平家物語 巻第六  総かな版(元和九年本)
「しんゐんほうぎよ」(『しんいんほうぎよ』)S0601¥ぢしよう−ごねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥だいり/に/は、¥とうごく/の¥ひやうがく、¥なんと/の¥くわさい/に¥よつ/て、¥てうはい¥とどめ/られ/て、¥しゆしやう¥しゆつぎよ/も¥なし。¥もの/の¥ね/も¥ふき−ならさ/ず、¥ぶがく/も¥そうせ/ず、¥よしの/の¥くず/も¥まゐら/ず、¥とうじ/の¥くぎやう¥いち−にん/も¥さんぜ/られ/ず。¥これ/は¥うぢでら¥ぜうしつ/に¥よつ/て/なり。¥ふつかのひ¥てんじやう/の¥えんすゐ/も¥なく、¥なんによ¥うち−ひそめ/て、¥きんちう¥いまいましう/ぞ¥みえ/し。¥ならびに¥ぶつぽふ¥わうぼふ¥とも/に¥つき/ぬる¥こと/ぞ¥あさましき。¥ほふわう¥おほせ/なり/ける/は、「¥しだい/の¥ていわう、¥おもへ/ば¥こ/なり、¥まご/なり。¥いか/なれ/ば¥ばんき/の¥せいむ/を¥とどめ/られ/て、¥むなしう¥としつき/を¥おくる/らん」/と/ぞ¥おん=なげき¥あり/ける。¥おなじき−いつかのひ、¥なんと/の¥そうがう=ら¥けつくわん−ぜ/られ/て、¥くじやう/を¥ちやうじ−し、¥しよしよく/を¥もつしう−せ/らる。¥され/ば¥かた/の¥やう/にて/も、¥ご=さいゑ/は¥ある/べき/ものを/と、¥そうみやう/の¥さた¥あり/し/に、¥なんと/の¥そうがう=ら/は、¥みな¥けつくわん−ぜ/られ/ぬ。¥ほくきやう/の¥そうがう/を¥もつて¥おこなは/る/べき/か/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、P347¥され/ば/とて、¥いまさら¥なんと/を/も¥すて−はて/させ¥たまふ/べき/なら/ね/ば、¥さんろんじう/の¥がくしやう、¥じやうほふ−いかう/が¥しのび/つつ、¥くわんじゆじ/に¥かくれ−ゐ/たり/ける/を¥めし−いだい/て、¥ご=さいゑ¥かた/の/ごとく¥とげ−おこなは/る。¥しゆと/は¥みな、¥おい/たる/も、¥わかき/も、¥あるひは¥い−ころさ/れ¥あるひは¥きり−ころさ/れ/て、¥けぶり/の¥うち/を¥いで/ず、¥ほのほ/に¥むせん/で¥ほろび/に/しか/ば、¥わづか/に¥のこる¥ともがら/は、¥さんりん/に¥まじはつ/て、¥あと/を¥とどむる¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥なか/に/も¥こうぶくじ/の−べつたう¥けりんゐん/の−そうじやう−やうえん/は、¥ぶつざう−きやうくわん/の¥けぶり/と¥たち−のぼら/せ¥たまふ/を¥み¥まゐらせ、¥あな¥あさまし/とて、¥むね¥うち−さわが/れ/ける/より¥やまひ¥つい/て、¥つひに¥うせ¥たまひ/ぬ。¥この¥やうえん/は¥いう/に¥やさしき¥ひと/にて¥おはし/けり。¥ある−とき¥ほととぎす/の¥なく/を¥きい/て、¥
きく¥たび/に¥めづらしけれ/ば¥ほととぎす¥いつも¥はつね/の¥ここち/こそ¥すれ W041
/と¥いふ¥うた/を¥よう/で/こそ、¥はつね/の−そうじやう/と/は¥いは/れ¥たまひ/けれ。¥しやうくわう/は、¥をとどし¥ほふわう/の¥とば=どの/に¥おし−こめ/られ/て¥わたら/せ¥たまひ/し¥おん=こと、¥こぞ¥たかくらのみや/の¥うた/れ/させ¥たまひ/し¥おん=ありさま、¥さ/しも¥たやすから/ぬ¥てんが/の¥だいじ、¥みやこうつり/など¥まうす¥こと/に、¥ご=なう¥つか/せ¥たまひ/て、¥おん=わづらはしう¥きこえ/させ¥たまひ/し/が、¥いま¥また¥とうだいじ¥こうぶくじ/の¥ほろび/ぬる¥よし¥きこしめし/て、¥ご=なう¥いとど¥おもら/せ¥おはします。¥ほふわう¥なのめ/なら/ず¥おん=なげき¥あり/し/ほど/に、¥おなじき−じふしにち¥ろくはら¥いけ=どの/にて、¥しんゐん¥つひに¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥ぎよ=う¥じふにねん、¥とくせい¥せんばんたん、¥ししよ¥じんぎ/の¥すたれ/ぬる¥みち/を¥おこし、¥りせい−あんらく/の¥たえ/たるP348¥あと/を¥つぎ¥たまふ。¥さんみやう−ろくつう/の¥らかん/も¥まぬかれ¥たまは/ず、¥げんじゆつ¥へんげ/の¥ごんじや/も¥のがれ/ぬ¥みち/なれ/ば、¥うゐ−むじやう/の¥ならひ/と/は¥いひ/ながら、¥ことわり¥すぎ/て/ぞ¥おぼえ/ける。¥やがて¥その¥よ、¥ひがしやま/の¥ふもと、¥せいがんじ/へ¥うつし¥たてまつり、¥ゆふべ/の¥けぶり/に¥たぐへ/つつ、¥はる/の¥かすみ/と¥のぼら/せ¥たまひ/ぬ。¥ちようけん−ほふいん、¥ご=さうそう/に¥まゐり−あは/ん/とて、¥いそぎ¥やま/より¥くだら/れ/ける/が、¥はや¥みち/にて¥けぶり/と¥たち−のぼら/せ¥たまふ/を¥み¥まゐらせ/て、¥なくなく¥かう/ぞ¥えいじ¥たまひ/ける。¥
つね/に¥み/し¥きみ/が¥みゆき/を¥けふ¥とへ/ば¥かへら/ぬ¥たび/と¥きく/ぞ¥かなしき W042¥
また¥ある¥にようばう/の、¥みかど¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ/と¥うけたまはつ/て、¥なくなく¥おもひ−つづけ/けり。¥
くも/の¥うへ/に¥ゆく−すゑ¥とほく¥み/し¥つき/の¥ひかり¥きえ/ぬ/と¥きく/ぞ¥かなしき W043¥
おん=とし¥にじふいち、¥うち/に/は¥じつかい/を¥たもつ/て¥じひ/を¥さき/と¥し、¥ほか/に/は¥ごじやう/を¥みだら/せ¥たまは/ず、¥れいぎ/を¥ただしう¥せ/させ¥おはします。¥まつだい/の¥けんわう/にて¥おはし/けれ/ば、¥よ/の¥をしみ¥たてまつる¥こと、¥つきひ/の¥ひかり/を¥うしなへ/る/が/ごとし。¥かやう/に¥ひと/の¥ねがひ/も¥かなは/ず、¥たみ/の¥くわはう/も¥つたなき、¥ただ¥にんげん/の¥さかひ/こそ¥かなしけれ。¥
「こうえふ」(『こうやう』)S0602¥たかくらのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥ひと/の¥したがひ−つき¥たてまつる¥こと/は、¥おそらく/は¥えんぎ−てんりやく/の−みかど/とP349¥まうす/とも、¥これ/に/は¥いかで¥まさら/せ¥たまふ/べき/と/ぞ、¥ひと¥まうし/ける。¥おほかた/は¥けんわう/の¥な/を¥あげ、¥じんとく/の¥かう/を¥ほどこさ/せ¥おはします¥こと/も、¥きみ¥ご=せいじん/の¥のち、¥せいだく/を¥わかた/せ¥たまひ/て/の¥うへ/の¥おん=こと/で/こそ¥ある/に、¥むげ/に¥この¥きみ/は、¥いまだ¥えうしゆ/の¥おん=とき/より、¥せい/を¥にうわ/に¥うけ/させ¥おはします。¥さんぬる¥しようあん/の¥ころほひ/は、¥おん=とし¥じつさい/ばかり/に/も/や¥なら/せ¥おはしまし/けん、¥あまり/に¥こうえふ/を¥あいせ/させ¥たまひ/て、¥きた/の−ぢん/に¥こやま/を¥つか/せ、¥はじかへで/の、¥まことに¥いろ¥うつくしう¥もみぢ/たる/を¥うゑ/させ、¥もみぢ/の−やま/と¥なづけ/て、¥ひねもす/に¥えいらん¥ある/に、¥なほ¥あき−たら/せ¥たまは/ず。¥しかる/を¥ある¥よ¥のわき¥はしたなう¥ふい/て、¥こうえふ¥みな¥ふき−ちらし、¥らくえふ¥すこぶる¥らうぜき/なり。¥とのもり/の¥とも/の−みやづこ、¥あさぎよめ−す/とて、¥これ/を¥ことごとく¥はき−すて/てげり。¥のこれ/る¥えだ、¥ちれ/る¥こ/の−は/を/ば¥かき−あつめ/て、¥かぜ¥すさまじかり/ける¥あした/なれ/ば、¥ぬひどの/の−ぢん/にて、¥さけ¥あたため/て¥たべ/ける¥たきぎ/に/こそ¥し/てげれ。¥ぶぎやう/の−くらんど、¥ぎやうがう/より¥さき/に/と、¥いそぎ¥ゆい/て¥みる/に、¥あとかた¥なし。「¥いか/に」/と¥とへ/ば、¥しかじか/と¥こたふ。「¥あな¥あさまし。¥さ/しも¥きみ/の¥しつし−おぼしめさ/れ/つる¥こうえふ/を、¥かやう/に¥し/つる¥こと/よ。¥しら/ず、¥なんぢ=ら¥きんごく¥るざい/に/も¥および、¥わが−み/も¥いか/なる¥げきりん/に/か¥あづから/んず/らん」/と、¥おもは/じ¥こと¥なう¥あんじ−つづけ/て¥ゐ/たり/ける¥ところ/に、¥しゆしやう¥いとどしく¥よる/の−おとど/を¥いで/させ/も¥あへ/ず、¥かしこ/へ¥ぎやうがう¥なつ/て、¥もみぢ/を¥えいらん¥ある/に、¥なかり/けれ/ば、¥いか/に/と¥おん=たづね¥あり/けり。¥くらんど¥なに/と¥そうす/べき¥むね/も¥なし。¥あり/の−まま/にP350¥そうもん−す。¥てんき¥こと/に¥おん=こころよ=げ/に¥うち−ゑま/せ¥たまひ/て、「¥りんかん/に¥さけ/を¥あたため/て¥こうえふ/を¥たく/と¥いふ¥し/の¥こころ/を/ば、¥され/ば¥それ=ら/に/は¥たれ/が¥をしへ/ける/ぞ/や。¥やさしう/も¥つかまつ/たる/ものかな」/とて、¥かへつて¥えいかん/に¥あづかつ/し¥うへ/は、¥あへて¥ちよくかん¥なかり/けり。¥また¥あんげん/の¥ころほひ、¥おん=かたたがひ/の¥ぎやうがう/の¥あり/し/に、¥さら/で/だに¥けいじん¥あかつき/を¥となふ¥こゑ、¥めいわう/の¥ねぶり/を¥おどろかす/ほど/に/も¥なり/しか/ば、¥いつも¥おん=ねざめ−がち/にて、¥つやつや¥ぎよ=しん/も¥なら/ざり/けり。¥いはんや¥さゆる¥しもよ/の¥はげしき/に/は、¥えんぎ/の−せいたい、¥こくど/の¥たみ=ども/が、¥いか/に¥さむかる/らん/とて、¥よる/の−おとど/に/して¥ぎよ=い/を¥ぬが/せ¥たまひ/ける¥こと/など/まで/も、¥おぼしめし−いで/て、¥わが¥ていとく/の¥いたら/ぬ¥こと/を/ぞ¥おん=なげき¥あり/ける。¥やや¥しんかう/に¥およん/で、¥ほど¥とほく¥ひと/の¥さけぶ¥こゑ−し/けり。¥ぐぶ/の¥ひとびと/は¥きき/も¥つけ/られ/ず。¥しゆしやう/は¥きこしめし/て、「¥ただいま¥さけぶ/は¥なにもの/ぞ。¥あれ¥み/て¥まゐれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥うへぶし−し/たる¥てんじやうびと、¥じやうにち/の−もの/に¥おほせ/て¥たづぬれ/ば、¥ある¥つじ/に¥あやし/の¥め/の−わらは/の、¥ながもち/の¥ふた¥さげ/たる/が、¥なく/にて/ぞ¥あり/ける。「¥いか/に」/と¥とへ/ば、「¥しう/の¥にようばう/の、¥ゐん/の−ごしよ/に¥さぶらは/せ¥たまふ/が、¥この−ほど¥やうやう/に/して¥したて/られ/たり/つる¥きぬ/を¥もつ/て¥まゐる/ほど/に、¥ただいま¥おとこ/の¥にさん−にん¥まうで−き/て、¥うばひ−とつ/て¥まかり/ぬる/ぞ/や。¥いま/は¥おん=しやうぞく/が¥あら/ば/こそ、¥ごしよに/も¥さぶらは/せ¥たまは/め。¥また¥はかばかしう¥たち−やどら/せ¥たまふ/べき。¥したしき¥おん=かた/も¥ましまさ/ず。¥これ/を¥おもひ−つづくる/に¥なく/なり」/と/ぞ¥いひ/ける。¥さて¥かの¥め/の−わらは/を¥ぐし/て¥まゐり、¥この¥よし¥そうもん−し/たり/けれ/ば、¥しゆしやう¥きこしめし/てP351、「¥あな¥むざん、¥なにもの/の¥しわざ/にて/か¥ある/らん」/とて、¥りようがん/より¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ/ぞ¥かたじけなき。「¥げう/の¥よ/の¥たみ/は、¥げう/の¥こころ/の¥すなほ/なる/を¥もつて¥こころ/と¥する¥ゆゑ/に、¥みな¥すなほ/なり。¥いま/の¥よ/の¥たみ/は、¥ちん/が¥こころ/を¥もつて¥こころ/と¥する¥ゆゑ/に、¥かだましき¥もの¥てう/に¥あつ/て¥つみ/を¥をかす。¥これ¥わが¥はぢ/に¥あら/ず/や」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥さる/にて/も¥とら/れ/つ/らん¥きぬ/は、¥なにいろ/ぞ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥しかじか/の¥いろ/と¥そうす。¥けんれいもんゐん、¥その−とき/は、¥いまだ¥ちうぐう/にて¥わたら/せ¥たまふ¥とき/なり。¥その¥おん=かた/へ、「¥さやう/の¥いろ¥し/たる¥ぎよ=い/や¥さふらふ」/と¥おん=たづね¥あり/けれ/ば、¥さき/の/より¥はるか/に¥いろ¥うつくしき/が¥まゐり/たる/を、¥くだん/の¥め/の−わらは/に/ぞ¥たまは/せ/ける。「¥いまだ¥よ¥ふかし。¥また¥さる¥め/に/も/ぞ¥あふ」/とて、¥じやうにち/の−もの/を¥あまた¥つけ/て、¥しう/の¥にようばう/の¥つぼね/まで、¥おくら/せ¥ましまし/ける/ぞ¥かたじけなき。¥され/ば、¥あやし/の¥しづ/の−を、¥しづ/の−め/に¥いたる/まで、¥ただ¥この¥きみ¥せんしう−ばんぜい/の¥はうさん/を/ぞ¥いのり¥たてまつる。¥
「あふひのまへ」(『あふひのまへ』)S0603¥それに¥なに/より/も¥また¥あはれ/なり/し¥こと/に/は、¥ちうぐう/の¥おん=かた/に¥さぶらは/れ/ける¥にようばう/の¥めし−つかひ/ける¥しやうとう、¥おもは/ざる¥ほか、¥りようがん/に¥しせき−する¥こと¥あり/けり。¥ただ¥よ/の−つね¥あからさま/にて/も¥なく/して、¥まめやか/に¥おん=こころざし¥ふかかり/けれ/ば、¥しう/の¥にようばう/も¥めし−つかは/ず、¥かへつて¥しう/の/ごとく/に/ぞP352、¥いつき¥もてなし/ける。『¥その−かみ¥えうえい/に¥いへ/る¥こと¥あり、¥をとこ/を¥うん/で/も¥きくわん−する¥こと¥なかれ、¥ぢよ/を¥うん/で/も¥ひさん−する¥こと¥なかれ。¥なん/は¥これ¥こう/に/だも¥ほうぜ/られ/ず、¥ぢよ/は¥ひ/たり』/とて、¥きさき/に¥たつ/と¥いへ/り。¥めでたかり/ける¥さいはひ/かな。「¥この¥ひと¥にようご¥きさき/と/も¥もてなさ/れ、¥こくも¥せんゐん/と/も¥あふが/れ/な/んず」/とて、¥その¥な/を、¥あふひのまへ/と¥まうし/けれ/ば、¥ないない/は¥あふひの−にようご/など/ぞ¥ささやき−あは/れ/ける。¥しゆしやう/は¥これ/を¥きこしめし/て、¥その−のち/は¥めさ/ざり/けり。¥これ/は¥おん=こころざし/の¥つき/ぬる/に/は¥あら/ず、¥ただ¥よ/の¥そしり/を¥はばから/せ¥たまふ/に¥よつ/て/なり。¥され/ば¥おん=ながめ−がち/にて、¥つやつや¥ぐご/も¥きこしめさ/ず、¥ご=なう/とて¥つね/は¥よる/の−おとど/に/のみ¥いら/せ¥おはします。¥その−とき/の¥くわんばく¥まつ=どの、¥この¥よし/を¥うけたまはつ/て、「¥しゆしやう¥おん=こころ/の¥つき/ぬる¥こと/こそ¥おはす/なれ。¥まうし−なぐさめ¥まゐらせ/ん」/とて、¥いそぎ¥ご=さんだい¥あつ/て、「¥さやう/に¥えいりよ/に¥かから/せ¥ましまさ/ん/に¥おいて/は、¥なんでふ¥こと/か¥さふらふ/べき。¥くだん/の¥にようばう¥めさ/れ¥まゐらす/べし/と¥おぼえ¥さふらふ。¥しな¥たづね/らるる/に¥およば/ず、¥もとふさ¥やがて¥いうし/に¥つかまつり¥さふらは/ん」/と¥そうせ/させ¥たまへ/ば、¥しゆしやう¥おほせ/なり/ける/は、「¥いさ/とよ、¥そこ/に¥はからひ¥まうす/も¥さる−こと/なれ/ども、¥くらゐ/を¥すべつ/て¥のち/は、¥まま¥さる¥ためし/も¥ある/なり。¥まさしう¥ざいゐ/の¥とき、¥さやう/の¥こと/は¥こうたい/の¥そしり/なる/べし」/とて、¥きこしめし/も¥いれ/ざり/けれ/ば、¥くわんばく=どの¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず、¥おん=なみだ/を¥おさへ/て、¥ご=たいしゆつ¥あり/けり。¥その−のち¥しゆしやう、¥みどん/の¥うすやう/の、¥にほひ¥こと/に¥ふかかり/ける/に、¥ふるき¥こと/なれ/ども、¥おぼしめし−いで/てP353、¥かう/ぞ¥あそばさ/れ/ける。¥
しのぶれ/ど¥いろ/に¥いで/に/けり¥わが¥こひ/は¥もの/や¥おもふ/と¥ひと/の¥とふ/まで W044¥
れんぜいの−せうしやう−たかふさ、¥これ/を¥たまはり−つい/で、¥くだん/の¥あふひのまへ/に¥たば/せ/たれ/ば、¥これ/を¥とつ/て¥ふところ/に¥いれ、¥かほ¥うち−あかめ、¥れい/なら/ぬ¥ここち¥いで−き/たり/とて、¥さと/へ¥かへり、¥うち−ふす¥こと¥ごろく−にち¥し/て、¥つひに¥はかなく¥なり/に/けり。¥きみ/が¥いちじつ/の¥おん/の¥ため/に、¥せふ/が¥はくねん/の¥み/を¥あやまつ/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。「¥むかし¥たう/の¥たいそう/の、¥ていじんき/が¥むすめ/を¥げんくわんでん/に¥いれ/ん/と¥せ/させ¥たまひ/し/を、¥ぎちよう、¥かの¥むすめ¥すでに¥りくし/に¥やくせ/り/と¥いさめ¥まうし/たり/けれ/ば、¥てん/に¥いれ/らるる¥こと/を¥とどめ/られ/たり/し/に/は、¥すこし/も¥たがは/せ¥たまは/ぬ、¥いま/の¥きみ/の¥おん=こころばせ/かな」/と/ぞ、¥ひと¥まうし/ける。¥
「こがう」(『こがう』)S0604¥しゆしやう/は¥れんぼ/の¥おん=なみだ/に¥おぼしめし−しづま/せ¥たまひ/たる/を、¥まうし−なぐさめ¥まゐらせ/ん/とて、¥ちうぐう/の¥お=かた/より、¥こがうの=との/と¥まうす¥にようばう/を¥まゐらせ/らる。¥そも¥この¥にようばう/と¥まうす/は、¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう/の¥おん=むすめ、¥きんちう¥いち/の¥びじん、¥ならび−なき¥こと/の¥じやうず/にて/ぞ¥ましまし/ける。¥れんぜいの−だいなごん−りうはうの−きやう、¥いまだ¥せうしやう/なり/し¥とき、¥み−そめ/たり/し¥にようばう/なり。¥はじめ/はP354¥うた/を¥よみ、¥ふみ/を/ば¥つくさ/れ/けれ/ども、¥たまづさ/の¥かず/のみ¥つもり/て、¥なびく¥けしき/も¥なかり/し/が、¥さすが¥なさけ/に¥よわる¥こころ/に/や、¥つひに/は¥なびき¥たまひ/けり。¥され/ども¥いま/は¥きみ/へ¥めさ/れ¥まゐらせ/て、¥せんかた/も¥なく¥かなしく/て、¥あか/ぬ¥わかれ/の¥なみだ/に/や、¥そで¥しほたれ/て、¥ほし−あへ/ず。¥せうしやう¥いか/に/も−し/て、¥こがうの=との/を¥いま−いちど¥み¥たてまつる¥こと/も/や/と、¥その¥こと/と¥なく¥つね/は¥さんだい−せ/られ/けり。¥こがうの=との/の¥おはし/ける¥つぼね/の¥へん、¥かなた−こなた/へ、¥たたずみ−ありき¥たまひ/けれ/ども、¥こがうの=との、¥われ¥きみ/へ¥めさ/れ¥まゐらせ/ぬる¥うへ/は、¥せうしやう¥いか/に¥まうす/とも、¥ことば/を/も¥かはす/べから/ず/とて、¥つて/の¥なさけ/を/だに/も¥かけ/られ/ず。¥せうしやう¥もしや/と、¥いつしゆ/の¥うた/を¥よう/で、¥こがうの=との/の¥ましまし/ける¥つぼね/の¥み=す/の¥うち/へ/ぞ¥なげ−いれ/ける。¥
おもひ−かね¥こころ/は¥そら/に¥みちのく/の¥ちか/の¥しほがま¥ちかき¥かひ−なし W045¥
こがうの=との、¥やがて¥へんじ/も¥せ/まほしう/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥きみ/の¥おん=ため、¥おん=うしろめたし/と/や¥おもは/れ/けん、¥て/に/だに¥とつ/て/も¥み¥たまは/ず、¥やがて¥しやうとう/に¥とら/せ/て、¥つぼ/の−うち/へ/ぞ¥なげ−いださ/る。¥せうしやう¥なさけ−なう¥うらめしけれ/ども、¥さすが¥ひと/も/こそ¥みれ/と、¥そら−おそろしく/て、¥いそぎ¥とつ/て¥ふところ/に¥ひき−いれ/て¥いで/られ/ける/が、¥なほ¥たち−かへり、¥
たまづさ/を¥いま/は¥て/に/だに¥とら/じ/と/や¥さ/こそ¥こころ/に¥おもひ−すつ/とも W046¥
いま/は¥この−よ/にて¥あひ−み/ん¥こと/も¥かたけれ/ば、¥いき/て¥ゐ/て、¥と/に−かく/に¥ひと/を¥こひし/と¥おもは/ん/より、¥ただ¥しな/ん/と/のみ/ぞ¥ねがは/れ/ける。P355¥
にふだう−しやうこく、¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥ちうぐう/と¥まうす/も¥おん=むすめ、¥れんぜいの−せうしやう/も¥また¥むこ/なり。¥こがうの=との/に、¥ふたり/の¥むこ/を¥とら/れ/て/は、¥よ/の−なか¥よかる/まじ。¥いか/に/も−し/て、¥こがうの=との/を¥めし−いだい/て¥うしなは/ん」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥こがうの=との、¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥わが−み/の−うへ/は¥と/に/も−かく/に/も¥なり/な/ん、¥きみ/の¥おん=ため¥おん=こころ−ぐるし/と¥おもは/れ/けれ/ば、¥ある¥よ¥だいり/を/ば¥まぎれ−いで/て、¥ゆくへ/も¥しら/ず/ぞ¥うせ/られ/ける。¥しゆしやう¥おん=なげき¥なのめ/なら/ず、¥ひる/は¥よる/の−おとど/に/のみ¥いら/せ¥たまひ/て、¥おん=なみだ/に¥しづま/せ¥おはします。¥よる/は¥なんでん/に¥しゆつぎよ¥なつ/て、¥つき/の¥ひかり/を¥ごらんじ/て/ぞ、¥なぐさま/せ¥ましまし/ける。¥にふだう−しやうこく¥この¥よし/を¥うけたまはつ/て、「¥さて/は¥きみ/は、¥こがう¥ゆゑ/に¥おぼしめし−しづま/せ¥たまひ/たん/なり。¥さら/ん/に¥とつ/て/は」/とて、¥おん=かいしやく/の¥にようばう=たち/を/も¥まゐらせ/られ/ず、¥さんだい−し¥たまふ¥ひとびと/も¥そねま/れ/けれ/ば、¥にふだう/の¥けんゐ/に¥はばかつ/て、¥まゐり−かよふ¥しんか/も¥なし。¥なんによ¥うち−ひそめ/て、¥きんちう¥いまいましう/ぞ¥みえ/し。¥ころ/は¥はちぐわつ−とをか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥さ/しも¥くまなき¥そら/なれ/ども、¥しゆしやう/は¥おん=なみだ/に¥くもら/せ¥たまひ/て、¥つき/の¥ひかり/も¥おぼろ/に/ぞ¥ごらんぜ/られ/ける。¥やや¥しんかう/に¥およん/で、「¥ひと/や¥ある¥ひと/や¥ある」/と¥めさ/れ/けれ/ども、¥お=いらへ¥まうす¥もの/も¥なし。¥やや¥あつ/て、¥だんじやう/の−だいひつ−なかくに、¥その¥よ/しも¥お=とのゐ/に¥まゐり/て、¥はるか/に¥とほう¥さふらひ/ける/が、「¥なかくに」/と¥お=いらへ¥まうす。「¥なんぢ¥ちかう¥まゐれ。¥おほせ−くださ/る/べき¥むね¥あり」/と¥おほせ/けれ/ば、¥なにごと/やらん/と¥おもひ、¥ごぜん¥ちかう/ぞ¥さんじ/たる。「¥なんぢ¥もし¥こがう/が¥ゆくへ/や¥しつ/たる」/と¥おほせ/けれ/ばP356、「¥いかで/か¥しり¥まゐらせ¥さふらふ/べき」/と¥まうす。「¥まことや¥こがう/は、¥さが/の¥へん、¥かたをりど/とかや¥し/たる¥うち/に¥あり/と、¥まうす¥もの/の¥ある/ぞ/とよ。¥あるじ/が¥な/を/ば¥しら/ず/とも、¥たづね/て¥まゐらせ/てんや」/と¥おほせ/けれ/ば、¥なかくに、「¥あるじ/が¥な/を¥しり¥さふらは/で/は、¥いかで/か¥たづね−あひ¥まゐらせ¥さふらふ/べき」/と¥まうし/けれ/ば、¥しゆしやう、¥げに/も/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥ましまさ/ず。¥
なかくに¥つくづく¥もの/を¥あんずる/に、¥まことや¥こがうの=との/は、¥こと¥ひき¥たまひ/し/ぞ/かし。¥この¥つき/の¥あか−さ/に、¥きみ/の¥おん=こと¥おもひ−いで¥まゐらせ/て、¥こと¥ひき¥たまは/ぬ¥こと/は¥よも¥あら/じ。¥だいり/にて¥こと¥ひき¥たまひ/し¥とき、¥なかくに¥ふえ/の¥やく/に¥めさ/れ¥まゐらせ/しか/ば、¥その¥こと/の¥ね/は、¥いづく/にて/も¥きき−しら/んずる/ものを。¥さが/の¥ざいけ¥いく−ほど/か¥あら/ん、¥うち−まはつ/て¥たづね/ん/に、¥など/か¥きき−いださ/で¥ある/べき/と¥おもひ、「¥さ¥さふらは/ば、¥あるじ/が¥な/は¥しら/ず¥さふらふ/とも、¥たづね¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥たとひ¥たづね−あひ¥まゐらせ/て¥さふらふ/とも、¥ご=しよ/など¥さふらは/ず/は、¥うはのそら/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらは/んず/らん。¥ご=しよ/を¥たまはつ/て、¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥しゆしやう、¥げに/も/とて、¥やがて¥ご=しよ¥あそばい/て/ぞ¥くださ/れ/ける。「¥れう/の−お=むま/に¥のり/て¥ゆけ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥なかくに¥れう/の−お=むま¥たまはつ/て、¥めいげつ/に¥むち/を¥あげ、¥にし/を¥さし/て/ぞ¥あゆま/せ/ける。¥をしか¥なく¥この¥やまざと/と¥えいじ/けん、¥さが/の¥あたり/の¥あき/の¥ころ、¥さ/こそ/は¥あはれ/に/も¥おぼえ/けめ。¥かたをりど−し/たる¥や/を¥み−つけ/て/は、¥この¥うち/に/も/や¥おはす/らん/と、¥ひかへ−ひかへ¥きき/けれ/ども、¥こと¥ひく¥ところ/は¥なかり/けり。P357¥み=だう/など/へ/も¥まゐり¥たまへ/る¥こと/も/や/と、¥しやかだう/を¥はじめ/て、¥だうだう¥み−まはれ/ども、¥こがうの=との/に¥に/たる¥にようばう/だに/も¥なかり/けり。¥むなしう¥かへり−まゐり/たら/ん/は、¥まゐら/ざら/ん/より、¥なかなか¥あしかる/べし。¥これ/より¥いづち/へ/も、¥まよひ−ゆか/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥いづく/か¥わうぢ/なら/ぬ、¥み/を¥かくす/べき¥やど/も¥なし。¥いかが−せ/ん/と¥あんじ−わづらふ。¥まことや¥ほふりん/は¥ほど−ちかけれ/ば、¥つき/の¥ひかり/に¥さそは/れ/て、¥まゐり¥たまへ/る¥こと/も/や/と、¥そなた/へ¥むい/て/ぞ¥あくがれ/ける。¥
かめやま/の¥あたり¥ちかく、¥まつ/の¥ひとむら¥ある¥かた/に、¥かすか/に¥こと/ぞ¥きこえ/ける。¥みね/の¥あらし/か¥まつかぜ/か、¥たづぬる¥ひと/の¥こと/の¥ね/か、¥おぼつかなく/は¥おもへ/ども、¥こま/を¥はやめ/て¥ゆく/ほど/に、¥かたをりど−し/たる¥うち/に、¥こと/を/ぞ¥ひき−すまさ/れ/たる。¥ひかへ/て¥これ/を¥きき/けれ/ば、¥すこし/も¥まがふ/べう/も¥なく、¥こがうの=との/の¥つまおと/なり。¥がく/は¥なに/ぞ/と¥きき/けれ/ば、¥をつと/を¥おもう/て¥こふ/と¥よむ、¥さうぶれん/と¥いふ¥がく/なり/けり。¥なかくに、¥され/ば/こそ、¥きみ/の¥おん=こと¥おもひ−いで¥まゐらせ/て、¥がく/こそ¥おほけれ、¥この¥がく/を¥ひき¥たまふ¥こと/の¥やさし−さ/よ/と¥おもひ、¥こし/より¥やうでう¥ぬき−いだし、¥ちつと¥ならい/て、¥かど/を¥ほとほと/と¥たたけ/ば、¥こと/を/ば¥やがて¥ひき−やみ¥たまひ/ぬ。「¥これ/は¥だいり/より¥なかくに/が¥お=つかひ/に¥まゐり/て¥さふらふ。¥あけ/させ¥たまへ」/とて、¥たたけ/ども¥たたけ/ども、¥とがむる¥もの/も¥なかり/けり。¥やや¥あり/て、¥うち/より¥ひと/の¥いづる¥おと−し/けり。¥うれしう¥おもひ/て¥まつ¥ところ/に、¥ぢやう/を¥はづし、¥かど/を¥ほそめ/に¥あけ、¥いたいけ−し/たる¥こ−にようばう/の、¥かほ/ばかり¥さし−いだい/て、「¥これ/はP358¥さやう/に¥だいり/より¥お=つかひ/など¥たまはる/べき¥ところ/で/も¥さぶらは/ず。¥もし¥かどたがへ/にて/ぞ¥さぶらふ/らん」/と¥いひ/けれ/ば、¥なかくに、¥へんじ−せ/ば¥かど¥たて/られ、¥ぢやう¥ささ/れ/な/んず/と/や¥おもひ/けん、¥ぜひ−なく¥おし−あけ/て/ぞ¥いり/に/ける。¥つまど/の¥きは/なる¥えん/に¥ゐ/て、「¥なん/とて¥かやう/の¥ところ/に¥おん=わたり¥さふらふ/やらん。¥きみ/は¥おん=ゆゑ/に¥おぼしめし−しづま/せ¥たまひ/て、¥おん=いのち/も¥すでに¥あやふく/こそ¥みえ/させ¥ましまし¥さふらへ。¥かやう/に¥まうさ/ば、¥うはのそら/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らん。¥ご=しよ/を¥たまはつ/て¥まゐり/て¥さふらふ」/とて¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥あり/つる¥にようばう¥とり−つい/で、¥こがうの=との/に/ぞ¥まゐらせ/ける。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、¥まことに¥きみ/の¥ご=しよ/にて/ぞ¥あり/ける。¥やがて¥おん=ぺんじ¥かい/て¥ひき−むすび、¥にようばう/の¥しやうぞく¥ひとかさね¥そへ/て/ぞ¥いださ/れ/たる。¥なかくに、「¥おん=ぺんじ/の¥うへ/は、¥とかう¥まうす/に¥および¥さふらは/ね/ども、¥べつ/の¥お=つかひ/にて/も¥さふらは/ば/こそ。¥ぢき/の¥おん=ぺんじ¥うけたまはら/で/は、¥いかで/か¥かへり−まゐり¥さふらふ/べき」/と¥まうし/けれ/ば、¥こがうの=との、¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥みづから¥へんじ−し¥たまひ/けり。「¥そこ/に/も¥きき¥たまひ/つ/らん¥やう/に、¥にふだう¥あまり/に¥おそろしき¥こと/を/のみ¥まうす/と¥きき/し/が¥あさまし−さ/に、¥ある¥よ¥ひそか/に¥しのび/つつ、¥だいり/を/ば¥まぎれ−いで/て、¥いま/は¥かかる¥ところ/の¥すまひ/なれ/ば、¥こと¥ひく¥こと/も¥なかり/し/が、¥あす/より¥おはら/の¥おく/へ¥おもひ−たつ¥こと/の¥さぶらへ/ば、¥あるじ/の¥にようばう、¥こよひ/ばかり/の¥なごり/を¥をしみ、¥いま/は¥よ/も¥ふけ/ぬ、¥たち−きく¥ひと/も¥あら/じ/など¥すすむる¥あひだ、¥さぞ/な¥むかし/の¥なごり/も¥さすが¥ゆかしく/て、¥て−なれ/し¥こと/を¥ひく/ほど/に、¥やすう/も¥きき−いださ/れ/けり/な」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ¥たまは/ね/ば、¥なかくに/も¥そぞろ/にP359¥そで/を/ぞ¥しぼり/ける。¥やや¥あつ/て、¥なかくに¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥あす/より¥おはら/の¥おく/へ¥おぼしめし−たつ¥こと/と¥さふらふ/は、¥さだめて¥おん=さま/など/も/や¥かへ/させ¥たまひ¥さふらは/んず/らん。¥しかる/べう/も¥さふらは/ず。¥さて¥きみ/を/ば¥なに/と/か、¥し¥まゐらせ¥たまふ/べき。¥ゆめゆめ¥かなひ¥さふらふ/まじ。¥あひ−かまへ/て¥この¥にようばう¥いだし¥まゐらす/な」/とて、¥とも/に¥めし−ぐし/たる¥めぶ、¥きじちやう/など¥とどめ−おき、¥その¥や/を¥しゆご−せ/させ、¥わが−み/は¥れう/の−お=むま/に¥うち−のつ/て、¥だいり/へ¥かへり−まゐつ/たれ/ば、¥よ/は¥ほのぼの/と/ぞ¥あけ/に/ける。¥なかくに、¥やがて¥れう/の−お=むま¥つなが/せ、¥にようばう/の¥しやうぞく/を/ば、¥はねむま/の¥しやうじ/に¥うち−かけ/て、¥いま/は¥さだめて¥ぎよ=しん/も¥なり/つ/らん、¥たれ/して/か¥まうす/べき/と¥おもひ、¥なんでん/を¥さし/て¥まゐる/ほど/に、¥しゆしやう/は¥いまだ¥ゆうべ/の¥ござ/に/ぞ¥ましまし/ける。「¥みなみ/に¥かけり¥きた/に¥むかふ、¥かんうん/を¥あき/の¥かり/に¥つけ−がたし。¥ひがし/に¥いで¥にし/に¥ながる、¥ただ¥せんばう/を¥あかつき/の¥つき/に¥よす」/と、¥おん=こころ−ほそ=げ/に¥うち−ながめ/させ¥たまふ¥ところ/に、¥なかくに¥つと¥まゐり/つつ、¥こがうの=との/の¥おん=ぺんじ/を/こそ¥まゐらせ/けれ。¥しゆしやう¥なのめ/なら/ず/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、「¥さら/ば¥なんぢ¥やがて¥ゆふさり¥ぐし/て¥まゐれ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥なかくに、¥にふだう−しやうこく/の¥かへり−きき¥たまは/ん¥ところ/は¥おそろしけれ/ども、¥これ¥また¥ちよくぢやう/なれ/ば、¥ひと/に¥くるま¥かつ/て、¥さが/へ¥ゆき−むかふ。¥こがうの=との¥まゐる/まじき¥よし¥のたまへ/ども、¥やうやう/に¥こしらへ¥たてまつり/て、¥くるま/に¥のせ¥たてまつり/て、¥だいり/へ¥まゐり/たり/けれ/ば、¥かすか/なる¥ところ/に¥しのば/せ/て、¥よなよな¥めさ/れ¥まゐらせ/ける/ほど/に、¥ひめみや¥ご=いつしよ¥いで−き/させ¥たまひ/けり。¥ばうもん/の−によゐん/と/は¥この¥みや/の¥おん=こと/なり。P360¥
にふだう−しやうこく、「¥こがう/が¥うせ/たり/と¥いふ/は、¥あとかた/も¥なき¥そらごと/なり。¥いか/に/も−し/て¥うしなは/ん」/と¥のたまひ/ける/が、¥なに/と/して/かは¥たばかり−いださ/れ/たり/けん、¥こがうの=との/を¥とらへ/つつ、¥あま/に¥なし/て/ぞ¥おつ−ぱな/たる。¥とし¥にじふさん。¥しゆつけ/は¥もと/より¥のぞみ/なり/けれ/ども、¥こころ/なら/ず¥あま/に¥なさ/れ、¥こき¥すみぞめ/に¥やつれ−はて、¥さが/の¥おく/に/ぞ¥すま/れ/ける。¥むげ/に¥うたてき¥こと=ども/なり。¥しゆしやう/は¥かやう/の¥こと=ども/に¥ご=なう¥つか/せ¥たまひ/て、¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ける/とかや。¥ほふわう¥うち−つづき、¥おん=なげき/のみ/ぞ¥しげかり/ける。¥さんぬる¥えいまん/に/は、¥だいいち/の¥みこ¥にでうのゐん¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥あんげん−にねん/の−しちぐわつ/に/は、¥おん=まご¥ろくでうのゐん¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥てん/に¥すま/ば¥ひよく/の¥とり、¥ち/に¥あら/ば¥れんり/の¥えだ/と¥なら/ん/と、¥あまのがは/の¥ほし/を¥さし/て、¥さ/しも¥おん=ちぎり¥あさから/ざり/し¥けんしゆんもんゐん、¥あき/の¥きり/に¥をかさ/れ/て、¥あした/の¥つゆ/と¥きえ/させ¥たまひ/ぬ。¥としつき/は¥へだた/れ/ども、¥きのふ¥けふ/の¥おん=わかれ/の¥やう/に¥おぼしめし/て、¥おん=なみだ/も¥いまだ¥つきせ/ざる/に、¥ぢしよう−しねん/の−ごぐわつ/に/は、¥だいに/の¥わうじ¥たかくらのみや¥うた/れ/させ¥たまひ/ぬ。¥げんぜ¥ごしやう¥たのみ−おぼしめさ/れ/つる¥しんゐん/さへ、¥さきだた/せ¥たまひ/ぬれ/ば、¥と/に−かく/に、¥かこつ¥かた¥なき¥おん=なみだ/のみ/ぞ¥しげかり/ける。「¥かなしみ/の¥いたつ/て¥かなしき/は、¥おい/て¥のち、¥こ/に¥おくれ/たる/より/も¥かなしき/は¥なし。¥うらみ/の¥いたつ/て¥うらめしき/は、¥わかう/して¥おや/に¥さきだつ/より/も、¥うらめしき/は¥なし」/と、¥かの¥あさつなの−しやうこう/の、¥しそく¥すみあきら/に¥おくれ/て、¥かき/たり/ける¥ふで/の¥あと、¥いま/こそ¥おぼしめし−しら/れ/けれ。¥かの¥いちじよう−めうでん/のP361¥ご=どくじゆ/も、¥おこたら/せ¥たまは/ず、¥さんみつ−ぎやうぼふ/の¥ご=くんじゆ/も、¥こう¥つもら/せ¥おはします。¥てんが¥りやうあん/に¥なり/しか/ば、¥おほみやびと/も¥おしなべて、¥はな/の¥たもと/や¥やつれ/けん。¥
「めぐらしぶみ」(『めぐらしぶみ』)S0605¥にふだう−しやうこく、¥かやう/に¥いたく¥なさけ−なう¥あたり¥たてまつら/れ/たり/ける¥こと/を、¥さすが¥そら−おそろしう/や¥おもは/れ/けん、¥ほふわう¥なぐさめ¥まゐらせ/ん/とて、¥あきの−いつくしま/の−ないし/が¥はら/の¥ひめぎみ/の、¥しやうねん¥じふはち/に¥なり¥たまふ/を/ぞ、¥ほふわう/へ/は¥まゐらせ/らる。¥たうけ¥たけ/の¥くぎやう¥おほく¥ぐぶ−し/て、¥ひとへに¥にようご¥まゐり/の/ごとく/にて/ぞ¥あり/ける。¥しやうくわう¥かくれ/させ¥たまひ/て、¥わづか¥にしち−にち/だに¥すぎ/ざる/に、¥しかる/べから/ず/と/ぞ、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/ける。¥さる−ほど/に¥その−ころ¥しなのの−くに/に、¥きその−じらう−よしなか/と¥いふ¥げんじ¥あり/と¥きこえ/けり。¥かれ/は¥こ=たてはき−せんじやう−よしかた/が¥じなん/なり。¥しかる/を¥ちち¥よしかた/は、¥さんぬる¥きうじゆ−にねん−はちぐわつ−じふににち、¥かまくら/の−あく−げんだ−よしひら/が¥ため/に¥ちうせ/られ/ぬ。¥その−とき/は¥いまだ¥にさい/なり/し/を、¥はは¥かかへ/て、¥なくなく¥しなの/へ¥くだり、¥きその−ちうざう−かねとほ/が¥もと/に¥ゆい/て、「¥これ¥いか/に/も−し/て¥そだて/て、¥ひと/に¥なし/て、¥われ/に¥みせよ」/と¥いひ/けれ/ば、¥かねとほ¥かひがひしう¥うけ−とつ/て¥やういく−す。¥やうやう¥ちやうだい−する¥まま/に、¥ようぎ−たいはい¥ひと/に¥すぐれ、¥こころ/も¥ならび−なく¥かう/なり/けり。P362¥ちから/の¥つよさ、¥ゆみ−や¥うちもの¥とつ/て/は、¥すべて¥しやうこ/の¥たむら、¥としひと、¥よご−しやうぐん、¥ちらい、¥ほうしやう、¥せんぞ¥らいくわう、¥ぎかの−あつそん/と¥いふ/とも、¥これ/に/は¥いかで/か¥まさる/べき/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥
じふさん/で¥げんぶく−し/たり/し/に/も、¥まづ¥やはた/へ¥まゐり、¥つや−し/て、「¥わが¥しだい/の¥そぶ¥ぎかの−あつそん/は、¥この¥おん=がみ/の¥おん=こ/と¥なし/て、¥な/を¥はちまん−たらう−よしいへ/と¥かうし/き。¥かつうは¥その¥あと/を¥おふ/べし/とて、¥ご=ほうぜん/にて¥もとどり¥とり−あげ、¥きその−じらう−よしなか/と/こそ¥つけ/たり/けれ。¥つね/は¥めのと/の¥ちうざう/に¥ぐせ/られ/て、¥みやこ/へ¥のぼり、¥へいけ/の¥ふるまひ¥ありさま=ども/を/も、¥よくよく¥み−うかがひ/けり。¥きそ¥ある−とき¥めのと/の¥かなとほ/を¥よう/で、「¥そもそも¥ひやうゑ/の−すけ−よりとも/は、¥とう−はつ−か−こく/を¥うち−したがへ/て、¥とうかいだう/より¥せめ−のぼり、¥へいけ/を¥おひ−おとさ/ん/と¥す/なり。¥よしなか/も¥とうせん¥ほくろく¥りやうだう/を¥したがへ/て、¥いま¥いちにち/も¥さき/に¥へいけ/を¥ほろぼし/て、¥たとへば¥につぽんごく/に¥ふたり/の¥しやうぐん/と¥あふが/れ/ん/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥かねとほ¥おほき/に¥かしこまり−よろこん/で、「¥その¥れう/に/こそ、¥きみ/を/ば¥この¥にじふ−よ−ねん/まで¥やういく−し¥たてまつ/て¥さふらへ。¥かやう/に¥おほせ/らるる/こそ、¥はちまん=どの/の¥おん=すゑ/と/も¥おぼえ/させ¥ましませ」/とて、¥やがて¥むほん/を¥くはだつ。「¥まづ¥めぐらしぶみ¥さふらふ/べし」/とて、¥しなのの−くに/に/は、¥ねのゐの−こやた¥しげのの−ゆきちか/を¥かたらふ/に、¥そむく¥こと¥なし。¥これ/を¥はじめ/て¥しなの¥いつこく/の¥つはもの=ども、¥みな¥したがひ−つき/に/けり。¥かうづけの−くに/に/は、¥たご/の−こほり/の¥つはもの=ども、¥ちち¥よしかた/が¥よしみ/に¥よつ/て、¥これ/も¥したがひ−つき/に/けり。¥へいけ/の¥すゑ/にP363¥なり/ぬる¥をり/を¥え/て、¥げんじ¥ねんらい/の¥そくわい/を¥とげ/ん/と¥す。¥
「ひきやくたうらい」(『ひきやくたうらい』)S0606¥きそ/と¥いふ¥ところ/は、¥しなの/に¥とつ/て/も¥みなみ/の¥はし、¥みの−ざかひ/なれ/ば、¥みやこ/も¥むげ/に¥ほど−ちかし。¥へいけ/の¥ひとびと、「¥とうごく/の¥そむく/だに¥ある/に、¥ほくこく/さへ¥こ/は¥いか/に」/とて、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥にふだう−しやうこく¥のたまひ/ける/は、「¥たとひ¥しなの¥いつこく/の¥もの=ども/こそ、¥きそ/に¥したがひ−つく/と¥いふ/とも、¥ゑちごの−くに/に/は、¥よご−しやうぐん/の¥ばつえふ、¥じやうの−たらう−すけなが、¥おなじき−しらう−すけもち、¥これ=ら/は¥きやうだい¥とも/に¥たぜい/の¥もの/なり。¥おほせ−くだし/たら/ん/に、¥やすう¥うつ/て¥まゐらせ/て/んず」/と¥のたまへ/ば、「¥げに/も」/と¥まうす¥ひと/も¥あり、「¥いやいや、¥ただいま¥おん=だいじ/に¥および/な/んず」/と、¥ささやく¥ひとびと/も¥あり/ける/とかや。¥にんぐわつ−ひとひのひ、¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥ゑちごの−くに/の¥ぢうにん、¥じやうの−たらう−すけなが、¥ゑちごの−かみ/に¥にんず。¥これ/は¥きそ¥つゐたう−せ/らる/べき¥はかりごと/と/ぞ¥きこえ/し。¥おなじき−なぬかのひ、¥だいじん¥くぎやう、¥いへいへ/に/して、¥そんじよう−だらに¥ならびに¥ふどう−みやうわう¥かき¥くやう−せ/らる。¥これ/は¥ひやうらん−つつしみ/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥おなじき−ここのかのひ、¥かはちの−くに/の¥いしかは/の−こほり/に¥きよぢう−し/ける¥むさしの−ごん/の−かみ−にふだう−よしもと、¥しそく¥いしかはの−はんぐわんだい−よしかぬ、¥これ/も¥へいけ/を¥そむい/て、¥よりとも/に¥こころ/を¥かよはし/てP364、¥とうごく/へ¥おち−くだる/べし/など¥きこえ/しか/ば、¥へいけ¥やがて¥うつて/を¥つかはす。¥たいしやうぐん/に/は¥げん−だいふ/の−はうぐわん−すゑさだ、¥つの−はうぐわん−もりずみ、¥つがふ¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥かはちの−くに/へ¥はつかう−す。¥じやう/の¥うち/に/は、¥よしもと−ぼつし/を¥はじめ/と/して、¥わづか¥ひやくき/ばかり/に/は¥すぎ/ざり/けり。¥う/の−こく/より¥や−あはせ−し/て、¥ひとひ¥たたかひ−くらし、¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥よしもと−ぼつし¥うちじに−す。¥しそく¥いしかはの−はんぐわんだい−よしかぬ/は、¥いたで¥おう/て¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥おなじき−じふいちにち、¥よしもと−ぼつし/が¥かうべ、¥みやこ/へ¥いつ/て¥おほぢ/を¥わたさ/る。¥りやうあん/に¥ぞくしゆ/を¥わたさ/るる¥こと、¥ほりかはのゐん¥ほうぎよ/の¥とき、¥さきの−つしまの−かみ−みなもとの−よしちか/が¥かうべ/を¥わたさ/れ/し、¥その¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥
あくる¥じふににち、¥ちんぜい/より¥ひきやく¥たうらい、¥うさ/の−だいぐうじ−きんみち/が¥まうし/ける/は、¥ちんぜい/の¥もの=ども、¥をがたの−さぶらう−これよし/を¥はじめ/と/して、¥うすき、¥へつぎ、¥まつら−たう/に¥いたる/まで、¥いつかう¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥どうしん/の¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、¥へいけ/の¥ひとびと、「¥とうごく¥ほくこく/の¥そむく/だに¥ある/に、¥さいこく/さへ¥こ/は¥いか/に」/とて、¥て/を¥うつ/て¥あさみ−あは/れ/けり。¥おなじき−じふろくにち、¥いよの−くに/より¥ひきやく¥たうらい、¥こぞ/の¥ふゆ/の¥ころ/より、¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥かはのの−しらう−みちきよ、¥いつかう¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥どうしん/の¥あひだ、¥びんごの−くに/の¥ぢうにん、¥ぬかの−にふだう−さいじやく/は、¥へいけ/に¥こころざし¥ふかかり/けれ/ば、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で¥いよの−くに/へ¥おし−わたり、¥だうぜん¥だうご/の¥さかひ/なる¥たかなほ/の−じやう/に¥おし−よせ/て、¥さんざん/に¥せめ/けれ/ば、¥かはのの−しらう−みちきよ¥うちじに−す。¥しそく¥かはのの−しらう−みちのぶ/は、¥あきの−くに/の¥ぢうにん、¥ぬたの−じらう/は¥ははかた/の¥をぢ/なり/けれ/ば、¥それ/へ¥こえ/て¥あり−あは/ず、¥ちち/を¥うた/せ/て¥やすから/ず¥おもひ/ける/が、¥いか/に/も−し/てP365¥さいじやく/を¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥うかがひ/ける。¥ぬかの−にふだう−さいじやく/は、¥しこく/の¥らうぜき/を¥しづめ/て、¥こんねん−しやうぐわつ−じふごにち、¥びんご/の¥とも/へ¥おし−わたり、¥いうくん−いうぢよ=ども¥めし−あつめ/て、¥あそび−たはぶれ、¥さかもり/ける¥ところ/へ、¥かはのの−しらう−みちのぶ、¥おもひ−きつ/たる¥もの=ども、¥ひやく−よ−にん¥あひ−かたらつ/て、¥ばつ/と¥おし−よす。¥さいじやく/が¥かた/に/も¥さんびやく−よ−にん¥あり/けれ/ども、¥にはかごと/にて¥あり/けれ/ば、¥おもひ−まうけ/ず、¥あわて−ふためき/ける/が、¥たて−あふ¥もの/を/ば¥い−ふせ¥きり−ふせ、¥まづ¥さいじやく/を¥いけどつ/て、¥いよの−くに/へ¥おし−わたり、¥ちち/が¥うた/れ/たる¥たかなほ/の−じやう/まで¥さげ−もて−ゆき、¥のこぎり/にて¥くび/を¥きつ/たり/と/も¥きこゆ。¥また¥はつつけ/に¥し/たり/と/も¥きこえ/けり。¥(『にうだうしきよ』)S0607¥その−のち/は¥しこく/の¥もの=ども、¥かはのの−しらう/に¥したがひ−つく。¥また¥きの−くに/の¥ぢうにん、¥くまの/の−べつたう−たんぞう/は、¥へいけ¥ぢうおん/の¥み/なり/し/が、¥たちまちに¥こころがはり−し/て、¥げんじ/に¥どうしん/の¥よし¥きこえ/しか/ば、¥へいけ/の¥ひとびと、¥とうごく¥ほくこく/の¥そむく/だに¥ある/に、¥なんかい¥さいかい¥かく/の/ごとし。¥いてき/の¥ほうき¥みみ/を¥おどろかし、¥げきらん/の¥せんべう¥しきり/に¥そうす。¥しい¥たちまちに¥おこれ/り。¥よ¥すでに¥うせ/な/ん/と¥する¥こと/は、¥かならず¥へいけ/の¥いちもん/に¥あら/ね/ども、¥こころ−ある¥ひとびと/の、¥なげき−かなしま/ぬ/は¥なかり/けり。P366
「にふだうせいきよ」¥おなじき−にじふさんにち、¥ゐん/の¥てんじやう/にて、¥にはか/に¥くぎやう−せんぎ¥あり。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥まうさ/れ/ける/は、¥こんど¥ばんどう/へ¥うつて/は¥むかう/たり/と¥いへ/ども、¥させる¥し−いだし/たる¥こと/も¥なし。¥こんど/は¥むねもり¥たいしやうぐん/を¥うけたまはつ/て、¥とうごく¥ほくこく/の¥きようと=ら/を¥つゐたう−す/べき¥よし¥まうさ/れ/けれ/ば、¥しよきやう¥しきだい−し/て、「¥むねもりの−きやう/の¥まうしじやう、¥ゆゆしう¥さふらひ/な/んず」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あり/けり。¥くぎやう−てんじやうびと/も、¥ぶくわん/に¥そなはり、¥すこし/も¥きうせん/に¥たづさはら/ん/ほど/の¥ひとびと/は、¥むねもり/を¥たいしやうぐん/と/して、¥とうごく¥ほくこく/の¥きようと=ら/を、¥つゐたう−す/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥おなじき−にじふしちにち¥かどで−し/て、¥すでに¥うつ−たた/ん/と¥し¥たまひ/ける¥やはん/ばかり/より、¥にふだう−しやうこく¥ゐれい/の¥ここち/とて、¥とどまり¥たまひ/ぬ。¥あくる¥にじふはちにち、¥ぢうびやう/を¥うけ¥たまへ/り/と¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥ろくはら¥ひしめき−あへ/り。「¥すは¥し/つる/は」。「¥さ¥み/つる¥こと/よ」/と/ぞ¥ささやき/ける。¥にふだう−しやうこく¥やまひ¥つき¥たまへ/る¥ひ/より/して、¥ゆみづ/も¥のど/へ¥いれ/られ/ず、¥み/の¥うち/の¥あつき¥こと/は、¥ひ/を¥たく/が/ごとし。¥ふし¥たまへ/る¥ところ、¥しごけん/が¥うち/へ¥いる¥もの/は、¥あつ−さ¥たへ−がたし。¥ただ¥のたまふ¥こと/とて/は、「¥あたあた」/と/ばかり/なり。¥まことに¥ただごと/と/もP367¥みえ¥たまは/ず。¥あまり/の¥たへ−がた−さ/に/や、¥ひえいさん/より¥せんじゆゐ/の¥みづ/を¥くみ−くだし、¥いし/の¥ふね/に¥たたへ、¥それ/に¥おり/て¥ひえ¥たまへ/ば、¥みづ¥おびたたしう¥わき−あがつ/て、¥ほど−なく¥ゆ/に/ぞ¥なり/に/ける。¥もしや/と¥かけひ/の¥みづ/を¥まか/すれ/ば、¥いし/や¥くろがね/など/の¥やけ/たる¥やう/に、¥みづ¥ほとばしつ/て¥より−つか/ず。¥おのづから¥あたる¥みづ/は、¥ほむら/と¥なつ/て¥もえ/けれ/ば、¥こくえん¥てん−ちう/に¥みちみち/て、¥ほのほ¥うづまい/て/ぞ¥あがり/ける。¥これ/や¥むかし¥ほふざう−そうづ/と¥いひ/し¥ひと、¥えんわう/の¥しやう/に¥おもむい/て、¥はは/の¥しやうじよ/を¥たづね/し/に、¥えんわう¥あはれみ¥たまひ/て、¥ごくそつ/を¥あひ−そへ/て、¥せうねつ−ぢごく/へ¥つかはさ/る。¥くろがね/の¥もん/の¥うち/へ¥さし−いつ/て¥みれ/ば、¥りうしやう/など/の/ごとく/に、¥ほのほ¥そら/に¥うち−のぼり、¥たひやく−ゆじゆん/に¥および/けん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥おぼえ/ける。¥また¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた、¥はちでう/の−にゐ=どの/の、¥ゆめ/に¥み¥たまひ/ける¥こと/こそ¥おそろしけれ。¥たとへば¥みやうくわ/の¥おびたたしう¥もえ/たる¥くるま/の、¥ぬし/も¥なき/を、¥もん/の¥うち/へ¥やり−いれ/たる/を¥みれ/ば、¥くるま/の¥ぜんご/に¥たつ/たる¥もの/は、¥あるひは¥うし/の¥おもて/の¥やう/なる¥もの/も¥あり、¥あるひは¥むま/の¥やう/なる¥もの/も¥あり。¥くるま/の¥まへ/に/は、¥む/と¥いふ¥もじ/ばかり¥あらはれ/たる、¥くろがね/の¥ふだ/を/ぞ¥うつ/たり/けり。¥にゐ=どの¥ゆめ/の¥うち/に、「¥これ/は¥いづく/より¥いづち/へ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥へいけ−だいじやう/の−にふだう=どの/の¥あくぎやう¥てうくわ−し¥たまへ/る/に¥よつ/て、¥えんま−わうぐう/より/の¥おん=むかひ/の¥おん=くるま/なり」/と¥まうす。「¥さて¥あの¥ふだ/は¥いか/に」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥なんえんぶだい¥こんどう−じふろく−ぢやう/の¥るしやなぶつ、¥やき−ほろぼし¥たまへ/る¥つみ/に¥よつ/て、¥むげん/の¥そこ/に¥しづめ¥たまふ/べき¥よし、¥えんま/の−ちやう/にて¥おん=さた¥あり/し/が、¥むげん/の¥む/を/ば¥かか/れ/たれ/ども、¥いまだ¥けん/のP368¥じ/を/ば¥かか/れ/ぬ/なり」/と/ぞ¥まうし/ける。¥にゐ=どの¥ゆめ¥さめ/て¥のち、¥あせみづ/に¥なり/つつ、¥これ/を¥ひと/に¥かたり¥たまへ/ば、¥きく¥ひと¥みな¥み/の−け¥よだち/けり。¥れいぶつ−れいしや/へ¥こんごん−しつぱう/を¥なげ、¥むま¥くら¥よろひ−かぶと¥ゆみ−や¥たち¥かたな/に¥いたる/まで、¥とり−いで¥はこび−いだし/て、¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ども、¥かなふ/べし/と/も¥みえ¥たまは/ず。¥ただ¥なんによ/の¥きんだち、¥あとまくら/に¥さし−つどひ/て、¥なげき−かなしみ¥たまひ/けり。¥うるふ−にんぐわつ−ふつかのひ、¥にゐ=どの¥あつ−さ¥たへ−がたけれ/ども、¥にふだう−しやうこく/の¥おん=まくら/に¥よつ/て、「¥おん=ありさま¥み¥たてまつる/に、¥ひ/に¥そへ/て¥たのみ¥すくなう/こそ¥みえ/させ¥おはしませ。¥もの/の¥すこし/も¥おぼえ/させ¥たまふ¥とき、¥おぼしめす¥こと¥あら/ば、¥おほせ−おか/れよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥にふだう−しやうこく、¥ひごろ/は¥さ/しも¥ゆゆしう¥おはせ/しか/ども、¥いまは/の−とき/に/も¥なり/しか/ば、¥よに/も¥くるし=げ/にて、¥いき/の¥した/にて¥のたまひ/ける/は、「¥たうけ/は¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥てうてき/を¥たひらげ、¥けんじやう¥み/に¥あまり、¥かたじけなく/も¥いつてん/の−きみ/の¥ご=ぐわいせき/と/して、¥しようじやう/の¥くらゐ/に¥いたり、¥えいぐわ¥すでに¥しそん/に¥のこす。¥こんじやう/の¥のぞみ/は、¥いちじ/も¥おもひ−おく¥こと¥なし。¥ただ¥おもひ−おく¥こと/とて/は、¥ひやうゑ/の−すけ−よりとも/が¥かうべ/を¥み/ざり/つる¥こと/こそ、¥なに/より/も¥また¥ほい−なけれ。¥われ¥いか/に/も−なり/な/ん¥のち、¥ぶつじ¥けうやう/を/も¥す/べから/ず、¥だうたふ/を/も¥たつ/べから/ず。¥いそぎ¥うつて/を¥くだし、¥よりとも/が¥かうべ/を¥はね/て、¥わが¥はか/の¥まへ/に¥かく/べし。¥それ/ぞ¥こんじやう¥ごしやう/の¥けうやう/にて¥あら/んずる/ぞ」/と¥のたまひ/ける/こそ、¥いとど¥つみ¥ふかう/は¥きこえ/し。¥もしや¥たすかる/と、¥いた/に¥みづ/を¥おき/て、¥ふし−まろび¥たまへ/ども、¥たすかる¥ここち/も¥しP369¥たまは/ず。¥おなじき−しにちのひ、¥もんぜつ−びやくち−し/て、¥つひに¥あづちじに/に/ぞ¥し¥たまひ/ける。¥むま¥くるま/の¥はせ−ちがふ¥おと/は、¥てん/も¥ひびき¥だいぢ/も¥ゆるぐ/ばかり/なり。¥いつてん/の−きみ、¥ばんじよう/の−あるじ/の、¥いか/なる¥おん=こと¥まします/とも、¥これ/に/は¥いかで/か¥まさる/べき。¥こんねん/は¥ろくじふし/に/ぞ¥なら/れ/ける。¥おいじに/と¥いふ/べき/に/は¥あら/ね/ども、¥しゆくうん¥たちまち/に¥つき/ぬれ/ば、¥だいほふ−ひほふ/の¥かうげん/も¥なく、¥しんめい−ぶつだ/の¥ゐくわう/も¥きえ、¥しよてん/も¥おうご−し¥たまは/ず。¥いはんや¥ぼんりよ/に¥おいて/を/や。¥み/に¥かはり¥いのち/に¥かはら/ん/と、¥ちう/を¥ぞんぜ/し¥すまん/の¥ぐんりよ/は、¥たうしやう−たうか/に¥なみ−ゐ/たれ/ども、¥これ/は¥め/に/も¥みえ/ず、¥ちから/に/も¥かかはら/ぬ¥むじやう/の¥せつき/を/ば、¥ざんじ/も¥たたかひ−かへさ/ず、¥また¥かへり−こ/ぬ¥しで/の−やま、¥みつせがは、¥くわうせん¥ちうう/の¥たび/の¥そら/に、¥ただ¥いつしよ/こそ¥おもむか/れ/けれ。¥され/ども¥ひごろ¥つくり−おか/れ/し¥ざいごふ/ばかり/こそ、¥ごくそつ/と¥なつ/て¥むかひ/に/も¥きたり/けめ。¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥おなじき−なぬかのひ、¥おたぎ/にて¥けぶり/に¥なし¥たてまつり、¥こつ/を/ば¥ゑんじつ−ほふげん¥くび/に¥かけ、¥つの−くに/へ¥くだり、¥きやうのしま/に/ぞ¥をさめ/ける。¥さ/しも¥につぽん¥いつしう/に¥な/を¥あげ、¥ゐ/を¥ふるひ/し¥ひと/なれ/ども、¥み/は¥ひととき/の¥けぶり/と¥なつ/て、¥みやこ/の¥そら/へ¥たち−のぼり、¥かばね/は¥しばし¥やすらひ/て、¥はま/の¥まさご/に¥たはぶれ/つつ、¥むなしき¥つち/と/ぞ¥なり¥たまふ。P370
「きやうのしま」(『つきしま』)S0608¥さうそう/の¥よ、¥ふしぎ/の¥こと¥あり/けり。¥たま/を¥のべ、¥きんぎん/を¥ちりばめ/て、¥つくら/れ/たり/ける¥にしはちでう=どの、¥その/よ¥にはか/に¥やけ/に/けり。¥ひと/の¥いへ/の¥やくる¥こと/は、¥つね/の¥ならひ/なれ/ども、¥なにもの/の¥しわざ/に/や¥あり/けん、¥はうくわ/と/ぞ¥きこえ/し。¥また¥ろくはら/の¥みなみ/に¥あたつ/て、¥ひと/なら/ば¥にさんじふにん/ばかり/が¥こゑ−し/て、「¥うれし/や¥みづ、¥なる/は¥たき/の¥みづ」/と¥いふ¥ひやうし/を¥いだい/て、¥まひ−をどり、¥どつと¥わらふ¥こゑ−し/けり。¥さんぬる¥しやうぐわつ/に/は、¥しやうくわう¥かくれ/させ¥たまひ/て、¥てんが¥りやうあん/に¥なり/ぬ。¥わづか¥いちりやう−ぐわつ/を¥へだて/て、¥にふだう−しやうこく¥こうぜ/られ/ぬ。¥こころ−なき¥あやし/の¥もの/も、¥いかが¥うれへ/ざる/べき。¥いかさま¥これ/は¥てんぐ/の¥しよゐ/と¥いふ¥さた/にて、¥へいけ/の¥はやりを/の¥つはもの=ども¥ひやく−よ−にん、¥わらふ¥こゑ/に¥つい/て¥これ/を¥たづぬる/に、¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/に/は、¥この¥さん−か−ねん/は¥ゐん/も¥わたら/せ¥たまは/ず。¥ごしよ−あづかり¥びぜんの−ぜんじ−もとむね/と¥いふ¥もの¥あり。¥かの¥もとむね/が¥あひ−しつ/たる¥もの=ども、¥さけ/を¥もつ/て¥きたり−あつまり、¥のみ/ける/が、「¥かかる¥をりふし/に¥おと¥な¥せ/そ」/とて¥のみ/ける/が、¥しだいに¥のみ−ゑひ/て、¥かやう/に/は¥まひ−をどり/ける/なり。¥ろくはら/の¥つはもの=ども¥これ/を¥きき−つけ、¥ばつと¥おし−よせ、¥さけ/に¥ゑひ=ども¥にさんじふにん¥からめ−とつ/て、¥ろくはら/へ¥ゐ/て¥まゐり、¥つぼ/の−うち/にP371¥ひつ−すゑ/させ、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、¥こと/の¥しさい/を¥たづね−きき¥たまひ/て、「¥げに/も¥さやう/に¥のみ−ゑひ/たら/んずる¥もの/を、¥さう−なく¥きる/べき¥やう¥なし」/とて、¥みな¥かへさ/れ/けり。¥じやうげ¥ひと/の¥うせ/ぬる¥あと/に/は、¥あさゆふ/に¥かね¥うち−ならし、¥れいじ−せんぼふ−する¥こと/は、¥つね/の¥ならひ/なれ/ども、¥この¥ぜんもん¥こうぜ/られ/て¥のち/は、¥いささか¥くぶつ−せそう/の¥いとなみ/と¥いふ¥こと/も¥なし。¥あさゆふ¥ただ¥いくさ−かつせん/の¥いとなみ/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥なし/と/ぞ¥みえ/し。¥
およそ/は¥さいご/の¥しよらう/の¥ありさま=ども/こそ、¥うたてけれ/ども、¥まこと/に/は、¥ただびと/と/も¥おぼえ/ぬ¥こと=ども¥おほかり/けり。¥ひよし/の−やしろ/へ¥まゐり¥たまひ/し/に/も、¥たうけ¥たけ/の¥くぎやう¥おほく¥ぐぶ−し/て、「¥せふろく/の¥しん/の¥かすが/の¥ご=さんけい、¥うぢいり/など¥まうす/とも、¥これ/に/は¥いかで/か¥まさる/べき」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥なに/より/も¥また¥ふくはら/の¥きやうのしま¥つい/て、¥じやうげ¥わうらい/の¥ふね/の、¥いま/の¥よ/に¥いたる/まで、¥わづらひ¥なき/こそ¥めでたけれ。¥かの¥しま/は、¥さんぬる¥おうほう−ぐわんねん−にんぐわつ−じやうじゆん/に、¥つき−はじめ/られ/たり/ける/が、¥おなじき−はちぐわつ−ふつかのひ、¥にはか/に¥おほ−かぜ¥ふき¥おほ−なみ¥たつ/て、¥みな¥ゆり−うしなひ/て/き。¥おなじき−さんねん−さんぐわつ−げじゆん/に、¥あはの−みんぶ−しげよし/を¥ぶぎやう/にて¥つか/れ/ける/に、¥ひとばしら¥たて/らる/べき/なんど、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、¥それ/は¥なかなか¥ざいごふ/なる/べし/とて、¥いし/の¥おもて/に¥いつさいきやう/を¥かい/て、¥つか/れ/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥きやうのしま/と/は¥なづけ/けれ。P372
「じしんばう」(『じしんばう』)S0609¥ある¥ひと/の¥まうし/ける/は、¥きよもり=こう/は¥ただびと/に/は¥あら/ず。¥じゑ−そうじやう/の¥けしん/なり。¥その¥ゆゑ/は、¥つの−くに¥せいちようじ/の¥ひじり、¥じしんばう−そんゑ/と¥まうし/し/は、¥もと/は¥えいざん/の¥がくりよ、¥たねん¥ほつけ/の¥ぢしや/なり。¥しかる/を¥だうしん¥おこし¥りさん−し/て、¥この¥てら/に¥すみ/ける/を、¥ひと¥みな¥きえ−し/けり。¥さんぬる¥じようあん−にねん−じふにんぐわつ−にじふににち/の¥よ/に¥いつ/て、¥そんゑ¥じやうぢう/の¥ぶつぜん/に¥いたり、¥けふそく/に¥より−かかつ/て、¥ほけきやう¥よみ¥たてまつり/ける¥ところ/に、¥ゆめ/と/も¥なく¥うつつ/と/も¥なく、¥じやうえ/に¥たて−ゑぼし¥き/て、¥わらんづ¥はばき−し/たる¥をとこ¥ににん、¥たてぶみ/を¥もつ/て¥き/たり。¥そんゑ¥ゆめ/の¥うち/に、「¥あれ/は¥いづく/より/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥えんま−わうぐう/より¥せんじ/の¥さふらふ」/とて¥そんゑ/に¥わたす。¥そんゑ¥これ/を¥ひらい/て¥みる/に、「¥なんえんぶだい¥だい−につぽんごく¥つの−くに¥せいちようじ/の¥ひじり、¥じしんばう−そんゑ、¥らい¥にじふろくにち¥えんまらじやう−だいこくでん/に/して、¥じふまんぶ/の¥ほけきやう¥あり。¥じふまんごく/より¥じふまんにん/の¥そう/を¥くやう−し、¥ほつけ¥てんどく−せ/らる/べき/なり。¥そんゑ/も¥その¥にんず/たる¥うへ、¥いそぎ¥さんきん−せ/らる/べし。¥えんわうせん¥よつて¥くつしやう¥くだん/の/ごとし。¥じようあん−にねん−じふにんぐわつ−にじふににち、¥えんま/の−ちやう」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥そんゑ¥いなみ¥まうす/に¥およば/ね/ば、¥やがて¥りやうじよう/の¥うけぶみ/を¥たてまつる/と¥おぼえ/て、¥ゆめ¥さめ/ぬ。¥これ/を¥ゐんじゆ/の¥くわうやう−ばう/にP373¥かたり/たり/けれ/ば、¥きく¥ひと¥み/の−け¥よだち/けり。¥その−のち/は¥ひとへに¥しきよ/の¥おもひ/を¥なし/て、¥くち/に/は¥ぶつみやう/を¥となへ、¥こころ/に¥いんぜふ/の¥ひぐわん/を¥ねんず。¥おなじき−にじふごにち/の¥よ/に¥いつ/て、¥また¥じやうぢう/の¥ぶつぜん/に¥まゐり、¥れい/の/ごとく¥ねんじゆ¥どくきやう−す。¥ね/の−こく/ばかり、¥ねぶり¥せつ/なる/が¥ゆゑ/に、¥ぢうばう/に¥かへつ/て¥うち−ふす。¥うし/の−こく/ばかり、¥また¥さき/の/ごとく/に¥をとこ¥ににん¥きたつ/て、¥とうとう/と¥すすむる¥あひだ、¥そんゑ¥さんけい¥いたさ/ん/と¥すれ/ば、¥えはつ¥さらに¥なし。¥えんわうせん/を¥じせ/ん/と¥すれ/ば、¥はなはだ¥その¥おそれ¥あり。¥この¥おもひ/を¥なす¥ところ/に、¥ほふえ¥じねん/に¥み/に¥まとつ/て¥かた/に¥かかり、¥てん/より¥こがね/の¥はち¥くだる。¥ににん/の¥じゆぞう、¥ににん/の¥どうじ、¥じふにん/の¥げそう、¥しつぽう/の¥だいしや、¥じばう/の¥まへ/に¥げんず。¥そんゑ¥よろこん/で¥くるま/に¥のり、¥せいほく/に¥むかつ/て¥そら/を¥かける/と¥おぼえ/て、¥ほど−なく¥えんま−わうぐう/に¥いたり/ぬ。¥
わうぐう/の¥てい/を¥みる/に、¥ぐわいくわく¥くわうくわう/と/して、¥その¥うち¥べうべう/たり。¥その¥なか/に¥しつぽう¥しよじやう/の¥だいこくでん¥あり。¥かうくわう¥こんじき/に/して、¥さらに¥ぼんぶ/の¥まなこ/に¥および−がたし。¥その−ひ/の¥ほふゑ¥をはつ/て¥のち、¥よそう=ら¥みな¥かへり−さん/ぬ。¥そんゑ/は¥だいこくでん/の¥なんぱう/の¥ちうもん/に¥たつ/て、¥はるか/の¥だいこくでん/を¥み−わたせ/ば、¥みやうくわん−みやうじゆ、¥みな¥えんま−ほふわう/の¥おん=まへ/に¥かしこまる。¥あり−がたき¥さんけい/なり。¥この¥ついで/に¥ごしやう/の¥ざいしやう/を¥たづね¥まうさ/ん/と¥おもつ/て¥あゆみ−むかふ。¥その¥あひだ/に¥ににん/の¥じゆそう¥はこ/を¥もち、¥ににん/の¥どうじ¥かい/を¥さし、¥じふにん/の¥げそう¥れつ/を¥ひい/て、¥やうやう¥あゆみ−ちかづく¥とき、¥えんま−ほふわう、¥みやうくわん−みやうじゆ、¥ことごとく¥おり−むかふ。¥やくわう−ぼさつ、¥ゆうぜ−ぼさつ、¥ににん/の¥じゆそう/に¥へんじ、¥たもん¥ぢこく、¥ににん/の¥どうじ/に¥げんず。¥じふ−らせつによ、¥じふにん/の¥げそう/にP374¥へんじ/て、¥ずゐちく−きふじ−し¥たまへ/り。¥えんわう¥とつ/て¥のたまはく、「¥よそう=ら¥みな¥かへり−さん/ぬ。¥おん=ばう¥いち−にん¥きたる¥こと¥いかん」。¥そんゑ¥こたへ¥まうさ/れ/ける/は、「¥われ¥えうせう/より、¥ほつけ¥てんどく¥まいにち¥おこたら/ず/と¥いへ/ども、¥ごしやう/の¥ざいしやう/を¥いまだ¥しら/ず、¥たづね¥まうさ/ん/が¥ため/なり」。¥えんわう¥おほせ/ける/は、「¥わうじやう¥ふわうじやう/は¥ひと/の¥しん¥ふしん/に¥あり/と¥うんぬん。¥それ¥ほつけ/は¥さんぜ/の¥しよぶつ/の¥しゆつせ/の¥ほんくわい、¥しゆじやう¥じやうぶつ/の¥ぢきだう/なり。¥いちねん¥しんげ/の¥くどく/は、¥ごはらみつ/の¥ぎやう/に/も¥こえ、¥ごじふてんでん/の¥ずゐき/の¥くどく/は、¥はちじつ−か−ねん/の¥ふせ/に/も¥すぐれ/たり。¥され/ば¥なんぢ¥かの¥くりき/に¥よつ/て、¥とそつ/の¥ないゐん/に¥しやうず/べし」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥えんわう¥また¥みやうくわん/に¥ちよくし/て¥おほせ/ける/は、「¥この¥ひと/の¥いちご/の¥ぎやう、¥さぜん/の¥ふばこ/に¥あり。¥とり−いだい/て¥けた/の¥ひもん¥みせ¥たてまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥みやうくわん¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥なんぱう/の¥ほうざう/に¥ゆい/て、¥かの¥ひとつ/の¥ふばこ/を¥とつ/て¥まゐり、¥すなはち¥ふた/を¥ひらい/て¥よみ−きか/す。¥いちご/が¥あひだ¥おもひ/と¥おもひ、¥せ/し/と¥せ/し¥こと/の、¥ひとつ/と/して¥あらはれ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥そんゑ¥ひたん−ていきふ−し/て、「¥ただ¥ねがは−く/は、¥しゆつりしやうじ/の¥はうほふ/を¥をしへ、¥しようだいぼだい/の¥ぢきだう/を¥しめし¥たまへ」/と¥なくなく¥まうさ/れ/けれ/ば、¥えんわう¥あいみん−けうげ−し/て、¥しゆじゆ/の¥げ/を¥じゆす。¥
さいし−わうゐ−ざい−けんぞく¥しこ−むいちらいさうしん¥
じやうずゐ−ごふ−き−けいばく−が¥じゆく−けうくわん−むへんざい¥
この¥げ/を¥じゆし−をはつ/て、¥そんゑ/に¥ふぞく−す。¥そんゑ¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、「¥なんえんぶだい¥だい−につぽんごく/に、P375¥へい−だいしやうこく/と¥まうす¥ひと/こそ、¥つの−くに¥わだ/の−みさき/を¥てんじ/て、¥しめん¥じふ−よ−ちやう/に¥や/を¥たて、¥けふ/の¥じふまんぞうゑ/の/ごとく、¥おほく/の¥ぢきやうじや/を¥くつしやうじ/て、¥ばうばう/に¥いちめん/に¥ざ/に¥つけ、¥ねんじゆ¥どくきやう、¥ていねい/に¥ごんぎやう¥いたさ/れ¥さふらふ」/と¥まうす。¥えんわう¥ずゐき−かんたん−し¥たまひ/て、「¥くだん/の¥にふだう/は¥ただびと/に/は¥あら/ず、¥まことに/は¥じゑ−そうじやう/の¥けしん/なり。¥その¥ゆゑ/は、¥てんだい/の¥ぶつぽふ¥ごぢ/の¥ため/に、¥かり/に¥につぽん/に¥さいたん−する¥ゆゑ/に、¥われ¥かの¥ひと/を¥にちにち/に¥さんど¥らいする¥もん¥あり。¥くだん/の¥にふだう/に¥え/さす/べし」/とて、¥
きやうらい−じゑ−だいそうじやう¥てんだい−ぶつぽふ−おうごしや¥
じげん−さいしよ−しやうぐん−しん¥あくごふ−しゆじやう−どう−りやく¥
この¥もん/を¥よみ−をはつ/て、¥そんゑ/に¥また¥ふぞく−す。¥そんゑ¥よろこび/の¥なみだ/を¥ながい/て、¥なんぱう/の¥ちうもん/を¥いづる¥とき、¥じふ−よ−にん/の¥じゆそう=ら、¥くるま/の¥ぜんご/を¥しゆご−し、¥とうなん/に¥むかつ/て¥そら/を¥かけ/り、¥ほど−なく¥かへり−きたる/か/と¥おぼえ/て、¥ゆめ/の¥ここち−し/て¥いき−いで/ぬ。¥その−のち¥みやこ/へ¥のぼり、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/に¥ゆい/て、¥この¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥やうやう/に¥もてなし、¥さまざま/の¥ひきでもの¥たう/で、¥その−とき/の¥けんじやう/に/は、¥りつし/に¥なさ/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥それ/より/して/こそ、¥きよもり=こう/を/ば、¥じゑ−そうじやう/の¥けしん/と/は、¥ひと¥みな¥しり/てげり。¥ぢきやう−しやうにん/は、¥こうぼふ−だいし/の¥さいたん、¥しらかはのゐん/は¥また¥ぢきやう−しやうにん/の¥けしん/なり。¥この¥きみ/は¥くどく/の¥はやし/を¥なし、¥ぜんごん/の¥とく/を¥かさね/させ¥おはします。¥まつだい/に/も¥きよもり=こう、¥じゑ−そうじやう/の¥けしん/にて、¥あくごふ/も¥ぜんごん/も¥とも/にP376¥こう/を¥つん/で、¥よ/の¥ため¥ひと/の¥ため/に、¥じた/の¥りやく/を¥なす/と¥みえ/たり。¥かの¥だつた/と¥しやくそん/の、¥どうしゆじやう/の¥りやく/に¥こと/なら/ず。¥
「ぎをんにようご」(『ぎをんにようご』)S0610¥また¥ふるい¥ひと/の¥まうし/ける/は、¥きよもり=こう/は¥ただびと/に/は¥あら/ず。¥まこと/に/は¥しらかはのゐん/の¥おん=こ/なり。¥その¥ゆゑ/は¥さんぬる¥えいきう/の¥ころほひ、¥ぎをん−にようご/とて、¥さいはひじん¥おはし/き。¥くだん/の¥にようばう/の¥すまひどころ/は、¥ひがしやま/の¥ふもと、¥ぎをん/の¥ほとり/にて/ぞ¥あり/ける。¥しらかはのゐん¥つね/は¥かしこ/へ¥ご=かう¥なる。¥ある−とき¥てんじやうびと¥いちりやう−にん、¥ほくめん¥せうせう¥めし−ぐし/て、¥しのび/の¥ご=かう¥あり/し/に、¥ころ/は¥さつき−はつか−あまり、¥まだ¥よひ/の¥こと/なる/に、¥さみだれ/さへ¥かき−くれ/て、¥よろづ¥もの¥いぶせかり/ける¥をりふし、¥くだん/の¥にようばう/の¥しゆくしよ¥ちかう¥み=だう¥あり。¥み=だう/の¥かたほとり/より、¥ひかりもの/こそ¥いで−き/たれ。¥かしら/は¥しろがね/の¥はり/を¥みがき−たて/たる¥やう/に¥きらめき、¥かたて/に/は¥つち/の¥やう/なる¥もの/を¥もち、¥かたて/に/は¥ひかる¥もの/を/ぞ¥もつ/たり/ける。¥これ/ぞ¥まこと/の¥おに/と¥おぼゆる。¥て/に¥もて/る¥もの/は、¥きこゆる¥うちで/の−こづち/なる/べし。¥いかが−せ/ん/とて、¥きみ/も¥しん/も¥おほき/に¥さわが/せ¥おはします。¥その−とき¥ただもり、¥ほくめん/の¥げらふ/にて、¥ぐぶ−せ/られ/たり/ける/を、¥ごぜん/へP377¥めし/て、「¥この¥なか/に/は¥なんぢ/ぞ¥ある/らん。¥あの¥もの¥い/も¥ころし、¥きり/も¥とどめ/な/ん/や」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て¥あゆみ−むかふ。¥ただもり¥ないない¥おもひ/ける/は、¥この¥もの¥さし/て¥たけき¥もの/と/は¥みえ/ず、¥おもふ/に¥きつね¥たぬき/の¥しわざ/にて/ぞ¥ある/らん。¥これ/を¥い/も¥ころし、¥きり/も¥とどめ/たら/ん/は、¥むげ/に¥ねん¥なから/まし。¥おなじく/は¥いけどり/に¥せ/ん/と¥おもう/て、¥あゆみ−むかふ。¥と/ばかり¥あつ/て/は¥さつ/と/は¥ひかり、¥と/ばかり¥あつ/て/は¥さつ/と/は¥ひかり、¥にさんど¥し/ける/を、¥ただもり¥はしり−よつ/て¥むず/と¥くむ。¥くま/れ/て、「¥こ/は¥いか/に」/と¥さわぐ。¥へんげ/の−もの/にて/は¥なかり/けり。¥ひと/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥その−とき¥じやうげ¥てんで/に¥ひ/を¥ともい/て、¥これ/を¥ごらんじ−み¥たまふ/に、¥ろくじふ/ばかり/の¥ほふし/なり。¥たとへば¥み=だう/の¥じようじ−ぼふし/にて¥あり/ける/が、¥ほとけ/に¥み=あかし/を¥まゐらせ/ん/とて、¥かたて/に/は¥てがめ/と¥いふ¥もの/に¥あぶら/を¥いれ/て¥もち、¥かたて/に/は¥かはらけ/に¥ひ/を¥いれ/て/ぞ¥もつ/たり/ける。¥あめ/は¥い/に−い/て¥ふる。¥ぬれ/じ/とて、¥こむぎ/の¥わら/を¥ひき−むすん/で¥かづい/たり/ける/が、¥かはらけ/の¥ひ/に¥かがやい/て、¥ひとへ/に¥しろがね/の¥はり/の/ごとく/に/は¥みえ/ける/なり。¥こと/の¥てい¥いちいち¥しだい/に¥あらはれ/ぬ。「¥これ/を¥い/も¥ころし、¥きり/も¥とどめ/たら/ん/は、¥いか/に¥ねん¥なから/まし。¥ただもり/が¥ふるまひ/こそ¥まことに¥しりよ¥ふかけれ。¥ゆみ−や−とり/は¥やさしかり/ける/ものかな」/とて、¥さ/しも¥ご=さいあい/と¥きこえ/し¥ぎをん−にようご/を、¥ただもり/に/こそ¥くださ/れ/けれ。¥この¥にようご¥はらみ¥たまへ/り。「¥うめ/らん¥こ、¥によし/なら/ば¥ちん/が¥こ/に¥せ/ん。¥なんし/なら/ば、¥ただもり¥とり/て、¥ゆみ−や−とり/に¥したてよ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥すなはち¥なん/を¥うめ/り。¥こと/に¥ふれ/て/は¥ひろう−せ/ざり/けれ/ども、P378¥ないない/は¥もてなし/けり。¥
この¥こと¥いか/に/も−し/て¥そうせ/ばや/と¥おもは/れ/けれ/ども、¥しかる/べき¥びんぎ/も¥なかり/ける/が、¥ある−とき¥しらかはのゐん、¥くまの/へ¥ご=かう¥なる。¥きの−くに¥いとがさか/と¥いふ¥ところ/に、¥おん=こし¥かき−すゑ/させ、¥しばらく¥ご=きうそく¥あり/けり。¥その−とき¥ただもり、¥やぶ/に¥いくら/も¥あり/ける¥ぬかご/を、¥そで/に¥もり−いれ、¥ごぜん/へ¥まゐり¥かしこまつ/て、¥
いも/が¥こ/は¥はふ/ほど/に/こそ¥なり/に/けれ
/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゐん¥やがて¥おん=こころえ¥あつ/て、¥
ただ¥もり−とり/て¥やしなひ/に¥せよ W047
/と/ぞ¥つけ/させ¥ましまし/ける。¥さて/こそ¥わが¥こ/と/は¥もてなさ/れ/けれ。¥この¥わかぎみ、¥あまり/に¥よなき/を¥し¥たまひ/しか/ば、¥ゐん¥きこしめし/て、¥いつしゆ/の¥ご=えい/を¥あそばい/て/ぞ¥くださ/れ/ける。¥
よなき−す/と¥ただ¥もり−たて/よ¥すゑ/の¥よ/に¥きよく¥さかふる¥こと/も/こそ¥あれ W048¥
それ/より/して/こそ¥きよもり/と/は¥なのら/れ/けれ。¥じふに/の¥とし¥げんぶく−し/て¥ひやうゑ/の−すけ/に¥なり、¥じふはち/の¥とし¥し−ほん−し/て、¥しゐ/の−ひやうゑ/の−すけ/と¥まうせ/し/を、¥しさい¥ぞんぢ−せ/ぬ¥ひと/は、「¥くわぞく/の¥ひと/こそ¥かう/は」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥とばのゐん/は¥しろしめし/て、「¥きよもり/が¥くわぞく/は¥ひと/に¥おとら/じ」/と/こそ¥おほせ/けれ。¥むかし/も¥てんぢ−てんわう、¥はらみ¥たまへ/る¥にようご/を¥たいしよくくわん/に¥たまふ/とて、「¥この¥にようご/の¥うめ/らんP379¥こ、¥によし/なら/ば¥ちん/が¥こ/に¥せ/ん、¥なんし/なら/ば¥しん/が¥こ/に¥せよ」/と¥おほせ/ける/に、¥すなはち¥なん/を¥うめ/り。¥たふのみね/の¥ほんぐわん¥ぢやうゑ−くわしやう¥これ/なり。¥しやうだい/に/も¥かかる¥ためし¥あり/けれ/ば、¥まつだい/に/も¥きよもり=こう、¥まこと/に/は¥しらかはのゐん/の¥わうじ/と/して、¥さ/しも¥たやすから/ぬ¥てんが/の¥だいじ、¥みやこうつり/など¥いふ¥こと/を/も、¥おもひ−たた/れ/ける/に/こそ。¥
「すのまたかつせん」¥おなじき−はつかのひ、¥ごでうの−だいなごん−くにつなの−きやう/も¥うせ¥たまひ/ぬ。¥にふだう−しやうこく/と¥さ/しも¥ちぎり¥ふかう¥おはせ/し/が、¥どう−にち/に¥やまひ¥つい/て、¥おなじ−つき¥うせ¥たまひ/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥おなじき−にじふににち、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥ゐんざん−し/て、¥ゐん/の−ごしよ/を¥ほふぢうじ=どの/へ¥ご=かう¥なし¥たてまつる/べき¥よし¥そうせ/らる。¥かの¥ごしよ/は¥さんぬる¥おうほう−ぐわんねん−しんぐわつ−じふごにち/に¥つくり−いださ/れ/て、¥いまびよし、¥いまぐまの、¥まぢかう¥くわんじやう−し¥たてまつり、¥せんずゐ−こだち/に¥いたる/まで、¥おぼしめす¥まま/なり/し/が、¥へいけ/の¥あくぎやう/に¥よつ/て、¥この¥にさん−か−ねん/は、¥ゐん/も¥わたら/せ¥たまは/ず。¥ごしよ/の¥はゑ−し/たる/を¥しゆり−し/て、¥ご=かう¥なし¥まゐらす/べき¥よし、¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう、「¥なん/の¥やう/も¥ある/べから/ず。¥ただ¥とうとう」/とて¥ご=かう¥なる。¥まづP380¥こ=けんしゆんもんゐん/の¥おはし/ける¥おん=かた/を¥ごらんずれ/ば、¥きし/の¥まつ、¥みぎは/の¥やなぎ、¥とし¥へ/に/けり/と¥おぼしく/て、¥こだかく¥なれ/り。¥たいえき/の¥ふよう、¥びあう/の¥やなぎ、¥これ/に¥むかふ/に¥いかんが¥なんだ¥すすま/ざら/ん。¥かの¥なんだい−せいきう/の¥むかし/の¥あと、¥いま/こそ¥おぼしめし−しら/れ/けれ。¥さんぐわつ−ひとひのひ、¥なんと/の¥そうがう=ら、¥みな¥ゆるさ/れ/て¥ほんぐわん/に¥ふくす。¥まつじ−しやうゑん¥いつしよ/も¥さうゐ¥ある/べから/ざる¥よし¥おほせ−くださ/る。¥おなじき−みつかのひ、¥だいぶつでん¥ことはじめ¥あり。¥ことはじめ/の¥ぶぎやう/に/は、¥さきの−させうべん−ゆきたか/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥この¥ゆきたか、¥せんねん¥やはた/へ¥まゐり、¥つや−せ/られ/たり/ける¥ゆめ/に、¥ご=はうでん/の¥み=と¥おし−ひらき、¥びんづら¥ゆう/たる¥てんどう/の¥いで/て、「¥これ/は¥だい−ぼさつ/の¥お=つかひ/なり。¥だいぶつでん¥ことはじめ/の¥ぶぎやう/の¥とき/は、¥これ/を¥もつ/べし」/とて、¥しやく/を¥たまはる/と¥いふ¥ゆめ/を¥み/て、¥さめ/て¥のち¥み¥たまへ/ば、¥うつつ/に¥まくらがみ/に/ぞ¥さふらひ/ける。¥あな¥ふしぎ、¥たうじ¥なにごと¥あつ/て/か、¥だいぶつでん¥ことはじめ/の¥ぶぎやう/に/は¥まゐる/べし/と¥おもは/れ/けれ/ども、¥ご=れいむ/なれ/ば、¥くわいちう−し/て¥しゆくしよ/に¥かへり、¥ふかう¥をさめ/て¥おか/れ/ける/が、¥へいけ/の¥あくぎやう/に¥よつ/て、¥なんと−えんしやう/の¥あひだ、¥おほく/の¥べん/の¥なか/に、¥この¥ゆきたか¥えらび−いださ/れ/て、¥だいぶつでん¥ことはじめ/の¥ぶぎやう/に¥まゐら/れ/ける¥しゆくえん/の¥ほど/こそ¥めでたけれ。¥
おなじき−とをかのひ、¥みのの−くに/の¥もくだい、¥はやむま/を¥もつて¥みやこ/へ¥まうし/ける/は、¥げんじ¥すで/に¥をはりの−くに/まで¥せめ−のぼり、¥みち/を¥ふさい/で、¥ひと/を¥いつかう¥とほさ/ぬ¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、¥へいけ¥やがて¥うつて/を¥さし−むけ/らる。¥たいしやうぐん/に/は、¥さひやうゑ/の−かみ−とももり、¥さちうじやう−きよつね、¥おなじき−せうしやう−ありもり、¥たんごの−じじう−ただふさ、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥ゑつちうの−じらう−ひやうゑ−もりつぎ、¥かづさの−ごらう−ひやうゑ−ただみつ、P381¥あく−しち−びやうゑ−かげきよ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥さんまん−よ−き、¥をはりの−くに/へ¥はつかう−す。¥にふだう−しやうこく¥こうぜ/られ/て、¥わづか/に¥ごじゆん/を/だに¥みた/ざる/に、¥さ/こそ¥みだれ/たる¥よ/と¥いひ/ながら、¥あさましかり/し¥こと=ども/なり。¥げんじ/の¥かた/に/は、¥じふらう−くらんど−ゆきいへ、¥ひやうゑ/の−すけ/の¥おとと−きやう/の−きみ−ぎゑん、¥つがふ¥その¥せい¥ろくせん−よ−き、¥をはりがは/を¥へだて/て、¥げんぺい¥りやうばう/に¥ぢん/を¥とる。¥おなじき−じふろくにち/の¥よ/に¥いつ/て、¥げんじ¥ろくせん−よ−き¥かは/を¥わたい/て、¥へいけ¥さんまん−よ−き/が¥せい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥とら/の−こく/より¥や−あはせ−し/て、¥よ/の¥あくる/まで¥たたかふ/に、¥へいけ/の¥かた/に/は¥ちつと/も¥さわが/ず。「¥かたき/は¥かは/を¥わたい/たれ/ば、¥むま¥もののぐ/も¥みな¥ぬれ/たる/ぞ。¥それ/を¥しるし/に¥うて/や」/とて、¥げんじ/を¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥ひやうゑ/の−すけ/の¥おとと−きやう/の−きみ−ぎゑん、¥ふかいり−し/て¥うた/れ/に/けり。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ¥さんざん/に¥たたかひ、¥いへのこ−らうどう¥おほく¥い/させ、¥ちから¥およば/で、¥かは/より¥ひがし/へ¥ひき−しりぞく。¥へいけ¥やがて¥かは/を¥わたい/て、¥おち−ゆく¥げんじ/を、¥おふものい/に¥い/て¥ゆく/に、¥あそこ−ここ/にて¥かへし−あはせ/て、¥ふせぎ−たたかふ/と¥いへ/ども、¥たぜい/に¥ぶぜい、¥かなふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。「¥すゐえき/を¥うしろ/に¥する¥こと¥なかれ/と/こそ¥いふ/に、¥こんど/の¥げんじ/の¥はかりごと/は¥おろか/なり」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ/は¥ひき−しりぞき、¥みかはの−くに/に¥うち−こえ/て、¥やはぎがは/の¥はし/を¥ひき、¥かいだて¥かい/て¥まち−かけ/たり。¥へいけ¥やがて¥つづい/て¥せめ¥たまへ/ば、¥そこ/を/も¥つひに¥せめ−おとさ/れ/ぬ。¥なほ/も¥つづい/て¥せめ¥たまは/ば、¥みかは¥とほたふみ/の¥せい/は、¥たやすう¥つく/べかり/し/を、¥たいしやうぐん−さひやうゑ/の−かみ−とももり、P382¥いたはり¥あり/とて、¥みかはの−くに/より¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/けり。¥こんど/も¥わづか/に¥いちぢん/を/こそ¥やぶら/れ/たれ/ども、¥ざんたう/を¥せめ/ざれ/ば、¥させる¥し−いだし/たる¥こと¥なき/が/ごとし。¥へいけ/は¥きよきよねん¥こまつの−おとど¥こうぜ/られ/ぬ。¥こんねん¥また¥にふだう−しやうこく¥うせ¥たまひ/ぬ。¥うんめい/の¥すゑ/に¥なる¥こと¥あらは/なり/しか/ば、¥ねんらい¥おんこ/の¥ともがら/の¥ほか/は、¥したがひ−つく¥もの¥なかり/けり。¥とうごく/は¥くさ/も¥き/も、¥みな¥げんじ/に/ぞ¥なびき/ける。¥
「しはがれごゑ」(『しはがれごゑ』)S0611¥さる−ほど/に¥ゑちごの−くに/の¥ぢうにん、¥じやうの−たらう−すけなが、¥ゑちごの−かみ/に¥にんぜ/らる。¥てうおん/の¥かたじけな−さ/に、¥きそ¥つゐたう/の¥ため/に/とて、¥その¥せい¥さんまん−よ−き/で、¥しなのの−くに/へ¥はつかう−す。¥ろくぐわつ−じふごにち/に¥かどで−し/て、¥すでに¥うつ−たた/ん/と¥し/ける¥やはん/ばかり、¥にはか/に¥そら¥かき−くもり、¥いかづち¥おびたたしう¥なつ/て、¥おほ−あめ¥くだり、¥てん¥はれ/て¥のち、¥こくう/に¥しはがれ/たる¥こゑ/を¥もつて、「¥なんえんぶだい¥こんどう−じふろく−ぢやう/の¥るしやなぶつ¥やき−ほろぼし¥たてまつ/たる¥へいけ/の¥かたうど−する¥もの¥ここ/に¥あり。¥よつて¥めし−とれ/や」/と、¥みこゑ¥さけん/で/ぞ¥とほり/ける。¥じやうの−たらう/を¥はじめ/と/して、¥これ/を¥きく¥つはもの=ども、¥みな¥み/の−け¥よだち/けり。¥らうどう=ども、「¥これ−ほど¥おそろしき¥てん/の¥おん=つげ/の¥さふらふ/に、P383¥ただ¥り/を¥まげ/て¥とまら/せ¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ども、「¥ゆみ−や¥とる¥み/の、¥それ/に¥よる/べから/ず」/とて、¥じやう/を¥いで/て、¥わづか¥にじふ−よ−ちやう/ぞ¥ゆき/たり/ける。¥また¥くろくも¥ひとむら¥たち−きたつ/て、¥すけなが/が¥うへ/に¥おほふ/と¥みえ/し/が、¥たちまち/に¥み¥すくみ¥こころ¥ほれ/て、¥らくば−し/て/けり。¥こし/に¥かか/れ/て¥たち/へ¥かへり、¥うち−ふす¥こと¥みとき/ばかり¥あつ/て、¥つひに¥しに/に/けり。¥ひきやく/を¥もつて¥みやこ/へ¥この¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、¥へいけ/の¥ひとびと、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥おなじき−しちぐわつ−じふしにち¥かいげん¥あつ/て、¥やうわ/と¥かうす。¥その−ひ¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥ちくごの−かみ−さだよし、¥ひごの−かみ/に¥なつ/て、¥ちくぜん¥ひご¥りやうごく/を¥たまはつ/て、¥ちんぜい/の¥むほん¥たひらげ/に、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥ちんぜい/へ¥はつかう−す。¥また¥その−ひ¥ひじやう/の¥しや¥おこなは/れ/て、¥さんぬる¥ぢしよう−さんねん/に¥ながさ/れ¥たまひ/し¥ひとびと、¥みな¥みやこ/へ¥めし−かへさ/る。¥にふだう−まつ=どの−てんが、¥びぜんの−くに/より¥のぼら/せ¥たまふ。¥めうおんゐん/の−だいじやう/の−おほい=どの、¥をはりの−くに/より¥ご=しやうらく、¥あぜち/の−だいなごん−すけかたの−きやう/は、¥しなのの−くに/より¥きらく/と/ぞ¥きこえ/し。¥
おなじき−にじふはちにち、¥めうおんゐん=どの¥ご=ゐんざん、¥さんぬる¥ちやうくわん/の¥きらく/に/は、¥ごぜん/の¥すのこ/に/して、¥がわうおん、¥げんじやうらく/を¥ひき¥たまひ/し/が、¥やうわ/の¥いま/の¥ききやう/に/は、¥せんとう/に/して¥しうふうらく/を/ぞ¥あそばさ/れ/ける。¥いづれ/も¥いづれ/も¥ふぜい¥をり/を¥おぼしめし−よら/せ¥たまひ/ける、¥お=こころばせ/こそ¥めでたけれ。¥あぜち/の−だいなごん−すけかたの−きやう/も、¥その−ひ¥おなじう¥ゐんざん−せ/らる。¥ほふわう¥えいらん¥あつ/て、「¥いか/に/や−いか/に、¥この−ころ/は¥ならは/ぬ¥ひな/の¥すまひ−し/て、¥えいきよく/など/も、¥いま/は¥さだめて¥あとかた¥あら/じ/と/こそ¥おぼしめせ/ども、¥まづ¥いまやう¥ひとつ¥あれ/かし」/とP384¥おほせ/けれ/ば、¥だいなごん¥ひやうし¥とつ/て、「¥しなの/に¥あん/なる¥きそぢがは」/と¥いふ¥いまやう/を、¥これ/は¥まさしう¥み−きか/れ/たり/しか/ば、「¥しなの/に¥あり/し¥きそぢがは」/と¥うたは/れ/ける/こそ、¥とき/に¥とつ/て/の¥かうみやう/なれ。¥
「よこたかはらかつせん」(『よこたがはらのかつせん』)S0612¥はちぐわつ−なぬかのひ、¥くわん/の−ちやう/に/して¥だい−にんわうゑ¥おこなは/る。¥これ/は¥まさかど¥つゐたう/の¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥くぐわつ−ひとひのひ、¥すみとも¥つゐたう/の¥れい/とて、¥いせ−だい−じんぐう/へ¥くろがね/の−よろひ−かぶと/を¥まゐらせ/らる。¥ちよくし/は¥さいしゆ¥じんぎ/の−ごん/の−たいふ−おほなかとみの−さだたか、¥みやこ/を¥たつ/て、¥あふみの−くに¥かふが/の¥うまや/より¥やまひ¥つい/て、¥おなじき−みつかのひ、¥いせ/の−りきう/に/して¥つひに¥しに/ぬ。¥また¥てうぶく/の¥ため/に、¥ごだんの−ほふ¥うけたまはつ/て¥おこなひ/ける¥こうざんぜ/の−だいあじやり、¥だい−ぎやうじ/の¥ひがんじよ/に/して、¥ねじに/に¥しに/ぬ。¥しんめい/も¥さんぱう/も、¥ご=なふじゆ¥なし/と¥いふ¥こと¥いちじるし。¥また¥だいげん/の−ほふ¥うけたまはつ/て¥おこなひ/ける、¥あんじやうじ/の−じつげん−あじやり/が、¥おん=くわんじゆ/を¥まゐらせ/たる/を、¥ひけん−せ/られ/けれ/ば、¥へいじ¥てうぶく/の¥よし/を¥ちうしん−し/ける/こそ¥おそろしけれ。「¥こ/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、「¥てうてき¥てうぶく−せよ/と¥おほせ−くださ/る。¥つらつら¥たうせい/の¥てい/を¥み¥さふらふ/に、¥へいけ¥もつぱら¥てうてき/と¥みえ/たり。¥よつて¥かれ/を¥てうぶく−す。¥なん/の¥とが/や¥さふらふ/べき」/と/ぞ¥まうし/ける。P385¥この¥ほふし¥きくわい/なり、¥しざい/か¥るざい/か/と¥さた¥あり/しか/ども、¥だいせうじ/の¥そうげき/に¥うち−まぎれ/て、¥なん/の¥さた/に/も¥およば/ず。¥へいけ¥ほろび¥げんじ/の¥よ/に¥なつ/て、¥かまくら/へ¥くだり、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥かまくら=どの¥かんじ¥たまひ/て、¥その¥けんじやう/に¥そうじやう/に¥なさ/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥おなじき−じふにんぐわつ−にじふしにち、¥ちうぐう¥ゐんがう¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥けんれいもんゐん/と/ぞ¥まうし/ける。¥しゆじやう¥いまだ¥えうしゆ/の¥おん=とき、¥ぼこう/の¥ゐんがう、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/て¥やうわ/も¥にねん/に¥なり/に/けり。¥せちゑ¥いげ¥つね/の/ごとし。¥にんぐわつ−にじふいちにち、¥たいはく¥ばうせい/を¥をかす。¥てんもんえうろく/に¥いはく、「¥たいはく¥ばうせい/を¥をかせ/ば、¥しい¥おこる」/と¥いへ/り。¥また、「¥しやうぐん¥ちよくめい/を¥うけたまはつ/て、¥くに/の¥さかひ/を¥いづ」/と/も¥みえ/たり。¥さんぐわつ−とをかのひ、¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥へいけ/の¥ひとびと¥たいりやく¥くわん−かかい−し¥たまふ。¥しんぐわつ−じふごにち、¥さきの−ごん−せう−そうづ−けんしん、¥ひよし/の−やしろ/に/して、¥によほふ/に¥ほけきやう¥いちまんぶ¥てんどく¥いたさ/るる¥こと¥あり/けり。¥ご=けちえん/の¥ため/に/とて¥ほふわう/も¥ご=かう¥なる。¥なにもの/の¥まうし−いだし/たり/ける/やらん、¥いちゐん¥さんもん/の¥だいしゆ/に¥おほせ/て、¥へいけ−つゐたう−せ/らる/べし/と¥きこえ/しか/ば、¥ぐんびやう¥だいり/へ¥さんじ/て、¥しはう/の¥ぢんどう/を¥けいご−す。¥へいじ/の¥いちるゐ、¥みな¥ろくはら/へ¥はせ−あつまる。¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥ひよし/の−やしろ/へ¥さんかう−す。¥さんもん/に¥また¥きこえ/ける/は、¥へいけ¥やま¥せめ/ん/とて、¥とうざん−す/と¥きこえ/しか/ば、¥だいしゆ¥ひがしざかもと/へ¥おり−くだつ/て、¥こ/は¥いか/に/と¥せんぎ−す。¥ほふわう/も¥えいりよ/を¥おどろか/させ¥おはします。¥くぎやう−てんじやうびと/も¥いろ/をP386¥うしなひ、¥ほくめん/の¥ともがら=ども/の¥なか/に/は、¥あまり/に¥あわて−さわい/で、¥わうずゐ¥つく¥もの¥おほかり/けり。¥さんじやう¥らくちう/の¥さうどう¥なのめ/なら/ず。¥さる−ほど/に¥しげひらの−きやう、¥あなふ/の¥へん/にて、¥ほふわう¥むかひ−とり¥まゐらせ/て、¥みやこ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつる。「¥いちゐん¥さんもん/の¥だいしゆ/に¥おほせ/て、¥へいけ−つゐたう−せ/らる/べし/と¥いふ¥こと/も、¥へいけ¥また¥やま¥せめ/ん/と¥いふ¥こと/も、¥あとかた−なき¥そらごと/なり。¥ただ¥てんま/の¥よく¥あれ/たる/に/こそ」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥ほふわう¥おほせ/なり/ける/は、「¥かく/のみ¥あら/ん/に/は、¥この−のち/は¥おん=ものまうで/など¥まうす¥おん=こと/も、¥おん=こころ/に/は¥まかす/まじき¥こと/やらん」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥おなじき−はつかのひ、¥にじふにしや/へ¥くわんぺいし/を¥たて/らる。¥これ/は¥ききん¥しつえき/に¥よつ/て/なり。¥おなじき−ごぐわつ−にじふしにち/に¥かいげん¥あつ/て、¥じゆえい/と¥かうす。¥その−ひ¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥ゑちごの−くに/の¥ぢうにん¥じやうの−しらう−すけもち、¥ゑちごの−かみ/に¥にんず。¥あに¥すけなが¥せいきよ/の¥あひだ、¥ふきつ/なり/とて、¥しきり/に¥じし¥まうし/けれ/ども、¥ちよくめい/なれ/ば¥ちから¥およば/ず。¥これ/に¥よつ/て¥すけもち/を¥ながもち/と¥かいみやう−す。¥
さる−ほど/に¥くぐわつ−ふつかのひ、¥ゑちごの−くに/の¥ぢうにん、¥じやうの−しらう−ながもち、¥きそ¥つゐたう/の¥ため/に/とて、¥ゑちご、¥では、¥あひづ¥しぐん/の¥つはもの=ども/を¥いんぞつ−し/て、¥つがふ¥その¥せい¥しまん−よ−き、¥しなのの−くに/へ¥はつかう−す。¥おなじき−ここのかのひ、¥たう−ごく¥よこたがはら/に¥ぢん/を¥とる。¥きそ/は¥よだ/の−じやう/に¥あり/ける/が、¥さんぜん−よ−き/で¥じやう/を¥いで/て¥はせ−むかふ。¥ここ/に¥しなの−げんじ、¥ゐのうへの−くらう−みつもり/が¥はかりごと/に、¥さんぜん−よ−き/を¥ななて/に¥わかち、¥にはか/に¥あかはた¥ななながれ¥つくつ/て、¥てんで/に¥さし−あげ、¥あそこ/の¥みね、¥ここ/の¥ほら/より¥よせ/けれ/ば、¥ゑちご/の¥せい=ども¥これ/を¥み/て、「¥あはや¥このP387¥くに/に/も¥み=かた/の¥あり/ける/は。¥ちから¥つき/ぬ」/とて¥いさみ−よろこぶ¥ところ/に、¥しだい/に¥ちかう¥なり/けれ/ば、¥あひづ/を¥さだめ/て、¥ななて/が¥ひとつ/に¥なり、¥あかはた=ども¥きり−すて/させ、¥かねて¥ようい−し/たり/ける¥しらはた/を、¥ざつと¥さし−あげ/て、¥とき/を¥どつと¥つくり/けれ/ば、¥ゑちご/の¥せい=ども¥これ/を¥み/て、「¥こ/は¥たばから/れ/に/けり。¥かたき¥なんじふまんぎ/か¥ある/らん、¥とり−こめ/られ/て/は¥かなふ/まじ」/とて、¥あわて−ふためき/ける/が、¥あるひは¥かは/へ¥おつ−ぱめ/られ、¥あるひは¥あくしよ/へ¥おひ−おとさ/れ/て、¥たすかる¥もの/は¥すくなう、¥うた/るる¥もの/ぞ¥おほかり/ける。¥じやうの−しらう/が¥むね/と¥たのみ−きつ/たる¥ゑちごの−やまの−たらう、¥あひづの−じようたん−ばう/など¥いふ¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの=ども、¥そこ/にて¥みな¥うつ−とら/れ/ぬ。¥じやうの−しらう、¥わが−み¥て−おひ、¥からき¥いのち/を¥いき/つつ、¥かは/に¥つい/て¥ゑちごの−くに/に¥ひき−しりぞく。¥ひきやく/を¥もつて¥みやこ/へ¥この¥よし/を¥まうし/たり/けれ/ども、¥へいけ/の¥ひとびと¥これ/を¥こと/と/も¥し¥たまは/ず。¥おなじき−じふろくにち、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥だいなごん/に¥くわんぢやく−し/て、¥じふぐわつ−みつかのひ、¥ないだいじん/に¥なり¥たまふ。¥おなじき−なぬか、¥よろこび−まうし/の¥あり/し/に、¥くぎやう/に/は¥くわざんのゐん−ちうなごん/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥じふににん¥こしよう−し/て¥やり−つづけ/らる。¥くらんど/の−とう−ちかむね¥いげ、¥てんじやうびと¥じふろくにん¥ぜんく−す。¥ちうなごん¥しにん、¥さんみ/の−ちうじやう/も¥さん−にん/まで¥おはし/き。¥とうごく¥ほくこく/の¥げんじ=ら、¥はち/の/ごとく/に¥おこり−あひ、¥ただいま¥みやこ/へ¥みだれ−いる¥よし¥きこえ/しか/ども、¥へいけ/の¥ひとびと/は、¥かぜ/の¥ふく/やらん、¥なみ/の¥たつ/やらん/を/も¥しり¥たまは/ず。¥かやう/に¥はなやか/なり/し¥こと=ども、¥なかなか¥いふ−かひ−なう/ぞ¥みえ/し。P388¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/て、¥じゆえい/も¥にねん/に¥なり/に/けり。¥せちゑ¥いげ¥つね/の/ごとし。¥しやうぐわつ−いつかのひ、¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/けり。¥これ/は¥とばのゐん¥ろくさい/にて、¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/し、¥その¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥にんぐわつ−にじふいちにち、¥むねもり=こう¥じゆ−いちゐ−し¥たまふ。¥やがて¥その−ひ¥ないだいじん/を/ば¥じやうへう−せ/らる。¥これ/は¥ひやうらん−つつしみ/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥なんと−ほくれい/の¥だいしゆ、¥ゆやきんぽうせん/の¥そうと、¥いせ−だい−じんぐう/の¥さいしゆ¥じんぐわん/に¥いたる/まで、¥いつかう¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥こころ/を¥かよは/し/けり。¥しかい/に¥せんじ/を¥なし−くだし、¥しよ−こく/へ¥ゐんぜん/を¥つかはせ/ども、¥ゐんぜん¥せんじ/を/も、¥みな¥へいけ/の¥げぢ/と/のみ¥こころ−え/て、¥したがひ−つく¥もの¥なかり/けり。¥

 

入力者:荒山慶一



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