平家物語 巻第四  総かな版(元和九年本)
「いつくしまごかう」(『いつくしまごかう』)S0401¥P236¥ぢしよう−しねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥とば=どの/に/は、¥しやうこく/も¥ゆるさ/ず、¥ほふわう/も¥おそれ/させ¥ましまし/けれ/ば、¥ぐわんにち¥ぐわんざん/の¥あひだ、¥さんにふ¥つかまつる¥ひと/も¥なし。¥され/ども¥その¥なか/に¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥しそく、¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう、¥その¥おとと¥さきやう/の−だいぶ−ながのり/ばかり/ぞ、¥ゆるさ/れ/て/は¥まゐら/れ/ける。¥おなじき−はつかのひ、¥とうぐう¥おん=はかまぎ、¥ならびに¥おん=まなはじめ/とて、¥めでたき¥こと=ども¥あり/しか/ども、¥ほふわう/は¥とば=どの/にて、¥おん=みみ/の¥よそ/に/ぞ¥きこしめす。¥にんぐわつ−にじふいちにち、¥しゆしやう¥こと/なる¥おん=つつが/も¥わたら/せ¥たまは/ざり/し/を、¥おし−おろし¥たてまつ/て、¥とうぐう¥せんそ¥あり。¥これ/も¥にふだう−しやうこく、¥よろづ¥おもふ¥さま/なる/が¥いたす¥ところ/なり。¥とき¥よく¥なり/ぬ/とて¥ひしめき−あへ/り。¥しんし、¥ほうけん、¥ないしどころ¥わたし¥たてまつる。¥かんだちめ¥ぢん/に¥あつまつ/て、¥ふるき¥こと=ども¥せんれい/に¥まかせ/て¥おこなひ/し/に、¥さだいじん=どの¥ぢん/に¥いで/て、¥おん=くらゐ−ゆづり/の¥こと=ども¥おほせ/し/を¥きい/て、P237¥こころ−ある¥ひとびと/の¥なみだ/を¥ながし、¥こころ/を¥いたま/しめ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥われ/と¥おん=くらゐ/を¥まうけ/の−きみ/に¥ゆづり¥たてまつり、¥はこや/の−やま/の¥うち/も、¥しづか/に/など¥おぼしめす¥さきざき/だに/も、¥あはれ/は¥おほき¥ならひ/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は、¥おん=こころ/なら/ず¥おし−おろさ/れ/させ¥ましまし/けん¥おん=こころ/の¥うち、¥まうす/も¥なかなか¥おろか/なり。¥つたはれ/る¥おん=たからもの=ども¥しなじな、¥つかさづかさ¥うけ−とつ/て、¥しんてい/の¥くわうきよ¥ごでう−だいり/へ¥わたし¥たてまつる。¥かんゐん=どの/に/は、¥ひ/の¥かげ¥かすか/に、¥けいじん/の¥こゑ/も¥とどま/り、¥たきぐち/の¥もんじやく/も¥たえ/に/しか/ば、¥ふるき¥ひとびと/は、¥かかる¥めでたき¥いはひ/の¥なか/に/も、¥いまさら¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥なみだ/を¥ながし¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥しんてい¥こんねん¥さんざい、¥あはれ¥いつしか/なる¥じやうゐ/かな/と/ぞ、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/ける。¥
へい−だいなごん−ときただの−きやう/は、¥うち/の¥おん=めのと、¥そつのすけ/の¥をつと/たる/に¥よつ/て、「¥こんど/の¥じやうゐ¥いつしか/なり/と、¥たれ/か¥かたぶけ¥まうす/べき。¥いこく/に/は、¥しう/の¥せいわう¥さんざい、¥しん/の¥ぼくてい¥にさい、¥わが¥てう/に/は、¥こんゑのゐん¥さんざい、¥ろくでうのゐん¥にさい、¥これ¥みな¥きやうほう/の¥なか/に¥つつま/れ/て、¥いたい/を¥ただしう¥せ/ざり/しか/ども、¥あるひは¥せつしやう¥おう/て¥くらゐ/に¥つき、¥あるひは¥ぼこう¥いだい/て¥てう/に¥のぞむ/と¥みえ/たり。¥ごかん/の¥かうしやう−くわうてい/は、¥むまれ/て¥ひやく−にち/と¥いふ/に¥せんそ¥あり。¥てんし¥くらゐ/を¥ふむ¥せんじよう、¥わかん¥かく/の/ごとし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥その−とき/の¥いうしよく/の¥ひとびと、「¥あな¥おそろし、¥もの¥な¥まうさ/れ/そ。¥され/ば¥それ=ら/は¥よき¥れい=ども/か/や」/と/ぞ¥つぶやき−あは/れ/ける。¥とうぐう¥せんそ¥あり/しか/ば、¥にふだう−しやうこく¥ふうふ¥とも/に、¥ぐわいそぶ、¥ぐわいそぼ/とて、¥じゆんさんごう/のP238¥せんじ/を¥かうぶり、¥ねんぐわん¥ねんじやく/を¥たまはつ/て、¥じやうにち/の−もの/を¥めし−つかひ、¥ゑ¥かき¥はな¥つけ/たる¥もの=ども¥いで−いつ/て、¥ひとへに¥ゐんぐう/の/ごとく/にて/ぞ¥あり/ける。¥しゆつけ/の¥ひと/の¥じゆんさんごう/の¥せんじ/を¥かうぶる¥こと/は、¥ほふこうゐん/の−おほ−にふだう=どの−かねいへ=こう/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥おなじき−さんぐわつ−じやうじゆん/に、¥じやうくわう¥あきの−いつくしま/へ¥ご=かう¥なる/べし/と¥きこえ/けり。¥ていわう¥くらゐ/を¥すべら/せ¥たまひ/て、¥しよしや/の¥ご=かう¥はじめ/に/は、¥やはた、¥かも、¥かすが/へ/こそ¥ご=かう/は¥なる/べき/に、¥はるばる/と¥あきの−くに/まで/の¥ご=かう/は¥いか/に/と、¥ひとふしん/を¥なす。¥ある¥ひと/の¥まうし/ける/は、「¥しらかはのゐん/は¥くまの/へ¥ご=かう、¥ごしらかは/は¥ひよし/の−やしろ/へ¥ご=かう¥なる。¥され/ば¥しん/ぬ、¥えいりよ/に¥あり/と¥まうす¥こと/を」。¥ご=しんぢう/に¥ふかき¥ご=りふぐわん¥あり。¥その−うへ¥この¥いつくしま/を/ば、¥へいけ¥なのめ/なら/ず/に¥あがめ−うやまひ¥まうさ/れ/ける¥あひだ、¥うへ/に/は¥へいけ/に¥ご=どうしん、¥した/に/は¥ほふわう/の¥いつ/と−なく¥とば=どの/に¥おし−こめ/られ/て¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥にふだう−しやうこく/の¥こころ/も¥やはらぎ¥たまふ/か/と/の、¥ご=きねん/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥さんもん/の¥だいしゆ¥いきどほり¥まうし/ける/は、「¥しゆしやう¥おん=くらゐ/を¥すべつ/て、¥しよしや/の¥ご=かう¥はじめ/に/は、¥やはた、¥かも、¥かすが/へ¥ご=かう¥なら/ず/は、¥わが−やま/の¥さんわう/へ/こそ¥ご=かう/は¥なる/べき/に、¥はるばる/と¥あきの−くに/まで/の¥ご=かう/は、¥いつ/の¥ならひ/ぞ/や。¥その¥ぎ/なら/ば¥しんよ¥ふり−くだし¥たてまつ/て、¥ご=かう/を¥とどめ¥たてまつれ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥これ/に¥よつ/て¥しばらく¥ご=えんいん¥あり/けり。¥にふだう−しやうこく¥やうやう/に¥なだめ¥のたまへ/ば、¥さんもん/の¥だいしゆ¥しづまり/ぬ。¥
おなじき−じふしちにち、¥しやうくわう¥いつくしま−ご=かう/の¥おん=かどで/とて、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた¥にゐ=どの/のP239¥しゆくしよ、¥はちでう−おほみや/へ¥ご=かう¥なる。¥その¥よ¥やがて¥いつくしま/の¥ご=じんじ¥はじめ/らる。¥てんが/より¥から/の¥おん=くるま、¥うつし/の¥むま/など¥まゐらせ/らる。¥あくる¥じふはちにち、¥にふだう−しやうこく/の¥てい/へ¥いら/せ¥おはします。¥その−ひ/の¥くれがた/に、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/を¥めし/て、「¥みやうにち¥いつくしま−ご=かう/の¥おん=ついで/に、¥とば=どの/へ¥まゐつ/て、¥ほふわう/の¥おん=げんざん/に¥いら/ばや/と¥おぼしめす/は、¥しやうこく−ぜんもん/に¥しらせ/ず/して/は、¥あしかり/な/ん/や」/と¥おほせ/けれ/ば、¥むねもりの−きやう、「¥なんでふ¥こと/か¥さふらふ/べき」/と¥そうせ/られ/たり/けれ/ば、「¥さら/ば¥なんぢ¥こよひ¥とば=どの/へ¥まゐり/て、¥その¥やう/を¥まうせ/かし」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥いそぎ¥とば=どの/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥ほふわう/は¥あまり/に¥おぼしめす¥おん=こと/にて、¥こ/は¥ゆめ/やらん/と/ぞ¥おほせ/ける。¥あくる¥じふくにち、¥おほみやの−だいなごん−たかすゑの−きやう、¥いまだ¥よ¥ふかう¥まゐつ/て、¥ご=かう¥もよほさ/れ/けり。¥この¥ひごろ¥きこえ/させ¥たまひ/つる¥いつくしま−ご=かう/を/ば、¥にしはちでう/の−てい/より¥すでに¥とげ/させ¥おはします。¥やよひ/も¥なかば¥すぎ/ぬれ/ど、¥かすみ/に¥くもる¥ありあけ/の−つき/は¥なほ¥おぼろ/なり。¥こしぢ/を¥さし/て¥かへる¥かり/の、¥くもゐ/に¥おとづれ−ゆく/も、¥をりふし¥あはれ/に¥おぼしめす。¥いまだ¥よ/の¥うち/に¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なる。¥もんぜん/にて¥おん=くるま/より¥おり/させ¥おはしまし、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いら/せ¥たまふ/に、¥ひと¥まれ/に/して¥こ−ぐらく、¥もの−さびし=げ/なる¥おん=すまひ、¥まづ¥あはれ/に/ぞ¥おぼしめす。¥はる¥すでに¥くれ/な/ん/と¥す。¥なつ−こだち/に/も¥なり/に/けり。¥こずゑ/の¥はな¥いろ¥おとろへ/て、¥みや/の¥うぐひす¥こゑ¥おい/たり。¥きよねん/の−しやうぐわつ−むゆか、¥てうきん/の¥ため/に¥ほふぢうじ=どの/へ¥ぎやうがう¥あり/し/に/は、P240¥がくや/に¥らんじやう/を¥そうし、¥しよきやう¥れつ/に¥たつ/て、¥しよゑ¥ぢん/を¥ひき、¥ゐんじ/の¥くぎやう¥まゐり¥むかつ/て、¥まんもん/を¥ひらき、¥かもんれう¥えんだう/を¥しき、¥ただしかり/し¥ぎしき、¥いちじ/も¥なし。¥けふ/は¥ただ¥ゆめ/と/のみ/ぞ¥おぼしめす。¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう¥まゐつ/て、¥ご=きしよく¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/は¥はや¥しんでん/の¥はしがくし/の−ま/へ¥ご=かう¥なつ/て、¥まち¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥しやうくわう/は¥こんねん¥にじふ、¥あけがた/の¥つき/の¥ひかり/に¥はえ/させ¥たまひ/て、¥ぎよくたい/も¥いとど¥うつくしう/ぞ¥みえ/させ¥ましまし/ける。¥おん=ぼぎ¥こ=けんしゆんもんゐん/に、¥いたく¥に¥まゐら/させ¥たまひ/たり/しか/ば、¥ほふわう/は¥まづ¥こ=によゐん/の¥おん=こと¥おぼしめし¥いで/て、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥りやうゐん/の¥ござ、¥ちかく¥しつらは/れ/たり。¥ご=もんだふ/は¥ひと¥うけたまはる/に¥およば/ず。¥ごぜん/に/は¥あまぜ/ばかり/ぞ¥さぶらは/れ/ける。¥やや¥ひさしく¥おん=ものがたり−せ/させ¥おはしまし、¥はるか/に¥ひ¥たけ/て¥のち、¥おん=いとま¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥とば/の¥くさづ/より¥おん=ふね/に/ぞ¥めさ/れ/ける。¥しやうくわう/は¥ほふわう/の¥りきう/の¥こ=てい、¥いうかん¥せきばく/の¥おん=すまひ、¥おん=こころ−ぐるしう¥ごらんじ−おか/せ¥たまへ/ば、¥ほふわう/は¥また¥しやうくわう/の¥りよはく¥かうきう/の¥なみ/の¥うへ、¥ふね/の¥うち/の¥おん=ありさま、¥おぼつかなく/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。¥まことに¥そうべう、¥やはた、¥かも/など/を¥さし−おか/せ¥たまひ/て、¥はるばると¥あきの−くに/まで/の¥ご=かう/を/ば、¥しんめい/も¥など/か¥ご=なふじゆ¥なかる/べき。¥ご=ぐわん¥じやうじゆ¥うたがひ¥なし/と/ぞ¥みえ/たり/ける。P241¥
「くわんぎよ」(『くわんぎよ』)S0402¥おなじき−にじふろくにち、¥しやうくわう¥いつくしま/へ¥ご=さんちやく。¥にふだう−しやうこく/の¥さいあい/の¥ないし/が¥しゆくしよ、¥くわうきよ/に¥なる。¥なか¥ふつか¥おん=とうりう¥あつ/て、¥きやうゑ¥ぶがく¥おこなは/る。¥けちぐわん/の¥だうし/に/は、¥こうけん−そうじやう、¥かうざ/に¥のぼり¥かね¥うち−ならし、¥へうびやく/の¥ことば/に¥いはく、「¥ここのへ/の¥みやこ/を¥いで/させ¥たまひ、¥やへ/の¥しほぢ/を¥わき¥もつて、¥はるばると¥これ/まで¥まゐらせ¥たまひ/たる、¥おん=こころざし/の¥かたじけな−さ/よ」/と¥たからか/に¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥みな¥かんるゐ/を/ぞ、¥もよほさ/れ/ける。¥おほみや、¥まらうど/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥やしろやしろ¥ところどころ/へ¥みな¥ご=かう¥なる。¥おほみや/より¥ごちやう/ばかり、¥やま/を¥まはら/せ¥たまひ/て、¥たきのみや/へ¥まゐらせ¥たまふ。¥こうけん−そうじやう¥はいでん/の¥はしら/に¥かき−つけ/られ/ける/とかや。¥
くもゐ/より¥おち−くる¥たき/の¥しらいと/に¥ちぎり/を¥むすぶ¥こと/ぞ¥うれしき W016¥
かんぬし¥さいきの−かげひろ¥かかい、¥じゆ−じやう/の−ごゐ、¥こくし−ふぢはらの−ありつな、¥しな¥あげ/られ/て¥じゆ−げ/の−し−ほん、¥ならびに¥ゐん/の¥てんじやう/を¥ゆるさ/る。¥ざす−そんえい、¥ほふげん/に¥なさ/る。¥しんりよ/も¥うごき、¥にふだう−しやうこく/の¥こころ/も¥やはらぎ¥たまひ/ぬ/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥おなじき−にじふくにち¥おん=ふね¥かざつ/て¥くわんぎよ¥なる。¥をりふし¥なみかぜ¥はげしかり/けれ/ば、¥おん=ふね¥こぎ−もどさ/せ、P242¥その−ひ/は¥いつくしま/の¥うち、¥あり/の−うら/と¥いふ¥ところ/に¥とどまら/せ¥たまふ。¥しやうくわう、「¥だい−みやうじん/の¥おん=なごり−をしみ/に、¥うた¥つかまつれ¥ひとびと」/と¥おほせ/けれ/ば、¥たかふさの−せうしやう、¥
たち−かへる¥なごり/も¥あり/の−うら/なれ/ば¥かみ/も¥めぐみ/を¥かくる¥しらなみ W017¥
やはん/ばかり/に¥かぜ¥しづまつ/て、¥かいじやう/も¥おだしかり/けれ/ば、¥おん=ふね¥こぎ−いださ/せ、¥その−ひ/は¥びんごの−くに¥しきな/の−とまり/に¥つか/せ¥たまふ。¥この¥ところ/は¥さんぬる¥おうほう/の¥ころほひ、¥いちゐん¥ご=かう/の¥とき、¥こくし−ふぢはらの−ためなり/が¥つくつ/たり/ける¥ごしよ/の¥あり/ける/を、¥にふだう−しやうこく¥おん=まうけ/に¥しつらは/れ/たり/しか/ども、¥しやうくわう¥それ/へ/は¥ご=かう/も¥なら/ず、「¥けふ/は¥うづき−ひとひ、¥ころもがへ/と¥いふ¥こと/の¥ある/ぞ/かし」/とて、¥おのおの¥みやこ/の¥こと/を¥のたまひ−いだし、¥ながめ−やり¥たまふ/ほど/に、¥きし/に¥いろ¥ふかき¥ふぢ/の¥まつ/の¥えだ/に¥さき−かかり/ける/を、¥しやうくわう¥えいらん¥あつ/て、「¥あの¥はな¥をり/に¥つかはせ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥おほみやの−だいなごん−たかすゑの−きやう¥うけたまはつ/て、¥さししやう−なかはらの−やすさだ/が¥はし−ぶね/に¥のつ/て、¥をりふし¥ごぜん/を¥こぎ−とほり/ける/を¥めし/て、¥をり/に¥つかはす。¥ふぢ/の¥はな/を¥まつ/の¥えだ/に¥つけ/ながら、¥をり/て¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥こころばせ¥あり/など¥おほせ/られ/て、¥ぎよ=かん¥あり/けり。「¥この¥はな/にて¥うた¥つかまつれ。¥おのおの」/と¥おほせ/けれ/ば、¥たかすゑの−だいなごん、¥
ちとせ¥へ/む¥きみ/が¥よはひ/に¥ふぢなみ/の¥まつ/の¥えだ/に/も¥かかり/ぬる/かな W018¥
ふつかのひ/は、¥びぜん/の¥こじま/の−とまり/に¥つか/せ¥たまふ。¥いつかのひ¥てん¥はれ/て、¥かいじやう/も¥のどけかり/けれ/ば、¥ごしよ/の¥おん=ふね/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥ひとびと/の¥ふね=ども¥みな¥こぎ−いだす。¥くも/のP243¥なみ、¥けぶり/の¥なみ/を¥わき−しのが/せ¥たまひ/て、¥その−ひ/は¥はりまの−くに¥やまた/の−うら/に¥つか/せ¥たまふ。¥それ/より¥おん=こし/に¥めし/て、¥ふくはら/へ¥いら/せ¥おはします。¥むゆかのひ/は、¥おん=とうりう¥あつ/て、¥ふくはら/の¥ところどころ/を¥みな¥れきらん¥ある。¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/の¥さんざう、¥あらた/まで¥ごらんぜ/らる。¥あくる¥なぬかのひ、¥ふくはら/を¥たた/せ¥たまふ/とて、¥にふだう/の¥いへ/の¥しやう¥おこなは/る。¥にふだう−しやうこく/の¥やうじ、¥たんばの−かみ−きよくに¥じやう−げ/の−しゐ、¥おなじう¥にふだう/の¥まご、¥ゑちぜんの−せうしやう/は¥しゐ/の−じゆ−じやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥その−ひ¥てらゐ/に¥つか/せ¥たまふ。¥やうかのひ¥おん=むかひ/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥とば/の¥くさづ/まで¥みな¥まゐら/れ/けり。¥くわんぎよ/の¥とき/は、¥とば=どの/へ/は¥ご=かう/も¥なら/ず、¥すぐに¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/へ/ぞ¥いら/せ¥おはします。¥おなじき−にじふににち、¥しんてい/の¥ご=そくゐ¥あり。¥だいこくでん/にて¥おこなは/る/べかり/しか/ども、¥ひととせ¥えんしやう/の¥のち/は¥いまだ¥つくり/も¥いださ/れ/ず。¥だいこくでん¥なから/ん¥うへ/は、¥だいじやうぐわん/の−ちやう/にて¥おこなは/る/べき/か/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ば、¥くでう=どの¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥だいじやうぐわん/の−ちやう/は、¥ぼんにん/の¥いへ/に¥とら/ば、¥くもんじよ−てい/の¥ところ/なり。¥だいこくでん¥なから/ん¥うへ/は、¥ししんでん/にて/こそ、¥ご=そくゐ/は¥ある/べけれ」/と¥まうさ/せ¥たまへ/ば、¥ししんでん/にて/ぞ、¥ご=そくゐ/は¥あり/ける。¥いんじ¥かうほう−しねん−じふいちぐわつ−じふいちにち、¥れんぜいゐん/の¥ご=そくゐ、¥ししんでん/にて¥あり/し/は、¥しゆしやう¥ご=じやけ/に¥よつ/て、¥だいこくでん/へ/の¥ぎやうがう¥かなは/ざり/し¥おん=ゆゑ/なり。¥ごさんでうのゐん/の¥えんきう/の¥かれい/に¥まかせ/て、¥だいじやうぐわん/の−ちやう/にて¥おこなは/る/べき/ものを/と、¥ひとびと¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥その−とき/の¥くでう=どの/の¥おん=ぱからひ/の¥うへ/は、¥さう/に¥およば/ず。¥とうぐうP244¥せんそ¥あり/しか/ば、¥ちうぐう/は¥こうきでん/より¥じじゆでん/へ¥うつつ/て、¥やがて¥たかみくら/へ¥まゐらせ¥たまふ。¥へいけ/の¥ひとびと¥みな¥しゆつし−せ/られ/ける¥なか/に、¥こまつ=どの/の¥きんだち=たち/は、¥こぞ¥おとど¥こうぜ/られ/に/しか/ば、¥いろ/にて¥ろうきよ−せ/られ/けり。¥
「げんじそろへ」(『げんじぞろへ』)S0403¥くらんど/の−さゑもん/の−ごん/の−すけ−さだなが、¥こんど/の¥ご=そくゐ/に¥ゐらん¥なく、¥めでたき¥やう/を、¥こうし¥じふまい/ばかり/に¥かい/て、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた、¥はちでうの−にゐ=どの/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥ゑみ/を¥ふくん/で/ぞ¥よろこば/れ/ける。¥かやう/に¥はなやか/に、¥めでたき¥こと=ども¥あり/しか/ども、¥せけん/は¥なほ¥にがにがしう/ぞ¥みえ/し。¥その−ころ¥いちゐん¥だいに/の¥わうじ、¥もちひとの−しんわう/と¥まうし/し/は、¥おん=はは¥かがの−だいなごん−すゑなりの−きやう/の¥おん=むすめ/なり。¥さんでうたかくら/に¥ましまし/けれ/ば、¥たかくらのみや/と/ぞ¥まうし/ける。¥いんじ¥えいまん−ぐわんねん−じふいちぐわつ−じふごにち/の¥あかつき、¥おん=とし¥じふご/にて、¥しのび/つつ、¥こんゑかはら/の−おほみや/の−ごしよ/にて、¥ひそか/に¥おん=げんぶく¥あり/けり。¥おん=しゆせき¥うつくしう¥あそばし、¥おん=さいかく/も¥すぐれ/て¥ましまし/けれ/ば、¥たいし/に/も¥たち、¥くらゐ/に/も¥つか/せ¥たまふ/べかり/しか/ども、¥こ=けんしゆんもんゐん/の¥おん=そねみ/に¥よつ/て、¥おし−こめ/られ/させ¥たまひ/けり。¥はな/の¥もと/の¥はる/の¥あそび/に/は、P245¥しがう/を¥ふるつ/て¥てづから¥ご=さく/を¥かき、¥つき/の¥まへ/の¥あき/の¥えん/に/は、¥ぎよくてき/を¥ふい/て、¥みづから¥がいん/を¥あやつり¥たまふ。¥かく−し/て¥あかし−くらさ/せ¥たまふ/ほど/に、¥ぢしよう−しねん/に/は、¥おん=とし¥さんじふ/に/ぞ¥なら/せ¥ましまし/ける。¥その−ころ¥このゑかはら/に¥さぶらは/れ/ける¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ、¥ある¥よ¥ひそか/に¥この¥みや/の¥ごしよ/に¥まゐり/て、¥まうさ/れ/ける¥こと/こそ¥おそろしけれ。¥たとへば、「¥きみ/は¥てんせうだいじん¥しじふはつせ/の¥しやうとう、¥じんむ−てんわう/より¥しちじふはちだい/に¥あたら/せ¥たまふ。¥しかれ/ば¥たいし/に/も¥たち、¥くらゐ/に/も¥つか/せ¥たまふ/べかり/し¥ひと/の、¥さんじふ/まで¥みや/にて¥わたら/せ¥たまふ¥おん=こと/を/ば、¥おん=こころ−うし/と/は¥おぼしめさ/れ¥さふらは/ず/や。¥はやはや¥ご=むほん¥おこさ/せ¥たまひ/て、¥へいけ/を¥ほろぼし、¥ほふわう/の¥いつ/と−なく、¥とば=どの/に¥おし−こめ/られ/て¥わたら/せ¥たまふ¥おん=いきどほり/を/も、¥やすめ¥まゐらせ、¥きみ/も¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまふ/べし。¥これ¥ひとへに¥ご=かうかう/の¥おん=いたり/にて/こそ¥さふらは/んずれ。¥もし¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/て、¥りやうじ/を¥くださ/れ¥たまふ¥もの/なら/ば、¥よろこび/を¥なし/て¥はせ−まゐら/んずる¥げんじ=ども/こそ、¥くにぐに/に¥おほう¥さふらへ」/とて¥まうし−つづく。「¥まづ¥きやうと/に/は¥ではの−ぜんじ−みつのぶ/が¥こども、¥いがの−かみ−みつもと、¥ではの−はんぐわん−みつなが、¥ではの−くらんど−みつしげ、¥ではの−くわんじや−みつよし、¥くまの/に/は¥こ=ろくでうの−はうぐわん−ためよし/が¥ばつし¥じふらう−よしもり/とて¥かくれ/て¥さふらふ。¥つの−くに/に/は¥ただの−くらんど−ゆきつな/こそ¥さふらへ/ども、¥これ/は¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥むほん/の¥とき、¥どうしん−し/ながら¥かへりちう−し/たる¥ふたうじん/にて¥さふらへ/ば、¥まうす/に¥およば/ず。¥さり/ながら¥その¥おとと¥ただの−じらう−ともざね、¥てしまの−くわんじや−たかより、¥おほたの−たらう−よりもと。¥かはちの−くに/に/は、¥いしかは/の−こほり/を¥ちぎやう−し/けるP246¥むさしの−ごん/の−かみ−にふだう−よしもと、¥しそく¥いしかはの−はんぐわんだい−よしかぬ。¥やまとの−くに/に/は、¥うのの−しちらう−ちかはる/が¥こども、¥たらう−ありはる、¥じらう−きよはる、¥さぶらう−なりはる、¥しらう−よしはる。¥あふみの−くに/に/は、¥やまもと、¥かしはぎ、¥にしごり。¥みの¥をはり/に/は、¥やまだの−じらう−しげひろ、¥かうべの−たらう−しげなほ、¥いづみの−たらう−しげみつ、¥うらのの−しらう−しげとほ、¥あじきの−じらう−しげより、¥その¥こ/の¥たらう−しげすけ、¥きだの−さぶらう−しげなが、¥かいでんの−はうぐわんだい−しげくに、¥やしまの−せんじやう−しげたか、¥その¥こ/の¥たらう−しげゆき。¥かひの−くに/に/は、¥へんみの−くわんじや−よしきよ、¥その¥こ/の¥たらう−きよみつ、¥たけだの−たらう−のぶよし、¥かがみの−じらう−とほみつ、¥おなじき−こじらう−ながきよ、¥いちでうの−じらう−ただより、¥いたがきの−さぶらう−かねのぶ、¥へんみの−ひやうゑ−ありよし、¥たけだの−ごらう−のぶみつ、¥やすだの−さぶらう−よしさだ。¥しなのの−くに/に/は、¥おほうち−たらう−これよし、¥をかだの−くわんじや−ちかよし、¥ひらがの−くわんじや−もりよし、¥その¥こ/の¥しらう−よしのぶ、¥こ=たてはきの−せんじやう−よしかた/が¥じなん、¥きその−くわんじや−よしなか。¥いづの−くに/に/は¥るにん−さきの−うひやうゑ/の−すけ−よりとも。¥ひたちの−くに/に/は、¥しだの−さぶらう−せんじやう−よしのり、¥さたけの−くわんじや−まさよし、¥その¥こ/の¥たらう−ただよし、¥さぶらう−よしむね、¥しらう−たかよし、¥ごらう−よしすゑ、¥みちの−くに/に/は¥こ=さま/の−かみ−よしとも/が¥ばつし、¥くらう−くわんじや−よしつね、¥これ¥みな¥ろくそんわう/の¥ご=べうえい、¥ただの−しんぼち−まんぢう/が¥こういん/なり。¥てうてき/を¥たひらげ¥しゆくまう/を¥とぐる¥こと/は、¥げんぺい¥いづれ¥しようれつ¥なかり/しか/ども、¥いま/は¥うんでい¥まじはり/を¥へだて/て、¥しゆじう/の¥れい/に/も¥なほ¥おとれ/り。¥くに/は¥こくし/に¥したがひ、¥しやう/は¥あづかつしよ/に¥めし−つかは/れ、¥くじざふじ/に¥かり−たて/られ/て、¥やすい¥こころ/も¥し¥さふらは/ず。¥つらつら¥たうせい/の¥てい/を¥み¥さふらふ/に、¥うへ/に/は¥したがう/たる¥やう/なれ/ども、¥ないない/は¥いつかう¥へいけ/を¥そねま/ぬ¥もの/や¥さふらふ。¥きみ¥もし¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/て、¥りやうじ/を¥たう/づる/ほど/なら/ば、¥くにぐに/の¥げんじ=ども、¥よ/を¥ひ/に¥つい/で¥はせ−のぼり、P247¥へいけ/を¥ほろぼさ/ん¥こと/は、¥じじつ/を¥めぐらす/べから/ず。¥その¥ぎ/にて¥さふらは/ば、¥にふだう/も¥とし/こそ¥よつ/て¥さふらへ/ども、¥わかき¥こども¥あまた¥さふらへ/ば、¥ひき−ぐし/て¥まゐり¥さふらふ/べし」/と/ぞ¥まうし/ける。¥
みや/は¥この¥こと¥いかが¥あら/んず/らん/と、¥おぼしめし−わづらは/せ¥たまひ/て、¥しばし/は¥ご=しよういん/も¥なかり/ける/が、¥ここ/に¥あこまる−だいなごん−むねみちの−きやう/の¥まご、¥びんごの−ぜんじ−すゑみち/が¥こ/に、¥せうなごん−これなが/と¥まうし/し/は、¥すぐれ/たる¥さうにん/の¥じやうず/にて¥あり/けれ/ば、¥とき/の−ひと、¥さうせうなごん/と/ぞ¥まうし/ける。¥その¥ひと¥この¥みや/を¥み¥まゐらせ/て、「¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまふ/べき¥おん=さう¥まします。¥あひ−かまへ/て¥てんが/の¥こと、¥おぼしめし−すつ/な」/と¥まうさ/れ/ける¥をりふし、¥この¥さんみ−にふだう/も、¥かやう/に¥すすめ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さて/は¥しかる/べき¥てんせうだいじん/の¥おん=つげ/やらん/とて、¥ひしひし/と¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/けり。¥まづ¥しんぐう/の−じふらう−よしもり/を¥めし/て、¥くらんど/に¥なさ/る。¥ゆきいへ/と¥かいみやう−し/て、¥りやうじ/の¥お=つかひ/に¥とうごく/へ/こそ¥くださ/れ/けれ。¥しんぐわつ−にじふはちにち¥みやこ/を¥たつ/て、¥あふみの−くに/より¥はじめ/て、¥みの¥をはり/の¥げんじ=ども/に、¥しだいに¥ふれ/て¥くだる/ほど/に、¥ごぐわつ−とをか/に/は、¥いづの¥ほうでう¥ひるがこじま/に¥つい/て、¥るにん−さきの−うひやうゑ/の−すけ=どの/に、¥りやうじ/を¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥しだの−さぶらう−せんじやう−よしのり/は、¥あに/なれ/ば¥たば/ん/とて、¥しだ/の¥うきしま/へ¥くだる。¥きその−くわんじや−よしなか/は、¥をひ/なれ/ば¥とら/せ/ん/とて、¥せんだう/へ/こそ¥おもむき/けれ。¥ここ/に¥くまのの−べつたう−たんぞう/は、¥へいけ¥ぢうおん/の¥み/なり/し/が、¥なに/と/して/か¥きき−いだし/けんP248、「¥しんぐうの−じふらう−よしもり/こそ、¥たかくらのみや/の¥りやうじ¥たまはつ/て、¥すでに¥むほん/を¥おこす/なれ。¥なち¥しんぐう/の¥もの=ども/は、¥さだめて¥げんじ/の¥かたうど/を/ぞ¥せ/んず/らん。¥たんぞう/は¥へいけ/の¥ご=おん/を¥あめやま/に¥かうぶり/たれ/ば、¥いかで/か¥そむき¥たてまつる/べき。¥や¥ひとつ¥い−かけ/て、¥その−のち¥みやこ/へ¥しさい/を¥まうさ/ん」/とて、¥ひた−かぶと¥いつせん−よ−にん、¥しんぐう/の−みなと/へ¥はつかう−す。¥しんぐう/に/は¥とりゐの−ほふげん、¥たかばう/の−ほふげん、¥さぶらひ/に/は¥うゐ、¥すずき、¥みづや、¥かめのかふ、¥なち/に/は¥しゆぎやう−ほふげん¥いげ、¥つがふ¥その¥せい¥いつせんごひやく−よ−にん、¥とき¥つくり¥や−あはせ−し/て、¥げんじ/の¥かた/に/は/と/こそ¥いれ、¥へいけ/の¥かた/に/は¥かく/こそ¥いれ/と、¥たがひ/に¥やさけび/の¥こゑ/の¥たいてん/も¥なく、¥かぶら/の¥なり−やむ¥ひま/も¥なく、¥みつか/が/ほど/こそ¥たたかう/たれ。¥され/ども¥おぼえ/の¥ほふげん¥たんぞう/は、¥いへのこ−らうどう¥おほく¥うた/せ、¥わが−み¥て−おひ、¥からき¥いのち¥いき/つつ、¥なくなく¥ほんぐう/へ/こそ¥かへり−のぼり/けれ。¥
「いたちのさた」(『いたちのさた』)S0404¥さる−ほど/に¥ほふわう/は、¥なりちか¥しゆんくわん=ら/が¥やう/に、¥とほき¥くに¥はるか/の¥しま/へ/も、¥うつし/ぞ¥やり¥まゐらせ/んずる/に/こそ/と、¥おぼしめさ/れ/けれ/ども、¥さ/は¥なく/して、¥とば=どの/にて¥ぢしよう/も¥しねん/に¥おくら/せ¥おはします。¥おなじき−ごぐわつ−じふににち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥とば=どの/に/は、¥いたち¥おびたたしう¥はしり−さわぐ。¥ほふわう¥おん=うらかた¥あそばい/て、¥あふみの−かみ−なかかぬ、¥その−とき/は¥いまだ¥つるくらんど/にてP249¥さふらひ/ける/を、¥ごぜん/へ¥めし/て、「¥これ¥もつ/て¥あべの−やすちか/が¥もと/へ¥ゆき、¥きつと¥かんがへ/させ/て、¥かんじやう/を¥とつ/て¥まゐれ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥なかかぬ¥これ/を¥たまはつ/て、¥あべの−やすちか/が¥もと/へ¥ゆく。¥をりふし¥しゆくしよ/に/は¥なかり/けり。¥しらかは/なる¥ところ/へ/と¥いひ/けれ/ば、¥それ/へ¥たづね−ゆき/て、¥ちよくぢやう/の¥おもむき¥おほすれ/ば、¥やすちか¥やがて¥かんじやう/を/こそ¥まゐらせ/けれ。¥なかかぬ¥これ/を¥とつ/て¥とば=どの/へ¥はせ−まゐり、¥もん/より¥いら/ん/と¥すれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども¥ゆるさ/ず。¥あんない/は¥しつ/たり、¥ついぢ/を¥こえ、¥おほ−ゆか/の¥した/を¥はう/て、¥ごぜん/の¥きりいた/より、¥やすちか/が¥かんじやう/を/こそ¥まゐらせ/けれ。¥ほふわう¥これ/を¥ひらい/て¥えいらん¥ある/に、「¥いま¥みつか/が¥うち/の¥おん=よろこび、¥ならびに¥おん=なげき」/と/ぞ¥かんがへ¥まうし/たる。¥ほふわう、「¥この¥おん=ありさま/にて/も、¥おん=よろこび/は¥しかる/べし。¥また¥いか/なる¥おん=め/に/か¥あふ/べき/やらん」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥おなじき−じふさんにち¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥ちち/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、¥ほふわう/の¥おん=こと/を¥たりふし¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥やうやう/に¥おもひ−なほつ/て、¥ほふわう/を/ば¥とば=どの/を¥いだし¥たてまつり、¥みやこ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつり、¥はちでう−からすまる/の¥びふくもんゐん/の¥ごしよ/へ¥いれ¥たてまつる。¥いま¥みつか/が¥うち/の¥おん=よろこび/と/は、¥やすちか¥これ/を/ぞ¥まうし/ける。¥かかり/ける¥ところ/に、¥くまのの−べつたう−たんぞう、¥ひきやく/を¥もつて、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/の¥よし/を、¥みやこ/へ¥まうし/たり/けれ/ば、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥おほき/に¥さわい/で、¥をりふし¥にふだう−しやうこく/は、¥ふくはら/の¥べつげふ/に¥おはし/ける/に¥この¥よし¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥おほき/に¥いかつ/て、「¥その¥ぎ/なら/ば¥たかくらのみや/をP250¥からめ−とつ/て、¥とさ/の−はた/へ¥うつす/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥しやうけい/に/は¥さんでうの−だいなごん−さねふさ、¥しきじ/に/は¥とう/の−べん−みつまさ/と/ぞ¥きこえ/し。¥ぶし/に/は¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな、¥ではの−はうぐわん−みつなが、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥みや/の¥ごしよ/へ/ぞ¥むかひ/ける。¥この¥げん−だいふ/の−はうぐわん/と¥まうす/は、¥さんみ−にふだう/の¥じなん/なり。¥しかる/を¥この¥にんじゆ/に¥いれ/られ/ける¥こと/は、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/を、¥さんみ−にふだう¥すすめ¥まうさ/れ/たり/と¥いふ¥こと/を、¥へいけ¥いまだ¥しら/ざり/ける/に¥よつ/て/なり。¥
「のぶつらかつせん」(『のぶつら』)S0405¥さる−ほど/に、¥みや/は¥さつき−じふごや/の¥くもま/の¥つき/を¥ながめ/させ¥たまひ/て、¥なん/の¥ゆくへ/も¥おぼしめし−よら/ざり/ける/に、¥さんみ−にふだう/の¥ししや/とて、¥ふみ¥もち/て¥いそがはし=げ/に¥いで−き/たる。¥みや/の¥おん=めのとご、¥ろくでうの−すけ/の−たいふ−むねのぶ、¥これ/を¥とつ/て¥ごぜん/へ¥まゐり、¥ひらい/て¥みる/に、「¥きみ/の¥ご=むほん¥すでに¥あらはれ/させ¥たまひ/て、¥とさ/の−はた/へ¥うつし¥まゐらす/べし/とて、¥くわんにん=ども/が¥べつたうせん/を¥うけたまはつ/て、¥お=むかひ/に¥まゐり¥さふらふ。¥いそぎ¥ごしよ/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥みゐでら/へ¥いら/せ¥おはしませ。¥にふだう/も¥やがて¥まゐり¥さふらは/ん」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥みや/は¥この¥こと¥いかが−せ/ん/と、¥おぼしめし−わづらは/せ¥たまふ¥ところ/に、¥みや/の¥さぶらひ/に¥ちやう−ひやうゑ/の−じよう−はせべの−のぶつら/とP251¥いふ¥もの¥あり。¥をりふし¥ごぜん¥ちかう¥さふらひ/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥ただ¥なん/の¥やう/も¥さふらふ/まじ。¥にようばう−しやうぞく/に¥いで−たた/せ¥たまひ/て、¥おち/させ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし/とて、¥おん=ぐし/を¥みだり、¥かさね/たる¥ぎよ=い/に、¥いちめがさ/を/ぞ¥めさ/れ/ける。¥ろくでうの−すけ/の−たいふ−むねのぶ、¥からかさ¥もち/て¥おん=とも¥つかまつる。¥つるまる/と¥いふ¥わらは、¥ふくろ/に¥もの¥いれ/て¥いただい/たり。¥たとへば¥せいし/が¥ぢよ/を¥むかへ/て¥ゆく¥やう/に¥いで−たた/せ¥たまひ/て、¥たかくら/を¥きた/へ¥おち/させ¥たまふ/に、¥おほき/なる¥みぞ/の¥あり/ける/を、¥いと¥もの−がるう¥こえ/させ¥たまへ/ば、¥みちゆきびと/が¥たち−とどまつ/て、「¥はしたな/の¥にようばう/の¥みぞ/の¥こえやう/や」/とて、¥あやし=げ/に¥み¥まゐらせ/けれ/ば、¥いとど¥あしばや/に/ぞ¥すぎ/させ¥おはします。¥
ごしよ/の¥おん=るす/に/は、¥ちやう−ひやうゑ/の−じよう−はせべの−のぶつら/を/ぞ¥おか/れ/ける。¥にようばう=たち/の¥せうせう¥おはし/ける/を/ば、¥かしこ−ここ/へ¥たち−しのばせ/て、¥み−ぐるしき¥もの¥あら/ば、¥とり−したため/ん/とて¥みる/ほど/に、¥さ/しも¥みや/の¥ご=ひざう¥あり/ける¥こえだ/と¥きこえ/し¥おん=ふえ/を、¥つね/の¥ごしよ/の¥おん=まくら/に、¥とり−わすれ/させ¥たまひ/たる/を/ぞ、¥たち−かへつ/て/も¥とら/まほしう/や¥おぼしめさ/れ/けん。¥のぶつら¥これ/を¥み−つけ/て、「¥あな¥あさまし。¥さ/しも¥きみ/の¥ご=ひざう/の¥おん=ふえ/を」/と¥まうし/て、¥いま¥ごちやう/が¥うち/にて¥おつ−つい/て¥まゐらせ/たり。¥みや¥なのめ/なら/ず¥ぎよ=かん¥あつ/て、「¥われ¥しな/ば、¥この¥ふえ/を/ば、¥ご=くわん/に¥いれよ」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥やがて¥おん=とも¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥のぶつら¥まうし/ける/は、「¥ただいま¥あの¥ごしよ/へ、¥くわんにん=ども/が¥お=むかひ/にP252¥まゐり¥さふらふ/なる/に、¥ひと¥いち−にん/も¥さふらは/ざら/ん/は、¥むげ/に¥くちをしく¥ぞんじ¥さふらふ。¥その−うへ¥あの¥ごしよ/に、¥のぶつら/が¥さふらふ/と¥まうす¥こと/を/ば、¥じやうげ¥みな¥しつ/たる¥こと/で/こそ¥さふらへ。¥こんや¥さふらは/ざら/ん/は、¥それ/も¥その¥よ/は¥にげ/たり/など¥いは/れ/ん¥こと、¥くちをしう¥さふらふ/べし。¥ゆみ−や¥とる¥み/は、¥かり/に/も¥な/こそ¥をしう¥さふらへ。¥くわんにん=ども/に¥しばらく¥あひ−しらひ、¥いつぱう¥うち−やぶつ/て、¥やがて¥まゐり¥さふらは/ん」/とて、¥ただ¥いち−にん¥とつ/て¥かへす。¥のぶつら/が¥その¥よ/の¥しやうぞく/に/は、¥うすあを/の¥かりぎぬ/の¥した/に、¥もよぎ−にほひ/の−はらまき/を¥き/て、¥ゑふ/の−たち/を/ぞ¥はい/たり/ける。¥さんでうおもて/の¥そうもん/を/も、¥たかくらおもて/の¥こもん/を/も、¥とも/に¥ひらい/て¥まち−かけ/たり。¥
あん/の/ごとく¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな、¥ではの−はうぐわん−みつなが、¥つがふ¥その¥せい¥さんびやく−よ−き、¥じふごにち/の¥ね/の−こく/に、¥みや/の¥ごしよ/へ/ぞ¥おし−よせ/たる。¥げん−だいふ/の−はうぐわん/は、¥ぞんずる¥むね¥あり/と¥おぼえ/て、¥はるか/の¥もんぐわい/に¥ひかへ/たり。¥ではの−はうぐわん−みつなが/は、¥のり/ながら¥もん/の¥うち/へ¥うち−いれ、¥には/に¥ひかへ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥みや/の¥ご=むほん¥すで/に¥あらはれ/させ¥たまひ/て、¥とさ/の−はた/へ¥うつし¥まゐらせ/ん/が¥ため/に、¥くわんにん=ども/が¥べつたうせん/を¥うけたまはつ/て、¥ただいま¥おん=むかひ/に¥まゐり/て¥さふらふ。¥とうとう¥おん=いで¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥のぶつら¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、「¥たうじ/は¥ごしよ/で/も¥さふらは/ず、¥おん=ものま[う]で/で¥さふらふ/ぞ。¥なにごと/ぞ、¥こと/の¥しさい/を¥まうさ/れよ」/と¥いひ/けれ/ば、¥ではの−はうぐわん、「¥なんでふ¥この¥ごしよ/なら/で/は、¥いづく/へ/か¥わたら/せ¥たまふ/べかん/なる/ぞ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥しもべ=ども¥まゐつ/て¥さがし¥たてまつれ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥のぶつら¥かさね/てP253、「¥もの/も¥おぼえ/ぬ¥くわんにん=ども/が¥まうしやう/かな。¥むま/に¥のり/ながら、¥もん/の¥うち/へ¥まゐる/だに/も¥きくわい/なる/に¥あまつさへ¥しもべ=ども¥まゐつ/て¥さがし¥たてまつれ/と/は、¥いかで/か¥まうす/ぞ。¥ちやう−ひやうゑ/の−じよう−はせべの−のぶつら/が¥さふらふ/ぞ。¥ちかう¥よつ/て¥あやまち−す/な」/と/ぞ¥いひ/ける。¥ちやう/の¥しもべ/の¥なか/に、¥かなたけ/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥うちもの/の¥さや/を¥はづし、¥のぶつら/に¥め/を¥かけ/て、¥おほ−ゆか/の¥うへ/へ¥とび−のぼる。¥これ/を¥み/て¥どうれい=ども、¥じふしごにん/ぞ¥つづい/たる。¥のぶつら¥これ/を¥み/て、¥かりぎぬ/の¥おびひも¥ひつ−きつ/て¥すつる¥まま/に、¥ゑふ/の−たち/なれ/ども、¥み/を/ば¥こころ−え/て¥つくら/せ/たる/を¥ぬき−あはせ/て、¥さんざん/に/こそ¥ふるまう/たれ。¥かたき/は¥おほ−だち、¥おほ−なぎなた/で¥ふるまへ/ども、¥のぶつら/が¥ゑふ/の−たち/に¥きり−たて/られ/て、¥あらし/に¥こ/の−は/の¥ちる¥やう/に、¥には/へ¥さつ/と/ぞ¥おり/たり/ける。¥
さつき−じふごや/の¥くもま/の¥つき/の、¥あらはれ−いで/て¥あかかり/ける/に、¥かたき/は¥ぶあんない/なり、¥のぶつら/は¥あんないしや/にて¥あり/けれ/ば、¥あそこ/の¥めんらう/に¥おつ−かけ/て/は、¥はた/と¥きり、¥ここ/の¥つまり/に¥おつ−つめ/て/は、¥ちやうど¥きる。「¥いか/に¥せんじ/の¥お=つかひ/を/ば、¥かう/は¥する/ぞ」/と¥いひ/けれ/ば、「¥せんじ/と/は¥なん/ぞ」/とて、¥たち¥ゆがめ/ば¥をどり−のき、¥おし−なほし、¥ふみ−なほし、¥やには/に¥よき¥もの=ども¥じふしごにん/ぞ¥きり−ふせ/たる。¥その−のち¥たち/の¥きつさき¥さんずん/ばかり¥うち−をつ/て¥すて/てげり。¥はら/を¥きら/ん/と¥こし/を¥さぐれ/ども、¥さやまき¥おち/て¥なかり/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず。¥おほて/を¥ひろげ/て、¥たかくらおもて/の¥こもん/より、¥をどり−いで/ん/と¥する¥ところ/に、¥おほ−なぎなた¥もち/たる¥をとこ¥いち−にん¥より−あう/たり。¥のぶつら¥なぎなた/に¥のら/ん/とP254¥とん/で¥かかる/が、¥のり−そんじ/て、¥もも/を¥ぬひざま/に¥つらぬか/れ、¥こころ/は¥たけく¥おもへ/ども、¥おほぜい/の¥なか/に¥とり−こめ/られ/て、¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥その−のち¥ごしよ−ぢう/に¥みだれ−いつ/て¥さがせ/ども、¥みや/は¥わたら/せ¥たまは/ず。¥のぶつら/ばかり¥からめ/て、¥ろくはら/へ¥ゐ/て¥まゐる。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、¥のぶつら/を¥おほ−には/に¥ひつ−すゑ/させ、「¥まことに¥わ−をのこ/は、¥せんじ/の¥お=つかひ/と¥なのる/を、¥せんじ/と/は¥なん/ぞ/とて¥きつ/たり/ける/か。¥その−うへ、¥ちやう/の¥しもべ=ども、¥おほく¥にんじやう¥せつがい−し/たん/なれ/ば、¥よくよく¥きうもん−し/て、¥こと/の¥しさい/を¥たづね−とひ、¥その−のち¥かはら/に¥ひき−いだい/て¥かうべ/を¥はねよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥
のぶつら¥もと/より¥すぐれ/たる¥だい−かう/の−もの/なり/けれ/ば、¥ゐ−なほり¥あざ−わらつ/て¥まうし/ける/は、「¥この−ほど¥あの¥ごしよ/を、¥よなよな¥もの/の¥うかがひ¥さふらふ/を、¥なんでふ¥こと/の¥ある/べき/と¥おもひ−あなどつ/て、¥ようじん/も¥つかまつら/ぬ¥ところ/に、¥やはん/ばかり/に¥よろう/たる¥もの=ども/が、¥にさんびやくき¥うち−いつ/て¥さふらふ/を、¥なにもの/ぞ/と¥たづね/て¥さふらへ/ば、¥せんじ/の¥お=つかひ/と¥まうす。¥たうじ/は¥しよ−こく/の¥せつたう¥がうだう、¥さんぞく¥かいぞく/など¥まうす¥やつ=ばら/が、¥あるひは¥きんだち/の¥いら/せ¥たまひ/たる/ぞ、¥あるひは¥せんじ/の¥お=つかひ/など¥なのり¥まうす/と、¥かねがね¥うけたまはつ/て¥さふらふ/ほど/に、¥せんじ/と/は¥なん/ぞ/とて、¥きつ/たる¥ざふらふ。¥およそ¥のぶつら、¥もののぐ/を/も¥おもふ¥さま/に¥つかまつり、¥かね¥よき¥たち/を/も¥もつ/て¥さふらは/ん/に/は、¥ただいま/の¥くわんにん=ども/を/ば、¥よも¥いち−にん/も¥あんをん/で/は¥かへし¥さふらは/じ。¥その−うへ、¥みや/の¥ご=ざいしよ/は、¥いづく/に¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん、¥しり¥まゐらせ/ぬ¥ざふらふ。¥たとひP255¥しり¥まゐらせ/て¥さふらふ/とも、¥さぶらひ−ほん/の¥もの/の、¥いちど¥まうさ/じ/と¥おもひ−きり/て/ん¥こと/を、¥きうもん/に¥およん/で¥まうす/べき¥やう¥なし」/とて、¥その−のち/は¥もの/も¥まうさ/ず。¥いくら/も¥なみ−ゐ/たり/ける¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、「¥あつぱれ¥かう/の−もの/や。¥これ=ら/を/こそ¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/と/も¥いふ/べけれ」/と、¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、¥その¥なか/に¥ある¥ひと/の¥まうし/ける/は、「¥あれ/が¥かうみやう/は¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/ぞ/かし。¥せんねん¥ところ/に¥あり/し¥とき、¥おほ−ばんじゆ/の¥もの=ども/の¥とどめ−かね/たり/し¥がうだう¥ろくにん/に、¥ただ¥いち−にん¥おつ−かかり、¥にでうほりかは/なる¥ところ/にて、¥しにん¥きり−ふせ、¥ににん¥いけどつ/て、¥その−とき¥なさ/れ/たり/し¥さひやうゑ/の−じよう/ぞ/かし。¥あつたら¥をのこ/の¥きら/れ/んずる¥こと/の¥むざん−さ/よ」/と¥をしみ−あへ/り/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥いかが¥おもは/れ/けん、「¥さら/ば、¥な¥きつ/そ」/とて、¥はうき/の¥ひの/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥へいけ¥ほろび¥げんじ/の¥よ/に¥なつ/て、¥とうごく/へ¥くだり、¥かぢはら−へいざう−かげとき/に¥つい/て、¥こと/の¥こんげん¥いちいち/に¥まうし/たり/けれ/ば、¥かまくら=どの、「¥しんべう/なり」/と¥かんじ¥たまひ/て、¥のとの−くに/に¥ご=おん¥かうぶり/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「たかくらのみやをんじやうじへじゆぎよ」(『きをほ』)S0406¥さる−ほど/に、¥みや/は¥たかくら/を¥きた/へ、¥こんゑ/を¥ひがし/へ、¥かもがは/を¥わたら/せ¥たまひ/て、¥によいやま/へP256¥いら/せ¥おはします。¥むかし¥きよみばらの−てんわう、¥おほともの−わうじ/に¥おそは/れ/させ¥たまひ/て、¥よしのやま/へ¥いら/せ¥たまひ/ける/に/こそ、¥をとめ/の¥すがた/を/ば¥から/せ¥たまひ/ける/なれ。¥いま¥この¥みや/の¥おん=ありさま/も、¥それ/に/は¥すこし/も¥たがは/せ¥たまふ/べから/ず。¥しら/ぬ¥やまぢ/を、¥よ/も−すがら¥はるばる/と¥わけ−いら/せ¥たまふ/に、¥いつ¥ならはし/の¥おん=こと/なれ/ば、¥おん=あし/より¥いづる¥ち/は、¥いさご/を¥そめ/て¥くれなゐ/の/ごとし。¥なつぐさ/の¥しげみ/が¥なか/の¥つゆけ−さ/も、¥さ/こそ/は¥ところ−せう¥おぼしめさ/れ/けめ。¥かく−し/て¥あかつき−がた/に¥みゐでら/へ¥いら/せ¥おはします。「¥かひ−なき¥いのち/の¥をし−さ/に、¥しゆと/を¥たのん/で¥じゆぎよ¥あり」/と¥おほせ/けれ/ば、¥だいしゆ¥おほき/に¥かしこまり−よろこん/で、¥ほふりんゐん/に¥ごしよ/を¥しつらひ、¥かた/の/ごとく/の¥ぐご¥し−いだい/て¥たてまつる。¥
「きほふ」¥あくる¥じふろくにち、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん¥おこさ/せ¥たまひ/て、¥みゐでら/へ¥おち/させ¥たまふ/ぞ/や/と¥まうす/ほど/こそ¥あり/けれ、¥きやう−ぢう/の¥さうどう¥なのめ/なら/ず。¥そもそも¥この¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/は、¥としごろ−ひごろ/も¥あれ/ば/こそ¥あり/けめ、¥こんねん¥いか/なる¥こころ/にて、¥むほん/を/ば¥おこさ/れ/ける/ぞ/と¥いふ/に、¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/の、¥ふしぎ/の¥こと/を/のみ¥し¥たまひ/ける/に¥よつ/て/なり。¥され/ば¥ひと/の¥よ/に¥あれ/ば/とて、¥すずろ/に¥いふ/まじき¥こと/を¥いひ、¥す/まじきP257¥こと/を¥する/は、¥よくよく¥しりよ¥ある/べき¥こと/なり。¥たとへば¥その−ころ¥さんみ−にふだう/の¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな/の¥もと/に、¥くぢう/に¥きこえ/たる¥めいば¥あり。¥かげ/なる¥むま/の¥ならび−なき¥いちもつ、¥のり−はしり、¥こころ−むけ、¥よ/に¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥な/を/ば¥このした/と/ぞ¥いは/れ/ける。¥むねもりの−きやう¥ししや/を¥たて/て、「¥きこえ¥さふらふ¥めいば/を¥たまはつ/て、¥み¥さふらは/ばや」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥いづの−かみ/の¥へんじ/に/は、「¥さる¥むま/を¥もつ/て¥さふらひ/し/を、¥この−ほど¥あまり/に¥のり−つからかし/て¥さふらふ/ほど/に、¥しばらく¥いたはら/せ/ん/が¥ため/に、¥でんしや/へ¥つかはし/て¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥さら/ん/に/は¥ちから¥およば/ず」/とて、¥その−のち/は¥さた¥なかり/ける/が、¥おほく¥なみ−ゐ/たり/ける¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、「¥あつぱれ¥その¥むま/は¥をととひ/も¥さふらひ/し。¥きのふ/も¥みえ/て¥さふらふ。¥けさ/も¥にはのり−し¥さふらひ/つる」/など、¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、「¥さて/は¥をしむ¥ござんなれ。¥にくし。¥こへ」/とて、¥さぶらひ/して¥はせ/させ、¥ふみ/など¥し/て、¥ひととき/が¥うち/に¥ごろくど¥しちはちど/など¥こは/れ/けれ/ば、¥さんみ−にふだう¥これ/を¥きき、¥いづの−かみ/に¥むかつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥たとひ¥こがね/を¥もつて¥まろめ/たる¥むま/なり/とも、¥それ−ほど¥ひと/の¥こは/うずる/に、¥をしむ/べき¥やう/や¥ある。¥その¥むま¥すみやか/に¥ろくはら/へ¥つかはせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥いづの−かみ¥ちから¥およば/ず、¥いつしゆ/の¥うた/を¥かき−そへ/て、¥ろくはら/へ¥つかはさ/る。¥
こひしく/は¥き/て/も¥みよ/かし¥み/に¥そふる¥かげ/を/ば¥いかが¥はなち−やる/べき W021¥
むねもりの−きやう、¥まづ¥うた/の¥へんじ/を/ば¥し¥たまは/で、「¥あつぱれ¥むま/や、¥むま/は¥まことに¥よい¥むま/で¥あり/けり。P258¥され/ども¥あまり/に¥をしみ/つる/が¥にくき/に、¥ぬし/が¥なのり/を¥かなやき/に¥せよ」/とて、¥なかつな/と¥いふ¥かなやき/を¥し/て、¥むまや/に/こそ¥たて/られ/けれ。¥まらうと¥きたつ/て、「¥きこえ¥さふらふ¥めいば/を¥み¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、「¥その¥なかつな=め/に¥くら¥おけ、¥ひき−いだせ、¥のれ、¥うて、¥はれ」/なんど/ぞ¥のたまひ/ける。¥いづの−かみ¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥み/に¥かへ/て¥おもふ¥むま/なれ/ども、¥けんゐ/に¥つい/て¥とら/るる/さへ¥ある/に、¥あまつさへ¥てんが/の¥わらはれぐさ/と¥なら/んずる¥こと/こそ¥やすから/ね」/と¥おほき/に¥いきどほら/れ/けれ/ば、¥さんみ−にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥なんでふ¥こと/の¥ある/べき/と¥おもひ−あなどつ/て、¥へいけ/の¥ひと=ども/が、¥かやう/の¥しれごと/を¥する/に/こそ¥あん/なれ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん。¥びんぎ/を¥うかがふ/に/こそ¥あら/め」/と¥のたまへ/ども、¥わたくし/に/は¥おもひ/も¥たた/れ/ず、¥たかくらのみや/を¥すすめ¥まうさ/れ/ける/と/ぞ、¥のち/に/は¥きこえ/し。¥これ/に¥つけ/て/も、¥てんが/の¥ひと、¥こまつの−おとど/の¥こと/を/ぞ¥しのび¥まうし/ける。¥ある−とき¥おとど¥さんだい/の¥ついで/に、¥ちうぐう/の¥おん=かた/へ¥まゐらせ¥たまふ/に、¥はつしやく/ばかり¥あり/ける¥くちなは/の、¥おとど/の¥さしぬき/の¥ひだん/の¥りん/を¥はひ−まはり/ける/を、¥しげもり¥さわが/ば、¥にようばう=たち/も¥さわぎ、¥ちうぐう/も¥おどろか/せ¥たまひ/な/んず/と¥おぼしめし、¥ひだん/の¥て/にて¥を/を¥おさへ、¥みぎ/の¥て/にて¥かしら/を¥とつ/て、¥なほし/の¥そで/の¥なか/へ¥ひき−いれ、¥ちつと/も¥さわが/ず、¥つい−たつ/て、「¥ろくゐ/や¥さふらふ、¥ろくゐ/や¥さふらふ」/と¥めさ/れ/けれ/ば、¥いづの−かみ−なかつな、¥その−とき/は¥いまだ¥ゑふ/の−くらんど/にて¥さふらは/れ/ける/が、「¥なかつな」/と¥なのつ/て¥まゐら/れ/たる/に、¥この¥くちなは/を¥たぶ。¥たまはつ/て¥ゆば=どの/をP259¥へ/て、¥てんじやう/の¥こには/に¥いで/つつ、¥みくら/の¥こ−とねり/を¥まねい/て、「¥これ¥たまはれ」/と¥いは/れ/けれ/ば、¥おほき/に¥かしら/を¥ふつ/て¥にげ−さり/ぬ。¥いづの−かみ¥ちから¥およば/ず、¥わが¥らうどう/の¥きほふ/を¥めし/て¥これ/を¥たぶ。¥たまはつ/て¥すて/てげり。¥その¥あした¥こまつ=どの/より、¥よい¥むま/に¥くら¥おい/て、¥いづの−かみ/の¥もと/へ¥つかはす/とて、「¥さて/も¥きのふ/の¥ふるまひ/こそ、¥いう/に¥やさしう¥さふらひ/つれ。¥これ/は¥のりいち/の¥むま/で¥さふらふ/ぞ。¥ゆふべ/に¥およん/で、¥ぢんげ/より¥けいせい/の¥もと/へ¥かよは/れ/ん¥とき¥もちひ/らる/べし」/とて¥つかはさ/る。¥いづの−かみ、¥だいじん/の¥おん=ぺんじ/なれ/ば、「¥お=むま¥かしこまつ/て¥たまはり¥さふらひ/ぬ。¥さて/も¥きのふ/の¥おん=ふるまひ/は、¥げんじやうらく/に/こそ¥に/て¥さふらひ/しか」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥いか/なれ/ば¥こまつ=どの/は、¥かやう/に¥いう/なる¥ためし/も¥おはせ/し/ぞ/かし。¥この¥むねもりの−きやう/は、¥さ/こそ¥なから/め、¥ひと/の¥をしむ¥むま¥こひ−とつ/て、¥あまつさへ¥てんが/の¥だいじ/に¥および/ぬる/こそ¥うたてけれ。¥さる−ほど/に¥おなじき−じふろくにち/の¥よ/に¥いつ/て、¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ、¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな、¥じなん¥げん−だいぶ/の−はうぐわん−かねつな、¥ろくでうの−くらんど−なかいへ、¥その¥こ¥くらんど−たらう−なかみつ¥いげ、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥たち/に¥ひ¥かけ¥やき−あげ/て、¥みゐでら/へ/こそ¥まゐら/れ/けれ。¥ここ/に¥さんみ−にふだう/の¥としごろ/の¥さぶらひ/に、¥わたなべの−げんざう−きほふの−たきぐち/と¥いふ¥もの¥あり。¥はせ−おくれ/て¥とどまり/たり/ける/を、¥ろくはら/へ¥めし/て、「¥など¥なんぢ/は、¥さうでん/の¥しゆ、¥さんみ−にふだう/が¥とも/を/ば¥せ/で、¥とどまつ/たる/ぞ」/と¥のたまへ/ば、¥きほふ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥ひごろ/は¥しぜん/の¥こと/も¥さふらは/ば、¥まつさき¥かけ/て、¥いのち/を¥たてまつら/う/ど/こそ¥ぞんぜ/しか。¥こんど/は¥いかがP260¥さふらひ/つる/やらん。¥かう/と/も¥しらせ/られ/ざり/つる¥あひだ、¥とどまつ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥むねもりの−きやう、「¥これ/に/も¥また¥けんざん/の¥もの/ぞ/かし。¥せんど¥こうえい/を¥ぞんじ/て、¥たうけ/に¥つい/て¥ほうこうーせ/う/と/や¥おもふ。¥また¥てうてき¥よりまさ−ぼふし/に¥どうしんーせ/ん/と/や¥おもふ。¥あり/の−まま/に¥まうせ/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥きほふ¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥たとひ¥さうでん/の¥よしみ¥さふらふ/とも、¥いかん/か¥てうてき/と¥なれ/る¥ひと/に、¥どうしん/を/ば¥つかまつり¥さふらふ/べき。¥ただ¥てん−ちう/に¥ほうこう¥いたさ/うずる¥ざふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいしやう、「¥さら/ば¥ほうこうーせよ。¥よりまさ−ぼふし/が¥し/けん¥おん/に/は、¥ちつと/も¥おとる/まじき/ぞ」/とて¥いり¥たまひ/ぬ。¥あした/より¥ゆふべ/に¥およぶ/まで、「¥きほふ/は¥ある/か」。「¥ざふらふ」。「¥ある/か」。「¥ざふらふ」/とて¥しこうーす。¥ひ/も¥やうやう¥くれ/けれ/ば、¥だいしやう¥いで/られ/たり。¥きほふ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥まこと/や¥さんみ−にふだう/は、¥みゐでら/に/と¥きこえ¥さふらふ。¥さだめて¥ようち/なんど/も/や¥むけ/られ¥さふらは/んず/らん。¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう¥さて/は¥みゐでら−ぼふし/にて/ぞ¥さふらは/んず/らん。¥こころ−にくう/も¥さふらは/ず、¥まかり−むかつ/て¥えりうち/など/も¥つかまつる/べき。¥さる¥むま/を¥もつ/て¥さふらひ/し/を、¥この−ほど¥したしい¥やつ−め/に¥ぬすま/れ/て¥さふらふ。¥おん=むま¥いつぴき¥くだし−あづかり¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいしやう、「¥もつとも¥さる/べし」/とて、¥しらあしげ/なる¥むま/の、¥なんれう/とて¥ひざうーせ/られ/たり/ける/に、¥よい¥くら¥おい/て¥きほふ/に¥たぶ。¥たまはつ/て¥しゆくしよ/に¥かへり、「¥はや¥ひ/の¥くれ/よ/かし。¥みゐでら/へ¥はせーまゐり、¥にふだう=どの/の¥まつさき¥かけ/て¥うちじにーせ/ん」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ひ/も¥やうやう¥くれ/けれ/ば、¥さいし=ども/を/ば、¥かしこ−ここ/に¥たち=しのば/せ/て、¥みゐでら/へ/とP261¥いで−たち/ける、¥こころ/の¥うち/こそ¥むざん/なれ。¥ひやうもん/の¥かりぎぬ/の¥きくとぢ¥おほきらか/に¥し/たる/に、¥ぢうだい/の¥きせなが、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥ほしじろ−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥いかもの−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥おほ−なかぐろ/の−や¥おひ、¥たきぐち/の¥こつぽふ¥わすれ/じ/と/や、¥たか/の−は/で¥はい/だり/ける¥まとや¥ひとて/ぞ¥さし−そへ/たる。¥しげどう/の−ゆみ¥もつ/て、¥なんれう/に¥うち−のり、¥のり−かへ¥いつき¥うち−ぐし、¥とねり−をとこ/に¥もつだて¥わき−ばさま/せ、¥やかた/に¥ひ¥かけ¥やき−あげ/て、¥みゐでら/へ/こそ¥はせ/たり/けれ。¥ろくはら/に/は¥きほふ/が¥やかた/より¥ひ¥いで−き/たり/とて¥ひしめき/けり。¥むねもりの−きやう¥いそぎ¥いで/て、「¥きほふ/は¥ある/か」。「¥さふらは/ず」/と¥まうす。「¥すは¥きやつ−め/を¥てのび/に/して、¥たばから/れ/ぬる/は。¥あれ¥おつ−かけ/て¥うて」/と¥のたまへ/ども、¥きほふ/は¥すぐれ/たる¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥やつぎばや/の¥てきき/にて¥あり/けれ/ば、「¥にじふし¥さい/たる¥や/で/は、¥まづ¥にじふしにん/は¥い−ころさ/れ/な/んず。¥おと¥な¥せ/そ」/とて、¥すすむ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥ただいま/しも¥みゐでら/に/は、¥わたなべ−たう¥より−あひ/て、¥きほふ/が¥さた¥あり/けり。「¥いか/に/も−し/て¥この¥きほふ−たきぐち/を/ば、¥めしーぐせ/られ¥さふらは/んずる/ものを」/と、¥くちぐち/に¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さんみ−にふだう、¥きほふ/が¥こころ/を¥よく¥しつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥むげ/に¥その¥もの¥とらへ−からめ/られ/は¥せ/じ。¥にふだう/に¥こころざし¥ふかき¥もの/なれ/ば、¥みよ、¥ただいま¥まゐら/うずる/ぞ」/と¥のたまひ/も¥はて/ぬ/に、¥きほふ¥つと¥まゐり/たり。「¥され/ば/こそ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥きほふ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥いづの−かう/の=との/の¥このした/が¥かはり/に、¥ろくはら/の¥なんれう/を/こそ¥とつ/て¥まゐつ/てP262¥さふらへ。¥まゐらせ¥さふらは/ん」/とて¥たてまつる。¥いづの−かみ¥なのめ/なら/ず¥よろこび¥たまひ/て、¥やがて¥をがみ/を¥きり、¥かなやき/を¥し/て、¥その¥よ¥ろくはら/へ¥つかはさ/る。¥やはん/ばかり/に¥もん/の¥うち/へ¥おひ−いれ/たり/けれ/ば、¥むまや/に¥いつ/て、¥むま=ども/と¥くひ−あひ/けれ/ば、¥その−とき¥とねり¥おどろき−あひ、「¥なんれう/が¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥むねもりの−きやう¥いそぎ¥いで/て¥み¥たまふ/に、¥むかし/は¥なんれう、¥いま/は、「¥たひらの−むねもり−にふだう」/と¥いふ¥かなやき/を/こそ¥し/たり/けれ。¥だいしやう、「¥につくい¥きほふ−め/を¥きつ/て¥すつ/べかり/ける/ものを。¥てのび/に/して¥たばから/れ/ぬる¥こと/こそ¥やすから/ね。¥こんど¥みゐでら/へ¥よせ/たら/んずる¥ひとびと/は、¥いか/に/も−し/て¥きほふ−め/を¥いけどり/に¥せよ。¥のこぎり/で¥くび¥きら/ん」/と、¥をどり−あがり−をどり−あがり¥いから/れ/けれ/ども、¥なんれう/が¥をがみ/も¥おひ/ず、¥かなやき/も¥また¥うせ/ざり/けり。¥
「さんもんへのてふじやう」(『さんもんへのてうじやう』)S0407¥さる−ほど/に、¥みゐでら/に/は、¥かひ¥かね¥ならい/て、¥だいしゆ¥せんぎ−す。「¥そもそも¥きんじつ¥せじやう/の¥てい/を¥あんずる/に、¥ぶつぽふ/の¥すゐび、¥わうぼふ/の¥らうろう、¥まさに¥この−とき/に¥あたれ/り。¥こんど¥にふだう/の¥ばうあく/を¥いましめ/ず/ば、¥いづれ/の¥ひ/を/か¥ごす/べき。¥みや¥ここ/に¥じゆぎよ/の¥おん=こと、¥しやう−はちまんぐう/の¥ゑご、¥しんら−だい−みやうじん/の¥みやうじよ/に¥あら/ず/や。¥てんじゆ−ちるゐ/も¥やうがう/を¥たれ、¥ぶつりき¥じんりき/も¥がうぶく/を¥くはへP263¥まします¥こと、¥など/か¥なから/ん。¥なかんづく¥ほくれい/は¥ゑんじう¥いちみ/の¥がくぢ、¥なんと/は、¥げらふ¥とくど/の¥かいぢやう/なり。¥てつそう/の¥ところ/に¥など/か¥くみせ/ざる/べき」/と、¥いちみ−どうしん/に¥せんぎ−し/て、¥やま/へ/も¥なら/へ/も¥てふじやう/を/こそ¥つかはし/けれ。¥まづ¥さんもん/へ/の¥じやう/に¥いはく、「¥をんじやうじ¥てつす、¥えんりやくじ/の¥が。¥こと/に¥がふりよく/を¥いたし/て、¥たうじ/の¥はめつ/を¥たすけ/られ/ん/と¥おもふ¥じやう。¥みぎ¥にふだう−じやうかい、¥ほしいまま/に¥ぶつぽふ/を¥はめつ−し、¥わうぼふ/を¥みだら/ん/と¥ほつす。¥しうたん¥きはまり¥なき¥ところ/に、¥こんげつ−じふごにち/の¥よ、¥いちゐん¥だいに/の¥わうじ、¥ふりよ/の¥なん/を¥のがれ/ん¥ため/に、¥ひそか/に¥にふじ−せ/しめ¥たまふ。¥ここ/に¥ゐんぜん/と¥かうし/て、¥いだし¥たてまつる/べき¥よし、¥しきり/に¥せめ¥あり/と¥いへ/ども、¥いだし¥たてまつる/に¥あたは/ず。¥よつて¥くわんぐん/を¥はなち−つかはす/べき¥むね、¥その¥きこえ¥あり。¥たうじ/の¥はめつ、¥まさに¥この−とき/に¥あたれ/り。¥しよしゆ¥なんぞ¥しうたん−せ/ざら/ん/や。¥なかんづく¥えんりやく¥をんじやう¥りやうじ/は、¥もんぜき¥ふたつ/に¥あひ−わかる/と¥いへ/ども、¥がくする¥ところ/は、¥これ¥ゑんどん¥いちみ/の¥けうもん/に¥おなじ。¥たとへば¥とり/の¥さう/の¥つばさ/の/ごとく、¥また¥くるま/の¥ふたつ/の¥わ/に¥に/たり。¥いつぱう¥かけ/ん/に¥おいて/は、¥いかで/か¥その¥なげき¥なから/ん/や。¥ていれば¥こと/に¥がふりよく/を¥いたし/て、¥たうじ/の¥はめつ/を¥たすけ/られ/ば、¥はやく¥ねんらい/の¥ゐこん/を¥わすれ、¥ぢうせん/の¥むかし/に¥ふくせ/ん。¥しゆと/の¥せんぎ¥かく/の/ごとし。¥よつて¥てふそう¥くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−ごぐわつ−じふはちにち、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。P264
「なんとへのてふじやう」(『なんとてうじやう』)S0408¥さんもん/の¥だいしゆ、¥この¥じやう/を¥ひけん−し/て、「¥こ/は¥いか/に、¥たうざん/の¥まつじ/で¥あり/ながら、¥とり/の¥さう/の¥つばさ/の/ごとく、¥また¥くるま/の¥ふたつ/の¥わ/に¥に/たり/と、¥おさへ/て¥かく¥でう、¥これ¥もつて¥きくわい/なり」/とて、¥へんてふ/に/も¥およば/ず。¥その−うへ¥にふだう−しやうこく、¥てんだい−ざす−めいうん−だいそうじやう/に、¥しゆと/を¥しづめ/らる/べき¥よし¥のたまひ/けれ/ば、¥ざす¥いそぎ¥とうざん−し/て、¥だいしゆ/を¥しづめ¥たまふ。¥かかり/し−ほど/に、¥みや/の¥おん=かた/へ/は、¥ふぢやう/の¥よし/を/ぞ¥まうし/ける。¥また¥にふだう−しやうこく/の¥はかりごと/に、¥あふみごめ¥にまんごく、¥ほくこく/の¥おりのべぎぬ¥さんぜんびき、¥わうらい/の¥ため/に¥さんもん/へ¥よせ/らる。¥これ/を¥たにだに¥みねみね/へ¥ひか/れ/ける/に、¥にはか/の¥こと/にて¥あり/けれ/ば、¥いち−にん/して¥あまた¥とる¥だいしゆ/も¥あり、¥また¥て/を¥むなしう/して、¥ひとつ/も¥とら/ぬ¥しゆと/も¥あり。¥なにもの/の¥しわざ/に/や¥あり/けん、¥らくしよ/を/ぞ¥し/たり/ける。¥
やまぼふし¥おりのべごろも¥うすく/して¥はぢ/を/ば¥え/こそ¥かくさ/ざり/けれ W022¥
また¥きぬ/に/も¥あたら/ぬ¥だいしゆ/の¥よみ/たり/ける/に/や、¥
おりのべ/を¥ひときれ/も¥え/ぬ¥われ=ら/さへ¥うすはぢ/を¥かく¥かず/に¥いる/かな W023¥
また¥なんと/へ/の¥じやう/に¥いはく、「¥をんじやうじ¥てつす、¥こうぶくじ/の¥が。¥こと/に¥がふりよく/を¥いたし/て、¥たうじ/のP265¥はめつ/を¥たすけ/られ/ん/と¥こふ¥じやう。¥みぎ¥ぶつぽふ/の¥しゆしよう/なる¥こと/は、¥わうぼふ/を¥まもら/ん/が¥ため、¥わうぼふ¥また¥ちやうきう/なる¥こと、¥すなはち¥ぶつぽふ/に¥よる。¥ここ/に¥にふだう−さきの−だいじやうだいじん−たひらの−あそん−きよもり=こう、¥ほふみやう¥じやうかい、¥ほしいまま/に¥こくゐ/を¥ひそか/に¥し、¥てうせい/を¥みだり、¥ない/に¥つけ¥げ/に¥つけ、¥うらみ/を¥なし、¥なげき/を¥なす¥あひだ、¥こんぐわつ−じふごにち/の¥よ、¥いちゐん¥だいに/の¥わうじ¥ふりよ/の¥なん/を¥のがれ/ん/が¥ため/に、¥にはか/に¥にふじ−せ/しめ¥たまふ。¥ここ/に¥ゐんぜん/と¥かうし/て¥いだし¥たてまつる/べき¥むね、¥しきり/に¥せめ¥あり/と¥いへ/ども、¥しゆと¥いつかう¥をしみ¥たてまつ/て、¥いだし¥たてまつる/に¥あたは/ず。¥よつて¥かの¥ぜんもん、¥ぶし/を¥たうじ/へ¥いれ/ん/と¥す。¥ぶつぽふ/と¥いひ、¥わうぼふ/と¥いひ、¥いちじ/に¥まさに¥はめつ−せ/ん/と¥す。¥むかし¥たう/の¥ゑしやう−てんし、¥ぐんびやう/を¥もつて¥ぶつぽふ/を¥ほろぼさ/しめ/し¥とき、¥しやうりやうぜん/の¥しゆ、¥かつせん/を¥いたし/て、¥これ/を¥ふせぐ。¥わうけん¥なほ¥かく/の/ごとし。¥いか/に−いはんや¥むほん−はちぎやく/の¥ともがら/に¥おいて/を/や。¥たれ/の¥ひと/か¥きやうせい−す/べき/ぞ/や。¥なかんづく¥なんきやう/は¥れい¥なく/して、¥つみ¥なき¥ちやうじや/を¥はいる−せ/らる。¥この−とき/に¥あら/ずん/ば、¥いづれ/の¥ひ/か¥くわいけい/を¥とげ/ん。¥ねがは−く/は¥しゆと、¥うち/に/は¥ぶつぽふ/の¥はめつ/を¥たすけ、¥ほか/に/は¥あくぎやく/の¥はんるゐ/を¥しりぞけ/ば、¥どうしん/の¥いたり、¥ほんぐわい/に¥たん/ぬ/べし。¥しゆと/の¥せんぎ¥かく/の/ごとく、¥よつて¥てつそう¥くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−ごぐわつ−じふはちにち、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。P266
「なんとへんてふ」¥なんと/の¥だいしゆ¥この¥じやう/を¥ひけん−し/て、¥いちみ−どうしん/に¥せんぎ−し/て、¥やがて¥へんてふ/を/こそ¥おくり/けれ。¥その¥へんてふ/に¥いはく、「¥こうぶくじ¥てつす、¥をんじやうじ/の¥が。¥らいてふ¥いつし/に¥のせ/られ/たり。¥みぎ¥にふだう−じやうかい/が¥ため/に、¥きじ/の¥ぶつぽふ/を¥ほろぼさ/ん/と¥する¥よし/の¥こと¥てつす。¥ぎよくせん¥ぎよくくわ¥りやうか/の¥しうぎ/を¥たつ/と¥いへ/ども、¥きんしやう−きんく、¥おなじう¥いちだい/の¥けうもん/より¥いで/たり。¥なんきやう¥ほくきやう¥とも/に¥もつて¥によらい/の¥でし/たり。¥じじ¥たじ、¥たがひ/に¥でうだつ/が¥ましやう/を¥ぶくす/べし。¥そもそも¥きよもり−にふだう/は¥へいじ/の¥さうかう、¥ぶけ/の¥ぢんがい/なり。¥そぶ¥まさもり、¥くらんど−ごゐ/の¥いへ/に¥つかへ/て、¥しよ−こく¥じゆりやう/の¥むち/を¥とる。¥おほくらきやう−ためふさ、¥かしう−しし/の¥いにしへ、¥けんびしよ/に¥ふし、¥しゆり/の−だいぶ−あきすゑ、¥はりまの−たいしゆ/たり/し¥むかし、¥むまや/の−べつたうしき/に¥にんず。¥しかる/を¥しんぶ¥ただもり、¥しようでん/を¥ゆるさ/れ/し¥とき、¥とひ/の¥らうせう、¥みな¥ほうこ/の¥かきん/を¥をしみ、¥ないげ/の¥えいかう、¥おのおの¥ばだい/の¥じんもん/に¥なく。¥ただもり¥せいうん/の¥つばさ/を¥かいつくろふ/と¥いへ/ども、¥よ/の¥たみ¥なほ¥はくをく/の¥たね/を¥かろん/ず。¥な/を¥をしむ¥せいし、¥その¥いへ/に¥のぞむ¥こと¥なし。¥しかれ/ば−すなはち¥さんぬる¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥だ[い]じやう−てんわう¥いつせん/の¥こう/を¥かんじ/て、¥ふじ/の¥しやう/を¥さづけ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥たかく¥しやうこく/に¥のぼつ/て、¥かねて¥ひやうぢやう/を¥たまはる。¥なんし¥あるひは¥たいかい/を¥かたじけなう¥し、¥あるひは¥うりん/にP267¥つらなり、¥によし¥あるひは¥ちうぐうしき/に¥そなはり、¥あるひは¥じゆんごう/の¥せん/を¥かうぶる。¥くんてい−そし、¥みな¥きよくろ/に¥あゆみ、¥その¥まご¥かの¥をひ、¥ことごとく¥ちくふ/を¥さく。¥しか/のみ/なら/ず¥きうしう/を¥とうりやう−し、¥はくし/を¥しんだい−し/て、¥ぬび¥みな¥ぼくじう/と¥なす。¥いちまう¥こころ/に¥たがへ/ば、¥わうこう/と¥いへ/ども¥これ/を¥とらへ、¥へんげん¥みみ/に¥さかふ/れ/ば、¥くぎやう/と¥いへ/ども¥これ/を¥からむ。¥これ/に¥よつ/て、¥あるひは¥いつたん/の¥しんみやう/を¥のべ/ん/が¥ため、¥あるひは¥へんし/の¥りようじよく/を¥のがれ/ん/と¥おもつ/て、¥ばんじよう/の−せいしゆ、¥なほ¥めんてん/の¥こび/を¥なし、¥ぢうだい/の¥かくん、¥かへつて¥しつかう/の¥れい/を¥いたす。¥だいだい¥さうでん/の¥けりやう/を¥うばふ/と¥いへ/ども、¥しやうさい/も¥おそれ/て¥した/を¥まき、¥みやみや¥さうじよう/の¥しやうゑん/を¥とる/と¥いへ/ども、¥けんゐ/に¥はばかつ/て¥もの¥いふ¥こと¥なし。¥かつ/に¥のる¥あまり、¥きよねん/の¥ふゆ¥じふいちぐわつ、¥だ[い]じやうくわう/の¥すみか/を¥つゐふく−し/て、¥はくりく=こう/の¥み/を¥おし−ながす。¥ほんぎやく/の¥はなはだしき¥こと、¥まことに¥こきん/に¥たえ/たり。¥その−とき¥われ=ら、¥すべからく¥ぞくしゆ/に¥ゆき−むかつ/て、¥その¥つみ/を¥とふ/べし/と¥いへ/ども、¥あるひは¥しんりよ/に¥あひ−はばかり、¥あるひは¥りんげん/と¥しようずる/に¥よつ/て、¥うつたう/を¥おさへ/て、¥くわういん/を¥おくる¥あひだ、¥かさねて¥ぐんびやう/を¥おこし/て、¥いちゐん¥だいに/の¥しんわうぐう/を¥うち−かこむ¥ところ/に、¥はちまん−さん−じよ、¥かすが−だい−みやうじん、¥ひそか/に¥やうがう/を¥たれ、¥せんひつ/を¥ささげ¥たてまつり、¥きじ/に¥おくり−つけ/て、¥しんら/の¥とぼそ/に¥あづけ¥たてまつる。¥わうぼふ¥つき/ざる¥むね¥あきらけし。¥よつて¥きじ¥しんみやう/を¥すて/て¥しゆご−し¥たてまつる¥でう、¥がんじき/の¥たぐひ、¥たれ/か¥ずゐき−せ/ざら/ん。¥この−とき¥われ=ら¥ゑんゐき/に¥あつ/て、¥その¥なさけ/を¥かんずる¥ところ/に、¥きよもり=こう、¥なほ¥きようき/を¥おこし/て、¥きじ/に¥いら/ん/と¥する¥よし、¥ほのか/に¥つたへ¥うけたまはる/に¥よつ/て、¥かねて¥ようい/を¥いたす。¥じふはちにち¥たつ/の−いつてん/に¥だいしゆ/を¥おこし、¥しよじ/に¥てつそう−し、¥まつじ/にP268¥げぢ−し/て、¥ぐんし/を¥え/て¥のち、¥あんない/を¥たつせ/ん/と¥する¥ところ/に、¥せいてう¥とび−きたつ/て¥はうかん/を¥なげ/たり。¥すうじつ/の¥うつねん¥いちじ/に¥げさん−す。¥かの¥たうか¥しやうりやう−いつ−さん/の¥ひつしゆ、¥なほ¥ぶそう/の¥くわんびやう/を¥かへす。¥いはんや¥わこく¥なんぼく¥りやうもん/の¥しゆと、¥なんぞ¥ぼうしん/の¥じやるゐ/を¥はらは/ざら/ん。¥よく¥りやうゑん¥さう/の¥ぢん/を¥かため/て、¥よろしく¥われ=ら/が¥しんぱつ/の¥つげ/を¥まつ/べし。¥じやう/を¥さつし/て¥ぎたい/を¥なす¥こと¥なかれ。¥もつて¥てつす。¥くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−ごぐわつ−にじふいちにち、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。¥
「だいしゆそろへ」(『ながのせんぎ』)S0409¥てら/に/は¥みや¥いら/せ¥たまひ/て¥のち、¥おほぜき¥こぜき¥ほり−きつ/て、¥だいしゆ¥また¥せんぎ−す。「¥そもそも¥さんもん/は¥こころがはり−し/つ。¥なんと/は¥いまだ¥まゐら/ず。¥この¥こと¥のび/て/は¥あしかり/な/ん。¥いざ/や¥こんや¥ろくはら/に¥おし−よせ/て、¥ようち/に¥せ/ん。¥その¥ぎ/なら/ば、¥らうせう¥ふたて/に¥あひ−わかつ/て、¥まづ¥らうそう=ども/は、¥によいがみね/より¥からめで/へ¥むかふ/べし。¥あしがる=ども/を¥さき−だて/て、¥しらかは/の¥ざいけ/に¥ひ/を¥かけ¥やき−あげ/ば、¥ざいきやうにん、¥ろくはら/の¥ぶし=ども、¥あはや¥こと¥いで−き/たり/とて、¥はせ−むかは/んず/らん。¥その−とき¥いはさか、¥さくらもと/の¥へん/に、¥しばし¥ささへ/て¥ふせぎ−たたかは/ん¥ま/に、¥おほて/は¥まつざか/より、¥いづの−かみ/を¥たいしやうぐん/と/して、¥わかだいしゆ¥あくそう=ども/は、¥ろくはら/にP269¥おし−よせ、¥かざうへ/に¥ひ/を¥かけ¥やき−あげ、¥ひともみ¥もう/で¥せめ/ん/に、¥など/か¥だいじやう−にふだう¥やき−いだい/て、¥うた/ざる/べき」/と/ぞ¥せんぎ−し/たり/ける。¥ここ/に¥へいけ/の¥いのり−し/ける、¥いちによ−ばう/の−あじやり−しんかい/は、¥でし¥どうじゆく¥すじふにん¥ひき−ぐし、¥せんぎ/の¥には/に¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥かやう/に¥まうせ/ば、¥へいけ/の¥かたうど/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らん。¥いつかう¥その¥ぎ/にて/は¥さふらは/ず。¥たとひ¥さ¥さふらふ/とも、¥いかが¥しゆと/の¥ぎ/を/も¥おもひ、¥わが¥てら/の¥な/を/も¥をしま/で/は、¥さふらふ/べき。¥むかし/は¥げんぺい¥さう/に¥あらそひ/て、¥てうか/の¥おん=かため/たり/しか/ども、¥ちかごろ/は¥げんじ/の¥うん¥かたぶき、¥へいけ¥よ/を¥とつ/て¥にじふ−よ−ねん、¥てんが/に¥なびか/ぬ¥くさき/も¥さふらは/ず。¥され/ば¥ないない/の¥たち/の¥ありさま/も、¥こぜい/にて/は¥たやすう¥かなひ−がたし。¥よくよく¥はかりごと/を¥めぐらし、¥せい/を¥もよほし、¥ごにち/に¥よせ/らる/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と、¥ほど/を¥のばさ/ん/が¥ため/に、¥ながなが/と/こそ¥せんぎ−し/たり/けれ。¥ここ/に¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう/は、¥ころも/の¥した/に¥もよぎ−にほひ/の−はらまき/を¥き、¥おほき/なる¥うち−がたな¥まへだれ/に¥さし−ほらし、¥しらえ/の−なぎなた¥つゑ/に¥つき、¥せんぎ/の¥には/に¥すすみ−いで/て、「¥しようこ/を¥ほか/に¥ひく/べから/ず。¥まづ¥わが¥てら/の¥ほんぐわん、¥てんむ−てんわう、¥いまだ¥とうぐう/の¥おん=とき、¥おほともの−わうじ/に¥おそは/れ/させ¥たまひ/て、¥よしの/の¥おく/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥やまとの−くに¥うだ/の−こほり/を¥すぎ/させ¥たまふ/に/は、¥その¥せい¥わづか/に¥じふしちき、¥され/ども¥いが¥いせ/に¥うち−こえ、¥みの¥をはり/の¥ぐんびやう/を¥もつて、¥おほともの−わうじ/を¥ほろぼし/て、¥つひに¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/き。¥きうてう¥ふところ/に¥いる。¥じんりん¥これ/を¥あはれむ/と¥いふ¥ほんもん¥あり。¥じよ/は¥しら/ず、¥きやうしう/が¥もんと/に¥おいて/は、¥こんやP270¥ろくはら/に¥おし−よせ/て¥うちじに−せよ/や」/と/ぞ¥せんぎ−し/ける。¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく¥すすみ−いで/て、「¥せんぎ¥はし¥おほし。¥ただ¥よ/の¥ふくる/に。¥いそげ/や、¥すすめ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥
(『だいしゆそろへ』)S0410¥まづ¥からめで/に¥むかふ¥らうそう=ども/の¥たいしやうぐん/に/は、¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ、¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう、¥りつじやう−ばう/の−あじやり−にちいん、¥そつ/の−ほふいん−ぜんち、¥ぜんち/が¥でし¥ぎはう、¥ぜんやう/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥いつせん−にん、¥てんで/に¥たいまつ¥もつ/て、¥によいがみね/へ/ぞ¥むかひ/ける。¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな、¥じなん¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな、¥ろくでうの−くらんど−なかいへ、¥その¥こ¥くらんど−たらう−なかみつ。¥だいしゆ/に/は¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく、¥りつじやう−ばう/の−いがのきみ、¥ほふりんゐん/の−おにさど、¥じやうきゐん/の−あらとさ、¥これ=ら/は¥ちから/の¥つよさ、¥ゆみ−や¥うちもの¥とつ/て/は、¥いか/なる¥おに/に/も¥かみ/に/も¥あは/う/ど¥いふ、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/なり。¥びやうどうゐん/に/は、¥いなばの−りつしや−くわうだいぶ、¥すみの−ろくらうばう、¥しまの−あじやり、¥つつゐ−ぼふし/に、¥きやうの−あじやり、¥あく−せうなごん、¥きたのゐん/に/は、¥こんくわうゐん/の−ろくてんぐ、¥しきぶ−たいふ、¥のと、¥かが、¥さど、¥びんご=ら/なり。¥まつゐの−ひご、¥しようなんゐん/の−ちくご、¥がやの−ちくぜん、¥おほやの−しゆんちやう、¥ごちゐん/の−たぢま、¥きやうしう/が¥ばうにん、¥ろくじふにん/の¥うち、¥かが−くわうじよう、¥ぎやうぶ−しゆんしう、¥ほふし=ばら/に/は、¥いちらい−ほふし/に¥しか/ざり/き。¥だうじゆ/に/は、¥つつゐの−じやうめう−めいしう、¥をぐらの−そんぐわつ、¥そんえい、¥じけい、¥らくぢう、¥かなこぶしの−げんやう、¥ぶし/に/は¥わたなべの−はぶく¥はりまの−じらう−さづく¥さつまの−ひやうゑ、¥ちやうじつ−となふ、¥きほふの−たきぐち、¥あたふの−うま/の−じよう、¥つづくの−げんた、¥きよし、¥すすむ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥いつせんごひやく−よ−にん、¥みゐでら/を/こそ¥うつ−たち/けれ。P271¥てら/に/は¥みや¥いら/せ¥たまひ/て¥のち、¥おほぜき¥こぜき¥ほり−きり、¥かいだて¥かき、¥さかもぎ¥ひき/たり/けれ/ば、¥ほり/に¥はし¥わたし、¥さかもぎ¥とり−のけ/など¥し/ける/ほど/に、¥じこく¥おし−うつつ/て、¥せきぢ/の¥にはとり¥なき−あへ/り。¥いづの−かみ、「¥ここ/にて¥とり¥ない/て/は、¥ろくはら/へ/は、¥はくちう/に/こそ¥よせ/んずれ。¥いかが−せ/ん」/と¥のたまへ/ば、¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく、¥また¥さき/の/ごとく/に¥すすみ−いで/て、「¥むかし¥しん/の¥せうわう、¥まうしやうくん/を¥めし−いましめ/られ/たり/し/に、¥きさき/の¥おん=たすけ/に¥よつ/て、¥つはもの¥さんぜんにん/を¥ひき−ぐし/て、¥にげ−まぬかれ/ける/が、¥ほど−なく¥かんこくくわん/に¥いたり/ぬ。¥いこく/の¥ならひ/に、¥にはとり/の¥なか/ぬ¥かぎり/は、¥せき/の¥と/を¥ひらく¥こと¥なし。¥かの¥まうしやうくん/が¥さんぜん/の¥かく/の¥なか/に、¥てんかつ/と¥いふ¥つはもの¥あり。¥にはとり/の¥なく¥まね/を¥ゆゆしう¥し/けれ/ば、¥けいめい/と/も¥いは/れ/けり。¥かの¥けいめい、¥たかき¥ところ/に¥はしり−あがり、¥にはとり/の¥なく¥まね/を¥ゆゆしう¥し/たり/けれ/ば、¥せきぢ/の¥にはとり¥きき−つたへ/て、¥みな¥なき−あへ/り。¥その−とき¥せきもり、¥とり/の¥そらね/に¥ばかさ/れ/て、¥せき/の¥と/を¥あけ/て/ぞ¥とほし/ける。¥され/ば¥これ/も¥かたき/の¥はかりごと/に/や¥なか/す/らん。¥ただ¥よせよ/や」/と/ぞ¥まうし/ける。¥かかり/し−ほど/に、¥さつき/の¥みじか−よ/なれ/ば、¥ほのぼの/と/ぞ¥あけ/に/ける。¥いづの−かみ¥のたまひ/ける/は、「¥ようち/に/こそ¥さり/とも/と¥おもひ/つれ、¥ひるいくさ/に/は¥いか/に/も¥かなふ/まじ。¥あれ¥よび−かへせ/や」/とて、¥おほて/は¥まつざか/より¥とつ/て¥かへし、¥からめで/は¥によいがみね/より¥ひつ−かへす。¥わかだいしゆ¥あくそう=ども、「¥これ/は¥いちによ−ばう/が¥なが−せんぎ/に/こそ、¥よ/は¥あけ/たれ。¥その¥ばう¥きれ」/とて、¥おし−よせ/て¥ばう/を¥さんざん/に¥きる。¥ふせぐ¥ところ/の¥でし¥どうじゆく、¥みな¥うた/れ/に/けり。P272¥わが−み¥て−おひ、¥はふはふ¥ろくはら/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥うつたへ¥まうし/けれ/ども、¥ろくはら/に/は¥ぐんびやう¥すまんぎ¥はせ−あつまつ/て、¥ちつと/も¥さわぐ¥けしき/も¥し¥たまは/ず。¥さる−ほど/に¥みや/は、¥さんもん/は¥こころがはり−し/つ、¥なんと/は¥いまだ¥まゐら/ず。¥この¥てら/ばかり/で/は、¥いか/に/も¥かなふ/べから/ず/とて、¥おなじき−にじふさんにち/の¥あかつき−がた/に、¥みゐでら/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥なんと/へ¥おち/させ¥おはします。¥この¥みや/は¥せみをれ、¥こえだ/とて、¥かんちく/の¥ふえ/を¥ふたつ¥もち¥たまへ/り。¥なか/に/も¥せみをれ/は、¥むかし¥とばのゐん/の¥おん=とき、¥そうてう/の¥みかど/へ、¥しやきん/を¥おほく¥まゐらつ/させ¥たまひ/たり/しか/ば、¥へんぱう/と¥おぼしく/て、¥いき/たる¥せみ/の/ごとく/に、¥ふし/の¥つき/たる¥ふえたけ/を、¥ひとよ¥まゐらつ/させ¥たまひ/けり。¥これ−ほど/の¥ちようほう/を、¥いかん/か¥さう−なう¥ゑら/せ/らる/べき/とて、¥みゐでら/の¥だいしん/の−そうじやう−かくそう/に¥おほせ、¥だんじやう/に¥たて、¥しち−にち¥かぢ−し/て、¥ゑら/せ¥たまへ/る¥おん=ふえ/なり。¥ある−とき¥たかまつの−ちうなごん−さねひらの−きやう¥まゐつ/て、¥この¥おん=ふえ/を¥ふか/れ/ける/に、¥よ/の−つね/の¥ふえ/の¥やう/に¥おもひ−わすれ/て、¥ひざ/より¥しも/に¥おか/れ/たり/けれ/ば、¥ふえ/や¥とがめ/けん、¥その−とき¥せみ¥をれ/に/けり。¥さて/こそ¥せみをれ/と/は¥めさ/れ/けれ。¥この¥みや¥ふえ/の¥おん=きりやう/たる/に¥よつ/て、¥ご=さうでん¥あり/ける/とかや。¥され/ども¥いま/を¥かぎり/と/や¥おぼしめさ/れ/けん、¥こんだう/の¥みろく/に¥こめ¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥りうげ/の¥あかつき、¥ちぐ/の¥おん=ため/か/と¥おぼしく/て、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥さる−ほど/に¥みや/は、¥らうそう=ども/に/は¥みな¥いとま¥たう/で、¥とどめ/させ¥おはします。¥しかる/べき¥わかだいしゆ¥あくそう=ども/は¥まゐり/けり。¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥みゐでら/の¥だいしゆ¥ひき−ぐし/て、P273¥その¥せい¥いつせんごひやく−よ−にん/と/ぞ¥きこえ/し。¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう/は¥はと/の¥つゑ/に¥すがり、¥みや/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥さうがん/より¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て¥まうし/ける/は、「¥いづく/まで/も¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらひ/しか/ども、¥とし¥すでに¥はちじゆん/に¥たけ/て、¥ぎやうぶ¥いか/に/も¥かなひ−がたく¥さふらへ/ば、¥でし/で¥さふらふ¥ぎやうぶ−ばう−しゆんしう/を¥まゐらせ¥さふらは/ん。¥これ/は¥ひととせ¥へいぢ/の−かつせん/の¥とき、¥こ=さま/の−かみ−よしとも/が¥て/に¥さふらう/て、¥ろくでうかはら/で¥うちじに¥つかまつり¥さふらひ/し、¥さがみの−くに/の¥ぢうにん、¥やまのうちのすどう−ぎやうぶ/の−じよう−としみち/が¥こ/にて¥さふらひ/し/を、¥いささか¥ゆかり¥さふらふ/に¥よつ/て、¥あとふところ/にて¥おほし−たて/て、¥こころ/の¥そこ/まで/も、¥よく¥しつ/て¥さふらへ/ば、¥いづく/まで/も¥めし−ぐせ/られ¥さふらへ」/とて、¥なみだ/を¥おさへ/て¥とどまり/ぬ。¥みや/も¥あはれ/に¥おぼしめし/て、「¥いつ/の¥よしみ/に¥かく/は¥まうす/らん」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥
「はしかつせん」(『はしがつせん』)S0411¥さる−ほど/に、¥みや/は¥うぢ/と¥てら/と/の¥あひだ/にて、¥ろくど/まで¥おん=らくば¥あり/けり。¥これ/は¥さんぬる¥よ、¥ぎよ=しん/なら/ざり/し¥ゆゑ/なり/とて、¥うぢばし¥さんげん¥ひき−はづし、¥びやうどうゐん/に¥いれ¥たてまつり、¥しばらく¥ご=きうそく¥あり/けり。¥ろくはら/に/は、「¥すはや¥みや/こそ、¥なんと/へ¥おち/させ¥たまふ/なれ。¥おつ−かけ/て¥うち¥たてまつれ/や」/とて、¥たいしやうぐん/に/は、¥さひやうゑ/の−かみ−とももり、P274¥とう/の−ちうじやう−しげひら、¥さつまの−かみ−ただのり、¥さむらひ−だいしやう/に/は、¥かづさの−かみ−ただきよ、¥その¥こ¥かづさの−たらう−はうぐわん−ただつな、¥ひだの−かみ−かげいへ、¥その/こ¥ひだの−たらう−はうぐわん−かげたか、¥たかはし/の−はうぐわん−ながつな、¥かはちの−はうぐわん−ひでくに、¥むさしの−さぶらうざゑもん−ありくに、¥ゑつちうの−じらうびやうゑ−もりつぎ、¥かづさの−ごらうひやうゑ−ただみつ、¥あく−しち−びやうゑ−かげきよ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥にまんはつせん−よ−き、¥こはたやま¥うち−こえ/て、¥うぢばし/の¥つめ/に/ぞ¥おし−よせ/たる。¥かたき¥びやうどうゐん/に/と¥み/てげれ/ば、¥とき/を¥つくる¥こと¥さん−か−ど/なり。¥みや/の¥おん=かた/に/も、¥おなじう¥とき/の−こゑ/を/ぞ¥あはせ/たる。¥せんぢん/が、「¥はし/を¥ひい/たる/ぞ、¥あやまち−す/な。¥はし/を¥ひい/たる/ぞ、¥あやまち−す/な」/と¥どよみ/けれ/ども、¥ごぢん/は¥これ/を¥きき−つけ/ず、¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と¥すすむ/ほど/に、¥せんぢん¥にひやく−よ−き¥おし−おとさ/れ、¥みづ/に¥おぼれ/て¥うせ/に/けり。¥さる−ほど/に、¥はし/の¥りやうばう/の¥つめ/に¥うつ−たつ/て¥や−あはせ−す。¥みや/の¥おん=かた/より、¥おほやの−しゆんちやう、¥ごちゐん/の−たぢま、¥わたなべの−はぶく、¥さづく、¥つづくの−げんた/が¥い/ける¥や/ぞ、¥たて/も¥たまら/ず、¥よろひ/も¥かけ/ず¥とほり/けり。¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/は、¥けふ/を¥さいご/と/や¥おもは/れ/けん、¥ちやうけん/の−よろひ−びたたれ/に、¥しながは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥わざと¥かぶと/を/ば¥き¥たまは/ず。¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−よろひ/なり。¥ゆみ/を¥つよう¥ひか/ん/が¥ため/に、¥これ/も¥かぶと/を/ば¥き/ざり/けり。¥
ここ/に¥ごちゐん/の−たぢま、¥おほ−なぎなた/の¥さや/を¥はづい/て、¥ただ¥いち−にん¥はし/の¥うへ/に/ぞ¥すすん/だる。¥へいけ/の¥かた/に/は¥これ/を¥み/て、「¥ただ¥い−とれ/や¥い−とれ」/とて、¥さしつめ−ひきつめ、P275¥さんざん/に¥い/けれ/ども、¥たぢま¥すこし/も¥さわが/ず、¥あがる¥や/を/ば¥つい−くぐり、¥さがる¥や/を/ば¥をどり−こえ、¥むかつ/て¥くる/を/ば¥なぎなた/にて¥きつ/て¥おとす。¥かたき/も¥み=かた/も¥けんぶつ−す。¥それ/より/して/こそ¥やぎり/の−たぢま/と/は¥いは/れ/けれ。¥また¥だうじゆ/の¥なか/に、¥つつゐの−じやうめう−めいしう/は、¥かち/の−ひたたれ/に、¥くろかは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥ごまい−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こくしつ/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥くろぼろ/の−や¥おひ、¥ぬりごめどう/の−ゆみ/に、¥このむ¥しらえ/の−おほ−なぎなた¥とり−そへ/て、¥これ/も¥ただ¥いち−にん¥はし/の¥うへ/に/ぞ¥すすん/だる。¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥とほから/ん¥もの/は¥おと/に/も¥きけ。¥ちかから/ん¥ひと/は¥め/に/も¥み¥たまへ。¥みゐでら/に/は¥かくれ¥なし、¥だうじゆ/の¥なか/に¥つつゐの−じやうめう−めいしう/とて、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/ぞ/や。¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥より−あへ/や¥げんざん−せ/ん」/とて、¥にじふし¥さい/たる¥や/を、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥いる。¥やには/に¥かたき¥じふににん¥い−ころし、¥じふいち−にん/に¥て¥おう/せ/たれ/ば、¥えびら/に¥ひとつ/ぞ¥のこつ/たる。¥その−のち、¥ゆみ/を/ば¥から/と¥なげ−すて/て、¥えびら/も¥とい/て¥すて/てげり。¥つらぬき¥ぬい/で¥はだし/に¥なり、¥はし/の¥ゆきげた/を、¥さらさら/と¥はしり/ける。¥ひと/は¥おそれ/て¥わたら/ね/ども、¥じやうめう−ばう/が¥ここち/に/は、¥いちでう¥にでう/の¥おほち/と/こそ¥ふるまう/たれ。¥なぎなた/にて¥むかふ¥かたき¥ごにん¥なぎ−ふせ、¥ろくにん/に¥あたる¥かたき/に¥あう/て、¥なぎなた¥なか/より¥うち−をつ/て¥すて/てげり。¥その−のち、¥たち/を¥ぬい/て¥たたかふ/に、¥かたき/は¥おほぜい/なり、¥くもで、¥かくなは、¥じふもんじ、¥とんばう−かへり、¥みづくるま、¥はつぱう¥すかさず¥きつ/たり/けり。¥むかふ¥かたき¥はちにん¥きり−ふせ、¥くにん/に¥あたる¥かたき/が¥かぶと/の¥はち/に¥あまり/に¥つよう¥うち−あて/て、¥めぬき/の¥もと/より¥ちやうど¥をれ、P276¥くつ/と¥ぬけ/て、¥かは/へ¥ざつぶと/ぞ¥いり/に/ける。¥たのむ¥ところ/は¥こし−がたな、¥しな/ん/と/のみ/ぞ¥くるひ/ける。¥
ここ/に¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう/が¥めし−つかひ/ける¥いちらい−ほふし/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥じやうめう−ばう/が¥うしろ/に¥つづい/て¥たたかひ/ける/が、¥ゆきげた/は¥せばし、¥そば¥とほる/べき¥やう/は¥なし。¥じやうめう−ばう/が¥かぶと/の¥しころ/に¥て/を¥おい/て、「¥あしう¥さふらふ、¥じやうめう−ばう」/とて、¥かた/を¥づんど¥をどり−こえ/て/ぞ¥たたかひ/ける。¥いちらい−ほふし¥うちじに−し/てげり。¥じやうめう−ばう/は¥はふはふ¥かへつ/て、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥まへ/なる¥しば/の¥うへ/に¥もののぐ¥ぬぎ−すて、¥よろひ/に¥たつ/たる¥やめ/を¥かぞへ/たれ/ば¥ろくじふさん、¥うら¥かく¥や¥ごしよ、¥され/ども¥いたで/なら/ね/ば、¥ところどころ/に¥きうぢ−し、¥かしら¥からげ、¥じやうえ¥き、¥ゆみ¥きり−をり¥つゑ/に¥つき、¥ひらあしだ¥はき、¥あみだぶ¥まうし/て、¥なら/の¥かた/へ/ぞ¥まかり/ける。¥その−のち/は¥じやうめう−ばう/が¥わたつ/たる/を¥てほん/と/して、¥みゐでら/の¥だいしゆ、¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥われ¥さき/に/と¥はしり−つづき−はしり−つづき、¥はし/の¥ゆきげた/を/こそ¥わたり/けれ。¥あるひは¥ぶんどり−し/て¥かへる¥もの/も¥あり、¥あるひは¥いたで¥おう/て¥はら¥かき−きり、¥かは/へ¥とび−いる¥もの/も¥あり、¥はし/の¥うへ/の¥いくさ、¥ひ¥いづる/ほど/に/ぞ¥みえ/たり/ける。¥へいけ/の¥かた/の¥さぶらひ−だいしやう−かづさの−かみ−ただきよ、¥たいしやうぐん/の¥おん=まへ/に¥まゐり、「¥あれ¥ごらん¥さふらへ。¥はし/の¥うへ/の¥たたかひ、¥て−いたう¥さふらふ。¥いま/は¥かは/を¥わたす/べき/にて¥さふらふ/が、¥をりふし¥さみだれ/の¥ころ、¥みづ¥まさつ/て¥さふらへ/ば、¥わたさ/ば¥むま¥ひと¥おほく¥ほろび¥さふらひ/な/ん。¥よど、¥いもあらひ/へ/や¥むかふ/べき。¥また¥かはちぢ/へ/や¥まはる/べき。¥いかが−せ/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥しもづけの−くに/の¥ぢうにん、¥あしかがの−またたらう−ただつな、P277¥しやうねん¥じふしちさい/にて¥あり/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥よど、¥いもあらひ、¥かはちぢ/へ/は、¥てんぢく¥しんだん/の¥ぶし/を¥めし/て、¥むけ/られ¥さふらは/んずる/か、¥それ/も¥われ=ら/こそ¥うけたまはつ/て¥むかひ¥さふらは/んずれ。¥め/に¥かけ/たる¥かたき/を¥うた/ず/して、¥みや/を¥なんと/へ¥いれ¥まゐらせ/な/ば、¥よしの¥とづがは/の¥せい=ども¥はせ−あつまつ/て、¥いよいよ¥おん=だいじ/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥むさし/と¥かうづけ/の¥さかひ/に、¥とねがは/と¥まうす¥だいが¥さふらふ。¥ちちぶ、¥あしかが、¥なか¥たがう/て、¥つね/は¥かつせん/を¥つかまつり¥さふらひ/し/に、¥おほて/は¥ながゐ/の−わたり、¥からめで/は¥こがすぎ/の−わたり/より¥よせ¥さふらひ/し/に¥ここ/に、¥かうづけの−くに/の¥ぢうにん、¥につたの−にふだう、¥あしかが/に¥かたらは/れ/て、¥すぎ/の−わたり/より¥よせ/ん/とて、¥まうけ/たり/ける¥ふね=ども/を、¥ちちぶ/が¥かた/より¥みな¥わら/れ/て、¥まうし/ける/は、『¥ただいま¥ここ/を¥わたさ/ず/は、¥ながき¥ゆみ−や/の¥きず/なる/べし。¥みづ/に¥おぼれ/て/も¥しな/ば¥しね、¥いざ¥わたさ/う』/とて、¥むま−いかだ/を¥つくつ/て、¥わたせ/ば/こそ¥わたし/けめ。¥ばんどう−むしや/の¥ならひ、¥かたき/を¥め/に¥かけ、¥かは/を¥へだて/たる¥いくさ/に、¥ふちせ¥きらふ¥やう/や¥ある。¥この¥かは/の¥ふか−さ¥はやさ、¥とねがは/に¥いく−ほど/の¥おとり−まさり/は¥よも¥あら/じ。¥つづけ/や¥との=ばら」/とて、¥まつさき/に/こそ¥うち−いれ/たれ。¥つづく¥ひとびと、¥おほご、¥おほむろ、¥ふかず、¥やまがみ、¥なはの−たらう、¥さぬきの−ひろつな−しらう−だいふ、¥をのでらの−ぜんじ−たらう、¥へやこの−しらう、¥らうどう/に/は¥うぶかたの−じらう、¥きりふの−ろくらう、¥たなかの−そうだ/を¥はじめ/と/して、¥さんびやく−よ−き/ぞ¥つづき/ける。¥あしかが¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥よわき¥むま/を/ば¥したて/に¥たてよ。¥つよき¥むま/を/ば¥うはて/に¥なせ。¥むま/の¥あし/の¥およば/う/ほど/は、¥たづな/を¥くれ/て¥あゆま/せよ。P278¥はずま/ば、¥かい−くつ/て¥およが/せよ。¥さがら/う¥もの/を/ば¥ゆみ/の¥はず/に¥とり−つか/せよ。¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥かた/を¥ならべ/て¥わたす/べし。¥むま/の¥かしら¥しづま/ば¥ひき−あげよ。¥いたう¥ひい/て¥ひつ−かづくな。¥くらつぼ/に¥よく¥のり−さだまつ/て、¥あぶみ/を¥つよう¥ふめ。¥みづ¥しとま/ば、¥さんづ/の¥うへ/に¥のり−かかれ。¥かはなか/にて¥ゆみ¥ひく/な。¥かたき¥いる/とも¥あひびき−す/な。¥つねに¥しころ/を¥かたぶけよ。¥いたう¥かたぶけ/て¥てへん¥い/さす/な。¥むま/に/は¥よわう、¥みづ/に/は¥つよう¥あたる/べし。¥かね/に¥わたい/て¥おし−おとさ/る/な。¥みづ/に¥しなう/て¥わたせ/や¥わたせ」/と¥おきて/て、¥さんびやく−よ−き¥いつき/も¥ながさ/ず、¥むかひ/の¥きし/へ¥ざつと/ぞ¥うち−あげ/たる。¥
「みやのごさいご」(『みやのごさいご』)S0412¥あしかが/が¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥くちば/の−あやの−ひたたれ/に、¥あかがは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥たかづの¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥もち/て、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥かしはぎ/に¥みみづく¥うつ/たる¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て/ぞ¥のつ/たり/ける。¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むかし¥てうてき¥まさかど/を¥ほろぼし/て、¥けんじやう¥かうぶつ/て、¥な/を¥こうだい/に¥あげ/たり/し¥たはら−とうだ−ひでさと/に¥じふ−だい/の¥こういん、¥しもづけの−くに/の¥ぢうにん、¥あしかがの−たらう−としつな/が¥こ、¥またたらう−ただつな、¥しやうねん¥じふしちさい/に¥まかり−なる。P279¥かやう/に¥むくわん¥むゐ/なる¥もの/の、¥みや/に¥むかひ¥まゐらせ/て¥ゆみ/を¥ひき¥や/を¥はなつ¥こと/は¥てん/の¥おそれ¥すくなから/ず¥さふらへ/ども、¥ただし¥ゆみ/も¥や/も、¥みやうが/の¥ほど/も¥へいけ/の¥おん=うへ/に/こそ¥とどまり¥さふらは/め。¥さんみ−にふだう=どの/の¥おん=かた/に、¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥より−あへ/や¥げんざん−せ/ん」/とて、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥うち/へ、¥せめ−いり−せめ−いり¥たたかひ/けり。¥たいしやうぐん−さひやうゑ/の−かみ−とももり、¥これ/を¥み¥たまひ/て、「¥わたせ/や¥わたせ」/と¥げぢ−し¥たまへ/ば、¥にまんはつせん−よ−き、¥みな¥うち−いれ/て¥わたす。¥さ/ばかり¥はやき¥うぢがは/も、¥むま/や¥ひと/に¥せか/れ/て、¥みづ/は¥かみ/に/ぞ¥たたへ/たる。¥ざふにん=ばら/は、¥むま/の¥したて/に¥とり−つき−とり−つき¥わたる/ほど/に、¥ひざ/より¥うへ/を¥ぬらさ/ぬ¥もの/も¥おほかり/けり。¥おのづから¥はづるる¥みづ/に/は¥なに/も¥たまら/ず¥ながれ/たり。¥ここ/に¥いが¥いせ¥りやうごく/の¥くわんびやう=ら、¥むま−いかだ¥おし−やぶら/れ/て、¥ろくぴやく−よ−き/こそ¥ながれ/たれ。¥もよぎ、¥ひ−をどし、¥あか−をどし、¥いろいろ/の¥よろひ/の、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ¥ゆら/れ/ける/は、¥かみなみやま/の¥もみぢば/の¥みね/の¥あらし/に¥さそは/れ/て、¥たつたがは/の¥あき/の¥くれ、¥ゐせき/に¥かかり/て、¥ながれ/も¥あへ/ぬ/に¥こと/なら/ず。¥その¥なか/に¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/たる¥むしや¥さん−にん、¥あじろ/に¥ながれ−かかり/て、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ¥ゆら/れ/ける/を、¥いづの−かみ¥み¥たまひ/て、¥かく/ぞ¥えいじ¥たまひ/ける。¥
いせ−むしや/は¥みな¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て¥うぢ/の¥あじろ/に¥かかり/ぬる/かな W024¥
これ=ら/は¥みな¥いせの−くに/の¥ぢうにん/なり。¥くろだの−ごへい−しらう、¥ひのの−じふらふ、¥おとべの−やしち/と¥いふ¥もの/なり。¥なか/に/も¥ひのの−じふらう/は¥ふる−つはもの/にて¥あり/けれ/ば、¥ゆみ/の¥はず、¥いは/の¥はざま/に¥ねぢ−たて/て、¥かき−あがり、¥ににん/の¥もの=ども/を¥ひき−あげ/て、¥たすけ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P280¥おほぜい¥みな¥わたつ/て、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥うち/へ、¥せめ−いり−せめ−いり¥たたかひ/けり。¥この¥まぎれ/に¥みや/を/ば¥なんと/へ¥さきだた/せ¥まゐらせ、¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥みゐでら/の¥だいしゆ、¥のこり−とどまつ/て¥ふせぎ−や¥い/けり。¥げん−ざんみ−にふだう/は、¥しちじふ/に¥あまつ/て¥いくさ−し/て、¥ゆんで/の¥ひざぐち/を¥い/させ、¥いたで/なれ/ば、¥こころ−しづか/に¥じがい−せ/ん/とて、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥うち/へ¥ひき−しりぞく¥ところ/に、¥かたき¥おそひ−かかれ/ば、¥じなん¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな/は、¥こんぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に¥からあや−をどし/の−よろひ¥き/て、¥しら−つきげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て¥のり¥たまひ/たり/ける/が、¥ちち/を¥のばさ/ん/が¥ため/に、¥かへし−あはせ−かへし−あはせ¥ふせぎ−たたかふ。¥かずさの−たらう−はうぐわん/が¥い/ける¥や/に、¥げん−だいふ/の−はうぐわん、¥うち−かぶと/を¥い/させ/て¥ひるむ¥ところ/に、¥かづさの−かみ/が¥わらは、¥じらうまる/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥もよぎ−にほひ/の−よろひ¥き、¥さんまい−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥うちもの/の¥さや/を¥はづい/て、¥げん−だいふ/の−はうぐわん/に¥おしーならべ/て、¥むず/と¥くん/で¥どうど¥おつ。¥げん−だいふ/の−はうぐわん/は、¥だい−ぢから/にて¥おはし/けれ/ば、¥じらうまる/を¥とつ/て¥おさへ/て¥くび/を¥かき、¥たち−あがら/ん/と¥する¥ところ/に¥へいけ/の¥つはもの=ども、¥じふしごき¥おち−かさなつ/て、¥つひに¥かねつな/を¥うち/てげり。¥いづの−かみ−なかつな/も¥さんざん/に¥たたかひ、¥いたで¥あまた¥おう/て、¥びやうどうゐん/の¥つり=どの/にて¥じがい−し/てげり。¥その¥くび/を/ば¥しもかうべの−とうざぶらう−きよちか¥とつ/て、¥おほ−ゆか/の¥した/へ/ぞ¥なげ−いれ/たる。¥ろくでうの−くらんど−なかいへ、¥その¥こ¥くらんど−たらう−なかみつ/も、¥さんざん/に¥たたかひ、¥いつしよ/で¥うちじに−し/てげり。¥この¥なかいへ/と¥まうす/は、¥こ=たてはき−せんじやう−よしかた/が¥ちやくし/なり。¥しかる/を¥ちち¥うた/れ/て¥のち、¥みなしご/にて¥あり/し/を、¥さんみ−にふだう¥やうじ/に/して、¥ふびん/に¥し¥たまひ/しか/ば、¥ひごろ/の¥けいやく/を¥たがへ/じ/と/や、P281¥いつしよ/で¥しに/に/ける/こそ¥むざん/なれ。¥さんみ−にふだう、¥わたなべの−ちやうじつ−となふ/を¥めし/て、「¥わが¥くび¥うて」/と¥のたまへ/ば、¥しう/の¥いけくび¥うた/んずる¥こと/の¥かなし−さ/に、「¥つかまつ/と/も¥ぞんじ¥さふらは/ず。¥おん=じがい¥さふらは/ば、¥その−のち/こそ¥たまはり¥さふらは/め」/と¥まうし/けれ/ば、¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥にし/に¥むかひ¥て/を¥あはせ、¥かうじやう/に¥じふねん¥となへ¥たまひ/て、¥さいご/の¥ことば/ぞ¥あはれ/なる。¥
うもれぎ/の¥はな¥さく¥こと/も¥なかり/し/に¥み/の¥なる¥はて/ぞ¥かなしかり/ける W025¥
これ/を¥さいご/の¥ことば/にて、¥たち/の¥さき/を¥はら/に¥つき−たて、¥うつぶさま/に¥つらぬかつ/て/ぞ¥うせ/られ/ける。¥その−とき/に¥うた¥よむ/べう/は¥なかり/しか/ども、¥わかう/より¥あながち/に¥すい/たる¥みち/なれ/ば、¥さいご/の¥とき/も¥わすれ¥たまは/ず。¥その¥くび/を/ば¥ちやうじつ−となふ/が¥とつ/て、¥いし/に¥くくり−あはせ、¥うぢがは/の¥ふかき¥ところ/に¥しづめ/てげり。¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、¥いか/に/も−し/て¥きほふ−たきぐち/を/ば¥いけどり/に¥せ/ばや/と¥うかがひ/けれ/ども、¥きほふ/も¥さき/に¥こころ−え/て¥さんざん/に¥たたかひ、¥いたで¥あまた¥おひ、¥はら¥かき−きつ/て¥しに/に/ける。¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく/は、¥いま/は¥みや/も¥はるか/に¥のび/させ¥たまひ/ぬ/らん/と/や¥おもひ/けん、¥おほ−だち¥おほ−なぎなた¥さう/に¥もつ/て、¥かたき/の¥なか/を¥わつ/て¥いで、¥うぢがは/へ¥とん/で¥いり、¥もののぐ¥ひとつ/も¥すて/ず、¥みづ/の¥そこ/を¥くぐつ/て、¥むかひ/の¥きし/に/ぞ¥つき/に/ける。¥たかき¥ところ/に¥はしり−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いか/に¥へいけ/の¥きんだち、¥これ/まで/は¥おん=だいじ/か、¥よう」/と¥いひ−すて/て、¥みゐでら/へ/こそ¥かへり/けれ。P282¥ひだの−かみ−かげいへ/は、¥ふる−つはもの/にて¥あり/けれ/ば、¥この¥まぎれ/に¥みや/は¥さだめて¥なんと/へ/や¥おち/させ¥たまふ/らん/とて、¥ひた−かぶと¥しごひやく−き、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おつ−かけ¥たてまつる。¥あん/の/ごとく¥みや/は¥さんじつき/ばかり/で¥おち/させ¥たまふ¥ところ/を、¥くわうみやうせん/の¥とりゐ/の¥まへ/にて¥おつ−つき¥たてまつり¥あめ/の¥ふる¥やう/に¥い¥たてまつり/けれ/ば、¥いづれ/が¥や/と/は¥しら/ね/ども、¥や¥ひとつ¥きたつ/て、¥みや/の¥ひだり/の¥おん=そばはら/に¥たち/けれ/ば、¥お=むま/より¥おち/させ¥たまひ/て、¥おん=くび¥とら/れ/させ¥たまひ/けり。¥おん=とも¥まうし/たる¥おにさど、¥あらとさ、¥くわうだいぶ、¥ぎやうぶ−しゆんしう/も、¥いのち/を/ば¥いつ/の¥ため/に/か¥をしむ/べき/とて、¥さんざん/に¥たたかひ、¥いつしよ/で¥うちじにーし/てげり。¥そのなか/に¥めのとご/の¥ろくでうの−すけ/の−たいふ−むねのぶ/は、¥にひの/が−いけ/へ¥とん/で¥いり、¥うきぐさ¥かほ/に¥とり−おほひ、¥ふるひ−ゐ/たれ/ば、¥かたき/は¥まへ/を/ぞ¥うち−とほり/ぬ。¥やや¥あつ/て¥かたき¥しごひやく−き、¥ざざめい/て¥かへり/ける¥なか/に、¥じやうえ¥き/たる¥しにん/の¥くび/も¥なき/を、¥しとみ/の¥もと/より¥かき−いだい/たる/を¥みれ/ば、¥みや/にて/ぞ¥おはしまし/ける。「¥われ¥しな/ば¥ご=くわん/に¥いれよ」/と¥おほせ/られ/し¥こえだ/と¥きこえ/し¥おん=ふえ/を/も、¥いまだ¥おん=こし/に/ぞ¥ささ/せ¥ましまし/ける。¥はしり−いで/て、¥とり−つき¥たてまつら/ばや/と¥おもへ/ども、¥おそろしけれ/ば¥それ/も¥かなは/ず。¥かたき¥みな¥とほつ/て¥のち、¥いけ/より¥あがり、¥ぬれ/たる¥もの=ども¥しぼり−き/て、¥なくなく¥みやこ/へ¥のぼつ/たり/ける/を、¥にくま/ぬ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥さる−ほど/に¥なんと/の¥だいしゆ¥しちせん−よ−にん、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥みや/の¥おん=むかひ/に¥まゐり/ける/が、¥せんぢん/は¥こづ/に¥すすみ、¥ごぢん/は¥いまだ¥こうぶくじ/の¥なんだいもん/に/ぞ¥ゆらへ/たる。¥みや/は¥はや¥くわうみやうせん/のP283¥とりゐ/の¥まへ/にて、¥うた/れ/させ¥たまひ/ぬ/と¥きこえ/しか/ば、¥だいしゆ¥ちから¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥とどまり/ぬ。¥いま¥ごじつちやう/ばかり¥まち−つけ/させ¥たまは/で、¥うた/れ/させ¥たまひ/ける、¥みや/の¥ご=うん/の¥ほど/こそ¥うたてけれ。¥
「わかみやごしゆつけ」(『わかみやしゆつけ』)S0413¥へいけ/の¥ひとびと、¥みや¥ならび/に¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥みゐでら/の¥だいしゆ、¥つがふ¥ごひやく−よ−にん/が¥くび¥きつ/て、¥たち¥なぎなた/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥ゆふべ/に¥およん/で¥ろくはら/へ¥かへり−いら/る。¥つはもの=ども¥いさみ−ののしる¥こと¥おびたたし。¥なか/に/も¥さんみ−にふだう/の¥くび/を/ば、¥ちやうじつ−となふ/が¥うぢがは/の¥ふかき¥ところ/に¥しづめ/てげれ/ば、¥みえ/ざり/けり。¥こ=ども/の¥くび/を/ば、¥あそこ−ここ/より¥みな¥たづね−いださ/れ/たり。¥なか/に/も¥みや/の¥おん=くび/を/ば、¥つね/に¥まゐり−かよふ¥ひと/も¥なかり/しか/ば、¥たれ¥み−しり¥まゐらせ/たる¥ひと/も¥なし。¥てんやく/の−かみ−さだなり/こそ、¥せんねん¥ご=れうぢ/の¥ため/に¥めさ/れ/しか/ば、¥それ/ぞ¥み−しり¥まゐらせ/たる/に/こそ/とて¥めさ/れ/けれ/ども、¥げんしよらう/とて¥まゐら/ず。¥また¥ろくはら/より、¥つね/は¥みや/の¥めさ/れ¥まゐらせ/ける¥にようばう/とて、¥たづね−いださ/れ/たり。¥おん=こ¥あまた¥うみ¥まゐらせ/など/して、¥さ/しも¥おん=ちぎり¥あさから/ざり/しか/ば、¥なじかは¥み−そんじ¥たてまつる/べき。¥ただ¥ひとめ¥み¥まゐらせ/て、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て¥なみだ/をP284¥ながし/ける/に/ぞ、¥やがて¥みや/の¥おん=くび/と/は¥しつ/てげる。¥この¥みや/は、¥はらばら/に¥おん=こ/の¥みや=たち、¥あまた¥おはしまし/けり。¥はちでうの−にようゐん/に¥さぶらは/れ/ける¥いよの−かみ−もりのり/が¥むすめ、¥さんみ/の−つぼね/と¥まうし/ける¥にようばう/の¥はら/に、¥しちさい/の¥わかみや、¥ごさい/の¥ひめみや¥おはしまし/けり。¥にふだう−しやうこく/の¥おとと、¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/を¥もつて、¥はちでうの−にようゐん/へ¥まうさ/れ/ける/は、「¥ひめみや/の¥おん=こと/は¥まうす/に¥およば/ず。¥わかみや/を/ば、¥とう¥いだし¥まゐら/させ¥たまへ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようゐん/の¥おん=ぺんじ/に、「¥かかる¥きこえ/の¥あり/し¥あかつき、¥おち/の¥ひと/なんど/が¥こころ−をさなう¥ぐし¥たてまつ/て¥うせ/に/ける/に/や、¥まつたく¥この¥ごしよ/に/は¥わたら/せ¥たまは/ず」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥よりもりの−きやう¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし¥かく/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥なんでふ¥その¥ごしよ/なら/で/は、¥いづく/へ/か¥わたら/せ¥たまふ/べかん/なる/ぞ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥ぶし=ども¥まゐり/て¥さがし¥たてまつれ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥この¥ちうなごん/は、¥にようゐん/の¥おん=めのと、¥さいしやう=どの/と¥まうす¥にようばう/に¥あひ−ぐし/て、¥つね/は¥まゐり−かよは/れ/けれ/ば、¥ひごろ/は¥なつかしう/こそ¥おぼしめし/つる/に、¥この¥みや/の¥おん=こと¥まうし/に¥まゐら/れ/たれ/ば、¥いつしか¥うとましう/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。¥わかみや、¥にようゐん/に¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥これ−ほど/の¥おん=だいじ/に¥および¥さふらふ¥うへ、¥つひに/は¥のがれ¥さふらふ/まじ。¥はやはや¥いださ/せ¥おはしませ」/と¥まうさ/せ¥たまひ/けれ/ば、¥にようゐん¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまひ/て、「¥ひと/の¥ななつ¥やつ/は、¥いまだ¥なにごと/を/も¥きき−わか/ぬ/ほど/ぞ/かし。¥それ/に¥おん=み¥ゆゑ、¥かかる¥だいじ/の¥いで−き/たる/を、¥かたはらいたく¥おぼし/て、¥かやう/に¥おほせ/らるる¥こと/よ。¥よし−なかり/ける¥ひと/を、P285¥この¥ろくしちねん¥て−ならし/て、¥けふ/は¥かかる¥うき−め/を¥みるよ」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥よりもりの−きやう、¥わかみや/の¥おん=こと¥かさね/て¥まうし/に¥まゐら/れ/たれ/ば、¥にようゐん¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず、¥つひに¥いだし¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥おん=はは¥さんみ/の−つぼね、¥いま/を¥かぎり/の¥おん=わかれ/なれ/ば、¥さ/こそ/は¥おん=なごり−をしう/も¥おぼしめさ/れ/けめ。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥なくなく¥ぎよ=い¥き/せ¥まゐらせ、¥おん=ぐし¥かき−なで/て、¥いだし¥まゐら/させ¥たまふ/も、¥ただ¥ゆめ/と/のみ/ぞ¥おもは/れ/ける。¥にようゐん/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥つぼね/の¥にようばう、¥め/の−わらは/に¥いたる/まで、¥なみだ/を¥ながし¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥よりもりの−きやう、¥わかみや¥うけ−とり¥まゐらせ、¥おん=くるま/に¥のせ¥たてまつり/て、¥ろくはら/へ¥わたし¥たてまつる。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥この¥みや/を¥み¥まゐらせ/て、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、「¥ぜんせ/の¥こと/に/や¥さふらふ/らん、¥わかみや/を¥ただ¥ひとめ¥み¥まゐらせ/て¥さふらへ/ば、¥あまり/に¥おん=いたはしう¥おもひ¥まゐらせ¥さふらふ。¥なに/か¥くるしう¥さふらふ/べき、¥この¥みや/の¥おん=いのち/を/ば、¥まげ/て¥むねもり/に¥たび¥さふらへ/かし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう¥いかが¥おもは/れ/けん、「¥さら/ば¥とう¥ご=しゆつけ/を¥せ/させ¥たてまつれ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥むねもりの−きやう¥はちでうの−にようゐん/へ、¥この¥よし¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようゐん、「¥なん/の¥やう/も¥ある/べから/ず、¥ただ¥とうとう」/とて、¥ご=しゆつけーせ/させ¥たてまつら/る。¥しやくし/に¥さだまら/せ¥たまひ/しか/ば、¥ほふし/に¥なし¥まゐらせ/て、¥にんなじ/の−お=むろ/の¥おん=でし/に¥なし¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥のち/に/は¥とうじ/の¥いち/の−ちやうじや、¥やすゐのみや/の−だいそうじやう−だうそん/と¥まうし/し/は、¥この¥みや/の¥おん=こと/なり。P286¥
(『とうぜうのさた』)S0414¥なら/に/も¥また¥ご=いつしよ¥おはし/ける/を、¥おん=めのと¥さぬきの−かみ−しげひで/が¥ご=しゆつけ−せ/させ¥たてまつり、¥ぐし¥たてまつり/て、¥ほくこく/へ¥おち−くだり/たり/し/を、¥きそ−よしなか¥しやうらく/の¥とき、¥しう/に¥し¥まゐらせ/ん/とて、¥げんぞく−せ/させ¥たてまつり、¥ぐそく−し¥たてまつり/て、¥みやこ/へ¥のぼり/たり/けれ/ば、¥きそがみや/と/も¥まうし、¥また¥げんぞく/の−みや/と/も¥まうす。¥のち/には¥さが/の¥へん、¥のより/に¥ましまし/けれ/ば、¥のよりのみや/と/も¥まうし/き。¥むかし¥とうじよう/と¥いつ/し¥さうにん¥あり。¥うぢ=どの、¥にでう=どの/を/ば、¥きみ¥さんだい/の¥くわんばく、¥とも/に¥おん=とし¥はちじふ/と¥まうし/たり/し/も¥たがは/ず、¥そつ/の−うち/の−おとど/を¥るざい/の¥さう¥まします/と¥まうし/たり/し/も¥たがは/ず。¥また¥しやうとくたいし/の、¥しゆじゆん−てんわう/を¥わうし/の¥さう¥まします/と¥まうさ/せ¥たまひ/たり/し/が、¥むまこの−だいじん/に¥ころさ/れ/させ¥たまひ/ぬ。¥かならず¥さうにん/と/しも¥あら/ね/ども、¥しやうこ/に/は¥かく/こそ¥めでたかり/しか。¥これ/は¥いつかう¥さうせうなごん/が¥ふかく/に/は¥あら/ず/や/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥なか−ごろ¥げんめい−しんわう、¥ぐへい−しんわう/と¥まうし/し/は、¥ぜん−ちうしよわう、¥ご−ちうしよわう/とて、¥とも/に¥けんわう−せいしゆ/の¥わうじ/にて¥わたら/せ¥たまひ/しか/ども、¥つひに¥くらゐ/に/は¥つか/せ¥たまは/ず。¥され/ども¥いつか/は¥ご=むほん¥おこさ/せ¥たまひ/たり/き。¥また¥ごさんでうのゐん¥だいさん/の¥わうじ、¥すけひとの−しんわう/と¥まうし/し/は、¥おん=さいかく¥すぐれ/て¥おはしまし/けれ/ば、¥しらかはのゐん¥いまだ¥とうぐう/の¥おん=とき、¥おん=くらゐ/の¥のち/は、¥この¥みや/を¥くらゐ/に¥つけ¥まゐら/させ¥たまへ/と、¥ごさんでうのゐん、¥ご=ゆゐぜう¥あり/しか/ども、¥しらかはのゐん¥いかが¥おぼしめさ/れ/けん、¥つひに¥くらゐ/に/は¥つけ¥まゐら/させ¥たまは/ず。¥せめて/の¥おん=こと/に/や、P287¥すけひとの−しんわう/の¥おん=こ/の¥みや/に、¥げんじ/の¥しやう/を¥さづけ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥むゐ/より¥いちど/に¥さんみ/に¥じよし/て、¥やがて¥ちうじやう/に¥なし¥まゐらせ/て、¥さんみ/の−ちうじやう/と/ぞ¥まうし/ける。¥いつせ/の¥げんじ、¥むゐ/より¥さんみ−する¥こと/は、¥さがの−くわうてい/の¥おん=こ、¥やうぜいゐん/の−だいなごん−さだむの−きやう/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥はなぞのの−さだいじん−ありひと=こう/の¥おん=こと/なり。¥され/ば¥こんど/の¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/に¥よつ/て、¥てうぶく/の¥ほふ¥うけたまはつ/て¥おこなは/れ/ける¥かうそう=たち/に、¥けんじやう=ども¥おこなは/る。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥しそく、¥じじう−きよむね¥さんみ/に¥じよし/て、¥さんみ/の−じじう/と/ぞ¥まうし/ける。¥こんねん¥じふにさい、¥ちち/の¥きやう/は¥この¥よはひ/で/は、¥わづか¥ひやうゑ/の−すけ/まで/こそ¥いたら/れ/しか。¥たちまち/に¥かんだちめ/に¥あがり¥たまふ¥こと、¥いち/の−ひと/の¥きんだち/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥さる−ほど/に¥みなもとの−もちひと¥ならびに¥さんみ−にふだう−よりまさ−ふし、¥つゐたう/の¥しやう/と/ぞ¥ききがき/に/は¥あり/ける。¥まさしい¥だ[い]じやう−ほふわう/の¥わうじ/を、¥い¥たてまつる/だに¥ある/に、¥あまつさへ¥ぼんにん/に¥なし¥たてまつる/ぞ¥あさましき。¥みなもとの−もちひと/と/は、¥この¥たかくらのみや/の¥おん=こと/なり。¥
「ぬえ」(『ぬえ』)S0415¥そもそも¥この¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/は、¥つの−かみ−らいくわう/に¥ごだい、¥みかはの−かみ−よりつな/が¥まご、¥ひやうごの−かみ−なかまさ/がP288¥こ/なり/けり。¥ほうげん/の−かつせん/の¥とき/も、¥み=かた/にて¥さき/を¥かけ/たり/しか/ども、¥させる¥しやう/に/も¥あづから/ず。¥また¥へいぢ/の−げきらん/に/も、¥すでに¥しんるゐ/を¥すて/て¥さんじ/たり/しか/ども、¥おんしやう¥これ¥おろそか/なり/き。¥たいだい−しゆご/にて、¥とし¥ひさしう¥あり/しか/ども、¥しようでん/を/ば¥ゆるさ/れ/ず。¥とし¥たけ¥よはひ¥かたぶい/て¥のち、¥じゆつくわい/の¥わか¥いつしゆ¥よみ/て/こそ、¥しようでん/を/ば¥し/たり/けれ。¥
ひと¥しれ/ぬ¥おほうちやま/の¥やまもり/は¥こ−がくれ/て/のみ¥つき/を¥みる/かな W026¥
これ/に¥よつ/て¥しようでん¥ゆるさ/れ、¥じやう−げ/の−しゐ/にて¥しばらく¥あり/し/が、¥なほ¥さんみ/を¥こころ/に¥かけ/つつ、¥
のぼる/べき¥たより−なき¥み/は¥こ/の−もと/に¥しゐ/を¥ひろひ/て¥よ/を¥わたる/かな W027¥
さて/こそ¥さんみ/は¥し/たり/けれ。¥やがて¥しゆつけ−し/て、¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/とて、¥こんねん/は¥しちじふご/に/ぞ¥なら/れ/ける。¥この¥ひと¥いちご/の¥かうみやう/と¥おぼしき¥こと/は¥おほき/が¥なか/に/も、¥こと/に/は¥にんぺい/の¥ころほひ、¥こんゑのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥しゆしやう¥よなよな¥おびえ/させ¥たまふ¥こと¥あり/けり。¥うげん/の¥かうそう¥きそう/に¥おほせ/て、¥だいほふ−ひほふ/を¥しゆせ/られ/けれ/ども¥その¥しるし¥なし。¥ご=なう/は¥うし/の−こく/ばかり/の¥こと/なる/に、¥とうさんでう/の−もり/の¥かた/より、¥くろくも¥ひとむら¥たち−きたつ/て、¥ご=てん/の¥うへ/に¥おほへ/ば、¥かならず¥おびえ/させ¥たまひ/けり。¥これ/に¥よつ/て¥くぎやう−せんぎ¥あり/けり。¥さんぬる¥くわんぢ/の¥ころほひ、¥ほりかはのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥しゆしやう¥しか/の/ごとく¥おびえ¥たまぎら/せ¥たまひ/けり。¥その−とき/のP289¥しやうぐん−よしいへの−あそん、¥なんでん/の¥おほ−ゆか/に¥さふらは/れ/ける/が、¥ご=なう/の¥こくげん/に¥およん/で、¥めいげん−する¥こと¥さんど/の¥のち、¥かうじやう/に¥さきの−みちの−くにの−かみ−みなもとの−よしいへ/と¥なのり/たり/けれ/ば、¥きく¥ひと¥み/の−け¥よだつ/て、¥ご=なう¥かならず¥おこたら/せ¥たまひ/けり。¥しかれ/ば−すなはち¥せんれい/に¥まかせ/て、¥ぶし/に¥おほせ/て¥けいご¥ある/べし/とて、¥げんぺい−りやうか/の¥つはもの/の¥なか/を¥えらま/せ/られ/ける/に、¥この¥よりまさ/を/ぞ¥えらび−いださ/れ/たり/ける。¥その−とき/は¥いまだ¥ひやうごの−かみ/にて¥さふらは/れ/ける/が、¥まうさ/れ/ける/は、「¥むかし/より¥てうか/に¥ぶし/を¥おか/るる¥こと/は、¥ぎやくほん/の¥もの/を¥しりぞけ、¥ゐちよく/の¥ともがら/を¥ほろぼさ/ん/が¥ため/なり。¥め/に/も¥みえ/ぬ¥へんげ/の−もの¥つかまつれ/と¥おほせ−くださ/るる¥こと、¥いまだ¥うけたまはり¥およば/ず」/と¥まうし/ながら、¥ちよくせん/なれ/ば、¥めし/に¥おうじ/て¥さんだい−す。¥よりまさ¥たのみ−きつ/たる¥らうどう、¥とほたふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ゐの−はやた/に、¥ほろ/の¥かざぎり¥はい/だり/ける¥や¥おは/せ/て、¥ただ¥いち−にん/ぞ¥ぐし/たり/ける。¥わが−み/は¥ふたへ/の¥かりぎぬ/に、¥やまどり/の¥を/を¥もつて¥はい/だり/ける¥とがりや¥ふたすぢ、¥しげどう/の−ゆみ/に¥とり−そへ/て、¥なんでん/の¥おほ−ゆか/に¥しこう−す。¥よりまさ¥や¥ふたつ¥た−ばさみ/ける¥こと/は、¥がらいの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥させうべん/にて¥おはし/ける/が、¥へんげ/の−もの¥つかまつら/んずる¥じん/は、¥よりまさ/ぞ¥さふらふ/らん/と¥えらび¥まうさ/れ/たる¥あひだ、¥いち/の−や/にて¥へんげ/の−もの¥い−そんずる/ほど/なら/ば、¥に/の−や/に/は、¥がらいの−べん/の¥しや¥くび/の¥ほね/を¥い/ん/と¥なり。¥あん/の/ごとく¥ひごろ¥ひと/の¥まうす/に¥たがは/ず、¥ご=なう/の¥こくげん/に¥およん/で、¥とうさんでう/の−もり/の¥かた/より、¥くろくも¥ひとむら¥たち−きたつ/て、¥ご=てん/の¥うへ/に¥たなびい/たり。¥よりまさ¥きつと¥み−あげ/たれ/ば、P290¥くも/の¥なか/に¥あやしき¥もの/の¥すがた¥あり。¥い−そんずる/ほど/なら/ば、¥よ/に¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥さり/ながら¥や¥とつ/て¥つがひ、¥なむ−はちまん−だい−ぼさつ/と¥こころ/の¥うち/に¥きねん−し/て、¥よつ−ぴい/て、¥ひようど¥はなつ。¥てごたへ−し/て¥はた/と¥あたる。「¥え/たり/や、¥おう」/と、¥やさけび/を/こそ¥し/てんげれ。¥ゐの−はやた¥つと¥より、¥おつる¥ところ/を¥とつ/て¥おさへ、¥つか/も¥こぶし/も¥とほれ−とほれ/と、¥つづけさま/に¥ここの−かたな/ぞ¥さい/たり/ける。¥その−とき¥じやうげ¥てんで/に¥ひ/を¥とぼし/て、¥これ/を¥ごらんじ−み¥たまふ/に、¥かしら/は¥さる、¥むくろ/は¥たぬき、¥を/は¥くちなば、¥てあし/は¥とら/の/ごとく/にて、¥なく¥こゑ¥ぬえ/に/ぞ¥に/たり/ける。¥おそろし/など/も¥おろか/なり。¥しゆしやう¥ぎよ=かん/の¥あまり/に¥ししわう/と¥まうす¥ぎよ=けん/を¥くださ/る。¥うぢの−さだいじん=どの¥これ/を¥たまはり−つい/で、¥よりまさ/に¥たば/ん/とて、¥ごぜん/の¥きざはし/を¥なから/ばかり¥おり/させ¥たまふ¥をりふし、¥ころ/は¥うづき−とをか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥くもゐ/に¥くわつこう¥ふたこゑ¥みこゑ¥おとづれ/て¥とほり/けれ/ば、¥さだいじん=どの、¥
ほととぎす¥な/を/も¥くもゐ/に¥あぐる/かな
/と¥おほせ/られ−かけ/たり/けれ/ば、¥よりまさ¥みぎ/の¥ひざ/を¥つき、¥ひだり/の¥そで/を¥ひろげ/て、¥つき/を¥すこし¥そばめ/に¥かけ/つつ、¥
ゆみはりつき/の¥いる/に¥まかせ/て W028
/と¥つかまつり、¥ぎよ=けん/を¥たまはり/て¥まかり−いづ。¥この¥よりまさの−きやう/は¥ぶげい/に/も¥かぎら/ず、¥かだう/に/も¥また¥すぐれ/たり/と/ぞ、¥とき/の−ひとびと¥かんじ−あは/れ/ける。¥さて¥かの¥へんげ/の−もの/を/ば、¥うつほ−ぶね/にP291¥いれ/て¥ながさ/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥また¥おうほう/の¥ころほひ、¥にでうのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥ぬえ/と¥いふ¥けてう、¥きんちう/に¥ない/て、¥しばしば¥しんきん/を¥なやまし¥たてまつる¥こと¥あり/けり。¥しかれ/ば¥せんれい/に¥まかせ/て、¥よりまさ/を/ぞ¥めさ/れ/ける。¥ころ/は¥さつき−はつか−あまり、¥まだ¥よひ/の¥こと/なる/に、¥ぬえ¥ただ¥ひとこゑ¥おとづれ/て、¥ふたこゑ/と/も¥なか/ざり/けり。¥めざす/とも¥しら/ぬ¥やみ/で/は¥あり、¥すがた¥かたち/も¥みえ/ざり/けれ/ば、¥やつぼ/を¥いづく/と/も¥さだめ−がたし。¥よりまさ/が¥はかりごと/に、¥まづ¥おほかぶら¥とつ/て¥つがひ、¥ぬえ/の¥こゑ−し/たり/ける¥だいり/の¥うへ/へ/ぞ¥い−あげ/たる。¥ぬえ、¥かぶら/の¥おと/に¥おどろい/て、¥こくう/に¥しばし/ぞ¥ひひめい/たる。¥つぎ/に¥こかぶら¥とつ/て¥つがひ、¥ひいふつと¥い−きつ/て、¥ぬえ/と¥ならべ/て¥まへ/に/ぞ¥おとし/たる。¥きんちう¥ざざめき−わたつ/て、¥よりまさ/に¥ぎよ=い/を¥かづけ/させ¥おはします。¥こんど/は¥おほひのみかど/の−うだいじん−きんよし=こう/の¥たまはり−つい/で、¥よりまさ/に¥かづけ/させ¥たまふ/とて、「¥むかし/の¥やういう/は、¥くも/の¥ほか/の¥かり/を¥い/き。¥いま/の¥よりまさ/は、¥あめ/の¥うち/の¥ぬえ/を¥い/たり」/と/ぞ¥かんぜ/られ/ける。¥
さつきやみ¥な/を¥あらはせ/る¥こよひ/かな
/と¥おほせ/られ−かけ/たり/けれ/ば、¥よりまさ、¥
たそかれどき/も¥すぎ/ぬ/と¥おもふ/に W029
/と¥つかまつり、¥ぎよ=い/を¥かた/に¥かけ/て¥まかり−いづ。¥その−のち¥いづの−くに¥たまはり、¥しそく¥なかつな¥じゆりやう/に¥なし、¥わが−み¥さんみ−し/て、¥たんば/の¥ごか/の−しやう、¥わかさ/の¥とうみやがは/を¥ちぎやう−し/て、¥さて¥おはす/べかり/しP292¥ひと/の、¥よし−なき¥むほん¥おこい/て、¥みや/を/も¥うしなひ¥まゐらせ、¥わが−み/も¥しそん/も¥ほろび/ぬる/こそ¥うたてけれ。¥
「みゐでらえんしやう」(『みゐでらえんしやう』)S0416¥ひごろ/は¥さんもん/の¥だいしゆ/こそ、¥はつかう/の¥みだりがはしき¥うつたへ¥つかまつる/に、¥こんど/は¥いかが¥おもひ/けん、¥をんびん/を¥ぞんじ/て¥おと/も¥せ/ず。¥しかる/を¥なんと¥みゐでら¥どうじん−し/て、¥あるひは¥みや¥うけ−とり¥まゐらせ、¥あるひは¥おん=むかひ/に¥まゐる¥でう、¥これ¥もつて¥てうてき/なり。¥しから/ば¥なら/を/も、¥てら/を/も¥せめ/らる/べし/と¥きこえ/し/が、¥まづ¥みゐでら/を¥せめ/らる/べし/とて、¥おなじき−ごぐわつ−にじふしちにち、¥たいしやうぐん/に/は¥さひやうゑ/の−かみ−とももり、¥ふくしやうぐん/に/は¥さつまの−かみ−ただのり、¥つがふ¥その¥せい¥いちまん−よ−き、¥をんじやうじ/へ¥はつかう−す。¥てら/に/も¥だいしゆ¥いつせん−にん、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥かいだて¥かき、¥さかもぎ¥ひい/て、¥まち−かけ/たり。¥う/の−こく/より¥や−あはせ−し/て、¥いちにち¥たたかひ−くらし、¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥だいしゆ¥いげ¥ほふし=ばら/に¥いたる/まで、¥さんびやく−よ−にん¥うた/れ/ぬ。¥よいくさ/に¥なつ/て、¥くら−さ/は¥くらし、¥くわんぐん¥じちう/に¥せめ−いり/て、¥ひ/を¥はなつ。¥やくる¥ところ、¥ほんがくゐん、¥じやうきゐん、¥しんによゐん、¥けをんゐん、¥だいほうゐん、¥しやうりうゐん、¥ふげんだう、¥けうだい−くわしやう/の¥ほんばう、¥ならびに¥ほんぞうとう、¥はちけん−しめん/の¥だい−かうだう、¥しゆろう、¥きやうざう、¥くわんぢやうだう、¥ごほふぜんじん/の¥しやだん、¥いまぐまの/の¥ご=ほうでん、¥すべてP293¥だうじや¥たふべう¥ろくぴやくさんじふしちう、¥おほつ/の−ざいけ¥いつせんはつぴやくごじふさんう、¥ならびに¥ちしよう/の¥わたし¥たまへ/る¥いつさいきやう¥しちせん−よ−くわん、¥ぶつざう¥にせん−よ−たい、¥たちまち/に¥けぶり/と¥なる/こそ¥かなしけれ。¥しよてん−ごめう/の¥たのしみ/も、¥この−とき¥ながく¥つき、¥りうじん−さんねつ/の¥くるしみ/も、¥いよいよ¥さかん/なる/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥
それ¥みゐでら/は、¥あふみ/の¥ぎだいりやう/が¥わたくし/の¥てら/たり/し/を、¥てんむ−てんわう/に¥よせ¥たてまつり/て、¥ご=ぐわん/と¥なす。¥ほんぶつ/も¥かの¥みかど/の¥ご=ほんぞん、¥しかる/を¥しやうじん/の¥みろく/と¥きこえ¥たまひ/し¥けうだい−くわしやう、¥ひやくろくじふねん¥おこなう/て、¥だいし/に¥ふぞく−し¥たまへ/り。¥としたてんじやう、¥まにほうでん/より¥あま−くだり、¥はるか/に¥りうげげしやう/の¥あかつき/を¥また/せ¥たまふ/と/こそ¥きき/つる/に、¥こ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や。¥だいし¥この¥ところ/を¥でんぽふ−くわんぢやう/の¥れいせき/と/して、¥ゐけすゐ/の¥みつ/を¥むすび¥たまひ/し¥ゆゑ/に/こそ、¥みゐでら/と/は¥なづけ/たれ。¥かかる¥めでたき¥せいぜき/なれ/ども、¥いま/は¥なに/なら/ず。¥けんみつ¥しゆゆに¥ほろび/て、¥がらん¥さらに¥あと/も¥なし。¥さんみつ−だうぢやう/も¥なけれ/ば、¥れい/の¥こゑ/も¥きこえ/ず。¥いちげ/の−はな/も¥なけれ/ば、¥あか/の¥おと/も¥せ/ざり/けり。¥しゆくらう−せきとく/の¥めいし/は、¥ぎやうがく/に¥おこたり、¥じゆほふ−さうじよう/の¥でし/は、¥また¥きやうげう/に¥わかれ/ん/だり。¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/は、¥てんわうじ/の−べつたう/を/も¥とどめ/られ/させ¥たまふ。¥その−ほか¥そうがう¥じふさん−にん、¥けつくわん−せ/られ/て、¥みな¥けんびゐし/に¥あづけ/らる。¥だうじゆ/は¥つつゐの−じやうめう−めいしう/に¥いたる/まで、¥さんじふ−よ−にん¥ながさ/れ/けり。「¥かかる¥てんが/の¥みだれ、¥こくど/の¥さわぎ、¥ただごと/と/も¥おぼえ/ず、¥へいけ/の¥よ/の¥すゑ/に¥なり/ぬる¥ぜんべう/やらん」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。P294¥

 

入力者:荒山慶一



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