平家物語 巻第九  総かな版(元和九年本)
「こでうはい」(『いけずきのさた』)S0901¥じゆえい−さんねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥ゐん/の−ごしよ/は¥だいぜん/の−だいぶ−なりただ/が¥しゆくしよ、¥ろくでう−にし/の−とうゐん/なり/けれ/ば、¥ごしよ/の¥てい¥しかる/べから/ず/とて、¥ゐん/の¥はいらい/も¥おこなは/れ/ず。¥ゐん/の¥はいらい¥なかり/けれ/ば、¥だいり/の¥こでうはい/も¥おこなは/れ/ず。¥へいけ/は¥さぬきの−くに¥やしま/の−いそ/に¥おくり−むかへ/て、¥とし/の¥はじめ/なれ/ども、¥ぐわんにち¥ぐわんざん/の¥ぎしき¥こと¥よろしから/ず。¥しゆしやう¥わたら/せ¥たまへ/ども、¥せちゑ/も¥おこなは/れ/ず、¥しはうはい/も¥なし。¥はらか/も¥そうせ/ず、¥よしの/の−くず/も¥まゐら/ず。「¥よ¥みだれ/たり/しか/ども、¥みやこ/にて/は¥さすが¥かく/は¥なかり/し/ものを」/と/ぞ、¥おのおの¥のたまひ−あは/れ/ける。¥せいやう/の¥はる/も¥き/たり、¥うら¥ふく¥かぜ/も¥やはらか/に、¥ひかげ/も¥のどか/に¥なり−ゆけ/ど、¥ただ¥へいけ/の¥ひとびと/は、¥いつも¥こほり/に¥とぢ−こめ/られ/たる¥ここち−し/て、¥かんくてう/に¥こと/なら/ず。¥とうがん¥せいがん/の¥やなぎ¥ちそく/を¥まじへ、¥なんし¥ほくし/の¥うめ、¥かいらく¥すでに¥こと/に/して、¥はな/の¥あした¥つき/の¥よ、¥しいか−くわんげん、¥まり、¥こゆみ、¥あふぎ−あはせ、P116¥ゑ−あはせ、¥くさ−づくし、¥むし−づくし、¥さまざま¥きよう¥あり/し¥こと=ども¥おもひ−いで、¥かたり−つづけ/て、¥ながき¥ひ/を¥くらし−かね¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥
「うぢがは」¥おなじき−しやうぐわつ−じふいちにち、¥きその−さま/の−かみ−よしなか¥ゐんざん−し/て、¥へいけ−つゐたう/の¥ため/に、¥さいこく/へ¥はつかう−す/べき¥よし/を¥そうもん−す。¥おなじき−じふさんにち、¥すでに¥かどいで−す/と¥きこえ/しか/ば、¥かまくら/の−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥きそ/が¥らうぜき¥しづめ/ん/とて、¥のりより¥よしつね/を¥さき/と/して、¥すまんぎ/の¥ぐんびやう/を¥さし−のぼせ/られ/ける/が、¥すでに¥みのの−くに、¥いせの−くに/に/も¥つく/と¥きこえ/しか/ば、¥きそ¥おほき/に¥おどろき、¥うぢ−せた/の−はし/を¥ひい/て、¥ぐんびやう=ども/を/も¥わかち−つかはす。¥をりふし¥せい/こそ¥なかりけれ。¥まづ¥せた/の−はし/へ/は、¥おほて/なれ/ば/とて、¥いまゐの−しらう−かねひら、¥はつぴやく−よ−き/にて¥さし−つかはす。¥うぢばし/へ/は、¥にしな、¥たかなし、¥やまだの−じらう、¥ごひやく−よ−き/で¥つかはし/けり。¥いもあらひ/へ/は、¥をぢ/の¥しだの−さぶらう−せんじやう−よしのり、¥さんびやく−よ−き/で¥むかひ/けり。¥さる−ほど/に¥とうごく/より¥せめ−のぼる¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥かまの−おん=ざうし−のりより、¥からめで/の¥たいしやうぐん/に/は、¥くらう−おん=ざうし−よしつね、¥むねと/の¥だいみやう¥さんじふ−よ−にん、¥つがふ¥その¥せい¥ろくまん−よ−き/と/ぞ¥きこえ/し。¥その−ころ¥かまくら=どの/に/は、¥いけずき、¥するすみ/とて、¥きこゆる¥めいば¥あり/けり。¥いけずき/を/ばP117¥かぢはら−げんだ−かげすゑ¥しきり/に¥しよまう¥まうし/けれ/ども、「¥これ/は¥しぜん/の¥こと/の¥あら/ん¥とき、¥よりとも/が¥もののぐ−し/て¥のる/べき¥むま/なり¥これ/も¥おとら/ぬ¥めいば/ぞ」/とて、¥かぢはら/に/は¥するすみ/を/こそ¥たう/でげれ。¥その−のち¥あふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ささき−しらう/の¥おん=いとま¥まうし/に¥まゐら/れ/たる/に、¥かまくら=どの¥いかが¥おぼしめさ/れ/けん。「¥しよまう/の¥もの/は¥いくら/も¥あり/けれ/ども、¥その¥むね¥ぞんぢ−せよ」/とて、¥いけずき/を/ば¥ささき/に¥たぶ。¥ささき¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥こんど¥この¥お=むま/にて、¥うぢがは/の¥まつさき¥わたし¥さふらふ/べし。¥もし¥しに/たり/と¥きこしめさ/れ¥さふらは/ば、¥ひと/に¥さき/を¥せ/られ/てげり/と、¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/べし。¥いまだ¥いき/たり/と¥きこしめさ/れ¥さふらは/ば、¥さだめて¥せんぢん/を/ば、¥たかつな/ぞ¥し/つ/らん/ものを/と、¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/とて、¥おん=まへ/を¥まかり−たつ。¥さんくわい−し/たる¥だいみやう−せうみやう、「¥あつぱれ¥くわうりやう/の¥まうしやう/かな」/と/ぞ、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/ける。¥おのおの¥かまくら/を¥たつ/て、¥あしがら/を¥へ/て¥ゆく/も¥あり、¥はこね/に¥かかる¥せい/も¥あり、¥おもひおもひ/に¥のぼる/ほど/に、¥するがの−くに¥うきしま/が−はら/にて、¥かぢはら−げんだ−かげすゑ、¥たかき¥ところ/に¥うち−あがり、¥しばらく¥ひかへ/て、¥おほく/の¥むま=ども/を¥み/ける/に、¥おもひおもひ/の¥くら¥おか/せ、¥いろいろ/の¥しりがい¥かけ、¥あるひは¥のりくち/に¥ひか/せ、¥あるひは¥もろくち/に¥ひか/せ、¥いくせんまん/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず、¥ひき−とほし−ひき−とほし¥し/ける¥なか/に/も、¥かげすゑ/が¥たまはつ/たる¥するすみ/に¥まさる¥むま/こそ¥なかりけれ/と、¥うれしう¥おもひ/て¥みる¥ところ/に、¥ここに¥いけずき/と¥おぼしき¥むま/こそ¥いつき¥いで−き/たれ。¥きんぶくりん/の−くら¥おか/せ、¥こぶさ/の¥しりがい¥かけ、¥しろぐつわ¥はげ、¥しろあわ¥かませ/て、¥とねり¥あまたP118つい/たり/けれ/ども、¥なほ¥ひき/も¥ため/ず、¥をどら/せ/て/こそ¥いで−き/たれ。¥かぢはら¥うち−よつ/て、「¥これ/は¥た/が¥お=むま/ぞ」。「¥ささき=どの/の¥お=むま¥ざふらふ」/と¥まうす。「¥ささき/は¥さぶらう=どの/か¥しらう=どの/か」。「¥しらう=どの/の¥お=むま¥ざふらふ」/とて¥ひき−とほす。¥かぢはら、「¥やすから/ぬ¥こと/なり。¥おなじ¥やう/に¥めし−つかは/るる¥かげすゑ/を、¥ささき/に¥おぼしめし−かへ/られ/ける¥こと/こそ、¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥こんど¥みやこ/へ¥のぼり、¥きそ=どの/の¥み=うち/に、¥し−てんわう/と¥きこゆる¥いまゐ、¥ひぐち、¥たて、¥ねのゐ/と¥くん/で¥しぬる/か、¥しから/ず/は、¥さいこく/へ¥むかつ/て、¥いち−にん−たうぜん/と¥きこゆる¥へいけ/の¥さぶらひ=ども/と¥いくさ−し/て、¥しな/ん/と/こそ¥おもひ/し/に、¥この¥ご=きしよく/で/は、¥それ/も¥せん−なし。¥せんずる−ところ、¥ここ/にて¥ささき/を¥まち−うけ、¥ひつ−くみ、¥さし−ちがへ¥よき¥さぶらひ¥ににん¥しん/で、¥かまくら=どの/に¥そん¥とら/せ¥たてまつら/ん」/と、¥つぶやい/て/こそ¥まち−かけ/たれ。¥ささき¥なにごころ/も¥なう¥あゆま/せ/て¥いで−き/たり。¥かぢはら¥おし−ならべ/て/や¥くむ、¥むかうざま/に¥あて/や¥おとす/べき/と¥おもひ/ける/が、¥まづ¥ことば/を/ぞ¥かけ/ける。「¥いか/に¥ささき=どの/は、¥いけずき¥たまはら/せ¥たまひ/て¥のぼら/せ¥たまふ/な」/と¥いひ/けれ/ば、¥ささき、¥あつぱれ、¥この¥じん/も、¥ないない¥しよまう¥まうし/つる/と¥きき/し/ものを/と¥おもひ、「¥さ¥さふらへ/ば、¥こんど¥この¥おん=だいじ/に¥まかり−のぼり¥さふらふ/が、¥さだめて¥うぢ−せた/の−はし/を/や¥ひき/たる/らん。¥のつ/て¥かは/を¥わたす/べき¥むま/は¥なし。¥いけずき/を¥まうさ/ばや/と/は¥ぞんじ/つれ/ども、¥ご=へん/の¥まうさ/せ¥たまふ/だに、¥おん=ゆるされ¥なき/と¥うけたまはつ/て、¥まして¥たかつな/など/が¥まうす/とも、¥よも¥たまはら/じ/と¥おもひ、¥ごにち/に¥いか/なる¥ご=かんだう/も¥あら/ば¥あれ/と¥ぞんじ/つつ、¥あかつき¥たた/ん/とて/の¥よ、¥とねり/にP119¥こころ/を¥あはせ/て、¥さ/しも¥ご=ひざう/の¥いけずき/を、¥ぬすみ−すまし/て、¥のぼり¥さう/は¥いか/に、¥かぢはら=どの」/と¥いひ/けれ/ば、¥かぢはら¥この¥ことば/に¥はら/が¥ゐ/て、「¥ねつたい、¥さら/ば¥かげすゑ/も¥ぬすむ/べかり/ける/ものを」/とて、¥どつと¥わらう/て/ぞ¥のき/に/ける。¥
(『うぢがはのせんぢん』)S0902¥ささき−しらう/の¥たまはら/れ/たり/ける¥お=むま/は、¥くろくりげ/なる¥むま/の、¥きはめて¥ふとう¥たくましき/が、¥むま/を/も¥ひと/を/も、¥あたり/を¥はらつ/て¥くひ/けれ/ば、¥いけずき/と/は¥つけ/られ/たり。¥やき/の¥むま/と/ぞ¥きこえ/し。¥かぢはら/が¥たまはつ/たり/ける¥お=むま/も、¥きはめて¥ふとう¥たくましき/が、¥まことに¥くろかり/けれ/ば、¥するすみ/と/は¥つけ/られ/たり¥いづれ/も¥おとら/ぬ¥めいば/なり。¥さる−ほど/に¥とうごく/より¥せめ−のぼる¥おほて¥からめで/の¥ぐんびやう、¥をはりの−くに/より¥ふたて/に¥わかつ/て¥せめ−のぼる。¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥かまの−おん=ざうし−のりより、¥あひ−ともなふ¥ひとびと、¥たけだの−たらう、¥かがみの−じらう、¥いちでうの−じらう、¥いたがきの−さぶらう、¥いなげの−さぶらう、¥はんがへの−しらう、¥くまがへの−じらう、¥ゐのまたの−こへいろく/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥さんまんごせん−よ−き、¥あふみの−くに¥のぢ¥しのはら/に/ぞ¥ぢん/を¥とる。¥からめで/の¥たいしやうぐん/に/は、¥くらう−おん=ざうし−よしつね、¥おなじく¥ともなふ¥ひとびと、¥やすだの−さぶらう、¥おほうちの−たらう、¥はたけやまの−しやうじ−じらう、¥かぢはら−げんだ、¥ささき−しらう、¥かすやの−とうだ、¥しぶやの−むま/の−じよう、¥ひらやまの−むしやどころ/を¥さき/と/して¥つがふ¥その¥せい¥にまんごせん−よ−き、¥いがの−くに/を¥へ/て、¥うぢばし/の¥つめ/に/ぞ¥おし−よせ/たる。¥うぢ/も¥せた/も¥はし/を¥ひき、¥みづ/の¥そこ/に/は¥らんぐひ¥うつ/て¥おほづな¥はり、¥さかもぎ¥つない/で¥ながし−かけ/たり。¥ころ/は¥むつき−はつか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥ひら/の−たかね、¥しが/の−やま、¥むかし/ながら/の¥ゆき/も¥きえ、P120¥たにだに/の¥こほり¥うち−とけ/て、¥みづ/は¥をりふし¥まさり/たり。¥はくらう¥おびたたしう¥みなぎり−おち、¥せまくら¥おほき/に¥たき¥なつ/て、¥さかまく¥みづ/も¥はやかり/けり。¥よ/は¥すでに¥ほのぼの/と¥あけ−ゆけ/ど、¥かはぎり¥ふかく¥たち−こめ/て、¥むま/の¥け/も、¥よろひ/の¥け/も¥さだか/なら/ず。¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし、¥かは/の¥はた/に¥うち−いで、¥みづ/の¥おもて/を¥み−わたい/て、¥ひとびと/の¥こころ/を¥み/ん/と/や¥おもは/れ/けん、「¥よど¥いもあらひ/へ/や¥むかふ/べき、¥また¥かはちぢ/へ/や¥まはる/べき。¥みづ/の¥おちあし/を/や¥まつ/べき、¥いかが−せ/ん」/と¥のたまふ¥ところ/に、¥ここ/に¥むさしの−くに/の¥ぢうにん¥はたけやまの−しやうじ−じらう−しげただ、¥しやうねん¥にじふいち/に¥なり/ける/が¥すすみ−いで/て、「¥この¥かは/の¥ご=さた/は、¥かまくら/にて/も¥よくよく¥さふらひ/し/ぞ/かし。¥かねても¥しろしめさ/れ/ぬ¥うみ¥かは/の、¥にはか/に¥いで−き/て/も¥さふらは/ば/こそ。¥あふみ/の¥みづうみ/の¥すゑ/なれ/ば、¥まつ/とも¥まつ/とも¥みづ¥ひ/まじ。¥はし/を/ば¥また¥たれ/か¥わたい/て¥まゐらす/べき。¥さんぬる¥じしよう/の−かつせん/に、¥あしかがの−またたらう−ただつな/が、¥しやうねん¥じふしちさい/にて¥わたし/ける/も、¥おにがみ/にて/は¥よも¥あら/じ。¥しげただ¥まづ¥せぶみ¥つかまつら/ん」/とて、¥たん/の−たう/を¥むね/と/して、¥ごひやく−よ−き¥ひしひし/と¥くつばみ/を¥ならぶる¥ところ/に、¥ここ/に¥びやうどうゐん/の¥うしとら、¥たちばな/の¥こじま/が−さき/より、¥むしや¥にき¥ひつ−かけ−ひつ−かけ¥いで−き/たり。¥いつき/は¥かぢはら−げんだ−かげすゑ、¥いつき/は¥ささき−しらう−たかつな/なり。¥ひとめ/に/は¥なに/と/も¥みえ/ざり/けれ/ども、¥ないない¥さき/に¥こころ/を¥かけ/たる/らん、¥かぢはら/は¥ささき/に¥いつたん/ばかり/ぞ¥すすん/だる。¥ささき、「¥いか/に¥かぢはら=どの、¥この¥かは/は¥さいこくいち/の¥たいが/ぞ/や。¥はるび/の¥のび/て¥みえ¥さう/ぞ。¥しめ¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥かぢはら¥さ/も¥ある/らん/と/や¥おもひ/けん、¥たづな/を¥むま/の¥ゆがみ/に¥すて、¥さう/の¥あぶみ/をP121¥ふみ−すかし、¥はるび/を¥とい/て/ぞ¥しめ/たり/ける。¥ささき、¥その¥ま/に、¥そこ/を¥つと¥はせ−ぬい/て、¥かは/へ¥ざつと/ぞ¥うち−いれ/たる。¥かぢはら¥たばから/れ/ぬ/と/や¥おもひ/けん、¥やがて¥つづい/て¥うち−いれ/たり。¥かぢはら、「¥いか/に¥ささき=どの、¥かうみやう−せ/う/とて¥ふかく−し¥たまふ/な。¥みづ/の¥そこ/に/は¥おほづな¥ある/らん、¥こころ−え¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥ささき¥さ/も¥ある/らん/と/や¥おもひ/けん、¥たち/を¥ぬい/て、¥むま/の¥あし/に¥かかり/ける¥おほづな=ども/を¥ふつふつ/と¥うち−きり−うち−きり、¥うぢがは¥はやし/と¥いへ/ども、¥いけずき/と¥いふ¥よいち/の¥むま/に/は¥のつ/たり/けり。¥いちもんじ/に¥ざつと¥わたい/て、¥むかふ/の¥きし/に/ぞ¥うち−あげ/たる。¥かぢはら/が¥のつ/たり/ける¥するすみ/は¥かはなか/より¥のためがた/に¥おし−ながさ/れ、¥はるか/の¥しも/より¥うち−あげ/たり。¥その−のち¥ささき¥あぶみ¥ふんばり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て「¥うだの−てんわう/に¥くだい/の¥こういん、¥あふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ささき−さぶらう−ひでよし/が¥しなん、¥ささき−しらう−たかつな、¥うぢがは/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥はたけやま¥ごひやく−よ−き¥うち−いれ/て¥わたす。¥むかひ/の¥きし/より¥やまだの−じらう/が¥はなつ¥や/に、¥はたけやま¥むま/の¥ひたひ/を¥のぶか/に¥い/させ、¥はぬれ/ば、¥ゆんづゑ/を¥つい/て¥おり−たつ/たり。¥いはなみ−かぶと/の¥てさき/へ¥ざつと¥おし−かけ/けれ/ども、¥はたけやま¥これ/を¥こと/と/も¥せ/ず、¥みづ/の¥そこ/を¥くぐつ/て、¥むかひ/の¥きし/に/ぞ¥つき/に/ける。¥うち−あがら/ん/と¥する¥ところ/に、¥うしろ/より¥もの/こそ¥むず/と¥ひかへ/たれ。「¥た/そ」/と¥とへ/ば、「¥しげちか」/と¥こたふ。「¥おほぐし/か」。「¥さん−ざふらふ」。¥おほぐしの−じらう/は、¥はたけやま/が¥ため/に/は、¥ゑぼしご/にて/ぞ¥さふらひ/ける。「¥あまり/に¥みづ/が¥はやう/て、¥むま/を/ば¥かはなか/よりP122¥おし−ながさ/れ¥さふらひ/ぬ。¥ちから¥およば/で¥これ/まで¥つき¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥いひ/けれ/ば、¥はたけやま、「¥いつも¥わ=どの=ばら/が¥やう/なる¥もの/は、¥しげただ/に/こそ¥たすけ/られ/んずれ」/と¥いふ¥まま、¥おほぐし/を¥つかん/で¥きし/の¥うへ/へ/ぞ¥なげ−あげ/たる。¥なげ−あげ/られ/て、¥ただ¥なほり、¥たち/を¥ぬい/て¥ひたひ/に¥あて、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥おほぐしの−じらう−しげちか、¥うぢがは/の¥かちだち/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥かたき/も¥み=かた/も¥これ/を¥きい/て、¥いちど/に¥どつと/ぞ¥わらひ/ける。¥その−のち¥はたけやま¥のりがへ/に¥のつ/て、¥をめい/て¥かく。¥ここ/に¥ぎよりようの−ひたたれ/に、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら/を¥おい/て、¥のつ/たり/ける¥むしや¥いつき、¥まつさき/に¥すすん/だる/を、¥はたけやま、「¥ここ/に¥かくる/は¥いか/なる¥もの/ぞ、¥なのれ/や」/と¥いひ/けれ/ば、「¥これ/は¥きそ=どの/の¥いへのこ/に、¥ながせの−はんぐわんだい−しげつな」/と¥なのる。¥はたけやま、¥けふ/の¥いくさがみ¥いはは/ん/とて、¥おし−ならべ/て¥むず/と¥くん/で¥ひき−おとし、¥わが¥のつ/たり/ける¥くら/の¥まへわ/に¥おし−つけ、¥ちつと/も¥はたらか/さ/ず、¥くび¥ねぢ−きつ/て、¥ほんだの−じらう/が¥くら/の¥とつつけ/に/こそ¥つけ/させ/けれ。¥これ/を¥はじめ/て、¥うぢばし¥かため/たり/ける¥つはもの=ども、¥しばし¥ささへ/て¥ふせぎ−たたかふ/と¥いへ/ども、¥とうごく/の¥おほぜい¥みな¥わたい/て¥せめ/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず、¥こはたやま、¥ふしみ/を¥さし/て/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥せた/を/ば¥いなげの−さぶらう−しげなり/が¥はからひ/にて、¥たなかみ/の−ぐご/の−せ/を/こそ¥わたし/けれ。P123
「かはらがつせん」(『かはらがつせん』)S0903¥いくさ¥やぶれ/に/けれ/ば、¥くらう−おん=ざうし−よしつね、¥ひきやく/を¥もつて¥かまくら=どの/へ、¥かつせん/の¥しだい/を¥くはしう¥しるい/て¥まうさ/れ/けり。¥かまくら=どの、¥まづ¥お=つかひ/に、「¥ささき/は¥いか/に」/と¥おん=たづね¥あり/けれ/ば、「¥うぢがは/の¥まつさき¥ざふらふ」/と¥まうす。¥さて¥につき/を¥ひらい/て¥み¥たまへ/ば、「¥うぢがは/の¥せんぢん、¥ささき−しらう−たかつな、¥にぢん、¥かぢはら−げんだ−かげすゑ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥うぢ¥せた¥やぶれ/ぬ/と¥きこえ/しか/ば、¥きそ/は¥さいご/の¥いとま¥まうさ/ん/とて、¥ゐん/の−ごしよ−ろくでう=どの/へ¥はせ−まゐる。¥きそ¥もんぜん/まで¥まゐり/たり/しか/ども、¥さして¥そうす/べき¥むね/も¥なく/して、¥とつ/て¥かへし、¥ろくでう−たかくら/なる¥ところ/に、¥はじめて¥み−そめ/たり/ける¥にようばう/の¥あり/けれ/ば、¥そこ/に¥うち−よつ/て、¥さいご/の¥なごり¥をしま/ん/とて、¥とみ/に¥いで/も¥やら/ざり/けり。¥ここ/に¥いま−まゐり−し/たり/ける¥ゑちごの−ちうだ−いへみつ/と¥いふ¥もの¥あり。「¥おん=かたき¥すでに¥かはら/まで¥せめ−いつ/て¥さふらふ/に、¥なん/とて¥さやう/に¥うち−とけ/て/は¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん。¥ただいま¥いぬじに−せ/させ¥たまひ¥さふらひ/な/んず。¥とうとう¥おん=いで¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ども、¥なほ¥いで/も¥やら/ざり/けれ/ば、「¥さ¥さふらは/ば、¥いへみつ/は¥まづ¥さきだち¥まゐらせ/て、¥しで/の−やま/にて/こそ¥まち¥まゐらせ¥さふらは/め」/とて、¥はら¥かき−きつ/て/ぞ¥しに/に/ける。¥きそ、「¥これ/はP124¥われ/を¥すすむる¥じがい/に/こそ」/とて、¥やがて¥うつ−たち¥たまひ/けり。¥ここ/に¥かうづけの−くに/の¥ぢうにん、¥なはの−たらう−ひろずみ/を¥さき/と/して、¥その¥せい¥ひやくき/ばかり/に/は¥すぎ/ざり/けり。¥ろうでう¥かはら/に¥うち−いで/て¥みれ/ば、¥とうごく/の¥せい/と¥おぼしく/て、¥まづ¥さんじつき/ばかり/で¥いで−き/たる。¥その¥なか/より¥むしや¥にき¥さき/に¥すすん/だり。¥いつき/は¥しほのやの−ごらう−これひろ、¥いつき/は¥てしがはらの−ごさぶらう−ありなほ/なり。¥しほのや/が¥まうし/ける/は、「¥ごぢん/の¥せい/を/や¥まつ/べき」。¥また¥てしがはら/が¥まうし/ける/は、「¥いちぢん¥やぶれ/ぬれ/ば¥ざんたう¥まつたから/ず。¥ただ¥かけよ/や」/とて、¥をめい/て¥かく。¥きそ/は¥けふ/を¥さいご/と¥たたかへ/ば、¥とうごく/の¥おほぜい、¥きそ/を¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥いくさ/を/ば¥ぐんびやう=ども/に¥せ/させ、¥わが−み/は、¥ゐん/の−ごしよ/の¥おぼつかなき/に、¥しゆご−し¥たてまつら/ん/とて、¥ひた−かぶと¥ごろくき、¥ゐん/の−ごしよ−ろくでう=どの/へ¥はせ−まゐる。¥ごしよ/に/は、¥だいぜん/の−だいぶ−なりただ、¥ごしよ/の¥ひんがし/の¥ついがき/の¥うへ/に¥のぼり−あがつ/て、¥わななく−わななく¥み−わたせ/ば、¥ぶし¥ごろくき¥のけ−かぶと/に¥たたかひ−なつ/て、¥いむけ/の¥そで¥はるかぜ/に¥ふき−なびか/させ、¥しらはた¥ざつと¥さし−あげ、¥くろけぶり¥け−たて/て¥はせ−まゐる。¥なりただ、「¥あな¥あさまし、¥きそ/が¥また¥まゐり¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥ゐん−ぢう/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥かたへ/の¥にようばう=たち/に¥いたる/まで、¥こんど/ぞ¥よ/の¥うせはて/とて、¥て/を¥にぎり、¥たて/ぬ¥ぐわん/も¥ましまさ/ず。¥なりただ¥かさね/て¥そうもん−し/ける/は、「¥けふ¥はじめて¥みやこ/へ¥いる¥とうごく/の¥ぶし/と¥おぼえ¥さふらふ。¥いかさま/に/も¥みな¥かさじるし/が¥かはつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/も¥はて/ぬ/に、¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥もんぜん/にて¥むま/よりP125
おり、¥もん/を¥たたか/せ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥かまくら/の−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも/が¥おとと、¥くらう−よしつね/こそ、¥うぢ/の−て/を¥せめ−やぶつ/て、¥この¥ごしよ¥しゆご/の¥ため/に¥はせ−まゐつ/て¥さふらへ。¥あけ/て¥いれ/させ¥たまへ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥なりただ¥あまり/の¥うれし−さ/に、¥いそぎ¥ついがき/の¥うへ/より¥をどり−おるる/とて、¥こし/を¥つき−そんじ/たり/けれ/ども、¥いた−さ/は¥うれし−さ/に¥まぎれ/て¥おぼえ/ず、¥はふはふ¥ごしよ/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−し/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥もん/を¥あけ/させ/て/ぞ¥いれ/られ/ける。¥よしつね¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥むらさき−すそご/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ/の¥とりうち/の¥もと/を、¥かみ/を¥ひろ−さ¥いつすん/ばかり/に¥きつ/て、¥ひだりまき/に¥まい/たる。¥これ/ぞ¥けふ/の¥たいしやうぐん/の¥しるし/と/は¥みえ/し。¥ほふわう、¥ちうもん/の¥れんじ/より¥えいらん¥あつ/て、「¥ゆゆし=げ/なる¥もの=ども/かな。¥みな¥なのら/せよ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥まづ¥たいしやうぐん−くらう−よしつね、¥つぎに¥やすだの−さぶらう−よしさだ、¥はたけやまの−しやうじ−じらう−しげただ、¥かぢはら−げんだ−かげすゑ、¥ささき−しらう−たかつな、¥しぶやの−むま/の−じよう−しげすけ/と/ぞ¥なのつ/たれ。¥よしつね¥ぐし/て¥ぶし/は¥ろくにん、¥よろひ/は¥いろいろ¥かはつ/たり/けれ/ども、¥つらだましひ¥ことがら、¥いづれ/も¥おとら/ず。¥なりただ¥おほせ¥うけたまはつ/て、¥よしつね/を¥おほ−ゆか/の¥きは/へ¥めし/て、¥かつせん/の¥しだい/を¥くはしう¥おん=たづね¥あり。¥よしつね¥かしこまつ/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥かまくら/の−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥きそ/が¥らうぜき¥しづめ/ん/とて、¥のりより¥よしつね/を¥さき/と/して、¥つがふ¥ろくまん−よ−き/を¥さし−のぼせ¥さふらふ/が、¥のりより/は¥せた/より¥まゐり¥さふらへ/ども、¥いまだ¥いつき/も¥みえ¥さふらは/ず。P126¥よしつね/は¥うぢ/の−て/を¥せめ−やぶつ/て、¥この¥ごしよ¥しゆご/の¥ため/に¥はせ−さんじ/て¥さふらへ。¥きそ/は¥かはら/を¥のぼり/に¥おち¥さふらひ/つる/を、¥ぐんびやう=ども/を¥もつて¥おは/せ¥さふらひ/つる/が、¥いま/は¥さだめて¥うつ−とり¥さふらひ/な/んず」/と、¥いと¥こと/も¥な=げ/に/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、「¥また¥きそ/が¥よたう/など¥まゐつ/て、¥らうぜき/も/ぞ¥つかまつる。¥なんぢ/は¥この¥ごしよ¥よくよく¥しゆご¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥しはう/の¥もん/を¥かため/て¥まつ/ほど/に、¥つはもの=ども¥はせ−あつまつ/て、¥ほど−なく¥いちまん−よ−き/ばかり/に¥なり/に/けり。¥きそ/は¥しぜん/の¥こと¥あら/ば、¥ほふわう¥とり¥たてまつ/て、¥さいこく/へ¥おち−くだり、¥へいけ/と¥ひとつ/に¥なら/ん/とて、¥りきしや¥にじふにん¥そろへ/て¥もつ/たり/けれ/ども、¥ごしよ/に/は¥また¥くらう−よしつね¥まゐつ/て、¥きびしう¥しゆご−し¥たてまつる/と¥きい/て、¥いま/は¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥かはら/を¥のぼり/に¥おち−ゆき/ける/が、¥ろくでうかはら/と¥さんでうかはら/の¥あひだ/にて、¥すでに¥うつ−とら/れ/ん/と¥する¥こと¥どど/に¥およぶ。¥きそ¥なみだ/を¥ながい/て、「¥かく¥ある/べし/と/も¥ごし/たり/せ/ば、¥いまゐ/を¥せた/へ/は¥やら/ざら/まし。¥えうせう¥ちくば/の¥むかし/より、¥しな/ば¥いつしよ/で¥しな/ん/と/こそ¥ちぎり/しか。¥いま/は¥ところどころ/で¥うた/れ/ん¥こと/こそ¥かなしけれ。¥さり/ながら、¥いま−いちど¥いまゐ/が¥ゆくへ/を¥きか/ん」/とて、¥かはら/を¥のぼり/に¥かくる/ほど/に、¥ろくでうかはら/と¥さんでうかはら/の¥あひだ/にて、¥かたき¥おそひ−かかれ/ば、¥とつ/て¥かへし¥とつ/て¥かへし、¥きそ¥わづか/なる¥こぜい/にて、¥うんか/の/ごとく/なる¥かたき/の¥おほぜい/を、¥ごろくど/まで¥おひ−かへし、¥かもかは¥ざつと¥うち−わたり、¥あはたぐち、¥まつざか/に/も¥かかり/けり。¥きよねん¥しなの/を¥いで/し/に/は、¥ごまん−よ−き/と¥きこえ/し/が、¥けふ¥しのみやがはら/をP127¥すぐる/に/は、¥しゆじう¥しちき/に¥なり/に/けり。¥まして¥ちうう/の¥たび/の¥そら、¥おもひ−やら/れ/て¥あはれ/なり。
「きそさいご」(『きそのさいご』)S0904¥きそ/は¥しなの/を¥いで/し/より、¥ともゑ、¥やまぶき/とて¥ににん/の¥びぢよ/を¥ぐせ/られ/たり。¥やまぶき/は¥いたはり¥あつ/て¥みやこ/に¥とどまり/ぬ。¥なか/に/も¥ともゑ/は¥いろ¥しろう¥かみ¥ながく、¥ようがん¥まことに¥びれい/なり。¥くつきやう/の¥あらむまのり/の、¥あくしよおとし、¥ゆみ−や¥うちもの¥とつ/て/は、¥いか/なる¥おに/に/も¥かみ/に/も¥あふ/と¥いふ、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/なり。¥され/ば¥いくさ/と¥いふ¥とき/は、¥さね¥よき¥よろひ¥き/せ、¥つよゆみ、¥おほ−だち¥もた/せ/て、¥いつぱう/の¥たいしやう/に¥むけ/られ/ける/に、¥どど/の¥かうみやう、¥かた/を¥ならぶる¥もの¥なし。¥され/ば¥こんど/も¥おほく/の¥もの¥おち−うせ、¥うた/れ/ける¥なか/に、¥しちき/が¥うち/まで/も、¥ともゑ/は¥うた/れ/ざり/けり。¥きそ/は¥ながさか/を¥へ/て、¥たんばぢ/へ/と/も¥きこゆ。¥りうげごえ/に¥かかつ/て、¥また¥ほくこく/へ/と/も¥きこえ/けり。¥かかり/しか/ども、¥いまゐ/が¥ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/に、¥とつ/て¥かへし/て、¥せた/の¥かた/へ/ぞ¥おち−ゆき¥たまふ。¥いまゐの−しらう−かねひら/も、¥はつびやく−よ−き/にて¥せた/を¥かため/たり/ける/が、¥ごじつき/ばかり/に¥うち−なさ/れ、¥はた/を/ば¥まか/せ/て¥もた/せ/つつ、¥しゆ/の¥ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/にP128、¥みやこ/の¥かた/へ¥のぼる/ほど/に、¥おほつ/の¥うちで/の−はま/にて、¥きそ=どの/に¥ゆき−あひ¥たてまつる。¥なか−いつちやう/ばかり/より、¥たがひ/に¥それ/と¥み−しつ/て、¥しゆじう¥こま/を¥はやめ/て¥より−あひ/たり。¥きそ=どの、¥いまゐ/が¥て/を¥とつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥よしなか¥ろくでうかはら/にて、¥いか/に/も−なる/べかり/しか/ども、¥なんぢ/が¥ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/に、¥おほく/の¥かたき/に¥うしろ/を¥みせ/て、¥これ/まで¥のがれ/たる/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥いまゐの−しらう、「¥ご=ぢやう¥まことに¥かたじけなう¥さふらふ。¥かねひら/も¥せた/にて¥うちじに¥つかまつる/べう¥さふらひ/しか/ども、¥おん=ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/に、¥これ/まで¥のがれ−まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥きそ=どの、「¥さて/は¥ちぎり/は¥いまだ¥くちせ/ざり/けり。¥よしなか/が¥せい、¥さんりん/に¥はせ−ちつ/て、¥この¥へん/に/も¥ひかへ/たる/らん/ぞ。¥なんぢ/が¥はた¥あげ/させよ」/と¥のたまへ/ば、¥まい/て¥もた/せ/たる¥いまゐ/が¥はた¥さし−あげ/たり。¥これ/を¥み−つけ/て、¥きやう/より¥おつる¥せい/と/も¥なく、¥また¥せた/より¥まゐる¥もの/と/も¥なく、¥はせ−あつまつ/て、¥ほど−なく¥さんびやくき/ばかり/に¥なり¥たまひ/ぬ。¥きそ=どの¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび/て、「¥この¥せい/にて/は¥さいご/の¥いくさ、¥ひといくさ¥など/か¥せ/ざる/べき。¥あれ/に¥しぐらう/て¥みゆる/は、¥た/が¥て/やらん」。「¥かひ/の¥いちでうの−じらう=どの/の¥おん=て/と/こそ¥うけたまはつ/て¥さふらへ」。「¥せい¥いか/ほど¥ある/らん」。「¥ろくせん−よ−き/と¥きこえ¥さふらふ」。「¥さて/は¥たがひ/に¥よい¥かたき、¥おなじう¥しぬる/とも、¥おほぜい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥よい¥かたき/に¥あう/て/こそ¥うちじに/を/も¥せ/め」/とて、¥まつさき/に/ぞ¥すすみ¥たまふ。¥きそ=どの¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥からあや−をどし/の−よろひ¥き/て、¥いかもの−づくり/の−たち/を¥はき、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥にじふし¥さい/たる¥いしうち/の−や/の、P129¥その−ひ/の¥いくさ/に¥い/て、¥せうせう¥のこつ/たる/を、¥かしらだか/に¥おひ−なし、¥しげどう/の−ゆみ/の¥まんなか¥とつ/て、¥きこゆる¥きそ/の¥おにあしげ/と¥いふ¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら/を¥おい/て¥のつ/たり/ける/が、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥ひごろ/は¥きき/けん/ものを、¥きその−くわんじや、¥いま/は¥みる/らん、¥さま/の−かみ−けん−いよの−かみ−あさひ/の−しやうぐん−みなもとの−よしなか/ぞ/や。¥かひ/の¥いちでうの−じらう/と/こそ¥きけ。¥よしなか¥うつ/て、¥ひやうゑ/の−すけ/に¥みせよ/や」/とて¥をめい/て¥かく。¥いちでうの−じらう¥これ/を¥きい/て、「¥ただいま¥なのる/は、¥たいしやうぐん/ぞ/や。¥あます/な¥もの=ども、¥もらす/な¥わかたう、¥うて/や」/とて、¥おほぜい/の¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥きそ¥さんびやく−よ−き、¥ろくせん−よ−き/が¥なか/へ¥かけ−いり、¥たてさま¥よこさま、¥くもで¥じふもんじ/に¥かけ−わつ/て、¥うしろ/へ¥つと¥いで/たれ/ば、¥ごじつき/ばかり/に¥なり/けり。¥そこ/を¥やぶつ/て¥ゆく/ほど/に、¥とひの−じらう−さねひら、¥にせん−よ−き/で¥ささへ/たり。¥そこ/を/も¥やぶつ/て¥ゆく/ほど/に、¥あそこ/にて/は¥しごひやくき、¥ここ/にて/は¥にさんびやくき、¥ひやくしごじつき、¥ひやくき/ばかり/が¥なか/を、¥かけ−わり−かけ−わり¥ゆく/ほど/に、¥しゆじう¥ごき/に/ぞ¥なり/に/ける。¥ごき/が¥うち/まで/も、¥ともゑ/は¥うた/れ/ざり/けり。¥きそ=どの¥ともゑ/を¥めし/て、「¥おのれ/は¥をんな/なれ/ば、¥これ/より¥とうとう¥いづち/へ/も¥おち−ゆけ。¥よしなか/は¥うちじに/を¥せ/んずる/なり。¥もし¥ひとで/に¥かから/ず/は、¥じがい/を¥せ/んずれ/ば、¥よしなか/が¥さいご/の¥いくさ/に、¥をんな/を¥ぐし/たり/など¥いは/れ/ん¥こと、¥くちをしかる/べし」/と¥のたまへ/ども、¥なほ¥おち/も¥ゆか/ざり/ける/が、¥あまり/に¥つよう¥いは/れ¥たてまつ/て、「¥あつぱれ¥よから/う¥かたき/の¥いで−こよ/かし。¥きそ=どの/に¥さいご/の¥いくさ−し/て¥みせ¥たてまつら/ん」/とて、P130
ひかへ/て¥かたき/を¥まつ¥ところ/に、¥ここに¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥おんだの−はちらう−もろしげ/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥さんじつき/ばかり/で¥いで−き/たる。¥ともゑ¥その¥なか/へ¥わつ/て¥いり、¥まづ¥おんだの−はちらう/に¥おし−ならべ、¥むず/と¥くん/で¥ひき−おとし、¥わが¥のつ/たり/ける¥くら/の¥まへわ/に¥おし−つけ/て、¥ちつと/も¥はたらか/さ/ず、¥くび¥ねぢ−きつ/て¥すて/てんげり。¥その−のち¥もののぐ¥ぬぎ−すて、¥とうごく/の¥かた/へ/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥てづかの−たらう¥うちじに−す。¥てづかの−べつたう¥おち/に/けり。¥きそ=どの¥いまゐの−しらう¥ただ¥しゆじう¥にき/に¥なつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥ひごろ/は¥なに/と/も¥おぼえ/ぬ¥よろひ/が、¥けふ/は¥おもう¥なつ/たる/ぞ/や」/と¥のたまへ/ば、¥いまゐの−しらう¥まうし/ける/は、「¥おん=み/も¥いまだ¥つかれ/させ¥たまひ¥さふらは/ず、¥お=むま/も¥よわり¥さふらは/ず。¥なに/に¥よつ/て¥いちりやう/の¥おん=きせなが/を、¥にはか/に¥おもう/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/べき。¥それ/は¥み=かた/に¥つづく¥せい/が¥さふらは/ね/ば、¥おくびやう/で/こそ¥さ/は¥おぼしめし¥さふらふ/らめ。¥かねひら¥いつき/を/ば、¥よ/の¥むしや¥せんぎ/と¥おぼしめし¥さふらふ/べし。¥ここ/に¥い−のこし/たる¥や¥ななつ¥やつ¥さふらへ/ば、¥しばらく¥ふせぎ−や¥つかまつり¥さふらは/ん。¥あれ/に¥みえ¥さふらふ/は、¥あはづ/の−まつばら/と¥まうし¥さふらふ。¥きみ/は¥あの¥まつ/の¥なか/へ¥いら/せ¥たまひ/て、¥しづか/に¥ご=じがい¥さふらへ」/とて、¥うつ/て¥ゆく/ほど/に、¥また¥あらて/の¥むしや¥ごじつき/ばかり/で¥いで−き/たる。「¥かねひら/は¥この¥おん=かたき¥しばらく¥ふせぎ¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥きみ/は¥あの¥まつ/の¥なか/へ¥いら/せ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥よしなか、「¥ろくでうかはら/にて、¥いか/に/も−なる/べかり/しか/ども、¥なんぢ/と¥いつしよ/で¥いか/に/も−なら/ん¥ため/に/こそ、¥おほく/の¥かたき/に¥うしろ/を¥みせ/て、¥これ/まで¥のがれ/たん/なれ。¥ところどころ/で¥うた/れ/ん/より、¥いつしよ/で/こそ¥うちじに/を/も¥せ/め」/とて、¥むま/の¥はな/を¥ならべ/てP131、¥すでに¥かけ/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥いまゐの−しらう、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥しゆ/の¥むま/の¥みづつき/に¥とり−つき、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥ゆみ−や−とり/は、¥としごろ−ひごろ¥いか/なる¥かうみやう¥さふらへ/ども、¥さいご/に¥ふかく−し/ぬれ/ば、¥ながき¥きず/にて¥さふらふ/なり。¥おん=み/も¥つかれ/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥お=むま/も¥よわつ/て¥さふらふ。¥いふ−かひ−なき¥ひと/の¥らうどう/に¥くみ−おとさ/れ/て、¥うた/れ/させ¥たまひ¥さふらひ/な/ば、¥さ/しも¥につぽんごく/に¥おにがみ/と¥きこえ/させ¥たまひ/つる¥きそ=どの/を/ば、¥なにがし/が¥らうどう/の¥て/に¥かけ/て、¥うち¥たてまつ/たり/な/ん/ぞ¥まうさ/れ/ん¥こと、¥くちをしかる/べし。¥ただ¥り/を¥まげ/て、¥あの¥まつ/の¥なか/へ¥いら/せ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥きそ=どの、¥さら/ば/とて、¥ただ¥いつき¥あはづ/の−まつばら/へ/ぞ¥かけ¥たまふ。¥いまゐの−しらう¥とつ/て¥かへし、¥ごじつき/ばかり/が¥せい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥とほから/ん¥もの/は¥おと/に/も¥きけ、¥ちかから/ん¥ひと/は¥め/に/も¥み¥たまへ。¥きそ=どの/の¥めのとご/に、¥いまゐの−しらう−かねひら/とて、¥しやうねん¥さんじふさん/に¥まかり−なる。¥さる−もの¥あり/と/は、¥かまくら=どの/まで/も¥しろしめさ/れ/たる/らん/ぞ。¥かねひら¥うつ/て¥ひやうゑ/の−すけ=どの/の¥おん=げんざん/に¥いれよ/や」/とて、¥い−のこし/たる¥やすぢ/の¥や/を、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥いる。¥ししやう/は¥しら/ず、¥やにはに¥かたき¥はちき¥い−おとし、¥その−のち¥たち/を¥ぬい/て¥きつ/て¥まはる/に、¥おもて/を¥あはする¥もの/ぞ¥なき。¥ただ、「¥い−とれ/や¥い−とれ」/とて、¥さしつめ−ひきつめ、¥さんざん/に¥い/けれ/ども、¥よろひ¥よけれ/ば¥うら¥かか/ず、¥あきま/を¥い/ね/ば¥て/も¥おは/ず。¥きそ=どの/は¥ただ¥いつき、¥あはづ/の−まつばら/へ¥かけ¥たまふ。¥ころ/は¥しやうぐわつ−にじふいちにち、¥いりあひ/ばかり/のP132¥こと/なる/に、¥うすごほり/は¥はつ/たり/けり。¥ふかた¥あり/と/も¥しら/ず/して、¥むま/を¥ざつと¥うち−いれ/たれ/ば、¥むま/の¥かしら/も¥みえ/ざり/けり。¥あふれ/ども¥あふれ/ども、¥うて/ども¥うて/ども¥はたらか/ず。¥かかり/しか/ども¥いまゐ/が¥ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/に、¥ふり−あふのぎ¥たまふ¥ところ/を、¥さがみの−くに/の¥ぢうにん、¥みうら/の−いしだの−じらう−ためひさ¥おつ−かかり、¥よつぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥きそ=どの¥うち−かぶと/を¥い/させ、¥いたで/なれ/ば、¥かぶと/の¥まつかふ/を¥むま/の¥かしら/に¥おし−あて/て¥うつぶし¥たまふ¥ところ/を、¥いしだ/が¥らうどう¥ににん¥おち−あひ/て、¥すでに¥おん=くび/を/ば¥たまはり/けり。¥やがて¥くび/を/ば¥たち/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥この¥ひごろ¥につぽんこく/に¥おにがみ/と¥きこえ/させ¥たまひ/つる¥きそ=どの/を/ば、¥みうら/の−いしだの−じらう−ためひさ/が、¥うち¥たてまつる/ぞ/や」/と¥なのり/けれ/ば、¥いまゐの−しらう/は¥いくさ−し/ける/が、¥これ/を¥きい/て、「¥いま/は¥たれ/を¥かばは/ん/とて、¥いくさ/を/ば¥す/べき。¥これ¥み¥たまへ、¥とうごく/の¥との=ばら、¥につぽん−いち/の¥かう/の−もの/の¥じがい−する¥てほん/よ」/とて、¥たち/の¥きつさき/を¥くち/に¥ふくみ、¥むま/より¥さかさま/に¥とび−おち、¥つらぬかつ/て/ぞ¥うせ/に/ける。¥
「ひぐちのきられ」(『ひぐちのきられ』)S0905¥いまゐ/が¥あに/の¥ひぐちの−じらう−かねみつ/は、¥じふらう−くらんど¥うた/ん/とて、¥その¥せい¥ごひやく−よ−き/で、¥かはちの−くにP133¥ながの/の−じやう/へ¥こえ/たり/ける/が、¥そこ/にて/は¥うち−もらし/ぬ。¥きの−くに¥なぐさ/に¥あり/と¥きい/て、¥やがて¥つづい/て¥よせ/たり/ける/が、¥みやこ/に¥いくさ¥あり/と¥きい/て、¥とつ/て¥かへし/て¥のぼる/ほど/に、¥よど/の−おほ−わたり/の−はし/にて、¥いまゐ/が¥げにん/に¥ゆき−あう/たり。「¥これ/は¥され/ば、¥いづち/へ/とて¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん。¥みやこ/に/は¥いくさ¥いで−き/て、¥きみ¥うた/れ/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥いまゐ=どの/も¥おん=じがい¥さふらふ」/と¥いひ/けれ/ば、¥ひぐちの−じらう、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥これ¥きき¥たまへ¥との=ばら、¥きみ/に¥おん=こころざし¥おもひ¥まゐらせ/ん¥ひとびと/は、¥これ/より¥とうとう¥いづち/へ/も¥おち−ゆき、¥いか/なら/ん¥こつじき−づだ/の−ぎやう/を/も¥し/て、¥きみ/の¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐら/させ¥たまへ。¥かねみつ/は¥みやこ/へ¥のぼり¥うちじに−し/て、¥めいど/にて/も、¥きみ/の¥おん=げんざん/に¥いり、¥いまゐ/を/も¥いま−いちど¥み/ばや/と¥おもふ¥ため/なり」/とて、¥うつ/て¥ゆく/ほど/に、¥ごひやく−よ−き/の¥せい=ども、¥あそこ−ここ/に¥ひかへ−ひかへ¥おち−ゆく/ほど/に、¥とば/の¥みなみ/の¥もん/を¥すぐる/に/は、¥その¥せい¥わづか/に¥にじふ−よ−き/に/ぞ¥なり/に/ける。¥ひぐちの−じらう、¥けふ¥すでに¥みやこ/へ¥いる/と¥きこえ/しか/ば、¥たう/も¥かうけ/も、¥しちでう¥しゆしやか、¥つくりみち、¥よつづか/へ¥はせ−むかふ。¥ひぐち/が¥て/に、¥ちのの−たらう−みつひろ/と¥いふ¥もの¥あり。¥よつづか/に¥いくら/も¥あり/ける¥せい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ、「¥この¥せい/の¥なか/に、¥かひ/の¥いちでうの−じらう=どの¥おん=て/の¥ひと/や¥まします」/と¥とひ/けれ/ば、「¥いちでうの−じらう/が¥て/で¥ない/は、¥いくさ/を/ば¥せ/ぬ/か。¥たれ/に/も¥あへ/かし」/とて、¥どつと¥わらふ。¥わらは/れ/て¥なのり/ける/は、「¥かう¥まうす¥もの/は、¥しなのの−くに¥すは/の−かみのみや/の¥ぢうにん、¥ちのの−たいふ−みついへ/がP134¥こ/に、¥ちのの−たらう−みつひろ/と¥いふ¥もの/なり。¥かならず¥いちでうの−じらう=どの/の¥おん=て/の¥ひと/を¥たづぬる/に/は¥あら/ず。¥おとと/の¥しちらう¥それ/に¥あり。¥こ=ども¥ににん¥しなのの−くに/に¥おい/たる/が、¥あつぱれ¥わが¥ちち/は、¥よう/て/や¥しん/だる/らん、¥あしう/て/や¥しん/だる/らん/と、¥なげか/んずる¥ところ/に、¥おとと/の¥しちらう/が¥まへ/にて¥うちじに−し/て、¥こ=ども/に¥たしか/に¥きか/せ/ん/と¥おもふ¥ため/なり。¥かたき/を/ば¥きらふ/まじ」/とて、¥あれ/に¥はせ−あひ、¥これ/に¥はせ−あひ、¥むしや¥さんき¥きつ/て¥おとし、¥しにん/に¥あたる¥かたき/に¥おし−ならべ、¥むずと¥くん/で¥どうど¥おち、¥さし−ちがへ/て/ぞ¥しに/に/ける。¥ひぐちの−じらう/は¥こだま−たう/に¥むすぼほれ/たり/けれ/ば、¥こだま/の¥ひと=ども¥より−あひ/て、「¥そもそも¥ゆみ−や−とり/の、¥われ/も¥ひと/も¥ひろなか/へ¥いる/と¥いふ/は、¥しぜん/の¥とき¥ひとまづ/の¥いき/を/も¥つぎ、¥しばし/の¥いのち/を/も¥いか/う/ど¥おもふ¥ため/なり。¥され/ば¥ひぐち/が¥われ=ら/に¥むすぼほれ/けん/も、¥さ/こそ¥あり/けめ。¥いのち/ばかり/を¥たすけ/ん」/とて、¥ひぐち/が¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥きそ=どの/の¥み=うち/に、¥いまゐ、¥ひぐち、¥たて、¥ねのゐ/と¥きこえ/させ¥たまひ/て¥さふらへ/ども、¥きそ=どの¥うた/れ/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥いまゐ=どの/も¥おん=じがい¥さふらふ¥うへ/は、¥なにか¥くるしう¥さふらふ/べき。¥われ=ら/が¥なか/へ¥かうにん/に¥なり¥たまへ。¥こんど/の¥くんこう/の¥しやう/に¥まうし−かへ/て、¥おん=いのち/ばかり/を/ば、¥たすけ¥たてまつら/ん」/と¥いひ−おくつ/たり/けれ/ば、¥ひぐちの−じらう/は¥きこゆる¥つはもの/なり/しか/ども、¥うん/や¥つき/に/けん、¥おめおめと¥こだま−たう/の¥なか/へ、¥かうにん/に/こそ¥なり/に/けれ。¥たいしやうぐん−のりより¥よしつね/に¥この¥よし/を¥まうす。¥ゐん/へ¥うかがひ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゐん−ぢう/の¥くぎやう−てんじやうびと、P135¥
つぼね/の¥にようばう、¥め/の−わらは/に¥いたる/まで、「¥きそ/が¥ほふぢうじ=どの/へ¥よせ/て、¥ごしよ/に¥ひ/を¥かけ¥やき−ほろぼし、¥おほく/の¥かうそう¥きそう/を¥うしなひ/たり/し/に/は、¥あそこ/に/も¥ここ/に/も、¥いまゐ、¥ひぐち/と¥いふ¥こゑ/のみ/こそ¥あり/しか。¥これ=ら/を¥たすけ/られ/ん/は、¥むげ/に¥くちをしかる/べし」/と、¥くちぐち/に¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥かなは/ず/して、¥また¥しざい/に/ぞ¥さだめ/られ/ける。¥おなじき−にじふににち、¥しん−せつしやう=どの¥とどめ/られ/させ¥たまひ/て、¥もと/の¥せつしやう¥くわんちやく−し¥たまふ。¥わづか¥ろくじふにち/の¥うち/に¥かへ/られ/させ¥たまひ/ぬれ/ば、¥いまだ¥み−はて/ぬ¥ゆめ/の/ごとし。¥むかし¥あはた/の−くわんばく/は¥よろこび−まうし/の¥のち、¥ただ¥しちかにち/だに¥あり/し/ぞ/かし。¥これ/は¥ろくじふにち/と/は¥まうせ/ども、¥その¥あひだ/に¥せちゑ/も¥ぢもく/も¥おこなは/れ/ぬれ/ば、¥おもひで¥なき/に¥あら/ず。¥おなじき−にじふしにち、¥きその−さま/の−かみ、¥よたう¥ごにん/が¥くび¥みやこ/へ¥いつ/て、¥おほぢ/を¥わたさ/る。¥ひぐちの−じらう/は¥かうにん/たり/し/が、¥しきり/に¥くび/の¥とも¥せ/ん/と¥まうし/けれ/ば、¥さら/ば/とて¥あゐずり/の−ひたたれ、¥たて−ゑぼし/にて/ぞ¥わたさ/れ/ける。¥あくる¥にじふごにち、¥ひぐちの−じらう¥つひに¥きら/れ/に/けり。¥のりより¥よしつね、¥さまざま/に¥まうさ/れ/けれ/ども、¥いまゐ、¥ひぐち、¥たて、¥ねのゐ/とて、¥きそ/が¥し−てんわう/の¥その¥いつ/なれ/ば、¥これ=ら/を¥たすけ/られ/ん/は、¥やうこ/の−うれへ¥ある/べし/と、¥こと/に¥さた¥あつ/て¥きら/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥つて/に¥きく、¥こらう/の−くに¥おとろへ/て、¥しよこう¥はち/の/ごとく/に¥おこつ/し¥とき、¥はいこう¥さき/に¥かんやうきう/へ¥いる/と¥いへ/ども、¥かうう/が¥のち/に¥き/たら/ん¥こと/を¥おそれ/て、¥さい/は¥びじん/を/も¥をかさ/ず、¥きんぎん¥しゆぎよく/を/も¥かすめ/ず、¥いたづら/に¥かんこく/の−せき/を¥まもつ/て、¥ぜんぜん/に¥かたき/を¥ほろぼし/て、¥てんが/を¥ぢするP136¥こと/を¥え/たり/き。¥され/ば¥いま/の¥きその−さま/の−かみ/も、¥まづ¥みやこ/へ¥いる/と¥いへ/ども、¥よりともの−あそん/の¥めい/に¥したがは/ましか/ば、¥かの¥はいこう/が¥はかりごと/に/は¥おとら/ざら/まし。¥さる−ほど/に¥へいけ/は¥こぞ/の¥ふゆ/の¥ころ/より、¥さぬきの−くに¥やしま/の−いそ/を¥いで/て、¥つの−くに¥なにはがた/に¥おし−わたり、¥にし/は¥いちのたに/を¥じやうくわく/に¥かまへ、¥ひんがし/は¥いくた/の−もり/を¥おほて/の¥きどぐち/と/ぞ¥さだめ/ける。¥その¥あひだ¥ふくはら、¥ひやうご、¥いたやど、¥すま/に¥こもる¥せい、¥せんやうだう¥はつ−か−こく、¥なんかいだう¥ろくかこく、¥つがふ¥じふしかこく/を¥うち−したがへ/て、¥めさ/るる¥ところ/の¥ぐんびやう、¥じふまん−よ−き/と/ぞ¥きこえ/し。¥いちのたに/は¥きた/は¥やま、¥みなみ/は¥うみ、¥くち/は¥せばく/て¥おく¥ひろし。¥きし¥たかく/して¥びやうぶ/を¥たて/たる/に¥こと/なら/ず。¥きた/の¥やまぎは/より、¥みなみ/の¥うみ/の¥とほあさ/まで、¥たいせき/を¥かさね−あげ、¥おほぎ/を¥きつ/て¥さかもぎ/に¥ひき、¥ふかき¥ところ/に/は¥おほ−ふね=ども/を¥そばだて/て、¥かいだて/に¥かき、¥じやう/の¥おもて/の¥たかやぐら/に/は、¥しこく−ちんぜい/の¥つはもの=ども、¥かつちう¥きうせん/を¥たいし/て、¥うんか/の/ごとく/に¥なみ−ゐ/たり。¥やぐら/の¥まへ/に/は、¥くらおきむま=ども、¥とへ¥はたへ/に¥ひつ−たて/たり。¥つねに¥たいこ/を¥うつ/て¥らんじやう−す。¥いつちやう/の¥ゆみ/の¥いきほひ/は、¥はんげつ¥むね/の¥まへ/に¥かかり、¥さんじやく/の¥けん/の¥ひかり/は、¥あき/の¥しも¥こし/の¥あひだ/に¥よこだへ/たり。¥たかき¥ところ/に/は¥あかはた¥おほく¥うつ−たて/たれ/ば、¥はるかぜ/に¥ふか/れ/て、¥てん/に¥ひるがへる/は、¥ただ¥くわえん/の¥もえ−あがる/に¥こと/なら/ず。P137
「ろくかどかつせん」(『ろくかどのいくさ』)S0906¥さる−ほど/に¥へいけ¥いちのたに/へ¥わたり¥たまひ/て¥のち/は、¥しこく/の¥もの=ども¥いつかう¥したがひ¥たてまつら/ず、¥なか/に/も¥あは¥さぬき/の¥ざいちやう=ら、¥みな¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥こころ/を¥かよはし/ける/が、¥さすが¥きのふ¥けふ/まで、¥へいけ/に¥したがひ¥たてまつ/たる¥み/の、¥けふ¥はじめて¥げんじ/へ¥まゐり/たり/とも、¥よも¥もちひ¥たまは/じ。¥へいけ/に¥や¥ひとつ¥い−かけ¥たてまつ/て、¥それ/を¥おもて/に/して¥まゐら/ん/とて、¥かどわきの−へい−ぢうなごん−のりもり、¥ゑちぜんの−さんみ−みちもり、¥のとの−かみ−のりつね¥ふし¥さん−にん、¥びぜんの−くに¥しもつゐ/に¥まします/と¥きい/て、¥ひやうせん¥じふ−よ−そう/で/ぞ¥よせ/たり/ける。¥のと=どの¥おほき/に¥いかつ/て、「¥きのふ¥けふ/まで、¥われ=ら/が¥むま/の¥くさ¥きつ/たる¥やつ=ばら/が、¥いつしか¥ちぎり/を¥へんずる/に/こそ¥あん/なれ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥いち−にん/も¥もらさ/ず¥うて/や」/とて、¥こ−ぶね=ども¥おし−うかべ/て¥おは/れ/けれ/ば、¥しこく/の¥もの=ども、¥ひとめ/ばかり/に/や¥ひとつ¥い/て、¥のか/ん/と/こそ¥おもひ/し/に、¥のと=どの/に¥あまり/に¥て−いたう¥せめ/られ¥たてまつ/て、¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥とほまけ/に/して¥ひき−しりぞき、¥あはぢの−くに¥ふくら/の−とまり/に¥つき/に/けり。¥その¥くに/に¥げんじ¥ににん¥あり/と¥きこえ/けり。¥こ=ろくでうの−はんぐわん−ためよし/が¥ばつし、¥かもの−くわんじや−よしつぎ、¥あはぢの−くわんじや−よしひさ/と¥きこえ/し/を、¥たいしやう/に¥たのう/で、¥じやうくわく/を¥かまへ/て¥まつ¥ところ/に、¥のと=どの¥おし−よせ/て、¥さんざん/に¥せめ¥たまへ/ば、P138¥
かもの−くわんじや¥うちじに−す。¥あはぢの−くわんじや/は¥いたで¥おう/て、¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥のこり−とどまつ/て¥ふせぎ−や¥い/ける¥もの=ども、¥にひやくさんじふ−よ−にん/が¥くび¥きり−かけ/させ、¥うつて/の¥けうみやう¥しるい/て、¥ふくはら/へ/こそ¥まゐらせ/られ/けれ。¥それ/より¥かどわき=どの/は、¥いちのたに/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥しそく=たち/は、¥いよ/の¥かはのの−しらう/が¥めせ/ども¥まゐら/ぬ/を¥せめ/ん/とて、¥しこく/へ/ぞ¥わたら/れ/ける。¥あに¥ゑちぜんの−さんみ−みちもりの−きやう/は、¥あはの−くに¥はなぞの/の−じやう/に/ぞ¥つき¥たまふ。¥おとと¥のとの−かみ−のりつね/は、¥さぬき/の¥やしま/に¥つき¥たまふ¥よし¥きこえ/しか/ば、¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥かはのの−しらう−みちのぶ/は、¥あきの−くに/の¥ぢうにん、¥ぬたの−じらう/は¥ははかた/の¥をぢ/なり/けれ/ば、¥ひとつ/に¥なら/ん/とて、¥あきの−くに/へ¥おし−わたる。¥のと=どの¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥やしま/を¥たつ/て¥おは/れ/ける/が、¥その−ひ/は¥びんごの−くに¥みのしま/と¥いふ¥ところ/に¥つい/て、¥つぎ/の−ひ¥ぬた/の−じやう/へ/ぞ¥よせ/られ/ける。¥ぬたの−じらう、¥かはのの−しらう¥ひとつ/に¥なつ/て、¥じやうくわく/を¥かまへ/て¥まつ¥ところ/に、¥のと=どの¥やがて¥おし−よせ/て、¥さんざん/に¥せめ¥たまへ/ば、¥ぬたの−じらう¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥かぶと/を¥ぬぎ¥ゆみ/の¥つる/を¥はづい/て¥かうにん/に¥まゐる。¥かはの/は¥なほ/も¥したがは/ず、¥その¥せい¥ごひやく−よ−き¥あり/ける/が、¥ごじつき/ばかり/に¥うち−なさ/れ、¥じやう/を¥おち/て¥ゆく¥ところ/に、¥ここ/に¥のと=どの/の¥さぶらひ/に、¥へいはち−びやうゑ−ためかず/と¥いふ¥もの、¥にひやくき/ばかり/が¥なか/に¥とり−こめ/られ、¥しゆじう¥しちき/に¥うち−なさ/れ、¥たすけ−ぶね/に¥のら/ん/とて、¥ほそみち/に¥かかつ/て¥みぎは/の¥かた/へ¥おち−ゆく¥ところ/を、¥へいはち−びやうゑ/が¥しそく、¥さぬきの−しちらう−よしのり、¥くつきやう/の¥ゆみ/の¥じやうず/なり/けれ/ば、¥おつ−かかり、¥よつびい/て、¥しちき/を¥ごき¥い−おとす。¥しゆじう¥にき/に/ぞ¥なり/に/ける。¥かはの/が¥み/に¥かへ/て¥おもひ/ける¥らうどう/に、¥さぬきの−しちらうP139¥おし−ならべ、¥むず/と¥くん/で、¥どうど¥おち、¥とつ/て¥おさへ/て、¥くび/を¥かか/ん/と¥する¥ところ/に、¥かはのの−しらう¥とつ/て¥かへし、¥わが¥らうどう/の¥うへ/なる¥さぬきの−しちらう/が¥くび¥かき−きつ/て¥ふかた/へ¥なげ−いれ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥かはのの−しらう−をちの−みちのぶ、¥しやうねん¥にじふいち、¥いくさ/を/ば¥かう/こそ¥すれ。¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥よつ/て¥とどめよ/や」/と¥なのり−すて/て、¥らうどう/を¥かた/に¥ひつ−かけ、¥そこ/を/ば¥なつく¥にげ−のび、¥いよの−くに/へ¥おし−わたる。¥のと=どの¥かはの/を/ば¥うち−もらさ/れ/たり/けれ/ども、¥ぬたの−じらう/が¥かうにん/たる/を¥めし−ぐし/て、¥いちのたに/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥また¥あはの−くに/の¥ぢうにん、¥あまの−ろくらう−ただかげ、¥これ/も¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥こころ/を¥かよはし/ける/が、¥おほ−ぶね¥にそう/に¥ひやうらうまい¥つみ、¥もののぐ¥いれ、¥みやこ/を¥さし/て¥のぼり/ける/を、¥のと=どの¥ふくはら/にて、¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥こ−ぶね=ども¥おし−うかべ/て¥おは/れ/けれ/ば、¥にしのみや/の¥おき/にて、¥かへし−あはせ/て¥ふせぎ−たたかふ。¥のと=どの、「¥あます/な、¥もらす/な」/とて、¥さんざん/に¥せめ¥たまへ/ば、¥あまの−ろくらう¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥いづみの−くに¥ふけひ/の−うら/に¥たて−こもる。¥また¥きの−くに/の¥ぢうにん、¥そのべの−ひやうゑ−ただやす、¥これ/も¥へいけ/に¥こころよから/ざり/ける/が、¥あまの−ろくらう/が¥のと=どの/に¥て−いたう¥せめ/られ¥たてまつ/て、¥いづみの−くに¥ふけひ/の−うら/に¥あり/と¥きい/て、¥その¥せい¥ひやくき/ばかり/で、¥いづみの−くに/へ¥うち−こえ/て、¥あまの−ろくらう、¥そのべの−ひやうゑ¥ひとつ/に¥なつ/て、¥じやうくわく/を¥かまへ/て¥まつ¥ところ/に、¥のと=どの¥やがて¥おし−よせ/て、¥さんざん/に¥せめ¥たまへ/ば、¥あまの−ろくらう、¥そのべの−ひやうゑ¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥みがら/は¥にげ/て¥きやう/へ¥のぼる。¥のこり−とどまつ/て、¥ふせぎ−やP140¥い/ける¥つはもの=ども、¥ひやくさんじふ−よ−にん/が¥くび¥きつ/て、¥ふくはら/へ/こそ¥まゐら/れ/けれ。¥また¥ぶんごの−くに/の¥ぢうにん、¥うすきの−じらう−これたか、¥をがたの−さぶらう−これよし、¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥かはのの−しらう−みちのぶ¥ひとつ/に¥なつ/て、¥つがふ¥その¥せい¥にせん−よ−にん、¥こ−ぶね=ども/に¥とり−のつ/て、¥びぜんの−くに/へ¥おし−わたり、¥いまぎ/の−じやう/に¥たて−ごもる。¥のと=どの、¥ふくはら/にて、¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥やすから/ぬ¥こと/なり/とて、¥その¥せい¥さんぜん−よ−きで、¥びぜんの−くに/に¥はせ−くだり、¥いまぎ/の−じやう/を¥せめ¥たまふ。¥のと=どの、¥きやつ=ばら/は¥こはい¥おん=かたき/で¥さふらふ。¥かさね/て¥せい/を¥たまはる/べき¥よし¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ふくはら/より¥すまんぎ/の¥ぐんびやう/を¥さし−むけ/らるる¥よし¥きこえ/しか/ば、¥じやう/の¥うち/の¥つはもの=ども、¥て/の−きは¥たたかひ、¥ぶんどり¥かうみやう−し¥きはめて、¥かたき/は¥たぜい/なり、¥み=かた/は¥こぜい/なり/けれ/ば、「¥とり−こめ/られ/て/は¥かなふ/まじ。¥ここ/を/ば¥おち/て、¥しばし/の¥いき/を¥つげ/や」/とて、¥うすきの−じらう−これたか、¥をがたの−さぶらう−これよし/は、¥ぶんごの−くに/へ¥おし−わたり、¥かはの/は¥いよ/へ/ぞ¥わたり/ける。¥のと=どの、¥いま/は¥せむ/べき¥かたき¥なし/とて、¥ふくはら/へ/こそ¥まゐら/れ/けれ。¥おほい=との¥いげ/の¥げつけい¥うんかく¥より−あひ¥たまひ/て、¥のと=どの/の¥まいど/の¥かうみやう/を/ぞ、¥かんじ−あは/れ/ける。¥
「みくさせいぞろへ」(『みくさせいぞろへ』)S0907¥おなじき−しやうぐわつ−にじふくにち、¥のりより¥よしつね¥ゐんざん−し/て、¥へいけ−つゐたう/の¥ため/に、¥さいこく/へ¥はつかう−す/べきP141¥よし/を¥そうもん−す。¥ほんてう/に/は、¥じんだい/より¥つたは/れ/る¥おん=たから¥みつ¥あり。¥しんし、¥ほうけん、¥ないしどころ¥これ/なり。¥ことゆゑ−なう¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつる/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥りやうにん¥ていしやう/に¥かしこまり−うけたまはつ/て¥まかり−いづ。¥にんぐわつ−よつかのひ、¥ふくはら/に/は¥こ=にふだう−さうこく/の¥きにち/とて、¥ぶつじ¥かた/の/ごとく¥とげ−おこなは/る。¥あさゆふ/の¥いくさだち/に、¥すぎ−ゆく¥つきひ/は¥しら/ね/ども、¥こぞ/は¥ことし/に¥めぐり−き/て、¥うかり/し¥はる/に/も¥なり/に/けり。¥よ/の¥よ/にて¥あら/ましか/ば、¥いか/なる¥きりふ−たふば/の¥くはだて、¥くぶつ−せそう/の¥いとなみ/も、¥ある/べかり/しか/ども、¥ただ¥なんによ/の¥きんだち=たち¥さし−つどひ/て、¥なげき−かなしみ−あは/れ/けり。¥ふくはら/に/は、¥この¥ついで/に¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥そう/も¥ぞく/も¥みな¥つかさ¥なさ/れ/けり。¥なか/に/も¥かどわきの−へい−ぢうなごん−のりもりの−きやう/を/ば、¥じやう−にゐ/の−だいなごん/に¥あがり¥たまふ/べき¥よし、¥おほい=との/より¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥のりもりの−きやう、¥
けふ/まで/も¥あれ/ば¥ある/か/の¥わが−み/かは¥ゆめ/の¥うち/に/も¥ゆめ/を¥みる/かな W067
/と¥おん=ぺんじ¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥つひに¥だいなごん/に/は¥なり¥たまは/ず。¥だいげき−なかはらの−もろなほ/が¥こ、¥すはう/の−すけ−もろずみ¥だいげき/に¥なる。¥ひやうぶ/の−せう−まさあき、¥ごゐ/の−くらんど/に¥なさ/れ/て、¥くらんど/の−せう/と/ぞ¥めさ/れ/ける。¥むかし¥まさかど¥とう−はつ−か−こく/を¥うち−したがへ/て、¥しもふさの−くに¥さうま/の−こほり/に¥みやこ/を¥たて、¥わが−み/を¥へい−しんわう/と¥しようじ/て、¥ひやくくわん/を¥なし/たり/し/に/は、¥こよみ/の−はかせ/ぞ¥なかり/ける。¥これ/は¥それ/に/は¥にる/べから/ず。¥しゆしやう¥きうと/を/こそ¥いで/させ¥たまふ/と¥いへ/ども、¥さんじゆ/の−しんき/を¥たいし/て、¥ばんじよう/の−くらゐ/に¥そなはり¥たまへ/ば、¥じよゐ−ぢもく¥おこなは/れ/ん/も¥ひがごと/に/は¥あら/ず。P142¥へいじ¥すでに¥ふくはら/まで、¥せめ−のぼつ/たる¥よし¥きこえ/しか/ば、¥ふるさと/に¥のこり−とどまり¥たまふ¥ひとびと、¥みな¥いさみ−よろこび−あは/れ/けり。¥なか/に/も¥にゐ/の−そうづ−せんしん/は、¥かぢゐのみや/の¥としごろ/の¥ご=どうじゆく/にて¥おはし/けれ/ば、¥かぜ/の−たより/に/も¥まうさ/れ/けり。¥みや/より/も¥また¥おん=ふみ¥あり。「¥たび/の¥そら/の¥よそほひ、¥おん=こころ−ぐるしけれ/ども、¥みやこ/も¥いまだ¥しづまら/ず」/など、¥こまごま/と¥あそばい/て、¥おく/に/は¥いつしゆ/の¥うた/ぞ¥あり/ける。¥
ひと¥しれ/ず¥そなた/を¥しのぶ¥こころ/を/ば¥かたぶく¥つき/に¥たぐへ/て/ぞ¥やる W068¥
そうづ¥これ/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥かなしみ/の¥なみだ¥せき−あへ/ず。¥さる−ほど/に¥こまつの−さんみ/の−ちうじやう−これもりの−きやう/は、¥とし¥へだたり¥ひ¥かさなる/に¥したがつ/て、¥ふるさと/に¥とどめ−おき¥たまへ/る¥きたのかた、¥をさなき¥ひとびと/の¥こと/を/のみ¥なげき−かなしみ¥たまひ/けり。¥あきんど/の¥たより/に、¥ふみ/など/の¥かよふ/に/も、¥きたのかた/の¥みやこ/の¥おん=すまひ、¥こころ−ぐるしう¥きき¥たまひ/て、¥さら/ば¥これ/へ¥むかへ¥まゐらせ/て、¥いつしよ/で¥いか/に/も−なら/ばや/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥わが−み/こそ¥あら/め、¥おん=ため¥いたはしく/て/など、¥おぼしめし−しづん/で、¥あかし−くらし¥たまふ/に/ぞ、¥せめて/の¥おん=こころざし/の¥ふか−さ/の¥ほど/は¥あらはれ/に/ける。¥にんぐわつ−よつかのひ、¥げんじ¥ふくはら/を¥せむ/べかり/しか/ども、¥こ=にふだう−しやうこく/の¥きにち/と¥きい/て、¥ぶつじ¥とげ/させ/ん/が¥ため/に、¥その−ひ/は¥よせ/ず。¥いつか/は¥にし¥ふさがり、¥むゆか/は¥だうこにち、¥なぬかのひ/の¥う/の−こく/に、¥いちのたに/の¥ひんがし¥にし/の¥きどぐち/にて、¥げんぺい¥や−あはせ/と/ぞ¥さだめ/ける。P143¥
され/ども¥よつか/は¥きちにち/なれ/ば/とて、¥おほて¥からめで/の¥ぐんびやう、¥ふたて/に¥わかつ/て¥せめ−くだる。¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥かまの−おん=ざうし−のりより、¥あひ−ともなふ¥ひとびと、¥たけだの−たらう−のぶよし、¥かがみの−じらう−とほみつ、¥おなじき−こじらう−ながきよ、¥やまなの−じらう−のりよし、¥おなじき−さぶらう−よしゆき、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥かぢはら−へいざう−かげとき、¥ちやくし/の¥げんだ−かげすゑ、¥じなん¥へいじ−かげたか、¥おなじき−さぶらう−かげいへ、¥いなげの−さぶらう−しげなり、¥はんがへの−しらう−しげとも、¥おなじき−ごらう−ゆきしげ、¥をやまの−こしらう−ともまさ、¥なかぬまの−ごらう−むねまさ、¥ゆふきの−しちらう−ともみつ、¥さぬきの−しらう−だいふ−ひろつな、¥をのでらの−ぜんじ−たらう−みちつな、¥そがの−たらう−すけのぶ、¥なかむらの−たらう−ときつね、¥えどの−しらう−しげはる、¥たまのゐの−しらう−すけかげ、¥おほかはづの−たらう−ひろゆき、¥しやうの−さぶらう−ただいへ、¥おなじき−しらう−たかいへ、¥しやうだいの−はちらう−ゆきひら、¥くげの−じらう−しげみつ、¥かはらの−たらう−たかなほ、¥おなじき−じらう−もりなほ、¥ふぢたの−さぶらう−だいふ−ゆきやす/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥ごまん−よ−き、¥にんぐわつ−よつかのひ/の¥たつ/の−いつてん/に¥みやこ/を¥たつ/て、¥その−ひ/の¥さるとり/の−こく/に/は、¥つの−くに¥こやの/に¥ぢん/を/ぞ¥とつ/たり/ける。¥からめで/の¥たいしやうぐん/に/は、¥くらう−おん=ざうし−よしつね、¥おなじう¥ともなふ¥ひとびと、¥やすだの−さぶらう−よしさだ、¥おほうちの−たらう−これよし、¥むらかみの−はんぐわんだい−やすくに、¥たしろの−くわんじや−のぶつな、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥とひの−じらう−さねひら、¥しそく/の¥やたらう−とほひら、¥みうら/の−すけ−よしずみ、¥しそく/の¥へいろく−よしむら、¥はたけやまの−しやうじ−じらう−しげただ、¥おなじき−ながのの−さぶらう−しげきよ、¥さはらの−じふらう−よしつら、¥わだの−こたらう−よしもり、¥おなじき−じらう−よしもち、¥さぶらう−むねざね、¥ささき−しらう−たかつな、¥おなじき−ごらう−よしきよ、¥くまがへの−じらう−なほざね、¥しそく/の¥こじらう−なほいへ、P144¥ひらやまの−むしやどころ−すゑしげ、¥あまのの−じらう−なほつね、¥こがはの−じらう−すけよし、¥はらの−さぶらう−きよます、¥たたらの−ごらう−よしはる、¥その¥こ/の¥たらう−みつよし、¥わたりやなぎの−やごらう−きよただ、¥べつぷの−こたらう−きよしげ、¥かねこの−じふらう−いへただ、¥おなじき−よいち−ちかのり、¥げんぱち−ひろつな、¥かたをかの−たらう−つねはる、¥いせの−さぶらう−よしもり、¥あうしう/の¥さとう−さぶらう−つぎのぶ、¥おなじき−しらう−ただのぶ、¥えだの−げんざう、¥くまゐの−たらう、¥むさし−ばう−べんけい、¥これ=ら/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥いちまん−よ−き、¥おなじ¥ひ/の¥おなじ¥とき/に¥みやこ/を¥たつ/て、¥たんばぢ/に¥かかり、¥ふつかぢ/を¥ひとひ/に¥うつ/て、¥たんば/と¥はりま/の¥さかひ/なる¥みくさ/の−やま/の¥ひんがし/の¥やまぐち、¥おのばら/に¥ぢん/を/ぞ¥とつ/たり/ける。¥
「みくさかつせん」(『みくさがつせん』)S0908¥へいけ/の¥かた/の¥たいしやうぐん/に/は、¥こまつの−しん−ざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥おなじき−せうしやう−ありもり、¥たんごの−じじう−ただふさ、¥びつちうの−かみ−もろもり、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥いがの−へいないびやうゑ−きよいへ、¥えみの−じらう−もりかた/を¥さき/と/して、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥みくさ/の−やま/の¥にし/の¥やまぐち/に¥おし−よせ/て¥ぢん/を¥とる。¥その¥よ/の¥いぬ/の−こく/ばかり/に、¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥さぶらひ−だいしやう−とひの−じらう−さねひら/を¥めし/て、「¥へいけ/は¥これ/より¥さんり¥へだて/て、¥みくさ/の−やま/の¥にし/の¥やまぐち/に、¥おほぜい/で¥ひかへ/たり。¥ようち/に/や¥す/べき、¥また¥あす/の¥いくさ/か」/と¥のたまへ/ば、¥たしろの−くわんじや¥すすみ−いで/て、P145「¥へいけ/の¥せい/は¥さんぜん−よ−き、¥み=かた/の¥おん=せい/は¥いちまん−よ−き、¥はるか/の¥り/に¥さふらふ。¥あす/の¥いくさ/と¥のべ/られ¥さふらひ/な/ば、¥へいけ/に¥せい¥つき¥さふらひ/な/んず。¥ようち¥よかん/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥とひの−じらう、「¥いしう/も¥まうさ/せ¥たまふ¥たしろ=どの/かな。¥たれ/も¥かう/こそ¥まうし/たう¥さふらひ/つれ。¥ようち¥よかん/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥つはもの=ども、「¥くら−さ/は¥くらし、¥いかが−せ/ん」/と¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、¥おん=ざうし、「¥れい/の¥おほ=だいまつ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥とひの−じらう、「¥さる−こと¥さふらふ」/とて、¥をのばら/の¥ざいけ/に¥ひ/を/ぞ¥かけ/たり/ける。¥これ/を¥はじめ/て、¥の/に/も¥やま/に/も、¥くさ/に/も¥き/に/も¥ひ/を¥かけ/たれ/ば、¥ひる/に/は¥ちつと/も¥おとら/ず/して、¥さんり/の¥やま/を/ぞ¥こえ−ゆき/ける。¥この¥たしろの−くわんじや/と¥まうす/は、¥ちち/は¥いづの−くに/の¥さきの−こくし、¥ちうなごん−ためつな/の¥ばつえふ/なり。¥はは/は¥かの/の−すけ−もちみつ/が¥むすめ/を¥おもう/て¥まうけ/たり/し/を、¥ははかた/の¥そぶ/に¥あづけ/て、¥ゆみ−や−とり/に/は¥したて/たん/なり。¥ぞくしやう/を¥たづぬれ/ば、¥ごさんでうのゐん/の¥だいさん/の¥わうじ、¥すけひとの−しんわう/に¥ごだい/の¥そん/なり。¥ぞくしやう/も¥よき¥うへ、¥ゆみ−や/を¥とつ/て/も¥よかり/けり。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥その¥よ、¥ようち/に¥せ/んずる/を/ば¥ゆめ/に/も¥しら/ず、「¥いくさ/は¥さだめて¥あす/の¥いくさ/にて/ぞ¥あら/んず/らん。¥いくさ/に/も¥ねぶたい/は¥だいじ/の¥もの/ぞ。¥よく¥ね/て¥いくさ−せよ¥もの=ども」/とて、¥せんぢん/は¥おのづから¥ようじん−し/けれ/ども、¥ごぢん/の¥つはもの=ども/は、¥あるひは¥かぶと/を¥まくら/に¥し、¥あるひは¥よろひ/の¥そで¥えびら/など/を¥まくら/と/して、¥ぜんご/も¥しら/ず/ぞ¥ふし/たり/ける。¥その¥よ/の¥やはん/ばかり、¥げんじ¥いちまん−よ−き、¥みくさ/の−やま/の¥にし/の¥やまぐち/に¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どうと/ぞP146¥つくり/ける。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥あまり/に¥あわて−さわい/で、¥ゆみ¥とる¥もの/は¥や/を¥しら/ず、¥や/を¥とる¥もの/は¥ゆみ/を¥しら/ず、¥あわて−ふためき/ける/が、¥むま/に¥あて/られ/じ/と/や¥おもひ/けん、¥みな¥なか/を¥あけ/て/ぞ¥とほし/ける。¥げんじ/は¥おち−ゆく¥へいけ/を、¥あそこ/に¥おつ−かけ、¥ここ/に¥おつ−つめ、¥さんざん/に¥せめ/けれ/ば、¥やにはに¥ごひやく−よ−にん¥うた/れ/ぬ。¥て¥おふ¥もの=ども¥おほかり/けり。¥たいしやうぐん−しん−ざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥おなじき−せうしやう−ありもり、¥たんごの−じじう−ただふさ、¥みくさ/の¥て/を¥やぶら/れ/て、¥めんぼく−なう/や¥おもは/れ/けん、¥はりま/の¥たかさご/より¥ふね/に¥のつ/て、¥さぬき/の¥やしま/へ¥わたり¥たまひ/ぬ。¥びつちうの−かみ−もろもり/ばかり/こそ、¥なに/と/して/かは¥もれ/させ¥たまひ/たり/けん、¥へいないびやうゑ、¥えみの−じらう/を¥めし−ぐし/て、¥いちのたに/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥
「らうば」(『らうば』)S0909¥おほい=との、¥あきの−むま/の−すけ−よしゆき/を¥ししや/にて、¥ひとびと/の¥もと/へ¥のたまひ−つかはさ/れ/ける/は、「¥くらう−よしつね/こそ、¥みくさ/の−て/を¥せめ−やぶつ/て、¥すでに¥みだれ−いる¥よし¥きこえ¥さふらふ。¥やま/の−て/が¥だいじ/で¥さふらへ/ば、¥おのおの¥むかは/れ¥さふらひ/な/ん/や」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥みな¥じし¥まうさ/れ/けり。¥のと=どの/の¥もと/へ/も、「¥たびたび/の¥こと/で/は¥さふらへ/ども、¥こんど/も¥また¥ご=へん¥むかは/れ¥さふらひ/な/ん/や」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥のと=どの/の¥へんじ/に、「¥いくさ/は¥さやう/にP147¥かりすなどり/など/の¥やう/に、¥あしだち/の¥よから/う¥かた/へ/は¥むかは/う、¥あしから/ん¥かた/へ/は¥むかは/じ/など¥さふらは/ん/に/は、¥いくさ/に¥かつ¥こと/は¥よも¥さふらは/じ。¥いく−たび/で/も¥さふらへ、¥こはから/ん¥かた/へ/は、¥のりつね¥うけたまはつ/て、¥まかり−むかひ¥さふらふ/べし。¥いつぱう¥うち−やぶつ/て¥まゐらせ¥さふらは/ん。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/べし」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥おほい=との¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび¥たまひ/て、¥ゑつちうの−せんじ−もりとし/を¥さき/と/して、¥いちまん−よ−き、¥のと=どの/に/ぞ¥つけ/られ/ける。¥あに¥ゑちぜんの−さんみ−みちもりの−きやう/を¥あひ−ぐし/て、¥やま/の−て/へ/ぞ¥むかは/れ/ける。¥この¥やま/の−て/と¥まうす/は、¥いちのたに/の¥うしろ、¥ひよどりごえ/の¥ふもと/なり。¥みちもりの−きやう、¥のと=どの/の¥かりや/へ、¥きたのかた¥むかへ−よせ¥たまひ/て、¥さいご/の¥なごり¥をしま/れ/けり。¥のと=どの¥おほき/に¥いかつ/て、「¥この¥て/は¥だいじ/の¥かた/とて、¥のりつね¥むけ/られ¥さふらふ/が、¥まことに¥こはう¥さふらふ/なり。¥ただいま/も¥うへ/の¥やま/より¥かたき¥おとす/ほど/なら/ば、¥とる¥もの/も¥とり−あへ¥さふらふ/まじ。¥たとひ¥ゆみ/を/ば¥もつ/たり/とも、¥や/を¥はげ/ず/は¥あしかる/べし。¥たとひ¥や/を/ば¥はげ/たり/とも、¥ひか/ず/は¥なほ/も¥あしかる/べし。¥まして¥さやう/に¥うち−とけ/て¥わたら/せ¥たまひ/て/は、¥なん/の¥よう/に¥あはせ¥たまふ/べき」/と¥いさめ/られ/て、¥みちもりの−きやう¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥いそぎ¥もののぐ−し/て、¥ひと/を/ば¥かへし¥たまひ/けり。¥いつかのひ/の¥くれがた/に、¥げんじ¥こやの/を¥たつ/て、¥やうやう¥いくた/の−もり/へ¥せめ−ちかづく。¥すずめ/の−まつばら、¥みかげのまつ、¥こやの/の¥かた/を¥み−わたせ/ば、¥げんじ¥てんで/に¥ぢん/を¥とつ/て、¥とほび/を¥たく。¥ふけ−ゆく¥まま/に¥ながむれ/ば、¥やま/の−は¥いづる¥つき/の/ごとし。¥へいけ/も¥とほび¥たけ/や/とて、P148¥いくた/の−もり/に/も¥かた/の/ごとく/ぞ¥たい/たり/ける。¥あけ−ゆく¥まま/に¥み−わたせ/ば、¥はれ/たる¥そら/の¥ほし/の/ごとし。¥これ/や¥むかし¥かはべ/の¥ほたる/と¥えいじ¥たまひ/けん/も、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。¥かやう/に¥げんじ/は、¥あそこ/に¥ぢん¥とつ/て/は¥むま¥やすめ、¥ここ/に¥ぢん¥とつ/て/は¥むま¥かひ/など¥し/ける/ほど/に¥いそが/ず。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥いま/や¥よす、¥いま/や¥よする/と¥あひ−まつ/て、¥やすい¥こころ/も¥せ/ざり/けり。¥おなじき−むゆかのひ/の¥あけぼの/に、¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥いちまん−よ−き/を¥ふたて/に¥わけ/て、¥とひの−じらう−さねひら/に、¥しちせん−よ−き/を¥さし−そへ/て、¥いちのたに/の¥にし/の¥きどぐち/へ¥さし−つかはす。¥わが−み/は¥さんぜん−よ−き/で、¥いちのたに/の¥うしろ、¥ひよどりごえ/を¥おとさ/ん/とて、¥たんばぢ/より¥からめで/へ/こそ¥むかは/れ/けれ。¥つはもの=ども、「¥これ/は¥きこゆる¥あくしよ/にて¥あん/なり。¥おなじう¥しぬる/とも、¥かたき/に¥あう/て/こそ¥しに/たけれ。¥あくしよ/に¥おち/て/は¥しに/たから/ず。¥あつぱれ¥この¥やま/の¥あんないしや/や¥ある」/と¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、¥ここ/に¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥ひらやまの−むしやどころ¥すすみ−いで/て、「¥すゑしげ/こそ¥この¥やま/の¥あんない¥よく¥ぞんぢ¥つかまつ/て¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥おん=ざうし、「¥わ=との/は¥とうごく−そだち/の¥もの/の、¥けふ¥はじめて¥みる¥さいこく/の¥やま/の¥あんないしや、¥おほき/に¥まことしから/ず」/と¥のたまへ/ば、¥すゑしげ¥かさね/て¥まうし/ける/は、「¥こ/は¥ご=ぢやう/と/も¥おぼえ¥さふらは/ぬ/ものかな。¥よしの¥はつせ/の¥はな/を/ば、¥み/ね/ども¥かじん/が¥しり、¥かたき/の¥こもつ/たる¥じやう/の¥うしろ/の¥あんない/を/ば、¥かう/の¥むしや/が¥しり¥さふらふ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥これ¥また¥ばうじやくぶじん/に/ぞ¥きこえ/し。P149¥
また¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥べつぷの−こたらう−きよしげ/とて、¥しやうねん¥じふはつさい/に¥なり/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥ちち/にて¥さふらひ/し¥よししげ−ぼふし/が¥をしへ¥さふらひ/し/は、¥たとへば¥やまごえ/の¥かり/を¥せよ、¥また/は¥かたき/に/も¥おそは/れよ、¥しんざん/に¥まよひ/たら/んずる¥とき/は、¥らうば/に¥たづな¥むすん/で¥うち−かけ、¥さき/に¥おつ−たて/て¥ゆけ、¥かならず¥みち/へ¥いで/うずる/ぞ/と/こそ¥をしへ¥さふらひ/しか」/と¥まうし/けれ/ば、¥おん=ざうし、「¥やさしう/も¥まうし/たる/ものかな。¥ゆき/は¥のばら/を¥うづめ/ども、¥おい/たる¥むま/ぞ¥みち/は¥しる/と¥いふ¥ためし¥あり」/とて、¥しらあしげ/なる¥らうば/に、¥かがみぐら¥おき、¥しろぐつわ¥はげ、¥たづな¥むすん/で¥うち−かけ、¥さき/に¥おつ−たて/て、¥いまだ¥しら/ぬ¥しんざん/へ/こそ¥いり¥たまへ。¥ころ/は¥きさらぎ¥はじめ/の¥こと/なれ/ば、¥みね/の¥ゆき¥むらぎえ/て、¥はな/か/と¥みゆる¥ところ/も¥あり、¥たに/の¥うぐひす¥おとづれ/て、¥かすみ/に¥まよふ¥ところ/も¥あり。¥のぼれ/ば¥はくせつ¥かうかう/と/して¥そびえ、¥くだれ/ば¥せいざん¥がが/と/して¥きし¥たかし。¥まつ/の¥ゆき/だに¥きえ−やら/で、¥こけ/の¥ほそみち¥かすか/なり。¥あらし/に¥たぐふ¥をりをり/は、¥ばいくわ/と/も¥また¥うたがは/れ、¥とうざい/に¥むち/を¥あげ、¥こま/を¥はやめ/て¥ゆく/ほど/に、¥やまぢ/に¥ひ¥くれ/ぬれ/ば、¥みな¥おり−ゐ/て¥ぢん/を¥とる。¥ここ/に¥むさし−ばう−べんけい、¥ある¥らうおう¥いち−にん¥ぐし/て¥まゐり/たり。¥おん=ざうし、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、「¥これ/は¥この¥やま/の¥れふし/で¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、「¥さて/は¥あんない¥よく¥しつ/たる/らん」。「¥いかで/か¥ぞんぢ¥つかまつら/で/は¥さふらふ/べき」。¥おん=ざうし、「¥さぞ¥ある/らん。¥これ/より¥へいけ/の¥じやうくわく¥いちのたに/へ¥おとさ/う/と¥おもふ/は¥いか/に」。「¥ゆめゆめ¥かなひ¥さふらふ/まじ。¥およそ¥さんじふぢやう/の¥たに、¥じふごぢやう/の¥いはさき/など/を/ば、¥たやすう¥ひと/の¥かよふ/べき¥やう/もP150¥さふらは/ず。¥その−うへ、¥じやう/の¥うち/に/は、¥おとしあな/を/も¥ほり、¥ひし/を/も¥うゑ/て¥まち¥まゐらせ¥さふらふ/らん。¥まして¥お=むま/など/は¥おもひ/も¥より¥さふらは/ず」/と¥まうし/けれ/ば、¥おん=ざうし、「¥さて¥さやう/の¥ところ/は、¥しし/は¥かよふ/か」。「¥しし/は¥かよひ¥さふらふ。¥せけん/だに¥あたたか/に¥なり¥さふらへ/ば、¥くさ/の¥ふかき/に¥ふさ/ん/とて、¥はりま/の¥しし/は¥たんば/へ¥こえ、¥せけん/だに¥さむく¥なり¥さふらへ/ば、¥ゆき/の¥あさり/に¥はま/ん/とて、¥たんば/の¥しし/は¥はりま/の¥いなみの/へ¥こえ¥さふらふ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥おん=ざうし、「¥さて/は¥ばば¥ござんなれ。¥しし/の¥かよは/んずる¥ところ/を、¥むま/の¥かよは/ざる/べき¥やう/や¥ある。¥さら/ば¥やがて¥なんぢ¥あんないしや−せよ」/と¥のたまへ/ば、「¥この¥み/は¥とし¥おい/て、¥いか/に/も¥かなひ¥さふらふ/まじ」/と¥まうす。「¥さて¥なんぢ/に¥こ/は¥ない/か」。「¥さふらふ」/とて、¥くまわう/とて¥しやうねん¥じふはつさい/に¥なり/ける¥せうくわん/を¥たてまつる。¥おん=ざうし、¥やがて¥もとどり¥とり−あげ/させ¥たまひ/て、¥ちち/を/ば¥わしのをの−しやうじ−たけひさ/と¥いふ¥あひだ、¥これ/を/ば¥わしのをの−さぶらう−よしひさ/と¥なのら/せ/て、¥いちのたに/の¥さきうち−せ/させ、¥あんないしや/に/こそ¥ぐせ/られ/けれ。¥へいけ¥ほろび、¥げんじ/の¥よ/に¥なつ/て¥のち、¥かまくら=どの/と¥なか¥たがう/て、¥あうしう/へ¥くだり¥うた/れ¥たまひ/し¥とき、¥わしのをの−さぶらう−よしひさ/と¥なのつ/て、¥いつしよ/で¥しに/に/ける¥つはもの/なり。P151
「いちにのかけ」(『いちにのかけ』)S0910¥むゆか/の¥やはん/ばかり/まで/は、¥くまがへ、¥ひらやま¥からめで/に/ぞ¥さふらひ/ける。¥くまがへ、¥しそく/の¥こじらう/を¥よう/で¥いひ/ける/は、「¥この¥て/は¥あくしよ/で¥あん/なれ/ば、¥たれ¥さき/と¥いふ¥こと/も¥ある/まじき/ぞ。¥いざ−うれ、¥とひ/が¥うけたまはつ/て¥むかう/たる¥にし/の¥て/へ¥よせ/て、¥いちのたに/の¥まつさき¥かけ/う」/ど¥いひ/けれ/ば、¥こじらう、「¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べう¥さふらふ。¥たれ/も¥かく/こそ¥まうし/たう¥さふらひ/つれ。¥さら/ば¥とう¥よせ/させ¥たまへ」/と¥まうす。¥くまがへ、「¥まこと/や¥ひらやま/も¥この¥て/に¥ある/ぞ/かし。¥うちごみ/の¥いくさ¥このま/ぬ¥もの/なれ/ば、¥ひらやま/が¥やう¥み/て¥まゐれ」/とて、¥げにん/を¥みせ/に¥つかはす。¥あん/の/ごとく¥ひらやま/は、¥くまがへ/より¥さき/に¥いで−たつ/て、「¥ひと/を/ば¥しる/べから/ず、¥すゑしげ/に¥おいて/は¥ひとひき/も¥ひく/まじい/ものを、¥ひく/まじい/ものを」/と、¥ひとりごと/を/ぞ¥し−ゐ/たる。¥げにん/が¥むま/を¥かふ/とて、「¥につくい¥むま/の¥ながぐらひ/かな」/とて¥うち/けれ/ば、¥ひらやま、「¥さう¥な¥せ/そ。¥その¥むま/の¥なごり/も¥こよひ/ばかり/ぞ」/とて¥うつ−たち/けり。¥げにん¥わしり−かへつ/て、¥しゆ/に¥この¥よし¥つげ/けれ/ば、¥さら/ば/こそ/とて、¥これ/も¥やがて¥うつ−たち/けり。¥くまがへ/が¥その¥よ/の¥しやうぞく/に/は、¥かち/の−ひたたれ/に、¥あかがは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥くれなゐ/の¥ほろ/を¥かけ、P152¥ごんだくりげ/と¥いふ¥きこゆる¥めいば/に/ぞ¥のつ/たり/ける。¥しそく/の¥こじらう−なほいへ/は、¥おもだか/を¥ひとしほ¥すつ/たる¥ひたたれ/に、¥ふしなはめ/の−よろひ¥き/て、¥せいろう/と¥いふ¥しら−つきげ/なる¥むま/に/ぞ¥のつ/たり/ける。¥はたさし/は¥きぢん/の−ひたたれ/に、¥こざくら/を¥き/に¥かへい/たる¥よろひ¥き/て、¥きかはらげ/なる¥むま/に/ぞ¥のつ/たり/ける。¥しゆじう¥さんき¥うち−つれ、¥おとさ/んずる¥たに/を/ば¥ゆんで/に¥なし、¥めて/へ¥あゆま/せ−ゆく/ほど/に、¥としごろ¥ひと/も¥かよは/ぬ¥たゐのはた/と¥いふ¥ふるみち/を¥へ/て、¥いちのたに/の¥なみうちぎは/へ/ぞ¥うち−いで/ける。¥いちのたに¥ちかう¥しほや/と¥いふ¥ところ¥あり。¥いまだ¥よ¥ふかかり/けれ/ば、¥とひの−じらう−さねひら、¥しちせん−よ−き/で¥ひかへ/たり。¥くまがへ¥よ/に¥まぎれ/て、¥なみうちぎは/より、¥そこ/を/ば¥つと¥はせ−とほり、¥いちのたに/の¥にし/の¥きどぐち/に/ぞ¥おし−よせ/たる。¥その−とき/も¥いまだ¥よ¥ふかかり/けれ/ば、¥じやう/の¥うち/に/は¥しづまり−かへつ/て¥おと/も¥せ/ず。¥くまがへ、¥しそく/の¥こじらう/に¥いひ/ける/は、「¥この¥て/は¥あくしよ/で¥あん/なれ/ば、¥われ/も¥われ/も/と¥さき/に¥こころ/を¥かけ/たる¥もの=ども¥おほかる/らん。¥すでに¥よせ/たれ/ども、¥よ/の¥あくる/を¥あひ−まつ/て、¥この¥へん/に/も¥ひかへ/たる/らん/ぞ。¥こころ−せばう¥なほざね¥いち−にん/と¥おもふ/べから/ず。¥いざ¥なのら/ん」/とて、¥かいだて/の¥きは/に¥あゆま/せ−より、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むさしの−くに/の¥ぢうにん¥くまがへの−じらう−なほざね、¥しそく/の¥こじらう−なほいへ、¥いちのたに/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、「¥よしよし¥おと¥な¥せ/そ。¥かたき/の¥むま/の¥あし¥つからかさ/せよ。¥やだね/を¥い−つくさ/せよ」/とて、¥あひ−しらふ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥やや¥あつ/てうしろ/より¥むしや/こそ¥にき¥つづい/たれ。「¥た/そ」/と¥とへ/ば、「¥すゑしげ」/と¥こたふ。「P153¥とふ/は¥た/そ」。「¥なほざね/ぞ/かし」。「¥いか/に¥くまがへ=どの/は¥いつ/より/ぞ」。「¥よひ/より」/と/こそ¥こたへ/けれ。「¥すゑしげ/も¥やがて¥つづい/て¥よす/べかり/つる/を、¥なりだ−ごらう/に¥たばから/れ/て、¥いま/まで/は¥ちち−し/たり/つる/なり。¥なりだ/が¥しな/ば¥いつしよ/で¥しな/ん/と¥ちぎり/し¥あひだ、¥うち−つれ/て¥よせ/つれ/ば、『¥いたう¥ひらやま=どの¥さきがけばやり¥な¥し¥たまひ/そ。¥いくさ/の¥さき/を¥かくる/と¥いふ/は、¥み=かた/の¥せい/を¥うしろ/に¥おい/て、¥さき/を¥かけ/たれ/ば/こそ、¥かうみやう¥ふかく/を/も¥ひと/に¥しら/るれ。¥あの¥おほぜい/の¥なか/へ¥ただ¥いつき、¥かけ−いつ/て¥うた/れ/たら/ん/は、¥なん/の¥せん/に/か¥あふ/べき』/と¥いふ¥あひだ、¥げに/も/と¥おもひ、¥こざか/の¥あり/つる/を¥うち−のぼせ、¥くだ(原本かな無し)りさま/に¥むま/の¥かしら/を¥ひき−たて/て、¥み=かた/の¥せい/を¥まつ¥ところ/に、¥なりだ/も¥つづい/て¥いで−き/たり、¥うち−ならべ/て¥いくさ/の¥やう/を/も¥いひ−あはせ/んずる/か/と¥おもひ/たれ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥すゑしげ/が¥かた/を/ば¥すげな=げ/に¥みなし/つつ、¥そば/を¥つと¥はせ−とほる¥あひだ、¥あつぱれ¥この¥もの¥すゑしげ¥たばかつ/て、¥さき¥かくる/よ/と¥おもひ、¥ごろくたん/ばかり¥すすん/だる/を、¥あれ/が¥むま/は¥わが¥むま/より¥よわ=げ/なる/ものを/と¥め/を¥かけ、¥ひとむち¥うつ/て¥おつ−つき、『¥いか/に¥なりだ=どの/は、¥まさなう/も¥すゑしげ/ほど/の¥もの/を、¥たばかり¥たまふ/ものかな』/と¥いひ/かけ、¥うち−すて/て¥よせ/つれ/ば、¥いま/は¥はるか/に¥さがり/ぬ/らん。¥よも¥うしろかげ/を/ば¥み/たら/じ」/と/こそ¥かたり/けれ。¥さる−ほど/に¥しののめ¥やうやう¥あけ−ゆけ/ば、¥くまがへ¥ひらやま、¥かれ−これ¥ごき/で/ぞ¥ひかへ/たる。¥くまがへ/は¥さき/に¥なのつ/たり/けれ/ども、¥ひらやま/が¥きく¥まへ/にて、¥また¥なのら/ん/と/や¥おもひ/けん、¥かいだて/の¥きは/へ¥あゆま/せ−より、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥そもそもP154¥いぜん¥なのつ/つる¥むさしの−くに/の¥ぢうにん¥くまがへの−じらう−なほざね、¥しそく/の¥こじらう−なほいへ、¥いちのたに/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、「¥いざ¥よ/も−すがら¥なのる¥くまがへ−おやこ/を¥ひつ−さげ/て¥こ/ん」/とて、¥すすむ¥へいけ/の¥さぶらひ¥たれたれ/ぞ。¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ、¥かづさの−ごらう−びやうゑ−ただみつ、¥あく−しち−びやうゑ−かげきよ、¥ごとうない−さだつね/を¥さき/と/して、¥むねと/の¥つはもの¥にじふ−よ−き、¥きど/を¥ひらい/て¥かけ−いで/たり。¥ここ/に¥ひらやま/は¥しげめゆひ/の−ひたたれ/に、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥ふたつひきりやう/の¥ほろ/を¥かけ、¥めかすげ/と¥いふ¥きこゆる¥めいば/に/ぞ¥のつ/たり/ける。¥はたさし/は¥くろかは−をどし/の−よろひ/に、¥かぶと¥ゐくび/に¥き−なし/つつ、¥さび−つきげ/なる¥むま/に/ぞ¥のつ/たり/ける。「¥ほうげん¥へいぢ¥にかど/の¥いくさ/に、¥さきがけ/て¥かくみやう−し/たる¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥ひらやまの−むしやどころ−すゑしげ」/と¥なのつ/て¥をめい/て¥かく。¥くまがへ¥かくれ/ば¥ひらやま¥つづき、¥ひらやま¥かくれ/ば¥くまがへ¥つづき、¥たがひに¥われ¥おとら/じ/と、¥いれ−かへ−いれ−かへ、¥なのり−かへ−なのり−かへ、¥もみ/に¥もう/で、¥ひ¥いづる/ほど/に/ぞ¥せめ/たり/ける。¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、¥くまがへ¥ひらやま/に¥あまり/に¥て−いたう¥せめ/られ/て、¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥じやう/の¥うち/へ¥ざつと¥ひい/て、¥かたき/を¥とざま/に¥なし/て/ぞ¥ふせぎ/ける。¥くまがへ/は¥むま/の¥ふとばら¥い/させ、¥はぬれ/ば、¥ゆんづゑ¥つい/て¥おり−たつ/たり。¥しそく/の¥こじらう−なほいへ/も、¥しやうねん¥じふろくさい/と¥なのつ/て、¥まつさき¥かけ/て¥たたかひ/ける/が、¥ゆんで/の¥かひな/を¥い/させ、¥これ/も¥むま/より¥おり、¥ちち/と¥ならん/で/ぞ¥たつ/たり/ける。¥くまがへ、「¥いか/に¥こじらう/は¥ておう/たる/か」。「¥さん−ざふらふ」。「¥よろひづき/を¥つね/に¥せよ。¥うら¥かかす/な。¥しころ/を¥かたぶけよ、¥うち−かぶと¥い/さす/な」/と/こそP155¥をしへ/けれ。¥くまがへ/は¥よろひ/に¥たつ/たる¥や=ども¥かなぐり−すて、¥じやう/の¥うち/を¥にらまへ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥こぞ/の¥ふゆ、¥かまくら/を¥たち/し/より¥この−かた、¥いのち/を/ば¥ひやうゑ/の−すけ=どの/に¥たてまつり、¥かばね/を¥いちのたに/の¥みぎは/に¥さらさ/ん/と、¥おもひ−きつ/たる¥なほざね/ぞ/かし。¥さんぬる¥むろやま¥みづしま¥にかど/の¥いくさ/に¥うち−かつ/て、¥かうみやう−し/たり/と¥なのる/なる、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ、¥かづさの−ごらう−びやゑ、¥あく−しち−びやうゑ/は¥ない/か。¥のと=どの/は¥おはせ/ぬ/か。¥かうみやう¥ふかく/も¥かたき/に¥よつ/て/こそ¥すれ。¥ひと−ごと/に/は¥え¥せ/じ/ものを。¥ただ¥くまがへ−おやこ/に¥おち−あへ/や、¥くめ/や¥くめ」/と/ぞ¥ののしつ/たる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ、¥このむ¥しやうぞく/なれ/ば、¥こむらご/の−ひたたれ/に、¥あか−をどし/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら/を¥おい/て¥のつ/たり/ける/が、¥くまがへ−おやこ/を¥め/に¥かけ/て¥あゆま/せ−よる。¥くまがへ−おやこ/も¥なか/を¥わら/れ/じ/と、¥あひ/も¥すかさ/ず¥たち−ならび、¥たち/を¥ぬい/て¥ひたひ/に¥あて、¥うしろ/へ/は¥ひとひき/も¥ひか/ず、¥いよいよ¥まへ/へ/ぞ¥すすん/だる。¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ¥これ/を¥み/て、¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥とつ/て¥かへす。¥くまがへ、「¥あれ/は¥いか/に、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ/と/こそ¥みれ。¥かたき/に/は¥どこ/を¥きらは/う/ぞ。¥おし−ならべ/て¥くめ/や¥くめ」/と¥いひ/けれ/ども、¥じらう−びやうゑ、「¥さ/も−さう/ず」/とて¥ひつ−かへす。¥かづさの−あく−しち−びやうゑ¥これ/を¥み/て、「¥きたない¥との=ばら/の¥ふるまひ/かな。¥しや¥くま/んずる/ものを。¥おち−あは/ぬ¥こと/は¥よも¥あら/じ」/とて、P156¥すでに¥かけ−いで¥くま/ん/と¥し/けれ/ば、¥じらう−びやうゑ、¥あく−しち−びやうゑ/が¥よろひ/の¥そで/を¥ひかへ/て、「¥きみ/の¥おん=だいじ¥これ/に¥かぎる/べから/ず。¥ある/べう/も¥なし」/と¥せいせ/られ/て、¥ちから¥およば/で¥くま/ざり/けり。¥その−のち¥くまがへ/は¥のりがへ/に¥のつ/て¥をめい/て¥かく。¥ひらやま/も¥くまがへ−おやこ/が¥たたかふ¥ま/に、¥むま/の¥いき¥やすめ、¥これ/も¥おなじう¥つづい/たり。¥へいけ/の¥かた/に/は¥これ/を¥み/て、¥ただ¥い−とれ/や¥い−とれ/とて、¥さしつめ−ひきつめ、¥さんざん/に¥い/けれ/ども、¥かたき/は¥こぜい/なり、¥み=かた/は¥おほぜい/なり/けれ/ば、¥せい/に¥まぎれ/て¥や/に/も¥あたら/ず。「¥ただ¥おし−ならべ/て¥くめ/や¥くめ」/と¥げぢ−し/けれ/ども、¥へいけ/の¥かた/の¥むま/は¥かふ/は¥まれ/なり、¥のり−しげし。¥ふね/に¥ひさしう¥たて/たり/けれ/ば、¥みな¥ゑり−きつ/たる¥やう/なり/けり。¥くまがへ¥ひらやま/が¥のつ/たる¥むま/は、¥かひ/に¥かう/たる¥だい/の¥むま=ども/なり。¥ひとあて¥あて/ば、¥みな¥け−たふさ/れ/ぬ/べき¥あひだ、¥さすが¥おし−ならべ/て¥くむ¥むしや¥いつき/も¥なかり/けり。¥ここ/に¥ひらやま/は、¥み/に¥かへ/て¥おもひ/ける¥はたさし/を¥うた/せ/て、¥やすから/ず/や¥おもひ/けん、¥じやう/の¥うち/へ¥かけ−いり、¥やがて¥その¥かたき/が¥くび¥とつ/て/ぞ¥いで/たり/ける。¥くまがへ−おやこ/も、¥ぶんどり¥あまた¥し/てげり。¥くまがへ/は¥さき/に¥よせ/たれ/ども、¥きど/を¥ひらか/ね/ば¥かけ−いら/ず。¥ひらやま/は¥のち/に¥よせ/たれ/ども、¥きど/を¥あけ/たれ/ば¥かけ−いり/ぬ。¥さて/こそ¥くまがへ¥ひらやま/が、¥いちに/の−かけ/を/ば¥あらそひ/けれ。P157
「にどのかけ」(『にどのかけ』)S0911¥さる−ほど/に¥なりだ−ごらう/も¥いで−き/たる。¥とひの−じらう−さねひら¥しちせん−よ−き、¥いろいろ/の¥はた¥さし−あげ、¥をめき−さけん/で¥せめ−たたかふ。¥おほて¥いくた/の−もり/を/ば、¥げんじ¥ごまん−よ−き/で¥かため/たり/ける/が、¥その¥せい/の¥なか/に、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥かはら−たらう、¥かはら−じらう/とて¥おととい¥あり。¥かはら−たらう、¥おとと/の¥じらう/を¥よう/で¥いひ/ける/は、「¥だいみやう/は¥われ/と¥て/を¥おろさ/ね/ども、¥けにん/の¥かうみやう/を¥もつて¥めいよ−す。¥われ=ら/は¥みづから¥て/を¥おろさ/で/は¥かなひ−がたし。¥かたき/を¥まへ/に¥おき/ながら、¥や¥ひとつ/を/だに¥い/ず/して¥まち−ゐ/たれ/ば、¥あまり/に¥こころ−もとなき/に、¥たかなほ/は¥じやう/の¥うち/へ¥まぎれ−いつ/て、¥ひと−や¥い/ん/と¥おもふ/なり。¥され/ば¥せんまん/が−いつ/も、¥いき/て¥かへら/ん¥こと¥あり−がたし。¥なんぢ/は¥のこり−とどまつ/て、¥のち/の¥しようにん/に¥たて」/と¥いひ/けれ/ば、¥おとと/の¥じらう、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥ただ¥きやうだい¥ににん¥ある¥もの/が、¥あに/を¥うた/せ/て、¥おとと/が¥あと/に¥のこり−とどまつ/たれ/ば/とて、¥いく−ほど/の¥えいぐわ/を/か¥たもつ/べき。¥ところどころ/で¥うた/れ/ん/より、¥いつしよ/で/こそ¥うちじに/を/も¥せ/め」/とて、¥げにん=ども¥よび−よせ、¥さいし/の¥もと/へ、¥さいご/の¥ありさま¥いひ−つかはし、¥むま/に/は¥のら/で¥げげ/を¥はき、¥ゆんづゑ/を¥つい/て、¥いくた/の−もり/の¥さかもぎ/を¥のぼり−こえ/て、¥じやう/の¥うち/へ/ぞ¥いつ/たり/ける。¥ほし−あかり/に¥よろひ/の¥け¥さだか/なら/ず。¥かはら−たらう¥だい−おんじやう/をP158¥あげ/て、「¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥かはら−たらう−きさいちの−たかなほ、¥おなじき−じらう−もりなほ、¥いくた/の−もり/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、「¥あつぱれ¥とうごく/の¥ぶし/ほど¥おそろしかり/ける¥もの/は¥なし。¥この¥おほぜい/の¥なか/へ、¥ただ¥きやうだい¥ににん¥かけ−いつ/たら/ば、¥なに/ほど/の¥こと/を/か¥し−いだす/べき。¥ただ¥おい/て¥あいせよ/や」/とて、¥うた/ん/と¥いふ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥かはら−きやうだい、¥くつきやう/の¥ゆみ/の¥じやうず/なり/けれ/ば、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥いる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥み/て、「¥いま/は¥この¥もの¥あいし−にくし。¥うて/や」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けめ、¥さいこく/に¥きこえ/たる¥つよゆみ−せいびやう、¥びつちうの−くに/の¥ぢうにん、¥まなべの−しらう、¥まなべの−ごらう/とて¥おととい¥あり。¥あに/の¥しらう/を/ば¥いちのたに/に¥おか/れ/たり。¥おとと/の¥ごらう/は¥いくた/の−もり/に¥あり/ける/が、¥これ/を¥み/て、¥よつ−ぴき、¥しばし¥たもつ/て¥ひやうど¥いる。¥かはらの−たらう/が¥よろひ/の¥むないた/を、¥うしろ/へ¥つと¥い−ぬか/れ/て、¥ゆんづゑ/に¥すがり¥すくむ¥ところ/を、¥おとと/の¥じらう¥はしり−より、¥あに/を¥かた/に¥ひつ−かけ/て、¥いくた/の−もり/の¥さかもぎ¥のぼり−こえ/ん/と¥する¥ところ/を、¥まなべ/が¥に/の−や/に、¥おとと/の¥じらう/が¥よろひ/の¥くさずり/の¥はづれ/を¥い/させ/て、¥おなじ¥まくら/に¥ふし/に/けり。¥まなべ/が¥げにん¥おち−あはせ/て、¥かはら−きやうだい/が¥くび/を¥とる。¥たいしやうぐん−しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥おん=げんざん/に¥いれ/たり/けれ/ば、「¥あつぱれ¥かう/の−もの/や、¥これ=ら/を/こそ、¥いち−にん−たうぜん/の¥よき¥つはもの=ども/と/も¥いふ/べけれ。¥あつたら¥もの=ども/が¥いのち/を¥たすけ/て¥み/で」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥その−のち¥かはら/が¥げにん¥はしり−ちつ/て、「¥かはら=どの¥きやうだい/こそ、¥ただいま¥じやう/の¥うち/へ¥まつさき¥かけ/て、P159¥うた/れ/させ¥たまひ/ぬる/は」/と¥よばはつ/たり/けれ/ば、¥かぢはら−へいざう¥これ/を¥きい/て、「¥これ/は¥し/の−たう/の¥との=ばら/の¥ふかく/で/こそ、¥かはら−きやうだい/を/ば¥うた/せ/たれ。¥とき¥よく¥なり/ぬる/ぞ、¥よせよ/や」/とて、¥かぢはら¥ごひやく−よ−き、¥いくた/の−もり/の¥さかもぎ/を¥とり−のけ/させ/て、¥じやう/の¥うち/へ¥をめい/て¥かく。¥じなん¥へいじ¥あまり/に¥さき/を¥かけ/う/ど¥すすむ¥あひだ、¥ちち¥へいざう¥ししや/を¥たて/て、「¥ごぢん/の¥せい/の¥つづか/ざら/ん/に、¥さきがけ/たら/んずる¥もの/に/は、¥けんじやう¥ある/まじき¥よし、¥たいしやうぐん/より/の¥おほせ/ぞ」/と¥いひ−おくつ/たり/けれ/ば、¥へいじ¥しばらく¥ひかへ/て、「¥
もののふ/の¥とり−つたへ/たる¥あづさゆみ¥ひい/て/は¥ひと/の¥かへす/もの/かは W069
/と¥まうさ/せ¥たまへ/や」/とて、¥をめい/て¥かく。¥かぢはら¥これ/を¥み/て、「¥へいじ¥うた/す/な¥もの=ども、¥かげたか¥うた/す/な¥つづけ/や」/とて、¥ちち/の¥へいざう、¥あに/の¥げんだ、¥おなじき−さぶらう¥つづい/たり。¥かぢはら¥ごひやく−よ−き/の、¥おほぜい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥たてさま、¥よこさま、¥くもで、¥じふもんじ/に¥かけ−わつ/て、¥ざつと¥ひい/て¥いで/たれ/ば、¥ちやくし/の¥げんだ/は¥みえ/ざり/けり。¥かぢはら¥らうどう=ども/に、「¥げんだ/は¥いか/に」/と¥とひ/けれ/ば、「¥あまり/に¥ふかいり−し/て、¥うた/れ/させ¥たまひ/て¥さふらふ/やらん。¥はるか/に¥みえ/させ¥たまひ¥さふらは/ず」/と¥まうし/けれ/ば、¥かぢはら¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥いくさ/の¥さき/を¥かけ/う/ど¥おもふ/も¥こ=ども/が¥ため、¥げんだ¥うた/せ/て、¥かげとき¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/なれ/ば、¥かへせ/や」/とて、¥また¥とつ/て¥かへす。¥その−のち¥かぢはら¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むかし¥はちまん=どの/の¥ごさんねん/の−おん=たたかひ/に、¥ではの−くに¥せんぶく¥かなざは/の−じやう/を¥せめ¥たまひ/し¥とき、¥しやうねん¥じふろくさい/と¥なのつ/て、¥まつさきP160¥かけ、¥ゆんで/の¥まなこ/を¥かぶと/の¥はちつけ/の¥いた/に¥い−つけ/られ/ながら、¥その¥や/を¥ぬか/で、¥たう/の¥や/を¥い−かへし、¥かたき¥い−おとし、¥けんじやう¥かうぶり、¥な/を¥こうだい/に¥あげ/たり/し¥かまくら/の−ごんごらう−かげまさ/に、¥ごだい/の¥ばつえふ、¥かぢはら−へいざう−かげとき/とて、¥とうごく/に¥きこえ/たる¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/ぞ/や。¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥より−あへ/や¥げんざん−せ/ん」/とて、¥をめい/て¥かく。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、「¥ただいま¥なのる/は¥とうごく/に¥きこえ/たる¥つはもの/ぞ/や。¥あます/な、¥もらす/な、¥うて/や」/とて、¥かぢはら/を¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥かぢはら¥まづ¥わが¥み/の−うへ/を/ば¥しら/ず/して、¥げんだ/は¥いづく/に¥ある/やらん/と、¥かけ−わり¥かけ−まはり¥たづぬる/ほど/に、¥あん/の/ごとく、¥げんだ/は、¥むま/を/も¥い/させ¥かちだち/に¥なり、¥かぶと/を/も¥うち−おとさ/れ、¥おほ−わらは/に¥たたかひ−なつ/て、¥にぢやう/ばかり¥あり/ける¥きし/を¥うしろ/に¥あて、¥らうどう¥ににん¥さう/に¥たて、¥うちもの¥ぬい/て、¥かたき¥ごにん/が¥なか/に¥とり−こめ/られ/て、¥おもて/も¥ふら/ず¥いのち/も¥をしま/ず、¥ここ/を¥さいご/と¥せめ−たたかふ。¥かぢはら¥これ/を¥み/て、¥げんだ/は¥いまだ¥うた/れ/ざり/けり/と¥うれしう¥おもひ、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、「¥いか/に¥げんだ、¥かげとき¥ここ/に¥あり。¥おなじう¥しぬる/とも、¥かたき/に¥うしろ/を¥みす/な」/とて、¥おやこ/して¥ごにん/の¥かたき/を¥さん−にん¥うつ−とり、¥ににん/に¥て¥おはせ/て、「¥ゆみ−や−とり/は、¥かくる/も¥ひく/も¥をり/に/こそ¥よれ。¥いざ−うれ¥げんだ」/とて、¥かい−ぐし/て/ぞ¥いで/たり/ける。¥かぢはら/が¥にど/の¥かけ/と/は¥これ/なり。P161
「さかおとし」(『さかおとし』)S0912¥これ/を¥はじめ/て、¥みうら、¥かまくら、¥ちちぶ、¥あしかが、¥たう/に/は、¥ゐのまた、¥こだま、¥のゐよ、¥よこやま、¥にしたう、¥つづき−たう、¥そうじ/て、¥し/の−たう/の¥つはもの=ども、¥げんぺい¥たがひ/に¥みだれ−あひ、¥をめき−さけぶ¥こゑ/は¥やま/を¥ひびかし、¥はせ−ちがふる¥むま/の¥おと/は¥いかづち/の/ごとく、¥い−ちがふる¥や/は¥あめ/の¥ふる/に¥こと/なら/ず。¥あるひは¥うすで¥おう/て¥たたかふ¥もの/も¥あり、¥あるひは¥ひつ−くみ¥さし−ちがへ/て¥しぬる/も¥あり、¥あるひは¥とつ/て¥おさへ/て¥くび/を¥かく/も¥あり、¥かか/るる/も¥あり、¥いづれ¥ひま¥あり/と/も¥みえ/ざり/けり。¥かかり/しか/ども、¥げんじ¥おほて/ばかり/で/は、¥いか/に/も¥かなふ/べし/と/も¥みえ/ざり/し/に、¥なぬかのひ/の¥あけぼの/に、¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き、¥ひよどりごえ/に¥うち−あがつ/て、¥じんば/の¥いき¥やすめ/て¥おはし/ける/が、¥その¥せい/に/や¥おどろき/たり/けん、¥をじか¥ふたつ¥めじか¥ひとつ、¥へいけ/の¥じやうくわく¥いちのたに/へ/ぞ¥おち/たり/ける。¥へいけ/の¥かた/の¥つはもの=ども¥これ/を¥み/て、「¥たとひ¥さと¥ちかから/ん¥しし/だに/も、¥われ=ら/に¥おそれ/て¥やま¥ふかう/こそ¥いる/べき/に、¥ただいま/の¥しし/の¥おちやう/こそ¥あやしけれ。¥いかさま/に/も、¥これ/は¥うへ/の¥やま/より¥かたき¥おとす/に/こそ」/とて、¥おほき/に¥さわぐ¥ところ/に、¥ここ/に¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥たけちの−むしやどころ−きよのり¥すすみ−いで/てP162、「¥たとひ¥なにもの/にて/も¥あら/ば¥あれ、¥かたき/の¥かた/より¥いで−き/たら/んずる¥もの/を、¥とほす/べき¥やう¥なし」/とて、¥をじか¥ふたつ¥い−とどめ/て、¥めじか/を/ば¥いい/で/ぞ¥とほし/ける。¥ゑつちうの−せんじ¥これ/を¥み/て、「¥せん−ない¥との=ばら/の¥しし/の¥いやう/かな。¥ただいま/の¥や¥ひとすぢ/で/は、¥かたき¥じふにん/を/ば¥ふせが/んずる/ものを。¥つみつくり/に¥や−だうな/に」/と/ぞ¥せいし/ける。¥さる−ほど/に¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥へいけ/の¥じやうくわく¥はるか/に¥み−くだし/て¥おはし/ける/が、¥むま=ども¥おとい/て¥み/ん/とて、¥せうせう¥おとさ/れ/けり。¥あるひは¥ちう/にて¥ころん/で¥おち、¥あるひは¥あし¥うち−をつ/て¥しぬる/も¥あり。¥され/ども¥その¥なか/に、¥くらおきむま¥さんびき、¥さうゐ−なく¥おち−つい/て、¥ゑつちうの−せんじ/が¥やかた/の¥まへ/に、¥みぶるひ−し/て/こそ¥たつ/たり/けれ。¥おん=ざうし、「¥むま/は¥ぬしぬし/が¥こころ−え/て¥おとさ/ん/に/は、¥いたう/は¥そんず/まじかり/ける/ぞ。¥くは¥おとせ、¥よしつね/を¥てほん/に¥せよ」/とて、¥まづ¥さんじつき/ばかり、¥まつさき¥かけ/て¥おとさ/れ/けれ/ば、¥さんぜん−よ−き/の¥つはもの=ども、¥みな¥つづい/て¥おとす。¥そこ/しも¥こ−いし−まじり/の¥まさご/なり/けれ/ば、¥ながれ−おとし/に¥にちやう/ばかり¥ざつと¥おとい/て、¥だん/なる¥ところ/に¥ひかへ/たり。¥それ/より¥しも/も¥み−くだせ/ば、¥だいばんじやく/の¥こけ¥むし/たる/が、¥つるべおろし/に¥じふしごぢやう/ぞ¥くだつ/たる。¥それ/より¥さき/へ/は¥すすむ/べき/と/も¥みえ/ず。¥また¥うしろ/へ¥とつ/て¥かへす/べき¥やう/も¥なかり/しか/ば、¥つはもの=ども、¥ここ/ぞ¥さいご/と¥まうし/て、¥あきれ/て¥ひかへ/たる¥ところ/に、¥みうらの−さはらの−じふらう−よしつら、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥われ=ら/が¥かた/で/は、¥とり¥ひとつ¥たつ/て/だに/も、¥あさゆふ¥かやう/の¥ところ/を/ば¥はせ−ありけ。¥これ/は¥みうら/の¥かた/の¥ばば/ぞ」/とて、¥まつさき¥かけ/て¥おとし/けれ/ば、¥おほぜい¥みな¥つづい/てP163¥おとす。¥ごぢん/に¥おとす¥もの/の¥あぶみ/の¥はな/は、¥せんぢん/の¥よろひ−かぶと/に¥さはる/ほど/なり。¥あまり/の¥いぶせ−さ/に、¥め/を¥ふさい/で¥おとし/ける。¥えいえいごゑ/を¥しのび/に/して、¥むま/に¥ちから/を¥つけ/て¥おとす。¥おほかた¥ひと/の¥しわざ/と/は¥みえ/ず、¥ただ¥きじん/の¥しよゐ/と/ぞ¥みえ/し。¥おとし/も¥はて/ぬ/に、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥さんぜん−よ−き/が¥こゑ/なれ/ども、¥やまびこ¥こたへ/て¥じふまん−よ−き/と/ぞ¥きこえ/ける。¥むらかみの−はんぐわんだい−やすくに/が¥て/より¥ひ/を¥いだい/て、¥へいけ/の¥やかた¥かりや/を、¥へんし/の¥けぶり/と¥やき−はらふ。¥くろけぶり¥すでに¥おし−かけ/けれ/ば、¥へいけ/の¥つはもの=ども、¥もしや¥たすかる/と、¥まへ/なる¥うみ/へ/ぞ¥おほく¥はしり−いり/ける。¥なぎさ/に/は¥たすけ−ぶね=ども¥いくら/も¥あり/けれ/ども、¥ふね¥いつそう/に/は¥よろう/たる¥もの=ども/が、¥しごひやくにん、¥せん−にん/ばかり¥こみ−のつ/たら/う/に、¥なじか/は¥よかる/べき。¥なぎさ/より¥さんちやう/ばかり¥こぎ−いで/て、¥め/の¥まへ/にて¥おほ−ぶね¥さんぞう¥しづみ/に/けり。¥その−のち/は、¥よき¥むしや/を/ば¥のする/とも、¥ざふにん=ばら/を/ば¥のす/べから/ず/とて、¥たち¥なぎなた/にて¥うち−はらひ/けり。¥かく¥する¥こと/と/は¥しり/ながら、¥かたき/に¥あう/て/は¥しな/ず/して、¥のせ/じ/と¥する¥ふね/に¥とり−つき¥つかみ−つき、¥あるひは¥ひぢ¥うち−きら/れ、¥あるひは¥うで¥うち−おとさ/れ/て、¥いちのたに/の¥みぎは/に、¥あけ/に¥なつ/て/ぞ¥なみ−ふし/たる。¥さる−ほど/に¥おほて/に/も¥はま/の−て/に/も、¥むさし¥さがみ/の¥わか=との=ばら、¥おもて/も¥ふら/ず¥いのち/も¥をしま/ず、¥ここ/を¥さいご/と¥せめ−たたかふ。¥のと=どの/は¥どど/の¥いくさ/に、¥いちど/も¥ふかく−し¥たまは/ぬ¥ひと/の、¥こんど/は¥いかが¥おもは/れ/けん、¥うすずみ/と¥いふ¥むま/に¥うち−のつ/て、¥にし/を¥さし/て/ぞ¥おち¥たまふ。¥はりま/の¥たかさご/より、¥お=ふね/に¥めし/て、P164¥さぬき/の¥やしま/へ¥わたり¥たまひ/ぬ。¥
「もりとしさいご」(『ゑつちゆうのせんじさいご』)S0913¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/は、¥いくた/の−もり/の¥たいしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥ひんがし/に¥むかつ/て¥たたかひ¥たまふ¥ところ/に、¥やま/の¥そば/より¥よせ/ける¥こだま−たう/の¥なか/より、¥ししや/を¥たて/て、「¥きみ/は¥ひととせ¥むさし/の¥こくし/にて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥その¥よしみ/を¥もつて、¥こだま/の¥もの=ども/が¥なか/より¥まうし¥さふらふ。¥いまだ¥おん=うしろ/を/ば¥ごらんぜ/られ¥さふらは/ぬ/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥しん−ぢうなごん¥いげ/の¥ひとびと、¥うしろ/を¥かへりみ¥たまへ/ば、¥くろけぶり¥おし−かけ/たり。「¥あはや、¥にし/の−て/は¥やぶれ/に/ける/は」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥とる¥もの/も¥とり−あへ/ず、¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥ゑつちうの−せんじ−もりとし/は、¥やま/の−て/の¥さぶらひ−だいしやう/にて¥ましまし/ける/が、¥いま/は¥おつ/とも¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥ひかへ/て¥かたき/を¥まつ¥ところ/に、¥ゐのまたの−こべいろく−のりつな、¥よき¥かたき/と¥め/を¥かけ、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−き/たり、¥おし−ならべ/て¥むず/と¥くん/で¥どうど¥おつ。¥ゐのまた/は¥はつ−か−こく/に¥きこえ/たる¥したたかもの/なり。¥か/の−つの/の¥いちに/の¥くさかり/を/ば、¥たやすく¥ひき−さき/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥ゑつちうの−せんじ/も、¥ひとめ/に/は¥にさんじふにん/が¥ちから¥あらはす/と¥いへ/ども、¥ないない/はP165¥ろくしちじふにん/して¥あげ−おろす¥ふね/を、¥ただ¥いち−にん/して¥おし−あげ¥おし−おろす/ほど/の¥だい−ぢから/なり。¥され/ば¥ゐのまた/を¥とつ/て¥おさへ/て¥はたらか/さ/ず、¥ゐのまた¥した/に¥ふし/ながら、¥かたな/を¥ぬか/う/ど¥すれ/ども、¥ゆび/の¥また¥はだかつ/て、¥かたな/の¥つか/を¥にぎる/に/も¥およば/ず、¥もの/を¥いは/う/ど¥すれ/ども、¥あまり/に¥つよう¥おさへ/られ/て¥こゑ/も¥いで/ず。¥され/ども¥ゐのまた/は¥だい−かう/の−もの/にて¥あり/けれ/ば、¥しばし/の¥いき/を¥やすめ/て、「¥かたき/の¥くび/を¥とる/と¥いふ/は、¥われ/も¥なのつ/て¥きか/せ、¥かたき/に/も¥なのら/せ/て、¥くび¥とつ/たれ/ば/こそ¥たいこう/なれ。¥な/も¥しら/ぬ¥くび¥とつ/て、¥なに/に/かは¥し¥たまふ/べき」/と¥いひ/けれ/ば、¥ゑつちうの−せんじ¥げに/も/と/や¥おもひ/けん、「¥もと/は¥へいけ/の¥いちもん/たり/し/が、¥み¥ふせう/なる/に¥よつ/て、¥たうじ/は¥さぶらひ/に¥なさ/れ/たる¥ゑつちうの−せんじ−もりとし/と¥いふ¥もの/なり。¥わ−ぎみ/は¥なにもの/ぞ。¥なのれ、¥きか/う」/ど¥いひ/けれ/ば、「¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥ゐのまたの−こべいろく−のりつな/と¥いふ¥もの/なり。¥ただいま¥わが¥いのち¥たすけ/させ¥おはしませ。¥さ/だに/も¥さふらは/ば、¥ご=へん/の¥いちもん、¥なんじふにん/も¥おはせよ、¥こんど/の¥くんこう/の¥しやう/に¥まうし−かへ/て、¥おん=いのち/ばかり/を/ば¥たすけ¥たてまつら/ん」/と¥いひ/けれ/ば、¥ゑつちうの−せんじ¥おほき/に¥いかつ/て、「¥もりとし¥み¥ふせう/なれ/ども、¥さすが¥へいけ/の¥いちもん/なり。¥もりとし¥げんじ/を¥たのま/う/ども¥おもひ/も¥よら/ず。¥げんじ¥また¥もりとし/に¥たのま/れ/う/ども、¥よも¥おもひ¥たまは/じ。¥にくい¥きみ/が¥まうしやう/かな」/とて、¥すでに¥くび/を¥かか/ん/と¥し/けれ/ば、「¥まさなう¥ざふらふ。¥かうにん/の¥くび¥かく¥やう/や¥ある」/と¥いひ/けれ/ば、「¥さら/ば¥たすけ/ん」/とて¥ゆるし/けり。¥まへ/は¥かただ/の¥はたけ/の¥やう/なる/が、¥うしろ/は¥みづた/の¥ごみ¥ふかかり/ける¥くろ/の¥うへ/に、¥ふたり/ながらP166¥こし¥うち−かけ/て、¥いき¥つぎ−ゐ/たり。¥やや¥あつ/て、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥つきげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て¥のつ/たり/ける¥むしや¥いつき、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−きたる。¥ゑつちうの−せんじ¥あやし=げ/に¥み/けれ/ば、「¥あれ/は¥ゐのまた/に¥したしう¥さふらふ¥ひとみの−しらう/で¥さふらふ/が、¥のりつな/が¥ある/を¥み/て、¥まうで−くる/と¥おぼえ¥さふらふ。¥くるしう/も¥さふらは/ぬ」/と¥いひ/ながら、¥あれ/が¥ちかづく/ほど/なら/ば、¥しや¥くま/んずる/ものを、¥おち−あは/ぬ¥こと/は¥よも¥あら/じ/と¥おもひ/て¥まつ¥ところ/に、¥あはひ¥いつたん/ばかり/に¥はせ−き/たる。¥ゑつちうの−せんじ、¥はじめ/は¥ふたり/の¥かたき/を¥ひとめ/づつ¥み/ける/が、¥しだいに¥ちかづく¥かたき/を¥はた/と¥まぼつ/て、¥のりつな/を¥み/ぬ¥ひま/に、¥ゐのまた¥ちからあし/を¥ふん/で¥たち−あがり、¥こぶし/を¥つよく¥にぎり、¥ゑつちうの−せんじ/が¥よろひ/の¥むないた/を、¥ばく/と¥つい/て、¥うしろ/へ¥のけ/に¥つき−たふす。¥おき−あがら/ん/と¥する¥ところ/を、¥ゐのまた¥うへ/に¥のり−かかり、¥ゑつちうの−せんじ/が¥こし/の¥かたな/を¥ぬき、¥よろひ/の¥くさずり¥ひき−あげ/て、¥つか/も¥こぶし/も¥とほれ¥とほれ/と、¥み−かたな¥さい/て¥くび/を¥とる。¥さる−ほど/に¥ひとみの−しらう/も¥いで−き/たり。¥かやう/の¥とき/は¥ろんずる¥こと/も¥あり/とて、¥やがて¥くび/を/ば¥たち/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥この¥ひごろ¥へいけ/の¥おん=かた/に¥おにかみ/と¥きこえ/つる¥ゑつちうの−せんじ−もりとし/を/ば、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥ゐのまたの−こべいろく−のりつな/が¥うつ/たる/ぞ/や」/と¥なのつ/て、¥その−ひ/の¥かうみやう/の¥いち/の−ふで/に/ぞ¥つき/に/ける。P167
「ただのりさいご」(『ただのりのさいご』)S0914¥さつまの−かみ−ただのり/は、¥にし/の−て/の¥たいしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥こんぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−よろひ¥き/て、¥くろき¥むま/の¥ふとう¥たくましき/に、¥いかけぢ/の¥くら¥おい/て¥のり¥たまひ/たり/ける/が、¥その¥せい¥ひやくき/ばかり/が¥なか/に¥うち−かこま/れ/て、¥いと¥さわが/ず、¥ひかへ−ひかへ¥おち¥たまふ¥ところ/に、¥ここ/に¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥をかべの−ろくやた−ただずみ、¥よき¥かたき/と¥め/を¥かけ、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おつ−かけ¥たてまつり、「¥あれ/は¥いか/に、¥よき¥たいしやうぐん/と/こそ¥み¥まゐらせ/て¥さふらへ。¥まさなう/も¥かたき/に¥うしろ/を¥みせ¥たまふ/ものかな。¥かへさ/せ¥たまへ」/と¥ことば/を¥かけ/けれ/ば、「¥これ/は¥み=かた/ぞ」/とて、¥ふり−あふのぎ¥たまふ¥うち−かぶと/を¥み−いれ/たれ/ば、¥かねぐろ/なり。「¥あつぱれ¥み=かた/に、¥かね¥つけ/たる¥もの/は¥なき/ものを。¥いかさま/に/も¥これ/は¥へいけ/の¥きんだち/にて/こそ¥おはす/らめ」/とて、¥おし−ならべ/て¥むず/と¥くむ。¥これ/を¥み/て¥ひやくき/ばかり/の¥つはもの=ども、¥みな¥くにぐに/の¥かりむしや/なり/けれ/ば、¥いつき/も¥おち−あは/ず、¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥さつまの−かみ/は¥きこゆる¥くまの−そだち/の¥だい−ぢから、¥くつきやう/の¥はやわざ/にて¥おはし/けれ/ば、¥ろくやた/を¥つかう/で、「¥につくい¥やつ/が、¥み=かた/ぞ/と¥いは/ば¥いは/せよ/かし」/とて、¥ろくやた/を¥とつ/て¥ひき−よせ、¥むま/の¥うへ/にて¥ふた−かたな、¥おち−つく¥ところ/で¥ひと−かたなP168、¥み−かたな/まで/こそ¥つか/れ/けれ。¥ふた−かたな/は¥よろひ/の¥うへ/なれ/ば¥とほら/ず、¥ひと−かたな/は¥うち−かぶと/へ¥つき−いれ/られ/たり/けれ/ども、¥うすで/なれ/ば¥しな/ざり/ける/を、¥とつ/て¥おさへ/て、¥くび/を¥かか/ん/と¥し¥たまふ¥ところ/に、¥ろくやた/が¥わらは、¥おくれ−ばせ/に¥はせ−きたつ/て、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥うち−がたな/を¥ぬい/て、¥さつまの−かみ/の¥みぎ/の¥かひな/を、¥ひぢ/の¥もと/より¥ふつと¥うち−おとす。¥さつまの−かみ¥いま/は¥かう/と/や¥おもは/れ/けん。「¥しばし¥のけ、¥さいご/の¥じふねん¥となへ/ん」/とて、¥ろくやた/を¥つかう/で、¥ゆんだけ/ばかり/ぞ¥なげ−のけ/らる。¥その−のち¥にし/に¥むかひ、「¥くわうみやう−へんぜう−じつぱう−せかい、¥ねんぶつ−しゆじやう−せつしゆ−ふしや」/と¥のたまひ/も¥はて/ね/ば、¥ろくやた¥うしろ/より¥より、¥さつまの−かみ/の¥くび/を¥とる。¥よい¥くび¥うち¥たてまつ/たり/と/は¥おもへ/ども、¥な/を/ば¥たれ/と/も¥しら/ざり/ける/が、¥えびら/に¥ゆひ−つけ/られ/たる¥ふみ/を¥とつ/て¥み/けれ/ば、¥りよしゆく/の−はな/と¥いふ¥だい/にて、¥うた/を/ぞ¥いつしゆ¥よま/れ/たる。¥
ゆき−くれ/て¥こ/の¥したかげ/を¥やど/と¥せ/ば¥はな/や¥こよひ/の¥あるじ/なら/まし W070¥
ただのり/と¥かか/れ/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥さつまの−かみ/と/は¥しり/てげれ。¥やがて¥くび/を/ば¥たち/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥この¥ひごろ¥につぽんごく/に¥おにかみ/と¥きこえ/させ¥たまひ/たる¥さつまの−かみ=どの/を/ば、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥をかべの−ろくやた−ただずみ/が¥うち¥たてまつ/たる/ぞ/や」/と、¥なのつ/たり/けれ/ば、¥かたき/も¥み=かた/も¥これ/を¥きい/て、「¥あな¥いとほし、¥ぶげい/に/も¥かだう/に/も¥すぐれ/て、¥よき¥たいしやうぐん/にて¥おはし/つる¥ひと/を」/とて、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。P169
「しげひらいけどり」(『しげひらいけどり』)S0915¥ほん−ざんみ/の−ちうぢやう−しげひらの−きやう/は、¥いくた/の−もり/の¥ふくしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥かち/に¥しろう¥き/なる¥いと/を¥もつて、¥いは/に¥むらちどり¥ぬう/たる¥ひたたれ/に、¥むらさき−すそご/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥もつ/て、¥どうじかげ/と¥いふ、¥きこゆる¥めいば/に、¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て¥のり¥たまへ/り。¥めのとご/の¥ごとう−びやうゑ−もりなが/は、¥しげめゆひ/の−ひたたれ/に、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥さんみ/の−ちうじやう/の¥さ/しも¥ひざう−せ/られ/たる、¥よめなし−つきげ/に/ぞ¥のせ/られ/たる。¥しゆじう¥にき¥たすけ−ぶね/に¥のら/ん/とて、¥なぎさ/の¥かた/へ¥おち¥たまふ¥ところ/に、¥しやうの−しらう−たかいへ、¥かぢはら−げんだ−かげすゑ、¥よき¥かたき/と¥め/を¥かけ、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おつ−かけ¥たてまつる。¥なぎさ/に/は¥たすけ−ぶね=ども¥おほかり/けれ/ども、¥うしろ/より¥かたき/は¥おつ−かけ/たり。¥のる/べき¥ひま/も¥なかり/けれ/ば、¥みなとがは、¥かるもがは/を/も¥うち−わたり、¥はすのいけ/を¥めて/に¥み/て、¥こま/の−はやし/を¥ゆんで/に¥なし、¥いたやど、¥すま/を/も¥うち−すぎ/て、¥にし/を¥さし/て/ぞ¥おち¥たまふ。¥さんみ/の−ちうじやう/は、¥どうじかげ/と¥いふ¥きこゆる¥めいば/に¥のり¥たまへ/り。¥もり−ふせ/たる¥むま=ども、¥たやすう¥おつ−つく/べし/と/も¥みえ/ざり/けれ/ば、¥かぢはら、¥もしや/と、¥とほや/に¥よつ−ぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥さんみ/の−ちうじやう/のP170¥むま/の¥さんづ/を¥のぶか/に¥い/させ/て¥よわる¥ところ/に、¥めのとご/の¥ごとう−びやうゑ−もりなが、¥わが¥むま¥めさ/れ/な/ん/と/や¥おもひ/けん、¥むち/を¥うつ/て/ぞ¥にげ/たり/ける。¥さんみ/の−ちうじやう、「¥いか/に¥もりなが、¥われ/を/ば¥すて/て¥いづく/へ¥ゆく/ぞ。¥ひごろ/は¥さ/は¥ちぎら/ざり/し/ものを」/と¥のたまへ/ども、¥そら−きか/ず/して、¥よろひ/に¥つけ/たる¥あかじるし=ども¥かなぐり−すて/て、¥ただ¥にげ/に/こそ¥にげ/たり/けれ。¥さんみ/の−ちうじやう、¥むま/は¥よわる、¥うみ/へ¥ざつと¥うち−いれ¥たまふ。¥み/を¥なげ/ん/と¥し¥たまへ/ども、¥そこ/しも¥とほあさ/にて、¥しづむ/べき¥やう/も¥なかり/けれ/ば、¥はら/を¥きら/ん/と¥し¥たまふ¥ところ/に、¥しやうの−しらう−たかいへ、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−きたり、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、「¥まさなう¥ざふらふ。¥いづく/まで/も¥おん=とも¥つかまつり¥さふらは/んずる/ものを」/とて、¥わが¥のつ/たり/ける¥むま/に¥かき−のせ¥たてまつり、¥くら/の¥まへわ/に¥しめ−つけ¥たてまつ/て、¥わが−み/は¥のりがへ/に¥のつ/て、¥み=かた/の¥ぢん/へ/ぞ¥いり/に/ける。¥めのとご/の¥もりなが/は、¥そこ/を/ば¥なつく¥にげ−のび/て、¥のち/に/は¥くまの−ぼふし/に、¥をなかの−ほつけう/を¥たのう/で¥ゐ/たり/ける/が、¥ほつけう¥しん/で/の¥のち、¥ごけ/の¥にこう/の¥そしよう/の¥ため/に、¥みやこ/へ¥のぼる/に¥とも−し/て¥のぼつ/たり/けれ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう/の¥めのとご/にて、¥じやうげ¥おほく/は¥み−しら/れ/たり。「¥あな¥にく/や、¥ごとう−びやうゑ−もりなが/が、¥さんみ/の−ちうじやう/の¥さ/しも¥ふびん/に¥し¥たまひ/つる/に、¥いつしよ/で¥いか/に/も−なら/ず/して、¥おもひ/も¥よら/ぬ¥ごけ/の¥にこう/の¥とも−し/て¥のぼつ/たる/よ」/とて、¥みな¥つまはじき/を/ぞ¥し/ける。¥もりなが/も¥さすが¥はづかしう/や¥おもは/れ/けん、¥あふぎ/を¥かほ/に¥かざし/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P171
「あつもり」(『あつもりのさいご』)S0916¥さる−ほど/に¥いちのたに/の¥いくさ¥やぶれ/に/しか/ば、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥くまがへの−じらう−なほざね、¥へいけ/の¥きんだち/の¥たすけ−ぶね/に¥のら/ん/とて、¥みぎは/の¥かた/へ/や¥おち−ゆき¥たまふ/らん、¥あつぱれ¥よき¥たいしやうぐん/に¥くま/ばや/と¥おもひ、¥ほそみち/に¥かかつ/て¥みぎは/の¥かた/へ¥あゆま/する¥ところ/に、¥ここ/に¥ねりぬき/に¥つる¥ぬう/たる¥ひたたれ/に、¥もよぎ−にほひ/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥もち、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て¥のつ/たり/ける¥もの¥いつき、¥おき/なる¥ふね/を¥め/に¥かけ、¥うみ/へ¥ざつ/と¥うち−いれ、¥ごろくたん/ばかり/ぞ¥およが/せ/ける。¥くまがへ、「¥あれ/は¥いか/に、¥よき¥たいしやうぐん/と/こそ¥み¥まゐらせ/て¥さふらへ。¥まさなう/も¥かたき/に¥うしろ/を¥みせ¥たまふ/ものかな。¥かへさ/せ¥たまへ¥かへさ/せ¥たまへ」/と、¥あふぎ/を¥あげ/て¥まねき/けれ/ば、¥まねか/れ/て¥とつ/て¥かへし、¥みぎは/に¥うち−あがら/ん/と¥し¥たまふ¥ところ/に、¥くまがへ¥なみうちぎは/にて¥おし−ならべ、¥むず/と¥くん/で、¥どうど¥おち、¥とつ/て¥おさへ/て¥くび/を¥かか/ん/とて、¥かぶと/を¥おし−あふのけ/て¥み/たり/けれ/ば、¥うすげしやう−し/て¥かねぐろ/なり。¥わが¥こ/の¥こじらう/が¥よはひ/ほど/して、¥じふろくしち/ばかん/なる/が、¥ようがん¥まことに¥びれい/なり。「¥そもそも¥いか/なる¥ひと/にて¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん。¥なのら/せ¥たまへ。¥たすけ¥まゐらせ/ん」/とP172¥まうし/けれ/ば、「¥まづ¥かう¥いふ¥わ=との/は¥た/そ」。「¥もの¥その¥かず/にて/は¥さふらは/ね/ども、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥くまがへの−じらう−なほざね」/と¥なのり¥まうす。「¥さて/は¥なんぢ/が¥ため/に/は¥よい¥かたき/ぞ。¥なのら/ず/とも¥くび/を¥とつ/て¥ひと/に¥とへ。¥み−しら/うずる/ぞ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥くまがへ、「¥あつぱれ¥たいしやうぐん/や。¥この¥ひと¥いち−にん¥うち¥たてまつ/たり/とも、¥まく/べき¥いくさ/に¥かつ/べき¥やう¥なし。¥また¥たすけ¥たてまつ/たり/とも、¥かちいくさ/に¥まくる¥こと/も¥よも¥あら/じ。¥けさ¥いちのたに/にて、¥わが¥こ/の¥こじらう/が¥うすで¥おう/たる/を/だに/も、¥なほざね/は¥こころ−ぐるしく¥おもふ/に、¥この¥との(/の¥ちち)、¥うた/れ¥たまひ/ぬ/と¥きき¥たまひ/て、¥さ/こそ/は¥なげき−かなしみ¥たまは/んず/らめ。¥たすけ¥まゐらせ/ん」/とて、¥うしろ/を¥かへりみ/たり/けれ/ば、¥とひ、¥かぢはら¥ごじつき/ばかり/で¥いで−き/たる。¥くまがへ¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥あれ¥ごらん¥さふらへ。¥いか/に/も−し/て¥たすけ¥まゐらせ/ん/と/は¥ぞんじ¥さふらへ/ども、¥み=かた/の¥ぐんびやう¥うんか/の/ごとく/に¥みちみち/て、¥よも¥のがし¥まゐらせ¥さふらは/じ。¥あはれ¥おなじう/は、¥なほざね/が¥て/に¥かけ¥たてまつ/て、¥のち/の¥おん=けうやう/を/も¥つかまつり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、「¥ただ¥なにさま/に/も、¥とうとう¥くび/を¥とれ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥くまがへ¥あまり/に¥いとほしく/て、¥いづく/に¥かたな/を¥たつ/べし/と/も¥おぼえ/ず、¥め/も¥くれ¥こころ/も¥きえ−はて/て、¥ぜんごふかく/に¥おぼえ/けれ/ども、¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥なくなく¥くび/を/ぞ¥かい/てげる。「¥あはれ¥ゆみ−や¥とる¥み/ほど¥くちをしかり/ける¥こと/は¥なし。¥ぶげい/の¥いへ/に¥うまれ/ず/は、¥なに¥し/に¥ただいま¥かかる¥うき−め/を/ば¥みる/べき。¥なさけ−なう/も¥うち¥たてまつ/たる/ものかな」/と、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と/ぞ¥なき−ゐ/たる。¥くび/を¥つつま/ん/とてP173、¥よろひ−ひたたれ/を¥とい/て¥み/けれ/ば、¥にしき/の¥ふくろ/に¥いれ/られ/たり/ける¥ふえ/を/ぞ¥こし/に¥ささ/れ/たる。「¥あな¥いとほし、¥この¥あかつき¥じやう/の¥うち/にて、¥くわんげん−し¥たまひ/つる/は、¥この¥ひとびと/にて¥おはし/けり。¥たうじ¥み=かた/に¥とうごく/の¥せい、¥なんまんぎ/か¥ある/らめ/ども、¥いくさ/の¥ぢん/に¥ふえ¥もつ¥ひと/は¥よも¥あら/じ。¥じやうらふ/は¥なほ/も¥やさしかり/ける/ものを」/とて、¥これ/を¥とつ/て¥たいしやうぐん/の¥おん=げんざん/に¥いれ/たり/けれ/ば、¥みる¥ひと¥なみだ/を¥ながし/けり。¥のち/に¥きけ/ば、¥しゆり/の−だいぶ−つねもり/の¥おとご、¥たいふ−あつもり/とて、¥しやうねん¥じふしち/に/ぞ¥なら/れ/ける。¥それ/より/して/こそ、¥くまがへ/が¥ほつしん/の¥こころ/は¥いで−き/に/けれ。¥くだん/の¥ふえ/は、¥おほぢ¥ただもり、¥ふえ/の¥じやうず/にて、¥とばのゐん/より¥くだし−たまはら/れ/たり/し/を、¥つねもり¥さうでん−せ/られ/たり/し/を、¥あつもり¥ふえ/の¥きりやう/たる/に¥よつ/て、¥もた/れ/たり/ける/とかや。¥な/を/ば¥さえだ/と/ぞ¥まうし/ける。¥きやうげん−きぎよ/の¥ことわり/と¥いひ/ながら、¥つひに¥さんぶつじよう/の¥いん/と¥なる/こそ¥あはれ/なれ。¥
「はまいくさ」(『ともあきらのさいご』)S0917¥かどわき=どの/の¥ばつし、¥くらんど/の−たいふ−なりもり/は、¥ひたちの−くに/の¥ぢうにん、¥ひぢやの−ごらう−しげゆき/と¥くん/で¥うた/れ¥たまひ/ぬ。¥くわうごぐう/の−すけ−つねまさ/は、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥かはごえの−こたらう−しげふさ/が¥て/に¥とり−こめP174¥たてまつ/て、¥つひに¥うち¥たてまつる。¥をはりの−かみ−きよさだ、¥あはぢの−かみ−きよふさ、¥わかさの−かみ−つねとし、¥さんぎ¥つれ/て¥かたき/の¥なか/へ¥わつ/て¥いり、¥さんざん/に¥たたかひ、¥ぶんどり¥あまた¥し/て、¥いつしよ/で¥うちじに−し/てげり。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/は、¥いくた/の−もり/の¥たいしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥その¥せい¥みな¥おち−うせ¥うた/れ/に/しか/ば、¥おん=こ¥むさしの−かみ−ともあきら、¥さぶらひ/に¥けんもつ−たらう−よりかた、¥しゆじう¥さんぎ¥みぎは/の¥かた/へ¥おち¥たまふ¥ところ/に、¥ここ/に¥こだま−たう/と¥おぼしく/て、¥うちは/の¥はた¥さし/たる¥もの=ども/が¥じつき/ばかり、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おし−かけ¥たてまつる。¥けんもつ−たらう/は、¥くつきやう/の¥ゆみ/の¥じやうず/なり/けれ/ば、¥とつ/て¥かへし、¥まづ¥まつさき/に¥すすん/だる¥はたさし/が¥くび/の¥ほね/を、¥ひやうつば/と¥い/て、¥むま/より¥さかさま/に¥い−おとす。¥その¥なか/の¥たいしやう/と¥おぼしき¥もの、¥しん−ぢうなごん/に¥くみ¥たてまつら/ん/とて¥はせ−ならぶる¥ところ/に、¥おん=こ¥むさしの−かみ−ともあきら、¥ちち/を¥うた/せ/じ/と、¥なか/に¥へだたり、¥おし−ならべ、¥むず/と¥くん/で、¥どうど¥おち、¥とつ/て¥おさへ/て¥くび/を¥かき、¥たち−あがら/ん/と¥し¥たまふ¥ところ/に、¥かたき/が¥わらは¥おち−あはせ/て、¥むさしの−かみ/の¥くび/を¥とる。¥けんもつ−たらう¥おち−かさなり、¥むさしの−かみ¥うち¥たてまつ/たり/ける¥かたき/の¥わらは/を/も¥うち/てげり。¥その−のち¥やだね/の¥ある/ほど¥い−つくし、¥うちもの¥ぬい/て¥たたかひ/ける/が、¥ゆんで/の¥ひざぐち/を¥したたか/に¥い/させ、¥たち/も¥あがら/で¥ゐ/ながら¥うちじに−し/てげり。¥この¥まぎれ/に¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/は、¥そこ/を¥つと¥にげ−のび/て、¥くつきやう/の¥いき−ながき¥めいば/に/は¥のり¥たまひ/ぬ。¥うみ/の¥おもて¥にじふ−よ−ちやう¥およが/せ/て、¥おほい=との/の¥おん=ふね/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。P175¥ふね/に/は¥ひと¥おほく¥とり−のつ/て、¥むま¥たつ/べき¥やう/も¥なかり/けれ/ば、¥むま/を/ば¥なぎさ/へ¥おつ−かへさ/る。¥あはの−みんぶ−しげよし、「¥お=むま¥かたき/の¥もの/に¥なり¥さふらひ/な/んず。¥い−ころし¥さふらは/ん」/とて、¥かたてや¥はげ/て¥いで/けれ/ば、¥しん−ぢうなごん、「¥たとひ¥なん/の¥もの/に/も¥なら/ば¥なれ、¥ただいま¥わが¥いのち¥たすけ/たら/んずる/ものを。¥ある/べう/も¥なし」/と¥のたまへ/ば、¥ちから¥およば/で¥い/ざり/けり。¥この¥むま、¥ぬし/の¥わかれ/を¥をしみ/つつ、¥しばし/は¥ふね/を¥はなれ/も¥やら/ず、¥おき/の¥かた/へ¥およぎ/ける/が、¥しだいに¥とほく¥なり/けれ/ば、¥むなしき¥なぎさ/へ¥およぎ−かへり、¥あし¥たつ/ほど/に/も¥なり/しか/ば、¥なほ¥ふね/の¥かた/を¥かへりみ/て、¥にさんど/まで/こそ¥いななき/けれ。¥その−のち¥くが/に¥あがつ/て¥やすみ−ゐ/たり/ける/を、¥かはごえの−こたらう−しげふさ、¥とつ/て¥ゐん/へ¥まゐらせ/たり。¥もとも¥この¥むま¥ゐん/の¥ご=ひざう/にて、¥いち/の−み=むまや/に¥たて/られ/たり/し/を、¥ひととせ¥むねもり=こう¥ないだいじん/に¥なつ/て、¥よろこび−まうし/の¥あり/し¥とき、¥くだし−たまはら/れ/たり/し/を、¥おとと¥ちうなごん/に¥あづけ/られ/たり/しか/ば、¥あまり/に¥ひざう−し/て、¥この¥むま/の¥いのり/の¥ため/に/とて、¥まいぐわつ¥ついたち−ごと/に、¥たいざんぶくん/を/ぞ¥まつら/れ/ける。¥その¥ゆゑ/に/や¥むま/の¥いき/も¥ながう、¥しゆ/の¥いのち/を/も¥たすけ/ける/こそ¥めでたけれ。¥この¥むま¥もと/は¥しなのの−くに¥ゐのうへ−だち/にて¥あり/けれ/ば、¥ゐのうへぐろ/と/ぞ¥めさ/れ/ける。¥こんど/は¥かはごえ/が¥とつ/て¥ゐん/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥かはごえぐろ/と/ぞ¥めさ/れ/ける。¥その−のち¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥おほい=との/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、¥なみだ/を¥ながい/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥むさしの−かみ/に/も¥おくれ¥さふらひ/ぬ。¥けんもつ−たらう/を/も¥うた/せ¥さふらひ/ぬ。¥いま/は¥こころ−ぼそう/こそP176¥まかり−なつ/て¥さふらへ。¥され/ば¥こ/は¥あつ/て、¥おや/を¥うた/せ/じ/と、¥かたき/に¥くむ/を¥み/ながら、¥いか/なる¥おや/なれ/ば、¥こ/の¥うた/るる/を¥たすけ/ず/して、¥これ/まで¥のがれ¥まゐつ/て¥さふらふ/やらん。¥あはれ¥ひと/の¥うへ/なら/ば、¥いか/ばかり¥もどかしう¥さふらふ/べき/に、¥わが−み/の−うへ/に¥なり¥さふらへ/ば、¥よう¥いのち/は¥をしい¥もの/にて¥さふらひ/けり/と、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/て¥さふらへ。¥ひとびと/の¥おぼしめさ/ん¥おん=こころ/の¥うち=ども/こそ、¥はづかしう¥さふらへ」/とて、¥よろひ/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と¥なか/れ/けれ/ば、¥おほい=との、「¥まことに¥むさしの−かみ/の¥ちち/の¥いのち/に¥かはら/れ/ける/こそ¥あり−がたけれ。¥て/も¥きき、¥こころ/も¥かう/に/して、¥よき¥たいしやうぐん/にて¥おはし/つる¥ひと/を。¥あの¥きよむね/と¥どうねん/にて、¥ことし/は¥じふろく/な」/とて、¥おん=こ¥ゑもん/の−かみ/の¥おはし/ける¥かた/を¥み¥たまひ/て、¥なみだぐみ¥たまへ/ば、¥その¥ざ/に¥いくら/も¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥ひとびと、¥こころ−ある/も¥こころ−なき/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥
「おちあし」(『おちあし』)S0918¥こまつ=どの/の¥ばつし¥びつちうの−かみ−もろもり/は、¥しゆじう¥しちにん¥こ−ぶね/に¥のり¥おち¥たまふ¥ところ/に、¥ここ/に¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥さぶらひ/に、¥せいゑもん−きんなが/と¥いふ¥もの、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−き/たり、「¥あれ/は¥いか/に、¥びつちうの−かう=との/の¥おん=ふね/と/こそ¥み¥まゐらせ/て¥さふらへ。¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ばP177、¥ふね/を¥なぎさ/へ¥さし−よせ/たり。¥だい/の−をとこ/の¥よろひ¥き/ながら、¥むま/より¥ふね/へ¥かはと¥とび−のら/う/に、¥なじか/は¥よかる/べき。¥ふね/は¥ちひさし、¥くるり/と¥ふみ−かへし/てげり。¥びつちうの−かみ、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ¥し¥たまふ¥ところ/に、¥はたけやま/が¥らうどう、¥ほんだの−じらう−ちかつね、¥しゆじう¥じふしごき、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−き/たり、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥びつちうの−かみ/を¥くまで/に¥かけ/て¥ひき−あげ¥たてまつり、¥つひに¥おん=くび/を/ぞ¥かい/てげる。¥しやうねん¥じふしさい/と/ぞ¥きこえ/し。¥ゑちぜんの−さんみ−みちもりの−きやう/は、¥やま/の−て/の¥たいしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥その¥せい¥みな¥おち−うせ¥うた/れ、¥おほぜい/に¥おし−へだて/られ/て、¥おとと¥のとの−かみ/に/は¥おくれ¥たまひ/ぬ。¥こころ−しづか/に¥じがい−せ/ん/とて、¥ひんがし/に¥むかつ/て¥おち−ゆき¥たまふ¥ところ/に、¥あふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ささきの−きむらの−さぶらう−なりつな、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥たまのゐの−しらう−すけかげ、¥かれ−これ¥しちき/が¥なか/に¥とり−こめ¥まゐらせ/て、¥つひに¥うち¥たてまつ/てげり。¥その−とき/まで/は、¥さぶらひ¥いち−にん¥つき¥たてまつ/たり/けれ/ども、¥これ/も¥さいご/の¥とき/は¥おち−あは/ず。¥およそ¥とうざい/の¥きどぐち、¥とき¥うつる/ほど/に/も¥なり/しか/ば、¥げんぺい¥かず/を¥つくし/て¥うた/れ/に/けり。¥やぐら/の¥まへ、¥さかもぎ/の¥した/に/は、¥じんば/の¥ししむら¥やま/の/ごとし。¥いちのたに¥を−ざさ−はら、¥みどん/の¥いろ/を¥ひき−かへ/て、¥うすくれなゐ/に/ぞ¥なり/に/ける。¥いちのたに、¥いくた/の−もり、¥やま/の¥そば、¥うみ/の¥みぎは/に、¥い/られ¥きら/れ/て¥しぬる/は¥しら/ず、¥げんじ/の¥かた/に¥きり−かけ/らるる¥くび=ども、¥にせん−よ−にん/なり。¥こんど¥いちのたに/にて¥うた/れ/させ¥たまへ/る¥むねと/の¥ひとびと/に/は、¥まづ¥ゑちぜんの−さんみ−みちもり、¥おとと¥くらんど/の−たいふ−なりもり、¥さつまの−かみ−ただのり、¥むさしの−かみ−ともあきら、¥びつちうの−かみ−もろもり、¥をはりの−かみ−きよさだ、P178¥あはぢの−かみ−きよふさ、¥つねもり/の¥ちやくし¥くわうごぐう/の−すけ−つねまさ、¥おとと¥わかさの−かみ−つねとし、¥その¥おとと¥たいふ−あつもり、¥いじやう¥じふにん/と/ぞ¥きこえ/し。¥いくさ¥やぶれ/に/けれ/ば、¥しゆしやう/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥ひとびと¥みな¥お=ふね/に¥めし/て、¥いで/させ¥たまふ/こそ¥かなしけれ。¥しほ/に¥ひか/れ¥かぜ/に¥したがつ/て、¥き/の−ぢ/へ¥おもむく¥ふね/も¥あり、¥あしや/の¥おき/に¥こぎ−いで/て、¥なみ/に¥ゆら/るる¥ふね/も¥あり。¥あるひは¥すま/より¥あかし/の¥うら−づたひ、¥とまり¥さだめ/ぬ¥かぢまくら、¥かたしく¥そで/も¥しをれ/つつ、¥おぼろ/に¥かすむ¥はる/の¥つき、¥こころ/を¥くだか/ぬ¥ひと/ぞ¥なき。¥あるひは¥あはぢ/の−せと/を¥おし−わたり、¥ゑじま/が−いそ/に¥ただよへ/ば、¥なみぢ¥はるか/に¥なき−わたり、¥とも¥まよは/せ/る¥さ−よ−ちどり、¥これ/も¥わが−み/の¥たぐひ/かな。¥ゆく−すゑ¥いまだ¥いづく/と/も、¥おもひ−さだめ/ぬ/か/と¥おぼしく/て、¥いちのたに/の¥おき/に¥やすらふ¥ふね/も¥あり。¥かやう/に¥うらうら−しまじま/に¥ただよへ/ば、¥たがひ/の¥ししやう/も¥しり−がたし。¥くに/を¥したがふる¥こと/も¥じふしかこく、¥せい/の¥つく¥こと/も¥じふまん−よ−き、¥みやこ/へ¥ちかづく¥こと/も¥わづか/に¥いちにち/の¥みち/なれ/ば、¥こんど/は¥さり/とも/と¥たのもしう/こそ¥おもは/れ/つる/に、¥いちのたに/を/も¥せめ−おとさ/れ/て、¥いとど¥こころ−ぼそう/ぞ¥なら/れ/ける。¥
「こざいしやう」(『こざいしやうみなげ』)S0919¥ゑちぜんの−さんみ−みちもりの−きやう/の¥さぶらひ/に、¥くんだ−たきぐち−ときかず/と¥いふ¥もの¥あり。¥いそぎ¥きたのかた/の¥お=ふね/にP179¥まゐつ/て¥まうし/ける/は、「¥きみ/は¥けさ¥みなとがは/の¥しも/にて、¥かたき¥しちき/が¥なか/に¥とり−こめ¥まゐらせ/て、¥つひに¥うた/れ/させ¥たまひ/て¥さふらひ/ぬ。¥なか/に/も¥こと/に¥て/を¥おろい/て¥うち¥たてまつ/たり/し/は、¥あふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ささきの−きむらの−さぶらう−なりつな、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥たまのゐの−しらう−すけかげ/と/ぞ、¥なのり¥まゐらせ/て¥さふらひ/つれ。¥ときかず/も¥いつしよ/で¥うちじに¥つかまつり、¥さいご/の¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらひ/つれ/ども、¥かねて/より¥おほせ¥さふらひ/し/は、¥みちもり¥いか/に−なる/とも、¥なんぢ/は¥いのち/を¥すつ/べから/ず。¥いか/に/も−し/て¥ながらへ/て、¥おん=ゆくへ/を/も¥たづね¥まゐらせよ/と、¥おほせ¥さふらひ/し/ほど/に、¥かひ−なき¥いのち/ばかり¥いき/て、¥つれなう/こそ¥これ/まで¥まゐつ/て¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた、¥とかう/の¥へんじ/に/も¥および¥たまは/ず。¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥いちぢやう¥うた/れ¥たまひ/ぬ/と/は¥きき¥たまへ/ども、¥もし¥ひがごと/にて/も/や¥ある/らん、¥いき/て¥かへら/るる¥こと/も/や/と、¥にさんにち/は、¥あからさま/に¥いで/たる¥ひと/を、¥まつ¥ここち−し/て¥おはし/ける/が、¥しごにち/も¥すぎ/しか/ば、¥もしや/の¥たのみ/も¥よわり−はて/て、¥いとど¥こころ−ぼそく/ぞ¥なら/れ/ける。¥ただ¥いち−にん¥つき¥たてまつり/たり/ける¥めのと/の−にようばう/も、¥おなじ¥まくら/に¥ふし−しづみ/に/けり。¥かく/と¥きき¥たまひ/し¥なぬかのひ/の¥くれ/ほど/より、¥じふさんにち/の¥よ/まで/は、¥おき/も¥あがり¥たまは/ず。¥あくれ/ば¥じふしにち、¥やしま/へ¥おし−わたる¥よひ¥うち−すぐる/まで/は、¥ふし¥たまひ/たり/ける/が、¥ふけ−ゆく¥まま/に、¥ふね/の¥うち¥しづまり/けれ/ば、¥めのと/の−にようばう/に¥のたまひ/ける/は、「¥けさ/まで/は、¥さんみ¥うた/れ/に/し/と/は¥きき/しか/ども、¥まこと/と/も¥おもは/で¥あり/つる/が、¥このP180¥くれ/ほど/より、¥げに¥さ/も¥あら/ん/と¥おもひ−さだめ/て¥ある/ぞ/とよ。¥その¥ゆゑ/は、¥みな¥ひと−ごと/に、¥みなとがは/と/やらん/にて、¥さんみ¥うた/れ/に/し/と/は¥いひ/しか/ども、¥その−のち、¥いき/て¥あう/たり/と¥いふ¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥あす¥うち−いで/ん/とて/の¥よ、¥あからさま/なる¥ところ/にて、¥ゆき−あひ/たり/しか/ば、¥いつ/より/も¥こころ−ぼそ=げ/に¥うち−なげい/て、『¥みやうにち/の¥いくさ/に/は、¥かならず¥うた/れ/ん/と¥おぼゆる/は/とよ。¥われ¥いか/に/も−なり/な/ん¥のち、¥ひと/は¥いかが/は¥し¥たまふ/べき』/など¥いひ/しか/ども、¥いくさ/は¥いつも/の¥こと/なれ/ば、¥いちぢやう¥さる/べし/と/も¥おもは/で¥あり/つる¥こと/こそ¥かなしけれ。¥それ/を¥かぎり/と/だに¥おもは/ましか/ば、¥など¥のち/の−よ/と¥ちぎら/ざり/けん/と、¥おもふ/さへ/こそ¥かなしけれ。¥ただ/なら/ず¥なり/たる¥こと/を/も、¥ひごろ/は¥かくし/て¥いは/ざり/しか/ども、¥あまり/に¥こころ−ぶかう¥おもは/れ/じ/とて、¥いひ−いだし/たり/しか/ば、¥なのめ/なら/ず¥うれし=げ/にて、『¥みちもり¥さんじふ/に¥なる/まで、¥こ/と¥いふ¥もの/も¥なかり/つる/に、¥あはれ¥おなじう/は¥なんし/にて/も¥あれ/かし。¥うき−よ/の¥わすれ−がたみ/に/も/と¥おもひ−おく/ばかり/なり。¥さて¥いくつき/に/か¥なる/らん、¥ここち/は¥いかが¥ある/らん。¥いつ/と−なき¥なみ/の¥うへ、¥ふね/の¥うち/の¥すまひ/なれ/ば、¥しづか/に¥みみ/と¥なら/ん¥とき、¥いかが/は¥し¥たまふ/べき』/など¥いひ/し/は、¥はかなかり/ける¥かねごと/かな。¥まこと/やらん、¥をんな/は¥さやう/の¥とき、¥とを/に¥ここのつ/は¥かならず¥しぬる/なれ/ば、¥はぢがましう、¥うたてき¥め/を¥み/て、¥むなしう¥なら/ん/も¥こころ−うし。¥しずか/に¥みみ/と¥なつ/て¥のち、¥をさなき¥もの/を¥そだて/て、¥なき¥ひと/の¥かたみ/に/も¥み/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥それ/を¥み/ん¥たび−ごと/に/は、¥むかし/の¥ひと/のみ¥こひしく/て、¥おもひ/の¥かず/は¥まさる/とも、¥なぐさむ¥こと/は¥よも¥あら/じP181。¥つひに/は¥のがる/まじき¥みち/なり。¥もし¥ふしぎ/に¥この/よ/を¥しのび−すごす/とも、¥こころ/に¥まかせ/ぬ¥よ/の¥ならひ/は、¥おもは/ぬ¥ほか/の¥ふしぎ/も¥ある/ぞ/とよ。¥それ/も¥おもへ/ば¥こころ−うし。¥まどろめ/ば¥ゆめ/に¥みえ、¥さむれ/ば¥おもかげ/に¥たつ/ぞ/とよ。¥いき/て¥ゐ/て、¥と/に−かく/に¥ひと/を¥こひし/と¥おもは/ん/より、¥みづ/の¥そこ/へ/も¥いら/ばや/と、¥おもひ−さだめ/て¥ある/ぞ/とよ。¥そこ/に¥いち−にん¥とどまつ/て、¥なげか/んずる¥こと/こそ¥こころ−ぐるしけれ/ども、¥わらは/が¥しやうぞく/の¥ある/を/ば¥とつ/て、¥いか/なら/ん¥そう/に/も¥たてまつり、¥なき¥ひと/の¥ご=ぼだい/を/も¥とぶらひ¥まゐらせ、¥わらは/が¥ごしやう/を/も¥たすけ¥たまへ。¥かき−おき/たる¥ふみ/を/ば¥みやこ/へ¥つたへ/て¥たべ」/など、¥こまごま/と¥のたまへ/ば、¥めのと/の−にようばう、¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥いとけなき¥こ/を/も¥ふり−すて、¥おい/たる¥おや/を/も¥とどめ−おき、¥はるばる/と¥これ/まで¥つき¥まゐらせ/て¥さぶらふ¥こころざし/を/ば、¥いか/ばかり/と/か¥おぼしめさ/れ¥さぶらふ/らん。¥こんど¥いちのたに/にて¥うた/れ/させ¥たまふ¥ご=いつけ/の¥きんだち=たち/の¥きたのかた/の¥おん=なげき、¥いづれ/か¥おろか/に¥おぼしめさ/れ¥さぶらふ/べき。¥かならず¥ひとつ−はちす/へ/と¥おぼしめさ/れ¥さぶらふ/とも、¥しやう¥かはら/せ¥たまひ/な/ん¥のち、¥ろくだう−ししやう/の¥あひだ/にて、¥いづれ/の¥みち/へ/か¥おもむか/せ¥たまは/んず/らん。¥ゆき−あはせ¥たまは/ん¥こと/も¥ふぢやう/なれ/ば、¥おん=み/を¥なげ/て/も¥よし−なき¥おん=こと/なり。¥しづか/に¥みみ/と¥なら/せ¥たまひ/て、¥いか/なら/ん¥いはき/の¥はざま/にて/も、¥をさなき¥ひと/を¥そだて¥まゐらせ、¥おん=さま/を¥かへ、¥ほとけ/の¥みな/を¥となへ/て、¥なき¥ひと/の¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐらせ¥たまへ/かし。¥その−うへ¥みやこ/の¥おん=こと/を/ば、¥たれ¥み−つぎ¥まゐらせよ/とて、¥かやう/に/は¥おほせ/られ¥さぶらふ/やらん。¥うらめしう/も¥うけたまはり¥さぶらふ/ものかな」/とて、¥さめざめ/と¥かき−くどき/けれ/ば、¥きたのかたP182、¥この¥こと¥あしう/も¥しらせ/な/ん/と/や¥おもは/れ/けん、「¥これ/は¥こころ/に¥かはつ/て/も、¥おし−はかり¥たまふ/べし。¥おほかた/の¥よ/の¥うらめし−さ、¥ひと/の¥わかれ/の¥かなし−さ/に/も、¥み/を¥なげ/ん/など¥いふ/は、¥つね/の¥ならひ/なり。¥され/ども¥さやう/の¥こと/は、¥あり−がたき¥ためし/ぞ/かし。¥まことに¥おもひ−たつ¥こと¥あら/ば、¥そこ/に¥しらせ/ず/して/は¥ある/まじき/ぞ。¥いま/は¥よ/も¥ふけ/ぬ。¥いざや¥ね/ん」/と¥のたまへ/ば、¥めのと/の−にようばう、¥この¥しごにち/は¥ゆみづ/を/だに、¥はかばかしう¥ごらんじ−いれ/させ¥たまは/ぬ¥ひと/の、¥かやう/に¥こまごま/と¥おほせ/らるる/は、¥まことに¥おぼしめし−たつ¥こと/も/や/と¥かなしう/て、「¥およそ/は¥みやこ/の¥おん=こと/も、¥さる−おん=こと/にて¥さぶらへ/ども、¥げに¥おぼしめし−たつ¥こと/なら/ば、¥わらは/を/も¥ちひろ/の¥そこ/まで/も、¥ひき/こそ¥ぐせ/させ¥たまは/め。¥おくれ¥まゐらせ/な/ん¥のち、¥さらに¥かたとき¥ながらふ/べし/と/も¥おぼえ/ぬ/ものかな」/と¥まうし/て、¥おん=そば/に¥あり/ながら、¥ちと¥うち−まどろみ/たり/ける¥ひま/に、¥きたのかた¥やはら¥ふなばた/へ¥おき−いで¥たまひ/て、¥まんまん/たる¥かいしやう/なれ/ば、¥いづち/を¥にし/と/は¥しら/ね/ども、¥つき/の¥いるさ/の¥やま/の¥は/を、¥そなた/の¥そら/と/や¥おぼし/けん、¥しづか/に¥ねんぶつ−し¥たまへ/ば、¥おき/の¥しらす/に¥なく¥ちどり、¥あま/の−と¥わたる¥かぢ/の¥おと、¥をり/から¥あはれ/や¥まさり/けん、¥しのびごゑ/に¥ねんぶつ¥ひやくぺん/ばかり¥となへ/させ¥たまひ/つつ、「¥なむ−さいはう−ごくらく−せかい/の−けうじゆ、¥みだによらい、¥ほんぐわん¥あやまた/ず、¥あか/で¥わかれ/し¥いもせ/の¥なからひ、¥かならず¥ひとつ−はちす/に」/と、¥なくなく¥はるか/に¥かき−くどき、¥なむ/と¥となふる¥こゑ¥とも/に、¥うみ/に/ぞ¥しづみ¥たまひ/ける。¥いちのたに/より¥やしま/へ¥おし−わたら/ん/とて/の、¥やはん/ばかり/の¥こと/なり/けれ/ば、¥ふね/の¥うち¥しづまつ/てP183、¥ひと¥これ/を¥しら/ざり/けり。¥その¥なか/に¥かんどり/の¥いち−にん¥ね/ざり/ける/が、¥この¥よし/を¥み¥たてまつ/て、「¥あれ/は¥いか/に。¥あの¥おん=ふね/より、¥にようばう/の¥うみ/へ¥いら/せ¥たまひ/ぬる/は」/と¥よばはつ/たり/けれ/ば、¥めのと/の−にようばう¥うち−おどろき、¥そば/を¥さぐれ/ども¥おはせ/ざり/けれ/ば、¥ただ「¥あれよ¥あれよ」/と/ぞ¥あきれ/ける。¥ひと¥あまた¥おり/て、¥とり−あげ¥たてまつら/ん/と¥し/けれ/ども、¥さら/ぬ/だに、¥はる/の¥よ/は、¥ならひ/に¥かすむ¥もの/なれ/ば、¥よも/の¥むらくも¥うかれ−き/て、¥かづけ/ども¥かづけ/ども、¥つき¥おぼろ/にて¥みえ¥たまは/ず。¥はるか/に¥ほど¥へ/て¥のち、¥とり−あげ¥たてまつり/たり/けれ/ども、¥はや¥この−よ/に¥なき¥ひと/と¥なり¥たまひ/ぬ。¥しろき¥はかま/に、¥ねりぬき/の¥ふたつぎぬ/を¥き¥たまへ/り。¥かみ/も¥はかま/も¥しほたれ/て、¥とり−あげ/けれ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥めのと/の−にようばう、¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥かほ/に¥かほ/を¥おし−あて/て、「¥などや¥これ−ほど/に¥おぼしめし−たつ¥こと/なら/ば、¥わらは/を/も¥ちひろ/の¥そこ/まで/も、¥ひき/こそ¥ぐせ/させ¥たまふ/べけれ。¥うらめしう/も¥ただ¥いち−にん¥とどめ/させ¥たまふ/ものかな。¥さる/にて/も、¥いま−いちど¥もの¥おほせ/られ/て、¥わらは/に¥きか/させ¥たまへ」/とて、¥もだえ−こがれ/けれ/ども、¥はや¥この−よ/に¥なき¥ひと/と¥なり¥たまひ/ぬる¥うへ/は、¥いちごん/の¥へんじ/に/も¥および¥たまは/ず。¥わづか/に¥かよひ/つる¥いき/も、¥はや¥たて−はて/ぬ。¥さる−ほど/に¥はる/の¥よ/の¥つき/も、¥くもゐ/に¥かたぶき、¥かすめる¥そら/も¥あけ−ゆけ/ば、¥なごり/は¥つきせ/ず¥おもへ/ども、¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥うき/も/や¥あがり¥たまふ/と、¥こ=さんみ=どの/の¥きせなが/の¥いちりやう¥のこつ/たる/を、¥ひき−まとひ¥たてまつり、¥つひに¥うみ/に/ぞ¥しづめ/ける。¥めのと/の−にようばうP184、¥こんど/は¥おくれ¥たてまつら/じ/と、¥つづい/て¥うみ/に¥いら/ん/と¥し/ける/を、¥ひとびと¥とり−とどめ/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず。¥せめて/の¥こころ/の¥あら/れ/ず−さ/に/や、¥てづから¥かみ/を¥はさみ−おろし、¥こ=さんみ=どの/の¥おん=おとと、¥ちうなごん/の−りつし、−ちうくわい/に¥そら/せ¥たてまつり、¥なくなく¥かい/を¥たもつ/て、¥しゆ/の¥ごせ/を/ぞ¥とぶらひ/ける。¥むかし/より¥をとこ/に¥おくるる¥たぐひ¥おほし/と¥いへ/ども、¥さま/を¥かふる/は¥つね/の¥ならひ、¥み/を¥なぐる/まで/は¥あり−がたき¥ためし/なり。¥され/ば¥ちうしん/は¥じくん/に¥つかへ/ず、¥ていぢよ/は¥じふ/に¥まみえ/ず/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。¥この¥にようばう/と¥まうす/は、¥とう/の−ぎやうぶきやう−のりかた/の¥むすめ、¥きんちう¥いち/の¥びじん、¥な/を/ば¥こざいしやう=どの/と/ぞ¥まうし/ける。¥じやうせいもんゐん/の¥にようばう/なり。¥この¥にようばう¥じふろく/と¥まうし/し¥あんげん/の¥はる/の¥ころ、¥によゐん¥ほつしようじ/へ¥はなみ/の¥ご=かう/の¥あり/し/に、¥みちもりの−きやう、¥その−ころ/は、¥いまだ¥ちうぐう/の−すけ/にて¥ぐぶ−せ/られ/たり/ける/が、¥み−そめ/たり/し¥にようばう/なり。¥はじめ/は¥うた/を¥よみ、¥ふみ/を¥つくさ/れ/けれ/ども、¥たまづさ/の¥かず/のみ¥つもつ/て、¥とり−いれ¥たまふ¥こと/も¥なし。¥すでに¥みとせ/に¥なり/しか/ば、¥みちもりの−きやう、¥いま/を¥かぎり/の¥ふみ/を¥かい/て、¥こざいしやう=どの/の¥もと/へ¥つかはす。¥あまつさへ¥とり−つたへ/ける¥にようばう/に/だに¥あは/ず/して、¥つかひ¥むなしう¥かへり/ける¥みち/にて、¥をりふし¥こざいしやう=どの/は、¥さと/より¥ごしよ/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥つかひ¥むなしう¥かへり−まゐら/ん¥こと/の¥ほい−な−さ/に、¥そば/を¥つと¥はしり−とほる¥やう/にて、¥こざいしやう=どの/の¥のり¥たまへ/る¥くるま/の¥すだれ/の¥うち/へ、¥みちもりの−きやう/の¥ふみ/を/ぞ¥なげ−いれ/たる。¥とも/の¥もの=ども/に¥とひ¥たまへ/ば、「¥しら/ず」/と¥まうす。¥さて¥かの¥ふみ/を¥あけ/て¥み¥たまへ/ば、¥みちもりの−きやう/の¥ふみ/なり/けり。¥くるま/に¥おく/べき¥やう/も¥なし。¥おほぢ/にP185¥すて/ん/も¥さすが/にて、¥はかま/の¥こし/に¥はさみ/つつ、¥ごしよ/へ/ぞ¥まゐり¥たまひ/ける。¥さて¥みやづかへ¥たまひ/し/ほど/に、¥ところ/しも/こそ¥おほけれ、¥ごぜん/に¥ふみ/を¥おとさ/れ/たり。¥にようゐん¥これ/を¥とら/せ¥おはしまし、¥いそぎ¥ぎよ=い/の¥たもと/に¥ひき−かくさ/せ¥たまひ/て、「¥めづらしき¥もの/を/こそ¥もとめ/たれ。¥この¥ぬし/は¥たれ/なる/らん」/と¥おほせ/けれ/ば、¥ごしよ−ぢう/の¥にようばう=たち、¥よろづ/の¥かみ−ほとけ/に¥かけ/て、「¥しら/ず」/と/のみ/ぞ¥まうし/ける。¥その¥なか/に¥こざいしやう=どの/ばかり¥かほ¥うち−あかめ/て、¥つやつや¥もの/も¥まうさ/れ/ず。¥にようゐん/も、¥ないない¥みちもりの−きやう/の¥まうす/と/は¥しろしめさ/れ/たり/けれ/ば、¥さて¥この¥ふみ/を¥あけ/て¥ごらんずれ/ば、¥きろ/の¥けぶり/の¥にほひ¥こと/に¥ふかき/に、¥ふで/の¥たて/ども¥よ/の−つね/なら/ず。「¥あまり/に¥ひと/の¥こころ−づよき/も、¥いま/は¥なかなか¥うれしく/て」/など、¥こまごま/と¥かい/て、¥おく/に/は¥いつしゆ/の¥うた/ぞ¥あり/ける。¥
わが¥こひ/は¥ほそたにがは/の¥まろきばし¥ふみ−かへさ/れ/て¥ぬるる¥そで/かな W071¥
にようゐん、「¥これ/は¥あは/ぬ/を¥うらみ/たる¥ふみ/や。¥あまり¥ひと/の¥こころ−づよき/も、¥なかなか¥いま/は¥あた/と¥なん/なる/ものを。¥なかごろ¥をのの−こまち/とて、¥みめ−かたち¥うつくしう、¥なさけ/の¥みち¥あり−がたかり/しか/ば、¥みる¥ひと¥きく¥もの、¥きも−たましひ/を¥いたま/しめ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥され/ども¥こころ−づよき¥な/を/や¥とり/たり/けん、¥はて/に/は¥ひと/の¥おもひ/の¥つもり/とて、¥かぜ/を¥ふせぐ¥たより/も¥なく、¥あめ/を¥もらさ/ぬ¥わざ/も¥なし。¥やど/に¥くもら/ぬ¥つきほし/は、¥なみだ/に¥うかび、¥のべ/の¥わかな、¥さは/の¥ねぜり/を¥つみ/て/こそ、¥つゆ/の−いのち/を/ば¥すごし/けれ」。¥にようゐん、「¥これ/は¥いか/に/も¥へんじ¥ある/べき¥こと/ぞ」/とて、¥おん=すずり¥めし−よせ/て、¥かたじけなく/も¥みづから¥おん=ぺんじ¥あそばさ/れ/けり。P186¥
ただ¥たのめ¥ほそたにがは/の¥まろきばし¥ふみ−かへし/て/は¥おち/ざら/め/やは W072¥
むね/の¥うち/の¥おもひ/は、¥ふじ/の¥けぶり/に¥あらはれ、¥そで/の¥うへ/の¥なみだ/は、¥きよみ/が−せき/の¥なみ/なれ/や。¥みめ/は¥さいはひ/の¥はな/なれ/ば、¥さんみ¥この¥にようばう/を¥たまはつ/て、¥たがひ/の¥こころざし¥あさから/ず。¥され/ば¥さいかい/の¥なみ/の¥うへ、¥ふね/の¥うち/まで/も¥ひき−ぐし/て、¥つひに¥おなじ¥みち/へ/ぞ¥おもむか/れ/ける。¥かどわきの−ちうなごん/は、¥ちやくし¥ゑちぜんの−さんみ、¥ばつし¥なりもり/に/も¥おくれ¥たまひ/ぬ。¥いま¥たのみ¥たまへ/る¥ひと/とて/は、¥のとの−かみ−のりつね、¥そう/に/は¥ちうなごん/の−りつし−ちうくわい/ばかり/なり。¥こ=さんみ=どの/の¥かたみ/と/も、¥この¥にようばう/を/こそ¥み¥たまふ/べき/に、¥それ/さへ¥かやう/に¥なり¥たまへ/ば、¥いとど¥こころ−ぼそう/ぞ¥なら/れ/ける。P187¥

 

入力者:荒山慶一

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