平家物語 巻第三  総かな版(元和九年本)
「ゆるしぶみ」(『ゆるしぶみ』)S0301¥ぢしよう−にねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥ゐん/の−ごしよ/に/は¥はいらい¥おこなは/れ/て、¥よつかのひ¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/けり。¥なにごと/も¥れい/に¥かはり/たる¥こと/は¥なけれ/ども、¥こぞ/の¥なつ¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ、¥きんじゆ/の¥ひとびと¥おほく¥ながし¥うしなは/れ/し¥こと、¥ほふわう¥おん=いきどほり¥いまだ¥やま/ざれ/ば、¥よ/の¥まつりごと/を/も¥よろづ¥もの−うく¥おぼしめし/て、¥おん=こころ−よから/ぬ¥こと=ども/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥だいじやう/の−にふだう/も、¥ただの−くらんど−ゆきつな/が¥つげ−しらせ¥たてまつ/て¥のち/は、¥きみ/を/も¥おん=うしろめたき¥こと/に¥おもひ¥たてまつり、¥うへ/に/は¥こと−なき¥やう/なれ/ども、¥した/に/は¥ようじん−し/て、¥にがわらひ/て/のみ/ぞ¥さふらは/れ/ける。¥なぬかのひ、¥せいせい¥とうばう/に¥いづ。¥しいうき/と/も¥まうす。¥また¥せきき/と/も¥まうす。¥じふはちにち¥ひかり/を¥ます。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ、¥けんれいもんゐん、¥その−とき/は¥いまだ¥ちうぐう/と¥きこえ/させ¥たまひ/し/が、¥ご=なう/とて、¥くも/の¥うへ、¥あめ/が¥した/の¥なげき/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥しよじ/に¥み=どきやう¥はじまり、¥しよしや/へ¥くわんぺいし/をP177¥たて/らる。¥おんやうじゆつ/を¥きはめ、¥いけ¥くすり/を¥つくし、¥だいほふ−ひほふ¥ひとつ/と/して¥のこる¥ところ¥なう¥しゆせ/られ/けり。¥され/ども¥ご=なう¥ただ/に/も¥わたら/せ¥たまは/ず、¥ご=くわいにん/と/ぞ¥きこえ/し。¥しゆしやう/は¥こんねん¥じふはち、¥ちうぐう/は¥にじふに/に¥なら/せ¥たまふ。¥しかれ/ども¥いまだ¥わうじ/も¥ひめみや/も¥いで−き/させ¥たまは/ず。¥もし¥わうじ/にて¥ましまさ/ば、¥いか/に¥めでたから/ん/と、¥へいけ/の¥ひとびと、¥ただいま¥わうじ¥たんじやう¥ある¥やう/に¥まうし/て、¥いさみ−よろこび−あは/れ/けり。¥たけ/の¥ひとびと/も、「¥へいじ/の¥はんじやう¥をり/を¥え/たり。¥わうじ¥ご=たんじやう¥うたがひ¥なし」/と/ぞ¥まうし−あは/れ/ける。¥ご=くわいにん¥さだまら/せ¥たまひ/しか/ば、¥にふだう−しやうこく、¥うげん/の¥かうそう¥きそう/に¥おほせ/て、¥だいほふ−ひほふ/を¥しゆし、¥しやうしゆく−ぶつ−ぼさつ/に¥つけ/て、¥わうじ¥ご=たんじやう/と/のみ¥きせい−せ/らる。¥ろくぐわつ−ひとひのひ、¥ちうぐう¥ご=ちやくたい¥あり/けり。¥にんわじ/の−お=むろ−しゆかく−ほつしんわう、¥いそぎ¥ご=さんだい¥あつ/て、¥くじやくきやう/の−ほふ/を¥もつて¥おん=かじ¥あり。¥てんだい−ざす−かくくわい−ほつしんわう、¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/も¥おなじく¥まゐらせ¥たまひ/て、¥へんじやう−なんし/の−ほふ/を¥しゆせ/られ/けり。¥
かかり/し/ほど/に、¥ちうぐう/は¥つき/の¥かさなる/に¥したがつ/て、¥おん=み/を¥くるしう¥せ/させ¥たまふ。¥ひとたび¥ゑめ/ば¥もも/の¥こび¥あり/けん¥かん/の¥りふじん、¥せうやうでん/の¥やまふ/の¥ゆか/も¥かく/や/と¥おぼえ、¥たう/の¥やうきひ、¥りくわ¥いつし¥はる/の¥あめ/を¥おび、¥ふよう/の¥かぜ/に¥しをれ/つつ、¥ぢよらうくわ/の¥つゆ¥おも=げ/なる/より、¥なほ¥いたはしき¥おん=さま/なり。¥かかる¥ご=なう/の¥をりふし/に¥あはせ/て、¥こはき¥おん=もののけ=ども、¥あまた¥とり−いり¥たてまつる。¥よりまし、¥みやうわう/の¥ばく/に¥かけ/て、¥れい¥あらはれ/たり。¥こと/に/は¥さぬきのゐん/の¥ご=れい、¥うぢの−あく−さふ/の¥ご=おくねん、¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥しりやう、¥さいくわう−ほふし/が¥あくりやう、P178¥きかいがしま/の¥るにん=ども/の¥しやうりやう/なんど/ぞ¥まうし/ける。¥これ/に¥よつ/て、¥しやうりやう/を/も、¥しりやう/を/も、¥なだめ/らる/べし/とて、¥まづ¥さぬきのゐん¥ご=つゐがう¥あつ/て¥しゆとく−てんわう/と¥かうし、¥うぢの−あく−さふ、¥ぞうくわん¥ぞうゐ¥おこなは/れ/て、¥だいじやうだいじん−じやういちゐ/を¥おくら/る。¥ちよくし/は¥せうないき−これもと/と/ぞ¥きこえ/し。¥くだん/の¥むしよ/は、¥やまとの−くに¥そふのかん/の−こほり¥かはかみ/の−むら、¥はんにやの/の¥ごさんまい/なり。¥ほうげん/の¥あき¥ほり−おこい/て¥すて/られ/し¥のち/は、¥しがいみち/の¥ほとり/の¥つち/と¥なつ/て、¥としどし/に¥ただ¥はる/の¥くさ/のみ¥しげれ/り。¥いま¥ちよくし¥たづね−き/て¥せんみやう/を¥よみ/けれ/ば、¥ばうこん¥そんりやう¥いか/に¥うれし/と¥おぼし/けん。¥され/ば¥さはらの−はいたいし/を/ば、¥しゆだう−てんわう/と¥かうし、¥ゐがみの−ないしんわう/を/ば、¥くわうこう/の¥しきゐ/に¥ふくす。¥これ¥みな¥をんりやう/を¥なだめ/られ/し¥はかりごと/と/ぞ¥きこえ/し。¥をんりやう/は、¥むかし/も¥かく¥おそろしかり/し¥こと=ども/なり。¥れんぜいゐん/の¥おん=もの−ぐるはしう¥ましまし、¥くわざんの−ほふわう/の、¥じふぜん/の−ていゐ/を¥すべら/せ¥たまひ/し/は、¥もとかたの−みんぶきやう/が¥れい/なり。¥また¥さんでうのゐん/の¥おん=め/も¥ごらんぜ/られ/ざり/し/は、¥くわんざん−くぶ/が¥れい/とかや。¥かどわきの−さいしやう、¥かやう/の¥こと=ども/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、¥こまつ=どの/に¥まうさ/れ/ける/は、「¥こんど¥ちうぐう¥ご=さん/の¥おん=いのり、¥さまざま/に¥さふらふ/なり。¥なに/と¥まうす/と/も、¥ひじやう/の¥しや/に¥すぎ/たる/ほど/の¥こと¥ある/べし/と/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥なか/に/も¥きかいがしま/の¥るにん=ども/を、¥めし−かへさ/れ/たら/ん/ほど/の¥くどく¥ぜんこん、¥なにごと/か¥さふらふ/べき」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、「¥あの¥たんばの−せうしやう/が¥こと/を、¥かどわきの−さいしやう¥あまり/に¥なげき¥まうす/が¥ふびん/に¥さふらふ。¥ことさら¥ちうぐう¥ご=なう/の¥おん=こと、¥うけたまはり¥およぶ/ごとくん/ば、¥なりちかの−きやう/が¥しりやう/など¥きこえ/てP179¥さふらふ。¥だいなごん/が¥しりやう/を¥なだめ/ん/と¥おぼしめさ/ん/に¥つけ/て/は、¥いき/て¥さふらふ¥せうしやう/を、¥めし/こそ¥かへさ/れ¥さふらは/め。¥ひと/の¥おもひ/を¥やめ/させ¥たまは/ば、¥おぼしめす¥こと/も¥かなひ、¥ひと/の¥ねがひ/を¥かなへ/させ¥ましまさ/ば、¥ご=ぐわん/も¥すなはち¥じやうじゆ−し/て、¥ご=さん¥へいあん¥わうじ¥ご=たんじやう¥あつ/て、¥かもん/の¥えいぐわ¥いよいよ¥さかん/に¥さふらふ/べし」/など¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、¥ひごろ/より¥こと/の−ほか/に¥やはらい/で、「¥さて¥しゆんくわん/や¥やすより−ぼふし/が¥こと/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、「¥それ/も¥おなじう/は¥めし/こそ¥かへさ/れ¥さふらは/め。¥もし¥いち−にん/も¥のこさ/れ/たら/ん/は、¥なかなか¥ざいごふ/たる/べう¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥やすより−ぼふし/が¥こと/は¥さる−こと/なれ/ども、¥しゆんくわん/は¥ずゐぶん¥にふだう/が¥こうじゆ/を¥もつて、¥ひと/と¥なつ/たる¥もの/ぞ/かし。¥それ/に¥ところ/しも/こそ¥おほけれ、¥ひがしやま¥ししのたに、¥わが¥さんざう/に¥より−あひ/て、¥きくわい/の¥ふるまひ=ども/が¥あり/けん/なれ/ば、¥しゆんくわん/が¥こと/は¥おもひ/も¥よら/ず」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥おとど¥かへつ/て¥をぢ/の¥さいしやう/を¥よび¥たてまつ/て、「¥せうしやう/は¥すでに¥しやめん¥ある/べき/で¥さふらふ/ぞ。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥さいしやう¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥なくなく¥て/を¥あはせ/て/ぞ¥よろこば/れ/ける。「¥くだり¥さふらひ/し¥とき/も、¥これ−ほど/の¥こと、¥など/や¥まうし−うけ/ざら/ん/と¥おもひ/たり=げ/にて、¥のりもの/を¥み¥さふらふ¥たび−ごと/に¥なみだ/を¥ながし¥さふらひ/し/が、¥ふびん/に¥さふらふ」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥こまつ=どの、「¥まことに¥さ/こそ/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らめ。¥こ/は¥たれ/とて/も¥かなしけれ/ば、¥よくよく¥まうし¥さふらは/ん」/とて¥いり¥たまひ/ぬ。¥さる−ほど/に¥きかいがしま/の¥るにん=ども/の、¥めし−かへさ/る/べき¥こと¥さだまり/しか/ば、¥にふだう−しやうこく/のP180¥ゆるしぶみ¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。¥お=つかひ¥すでに¥みやこ/を¥たつ。¥さいしやう¥あまり/の¥うれし−さ/に、¥お=つかひ/に¥わたくし/の¥つかひ/を¥そへ/て¥くださ/れ/ける。¥よる/を¥ひる/に¥し¥いそぎ¥くだれ/と¥あり/しか/ども、¥こころ/に¥まかせ/ぬ¥かいろ/なれ/ば、¥なみかぜ/を¥しのい/で¥ゆく/ほど/に、¥みやこ/を/ば(は)¥しちぐわつ−げじゆん/に¥いで/たれ/ども、¥ながつき−はつか−ごろ/に/ぞ、¥きかいがしま/に/は¥つき/に/ける。
「あしずり」(『あしずり』)S0302¥お=つかひ/は¥たんざゑもん/の−じよう−もとやす/と¥いふ¥もの/なり。¥いそぎ¥ふね/より¥あがり、「¥これ/に¥みやこ/より¥ながさ/れ¥たまひ/たり/し¥へい−はんぐわん−やすより−にふだう、¥たんばの−せうしやう=どの/や¥おはす」/と、¥こゑごゑ/に/ぞ¥たづね/ける。¥ににん/の¥ひとびと/は、¥れい/の¥くまのまうで−し/て¥なかり/けり。¥しゆんくわん¥いち−にん¥あり/ける/が、¥これ/を¥きい/て、¥あまり/に¥おもへ/ば¥ゆめ/やらん、¥また¥てんま−はじゆん/の、¥わが¥こころ/を¥たぶらかさ/ん/とて¥いふ/やらん、¥うつつ/と/も¥さらに¥おぼえ/ぬ/ものかな/とて、¥あわて−ふためき、¥はしる/と/も¥なく、¥たふるる/と/も¥なく、¥いそぎ¥お=つかひ/の¥まへ/に¥ゆき−むかつ/て、「¥これ/こそ¥ながさ/れ/たる¥しゆんくわん/よ」/と¥なのり¥たまへ/ば、¥ざつしき/が¥くび/に¥かけ/させ/たる¥ふぶくろ/より、¥にふだう−しやうこく/の¥ゆるしぶみ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、「¥ぢうくわ/は¥をんる/に¥めんず。¥はやく¥きらく/のP181¥おもひ/を¥なす/べし。¥こんど¥ちうぐう¥ご=さん/の¥おん=いのり/に¥よつ/て、¥ひじやう/の¥しや¥おこなは/る。¥しかる−あひだ¥きかいがしま/の¥るにん、¥せうしやう−なりつね、¥やすより−ぼふし¥しやめん」/と/ばかり¥かか/れ/て、¥しゆんくわん/と¥いふ¥もじ/は¥なし。¥らいし/に/ぞ¥ある/らん/とて、¥らいし/を¥みる/に/も¥みえ/ず。¥おく/より¥はし/へ¥よみ、¥はし/より¥おく/へ¥よみ/けれ/ども、¥ににん/と/ばかり¥かか/れ/て、¥さん−にん/と/は¥かか/れ/ず。¥さる−ほど/に¥せうしやう/や¥やすより−ぼふし/も¥いで−き/たり、¥せうしやう/の¥とつ/て¥みる/に/も、¥やすより−ぼふし/が¥よみ/ける/に/も、¥ににん/と/ばかり¥かか/れ/て、¥さん−にん/と/は¥かか/れ/ざり/けり。¥ゆめ/に/こそ¥かかる¥こと/は¥あれ、¥ゆめ/か/と¥おもひ−なさ/ん/と¥すれ/ば¥うつつ/なり、¥うつつ/か/と¥おもへ/ば¥また¥ゆめ/の/ごとし。¥その−うへ¥ににん/の¥ひとびと/の¥もと/へ/は、¥みやこ/より¥ことづて/たる¥ふみ=ども¥いくら/も¥あり/けれ/ども、¥しゆんくわん−そうづ/の¥もと/へ/は、¥こと−とふ¥ふみ¥ひとつ/も¥なし。¥され/ば¥わが¥ゆかり/の¥もの=ども/は、¥みな¥みやこ/の¥うち/に¥あと/を¥とどめ/ず¥なり/に/ける/よ/と、¥おもひ−やる/に/も¥おぼつかなし。「¥そもそも¥われ=ら¥さん−にん/は¥おなじ¥つみ、¥はいしよ/も¥おなじ¥ところ/なり。¥いか/なれ/ば¥しやめん/の¥とき、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て、¥いち−にん¥ここ/に¥のこす/べき。¥へいけ/の¥おもひわすれ/か/や、¥しゆひつ/の¥あやまり/か、¥こ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や」/と、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし/て、¥なき−かなしめ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥そうづ¥せうしやう/の¥たもと/に¥すがり、「¥しゆんくわん/が¥かやう/に¥なる/と¥いふ/も、¥ご=へん/の¥ちち、¥こ=だいなごん=どの/の、¥よし−なき¥むほん/の¥ゆゑ/なり。¥され/ば¥よそ/の¥こと/と¥おもひ¥たまふ/べから/ず。¥ゆるされ¥なけれ/ば、¥みやこ/まで/こそ¥かなは/ず/とも、¥せめて/は¥この¥ふね/に¥のせ/て¥くこく/の¥ぢ/まで¥つけ/て¥たべ。¥おのおの/の¥これ/に¥おはし/つる/ほど/こそ、¥はる/は¥つばくらめ、¥あき/は¥たのも/の¥かり/のP182¥おとづるる¥やう/に、¥おのづから¥こきやう/の¥こと/を/も¥つたへ−きき/つれ。¥いま/より¥のち/は、¥なに/と/して/か¥きく/べき」/とて、¥もだえ−こがれ¥たまひ/けり。¥せうしやう、「¥まことに¥さ/こそ/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らめ。¥われ=ら/が¥めし−かへさ/るる¥うれし−さ/も、¥さる−こと/にて/は¥さふらへ/ども、¥おん=ありさま/を¥み¥たてまつる/に、¥さらに¥ゆく/べき¥そら/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥この¥ふね/に¥うち−のせ¥たてまつ/て、¥のぼり/たう/は¥さふらへ/ども、¥みやこ/の¥お=つかひ、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を¥しきり/に¥まうす。¥その−うへ¥ゆるされ/も¥なき/に、¥さん−にん/ながら¥しま/の¥うち/を¥いで/たり/など¥きこえ¥さふらは/ば、¥なかなか¥あしう¥さふらひ/な/んず。¥なりつね¥まづ¥まかり−のぼつ/て、¥ひとびと/に/も¥よくよく¥まうし−あはせ、¥にふだう−しやうこく/の¥きしよく/を/も¥うかがひ、¥むかひ/に¥ひと/を¥たてまつら/ん。¥その−ほど/は¥ひごろ¥おはし/つる¥やう/に¥おもひ−なし/て¥まち¥たまへ。¥いのち/は¥いか/に/も¥たいせつ/の¥こと/なれ/ば、¥たとひ¥この¥せ/に/こそ¥もれ/させ¥たまふ/とも、¥つひに/は¥など/か¥しやめん¥なく/て¥さふらふ/べき」/と、¥やうやう/に¥なぐさめ−のたまへ/ども、¥そうづ¥たへ−しのぶ/べう/も¥みえ¥たまは/ず。¥さる−ほど/に¥ふね¥いださ/ん/と¥し/けれ/ば、¥そうづ¥ふね/に¥のつ/て/は¥おり/つ、¥おり/て/は¥のつ/つ、¥あらましごと/を/ぞ¥し¥たまひ/ける。¥せうしやう/の¥かたみ/に/は¥よる/の¥ふすま、¥やすより−にふだう/が¥かたみ/に/は、¥いちぶ/の¥ほけきやう/を/ぞ¥とどめ/ける。¥すでに¥ともづな¥とい/て、¥ふね¥おし−いだせ/ば、¥そうづ¥つな/に¥とり−つき、¥こし/に¥なり、¥わき/に¥なり、¥たけ/の¥たつ/まで/は、¥ひか/れ/て¥いづ。¥たけ/も¥およば/ず¥なり/けれ/ば、¥そうづ¥ふね/に¥とり−つき、「¥さて¥いか/に¥おのおの¥しゆんくわん/を/ば¥つひに¥すて−はて¥たまふ/か。¥ひごろ/の¥なさけ/も¥いま/は¥なに¥なら/ず。¥ゆるされ¥なけれ/ば¥みやこ/まで/こそ¥かなは/ず/とも、P183¥せめて/は¥この¥ふね/に¥のせ/て¥くこく/の¥ち/まで」/と、¥くどか/れ/けれ/ども、¥みやこ/の¥お=つかひ、「¥いか/に/も¥かなひ¥さふらふ/まじ」/とて、¥とり−つき¥たまひ/つる¥て/を¥ひき−のけ/て、¥ふね/を/ば¥つひに¥こぎ−いだす。¥そうづ¥せんかた−なさ/に、¥なぎさ/に¥あがり¥たふれ−ふし、¥をさなき¥もの/の¥めのと/や¥はは/など/を¥したふ¥やう/に、¥あしずり/を¥し/て、「¥これ¥のせ/て¥ゆけ、¥ぐし/て¥ゆけ」/と¥のたまひ/て、¥をめき−さけび¥たまへ/ども、¥こぎ−ゆく¥ふね/の¥ならひ/にて、¥あと/は¥しらなみ/ばかり/なり。¥いまだ¥とほから/ぬ¥ふね/なれ/ども、¥なみだ/に¥くれ/て¥みえ/ざり/けれ/ば、¥そうづ¥たかき¥ところ/に¥はしり−あがり、¥おき/の¥かた/を/ぞ¥まねき/ける。¥かの¥まつらさよひめ/が¥もろこし−ぶね/を¥したひ/つつ¥ひれ¥ふり/けん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥さる−ほど/に¥ふね/も¥こぎ−かくれ、¥ひ/も¥くるれ/ども、¥そうづ¥あやし/の¥ふしど/へ/も¥かへら/ず、¥なみ/に¥あし¥うち−あらは/せ、¥つゆ/に¥しをれ/て、¥その¥よ/は¥そこ/に/ぞ¥あかし/ける。¥さり/とも¥せうしやう/は¥なさけ−ふかき¥ひと/なれ/ば、¥よき¥やう/に¥まうす¥こと/も/や/と、¥たのみ/を¥かけ/て、¥その¥せ/に¥み/を/も¥なげ/ざり/し¥こころ/の¥うち/こそ¥はかなけれ。¥むかし¥さうり¥そくり/が、¥かいがんさん/へ¥はなた/れ/たり/けん¥かなしみ/も、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。P184
「ごさんのまき」(『ごさん』)S0303¥さる−ほど/に¥ににん/の¥ひとびと/は、¥きかいがしま/を¥いで/て、¥ひぜんの−くに¥かせ/の−しやう/に/ぞ¥つき¥たまふ。¥さいしやう¥きやう/より¥ひと/を¥くだし/て、「¥とし/の¥うち/は¥なみかぜ/も¥はげしう、¥みち/の¥あひだ/も¥おぼつかなう¥さふらへ/ば、¥はる/に¥なつ/て¥のぼら/れ¥さふらへ」/と¥あり/しか/ば、¥せうしやう¥かせ/の−しやう/にて¥とし/を¥くらす。¥さる−ほど/に¥おなじき−じふいちぐわつ−じふににち/の¥とら/の−こく/より、¥ちうぐう¥ご=さん/の¥け¥まします/とて、¥きやう−ぢう¥ろくはら¥ひしめき−あへ/り。¥ご=さんじよ/は¥ろくはら¥いけ=どの/にて¥あり/けれ/ば、¥ほふわう/も¥ご=かう¥なる。¥くわんばく=どの/を¥はじめ¥たてまつ/て¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥すべて¥よ/に¥ひと/と¥かぞへ/られ、¥くわん−かかい/に¥のぞみ/を¥かけ、¥しよたい¥しよしよく/を¥たい−する/ほど/の¥ひと/の、¥いち−にん/も¥もるる/は¥なかり/けり。¥せんれい/も¥にようご¥きさき¥ご=さん/の¥とき/に¥のぞん/で¥だいしや¥あり/き。¥だいぢ−にねん−くぐわつ−ひとひのひ、¥たいけんもんゐん¥ご=さん/の¥とき、¥だいしや¥おこなは/るる¥こと¥あり/けり。¥こんど/も¥その¥れい/とて、¥ひじやう/の¥だいしや¥おこなは/れ/て、¥ぢうくわ/の¥ともがら¥おほく¥ゆるさ/れ/ける¥なか/に、¥この¥しゆんくわん−そうづ¥いち−にん、¥しやめん¥なかり/ける¥こと/こそ¥うたてけれ。¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥ましまさ/ば、¥やはた¥ひらの、¥おほはらの/なんど/へ¥ぎやうげい¥ある/べき¥よし、¥ご=りふぐわん¥あり。¥せんげん−ほふいん¥うけたまはつ/て、¥これ/を¥けいびやく−すP185。¥しんじや/は¥だい−じんぐう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥にじふ−よ−か−しよ、¥ぶつじ/は¥とうだいじ¥こうぶくじ¥いげ¥じふろく−か−しよ/へ¥み=じゆきやう¥あり。¥み=じゆきやう/の¥お=つかひ/は、¥みや/の¥さぶらひ/の¥なか/に、¥うくわん/の¥ともがら¥これ/を¥つとむ。¥ひやうもん/の¥かりぎぬ/に¥たいけん−し/たる¥もの=ども/が、¥いろいろ/の¥み=じゆぎやうもつ、¥ぎよ=けん¥ぎよ=い/を¥もち−つづい/て、¥ひがし/の¥たい/より¥なんてい/を¥わたつ/て、¥にし/の¥ちうもん/に¥いづ。¥めでたかり/し¥けんぶつ/なり。¥
こまつの−おとど/は、¥れい/の¥ぜんあく/に¥つき/て¥さわぎ¥たまは/ぬ¥ひと/にて¥おはし/けれ/ば、¥はるか/に¥ほど¥へ/て¥のち、¥ちやくし¥ごん/の−すけ−せうしやう−これもり¥いげ/の¥きんだち/の¥くるま=ども¥やり−つづけ/させ、¥いろいろ/の¥ぎよ=い¥しじふりやう、¥ぎんけん¥ななつ、¥ひろぶた/に¥おか/せ、¥お=むま¥じふにひき¥ひか/せ/て¥まゐらせ/らる。¥これ/は、¥くわんこう/に¥じやうとうもんゐん¥ご=さん/の¥とき、¥み=だう=どの/の¥お=むま¥まゐらせ/られ/し¥その¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥おとど/は¥ちうぐう/の¥おん=せうと/にて¥おはし/ける¥うへ、¥とりわき¥ふし/の¥おん=ちぎり/なれ/ば、¥お=むま¥まゐらせ¥たまふ/も¥ことわり/なり。¥また¥ごでうの−だいなごん−くにつなの−きやう/も、¥お=むま¥にひき¥まゐらせ/らる。「¥こころざし/の¥いたり/か、¥とく/の¥あまり/か」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥なほ¥いせ/より¥はじめ¥たてまつ/て、¥あきの−いつくしま/に¥いたる/まで、¥しちじふ−よ−か−しよ/へ¥じんめ/を¥たて/らる。¥だいり/に/も¥れう/の−お=むま/に¥しで¥つけ/て、¥すうじつぴき¥ひつ−たて/たり。¥にんわじ/の−お=むろ−しゆかく−ほつしんわう/は¥くじやくきやう/の−ほふ、¥てんだい−ざす−かくくわい−ほつしんわう/は¥しちぶつやくし/の−ほふ、¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/は¥こんがうどうじ/の−ほふ、¥その−ほか¥ごだいこくうざう、¥ろくくわんおん、¥いちじきんりん、¥ごだん/の−ほふ、¥ろくじかりん、¥はちじもんじゆ、¥ふげんえんめい/に¥いたる/まで、¥のこる¥ところ¥なう¥しゆせ/られ/けり。¥ごま/の¥けぶり¥ごしよ−ぢう/に¥みち/て、¥れい/の¥こゑP186¥くも/を¥ひびか/し、¥しゆほふ/の¥こゑ¥み/の−け¥よだつ/て、¥いか/なる¥おん=もののけ/なり/とも、¥なに¥おもて/を¥むかふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。¥なほ¥ぶつしよ/の¥ほふいん/に¥おほせ/て、¥ごしん−とうじん/の¥やくし¥ならび/に¥ごだいそん/の¥ざう/を¥つくり−はじめ/らる。¥かかり/しか/ども、¥ちうぐう/は¥ひま−なく¥しきら/せ¥たまふ/ばかり/にて、¥ご=さん/も¥とみ/に¥なり−やら/ず。¥にふだう−しやうこく、¥にゐ=どの、¥むね/に¥て/を¥おい/て、「¥こ/は¥いかが−せ/ん、¥いか/に−せ/ん」/と/ぞ¥あきれ¥たまふ。¥ひと/の¥もの¥まうし/けれ/ども、「¥ただ¥と/も−かう/も、¥よき¥やう/に¥よき¥やう/に」/と/ばかり/ぞ¥のたまひ/ける。「¥あはれ¥じやうかい、¥いくさ/の¥ぢん/なら/ば、¥さり/とも¥これ−ほど/まで/は¥おくせ/じ/ものを」/と/ぞ、¥のち/に/は¥のたまひ/ける。¥
おん=げんじや/に/は、¥ばうかく¥しやううん¥りやう−そうじやう、¥しゆんげう−ほふいん、¥がうぜん¥じつせん¥りやう−そうづ、¥おのおの¥そうが/の¥く=ども¥あげ、¥ほんじ¥ほんざん/の¥さんぽう、¥ねんらい¥しよぢ/の¥ほんぞん=たち、¥せめ−ふせ−せめ−ふせ¥もま/れ/けれ/ば、¥まことに¥さ/こそ/は/と¥おぼえ/て¥たつとかり/ける¥なか/に、¥をりふし¥ほふわう/は、¥いまぐまの/へ、¥ご=かう¥なる/べき/にて、¥おん=しやうじん/の¥ついで/なり/ける/が、¥きんちやう¥ちかく¥ござ¥あつ/て、¥せんじゆきやう/を¥うち−あげ−うち−あげ¥あそばさ/れ/ける/に/ぞ、¥いま¥ひときは¥こと¥かはつ/て、¥さ/しも¥をどり−くるひ/ける¥おん=よりまし=ども/が¥ばく/も、¥しばらく¥うち−しづめ/けり。¥ほふわう¥おほせ/なり/ける/は、「¥たとひ¥いか/なる¥おん=もののけ/なり/とも、¥この¥おい−ぼふし/が¥かくて¥さふらは/ん/に/は、¥いかで/か¥ちかづき¥たてまつる/べき。¥なかんずく¥いま¥あらはるる¥ところ/の¥をんりやう/は¥みな¥わが¥てうおん/を¥もつて¥ひと/と¥なり/たる¥もの/ぞ/かし。¥たとひ¥はうしや/の¥こころ/を/こそ¥ぞんぜ/ず/とも、¥いかで/か¥あに¥しやうげ/を¥なす/べき/やP187。¥すみやか/に¥まかり−しりぞき¥さふらへ」/とて、「¥によにん¥しやうさん−し−がたから/ん¥とき/に¥のぞん/で、¥じやま−しやしやう−し、¥く¥しのび−がたから/ん/に/も、¥こころ/を¥いたし/て¥だいひじゆ/を¥しようじゆ−せ/ば、¥きしん¥たいさん−し/て、¥あんらく/に¥しやうぜ/ん」/と¥あそばい/て、¥みな¥ずゐしやう/の¥おん=ずず/を¥おし−もま/せ¥たまへ/ば、¥ご=さん¥へいあん/のみ/なら/ず、¥わうじ/にて/こそ¥ましまし/けれ。¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥ちうぐう/の−すけ/にて¥おはし/ける/が、¥ぎよれん/の¥うち/より¥つと¥いで/て、「¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥さふらふ/ぞ」/と¥たからか/に¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥くわんばく−まつ=どの、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥おのおの/の¥じよじゆ、¥おんやう/の−かみ、¥てんやく/の−かみ、¥すはい/の¥おん=げんじや、¥すべて¥たうしやう−たうか、¥いちどう/に¥あつ/と¥よろこび−あは/れ/ける¥こゑ/は、¥もんぐわい/まで/も¥どよみ/て、¥しばし/は¥しづまり/も¥やら/ざり/けり。¥にふだう−しやうこく¥うれし−さ/の¥あまり/に、¥こゑ/を¥あげ/て/ぞ¥なか/れ/ける。¥よろこびなき/と/は、¥これ/を¥いふ/べき/に/や。¥こまつの−おとど/は、¥いそぎ¥ちうぐう/の¥おん=かた/へ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥きんせん¥くじふく−もん、¥わうじ/の¥おん=まくら/に¥おい/て、「¥てん/を¥もつて/は¥ちち/と¥し、¥ち/を¥もつて/は¥はは/と¥さだめ¥たまふ/べし。¥おん=いのち/は¥はうし¥とうばうさく/が¥よはひ/を¥たもち、¥おん=こころ/に/は¥てんせうだいじん¥いり−かはら/せ¥たまへ」/とて¥くは/の−ゆみ¥よもぎ/の−や/を¥もつて、¥てんち¥しはう/を¥い/させ/らる。P188¥
「くぎやうそろへ」(『くぎやうぞろへ』)S0304¥おん=ち/に/は¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥きたのかた/と¥さだめ/られ/たり/しか/ども、¥さんぬる¥しちぐわつ/に¥なんざん/を¥し/て¥うせ¥たまひ/しか/ば、¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/の¥きたのかた/ぞ、¥おん=ち/に/は¥まゐらせ¥たまふ。¥のち/に/は¥そつのすけ=どの/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥ほふわう¥やがて¥くわんぎよ¥あり。¥もんぜん/に¥おん=くるま/を¥たて/られ/たり。¥にふだう−しやうこく¥うれし−さ/の¥あまり/に、¥こがね¥いつせんりやう、¥ふじ/の¥わた¥にせんりやう、¥ほふわう/へ¥しんじやう−せ/らる。「¥これ¥また¥しかる/べから/ず」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥こんど/の¥ご=さん/に¥しようし¥あまた¥あり。¥まづ¥ほふわう/の¥おん=げんじや、¥つぎ/に¥きさき¥ご=さん/の¥とき、¥ご=てん/の¥むね/より¥こしき/を¥まろばかす¥こと¥あり/けり。¥わうじ¥ご=たんじやう/に/は¥みなみ/へ¥おとし、¥くわうによ¥たんじやう/に/は¥きた/へ¥おとす/を、¥これ/は¥きた/へ¥おとさ/れ/たり/けれ/ば、¥いか/に/と¥さわぎ、¥とり−あげ、¥おとし−なほさ/れ/たり/けれ/ども、¥なほ¥あしき¥こと/に/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥をかしかり/し/は、¥にふだう−しやうこく/の¥あきれざま、¥めでたかり/し/は¥こまつの−おとど/の¥ふるまひ、¥ほい−なかり/し/は、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の、¥さいあい/の¥きたのかた/に¥おくれ¥たまひ/て、¥だいなごん¥だいしやう¥りやう−しよく/を¥じし/て、¥ろうきよ−せ/られ/し¥こと、¥きやうだい¥とも/に¥しゆつし¥あら/ば、¥いか/に¥めでたから/ん。P189¥つぎ/に¥しちにん/の¥おんやうじ¥まゐつ/て、¥せんど/の¥お=はらひ¥つかまつる。¥その¥なか/に¥かもん/の−かみ−ときはる/と¥いふ¥らうしや¥あり。¥しよじう/など/も¥ぼくせう/なり/ける/が、¥あまり/に¥ひと¥おほく¥まゐり−つどひ、¥たかんな/を¥こみ、¥たうま¥ちくゐ/の/ごとし。「¥やくにん/ぞ、¥あけ/られ¥さふらへ」/とて、¥おほぜい/の¥なか/を¥おし−わけ−おし−わけ¥まゐる/ほど/に、¥いかが/は¥し/たり/けん、¥みぎ/の¥くつ/を¥ふみ−ぬか/れ/て、¥そこ/にて¥ちつ/と¥たち−やすらふ/が、¥あまつさへ¥かぶり/を/さへ¥つき−おとさ/れ/て、¥さ/ばかり/の¥みぎり/に、¥そくたい¥ただしき¥らうしや/が、¥もとどり¥はなし/て¥ねり−いで/たり/けれ/ば、¥わかき¥くぎやう−てんじやうびと/は¥こらへ/ず/して、¥いちど/に¥どつと/ぞ¥わらは/れ/ける。¥おんやうじ/など¥いふ/は、¥へんばい/とて¥あし/を/も¥あだ/に¥ふま/ず/と/こそ¥うけたまはれ。¥その−ほか¥ふしぎ=ども/の¥あり/ける/を、¥その−とき/は¥なに/と/も¥おぼえ/ざり/けれ/ども、¥のち/に/は¥おもひ−あは/する¥こと=ども/は¥おほかり/けり。¥
ご=さん/に¥よつ/て¥ろくはら/へ¥まゐらせ¥たまふ¥ひとびと、¥くわんばく−まつ=どの、¥だいじやうだいじん−めうおんゐん、¥さだいじん−おほひのみかど、¥うだいじん−つきのわ=どの、¥ないだいじん−こまつ=どの、¥さだいしやう−じつてい、¥げん−だいなごん−さだふさ、¥さんでうの−だいなごん−さねふさ、¥ごでうの−だいなごん−くにつな、¥とう−だいなごん−さねくに、¥あぜつし−すけかた、¥なかのみかどの−ちうなごん−むねいへ、¥くわざんのゐん/の−ちうなごん−かねまさ、¥げん−ぢうなごん−がらい、¥ごん−ぢうなごん−さねつな、¥とう−ちうなごん−すけなが、¥いけの−ちうなごん−よりもり、¥さゑもん/の−かみ−ときただ、¥べつたう−ただちか、¥ひだん/の−さいしやう/の−ちうじやう−さねいへ、¥みぎ/の−さいしやう/の−ちうじやう−さねむね、¥しん−ざいしやう/の−ちうじやう−みちちか、¥へい−ざいしやう−のりもり、¥ろくかくの−さいしやう−いへみち、¥ほりかはの−さいしやう−よりさだ、¥さだいべん/の−さいしやう−ながかた、¥うだいべん/の−さんみ−としつね、¥さひやうゑ/の−かみ−しげのり、¥うひやうゑ/の−かみ−みつよし、¥くわうだいこうくう/の−だいぶ−ともかた、¥さきやう/の−だいぶ−ながのり、¥だざい/の−だいに−ちかのぶ、¥しん−ざんみ−さねきよ、¥いじやう¥さんじふさん−にん、P190¥うだいべん/の¥ほか/は¥ちよくい/なり。¥ふさん/の¥ひとびと/に/は、¥くわざんのゐん/の¥さきの−だいじやうだいじん−ただまさ=こう、¥おほみやの−だいなごん−たかすゑの−きやう¥いげ¥じふ−よ−にん、¥ごにち/に¥ほうい¥ちやくし/て、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/へ¥まゐり−むかは/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「だいたふこんりふ」(『だいたふこんりふ』)S0305¥み=しほ/の¥けちぐわん/に/は¥けんじやう=ども¥おこなは/る。¥にんわじ/の−お=むろ/は¥とうじ¥しゆざう−せ/らる/べき/なり。¥ごしちにち/の¥み=しほ、¥たいげん/の−ほふ¥ならび/に¥くわんぢやう、¥こうぎやう−せ/らる/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥おん=でし¥ゑんりやう−ほふげん、¥ほふいん/に¥なさ/る。¥ざすのみや/は、¥にほん¥ならび/に¥ぎつしや/の¥せんじ/を¥まうさ/せ¥たまふ/を、¥お=むろ¥ささへ¥まうさ/せ¥たまふ/に¥よつ/て、¥おん=でし¥かくせい−そうづ、¥ほふいん/に¥なさ/る。¥その−ほか/の¥けんじやう=ども¥まうきよ/に¥いとま¥あら/ず/と/ぞ¥きこえ/し。¥ひかず¥へ/に/けれ/ば、¥ちうぐう/は¥ろくはら/より¥だいり/へ¥かへり−まゐらせ¥たまふ。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ、¥きさき/に¥たた/せ¥たまふ¥うへ/は、¥あはれ¥とく/して、¥この¥おん=はら/に¥わうじ¥ご=たんじやう¥あれ/かし、¥くらゐ/に¥つけ¥たてまつ/て、¥ふうふ¥とも/に¥ぐわいそぶ、¥ぐわいそぼ/と¥あふが/れ/ん/と¥ねがは/れ/ける/が、¥あがめ¥たてまつる¥いつくしま/へ¥まうさ/ん/とて、¥つき−まうで/を¥はじめ/て、¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ば/に/や、¥ちうぐう¥やがて¥ご=くわいにん¥あり/て、¥ご=さん¥へいあん¥わうじ¥ご=たんじやう¥ましまし/ける/こそ¥めでたけれ。P191¥そもそも¥へいけ¥あきの−いつくしま/を、¥しんじ−はじめ/られ/ける¥こと/を¥いか/に/と¥いふ/に、¥きよもり=こう¥いまだ¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥あきの−くに/を¥もつて、¥かうや/の¥だいたふ¥しゆり−せ/られ/ける/に、¥わたなべの−ゑんどう−ろくらう−よりかた/を¥ざつしやう/に¥つけ/られ/て、¥ろくねん/に¥しゆり¥をはり/ぬ。¥しゆり¥をはつ/て¥のち、¥きよもり¥かうや/へ¥のぼり、¥だいたふ¥をがみ、¥おく/の¥ゐん/へ¥まゐら/れ/ける/に、¥いづく/より¥きたる/と/も¥なく、¥らうそう/の¥はくはつ/なる/が、¥まゆ/に/は¥しも/を¥たれ、¥ひたひ/に¥なみ/を¥たたみ、¥かせづゑ/の¥ふたまた/なる/に¥すがつ/て、¥いで−き¥たまへ/り。¥この¥そう¥なに/と−なう¥ものがたり/を¥し/ける/ほど/に、「¥それ¥わが−やま/は、¥むかし/より¥みつしう/を¥ひかへ/て¥たいてん¥なし。¥てんが/に¥また/も¥さふらは/ず。¥だいたふ¥すでに¥しゆり¥をはり¥さふらひ/たり。¥それ/に¥つき¥さふらう/て/は、¥ゑちぜんの−けひのみや/と¥あきの−いつくしま/は、¥りやうがい/の¥すゐじやく/にて¥さふらふ/が、¥けひのみや/は¥さかえ/たれ/ども、¥いつくしま/は¥なき/が/ごとく/に¥あれ−はて/て¥さふらふ。¥あはれ¥おなじう/は、¥この¥ついで/に¥そうもん−し/て、¥しゆり−せ/させ¥たまへ/かし。¥さ/だに/も¥さふらは/ば、¥くわん−かかい/は¥かた/を¥ならぶる¥ひと、¥てんが/に¥また/も¥ある/まじき/ぞ」/とて¥たた/れ/けり。¥
この¥らうそう/の¥ゐ¥たまへ/る¥ところ/に、¥いきやう¥すなはち¥くん−じ/たり。¥ひと/を¥つけ/て¥みせ/らるる/に、¥さんぢやう/ばかり/は¥みえ¥たまひ/て、¥その−のち/は¥かき−けす¥やう/に¥うせ¥たまひ/ぬ。¥これ¥ただびと/に¥あら/ず、¥だいし/にて¥ましまし/けり/と、¥いよいよ¥たつとく¥おぼえ/て、¥しやば−せかい/の¥おもひで/に/とて、¥かうや/の¥こんだう/に¥まんだら/を¥かか/れ/ける/が、¥さいまんだら/を/ば、¥じやうみやう−ほふいん/と¥いふ¥ゑし/に¥かか/せ/らる。¥とうまんだら/を/ば、¥きよもり¥かか/ん/とて、¥じひつ/に¥かか/れ/ける/が、¥はちえふ/の¥ちうぞん/の¥ほうくわん/を/ば、¥いかが¥おもは/れ/けん、¥わが¥かうべ/の¥ち/を¥いだい/て¥かか/れ/ける/と/ぞP192¥きこえ/し。¥その−のち¥みやこ/へ¥のぼり¥ゐんざん−し/て、¥この¥よし/を¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥ぎよ=かん¥あり/けり。¥なほ¥にん/を¥のべ/られ/て、¥いつくしま/を/も¥しゆり−せ/らる。¥とりゐ/を¥たて−かへ、¥やしろやしろ/を¥つくり−かへ、¥ひやくはちじつ−けん/の¥くわいらう/を/ぞ¥つくら/れ/ける。¥しゆり¥をはつ/て¥のち、¥きよもり¥いつくしま/へ¥まゐり、¥つや−せ/られ/たり/ける¥ゆめ/に、¥ご=ほうでん/の¥み=と¥おし−ひらき、¥びんづら¥ゆう/たる¥てんどう/の¥いで/て、「¥われ/は¥これ¥だい−みやうじん/の¥お=つかひ/なり。¥なんぢ¥この¥けん/を¥もつて、¥てうか/の¥おん=かため/たる/べし」/とて、¥しろがね/の¥ひるまき−し/たる¥こなぎなた/を¥たまはる/と¥いふ¥ゆめ/を¥み/て、¥さめ/て¥のち¥み¥たまへ/ば、¥うつつ/に¥まくらがみ/に/ぞ¥たつ/たり/ける。¥さて¥だい−みやうじん¥ご=たくせん¥あり/けり。「¥なんぢ¥しれ/り/や¥わすれ/り/や。¥ある¥ひじり/を¥もつて¥いは/せ/し¥こと/は¥いか/に。¥ただし¥あくぎやう¥あら/ば、¥しそん/まで/は¥かなふ/まじき/ぞ」/とて、¥だい−みやうじん¥あがら/せ¥たまひ/けり。¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。¥
「らいがう」(『らいがう』)S0306¥しらかはのゐん¥ご=ざいゐ/の¥とき、¥きやうごくの−おほ=との/の¥おん=むすめ、¥きさき/に¥たち¥たまふ¥こと¥あり/けり。¥けんしの−ちうぐう/とて、¥ご=さいあい¥あり/しか/ば、¥しゆじやう¥この¥きさき/の¥おん=はら/に、¥わうじ¥たんじやう¥あら/まほしう¥おぼしめし/て、¥その−ころ¥みゐでら/に、¥うげん/の¥そう/と¥きこゆる、¥らいがう−あじやり/を¥めし/て、「¥なんぢ、P193¥この¥きさき/の¥おん=はら/に、¥わうじ¥たんじやう¥いのり¥まうせ。¥ぐわん¥じやうじゆ−せ/ば、¥しよまう/は¥こふ/に¥よる/べし」/と¥おほせ−くださ/る。¥らいがう¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥みゐでら/に¥かへり、¥かんたん/を¥くだい/て¥いのり/けれ/ば、¥ちうぐう¥やがて¥ご=くわいにん¥あつ/て、¥しようほう−ぐわんねん−じふにんぐわつ−じふろくにち、¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥あり/けり。¥しゆじやう¥なのめ/なら/ず¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥らいがう−あじやり/を¥だいり/へ¥めし/て、「¥さて¥なんぢ/が¥しよまう/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥みゐでら/に¥かいだん¥こんりふ/の¥よし/を¥そうもん−す。「¥いつかい−そうじやう/など/の¥こと/を/も¥まうさ/んずる/か/と/こそ¥おぼしめし/つる/に¥これ/こそ¥ぞんじ/の¥ほか/の¥しよまう/なれ。¥およそ¥わうじ¥たんじやう¥あつ/て、¥そ/を¥つが/しめ/ん/も、¥かいだい¥ぶじ/を¥おぼしめす¥おん=ゆゑ/なり。¥いま¥なんぢ/が¥しよまう/を¥たつせ/ば、¥さんもん¥いきどほつ/て、¥せじやう/も¥しづか/なる/べから/ず。¥りやうもん¥とも/に¥かつせん−せ/ば、¥てんだい/の¥ぶつぽふ¥ほろび/な/んず」/とて、¥きこしめし/も¥いれ/ざり/けり。¥らいがう、「¥こ/は¥くちをしき¥こと/に/こそ¥あん/なれ」/とて、¥いそぎ¥みゐでら/に¥はしり−かへつ/て、¥ひじに/に¥せ/ん/と¥す。¥しゆじやう、¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、¥がうそつ−きやうばうの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥みまさかの−かみ/と¥きこえ/し/を¥めし/て、「¥なんじ/は¥らいがう/に¥しだん/の¥ちぎり¥あん/なれ/ば、¥ゆい/て¥こしらへ/て¥みよ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥いそぎ¥みゐでら/に¥ゆき−むかひ、¥らいがう−あじやり/が¥しゆくばう/に¥ゆい/て、¥ちよくぢやう/の¥おもむき¥おほせ−ふくめ/ん/と¥すれ/ば、¥もつて/の−ほか/に¥ふすぼつ/たる¥ぢぶつだう/に¥たてこもり、¥おそろし=げ/なる¥こゑ−し/て、「¥てんし/に/は¥たはぶれ/の¥ことば¥なし。¥りんげん¥あせ/の/ごとし/と/こそ¥うけたまはつ/て¥さふらへ。¥これ−ほど/の¥しよまう¥かなは/ざら/ん/に¥おいて/は、¥わが¥いのり−いだし¥たてまつ/たるP194¥わうじ/なれ/ば、¥とり¥たてまつ/て¥まだう/へ/こそ¥ゆか/んず/らめ」/とて、¥つひに¥たいめん/も¥せ/ざり/けり。¥みまさかの−かみ¥かへり−まゐり/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥しゆしやう¥おん=なげき¥なのめ/なら/ず。¥らいがう¥つひに¥ひじに/に¥しに/に/けり。¥さる−ほど/に¥わうじ¥ご=なう¥つか/せ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/しか/ば、¥さまざま¥おん=いのり=ども¥あり/けれ/ども、¥かなふ/べし/と/も¥みえ/させ¥たまは/ず。¥はくはつ/なる¥らうそう/の、¥しやくぢやう/を¥もつて、¥つね/は¥わうじ/の¥おん=まくら/に¥たたずむ/と、¥ひと/の¥ゆめ/に/も¥みえ、¥うつつ/に/も¥また¥たち/けり。¥おそろし/など/も¥おろか/なり。¥
しようりやく−ぐわんねん−はちぐわつ−むゆかのひ、¥わうじ¥おん=とし¥しさい/にて¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥あつぶんの−しんわう¥これ/なり。¥しゆしやう¥なのめ/なら/ず¥おん=なげき¥あつ/て、¥その−ころ¥また¥さんもん/に¥うげん/の¥そう/と¥きこえ/し¥さいきやう/の¥ざす¥りやうしん−だいそうじやう、¥その−とき/は¥いまだ¥ゑんゆうばう/の−そうづ/と¥きこえ/し/を、¥だいり/へ¥めし/て、「¥こ/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、「¥いつも¥かやう/の¥ご=ぐわん/は、¥わが−やま/の¥ちから/で/こそ¥じやうじゆ−する¥こと/で/は¥さふらへ。¥され/ば¥くでうの−うしようじやう−もろすけ=こう/も、¥じゑ−だいそうじやう/に¥おん=ちぎり¥まうさ/せ¥たまひ/て/こそ、¥れんぜいゐん/の¥わうじ、¥ご=たんじやう/は¥さふらひ/しか。¥やすい/ほど/の¥おん=こと¥ざふらふ」/とて、¥さんもん/に¥かへつ/て、¥ひやく−にち¥かんたん/を¥くだい/て¥いのら/れ/けれ/ば、¥ちうぐう¥やがて¥ひやく−にち/の¥うち/に¥ご=くわいにん¥あつ/て、¥しようりやく−さんねん−しちぐわつ−ここのかのひ、¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥あり/けり。¥ほりかはの−てんわう¥これ/なり。¥をんりやう/は¥かく¥むかし/も¥おそろしかり/し¥こと=ども/なり。¥こんど¥さ/しも¥めでたき¥ご=さん/に、¥ひじやう/の¥たいしや¥おこなは/れ/たり/と¥いへ/ども、¥この¥しゆんくわん−そうづ¥いち−にん、¥しやめん¥なかり/ける/こそ¥うたてけれ。P195¥おなじき−じふにんぐわつ−やうかのひ、¥わうじ¥とうぐう/に¥たた/せ¥たまふ。¥ふ/に/は¥こまつの−ないだいじん、¥だいぶ/に/は¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/て、¥ぢしよう/も¥みとせ/に¥なり/に/けり。
「せうしやうみやこがへり」(『せうしやうみやこがへり』)S0307¥しやうぐわつ−げじゆん/に¥たんばの−せうしやう−なりつね、¥へい−はんぐわん−やすより−にふだう¥ににん/の¥ひとびと/は、¥ひぜんの−くに¥かせ/の−しやう/を¥たつ/て、¥みやこ/へ/と/は¥いそが/れ/けれ/ども、¥よかん/も¥いまだ¥はげしう、¥かいじやう/も¥いたく¥あれ/けれ/ば、¥うら−づたひ¥しま−づたひ−し/て、¥きさらぎ−とをか−ごろ/に/ぞ、¥びぜん/の−こじま/に/は¥つき¥たまふ。¥それ/より¥ちち¥だいなごん/の¥おん=わたり¥あん/なる¥ありき/の−べつしよ/とかや/に¥たづね−いつ/て¥み¥たまへ/ば、¥たけ/の¥はしら、¥ふり/たる¥しやうじ/など/に、¥かき−おき¥たまひ/つる¥ふで/の¥すさび/を¥み¥たまひ/て、「¥あはれ¥ひと/の¥かたみ/に/は、¥しゆせき/に¥すぎ/たる¥もの/ぞ¥なき。¥かき−おき¥たまは/ず/は、¥いかで/か¥これ/を¥みる/べき」/とて、¥やすより−にふだう/と¥ににん、¥よみ/て/は¥なき、¥なき/て/は¥よむ。「¥あんげん−さんねん−しちぐわつ−はつか¥しゆつけ、¥おなじき−にじふろくにち¥のぶとし¥げかう」/と/も¥かか/れ/たり。¥さて/こそ¥げんざゑもん/の−じよう−のぶとし/が¥まゐり/たる/を/も¥しら/れ/けれ。¥そば/なる¥かべ/に/は、「¥さんぞん¥らいかう¥たより¥あり、¥く−ほん¥わうじやう¥うたがひ¥なし」/と/も¥かか/れ/たり。¥この¥かたみ/をP196¥み¥たまひ/て/こそ、¥さすが¥ごんぐ−じやうど/の¥のぞみ/も¥おはし/けり/と、¥かぎり−なき¥なげき/の¥なか/に/も、¥いささか¥たのもし=げ/に/は¥のたまひ/けれ。¥
その¥はか/を¥たづね/て¥み¥たまへ/ば、¥まつ/の¥ひとむら¥ある¥なか/に、¥かひがひしう¥だん/を¥つい/たる¥こと/も¥なく、¥つち/の¥すこし¥たかき¥ところ/に¥むかひ、¥せうしやう¥そで¥かき−あはせ、¥いき/たる¥ひと/に¥もの/を¥まうす¥やう/に、¥なくなく¥かき−くどい/て¥まうさ/れ/ける/は「¥とほき¥おん=まもり/と¥なら/せ¥おはしまし/たる¥こと/を/ば、¥しま/にて/も¥かすか/に¥つたへ¥うけたまはつ/て¥さふらひ/しか/ども、¥こころ/に¥まかせ/ぬ¥うき−み/なれ/ば、¥いそぎ¥まゐる¥こと/も¥さふらは/ず。¥なりつね¥かの¥しま/へ¥ながさ/れ/て¥のち/の¥たより−な−さ、¥いち−にち−へんし/の¥いのち/も¥あり−がたう/こそ¥さふらひ/しか/ども、¥さすが¥つゆ/の−いのち/は¥きえ−やら/で、¥この¥ふたとせ/を¥おくつ/て、¥いま¥めし−かへさ/るる¥うれし−さ/も、¥さる−こと/にて/は¥さふらへ/ども、¥ちち¥だいなごん=どの/の¥まさしう¥この−よ/に¥わたら/せ¥たまは/ん/を、¥み¥まゐらせ/て/も¥さふらは/ば/こそ、¥さすが¥いのち/の¥ながき¥かひ/も¥さふらは/め。¥これ/まで/は¥いそが/れ/つれ/ども、¥けふ/より¥のち/は¥いそぐ/べし/と/も¥おぼえ/ず」/とて、¥かき−くどい/て/ぞ¥なか/れ/ける。¥まこと/に¥ぞんじやう/の¥とき/なら/ば、¥だいなごん−にふだう=どの/こそ、¥いか/に/と/も¥のたまふ/べき/に、¥しやう/を¥へだて/たる¥ならひ/ほど、¥うらめしかり/ける¥こと/は¥なし。¥こけ/の¥した/に/は¥たれ/か¥こたふ/べき、¥ただ¥あらし/に¥さわぐ¥まつ/の¥ひびき/ばかり/なり。¥
その¥よ/は¥やすより−にふだう/と¥ににん、¥はか/の¥めぐり/を¥ぎやうだう−し、¥あけ/けれ/ば¥あたらしう¥だん¥つき、¥くぎぬき−せ/させ、¥まへ/に¥かりや¥つくり、¥しち−にち−しち−や/が¥あひだ¥ねんぶつ¥まうし、¥きやう¥かい/て、¥けちぐわん/に/は¥おほき/なる¥そとば/を¥たて、「¥くわこ−しやうりやう、¥しゆつり−しやうじ、¥しようだいぼだい」/と¥かい/て、P197¥ねんがう¥つきひ/の¥した/に/は、「¥かうし¥なりつね」/と¥かか/れ/たれ/ば、¥しづ−やまがつ/の¥こころ−なき/も、¥こ/に¥すぎ/たる¥たから¥なし/とて、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥とし¥さり¥とし¥き/たれ/ども、¥わすれ−がたき/は¥ぶいく/の¥むかし/の¥おん、¥ゆめ/の/ごとく¥まぼろし/の/ごとし。¥つき−がたき/は¥れんぼ/の¥いま/の¥なみだ/なり。¥さん−ぜ−じつ−ぱう/の¥ぶつだ/の¥しやうじゆ/も¥あはれみ¥たまひ、¥ばうこん¥そんりやう/も、¥いか/に¥うれし/と¥おぼし/けん。「¥いま¥しばらく¥さふらひ/て、¥ねんぶつ/の¥こう/を/も¥つむ/べう¥さふらへ/ども、¥みやこ/に¥まつ¥ひと=ども/の¥こころ−もとなう¥さふらふ/らん。¥また/こそ¥まゐり¥さふらは/め」/とて、¥まうじや/に¥いとま¥まうし/つつ、¥なくなく¥そこ/を/ぞ¥たた/れ/ける。¥くさ/の¥かげ/にて/も¥なごり−をしう/や¥おもは/れ/けん。¥
おなじき−さんぐわつ−じふろくにち、¥せうしやう¥とば/へ¥あかう/ぞ¥つき¥たまふ。¥こ=だいなごん=どの/の¥さんざう、¥すはま=どの/とて¥とば/に¥あり。¥それ/に¥たち−より¥み¥たまへ/ば、¥すみ−あらし/て¥とし¥へ/に/けれ/ば、¥ついぢ/は¥あれ/ども¥おほひ/も¥なく、¥もん/は¥あれ/ども¥とびら/も¥なし。¥には/に¥たち−いり¥み¥たまへ/ば、¥じんせき¥たえ/て¥こけ¥ふかし。¥いけ/の¥ほとり/を¥み−まはせ/ば、¥あき/の¥やま/の¥はるかぜ/に、¥しらなみ¥しきり/に¥をり−かけ/て、¥しゑん¥はくおう¥せうえう−す。¥きようぜ/し¥ひと/の¥こひし−さ/に、¥ただ¥つきせ/ぬ¥もの/は¥なみだ/なり。¥いへ/は¥あれ/ども、¥らんもん¥やぶれ/て、¥しとみ、¥やりど/も¥たえ/て¥なし。「¥ここ/に/は¥だいなごん=どの/の、/と/こそ¥おはせ/しか。¥この¥つまど/を/ば、¥かう/こそ¥いで−いり¥たまひ/しか。¥あの¥き/を/ば、¥みづから/こそ¥うゑ¥たまひ/しか」/なんど¥いう/て、¥こと/の−は/に¥つけ/て/も、¥ただ¥ちち/の¥こと/を/のみ¥こひし=げ/に/こそ¥のたまひ/けれ。¥やよひ−なか/の−むゆか/なれ/ば、¥はな/は¥いまだ¥なごり¥あり。¥やうばい¥たうり/の¥こずゑ/こそ、¥をりしり−がほ/に¥いろいろ/なれ。¥むかし/の¥あるじ/は¥なけれ/ども、¥はる/を¥わすれ/ぬ¥はな/なれ/や。P198¥せうしやう¥はな/の¥もと/に¥たち−より/て、¥
たうり¥もの¥いは/ず¥はる¥いくばく/か¥くれ/ぬる¥えんか¥あと¥なし¥むかし¥たれ/か¥すんじ¥
ふるさと/の¥はな/の¥もの¥いふ¥よ/なり/せ/ば¥いか/に¥むかし/の¥こと/を¥とは/まし W014¥
この¥ふるき¥しいか/を¥くちずさみ¥たまへ/ば、¥やすより−にふだう/も、¥をりふし¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥すみぞめ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥くるる/ほど/と/は¥また/れ/けれ/ども、¥あまり/に¥なごり−をしく/て、¥よ¥ふくる/まで/こそ¥おはし/けれ。¥ふけ−ゆく¥まま/に/は、¥あれ/たる¥やど/の¥ならひ/とて、¥ふるき¥のき/の¥いたま/より、¥もる¥つきかげ/ぞ¥くま/も¥なき。¥けいろう/の¥やま¥あけ/な/ん/と¥すれ/ども、¥いへぢ/は¥さら/に¥いそが/れ/ず。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥むかひ/に¥のりもの=ども¥つかはし/て¥まつ/らん/も¥こころ−なし/とて、¥せうしやう¥なくなく¥すはま=どの/を¥いで/つつ、¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/ける。¥ひとびと/の¥こころ/の¥うち、¥さ/こそ/は¥うれしう/も、¥また¥あはれ/に/も¥あり/けめ。¥やすより−にふだう/が¥むかひ/に/も、¥のりもの/は¥あり/けれ/ども、¥いまさら¥なごり/の¥をしき/に/とて、¥それ/に/は¥のら/ず、¥せうしやう/の¥くるま/の¥しり/に¥のつ/て、¥しちでうかはら/まで/は¥ゆく。¥それ/より¥ゆき−わかれ/ける/が、¥なほ¥ゆき/も¥やら/ざり/けり。¥はな/の¥もと/の¥はんじつ/の¥かく、¥つき/の¥まへ/の¥いち−や/の¥とも、¥りよじん/が¥ひとむらさめ/の¥すぎ−ゆく/に、¥いちじゆ/の¥かげ/に¥たち−より/て、¥わかるる¥なごり/も¥をしき/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は、¥うかり/し¥しま/の¥すまひ、¥ふね/の¥うち、¥なみ/の¥うへ、¥いちごふ−しよかん/の¥み/なれ/ば、¥ぜんぜ/の¥はうえん/も¥あさから/ず/や¥おもは/れ/けん。P199¥
せうしやう/の¥ははうへ、¥りやうぜん/に¥おはし/ける/が、¥きのふ/より¥さいしやう/の¥しゆくしよ/に¥おはし/て¥また/れ/けり。¥せうしやう/の¥たち−いり¥たまふ¥すがた/を、¥ただ¥ひとめ¥み¥たまひ/て、「¥いのち¥あれ/ば」/と/ばかり/にて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥きたのかた/は、¥さ/しも¥うつくしう¥はなやか/に¥おはせ/しか/ども、¥つきせ/ぬ¥もの−おもひ/に¥やせ−くろみ/て、¥その¥ひと/と/も¥みえ¥たまは/ず。¥ろくでう/が¥くろかり/し¥かみ/も¥しろく¥なり/たり。¥せうしやう/の¥ながさ/れ/し¥とき、¥さんざい/で¥わかれ¥たまひ/し¥をさなき¥ひと/も、¥いま/は¥おとなしう¥なつ/て、¥かみ¥ゆふ/ほど/なり。¥その¥そば/に¥みつ/ばかん/なる¥をさなき¥ひと/の¥おはし/ける/を、¥せうしやう、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥ろくでう、「¥これ/こそ」/と/ばかり¥まうし/て、¥なみだ/を¥ながし/ける/に/こそ、¥さて/は¥わが¥ながさ/れ/し¥とき、¥こころ−ぐるし=げ/なる¥ありさま=ども/を¥み−おき/し/が、¥ことゆゑ−なう¥そだち/ける/よ/と、¥おもひ−いで/て/も¥かなしかり/けり。¥せうしやう/は¥もと/の/ごとく¥ゐん/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥さいしやう/の−ちうじやう/まで¥あがり¥たまふ。¥やすより−にふだう/は、¥ひがしやま¥さうりんじ/に、¥わが¥さんざう/の¥あり/けれ/ば、¥それ/に¥おち−つい/て、¥まづ¥かう/ぞ¥おもひ−つづけ/ける。¥
ふるさと/の¥のき/の¥いたま/に¥こけ¥むし/て¥おもひ/し/ほど/は¥もら/ぬ¥つき/かな W015¥
やがて¥そこ/に¥ろうきよ−し/て、¥うかり/し¥むかし/を¥おもひ−やり、¥ほうぶつしふ/と¥いふ¥ものがたり/を¥かき/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P200¥
「ありわうがしまくだり」(『ありわう』)S0308¥さる−ほど/に¥きかいがしま/の¥るにん=ども、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て¥みやこ/へ¥のぼり/ぬ。¥いま¥いち−にん¥のこさ/れ/て、¥うかり/し¥しま/の¥しまもり/と¥なり/に/ける/こそ¥うたてけれ。¥そうづ/の¥をさなう/より¥ふびん/に/して、¥めし−つかは/れ/ける¥わらは¥あり。¥な/を/ば¥ありわう/と/ぞ¥まうし/ける。¥きかいがしま/の¥るにん=ども、¥けふ¥すでに¥みやこ/へ¥いる/と¥きこえ/しか/ば、¥ありわう¥とば/まで¥ゆき−むかつ/て¥み/けれ/ども、¥わが¥しゆ/は¥みえ¥たまは/ず。「¥いか/に」/と¥とへ/ば、「¥それ/は¥なほ¥つみ¥ふかし/とて、¥いち−にん¥しま/に¥のこさ/れ/ぬ」/と¥きい/て、¥こころ−うし/など/も¥おろか/なり。¥つね/は¥ろくはら−へん/に¥ただずみ/て¥きき/けれ/ども、¥いつ¥しやめん¥ある/べし/と/も、¥きき−いださ/ざり/けれ/ば、¥そうづ/の¥おん=むすめ/の¥しのう/で¥おはし/ける¥ところ/へ¥まゐつ/て、「¥この¥せ/に/も¥もれ/させ¥たまひ/て、¥おん=のぼり/も¥さふらは/ず。¥いま/は¥いか/に/も−し/て¥かの¥しま/へ¥わたつ/て、¥おん=ゆくへ/を/も¥たづね¥まゐらせ/ばや/と¥ぞんじ¥さふらふ。¥おん=ふみ¥たまはつ/て¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥ひめ−ごぜん、¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥やがて¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。¥いとま/を¥こふ/とも、¥よも¥ゆるさ/じ/とて、¥ちち/に/も¥はは/に/も¥しらせ/ず、¥もろこし−ぶね/の¥ともづな/は、¥うづき¥さつき/に¥とく/なれ/ば、¥なつごろも¥たつ/を¥おそく/や¥おもひ/けん、¥やよひ/の¥すゑ/に¥みやこ/を¥たつ/て、¥おほく/の¥なみじ/を¥しのぎ/つつ、¥さつまがた/へ/ぞ¥くだり/ける。P201¥
さつま/より¥かの¥しま/へ¥わたる¥ふなつ/にて、¥ありわう/を¥ひと¥あやしめ、¥き/たる¥もの/を¥はぎ−とり/など¥し/けれ/ども、¥すこし/も¥こうくわい−せ/ず、¥ひめ−ごぜん/の¥おん=ふみ/ばかり/ぞ、¥ひと/に¥みせ/じ/と、¥もとゆひ/の¥なか/に/は¥かくし/ける。¥さて¥あきんど−ぶね/に¥のつ/て、¥くだん/の¥しま/へ¥わたつ/て¥みる/に、¥みやこ/にて¥かすか/に¥つたへ−きき/し/は、¥こと/の−かず/なら/ず。¥た/も¥なし。¥はたけ/も¥なし。¥さと/も¥なし。¥むら/も¥なし。¥おのづから¥ひと/は¥あれ/ども、¥いふ¥ことば/を/も¥きき−しら/ず。¥ありわう¥しま/の¥もの/に¥ゆき−むかつ/て、「¥もの¥まうさ/う」/と¥いへ/ば、「¥なにごと」/と¥こたふ。「¥これ/に¥みやこ/より¥ながさ/れ/させ¥たまひ/たる¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ/と¥まうす¥ひと/の、¥おん=ゆく−すゑ/や¥しつ/たる」/と¥とふ/に、¥ほつしようじ/と/も、¥しゆぎやう/と/も、¥しつ/たら/ば/こそ¥へんじ/は¥せ/め、¥ただ¥かしら/を¥ふつ/て¥しら/ぬ/と¥いふ。¥その¥なか/に¥ある¥もの/が¥こころ−え/て、「¥いさ/とよ、¥さやう/の¥ひと/は、¥さん−にん¥これ/に¥あり/し/が、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て¥みやこ/へ¥のぼり/ぬ。¥いま¥いち−にん¥のこさ/れ/て、¥あそこ−ここ/よ/と¥まよひ−ありき/し/が、¥その−のち/は¥ゆくへ/を/も¥しら/ず」/と/ぞ¥いひ/ける。¥やま/の¥かた/の¥おぼつかな−さ/に、¥はるか/に¥わき−いり、¥みね/に¥よぢ、¥たに/に¥くだれ/ども、¥はくうん¥あと/を¥うづん/で、¥ゆきき/の¥みち/も¥さだか/なら/ず。¥せいらん¥ゆめ/を¥やぶつ/て/は、¥その¥おもかげ/も¥みえ/ざり/けり。¥やま/にて/は¥つひ/に¥たづね/も¥あは/ず。¥うみ/の¥ほとり/に¥つい/て¥たづぬる/に、¥さとう/に¥いん/を¥きざむ¥かもめ、¥おき/の¥しらす/に¥すだく¥はまちどり/の¥ほか/は、¥あと¥とふ¥もの/も¥なかり/けり。¥
ある¥あした¥いそ/の¥かた/より、¥かげろふ/なんど/の/ごとく/に¥やせ−おとろへ/たる/もの、¥よろぼひ¥いで−き/たり。P202¥もと/は¥ほふし/にて¥あり/けり/と¥おぼえ/て、¥かみ/は¥そらさま/に¥おひ−あがり、¥よろづ/の¥もくづ¥とり−つけ/て、¥おどろ/を¥いただい/たる/が/ごとし。¥つぎめ¥あらはれ/て¥かは¥ゆたひ、¥み/に¥き/たる¥もの/は、¥きぬ、¥ぬの/の¥わき/も¥みえ/ず。¥かたて/に/は¥あらめ/を¥もち、¥かたて/に/は¥うを/を¥もらう/て¥もち、¥あゆむ¥やう/に/は¥し/けれ/ども、¥はか/も¥ゆか/ず、¥よろよろ/と/して/ぞ¥いで−き/たる。¥みやこ/にて¥おほく/の¥こつがいにん/は¥み/しか/ども、¥かかる¥もの/は¥いまだ¥み/ず。「¥しよ−あしゆら−とう、¥こざい−だいかいへん」/とて、¥しゆら/の¥さん−あく¥し−しゆ/は、¥しんざん¥だいかい/の¥ほとり/に¥あり/と、¥ほとけ/の¥とき−おき¥たまひ/たれ/ば、¥しら/ず、¥われ¥がきだう/など/へ¥まよひ−き/たる/か/と/ぞ¥おぼえ/たる。¥はや¥かれ/も¥これ/も¥しだい/に¥あゆみ−ちかづく。¥もし¥かやう/の¥もの/にて/も、¥わが¥しゆ/の¥おん=ゆくへ/や¥しつ/たる/と、「¥もの¥まうさ/う」/と¥いへ/ば、「¥なにごと」/と¥こたふ。「¥これ/に¥みやこ/より¥ながさ/れ¥たまひ/たり/し¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−、しゆんくわん−そうづ/と¥まうす¥ひと/や¥まします」/と¥とふ/に、¥わらは/こそ¥み−わすれ/たれ/ども、¥そうづ/は¥いかで/か¥わすれ¥たまふ/べき/なれ/ば、「¥これ/こそ¥そ/よ」/と¥のたまひ/も¥あへ/ず、¥て/に¥もて/る¥もの/を¥なげ−すて/て、¥すなご/の¥うへ/に/ぞ¥たふれ−ふす。¥さて/こそ¥わが¥しゆ/の¥おん=ゆくへ/と/は¥しり/てげれ。¥そうづ¥やがて¥きえ−いり¥たまふ/を、¥ありわう¥ひざ/の¥うへ/に¥かき−のせ¥たてまつり、「¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのぎ/つつ、¥はるばる/と¥これ/まで¥たづね−まゐつ/たる¥かひ/も¥なく、¥いか/に¥やがて¥うき−め/を/ば¥みせ/ん/と/は、¥せ/させ¥たまひ¥さふらふ/ぞ」/と、¥さめざめと¥かき−くどき/けれ/ば、¥そうづ¥すこし¥ひとごこち¥いで−き、¥たすけ−おこさ/れ、「¥まこと/に¥なんじ¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのぎ/つつ、¥はるばる/とP203¥これ/まで¥まゐつ/たる/こそ¥しんべう/なれ。¥ただ¥あけ/て/も¥くれ/て/も、¥みやこ/の¥こと/を/のみ¥おもひ−ゐ/たれ/ば、¥こひしき¥もの=ども/の¥おもかげ/を、¥ゆめ/に¥みる¥をり/も¥あり、¥また¥まぼろし/に¥たつ¥とき/も¥あり。¥み/も¥いたう¥つかれ−よわつ/て¥のち/は、¥ゆめ/も¥うつつ/も¥おもひ−わか/ず。¥いま¥なんぢ/が¥きたれ/る/を/も、¥ただ¥ゆめ/と/のみ/こそ¥おぼゆれ。¥もし¥この¥こと/の¥ゆめ/なり/せ/ば、¥さめ/て/の¥のち/は¥いかが−せ/ん」。¥ありわう、「¥こ/は¥うつつ/にて¥さふらふ/なり。¥さて/も¥この¥おん=ありさま/にて、¥いま/まで¥おん=いのち/の¥のび/させ¥たまひ/たる/こそ、¥ふしぎ/に/は¥おぼえ¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、「¥いさ/とよ、¥これ/は¥こぞ¥せうしやう/や¥はんぐわん−にふだう/が¥むかひ/の¥とき、¥その¥せ/に¥み/を/も¥なぐ/べかり/し/を、¥よし−なき¥せうしやう/の、『¥いま−いちど、¥みやこ/の¥おとづれ/を/も¥まて/かし』/など¥なぐさめ−おき/し/を、¥おろか/に¥もしや/と¥たのみ/つつ、¥ながらへ/ん/と/は¥せ/しか/ども、¥この¥しま/に/は、¥ひと/の¥くひもの/も¥たえ/て¥なき¥ところ/なれ/ば、¥み/に¥ちから/の¥あり/し/ほど/は、¥やま/に¥のぼつ/て¥いわう/と¥いふ¥もの/を¥とり、¥くこく/より¥かよふ¥あきんど/に¥あひ、¥くひもの/に¥かへ/など¥せ/しか/ども、¥ひ/に¥そひ/て¥よわり−ゆけ/ば、¥いま/は¥さやう/の¥わざ/も¥せ/ず。¥かやう/に¥ひ/の¥のどか/なる¥とき/は、¥いそ/に¥いで/て、¥あみうど¥つりうど/に¥て/を¥すり、¥ひざ/を¥かがめ/て、¥うを/を¥もらひ、¥しほひ/の¥とき/は¥かひ/を¥ひろひ、¥あらめ/を¥とり、¥いそ/の¥こけ/に¥つゆ/の−いのち/を¥かけ/て/こそ、¥うき/ながら¥けふ/まで/は¥ながらへ/たれ。¥さら/で/は¥うき−よ/を¥わたる¥よすが/を/ば、¥いか/に−し/つ/らん/と/か¥おもふ/らん」。¥そうづ、「¥これ/にて¥なにごと/を/も¥いは/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥いざ¥わが¥いへ/へ」/と¥のたまへ/ば、¥ありわう、¥あの¥おん=ありさま/にて/も、¥いへ/を¥もち¥たまへ/る¥ふしぎ−さ/よ/と¥おもひ、¥そうづ/を¥かた/にP204¥ひつ−かけ¥まゐらせ、¥をしへ/に¥したがつ/て¥ゆく/ほど/に、¥まつ/の¥ひとむら¥ある¥なか/に、¥よりたけ/を¥はしら/と¥し、¥あし/を¥ゆひ、¥けたはり/に¥わたし、¥うへ/に/も¥した/に/も、¥まつ/の−は/を¥ひし/と¥とり−かけ/たれ/ば、¥あめかぜ¥たまる/べう/も¥みえ/ず。¥ありわう、「¥あな¥あさまし。¥もと/は¥ほつしようじ/の¥じむしき/にて、¥はちじふ−よ−か−しよ/の¥しやうむ/を¥つかさどり¥たまひ/しか/ば、¥むねかど¥ひらかど/の¥うち/に、¥しごひやく−にん/の¥しよじうーけんぞく/に¥ゐねう−せ/られ/て¥おはせ/し¥ひと/の、¥まのあたり¥かかる¥うき−め/に¥あはせ¥たまふ¥こと/の¥ふしぎ−さ/よ。¥ごふ/に¥さまざま¥あり、¥じゆんげん、¥じゆんしやう、¥じゆんごごふ/と¥いへ/り。¥そうづ¥いちご/が¥あひだ、¥み/に¥もちふる¥ところ、¥みな¥だい−がらん/の¥じもつ¥ぶつもつ/なら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥され/ば¥かの¥しんぜ−むざん/の¥つみ/に¥よつ/て、¥こんじやう/にて¥はや¥かんぜ/られ/けり/と/ぞ¥みえ/たり/ける」。¥
(『そうづしきよ』)S0309¥そうづ、¥こ/は¥うつつ/にて¥あり/けり/と¥おもひ−さだめ/て、「¥こぞ¥せうしやう/や¥はんぐわん−にふだう¥むかひ/の¥とき/も、¥これ=ら/が¥ふみ/と¥いふ¥こと/も¥なし。¥いま¥また¥なんぢ/が¥たより/に/も、¥かく/と/も¥いは/ざり/けり/な」/と¥のたまへ/ば、¥ありわう¥なみだ/に¥むせび、¥うつぶし/て、¥しばし/は¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず。¥やや¥あつ/て¥おき−あ(お)がり、¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥きみ/の¥にしはちでう/へ¥いで/させ¥たまひ/し¥のち、¥くわんにん¥まゐつ/て、¥しざい−ざふぐ/を¥つゐふく−し、¥み=うち/の¥もの=ども¥からめ−とり、¥ご=むほん/の¥しだい/を¥たづね−とひ、¥みな¥うしなひ−はて¥さふらひ/き。¥きたのかた/は¥をさなき¥ひと/を¥かくし−かね¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥くらま/の¥おく/に¥しのう/で¥おん=わたり¥さふらひ/し/に/も、¥この¥わらは/ばかり/こそ、¥ときどき¥まゐつ/て¥おん=みやづかへ¥つかまつり¥さふらふ/なり。¥いづれ/も¥おん=なげき/の¥おろか/なる¥かた/は¥さふらは/ね/ども、¥なか/に/も¥をさなき¥ひと/は、¥あまり/に¥こひ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥まゐり¥さふらふ¥たび−ごと/に/は、『¥いか/に¥ありわう/よ、¥われ¥きかいがしま/とかや/へP205¥ぐし/て¥まゐれ』/と¥のたまひ/て、¥むつから/せ¥たまひ/し/が、¥すぎ¥さふらひ/し¥きさらぎ/に、¥もがさ/と¥まうす¥こと/に、¥うせ/させ¥おはしまし¥さふらひ/ぬ。¥きたのかた/は¥その¥おん=なげき/と¥まうし、¥また¥これ/の¥おん=こと/と¥まうし、¥ひとかた/なら/ぬ¥おん=もの−おもひ/に¥おぼしめし−しづま/せ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/し/が、¥さんぬる¥さんぐわつ−ふつかのひ、¥つひに¥はかなく¥なら/せ¥たまひ/て¥さふらひ/ぬ。¥いま/は¥ひめ−ごぜん/ばかり/こそ、¥なら/の¥をば−ごぜん/の¥おん=もと/に¥しのう/で¥おはし/ける、¥それ/より¥おん=ふみ¥たまはつ/て¥まゐつ/て¥さふらふ」/とて、¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥そうづ¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまへ/ば、¥ありわう/が¥まうす/に¥たがは/ず¥かか/れ/たり。¥おく/に/は、「¥などや¥さん−にん¥ながさ/れ/て¥まします¥ひと/の、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て¥さぶらふ/に、¥なに/とて¥いち−にん¥のこさ/れ/て、¥いま/まで¥おん=のぼり/も¥さぶらは/ぬ/ぞ。¥あはれ¥たかき/も¥いやしき/も、¥をんな/の¥み/ほど¥いふ−かひ−なき¥こと/は¥さぶらは/ず。¥をとこ/の¥み/にて/も¥さぶらは/ば、¥わたら/せ¥たまふ¥しま/へ/も、¥など/か¥たづね−まゐら/で¥さぶらふ/べき。¥この¥わらは/を¥おん=とも/にて、¥いそぎ¥のぼら/せ¥たまへ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。「¥これ¥みよ、¥ありわう/よ。¥この¥こ/が¥ふみ/の¥かきやう/の¥はかな−さ/よ。¥おのれ/を¥とも/にて、¥いそぎ¥のぼれ/と¥かい/たる¥こと/の¥うらめし−さ/よ。¥しゆんくわん/が¥こころ/に¥まかせ/たる¥うき−み/なら/ば、¥いかで/か¥この¥しま/にて¥みとせ/の¥はるあき/を/ば¥おくる/べき。¥ことし/は¥じふに/に¥なる/と¥おぼゆる/が、¥これ−ほど/に/は¥かなう/て/は、¥いかで/か¥ひと/に/も¥まみえ、¥みやづかへ/を/も¥し/て、¥み/を/も¥たすく/べき/か」/とて¥なか/れ/ける/に/ぞ、¥ひと/の¥おや/の¥こころ/は¥やみ/に¥あら/ね/ども、¥こ/を¥おもふ¥みち/に¥まよふ/と/は、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。P206「¥
この¥しま/へ¥ながさ/れ/て¥のち/は、¥こよみ/も¥なけれ/ば、¥つきひ/の¥たつ/を/も¥しら/ず。¥ただ¥おのづから¥はな/の¥ちり、¥は/の¥おつる/を¥み/て/は、¥みとせ/の¥はるあき/を¥わきまへ、¥せみ/の¥こゑ¥ばくしう/を¥おくれ/ば¥なつ/と¥おもひ、¥ゆき/の¥つもる/を¥ふゆ/と¥しる。¥びやくぐわつ¥こくぐわつ/の¥かはり−ゆく/を¥み/て/は、¥さんじふにち/を¥わきまへ、¥ゆび/を¥をつ/て¥かぞふれ/ば、¥ことし/は¥むつ/に¥なる/と¥おぼゆる¥をさなき¥もの/も、¥はや¥さきだち/ける¥ござんなれ。¥にしはちでう/へ¥いで/し¥とき、¥この¥こ/が¥ゆか/ん/と¥したひ/し/を、¥やがて¥かへら/うずる/ぞ/と¥なぐさめ−おき/し/が、¥ただいま/の¥やう/に¥おぼゆる/ぞ/や。¥それ/を¥かぎり/と/だに/も¥おもは/ましか/ば、¥いま¥しばらく/も¥など/か¥み/ざら/ん。¥おや/と¥なり¥こ/と¥なり、¥ふうふ/の¥えん/を¥むすぶ/も、¥みな¥この−よ¥ひとつ/に¥かぎら/ぬ¥ちぎり/ぞ/かし。¥いま/は¥ひめ/が¥こと/ばかり/こそ¥こころ−ぐるしけれ/ども、¥それ/は¥いきみ/なれ/ば、¥なげき/ながら/も¥すごさ/んず/らん。¥さ/のみ¥ながらへ/て、¥おのれ/に¥うき−め/を¥みせ/ん/も、¥わが−み/ながら¥つれなかる/べし」/とて、¥おのづから¥しよくじ/を¥とどめ、¥ひとへに¥みだ/の¥みやうがう/を¥となへ、¥りんじう−しやうねん/を/ぞ¥いのら/れ/ける。¥ありわう¥わたつ/て¥にじふさんにち/と¥まうす/に、¥そうづ¥いほり/の¥うち/にて、¥つひに¥をはり¥たまひ/ぬ。¥とし¥さんじふしち/と/ぞ¥きこえ/し。¥ありわう¥むなしき¥すがた/に¥とり−つき¥たてまつり、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし、¥こころ/の¥ゆく/ほど¥なき−あき/て、「¥やがて¥ごせ/の¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらへ/ども、¥この−よ/に/は¥ひめ−ごぜん/ばかり/こそ¥わたら/せ¥たまひ¥さふらへ。¥ごせ¥とぶらひ¥まゐらす/べき¥ひと/も¥さふらは/ず。¥しばし¥ながらへ/て¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐらす/べし」/とて、¥ふしど/を¥あらため/ず、¥いほり/を¥きり−かけ、¥まつ/の¥かれえだ、¥あし/の¥かれば/を¥ひし/と¥とり−かけ/て、¥もしほ/の¥けぶり/と¥なし¥たてまつり、¥だびこと¥をへ/ぬれ/ば、¥はくこつ/をP207¥ひろひ¥くび/に¥かけ、¥また¥あきんど−ぶね/の¥たより/にて、¥くこく/の¥ぢ/に/ぞ¥つき/に/ける。¥それ/より¥そうづ/の¥おん=むすめ/の、¥しのう/で¥おはし/ける¥おん=もと/に¥まゐつ/て、¥あり/し¥やう/を¥はじめ/より¥こまごま/と¥かたり¥まうす。「¥なかなか¥ふみ/を¥ごらんじ/て/こそ、¥いとど¥おん=おもひ/は¥まさら/せ¥たまひ/て¥さふらひ/しか。¥くだん/の¥しま/に/は、¥すずり/も¥かみ/も¥なけれ/ば、¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず。¥おぼしめさ/れ/つる¥おん=こと=ども/は、¥さながら¥むなしう/て¥やみ¥さふらひ/ぬ。¥いま/は¥しやうじやう−せせ/を¥おくり、¥たしやう−くわうごふ/を/ば¥へだて¥たまふ/とも、¥いかで/か¥おん=こゑ/を/も¥きき、¥おん=すがた/を/も¥み¥まゐら/させ¥たまふ/べき。¥ただ¥いか/に/も−し/て、¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐら/させ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥ひめ−ごぜん¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥ふし−まろび/て/ぞ¥なか/れ/ける。¥やがて¥じふに/の¥とし¥あま/に¥なり、¥なら/の¥ほつけじ/に¥おこなひ−すまし/て、¥ぶも/の¥ごせ/を¥とぶらひ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥ありわう/は¥しゆんくわん−そうづ/の¥ゆゐこつ/を¥くび/に¥かけ、¥かうや/へ¥のぼり、¥おく/の¥ゐん/に¥をさめ/つつ、¥れんげだに/にて¥ほふし/に¥なり、¥しよ−こく−しちだう¥しゆげふ−し/て、¥しゆ/の¥ごせ/を/ぞ¥とぶらひ/ける。¥かやう/に¥ひとびと/の¥おもひ−なげき/の¥つもり/ぬる、¥へいけ/の¥すゑ/こそ¥おそろしけれ。¥
「つじかぜ」(『つじかぜ』)S0310¥さる−ほど/に¥おなじき−ごぐわつ−じふににち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥きやうちう/に¥つじかぜ¥おびたたしう¥ふい/て、¥じんをくP208¥おほく¥てんだう−す。¥かぜ/は¥なかのみかど−きやうごく/より¥おこつ/て、¥ひつじさる/の¥かた/へ¥ふい/て¥ゆく/に、¥むねかど¥ひらかど¥ふき−ぬい/て、¥しごちやう¥じつちやう/ばかり¥ふき¥もて¥ゆき、¥けた、¥なげし、¥はしら/など/は、¥こくう/に¥さんざい−し、¥ひはだ、¥ふきいた/の¥るゐ、¥ふゆ/の¥こ/の−は/の¥かぜ/に¥みだるる/が/ごとし。¥おびたたしう¥なり−どよむ¥おと/は、¥かの¥じごく/の¥ごふふう/なり/とも、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥ただ¥しやをく/の¥はそんずる/のみ/なら/ず、¥いのち/を¥うしなふ¥もの/も¥おほし。¥ぎうば/の¥たぐひ、¥かず/を¥しら/ず¥うち−ころさ/る。¥これ¥ただごと/に¥あら/ず、¥みうら¥ある/べし/とて、¥じんぎくわん/に/して¥みうら¥あり。「¥いま¥ひやく−にち/の¥うち/に、¥ろく/を¥おもんずる¥だいじん/の¥つつしみ、¥べつし/て/は¥てんが/の¥だいじ、¥ぶつぽふ¥わうぼふ¥とも/に¥かたぶき、¥ならびに¥ひやうがく¥さうぞく−す/べし」/と/ぞ、¥じんぎくわん、¥おんやうりやう¥とも/に¥うらなひ¥たてまつる。¥
「いしもんだふ」(『いしもんだふ』)S0311¥おなじき¥なつ/の¥ころ、¥こまつの−おとど/は、¥かやう/の¥こと=ども/に、¥よろづ¥こころ−ぼそく/や¥おもは/れ/けん、¥その−ころ¥くまの−さんけい/の¥こと¥あり/けり。¥ほんぐう−しようじやうでん/の¥おん=まへ/にて、¥しづか/に¥ほつせ¥まゐらせ/て、¥よ/も−すがら¥けいびやく−せ/られ/ける/は、「¥しんぷ¥にふだう−しやうこく/の¥てい/を¥みる/に、¥あくぎやく−ぶだう/に/して、¥やや/も¥すれ/ば¥きみ/を¥なやまし¥たてまつる。¥その¥ふるまひ/を¥みる/に、¥いちご/の¥えいぐわ¥なほ¥あやふし。¥しげもり¥ちやうし/と/して、¥しきり/に¥いさめ/を¥いたす/と¥いへ/ども、¥み¥ふせう/の¥あひだ、¥かれ¥もつて¥ふくよう−せ/ず。P209¥しえふ¥れんぞく−し/て、¥しん/を¥あらはし¥な/を¥あげ/ん¥こと¥かたし。¥この−とき/に¥あたつ/て、¥しげもり¥いやしう/も¥おもへ/り。¥なまじひ/に¥れつし/て、¥よ/に¥ふちん−せ/ん¥こと、¥あへて¥りやうしん−かうし/の−ほふ/に¥あら/ず。¥しか/じ、¥な/を¥のがれ¥み/を¥しりぞい/て、¥こんじやう/の¥めいばう/を¥なげ−すて/て、¥らいせ/の¥ぼだい/を¥もとめ/ん/に。¥ただし¥ぼんぶ¥はくぢ、¥ぜひ/に¥まどへ/る/が¥ゆゑ/に、¥こころざし/を¥なほ¥ほしいまま/に¥せ/ず、¥なむ−ごんげん−こんがうどうじ。¥ねがは−く/は、¥しそん¥はんえい¥たえ/ず/して、¥つかへ/て¥てうてい/に¥まじはる/べく/ば、¥にふだう/の¥あくしん/を¥やはらげ/て、¥てんが/の¥あんぜん/を¥え/せ/しめ¥たまへ。¥えいえう¥また¥いちご/を¥かぎつ/て、¥こうこん¥はぢ/に¥およぶ/べく/ば、¥しげもり/が¥うんめい/を¥つづめ/て、¥らいせ/の¥くりん/を¥たすけ¥たまへ。¥りやうか/の¥ぐぐわん¥ひとへに¥みやうじよ/を¥あふぐ」/と、¥かんたん/を¥くだい/て¥きねん−せ/られ/けれ/ば、¥とうろう/の¥ひ/の¥やう/なる¥もの/の、¥おとど/の¥おん=み/より¥いで/て、¥ばつ/と¥きゆる/が/ごとく/して¥うせ/に/けり。¥ひと¥あまた¥み¥たてまつり/けれ/ども、¥おそれ/て¥これ/を¥まうさ/ず。¥おとど¥げかう/の¥とき、¥いはだがは/を¥わたら/れ/ける/に、¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり¥いげ/の¥きんだち、¥じやうえ/の¥した/に¥うすいろ/の¥きぬ/を¥き/て、¥なつ/の¥こと/なれ/ば、¥なにと−なう¥みづ/に¥たはぶれ¥たまふ/ほど/に、¥じやうえ/の¥ぬれ/て¥きぬ/に¥うつり/たる/が、¥ひとへに¥いろ/の/ごとく/に¥みえ/ける/を、¥ちくごの−かみ−さだよし¥これ/を¥み−とがめ/て、「¥なに/と/やらん¥あの¥おん=じやうえ/の、¥よ/に¥いまはし=げ/に¥みえ/させ¥ましまし¥さふらふ。¥いそぎ¥めし−かへ/らる/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど、「¥さて/は¥わが¥しよぐわん¥すでに¥じやうじゆ−し/に/けり。¥あへて¥その¥じやうえ¥あらたむ/べから/ず」/とて、¥いはだがは/より¥くまの/へ、¥べつし/て¥よろこび/の¥ほうへい/を/ぞ¥たて/られ/ける。¥ひと¥あやし/と¥おもへ/ども、¥なほ¥その¥こころ/を/ばP210¥え/しめ¥たまは/ず。¥しかる/に¥この¥きんだち、¥ほど−なく¥やがて、¥まこと/の¥いろ/を¥き¥たまひ/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥その−のち¥おとど¥げかう/の¥とき、¥いくばく/の¥ひかず/を¥へ/ず/して、¥やまひ¥つき¥たまひ/ぬ。¥ごんげん¥すでに¥ご=なふじゆ¥ある/に/こそ/とて、¥れうぢ/を/も¥し¥たまは/ず。¥まして¥きたう/を/も¥いたさ/れ/ず。¥
その−ころ¥そうてう/より¥すぐれ/たる¥めいい¥わたつ/て、¥ほんてう/に¥やすらふ¥こと¥あり/けり。¥をりふし¥にふだう−しやうこく/は、¥ふくはら/の¥べつげふ/に¥おはし/ける/が、¥ゑつちうの−ぜんじ−もりとし/を¥ししや/にて、¥こまつ=どの/へ¥のたまひ−つかはさ/れ/ける/は、「¥しよらう¥いよいよ¥だいじ/なる¥よし、¥その¥きこえ¥あり。¥かねては¥また¥そうてう/より¥すぐれ/たる¥めいい¥わたれ/り。¥をりふし¥これ/を¥よろこび/と¥す。¥よつて¥かれ/を¥めし−しやうじ/て、¥いれう/を¥くはへ/しめ¥たまへ」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥おとど¥たすけ−おこさ/れ、¥もりとし/を¥おん=まへ/へ¥めし/て¥たいめん¥あり。「¥まづ¥いれう/の¥こと、¥かしこまつ/て¥うけたまはり¥さふらひ/ぬ/と¥まうす/べし。¥ただし¥なんぢ/も¥よく¥うけたまはれ。¥えんぎの−みかど/は、¥さ/ばかん/の¥けんわう/にて¥わたら/せ¥たまひ/しか/ども、¥いこく/の¥さうにん/を、¥みやこ/の¥うち/へ¥いれ/られ/たり/し¥こと/を/ば、¥まつだい/まで/も¥けんわう/の¥おん=あやまり、¥ほんてう/の¥はぢ/と/こそ¥みえ/たれ。¥いはんや¥しげもり/ほど/の¥ぼんにん/が、¥いこく/の¥いし/を¥わうじやう/へ¥いれ/ん¥こと、¥まつたく¥くに/の¥はぢ/に¥あら/ず/や。¥かん/の¥かうそ/は、¥さんじやく/の¥けん/を¥ひつ−さげ/て、¥てんが/を¥をさめ/し/に、¥わいなん/の¥げいふ/を¥うち/し¥とき、¥りうし/に¥あたつ/て¥きず/を¥かうぶる。¥きさき¥りよたいこう、¥りやうい/を¥むかへ/て¥みせ/しむる/に、¥い/の¥いはく、¥この¥きず¥ぢし/つ/べし。¥ただし¥ごじつこん/の¥きん/を¥あたへ/ば¥ぢせ/ん/と¥いふ。¥かうそ¥のたまはく、¥われ¥まもり¥つよかつ/し/ほど/は、¥おほく/のP211¥たたかひ/に¥あう/て¥きず/を¥かうぶり/しか/ども、¥その¥いたみ¥なし。¥うん¥すでに¥つき/ぬ。¥めい/は¥すなはち¥てん/に¥あり、¥へんじやく/と¥いふ/とも¥なん/の¥えき/か¥あら/ん。¥しかれ/ば¥また¥かね/を¥をしむ/に¥に/たり/とて、¥ごじつこん/の¥きん/を¥いし/に¥あたへ/ながら、¥つひに¥ぢせ/ざり/き。¥せんげん¥みみ/に¥あり、¥いま¥もつて¥かんじん−す。¥しげもり¥いやしくも¥きうけい/に¥れつし¥さんたい/に¥のぼる。¥その¥うんめい/を¥はかる/に、¥もつて¥てんしん/に¥あり。¥なんぞ¥てんしん/を¥さつせ/ず/して、¥おろか/に¥いれう/を¥いたはしう¥せ/ん/や。¥しよらう¥もし¥ぢやうごふ/たら/ば、¥いれう/を¥くはふる/とも¥えき¥なから/ん/か。¥また¥ひごふ/たら/ば、¥れうぢ/を¥くはへ/ず/とも、¥たすかる¥こと/を¥う/べし。¥かの¥ぎば/が¥いじゆつ¥およば/ず/して、¥だいかく−せそん、¥めつど/を¥ばつだいが/の¥ほとり/に¥となふ。¥これ¥すなはち¥ぢやうごふ/の¥やまひ、¥いやさ/ざる¥こと/を¥しめさ/ん/が¥ため/なり。¥ぢする/は¥ぶつたい/なり。¥れうする/は¥ぎば/なり。¥
ぢやうごふ¥もし¥いれう/に¥かかはる/べう¥さふらは/ば、¥あに¥しやくそん¥にふめつ¥あら/ん/や。¥ぢやうごふ¥なほ¥ぢする/に¥たへ/ざる¥むね¥あきらけし。¥しかれ/ば¥しげもり/が¥み、¥ぶつたい/に¥あら/ず、¥めいい¥また¥ぎば/に¥およぶ/べから/ず、¥たとひ¥しぶ/の¥しよ/を¥かんがみ/て、¥ひやく−れう/に¥ちやうず/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥うだい/の¥ゑしん/を¥ぐれう−せ/ん。¥たとひ¥また¥ごきやう/の¥せつ/に¥つまびらか/に/して、¥しゆびやう/を¥いやす/と¥いふ/とも、¥あに¥ぜんぜ/の¥ごふびやう/を¥ぢせ/ん/や。¥もし¥かの¥いじゆつ/に¥よつ/て¥ぞんめい−せ/ば、¥ほんてう/の¥いだう¥なき/に¥に/たり。¥いじゆつ¥かうげん¥なく/ば、¥めんえつ¥しよせん¥なし。¥なかんづく¥ほんてう¥ていしん/の¥げさう/を¥もつて、¥いてう¥ふいう/の¥らいかく/に¥まみえ/ん¥こと、¥かつうは¥くに/の¥はぢ、¥かつうは¥みち/の¥りようち/なり。¥たとひ¥しげもり¥めい/は¥ばうず/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥くに/の¥はぢ/を¥おもふ¥こころ/を¥ぞんぜ/ざら/ん。¥この¥よし/を¥まうせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。P212¥
もりとし¥なくなく¥ふくはら/へ¥はせ−くだり、¥この¥よし/を¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥くに/の¥はぢ/を¥おもふ¥だいじん、¥しやうこ/に¥いまだ¥きか/ず。¥まして¥まつだい/に¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥につぽん/に¥さうおう−せ/ぬ¥だいじん/なれ/ば、¥いかさま/に/も¥こんど¥うせ/られ/な/んず」/とて、¥いそぎ¥みやこ/へ¥のぼら/れ/けり。¥しちぐわつ−にじふはちにち、¥こまつ=どの¥しゆつけ−し¥たまひ/ぬ。¥ほふみやう/は¥じやうれん/と/こそ¥つき¥たまへ。¥やがて¥はちぐわつ−ひとひのひ、¥りんじう−しやうねん/に¥ぢうし/て¥うせ¥たまひ/ぬ。¥おん=とし¥しじふさん。¥よ/は¥さかり/と/こそ¥みえ/つる/に、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥にふだう−しやうこく/の、¥さ/しも¥よこがみ/を¥やら/れ/し/に/も、¥この¥ひと/の¥おはし/て、¥やうやう/に¥なだめ−のたまひ/つれ/ば/こそ、¥よ/は¥けふ/まで/も¥おだしかり/つれ。¥この−のち¥てんが/に¥いか/ばかり/の¥こと/か¥いで−こ/んず/らん/とて、¥じやうげ¥みな¥なげき−あへ/り。¥また¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥かたざま/の¥ひとびと、¥よ/は¥ただいま¥だいしやう=どの/へ¥まゐり/な/んず/とて、¥いさみ−よろこび−あは/れ/けり。¥ひと/の¥おや/の¥こ/を¥おもふ¥ならひ/は、¥おろか/なる/が、¥さきだつ/だに/も¥かなしき/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は¥たうけ/の¥とうりやう、¥たうせい/の¥けんじん/にて¥ましませ/ば、¥おんあい/の¥わかれ、¥いへ/の¥すゐび、¥かなしん/で/も¥なほ¥あまり¥あり。¥され/ば¥よ/に/は¥りやうしん/を¥うしなへ/る¥こと/を¥なげき、¥いへ/に/は¥ぶりやく/の¥すたれ/ぬる¥こと/を¥かなしむ。¥およそ/は¥この¥おとど、¥ぶんしやう¥うるはしう/して、¥こころ/に¥ちう/を¥そんじ、¥さいげい¥すぐれ/て、¥ことば/に¥とく/を¥かね¥たまへ/り。P213¥
「むもんのさた」(『むもん』)S0312¥てんぜい¥この¥おとど/は、¥ふしん¥だいいち/の¥ひと/にて、¥みらい/の¥こと/を/も¥かねて¥さとり¥たまひ/ける/に/や、¥さんぬる¥しんぐわつ−なぬか/の¥よ/の¥ゆめ/に、¥み¥たまひ/たり/ける¥こと/こそ¥ふしぎ/なれ。¥たとへば¥ある¥はまぢ/を、¥はるばる/と¥あゆみ−ゆき¥たまふ/ほど/に、¥かたはら/に¥おほき/なる¥とりゐ/の¥あり/ける/を、¥おとど¥ゆめ/の¥うち/に、「¥あれ/は¥いか/なる¥おん=とりゐ/やらん」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥かすが−だい−みやうじん/の¥おん=とりゐ/なり」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ひと¥くんじゆ−し/たり。¥その¥なか/より¥おほき/なる¥ほふし/の¥かうべ/を、¥たち/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ/たる/を、¥おとど、「¥なにもの/の¥くび/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥へいけ−だいじやう−にふだう=どの/の、¥あくぎやう¥てうくわ−し¥たまへ/る/に¥よつ/て、¥たうしや¥だい−みやうじん/の¥めし−とら/せ¥たまひ/て¥さふらふ」/と¥まうす/と¥おぼえ/て¥ゆめ¥さめ/ぬ。¥たうけ/は¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥てうてき/を¥たひらげ、¥けんじやう¥み/に¥あまり、¥ていそ、¥だいじやうだいじん/に¥いたり、¥いちぞく/の¥しようじん¥ろくじふ−よ−にん、¥にじふ−よ−ねん/の¥この−かた、¥くわん−かかい¥てんが/に¥かた/を¥ならぶる¥ひと/も¥なかり/つる/に、¥さて/は¥にふだう/の¥あくぎやう¥てうくわ−し¥たまへ/る/に¥よつ/て、¥たうけ/の¥うんめい/の¥すゑ/に¥なる/に/こそ/と¥おぼしめし/て、¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ。¥をりふし¥つまど/を¥ほとほとと¥うち−たたく¥もの¥いで−き/たり。¥おとど、「¥なにもの/ぞ、¥あれ¥きけ」/とP214¥のたまへ/ば、「¥せのをの−たらう−かねやす/が、¥こんや¥あまり/に¥ふしぎ/の¥こと/を¥み¥さふらう/て、¥まうし−あげ/ん/が¥ため/に、¥よ/の¥あくる/が¥おそう¥おぼえ/て¥まゐつ/て¥さふらふ。¥おん=まへ/の¥ひと/を¥はるか/に¥のけ/られ¥さふらへ」/とて、¥ひと/を¥のけ/て¥たいめん¥あり/けり。¥おとど/の¥ごらんぜ/られ/ける¥ゆめ/に、¥すこし/も¥たがは/ず、¥つぶさ/に¥かたり¥まうし/たり/けれ/ば、¥さて/こそ¥かねやす/は、¥しん/に/も¥つうじ/たる/ものかな/と/ぞ、¥おとど/も¥かんじ¥たまひ/ける。¥
その¥あした¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり、¥ゐん/へ¥まゐら/ん/とて¥いで−たた/れ/ける/を、¥おとど¥よび¥たてまつ/て、「¥ひと/の¥おや/の¥かやう/の¥こと¥まうす/は、¥をこがましけれ/ども、¥ご=へん/は¥ひと/の¥こ/に/は¥すぐれ/て¥みえ¥たまへ/り。¥あれ¥せうしやう/に¥さけ¥すすめよ」/と¥のたまへ/ば、¥ちくごの−かみ−さだよし¥おん=しやく/に¥まゐる。¥これ/を/ば¥せうしやう/に/こそ¥たぶ/べけれ/ども、¥おや/より¥さき/に/は¥よも¥たまはら/じ/とて、¥おとど¥さんど¥くん/で、¥その−のち¥せうしやう=どの/に/ぞ¥ささ/れ/ける。¥せうしやう¥また¥さんど¥うけ¥たまふ¥とき、「¥あれ¥せうしやう/に¥ひきでもの−せよ」/と¥のたまへ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥あかぢ/の−にしき/の¥ふくろ/に¥いれ/たる¥おん=たち¥もつ/て¥まゐつ/たり。¥せうしやう、¥これ/は¥たうけ/に¥つたはる¥こがらす/と¥いふ¥たち/やらん/と、¥うれし=げ/に¥み¥たまへ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥だいじん¥さう/の¥とき¥もちふる¥むもん/の−たち/なり。¥その−とき¥せうしやう¥もつて/の−ほか/に¥きしよく¥かはつ/て¥みえ¥たまへ/ば、¥おとど¥なみだ/を¥はらはらと¥ながい/て、「¥それ/は¥さだよし/が¥ひがごと/に/は¥あら/ず。¥だいじん¥さう/の¥とき¥はい/て¥とも−する¥むもん/と¥いふ¥たち/なり。¥ひごろ/は¥にふだう=どの¥いか/に/も−なり¥たまは/ば、¥しげもり¥はい/て¥とも−せ/ん/と/こそ¥ぞんぜ/しか。¥いま/は¥しげもり、¥にふだう=どの/に¥さきだち¥たてまつら/んずれ/ば、¥ご=へん/に¥たぶ/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。P215¥せうしやう¥とかう/の¥へんじ/に/も¥および¥たまは/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥しゆくしよ/に¥かへり、¥その−ひ/は¥しゆつし/も¥し¥たまは/ず、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥その−のち¥おとど¥くまの/へ¥まゐり¥げかう−し/て、¥いくばく/の¥ひかず/を¥へ/ず/して、¥やまひ¥つい/て¥うせ¥たまひ/ける/に/こそ、¥げに/も/と¥おもひ−しら/れ/けれ。¥
「とうろう」(『とうろのさた』)S0313¥すべて¥この¥おとど/は、¥めつざい−しやうぜん/の¥こころざし¥ふかう¥おはし/けれ/ば、¥たうらい/の¥ふちん/を¥なげき、¥ろくはち−ぐぜい/の¥ぐわん/に¥なぞらへ/て、¥ひがしやま/の¥ふもと/に、¥しじふはちけん/の¥しやうじや/を¥たて、¥いつけん/に¥ひとつ−づつ、¥しじふはち/の¥とうろう/を¥かけ/られ/たり/けれ/ば、¥くぼん/の¥うてな¥め/の¥まへ/に¥かがやき、¥くわうえう¥らんけい/を¥みがい/て、¥じやうど/の¥みぎり/に¥のぞみ/ぬる/が/ごとし。¥まいげつ¥じふしにち¥じふごにち/を¥てんじ/て、¥だいねんぶつ¥あり/しか/ば、¥たうけ¥たけ/の¥ひとびと/の¥もと/より、¥みめ¥よく¥わかう¥さかん/なつ/し¥にようばう/を¥しやうじ/て、¥いつけん/に¥ろくにん−づつ、¥にひやくはちじふはちにん/の¥じしゆ/と¥さだめ/て、¥かの¥りやうにち/が¥あひだ/は、¥いつしん−ふらん/の¥しようみやう/の¥こゑ¥おこたら/ず。¥まことに¥らいかう−いんぜふ/の¥ひぐわん/も、¥この¥ところ/に¥やうがう/を¥たれ、¥せつしゆ−ふしや/の¥ひかり/も、¥この¥おとど/を¥てらし¥たまふ/か/と/ぞ¥おぼえ/たる。¥じふごにち/の¥につちう/を¥けちぐわん/と/して、¥だいねんぶつ¥あり/けり。¥おとど¥ぎやうだう/の¥なか/に¥まじはつ/て、¥さいはう/に¥むかひ¥て/をP216¥あはせ、「¥なむ¥あんやうせかい/の¥けうしゆ、¥みだぜんぜい、¥さんがい−ろくだう/の¥しゆじやう/を、¥あまねく¥さいど−し¥たまへ」/と、¥ゑかう−ほつぐわん−し¥たまへ/ば、¥みる¥ひと¥じひしん/を¥おこし、¥きく¥もの¥かんるゐ/を/ぞ¥もよほし/ける。¥それ/より/して/こそ、¥この¥おとど/を¥とうろう/の−だいじん/と/は¥まうし/けれ。¥
「かねわたし」(『かねわたし』)S0314¥おとど¥また¥いか/なる¥ぜんごん/を/も¥し/て、¥ごせ¥とぶらは/れ/ばや/と¥おもは/れ/ける/が、¥わが¥てう/に/は¥いか/なる¥だい=ぜんごん/を¥し−おい/たり/とも、¥しそん¥あひ−つづい/て、¥しげもり/が¥ごせ¥とぶらは/ん¥こと¥あり−がたし。¥たこく/に¥いか/なる¥ぜんごん/を/も¥し/て、¥ごせ¥とぶらは/れ/ん/とて、¥あんげん/の¥はる/の¥ころ、¥ちんぜい/より¥めうでん/と¥いふ¥せんどう/を¥めし−のぼせ、¥ひと/を¥はるか/に¥のけ/て¥たいめん¥あり。¥こがね/を¥さんぜんごひやく−りやう¥めし−よせ/て、「¥なんぢ/は¥きこゆる¥だい=しやうじき/の¥もの/なれ/ば」/とて、「¥ごひやく−りやう/を/ば¥なんぢ/に¥え/さす。¥さんぜんりやう/を/ば¥そうてう/へ¥わたし、¥いつせんりやう/を/ば¥いわうさん/の¥そう/に¥ひき、¥にせんりやう/を/ば¥みかど/へ¥まゐらせ/て、¥でんだい/を¥いわうさん/へ¥まうし−よせ/て、¥しげもり/が¥ごせ¥とぶらは/す/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥めうでん¥これ/を¥たまはつ/て、¥ばんり/の¥えんらう/を¥しのぎ/つつ、¥だいそうこく/へ/ぞ¥わたり/ける。¥いわうさん/の¥はうぢやう、¥ぶつせう−ぜんじ¥とくくわう/に¥あひ¥たてまつ/て、¥この¥よし¥まうし/けれ/ば、¥ずゐき¥かんたん−し/て、P217¥やがて¥せんりやう/を/ば、¥いわうさん/の¥そう/に¥ひき、¥にせんりやう/を/ば¥みかど/へ¥まゐらせ/て、¥こまつ=どの/の¥まうさ/れ/つる¥やう/を、¥つぶさ/に¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥みかど¥おほき/に¥かんじ¥おぼしめし/て、¥ごひやくちやう/の¥でんだい/を、¥いわうさん/へ/ぞ¥よせ/られ/ける。¥され/ば¥につぽん/の¥だいじん、¥たひらの−あそん−しげもり=こう/の¥ごしやう−ぜんしよ/と¥いのる¥こと、¥いま/に¥あり/と/ぞ¥うけたまはる。¥(『ほふいんもんだふ』)S0315¥にふだう−しやうこく、¥こまつ=どの/に/は¥おくれ¥たまひ/ぬ。¥よろづ¥こころ−ぼそく/や¥おもは/れ/けん、¥ふくはら/へ¥はせ−くだり、¥へいもん−し/て/こそ¥おはし/けれ。¥
「ほふいんもんだふ」¥おなじき−じふいちぐわつ−なぬか/の¥よ/の¥いぬ/の−こく/ばかり、¥だいぢ¥おびたたしう¥うごい/て¥やや¥ひさし。¥おんやう/の−かみ−あべの−たいしん、¥いそぎ¥だいり/へ¥はせ−まゐり、「¥こんど/の¥ぢしん、¥せんもん/の¥さす¥ところ、¥その¥つつしみ¥かろから/ず¥さふらふ。¥たう−だう¥さんきやう/の¥なか/に、¥こんききやう/の¥せつ/を¥み¥さふらふ/に、¥とし/を¥え/て/は¥とし/を¥いで/ず、¥つき/を¥え/て/は¥つき/を¥いで/ず、¥ひ/を¥え/て/は¥ひ/を¥いで/ず、¥もつて/の−ほか/に¥くわきふ/に¥さふらふ」/とて、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながし/けれ/ば、¥てんそう/の¥ひと/も¥いろ/を¥うしなひ、¥きみ/も¥えいりよ/を¥おどろか/せ¥おはします。¥わかき¥くぎやう−てんじやうびと/は、「¥けしから/ぬ¥やすちか/が¥なきやう/かな。¥ただいま¥なにごと/の¥ある/べき/か」/とて、¥いちど/に¥どつと/ぞ¥わらひ−あは/れ/ける。¥され/ども¥このP218¥やすちか/は、¥せいめい¥ごだい/の¥べうえい/を¥うけ/て、¥てんもん/は¥えんげん/を¥きはめ、¥すゐでう¥たなごころ/を¥さす/が/ごとし。¥いちじ/も¥たがは/ざり/けれ/ば、¥さす/の−みこ/と/ぞ¥まうし/ける。¥いかづち/の¥おち−かかり/たり/しか/ども、¥らいくわ/の¥ため/に¥かりぎぬ/の¥そで/は¥やけ/ながら、¥その¥み/は¥つつが/も¥なかり/けり。¥じやうだい/に/も¥まつだい/に/も¥あり−がたかり/し¥やすちか/なり。¥おなじき−じふしにち、¥にふだう−しやうこく¥いかが/は¥おもひ−なら/れ/たり/けん、¥すせんぎ/の¥ぐんびやう/を¥たなびい/て、¥みやこ/へ¥かへり−いり¥たまふ¥よし¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥なに/と¥きき−わけ/たる¥こと/は¥なけれ/ども、¥じやうげ¥さわぎ−あへ/り。¥また¥なにもの/の¥まうし−いだし/たり/ける/やらん。¥にふだう−しやこく¥てうか/を¥うらみ¥たてまつる/べし/と¥いふ¥ひろう/を¥なす。¥くわんばく=どの/も、¥ないない¥きこしめさ/るる¥むね/も/や¥あり/けん、¥いそぎ¥ご=さんだい¥あつ/て、「¥こんど¥にふだう/の¥じゆらく/は、¥ひとへに¥もとふさ¥ほろぼす/べき¥よし/の¥けつこう/にて¥さふらへ。¥つひに¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あひ¥さふらは/んず/らん」/と、¥そうせ/させ¥たまへ/ば、¥しゆしやう¥きこしめし/て、「¥そこ/に¥いか/なる¥め/に/も¥あは/ん/は、¥ひとへに¥わが¥あふ/にて/こそ¥あら/んず/らめ」/とて、¥りようがん/より¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ/ぞ¥かたじけなき。¥まことに¥てんが/の¥おん=まつりごと/は、¥しゆしやう¥せふろく/の¥おん=ぱからひ/にて/こそ¥ある/に、¥これ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や。¥てんせうだいじん、¥かすが−だい−みやうじん/の¥しんりよ/の/ほど/も¥はかり−がたし。¥
おなじき−じふごにち、¥にふだう−しやうこく¥てうか/を¥うらみ¥たてまつる/べき¥こと、¥ひつぢやう/と¥きこえ/しか/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、¥こ=せうなごん−しんせい/の¥しそく¥じやうけん−ほふいん/を¥お=つかひ/にて、¥にふだう−しやうこく/の¥もと/へ¥つかはさ/る。¥おほせ−くださ/れ/ける/は、「¥きんねん¥てうてい¥しづか/なら/ず/して、¥ひと/の¥こころ/も¥ととのほら/ず。P219¥せけん/も¥いまだ¥らくきよ−せ/ぬ¥さま/に¥なり−ゆく¥こと/を、¥そうべつ/に¥つけ/て¥なげき−おぼしめせ/ども、¥さて¥そこ/に¥あれ/ば、¥ばんじ/は¥たのみ−おぼしめさ/れ/て/こそ¥ある/に、¥たとひ¥てんが/を¥しづむる/まで/こそ¥なから/め、¥あまつさへ¥がうがう/なる¥てい/にて、¥てうか/を¥うらみ¥たてまつる/べし/と¥きこしめす/は¥なにごと/ぞ」/と¥おほせ−くださ/る。¥ほふいん¥ちよくぢやう/を¥うけたまはつ/て、¥にしはちでう/の−てい/に¥ゆき−むかふ。¥にふだう¥たいめん/も¥し¥たまは/ず、¥あした/より¥ゆうべ/に¥およぶ/まで¥また/れ/けれ/ども、¥ぶいん/なり/けれ/ば、¥され/ば/こそ/と¥むやく/に¥おもひ、¥げん−たいふ/の−はんぐわん−すゑさだ/を¥もつて、¥ちよくぢやう/の¥おもむき¥いひ−いれ/させ、「¥いとま¥まうし/て」/とて¥いで/られ/けれ/ば、¥その−とき¥にふだう、「¥ほふいん¥よべ」/とて¥いで/られ/たり。¥よび−かへし/て、「¥やや¥ほふいん/の−おん=ばう、¥じやうかい/が¥まうす¥ところ/は¥ひがごと/か。¥まず¥だいふ/が¥みまかり/ぬる¥こと、¥たうけ/の¥うんめい/を¥はかる/に¥もつて、¥にふだう¥ずゐぶん¥ひるゐ/を¥おさへ/て/こそ¥まかり−すぎ¥さふらひ/しか。¥ご=へん/の¥こころ/に/も¥すゐさつ−し¥たまへ。¥ほうげん¥いご/は、¥らんげき¥うち−つづい/て、¥きみ¥やすい¥こころ/も¥ましまさ/ざり/し/に、¥にふだう/は¥ただ¥おほかた/を¥とり−おこなふ/ばかり/で/こそ¥さふらへ。¥だいふ/こそ¥て/を¥おろし¥み/を¥くだい/て、¥どど/の¥げきりん/を/ば¥しづめ¥まゐらせ¥さふらひ/しか。¥その−ほか¥りんじ/の¥おん=だいじ、¥てうせき/の¥せいむ、¥だいふ/ほど/の¥こうしん/は、¥あり−がたう/こそ¥さふらへ。¥ここ/を¥もつて¥いにしへ/を¥あんずる/に、¥たう/の¥たいそう/は、¥ぎちよう/に¥おくれ/て、¥かなしみ/の¥あまり/に、¥むかし/の¥いんそう/は¥ゆめ/の¥うち/に¥りやうひつ/を¥え、¥いま/の¥ちん/は¥さめ/て/の¥のち¥けんしん/を¥うしなふ/と¥いふ¥ひ/の¥もん/を¥みづから¥かい/て、¥べう/に¥たて/て/だに/こそ¥かなしみ¥たまひ/ける/なれ。¥わが¥てう/に/も、¥まぢかう¥み¥さふらひ/し¥こと/ぞ/かし。¥あきよりの−みんぶきやう/が¥せいきよ−し/たり/し/を/ば、¥こ=ゐん¥こと/に¥おん=なげき¥あつ/て、P220¥やはた/の−ぎやうがう¥えんいん¥あつ/て、¥ぎよ=いう¥なかり/き。¥すべて¥しんか/の¥そつする/を/ば、¥だいだい/の¥みかど、¥みな¥おん=なげき¥ある¥こと/で/こそ¥さふらへ。¥それ/に¥だいふ/が¥ちういん/に、¥やはた/の¥ご=かう¥あつ/て¥ぎよ=いう¥あり/き。¥おん=なげき/の¥いろ、¥いちじ/も¥これ/を¥み/ず。¥たとひ¥だいふ/が¥ちう/を/こそ¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまふ/とも、¥など/か¥にふだう/が¥かなしみ/を/ば、¥おん=あはれみ¥なく/て/は¥さふらふ/べき。¥たとひ¥にふだう/が¥かなしみ/を/こそ¥おん=あはれみ¥なく/とも、¥など/か¥だいふ/が¥ちう/を/ば¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまふ/べき。¥ふし¥とも/に¥えいりよ/に¥そむき¥まうす¥こと、¥いま/に¥おいて¥めんぼく/を¥うしなふ。¥これ¥ひとつ。¥つぎ/に¥ゑちぜんの−くに/を/ば、¥しし−そんぞん/まで¥ご=へんかい¥ある/まじき¥よし¥おん=やくそく¥さふらひ/て、¥くだし¥たまひ/て¥さふらひ/しか/ども、¥だいふ/に¥おくれ/て¥のち、¥やがて¥めし−かへさ/れ¥さふらふ/は、¥なん/の¥くわたい/にて¥さふらふ/やらん。¥これ¥ひとつ。¥つぎに¥ちうなごん¥けつ/の¥さふらひ/し¥とき、¥にゐ/の−ちうじやう¥しきり/に¥しよまう¥さふらひ/し/を、¥にふだう¥ずゐぶん¥とり¥まうし/しか/ども、¥つひに¥ご=しよういん¥なく/して、¥くわんばく/の¥そく/を¥なさ/るる¥こと/は¥いか/に。¥たとひ¥にふだう¥いか/なる¥ひきよ¥まうし−おこなふ/とも、¥いちど/は¥など/か¥きこしめし−いれ/で/は¥さふらふ/べき。¥ゐかい/と¥いひ、¥けちやく/と¥いひ、¥りうん¥さう/に¥およば/ざる¥こと/を、¥ひき−ちがへ/させ¥たまふ¥おん=こと/は、¥あまり/に¥ほい−なき¥おん=ぱからひ/と/こそ¥ぞんじ¥さふらへ。¥これ¥ひとつ。¥つぎに¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ、¥きんじふ/の¥ひとびと、¥ししのたに/に¥より−あひ/て、¥むほん/を¥くはだて/し¥こと/も、¥まつたく¥わたくし/の¥けいりやく/に/は¥あら/ず、¥しかしながら¥きみ¥ご=きよよう¥ある/に¥よつ/て/なり。¥こと−あたらしき¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥この¥いちもん/を/ば¥しちだい/まで/は、¥いかで/か¥おぼしめし−すて/させ¥たまふ/べき/に、¥それ/に¥にふだう¥しちじゆん/に¥およん/で、¥よめい¥いくばく/なら/ぬP221¥いちご/の¥うち/に/だに、¥やや/も¥すれ/ば¥ほろぼさ/る/べき¥よし/の¥ご=けつこう¥ざふらふ。¥まうし¥さふらは/ん/や、¥しそん¥あひ−つづい/て、¥てうか/に¥めし−つかは/れ/ん¥こと/も¥あり−がたう/こそ¥さふらへ。¥およそ¥おい/て¥こ/に¥おくるる/は、¥こぼく/の¥えだ¥なき/に¥こと/なら/ず。¥いま/は¥ほど−なき¥うき−よ/に、¥さ/のみ¥こころ/を¥つひやし/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/なれば、¥いかで/も¥あり/な/ん/と¥おもひ−なつ/て/こそ¥さふらへ」/とて、¥かつうは¥ふくりふ−し、¥かつうは¥らくるゐ−し¥たまへ/ば、¥ほふいん¥おそろしう/も、¥また¥あはれ/に/も¥おぼえ/て、¥あせみづ/に/こそ¥なら/れ/けれ。¥
その−とき/は¥いか/なる¥ひと/も、¥いちごん/の¥へんじ/に/は¥および−がたき¥こと/ぞ/かし。¥その−うへ¥わが−み/も¥きんじゆ/の¥じん/にて、¥ししのたに/に¥より−あひ/し¥こと/を、¥まさしう¥み−きか/れ/しか/ば、¥ただいま/も¥その¥にんじゆ/とて¥めし/や¥こめ/られ/んず/らん/と¥おもは/れ/けれ/ば、¥りよう/の¥ひげ/を¥なで、¥とら/の¥を/を¥ふむ¥ここち/は¥せ/られ/けれ/ども、¥ほふいん/も¥さる¥おそろしき¥ひと/にて、¥ちつと/も¥さわが/ず¥まうさ/れ/ける/は、「¥まことに¥どど/の¥ご=ほうこう¥あさから/ず¥さふらふ。¥いつたん¥うらみ¥まうさ/せ¥まします¥むね、¥その¥いはれ¥さふらふ。¥ただし¥くわんゐ/と¥いひ、¥ほうろく/と¥いひ、¥おん=み/に¥とつ/て/は¥ことごとく¥まんぞく−す。¥され/ば¥こう/の¥ばくたい/なる¥こと/を/も、¥きみ¥つねに¥ぎよ=かん¥ある/で/こそ¥さふらへ。¥しかる/に¥きんしん¥こと/を¥みだり、¥きみ¥ご=きよよう¥あり/など¥まうす¥こと/は、¥ぼうしん/の¥きようがい/にて/ぞ¥さふらは/んず/らん。¥およそ¥みみ/を¥しんじ/て¥め/を¥うたがふ/は、¥ぞく/の¥つね/の¥へい/なり。¥せうじん/の¥ふげん/を¥おもく/して、¥てうおん/の¥た/に¥こと/なる/に、¥いまさら¥また¥きみ/を¥かたぶけ¥まゐら/させ ¥たまは/ん¥こと、¥みやうけん/に¥つけ/て、¥その¥おそれ¥すくなから/ず¥さふらふ。¥およそ¥てんしん/は¥さうさう/と/して¥はかり−がたし。¥えいりよ¥さだめて¥その¥ぎ/で/ぞ¥さふらは/んず/らん。P222¥しも/と/して¥かみ/に¥さかふる¥こと/は、¥あに¥じんしん/の¥れい/たら/ん/や。¥よくよく¥ご=しゆゐ¥さふらふ/べし。¥せんずる−ところ、¥この¥おもむき/を/こそ¥ひろう¥つかまつり¥さふらは/め」/とて¥たた/れ/けれ/ば、¥その¥ざ/に¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥ひとびと、「¥あな¥おそろし。¥にふだう/の¥あれ−ほど¥いかり¥たまふ/に、¥ちつと/も¥さわが/ず、¥へんじ¥うち−し/て¥たた/れ/ける/よ」/とて、¥ほふいん/を¥ほめ/ぬ¥ひと/こそ¥なかり/けれ。
「だいじんるざい」(『だいじんるざい』)S0316¥ほふいん¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥ほふわう/も¥だうり¥しごく−し/て、¥かさねて¥おほせ−くださ/るる¥むね/も¥なし。¥おなじき−じふろくにち、¥にふだう−しやうこく¥この¥ひごろ¥おもひ−たち¥たまへ/る¥こと/なれ/ば、¥くわんばく=どの/を¥はじめ¥たてまつり/て、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく¥しじふさん−にん/が¥くわんしよく/を¥とどめ/て、¥おひ−こめ¥たてまつら/る。¥なか/に/も¥くわんばく=どの/を/ば、¥だざい/の−そつ/に¥うつし/て、¥ちんぜい/へ/と/ぞ¥きこえ/し。「¥かから/ん¥よ/に/は、¥とても−かくても¥あり/な/ん」/とて、¥とば/の¥へん、¥ふるかは/と¥いふ¥ところ/にて¥ご=しゆつけ¥あり。¥おん=とし¥さんじふご。「¥れいぎ¥よく¥しろしめし/て、¥くもり¥なき¥かがみ/にて¥おはし/つる¥ひと/を」/とて、¥よ/の¥をしみ¥たてまつる¥こと¥なのめ/なら/ず。¥をんる/の¥ひと/の、¥みち/にて¥しゆつけ−し/たる/を/ば、¥やくそく/の¥くに/へ/は¥つかはさ/ぬ¥こと/にて¥ある¥あひだ、¥はじめ/は¥ひうがの−くに/とP223¥さだめ/られ/たり/しか/ども、¥これ/は¥ご=しゆつけ/の¥あひだ、¥びぜん/の¥こふ/の¥へん、¥いばさま/と¥いふ¥ところ/に/ぞ¥おき¥たてまつる。¥だいじん¥るざい/の¥れい/は、¥さだいじん−そがの−あかえ、¥うだいじん−とよなり、¥さだいじん−うをな、¥うだいじん−すがはら、¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく¥いま/の¥きたのの−てんじん/の¥おん=こと/なり。¥さだいじん−かうめい=こう、¥ないだいじん−ふぢはらの−いしう=こう/に¥いたる/まで、¥その¥れい¥すでに¥ろくにん、¥され/ども¥せつしやう¥くわんばく¥るざい/の¥れい/は¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥こ=なか=どの/の¥おん=こ、¥にゐ/の−ちうじやう−もとみち/は、¥にふだう/の¥むこ/にて¥おはし/けれ/ば、¥だいじん¥くわんばく/に¥なし¥たてまつら/る。¥さんぬる¥ゑんゆうゐん/の¥ぎよ=う、¥てんろく−さんねん−じふいちぐわつ−ひとひのひ、¥いちでうの−せつしやう−けんとく=こう¥うせ¥たまひ/しか/ば、¥おん=おとと¥ほりかはの−くわんばく−ちうぎこう、¥その−とき/は¥いまだ¥じゆ−にゐ/の−ちうなごん/にて¥おはし/き。¥その¥おん=おとと¥ほふこうゐん/の−おほ−にふだう−かねいへ=こう、¥その−ころ/は¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥ましまし/けれ/ば、¥ちうぎ=こう/は¥おん=おとと/に¥かかい¥こえ/られ/させ¥たまひ/たり/しか/ども、¥いま¥また¥こえ−かへし/て、¥ないだいじん−じやう−にゐ−し/て、¥ないらん/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまひ/し/を/こそ、¥ひと¥みな¥じぼく/を¥おどろかし/たる¥ご=しようじん/と/は¥まうし−あは/れ/しか。¥これ/は¥それ/に/は¥なほ¥てうくわ−せ/り。¥ひさんぎ−にゐ/の−ちうじやう/より、¥だいちうなごん/を¥へ/ず/して、¥だいじん−せつしやう/に¥なる¥こと、¥これ¥はじめ。¥ふげんじ=どの/の¥おん=こと/なり。¥しやうけい−さいしやう、¥だいげき、¥たいふのし/に¥いたる/まで、¥みな¥あきれ/たる¥さま/にて/ぞ¥さふらは/れ/ける。¥
だいじやうだいじん−もろなが/は、¥つかさ/を¥とどめ/て、¥あづま/の¥かた/へ¥ながさ/れ¥たまふ。¥さんぬる¥ほうげん/に/は¥ちちP224¥あく−ひだん/の−おほい=どの/の¥えんざ/に¥よつ/て、¥きやうだい¥しにん¥るざい−せ/られ¥たまひ/に/き。¥おん=あに¥うだいしやう−かねなが、¥おん=おとと¥ひだん/の−ちうじやう−たかなが、¥はんちやう−ぜんじ¥さん−にん/は、¥きらく/を¥また/ず/して、¥はいしよ/にて¥つひに¥うせ¥たまひ/ぬ。¥これ/は¥とさ/の¥はた/にて¥ここのかへり/の¥はるあき/を¥おくり−むかへ、¥ちやうぐわん−にねん−はちぐわつ/に¥めし−かへさ/れ/て、¥ほんゐ/に¥ふくし、¥つぎ/の¥とし¥じやう−にゐ−し/て、¥にんあん−ぐわんねん−じふぐわつ/に、¥さきの−ちうなごん/より¥ごん−だいなごん/に¥あがり¥たまふ。¥をりふし¥だいなごん¥あか/ざり/けれ/ば、¥かず/の¥ほか/に/ぞ¥くはは/られ/ける。¥だいなごん¥ろくにん/に¥なる¥こと、¥これ¥はじめ。¥また¥さきの−ちうなごん/より¥ごん−だいなごん/に¥あがる¥こと/も、¥ごやましなの−だいじん−みもり=こう、¥うぢの−だいなんごん−りうこくの−きやう/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥くわんげん/の¥みち/に¥たつし、¥さいげい¥すぐれ/て¥おはし/けれ/ば、¥しだい/の¥しようじん¥とどこほら/ず、¥だいじやうだいじん/まで¥きはめ/させ¥たまひ/て、¥また¥いか/なる¥つみ/の¥むくい/に/や、¥かさね/て¥ながさ/れ¥たまふ/らん。¥ほうげん/の¥むかし/は、¥なんかい¥とさ/へ¥うつさ/れ、¥ぢしよう/の¥いま/は、¥また¥とうくわん¥をはりの−くに/とかや。¥もと/より¥つみ¥なく/して¥はいしよ/の¥つき/を¥み/ん/と¥いふ¥こと/を/ば、¥こころ−ある¥きは/の¥ひと/の¥ねがふ¥こと/なれ/ば、¥おとど¥あへて¥こと/と/も¥し¥たまは/ず。¥かの¥たう/の¥たいし/の¥ひんかく¥はくらくてん、¥しんやうのえ/の¥ほとり/に¥やすらひ/けん、¥その¥いにしへ/を¥おもひ−やり、¥なるみがた¥しほぢ¥はるか/に¥ゑんけん−し/て、¥つねは¥らうげつ/を¥のぞみ、¥うらかぜ/に¥うそぶき、¥びは/を¥だんじ、¥わか/を¥えいじ/て、¥なほざり−がてら/に、¥つきひ/を¥おくり¥たまひ/けり。¥ある−とき¥たう−ごく¥だいさん/の¥みや¥あつたの−みやうじん/に¥さんけい¥あり/て、¥その¥よ¥しんめい¥ほふらく/の¥ため/に、¥びは¥ひき¥らうえい−し¥たまふ/に、¥ところ¥もと/より¥むち/の¥さかひ/なれ/ば、¥なさけ/を¥しれ/る¥もの¥なし。¥いふらう¥そんぢよ、P225¥ぎよじん¥やそう、¥かうべ/を¥うなだれ、¥みみ/を¥そばだつ/と¥いへ/ども、¥さらに¥せいだく/を¥わかつ/て、¥りよりつ/を¥しる¥こと¥なし。¥され/ども¥こはきん/を¥だんぜ/しか/ば、¥ぎよりん¥をどり−ほとばしり、¥ぐこう¥うた/を¥はつせ/しか/ば、¥りやうぢん¥うごき−うごく。¥もの/の¥めう/を¥きはむる¥とき/に/は、¥しぜん/に¥かん/を¥もよほす¥ことわり/なれ/ば、¥しよにん¥み/の−け¥よだつ/て、¥まんざ¥きい/の¥おもひ/を¥なす。¥やうやう¥しんかう/に¥およん/で、¥ふがうでう/の¥うち/に/は、¥はな¥ふんぷく/の¥き/を¥ふくみ、¥りうせん/の¥きよく/の¥あひだ/に/は、¥つき¥せいめい/の¥ひかり/を¥あらそふ。「¥ねがは−く/は¥こんじやう¥せぞくもんじ/の¥ごふ、¥きやうげん−きぎよ/の¥あやまり/を¥もつて」/と¥いふ¥らうえい/を¥し/て、¥ひきよく/を¥ひき¥たまひ/しか/ば、¥しんめい¥かんおう/に¥たへ/ず/して、¥ほうでん¥おほき/に¥しんどう−す。「¥へいけ/の¥あくぎやう¥なかり/せ/ば、¥いま¥この¥ずゐさう/を/ば¥いかで/か¥をがむ/べき」/とて、¥おとど¥かんるゐ/を/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥あぜつ/の−だいなごん−すけかたの−きやう、¥しそく¥うこんゑ/の−せうしやう−けん−さぬきの−かみ−みなもとの−すけとき、¥ふたつ/の¥くわん/を¥とどめ/らる。¥さんぎ−くわうだいこうぐう/の−ごん/の−だいぶ−けん−うひやうゑ/の−かみ−ふぢはらの−みつよし、¥おほくらきやう−うきやう/の−だいぶ−けん−いよの−かみ−たかしなの−やすつね、¥くらんど/の−させうべん−けん−ちうぐう/の−ごん/の−だいしん−ふぢはらの−もとちか、¥さんくわん¥とも/に¥とどめ/らる。¥なか/に/も¥あぜつ/の−だいなごん−すけかたの−きやう、¥しそく¥うこんゑ/の−せうしやう、¥まご/の¥うせうしやう−まさかた、¥これ¥さん−にん/を/ば、¥けふ¥やがて¥みやこ/の¥うち/を¥おひ−いださ/る/べし/とて、¥しやうけい/に/は¥とう−だいなごん−さねくに、¥はかせ/の−はうぐわん−なかはらの−のりさだ/に¥おほせ/て、¥その−ひ¥やがて¥みやこ/の¥うち/を¥おひ−いださ/る。¥だいなんごん¥のたまひ/ける/は、「¥さんがい¥ひろし/と¥いへ/ども、¥ごしやく/の¥み¥おきどころ¥なし。¥いつしやう¥ほど−なし/と¥いへ/ども、¥いちにち¥くらし−がたし」/とて、¥やちう/に¥ここのへ/の¥うち/を¥まぎれ−いで/て、¥やへ¥たつ¥くも/の¥ほか/へ/ぞP226¥おもむか/れ/ける。¥かの¥おほえやま/や、¥いくの/の¥みち/に¥かかり/つつ、¥はじめ/は¥たんばの−くに¥むらくも/と¥いふ¥ところ/に、¥しばし/は¥やすらひ¥たまひ/し/が、¥それ/より¥つひに/は¥たづね−いださ/れ/て、¥しなのの−くに/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「ゆきたかのさた」(『ゆきたかのさた』)S0317¥さきの−くわんばく−まつ=どの/の¥さぶらひ/に、¥がう−たいふ/の−はうぐわん−とほなり/と¥いふ¥もの¥あり。¥これ/も¥へいけ/に¥こころよから/ざり/ける/が、¥ろくはら/より¥からめ−とら/る/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥しそく¥がう−ざゑもん/の−じよう−いへなり¥あひ−ぐし/て、¥みなみ/を¥さし/て¥おち−ゆき/ける/が、¥いなりやま/に¥うち−あがり、¥むま/より¥おり/て、¥おやこ¥いひ−あはせ/ける/は、「¥これ/より¥とうごく/へ¥おち−くだり、¥るにん¥さきの−うひやうゑ/の−すけ−よりとも/を¥たのま/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥それ/も¥たうじ/は¥ちよくかん/の¥み/にて、¥わが−み¥ひとつ/を/だに¥かなひ−がたう¥おはす/なり。¥その−ほか¥につぽんごく/に、¥へいけ/の¥しやうゑん/なら/ぬ¥ところ/や¥ある。¥とても¥のがれ/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥ねんらい¥すみ−なれ/たる¥ところ/を、¥ひと/に¥みせ/ん/も¥はぢがまし。¥これ/より¥とつ/て¥かへし、¥ろくはら/より¥めしつかひ¥あら/ば、¥たち/に¥ひ¥かけ¥やき−あげ、¥はら¥かき−きつ/て¥しな/ん/に/は¥しか/じ」/とて、¥また¥かはらざか/の¥しゆくしよ/へ¥とつ/て¥かへす。¥あん/の/ごとく¥げん−だいふ/の−はうぐわん−すゑさだ、¥つの−はうぐわん−もりずみ、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥かはらざか/の¥しゆくしよ/へ¥おし−よせ/て、P227¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥がう−たいふ/の−はうぐわん、¥えん/に¥たち−いで¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いか/に¥おのおの¥ろくはら/で/は、¥この¥やう/を¥まうさ/せ¥たまへ」/とて、¥たち/に¥ひ¥かけ、¥やき−あげ、¥ふし¥とも/に¥はら¥かき−きつ/て、¥ほのほ/の¥なか/にて¥やけ−しに/ぬ。¥そもそも¥かやう/に¥ひと/の¥ほろび−そんずる¥こと/を¥いか/に/と¥いふ/に、¥さきの−おほ=との/の¥おん=こ¥さんみ/の−ちうじやう=どの/と、¥たうじ¥くわんばく/に¥なら/せ¥たまふ¥にゐ/の−ちうじやう=どの/と、¥ちうなごん¥ご=さうろん¥ゆゑ/と/ぞ¥きこえ/し。¥さら/ば¥くわんばく=どの¥ご=いつしよ/ばかり/こそ、¥いか/なる¥おん=め/に/も¥あはせ¥たまふ/べき/に、¥しじふさん−にん/の¥ひとびと/の、¥こと/に¥あふ/べき/や/は。¥およそ/は¥これ/に/も¥かぎる/まじか/ん/なれ/ども、¥にふだう−しやうこく/の¥こころ/に¥てんま¥いり−かはつ/て、¥よろづ¥はら/を¥すゑ−かね¥たまふ¥よし¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥また¥さわぎ−あへ/り。¥こぞ¥さぬきのゐん¥ご=つゐがう¥あり/て、¥しゆとく−てんわう/と¥かうし、¥うぢの−あく−さふ、¥ぞうくわん¥ぞうゐ¥おこなは/れ/たり/と¥いへ/ども、¥せけん/は¥なほ/も¥しづか/なら/ず。¥
その−ころ¥さきの−させうべん−ゆきたか/と¥きこえ/し/は、¥こ=なかやまの−ちうなごん−あきときの−きやう/の¥ちやうなん/なり。¥にでうのゐん/の¥おん=とき/は、¥べんくわん/に¥くははつ/て、¥さ/しも¥ゆゆしう¥おはせ/し/が、¥この¥じふ−よ−ねん/は¥くわん/を/も¥とどめ/られ/て、¥なつ¥ふゆ/の¥ころもがへ/に/も¥およば/ず、¥てうぼ/の¥ざん/も¥まれ/なり。¥ある/か¥なき/か/の¥てい/にて¥おはし/ける/を、¥にふだう−しやうこく¥ししや/を¥もつて、「¥きつと¥たち−より¥たまへ。¥まうし−あは/す/べき¥こと¥あり」/と、¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゆきたか、「¥この¥じふ−よ−ねん/は¥くわん/を/も¥とどめ/られ/て、¥よろづ¥なにごと/に/も¥まじはら/ざり/つる/ものを。¥いかさま/に/も¥ざんげん−し/て、¥うしなは/ん/と¥する¥もの/の¥ある/に/こそ」/とて、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥きたのかた¥いげ¥にようばう=たち、P228¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。¥さる−ほど/に¥にしはちでう=どの/より、¥つかひ¥しきなみ/に¥あり/しか/ば、¥ゆきたか、「¥いで−むかつ/て/こそ、¥と/も−かく/も¥なら/め」/とて、¥ひと/に¥くるま¥かつ/て¥いで/られ/たれ/ば、¥おもふ/に/は¥に/ず、¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん¥あり/て、「¥ご=へん/の¥ちち/の¥きやう/は、¥にふだう¥だいせうじ/を¥まうし−あはせ/し¥ひと/なり。¥その¥しそく/にて¥おはすれ/ば、¥ご=へん/とて/も¥まつたく¥おろそか/に¥おもひ¥たてまつら/ず。¥ねんらい¥ろうきよ/の¥こと/も¥いたはしう/は¥おぼゆれ/ども、¥ほふわう/の¥ご=せいむ/の¥うへ/は¥ちから¥およば/ず。¥いま/は¥しゆつし−し¥たまへ。¥くわんど/の¥こと/も、¥まうし¥さた¥つかまつり¥さふらは/ん。¥さら/ば¥とう¥かへら/れよ」/とて¥かへさ/れ/たれ/ば、¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥さし−つどひ/て、¥しに/たる¥ひと/の¥いき−かへり/たる¥ここち−し/て、¥よろこびなき/を/ぞ¥せ/られ/ける。¥その−のち¥げん−たいふ/の−はんぐわん−すゑさだ/を¥もつて、¥ちぎやう−し¥たまふ/べき¥しやうゑんじやう=ども、¥あまた¥なし−つかはし、¥まづ¥さ/こそ¥おはす/らん/とて、¥ひやつ−ぴき¥ひやく−りやう/に、¥よね/を¥つん/で/ぞ¥おくら/れ/ける。¥しゆつし/の¥れう/に/とて、¥ざふしき¥うしかひ¥うし−ぐるま/に¥いたる/まで、¥きよ=げ/に¥さた−し¥おくら/れ/けれ/ば、¥ゆきたか¥て/の¥まひ、¥あし/の¥ふみど/を/も¥おぼえ¥たまは/ず、¥こ/は¥ゆめ/やらん/と/ぞ¥おどろか/れ/ける。¥おなじき−じふしちにち、¥ごゐ/の−じちう/に¥ふせ/られ/て、¥もと/の/ごとく¥させうべん/に¥なし−かへさ/る。¥こんねん¥ごじふいち、¥いまさら¥わかやぎ¥たまひ/けり。¥ただ¥へんし/の¥えいぐわ/と/ぞ¥みえ/し。P229¥
「ほふわうごせんかう」(『ほふわうながされ』)S0318¥おなじき−はつかのひ、¥ほふぢうじ=どの/を/ば、¥ぐんびやう¥しめん/を¥うち−かこん/で、¥へいぢ/に¥のぶよりの−きやう/が¥さんでう=どの/を¥し/たり/し¥やう/に、¥ごしよ/に¥ひ/を¥かけ、¥ひと/を/ば¥みな¥やき−ほろぼす/べき¥よし¥きこえ/しか/ば、¥つぼね/の¥にようぼう、¥あやし/の¥め/の−わらは/に¥いたる/まで、¥もの/を/だに¥うち−かづか/ず/して、¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と/ぞ¥にげ−いで/ける。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥おん=くるま/を¥よせ/て、「¥とうとう」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥えいりよ/を¥おどろか/せ¥おはしまし、「¥なりちか¥しゆんくわん=ら/が¥やう/に、¥とほき¥くに、¥はるか/の¥しま/へ/も¥うつし−やら/れ/んずる/に/こそ。¥さらに¥おん=とが¥ある/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥しゆしやう¥さて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥せいむ/の¥こうじゆ−する/ばかり/なり。¥それ/も¥さら/ず/は、¥じごん¥いご、¥さら/で/も¥あれ/かし」/と¥おほせ/けれ/ば、¥むねもりの−きやう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥いか/に¥ただいま、¥さる−おん=こと¥さふらふ/べき。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥とば/の¥きた=どの/へ¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせよ/と、¥ちち/の¥ぜんもん¥まうし¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、「¥さら/ば¥なんぢ¥やがて¥おん=とも¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ども、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥きしよく/に¥おそれ/を¥なし/て、¥おん=とも/に/は¥まゐら/れ/ず。「¥これ/に¥つけ/て/も、¥あに/の¥だいふ/に/は、¥こと/の−ほか/に¥おとり/たる/ものかな。¥ひととせ/も¥かかる¥おん=め/に¥あふ/べかり/し/を、¥だいふ/が¥み/に¥かへ/てP230¥せいし−とどめ/て/こそ、¥けふ/まで/も¥おん=こころ−やすかり/つれ。¥いま/は¥いさむる¥もの/の¥なき/とて、¥かう/は¥する/やらん。¥ゆく−すゑ/とて/も¥たのもしから/ず¥おぼしめす」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥さて¥おん=くるま/に¥めさ/れ/けり。¥くぎやう−てんじやうびと、¥いち−にん/も¥ぐぶ−せ/られ/ず、¥ほくめん/の¥げらふ/と、¥さて/は¥こんぎやう/と¥いふ¥おん=りきしや/ばかり/ぞ¥まゐり/ける。¥おん=くるま/の¥しり/に/は、¥あまぜ¥いち−にん¥まゐら/れ/けり。¥この¥あまぜ/と¥まうす/は、¥やがて¥ほふわう/の¥おん=ち/の¥ひと、¥きの−にゐ/の¥おん=こと/なり。¥しちでう/を¥にし/へ、¥しゆしやか/を¥みなみ/へ¥ご=かう¥なし¥たてまつる。「¥あはや¥ほふわう/の¥ながさ/れ/させ¥おはします/ぞ/や」/とて、¥こころ−なき¥あやし/の¥しづ/の−を、¥しづ/の−め/に¥いたる/まで、¥みな¥なみだ/を¥ながし、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。「¥さんぬる¥なぬか/の¥よ/の¥おほ−ぢしん/も、¥かかる/べかり/ける¥ぜんべう/にて、¥じふろく−らくしや/の¥そこ/まで/も¥こたへ、¥けんらうぢじん(じしん)/の¥おどろき−さわぎ¥たまふ/らん/も¥ことわり/かな」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥さて¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なつ/て¥のち、¥ごぜん/に¥ひと¥いち−にん/も¥さふらは/ず。¥なに/と/して/か¥まぎれ−いり/たり/けん、¥だいぜん/の−だいぶ−のぶなり/が¥ただ¥いち−にん¥さふらひ/ける/を、¥ごぜん/へ¥めし/て、「¥われ/は¥ちかう¥うしなは/れ/んずる/と¥おぼしめす/ぞ。¥おん=ぎやうずゐ/を¥めさ/ばや/と¥おぼしめす/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥さら/ぬ/だに¥のぶなり/は、¥けさ/より¥きも−たましひ/も¥み/に¥そは/ず、¥あきれ/たる¥さま/にて¥さふらひ/ける/が、¥この¥おほせ¥うけたまはる¥こと/の¥かたじけな−さ/に、¥かりぎぬ/の¥たまだすき¥あげ、¥かま/に¥みづ¥くみ−いれ、¥こしばがき¥こぼち、¥おほ−ゆか/の¥つかばしら¥わり/など¥し/て、¥かた/の/ごとく/の¥おん=ゆ¥し−いだい/て¥たてまつる。P231¥
また¥じやうけん−ほふいん、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/へ¥ゆき−むかつ/て、「¥ゆふべ¥ほふわう/の¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なつ/て¥さふらふ/なる/に、¥ごぜん/に¥ひと¥いち−にん/も¥さふらは/ぬ¥よし¥うけたまはつ/て、¥あまり/に¥あさましく¥おぼえ¥さふらふ。¥なにか¥くるしう¥さふらふ/べき。¥じやうけん/ばかり¥おん=ゆるされ/を¥かうぶつ/て、¥まゐり¥さふらは/ばや」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥いかが¥おもは/れ/けん。「¥おん=ぼう/は¥いつかう¥こと¥あやまつ/まじき¥ひと/なり。¥とうとう」/とて¥ゆるさ/れ/けり。¥ほふいん¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥いそぎ¥とば=どの/へ¥まゐり、¥もんぜん/にて¥くるま/より¥おり、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いり¥たまふ/に、¥をりふし¥ほふわう/は¥おん=きやう¥うち−あげ−うち−あげ¥あそばさ/れ/ける¥おん=こゑ/の、¥こと/に¥すごう/ぞ¥きこえ/させ¥おはします。¥ほふいん/の、¥つと¥まゐら/れ/たれ/ば、¥あそばさ/れ/ける¥おん=きやうに、¥おん=なみだ/の¥はらはら/と¥かから/せ¥たまふ/を¥み¥まゐらせ/て、¥ほふいん¥あまり/の¥かなし−さ/に、¥きうたい/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥なくなく¥ごぜん/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥ごぜん/に/は¥あまぜ/ばかり/ぞ¥さふらは/れ/ける。「¥やや¥ほふいん/の¥おん=ばう、¥きみ/は¥きのふ/の¥あした、¥ほふぢうじ=どの/にて、¥ぐご¥きこしめし/て¥のち/は、¥ゆふべ/も¥けさ/も¥きこしめさ/ず。¥ながき¥よ−すがら¥ぎよ=しん/も¥なら/ず、¥おん=いのち/も¥すでに¥あやふう/こそ¥みえ/させ¥おはしませ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ほふいん¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥なにごと/も¥かぎり−ある¥こと/で/こそ¥さふらへ。¥へいけ¥よ/を¥とつ/て¥にじふ−よ−ねん、¥され/ども¥あくぎやう¥ほふ/に¥すぎ/て、¥すでに¥ほろび¥さふらひ/な/んず。¥され/ば¥てんせうだいじん、¥しやう−はちまんぐう/も、¥きみ/を/ば¥いかで/か¥おぼしめし−はなた/せ¥たまふ/べき。¥なか/に/も¥きみ/の¥おん=たのみ¥まします¥ひよし−さんわう−しちしや、¥いちじよう−しゆご/の¥おん=ちかひ¥いまだ¥あらたま/ら/ず/は、¥かの¥ほつけ−はちぢく/にP232¥たち−かけつ/て/こそ、¥きみ/を/ば¥まもり¥まゐら/させ¥たまふ/らめ。¥され/ば¥せいむ/は¥きみ/の¥おん=よ/と¥なり、¥きようと/は¥みづ/の¥あわ/と¥きえ−うせ¥さふらひ/な/んず」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ほふわう¥この¥ことば/に¥すこし¥なぐさま/せ¥おはします。¥しゆしやう/は¥くわんばく¥ながさ/れ¥たまひ、¥しんか/の¥おほく¥ほろび−そんずる¥こと/を/のみ/こそ、¥おん=なげき¥あり/つる/に、¥いま¥また¥ほふわう/の¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なり/ぬる¥よし¥きこしめし/て、¥つやつや¥ぐご/も¥きこしめさ/ず、¥ご=なう/とて¥つね/は¥よるの−おとど/に/のみ¥いら/せ¥おはします。¥ごぜん/に¥さぶらは/せ¥たまふ¥にようばう=たち、¥きさいのみや/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥いか/なる/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥ほふわう/の¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なつ/て¥のち、¥だいり/に/は¥りんじ/の¥ご=じんじ/とて、¥せいりやうでん/の¥いしばひ/の−だん/に/して、¥しゆしやう¥よ−ごと/に¥いせ−だい−じんぐう/を/ぞ¥ご=はい¥あり/ける。¥これ/は¥いつかう¥ほふわう¥おん=いのり/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥にでうのゐん/は、¥さ/ばかり/の¥けんわう/にて¥わたら/せ¥たまひ/しか/ども、¥てんし/に¥ぶも¥なし/とて、¥つね/は¥ゐん/の¥おほせ/を¥まうし−かへさ/せ¥おはしまし/けれ/ば/に/や、¥けいてい/の−きみ/にて/も¥ましまさ/ず。¥され/ば¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまひ/たり/し¥ろくでうのゐん/も、¥あんげん−にねん−しちぐわつ−じふしにち、¥おん=とし¥じふさん/にて、¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥あさましかり/し¥こと=ども/なり。P233¥
「せいなんのりきう」(『せいなんのりきゆう』)S0319¥はくかう/の¥なか/に/は、¥かうかう/を¥もつて¥さき/と¥す。¥めいわう/は¥かう/を¥もつて¥てんが/を¥をさむ/と¥いへ/り。¥され/ば¥たうげう/は¥おい−おとろへ/たる¥はは/を¥たつとび、¥ぐしゆん/は¥かたくな/なる¥ちち/を¥うやまふ/と¥みえ/たり。¥かの¥けんわう¥せいしゆ/の¥せんき/を¥おはせ¥ましまし/けん、¥えいりよ/の¥ほど/こそ¥めでたけれ。¥その−ころ¥だいり/より¥とば=どの/へ、¥ひそか/に¥ごしよ¥あり/けり。「¥かから/ん¥よ/に/は、¥くもゐ/に¥あと/を¥とどめ/て/も、¥なに/に/かは¥し¥さふらふ/べき/なれ/ば、¥くわんぺい/の¥むかし/を/も¥とぶらひ、¥くわざん/の¥いにしへ/を/も¥たづね/て、¥さんりん¥るらう/の¥ぎやうじや/と/も¥なり/ぬ/べう/こそ¥さふらへ」/と¥あそばさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/の¥おん=ぺんじ/に、「¥さ¥な¥おぼしめさ/れ¥さふらひ/そ。¥さて¥わたら/せ¥たまへ/ば/こそ、¥ひとつ/の¥たのみ/にて/も¥さふらへ。¥あと¥なく¥おぼしめし−なら/せ¥たまひ/な/ん¥のち/は、¥なに/の¥たのみ/か¥さふらふ/べき。¥ただ¥と/も−かう/も、¥ぐらう/が¥なら/ん¥やう/を、¥ごらんじ−はて/させ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と、¥あそばさ/れ/たり/けれ/ば、¥しゆしやう¥この¥おん=ぺんじ/を¥りようがん/に¥おし−あて/させ¥たまひ/て、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥きみ/は¥ふね、¥しん/は¥みづ、¥みづ¥よく¥ふね/を¥うかべ、¥みづ¥また¥ふね/を¥くつがへし、¥しん¥よく¥きみ/を¥たもち、¥しん¥また¥きみ/を¥くつがへす。¥ほうげん¥へいぢ/の¥ころ/は、¥にふだう−しやうこく、¥きみ/を¥たもち¥たてまつる/と¥いへ/ども、¥あんげん¥ぢしよう/の¥いま/は¥また、¥きみ/を¥なみし¥たてまつる。¥ししよ/のP234¥もん/に¥たがは/ず。¥
おほみやの−だいしやうこく、¥さんでうの−ないだいじん、¥はむろの−だいなごん、¥なかやまの−ちうなごん/も¥うせ/られ/ぬ。¥いま¥ふるき¥ひと/とて/は、¥せいらい、¥しんぱん/ばかり/なり。¥この¥ひとびと/も、¥かから/ん¥よ/に/は、¥てう/に¥つかへ¥み/を¥たて、¥だいちうなごん/を¥へ/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/とて、¥いまだ¥さかん/なつ/し¥ひとびと/の、¥いへ/を¥いで¥よ/を¥のがれ、¥みんぶきやう−にふだう−しんぱん/は、¥をはら/の¥しも/に¥ともなひ、¥さいしやう−にふだう−せいらい/は、¥かうや/の¥きり/に¥まじはつ/て、¥いつかう¥ごせ−ぼだい/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥なし/と/ぞ¥きこえ/し。¥むかし/も¥しやうざん/の¥くも/に¥かくれ、¥えいせん/の¥つき/に¥こころ/を¥すます¥ひと/も¥あり/けん/なれ/ば、¥これ¥あに¥はくらん−せいけつ/に/して、¥よ/を¥のがれ/たる/に¥あら/ず/や。¥なか/に/も¥かうや/に¥おはし/ける¥さいしやう−にふだう−せいらい、¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥あはれ¥こころ¥とく/も¥よ/を/ば¥のがれ/たる/ものかな。¥かくて¥きく/も¥おなじ¥こと/なれ/ども、¥まのあたり¥たち−まじはつ/て¥きか/ましか/ば、¥いか/ばかり¥こころ−うから/ん。¥ほうげん¥へいぢ/の¥みだれ/を/こそ、¥あさまし/と¥おもひ/つる/に、¥よ¥すゑ/に¥なれ/ば、¥かかる¥ふしぎ/も¥いで−き/に/けり。¥この−のち¥てんが/に¥いか/ばかり/の¥こと/か¥いで−こ/んず/らん。¥くも/を¥わき/て/も¥のぼり、¥やま/を¥へだて/て/も¥いり/な/ばや」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥げに¥こころ−あら/ん/ほど/の¥ひと/の、¥あと/を¥とどむ/べき¥よ/と/も¥おぼえ/ず。¥
おなじき−にじふいちにち、¥てんだい−ざす−かくくわい−ほつしんわう、¥しきり/に¥ご=じたい¥あり/しか/ば、¥さきの−ざす−めいうん−だいそうじやう、¥くわんちやく−し¥たまふ。¥にふだう−しやうこく、¥かく¥さんざん/に¥し−ちらさ/れ/たり/しか/ども、¥ちうぐう/と¥まうす/も¥おん=むすめ、¥くわんばく=どの/も¥また¥むこ/なり/けれ/ば、¥よろづ¥こころ−やすく/や¥おもは/れ/けん、¥せいむ/はP235¥いつかう¥しゆしやう/の¥おん=ぱからひ/たる/べし/とて、¥ふくはら/へ/ぞ¥くだら/れ/ける。¥おなじき−にじふさんにち、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥いそぎ¥さんだい−し/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥しゆしやう、「¥ほふわう/の¥ゆづり¥ましまし/たる¥よ/なら/ば/こそ。¥ただ¥しつぺい/に¥いひ−あはせ/て、¥むねもり¥と/も−かう/も¥よき¥やう/に¥あひ−はからへ」/とて、¥きこしめし/も¥いれ/ざり/けり。¥ほふわう/は¥せいなん/の−りきう/に/して、¥ふゆ/も¥なかば¥すごさ/せ¥たまへ/ば、¥やさん/の¥あらし/の¥おと/のみ¥はげしく/て、¥かんてい/の¥つき/ぞ¥さやけき。¥には/に/は¥ゆき¥ふり−つもれ/ども、¥あと¥ふみ−つくる¥ひと/も¥なく、¥いけ/に/は¥つらら¥とぢ−かさね/て、¥むれ−ゐ/し¥とり/も¥みえ/ざり/けり。¥おほでら/の¥かね/の¥こゑ、¥ゐあいじ/の¥きき/を¥おどろかし、¥にしやま/の¥ゆき/の¥いろ、¥かうろほう/の¥のぞみ/を¥もよほす。¥よる¥しも/に¥さむけき¥きぬた/の¥ひびき、¥かすか/に¥おん=まくら/に¥つたひ、¥あかつき¥こほり/を¥きしる¥くるま/の¥あと、¥はるか/の¥もんぜん/に¥よこたは/れ/り。¥ちまた/を¥すぐる¥かうじんせいば/の¥いそがはし=げ/なる¥けしき、¥うき−よ/を¥わたる¥ありさま/も、¥おぼしめし−しら/れ/て¥あはれ/なり。¥きうもん/を¥まもる¥ばんい/の、¥よる¥ひる¥けいゑい/を¥つとむる/も、「¥さき/の¥よ/の¥いか/なる¥ちぎり/にて、¥いま¥えん/を¥むすぶ/らん」/と、¥おほせ/なり/ける/ぞ¥かたじけなき。¥およそ¥もの/に¥ふれ¥こと/に¥したがつ/て、¥おん=こころ/を¥いため/しめ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥さる−まま/に/は、¥かの¥をりをり/の¥ご=いうらん、¥ところどころ/の¥ご=さんけい、¥おん=が/の¥めでたかり/し¥こと=ども、¥おぼしめし−つづけ/て、¥くわいきう/の¥おん=なみだ¥おさへ−がたし。¥とし¥さり¥とし¥きたつ/て、¥ぢしよう/も¥しねん/に¥なり/に/けり。P236¥