平家物語 灌頂巻(くわんぢやうのまき) 総かな版(元和九年本)
「にようゐんごしゆつけ」(『にようゐんしゆつけ』)S1301¥けんれいもんゐん/は、¥ひんがしやま/の¥ふもと、¥よしだ/の¥へん/なる¥ところ/に/ぞ、¥たち−いら/せ¥たまひ/ける。¥ちうなごん/の−ほふいん−きやうゑ/と¥まうす¥なら−ぼふし/の¥ぼう/なり/けり。¥すみ−あらし/て¥とし¥ひさしう¥なり/けれ/ば、¥には/に/は¥くさ¥ふかく、¥のき/に/は¥しのぶ¥しげれ/り。¥すだれ¥たえ¥ねや¥あらは/にて、¥あめかぜ¥たまる/べう/も¥なし。¥はな/は¥いろいろ¥にほへ/ども、¥あるじ/と¥たのむ¥ひと/も¥なく、¥つき/は¥よなよな¥さし−いれ/ども、¥ながめ/て¥あかす¥ぬし/も¥なし。¥むかし/は¥たま/の−うてな/を¥みがき、¥にしき/の−ちやう/に¥まとは/れ/て、¥あかし−くらさ/せ¥たまひ/し/が、¥いま/は¥あり/と/し−ある¥ひと/に/も、¥みな¥わかれ−はて/て、¥あさまし=げ/なる¥くちばう/に、¥いら/せ¥たまひ/けん¥おん=こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥うを/の¥くが/に¥あがれ/る/が/ごとく、¥とり/の¥す/を¥はなれ/たる/が/ごとし。¥さる−まま/に/は、¥うかり/し¥なみ/の¥うへ、¥ふね/の¥うち/の¥おん=すまひ/も、¥いま/は¥こひしう/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。¥さうは¥みち¥とほし、¥おもひ/を¥さいかい¥せんり/の¥くも/に¥よす。¥はくをく¥こけ¥ふかく/して、¥なんだ¥とうざん¥いつてい/の¥つき/に¥おつ。¥かなし/と/も¥いふ¥はかり¥なし。P351¥かくて¥にようゐん/は、¥ぶんぢ−ぐわんねん−ごぐわつ−ひとひのひ、¥おん=ぐし¥おろさ/せ¥たまひ/けり。¥おん=かい/の−し/に/は、¥ちやうらくじ/の¥あしよう−ばう/の−しやうにん−いんせい/と/ぞ¥きこえ/し。¥おん=ふせ/に/は、¥せんてい/の¥おん=なほし/なり。¥すでに¥いまは/の−とき/まで/も、¥めさ/れ/たり/けれ/ば、¥その¥おん=うつりが/も¥いまだ¥うせ/ず、¥おん=かたみ/に¥ごらんぜ/ん/とて、¥さいこく/より¥はるばる/と¥みやこ/まで、¥もた/せ¥たまひ/たり/しか/ば、¥いか/なら/ん¥よ/まで/も、¥おん=み/を¥はなた/じ/と/こそ¥おぼしめさ/れ/けれ/ども、¥おん=ふせ/に¥なり/ぬ/べき¥もの/の¥なき¥うへ、¥かつう/は¥かの¥おん=ぼだい/の¥ため/に/も/とて、¥なくなく¥とり−いださ/せ¥おはします。¥しやうにん¥これ/を¥たまはつ/て、¥なに/と¥そうす/べき¥むね/も¥なく/して、¥すみぞめ/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て¥なくなく¥ごしよ/を/ぞ¥まかり−いで/られ/ける。¥くだん/の¥ぎよ=い/を/ば、¥はた/に、¥ぬう/て、¥ちやうらくじ/の¥ぶつぜん/に¥かけ/られ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥にようゐん/は¥じふご/にて、¥にようご/の¥せんじ/を¥かうぶり、¥じふろく/にて¥こうひ/の¥くらゐ/に¥そなはり、¥くんわう/の¥かたはら/に¥さぶらは/せ¥たまひ/て、¥あした/に/は¥あさまつりごと/を¥すすめ、¥よる/は¥よ/を¥もつぱら/に¥し¥たまへ/り。¥にじふに/にて¥わうじ¥ご=たんじやう¥あつ/て、¥くわうたいし/に¥たち、¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/しか/ば、¥ゐんがう¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥けんれいもんゐん/と/ぞ¥まうし/ける。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ/なる¥うへ、¥てんし/の¥こくも/にて¥ましませ/ば、¥よ/の¥おもう¥し¥たてまつる¥こと¥なのめ/なら/ず。¥ことし/は¥にじふく/に/ぞ¥なら/せ¥ましまし/ける。¥たうり/の¥おん=よそほひ¥なほ¥こまやか/に、¥ふよう/の¥おん=かたち/も¥いまだ¥おとろへ/させ¥たまは/ね/ども、¥ひすゐ/の¥おん=かんざし¥つけ/て/も、¥なに/に/かは、¥せ/させ¥たまふ/べき/なれ/ば、¥つひに¥おん=さま/を¥かへ/させ¥たまひ/てげり。¥うき−よ/を¥いとひ、¥まこと/の−みち/に¥いら/せ¥たまへ/ども、¥おん=なげき/は¥さらに¥つきせ/ず。P352¥ひとびと¥いま/は¥かく/とて¥うみ/に¥しづみ/し¥ありさま、¥せんてい、¥にゐ=どの/の¥おん=おもかげ、¥ひし/と¥おん=み/に¥そひ/て、¥いか/なら/ん¥よ/に、¥わする/べし/と/も¥おぼしめさ/ね/ば、¥つゆ/の−おん=いのち/の、¥なに¥し/に¥いま/まで¥ながらへ/て、¥かかる¥うき−め/を¥みる/らん/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥さつき/の¥みじか−よ/なれ/ども、¥あかし−かね/させ¥たまひ/つつ、¥おのづから¥うち−まどろま/せ¥たまは/ね/ば、¥むかし/の¥こと/を/ば¥ゆめ/に/だに/も¥ごらんぜ/ず。¥かべ/に¥そむけ/る¥のこん/の¥ともしび/の¥かげ¥かすか/に、¥よ/も−すがら¥まど¥うつ¥くらき¥あめ/の¥おと/ぞ¥さびしかり/ける。¥しやうやうじん/が¥しやうやうきう/に¥とぢ/られ/たり/けん¥かなしみ/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥むかし/を¥しのぶ¥つま/と¥なれ/とて/や、¥もと/の¥あるじ/の¥うつし−うゑ−おき/たり/けん、¥はなたちばな/の¥かぜ¥なつかしく、¥のき¥ちかく¥かをり/ける/に、¥やまほととぎす/の¥ふたこゑ¥みこゑ¥おと−づれ/て¥とほり/けれ/ば、¥にようゐん、¥ふるき¥こと/なれ/ども、¥おぼしめし−いで/て、¥おん=すずり/の¥ふた/に¥かう/ぞ¥あそばさ/れ/ける。¥
ほととぎす¥はなたちばな/の¥か/を¥とめ/て¥なく/は¥むかし/の¥ひと/ぞ¥こひしき W093¥
にようばう=たち/は、¥にゐ=どの、¥ゑちぜんの−さんみ/の−うへ/の¥やう/に、¥さ/のみ¥たけう¥みづ/の¥そこ/に/も¥しづみ¥たまは/ね/ば、¥もののふ/の¥あらけ−なき/に¥とらはれ/て、¥きうり/に¥かへり、¥おい/たる/も¥わかき/も、¥あるひは¥さま/を¥かへ、¥あるひは¥かたち/を¥やつし、¥ある/に/も−あら/ぬ¥ありさま=ども/にて、¥おもひ/も¥かけ/ぬ¥たに/の¥そこ、¥いは/の¥はざま/にて/ぞ、¥あかし−くらさ/せ¥たまひ/ける。¥すまひ/し¥やど/は、¥みな¥けぶり/と¥たち−のぼり/に/しか/ば、¥むなしき¥あと/のみ¥のこつ/て、¥しげき¥のべ/と¥なり/つつ、¥み−なれ/し¥ひと/の¥とひ−くる/も¥なし。¥せんか/より¥かへつ/て、¥しちせ/の¥まご/に¥あひ/けん/も、¥かく/や/と¥おぼえ/て¥あはれ/なり。P353¥
「をはらへのじゆぎよ」¥さんぬる¥しちぐわつ−ここのかのひ/の¥おほ−ぢしん/に、¥ついぢ/も¥くづれ、¥あれ/たる¥ごしよ/も¥かたぶき−やぶれ/て、¥いとど¥すま/せ¥たまふ/べき¥おん=たより/も¥なし。¥りよくい/の¥かんし、¥きうもん/を¥まもる/だに/も¥なし。¥こころ/の¥まま/に¥あれ/たる¥まがき/は、¥しげき¥のべ/より/も¥つゆけく、¥をりしり−がほ/に、¥いつしか¥むし/の¥こゑごゑ¥うらむる/も¥あはれ/なり。¥さる−まま/に/は、¥よ/も¥やうやう¥ながく¥なれ/ば、¥いとど¥おん=ねざめ−がち/にて、¥あかし−かね/させ¥たまひ/けり。¥つきせ/ぬ¥おん=もの−おもひ/に、¥あき/の¥あはれ/さへ¥うち−そひ/て、¥いとど¥しのび−がたう/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。¥なにごと/も¥みな¥かはり−はて/ぬる¥うき−よ/なれ/ば、¥おのづから¥なさけ/を¥かけ¥たてまつる/べき、¥むかし/の¥くさ/の¥ゆかり/も¥みな¥かれ−はて/て、¥たれ¥はぐくみ¥たてまつる/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥(『おほはらいり』)S1302¥され/ども¥れんぜいの−だいなごん−たかふさの−きやう/の¥きたのかた、¥しちでうの−しゆり/の−だいぶ−のぶたかの−きやう/の¥きたのかた/より、¥しのび/つつ、¥つね/は¥こと−とひ¥まうさ/れ/けり。¥にようゐん、「¥その¥むかし、¥あの¥ひと=ども/の¥はぐくみ/にて¥ある/べし/と/は、¥つゆ/も¥おぼしめし−よら/ざり/し/ものを」/とて、¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまひ/けれ/ば、¥つき¥まゐらせ/たる¥にようばう=たち/も、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。P354¥この¥おん=すまひ/も、¥なほ¥みやこ¥ちかく/て、¥たまぼこ/の¥みちゆきびと/の、¥ひとめ/も¥しげけれ/ば、¥つゆ/の−おん=いのち/の¥かぜ/を¥また/ん/ほど、¥うき¥こと¥きか/ぬ¥ふかき¥やま/の、¥おく/の¥おく/へ/も、¥いり/な/ばや/と/は¥おぼしめさ/れ/けれ/ども、¥さる/べき¥たより/も¥ましまさ/ず。¥ある¥にようばう/の¥よしだ/に¥まゐつ/て¥まうし/ける/は、「¥これ/より¥きた、¥をはらやま/の¥おく、¥じやくくわうゐん/と¥まうす¥ところ/こそ、¥しづか/に¥さぶらへ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥にようゐん、「¥やまざと/は¥もの/の¥さびしき¥こと/こそ¥あん/なれ/ども、¥よ/の¥うき/より/は¥すみ−よかん/なる/ものを」/とて、¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/けり。¥おん=こし/など/を/ば、¥のぶたか¥たかふさ/の¥きたのかた/より、¥おん=さた¥あり/ける/とかや。¥ぶんぢ−ぐわんねん−ながつき/の¥すゑ/に、¥かの¥じやくくわうゐん/へ¥いら/せ¥おはします。¥みち−すがら/も、¥よも/の¥こずゑ/の¥いろいろ/なる/を、¥ごらんじ−すぎ/させ¥たまふ/ほど/に、¥やまかげ/なれ/ば/に/や、¥ひ/も¥やうやう¥くれ−かかり/ぬ。¥のでら/の¥かね/の¥いりあひ/の¥こゑ¥すごく、¥わくる¥くさば/の¥つゆ¥しげみ、¥いとど¥おん=そで¥ぬれ−まさり、¥あらし¥はげしく、¥こ/の−は¥みだり−がはし。¥そら¥かき−くもり、¥いつしか¥うち−しぐれ/つつ、¥しか/の¥ね¥かすか/に¥おとづれ/て、¥むし/の¥うらみ/も¥たえだえ/なり。¥と/に−かく/に¥とり−あつめ/たる¥おん=こころ−ぼそ−さ、¥たとへ¥やる/べき¥かた/も¥なし。¥うら−づたひ¥しま−づたひ−せ/しか/ども、¥さすが¥かく/は¥なかり/し/ものを/と、¥おぼしめす/こそ¥かなしけれ。¥いは/に¥こけ¥むし/て、¥さび/たる¥ところ/なれ/ば、¥すま/まほしく/ぞ¥おぼしめす。¥つゆ¥むすぶ¥には/の¥をぎはら¥しも−がれ/て、¥まがき/の¥きく/の¥かれがれ/に、¥うつろふ¥いろ/を¥ごらんじ/て/も、¥おん=み/の−うへ/と/や¥おぼし/けん。¥ほとけ/の¥おん=まへ/に¥まゐらせ¥たまひ/て、「¥てんし−しやうりやう、−じやうどう−しやうがく、¥いちもん−ばうこん、¥とんしようぼだい」/と¥いのり¥まうさ/せP355¥たまひ/けり。¥いつ/の¥よ/に/も¥わすれ−がたき/は、¥せんてい/の¥おん=おもかげ、¥ひし/と¥おん=み/に¥そひ/て、¥いか/なら/ん¥よ/に/も、¥わする/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥さて¥じやくくわうゐん/の¥かたはら/に、¥はうぢやう/なる¥おん=あんじつ/を¥むすん/で、¥ひとま/を/ば¥ぶつしよ/に¥さだめ、¥ひとま/を/ば¥ご=しんじよ/に¥しつらひ、¥ちうや¥てうせき/の¥おん=つとめ、¥ぢやうじ−ふだん/の¥おん=ねんぶつ、¥おこたる¥こと¥なく/して、¥つきひ/を¥おくら/せ¥たまひ/けり。¥かくて¥かみなづき−なか/の−いつか/の¥くれがた/に、¥には/に¥ちり−しく¥なら/の−は/を、¥もの¥ふみ−ならし/て¥きこえ/けれ/ば、¥にようゐん、「¥よ/を¥いとふ¥ところ/に、¥なにもの/の¥とひ−くる/やらん。¥あれ¥みよ/や。¥しのぶ/べき¥もの/なら/ば、¥いそぎ¥しのば/ん」/とて¥みせ/らるる/に、¥をじか/の¥とほる/にて/ぞ¥あり/ける。¥にようゐん、「¥さて¥いか/に/や−いか/に/や」/と¥おほせ/けれ/ば、¥だいなごん/の−すけ/の−つぼね¥なみだ/を¥おさへ/て、¥
いはね¥ふみ¥たれ/か/は¥とは/ん¥なら/の−は/の¥そよぐ/は¥しか/の¥わたる/なり/けり W094¥
にようゐん¥この¥うた¥あまり/に¥あはれ/に¥おぼしめし/て、¥まど/の¥こしやうじ/に¥あそばし−とどめ/させ¥おはします。¥かかる¥おん=つれづれ/の¥なか/に/も、¥おぼしめし−なぞらふ¥こと=ども/は、¥つらき¥なか/に/も¥あまた¥あり。¥のき/に¥ならべ/る¥うゑき/を/ば、¥しちぢう−ほうじゆ/と¥かたどれ/り。¥いはま/に¥つもる¥みづ/を/ば、¥はつくどくすゐ/と¥おぼしめす。¥むじやう/は¥はる/の¥はな、¥かぜ/に¥したがつ/て¥ちり−やすく、¥うがい/は¥あき/の¥つき、¥くも/に¥ともなつ/て¥かくれ−やすし。¥せうやうでん/に¥はな/を¥もてあそん/じ¥あした/に/は、¥かぜ¥きたつ/て¥にほひ/を¥ちらし、¥ちやうしうきう/にP356¥つき/を¥えいぜ/し¥ゆふべ/に/は、¥くも¥おほう/て¥ひかり/を¥かくす。¥むかし/は¥ぎよくろう−きんでん/に、¥にしき/の¥しとね/を¥しき、¥たへ/なり/し¥おん=すまひ/なり/しか/ども、¥いま/は¥しば¥ひき−むすぶ¥くさ/の¥いほ、¥よそ/の¥たもと/も¥しをれ/けり。¥
「をはらごかう」(『おほはらごかう』)S1303¥かかり/し−ほど/に¥ほふわう/は、¥ぶんぢ−にねん/の¥はる/の¥ころ、¥けんれいもんゐん/の¥をはら/の¥かんきよ/の¥おん=すまひ、¥ごらんぜ/まほしう¥おぼしめさ/れ/けれ/ども、¥きさらぎ¥やよひ/の¥ほど/は、¥あらし¥はげしう¥よかん/も¥いまだ¥つき/ず。¥みね/の¥しらゆき¥きえ−やら/で、¥たに/の¥つらら/も¥うち−とけ/ず。¥かくて¥はる¥すぎ¥なつ¥きたつ/て、¥きたまつり/も¥すぎ/しか/ば、¥ほふわう¥よ/を¥こめ/て、¥をはら/の¥おく/へ¥ご=かう¥なる。¥しのび/の¥ご=かう¥なり/けれ/ども、¥ぐぶ/の¥ひとびと/に/は、¥とくだいじ、¥くわざんのゐん、¥つちみかど¥いげ、¥くぎやう¥ろくにん、¥てんじやうびと¥はちにん、¥ほくめん¥せうせう¥さぶらひ/けり。¥くらまどほり/の¥ご=かう¥なり/けれ/ば、¥かの¥きよはらの−ふかやぶ/が¥ふだらくじ、¥をのの−くわうだいこうぐう/の¥きうせき¥えいらん¥あつ/て、¥それ/より¥おん=こし/に/ぞ¥めさ/れ/ける。¥とほやま/に¥かかる¥しらくも/は、¥ちり/に/し¥はな/の¥かたみ/なり。¥あをば/に¥みゆる¥こずゑ/に/は、¥はる/の¥なごり/ぞ¥をしま/るる。¥ころ/は¥うづき−はつか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥なつくさ/の¥しげみ/が¥すゑ/を¥わき−いら/せ¥たまふ/に、¥はじめ/たる¥ご=かう¥なれ/ば、¥ごらんじ−なれ/たる¥かた/も¥なく、¥じんせき¥たえ/たるP357¥ほど/も¥おぼしめし−しら/れ/て¥あはれ/なり。¥にし/の¥やま/の¥ふもと/に、¥いち−う/の¥み=だう¥あり。¥すなはち¥じやくくわうゐん¥これ/なり。¥ふるう¥つくり−なせ/る¥せんずゐ−こだち、¥よし−ある¥さま/の¥ところ/なり。¥いらか¥やぶれ/て/は¥きり¥ふだん/の¥かう/を¥たき、¥とぼそ¥おち/て/は¥つき¥じやうぢう/の¥ともしび/を¥かかぐ/とも、¥かやう/の¥ところ/を/や¥まうす/べき。¥には/の¥わかぐさ¥しげり−あひ、¥あをやぎ¥いと/を¥みだり/つつ、¥いけ/の¥うきぐさ¥なみ/に¥ただよひ、¥にしき/を¥さらす/か/と¥あやまた/る。¥なかじま/の¥まつ/に¥かかれ/る¥ふぢなみ/の、¥うらむらさき/に¥さけ/る¥いろ、¥あをば¥まじり/の¥おそざくら、¥はつはな/より/も¥めづらしく、¥きし/の¥やまぶき¥さき−みだれ、¥やへ¥たつ¥くも/の¥たえま/より、¥やまほととぎす/の¥ひとこゑ/も、¥きみ/の¥みゆき/を¥まちがほ/なり。¥ほふわう¥これ/を¥えいらん¥あつ/て、¥かう/ぞ¥あそばさ/れ/ける。¥
いけみづ/に¥みぎは/の¥さくら¥ちり−しき/て¥なみ/の−はな/こそ¥さかり/なり/けれ W095¥
ふり/に/ける¥いは/の¥たえま/より、¥おち−くる¥みづ/の¥おと/さへ、¥ゆゑび¥よし−ある¥ところ/なり。¥りよくら/の¥かき、¥すゐたい/の¥やま、¥ゑ/に¥かく/とも¥ふで/も¥および−がたし。¥さて¥にようゐん/の¥おん=あんじつ/を¥えいらん¥ある/に、¥のき/に/は¥つた、¥あさがほ¥はひ−かかり、¥しのぶ−まじり/の¥わすれぐさ、¥へうたん¥しばしば¥むなし、¥くさ¥がんゑん/が¥ちまた/に¥しげし、¥れいでう¥ふかく¥させ/り、¥あめ¥げんけん/が¥とぼそ/を¥うるほす/とも¥いつつ/べし。¥すぎ/の¥ふきめ/も、¥まばら/にて、¥しぐれ/も¥しも/も¥おく¥つゆ/も、¥もる¥つきかげ/に¥あらそひ/て、¥たまる/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。¥うしろ/は¥やま、¥まへ/は¥のべ、¥いざさ−を−ざさ/に¥かぜ¥さわぎ、¥よ/に¥たた/ぬ¥み/の¥ならひ/とて、¥うき−ふし¥しげき¥たけばしら、¥みやこ/の¥かた/の¥ことづて/は、¥まどほ/に¥ゆへ/る¥ませがき/や、¥わづか/に¥こと−とふ¥もの/とて/は、¥みね/に¥こ−づたふ¥さる/の¥こゑ、¥しづ/が−つまぎ/の¥をの/のP358¥おと、¥これ=ら/が¥おとづれ/なら/で/は、¥まさき/の−かづら、¥あをつづら、¥くる¥ひと¥まれ/なる¥ところ/なり。¥
ほふわう、「¥ひと/や¥ある、¥ひと/や¥ある」/と¥めさ/れ/けれ/ども、¥おん=いらへ¥まうす¥もの/も¥なし。¥やや¥あつ/て¥おい−おとろへ/たる¥あま¥いち−にん¥まゐり/たり。「¥にようゐん/は¥いづく/へ¥ご=かう¥なり/ぬる/ぞ」/と¥おほせ/けれ/ば、「¥この−うへ/の¥やま/へ¥はな¥つみ/に¥いら/せ¥たまひ/て¥さぶらふ」/と¥まうす。「¥さ/こそ¥よ/を¥いとふ¥おん=ならひ/と¥いひ/ながら、¥さやう/の¥こと/に¥つかへ¥たてまつる/べき¥ひと/も¥なき/に/や、¥おん=いたはしう/こそ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥この¥あま¥まうし/ける/は、「¥ごかい−じふぜん/の¥おん=くわはう¥つき/させ¥たまふ/に¥よつ/て、¥いま¥かかる¥おん=め/を¥ごらんぜ/られ¥さぶらふ/に/こそ。¥しやしん/の¥ぎやう/に、¥なじか/は¥おん=み/を¥をしま/せ¥たまひ¥さぶらふ/べき。¥いんぐわきやう/に/は、『¥よくちくわこいん、¥けんごげんざいくわ、¥よくちみらいくわ、¥けんごげんざいいん』/と¥とか/れ/たり。¥くわこ¥みらい/の¥いんぐわ/を、¥かねて¥さとら/せ¥たまひ/な/ば、¥つやつや¥おん=なげき¥ある/べから/ず。¥むかし¥しつだたいし/は、¥じふく/にて¥がやじやう/を¥いで、¥だんどくせん/の¥ふもと/にて、¥こ/の−は/を¥つらね/て¥はだへ/を¥かくし、¥みね/に¥のぼつ/て¥たきぎ/を¥とり、¥たに/に¥くだり/て¥みづ/を¥むすび、¥なんぎやう−くぎやう/の¥こう/に¥よつ/て/こそ、¥つひに¥じやうとう−しやうがく−し¥たまひ/き」/と/ぞ¥まうし/ける。¥この¥あま/の¥ありさま/を¥ごらんずれ/ば、¥み/に/は¥きぬぬの/の¥わき/も¥みえ/ぬ¥もの/を、¥むすび−あつめ/て/ぞ¥き/たり/ける。¥あの¥ありさま/にて/も、¥かやう/の¥こと¥まうす¥ふしぎ−さ/よ/と¥おぼしめし/て、「¥そもそも¥なんぢ/は¥いか/なる¥もの/ぞ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥この¥あま¥さめざめ/と¥ない/て、¥しばし/は、¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず。¥やや¥あつ/て¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥まうす/に¥つけ/て¥はばかり−おぼえ¥さぶらへ/ども、¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/が¥むすめ、¥あはの−ないし/と¥まうす¥もの/にて¥さぶらふ/なり。P359¥はは/は¥きの−にゐ、¥さ/しも¥おん=いとほしみ¥ふかう/こそ¥さぶらひ/し/に、¥ごらんじ−わすれ/させ¥たまふ/に¥つけ/て/も、¥み/の¥おとろへ/ぬる/ほど¥おもひ−しら/れ/て、¥いまさら¥せんかた−なう/こそ¥さぶらへ」/とて、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥しのび−あへ/ぬ¥さま、¥め/も¥あて/られ/ず。¥ほふわう、「¥げに/も¥なんぢ/は、¥あはの−ないし/にて¥ある¥ござんなれ。¥ごらんじ−わすれ/させ¥たまふ/ぞ/かし。¥なにごと/に¥つけ/て/も、¥ただ¥ゆめ/と/のみ/こそ¥おぼしめせ」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ね/ば、¥ぐぶ/の¥くぎやう−てんじやうびと/も、¥ふしぎ/の¥こと¥まうす¥あま/かな/と¥おもひ/たれ/ば、¥ことわり/にて¥まうし/けり/と/ぞ、¥おのおの¥かんじ−あは/れ/ける。¥
さて¥かなた−こなた/を¥えいらん¥ある/に、¥には/の¥ちぐさ¥つゆ¥おもく、¥まがき/に¥たふれ−かかり/つつ、¥そとも/の¥をだ/も¥みづ¥こえ/て、¥しぎ¥たつ¥ひま/も¥みえ−わか/ず。¥さて¥にようゐん/の¥おん=あんじつ/へ¥いら/せ¥おはしまし、¥しやうじ/を¥ひき−あけ/て¥えいらん¥ある/に、¥ひとま/に/は¥らいかう/の¥さんぞん¥おはします。¥ちうぞん/の¥み=て/に/は、¥ごしき/の¥いと/を¥かけ/られ/たり。¥ひだん/に¥ふげん/の¥ゑざう、¥みぎ/に¥ぜんだう−くわしやう、¥ならび/に¥せんてい/の¥み=えい/を¥かけ、¥はちぢく/の¥めうもん、¥くでふ/の¥ご=しよ/も¥おか/れ/たり。¥らんじや/の¥にほひ/に¥ひき−かへ/て、¥かう/の¥けぶり/ぞ¥たち−のぼる。¥かの¥じやうみやうこじ/の、¥はうぢやう/の¥しつ/の¥うち/に、¥さんまんにせん/の¥ゆか/を¥ならべ、¥じつぱう/の¥しよぶつ/を¥しやうじ¥たまひ/けん/も、¥かく/や/と/ぞ¥おぼえ/ける。¥しやうじ/に/は¥しよきやう/の¥えうもん=ども、¥しきし/に¥かい/て¥ところどころ/に¥おさ/れ/たり。¥その¥なか/に¥おほえの−さだもと−ぼつし/が、¥せいりやうぜん/に/して¥えいじ/たり/けん、「¥せいが¥はるか/に¥きこゆ¥こうん/の¥うへ、¥しやうじゆ¥らいかう−す¥らくじつ/の¥まへ」/と/も¥かか/れ/たり。¥すこし¥ひき−のけ/て、¥にようゐん/の¥ぎよ=せい/と¥おぼしく/て、P360¥
おもひ/き/や¥み−やま/の¥おく/に¥すまひ−し/て¥くもゐ/の¥つき/を¥よそ/に¥み/ん/と/は W096¥
さて¥かたはら/を¥えいらん¥ある/に、¥ぎよ=しんじよ/と¥おぼしく/て、¥たけ/の¥おん=さを/に、¥あさ/の¥おん=ころも、¥かみ/の¥ふすま/なんど¥かけ/られ/たり。¥さ/しも¥ほんてう¥かんど/の¥たへ/なる¥たぐひ¥かず/を¥つくし、¥りようら−きんしう/の¥よそほひ/も、¥さながら¥ゆめ/に/ぞ¥なり/に/ける。¥ほふわう¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまへ/ば、¥ぐぶ/の¥くぎやう−てんじやうびと/も、¥まのあたり¥み¥たてまつり/し¥こと=ども、¥いま/の¥やう/に¥おぼえ/て、¥みな¥そで/を/ぞ¥しぼら/れ/ける。¥やや¥あつ/て¥うへ/の¥やま/より、¥こき¥すみぞめ/の¥ころも¥き/たり/ける¥あま¥ににん、¥いは/の¥かけぢ/を¥つたひ/つつ、¥おり−わづらひ/たる¥さま/なり/ける。¥ほふわう、「¥あれ/は¥いか/なる¥もの/ぞ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥らうに¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥はな−がたみ¥ひぢ/に¥かけ、¥いはつつじ¥とり−ぐし/て、¥もた/せ¥たまひ/て¥さぶらふ/は、¥にようゐん/にて¥わたら/せ¥たまひ¥さぶらふ。¥つまぎ/に¥わらび¥をり−そへ/て¥もち/たる/は、¥とりかひの−ちうなごん−これざね/が¥むすめ、¥ごでうの−だいなごん−くにつな/の¥やうじ、¥せんてい/の¥おん=めのと、¥だいなごん/の−すけ/の−つぼね」/と¥まうし/も¥あへ/ず¥なき/けり。¥ほふわう¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまへ/ば、¥ぐぶ/の¥くぎやう−てんじやうびと/も、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥にようゐん/は、¥よ/を¥いとふ¥おん=ならひ/と¥いひ/ながら、¥いま¥かかる¥ありさま/を¥みえ¥まゐらせ/んず/らん¥はづかし−さ/よ、¥きえ/も¥うせ/ばや/と¥おぼしめせ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥よひよひ−ごと/の¥あか/の−みづ、¥むすぶ¥たもと/も¥しをるる/に、¥あかつきおき/の¥そで/の¥うへ、¥やまぢ/の¥つゆ/も¥しげく/して、¥しぼり/や¥かね/させ¥たまひ/けん。¥やま/へ/も¥かへら/せ¥たまは/ず、¥また¥おん=あんじつ/へ/も¥いら/せ¥おはしまさ/ず、P361¥あきれ/て¥たた/せ¥ましまし/たる¥ところ/に、¥ないし/の¥あま¥まゐり/つつ、¥はな−がたみ/を/ば¥たまはり/けり。¥
「ろくだう」(『ろくだうのさた』)S1304「¥よ/を¥いとふ¥おん=ならひ、¥なにか¥くるしう¥さぶらふ/べき。¥はやはや¥おん=げんざん¥あつ/て、¥くわんぎよ¥なし¥まゐら/させ¥さぶらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にようゐん¥おん=なみだ/を¥おさへ/て、¥おん=あんじつ/に¥いら/せ¥おはします。「¥いちねん/の¥まど/の¥まへ/に/は、¥せつしゆ/の¥くわうみやう/を¥ごし、¥じふねん/の¥しば/の¥とぼそ/に/は、¥しやうじゆ/の¥らいかう/を/こそ¥まち/つる/に、¥おもひ/の−ほか/の¥ご=かう/かな」/とて、¥おん=げんざん¥あり/けり。¥ほふわう¥この¥おん=ありさま/を¥えいらん¥あつ/て、¥おほせ/なり/ける/は、「¥ひさう/の¥はちまんごふ、¥なほ¥ひつめつ/の¥うれへ/に¥あひ、¥よくかい/の¥ろくてん、¥いまだ¥ごすゐ/の¥かなしみ/を¥まぬかれ/ず。¥きけんじやう/の¥しようめうのらく、¥ちうげんぜん/の¥かうだい/の¥かく、¥ゆめ/の¥うち/の¥くわはう、¥また¥まぼろし/の¥あひだ/の¥たのしみ、¥すでに¥るてん¥むぐう/なり。¥しやりん/の¥めぐる/が/ごとし。¥てんにん/の¥ごすゐ/の¥かなしみ、¥にんげん/に/も¥さふらひ/ける/ものかな。¥さる/にて/も¥たれ/か¥こと−とひ¥まゐらせ(¥さふらふ)。¥なにごと/に¥つけ/て/も、¥さ/こそ¥いにしへ/を/のみ/こそ¥おぼしめし−いづ/らめ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥にようゐん、「¥いづかた/より/も¥おとづるる¥こと/も¥さぶらは/ず。¥のぶたか¥たかふさの−きやう¥の¥きたのかた/より、¥たえだえ¥まうし−おくる¥こと/こそ¥さぶらへ。¥その¥むかし¥あの¥ひと=ども/のP362¥はぐくみ/にて¥ある/べし/と/は、¥つゆ/も¥おぼしめし−よら/ざり/し/ものを」/とて、¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまへ/ば、¥つき¥まゐらせ/たる¥にようばう=たち/も、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥やや¥あつ/て¥にようゐん¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥いま¥かかる¥み/に¥なり¥さぶらふ¥こと/は、¥いつたん/の¥なげき¥まうす/に¥および¥さぶらは/ね/ども、¥ごしやう−ぼだい/の¥ため/に/は、¥よろこび/と¥おぼえ¥さぶらふ/なり。¥たちまち/に¥しやか/の¥ゆゐてい/に¥つらなり、¥かたじけなく/も¥みだ/の¥ほんぐわん/に¥じようじ/て、¥ごしやう−さんじゆう/の¥くるしみ/を¥のがれ、¥さんじ/に¥ろくこん/を¥きよめ/て、¥ひとすぢ/に¥くほん/の¥じやうせつ/を¥ねがひ、¥もつぱら¥いちもん/の¥ぼだい/を¥いのり、¥つね/に/は¥しやうじゆ/の¥らいかう/を¥ごす。¥いつ/の¥よ/に/も¥わすれ−がたき/は、¥せんてい/の¥おん=おもかげ、¥わすれ/ん/と¥すれ/ども¥わすら/れ/ず、¥しのば/ん/と¥すれ/ども¥しのば/れ/ず。¥ただ¥おんあい/の−みち/ほど、¥かなしかり/ける¥こと/は¥なし。¥され/ば¥かの¥ご=ぼだい/の¥ため/に、¥あさゆふ/の¥つとめ¥おこたる¥こと¥さぶらは/ず。¥これ/も¥しかる/べき¥ぜんぢしき/と¥おぼえ¥さぶらふ」/と¥まうさ/せ¥たまへ/ば、¥ほふわう¥おほせ/なり/ける/は、「¥それ¥わが¥くに/は¥そくさん−へんど/なり/と¥いへ/ども、¥かたじけなく/も¥じふぜん/の¥よくん/に¥こたへ、¥ばんじよう/の−あるじ/と¥なり、¥ずゐぶん¥ひとつ/と/して¥こころ/に¥かなは/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥なかんづく¥ぶつぽふ¥るふ/の¥よ/に¥むまれ/て、¥ぶつだう−しゆぎやう/の¥こころざし¥あれ/ば、¥ごしやう−ぜんしよ¥うたがひ¥ある/まじき¥こと/なれ/ば、¥にんげん/の¥あだ/なる¥ならひ、¥いまさら¥おどろく/べき/に/は¥さふらは/ね/ども、¥おん=ありさま¥み¥まゐらせ¥さふらふ/に、¥せんかた−なう/こそ¥さふらへ」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥
にようゐん¥かさね/て¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥わが−み¥へい−しやうこく/の¥むすめ/と/して、¥てんし/の¥こくも/と¥なり/しか/ば、¥いつてん−しかい/は¥みな¥たなごころ/の¥まま/なり/き。¥され/ば¥はいらい/の¥はる/の¥はじめ/より、¥いろいろ/のP363¥ころもがへ、¥ぶつみやう/の¥とし/の¥くれ、¥せふろく¥いげ/の¥だいじん¥くぎやう/に¥もてなさ/れ/し¥ありさま/は、¥ろくよく−しぜん/の¥くも/の¥うへ/にて、¥はちまん/の¥しよてん/に¥ゐねう−せ/られ¥さぶらふ/らん¥やう/に、¥ひやくくわん¥ことごとく¥あふが/ぬ¥もの/や¥さぶらひ/し。¥せいりやうししん/の¥ゆか/の¥うへ、¥たま/の−すだれ/の¥うち/に¥もてなさ/れ、¥はる/は¥なんでん/の¥さくら/に¥こころ/を¥とめ/て、¥ひ/を¥くらし、¥きうか−さんぷく/の¥あつき¥ひ/は、¥いづみ/を¥むすん/で¥こころ/を¥なぐさみ、¥あき/は¥くも/の¥うへ/の¥つき/を、¥ひとり¥み/ん¥こと/を¥ゆるさ/れ/ず。¥けんとう−そせつ/の¥さむき¥よ/は、¥つま/を¥かさね/て¥あたたか/に¥す。¥ちやうせい−ふらう/の¥じゆつ/を¥ねがひ、¥ほうらい−ふし/の−くすり/を¥たづね/て/も、¥ただ¥ひさしから/ん¥こと/を¥おもへ/り。¥あけ/て/も¥くれ/て/も、¥たのしみ−さかえ¥さぶらひ/し¥こと、¥てんじやう/の¥くわはう/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/こそ¥おぼえ¥さぶらひ/しか。¥さて/も¥じゆえい/の¥あき/の¥はじめ、¥きそ−よしなか/とかや/に¥おそれ/て、¥いちもん/の¥ひとびと、¥すみ−なれ/し¥みやこ/を/ば、¥くもゐ/の¥よそ/に¥かへりみ/て、¥ふるさと/を¥やけの/が−はら/と¥うち−ながめ、¥いにしへ/は¥な/を/のみ¥ききし、¥すま/より¥あかし/の¥うら−づたひ、¥さすが¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥ひる/は¥まんまん/たる¥たいかい/に、¥なみぢ/を¥わけ/て¥そで/を¥ぬらし、¥よる/は¥すざき/の¥ちどり/と¥とも/に¥なき−あかす。¥うらうら−しまじま、¥よし−ある¥ところ/を¥み/しか/ども、¥ふるさと/の¥こと/は¥わすら/れ/ず。¥かくて¥よる¥かた¥なかり/し/は、¥ごすゐ−ひつめつ/の¥かなしみ/と/こそ¥おぼえ¥さぶらひ/しか。¥およそ¥にんげん/の¥こと/は、¥あいべつりく、¥をんぞうゑく、¥しく−はつく、¥とも/に¥ひとつ/と/して、¥わが−み/に¥しら/れ/て、¥のこる¥ところ/も¥さぶらは/ず。¥さて/も¥ちくぜんの−くに¥ださいふ/とかや/に¥つい/て、¥すこし¥こころ/を¥のべ/しか/ば、¥これよし/とかや/に¥くこく/の¥うち/を/も¥おひ−いださ/れ、¥さんや¥ひろし/と¥いへ/ども、¥たち−より¥やすむ/べき¥ところ/も¥なし。¥おなじ¥あき/の¥くれ/に/も¥なり/しか/ば、¥むかし/は¥ここのへ/の¥くも/の¥うへ/にて¥み/し¥つき/を、¥やへ/のP364¥しほぢ/に¥ながめ/つつ、¥あかし−くらし¥さぶらひ/し/ほど/に、¥かみなづき/の¥ころほひ、¥きよつね/の¥ちうじやう/が、『¥みやこ/を/ば¥げんじ/が¥ため/に¥せめ−おとさ/れ、¥ちんぜい/を/ば¥これよし/が¥ため/に¥おひ−いださ/る。¥あみ/に¥かかれ/る¥うを/の/ごとし。¥いづく/へ¥ゆか/ば¥のがる/べき/かは。¥ながらへ−はつ/べき¥み/に/も¥あら/ず』/とて、¥うみ/に¥しづみ¥さぶらひ/し。¥これ/ぞ¥うき¥こと/の¥はじめ/にて/は¥さぶらひ/しか。¥なみ/の¥うへ/にて¥ひ/を¥くらし、¥ふね/の¥うち/にて¥よ/を¥あかす。¥みつぎもの/も¥なけれ/ば、¥ぐご/を¥そなふる¥こと/も¥なく、¥たまたま¥ぐご/を¥そなへ/ん/と¥すれ/ども、¥みづ¥なけれ/ば¥まゐら/ず。¥たいかい/に¥うかむ/と¥いへ/ども、¥うしほ/なれ/ば¥のむ¥こと¥なし。¥これ¥また¥がきだう/の¥くるしみ/と/こそ¥おぼえ¥さぶらひ/しか。¥かくて¥むろやま¥みづしま¥にかど/の¥いくさ/に¥かち/しか/ば、¥いちもん/の¥ひとびと、¥すこし¥いろ¥なほつ/て¥みえ¥さぶらひ/しか/ば、¥つの−くに¥いちのたに/とかや/に、¥じやうくわく/を¥かまへ、¥おのおの¥なほし−そくたい/を¥ひき−かへ/て、¥くろがね/を¥のべ/て¥み/に¥まとひ、¥あけ/て/も¥くれ/て/も、¥いくさよばひ/の¥こゑ/の¥たゆる¥こと/も¥なかり/し/は、¥しゆら/の¥とうじやう、¥たいしやく/の¥あらそひ/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/こそ¥おぼえ¥さぶらひ/しか。¥いちのたに/を¥せめ−おとさ/れ/て¥のち、¥おや/は¥こ/に¥おくれ、¥め/は¥をつと/に¥わかる。¥おき/に¥つり−する¥ふね/を/ば、¥かたき/の¥ふね/か/と¥きも/を¥けし、¥とほき¥まつ/に¥しろき¥さぎ/の¥むれ−ゐる/を¥み/て/は、¥げんじ/の¥はた/か/と¥こころ/を¥つくす。¥かくて¥もんじ¥あかま¥だんのうら/の¥いくさ、¥すでに¥けふ/を¥かぎり/と¥みえ/しか/ば、¥にゐ/の−あま¥なくなく¥まうし¥さぶらひ/し/は、『¥この¥よ/の−なか/の¥ありさま、¥いま/は¥かう/と¥おぼゆる/なり。¥こんど/の¥いくさ/に、¥をのこ/の¥いのち/の¥いき−のこら/ん¥こと/は、¥せんまん/が−ひとつ/も¥あり−がたし。¥たとひ¥また¥とほき¥ゆかり/は、¥おのづから¥いき−のこる¥こと¥あり/と¥いふ/とも、¥わらは/が¥ごしやう¥とぶらは/ん¥こと/も¥あり−がたし。¥むかし/より¥をんな/は¥ころさ/ぬP365¥ならひ/なれ/ば、¥いか/に/も−し/て¥ながらへ/て、¥しゆしやう/の¥おん=ぼだい/を¥とぶらひ、¥われ=ら/が¥ごしやう/を/も¥たすけ¥たまへ』/と¥まうし¥さぶらひ/し/を、¥ゆめ/の¥ここち−し/て¥おぼえ¥さぶらひ/し/ほど/に、¥かぜ¥たちまち/に¥ふき、¥ふうん¥あつく¥たなびき、¥つはもの=ども/の¥こころ/を¥まどはし、¥てんうん¥つき/て、¥ひと/の¥ちから/に/も¥および−がたし。¥すでに¥かう/と¥みえ/しか/ば、¥にゐ/の−あま¥せんてい/を¥いだき¥まゐらせ/て、¥ふなばた/に¥いで/し¥とき、¥あきれ/たる¥おん=ありさま/にて、『¥そもそも¥あまぜ、¥われ/を/ば¥いづち/へ¥ぐし/て¥ゆか/ん/と¥する/ぞ』/と¥おほせ/けれ/ば、¥にゐ/の−あま、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、¥いとけなき¥きみ/に¥むかひ¥まゐらせ/て、『¥きみ/は¥いまだ¥しろしめさ/れ¥さぶらは/ず/や。¥ぜんぜの−じふぜん−かいぎやう/の¥おん=ちから/に¥よつ/て、¥いま¥ばんじよう/の−あるじ/と/は¥むまれ/させ¥たまへ/ども、¥あくえん/に¥ひか/れ/て、¥ご=うん¥すでに¥つき/させ¥たまひ¥さぶらひ/ぬ。¥まづ¥ひんがし/に¥むかは/せ¥たまひ/て、¥いせ−だい−じんぐう¥ふし−をがま/せ¥おはしまし、¥その−のち¥さいはう−じやうど/の¥らいかう/に¥あづから/ん/と、¥ちかは/せ¥おはしまし/て、¥おん=ねんぶつ¥さぶらふ/べし。¥この¥くに/は¥そくさん−へんど/と¥まうし/て、¥こころ−うき¥さかひ/にて¥さぶらふ。¥あの¥なみ/の¥そこ/に/こそ、¥ごくらく−じやうど/と¥まうし/て、¥めでたき¥みやこ/の¥さぶらふ。¥それ/へ¥ぐし¥まゐらせ¥さぶらふ/ぞ』/と、¥やうやう/に¥なぐさめ¥まゐらせ/しか/ば、¥やまばといろ/の¥ぎよ=い/に¥びんづら¥ゆは/せ¥たまひ/て、¥おん=なみだ/に¥おぼれ、¥ちひさう¥うつくしき¥おん=て/を¥あはせ、¥まづ¥ひんがし/に¥むかは/せ¥たまひ/て、¥いせ−だい−じんぐう/に¥おん=いとま¥まうさ/せ¥たまひ、¥その−のち¥にし/に¥むかは/せ¥たまひ/て、¥おん=ねんぶつ¥あり/しか/ば、¥にゐ/の−あま¥せんてい/を¥いだき¥まゐらせ/て、¥うみ/に¥しづみ/し¥ありさま、¥め/も¥くれ、¥こころ/も¥きえ−はて/て、¥わすれ/ん/と¥すれ/ども¥わすら/れ/ず。¥しのば/ん/と¥すれ/ども¥しのば/れ/ず。¥かくて¥いき−のこり/たる¥もの=ども/の、¥をめき−さけび/し¥ありさま/は、¥けうくわん、P366¥だいけうくわん、¥むげん−あび、¥ほのほ/の¥そこ/の¥ざいにん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/こそ¥おぼえ¥さぶらひ/しか。¥さて¥もののふ=ども/の¥あらけ−なき/に¥とらはれ/て、¥のぼり¥さぶらひ/し/ほど/に、¥はりまの−くに¥あかし/の−うら/とかや/に¥つい/て、¥ちと¥まどろみ/たり/し¥ゆめ/に、¥むかし/の¥だいり/に/は¥はるか/に¥まさり/たる¥ところ/に、¥せんてい/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥いちもん/の¥げつけい−うんかく、¥おのおの¥ゆゆし=げ/なる¥れいぎ=ども/にて¥なみ−ゐ/たり。¥みやこ/を¥いで/て¥のち、¥いまだ¥かかる¥ところ/を¥み/ず。『¥ここ/を/ば¥いづく/と¥いふ/ぞ』/と¥とひ¥さぶらひ/しか/ば、¥にゐ/の−あま¥こたへ¥まうし¥さぶらひ/し/は、『¥りうぐうじやう/と¥まうす¥ところ/なり』。『¥さて/は¥めでたき¥ところ/かな。¥この¥くに/に¥く/は¥なき/やらん』/と¥とひ¥さぶらひ/つれ/ば、『¥りうちくきやう/に¥みえ/て¥さぶらふ。¥ごせ¥よくよく¥とぶらは/せ¥たまへ』/と¥まうす/と¥おぼえ/て¥ゆめ¥さめ/ぬ。¥その−のち/は¥いよいよ¥きやう¥よみ¥ねんぶつ−し/て、¥かの¥おん=ぼだい/を¥とぶらひ¥たてまつる。¥これ¥ひとへに¥ろくだう/に¥たがは/じ/と/こそ¥おぼえ¥さぶらへ」/と¥まうさ/せ¥たまへ/ば、¥ほふわう¥おほせ/なり/ける/は、「¥いこく/の¥げんざう−さんざう/は、¥さとり/の¥まへ/に¥ろくだう/を¥み/き。¥わが¥てう/の¥にちざう−しやうにん/は、¥ざわう−ごんげん/の¥おん=ちから/に¥よつ/て、¥ろくだう/を¥み/たり/と/こそ¥うけたまはれ。¥まのあたり¥ごらんぜ/られ/ける/こそ、¥あり−がたう¥さふらへ」/と/ぞ¥おほせ/ける。P367
「ごわうじやう」(『にようゐんしきよ』)S1305¥さる−ほど/に¥じやくくわうゐん/の¥かね/の¥こゑ、¥けふ/も¥くれ/ぬ/と¥うち−しら/れ、¥せきやう¥にし/に¥かたぶけ/ば、¥おん=なごり/は¥つきせ/ず¥おぼしめさ/れ/けれ/ども、¥おん=なみだ/を¥おさへ/て、¥くわんぎよ¥なら/せ¥たまひ/けり。¥にようゐん/は¥いつしか¥むかし/を/や¥おぼしめし−いださ/せ¥たまひ/けん、¥しのび−あへ/ぬ¥おん=なみだ/に、¥そで/の¥しがらみ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥おん=うしろ/を¥はるか/に¥ごらんじ−おくつ/て、¥くわんぎよ/も¥やうやう¥のび/させ¥たまへ/ば、¥おん=あんじつ/に¥いら/せ¥たまひ/て、¥ほとけ/の¥おん=まへ/に¥むかは/せ¥たまひ/て、「¥てんし−しやうりやう、−じやうとう−しやうがく、¥いちもん−ばうこん、¥とんしようぼだい」/と、¥いのり¥まうさ/せ¥たまひ/けり。¥むかし/は¥まづ¥ひんがし/に¥むかは/せ¥たまひ/て、¥いせ−だい−じんぐう、¥しやう−はちまんぐう¥ふし−をがま/せ¥おはしまし、「¥てんし−はうさん¥せんしう−ばんぜい」/と/こそ¥いのり¥まうさ/せ¥たまひ/し/に、¥いま/は¥ひき−かへ/て、¥にし/に¥むかは/せ¥たまひ/て、「¥くわこ−しやうりやう、¥かならず¥いちぶつど/へ」/と、¥いのら/せ¥たまふ/こそ¥かなしけれ。¥にようゐん/は¥いつしか¥むかし¥こひしう/も/や¥おぼしめさ/れ/けん。¥おん=あんじつ/の¥おん=しやうじ/に、¥かう/ぞ¥あそばさ/れ/ける。¥
このごろ/は¥いつ¥ならひ/て/か¥わが¥こころ¥おほみやびと/の¥こひしかる/らん W097¥
いにしへ/も¥ゆめ/に¥なり/に/し¥こと/なれ/ば¥しば/の¥あみど/も¥ひさしから/じ/な W098 
P368¥また¥ご=かう/の¥おん=とも/に¥さぶらは/れ/ける、¥とくだいじの−さだいしやう−さねさだ=こう、¥おん=あんじつ/の¥はしら/に、¥かき−つけ/られ/ける/とかや。¥
いにしへ/は¥つき/に¥たとへ/し¥きみ/なれ/ど¥その¥ひかり¥なき¥み−やまべ/の¥さと W099¥
にようゐん/は¥こ/し−かた¥ゆく−すゑ/の、¥うれしう、¥つらかり/し¥こと=ども、¥おぼしめし−つづけ/て、¥おん=なみだ/に¥むせば/せ¥たまふ¥をりふし、¥やまほととぎす/の¥ふたこゑ¥みこゑ¥おとづれ/て¥とほり/けれ/ば、¥にようゐん、¥
いざ¥さら/ば¥なみだ¥くらべ/ん¥ほととぎす¥われ/も¥うき−よ/に¥ね/を/のみ/ぞ¥なく W100¥
そもそも¥だんのうら/にて、¥いけどり/に¥せ/られ/たり/ける¥にじふ−よ−にん/の¥ひとびと、¥あるひは¥かうべ/を¥はね/て¥おほち/を¥わたさ/れ、¥あるひは¥さいし/に¥わかれ/て¥をんる−せ/らる。¥いけの−だいなごん/の¥ほか/は、¥いち−にん/も¥いのち/を¥いけ/て¥みやこ/に¥おか/ず。¥しじふ−よ−にん/の¥にようばう=たち/の¥おん=こと/は、¥なん/の¥さた/に/も¥およば/ず。¥しんるゐ/に¥したがひ、¥しよえん/に¥つい/て/ぞ¥ましまし/ける。¥しのぶ¥おもひ/は¥つきせ/ね/ども、¥さて/こそ¥なげき/ながら/も¥すごさ/れ/けれ。¥かみ/は¥たま/の−すだれ/の¥うち/まで/も、¥かぜ¥しづか/なる¥いへ/も¥なく、¥しも/は¥しづ/が−ふせや/の¥うち/まで/も、¥ちり¥をさま/れ/る¥やど/も¥なし。¥まくら/を¥ならべ/し¥いもせ/も、¥くもゐ/の¥よそ/に/ぞ¥なり−はつる。¥やしなひ−たて/し¥おやこ/も、¥ゆきかた¥しら/ず¥わかれ/けり。¥これ/は¥にふだう−しやうこく、¥かみ/は¥いちじん/を/も¥おそれ/ず、¥しも/は¥ばんみん/を/も¥かへりみ/ず、¥しざい¥るけい、¥げくわん¥ちやうにん、¥おもふ¥さま/に¥つね/に¥おこなは/れ/し/が¥いたす¥ところ/なり。¥され/ば¥ふそ/の¥ぜんあく/は、¥かならず¥しそん/に¥およぶ/と¥いふ¥こと/は¥うたがひ¥なし/と/ぞ¥みえ/ける。¥かくて¥にようゐん/は¥むなしう¥としつき/を¥おくら/せ¥たまふ/ほど/に、¥れい/なら/ぬ¥おん=ここち¥いで−き/させ¥たまひ/て、P369¥うち−ふさ/せ¥たまひ/し/が、¥ひごろ/より¥おぼしめし−まうけ/たる¥おん=こと/なれ/ば、¥ほとけ/の¥み−て/に¥かけ/られ/たり/ける、¥ごしき/の¥いと/を¥ひかへ/つつ、「¥なむ−さいはう−ごくらく−せかい/の−けうしゆ、−みだによらい、¥ほんぐわん¥あやまち¥たまは/ず/は、¥かならず¥いんぜふ−し¥たまへ」/とて、¥おん=ねんぶつ¥あり/しか/ば、¥だいなごん/の−すけ/の−つぼね、¥あはの−ないし、¥さう/に¥さぶらひ/て、¥いま/を¥かぎり/の¥おん=なごり/の¥をし−さ/に、¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。¥おん=ねんぶつ/の¥おん=こゑ、¥やうやう¥よわら/せ¥ましまし/けれ/ば、¥にし/に¥しうん¥たなびき、¥いぎやう¥しつ/に¥みち/て、¥おんがく¥そら/に¥きこゆ。¥かぎり−ある¥おん=こと/なれ/ば、¥けんきう−にねん−にんぐわつ−ちうじゆん/に、¥いちご¥つひに¥をはら/せ¥たまひ/けり。¥ににん/の¥にようばう=たち/は、¥きさいのみや/の¥おん=くらゐ/より¥つき¥まゐらせ/て、¥かたとき/も¥はなれ¥まゐらせ/ず/して¥さぶらは/れ/しか/ば、¥わかれぢ/の¥おん=とき/も、¥やる¥かた¥なく/ぞ¥おもは/れ/ける。¥この¥にようばう=たち/は、¥むかし/の¥くさ/の¥ゆかり/も、¥みな¥かれ−はて/て、¥よる¥かた/も¥なき¥み/なれ/ども、¥をりをり/の¥おん=ぶつじ、¥いとなみ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥この¥ひとびと/も、¥つひに/は¥りうによ/が¥しやうがく/の¥あと/を¥おひ、¥ゐだいけぶにん/の/ごとく/に、¥みな¥わうじやう/の¥そくわい/を¥とげ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥

 

入力者:荒山慶一

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