平家物語 巻第十一  総かな版(元和九年本)
「さかろ」(『さかろ』)S1101¥げんりやく−にねん−しやうぐわつ−とをかのひ、¥くらう−たいふ/の−はうぐわん−よしつね¥ゐんざん−し/て、¥おほくら/の−きやう−やすつねの−あそん/を¥もつて、¥そうもん−せ/られ/ける/は、「¥へいけ/は¥しんめい/に/も¥はなた/れ¥たてまつり、¥きみ/に/も¥すて/られ¥まゐらせ/て、¥ていと/を¥いで/て¥なみ/の¥うへ/に¥ただよふ¥おちうと/と¥なれ/り。¥しかる/を¥この¥さんがねん/が¥あひだ、¥せめ−おとさ/ず/して、¥おほく/の¥くにぐに/を¥ふさげ/られ/ぬる¥こと/こそ¥くちをしう¥さふらへ。¥こんど¥よしつね/に¥おいて/は、¥きかい、¥かうらい、¥けいたん、¥くも/の¥はて、¥うみ/の¥はて/まで/も、¥へいけ/を¥ほろぼさ/ざら/ん¥かぎり/は、¥わうじやう/へ¥かへる/べから/ざる」¥よし、¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥あひ−かまへ/て¥よ/を¥ひ/に¥つい/で、¥しようぶ/を¥けつす/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥はうぐわん¥しゆくしよ/に¥かへつ/て、¥とうごく/の¥さぶらひ=ども/に¥むかつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥こんど¥よしつね/こそ¥ゐんぜん/を¥うけたまはり、¥かまくら=どの/の¥おん=だいくわん/と/して、¥へいけ−つゐたう/の¥ため/に、¥さいこく/へ¥はつかう−す/なれ。¥くが/は¥こま/の¥ひづめ/の¥かよは/ん/を¥かぎり、¥うみ/は¥ろかい/の¥たた/ん¥ところ/まで、¥せめ−ゆく/べし。¥それ/にP248¥すこし/も¥しさい/を¥ぞんぜ/ん¥ひとびと/は、¥これ/より¥とうとう¥かまくら/へ¥くだる/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥さる−ほど/に¥やしま/に/は、¥ひま−ゆく¥こま/の¥あし¥はやく/して、¥しやうぐわつ/も¥たち、¥にんぐわつ/に/も¥なり/ぬ。¥はる/の¥くさ¥くれ/て、¥あき/の¥かぜ/に¥おどろき、¥あき/の¥かぜ¥やん/で、¥また¥はる/の¥くさ/に/も¥なれ/り。¥おくり−むかへ/て、¥すでに¥みとせ/に¥なり/に/けり。¥へいけ¥さぬき/の¥やしま/へ¥わたり¥たまひ/て¥のち/も、¥とうごく/より¥あらて/の¥ぐんびやう¥すまんぎ、¥みやこ/に¥つい/て¥せめ−くだる/と/も¥きこゆ。¥また¥ちんぜい/より、¥うすき、¥へつき、¥まつら−たう¥どうしん−し/て、¥おし−わたる/と/も¥きこえ/けり。¥かれ/を¥きき¥これ/を¥きく/に/も、¥ただ¥みみ/を¥おどろかし、¥きも−たましひ/を¥けす/より¥ほか/の¥こと/ぞ¥なき。¥にようゐん、¥きたのまんどころ、¥にゐ=どの¥いげ/の¥にようばう=たち¥さし−つどひ¥たまひ/て、¥こんど¥わが¥かたざま/に、¥いか/なる¥うき¥こと/を¥きき、¥いか/なる¥うき−め/を/か¥み/んず/らん/と、¥なげき−あひ¥かなしみ−あは/れ/けり。¥なか/に/も¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥のたまひ/ける/は、「¥とうごく¥ほつこく/の¥きようと=ら/も、¥ずゐぶん¥ぢうおん/を¥かうぶつ/たり/しか/ども、¥たちまち/に¥おん/を¥わすれ、¥ちぎり/を¥へんじ/て、¥よりとも¥よしなか=ら/に¥したがひ/き。¥まして¥さいこく/とて/も、¥さ/こそ/は¥あら/んず/らめ/と¥おもひ/しか/ば、¥ただ¥みやこ/の¥うち/にて、¥いか/に/も−なら/せ¥たまへ/と、¥さ/しも¥まうし/つる/ものを。¥わが−み¥ひとつ/の¥こと/なら/ね/ば、¥こころ−よわう¥あこがれ−いで/て、¥けふ/は¥かかる¥うき−め/を¥みる¥くちをし−さ/よ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥まことに¥ことわり/と¥おぼえ/て¥あはれ/なり。¥さる−ほど/に¥にんぐわつ−みつかのひ、¥くらう−たいふ/の−はうぐわん−よしつね、¥みやこ/を¥たつ/て、¥つの−くに¥わたなべ、¥ふくしまP249¥りやうしよ/にて¥ふなぞろへ−し、¥やしま/へ¥すでに¥よせ/ん/と¥す。¥あに/の¥みかはの−かみ−のりより/も、¥どうにち/に¥みやこ/を¥たつ/て、¥これ/も¥つの−くに¥かんざき/にて、¥ひやうせん¥そろへ/て、¥せんやうだう/へ¥おもむか/ん/と¥す。¥おなじき−とをかのひ、¥いせ、¥いはしみづ/へ¥くわんぺいし/を¥たて/らる。¥しゆしやう¥ならびに¥さんじゆ/の−しんき、¥ことゆゑ−なう¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつる/べき¥よし、¥じんぎくわん/の¥くわんにん、¥もろもろ/の¥しやし、¥ほんぐう、¥ほんじや/にて¥きせい¥まうす/べき¥むね¥おほせ−くださ/る。¥おなじき−じふろくにち、¥わたなべ、¥ふくしま¥りやうしよ/にて、¥そろへ/たり/ける¥ふね=ども/の、¥ともづな¥すでに¥とか/ん/と¥す。¥をりふし¥きたかぜ¥き/を¥をつ/て、¥はげしう¥ふい/たり/けれ/ば、¥ふね=ども¥みな¥うち−そんぜ/られ/て¥いだす/に¥およば/ず。¥しゆり/の¥ため/に、¥その−ひ/は¥とどまり/ぬ。¥
さる−ほど/に¥わたなべ/に/は¥とうごく/の¥だいみやう−せうみやう¥より−あひ/て、「¥そもそも¥われ=ら¥ふな−いくさ/の¥やう/は¥いまだ¥てうれん−せ/ず。¥いかが−せ/ん」/と¥ひやうぢやう−す。¥かぢはら¥すすみ−いで/て、「¥こんど/の¥ふね/に/は、¥さかろ/を¥たて¥さふらは/ばや」/と¥まうす。¥はうぐわん、「¥さかろ/と/は¥なん/ぞ」。¥かぢはら、「¥むま/は¥かけ/ん/と¥おもへ/ば¥かけ、¥ひか/ん/と¥おもへ/ば¥ひき、¥ゆんで/へ/も¥めて/へ/も¥まはし−やすう¥さふらふ/が、¥ふね/は¥さやう/の¥とき、¥きつと¥おし−まはす/が¥だいじ/で¥さふらへ/ば、¥ともへ/に¥ろ/を¥たて−ちがへ、¥わいかぢ/を¥いれ/て、¥どなた/へ/も¥まはし−やすい¥やう/に¥し¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん、「¥まづ¥かどで/の¥あし−さ/よ。¥いくさ/に/は¥ひとひき/も¥ひか/じ/と¥おもふ/だに、¥あはひ¥あしけれ/ば¥ひく/は¥つね/の¥ならひ/なり。¥まして¥さやう/に¥にげ−まうけ−せ/ん/に、¥なじかは¥よかる/べき。¥との=ばら/の¥ふね/に/は、¥さかろ/を/も¥かへさまろ/を/も、¥ひやくちやう¥せんぢやう/も¥たて¥たまへ。¥よしつね/は¥ただ¥もと/の¥ろ/でP250¥さふらは/ん」/と¥のたまへ/ば、¥かぢはら¥かさね/て、「¥よき¥たいしやうぐん/と¥まうす/は、¥かく/べき¥ところ/を/も¥かけ、¥ひく/べき¥ところ/を/も¥ひき、¥み/を¥まつたう−し/て、¥かたき/を¥ほろぼす/を¥もつて、¥よき¥たいしやう/と/は¥し/たる¥ざふらふ。¥さやう/に¥かたおもむき/なる/を/ば、¥ゐのしし−むしや/とて、¥よき/に/は¥せ/ず」/と¥まうす。¥はうぐわん、「¥ゐのしし¥かのしし/は¥しら/ず、¥いくさ/は¥ただ¥ひらぜめ/に¥せめ/て、¥かつ/たる/ぞ¥ここち/は¥よき」/と¥のたまへ/ば、¥とうごく/の¥だいみやう−せうみやう、¥かぢはら/に¥おそれ/て、¥たかく/は¥わらは/ね/ども、¥め¥ひき¥はな¥ひき、¥ききめき−あへ/り。¥その−ひ¥はうぐわん/と¥かぢはら/と、¥すでに¥どし−いくさ−せ/ん/と¥す。¥され/ども¥いくさ/は¥なかり/けり。¥はうぐわん、「¥ふね=ども/の¥しゆり−し/て、¥あたらしう¥なつ/たる/に、¥おのおの¥いつしゆ¥いつぺい−し/て、¥いはひ¥たまへ、¥との=ばら」/とて、¥いとなむ¥てい/に¥もてなし、¥ふね/に¥ひやうらうまい¥つみ、¥もののぐ¥いれ、¥むま=ども¥たて/させ、「¥ふね¥とう¥つかまつれ」/と¥のたまへ/ば、¥すゐしゆ−かんどり=ども、「¥これ/は¥じゆんぷう/にて/は¥さふらへ/ども、¥ふつう/に/は¥すこし¥すぎ/て¥さふらふ。¥おき/は¥さぞ¥ふい/て¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん¥おほき/に¥いかつ/て、「¥かいしやう/に¥いで−うかう/だる¥とき、¥かぜ¥こはけれ/ば/とて¥とどまる/べき/か。¥のやま/の¥すゑ/にて¥しに、¥うみかは/に¥おぼれ/て¥うする/も、¥みな¥これ¥ぜんぜ/の¥しゆくごふ/なり。¥むかひかぜ/に¥わたら/ん/と¥いは/ば/こそ、¥よしつね/が¥ひがごと/なら/め。¥じゆんぷう/なる/が、¥ふつう/に¥すこし¥すぎ/たれ/ば/とて、¥これ−ほど/の¥おん=だいじ/に、¥ふね¥つかまつら/じ/と/は、¥いかで/か¥まうす/ぞ。¥ふね¥とう¥つかまつれ。¥つかまつら/ず/は、¥しやつ=ばら¥いちいち/に¥い−ころせ、¥もの=ども」/と/ぞ¥げぢ−し¥たまひ/ける。「¥うけたまはつ/て¥さふらふ」/とて、¥いせの−さぶらう−よしもり、¥あうしう/の−さとう−さぶらう−びやうゑ−つぎのぶ、¥おなじき−しらう−びやうゑ−ただのぶP251、¥えだの−げんざう、¥くまゐ−たらう、¥むさし−ばう−べんけい/など¥いふ、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの=ども、「¥ご=ぢやう/で¥ある/ぞ、¥ふね¥とう¥つかまつれ。¥つかまつら/ず/は、¥おのれ=ばら¥いちいち/に¥い−ころさ/ん」/とて、¥かたてや¥はげ/て、¥はせ−まはる¥あひだ、¥すゐしゆ−かんどり=ども、「¥ここ/にて¥い−ころさ/れ/ん/も¥おなじ¥こと、¥かぜ¥こはく/ば、¥おき/にて¥はせ−じに/に/も¥しね/や、¥もの=ども」/とて、¥にひやく−よ−そう/が¥なか/より/も、¥ただ¥ごそう¥いで/て/ぞ¥はしり/ける。¥ごそう/の¥ふね/と¥まうす/は、¥まづ¥はうぐわん/の¥ふね、¥つぎに¥たしろの−くわんじや/の¥ふね、¥ごとう−びやうゑ−ふし、¥かねこ−きやうだい、¥よどの−がうない−ただとし/とて、¥ふなぶぎやう/の¥のつ/たる¥ふね/なり/けり。¥のこり/の¥ふね/は、¥かぢはら/に¥おそるる/か、¥かぜ/に¥おづる/か/して¥いで/ざり/けり。¥はうぐわん、「¥ひと/の¥いで/ね/ば/とて、¥とどまる/べき/に¥あら/ず。¥つね/の¥とき/は¥かたき/も¥おそれ/て、¥ようじん−す/らん。¥かかる¥おほ−かぜ¥おほ−なみ/に、¥おもひ/も¥よら/ぬ¥ところ/へ¥よせ/て/こそ、¥おもふ¥かたき/を/ば¥うた/んずれ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥はうぐわん、「¥おのおの/の¥ふね/に¥かがり¥な¥ともい/そ。¥ひかず¥おほう¥みえ/ば、¥かたき/も¥おそれ/て¥ようじん−し/て/んず/ぞ。¥よしつね/が¥ふね/を¥ほん−ぶね/と/して、¥ともへ/の¥かがり/を¥まぼれ」/とて、¥よ/も−すがら¥わたる/ほど/に、¥みつか/に¥わたる¥ところ/を、¥ただ¥みとき/ばかり/に/ぞ¥はしり/ける。¥にんぐわつ−じふろくにち/の¥うし/の−こく/に、¥つの−くに¥わたなべ、¥ふくしま/を¥いで/て、¥あくる¥う/の−こく/に/は、¥あは/の¥ぢ/へ/こそ¥ふき−つけ/けれ。P252
「かつうらかつせん」(『かつうら つけたり おほざかごえ』)S1102¥あけ/けれ/ば、¥なぎさ/に/は¥あかはた¥せうせう¥ひらめい/たり。¥はうぐわん、「¥すは¥われ=ら/が¥まうけ/を/ば¥し/たり/ける/ぞ。¥なぎさ¥ちかう¥なつ/て、¥むま=ども¥おひ−おろさ/ん/と¥せ/ば、¥かたき/の¥まと/に¥なつ/て¥い/られ/な/んず。¥なぎさ¥ちかう/なら/ぬ¥さき/に、¥ふね=ども¥のり−かたぶけ−のり−かたぶけ、¥むま=ども¥おひ−おろし−おひ−おろし、¥ふね/に¥ひき−つけ−ひき−つけ¥およが/せよ。¥むま/の¥あし¥たち、¥くらづめ¥ひたる/ほど/に/も¥なら/ば、¥ひたひた/と¥うち−のつ/て、¥かけよ、¥もの=ども」/と/ぞ¥げぢ−し¥たまひ/ける。¥ごそう/の¥ふね/に/は、¥ひやうらうまい¥つみ、¥もののぐ¥いれ/たり/けれ/ば、¥むまかず¥ごじふよひき/ぞ¥たて/たり/ける。¥あん/の/ごとく¥なぎさ¥ちかう¥なり/しか/ば、¥ふね=ども¥のり−かたぶけ−のり−かたぶけ、¥むま=ども¥おひ−おろし−おひ−おろし、¥ふね/に¥ひき−つけ−ひき−つけ¥およが/す。¥むま/の¥あし¥たち、¥くらづめ¥ひたる/ほど/に/も¥なり/しか/ば、¥ひたひた/と¥うち−のつ/て、¥はうぐわん¥ごじふ−よ−き、¥をめい/て¥さき/を¥かけ¥たまへ/ば、¥なぎさ/に¥ひかへ/たり/ける¥ひやくき/ばかり/の¥つはもの=ども、¥しばし/も¥たまら/ず、¥にちやう/ばかり¥ざつと¥ひい/て¥ひかへ/たり。¥はうぐわん¥なぎさ/に¥あがり、¥じんば/の¥いき¥やすめ/て¥おはし/ける/が、¥いせの−さぶらう−よしもり/を¥めし/て、「¥あの¥せい/の¥なか/に、¥さり/ぬ/べき¥もの¥あら/ば、¥いち−にん¥ぐし/て¥まゐれ。¥たづぬ/べき¥こと¥あり」/とP253¥のたまへ/ば、¥よしもり¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥ひやくき/ばかり/の¥せい/の¥なか/へ、¥ただ¥いつき¥かけ−いつ/て、¥なんとか¥いひ/たり/けん、¥とし/の−よはひ¥しじふ/ばかん/なる¥をのこ/の、¥くろかは−をどし/の−よろひ¥き/たる/を、¥かぶと/を¥ぬが/せ、¥ゆみ/の¥つる¥はづさ/せ、¥かうにん/に¥ぐし/て¥まゐり/たり。¥はうぐわん、「¥あれ/は¥なにもの/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥たう−ごく/の¥ぢうにん¥ばんざいの−こんどう−ろく−ちかいへ」/と¥なのり¥まうす。¥はうぐわん、「¥たとひ¥なにいへ/にて/も¥あら/ば¥あれ、¥しやつ/に¥め¥はなす/な。¥もののぐ¥な¥ぬが/せ/そ。¥やがて¥やしま/へ/の¥あんないしや/に¥ぐせ/んずる/ぞ。¥にげ/て¥ゆか/ば¥い−ころせ、¥もの=ども」/と/ぞ¥げぢ−し¥たまひ/ける。¥はうぐわん¥ちかいへ/を¥めし/て、「¥ここ/を/ば¥いづく/と¥いふ/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥かつうら/と¥まうし¥さふらふ」。¥はうぐわん¥わらつ/て、「¥しきだい/な」/と¥のたまへ/ば、「¥いちぢやう¥かつうら¥ざふらふ。¥げらふ/の¥まうし−やすき¥まま/に、¥かつら/と/は¥まうせ/ども、¥もじ/に/は¥かつうら/と¥かい/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび¥たまひ/て、「¥あれ¥きき¥たまへ¥との=ばら、¥いくさ−し/に¥むかふ¥よしつね/が、¥かつうら/に¥つく¥めでた−さ/よ。¥もし¥この¥へん/に¥へいけ/の¥うしろや¥い/つ/べき¥じん/は¥たれ/か¥ある」/と¥のたまへ/ば、「¥あはの−みんぶ−しげよし/が¥おとと、¥さくらば/の−すけ−よしとほ/とて¥さふらふ」/と¥まうす。「¥いざ¥さら/ば¥け−ちらし/て¥とほら/ん」/とて、¥こんどう−ろく/が¥せい/の¥ひやくき/ばかり/が¥なか/より、¥むま/や¥ひと/を¥すぐつ/て、¥さんじつき/ばかり、¥わが¥せい/に/こそ¥ぐせ/られ/けれ。¥よしとほ/が¥じやう/に¥おし−よせ/て¥み¥たまへ/ば、¥さんばう/は¥ぬま、¥いつぽう/は¥ほり/なり。¥ほり/の¥かた/より¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥じやう/の¥うち/の¥つはもの=ども、「¥ただ¥い−とれ/や−い−とれ」/とて、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥い/けれ/ども、¥げんじ/の¥つはもの=ども¥これ/を¥こと/と/も¥せ/ず、¥ほり/を¥こえ、¥かぶと/の¥しころ/を¥かたぶけ/て、¥をめき−さけん/でP254¥せめ/けれ/ば、¥よしとほ¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥いへのこ−らうどう=ども/に¥ふせぎ−や¥い/させ、¥わが−み/は¥くつきやう/の¥むま/を¥もつ/たり/けれ/ば、¥それ/に¥うち−のり、¥けう/に/して¥おち/に/けり。¥のこり−とどまつ/て¥ふせぎ−や¥い/ける¥つはもの=ども、¥にじふ−よ−にん/が¥くび¥きり−かけ/させ、¥いくさがみ/に¥まつり、¥よろこび/の¥とき/を¥つくり、「¥かどで¥よし」/と/ぞ¥よろこば/れ/ける。¥
「おほさかごえ」¥はうぐわん¥また¥ばんざいの−こんどう−ろく−ちかいへ/を¥めし/て、「¥やしま/に/は¥へいけ/の¥せい¥いか/ほど¥ある/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥せんぎ/に/は¥よも¥すぎ¥さふらは/じ」/と¥まうす。¥はうぐわん、「¥など¥すくない/ぞ」。「¥かやう/に¥しこく/の¥うらうら−しまじま/に、¥ごじつき¥ひやくき/づつ¥さし−おか/れ/て¥さふらふ。¥その−うへ¥あはの−みんぶ−しげよし/が¥ちやくし、¥でんない−ざゑもん−のりよし/は、¥いよ/の¥かはのの−しらう/が、¥めせ/ども¥まゐら/ぬ/を¥せめ/ん/とて、¥さんぜん−よ−き/で、¥いよ/へ¥こえ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥はうぐわん、「¥さて/は¥よき¥ひま¥ござんなれ。¥これ/より¥やしま/へ/は、¥いか/ほど¥ある/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥ふつかぢ/で¥さふらふ」/と¥まうす。「¥いざ¥さら/ば¥かたき/の¥きか/ぬ¥さき/に¥よせ/ん」/とて、¥はせ/つ¥ひかへ/つ、¥かけ/つ¥あゆま/せ/つ、¥あは/と¥さぬき/の¥さかひ/なる、¥おほさかごえ/と¥いふ¥やま/を、¥よ/も−すがら/こそ¥こえ/られ/けれ。¥その¥よ/の¥やはん/ばかり/に、¥たてぶみ¥もつ/たる¥をとこ¥いち−にん、¥はうぐわん/に¥ゆき−つれ/たり。¥よる/の¥こと/で/はP255¥あり、¥かたき/と/は¥ゆめ/に/も¥しら/ず、¥み=かた/の¥つはもの=ども/の¥やしま/へ¥まゐる/と/や¥おもひ/けん、¥うち−とけ/て¥ものがたり/を/ぞ¥し/ける。¥はうぐわん、「¥われ/も¥やしま/に¥まゐる/が、¥あんない/を¥しら/ぬ/ぞ。¥じんじよ−せよ」/と¥のたまへ/ば、「¥この¥をとこ/は¥たびたび¥まゐつ/て、¥あんない¥よく¥ぞんじ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥はうぐわん、「¥さて¥その¥ふみ/は、¥いづく/より¥いづかた/へ¥まゐらせ/らるる/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥これ/は¥きやう/より¥にようばう/の、¥やしま/の¥おほい=との/へ¥まゐらせ/られ¥さふらふ」。「¥さて¥なにごと/に/や」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥べつ/の¥しさい/で/は、¥よも¥さふらは/じ。¥げんじ¥すでに¥よどがはじり/に¥いで−うかう/で¥さふらへ/ば、¥さだめて¥それ/を/こそ¥つげ¥まうさ/れ¥さふらふ/らめ」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん、「¥げに¥さぞ¥ある/らん。¥その¥ふみ¥うばへ」/とて、¥もつ/たる¥ふみ/を¥うばひ−とら/せ、「¥しやつ¥からめ/よ。¥つみつくり/に¥くび¥な¥きつ/そ」/とて、¥やまなか/の¥き/に¥しばり−つけ/させ/て/こそ¥とほら/れ/けれ。¥はうぐわん¥さて¥かの¥ふみ/を¥あけ/て¥み¥たまへ/ば、¥まことに¥にようばう/の¥ふみ/と¥おぼしく/て、「¥くらう/は¥すすどき¥をのこ/なれ/ば、¥いか/なる¥おほ−かぜ¥おほ−なみ/を/も¥きらひ¥さぶらは/で、¥よせ¥さぶらふ/らん/と¥おぼえ¥さぶらふ。¥あひ−かまへ/て¥おん=せい=ども¥ちら/させ¥たまは/で、¥よくよく¥ようじん−せ/させ¥たまへ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥はうぐわん、「¥これ/は¥よしつね/に、¥てん/の¥あたへ¥たまふ¥ふみ/や。¥かまくら=どの/に¥みせ¥まうさ/ん」/とて、¥ふかう¥をさめ/て/ぞ¥おか/れ/ける。¥あくる¥じふはちにち/の¥とら/の−こく/に、¥さぬきの−くに¥ひけた/と¥いふ¥ところ/に¥おち−つい/て、¥じんば/の¥いき/を/ぞ¥やすめ/ける。¥それ/より¥しろとり、¥にふのや、¥うち−すぎ−うち−すぎ、¥やしま/の−じやう/へ/ぞ¥よせ¥たまふ。¥はうぐわん¥また¥ちかいへ/を¥めし/て、「¥これ/より¥やしま/へ/の¥たち/は、¥いかやう/なる/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ばP256、「¥しろしめさ/れ/ね/ば/こそ。¥むげ/に¥あさま/に¥さふらふ。¥しほ/の¥ひ/て¥さふらふ¥とき/は、¥くが/と¥しま/と/の¥あひだ/は、¥むま/の¥ふとばら/も¥つかり¥さふらは/ず」/と¥まうす。「¥かたき/の¥きか/ぬ¥さき/に、¥さら/ば¥とう¥よせよ/や」/とて、¥たかまつ/の¥ざいけ/に¥ひ/を¥かけ/て、¥やしま/の−じやう/へ/ぞ¥よせ/られ/ける。¥
さる−ほど/に¥やしま/に/は、¥あはの−みんぶ−しげよし/が¥ちやくし、¥でんない−ざゑもん−のりよし/は、¥いよ/の¥かはのの−しらう/が、¥めせ/ども¥まゐら/ぬ/を¥せめ/ん/とて、¥さんぜん−よ−き/で、¥いよ/へ¥こえ/たり/し/が、¥かはの/を/ば¥うち−もらし/ぬ。¥いへのこ−らうどう¥ひやくごじふにん/が¥くび¥きつ/て、¥やしま/の¥だいり/へ¥まゐらせ/たる/を、「¥だいり/にて、¥ぞくしゆ/の¥じつけん¥しかる/べから/ず」/とて、¥おほい=との/の¥おん=しゆくしよ/にて、¥くび=ども/の¥じつけん−し/て¥おはし/ける¥ところ/に、¥もの=ども、「¥たかまつ/の¥ざいけ/より¥ひ¥いで−き/たり」/とて、¥ひしめき/けり。「¥ひる/で¥さふらへ/ば、¥て−あやまち/にて/は、¥よも¥さふらは/じ。¥いかさま/に/も、¥かたき/の¥よせ/て¥ひ/を¥かけ/たる/と¥おぼえ¥さふらふ。¥さだめて¥おほぜい/で/ぞ¥さふらふ/らん。¥とり−こめ/られ/て/は¥かなひ¥さふらふ/まじ。¥とうとう¥めさ/る/べく¥さふらふ」/とて、¥そうもん/の¥まへ/の¥みぎは/に、¥いくら/も¥つけ−ならべ/たる¥ふね=ども/に、¥われ/も−われ/も/と¥あわて¥のり¥たまふ。¥ごしよ/の¥おん=ふね/に/は、¥にようゐん、¥きたのまんどころ、¥にゐ=どの¥いげ/の¥にようばう=たち¥めさ/れ/けり。¥おほい=との−ふし/は、¥ひとつ−ふね/に/ぞ¥のり¥たまふ。¥その−ほか/の¥ひとびと/は、¥おもひおもひ/に¥とり−のつ/て、¥あるひは¥いつちやう/ばかり、¥あるひは¥しちはつたん¥ごろくたん/など、¥こぎ−いだし/たる¥ところ/に、¥げんじ/の¥つはもの=ども、¥ひた−かぶと¥しちはちじつき、¥そうもん/の¥まへ/の¥なぎさ/に、¥つつ/と/ぞ¥うち−いで/たる。¥しほひがた/の、¥をりふし¥しほ¥ひる¥さかり/なり/けれ/ば、¥むま/の¥からすがしら、¥むながい−づくし、¥ふとばら/に¥たつ¥ところ/も¥あり、¥それ/より¥あさき¥ところ/も¥ありP257。¥け−あぐる¥しほ/の¥かすみ/と¥とも/に、¥しぐらう/だる¥なか/より、¥しらはた¥ざつと¥さし−あげ/たれ/ば、¥へいけ/は¥うん¥つき/て、¥おほぜい/と/こそ¥み/てげれ。¥はうぐわん¥かたき/に¥こぜい/と¥みえ/じ/とて、¥ごろつき、¥しちはつき、¥じつき/ばかり、¥うち−むれ−うち−むれ¥いで−き/たり。¥
(『つぎのぶさいご』)S1103¥はうぐわん¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥むらさき−すそご/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ/の¥まんなか¥とり、¥おき/の¥かた/を¥にらまへ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いちゐん/の¥おん=つかひ、¥けんびゐし−ごゐ/の−じよう−みなもとの−よしつね」/と¥なのる。¥つぎ/に¥なのる/は、¥いづの−くに/の¥ぢうにん、¥たしろの−くわんじや−のぶつな、¥つづい/て¥なのる/は、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥かねこの−じふらう−いへただ、¥おなじき−よいち−ちかのり、¥いせの−さぶらう−よしもり/と/ぞ¥なのつ/たる。¥つづい/て¥なのる/は、¥ごとう−びやうゑ−さねもと、¥しそく¥しん−びやうゑ/の−じよう−もときよ、¥あうしう/の−さとう−さぶらう−びやうゑ−つぎのぶ、¥おなじき−しらう−びやうゑ−ただのぶ、¥えだの−げんざう、¥くまゐ−たらう、¥むさし−ばう−べんけい/など¥いふ¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの=ども、¥こゑごゑ/に¥なのつ/て¥はせ−き/たる。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥これ/を¥み/て、「¥あれ¥い−とれ/や、¥い−とれ」/とて、¥あるひは¥とほや/に¥いる¥ふね/も¥あり、¥あるひは¥さしや/に¥いる¥ふね/も¥あり。¥げんじ/の¥かた/の¥つはもの=ども、¥これ/を¥こと/と/も¥せ/ず、¥ゆんで/に¥なし/て/は、¥い/て¥とほり、¥めて/に¥なし/て/は、¥い/て¥とほる。¥あげ−おい/たる¥ふね=ども/の¥かげ/を、¥むまやすめどころ/と/して、¥をめき−さけん/で¥せめ−たたかふ。P258
「つぎのぶさいご」¥なか/に/も¥ごとう−びやうゑ−さねもと/は、¥ふるづはもの/にて¥あり/けれ/ば、¥いそ/の¥いくさ/を/ば¥せ/ず、¥まづ¥だいり/へ¥みだれ−いり、¥てんで/に¥ひ/を¥はなつ/て、¥へんし/の¥けぶり/と¥やき−はらふ。¥おほい=との、¥さぶらひ=ども/に、「¥げんじ/が¥せい/は¥いか/ほど¥ある/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥しちはちじつき/に/は¥よも¥すぎ¥さふらは/じ」。「¥あな¥こころ−う/や、¥かみ/の¥すぢ/を¥ひとすぢ/づつ、¥わけ/て¥とる/とも、¥この¥せい/に/は¥たる/まじかり/つる/ものを。¥なか/に/も¥とり−こめ/て¥うた/ず/して、¥あわて/て¥ふね/に¥のつ/て、¥だいり/を¥やか/せ/ぬる¥こと/こそ¥くちをしけれ。¥のと=どの/は¥おはせ/ぬ/か、¥くが/に¥あがつ/て、¥ひといくさ−し¥たまへ/かし」/と¥のたまへ/ば、「¥うけたまはり¥さふらふ」/とて、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥ごひやく−よ−にん、¥こ−ぶね/に¥のり、¥やき−はらひ/たる¥そうもん/の¥まへ/の¥みぎは/に¥おし−よせ/て¥ぢん/を¥とる。¥はうぐわん/も¥はちじふ−よ−き、¥やごろ/に¥よせ/て¥ひかへ/たり。¥へいけ/の¥かた/より、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ、¥ふね/の¥やかた/に¥すすみ−いで、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥そもそも¥いぜん¥なのり¥たまひ/つる/と/は¥きき/つれ/ども、¥かいじやう¥はるか/に¥へだたつ/て、¥その¥けみやう¥じつみやう¥ぶんみやう/なら/ず。¥けふ/の¥げんじ/の¥たいしやうぐん/は、¥たれびと/にて¥まします/ぞ。¥なのり¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥いせの−さぶらう¥すすみ−いで/て、「¥あな¥こと/も¥おろか/や、¥せいわ−てんわう/に¥じふ−だい/のP259¥こういん、¥かまくら=どの/の¥おん=おとと、¥たいふ/の−はうぐわん=どの/ぞ/かし」。¥もりつぎ¥きい/て、「¥さる−こと¥あり。¥さんぬる¥へいぢ/の−かつせん/に、¥ちち¥うた/れ/て¥みなしご/にて¥あり/し/が、¥くらま/の¥ちご/して、¥のち/に/は¥こがね−あきんど/の¥しよじう/と¥なり、¥らうれう¥せおう/て、¥おく/の¥かた/へ¥おち−くだり/し、¥その¥こ−くわんじや−め/が¥こと/か」/と/ぞ¥いひ/ける。¥よしもり¥あゆま/せ−よつ/て、「¥した/の¥やはらか/なる¥まま/に、¥きみ/の¥おん=こと¥な¥まうし/そ。¥さいふわ¥ひと=ども/こそ、¥ほつこく¥となみやま/の¥いくさ/に¥うち−まけ、¥からき¥いのち¥いき/つつ、¥ほくろくだう/に¥さまよひ、¥こつじき−し/て¥のばつ/たり/し、¥その¥ひと/か」/と/ぞ¥いひ/ける。¥もりつぎ¥かさね/て、「¥きみ/の¥ご=おん/に¥あき−みち/て、¥なん/の¥ふそく¥あつ/て/か、¥こつじき/を/ば¥す/べき。¥さいふわ¥ひと=ども/こそ、¥いせの−くに¥すずかやま/にて¥やまだち−し、¥さいし/を/も¥はぐくみ、¥わが−み/も¥しよじう/も、¥すぎ/ける/と/は¥きき/しか」/と¥いひ/けれ/ば、¥かねこの−じふらう¥すすみ−いで/て、「¥せん−ない¥との=ばら/の¥ざふごん/かな。¥われ/も¥ひと/も¥そらごと¥いひ−つけ、¥ざふごん−せ/ん/に、¥たれ/かは¥おとる/べき。¥こぞ/の¥はる、¥つの−くに¥いちのたに/にて、¥むさし¥さがみ/の¥わか=との=ばら/の、¥てなみ/の/ほど/を/ば¥み/て/ん/ものを」/と¥いふ¥ところ/に、¥おとと/の¥よいち、¥そば/に¥あり/ける/が、¥いはせ/も¥はて/ず、¥じふに−そく−みつ−ぶせ¥とつ/て¥つがひ、¥よつぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥じらう−びやうゑ/が¥よろひ/の¥むないた/に、¥うら¥かく/ほど/に/ぞ¥たつ/たり/ける。¥さて/こそ¥たがひ/の¥ことば−だたかひ/は¥やみ/に/けれ。¥
のと=どの、「¥ふな−いくさ/は¥やう¥ある¥もの/ぞ」/とて、¥よろひ−びたたれ/を/ば¥き¥たまは/ず、¥からまきぞめ/の¥こそで/に、¥からあや−をどし/の−よろひ¥き/て、¥いかもの−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる、¥たかうすべう/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ/を¥もち¥たまへ/り。¥わうじやういち/の¥つよゆみ−せいびやう/なり/けれ/ば、¥のと=どの/のP260¥や−さき/に¥まはる¥もの、¥いち−にん/も¥い−おとさ/れ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥なか/に/も¥げんじ/の¥たいしやうぐん、¥くらう−よしつね/を、¥ただ¥ひとや/に¥い−おとさ/ん/と、¥ねらは/れ/けれ/ども、¥げんじ/の¥かた/に/も¥こころ−え/て、¥いせの−さぶらう−よしもり、¥あうしう/の−さとう−さぶらう−びやうゑ−つぎのぶ、¥おなじき−しらう−びやうゑ−ただのぶ、¥えだの−げんざう、¥くまゐ−たらう、¥むさし−ばう−べんけい/など¥いふ、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの=ども、¥むま/の¥かしら/を¥いちめん/に¥たて−ならべ/て、¥たいしやうぐん/の¥やおもて/に¥はせ−ふさがり/けれ/ば、¥のと=どの/も¥ちから¥および¥たまは/ず。¥のと=どの、「¥そこ¥のき¥さふらへ、¥やおもて/の¥ざふにん=ばら」/とて、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥い¥たまへ/ば、¥やには/に¥よろひ−むしや¥じつき/ばかり¥い−おとさ/る。¥なか/に/も¥まつさき/に¥すすん/だる¥あうしう/の−さとう−さぶらう−びやうゑ−つぎのぶ/は、¥ゆんで/の¥かた/より¥めて/の¥わき/へ、¥つと¥い−ぬか/れ/て、¥しばし/も¥たまら/ず、¥むま/より¥さかさま/に¥どうど¥おつ。¥のと=どの/の¥わらは/に、¥きくわうまる/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥もよぎ−をどし/の−はらまき/に、¥さんまい−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥うちもの/の¥さや/を¥はづい/て、¥つぎのぶ/が¥くび/を¥とら/ん/と、¥とん/で¥かかる/を、¥ただのぶ¥そば/に¥あり/ける/が、¥あに/が¥くび/を¥とら/せ/じ/と、¥よつぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥きくわうまる/が¥くさずり/の¥はづれ/を、¥あなた/へ、¥つと¥い−ぬか/れ/て、¥いぬゐ/に¥たふれ/ぬ。¥のと=どの¥これ/を¥み¥たまひ/て、¥ひだん/の¥て/に/は¥ゆみ/を¥もち/ながら、¥みぎ/の¥て/にて、¥きくわうまる/を¥つかん/で、¥ふね/へ¥からり/と¥なげ−いれ¥たまふ。¥かたき/に¥くび/は¥とら/れ/ね/ども、¥いたで/なれ/ば¥しに/に/けり。¥この¥わらは/と¥まうす/は、¥もと/は¥ゑちぜんの−さんみ−みちもりの−きやう/の¥わらは/なり。¥しかる/を¥さんみ¥うた/れ¥たまひ/て¥のち、¥おとと¥のと=どの/に/ぞ¥つかは/れ/ける。¥しやうねん¥じふはつさい/と/ぞ¥きこえ/し。¥のと=どの¥この¥わらは/を¥うた/せ/て、¥あまり/に¥あはれ/に¥おもは/れ/けれ/ば、¥その−のち/は¥いくさ/を/も¥し¥たまは/ず。P261¥はうぐわん/は、¥つぎのぶ/を¥ぢん/の¥うしろ/へ¥かき−いれ/させ、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥て/を¥とつ/て、「¥いかが¥おぼゆる、¥さぶらう−びやうゑ」/と¥のたまへ/ば、「¥いま/は¥かう/に/こそ¥さふらへ」。「¥この−よ/に¥おもひ−おく¥こと/は¥なき/か」/と¥のたまへ/ば、「¥べつ/に¥なにごと/を/か¥おもひ−おき¥さふらふ/べき。¥さ/は¥さふらへ/ども、¥きみ/の¥おん=よ/に¥わたら/せ¥たまふ/を¥み¥まゐらせ/ず/して、¥しに¥さふらふ/こそ¥こころ/に¥かかり¥さふらへ。¥さ¥さふらは/で/は、¥ゆみ−や−とり/は、¥かたき/の¥や/に¥あたつ/て¥しぬる¥こと、¥もと/より¥ごする¥ところ/で/こそ¥さふらへ。¥なかんづく¥げんぺい/の¥ご=かつせん/に、¥あうしう/の−さとう−さぶらう−びやうゑ−つぎのぶ/と¥いひ/けん¥もの、¥さぬきの−くに¥やしま/の−いそ/にて、¥しゆ/の¥おん=いのち/に¥かはり/て、¥うた/れ/たり/など、¥まつだい/まで/の¥ものがたり/に、¥まうさ/れ/ん/こそ、¥こんじやう/の¥めんばく、¥めいど/の¥おもひで/にて¥さふらへ」/とて、¥ただ¥よわり/に/ぞ¥よわり/ける。¥はうぐわん/は¥たけき¥もののふ/なれ/ども、¥あまり/に¥あはれ/に¥おもひ¥たまひ/て、¥よろひ/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と/ぞ¥なか/れ/ける。「¥もし¥この¥へん/に¥たつとき¥そう/や¥ある」/とて、¥たずね−いださ/せ、「¥て−おひ/の¥ただいま¥しに¥さふらふ/に、¥いちにち¥ぎやう¥かい/て¥とぶらひ¥たまへ」/とて、¥くろき¥むま/の¥ふとう¥たくましき/に、¥よい¥くら¥おい/て、¥かの¥そう/に/ぞ¥たび/に/ける。¥この¥むま/は、¥はうぐわん¥ごゐ/の−じよう/に¥なら/れ/し¥とき、¥これ/を/も¥ごゐ/に¥なし/て、¥たいふぐろ/と¥よば/れ/し¥むま/なり。¥いちのたに/の¥うしろ、¥ひよどりごえ/を/も、¥この¥むま/にて/ぞ¥おとさ/れ/ける。¥おとと¥ただのぶ/を¥はじめ/と/して、¥これ/を¥みる¥さぶらひ=ども、¥みな¥なみだ/を¥ながし/て、「¥この¥きみ/の¥おん=ため/に、¥いのち/を¥うしなは/ん¥こと/は、¥まつたく¥つゆ¥ちり/ほど/も¥をしから/ず」/と/ぞ¥まうし/ける。P262
「なすのよいち」(『なすのよいち』)S1104¥さる−ほど/に¥あは¥さぬき/に¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/を¥まち/ける¥つはもの=ども、¥あそこ/の¥みね、¥ここ/の¥ほら/より、¥じふしごき¥にじつき、¥うち−つれ−うち−つれ¥はせ−きたる/ほど/に、¥はうぐわん¥ほど−なく¥さんびやく−よ−き/に¥なり¥たまひ/ぬ。「¥けふ/は¥ひ¥くれ/ぬ、¥しようぶ/を¥けつす/べから/ず」/とて、¥げんぺい¥たがひ/に¥ひき−しりぞく¥ところ/に、¥おき/より¥じんじやう/に¥かざつ/たる¥こ−ぶね¥いつそう、¥みぎは/へ¥むい/て¥こぎ−よせ、¥なぎさ/より¥しちはつたん/ばかり/に/も¥なり/しか/ば、¥ふね/を¥よこさま/に¥なす。「¥あれ/は¥いか/に」/と¥みる¥ところ/に、¥ふね/の¥うち/より¥とし/の−よはひ¥じふはつく/ばかん/なる¥にようばう/の、¥やなぎ/の¥いつつぎぬ/に、¥くれなゐ/の¥はかま¥き/たる/が、¥みな−ぐれなゐ/の¥あふぎ/の、¥ひ¥いだし/たる/を、¥ふね/の¥せがい/に¥はさみ−たて、¥くが/へ¥むい/て/ぞ¥まねき/ける。¥はうぐわん¥ごとう−びやうゑ−さねもと/を¥めし/て、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、「¥いよ/と/に/こそ¥さふらふ/らめ。¥ただし¥たいしやうぐん/の¥やおもて/に¥すすん/で、¥けいせい/を¥ごらんぜ/られ/ん¥ところ/を、¥てだれ/に¥ねらう/て¥い−おとせ/と/の¥はかりごと/と/こそ¥ぞんじ¥さふらへ。¥さり/ながら¥あふぎ/を/ば、¥い/させ/らる/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん、「¥み=かた/に¥いつ/べき¥じん/は、¥たれ/か¥ある」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥てだれ=ども¥おほう¥さふらふ¥なか/に、¥しもづけの−くに/の¥ぢうにん、¥なすの−たらう−すけたか/が¥こ/に、¥よいち−むねたか/こそ、¥こひやう/で/は¥さふらへ/ども、¥て/は¥きい/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥はうぐわんP263、「¥しようこ/が¥ある/か」。「¥さん−ざふらふ。¥かけどり/など/を¥あらそう/て、¥みつ/に¥ふたつ/は、¥かならず¥い−おとし¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん、「¥さら/ば、¥よいち¥よべ」/とて¥めさ/れ/けり。¥よいち¥その−ころ/は、¥いまだ¥はたち/ばかん/の¥をのこ/なり。¥かち/に、¥あかぢ/の−にしき/を¥もつて、¥おほくび¥はたそで¥いろへ/たる¥ひたたれ/に、¥もよぎ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥あしじろ/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥うすぎりふ/に、¥たか/の−は¥わり−あはせ/て、¥はひ/だり/ける、¥ぬため/の−かぶら/を/ぞ¥さし−そへ/たる。¥しげどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で¥たかひも/に¥かけ、¥はうぐわん/の¥おん=まへ/に¥かしこまる。¥はうぐわん、「¥いか/に¥よいち、¥あの¥あふぎ/の¥まんなか¥い/て、¥かたき/に¥けんぶつ−せ/させよ/かし」/と¥のたまへ/ば、¥よいち、「¥つかまつ/と/も¥ぞんじ¥さふらは/ず。¥これ/を¥い−そんずる¥もの/なら/ば、¥ながき¥み=かた/の¥おん=ゆみ−や/の¥きず/にて¥さふらふ/べし。¥いちぢやう¥つかまつら/うずる¥じん/に、¥おほせ−つけ/らる/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん¥おほき/に¥いかつ/て、「¥こんど¥かまくら/を¥たつ/て、¥さいこく/へ¥むかは/んずる¥もの=ども/は、¥みな¥よしつね/が¥げぢ/を¥そむく/べから/ず。¥それ/に¥すこし/も¥しさい/を¥ぞんぜ/ん¥ひとびと/は、¥これ/より¥とうとう¥かまくら/へ¥かへら/る/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥よいち¥かさね/て¥じせ/ば、¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、「¥さ¥さふらは/ば、¥はづれ/ん/を/ば¥ぞんじ¥さふらは/ず、¥ご=ぢやう/で¥さふらへ/ば、¥つかまつ/て/こそ¥み¥さふらは/め」/とて、¥おん=まへ/を¥まかり−たち、¥くろき¥むま/の¥ふとう¥たくましき/に、¥まろぼや¥すつ/たる¥きんぷくりん/の¥くら¥おい/て¥のつ/たり/ける/が、¥ゆみ¥とり−なほし、¥たづな¥かい−くつ/て、¥みぎは/へ¥むい/て/ぞ¥あゆま/せ/ける。¥み=かた/の¥つはもの=ども、¥よいち/が¥うしろ/を¥はるか/に¥み−おくつ/て、「¥この¥わかもの、¥いちぢやう¥つかまつら/うずる/と、¥おぼえ¥さふらふ」/とP264¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん/も¥たのもし=げ/に/ぞ¥み¥たまひ/ける。¥やごろ¥すこし¥とほかり/けれ/ば、¥うみ/の¥なか¥いつたん/ばかり¥うち−いれ/たり/けれ/ども、¥なほ¥あふぎ/の¥あはひ/は、¥しちたん/ばかり/も¥ある/らん/と/こそ¥みえ/たり/けれ。¥ころ/は¥にんぐわつ−じふはちにち¥とり/の−こく/ばかん/の¥こと/なる/に、¥をりふし¥きたかぜ¥はげしう¥ふき/けれ/ば、¥いそ¥うつ¥なみ/も¥たかかり/けり。¥ふね/は¥ゆり−あげ¥ゆり−すゑ¥ただよへ/ば、¥あふぎ/も¥くし/に¥さだまら/ず、¥ひらめい/たり。¥おき/に/は¥へいけ¥ふね/を¥いちめん/に¥ならべ/て¥けんぶつ−す。¥くが/に/は¥げんじ¥くつばみ/を¥ならべ/て¥これ/を¥みる。¥いづれ/も−いづれ/も¥はれ/なら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥よいち¥め/を¥ふさい/で、「¥なむ−はちまん−だい−ぼさつ、¥べつし/て/は¥わが¥くに/の¥しんめい、¥につくわう/の−ごんげん、¥うつのみや、¥なす/の−ゆぜん−だい−みやうじん、¥ねがは−く/は、¥あの¥あふぎ/の¥まんなか¥い/させ/て¥たば/せ¥たまへ。¥これ/を¥い−そんずる¥もの/なら/ば、¥ゆみ¥きり−をり¥じがい−し/て、¥ひと/に¥ふたたび¥おもて/を¥むかふ/べから/ず。¥いま−いちど¥ほんごく/へ¥かへさ/ん/と¥おぼしめさ/ば、¥この¥や¥はづさ/せ¥たまふ/な」/と、¥こころ/の¥うち/に¥きねん−し/て、¥め/を¥み−ひらい/たれ/ば、¥かぜ/も¥すこし¥ふき−よわつ/て、¥あふぎ/も¥い−よ=げ/に/こそ¥なつ/たり/けれ。¥よいち¥かぶら/を¥とつ/て¥つがひ、¥よつぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥こひやう/と¥いふ¥でう、¥じふに−そく−みつ−ぶせ、¥ゆみ/は¥つよし、¥かぶら/は¥うら−ひびく/ほど/に¥ながなり/して、¥あやまた/ず¥あふぎ/の¥かなめ−ぎは、¥いつすん/ばかり¥おい/て、¥ひいふつ/と/ぞ¥い−きつ/たる。¥かぶら/は¥うみ/へ¥いり/けれ/ば、¥あふぎ/は¥そら/へ/ぞ¥あがり/ける。¥はるかぜ/に¥ひともみ¥ふたもみ¥もま/れ/て、¥うみ/へ¥さつと/ぞ¥ちつ/たり/ける。¥みな−ぐれなゐ/の¥あふぎ/の、¥ゆふひ/の¥かかやく/に、¥しらなみ/の¥うへ/に¥ただよひ、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ¥ゆら/れ/ける/を、¥おき/に/は¥へいけ¥ふなばた/を¥たたい/て¥かんじ/たり。P265¥くが/に/は¥げんじ¥えびら/を¥たたい/て、¥どよめき/けり。¥
「ゆみながし」(『ゆみながし』)S1105¥あまり/の¥おもしろ−さ/に、¥かん/に¥たへ/ず/や¥おもひ/けん、¥ふね/の¥うち/より、¥とし/の−よはひ¥ごじふ/ばかん/なる¥をのこ/の、¥くろかは−をどし/の−よろひ¥き/たる/が、¥しらえ/の−なぎなた¥つゑ/に¥つき、¥あふぎ¥たて/たる¥ところ/に¥たつ/て、¥まひ−すまし/たり。¥いせの−さぶらう−よしもり、¥よいち/が¥うしろ/に¥あゆま/せ−よつ/て、「¥ご=ぢやう/で¥ある/ぞ。¥これ/を/も¥また¥つかまつれ」/と¥いひ/けれ/ば、¥よいち¥こんど/は¥なかざし¥とつ/て¥つがひ、¥よつぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥まひ−すまし/たる¥をのこ/の、¥まつただなか/を、¥ひやうつば/と¥い/て、¥ふなぞこ/へ¥まつさかさま/に¥い−たふす。「¥ああ¥い/たり」/と¥いふ¥もの/も¥あり、「¥いやいや¥なさけ−なし」/と¥いふ¥もの/も¥おほかり/けり。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥しづまり−かへつ/て¥おと/も¥せ/ず、¥げんじ/は¥また¥えびら/を¥たたい/て、¥どよめき/けり。¥へいけ¥これ/を¥ほい−なし/と/や¥おもひ/けん、¥ゆみ¥もつ/て¥いち−にん、¥たて¥つい/て¥いち−にん、¥なぎなた¥もつ/て¥いち−にん、¥むしや¥さん−にん¥なぎさ/に¥あがり、「¥げんじ¥ここ/を¥よせよ/や」/と/ぞ¥まねき/ける。¥はうぐわん、「¥やすから/ぬ¥こと/なり。¥むま−づよ/なら/ん¥わかたう=ども、¥はせ−よせ/て¥け−ちらせ」/と¥のたまへ/ば、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥みをのやの−じふらう、¥おなじき−しらう、¥おなじき−とうじち、¥かうづけの−くに/の¥ぢうにん、¥にふの−しらうP266、¥しなのの−くに/の¥ぢうにん、¥きその−ちうじ、¥ごき¥つれ/て、¥をめい/て¥かく。¥まづ¥たて/の¥かげ/より、¥ぬりの/に¥くろぼろ¥はい/だる¥だい/の−や/を¥もつ/て、¥まつさき/に¥すすん/だる、¥みをのやの−じふらう/が、¥むま/の¥ひだん/の¥むながい−づくし/を、¥はず/の¥かくるる/ほど/に/ぞ¥い−こう/だる。¥びやうぶ/を¥かへす¥やう/に、¥むま/は¥どうど¥たふるれ/ば、¥ぬし/は¥ゆんで/の¥あし/を¥こえ、¥めて/の¥かた/へ¥おり−たつ/て、¥やがて¥たち/を/ぞ¥ぬい/たり/ける。¥また¥たて/の¥かげ/より、¥おほ−なぎなた¥うち−ふつ/て¥かかり/けれ/ば、¥みをのやの−じふらう、¥こだち¥おほ−なぎなた/に¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥かい−ふい/て¥にげ/けれ/ば、¥やがて¥つづい/て¥おつ−かけ/たり。¥なぎなた/にて¥なが/んずる/か/と¥みる¥ところ/に、¥さ/は¥なく/して、¥なぎなた/を/ば¥ゆんで/の¥わき/に¥かい−はさみ、¥めて/の¥て/を¥さし−のべ/て、¥みをのやの−じふらう/が¥かぶと/の¥しころ/を¥つかま/う/ど¥す。¥つかま/れ/じ/と¥にぐる。¥さんど¥つかみ−はづい/て、¥しど/の¥たび、¥むず/と¥つかむ。¥しばし/ぞ¥たまつ/て¥みえ/し。¥はちつけ/の¥いた/より、¥ふつと¥ひつ−きつ/て/ぞ¥にげ/たり/ける。¥のこり¥しき/は、¥むま/を¥をしう/で¥かけ/ず、¥けんぶつ−し/て/ぞ¥ゐ/たり/ける。¥みをのやの−じふらう/は、¥み=かた/の¥むま/の¥かげ/に¥にげ−いつ/て、¥いき¥つぎ−ゐ/たり。¥かたき/は¥おう/て/も¥こ/ず。¥その−のち¥かぶと/の¥しころ/を/ば、¥なぎなた/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥とほから/ん¥もの/は¥おと/に/も¥きけ、¥ちかく/は¥め/に/も¥み¥たまへ。¥これ/こそ¥きやう−わらんべ/の¥よぶ/なる、¥かづさ/の−あく−しち−びやうゑ−かげきよ/よ」/と¥なのり−すて/て、¥み=かた/の¥たて/の¥かげ/へ/ぞ¥のき/に/ける。¥
へいけ¥これ/に¥すこし¥ここち/を¥なほい/て、「¥あく−しち−びやうゑ¥うた/す/な、¥もの=ども、¥かげきよ¥うた/す/な、¥つづけ/や」/とて、¥にひやく−よ−にん¥なぎさ/に¥あがり、¥たて/を¥めんどりば/に¥つき−ならべ、「¥げんじ¥ここ/をP267¥よせよ/や」/と/ぞ¥まねい/たる。¥はうぐわん¥やすから/ぬ¥こと/なり/とて、¥たしろの−くわんじや/を¥まへ/に¥たて、¥ごとう−びやうゑ−ふし、¥かねこ−きやうだい/を¥ゆんで¥めて/に¥なし、¥いせの−さぶらう/を¥うしろ/と/して、¥はうぐわん¥はちじふ−よ−き¥をめい/て¥さき/を¥かけ¥たまへ/ば、¥へいけ/の¥かた/に/は、¥むま/に¥のつ/たる¥せい/は¥すくなし、¥たいりやく¥かち−むしや/なり/けれ/ば、¥むま/に¥あて/られ/じ/と/や¥おもひ/けん、¥しばし/も¥たまら/ず¥ひき−しりぞき、¥みな¥ふね/に/ぞ¥のり/に/ける。¥たて/は¥さん/を¥ちらし/たる¥やう/に、¥さんざん/に¥け−ちらさ/る。¥げんじ¥かつ/に¥のつ/て、¥むま/の¥ふとばら¥つかる/ほど/に、¥うち−いれ−うち−いれ¥せめ−たたかふ。¥ふね/の¥うち/より¥くまで¥ないがま/を¥もつ/て、¥はうぐわん/の¥かぶと/の¥しころ/に、¥からりからり/と¥うち−かけ−うち−かけ、¥にさんど¥し/けれ/ども¥み=かた/の¥つはもの=ども、¥たち¥なぎなた/の¥さき/にて、¥うち−はらひ−うち−はらひ¥せめ−たたかふ。¥され/ども¥いかが/は¥し¥たまひ/たり/けん、¥はうぐわん¥ゆみ/を¥とり−おとさ/れ/ぬ。¥うつぶし、¥むち/を¥もつて¥かき−よせ、¥とら/ん−とら/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥み=かた/の¥つはもの=ども、「¥ただ¥すて/させ¥たまへ¥すて/させ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ども、¥つひに¥とつ/て、¥わらう/て/ぞ¥かへら/れ/ける。¥おとな=ども/は、¥みな¥つまはじき/を/して、「¥たとひ¥せんびき¥まんびき/に、¥かへ/させ¥たまふ/べき¥おん=だらし/なり/と¥まうす/とも、¥いかで/か¥おん=いのち/に/は、¥かへ/させ¥たまふ/べき/か」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん、「¥ゆみ/の¥をし−さ/に/も、¥とら/ば/こそ。¥よしつね/が¥ゆみ/と¥いは/ば、¥ににん/して/も¥はり、¥もしは¥さん−にん/して/も¥はり、¥をぢ¥ためとも/など/が¥ゆみ/の¥やう/なら¥ば、¥わざと/も¥おとい/て¥とら/す/べし。¥わうじやく/たる¥ゆみ/を、¥かたき/の¥とり−もつ/て、¥これ/こそ¥げんじ/の¥たいしやうぐん、¥くらう−よしつね/が¥ゆみ/よ/など、¥てうろう−ぜ/られ/ん/が¥くちをし−さ/に、¥いのち/に¥かへ/て¥とつ/たる/ぞ/かし」/と¥のたまへ/ば、¥みな¥また¥これ/を/ぞP268¥かんじ/ける。¥いちにち¥たたかひ−くらし¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥へいけ/の¥ふね/は¥おき/に¥うかび、¥げんじ/は¥くが/に¥うち−あがつ/て、¥むれ¥たかまつ/の¥なか/なる¥のやま/に、¥ぢん/を/ぞ¥とつ/たり/ける。¥げんじ/の¥つはもの=ども/は、¥この¥みつか/が¥あひだ/は¥ね/ざり/けり。¥をととひ¥つの−くに¥わたなべ、¥ふくしま/を¥いづる/とて、¥おほ−かぜ¥おほ−なみ/に¥ゆら/れ/て、¥まどろま/ず、¥きのふ¥あはの−くに¥かつうら/に¥つい/て¥いくさ−し、¥よ/も−すがら¥なかやま¥こえ、¥けふ¥また¥いちにち¥たたかひ−くらし/たり/けれ/ば、¥ひと/も¥むま/も¥みな¥つかれ−はて/て、¥あるひは¥かぶと/を¥まくら/に¥し、¥あるひは¥よろひ/の¥そで、¥えびら/など/を¥まくら/と/して、¥ぜんご/も¥しら/ず/ぞ¥ふし/に/ける。¥され/ども¥その¥なか/に、¥はうぐわん/と¥いせの−さぶらう/は¥ね/ざり/けり。¥はうぐわん/は¥たかき¥ところ/に¥うち−あがつ/て、¥かたき/や¥よす/と¥とほみ−し¥たまふ。¥いせの−さぶらう/は、¥くぼき¥ところ/に¥かくれ−ゐ/て、¥かたき¥よせ/ば、¥まづ¥むま/の¥ふとばら¥い/ん/とて¥まち−かけ/たり。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥のと=どの/を¥たいしやうぐん/と/して、¥その¥よ¥ようち/に¥せ/ん/と、¥したく−せ/られ/たり/けれ/ども、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ/と、¥えみの−じらう/が、¥せんぢん/を¥あらそふ/ほど/に、¥その¥よ/も¥むなしく¥あけ/に/けり。¥よせ/たり¥せ/ば、¥げんじ¥なじか/は¥たまる/べき、¥よせ/ざり/ける/こそ、¥せめて/の¥うん/の¥きはめ/なれ。P269
「しどかつせん」(『しどかつせん』)S1106¥あけ/けれ/ば、¥へいけ/は¥たう−ごく¥しど/の−うら/へ¥こぎ−しりぞく。¥はうぐわん¥はちじふ−よ−き、¥しど/へ¥おう/て/ぞ¥かか/られ/ける。¥へいけ¥これ/を¥み/て、「¥げんじ/は¥こぜい/なり/ける/ぞ。¥なか/に¥とり−こめ/て¥うて/や」/とて、¥せん−よ−にん¥なぎさ/に¥あがり、¥げんじ/を¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥さる−ほど/に¥やしま/に¥のこり−とどまつ/たる¥にひやく−よ−き/の¥せい=ども、¥おくれ−ばせ/に¥はせ−きたる。¥へいけ¥これ/を¥み/て、「¥あはや¥げんじ/の¥おほぜい/の¥つづい/たる/は。¥なんじふまんぎ/が¥ある/らん、¥とり−こめ/られ/て/は¥かなふ/べから/ず」/とて¥ひき−しりぞき、¥みな¥ふね/に/ぞ¥のり/に/ける。¥しほ/に¥ひか/れ、¥かぜ/に¥まかせ/て、¥いづち/を¥さす/と/も¥なく、¥ゆら/れ−ゆく/こそ¥かなしけれ。¥しこく/を/ば¥くらう−たいふ/の−はうぐわん¥せめ−おとさ/れ/ぬ。¥くこく/へ/は¥いれ/られ/ず、¥ただ¥ちうう/の−しゆじやう/と/ぞ¥みえ/し。¥はうぐわん/は¥しど/の−うら/に¥おり−ゐ/て、¥くび=ども/の¥じつけん−し/て¥おはし/ける/が、¥いせの−さぶらう−よしもり/を¥めし/て、「¥あはの−みんぶ−しげよし/が¥ちやくし、¥でんない−ざゑもん−のりよし、¥いよ/の¥かはのの−しらう/が、¥めせ/ども¥まゐら/ぬ/を¥せめ/ん/とて、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥いよ/へ¥こえ/たり/ける/が、¥かはの/を/ば¥うち−もらし/ぬ。¥いへのこ−らうどう¥ひやくごじふにん/が¥くび¥きつ/て、¥やしま/の−だいり/へ¥まゐらせ/たる/がP270、¥けふ¥これ/へ¥つく/と¥きく。¥なんぢ¥ゆき−むかつ/て、¥こしらへ/て¥みよ」/と¥のたまへ/ば、¥よしもり¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥しらはた¥ひとながれ¥たまはつ/て¥さす¥まま/に、¥てぜい¥じふろくき、¥みな¥しらしやうぞく/に¥いで−たつ/て、¥はせ−むかふ。¥
さる−ほど/に¥いせの−さぶらう、¥でんない−ざゑもん¥ゆき−あう/たり。¥あはひ¥いつちやう/ばかり/を¥へだて/て、¥たがひ/に¥あかはた¥しらはた¥うつ−たて/たり。¥よしもり、¥のりよし/が¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥かつ¥きこしめさ/れ/て/も/や¥さふらふ/らん、¥かまくら=どの/の¥おん=おとと、¥くらう−たいふ/の−はうぐわん=どの/こそ、¥へいけ−つゐたう/の¥ゐんぜん/を¥うけたまはつ/て、¥さいこく/へ¥むかは/せ¥たまひ/て¥さふらふ。¥その¥み=うち/に、¥いせの−さぶらう−よしもり/と¥まうす¥もの/にて¥さふらふ/が、¥いくさ−かつせん/の¥れう/で¥さふらは/ね/ば、¥もののぐ/を/も¥し¥さふらは/ず、¥きうせん/を/も¥たいし¥さふらは/ず。¥たいしやう/に¥まうす/べき¥こと¥あつ/て、¥これ/まで¥まかり−むかつ/て¥さふらふ/ぞ。¥あけ/て¥いれ/させ¥たまへ」/と¥いひ−おくつ/たり/けれ/ば、¥さんぜん−よ−き/の¥つはもの=ども、¥みな¥なか/を¥あけ/て/ぞ¥とほし/ける。¥いせの−さぶらう、¥でんない−ざゑもん/に¥うち−ならべ/て¥いひ/ける/は、「¥かつ¥きき¥たまひ/て/も¥さふらふ/らん。¥かまくら=どの/の¥おん=おとと、¥くらう−たいふ/の−はうぐわん=どの/こそ、¥へいけ−つゐたう/の¥ため/に、¥これ/まで¥むかは/せ¥たまひ/て¥さふらふ/が、¥をととひ¥あはの−くに¥かつうら/に¥つい/て、¥ご=へん/の¥をぢ、¥さくらばの−すけ=どの¥うつ−とり、¥きのふ¥やしま/に¥つい/て¥いくさ−し、¥ごしよ¥だいり¥みな¥やき−はらひ、¥しゆしやう/は¥うみ/へ¥いら/せ¥たまひ/ぬ。¥おほい=との−ふし/を/ば、¥いけどり/に¥し¥まゐらせ/て¥さふらふ。¥のと=どの/も¥おん=じがい、¥その−ほか/の¥ひとびと/は、¥あるひは、¥おん=じがい、¥あるひは¥うみ/へ¥いら/せ¥たまふ。¥よたう/の¥せうせう¥のこつ/たる/を/ば、¥けさ¥しど/の−うら/にて¥みな¥うつ−とり¥さふらひ/ぬ。¥ご=へん/の¥ちち¥あはの−みんぶ=どの/は、¥かうにん/に¥まゐらせ¥たまひ/て¥さふらふ/を、P271¥よしもり/が¥あづかり¥たてまつ/て¥さふらふ/が、『¥あな¥むざん、¥でんない−ざゑもん−のりよし/が、¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しら/ず/して、¥あす/は¥いくさ−し/て¥うた/れ/んずる¥こと/の¥むざん−さ/よ』/と、¥よ/も−すがら¥なげき¥たまふ/が¥いたはし−さ/に、¥つげ−しらせ¥まゐらせ/ん/が¥ため/に、¥これ/まで¥まかり−むかつ/て¥さふらふ/ぞ。¥いま/は¥いくさ−し/て¥うた/れ¥たまは/ん/とも、¥また¥かぶと/を¥ぬぎ¥ゆみ/の¥つる/を¥はづし、¥かうにん/に¥まゐつ/て、¥ちち/を¥いま−いちど¥み¥たまは/ん/とも、¥と/も−かう/も¥ご=へん/の¥おん=ぱからひ/ぞ」/と¥いひ/けれ/ば、¥でんない−ざゑもん、「¥かつ¥きく¥こと/に¥すこし/も¥たがは/ず」/とて、¥かぶと/を¥ぬぎ¥ゆみ/の¥つる/を¥はづし/て、¥かうにん/に¥まゐる。¥たいしやう¥かやう/に¥なる¥うへ/は、¥さんぜん−よ−き/の¥つはもの=ども/も、¥みな¥かく/の/ごとし。¥よしもり/が¥わづか¥じふろくき/に¥ぐせ/られ/て、¥おめおめ/と¥かうにん/に/こそ¥なり/に/けれ。¥よしもり¥でんない−ざゑもん/を¥あひ−ぐし/て、¥はうぐわん/の¥おん=まへ/に¥かしこまつ/て、¥この¥よし¥かくと¥まうし/けれ/ば、「¥よしもり/が¥はかりごと、¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/なれ/ども、¥しんべう/に/も¥つかまつ/たる/ものかな」/とて、¥やがて¥でんない−ざゑもん/を/ば、¥もののぐ¥めさ/れ/て、¥いせの−さぶらう/に¥あづけ/らる。「¥さて¥あの¥つはもの=ども/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、「¥ゑんごく/の¥もの=ども/は、¥たれ/を¥たれ/と/か¥おもひ¥まゐらせ¥さふらふ/べき。¥ただ¥よ/の¥らん/を¥しづめ/て、¥くに/を¥しろしめさ/れ/ん/を、¥しゆ/に¥し¥まゐらせ/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん、「¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし」/とて、¥さんぜん−よ−き/の¥つはもの=ども/を、¥みな¥わが¥せい/に/ぞ¥ぐせ/られ/ける。¥さる−ほど/に¥わたなべ¥ふくしま¥りやうしよ/に、¥のこり−とどまつ/たり/ける¥にひやく−よ−そう/の¥ふね=ども、¥かぢはら/を¥さき/と/して、¥おなじき−にじふににち/の¥たつ/の−いつてん/に、¥やしま/の−いそ/に/ぞ¥つき/に/ける。「¥しこく/を/ばP272¥くらう−はうぐわん¥せめ−おとさ/れ/ぬ。¥いま/は¥なん/の¥よう/に/か¥あふ/べき。¥むゆか/の¥しやうぶ、¥ゑ/に¥あは/ぬ¥はな、¥いさかひ¥はて/て/の¥ちぎりき/かな」/と/ぞ¥わらは/れ/ける。¥はうぐわん¥やしま/へ¥わたり¥たまひ/て¥のち、¥すみよし/の−かんぬし−つもりの−ながもり、¥みやこ/へ¥のぼり¥ゐんざん−し/て、「¥さんぬる¥じふろくにち/の¥うし/の−こく/ばかり、¥たうしや/の¥だいさん/の¥じんでん/より、¥かぶらや/の¥こゑ¥いで/て、¥にし/を¥さし/て¥まかり¥さふらひ/ぬ」/と、¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥ぎよ=けん¥いげ、¥しゆじゆ/の¥じんぼう/を、¥ながもり/して¥すみよしの−だい−みやうじん/へ¥まゐらせ/らる。¥むかし¥じんぐうくわうごう、¥しんら/を¥せめ/させ¥たまひ/し¥とき、¥いせ−だい−じんぐう/より、¥にじん/の¥あらみさき/を¥さし−そへ/させ¥たまひ/けり。¥にじん¥おん=ふね/の¥ともへ/に¥たつ/て、¥しんら/を¥やすう¥せめ−したがへ/させ¥たまひ/けり。¥いこく/の¥いくさ/を¥しづめ/させ¥たまひ/て、¥きてう/の¥のち、¥いちじん/は¥つの−くに¥すみよし/の−こほり/に、¥とどまら/せ¥おはします。¥すみよし−だい−みやうじん¥これ/なり。¥いま¥いちじん/は、¥しなのの−くに¥すは/の−こほり/に¥あと/を¥たる。¥すはの−だい−みやうじん/の¥おん=こと/なり。「¥むかし/の¥せいばつ/の¥こと/を、¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまは/で、¥いま/も¥てう/の¥をんでき/を、¥ほろぼし¥たまふ/べき/に/や」/と、¥きみ/も¥しん/も¥たのもしう/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。¥
「だんのうらかつせん」(『とりあわせ だんのうらかつせん』)S1107¥さる−ほど/に¥はうぐわん¥やしま/の¥いくさ/に¥うち−かつ/て、¥すはう/の−ぢ/へ¥おし−わたり、¥あに/の¥みかはの−かみ/と¥ひとつ/にP273¥なる。¥へいけ/は¥ながとの−くに¥ひくしま/に¥つく/と¥きこえ/しか/ば、¥げんじ/も¥おなじ¥くに/の¥うち、¥おひつ/に¥つく/こそ¥ふしぎ/なれ。¥ここに¥きの−くに/の¥ぢうにん、¥くまのの−べつたう−たんぞう/は、¥へいけ¥ぢうおん/の¥み/なり/し/が、¥たちまち/に¥こころがはり−し/て、¥へいけ/へ/や¥まゐら/ん、¥げんじ/へ/や¥まゐら/ん/と¥おもひ/ける/が、¥まづ¥たなべ/の¥いまぐまの/に¥しち−にち¥さんろう−し、¥み=かぐら/を¥そうし/て、¥ごんげん/へ¥きせい¥まうし/けれ/ば、「¥ただ¥しらはた/に¥つけ」/と/の¥ご=たくせん¥あり/しか/ども、¥なほ¥うたがひ/を¥なし¥まゐらせ/て、¥しろき¥にはとり¥ななつ、¥あかき¥にはとり¥ななつ、¥これ/を¥もつて¥ごんげん/の¥おん=まへ/にて、¥しようぶ/を¥せ/させ/ける/に、¥あかき¥にはとり¥ひとつ/も¥かた/ず、¥みな¥まけ/て/ぞ¥にげ/に/ける。¥さて/こそ¥げんじ/へ¥まゐら/ん/と/は¥おもひ−さだめ/けれ。¥さる−ほど/に¥いちもん/の¥もの=ども¥あひ−もよほし、¥つがふ¥その¥せい¥にせん−よ−にん、¥にひやく−よ−そう/の¥ひやうせん/に¥とり−のり、¥にやくわうじ/の¥おん=しやうだい/を、¥ふね/に¥のせ¥まゐらせ、¥はた/の¥よこがみ/に/は、¥こんがうどうじ/を¥かき¥たてまつ/て、¥だんのうら/へ¥よする/を¥み/て、¥げんじ/も¥へいけ/も¥とも/に¥はいし¥たてまつる。¥され/ども¥この¥ふね¥げんじ/の¥かた/へ¥つき/けれ/ば、¥へいけ¥きよう¥さめ/て/ぞ¥みえ/られ/ける。¥また¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥かはのの−しらう−みちのぶ/も、¥ひやくごじつそう/の¥たいせん/に、¥のり−つれ/て¥こぎ−きたり、¥これ/も¥おなじう¥げんじ/の¥かた/へ¥つき/けれ/ば、¥へいけ¥いとど¥きよう¥さめ/て/ぞ¥おもは/れ/ける。¥げんじ/の¥せい/は¥かさなれ/ば、¥へいけ/の¥せい/は¥おち/ぞ¥ゆく。¥げんじ/の¥ふね/は¥さんぜん−よ−そう、¥へいけ/の¥ふね/は¥せん−よ−そう、¥たうせん¥せうせう¥あひ−まじれ/り。¥げんりやく−にねん−さんぐわつ−にじふしにち/の¥う/の−こく/に、¥ぶぜんの−くに¥たのうら、¥もんじ/の−せき、¥ながとの−くに¥だんのうら、¥あかま/が−せき/にて、¥げんぺい/の¥や−あはせ/と/ぞ¥さだめ/ける。¥その−ひ¥はうぐわん/と¥かぢはら/と、¥すでに¥どし−いくさ−せ/ん/とP274¥す。¥かぢはら¥すすみ−いで/て、「¥けふ/の¥せんぢん/を/ば、¥かげとき/に¥たび¥さふらへ/かし」。¥はうぐわん、「¥よしつね/が¥なく/ば/こそ」/と¥のたまへ/ば、¥かぢはら、「¥まさなう¥さふらふ。¥との/は¥たいしやうぐん/にて¥ましまし¥さふらふ/ものを」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん、「¥それ¥おもひ/も¥よら/ず、¥かまくら=どの/こそ¥たいしやうぐん/よ。¥よしつね/は¥いくさぶぎやう/を¥うけたまはつ/たる¥み/なれ/ば、¥ただ¥わ=どの=ばら/と¥おなじ¥こと/よ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥かぢはら、¥せんぢん/を¥しよまう−し−かね/て、「¥てんぜい¥この¥との/は、¥さぶらひ/の¥しゆ/に/は¥なり−がたし」/と/ぞ¥つぶやき/ける。¥はうぐわん、「¥わ=どの/は¥につぽん−いち/の¥をこ/の−もの/かな」/とて、¥たち/の¥つか/に¥て/を¥かけ¥たまへ/ば、¥かぢはら、「¥こ/は¥いか/に、¥かまくら=どの/より¥ほか、¥べつ/に¥しゆ/を/ば¥もち¥たてまつら/ぬ/ものを」/とて、¥これ/も¥おなじう¥たち/の¥つか/に¥て/を/ぞ¥かけ/ける。¥ちち/が¥けしき/を¥み/て、¥ちやくし/の¥げんだ−かげすゑ、¥じなん¥へいじ−かげたか、¥おなじき−さぶらう−かげいへ、¥おやこ¥しゆじう¥じふしごにん、¥うちもの/の¥さや/を¥はづい/て、¥ちち/と¥いつしよ/に¥より−あう/たり。¥はうぐわん/の¥けしき/を¥み¥たてまつ/て、¥いせの−さぶらう−よしもり、¥あうしう/の−さとう−しらう−びやうゑ−ただのぶ、¥えだの−げんざう、¥くまゐ−たらう、¥むさし−ばう−べんけい/など¥いふ、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの=ども、¥かぢはら/を¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥され/ども¥はうぐわん/に/は、¥みうら/の−すけ¥とり−つき¥たてまつり、¥かぢはら/に/は、¥とひの−じらう¥つかみ−つい/て、¥りやうにん¥て/を¥すつ/て¥まうし/ける/は、「¥これ−ほど/の¥おん=だいじ/を¥まへ/に¥かかへ/ながら、¥どし−いくさ−し¥たまひ/な/ば、¥へいけ/に¥せい¥つき¥さふらひ/な/んず。¥かつうは¥かまくら=どの/の¥かへり−きこしめさ/れ/んずる¥ところ/も、¥をんびん/なら/ず」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん¥しづまり¥たまひ/ぬ。¥かぢはら¥すすむ/に¥およば/ず。¥それ/より/して、¥かぢはら¥はうぐわん/を¥にくみ−そめ¥たてまつ/て、¥ざんげん−し/て¥つひにP275¥うしなひ¥たてまつ/たり/と/ぞ、¥のち/に/は¥きこえ/し。¥さる−ほど/に¥げんぺい¥りやうばう¥ぢん/を¥あはす。¥ぢん/の¥あはひ、¥うみ/の¥おもて¥わづか/に¥さんじふ−よ−ちやう/を/ぞ¥へだて/たる。¥もんじ、¥あかま、¥だんのうら/は、¥たぎり/て¥おつる¥しほ/なれ/ば、¥へいけ/の¥ふね/は¥こころ/なら/ず、¥しほ/に¥むかつ/て¥おし−おとさ/る。¥げんじ/の¥ふね/は¥おのづから、¥しほ/に¥おう/て/ぞ¥いで−きたる。¥おき/は¥しほ/の¥はやけれ/ば、¥みぎは/に¥つい/て、¥かぢはら¥かたき/の¥ふね/の¥ゆき−ちがふ/を、¥くまで/に¥かけ/て¥ひき−よせ、¥のり−うつり−のり−うつり、¥おやこ¥しゆじう¥じふしごにん、¥うちもの/の¥さや/を¥はづい/て、¥ともへ/に¥さんざん/に¥ない/で¥まはり、¥ぶんどり¥あまた¥し/て、¥その−ひ/の¥かうみやう/の¥いち/の−ふで/に/ぞ¥つき/に/ける。¥
「とほや」¥さる−ほど/に¥げんぺい¥りやうばう¥ぢん/を¥あはせ/て、¥とき/を¥つくる。¥かみ/は¥ぼんでん/まで/も¥きこえ、¥しも/は¥けんらうぢじん/も、¥おどろき¥たまふ/らん/と/ぞ¥おぼえ/たる。¥とき/の−こゑ/も¥しづまり/しか/ば、¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥ふね/の¥やかた/に¥すすみ−いで、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥てんぢく¥しんだん/に/も、¥につぽん¥わが¥てう/に/も、¥ならび−なき¥めいしやう¥ゆうし/と¥いへ/ども、¥うんめい¥つき/ぬれ/ば¥ちから¥およば/ず。¥され/ども¥な/こそ¥をしけれ。¥とうごく/の¥もの=ども/に¥よわ=げ¥みす/な。¥いつ/の¥ため/に/か¥いのち/を/ば¥をしむ/べき。¥いくさ¥よう¥せよ、¥もの=ども、¥ただ¥これ/のみ/ぞ¥おもふ¥こと/よ」/と¥のたまへ/ば、¥ひだの−さぶらう−ざゑもん−かげつねP276、¥おん=まへ/に¥さふらひ/ける/が、「¥これ¥うけたまはれ、¥さぶらひ=ども」/と/ぞ¥げぢ−し/ける。¥かづさの−あく−しち−びやうゑ¥すすみ−いで/て、「¥それ¥ばんどう−むしや/は、¥むま/の¥うへ/にて/こそ、¥くち/は¥きき¥さふらふ/とも、¥ふな−いくさ/を/ば¥いつ¥てうれん−し¥さふらふ/べき。¥たとへば¥うを/の¥き/に¥のぼつ/たる/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥いちいち/に¥とつ/て、¥うみ/に¥つけ/な/ん/ものを」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ¥すすみ−いで/て、「¥おなじう/は¥たいしやう/の¥げん−くらう/と¥くみ¥たまへ。¥くらう/は¥せい/の¥ちひさき¥をのこ/の、¥いろ/の¥しろかん/なる/が、¥むかば/の¥すこし¥さし−いで/て、¥こと/に¥しるかん/なる/ぞ。¥ただし¥よろひ−ひたたれ/を¥つね/に¥きかふ/なれ/ば、¥きつと¥み−わけ−がたかん/なり」/と/ぞ¥まうし/ける。¥あく−しち−びやうゑ¥かさね/て、「¥なんでふ¥その¥こ−くわんじや−め、¥たとひ¥こころ/こそ¥たけく/とも、¥なに/ほど/の¥こと/か¥ある/べき。¥しや¥かたわき/に¥はさん/で、¥うみ/に¥いれ/な/ん/ものを」/と/ぞ¥まうし/ける。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/は、¥かやう/に¥げぢ−し/たまひ/て¥のち、¥こ−ぶね/に¥のり、¥おほい=との/の¥おん=まへ/に¥おはし/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥み=かた/の¥つはもの=ども、¥けふ/は¥よう¥みえ¥さふらふ。¥ただし¥あはの−みんぶ−しげよし/ばかり/こそ、¥こころがはり−し/たる/と¥おぼえ¥さふらへ。¥かうべ/を¥はね¥さふらは/ばや」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥おほい=との、「¥さ/しも¥ほうこう/の¥もの/で¥ある/に、¥みえ/たる¥こと/も¥なく/して、¥いかで/か¥かうべ/を/ば¥はね/らる/べき。¥しげよし¥めせ」/とて¥めさ/れ/けり。¥しげよし¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥むくらんぢ/の−ひたたれ/に、¥あらひがはの−よろひ¥き/て、¥おん=まへ/に¥かしこまつ/て/ぞ¥さふらひ/ける。¥おほい=との、「¥いか/に¥しげよし/は、¥こころがはり−し/たる/か。¥けふ/は¥わるう¥みゆる/ぞ。¥しこく/の¥もの=ども/に、¥いくさ¥よう¥せよ/と¥げぢ−せよ。¥おくし/たん/な」/と¥のたまへ/ば、「¥なんでふ¥おくし¥さふらふ/べき」/とてP277、¥おん=まへ/を¥まかり−たつ。¥しん−ぢうなごん/は、¥たち/の¥つか¥くだけよ/と¥にぎる¥まま/に、「¥あつぱれ¥しげよし−め/が¥くび¥うち−おとさ/ばや」/と、¥おほい=との/の¥おん=かた/を、¥しきり/に¥み¥まゐら/させ¥たまへ/ども、¥おん=ゆるされ¥なけれ/ば、¥ちから¥および¥たまは/ず。¥さる−ほど/に¥へいけ/は¥せん−よ−そう/を¥みて/に¥つくる。¥まづ¥やまがの−ひやうどうじ−ひでとほ、¥ごひやく−よ−そう/で¥せんぢん/に¥こぎ−むかふ。¥まつうら−たう¥さんびやく−よ−そう/で、¥にぢん/に¥つづく。¥へいけ/の¥きんだち=たち、¥にひやく−よ−そう/で¥さんぢん/に¥つづき¥たまへ/り。¥なか/に/も¥やまがの−ひやうどうじ−ひでとほ/は、¥くこくいち/の¥つよゆみ−せいびやう/なり/けれ/ば、¥われ/ほど/こそ¥なけれ/ども、¥ふつうざま/の¥せいびやう¥ごひやくにん¥すぐつ/て、¥ふねぶね/の¥ともへ/に¥たて、¥かた/を¥いちめん/に¥ならべ/て、¥ごひやく/の¥や/を¥いちど/に¥はなつ。¥げんじ/の¥かた/に/も¥さんぜん−よ−そう/の¥ふね/なり/けれ/ば、¥せい/の¥かず¥さ/こそ/は¥おほかり/けめ/ども、¥あそこ−ここ/より¥い/ける/ほど/に、¥いづく/に¥せいびやう¥あり/と/も¥みえ/ざり/けり。¥なか/に/も¥たいしやうぐん−げん−くらう−よしつね/は、¥まつさき/に¥すすん/で¥たたかひ/ける/が、¥たて/も¥よろひ/も¥こらへ/ず/して、¥さんざん/に¥い−しらまさる。¥へいけ、¥み=かた¥かち/ぬ/とて、¥しきり/に¥せめ¥つづみ/を¥うつ/て、¥をめき−さけん/で¥せめ−たたかふ。¥
(『とほや』)S1108¥げんじ/の¥かた/に/は、¥わだの−こたらう−よしもり、¥ふね/に/は¥のら/ず¥むま/に¥うち−のり、¥あぶみ/の¥はな¥ふみ−そらし。¥へいけ/の¥せい/の¥なか/を、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥いる。¥もと/より¥せいびやう/の¥てきき/にて¥あり/けれ/ば、¥さんちやう/が¥うち/の¥もの/を/ば、¥はづさ/ず、¥つよう¥い/けり。¥なか/に/も¥ことに¥とほう¥い/たる/と¥おぼしき¥や/を、「¥その¥や¥たまはら/ん」/と/ぞ¥まねき/ける。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥この¥や/を¥ぬか/せ/て¥み¥たまへ/ば、¥しらの/に¥つる/の¥もとじろ、¥こう/の¥は¥わり−あはせ/て¥はい/だる¥や/の、¥じふさん−ぞく−みつ−ぶせ¥あり/ける/にP278、¥くつまき/より¥いつそく/ばかり¥おい/て、¥わだの−こたらう−たひらの−よしもり/と、¥うるし/にて/ぞ¥かき−つけ/たる。¥へいけ/の¥かた/に/も¥せいびやう¥おほし/と¥いへ/ども、¥さすが¥とほや¥いる¥じん/や¥なかり/けん。¥やや¥あつ/て¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥にゐの−きしらう−ちかきよ、¥この¥や/を¥たまはつ/て¥い−かへす。¥これ/も¥さんちやうよ/を、¥つと¥い−わたい/て、¥わだ/が¥うしろ¥いつたん/ばかり/に¥ひかへ/たる、¥みうらの−いしざこんの−たらう/が、¥ゆんで/の¥かひな/に、¥したたか/に/こそ¥たつ/たり/けれ。¥みうら/の¥ひと=ども¥より−あひ/て、「¥あな¥にく/や、¥わだの−こたらう/が、¥われ/ほど/の¥せいびやう¥なし/と¥こころ−え/て、¥はぢ¥かき/ぬる¥をかし−さ/よ」/と¥わらひ/けれ/ば、¥よしもり、¥やすから/ぬ¥こと/なり/とて、¥こんど/は¥こ−ぶね/に¥のつ/て¥こぎ−いだし、¥へいけ/の¥せい/の¥なか/を、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥い/けれ/ば、¥もの=ども¥おほく¥て−おひ¥い−ころさ/る。¥やや¥あつ/て¥おき/の¥かた/より、¥はうぐわん/の¥のり¥たまひ/たる¥ふね/に、¥しらの/の¥おほや/を¥ひとつ¥い−たて、¥これ/も¥わだ/が¥やう/に、「¥その¥や¥たまはら/ん」/と¥まねき/けり。¥はうぐわん¥この¥や/を¥ぬか/せ/て¥み¥たまへ/ば、¥しらの/に¥やまどり/の¥を/を¥もつて¥はい/だる¥や/の、¥じふし−そく−みつ−ぶせ¥あり/ける/に、¥くつまき/より¥いつそく/ばかり¥おい/て、¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥にゐの−きしらう−ちかきよ/と、¥うるし/にて/ぞ¥かき−つけ/たる。¥はうぐわん、¥ごとう−びやうゑ−さねもと/を¥めし/て、「¥み=かた/に¥この¥や¥いつ/べき¥じん/は¥たれ/か¥ある」/と¥のたまへ/ば、「¥かひ−げんじ/に、¥あさりの−よいち=どの/こそ、¥せいびやう/の¥てきき/にて¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん、「¥さら/ば¥よいち¥よべ」/とて¥めさ/れ/けり。¥あさりの−よいち¥いで−き/たり。¥はうぐわん、「¥いか/に¥よいち、¥この¥や¥ただいま¥おき/より¥い/て¥さふらふ/が、¥その¥や¥たまはら/ん/とP279¥まねき¥さふらふ。¥ご=へん¥い/られ¥さふらひ/な/ん/や」/と¥のたまへ/ば、「¥たまはつ/て¥み¥さふらは/ん」/とて、¥とつ/て¥つま−よつ/て、「¥これ/は¥の/が¥よわう¥さふらふ。¥やづか/も¥すこし¥みじかう¥さふらへ/ば、¥おなじう/は¥よしなり/が¥ぐそく/にて¥つかまつり¥さふらは/ん」/とて、¥ぬりの/に¥くろぼろ¥はい/だる¥だい/の¥や/の、¥わが¥おほで/に¥おし−にぎつ/て、¥じふご−そく−みつ−ぶせ¥あり/ける/を、¥ぬりごめどう/の−ゆみ/の、¥くしやく/ばかり¥あり/ける/に、¥とつ/て¥つがひ、¥よつぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥これ/も¥しちやう−よ/を、¥つと¥い−わたい/て、¥おほ−ふね/の¥へ/に¥たつ/たる、¥にゐの−きしらう−ちかきよ/が、¥まつただなか/を、¥ひやうつば/と¥い/て、¥ふなぞこ/へ¥まつさかさま/に¥い−おとす。¥もと/より¥この¥あさりの−よいち/は、¥せいびやう/の¥てきき/にて、¥にちやう/が¥うち/を¥わしる¥しか/を/ば¥はづさ/ず、¥つよう¥い/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥その−のち/は¥げんぺい/の¥つはもの=ども、¥たがひ/に¥おもて/も¥ふら/ず、¥いのち/も¥をしま/ず¥せめ−たたかふ。¥され/ども¥へいけ/の¥おん=かた/に/は、¥じふぜん−ていわう、¥さんじゆ/の−しんき/を¥たいし/て¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥げんじ¥いかが¥あら/んず/らん/と、¥あやふう¥おもふ¥ところ/に、¥しばし/は¥しらくも/か/と¥おぼしく/て、¥こくう/に¥ただよひ/ける/が、¥くも/にて/は¥なかり/けり。¥ぬし/も¥なき¥しらはた¥ひとながれ¥まひ−さがつ/て、¥げんじ/の¥ふね/の¥へ/に、¥さをづけ/の¥を/の、¥さはる/ほど/に/ぞ¥みえ/たり/ける。P280¥
「せんていのごじゆすゐ」¥はうぐわん、「¥これ/は¥はちまん−だい−ぼさつ/の¥げんじ¥たまへ/る/に/こそ」/と¥よろこん/で、¥かぶと/を¥ぬぎ、¥てうづ−うがひ−し/て、¥これ/を¥はいし¥たてまつり¥たまふ。¥つはもの=ども/も¥みな¥かく/の/ごとし。¥また¥おき/より¥いるか/と¥いふ¥うを、¥いちにせん¥はう/で、¥へいけ/の¥ふね/の¥かた/へ/ぞ¥むかひ/ける。¥おほい=との、¥こばかせ−はるのぶ/を¥めし/て、「¥いるか/は¥つねに¥おほけれ/ども、¥いまだ¥かやう/の¥こと¥なし。¥きつと¥かんがへ¥まうせ」/と¥のたまへ/ば、「¥この¥いるか¥はみ−かへり¥さふらは/ば、¥げんじ¥ほろび¥さふらひ/な/んず。¥はみ−とほり¥さふらは/ば、¥み=かた/の¥おん=いくさ¥あやふう¥おぼえ¥さふらふ」/と¥まうし/も¥はて/ぬ/に、¥へいけ/の¥ふね/の¥した/を、¥すぐに¥はう/で/ぞ¥とほり/ける。¥よ/の−なか/は¥いま/は¥かう/と/ぞ¥みえ/し。¥あはの−みんぶ−しげよし/は、¥この¥さんがねん/が¥あひだ、¥へいけ/に¥つい/て¥ちう/を¥いたし/たり/しか/ども、¥しそく¥でんない−ざゑもん−のりよし/を、¥いけどり/に¥せ/られ/て、¥いま/は¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥たちまちに¥こころがはり−し/て、¥げんじ/と¥ひとつ/に¥なり/に/けり。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、「¥あつぱれ¥しげよし−め/を、¥きつ/て¥すつ/べかり/つる/ものを」/と、¥こうくわい−せ/られ/けれ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥へいけ/の¥かた/の¥はかりごと/に/は、¥よき¥むしや/を/ば¥ひやうせん/に¥のせ、¥ざふにん=ばら/を/ば¥たうせん/に¥のせ/て、¥げんじ¥こころ−にく−さ/に、¥たうせん/を¥せめ/ば、¥なか/に¥とり−こめ/て¥うた/ん/と、¥したく−せ/られ/たり/しか/どもP281、¥しげよし/が¥かへりちう/の¥うへ/は、¥たうせん/に/は¥め/も¥かけ/ず、¥たいしやうぐん/の¥やつし¥のり¥たまへ/る¥ひやうせん/を/ぞ¥せめ/たり/ける。¥その−のち/は¥しこく−ちんぜい/の¥つはもの=ども、¥みな¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥つく。¥いま/まで¥したがひ−つき/たり/しか/ども、¥きみ/に¥むかつ/て¥ゆみ/を¥ひき、¥しゆ/に¥たいし/て¥たち/を¥ぬく。¥かしこ/の¥きし/に¥つか/ん/と¥すれ/ば、¥なみ¥たかう/して¥かなひ−がたし。¥ここ/の¥みぎは/に¥よら/ん/と¥すれ/ば、¥かたき¥や−さき/を¥そろへ/て¥まち−かけ/たり。¥げんぺい/の¥くに−あらそひ、¥けふ/を¥かぎり/と/ぞ¥みえ/たり/ける。¥
(『せんていみなげ』)S1109¥さる−ほど/に¥げんじ/の¥つはもの=ども、¥へいけ/の¥ふね/に¥のり−うつり/けれ/ば、¥すゐしゆ−かんどり=ども、¥あるひは¥い−ころさ/れ、¥あるひは¥きり−ころさ/れ/て、¥ふね/を¥なほす/に¥およば/ず、¥ふなぞこ/に¥みな¥たふれ−ふし/に/けり。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥こ−ぶね/に¥のつ/て、¥いそぎ¥ごしよ/の¥おん=ふね/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、「¥よ/の−なか/は¥いま/は¥かう/と¥おぼえ¥さふらふ。¥み−ぐるしき¥もの/を/ば、¥みな¥うみ/へ¥いれ/て、¥ふね/の¥さうぢ¥めさ/れ¥さふらへ」/とて、¥はい/たり、¥のごう/たり、¥ちり¥ひろひ、¥ともへ/に¥はしり−まはつ/て、¥てづから¥さうじ−し¥たまひ/けり。¥にようばう=たち、「¥やや¥ちうなごん=どの、¥いくさ/の¥やう/は¥いか/に/や−いか/に」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥ただいま¥めづらしき¥あづまをとこ/を/こそ、¥ごらんぜ/られ¥さふらは/んず/らめ」/とて、¥からから/と¥わらは/れ/けれ/ば、「¥なんでふ¥ただいま/の¥たはぶれ/ぞ/や」/とて、¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。¥にゐ=どの/は、¥ひごろ/より¥おもひ−まうけ¥たまへ/る¥こと/なれ/ば、¥にぶいろ/の¥ふたつぎぬ¥うち−かづき、¥ねりばかま/の¥そば¥たかく¥とり、¥しんし/を¥わき/に¥はさみ、¥ほうけん/を¥こし/に¥さし、¥しゆしやう/を¥いだき¥まゐらせ/て、P282「¥われ/は¥をんな/なり/とも、¥かたき/の¥て/に/は¥かかる/まじ。¥しゆしやう/の¥おん=とも/に¥まゐる/なり。¥おん=こころざし¥おもひ¥たまは/ん¥ひとびと/は、¥いそぎ¥つづき¥たまへ/や」/とて、¥しづしづ/と¥ふなばた/へ/ぞ¥あゆみ−いで/られ/ける。¥しゆしやう¥ことし/は、¥はつさい/に/ぞ¥なら/せ¥おはします。¥おん=とし/の/ほど/より、¥はるか/に¥ねび/させ¥たまひ/て、¥おん=かたち¥いつくしう、¥あたり/も¥てり−かかやく/ばかり/なり。¥おん=ぐし¥くろう¥ゆらゆら/と、¥おん=せなか¥すぎ/させ¥たまひ/けり。¥しゆしやう¥あきれ/たる¥おん=ありさま/にて、「¥そもそも¥あまぜ、¥われ/を/ば¥いづち/へ¥ぐし/て¥ゆか/ん/と/は¥する/ぞ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥にゐ=どの、¥いとけなき¥きみ/に¥むかひ¥まゐらせ、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥きみ/は¥いまだ¥しろしめさ/れ¥さふらは/ず/や。¥ぜんぜ/の¥じふぜん−かいぎやう/の¥おん=ちから/に¥よつ/て、¥いま¥ばんじよう/の−あるじ/と/は¥うまれ/させ¥たまへ/ども、¥あくえん/に¥ひか/れ/て、¥ご=うん¥すでに¥つき/させ¥たまひ¥さぶらひ/ぬ。¥まづ¥ひんがし/に¥むかは/せ¥たまひ/て、¥いせ−だい−じんぐう/に¥おん=いとま¥まうさ/せ¥おはしまし、¥その−のち¥にし/に¥むかは/せ¥たまひ/て、¥さいはう−じやうど/の¥らいかう/に¥あづから/ん/と¥ちかは/せ¥おはしまし/て、¥おん=ねんぶつ¥さぶらふ/べし。¥この¥くに/は¥そくさん−へんど/と¥まうし/て、¥もの−うき¥さかひ/にて¥さぶらふ。¥あの¥なみ/の¥した/に/こそ、¥ごくらく−じやうど/とて、¥めでたき¥みやこ/の¥さぶらふ。¥それ/へ¥ぐし¥まゐらせ¥さぶらふ/ぞ」/と、¥さまざま/に¥なぐさめ¥まゐらせ/しか/ば、¥やまばといろ/の¥ぎよ=い/に¥びんづら¥ゆは/せ¥たまひ/て、¥おん=なみだ/に¥おぼれ、¥ちひさう¥うつくしき¥おん=て/を¥あはせ、¥まづ¥ひんがし/に¥むかは/せ¥たまひ/て、¥いせ−だい−じんぐう、¥しやう−はちまんぐう/に、¥おん=いとま¥まうさ/せ¥おはしまし、¥その−のち¥にし/に¥むかは/せ¥たまひ/て、¥おん=ねんぶつ¥あり/しか/ば、¥にゐ=どの¥やがて¥いだき¥まゐらせ/て、「¥なみ/の¥そこ/に/も¥みやこ/の¥さぶらふ/ぞ」/と¥なぐさめ¥まゐらせ/て、¥ちひろ/の¥そこ/に/ぞ¥しづみ¥たまふ。¥かなしき/かな、¥むじやう/の¥はる/の¥かぜ、P283¥たちまち/に¥はな/の¥おん=すがた/を¥ちらし、¥いたましき/かな、¥ぶんだん/の¥あらき¥なみ、¥ぎよくたい/を¥しづめ¥たてまつる。¥てん/を/ば¥ちやうせい/と¥なづけ/て、¥ながき¥すみか/と¥さだめ、¥もん/を/ば¥ふらう/と¥かうし/て、¥おいせ/ぬ¥とざし/と/は¥かき/たれ/ども、¥いまだ¥じつさい/の¥うち/に/して、¥そこ/の¥みくず/と¥なら/せ¥おはします。¥じふぜん−ていゐ/の¥おん=くわはう、¥まうす/も¥なかなか¥おろか/なり。¥うんしやう/の¥りよう¥くだつ/て、¥かいてい/の¥うを/と¥なり¥たまふ。¥だいぼん¥かうだい/の¥かく/の¥うへ、¥しやくだい−きけん/の−みや/の¥うち、¥いにしへ/は¥くわいもん¥きよくろ/の¥あひだ/に、¥きうぞく/を¥なびかし、¥いま/は¥ふね/の¥うち¥なみ/の¥した/にて、¥おん=み/を¥いつし/に¥ほろぼし¥たまふ/こそ¥かなしけれ。¥
「のとどのさいご」(『のとどのさいご』)S1110¥にようゐん/は¥この¥ありさま/を¥み¥まゐらせ¥たまひ/て、¥いま/は¥かう/と/や¥おぼしめさ/れ/けん、¥おん=すずり、¥おん=やきいし、¥さう/の¥おん=ふところ/に¥いれ/て、¥うみ/に¥いら/せ¥たまふ/を、¥わたなべの−げんご−むま/の−じよう−むつる、¥こ−ぶね/を¥つと¥こぎ−よせ/て、¥おん=ぐし/を¥くまで/に¥かけ/て¥ひき−あげ¥たてまつる。¥だいなごん/の−すけ/の−つぼね、「¥あな¥あさまし、¥それ/は¥にようゐん/にて¥わたら/せ¥たまふ/ぞ。¥あやまち¥つかまつる/な」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥はうぐわん/に¥まうし/て、¥いそぎ¥ごしよ/の¥おん=ふね/へ¥うつし¥たてまつる。¥さて¥だいなごん/の−すけ/の−つぼね/は、¥ないしどころ/の¥おん=からうと/を¥とつ/て、¥うみ/に¥いら/ん/と¥し¥たまひ/ける/が、¥はかま/の¥すそ/をP284¥ふなばた/に¥い−つけ/られ/て、¥け−まとひ¥たふれ¥たまひ/ける/を、¥ぶし=ども¥とり−とどめ¥たてまつる。¥その−のち¥おん=からうと/の¥ぢやう/を¥ねぢ−きつ/て、¥おん=ふた/を¥すでに¥ひらか/ん/と¥す。¥たちまち/に¥め¥くれ¥はなぢ¥たる。¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/は、¥いけどり/に¥せ/られ/て¥おはし/ける/が、「¥あれ/は¥いか/に、¥ないしどころ/にて¥わたら/せ¥たまふ/ぞ。¥ぼんぶ/は¥み¥たてまつら/ぬ¥こと/ぞ」/と¥のたまへ/ば、¥つはもの=ども¥した/を¥ふつ/て¥おそれ−をののく。¥その−のち¥はうぐわん¥ときただの−きやう/に¥まうし−あはせ/て、¥もと/の/ごとく¥からげ−をさめ¥たてまつら/る。¥さる−ほど/に、¥かどわきの−へい−ぢうなごん−のりもり、¥しゆり/の−だいぶ−つねもり、¥きやうだい¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥よろひ/の¥うへ/に¥いかり/を¥おう/て、¥うみ/に/ぞ¥しづみ¥たまひ/ける。¥こまつの−しん−ざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥おなじき−せうしやう−ありもり、¥いとこ/の¥さま/の−かみ−ゆきもり/も、¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥これ/も¥よろひ/の¥うへ/に¥いかり/を¥おう/て、¥いつしよ/に¥うみ/に/ぞ¥いり¥たまふ。¥ひとびと/は¥かやう/に¥し¥たまへ/ども、¥おほい=との−ふし/は、¥さ/も¥し¥たまは/ず、¥ふなばた/に¥たち、¥しはう¥み−めぐらし/て¥おはし/けれ/ば、¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、¥あまり/の¥こころ−う−さ/に、¥そば/を¥つと¥わしり−とほる¥やう/にて、¥まづ¥おほい=との/を¥うみ/へ¥がば/と¥つき−いれ¥たてまつる。¥これ/を¥み/て¥ゑもん/の−かみ、¥やがて¥つづい/て¥とび−いり¥たまひ/ぬ。¥ひとびと/は、¥よろひ/の¥うへ/に、¥おもき¥もの/を¥おう/たり¥いだい/たり¥し/て、¥いれ/ば/こそ¥しづめ、¥この¥ひと¥おやこ/は、¥さ/も¥し¥たまは/ず。¥なまじひ/に¥すゐれん/の¥じやうず/にて¥おはし/けれ/ば、¥おほい=との/は、¥ゑもん/の−かみ¥しづま/ば、¥われ/も¥しづま/ん、¥たすから/ば、¥われ/も¥とも/に¥たすから/ん/と¥おもひ、¥たがひ/に¥め/を¥みかはし/て、¥かなた−こなた/へ¥およぎ−ありき¥たまひ/ける/を、¥いせの−さぶらう−よしもり、¥こ−ぶね/を¥つと¥こぎ−よせ/てP285、¥まづ¥ゑもん/の−かみ/を、¥くまで/に¥かけ/て¥ひき−あげ¥たてまつる。¥おほい=との、¥いとど¥しづみ/も¥やり¥たまは/ざり/し/を、¥いつしよ/に¥とり−あげ¥たてまつ/てげり。¥めのとご/の¥ひだの−さぶらう−ざゑもん−かげつね、¥この¥よし/を¥み¥たてまつ/て、「¥わが¥きみ¥とり¥たてまつる/は¥なにもの/ぞ」/とて、¥こ−ぶね/に¥のり、¥よしもり/が¥ふね/に¥おし−ならべ/て¥のり−うつり、¥たち/を¥ぬい/て¥うつ/て¥かかる。¥よしもり¥あぶなう¥みえ/ける¥ところ/に、¥よしもり/が¥わらは、¥しゆ/を¥うた/せ/じ/と、¥なか/に¥へだたり、¥さぶらう−ざゑもん/に¥うつ/て¥かかる。¥さぶらう−ざゑもん/が¥うつ¥たち/に、¥よしもり/が¥わらは、¥かぶと/の¥まつかう¥うち−わら/れ/て、¥に/の−たち/に¥くび¥うち−おとさ/る。¥よしもり/は¥なほ¥あぶなう¥みえ/ける/を、¥となり/の¥ふね/より、¥ほりの−やたらう−ちかつね、¥よつぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥さぶらう−ざゑもん、¥うち−かぶと/を¥い/させ/て¥ひるむ¥ところ/に、¥ほりの−やたらう、¥よしもり/が¥ふね/に¥のり−うつり、¥さぶらう−ざゑもん/に¥くん/で¥ふす。¥ほり/が¥らうどう¥やがて¥つづい/て¥のり−うつり、¥さぶらう−ざゑもん/が¥こし/の¥かたな/を¥ぬき、¥よろひ/の¥くさずり¥ひき−あげ/て、¥つか/も¥こぶし/も、¥とほれ−とほれ/と¥み−かたな¥さい/て、¥くび/を¥とる。¥おほい=との/は、¥めのとご/が¥め/の¥まへ/にて、¥かやう/に¥なる/を¥み¥たまひ/て、¥いか/ばかり/の¥こと/を/か¥おもは/れ/けん。¥
およそ¥のと=どの/の¥や−さき/に¥まはる¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥のりつね/は¥けふ/を¥さいご/と/や¥おもは/れ/けん、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥からあや−をどし/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥いかもの−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥もつ/て、¥さしつめ−ひきつめ、¥さんざん/に¥い¥たまへ/ば、¥もの=ども¥おほく¥て−おひ¥い−ころさ/る。¥やだね¥みな¥つき/けれ/ば、¥こくしつ/の−おほ−たち、¥しらえ/の−おほ−なぎなた、¥さう/に¥もつ/て、¥さんざん/に¥ない/で¥まはり¥たまふ。P286¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥のと=どの/の¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥いたう¥つみ¥な¥つくり¥たまひ/そ。¥さり/とて/は¥よき¥かたき/かは」/と¥のたまへ/ば、¥のと=どの、「¥さて/は¥たいしやう/に¥くめ¥ござんなれ」/とて、¥うちもの¥くき−みじか/に¥とり、¥ともへ/に¥さんざん/に¥ない/で¥まはり¥たまふ。¥され/ども¥はうぐわん/を¥み−しり¥たまは/ね/ば、¥もののぐ/の¥よき¥むしや/を/ば、¥はうぐわん/か/と¥め/を¥かけ/て¥とん/で¥かかる。¥はうぐわん/も¥ないない¥おもて/に¥たつ¥やう/に/は¥し¥たまへ/ども、¥とかう¥ちがへ/て、¥のと=どの/に/は¥くま/れ/ず。¥され/ども¥いかが/は¥し¥たまひ/たり/けん、¥はうぐわん/の¥ふね/に¥のり−あたり、「¥あはや」/と¥め/を¥かけ/て、¥とん/で¥かかる。¥はうぐわん¥かなは/じ/と/や¥おもは/れ/けん、¥なぎなた/を/ば¥ゆんで/の¥わき/に¥かい−はさみ、¥み=かた/の¥ふね/の、¥にぢやう/ばかり¥のき/たり/ける/に、¥ゆらり/と¥とび−のり¥たまひ/ぬ。¥のと=どの¥はやわざ/や¥おとら/れ/たり/けん、¥つづい/て/も¥とび¥たまは/ず。¥のと=どの¥いま/は¥かう/と/や¥おもは/れ/けん、¥たち¥なぎなた/を/も¥うみ/へ¥なげ−いれ、¥かぶと/も¥ぬい/で¥すて/られ/けり。¥よろひ/の¥そで、¥くさずり/を/も¥かなぐり−す/て、¥どう/ばかり¥き/て¥おほ−わらは/に¥なり、¥おほて/を¥ひろげ/て、¥ふね/の¥やかた/に¥たち−いで、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥げんじ/の¥かた/に¥われ/と¥おもは/ん¥もの¥あら/ば、¥よつ/て¥のりつね¥くん/で¥いけどり/に¥せよ。¥かまくら/へ¥くだり、¥ひやうゑ/の−すけ/に¥もの¥ひとことば¥いは/ん/と¥おもふ/なり。¥よれ/や¥よれ」/と¥のたまへ/ども、¥よる¥もの¥いち−にん/も¥なかり/けり。¥ここに¥とさの−くに/の¥ぢうにん、¥あき/の−がう/を¥ちぎやう−し/ける¥あきの−だいりやう−さねやす/が¥こ/に、¥あきの−たらう−さねみつ/とて、¥およそ¥にさんじふにん/が¥ちから¥あらはし/たる¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥われ/に¥ちつと/も¥おとら/ぬ¥らうどう¥いち−にん¥ぐし/たり/けり。¥おとと/の¥じらう/も、¥ふつう/に/は¥すぐれ/たる¥つはもの/なり。¥かれ=らP287¥さん−にん¥より−あひ/て、「¥たとひ¥のと=どの、¥こころ/こそ¥かう/に¥おはす/とも、¥なに/ほど/の¥こと/か¥ある/べき。¥たけ¥じふぢやう/の¥おに/なり/とも、¥われ=ら¥さん−にん/が¥つかみ−つい/たら/ん/に、¥など/か¥したがへ/ざる/べき」/とて、¥こ−ぶね/に¥のり、¥のと=どの/の¥ふね/に¥おし−ならべ/て¥のり−うつり、¥たち/の¥きつさき/を¥ととのへ/て、¥いちめん/に¥うつ/て¥かかる。¥のと=どの¥これ/を¥み¥たまひ/て、¥まづ¥まつさき/に¥すすん/だる、¥あきの−たらう/が¥らうどう/に、¥すそ/を¥あはせ/て、¥うみ/へ¥どうど¥け−いれ¥たまふ。¥つづい/て¥かかる¥あきの−たらう/を/ば、¥ゆんで/の¥わき/に¥かい−はさみ、¥おとと/の¥じらう/を/ば、¥めて/の¥わき/に¥とつ/て¥はさみ、¥ひとしめ¥しめ/て、「¥いざ−うれ¥おのれ=ら、¥しで/の¥やま/の¥とも¥せよ」/とて、¥しやうねん¥にじふろく/にて、¥うみ/へ¥つつ/と/ぞ¥いり¥たまふ。¥
「ないしどころのみやこいり」(『ないしどころのみやこいり』)S1111¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/は、「¥みる/べき¥ほど/の¥こと/を/ば¥み/つ、¥いま/は¥ただ¥じがい/を¥せ/ん」/とて、¥めのとご/の¥いがの−へいない−ざゑもん−いへなが/を¥めし/て、「¥ひごろ/の¥けいやく/を/ば¥たがへ/まじき/か」/と¥のたまへ/ば、「¥さる−こと¥さふらふ」/とて、¥ちうなごん=どの/に/も、¥よろひ¥にりやう¥きせ¥たてまつり、¥わが−み/も¥にりやう¥き/て、¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥いつしよ/に¥うみ/に/ぞ¥いり¥たまふ。¥これ/を¥み/て、¥たうざ/に¥あり/ける、¥にじふ−よ−にん/の¥さぶらひ=ども、¥つづい/て¥うみ/に/ぞ¥しづみ/ける。¥され/ども¥その¥なか/に、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑP288、¥かづさの−ごらう−びやうゑ、¥あく−しち−びやうゑ、¥ひだの−しらう−びやうゑ/など/は、¥なに/と/して/かは¥のがれ/たり/けん、¥そこ/を/も¥つひに¥おち/に/けり。¥かいしやう/に/は¥あかはた、¥あかじるし=ども、¥きり−すて¥かなぐり−すて/たり/けれ/ば、¥たつたがは/の¥もみぢば/を、¥あらし/の¥ふき−ちらし/たる/に¥こと/なら/ず。¥みぎは/に¥よする¥しらなみ/は、¥うすぐれなゐ/に/ぞ¥なり/に/ける。¥ぬし/も¥なき¥むなしき¥ふね=ども/は、¥しほ/に¥ひか/れ¥かぜ/に¥したがひ/て、¥いづち/を¥さす/と/も¥なく、¥ゆら/れ/て¥ゆく/こそ¥かなしけれ。¥いけどり/に/は、¥さきの−ないだいじん−むねもり=こう、¥へい−だいなごん−ときただ、¥ゑもん/の−かみ−きよむね、¥くら/の−かみ−のぶもと、¥さぬきの−ちうじやう−ときざね、¥おほい=との/の¥はつさい/の¥わかぎみ、¥ひやうぶ/の−せふ−まさあきら、¥そう/に/は¥にゐ/の−そうづ−せんしん、¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−のうゑん、¥ちうなごん/の−りつし−ちうくわい、¥きやうじゆ−ばう/の−あじやり−ゆうゑん、¥さぶらひ/に/は¥げん−だいふ/の−はうぐわん−すゑさだ、¥つの−はうぐわん−もりずみ、¥とうない−さゑもん/の−じよう−のぶやす、¥きち−ない−さゑもん/の−じよう−すゑやす、¥あはの−みんぶ−しげよし−ふし、¥いじやう¥さんじふはちにん/なり。¥きくちの−じらう−たかなほ、¥はらだの−たいふ−たねなほ/は、¥いくさ¥いぜん/より¥かぶと/を¥ぬぎ、¥ゆみ/の¥つる/を¥はづい/て、¥かうにん/に¥まゐる。¥にようばう=たち/に/は、¥にようゐん、¥きたのまんどころ、¥らふ/の−おん=かた、¥だいなごん/の−すけ=どの、¥そつのすけ=どの、¥ぢぶきやう/の−つぼね¥いげ、¥いじやう¥しじふさん−にん/と/ぞ¥きこえ/し。¥げんりやく−にねん/の¥はる/の¥くれ、¥いか/なる¥としつき/にて、¥いちじん¥かいてい/に¥しづみ、¥ひやくくわん¥はしやう/に¥うかぶ/らん。¥こくも¥くわんぢよ/は、¥とうい−せいじゆ/の¥て/に¥したがひ、¥しんか−けいしやう/は、¥すまん/の¥ぐんりよ/に¥とらはれ/て、¥きうり/へ¥かへり¥たまひ/し/に、¥あるひは¥しゆばいしん/が¥にしき/を¥き/ざる¥こと/を¥なげき、¥あるひは¥わうぜうくん/が¥ここく/に¥おもむき/し¥うらみ/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥
しんぐわつ−みつかのひ、¥くらう−たいふ/の−はうぐわん−よしつね、¥げんはち−ひろつな/を¥もつて、¥ゐん/の−ごしよ/へ¥そうもん−せ/られ/ける/はP289、「¥さんぬる¥さんぐわつ−にじふしにち/の¥う/の−こく/に、¥ぶぜんの−くに¥たのうら、¥もんじ/が−せき、¥ながとの−くに¥だんのうら、¥あかま/が−せき/にて、¥へいけ/を¥ことごとく¥せめ−ほろぼし、¥ないしどころ、¥しるし/の−おん=はこ、¥ことゆゑ−なう¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつる/べき」¥よし、¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥ひろつな/を¥お=つぼ/の−うち/へ¥めし/て、¥かつせん/の¥しだい/を¥くはしう¥おん=たづね¥あつ/て、¥ぎよ=かん/の¥あまり/に、¥ひろつな/を¥たうざ/に¥さひやうゑ/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥おなじき−いつかのひ、¥ほくめん/に¥さふらふ¥とう−はうぐわん−のぶもり/を¥めし/て、「¥ないしどころ、¥しるし/の−おん=はこ、¥いちぢやう¥かへり−いら/せ¥たまふ/か、¥み/て¥まゐれ」/とて、¥さいこく/へ¥つかはさ/る。¥のぶもり¥やがて¥ゐん/の¥お=むま¥たまはつ/て、¥しゆくしよ/へ/も¥かへら/ず、¥むち/を¥あげ、¥にし/を¥さし/て/ぞ¥はせ−くだる。¥さる−ほど/に¥くらう−たいふ/の−はうぐわん−よしつね、¥へいじ¥なんによ/の¥いけどり=ども、¥あひ−ぐし/て¥のぼら/れ/ける/が、¥おなじき−じふしにち¥はりまの−くに¥あかし/の−うら/に/ぞ¥つか/れ/ける。¥な/を¥え/たる¥うら/なれ/ば、¥ふけ−ゆく¥まま/に¥つき¥すみ−のぼり、¥あき/の¥そら/に/も¥おとら/ず。¥にようばう=たち/は、¥さし−つどひ/て、「¥ひととせ¥これ/を¥とほり/し/に/は、¥かかる/べし/と/は¥おもは/ざり/し/ものを」/とて、¥しのびね/に¥なき/ぞ¥あは/れ/ける。¥そつのすけ=どの、¥つくづく¥つき/を¥ながめ¥たまひ/て、¥いと¥おもひ−のこせ/る¥こと/も¥おはせ/ざり/けれ/ば、¥なみだ/に¥とこ/も¥うく/ばかり/にて、¥かう/ぞ¥おもひ−つづけ/らる。¥
ながむれ/ば¥ぬるる¥たもと/に¥やどり/けり¥つき/よ¥くもゐ/の¥ものがたり−せよ W085¥
ぢぶきやう/の−つぼね、¥
くも/の¥へ/に¥み/し/に¥かはら/ぬ¥つきかげ/の¥すむ/に¥つけ/て/も¥もの/ぞ¥かなしき W086 
P290¥だいなごん/の−すけ/の−つぼね、¥
わが−み/こそ¥あかし/の−うら/に¥たびね−せ/め¥おなじ¥なみ/に/も¥やどる¥つき/かな W087¥
はうぐわん/は¥たけき¥もののふ/なれ/ども、¥さ/こそ¥おのおの/の、¥むかし¥こひしう、¥もの−がなしう/も/や¥おはす/らん/と、¥み/に¥しみ/て¥あはれ/に/ぞ¥おもは/れ/ける。¥おなじき−にじふごにち、¥ないしどころ、¥しるし/の−おん=はこ、¥とば/に¥つか/せ¥たまふ/と¥きこえ/しか/ば、¥だいり/より¥おん=むかひ/に¥まゐらせ¥たまふ¥ひとびと、¥かでのこうぢの−ちうなごん−つねふさの−きやう、¥けんびゐし/の−べつたう−さゑもん/の−かみ−さねいへ、¥たかくらの−さいしやう/の−ちうじやう−やすみち、¥ごん/の−うちうべん−かねただ、¥えなみの−ちうじやう−きんとき、¥たぢまの−せうしやう−のりよし、¥ぶし/に/は¥いづの−くらんど/の−たいふ−よりかぬ、¥いしかはの−はんぐわんだい−よしかぬ、¥さゑもん/の−じよう−ありつな/と/ぞ¥きこえ/し。¥その¥よ/の¥ね/の−こく/に、¥ないしどころ、¥しるし/の−おん=はこ、¥だいじやうぐわん/の−ちやう/に¥いら/せ¥おはします。¥ほうけん/は¥うせ/に/けり。¥しんし/は¥かいしやう/に¥うかび/たる/を、¥かたをかの−たらう−つねはる/が¥とり−あげ¥たてまつ/たり/ける/とかや。¥
(『けん』)S1112¥
「いちもんおほぢわたされ」(『いちもんおほちわたし』)S1113¥さる−ほど/に¥に/の−みや¥かへり−いら/せ¥たまふ/と¥きこえ/しか/ば、¥ほふわう/より¥おん=むかひ/の¥おん=くるま/を¥まゐらせ/らる。¥おん=こころ/なら/ず、¥ぐわいせき/の¥へいけ/に¥とらはれ/させ¥たまひ/て、¥さいかい/の¥なみ/の¥うへ/に¥ただよは/せP291¥たまふ¥おん=こと/を、¥おん=ぼぎ/も¥おん=めのと¥ぢみやうゐん/の−さいしやう/も、¥なのめ/なら/ず¥おん=なげき¥あり/し/に、¥いま¥まち−うけ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥いか/ばかり¥らうたく¥おぼしめさ/れ/けん。¥おなじき−にじふろくにち、¥へいじ/の¥いけどり=ども、¥とば/に¥つい/て、¥やがて¥その−ひ¥みやこ/へ¥いつ/て¥おほぢ/を¥わたさ/る。¥こはちえふ/の¥くるま/の、¥ぜんご/の¥すだれ/を¥あげ、¥さう/の¥ものみ/を¥ひらく。¥おほい=との/は¥じやうえ/を¥き¥たまへ/り。¥ひごろ/は¥さ/しも¥いろ¥しろう¥きよ=げ/に¥おはせ/しか/ども、¥しほかぜ/に¥やせ−くろみ/て、¥その¥ひと/と/も¥みえ¥たまは/ず。¥され/ども¥しはう/を¥み−めぐらし/て、¥いと¥おもひ−いれ¥たまへ/る¥けしき/も¥おはせ/ざり/けり。¥おん=こ¥ゑもん/の−かみ−きよむね/は、¥しろき¥ひたたれ/にて、¥ちち/の¥おん=くるま/の¥しり/に/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥なみだ/に¥むせび¥うつぶし/て、¥め/も¥み−あげ¥たまは/ず、¥まことに¥ふかう¥おもひ−いれ¥たまへ/る¥けしき/なり。¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/の¥くるま/も、¥おなじう¥やり−つづけ/られ/たり。¥さぬきの−ちうじやう−ときざね/も、¥どうしや/に¥わたさ/る/べかり/しか/ども、¥げんじよらう/とて¥わたさ/れ/ず。¥くら/の−かみ−のぶもと/は、¥きず/を¥かうむつ/たり/しか/ば、¥かんだう/より¥いり/に/けり。¥これ/を¥み/ん/とて、¥ゑんごく¥きんごく、¥やまやま¥てらでら、¥きやう−ぢう/の¥じやうげ¥おい/たる/も¥わかき/も、¥おほく¥きたり−あつまつ/て、¥とば/の−みなみ/の−もん、¥つくりみち、¥よつづか/まで、¥はた/と¥つづい/て、¥いくせんまん/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず。¥ひと/は¥かへりみる¥こと/を¥え/ず、¥くるま/は¥わ/を¥めぐらす¥こと¥あたは/ず。¥さんぬる¥ぢしよう¥やうわ/の¥ききん、¥とうごく¥さいこく/の¥いくさ/に、¥ひとだね¥おほく¥ほろび−うせ/たり/と¥いへ/ども、¥なほ¥のこり/は¥おほかり/けり/と/ぞ¥みえ/し。¥みやこ/を¥いで/て¥なか−いちねん、¥むげ/に¥まぢかき¥ほど/なれ/ば、¥めでたかり/し¥こと/も¥わすら/れ/ず。¥さ/しも¥おそれ−をののき/し¥ひと/の、¥けふ/の¥ありさま、¥ゆめ¥うつつ/と/も¥わき−かね/たり。P292¥こころ−なき¥あやし/の¥しづ/の−を¥しづ/の−め/に¥いたる/まで、¥みな¥なみだ/を¥ながし、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥まして¥なれ−ちかづき/たり/し¥ひとびと/の¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥ねんらい¥ぢうおん/を¥かうむつ/て、¥ふそ/の¥とき/より¥しこう−せ/し¥ともがら/の、¥さすが¥み/の¥すて−がた−さ/に、¥おほく/は¥げんじ/に¥つき/たり/しか/ども、¥むかし/の¥よしみ¥たちまち/に¥わする/べき/に/も¥あら/ね/ば、¥さ/こそ/は¥かなしう/も¥おもひ/けめ。¥みな¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥め/を¥み−あげ/ぬ¥もの/も¥おほかり/けり。¥おほい=との/の¥うしかひ/は、¥きそ/が¥ゐんざん/の¥とき、¥くるま¥やり−そんじ/て¥きら/れ/たり/し¥じらうまる/が¥おとと、¥さぶらうまる/にて/ぞ¥あり/ける。¥さいこく/にて/は、¥かりをのこ/に¥なつ/たり/ける/が、¥とば/にて¥はうぐわん/に¥まうし/ける/は、「¥とねり¥うしかひ/など¥まうす¥もの/は、¥いやしき¥げらふ/の¥はて/にて、¥こころ−ある/べき/で/は¥さふらは/ね/ども、¥ねんらい¥めし−つかは/れ¥まゐらせ¥さふらひ/し¥おん=こころざし¥あさから/ず¥さふらふ。¥なにか¥くるしう¥さふらふ/べき。¥おん=ゆるされ/を¥かうむつ/て、¥おほい=との/の¥ご=さいご/の¥おん=くるま/を、¥いま−いちど¥つかまつり¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん¥なさけ−ある¥ひと/にて、「¥もつとも¥さる/べし。¥とうとう」/とて¥ゆるさ/れ/けり。¥さぶらうまる¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥じんじやう/に¥しやうぞく¥き、¥ふところ/より¥やりなは¥とり−いだい/て¥つけ−かへ、¥なみだ/に¥くれ/て、¥ゆくさき/は¥みえ/ね/ども、¥うし/の¥ゆく/に¥まかせ/つつ、¥なくなく¥やつ/て/ぞ¥まかり/ける。¥ほふわう/は¥ろくでう−ひんがし/の−とうゐん/に、¥おん=くるま/を¥たて/て¥えいらん¥ある。¥ぐぶ/の¥くぎやう−てんじやうびと/の¥くるま=ども/も、¥おなじう¥たて−ならべ/られ/たり。¥さ/しも¥おん=み¥ちかう¥めし−つかはせ¥たまひ/しか/ば、¥ほふわう/も¥おん=こころ−よわう、¥いまさら¥あはれ/に/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。「¥ひごろ/は¥いか/なる¥ひと/も、¥あの¥ひとびと/のP293¥め/に/も¥みえ、¥ことば/の¥すゑ/に/も¥かから/ばや/と/こそ¥おもひ/し/に、¥けふ¥かやう/に¥みなす/べし/と/は、¥たれ/か¥おもひ−より/し/ぞ/や」/とて、¥じやうげ¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥ひととせ¥むねもり=こう¥ないだいじん/に¥なつ/て、¥よろこび−まうし/の¥あり/し¥とき、¥くぎやう/に/は¥くわざんのゐん/の−ちうなごん−かねまさの−きやう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥じふににん¥こしよう−し/て¥やり−つづけ/らる。¥くらんど/の−かみ−ちかむね¥いげ/の¥てんじやうびと¥じふろくにん¥せんぐ−す。¥ちうなごん¥しにん、¥さんみ/の−ちうじやう/も¥さん−にん/まで¥おはし/き。¥くぎやう/も¥てんじやうびと/も、¥けふ/を¥はれ/と¥ときめき¥たまへ/り。¥その−とき¥この¥ときただの−きやう、¥ごぜん/へ¥めさ/れ¥まゐらせ/て、¥やうやう/に¥もてなさ/れ、¥しゆじゆ/の¥ひきでもの¥たまはつ/て、¥いで/られ¥たまひ/し/は、¥めでたかり/し¥ぎしき/ぞ/かし。¥けふ/は¥げつけい−うんかく¥いち−にん/も¥したがは/ず。¥おなじう¥だんのうら/にて¥いけどり/に¥せ/られ/たり/し¥にじふ−よ−にん/の¥さぶらひ=ども/も、¥みな¥しろき¥ひたたれ/にて、¥くら/の¥まへわ/に¥しめ−つけ/て/ぞ¥わたさ/れ/ける。¥ろくでう/を¥ひんがし/へ¥かはら/まで¥わたい/て、¥それ/より¥かへつ/て、¥はうぐわん/の¥しゆくしよ、¥ろくでうほりかは/なる¥ところ/に¥すゑ¥たてまつ/て、¥きびしう¥しゆご−し¥たてまつる。¥おほい=との/は¥おん=もの¥まゐらせ/けれ/ども、¥むね¥せき−ふさがつ/て、¥おはし/を/だに/も¥たて/られ/ず。¥よる/に¥なれ/ども、¥しやうぞく/を/だに/も¥くつろげ¥たまは/ず。¥そで¥かたしい/て¥ふし¥たまひ/たり/ける/が、¥おん=こ¥ゑもん/の−かみ/に、¥おん=じやうえ/の¥そで/を¥うち−きせ¥たまへ/る/を、¥しゆご/の−ぶし=ども¥み¥たてまつ/て、「¥あはれ¥たかき/も¥いやしき/も¥おんあい/の−みち/ほど¥かなしかり/ける¥こと/は¥なし。¥おん=じやうえ/の¥そで/を¥うち−きせ¥たまひ/たれ/ば/とて、¥なに/ほど/の¥こと/か¥おはす/べき。¥せめて/の¥おん=こころざし/の¥ふか−さ/かな」/とて、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。P294
(『かがみ』)S1114¥
「へいだいなごんのふみのさた」(『ふみのさた』)S1115¥へい−だいなごん−ときただの−きやう−ふし/も、¥はうぐわん/の¥しゆくしよ¥ちかう/ぞ¥おはし/ける。¥よ/の−なか/は¥かく/なる¥うへ/は、¥とても−かうても/と/こそ¥おもは/る/べき/に、¥だいなごん¥いのち¥をしう/や¥おもは/れ/けん、¥しそく¥さぬきの−ちうじやう−ときざね/を¥まねい/て、「¥ちらす/まじき¥ふみ=ども¥いちがふ、¥はうぐわん/に¥とら/れ/て¥ある/ぞ/とよ。¥これ/を¥かまくら/の−げん−にゐ/に¥みせ/な/ば、¥ひと/も¥おほく¥ほろび、¥わが−み/も¥いのち¥たすかる/まじ。¥いかが−せ/ん」/と¥のたまへ/ば、¥ちうじやう¥まうさ/れ/ける/は、「¥くらう/は¥たけき¥もののふ/なれ/ども、¥にようばう/など/の¥うつたへ−なげく¥こと/を/ば、¥いか/なる¥だいじ/を/も、¥もてはなれ/ず/と/こそ¥うけたまはつ/て¥さふらへ。¥ひめぎみたち¥あまた¥ましまし¥さふらへ/ば、¥いづれ/にて/も¥ご=いつしよ¥みせ/させ¥おはしまし、¥したしう¥なら/せ¥たまひ/て¥のち、¥おほせ−いださ/る/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥その−とき¥だいなごん、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥さり/とも¥われ¥よ/に¥あり/し¥とき/は、¥むすめ=ども/を/ば、¥にようご¥きさき/に¥たて/ん/と/こそ¥おもひ/しか。¥なみなみ/の¥ひと/に¥みせ/ん/と/は、¥つゆ/も¥おもは/ざり/し/ものを」/とて¥なか/れ/けれ/ば、¥ちうじやう、「¥いま/は¥さやう/の¥こと、¥ゆめゆめ¥おぼしめし−よら/せ¥たまふ/べから/ず、¥たうぷく/の¥ひめぎみ/の、¥しやうねん¥じふしち/に¥なり¥たまふ/を」/と¥まうさ/れ/けれ/ども、¥だいなごん、¥それ/を/ば¥なほ¥いとほしき¥こと/に¥おぼし/てP295、¥さき/の¥はら/の¥ひめぎみ/の、¥しやうねん¥にじふいち/に¥なり¥たまふ/を/ぞ、¥はうぐわん/に/は¥みせ/られ/ける。¥これ/は¥とし/こそ¥すこし¥おとなしけれ/ども、¥みめ−すがた¥よ/に¥すぐれ、¥こころざま¥いう/に¥おはし/けれ/ば、¥はうぐわん/も、¥よ/に¥あり−がたき¥こと/に¥おもひ¥たまひ/て、¥さき/の¥うへ/の、¥かはごえの−たらう−しげふさ/が¥むすめ/も¥あり/けれ/ども、¥それ/を/ば¥べつ/の¥ところ/に¥うつし¥たてまつ/て、¥ざしき¥しつらう/て/ぞ¥おか/れ/ける。¥さて¥にようばう、¥かの¥ふみ/の¥こと/を¥のたまひ−いださ/れ/たり/けれ/ば、¥はうぐわん¥あまつさへ¥ふう/を/だに¥とか/ず/して、¥いそぎ¥だいなごん/の¥もと/へ¥つかはさ/る。¥なのめ/なら/ず¥よろこび/て、¥やがて¥やい/て/ぞ¥すて/られ/ける。¥いか/なる¥ふみ=ども/にて/か¥あり/けん、¥おぼつかなう/ぞ¥みえ/し。¥へいけ¥ほろび、¥いつしか¥くにぐに¥しづまつ/て、¥ひと/の¥かよひ/も¥わづらひ¥なく、¥みやこ/も¥おだしかり/けれ/ば、¥よ/に/は¥ただ、「¥はうぐわん/ほど/の¥ひと/ぞ¥なき。¥かまくら/の−げん−にゐ、¥なにごと/を/か¥し−いだし/たる。¥よ/は¥いつかう¥はうぐわん/の¥まま/にて¥あら/ばや」/なんど¥いふ¥こと/を、¥げん−にゐ¥もれ−きき¥たまひ/て、「¥こ/は¥いか/に、¥よりとも/が¥よく¥はからひ/て、¥つはもの=ども/を¥さし−のぼせ/たれ/ば/こそ、¥へいけ/は¥たやすう¥ほろび/たれ。¥くらう/ばかり/して/は、¥いかで/か¥よ/を/ば¥しづむ/べき。¥ひと/の¥かく¥いふ/に¥おごつ/て、¥いつしか¥よ/を¥わが¥まま/に¥する¥こと/で/こそ¥あれ。¥ひと/こそ¥おほけれ、¥へい−だいなごん/の¥むこ/に¥おし−なつ/て、¥だいなごん¥もて¥あつかふ/らん/も¥うけ/られ/ず。¥また¥よ/に/も¥はばから/ず、¥だいなごん/の¥むこどり¥いはれ¥なし。¥さだめて¥これ/へ¥くだつ/て/も、¥くわぶん/の¥ふるまひ/を¥せ/んず/らん」/と/ぞ¥のたまひ/ける。P296
「ふくしやうきられ」(『ふくしやうきられ』)S1116¥げんりやく−にねん−ごぐわつ−むゆかのひ、¥くらう−たいふ/の−はうぐわん−よしつね、¥おほい=との−ふし¥ぐそく−し¥たてまつ/て、¥くわんとう/へ¥くだら/る/べき/に¥さだまり/しか/ば、¥おほい=との¥はうぐわん/の¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥みやうにち¥くわんとう/へ¥げかう/の¥よし¥その¥きこえ¥さふらふ。¥それ/に¥つき¥さふらひ/て/は、¥いけどり/の¥うち/に、¥はつさい/の¥わらは/と¥つけ/られ¥まゐらせ/て¥さふらふ/は、¥いまだ¥うき−よ/に¥さふらふ/やらん。¥たまはつ/て¥いま−いちど¥み¥さふらは/ばや」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥はうぐわん/の¥へんじ/に、「¥たれ/とて/も¥おんあい/の−みち/は、¥おもひ−きら/れ/ぬ¥こと/にて¥さふらへ/ば、¥まことに¥さ/こそ/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らめ」/とて、¥かはごえの−こたらう−しげふさ/が¥もと/に¥あづけ−おき¥たてまつ/たり/ける¥わかぎみ/を、¥いそぎ¥おほい=との/の¥もと/へ¥ぐそく−し¥たてまつる/べき¥よし、¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥かはごえ、¥ひと/に¥くるま¥かつ/て、¥のせ¥たてまつる。¥ににん/の¥にようばう=ども/も、¥とも/に¥のつ/て/ぞ¥いで/に/ける。¥わかぎみ/は¥ちち/を¥はるか/に¥み¥まゐらせ¥たまは/ね/ば、¥よに/も¥なつかし=げ/にて/ぞ¥おはし/ける。¥おほい=との、¥わかぎみ/を¥み¥たまひ/て、「¥いか/に¥ふくしやう、¥これ/へ」/と¥のたまへ/ば、¥いそぎ¥ちち/の¥おん=ひざ/の¥うへ/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥おほい=との、¥わかぎみ/の¥かみ¥かき−なで、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥これ¥きき¥たまへ、¥おのおの、¥この¥こ/は¥はは/も¥なき¥もの/にて¥ある/ぞ/とよ。¥この¥こ/が¥はは/は、¥これ/をP297¥うむ/とて、¥さん/を/ば¥たひらか/に¥し/たり/しか/ども、¥やがて¥うち−ふし¥なやみ/し/が、¥つひに¥はかなく¥なる/ぞ/とよ。『¥この−のち¥いか/なる¥ひと/の¥はら/に、¥きんだち/を¥まうけ¥たまふ/とも、¥これ/を/ば¥おぼしめし−すて/ず/して、¥わらは/が¥かたみ/に¥ごらんぜよ。¥さし−はなつ/て¥めのと/など/の¥もと/へ/も¥つかはす/な』/と¥いひ/し¥こと/の¥ふびん−さ/よ。¥てうてき/を¥たひらげ/ん¥とき、¥あの¥ゑもん/の−かみ/に/は、¥たいしやうぐん/を¥せ/させ、¥これ/に/は¥ふくしやうぐん/を¥せ/させ/んずれ/ば/とて、¥な/を¥ふくしやう/と¥つけ/たり/しか/ば、¥なのめ/なら/ず¥うれし=げ/にて、¥いま/を¥かぎり/の¥とき/まで/も、¥な/を¥よび/など/して¥あいせ/し/が、¥なぬか/と¥いふ/に、¥つひに¥はかなく¥なつ/て¥ある/ぞ/とよ。¥この¥こ/を¥みる¥たび−ごと/に/は、¥その¥こと/が¥わすれ−がたく¥おぼゆる/ぞ/や」/とて¥なか/れ/けれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥ゑもん/の−かみ/も¥なき¥たまへ/ば、¥めのと/も¥そで/を/ぞ¥しぼり/ける。¥やや¥あつ/て¥おほい=との、「¥いか/に¥ふくしやう、¥はや¥とう¥かへれ」/と¥のたまへ/ども、¥わかぎみ¥かへり¥たまは/ず。¥ゑもん/の−かみ¥これ/を¥み¥たまひ/て、¥あまり/に¥あはれ/に¥おもは/れ/けれ/ば、「¥ふくしやう¥こよひ/は¥とう¥かへれ。¥ただいま¥まらうと/の¥こ/うずる/に。¥あした/は¥いそぎ¥まゐれ」/と¥のたまへ/ども、¥ちち/の¥おん=じやうえ/の¥そで/に¥ひし/と¥とり−つい/て、「¥いな/や、¥かへら/じ」/と/こそ¥なか/れ/けれ。¥かく/て¥はるか/に¥ほど¥ふれ/ば、¥ひ/も¥やうやう¥くれ−かかり/ぬ。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥めのと/の−にようばう、¥いだき−とつ/て、¥つひに¥くるま/に¥のせ¥たてまつる。¥ににん/の¥にようばう=ども/も、¥とも/に¥のつ/て/ぞ¥いで/に/ける。¥
おほい=との、¥わかぎみ/の¥おん=うしろ/を、¥はるか/に¥ごらんじ−おくつ/て、「¥ひごろ/の¥こひし−さ/は¥こと/の−かず/なら/ず」/と/ぞP298¥かなしみ¥たまひ/ける。¥この¥こ/は¥はは/の¥ゆゐごん/の¥むざん−さ/に、¥さし−はなつ/て¥めのと/など/の¥もと/へ/も¥つかはさ/ず、¥あさゆふ¥おん=まへ/にて¥そだて¥たまふ。¥さんざい/で¥うひかうぶり−し/て、¥よしむね/と/ぞ¥なのら/せ/ける。¥やうやう¥おひ−たち¥たまふ/ほど/に、¥みめ−すがた¥よ/に¥すぐれ、¥こころざま¥いう/に¥おはし/けれ/ば、¥おほい=との/も、¥いとしう¥うれしき¥こと/に¥おぼし/て、¥され/ば¥さいかい/の¥なみ/の¥うへ、¥ふね/の¥うち/まで/も¥ひき−ぐし/て、¥かたとき/も¥はなれ¥たまは/ず。¥しかる/を¥いくさ¥やぶれ/て¥のち/は、¥けふ/ぞ¥たがひ/に¥み¥たまひ/ける。¥しげふさ、¥はうぐわん/に¥まうし/ける/は、「¥そもそも¥わかぎみ/を/ば¥なに/と¥おん=ぱからひ¥さふらふ/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、「¥かまくら/まで¥ぐそく−し¥たてまつる/に¥およば/ず。¥なんぢ¥これ/にて¥と/も−かう/も¥あひ−はからへ」/と¥のたまへ/ば、¥しげふさ¥しゆくしよ/に¥かへつ/て、¥ににん/の¥にようばう=ども/に¥いひ/ける/は、「¥おほい=との/は¥あす¥くわんとう/へ¥げかう¥さふらふ。¥しげふさ/も¥おん=とも/に¥まかり−くだり¥さふらふ¥あひだ、¥わかぎみ/を/ば¥きやうと/に¥とどめ−おき、¥をがたの−さぶらう−これよし/が¥て/へ¥わたし¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥とうとう¥めさ/れ¥さふらへ」/とて、¥おん=くるま/を¥よせ/たり/けれ/ば、¥わかぎみ/は¥また¥さき/の¥やう/に、¥ちち/の¥おん=もと/へ/か/と、¥うれし=げ/に¥おぼし/たる/こそ¥いとほしけれ。¥ににん/の¥にようばう/も、¥ひとつくるま/に¥のつ/て/ぞ¥いで/に/ける。¥ろくでう/を¥ひんがし/へ、¥かはら/まで¥やつ/て¥ゆく。¥めのと/の−にようばう、「¥あはれ¥これ/は¥あやしき/ものかな」/と、¥きも−たましひ/を¥けし/て¥おもふ¥ところ/に、¥やや¥あつ/て¥つはもの=ども¥ごろくじつき/が/ほど、¥かはらなか/へ¥うつ/て¥いで/たり。¥やがて¥くるま/を¥やり−とどめ、「¥わかぎみ¥おり/させ¥たまへ」/とて、¥しきがは¥しい/て¥すゑ¥たてまつる。¥わかぎみ¥あきれ/たる¥おん=ありさま/にて、「¥そもそも¥われ/を/ば¥いづち/へ¥ぐし/て¥ゆか/ん/と/はP299¥する/ぞ」/と¥のたまへ/ば、¥ににん/の¥にようばう=ども、¥とかう/の¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず、¥こゑ/を¥はかり/に¥をめき−さけぶ。¥しげふさ/が¥らうどう、¥たち/を¥ひき−そばめ、¥ひだん/の¥かた/より¥わかぎみ/の¥おん=うしろ/に¥たち−まはり、¥すでに¥きり¥たてまつら/ん/と¥し/ける/を、¥わかぎみ¥み−つけ¥たまひ/て、¥いく−ほど¥のがる/べき¥こと/の¥やう/に、¥いそぎ¥めのと/の¥ふところ/の¥うち/へ/ぞ¥にげ−いら/せ¥たまひ/ける。¥ににん/の¥にようばう=ども、¥わかぎみ/を¥いだき¥たてまつ/て、「¥ただ¥われわれ/を¥うしなひ¥たまへ」/とて、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし/て、¥なき−かなしめ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥やや¥あつ/て¥しげふさ、¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥いま/は¥いか/に/も¥かなは/せ¥たまふ/べから/ず」/とて、¥いそぎ¥めのと/の¥ふところ/の¥うち/より、¥わかぎみ¥ひき−いだし¥まゐらせ、¥こし/の¥かたな/にて¥おし−ふせ/て、¥つひに¥くび/を/ぞ¥かい/てげる。¥くび/を/ば¥はうぐわん/に¥みせ/ん/とて¥とつ/て¥ゆく。¥ににん/の¥にようばう=ども、¥かちはだし/にて¥おつ−つき、「¥なにか¥くるしう¥さぶらふ/べき。¥おん=くび/を/ば¥たまはつ/て、¥おん=けうやう−し¥まゐらせ¥さぶらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥はうぐわん¥なさけ−ある¥ひと/にて、「¥もつとも¥さる/べし。¥とうとう」/とて¥たび/に/けり。¥ににん/の¥にようばう=ども、¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥これ/を¥とつ/て¥ふところ/に¥ひき−いれ/て、¥なくなく¥きやう/の¥かた/へ¥かへる/と/ぞ¥みえ/し。¥その−のち¥ごろくにち/して、¥かつらがは/に¥にようばう¥ににん¥み/を¥なげ/たり/と¥いふ¥こと¥あり/けり。¥いち−にん¥をさなき¥ひと/の¥くび/を¥ふところ/に¥いれ/て、¥しづみ/たり/し/は、¥この¥わかぎみ/の¥めのと/の−にようばう/にて/ぞ¥あり/ける。¥いま¥いち−にん¥むくろ/を¥いだい/て¥しづみ/たり/し/は、¥かいしやく/の¥にようばう/なり。¥めのと/が¥おもひ−きる/は、¥せめて¥いかが−せ/ん、¥かいしやく/の¥にようばう/さへ、¥み/を¥なげ/ける/こそ¥あはれ/なれ。P300
「こしごえ」(『こしごえ』)S1117¥げんりやく−にねん−ごぐわつ−なぬかのひ、¥くらう−たいふ/の−はうぐわん−よしつね、¥おほい=との−ふし¥ぐそく−し¥たてまつ/て、¥すでに¥みやこ/を¥たち¥たまふ。¥あはだぐち/に/も¥かかり¥たまへ/ば、¥おほうちやま/は¥くもゐ/の¥よそ/に¥へだたり/ぬ。¥せき/の−しみづ/を¥み¥たまひ/て、¥おほい=との¥なくなく¥えいじ¥たまひ/けり。¥
みやこ/を/ば¥けふ/を¥かぎり/の¥せきみづ/に¥また¥あふさか/の¥かげ/や¥うつさ/ん W089¥
みち−すがら/も¥こころ−ぼそ=げ/に¥おはし/けれ/ば、¥はうぐわん¥なさけ−ある¥ひと/にて、¥やうやう/に¥なぐさめ¥たてまつり¥たまふ。¥おほい=との、「¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥こんど/の¥いのち/を¥たすけ/て¥たべ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥はうぐわん、「¥さ¥さふらへ/ば/とて、¥おん=いのち¥うしなひ¥たてまつる/まで/は、¥よも¥さふらは/じ。¥たとひ¥さ¥さふらふ/とも、¥よしつね¥かうて¥さふらへ/ば、¥こんど/の¥くんこう/の¥しやう/に¥まうし−かへ/て、¥おん=いのち/ばかり/を/ば¥たすけ¥たてまつら/ん。¥さり/ながら/も、¥とほき¥くに、¥はるか/の¥しま/へ/も¥うつし/ぞ¥やり¥まゐらせ/んず/らん」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥おほい=との、「¥たとひ¥えぞ/が¥ちしま/なり/とも、¥いのち/だに¥あら/ば」/と¥のたまひ/ける/こそ¥くちをしけれ。¥ひかず¥ふれ/ば、¥おなじき−にじふさんにち、¥はうぐわん¥かまくら/へ¥くだり−つき¥たまふ/べき¥よし¥きこえ/しか/ば、¥かぢはら−へいざう−かげとき、¥はうぐわん/に¥さきだつ/て、¥かまくら=どの/へ¥まうし/ける/は、「¥いま/は¥につぽんごく¥のこるP301¥ところ/も¥なう、¥したがひ−つき¥たてまつ/て¥さふらふ。¥さ/は¥さふらへ/ども、¥おん=おとと¥くらう−たいふ/の−はうぐわん=どの/こそ、¥つひ/の¥おん=かたき/と/は¥みえ/させ¥たまひ/て¥さふらへ。¥その¥ゆゑ/は¥いち/を¥もつて¥まん/を¥さつす/とて、『¥いちのたに/を¥うへ/の¥やま/より¥おとさ/ず/は、¥とうざい/の¥きどぐち¥やぶれ−がたし。¥され/ば¥いけどり/を/も、¥しにどり/を/も、¥まづ¥よしつね/に/こそ¥みす/べき/に、¥もの/の¥よう/に/も¥あひ−たまは/ぬ¥かば=どの/の¥げんざん/に¥いる/べき¥やう/や¥ある。¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう=どの/を、¥いそぎ¥これ/へ¥たび¥さふらへ。¥たば/ず/は、¥よしつね¥まゐつ/て¥たまはら/ん』/とて、¥すでに¥こと¥いで−こ/ん/と¥し¥さふらひ/し/を/も、¥かげとき/が¥よく¥はからひ/て、¥とひ/に¥こころ/を¥あはせ/て、¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう=どの/を、¥とひの−じらう−さねひら/が¥もと/に¥あづけ−おき¥たてまつ/て¥のち/こそ、¥よ/は¥しづまつ/て¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥かまくら=どの¥おほき/に¥うち−うなづい/て、「¥くらう/が¥けふ¥これ/へ¥いる/なる。¥おのおの¥ようい−し¥たまへ」/と¥のたまへ/ば、¥だいみやう−せうみやう¥はせ−あつまつ/て、¥かまくら=どの/は¥ほど−なく¥すせんぎ/に/こそ¥なり¥たまへ。¥かまくら=どの/は、¥ぐんびやう¥ななへ¥やへ/に¥すゑ−おき、¥わが−み/は¥その¥うち/に¥おはし/ながら、「¥くらう/は¥すすどき¥をのこ/なれ/ば、¥この¥たたみ/の¥した/より/も¥はひ−いで/んずる¥もの/なり。¥され/ども¥よりとも/は、¥せ/らる/まじ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥かねあらひざは/に¥せき¥すゑ/て、¥おほい=との−ふし¥うけ−とり¥たてまつ/て、¥それ/より¥はうぐわん/を/ば¥こしごえ/へ¥おひ−かへさ/る。¥はうぐわん、「¥こ/は¥され/ば¥なにごと/ぞ/や。¥こぞ/の¥はる、¥きそ−よしなか/を¥つゐたう−せ/し/より¥この−かた、¥ことし/の¥はる、¥へいけ/を¥ことごとく¥ほろぼし−はて/て、¥ないしどころ、¥しるし/の−おん=はこ、¥ことゆゑ−なう¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつり、¥あまつさへ¥たいしやうぐん−おほい=との−ふし¥いけどり/に/して、¥これ/まで¥くだり/たら/ん/に/はP302¥たとひ¥いか/なる¥ふしぎ¥あり/とも、¥いちど/は¥など/か¥たいめん¥なから/ん。¥およそ¥くこく/の¥そうづゐぶし/に/も¥ふせ/られ、¥せんおん、¥せんやう、¥なんかいだう、¥いづれ/なり/とも¥あづけ/られ、¥いつぱう/の¥おん=かため/に/も¥なさ/れ/んずる/か/と/こそ¥おもひ/たれ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥わづか/に¥いよの−くに/ばかり¥ちぎやう−す/べき¥よし¥のたまひ/て、¥かまくら−ぢう/へ/だに¥いれ/られ/ず/して、¥こしごえ/へ¥おひ−のぼせ/られ/し¥こと/は¥いか/に。¥およそ¥につぽんこく−ぢう/を¥しづむる¥こと/は、¥よしなか¥よしつね/が¥しわざ/に¥あら/ず/や。¥たとへば¥おなじ¥ちち/が¥こ/にて、¥さき/に¥うまるる/を¥あに/と¥し、¥のち/に¥うまるる/を¥おとと/と¥する/ばかり/なり。¥てんが/を¥しら/ん/に、¥たれ/か/は¥しら/ざら/ん。¥しやする¥ところ/を¥しら/ず」/と¥つぶやか/れ/けれ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥はうぐわん¥なくなく¥いつつう/の¥じやう/を¥かい/て、¥ひろもと/の¥もと/へ¥つかはさ/る。¥
その¥じやう/に¥いはく、「¥みなもと−よしつね¥おそれ/ながら¥まうし−あげ¥さふらふ¥いしゆ/は、¥おん=だいくわん/の¥その¥ひとつ/に¥えらば/れ、¥ちよくせん/の¥おん=つかひ/と/して、¥てうてき/を¥たひらげ、¥くわいけい/の−ちじよく/を¥すすぐ。¥くんしやう¥おこなは/る/べき¥ところ/に、¥おもひ/の−ほか/に¥ここう/の¥ざんげん/に¥よつて、¥ばくたい/の¥くんこう/を¥もだせ/らる。¥よしつね¥をかす¥こと¥なう/して¥とが/を¥かうぶる。¥こう¥あつ/て¥あやまり¥なし/と¥いへ/ども、¥ご=かんき/を¥かうぶる/の¥あひだ、¥むなしく¥こうるゐ/に¥しづむ。¥ざんしや/の¥じつぷ/を¥たださ/れ/ず、¥かまくら−ぢう/へ/だに¥いれ/られ/ざる¥あひだ、¥そい/を¥のぶる/に¥あたは/ず。¥いたづら/に¥すじつ/を¥おくる。¥この−とき/に¥あたつ/て、¥ながく¥おんがん/を¥はいし¥たてまつら/ず。¥こつにく−どうはう/の¥ぎ¥すでに¥たえ、¥しゆくうん¥きはめて¥むなしき/に¥に/たる/か。¥はたまた¥ぜんぜ/の¥ごふいん/を¥かんずる/か。¥かなしき/かな、¥この¥でう、¥こ=ばうぶ¥そんりやう¥さいたん−し¥たまは/ずん/ば、¥たれ/のP303¥ひと/か¥ぐい/の¥ひたん/を¥まうし−ひらか/ん。¥いづれ/の¥ひと/か¥あいれん/を¥たれ/ん/や。¥こと−あたらしき¥まうしでう、¥じゆつくわい/に¥に/たり/と¥いへ/ども、¥よしつね¥しんだい−はつぷ/を¥ふぼ/に¥うけ、¥いくばく/の¥じせつ/を¥へ/ず/して、¥こ=かう/の=との¥ご=たかい/の¥あひだ、¥みなしご/と¥なつ/て¥はは/の¥ふところ/の¥うち/に¥いだか/れ/て、¥やまとの−くに¥うだ/の−こほり/に¥おもむき/し/より¥この−かた、¥いち−にち−へんし¥あんど/の¥おもひ/に¥ぢうせ/ず、¥かひ−なき¥いのち/は¥そんす/と¥いへ/ども、¥きやうと/の¥けいぐわい¥なんぢ/の¥あひだ、¥み/を¥ざいざいしよしよ/に¥かくし、¥へんど¥ゑんごく/を¥すみか/と/して、¥どみん¥ひやくしやう=ら/に¥ぶくじ−せ/らる。¥しかれ/ども¥かうけい¥たちまち/に¥じゆんじゆく−し/て、¥へいけ/の¥いちぞく¥つゐたう/の¥ため/に、¥しやうらく−せ/しむる¥て−あはせ/に、¥まづ¥きそ−よしなか/を¥ちうりく/の¥のち、¥へいけ/を¥せめ−かたぶけ/ん/が¥ため/に、¥ある−とき/は¥がが/たる¥がんぜき/に、¥しゆんめ/に¥むち¥うつ/て、¥かたき/の¥ため/に¥いのち/を¥ほろぼさ/ん¥こと/を¥かへりみ/ず、¥ある−とき/は¥まんまん/たる¥だいかい/に、¥ふうは/の¥なん/を¥しのぎ、¥み/を¥かいてい/に¥しづめ/ん¥こと/を¥いたま/ず/して、¥かばね/を¥けいげい/の¥あぎと/に¥かく。¥しか/のみ/なら/ず¥かつちう/を¥まくら/と¥し、¥きうせん/を¥げふ/と¥する¥ほんい、¥しかしながら¥ばうこん/の¥いきどほり/を¥やすめ¥たてまつり、¥ねんらい/の¥しゆくばう/を¥とげ/ん/と¥ほつする¥ほか/は¥たじ¥なし。¥あまつさへ¥よしつね¥ごゐ/の−じよう/に¥ふにん/の¥でう、¥たうけ/の¥ちようじよく¥なにごと/か¥これ/に¥しか/ん。¥しかり/と¥いへ/ども、¥いま¥うれへ¥ふかく¥なげき¥せつ/なり。¥ぶつしん/の¥おん=たすけ/に¥あら/ず/より¥ほか/は、¥いかで/か¥しうそ/を¥たつせ/ん。¥これ/に¥よつ/て¥しよじ−しよしや/の¥ごわう−はういん/の¥うら/を¥もつて、¥まつたく¥やしん/を¥さし−はさま/ざる¥むね、¥につぽんごく−ちう/の¥だいせう/の¥じんぎ−みやうだう/を¥しやうじ−おどろかし¥たてまつ/て、¥すつう/の¥きしやうもん/を¥かき−しんず/と¥いへ/ども、¥なほ¥もつて¥ご=いうめん¥なし。¥それ¥わが¥くに/は¥しんこく/なり。¥しん/は¥ひれい/を¥うけ¥たまふ/べから/ず。¥たのむ¥ところ¥た/に¥あら/ず。¥ひとへに¥きでん¥くわうだい/の¥じひ/をP304¥あふぎ、¥べんぎ/を¥うかがひ、¥かうぶん/に¥たつせ/しめ、¥ひけい/を¥めぐらし/て、¥あやまり¥なき¥むね/を¥いうぜ/られ、¥はうめん/に¥あづから/ば、¥しやくぜん/の¥よけい¥かもん/に¥および、¥えいぐわ¥ながく¥しそん/に¥つたへ、¥よつて¥ねんらい/の¥しうび/を¥ひらき、¥いちご/の¥あんねい/を¥え/ん。¥しよし/に¥つくさ/ず。¥しかしながら¥せいりやく−せ/しめ¥さふらひ−をはん/ぬ。¥よしつね¥きようくわう¥つつしん/で¥まうす。¥げんりやく−にねん−ろくぐわつ−いつかのひ、¥みなもとの−よしつね¥しんじやう、¥いなばの−かう/の=との/へ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥
「おほいとのちうばつ」(『おほいとのきられ』)S1118¥さる−ほど/に¥かまくら=どの、¥おほい=との/に¥たいめん¥ある。¥おはし/ける¥ところ、¥には/を¥ひとつ¥へだて/て、¥むかひ/なる¥や/に¥すゑ¥たてまつり、¥すだれ/の¥うち/より¥み¥いだし¥たまひ/て、¥ひきの−とうしらう−よしかず/を¥もつて¥まうさ/れ/けれる/は、「¥そもそも¥へいけ/を¥よりとも/が¥わたくし/の¥かたき/と/は、¥ゆめゆめ¥おもひ¥たてまつら/ず。¥その¥ゆゑ/は¥こ=にふだう−しやうこく/の¥おん=ゆるされ¥さふらは/ず/は、¥よりとも¥いかで/か¥たすかる/べき。¥さて/こそ¥にじふ−よ−ねん/まで¥まかり−すぎ¥さふらひ/しか。¥され/ども¥てうてき/と¥なら/せ¥たまひ/て¥のち/は、¥いそぎ¥つゐたう−す/べき¥よし/の¥ゐんぜん/を¥たまはつ/て¥さふらへ/ば、¥さ/のみ¥わうぢ/に¥はらま/れ/て、¥ぜうめい/を¥そむく/べき/に/も¥あら/ね/ば、¥これ/へ¥むかへ¥たてまつ/たり。¥さり/ながら/も¥かやう/に¥おん=げんざん/に¥いり¥さふらひ/ぬる¥こと/こそ、¥かへすがへす/も¥ほんい/に¥さふらへ」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥よしかず¥この¥こと¥まうさ/ん/とてP305、¥おほい=との/の¥おん=まへ/へ¥まゐつ/たり/けれ/ば、¥ゐ−なほり¥かしこまり¥たまふ/ぞ¥くちをしき。¥しよ−こく/の¥だいみやう−せうみやう¥おほう¥なみ−ゐ/たり/ける¥なか/に、¥きやう/の¥もの¥いくら/も¥あり、¥また¥へいけ/の¥けにん/たつ/し¥もの/も¥あり。¥みな¥つまはじき/を¥し/て、「¥あな¥いとほし。¥あの¥おん=こころ/で/こそ、¥かかる¥おん=め/に/も¥あはせ¥たまへ。¥ゐ−なほり¥かしこまり¥たまひ/たれ/ば/とて、¥いまさら¥おん=いのち/の¥たすかり¥たまふ/べき/か。¥さいこく/にて¥いか/に/も−なり¥たまふ/べき¥ひと/の、¥いき/ながら¥とらはれ/て、¥これ/まで¥くだり¥たまふ/も¥ことわり/かな」/と¥いひ/けれ/ば、「¥げに/も」/と¥まうす¥ひと/も¥あり、¥また¥なみだ/を¥ながす¥もの/も¥おほかり/けり。¥その¥なか/に¥ある¥ひと/の¥まうし/ける/は、「¥まうこ¥しんざん/に¥ある¥とき/は、¥すなはち¥はくじう¥ふるひ−おづ。¥かんせい/の¥うち/に¥ある¥とき/は、¥すなはち¥を/を¥ふつ/て¥じき/を¥もとむ/とて、¥たけき¥とら/の¥しんざん/に¥ある¥とき/は、¥もも/の−けだもの¥おぢ−おそる/と¥いへ/ども、¥とつ/て¥おり/の¥なか/に¥こめ/られ/て¥のち/は、¥を/を¥ふつ/て¥ひと/に¥むかふ/らん¥やう/に、¥いか/に¥たけき¥たいしやうぐん/も、¥うん¥つき¥かく¥なつ/て¥のち/は、¥こころ¥かはる¥ならひ/なれ/ば、¥この¥おほい=との/も、¥さ/こそ¥おはす/に/や」/と、¥まうす¥ひとびと/も¥あり/ける/とかや。¥はうぐわん¥やうやう/に¥ちんじ¥まうさ/れ/けれ/ども、¥かげとき/が¥ざんげん/の¥うへ/は、¥かまくら=どの¥さら/に¥もちひ¥たまは/ず。¥おほい=との−ふし¥ぐし¥たてまつ/て、¥いそぎ¥のぼり¥たまふ/べき¥よし¥のたまふ¥あひだ、¥ろくぐわつ−ここのかのひ、¥また¥おほい=との−ふし¥うけ−とり¥たてまつ/て、¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/けり。¥おほい=との/は、¥かやう/に¥いちにち/も¥ひかず/の¥のぶる¥こと/を、¥うれしき¥こと/に¥おぼし/ける/こそ¥いとほしけれ。¥みち−すがら/も、「¥ここ/にて/や¥ここ/にて/や」/と¥おもは/れ/けれ/ども、¥くにぐに¥しゆくじゆく¥うち−すぎ−うち−すぎ¥とほり/ぬP306。¥をはりの−くに¥うつみ/と¥いふ¥ところ¥あり。「¥これ/は¥ひととせ¥こ=さま/の−かみ−よしとも/が¥ちうせ/られ/し¥ところ/なれ/ば、¥ここ/にて/ぞ¥いちぢやう¥きら/れ/つ/らん」/と¥おもは/れ/けれ/ども、¥そこ/を/も¥つひに¥すぎ/しか/ば、「¥さて/は¥わが¥いのち/の¥たすから/んずる/に/こそ」/と、¥おぼし/ける/こそ¥はかなけれ。¥ゑもん/の−かみ/は、¥さ/は¥おもひ¥たまは/ず、「¥かやう/に¥あつき¥ころ/なれ/ば、¥くび/の¥そんぜ/ぬ¥やう/に¥はからひ/て、¥みやこ¥ちかう¥なつ/て/こそ¥きら/れ/んず/らめ」/と¥おもは/れ/けれ/ども、¥ちち/の¥あまり/に¥なげき¥たまふ/が¥いたはし−さ/に、¥さ/は¥まうさ/れ/ず、¥ひとへに¥ねんぶつ/を/のみ/ぞ¥すすめ¥まうさ/れ/ける。¥
おなじき−にじふさんにち、¥あふみの−くに¥しのはら/の−しゆく/に¥つき¥たまふ。¥きのふ/まで/は¥ふし¥ひとつ−ところ/に¥おはせ/しか/ども、¥けさ/より¥ひき−わかつ/て、¥べつ/の¥ところ/に¥すゑ¥たてまつる。¥はうぐわん¥なさけ−ある¥ひと/にて、¥みつかぢ/より¥ひと/を¥さきだて/て、¥ぜんぢしき/の¥ため/に/とて、¥おほはら/の¥ほんしやう−ばう−たんがう/と¥まうす¥ひじり/を¥しやうじ−くださ/れ/たり。¥おほい=との、¥ぜんぢしき/の¥ひじり/に¥むかつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥さて/も¥ゑもん/の−かみ/は、¥いづく/に¥さふらふ/やらん。¥たとひ¥かうべ/を/こそ¥はね/らるる/とも、¥むくろ/は¥ひとつ−むしろ/に¥ふさ/ん/と/こそ¥おもひ/し/に、¥いき/ながら¥わかれ/ぬる¥こと/こそ¥かなしけれ。¥この¥じふしちねん/が¥あひだ、¥いち−にち−へんし/も¥はなれ/ず、¥こんど¥さいこく/にて、¥いか/に/も−なる/べかり/し/の¥み/の、¥いき/ながら¥とらはれ/て、¥きやう¥かまくら¥はぢ/を¥さらす/も、¥ひとへに¥あの¥ゑもん/の−かみ¥ゆゑ/なり」/とて¥なか/れ/けれ/ば、¥ひじり/も¥あはれ/に¥おもは/れ/けれ/ども、¥われ/さへ¥こころ−よわう/て/は、¥かなは/じ/と/や¥おもは/れ/けん、¥なみだ¥おし−のごひ、¥さら/ぬ¥てい/に¥もてなし、「¥あはれ¥たかき/も¥いやしき/も、¥おんあい/のP307¥みち/は、¥おもひ−きら/れ/ぬ¥こと/にて¥さふらへ/ば、¥まことに¥さ/こそ/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らめ。¥しやう/を¥うけ/させ¥たまひ/て/より¥この−かた、¥たのしみ−さかえ¥むかし/も¥たぐひ¥さふらは/ず。¥いつてん/の−きみ/の¥ご=ぐわいせき/と/して¥しようじやう/の¥くらゐ/に¥いたら/せ¥たまへ/ば、¥こんじやう/の¥ご=えいぐわ、¥いちじ/も¥のこる¥ところ¥ましまさ/ず。¥いま¥また¥かかる¥おん=め/に¥あひ¥たまふ¥おん=こと/も、¥ぜんぜ/の¥しゆくごふ/なれ/ば、¥よ/を/も¥ひと/を/も¥かみ/を/も¥ほとけ/を/も、¥うらみ−おぼしめす/べから/ず。¥だいぼん−わうぐう/の¥じんぜんぢやう/の¥たのしみ、¥おもへ/ば¥ほど−なし。¥いはんや¥でんくわう−てうろ/の¥げかい/の¥いのち/に¥おいて/を/や。¥たうりてん/の¥おくせんざい、¥ただ¥ゆめ/の/ごとし。¥さんじふくねん/を¥すぎ/させ¥たまひ/けん/も、¥わづか/に¥いつし/の¥あひだ/なり。¥たれ/か¥なめ/たり/し¥ふらうふし/の−くすり、¥たれ/か¥たもち/たり/けん¥とうぶ−せいぼ/が¥いのち、¥しん/の¥しくわう/の¥おごり/を¥きはめ¥たまひ/し/も、¥つひに/は¥りさん/の¥つか/に¥うづもれ、¥かん/の¥ぶてい/の¥いのち/を¥をしみ¥たまひ/けん/も、¥むなしく¥とりよう/の¥こけ/に¥くち/に/き。¥しやう¥ある¥もの/は¥かならず¥めつ/す。¥しやくそん¥いまだ¥せんだん/の¥けぶり/を¥まぬかれ¥たまは/ず。¥たのしみ¥つき/て¥かなしみ¥き/たる。¥てんにん¥なほ¥ごすゐ/の¥ひ/に¥あへ/り/と/こそ¥うけたまはれ。¥され/ば¥ほとけ/は、『¥がしんじくう、¥ざいふくむしゆ、¥くわんじんむしん、¥ほふふぢうほふ』/とて、¥ぜん/も¥あく/も¥くう/なり/と¥くわんずる/が、¥まさしう¥ほとけ/の¥おん=こころ/に¥あひ−かなふ¥こと/にて¥さふらふ/なり。¥いか/なれ/ば¥みだによらい/は、¥ごこふ/が¥あひだ¥しゆゐ−し/て、¥おこし−がたき¥ぐわん/を¥おこし¥まします/に、¥いか/なる¥われ=ら/なれ/ば、¥おくおくまんごふ/が¥あひだ、¥しやうじ/に¥りんゑ−し/て、¥たから/の−やま/に¥いつ/て、¥て/を¥むなしう¥せ/ん¥こと、¥うらみ/の¥なか/の¥うらみ、¥おろか/なる/が¥なか/の、¥くちをしき¥こと/にて/は¥さふらは/ず/や。¥いま/は¥ゆめゆめ¥よねん/を¥おぼしめす/べから/ず」/とて、¥かい¥たもた/せ¥たてまつり、¥しきり/に¥ねんぶつ/を¥すすめ¥たてまつれ/ばP308、¥おほい=との/も、¥しかる/べき¥ぜんぢしき/と¥おぼしめし、¥たちまち/に¥まうねん/を¥ひるがへし、¥にし/に¥むかひ¥て/を¥あはせ、¥かうじやう/に¥ねんぶつ−し¥たまふ¥ところ/に、¥きつ−むま/の−じよう−きんなが、¥たち/を¥ひきそばめ、¥ひだん/の¥かた/より¥おほい=との/の¥おん=うしろ/に¥たち−まはり、¥すでに¥きり¥たてまつら/ん/と¥し/けれ/ば、¥おほい=との¥ねんぶつ/を¥とどめ/て、「¥ゑもん/の−かみ/も¥すでに/か」/と¥のたまひ/ける/こそ¥あはれ/なれ。¥きんなが¥うしろ/へ¥よる/か/と¥みえ/しか/ば、¥くび/は¥まへ/へ/ぞ¥おち/に/ける。¥ぜんぢしき/の¥ひじり/も¥なみだ/に¥むせび、¥たけき¥もののふ=ども/も、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥この¥きんなが/と¥まうす/は、¥へいけ¥さうでん/の¥けにん/にて、¥なかんづく¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥もと/に、¥あさゆふ¥しこう/の¥さぶらひ/なり。「¥さ/こそ¥よ/を¥へつらふ¥ならひ/と/は¥いひ/ながら、¥むげ/に¥なさけ−なかり/ける/ものかな」/と/ぞ、¥ひと¥みな¥ざんぎ−し/ける。¥ゑもん/の−かみ/に/も、¥また¥さき/の/ごとく¥かい¥たもた/せ¥たてまつり、¥ねんぶつ¥すすめ¥まうさ/れ/けり。¥ゑもん/の−かみ、¥ぜんぢしき/の¥ひじり/に¥むかつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥さて/も¥ちち/の¥ご=さいご/は、¥いかが¥ましまし¥さふらひ/つる/やらん」/と¥のたまへ/ば、「¥めでたう¥ましまし¥さふらひ/つる。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ゑもん/の−かみ、「¥いま/は¥うき−よ/に¥おもひ−おく¥こと¥なし。¥さら/ば¥きれ」/とて、¥くび/を¥のべ/て/ぞ¥きら/せ/らる。¥こんど/は¥ほりの−やたらう−ちかつね¥きり/てんげり。¥むくろ/を/ば¥きんなが/が¥さた/と/して、¥ふし¥ひとつ¥あな/に/ぞ¥うづみ/ける。¥これ/は¥おほい=との/の、¥あまり/に¥つみ¥ふかう¥のたまひ/ける/に¥よつ/て/なり。¥おなじき−にじふしにち、¥おほい=との−ふし/の¥くび、¥みやこ/へ¥いる。¥けんびゐし=ども、¥さんでうかはら/に¥いで−むかつ/て、¥これ/を¥うけ−とり、¥さんでう/を¥にし/へ、¥ひんがし/の−とうゐん/を¥きた/へ¥わたし/て、¥ごくもん/の¥ひだん/のP309¥あふち/の−き/に/ぞ¥かけ/られ/ける。¥むかし/より¥さんみ¥いじやう/の¥ひと/の¥くび、¥おほぢ/を¥わたさ/るる¥こと、¥いこく/に/は¥その¥れい/も/や¥ある/らん、¥わが¥てう/に/は¥いまだ¥せんじよう/を¥きか/ず。¥へいぢ/に/も¥のぶよりの−きやう/は、¥さ/ばかり/の¥あくぎやうにん/たり/しか/ば、¥かうべ/を/ば¥はね/られ/たれ/ども、¥おほぢ/を/ば¥わたさ/れ/ず、¥へいけ/に¥とつ/て/ぞ¥わたさ/れ/ける。¥さいこく/より¥のぼつ/て/は、¥いき/て¥ろくでう/を¥ひんがし/へ¥わたさ/れ、¥とうごく/より¥かへつ/て/は、¥しん/で¥さんでう/を¥にし/へ¥わたさ/る。¥いき/て/の¥はぢ、¥しし/て/の¥はぢ、¥いづれ/も¥おとら/ざり/けり。P310¥

 

入力者:荒山慶一

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