平家物語 巻第一  総かな版(元和九年本)
「ぎをんしやうじや」(『ぎをんしやうじや』)S0101 P51¥ぎをん−しやうじや/の¥かね/の¥こゑ、¥しよぎやう−むじやう/の¥ひびき¥あり。¥しやら−さうじゆ/の¥はな/の¥いろ、¥じやうしや−ひつすゐ/の¥ことわり/を¥あらはす。¥おごれ/る¥もの¥ひさしから/ず、¥ただ¥はる/の¥よ/の¥ゆめ/の/ごとし。¥たけき¥ひと/も¥つひに/は¥ほろび/ぬ。¥ひとへに¥かぜ/の¥まへ/の¥ちり/に¥おなじ。¥とほく¥いてう/を¥とぶらふ/に、¥しん/の¥てうかう、¥かん/の¥わうまう、¥りやう/の¥しゆい、¥たう/の¥ろくさん、¥これ=ら/は¥みな¥きうしゆ¥せんくわう/の¥まつりごと/に/も¥したがは/ず、¥たのしみ/を¥きはめ、¥いさめ/を/も¥おもひ−いれ/ず、¥てんが/の¥みだれ/ん¥こと/を/も¥さとら/ず/して、¥みんかん/の¥うれふる¥ところ/を¥しら/ざり/しか/ば、¥ひさしから/ず/して、¥ばうじ/に/し¥もの=ども/なり。¥ちかく¥ほんてう/を¥うかがふ/に、¥しようへい/の¥まさかど、¥てんぎやう/の¥すみとも、¥かうわ/の¥ぎしん、¥へいぢ/の¥しんらい、¥これ=ら/は¥おごれ/る¥こと/も¥たけき¥こころ/も、¥みな¥とりどり/なり/しか/ども、¥まぢかく/は¥ろくはら/の−にふだう−さきの−だいじやうだいじん−たひらの−あそん−きよもり=こう/と¥まうし/し¥ひと/の¥ありさま、¥つたへ−うけたまはる/こそ、¥こころ/も¥ことば/も¥およば/れ/ね。¥その¥せんぞ/を¥たづぬれ/ば、¥くわんむ−てんわう¥だいご/の¥わうじ、¥いつぽんしきぶきやう−かづらはらの−しんわう¥くだい/のP52¥こういん、¥さぬきの−かみ−まさもり/が¥そん、¥ぎやうぶきやう−ただもりの−あそん/の¥ちやくなん/なり。¥かの¥しんわう/の¥みこ¥たかみの−わう¥むくわん¥むゐ/に/して¥うせ¥たまひ/ぬ。¥その¥おん=こ¥たかもちの−わう/の¥とき、¥はじめて¥たひら/の¥しやう/を¥たまはつ/て、¥かづさの−すけ/に¥なり¥たまひ/し/より¥この−かた、¥たちまちに¥わうし/を¥いで/て¥じんしん/に¥つらなる。¥その¥こ¥ちんじゆふ/の−しやうぐん−よしもち、¥のち/に/は¥くにか/と¥あらたむ。¥くにか/より¥まさもり/に¥いたる/まで¥ろくだい/は、¥しよ−こく/の¥じゆりやう/たり/しか/ども、¥てんじやう/の¥せんせき/を/ば¥いまだ¥ゆるさ/れ/ず。
「てんじやうのやみうち」(『てんじやうのやみうち』)S0102¥しかる/に¥ただもり、¥いまだ¥びぜんの−かみ/たり/し¥とき、¥とばのゐん/の¥ご=ぐわん、¥とくぢやうじゆ−ゐん/を¥ざうしん−し/て、¥さんじふさんげん/の¥み=だう/を¥たて、¥いつせんいつたい/の¥おん=ほとけ/を¥すゑ¥たてまつら/る。¥くやう/は¥てんじよう−ぐわんねん−さんぐわつ−じふさんにち/なり。¥けんじやう/に/は¥けつこく/を¥たまふ/べき¥よし¥おほせ−くださ/れ/ける。¥をりふし¥たじまの−くに/の¥あき/たり/ける/を/ぞ¥くださ/れ/ける。¥しやうくわう¥なほ¥ぎよ=かん/の¥あまり/に、¥うち/の¥しようでん/を¥ゆるさ/る。¥ただもり¥さんじふろく/にて¥はじめて¥しようでん−す。¥くものうへびと¥これ/を¥そねみ¥いきどほり、¥おなじき−とし/の−じふいちぐわつ−にじふさんにち、¥ごせつ−とよのあかり/の−せちゑ/の¥よ、¥ただもり/を¥やみうち/に¥せ/ん/と/ぞ¥ぎ−せ/られ/ける。¥ただもり、¥この¥よし/を¥つたへ−きい/て、「¥われ¥いうひつ/の¥み/に¥あら/ず、¥ぶよう/の¥いへ/に¥むまれ/て、¥いま¥ふりよ/の¥はぢ/に¥あは/ん¥こと、P53¥いへ/の¥ため、¥み/の¥ため¥こころ−うかる/べし。¥せんずる−ところ、¥み/を¥まつたう−し/て¥きみ/に¥つかへ¥たてまつれ/と¥いふ¥ほんもん¥あり」/とて、¥かねて¥ようい/を¥いたす。¥さんだい/の¥はじめ/より、¥おほき/なる¥さやまき/を¥ようい−し、¥そくたい/の¥した/に¥しどけな=げ/に¥さし−ほらし、¥ひ/の¥ほの−ぐらき¥かた/に¥むかつ/て、¥やはら¥この¥かたな/を¥ぬき−いだい/て、¥びん/に¥ひき−あて/られ/たり/ける/が、¥よそ/より/は、¥こほり/など/の¥やう/に/ぞ¥みえ/ける。¥しよにん¥め/を¥すまし/けり。¥また¥ただもり/の¥らうどう、¥もとは¥いちもん/たり/し¥たひらの−むくの−すけ−さだみつ/が¥まご、¥しんの−さぶらう−だいふ−いへふさ/が¥こ/に、¥さひやうゑ/の−じよう−いへさだ/と¥いふ¥もの¥あり。¥うすあを/の¥かりぎぬ/の¥した/に、¥もよぎ−をどし/の−はらまき/を¥き、¥つるぶくろ¥つけ/たる¥たち¥わき−ばさん/で、¥てんじやう/の¥こには/に¥かしこまつ/て/ぞ¥さぶらひ/ける。¥くわんじゆ¥いげ、¥あやしみ/を¥なし/て、「¥うつほばしら/より¥うち、¥すず/の¥つな/の¥へん/に、¥ほうい/の¥もの/の¥さぶらふ/は¥なにもの/ぞ。¥らうぜき/なり。¥とうとう¥まかり−いでよ」/と、¥ろくゐ/を¥もつて¥いは/せ/られ/たり/けれ/ば、¥いへさだ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥さうでん/の¥しゆ¥びぜんの−かう/の=との/の¥こんや¥やみうち/に¥せ/られ¥たまふ/べき¥よし¥うけたまはつ/て、¥その¥なら/ん¥やう/を¥み/ん/とて、¥かくて¥さぶらふ/なり。¥え/こそ¥いづ/まじ」/とて、¥また¥かしこまつ/て/ぞ¥さぶらひ/ける。¥これ=ら/を¥よし−なし/と/や¥おもは/れ/けん、¥その¥よ/の¥やみうち¥なかり/けり。¥
ただもり¥また¥ごぜん/の¥めし/に¥まは/れ/ける/に、¥ひとびと¥ひやうし/を¥かへ/て、「¥いせ−へいじ/は¥すがめ/なり/けり」/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく、¥この¥ひとびと/は¥かしはばらの−てんわう/の¥おん=すゑ/と/は¥まうし/ながら、¥なかごろ/は¥みやこ/の¥すまひ/も¥うとうとしく、¥ぢげ/に/のみ¥ふるまひ¥なつ/て、P54¥いせの−くに/に¥ぢうこく¥ふかかり/しか/ば、¥その¥くに/の¥うつはもの/に¥こと−よせ/て、¥いせ−へいじ/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。¥その−うへ¥ただもり/の¥め/の¥すがま/れ/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥かやう/に/は¥はやさ/れ/ける/なれ。¥ただもり¥いか/に−す/べき¥やう/も¥なく/して、¥ぎよ=いう/も¥いまだ¥をはら/ざる¥さき/に、¥ごぜん/を¥まかり−いで/らるる/とて、¥ししんでん/の¥ごご/に/して、¥ひとびと/の¥み/られ/ける¥ところ/にて、¥よこだへ¥ささ/れ/たり/ける¥こし/の¥かたな/を/ば、¥とのもづかさ/に¥あづけ−おき/て/ぞ¥いで/られ/ける。¥いへさだ、¥まち−うけ¥たてまつ/て、「¥さて¥いかが¥さふらひ/つる/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥かう/と/も¥いは/まほしう/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥まさしう¥いひ/つる/ほど/なら/ば、¥やがて¥てんじやう/まで/も¥きり−のぼら/んずる¥もの/の¥つらだましひ/にて¥ある¥あひだ、「¥べつ/の¥こと¥なし」/と/ぞ¥こたへ/られ/ける。¥ごせつ/に/は、「¥しろうすやう、¥こぜんじ/の¥かみ、¥まきあげ/の¥ふで、¥ともゑ¥かい/たる¥ふで/の¥ぢく」/なんど、¥いふ、¥さまざま¥かやう/に¥おもしろき¥こと/を/のみ/こそ¥うたひ¥まは/るる/に、¥なかごろ¥ださい/の−ごん/の−そつ−すゑなかの−きやう/と¥いふ¥ひと¥あり/けり。¥あまり/に¥いろ/の¥くろかり/けれ/ば、¥とき/の−ひと、¥こくそつ/と/ぞ¥まうし/ける。¥この¥ひと¥いまだ¥くらんど/の−とう/なり/し¥とき、¥ごぜん/の¥めし/に¥まは/れ/ける/に、¥ひとびと¥ひやうし/を¥かへ/て、「¥あな¥くろくろ、¥くろき¥とう/かな。¥いか/なる¥ひと/の¥うるし¥ぬり/けん」/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。¥また¥くわざんのゐん/の−さきの−だいじやうだいじん−ただまさ=こう、¥いまだ¥じつさい/なり/し¥とき、¥ちち¥ちうなごん−ただむねの−きやう/に¥おくれ¥たまひ/て、¥みなしご/にて¥おはし/ける/を、¥こ=なかのみかど/の−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥はりまの−かみ/にて¥おはし/ける/が、¥むこ/に¥とつ/て、¥はなやか/に¥もてなさ/れ/しか/ば、¥これ/も¥ごせつ/に/は、「¥はりまよね/は¥とくさ/か、¥むく/の−は/か、¥ひと/の¥きら/をP55¥みがく/は」/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。「¥しやうこ/に/は¥かやう/の¥こと=ども¥おほかり/しか/ども、¥こと¥いで−こ/ず。¥まつだい¥いかが¥あら/んず/らん、¥おぼつかなし/と/ぞ¥ひとびと¥まうし−あは/れ/ける。¥
あん/の/ごとく¥ごせつ¥はて/に/しか/ば、¥ゐん−ぢう/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥いちどう/に¥うつたへ¥まうさ/れ/ける/は、「¥それ¥ゆうけん/を¥たいし/て¥くえん/に¥れつし、¥ひやうぢやう/を¥たまはつ/て¥きうちう/を¥しゆつにふ−する/は、¥みな¥これ¥きやくしき/の¥れい/を¥まもる、¥りんめい¥よし−ある¥せんぎ/なり。¥しかる/を¥ただもりの−あそん、¥あるひは¥ねんらい/の¥らうじう/と¥かうし/て、¥ほうい/の¥つはもの/を¥てんじやう/の¥こには/に¥めし−おき、¥あるひは¥こし/の¥かたな/を¥よこだへ¥さい/て、¥せちゑ/の¥ざ/に¥つらなる。¥りやうでう¥きたい¥いまだ¥きか/ざる¥らうぜき/なり。¥こと¥すでに¥ちようでふ−せ/り。¥ざいくわ¥もつとも¥のがれ−がたし。¥はやく¥てんじやう/の¥みふだ/を¥けづつ/て、¥けつくわん¥ちやうにん¥おこなは/る/べき/か」/と、¥しよきやう¥いちどう/に¥うつたへ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥しやうくわう¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、¥ただもり/を¥ごぜん/へ¥めし/て¥おん=たづね¥あり。¥ちんじ¥まうさ/れ/ける/は、「¥まづ¥らうじう¥こには/に¥しこう/の¥よし、¥まつたく¥かくご¥つかまつら/ず。¥ただし¥きんじつ¥ひとびと¥あひ−たくま/るる¥むね、¥しさい¥ある/か/の¥あひだ、¥ねんらい/の¥けにん、¥こと/を¥つたへ−きく/か/に¥よつ/て、¥その¥はぢ/を¥たすけ/ん/が¥ため/に、¥ただもり/に/は¥しらせ/ず/して,¥ひそか/に¥さんこう/の¥でう、¥ちから¥およば/ざる¥しだい/なり。¥もし¥とが¥ある/べく/は、¥かの¥み/を¥めし−しんず/べき/か。¥つぎに¥かたな/の¥こと/は、¥とのもづかさ/に¥あづけ−おき¥さふらひ−をはん/ぬ。¥これ/を¥めし−いださ/れ、¥かたな/の¥じつぷ/に¥よつ/て、¥とが/の¥さう¥おこなは/る/べき/か」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし/とて、¥いそぎ¥かの¥かたな/を¥めし−いだい/て¥えいらん¥ある/に、¥うへ/は¥さやまき/の¥くろう¥ぬつ/たり/ける/が、¥なか/は¥き−がたな/に¥ぎんぱく/を/ぞ¥おい/たり/ける。「¥たうざ/の¥ちじよく/を¥のがれ/ん/がP56¥ため/に、¥かたな/を¥たいする¥よし¥あらはす/と¥いへ/ども、¥ごにち/の¥そしよう/を¥ぞんぢ−し/て、¥き−がたな/を¥たいし/ける¥ようい/の¥ほど/こそ¥しんべう/なれ。¥きうせん/に¥たづさはら/ん/ほど/の¥もの/の¥はかりごと/に/は、¥もつとも¥かう/こそ¥あら/まほしけれ。¥かねては¥また¥らうじう¥こには/に¥しこう/の¥こと、¥かつうは¥ぶし/の¥らうどう/の¥ならひ/なり。¥ただもり/が¥とが/に/は¥あら/ず」/とて、¥かへつて¥えいかん/に¥あづかつ/し¥うへ/は、¥あへて¥ざいくわ/の¥さた/は¥なかり/けり。
「すずき」(『すずき』)S0103¥その¥こども/は¥みな¥しよゑ/の−すけ/に¥なる。¥しようでん−せ/し/に、¥てんじやう/の¥まじはり/を¥ひと¥きらふ/に¥およば/ず。¥ある−とき¥ただもり、¥びぜんの−くに/より¥のぼら/れ/たり/ける/に、¥とばのゐん「¥あかし/の−うら/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば¥ただもり¥かしこまつ/て、¥
ありあけ/の−つき/も¥あかし/の¥うらかぜ/に¥なみ/ばかり/こそ¥よる/と¥みえ/しか W001
/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゐん¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥やがて¥この¥うた/を/ば、¥きんえふしふ/に/ぞ¥いれ/られ/ける。¥ただもり、¥また¥せんとう/に¥さいあい/の¥にようばう/を¥もつ/て¥よなよな¥かよは/れ/ける/が、¥ある¥よ¥おはし/たり/ける/に、¥かの¥にようばう/の¥つぼね/に、¥つま/に¥つき¥いだし/たる¥あふぎ/を¥とり−わすれ/て、¥いで/られ/たり/けれ/ば、P57¥かたへ/の¥にようばう=たち、「¥これ/は¥いづく/より/の¥つきかげ/ぞ/や、¥いでどころ¥おぼつかなし」/など、¥わらひ−あは/れ/けれ/ば、¥かの¥にようばう、¥
くもゐ/より¥ただ¥もり−き/たる¥つき/なれ/ば¥おぼろ=げ/にて/は¥いは/じ/と/ぞ¥おもふ W002
/と¥よみ/たり/けれ/ば、¥いとど¥あさから/ず/ぞ¥おもは/れ/ける。¥さつまの−かみ−ただのり/の¥はは¥これ/なり。¥にる/を¥とも/とかや/の¥ふぜい/にて、¥ただもり/の¥すい/たり/けれ/ば、¥かの¥にようばう/も¥いう/なり/けり。¥
かくて¥ただもり、¥ぎやうぶきやう/に¥なつ/て、¥にんぺい−さんねん−しやうぐわつ−じふごにち、¥とし¥ごじふはち/にて¥うせ¥たまひ/しか/ば、¥きよもり¥ちやくなん/たる/に¥よつ/て、¥その¥あと/を¥つぎ、¥はうげん−ぐわんねん−しちぐわつ/に、¥うぢの−さふ、¥よ/を¥みだり¥たまひ/し¥とき、¥み=かた/にて¥さき/を¥かけ/たり/けれ/ば、¥けんじやう¥おこなは/れ/けり。¥もと/は¥あきの−かみ/たり/し/が、¥はりまの−かみ/に¥うつつ/て、¥おなじき−さんねん/に¥だざい/の−だいに/に¥なる。¥また¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥のぶより¥よしとも/が¥むほん/の¥とき/も、¥み=かた/にて¥ぞくと/を¥うち−たひらげ/たり/しか/ば、¥くんこう¥ひとつ/に¥あら/ず、¥おんしやう¥これ¥おもかる/べし/とて、¥つぎ/の¥とし¥じやう−ざんみ/に¥じよ−せ/られ、¥うち−つづき¥さいしやう、¥ゑふ/の−かみ、¥けんびゐし/の−べつたう、¥ちうなごん、¥だいなごん/に¥へ−あがつ/て、¥あまつさへ¥しようじやう/の¥くらゐ/に¥いたる。¥さう/を¥へ/ず/して、¥ないだいじん/より¥だいじやうだいじん−じゆ−いちゐ/に¥いたり、¥だいしやう/に/は¥あら/ね/ども、¥ひやうぢやう/を¥たまはつ/て¥ずゐじん/を¥めし−ぐす。¥ぎつしや¥れんじや/の¥せんじ/を¥かうぶつ/て、¥のり/ながら¥きうちう/を¥しゆつにふ−す。¥ひとへに¥しつせい/の¥しん/の/ごとし。「¥だいじやうだいじん/は¥いちじん/に¥しはん/と/して、¥しかい/に¥ぎけい−せ/り。¥くに/を¥をさめ¥みち/を¥ろんじ、¥いんやう/を¥やはらげ−をさむ。¥その¥ひと/に¥あら/ず/は、¥すなはち¥かけよ/と¥いへ/り。¥そくけつ/の−くわん/と/も¥なづけ/られ/たり。P58¥その¥ひと/なら/で/は¥けがす/べき¥くわん/なら/ね/ども、¥この¥にふだう−しやうこく/は¥いつてん−しかい/を¥たなごころ/の¥うち/に¥にぎり¥たまふ¥うへ/は、¥しさい/に¥およば/ず。¥そもそも¥へいけ¥かやう/に¥はんじやう−せ/られ/ける¥こと/は、¥ひとへに¥くまの−ごんげん/の¥ご=りしやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥その¥ゆゑ/は、¥きよもり¥いまだ¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥いせの−くに¥あの/の−つ/より、¥ふね/にて¥くまの/へ¥まゐら/れ/ける/に、¥おほき/なる¥すずき/の¥ふね/へ¥をどり−いつ/たり/けれ/ば、¥せんだち¥まうし/ける/は、「¥むかし、¥しう/の¥ぶわう/の¥ふね/に/こそ、¥はくぎよ/は¥をどり−いつ/たる/なれ。¥いかさま/に/も¥これ/は¥ごんげん/の¥ご=りしやう/と¥おぼえ¥さふらふ。¥まゐる/べし」/と¥まうし/けれ/ば、¥さ/しも¥じつかい/を¥たもつ/て、¥しやうじん−けつさい/の¥みち/なれ/ども、¥みづから¥てうび−し/て¥わが−み¥くひ、¥いへのこ−らうどう=ども/に/も¥くはせ/らる。¥その¥ゆゑ/に/や¥きちじ/のみ¥うち−つづい/て、¥わが−み¥だいじやうだいじん/に¥いたり、¥しそん/の¥くわんど/も、¥りよう/の¥くも/に¥のぼる/より/は¥なほ¥すみやか/なり。¥くだい/の¥せんじよう/を¥こえ¥たまふ/こそ¥めでたけれ。
「かぶろ」(『かぶろ』)S0104¥かくて¥きよもり=こう、¥にんあん−さんねん−じふいちぐわつ−じふいちにち、¥とし¥ごじふいち/にて¥やまひ/に¥をかさ/れ、¥ぞんめい/の¥ため/に/とて、¥すなはち¥しゆつけにふだう−す。¥ほふみやう/を/ば¥じやうかい/と/こそ¥つき¥たまへ。¥その¥ゆゑ/に/や、¥しゆくびやうP59¥たちどころ/に¥いえ/て¥てんめい/を¥まつたう−す。¥しゆつけ/の¥のち/も、¥えいえう/は¥なほ¥つき/ず/と/ぞ¥みえ/し。¥おのづから¥ひと/の¥したがひ−つき¥たてまつる¥こと/は、¥ふく¥かぜ/の¥くさき/を¥なびかす/ごとく、¥よ/の¥あふげる¥こと/も、¥ふる¥あめ/の¥こくど/を¥うるほす/に¥おなじ。¥ろくはら=どの/の¥ご=いつけ/の¥きんだち/と/だに¥いへ/ば、¥くわそく/も¥えいゆう/も、¥たれ¥かた/を¥ならべ、¥おもて/を¥むかふ¥もの¥なし。¥また¥にふだう−しやうこく/の¥こじうと、¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/の¥のたまひ/ける/は、「¥この¥いちもん/に¥あら/ざら/ん¥もの/は、¥みな¥にんぴにん/たる/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥され/ば¥いか/なる¥ひと/も、¥この¥いちもん/に¥むすぼれ/ん/と/ぞ¥し/ける。¥ゑぼし/の¥ため−やう/より¥はじめ/て、¥えもん/の¥かき−やう/に¥いたる/まで、¥なにごと/も¥ろくはら−やう/と/だに¥いひ/て/しか/ば、¥いつてん−しかい/の¥ひと¥みな¥これ/を¥まなぶ。¥いか/なる¥けんわう¥けんしゆ/の¥おん=まつりごと、¥せつしやう¥くわんばく/の¥ご=せいばい/に/も、¥よ/に¥あまさ/れ/たる/ほど/の¥いたづらもの/など/の、¥かたはら/に¥より−あひ/て、¥なにと−なう¥そしり−かたぶけ¥まうす¥こと/は¥つね/の¥ならひ/なれ/ども、¥この¥ぜんもん¥よざかり/の¥ほど/は、¥いささか¥ゆるがせ/に¥まうす¥もの¥なし。¥その¥ゆゑ/は¥にふだう−しやうこく/の¥はかりごと/に、¥じふしごろく/の¥わらべ/を¥さんびやくにん¥すぐつ/て、¥かみ/を¥かぶろ/に¥きり−まはし、¥あかき¥ひたたれ/を¥きせ/て、¥めし−つかは/れ/ける/が、¥きやう−ぢう/に¥みちみち/て¥わうばん−し/けり。¥おのづから¥へいけ/の¥おん=こと、¥あしざま/に¥まうす¥もの¥あれ/ば、¥いち−にん¥きき−いださ/ぬ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥よたう/に¥ふれ−まはし、¥かの¥いへ/に¥らんにふ−し、¥しざい−ざふぐ/を¥つゐふく−し、¥その¥やつ/を¥からめ/て、¥ろくはら=どの/へ¥ゐ/て¥まゐる。¥され/ば¥め/に¥み、¥こころ/に¥しる/と¥いへ/ども、¥ことば/に¥あらはし/て¥まうす¥もの¥なし。¥ろくはら=どの/の¥かぶろ/と/だに¥いへ/ば、¥みち/を¥すぐる¥むま¥くるま/も、¥みな¥よぎ/て/ぞP60¥とほし/ける。¥きんもん/を¥しゆつにふ−す/と¥いへ/ども、¥しやうみやう/を¥たづね/らるる/に¥およば/ず。¥けいし/の¥ちやうり、¥これ/が¥ため/に¥め/を¥そばむ/と¥みえ/たり。
「わがみのえいぐわ」(『わがみのえいぐわ』)S0105¥わが−み/の¥えいぐわ/を¥きはむる/のみ/なら/ず、¥いちもん¥ともに¥はんじやう−し/て、¥ちやくし¥しげもり、¥ないだいじん/の−さだいしやう、¥じなん¥むねもり、¥ちうなごん/の−うだいしやう、¥さんなん¥とももり、¥さんみ/の−ちうじやう、¥ちやくそん¥これもり、¥しゐ/の−せうしやう、¥すべて¥いちもん/の¥くぎやう¥じふろく−にん、¥てんじやうびと¥さんじふ−よ−にん、¥しよ−こく/の¥じゆりやう、¥ゑふ、¥しよし、¥つがふ¥ろくじふ−よ−にん/なり。¥よ/に/は¥また¥ひと¥なく/ぞ¥みえ/られ/ける。¥むかし¥ならの−みかど/の¥おん=とき、¥じんき−ごねん、¥てうか/に¥ちうゑ/の¥だいしやう/を¥はじめ−おか/る。¥だいどう−しねん/に¥ちうゑ/を¥こんゑ/と¥あらため/られ/し/より¥この−かた、¥きやうだい¥さう/に¥あひ−ならぶ¥こと、¥わづか/に¥さんしかど/なり。¥もんどく−てんわう/の¥おん=とき/は、¥ひだん/に¥よしふさ、¥うだいじん/の−さだいしやう、¥みぎ/に¥よしあふ、¥だいなごん/の−うだいしやう、¥これ/は¥かんゐん/の−さだいじん−ふゆつぎ/の¥おん=こ/なり。¥しゆしやくゐん/の¥ぎよ=う/に/は、¥ひだり/に¥さねより、¥をののみや=どの、¥みぎ/に¥もろすけ、¥くでう=どの、¥ていじん=こう/の¥おん=こ/なり。¥ごれんぜいゐん/の¥おん=とき/は、¥ひだり/に¥のりみち、¥おほにでう=どの、¥みぎ/に¥よりむね、¥ほりかは=どの、¥み=だう/の−くわんばく/の¥おん=こ/なり。¥にでうのゐん/の¥ぎよ=う/に/は、¥ひだり/に¥もとふさ、¥まつ=どの、¥みぎ/に¥かねざね、¥つきのわ=どの、¥ほつしやうじ=どの/の¥おん=こ/なり。¥これ¥みな¥せふろく/のP61¥しん/の¥ご=しそく、¥はんじん/に¥とつ/て/は¥その¥れい¥なし。¥てんじやう/の¥まじはり/を/だに¥きらは/れ/し¥ひと/の¥しそん/にて、¥きんじき、¥ざつぱう/を¥ゆり、¥りようら¥きんしう/を¥み/に¥まとひ、¥だいじん/の−だいしやう/に¥なつ/て¥きやうだい¥さう/に¥あひ−ならぶ¥こと、¥まつだい/と/は¥いひ/ながら、¥ふしぎ/なり/し¥こと=ども/なり。¥その−ほか、¥おん=むすめ¥はち−にん¥おはし/き。¥みな¥とりどり/に¥さいはひ¥たまへ/り。¥いち−にん/は¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう/の¥きたのかた/にて¥おはす/べかり/し/が、¥はつさい/の¥とし¥おん=やくそく/ばかり/にて、¥へいぢ/の¥みだれ¥いご、¥ひき−ちがへ/られ/て、¥くわざんのゐん/の−さだいじん=どの/の¥み=だいばんどころ/に¥なら/せ¥たまひ/て、¥きんだち¥あまた¥ましまし/けり。¥そもそも¥この¥しげのりの−きやう/を¥さくらまちの−ちうなごん/と¥まうし/ける¥こと/は、¥すぐれ/て¥こころ¥すき¥たまへ/る¥ひと/にて、¥つね/は¥よしの/の−やま/を¥こひ/つつ、¥ちやう/に¥さくら/を¥うゑ¥ならべ、¥その¥うち/に¥や/を¥たて/て¥すみ¥たまひ/しか/ば、¥くる¥とし/の¥はる−ごと/に、¥みる¥ひと、¥さくらまち/と/ぞ¥まうし/ける。¥さくら/は¥さい/て¥しちかにち/に¥ちる/を、¥なごり/を¥をしみ、¥あまてるおんがみ/に¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ば/に/や、¥さんしち−にち/まで¥なごり¥あり/けり。¥きみ/も¥けんわう/にて¥ましませ/ば、¥しん/も¥しんとく/を¥かかやかし、¥はな/も¥こころ−あり/けれ/ば、¥はつか/の¥よはひ/を¥たもち/けり。¥
いち−にん/は¥きさき/に¥たた/せ¥たまふ。¥にじふに/にて¥わうじ¥ご=たんじやう¥あつ/て、¥くわうたいし/に¥たち、¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/しか/ば、¥ゐんがう¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥けんれいもんゐん/と/ぞ¥まうし/ける。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ/なる¥うへ、¥てんが/の¥こくも/にて¥ましませ/ば、¥とかう¥まうす/に¥およば/れ/ず。¥いち−にん/は¥ろくでう/の−せつしやう=どの/の¥きたのまんどころ/に¥なら/せ¥たまふ。¥これ/は¥たかくらのゐん¥ございゐ/の¥おん=とき、¥おん=ははしろ/とて、¥じゆんさんごう/の¥せんじ/を¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥しらかは=どの/とて、¥おもき¥ひと/にて/ぞ¥ましまし/ける。P62¥いち−にん/は¥ふげんじ=どの/の¥きたのまんどころ/に¥なら/せ¥たまふ。¥いち−にん/は¥れんぜいの−だいなごん−りうばうの−きやう/の¥きたのかた、¥いち−にん/は¥しちでうの−しゆり/の−だいぶ−のぶたかの−きやう/に¥あひ−ぐし¥たまへ/り。¥また¥あきの−くに¥いつくしま/の−ないし/が¥はら/に¥いち−にん、¥これ/は¥ごしらかはの−ほふわう/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥ひとへに¥にようご/の¥やう/で/ぞ¥ましまし/ける。¥その−ほか¥くでうのゐん/の¥ざふし¥ときは/が¥はら/に¥いち−にん、¥これ/は¥くわざんのゐん=どの/の¥じやうらふ−にようばう/にて、¥らふ/の−おん=かた/と/ぞ¥まうし/ける。¥につぽん¥あきつしま/は¥わづかに¥ろくじふろく−か−こく、¥へいけ¥ちぎやう/の¥くに¥さんじふ−よ−か−こく、¥すでに¥はんごく/に¥こえ/たり。¥その−ほか¥しやうえん、¥でんばく、¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず。¥きら¥じうまん−し/て、¥たうしやう¥はな/の/ごとし。¥けんき¥くんじゆ−し/て、¥もんぜん¥いち/を¥なす。¥やうしう/の¥こがね、¥けいしう/の¥たま、¥ごきん/の¥あや、¥しよつかう/の¥にしき、¥しつちん−まんぽう、¥ひとつ/と/して¥かけ/たる¥こと¥なし。¥かたう−ぶかく/の¥もとゐ、¥ぎよりよう−しやくば/の¥もてあそびもの、¥おそらく/は、¥ていけつ/も¥せんとう/も、¥これ/に/は¥すぎじ/と/ぞ¥みえ/し。¥
「ぎわう」(『ぎわう』)S0106¥だいじやう/の−にふだう/は、¥かやう/に¥てんが/を¥たなごころ/の¥うち/に¥にぎり¥たまひ/し¥うへ/は、¥よ/の¥そしり/を/も¥はばから/ず、¥ひと/の¥あざけり/を/も¥かへりみ/ず、¥ふしぎ/の¥こと/を/のみ¥し¥たまへ/り。¥たとへば、¥その−ころ¥きやう−ぢう/に¥きこえ/たる¥しらびやうし/の¥じやうず、¥ぎわう、¥ぎによ/とて¥おととひ¥あり。¥とぢ/と¥いふP63¥しらびやうし/が¥むすめ/なり。¥しかる/に¥あね/の¥ぎわう/を、¥にふだう−しやうこく¥ちようあい−し¥たまふ¥うへ、¥いもと/の¥ぎによ/を/も、¥よ/の¥ひと¥もてなす¥こと¥なのめ/なら/ず。¥はは¥とぢ/に/も¥よき¥や¥つくつ/て¥とら/せ、¥まい−ぐわつ/に¥ひやく−こく¥ひやく−くわん/を¥おくら/れ/たり/けれ/ば、¥けない¥ふつき−し/て¥たのしい¥こと¥なのめ/なら/ず。¥そもそも¥わが¥てう/に¥しらびやうし/の¥はじまり/ける¥こと/は、¥むかし¥とばのゐん/の¥ぎよ=う/に、¥しまのせんざい、¥わかのまへ、¥かれ=ら¥ににん/が¥まひ−いだし/たり/ける/なり。¥はじめ/は¥すゐかん/に¥たて−ゑぼし、¥しろざやまき/を¥さい/て¥まひ/けれ/ば¥をとこまひ/と/ぞ¥まうし/ける。¥しかる/を¥なかごろ/より¥ゑぼし¥かたな/を¥のけ/られ/て、¥すゐかん/ばかり¥もちひ/たり。¥さて/こそ¥しらびやうし/と/は¥なづけ/けれ。¥きやう−ぢう/の¥しらびやうし=ども、¥ぎわう/が¥さいはひ/の¥めでたき¥やう/を¥きい/て、¥うらやむ¥もの/も¥あり、¥そねむ¥もの/も¥あり。¥うらやむ¥もの=ども/は、「¥あな¥めでた/の¥ぎわう−ごぜん/の¥さいはひ/や。¥おなじ¥あそびめ/と/なら/ば、¥たれ/も¥みな¥あの¥やう/で/こそ¥あり/たけれ。¥いかさま/に/も¥ぎ/と¥いふ¥もじ/を¥な/に¥つい/て、¥かく/は¥めでたき/やらん。¥いざ/や¥われ=ら/も¥つい/て¥み/ん」/とて、¥あるひは¥ぎいち、¥ぎに/と¥つき、¥あるひは¥ぎふく、¥ぎとく/など¥つく¥もの/も¥あり/けり。¥そねむ¥もの=ども/は、「¥なんでふ¥な/に¥より、¥もじ/に/は¥よる/べき。¥さいはひ/は¥ただ¥ぜんぜ/の¥むまれつき/で/こそ¥あん/なれ」/とて、¥つか/ぬ¥もの/も¥おほかり/けり。¥かくて¥さんねん/と¥いふ/に、¥また¥しらびやうし/の¥じやうず、¥いち−にん¥いで−き/たり。¥かがの−くに/の¥もの/なり。¥な/を/ば¥ほとけ/と/ぞ¥まうし/ける。¥とし¥じふろく/と/ぞ¥きこえ/し。¥きやう−ぢう/の¥じやうげ¥これ/を¥み/て、¥むかし/より¥おほく/の¥しらびやうし/は¥み/しか/ども、¥かかる¥まひ/の¥じやうず/は¥いまだ¥み/ず/とて、¥よ/の¥ひと¥もてなすP64¥こと¥なのめ/なら/ず。¥
ある−とき¥ほとけ−ごぜん¥まうし/ける/は、「¥われ¥てんが/に¥もてあそば/るる/と¥いへ/ども、¥たうじ¥めでたう¥さかえ/させ¥たまふ¥へいけ−だいじやう/の−にふだう=どの/へ、¥めさ/れ/ぬ¥こと/こそ¥ほい−なけれ。¥あそびもの/の¥ならひ、¥なに/か¥くるしかる/べき。¥すゐさん−し/て¥み/ん」/とて、¥ある−とき¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥ひと¥ごぜん/に¥まゐつ/て、「¥たうじ¥みやこ/に¥きこえ¥さふらふ¥ほとけ−ごぜん/が¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥おほき/に¥いかつ/て、「¥なんでふ、¥さやう/の¥あそびもの/は、¥ひと/の¥めし/にて/こそ¥まゐる¥もの/なれ、¥さう−なう¥すゐさん−する¥やう/や¥ある。¥その−うへ、¥かみ/と/も¥いへ、¥ほとけ/と/も¥いへ、¥ぎわう/が¥あら/んずる¥ところ/へ/は¥かなふ/まじき/ぞ。¥とうとう¥まかり−いでよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ほとけ−ごぜん/は、¥すげなう¥いは/れ¥たてまつ/て、¥すでに¥いで/ん/と¥し/ける/を、¥ぎわう¥にふだう=どの/に¥まうし/ける/は、「¥あそびもの/の¥すゐさん/は、¥つね/の¥ならひ/で/こそ¥さぶらへ。¥その−うへ¥とし/も¥いまだ¥をさなう¥さぶらふ/なる/が、¥たまたま¥おもひ−たつ/て¥まゐつ/て¥さぶらふ/を、¥すげなう¥おほせ/られ/て、¥かへさ/せ¥たまは/ん/こそ¥ふびん/なれ。¥いか/ばかり¥はづかしう、¥かたはらいたく/も¥さぶらふ/らん。¥わが¥たて/し¥みち/なれ/ば、¥ひと/の¥うへ/と/も¥おぼえ/ず。¥たとひ¥まひ/を¥ごらんじ、¥うた/を/こそ¥きこしめさ/ず/とも、¥ただ¥り/を¥まげ/て、¥めし−かへい/て¥ご=たいめん/ばかり¥さぶらひ/て、¥かへさ/せ¥たまは/ば、¥あり−がたき¥おん=なさけ/で/こそ¥さぶらは/んずれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥いでいで¥さら/ば、¥わ−ごぜ/が¥あまり/に¥いふ¥こと/なる/に、¥たいめん−し/て¥かへさ/ん」/とて、¥お=つかひ/を¥たて/て、¥めさ/れ/けり。¥ほとけ−ごぜん/は、¥すげなう¥いは/れ¥たてまつ/て、¥くるま/に¥のつ/て¥すでに¥いで/ん/とP65¥し/ける/が、¥めさ/れ/て¥かへり−まゐり/たり。¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん−し¥たまひ/て、「¥いか/に¥ほとけ、¥けふ/の¥げんざん/は¥ある/まじかり/つれ/ども、¥ぎわう/が¥なに/と¥おもふ/やらん、¥あまり/に¥まうし−すすむる¥あひだ、¥かやう/に¥げんざん/は¥し/つ。¥げんざん−する¥うへ/で/は¥いかで/か¥こゑ/を/も¥きか/で¥ある/べき。¥まづ¥いまやう¥ひとつ¥うたへ/かし」/と¥のたまへ/ば、¥ほとけ−ごぜん、「¥うけたまはり¥さぶらふ」/とて、¥いまやう¥ひとつ/ぞ¥うたう/たる。¥
きみ/を¥はじめて¥みる¥とき/は¥ちよ/も¥へ/ぬ/べし¥ひめこまつ¥
お=まへ/の¥いけ/なる¥かめをか/に¥つる/こそ¥むれ−ゐ/て¥あそぶ/めれ
/と、¥おし−かへし−おし−かへし、¥さんべん¥うたひ−すまし/たり/けれ/ば、¥けんもん/の¥ひとびと、¥みな¥じぼく/を¥おどろか/す。¥にふだう/も¥おもしろき¥こと/に¥おもひ¥たまひ/て、「¥さて¥わ−ごぜ/は、¥いまやう/は¥じやうず/にて¥あり/ける/や。¥この¥ぢやう/で/は¥まひ/も¥さだめて¥よから/ん。¥いちばん¥み/ばや、¥つづみ¥うち−めせ」/とて¥めさ/れ/けり。¥うた/せ/て¥いちばん¥まう/たり/けり。¥ほとけ−ごぜん/は、¥かみ¥すがた/より¥はじめ/て、¥みめ−かたち¥よ/に¥すぐれ、¥こゑ¥よく¥ふし/も¥じやうず/なり/けれ/ば、¥なじか/は¥まひ/は¥そんず/べき。¥こころ/も¥およば/ず¥まひ−すまし/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥まひ/に¥めで¥たまひ/て、¥ほとけ/に¥こころ/を¥うつさ/れ/けり。¥ほとけ−ごぜん、「¥こ/は¥なにごと/にて¥さぶらふ/ぞ/や。¥もと/より¥わらは/は¥すゐさん/の¥もの/にて、¥すでに¥いださ/れ¥まゐらせ/し/を、¥ぎわう−ごぜん/の¥まうしじやう/に¥よつ/て/こそ、¥めし−かへさ/れ/て/も¥さぶらふ。¥はやはや¥いとま¥たまはつ/て、¥いださ/せ¥おはしませ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥すべて¥その¥ぎ¥かなふ/まじ。¥ただし¥ぎわう/が¥ある/にP66¥よつ/て、¥さやう/に¥はばかる/か。¥その¥ぎ/なら/ば¥ぎわう/を/こそ¥いださ/め」/と¥のたまへ/ば、¥ほとけ−ごぜん、「¥これ¥また¥いかで¥さる−おん=こと¥さぶらふ/べき。¥とも/に¥めし−おか/れ/ん/だに、¥はづかしう¥さぶらふ/べき/に、¥ぎわう−ごぜん/を¥いださ/せ¥たまひ/て、¥わらは/を¥いち−にん¥めし−おか/れ/な/ば、¥ぎわう−ごぜん/の¥おもひ¥たまは/ん¥こころ/の¥うち、¥いか/ばかり¥はづかしう、¥かたはらいたく/も¥さぶらふ/べき。¥おのづから¥のち/まで/も¥わすれ¥たまは/ぬ¥おん=こと/なら/ば、¥めさ/れ/て¥また/は¥まゐる/とも、¥けふ/は¥いとま/を¥たまはら/ん」/と/ぞ¥まうし/ける。¥にふだう、「¥その¥ぎ/なら/ば、¥ぎわう¥とうとう¥まかり−いで/よ」/と、¥お=つかひ¥かさね/て¥さんど/まで/こそ¥たて/られ/けれ。¥ぎわう/は¥もと/より¥おもひ−まうけ/たる¥みち/なれ/ども、¥さすが¥きのふ¥けふ/と/は¥おもひ/も¥よら/ず。¥にふだう−しやうこく、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし、¥しきり/に¥のたまふ¥あひだ、¥はき−のごひ、¥ちり¥ひろは/せ、¥いづ/べき/に/こそ¥さだめ/けれ。¥いちじゆ/の¥かげ/に¥やどり−あひ、¥おなじ¥ながれ/を¥むすぶ/だに、¥わかれ/は¥かなしき¥ならひ/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は¥みとせ/が¥あひだ¥すみ−なれ/し¥ところ/なれ/ば、¥なごり/も¥をしく¥かなしく/て、¥かひ−なき¥なみだ/ぞ¥すすみ/ける。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥ぎわう¥いま/は¥かう/とて¥いで/ける/が、¥なから/ん¥あと/の¥わすれ−がたみ/に/も/と/や¥おもひ/けん、¥しやうじ/に¥なくなく¥いつしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/ける。¥
もえ−いづる/も¥かるる/も¥おなじ¥のべ/の¥くさ¥いづれ/か¥あき/に¥あは/で¥はつ/べき W003
¥さて¥くるま/に¥のつ/て¥しゆくしよ/へ¥かへり、¥しやうじ/の¥うち/に¥たふれ−ふし、¥ただ¥なく/より¥ほか/の¥こと/ぞ¥なき。¥はは/や¥いもと¥これ/を¥み/て、¥いか/に/や−いか/に/と¥とひ/けれ/ども、¥ぎわう¥とかう/の¥へんじ/に/もP67¥およば/ず、¥ぐし/たる¥をんな/に¥たづね/て/こそ、¥さる−こと¥あり/と/も¥しつ/てげれ。¥さる−ほど/に¥まい−ぐわつ¥おくら/れ/ける¥ひやく−こく¥ひやく−くわん/を/も¥おし−とめ/られ/て、¥いま/は¥ほとけ−ごぜん/の¥ゆかり/の¥もの=ども/ぞ、¥はじめて¥たのしみ−さかえ/ける。¥きやう−ぢう/の¥じやうげ、¥この¥よし/を¥つたへ−きい/て、「¥まこと/や¥ぎわう/こそ、¥にしはちでう=どの/より¥いとま¥たまはつ/て¥いださ/れ/たん/なれ。¥いざや¥げんざん−し/て¥あそば/ん」/とて、¥あるひは¥ふみ/を¥つかはす¥もの/も¥あり、¥あるひは¥ししや/を¥たつる¥ひと/も¥あり/けれ/ども、¥ぎわう、¥いまさら¥また¥ひと/に¥たいめん−し/て、¥あそび−たはむる/べき/に/も¥あら/ね/ば/とて、¥ふみ/を/だに¥とり−いるる¥こと/も¥なく、¥まして¥つかひ/を¥あひ−しらふ/まで/も¥なかり/けり。¥ぎわう¥これ/に¥つけ/て/も、¥いとど¥かなしく/て、¥かひ−なき¥なみだ/ぞ¥こぼれ/ける。¥かくて¥ことし/も¥くれ/ぬ。¥あくる¥はる/に/も¥なり/しか/ば、¥にふだう−しやうこく、¥ぎわう/が¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥いか/に¥ぎわう、¥その−のち/は¥なにごと/か¥ある。¥ほとけ−ごぜん/が¥あまり/に¥つれづれ=げ/に¥みゆる/に、¥まゐつ/て¥いまやう/を/も¥うたひ、¥まひ/など/を/も¥まう/て、¥ほとけ¥なぐさめよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぎわう¥とかう/の¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥ふし/に/けり。¥にふだう¥かさね/て、「¥なに/とて¥ぎわう/は、¥と/も−かう/も¥へんじ/を/ば¥まうさ/ぬ/ぞ。¥まゐる/まじき/か。¥まゐる/まじく/は、¥その¥やう/を¥まうせ。¥じやうかい/も¥はからふ¥むね¥あり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥はは¥とぢ¥これ/を¥きく/に¥かなしく/て、¥なくなく¥けうくん−し/ける/は、「¥なに/とて¥ぎわう/は¥と/も−かう/も¥おん=ぺんじ/を/ば¥まうさ/で、¥かやう/に¥しから/れ¥まゐらせ/ん/より/は」/と¥いへ/ば、¥ぎわう¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥まゐら/ん/と¥おもふ¥みち/なら/ば/こそ、¥やがて¥まゐる/べし/と/も¥まうす/べけれ。P68¥なかなか¥まゐら/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥なに/と¥おん=ぺんじ/を/ば¥まうす/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥この−たび¥めさ/ん/に¥まゐら/ず/は、¥はからふ¥むね¥あり/と¥おほせ/らるる/は、¥さだめて¥みやこ/の¥ほか/へ¥いださ/るる/か、¥さら/ず/は¥いのち/を¥めさ/るる/か、¥これ¥ふたつ/に/は¥よも¥すぎ/じ。¥たとひ¥みやこ/を¥いださ/るる/とも、¥なげく/べき¥みち/に¥あら/ず。¥また¥いのち/を¥めさ/るる/とも¥をしかる/べき¥わが−み/かは。¥いちど¥うき¥もの/に¥おもは/れ¥まゐらせ/て、¥ふたたび¥おもて/を¥むかふ/べし/と/も¥おぼえ/ず」/とて、¥なほ¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ざり/しか/ば、¥はは¥とぢ¥なくなく¥また¥けうくん−し/ける/は、「¥あめ/が¥した/に¥すま/ん/に/は、¥と/も−かう/も¥にふだう=どの/の¥おほせ/を/ば、¥そむく/まじき¥こと/にて¥ある/ぞ。¥その−うへ¥わ−ごぜ/は、¥をとこ¥をんな/の¥えん、¥しゆくせ、¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/ぞ/かし。¥せんねん¥まんねん/と/は¥ちぎれ/ども、¥やがて¥わかるる¥なか/も¥あり。¥あからさま/と/は¥おもへ/ども、¥ながらへ−はつる¥こと/も¥あり。¥よ/に¥さだめ¥なき¥もの/は、¥をとこ¥をんな/の¥ならひ/なり。¥いはんや¥わ−ごぜ/は、¥この¥みとせ/が¥あひだ¥おもは/れ¥まゐらせ/たれ/ば、¥あり−がたき¥おん=なさけ/で/こそ¥さぶらへ。¥この−たび¥めさ/ん/に¥まゐら/ね/ば/とて、¥いのち/を¥めさ/るる/まで/は¥よも¥あら/じ。¥さだめて¥みやこ/の¥ほか/へ/ぞ¥いださ/れ/んず/らん。¥たとひ¥みやこ/を¥いださ/るる/とも、¥わ−ごぜ=たち/は¥とし¥いまだ¥わかけれ/ば、¥いか/なら/ん¥いはき/の¥はざま/にて/も、¥すごさ/ん¥こと¥やすかる/べし。¥わが−み/は¥としおい¥よはひ¥おとろへ/たれ/ば、¥ならは/ぬ¥ひな/の¥すまひ/を、¥かねて¥おもふ/こそ¥かなしけれ。¥ただ¥われ/を/ば¥みやこ/の¥うち/にて¥すみ−はて/させよ。¥それ/ぞ¥こんじやう¥ごしやう/の¥けうやう/にて¥あら/んずる/ぞ」/と¥いへ/ば、¥ぎわう¥まゐら/じ/と¥おもひ−さだめ/し¥みち/なれ/ども、¥はは/の¥めい/を¥そむか/じ/とて、¥なくなく¥また¥いで−たち/ける、P69¥こころ/の¥うち/こそ¥むざん/なれ。¥
ぎわう¥ひとり¥まゐら/ん¥こと/の、¥あまり/に¥こころ−うし/とて、¥いもと/の¥ぎによ/を/も¥あひ−ぐし/けり。¥その−ほか¥しらびやうし¥ににん、¥そうじて¥しにん、¥ひとつ¥くるま/に¥とり−のつ/て、¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥ひごろ¥めさ/れ/つる¥ところ/へ/は¥いれ/られ/ず/して、¥はるか/に¥さがり/たる¥ところ/に、¥ざしき¥しつらう/て/ぞ¥おか/れ/ける。¥ぎわう、「¥こ/は¥され/ば¥なにごと/ぞ/や。¥わが−み/に¥あやまつ¥こと/は¥なけれ/ども、¥いださ/れ¥まゐらする/だに¥ある/に、¥あまつさへ¥ざしき/を/だに¥さげ/らるる¥こと/の¥くちをし−さ/よ。¥いか/に−せ/ん」/と¥おもふ/を、¥ひと/に¥しらせ/じ/と、¥おさふる¥そで/の¥ひま/より/も、¥あまり/て¥なみだ/ぞ¥こぼれ/ける。¥ほとけ−ごぜん¥これ/を¥み/て、¥あまり/に¥あはれ/に¥おぼえ/けれ/ば、¥にふだう=どの/に¥まうし/ける/は、「¥あれ/は¥いか/に、¥ぎわう/と/こそ¥み¥まゐらせ¥さぶらへ。¥ひごろ¥めさ/れ/ぬ¥ところ/にて/も¥さぶらは/ば/こそ。¥これ/へ¥めさ/れ¥さぶらへ/かし。¥さら/ず/は¥わらは/に¥いとま/を¥たべ。¥いで¥まゐらせ/ん」/と¥まうし/けれ/ども、¥にふだう¥いか/に/も¥かなふ/まじき/と¥のたまふ¥あひだ、¥ちから¥およば/で¥いで/ざり/けり。¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん−し¥たまひ/て、「¥いか/に¥ぎわう、¥その−のち/は¥なにごと/か¥ある。¥ほとけ−ごぜん/が¥あまり/に¥つれづれ=げ/に¥みゆる/に、¥いまやう/を/も¥うたひ、¥まひ/なんど/を/も¥まう/て、¥ほとけ¥なぐさめ/よ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぎわう、¥まゐる/ほど/で/は、¥と/も−かく/も¥にふだう=どの/の¥おほせ/を/ば、¥そむく/まじき/ものを/と¥おもひ、¥ながるる¥なみだ/を¥おさへ/つつ、¥いまやう¥ひとつ/ぞ¥うたう/たる。P70¥
ほとけ/も¥むかし/は¥ぼんぶ/なり¥われ=ら/も¥つひ/に/は¥ほとけ/なり¥
いづれ/も¥ぶつしやう¥ぐせ/る¥み/を¥へだつる/のみ/こそ¥かなしけれ
/と、¥なくなく¥にへん¥うたう/たり/けれ/ば、¥その¥ざ/に¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥へいけ¥いちもん/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥しよだいぶ、¥さぶらひ/に¥いたる/まで、¥みな¥かんるゐ/を/ぞ¥もよほさ/れ/ける。¥にふだう/も¥げに/も/と¥おもひ¥たまひ/て、「¥とき/に¥とつ/て/は¥しんべう/に/も¥まうし/たり。¥さて/は¥まひ/も¥み/たけれ/ども、¥けふ/は¥まぎるる¥こと¥いで−き/たり。¥この−のち/は¥めさ/ず/とも¥つねに¥まゐり/て、¥いまやう/を/も¥うたひ、¥まひ/など/を/も¥まう/て、¥ほとけ¥なぐさめよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぎわう¥とかう/の¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥いで/に/けり。¥ぎわう、「¥まゐら/じ/と¥おもひ−さだめ/し¥みち/なれ/ども、¥はは/の¥めい/を¥そむか/じ/と、¥つらき¥みち/に¥おもむい/て、¥ふたたび¥うき¥はぢ/を¥み/つる¥こと/の¥くちをし−さ/よ。¥かくて¥この−よ/に¥ある/なら/ば、¥また/も¥うき−め/に¥あは/んず/らん。¥いま/は¥ただ¥み/を¥なげ/ん/と¥おもふ/なり」/と¥いへ/ば、¥いもうと/の¥ぎによ¥これ/を¥きい/て、「¥あね¥み/を¥なげ/ば、¥われ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/ん」/と¥いふ。¥はは¥とぢ¥これ/を¥きく/に¥かなしく/て、¥なくなく¥また¥かさねて¥けうくん−し/ける/は、「¥さやう/の¥こと¥ある/べし/と/も¥しら/ず/して、¥けうくん−し/て¥まゐらせ/つる¥こと/の¥うらめし−さ/よ。¥まことに¥わ−ごぜ/の¥うらむる/も¥ことわり/なり。¥ただし¥わ−ごぜ/が¥み/を¥なげ/ば、¥いもうと/の¥ぎによ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/ん/と¥いふ。¥わかき¥むすめ=ども/を¥さき−だて/て、¥としおい¥よはひ¥おとろへ/たる¥はは、¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/なれ/ば、¥われ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/んずる/なり。¥いまだ¥しご/も¥き/たら/ぬ¥はは/に、¥み/を¥なげ/させ/んずる¥こと/は、¥ごぎやくざい/にて/やP71¥あら/んず/らん。¥この−よ/は¥かり/の¥やどり/なれ/ば、¥はぢ/て/も−はぢ/て/も¥なに/なら/ず。¥ただ¥ながき¥よ/の¥やみ/こそ¥こころ−うけれ。¥こんじやう/で¥もの/を¥おもは/する/だに¥ある/に、¥ごしやう/で/さへ¥あくだう/へ¥おもむか/んずる¥こと/の¥かなし−さ/よ」/と、¥さめざめ/と¥かき−くどき/けれ/ば、¥ぎわう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥げに/も¥さやう/に¥さぶらは/ば、¥ごぎやくざい¥うたがひ¥なし。¥いつたん¥うき¥はぢ/を¥み/つる¥こと/の¥くちをし−さ/に/こそ、¥み/を¥なげ/ん/と/は¥まうし/たれ。¥さ¥さぶらは/ば¥じがい/を/ば¥おもひ−とどまり¥さぶらひ/ぬ。¥かくて¥みやこ/に¥ある/なら/ば、¥また/も¥うき−め/を¥み/んず/らん。¥いま/は¥ただ¥みやこ/の¥ほか/へ¥いで/ん」/とて、¥ぎわう¥にじふいち/にて¥あま/に¥なり、¥さが/の¥おく/なる¥やまざと/に、¥しば/の¥いほり/を¥ひき−むすび、¥ねんぶつ−し/て/ぞ¥ゐ/たり/ける。¥いもうと/の¥ぎによ¥これ/を¥きい/て、「¥あね¥み/を¥なげ/ば、¥われ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/ん/と/こそ¥ちぎり/しか。¥まして¥さやう/に¥よ/を¥いとは/ん/に、¥たれ/か¥おとる/べき」/とて、¥じふく/にて¥さま/を¥かへ、¥あね/と¥いつしよ/に¥こもり−ゐ/て、¥ひとへに¥ごせ/を/ぞ¥ねがひ/ける。¥はは¥とぢ¥これ/を¥きい/て、「¥わかき¥むすめ=ども/だに、¥さま/を¥かふる¥よ/の−なか/に、¥としおい¥よはひ¥おとろへ/たる¥はは、¥しらが/を¥つけ/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん」/とて、¥しじふご/にて¥かみ/を¥そり、¥ふたり/の¥むすめ¥もろとも/に、¥いつかう¥せんじゆ/に¥ねんぶつ−し/て、¥ごせ/を¥ねがふ/ぞ¥あはれ/なる。¥かくて¥はる¥すぎ¥なつ¥たけ/ぬ。¥あき/の¥はつかぜ¥ふき/ぬれ/ば、¥ほしあひ/の¥そら/を¥ながめ/つつ、¥あま/の−と¥わたる¥かぢ/の¥は/に、¥おもふ¥こと¥かく¥ころ/なれ/や。¥ゆふひ/の¥かげ/の¥にし/の¥やま/の¥は/に¥かくるる/を¥み/て/も、¥ひ/の¥いり¥たまふ¥ところ/は、¥さいはう−じやうど/にて/こそ¥あん/なれ。¥いつか¥われ=ら/も¥かしこ/にP72¥むまれ/て、¥もの/も¥おもは/で¥すごさ/んず/らん/と、¥すぎ/に/し¥かた/の¥うき¥こと=ども¥おもひ−つづけ/て、¥ただ¥つきせ/ぬ¥もの/は¥なみだ/なり。¥
たそかれどき/も¥すぎ/ぬれ/ば、¥たけ/の¥あみど/を¥とぢ−ふさぎ、¥ともしび¥かすか/に¥かき−たて/て、¥おやこ¥さん−にん¥もろとも/に¥ねんぶつ−し/て¥ゐ/たる¥ところ/に、¥たけ/の¥あみど/を、¥ほとほと/と¥うち−たたく¥もの¥いで−き/たり。¥その−とき¥あまども¥きも/を¥けし、「¥あはれ、¥これ/は、¥いふ¥かひ−なき¥われ=ら/が¥ねんぶつ−し/て¥ゐ/たる/を¥さまたげ/ん/とて、¥まえん/の¥き/たる/にて/ぞ¥ある/らん。¥ひる/だに/も¥ひと/も¥とひ−こ/ぬ¥やまざと/の、¥しば/の¥いほり/の¥うち/なれ/ば、¥よ¥ふけ/て¥たれ/か/は¥たづぬ/べき。¥わづか/に¥たけ/の¥あみど/なれ/ば、¥あけ/ず/とも¥おし−やぶら/ん¥こと¥やすかる/べし。¥いま/は¥ただ¥なかなか¥あけ/て¥いれ/ん/と¥おもふ/なり。¥それ/に¥なさけ/を¥かけ/ず/して、¥いのち/を¥うしなふ¥もの/なら/ば、¥としごろ¥たのみ¥たてまつる¥みだ/の¥ほんぐわん/を¥つよく¥しんじ/て、¥ひま¥なく¥みやうがう/を¥となへ¥たてまつる/べし。¥こゑ/を¥たづね/て¥むかへ¥たまふ/なる¥しやうじゆ/の¥らいかう/にて¥ましませ/ば、¥など/か¥いんぜふ¥なかる/べき。¥あひ−かまへ/て¥ねんぶつ¥おこたり¥たまふ/な」/と¥たがひ/に¥こころ/を¥いましめ/て、¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥たけ/の¥あみど/を¥あけ/たれ/ば、¥まえん/にて/は¥なかり/けり。¥ほとけ−ごぜん/ぞ¥いで−きたる。¥ぎわう、「¥あれ/は¥いか/に、¥ほとけ−ごぜん/と¥み¥まゐらする/は。¥ゆめ/か/や¥うつつ/か」/と¥いひ/けれ/ば、¥ほとけ−ごぜん¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥かやう/の¥こと¥まうせ/ば、¥すべて¥こと−あたらしう/は¥さぶらへ/ども、¥まうさ/ず/は¥また¥おもひ−しら/ぬ¥み/と/も¥なり/ぬ/べけれ/ば、¥はじめ/より/して、¥こまごま/と¥あり/の−まま/に¥まうす/なり。¥もと/より¥わらは/は¥すゐさん/の¥もの/にて、¥すでに¥いださ/れ¥まゐらせ/し/を、P73¥わ−ごぜ/の¥まうしじやう/に¥よつ/て/こそ、¥めし−かへされ/て/も¥さぶらふ/に、¥をんな/の¥み/の¥いふ¥かひ−なき¥こと、¥わが−み/を¥こころ/に¥まかせ/ず/して、¥わ−ごぜ/を¥いださ/せ¥まゐらせ/て、¥わらは/が¥おし−とどめ/られ/ぬる¥こと、¥いま/に¥はづかしう¥かたはらいたく/こそ¥さぶらへ。¥わ−ごぜ/の¥いで/られ¥たまひ/し/を¥み/し/に¥つけ/て/も、¥いつか¥また¥わが¥み/の−うへ/なら/ん/と¥おもひ−ゐ/たれ/ば、¥うれし/と/は¥さらに¥おもは/ず。¥しやうじ/に¥また、『¥いづれ/か¥あき/に¥あは/で¥はつ/べき』/と¥かき−おき¥たまひ/し¥ふで/の¥あと、¥げに/も/と¥おもひ¥さぶらひ/し/ぞ/や。¥いつ/ぞ/や¥また¥わ−ごぜ/の¥めさ/れ¥まゐらせ/て、¥いまやう/を¥うたひ¥たまひ/し/に/も、¥おもひ−しら/れ/て/こそ¥さぶらへ。¥その−のち/は¥ざいしよ/を¥いづく/と/も¥しら/ざり/し/に、¥この−ほど¥きけ/ば、¥かやう/に¥さま/を¥かへ、¥ひとつ−ところ/に¥ねんぶつ−し/て¥おはし/つる¥よし、¥あまり/に¥うらやましく/て、¥つね/は¥いとま/を¥まうし/しか/ども、¥にふだう=どの¥さらに¥おん=もちひ¥ましまさ/ず。¥つくづく¥もの/を¥あんずる/に、¥しやば/の¥えいぐわ/は¥ゆめ/の¥ゆめ、¥たのしみ−さかえ/て¥なにか¥せ/ん。¥にんじん/は¥うけ−がたく、¥ぶつけう/に/は¥あひ−がたし。¥この−たび¥ないり/に¥しづみ/な/ば、¥たしやう¥くわうごふ/を/ば¥へだつ/とも、¥うかび−あがら/ん¥こと¥かたかる/べし。¥らうせう¥ふぢやう/の¥さかひ/なれ/ば、¥とし/の¥わかき/を¥たのむ/べき/に¥あら/ず。¥いづる¥いき/の¥いる/を/も¥まつ/べから/ず。¥かげろふ¥いなづま/より/も¥なほ¥はかなし。¥いつたん/の¥えいぐわ/に¥ほこつ/て、¥ごせ/を¥しら/ざら/ん¥こと/の¥かなし−さ/に、¥けさ¥まぎれ−いで/て、¥かく¥なつ/て/こそ¥まゐり/たれ」/とて、¥かづい/たる¥きぬ/を¥うち−のけ/たる/を¥みれ/ば、¥あま/に¥なつ/て/ぞ¥いで−きたる。「¥かやう/に¥さま/を¥かへ/て¥まゐり/たる¥うへ/は、¥ひごろ/の¥とが/を/ば¥ゆるし¥たまへ。¥ゆるさ/ん/と/だに¥のたまは/ば、¥もろとも/に¥ねんぶつ−し/て、¥ひとつ−はちす/のP74¥み/と¥なら/ん。¥それ/に/も¥なほ¥こころ−ゆか/ず/は、¥これ/より¥いづち/へ/も¥まよひ−ゆき、¥いか/なら/ん¥こけ/の¥むしろ、¥まつ/が¥ね/に/も¥たふれ−ふし、¥いのち/の¥あら/ん¥かぎり/は¥ねんぶつ−し/て、¥わうじやう/の¥そくわい/を¥とげ/ん/と¥おもふ/なり」/とて、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と¥かき−くどき/けれ/ば、¥ぎわう¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥わ−ごぜ/の¥それ−ほど/まで¥おもひ¥たまは/ん/と/は¥ゆめ/に/も¥しら/ず、¥うき¥よ/の−なか/の¥さが/なれ/ば、¥み/の¥うき/と/こそ¥おもひ/し/に、¥と/も−すれ/ば¥わ−ごぜ/の¥こと/のみ¥うらめしく/て、¥こんじやう/も¥ごしやう/も、¥なまじひ/に¥し−そんじ/たる¥ここち/にて¥あり/つる/に、¥かやう/に¥さま/を¥かへ/て¥おはし/つる¥うへ/は、¥ひごろ/の¥とが/は、¥つゆ¥ちり/ほど/も¥のこら/ず、¥いま/は¥わうじやう¥うたがひ¥なし。¥この−たび¥そくわい/を¥とげ/ん/こそ、¥なに/より/も¥また¥うれしけれ。¥わらは/が¥あま/に¥なり/し/を/だに、¥よ/に¥あり−がたき¥こと/の¥やう/に、¥ひと/も¥いひ、¥わが−み/も¥おもひ¥さぶらひ/し/ぞ/や。¥それ/は¥よ/を¥うらみ、¥み/を¥なげい/たれ/ば、¥さま/を¥かふる/も¥ことわり/なり。¥わ−ごぜ/は¥うらみ/も¥なく¥なげき/も¥なし。¥ことし/は¥わづか¥じふしち/に/こそ¥なり/し¥ひと/の、¥それ−ほど/まで¥ゑど/を¥いとひ、¥じやうど/を¥ねがは/ん/と、¥ふかく¥おもひ−いり¥たまふ/こそ、¥まこと/の¥だいだうしん/と/は¥おぼえ¥さぶらひ/しか。¥うれしかり/ける¥ぜんぢしき/かな。¥いざ¥もろとも/に¥ねがは/ん」/とて、¥しにん¥いつしよ/に¥こもり−ゐ/て、¥あさゆふ¥ぶつぜん/に¥むかひ、¥はな¥かう/を¥そなへ/て、¥たねん¥なく¥ねがひ/ける/が、¥ちそく/こそ¥あり/けれ、¥みな¥わうじやう/の¥そくわい/を¥とげ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥され/ば¥かの¥ごしらかはの−ほふわう/の¥ちやうがうだう/の¥くわこちやう/に/も、¥ぎわう、¥ぎによ、¥ほとけ、¥とぢ=ら/が¥そんりやう/と、¥しにん¥いつしよ/に¥いれ/られ/たり。¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。P75¥
「にだいのきさき」(『にだいのきさき』)S0107¥むかし/より¥いま/に¥いたる/まで、¥げんぺい−りやうし¥てうか/に¥めし−つかは/れ/て、¥わうくわ/に¥したがは/ず、¥おのづから¥てうけん/を¥かろんずる¥もの/に/は、¥たがひ/に¥いましめ/を¥くはへ/しか/ば、¥よ/の¥みだれ/は¥なかり/し/に、¥ほうげん/に¥ためよし¥きら/れ、¥へいぢ/に¥よしとも¥ちう−せ/られ/て¥のち/は、¥すゑずゑ/の¥げんじ=ども¥あるひは¥ながさ/れ、¥あるひは¥うしなは/れ/て、¥いま/は¥へいけ/の¥いちるゐ/のみ¥はんじやう−し/て、¥かしら/を¥さし−いだす¥もの¥なし。¥いか/なら/ん¥すゑ/の¥よ/まで/も、¥なにごと/か¥あら/ん/と/ぞ¥みえ/し。¥され/ども¥とばのゐん¥ごあんが/の¥のち/は、¥ひやうがく¥うち−つづい/て、¥しざい、¥るけい、¥けつくわん、¥ちやうにん、¥つねに¥おこなは/れ/て、¥かいだい/も¥しづか/なら/ず、¥せけん/も¥いまだ¥らくきよ−せ/ず。¥なかんづく¥えいりやく、¥おうほう/の¥ころ/より/して、¥ゐん/の¥きんじゆしや/を/ば、¥うち/より¥おん=いましめ¥あり、¥うち/の¥きんじゆしや/を/ば¥ゐん/より¥いましめ/らるる¥あひだ、¥じやうげ¥おそれ−をののい/て、¥やすい¥こころ/も¥せ/ず、¥ただ¥しんえん/に¥のぞん/で、¥はくひよう/を¥ふむ/に¥おなじ。¥しゆしやう¥しやうくわう¥ふし/の¥おん=あひだ/に、¥なにごと/の¥おん=へだて/か¥ある/なれ/ども、¥おもひ/の−ほか/の¥こと=ども¥おほかり/けり。¥これ/も¥よ¥げうき/に¥およん/で、¥ひと¥けうあく/を¥さき/と¥する¥ゆゑ/なり。¥しゆしやう、¥ゐん/の¥おほせ/を¥つね/は¥まうし−かへさ/せ¥おはしまし/ける¥なか/に、¥ひと¥じぼく/を¥おどろかし、¥よ¥もつて¥おほき/に¥かたぶけ¥まうす¥こと¥あり/けり。¥こ=こんゑのゐん/の¥きさき、¥たいくわうたいこうぐう/と¥まうし/し/は、P76¥おほひのみかど/の−うだいじん−きんよし=こう/の¥おん=むすめ/なり。¥せんてい/に¥おくれ¥たてまつら/せ¥たまひ/て¥のち/は、¥ここのへ/の¥ほか、¥このゑかはら/の¥ごしよ/に/ぞ¥うつり−すま/せ¥たまひ/ける。¥さきの−きさいのみや/にて、¥かすか/なる¥おん=ありさま/にて¥わたら/せ¥たまひ/し/が、¥えいりやく/の¥ころほひ/は、¥おん=とし¥にじふにさん/に/も/や¥なら/せ¥ましまし/けん、¥おん=さかり/も¥すこし¥すぎ/させ¥おはします/ほど/なり。¥され/ども、¥てんが¥だいいち/の¥びじん/の¥きこえ¥ましまし/けれ/ば、¥しゆしやう¥いろ/に/のみ¥そめる¥おん=こころ/にて、¥ひそか/に¥かうりよくし/に¥ぜうじ/て、¥ぐわいきう/に¥ひき−もとめ/しむる/に¥およん/で、¥この¥おほみや/の¥ごしよ/へ、¥ひそか/に¥ご=えんしよ¥あり。¥おほみや¥あへて¥きこしめし/も¥いれ/ず。¥され/ば¥ひたすら¥はやほ/に¥あらはれ/て、¥きさき¥ご=じゆだい¥ある/べき¥よし、¥うだいじんげ/に¥せんじ/を¥くださ/る。¥この¥こと¥てんが/に¥おい/て¥こと/なる¥しようじ/なれ/ば、¥くぎやう−せんぎ¥あつ/て、¥おのおの¥いけん/を¥いふ。「¥まづ¥いてう/の¥せんじよう/を¥とぶらふ/に、¥しんだん/の¥そくてんくわうごう/は、¥たう/の¥たいそう/の¥きさき、¥かうそう−くわうてい/の¥けいぼ/なり。¥たいそう¥ほうぎよ/の¥のち、¥かうそう/の¥きさき/に¥たち¥たまふ¥こと¥あり。¥それ/は¥いてう/の¥せんぎ/たる¥うへ、¥べつだん/の¥こと/なり。¥しかれ/ども¥わが¥てう/に/は、¥じんむ−てんわう/より¥この−かた¥にんわう¥しちじふ−よ−だい/に¥いたる/まで、¥いまだ¥に−だい/の¥きさき/に¥たた/せ¥たまふ¥れい/を¥きか/ず」/と¥しよきやう¥いちどう/に¥うつたへ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥しやうくわう/も¥しかる/べから/ざる¥よし、¥こしらへ¥まうさ/せ¥たまへ/ども、¥しゆしやう¥おほせ/なり/ける/は、「¥てんし/に¥ぶも¥なし。¥われ¥じふぜん/の¥かいこう/に¥よつ/て、¥いま¥ばんじよう/の−ほうゐ/を¥たもつ。¥これ−ほど/の¥こと¥など/か¥えいりよ/に¥まかせ/ざる/べき」/とて、¥やがて¥ご=じゆだい/の¥ひ、¥せんげ−せ/られ/ける¥うへ/は、¥しやうくわう/も¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず。P77¥
おほみや¥かく/と¥きこしめさ/れ/ける/より、¥おん=なみだ/に¥しづま/せ¥おはします。¥せんてい/に¥おくれ¥まゐらせ/に/し¥きうじゆ/の¥あき/の¥はじめ、¥おなじ¥のばら/の¥つゆ/と/も¥きえ、¥いへ/を/も¥いで¥よ/を/も¥のがれ/たり/せ/ば、¥いま¥かかる¥うき¥みみ/を/ば¥きか/ざら/まし/と/ぞ、¥おん=なげき¥あり/ける。¥ちち/の¥おとど¥こしらへ¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥よ/に¥したがは/ざる/を¥もつて¥きやうじん/と¥す/と¥みえ/たり。¥すでに¥ぜうめい/を¥くださ/る。¥しさい/を¥まうす/に¥ところ¥なし。¥ただ¥すみやか/に¥まゐらせ¥たまふ/べき/なり。¥もし¥わうじ¥ご=たんじやう¥あり/て、¥きみ/も¥こくも/と¥いは/れ、¥ぐらう/も¥ぐわいそ/と¥あふが/る/べき¥ずゐさう/にて/も/や¥さふらふ/らん。¥これ¥ひとへに¥ぐらう/を¥たすけ/させ¥まします¥ご=かうかう/の¥おん=いたり/なる/べし」/と、¥やうやう/に¥こしらへ¥まうさ/せ¥たまへ/ども、¥おん=ぺんじ/も¥なかり/けり。¥おほみや¥その−ころ¥なに/と−なき¥おん=てならひ/の¥ついで/に、¥
うき−ふし/に¥しづみ/も¥やら/で¥かはたけ/の¥よ/に¥ためし¥なき¥な/を/や¥ながさ/む W004¥
よ/に/は¥いか/に/して¥もれ/ける/や/らん、¥あはれ/に¥やさしき¥ためし/に/ぞ¥ひとびと¥まうし−あは/れ/ける。¥すでに¥ご=じゆだい/の¥ひ/に/も¥なり/しか/ば、¥ちち/の¥おとど、¥ぐぶ/の¥かんだちめ、¥しゆつしや/の¥ぎしき/など、¥こころ¥こと/に¥だし−たて¥まゐらつ/させ¥たまひ/けり。¥おほみや¥もの=うき¥おん=いでたち/なれ/ば、¥とみ/に/も¥たてまつら/ず、¥はるか/に¥よ¥ふけ、¥さ−よ/も¥なかば/に¥なり/て¥のち、¥おん=くるま/に¥たすけ−のせ/られ/させ¥たまひ/けり。¥ご=じゆだい/の¥のち/は、¥れいけいでん/に/ぞ¥ましまし/ける。¥され/ば¥ひたすら¥あさまつりごと/を¥すすめ¥まうさ/せ¥たまふ¥おん=さま/なり。¥かの¥ししんでん/の¥くわうきよ/に/は、¥げんじやう/の¥しやうじ/を¥たて/られ/たり。P78¥いいん、¥ていごりん、¥ぐせいなん、¥たいこうばう、¥ろくりせんせい、¥りせき、¥しば、¥てなが、−あしなが、¥むまがた/の¥しやうじ、¥おに/の−ま、¥りしやうぐん/が¥すがた/を¥さながら¥うつせ/る¥しやうじ/も¥あり。¥をはりの−かみ−をのの−たうふう/が、¥しつくわい−げんじやう/の¥しやうじ/と¥かける/も、¥ことわり/と/ぞ¥みえ/し。¥かの¥せいりやうでん/の¥ぐわと/の¥みしやうじ/に/は、¥むかし¥かなをか/が¥かき/たり/し¥ゑんざん/の¥ありあけ/の−つき/も¥あり/とかや。¥こ=ゐん/の¥いまだ¥えうしゆ/にて¥ましませ/し¥その−かみ、¥なに/と−なき¥おん=て¥まさぐり/の¥ついで/に、¥かき−くもらかさ/せ¥たまひ/たり/し/が、¥あり/し/ながら/に¥すこし/も¥たがは/せ¥たまは/ぬ/を¥ごらんじ/て、¥せんてい/の¥むかし/も/や¥おん=こひしう¥おぼしめさ/れ/けん、¥
おもひ/き/や¥うきみ/ながら/に¥めぐり−き/て¥おなじ¥くもゐ/の¥つき/を¥み/む/と/は W005¥
その¥あひだ/の¥おん=なからひ、¥いひ−しら/ず¥あはれ/に¥やさしき¥おん=こと/なり。
「がくうちろん」(『がくうちろん』)S0108¥さる−ほど/に、¥えいまん−ぐわんねん/の¥はる/の¥ころ/より、¥しゆしやう¥ごふよ/の¥おん=こと/と¥きこえ/させ¥たまひ/し/が、おなじき¥なつ/の¥はじめ/に/も¥なり/しか/ば、¥こと/の−ほか/に¥おもらせ¥たまふ。¥これ/に¥よつ/て、¥おほくら/の−たいふ−いきの−かねもり/が¥むすめ/の¥はら/に、¥こんじやう¥いちのみや/の¥に−さい/に¥なら/せ¥たまふ/が¥ましまし/ける/を、¥たいし/に¥たて¥まゐら/させ¥たまふ/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥おなじき−ろくぐわつ−にじふごにち、¥にはか/にP79¥しんわう/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまふ。¥やがて¥その¥よ¥じゆぜん¥あり/しか/ば、¥てんが¥なに/と−なう¥あわて/たる¥さま/なり/けり。¥その−とき/の¥いうしよく/の¥ひとびと¥まうし−あは/れ/ける/は、¥まづ¥ほんてう/に、¥とうたい/の¥れい/を¥たづぬる/に、¥せいわ−てんわう¥く−さい/に/して、¥もんどく−てんわう/の¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまふ。¥それ/は¥かの¥しうくたん/の¥せいわう/に¥かはり、¥なんめん/に/して、¥いちじつ−ばんき/の¥まつりごと/を¥をさめ¥たまひ/し/に¥なぞらへ/て、¥ぐわいそ¥ちうじん=こう、¥えうしゆ/を¥ふち−し¥たまへ/り。¥これ/ぞ¥せつしやう/の¥はじめ/なる。¥とばのゐん¥ご−さい、¥こんゑのゐん¥さん−ざい/にて¥せんそ¥あり。¥かれ/を/こそ、¥いつしか/なれ/と¥まうし/し/に、¥これ/は¥に−さい/に¥なら/せ¥たまふ。¥せんれい¥なし。¥もの−さわがし/とも¥おろか/なり。¥さる−ほど/に、¥おなじき−しちぐわつ−にじふしちにち、¥しやうくわう¥つひに¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥おん=とし¥にじふさん。¥つぼめる¥はな/の¥ちれ/る/が/ごとし。¥たま/の−すだれ、¥にしき/の−ちやう/の¥うち、¥みな¥おん=なみだ/に¥むせば/せ¥おはします。¥やがて¥その¥よ、¥かうりうじ/の¥うしとら、¥れんだいの/の¥おく、¥ふなをかやま/に¥をさめ¥たてまつる。¥ご=さうそう/の¥よ、¥えんりやく¥こうぶく¥りやうじ/の¥だいしゆ、¥がくうちろん/と¥いふ¥こと/を¥し−いだし/て、¥たがひ/に¥らうぜき/に¥およぶ。¥
いつてん/の−きみ¥ほうぎよ¥なつ/て¥のち、¥ご=むしよ/へ¥わたし¥たてまつる¥とき/の¥さほふ/は、¥なんぼく¥にきやう/の¥だいしゆ、¥ことごとく¥ぐぶ−し/て、¥ご=むしよ/の¥めぐり/に、¥わが¥てらでら/の¥がく/を¥うつ¥こと¥あり/けり。¥まづ¥しやうむ−てんわう/の¥ご=ぐわん、¥あらそふ/べき¥てら¥なけれ/ば、¥とうだいじ/の¥がく/を¥うつ。¥つぎ/に¥たんかいこう/の¥ご=ぐわん/とて¥こうぶくじ/の¥がく/を¥うつ。¥ほくきやう/に/は、¥こうぶくじ/に¥むかへ/て、¥えんりやくじ/の¥がく/を¥うつ。¥つぎ/に¥てんむ−てんわう/の¥ご=ぐわん、¥けうだい−くわしやう、¥ちしよう−だいし/の¥さうさう/とて¥をんじやうじ/の¥がく/を¥うつ。¥しかる/を、¥さんもん/の¥だいしゆ、¥いかが¥おもひ/けん、¥せんれい/を¥そむい/て、¥とうだいじ/の¥つぎ、¥こうぶくじ/のP80¥うへ/に、¥えんりやくじ/の¥がく/を¥うつ¥あひだ、¥なんと/の¥だいしゆ、¥とやせまし、¥かうやせまし/と、¥せんぎ−する¥ところ/に、¥ここに¥こうぶくじ/の¥さいこんだうじゆ、¥くわんおん−ばう、¥せいしばう/とて、¥きこえ/たる¥だいあくそう¥に−にん¥あり/けり。¥くわんおん−ばう/は¥くろいと−をどし/の−はらまき/に、¥しらえ/の−なぎなた、¥くき−みじか/に¥とり、¥せいしばう/は¥もよぎ−をどし/の−よろひ¥き、¥こくしつ/の−おほ−だち¥もつ/て、¥に−にん¥つと¥はしり−いで、¥えんりやくじ/の¥がく/を¥きつ/て¥おとし、¥さんざん/に¥うち−わり、「¥うれし/や¥みづ、¥なる/は¥たき/の¥みづ、¥ひ/は¥てる/とも、¥たえ/ず/と¥うたへ」/と¥はやし/つつ、¥なんと/の¥しゆと/の¥なか/へ/ぞ¥いり/に/ける。
「きよみづえんしやう」(『きよみづでらえんしやう』)S0109¥さんもん/の¥だいしゆ、¥らうぜき/を¥いたさ/ば¥てむかひ¥す/べき¥ところ/に、¥こころ−ぶかう¥ねらふ¥かた/も/や¥あり/けん、¥ひとことば/も¥いださ/ず。¥みかど¥かくれ/させ¥たまひ/て¥のち/は、¥こころ−なき¥さうもく/まで/も、¥みな¥うれへ/たる¥いろ/に/こそ¥ある/べき/に、¥この¥さうどう/の¥あさまし−さ/に¥たかき/も¥いやしき/も、¥きも−たましひ/を¥うしなつ/て、¥しはう/へ¥みな¥たいさん−す。¥おなじき−にじふくにち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥さんもん/の¥だいしゆ¥おびたたしう¥げらく−す/と¥きこえ/しか/ば、¥ぶし、¥けんびゐし、¥にしざかもと/に¥ゆき−むかつ/て¥ふせぎ/けれ/ども、¥こと/と/も¥せ/ず、¥おし−やぶつ/て¥らんにふ−す。¥また¥なにもの/の¥まうし−いだし/たり/ける/やらん、「¥いちゐん、¥さんもん/の¥だいしゆ/に¥おほせ/て、¥へいけ−つゐたう−せ/らる/べし」/と¥きこえ/しか/ば、¥ぐんびやう¥だいり/にP81¥さんじ/て¥しはう/の¥ぢんどう/を¥かため/て¥けいご−す。¥へいじ/の¥いちるゐ¥みな¥ろくはら/に¥はせ−あつまる。¥いちゐん/も¥いそぎ¥ろくはら/へ¥ご=かう¥なる。¥きよもり=こう¥そのーとき/は¥いまだ¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥おはし/ける/が、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥こまつ=どの、「¥なに/に¥よつ/て、¥ただいま¥さる−おん=こと¥さふらふ/べき」/と¥しづめ¥まうさ/れ/けれ/ども、¥つはもの=ども¥さわぎ−ののしる¥こと¥おびたたし。¥され/ども¥さんもん/の¥だいしゆ¥ろくはら/へ/は¥よせ/ず/して、¥そぞろ/なる¥せいすゐじ/に¥おし−よせ/て、¥ぶつかく¥そうばう¥いち−う/も¥のこさ/ず¥みな¥やき−はらふ。¥これ/は¥さんぬる¥ご=さうそう/の¥よ/の¥くわいけい/の−はぢ/を¥きよめ/ん/が¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥せいすゐじ/は¥こうぶくじ/の¥まつじ/たる/に¥よつ/て/なり。¥せいすゐじ¥やけ/たり/ける¥あした、「¥くわんおんくわけう−へんじやうち/は¥いか/に」/と、¥ふだ/に¥かい/て、¥だいもん/の¥まへ/に/ぞ¥たて/たり/ける。¥つぎ/の−ひ¥また、「¥りやくこふ−ふしぎ¥ちから¥およば/ず」/と、¥かへし/の¥ふだ/を/ぞ¥うつ/たり/ける。¥しゆと¥かへり−のぼり/けれ/ば、¥いちゐん/も¥いそぎ¥ろくはら/より¥くわんぎよ¥なる。¥しげもりの−きやう/ばかり/ぞ、¥おん=おくり/に/は¥まゐら/れ/ける。¥ちち/の¥きやう/は¥まゐら/れ/ず。¥なほ¥ようじん/の¥ため/か/と/ぞ¥みえ/し。¥
しげもりの−きやう、¥おん=おくり/より¥かへら/れ/たり/けれ/ば、¥ちち/の¥だいなごん¥のたまひ/ける/は、「¥さて/も¥いちゐん/の¥ご=かう/こそ¥おほき/に¥おそれ¥おぼゆれ。¥かねても¥おぼしめし−より、¥おほせ/らるる¥むね/の¥あれ/ば/こそ、¥かう/は¥きこゆ/らめ。¥それ/に/も¥なほ¥うち−とけ¥たまふ/まじ」/と¥のたまへ/ば、¥しげもりの−きやう¥まうさ/れ/ける/は、「¥この¥こと¥ゆめゆめ¥おん=けしき/に/も、¥おん=ことば/に/も¥いださ/せ¥たまふ/べから/ず。¥ひと/に¥こころつけがほ/に、¥なかなか¥あしき¥おん=こと/なり。¥これ/に¥つけ/て/も、¥よくよく¥えいりよ/に¥そむか/せ¥たまは/で、¥ひと/の¥ため/に¥おん=なさけ/を¥ほどこさ/せ¥ましまさ/ば、¥しんめい¥さんぽう¥かごP82¥ある/べし。¥さら/ん/に¥とつ/て/は、¥おん=み/の¥おそれ¥さふらふ/まじ」/とて¥たた/れ/けれ/ば、「¥しげもりの−きやう/は¥ゆゆしう¥おほやう/なる/ものかな」/と/ぞ、¥ちち/の¥きやう/も¥のたまひ/ける。¥いちゐん¥くわんぎよ/の¥のち、¥ごぜん/に¥うとから/ぬ¥きんじゆしや=たち、¥あまた¥さぶらは/れ/ける/に、「¥さて/も¥ふしぎ/の¥こと/を¥まうし−いだし/たる/ものかな。¥つゆ/も¥おぼしめし−よら/ぬ/ものを」/と¥おほせ/けれ/ば、¥ゐん−ぢう/の¥きりもの/に¥さいくわう−ほふし/と¥いふ¥もの¥あり。¥をりふし¥ごぜん¥ちかう¥さぶらひ/ける/が、¥すすみ−いで/て、「¥てん/に¥くち¥なし、¥にん/を¥もつて¥いは/せよ/と¥まうす。¥へいけ¥もつて/の−ほか/に¥くわぶん/に¥さふらふ¥あひだ、¥てん/の¥おん=ぱからひ/に/や」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ひとびと、「¥この¥こと¥よし−なし。¥かべ/に¥みみ¥あり。¥おそろし−おそろし」/と/ぞ、¥おのおの¥ささやき−あは/れ/ける。
(『とうぐうだち』)S0110¥さる−ほど/に、¥その¥とし/は¥りやうあん/なり/けれ/ば、¥ご=けい¥だいじやうゑ/も¥おこなは/れ/ず。¥けんしゆんもんゐん、¥そのーとき/は¥いまだ¥ひがしのおんかた/と¥まうし/ける。¥その¥おん=はら/に、¥いちゐん/の¥みや/の¥ご−さい/に¥なら/せ¥たまふ/の¥ましまし/ける/を、¥たいし/に¥たて¥まゐら/させ¥たまふ/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥おなじき−じふにんぐわつ−にじふしにち、¥にはか/に¥しんわう/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまふ。¥あくれ/ば¥かいげん¥あり/て、¥にんあん/と¥かうす。¥おなじき−とし/の−じふぐわつ−やうかのひ、¥きよねん¥しんわう/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまひ/し¥わうじ、¥とうさんでう/にて¥とうぐう/に¥たた/せ¥たまふ。¥とうぐう/は¥おん=をぢ¥ろく−さい、¥しゆしやう/は¥おん=をひ¥さん−ざい、¥いづれ/も¥ぜうもく/に¥あひ−かなは/ず。¥ただし¥くわんわ−にねん/に、¥いちでうのゐん¥しち−さい/にて¥ご=そくゐ¥あり。¥さんでうのゐん¥じふいつ−さい/にて¥とうぐう/に¥たた/せ¥たまふ。¥せんれい¥なき/に/しも¥あら/ず。¥しゆしやう/は¥に−さい/にて¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥わづか¥ご−さい/と¥まうし/し¥にんぐわつ−じふくにち/に、¥おん=くらゐ/を¥すべり/て、¥しんゐん/と/ぞ¥まうし/ける。P83¥いまだ¥おん=げんぶく/も¥なく/して、¥だいじやう−てんわう/の¥そんがう¥あり。¥かんか¥ほんてう、¥これ/や¥はじめ/なら/ん。¥にんあん−さんねん−さんぐわつ−はつかのひ、¥しんてい¥だいこくでん/に/して¥ご=そくゐ¥あり。¥この¥きみ/の¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/ぬる/は、¥いよいよ¥へいけ/の¥えいぐわ/と/ぞ¥みえ/し。¥こくも¥けんしゆんもんゐん/と¥まうす/は、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた、¥はちでう/の−にゐ=どの/の¥おん=いもうと/なり。¥また¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/と¥まうす/も、¥この¥にようゐん/の¥おん=せうと/なる¥うへ、¥うち/の¥ご=ぐわいせき/なり。¥ないげ/に¥つけ/て¥しつけん/の−しん/と/ぞ¥みえ/し。¥その−ころ/の¥じよゐ¥じもく/と¥まうす/も、¥ひとへに¥この¥ときただの−きやう/の¥まま/なり/けり。¥やうきひ/が¥さいはひ/し¥とき、¥やうこくちう/が¥さかえ/し/が/ごとし。¥よ/の¥おぼえ、¥とき/の¥きら¥めでたかり/き。¥にふだう−しやうこく¥てんが/の¥だいせうじ/を¥のたまひ¥あはせ/られ/けれ/ば、¥とき/の−ひと、¥へいくわんばく/と/ぞ¥まうし/ける。
「てんがののりあひ」(『てんがののりあひ』)S0111¥さる−ほど/に¥かおう−ぐわんねん−しちぐわつ−じふろくにち、¥いちゐん¥ご=しゆつけ¥あり。¥ご=しゆつけ/の¥のち/も、¥ばんき/の¥まつりごと/を¥しろしめさ/れ/けれ/ば、¥ゐん、¥うち、¥わく¥かた¥なし。¥ゐん−ぢう/に¥ちかう¥めし−つかは/れ/ける¥くぎやう−てんじやうびと、¥じやうげ/の¥ほくめん/に¥いたる/まで、¥くわんゐ¥ほうろく、¥みな¥み/に¥あまる/ばかり/なり。¥され/ども¥ひと/の¥こころ/の¥ならひ/にて、¥なほ¥あき−たら/で、「¥あつぱれ、¥その¥ひと/の¥うせ/たら/ば、P84¥その¥くに/は¥あき/な/ん。¥その¥ひと/の¥ほろび/たら/ば、¥その¥くわん/に/は¥なり/な/ん」/など、¥うとから/ぬ¥どち/は、¥より−あひ−より−あひ、¥ささやき/けり。¥いちゐん/も¥ないない¥おほせ/なり/ける/は、「¥むかし/より¥だいだい/の¥てうてき/を¥たひらげ/たる¥もの¥おほし/と¥いへ/ども、¥いまだ¥かやう/の¥こと/は¥なし。¥さだもり¥ひでさと/が¥まさかど/を¥うち、¥らいぎ/が¥さだたふ¥むねたふ/を¥ほろぼし、¥ぎか/が¥たけひら¥いへひら/を¥せめ/たり/し/に/も、¥けんじやう¥おこなは/れ/し¥こと、¥わづか¥じゆりやう/に/は¥すぎ/ざり/き。¥いま¥きよもり/が、¥かく¥こころ/の¥まま/に¥ふるまふ¥こと/こそ¥しかる/べから/ね。¥これ/も¥よ¥すゑ/に¥なつ/て、¥わうぼふ/の¥つき/ぬる¥ゆゑ/なり」/と/は¥おほせ/なり/けれ/ども、¥ついで¥なけれ/ば¥おん=いましめ/も¥なし。¥へいけ/も¥また¥べつ−し/て¥てうか/を¥うらみ¥たてまつら/るる¥こと/も¥なかり/し/に、¥よ/の¥みだれ−そめ/ける¥こんぼん/は、¥いんじ¥かおう−にねん−じふぐわつ−じふろくにち/に、¥こまつ=どの/の¥じなん、¥しんーざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥その−とき/は¥いまだ¥ゑちぜんの−かみ/とて、¥しやうねん¥じふさん/に¥なら/れ/ける/が、¥ゆき/は¥はだれ/に¥ふつ/たり/けり。¥かれの/の¥けしき、¥まこと/に¥おもしろかり/けれ/ば、¥わかき¥さぶらひ=ども¥さんじつ−き/ばかり¥めし−ぐし/て、¥れんだいの/や、¥むらさきの、¥うこんのばば/に¥うち−いで/て¥たか=ども¥あまた¥すゑ/させ、¥うづら¥ひばり/を¥おつ−たて−おつ−たて、¥ひねもす/に¥かり−くらし、¥はくぼ/に¥およん/で¥ろくはら/へ/こそ¥かへら/れ/けれ。¥
その−とき/の¥ごせつろく/は¥まつ=どの/にて/ぞ¥ましまし/ける。¥ひがし/の−とうゐん/の¥ごしよ/より、¥ご=さんだい¥あり/けり。¥いうはうもん/より¥じゆぎよ¥ある/べき/にて、¥ひがし/の−とうゐん/を¥みなみ/へ、¥おほひのみかど/を¥にし/へ¥ぎよ=しゆつ¥なる/に、¥すけもり−あそん、¥おほひのみかど¥ゐのくま/にて、¥てんが/の¥ぎよ=しゆつ/に¥はなつき/に¥まゐり−あふ。¥おん=とも/の¥ひと=ども、「¥なにもの/ぞ、¥らうぜき/なり。¥ぎよ=しゆつ¥なる/に、¥のりもの/より¥おり¥さふらへ¥おりP85¥さふらへ」/と¥いら/で/けれ/ども、¥あまり/に¥ほこり−いさみ、¥よ/を¥よ/と/も¥せ/ざり/ける¥うへ、¥めし−ぐし/たる¥さぶらひ=ども/も、¥みな¥にじふ/より¥うち/の¥わかもの=ども/なれ/ば、¥れいぎ¥こつぽふ¥わきまへ/たる¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥てんが/の¥ぎよ=しゆつ/と/も¥いは/ず、¥いつせつ¥げば/の¥れいぎ/に/も¥およば/ず、¥ただ¥かけ−やぶつ/て¥とほら/ん/と¥する¥あひだ、¥くら−さ/は¥くらし、¥つやつや¥だいじやう/の−にふだう/の¥まご/と/も¥しら/ず、¥また¥せうせう/は¥しつ/たれ/ども、¥そら−しら/ず/して、¥すけもりの−あそん/を¥はじめ/と/して、¥さぶらひ=ども¥みな¥むま/より¥とつ/て¥ひき−おろし、¥すこぶる¥ちじよく/に¥および/けり。¥すけもり−あそん、¥はふはふ¥ろくはら/へ¥かへり¥おはし/て、¥おほぢ/の¥しやうこく−ぜんもん/に¥この¥よし¥うつたへ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう¥おほき/に¥いかつ/て、「¥たとひ¥てんが/なり/とも、¥じやうかい/が¥あたり/を/ば¥はばかり¥たまふ/べき/に、¥さう−なう¥あの¥おさなき¥もの/に¥ちじよく/を¥あたへ/られ/ける/こそ¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥かかる¥こと/より/して、¥ひと/に/は¥あざむか/るる/ぞ。¥この¥こと¥てんが/に¥おもひ−しらせ¥たてまつら/で/は、¥え/こそ¥ある/まじけれ。¥いか/に/も−し/て¥うらみ¥たてまつら/ばや」/と¥のたまへ/ば、¥しげもりの−きやう¥まうさ/れ/ける/は、「¥これ/は¥すこし/も¥くるしう¥さふらふ/まじ。¥よりまさ、¥みつもと/など¥まうす¥げんじ=ども/に¥あざけら/れ/て/も¥さふらは/ん/は、¥まこと/に¥いちもん/の¥ちじよく/にて/も¥さふらふ/べし。¥しげもり/が¥こども/とて¥さうらは/んずる¥もの/が、¥との/の¥ぎよ=しゆつ/に¥まゐり−あう/て、¥のりもの/より¥おり¥さふらは/ぬ¥こと/こそ¥かへすがへす/も¥びろう/に¥さふらへ」/とて、¥その−とき¥こと/に¥あう/たる¥さぶらひ=ども、¥みな¥めし−よせ/て、「¥じこん¥いご¥なんぢ=ら¥よくよく¥こころ−う/べし。¥あやまつ/て¥てんが/へ¥ぶれい/の¥よし/を¥まうさ/ばや/と¥おもへ」/とて/こそ¥かへさ/れ/けれ。P86¥
その−のち¥にふだう、¥こまつ=どの/に/は¥かう/と/も¥のたまひ/も¥あはせ/ず/して、¥かたゐなか/の¥さぶらひ/の、¥きはめて¥こはらか/なる/が¥にふだう/の¥おほせ/より¥ほか、¥よ/に¥また¥おそろしき¥こと¥なし/と¥おもふ¥もの=ども、¥なんば、¥せのを/を¥はじめ/と/して、¥つがふ¥ろくじふ−よ−にん¥めし−よせ/て、「¥らい¥にじふいちにち、¥てんが¥ぎよ=しゆつ¥ある/べかん/なり。¥いづく/にて/も¥まち−うけ¥たてまつり、¥せんぐ¥みずゐじん=ども/が¥もとどり¥きつ/て、¥すけもり/が¥はぢ¥すすげ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥つはもの=ども¥かしこまり−うけたまはつ/て¥まかり−いづ。¥てんが¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しろしめさ/れ/ず、¥しゆしやう¥みやうねん¥おん=げんぶく、¥ご=かくわん¥はいくわん/の¥おん=さだめ/の¥ため/に、¥しばらく¥ご=ちよくろ/に¥ある/べき/にて、¥つね/の¥ぎよ=しゆつ/より/は¥ひき−つくろは/せ¥たまひ/て、¥こんど/は¥たいけんもん/より¥じゆぎよ¥ある/べき/にて、¥なかのみかど/を¥にし/へ¥ぎよ=しゆつ¥なる/に¥ゐのくまほりかは/の¥へん/にて、¥ろくはら/の¥つはもの=ども、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥まち−うけ¥たてまつり、¥てんが/を¥なか/に¥とり−こめ¥まゐらせ/て、¥ぜんご/より¥いちど/に、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥せんぐ¥みずゐじん=ども/が、¥けふ/を¥はれ/と¥しやうぞ¥い/たる/を、¥あそこ/に¥おつ−かけ、¥ここ/に¥おつ−つめ、¥さんざん/に¥りようりやく−し/て、¥いちいち/に¥みな¥もとどり/を¥きる。¥ずゐじん¥じふ−にん/の¥うち、¥みぎ/の−ふしやう−たけもと/が¥もとどり/を/も¥きら/れ/てげり。¥その¥なか/に¥とう−くらんど/の−たいふ−たかのり/が¥もとどり/を¥きる/とて、「¥これ/は¥なんぢ/が¥もとどり/と¥おもふ/べから/ず、¥しゆ/の¥もとどり/と¥おもふ/べし」/と、¥いひ−ふくめ/て/ぞ¥きつ/てげる。¥その−のち/は¥おん=くるま/の¥うち/へ/も、¥ゆみ/の¥はず¥つき−いれ/など/して、¥すだれ¥かなぐり−おとし、¥お=うし/の¥むながい¥しりがい¥きり−はなち、¥かく¥さんざん/に¥しちらし/て、¥よろこび/の¥とき/を¥つくり、¥ろくはら/へ¥かへり−まゐり/たれ/ば、¥にふだう、「¥しんべう/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。P87¥
され/ども¥おん=くるま¥ぞひ/に/は、¥いなば/の¥さいづかひ、¥とばの−くにひさまる/と¥いふ¥をのこ、¥げらふ/なれ/ども、¥さかざかしき¥もの/にて、¥おん=くるま/を¥しつらひ、¥のせ¥たてまつ/て、¥なかのみかど/の¥ごしよ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつる。¥そくたい/の¥おん=そで/にて¥おん=なみだ/を¥おさへ/させ¥たまひ/つつ、¥くわんぎよ/の¥ぎしき/の¥あさまし−さ、¥まうす/も¥なかなか¥おろか/なり。¥たいしよくくわん、¥たんかいこう/の¥おん=こと/は¥あげ/て¥まうす/に¥およば/ず、¥ちうじん=こう、¥せうぜん=こう/より¥この−かた、¥せつしやう¥くわんばく/の¥かかる¥おん=め/に¥あはせ¥たまふ¥こと、¥いまだ¥うけたまはり¥およば/ず。¥これ/こそ¥へいけ/の¥あくぎやう/の¥はじめ/なれ。¥こまつ=どの¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥そのーとき¥ゆき−むかう/たる¥さぶらひ=ども、¥みな¥かんだう−せ/らる。「¥たとひ¥にふだう¥いか/なる¥ふしぎ/を¥げぢ−し¥たまふ/と¥いふ/とも、¥など¥しげもり/に¥ゆめ/ばかり¥しらせ/ざり/ける/ぞ。¥およそ/は¥すけもり¥きくわい/なり。¥せんだん/は¥ふたば/より¥かうばし/と/こそ¥みえ/たれ。¥すでに¥じふにさん/に¥なら/んずる¥もの/が、¥いま/は¥れいぎ/を¥ぞんぢ−し/て/こそ¥ふるまふ/べき/に、¥かやう/の¥びろう/を¥げんじ/て、¥にふだう/の¥あくみやう/を¥たつ。¥ふけう/の¥いたり、¥なんぢ¥ひとり/に¥あり/けり」/とて、¥しばらく¥いせの−くに/へ¥おひ−くださ/る。¥され/ば、¥この¥だいしやう/を/ば、¥きみ/も¥しん/も¥ぎよ=かん¥あり/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P88¥
「ししのたに」(『ししのたに』)S0112¥これ/に¥よつ/て、¥しゆしやう¥おん=げんぶく/の¥おん=さだめ、¥その−ひ/は¥のび/させ¥たまひ/て、¥おなじき−にじふごにち、¥ゐん/の¥てんじやう/にて/ぞ¥おん=げんぶく/の¥おん=さだめ/は¥あり/ける。¥せつしやう=どの¥さて/も¥わたら/せ¥たまふ/べき/なら/ね/ば、¥おなじき−じふにんぐわつ−ここのかのひ、¥かねせんじ/を¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥おなじき−じふしにち¥だいじやうだいじん/に¥あがら/せ¥たまふ。¥やがて¥おなじき−じふしちにち、¥よろこび−まうし/の¥あり/しか/ども、¥よ/の−なか/は¥なほ¥にがにがしう/ぞ¥みえ/し。¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/ぬ。¥かおう/も¥みとせ/に¥なり/に/けり。¥しやうぐわつ−いつかのひ、¥しゆしやう¥おん=げんぶく¥あつ/て、¥おなじき−じふさんにち、¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/けり。¥ほふわう¥にようゐん¥まち−うけ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥うひかうぶり/の¥おん=よそほひ、¥いか/ばかり¥らうたく¥おぼしめさ/れ/けん。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ、¥にようご/に¥まゐらせ¥たまふ。¥おん=とし¥じふご−さい、¥ほふわう¥おん=いうじ/の¥ぎ/なり。¥めうおんゐん=どの、¥その−ころ/は¥いまだ¥ないだいじん/の−さだいしやう/にて¥ましまし/ける/が、¥だいしやう/を¥じし¥まうさ/せ¥たまふ¥こと¥あり/けり。¥ときに¥とくだいじの−だいなごん−じつていの−きやう、¥その¥じん/に¥あひ−あたり¥たまふ。¥また¥くわざんのゐん/の−ちうなごん−かねまさの−きやう/も¥しよまう¥あり。¥その−ほか¥こ=なかのみかど/の−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう/の¥さんなん、¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/も¥ひら/に¥まうさ/る。¥この¥だいなごん/は¥ゐん/の¥ご=きしよく¥よかり/けれ/ば、P89¥さまざま/の¥いのり/を¥はじめ/らる。¥まづ¥やはた/に¥ひやく−にん/の¥そう/を¥こめ/て、¥しんどく/の¥だいはんにや/を¥しち−にち¥よま/せ/られ/たり/ける¥さいちう/に、¥かはら/の−だい−みやうじん/の¥おん=まへ/なる¥たちばな/の¥き/へ、¥をとこやま/の¥かた/より、¥やまばと¥みつ¥とび−きたつ/て、¥くひ−あひ/て/ぞ¥しに/に/ける。¥はと/は¥はちまん−だい−ぼさつ/の¥だいいち/の¥ししや/なり。¥みやてら/に¥かかる¥ふしぎ¥なし/とて、¥とき/の¥けんぎやう、¥きやうせい−ほふいん¥この¥よし¥だいり/へ¥そうもん−し/たり/けれ/ば、¥これ¥ただごと/に¥あら/ず、¥みうら¥ある/べし/とて、¥じんぎくわん/に/して¥みうら¥あり。¥おもき¥おん=つつしみ/と¥うらなひ¥まうす。¥ただし¥これ/は¥きみ/の¥おん=つつしみ/に/は¥あら/ず、¥しんか/の¥つつしみ/と/ぞ¥まうし/ける。¥それ/に¥だいなごん¥おそれ/を/も¥いたさ/れ/ず、¥ひる/は¥ひとめ/の¥しげ/けれ/ば、¥よなよな¥ほかう/にて、¥なかのみかど−からすまる/の¥しゆくしよ/より、¥かも/の−かみ/の−やしろ/へ、¥ななよ¥つづけ/て¥まゐら/れ/けり。¥ななよ/に¥まんずる¥よ、¥しゆくしよ/に¥げかう−し/て、¥くるし−さ/に¥すこし¥まどろみ/たり/ける¥ゆめ/に、¥かも/の−かみ/の−やしろ/へ¥まゐり/たる/と¥おぼしく/て、¥ご=ほうでん/の¥み=と¥おし−ひらき、¥ゆゆしう¥けだか=げ/なる¥おん=こゑ/にて、¥
さくらばな¥かも/の¥かはかぜ¥うらむ/な/よ¥ちる/を/ば¥え/こそ¥とどめ/ざり/けれ W006¥
だいなごん¥これ/に¥なほ¥おそれ/を/も¥いたさ/れ/ず、¥かも/の−かみ/の−やしろ/に、¥ご=ほうでん/の¥おん=うしろ/なる、¥すぎ/の¥ほら/に¥だん/を¥たて、¥ある¥ひじり/を¥こめ/て、¥だぎに/の¥ほふ/を¥ひやくにち¥おこなは/せ/られ/ける/に、¥ある−とき¥にはか/に¥そら¥かき−くもり、¥いかづち¥おびたたしう¥なつ/て、¥かの¥おほすぎ/に¥おち−かかり、¥らいくわ¥もえ−あがつ/て、¥きうちう¥すでに¥あやふく¥みえ/ける/を、¥みやうど=ども¥わしり¥あつまり/て、¥これ/を¥うち−けす。¥さて¥かの¥げほふ¥おこなひ/ける¥ひじり/を¥つゐしゆつ−せ/ん/と¥す。「¥われ¥たうしや/に¥ひやくにち¥さんろう/の¥こころざし¥あつ/て、P90¥けふ/は¥しちじふごにち/に¥なる。¥まつたく¥いづ/まじ」/とて¥はたらか/ず。¥この¥よし/を¥しやけ/より¥だいり/へ¥そうもん¥まうし/たり/けれ/ば、¥ただ¥ほふ/に¥まかせよ/と、¥せんじ/を¥くださ/る。¥そのーとき¥じんにん¥しらづゑ/を¥もつ/て¥かの¥ひじり/が¥うなじ/を¥しらげ/て、¥いちでう/の¥おほち/より、¥みなみ/へ¥おつ−こし/てげり。¥しん/は¥ひれい/を¥うけ/ず/と¥まうす/に、¥この¥だいなごん、¥ひぶん/の¥だいしやう/を¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ば/に/や、¥かかる¥ふしぎ/も¥いで−き/に/けり。¥その−ころ/の¥じよゐ−ぢもく/と¥まうす/は、¥ゐん、¥うち/の¥おん=ぱからひ/に/も¥あら/ず、¥せつしやう¥くわんばく/の¥ご=せいばい/に/も¥およば/ず、¥ただ¥いつかう¥へいけ/の¥まま/にて¥あり/けれ/ば、¥とくだいじ、¥くわざんのゐん/も¥なり¥たまは/ず、¥にふだう−しやうこく/の¥ちやくなん¥こまつ=どの、¥そのーとき/は¥いまだ¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥ましまし/ける/が、¥ひだん/に¥うつり/て、¥じなん¥むねもり、¥ちうなごん/にて¥おはせ/し/が、¥すはい/の¥じやうらふ/を¥てうをつ−し/て、¥みぎ/に¥くははら/れ/ける/こそ、¥まうす¥はかり/も¥なかり/しか。¥なか/に/も¥とくだいじ=どの/は、¥いち/の¥だいなごん/にて、¥くわそく¥えいゆう、¥さいかく¥いうちやう、¥けちやく/にて¥ましまし/ける/が、¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/に、¥かかい¥こえ/られ¥たまひ/ぬる/こそ¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥さだめて¥ご=しゆつけ/など/も/や¥あら/んず/らん」/と、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/けれ/ども、¥とくだいじ=どの/は¥しばらく¥よ/の¥なら/ん¥やう/を¥み/ん/とて、¥だいなごん/を¥じし/て¥ろうきよ/と/ぞ¥きこえ/し。¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥のたまひ/ける/は、「¥とくだいじ、¥くわざんのゐん/に¥こえ/られ/たら/ん/は¥いかが−せ/ん。¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/に¥かかい¥こえ/られ/ぬる/こそ、¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥いか/に/も−し/て¥へいけ/を¥ほろぼし、¥ほんまう/を¥とげ/ん」/と¥のたまひ/ける/こそ¥おそろしけれ。¥ちち/の¥きやう/は、¥この¥よはひ/で/は、¥わづかP91¥ちうなごん/まで/こそ¥いたら/れ/しか。¥その¥ばつし/にて、¥くらゐ¥じやう−にゐ、¥くわん¥だいなごん/に¥へ−あがつ/て、、¥たいこく¥あまた¥たまはつ/て、¥しそく、¥しよじう、¥てうおん/に¥ほこれ/り。¥なに/の¥ふそく¥あつ/て/か¥かかる¥こころ¥つか/れ/けん、¥ひとへ/に¥てんま/の¥しよゐ/と/ぞ¥みえ/し。¥へいぢ/に/も¥ゑちごの−ちうじやう/とて、¥のぶよりの−きやう/に¥どうしん/の¥あひだ、¥そのーとき¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、こまつ=どの/の¥やうやう/に¥まうし/て、¥くび/を¥つぎ¥たまへ/り。¥しかる/に¥その¥おん/を¥わすれ/て、¥ぐわいじん/も¥なき¥ところ/に、¥ひやうぐ/を¥ととのへ、¥ぐんびやう/を¥かたらひ−おき、¥あさゆふ/は¥ただ¥いくさ−かつせん/の¥いとなみ/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥なし/と/ぞ¥みえ/たり/ける。¥ひんがしやま¥ししのたに/と¥いふ¥ところ/は、¥うしろ¥みゐでら/に¥つづい/て、¥ゆゆしき¥じやうくわく/にて/ぞ¥あり/ける。¥それ/に¥しゆんくわん−そうづ/の¥さんざう¥あり。¥かれ/に¥つね/は¥より−あひ−より−あひ、¥へいけ¥ほろぼす/べき¥はかりごと/を/ぞ¥めぐらし/ける。¥ある−よ、¥ほふわう/も¥ご=かう¥なる。¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥しそく、¥じやうけん−ほふいん/も¥おん=とも¥つかまつら/る。¥その¥よ/の¥しゆえん/に、¥この¥よし/を¥おほせ−あはせ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふいん、「¥あな¥あさまし。¥ひと¥あまた¥うけたまはり¥さふらひ/ぬ。¥ただいま¥もれ−きこえ/て、¥てんが/の¥おん=だいじ/に¥および¥さふらひ/な/んず」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥だいなごん¥けしき¥かはつ/て、¥さつと¥たた/れ/ける/が、¥ごぜん/に¥たて/られ/たり/ける¥へいじ/を、¥かりぎぬ/の¥そで/に¥かけ/て¥ひき−たふさ/れ/たり/ける/を、¥ほふわう¥えいらん¥あつ/て、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥だいなごん¥たち−かへつ/て、「¥へいじ¥たふれ¥さふらひ/ぬ」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥ほふわう/も¥ゑつぼ/に¥いら/せ¥おはしまし、「¥もの=ども¥まゐつ/て¥さるがく¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥へい−はうぐわん−やすより¥つと¥まゐつ/て、「P92¥ああ¥あまり/に¥へいじ/の¥おほう¥さふらふ/に、¥もて¥ゑひ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥しゆんくわん−そうづ、「¥さて¥それ/を/ば、¥いかが¥つかまつる/べき/やらん」。¥さいくわう−ほふし、「¥ただ¥くび/を¥とる/に/は¥しか/じ」/とて、¥へいじ/の¥くび/を¥とつ/て/ぞ¥いり/に/ける。¥ほふいん、¥あまり/の¥あさまし−さ/に、¥つやつや¥もの/も¥まうさ/れ/ず。¥かへすがへす/も¥おそろしかり/し¥こと=ども/なり。¥さて¥よりき/の¥ともがら¥たれたれ/ぞ。¥あふみの−ちうじやう−にふだう−れんじやう、¥ぞくみやう¥なりまさ、¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ、¥やましろの−かみ−もとかぬ、¥しきぶ/の−たいふ−まさつな、¥へい−はうぐわん−やすより、¥そう−はうぐわん−のぶふさ、¥しん−へい−はうぐわん−すけゆき、¥ぶし/に/は¥ただの−くらんど−ゆきつな/を¥はじめ/と/して、¥ほくめん/の¥もの=ども¥おほく¥よりき−し/てげり。
「うがはかつせん」(『しゆんくわんのさた うがはいくさ』)S0113¥そもそも¥この¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ/と¥まうす/は、¥きやうごく/の¥げん−だいなごん−がしゆんの−きやう/の¥まご、¥きでら/の−ほふいん−くわんが/に/は¥こ/なり/けり。¥そぶ¥だいなごん/は、¥さして¥ゆみ−や¥とる¥いへ/に/は¥あら/ね/ども、¥あまり/に¥はら¥あしき¥ひと/にて、¥さんでうのぼうもん¥きやうごく/の¥しゆくしよ/の¥まへ/を/ば、¥ひと/を/も¥やすく¥とほさ/れ/ず、¥つね/は¥ちうもん/に¥たたずみ、¥は/を¥くひしばり、¥いかつ/て/こそ¥おはし/けれ。¥かかる¥おそろしき¥ひと/の¥まご/なれ/ば/に/や、¥この¥しゆんくわん/も、¥そう/なれ/ども、¥こころ/も¥たけく、¥おごれ/る¥ひと/にて、¥よし−なき¥むほん/に/も¥くみし/てげる/に/こそ。¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう、P93¥ただの−くらんど−ゆきつな/を¥めし/て、「¥こんど¥ご=へん/を/ば、¥いつぱう/の¥たいしやう/に¥たのむ/なり。¥この¥こと¥し−おほせ/つる¥もの/なら/ば、¥くに/を/も¥しやう/を/も¥しよまう/に¥よる/べし。¥まづ¥ゆぶくろ/の¥れう/に」/とて、¥しろぬの¥ごじつ−たん¥おくら/れ/たり。¥あんげん−さんねん−さんぐわつ−いつかのひ、¥めうおんゐん=どの、¥だいじやうだいじん/に¥てんじ¥たまへ/る¥かはり/に、¥こまつ=どの、¥げん−だいなごん−さだふさの−きやう/を¥こえ/て、¥ないだいじん/に¥なり¥たまふ。¥やがて¥だいきやう¥おこなは/る。¥だいじん/の−だいしやう¥めでたかり/き。¥そんじや/に/は¥おほひのみかど/の−うだいじん−つねむね=こう/と/ぞ¥きこえ/し。¥いち/の−かみ/こそ¥せんど/なれ/ども、¥ちち¥うぢの−あく−さふ/の¥ご=れい、¥その¥おそれ¥あり。¥ほくめん/は¥しやうこ/に/は¥なかり/けり。¥しらかはのゐん/の¥おん=とき、¥はじめ−おか/れ/て/より¥この−かた、¥ゑふ=ども¥あまた¥さふらひ/けり。¥ためとし、¥もりしげ、¥わらは/より¥いまいぬまる、¥せんじゆまる/とて、¥これ=ら/は¥さう−なき¥きりもの/にて/ぞ¥あり/ける。¥とばのゐん/の¥おん=とき/も、¥すゑより、¥すゑのり¥ふし¥とも/に、¥てうか/に¥めし−つかは/れ/て¥あり/し/が、¥つね/は¥てんそう−する¥をり/も¥あり/なんど¥きこえ/しか/ども、¥これ=ら/は¥みな¥み/の¥ほど/を¥ふるまう/て/こそ¥あり/し/か。¥この¥とき/の¥ほくめん/の¥ともがら/は、¥もつて/の−ほか/に¥くわぶん/にて、¥くぎやう−てんじやうびと/を/も¥こと/と/も¥せ/ず、¥げほくめん/より¥しやうほくめん/に¥あがり、¥しやうほくめん/より¥てんじやう/の¥まじはり/を¥ゆるさ/るる¥もの/も¥おほかり/けり。¥かく/のみ¥おこなは/るる¥あひだ、¥おごれ/る¥こころ=ども¥つき/て、¥よし−なき¥むほん/に/も¥くみし/てげる/に/こそ。¥
なか/に/も¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥もと/に¥めし−つかは/れ/ける¥もろみつ、¥なりかげ/と¥いふ¥もの¥あり。¥もろみつ/は¥あはの−くに/の¥ざいちやう、¥なりかげ/は¥きやう/の¥もの、¥じゆつこん¥いやしき¥げらふ/なり。¥こんでいわらは、¥もしは¥かくごしや/など/にて/も/やP94¥あり/けん、¥さかざかしかり/し/に¥よつ/て、¥つね/は¥ゐん/へ/も¥めし−つかは/れ/ける/が、¥もろみつ/は¥さゑもん/の−じよう、¥なりかげ/は¥うゑもん/の−じよう/とて、¥に−にん¥いちど/に¥ゆきへ/の−じよう/に¥なり/ぬ。¥ひととせ¥しんせい¥こと/に¥あひ/し¥とき、¥に−にん¥とも/に¥しゆつけ−し/て、¥さゑもん−にふだう¥さいくわう、¥うゑもん−にふだう¥さいけい/とて、¥これ=ら/は¥しゆつけ/の¥のち/も、¥ゐん/の¥みくら¥あづかり/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥かの¥さいくわう/が¥こ/に¥もろたか/と¥いふ¥もの¥あり。¥これ/も¥さう−なき¥きりもの/にて、¥けんびゐし、¥ごゐ/の−じやう/まで¥へ−あがり/て、¥あまつさへ¥あんげん−ぐわんねん−じふにんぐわつ−にじふくにち、¥つゐな/の−ぢもく/に、¥かがの−かみ/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥こくむ/を¥おこなふ¥あひだ、¥ひほふ¥ひれい/を¥ちやうぎやう−し、¥じんじや¥ぶつじ、¥けんもん¥せいけ/の¥しやうりやう/を¥もつたう−し/て、¥さんざん/の¥こと=ども/にて/ぞ¥あり/ける。¥たとひ¥せうこう/が¥あと/を¥へだつ/と¥いふ/とも、¥をんびん/の¥まつりごと/を¥おこなふ/べかり/し/に、¥かく¥こころ/の¥まま/に¥ふるまふ¥あひだ、¥おなじき−にねん/の¥なつ/の¥ころ、¥こくし−もろたか/が¥おとと、¥こんどう−はんぐわん−もろつね/を¥かが/の¥もくだい/に¥ふせ/らる。¥もくだい¥げちやく/の¥はじめ、¥こくふ/の¥へん/に¥うがは/と¥いふ¥やまでら¥あり。¥をりふし¥じそう=ども/が¥ゆ/を¥わかい/て¥あび/ける/を、¥らんにふ−し/て¥おひ−あげ、¥わが−み¥あび、¥ざふにん=ばら¥おろし、¥むま¥あらは/せ/など¥し/けり。¥じそう¥いかり/を¥なし/て、「¥むかし/より¥この¥ところ/は、¥くにがた/の¥もの/の¥にふぶ−する¥こと¥なし。¥せんれい/に¥まかせ/て、¥すみやか/に¥にふぶ/の¥あふばう¥とどめよ/や」/と/ぞ¥まうし/ける。「¥もくだい¥おほき/に¥いかつ/て、「¥せんせん/の¥もくだい/は、¥ふかく/で/こそ¥いやしま/れ/たれ。¥たう−もくだい/に¥おいて/は、¥すべて¥その¥ぎ¥ある/まじ。¥ただ¥ほふ/に¥まかせよ」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥じそう=ども/は¥くにがた/の¥もの/を¥つゐしゆつ−せ/ん/と¥す。¥くにがた/の¥もの=ども/は、¥ついで/を¥もつて¥らんにふ−せ/ん/と、¥うち−あひ、P95¥はり−あひ−し/ける/ほど/に、¥もくだい−もろつね/が¥ひざう−し/ける¥むま/の¥あし/を/ぞ¥うち−をり/ける。¥その−のち/は¥たがひ/に¥きうせん¥ひやうぢやう/を¥たいし/て、¥い−あひ、¥きり−あひ、¥すこく¥たたかふ。¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥もくだい¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん¥ひき−しりぞく。¥その−のち¥たう−ごく/の¥ざいちやう=ら¥いつせん−よ−にん、¥もよほし−あつめ/て、¥うがは/に¥おし−よせ、¥ばうじや¥いち−う/も¥のこさ/ず¥みな¥やき−はらふ。¥うがは/と¥いふ/は、¥はくさん/の¥まつじ/なり。¥この¥こと¥うつたへ/ん/とて、¥すすむ¥らうそう¥たれたれ/ぞ。¥ちしやく、¥がくみやう、¥ほうだいばう、¥しやうち、¥がくおん、¥とさの−あざり/ぞ¥すすみ/ける。¥しらやま¥さんじや¥はちゐん/の¥だいしゆ、¥ことごとく¥おこり−あひ、¥つがふ¥その¥せい¥にせん−よ−にん、¥おなじき−しちぐわつ−ここのかのひ/の¥くれがた/に、¥もくだい−もろつね/が¥たち¥ちかう/こそ¥おし−よせ/たれ。¥けふ/は¥ひ¥くれ/ぬ。¥あす/の¥いくさ/と¥さだめ/て、¥その−ひ/は¥よせ/で¥ゆらへ/たり。¥つゆ¥ふき−むすぶ¥あきかぜ/は、¥いむけ/の¥そで/を¥ひるがへし、¥くもゐ/を¥てらす¥いなづま/は、¥かぶと/の¥ほし/を¥かがやかす。¥もくだい¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥よにげ/に/して¥きやう/へ¥のぼる。¥あくる¥う/の−こく/に¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥じやう/の¥うち/に/は¥おと/も¥せ/ず。¥ひと/を¥いれ/て¥みせ/けれ/ば、「¥みな¥おち/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥だいしゆ¥ちから¥およば/で¥ひき−しりぞく。¥さら/ば¥さんもん/へ¥うつたへ/ん/とて、¥はくさん−ちうぐう/の¥しんよ、¥かざり¥たてまつ/て、¥ひえいさん/へ¥ふり−あげ¥たてまつる。¥おなじき−はちぐわつ−じふににち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥はくさん−ちうぐう/の¥しんよ、¥すでに¥ひえいさん¥ひがしざかもと/に¥つか/せ¥たまふ/と¥まうす/ほど/こそ¥あり/けれ、¥ほくこく/の¥かた/より、¥いかづち¥おびたたしく¥なつ/て、¥みやこ/を¥さし/て¥なり−のぼり、¥はくせつ¥くだつ/て¥ち/を¥うづみ、¥さんじやう¥らくちう¥おしなべて、¥ときは/の¥やま/の¥こずゑ/まで、¥みな¥しろたへ/に/ぞ¥なり/に/ける。
(『ぐわんだて』)S0114¥だいしゆ¥しんよ/を/ば、¥まらうと/の−みや/へ¥いれP96¥たてまつる。¥まらうと/と¥まうす/は、¥はくさん−めうり−ごんげん/にて¥おはします。¥まうせ/ば¥ふし/の¥おん=なか/なり。¥まづ¥さた/の¥じやうふ/は¥しら/ず、¥しやうぜん/の¥おん=よろこび、¥ただ¥この¥こと/に¥あり。¥うらしま/が¥こ/の¥しつせ/の¥まご/に¥あへ/り/し/に/も¥すぎ、¥たいない/の¥もの/の¥りやうぜん/の¥ちち/を¥み/し/に/も¥こえ/たり。¥さんぜん/の¥しゆと¥くびす/を¥つぎ、¥しちしや/の¥じんにん¥そで/を¥つらね/て、¥じじこくこく/の¥ほつせ¥きねん、¥ごんご−だうだん/の¥こと=ども/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥さる−ほど/に¥さんもん/の¥だいしゆ、¥こくし−かがの−かみ−もろたか/を¥るざい/に¥しよせ/られ、¥もくだい−こんどう−はんぐわん−もろつね/を¥きんごく−せ/らる/べき¥よし、¥そうもん¥どど/に¥およぶ/と¥いへ/ども、¥ご=さいきよ¥なかり/けれ/ば、¥しかる/べき¥くぎやう−てんじやうびと/は、「¥あはれ¥とく/して¥ご=さいだん¥ある/べき/ものを。¥むかし/より¥さんもん/の¥そしよう/は¥た/に¥こと/なり。¥おほくら/の−きやう−ためふさ、¥ださい/の−ごん/の−そつ−すゑなかの−きやう/は、¥さ/しも¥てうか/に¥ちようしん/たり/しか/ども、¥さんもん/の¥そしよう/に¥よつ/て¥るざい−せ/られ¥たまひ/に/き。¥いはんや¥もろたか/など/は¥こと/の−かず/にて/や/は¥ある/べき、¥しさい/に/や¥およぶ/べき」/と¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥たいしん/は¥ろく/を¥おもんじ/て¥いさめ/ず、¥せうしん/は¥つみ/に¥おそれ/て¥まうさ/ず」/と¥いふ¥こと/なれ/ば、¥おのおの¥くち/を¥とぢ¥たまへ/り。P97
「ぐわんだて」¥かもがは/の¥みづ、¥すごろく/の¥さい、¥やまぼふし、¥これ/ぞ¥わが¥おん=こころ/に¥かなは/ぬ¥もの」/と、¥しらかはのゐん/も¥おほせ/なり/ける/とかや。¥とばのゐん/の¥おん=とき/も、¥ゑちぜん/の¥へいせんじ/を¥さんもん/へ¥よせ/られ/ける¥こと/は、¥たうざん/を¥ご=きゑ¥あさから/ざる/に¥よつ/て/なり。「¥ひ/を¥もつて¥り/と¥す」/と¥せんげ−せ/られ/て/こそ、¥ゐんぜん/を/ば¥くださ/れ/けれ。¥され/ば¥がうぞつ−きやうばうの−きやう/の¥まうさ/れ/し/は、「¥さんもん/の¥だいしゆ、¥ひよし/の¥しんよ/を¥ぢんどう/へ¥ふり¥たてまつ/て、¥そしよう/を¥いたさ/ば、¥きみ/は¥いかが¥おん=ぱからひ¥さうらふ/べき」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥ほふわう、「¥げに/も¥さんもん/の¥そしよう/は¥もだし−がたし」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥いんじ¥かほう−にねん−さんぐわつ−ふつかのひ、¥みのの−かみ−みなもとの−よしつなの−あそん、¥たう−ごく¥しんりふ/の¥しやう/を¥たふす¥あひだ、¥やま/の¥くぢうしや¥ゑんおう/を¥せつがい−す。¥これ/に¥よつ/て¥ひよし/の¥しやし、¥えんりやくじ/の¥じくわん、¥つがふ¥さんじふ−よ−にん、¥まうしぶみ/を¥ささげ/て¥ぢんどう/へ¥さんじ/たる/を、¥ごにでう/の−くわんばく=どの、¥やまとげんじ−なかづかさの−ごん/の−せふ−よりはる/に¥おほせ/て、¥これ/を¥ふせが/せ/らるる/に¥よりはる/が¥らうどう、¥や/を¥はなつ。¥やには/に¥ゐ−ころさ/るる¥もの¥はち−にん、¥きず/を¥かうぶる¥もの¥じふ−よ−にん、¥しやし、¥しよし、¥しはう/へ¥みな¥にげ−さり/ぬ。¥これ/に¥よつ/て¥さんもん/の¥じやうかう=ら、¥しさい/を¥そうもん/の¥ため/に、¥おびたたしう¥げらく−す/とP98¥きこえ/しか/ば、¥ぶし、¥けんびゐし、¥にしざかもと/に¥ゆき−むかつ/て、¥みな¥おつ−かへす。¥
さる−ほど/に¥さんもん/に/は、¥ご=さいだん¥ちち/の¥あひだ、¥ひよし/の¥しんよ/を¥こんぽんちうだう/へ¥ふり−あげ¥たてまつり、¥その¥おん=まへ/にて¥しんどく/の¥だいはんにや/を¥しち−にち¥よみ/て、¥ごにでう/の−くわんばく=どの/を¥じゆそ−し¥たてまつる。¥けちぐわん/の¥だうし/に/は、¥ちういん−ほふいん、¥そのーとき/は¥いまだ¥ちういん−ぐぶ/と¥まうし/し/が、¥かうざ/に¥のぼり¥かね¥うち−ならし、¥けいびやく/の¥ことば/に¥いはく、「¥われ=ら/が¥なたね/の¥ふたば/より¥おほし−たて¥たまひ/し¥かみ=たち、¥ごにでう/の−くわんばく=どの/に、¥かぶらや¥ひとつ¥はなち−あて¥たまへ。¥だいはちわうじ−ごんげん」/と¥たからか/に/こそ¥きせい−し/たり/けれ。¥その¥よ¥やがて¥ふしぎ/の¥こと¥あり/けり。¥はちわうじ/の¥ご=てん/より、¥かぶらや/の¥こゑ¥いで/て、¥わうじやう/を¥さし/て¥なり/て¥ゆく/と/ぞ、¥ひと/の¥ゆめ/に/は¥みえ/たり/ける。¥その¥あした¥くわんばく=どの/の¥ごしよ/の¥み=かうし/を¥あげ/ける/に、¥ただいま¥やま/より¥とつ/て¥き/たる¥やう/に、¥つゆ/に¥ぬれ/たる¥しきみ¥ひとえだ、¥たつ/たり/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥やがて¥その¥よ/より、¥ごにでう/の−くわんばく=どの、¥さんわう/の¥おん=とがめ/とて、¥おもき¥おん=やまふ/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/しか/ば、¥ははうへ¥おほ=との/の¥きたのまんどころ、¥おほき/に¥おん=なげき¥あつ/て、¥おん=さま/を¥やつし、¥いやしき¥げらふ/の¥まね/を¥し/て、¥ひよし/の−やしろ/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥しち−にち−しち−や/が¥あひだ¥いのり¥まうさ/せ¥おはします。¥まづ¥あらはれ/て/の¥ご=りふぐわん/に/は、¥しばでんがく¥ひやく−ばん、¥ひやく−ばん/の¥ひとつもの、¥けいば、¥やぶさめ、¥すまふ、¥おのおの¥ひやく−ばん、¥ひやく−ざ/の¥にんわうかう、¥ひやく−ざ/の¥やくしかう、¥いつ−ちやくしゆ−はん/の¥やくし¥ひやく−たい、¥とうじん/の¥やくし¥いつたい、¥ならびに¥しやか、¥あみだ/の¥ぞう、¥おのおの¥ざうりふ¥くやう−せ/られ/けり。¥また¥ご=しんぢう/に¥みつ/の¥ご=りふぐわん¥あり。¥おん=こころ/の¥うち/の¥おん=こと/なれ/ば、P99¥ひと¥これ/を/ば、¥いかで/か¥しり¥たてまつる/べき/に、¥それに¥なに/より/も¥また¥ふしぎ/なり/ける¥こと/に/は、¥しち−や/に¥まんずる¥よ、¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/に¥いくら/も¥あり/ける¥まゐりうど=ども/の¥なか/に、¥みちのく/より、¥はるばる/と¥のぼつ/たり/ける¥わらは−みこ、¥やはん/ばかり/に¥にはか/に¥たえ−いり/けり。¥はるか/に¥かき−いだし/て¥いのり/けれ/ば、¥やがて¥たつ/て¥まひ−かなづ。¥ひと¥きどく/の¥おもひ/を¥なし/て¥これ/を¥みる。¥はんじ/ばかり¥まう/て¥のち、¥さんわう¥おり/させ¥たまひ/て、¥やうやう/の¥ご=たくせん/こそ¥おそろしけれ。「¥しゆじやう=ら¥たしか/に¥うけたまはれ。¥おほ=との/の¥きたのまんどころ、¥けふ¥しち−にち、¥わが¥おん=まへ/に¥こもら/せ¥たまひ/たり。¥ご=りふぐわん¥みつ¥あり。¥まづ¥ひとつ/に/は、¥こんど¥てんが/の¥じゆみやう/を¥たすけ/させ¥おはしませ。¥さ/も¥さふらは/ば、¥おほみや/の¥した=どの/に¥さぶらふ¥もろもろ/の¥かたはうど/に¥まじはつ/て、¥いつせんにち/が¥あひだ、¥てうせき¥みやづかひ¥まうさ/ん/と/なり。¥おほ=との/の¥きたのまんどころ/にて、¥よ/を¥よ/と/も¥おぼしめさ/で、¥すごさ/せ¥たまふ¥おん=こころ/に/も、¥こ/を¥おもふ¥みち/に¥まよひ/ぬれ/ば、¥いぶせき¥こと/を/も¥わすら/れ/て、¥あさまし=げ/なる¥かたはうど/に¥まじはつ/て、¥いつせんにち/が¥あひだ、¥あさゆふ¥みやづかひ¥まうさ/ん/と¥おほせ/らるる/こそ、¥まことに¥あはれ/に¥おぼしめせ。¥ふたつ/に/は¥おほみや/の¥はしどの/より、¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/まで、¥くわいらう¥つくつ/て¥まゐらせ/ん/と/なり。¥さんぜん−にん/の¥だいしゆ、¥ふる/に/も¥てる/に/も、¥しやさん/の¥とき、¥いたはしう¥おぼゆる/に、¥くわいらう¥つくら/れ/たら/ん/は、¥いか/に¥めでたから/ん。¥みつ/に/は¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/にて、¥ほつけ−もんだふかう¥まいにち¥たいてん¥なく¥おこなは/す/べし/と/なり。¥この¥ご=りふぐわん=ども/は、¥いづれ/も¥おろか/なら/ね/ども、¥せめて/は¥かみ¥ふたつ/は、¥さ¥なく/と/も¥あり/な/ん。¥ほつけ−もんだふかう/こそ、¥いちぢやう¥あら/まほしう/は¥おぼしめせ。P100¥ただし、¥こんど/の¥そしよう/は、¥むげ/に¥やすかり/ぬ/べき¥こと/にて¥あり/つる/を、¥ご=さいきよ¥なく/して、¥じんにん、¥みやじ¥い−ころさ/れ、¥しゆと¥おほく¥きず/を¥かうぶつ/て、¥なくなく¥まゐり/て¥うつたへ¥まうす/が、¥あまり/に¥こころ−うけれ/ば、¥いか/なら/ん¥よ/に¥わする/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥その−うへ¥かれ=ら/に¥あたる¥ところ/の¥や/は、¥すなはち¥わくわう−すゐじやく/の¥おん=はだへ/に¥たつ/たる/なり。¥まこと¥そらごと/は¥これ/を¥みよ」/とて、¥かた¥ぬぎ/たる/を¥みれ/ば、¥ひだり/の¥わき/の¥した、¥おほき/なる¥かはらけ/の¥くち/ほど、¥うげのい/て/ぞ¥あり/ける。「¥これ/が¥あまり/に¥こころ−うけれ/ば、¥いか/に¥まうす/と/も¥しぢう/の¥こと/は¥かなふ/まじ。¥ほつけ−もんだふかう¥いちぢやう¥ある/べく/は、¥みとせ/が¥いのち/を¥のべ/て¥たてまつら/ん。¥それ/を¥ふそく/に¥おぼしめさ/ば¥ちから¥およば/ず」/とて、¥さんわう¥あがら/せ¥たまひ/けり。¥ははうへ¥この¥ご=りふぐわん/の¥おん=こと、¥ひと/に/も¥かたら/せ¥たまは/ね/ば、¥たれ¥もらし/ぬ/らん/と、¥すこし/も¥うたがふ¥かた/も¥ましまさ/ず。¥おん=こころ/の¥うち/の¥こと=ども/を、¥あり/の−まま/に¥ご=たくせん¥あり/けれ/ば、¥いよいよ¥しんかん/に¥そう/て、¥こと/に¥たつとく¥おぼしめし、「¥たとひ¥いちにち¥へんし/と¥さぶらふ/とも、¥あり−がたう/こそ¥さぶらふ/べき/に、¥まして¥みとせ/が¥いのち/を¥のべ/て¥たまはら/ん/と¥おほせ/らるる/こそ、¥まことに¥あり−がたう/は¥さぶらへ」/とて、¥おん=なみだ/を¥おさへ/て¥おん=げかう¥あり/けり。¥その−のち¥きの−くに/に¥てんが/の¥りやう、¥たなか/の−しやう/と¥いふ¥ところ/を、¥えいたい¥はちわうじ/へ¥きしん−せ/らる。¥され/ば¥いま/の¥よ/に¥いたる/まで、¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/にて、¥ほつけ−もんだふかう、¥まいにち¥たいてん¥なし/と/ぞ¥うけたまはる。¥かかり/し−ほど/に、¥ごにでう/の−くわんばく=どの¥おん=やまふ¥かるま/せ¥たまひ/て、¥もと/の/ごとく/に¥なら/せ¥たまふ。¥じやうげ¥よろこび¥あは/れ/し/ほど/に、¥みとせ/の¥すぐる/は¥ゆめ/なれ/や、¥えいちやう−にねん/に¥なり/に/けり。P101¥ろくぐわつ−にじふいちにち、¥また¥ごにでう/の−くわんばく=どの、¥おん=ぐし/の¥きは/に¥あしき¥おん=かさ¥いで/させ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/し/が、¥おなじき−にじふしちにち、¥おん=とし¥さんじふはち/にて、¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥おん=こころ/の¥たけさ、¥り/の¥つよさ、¥さ/しも¥ゆゆしう¥おはせ/しか/ども、¥まめやか/に¥こと/の¥きふ/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥おん=いのち/を¥をしま/せ¥たまひ/けり。¥まことに¥をしかる/べし。¥しじふ/に/だに¥みたせ¥たまは/で、¥おほ=との/に¥さきだた/せ¥たまふ/こそ¥かなしけれ。¥かならず¥ちち/を¥さきだつ/べし/と¥いふ¥こと/は¥なけれ/ども、¥しやうじ/の¥おきて/に¥したがふ¥ならひ、¥まんどく−ゑんまん/の¥せそん、¥じふぢ−くきやう/の¥だいじ=たち/も、¥ちから¥およば/せ¥たまは/ぬ¥しだい/なり。¥じひ¥ぐそく/の¥さんわう、¥りもつ/の¥はうべん/にて¥ましませ/ば、¥おん=とがめ¥なかる/べし/と/も¥おぼえ/ず。
「みこしぶり」(『みこしぶり』)S0115¥さる−ほど/に¥さんもん/に/は、¥こくし−かがの−かみ−もろたか/を¥るざい/に¥しよ−せ/られ、¥もくだい−こんどう−はんぐわん−もろつね/を¥きんごく−せ/らる/べき¥よし、¥そうもん¥どど/に¥およぶ/と¥いへ/ども、¥ご=さいきよ¥なかり/けれ/ば、¥ひよし/の¥さいれい/を¥うち−とどめ/て、¥あんげん−さんねん−しんぐわつ−じふさんにち/の¥たつ/の¥いつてん/に、¥じふぜんじ−ごんげん、¥まらうど、¥はちわうじ、¥さんじや/の¥しんよ/を¥かざり¥たてまつ/て、¥ぢんどう/へ¥ふり−あげ¥たてまつる。¥さがりまつ、¥きれづつみ、¥かも/の¥かはら、¥ただす、¥うめただ、¥やなぎはら、¥とうぼくゐん/の¥へん/に、¥じんにん、¥みやじ、¥しらだいしゆ、P102¥せんだう¥みちみち/て、¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず。¥しんよ/は¥いちでう/を¥にし/へ¥いら/せ¥たまふ/に、¥ご=じんぼう¥てん/に¥かかやい/て、¥にちぐわつ¥ち/に¥おち¥たまふ/か/と¥おどろか/る。¥これ/に¥よつ/て¥げんぺい−りやうけ/の¥たいしやうぐん/に¥おほせ/て、¥しはう/の¥ぢんどう/を¥かため/て、¥だいしゆ¥ふせぐ/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥へいけ/に/は¥こまつの−ないだいじん/の−さだいしやう−しげもり=こう、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/にて、¥おほみやおもて/の¥やうめい、¥たいけん、¥いうはう、¥みつ/の¥もん/を¥かため¥たまふ。¥おとと¥むねもり、¥とももり、¥しげひら、¥をぢ¥よりもり、¥のりもり、¥つねもり/など/は、¥にしみなみ/の¥もん/を¥かため¥たまふ。¥げんじ/に/は¥たいだい−しゆご/の¥げん−ざんみ−よりまさ、¥らうどう/に/は¥わたなべの−はぶく、¥さづく/を¥さき/と/して、¥その¥せい¥わづか/に¥さんびやく−よ−き、¥きた/の¥もん、¥ぬひどの/の−ぢん/を¥かため¥たまふ。¥ところ/は¥ひろし、¥せい/は¥すくなし、¥まばら/に/こそ¥みえ/たり/けれ。¥だいしゆ¥ぶせい/たる/に¥よつ/て、¥きた/の¥もん、¥ぬひどの/の−ぢん/より¥しんよ/を¥いれ¥たてまつら/ん/と¥する/に、¥よりまさの−きやう¥さる−ひと/にて、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥かぶと/を¥ぬぎ、¥てうづ−うがひ−し/て、¥しんよ/を¥はいし¥たてまつら/る。¥つはもの=ども/も¥みな¥かく/の/ごとし。¥よりまさの−きやう/より、¥だいしゆ/の¥なか/へ¥ししや/を¥たて/て、¥いひ¥おくら/るる¥むね¥あり。¥その¥つかひ/は¥わたなべの−ちやうじつ−となふ/と/ぞ¥きこえ/し。¥となふ¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥きちん/の−ひたたれ/に、¥こざくら/を¥き/に¥かへし/たる¥よろひ¥き/て、¥しやくどう−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥しらは/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で、¥たかひも/に¥かけ、¥しんよ/の¥おん=まへ/に¥かしこまつ/て、「¥しばらく¥しづまら/れ¥さふらへ。¥げん−ざんみ=どの/より、¥しゆと/の¥おん=なか/へ¥げん−ざんみ=どの/の¥まうせ/と¥ざふらふ」/とて、「¥こんど¥さんもん/の¥ご=そしよう、¥りうん/の¥でう¥もちろん/に¥さふらふ。¥ご=さいだん¥ちち/こそ、¥よそ/にて/も¥ゐこん/に¥おぼえ¥さうらへ。¥しんよ¥いれ¥たてまつら/んP103¥こと、¥しさい/に¥および¥さふらは/ず。¥ただし¥よりまさ¥ぶせい/に¥さふらふ。¥あけ/て¥いれ¥たてまつる¥ぢん/より¥いら/せ¥たまひ/な/ば、¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥めだりがほ−し/けり/など、¥きやう−わらんべ/の¥まうさ/ん¥こと、¥ごにち/の¥なん/に/や¥さふらは/んず/らん。¥あけ/て¥いれ¥たてまつれ/ば、¥せんじ/を¥そむく/に¥に/たり。¥また¥ふせぎ¥たてまつら/ん/と¥すれ/ば、¥ねんらい¥いわう、¥さんわう/に¥かうべ/を¥かたぶけ/て¥さふらふ¥み/が、¥けふ/より¥のち、¥ながく¥ゆみ−や/の¥みち/に¥わかれ¥さふらひ/な/んず。¥かれ/と¥いひ、¥これ/と¥いひ、¥かたがた¥なんぢ/の¥やう/に¥おぼえ¥さふらふ。¥ひんがし/の¥ぢんどう/を/ば¥こまつ=どの/の¥おほぜい/にて¥かため/られ/て¥さふらふ。¥その¥ぢん/より¥いら/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と、¥いひ¥おくり/たり/けれ/ば、¥となふ/が¥かく¥いふ/に¥ふせが/れ/て、¥じんにん、¥みやじ、¥しばらく¥ゆらへ/たり。¥わかだいしゆ、¥あくそう=ども/は、「¥なんでふ¥その¥ぎ¥ある/べき。¥ただ¥この¥ぢん/より¥しんよ/を¥いれ¥たてまつれ/や」/と¥いふ¥やから¥おほかり/けれ/ども、¥ここ/に¥らうそう/の¥なか/に、¥さんたふ−いち/の¥せんぎしや/と¥きこえ/し¥つの−りつしや−がううん、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥この¥ぎ¥もつとも¥さ¥いは/れ/たり。¥われ=ら¥しんよ/を¥さき−だて¥まゐらせ/て、¥そしよう/を¥いたさ/ば、¥おほぜい/の¥なか/を¥うち−やぶり/て/こそ、¥こうたい/の¥きこえ/も¥あら/んずれ。¥なかんづく¥この¥よりまさの−きやう/は、¥ろくそんわう/より¥この−かた、¥げんじ¥ちやくちやく/の¥しやうとう、¥ゆみ−や/を¥とつ/て/も、¥いまだ¥その¥ふかく/を¥きか/ず。¥およそ/は¥ぶげい/に/も¥かぎら/ず、¥かだう/に/も¥また¥すぐれ/たる¥をのこ/なり。¥ひととせ¥こんゑのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥たうざ/の¥ご=くわい/の¥あり/し/に、『¥しんざん/の¥はな』/と¥いふ¥だい/を¥いださ/れ/たり/ける/に、¥ひとびと¥みな¥よみ¥わづらは/れ/たり/し/を、¥この¥よりまさの−きやう、P104¥
み−やま−ぎ/の¥その¥こずゑ/と/も¥みえ/ざり/し¥さくら/は¥はな/に¥あらはれ/に/けり W007
/と¥いふ¥めいか¥つかまつ/て¥ぎよ=かん/に¥あづかる/ほど/の¥やさおのこ/に、¥いかんが¥とき/に¥のぞん/で¥なさけ−なう¥ちじよく/を/ば¥あたふ/べき。¥ただ¥しんよ¥かき−かへし¥たてまつれ/や」/と、¥せんぎ−し/たり/けれ/ば、¥すせん−にん/の¥だいしゆ、¥せんぢん/より¥ごぢん/まで、¥みな¥もつとも−もつとも/と/ぞ¥どうじ/ける。¥さて¥しんよ¥かき−かへし¥たてまつり、¥ひんがし/の¥ぢんどう、¥たいけんもん/より¥いれ¥たてまつら/ん/と¥し/ける/に、¥らうぜき¥たちまち/に¥いで−き/て、¥ぶし=ども¥さんざん/に¥い¥たてまつる。¥じふぜんじ/の¥み=こし/に/も、¥や=ども¥あまた¥い−たて/けり。¥じんにん、¥みやじ¥い−ころさ/れ、¥しゆと¥おほく¥きず/を¥かうぶつ/て、¥をめき−さけぶ¥こゑ/は¥ぼんでん/まで/も¥きこえ、¥けんらう¥ぢじん/も¥おどろき¥たまふ/らん/と/ぞ¥おぼえ/ける。¥だいしゆ¥しんよ/を/ば¥ぢんどう/に¥ふり−すて¥たてまつり、¥なくなく¥ほんざん/へ/ぞ¥かへり−のぼり/ける。
「だいりえんしやう」(『だいりえんしやう』)S0116¥ゆふべ/に¥およん/で¥くらんど/の−させうべん−かねみつ/に¥おほせ/て、¥ゐん/の¥てんじやう/にて、¥にはか/に¥くぎやう−せんぎ¥あり/けり。¥さんぬる¥ほうあん−しねん−しんぐわつ/に¥しんよ¥じゆらく/の¥とき/は、¥ざす/に¥おほせ/て、¥せきさん/の−やしろ/へ¥いれ¥たてまつら/る。¥また¥ほうえん−しねん−しちぐわつ/に¥しんよ¥じゆらく/の¥とき/は、¥ぎをん/の−べつたう/に¥おほせ/て、¥ぎをん/の−やしろ/へ¥いれ¥たてまつら/る。¥こんど/も¥ほうえん/の¥れい/たる/べし/とて、¥ぎをん/の−べつたう−ごん/の−だいそうづ−ちようけん/にP105¥おほせ、¥へいしよく/に¥およん/で¥ぎをん/の−やしろ/へ¥いれ¥たてまつら/る。¥しんよ/に¥たつ¥ところ/の¥や/を/ば、¥じんにん/して¥これ/を¥ぬか/せ/らる。¥むかし/より¥さんもん/の¥だいしゆ、¥しんよ/を¥ぢんどう/へ¥ふり¥たてまつる¥こと/は、¥さんぬる¥えいきう/より¥この−かた、¥ぢしよう/まで/は¥ろく−か−ど/なり。¥され/ども¥まいど/に¥ぶし/に¥おほせ/て¥ふせが/せ/らるる/に、¥しんよ¥い¥たてまつる¥こと/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。「¥れいしん¥いかり/を¥なせ/ば、¥さいがい¥ちまた/に¥みつ/と¥いへ/り。¥おそろし−おそろし」/と/ぞ¥おのおの¥のたまひ−あは/れ/ける。¥おなじき−じふしにち/の¥やはん/ばかり、¥さんもん/の¥だいしゆ、¥また¥おびたたしう¥げらく−する/と¥きこえ/しか/ば、¥しゆしやう/は¥やちう/に¥えうよ/に¥めし/て、¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/へ¥ぎやうがう¥なる。¥ちうぐう、¥みやみや/は、¥おん=くるま/に¥たてまつり/て、¥たしよ/へ¥ぎやうげい¥あり/けり。¥くわんばく=どの/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥われ/も¥われ/も/と¥ぐぶ−せ/らる。¥こまつの−おとど/は、¥なほし/に¥や¥おう/て¥ぐぶ−せ/らる。¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり/は、¥そくたい/に¥ひらやなぐひ¥おう/て/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥およそ¥きんちう/の¥じやうげ、¥きやう−ぢう/の¥きせん、¥さわぎ−ののしる¥こと¥おびたたし。¥され/ども¥さんもん/に/は、¥しんよ/に¥や¥たち、¥じんにん¥みやじ¥い−ころさ/れ、¥しゆと¥おほく¥きず/を¥かうぶり/たり/しか/ば、¥おほみや¥に/の−みや¥いげ、¥かうだう、¥ちうだう、¥すべて¥しよだう、¥いち−う/も¥のこさ/ず¥みな¥やき−はらつ/て、¥さんや/に¥まじはる/べき¥よし、¥さんぜん¥いちどう/に¥せんぎ−す。¥これ/に¥よつ/て¥だいしゆ/の¥まうす¥ところ、¥ほふわう¥おん=ぱからひ¥ある/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥さんもん/の¥じやうかう=ら、¥しさい/を¥しゆと/に¥ふれ/ん/とて、¥とうざん−す/と¥きこえ/しか/ば、¥だいしゆ¥にしざかもと/に¥おり−くだつ/て、¥みな¥おつ−かへす。¥へい−だいなごん−ときただの−きやう、P106¥その−とき/は¥いまだ¥さゑもん/の−かみ/にて¥おはし/ける/が、¥しやうけい/に¥たつ。¥だい−かうだう/の¥には/に¥さんたふ¥くわいがふ−し/て、「¥しやうけい/を¥とつ/て¥ひつぱり、¥しや¥かぶり/を¥うち−おとし、¥その¥み/を¥からめ/て、¥みづうみ/に¥しづめよ」/など/ぞ¥まうし/ける。¥すでに¥かう/と¥みえ/し¥とき、¥ときただの−きやう、¥だいしゆ/の¥なか/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥しばらく¥しづまら/れ¥さふらへ。¥しゆと/の¥おん=なか/へ¥まうす/べき¥こと/の¥さふらふ」/とて、¥ふところ/より¥こすずり¥たたうがみ¥とり−いだし、¥ひとふで¥かい/て¥だいしゆ/の¥なか/へ¥おくら/る。¥これ/を¥ひらい/て¥みる/に、「¥しゆと/の¥らんあく/を¥いたす/は、¥まえん/の¥しよぎやう/なり。¥めいわう/の¥せいし/を¥くはふる/は、¥ぜんぜい/の¥かご/なり」/と/こそ¥かか/れ/たれ。¥これ/を¥み/て、¥だいしゆ¥ひつぱる/に/も¥およば/ず、¥みな¥もつとも−もつとも/と¥どうじ/て、¥たにだに/に¥おり、¥ばうばう/へ/ぞ¥いり/に/ける。¥いつし¥いつく/を¥もつて、¥さんたふ¥さんぜん/の¥いきどほり/を¥やすめ、¥こうし/の¥はぢ/を/も¥のがれ¥たまひ/けん¥ときただの−きやう/こそ¥ゆゆしけれ。¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥はつかう/の¥みだりがはしき/ばかり/か/と¥おもひ/ぬれ/ば、¥ことわり/を/も¥ぞんぢ−し/けり/と/ぞ、¥ひとびと¥かんじ−あは/れ/ける。¥おなじき−はつかのひ、¥くわざんのゐん−ごん−ぢうなごん−ただちかの−きやう/を¥しやうけい/にて、¥こくし−かがの−かみ−もろたか/を¥けつくわん−せ/られ/て、¥おはり/の¥ゐどた/へ¥ながさ/る。¥おとと¥こんどう−はんぐわん−もろつね/を/ば¥きんごく−せ/らる。¥また¥さんぬる¥じふさんにち¥しんよ¥い¥たてまつ/し¥ぶし¥ろくにん¥ごくぢやう−せ/らる。¥これ=ら/は¥みな¥こまつ=どの/の¥さぶらひ/なり。¥おなじき−にじふはちにち/の¥よ/の¥いぬ/の−こく/ばかり、¥ひぐちとみのこうぢ/より¥ひ¥いで−きたつ/て、¥きやう−ぢう¥おほく¥やけ/に/けり。¥をりふし¥たつみ/の¥かぜ¥はげしく¥ふき/けれ/ば、¥おほき/なる¥しやりん/の/ごとく/なるP107¥ほのほ/が、¥さんぢやう¥ごちやう/を¥へだて/て、¥いぬゐ/の¥かたへ¥すぢかへ/に¥とび−こえ−とび−こえ¥やけ−ゆけ/ば、¥おそろし/など/も¥おろか/なり。¥あるひは¥ぐへいしんわう/の¥ちぐさ=どの、¥あるひは¥きたの/の−てんじん/の¥こうばい=どの、¥きつ−いつせい/の¥はひまつ=どの、¥おに=どの、¥たかまつ=どの、¥かもゐ=どの、¥とうさんでう、¥ふゆつぎ/の−おとど/の¥かんゐん=どの、¥せうぜん=こう/の¥ほりかは=どの、¥これ/を¥はじめ/て、¥むかし−いま/の¥めいしよ¥さんじふ−よ−か−しよ、¥くぎやう/の¥いへ/だに/も¥じふろく−か−しよ/まで¥やけ/に/けり。¥その−ほか¥てんじやうびと、¥しよだいぶ/の¥いへいへ/は¥しるす/に¥およば/ず。¥はて/は¥たいだい/に¥ふき−つけ/て、¥しゆしやくもん/より¥はじめ/て、¥おうでんもん、¥くわいしやうもん、¥だいこくでん、¥ぶらくゐん、¥しよし¥はつしやう、¥あいたんどころ、¥いちじ/が¥うち/に、¥みな¥くわいじん/の¥ち/と/ぞ¥なり/に/ける。¥いへいへ/の¥につき、¥だいだい/の¥もんじよ、¥しつちん−まんぽう¥さながら¥ちり−はひ/と¥なり/ぬ。¥その¥あひだ/の¥つひえ¥いか/ばかり/ぞ。¥ひと/の¥やけ−しぬる¥こと¥すひやく−にん、¥ぎうば/の¥たぐひ¥かず/を¥しら/ず。¥これ¥ただごと/に¥あら/ず。¥さんわう/の¥おん=とがめ/とて、¥ひえいさん/より、¥おほき/なる¥さる=ども/が、¥にさんぜん¥おり−くだり、¥てんで/に¥まつび/を¥ともい/て、¥きやう−ぢう/を¥やく/と/ぞ、¥ひと/の¥ゆめ/に/は¥みえ/たり/ける。¥だいこくでん/は¥せいわ−てんわう/の¥ぎよ=う、¥ぢやうくわん−じふはちねん/に¥はじめて¥やけ/たり/けれ/ば、¥おなじき−じふくねん−しやうぐわつ−みつかのひ、¥やうぜいのゐん/の¥ご=そくゐ/は¥ぶらくゐん/にて/ぞ¥あり/ける。¥ぐわんきやう−ぐわんねん−しんぐわつ−ここのかのひ、¥ことはじめ¥あつ/て、¥おなじき−にねん−じふぐわつ−やうかのひ/ぞ¥つくり−いださ/れ/たり/ける。¥ごれんぜいのゐん/の¥ぎよ=う、¥てんき−ごねん−にんぐわつ−にじふろくにち、¥また¥やけ/に/けり。¥ぢりやく−しねん−はちぐわつ−じふしにち/に、¥ことはじめ¥あり/しか/ども、¥いまだ¥つくり/も¥いださ/れ/ず/して、¥ごれんぜいのゐん¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥ごさんでうのゐん/の¥ぎよ=う、¥えんきう−しねん−しんぐわつ−じふごにち/に¥つくり−いださ/れ/て、¥ぶんじん¥し/を¥たてまつり、P108¥れいじん¥がく/を¥そうし/て、¥せんかう¥なし¥たてまつる。¥いま/は¥よ¥すゑ/に¥なつ/て、¥くに/の¥ちから/も¥みな¥おとろへ/たれ/ば、¥その−のち/は¥つひに¥つくら/れ/ず。P109¥

 

入力者:荒山慶一



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