平家物語 巻第二  総かな版(元和九年本)
「ざすながし」(『ざすながし』)S0201¥ぢしよう−ぐわんねん−ごぐわつ−いつかのひ、¥てんだい−ざす−めいうん−だいそうじやう、¥くじやう/を¥ちやうじ−せ/らるる¥うへ、¥くらんど/を¥お=つかひ/にて、¥によいりん/の¥ご=ほんぞん/を¥めし−かへい/て、¥ごぢそう/を¥かいえき−せ/らる。¥すなはち¥しちやう/の¥つかひ/を¥つけ/て、¥こんど¥しんよ¥だいり/へ¥ふり¥たてまつ/し¥しゆと/の¥ちやうぼん/を¥めさ/れ/けり。¥かがの−くに/に¥ざす/の¥ご=ばうりやう¥あり。¥こくし−もろたか¥これ/を¥ちやうはい/の¥あひだ、¥その¥しゆくい/に¥よつ/て、¥だいしゆ/を¥かたらひ¥そしよう/を¥いたさ/る。¥すでに¥てうか/の¥おん=だいじ/に¥およぶ/べき¥よし、¥さいくわう−ほふし−ふし/が¥ざんそう/に¥よつ/て、¥ほふわう¥おほき/に¥げきりん¥あり/けり。¥こと/に¥ぢうくわ/に¥おこなは/る/べし/と¥きこゆ。¥めいうん/は¥ゐん/の¥ご=きしよく¥あしかり/けれ/ば、¥いんやく/を¥かへし¥たてまつ/て、¥ざす/を¥じし¥まうさ/れ/けり。¥おなじき−じふいちにち、¥とばのゐん/の¥しちのみや¥かくくわい−ほつしんわう、¥てんだい−ざす/に¥なら/せ¥たまふ。¥これ/は¥しやうれんゐん/の¥だいそうじやう−ぎやうげん/の¥おん=でし/なり。¥あくる¥じふににち、¥せん−ざす¥しよしよく/を¥もつしゆ−せ/らるるP110¥うへ、¥けんびゐし¥ににん/を¥つけ/て、¥ゐ/に¥ふた/を¥し、¥ひ/に¥みづ/を¥かけ/て、¥すゐくわ/の¥せめ/に¥おこなは/る/べき¥よし¥きこゆ。¥これ/に¥よつ/て、¥だいしゆ¥なほ¥さんらく−す/と¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥また¥さわぎ−あへ/り。¥
おなじき−じふはちにち¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥くぎやう¥じふさん−にん¥さんだい−し/て、¥ぢん/の¥ざ/に¥つき、¥さきの−ざす¥ざいくわ/の¥こと¥ぎぢやう¥あり。¥はちでうの−ちうなごん−ながかたの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥さだいべん/の−さいしやう/にて、¥ばつざ/に¥さぶらは/れ/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥ほつけ/の¥かんじやう/に¥まかせ/て、¥しざい¥いつとう/を¥げん−じ/て、¥をんる−せ/らる/べし/と/は¥みえ/て¥さふらへ/ども、¥せん−ざす−めいうん−だいそうじやう/は¥けんみつ¥けんがく−し/て、¥じやうぎやう−ぢりつ/の¥うへ、¥だいじようめうきやう/を¥くげ/に¥さづけ¥たてまつり、¥ぼさつじやうかい/を¥ほふわう/に¥たもた/せ¥たてまつる。¥おんきやう/の¥し、¥おん=かい/の−し、¥ぢうくわ/に¥おこなは/れ/ん¥こと/は、¥みやう/の¥せうらん¥はかり−がたし。¥げんぞく−をんる/を¥なだめ/らる/べき/か」/と、¥はばかる¥ところ/も¥なう¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥たうざ/の¥くぎやう、¥みな¥ながかた/の¥ぎ/に¥どう−ず/と¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥ほふわう¥おん=いきどほり¥ふかかり/けれ/ば、¥なほ¥をんる/に¥さだめ/らる。¥だいじやう/の−にふだう/も¥この¥こと¥まうさ/ん/とて、¥ゐんざん−せ/られ/たり/けれ/ども、¥ほふわう¥おん=かぜ/の¥け/とて、¥ごぜん/へ/も¥めさ/れ¥たまは/ね/ば、¥ほい−な=げ/にて¥たいしゆつ−せ/らる。¥そう/を¥つみ−する¥ならひ/とて、¥どえん/を¥めし−かへし、¥げんぞく−せ/させ¥たてまつり、¥だいなごん/の−たいふ−ふじゐの−まつえだ/と¥いふ¥ぞくみやう/を/こそ¥つけ/られ/けれ。¥この¥めいうん/と¥まうす/は、¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく、¥むらかみの−てんわう¥だいしち/の¥わうじ、¥ぐへい−しんわう/より¥ろくだい/の¥おん=すゑ、¥こがの−だいなごん−あきみちの−きやう/の¥おん=こ/なり。¥まことに¥ぶさう/の¥せきとく、¥てんがP111¥だいいち/の¥かうそう/にて¥おはし/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥たつとみ¥たまひ/て、¥てんわうじ、¥ろくしようじ/の¥べつたう/を/も¥かけ¥たまへ/り。¥され/ども¥をんやう/の−かみ−あべの−やすちか/が¥まうし/ける/は、「¥さ/ばかり/の¥ちしや/の、¥めいうん/と¥なのり¥たまふ/こそ¥こころ−え/ね。¥うへ/に/は¥じつげつ/の¥ひかり/を¥ならべ、¥した/に¥くも¥あり」/と/ぞ¥なんじ/ける。¥にんあん−ぐわんねん−にんぐわつ−はつかのひ、¥てんだい−ざす/に¥なら/せ¥たまふ。¥おなじき−さんぐわつ−じふごにち¥ご=はいだう¥あり。¥ちうだう/の¥ほうざう/を¥ひらか/れ/ける/に、¥しゆじゆ/の¥ちようほう=ども/の¥なか/に、¥はう¥いつしやく/の¥はこ¥あり。¥しろい¥ぬの/にて¥つつま/れ/たり。¥いつしやう−ふぼん/の¥ざす、¥かの¥はこ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、¥わうし/に¥かけ/る¥ふみ¥いつくわん¥あり。¥でんげう−だいし、¥みらい/の¥ざす/の¥みやうじ/を、¥かね/て¥しるし−おか/れ/たり。¥わが¥な/の¥ある¥ところ/まで/は¥み/て、¥それ/より¥おく/を/ば¥み¥たまは/ず、¥もと/の/ごとく¥まき−かへし/て¥おか/るる¥ならひ/なり。¥され/ば¥この¥そうじやう/も、¥さ/こそ/は¥おはし/けめ。¥かかる¥たつとき¥ひと/なれ/ども、¥ぜんぜ/の¥しゆくごふ/を/ば¥まぬかれ¥たまは/ず、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥おなじき−にじふいちにち、¥はいしよ¥いづの−くに/と¥さだめ/らる。¥ひとびと¥やうやう/に¥まうさ/れ/けれ/ども、¥さいくわう−ほふし−ふし/が¥ざんそう/に¥よつ/て、¥かやう/に/は¥おこなは/れ/ける/なり。¥けふ¥やがて¥みやこ/の¥うち/を¥おひ−いださ/る/べし/とて、¥おつたて/の−くわんにん、¥しらかは/の¥ごばう/に¥ゆき−むかつ/て¥おひ¥たてまつる。¥そうじやう¥なくなく¥ごばう/を¥いで/つつ、¥あはたぐち/の¥ほとり、¥いつさいきやう/の−べつしよ/へ¥いら/せ¥おはします。¥さんもん/に/は、¥せんずる−ところ、¥われ=ら/が¥かたき/は、¥さいくわう−ほふし−ふし/に¥すぎ/たる¥もの¥なし/とて、¥かれ=ら−ふし/が¥みやうじ/を¥かい/て、¥こんぽん−ちうだう/に¥おはします¥じふに−じんじやう/の¥うち、¥こんぴらだいじやう/のP112¥ひだん/の¥み=あし/の¥した/に¥ふま/せ¥たてまつり、「¥じふに−じんじやう、¥しちせん−やしや、¥じこく/を¥めぐらさ/ず、¥さいくわう−ほふし−ふし/が¥いのち/を¥めし−とり¥たまへ/や」/と、¥をめき−さけん/で¥しゆそ−し/ける/こそ、¥きく/も¥おそろしけれ。¥
おなじき−にじふさんにち¥いつさいきやう/の−べつしよ/より、¥はいしよ/へ¥おもむき¥たまひ/けり。¥さ/ばかり/の¥ほふむ/の¥だいそうじやう/ほど/の¥ひと/の¥おつたて/の−うつし/が¥さき/に¥け−たて/られ/て、¥けふ/を¥かぎり/に¥みやこ/を¥いで/て、¥せき/の¥ひがし/へ¥おもむか/れ/けん¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥おほつ/の¥うちで/の−はま/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥もんじゆろう/の¥のきば/の¥しろじろ/と/して¥みえ/ける/を、¥ふため/と/も¥み¥たまは/ず、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て¥なみだ/に¥むせび¥たまひ/けり。¥さんもん/に/は¥しゆくらう−せきとく¥おほし/と¥いへ/ども、¥ちようけん−ほふいん、¥その−とき/は¥いまだ¥そうづ/にて¥おはし/ける/が、¥あまり/に¥なごり/を¥をしみ¥たてまつり、¥あはづ/まで¥おくり¥まゐらせ/て、¥それ/より¥いとま¥こう/て¥かへら/れ/ける/に、¥そうじやう¥こころざし/の¥せつ/なる¥こと/を¥かんじ/て、¥ねんらい¥こしんぢう/に¥ひ−せ/られ/たり/し、¥いつしん−さんぐわん/の¥けつみやく−さうじよう/を¥さづけ/らる。¥この¥ほう/は¥しやくそん/の¥ふぞく、¥はらないこく/の¥めみやうびく、¥なんてんぢく/の¥りうじゆぼさつ/より¥しだい/に¥さうでん−し¥きたれ/る/を、¥けふ/の¥なさけ/に¥さづけ/らる。¥さすが¥わが¥てう/は¥そくさん−へんぢ/の¥さかひ、¥じよくせ¥まつだい/と/は¥いひ/ながら、¥ちようけん¥これ/を¥ふぞく−し/て、¥ほふえ/の¥たもと/を¥しぼり/つつ、¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/けん、¥こころ/の¥うち/こそ¥たつとけれ。¥
さる−ほど/に¥さんもん/に/は¥だいしゆ¥おこつ/て¥せんぎ−す。「¥そもそも¥ぎしん−くわしやう/より¥この−かた、¥てんだい−ざす¥はじまつ/て、¥ごじふご−だい/に¥いたる/まで、¥いまだ¥るざい/の¥れい/を¥きか/ず。¥つらつら¥こと/の¥こころ/を¥あんずる/に、P113¥えんりやく/の¥ころほひ、¥くわうてい/は¥ていと/を¥たて、¥だいし/は¥たうざん/に¥よぢ−のぼり/て、¥しめい/の¥けうぼふ/を¥この¥ところ/に¥ひろめ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥ごしやう/の¥によにん¥あと¥たえ/て、¥さんぜん/の¥じやうりよ¥きよ/を¥しめ/たり。¥みね/に/は¥いちじよう−どくじゆ¥とし¥ふり/て、¥ふもと/に/は¥しちしや/の¥れいげん¥ひ¥あらた/なり。¥かの¥ぐわつし/の¥りやうぜん/は、¥わうじやう/の¥とうぼく、¥だいしやう/の¥いうくつ/なり。¥この¥じちゐき/の¥えいがく/も¥ていと/の¥きもん/に¥そばだち/て¥ごこく/の¥れいち/なり。¥だいだい/の¥けんわう¥ちしん、¥この¥ところ/に¥だんぢやう/を¥しむ。¥まつだい/なら/ん/がらん/に、¥いかで/か¥たうざん/に¥きず/を/ば¥つく/べき。¥こ/は¥こころ−うし」/とて、¥をめき−さけぶ/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥まんざん/の¥だいしゆ、¥のこり−とどま/る¥もの/も¥なく、¥みな¥ひがしざかもと/へ¥おり−くだる。¥(『いちぎやうあじやりのさた』)S0202¥じふぜんじ−ごんげん/の¥おん=まへ/にて、¥だいしゆ¥また¥せんぎ−す。「¥そもそも¥われ=ら¥あはづ/へ¥ゆき−むかつ/て、¥くわんじゆ/を/ば¥うばひ−とどめ¥たてまつる/べし。¥ただし¥おつたて/の−うつし、¥りやうそうし¥ある/なれ/ば、¥さう−なう¥とり−え¥たてまつら/ん¥こと¥あり−がたし。¥いま/は¥さんわう−だいし/の¥おん=ちから/の¥ほか、¥また¥たのみ¥たてまつる¥かた¥なし。¥まことに¥べつ/の¥しさい¥なく、¥とり−え¥たてまつる/べく/は、¥ここ/にて¥まづ¥ひとつ/の¥ずゐさう/を¥みせ/しめ¥たまへ」/と、¥らうそう=ども¥かんたん/を¥くだい/て¥きねん−し/けり。¥ここに¥むどうじ−ぼふし¥じようゑん−りつし/が¥めし−つかひ/ける¥つるまる/と¥いふ¥わらは¥あり。¥しやうねん¥じふはつさい/に¥なり/ける/が、¥しんじん/を¥くるしめ、¥ごたい/に¥あせ/を¥ながい/て、¥にはか/に¥くるひ−いで/たり。「¥われ¥じふぜんじ−ごんげん¥のり−ゐ/させ¥たまへ/り。¥まつだい/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥わが−やま/の¥くわんじゆ/を/ば、¥たこく/へ/は¥うつさ/る/べき。¥しやうじやう−せせ/に¥こころ−うし。¥さら/ん/に¥とつ/て/は、¥われ¥この¥ふもと/に¥あと/を¥とどめ/て/も¥なに/に/かは¥せん」/とて、¥さう/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と¥なき/けれ/ば、P114¥だいしゆ¥これ/を¥あやしみ/て、「¥まことに¥じふぜんじ−ごんげん/の¥ご=たくせん/にて¥おはしまさ/ば、¥われ=ら¥しるし/を¥まゐらせ/ん。¥
いちいち/に¥もと/の¥ぬし/に¥かへし¥たまへ」/とて、¥らうそう=ども¥しごひやく−にん、¥てんで/に¥もつ/たる¥じゆず=ども/を、¥じふぜんじ−ごんげん/の¥おほ−ゆか/の¥うへ/へ/ぞ¥なげ−あげ/たる。¥かの¥ものぐるひ¥はしり=まはり、¥ひろひ−あつめ/て¥すこし/も¥たがへ/ず、¥いちいち/に¥みな¥もと/の¥ぬし/に/ぞ¥くばり/ける。¥だいしゆ¥しんめい/の¥れいげん¥あらた/なる¥こと/の¥たつとさ/に、¥みな¥たなごころ/を¥あはせ/て¥ずゐき/の¥かんるゐ/を/ぞ¥もよほし/ける。「¥その¥ぎ/なら/ば、¥ゆき−むかつ/て¥うばひ−とどめ¥たてまつれ/や」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥うんか/の/ごとく/に¥はつかう−す。¥あるひは¥しが¥からさき/の¥はまぢ/に¥あゆみ−つづけ/る¥だいしゆ/も¥あり。¥あるひは¥やまだやばせ/の¥こしやう/に¥ふね¥おし−いだす¥しゆと/も¥あり。¥これ/を¥み/て¥さ/しも¥きびし=げ/なり/つる¥おつたて/の−うつし、¥りやうそうし、¥ちりぢり/に¥みな¥にげ−さり/ぬ。¥だいしゆ¥こくぶんじ/へ¥まゐり−むかふ。¥せん−ざす¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、「¥およそ¥ちよくかん/の¥もの/は、¥つきひ/の¥ひかり/に/だに¥あたら/ず/と/こそ¥うけたまはれ。¥いか/に−いはんや、¥じこく/を¥めぐらさ/ず、¥いそぎ¥おひ−くださ/る/べし/と、¥ゐんぜん¥せんじ/の¥なり/たる/に、¥すこし/も¥やすらふ/べから/ず。¥しゆと¥とうとう¥かへり−のぼり¥たまふ/べし」/と、¥はし¥ちかく¥ゐ−いで/て¥のたまひ/ける/は、「¥さんだい−くわいもん/の¥いへ/を¥いで/て、¥しめい−いうけい/の¥まど/に¥いつ/し/より¥この−かた、¥ひろく¥ゑんじう/の¥けうぼふ/を¥がく−し/て、¥けん−みつ¥りやう−しう/を¥まなび/き。¥ただ¥わが−やま/の¥こうりう/を/のみ¥おもへ/り。¥また¥こくか/を¥いのり¥たてまつる¥こと/も¥おろそか/なら/ず。¥しゆと/を¥はぐくむ¥こころざし/も¥ふかかり/き。¥りやうじよ¥さんしやう¥さだめ/て¥せうらん−し¥たまふ/らん。¥み/に¥あやまつ¥こと¥なし。¥むじつ/の¥つみ/に¥よつ/て、¥をんる/の¥ぢうくわ/を¥かうむれ/ば、¥よ/を/も¥ひと/を/も¥かみ/を/も¥ほとけ/を/も、P115¥うらみ¥たてまつる¥かた¥なし。¥まことに¥はるばる/と¥これ/まで¥とぶらひ−きたり¥たまふ¥しゆと/の¥はうし/こそ、¥しやうじやう−せせ/に/も¥ほうじ¥つくし−がたけれ」/とて、¥かうぞめ/の¥おん=ころも/の¥そで/を¥しぼり/も¥あへ/させ¥たまは/ね/ば、¥だいしゆ/も¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥すでに¥おん=こし¥さし−よせ/て、「¥とうとう¥めさ/る/べう¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥せん−ざす¥のたまひ/ける/は、「¥むかし/こそ¥さんぜん/の¥しゆと/の¥くわんじゆ/たり/しか。¥いま/は¥かかる¥るにん/の¥み/と¥なつ/て、¥いかで/か¥やんごとなき¥しゆがくしや、¥ちゑ¥ふかき¥だいしゆ=たち/に¥かき−ささげ/られ/て/は¥のぼる/べき。¥たとひ¥のぼる/べき/なり/とも、¥わらんづ/など¥いふ¥もの/を¥しばり−はい/て、¥おなじ¥やう/に¥あゆみ−つづい/て/こそ¥のぼら/め」/とて、¥のり¥たまは/ず。¥
ここ/に¥さいたふ/の¥ぢうりよ、¥かいじやう−ばう/の−あじやり−いうけい/と¥いふ¥あくそう¥あり。¥たけ¥しちしやく/ばかり¥あり/ける/が、¥くろかは−をどし/の−よろひ/の、¥おほ−あらめ/に¥かね¥まぜ/たる/を、¥くさずりなが/に¥き−なし、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で、¥ほふし=ばら/に¥もた/せ/つつ、¥しらえ/の−なぎなた¥つゑ/に¥つき、¥だいしゆ/の¥なか/を¥おし−わけ−おし−わけ、¥せん=ざす/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥だい/の¥まなこ/を¥み−いからかし、¥せん−ざす/を¥しばし¥にらまへ¥たてまつ/て、「¥その¥おん=こころ/で/こそ、¥かかる¥おん=め/に/も¥あはせ¥たまひ¥さふらへ。¥とうとう¥めさ/る/べう¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥せん−ざす¥おそろし−さ/に、¥いそぎ¥のり¥たまふ。¥だいしゆ¥とり−え¥たてまつる¥こと/の¥うれし−さ/に、¥いやしき¥ほふし=ばら/に/は¥あら/ず、¥やんごとなき¥しゆがくしや=ども/が¥かき−ささげ¥たてまつ/て¥のぼる/ほど/に、¥ひと/は¥かはれ/ども¥いうけい/は¥かはら/ず、¥さきごし¥かい/て、¥こし/の¥ながえ/も、¥なぎなた/の¥え/も、¥くだけよ/と¥とる¥まま/に、¥さ/しも¥さがしき¥ひがしざか、¥へいぢ/を¥ゆく/が/ごとく/なり。P116¥
だい−かうだう/の¥には/に、¥おん=こし¥かき−すゑ/て、¥だいしゆ¥また¥せんぎ−す。「¥そもそも¥われ=ら¥あはづ/に¥ゆき−むかつ/て、¥くわんじゆ/を/ば¥うばひ−とどめ¥たてまつり/ぬ。¥ただし¥ちよくかん/を¥かうむり/て¥をんる−せ/られ¥たまふ¥ひと/を、¥くわんじゆ/に¥もちひ¥まうさ/ん¥こと、¥いかが¥ある/べかる/らん」/と¥ひやうぢやう−す。¥かいじやう−ばう/の−あじやり−いうけい、¥また¥さき/の/ごとく¥すすみ−いで/て¥せんぎ−し/ける/は、「¥それ¥わが−やま/は¥につぽん¥ぶさう/の¥れいち、¥ちんご−こくか/の¥だうぢやう、¥さんわう/の¥ご=ゐくわう¥さかん/に/して、¥ぶつぽふ¥わうぼふ¥ごかく/なり。¥され/ば¥しゆと/の¥いしゆ/に¥いたる/まで¥ならび−なく、¥いやしき¥ほふし=ばら/まで/も、¥よ¥もつて¥かろしめ/ず。¥いはんや¥ちゑ¥かうき/に/して、¥さんぜん/の¥しゆと/の¥くわんじゆ/たり。¥とくぎやう¥おもう/して¥いつさん/の¥わじやう/たり。¥つみ¥なく/して¥つみ/を¥かうむり¥たまふ¥こと、¥さんじやう¥らくちう/の¥いきどほり、¥こうぶく¥をんじやう/の¥あざけり/に¥あら/ず/や。¥この−とき¥われ=ら¥けんみつ/の¥あるじ/を¥うしなつ/て、¥すはい/の¥がくりよ、¥ながく¥けいせつ/の¥つとめ¥おこたら/ん¥こと、¥こころ−うかる/べし。¥せんずる−ところ、¥いうけい¥ちやうぼん/に¥しよう−ぜ/られ、¥きんごく¥るざい/に/も¥および、¥かうべ/の¥はね/られ/ん¥こと、¥こんじやう/の¥めんぼく、¥めいど/の¥おもひで¥なる/べし」/とて、¥さうがん/より¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながし/けれ/ば、¥すせん−にん/の¥だいしゆ/も、¥みな¥もつとも−もつとも/と/ぞ¥どうじ/ける。¥それ/より/して/こそ、¥いうけい/を/ば¥いかめ−ばう/と/は¥いは/れ/けれ。¥その¥でし¥ゑけい−りつし/を/ば、¥とき/の−ひと¥こいかめ−ばう/と/ぞ¥まうし/ける。P117¥
「いちぎやうあじやり」¥だいしゆ¥せん−ざす/を/ば、¥とうだふ/の¥みなみだに、¥めうくわうばう/に¥いれ¥たてまつる。¥とき/の¥わうざい/を/ば、¥ごんげ/の¥ひと/も¥まぬかれ¥たまは/ざり/ける/に/や。¥むかし¥たう/の¥いちぎやう−あじやり/は、¥げんそう−くわうてい/の¥ごぢそう/にて¥おはし/ける/が、¥げんそう/の¥きさき¥やうきひ/に¥な/を¥たち¥たまへ/り。¥むかし/も¥いま/も、¥だいこく/も¥せうこく/も、¥ひと/の¥くち/の¥さがな−さ/は、¥あとかた/も¥なき¥こと/なり/しか/ども、¥その¥うたがひ/に¥よつ/て、¥くわらこく/へ¥ながさ/れ/させ¥たまふ。¥くだん/の¥くに/へ/は¥みつ/の¥みち¥あり。¥りんちだう/とて¥ごかうみち、¥いうちだう/とて¥ざふにん/の¥かよふ¥みち、¥あんけつだう/とて¥ぢうくわ/の¥もの/を¥つかはす¥みち/なり。¥され/ば、¥かの¥いちぎやう−あじやり/は¥だいぼん/の¥ひと/なれ/ば/とて、¥あんけつだう/へ/ぞ¥つかはさ/れ/ける。¥しち−にち−しち−や/が¥あひだ、¥つきひ/の¥ひかり/も¥み/ず/して¥ゆく¥ところ/なり。¥みやうみやう/と/して¥ひと/も¥なく、¥かうほ/に¥せんど¥まよひ、¥しんしん/と/して¥やま¥ふかし。¥ただ¥かんこく/に¥とり/の¥ひとこゑ/ばかり/にて、¥こけ/の¥ぬれぎぬ¥ほし−あへ/ず、¥むじつ/の¥つみ/に¥よつ/て、¥をんる/の¥ぢうくわ/を¥かうむり¥たまふ¥こと/を、¥てんだう¥あはれみ¥たまひ/て、¥くえう/の¥かたち/を¥げんじ/つつ、¥いちぎやう−あじやり/を¥まもり¥たまふ。¥とき/に¥いちぎやう¥みぎ/の¥ゆび/を¥くひ−きり、¥ひだん/の¥たもと/に¥くえう/の¥かたち/を¥うつさ/れ/けり。¥わかん¥りやうてう/に、¥しんごん/の¥ほんぞん/たる¥くえう/の¥まんだら¥これ/なり。P118¥
「さいくわうがきられ」(『さいくわうがきられ』)S0203¥さる−ほど/に¥さんもん/の¥だいしゆ、¥せん−ざす¥とり−とどめ¥たてまつ/たる¥こと、¥ほふわう¥きこしめし/て、¥いとど¥やすから/ず¥おぼしめし/ける¥ところ/に、¥さいくわう−ほふし¥まうし/ける/は、「¥むかし/より¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥はつかう/の¥みだりがはしき¥うつたへ¥つかまつる¥こと、¥いま/に¥はじめ/ず/と/は¥まうし/ながら、¥こんど/は¥もつて/の−ほか/に¥くわぶん/に¥さふらふ。¥よくよく¥おん=ぱからひ¥さふらふ/べし。¥これ=ら/を¥おん=いましめ¥さふらは/ず/は、¥この−のち/は¥よ/が¥よ/で/も¥さふらふ/まじ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ただいま¥わが−み/の¥ほろび−うせ/んずる¥こと/を/も¥かへりみ/ず、¥さんわう−だいし/の¥しんりよに/も¥はばから/ず、¥かやう/に¥まうし/て¥しんきん/を¥なやまし¥たてまつる。¥ざんしん/は¥くに/を¥みだる/と¥いへ/り。¥まこと/なる/かな。¥さうらん¥しげから/ん/と¥すれ/ども、¥あき/の¥かぜ¥これ/を¥やぶり、¥わうじや¥あきらか/なら/ん/と¥すれ/ども、¥ざんしん¥これ/を¥くらう−す/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ¥きんじゆ/の¥ひとびと/に¥おほせ/て、¥ほふわう¥やま¥せめ/らる/べし/と¥きこえ/しか/ば、¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥さ/のみ¥わうぢ/に¥はらま/れ/て、¥ぜうめい/を¥たいかん−せ/ん/も¥おそれ/なり/とて、¥ないない¥ゐんぜん/に¥したがひ¥たてまつる¥しゆと/も¥あり/など¥きこえ/しか/ば、¥せん−ざす/は¥とうだふ/の¥みなみだに、¥めうくわうばう/に¥おはし/ける/が、¥だいしゆ¥ふたごころ¥あり/と¥きき¥たまひ/て、「¥また¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あふ/べき/やらん」/と、¥こころ−ぼそ=げ/に/ぞ¥のたまひ/ける。¥され/どもP119¥るざい/の¥さた/は¥なかり/けり。¥さる−ほど/に¥しん−だいなごん/は、¥さんもん/の¥さうどう/に¥よつ/て、¥わたくし/の¥しゆくい/を/ば¥しばらく¥おさへ/られ/けり。¥そも¥ないぎ¥したく/は¥さまざま/なり/しか/ども、¥ぎせい/ばかり/で、¥この¥むほん¥かなふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けれ/ば、¥さ/しも¥たのま/れ/たり/つる¥ただの−くらんど−ゆきつな、¥この¥こと¥むやく/なり/と¥おもふ¥こころ/や¥つき/に/けん、¥ゆぶくろ/の¥れう/に/とて¥おくら/れ/たり/ける¥ぬの=ども/を/ば、¥ひたたれ、¥かたびら/に¥たち−ぬは/せ、¥いへのこ、¥らうどう=ども/に¥きせ/つつ、¥め¥うち−しばだたい/て¥ゐ/たり/ける/が、¥つらつら¥へいけ/の¥はんじやう−する¥ありさま/を¥みる/に、¥たうじ¥たやすう¥かたぶけ−がたし。¥もし¥この¥こと¥もれ/ぬる/ほど/なら/ば、¥ゆきつな¥まづ¥うしなは/れ/な/んず。¥たにん/の¥くち/より¥もれ/ぬ¥さき/に¥かへりちう−し/て、¥いのち¥いか/う/ど¥おもふ¥こころ/ぞ¥つき/に/ける。¥
おなじき−にじふくにち/の¥さ−よ−ふけがた/に、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/に¥まゐつ/て、「¥ゆきつな/こそ¥まうす/べき¥こと¥あつ/て、¥これ/まで¥まゐつ/て¥さふらへ」/と、¥あんない/を¥いひ−いれ/たり/けれ/ば、¥にふだう、「¥つね/に/も¥まゐら/ぬ¥もの/の¥さんじ/たる/は¥なにごと/ぞ、¥あれ¥きけ」/とて、¥しゆめ/の−はんぐわん−もりくに/を¥いださ/れ/たり。「¥まつたく¥ひとづて/に/は¥まうす/まじき¥こと/なり」/と¥いふ¥あひだ、¥にふだう、¥さら/ば/とて、¥みづから¥ちうもん/の¥らう/に/ぞ¥いで/られ/たる。「¥よ/は¥はるか/に¥ふけ/ぬ/らん/に、¥いか/に¥ただいま¥なにごと/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥ひる/は¥ひとめ/の¥しげう¥さふらふ¥あひだ、¥よ/に¥まぎれ/て¥まゐつ/て¥さふらふ。¥この−ほど¥ゐん−ぢう/の¥ひとびと/の¥ひやうぐ/を¥ととのへ、¥ぐんびやう¥もよほさ/れ/し¥こと/を/ば、¥なに/と/か¥きこしめさ/れ/て¥さふらふ/やらん」。¥にふだう、「¥いさ/とよ、¥それ/は¥ほふわう/の¥やま¥せめ/らる/べきP120¥ご=けつこう/と/こそ¥きけ」/と、¥いと¥こと/も−な=げ/に/ぞ¥のたまひ/ける。¥ゆきつな¥ちかう¥より¥こごゑ/に¥なつ/て、「¥その¥ぎ/で/は¥さふらは/ず。¥いつかう¥たうけ/の¥おん=うへ/と/こそ¥うけたまはり¥さふらへ」。¥にふだう、「¥さて¥それ/を/ば¥ほふわう/も¥しろしめさ/れ/たる/か」。「¥しさい/に/や¥および¥さふらふ。¥しつじ/の−べつたう−なりちかの−きやう/の¥ぐんびやう¥もよほさ/れ¥さふらひ/し/に/も、¥ゐんぜん/とて/こそ¥めさ/れ/しか。¥やすより/が/と¥まうし/て、¥しゆんくわん/が¥かく¥まうし/て、¥さいくわう/が/と¥ふるまう/て」/など、¥あり/の−まま/に/は¥さし−すぎ/て¥いひ−ちらし、¥わが−み/は¥いとま¥まうす/とて¥いで/けれ/ば、¥その−とき¥にふだう¥おほ−ごゑ/を¥もつて¥さぶらひ=ども¥よび−ののしり¥たまふ¥こと¥おびたたし。¥ゆきつな¥なまじひ/なる¥こと¥まうし−いで/て、¥しようにん/に/や¥ひかれ/んず/らん/と¥おそろし−さ/に、¥ひと/も¥おは/ぬ/に¥とりばかま−し、¥おほの/に¥ひ/を¥はなち/たる¥ここち−し/て、¥いそぎ¥もんぐわい/へ/ぞ¥にげ−いで/ける。¥その−のち¥にふだう、¥ちくごの−かみ−さだよし/を¥めし/て、「¥たうけ¥かたぶけ/う/ど¥する¥むほん/の¥ともがら/こそ、¥きやう−ぢう/に¥みちみち/たん/なれ。¥いそぎ¥いちもん/の¥ひとびと/に/も¥ふれ¥まうせ。¥さぶらひ=ども¥もよほせ」/と¥のたまへ/ば、¥はせ−まはつ/て¥ひろう−す。¥うだいしやう−むねもり、¥さんみ/の−ちうじやう−とももり、¥とう/の−ちうじやう−しげひら、¥さま/の−かみ−ゆきもり¥いげ/の¥いちもん/の¥ひとびと、¥かつちう¥きうせん/を¥たいし/て¥さし−つどふ。¥その−ほか¥さぶらひ=ども/も¥うんか/の/ごとく/に¥はせ−あつまつ/て、¥その¥よ/の¥うち/に¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/に/は、¥つはもの¥ろくしちせんき/も¥ある/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥
あくれ/ば¥ろくぐわつ−ひとひのひ/なり。¥いまだ¥くらかり/ける/に、¥にふだう−しやうこく¥あべの−すけなり/を¥めし/て、「¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐり、¥だいぜん/の−だいぶ−のぶなり/を¥よび−いだい/て、¥きつと¥まうさ/んずる¥こと/は/よな、P121¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ、¥きんじゆ/の¥ひとびと、¥この¥いちもん¥ほろぼし/て¥てんが¥みだら/ん/と¥する¥むほん/の¥くはだて¥あり。¥いちいち/に¥からめ−とつ/て、¥たづね¥さた¥つかまつり¥さふらふ/べし。¥それ/を/ば¥きみ/も¥しろしめさ/る/まじう¥さふらふ/と¥まうす/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥すけなり¥いそぎ¥ゐん/の−ごしよ/に¥はせ−まゐり、¥のぶなり/を¥まねい/て¥この¥こと¥まうす/に、¥いろ/を¥うしなふ。¥やがて¥おん=まへ/へ¥まゐり/て¥この¥よし¥かく/と¥そうもん¥まうし/けれ/ば、¥ほふわう「¥ああ¥はや、¥これ=ら/が¥ないない¥はかり/し¥こと/の¥もれ−きこえ/ける/に/こそ。¥さる/にて/も、¥こ/は¥なにごと/ぞ」/と/ばかり¥おほせ/られ/て、¥ふんみやう/の¥おん=ぺんじ/も¥なかり/けり。¥すけなり¥いそぎ¥はしり−かへつ/て、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、「¥され/ば/こそ¥ゆきつな/は¥まこと/を¥まうし/たれ。¥ゆきつな¥この¥こと¥つげ−しらせ/ず/は、¥じやうかい¥あんをん/にて/やは¥ある/べき」/とて、¥ちくごの−かみ−さだよし、¥ひだの−かみ−かげいへ/を¥めし/て、¥たうけ¥かたむけ/う/ど¥する¥むほん/の¥ともがら、¥いちいち/に¥からめ−とる/べき¥よし¥げぢ−せ/らる。¥よつて¥にひやく−よ−き、¥さんびやく−よ−き、¥あそこ−ここ/に¥おし−よせ−おし−よせ¥からめ−とる。¥にふだう−しやうこく¥まづ¥ざつしき/を¥もつて、¥なかのみかど−からすまる/の¥しん−だいなごん/の¥しゆくしよ/へ、「¥きつと¥たち−より¥たまへ。¥まうし−あはす/べき¥こと/の¥さふらふ¥」/と、¥のたまひ−つかはさ/れ/けれ/ば、¥だいなごん¥わが¥み/の−うへ/と/は¥つゆ−しら/ず、¥あはれ、¥これ/は¥ほふわう/の¥やま¥せめ/らる/べき¥ご=けつこう/の¥ある/を、¥まうし−なだめ/られ/んずる/に/こそ。¥おん=いきどほり¥ふか=げ/なり。¥いか/に/も¥かなふ/まじき/ものを」/とて、¥ないきよ=げ/なる¥ほうい¥たをやか/に¥きなし、¥あざやか/なる¥くるま/に¥のり、¥さぶらひ¥さんしにん¥めし−ぐし/て、¥ざつしき¥うしかひ/に¥いたる/まで、¥つね/より/も¥なほ¥ひき−つくろは/れ/たり。¥そも¥さいご/と/はP122¥のち/に/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。¥
にしはちでう¥ちかう¥なつ/て¥み¥たまへ/ば、¥しごちやう/に¥ぐんびやう=ども¥みちみち/たり。「¥あな¥おびたたし、¥こ/は¥なにごと/なる/らん/と、¥むね¥うち−さわが/れ/けれ/ども、¥もんぜん/にて¥くるま/より¥おり、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いつ/て¥み¥たまへ/ば、¥うち/に/も¥つはもの=ども¥ひま−はざま/も¥なう/ぞ¥なみ−ゐ/たる。¥ちうもん/の¥くち/に/は¥おそろし=げ/なる¥もの=ども、¥あまた¥まち−うけ¥たてまつり、¥だいなごん/を¥とつ/て¥ひつぱり、「¥いましむ/べう¥さふらふ/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう¥れんちう/より¥み−いだし¥たまひ/て、「¥ある/べう/も−なし」/と¥のたまへ/ば、¥さぶらひ=ども¥じふしごにん、¥ぜんご¥さう/に¥たち−かこみ、¥だいなごん/の¥て/を¥とつ/て、¥えん/の¥うへ/へ¥ひき−あげ¥たてまつり、¥ひとま/なる¥ところ/に¥おし−こめ¥たてまつ/てげり。¥だいなごん/は¥ゆめ/の¥ここち−し/て、¥つやつや¥もの/も¥おぼえ¥たまは/ず。¥とも/に¥あり/つる¥さぶらひ=ども、¥おほぜい/に¥おし−へだて/られ/て、¥ちりぢり/に¥なり/ぬ。¥ざふしき¥うしかひ¥いろ/を¥うしなひ、¥うし¥くるま/を¥すて/て、¥みな¥にげ−さり/ぬ。¥さる−ほど/に、¥あふみ−ちうじやう−にふだう−れんじやう、¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ、¥やましろの−かみ−もとかぬ、¥しきぶ/の−たいふ−まさつな、¥へい−はうぐわん−やすより、¥そう−はうぐわん−のぶふさ、¥しん−へい−はうぐわん−すけゆき/も、¥とらはれ/て/こそ¥いで−き/たれ。¥さいくわう−ほふし¥この¥よし/を¥きい/て、¥わが¥み/の−うへ/と/や¥おもひ/けん、¥むち/を¥うつ/て¥いそぎ¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐる。¥ろくはら/の¥つはもの=ども、¥みち/にて¥ゆき−あひ、「¥にしはちでう=どの/より¥めさ/るる/ぞ。¥きつと¥まゐれ」/と¥いひ/けれ/ば、「¥これ/は¥そうす/べき¥こと¥あつ/て、¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐる。¥やがて/こそ¥かへり−まゐら/め」/と¥いひ/けれ/ば、「¥につくい¥にふだう=め/が、¥なにごと/を/かP123¥そうす/べかん/なる/ぞ」/とて、¥しや¥むま/より¥とつ/て¥ひき−おとし、¥ちう/に¥くくつ/て¥にしはちでう=どの/へ¥さげ/て¥まゐる。¥ひ/の¥はじめ/より¥ごんげん¥よりき/の¥もの/なり/けれ/ば、¥こと/に¥つよう¥いましめ/て、¥おん=つぼ/の−うち/に/ぞ¥ひつ−すゑ/たる。¥にふだう−しやうこく¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、¥しばし¥にらまへ、「¥あな¥にく/や、¥たうけ¥かたぶけ/う/ど¥する¥むほん/の¥やつ/が¥なれ/る¥すがた/よ。¥しやつ¥ここ/へ¥ひき−よせよ」/とて、¥えん/の¥きは/へ¥ひき−よせ/させ、¥もの¥はき/ながら、¥しや¥つら/を¥むずむず/と/ぞ¥ふま/れ/ける。「¥もと/より¥おのれ=ら/が¥やう/なる¥げらふ/の¥はて/を、¥きみ/の¥めし−つかはせ¥たまひ/て、¥なさ/る/まじき¥くわんしよく/を¥なし¥たび、¥ふし¥とも/に¥くわぶん/の¥ふるまひ/を¥する/と¥み/し/に¥あはせ/て、¥あやまた/ぬ¥てんだい−ざす¥るざい/に¥まうし−おこなひ、¥あまつさへ¥たうけ¥かたぶけ/う/ど¥する¥むほん/の¥ともがら/に¥くみ−し/てげる/なり。¥あり/の−まま/に¥まうせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥
さいくわう¥もと/より¥すぐれ/たる¥だい−かう/の−もの/なり/けれ/ば、¥ちと/も¥いろ/も¥へん−ぜ/ず、¥わろびれ/たる¥けしき/も¥なく、¥ゐ−なほり、¥あざ−わらつ/て¥まうし/ける/は、「¥ゐん−ぢう/に¥ちかう¥めし−つかは/るる¥み/なれ/ば、¥しつじ/の−べつたう−なりちかの−きやう/の¥ぐんびやう¥もよほさ/れ¥さふらふ¥こと/に/も、¥くみ−せ/ず/と/は¥まうす/べき¥やう¥なし。¥それ/は¥くみ−し/たり。¥ただし、¥みみ/に¥あたる¥こと/を/も¥のたまふ/ものかな。¥たにん/の¥まへ/は¥しら/ず、¥さいくわう/が¥きか/んずる¥ところ/にて/は、¥さやう/の¥こと/を/ば、¥え/こそ¥のたまふ/まじけれ。¥そもそも¥ご=へん/は、¥こ=ぎやうぶきやう−ただもり/の¥ちやくし/にて¥おはせ/し/が、¥じふしご/まで/は¥しゆつし/も¥し¥たまは/ず。¥こ=なかのみかど/の−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう/の¥へん/に¥たち−いり¥たまひ/し/を/ば、¥きやう−わらんべ/は¥れい/の¥たかへいだ/と/こそ¥いひ/しか。¥しかる/を¥ほうえん/の¥ころ、¥かいぞく/の¥ちやうぼん¥さんじふ−よ−にん¥からめ−しん−ぜ/られ/たり/しP124¥けんじやう/に¥し−ほん−し/て¥しゐ/の−ひやうゑ/の−すけ/と¥まうし/し/を/だに、¥ひと¥みな¥くわぶん/と/こそ¥まうし−あは/れ/しか。¥てんじやう/の¥まじはり/を/だに¥きらは/れ/し¥ひと/の¥しそん/にて、¥いま¥だいじやうだいじん/まで¥なり−あがつ/たる/や¥くわぶん/なる/らん。¥もと/より¥さぶらひ/ほど/の¥もの/の、¥じゆりやう¥けんびゐし/に¥いたる¥こと、¥せんれい、¥ほうれい¥なき/に/しも¥あら/ず。¥なじか/は¥くわぶん/なる/べき」/と、¥はばかる¥ところ/も¥なう¥いひ−ちらし/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥あまり/に¥はら/を¥すゑ−かね/て、¥しばし/は¥もの/を/も¥のたまは/ず。¥やや¥あつ/て¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥しやつ/が¥くび¥さう−なう¥きる/な。¥よくよく¥きうもん−し/て¥こと/の¥しさい/を¥たづね−とひ、¥その−のち¥かはら/へ¥ひき−いだい/て、¥かうべ/を¥はねよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥まつうらの−たらう−しげとし¥うけたまはつ/て、¥てあし/を¥はさみ、¥さまざま/に/して¥いため−とふ。¥さいくわう¥もと/より¥あらそは/ざり/ける¥うへ、¥がうもん/は¥きびしかり/けり。¥はくじやう¥しごまい/に¥きせ/られ/て、¥その−のち¥くち/を¥さけ/とて、¥くち/を¥さか/れ、¥ごでう−にしのしゆしやか/に/して、¥つひに¥きら/れ/に/けり。¥ちやくし¥かがの−かみ−もろたか/は¥けつくわん−ぜ/られ/て、¥をはり/の¥ゐどた/へ¥ながさ/れ/たり/し/を、¥おなじき−くに/の¥ぢうにん¥をぐまの−ぐんじ−これすゑ/に¥おほせ/て¥うた/せ/らる。¥じなん¥こんどう−はんぐわん−もろつね/を/ば、¥ごく/より¥ひき−いだい/て、¥ちうせ/らる。¥その¥おとと¥さゑもん/の−じよう−もろひら、¥らうどう¥さん−にん/を/も¥おなじう¥かうべ/を¥はね/られ/けり。¥これ=ら/は¥みな¥いふ−かひ−なき¥もの/の¥ひいで/て、¥いろふ/まじき¥こと/を/のみ¥いろひ、¥あやまた/ぬ¥てんだい−ざす¥るざい/に¥まうし−おこなひ、¥くわはう/や¥つき/に/けん、¥さんわう−だいし/の¥しんばつ¥みやうばつ/を¥たちどころ/に¥かうむつ/て、¥かかる¥うき−め/に¥あへ/り/けり。P125
「こげうくん」(『こげうくん』)S0204¥しん−だいなごん/は¥ひとま/なる¥ところ/に¥おし−こめ/られ/て、¥あせみづ/に¥なり/つつ、「¥あはれ¥これ/は¥ひごろ/の¥あらましごと/の、¥もれ−きこえ/ける/に/こそ。¥たれ¥もらし/ぬ/らん。¥さだめて¥ほくめん/の¥ともがら/の¥なか/に/ぞ¥ある/らん」/なんど、¥おもは/じ¥こと¥なう¥あんじ−つづけ/て¥おはし/ける¥ところ/に、¥うしろ/より¥あしおと/の¥たからか/に¥し/けれ/ば、¥すは¥ただいま¥わが¥いのち¥うしなは/ん/とて、¥もののふ=ども/の¥まゐる/に/こそ/と¥おもは/れ/けれ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥にふだう¥いたじき¥たからか/に¥ふみ−ならし、¥だいなごん/の¥おはし/ける¥うしろ/の¥しやうじ/を、¥さつと¥ひき−あけ/て¥いで/られ/たり。¥そけん/の¥ころも/の¥みじからか/なる/に、¥しろき¥おほくち¥ふみ−くくみ、¥ひじりづか/の¥かたな¥おし−くつろげ/て¥さす¥まま/に、¥もつて/の−ほか/に¥いかれ/る¥けしき/にて、¥だいなごん/を¥しばし¥にらまへ/て、「¥そもそも¥ご=へん/は、¥へいぢ/に/も¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥だいふ/が¥み/に¥かへ/て¥まうし−うけ、¥くび/を¥つぎ¥たてまつ/し/は¥いか/に。¥しかる/に¥その¥おん/を¥わすれ/て、¥なん/の¥ゐこん¥あつ/て/か、¥たうけ¥かたぶけ/う/ど/は¥し¥たまふ/なる/ぞ。¥おん/を¥しる/を¥もつて¥ひと/と/は¥いふ/ぞ。¥おん/を¥しら/ざる/を/ば¥ちくしやう/と/こそ¥いへ。¥され/ども¥たうけ/の¥うんめい¥いまだ¥つき/ざる/に¥よつ/て、¥これ/まで/は¥むかへ/たん/なり。¥ひごろ/の¥あらまし/の¥しだい、¥ぢき/に¥うけたまはら/ん」/と¥のたまへ/ば、¥だいなごん、「¥まつたく¥さる−こと¥さふらは/ず。¥いかさま/に/もP126¥ひと/の¥ざんげん/にて/ぞ¥さふらふ/らん。¥よくよく¥おん=たづね¥さふらふ/べし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう¥いは/せ/も¥はて/ず、「¥ひと/や¥ある、¥ひと/や¥ある」/と¥めさ/れ/けれ/ば、¥さだよし¥つと¥まゐり/たり。「¥
さいくわう=め/が¥はくじやう¥とつ/て¥まゐれ」/と¥のたまへ/ば、¥もつて¥まゐり/たり。¥にふだう¥これ/を¥とつ/て、¥おし−かへし−おし−かへし¥にさんべん¥たからか/に¥よみ−きか/せ、「¥あな¥にくや、¥この¥うへ/を/ば¥なに/と/か¥ちん−ず/べかん/なる/ぞ」/とて、¥だいなごん/の¥かほ/に¥さつと¥なげ−かけ、¥しやうじ/を¥ちやうど¥ひき−たて/て¥いで/られ/ける/が、¥なほ¥はら/を¥すゑ−かね/て、¥つねとほ¥かねやす/と¥めす。¥なんばの−じらう、¥せのをの−たらう¥まゐり/たり。「¥あの¥をのこ¥とつ/て、¥には/へ¥ひき−おとせ」/と¥のたまへ/ども、¥これ=ら¥さう−なう/も¥し¥たてまつら/ず、「¥こまつ=どの/の¥ご=きしよく、¥いかが¥さふらは/んずる/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、「¥よしよし、¥おのれ=ら/は、¥だいふ/が¥めい/を¥おもんじ/て、¥にふだう/が¥おほせ/を/ば¥かるう¥し/ける¥ござんなれ。¥このうへ/は¥ちから¥およば/ず」/と¥のたまへ/ば、¥これ=ら¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、¥たち−あがり、¥だいなごん/の¥さう/の¥て/を¥とつ/て、¥には/へ¥ひき−おとし¥たてまつる。¥その−とき¥にふだう¥ここち−よ=げ/にて、「¥とつ/て¥ふせ/て¥をめか/せよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ににん/の¥もの=ども、¥だいなごん/の¥さう/の¥みみ/に¥くち/を¥あて/て、「¥いかさま/に/も¥おん=こゑ/の¥いづ/べう¥さふらふ」/と、¥ささやい/て¥ひき−ふせ¥たてまつれ/ば、¥ふたこゑ¥みこゑ/ぞ¥をめか/れ/ける。¥その¥てい、¥めいど/にて、¥しやば−せかい/の¥ざいにん/を、¥あるひは¥ごふ/の¥はかり/に¥かけ、¥あるひは¥じやうはり/の¥かがみ/に¥ひき−むけ/て、¥つみ/の¥きやう−ぢう/に¥まかせ/つつ、¥あはう−らせつ/が¥かしやく−す/らん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。P127¥せうはん¥とらはれ−とらはれ/て、¥かんはう¥にらぎす−さ/れ/たり。¥てうそ¥りく/を¥うけ、¥しうぎ¥つみ−せ/らる。¥たとへば、¥せうが、¥はんくわい、¥かんしん、¥はうゑつ、¥これ=ら/は¥みな¥かうそ/の¥ちうしん/たり/しか/ども、¥せうじん/の¥ざん/に¥よつ/て、¥くわはい/の¥はぢ/を¥うく/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。¥しん−だいなごん/は、¥わが−み/の¥かく¥なる/に¥つけ/て/も、¥しそく¥たんばの−せうしやう−なりつね¥いげ、¥をさなき¥もの=ども/の¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あふ/らん/と、¥おもひ−やる/に/も¥おぼつかなし。¥さ/ばかり¥あつき¥ろくぐわつ/に、¥しやうぞく/を/だに/も¥くつろげ/られ/ず、¥あつ−さ/も¥たへ−がたけれ/ば、¥むね/も¥せき−あぐる¥ここち−し/て、¥あせ/も¥なみだ/も¥あらそひ/て/ぞ¥ながれ/ける。¥さり/とも¥こまつ=どの/は¥おぼしめし¥はなた/じ/ものを/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥たれ/して¥まうす/べし/と/も¥おぼえ¥たまは/ず。¥
こまつの−おとど/は、¥れい/の¥ぜんあく/に¥さわぎ¥たまは/ぬ¥ひと/にて¥おはし/けれ/ば、¥はるか/に¥ひ¥たけ/て¥のち、¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり/を、¥くるま/の¥しり/に¥のせ/つつ、¥ゑふ¥しごにん、¥ずゐじん¥にさん−にん¥めし−ぐし/て、¥ぐんびやう=ども/を/ば¥いち−にん/も¥ぐせ/られ/ず、¥まこと/に¥おほやう=げ/にて¥おはし/たれ/ば、¥にふだう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥いちもん/の¥ひとびと、¥みな¥おもは/ず=げ/に/ぞ¥み¥たまひ/ける。¥おとど¥ちうもん/の¥くち/にて、¥おん=くるま/より¥おり¥たまふ¥ところ/へ、¥さだよし¥つと¥まゐつ/て、「¥など¥これ−ほど/の¥おん=だいじ/に、¥ぐんびやう/を/ば¥いち−にん/も¥めし−ぐせ/られ¥さふらは/ぬ/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど、「¥だいじ/と/は¥てんが/の¥こと/を/こそ¥いへ。¥かやう/の¥わたくしごと/を、¥だいじ/と¥いふ¥やう/や¥ある」/と¥のたまへ/ば、¥ひやうぢやう/を¥たい−し/たり/ける¥つはもの=ども、¥みな¥そぞろい/て/ぞ¥みえ/たり/ける。¥その−のち¥おとど、¥だいなごん/を/ば¥いづく/に¥おき¥たてまつ/たる/やらん/と、¥ここ−かしこ/を¥ひき−あけ−ひき−あけP128¥み¥たまふ/に、¥ある¥しやうじ/の¥うへ/に、¥くもで¥ゆう/たる¥ところ¥あり。¥ここ/やらん/とて¥あけ/られ/たれ/ば、¥だいなごん¥おはし/けり。¥なみだ/に¥むせび¥うつぶし/て、¥め/も¥み−あげ¥たまは/ず。「¥いか/に/や」/と¥のたまへ/ば、¥その−とき¥み−つけ¥たてまつ/て、¥うれし=げ/に¥おもは/れ/たる¥けしき、¥ぢごく/にて¥ざいにん=ども/が、¥ぢざう−ぼさつ/を¥み¥たてまつる/らん/も、¥かく/や/と¥おぼえ/て¥あはれ/なり。「¥なにごと/にて¥さふらふ/やらん。¥けさ/より¥かかる¥うき−め/に¥あひ¥さふらふ。¥さて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥さり/とも/と/こそ¥ふかう¥たのみ¥たてまつ/て¥さふらへ。¥へいぢ/に/も¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥ご=おん/を¥もつて¥くび/を¥つが/れ¥まゐらせ、¥あまつさへ¥じやう−にゐ/の−だいなごん/まで¥へ−あがつ/て、¥とし¥すでに¥しじふ/に¥あまり¥さふらふ¥ご=おん/こそ、¥しやうじやう−せせ/に/も¥はうじ¥つくし−がたう¥さふらへ/ども、¥こんど/も¥また¥かひ−なき¥いのち/を¥たすけ/させ¥おはしませ。¥さ/だに/も¥さふらは/ば、¥しゆつけ−にふだう¥つかまつり、¥いか/なら/ん¥かた−やまざと/に/も¥こもり−ゐ/て、¥ひとすぢ/に¥ごせ−ぼだい/の¥つとめ/を¥いとなみ¥さふらは/ん」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥
おとど、「¥さ¥さふらへ/ば/とて、¥おん=いのち¥うしなひ¥たてまつる/まで/の¥こと/は¥よも¥さふらは/じ。¥たとひ¥さ¥さふらふ/とも、¥しげもり¥かう/て¥さふらへ/ば、¥おん=いのち/に/は¥かはり¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/とて、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、「¥あの¥だいなごん¥うしなは/れ/ん¥こと/は、¥よくよく¥ご=しゆゐ¥さふらふ/べし。¥その¥ゆゑ/は¥せんぞ¥しゆり/の−だいぶ−あきすゑ、¥しらかはのゐん/に¥めし−つかは/れ¥まゐらせ/し/より¥この−かた、¥いへ/に¥その¥れい¥なき¥じやう−にゐ/の−だいなごん/に¥へ−あがつ/て、¥あまつさへ¥たうじ、¥きみ¥ぶさう/の¥おん=いとほしみ、¥かうべ/を¥はね/られ/ん¥こと¥しかる/べう/も¥さふらは/ず(す)。¥ただ¥みやこ/の¥ほか/へ¥いださ/れ/たら/ん/に、P129¥こと¥たり¥さふらひ/な/んず。¥
きたのの−てんじん/は、¥しへいの−おとど/の¥ざんそう/にて、¥うき−な/を¥さいかい/の¥なみ/に¥ながし、¥にしのみやの−だいじん/は、¥ただの−まんぢう/の¥ざんげん/に¥よつ/て、¥うらみ/を¥せんやう/の¥くも/に¥よす。¥おのおの¥むじつ/なり/しか/ども、¥るざい−せ/られ¥たまひ/に/き。¥これ¥みな¥えんぎの−せいだい、¥あんわの−みかど/の¥おん=ひがこと/と/ぞ¥まうし−つたへ/たる。¥しやうこ¥なほ¥かく/の/ごとし。¥いはんや¥まつだい/に¥おい/て/を/や。¥けんわう¥なほ¥おん=あやまり¥あり、¥いはんや¥ぼんにん/に¥おい/て/を/や。¥すでに¥めし−おか/れ/ぬる¥うへ/は、¥いそぎ¥うしなは/れ/ず/とも、¥なに/の¥おそれ/か¥さふらふ/べき。¥けい/の¥うたがはしき/を/ば¥かろんぜよ、¥こう/の¥うたがはしき/を/ば¥おもんぜよ/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥こと−あたらしき¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥しげもり¥かの¥だいなごん/が¥いもうと/に¥あひ−ぐし/て¥さふらふ。¥これもり¥また¥むこ/なり。¥かやう/に¥したしう¥まかり−なつ/て¥さふらへ/ば、¥まうす/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らん。¥いつかう¥その¥ぎ/で/は¥さふらは/ず。¥ただ¥きみ/の¥ため、¥くに/の¥ため、¥よ/の¥ため、¥いへ/の¥ため/の¥こと/を¥おもつ/て¥まうし¥さふらふ。¥ひととせ¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/が¥しつけん/の¥とき/に¥あひ−あたつ/て、¥わが¥てう/に/は¥さがの−くわうてい/の¥おん=とき、¥うひやうゑ/の−かみ−ふぢはらの−なかなり/を¥ちうせ/られ/て/より¥この−かた、¥ほうげん/まで/は、¥きみ¥にじふごだい/の¥あひだ、¥おこなは/れ/ざり/し¥しざい/を、¥はじめて¥とり−おこなひ、¥うぢの−あく−さふ/の¥しがい/を¥ほり−おこい/て、¥じつけん−せ/られ/たり/し¥こと/なんど/まで/は、¥あまり/なる¥おん=まつりごと/と/こそ¥ぞんじ¥さふらへ。¥され/ば¥いにしへ/の¥ひと/も、¥しざい/を¥おこなへ/ば、¥かいだい/に¥むほん/の¥ともがら¥たえ/ず/と/こそ¥まうし−つたへ/て¥さふらへ。¥この¥ことば/に¥つい/て、¥なか¥にねん¥あつ/て、¥へいぢ/に¥また¥よ¥みだれ/て、¥しんせい/が¥うづま/れ/たり/し/を¥ほり−おこし、¥かうべ/を¥はね/て¥おほぢ/を¥わたさ/れ¥さふらひ/き。¥ほうげん/に¥まうし−おこなひ/し¥こと/の、¥いく−ほど/も¥なく/て、¥はやP130¥み/の−うへ/に¥むくは/れ/に/き/と¥おもへ/ば、¥おそろしう/こそ¥さふらへ。¥これ/は¥させる¥てうてき/にて/も¥さふらは/ず、¥かたがた¥おそれ¥ある/べし。¥ご=えいぐわ¥のこる¥ところ¥なけれ/ば、¥おぼしめさ/るる¥こと/は¥ある/まじけれ/ども、¥しし−そんぞん/まで、¥はんじやう/こそ¥あら/まほしう/は¥さふらへ。¥され/ば¥ふそ/の¥ぜんあく/は、¥かならず¥しそん/に¥およぶ/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥しやくぜん/の¥いへ/に/は¥よけい¥あり、¥せきあく/の¥かど/に/は¥よあう¥とどまる/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥いかさま/に/も¥こんや¥かうべ/を¥はね/られ/ん¥こと/は、¥しかる/べう/も¥さふらは/ず」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にふだう¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥しざい/を/ば¥おもひ−とどまり¥たまひ/けり。¥その−のち¥おとど¥ちうもん/に¥いで/て、¥さぶらひ=ども/に¥のたまひ/ける/は、「¥おほせ/なれ/ば/とて、¥あの¥だいなごん¥うしなは/ん¥こと、¥さう−なう¥ある/べから/ず。¥にふだう¥はら/の¥たち/の¥まま/に、¥もの−さわがしき¥こと¥し¥たまひ/て、¥のち/に/は¥かならず¥くやみ¥たまふ/べし。¥ひがごと−し/て¥われ¥うらむ/な」/と¥のたまへ/ば、¥ひやうぢやう/を¥たい−し/たり/ける¥つはもの=ども、¥みな¥した/を¥ふるつ/て¥おそれ−をののく。「¥さて/も¥けさ¥つねとほ¥かねやす/が、¥あの¥だいなごん/に¥なさけ−なう¥あたり¥たてまつ/たる¥こと/こそ、¥かへすがへす/も¥きくわい/なれ。¥など¥しげもり/が¥かへり−きか/んずる¥ところ/を/ば、¥はばから/ざり/ける/ぞ。¥かたゐなか/の¥さぶらひ/は、¥みな¥かかる/ぞ/とよ」/と¥のたまへ/ば、¥なんば/も¥せのを/も、¥とも/に¥おそれ−いつ/たり/けり。¥おとど/は¥かやう/に¥のたまひ/て、¥こまつ=どの/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥
さる−ほど/に¥だいなごん/の¥さむらひ=ども、¥いそぎ¥なかのみかど−からすまる/の¥しゆくしよ/に¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた¥いげ/の¥にようばう=たち、¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。「¥せうしやう=どの/をP131¥はじめ¥まゐらせ/て、¥をさなき¥ひとびと/も、¥みな¥とら/れ/させ¥たまふ/べき¥よし¥うけたまはり/て¥さふらへ。¥いそぎ¥いづかた/へ/も¥しのば/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた、「¥いま/は¥これ−ほど/に¥なつ/て、¥のこり−とどまる¥み/とて/も、¥あんをん/にて¥なに/に/かは¥せ/ん/なれ/ば、¥ただ¥おなじ¥ひとよ/の¥つゆ/と/も¥きえ/ん¥こと/こそ¥ほい/なれ。¥さて/も¥けさ/を¥かぎり/と¥しら/ざり/つる¥こと/の¥かなし−さ/よ」/とて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥すでに¥ぶし=ども/の¥ちかづく¥よし¥きこえ/しか/ば、¥かくて¥はぢがましう、¥うたてき¥め/を¥み/ん/も、¥さすが/なれ/ば/とて、¥とを/に¥なり¥たまふ¥によし、¥はつさい/の¥なんし、¥ひとつ¥くるま/に¥とり−のつ/て、¥いづち/を¥さす/と/も¥なく¥やり−いだす。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥おほみや/を¥のぼり/に、¥きたやま/の¥へん¥うんりんゐん/へ/ぞ¥おはし/ける。¥その¥へん/なる¥そうばう/に¥おろし−おき¥たてまつり、¥おくり/の¥もの=ども/は、¥みみ/の¥すて−がた−さ/に、¥みな¥いとま¥まうし/て¥かへり/に/けり。¥いま/は¥いとけなき¥ひとびと/ばかり¥のこり−ゐ/て、¥また¥こと−とふ¥ひと/も¥なく/して¥おはし/ける¥きたのかた/の¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥くれ−ゆく¥かげ/を¥み¥たまふ/に¥つけ/て/も、¥だいなごん/の¥つゆ/の−いのち、¥この¥ゆふべ/を¥かぎり/なり/と、¥おもひ−やる/に/も¥きえぬ/べし。¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥おほかり/けれ/ども、¥もの/を/だに¥とり−したため/ず、¥かど/を/だに¥おし/も¥たて/ず。¥むまや/に/は¥むま=ども¥おほく¥なみ−たち/たれ/ども、¥くさ−かふ¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥よ¥あくれ/ば¥むま¥くるま¥かど/に¥たち−なみ、¥ひんかく¥ざ/に¥つらなつ/て、¥あそび−たはぶれ¥まひ−をどり、¥よ/を¥よ/と/も¥し¥たまは/ず。¥ちかき¥あたり/の¥もの=ども/は、¥もの/を/だに¥たかく¥いは/ず、¥おぢ−おそれ/て/こそ¥きのふ/まで/も¥あり/し/に、¥よ/の¥ま/に¥かはる¥ありさま、¥じやうしや−ひつすゐ/のP132¥ことわり/は¥め/の¥まへ/に/こそ¥あらはれ/たれ。「¥たのしみ¥つき/て¥かなしみ¥きたる」/と¥かか/れ/たる、¥かうしやうこう/の¥ふで/の¥あと、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。¥
「せうしやうこひうけ」(『せうしやうこひうけ』)S0205¥たんばの−せうしやう−なりつね/は、¥その¥よ/しも¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/に¥うへぶし−し/て、¥いまだ¥いで/られ/ざり/ける/に、¥だいなごん/の¥さぶらひ=ども、¥いそぎ¥ゐん/の−ごしよ/に¥はせ−まゐり、¥せうしやう=どの/を¥よび−いだし¥たてまつり、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥せうしやう、「¥これ−ほど/の¥こと、¥など/や¥さいしやう/の¥もと/より、¥いま/まで¥つげ−しらせ/ざる/らん」/と¥のたまひ/も¥はて/ぬ/に、¥さいしやう=どの/より/とて¥お=つかひ¥あり。¥この¥さいしやう/と¥まうす/は、¥にふだう−しやうこく/の¥おん=おとと、¥しゆくしよ/は¥ろくはら/の¥そうもん/の¥わき/に¥おはし/けれ/ば、¥かどわきの−さいしやう/と/ぞ¥まうし/ける。¥たんばの−せうしやう/に/は¥しうと/なり。「¥なにごと/にて¥さふらふ/やらん。けさ¥にしはちでう/の−てい/より、¥きつと¥ぐし¥たてまつれ/と¥さふらふ」/と、¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥せうしやう¥この¥こと¥こころ−え/て、¥きんじゆ/の¥にようばう=たち/を¥よび−いだし¥まゐらせ/て、「¥ゆふべ¥なに/と−なう¥ものさわがしう¥さふらひ/し/を、¥れい/の¥やまぼふし/の¥くだる/か/なんど、¥よそ/に¥おもひ/て¥さふらへ/ば、¥はや¥なりつね/が¥み/の−うへ/に¥まかり−なつ/て¥さふらひ/ける/ぞ/や。¥ゆふさり¥だいなごん¥きら/る/べう¥さふらふ/なれ/ば、¥なりつね/とて/も¥どうざい/にて/ぞ¥さふらは/んず/らん。¥いま−いちど¥ごぜん/へ¥さん−じ/て、P133¥きみ/を/も¥み¥まゐらせ/たく¥さふらへ/ども、¥かかる¥み/に¥まかり−なつ/て¥さふらへ/ば、¥はばかり−ぞんじ¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようばう=たち¥いそぎ¥ごぜん/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥けさ/の¥ぜんもん/の¥つかひ/に¥はや¥おん=こころえ¥あつ/て、「¥これ=ら/が¥ないない¥はかり/し¥こと/の¥もれ−きこえ/ける/に/こそ。¥さる/にて/も¥いま−いちど¥これ/へ」/と¥ご=きしよく¥あり/けれ/ば、¥せうしやう¥ごぜん/へ¥まゐら/れ/たり。¥ほふわう¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまひ/て、¥おほせ−くださ/るる¥むね/も¥なく、¥せうしやう/も¥また¥なみだ/に¥むせん/で、¥まうし−あげ/らるる¥こと/も¥なし。¥やや¥あつ/て¥せうしやう¥ごぜん/を¥まかり−いで/られ/ける/に、¥ほふわう¥うしろ/を¥はるか/に¥ごらんじ−おくつ/て、「¥ただ¥まつだい/こそ¥こころ−うけれ。¥これ/が¥かぎり/にて¥また/も¥ごらんぜ/ぬ¥こと/も/や¥あら/んず/らん」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥せうしやう¥ごぜん/を¥まかり−いで/られ/ける/に、¥ゐん−ぢう/の¥ひとびと、¥つぼね/の¥にようばう=たち/に¥いたる/まで、¥なごり/を¥をしみ、¥たもと/に¥すがり、¥なみだ/を¥ながし、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥
しうと/の¥さいしやう/の¥もと/へ¥いで/られ/たれ/ば、¥きたのかた/は¥ちかう¥さん−す/べき¥ひと/にて¥おはし/ける/が、¥けさ/より¥この¥なげき/を¥うち−そへ/て、¥すでに¥いのち/も¥きえ−いる¥ここち/ぞ¥せ/られ/ける。¥せうしやう¥ごしよ/を¥まかり−いで/られ/ける/より、¥ながるる¥なみだ¥つきせ/ぬ/に、¥いま¥きたのかた/の¥ありさま/を¥み¥たまひ/て、¥いとど¥せんかた−な=げ/に/ぞ¥みえ/られ/ける。¥せうしやう/の¥めのと/に¥ろくでう/と¥いふ¥をんな¥あり。「¥われ¥おん=ち/に¥まゐり−はじめ¥さぶらひ/て、¥きみ/を¥ち/の¥なか/より¥いだき−あげ¥たてまつり、¥おほし−たて¥まゐらせ/し/より¥この−かた、¥つきひ/の¥かさなる/に¥したがつ/て、¥わが−み/の¥とし/の¥ゆく/を/ば¥なげか/ず/して、P134¥ひとへに¥きみ/の¥おとなしう¥なら/せ¥たまふ¥こと/を/のみ¥よろこび、¥あからさま/と/は¥おもへ/ども、¥ことし/は¥にじふいちねん、¥かたとき/も¥はなれ¥まゐらせ¥さぶらは/ず。¥ゐん−うち/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥おそう¥いで/させ¥たまふ/だに、¥こころ−ぐるしう¥おもひ¥まゐらせ¥さぶらひ/つる/に、¥つひに¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あはせ¥たまふ/べき/やらん」/とて¥なく。¥せうしやう、「¥いたう¥な¥なげい/そ。¥さて¥さいしやう¥おはすれ/ば、¥さり/とも¥いのち/ばかり/を/ば、¥こひ−うけ¥たまは/んずる/ものを」/と、¥やうやう/に¥なぐさめ−のたまへ/ども、¥ろくでう¥ひとめ/も¥はぢ/ず、¥なき−もだえ/けり。¥さる−ほど/に¥にしはちでう=どの/より¥つかひ¥しきなみ/に¥あり/しか/ば、¥さいしやう、「¥いま/は¥ただ¥いで−むかつ/て/こそ、¥と/も−かう/も¥なら/め」/とて¥いで/られ/けれ/ば、¥せうしやう/も¥さいしやう/の¥くるま/の¥しり/に¥のつ/て/ぞ¥いで/られ/ける¥。¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥へいけ/の¥ひとびと/は、¥たのしみ−さかえ/のみ¥あつ/て、¥うれへ¥なげき/は¥なかり/し/に、¥この¥さいしやう/ばかり/こそ、¥よし−なき¥むこ¥ゆゑ/に、¥かかる¥なげき/を/ば¥せ/られ/けれ。¥にしはちでう¥ちかう¥なつ/て、¥まづ¥あんない/を¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥せうしやう/を/ば¥もん/の¥うち/へ/は¥いれ/らる/べから/ず/と¥のたまふ¥あひだ、¥その¥へん/なる¥さぶらひ/の¥もと/に¥おろし−おき、¥さいしやう/ばかり/ぞ、¥もん/の¥うち/へ/は¥まゐら/れ/ける。¥いつしか¥せうしやう/を/ば、¥ぶし=ども¥しはう/を¥うち−かこん/で、¥きびしう¥しゆご−し¥たてまつる。¥せうしやう/の¥さ/しも¥たのもしう¥おもは/れ/つる¥さいしやう=どの/に/は¥はなれ¥たまひ/ぬ。¥せうしやう/の¥こころ/の¥うち、¥さ/こそ/は¥たより−なかり/けめ。¥
さいしやう¥ちうもん/に¥ゐ¥たまひ/たれ/ども、¥にふだう¥いで/も¥あは/れ/ず。¥やや¥あつ/て¥さいしやう、¥げん−だいふ/の−はんぐわん−すゑさだ/を¥もつて¥まうさ/れ/ける/は、「¥のりもり/こそ¥よし−なき¥もの/に¥したしう¥なつ/て、¥かへすがへすP135¥くやしみ¥さふらへ/ども、¥かひ/も¥さふらは/ず。¥あひ−ぐせ/させ/て¥さふらふ¥もの/の、¥この−ほど¥なやむ¥こと/の¥さふらふ/なる/が、¥けさ/より¥この¥なげき/を¥うち−そへ/て、¥すでに¥いのち/も¥たえ¥さふらひ/な/んず。¥のりもり¥かう/て¥さふらへ/ば、¥なじか/は¥ひがごと−せ/させ¥さふらふ/べき。¥せうしやう/を/ば¥しばらく¥のりもり/に¥あづけ/させ¥おはしませ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥すゑさだ¥まゐつ/て¥この¥よし/を¥まうす。¥にふだう、「¥あはれ¥れい/の¥さいしやう/が¥もの/に¥こころ−え/ぬ/よ」/とて、¥とみ/に¥へんじ/も¥し¥たまは/ず。¥やや¥あつ/て¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ¥きんじゆ/の¥ひとびと、¥この¥いちもん¥ほろぼし/て¥てんが¥みだら/ん/と¥する¥くはだて¥あり。¥すでに¥この¥せうしやう/は¥かの¥だいなごん/が¥ちやくし/なり。¥うとう/も¥なれ、¥したしう/も¥なれ、¥え/こそ¥まうし−ゆるす/まじけれ。¥もし¥この¥むほん¥とげ/な/ましか/ば、¥ご=へん/とて/も¥おだしう/て/やは¥おはす/べき/と¥いふ/べし」/と¥のたまへ/ば、¥すゑさだ¥かへり−まゐつ/て、¥さいしやう=どの/に¥この¥よし/を¥まうす。¥さいしやう¥よに/も¥ほい−な=げ/にて、¥かさね/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥かつせん/に/も、¥おん=いのち/に/は¥かはり¥まゐらせ/ん/と/こそ¥ぞんじ¥さふらひ/しか。¥この−のち/も¥あらき¥かぜ/を/ば、¥まづ¥ふせぎ¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥たとひ¥のりもり/こそ¥とし¥おい/て¥さふらふ/とも、¥わかき¥こども¥あまた¥さふらへ/ば、¥いつぱう/の¥おん=かため/に/も、¥など/か¥なら/で/は¥さふらふ/べき。¥それ/に¥しばらく¥せうしやう/を¥あづから/う/ど¥まうす/に、¥おん=ゆるされ¥なき/は、¥いつかう¥のりもり/を¥ふたごころ¥ある¥もの/と¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/に/こそ。¥それ−ほど/まで¥うしろめたう¥おもは/れ¥まゐらせ/て/は、¥よ/に¥あつ/て/も¥なに/に/かは¥し¥さふらふ/べき/なれ/ば、¥み/の¥いとま/を¥たまはつ/て、¥しゆつけ−にふだう¥つかまつり、¥かうや、¥こがは/に/も¥こもり−ゐ/て、¥ひとすぢ/に¥ごせ−ぼだい/の¥つとめ/を¥いとなみ¥さふらは/ん。P136¥
よし−なき¥うき−よ/の¥まじはり/なり。¥よ/に¥あれ/ば/こそ¥のぞみ/も¥あれ、¥のぞみ/の¥かなは/ね/ば/こそ¥うらみ/も¥あれ。¥しか/じ¥うき−よ/を¥いとひ、¥まこと/の−みち/に¥いり/な/ん/に/は」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥すゑさだ¥まゐり/て、「¥さいしやう=どの/は¥はや¥おぼしめし¥きつ/て¥さふらふ/ぞ。¥と/も−かく/も¥よき¥やう/に¥おん=ぱからひ¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、「¥いやいや¥しゆつけ−にふだう/まで/は¥あまり/に¥けしから/ず。¥その¥ぎ/なら/ば、¥せうしやう/を/ば¥しばらく¥のりもり/に¥あづくる/と¥いふ/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥すゑさだ¥かへり−まゐつ/て、¥さいしやう=どの/に¥この¥よし/を¥まうす。¥さいしやう、「¥あはれ¥ひと/の¥こ/を/ば¥もつ/まじかり/ける/ものかな。¥わが¥こ/の¥えん/に¥むすぼほれ/ざら/ん/に/は、¥これ−ほど/まで¥こころ/を/ば¥くだか/じ/ものを」/とて¥いで/られ/けり。¥せうしやう¥まち−うけ¥たてまつ/て、「¥さて¥いかが¥さふらひ/つる/やらん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥にふだう¥あまり/に¥いかつ/て、¥のりもり/に/は¥つひに¥たいめん/も¥し¥たまは/ず、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を¥しきり/に¥のたまふ¥あひだ、¥しゆつけ−にふだう/まで¥まうし/たれ/ば/に/やらん、¥その¥ぎ/なら/ば、¥ご=へん/を/ば¥しばらく¥のりもり/に¥あづくる/と¥のたまひ/つれ/ども、¥それ/も¥しじう/は¥よかる/べし/と/も¥おぼえ/ず」/と¥のたまへ/ば、¥せうしやう、「¥さて/は¥なりつね/は¥ご=おん/を¥もつて¥しばし/の¥いのち/の¥のび¥さふらは/んずる/に/こそ。¥それ/に¥つき¥さふらう/て/は、¥ちち/で¥さふらふ¥だいなごん/が¥こと/を/ば、¥なに/と/か¥きこしめさ/れ/て¥さふらふ/やらん」。¥さいしやう、「¥いさ/とよ、¥ご=へん/の¥こと/を/こそ、¥やうやう/に¥まうし/たれ。¥それ/まで/の¥こと/は¥おもひ/も¥よら/ざり/つれ」/と¥のたまへ/ば、¥その−とき¥せうしやう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥いのち/の¥をしう¥さふらふ/も、¥ちち/を¥いま−いちど¥み/ばや/と¥おもふ¥ため/なり。¥ゆふさり¥だいなごん¥きら/れP137¥さふらは/ん/に¥おい/て/は、¥なりつね¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥し¥さふらふ/べき/なれ/ば、¥ただ¥いつしよ/で¥いか/に/も−なる¥やう/に¥まうし/て¥たば/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さいしやう¥よに/も¥くるし=げ/にて、「¥いさ/とよ、¥ご=へん/の¥こと/を/こそ¥やうやう/に¥まうし/たれ。それ/まで/の¥こと/は¥おもひ/も¥よら/ざり/つれ/ども、けさ¥うち/の−おとど/の¥やうやう/に¥まうさ/せ¥たまひ/つれ/ば、それ/も¥しばし/は¥よき¥やう/に/こそ¥きけ」/と¥のたまへ/ば、¥せうしやう¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥なくなく¥て/を¥あはせ/て/ぞ¥よろこば/れ/ける。¥こ/なら/ざら/ん¥もの/が、¥たれ/か¥ただいま¥わが−み/の−うへ/を¥さし−おい/て、¥これ−ほど/まで/は¥よろこぶ/べき。¥まこと/の¥ちぎり/は¥おやこ/の¥なか/に/ぞ¥あり/ける。¥こ/を/ば¥ひと/の¥もつ/べかり/ける/ものかな/と、¥やがて¥おもひ/ぞ¥かへさ/れ/ける。¥さて¥けさ/の/ごとく、¥どうじや−し/て¥かへら/れ/たれ/ば、¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥さし−つどひ/て、¥しに/たる¥ひと/の¥いき−かへり/たる¥ここち−し/て、¥みな¥よろこびなき/を/ぞ¥せ/られ/ける。¥
「けうくん」(『けうくんじやう』)S0206¥だいじやう/の−にふだう/は、¥かやう/に¥ひとびと¥あまた¥いましめ−おい/て/も、¥なほ¥こころ−ゆか/ず/や¥おもは/れ/けん、¥すでに¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−はらまき/の¥しろかなもの¥うつ/たる¥むないた¥せめ、¥せんねん¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥じんばい/の¥ついで/に¥れいむ/を¥かうむつ/て、¥いつくしまの−だい−みやうじん/より¥うつつ/に¥たまはら/れ/たり/ける、P138¥しろかね/の¥ひるまき−し/たる¥こなぎなた、¥つね/の¥まくら/を¥はなた/ず¥たて/られ/たり/し/を¥わき/に¥はさみ、¥ちうもん/の¥らう/に/ぞ¥いで/られ/たる。¥おほかた¥その¥きしよく¥ゆゆしう/ぞ¥みえ/し。「¥さだよし」/と¥めす。¥ちくごの−かみ−さだよし/は、¥むくらんぢ/の−ひたたれ/に、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て¥おん=まへ/に¥かしこまつ/て/ぞ¥さふらひ/ける。¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥いか/に¥さだよし、¥この¥こと¥いかが¥おもふ/ぞ。¥ほうげん/に¥へい−うま/の−すけ/を¥はじめ/と/して、¥いちもん¥なかば¥すぎ/て、¥しんゐん/の¥み=かた/に¥まゐり/に/き。¥いちのみや/の¥おん=こと/は、¥こ=ぎやうぶきやう/の=との/の¥やうくん/にて¥ましまし/しか/ば、¥かたがた¥み−はなち¥まゐらせ−がたかり/しか/ども、¥こ=ゐん/の¥ご=ゆゐかい/に¥まかせ/て、¥み=かた/にて¥さき/を¥かけ/たり/き。¥これ¥ひとつ/の¥ほうこう。¥つぎ/に¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥のぶより¥よしとも/が¥むほん/の¥とき、¥ゐん−うち/を¥とり¥たてまつ/て、¥たいだい/に¥たてごもり、¥てんが¥くらやみ/と¥なつ/たり/し/に/も、¥にふだう¥ずゐぶん¥み/を¥すて/て、¥きようと/を¥おひ−おとし、¥つねむね¥これかた/を¥めし−いましめ/し/に¥いたる/まで、¥きみ/の¥おん=ため/に、¥すでに¥いのち/を¥うしなは/ん/と¥する¥こと¥どど/に¥およぶ。¥され/ば¥ひと¥なに/と¥まうす/とも、¥いかで/か¥この¥いちもん/を/ば、¥しち−だい/まで/は¥おぼしめし−すて/させ¥たまふ/べき。¥それ/に¥なりちか/と¥いふ¥むよう/の¥いたづらもの、¥さいくわう/と¥まうす¥げせん/の¥ふたうじん/が¥まうす¥こと/に、¥きみ/の¥つか/せ¥たまひ/て、¥やや/も¥すれ/ば、¥この¥いちもん¥ほろぼさ/る/べき¥よし/の¥ご=けつこう/こそ¥しかる/べから/ね。¥この−のち/も¥ざんそう−する¥もの¥あら/ば、¥たうけ¥つゐたう/の¥ゐんぜん/を¥くださ/れ/つ/と¥おぼゆる/ぞ。¥てうてき/と¥なつ/て¥のち/は、¥いか/に¥くゆ/とも¥えき¥ある/まじ。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/へ¥うつし¥まゐらする/か、¥しから/ず/は¥これ/へ¥まれ、¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせ/ん/と¥おもふ/は¥いか/に。¥その¥ぎ/なら/ば、¥さだめ/てP139¥ほくめん/の¥もの=ども/が¥なか/より、¥や/を/も¥ひとつ¥い/んず/らん。¥その¥ようい−せよ/と¥さぶらひ=ども/に¥ふる/べし。¥おほかた/は¥にふだう¥ゐんがた/の¥ほうこう¥おもひ−きつ/たり。¥むま/に¥くら¥おか/せよ。¥きせなが¥とり−いだせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥
しゆめ/の−はんぐわん−もりくに、¥いそぎ¥こまつ=どの/へ¥はせ−まゐつ/て、「¥よ/は¥はや¥かう¥ざふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、「¥ああ¥はや¥なりちかの−きやう/の¥かうべ/の¥はね/られ/たん/な」/と¥のたまへ/ば、「¥その¥ぎ/にて/は¥さふらは/ね/ども、¥にふだう=どの/の¥おん=きせなが/を¥めさ/れ¥さふらふ¥うへ/は、¥さぶらひ=ども/も¥みな¥うつ−たつ/て、¥ただいま¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/へ¥よせ/ん/と/こそ¥いで−たち¥さふらひ/つれ。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/へ¥うつし¥まゐらする/か、¥しから/ず/は¥これ/へ¥まれ、¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせ/う/ど/は¥さふらへ/ども、¥ないない/は¥ちんぜい/の¥かた/へ¥ながし¥まゐらせ/ん/と/こそ¥ぎせ/られ¥さふらひ/つれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど、¥なに/に¥よつ/て、¥ただいま¥さる−おん=こと/の¥おはす/べき/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥けさ/の¥ぜんもん/の¥きしよく、¥さる¥もの−ぐるはしき¥こと/も/や¥おはす/らん/とて、¥いそぎ¥くるま/を¥とばせ/て、¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥おはし/たる。¥もんぜん/にて¥くるま/より¥おり、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いつ/て¥み¥たまふ/に、¥にふだう¥はらまき/を¥き¥たまふ¥うへ、¥いちもん/の¥けいしやう−うんかく¥すじふにん、¥おのおの¥いろいろ/の¥ひたたれ/に、¥おもひおもひ/の¥よろひ¥き/て、¥ちうもん/の¥らう/に¥にぎやう/に¥ちやくせ/られ/たり。¥その−ほか¥しよ−こく/の¥じゆりやう、¥ゑふ、¥しよし/など/は¥えん/に¥ゐ−こぼれ、¥には/に/も¥ひし/と¥なみ−ゐ/たり。¥はたざを=ども¥ひき−そばめ−ひき−そばめ、¥むま/の¥はるび/を¥かため、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥ただいま¥みな¥うつーたた/んずる¥けしき=ども/なる/に、¥こまつ=どの¥ゑぼし¥なほし/に、P140¥だいもん/の¥さしぬき/の¥そば¥とつ/て、¥ざやめき−いり¥たまへ/ば、¥こと/の−ほか/に/ぞ¥みえ/られ/ける。¥
にふだう¥ふしめ/に¥なつ/て、¥あはれ¥れい/の¥だいふ/が、¥よ/を¥へう−する¥やう/に¥ふるまふ/ものかな。¥おほき/に¥いさめ/ばや/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥さすが¥こ/ながら/も、¥うち/に/は¥ごかい/を¥たもつ/て、¥じひ/を¥さき/と¥し、¥ほか/に/は¥ごじやう/を¥みだら/ず、¥れいぎ/を¥ただしう¥し¥たまふ¥ひと/なれ/ば、¥あの¥すがた/に¥はらまき/を¥き/て¥むかは/ん¥こと、¥さすが¥おもばゆう、¥はづかしう/や¥おもは/れ/けん、¥しやうじ/を¥すこし¥ひき−たて/て、¥はらまき/の¥うへ/に、¥そけん/の¥ころも/を¥あわてぎ/に¥き¥たまひ/たり/ける/が、¥むないた/の¥かなもの/の、¥すこし¥はづれ/て¥みえ/ける/を、¥かくさ/う/ど、¥しきり/に¥ころも/の¥むね/を¥ひき−ちがへ−ひき−ちがへ/ぞ¥し¥たまひ/ける。¥おとど/は¥しやてい¥むねもりの−きやう/の¥ざしやう/に¥つき¥たまふ。¥にふだう¥のたまひ−いださ/るる¥こと/も¥なく、¥おとど/も¥また¥まうし−あげ/らるる¥むね/も¥なし。¥やや¥あつ/て¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥あの¥なりちかの−きやう/が¥むほん/は、¥こと/の−かず/に/も¥さふらは/ず、¥いつかう¥ほふわう/の¥ご=けつこう/にて¥さふらひ/ける/ぞ/や。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/へ¥うつし¥まゐらする/か、¥しから/ず/は¥これ/へ¥まれ、¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせ/ん/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥おとど¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥はらはら/と/ぞ¥なか/れ/ける。¥にふだう、「¥さて¥いか/に/や−いか/に」/と¥あきれ¥たまへ/ば、¥やや¥あつ/て¥おとど¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥この¥おほせ¥うけたまはり¥さふらふ/に、¥ご=うん/は¥はや¥すゑ/に¥なり/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ。¥ひと/の¥うんめい/の¥かたぶか/ん/とて/は、¥かならず¥あくじ/を¥おもひ−たち¥さふらふ/なり。¥また¥おん=ありさま/を¥み¥まゐらせ¥さふらふ/に、¥さらに¥うつつ/と/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥さすが¥わが¥てう/は、¥へんぢ−そくさん/の¥さかひ/と/は¥まうし/ながら、¥てんせうだいじん/の¥ご=しそん、P141¥くに/の¥あるじ/と/して、¥あまのこやねのみこと/の¥おん=すゑ、¥てう/の¥まつりごと/を¥つかさどら/せ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥だいじやうだいじん/の¥くわん/に¥いたる¥ひと/の¥かつちう/を¥よろふ¥こと、¥れいぎ/を¥そむく/に¥あら/ず/や。¥なかんずく¥ご=しゆつけ/の¥おん=み/なり。¥それ¥さんぜ/の¥しよぶつ、¥げだつ¥どうさう/の¥ほふえ/を¥ぬぎ−すて/て、¥たちまちに¥かつちう/を¥よろひ、¥きうせん/を¥たいし¥ましまさ/ん¥こと、¥うち/に/は¥はかい¥むざん/の¥つみ/を¥まねく/のみ/なら/ず、¥ほか/に/は¥じん−ぎ−れい−ち−しん/の¥ほふ/に/も¥そむき¥さふらひ/な/んず。¥かたがた¥おそれ¥ある¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥こころ/の¥そこ/に¥しいしゆ/を¥のこす/べき/に/も¥さふらは/ず。¥
まづ¥よ/に¥しおん¥さふらふ。¥てんち/の¥おん、¥こくわう/の¥おん、¥ぶも/の¥おん、¥しゆじやう/の¥おん¥これ/なり。¥その¥なか/に¥もつとも¥おもき/は¥てうおん/なり。¥ふてん/の¥した、¥わうぢ/に¥あら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥され/ば¥かの¥えいせん/の¥みづ/に¥みみ/を¥あらひ、¥しゆやうざん/に¥わらび/を¥をり/し¥けんじん/も、¥ちよくめい¥そむき−がたき¥れいぎ/を/ば¥ぞんぢ−す/と/こそ¥うけたまはれ。¥いか/に−いはんや、¥せんぞ/に/も¥いまだ¥きか/ざつ/し¥だいじやうだいじん/を¥きはめ/させ¥たまふ。¥いはゆる¥しげもり/が¥むざい¥ぐあん/の¥み/を¥もつて、¥れんぷ¥くわいもん/の¥くらゐ/に¥いたる。¥しか/のみ/なら/ず¥こくぐん¥なかば/は¥いちもん/の¥しよりやう/と¥なつ/て、¥でんをん¥ことごとく¥いつけ/の¥しんじ/たり。¥これ¥きたい/の¥てうおん/に¥あら/ず/や。¥いま¥これ=ら/の¥ばくたい/の¥ご=おん/を¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまひ/て、¥みだりがはしく¥ほふわう/を¥かたぶけ¥まゐら/させ¥たまは/ん¥こと、¥てんせうだいじん、¥しやう−はちまんぐう/の¥しんりよに/も¥そむか/せ¥たまひ¥さふらひ/な/んず。¥それ¥につぽん/は¥しんこく/なり。¥しん/は¥ひれい/を¥うけ¥たまふ/べから/ず¥しかれ/ば¥きみ/の¥おぼしめし−たた/せ¥たまふ¥ところ、¥だうり¥なかば¥なき/に¥あら/ず。¥なか/に/も¥この¥いちもん/は¥だいだい/の¥てうてき/を¥たひらげ/て、¥しかい/の¥げきらう/を¥しづむる¥こと/は、¥ぶさう/の¥ちう/なれ/ども、¥その¥しやう/に¥ほこる¥こと/は、P142¥ばうじやくぶじん/と/も¥まうし/つ/べし。¥しやうとくたいし¥じふしちかでう/の¥ご=けんぼふ/に、『¥ひと¥みな¥こころ−あり。¥こころ¥おのおの¥しふ¥あり。¥かれ/を¥ぜし、¥われ/を¥ひし、¥われ/を¥ぜし、¥かれ/を¥ひす。¥ぜひ/の¥ことわり、¥たれ/か¥よく¥さだむ/べき。¥あひ−とも/に¥けんぐ/なり。¥たまき/の/ごとく/して¥はし¥なし。¥ここ/を¥もつて、¥たとひ¥ひと¥いかる/と¥いふ/とも、¥かへつて¥わが¥とが/を¥おそれよ』/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥しかれ/ども¥たうけ/の¥うんめい¥いまだ¥つき/ざる/に¥よつ/て、¥ご=むほん¥すでに¥あらはれ/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥その−うへ¥おほせ−あはせ/らるる¥なりちかの−きやう/を、¥めし−おか/れ/ぬる¥うへ/は、¥たとひ¥きみ¥いか/なる¥ふしぎ/を¥おぼしめし−たた/せ¥たまふ/とも、¥なん/の¥おそれ/か¥さふらふ/べき。¥しよたう/の¥ざいくわ¥おこなは/れ/ぬる¥うへ/は、¥しりぞい/て¥こと/の¥よし/を¥ちんじ¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥きみ/の¥おん=ため/に/は、¥いよいよ¥ほうこう/の¥ちうきん/を¥つくし、¥たみ/の¥ため/に/は、¥ますます¥ぶいく/の¥あいれん/を¥いたさ/せ¥たまは/ば、¥しんめい/の¥かご/に¥あづかつ/て、¥ぶつだ/の¥みやうりよ/に¥そむく/べから/ず。¥しんめい−ぶつだ¥かんおう¥あら/ば、¥きみ/も¥おぼしめし−なほす¥こと、¥など/か¥さふらは/ざる/べき。¥きみ/と¥しん/と/を¥くらぶる/に、¥しんそ¥わく¥かた¥なし。¥だうり/と¥ひがごと/を¥ならべ/ん/に、¥いかで/か¥だうり/に¥つか/ざる/べき」。¥
「ほうくわ」(『ほうくわのさた』)S0207¥「¥これ/は¥もつとも¥きみ/の¥おん=ことわり/にて¥さふらへ/ば、¥かなは/ざら/ん/まで/も、¥ゐん−ぢう/を¥しゆご−し¥まゐらせP143¥さふらふ/べし。¥その¥ゆゑ/は、¥しげもり¥はじめ¥じよしやく/より、¥いま¥だいじん/の¥だいしやう/に¥いたる/まで、¥しかしながら¥きみ/の¥ご=おん/なら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥この¥おん/の¥おもき¥こと/を¥おもへ/ば、¥せんくわ¥ばんくわ/の¥たま/に/も¥こえ、¥その¥おん/の¥ふかき¥いろ/を¥あんずる/に、¥いちじふ−さいじふ/の¥くれなゐ/に/も¥なほ¥すぎ/たら/ん。¥しから/ば¥ゐん−ぢう/へ¥まゐり−こもり¥さふらふ/べし。¥その¥ぎ/にて¥さふらは/ば、¥しげもり/が¥み/に¥かはり、¥いのち/に¥かはら/ん/と¥ちぎり/たる¥さぶらひ=ども¥せうせう¥さふらふ/らん。¥これ=ら/を¥めし−ぐし/て¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/を¥しゆご−し¥まゐらせ¥さふらは/ば、¥さすが¥もつて/の−ほか/の¥おん=だいじ/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥かなしき/かな、¥きみ/の¥おん=ため/に¥ほうこう/の¥ちう/を¥いたさ/ん/と¥すれ/ば、¥めいろ¥はちまん/の¥いただき/より/も¥なほ¥たかき¥ちち/の¥おん¥たちまちに¥わすれ/ん/と¥す。¥いたましき/かな、¥ふけう/の¥つみ/を¥のがれ/ん/と¥すれ/ば、¥きみ/の¥おん=ため/に/は¥すでに¥ふちう/の¥ぎやくしん/と/も¥なり/ぬ/べし。¥しんだい¥これ¥きはまれ/り。¥ぜひ¥いか/に/も¥わきまへ−がたし。¥まうし−うくる¥しよせん/は、¥ただ¥しげもり/が¥くび/を¥めさ/れ¥さふらへ。¥その¥ゆゑ/は、¥ゐんざん/の¥おん=とも/を/も¥つかまつる/べから/ず。¥また¥ゐん−ぢう/を/も¥しゆご−し¥まゐらす/べから/ず。¥され/ば¥かの¥せうが/は¥たいこう¥かたへ/に¥こえ/たる/に¥よつ/て、¥くわん¥たいしやうこく/に¥いたり、¥けん/を¥たいし¥くつ/を¥はき/ながら、¥てんじやう/へ¥のぼる¥こと/を¥ゆるさ/れ/しか/ども、¥えいりよ/に¥そむく¥こと¥あり/しか/ば、¥かうそ¥おもう¥いましめ/て、¥ふかう¥つみ−せ/られ/に/き。¥かやう/の¥せんじよう/を¥おもへ/ば、¥ふつき/と¥いひ、¥えいぐわ/と¥いひ、¥てうおん/と¥まうし、¥ちようじよく/と¥いひ、¥かたがた¥きはめ/させ¥たまひ/ぬれ/ば、¥ご=うん/の¥つき/ん¥こと¥かたかる/べき/に¥あら/ず。¥ふつき/の¥いへ/に/は¥ろくゐ¥ちようでふ−せ/り。¥ふたたび¥み¥なる¥き/は、¥その¥ね¥かならず¥いたむ/と¥みえ/て¥さふらふ。¥こころ−ぼそう/こそ¥さふらへ。¥いつ/まで/かP144¥いのち¥いき/て、¥みだれ/ん¥よ/を/も¥み¥さふらふ/べき。¥ただ¥まつだい/に¥しやう/を¥うけ/て、¥かかる¥うき−め/に¥あひ¥さふらふ¥しげもり/が¥くわはう/の/ほど/こそ¥つたなう¥さふらへ。¥ただいま/も¥さぶらひ¥いち−にん/に¥おほせ−つけ/られ、¥おん=つぼ/の−うち/へ¥ひき−いださ/れ/て、¥しげもり/が¥かうべ/の¥はね/られ/んずる¥こと/は、¥いと¥やすい/ほど/の¥おん=こと/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥これ/を¥おのおの¥きき¥たまへ」/とて、¥なほし/の¥そで/も¥しぼる/ばかり/に、¥かき−くどき、¥さめざめ/と¥なき¥たまへ/ば、¥その¥ざ/に¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥へいけ¥いちもん/の¥ひとびと、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥
にふだう、¥たのみ−きつ/たる¥だいふ/は、¥かやう/に¥のたまふ。¥よに/も¥ちから¥な=げ/にて、「¥いやいや¥それ/まで/の¥こと/は¥おもひ/も¥より¥さう/ず。¥あくたう=ども/の¥まうす¥こと/に、¥きみ/の¥つか/せ¥たまひ/て、¥いか/なる¥ひがごと/など/も/や、¥いで−こ/んず/らん/と¥おもふ/ばかり/で/こそ¥さふらへ」。¥おとど、「¥たとひ¥いか/なる¥ひがごと¥いで−き¥さふらへ/ば/とて、¥きみ/を/ば¥なに/と/か¥し¥まゐら/させ¥たまふ/べき」/とて、¥つい−たつ/て¥ちうもん/に¥いで、¥さぶらひ=ども/に¥のたまひ/ける/は、「¥ただいま¥これ/にて¥まうし/つる¥こと=ども/を/ば、¥なんぢ=ら/は¥よく¥うけたまはら/ず/や。¥けさ/より¥これ/に¥さふらう/て、¥かやう/の¥こと=ども/を/も¥まうし−しづめ/ん/と/は¥ぞんじ/つれ/ども、¥あまり/に¥ひた−さわぎ/に¥みえ/つる¥あひだ、¥まづ¥かへり/つる/なり。¥ゐんざん/の¥おん=とも/に¥おい/て/は、¥しげもり/が¥かうべ/の¥はね/られ/たら/ん/を¥み/て¥つかまつれ。¥さら/ば¥ひと¥まゐれ」/とて、¥こまつ=どの/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥その−のち¥おとど¥しゆめ/の−はんぐわん−もりくに/を¥めし/て、「¥しげもり/こそ¥けさ¥べつし/て¥てんが/の¥だいじ/を¥きき−いだし/たん/なれ。¥われ/を¥われ/と¥おもは/んずる¥もの=ども/は、¥もののぐ−し/て¥いそぎ¥まゐれ/と¥もよほせ」/とP145¥のたまへ/ば、¥はせ−まはつ/て¥ひろう−す。¥おぼろ=げ/にて/は¥さわぎ¥たまは/ぬ¥ひと/の、¥かやう/の¥ひろう/の¥ある/は、¥まことに¥べち/の¥しさい/の¥ある/に/こそ/とて、¥われ/も−われ/も/と¥はせ−まゐる。¥よど、¥はつかし、¥うぢ、¥をかのや、¥ひの、¥くわんじゆじ、¥だいご、¥をぐるす、¥むめづ、¥かつら、¥おはら、¥しづはら、¥せれふ/の¥さと/に¥あぶれ−ゐ/たる¥つはもの=ども、¥あるひは¥よろひ¥き/て、¥いまだ¥かぶと/を¥き/ぬ/も¥あり、¥あるひは¥や¥おう/て¥いまだ¥ゆみ/を¥もた/ぬ/も¥あり。¥かた−あぶみ¥ふむ/や¥ふま/ず/にて、¥あわて−さわい/で¥はせ−まゐる。¥
こまつ=どの/に¥さわぐ¥こと¥あり/と¥きこえ/しか/ば、¥にしはちでう/に¥すせんき¥あり/ける¥つはもの=ども、¥にふだう/に/は¥かう/とも¥まうし/も¥いれ/ず、¥ざやめき−つれ/て、¥みな¥こまつ=どの/へ/ぞ¥はせ/たり/ける。¥きうせん/に¥たづさはる/ほど/の¥もの/は、¥いち−にん/も¥のこら/ず。¥ちくごの−かみ−さだよし/が¥ただ¥いち−にん¥さふらひ/ける/を¥ごぜん/へ¥めし/て、「¥だいふ/は¥なに/と¥おもひ/て、¥これ=ら/を/ば¥みな¥かやう/に¥よび−とる/やらん。¥けさ¥これ/にて¥いひ/つる¥やう/に、¥じやうかい/が¥もと/へ¥うつて/など/も/や¥むけ/んず/らん」/と¥のたまへ/ば、¥さだよし¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥ひと/も¥ひと/に/こそ¥よら/せ¥たまひ¥さふらへ。¥いかで/か¥ただいま¥さる−おん=こと¥さふらふ/べき。¥けさ¥これ/にて¥まうさ/せ¥たまひ/つる¥おん=こと=ども/を/ば、¥はや¥みな¥ご=こうくわい/ぞ¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、¥いやいや¥だいふ/に¥なか¥たがう/て/は、¥あしかり/な/ん/と/や¥おもは/れ/けん、¥ほふわう¥むかへ¥まゐらせ/ん/と¥おもは/れ/ける¥こころ/も¥やはらぎ、¥いそぎ¥はらまき¥ぬぎ−おき、¥そけん/の¥ころも/に¥けさ¥うち−かけ/て、¥いと¥こころ/に/も¥おこら/ぬ¥ねんじゆ−し/て/こそ¥おはし/けれ。¥その−のち¥こまつ=どの/に/は、¥もりくに¥うけたまはつ/て、¥ちやくたう¥つけ/けり。¥はせ−さんじ/たる¥さぶらひ=ども、P146¥いちまん−よ−き/と/ぞ¥しるし/ける。¥ちやくたう¥ひけん/の¥のち、¥おとど¥ちうもん/に¥いで/て、¥さぶらひ=ども/に¥のたまひ/ける/は、「¥ひごろ/の¥けいやく/を¥たがへ/ず/して、¥みな¥かやう/に¥まゐり/たる/こそ¥しんべう/なれ。¥いこく/に¥さる¥ためし¥あり。¥しう/の¥いうわう、¥はうじ/と¥いへ/る¥さいあい/の¥きさき/を¥もち¥たまへ/り。¥てんが¥だいいち/の¥びじん/なり。¥され/ども¥いうわう/の¥おん=こころ/に¥かなは/ざり/ける¥こと/に/は、¥はうじ¥ゑみ/を¥ふくま/ず/とて、¥すべて¥わらふ¥こと¥し¥たまは/ず、¥いこく/の¥ならひ/に、¥てんが/に¥ひやうらん/の¥おこる¥とき/は、¥しよしよ/に¥ひ/を¥あげ、¥たいこ/を¥うつ/て、¥つはもの/を¥めす¥はかりごと¥あり。¥これ/を¥ほうくわ/と¥なづく。¥ある−とき¥てんが/に¥ひやうがく¥おこつ/て、¥しよしよ/に¥ほうくわ/を¥あげ/たり/けれ/ば、¥きさき¥これ/を¥ごらんじ/て、『¥あな¥おびたたし、¥ひ/も¥あれ−ほど/まで¥おほかり/けり/な』/とて、¥その−とき¥はじめて¥わらひ¥たまへ/り。¥ひとたび¥ゑめ/ば¥もも/の¥こび¥あり/けり。¥いうわう¥これ/を¥うれしき¥こと/に¥し¥たまひ/て、¥その¥こと/と¥なく、¥つね/は¥ほうくわ/を¥あげ¥たまふ。¥しよこう¥き/たる/に¥あた¥なし、¥あた¥なけれ/ば¥すなはち¥かへり−さん/ぬ。¥かやう/に¥する¥こと¥どど/に¥およべ/ば、¥つはもの/も¥まゐら/ず。¥ある−とき¥りんごく/より¥きようぞく¥おこつ/て、¥いうわう/の¥みやこ/を¥せめ/ける/に、¥ほうくわ/を¥あぐれ/ども、¥れい/の¥きさき/の¥ひ/に¥ならつ/て、¥つはもの/も¥まゐら/ず。¥その−とき¥みやこ¥かたぶい/て、¥いうわう¥つひに¥ほろび/に/けり。¥さて¥かの¥きさき、¥やかん/と¥なつ/て¥はしり−うせ/ける/ぞ¥おそろしき。¥かやう/の¥こと/の¥ある¥とき/は、¥じこん¥いご、¥これ/より¥めさ/ん/に/は、¥みな¥かく/の/ごとく¥まゐる/べし。¥しげもり¥けさ¥べつし/て¥てんが/の¥だいじ/を¥きき−いだし/て¥めし/つる/なり。¥され/ども¥この¥こと¥きき−なほし/つつ、¥ひがごと/にて¥あり/けり。¥さら/ば¥とう¥かへれ」/とて、¥さぶらひ=ども¥みな¥かへさ/れ/けり。¥まことに¥させる¥こと/を/も¥きき−いださ/れ/ざり/けれ/ども、P147¥けさ¥ちち/を¥いさめ¥まうさ/れ/ける¥ことば/に¥したがつ/て、¥わが−み/に¥せい/の¥つく/か、¥つか/ぬ/か/の/ほど/を/も¥しり、¥また¥ふし¥いくさ/を¥せん/と/に/は¥あら/ね/ども、¥かう¥し/て¥にふだう−たいしやうこく/の¥むほん/の¥こころ/も、¥やはらぎ¥たまふ/か/と/の¥はかりごと/と/ぞ¥きこえ/し。¥きみ¥きみ/たら/ず/と¥いへ/ども、¥しん¥もつて¥しん/たら/ずん/ば¥ある/べから/ず。¥ちち¥ちち/たら/ず/と¥いへ/ども、¥こ¥もつて¥こ/たら/ずん/ば¥ある/べから/ず。¥きみ/の¥ため/に/は¥ちう¥あつ/て、¥ちち/の¥ため/に/は¥かう¥あれ/と、¥ぶんせんわう/の¥のたまひ/ける/に¥たがは/ず。¥きみ/も¥この¥よし¥きこしめし/て、「¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/なれ/ども、¥だいふ/が¥こころ/の¥うち/こそ¥はづかしけれ。¥あた/を/ば¥おん/を¥もつて¥はうぜ/られ/たり」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥くわはう/こそ¥めでたう/て、¥いま¥だいじん/の−だいしやう/に¥いたら/め。¥ようぎ−たいはい¥ひと/に¥すぐれ、¥さいち¥さいかく/さへ¥よ/に¥こえ/たる/べき/やは」/と/ぞ、¥とき/の−ひとびと¥かんじ−あは/れ/ける。¥くに/に¥いさむる¥しん¥あれ/ば、¥その¥くに¥かならず¥やすく、¥いへ/に¥いさむる¥こ¥あれ/ば、¥その¥いへ¥かならず¥ただし/と¥いへ/り。¥しやうだい/に/も¥まつだい/に/も、¥あり−がたかり/し¥だいじん/なり。¥
「しんだいなごんのながされ」(『だいなごんるざい』)S0208¥さる−ほど/に¥ろくぐわつ−ふつかのひ、¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/を/ば、¥くぎやう/の¥ざ/に¥いだし¥たてまつ/て、¥おん=もの¥まゐらせ/けれ/ども¥むね¥せき−ふさがつ/て、¥お=はし/を/だに/も¥たて/られ/ず。¥あづかり/の−ぶしP148¥なんばの−じらう−つねとほ、¥おん=くるま/を¥よせ/て、「¥とうとう」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいなごん¥こころ/なら/ず/ぞ¥のり¥たまふ。¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥いま−いちど¥こまつ=どの/に¥みえ¥たてまつら/ばや/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥それ/も¥かなは/ず。¥み−まはせ/ば、¥ぐんびやう=ども、¥ぜんご¥さう/に¥うち−かこん/で、¥わが¥かたさま/の¥もの/は¥いち−にん/も¥なし。¥たとひ¥ぢうくわ/を¥かうぶつ/て、¥ゑんごく/へ¥ゆく¥もの/も、¥ひと¥いち−にん¥み/に¥そへ/ざる/べき¥こと/や¥ある/と、¥くるま/の¥うち/にて¥かき−くどか/れ/けれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥にし/の−しゆしやか/を¥みなみ/へ¥ゆけ/ば、¥おほうちやま/を/も¥いま/は¥よそ/に/ぞ¥み¥たまひ/ける。¥としごろ¥み−なれ¥たてまつり/し¥ざふしき¥うしかひ/に¥いたる/まで、¥みな¥なみだ/を¥ながし¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥まして¥みやこ/に¥のこり−とどまり¥たまふ¥きたのかた、¥をさなき¥ひとびと/の¥こころ/のうち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥とば=どの/を¥すぎ¥たまふ/に/も、¥この¥ごしよ/へ¥ご=かう¥なり/し/に/は、¥いちど/も¥おん=とも/に/は¥はづれ/ざり/し/ものを/とて、¥わが¥さんざう、¥すはま=どの/とて¥あり/し/を/も、¥よそ/に¥み/て/こそ¥とほら/れ/けれ。¥とば/の¥みなみ/の¥もん¥いで/て、¥ふね¥おそし/と/ぞ¥いそが/せ/ける。¥だいなごん、「¥おなじく¥うしなは/る/べく/は、¥みやこ¥ちかき¥この¥へん/にて/も¥あれ/かし」/と¥のたまひ/ける/こそ、¥せめて/の¥こと/なれ。¥ちかう¥そひ¥たてまつ/たる¥ぶし/を、「¥た/そ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥あづかり/の−ぶし¥なんばの−じらう−つねとほ」/と¥なのり¥まうす。「¥もし¥この¥へん/に¥わが¥かたさま/の¥もの/や¥ある、¥いち−にん¥たづね/て¥まゐらせよ。¥ふね/に¥のら/ぬ¥さき/に¥いひ−おく/べき¥こと¥あり」/と¥のたまへ/ば、¥つねとほ¥その¥へん/を¥はしり−まはつ/て¥たづね/けれ/ども、¥われ/こそ¥だいなごん=どの/の¥おん=かた/とP149¥まうす¥もの、¥いち−にん/も¥なし。¥
その−とき¥だいなごん¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥さり/とも¥わが¥よ/に¥あり/し¥とき/は、¥したがひ−つき/たり/し¥もの=ども、¥いちにせん−にん/も¥あり/つ/らん/に、¥いま/は¥よそ/にて/だに¥この¥ありさま/を¥み−おくる¥もの/の¥なかり/ける¥かなし−さ/よ」/とて、¥なか/れ/けれ/ば、¥たけき¥もののふ=ども/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥ただ¥み/に¥そふ¥もの/とて/は、¥つきせ/ぬ¥なみだ/ばかり/なり。¥くまの−まうで、¥てんわうじ−まうで/など/に/は、¥ふたつ−がはら/の¥みつ−むね/に¥つくつ/たる¥ふね/に¥のり、¥つぎ/の¥ふね¥にさんじつ−そう¥こぎ−つづけ/て/こそ¥あり/し/に、¥いま/は¥けしかる¥かきすゑ−やかた−ぶね/に¥おおまく¥ひか/せ、¥み/も¥なれ/ぬ¥つはもの=ども/に¥ぐせ/られ/て、¥けふ/を¥かぎり/に¥みやこ/を¥いで/て、¥なみぢ¥はるか/に¥おもむか/れ/けん、¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥しん−だいなごん/は、¥しざい/に¥おこなは/る/べかり/し¥ひと/の、¥るざい/に¥なだめ/られ/ける¥こと/は、¥ひとへに¥こまつ=どの/の¥やうやう/に¥まうさ/れ/ける/に¥よつ/て/なり。¥その−ひ/は¥つの−くに¥だいもつ/の−うら/に/ぞ¥つき¥たまふ。¥あくる¥みつかのひ、¥だいもつ/の−うら/へ/は¥きやう/より¥お=つかひ¥あり/とて、¥ひしめき/けり。¥だいなごん¥そこ/にて¥うしなへ/と/に/や/と¥きき¥たまへ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥びぜん/の−こじま/へ¥ながす/べし/と/の¥お=つかひ/なり。¥また¥こまつ=どの/より¥おん=ふみ¥あり。「¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥みやこ¥ちかき¥かた−やまざと/に/も¥おき¥たてまつら/ばや/と、¥さ/しも¥まうし/つる¥こと/の¥かなは/ざり/ける¥こと/こそ¥よ/に¥ある¥かひ/も¥さふらは/ね。¥さり/ながら/も¥おん=いのち/ばかり/を/ば、¥こひ−うけ¥たてまつ/て¥さふらふ/ぞ。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/とて、¥なんば/が¥もと/へ/も、「¥よくよく¥みやづかへP150¥たてまつれ。¥あひ−かまへ/て、¥おん=こころ/に/ばし¥たがふ/な」/など¥のたまひ−つかはし、¥たび/の¥よそほひ、¥こまごま/と¥さた−し、¥おくら/れ/たり。¥しん−だいなごん/は¥さ/しも¥かたじけなう¥おぼしめさ/れ/つる¥きみ/に/も、¥はなれ¥まゐらせ、¥つか/の−ま/も¥さり−がたう¥おもは/れ/ける¥きたのかた、¥をさなき¥ひとびと/に/も、¥みな¥わかれ−はて/て、¥こ/は¥いづち/へ/とて¥ゆく/らん。¥ふたたび¥こきやう/に¥かへつ/て、¥さいし/を¥あひ−み/ん¥こと/も¥あり−がたし。¥ひととせ¥さんもん/の¥そしよう/に¥よつ/て、¥すでに¥ながさ/れ/し/を/も、¥きみ¥をしま/せ¥たまひ/て、¥にし/の−しちでう/より¥めし−かへさ/れ/ぬ。¥され/ば¥これ/は¥きみ/の¥おん=いましめ/に/も¥あら/ず、¥こ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や」/と、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし/て、¥なき−かなしめ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥あけ/けれ/ば、¥ふね¥おし−いだい/て¥くだり¥たまふ/に¥みち−すがら¥ただ¥なみだ/に/のみ¥むせん/で、¥ながらふ/べし/と/は¥おぼえ/ね/ども、¥さすが¥つゆ/の−いのち/は¥きえ−やら/ず、¥あと/の¥しらなみ¥へだつれ/ば、¥みやこ/は¥しだいに¥とほざかり、¥ひかず¥やうやう¥かさなれ/ば、¥ゑんごく/は¥すでに¥ちかづき/ぬ。¥びぜん/の−こじま/に¥こぎ−よせ/て、¥たみ/の¥いへ/の¥あさまし=げ/なる¥しば/の¥いほり/に¥いれ¥たてまつる。¥しま/の¥ならひ、¥うしろ/は¥やま、¥まえ/は¥うみ、¥いそ/の¥まつかぜ¥なみ/の¥おと、¥いづれ/も¥あはれ/は¥つきせ/ず。¥
「あこやのまつ」(『あこやのまつ』)S0209¥およそ¥しん−だいなごん¥いち−にん/に/も¥かぎら/ず、¥いましめ/を¥かうむる¥ともがら¥おほかり/き。¥あふみの−ちうじやう−にふだう−れんじやうP151¥さどの−くに、¥やましろの−かみ−もとかぬ¥はうきの−くに、¥しきぶ/の−たいふ−まさつな¥はりまの−くに、¥そう−はうぐわん−のぶふさ¥あはの−くに、¥しん−へい−はうぐわん−すけゆき/は¥みまさかの−くに/と/ぞ¥きこえ/し。¥をりふし¥にふだう−しやうこく/は、¥ふくはら/の¥べつげふ/に¥おはし/ける/が、¥おなじき−はつかのひ、¥つの−さゑもん−もりずみ/を¥ししや/にて、¥かどわき=どの/の¥もと/へ、「¥それ/に¥あづけ−おき¥たてまつ/たる¥たんばの−せうしやう/を、¥いそぎ¥これ/へ¥たべ。¥ぞんずる¥むね¥あり」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥さいしやう、「¥さら/ば¥ただ¥あり/し¥とき、¥と/も−かう/も¥なり/たり/せ/ば、¥いか/に/か¥せ/ん。¥ふたたび¥もの/を¥おもは/せ/んずる¥こと/の¥かなし−さ/よ」/とて、¥いそぎ¥ふくはら/へ¥くだり¥たまふ/べき¥よし¥のたまへ/ば、¥せうしやう¥なくなく¥いで−たた/れ/けり。¥きたのかた¥いげ/の¥にようばう=たち/は、「¥かなは/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥なほ/も¥さいしやう/の¥よき¥やう/に¥まうさ/せ¥たまへ/かし」/と¥なげか/れ/けれ/ば、¥さいしやう、「¥ぞんずる/ほど/の¥こと/を/ば¥まうし/つ。¥いま/は¥よ/を¥すて/ん/より¥ほか、¥また¥なにごと/を/か¥まうす/べき。¥たとひ¥いづく/の¥うら/に/も¥おはせよ、¥わが¥いのち/の¥あら/ん¥かぎり/は、¥とぶらひ¥たてまつる/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥せうしやう/は¥ことし¥みつ/に¥なり¥たまふ¥をさなき¥ひと/の¥おはし/けれ/ども、¥ひごろ/は¥わかき¥ひと/にて、¥きんだち/など/の¥こと/を/ば¥さ/しも¥こまやか/に/も¥おはせ/ざり/しか/ども、¥いまは/の−とき/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥さすが¥なつかしう/や¥おもは/れ/けん、「¥をさなき¥もの/を¥いま−いちど¥み/ばや」/と¥のたまへ/ば、¥めのと¥いだい/て¥まゐり/たり。¥せうしやう¥ひざ/の¥うへ/に¥おき、¥かみ¥かき−なで、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥あはれ¥なんぢ¥しちさい/に¥なら/ば、¥をとこ/に¥なし/て、¥きみ/へ¥まゐらせ/ん/と/こそ¥おもひ/し/に、¥され/ども¥いま/は¥いふ¥かひ−なし。P152¥もし¥ふしぎ/に¥いのち¥いき/て、¥おひ−たち/たら/ば、¥ほふし/に¥なつ/て、¥わが¥のち/の−よ/を¥よく¥とぶらへよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥いまだ¥いとけなき¥おんこころ/に、¥なにごと/を/か¥きき−わき¥たまふ/べき/なれ/ども、¥うち−うなづき¥たまへ/ば、¥せうしやう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥ははうへ¥めのと/の−にようばう、¥その¥ざ/に¥いくら/も¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥ひとびと、¥こころ−ある/も¥こころ−なき/も、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥
ふくはら/の¥お=つかひ、¥こんや¥とば/まで¥いで/させ¥たまふ/べき¥よし/を¥まうす。¥せうしやう、「¥いく−ほど/も¥のび/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥こよひ/ばかり/は¥みやこ/の¥うち/にて¥あかさ/ばや」/と¥のたまへ/ども、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を、¥しきり/に¥まうし/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず、¥その¥よ¥とば/へ/ぞ¥いで/られ/ける。¥さいしやう¥あまり/の¥もの−う−さ/に、¥こんど/は¥のり/も¥ぐし¥たまは/ず、¥せうしやう/ばかり/ぞ¥のり¥たまふ。¥おなじき−にじふににち¥せうしやう¥ふくはら/へ¥くだり−つき¥たまふ。¥にふだう−しやうこく、¥びつちうの−くに/の¥ぢうにん¥せのをの−たらう−かねやす/に¥おほせ/て、¥びつちうの−くに/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥かねやす/は¥さいしやう/の¥かへり−きき¥たまは/んずる¥ところ/を¥おそれ/て、¥いたう¥きびしう/も¥あたり¥たてまつら/ず、¥みち−すがら/も¥やうやう/に¥いたはり¥まゐらせ/けれ/ども、¥せうしやう¥すこし/も¥なぐさみ¥たまふ¥こと/も¥なく、¥よる−ひる¥ただ¥ほとけ/の¥み=な/を/のみ¥となへ/て、¥ひとへに¥ちち/の¥こと/を/ぞ¥いのら/れ/ける。¥さる−ほど/に¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/は、¥びぜん/の−こじま/に¥おはし/ける/を、¥これ/は¥なほ¥ふなつき¥ちかう/て、¥あしかり/な/ん/とて、¥ぢ/へ¥わたし¥たてまつり、¥びぜん¥びつちう/の¥さかひ、¥にはせ/の−がう、¥きび/の−なかやま、¥ありき/の−べつしよ/と¥いふ¥やまでら/に¥おき¥たてまつる。¥それ/より¥せうしやう/の¥おはし/ける¥びつちう/の¥せのを/と、¥ありき/の−べつしよ/の¥あひだ/は、¥わづか¥ごじつちやう/に¥たら/ぬ¥ところ/なれ/ば、¥せうしやう¥さすがP153¥そなた/の¥かぜ/も¥なつかしう/や¥おもは/れ/けん、¥ある−とき¥かねやす/を¥めし/て、「¥これ/より¥ちち¥だいなごん=どの/の¥おん=わたり¥あん/なる¥ありき/の−べつしよ/とかや/へ/は¥いか/ほど¥ある/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、¥かねやす¥すぐ/に¥しらせ¥たてまつ/て/は、¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、「¥かたみち¥じふにさんにち¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥その−とき¥せうしやう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥につぽん/は¥むかし¥さんじふさん−か−こく/にて¥あり/し/を、¥なかごろ¥ろくじふろく−か−こく/に/は¥わけ/られ/たん/なり。¥さいふ¥びぜん¥びつちう¥びんご/も、¥もと/は¥いつ−こく/にて¥あり/ける/なり。¥また¥あづま/に¥きこゆる¥では¥みちの−くに/も、¥むかし/は¥ろくじふろく−ぐん/が¥いつ−こく/なり/し/を、¥じふにぐん¥さき−わかつ/て¥のち、¥ではの−くに/と/は¥たて/られ/たん/なり。¥され/ば¥さねかたの−ちうじやう¥あうしう/へ¥ながさ/れ/し¥とき、¥たう−ごく/の¥めいしよ、¥あこや/の−まつ/を¥み/ん/とて、¥くに/の¥うち/を¥たづね−まはる/に、¥もとめ−かね/て¥すでに¥むなしう¥かへら/ん/と¥し/ける/が、¥みち/にて¥ある¥らうをう/に¥ゆき−あひ/たり。¥ちうじやう、『¥やや¥ご=へん/は¥ふるい¥ひと/と/こそ¥みれ。¥たう−ごく/の¥めいしよ、¥あこや/の−まつ/と¥いふ¥ところ/や¥しつ/たる』/と¥とふ/に、『¥まつたく¥くに/の¥うち/に/は¥さふらは/ず、¥ではの−くに/に/ぞ¥さふらふ/らん』/と¥まうし/けれ/ば、『¥さて/は¥なんぢ/も¥しら/ざり/けり。¥いま/は¥よ¥すゑ/に¥なつ/て、¥くに/の¥めいしよ/を/も、¥はや¥みな¥よび¥うしなひ/ける/に/こそ』/とて、¥すでに¥すぎ/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥らうをう¥ちうじやう/の¥そで/を¥ひかへ/て、『¥あはれ¥きみ/は、¥
みちのく/の¥あこや/の−まつ/に¥こ−がくれ/て¥いづ/べき¥つき/の¥いで/も¥やら/ぬ/か W008
/と¥いふ¥うた/の¥こころ/を¥もつて、¥たう−ごく/の¥めいしよ、¥あこや/の−まつ/と/は¥おん=たづね¥さふらふ/か。¥それ/は¥むかし¥りやうこく/が¥いつこく/なり/し¥とき、¥よみ¥はんべり/し¥うた/なり。¥じふに−ぐん¥さき−わかつ/て¥のち/は、¥ではの−くに/に/ぞP154¥さふらふ/らん』/と¥まうし/けれ/ば、¥さら/ば/とて¥さねかたの−ちうじやう/も、¥ではの−くに/に¥こえ/て/こそ、¥あこや/の−まつ/を/ば¥み/てげれ。¥つくし/の¥ださいふ/より¥みやこ/へ、¥はらか/の¥つかひ/の¥のぼる/こそ、¥かちぢ¥じふごにち/と/は¥さだめ/た/なれ。¥すでに¥じふにさんにち/と¥まうす/は、¥これ/より¥ほとんど¥ちんぜい/へ¥げかう¥ござんなれ。¥とほし/と¥いふ/とも、¥びぜん¥びつちう¥びんご/の¥あひだ/は、¥りやうさんにち/に/は¥よも¥すぎ/じ。¥ちかい/を¥とほう¥まうす/は、¥ちち¥だいなごん=どの/の¥おん=わたり¥あん/なる¥ところ/を、¥なりつね/に¥しらせ/じ/とて/こそ¥まうす/らめ」/とて、¥その−のち/は¥こひしけれ/ども¥とひ¥たまは/ず。¥
「しんだいなごんのしきよ」(『だいなごんのしきよ』)S0210¥さる−ほど/に¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ、¥たんばの−せうしやう−なりつね、¥へい−はうぐわん−やすより、¥これ¥さん−にん/を/ば、¥さつまがた¥きかいがしま/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥かの¥しま/へ/は¥みやこ/を¥いで/て、¥はるばる/と¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのい/で¥ゆく¥ところ/なり。¥おぼろ=げ/にて/は¥ふね/も¥かよは/ず、¥しま/に/は¥ひと¥まれ/なり/けり。¥おのづから¥ひと/は¥あれ/ども、¥いしやう¥なけれ/ば、¥この¥ど/の¥ひと/に/も¥に/ず、¥いふ¥ことば/を/も¥きき−しら/ず。¥み/に/は¥しきり/に¥け¥おひ/つつ、¥いろ¥くろう/して¥うし/の/ごとし。¥をとこ/は¥ゑぼし/も¥き/ず、¥をんな/は¥かみ/も¥さげ/ざり/けり。¥しよく−する¥もの/も¥なけれ/ば、¥つねに¥ただ¥せつしやう/を/のみ¥さき/と¥す。¥しづがやまだ/を¥かへさ/ね/ば、¥べいこく/の¥るゐ/も¥なく、¥その/の¥くは/を¥とら/ざれ/ば、P155¥けんばく/の¥たぐひ/も¥なかり/けり。¥しま/の¥うち/に/は¥たかき¥やま¥あり。¥とこしなへ/に¥ひ¥もゆ。¥いわう/と¥いふ¥もの¥みち−みて/り。¥かるがゆゑ/に/こそ¥いわう/が−しま/と/は¥なづけ/たれ。¥いかづち¥つね/に、¥なり−あがり、¥なり−くだり、¥ふもと/に/は¥あめ¥しげし。¥いち−にち¥へんし¥ひと/の¥いのち/の¥たえ/て¥ある/べき¥やう/も¥なし。¥しん−だいなごん/は¥すこし¥くつろぐ¥こと/も/や/と¥おもは/れ/ける/が、¥しそく¥たんばの−せうしやう−なりつね¥いげ¥さん−にん、¥さつまがた¥きかいがしま/へ¥ながさ/れ/ぬ/と¥きい/て、¥いま/は¥なに/を/か¥ごす/べき/とて、¥しゆつけ/の¥こころざし/の¥さふらふ¥よし/を、¥たより/に¥つけ/て、¥こまつ=どの/へ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/へ¥うかがひ¥まうし/て、¥ごめん¥あり/けり。¥えいぐわ/の¥たもと/を¥ひき−かへ/て、¥うき−よ/を¥よそ/に¥すみぞめ/の¥そで/に/ぞ¥やつれ¥たまひ/ける。¥さる−ほど/に¥だいなごん/の¥きたのかた/は、¥みやこ/の¥きたやま¥うんりんゐん/の¥へん/に¥しのう/で¥おはし/ける/が、¥さら/ぬ/だに、¥すみ−なれ/ぬ¥ところ/は¥もの−うき/に、¥いとど¥しのば/れ/けれ/ば、¥すぎ−ゆく¥つきひ/を¥あかし−かね、¥くらし−わづらふ¥さま/なり/けり。¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥おほかり/けれ/ども、¥あるひは¥よ/を¥おそれ、¥あるひは¥ひとめ/を¥つつむ/ほど/に、¥とひ−とぶらふ¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥され/ども¥その¥なか/に¥げん−ざゑもん/の−じよう−のぶとし/と¥いふ¥さぶらひ¥いち−にん、¥なさけ−ある¥もの/にて、¥つね/は¥とぶらひ¥たてまつる。¥ある−とき¥きたのかた、¥のぶとし/を¥めし/て、「¥まことや¥これ/に/は、¥びぜん/の−こじま/に¥おはし/ける/が、¥この−ほど¥きけ/ば、¥ありき/の−べつしよ/とかや/に¥おはす/なり。¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥はかなき¥ふで/の¥あと/を/も¥たてまつり、¥おん=かへりごと/を/も¥いま−いちど¥み/ばや/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥のぶとし¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥われ¥えうせう/の¥とき/より、¥おん=あはれみ/を¥かうぶつ/て¥めし−つかは/れ、P156¥かたとき/も¥はなれ¥まゐらせ¥さふらは/ず。¥
めさ/れ¥まゐらせ/し¥おん=こゑ/の¥みみ/に¥とどまり、¥いさめ/られ¥まゐらせ/し¥おん=ことば/の¥きも/に¥めいじ/て、¥わするる¥こと/も¥さふらは/ず。¥さいこく/へ¥おん=くだり¥さふらひ/し¥とき/も、¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらひ/しか/ども、¥ろくはら/より¥ゆるされ¥なけれ/ば、¥ちから¥および¥さふらは/ず。¥たとひ¥こんど/は¥いか/なる¥うき−め/に/も¥あひ¥さふらへ、¥おん=ふみ¥たまはつ/て¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥やがて¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も¥めんめん/に¥おん=ふみ¥あり。¥のぶとし¥この¥おん=ふみ=ども/を¥たまはつ/て、¥はるばる/と¥びぜんの−くに¥ありき/の−べつしよ/へ¥たづね−くだり、¥まづ¥あづかり/の−ぶし¥なんばの−じらう−つねとほ/に、¥あんない/を¥いひ−いれ/たり/けれ/ば、¥つねとほ¥こころざし/の/ほど/を¥かんじ/て、¥やがて¥おん=げんざん/に¥いれ/てげり。¥だいなごん−にふだう=どの/は、¥ただいま/しも¥みやこ/の¥こと/を/のみ¥のたまひ−いだし/て、¥なげき−しづん/で¥おはし/ける¥ところ/に、「¥きやう/より¥のぶとし/が¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいなごん¥おき−あがつ/て、「¥いか/に/や−いか/に、¥ゆめ/か/や¥うつつ/か、¥これ/へ¥これ/へ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥のぶとし¥おん=そば¥ちかう¥まゐつ/て、¥おん=ありさま/を¥み¥たてまつる/に、¥まづ¥おん=すまひどころ/の¥もの−う−さ/は、¥さる−こと/なり。¥すみぞめ/の¥おん=そで/を¥み¥たてまつる/に、¥め/も¥くれ¥こころ/も¥きえ−はて/て、¥なみだ/も¥さら/に¥とどまら/ず。¥やや¥あつ/て¥なみだ/を¥おさへ/て、¥きたのかた/の¥おほせ¥かうぶつ/し¥しだい、¥こまごま/と¥かたり¥まうす。¥その−のち¥おん=ふみ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、¥みづぐき/の¥あと/は¥なみだ/に¥かき−くれ/て、¥そこはか/と/は¥みえ/ね/ども、¥をさなき¥ひとびと/の¥あまり/に¥こひ−かなしみ¥たまふ¥ありさま、¥わが−み/も¥つきせ/ぬ¥もの−おもひ/に、¥たへ−しのぶ/べう/も¥なし/など¥かか/れ/たれ/ば、¥ひごろ/の¥こひし−さ/は¥こと/の−かず/なら/ず/と/ぞ¥かなしみ¥たまひ/ける。P157¥
かくて¥しごにち/も¥すぎ/しか/ば、¥のぶとし、「¥これ/に¥さふらひ/て、¥ご=さいご/の¥おん=ありさま/を/も¥み¥まゐらせ/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥あづかり/の−ぶし、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を¥まうす¥あひだ、¥だいなごん、「¥いく−ほど/も¥のび/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に¥ただ¥とう¥かへれ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。「¥われ/は¥ちかう¥うしなは/れ/ん/と¥おぼゆる/ぞ。¥この−よ/に¥なき¥もの/と¥きか/ば、¥わが¥のち/の−よ/を¥よく¥とぶらへ/よ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥おん=ぺんじ¥かい/て¥たう/だり/けれ/ば、¥のぶとし¥これ/を¥たまはつ/て、「¥また/こそ¥まゐり¥さふらは/め」/とて、¥いとま¥まうし/て¥いで/けれ/ば、「¥なんぢ/が¥また¥こ/ん¥たび/を¥まち−つく/べし/と/も¥おぼえ/ぬ/ぞ。¥あまり/に¥なごり−をしう¥おぼゆる/に、¥しばし−しばし」/と¥のたまひ/て、¥たびたび¥よび/ぞ¥かへさ/れ/ける。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥のぶとし¥なみだ/を¥おさへ/つつ、¥みやこ/へ¥かへり−のぼり/けり。¥きたのかた/に、¥おん=ぺんじ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまへ/ば、¥はや¥おん=さま¥かへ/させ¥たまひ/たり/と¥おぼしく/て、¥おん=ふみ/の¥おく/に¥おん=ぐし/の¥ひとふさ¥あり/ける/を、¥ふため/と/も¥み¥たまは/ず、¥かたみ/こそ¥いま/は¥なかなか¥あだ/なれ/とて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も、¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。¥さる−ほど/に¥おなじき−はちぐわつ−じふくにち、¥だいなごん−にふだう=どの/を/ば、¥びぜん¥びつちう/の¥さかひ、¥にはせ/の−がう、¥きび/の−なかやま、¥ありき/の−べつしよ/にて/ぞ¥つひに¥うしなひ¥たてまつる。¥その¥さいご/の¥ありさま¥やうやう/に/ぞ¥きこえ/ける。¥はじめ/は¥さけ/に¥どく/を¥いれ/て¥まゐらせ/けれ/ども、¥かなは/ざり/けれ/ば、¥にぢやう/ばかり¥あり/ける¥きし/の¥した/に¥ひし/を¥うゑ/て、¥つき−おとし¥たてまつれ/ば、¥ひし/に¥つらぬかつ/て/ぞ¥うせ/られ/ける。¥むげ/に¥うたてき¥こと=ども/なり。¥ためし¥すくなう/ぞ¥きこえ/し。P158¥
きたのかた¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥かはら/ぬ¥すがた/を、¥いま−いちど¥み/も¥し、¥みえ/ばや/と¥おもひ/て/こそ、¥けふ/まで¥さま/を/ば¥かへ/ざり/つれ。¥いま/は¥なに/に/かは¥せ/ん」/とて、¥ぼだいゐん/と¥いふ¥てら/に¥おはし/て、¥おん=さま/を¥かへ、¥かた/の/ごとく/の¥ぶつじ¥いとなみ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥この¥きたのかた/と¥まうす/は、¥やましろの−かみ−あつかた/の¥むすめ、¥ごしらかはの−ほふわう/の¥おん=おもひびと、¥ならび−なき¥びじん/にて¥おはし/ける/を、¥この¥だいなごん¥あり−がたき¥ご=ちようあい/の¥ひと/にて、¥くだし¥たまはら/れ/たり/ける/とかや。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も、¥めんめん/に¥はな/を¥たをり、¥あか/の−みづ/を¥むすん/で、¥ちち/の¥ごせ/を¥とぶらひ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥かくて¥とき¥うつり¥こと¥さつ/て、¥よ/の¥かはり−ゆく¥ありまさ/は、¥ただ¥てんにん/の¥ごすゐ/に¥こと/なら/ず。¥
「とくだいじのいつくしままうで」(『とくだいじのさた』)S0211¥ここ/に¥とくだいじの−だいなごん−じつていの−きやう/は、¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/に¥だいしやう/を¥こえ/られ/て、¥しばらく¥よ/の¥なら/ん¥やう/を¥み/ん/とて、¥だいなごん/を¥じし/て¥ろうきよ−し/て¥おはし/ける/が、¥しゆつけ−せ/ん/と¥のたまへ/ば、¥み=うち/の¥じやうげ¥みな¥なげき−かなしび−あへ/り/けり。¥その¥なか/に¥とう−くらんど/の−たいふ−しげかぬ/と¥いふ¥しよだいぶ¥あり。¥しよじ/に¥こころ−え/たる¥ひと/にて¥あり/ける/が、¥ある¥つき/の¥よ、¥とくだいじ=どの¥ただ¥いち−にん、¥なんめん/の¥み=かうし¥あげ/させ、¥つき/に¥うそぶい/て¥おはし/ける¥ところ/へ、¥とう−くらんど¥まゐり/たり。P159「¥た/そ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥しげかぬ¥ざふらふ」。「¥よ/は¥はるか/に¥ふけ/ぬ/らん/に、¥いか/に¥ただいま¥なにごと/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥こんや/は¥つき¥さえ、¥よろづ¥こころ/の¥すむ¥まま/に¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥とくだいじ=どの、「¥しんべう/に/も¥まゐり/たり。¥まことに¥こよひ/は¥なに/と/やらん¥こころ−ぼそう/て、¥よ/に¥とぜん/なる/に」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥さて¥むかし−いま/の¥ものがたり=ども¥し¥たまひ/て¥のち、¥だいなごん¥のたまひ/ける/は、「¥つらつら¥へいけ/の¥はんじやう−する¥ありさま/を¥みる/に、¥ちやくし¥しげもり、¥じなん¥むねもり、¥さう/の−だいしやう/なり。¥やがて¥さんなん¥とももり、¥ちやくそん¥これもり/も¥ある/ぞ/かし。¥かれ/も¥これ/も¥しだい/に/なら/ば、¥たけ/の¥ひとびと/は、¥いつ¥だいしやう/に¥あたり−つく/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥され/ば¥つひ/の¥こと/なり、¥しゆつけ−せ/ん」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥とう−くらんど¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥きみ/の¥ご=しゆつけ¥さふらは/ば、¥み=うち/の¥じやうげ¥みな¥まどひもの/と¥なり¥さふらひ/な/んず。¥しげかぬ/こそ、¥このごろ¥めづらしき¥こと/を¥あんじ−いだし/て¥さふらへ。¥たとへば¥あきの−いつくしま/を/ば、¥へいけ¥なのめ/なら/ず¥あがめ−うやまは/れ¥さふらふ。¥これ/へ¥おん=まゐり¥さふらへ/かし。¥かの¥やしろ/に/は¥ないし/とて、¥いう/なる¥まひひめ¥あまた¥さふらふ/なれ/ば、¥めづらしく¥おもひ¥まゐらせ/て、¥もてなし¥まゐらせ¥さふらは/んず/らん。¥なにごと/の¥ごきせい/やらん/と¥たづね¥まうし¥さふらは/ば、¥あり/の−まま/に¥おほせ¥さふらふ/べし。¥さて¥おん=げかう/の¥とき、¥むねと/の¥ないし¥いちりやう−にん、¥みやこ/まで¥めし−ぐせ/させ¥たまひ/て¥さふらは/ば、¥さだめて¥にしはちでう/の−てい/へ/ぞ¥まゐり¥さふらは/んず/らん。¥にふだう¥なにごと/ぞ/と¥たづね¥まうさ/れ¥さふらは/ば、¥あり/の−まま/に/ぞ¥まうし¥さふらは/んず/らん。¥にふだう/は¥きはめて¥もの−めで−し¥たまふ¥ひと/なれ/ば、¥しかる/べき¥はからひ/も¥あん/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥とくだいじ=どの、「P160¥
これ/こそ¥おもひ−よら/ざり/つれ。¥さら/ば¥やがて¥まゐら/ん」/とて¥にはか/に¥しやうじん¥はじめ/つつ、¥いつくしま/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥げに/も¥いう/なる¥まひひめ=ども¥おほかり/けり。「¥
そもそも¥たうしや/へ/は、¥われ=ら/が¥しう/の、¥へいけ/の¥きんだち=たち/こそ、¥おん=まゐり¥さぶらふ/に、¥これ/こそ¥めづらしき¥おん=まゐり/にて¥さぶらへ」/とて、¥むねと/の¥ないし¥じふ−よ−にん、¥よる¥ひる¥つきそひ¥まゐらせ/て、¥やうやう/に¥もてなし¥たてまつる。¥さて¥ないし=ども、「¥なにごと/の¥ご=きせい/やらん」/と¥たづね¥さふらへ/ば、「¥だいしやう/を¥ひと/に¥こえ/られ/て、¥その¥いのり/の¥ため/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥いちしち−にち¥ご=さんろう¥あつ/て、¥かぐら/を¥そうし、¥ふうぞく、¥さいばら¥うたは/る。¥その¥あひだ/に¥ぶがく/も¥さん−か−ど/まで¥あり/けり。¥さて¥おん=げかう/の¥とき、¥むねと/の¥ないし¥じふ−よ−にん、¥ふね¥おし−たて/て、¥ひとひぢ¥おくり¥たてまつる。¥とくだいじ=どの、「¥あまり/に¥なごり−をしき/に、¥いま¥ひとひぢ、¥いま¥ふつかぢ」/と¥のたまひ/て、¥みやこ/まで¥めし−ぐせ/させ¥たまひ、¥とくだいじ/の¥てい/へ¥いれ/させ¥おはしまし、¥やうやう/に¥もてなし、¥さまざま/の¥ひきでもの¥たう/で¥かへさ/れ/けり。¥ないし=ども、「¥はるばる¥これ/まで¥のぼり/たら/んずる/に、¥いかで/か¥われ=ら/が¥しう/の、¥へいけ/へ¥まゐら/で¥ある/べき/か」/とて、¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん−し¥たまひ/て、「¥いか/に¥ないし=ども/は、¥ただいま¥なにごと/の¥れつさん/ぞ/や」/と¥のたまへ/ば、「¥とくだいじ=どの/の¥いつくしま/へ¥おん=まゐり¥さぶらふ/ほど/に、¥われ=ら/が¥ふね/を¥したて/て、¥ひとひぢ¥おくり¥まゐらせ/て、¥それ/より¥いとま¥まうし/けれ/ば、¥とくだいじ=どの、¥さり/とて/は¥なごり−をしき/に、¥いま¥ひとひぢ、¥いま¥ふつかぢ/と¥おほせ/られ/て、¥これ/まで¥めし−ぐせ/られ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥にふだう、「¥とくだいじ/はP161¥なにごと/の¥きせい/に、¥いつくしま/へ/は¥まゐら/れ/ける/やらん」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥だいしやう/を¥ひと/に¥こえ/られ/て、¥その¥いのり/の¥ため/と/こそ¥おほせ¥はんべり/つれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥その−とき¥にふだう¥おほき/に¥うち−うなづい/て、「¥わうじやう/に¥さ/しも¥あらた/なる¥れいぶつ−れいしや/の¥いくら/も¥まします/を¥さし−おい/て、¥じやうかい/が¥あがめ¥たてまつる¥いつくしま/へ¥はるばる/と¥まゐら/れ/ける/こそ¥いとほしけれ。¥それ−ほど/まで¥せつ/なら/ん¥うへ/は」/とて、¥ちやくし¥しげもり¥ないだいじん/の−さだいしやう/にて¥おはし/ける/を¥じせ/させ¥たてまつり、¥じなん¥むねもり¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥おはし/ける/を¥こえ/させ/て、¥とくだいじ/を¥さだいしやう/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥あはれ¥かしこき¥はからひ/かな。¥しん−だいなごん/も、¥かやう/の¥はかりごと/を/ば¥し¥たまは/で、¥よし−なき¥むほん¥おこし/て、¥わが−み/も¥しそん/も、¥ほろび/ぬる/こそ¥うたてけれ。¥
「さんもんめつばう」(『さんもんめつばう だうじゆかつせん』)S0212¥さる−ほど/に、¥ほふわう/は¥みゐでら/の¥こうけん−そうじやう/を¥ご=しはん/と/して、¥しんごん/の¥ひほふ/を¥でんじゆ−せ/させ¥おはします。¥だいにちきやう、¥こんがうちやうきやう、¥そしつぢきやう、¥この¥さんぶ/の¥ひきやう/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥くぐわつ−よつかのひ、¥みゐでら/にて¥ご=くわんぢやう¥ある/べき¥よし¥きこゆ。¥さんもん/の¥だいしゆ¥いきどほり¥まうし/ける/は、「¥むかし/より¥ご=くわんぢやう¥おん=じゆかい、¥みな¥たうざん/に/して¥とげ/させ¥たまふ¥こと¥せんぎ/なり。P162¥なかんづく¥さんわう/の¥けだう/は、¥じゆかい¥くわんぢやう/の¥ため/なり。¥しかる/を¥いま¥みゐでら/にて¥とげ/させ¥おはしまさ/ば、¥てら/を¥いつかう¥やき−はらふ/べし」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ほふわう、「¥これ¥むやく/なり」/とて、¥おん=けぎやう/ばかり¥ご=けつぐわん¥あつ/て、¥ご=くわんぢやう/を/ば¥おぼしめし¥とどまら/せ¥たまひ/けり。¥され/ども¥ご=ほんい/なれ/ば/とて、¥こうけん−そうじやう/を¥めし−ぐし/つつ、¥てんわうじ/へ¥ご=かう¥なつ/て、¥ごちくわうゐん/を¥たて、¥かめゐ/の¥みづ/を¥ごびやう/の¥ちすゐ/と¥さだめ、¥ぶつぽふ¥さいしよ/の¥れいち/にて/ぞ、¥でんぽふ−くわんぢやう/を/ば¥とげ/させ¥おはします。¥さんもん/の¥さうどう/を¥しづめ/られ/ん/が¥ため/に、¥みゐでら/にて¥ご=くわんぢやう/は¥なかり/しか/ども、¥さんもん/に/は¥だうじゆ¥がくしやう、¥ふくわい/の¥こと¥いで−き/て、¥かつせん¥どど/に¥およぶ。¥まいど/に¥がくりよ¥うち−おとさ/る。¥さんもん/の¥めつばう、¥てうか/の¥おん=だいじ/と/ぞ¥みえ/し。¥だうじゆ/と¥いふ/は、¥がくしやう/の¥しよじう/なり/ける¥わらんべ/の、¥ほふし/に¥なり/たる/や、¥もしは¥ちうげん−ぼふし=ばら/にて/も/や¥あり/けん。¥ひととせ¥こんがうじゆゐん/の¥ざす、¥かくじん−ごん−そうじやう¥ぢさん/の¥とき、¥さんたふ/に¥けつばん−し/て、¥げしゆ/と¥かうし/て¥ほとけ/に¥はな¥まゐらせ/し¥もの=ども/なり。¥しかる/を¥きんねん¥ぎやうにん/とて、¥だいしゆ/を/も¥こと/と/も¥せ/ず、¥かく¥どど/の¥いくさ/に¥うち−かち/ぬ。¥だうじゆ=ら¥ししゆ/の¥めい/を¥そむい/て、¥すでに¥むほん/を¥くはだつ、¥すみやか/に¥ちうばつ−せ/らる/べき¥よし、¥だいしゆ¥くげ/へ¥そうもん−し、¥ぶけ/に¥ふれ−うつたふ。¥これ/に¥よつ/て¥にふだう−しやうこく¥ゐんぜん/を¥うけたまはつ/て、¥きの−くに/の¥ぢうにん、¥ゆあさの−ごん/の−かみ−むねしげ¥いげ、¥きない/の¥つはもの¥にせん−よ−にん、¥だいしゆ/に¥さし−そへ/て、¥だうじゆ/を¥せめ/らる。¥だうじゆ¥ひごろ/は¥とうやう−ばう/に¥あり/ける/が、¥これ/を¥きい/て、¥あふみの−くに¥さんが/の−しやう/に¥げかう−し/て、¥すた/の¥せい/を¥そつし/て¥また¥とうざん−し、¥さういざか/にP163¥じやうくわく/を¥かまへ/て¥たて−こもる。¥おなじき−くぐわつ−はつかのひ/の¥たつ/の−いつてん/に、¥だいしゆ¥さんぜんにん、¥くわんぐん¥にせん−よ−にん、¥つがふ¥その¥せい¥ごせん−よ−にん、¥さういざか/に¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥じやう/の¥うち/より¥いしゆみ¥はづし−かけ/たり/けれ/ば、¥だいしゆ¥くわんぐん¥かず/を¥つくし/て¥うた/れ/に/けり。¥だいしゆ/は¥くわんぐん/を¥さきだて/ん/と¥す、¥くわんぐん/は¥また¥だいしゆ/を¥さきだて/ん/と¥あらそふ/ほど/に、¥こころごころ/に¥なつ/て、¥はかばかしう/も¥たたかは/ず。¥だうじゆ/に¥かたらふ¥あくたう/と¥いふ/は、¥しよ−こく/の¥せつたう¥がうたう¥さんぞく¥かいぞく=ら/なり。¥よくしん¥しじやう/に/して、¥ししやう¥ふち/の¥やつ=ばら/なり/けれ/ば、¥われ¥いち−にん/と¥おもひ−きつ/て¥たたかふ/ほど/に、¥こんど/も¥また¥がくしやう¥いくさ/に¥まけ/に/けり。¥
(『さんもんめつばう』)S0213¥その−のち/は¥さんもん¥いよいよ¥あれ−はて/て、¥じふに−ぜんじゆ/の¥ほか/は、¥しぢう/の¥そうりよ¥まれ/なり。¥たにだに/の¥かうえん¥まめつ−し/て、¥だうだう/の¥ぎやうぼふ/も¥たいてん−す。¥しゆがく/の¥まど/を¥とぢ、¥ざぜん/の¥ゆか/を¥むなしう¥せ/り。¥しけう−ごじ/の¥はる/の¥はな/も¥にほは/ず、¥さんだい−そくぜ/の¥あき/の¥つき/も¥くもれ/り。¥さんびやく−よ−さい/の¥ほふとう/を¥かかぐる¥ひと/も¥なく、¥ろくじ−ふだん/の¥かう/の¥けぶり/も¥たえ/や¥し/に/けん。¥だうじや¥たかく¥そびえ/て、¥さんぢう/の¥かまへ/を¥せいかん/の¥うち/に¥さし−はさみ、¥とうりやう¥はるか/に¥ひいで/て、¥しめん/の¥たるき/を¥はくぶ/の¥あひだ/に¥かけ/たり/き。¥され/ども¥いま/は¥くぶつ/を¥みね/の¥あらし/に¥まかせ、¥きんよう/を¥こうれき/に¥うるほし、¥よる/の¥つき¥ともしび/を¥かかげ/て、¥のき/の¥ひま/より¥もり、¥あかつき/の¥つゆ¥たま/を¥たれ/て、¥れんざ/の¥よそほひ/を¥そふ/とかや。¥それ¥まつだい/の¥ぞく/に¥いたつ/て/は、¥さんごく/の¥ぶつぽふ/も¥しだいに¥すゐび−せ/り。¥とほく¥てんぢく/に¥ぶつせき/を¥とぶらふ/に、¥むかし¥ほとけ/の¥のり/を¥とき¥たまひ/し¥ちくりん−しやうじや、¥ぎつこどくをん/も、¥このごろ/は¥こらう−やかん/のP164¥すみか/と¥なつ/て、¥いしずゑ/のみ/や¥のこる/らん。¥はくろち/に/は¥みづ¥たえ/て、¥くさ/のみ¥ふかく¥しげれ/り。¥たいぼん¥げじよう/の¥そとば/も¥こけ/のみ¥むし/て¥かたぶき/ぬ。¥しんだん/に/も¥てんだいさん、¥ごだいさん、¥はくばじ、¥ぎよくせんじ/も、¥いま/は¥ぢうりよ¥なき¥さま/に¥あれ−はて/て、¥だいせうじよう/の¥ほふもん/も、¥はこ/の¥そこ/に/や¥くち/ぬ/らん。¥わが¥てう/に/も¥なんと/の¥しちだいじ¥あれ−はて/て、¥はつしう¥くしう/も¥あと¥たえ、¥あたご¥たかを/も、¥むかし/は¥だうたふ¥のき/を¥ならべ/たり/しか/ども、¥いち−や/の¥うち/に¥あれ−はて/て、¥てんぐ/の¥すみか/と¥なり−はて/ぬ。¥され/ば/に/や、¥さ/しも¥やんごとなかり/つる¥てんだい/の¥ぶつぽふ/も、¥ぢしよう/の¥いま/に¥およん/で、¥ほろび−はて/ぬる/に/や。¥こころ−ある¥ひと/の¥なげき−かなしま/ぬ/は¥なかり/けり。¥なにもの/の¥しわざ/にて/や¥あり/けん、¥りさん−し/ける¥そう/の¥ばう/の¥はしら/に、¥いつしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/たる。¥
いのり−こ/し¥わが¥たつ¥そま/の¥ひき−かへ/て¥ひと¥なき¥みね/と¥あれ/や¥はて/な/む W009¥
これ/は¥むかし¥でんげう−だいし、¥たうざん¥さうさう/の¥はじめ、¥あのくたらさんみやくさんぼだい/の¥ほとけ=たち/に¥いのり¥まうさ/せ¥たまひ/し¥こと/を、¥いま¥おもひ−いで/て¥よみ/たり/ける/に/や。¥いと¥やさしう/ぞ¥きこえ/し。¥やうか/は¥やくし/の¥ひ/なれ/ども、¥なむ/と¥となふる¥こゑ/も¥せ/ず、¥うづき/は¥すゐじやく/の¥つき/なれ/ども、¥へいはく/を¥ささぐる¥ひと/も¥なく、¥あけ/の−たまがき¥かみ−さび/て、¥しめなは/のみ/や¥のこる/らん。P165
「ぜんくわうじえんしやう」(『ぜんくわうじえんしやう』)S0214¥その−ころ¥しなのの−くに¥ぜんくわうじ¥えんしやう/の¥こと¥あり/けり。¥かの¥によらい/は、¥むかし¥ちうてんぢく¥しやゑこく/に、¥ごしゆ/の¥あくびやう¥おこつ/て、¥じんそう¥おほく¥ほろび/し¥とき、¥ぐわつかいちやうじや/が¥ちせい/に¥よつ/て、¥りゆうぐうじやう/より¥えんぶだごん/を¥え/て、¥ほとけ、¥もくれんちやうじや、¥こころ/を¥ひとつ/に¥し/て、¥い−あらはし¥たまへ/る¥いつ−ちやくしゆ−はん/の¥みだ/の¥さんぞん、¥さんごく¥ぶさう/の¥れいざう/なり。¥ぶつめつど/の¥のち、¥てんぢく/に¥とどまら/せ¥たまふ¥こと¥ごひやく−よ−さい、¥され/ども¥ぶつぽふ¥とうぜん/の¥ことわり/にて、¥はくさいこく/に¥うつら/せ¥たまひ/て、¥いつせんざい/の¥のち、¥はくさい/の¥みかど¥せいめいわう、¥わが¥てう/の¥みかど¥きんめい−てんわう/の¥ぎよ=う/に¥および/て、¥かの¥くに/より¥この¥くに/へ¥うつら/せ¥たまひ/て、¥つの−くに¥なんば/の−うら/に/して、¥せいざう/を¥おくら/せ¥おはします。¥つねに¥こんじき/の¥ひかり/を¥はなた/せ¥たまふ。¥これ/に¥よつ/て¥ねんがう/を/ば¥こんくわう/と¥かうす。¥おなじき−さんねん−さんぐわつ−じやうじゆん/に、¥しなのの−くに/の¥ぢうにん¥おほみ/の¥ほんだ−よしみつ、¥みやこ/へ¥のぼり、¥によらい/に¥あひ¥たてまつり、¥やがて¥いざなひ¥まゐらせ/て¥くだり/ける/が、¥ひる/は¥よしみつ¥によらい/を¥おひ¥たてまつり、¥よる/は¥よしみつ¥によらい/に¥おは/れ¥たてまつ/て、¥しなのの−くに/へ¥くだり、¥みのち/の−こほり/に¥あんぢ−し¥たてまつ/し/より¥この−かた、¥せいざう/は¥ごひやくはちじふ−よ−さい、¥され/ども¥えんしやう/は¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥わうぼふ¥つきん/とて/は、¥ぶつぽふ¥まづ¥ばうず/と¥いへ/り。¥され/ば/に/や、¥さ/しも¥やんごとなかり/つる¥れいじP166¥れいさん/の¥おほく¥ほろび−うせ/ぬる¥こと/は、¥わうぼふ/の¥すゑ/に¥なり/ぬる¥ぜんべう/やらん/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥
「やすよりのつと」(『やすよりのつと』)S0215¥さる−ほど/に¥きかいがしま/の¥るにん=ども、¥つゆ/の−いのち¥くさば/の¥すゑ/に¥かかつ/て、¥をしむ/べし/と/に/は¥あら/ね/ども、¥たんばの−せうしやう/の¥しうと¥へい−さいしやう−のりもり/の¥りやう、¥ひぜんの−くに¥かせ/の−しやう/より、¥いしよく/を¥つねに¥おくら/れ/たり/けれ/ば、¥それ/にて/ぞ¥しゆんくわん/も¥やすより/も¥いのち¥いき/て/は¥すごし/ける。¥なか/に/も¥やすより/は¥ながさ/れ/し¥とき、¥すはう/の¥むろづみ/にて¥しゆつけ−し/てげり。¥ほふみやう/を/ば¥しやうせう/と/こそ¥つい/たり/けれ。¥しゆつけ/は¥もと/より¥のぞみ/なり/けれ/ば、¥
つひに¥かく¥そむき−はて/ける¥よ/の−なか/を¥とく¥すて/ざり/し¥こと/ぞ¥くやしき W010¥
たんばの−せうしやう/と¥やすより−にふだう/は、¥もと/より¥くまの−しんじん/の¥ひとびと/にて¥おはし/けれ/ば、「¥いか/に/も−し/て¥この¥しま/の¥うち/に、¥さん−じよ−ごんげん/を¥くわんじやう−し¥たてまつ/て、¥きらく/の¥こと/を¥いのら/ばや」/と¥いふ/に、¥てんぜい¥この¥しゆんくわん/は、¥ふしん¥だいいち/の¥ひと/にて、¥これ/を¥もちひ/ず、¥ににん/は¥おなじ¥こころ/にて、¥もし¥くまの/に¥に/たる¥ところ/も/や¥ある/と、¥しま/の¥うち/を¥たづね−まはる/に、¥あるひは¥りんたう/の¥たへ/なる¥あり、¥こうきんしう/の¥よそほひ¥しなじな/に、¥あるひは¥うんれい/の¥あやしき¥あり、¥へきらりよう/の¥いろ¥ひとつ/にP167¥あら/ず。¥
やま/の¥けしき、¥き/の¥こだち/に¥いたる/まで、¥ほか/より/も¥なほ¥すぐれ/たり。¥みなみ/を¥のぞめ/ば、¥かい¥まんまん/と/して、¥くも/の¥なみ¥けむり/の¥なみ¥ふかく、¥きた/を¥かへりみれ/ば、¥また¥さんがく/の¥がが/たる/より、¥はくせき/の¥りうすゐ¥みなぎり−おち/たり。¥たき/の¥おと¥こと/に¥すさまじく、¥まつかぜ¥かみ−さび/たる¥すまひ、¥ひれう−ごんげん/の¥おはします¥なち/の−お=やま/に¥さ/も¥に/たり/けり。¥さて/こそ¥やがて、¥そこ/を/ば¥なち/の−お=やま/と/は¥なづけ/けれ。¥この¥みね/は¥しんぐう、¥かれ/は¥ほんぐう、¥これ/は¥そんじやう¥その¥わうじ、¥かの¥わうじ/など、¥わうじ−わうじ/の¥な/を¥まうし/て、¥やすより−にふだう¥せんだち/にて、¥たんばの−せうしやう¥あひ−ぐし/つつ、¥ひ−ごと/に¥くまの−まうで/の¥まね/を¥し/て、¥きらく/の¥こと/を/ぞ¥いのり/ける。「¥なむ−ごんげん−こんがうどうじ、¥ねがは−く/は¥あはれみ/を¥たれ/させ¥おはしまし、¥われ=ら/を¥いま−いちど¥こきやう/へ¥かへし−いれ/させ¥たまひ/て、¥さいし/を/も¥みせ/しめ¥たまへ」/と/ぞ¥いのり/ける。¥ひかず¥つもつ/て、¥たち−かふ/べき¥じやうえ/も¥なけれ/ば、¥あさ/の¥ころも/を¥み/に¥まとひ、¥さはべ/の¥みづ/を¥こり/に¥かい/て/は、¥いはだがは/の¥きよき¥ながれ/と¥おもひ−やり、¥たかき¥ところ/に¥あがつ/て/は、¥ほつしんもん/と/ぞ¥くわんじ/ける。¥
やすより−にふだう/は、¥まゐる¥たび−ごと/に、¥さん−じよ−ごんげん/の¥おん=まへ/にて¥のつと/を¥まうす/に、¥ごへいがみ/も¥なけれ/ば、¥はな/を¥たをつ/て¥ささげ/つつ、「¥ゐ¥あたれ/る¥さいし、¥ぢしよう−ぐわんねん¥ひのとのとり、¥つき/の¥ならび/は¥とつき¥ふたつき、¥ひ/の¥かず¥さんびやくごじふ−よかにち、¥きちにち¥りやうしん/を¥えらん/で、¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく¥につぽん¥だいいち¥だいりやうげん、¥ゆや−さん−じよ−ごんげん、¥ひれう−だい−さつた/の¥けうりやう、¥うづ/の¥ひろまへ/に/して、¥しんじん/の¥だいせしゆ、¥うりん−ふぢはらの−なりつね、¥ならびに¥しやみ−しやうせう、¥いつしん¥しやうじやう/の¥まこと/を¥いたし、¥さん−ごふP168¥さうおう/の¥こころざし/を¥ぬきんで/て、¥つつしん/で¥もつて¥うやまつ/て¥まうす。¥それ¥しようじやう−だい−ぼさつ/は、¥さいど−くかい/の¥けうしゆ、¥さんじん−ゑんまん/の¥かくわう/なり。¥あるひは¥とうばう−じやうるりいわう/の¥しゆ、¥しゆびやう−しつぢよ/の¥によらい/なり。¥あるひは¥なんぱう−ふだらく−のうげ/の¥しゆ、¥にふぢう−げんもん/の¥だいじ、¥にやくわうじ/は¥しやば−せかい/の¥ほんじゆ、¥せむいしや/の¥だいじ、¥ちやうじやう/の¥ぶつめん/を¥げんじ/て、¥しゆじやう/の¥しよぐわん/を¥み/て/しめ¥たまへ/り。¥これ/に¥よつ/て、¥かみ¥いちじん/より¥しも¥ばんみん/に¥いたる/まで、¥あるひは¥げんぜ¥あんをん/の¥ため、¥あるひは¥ごしやう−ぜんしよ/の¥ため/に、¥あした/に/は¥じやうすゐ/を¥むすん/で¥ぼんなう/の¥あか/を¥すすぎ、¥ゆふべ/に/は¥しんざん/に¥むかつ/て¥ほうがう/を¥となふる/に、¥かんおう¥おこたる¥こと¥なし。¥がが/たる¥みね/の¥たかき/を/ば、¥しんとく/の¥たかき/に¥たとへ、¥けんけん/たる¥たに/の¥ふかき/を/ば、¥ぐぜい/の¥ふかき/に¥なぞらへ/て、¥くも/を¥わき/て¥のぼり、¥つゆ/を¥しのい/で¥くだる。¥ここ/に¥りやく/の¥ち/を¥たのま/ずん/ば、¥いかで/か¥あゆみ/を¥けんなん/の¥みち/に¥はこば/ん。¥ごんげん/の¥とく/を¥あふが/ずん/ば、¥なんぞ¥かならず/しも¥いうゑん/の¥さかひ/に¥ましまさ/ん/や。¥よつて¥しようじやう−ごんげん、¥ひれう−だい−さつた、¥おのおの¥しやうれん−じひ/の¥まなじり/を¥あひ−ならべ、¥さ−をしか/の¥おん=みみ/を¥ふり−たて/て、¥われ=ら/が¥むに/の¥たんぜい/を¥ちけん−し/て、¥いちいち/の¥こんし/を¥なふじゆ−し¥たまへ。¥しかれ/ば−すなはち、¥むすぶ¥はやたま/の¥りやう−じよ−ごんげん、¥き/に¥したがつ/て、¥あるひは¥うえん/の¥しゆじやう/を¥みちびき、¥あるひは¥むえん/の¥ぐんるゐ/を¥すくは/ん/が¥ため/に、¥しつぽう−しやうごん/の¥すみか/を¥すて/て、¥はちまんしせん/の¥ひかり/を¥やはらげ、¥ろくだう−さんう/の¥ちり/に¥どうじ¥たまへ/り。¥かるがゆゑに¥ぢやうごふ−やくのうてん、¥ぐぢやうじゆ、¥とくぢやうじゆ/の¥らいはい¥そで/を¥つらね、¥へいはく¥れいてん/を¥ささぐる¥こと¥ひま¥なし。¥にんにく/の¥ころも/を¥かさね、¥かくだう/の¥はな/を¥ささげ/て、¥じんでん/の¥ゆか/を¥うごかし、¥しんじん/の¥みづ/を¥すまし/て、¥りしやう/の¥いけ/を¥たたへ/たり。¥しんめい¥なふじゆ−し¥たまは/ば、P169¥しよぐわん¥なんぞ¥じやうじゆ−せ/ざら/ん。¥あふぎ−ねがは−く/は、¥じふに−しよ−ごんげん、¥おのおの¥りしやう/の¥つばさ/を¥ならべ、¥はるか/に¥くかい/の¥そら/に¥かけ/り、¥させん/の¥うれへ/を¥やすめ/て、¥すみやか/に¥きらく/の¥ほんくわい/を¥とげ/しめ¥たまへ。¥さいはい」/と/ぞ¥やすより¥のつと/を/ば¥まうし/ける。¥
「そとばながし」(『そとばながし』)S0216¥さる−ほど/に¥ににん/の¥ひとびと、¥つね/は¥さん−じよ−ごんげん/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥つや−する¥をり/も¥あり/けり。¥ある¥よ¥ににん¥まゐつ/て、¥よ/も−すがら¥いまやう¥うたひ、¥まひ/なんど¥まひ/て、¥あかつき−がた¥くるし−さ/に、¥ちつと¥うち−まどろみ/たり/つる¥ゆめ/に、¥おき/より¥しろい¥ほ¥かけ/たる¥こ−ぶね/を¥いつそう、¥みぎは/へ¥こぎ−よせ、¥ふね/の¥うち/より¥くれなゐ/の¥はかま¥き/たり/ける¥にようばう=たち、¥にさんじふにん¥なぎさ/に¥あがり、¥つづみ/を¥うち、¥こゑ/を¥ととのへ/て、¥
よろづ/の¥ほとけ/の¥ぐわん/より/も¥せんじゆ/の¥ちかひ/ぞ¥たのもしき¥
かれ/たる¥くさき/も¥たちまち/に¥はな¥さき¥み¥なる/と/こそ¥きけ
/と¥おし−かへし−おし−かへし¥さんべん¥うたひ−すまし/て、¥かき−けす¥やう/に/ぞ¥うせ/に/ける。¥やすより−にふだう¥ゆめ¥さめ/て¥のち、¥きい/の¥おもひ/を¥なし/つつ、「¥いかさま/に/も¥これ/は¥りうじん/の¥けげん/と¥おぼえ¥さふらふ。¥くまの−さん−じよ−ごんげん/の¥うち/に、¥にしのごぜん/と¥まうし¥たてまつる/は、¥ほんぢ¥せんじゆ−くわんおん/にて¥おはします。P170¥りうじん/は¥すなはち¥せんじゆ/の¥にじふはち−ぶ−しゆ/の¥その¥ひとつ/にて¥おはしませ/ば、¥もつて¥ご=なふじゆ/こそ¥たのもしけれ」。¥ある¥よ¥また¥ににん¥まゐつ/て¥つや−し/たり/ける¥ゆめ/に、¥おき/より/も¥ふき−くる¥かぜ/に、¥こ/の−は/を¥ふたつ、¥ににん/が¥たもと/に¥ふき−かけ/たり。¥なんと−なう¥これ/を¥とつ/て¥み/けれ/ば、¥み=くまの/の¥なぎのは/にて/ぞ¥あり/ける。¥かの¥ふたつ/の¥なぎのは/に、¥いつしゆ/の¥うた/を¥むしぐひ/に/こそ¥し/たり/けれ。¥
ちはやぶる¥かみ/に¥いのり/の¥しげ/けれ/ば¥など/か¥みやこ/へ¥かへら/ざる/べき W011¥
やすより−にふだう/は、¥あまり/に¥こきやう/の¥こひしき¥まま/に、¥せめて/の¥はかりごと/に/や、¥せんぼん/の¥そとば/を¥つくり、¥あじ/の¥ぼんじ、¥ねんがう¥つきひ、¥けみやう¥じつみやう、¥にしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/ける。¥
さつまがた¥おき/の¥こじま/に¥われ¥あり/と¥おや/に/は¥つげ/よ¥やへ/の¥しほかぜW012¥
おもひ−やれ¥しばし/と¥おもふ¥たび/だに/も¥なほ¥ふるさと/は¥こひしき/ものを W013¥
これ/を¥うら/に¥もつ/て¥いで/て、「¥なむ−きみやう−ちやうらい、¥ぼんでん¥たいしやく、¥し−だい−てんわう、¥けんらうぢじん、¥わうじやう/の¥ちんじゆ¥しよ=だい−みやうじん、¥べつして/は¥くまのの−ごんげん、¥あきの−いつくしまの−だい−みやうじん、¥せめて/は¥いつぽん/なり/とも、¥みやこ/へ¥つたへ/て¥たべ」/とて、¥おき/つ¥しらなみ/の、¥よせ/て/は¥かへす¥たび−ごと/に、¥そとば/を¥うみ/に/ぞ¥うかべ/ける。¥そとば/は¥つくり−いだす/に¥したがつ/て、¥うみ/に¥いれ/けれ/ば、¥ひかず¥つもれ/ば、¥そとば/の¥かず/も¥つもり/けり。¥その¥もの¥おもふ¥こころ/や¥たより/の¥かぜ/と/も¥なり/たり/けん、¥また¥しんめい−ぶつだ/も/や¥おくら/せ¥たまひ/たり/けん、¥せんぼん/の¥そとば/の¥なか/に、¥いつぽん¥あきの−くに¥いつくしまの−だい−みやうじん/の¥お=まへ/の¥なぎさ/に¥うち−あげ/たり。P171¥
ここに¥やすより−にふだう/が¥ゆかり¥あり/ける¥そう/の、¥もし¥しかる/べき¥たより/も¥あら/ば、¥かの¥しま/へ¥わたつ/て、¥その¥ゆくへ/を/も¥たづね/ん/とて、¥さいこく−しゆぎやう/に¥いで/たり/ける/が、¥まづ¥いつくしま/へ/ぞ¥まゐり/ける。¥ここに¥みやうど/と¥おぼしく/て、¥かりぎぬ−しやうぞく/なる¥ぞく¥いち−にん¥いで−き/たり。¥この¥そう¥なんと−なう¥ものがたり/を¥し/ける/ほど/に、「¥それ¥しんめい/は、¥わくわう−どうぢん/の¥りしやう、¥さまざま/なり/と/は¥まうせ/ども、¥なか/に/も¥この¥おんかみ/は、¥いか/なる¥いんえん/を¥もつて、¥かいまん/の¥うろくづ/に¥えん/を/ば¥むすば/せ¥たまふ/らん」/と¥とひ¥たてまつれ/ば、¥みやうど¥こたへ/て¥いはく、「¥それ/は/よな、¥しやかつらりうわう/の¥だいさん/の¥ひめみや、¥たいざうかい/の¥すゐじやく/なり」。¥この¥しま/へ¥ごやうがう¥あり/し¥はじめ/より、¥さいど−りしやう/の¥いま/に¥いたる/まで、¥じんじん¥きどく/の¥こと=ども/を/ぞ¥かたり/ける。¥され/ば/に/や、¥はつしや/の¥ご=てん¥いらか/を¥ならべ、¥やしろ/は¥わだづみ/の¥ほとり/なれ/ば、¥しほ/の¥みちひ/に¥つき/ぞ¥すむ。¥しほ¥みち−くれ/ば、¥おほどりゐ、¥あけ/の−たまがき、¥るり/の/ごとし。¥しほ¥ひき/ぬれ/ば、¥なつ/の¥よ/なれ/ども、¥お=まへ/の¥しらす/に¥しも/ぞ¥おく。¥この¥そう¥いよいよ¥たつとく¥おもひ、¥しづか/に¥ほつせ¥まゐらせ/て¥ゐ/たり/ける/が、¥やうやう¥ひ¥くれ¥つき¥さし−いで/て、¥しほ/の¥みち−くる/に、¥おき/より¥そこはかと−なく¥ゆら/れ¥より/ける¥もくづ=ども/の¥なか/に、¥そとば/の¥かた/の¥みえ/ける/を、¥なんと−なう¥これ/を¥とつ/て¥み/けれ/ば、「¥さつまがた¥おき/の¥こじま/に¥われ¥あり」/と、¥かき−ながせ/る¥こと/の−は/なり。¥もじ/を/ば¥ゑり−いれ¥きざみ−つけ/たり/けれ/ば、¥なみ/に/も¥あらは/れ/ず、¥あざあざ/と/して/こそ¥みえ/たり/けれ。¥
この¥そう¥ふしぎ/の¥おもひ/を¥なし、¥おひ/の¥かた/に¥さし/て、¥みやこ/へ¥かへり−のぼり、¥やすより−にふだう/がP172¥らうぼ/の¥にこう、¥さいし=ども/の、¥いちでう/の¥きた、¥むらさきの/と¥いふ¥ところ/に¥しのび/つつ¥かくれ−ゐ/たり/ける/に、¥これ/を¥みせ/たり/けれ/ば、「¥さら/ば、¥この¥そとば/が、¥もろこし/の¥かた/へ/も¥ゆら/れ¥ゆか/ず/して、¥なに¥し/に¥これ/まで¥つたへ−き/て、¥いまさら¥もの/を¥おもは/す/らん」/と/ぞ¥かなしみ/ける。¥はるか/の¥えいぶん/に¥およん/で、¥ほふわう¥これ/を¥えいらん¥あつ/て、「¥あな¥むざん、¥この¥もの=ども/が¥いのち/の¥いまだ¥いき/て¥ある/に/こそ」/とて、¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ/ぞ¥かたじけなき。¥これ/を¥こまつの−おとど/の¥もと/へ¥つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥ちち/の¥ぜんもん/に¥みせ¥たてまつら/る。¥かきのもとの−ひとまる/は、¥しまがくれ−ゆく¥ふね/を¥おもひ、¥やまべの−あかひと/は、¥あしべ/の¥たづ/を¥ながめ¥たまふ。¥すみよしの−みやうじん/は、¥かた−そぎ/の¥おもひ/を¥なし、¥みわの−みやうじん/は、¥すぎ−たて/る¥かど/を¥さす。¥むかし¥すさのをのみこと、¥さんじふいちじ/の¥やまとうた/を¥よみ−はじめ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥もろもろ/の¥しんめい−ぶつだ/も、¥かの¥えいぎん/を¥もつて、¥はくせん−ばんたん/の¥おもひ/を¥のべ¥たまふ。¥
「そぶ」¥にふだう/も¥いはき/なら/ね/ば、¥さすが¥あはれ=げ/に/こそ¥のたまひ/けれ。¥(『そぶ』)S0217¥にふだう¥かく¥あはれみ¥たまふ¥うへ/は、¥きやう−ぢう/の¥じやうげ、¥おい/たる/も¥わかき/も、¥きかいがしま/の¥るにん/の¥うた/とて、¥くちずさま/ぬ/は¥なかり/けり。¥せんぼん/まで¥つくり−いだせ/る¥そとば/なれ/ば、¥さ/こそ/は¥ちひさう/も¥あり/けめ、P173¥さつまがた/より¥はるばると¥みやこ/まで¥つたはり/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥あまり/に¥おもふ¥こと/に/は、¥むかし/も¥かく¥しるし¥あり/ける/に/や。¥いにしへ¥かんわう、¥ここく/を¥せめ¥たまひ/し¥とき、¥はじめ/は¥りせうけい/を¥たいしやうぐん/にて、¥さんじふまんぎ/を¥むけ/らる。¥かん/の¥たたかひ¥よわく/して、¥ここく/の¥いくさ¥かち/に/けり。¥あまつさへ¥たいしやうぐん−りせうけい、¥こわう/の¥ため/に¥いけどら/る。¥つぎに¥そぶ/を¥たいしやうぐん/にて、¥ごじふまんぎ/を¥むけ/らる。¥こんど/も¥また¥かん/の¥たたかひ¥よわく/して、¥ここく/の¥いくさ¥かち/に/けり。¥つはもの¥ろくせん−よ−にん¥いけどり/に¥せ/らる。¥その¥なか/に¥そぶ/を¥はじめ/と/して、¥むねと/の¥つはもの¥ろつぴやくさんじふ−よ−にん、¥すぐり−いだい/て、¥いちいち/に¥かたあし/を¥きつ/て¥おつ−ぱな/たる。¥すなはち¥しぬる¥もの/も¥あり、¥ほど¥へ/て¥しする¥もの/も¥あり。¥その¥なか/に¥そぶ/は¥いち−にん¥しな/ざり/けり。¥かたあし/を/ば¥きら/れ/ながら、¥やま/に¥のぼつ/て/は¥このみ/を¥ひろひ、¥さと/に¥いで/て/は¥ねぜり/を¥つみ、¥あき/は¥たづら/の¥おちぼ−ひろひ/なんど¥し/て/ぞ、¥つゆ/の−いのち/を/ば¥すごし/ける。¥た/に¥いくら/も¥あり/ける¥かり=ども、¥そぶ/に¥み−なれ/て¥おそれ/ざり/けれ/ば、¥これ=ら/は¥みな¥わが¥こきやう/へ¥かよふ¥もの/ぞ/かし/と¥なつかしく/て、¥おもふ¥こと¥ひとふで¥かい/て、「¥あひ−かまへ/て¥これ¥かんわう/に¥え/させよ」/と¥いひ−ふくめ/て、¥かり/の¥つばさ/に¥むすび−つけ/て/ぞ¥はなち/ける。¥
かひがひしく/も¥たのも/の¥かり、¥あき/は¥かならず¥こしぢ/より¥みやこ/へ¥かよふ¥もの/なる/に、¥かん/の¥せうてい¥しやうりんゑん/に¥ぎよ=いう¥あり/し/に、¥ゆうざれ/の¥そら¥うす−くもり、¥なにと−なく¥もの−あはれ/なり/ける¥をりふし、¥ひとつら/の¥かり¥とび−わたる。¥その¥なか/より¥がん¥ひとつ¥とび−さがつ/て、¥おの/が¥つばさ/に¥むすび−つけ/たるP174¥たまづさ/を、¥くひ−きつ/て/ぞ¥おとし/ける。¥くわんにん¥これ/を¥とつ/て、¥みかど/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥ひらい/て¥えいらん¥ある/に、「¥むかし/は¥がんくつ/の¥ほら/に¥こめ/られ/て¥さんしゆん/の¥しうたん/を¥おくり、¥いま/は¥くわうでん/の¥うね/に¥すて/られ/て、¥こてき/の¥いつそく/と¥なれ/り。¥たとひ¥かばね/は¥こ/の¥ち/に¥ちらす/と¥いふ/とも、¥たましひ/は¥ふたたび¥くんべん/に¥つかへ/ん」/と/ぞ¥かい/たり/ける。¥それ/より/して/こそ、¥ふみ/を/ば¥がんしよ/と/も¥いひ、¥がんさつ/と/も¥また¥なづけ/けれ。「¥あな¥むざん、¥そぶ/が¥ほまれ/の¥あと/なり/けり。¥この¥もの=ども/が¥いのち/の¥いまだ¥いき/て¥ある/に/こそ」/とて、¥りくわう/と¥いふ¥しやうぐん/に¥おほせ/て、¥ひやくまんぎ/を¥むけ/らる。¥こんど/は¥かん/の¥たたかひ¥つよく/して、¥ここく/の¥いくさ¥やぶれ/に/けり。¥み=かた¥たたかひ¥かち/ぬ/と¥きこえ/しか/ば、¥そぶ/は¥くわうや/の¥なか/より¥はひ−いで/て、「¥これ/こそ¥いにしへ/の¥そぶ/よ」/と¥なのる。¥かたあし/は¥きら/れ/ながら、¥じふくねん/の¥せいざう/を¥おくり−むかへ、¥こし/に¥かか/れ/て¥きうり/へ/ぞ¥かへり/ける。¥そぶ/は¥じふろく/の¥とし、¥ここく/へ¥むけ/られ/し¥とき、¥みかど/より¥くだし¥たまはつ/たり/ける¥はた/を/ば、¥まい/て¥み/を¥はなた/ず¥もち/たり/し/を、¥いま¥とり−いだい/て、¥みかど/の¥ご=げんざん/に¥いれ/たり/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥かんたん¥なのめ/なら/ず。¥そぶ/は¥きみ/の¥おん=ため/に¥たいこう¥ならび−なかり/しか/ば、¥だいこく¥あまた¥たまはつ/て、¥その−うへ、¥てんしよくこく/と¥いふ¥つかさ/を/ぞ¥くださ/れ/ける。¥あまつさへ¥りせうけい/は、¥ここく/に¥とどまつ/て¥つひに¥かへら/ず。¥いか/に/も−し/て¥かんてう/へ¥かへら/ん/と/のみ¥なげき/けれ/ども、¥こわう¥ゆるさ/ね/ば¥ちから¥およば/ず。¥かんわう¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しり¥たまは/ず、¥りせうけい/は¥きみ/の¥おん=ため/に、¥すでに¥ふちう/なる¥もの/なり/とて、¥むなしく¥なれ/る¥にしん/が¥かばね/を¥ほり−おこし/て¥うた/せ/らる。P175¥その−ほか¥ろくしん/を¥みな¥つみ−せ/らる。¥りせうけい¥この¥よし/を¥つたへ−きい/て、¥うらみ¥ふかう/ぞ¥なり/に/ける。¥さり/ながら/も¥なほ¥こきやう/を¥こひ/つつ、¥まつたく¥ふちう¥なき¥よし/を、¥いつくわん/の¥しよ/に¥つくつ/て、¥みかど/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥かんわう¥これ/を¥えいらん¥あつ/て、「¥さて/は¥ふちう¥なかり/けり。¥ふびん/なる¥こと¥ござんなれ」/とて、¥ふぼ/が¥かばね/を¥ほり−おこし/て¥うた/せ/られ/たり/ける¥こと/を/ぞ、¥かへつて¥くやしみ¥たまひ/ける。¥かんか/の¥そぶは、¥しよ/を¥かり/の¥つばさ/に¥つけ/て¥きうり/へ¥おくり、¥ほんてう/の¥やすより/は、¥なみ/の¥たより/に¥うた/を¥こきやう/へ¥つたふ。¥かれ/は¥いつぴつ/の¥すさみ、¥これ/は¥にしゆ/の¥うた、¥かれ/は¥じやうだい、¥これ/は¥まつだい、¥ここく¥きかいがしま、¥さかひ/を¥へだて/て、¥よよ/は¥かはれ/ども、¥ふぜい/は¥おなじ¥ふぜい、¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。P176¥

 

入力者:荒山慶一



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