平家物語 巻第一  総かな版(元和九年本)
「ぎをんしやうじや」(『ぎをんしやうじや』)S0101 P51¥ぎをん−しやうじや/の¥かね/の¥こゑ、¥しよぎやう−むじやう/の¥ひびき¥あり。¥しやら−さうじゆ/の¥はな/の¥いろ、¥じやうしや−ひつすゐ/の¥ことわり/を¥あらはす。¥おごれ/る¥もの¥ひさしから/ず、¥ただ¥はる/の¥よ/の¥ゆめ/の/ごとし。¥たけき¥ひと/も¥つひに/は¥ほろび/ぬ。¥ひとへに¥かぜ/の¥まへ/の¥ちり/に¥おなじ。¥とほく¥いてう/を¥とぶらふ/に、¥しん/の¥てうかう、¥かん/の¥わうまう、¥りやう/の¥しゆい、¥たう/の¥ろくさん、¥これ=ら/は¥みな¥きうしゆ¥せんくわう/の¥まつりごと/に/も¥したがは/ず、¥たのしみ/を¥きはめ、¥いさめ/を/も¥おもひ−いれ/ず、¥てんが/の¥みだれ/ん¥こと/を/も¥さとら/ず/して、¥みんかん/の¥うれふる¥ところ/を¥しら/ざり/しか/ば、¥ひさしから/ず/して、¥ばうじ/に/し¥もの=ども/なり。¥ちかく¥ほんてう/を¥うかがふ/に、¥しようへい/の¥まさかど、¥てんぎやう/の¥すみとも、¥かうわ/の¥ぎしん、¥へいぢ/の¥しんらい、¥これ=ら/は¥おごれ/る¥こと/も¥たけき¥こころ/も、¥みな¥とりどり/なり/しか/ども、¥まぢかく/は¥ろくはら/の−にふだう−さきの−だいじやうだいじん−たひらの−あそん−きよもり=こう/と¥まうし/し¥ひと/の¥ありさま、¥つたへ−うけたまはる/こそ、¥こころ/も¥ことば/も¥およば/れ/ね。¥その¥せんぞ/を¥たづぬれ/ば、¥くわんむ−てんわう¥だいご/の¥わうじ、¥いつぽんしきぶきやう−かづらはらの−しんわう¥くだい/のP52¥こういん、¥さぬきの−かみ−まさもり/が¥そん、¥ぎやうぶきやう−ただもりの−あそん/の¥ちやくなん/なり。¥かの¥しんわう/の¥みこ¥たかみの−わう¥むくわん¥むゐ/に/して¥うせ¥たまひ/ぬ。¥その¥おん=こ¥たかもちの−わう/の¥とき、¥はじめて¥たひら/の¥しやう/を¥たまはつ/て、¥かづさの−すけ/に¥なり¥たまひ/し/より¥この−かた、¥たちまちに¥わうし/を¥いで/て¥じんしん/に¥つらなる。¥その¥こ¥ちんじゆふ/の−しやうぐん−よしもち、¥のち/に/は¥くにか/と¥あらたむ。¥くにか/より¥まさもり/に¥いたる/まで¥ろくだい/は、¥しよ−こく/の¥じゆりやう/たり/しか/ども、¥てんじやう/の¥せんせき/を/ば¥いまだ¥ゆるさ/れ/ず。
「てんじやうのやみうち」(『てんじやうのやみうち』)S0102¥しかる/に¥ただもり、¥いまだ¥びぜんの−かみ/たり/し¥とき、¥とばのゐん/の¥ご=ぐわん、¥とくぢやうじゆ−ゐん/を¥ざうしん−し/て、¥さんじふさんげん/の¥み=だう/を¥たて、¥いつせんいつたい/の¥おん=ほとけ/を¥すゑ¥たてまつら/る。¥くやう/は¥てんじよう−ぐわんねん−さんぐわつ−じふさんにち/なり。¥けんじやう/に/は¥けつこく/を¥たまふ/べき¥よし¥おほせ−くださ/れ/ける。¥をりふし¥たじまの−くに/の¥あき/たり/ける/を/ぞ¥くださ/れ/ける。¥しやうくわう¥なほ¥ぎよ=かん/の¥あまり/に、¥うち/の¥しようでん/を¥ゆるさ/る。¥ただもり¥さんじふろく/にて¥はじめて¥しようでん−す。¥くものうへびと¥これ/を¥そねみ¥いきどほり、¥おなじき−とし/の−じふいちぐわつ−にじふさんにち、¥ごせつ−とよのあかり/の−せちゑ/の¥よ、¥ただもり/を¥やみうち/に¥せ/ん/と/ぞ¥ぎ−せ/られ/ける。¥ただもり、¥この¥よし/を¥つたへ−きい/て、「¥われ¥いうひつ/の¥み/に¥あら/ず、¥ぶよう/の¥いへ/に¥むまれ/て、¥いま¥ふりよ/の¥はぢ/に¥あは/ん¥こと、P53¥いへ/の¥ため、¥み/の¥ため¥こころ−うかる/べし。¥せんずる−ところ、¥み/を¥まつたう−し/て¥きみ/に¥つかへ¥たてまつれ/と¥いふ¥ほんもん¥あり」/とて、¥かねて¥ようい/を¥いたす。¥さんだい/の¥はじめ/より、¥おほき/なる¥さやまき/を¥ようい−し、¥そくたい/の¥した/に¥しどけな=げ/に¥さし−ほらし、¥ひ/の¥ほの−ぐらき¥かた/に¥むかつ/て、¥やはら¥この¥かたな/を¥ぬき−いだい/て、¥びん/に¥ひき−あて/られ/たり/ける/が、¥よそ/より/は、¥こほり/など/の¥やう/に/ぞ¥みえ/ける。¥しよにん¥め/を¥すまし/けり。¥また¥ただもり/の¥らうどう、¥もとは¥いちもん/たり/し¥たひらの−むくの−すけ−さだみつ/が¥まご、¥しんの−さぶらう−だいふ−いへふさ/が¥こ/に、¥さひやうゑ/の−じよう−いへさだ/と¥いふ¥もの¥あり。¥うすあを/の¥かりぎぬ/の¥した/に、¥もよぎ−をどし/の−はらまき/を¥き、¥つるぶくろ¥つけ/たる¥たち¥わき−ばさん/で、¥てんじやう/の¥こには/に¥かしこまつ/て/ぞ¥さぶらひ/ける。¥くわんじゆ¥いげ、¥あやしみ/を¥なし/て、「¥うつほばしら/より¥うち、¥すず/の¥つな/の¥へん/に、¥ほうい/の¥もの/の¥さぶらふ/は¥なにもの/ぞ。¥らうぜき/なり。¥とうとう¥まかり−いでよ」/と、¥ろくゐ/を¥もつて¥いは/せ/られ/たり/けれ/ば、¥いへさだ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥さうでん/の¥しゆ¥びぜんの−かう/の=との/の¥こんや¥やみうち/に¥せ/られ¥たまふ/べき¥よし¥うけたまはつ/て、¥その¥なら/ん¥やう/を¥み/ん/とて、¥かくて¥さぶらふ/なり。¥え/こそ¥いづ/まじ」/とて、¥また¥かしこまつ/て/ぞ¥さぶらひ/ける。¥これ=ら/を¥よし−なし/と/や¥おもは/れ/けん、¥その¥よ/の¥やみうち¥なかり/けり。¥
ただもり¥また¥ごぜん/の¥めし/に¥まは/れ/ける/に、¥ひとびと¥ひやうし/を¥かへ/て、「¥いせ−へいじ/は¥すがめ/なり/けり」/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく、¥この¥ひとびと/は¥かしはばらの−てんわう/の¥おん=すゑ/と/は¥まうし/ながら、¥なかごろ/は¥みやこ/の¥すまひ/も¥うとうとしく、¥ぢげ/に/のみ¥ふるまひ¥なつ/て、P54¥いせの−くに/に¥ぢうこく¥ふかかり/しか/ば、¥その¥くに/の¥うつはもの/に¥こと−よせ/て、¥いせ−へいじ/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。¥その−うへ¥ただもり/の¥め/の¥すがま/れ/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥かやう/に/は¥はやさ/れ/ける/なれ。¥ただもり¥いか/に−す/べき¥やう/も¥なく/して、¥ぎよ=いう/も¥いまだ¥をはら/ざる¥さき/に、¥ごぜん/を¥まかり−いで/らるる/とて、¥ししんでん/の¥ごご/に/して、¥ひとびと/の¥み/られ/ける¥ところ/にて、¥よこだへ¥ささ/れ/たり/ける¥こし/の¥かたな/を/ば、¥とのもづかさ/に¥あづけ−おき/て/ぞ¥いで/られ/ける。¥いへさだ、¥まち−うけ¥たてまつ/て、「¥さて¥いかが¥さふらひ/つる/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥かう/と/も¥いは/まほしう/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥まさしう¥いひ/つる/ほど/なら/ば、¥やがて¥てんじやう/まで/も¥きり−のぼら/んずる¥もの/の¥つらだましひ/にて¥ある¥あひだ、「¥べつ/の¥こと¥なし」/と/ぞ¥こたへ/られ/ける。¥ごせつ/に/は、「¥しろうすやう、¥こぜんじ/の¥かみ、¥まきあげ/の¥ふで、¥ともゑ¥かい/たる¥ふで/の¥ぢく」/なんど、¥いふ、¥さまざま¥かやう/に¥おもしろき¥こと/を/のみ/こそ¥うたひ¥まは/るる/に、¥なかごろ¥ださい/の−ごん/の−そつ−すゑなかの−きやう/と¥いふ¥ひと¥あり/けり。¥あまり/に¥いろ/の¥くろかり/けれ/ば、¥とき/の−ひと、¥こくそつ/と/ぞ¥まうし/ける。¥この¥ひと¥いまだ¥くらんど/の−とう/なり/し¥とき、¥ごぜん/の¥めし/に¥まは/れ/ける/に、¥ひとびと¥ひやうし/を¥かへ/て、「¥あな¥くろくろ、¥くろき¥とう/かな。¥いか/なる¥ひと/の¥うるし¥ぬり/けん」/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。¥また¥くわざんのゐん/の−さきの−だいじやうだいじん−ただまさ=こう、¥いまだ¥じつさい/なり/し¥とき、¥ちち¥ちうなごん−ただむねの−きやう/に¥おくれ¥たまひ/て、¥みなしご/にて¥おはし/ける/を、¥こ=なかのみかど/の−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥はりまの−かみ/にて¥おはし/ける/が、¥むこ/に¥とつ/て、¥はなやか/に¥もてなさ/れ/しか/ば、¥これ/も¥ごせつ/に/は、「¥はりまよね/は¥とくさ/か、¥むく/の−は/か、¥ひと/の¥きら/をP55¥みがく/は」/と/ぞ¥はやさ/れ/ける。「¥しやうこ/に/は¥かやう/の¥こと=ども¥おほかり/しか/ども、¥こと¥いで−こ/ず。¥まつだい¥いかが¥あら/んず/らん、¥おぼつかなし/と/ぞ¥ひとびと¥まうし−あは/れ/ける。¥
あん/の/ごとく¥ごせつ¥はて/に/しか/ば、¥ゐん−ぢう/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥いちどう/に¥うつたへ¥まうさ/れ/ける/は、「¥それ¥ゆうけん/を¥たいし/て¥くえん/に¥れつし、¥ひやうぢやう/を¥たまはつ/て¥きうちう/を¥しゆつにふ−する/は、¥みな¥これ¥きやくしき/の¥れい/を¥まもる、¥りんめい¥よし−ある¥せんぎ/なり。¥しかる/を¥ただもりの−あそん、¥あるひは¥ねんらい/の¥らうじう/と¥かうし/て、¥ほうい/の¥つはもの/を¥てんじやう/の¥こには/に¥めし−おき、¥あるひは¥こし/の¥かたな/を¥よこだへ¥さい/て、¥せちゑ/の¥ざ/に¥つらなる。¥りやうでう¥きたい¥いまだ¥きか/ざる¥らうぜき/なり。¥こと¥すでに¥ちようでふ−せ/り。¥ざいくわ¥もつとも¥のがれ−がたし。¥はやく¥てんじやう/の¥みふだ/を¥けづつ/て、¥けつくわん¥ちやうにん¥おこなは/る/べき/か」/と、¥しよきやう¥いちどう/に¥うつたへ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥しやうくわう¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、¥ただもり/を¥ごぜん/へ¥めし/て¥おん=たづね¥あり。¥ちんじ¥まうさ/れ/ける/は、「¥まづ¥らうじう¥こには/に¥しこう/の¥よし、¥まつたく¥かくご¥つかまつら/ず。¥ただし¥きんじつ¥ひとびと¥あひ−たくま/るる¥むね、¥しさい¥ある/か/の¥あひだ、¥ねんらい/の¥けにん、¥こと/を¥つたへ−きく/か/に¥よつ/て、¥その¥はぢ/を¥たすけ/ん/が¥ため/に、¥ただもり/に/は¥しらせ/ず/して,¥ひそか/に¥さんこう/の¥でう、¥ちから¥およば/ざる¥しだい/なり。¥もし¥とが¥ある/べく/は、¥かの¥み/を¥めし−しんず/べき/か。¥つぎに¥かたな/の¥こと/は、¥とのもづかさ/に¥あづけ−おき¥さふらひ−をはん/ぬ。¥これ/を¥めし−いださ/れ、¥かたな/の¥じつぷ/に¥よつ/て、¥とが/の¥さう¥おこなは/る/べき/か」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし/とて、¥いそぎ¥かの¥かたな/を¥めし−いだい/て¥えいらん¥ある/に、¥うへ/は¥さやまき/の¥くろう¥ぬつ/たり/ける/が、¥なか/は¥き−がたな/に¥ぎんぱく/を/ぞ¥おい/たり/ける。「¥たうざ/の¥ちじよく/を¥のがれ/ん/がP56¥ため/に、¥かたな/を¥たいする¥よし¥あらはす/と¥いへ/ども、¥ごにち/の¥そしよう/を¥ぞんぢ−し/て、¥き−がたな/を¥たいし/ける¥ようい/の¥ほど/こそ¥しんべう/なれ。¥きうせん/に¥たづさはら/ん/ほど/の¥もの/の¥はかりごと/に/は、¥もつとも¥かう/こそ¥あら/まほしけれ。¥かねては¥また¥らうじう¥こには/に¥しこう/の¥こと、¥かつうは¥ぶし/の¥らうどう/の¥ならひ/なり。¥ただもり/が¥とが/に/は¥あら/ず」/とて、¥かへつて¥えいかん/に¥あづかつ/し¥うへ/は、¥あへて¥ざいくわ/の¥さた/は¥なかり/けり。

「すずき」(『すずき』)S0103¥その¥こども/は¥みな¥しよゑ/の−すけ/に¥なる。¥しようでん−せ/し/に、¥てんじやう/の¥まじはり/を¥ひと¥きらふ/に¥およば/ず。¥ある−とき¥ただもり、¥びぜんの−くに/より¥のぼら/れ/たり/ける/に、¥とばのゐん「¥あかし/の−うら/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば¥ただもり¥かしこまつ/て、¥
ありあけ/の−つき/も¥あかし/の¥うらかぜ/に¥なみ/ばかり/こそ¥よる/と¥みえ/しか W001
/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゐん¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥やがて¥この¥うた/を/ば、¥きんえふしふ/に/ぞ¥いれ/られ/ける。¥ただもり、¥また¥せんとう/に¥さいあい/の¥にようばう/を¥もつ/て¥よなよな¥かよは/れ/ける/が、¥ある¥よ¥おはし/たり/ける/に、¥かの¥にようばう/の¥つぼね/に、¥つま/に¥つき¥いだし/たる¥あふぎ/を¥とり−わすれ/て、¥いで/られ/たり/けれ/ば、P57¥かたへ/の¥にようばう=たち、「¥これ/は¥いづく/より/の¥つきかげ/ぞ/や、¥いでどころ¥おぼつかなし」/など、¥わらひ−あは/れ/けれ/ば、¥かの¥にようばう、¥
くもゐ/より¥ただ¥もり−き/たる¥つき/なれ/ば¥おぼろ=げ/にて/は¥いは/じ/と/ぞ¥おもふ W002
/と¥よみ/たり/けれ/ば、¥いとど¥あさから/ず/ぞ¥おもは/れ/ける。¥さつまの−かみ−ただのり/の¥はは¥これ/なり。¥にる/を¥とも/とかや/の¥ふぜい/にて、¥ただもり/の¥すい/たり/けれ/ば、¥かの¥にようばう/も¥いう/なり/けり。¥
かくて¥ただもり、¥ぎやうぶきやう/に¥なつ/て、¥にんぺい−さんねん−しやうぐわつ−じふごにち、¥とし¥ごじふはち/にて¥うせ¥たまひ/しか/ば、¥きよもり¥ちやくなん/たる/に¥よつ/て、¥その¥あと/を¥つぎ、¥はうげん−ぐわんねん−しちぐわつ/に、¥うぢの−さふ、¥よ/を¥みだり¥たまひ/し¥とき、¥み=かた/にて¥さき/を¥かけ/たり/けれ/ば、¥けんじやう¥おこなは/れ/けり。¥もと/は¥あきの−かみ/たり/し/が、¥はりまの−かみ/に¥うつつ/て、¥おなじき−さんねん/に¥だざい/の−だいに/に¥なる。¥また¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥のぶより¥よしとも/が¥むほん/の¥とき/も、¥み=かた/にて¥ぞくと/を¥うち−たひらげ/たり/しか/ば、¥くんこう¥ひとつ/に¥あら/ず、¥おんしやう¥これ¥おもかる/べし/とて、¥つぎ/の¥とし¥じやう−ざんみ/に¥じよ−せ/られ、¥うち−つづき¥さいしやう、¥ゑふ/の−かみ、¥けんびゐし/の−べつたう、¥ちうなごん、¥だいなごん/に¥へ−あがつ/て、¥あまつさへ¥しようじやう/の¥くらゐ/に¥いたる。¥さう/を¥へ/ず/して、¥ないだいじん/より¥だいじやうだいじん−じゆ−いちゐ/に¥いたり、¥だいしやう/に/は¥あら/ね/ども、¥ひやうぢやう/を¥たまはつ/て¥ずゐじん/を¥めし−ぐす。¥ぎつしや¥れんじや/の¥せんじ/を¥かうぶつ/て、¥のり/ながら¥きうちう/を¥しゆつにふ−す。¥ひとへに¥しつせい/の¥しん/の/ごとし。「¥だいじやうだいじん/は¥いちじん/に¥しはん/と/して、¥しかい/に¥ぎけい−せ/り。¥くに/を¥をさめ¥みち/を¥ろんじ、¥いんやう/を¥やはらげ−をさむ。¥その¥ひと/に¥あら/ず/は、¥すなはち¥かけよ/と¥いへ/り。¥そくけつ/の−くわん/と/も¥なづけ/られ/たり。P58¥その¥ひと/なら/で/は¥けがす/べき¥くわん/なら/ね/ども、¥この¥にふだう−しやうこく/は¥いつてん−しかい/を¥たなごころ/の¥うち/に¥にぎり¥たまふ¥うへ/は、¥しさい/に¥およば/ず。¥そもそも¥へいけ¥かやう/に¥はんじやう−せ/られ/ける¥こと/は、¥ひとへに¥くまの−ごんげん/の¥ご=りしやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥その¥ゆゑ/は、¥きよもり¥いまだ¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥いせの−くに¥あの/の−つ/より、¥ふね/にて¥くまの/へ¥まゐら/れ/ける/に、¥おほき/なる¥すずき/の¥ふね/へ¥をどり−いつ/たり/けれ/ば、¥せんだち¥まうし/ける/は、「¥むかし、¥しう/の¥ぶわう/の¥ふね/に/こそ、¥はくぎよ/は¥をどり−いつ/たる/なれ。¥いかさま/に/も¥これ/は¥ごんげん/の¥ご=りしやう/と¥おぼえ¥さふらふ。¥まゐる/べし」/と¥まうし/けれ/ば、¥さ/しも¥じつかい/を¥たもつ/て、¥しやうじん−けつさい/の¥みち/なれ/ども、¥みづから¥てうび−し/て¥わが−み¥くひ、¥いへのこ−らうどう=ども/に/も¥くはせ/らる。¥その¥ゆゑ/に/や¥きちじ/のみ¥うち−つづい/て、¥わが−み¥だいじやうだいじん/に¥いたり、¥しそん/の¥くわんど/も、¥りよう/の¥くも/に¥のぼる/より/は¥なほ¥すみやか/なり。¥くだい/の¥せんじよう/を¥こえ¥たまふ/こそ¥めでたけれ。
「かぶろ」(『かぶろ』)S0104¥かくて¥きよもり=こう、¥にんあん−さんねん−じふいちぐわつ−じふいちにち、¥とし¥ごじふいち/にて¥やまひ/に¥をかさ/れ、¥ぞんめい/の¥ため/に/とて、¥すなはち¥しゆつけにふだう−す。¥ほふみやう/を/ば¥じやうかい/と/こそ¥つき¥たまへ。¥その¥ゆゑ/に/や、¥しゆくびやうP59¥たちどころ/に¥いえ/て¥てんめい/を¥まつたう−す。¥しゆつけ/の¥のち/も、¥えいえう/は¥なほ¥つき/ず/と/ぞ¥みえ/し。¥おのづから¥ひと/の¥したがひ−つき¥たてまつる¥こと/は、¥ふく¥かぜ/の¥くさき/を¥なびかす/ごとく、¥よ/の¥あふげる¥こと/も、¥ふる¥あめ/の¥こくど/を¥うるほす/に¥おなじ。¥ろくはら=どの/の¥ご=いつけ/の¥きんだち/と/だに¥いへ/ば、¥くわそく/も¥えいゆう/も、¥たれ¥かた/を¥ならべ、¥おもて/を¥むかふ¥もの¥なし。¥また¥にふだう−しやうこく/の¥こじうと、¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/の¥のたまひ/ける/は、「¥この¥いちもん/に¥あら/ざら/ん¥もの/は、¥みな¥にんぴにん/たる/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥され/ば¥いか/なる¥ひと/も、¥この¥いちもん/に¥むすぼれ/ん/と/ぞ¥し/ける。¥ゑぼし/の¥ため−やう/より¥はじめ/て、¥えもん/の¥かき−やう/に¥いたる/まで、¥なにごと/も¥ろくはら−やう/と/だに¥いひ/て/しか/ば、¥いつてん−しかい/の¥ひと¥みな¥これ/を¥まなぶ。¥いか/なる¥けんわう¥けんしゆ/の¥おん=まつりごと、¥せつしやう¥くわんばく/の¥ご=せいばい/に/も、¥よ/に¥あまさ/れ/たる/ほど/の¥いたづらもの/など/の、¥かたはら/に¥より−あひ/て、¥なにと−なう¥そしり−かたぶけ¥まうす¥こと/は¥つね/の¥ならひ/なれ/ども、¥この¥ぜんもん¥よざかり/の¥ほど/は、¥いささか¥ゆるがせ/に¥まうす¥もの¥なし。¥その¥ゆゑ/は¥にふだう−しやうこく/の¥はかりごと/に、¥じふしごろく/の¥わらべ/を¥さんびやくにん¥すぐつ/て、¥かみ/を¥かぶろ/に¥きり−まはし、¥あかき¥ひたたれ/を¥きせ/て、¥めし−つかは/れ/ける/が、¥きやう−ぢう/に¥みちみち/て¥わうばん−し/けり。¥おのづから¥へいけ/の¥おん=こと、¥あしざま/に¥まうす¥もの¥あれ/ば、¥いち−にん¥きき−いださ/ぬ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥よたう/に¥ふれ−まはし、¥かの¥いへ/に¥らんにふ−し、¥しざい−ざふぐ/を¥つゐふく−し、¥その¥やつ/を¥からめ/て、¥ろくはら=どの/へ¥ゐ/て¥まゐる。¥され/ば¥め/に¥み、¥こころ/に¥しる/と¥いへ/ども、¥ことば/に¥あらはし/て¥まうす¥もの¥なし。¥ろくはら=どの/の¥かぶろ/と/だに¥いへ/ば、¥みち/を¥すぐる¥むま¥くるま/も、¥みな¥よぎ/て/ぞP60¥とほし/ける。¥きんもん/を¥しゆつにふ−す/と¥いへ/ども、¥しやうみやう/を¥たづね/らるる/に¥およば/ず。¥けいし/の¥ちやうり、¥これ/が¥ため/に¥め/を¥そばむ/と¥みえ/たり。
「わがみのえいぐわ」(『わがみのえいぐわ』)S0105¥わが−み/の¥えいぐわ/を¥きはむる/のみ/なら/ず、¥いちもん¥ともに¥はんじやう−し/て、¥ちやくし¥しげもり、¥ないだいじん/の−さだいしやう、¥じなん¥むねもり、¥ちうなごん/の−うだいしやう、¥さんなん¥とももり、¥さんみ/の−ちうじやう、¥ちやくそん¥これもり、¥しゐ/の−せうしやう、¥すべて¥いちもん/の¥くぎやう¥じふろく−にん、¥てんじやうびと¥さんじふ−よ−にん、¥しよ−こく/の¥じゆりやう、¥ゑふ、¥しよし、¥つがふ¥ろくじふ−よ−にん/なり。¥よ/に/は¥また¥ひと¥なく/ぞ¥みえ/られ/ける。¥むかし¥ならの−みかど/の¥おん=とき、¥じんき−ごねん、¥てうか/に¥ちうゑ/の¥だいしやう/を¥はじめ−おか/る。¥だいどう−しねん/に¥ちうゑ/を¥こんゑ/と¥あらため/られ/し/より¥この−かた、¥きやうだい¥さう/に¥あひ−ならぶ¥こと、¥わづか/に¥さんしかど/なり。¥もんどく−てんわう/の¥おん=とき/は、¥ひだん/に¥よしふさ、¥うだいじん/の−さだいしやう、¥みぎ/に¥よしあふ、¥だいなごん/の−うだいしやう、¥これ/は¥かんゐん/の−さだいじん−ふゆつぎ/の¥おん=こ/なり。¥しゆしやくゐん/の¥ぎよ=う/に/は、¥ひだり/に¥さねより、¥をののみや=どの、¥みぎ/に¥もろすけ、¥くでう=どの、¥ていじん=こう/の¥おん=こ/なり。¥ごれんぜいゐん/の¥おん=とき/は、¥ひだり/に¥のりみち、¥おほにでう=どの、¥みぎ/に¥よりむね、¥ほりかは=どの、¥み=だう/の−くわんばく/の¥おん=こ/なり。¥にでうのゐん/の¥ぎよ=う/に/は、¥ひだり/に¥もとふさ、¥まつ=どの、¥みぎ/に¥かねざね、¥つきのわ=どの、¥ほつしやうじ=どの/の¥おん=こ/なり。¥これ¥みな¥せふろく/のP61¥しん/の¥ご=しそく、¥はんじん/に¥とつ/て/は¥その¥れい¥なし。¥てんじやう/の¥まじはり/を/だに¥きらは/れ/し¥ひと/の¥しそん/にて、¥きんじき、¥ざつぱう/を¥ゆり、¥りようら¥きんしう/を¥み/に¥まとひ、¥だいじん/の−だいしやう/に¥なつ/て¥きやうだい¥さう/に¥あひ−ならぶ¥こと、¥まつだい/と/は¥いひ/ながら、¥ふしぎ/なり/し¥こと=ども/なり。¥その−ほか、¥おん=むすめ¥はち−にん¥おはし/き。¥みな¥とりどり/に¥さいはひ¥たまへ/り。¥いち−にん/は¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう/の¥きたのかた/にて¥おはす/べかり/し/が、¥はつさい/の¥とし¥おん=やくそく/ばかり/にて、¥へいぢ/の¥みだれ¥いご、¥ひき−ちがへ/られ/て、¥くわざんのゐん/の−さだいじん=どの/の¥み=だいばんどころ/に¥なら/せ¥たまひ/て、¥きんだち¥あまた¥ましまし/けり。¥そもそも¥この¥しげのりの−きやう/を¥さくらまちの−ちうなごん/と¥まうし/ける¥こと/は、¥すぐれ/て¥こころ¥すき¥たまへ/る¥ひと/にて、¥つね/は¥よしの/の−やま/を¥こひ/つつ、¥ちやう/に¥さくら/を¥うゑ¥ならべ、¥その¥うち/に¥や/を¥たて/て¥すみ¥たまひ/しか/ば、¥くる¥とし/の¥はる−ごと/に、¥みる¥ひと、¥さくらまち/と/ぞ¥まうし/ける。¥さくら/は¥さい/て¥しちかにち/に¥ちる/を、¥なごり/を¥をしみ、¥あまてるおんがみ/に¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ば/に/や、¥さんしち−にち/まで¥なごり¥あり/けり。¥きみ/も¥けんわう/にて¥ましませ/ば、¥しん/も¥しんとく/を¥かかやかし、¥はな/も¥こころ−あり/けれ/ば、¥はつか/の¥よはひ/を¥たもち/けり。¥
いち−にん/は¥きさき/に¥たた/せ¥たまふ。¥にじふに/にて¥わうじ¥ご=たんじやう¥あつ/て、¥くわうたいし/に¥たち、¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/しか/ば、¥ゐんがう¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥けんれいもんゐん/と/ぞ¥まうし/ける。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ/なる¥うへ、¥てんが/の¥こくも/にて¥ましませ/ば、¥とかう¥まうす/に¥およば/れ/ず。¥いち−にん/は¥ろくでう/の−せつしやう=どの/の¥きたのまんどころ/に¥なら/せ¥たまふ。¥これ/は¥たかくらのゐん¥ございゐ/の¥おん=とき、¥おん=ははしろ/とて、¥じゆんさんごう/の¥せんじ/を¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥しらかは=どの/とて、¥おもき¥ひと/にて/ぞ¥ましまし/ける。P62¥いち−にん/は¥ふげんじ=どの/の¥きたのまんどころ/に¥なら/せ¥たまふ。¥いち−にん/は¥れんぜいの−だいなごん−りうばうの−きやう/の¥きたのかた、¥いち−にん/は¥しちでうの−しゆり/の−だいぶ−のぶたかの−きやう/に¥あひ−ぐし¥たまへ/り。¥また¥あきの−くに¥いつくしま/の−ないし/が¥はら/に¥いち−にん、¥これ/は¥ごしらかはの−ほふわう/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥ひとへに¥にようご/の¥やう/で/ぞ¥ましまし/ける。¥その−ほか¥くでうのゐん/の¥ざふし¥ときは/が¥はら/に¥いち−にん、¥これ/は¥くわざんのゐん=どの/の¥じやうらふ−にようばう/にて、¥らふ/の−おん=かた/と/ぞ¥まうし/ける。¥につぽん¥あきつしま/は¥わづかに¥ろくじふろく−か−こく、¥へいけ¥ちぎやう/の¥くに¥さんじふ−よ−か−こく、¥すでに¥はんごく/に¥こえ/たり。¥その−ほか¥しやうえん、¥でんばく、¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず。¥きら¥じうまん−し/て、¥たうしやう¥はな/の/ごとし。¥けんき¥くんじゆ−し/て、¥もんぜん¥いち/を¥なす。¥やうしう/の¥こがね、¥けいしう/の¥たま、¥ごきん/の¥あや、¥しよつかう/の¥にしき、¥しつちん−まんぽう、¥ひとつ/と/して¥かけ/たる¥こと¥なし。¥かたう−ぶかく/の¥もとゐ、¥ぎよりよう−しやくば/の¥もてあそびもの、¥おそらく/は、¥ていけつ/も¥せんとう/も、¥これ/に/は¥すぎじ/と/ぞ¥みえ/し。¥
「ぎわう」(『ぎわう』)S0106¥だいじやう/の−にふだう/は、¥かやう/に¥てんが/を¥たなごころ/の¥うち/に¥にぎり¥たまひ/し¥うへ/は、¥よ/の¥そしり/を/も¥はばから/ず、¥ひと/の¥あざけり/を/も¥かへりみ/ず、¥ふしぎ/の¥こと/を/のみ¥し¥たまへ/り。¥たとへば、¥その−ころ¥きやう−ぢう/に¥きこえ/たる¥しらびやうし/の¥じやうず、¥ぎわう、¥ぎによ/とて¥おととひ¥あり。¥とぢ/と¥いふP63¥しらびやうし/が¥むすめ/なり。¥しかる/に¥あね/の¥ぎわう/を、¥にふだう−しやうこく¥ちようあい−し¥たまふ¥うへ、¥いもと/の¥ぎによ/を/も、¥よ/の¥ひと¥もてなす¥こと¥なのめ/なら/ず。¥はは¥とぢ/に/も¥よき¥や¥つくつ/て¥とら/せ、¥まい−ぐわつ/に¥ひやく−こく¥ひやく−くわん/を¥おくら/れ/たり/けれ/ば、¥けない¥ふつき−し/て¥たのしい¥こと¥なのめ/なら/ず。¥そもそも¥わが¥てう/に¥しらびやうし/の¥はじまり/ける¥こと/は、¥むかし¥とばのゐん/の¥ぎよ=う/に、¥しまのせんざい、¥わかのまへ、¥かれ=ら¥ににん/が¥まひ−いだし/たり/ける/なり。¥はじめ/は¥すゐかん/に¥たて−ゑぼし、¥しろざやまき/を¥さい/て¥まひ/けれ/ば¥をとこまひ/と/ぞ¥まうし/ける。¥しかる/を¥なかごろ/より¥ゑぼし¥かたな/を¥のけ/られ/て、¥すゐかん/ばかり¥もちひ/たり。¥さて/こそ¥しらびやうし/と/は¥なづけ/けれ。¥きやう−ぢう/の¥しらびやうし=ども、¥ぎわう/が¥さいはひ/の¥めでたき¥やう/を¥きい/て、¥うらやむ¥もの/も¥あり、¥そねむ¥もの/も¥あり。¥うらやむ¥もの=ども/は、「¥あな¥めでた/の¥ぎわう−ごぜん/の¥さいはひ/や。¥おなじ¥あそびめ/と/なら/ば、¥たれ/も¥みな¥あの¥やう/で/こそ¥あり/たけれ。¥いかさま/に/も¥ぎ/と¥いふ¥もじ/を¥な/に¥つい/て、¥かく/は¥めでたき/やらん。¥いざ/や¥われ=ら/も¥つい/て¥み/ん」/とて、¥あるひは¥ぎいち、¥ぎに/と¥つき、¥あるひは¥ぎふく、¥ぎとく/など¥つく¥もの/も¥あり/けり。¥そねむ¥もの=ども/は、「¥なんでふ¥な/に¥より、¥もじ/に/は¥よる/べき。¥さいはひ/は¥ただ¥ぜんぜ/の¥むまれつき/で/こそ¥あん/なれ」/とて、¥つか/ぬ¥もの/も¥おほかり/けり。¥かくて¥さんねん/と¥いふ/に、¥また¥しらびやうし/の¥じやうず、¥いち−にん¥いで−き/たり。¥かがの−くに/の¥もの/なり。¥な/を/ば¥ほとけ/と/ぞ¥まうし/ける。¥とし¥じふろく/と/ぞ¥きこえ/し。¥きやう−ぢう/の¥じやうげ¥これ/を¥み/て、¥むかし/より¥おほく/の¥しらびやうし/は¥み/しか/ども、¥かかる¥まひ/の¥じやうず/は¥いまだ¥み/ず/とて、¥よ/の¥ひと¥もてなすP64¥こと¥なのめ/なら/ず。¥
ある−とき¥ほとけ−ごぜん¥まうし/ける/は、「¥われ¥てんが/に¥もてあそば/るる/と¥いへ/ども、¥たうじ¥めでたう¥さかえ/させ¥たまふ¥へいけ−だいじやう/の−にふだう=どの/へ、¥めさ/れ/ぬ¥こと/こそ¥ほい−なけれ。¥あそびもの/の¥ならひ、¥なに/か¥くるしかる/べき。¥すゐさん−し/て¥み/ん」/とて、¥ある−とき¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥ひと¥ごぜん/に¥まゐつ/て、「¥たうじ¥みやこ/に¥きこえ¥さふらふ¥ほとけ−ごぜん/が¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥おほき/に¥いかつ/て、「¥なんでふ、¥さやう/の¥あそびもの/は、¥ひと/の¥めし/にて/こそ¥まゐる¥もの/なれ、¥さう−なう¥すゐさん−する¥やう/や¥ある。¥その−うへ、¥かみ/と/も¥いへ、¥ほとけ/と/も¥いへ、¥ぎわう/が¥あら/んずる¥ところ/へ/は¥かなふ/まじき/ぞ。¥とうとう¥まかり−いでよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ほとけ−ごぜん/は、¥すげなう¥いは/れ¥たてまつ/て、¥すでに¥いで/ん/と¥し/ける/を、¥ぎわう¥にふだう=どの/に¥まうし/ける/は、「¥あそびもの/の¥すゐさん/は、¥つね/の¥ならひ/で/こそ¥さぶらへ。¥その−うへ¥とし/も¥いまだ¥をさなう¥さぶらふ/なる/が、¥たまたま¥おもひ−たつ/て¥まゐつ/て¥さぶらふ/を、¥すげなう¥おほせ/られ/て、¥かへさ/せ¥たまは/ん/こそ¥ふびん/なれ。¥いか/ばかり¥はづかしう、¥かたはらいたく/も¥さぶらふ/らん。¥わが¥たて/し¥みち/なれ/ば、¥ひと/の¥うへ/と/も¥おぼえ/ず。¥たとひ¥まひ/を¥ごらんじ、¥うた/を/こそ¥きこしめさ/ず/とも、¥ただ¥り/を¥まげ/て、¥めし−かへい/て¥ご=たいめん/ばかり¥さぶらひ/て、¥かへさ/せ¥たまは/ば、¥あり−がたき¥おん=なさけ/で/こそ¥さぶらは/んずれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥いでいで¥さら/ば、¥わ−ごぜ/が¥あまり/に¥いふ¥こと/なる/に、¥たいめん−し/て¥かへさ/ん」/とて、¥お=つかひ/を¥たて/て、¥めさ/れ/けり。¥ほとけ−ごぜん/は、¥すげなう¥いは/れ¥たてまつ/て、¥くるま/に¥のつ/て¥すでに¥いで/ん/とP65¥し/ける/が、¥めさ/れ/て¥かへり−まゐり/たり。¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん−し¥たまひ/て、「¥いか/に¥ほとけ、¥けふ/の¥げんざん/は¥ある/まじかり/つれ/ども、¥ぎわう/が¥なに/と¥おもふ/やらん、¥あまり/に¥まうし−すすむる¥あひだ、¥かやう/に¥げんざん/は¥し/つ。¥げんざん−する¥うへ/で/は¥いかで/か¥こゑ/を/も¥きか/で¥ある/べき。¥まづ¥いまやう¥ひとつ¥うたへ/かし」/と¥のたまへ/ば、¥ほとけ−ごぜん、「¥うけたまはり¥さぶらふ」/とて、¥いまやう¥ひとつ/ぞ¥うたう/たる。¥
きみ/を¥はじめて¥みる¥とき/は¥ちよ/も¥へ/ぬ/べし¥ひめこまつ¥
お=まへ/の¥いけ/なる¥かめをか/に¥つる/こそ¥むれ−ゐ/て¥あそぶ/めれ
/と、¥おし−かへし−おし−かへし、¥さんべん¥うたひ−すまし/たり/けれ/ば、¥けんもん/の¥ひとびと、¥みな¥じぼく/を¥おどろか/す。¥にふだう/も¥おもしろき¥こと/に¥おもひ¥たまひ/て、「¥さて¥わ−ごぜ/は、¥いまやう/は¥じやうず/にて¥あり/ける/や。¥この¥ぢやう/で/は¥まひ/も¥さだめて¥よから/ん。¥いちばん¥み/ばや、¥つづみ¥うち−めせ」/とて¥めさ/れ/けり。¥うた/せ/て¥いちばん¥まう/たり/けり。¥ほとけ−ごぜん/は、¥かみ¥すがた/より¥はじめ/て、¥みめ−かたち¥よ/に¥すぐれ、¥こゑ¥よく¥ふし/も¥じやうず/なり/けれ/ば、¥なじか/は¥まひ/は¥そんず/べき。¥こころ/も¥およば/ず¥まひ−すまし/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥まひ/に¥めで¥たまひ/て、¥ほとけ/に¥こころ/を¥うつさ/れ/けり。¥ほとけ−ごぜん、「¥こ/は¥なにごと/にて¥さぶらふ/ぞ/や。¥もと/より¥わらは/は¥すゐさん/の¥もの/にて、¥すでに¥いださ/れ¥まゐらせ/し/を、¥ぎわう−ごぜん/の¥まうしじやう/に¥よつ/て/こそ、¥めし−かへさ/れ/て/も¥さぶらふ。¥はやはや¥いとま¥たまはつ/て、¥いださ/せ¥おはしませ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥すべて¥その¥ぎ¥かなふ/まじ。¥ただし¥ぎわう/が¥ある/にP66¥よつ/て、¥さやう/に¥はばかる/か。¥その¥ぎ/なら/ば¥ぎわう/を/こそ¥いださ/め」/と¥のたまへ/ば、¥ほとけ−ごぜん、「¥これ¥また¥いかで¥さる−おん=こと¥さぶらふ/べき。¥とも/に¥めし−おか/れ/ん/だに、¥はづかしう¥さぶらふ/べき/に、¥ぎわう−ごぜん/を¥いださ/せ¥たまひ/て、¥わらは/を¥いち−にん¥めし−おか/れ/な/ば、¥ぎわう−ごぜん/の¥おもひ¥たまは/ん¥こころ/の¥うち、¥いか/ばかり¥はづかしう、¥かたはらいたく/も¥さぶらふ/べき。¥おのづから¥のち/まで/も¥わすれ¥たまは/ぬ¥おん=こと/なら/ば、¥めさ/れ/て¥また/は¥まゐる/とも、¥けふ/は¥いとま/を¥たまはら/ん」/と/ぞ¥まうし/ける。¥にふだう、「¥その¥ぎ/なら/ば、¥ぎわう¥とうとう¥まかり−いで/よ」/と、¥お=つかひ¥かさね/て¥さんど/まで/こそ¥たて/られ/けれ。¥ぎわう/は¥もと/より¥おもひ−まうけ/たる¥みち/なれ/ども、¥さすが¥きのふ¥けふ/と/は¥おもひ/も¥よら/ず。¥にふだう−しやうこく、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし、¥しきり/に¥のたまふ¥あひだ、¥はき−のごひ、¥ちり¥ひろは/せ、¥いづ/べき/に/こそ¥さだめ/けれ。¥いちじゆ/の¥かげ/に¥やどり−あひ、¥おなじ¥ながれ/を¥むすぶ/だに、¥わかれ/は¥かなしき¥ならひ/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は¥みとせ/が¥あひだ¥すみ−なれ/し¥ところ/なれ/ば、¥なごり/も¥をしく¥かなしく/て、¥かひ−なき¥なみだ/ぞ¥すすみ/ける。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥ぎわう¥いま/は¥かう/とて¥いで/ける/が、¥なから/ん¥あと/の¥わすれ−がたみ/に/も/と/や¥おもひ/けん、¥しやうじ/に¥なくなく¥いつしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/ける。¥
もえ−いづる/も¥かるる/も¥おなじ¥のべ/の¥くさ¥いづれ/か¥あき/に¥あは/で¥はつ/べき W003
¥さて¥くるま/に¥のつ/て¥しゆくしよ/へ¥かへり、¥しやうじ/の¥うち/に¥たふれ−ふし、¥ただ¥なく/より¥ほか/の¥こと/ぞ¥なき。¥はは/や¥いもと¥これ/を¥み/て、¥いか/に/や−いか/に/と¥とひ/けれ/ども、¥ぎわう¥とかう/の¥へんじ/に/もP67¥およば/ず、¥ぐし/たる¥をんな/に¥たづね/て/こそ、¥さる−こと¥あり/と/も¥しつ/てげれ。¥さる−ほど/に¥まい−ぐわつ¥おくら/れ/ける¥ひやく−こく¥ひやく−くわん/を/も¥おし−とめ/られ/て、¥いま/は¥ほとけ−ごぜん/の¥ゆかり/の¥もの=ども/ぞ、¥はじめて¥たのしみ−さかえ/ける。¥きやう−ぢう/の¥じやうげ、¥この¥よし/を¥つたへ−きい/て、「¥まこと/や¥ぎわう/こそ、¥にしはちでう=どの/より¥いとま¥たまはつ/て¥いださ/れ/たん/なれ。¥いざや¥げんざん−し/て¥あそば/ん」/とて、¥あるひは¥ふみ/を¥つかはす¥もの/も¥あり、¥あるひは¥ししや/を¥たつる¥ひと/も¥あり/けれ/ども、¥ぎわう、¥いまさら¥また¥ひと/に¥たいめん−し/て、¥あそび−たはむる/べき/に/も¥あら/ね/ば/とて、¥ふみ/を/だに¥とり−いるる¥こと/も¥なく、¥まして¥つかひ/を¥あひ−しらふ/まで/も¥なかり/けり。¥ぎわう¥これ/に¥つけ/て/も、¥いとど¥かなしく/て、¥かひ−なき¥なみだ/ぞ¥こぼれ/ける。¥かくて¥ことし/も¥くれ/ぬ。¥あくる¥はる/に/も¥なり/しか/ば、¥にふだう−しやうこく、¥ぎわう/が¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥いか/に¥ぎわう、¥その−のち/は¥なにごと/か¥ある。¥ほとけ−ごぜん/が¥あまり/に¥つれづれ=げ/に¥みゆる/に、¥まゐつ/て¥いまやう/を/も¥うたひ、¥まひ/など/を/も¥まう/て、¥ほとけ¥なぐさめよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぎわう¥とかう/の¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥ふし/に/けり。¥にふだう¥かさね/て、「¥なに/とて¥ぎわう/は、¥と/も−かう/も¥へんじ/を/ば¥まうさ/ぬ/ぞ。¥まゐる/まじき/か。¥まゐる/まじく/は、¥その¥やう/を¥まうせ。¥じやうかい/も¥はからふ¥むね¥あり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥はは¥とぢ¥これ/を¥きく/に¥かなしく/て、¥なくなく¥けうくん−し/ける/は、「¥なに/とて¥ぎわう/は¥と/も−かう/も¥おん=ぺんじ/を/ば¥まうさ/で、¥かやう/に¥しから/れ¥まゐらせ/ん/より/は」/と¥いへ/ば、¥ぎわう¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥まゐら/ん/と¥おもふ¥みち/なら/ば/こそ、¥やがて¥まゐる/べし/と/も¥まうす/べけれ。P68¥なかなか¥まゐら/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥なに/と¥おん=ぺんじ/を/ば¥まうす/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥この−たび¥めさ/ん/に¥まゐら/ず/は、¥はからふ¥むね¥あり/と¥おほせ/らるる/は、¥さだめて¥みやこ/の¥ほか/へ¥いださ/るる/か、¥さら/ず/は¥いのち/を¥めさ/るる/か、¥これ¥ふたつ/に/は¥よも¥すぎ/じ。¥たとひ¥みやこ/を¥いださ/るる/とも、¥なげく/べき¥みち/に¥あら/ず。¥また¥いのち/を¥めさ/るる/とも¥をしかる/べき¥わが−み/かは。¥いちど¥うき¥もの/に¥おもは/れ¥まゐらせ/て、¥ふたたび¥おもて/を¥むかふ/べし/と/も¥おぼえ/ず」/とて、¥なほ¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ざり/しか/ば、¥はは¥とぢ¥なくなく¥また¥けうくん−し/ける/は、「¥あめ/が¥した/に¥すま/ん/に/は、¥と/も−かう/も¥にふだう=どの/の¥おほせ/を/ば、¥そむく/まじき¥こと/にて¥ある/ぞ。¥その−うへ¥わ−ごぜ/は、¥をとこ¥をんな/の¥えん、¥しゆくせ、¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/ぞ/かし。¥せんねん¥まんねん/と/は¥ちぎれ/ども、¥やがて¥わかるる¥なか/も¥あり。¥あからさま/と/は¥おもへ/ども、¥ながらへ−はつる¥こと/も¥あり。¥よ/に¥さだめ¥なき¥もの/は、¥をとこ¥をんな/の¥ならひ/なり。¥いはんや¥わ−ごぜ/は、¥この¥みとせ/が¥あひだ¥おもは/れ¥まゐらせ/たれ/ば、¥あり−がたき¥おん=なさけ/で/こそ¥さぶらへ。¥この−たび¥めさ/ん/に¥まゐら/ね/ば/とて、¥いのち/を¥めさ/るる/まで/は¥よも¥あら/じ。¥さだめて¥みやこ/の¥ほか/へ/ぞ¥いださ/れ/んず/らん。¥たとひ¥みやこ/を¥いださ/るる/とも、¥わ−ごぜ=たち/は¥とし¥いまだ¥わかけれ/ば、¥いか/なら/ん¥いはき/の¥はざま/にて/も、¥すごさ/ん¥こと¥やすかる/べし。¥わが−み/は¥としおい¥よはひ¥おとろへ/たれ/ば、¥ならは/ぬ¥ひな/の¥すまひ/を、¥かねて¥おもふ/こそ¥かなしけれ。¥ただ¥われ/を/ば¥みやこ/の¥うち/にて¥すみ−はて/させよ。¥それ/ぞ¥こんじやう¥ごしやう/の¥けうやう/にて¥あら/んずる/ぞ」/と¥いへ/ば、¥ぎわう¥まゐら/じ/と¥おもひ−さだめ/し¥みち/なれ/ども、¥はは/の¥めい/を¥そむか/じ/とて、¥なくなく¥また¥いで−たち/ける、P69¥こころ/の¥うち/こそ¥むざん/なれ。¥
ぎわう¥ひとり¥まゐら/ん¥こと/の、¥あまり/に¥こころ−うし/とて、¥いもと/の¥ぎによ/を/も¥あひ−ぐし/けり。¥その−ほか¥しらびやうし¥ににん、¥そうじて¥しにん、¥ひとつ¥くるま/に¥とり−のつ/て、¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥ひごろ¥めさ/れ/つる¥ところ/へ/は¥いれ/られ/ず/して、¥はるか/に¥さがり/たる¥ところ/に、¥ざしき¥しつらう/て/ぞ¥おか/れ/ける。¥ぎわう、「¥こ/は¥され/ば¥なにごと/ぞ/や。¥わが−み/に¥あやまつ¥こと/は¥なけれ/ども、¥いださ/れ¥まゐらする/だに¥ある/に、¥あまつさへ¥ざしき/を/だに¥さげ/らるる¥こと/の¥くちをし−さ/よ。¥いか/に−せ/ん」/と¥おもふ/を、¥ひと/に¥しらせ/じ/と、¥おさふる¥そで/の¥ひま/より/も、¥あまり/て¥なみだ/ぞ¥こぼれ/ける。¥ほとけ−ごぜん¥これ/を¥み/て、¥あまり/に¥あはれ/に¥おぼえ/けれ/ば、¥にふだう=どの/に¥まうし/ける/は、「¥あれ/は¥いか/に、¥ぎわう/と/こそ¥み¥まゐらせ¥さぶらへ。¥ひごろ¥めさ/れ/ぬ¥ところ/にて/も¥さぶらは/ば/こそ。¥これ/へ¥めさ/れ¥さぶらへ/かし。¥さら/ず/は¥わらは/に¥いとま/を¥たべ。¥いで¥まゐらせ/ん」/と¥まうし/けれ/ども、¥にふだう¥いか/に/も¥かなふ/まじき/と¥のたまふ¥あひだ、¥ちから¥およば/で¥いで/ざり/けり。¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん−し¥たまひ/て、「¥いか/に¥ぎわう、¥その−のち/は¥なにごと/か¥ある。¥ほとけ−ごぜん/が¥あまり/に¥つれづれ=げ/に¥みゆる/に、¥いまやう/を/も¥うたひ、¥まひ/なんど/を/も¥まう/て、¥ほとけ¥なぐさめ/よ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぎわう、¥まゐる/ほど/で/は、¥と/も−かく/も¥にふだう=どの/の¥おほせ/を/ば、¥そむく/まじき/ものを/と¥おもひ、¥ながるる¥なみだ/を¥おさへ/つつ、¥いまやう¥ひとつ/ぞ¥うたう/たる。P70¥
ほとけ/も¥むかし/は¥ぼんぶ/なり¥われ=ら/も¥つひ/に/は¥ほとけ/なり¥
いづれ/も¥ぶつしやう¥ぐせ/る¥み/を¥へだつる/のみ/こそ¥かなしけれ
/と、¥なくなく¥にへん¥うたう/たり/けれ/ば、¥その¥ざ/に¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥へいけ¥いちもん/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥しよだいぶ、¥さぶらひ/に¥いたる/まで、¥みな¥かんるゐ/を/ぞ¥もよほさ/れ/ける。¥にふだう/も¥げに/も/と¥おもひ¥たまひ/て、「¥とき/に¥とつ/て/は¥しんべう/に/も¥まうし/たり。¥さて/は¥まひ/も¥み/たけれ/ども、¥けふ/は¥まぎるる¥こと¥いで−き/たり。¥この−のち/は¥めさ/ず/とも¥つねに¥まゐり/て、¥いまやう/を/も¥うたひ、¥まひ/など/を/も¥まう/て、¥ほとけ¥なぐさめよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぎわう¥とかう/の¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥いで/に/けり。¥ぎわう、「¥まゐら/じ/と¥おもひ−さだめ/し¥みち/なれ/ども、¥はは/の¥めい/を¥そむか/じ/と、¥つらき¥みち/に¥おもむい/て、¥ふたたび¥うき¥はぢ/を¥み/つる¥こと/の¥くちをし−さ/よ。¥かくて¥この−よ/に¥ある/なら/ば、¥また/も¥うき−め/に¥あは/んず/らん。¥いま/は¥ただ¥み/を¥なげ/ん/と¥おもふ/なり」/と¥いへ/ば、¥いもうと/の¥ぎによ¥これ/を¥きい/て、「¥あね¥み/を¥なげ/ば、¥われ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/ん」/と¥いふ。¥はは¥とぢ¥これ/を¥きく/に¥かなしく/て、¥なくなく¥また¥かさねて¥けうくん−し/ける/は、「¥さやう/の¥こと¥ある/べし/と/も¥しら/ず/して、¥けうくん−し/て¥まゐらせ/つる¥こと/の¥うらめし−さ/よ。¥まことに¥わ−ごぜ/の¥うらむる/も¥ことわり/なり。¥ただし¥わ−ごぜ/が¥み/を¥なげ/ば、¥いもうと/の¥ぎによ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/ん/と¥いふ。¥わかき¥むすめ=ども/を¥さき−だて/て、¥としおい¥よはひ¥おとろへ/たる¥はは、¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/なれ/ば、¥われ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/んずる/なり。¥いまだ¥しご/も¥き/たら/ぬ¥はは/に、¥み/を¥なげ/させ/んずる¥こと/は、¥ごぎやくざい/にて/やP71¥あら/んず/らん。¥この−よ/は¥かり/の¥やどり/なれ/ば、¥はぢ/て/も−はぢ/て/も¥なに/なら/ず。¥ただ¥ながき¥よ/の¥やみ/こそ¥こころ−うけれ。¥こんじやう/で¥もの/を¥おもは/する/だに¥ある/に、¥ごしやう/で/さへ¥あくだう/へ¥おもむか/んずる¥こと/の¥かなし−さ/よ」/と、¥さめざめ/と¥かき−くどき/けれ/ば、¥ぎわう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥げに/も¥さやう/に¥さぶらは/ば、¥ごぎやくざい¥うたがひ¥なし。¥いつたん¥うき¥はぢ/を¥み/つる¥こと/の¥くちをし−さ/に/こそ、¥み/を¥なげ/ん/と/は¥まうし/たれ。¥さ¥さぶらは/ば¥じがい/を/ば¥おもひ−とどまり¥さぶらひ/ぬ。¥かくて¥みやこ/に¥ある/なら/ば、¥また/も¥うき−め/を¥み/んず/らん。¥いま/は¥ただ¥みやこ/の¥ほか/へ¥いで/ん」/とて、¥ぎわう¥にじふいち/にて¥あま/に¥なり、¥さが/の¥おく/なる¥やまざと/に、¥しば/の¥いほり/を¥ひき−むすび、¥ねんぶつ−し/て/ぞ¥ゐ/たり/ける。¥いもうと/の¥ぎによ¥これ/を¥きい/て、「¥あね¥み/を¥なげ/ば、¥われ/も¥とも/に¥み/を¥なげ/ん/と/こそ¥ちぎり/しか。¥まして¥さやう/に¥よ/を¥いとは/ん/に、¥たれ/か¥おとる/べき」/とて、¥じふく/にて¥さま/を¥かへ、¥あね/と¥いつしよ/に¥こもり−ゐ/て、¥ひとへに¥ごせ/を/ぞ¥ねがひ/ける。¥はは¥とぢ¥これ/を¥きい/て、「¥わかき¥むすめ=ども/だに、¥さま/を¥かふる¥よ/の−なか/に、¥としおい¥よはひ¥おとろへ/たる¥はは、¥しらが/を¥つけ/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん」/とて、¥しじふご/にて¥かみ/を¥そり、¥ふたり/の¥むすめ¥もろとも/に、¥いつかう¥せんじゆ/に¥ねんぶつ−し/て、¥ごせ/を¥ねがふ/ぞ¥あはれ/なる。¥かくて¥はる¥すぎ¥なつ¥たけ/ぬ。¥あき/の¥はつかぜ¥ふき/ぬれ/ば、¥ほしあひ/の¥そら/を¥ながめ/つつ、¥あま/の−と¥わたる¥かぢ/の¥は/に、¥おもふ¥こと¥かく¥ころ/なれ/や。¥ゆふひ/の¥かげ/の¥にし/の¥やま/の¥は/に¥かくるる/を¥み/て/も、¥ひ/の¥いり¥たまふ¥ところ/は、¥さいはう−じやうど/にて/こそ¥あん/なれ。¥いつか¥われ=ら/も¥かしこ/にP72¥むまれ/て、¥もの/も¥おもは/で¥すごさ/んず/らん/と、¥すぎ/に/し¥かた/の¥うき¥こと=ども¥おもひ−つづけ/て、¥ただ¥つきせ/ぬ¥もの/は¥なみだ/なり。¥
たそかれどき/も¥すぎ/ぬれ/ば、¥たけ/の¥あみど/を¥とぢ−ふさぎ、¥ともしび¥かすか/に¥かき−たて/て、¥おやこ¥さん−にん¥もろとも/に¥ねんぶつ−し/て¥ゐ/たる¥ところ/に、¥たけ/の¥あみど/を、¥ほとほと/と¥うち−たたく¥もの¥いで−き/たり。¥その−とき¥あまども¥きも/を¥けし、「¥あはれ、¥これ/は、¥いふ¥かひ−なき¥われ=ら/が¥ねんぶつ−し/て¥ゐ/たる/を¥さまたげ/ん/とて、¥まえん/の¥き/たる/にて/ぞ¥ある/らん。¥ひる/だに/も¥ひと/も¥とひ−こ/ぬ¥やまざと/の、¥しば/の¥いほり/の¥うち/なれ/ば、¥よ¥ふけ/て¥たれ/か/は¥たづぬ/べき。¥わづか/に¥たけ/の¥あみど/なれ/ば、¥あけ/ず/とも¥おし−やぶら/ん¥こと¥やすかる/べし。¥いま/は¥ただ¥なかなか¥あけ/て¥いれ/ん/と¥おもふ/なり。¥それ/に¥なさけ/を¥かけ/ず/して、¥いのち/を¥うしなふ¥もの/なら/ば、¥としごろ¥たのみ¥たてまつる¥みだ/の¥ほんぐわん/を¥つよく¥しんじ/て、¥ひま¥なく¥みやうがう/を¥となへ¥たてまつる/べし。¥こゑ/を¥たづね/て¥むかへ¥たまふ/なる¥しやうじゆ/の¥らいかう/にて¥ましませ/ば、¥など/か¥いんぜふ¥なかる/べき。¥あひ−かまへ/て¥ねんぶつ¥おこたり¥たまふ/な」/と¥たがひ/に¥こころ/を¥いましめ/て、¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥たけ/の¥あみど/を¥あけ/たれ/ば、¥まえん/にて/は¥なかり/けり。¥ほとけ−ごぜん/ぞ¥いで−きたる。¥ぎわう、「¥あれ/は¥いか/に、¥ほとけ−ごぜん/と¥み¥まゐらする/は。¥ゆめ/か/や¥うつつ/か」/と¥いひ/けれ/ば、¥ほとけ−ごぜん¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥かやう/の¥こと¥まうせ/ば、¥すべて¥こと−あたらしう/は¥さぶらへ/ども、¥まうさ/ず/は¥また¥おもひ−しら/ぬ¥み/と/も¥なり/ぬ/べけれ/ば、¥はじめ/より/して、¥こまごま/と¥あり/の−まま/に¥まうす/なり。¥もと/より¥わらは/は¥すゐさん/の¥もの/にて、¥すでに¥いださ/れ¥まゐらせ/し/を、P73¥わ−ごぜ/の¥まうしじやう/に¥よつ/て/こそ、¥めし−かへされ/て/も¥さぶらふ/に、¥をんな/の¥み/の¥いふ¥かひ−なき¥こと、¥わが−み/を¥こころ/に¥まかせ/ず/して、¥わ−ごぜ/を¥いださ/せ¥まゐらせ/て、¥わらは/が¥おし−とどめ/られ/ぬる¥こと、¥いま/に¥はづかしう¥かたはらいたく/こそ¥さぶらへ。¥わ−ごぜ/の¥いで/られ¥たまひ/し/を¥み/し/に¥つけ/て/も、¥いつか¥また¥わが¥み/の−うへ/なら/ん/と¥おもひ−ゐ/たれ/ば、¥うれし/と/は¥さらに¥おもは/ず。¥しやうじ/に¥また、『¥いづれ/か¥あき/に¥あは/で¥はつ/べき』/と¥かき−おき¥たまひ/し¥ふで/の¥あと、¥げに/も/と¥おもひ¥さぶらひ/し/ぞ/や。¥いつ/ぞ/や¥また¥わ−ごぜ/の¥めさ/れ¥まゐらせ/て、¥いまやう/を¥うたひ¥たまひ/し/に/も、¥おもひ−しら/れ/て/こそ¥さぶらへ。¥その−のち/は¥ざいしよ/を¥いづく/と/も¥しら/ざり/し/に、¥この−ほど¥きけ/ば、¥かやう/に¥さま/を¥かへ、¥ひとつ−ところ/に¥ねんぶつ−し/て¥おはし/つる¥よし、¥あまり/に¥うらやましく/て、¥つね/は¥いとま/を¥まうし/しか/ども、¥にふだう=どの¥さらに¥おん=もちひ¥ましまさ/ず。¥つくづく¥もの/を¥あんずる/に、¥しやば/の¥えいぐわ/は¥ゆめ/の¥ゆめ、¥たのしみ−さかえ/て¥なにか¥せ/ん。¥にんじん/は¥うけ−がたく、¥ぶつけう/に/は¥あひ−がたし。¥この−たび¥ないり/に¥しづみ/な/ば、¥たしやう¥くわうごふ/を/ば¥へだつ/とも、¥うかび−あがら/ん¥こと¥かたかる/べし。¥らうせう¥ふぢやう/の¥さかひ/なれ/ば、¥とし/の¥わかき/を¥たのむ/べき/に¥あら/ず。¥いづる¥いき/の¥いる/を/も¥まつ/べから/ず。¥かげろふ¥いなづま/より/も¥なほ¥はかなし。¥いつたん/の¥えいぐわ/に¥ほこつ/て、¥ごせ/を¥しら/ざら/ん¥こと/の¥かなし−さ/に、¥けさ¥まぎれ−いで/て、¥かく¥なつ/て/こそ¥まゐり/たれ」/とて、¥かづい/たる¥きぬ/を¥うち−のけ/たる/を¥みれ/ば、¥あま/に¥なつ/て/ぞ¥いで−きたる。「¥かやう/に¥さま/を¥かへ/て¥まゐり/たる¥うへ/は、¥ひごろ/の¥とが/を/ば¥ゆるし¥たまへ。¥ゆるさ/ん/と/だに¥のたまは/ば、¥もろとも/に¥ねんぶつ−し/て、¥ひとつ−はちす/のP74¥み/と¥なら/ん。¥それ/に/も¥なほ¥こころ−ゆか/ず/は、¥これ/より¥いづち/へ/も¥まよひ−ゆき、¥いか/なら/ん¥こけ/の¥むしろ、¥まつ/が¥ね/に/も¥たふれ−ふし、¥いのち/の¥あら/ん¥かぎり/は¥ねんぶつ−し/て、¥わうじやう/の¥そくわい/を¥とげ/ん/と¥おもふ/なり」/とて、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と¥かき−くどき/けれ/ば、¥ぎわう¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥わ−ごぜ/の¥それ−ほど/まで¥おもひ¥たまは/ん/と/は¥ゆめ/に/も¥しら/ず、¥うき¥よ/の−なか/の¥さが/なれ/ば、¥み/の¥うき/と/こそ¥おもひ/し/に、¥と/も−すれ/ば¥わ−ごぜ/の¥こと/のみ¥うらめしく/て、¥こんじやう/も¥ごしやう/も、¥なまじひ/に¥し−そんじ/たる¥ここち/にて¥あり/つる/に、¥かやう/に¥さま/を¥かへ/て¥おはし/つる¥うへ/は、¥ひごろ/の¥とが/は、¥つゆ¥ちり/ほど/も¥のこら/ず、¥いま/は¥わうじやう¥うたがひ¥なし。¥この−たび¥そくわい/を¥とげ/ん/こそ、¥なに/より/も¥また¥うれしけれ。¥わらは/が¥あま/に¥なり/し/を/だに、¥よ/に¥あり−がたき¥こと/の¥やう/に、¥ひと/も¥いひ、¥わが−み/も¥おもひ¥さぶらひ/し/ぞ/や。¥それ/は¥よ/を¥うらみ、¥み/を¥なげい/たれ/ば、¥さま/を¥かふる/も¥ことわり/なり。¥わ−ごぜ/は¥うらみ/も¥なく¥なげき/も¥なし。¥ことし/は¥わづか¥じふしち/に/こそ¥なり/し¥ひと/の、¥それ−ほど/まで¥ゑど/を¥いとひ、¥じやうど/を¥ねがは/ん/と、¥ふかく¥おもひ−いり¥たまふ/こそ、¥まこと/の¥だいだうしん/と/は¥おぼえ¥さぶらひ/しか。¥うれしかり/ける¥ぜんぢしき/かな。¥いざ¥もろとも/に¥ねがは/ん」/とて、¥しにん¥いつしよ/に¥こもり−ゐ/て、¥あさゆふ¥ぶつぜん/に¥むかひ、¥はな¥かう/を¥そなへ/て、¥たねん¥なく¥ねがひ/ける/が、¥ちそく/こそ¥あり/けれ、¥みな¥わうじやう/の¥そくわい/を¥とげ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥され/ば¥かの¥ごしらかはの−ほふわう/の¥ちやうがうだう/の¥くわこちやう/に/も、¥ぎわう、¥ぎによ、¥ほとけ、¥とぢ=ら/が¥そんりやう/と、¥しにん¥いつしよ/に¥いれ/られ/たり。¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。P75¥「にだいのきさき」(『にだいのきさき』)S0107¥むかし/より¥いま/に¥いたる/まで、¥げんぺい−りやうし¥てうか/に¥めし−つかは/れ/て、¥わうくわ/に¥したがは/ず、¥おのづから¥てうけん/を¥かろんずる¥もの/に/は、¥たがひ/に¥いましめ/を¥くはへ/しか/ば、¥よ/の¥みだれ/は¥なかり/し/に、¥ほうげん/に¥ためよし¥きら/れ、¥へいぢ/に¥よしとも¥ちう−せ/られ/て¥のち/は、¥すゑずゑ/の¥げんじ=ども¥あるひは¥ながさ/れ、¥あるひは¥うしなは/れ/て、¥いま/は¥へいけ/の¥いちるゐ/のみ¥はんじやう−し/て、¥かしら/を¥さし−いだす¥もの¥なし。¥いか/なら/ん¥すゑ/の¥よ/まで/も、¥なにごと/か¥あら/ん/と/ぞ¥みえ/し。¥され/ども¥とばのゐん¥ごあんが/の¥のち/は、¥ひやうがく¥うち−つづい/て、¥しざい、¥るけい、¥けつくわん、¥ちやうにん、¥つねに¥おこなは/れ/て、¥かいだい/も¥しづか/なら/ず、¥せけん/も¥いまだ¥らくきよ−せ/ず。¥なかんづく¥えいりやく、¥おうほう/の¥ころ/より/して、¥ゐん/の¥きんじゆしや/を/ば、¥うち/より¥おん=いましめ¥あり、¥うち/の¥きんじゆしや/を/ば¥ゐん/より¥いましめ/らるる¥あひだ、¥じやうげ¥おそれ−をののい/て、¥やすい¥こころ/も¥せ/ず、¥ただ¥しんえん/に¥のぞん/で、¥はくひよう/を¥ふむ/に¥おなじ。¥しゆしやう¥しやうくわう¥ふし/の¥おん=あひだ/に、¥なにごと/の¥おん=へだて/か¥ある/なれ/ども、¥おもひ/の−ほか/の¥こと=ども¥おほかり/けり。¥これ/も¥よ¥げうき/に¥およん/で、¥ひと¥けうあく/を¥さき/と¥する¥ゆゑ/なり。¥しゆしやう、¥ゐん/の¥おほせ/を¥つね/は¥まうし−かへさ/せ¥おはしまし/ける¥なか/に、¥ひと¥じぼく/を¥おどろかし、¥よ¥もつて¥おほき/に¥かたぶけ¥まうす¥こと¥あり/けり。¥こ=こんゑのゐん/の¥きさき、¥たいくわうたいこうぐう/と¥まうし/し/は、P76¥おほひのみかど/の−うだいじん−きんよし=こう/の¥おん=むすめ/なり。¥せんてい/に¥おくれ¥たてまつら/せ¥たまひ/て¥のち/は、¥ここのへ/の¥ほか、¥このゑかはら/の¥ごしよ/に/ぞ¥うつり−すま/せ¥たまひ/ける。¥さきの−きさいのみや/にて、¥かすか/なる¥おん=ありさま/にて¥わたら/せ¥たまひ/し/が、¥えいりやく/の¥ころほひ/は、¥おん=とし¥にじふにさん/に/も/や¥なら/せ¥ましまし/けん、¥おん=さかり/も¥すこし¥すぎ/させ¥おはします/ほど/なり。¥され/ども、¥てんが¥だいいち/の¥びじん/の¥きこえ¥ましまし/けれ/ば、¥しゆしやう¥いろ/に/のみ¥そめる¥おん=こころ/にて、¥ひそか/に¥かうりよくし/に¥ぜうじ/て、¥ぐわいきう/に¥ひき−もとめ/しむる/に¥およん/で、¥この¥おほみや/の¥ごしよ/へ、¥ひそか/に¥ご=えんしよ¥あり。¥おほみや¥あへて¥きこしめし/も¥いれ/ず。¥され/ば¥ひたすら¥はやほ/に¥あらはれ/て、¥きさき¥ご=じゆだい¥ある/べき¥よし、¥うだいじんげ/に¥せんじ/を¥くださ/る。¥この¥こと¥てんが/に¥おい/て¥こと/なる¥しようじ/なれ/ば、¥くぎやう−せんぎ¥あつ/て、¥おのおの¥いけん/を¥いふ。「¥まづ¥いてう/の¥せんじよう/を¥とぶらふ/に、¥しんだん/の¥そくてんくわうごう/は、¥たう/の¥たいそう/の¥きさき、¥かうそう−くわうてい/の¥けいぼ/なり。¥たいそう¥ほうぎよ/の¥のち、¥かうそう/の¥きさき/に¥たち¥たまふ¥こと¥あり。¥それ/は¥いてう/の¥せんぎ/たる¥うへ、¥べつだん/の¥こと/なり。¥しかれ/ども¥わが¥てう/に/は、¥じんむ−てんわう/より¥この−かた¥にんわう¥しちじふ−よ−だい/に¥いたる/まで、¥いまだ¥に−だい/の¥きさき/に¥たた/せ¥たまふ¥れい/を¥きか/ず」/と¥しよきやう¥いちどう/に¥うつたへ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥しやうくわう/も¥しかる/べから/ざる¥よし、¥こしらへ¥まうさ/せ¥たまへ/ども、¥しゆしやう¥おほせ/なり/ける/は、「¥てんし/に¥ぶも¥なし。¥われ¥じふぜん/の¥かいこう/に¥よつ/て、¥いま¥ばんじよう/の−ほうゐ/を¥たもつ。¥これ−ほど/の¥こと¥など/か¥えいりよ/に¥まかせ/ざる/べき」/とて、¥やがて¥ご=じゆだい/の¥ひ、¥せんげ−せ/られ/ける¥うへ/は、¥しやうくわう/も¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず。P77¥
おほみや¥かく/と¥きこしめさ/れ/ける/より、¥おん=なみだ/に¥しづま/せ¥おはします。¥せんてい/に¥おくれ¥まゐらせ/に/し¥きうじゆ/の¥あき/の¥はじめ、¥おなじ¥のばら/の¥つゆ/と/も¥きえ、¥いへ/を/も¥いで¥よ/を/も¥のがれ/たり/せ/ば、¥いま¥かかる¥うき¥みみ/を/ば¥きか/ざら/まし/と/ぞ、¥おん=なげき¥あり/ける。¥ちち/の¥おとど¥こしらへ¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥よ/に¥したがは/ざる/を¥もつて¥きやうじん/と¥す/と¥みえ/たり。¥すでに¥ぜうめい/を¥くださ/る。¥しさい/を¥まうす/に¥ところ¥なし。¥ただ¥すみやか/に¥まゐらせ¥たまふ/べき/なり。¥もし¥わうじ¥ご=たんじやう¥あり/て、¥きみ/も¥こくも/と¥いは/れ、¥ぐらう/も¥ぐわいそ/と¥あふが/る/べき¥ずゐさう/にて/も/や¥さふらふ/らん。¥これ¥ひとへに¥ぐらう/を¥たすけ/させ¥まします¥ご=かうかう/の¥おん=いたり/なる/べし」/と、¥やうやう/に¥こしらへ¥まうさ/せ¥たまへ/ども、¥おん=ぺんじ/も¥なかり/けり。¥おほみや¥その−ころ¥なに/と−なき¥おん=てならひ/の¥ついで/に、¥
うき−ふし/に¥しづみ/も¥やら/で¥かはたけ/の¥よ/に¥ためし¥なき¥な/を/や¥ながさ/む W004¥
よ/に/は¥いか/に/して¥もれ/ける/や/らん、¥あはれ/に¥やさしき¥ためし/に/ぞ¥ひとびと¥まうし−あは/れ/ける。¥すでに¥ご=じゆだい/の¥ひ/に/も¥なり/しか/ば、¥ちち/の¥おとど、¥ぐぶ/の¥かんだちめ、¥しゆつしや/の¥ぎしき/など、¥こころ¥こと/に¥だし−たて¥まゐらつ/させ¥たまひ/けり。¥おほみや¥もの=うき¥おん=いでたち/なれ/ば、¥とみ/に/も¥たてまつら/ず、¥はるか/に¥よ¥ふけ、¥さ−よ/も¥なかば/に¥なり/て¥のち、¥おん=くるま/に¥たすけ−のせ/られ/させ¥たまひ/けり。¥ご=じゆだい/の¥のち/は、¥れいけいでん/に/ぞ¥ましまし/ける。¥され/ば¥ひたすら¥あさまつりごと/を¥すすめ¥まうさ/せ¥たまふ¥おん=さま/なり。¥かの¥ししんでん/の¥くわうきよ/に/は、¥げんじやう/の¥しやうじ/を¥たて/られ/たり。P78¥いいん、¥ていごりん、¥ぐせいなん、¥たいこうばう、¥ろくりせんせい、¥りせき、¥しば、¥てなが、−あしなが、¥むまがた/の¥しやうじ、¥おに/の−ま、¥りしやうぐん/が¥すがた/を¥さながら¥うつせ/る¥しやうじ/も¥あり。¥をはりの−かみ−をのの−たうふう/が、¥しつくわい−げんじやう/の¥しやうじ/と¥かける/も、¥ことわり/と/ぞ¥みえ/し。¥かの¥せいりやうでん/の¥ぐわと/の¥みしやうじ/に/は、¥むかし¥かなをか/が¥かき/たり/し¥ゑんざん/の¥ありあけ/の−つき/も¥あり/とかや。¥こ=ゐん/の¥いまだ¥えうしゆ/にて¥ましませ/し¥その−かみ、¥なに/と−なき¥おん=て¥まさぐり/の¥ついで/に、¥かき−くもらかさ/せ¥たまひ/たり/し/が、¥あり/し/ながら/に¥すこし/も¥たがは/せ¥たまは/ぬ/を¥ごらんじ/て、¥せんてい/の¥むかし/も/や¥おん=こひしう¥おぼしめさ/れ/けん、¥
おもひ/き/や¥うきみ/ながら/に¥めぐり−き/て¥おなじ¥くもゐ/の¥つき/を¥み/む/と/は W005¥
その¥あひだ/の¥おん=なからひ、¥いひ−しら/ず¥あはれ/に¥やさしき¥おん=こと/なり。
「がくうちろん」(『がくうちろん』)S0108¥さる−ほど/に、¥えいまん−ぐわんねん/の¥はる/の¥ころ/より、¥しゆしやう¥ごふよ/の¥おん=こと/と¥きこえ/させ¥たまひ/し/が、おなじき¥なつ/の¥はじめ/に/も¥なり/しか/ば、¥こと/の−ほか/に¥おもらせ¥たまふ。¥これ/に¥よつ/て、¥おほくら/の−たいふ−いきの−かねもり/が¥むすめ/の¥はら/に、¥こんじやう¥いちのみや/の¥に−さい/に¥なら/せ¥たまふ/が¥ましまし/ける/を、¥たいし/に¥たて¥まゐら/させ¥たまふ/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥おなじき−ろくぐわつ−にじふごにち、¥にはか/にP79¥しんわう/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまふ。¥やがて¥その¥よ¥じゆぜん¥あり/しか/ば、¥てんが¥なに/と−なう¥あわて/たる¥さま/なり/けり。¥その−とき/の¥いうしよく/の¥ひとびと¥まうし−あは/れ/ける/は、¥まづ¥ほんてう/に、¥とうたい/の¥れい/を¥たづぬる/に、¥せいわ−てんわう¥く−さい/に/して、¥もんどく−てんわう/の¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまふ。¥それ/は¥かの¥しうくたん/の¥せいわう/に¥かはり、¥なんめん/に/して、¥いちじつ−ばんき/の¥まつりごと/を¥をさめ¥たまひ/し/に¥なぞらへ/て、¥ぐわいそ¥ちうじん=こう、¥えうしゆ/を¥ふち−し¥たまへ/り。¥これ/ぞ¥せつしやう/の¥はじめ/なる。¥とばのゐん¥ご−さい、¥こんゑのゐん¥さん−ざい/にて¥せんそ¥あり。¥かれ/を/こそ、¥いつしか/なれ/と¥まうし/し/に、¥これ/は¥に−さい/に¥なら/せ¥たまふ。¥せんれい¥なし。¥もの−さわがし/とも¥おろか/なり。¥さる−ほど/に、¥おなじき−しちぐわつ−にじふしちにち、¥しやうくわう¥つひに¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥おん=とし¥にじふさん。¥つぼめる¥はな/の¥ちれ/る/が/ごとし。¥たま/の−すだれ、¥にしき/の−ちやう/の¥うち、¥みな¥おん=なみだ/に¥むせば/せ¥おはします。¥やがて¥その¥よ、¥かうりうじ/の¥うしとら、¥れんだいの/の¥おく、¥ふなをかやま/に¥をさめ¥たてまつる。¥ご=さうそう/の¥よ、¥えんりやく¥こうぶく¥りやうじ/の¥だいしゆ、¥がくうちろん/と¥いふ¥こと/を¥し−いだし/て、¥たがひ/に¥らうぜき/に¥およぶ。¥
いつてん/の−きみ¥ほうぎよ¥なつ/て¥のち、¥ご=むしよ/へ¥わたし¥たてまつる¥とき/の¥さほふ/は、¥なんぼく¥にきやう/の¥だいしゆ、¥ことごとく¥ぐぶ−し/て、¥ご=むしよ/の¥めぐり/に、¥わが¥てらでら/の¥がく/を¥うつ¥こと¥あり/けり。¥まづ¥しやうむ−てんわう/の¥ご=ぐわん、¥あらそふ/べき¥てら¥なけれ/ば、¥とうだいじ/の¥がく/を¥うつ。¥つぎ/に¥たんかいこう/の¥ご=ぐわん/とて¥こうぶくじ/の¥がく/を¥うつ。¥ほくきやう/に/は、¥こうぶくじ/に¥むかへ/て、¥えんりやくじ/の¥がく/を¥うつ。¥つぎ/に¥てんむ−てんわう/の¥ご=ぐわん、¥けうだい−くわしやう、¥ちしよう−だいし/の¥さうさう/とて¥をんじやうじ/の¥がく/を¥うつ。¥しかる/を、¥さんもん/の¥だいしゆ、¥いかが¥おもひ/けん、¥せんれい/を¥そむい/て、¥とうだいじ/の¥つぎ、¥こうぶくじ/のP80¥うへ/に、¥えんりやくじ/の¥がく/を¥うつ¥あひだ、¥なんと/の¥だいしゆ、¥とやせまし、¥かうやせまし/と、¥せんぎ−する¥ところ/に、¥ここに¥こうぶくじ/の¥さいこんだうじゆ、¥くわんおん−ばう、¥せいしばう/とて、¥きこえ/たる¥だいあくそう¥に−にん¥あり/けり。¥くわんおん−ばう/は¥くろいと−をどし/の−はらまき/に、¥しらえ/の−なぎなた、¥くき−みじか/に¥とり、¥せいしばう/は¥もよぎ−をどし/の−よろひ¥き、¥こくしつ/の−おほ−だち¥もつ/て、¥に−にん¥つと¥はしり−いで、¥えんりやくじ/の¥がく/を¥きつ/て¥おとし、¥さんざん/に¥うち−わり、「¥うれし/や¥みづ、¥なる/は¥たき/の¥みづ、¥ひ/は¥てる/とも、¥たえ/ず/と¥うたへ」/と¥はやし/つつ、¥なんと/の¥しゆと/の¥なか/へ/ぞ¥いり/に/ける。「きよみづえんしやう」(『きよみづでらえんしやう』)S0109¥さんもん/の¥だいしゆ、¥らうぜき/を¥いたさ/ば¥てむかひ¥す/べき¥ところ/に、¥こころ−ぶかう¥ねらふ¥かた/も/や¥あり/けん、¥ひとことば/も¥いださ/ず。¥みかど¥かくれ/させ¥たまひ/て¥のち/は、¥こころ−なき¥さうもく/まで/も、¥みな¥うれへ/たる¥いろ/に/こそ¥ある/べき/に、¥この¥さうどう/の¥あさまし−さ/に¥たかき/も¥いやしき/も、¥きも−たましひ/を¥うしなつ/て、¥しはう/へ¥みな¥たいさん−す。¥おなじき−にじふくにち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥さんもん/の¥だいしゆ¥おびたたしう¥げらく−す/と¥きこえ/しか/ば、¥ぶし、¥けんびゐし、¥にしざかもと/に¥ゆき−むかつ/て¥ふせぎ/けれ/ども、¥こと/と/も¥せ/ず、¥おし−やぶつ/て¥らんにふ−す。¥また¥なにもの/の¥まうし−いだし/たり/ける/やらん、「¥いちゐん、¥さんもん/の¥だいしゆ/に¥おほせ/て、¥へいけ−つゐたう−せ/らる/べし」/と¥きこえ/しか/ば、¥ぐんびやう¥だいり/にP81¥さんじ/て¥しはう/の¥ぢんどう/を¥かため/て¥けいご−す。¥へいじ/の¥いちるゐ¥みな¥ろくはら/に¥はせ−あつまる。¥いちゐん/も¥いそぎ¥ろくはら/へ¥ご=かう¥なる。¥きよもり=こう¥そのーとき/は¥いまだ¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥おはし/ける/が、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥こまつ=どの、「¥なに/に¥よつ/て、¥ただいま¥さる−おん=こと¥さふらふ/べき」/と¥しづめ¥まうさ/れ/けれ/ども、¥つはもの=ども¥さわぎ−ののしる¥こと¥おびたたし。¥され/ども¥さんもん/の¥だいしゆ¥ろくはら/へ/は¥よせ/ず/して、¥そぞろ/なる¥せいすゐじ/に¥おし−よせ/て、¥ぶつかく¥そうばう¥いち−う/も¥のこさ/ず¥みな¥やき−はらふ。¥これ/は¥さんぬる¥ご=さうそう/の¥よ/の¥くわいけい/の−はぢ/を¥きよめ/ん/が¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥せいすゐじ/は¥こうぶくじ/の¥まつじ/たる/に¥よつ/て/なり。¥せいすゐじ¥やけ/たり/ける¥あした、「¥くわんおんくわけう−へんじやうち/は¥いか/に」/と、¥ふだ/に¥かい/て、¥だいもん/の¥まへ/に/ぞ¥たて/たり/ける。¥つぎ/の−ひ¥また、「¥りやくこふ−ふしぎ¥ちから¥およば/ず」/と、¥かへし/の¥ふだ/を/ぞ¥うつ/たり/ける。¥しゆと¥かへり−のぼり/けれ/ば、¥いちゐん/も¥いそぎ¥ろくはら/より¥くわんぎよ¥なる。¥しげもりの−きやう/ばかり/ぞ、¥おん=おくり/に/は¥まゐら/れ/ける。¥ちち/の¥きやう/は¥まゐら/れ/ず。¥なほ¥ようじん/の¥ため/か/と/ぞ¥みえ/し。¥
しげもりの−きやう、¥おん=おくり/より¥かへら/れ/たり/けれ/ば、¥ちち/の¥だいなごん¥のたまひ/ける/は、「¥さて/も¥いちゐん/の¥ご=かう/こそ¥おほき/に¥おそれ¥おぼゆれ。¥かねても¥おぼしめし−より、¥おほせ/らるる¥むね/の¥あれ/ば/こそ、¥かう/は¥きこゆ/らめ。¥それ/に/も¥なほ¥うち−とけ¥たまふ/まじ」/と¥のたまへ/ば、¥しげもりの−きやう¥まうさ/れ/ける/は、「¥この¥こと¥ゆめゆめ¥おん=けしき/に/も、¥おん=ことば/に/も¥いださ/せ¥たまふ/べから/ず。¥ひと/に¥こころつけがほ/に、¥なかなか¥あしき¥おん=こと/なり。¥これ/に¥つけ/て/も、¥よくよく¥えいりよ/に¥そむか/せ¥たまは/で、¥ひと/の¥ため/に¥おん=なさけ/を¥ほどこさ/せ¥ましまさ/ば、¥しんめい¥さんぽう¥かごP82¥ある/べし。¥さら/ん/に¥とつ/て/は、¥おん=み/の¥おそれ¥さふらふ/まじ」/とて¥たた/れ/けれ/ば、「¥しげもりの−きやう/は¥ゆゆしう¥おほやう/なる/ものかな」/と/ぞ、¥ちち/の¥きやう/も¥のたまひ/ける。¥いちゐん¥くわんぎよ/の¥のち、¥ごぜん/に¥うとから/ぬ¥きんじゆしや=たち、¥あまた¥さぶらは/れ/ける/に、「¥さて/も¥ふしぎ/の¥こと/を¥まうし−いだし/たる/ものかな。¥つゆ/も¥おぼしめし−よら/ぬ/ものを」/と¥おほせ/けれ/ば、¥ゐん−ぢう/の¥きりもの/に¥さいくわう−ほふし/と¥いふ¥もの¥あり。¥をりふし¥ごぜん¥ちかう¥さぶらひ/ける/が、¥すすみ−いで/て、「¥てん/に¥くち¥なし、¥にん/を¥もつて¥いは/せよ/と¥まうす。¥へいけ¥もつて/の−ほか/に¥くわぶん/に¥さふらふ¥あひだ、¥てん/の¥おん=ぱからひ/に/や」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ひとびと、「¥この¥こと¥よし−なし。¥かべ/に¥みみ¥あり。¥おそろし−おそろし」/と/ぞ、¥おのおの¥ささやき−あは/れ/ける。
(『とうぐうだち』)S0110¥さる−ほど/に、¥その¥とし/は¥りやうあん/なり/けれ/ば、¥ご=けい¥だいじやうゑ/も¥おこなは/れ/ず。¥けんしゆんもんゐん、¥そのーとき/は¥いまだ¥ひがしのおんかた/と¥まうし/ける。¥その¥おん=はら/に、¥いちゐん/の¥みや/の¥ご−さい/に¥なら/せ¥たまふ/の¥ましまし/ける/を、¥たいし/に¥たて¥まゐら/させ¥たまふ/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥おなじき−じふにんぐわつ−にじふしにち、¥にはか/に¥しんわう/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまふ。¥あくれ/ば¥かいげん¥あり/て、¥にんあん/と¥かうす。¥おなじき−とし/の−じふぐわつ−やうかのひ、¥きよねん¥しんわう/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまひ/し¥わうじ、¥とうさんでう/にて¥とうぐう/に¥たた/せ¥たまふ。¥とうぐう/は¥おん=をぢ¥ろく−さい、¥しゆしやう/は¥おん=をひ¥さん−ざい、¥いづれ/も¥ぜうもく/に¥あひ−かなは/ず。¥ただし¥くわんわ−にねん/に、¥いちでうのゐん¥しち−さい/にて¥ご=そくゐ¥あり。¥さんでうのゐん¥じふいつ−さい/にて¥とうぐう/に¥たた/せ¥たまふ。¥せんれい¥なき/に/しも¥あら/ず。¥しゆしやう/は¥に−さい/にて¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥わづか¥ご−さい/と¥まうし/し¥にんぐわつ−じふくにち/に、¥おん=くらゐ/を¥すべり/て、¥しんゐん/と/ぞ¥まうし/ける。P83¥いまだ¥おん=げんぶく/も¥なく/して、¥だいじやう−てんわう/の¥そんがう¥あり。¥かんか¥ほんてう、¥これ/や¥はじめ/なら/ん。¥にんあん−さんねん−さんぐわつ−はつかのひ、¥しんてい¥だいこくでん/に/して¥ご=そくゐ¥あり。¥この¥きみ/の¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/ぬる/は、¥いよいよ¥へいけ/の¥えいぐわ/と/ぞ¥みえ/し。¥こくも¥けんしゆんもんゐん/と¥まうす/は、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた、¥はちでう/の−にゐ=どの/の¥おん=いもうと/なり。¥また¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/と¥まうす/も、¥この¥にようゐん/の¥おん=せうと/なる¥うへ、¥うち/の¥ご=ぐわいせき/なり。¥ないげ/に¥つけ/て¥しつけん/の−しん/と/ぞ¥みえ/し。¥その−ころ/の¥じよゐ¥じもく/と¥まうす/も、¥ひとへに¥この¥ときただの−きやう/の¥まま/なり/けり。¥やうきひ/が¥さいはひ/し¥とき、¥やうこくちう/が¥さかえ/し/が/ごとし。¥よ/の¥おぼえ、¥とき/の¥きら¥めでたかり/き。¥にふだう−しやうこく¥てんが/の¥だいせうじ/を¥のたまひ¥あはせ/られ/けれ/ば、¥とき/の−ひと、¥へいくわんばく/と/ぞ¥まうし/ける。
「てんがののりあひ」(『てんがののりあひ』)S0111¥さる−ほど/に¥かおう−ぐわんねん−しちぐわつ−じふろくにち、¥いちゐん¥ご=しゆつけ¥あり。¥ご=しゆつけ/の¥のち/も、¥ばんき/の¥まつりごと/を¥しろしめさ/れ/けれ/ば、¥ゐん、¥うち、¥わく¥かた¥なし。¥ゐん−ぢう/に¥ちかう¥めし−つかは/れ/ける¥くぎやう−てんじやうびと、¥じやうげ/の¥ほくめん/に¥いたる/まで、¥くわんゐ¥ほうろく、¥みな¥み/に¥あまる/ばかり/なり。¥され/ども¥ひと/の¥こころ/の¥ならひ/にて、¥なほ¥あき−たら/で、「¥あつぱれ、¥その¥ひと/の¥うせ/たら/ば、P84¥その¥くに/は¥あき/な/ん。¥その¥ひと/の¥ほろび/たら/ば、¥その¥くわん/に/は¥なり/な/ん」/など、¥うとから/ぬ¥どち/は、¥より−あひ−より−あひ、¥ささやき/けり。¥いちゐん/も¥ないない¥おほせ/なり/ける/は、「¥むかし/より¥だいだい/の¥てうてき/を¥たひらげ/たる¥もの¥おほし/と¥いへ/ども、¥いまだ¥かやう/の¥こと/は¥なし。¥さだもり¥ひでさと/が¥まさかど/を¥うち、¥らいぎ/が¥さだたふ¥むねたふ/を¥ほろぼし、¥ぎか/が¥たけひら¥いへひら/を¥せめ/たり/し/に/も、¥けんじやう¥おこなは/れ/し¥こと、¥わづか¥じゆりやう/に/は¥すぎ/ざり/き。¥いま¥きよもり/が、¥かく¥こころ/の¥まま/に¥ふるまふ¥こと/こそ¥しかる/べから/ね。¥これ/も¥よ¥すゑ/に¥なつ/て、¥わうぼふ/の¥つき/ぬる¥ゆゑ/なり」/と/は¥おほせ/なり/けれ/ども、¥ついで¥なけれ/ば¥おん=いましめ/も¥なし。¥へいけ/も¥また¥べつ−し/て¥てうか/を¥うらみ¥たてまつら/るる¥こと/も¥なかり/し/に、¥よ/の¥みだれ−そめ/ける¥こんぼん/は、¥いんじ¥かおう−にねん−じふぐわつ−じふろくにち/に、¥こまつ=どの/の¥じなん、¥しんーざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥その−とき/は¥いまだ¥ゑちぜんの−かみ/とて、¥しやうねん¥じふさん/に¥なら/れ/ける/が、¥ゆき/は¥はだれ/に¥ふつ/たり/けり。¥かれの/の¥けしき、¥まこと/に¥おもしろかり/けれ/ば、¥わかき¥さぶらひ=ども¥さんじつ−き/ばかり¥めし−ぐし/て、¥れんだいの/や、¥むらさきの、¥うこんのばば/に¥うち−いで/て¥たか=ども¥あまた¥すゑ/させ、¥うづら¥ひばり/を¥おつ−たて−おつ−たて、¥ひねもす/に¥かり−くらし、¥はくぼ/に¥およん/で¥ろくはら/へ/こそ¥かへら/れ/けれ。¥
その−とき/の¥ごせつろく/は¥まつ=どの/にて/ぞ¥ましまし/ける。¥ひがし/の−とうゐん/の¥ごしよ/より、¥ご=さんだい¥あり/けり。¥いうはうもん/より¥じゆぎよ¥ある/べき/にて、¥ひがし/の−とうゐん/を¥みなみ/へ、¥おほひのみかど/を¥にし/へ¥ぎよ=しゆつ¥なる/に、¥すけもり−あそん、¥おほひのみかど¥ゐのくま/にて、¥てんが/の¥ぎよ=しゆつ/に¥はなつき/に¥まゐり−あふ。¥おん=とも/の¥ひと=ども、「¥なにもの/ぞ、¥らうぜき/なり。¥ぎよ=しゆつ¥なる/に、¥のりもの/より¥おり¥さふらへ¥おりP85¥さふらへ」/と¥いら/で/けれ/ども、¥あまり/に¥ほこり−いさみ、¥よ/を¥よ/と/も¥せ/ざり/ける¥うへ、¥めし−ぐし/たる¥さぶらひ=ども/も、¥みな¥にじふ/より¥うち/の¥わかもの=ども/なれ/ば、¥れいぎ¥こつぽふ¥わきまへ/たる¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥てんが/の¥ぎよ=しゆつ/と/も¥いは/ず、¥いつせつ¥げば/の¥れいぎ/に/も¥およば/ず、¥ただ¥かけ−やぶつ/て¥とほら/ん/と¥する¥あひだ、¥くら−さ/は¥くらし、¥つやつや¥だいじやう/の−にふだう/の¥まご/と/も¥しら/ず、¥また¥せうせう/は¥しつ/たれ/ども、¥そら−しら/ず/して、¥すけもりの−あそん/を¥はじめ/と/して、¥さぶらひ=ども¥みな¥むま/より¥とつ/て¥ひき−おろし、¥すこぶる¥ちじよく/に¥および/けり。¥すけもり−あそん、¥はふはふ¥ろくはら/へ¥かへり¥おはし/て、¥おほぢ/の¥しやうこく−ぜんもん/に¥この¥よし¥うつたへ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう¥おほき/に¥いかつ/て、「¥たとひ¥てんが/なり/とも、¥じやうかい/が¥あたり/を/ば¥はばかり¥たまふ/べき/に、¥さう−なう¥あの¥おさなき¥もの/に¥ちじよく/を¥あたへ/られ/ける/こそ¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥かかる¥こと/より/して、¥ひと/に/は¥あざむか/るる/ぞ。¥この¥こと¥てんが/に¥おもひ−しらせ¥たてまつら/で/は、¥え/こそ¥ある/まじけれ。¥いか/に/も−し/て¥うらみ¥たてまつら/ばや」/と¥のたまへ/ば、¥しげもりの−きやう¥まうさ/れ/ける/は、「¥これ/は¥すこし/も¥くるしう¥さふらふ/まじ。¥よりまさ、¥みつもと/など¥まうす¥げんじ=ども/に¥あざけら/れ/て/も¥さふらは/ん/は、¥まこと/に¥いちもん/の¥ちじよく/にて/も¥さふらふ/べし。¥しげもり/が¥こども/とて¥さうらは/んずる¥もの/が、¥との/の¥ぎよ=しゆつ/に¥まゐり−あう/て、¥のりもの/より¥おり¥さふらは/ぬ¥こと/こそ¥かへすがへす/も¥びろう/に¥さふらへ」/とて、¥その−とき¥こと/に¥あう/たる¥さぶらひ=ども、¥みな¥めし−よせ/て、「¥じこん¥いご¥なんぢ=ら¥よくよく¥こころ−う/べし。¥あやまつ/て¥てんが/へ¥ぶれい/の¥よし/を¥まうさ/ばや/と¥おもへ」/とて/こそ¥かへさ/れ/けれ。P86¥
その−のち¥にふだう、¥こまつ=どの/に/は¥かう/と/も¥のたまひ/も¥あはせ/ず/して、¥かたゐなか/の¥さぶらひ/の、¥きはめて¥こはらか/なる/が¥にふだう/の¥おほせ/より¥ほか、¥よ/に¥また¥おそろしき¥こと¥なし/と¥おもふ¥もの=ども、¥なんば、¥せのを/を¥はじめ/と/して、¥つがふ¥ろくじふ−よ−にん¥めし−よせ/て、「¥らい¥にじふいちにち、¥てんが¥ぎよ=しゆつ¥ある/べかん/なり。¥いづく/にて/も¥まち−うけ¥たてまつり、¥せんぐ¥みずゐじん=ども/が¥もとどり¥きつ/て、¥すけもり/が¥はぢ¥すすげ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥つはもの=ども¥かしこまり−うけたまはつ/て¥まかり−いづ。¥てんが¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しろしめさ/れ/ず、¥しゆしやう¥みやうねん¥おん=げんぶく、¥ご=かくわん¥はいくわん/の¥おん=さだめ/の¥ため/に、¥しばらく¥ご=ちよくろ/に¥ある/べき/にて、¥つね/の¥ぎよ=しゆつ/より/は¥ひき−つくろは/せ¥たまひ/て、¥こんど/は¥たいけんもん/より¥じゆぎよ¥ある/べき/にて、¥なかのみかど/を¥にし/へ¥ぎよ=しゆつ¥なる/に¥ゐのくまほりかは/の¥へん/にて、¥ろくはら/の¥つはもの=ども、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥まち−うけ¥たてまつり、¥てんが/を¥なか/に¥とり−こめ¥まゐらせ/て、¥ぜんご/より¥いちど/に、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥せんぐ¥みずゐじん=ども/が、¥けふ/を¥はれ/と¥しやうぞ¥い/たる/を、¥あそこ/に¥おつ−かけ、¥ここ/に¥おつ−つめ、¥さんざん/に¥りようりやく−し/て、¥いちいち/に¥みな¥もとどり/を¥きる。¥ずゐじん¥じふ−にん/の¥うち、¥みぎ/の−ふしやう−たけもと/が¥もとどり/を/も¥きら/れ/てげり。¥その¥なか/に¥とう−くらんど/の−たいふ−たかのり/が¥もとどり/を¥きる/とて、「¥これ/は¥なんぢ/が¥もとどり/と¥おもふ/べから/ず、¥しゆ/の¥もとどり/と¥おもふ/べし」/と、¥いひ−ふくめ/て/ぞ¥きつ/てげる。¥その−のち/は¥おん=くるま/の¥うち/へ/も、¥ゆみ/の¥はず¥つき−いれ/など/して、¥すだれ¥かなぐり−おとし、¥お=うし/の¥むながい¥しりがい¥きり−はなち、¥かく¥さんざん/に¥しちらし/て、¥よろこび/の¥とき/を¥つくり、¥ろくはら/へ¥かへり−まゐり/たれ/ば、¥にふだう、「¥しんべう/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。P87¥
され/ども¥おん=くるま¥ぞひ/に/は、¥いなば/の¥さいづかひ、¥とばの−くにひさまる/と¥いふ¥をのこ、¥げらふ/なれ/ども、¥さかざかしき¥もの/にて、¥おん=くるま/を¥しつらひ、¥のせ¥たてまつ/て、¥なかのみかど/の¥ごしよ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつる。¥そくたい/の¥おん=そで/にて¥おん=なみだ/を¥おさへ/させ¥たまひ/つつ、¥くわんぎよ/の¥ぎしき/の¥あさまし−さ、¥まうす/も¥なかなか¥おろか/なり。¥たいしよくくわん、¥たんかいこう/の¥おん=こと/は¥あげ/て¥まうす/に¥およば/ず、¥ちうじん=こう、¥せうぜん=こう/より¥この−かた、¥せつしやう¥くわんばく/の¥かかる¥おん=め/に¥あはせ¥たまふ¥こと、¥いまだ¥うけたまはり¥およば/ず。¥これ/こそ¥へいけ/の¥あくぎやう/の¥はじめ/なれ。¥こまつ=どの¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥そのーとき¥ゆき−むかう/たる¥さぶらひ=ども、¥みな¥かんだう−せ/らる。「¥たとひ¥にふだう¥いか/なる¥ふしぎ/を¥げぢ−し¥たまふ/と¥いふ/とも、¥など¥しげもり/に¥ゆめ/ばかり¥しらせ/ざり/ける/ぞ。¥およそ/は¥すけもり¥きくわい/なり。¥せんだん/は¥ふたば/より¥かうばし/と/こそ¥みえ/たれ。¥すでに¥じふにさん/に¥なら/んずる¥もの/が、¥いま/は¥れいぎ/を¥ぞんぢ−し/て/こそ¥ふるまふ/べき/に、¥かやう/の¥びろう/を¥げんじ/て、¥にふだう/の¥あくみやう/を¥たつ。¥ふけう/の¥いたり、¥なんぢ¥ひとり/に¥あり/けり」/とて、¥しばらく¥いせの−くに/へ¥おひ−くださ/る。¥され/ば、¥この¥だいしやう/を/ば、¥きみ/も¥しん/も¥ぎよ=かん¥あり/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P88¥
「ししのたに」(『ししのたに』)S0112¥これ/に¥よつ/て、¥しゆしやう¥おん=げんぶく/の¥おん=さだめ、¥その−ひ/は¥のび/させ¥たまひ/て、¥おなじき−にじふごにち、¥ゐん/の¥てんじやう/にて/ぞ¥おん=げんぶく/の¥おん=さだめ/は¥あり/ける。¥せつしやう=どの¥さて/も¥わたら/せ¥たまふ/べき/なら/ね/ば、¥おなじき−じふにんぐわつ−ここのかのひ、¥かねせんじ/を¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥おなじき−じふしにち¥だいじやうだいじん/に¥あがら/せ¥たまふ。¥やがて¥おなじき−じふしちにち、¥よろこび−まうし/の¥あり/しか/ども、¥よ/の−なか/は¥なほ¥にがにがしう/ぞ¥みえ/し。¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/ぬ。¥かおう/も¥みとせ/に¥なり/に/けり。¥しやうぐわつ−いつかのひ、¥しゆしやう¥おん=げんぶく¥あつ/て、¥おなじき−じふさんにち、¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/けり。¥ほふわう¥にようゐん¥まち−うけ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥うひかうぶり/の¥おん=よそほひ、¥いか/ばかり¥らうたく¥おぼしめさ/れ/けん。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ、¥にようご/に¥まゐらせ¥たまふ。¥おん=とし¥じふご−さい、¥ほふわう¥おん=いうじ/の¥ぎ/なり。¥めうおんゐん=どの、¥その−ころ/は¥いまだ¥ないだいじん/の−さだいしやう/にて¥ましまし/ける/が、¥だいしやう/を¥じし¥まうさ/せ¥たまふ¥こと¥あり/けり。¥ときに¥とくだいじの−だいなごん−じつていの−きやう、¥その¥じん/に¥あひ−あたり¥たまふ。¥また¥くわざんのゐん/の−ちうなごん−かねまさの−きやう/も¥しよまう¥あり。¥その−ほか¥こ=なかのみかど/の−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう/の¥さんなん、¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/も¥ひら/に¥まうさ/る。¥この¥だいなごん/は¥ゐん/の¥ご=きしよく¥よかり/けれ/ば、P89¥さまざま/の¥いのり/を¥はじめ/らる。¥まづ¥やはた/に¥ひやく−にん/の¥そう/を¥こめ/て、¥しんどく/の¥だいはんにや/を¥しち−にち¥よま/せ/られ/たり/ける¥さいちう/に、¥かはら/の−だい−みやうじん/の¥おん=まへ/なる¥たちばな/の¥き/へ、¥をとこやま/の¥かた/より、¥やまばと¥みつ¥とび−きたつ/て、¥くひ−あひ/て/ぞ¥しに/に/ける。¥はと/は¥はちまん−だい−ぼさつ/の¥だいいち/の¥ししや/なり。¥みやてら/に¥かかる¥ふしぎ¥なし/とて、¥とき/の¥けんぎやう、¥きやうせい−ほふいん¥この¥よし¥だいり/へ¥そうもん−し/たり/けれ/ば、¥これ¥ただごと/に¥あら/ず、¥みうら¥ある/べし/とて、¥じんぎくわん/に/して¥みうら¥あり。¥おもき¥おん=つつしみ/と¥うらなひ¥まうす。¥ただし¥これ/は¥きみ/の¥おん=つつしみ/に/は¥あら/ず、¥しんか/の¥つつしみ/と/ぞ¥まうし/ける。¥それ/に¥だいなごん¥おそれ/を/も¥いたさ/れ/ず、¥ひる/は¥ひとめ/の¥しげ/けれ/ば、¥よなよな¥ほかう/にて、¥なかのみかど−からすまる/の¥しゆくしよ/より、¥かも/の−かみ/の−やしろ/へ、¥ななよ¥つづけ/て¥まゐら/れ/けり。¥ななよ/に¥まんずる¥よ、¥しゆくしよ/に¥げかう−し/て、¥くるし−さ/に¥すこし¥まどろみ/たり/ける¥ゆめ/に、¥かも/の−かみ/の−やしろ/へ¥まゐり/たる/と¥おぼしく/て、¥ご=ほうでん/の¥み=と¥おし−ひらき、¥ゆゆしう¥けだか=げ/なる¥おん=こゑ/にて、¥
さくらばな¥かも/の¥かはかぜ¥うらむ/な/よ¥ちる/を/ば¥え/こそ¥とどめ/ざり/けれ W006¥
だいなごん¥これ/に¥なほ¥おそれ/を/も¥いたさ/れ/ず、¥かも/の−かみ/の−やしろ/に、¥ご=ほうでん/の¥おん=うしろ/なる、¥すぎ/の¥ほら/に¥だん/を¥たて、¥ある¥ひじり/を¥こめ/て、¥だぎに/の¥ほふ/を¥ひやくにち¥おこなは/せ/られ/ける/に、¥ある−とき¥にはか/に¥そら¥かき−くもり、¥いかづち¥おびたたしう¥なつ/て、¥かの¥おほすぎ/に¥おち−かかり、¥らいくわ¥もえ−あがつ/て、¥きうちう¥すでに¥あやふく¥みえ/ける/を、¥みやうど=ども¥わしり¥あつまり/て、¥これ/を¥うち−けす。¥さて¥かの¥げほふ¥おこなひ/ける¥ひじり/を¥つゐしゆつ−せ/ん/と¥す。「¥われ¥たうしや/に¥ひやくにち¥さんろう/の¥こころざし¥あつ/て、P90¥けふ/は¥しちじふごにち/に¥なる。¥まつたく¥いづ/まじ」/とて¥はたらか/ず。¥この¥よし/を¥しやけ/より¥だいり/へ¥そうもん¥まうし/たり/けれ/ば、¥ただ¥ほふ/に¥まかせよ/と、¥せんじ/を¥くださ/る。¥そのーとき¥じんにん¥しらづゑ/を¥もつ/て¥かの¥ひじり/が¥うなじ/を¥しらげ/て、¥いちでう/の¥おほち/より、¥みなみ/へ¥おつ−こし/てげり。¥しん/は¥ひれい/を¥うけ/ず/と¥まうす/に、¥この¥だいなごん、¥ひぶん/の¥だいしやう/を¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ば/に/や、¥かかる¥ふしぎ/も¥いで−き/に/けり。¥その−ころ/の¥じよゐ−ぢもく/と¥まうす/は、¥ゐん、¥うち/の¥おん=ぱからひ/に/も¥あら/ず、¥せつしやう¥くわんばく/の¥ご=せいばい/に/も¥およば/ず、¥ただ¥いつかう¥へいけ/の¥まま/にて¥あり/けれ/ば、¥とくだいじ、¥くわざんのゐん/も¥なり¥たまは/ず、¥にふだう−しやうこく/の¥ちやくなん¥こまつ=どの、¥そのーとき/は¥いまだ¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥ましまし/ける/が、¥ひだん/に¥うつり/て、¥じなん¥むねもり、¥ちうなごん/にて¥おはせ/し/が、¥すはい/の¥じやうらふ/を¥てうをつ−し/て、¥みぎ/に¥くははら/れ/ける/こそ、¥まうす¥はかり/も¥なかり/しか。¥なか/に/も¥とくだいじ=どの/は、¥いち/の¥だいなごん/にて、¥くわそく¥えいゆう、¥さいかく¥いうちやう、¥けちやく/にて¥ましまし/ける/が、¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/に、¥かかい¥こえ/られ¥たまひ/ぬる/こそ¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥さだめて¥ご=しゆつけ/など/も/や¥あら/んず/らん」/と、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/けれ/ども、¥とくだいじ=どの/は¥しばらく¥よ/の¥なら/ん¥やう/を¥み/ん/とて、¥だいなごん/を¥じし/て¥ろうきよ/と/ぞ¥きこえ/し。¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥のたまひ/ける/は、「¥とくだいじ、¥くわざんのゐん/に¥こえ/られ/たら/ん/は¥いかが−せ/ん。¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/に¥かかい¥こえ/られ/ぬる/こそ、¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥いか/に/も−し/て¥へいけ/を¥ほろぼし、¥ほんまう/を¥とげ/ん」/と¥のたまひ/ける/こそ¥おそろしけれ。¥ちち/の¥きやう/は、¥この¥よはひ/で/は、¥わづかP91¥ちうなごん/まで/こそ¥いたら/れ/しか。¥その¥ばつし/にて、¥くらゐ¥じやう−にゐ、¥くわん¥だいなごん/に¥へ−あがつ/て、、¥たいこく¥あまた¥たまはつ/て、¥しそく、¥しよじう、¥てうおん/に¥ほこれ/り。¥なに/の¥ふそく¥あつ/て/か¥かかる¥こころ¥つか/れ/けん、¥ひとへ/に¥てんま/の¥しよゐ/と/ぞ¥みえ/し。¥へいぢ/に/も¥ゑちごの−ちうじやう/とて、¥のぶよりの−きやう/に¥どうしん/の¥あひだ、¥そのーとき¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、こまつ=どの/の¥やうやう/に¥まうし/て、¥くび/を¥つぎ¥たまへ/り。¥しかる/に¥その¥おん/を¥わすれ/て、¥ぐわいじん/も¥なき¥ところ/に、¥ひやうぐ/を¥ととのへ、¥ぐんびやう/を¥かたらひ−おき、¥あさゆふ/は¥ただ¥いくさ−かつせん/の¥いとなみ/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥なし/と/ぞ¥みえ/たり/ける。¥ひんがしやま¥ししのたに/と¥いふ¥ところ/は、¥うしろ¥みゐでら/に¥つづい/て、¥ゆゆしき¥じやうくわく/にて/ぞ¥あり/ける。¥それ/に¥しゆんくわん−そうづ/の¥さんざう¥あり。¥かれ/に¥つね/は¥より−あひ−より−あひ、¥へいけ¥ほろぼす/べき¥はかりごと/を/ぞ¥めぐらし/ける。¥ある−よ、¥ほふわう/も¥ご=かう¥なる。¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥しそく、¥じやうけん−ほふいん/も¥おん=とも¥つかまつら/る。¥その¥よ/の¥しゆえん/に、¥この¥よし/を¥おほせ−あはせ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふいん、「¥あな¥あさまし。¥ひと¥あまた¥うけたまはり¥さふらひ/ぬ。¥ただいま¥もれ−きこえ/て、¥てんが/の¥おん=だいじ/に¥および¥さふらひ/な/んず」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥だいなごん¥けしき¥かはつ/て、¥さつと¥たた/れ/ける/が、¥ごぜん/に¥たて/られ/たり/ける¥へいじ/を、¥かりぎぬ/の¥そで/に¥かけ/て¥ひき−たふさ/れ/たり/ける/を、¥ほふわう¥えいらん¥あつ/て、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥だいなごん¥たち−かへつ/て、「¥へいじ¥たふれ¥さふらひ/ぬ」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥ほふわう/も¥ゑつぼ/に¥いら/せ¥おはしまし、「¥もの=ども¥まゐつ/て¥さるがく¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥へい−はうぐわん−やすより¥つと¥まゐつ/て、「P92¥ああ¥あまり/に¥へいじ/の¥おほう¥さふらふ/に、¥もて¥ゑひ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥しゆんくわん−そうづ、「¥さて¥それ/を/ば、¥いかが¥つかまつる/べき/やらん」。¥さいくわう−ほふし、「¥ただ¥くび/を¥とる/に/は¥しか/じ」/とて、¥へいじ/の¥くび/を¥とつ/て/ぞ¥いり/に/ける。¥ほふいん、¥あまり/の¥あさまし−さ/に、¥つやつや¥もの/も¥まうさ/れ/ず。¥かへすがへす/も¥おそろしかり/し¥こと=ども/なり。¥さて¥よりき/の¥ともがら¥たれたれ/ぞ。¥あふみの−ちうじやう−にふだう−れんじやう、¥ぞくみやう¥なりまさ、¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ、¥やましろの−かみ−もとかぬ、¥しきぶ/の−たいふ−まさつな、¥へい−はうぐわん−やすより、¥そう−はうぐわん−のぶふさ、¥しん−へい−はうぐわん−すけゆき、¥ぶし/に/は¥ただの−くらんど−ゆきつな/を¥はじめ/と/して、¥ほくめん/の¥もの=ども¥おほく¥よりき−し/てげり。
「うがはかつせん」(『しゆんくわんのさた うがはいくさ』)S0113¥そもそも¥この¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ/と¥まうす/は、¥きやうごく/の¥げん−だいなごん−がしゆんの−きやう/の¥まご、¥きでら/の−ほふいん−くわんが/に/は¥こ/なり/けり。¥そぶ¥だいなごん/は、¥さして¥ゆみ−や¥とる¥いへ/に/は¥あら/ね/ども、¥あまり/に¥はら¥あしき¥ひと/にて、¥さんでうのぼうもん¥きやうごく/の¥しゆくしよ/の¥まへ/を/ば、¥ひと/を/も¥やすく¥とほさ/れ/ず、¥つね/は¥ちうもん/に¥たたずみ、¥は/を¥くひしばり、¥いかつ/て/こそ¥おはし/けれ。¥かかる¥おそろしき¥ひと/の¥まご/なれ/ば/に/や、¥この¥しゆんくわん/も、¥そう/なれ/ども、¥こころ/も¥たけく、¥おごれ/る¥ひと/にて、¥よし−なき¥むほん/に/も¥くみし/てげる/に/こそ。¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう、P93¥ただの−くらんど−ゆきつな/を¥めし/て、「¥こんど¥ご=へん/を/ば、¥いつぱう/の¥たいしやう/に¥たのむ/なり。¥この¥こと¥し−おほせ/つる¥もの/なら/ば、¥くに/を/も¥しやう/を/も¥しよまう/に¥よる/べし。¥まづ¥ゆぶくろ/の¥れう/に」/とて、¥しろぬの¥ごじつ−たん¥おくら/れ/たり。¥あんげん−さんねん−さんぐわつ−いつかのひ、¥めうおんゐん=どの、¥だいじやうだいじん/に¥てんじ¥たまへ/る¥かはり/に、¥こまつ=どの、¥げん−だいなごん−さだふさの−きやう/を¥こえ/て、¥ないだいじん/に¥なり¥たまふ。¥やがて¥だいきやう¥おこなは/る。¥だいじん/の−だいしやう¥めでたかり/き。¥そんじや/に/は¥おほひのみかど/の−うだいじん−つねむね=こう/と/ぞ¥きこえ/し。¥いち/の−かみ/こそ¥せんど/なれ/ども、¥ちち¥うぢの−あく−さふ/の¥ご=れい、¥その¥おそれ¥あり。¥ほくめん/は¥しやうこ/に/は¥なかり/けり。¥しらかはのゐん/の¥おん=とき、¥はじめ−おか/れ/て/より¥この−かた、¥ゑふ=ども¥あまた¥さふらひ/けり。¥ためとし、¥もりしげ、¥わらは/より¥いまいぬまる、¥せんじゆまる/とて、¥これ=ら/は¥さう−なき¥きりもの/にて/ぞ¥あり/ける。¥とばのゐん/の¥おん=とき/も、¥すゑより、¥すゑのり¥ふし¥とも/に、¥てうか/に¥めし−つかは/れ/て¥あり/し/が、¥つね/は¥てんそう−する¥をり/も¥あり/なんど¥きこえ/しか/ども、¥これ=ら/は¥みな¥み/の¥ほど/を¥ふるまう/て/こそ¥あり/し/か。¥この¥とき/の¥ほくめん/の¥ともがら/は、¥もつて/の−ほか/に¥くわぶん/にて、¥くぎやう−てんじやうびと/を/も¥こと/と/も¥せ/ず、¥げほくめん/より¥しやうほくめん/に¥あがり、¥しやうほくめん/より¥てんじやう/の¥まじはり/を¥ゆるさ/るる¥もの/も¥おほかり/けり。¥かく/のみ¥おこなは/るる¥あひだ、¥おごれ/る¥こころ=ども¥つき/て、¥よし−なき¥むほん/に/も¥くみし/てげる/に/こそ。¥
なか/に/も¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥もと/に¥めし−つかは/れ/ける¥もろみつ、¥なりかげ/と¥いふ¥もの¥あり。¥もろみつ/は¥あはの−くに/の¥ざいちやう、¥なりかげ/は¥きやう/の¥もの、¥じゆつこん¥いやしき¥げらふ/なり。¥こんでいわらは、¥もしは¥かくごしや/など/にて/も/やP94¥あり/けん、¥さかざかしかり/し/に¥よつ/て、¥つね/は¥ゐん/へ/も¥めし−つかは/れ/ける/が、¥もろみつ/は¥さゑもん/の−じよう、¥なりかげ/は¥うゑもん/の−じよう/とて、¥に−にん¥いちど/に¥ゆきへ/の−じよう/に¥なり/ぬ。¥ひととせ¥しんせい¥こと/に¥あひ/し¥とき、¥に−にん¥とも/に¥しゆつけ−し/て、¥さゑもん−にふだう¥さいくわう、¥うゑもん−にふだう¥さいけい/とて、¥これ=ら/は¥しゆつけ/の¥のち/も、¥ゐん/の¥みくら¥あづかり/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥かの¥さいくわう/が¥こ/に¥もろたか/と¥いふ¥もの¥あり。¥これ/も¥さう−なき¥きりもの/にて、¥けんびゐし、¥ごゐ/の−じやう/まで¥へ−あがり/て、¥あまつさへ¥あんげん−ぐわんねん−じふにんぐわつ−にじふくにち、¥つゐな/の−ぢもく/に、¥かがの−かみ/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥こくむ/を¥おこなふ¥あひだ、¥ひほふ¥ひれい/を¥ちやうぎやう−し、¥じんじや¥ぶつじ、¥けんもん¥せいけ/の¥しやうりやう/を¥もつたう−し/て、¥さんざん/の¥こと=ども/にて/ぞ¥あり/ける。¥たとひ¥せうこう/が¥あと/を¥へだつ/と¥いふ/とも、¥をんびん/の¥まつりごと/を¥おこなふ/べかり/し/に、¥かく¥こころ/の¥まま/に¥ふるまふ¥あひだ、¥おなじき−にねん/の¥なつ/の¥ころ、¥こくし−もろたか/が¥おとと、¥こんどう−はんぐわん−もろつね/を¥かが/の¥もくだい/に¥ふせ/らる。¥もくだい¥げちやく/の¥はじめ、¥こくふ/の¥へん/に¥うがは/と¥いふ¥やまでら¥あり。¥をりふし¥じそう=ども/が¥ゆ/を¥わかい/て¥あび/ける/を、¥らんにふ−し/て¥おひ−あげ、¥わが−み¥あび、¥ざふにん=ばら¥おろし、¥むま¥あらは/せ/など¥し/けり。¥じそう¥いかり/を¥なし/て、「¥むかし/より¥この¥ところ/は、¥くにがた/の¥もの/の¥にふぶ−する¥こと¥なし。¥せんれい/に¥まかせ/て、¥すみやか/に¥にふぶ/の¥あふばう¥とどめよ/や」/と/ぞ¥まうし/ける。「¥もくだい¥おほき/に¥いかつ/て、「¥せんせん/の¥もくだい/は、¥ふかく/で/こそ¥いやしま/れ/たれ。¥たう−もくだい/に¥おいて/は、¥すべて¥その¥ぎ¥ある/まじ。¥ただ¥ほふ/に¥まかせよ」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥じそう=ども/は¥くにがた/の¥もの/を¥つゐしゆつ−せ/ん/と¥す。¥くにがた/の¥もの=ども/は、¥ついで/を¥もつて¥らんにふ−せ/ん/と、¥うち−あひ、P95¥はり−あひ−し/ける/ほど/に、¥もくだい−もろつね/が¥ひざう−し/ける¥むま/の¥あし/を/ぞ¥うち−をり/ける。¥その−のち/は¥たがひ/に¥きうせん¥ひやうぢやう/を¥たいし/て、¥い−あひ、¥きり−あひ、¥すこく¥たたかふ。¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥もくだい¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん¥ひき−しりぞく。¥その−のち¥たう−ごく/の¥ざいちやう=ら¥いつせん−よ−にん、¥もよほし−あつめ/て、¥うがは/に¥おし−よせ、¥ばうじや¥いち−う/も¥のこさ/ず¥みな¥やき−はらふ。¥うがは/と¥いふ/は、¥はくさん/の¥まつじ/なり。¥この¥こと¥うつたへ/ん/とて、¥すすむ¥らうそう¥たれたれ/ぞ。¥ちしやく、¥がくみやう、¥ほうだいばう、¥しやうち、¥がくおん、¥とさの−あざり/ぞ¥すすみ/ける。¥しらやま¥さんじや¥はちゐん/の¥だいしゆ、¥ことごとく¥おこり−あひ、¥つがふ¥その¥せい¥にせん−よ−にん、¥おなじき−しちぐわつ−ここのかのひ/の¥くれがた/に、¥もくだい−もろつね/が¥たち¥ちかう/こそ¥おし−よせ/たれ。¥けふ/は¥ひ¥くれ/ぬ。¥あす/の¥いくさ/と¥さだめ/て、¥その−ひ/は¥よせ/で¥ゆらへ/たり。¥つゆ¥ふき−むすぶ¥あきかぜ/は、¥いむけ/の¥そで/を¥ひるがへし、¥くもゐ/を¥てらす¥いなづま/は、¥かぶと/の¥ほし/を¥かがやかす。¥もくだい¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥よにげ/に/して¥きやう/へ¥のぼる。¥あくる¥う/の−こく/に¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥じやう/の¥うち/に/は¥おと/も¥せ/ず。¥ひと/を¥いれ/て¥みせ/けれ/ば、「¥みな¥おち/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥だいしゆ¥ちから¥およば/で¥ひき−しりぞく。¥さら/ば¥さんもん/へ¥うつたへ/ん/とて、¥はくさん−ちうぐう/の¥しんよ、¥かざり¥たてまつ/て、¥ひえいさん/へ¥ふり−あげ¥たてまつる。¥おなじき−はちぐわつ−じふににち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥はくさん−ちうぐう/の¥しんよ、¥すでに¥ひえいさん¥ひがしざかもと/に¥つか/せ¥たまふ/と¥まうす/ほど/こそ¥あり/けれ、¥ほくこく/の¥かた/より、¥いかづち¥おびたたしく¥なつ/て、¥みやこ/を¥さし/て¥なり−のぼり、¥はくせつ¥くだつ/て¥ち/を¥うづみ、¥さんじやう¥らくちう¥おしなべて、¥ときは/の¥やま/の¥こずゑ/まで、¥みな¥しろたへ/に/ぞ¥なり/に/ける。
(『ぐわんだて』)S0114¥だいしゆ¥しんよ/を/ば、¥まらうと/の−みや/へ¥いれP96¥たてまつる。¥まらうと/と¥まうす/は、¥はくさん−めうり−ごんげん/にて¥おはします。¥まうせ/ば¥ふし/の¥おん=なか/なり。¥まづ¥さた/の¥じやうふ/は¥しら/ず、¥しやうぜん/の¥おん=よろこび、¥ただ¥この¥こと/に¥あり。¥うらしま/が¥こ/の¥しつせ/の¥まご/に¥あへ/り/し/に/も¥すぎ、¥たいない/の¥もの/の¥りやうぜん/の¥ちち/を¥み/し/に/も¥こえ/たり。¥さんぜん/の¥しゆと¥くびす/を¥つぎ、¥しちしや/の¥じんにん¥そで/を¥つらね/て、¥じじこくこく/の¥ほつせ¥きねん、¥ごんご−だうだん/の¥こと=ども/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥さる−ほど/に¥さんもん/の¥だいしゆ、¥こくし−かがの−かみ−もろたか/を¥るざい/に¥しよせ/られ、¥もくだい−こんどう−はんぐわん−もろつね/を¥きんごく−せ/らる/べき¥よし、¥そうもん¥どど/に¥およぶ/と¥いへ/ども、¥ご=さいきよ¥なかり/けれ/ば、¥しかる/べき¥くぎやう−てんじやうびと/は、「¥あはれ¥とく/して¥ご=さいだん¥ある/べき/ものを。¥むかし/より¥さんもん/の¥そしよう/は¥た/に¥こと/なり。¥おほくら/の−きやう−ためふさ、¥ださい/の−ごん/の−そつ−すゑなかの−きやう/は、¥さ/しも¥てうか/に¥ちようしん/たり/しか/ども、¥さんもん/の¥そしよう/に¥よつ/て¥るざい−せ/られ¥たまひ/に/き。¥いはんや¥もろたか/など/は¥こと/の−かず/にて/や/は¥ある/べき、¥しさい/に/や¥およぶ/べき」/と¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥たいしん/は¥ろく/を¥おもんじ/て¥いさめ/ず、¥せうしん/は¥つみ/に¥おそれ/て¥まうさ/ず」/と¥いふ¥こと/なれ/ば、¥おのおの¥くち/を¥とぢ¥たまへ/り。P97
「ぐわんだて」¥かもがは/の¥みづ、¥すごろく/の¥さい、¥やまぼふし、¥これ/ぞ¥わが¥おん=こころ/に¥かなは/ぬ¥もの」/と、¥しらかはのゐん/も¥おほせ/なり/ける/とかや。¥とばのゐん/の¥おん=とき/も、¥ゑちぜん/の¥へいせんじ/を¥さんもん/へ¥よせ/られ/ける¥こと/は、¥たうざん/を¥ご=きゑ¥あさから/ざる/に¥よつ/て/なり。「¥ひ/を¥もつて¥り/と¥す」/と¥せんげ−せ/られ/て/こそ、¥ゐんぜん/を/ば¥くださ/れ/けれ。¥され/ば¥がうぞつ−きやうばうの−きやう/の¥まうさ/れ/し/は、「¥さんもん/の¥だいしゆ、¥ひよし/の¥しんよ/を¥ぢんどう/へ¥ふり¥たてまつ/て、¥そしよう/を¥いたさ/ば、¥きみ/は¥いかが¥おん=ぱからひ¥さうらふ/べき」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥ほふわう、「¥げに/も¥さんもん/の¥そしよう/は¥もだし−がたし」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥いんじ¥かほう−にねん−さんぐわつ−ふつかのひ、¥みのの−かみ−みなもとの−よしつなの−あそん、¥たう−ごく¥しんりふ/の¥しやう/を¥たふす¥あひだ、¥やま/の¥くぢうしや¥ゑんおう/を¥せつがい−す。¥これ/に¥よつ/て¥ひよし/の¥しやし、¥えんりやくじ/の¥じくわん、¥つがふ¥さんじふ−よ−にん、¥まうしぶみ/を¥ささげ/て¥ぢんどう/へ¥さんじ/たる/を、¥ごにでう/の−くわんばく=どの、¥やまとげんじ−なかづかさの−ごん/の−せふ−よりはる/に¥おほせ/て、¥これ/を¥ふせが/せ/らるる/に¥よりはる/が¥らうどう、¥や/を¥はなつ。¥やには/に¥ゐ−ころさ/るる¥もの¥はち−にん、¥きず/を¥かうぶる¥もの¥じふ−よ−にん、¥しやし、¥しよし、¥しはう/へ¥みな¥にげ−さり/ぬ。¥これ/に¥よつ/て¥さんもん/の¥じやうかう=ら、¥しさい/を¥そうもん/の¥ため/に、¥おびたたしう¥げらく−す/とP98¥きこえ/しか/ば、¥ぶし、¥けんびゐし、¥にしざかもと/に¥ゆき−むかつ/て、¥みな¥おつ−かへす。¥
さる−ほど/に¥さんもん/に/は、¥ご=さいだん¥ちち/の¥あひだ、¥ひよし/の¥しんよ/を¥こんぽんちうだう/へ¥ふり−あげ¥たてまつり、¥その¥おん=まへ/にて¥しんどく/の¥だいはんにや/を¥しち−にち¥よみ/て、¥ごにでう/の−くわんばく=どの/を¥じゆそ−し¥たてまつる。¥けちぐわん/の¥だうし/に/は、¥ちういん−ほふいん、¥そのーとき/は¥いまだ¥ちういん−ぐぶ/と¥まうし/し/が、¥かうざ/に¥のぼり¥かね¥うち−ならし、¥けいびやく/の¥ことば/に¥いはく、「¥われ=ら/が¥なたね/の¥ふたば/より¥おほし−たて¥たまひ/し¥かみ=たち、¥ごにでう/の−くわんばく=どの/に、¥かぶらや¥ひとつ¥はなち−あて¥たまへ。¥だいはちわうじ−ごんげん」/と¥たからか/に/こそ¥きせい−し/たり/けれ。¥その¥よ¥やがて¥ふしぎ/の¥こと¥あり/けり。¥はちわうじ/の¥ご=てん/より、¥かぶらや/の¥こゑ¥いで/て、¥わうじやう/を¥さし/て¥なり/て¥ゆく/と/ぞ、¥ひと/の¥ゆめ/に/は¥みえ/たり/ける。¥その¥あした¥くわんばく=どの/の¥ごしよ/の¥み=かうし/を¥あげ/ける/に、¥ただいま¥やま/より¥とつ/て¥き/たる¥やう/に、¥つゆ/に¥ぬれ/たる¥しきみ¥ひとえだ、¥たつ/たり/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥やがて¥その¥よ/より、¥ごにでう/の−くわんばく=どの、¥さんわう/の¥おん=とがめ/とて、¥おもき¥おん=やまふ/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/しか/ば、¥ははうへ¥おほ=との/の¥きたのまんどころ、¥おほき/に¥おん=なげき¥あつ/て、¥おん=さま/を¥やつし、¥いやしき¥げらふ/の¥まね/を¥し/て、¥ひよし/の−やしろ/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥しち−にち−しち−や/が¥あひだ¥いのり¥まうさ/せ¥おはします。¥まづ¥あらはれ/て/の¥ご=りふぐわん/に/は、¥しばでんがく¥ひやく−ばん、¥ひやく−ばん/の¥ひとつもの、¥けいば、¥やぶさめ、¥すまふ、¥おのおの¥ひやく−ばん、¥ひやく−ざ/の¥にんわうかう、¥ひやく−ざ/の¥やくしかう、¥いつ−ちやくしゆ−はん/の¥やくし¥ひやく−たい、¥とうじん/の¥やくし¥いつたい、¥ならびに¥しやか、¥あみだ/の¥ぞう、¥おのおの¥ざうりふ¥くやう−せ/られ/けり。¥また¥ご=しんぢう/に¥みつ/の¥ご=りふぐわん¥あり。¥おん=こころ/の¥うち/の¥おん=こと/なれ/ば、P99¥ひと¥これ/を/ば、¥いかで/か¥しり¥たてまつる/べき/に、¥それに¥なに/より/も¥また¥ふしぎ/なり/ける¥こと/に/は、¥しち−や/に¥まんずる¥よ、¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/に¥いくら/も¥あり/ける¥まゐりうど=ども/の¥なか/に、¥みちのく/より、¥はるばる/と¥のぼつ/たり/ける¥わらは−みこ、¥やはん/ばかり/に¥にはか/に¥たえ−いり/けり。¥はるか/に¥かき−いだし/て¥いのり/けれ/ば、¥やがて¥たつ/て¥まひ−かなづ。¥ひと¥きどく/の¥おもひ/を¥なし/て¥これ/を¥みる。¥はんじ/ばかり¥まう/て¥のち、¥さんわう¥おり/させ¥たまひ/て、¥やうやう/の¥ご=たくせん/こそ¥おそろしけれ。「¥しゆじやう=ら¥たしか/に¥うけたまはれ。¥おほ=との/の¥きたのまんどころ、¥けふ¥しち−にち、¥わが¥おん=まへ/に¥こもら/せ¥たまひ/たり。¥ご=りふぐわん¥みつ¥あり。¥まづ¥ひとつ/に/は、¥こんど¥てんが/の¥じゆみやう/を¥たすけ/させ¥おはしませ。¥さ/も¥さふらは/ば、¥おほみや/の¥した=どの/に¥さぶらふ¥もろもろ/の¥かたはうど/に¥まじはつ/て、¥いつせんにち/が¥あひだ、¥てうせき¥みやづかひ¥まうさ/ん/と/なり。¥おほ=との/の¥きたのまんどころ/にて、¥よ/を¥よ/と/も¥おぼしめさ/で、¥すごさ/せ¥たまふ¥おん=こころ/に/も、¥こ/を¥おもふ¥みち/に¥まよひ/ぬれ/ば、¥いぶせき¥こと/を/も¥わすら/れ/て、¥あさまし=げ/なる¥かたはうど/に¥まじはつ/て、¥いつせんにち/が¥あひだ、¥あさゆふ¥みやづかひ¥まうさ/ん/と¥おほせ/らるる/こそ、¥まことに¥あはれ/に¥おぼしめせ。¥ふたつ/に/は¥おほみや/の¥はしどの/より、¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/まで、¥くわいらう¥つくつ/て¥まゐらせ/ん/と/なり。¥さんぜん−にん/の¥だいしゆ、¥ふる/に/も¥てる/に/も、¥しやさん/の¥とき、¥いたはしう¥おぼゆる/に、¥くわいらう¥つくら/れ/たら/ん/は、¥いか/に¥めでたから/ん。¥みつ/に/は¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/にて、¥ほつけ−もんだふかう¥まいにち¥たいてん¥なく¥おこなは/す/べし/と/なり。¥この¥ご=りふぐわん=ども/は、¥いづれ/も¥おろか/なら/ね/ども、¥せめて/は¥かみ¥ふたつ/は、¥さ¥なく/と/も¥あり/な/ん。¥ほつけ−もんだふかう/こそ、¥いちぢやう¥あら/まほしう/は¥おぼしめせ。P100¥ただし、¥こんど/の¥そしよう/は、¥むげ/に¥やすかり/ぬ/べき¥こと/にて¥あり/つる/を、¥ご=さいきよ¥なく/して、¥じんにん、¥みやじ¥い−ころさ/れ、¥しゆと¥おほく¥きず/を¥かうぶつ/て、¥なくなく¥まゐり/て¥うつたへ¥まうす/が、¥あまり/に¥こころ−うけれ/ば、¥いか/なら/ん¥よ/に¥わする/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥その−うへ¥かれ=ら/に¥あたる¥ところ/の¥や/は、¥すなはち¥わくわう−すゐじやく/の¥おん=はだへ/に¥たつ/たる/なり。¥まこと¥そらごと/は¥これ/を¥みよ」/とて、¥かた¥ぬぎ/たる/を¥みれ/ば、¥ひだり/の¥わき/の¥した、¥おほき/なる¥かはらけ/の¥くち/ほど、¥うげのい/て/ぞ¥あり/ける。「¥これ/が¥あまり/に¥こころ−うけれ/ば、¥いか/に¥まうす/と/も¥しぢう/の¥こと/は¥かなふ/まじ。¥ほつけ−もんだふかう¥いちぢやう¥ある/べく/は、¥みとせ/が¥いのち/を¥のべ/て¥たてまつら/ん。¥それ/を¥ふそく/に¥おぼしめさ/ば¥ちから¥およば/ず」/とて、¥さんわう¥あがら/せ¥たまひ/けり。¥ははうへ¥この¥ご=りふぐわん/の¥おん=こと、¥ひと/に/も¥かたら/せ¥たまは/ね/ば、¥たれ¥もらし/ぬ/らん/と、¥すこし/も¥うたがふ¥かた/も¥ましまさ/ず。¥おん=こころ/の¥うち/の¥こと=ども/を、¥あり/の−まま/に¥ご=たくせん¥あり/けれ/ば、¥いよいよ¥しんかん/に¥そう/て、¥こと/に¥たつとく¥おぼしめし、「¥たとひ¥いちにち¥へんし/と¥さぶらふ/とも、¥あり−がたう/こそ¥さぶらふ/べき/に、¥まして¥みとせ/が¥いのち/を¥のべ/て¥たまはら/ん/と¥おほせ/らるる/こそ、¥まことに¥あり−がたう/は¥さぶらへ」/とて、¥おん=なみだ/を¥おさへ/て¥おん=げかう¥あり/けり。¥その−のち¥きの−くに/に¥てんが/の¥りやう、¥たなか/の−しやう/と¥いふ¥ところ/を、¥えいたい¥はちわうじ/へ¥きしん−せ/らる。¥され/ば¥いま/の¥よ/に¥いたる/まで、¥はちわうじ/の¥おん=やしろ/にて、¥ほつけ−もんだふかう、¥まいにち¥たいてん¥なし/と/ぞ¥うけたまはる。¥かかり/し−ほど/に、¥ごにでう/の−くわんばく=どの¥おん=やまふ¥かるま/せ¥たまひ/て、¥もと/の/ごとく/に¥なら/せ¥たまふ。¥じやうげ¥よろこび¥あは/れ/し/ほど/に、¥みとせ/の¥すぐる/は¥ゆめ/なれ/や、¥えいちやう−にねん/に¥なり/に/けり。P101¥ろくぐわつ−にじふいちにち、¥また¥ごにでう/の−くわんばく=どの、¥おん=ぐし/の¥きは/に¥あしき¥おん=かさ¥いで/させ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/し/が、¥おなじき−にじふしちにち、¥おん=とし¥さんじふはち/にて、¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥おん=こころ/の¥たけさ、¥り/の¥つよさ、¥さ/しも¥ゆゆしう¥おはせ/しか/ども、¥まめやか/に¥こと/の¥きふ/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥おん=いのち/を¥をしま/せ¥たまひ/けり。¥まことに¥をしかる/べし。¥しじふ/に/だに¥みたせ¥たまは/で、¥おほ=との/に¥さきだた/せ¥たまふ/こそ¥かなしけれ。¥かならず¥ちち/を¥さきだつ/べし/と¥いふ¥こと/は¥なけれ/ども、¥しやうじ/の¥おきて/に¥したがふ¥ならひ、¥まんどく−ゑんまん/の¥せそん、¥じふぢ−くきやう/の¥だいじ=たち/も、¥ちから¥およば/せ¥たまは/ぬ¥しだい/なり。¥じひ¥ぐそく/の¥さんわう、¥りもつ/の¥はうべん/にて¥ましませ/ば、¥おん=とがめ¥なかる/べし/と/も¥おぼえ/ず。「みこしぶり」(『みこしぶり』)S0115¥さる−ほど/に¥さんもん/に/は、¥こくし−かがの−かみ−もろたか/を¥るざい/に¥しよ−せ/られ、¥もくだい−こんどう−はんぐわん−もろつね/を¥きんごく−せ/らる/べき¥よし、¥そうもん¥どど/に¥およぶ/と¥いへ/ども、¥ご=さいきよ¥なかり/けれ/ば、¥ひよし/の¥さいれい/を¥うち−とどめ/て、¥あんげん−さんねん−しんぐわつ−じふさんにち/の¥たつ/の¥いつてん/に、¥じふぜんじ−ごんげん、¥まらうど、¥はちわうじ、¥さんじや/の¥しんよ/を¥かざり¥たてまつ/て、¥ぢんどう/へ¥ふり−あげ¥たてまつる。¥さがりまつ、¥きれづつみ、¥かも/の¥かはら、¥ただす、¥うめただ、¥やなぎはら、¥とうぼくゐん/の¥へん/に、¥じんにん、¥みやじ、¥しらだいしゆ、P102¥せんだう¥みちみち/て、¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず。¥しんよ/は¥いちでう/を¥にし/へ¥いら/せ¥たまふ/に、¥ご=じんぼう¥てん/に¥かかやい/て、¥にちぐわつ¥ち/に¥おち¥たまふ/か/と¥おどろか/る。¥これ/に¥よつ/て¥げんぺい−りやうけ/の¥たいしやうぐん/に¥おほせ/て、¥しはう/の¥ぢんどう/を¥かため/て、¥だいしゆ¥ふせぐ/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥へいけ/に/は¥こまつの−ないだいじん/の−さだいしやう−しげもり=こう、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/にて、¥おほみやおもて/の¥やうめい、¥たいけん、¥いうはう、¥みつ/の¥もん/を¥かため¥たまふ。¥おとと¥むねもり、¥とももり、¥しげひら、¥をぢ¥よりもり、¥のりもり、¥つねもり/など/は、¥にしみなみ/の¥もん/を¥かため¥たまふ。¥げんじ/に/は¥たいだい−しゆご/の¥げん−ざんみ−よりまさ、¥らうどう/に/は¥わたなべの−はぶく、¥さづく/を¥さき/と/して、¥その¥せい¥わづか/に¥さんびやく−よ−き、¥きた/の¥もん、¥ぬひどの/の−ぢん/を¥かため¥たまふ。¥ところ/は¥ひろし、¥せい/は¥すくなし、¥まばら/に/こそ¥みえ/たり/けれ。¥だいしゆ¥ぶせい/たる/に¥よつ/て、¥きた/の¥もん、¥ぬひどの/の−ぢん/より¥しんよ/を¥いれ¥たてまつら/ん/と¥する/に、¥よりまさの−きやう¥さる−ひと/にて、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥かぶと/を¥ぬぎ、¥てうづ−うがひ−し/て、¥しんよ/を¥はいし¥たてまつら/る。¥つはもの=ども/も¥みな¥かく/の/ごとし。¥よりまさの−きやう/より、¥だいしゆ/の¥なか/へ¥ししや/を¥たて/て、¥いひ¥おくら/るる¥むね¥あり。¥その¥つかひ/は¥わたなべの−ちやうじつ−となふ/と/ぞ¥きこえ/し。¥となふ¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥きちん/の−ひたたれ/に、¥こざくら/を¥き/に¥かへし/たる¥よろひ¥き/て、¥しやくどう−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥しらは/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で、¥たかひも/に¥かけ、¥しんよ/の¥おん=まへ/に¥かしこまつ/て、「¥しばらく¥しづまら/れ¥さふらへ。¥げん−ざんみ=どの/より、¥しゆと/の¥おん=なか/へ¥げん−ざんみ=どの/の¥まうせ/と¥ざふらふ」/とて、「¥こんど¥さんもん/の¥ご=そしよう、¥りうん/の¥でう¥もちろん/に¥さふらふ。¥ご=さいだん¥ちち/こそ、¥よそ/にて/も¥ゐこん/に¥おぼえ¥さうらへ。¥しんよ¥いれ¥たてまつら/んP103¥こと、¥しさい/に¥および¥さふらは/ず。¥ただし¥よりまさ¥ぶせい/に¥さふらふ。¥あけ/て¥いれ¥たてまつる¥ぢん/より¥いら/せ¥たまひ/な/ば、¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥めだりがほ−し/けり/など、¥きやう−わらんべ/の¥まうさ/ん¥こと、¥ごにち/の¥なん/に/や¥さふらは/んず/らん。¥あけ/て¥いれ¥たてまつれ/ば、¥せんじ/を¥そむく/に¥に/たり。¥また¥ふせぎ¥たてまつら/ん/と¥すれ/ば、¥ねんらい¥いわう、¥さんわう/に¥かうべ/を¥かたぶけ/て¥さふらふ¥み/が、¥けふ/より¥のち、¥ながく¥ゆみ−や/の¥みち/に¥わかれ¥さふらひ/な/んず。¥かれ/と¥いひ、¥これ/と¥いひ、¥かたがた¥なんぢ/の¥やう/に¥おぼえ¥さふらふ。¥ひんがし/の¥ぢんどう/を/ば¥こまつ=どの/の¥おほぜい/にて¥かため/られ/て¥さふらふ。¥その¥ぢん/より¥いら/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と、¥いひ¥おくり/たり/けれ/ば、¥となふ/が¥かく¥いふ/に¥ふせが/れ/て、¥じんにん、¥みやじ、¥しばらく¥ゆらへ/たり。¥わかだいしゆ、¥あくそう=ども/は、「¥なんでふ¥その¥ぎ¥ある/べき。¥ただ¥この¥ぢん/より¥しんよ/を¥いれ¥たてまつれ/や」/と¥いふ¥やから¥おほかり/けれ/ども、¥ここ/に¥らうそう/の¥なか/に、¥さんたふ−いち/の¥せんぎしや/と¥きこえ/し¥つの−りつしや−がううん、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥この¥ぎ¥もつとも¥さ¥いは/れ/たり。¥われ=ら¥しんよ/を¥さき−だて¥まゐらせ/て、¥そしよう/を¥いたさ/ば、¥おほぜい/の¥なか/を¥うち−やぶり/て/こそ、¥こうたい/の¥きこえ/も¥あら/んずれ。¥なかんづく¥この¥よりまさの−きやう/は、¥ろくそんわう/より¥この−かた、¥げんじ¥ちやくちやく/の¥しやうとう、¥ゆみ−や/を¥とつ/て/も、¥いまだ¥その¥ふかく/を¥きか/ず。¥およそ/は¥ぶげい/に/も¥かぎら/ず、¥かだう/に/も¥また¥すぐれ/たる¥をのこ/なり。¥ひととせ¥こんゑのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥たうざ/の¥ご=くわい/の¥あり/し/に、『¥しんざん/の¥はな』/と¥いふ¥だい/を¥いださ/れ/たり/ける/に、¥ひとびと¥みな¥よみ¥わづらは/れ/たり/し/を、¥この¥よりまさの−きやう、P104¥
み−やま−ぎ/の¥その¥こずゑ/と/も¥みえ/ざり/し¥さくら/は¥はな/に¥あらはれ/に/けり W007
/と¥いふ¥めいか¥つかまつ/て¥ぎよ=かん/に¥あづかる/ほど/の¥やさおのこ/に、¥いかんが¥とき/に¥のぞん/で¥なさけ−なう¥ちじよく/を/ば¥あたふ/べき。¥ただ¥しんよ¥かき−かへし¥たてまつれ/や」/と、¥せんぎ−し/たり/けれ/ば、¥すせん−にん/の¥だいしゆ、¥せんぢん/より¥ごぢん/まで、¥みな¥もつとも−もつとも/と/ぞ¥どうじ/ける。¥さて¥しんよ¥かき−かへし¥たてまつり、¥ひんがし/の¥ぢんどう、¥たいけんもん/より¥いれ¥たてまつら/ん/と¥し/ける/に、¥らうぜき¥たちまち/に¥いで−き/て、¥ぶし=ども¥さんざん/に¥い¥たてまつる。¥じふぜんじ/の¥み=こし/に/も、¥や=ども¥あまた¥い−たて/けり。¥じんにん、¥みやじ¥い−ころさ/れ、¥しゆと¥おほく¥きず/を¥かうぶつ/て、¥をめき−さけぶ¥こゑ/は¥ぼんでん/まで/も¥きこえ、¥けんらう¥ぢじん/も¥おどろき¥たまふ/らん/と/ぞ¥おぼえ/ける。¥だいしゆ¥しんよ/を/ば¥ぢんどう/に¥ふり−すて¥たてまつり、¥なくなく¥ほんざん/へ/ぞ¥かへり−のぼり/ける。「だいりえんしやう」(『だいりえんしやう』)S0116¥ゆふべ/に¥およん/で¥くらんど/の−させうべん−かねみつ/に¥おほせ/て、¥ゐん/の¥てんじやう/にて、¥にはか/に¥くぎやう−せんぎ¥あり/けり。¥さんぬる¥ほうあん−しねん−しんぐわつ/に¥しんよ¥じゆらく/の¥とき/は、¥ざす/に¥おほせ/て、¥せきさん/の−やしろ/へ¥いれ¥たてまつら/る。¥また¥ほうえん−しねん−しちぐわつ/に¥しんよ¥じゆらく/の¥とき/は、¥ぎをん/の−べつたう/に¥おほせ/て、¥ぎをん/の−やしろ/へ¥いれ¥たてまつら/る。¥こんど/も¥ほうえん/の¥れい/たる/べし/とて、¥ぎをん/の−べつたう−ごん/の−だいそうづ−ちようけん/にP105¥おほせ、¥へいしよく/に¥およん/で¥ぎをん/の−やしろ/へ¥いれ¥たてまつら/る。¥しんよ/に¥たつ¥ところ/の¥や/を/ば、¥じんにん/して¥これ/を¥ぬか/せ/らる。¥むかし/より¥さんもん/の¥だいしゆ、¥しんよ/を¥ぢんどう/へ¥ふり¥たてまつる¥こと/は、¥さんぬる¥えいきう/より¥この−かた、¥ぢしよう/まで/は¥ろく−か−ど/なり。¥され/ども¥まいど/に¥ぶし/に¥おほせ/て¥ふせが/せ/らるる/に、¥しんよ¥い¥たてまつる¥こと/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。「¥れいしん¥いかり/を¥なせ/ば、¥さいがい¥ちまた/に¥みつ/と¥いへ/り。¥おそろし−おそろし」/と/ぞ¥おのおの¥のたまひ−あは/れ/ける。¥おなじき−じふしにち/の¥やはん/ばかり、¥さんもん/の¥だいしゆ、¥また¥おびたたしう¥げらく−する/と¥きこえ/しか/ば、¥しゆしやう/は¥やちう/に¥えうよ/に¥めし/て、¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/へ¥ぎやうがう¥なる。¥ちうぐう、¥みやみや/は、¥おん=くるま/に¥たてまつり/て、¥たしよ/へ¥ぎやうげい¥あり/けり。¥くわんばく=どの/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥われ/も¥われ/も/と¥ぐぶ−せ/らる。¥こまつの−おとど/は、¥なほし/に¥や¥おう/て¥ぐぶ−せ/らる。¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり/は、¥そくたい/に¥ひらやなぐひ¥おう/て/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥およそ¥きんちう/の¥じやうげ、¥きやう−ぢう/の¥きせん、¥さわぎ−ののしる¥こと¥おびたたし。¥され/ども¥さんもん/に/は、¥しんよ/に¥や¥たち、¥じんにん¥みやじ¥い−ころさ/れ、¥しゆと¥おほく¥きず/を¥かうぶり/たり/しか/ば、¥おほみや¥に/の−みや¥いげ、¥かうだう、¥ちうだう、¥すべて¥しよだう、¥いち−う/も¥のこさ/ず¥みな¥やき−はらつ/て、¥さんや/に¥まじはる/べき¥よし、¥さんぜん¥いちどう/に¥せんぎ−す。¥これ/に¥よつ/て¥だいしゆ/の¥まうす¥ところ、¥ほふわう¥おん=ぱからひ¥ある/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥さんもん/の¥じやうかう=ら、¥しさい/を¥しゆと/に¥ふれ/ん/とて、¥とうざん−す/と¥きこえ/しか/ば、¥だいしゆ¥にしざかもと/に¥おり−くだつ/て、¥みな¥おつ−かへす。¥へい−だいなごん−ときただの−きやう、P106¥その−とき/は¥いまだ¥さゑもん/の−かみ/にて¥おはし/ける/が、¥しやうけい/に¥たつ。¥だい−かうだう/の¥には/に¥さんたふ¥くわいがふ−し/て、「¥しやうけい/を¥とつ/て¥ひつぱり、¥しや¥かぶり/を¥うち−おとし、¥その¥み/を¥からめ/て、¥みづうみ/に¥しづめよ」/など/ぞ¥まうし/ける。¥すでに¥かう/と¥みえ/し¥とき、¥ときただの−きやう、¥だいしゆ/の¥なか/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥しばらく¥しづまら/れ¥さふらへ。¥しゆと/の¥おん=なか/へ¥まうす/べき¥こと/の¥さふらふ」/とて、¥ふところ/より¥こすずり¥たたうがみ¥とり−いだし、¥ひとふで¥かい/て¥だいしゆ/の¥なか/へ¥おくら/る。¥これ/を¥ひらい/て¥みる/に、「¥しゆと/の¥らんあく/を¥いたす/は、¥まえん/の¥しよぎやう/なり。¥めいわう/の¥せいし/を¥くはふる/は、¥ぜんぜい/の¥かご/なり」/と/こそ¥かか/れ/たれ。¥これ/を¥み/て、¥だいしゆ¥ひつぱる/に/も¥およば/ず、¥みな¥もつとも−もつとも/と¥どうじ/て、¥たにだに/に¥おり、¥ばうばう/へ/ぞ¥いり/に/ける。¥いつし¥いつく/を¥もつて、¥さんたふ¥さんぜん/の¥いきどほり/を¥やすめ、¥こうし/の¥はぢ/を/も¥のがれ¥たまひ/けん¥ときただの−きやう/こそ¥ゆゆしけれ。¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥はつかう/の¥みだりがはしき/ばかり/か/と¥おもひ/ぬれ/ば、¥ことわり/を/も¥ぞんぢ−し/けり/と/ぞ、¥ひとびと¥かんじ−あは/れ/ける。¥おなじき−はつかのひ、¥くわざんのゐん−ごん−ぢうなごん−ただちかの−きやう/を¥しやうけい/にて、¥こくし−かがの−かみ−もろたか/を¥けつくわん−せ/られ/て、¥おはり/の¥ゐどた/へ¥ながさ/る。¥おとと¥こんどう−はんぐわん−もろつね/を/ば¥きんごく−せ/らる。¥また¥さんぬる¥じふさんにち¥しんよ¥い¥たてまつ/し¥ぶし¥ろくにん¥ごくぢやう−せ/らる。¥これ=ら/は¥みな¥こまつ=どの/の¥さぶらひ/なり。¥おなじき−にじふはちにち/の¥よ/の¥いぬ/の−こく/ばかり、¥ひぐちとみのこうぢ/より¥ひ¥いで−きたつ/て、¥きやう−ぢう¥おほく¥やけ/に/けり。¥をりふし¥たつみ/の¥かぜ¥はげしく¥ふき/けれ/ば、¥おほき/なる¥しやりん/の/ごとく/なるP107¥ほのほ/が、¥さんぢやう¥ごちやう/を¥へだて/て、¥いぬゐ/の¥かたへ¥すぢかへ/に¥とび−こえ−とび−こえ¥やけ−ゆけ/ば、¥おそろし/など/も¥おろか/なり。¥あるひは¥ぐへいしんわう/の¥ちぐさ=どの、¥あるひは¥きたの/の−てんじん/の¥こうばい=どの、¥きつ−いつせい/の¥はひまつ=どの、¥おに=どの、¥たかまつ=どの、¥かもゐ=どの、¥とうさんでう、¥ふゆつぎ/の−おとど/の¥かんゐん=どの、¥せうぜん=こう/の¥ほりかは=どの、¥これ/を¥はじめ/て、¥むかし−いま/の¥めいしよ¥さんじふ−よ−か−しよ、¥くぎやう/の¥いへ/だに/も¥じふろく−か−しよ/まで¥やけ/に/けり。¥その−ほか¥てんじやうびと、¥しよだいぶ/の¥いへいへ/は¥しるす/に¥およば/ず。¥はて/は¥たいだい/に¥ふき−つけ/て、¥しゆしやくもん/より¥はじめ/て、¥おうでんもん、¥くわいしやうもん、¥だいこくでん、¥ぶらくゐん、¥しよし¥はつしやう、¥あいたんどころ、¥いちじ/が¥うち/に、¥みな¥くわいじん/の¥ち/と/ぞ¥なり/に/ける。¥いへいへ/の¥につき、¥だいだい/の¥もんじよ、¥しつちん−まんぽう¥さながら¥ちり−はひ/と¥なり/ぬ。¥その¥あひだ/の¥つひえ¥いか/ばかり/ぞ。¥ひと/の¥やけ−しぬる¥こと¥すひやく−にん、¥ぎうば/の¥たぐひ¥かず/を¥しら/ず。¥これ¥ただごと/に¥あら/ず。¥さんわう/の¥おん=とがめ/とて、¥ひえいさん/より、¥おほき/なる¥さる=ども/が、¥にさんぜん¥おり−くだり、¥てんで/に¥まつび/を¥ともい/て、¥きやう−ぢう/を¥やく/と/ぞ、¥ひと/の¥ゆめ/に/は¥みえ/たり/ける。¥だいこくでん/は¥せいわ−てんわう/の¥ぎよ=う、¥ぢやうくわん−じふはちねん/に¥はじめて¥やけ/たり/けれ/ば、¥おなじき−じふくねん−しやうぐわつ−みつかのひ、¥やうぜいのゐん/の¥ご=そくゐ/は¥ぶらくゐん/にて/ぞ¥あり/ける。¥ぐわんきやう−ぐわんねん−しんぐわつ−ここのかのひ、¥ことはじめ¥あつ/て、¥おなじき−にねん−じふぐわつ−やうかのひ/ぞ¥つくり−いださ/れ/たり/ける。¥ごれんぜいのゐん/の¥ぎよ=う、¥てんき−ごねん−にんぐわつ−にじふろくにち、¥また¥やけ/に/けり。¥ぢりやく−しねん−はちぐわつ−じふしにち/に、¥ことはじめ¥あり/しか/ども、¥いまだ¥つくり/も¥いださ/れ/ず/して、¥ごれんぜいのゐん¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥ごさんでうのゐん/の¥ぎよ=う、¥えんきう−しねん−しんぐわつ−じふごにち/に¥つくり−いださ/れ/て、¥ぶんじん¥し/を¥たてまつり、P108¥れいじん¥がく/を¥そうし/て、¥せんかう¥なし¥たてまつる。¥いま/は¥よ¥すゑ/に¥なつ/て、¥くに/の¥ちから/も¥みな¥おとろへ/たれ/ば、¥その−のち/は¥つひに¥つくら/れ/ず。P109¥

平家物語 巻第二  総かな版(元和九年本)
「ざすながし」(『ざすながし』)S0201¥ぢしよう−ぐわんねん−ごぐわつ−いつかのひ、¥てんだい−ざす−めいうん−だいそうじやう、¥くじやう/を¥ちやうじ−せ/らるる¥うへ、¥くらんど/を¥お=つかひ/にて、¥によいりん/の¥ご=ほんぞん/を¥めし−かへい/て、¥ごぢそう/を¥かいえき−せ/らる。¥すなはち¥しちやう/の¥つかひ/を¥つけ/て、¥こんど¥しんよ¥だいり/へ¥ふり¥たてまつ/し¥しゆと/の¥ちやうぼん/を¥めさ/れ/けり。¥かがの−くに/に¥ざす/の¥ご=ばうりやう¥あり。¥こくし−もろたか¥これ/を¥ちやうはい/の¥あひだ、¥その¥しゆくい/に¥よつ/て、¥だいしゆ/を¥かたらひ¥そしよう/を¥いたさ/る。¥すでに¥てうか/の¥おん=だいじ/に¥およぶ/べき¥よし、¥さいくわう−ほふし−ふし/が¥ざんそう/に¥よつ/て、¥ほふわう¥おほき/に¥げきりん¥あり/けり。¥こと/に¥ぢうくわ/に¥おこなは/る/べし/と¥きこゆ。¥めいうん/は¥ゐん/の¥ご=きしよく¥あしかり/けれ/ば、¥いんやく/を¥かへし¥たてまつ/て、¥ざす/を¥じし¥まうさ/れ/けり。¥おなじき−じふいちにち、¥とばのゐん/の¥しちのみや¥かくくわい−ほつしんわう、¥てんだい−ざす/に¥なら/せ¥たまふ。¥これ/は¥しやうれんゐん/の¥だいそうじやう−ぎやうげん/の¥おん=でし/なり。¥あくる¥じふににち、¥せん−ざす¥しよしよく/を¥もつしゆ−せ/らるるP110¥うへ、¥けんびゐし¥ににん/を¥つけ/て、¥ゐ/に¥ふた/を¥し、¥ひ/に¥みづ/を¥かけ/て、¥すゐくわ/の¥せめ/に¥おこなは/る/べき¥よし¥きこゆ。¥これ/に¥よつ/て、¥だいしゆ¥なほ¥さんらく−す/と¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥また¥さわぎ−あへ/り。¥
おなじき−じふはちにち¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥くぎやう¥じふさん−にん¥さんだい−し/て、¥ぢん/の¥ざ/に¥つき、¥さきの−ざす¥ざいくわ/の¥こと¥ぎぢやう¥あり。¥はちでうの−ちうなごん−ながかたの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥さだいべん/の−さいしやう/にて、¥ばつざ/に¥さぶらは/れ/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥ほつけ/の¥かんじやう/に¥まかせ/て、¥しざい¥いつとう/を¥げん−じ/て、¥をんる−せ/らる/べし/と/は¥みえ/て¥さふらへ/ども、¥せん−ざす−めいうん−だいそうじやう/は¥けんみつ¥けんがく−し/て、¥じやうぎやう−ぢりつ/の¥うへ、¥だいじようめうきやう/を¥くげ/に¥さづけ¥たてまつり、¥ぼさつじやうかい/を¥ほふわう/に¥たもた/せ¥たてまつる。¥おんきやう/の¥し、¥おん=かい/の−し、¥ぢうくわ/に¥おこなは/れ/ん¥こと/は、¥みやう/の¥せうらん¥はかり−がたし。¥げんぞく−をんる/を¥なだめ/らる/べき/か」/と、¥はばかる¥ところ/も¥なう¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥たうざ/の¥くぎやう、¥みな¥ながかた/の¥ぎ/に¥どう−ず/と¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥ほふわう¥おん=いきどほり¥ふかかり/けれ/ば、¥なほ¥をんる/に¥さだめ/らる。¥だいじやう/の−にふだう/も¥この¥こと¥まうさ/ん/とて、¥ゐんざん−せ/られ/たり/けれ/ども、¥ほふわう¥おん=かぜ/の¥け/とて、¥ごぜん/へ/も¥めさ/れ¥たまは/ね/ば、¥ほい−な=げ/にて¥たいしゆつ−せ/らる。¥そう/を¥つみ−する¥ならひ/とて、¥どえん/を¥めし−かへし、¥げんぞく−せ/させ¥たてまつり、¥だいなごん/の−たいふ−ふじゐの−まつえだ/と¥いふ¥ぞくみやう/を/こそ¥つけ/られ/けれ。¥この¥めいうん/と¥まうす/は、¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく、¥むらかみの−てんわう¥だいしち/の¥わうじ、¥ぐへい−しんわう/より¥ろくだい/の¥おん=すゑ、¥こがの−だいなごん−あきみちの−きやう/の¥おん=こ/なり。¥まことに¥ぶさう/の¥せきとく、¥てんがP111¥だいいち/の¥かうそう/にて¥おはし/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥たつとみ¥たまひ/て、¥てんわうじ、¥ろくしようじ/の¥べつたう/を/も¥かけ¥たまへ/り。¥され/ども¥をんやう/の−かみ−あべの−やすちか/が¥まうし/ける/は、「¥さ/ばかり/の¥ちしや/の、¥めいうん/と¥なのり¥たまふ/こそ¥こころ−え/ね。¥うへ/に/は¥じつげつ/の¥ひかり/を¥ならべ、¥した/に¥くも¥あり」/と/ぞ¥なんじ/ける。¥にんあん−ぐわんねん−にんぐわつ−はつかのひ、¥てんだい−ざす/に¥なら/せ¥たまふ。¥おなじき−さんぐわつ−じふごにち¥ご=はいだう¥あり。¥ちうだう/の¥ほうざう/を¥ひらか/れ/ける/に、¥しゆじゆ/の¥ちようほう=ども/の¥なか/に、¥はう¥いつしやく/の¥はこ¥あり。¥しろい¥ぬの/にて¥つつま/れ/たり。¥いつしやう−ふぼん/の¥ざす、¥かの¥はこ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、¥わうし/に¥かけ/る¥ふみ¥いつくわん¥あり。¥でんげう−だいし、¥みらい/の¥ざす/の¥みやうじ/を、¥かね/て¥しるし−おか/れ/たり。¥わが¥な/の¥ある¥ところ/まで/は¥み/て、¥それ/より¥おく/を/ば¥み¥たまは/ず、¥もと/の/ごとく¥まき−かへし/て¥おか/るる¥ならひ/なり。¥され/ば¥この¥そうじやう/も、¥さ/こそ/は¥おはし/けめ。¥かかる¥たつとき¥ひと/なれ/ども、¥ぜんぜ/の¥しゆくごふ/を/ば¥まぬかれ¥たまは/ず、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥おなじき−にじふいちにち、¥はいしよ¥いづの−くに/と¥さだめ/らる。¥ひとびと¥やうやう/に¥まうさ/れ/けれ/ども、¥さいくわう−ほふし−ふし/が¥ざんそう/に¥よつ/て、¥かやう/に/は¥おこなは/れ/ける/なり。¥けふ¥やがて¥みやこ/の¥うち/を¥おひ−いださ/る/べし/とて、¥おつたて/の−くわんにん、¥しらかは/の¥ごばう/に¥ゆき−むかつ/て¥おひ¥たてまつる。¥そうじやう¥なくなく¥ごばう/を¥いで/つつ、¥あはたぐち/の¥ほとり、¥いつさいきやう/の−べつしよ/へ¥いら/せ¥おはします。¥さんもん/に/は、¥せんずる−ところ、¥われ=ら/が¥かたき/は、¥さいくわう−ほふし−ふし/に¥すぎ/たる¥もの¥なし/とて、¥かれ=ら−ふし/が¥みやうじ/を¥かい/て、¥こんぽん−ちうだう/に¥おはします¥じふに−じんじやう/の¥うち、¥こんぴらだいじやう/のP112¥ひだん/の¥み=あし/の¥した/に¥ふま/せ¥たてまつり、「¥じふに−じんじやう、¥しちせん−やしや、¥じこく/を¥めぐらさ/ず、¥さいくわう−ほふし−ふし/が¥いのち/を¥めし−とり¥たまへ/や」/と、¥をめき−さけん/で¥しゆそ−し/ける/こそ、¥きく/も¥おそろしけれ。¥
おなじき−にじふさんにち¥いつさいきやう/の−べつしよ/より、¥はいしよ/へ¥おもむき¥たまひ/けり。¥さ/ばかり/の¥ほふむ/の¥だいそうじやう/ほど/の¥ひと/の¥おつたて/の−うつし/が¥さき/に¥け−たて/られ/て、¥けふ/を¥かぎり/に¥みやこ/を¥いで/て、¥せき/の¥ひがし/へ¥おもむか/れ/けん¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥おほつ/の¥うちで/の−はま/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥もんじゆろう/の¥のきば/の¥しろじろ/と/して¥みえ/ける/を、¥ふため/と/も¥み¥たまは/ず、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て¥なみだ/に¥むせび¥たまひ/けり。¥さんもん/に/は¥しゆくらう−せきとく¥おほし/と¥いへ/ども、¥ちようけん−ほふいん、¥その−とき/は¥いまだ¥そうづ/にて¥おはし/ける/が、¥あまり/に¥なごり/を¥をしみ¥たてまつり、¥あはづ/まで¥おくり¥まゐらせ/て、¥それ/より¥いとま¥こう/て¥かへら/れ/ける/に、¥そうじやう¥こころざし/の¥せつ/なる¥こと/を¥かんじ/て、¥ねんらい¥こしんぢう/に¥ひ−せ/られ/たり/し、¥いつしん−さんぐわん/の¥けつみやく−さうじよう/を¥さづけ/らる。¥この¥ほう/は¥しやくそん/の¥ふぞく、¥はらないこく/の¥めみやうびく、¥なんてんぢく/の¥りうじゆぼさつ/より¥しだい/に¥さうでん−し¥きたれ/る/を、¥けふ/の¥なさけ/に¥さづけ/らる。¥さすが¥わが¥てう/は¥そくさん−へんぢ/の¥さかひ、¥じよくせ¥まつだい/と/は¥いひ/ながら、¥ちようけん¥これ/を¥ふぞく−し/て、¥ほふえ/の¥たもと/を¥しぼり/つつ、¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/けん、¥こころ/の¥うち/こそ¥たつとけれ。¥
さる−ほど/に¥さんもん/に/は¥だいしゆ¥おこつ/て¥せんぎ−す。「¥そもそも¥ぎしん−くわしやう/より¥この−かた、¥てんだい−ざす¥はじまつ/て、¥ごじふご−だい/に¥いたる/まで、¥いまだ¥るざい/の¥れい/を¥きか/ず。¥つらつら¥こと/の¥こころ/を¥あんずる/に、P113¥えんりやく/の¥ころほひ、¥くわうてい/は¥ていと/を¥たて、¥だいし/は¥たうざん/に¥よぢ−のぼり/て、¥しめい/の¥けうぼふ/を¥この¥ところ/に¥ひろめ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥ごしやう/の¥によにん¥あと¥たえ/て、¥さんぜん/の¥じやうりよ¥きよ/を¥しめ/たり。¥みね/に/は¥いちじよう−どくじゆ¥とし¥ふり/て、¥ふもと/に/は¥しちしや/の¥れいげん¥ひ¥あらた/なり。¥かの¥ぐわつし/の¥りやうぜん/は、¥わうじやう/の¥とうぼく、¥だいしやう/の¥いうくつ/なり。¥この¥じちゐき/の¥えいがく/も¥ていと/の¥きもん/に¥そばだち/て¥ごこく/の¥れいち/なり。¥だいだい/の¥けんわう¥ちしん、¥この¥ところ/に¥だんぢやう/を¥しむ。¥まつだい/なら/ん/がらん/に、¥いかで/か¥たうざん/に¥きず/を/ば¥つく/べき。¥こ/は¥こころ−うし」/とて、¥をめき−さけぶ/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥まんざん/の¥だいしゆ、¥のこり−とどま/る¥もの/も¥なく、¥みな¥ひがしざかもと/へ¥おり−くだる。¥(『いちぎやうあじやりのさた』)S0202¥じふぜんじ−ごんげん/の¥おん=まへ/にて、¥だいしゆ¥また¥せんぎ−す。「¥そもそも¥われ=ら¥あはづ/へ¥ゆき−むかつ/て、¥くわんじゆ/を/ば¥うばひ−とどめ¥たてまつる/べし。¥ただし¥おつたて/の−うつし、¥りやうそうし¥ある/なれ/ば、¥さう−なう¥とり−え¥たてまつら/ん¥こと¥あり−がたし。¥いま/は¥さんわう−だいし/の¥おん=ちから/の¥ほか、¥また¥たのみ¥たてまつる¥かた¥なし。¥まことに¥べつ/の¥しさい¥なく、¥とり−え¥たてまつる/べく/は、¥ここ/にて¥まづ¥ひとつ/の¥ずゐさう/を¥みせ/しめ¥たまへ」/と、¥らうそう=ども¥かんたん/を¥くだい/て¥きねん−し/けり。¥ここに¥むどうじ−ぼふし¥じようゑん−りつし/が¥めし−つかひ/ける¥つるまる/と¥いふ¥わらは¥あり。¥しやうねん¥じふはつさい/に¥なり/ける/が、¥しんじん/を¥くるしめ、¥ごたい/に¥あせ/を¥ながい/て、¥にはか/に¥くるひ−いで/たり。「¥われ¥じふぜんじ−ごんげん¥のり−ゐ/させ¥たまへ/り。¥まつだい/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥わが−やま/の¥くわんじゆ/を/ば、¥たこく/へ/は¥うつさ/る/べき。¥しやうじやう−せせ/に¥こころ−うし。¥さら/ん/に¥とつ/て/は、¥われ¥この¥ふもと/に¥あと/を¥とどめ/て/も¥なに/に/かは¥せん」/とて、¥さう/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と¥なき/けれ/ば、P114¥だいしゆ¥これ/を¥あやしみ/て、「¥まことに¥じふぜんじ−ごんげん/の¥ご=たくせん/にて¥おはしまさ/ば、¥われ=ら¥しるし/を¥まゐらせ/ん。¥
いちいち/に¥もと/の¥ぬし/に¥かへし¥たまへ」/とて、¥らうそう=ども¥しごひやく−にん、¥てんで/に¥もつ/たる¥じゆず=ども/を、¥じふぜんじ−ごんげん/の¥おほ−ゆか/の¥うへ/へ/ぞ¥なげ−あげ/たる。¥かの¥ものぐるひ¥はしり=まはり、¥ひろひ−あつめ/て¥すこし/も¥たがへ/ず、¥いちいち/に¥みな¥もと/の¥ぬし/に/ぞ¥くばり/ける。¥だいしゆ¥しんめい/の¥れいげん¥あらた/なる¥こと/の¥たつとさ/に、¥みな¥たなごころ/を¥あはせ/て¥ずゐき/の¥かんるゐ/を/ぞ¥もよほし/ける。「¥その¥ぎ/なら/ば、¥ゆき−むかつ/て¥うばひ−とどめ¥たてまつれ/や」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥うんか/の/ごとく/に¥はつかう−す。¥あるひは¥しが¥からさき/の¥はまぢ/に¥あゆみ−つづけ/る¥だいしゆ/も¥あり。¥あるひは¥やまだやばせ/の¥こしやう/に¥ふね¥おし−いだす¥しゆと/も¥あり。¥これ/を¥み/て¥さ/しも¥きびし=げ/なり/つる¥おつたて/の−うつし、¥りやうそうし、¥ちりぢり/に¥みな¥にげ−さり/ぬ。¥だいしゆ¥こくぶんじ/へ¥まゐり−むかふ。¥せん−ざす¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、「¥およそ¥ちよくかん/の¥もの/は、¥つきひ/の¥ひかり/に/だに¥あたら/ず/と/こそ¥うけたまはれ。¥いか/に−いはんや、¥じこく/を¥めぐらさ/ず、¥いそぎ¥おひ−くださ/る/べし/と、¥ゐんぜん¥せんじ/の¥なり/たる/に、¥すこし/も¥やすらふ/べから/ず。¥しゆと¥とうとう¥かへり−のぼり¥たまふ/べし」/と、¥はし¥ちかく¥ゐ−いで/て¥のたまひ/ける/は、「¥さんだい−くわいもん/の¥いへ/を¥いで/て、¥しめい−いうけい/の¥まど/に¥いつ/し/より¥この−かた、¥ひろく¥ゑんじう/の¥けうぼふ/を¥がく−し/て、¥けん−みつ¥りやう−しう/を¥まなび/き。¥ただ¥わが−やま/の¥こうりう/を/のみ¥おもへ/り。¥また¥こくか/を¥いのり¥たてまつる¥こと/も¥おろそか/なら/ず。¥しゆと/を¥はぐくむ¥こころざし/も¥ふかかり/き。¥りやうじよ¥さんしやう¥さだめ/て¥せうらん−し¥たまふ/らん。¥み/に¥あやまつ¥こと¥なし。¥むじつ/の¥つみ/に¥よつ/て、¥をんる/の¥ぢうくわ/を¥かうむれ/ば、¥よ/を/も¥ひと/を/も¥かみ/を/も¥ほとけ/を/も、P115¥うらみ¥たてまつる¥かた¥なし。¥まことに¥はるばる/と¥これ/まで¥とぶらひ−きたり¥たまふ¥しゆと/の¥はうし/こそ、¥しやうじやう−せせ/に/も¥ほうじ¥つくし−がたけれ」/とて、¥かうぞめ/の¥おん=ころも/の¥そで/を¥しぼり/も¥あへ/させ¥たまは/ね/ば、¥だいしゆ/も¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥すでに¥おん=こし¥さし−よせ/て、「¥とうとう¥めさ/る/べう¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥せん−ざす¥のたまひ/ける/は、「¥むかし/こそ¥さんぜん/の¥しゆと/の¥くわんじゆ/たり/しか。¥いま/は¥かかる¥るにん/の¥み/と¥なつ/て、¥いかで/か¥やんごとなき¥しゆがくしや、¥ちゑ¥ふかき¥だいしゆ=たち/に¥かき−ささげ/られ/て/は¥のぼる/べき。¥たとひ¥のぼる/べき/なり/とも、¥わらんづ/など¥いふ¥もの/を¥しばり−はい/て、¥おなじ¥やう/に¥あゆみ−つづい/て/こそ¥のぼら/め」/とて、¥のり¥たまは/ず。¥
ここ/に¥さいたふ/の¥ぢうりよ、¥かいじやう−ばう/の−あじやり−いうけい/と¥いふ¥あくそう¥あり。¥たけ¥しちしやく/ばかり¥あり/ける/が、¥くろかは−をどし/の−よろひ/の、¥おほ−あらめ/に¥かね¥まぜ/たる/を、¥くさずりなが/に¥き−なし、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で、¥ほふし=ばら/に¥もた/せ/つつ、¥しらえ/の−なぎなた¥つゑ/に¥つき、¥だいしゆ/の¥なか/を¥おし−わけ−おし−わけ、¥せん=ざす/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥だい/の¥まなこ/を¥み−いからかし、¥せん−ざす/を¥しばし¥にらまへ¥たてまつ/て、「¥その¥おん=こころ/で/こそ、¥かかる¥おん=め/に/も¥あはせ¥たまひ¥さふらへ。¥とうとう¥めさ/る/べう¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥せん−ざす¥おそろし−さ/に、¥いそぎ¥のり¥たまふ。¥だいしゆ¥とり−え¥たてまつる¥こと/の¥うれし−さ/に、¥いやしき¥ほふし=ばら/に/は¥あら/ず、¥やんごとなき¥しゆがくしや=ども/が¥かき−ささげ¥たてまつ/て¥のぼる/ほど/に、¥ひと/は¥かはれ/ども¥いうけい/は¥かはら/ず、¥さきごし¥かい/て、¥こし/の¥ながえ/も、¥なぎなた/の¥え/も、¥くだけよ/と¥とる¥まま/に、¥さ/しも¥さがしき¥ひがしざか、¥へいぢ/を¥ゆく/が/ごとく/なり。P116¥
だい−かうだう/の¥には/に、¥おん=こし¥かき−すゑ/て、¥だいしゆ¥また¥せんぎ−す。「¥そもそも¥われ=ら¥あはづ/に¥ゆき−むかつ/て、¥くわんじゆ/を/ば¥うばひ−とどめ¥たてまつり/ぬ。¥ただし¥ちよくかん/を¥かうむり/て¥をんる−せ/られ¥たまふ¥ひと/を、¥くわんじゆ/に¥もちひ¥まうさ/ん¥こと、¥いかが¥ある/べかる/らん」/と¥ひやうぢやう−す。¥かいじやう−ばう/の−あじやり−いうけい、¥また¥さき/の/ごとく¥すすみ−いで/て¥せんぎ−し/ける/は、「¥それ¥わが−やま/は¥につぽん¥ぶさう/の¥れいち、¥ちんご−こくか/の¥だうぢやう、¥さんわう/の¥ご=ゐくわう¥さかん/に/して、¥ぶつぽふ¥わうぼふ¥ごかく/なり。¥され/ば¥しゆと/の¥いしゆ/に¥いたる/まで¥ならび−なく、¥いやしき¥ほふし=ばら/まで/も、¥よ¥もつて¥かろしめ/ず。¥いはんや¥ちゑ¥かうき/に/して、¥さんぜん/の¥しゆと/の¥くわんじゆ/たり。¥とくぎやう¥おもう/して¥いつさん/の¥わじやう/たり。¥つみ¥なく/して¥つみ/を¥かうむり¥たまふ¥こと、¥さんじやう¥らくちう/の¥いきどほり、¥こうぶく¥をんじやう/の¥あざけり/に¥あら/ず/や。¥この−とき¥われ=ら¥けんみつ/の¥あるじ/を¥うしなつ/て、¥すはい/の¥がくりよ、¥ながく¥けいせつ/の¥つとめ¥おこたら/ん¥こと、¥こころ−うかる/べし。¥せんずる−ところ、¥いうけい¥ちやうぼん/に¥しよう−ぜ/られ、¥きんごく¥るざい/に/も¥および、¥かうべ/の¥はね/られ/ん¥こと、¥こんじやう/の¥めんぼく、¥めいど/の¥おもひで¥なる/べし」/とて、¥さうがん/より¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながし/けれ/ば、¥すせん−にん/の¥だいしゆ/も、¥みな¥もつとも−もつとも/と/ぞ¥どうじ/ける。¥それ/より/して/こそ、¥いうけい/を/ば¥いかめ−ばう/と/は¥いは/れ/けれ。¥その¥でし¥ゑけい−りつし/を/ば、¥とき/の−ひと¥こいかめ−ばう/と/ぞ¥まうし/ける。P117¥
「いちぎやうあじやり」¥だいしゆ¥せん−ざす/を/ば、¥とうだふ/の¥みなみだに、¥めうくわうばう/に¥いれ¥たてまつる。¥とき/の¥わうざい/を/ば、¥ごんげ/の¥ひと/も¥まぬかれ¥たまは/ざり/ける/に/や。¥むかし¥たう/の¥いちぎやう−あじやり/は、¥げんそう−くわうてい/の¥ごぢそう/にて¥おはし/ける/が、¥げんそう/の¥きさき¥やうきひ/に¥な/を¥たち¥たまへ/り。¥むかし/も¥いま/も、¥だいこく/も¥せうこく/も、¥ひと/の¥くち/の¥さがな−さ/は、¥あとかた/も¥なき¥こと/なり/しか/ども、¥その¥うたがひ/に¥よつ/て、¥くわらこく/へ¥ながさ/れ/させ¥たまふ。¥くだん/の¥くに/へ/は¥みつ/の¥みち¥あり。¥りんちだう/とて¥ごかうみち、¥いうちだう/とて¥ざふにん/の¥かよふ¥みち、¥あんけつだう/とて¥ぢうくわ/の¥もの/を¥つかはす¥みち/なり。¥され/ば、¥かの¥いちぎやう−あじやり/は¥だいぼん/の¥ひと/なれ/ば/とて、¥あんけつだう/へ/ぞ¥つかはさ/れ/ける。¥しち−にち−しち−や/が¥あひだ、¥つきひ/の¥ひかり/も¥み/ず/して¥ゆく¥ところ/なり。¥みやうみやう/と/して¥ひと/も¥なく、¥かうほ/に¥せんど¥まよひ、¥しんしん/と/して¥やま¥ふかし。¥ただ¥かんこく/に¥とり/の¥ひとこゑ/ばかり/にて、¥こけ/の¥ぬれぎぬ¥ほし−あへ/ず、¥むじつ/の¥つみ/に¥よつ/て、¥をんる/の¥ぢうくわ/を¥かうむり¥たまふ¥こと/を、¥てんだう¥あはれみ¥たまひ/て、¥くえう/の¥かたち/を¥げんじ/つつ、¥いちぎやう−あじやり/を¥まもり¥たまふ。¥とき/に¥いちぎやう¥みぎ/の¥ゆび/を¥くひ−きり、¥ひだん/の¥たもと/に¥くえう/の¥かたち/を¥うつさ/れ/けり。¥わかん¥りやうてう/に、¥しんごん/の¥ほんぞん/たる¥くえう/の¥まんだら¥これ/なり。P118¥
「さいくわうがきられ」(『さいくわうがきられ』)S0203¥さる−ほど/に¥さんもん/の¥だいしゆ、¥せん−ざす¥とり−とどめ¥たてまつ/たる¥こと、¥ほふわう¥きこしめし/て、¥いとど¥やすから/ず¥おぼしめし/ける¥ところ/に、¥さいくわう−ほふし¥まうし/ける/は、「¥むかし/より¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥はつかう/の¥みだりがはしき¥うつたへ¥つかまつる¥こと、¥いま/に¥はじめ/ず/と/は¥まうし/ながら、¥こんど/は¥もつて/の−ほか/に¥くわぶん/に¥さふらふ。¥よくよく¥おん=ぱからひ¥さふらふ/べし。¥これ=ら/を¥おん=いましめ¥さふらは/ず/は、¥この−のち/は¥よ/が¥よ/で/も¥さふらふ/まじ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ただいま¥わが−み/の¥ほろび−うせ/んずる¥こと/を/も¥かへりみ/ず、¥さんわう−だいし/の¥しんりよに/も¥はばから/ず、¥かやう/に¥まうし/て¥しんきん/を¥なやまし¥たてまつる。¥ざんしん/は¥くに/を¥みだる/と¥いへ/り。¥まこと/なる/かな。¥さうらん¥しげから/ん/と¥すれ/ども、¥あき/の¥かぜ¥これ/を¥やぶり、¥わうじや¥あきらか/なら/ん/と¥すれ/ども、¥ざんしん¥これ/を¥くらう−す/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ¥きんじゆ/の¥ひとびと/に¥おほせ/て、¥ほふわう¥やま¥せめ/らる/べし/と¥きこえ/しか/ば、¥さんもん/の¥だいしゆ/は、¥さ/のみ¥わうぢ/に¥はらま/れ/て、¥ぜうめい/を¥たいかん−せ/ん/も¥おそれ/なり/とて、¥ないない¥ゐんぜん/に¥したがひ¥たてまつる¥しゆと/も¥あり/など¥きこえ/しか/ば、¥せん−ざす/は¥とうだふ/の¥みなみだに、¥めうくわうばう/に¥おはし/ける/が、¥だいしゆ¥ふたごころ¥あり/と¥きき¥たまひ/て、「¥また¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あふ/べき/やらん」/と、¥こころ−ぼそ=げ/に/ぞ¥のたまひ/ける。¥され/どもP119¥るざい/の¥さた/は¥なかり/けり。¥さる−ほど/に¥しん−だいなごん/は、¥さんもん/の¥さうどう/に¥よつ/て、¥わたくし/の¥しゆくい/を/ば¥しばらく¥おさへ/られ/けり。¥そも¥ないぎ¥したく/は¥さまざま/なり/しか/ども、¥ぎせい/ばかり/で、¥この¥むほん¥かなふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けれ/ば、¥さ/しも¥たのま/れ/たり/つる¥ただの−くらんど−ゆきつな、¥この¥こと¥むやく/なり/と¥おもふ¥こころ/や¥つき/に/けん、¥ゆぶくろ/の¥れう/に/とて¥おくら/れ/たり/ける¥ぬの=ども/を/ば、¥ひたたれ、¥かたびら/に¥たち−ぬは/せ、¥いへのこ、¥らうどう=ども/に¥きせ/つつ、¥め¥うち−しばだたい/て¥ゐ/たり/ける/が、¥つらつら¥へいけ/の¥はんじやう−する¥ありさま/を¥みる/に、¥たうじ¥たやすう¥かたぶけ−がたし。¥もし¥この¥こと¥もれ/ぬる/ほど/なら/ば、¥ゆきつな¥まづ¥うしなは/れ/な/んず。¥たにん/の¥くち/より¥もれ/ぬ¥さき/に¥かへりちう−し/て、¥いのち¥いか/う/ど¥おもふ¥こころ/ぞ¥つき/に/ける。¥
おなじき−にじふくにち/の¥さ−よ−ふけがた/に、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/に¥まゐつ/て、「¥ゆきつな/こそ¥まうす/べき¥こと¥あつ/て、¥これ/まで¥まゐつ/て¥さふらへ」/と、¥あんない/を¥いひ−いれ/たり/けれ/ば、¥にふだう、「¥つね/に/も¥まゐら/ぬ¥もの/の¥さんじ/たる/は¥なにごと/ぞ、¥あれ¥きけ」/とて、¥しゆめ/の−はんぐわん−もりくに/を¥いださ/れ/たり。「¥まつたく¥ひとづて/に/は¥まうす/まじき¥こと/なり」/と¥いふ¥あひだ、¥にふだう、¥さら/ば/とて、¥みづから¥ちうもん/の¥らう/に/ぞ¥いで/られ/たる。「¥よ/は¥はるか/に¥ふけ/ぬ/らん/に、¥いか/に¥ただいま¥なにごと/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥ひる/は¥ひとめ/の¥しげう¥さふらふ¥あひだ、¥よ/に¥まぎれ/て¥まゐつ/て¥さふらふ。¥この−ほど¥ゐん−ぢう/の¥ひとびと/の¥ひやうぐ/を¥ととのへ、¥ぐんびやう¥もよほさ/れ/し¥こと/を/ば、¥なに/と/か¥きこしめさ/れ/て¥さふらふ/やらん」。¥にふだう、「¥いさ/とよ、¥それ/は¥ほふわう/の¥やま¥せめ/らる/べきP120¥ご=けつこう/と/こそ¥きけ」/と、¥いと¥こと/も−な=げ/に/ぞ¥のたまひ/ける。¥ゆきつな¥ちかう¥より¥こごゑ/に¥なつ/て、「¥その¥ぎ/で/は¥さふらは/ず。¥いつかう¥たうけ/の¥おん=うへ/と/こそ¥うけたまはり¥さふらへ」。¥にふだう、「¥さて¥それ/を/ば¥ほふわう/も¥しろしめさ/れ/たる/か」。「¥しさい/に/や¥および¥さふらふ。¥しつじ/の−べつたう−なりちかの−きやう/の¥ぐんびやう¥もよほさ/れ¥さふらひ/し/に/も、¥ゐんぜん/とて/こそ¥めさ/れ/しか。¥やすより/が/と¥まうし/て、¥しゆんくわん/が¥かく¥まうし/て、¥さいくわう/が/と¥ふるまう/て」/など、¥あり/の−まま/に/は¥さし−すぎ/て¥いひ−ちらし、¥わが−み/は¥いとま¥まうす/とて¥いで/けれ/ば、¥その−とき¥にふだう¥おほ−ごゑ/を¥もつて¥さぶらひ=ども¥よび−ののしり¥たまふ¥こと¥おびたたし。¥ゆきつな¥なまじひ/なる¥こと¥まうし−いで/て、¥しようにん/に/や¥ひかれ/んず/らん/と¥おそろし−さ/に、¥ひと/も¥おは/ぬ/に¥とりばかま−し、¥おほの/に¥ひ/を¥はなち/たる¥ここち−し/て、¥いそぎ¥もんぐわい/へ/ぞ¥にげ−いで/ける。¥その−のち¥にふだう、¥ちくごの−かみ−さだよし/を¥めし/て、「¥たうけ¥かたぶけ/う/ど¥する¥むほん/の¥ともがら/こそ、¥きやう−ぢう/に¥みちみち/たん/なれ。¥いそぎ¥いちもん/の¥ひとびと/に/も¥ふれ¥まうせ。¥さぶらひ=ども¥もよほせ」/と¥のたまへ/ば、¥はせ−まはつ/て¥ひろう−す。¥うだいしやう−むねもり、¥さんみ/の−ちうじやう−とももり、¥とう/の−ちうじやう−しげひら、¥さま/の−かみ−ゆきもり¥いげ/の¥いちもん/の¥ひとびと、¥かつちう¥きうせん/を¥たいし/て¥さし−つどふ。¥その−ほか¥さぶらひ=ども/も¥うんか/の/ごとく/に¥はせ−あつまつ/て、¥その¥よ/の¥うち/に¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/に/は、¥つはもの¥ろくしちせんき/も¥ある/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥
あくれ/ば¥ろくぐわつ−ひとひのひ/なり。¥いまだ¥くらかり/ける/に、¥にふだう−しやうこく¥あべの−すけなり/を¥めし/て、「¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐり、¥だいぜん/の−だいぶ−のぶなり/を¥よび−いだい/て、¥きつと¥まうさ/んずる¥こと/は/よな、P121¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ、¥きんじゆ/の¥ひとびと、¥この¥いちもん¥ほろぼし/て¥てんが¥みだら/ん/と¥する¥むほん/の¥くはだて¥あり。¥いちいち/に¥からめ−とつ/て、¥たづね¥さた¥つかまつり¥さふらふ/べし。¥それ/を/ば¥きみ/も¥しろしめさ/る/まじう¥さふらふ/と¥まうす/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥すけなり¥いそぎ¥ゐん/の−ごしよ/に¥はせ−まゐり、¥のぶなり/を¥まねい/て¥この¥こと¥まうす/に、¥いろ/を¥うしなふ。¥やがて¥おん=まへ/へ¥まゐり/て¥この¥よし¥かく/と¥そうもん¥まうし/けれ/ば、¥ほふわう「¥ああ¥はや、¥これ=ら/が¥ないない¥はかり/し¥こと/の¥もれ−きこえ/ける/に/こそ。¥さる/にて/も、¥こ/は¥なにごと/ぞ」/と/ばかり¥おほせ/られ/て、¥ふんみやう/の¥おん=ぺんじ/も¥なかり/けり。¥すけなり¥いそぎ¥はしり−かへつ/て、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、「¥され/ば/こそ¥ゆきつな/は¥まこと/を¥まうし/たれ。¥ゆきつな¥この¥こと¥つげ−しらせ/ず/は、¥じやうかい¥あんをん/にて/やは¥ある/べき」/とて、¥ちくごの−かみ−さだよし、¥ひだの−かみ−かげいへ/を¥めし/て、¥たうけ¥かたむけ/う/ど¥する¥むほん/の¥ともがら、¥いちいち/に¥からめ−とる/べき¥よし¥げぢ−せ/らる。¥よつて¥にひやく−よ−き、¥さんびやく−よ−き、¥あそこ−ここ/に¥おし−よせ−おし−よせ¥からめ−とる。¥にふだう−しやうこく¥まづ¥ざつしき/を¥もつて、¥なかのみかど−からすまる/の¥しん−だいなごん/の¥しゆくしよ/へ、「¥きつと¥たち−より¥たまへ。¥まうし−あはす/べき¥こと/の¥さふらふ¥」/と、¥のたまひ−つかはさ/れ/けれ/ば、¥だいなごん¥わが¥み/の−うへ/と/は¥つゆ−しら/ず、¥あはれ、¥これ/は¥ほふわう/の¥やま¥せめ/らる/べき¥ご=けつこう/の¥ある/を、¥まうし−なだめ/られ/んずる/に/こそ。¥おん=いきどほり¥ふか=げ/なり。¥いか/に/も¥かなふ/まじき/ものを」/とて、¥ないきよ=げ/なる¥ほうい¥たをやか/に¥きなし、¥あざやか/なる¥くるま/に¥のり、¥さぶらひ¥さんしにん¥めし−ぐし/て、¥ざつしき¥うしかひ/に¥いたる/まで、¥つね/より/も¥なほ¥ひき−つくろは/れ/たり。¥そも¥さいご/と/はP122¥のち/に/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。¥
にしはちでう¥ちかう¥なつ/て¥み¥たまへ/ば、¥しごちやう/に¥ぐんびやう=ども¥みちみち/たり。「¥あな¥おびたたし、¥こ/は¥なにごと/なる/らん/と、¥むね¥うち−さわが/れ/けれ/ども、¥もんぜん/にて¥くるま/より¥おり、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いつ/て¥み¥たまへ/ば、¥うち/に/も¥つはもの=ども¥ひま−はざま/も¥なう/ぞ¥なみ−ゐ/たる。¥ちうもん/の¥くち/に/は¥おそろし=げ/なる¥もの=ども、¥あまた¥まち−うけ¥たてまつり、¥だいなごん/を¥とつ/て¥ひつぱり、「¥いましむ/べう¥さふらふ/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう¥れんちう/より¥み−いだし¥たまひ/て、「¥ある/べう/も−なし」/と¥のたまへ/ば、¥さぶらひ=ども¥じふしごにん、¥ぜんご¥さう/に¥たち−かこみ、¥だいなごん/の¥て/を¥とつ/て、¥えん/の¥うへ/へ¥ひき−あげ¥たてまつり、¥ひとま/なる¥ところ/に¥おし−こめ¥たてまつ/てげり。¥だいなごん/は¥ゆめ/の¥ここち−し/て、¥つやつや¥もの/も¥おぼえ¥たまは/ず。¥とも/に¥あり/つる¥さぶらひ=ども、¥おほぜい/に¥おし−へだて/られ/て、¥ちりぢり/に¥なり/ぬ。¥ざふしき¥うしかひ¥いろ/を¥うしなひ、¥うし¥くるま/を¥すて/て、¥みな¥にげ−さり/ぬ。¥さる−ほど/に、¥あふみ−ちうじやう−にふだう−れんじやう、¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ、¥やましろの−かみ−もとかぬ、¥しきぶ/の−たいふ−まさつな、¥へい−はうぐわん−やすより、¥そう−はうぐわん−のぶふさ、¥しん−へい−はうぐわん−すけゆき/も、¥とらはれ/て/こそ¥いで−き/たれ。¥さいくわう−ほふし¥この¥よし/を¥きい/て、¥わが¥み/の−うへ/と/や¥おもひ/けん、¥むち/を¥うつ/て¥いそぎ¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐる。¥ろくはら/の¥つはもの=ども、¥みち/にて¥ゆき−あひ、「¥にしはちでう=どの/より¥めさ/るる/ぞ。¥きつと¥まゐれ」/と¥いひ/けれ/ば、「¥これ/は¥そうす/べき¥こと¥あつ/て、¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐる。¥やがて/こそ¥かへり−まゐら/め」/と¥いひ/けれ/ば、「¥につくい¥にふだう=め/が、¥なにごと/を/かP123¥そうす/べかん/なる/ぞ」/とて、¥しや¥むま/より¥とつ/て¥ひき−おとし、¥ちう/に¥くくつ/て¥にしはちでう=どの/へ¥さげ/て¥まゐる。¥ひ/の¥はじめ/より¥ごんげん¥よりき/の¥もの/なり/けれ/ば、¥こと/に¥つよう¥いましめ/て、¥おん=つぼ/の−うち/に/ぞ¥ひつ−すゑ/たる。¥にふだう−しやうこく¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、¥しばし¥にらまへ、「¥あな¥にく/や、¥たうけ¥かたぶけ/う/ど¥する¥むほん/の¥やつ/が¥なれ/る¥すがた/よ。¥しやつ¥ここ/へ¥ひき−よせよ」/とて、¥えん/の¥きは/へ¥ひき−よせ/させ、¥もの¥はき/ながら、¥しや¥つら/を¥むずむず/と/ぞ¥ふま/れ/ける。「¥もと/より¥おのれ=ら/が¥やう/なる¥げらふ/の¥はて/を、¥きみ/の¥めし−つかはせ¥たまひ/て、¥なさ/る/まじき¥くわんしよく/を¥なし¥たび、¥ふし¥とも/に¥くわぶん/の¥ふるまひ/を¥する/と¥み/し/に¥あはせ/て、¥あやまた/ぬ¥てんだい−ざす¥るざい/に¥まうし−おこなひ、¥あまつさへ¥たうけ¥かたぶけ/う/ど¥する¥むほん/の¥ともがら/に¥くみ−し/てげる/なり。¥あり/の−まま/に¥まうせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥
さいくわう¥もと/より¥すぐれ/たる¥だい−かう/の−もの/なり/けれ/ば、¥ちと/も¥いろ/も¥へん−ぜ/ず、¥わろびれ/たる¥けしき/も¥なく、¥ゐ−なほり、¥あざ−わらつ/て¥まうし/ける/は、「¥ゐん−ぢう/に¥ちかう¥めし−つかは/るる¥み/なれ/ば、¥しつじ/の−べつたう−なりちかの−きやう/の¥ぐんびやう¥もよほさ/れ¥さふらふ¥こと/に/も、¥くみ−せ/ず/と/は¥まうす/べき¥やう¥なし。¥それ/は¥くみ−し/たり。¥ただし、¥みみ/に¥あたる¥こと/を/も¥のたまふ/ものかな。¥たにん/の¥まへ/は¥しら/ず、¥さいくわう/が¥きか/んずる¥ところ/にて/は、¥さやう/の¥こと/を/ば、¥え/こそ¥のたまふ/まじけれ。¥そもそも¥ご=へん/は、¥こ=ぎやうぶきやう−ただもり/の¥ちやくし/にて¥おはせ/し/が、¥じふしご/まで/は¥しゆつし/も¥し¥たまは/ず。¥こ=なかのみかど/の−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう/の¥へん/に¥たち−いり¥たまひ/し/を/ば、¥きやう−わらんべ/は¥れい/の¥たかへいだ/と/こそ¥いひ/しか。¥しかる/を¥ほうえん/の¥ころ、¥かいぞく/の¥ちやうぼん¥さんじふ−よ−にん¥からめ−しん−ぜ/られ/たり/しP124¥けんじやう/に¥し−ほん−し/て¥しゐ/の−ひやうゑ/の−すけ/と¥まうし/し/を/だに、¥ひと¥みな¥くわぶん/と/こそ¥まうし−あは/れ/しか。¥てんじやう/の¥まじはり/を/だに¥きらは/れ/し¥ひと/の¥しそん/にて、¥いま¥だいじやうだいじん/まで¥なり−あがつ/たる/や¥くわぶん/なる/らん。¥もと/より¥さぶらひ/ほど/の¥もの/の、¥じゆりやう¥けんびゐし/に¥いたる¥こと、¥せんれい、¥ほうれい¥なき/に/しも¥あら/ず。¥なじか/は¥くわぶん/なる/べき」/と、¥はばかる¥ところ/も¥なう¥いひ−ちらし/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥あまり/に¥はら/を¥すゑ−かね/て、¥しばし/は¥もの/を/も¥のたまは/ず。¥やや¥あつ/て¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥しやつ/が¥くび¥さう−なう¥きる/な。¥よくよく¥きうもん−し/て¥こと/の¥しさい/を¥たづね−とひ、¥その−のち¥かはら/へ¥ひき−いだい/て、¥かうべ/を¥はねよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥まつうらの−たらう−しげとし¥うけたまはつ/て、¥てあし/を¥はさみ、¥さまざま/に/して¥いため−とふ。¥さいくわう¥もと/より¥あらそは/ざり/ける¥うへ、¥がうもん/は¥きびしかり/けり。¥はくじやう¥しごまい/に¥きせ/られ/て、¥その−のち¥くち/を¥さけ/とて、¥くち/を¥さか/れ、¥ごでう−にしのしゆしやか/に/して、¥つひに¥きら/れ/に/けり。¥ちやくし¥かがの−かみ−もろたか/は¥けつくわん−ぜ/られ/て、¥をはり/の¥ゐどた/へ¥ながさ/れ/たり/し/を、¥おなじき−くに/の¥ぢうにん¥をぐまの−ぐんじ−これすゑ/に¥おほせ/て¥うた/せ/らる。¥じなん¥こんどう−はんぐわん−もろつね/を/ば、¥ごく/より¥ひき−いだい/て、¥ちうせ/らる。¥その¥おとと¥さゑもん/の−じよう−もろひら、¥らうどう¥さん−にん/を/も¥おなじう¥かうべ/を¥はね/られ/けり。¥これ=ら/は¥みな¥いふ−かひ−なき¥もの/の¥ひいで/て、¥いろふ/まじき¥こと/を/のみ¥いろひ、¥あやまた/ぬ¥てんだい−ざす¥るざい/に¥まうし−おこなひ、¥くわはう/や¥つき/に/けん、¥さんわう−だいし/の¥しんばつ¥みやうばつ/を¥たちどころ/に¥かうむつ/て、¥かかる¥うき−め/に¥あへ/り/けり。P125
「こげうくん」(『こげうくん』)S0204¥しん−だいなごん/は¥ひとま/なる¥ところ/に¥おし−こめ/られ/て、¥あせみづ/に¥なり/つつ、「¥あはれ¥これ/は¥ひごろ/の¥あらましごと/の、¥もれ−きこえ/ける/に/こそ。¥たれ¥もらし/ぬ/らん。¥さだめて¥ほくめん/の¥ともがら/の¥なか/に/ぞ¥ある/らん」/なんど、¥おもは/じ¥こと¥なう¥あんじ−つづけ/て¥おはし/ける¥ところ/に、¥うしろ/より¥あしおと/の¥たからか/に¥し/けれ/ば、¥すは¥ただいま¥わが¥いのち¥うしなは/ん/とて、¥もののふ=ども/の¥まゐる/に/こそ/と¥おもは/れ/けれ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥にふだう¥いたじき¥たからか/に¥ふみ−ならし、¥だいなごん/の¥おはし/ける¥うしろ/の¥しやうじ/を、¥さつと¥ひき−あけ/て¥いで/られ/たり。¥そけん/の¥ころも/の¥みじからか/なる/に、¥しろき¥おほくち¥ふみ−くくみ、¥ひじりづか/の¥かたな¥おし−くつろげ/て¥さす¥まま/に、¥もつて/の−ほか/に¥いかれ/る¥けしき/にて、¥だいなごん/を¥しばし¥にらまへ/て、「¥そもそも¥ご=へん/は、¥へいぢ/に/も¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥だいふ/が¥み/に¥かへ/て¥まうし−うけ、¥くび/を¥つぎ¥たてまつ/し/は¥いか/に。¥しかる/に¥その¥おん/を¥わすれ/て、¥なん/の¥ゐこん¥あつ/て/か、¥たうけ¥かたぶけ/う/ど/は¥し¥たまふ/なる/ぞ。¥おん/を¥しる/を¥もつて¥ひと/と/は¥いふ/ぞ。¥おん/を¥しら/ざる/を/ば¥ちくしやう/と/こそ¥いへ。¥され/ども¥たうけ/の¥うんめい¥いまだ¥つき/ざる/に¥よつ/て、¥これ/まで/は¥むかへ/たん/なり。¥ひごろ/の¥あらまし/の¥しだい、¥ぢき/に¥うけたまはら/ん」/と¥のたまへ/ば、¥だいなごん、「¥まつたく¥さる−こと¥さふらは/ず。¥いかさま/に/もP126¥ひと/の¥ざんげん/にて/ぞ¥さふらふ/らん。¥よくよく¥おん=たづね¥さふらふ/べし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう¥いは/せ/も¥はて/ず、「¥ひと/や¥ある、¥ひと/や¥ある」/と¥めさ/れ/けれ/ば、¥さだよし¥つと¥まゐり/たり。「¥
さいくわう=め/が¥はくじやう¥とつ/て¥まゐれ」/と¥のたまへ/ば、¥もつて¥まゐり/たり。¥にふだう¥これ/を¥とつ/て、¥おし−かへし−おし−かへし¥にさんべん¥たからか/に¥よみ−きか/せ、「¥あな¥にくや、¥この¥うへ/を/ば¥なに/と/か¥ちん−ず/べかん/なる/ぞ」/とて、¥だいなごん/の¥かほ/に¥さつと¥なげ−かけ、¥しやうじ/を¥ちやうど¥ひき−たて/て¥いで/られ/ける/が、¥なほ¥はら/を¥すゑ−かね/て、¥つねとほ¥かねやす/と¥めす。¥なんばの−じらう、¥せのをの−たらう¥まゐり/たり。「¥あの¥をのこ¥とつ/て、¥には/へ¥ひき−おとせ」/と¥のたまへ/ども、¥これ=ら¥さう−なう/も¥し¥たてまつら/ず、「¥こまつ=どの/の¥ご=きしよく、¥いかが¥さふらは/んずる/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、「¥よしよし、¥おのれ=ら/は、¥だいふ/が¥めい/を¥おもんじ/て、¥にふだう/が¥おほせ/を/ば¥かるう¥し/ける¥ござんなれ。¥このうへ/は¥ちから¥およば/ず」/と¥のたまへ/ば、¥これ=ら¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、¥たち−あがり、¥だいなごん/の¥さう/の¥て/を¥とつ/て、¥には/へ¥ひき−おとし¥たてまつる。¥その−とき¥にふだう¥ここち−よ=げ/にて、「¥とつ/て¥ふせ/て¥をめか/せよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ににん/の¥もの=ども、¥だいなごん/の¥さう/の¥みみ/に¥くち/を¥あて/て、「¥いかさま/に/も¥おん=こゑ/の¥いづ/べう¥さふらふ」/と、¥ささやい/て¥ひき−ふせ¥たてまつれ/ば、¥ふたこゑ¥みこゑ/ぞ¥をめか/れ/ける。¥その¥てい、¥めいど/にて、¥しやば−せかい/の¥ざいにん/を、¥あるひは¥ごふ/の¥はかり/に¥かけ、¥あるひは¥じやうはり/の¥かがみ/に¥ひき−むけ/て、¥つみ/の¥きやう−ぢう/に¥まかせ/つつ、¥あはう−らせつ/が¥かしやく−す/らん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。P127¥せうはん¥とらはれ−とらはれ/て、¥かんはう¥にらぎす−さ/れ/たり。¥てうそ¥りく/を¥うけ、¥しうぎ¥つみ−せ/らる。¥たとへば、¥せうが、¥はんくわい、¥かんしん、¥はうゑつ、¥これ=ら/は¥みな¥かうそ/の¥ちうしん/たり/しか/ども、¥せうじん/の¥ざん/に¥よつ/て、¥くわはい/の¥はぢ/を¥うく/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。¥しん−だいなごん/は、¥わが−み/の¥かく¥なる/に¥つけ/て/も、¥しそく¥たんばの−せうしやう−なりつね¥いげ、¥をさなき¥もの=ども/の¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あふ/らん/と、¥おもひ−やる/に/も¥おぼつかなし。¥さ/ばかり¥あつき¥ろくぐわつ/に、¥しやうぞく/を/だに/も¥くつろげ/られ/ず、¥あつ−さ/も¥たへ−がたけれ/ば、¥むね/も¥せき−あぐる¥ここち−し/て、¥あせ/も¥なみだ/も¥あらそひ/て/ぞ¥ながれ/ける。¥さり/とも¥こまつ=どの/は¥おぼしめし¥はなた/じ/ものを/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥たれ/して¥まうす/べし/と/も¥おぼえ¥たまは/ず。¥
こまつの−おとど/は、¥れい/の¥ぜんあく/に¥さわぎ¥たまは/ぬ¥ひと/にて¥おはし/けれ/ば、¥はるか/に¥ひ¥たけ/て¥のち、¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり/を、¥くるま/の¥しり/に¥のせ/つつ、¥ゑふ¥しごにん、¥ずゐじん¥にさん−にん¥めし−ぐし/て、¥ぐんびやう=ども/を/ば¥いち−にん/も¥ぐせ/られ/ず、¥まこと/に¥おほやう=げ/にて¥おはし/たれ/ば、¥にふだう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥いちもん/の¥ひとびと、¥みな¥おもは/ず=げ/に/ぞ¥み¥たまひ/ける。¥おとど¥ちうもん/の¥くち/にて、¥おん=くるま/より¥おり¥たまふ¥ところ/へ、¥さだよし¥つと¥まゐつ/て、「¥など¥これ−ほど/の¥おん=だいじ/に、¥ぐんびやう/を/ば¥いち−にん/も¥めし−ぐせ/られ¥さふらは/ぬ/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど、「¥だいじ/と/は¥てんが/の¥こと/を/こそ¥いへ。¥かやう/の¥わたくしごと/を、¥だいじ/と¥いふ¥やう/や¥ある」/と¥のたまへ/ば、¥ひやうぢやう/を¥たい−し/たり/ける¥つはもの=ども、¥みな¥そぞろい/て/ぞ¥みえ/たり/ける。¥その−のち¥おとど、¥だいなごん/を/ば¥いづく/に¥おき¥たてまつ/たる/やらん/と、¥ここ−かしこ/を¥ひき−あけ−ひき−あけP128¥み¥たまふ/に、¥ある¥しやうじ/の¥うへ/に、¥くもで¥ゆう/たる¥ところ¥あり。¥ここ/やらん/とて¥あけ/られ/たれ/ば、¥だいなごん¥おはし/けり。¥なみだ/に¥むせび¥うつぶし/て、¥め/も¥み−あげ¥たまは/ず。「¥いか/に/や」/と¥のたまへ/ば、¥その−とき¥み−つけ¥たてまつ/て、¥うれし=げ/に¥おもは/れ/たる¥けしき、¥ぢごく/にて¥ざいにん=ども/が、¥ぢざう−ぼさつ/を¥み¥たてまつる/らん/も、¥かく/や/と¥おぼえ/て¥あはれ/なり。「¥なにごと/にて¥さふらふ/やらん。¥けさ/より¥かかる¥うき−め/に¥あひ¥さふらふ。¥さて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥さり/とも/と/こそ¥ふかう¥たのみ¥たてまつ/て¥さふらへ。¥へいぢ/に/も¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥ご=おん/を¥もつて¥くび/を¥つが/れ¥まゐらせ、¥あまつさへ¥じやう−にゐ/の−だいなごん/まで¥へ−あがつ/て、¥とし¥すでに¥しじふ/に¥あまり¥さふらふ¥ご=おん/こそ、¥しやうじやう−せせ/に/も¥はうじ¥つくし−がたう¥さふらへ/ども、¥こんど/も¥また¥かひ−なき¥いのち/を¥たすけ/させ¥おはしませ。¥さ/だに/も¥さふらは/ば、¥しゆつけ−にふだう¥つかまつり、¥いか/なら/ん¥かた−やまざと/に/も¥こもり−ゐ/て、¥ひとすぢ/に¥ごせ−ぼだい/の¥つとめ/を¥いとなみ¥さふらは/ん」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥
おとど、「¥さ¥さふらへ/ば/とて、¥おん=いのち¥うしなひ¥たてまつる/まで/の¥こと/は¥よも¥さふらは/じ。¥たとひ¥さ¥さふらふ/とも、¥しげもり¥かう/て¥さふらへ/ば、¥おん=いのち/に/は¥かはり¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/とて、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、「¥あの¥だいなごん¥うしなは/れ/ん¥こと/は、¥よくよく¥ご=しゆゐ¥さふらふ/べし。¥その¥ゆゑ/は¥せんぞ¥しゆり/の−だいぶ−あきすゑ、¥しらかはのゐん/に¥めし−つかは/れ¥まゐらせ/し/より¥この−かた、¥いへ/に¥その¥れい¥なき¥じやう−にゐ/の−だいなごん/に¥へ−あがつ/て、¥あまつさへ¥たうじ、¥きみ¥ぶさう/の¥おん=いとほしみ、¥かうべ/を¥はね/られ/ん¥こと¥しかる/べう/も¥さふらは/ず(す)。¥ただ¥みやこ/の¥ほか/へ¥いださ/れ/たら/ん/に、P129¥こと¥たり¥さふらひ/な/んず。¥
きたのの−てんじん/は、¥しへいの−おとど/の¥ざんそう/にて、¥うき−な/を¥さいかい/の¥なみ/に¥ながし、¥にしのみやの−だいじん/は、¥ただの−まんぢう/の¥ざんげん/に¥よつ/て、¥うらみ/を¥せんやう/の¥くも/に¥よす。¥おのおの¥むじつ/なり/しか/ども、¥るざい−せ/られ¥たまひ/に/き。¥これ¥みな¥えんぎの−せいだい、¥あんわの−みかど/の¥おん=ひがこと/と/ぞ¥まうし−つたへ/たる。¥しやうこ¥なほ¥かく/の/ごとし。¥いはんや¥まつだい/に¥おい/て/を/や。¥けんわう¥なほ¥おん=あやまり¥あり、¥いはんや¥ぼんにん/に¥おい/て/を/や。¥すでに¥めし−おか/れ/ぬる¥うへ/は、¥いそぎ¥うしなは/れ/ず/とも、¥なに/の¥おそれ/か¥さふらふ/べき。¥けい/の¥うたがはしき/を/ば¥かろんぜよ、¥こう/の¥うたがはしき/を/ば¥おもんぜよ/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥こと−あたらしき¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥しげもり¥かの¥だいなごん/が¥いもうと/に¥あひ−ぐし/て¥さふらふ。¥これもり¥また¥むこ/なり。¥かやう/に¥したしう¥まかり−なつ/て¥さふらへ/ば、¥まうす/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らん。¥いつかう¥その¥ぎ/で/は¥さふらは/ず。¥ただ¥きみ/の¥ため、¥くに/の¥ため、¥よ/の¥ため、¥いへ/の¥ため/の¥こと/を¥おもつ/て¥まうし¥さふらふ。¥ひととせ¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/が¥しつけん/の¥とき/に¥あひ−あたつ/て、¥わが¥てう/に/は¥さがの−くわうてい/の¥おん=とき、¥うひやうゑ/の−かみ−ふぢはらの−なかなり/を¥ちうせ/られ/て/より¥この−かた、¥ほうげん/まで/は、¥きみ¥にじふごだい/の¥あひだ、¥おこなは/れ/ざり/し¥しざい/を、¥はじめて¥とり−おこなひ、¥うぢの−あく−さふ/の¥しがい/を¥ほり−おこい/て、¥じつけん−せ/られ/たり/し¥こと/なんど/まで/は、¥あまり/なる¥おん=まつりごと/と/こそ¥ぞんじ¥さふらへ。¥され/ば¥いにしへ/の¥ひと/も、¥しざい/を¥おこなへ/ば、¥かいだい/に¥むほん/の¥ともがら¥たえ/ず/と/こそ¥まうし−つたへ/て¥さふらへ。¥この¥ことば/に¥つい/て、¥なか¥にねん¥あつ/て、¥へいぢ/に¥また¥よ¥みだれ/て、¥しんせい/が¥うづま/れ/たり/し/を¥ほり−おこし、¥かうべ/を¥はね/て¥おほぢ/を¥わたさ/れ¥さふらひ/き。¥ほうげん/に¥まうし−おこなひ/し¥こと/の、¥いく−ほど/も¥なく/て、¥はやP130¥み/の−うへ/に¥むくは/れ/に/き/と¥おもへ/ば、¥おそろしう/こそ¥さふらへ。¥これ/は¥させる¥てうてき/にて/も¥さふらは/ず、¥かたがた¥おそれ¥ある/べし。¥ご=えいぐわ¥のこる¥ところ¥なけれ/ば、¥おぼしめさ/るる¥こと/は¥ある/まじけれ/ども、¥しし−そんぞん/まで、¥はんじやう/こそ¥あら/まほしう/は¥さふらへ。¥され/ば¥ふそ/の¥ぜんあく/は、¥かならず¥しそん/に¥およぶ/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥しやくぜん/の¥いへ/に/は¥よけい¥あり、¥せきあく/の¥かど/に/は¥よあう¥とどまる/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥いかさま/に/も¥こんや¥かうべ/を¥はね/られ/ん¥こと/は、¥しかる/べう/も¥さふらは/ず」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にふだう¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥しざい/を/ば¥おもひ−とどまり¥たまひ/けり。¥その−のち¥おとど¥ちうもん/に¥いで/て、¥さぶらひ=ども/に¥のたまひ/ける/は、「¥おほせ/なれ/ば/とて、¥あの¥だいなごん¥うしなは/ん¥こと、¥さう−なう¥ある/べから/ず。¥にふだう¥はら/の¥たち/の¥まま/に、¥もの−さわがしき¥こと¥し¥たまひ/て、¥のち/に/は¥かならず¥くやみ¥たまふ/べし。¥ひがごと−し/て¥われ¥うらむ/な」/と¥のたまへ/ば、¥ひやうぢやう/を¥たい−し/たり/ける¥つはもの=ども、¥みな¥した/を¥ふるつ/て¥おそれ−をののく。「¥さて/も¥けさ¥つねとほ¥かねやす/が、¥あの¥だいなごん/に¥なさけ−なう¥あたり¥たてまつ/たる¥こと/こそ、¥かへすがへす/も¥きくわい/なれ。¥など¥しげもり/が¥かへり−きか/んずる¥ところ/を/ば、¥はばから/ざり/ける/ぞ。¥かたゐなか/の¥さぶらひ/は、¥みな¥かかる/ぞ/とよ」/と¥のたまへ/ば、¥なんば/も¥せのを/も、¥とも/に¥おそれ−いつ/たり/けり。¥おとど/は¥かやう/に¥のたまひ/て、¥こまつ=どの/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥
さる−ほど/に¥だいなごん/の¥さむらひ=ども、¥いそぎ¥なかのみかど−からすまる/の¥しゆくしよ/に¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた¥いげ/の¥にようばう=たち、¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。「¥せうしやう=どの/をP131¥はじめ¥まゐらせ/て、¥をさなき¥ひとびと/も、¥みな¥とら/れ/させ¥たまふ/べき¥よし¥うけたまはり/て¥さふらへ。¥いそぎ¥いづかた/へ/も¥しのば/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた、「¥いま/は¥これ−ほど/に¥なつ/て、¥のこり−とどまる¥み/とて/も、¥あんをん/にて¥なに/に/かは¥せ/ん/なれ/ば、¥ただ¥おなじ¥ひとよ/の¥つゆ/と/も¥きえ/ん¥こと/こそ¥ほい/なれ。¥さて/も¥けさ/を¥かぎり/と¥しら/ざり/つる¥こと/の¥かなし−さ/よ」/とて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥すでに¥ぶし=ども/の¥ちかづく¥よし¥きこえ/しか/ば、¥かくて¥はぢがましう、¥うたてき¥め/を¥み/ん/も、¥さすが/なれ/ば/とて、¥とを/に¥なり¥たまふ¥によし、¥はつさい/の¥なんし、¥ひとつ¥くるま/に¥とり−のつ/て、¥いづち/を¥さす/と/も¥なく¥やり−いだす。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥おほみや/を¥のぼり/に、¥きたやま/の¥へん¥うんりんゐん/へ/ぞ¥おはし/ける。¥その¥へん/なる¥そうばう/に¥おろし−おき¥たてまつり、¥おくり/の¥もの=ども/は、¥みみ/の¥すて−がた−さ/に、¥みな¥いとま¥まうし/て¥かへり/に/けり。¥いま/は¥いとけなき¥ひとびと/ばかり¥のこり−ゐ/て、¥また¥こと−とふ¥ひと/も¥なく/して¥おはし/ける¥きたのかた/の¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥くれ−ゆく¥かげ/を¥み¥たまふ/に¥つけ/て/も、¥だいなごん/の¥つゆ/の−いのち、¥この¥ゆふべ/を¥かぎり/なり/と、¥おもひ−やる/に/も¥きえぬ/べし。¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥おほかり/けれ/ども、¥もの/を/だに¥とり−したため/ず、¥かど/を/だに¥おし/も¥たて/ず。¥むまや/に/は¥むま=ども¥おほく¥なみ−たち/たれ/ども、¥くさ−かふ¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥よ¥あくれ/ば¥むま¥くるま¥かど/に¥たち−なみ、¥ひんかく¥ざ/に¥つらなつ/て、¥あそび−たはぶれ¥まひ−をどり、¥よ/を¥よ/と/も¥し¥たまは/ず。¥ちかき¥あたり/の¥もの=ども/は、¥もの/を/だに¥たかく¥いは/ず、¥おぢ−おそれ/て/こそ¥きのふ/まで/も¥あり/し/に、¥よ/の¥ま/に¥かはる¥ありさま、¥じやうしや−ひつすゐ/のP132¥ことわり/は¥め/の¥まへ/に/こそ¥あらはれ/たれ。「¥たのしみ¥つき/て¥かなしみ¥きたる」/と¥かか/れ/たる、¥かうしやうこう/の¥ふで/の¥あと、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。¥
「せうしやうこひうけ」(『せうしやうこひうけ』)S0205¥たんばの−せうしやう−なりつね/は、¥その¥よ/しも¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/に¥うへぶし−し/て、¥いまだ¥いで/られ/ざり/ける/に、¥だいなごん/の¥さぶらひ=ども、¥いそぎ¥ゐん/の−ごしよ/に¥はせ−まゐり、¥せうしやう=どの/を¥よび−いだし¥たてまつり、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥せうしやう、「¥これ−ほど/の¥こと、¥など/や¥さいしやう/の¥もと/より、¥いま/まで¥つげ−しらせ/ざる/らん」/と¥のたまひ/も¥はて/ぬ/に、¥さいしやう=どの/より/とて¥お=つかひ¥あり。¥この¥さいしやう/と¥まうす/は、¥にふだう−しやうこく/の¥おん=おとと、¥しゆくしよ/は¥ろくはら/の¥そうもん/の¥わき/に¥おはし/けれ/ば、¥かどわきの−さいしやう/と/ぞ¥まうし/ける。¥たんばの−せうしやう/に/は¥しうと/なり。「¥なにごと/にて¥さふらふ/やらん。けさ¥にしはちでう/の−てい/より、¥きつと¥ぐし¥たてまつれ/と¥さふらふ」/と、¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥せうしやう¥この¥こと¥こころ−え/て、¥きんじゆ/の¥にようばう=たち/を¥よび−いだし¥まゐらせ/て、「¥ゆふべ¥なに/と−なう¥ものさわがしう¥さふらひ/し/を、¥れい/の¥やまぼふし/の¥くだる/か/なんど、¥よそ/に¥おもひ/て¥さふらへ/ば、¥はや¥なりつね/が¥み/の−うへ/に¥まかり−なつ/て¥さふらひ/ける/ぞ/や。¥ゆふさり¥だいなごん¥きら/る/べう¥さふらふ/なれ/ば、¥なりつね/とて/も¥どうざい/にて/ぞ¥さふらは/んず/らん。¥いま−いちど¥ごぜん/へ¥さん−じ/て、P133¥きみ/を/も¥み¥まゐらせ/たく¥さふらへ/ども、¥かかる¥み/に¥まかり−なつ/て¥さふらへ/ば、¥はばかり−ぞんじ¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようばう=たち¥いそぎ¥ごぜん/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥けさ/の¥ぜんもん/の¥つかひ/に¥はや¥おん=こころえ¥あつ/て、「¥これ=ら/が¥ないない¥はかり/し¥こと/の¥もれ−きこえ/ける/に/こそ。¥さる/にて/も¥いま−いちど¥これ/へ」/と¥ご=きしよく¥あり/けれ/ば、¥せうしやう¥ごぜん/へ¥まゐら/れ/たり。¥ほふわう¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまひ/て、¥おほせ−くださ/るる¥むね/も¥なく、¥せうしやう/も¥また¥なみだ/に¥むせん/で、¥まうし−あげ/らるる¥こと/も¥なし。¥やや¥あつ/て¥せうしやう¥ごぜん/を¥まかり−いで/られ/ける/に、¥ほふわう¥うしろ/を¥はるか/に¥ごらんじ−おくつ/て、「¥ただ¥まつだい/こそ¥こころ−うけれ。¥これ/が¥かぎり/にて¥また/も¥ごらんぜ/ぬ¥こと/も/や¥あら/んず/らん」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥せうしやう¥ごぜん/を¥まかり−いで/られ/ける/に、¥ゐん−ぢう/の¥ひとびと、¥つぼね/の¥にようばう=たち/に¥いたる/まで、¥なごり/を¥をしみ、¥たもと/に¥すがり、¥なみだ/を¥ながし、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥
しうと/の¥さいしやう/の¥もと/へ¥いで/られ/たれ/ば、¥きたのかた/は¥ちかう¥さん−す/べき¥ひと/にて¥おはし/ける/が、¥けさ/より¥この¥なげき/を¥うち−そへ/て、¥すでに¥いのち/も¥きえ−いる¥ここち/ぞ¥せ/られ/ける。¥せうしやう¥ごしよ/を¥まかり−いで/られ/ける/より、¥ながるる¥なみだ¥つきせ/ぬ/に、¥いま¥きたのかた/の¥ありさま/を¥み¥たまひ/て、¥いとど¥せんかた−な=げ/に/ぞ¥みえ/られ/ける。¥せうしやう/の¥めのと/に¥ろくでう/と¥いふ¥をんな¥あり。「¥われ¥おん=ち/に¥まゐり−はじめ¥さぶらひ/て、¥きみ/を¥ち/の¥なか/より¥いだき−あげ¥たてまつり、¥おほし−たて¥まゐらせ/し/より¥この−かた、¥つきひ/の¥かさなる/に¥したがつ/て、¥わが−み/の¥とし/の¥ゆく/を/ば¥なげか/ず/して、P134¥ひとへに¥きみ/の¥おとなしう¥なら/せ¥たまふ¥こと/を/のみ¥よろこび、¥あからさま/と/は¥おもへ/ども、¥ことし/は¥にじふいちねん、¥かたとき/も¥はなれ¥まゐらせ¥さぶらは/ず。¥ゐん−うち/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥おそう¥いで/させ¥たまふ/だに、¥こころ−ぐるしう¥おもひ¥まゐらせ¥さぶらひ/つる/に、¥つひに¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あはせ¥たまふ/べき/やらん」/とて¥なく。¥せうしやう、「¥いたう¥な¥なげい/そ。¥さて¥さいしやう¥おはすれ/ば、¥さり/とも¥いのち/ばかり/を/ば、¥こひ−うけ¥たまは/んずる/ものを」/と、¥やうやう/に¥なぐさめ−のたまへ/ども、¥ろくでう¥ひとめ/も¥はぢ/ず、¥なき−もだえ/けり。¥さる−ほど/に¥にしはちでう=どの/より¥つかひ¥しきなみ/に¥あり/しか/ば、¥さいしやう、「¥いま/は¥ただ¥いで−むかつ/て/こそ、¥と/も−かう/も¥なら/め」/とて¥いで/られ/けれ/ば、¥せうしやう/も¥さいしやう/の¥くるま/の¥しり/に¥のつ/て/ぞ¥いで/られ/ける¥。¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥へいけ/の¥ひとびと/は、¥たのしみ−さかえ/のみ¥あつ/て、¥うれへ¥なげき/は¥なかり/し/に、¥この¥さいしやう/ばかり/こそ、¥よし−なき¥むこ¥ゆゑ/に、¥かかる¥なげき/を/ば¥せ/られ/けれ。¥にしはちでう¥ちかう¥なつ/て、¥まづ¥あんない/を¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥せうしやう/を/ば¥もん/の¥うち/へ/は¥いれ/らる/べから/ず/と¥のたまふ¥あひだ、¥その¥へん/なる¥さぶらひ/の¥もと/に¥おろし−おき、¥さいしやう/ばかり/ぞ、¥もん/の¥うち/へ/は¥まゐら/れ/ける。¥いつしか¥せうしやう/を/ば、¥ぶし=ども¥しはう/を¥うち−かこん/で、¥きびしう¥しゆご−し¥たてまつる。¥せうしやう/の¥さ/しも¥たのもしう¥おもは/れ/つる¥さいしやう=どの/に/は¥はなれ¥たまひ/ぬ。¥せうしやう/の¥こころ/の¥うち、¥さ/こそ/は¥たより−なかり/けめ。¥
さいしやう¥ちうもん/に¥ゐ¥たまひ/たれ/ども、¥にふだう¥いで/も¥あは/れ/ず。¥やや¥あつ/て¥さいしやう、¥げん−だいふ/の−はんぐわん−すゑさだ/を¥もつて¥まうさ/れ/ける/は、「¥のりもり/こそ¥よし−なき¥もの/に¥したしう¥なつ/て、¥かへすがへすP135¥くやしみ¥さふらへ/ども、¥かひ/も¥さふらは/ず。¥あひ−ぐせ/させ/て¥さふらふ¥もの/の、¥この−ほど¥なやむ¥こと/の¥さふらふ/なる/が、¥けさ/より¥この¥なげき/を¥うち−そへ/て、¥すでに¥いのち/も¥たえ¥さふらひ/な/んず。¥のりもり¥かう/て¥さふらへ/ば、¥なじか/は¥ひがごと−せ/させ¥さふらふ/べき。¥せうしやう/を/ば¥しばらく¥のりもり/に¥あづけ/させ¥おはしませ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥すゑさだ¥まゐつ/て¥この¥よし/を¥まうす。¥にふだう、「¥あはれ¥れい/の¥さいしやう/が¥もの/に¥こころ−え/ぬ/よ」/とて、¥とみ/に¥へんじ/も¥し¥たまは/ず。¥やや¥あつ/て¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ¥きんじゆ/の¥ひとびと、¥この¥いちもん¥ほろぼし/て¥てんが¥みだら/ん/と¥する¥くはだて¥あり。¥すでに¥この¥せうしやう/は¥かの¥だいなごん/が¥ちやくし/なり。¥うとう/も¥なれ、¥したしう/も¥なれ、¥え/こそ¥まうし−ゆるす/まじけれ。¥もし¥この¥むほん¥とげ/な/ましか/ば、¥ご=へん/とて/も¥おだしう/て/やは¥おはす/べき/と¥いふ/べし」/と¥のたまへ/ば、¥すゑさだ¥かへり−まゐつ/て、¥さいしやう=どの/に¥この¥よし/を¥まうす。¥さいしやう¥よに/も¥ほい−な=げ/にて、¥かさね/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥かつせん/に/も、¥おん=いのち/に/は¥かはり¥まゐらせ/ん/と/こそ¥ぞんじ¥さふらひ/しか。¥この−のち/も¥あらき¥かぜ/を/ば、¥まづ¥ふせぎ¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥たとひ¥のりもり/こそ¥とし¥おい/て¥さふらふ/とも、¥わかき¥こども¥あまた¥さふらへ/ば、¥いつぱう/の¥おん=かため/に/も、¥など/か¥なら/で/は¥さふらふ/べき。¥それ/に¥しばらく¥せうしやう/を¥あづから/う/ど¥まうす/に、¥おん=ゆるされ¥なき/は、¥いつかう¥のりもり/を¥ふたごころ¥ある¥もの/と¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/に/こそ。¥それ−ほど/まで¥うしろめたう¥おもは/れ¥まゐらせ/て/は、¥よ/に¥あつ/て/も¥なに/に/かは¥し¥さふらふ/べき/なれ/ば、¥み/の¥いとま/を¥たまはつ/て、¥しゆつけ−にふだう¥つかまつり、¥かうや、¥こがは/に/も¥こもり−ゐ/て、¥ひとすぢ/に¥ごせ−ぼだい/の¥つとめ/を¥いとなみ¥さふらは/ん。P136¥
よし−なき¥うき−よ/の¥まじはり/なり。¥よ/に¥あれ/ば/こそ¥のぞみ/も¥あれ、¥のぞみ/の¥かなは/ね/ば/こそ¥うらみ/も¥あれ。¥しか/じ¥うき−よ/を¥いとひ、¥まこと/の−みち/に¥いり/な/ん/に/は」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥すゑさだ¥まゐり/て、「¥さいしやう=どの/は¥はや¥おぼしめし¥きつ/て¥さふらふ/ぞ。¥と/も−かく/も¥よき¥やう/に¥おん=ぱからひ¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、「¥いやいや¥しゆつけ−にふだう/まで/は¥あまり/に¥けしから/ず。¥その¥ぎ/なら/ば、¥せうしやう/を/ば¥しばらく¥のりもり/に¥あづくる/と¥いふ/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥すゑさだ¥かへり−まゐつ/て、¥さいしやう=どの/に¥この¥よし/を¥まうす。¥さいしやう、「¥あはれ¥ひと/の¥こ/を/ば¥もつ/まじかり/ける/ものかな。¥わが¥こ/の¥えん/に¥むすぼほれ/ざら/ん/に/は、¥これ−ほど/まで¥こころ/を/ば¥くだか/じ/ものを」/とて¥いで/られ/けり。¥せうしやう¥まち−うけ¥たてまつ/て、「¥さて¥いかが¥さふらひ/つる/やらん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥にふだう¥あまり/に¥いかつ/て、¥のりもり/に/は¥つひに¥たいめん/も¥し¥たまは/ず、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を¥しきり/に¥のたまふ¥あひだ、¥しゆつけ−にふだう/まで¥まうし/たれ/ば/に/やらん、¥その¥ぎ/なら/ば、¥ご=へん/を/ば¥しばらく¥のりもり/に¥あづくる/と¥のたまひ/つれ/ども、¥それ/も¥しじう/は¥よかる/べし/と/も¥おぼえ/ず」/と¥のたまへ/ば、¥せうしやう、「¥さて/は¥なりつね/は¥ご=おん/を¥もつて¥しばし/の¥いのち/の¥のび¥さふらは/んずる/に/こそ。¥それ/に¥つき¥さふらう/て/は、¥ちち/で¥さふらふ¥だいなごん/が¥こと/を/ば、¥なに/と/か¥きこしめさ/れ/て¥さふらふ/やらん」。¥さいしやう、「¥いさ/とよ、¥ご=へん/の¥こと/を/こそ、¥やうやう/に¥まうし/たれ。¥それ/まで/の¥こと/は¥おもひ/も¥よら/ざり/つれ」/と¥のたまへ/ば、¥その−とき¥せうしやう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥いのち/の¥をしう¥さふらふ/も、¥ちち/を¥いま−いちど¥み/ばや/と¥おもふ¥ため/なり。¥ゆふさり¥だいなごん¥きら/れP137¥さふらは/ん/に¥おい/て/は、¥なりつね¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥し¥さふらふ/べき/なれ/ば、¥ただ¥いつしよ/で¥いか/に/も−なる¥やう/に¥まうし/て¥たば/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さいしやう¥よに/も¥くるし=げ/にて、「¥いさ/とよ、¥ご=へん/の¥こと/を/こそ¥やうやう/に¥まうし/たれ。それ/まで/の¥こと/は¥おもひ/も¥よら/ざり/つれ/ども、けさ¥うち/の−おとど/の¥やうやう/に¥まうさ/せ¥たまひ/つれ/ば、それ/も¥しばし/は¥よき¥やう/に/こそ¥きけ」/と¥のたまへ/ば、¥せうしやう¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥なくなく¥て/を¥あはせ/て/ぞ¥よろこば/れ/ける。¥こ/なら/ざら/ん¥もの/が、¥たれ/か¥ただいま¥わが−み/の−うへ/を¥さし−おい/て、¥これ−ほど/まで/は¥よろこぶ/べき。¥まこと/の¥ちぎり/は¥おやこ/の¥なか/に/ぞ¥あり/ける。¥こ/を/ば¥ひと/の¥もつ/べかり/ける/ものかな/と、¥やがて¥おもひ/ぞ¥かへさ/れ/ける。¥さて¥けさ/の/ごとく、¥どうじや−し/て¥かへら/れ/たれ/ば、¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥さし−つどひ/て、¥しに/たる¥ひと/の¥いき−かへり/たる¥ここち−し/て、¥みな¥よろこびなき/を/ぞ¥せ/られ/ける。¥
「けうくん」(『けうくんじやう』)S0206¥だいじやう/の−にふだう/は、¥かやう/に¥ひとびと¥あまた¥いましめ−おい/て/も、¥なほ¥こころ−ゆか/ず/や¥おもは/れ/けん、¥すでに¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−はらまき/の¥しろかなもの¥うつ/たる¥むないた¥せめ、¥せんねん¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥じんばい/の¥ついで/に¥れいむ/を¥かうむつ/て、¥いつくしまの−だい−みやうじん/より¥うつつ/に¥たまはら/れ/たり/ける、P138¥しろかね/の¥ひるまき−し/たる¥こなぎなた、¥つね/の¥まくら/を¥はなた/ず¥たて/られ/たり/し/を¥わき/に¥はさみ、¥ちうもん/の¥らう/に/ぞ¥いで/られ/たる。¥おほかた¥その¥きしよく¥ゆゆしう/ぞ¥みえ/し。「¥さだよし」/と¥めす。¥ちくごの−かみ−さだよし/は、¥むくらんぢ/の−ひたたれ/に、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て¥おん=まへ/に¥かしこまつ/て/ぞ¥さふらひ/ける。¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥いか/に¥さだよし、¥この¥こと¥いかが¥おもふ/ぞ。¥ほうげん/に¥へい−うま/の−すけ/を¥はじめ/と/して、¥いちもん¥なかば¥すぎ/て、¥しんゐん/の¥み=かた/に¥まゐり/に/き。¥いちのみや/の¥おん=こと/は、¥こ=ぎやうぶきやう/の=との/の¥やうくん/にて¥ましまし/しか/ば、¥かたがた¥み−はなち¥まゐらせ−がたかり/しか/ども、¥こ=ゐん/の¥ご=ゆゐかい/に¥まかせ/て、¥み=かた/にて¥さき/を¥かけ/たり/き。¥これ¥ひとつ/の¥ほうこう。¥つぎ/に¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥のぶより¥よしとも/が¥むほん/の¥とき、¥ゐん−うち/を¥とり¥たてまつ/て、¥たいだい/に¥たてごもり、¥てんが¥くらやみ/と¥なつ/たり/し/に/も、¥にふだう¥ずゐぶん¥み/を¥すて/て、¥きようと/を¥おひ−おとし、¥つねむね¥これかた/を¥めし−いましめ/し/に¥いたる/まで、¥きみ/の¥おん=ため/に、¥すでに¥いのち/を¥うしなは/ん/と¥する¥こと¥どど/に¥およぶ。¥され/ば¥ひと¥なに/と¥まうす/とも、¥いかで/か¥この¥いちもん/を/ば、¥しち−だい/まで/は¥おぼしめし−すて/させ¥たまふ/べき。¥それ/に¥なりちか/と¥いふ¥むよう/の¥いたづらもの、¥さいくわう/と¥まうす¥げせん/の¥ふたうじん/が¥まうす¥こと/に、¥きみ/の¥つか/せ¥たまひ/て、¥やや/も¥すれ/ば、¥この¥いちもん¥ほろぼさ/る/べき¥よし/の¥ご=けつこう/こそ¥しかる/べから/ね。¥この−のち/も¥ざんそう−する¥もの¥あら/ば、¥たうけ¥つゐたう/の¥ゐんぜん/を¥くださ/れ/つ/と¥おぼゆる/ぞ。¥てうてき/と¥なつ/て¥のち/は、¥いか/に¥くゆ/とも¥えき¥ある/まじ。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/へ¥うつし¥まゐらする/か、¥しから/ず/は¥これ/へ¥まれ、¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせ/ん/と¥おもふ/は¥いか/に。¥その¥ぎ/なら/ば、¥さだめ/てP139¥ほくめん/の¥もの=ども/が¥なか/より、¥や/を/も¥ひとつ¥い/んず/らん。¥その¥ようい−せよ/と¥さぶらひ=ども/に¥ふる/べし。¥おほかた/は¥にふだう¥ゐんがた/の¥ほうこう¥おもひ−きつ/たり。¥むま/に¥くら¥おか/せよ。¥きせなが¥とり−いだせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥
しゆめ/の−はんぐわん−もりくに、¥いそぎ¥こまつ=どの/へ¥はせ−まゐつ/て、「¥よ/は¥はや¥かう¥ざふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、「¥ああ¥はや¥なりちかの−きやう/の¥かうべ/の¥はね/られ/たん/な」/と¥のたまへ/ば、「¥その¥ぎ/にて/は¥さふらは/ね/ども、¥にふだう=どの/の¥おん=きせなが/を¥めさ/れ¥さふらふ¥うへ/は、¥さぶらひ=ども/も¥みな¥うつ−たつ/て、¥ただいま¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/へ¥よせ/ん/と/こそ¥いで−たち¥さふらひ/つれ。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/へ¥うつし¥まゐらする/か、¥しから/ず/は¥これ/へ¥まれ、¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせ/う/ど/は¥さふらへ/ども、¥ないない/は¥ちんぜい/の¥かた/へ¥ながし¥まゐらせ/ん/と/こそ¥ぎせ/られ¥さふらひ/つれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど、¥なに/に¥よつ/て、¥ただいま¥さる−おん=こと/の¥おはす/べき/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥けさ/の¥ぜんもん/の¥きしよく、¥さる¥もの−ぐるはしき¥こと/も/や¥おはす/らん/とて、¥いそぎ¥くるま/を¥とばせ/て、¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥おはし/たる。¥もんぜん/にて¥くるま/より¥おり、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いつ/て¥み¥たまふ/に、¥にふだう¥はらまき/を¥き¥たまふ¥うへ、¥いちもん/の¥けいしやう−うんかく¥すじふにん、¥おのおの¥いろいろ/の¥ひたたれ/に、¥おもひおもひ/の¥よろひ¥き/て、¥ちうもん/の¥らう/に¥にぎやう/に¥ちやくせ/られ/たり。¥その−ほか¥しよ−こく/の¥じゆりやう、¥ゑふ、¥しよし/など/は¥えん/に¥ゐ−こぼれ、¥には/に/も¥ひし/と¥なみ−ゐ/たり。¥はたざを=ども¥ひき−そばめ−ひき−そばめ、¥むま/の¥はるび/を¥かため、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥ただいま¥みな¥うつーたた/んずる¥けしき=ども/なる/に、¥こまつ=どの¥ゑぼし¥なほし/に、P140¥だいもん/の¥さしぬき/の¥そば¥とつ/て、¥ざやめき−いり¥たまへ/ば、¥こと/の−ほか/に/ぞ¥みえ/られ/ける。¥
にふだう¥ふしめ/に¥なつ/て、¥あはれ¥れい/の¥だいふ/が、¥よ/を¥へう−する¥やう/に¥ふるまふ/ものかな。¥おほき/に¥いさめ/ばや/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥さすが¥こ/ながら/も、¥うち/に/は¥ごかい/を¥たもつ/て、¥じひ/を¥さき/と¥し、¥ほか/に/は¥ごじやう/を¥みだら/ず、¥れいぎ/を¥ただしう¥し¥たまふ¥ひと/なれ/ば、¥あの¥すがた/に¥はらまき/を¥き/て¥むかは/ん¥こと、¥さすが¥おもばゆう、¥はづかしう/や¥おもは/れ/けん、¥しやうじ/を¥すこし¥ひき−たて/て、¥はらまき/の¥うへ/に、¥そけん/の¥ころも/を¥あわてぎ/に¥き¥たまひ/たり/ける/が、¥むないた/の¥かなもの/の、¥すこし¥はづれ/て¥みえ/ける/を、¥かくさ/う/ど、¥しきり/に¥ころも/の¥むね/を¥ひき−ちがへ−ひき−ちがへ/ぞ¥し¥たまひ/ける。¥おとど/は¥しやてい¥むねもりの−きやう/の¥ざしやう/に¥つき¥たまふ。¥にふだう¥のたまひ−いださ/るる¥こと/も¥なく、¥おとど/も¥また¥まうし−あげ/らるる¥むね/も¥なし。¥やや¥あつ/て¥にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥あの¥なりちかの−きやう/が¥むほん/は、¥こと/の−かず/に/も¥さふらは/ず、¥いつかう¥ほふわう/の¥ご=けつこう/にて¥さふらひ/ける/ぞ/や。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/へ¥うつし¥まゐらする/か、¥しから/ず/は¥これ/へ¥まれ、¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせ/ん/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥おとど¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥はらはら/と/ぞ¥なか/れ/ける。¥にふだう、「¥さて¥いか/に/や−いか/に」/と¥あきれ¥たまへ/ば、¥やや¥あつ/て¥おとど¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥この¥おほせ¥うけたまはり¥さふらふ/に、¥ご=うん/は¥はや¥すゑ/に¥なり/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ。¥ひと/の¥うんめい/の¥かたぶか/ん/とて/は、¥かならず¥あくじ/を¥おもひ−たち¥さふらふ/なり。¥また¥おん=ありさま/を¥み¥まゐらせ¥さふらふ/に、¥さらに¥うつつ/と/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥さすが¥わが¥てう/は、¥へんぢ−そくさん/の¥さかひ/と/は¥まうし/ながら、¥てんせうだいじん/の¥ご=しそん、P141¥くに/の¥あるじ/と/して、¥あまのこやねのみこと/の¥おん=すゑ、¥てう/の¥まつりごと/を¥つかさどら/せ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥だいじやうだいじん/の¥くわん/に¥いたる¥ひと/の¥かつちう/を¥よろふ¥こと、¥れいぎ/を¥そむく/に¥あら/ず/や。¥なかんずく¥ご=しゆつけ/の¥おん=み/なり。¥それ¥さんぜ/の¥しよぶつ、¥げだつ¥どうさう/の¥ほふえ/を¥ぬぎ−すて/て、¥たちまちに¥かつちう/を¥よろひ、¥きうせん/を¥たいし¥ましまさ/ん¥こと、¥うち/に/は¥はかい¥むざん/の¥つみ/を¥まねく/のみ/なら/ず、¥ほか/に/は¥じん−ぎ−れい−ち−しん/の¥ほふ/に/も¥そむき¥さふらひ/な/んず。¥かたがた¥おそれ¥ある¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥こころ/の¥そこ/に¥しいしゆ/を¥のこす/べき/に/も¥さふらは/ず。¥
まづ¥よ/に¥しおん¥さふらふ。¥てんち/の¥おん、¥こくわう/の¥おん、¥ぶも/の¥おん、¥しゆじやう/の¥おん¥これ/なり。¥その¥なか/に¥もつとも¥おもき/は¥てうおん/なり。¥ふてん/の¥した、¥わうぢ/に¥あら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥され/ば¥かの¥えいせん/の¥みづ/に¥みみ/を¥あらひ、¥しゆやうざん/に¥わらび/を¥をり/し¥けんじん/も、¥ちよくめい¥そむき−がたき¥れいぎ/を/ば¥ぞんぢ−す/と/こそ¥うけたまはれ。¥いか/に−いはんや、¥せんぞ/に/も¥いまだ¥きか/ざつ/し¥だいじやうだいじん/を¥きはめ/させ¥たまふ。¥いはゆる¥しげもり/が¥むざい¥ぐあん/の¥み/を¥もつて、¥れんぷ¥くわいもん/の¥くらゐ/に¥いたる。¥しか/のみ/なら/ず¥こくぐん¥なかば/は¥いちもん/の¥しよりやう/と¥なつ/て、¥でんをん¥ことごとく¥いつけ/の¥しんじ/たり。¥これ¥きたい/の¥てうおん/に¥あら/ず/や。¥いま¥これ=ら/の¥ばくたい/の¥ご=おん/を¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまひ/て、¥みだりがはしく¥ほふわう/を¥かたぶけ¥まゐら/させ¥たまは/ん¥こと、¥てんせうだいじん、¥しやう−はちまんぐう/の¥しんりよに/も¥そむか/せ¥たまひ¥さふらひ/な/んず。¥それ¥につぽん/は¥しんこく/なり。¥しん/は¥ひれい/を¥うけ¥たまふ/べから/ず¥しかれ/ば¥きみ/の¥おぼしめし−たた/せ¥たまふ¥ところ、¥だうり¥なかば¥なき/に¥あら/ず。¥なか/に/も¥この¥いちもん/は¥だいだい/の¥てうてき/を¥たひらげ/て、¥しかい/の¥げきらう/を¥しづむる¥こと/は、¥ぶさう/の¥ちう/なれ/ども、¥その¥しやう/に¥ほこる¥こと/は、P142¥ばうじやくぶじん/と/も¥まうし/つ/べし。¥しやうとくたいし¥じふしちかでう/の¥ご=けんぼふ/に、『¥ひと¥みな¥こころ−あり。¥こころ¥おのおの¥しふ¥あり。¥かれ/を¥ぜし、¥われ/を¥ひし、¥われ/を¥ぜし、¥かれ/を¥ひす。¥ぜひ/の¥ことわり、¥たれ/か¥よく¥さだむ/べき。¥あひ−とも/に¥けんぐ/なり。¥たまき/の/ごとく/して¥はし¥なし。¥ここ/を¥もつて、¥たとひ¥ひと¥いかる/と¥いふ/とも、¥かへつて¥わが¥とが/を¥おそれよ』/と/こそ¥みえ/て¥さふらへ。¥しかれ/ども¥たうけ/の¥うんめい¥いまだ¥つき/ざる/に¥よつ/て、¥ご=むほん¥すでに¥あらはれ/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥その−うへ¥おほせ−あはせ/らるる¥なりちかの−きやう/を、¥めし−おか/れ/ぬる¥うへ/は、¥たとひ¥きみ¥いか/なる¥ふしぎ/を¥おぼしめし−たた/せ¥たまふ/とも、¥なん/の¥おそれ/か¥さふらふ/べき。¥しよたう/の¥ざいくわ¥おこなは/れ/ぬる¥うへ/は、¥しりぞい/て¥こと/の¥よし/を¥ちんじ¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥きみ/の¥おん=ため/に/は、¥いよいよ¥ほうこう/の¥ちうきん/を¥つくし、¥たみ/の¥ため/に/は、¥ますます¥ぶいく/の¥あいれん/を¥いたさ/せ¥たまは/ば、¥しんめい/の¥かご/に¥あづかつ/て、¥ぶつだ/の¥みやうりよ/に¥そむく/べから/ず。¥しんめい−ぶつだ¥かんおう¥あら/ば、¥きみ/も¥おぼしめし−なほす¥こと、¥など/か¥さふらは/ざる/べき。¥きみ/と¥しん/と/を¥くらぶる/に、¥しんそ¥わく¥かた¥なし。¥だうり/と¥ひがごと/を¥ならべ/ん/に、¥いかで/か¥だうり/に¥つか/ざる/べき」。¥
「ほうくわ」(『ほうくわのさた』)S0207¥「¥これ/は¥もつとも¥きみ/の¥おん=ことわり/にて¥さふらへ/ば、¥かなは/ざら/ん/まで/も、¥ゐん−ぢう/を¥しゆご−し¥まゐらせP143¥さふらふ/べし。¥その¥ゆゑ/は、¥しげもり¥はじめ¥じよしやく/より、¥いま¥だいじん/の¥だいしやう/に¥いたる/まで、¥しかしながら¥きみ/の¥ご=おん/なら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥この¥おん/の¥おもき¥こと/を¥おもへ/ば、¥せんくわ¥ばんくわ/の¥たま/に/も¥こえ、¥その¥おん/の¥ふかき¥いろ/を¥あんずる/に、¥いちじふ−さいじふ/の¥くれなゐ/に/も¥なほ¥すぎ/たら/ん。¥しから/ば¥ゐん−ぢう/へ¥まゐり−こもり¥さふらふ/べし。¥その¥ぎ/にて¥さふらは/ば、¥しげもり/が¥み/に¥かはり、¥いのち/に¥かはら/ん/と¥ちぎり/たる¥さぶらひ=ども¥せうせう¥さふらふ/らん。¥これ=ら/を¥めし−ぐし/て¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/を¥しゆご−し¥まゐらせ¥さふらは/ば、¥さすが¥もつて/の−ほか/の¥おん=だいじ/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥かなしき/かな、¥きみ/の¥おん=ため/に¥ほうこう/の¥ちう/を¥いたさ/ん/と¥すれ/ば、¥めいろ¥はちまん/の¥いただき/より/も¥なほ¥たかき¥ちち/の¥おん¥たちまちに¥わすれ/ん/と¥す。¥いたましき/かな、¥ふけう/の¥つみ/を¥のがれ/ん/と¥すれ/ば、¥きみ/の¥おん=ため/に/は¥すでに¥ふちう/の¥ぎやくしん/と/も¥なり/ぬ/べし。¥しんだい¥これ¥きはまれ/り。¥ぜひ¥いか/に/も¥わきまへ−がたし。¥まうし−うくる¥しよせん/は、¥ただ¥しげもり/が¥くび/を¥めさ/れ¥さふらへ。¥その¥ゆゑ/は、¥ゐんざん/の¥おん=とも/を/も¥つかまつる/べから/ず。¥また¥ゐん−ぢう/を/も¥しゆご−し¥まゐらす/べから/ず。¥され/ば¥かの¥せうが/は¥たいこう¥かたへ/に¥こえ/たる/に¥よつ/て、¥くわん¥たいしやうこく/に¥いたり、¥けん/を¥たいし¥くつ/を¥はき/ながら、¥てんじやう/へ¥のぼる¥こと/を¥ゆるさ/れ/しか/ども、¥えいりよ/に¥そむく¥こと¥あり/しか/ば、¥かうそ¥おもう¥いましめ/て、¥ふかう¥つみ−せ/られ/に/き。¥かやう/の¥せんじよう/を¥おもへ/ば、¥ふつき/と¥いひ、¥えいぐわ/と¥いひ、¥てうおん/と¥まうし、¥ちようじよく/と¥いひ、¥かたがた¥きはめ/させ¥たまひ/ぬれ/ば、¥ご=うん/の¥つき/ん¥こと¥かたかる/べき/に¥あら/ず。¥ふつき/の¥いへ/に/は¥ろくゐ¥ちようでふ−せ/り。¥ふたたび¥み¥なる¥き/は、¥その¥ね¥かならず¥いたむ/と¥みえ/て¥さふらふ。¥こころ−ぼそう/こそ¥さふらへ。¥いつ/まで/かP144¥いのち¥いき/て、¥みだれ/ん¥よ/を/も¥み¥さふらふ/べき。¥ただ¥まつだい/に¥しやう/を¥うけ/て、¥かかる¥うき−め/に¥あひ¥さふらふ¥しげもり/が¥くわはう/の/ほど/こそ¥つたなう¥さふらへ。¥ただいま/も¥さぶらひ¥いち−にん/に¥おほせ−つけ/られ、¥おん=つぼ/の−うち/へ¥ひき−いださ/れ/て、¥しげもり/が¥かうべ/の¥はね/られ/んずる¥こと/は、¥いと¥やすい/ほど/の¥おん=こと/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥これ/を¥おのおの¥きき¥たまへ」/とて、¥なほし/の¥そで/も¥しぼる/ばかり/に、¥かき−くどき、¥さめざめ/と¥なき¥たまへ/ば、¥その¥ざ/に¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥へいけ¥いちもん/の¥ひとびと、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥
にふだう、¥たのみ−きつ/たる¥だいふ/は、¥かやう/に¥のたまふ。¥よに/も¥ちから¥な=げ/にて、「¥いやいや¥それ/まで/の¥こと/は¥おもひ/も¥より¥さう/ず。¥あくたう=ども/の¥まうす¥こと/に、¥きみ/の¥つか/せ¥たまひ/て、¥いか/なる¥ひがごと/など/も/や、¥いで−こ/んず/らん/と¥おもふ/ばかり/で/こそ¥さふらへ」。¥おとど、「¥たとひ¥いか/なる¥ひがごと¥いで−き¥さふらへ/ば/とて、¥きみ/を/ば¥なに/と/か¥し¥まゐら/させ¥たまふ/べき」/とて、¥つい−たつ/て¥ちうもん/に¥いで、¥さぶらひ=ども/に¥のたまひ/ける/は、「¥ただいま¥これ/にて¥まうし/つる¥こと=ども/を/ば、¥なんぢ=ら/は¥よく¥うけたまはら/ず/や。¥けさ/より¥これ/に¥さふらう/て、¥かやう/の¥こと=ども/を/も¥まうし−しづめ/ん/と/は¥ぞんじ/つれ/ども、¥あまり/に¥ひた−さわぎ/に¥みえ/つる¥あひだ、¥まづ¥かへり/つる/なり。¥ゐんざん/の¥おん=とも/に¥おい/て/は、¥しげもり/が¥かうべ/の¥はね/られ/たら/ん/を¥み/て¥つかまつれ。¥さら/ば¥ひと¥まゐれ」/とて、¥こまつ=どの/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥その−のち¥おとど¥しゆめ/の−はんぐわん−もりくに/を¥めし/て、「¥しげもり/こそ¥けさ¥べつし/て¥てんが/の¥だいじ/を¥きき−いだし/たん/なれ。¥われ/を¥われ/と¥おもは/んずる¥もの=ども/は、¥もののぐ−し/て¥いそぎ¥まゐれ/と¥もよほせ」/とP145¥のたまへ/ば、¥はせ−まはつ/て¥ひろう−す。¥おぼろ=げ/にて/は¥さわぎ¥たまは/ぬ¥ひと/の、¥かやう/の¥ひろう/の¥ある/は、¥まことに¥べち/の¥しさい/の¥ある/に/こそ/とて、¥われ/も−われ/も/と¥はせ−まゐる。¥よど、¥はつかし、¥うぢ、¥をかのや、¥ひの、¥くわんじゆじ、¥だいご、¥をぐるす、¥むめづ、¥かつら、¥おはら、¥しづはら、¥せれふ/の¥さと/に¥あぶれ−ゐ/たる¥つはもの=ども、¥あるひは¥よろひ¥き/て、¥いまだ¥かぶと/を¥き/ぬ/も¥あり、¥あるひは¥や¥おう/て¥いまだ¥ゆみ/を¥もた/ぬ/も¥あり。¥かた−あぶみ¥ふむ/や¥ふま/ず/にて、¥あわて−さわい/で¥はせ−まゐる。¥
こまつ=どの/に¥さわぐ¥こと¥あり/と¥きこえ/しか/ば、¥にしはちでう/に¥すせんき¥あり/ける¥つはもの=ども、¥にふだう/に/は¥かう/とも¥まうし/も¥いれ/ず、¥ざやめき−つれ/て、¥みな¥こまつ=どの/へ/ぞ¥はせ/たり/ける。¥きうせん/に¥たづさはる/ほど/の¥もの/は、¥いち−にん/も¥のこら/ず。¥ちくごの−かみ−さだよし/が¥ただ¥いち−にん¥さふらひ/ける/を¥ごぜん/へ¥めし/て、「¥だいふ/は¥なに/と¥おもひ/て、¥これ=ら/を/ば¥みな¥かやう/に¥よび−とる/やらん。¥けさ¥これ/にて¥いひ/つる¥やう/に、¥じやうかい/が¥もと/へ¥うつて/など/も/や¥むけ/んず/らん」/と¥のたまへ/ば、¥さだよし¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥ひと/も¥ひと/に/こそ¥よら/せ¥たまひ¥さふらへ。¥いかで/か¥ただいま¥さる−おん=こと¥さふらふ/べき。¥けさ¥これ/にて¥まうさ/せ¥たまひ/つる¥おん=こと=ども/を/ば、¥はや¥みな¥ご=こうくわい/ぞ¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にふだう、¥いやいや¥だいふ/に¥なか¥たがう/て/は、¥あしかり/な/ん/と/や¥おもは/れ/けん、¥ほふわう¥むかへ¥まゐらせ/ん/と¥おもは/れ/ける¥こころ/も¥やはらぎ、¥いそぎ¥はらまき¥ぬぎ−おき、¥そけん/の¥ころも/に¥けさ¥うち−かけ/て、¥いと¥こころ/に/も¥おこら/ぬ¥ねんじゆ−し/て/こそ¥おはし/けれ。¥その−のち¥こまつ=どの/に/は、¥もりくに¥うけたまはつ/て、¥ちやくたう¥つけ/けり。¥はせ−さんじ/たる¥さぶらひ=ども、P146¥いちまん−よ−き/と/ぞ¥しるし/ける。¥ちやくたう¥ひけん/の¥のち、¥おとど¥ちうもん/に¥いで/て、¥さぶらひ=ども/に¥のたまひ/ける/は、「¥ひごろ/の¥けいやく/を¥たがへ/ず/して、¥みな¥かやう/に¥まゐり/たる/こそ¥しんべう/なれ。¥いこく/に¥さる¥ためし¥あり。¥しう/の¥いうわう、¥はうじ/と¥いへ/る¥さいあい/の¥きさき/を¥もち¥たまへ/り。¥てんが¥だいいち/の¥びじん/なり。¥され/ども¥いうわう/の¥おん=こころ/に¥かなは/ざり/ける¥こと/に/は、¥はうじ¥ゑみ/を¥ふくま/ず/とて、¥すべて¥わらふ¥こと¥し¥たまは/ず、¥いこく/の¥ならひ/に、¥てんが/に¥ひやうらん/の¥おこる¥とき/は、¥しよしよ/に¥ひ/を¥あげ、¥たいこ/を¥うつ/て、¥つはもの/を¥めす¥はかりごと¥あり。¥これ/を¥ほうくわ/と¥なづく。¥ある−とき¥てんが/に¥ひやうがく¥おこつ/て、¥しよしよ/に¥ほうくわ/を¥あげ/たり/けれ/ば、¥きさき¥これ/を¥ごらんじ/て、『¥あな¥おびたたし、¥ひ/も¥あれ−ほど/まで¥おほかり/けり/な』/とて、¥その−とき¥はじめて¥わらひ¥たまへ/り。¥ひとたび¥ゑめ/ば¥もも/の¥こび¥あり/けり。¥いうわう¥これ/を¥うれしき¥こと/に¥し¥たまひ/て、¥その¥こと/と¥なく、¥つね/は¥ほうくわ/を¥あげ¥たまふ。¥しよこう¥き/たる/に¥あた¥なし、¥あた¥なけれ/ば¥すなはち¥かへり−さん/ぬ。¥かやう/に¥する¥こと¥どど/に¥およべ/ば、¥つはもの/も¥まゐら/ず。¥ある−とき¥りんごく/より¥きようぞく¥おこつ/て、¥いうわう/の¥みやこ/を¥せめ/ける/に、¥ほうくわ/を¥あぐれ/ども、¥れい/の¥きさき/の¥ひ/に¥ならつ/て、¥つはもの/も¥まゐら/ず。¥その−とき¥みやこ¥かたぶい/て、¥いうわう¥つひに¥ほろび/に/けり。¥さて¥かの¥きさき、¥やかん/と¥なつ/て¥はしり−うせ/ける/ぞ¥おそろしき。¥かやう/の¥こと/の¥ある¥とき/は、¥じこん¥いご、¥これ/より¥めさ/ん/に/は、¥みな¥かく/の/ごとく¥まゐる/べし。¥しげもり¥けさ¥べつし/て¥てんが/の¥だいじ/を¥きき−いだし/て¥めし/つる/なり。¥され/ども¥この¥こと¥きき−なほし/つつ、¥ひがごと/にて¥あり/けり。¥さら/ば¥とう¥かへれ」/とて、¥さぶらひ=ども¥みな¥かへさ/れ/けり。¥まことに¥させる¥こと/を/も¥きき−いださ/れ/ざり/けれ/ども、P147¥けさ¥ちち/を¥いさめ¥まうさ/れ/ける¥ことば/に¥したがつ/て、¥わが−み/に¥せい/の¥つく/か、¥つか/ぬ/か/の/ほど/を/も¥しり、¥また¥ふし¥いくさ/を¥せん/と/に/は¥あら/ね/ども、¥かう¥し/て¥にふだう−たいしやうこく/の¥むほん/の¥こころ/も、¥やはらぎ¥たまふ/か/と/の¥はかりごと/と/ぞ¥きこえ/し。¥きみ¥きみ/たら/ず/と¥いへ/ども、¥しん¥もつて¥しん/たら/ずん/ば¥ある/べから/ず。¥ちち¥ちち/たら/ず/と¥いへ/ども、¥こ¥もつて¥こ/たら/ずん/ば¥ある/べから/ず。¥きみ/の¥ため/に/は¥ちう¥あつ/て、¥ちち/の¥ため/に/は¥かう¥あれ/と、¥ぶんせんわう/の¥のたまひ/ける/に¥たがは/ず。¥きみ/も¥この¥よし¥きこしめし/て、「¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/なれ/ども、¥だいふ/が¥こころ/の¥うち/こそ¥はづかしけれ。¥あた/を/ば¥おん/を¥もつて¥はうぜ/られ/たり」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥くわはう/こそ¥めでたう/て、¥いま¥だいじん/の−だいしやう/に¥いたら/め。¥ようぎ−たいはい¥ひと/に¥すぐれ、¥さいち¥さいかく/さへ¥よ/に¥こえ/たる/べき/やは」/と/ぞ、¥とき/の−ひとびと¥かんじ−あは/れ/ける。¥くに/に¥いさむる¥しん¥あれ/ば、¥その¥くに¥かならず¥やすく、¥いへ/に¥いさむる¥こ¥あれ/ば、¥その¥いへ¥かならず¥ただし/と¥いへ/り。¥しやうだい/に/も¥まつだい/に/も、¥あり−がたかり/し¥だいじん/なり。¥
「しんだいなごんのながされ」(『だいなごんるざい』)S0208¥さる−ほど/に¥ろくぐわつ−ふつかのひ、¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/を/ば、¥くぎやう/の¥ざ/に¥いだし¥たてまつ/て、¥おん=もの¥まゐらせ/けれ/ども¥むね¥せき−ふさがつ/て、¥お=はし/を/だに/も¥たて/られ/ず。¥あづかり/の−ぶしP148¥なんばの−じらう−つねとほ、¥おん=くるま/を¥よせ/て、「¥とうとう」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいなごん¥こころ/なら/ず/ぞ¥のり¥たまふ。¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥いま−いちど¥こまつ=どの/に¥みえ¥たてまつら/ばや/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥それ/も¥かなは/ず。¥み−まはせ/ば、¥ぐんびやう=ども、¥ぜんご¥さう/に¥うち−かこん/で、¥わが¥かたさま/の¥もの/は¥いち−にん/も¥なし。¥たとひ¥ぢうくわ/を¥かうぶつ/て、¥ゑんごく/へ¥ゆく¥もの/も、¥ひと¥いち−にん¥み/に¥そへ/ざる/べき¥こと/や¥ある/と、¥くるま/の¥うち/にて¥かき−くどか/れ/けれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥にし/の−しゆしやか/を¥みなみ/へ¥ゆけ/ば、¥おほうちやま/を/も¥いま/は¥よそ/に/ぞ¥み¥たまひ/ける。¥としごろ¥み−なれ¥たてまつり/し¥ざふしき¥うしかひ/に¥いたる/まで、¥みな¥なみだ/を¥ながし¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥まして¥みやこ/に¥のこり−とどまり¥たまふ¥きたのかた、¥をさなき¥ひとびと/の¥こころ/のうち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥とば=どの/を¥すぎ¥たまふ/に/も、¥この¥ごしよ/へ¥ご=かう¥なり/し/に/は、¥いちど/も¥おん=とも/に/は¥はづれ/ざり/し/ものを/とて、¥わが¥さんざう、¥すはま=どの/とて¥あり/し/を/も、¥よそ/に¥み/て/こそ¥とほら/れ/けれ。¥とば/の¥みなみ/の¥もん¥いで/て、¥ふね¥おそし/と/ぞ¥いそが/せ/ける。¥だいなごん、「¥おなじく¥うしなは/る/べく/は、¥みやこ¥ちかき¥この¥へん/にて/も¥あれ/かし」/と¥のたまひ/ける/こそ、¥せめて/の¥こと/なれ。¥ちかう¥そひ¥たてまつ/たる¥ぶし/を、「¥た/そ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥あづかり/の−ぶし¥なんばの−じらう−つねとほ」/と¥なのり¥まうす。「¥もし¥この¥へん/に¥わが¥かたさま/の¥もの/や¥ある、¥いち−にん¥たづね/て¥まゐらせよ。¥ふね/に¥のら/ぬ¥さき/に¥いひ−おく/べき¥こと¥あり」/と¥のたまへ/ば、¥つねとほ¥その¥へん/を¥はしり−まはつ/て¥たづね/けれ/ども、¥われ/こそ¥だいなごん=どの/の¥おん=かた/とP149¥まうす¥もの、¥いち−にん/も¥なし。¥
その−とき¥だいなごん¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥さり/とも¥わが¥よ/に¥あり/し¥とき/は、¥したがひ−つき/たり/し¥もの=ども、¥いちにせん−にん/も¥あり/つ/らん/に、¥いま/は¥よそ/にて/だに¥この¥ありさま/を¥み−おくる¥もの/の¥なかり/ける¥かなし−さ/よ」/とて、¥なか/れ/けれ/ば、¥たけき¥もののふ=ども/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥ただ¥み/に¥そふ¥もの/とて/は、¥つきせ/ぬ¥なみだ/ばかり/なり。¥くまの−まうで、¥てんわうじ−まうで/など/に/は、¥ふたつ−がはら/の¥みつ−むね/に¥つくつ/たる¥ふね/に¥のり、¥つぎ/の¥ふね¥にさんじつ−そう¥こぎ−つづけ/て/こそ¥あり/し/に、¥いま/は¥けしかる¥かきすゑ−やかた−ぶね/に¥おおまく¥ひか/せ、¥み/も¥なれ/ぬ¥つはもの=ども/に¥ぐせ/られ/て、¥けふ/を¥かぎり/に¥みやこ/を¥いで/て、¥なみぢ¥はるか/に¥おもむか/れ/けん、¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥しん−だいなごん/は、¥しざい/に¥おこなは/る/べかり/し¥ひと/の、¥るざい/に¥なだめ/られ/ける¥こと/は、¥ひとへに¥こまつ=どの/の¥やうやう/に¥まうさ/れ/ける/に¥よつ/て/なり。¥その−ひ/は¥つの−くに¥だいもつ/の−うら/に/ぞ¥つき¥たまふ。¥あくる¥みつかのひ、¥だいもつ/の−うら/へ/は¥きやう/より¥お=つかひ¥あり/とて、¥ひしめき/けり。¥だいなごん¥そこ/にて¥うしなへ/と/に/や/と¥きき¥たまへ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥びぜん/の−こじま/へ¥ながす/べし/と/の¥お=つかひ/なり。¥また¥こまつ=どの/より¥おん=ふみ¥あり。「¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥みやこ¥ちかき¥かた−やまざと/に/も¥おき¥たてまつら/ばや/と、¥さ/しも¥まうし/つる¥こと/の¥かなは/ざり/ける¥こと/こそ¥よ/に¥ある¥かひ/も¥さふらは/ね。¥さり/ながら/も¥おん=いのち/ばかり/を/ば、¥こひ−うけ¥たてまつ/て¥さふらふ/ぞ。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/とて、¥なんば/が¥もと/へ/も、「¥よくよく¥みやづかへP150¥たてまつれ。¥あひ−かまへ/て、¥おん=こころ/に/ばし¥たがふ/な」/など¥のたまひ−つかはし、¥たび/の¥よそほひ、¥こまごま/と¥さた−し、¥おくら/れ/たり。¥しん−だいなごん/は¥さ/しも¥かたじけなう¥おぼしめさ/れ/つる¥きみ/に/も、¥はなれ¥まゐらせ、¥つか/の−ま/も¥さり−がたう¥おもは/れ/ける¥きたのかた、¥をさなき¥ひとびと/に/も、¥みな¥わかれ−はて/て、¥こ/は¥いづち/へ/とて¥ゆく/らん。¥ふたたび¥こきやう/に¥かへつ/て、¥さいし/を¥あひ−み/ん¥こと/も¥あり−がたし。¥ひととせ¥さんもん/の¥そしよう/に¥よつ/て、¥すでに¥ながさ/れ/し/を/も、¥きみ¥をしま/せ¥たまひ/て、¥にし/の−しちでう/より¥めし−かへさ/れ/ぬ。¥され/ば¥これ/は¥きみ/の¥おん=いましめ/に/も¥あら/ず、¥こ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や」/と、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし/て、¥なき−かなしめ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥あけ/けれ/ば、¥ふね¥おし−いだい/て¥くだり¥たまふ/に¥みち−すがら¥ただ¥なみだ/に/のみ¥むせん/で、¥ながらふ/べし/と/は¥おぼえ/ね/ども、¥さすが¥つゆ/の−いのち/は¥きえ−やら/ず、¥あと/の¥しらなみ¥へだつれ/ば、¥みやこ/は¥しだいに¥とほざかり、¥ひかず¥やうやう¥かさなれ/ば、¥ゑんごく/は¥すでに¥ちかづき/ぬ。¥びぜん/の−こじま/に¥こぎ−よせ/て、¥たみ/の¥いへ/の¥あさまし=げ/なる¥しば/の¥いほり/に¥いれ¥たてまつる。¥しま/の¥ならひ、¥うしろ/は¥やま、¥まえ/は¥うみ、¥いそ/の¥まつかぜ¥なみ/の¥おと、¥いづれ/も¥あはれ/は¥つきせ/ず。¥
「あこやのまつ」(『あこやのまつ』)S0209¥およそ¥しん−だいなごん¥いち−にん/に/も¥かぎら/ず、¥いましめ/を¥かうむる¥ともがら¥おほかり/き。¥あふみの−ちうじやう−にふだう−れんじやうP151¥さどの−くに、¥やましろの−かみ−もとかぬ¥はうきの−くに、¥しきぶ/の−たいふ−まさつな¥はりまの−くに、¥そう−はうぐわん−のぶふさ¥あはの−くに、¥しん−へい−はうぐわん−すけゆき/は¥みまさかの−くに/と/ぞ¥きこえ/し。¥をりふし¥にふだう−しやうこく/は、¥ふくはら/の¥べつげふ/に¥おはし/ける/が、¥おなじき−はつかのひ、¥つの−さゑもん−もりずみ/を¥ししや/にて、¥かどわき=どの/の¥もと/へ、「¥それ/に¥あづけ−おき¥たてまつ/たる¥たんばの−せうしやう/を、¥いそぎ¥これ/へ¥たべ。¥ぞんずる¥むね¥あり」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥さいしやう、「¥さら/ば¥ただ¥あり/し¥とき、¥と/も−かう/も¥なり/たり/せ/ば、¥いか/に/か¥せ/ん。¥ふたたび¥もの/を¥おもは/せ/んずる¥こと/の¥かなし−さ/よ」/とて、¥いそぎ¥ふくはら/へ¥くだり¥たまふ/べき¥よし¥のたまへ/ば、¥せうしやう¥なくなく¥いで−たた/れ/けり。¥きたのかた¥いげ/の¥にようばう=たち/は、「¥かなは/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥なほ/も¥さいしやう/の¥よき¥やう/に¥まうさ/せ¥たまへ/かし」/と¥なげか/れ/けれ/ば、¥さいしやう、「¥ぞんずる/ほど/の¥こと/を/ば¥まうし/つ。¥いま/は¥よ/を¥すて/ん/より¥ほか、¥また¥なにごと/を/か¥まうす/べき。¥たとひ¥いづく/の¥うら/に/も¥おはせよ、¥わが¥いのち/の¥あら/ん¥かぎり/は、¥とぶらひ¥たてまつる/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥せうしやう/は¥ことし¥みつ/に¥なり¥たまふ¥をさなき¥ひと/の¥おはし/けれ/ども、¥ひごろ/は¥わかき¥ひと/にて、¥きんだち/など/の¥こと/を/ば¥さ/しも¥こまやか/に/も¥おはせ/ざり/しか/ども、¥いまは/の−とき/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥さすが¥なつかしう/や¥おもは/れ/けん、「¥をさなき¥もの/を¥いま−いちど¥み/ばや」/と¥のたまへ/ば、¥めのと¥いだい/て¥まゐり/たり。¥せうしやう¥ひざ/の¥うへ/に¥おき、¥かみ¥かき−なで、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥あはれ¥なんぢ¥しちさい/に¥なら/ば、¥をとこ/に¥なし/て、¥きみ/へ¥まゐらせ/ん/と/こそ¥おもひ/し/に、¥され/ども¥いま/は¥いふ¥かひ−なし。P152¥もし¥ふしぎ/に¥いのち¥いき/て、¥おひ−たち/たら/ば、¥ほふし/に¥なつ/て、¥わが¥のち/の−よ/を¥よく¥とぶらへよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥いまだ¥いとけなき¥おんこころ/に、¥なにごと/を/か¥きき−わき¥たまふ/べき/なれ/ども、¥うち−うなづき¥たまへ/ば、¥せうしやう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥ははうへ¥めのと/の−にようばう、¥その¥ざ/に¥いくら/も¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥ひとびと、¥こころ−ある/も¥こころ−なき/も、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥
ふくはら/の¥お=つかひ、¥こんや¥とば/まで¥いで/させ¥たまふ/べき¥よし/を¥まうす。¥せうしやう、「¥いく−ほど/も¥のび/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥こよひ/ばかり/は¥みやこ/の¥うち/にて¥あかさ/ばや」/と¥のたまへ/ども、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を、¥しきり/に¥まうし/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず、¥その¥よ¥とば/へ/ぞ¥いで/られ/ける。¥さいしやう¥あまり/の¥もの−う−さ/に、¥こんど/は¥のり/も¥ぐし¥たまは/ず、¥せうしやう/ばかり/ぞ¥のり¥たまふ。¥おなじき−にじふににち¥せうしやう¥ふくはら/へ¥くだり−つき¥たまふ。¥にふだう−しやうこく、¥びつちうの−くに/の¥ぢうにん¥せのをの−たらう−かねやす/に¥おほせ/て、¥びつちうの−くに/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥かねやす/は¥さいしやう/の¥かへり−きき¥たまは/んずる¥ところ/を¥おそれ/て、¥いたう¥きびしう/も¥あたり¥たてまつら/ず、¥みち−すがら/も¥やうやう/に¥いたはり¥まゐらせ/けれ/ども、¥せうしやう¥すこし/も¥なぐさみ¥たまふ¥こと/も¥なく、¥よる−ひる¥ただ¥ほとけ/の¥み=な/を/のみ¥となへ/て、¥ひとへに¥ちち/の¥こと/を/ぞ¥いのら/れ/ける。¥さる−ほど/に¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/は、¥びぜん/の−こじま/に¥おはし/ける/を、¥これ/は¥なほ¥ふなつき¥ちかう/て、¥あしかり/な/ん/とて、¥ぢ/へ¥わたし¥たてまつり、¥びぜん¥びつちう/の¥さかひ、¥にはせ/の−がう、¥きび/の−なかやま、¥ありき/の−べつしよ/と¥いふ¥やまでら/に¥おき¥たてまつる。¥それ/より¥せうしやう/の¥おはし/ける¥びつちう/の¥せのを/と、¥ありき/の−べつしよ/の¥あひだ/は、¥わづか¥ごじつちやう/に¥たら/ぬ¥ところ/なれ/ば、¥せうしやう¥さすがP153¥そなた/の¥かぜ/も¥なつかしう/や¥おもは/れ/けん、¥ある−とき¥かねやす/を¥めし/て、「¥これ/より¥ちち¥だいなごん=どの/の¥おん=わたり¥あん/なる¥ありき/の−べつしよ/とかや/へ/は¥いか/ほど¥ある/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、¥かねやす¥すぐ/に¥しらせ¥たてまつ/て/は、¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、「¥かたみち¥じふにさんにち¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥その−とき¥せうしやう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥につぽん/は¥むかし¥さんじふさん−か−こく/にて¥あり/し/を、¥なかごろ¥ろくじふろく−か−こく/に/は¥わけ/られ/たん/なり。¥さいふ¥びぜん¥びつちう¥びんご/も、¥もと/は¥いつ−こく/にて¥あり/ける/なり。¥また¥あづま/に¥きこゆる¥では¥みちの−くに/も、¥むかし/は¥ろくじふろく−ぐん/が¥いつ−こく/なり/し/を、¥じふにぐん¥さき−わかつ/て¥のち、¥ではの−くに/と/は¥たて/られ/たん/なり。¥され/ば¥さねかたの−ちうじやう¥あうしう/へ¥ながさ/れ/し¥とき、¥たう−ごく/の¥めいしよ、¥あこや/の−まつ/を¥み/ん/とて、¥くに/の¥うち/を¥たづね−まはる/に、¥もとめ−かね/て¥すでに¥むなしう¥かへら/ん/と¥し/ける/が、¥みち/にて¥ある¥らうをう/に¥ゆき−あひ/たり。¥ちうじやう、『¥やや¥ご=へん/は¥ふるい¥ひと/と/こそ¥みれ。¥たう−ごく/の¥めいしよ、¥あこや/の−まつ/と¥いふ¥ところ/や¥しつ/たる』/と¥とふ/に、『¥まつたく¥くに/の¥うち/に/は¥さふらは/ず、¥ではの−くに/に/ぞ¥さふらふ/らん』/と¥まうし/けれ/ば、『¥さて/は¥なんぢ/も¥しら/ざり/けり。¥いま/は¥よ¥すゑ/に¥なつ/て、¥くに/の¥めいしよ/を/も、¥はや¥みな¥よび¥うしなひ/ける/に/こそ』/とて、¥すでに¥すぎ/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥らうをう¥ちうじやう/の¥そで/を¥ひかへ/て、『¥あはれ¥きみ/は、¥
みちのく/の¥あこや/の−まつ/に¥こ−がくれ/て¥いづ/べき¥つき/の¥いで/も¥やら/ぬ/か W008
/と¥いふ¥うた/の¥こころ/を¥もつて、¥たう−ごく/の¥めいしよ、¥あこや/の−まつ/と/は¥おん=たづね¥さふらふ/か。¥それ/は¥むかし¥りやうこく/が¥いつこく/なり/し¥とき、¥よみ¥はんべり/し¥うた/なり。¥じふに−ぐん¥さき−わかつ/て¥のち/は、¥ではの−くに/に/ぞP154¥さふらふ/らん』/と¥まうし/けれ/ば、¥さら/ば/とて¥さねかたの−ちうじやう/も、¥ではの−くに/に¥こえ/て/こそ、¥あこや/の−まつ/を/ば¥み/てげれ。¥つくし/の¥ださいふ/より¥みやこ/へ、¥はらか/の¥つかひ/の¥のぼる/こそ、¥かちぢ¥じふごにち/と/は¥さだめ/た/なれ。¥すでに¥じふにさんにち/と¥まうす/は、¥これ/より¥ほとんど¥ちんぜい/へ¥げかう¥ござんなれ。¥とほし/と¥いふ/とも、¥びぜん¥びつちう¥びんご/の¥あひだ/は、¥りやうさんにち/に/は¥よも¥すぎ/じ。¥ちかい/を¥とほう¥まうす/は、¥ちち¥だいなごん=どの/の¥おん=わたり¥あん/なる¥ところ/を、¥なりつね/に¥しらせ/じ/とて/こそ¥まうす/らめ」/とて、¥その−のち/は¥こひしけれ/ども¥とひ¥たまは/ず。¥
「しんだいなごんのしきよ」(『だいなごんのしきよ』)S0210¥さる−ほど/に¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ、¥たんばの−せうしやう−なりつね、¥へい−はうぐわん−やすより、¥これ¥さん−にん/を/ば、¥さつまがた¥きかいがしま/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥かの¥しま/へ/は¥みやこ/を¥いで/て、¥はるばる/と¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのい/で¥ゆく¥ところ/なり。¥おぼろ=げ/にて/は¥ふね/も¥かよは/ず、¥しま/に/は¥ひと¥まれ/なり/けり。¥おのづから¥ひと/は¥あれ/ども、¥いしやう¥なけれ/ば、¥この¥ど/の¥ひと/に/も¥に/ず、¥いふ¥ことば/を/も¥きき−しら/ず。¥み/に/は¥しきり/に¥け¥おひ/つつ、¥いろ¥くろう/して¥うし/の/ごとし。¥をとこ/は¥ゑぼし/も¥き/ず、¥をんな/は¥かみ/も¥さげ/ざり/けり。¥しよく−する¥もの/も¥なけれ/ば、¥つねに¥ただ¥せつしやう/を/のみ¥さき/と¥す。¥しづがやまだ/を¥かへさ/ね/ば、¥べいこく/の¥るゐ/も¥なく、¥その/の¥くは/を¥とら/ざれ/ば、P155¥けんばく/の¥たぐひ/も¥なかり/けり。¥しま/の¥うち/に/は¥たかき¥やま¥あり。¥とこしなへ/に¥ひ¥もゆ。¥いわう/と¥いふ¥もの¥みち−みて/り。¥かるがゆゑ/に/こそ¥いわう/が−しま/と/は¥なづけ/たれ。¥いかづち¥つね/に、¥なり−あがり、¥なり−くだり、¥ふもと/に/は¥あめ¥しげし。¥いち−にち¥へんし¥ひと/の¥いのち/の¥たえ/て¥ある/べき¥やう/も¥なし。¥しん−だいなごん/は¥すこし¥くつろぐ¥こと/も/や/と¥おもは/れ/ける/が、¥しそく¥たんばの−せうしやう−なりつね¥いげ¥さん−にん、¥さつまがた¥きかいがしま/へ¥ながさ/れ/ぬ/と¥きい/て、¥いま/は¥なに/を/か¥ごす/べき/とて、¥しゆつけ/の¥こころざし/の¥さふらふ¥よし/を、¥たより/に¥つけ/て、¥こまつ=どの/へ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/へ¥うかがひ¥まうし/て、¥ごめん¥あり/けり。¥えいぐわ/の¥たもと/を¥ひき−かへ/て、¥うき−よ/を¥よそ/に¥すみぞめ/の¥そで/に/ぞ¥やつれ¥たまひ/ける。¥さる−ほど/に¥だいなごん/の¥きたのかた/は、¥みやこ/の¥きたやま¥うんりんゐん/の¥へん/に¥しのう/で¥おはし/ける/が、¥さら/ぬ/だに、¥すみ−なれ/ぬ¥ところ/は¥もの−うき/に、¥いとど¥しのば/れ/けれ/ば、¥すぎ−ゆく¥つきひ/を¥あかし−かね、¥くらし−わづらふ¥さま/なり/けり。¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥おほかり/けれ/ども、¥あるひは¥よ/を¥おそれ、¥あるひは¥ひとめ/を¥つつむ/ほど/に、¥とひ−とぶらふ¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥され/ども¥その¥なか/に¥げん−ざゑもん/の−じよう−のぶとし/と¥いふ¥さぶらひ¥いち−にん、¥なさけ−ある¥もの/にて、¥つね/は¥とぶらひ¥たてまつる。¥ある−とき¥きたのかた、¥のぶとし/を¥めし/て、「¥まことや¥これ/に/は、¥びぜん/の−こじま/に¥おはし/ける/が、¥この−ほど¥きけ/ば、¥ありき/の−べつしよ/とかや/に¥おはす/なり。¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥はかなき¥ふで/の¥あと/を/も¥たてまつり、¥おん=かへりごと/を/も¥いま−いちど¥み/ばや/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥のぶとし¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥われ¥えうせう/の¥とき/より、¥おん=あはれみ/を¥かうぶつ/て¥めし−つかは/れ、P156¥かたとき/も¥はなれ¥まゐらせ¥さふらは/ず。¥
めさ/れ¥まゐらせ/し¥おん=こゑ/の¥みみ/に¥とどまり、¥いさめ/られ¥まゐらせ/し¥おん=ことば/の¥きも/に¥めいじ/て、¥わするる¥こと/も¥さふらは/ず。¥さいこく/へ¥おん=くだり¥さふらひ/し¥とき/も、¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらひ/しか/ども、¥ろくはら/より¥ゆるされ¥なけれ/ば、¥ちから¥および¥さふらは/ず。¥たとひ¥こんど/は¥いか/なる¥うき−め/に/も¥あひ¥さふらへ、¥おん=ふみ¥たまはつ/て¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥やがて¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も¥めんめん/に¥おん=ふみ¥あり。¥のぶとし¥この¥おん=ふみ=ども/を¥たまはつ/て、¥はるばる/と¥びぜんの−くに¥ありき/の−べつしよ/へ¥たづね−くだり、¥まづ¥あづかり/の−ぶし¥なんばの−じらう−つねとほ/に、¥あんない/を¥いひ−いれ/たり/けれ/ば、¥つねとほ¥こころざし/の/ほど/を¥かんじ/て、¥やがて¥おん=げんざん/に¥いれ/てげり。¥だいなごん−にふだう=どの/は、¥ただいま/しも¥みやこ/の¥こと/を/のみ¥のたまひ−いだし/て、¥なげき−しづん/で¥おはし/ける¥ところ/に、「¥きやう/より¥のぶとし/が¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいなごん¥おき−あがつ/て、「¥いか/に/や−いか/に、¥ゆめ/か/や¥うつつ/か、¥これ/へ¥これ/へ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥のぶとし¥おん=そば¥ちかう¥まゐつ/て、¥おん=ありさま/を¥み¥たてまつる/に、¥まづ¥おん=すまひどころ/の¥もの−う−さ/は、¥さる−こと/なり。¥すみぞめ/の¥おん=そで/を¥み¥たてまつる/に、¥め/も¥くれ¥こころ/も¥きえ−はて/て、¥なみだ/も¥さら/に¥とどまら/ず。¥やや¥あつ/て¥なみだ/を¥おさへ/て、¥きたのかた/の¥おほせ¥かうぶつ/し¥しだい、¥こまごま/と¥かたり¥まうす。¥その−のち¥おん=ふみ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、¥みづぐき/の¥あと/は¥なみだ/に¥かき−くれ/て、¥そこはか/と/は¥みえ/ね/ども、¥をさなき¥ひとびと/の¥あまり/に¥こひ−かなしみ¥たまふ¥ありさま、¥わが−み/も¥つきせ/ぬ¥もの−おもひ/に、¥たへ−しのぶ/べう/も¥なし/など¥かか/れ/たれ/ば、¥ひごろ/の¥こひし−さ/は¥こと/の−かず/なら/ず/と/ぞ¥かなしみ¥たまひ/ける。P157¥
かくて¥しごにち/も¥すぎ/しか/ば、¥のぶとし、「¥これ/に¥さふらひ/て、¥ご=さいご/の¥おん=ありさま/を/も¥み¥まゐらせ/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥あづかり/の−ぶし、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を¥まうす¥あひだ、¥だいなごん、「¥いく−ほど/も¥のび/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に¥ただ¥とう¥かへれ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。「¥われ/は¥ちかう¥うしなは/れ/ん/と¥おぼゆる/ぞ。¥この−よ/に¥なき¥もの/と¥きか/ば、¥わが¥のち/の−よ/を¥よく¥とぶらへ/よ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥おん=ぺんじ¥かい/て¥たう/だり/けれ/ば、¥のぶとし¥これ/を¥たまはつ/て、「¥また/こそ¥まゐり¥さふらは/め」/とて、¥いとま¥まうし/て¥いで/けれ/ば、「¥なんぢ/が¥また¥こ/ん¥たび/を¥まち−つく/べし/と/も¥おぼえ/ぬ/ぞ。¥あまり/に¥なごり−をしう¥おぼゆる/に、¥しばし−しばし」/と¥のたまひ/て、¥たびたび¥よび/ぞ¥かへさ/れ/ける。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥のぶとし¥なみだ/を¥おさへ/つつ、¥みやこ/へ¥かへり−のぼり/けり。¥きたのかた/に、¥おん=ぺんじ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまへ/ば、¥はや¥おん=さま¥かへ/させ¥たまひ/たり/と¥おぼしく/て、¥おん=ふみ/の¥おく/に¥おん=ぐし/の¥ひとふさ¥あり/ける/を、¥ふため/と/も¥み¥たまは/ず、¥かたみ/こそ¥いま/は¥なかなか¥あだ/なれ/とて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も、¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。¥さる−ほど/に¥おなじき−はちぐわつ−じふくにち、¥だいなごん−にふだう=どの/を/ば、¥びぜん¥びつちう/の¥さかひ、¥にはせ/の−がう、¥きび/の−なかやま、¥ありき/の−べつしよ/にて/ぞ¥つひに¥うしなひ¥たてまつる。¥その¥さいご/の¥ありさま¥やうやう/に/ぞ¥きこえ/ける。¥はじめ/は¥さけ/に¥どく/を¥いれ/て¥まゐらせ/けれ/ども、¥かなは/ざり/けれ/ば、¥にぢやう/ばかり¥あり/ける¥きし/の¥した/に¥ひし/を¥うゑ/て、¥つき−おとし¥たてまつれ/ば、¥ひし/に¥つらぬかつ/て/ぞ¥うせ/られ/ける。¥むげ/に¥うたてき¥こと=ども/なり。¥ためし¥すくなう/ぞ¥きこえ/し。P158¥
きたのかた¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥あはれ¥いか/に/も−し/て、¥かはら/ぬ¥すがた/を、¥いま−いちど¥み/も¥し、¥みえ/ばや/と¥おもひ/て/こそ、¥けふ/まで¥さま/を/ば¥かへ/ざり/つれ。¥いま/は¥なに/に/かは¥せ/ん」/とて、¥ぼだいゐん/と¥いふ¥てら/に¥おはし/て、¥おん=さま/を¥かへ、¥かた/の/ごとく/の¥ぶつじ¥いとなみ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥この¥きたのかた/と¥まうす/は、¥やましろの−かみ−あつかた/の¥むすめ、¥ごしらかはの−ほふわう/の¥おん=おもひびと、¥ならび−なき¥びじん/にて¥おはし/ける/を、¥この¥だいなごん¥あり−がたき¥ご=ちようあい/の¥ひと/にて、¥くだし¥たまはら/れ/たり/ける/とかや。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も、¥めんめん/に¥はな/を¥たをり、¥あか/の−みづ/を¥むすん/で、¥ちち/の¥ごせ/を¥とぶらひ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥かくて¥とき¥うつり¥こと¥さつ/て、¥よ/の¥かはり−ゆく¥ありまさ/は、¥ただ¥てんにん/の¥ごすゐ/に¥こと/なら/ず。¥
「とくだいじのいつくしままうで」(『とくだいじのさた』)S0211¥ここ/に¥とくだいじの−だいなごん−じつていの−きやう/は、¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/に¥だいしやう/を¥こえ/られ/て、¥しばらく¥よ/の¥なら/ん¥やう/を¥み/ん/とて、¥だいなごん/を¥じし/て¥ろうきよ−し/て¥おはし/ける/が、¥しゆつけ−せ/ん/と¥のたまへ/ば、¥み=うち/の¥じやうげ¥みな¥なげき−かなしび−あへ/り/けり。¥その¥なか/に¥とう−くらんど/の−たいふ−しげかぬ/と¥いふ¥しよだいぶ¥あり。¥しよじ/に¥こころ−え/たる¥ひと/にて¥あり/ける/が、¥ある¥つき/の¥よ、¥とくだいじ=どの¥ただ¥いち−にん、¥なんめん/の¥み=かうし¥あげ/させ、¥つき/に¥うそぶい/て¥おはし/ける¥ところ/へ、¥とう−くらんど¥まゐり/たり。P159「¥た/そ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥しげかぬ¥ざふらふ」。「¥よ/は¥はるか/に¥ふけ/ぬ/らん/に、¥いか/に¥ただいま¥なにごと/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥こんや/は¥つき¥さえ、¥よろづ¥こころ/の¥すむ¥まま/に¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥とくだいじ=どの、「¥しんべう/に/も¥まゐり/たり。¥まことに¥こよひ/は¥なに/と/やらん¥こころ−ぼそう/て、¥よ/に¥とぜん/なる/に」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥さて¥むかし−いま/の¥ものがたり=ども¥し¥たまひ/て¥のち、¥だいなごん¥のたまひ/ける/は、「¥つらつら¥へいけ/の¥はんじやう−する¥ありさま/を¥みる/に、¥ちやくし¥しげもり、¥じなん¥むねもり、¥さう/の−だいしやう/なり。¥やがて¥さんなん¥とももり、¥ちやくそん¥これもり/も¥ある/ぞ/かし。¥かれ/も¥これ/も¥しだい/に/なら/ば、¥たけ/の¥ひとびと/は、¥いつ¥だいしやう/に¥あたり−つく/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥され/ば¥つひ/の¥こと/なり、¥しゆつけ−せ/ん」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥とう−くらんど¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥きみ/の¥ご=しゆつけ¥さふらは/ば、¥み=うち/の¥じやうげ¥みな¥まどひもの/と¥なり¥さふらひ/な/んず。¥しげかぬ/こそ、¥このごろ¥めづらしき¥こと/を¥あんじ−いだし/て¥さふらへ。¥たとへば¥あきの−いつくしま/を/ば、¥へいけ¥なのめ/なら/ず¥あがめ−うやまは/れ¥さふらふ。¥これ/へ¥おん=まゐり¥さふらへ/かし。¥かの¥やしろ/に/は¥ないし/とて、¥いう/なる¥まひひめ¥あまた¥さふらふ/なれ/ば、¥めづらしく¥おもひ¥まゐらせ/て、¥もてなし¥まゐらせ¥さふらは/んず/らん。¥なにごと/の¥ごきせい/やらん/と¥たづね¥まうし¥さふらは/ば、¥あり/の−まま/に¥おほせ¥さふらふ/べし。¥さて¥おん=げかう/の¥とき、¥むねと/の¥ないし¥いちりやう−にん、¥みやこ/まで¥めし−ぐせ/させ¥たまひ/て¥さふらは/ば、¥さだめて¥にしはちでう/の−てい/へ/ぞ¥まゐり¥さふらは/んず/らん。¥にふだう¥なにごと/ぞ/と¥たづね¥まうさ/れ¥さふらは/ば、¥あり/の−まま/に/ぞ¥まうし¥さふらは/んず/らん。¥にふだう/は¥きはめて¥もの−めで−し¥たまふ¥ひと/なれ/ば、¥しかる/べき¥はからひ/も¥あん/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥とくだいじ=どの、「P160¥
これ/こそ¥おもひ−よら/ざり/つれ。¥さら/ば¥やがて¥まゐら/ん」/とて¥にはか/に¥しやうじん¥はじめ/つつ、¥いつくしま/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥げに/も¥いう/なる¥まひひめ=ども¥おほかり/けり。「¥
そもそも¥たうしや/へ/は、¥われ=ら/が¥しう/の、¥へいけ/の¥きんだち=たち/こそ、¥おん=まゐり¥さぶらふ/に、¥これ/こそ¥めづらしき¥おん=まゐり/にて¥さぶらへ」/とて、¥むねと/の¥ないし¥じふ−よ−にん、¥よる¥ひる¥つきそひ¥まゐらせ/て、¥やうやう/に¥もてなし¥たてまつる。¥さて¥ないし=ども、「¥なにごと/の¥ご=きせい/やらん」/と¥たづね¥さふらへ/ば、「¥だいしやう/を¥ひと/に¥こえ/られ/て、¥その¥いのり/の¥ため/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥いちしち−にち¥ご=さんろう¥あつ/て、¥かぐら/を¥そうし、¥ふうぞく、¥さいばら¥うたは/る。¥その¥あひだ/に¥ぶがく/も¥さん−か−ど/まで¥あり/けり。¥さて¥おん=げかう/の¥とき、¥むねと/の¥ないし¥じふ−よ−にん、¥ふね¥おし−たて/て、¥ひとひぢ¥おくり¥たてまつる。¥とくだいじ=どの、「¥あまり/に¥なごり−をしき/に、¥いま¥ひとひぢ、¥いま¥ふつかぢ」/と¥のたまひ/て、¥みやこ/まで¥めし−ぐせ/させ¥たまひ、¥とくだいじ/の¥てい/へ¥いれ/させ¥おはしまし、¥やうやう/に¥もてなし、¥さまざま/の¥ひきでもの¥たう/で¥かへさ/れ/けり。¥ないし=ども、「¥はるばる¥これ/まで¥のぼり/たら/んずる/に、¥いかで/か¥われ=ら/が¥しう/の、¥へいけ/へ¥まゐら/で¥ある/べき/か」/とて、¥にしはちでう=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん−し¥たまひ/て、「¥いか/に¥ないし=ども/は、¥ただいま¥なにごと/の¥れつさん/ぞ/や」/と¥のたまへ/ば、「¥とくだいじ=どの/の¥いつくしま/へ¥おん=まゐり¥さぶらふ/ほど/に、¥われ=ら/が¥ふね/を¥したて/て、¥ひとひぢ¥おくり¥まゐらせ/て、¥それ/より¥いとま¥まうし/けれ/ば、¥とくだいじ=どの、¥さり/とて/は¥なごり−をしき/に、¥いま¥ひとひぢ、¥いま¥ふつかぢ/と¥おほせ/られ/て、¥これ/まで¥めし−ぐせ/られ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥にふだう、「¥とくだいじ/はP161¥なにごと/の¥きせい/に、¥いつくしま/へ/は¥まゐら/れ/ける/やらん」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥だいしやう/を¥ひと/に¥こえ/られ/て、¥その¥いのり/の¥ため/と/こそ¥おほせ¥はんべり/つれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥その−とき¥にふだう¥おほき/に¥うち−うなづい/て、「¥わうじやう/に¥さ/しも¥あらた/なる¥れいぶつ−れいしや/の¥いくら/も¥まします/を¥さし−おい/て、¥じやうかい/が¥あがめ¥たてまつる¥いつくしま/へ¥はるばる/と¥まゐら/れ/ける/こそ¥いとほしけれ。¥それ−ほど/まで¥せつ/なら/ん¥うへ/は」/とて、¥ちやくし¥しげもり¥ないだいじん/の−さだいしやう/にて¥おはし/ける/を¥じせ/させ¥たてまつり、¥じなん¥むねもり¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥おはし/ける/を¥こえ/させ/て、¥とくだいじ/を¥さだいしやう/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥あはれ¥かしこき¥はからひ/かな。¥しん−だいなごん/も、¥かやう/の¥はかりごと/を/ば¥し¥たまは/で、¥よし−なき¥むほん¥おこし/て、¥わが−み/も¥しそん/も、¥ほろび/ぬる/こそ¥うたてけれ。¥
「さんもんめつばう」(『さんもんめつばう だうじゆかつせん』)S0212¥さる−ほど/に、¥ほふわう/は¥みゐでら/の¥こうけん−そうじやう/を¥ご=しはん/と/して、¥しんごん/の¥ひほふ/を¥でんじゆ−せ/させ¥おはします。¥だいにちきやう、¥こんがうちやうきやう、¥そしつぢきやう、¥この¥さんぶ/の¥ひきやう/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥くぐわつ−よつかのひ、¥みゐでら/にて¥ご=くわんぢやう¥ある/べき¥よし¥きこゆ。¥さんもん/の¥だいしゆ¥いきどほり¥まうし/ける/は、「¥むかし/より¥ご=くわんぢやう¥おん=じゆかい、¥みな¥たうざん/に/して¥とげ/させ¥たまふ¥こと¥せんぎ/なり。P162¥なかんづく¥さんわう/の¥けだう/は、¥じゆかい¥くわんぢやう/の¥ため/なり。¥しかる/を¥いま¥みゐでら/にて¥とげ/させ¥おはしまさ/ば、¥てら/を¥いつかう¥やき−はらふ/べし」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ほふわう、「¥これ¥むやく/なり」/とて、¥おん=けぎやう/ばかり¥ご=けつぐわん¥あつ/て、¥ご=くわんぢやう/を/ば¥おぼしめし¥とどまら/せ¥たまひ/けり。¥され/ども¥ご=ほんい/なれ/ば/とて、¥こうけん−そうじやう/を¥めし−ぐし/つつ、¥てんわうじ/へ¥ご=かう¥なつ/て、¥ごちくわうゐん/を¥たて、¥かめゐ/の¥みづ/を¥ごびやう/の¥ちすゐ/と¥さだめ、¥ぶつぽふ¥さいしよ/の¥れいち/にて/ぞ、¥でんぽふ−くわんぢやう/を/ば¥とげ/させ¥おはします。¥さんもん/の¥さうどう/を¥しづめ/られ/ん/が¥ため/に、¥みゐでら/にて¥ご=くわんぢやう/は¥なかり/しか/ども、¥さんもん/に/は¥だうじゆ¥がくしやう、¥ふくわい/の¥こと¥いで−き/て、¥かつせん¥どど/に¥およぶ。¥まいど/に¥がくりよ¥うち−おとさ/る。¥さんもん/の¥めつばう、¥てうか/の¥おん=だいじ/と/ぞ¥みえ/し。¥だうじゆ/と¥いふ/は、¥がくしやう/の¥しよじう/なり/ける¥わらんべ/の、¥ほふし/に¥なり/たる/や、¥もしは¥ちうげん−ぼふし=ばら/にて/も/や¥あり/けん。¥ひととせ¥こんがうじゆゐん/の¥ざす、¥かくじん−ごん−そうじやう¥ぢさん/の¥とき、¥さんたふ/に¥けつばん−し/て、¥げしゆ/と¥かうし/て¥ほとけ/に¥はな¥まゐらせ/し¥もの=ども/なり。¥しかる/を¥きんねん¥ぎやうにん/とて、¥だいしゆ/を/も¥こと/と/も¥せ/ず、¥かく¥どど/の¥いくさ/に¥うち−かち/ぬ。¥だうじゆ=ら¥ししゆ/の¥めい/を¥そむい/て、¥すでに¥むほん/を¥くはだつ、¥すみやか/に¥ちうばつ−せ/らる/べき¥よし、¥だいしゆ¥くげ/へ¥そうもん−し、¥ぶけ/に¥ふれ−うつたふ。¥これ/に¥よつ/て¥にふだう−しやうこく¥ゐんぜん/を¥うけたまはつ/て、¥きの−くに/の¥ぢうにん、¥ゆあさの−ごん/の−かみ−むねしげ¥いげ、¥きない/の¥つはもの¥にせん−よ−にん、¥だいしゆ/に¥さし−そへ/て、¥だうじゆ/を¥せめ/らる。¥だうじゆ¥ひごろ/は¥とうやう−ばう/に¥あり/ける/が、¥これ/を¥きい/て、¥あふみの−くに¥さんが/の−しやう/に¥げかう−し/て、¥すた/の¥せい/を¥そつし/て¥また¥とうざん−し、¥さういざか/にP163¥じやうくわく/を¥かまへ/て¥たて−こもる。¥おなじき−くぐわつ−はつかのひ/の¥たつ/の−いつてん/に、¥だいしゆ¥さんぜんにん、¥くわんぐん¥にせん−よ−にん、¥つがふ¥その¥せい¥ごせん−よ−にん、¥さういざか/に¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥じやう/の¥うち/より¥いしゆみ¥はづし−かけ/たり/けれ/ば、¥だいしゆ¥くわんぐん¥かず/を¥つくし/て¥うた/れ/に/けり。¥だいしゆ/は¥くわんぐん/を¥さきだて/ん/と¥す、¥くわんぐん/は¥また¥だいしゆ/を¥さきだて/ん/と¥あらそふ/ほど/に、¥こころごころ/に¥なつ/て、¥はかばかしう/も¥たたかは/ず。¥だうじゆ/に¥かたらふ¥あくたう/と¥いふ/は、¥しよ−こく/の¥せつたう¥がうたう¥さんぞく¥かいぞく=ら/なり。¥よくしん¥しじやう/に/して、¥ししやう¥ふち/の¥やつ=ばら/なり/けれ/ば、¥われ¥いち−にん/と¥おもひ−きつ/て¥たたかふ/ほど/に、¥こんど/も¥また¥がくしやう¥いくさ/に¥まけ/に/けり。¥
(『さんもんめつばう』)S0213¥その−のち/は¥さんもん¥いよいよ¥あれ−はて/て、¥じふに−ぜんじゆ/の¥ほか/は、¥しぢう/の¥そうりよ¥まれ/なり。¥たにだに/の¥かうえん¥まめつ−し/て、¥だうだう/の¥ぎやうぼふ/も¥たいてん−す。¥しゆがく/の¥まど/を¥とぢ、¥ざぜん/の¥ゆか/を¥むなしう¥せ/り。¥しけう−ごじ/の¥はる/の¥はな/も¥にほは/ず、¥さんだい−そくぜ/の¥あき/の¥つき/も¥くもれ/り。¥さんびやく−よ−さい/の¥ほふとう/を¥かかぐる¥ひと/も¥なく、¥ろくじ−ふだん/の¥かう/の¥けぶり/も¥たえ/や¥し/に/けん。¥だうじや¥たかく¥そびえ/て、¥さんぢう/の¥かまへ/を¥せいかん/の¥うち/に¥さし−はさみ、¥とうりやう¥はるか/に¥ひいで/て、¥しめん/の¥たるき/を¥はくぶ/の¥あひだ/に¥かけ/たり/き。¥され/ども¥いま/は¥くぶつ/を¥みね/の¥あらし/に¥まかせ、¥きんよう/を¥こうれき/に¥うるほし、¥よる/の¥つき¥ともしび/を¥かかげ/て、¥のき/の¥ひま/より¥もり、¥あかつき/の¥つゆ¥たま/を¥たれ/て、¥れんざ/の¥よそほひ/を¥そふ/とかや。¥それ¥まつだい/の¥ぞく/に¥いたつ/て/は、¥さんごく/の¥ぶつぽふ/も¥しだいに¥すゐび−せ/り。¥とほく¥てんぢく/に¥ぶつせき/を¥とぶらふ/に、¥むかし¥ほとけ/の¥のり/を¥とき¥たまひ/し¥ちくりん−しやうじや、¥ぎつこどくをん/も、¥このごろ/は¥こらう−やかん/のP164¥すみか/と¥なつ/て、¥いしずゑ/のみ/や¥のこる/らん。¥はくろち/に/は¥みづ¥たえ/て、¥くさ/のみ¥ふかく¥しげれ/り。¥たいぼん¥げじよう/の¥そとば/も¥こけ/のみ¥むし/て¥かたぶき/ぬ。¥しんだん/に/も¥てんだいさん、¥ごだいさん、¥はくばじ、¥ぎよくせんじ/も、¥いま/は¥ぢうりよ¥なき¥さま/に¥あれ−はて/て、¥だいせうじよう/の¥ほふもん/も、¥はこ/の¥そこ/に/や¥くち/ぬ/らん。¥わが¥てう/に/も¥なんと/の¥しちだいじ¥あれ−はて/て、¥はつしう¥くしう/も¥あと¥たえ、¥あたご¥たかを/も、¥むかし/は¥だうたふ¥のき/を¥ならべ/たり/しか/ども、¥いち−や/の¥うち/に¥あれ−はて/て、¥てんぐ/の¥すみか/と¥なり−はて/ぬ。¥され/ば/に/や、¥さ/しも¥やんごとなかり/つる¥てんだい/の¥ぶつぽふ/も、¥ぢしよう/の¥いま/に¥およん/で、¥ほろび−はて/ぬる/に/や。¥こころ−ある¥ひと/の¥なげき−かなしま/ぬ/は¥なかり/けり。¥なにもの/の¥しわざ/にて/や¥あり/けん、¥りさん−し/ける¥そう/の¥ばう/の¥はしら/に、¥いつしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/たる。¥
いのり−こ/し¥わが¥たつ¥そま/の¥ひき−かへ/て¥ひと¥なき¥みね/と¥あれ/や¥はて/な/む W009¥
これ/は¥むかし¥でんげう−だいし、¥たうざん¥さうさう/の¥はじめ、¥あのくたらさんみやくさんぼだい/の¥ほとけ=たち/に¥いのり¥まうさ/せ¥たまひ/し¥こと/を、¥いま¥おもひ−いで/て¥よみ/たり/ける/に/や。¥いと¥やさしう/ぞ¥きこえ/し。¥やうか/は¥やくし/の¥ひ/なれ/ども、¥なむ/と¥となふる¥こゑ/も¥せ/ず、¥うづき/は¥すゐじやく/の¥つき/なれ/ども、¥へいはく/を¥ささぐる¥ひと/も¥なく、¥あけ/の−たまがき¥かみ−さび/て、¥しめなは/のみ/や¥のこる/らん。P165
「ぜんくわうじえんしやう」(『ぜんくわうじえんしやう』)S0214¥その−ころ¥しなのの−くに¥ぜんくわうじ¥えんしやう/の¥こと¥あり/けり。¥かの¥によらい/は、¥むかし¥ちうてんぢく¥しやゑこく/に、¥ごしゆ/の¥あくびやう¥おこつ/て、¥じんそう¥おほく¥ほろび/し¥とき、¥ぐわつかいちやうじや/が¥ちせい/に¥よつ/て、¥りゆうぐうじやう/より¥えんぶだごん/を¥え/て、¥ほとけ、¥もくれんちやうじや、¥こころ/を¥ひとつ/に¥し/て、¥い−あらはし¥たまへ/る¥いつ−ちやくしゆ−はん/の¥みだ/の¥さんぞん、¥さんごく¥ぶさう/の¥れいざう/なり。¥ぶつめつど/の¥のち、¥てんぢく/に¥とどまら/せ¥たまふ¥こと¥ごひやく−よ−さい、¥され/ども¥ぶつぽふ¥とうぜん/の¥ことわり/にて、¥はくさいこく/に¥うつら/せ¥たまひ/て、¥いつせんざい/の¥のち、¥はくさい/の¥みかど¥せいめいわう、¥わが¥てう/の¥みかど¥きんめい−てんわう/の¥ぎよ=う/に¥および/て、¥かの¥くに/より¥この¥くに/へ¥うつら/せ¥たまひ/て、¥つの−くに¥なんば/の−うら/に/して、¥せいざう/を¥おくら/せ¥おはします。¥つねに¥こんじき/の¥ひかり/を¥はなた/せ¥たまふ。¥これ/に¥よつ/て¥ねんがう/を/ば¥こんくわう/と¥かうす。¥おなじき−さんねん−さんぐわつ−じやうじゆん/に、¥しなのの−くに/の¥ぢうにん¥おほみ/の¥ほんだ−よしみつ、¥みやこ/へ¥のぼり、¥によらい/に¥あひ¥たてまつり、¥やがて¥いざなひ¥まゐらせ/て¥くだり/ける/が、¥ひる/は¥よしみつ¥によらい/を¥おひ¥たてまつり、¥よる/は¥よしみつ¥によらい/に¥おは/れ¥たてまつ/て、¥しなのの−くに/へ¥くだり、¥みのち/の−こほり/に¥あんぢ−し¥たてまつ/し/より¥この−かた、¥せいざう/は¥ごひやくはちじふ−よ−さい、¥され/ども¥えんしやう/は¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥わうぼふ¥つきん/とて/は、¥ぶつぽふ¥まづ¥ばうず/と¥いへ/り。¥され/ば/に/や、¥さ/しも¥やんごとなかり/つる¥れいじP166¥れいさん/の¥おほく¥ほろび−うせ/ぬる¥こと/は、¥わうぼふ/の¥すゑ/に¥なり/ぬる¥ぜんべう/やらん/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥
「やすよりのつと」(『やすよりのつと』)S0215¥さる−ほど/に¥きかいがしま/の¥るにん=ども、¥つゆ/の−いのち¥くさば/の¥すゑ/に¥かかつ/て、¥をしむ/べし/と/に/は¥あら/ね/ども、¥たんばの−せうしやう/の¥しうと¥へい−さいしやう−のりもり/の¥りやう、¥ひぜんの−くに¥かせ/の−しやう/より、¥いしよく/を¥つねに¥おくら/れ/たり/けれ/ば、¥それ/にて/ぞ¥しゆんくわん/も¥やすより/も¥いのち¥いき/て/は¥すごし/ける。¥なか/に/も¥やすより/は¥ながさ/れ/し¥とき、¥すはう/の¥むろづみ/にて¥しゆつけ−し/てげり。¥ほふみやう/を/ば¥しやうせう/と/こそ¥つい/たり/けれ。¥しゆつけ/は¥もと/より¥のぞみ/なり/けれ/ば、¥
つひに¥かく¥そむき−はて/ける¥よ/の−なか/を¥とく¥すて/ざり/し¥こと/ぞ¥くやしき W010¥
たんばの−せうしやう/と¥やすより−にふだう/は、¥もと/より¥くまの−しんじん/の¥ひとびと/にて¥おはし/けれ/ば、「¥いか/に/も−し/て¥この¥しま/の¥うち/に、¥さん−じよ−ごんげん/を¥くわんじやう−し¥たてまつ/て、¥きらく/の¥こと/を¥いのら/ばや」/と¥いふ/に、¥てんぜい¥この¥しゆんくわん/は、¥ふしん¥だいいち/の¥ひと/にて、¥これ/を¥もちひ/ず、¥ににん/は¥おなじ¥こころ/にて、¥もし¥くまの/に¥に/たる¥ところ/も/や¥ある/と、¥しま/の¥うち/を¥たづね−まはる/に、¥あるひは¥りんたう/の¥たへ/なる¥あり、¥こうきんしう/の¥よそほひ¥しなじな/に、¥あるひは¥うんれい/の¥あやしき¥あり、¥へきらりよう/の¥いろ¥ひとつ/にP167¥あら/ず。¥
やま/の¥けしき、¥き/の¥こだち/に¥いたる/まで、¥ほか/より/も¥なほ¥すぐれ/たり。¥みなみ/を¥のぞめ/ば、¥かい¥まんまん/と/して、¥くも/の¥なみ¥けむり/の¥なみ¥ふかく、¥きた/を¥かへりみれ/ば、¥また¥さんがく/の¥がが/たる/より、¥はくせき/の¥りうすゐ¥みなぎり−おち/たり。¥たき/の¥おと¥こと/に¥すさまじく、¥まつかぜ¥かみ−さび/たる¥すまひ、¥ひれう−ごんげん/の¥おはします¥なち/の−お=やま/に¥さ/も¥に/たり/けり。¥さて/こそ¥やがて、¥そこ/を/ば¥なち/の−お=やま/と/は¥なづけ/けれ。¥この¥みね/は¥しんぐう、¥かれ/は¥ほんぐう、¥これ/は¥そんじやう¥その¥わうじ、¥かの¥わうじ/など、¥わうじ−わうじ/の¥な/を¥まうし/て、¥やすより−にふだう¥せんだち/にて、¥たんばの−せうしやう¥あひ−ぐし/つつ、¥ひ−ごと/に¥くまの−まうで/の¥まね/を¥し/て、¥きらく/の¥こと/を/ぞ¥いのり/ける。「¥なむ−ごんげん−こんがうどうじ、¥ねがは−く/は¥あはれみ/を¥たれ/させ¥おはしまし、¥われ=ら/を¥いま−いちど¥こきやう/へ¥かへし−いれ/させ¥たまひ/て、¥さいし/を/も¥みせ/しめ¥たまへ」/と/ぞ¥いのり/ける。¥ひかず¥つもつ/て、¥たち−かふ/べき¥じやうえ/も¥なけれ/ば、¥あさ/の¥ころも/を¥み/に¥まとひ、¥さはべ/の¥みづ/を¥こり/に¥かい/て/は、¥いはだがは/の¥きよき¥ながれ/と¥おもひ−やり、¥たかき¥ところ/に¥あがつ/て/は、¥ほつしんもん/と/ぞ¥くわんじ/ける。¥
やすより−にふだう/は、¥まゐる¥たび−ごと/に、¥さん−じよ−ごんげん/の¥おん=まへ/にて¥のつと/を¥まうす/に、¥ごへいがみ/も¥なけれ/ば、¥はな/を¥たをつ/て¥ささげ/つつ、「¥ゐ¥あたれ/る¥さいし、¥ぢしよう−ぐわんねん¥ひのとのとり、¥つき/の¥ならび/は¥とつき¥ふたつき、¥ひ/の¥かず¥さんびやくごじふ−よかにち、¥きちにち¥りやうしん/を¥えらん/で、¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく¥につぽん¥だいいち¥だいりやうげん、¥ゆや−さん−じよ−ごんげん、¥ひれう−だい−さつた/の¥けうりやう、¥うづ/の¥ひろまへ/に/して、¥しんじん/の¥だいせしゆ、¥うりん−ふぢはらの−なりつね、¥ならびに¥しやみ−しやうせう、¥いつしん¥しやうじやう/の¥まこと/を¥いたし、¥さん−ごふP168¥さうおう/の¥こころざし/を¥ぬきんで/て、¥つつしん/で¥もつて¥うやまつ/て¥まうす。¥それ¥しようじやう−だい−ぼさつ/は、¥さいど−くかい/の¥けうしゆ、¥さんじん−ゑんまん/の¥かくわう/なり。¥あるひは¥とうばう−じやうるりいわう/の¥しゆ、¥しゆびやう−しつぢよ/の¥によらい/なり。¥あるひは¥なんぱう−ふだらく−のうげ/の¥しゆ、¥にふぢう−げんもん/の¥だいじ、¥にやくわうじ/は¥しやば−せかい/の¥ほんじゆ、¥せむいしや/の¥だいじ、¥ちやうじやう/の¥ぶつめん/を¥げんじ/て、¥しゆじやう/の¥しよぐわん/を¥み/て/しめ¥たまへ/り。¥これ/に¥よつ/て、¥かみ¥いちじん/より¥しも¥ばんみん/に¥いたる/まで、¥あるひは¥げんぜ¥あんをん/の¥ため、¥あるひは¥ごしやう−ぜんしよ/の¥ため/に、¥あした/に/は¥じやうすゐ/を¥むすん/で¥ぼんなう/の¥あか/を¥すすぎ、¥ゆふべ/に/は¥しんざん/に¥むかつ/て¥ほうがう/を¥となふる/に、¥かんおう¥おこたる¥こと¥なし。¥がが/たる¥みね/の¥たかき/を/ば、¥しんとく/の¥たかき/に¥たとへ、¥けんけん/たる¥たに/の¥ふかき/を/ば、¥ぐぜい/の¥ふかき/に¥なぞらへ/て、¥くも/を¥わき/て¥のぼり、¥つゆ/を¥しのい/で¥くだる。¥ここ/に¥りやく/の¥ち/を¥たのま/ずん/ば、¥いかで/か¥あゆみ/を¥けんなん/の¥みち/に¥はこば/ん。¥ごんげん/の¥とく/を¥あふが/ずん/ば、¥なんぞ¥かならず/しも¥いうゑん/の¥さかひ/に¥ましまさ/ん/や。¥よつて¥しようじやう−ごんげん、¥ひれう−だい−さつた、¥おのおの¥しやうれん−じひ/の¥まなじり/を¥あひ−ならべ、¥さ−をしか/の¥おん=みみ/を¥ふり−たて/て、¥われ=ら/が¥むに/の¥たんぜい/を¥ちけん−し/て、¥いちいち/の¥こんし/を¥なふじゆ−し¥たまへ。¥しかれ/ば−すなはち、¥むすぶ¥はやたま/の¥りやう−じよ−ごんげん、¥き/に¥したがつ/て、¥あるひは¥うえん/の¥しゆじやう/を¥みちびき、¥あるひは¥むえん/の¥ぐんるゐ/を¥すくは/ん/が¥ため/に、¥しつぽう−しやうごん/の¥すみか/を¥すて/て、¥はちまんしせん/の¥ひかり/を¥やはらげ、¥ろくだう−さんう/の¥ちり/に¥どうじ¥たまへ/り。¥かるがゆゑに¥ぢやうごふ−やくのうてん、¥ぐぢやうじゆ、¥とくぢやうじゆ/の¥らいはい¥そで/を¥つらね、¥へいはく¥れいてん/を¥ささぐる¥こと¥ひま¥なし。¥にんにく/の¥ころも/を¥かさね、¥かくだう/の¥はな/を¥ささげ/て、¥じんでん/の¥ゆか/を¥うごかし、¥しんじん/の¥みづ/を¥すまし/て、¥りしやう/の¥いけ/を¥たたへ/たり。¥しんめい¥なふじゆ−し¥たまは/ば、P169¥しよぐわん¥なんぞ¥じやうじゆ−せ/ざら/ん。¥あふぎ−ねがは−く/は、¥じふに−しよ−ごんげん、¥おのおの¥りしやう/の¥つばさ/を¥ならべ、¥はるか/に¥くかい/の¥そら/に¥かけ/り、¥させん/の¥うれへ/を¥やすめ/て、¥すみやか/に¥きらく/の¥ほんくわい/を¥とげ/しめ¥たまへ。¥さいはい」/と/ぞ¥やすより¥のつと/を/ば¥まうし/ける。¥
「そとばながし」(『そとばながし』)S0216¥さる−ほど/に¥ににん/の¥ひとびと、¥つね/は¥さん−じよ−ごんげん/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥つや−する¥をり/も¥あり/けり。¥ある¥よ¥ににん¥まゐつ/て、¥よ/も−すがら¥いまやう¥うたひ、¥まひ/なんど¥まひ/て、¥あかつき−がた¥くるし−さ/に、¥ちつと¥うち−まどろみ/たり/つる¥ゆめ/に、¥おき/より¥しろい¥ほ¥かけ/たる¥こ−ぶね/を¥いつそう、¥みぎは/へ¥こぎ−よせ、¥ふね/の¥うち/より¥くれなゐ/の¥はかま¥き/たり/ける¥にようばう=たち、¥にさんじふにん¥なぎさ/に¥あがり、¥つづみ/を¥うち、¥こゑ/を¥ととのへ/て、¥
よろづ/の¥ほとけ/の¥ぐわん/より/も¥せんじゆ/の¥ちかひ/ぞ¥たのもしき¥
かれ/たる¥くさき/も¥たちまち/に¥はな¥さき¥み¥なる/と/こそ¥きけ
/と¥おし−かへし−おし−かへし¥さんべん¥うたひ−すまし/て、¥かき−けす¥やう/に/ぞ¥うせ/に/ける。¥やすより−にふだう¥ゆめ¥さめ/て¥のち、¥きい/の¥おもひ/を¥なし/つつ、「¥いかさま/に/も¥これ/は¥りうじん/の¥けげん/と¥おぼえ¥さふらふ。¥くまの−さん−じよ−ごんげん/の¥うち/に、¥にしのごぜん/と¥まうし¥たてまつる/は、¥ほんぢ¥せんじゆ−くわんおん/にて¥おはします。P170¥りうじん/は¥すなはち¥せんじゆ/の¥にじふはち−ぶ−しゆ/の¥その¥ひとつ/にて¥おはしませ/ば、¥もつて¥ご=なふじゆ/こそ¥たのもしけれ」。¥ある¥よ¥また¥ににん¥まゐつ/て¥つや−し/たり/ける¥ゆめ/に、¥おき/より/も¥ふき−くる¥かぜ/に、¥こ/の−は/を¥ふたつ、¥ににん/が¥たもと/に¥ふき−かけ/たり。¥なんと−なう¥これ/を¥とつ/て¥み/けれ/ば、¥み=くまの/の¥なぎのは/にて/ぞ¥あり/ける。¥かの¥ふたつ/の¥なぎのは/に、¥いつしゆ/の¥うた/を¥むしぐひ/に/こそ¥し/たり/けれ。¥
ちはやぶる¥かみ/に¥いのり/の¥しげ/けれ/ば¥など/か¥みやこ/へ¥かへら/ざる/べき W011¥
やすより−にふだう/は、¥あまり/に¥こきやう/の¥こひしき¥まま/に、¥せめて/の¥はかりごと/に/や、¥せんぼん/の¥そとば/を¥つくり、¥あじ/の¥ぼんじ、¥ねんがう¥つきひ、¥けみやう¥じつみやう、¥にしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/ける。¥
さつまがた¥おき/の¥こじま/に¥われ¥あり/と¥おや/に/は¥つげ/よ¥やへ/の¥しほかぜW012¥
おもひ−やれ¥しばし/と¥おもふ¥たび/だに/も¥なほ¥ふるさと/は¥こひしき/ものを W013¥
これ/を¥うら/に¥もつ/て¥いで/て、「¥なむ−きみやう−ちやうらい、¥ぼんでん¥たいしやく、¥し−だい−てんわう、¥けんらうぢじん、¥わうじやう/の¥ちんじゆ¥しよ=だい−みやうじん、¥べつして/は¥くまのの−ごんげん、¥あきの−いつくしまの−だい−みやうじん、¥せめて/は¥いつぽん/なり/とも、¥みやこ/へ¥つたへ/て¥たべ」/とて、¥おき/つ¥しらなみ/の、¥よせ/て/は¥かへす¥たび−ごと/に、¥そとば/を¥うみ/に/ぞ¥うかべ/ける。¥そとば/は¥つくり−いだす/に¥したがつ/て、¥うみ/に¥いれ/けれ/ば、¥ひかず¥つもれ/ば、¥そとば/の¥かず/も¥つもり/けり。¥その¥もの¥おもふ¥こころ/や¥たより/の¥かぜ/と/も¥なり/たり/けん、¥また¥しんめい−ぶつだ/も/や¥おくら/せ¥たまひ/たり/けん、¥せんぼん/の¥そとば/の¥なか/に、¥いつぽん¥あきの−くに¥いつくしまの−だい−みやうじん/の¥お=まへ/の¥なぎさ/に¥うち−あげ/たり。P171¥
ここに¥やすより−にふだう/が¥ゆかり¥あり/ける¥そう/の、¥もし¥しかる/べき¥たより/も¥あら/ば、¥かの¥しま/へ¥わたつ/て、¥その¥ゆくへ/を/も¥たづね/ん/とて、¥さいこく−しゆぎやう/に¥いで/たり/ける/が、¥まづ¥いつくしま/へ/ぞ¥まゐり/ける。¥ここに¥みやうど/と¥おぼしく/て、¥かりぎぬ−しやうぞく/なる¥ぞく¥いち−にん¥いで−き/たり。¥この¥そう¥なんと−なう¥ものがたり/を¥し/ける/ほど/に、「¥それ¥しんめい/は、¥わくわう−どうぢん/の¥りしやう、¥さまざま/なり/と/は¥まうせ/ども、¥なか/に/も¥この¥おんかみ/は、¥いか/なる¥いんえん/を¥もつて、¥かいまん/の¥うろくづ/に¥えん/を/ば¥むすば/せ¥たまふ/らん」/と¥とひ¥たてまつれ/ば、¥みやうど¥こたへ/て¥いはく、「¥それ/は/よな、¥しやかつらりうわう/の¥だいさん/の¥ひめみや、¥たいざうかい/の¥すゐじやく/なり」。¥この¥しま/へ¥ごやうがう¥あり/し¥はじめ/より、¥さいど−りしやう/の¥いま/に¥いたる/まで、¥じんじん¥きどく/の¥こと=ども/を/ぞ¥かたり/ける。¥され/ば/に/や、¥はつしや/の¥ご=てん¥いらか/を¥ならべ、¥やしろ/は¥わだづみ/の¥ほとり/なれ/ば、¥しほ/の¥みちひ/に¥つき/ぞ¥すむ。¥しほ¥みち−くれ/ば、¥おほどりゐ、¥あけ/の−たまがき、¥るり/の/ごとし。¥しほ¥ひき/ぬれ/ば、¥なつ/の¥よ/なれ/ども、¥お=まへ/の¥しらす/に¥しも/ぞ¥おく。¥この¥そう¥いよいよ¥たつとく¥おもひ、¥しづか/に¥ほつせ¥まゐらせ/て¥ゐ/たり/ける/が、¥やうやう¥ひ¥くれ¥つき¥さし−いで/て、¥しほ/の¥みち−くる/に、¥おき/より¥そこはかと−なく¥ゆら/れ¥より/ける¥もくづ=ども/の¥なか/に、¥そとば/の¥かた/の¥みえ/ける/を、¥なんと−なう¥これ/を¥とつ/て¥み/けれ/ば、「¥さつまがた¥おき/の¥こじま/に¥われ¥あり」/と、¥かき−ながせ/る¥こと/の−は/なり。¥もじ/を/ば¥ゑり−いれ¥きざみ−つけ/たり/けれ/ば、¥なみ/に/も¥あらは/れ/ず、¥あざあざ/と/して/こそ¥みえ/たり/けれ。¥
この¥そう¥ふしぎ/の¥おもひ/を¥なし、¥おひ/の¥かた/に¥さし/て、¥みやこ/へ¥かへり−のぼり、¥やすより−にふだう/がP172¥らうぼ/の¥にこう、¥さいし=ども/の、¥いちでう/の¥きた、¥むらさきの/と¥いふ¥ところ/に¥しのび/つつ¥かくれ−ゐ/たり/ける/に、¥これ/を¥みせ/たり/けれ/ば、「¥さら/ば、¥この¥そとば/が、¥もろこし/の¥かた/へ/も¥ゆら/れ¥ゆか/ず/して、¥なに¥し/に¥これ/まで¥つたへ−き/て、¥いまさら¥もの/を¥おもは/す/らん」/と/ぞ¥かなしみ/ける。¥はるか/の¥えいぶん/に¥およん/で、¥ほふわう¥これ/を¥えいらん¥あつ/て、「¥あな¥むざん、¥この¥もの=ども/が¥いのち/の¥いまだ¥いき/て¥ある/に/こそ」/とて、¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ/ぞ¥かたじけなき。¥これ/を¥こまつの−おとど/の¥もと/へ¥つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥ちち/の¥ぜんもん/に¥みせ¥たてまつら/る。¥かきのもとの−ひとまる/は、¥しまがくれ−ゆく¥ふね/を¥おもひ、¥やまべの−あかひと/は、¥あしべ/の¥たづ/を¥ながめ¥たまふ。¥すみよしの−みやうじん/は、¥かた−そぎ/の¥おもひ/を¥なし、¥みわの−みやうじん/は、¥すぎ−たて/る¥かど/を¥さす。¥むかし¥すさのをのみこと、¥さんじふいちじ/の¥やまとうた/を¥よみ−はじめ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥もろもろ/の¥しんめい−ぶつだ/も、¥かの¥えいぎん/を¥もつて、¥はくせん−ばんたん/の¥おもひ/を¥のべ¥たまふ。¥
「そぶ」¥にふだう/も¥いはき/なら/ね/ば、¥さすが¥あはれ=げ/に/こそ¥のたまひ/けれ。¥(『そぶ』)S0217¥にふだう¥かく¥あはれみ¥たまふ¥うへ/は、¥きやう−ぢう/の¥じやうげ、¥おい/たる/も¥わかき/も、¥きかいがしま/の¥るにん/の¥うた/とて、¥くちずさま/ぬ/は¥なかり/けり。¥せんぼん/まで¥つくり−いだせ/る¥そとば/なれ/ば、¥さ/こそ/は¥ちひさう/も¥あり/けめ、P173¥さつまがた/より¥はるばると¥みやこ/まで¥つたはり/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥あまり/に¥おもふ¥こと/に/は、¥むかし/も¥かく¥しるし¥あり/ける/に/や。¥いにしへ¥かんわう、¥ここく/を¥せめ¥たまひ/し¥とき、¥はじめ/は¥りせうけい/を¥たいしやうぐん/にて、¥さんじふまんぎ/を¥むけ/らる。¥かん/の¥たたかひ¥よわく/して、¥ここく/の¥いくさ¥かち/に/けり。¥あまつさへ¥たいしやうぐん−りせうけい、¥こわう/の¥ため/に¥いけどら/る。¥つぎに¥そぶ/を¥たいしやうぐん/にて、¥ごじふまんぎ/を¥むけ/らる。¥こんど/も¥また¥かん/の¥たたかひ¥よわく/して、¥ここく/の¥いくさ¥かち/に/けり。¥つはもの¥ろくせん−よ−にん¥いけどり/に¥せ/らる。¥その¥なか/に¥そぶ/を¥はじめ/と/して、¥むねと/の¥つはもの¥ろつぴやくさんじふ−よ−にん、¥すぐり−いだい/て、¥いちいち/に¥かたあし/を¥きつ/て¥おつ−ぱな/たる。¥すなはち¥しぬる¥もの/も¥あり、¥ほど¥へ/て¥しする¥もの/も¥あり。¥その¥なか/に¥そぶ/は¥いち−にん¥しな/ざり/けり。¥かたあし/を/ば¥きら/れ/ながら、¥やま/に¥のぼつ/て/は¥このみ/を¥ひろひ、¥さと/に¥いで/て/は¥ねぜり/を¥つみ、¥あき/は¥たづら/の¥おちぼ−ひろひ/なんど¥し/て/ぞ、¥つゆ/の−いのち/を/ば¥すごし/ける。¥た/に¥いくら/も¥あり/ける¥かり=ども、¥そぶ/に¥み−なれ/て¥おそれ/ざり/けれ/ば、¥これ=ら/は¥みな¥わが¥こきやう/へ¥かよふ¥もの/ぞ/かし/と¥なつかしく/て、¥おもふ¥こと¥ひとふで¥かい/て、「¥あひ−かまへ/て¥これ¥かんわう/に¥え/させよ」/と¥いひ−ふくめ/て、¥かり/の¥つばさ/に¥むすび−つけ/て/ぞ¥はなち/ける。¥
かひがひしく/も¥たのも/の¥かり、¥あき/は¥かならず¥こしぢ/より¥みやこ/へ¥かよふ¥もの/なる/に、¥かん/の¥せうてい¥しやうりんゑん/に¥ぎよ=いう¥あり/し/に、¥ゆうざれ/の¥そら¥うす−くもり、¥なにと−なく¥もの−あはれ/なり/ける¥をりふし、¥ひとつら/の¥かり¥とび−わたる。¥その¥なか/より¥がん¥ひとつ¥とび−さがつ/て、¥おの/が¥つばさ/に¥むすび−つけ/たるP174¥たまづさ/を、¥くひ−きつ/て/ぞ¥おとし/ける。¥くわんにん¥これ/を¥とつ/て、¥みかど/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥ひらい/て¥えいらん¥ある/に、「¥むかし/は¥がんくつ/の¥ほら/に¥こめ/られ/て¥さんしゆん/の¥しうたん/を¥おくり、¥いま/は¥くわうでん/の¥うね/に¥すて/られ/て、¥こてき/の¥いつそく/と¥なれ/り。¥たとひ¥かばね/は¥こ/の¥ち/に¥ちらす/と¥いふ/とも、¥たましひ/は¥ふたたび¥くんべん/に¥つかへ/ん」/と/ぞ¥かい/たり/ける。¥それ/より/して/こそ、¥ふみ/を/ば¥がんしよ/と/も¥いひ、¥がんさつ/と/も¥また¥なづけ/けれ。「¥あな¥むざん、¥そぶ/が¥ほまれ/の¥あと/なり/けり。¥この¥もの=ども/が¥いのち/の¥いまだ¥いき/て¥ある/に/こそ」/とて、¥りくわう/と¥いふ¥しやうぐん/に¥おほせ/て、¥ひやくまんぎ/を¥むけ/らる。¥こんど/は¥かん/の¥たたかひ¥つよく/して、¥ここく/の¥いくさ¥やぶれ/に/けり。¥み=かた¥たたかひ¥かち/ぬ/と¥きこえ/しか/ば、¥そぶ/は¥くわうや/の¥なか/より¥はひ−いで/て、「¥これ/こそ¥いにしへ/の¥そぶ/よ」/と¥なのる。¥かたあし/は¥きら/れ/ながら、¥じふくねん/の¥せいざう/を¥おくり−むかへ、¥こし/に¥かか/れ/て¥きうり/へ/ぞ¥かへり/ける。¥そぶ/は¥じふろく/の¥とし、¥ここく/へ¥むけ/られ/し¥とき、¥みかど/より¥くだし¥たまはつ/たり/ける¥はた/を/ば、¥まい/て¥み/を¥はなた/ず¥もち/たり/し/を、¥いま¥とり−いだい/て、¥みかど/の¥ご=げんざん/に¥いれ/たり/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥かんたん¥なのめ/なら/ず。¥そぶ/は¥きみ/の¥おん=ため/に¥たいこう¥ならび−なかり/しか/ば、¥だいこく¥あまた¥たまはつ/て、¥その−うへ、¥てんしよくこく/と¥いふ¥つかさ/を/ぞ¥くださ/れ/ける。¥あまつさへ¥りせうけい/は、¥ここく/に¥とどまつ/て¥つひに¥かへら/ず。¥いか/に/も−し/て¥かんてう/へ¥かへら/ん/と/のみ¥なげき/けれ/ども、¥こわう¥ゆるさ/ね/ば¥ちから¥およば/ず。¥かんわう¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しり¥たまは/ず、¥りせうけい/は¥きみ/の¥おん=ため/に、¥すでに¥ふちう/なる¥もの/なり/とて、¥むなしく¥なれ/る¥にしん/が¥かばね/を¥ほり−おこし/て¥うた/せ/らる。P175¥その−ほか¥ろくしん/を¥みな¥つみ−せ/らる。¥りせうけい¥この¥よし/を¥つたへ−きい/て、¥うらみ¥ふかう/ぞ¥なり/に/ける。¥さり/ながら/も¥なほ¥こきやう/を¥こひ/つつ、¥まつたく¥ふちう¥なき¥よし/を、¥いつくわん/の¥しよ/に¥つくつ/て、¥みかど/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥かんわう¥これ/を¥えいらん¥あつ/て、「¥さて/は¥ふちう¥なかり/けり。¥ふびん/なる¥こと¥ござんなれ」/とて、¥ふぼ/が¥かばね/を¥ほり−おこし/て¥うた/せ/られ/たり/ける¥こと/を/ぞ、¥かへつて¥くやしみ¥たまひ/ける。¥かんか/の¥そぶは、¥しよ/を¥かり/の¥つばさ/に¥つけ/て¥きうり/へ¥おくり、¥ほんてう/の¥やすより/は、¥なみ/の¥たより/に¥うた/を¥こきやう/へ¥つたふ。¥かれ/は¥いつぴつ/の¥すさみ、¥これ/は¥にしゆ/の¥うた、¥かれ/は¥じやうだい、¥これ/は¥まつだい、¥ここく¥きかいがしま、¥さかひ/を¥へだて/て、¥よよ/は¥かはれ/ども、¥ふぜい/は¥おなじ¥ふぜい、¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。P176¥

平家物語 巻第三  総かな版(元和九年本)
「ゆるしぶみ」(『ゆるしぶみ』)S0301¥ぢしよう−にねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥ゐん/の−ごしよ/に/は¥はいらい¥おこなは/れ/て、¥よつかのひ¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/けり。¥なにごと/も¥れい/に¥かはり/たる¥こと/は¥なけれ/ども、¥こぞ/の¥なつ¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ、¥きんじゆ/の¥ひとびと¥おほく¥ながし¥うしなは/れ/し¥こと、¥ほふわう¥おん=いきどほり¥いまだ¥やま/ざれ/ば、¥よ/の¥まつりごと/を/も¥よろづ¥もの−うく¥おぼしめし/て、¥おん=こころ−よから/ぬ¥こと=ども/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥だいじやう/の−にふだう/も、¥ただの−くらんど−ゆきつな/が¥つげ−しらせ¥たてまつ/て¥のち/は、¥きみ/を/も¥おん=うしろめたき¥こと/に¥おもひ¥たてまつり、¥うへ/に/は¥こと−なき¥やう/なれ/ども、¥した/に/は¥ようじん−し/て、¥にがわらひ/て/のみ/ぞ¥さふらは/れ/ける。¥なぬかのひ、¥せいせい¥とうばう/に¥いづ。¥しいうき/と/も¥まうす。¥また¥せきき/と/も¥まうす。¥じふはちにち¥ひかり/を¥ます。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ、¥けんれいもんゐん、¥その−とき/は¥いまだ¥ちうぐう/と¥きこえ/させ¥たまひ/し/が、¥ご=なう/とて、¥くも/の¥うへ、¥あめ/が¥した/の¥なげき/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥しよじ/に¥み=どきやう¥はじまり、¥しよしや/へ¥くわんぺいし/をP177¥たて/らる。¥おんやうじゆつ/を¥きはめ、¥いけ¥くすり/を¥つくし、¥だいほふ−ひほふ¥ひとつ/と/して¥のこる¥ところ¥なう¥しゆせ/られ/けり。¥され/ども¥ご=なう¥ただ/に/も¥わたら/せ¥たまは/ず、¥ご=くわいにん/と/ぞ¥きこえ/し。¥しゆしやう/は¥こんねん¥じふはち、¥ちうぐう/は¥にじふに/に¥なら/せ¥たまふ。¥しかれ/ども¥いまだ¥わうじ/も¥ひめみや/も¥いで−き/させ¥たまは/ず。¥もし¥わうじ/にて¥ましまさ/ば、¥いか/に¥めでたから/ん/と、¥へいけ/の¥ひとびと、¥ただいま¥わうじ¥たんじやう¥ある¥やう/に¥まうし/て、¥いさみ−よろこび−あは/れ/けり。¥たけ/の¥ひとびと/も、「¥へいじ/の¥はんじやう¥をり/を¥え/たり。¥わうじ¥ご=たんじやう¥うたがひ¥なし」/と/ぞ¥まうし−あは/れ/ける。¥ご=くわいにん¥さだまら/せ¥たまひ/しか/ば、¥にふだう−しやうこく、¥うげん/の¥かうそう¥きそう/に¥おほせ/て、¥だいほふ−ひほふ/を¥しゆし、¥しやうしゆく−ぶつ−ぼさつ/に¥つけ/て、¥わうじ¥ご=たんじやう/と/のみ¥きせい−せ/らる。¥ろくぐわつ−ひとひのひ、¥ちうぐう¥ご=ちやくたい¥あり/けり。¥にんわじ/の−お=むろ−しゆかく−ほつしんわう、¥いそぎ¥ご=さんだい¥あつ/て、¥くじやくきやう/の−ほふ/を¥もつて¥おん=かじ¥あり。¥てんだい−ざす−かくくわい−ほつしんわう、¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/も¥おなじく¥まゐらせ¥たまひ/て、¥へんじやう−なんし/の−ほふ/を¥しゆせ/られ/けり。¥
かかり/し/ほど/に、¥ちうぐう/は¥つき/の¥かさなる/に¥したがつ/て、¥おん=み/を¥くるしう¥せ/させ¥たまふ。¥ひとたび¥ゑめ/ば¥もも/の¥こび¥あり/けん¥かん/の¥りふじん、¥せうやうでん/の¥やまふ/の¥ゆか/も¥かく/や/と¥おぼえ、¥たう/の¥やうきひ、¥りくわ¥いつし¥はる/の¥あめ/を¥おび、¥ふよう/の¥かぜ/に¥しをれ/つつ、¥ぢよらうくわ/の¥つゆ¥おも=げ/なる/より、¥なほ¥いたはしき¥おん=さま/なり。¥かかる¥ご=なう/の¥をりふし/に¥あはせ/て、¥こはき¥おん=もののけ=ども、¥あまた¥とり−いり¥たてまつる。¥よりまし、¥みやうわう/の¥ばく/に¥かけ/て、¥れい¥あらはれ/たり。¥こと/に/は¥さぬきのゐん/の¥ご=れい、¥うぢの−あく−さふ/の¥ご=おくねん、¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥しりやう、¥さいくわう−ほふし/が¥あくりやう、P178¥きかいがしま/の¥るにん=ども/の¥しやうりやう/なんど/ぞ¥まうし/ける。¥これ/に¥よつ/て、¥しやうりやう/を/も、¥しりやう/を/も、¥なだめ/らる/べし/とて、¥まづ¥さぬきのゐん¥ご=つゐがう¥あつ/て¥しゆとく−てんわう/と¥かうし、¥うぢの−あく−さふ、¥ぞうくわん¥ぞうゐ¥おこなは/れ/て、¥だいじやうだいじん−じやういちゐ/を¥おくら/る。¥ちよくし/は¥せうないき−これもと/と/ぞ¥きこえ/し。¥くだん/の¥むしよ/は、¥やまとの−くに¥そふのかん/の−こほり¥かはかみ/の−むら、¥はんにやの/の¥ごさんまい/なり。¥ほうげん/の¥あき¥ほり−おこい/て¥すて/られ/し¥のち/は、¥しがいみち/の¥ほとり/の¥つち/と¥なつ/て、¥としどし/に¥ただ¥はる/の¥くさ/のみ¥しげれ/り。¥いま¥ちよくし¥たづね−き/て¥せんみやう/を¥よみ/けれ/ば、¥ばうこん¥そんりやう¥いか/に¥うれし/と¥おぼし/けん。¥され/ば¥さはらの−はいたいし/を/ば、¥しゆだう−てんわう/と¥かうし、¥ゐがみの−ないしんわう/を/ば、¥くわうこう/の¥しきゐ/に¥ふくす。¥これ¥みな¥をんりやう/を¥なだめ/られ/し¥はかりごと/と/ぞ¥きこえ/し。¥をんりやう/は、¥むかし/も¥かく¥おそろしかり/し¥こと=ども/なり。¥れんぜいゐん/の¥おん=もの−ぐるはしう¥ましまし、¥くわざんの−ほふわう/の、¥じふぜん/の−ていゐ/を¥すべら/せ¥たまひ/し/は、¥もとかたの−みんぶきやう/が¥れい/なり。¥また¥さんでうのゐん/の¥おん=め/も¥ごらんぜ/られ/ざり/し/は、¥くわんざん−くぶ/が¥れい/とかや。¥かどわきの−さいしやう、¥かやう/の¥こと=ども/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、¥こまつ=どの/に¥まうさ/れ/ける/は、「¥こんど¥ちうぐう¥ご=さん/の¥おん=いのり、¥さまざま/に¥さふらふ/なり。¥なに/と¥まうす/と/も、¥ひじやう/の¥しや/に¥すぎ/たる/ほど/の¥こと¥ある/べし/と/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥なか/に/も¥きかいがしま/の¥るにん=ども/を、¥めし−かへさ/れ/たら/ん/ほど/の¥くどく¥ぜんこん、¥なにごと/か¥さふらふ/べき」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、「¥あの¥たんばの−せうしやう/が¥こと/を、¥かどわきの−さいしやう¥あまり/に¥なげき¥まうす/が¥ふびん/に¥さふらふ。¥ことさら¥ちうぐう¥ご=なう/の¥おん=こと、¥うけたまはり¥およぶ/ごとくん/ば、¥なりちかの−きやう/が¥しりやう/など¥きこえ/てP179¥さふらふ。¥だいなごん/が¥しりやう/を¥なだめ/ん/と¥おぼしめさ/ん/に¥つけ/て/は、¥いき/て¥さふらふ¥せうしやう/を、¥めし/こそ¥かへさ/れ¥さふらは/め。¥ひと/の¥おもひ/を¥やめ/させ¥たまは/ば、¥おぼしめす¥こと/も¥かなひ、¥ひと/の¥ねがひ/を¥かなへ/させ¥ましまさ/ば、¥ご=ぐわん/も¥すなはち¥じやうじゆ−し/て、¥ご=さん¥へいあん¥わうじ¥ご=たんじやう¥あつ/て、¥かもん/の¥えいぐわ¥いよいよ¥さかん/に¥さふらふ/べし」/など¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、¥ひごろ/より¥こと/の−ほか/に¥やはらい/で、「¥さて¥しゆんくわん/や¥やすより−ぼふし/が¥こと/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、「¥それ/も¥おなじう/は¥めし/こそ¥かへさ/れ¥さふらは/め。¥もし¥いち−にん/も¥のこさ/れ/たら/ん/は、¥なかなか¥ざいごふ/たる/べう¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥やすより−ぼふし/が¥こと/は¥さる−こと/なれ/ども、¥しゆんくわん/は¥ずゐぶん¥にふだう/が¥こうじゆ/を¥もつて、¥ひと/と¥なつ/たる¥もの/ぞ/かし。¥それ/に¥ところ/しも/こそ¥おほけれ、¥ひがしやま¥ししのたに、¥わが¥さんざう/に¥より−あひ/て、¥きくわい/の¥ふるまひ=ども/が¥あり/けん/なれ/ば、¥しゆんくわん/が¥こと/は¥おもひ/も¥よら/ず」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥おとど¥かへつ/て¥をぢ/の¥さいしやう/を¥よび¥たてまつ/て、「¥せうしやう/は¥すでに¥しやめん¥ある/べき/で¥さふらふ/ぞ。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥さいしやう¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥なくなく¥て/を¥あはせ/て/ぞ¥よろこば/れ/ける。「¥くだり¥さふらひ/し¥とき/も、¥これ−ほど/の¥こと、¥など/や¥まうし−うけ/ざら/ん/と¥おもひ/たり=げ/にて、¥のりもの/を¥み¥さふらふ¥たび−ごと/に¥なみだ/を¥ながし¥さふらひ/し/が、¥ふびん/に¥さふらふ」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥こまつ=どの、「¥まことに¥さ/こそ/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らめ。¥こ/は¥たれ/とて/も¥かなしけれ/ば、¥よくよく¥まうし¥さふらは/ん」/とて¥いり¥たまひ/ぬ。¥さる−ほど/に¥きかいがしま/の¥るにん=ども/の、¥めし−かへさ/る/べき¥こと¥さだまり/しか/ば、¥にふだう−しやうこく/のP180¥ゆるしぶみ¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。¥お=つかひ¥すでに¥みやこ/を¥たつ。¥さいしやう¥あまり/の¥うれし−さ/に、¥お=つかひ/に¥わたくし/の¥つかひ/を¥そへ/て¥くださ/れ/ける。¥よる/を¥ひる/に¥し¥いそぎ¥くだれ/と¥あり/しか/ども、¥こころ/に¥まかせ/ぬ¥かいろ/なれ/ば、¥なみかぜ/を¥しのい/で¥ゆく/ほど/に、¥みやこ/を/ば(は)¥しちぐわつ−げじゆん/に¥いで/たれ/ども、¥ながつき−はつか−ごろ/に/ぞ、¥きかいがしま/に/は¥つき/に/ける。
「あしずり」(『あしずり』)S0302¥お=つかひ/は¥たんざゑもん/の−じよう−もとやす/と¥いふ¥もの/なり。¥いそぎ¥ふね/より¥あがり、「¥これ/に¥みやこ/より¥ながさ/れ¥たまひ/たり/し¥へい−はんぐわん−やすより−にふだう、¥たんばの−せうしやう=どの/や¥おはす」/と、¥こゑごゑ/に/ぞ¥たづね/ける。¥ににん/の¥ひとびと/は、¥れい/の¥くまのまうで−し/て¥なかり/けり。¥しゆんくわん¥いち−にん¥あり/ける/が、¥これ/を¥きい/て、¥あまり/に¥おもへ/ば¥ゆめ/やらん、¥また¥てんま−はじゆん/の、¥わが¥こころ/を¥たぶらかさ/ん/とて¥いふ/やらん、¥うつつ/と/も¥さらに¥おぼえ/ぬ/ものかな/とて、¥あわて−ふためき、¥はしる/と/も¥なく、¥たふるる/と/も¥なく、¥いそぎ¥お=つかひ/の¥まへ/に¥ゆき−むかつ/て、「¥これ/こそ¥ながさ/れ/たる¥しゆんくわん/よ」/と¥なのり¥たまへ/ば、¥ざつしき/が¥くび/に¥かけ/させ/たる¥ふぶくろ/より、¥にふだう−しやうこく/の¥ゆるしぶみ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、「¥ぢうくわ/は¥をんる/に¥めんず。¥はやく¥きらく/のP181¥おもひ/を¥なす/べし。¥こんど¥ちうぐう¥ご=さん/の¥おん=いのり/に¥よつ/て、¥ひじやう/の¥しや¥おこなは/る。¥しかる−あひだ¥きかいがしま/の¥るにん、¥せうしやう−なりつね、¥やすより−ぼふし¥しやめん」/と/ばかり¥かか/れ/て、¥しゆんくわん/と¥いふ¥もじ/は¥なし。¥らいし/に/ぞ¥ある/らん/とて、¥らいし/を¥みる/に/も¥みえ/ず。¥おく/より¥はし/へ¥よみ、¥はし/より¥おく/へ¥よみ/けれ/ども、¥ににん/と/ばかり¥かか/れ/て、¥さん−にん/と/は¥かか/れ/ず。¥さる−ほど/に¥せうしやう/や¥やすより−ぼふし/も¥いで−き/たり、¥せうしやう/の¥とつ/て¥みる/に/も、¥やすより−ぼふし/が¥よみ/ける/に/も、¥ににん/と/ばかり¥かか/れ/て、¥さん−にん/と/は¥かか/れ/ざり/けり。¥ゆめ/に/こそ¥かかる¥こと/は¥あれ、¥ゆめ/か/と¥おもひ−なさ/ん/と¥すれ/ば¥うつつ/なり、¥うつつ/か/と¥おもへ/ば¥また¥ゆめ/の/ごとし。¥その−うへ¥ににん/の¥ひとびと/の¥もと/へ/は、¥みやこ/より¥ことづて/たる¥ふみ=ども¥いくら/も¥あり/けれ/ども、¥しゆんくわん−そうづ/の¥もと/へ/は、¥こと−とふ¥ふみ¥ひとつ/も¥なし。¥され/ば¥わが¥ゆかり/の¥もの=ども/は、¥みな¥みやこ/の¥うち/に¥あと/を¥とどめ/ず¥なり/に/ける/よ/と、¥おもひ−やる/に/も¥おぼつかなし。「¥そもそも¥われ=ら¥さん−にん/は¥おなじ¥つみ、¥はいしよ/も¥おなじ¥ところ/なり。¥いか/なれ/ば¥しやめん/の¥とき、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て、¥いち−にん¥ここ/に¥のこす/べき。¥へいけ/の¥おもひわすれ/か/や、¥しゆひつ/の¥あやまり/か、¥こ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や」/と、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし/て、¥なき−かなしめ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥そうづ¥せうしやう/の¥たもと/に¥すがり、「¥しゆんくわん/が¥かやう/に¥なる/と¥いふ/も、¥ご=へん/の¥ちち、¥こ=だいなごん=どの/の、¥よし−なき¥むほん/の¥ゆゑ/なり。¥され/ば¥よそ/の¥こと/と¥おもひ¥たまふ/べから/ず。¥ゆるされ¥なけれ/ば、¥みやこ/まで/こそ¥かなは/ず/とも、¥せめて/は¥この¥ふね/に¥のせ/て¥くこく/の¥ぢ/まで¥つけ/て¥たべ。¥おのおの/の¥これ/に¥おはし/つる/ほど/こそ、¥はる/は¥つばくらめ、¥あき/は¥たのも/の¥かり/のP182¥おとづるる¥やう/に、¥おのづから¥こきやう/の¥こと/を/も¥つたへ−きき/つれ。¥いま/より¥のち/は、¥なに/と/して/か¥きく/べき」/とて、¥もだえ−こがれ¥たまひ/けり。¥せうしやう、「¥まことに¥さ/こそ/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らめ。¥われ=ら/が¥めし−かへさ/るる¥うれし−さ/も、¥さる−こと/にて/は¥さふらへ/ども、¥おん=ありさま/を¥み¥たてまつる/に、¥さらに¥ゆく/べき¥そら/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥この¥ふね/に¥うち−のせ¥たてまつ/て、¥のぼり/たう/は¥さふらへ/ども、¥みやこ/の¥お=つかひ、¥いか/に/も¥かなふ/まじき¥よし/を¥しきり/に¥まうす。¥その−うへ¥ゆるされ/も¥なき/に、¥さん−にん/ながら¥しま/の¥うち/を¥いで/たり/など¥きこえ¥さふらは/ば、¥なかなか¥あしう¥さふらひ/な/んず。¥なりつね¥まづ¥まかり−のぼつ/て、¥ひとびと/に/も¥よくよく¥まうし−あはせ、¥にふだう−しやうこく/の¥きしよく/を/も¥うかがひ、¥むかひ/に¥ひと/を¥たてまつら/ん。¥その−ほど/は¥ひごろ¥おはし/つる¥やう/に¥おもひ−なし/て¥まち¥たまへ。¥いのち/は¥いか/に/も¥たいせつ/の¥こと/なれ/ば、¥たとひ¥この¥せ/に/こそ¥もれ/させ¥たまふ/とも、¥つひに/は¥など/か¥しやめん¥なく/て¥さふらふ/べき」/と、¥やうやう/に¥なぐさめ−のたまへ/ども、¥そうづ¥たへ−しのぶ/べう/も¥みえ¥たまは/ず。¥さる−ほど/に¥ふね¥いださ/ん/と¥し/けれ/ば、¥そうづ¥ふね/に¥のつ/て/は¥おり/つ、¥おり/て/は¥のつ/つ、¥あらましごと/を/ぞ¥し¥たまひ/ける。¥せうしやう/の¥かたみ/に/は¥よる/の¥ふすま、¥やすより−にふだう/が¥かたみ/に/は、¥いちぶ/の¥ほけきやう/を/ぞ¥とどめ/ける。¥すでに¥ともづな¥とい/て、¥ふね¥おし−いだせ/ば、¥そうづ¥つな/に¥とり−つき、¥こし/に¥なり、¥わき/に¥なり、¥たけ/の¥たつ/まで/は、¥ひか/れ/て¥いづ。¥たけ/も¥およば/ず¥なり/けれ/ば、¥そうづ¥ふね/に¥とり−つき、「¥さて¥いか/に¥おのおの¥しゆんくわん/を/ば¥つひに¥すて−はて¥たまふ/か。¥ひごろ/の¥なさけ/も¥いま/は¥なに¥なら/ず。¥ゆるされ¥なけれ/ば¥みやこ/まで/こそ¥かなは/ず/とも、P183¥せめて/は¥この¥ふね/に¥のせ/て¥くこく/の¥ち/まで」/と、¥くどか/れ/けれ/ども、¥みやこ/の¥お=つかひ、「¥いか/に/も¥かなひ¥さふらふ/まじ」/とて、¥とり−つき¥たまひ/つる¥て/を¥ひき−のけ/て、¥ふね/を/ば¥つひに¥こぎ−いだす。¥そうづ¥せんかた−なさ/に、¥なぎさ/に¥あがり¥たふれ−ふし、¥をさなき¥もの/の¥めのと/や¥はは/など/を¥したふ¥やう/に、¥あしずり/を¥し/て、「¥これ¥のせ/て¥ゆけ、¥ぐし/て¥ゆけ」/と¥のたまひ/て、¥をめき−さけび¥たまへ/ども、¥こぎ−ゆく¥ふね/の¥ならひ/にて、¥あと/は¥しらなみ/ばかり/なり。¥いまだ¥とほから/ぬ¥ふね/なれ/ども、¥なみだ/に¥くれ/て¥みえ/ざり/けれ/ば、¥そうづ¥たかき¥ところ/に¥はしり−あがり、¥おき/の¥かた/を/ぞ¥まねき/ける。¥かの¥まつらさよひめ/が¥もろこし−ぶね/を¥したひ/つつ¥ひれ¥ふり/けん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥さる−ほど/に¥ふね/も¥こぎ−かくれ、¥ひ/も¥くるれ/ども、¥そうづ¥あやし/の¥ふしど/へ/も¥かへら/ず、¥なみ/に¥あし¥うち−あらは/せ、¥つゆ/に¥しをれ/て、¥その¥よ/は¥そこ/に/ぞ¥あかし/ける。¥さり/とも¥せうしやう/は¥なさけ−ふかき¥ひと/なれ/ば、¥よき¥やう/に¥まうす¥こと/も/や/と、¥たのみ/を¥かけ/て、¥その¥せ/に¥み/を/も¥なげ/ざり/し¥こころ/の¥うち/こそ¥はかなけれ。¥むかし¥さうり¥そくり/が、¥かいがんさん/へ¥はなた/れ/たり/けん¥かなしみ/も、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。P184
「ごさんのまき」(『ごさん』)S0303¥さる−ほど/に¥ににん/の¥ひとびと/は、¥きかいがしま/を¥いで/て、¥ひぜんの−くに¥かせ/の−しやう/に/ぞ¥つき¥たまふ。¥さいしやう¥きやう/より¥ひと/を¥くだし/て、「¥とし/の¥うち/は¥なみかぜ/も¥はげしう、¥みち/の¥あひだ/も¥おぼつかなう¥さふらへ/ば、¥はる/に¥なつ/て¥のぼら/れ¥さふらへ」/と¥あり/しか/ば、¥せうしやう¥かせ/の−しやう/にて¥とし/を¥くらす。¥さる−ほど/に¥おなじき−じふいちぐわつ−じふににち/の¥とら/の−こく/より、¥ちうぐう¥ご=さん/の¥け¥まします/とて、¥きやう−ぢう¥ろくはら¥ひしめき−あへ/り。¥ご=さんじよ/は¥ろくはら¥いけ=どの/にて¥あり/けれ/ば、¥ほふわう/も¥ご=かう¥なる。¥くわんばく=どの/を¥はじめ¥たてまつ/て¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥すべて¥よ/に¥ひと/と¥かぞへ/られ、¥くわん−かかい/に¥のぞみ/を¥かけ、¥しよたい¥しよしよく/を¥たい−する/ほど/の¥ひと/の、¥いち−にん/も¥もるる/は¥なかり/けり。¥せんれい/も¥にようご¥きさき¥ご=さん/の¥とき/に¥のぞん/で¥だいしや¥あり/き。¥だいぢ−にねん−くぐわつ−ひとひのひ、¥たいけんもんゐん¥ご=さん/の¥とき、¥だいしや¥おこなは/るる¥こと¥あり/けり。¥こんど/も¥その¥れい/とて、¥ひじやう/の¥だいしや¥おこなは/れ/て、¥ぢうくわ/の¥ともがら¥おほく¥ゆるさ/れ/ける¥なか/に、¥この¥しゆんくわん−そうづ¥いち−にん、¥しやめん¥なかり/ける¥こと/こそ¥うたてけれ。¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥ましまさ/ば、¥やはた¥ひらの、¥おほはらの/なんど/へ¥ぎやうげい¥ある/べき¥よし、¥ご=りふぐわん¥あり。¥せんげん−ほふいん¥うけたまはつ/て、¥これ/を¥けいびやく−すP185。¥しんじや/は¥だい−じんぐう/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥にじふ−よ−か−しよ、¥ぶつじ/は¥とうだいじ¥こうぶくじ¥いげ¥じふろく−か−しよ/へ¥み=じゆきやう¥あり。¥み=じゆきやう/の¥お=つかひ/は、¥みや/の¥さぶらひ/の¥なか/に、¥うくわん/の¥ともがら¥これ/を¥つとむ。¥ひやうもん/の¥かりぎぬ/に¥たいけん−し/たる¥もの=ども/が、¥いろいろ/の¥み=じゆぎやうもつ、¥ぎよ=けん¥ぎよ=い/を¥もち−つづい/て、¥ひがし/の¥たい/より¥なんてい/を¥わたつ/て、¥にし/の¥ちうもん/に¥いづ。¥めでたかり/し¥けんぶつ/なり。¥
こまつの−おとど/は、¥れい/の¥ぜんあく/に¥つき/て¥さわぎ¥たまは/ぬ¥ひと/にて¥おはし/けれ/ば、¥はるか/に¥ほど¥へ/て¥のち、¥ちやくし¥ごん/の−すけ−せうしやう−これもり¥いげ/の¥きんだち/の¥くるま=ども¥やり−つづけ/させ、¥いろいろ/の¥ぎよ=い¥しじふりやう、¥ぎんけん¥ななつ、¥ひろぶた/に¥おか/せ、¥お=むま¥じふにひき¥ひか/せ/て¥まゐらせ/らる。¥これ/は、¥くわんこう/に¥じやうとうもんゐん¥ご=さん/の¥とき、¥み=だう=どの/の¥お=むま¥まゐらせ/られ/し¥その¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥おとど/は¥ちうぐう/の¥おん=せうと/にて¥おはし/ける¥うへ、¥とりわき¥ふし/の¥おん=ちぎり/なれ/ば、¥お=むま¥まゐらせ¥たまふ/も¥ことわり/なり。¥また¥ごでうの−だいなごん−くにつなの−きやう/も、¥お=むま¥にひき¥まゐらせ/らる。「¥こころざし/の¥いたり/か、¥とく/の¥あまり/か」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥なほ¥いせ/より¥はじめ¥たてまつ/て、¥あきの−いつくしま/に¥いたる/まで、¥しちじふ−よ−か−しよ/へ¥じんめ/を¥たて/らる。¥だいり/に/も¥れう/の−お=むま/に¥しで¥つけ/て、¥すうじつぴき¥ひつ−たて/たり。¥にんわじ/の−お=むろ−しゆかく−ほつしんわう/は¥くじやくきやう/の−ほふ、¥てんだい−ざす−かくくわい−ほつしんわう/は¥しちぶつやくし/の−ほふ、¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/は¥こんがうどうじ/の−ほふ、¥その−ほか¥ごだいこくうざう、¥ろくくわんおん、¥いちじきんりん、¥ごだん/の−ほふ、¥ろくじかりん、¥はちじもんじゆ、¥ふげんえんめい/に¥いたる/まで、¥のこる¥ところ¥なう¥しゆせ/られ/けり。¥ごま/の¥けぶり¥ごしよ−ぢう/に¥みち/て、¥れい/の¥こゑP186¥くも/を¥ひびか/し、¥しゆほふ/の¥こゑ¥み/の−け¥よだつ/て、¥いか/なる¥おん=もののけ/なり/とも、¥なに¥おもて/を¥むかふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。¥なほ¥ぶつしよ/の¥ほふいん/に¥おほせ/て、¥ごしん−とうじん/の¥やくし¥ならび/に¥ごだいそん/の¥ざう/を¥つくり−はじめ/らる。¥かかり/しか/ども、¥ちうぐう/は¥ひま−なく¥しきら/せ¥たまふ/ばかり/にて、¥ご=さん/も¥とみ/に¥なり−やら/ず。¥にふだう−しやうこく、¥にゐ=どの、¥むね/に¥て/を¥おい/て、「¥こ/は¥いかが−せ/ん、¥いか/に−せ/ん」/と/ぞ¥あきれ¥たまふ。¥ひと/の¥もの¥まうし/けれ/ども、「¥ただ¥と/も−かう/も、¥よき¥やう/に¥よき¥やう/に」/と/ばかり/ぞ¥のたまひ/ける。「¥あはれ¥じやうかい、¥いくさ/の¥ぢん/なら/ば、¥さり/とも¥これ−ほど/まで/は¥おくせ/じ/ものを」/と/ぞ、¥のち/に/は¥のたまひ/ける。¥
おん=げんじや/に/は、¥ばうかく¥しやううん¥りやう−そうじやう、¥しゆんげう−ほふいん、¥がうぜん¥じつせん¥りやう−そうづ、¥おのおの¥そうが/の¥く=ども¥あげ、¥ほんじ¥ほんざん/の¥さんぽう、¥ねんらい¥しよぢ/の¥ほんぞん=たち、¥せめ−ふせ−せめ−ふせ¥もま/れ/けれ/ば、¥まことに¥さ/こそ/は/と¥おぼえ/て¥たつとかり/ける¥なか/に、¥をりふし¥ほふわう/は、¥いまぐまの/へ、¥ご=かう¥なる/べき/にて、¥おん=しやうじん/の¥ついで/なり/ける/が、¥きんちやう¥ちかく¥ござ¥あつ/て、¥せんじゆきやう/を¥うち−あげ−うち−あげ¥あそばさ/れ/ける/に/ぞ、¥いま¥ひときは¥こと¥かはつ/て、¥さ/しも¥をどり−くるひ/ける¥おん=よりまし=ども/が¥ばく/も、¥しばらく¥うち−しづめ/けり。¥ほふわう¥おほせ/なり/ける/は、「¥たとひ¥いか/なる¥おん=もののけ/なり/とも、¥この¥おい−ぼふし/が¥かくて¥さふらは/ん/に/は、¥いかで/か¥ちかづき¥たてまつる/べき。¥なかんずく¥いま¥あらはるる¥ところ/の¥をんりやう/は¥みな¥わが¥てうおん/を¥もつて¥ひと/と¥なり/たる¥もの/ぞ/かし。¥たとひ¥はうしや/の¥こころ/を/こそ¥ぞんぜ/ず/とも、¥いかで/か¥あに¥しやうげ/を¥なす/べき/やP187。¥すみやか/に¥まかり−しりぞき¥さふらへ」/とて、「¥によにん¥しやうさん−し−がたから/ん¥とき/に¥のぞん/で、¥じやま−しやしやう−し、¥く¥しのび−がたから/ん/に/も、¥こころ/を¥いたし/て¥だいひじゆ/を¥しようじゆ−せ/ば、¥きしん¥たいさん−し/て、¥あんらく/に¥しやうぜ/ん」/と¥あそばい/て、¥みな¥ずゐしやう/の¥おん=ずず/を¥おし−もま/せ¥たまへ/ば、¥ご=さん¥へいあん/のみ/なら/ず、¥わうじ/にて/こそ¥ましまし/けれ。¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥ちうぐう/の−すけ/にて¥おはし/ける/が、¥ぎよれん/の¥うち/より¥つと¥いで/て、「¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥さふらふ/ぞ」/と¥たからか/に¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥くわんばく−まつ=どの、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥おのおの/の¥じよじゆ、¥おんやう/の−かみ、¥てんやく/の−かみ、¥すはい/の¥おん=げんじや、¥すべて¥たうしやう−たうか、¥いちどう/に¥あつ/と¥よろこび−あは/れ/ける¥こゑ/は、¥もんぐわい/まで/も¥どよみ/て、¥しばし/は¥しづまり/も¥やら/ざり/けり。¥にふだう−しやうこく¥うれし−さ/の¥あまり/に、¥こゑ/を¥あげ/て/ぞ¥なか/れ/ける。¥よろこびなき/と/は、¥これ/を¥いふ/べき/に/や。¥こまつの−おとど/は、¥いそぎ¥ちうぐう/の¥おん=かた/へ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥きんせん¥くじふく−もん、¥わうじ/の¥おん=まくら/に¥おい/て、「¥てん/を¥もつて/は¥ちち/と¥し、¥ち/を¥もつて/は¥はは/と¥さだめ¥たまふ/べし。¥おん=いのち/は¥はうし¥とうばうさく/が¥よはひ/を¥たもち、¥おん=こころ/に/は¥てんせうだいじん¥いり−かはら/せ¥たまへ」/とて¥くは/の−ゆみ¥よもぎ/の−や/を¥もつて、¥てんち¥しはう/を¥い/させ/らる。P188¥
「くぎやうそろへ」(『くぎやうぞろへ』)S0304¥おん=ち/に/は¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥きたのかた/と¥さだめ/られ/たり/しか/ども、¥さんぬる¥しちぐわつ/に¥なんざん/を¥し/て¥うせ¥たまひ/しか/ば、¥へい−だいなごん−ときただの−きやう/の¥きたのかた/ぞ、¥おん=ち/に/は¥まゐらせ¥たまふ。¥のち/に/は¥そつのすけ=どの/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥ほふわう¥やがて¥くわんぎよ¥あり。¥もんぜん/に¥おん=くるま/を¥たて/られ/たり。¥にふだう−しやうこく¥うれし−さ/の¥あまり/に、¥こがね¥いつせんりやう、¥ふじ/の¥わた¥にせんりやう、¥ほふわう/へ¥しんじやう−せ/らる。「¥これ¥また¥しかる/べから/ず」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥こんど/の¥ご=さん/に¥しようし¥あまた¥あり。¥まづ¥ほふわう/の¥おん=げんじや、¥つぎ/に¥きさき¥ご=さん/の¥とき、¥ご=てん/の¥むね/より¥こしき/を¥まろばかす¥こと¥あり/けり。¥わうじ¥ご=たんじやう/に/は¥みなみ/へ¥おとし、¥くわうによ¥たんじやう/に/は¥きた/へ¥おとす/を、¥これ/は¥きた/へ¥おとさ/れ/たり/けれ/ば、¥いか/に/と¥さわぎ、¥とり−あげ、¥おとし−なほさ/れ/たり/けれ/ども、¥なほ¥あしき¥こと/に/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥をかしかり/し/は、¥にふだう−しやうこく/の¥あきれざま、¥めでたかり/し/は¥こまつの−おとど/の¥ふるまひ、¥ほい−なかり/し/は、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の、¥さいあい/の¥きたのかた/に¥おくれ¥たまひ/て、¥だいなごん¥だいしやう¥りやう−しよく/を¥じし/て、¥ろうきよ−せ/られ/し¥こと、¥きやうだい¥とも/に¥しゆつし¥あら/ば、¥いか/に¥めでたから/ん。P189¥つぎ/に¥しちにん/の¥おんやうじ¥まゐつ/て、¥せんど/の¥お=はらひ¥つかまつる。¥その¥なか/に¥かもん/の−かみ−ときはる/と¥いふ¥らうしや¥あり。¥しよじう/など/も¥ぼくせう/なり/ける/が、¥あまり/に¥ひと¥おほく¥まゐり−つどひ、¥たかんな/を¥こみ、¥たうま¥ちくゐ/の/ごとし。「¥やくにん/ぞ、¥あけ/られ¥さふらへ」/とて、¥おほぜい/の¥なか/を¥おし−わけ−おし−わけ¥まゐる/ほど/に、¥いかが/は¥し/たり/けん、¥みぎ/の¥くつ/を¥ふみ−ぬか/れ/て、¥そこ/にて¥ちつ/と¥たち−やすらふ/が、¥あまつさへ¥かぶり/を/さへ¥つき−おとさ/れ/て、¥さ/ばかり/の¥みぎり/に、¥そくたい¥ただしき¥らうしや/が、¥もとどり¥はなし/て¥ねり−いで/たり/けれ/ば、¥わかき¥くぎやう−てんじやうびと/は¥こらへ/ず/して、¥いちど/に¥どつと/ぞ¥わらは/れ/ける。¥おんやうじ/など¥いふ/は、¥へんばい/とて¥あし/を/も¥あだ/に¥ふま/ず/と/こそ¥うけたまはれ。¥その−ほか¥ふしぎ=ども/の¥あり/ける/を、¥その−とき/は¥なに/と/も¥おぼえ/ざり/けれ/ども、¥のち/に/は¥おもひ−あは/する¥こと=ども/は¥おほかり/けり。¥
ご=さん/に¥よつ/て¥ろくはら/へ¥まゐらせ¥たまふ¥ひとびと、¥くわんばく−まつ=どの、¥だいじやうだいじん−めうおんゐん、¥さだいじん−おほひのみかど、¥うだいじん−つきのわ=どの、¥ないだいじん−こまつ=どの、¥さだいしやう−じつてい、¥げん−だいなごん−さだふさ、¥さんでうの−だいなごん−さねふさ、¥ごでうの−だいなごん−くにつな、¥とう−だいなごん−さねくに、¥あぜつし−すけかた、¥なかのみかどの−ちうなごん−むねいへ、¥くわざんのゐん/の−ちうなごん−かねまさ、¥げん−ぢうなごん−がらい、¥ごん−ぢうなごん−さねつな、¥とう−ちうなごん−すけなが、¥いけの−ちうなごん−よりもり、¥さゑもん/の−かみ−ときただ、¥べつたう−ただちか、¥ひだん/の−さいしやう/の−ちうじやう−さねいへ、¥みぎ/の−さいしやう/の−ちうじやう−さねむね、¥しん−ざいしやう/の−ちうじやう−みちちか、¥へい−ざいしやう−のりもり、¥ろくかくの−さいしやう−いへみち、¥ほりかはの−さいしやう−よりさだ、¥さだいべん/の−さいしやう−ながかた、¥うだいべん/の−さんみ−としつね、¥さひやうゑ/の−かみ−しげのり、¥うひやうゑ/の−かみ−みつよし、¥くわうだいこうくう/の−だいぶ−ともかた、¥さきやう/の−だいぶ−ながのり、¥だざい/の−だいに−ちかのぶ、¥しん−ざんみ−さねきよ、¥いじやう¥さんじふさん−にん、P190¥うだいべん/の¥ほか/は¥ちよくい/なり。¥ふさん/の¥ひとびと/に/は、¥くわざんのゐん/の¥さきの−だいじやうだいじん−ただまさ=こう、¥おほみやの−だいなごん−たかすゑの−きやう¥いげ¥じふ−よ−にん、¥ごにち/に¥ほうい¥ちやくし/て、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/へ¥まゐり−むかは/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「だいたふこんりふ」(『だいたふこんりふ』)S0305¥み=しほ/の¥けちぐわん/に/は¥けんじやう=ども¥おこなは/る。¥にんわじ/の−お=むろ/は¥とうじ¥しゆざう−せ/らる/べき/なり。¥ごしちにち/の¥み=しほ、¥たいげん/の−ほふ¥ならび/に¥くわんぢやう、¥こうぎやう−せ/らる/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥おん=でし¥ゑんりやう−ほふげん、¥ほふいん/に¥なさ/る。¥ざすのみや/は、¥にほん¥ならび/に¥ぎつしや/の¥せんじ/を¥まうさ/せ¥たまふ/を、¥お=むろ¥ささへ¥まうさ/せ¥たまふ/に¥よつ/て、¥おん=でし¥かくせい−そうづ、¥ほふいん/に¥なさ/る。¥その−ほか/の¥けんじやう=ども¥まうきよ/に¥いとま¥あら/ず/と/ぞ¥きこえ/し。¥ひかず¥へ/に/けれ/ば、¥ちうぐう/は¥ろくはら/より¥だいり/へ¥かへり−まゐらせ¥たまふ。¥にふだう−しやうこく/の¥おん=むすめ、¥きさき/に¥たた/せ¥たまふ¥うへ/は、¥あはれ¥とく/して、¥この¥おん=はら/に¥わうじ¥ご=たんじやう¥あれ/かし、¥くらゐ/に¥つけ¥たてまつ/て、¥ふうふ¥とも/に¥ぐわいそぶ、¥ぐわいそぼ/と¥あふが/れ/ん/と¥ねがは/れ/ける/が、¥あがめ¥たてまつる¥いつくしま/へ¥まうさ/ん/とて、¥つき−まうで/を¥はじめ/て、¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ば/に/や、¥ちうぐう¥やがて¥ご=くわいにん¥あり/て、¥ご=さん¥へいあん¥わうじ¥ご=たんじやう¥ましまし/ける/こそ¥めでたけれ。P191¥そもそも¥へいけ¥あきの−いつくしま/を、¥しんじ−はじめ/られ/ける¥こと/を¥いか/に/と¥いふ/に、¥きよもり=こう¥いまだ¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥あきの−くに/を¥もつて、¥かうや/の¥だいたふ¥しゆり−せ/られ/ける/に、¥わたなべの−ゑんどう−ろくらう−よりかた/を¥ざつしやう/に¥つけ/られ/て、¥ろくねん/に¥しゆり¥をはり/ぬ。¥しゆり¥をはつ/て¥のち、¥きよもり¥かうや/へ¥のぼり、¥だいたふ¥をがみ、¥おく/の¥ゐん/へ¥まゐら/れ/ける/に、¥いづく/より¥きたる/と/も¥なく、¥らうそう/の¥はくはつ/なる/が、¥まゆ/に/は¥しも/を¥たれ、¥ひたひ/に¥なみ/を¥たたみ、¥かせづゑ/の¥ふたまた/なる/に¥すがつ/て、¥いで−き¥たまへ/り。¥この¥そう¥なに/と−なう¥ものがたり/を¥し/ける/ほど/に、「¥それ¥わが−やま/は、¥むかし/より¥みつしう/を¥ひかへ/て¥たいてん¥なし。¥てんが/に¥また/も¥さふらは/ず。¥だいたふ¥すでに¥しゆり¥をはり¥さふらひ/たり。¥それ/に¥つき¥さふらう/て/は、¥ゑちぜんの−けひのみや/と¥あきの−いつくしま/は、¥りやうがい/の¥すゐじやく/にて¥さふらふ/が、¥けひのみや/は¥さかえ/たれ/ども、¥いつくしま/は¥なき/が/ごとく/に¥あれ−はて/て¥さふらふ。¥あはれ¥おなじう/は、¥この¥ついで/に¥そうもん−し/て、¥しゆり−せ/させ¥たまへ/かし。¥さ/だに/も¥さふらは/ば、¥くわん−かかい/は¥かた/を¥ならぶる¥ひと、¥てんが/に¥また/も¥ある/まじき/ぞ」/とて¥たた/れ/けり。¥
この¥らうそう/の¥ゐ¥たまへ/る¥ところ/に、¥いきやう¥すなはち¥くん−じ/たり。¥ひと/を¥つけ/て¥みせ/らるる/に、¥さんぢやう/ばかり/は¥みえ¥たまひ/て、¥その−のち/は¥かき−けす¥やう/に¥うせ¥たまひ/ぬ。¥これ¥ただびと/に¥あら/ず、¥だいし/にて¥ましまし/けり/と、¥いよいよ¥たつとく¥おぼえ/て、¥しやば−せかい/の¥おもひで/に/とて、¥かうや/の¥こんだう/に¥まんだら/を¥かか/れ/ける/が、¥さいまんだら/を/ば、¥じやうみやう−ほふいん/と¥いふ¥ゑし/に¥かか/せ/らる。¥とうまんだら/を/ば、¥きよもり¥かか/ん/とて、¥じひつ/に¥かか/れ/ける/が、¥はちえふ/の¥ちうぞん/の¥ほうくわん/を/ば、¥いかが¥おもは/れ/けん、¥わが¥かうべ/の¥ち/を¥いだい/て¥かか/れ/ける/と/ぞP192¥きこえ/し。¥その−のち¥みやこ/へ¥のぼり¥ゐんざん−し/て、¥この¥よし/を¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥ぎよ=かん¥あり/けり。¥なほ¥にん/を¥のべ/られ/て、¥いつくしま/を/も¥しゆり−せ/らる。¥とりゐ/を¥たて−かへ、¥やしろやしろ/を¥つくり−かへ、¥ひやくはちじつ−けん/の¥くわいらう/を/ぞ¥つくら/れ/ける。¥しゆり¥をはつ/て¥のち、¥きよもり¥いつくしま/へ¥まゐり、¥つや−せ/られ/たり/ける¥ゆめ/に、¥ご=ほうでん/の¥み=と¥おし−ひらき、¥びんづら¥ゆう/たる¥てんどう/の¥いで/て、「¥われ/は¥これ¥だい−みやうじん/の¥お=つかひ/なり。¥なんぢ¥この¥けん/を¥もつて、¥てうか/の¥おん=かため/たる/べし」/とて、¥しろがね/の¥ひるまき−し/たる¥こなぎなた/を¥たまはる/と¥いふ¥ゆめ/を¥み/て、¥さめ/て¥のち¥み¥たまへ/ば、¥うつつ/に¥まくらがみ/に/ぞ¥たつ/たり/ける。¥さて¥だい−みやうじん¥ご=たくせん¥あり/けり。「¥なんぢ¥しれ/り/や¥わすれ/り/や。¥ある¥ひじり/を¥もつて¥いは/せ/し¥こと/は¥いか/に。¥ただし¥あくぎやう¥あら/ば、¥しそん/まで/は¥かなふ/まじき/ぞ」/とて、¥だい−みやうじん¥あがら/せ¥たまひ/けり。¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。¥
「らいがう」(『らいがう』)S0306¥しらかはのゐん¥ご=ざいゐ/の¥とき、¥きやうごくの−おほ=との/の¥おん=むすめ、¥きさき/に¥たち¥たまふ¥こと¥あり/けり。¥けんしの−ちうぐう/とて、¥ご=さいあい¥あり/しか/ば、¥しゆじやう¥この¥きさき/の¥おん=はら/に、¥わうじ¥たんじやう¥あら/まほしう¥おぼしめし/て、¥その−ころ¥みゐでら/に、¥うげん/の¥そう/と¥きこゆる、¥らいがう−あじやり/を¥めし/て、「¥なんぢ、P193¥この¥きさき/の¥おん=はら/に、¥わうじ¥たんじやう¥いのり¥まうせ。¥ぐわん¥じやうじゆ−せ/ば、¥しよまう/は¥こふ/に¥よる/べし」/と¥おほせ−くださ/る。¥らいがう¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥みゐでら/に¥かへり、¥かんたん/を¥くだい/て¥いのり/けれ/ば、¥ちうぐう¥やがて¥ご=くわいにん¥あつ/て、¥しようほう−ぐわんねん−じふにんぐわつ−じふろくにち、¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥あり/けり。¥しゆじやう¥なのめ/なら/ず¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥らいがう−あじやり/を¥だいり/へ¥めし/て、「¥さて¥なんぢ/が¥しよまう/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥みゐでら/に¥かいだん¥こんりふ/の¥よし/を¥そうもん−す。「¥いつかい−そうじやう/など/の¥こと/を/も¥まうさ/んずる/か/と/こそ¥おぼしめし/つる/に¥これ/こそ¥ぞんじ/の¥ほか/の¥しよまう/なれ。¥およそ¥わうじ¥たんじやう¥あつ/て、¥そ/を¥つが/しめ/ん/も、¥かいだい¥ぶじ/を¥おぼしめす¥おん=ゆゑ/なり。¥いま¥なんぢ/が¥しよまう/を¥たつせ/ば、¥さんもん¥いきどほつ/て、¥せじやう/も¥しづか/なる/べから/ず。¥りやうもん¥とも/に¥かつせん−せ/ば、¥てんだい/の¥ぶつぽふ¥ほろび/な/んず」/とて、¥きこしめし/も¥いれ/ざり/けり。¥らいがう、「¥こ/は¥くちをしき¥こと/に/こそ¥あん/なれ」/とて、¥いそぎ¥みゐでら/に¥はしり−かへつ/て、¥ひじに/に¥せ/ん/と¥す。¥しゆじやう、¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、¥がうそつ−きやうばうの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥みまさかの−かみ/と¥きこえ/し/を¥めし/て、「¥なんじ/は¥らいがう/に¥しだん/の¥ちぎり¥あん/なれ/ば、¥ゆい/て¥こしらへ/て¥みよ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥いそぎ¥みゐでら/に¥ゆき−むかひ、¥らいがう−あじやり/が¥しゆくばう/に¥ゆい/て、¥ちよくぢやう/の¥おもむき¥おほせ−ふくめ/ん/と¥すれ/ば、¥もつて/の−ほか/に¥ふすぼつ/たる¥ぢぶつだう/に¥たてこもり、¥おそろし=げ/なる¥こゑ−し/て、「¥てんし/に/は¥たはぶれ/の¥ことば¥なし。¥りんげん¥あせ/の/ごとし/と/こそ¥うけたまはつ/て¥さふらへ。¥これ−ほど/の¥しよまう¥かなは/ざら/ん/に¥おいて/は、¥わが¥いのり−いだし¥たてまつ/たるP194¥わうじ/なれ/ば、¥とり¥たてまつ/て¥まだう/へ/こそ¥ゆか/んず/らめ」/とて、¥つひに¥たいめん/も¥せ/ざり/けり。¥みまさかの−かみ¥かへり−まゐり/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥しゆしやう¥おん=なげき¥なのめ/なら/ず。¥らいがう¥つひに¥ひじに/に¥しに/に/けり。¥さる−ほど/に¥わうじ¥ご=なう¥つか/せ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/しか/ば、¥さまざま¥おん=いのり=ども¥あり/けれ/ども、¥かなふ/べし/と/も¥みえ/させ¥たまは/ず。¥はくはつ/なる¥らうそう/の、¥しやくぢやう/を¥もつて、¥つね/は¥わうじ/の¥おん=まくら/に¥たたずむ/と、¥ひと/の¥ゆめ/に/も¥みえ、¥うつつ/に/も¥また¥たち/けり。¥おそろし/など/も¥おろか/なり。¥
しようりやく−ぐわんねん−はちぐわつ−むゆかのひ、¥わうじ¥おん=とし¥しさい/にて¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥あつぶんの−しんわう¥これ/なり。¥しゆしやう¥なのめ/なら/ず¥おん=なげき¥あつ/て、¥その−ころ¥また¥さんもん/に¥うげん/の¥そう/と¥きこえ/し¥さいきやう/の¥ざす¥りやうしん−だいそうじやう、¥その−とき/は¥いまだ¥ゑんゆうばう/の−そうづ/と¥きこえ/し/を、¥だいり/へ¥めし/て、「¥こ/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、「¥いつも¥かやう/の¥ご=ぐわん/は、¥わが−やま/の¥ちから/で/こそ¥じやうじゆ−する¥こと/で/は¥さふらへ。¥され/ば¥くでうの−うしようじやう−もろすけ=こう/も、¥じゑ−だいそうじやう/に¥おん=ちぎり¥まうさ/せ¥たまひ/て/こそ、¥れんぜいゐん/の¥わうじ、¥ご=たんじやう/は¥さふらひ/しか。¥やすい/ほど/の¥おん=こと¥ざふらふ」/とて、¥さんもん/に¥かへつ/て、¥ひやく−にち¥かんたん/を¥くだい/て¥いのら/れ/けれ/ば、¥ちうぐう¥やがて¥ひやく−にち/の¥うち/に¥ご=くわいにん¥あつ/て、¥しようりやく−さんねん−しちぐわつ−ここのかのひ、¥ご=さん¥へいあん、¥わうじ¥ご=たんじやう¥あり/けり。¥ほりかはの−てんわう¥これ/なり。¥をんりやう/は¥かく¥むかし/も¥おそろしかり/し¥こと=ども/なり。¥こんど¥さ/しも¥めでたき¥ご=さん/に、¥ひじやう/の¥たいしや¥おこなは/れ/たり/と¥いへ/ども、¥この¥しゆんくわん−そうづ¥いち−にん、¥しやめん¥なかり/ける/こそ¥うたてけれ。P195¥おなじき−じふにんぐわつ−やうかのひ、¥わうじ¥とうぐう/に¥たた/せ¥たまふ。¥ふ/に/は¥こまつの−ないだいじん、¥だいぶ/に/は¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/て、¥ぢしよう/も¥みとせ/に¥なり/に/けり。
「せうしやうみやこがへり」(『せうしやうみやこがへり』)S0307¥しやうぐわつ−げじゆん/に¥たんばの−せうしやう−なりつね、¥へい−はんぐわん−やすより−にふだう¥ににん/の¥ひとびと/は、¥ひぜんの−くに¥かせ/の−しやう/を¥たつ/て、¥みやこ/へ/と/は¥いそが/れ/けれ/ども、¥よかん/も¥いまだ¥はげしう、¥かいじやう/も¥いたく¥あれ/けれ/ば、¥うら−づたひ¥しま−づたひ−し/て、¥きさらぎ−とをか−ごろ/に/ぞ、¥びぜん/の−こじま/に/は¥つき¥たまふ。¥それ/より¥ちち¥だいなごん/の¥おん=わたり¥あん/なる¥ありき/の−べつしよ/とかや/に¥たづね−いつ/て¥み¥たまへ/ば、¥たけ/の¥はしら、¥ふり/たる¥しやうじ/など/に、¥かき−おき¥たまひ/つる¥ふで/の¥すさび/を¥み¥たまひ/て、「¥あはれ¥ひと/の¥かたみ/に/は、¥しゆせき/に¥すぎ/たる¥もの/ぞ¥なき。¥かき−おき¥たまは/ず/は、¥いかで/か¥これ/を¥みる/べき」/とて、¥やすより−にふだう/と¥ににん、¥よみ/て/は¥なき、¥なき/て/は¥よむ。「¥あんげん−さんねん−しちぐわつ−はつか¥しゆつけ、¥おなじき−にじふろくにち¥のぶとし¥げかう」/と/も¥かか/れ/たり。¥さて/こそ¥げんざゑもん/の−じよう−のぶとし/が¥まゐり/たる/を/も¥しら/れ/けれ。¥そば/なる¥かべ/に/は、「¥さんぞん¥らいかう¥たより¥あり、¥く−ほん¥わうじやう¥うたがひ¥なし」/と/も¥かか/れ/たり。¥この¥かたみ/をP196¥み¥たまひ/て/こそ、¥さすが¥ごんぐ−じやうど/の¥のぞみ/も¥おはし/けり/と、¥かぎり−なき¥なげき/の¥なか/に/も、¥いささか¥たのもし=げ/に/は¥のたまひ/けれ。¥
その¥はか/を¥たづね/て¥み¥たまへ/ば、¥まつ/の¥ひとむら¥ある¥なか/に、¥かひがひしう¥だん/を¥つい/たる¥こと/も¥なく、¥つち/の¥すこし¥たかき¥ところ/に¥むかひ、¥せうしやう¥そで¥かき−あはせ、¥いき/たる¥ひと/に¥もの/を¥まうす¥やう/に、¥なくなく¥かき−くどい/て¥まうさ/れ/ける/は「¥とほき¥おん=まもり/と¥なら/せ¥おはしまし/たる¥こと/を/ば、¥しま/にて/も¥かすか/に¥つたへ¥うけたまはつ/て¥さふらひ/しか/ども、¥こころ/に¥まかせ/ぬ¥うき−み/なれ/ば、¥いそぎ¥まゐる¥こと/も¥さふらは/ず。¥なりつね¥かの¥しま/へ¥ながさ/れ/て¥のち/の¥たより−な−さ、¥いち−にち−へんし/の¥いのち/も¥あり−がたう/こそ¥さふらひ/しか/ども、¥さすが¥つゆ/の−いのち/は¥きえ−やら/で、¥この¥ふたとせ/を¥おくつ/て、¥いま¥めし−かへさ/るる¥うれし−さ/も、¥さる−こと/にて/は¥さふらへ/ども、¥ちち¥だいなごん=どの/の¥まさしう¥この−よ/に¥わたら/せ¥たまは/ん/を、¥み¥まゐらせ/て/も¥さふらは/ば/こそ、¥さすが¥いのち/の¥ながき¥かひ/も¥さふらは/め。¥これ/まで/は¥いそが/れ/つれ/ども、¥けふ/より¥のち/は¥いそぐ/べし/と/も¥おぼえ/ず」/とて、¥かき−くどい/て/ぞ¥なか/れ/ける。¥まこと/に¥ぞんじやう/の¥とき/なら/ば、¥だいなごん−にふだう=どの/こそ、¥いか/に/と/も¥のたまふ/べき/に、¥しやう/を¥へだて/たる¥ならひ/ほど、¥うらめしかり/ける¥こと/は¥なし。¥こけ/の¥した/に/は¥たれ/か¥こたふ/べき、¥ただ¥あらし/に¥さわぐ¥まつ/の¥ひびき/ばかり/なり。¥
その¥よ/は¥やすより−にふだう/と¥ににん、¥はか/の¥めぐり/を¥ぎやうだう−し、¥あけ/けれ/ば¥あたらしう¥だん¥つき、¥くぎぬき−せ/させ、¥まへ/に¥かりや¥つくり、¥しち−にち−しち−や/が¥あひだ¥ねんぶつ¥まうし、¥きやう¥かい/て、¥けちぐわん/に/は¥おほき/なる¥そとば/を¥たて、「¥くわこ−しやうりやう、¥しゆつり−しやうじ、¥しようだいぼだい」/と¥かい/て、P197¥ねんがう¥つきひ/の¥した/に/は、「¥かうし¥なりつね」/と¥かか/れ/たれ/ば、¥しづ−やまがつ/の¥こころ−なき/も、¥こ/に¥すぎ/たる¥たから¥なし/とて、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥とし¥さり¥とし¥き/たれ/ども、¥わすれ−がたき/は¥ぶいく/の¥むかし/の¥おん、¥ゆめ/の/ごとく¥まぼろし/の/ごとし。¥つき−がたき/は¥れんぼ/の¥いま/の¥なみだ/なり。¥さん−ぜ−じつ−ぱう/の¥ぶつだ/の¥しやうじゆ/も¥あはれみ¥たまひ、¥ばうこん¥そんりやう/も、¥いか/に¥うれし/と¥おぼし/けん。「¥いま¥しばらく¥さふらひ/て、¥ねんぶつ/の¥こう/を/も¥つむ/べう¥さふらへ/ども、¥みやこ/に¥まつ¥ひと=ども/の¥こころ−もとなう¥さふらふ/らん。¥また/こそ¥まゐり¥さふらは/め」/とて、¥まうじや/に¥いとま¥まうし/つつ、¥なくなく¥そこ/を/ぞ¥たた/れ/ける。¥くさ/の¥かげ/にて/も¥なごり−をしう/や¥おもは/れ/けん。¥
おなじき−さんぐわつ−じふろくにち、¥せうしやう¥とば/へ¥あかう/ぞ¥つき¥たまふ。¥こ=だいなごん=どの/の¥さんざう、¥すはま=どの/とて¥とば/に¥あり。¥それ/に¥たち−より¥み¥たまへ/ば、¥すみ−あらし/て¥とし¥へ/に/けれ/ば、¥ついぢ/は¥あれ/ども¥おほひ/も¥なく、¥もん/は¥あれ/ども¥とびら/も¥なし。¥には/に¥たち−いり¥み¥たまへ/ば、¥じんせき¥たえ/て¥こけ¥ふかし。¥いけ/の¥ほとり/を¥み−まはせ/ば、¥あき/の¥やま/の¥はるかぜ/に、¥しらなみ¥しきり/に¥をり−かけ/て、¥しゑん¥はくおう¥せうえう−す。¥きようぜ/し¥ひと/の¥こひし−さ/に、¥ただ¥つきせ/ぬ¥もの/は¥なみだ/なり。¥いへ/は¥あれ/ども、¥らんもん¥やぶれ/て、¥しとみ、¥やりど/も¥たえ/て¥なし。「¥ここ/に/は¥だいなごん=どの/の、/と/こそ¥おはせ/しか。¥この¥つまど/を/ば、¥かう/こそ¥いで−いり¥たまひ/しか。¥あの¥き/を/ば、¥みづから/こそ¥うゑ¥たまひ/しか」/なんど¥いう/て、¥こと/の−は/に¥つけ/て/も、¥ただ¥ちち/の¥こと/を/のみ¥こひし=げ/に/こそ¥のたまひ/けれ。¥やよひ−なか/の−むゆか/なれ/ば、¥はな/は¥いまだ¥なごり¥あり。¥やうばい¥たうり/の¥こずゑ/こそ、¥をりしり−がほ/に¥いろいろ/なれ。¥むかし/の¥あるじ/は¥なけれ/ども、¥はる/を¥わすれ/ぬ¥はな/なれ/や。P198¥せうしやう¥はな/の¥もと/に¥たち−より/て、¥
たうり¥もの¥いは/ず¥はる¥いくばく/か¥くれ/ぬる¥えんか¥あと¥なし¥むかし¥たれ/か¥すんじ¥
ふるさと/の¥はな/の¥もの¥いふ¥よ/なり/せ/ば¥いか/に¥むかし/の¥こと/を¥とは/まし W014¥
この¥ふるき¥しいか/を¥くちずさみ¥たまへ/ば、¥やすより−にふだう/も、¥をりふし¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥すみぞめ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。¥くるる/ほど/と/は¥また/れ/けれ/ども、¥あまり/に¥なごり−をしく/て、¥よ¥ふくる/まで/こそ¥おはし/けれ。¥ふけ−ゆく¥まま/に/は、¥あれ/たる¥やど/の¥ならひ/とて、¥ふるき¥のき/の¥いたま/より、¥もる¥つきかげ/ぞ¥くま/も¥なき。¥けいろう/の¥やま¥あけ/な/ん/と¥すれ/ども、¥いへぢ/は¥さら/に¥いそが/れ/ず。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥むかひ/に¥のりもの=ども¥つかはし/て¥まつ/らん/も¥こころ−なし/とて、¥せうしやう¥なくなく¥すはま=どの/を¥いで/つつ、¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/ける。¥ひとびと/の¥こころ/の¥うち、¥さ/こそ/は¥うれしう/も、¥また¥あはれ/に/も¥あり/けめ。¥やすより−にふだう/が¥むかひ/に/も、¥のりもの/は¥あり/けれ/ども、¥いまさら¥なごり/の¥をしき/に/とて、¥それ/に/は¥のら/ず、¥せうしやう/の¥くるま/の¥しり/に¥のつ/て、¥しちでうかはら/まで/は¥ゆく。¥それ/より¥ゆき−わかれ/ける/が、¥なほ¥ゆき/も¥やら/ざり/けり。¥はな/の¥もと/の¥はんじつ/の¥かく、¥つき/の¥まへ/の¥いち−や/の¥とも、¥りよじん/が¥ひとむらさめ/の¥すぎ−ゆく/に、¥いちじゆ/の¥かげ/に¥たち−より/て、¥わかるる¥なごり/も¥をしき/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は、¥うかり/し¥しま/の¥すまひ、¥ふね/の¥うち、¥なみ/の¥うへ、¥いちごふ−しよかん/の¥み/なれ/ば、¥ぜんぜ/の¥はうえん/も¥あさから/ず/や¥おもは/れ/けん。P199¥
せうしやう/の¥ははうへ、¥りやうぜん/に¥おはし/ける/が、¥きのふ/より¥さいしやう/の¥しゆくしよ/に¥おはし/て¥また/れ/けり。¥せうしやう/の¥たち−いり¥たまふ¥すがた/を、¥ただ¥ひとめ¥み¥たまひ/て、「¥いのち¥あれ/ば」/と/ばかり/にて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥きたのかた/は、¥さ/しも¥うつくしう¥はなやか/に¥おはせ/しか/ども、¥つきせ/ぬ¥もの−おもひ/に¥やせ−くろみ/て、¥その¥ひと/と/も¥みえ¥たまは/ず。¥ろくでう/が¥くろかり/し¥かみ/も¥しろく¥なり/たり。¥せうしやう/の¥ながさ/れ/し¥とき、¥さんざい/で¥わかれ¥たまひ/し¥をさなき¥ひと/も、¥いま/は¥おとなしう¥なつ/て、¥かみ¥ゆふ/ほど/なり。¥その¥そば/に¥みつ/ばかん/なる¥をさなき¥ひと/の¥おはし/ける/を、¥せうしやう、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥ろくでう、「¥これ/こそ」/と/ばかり¥まうし/て、¥なみだ/を¥ながし/ける/に/こそ、¥さて/は¥わが¥ながさ/れ/し¥とき、¥こころ−ぐるし=げ/なる¥ありさま=ども/を¥み−おき/し/が、¥ことゆゑ−なう¥そだち/ける/よ/と、¥おもひ−いで/て/も¥かなしかり/けり。¥せうしやう/は¥もと/の/ごとく¥ゐん/へ¥まゐらせ¥たまひ/て、¥さいしやう/の−ちうじやう/まで¥あがり¥たまふ。¥やすより−にふだう/は、¥ひがしやま¥さうりんじ/に、¥わが¥さんざう/の¥あり/けれ/ば、¥それ/に¥おち−つい/て、¥まづ¥かう/ぞ¥おもひ−つづけ/ける。¥
ふるさと/の¥のき/の¥いたま/に¥こけ¥むし/て¥おもひ/し/ほど/は¥もら/ぬ¥つき/かな W015¥
やがて¥そこ/に¥ろうきよ−し/て、¥うかり/し¥むかし/を¥おもひ−やり、¥ほうぶつしふ/と¥いふ¥ものがたり/を¥かき/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P200¥
「ありわうがしまくだり」(『ありわう』)S0308¥さる−ほど/に¥きかいがしま/の¥るにん=ども、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て¥みやこ/へ¥のぼり/ぬ。¥いま¥いち−にん¥のこさ/れ/て、¥うかり/し¥しま/の¥しまもり/と¥なり/に/ける/こそ¥うたてけれ。¥そうづ/の¥をさなう/より¥ふびん/に/して、¥めし−つかは/れ/ける¥わらは¥あり。¥な/を/ば¥ありわう/と/ぞ¥まうし/ける。¥きかいがしま/の¥るにん=ども、¥けふ¥すでに¥みやこ/へ¥いる/と¥きこえ/しか/ば、¥ありわう¥とば/まで¥ゆき−むかつ/て¥み/けれ/ども、¥わが¥しゆ/は¥みえ¥たまは/ず。「¥いか/に」/と¥とへ/ば、「¥それ/は¥なほ¥つみ¥ふかし/とて、¥いち−にん¥しま/に¥のこさ/れ/ぬ」/と¥きい/て、¥こころ−うし/など/も¥おろか/なり。¥つね/は¥ろくはら−へん/に¥ただずみ/て¥きき/けれ/ども、¥いつ¥しやめん¥ある/べし/と/も、¥きき−いださ/ざり/けれ/ば、¥そうづ/の¥おん=むすめ/の¥しのう/で¥おはし/ける¥ところ/へ¥まゐつ/て、「¥この¥せ/に/も¥もれ/させ¥たまひ/て、¥おん=のぼり/も¥さふらは/ず。¥いま/は¥いか/に/も−し/て¥かの¥しま/へ¥わたつ/て、¥おん=ゆくへ/を/も¥たづね¥まゐらせ/ばや/と¥ぞんじ¥さふらふ。¥おん=ふみ¥たまはつ/て¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥ひめ−ごぜん、¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥やがて¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。¥いとま/を¥こふ/とも、¥よも¥ゆるさ/じ/とて、¥ちち/に/も¥はは/に/も¥しらせ/ず、¥もろこし−ぶね/の¥ともづな/は、¥うづき¥さつき/に¥とく/なれ/ば、¥なつごろも¥たつ/を¥おそく/や¥おもひ/けん、¥やよひ/の¥すゑ/に¥みやこ/を¥たつ/て、¥おほく/の¥なみじ/を¥しのぎ/つつ、¥さつまがた/へ/ぞ¥くだり/ける。P201¥
さつま/より¥かの¥しま/へ¥わたる¥ふなつ/にて、¥ありわう/を¥ひと¥あやしめ、¥き/たる¥もの/を¥はぎ−とり/など¥し/けれ/ども、¥すこし/も¥こうくわい−せ/ず、¥ひめ−ごぜん/の¥おん=ふみ/ばかり/ぞ、¥ひと/に¥みせ/じ/と、¥もとゆひ/の¥なか/に/は¥かくし/ける。¥さて¥あきんど−ぶね/に¥のつ/て、¥くだん/の¥しま/へ¥わたつ/て¥みる/に、¥みやこ/にて¥かすか/に¥つたへ−きき/し/は、¥こと/の−かず/なら/ず。¥た/も¥なし。¥はたけ/も¥なし。¥さと/も¥なし。¥むら/も¥なし。¥おのづから¥ひと/は¥あれ/ども、¥いふ¥ことば/を/も¥きき−しら/ず。¥ありわう¥しま/の¥もの/に¥ゆき−むかつ/て、「¥もの¥まうさ/う」/と¥いへ/ば、「¥なにごと」/と¥こたふ。「¥これ/に¥みやこ/より¥ながさ/れ/させ¥たまひ/たる¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−しゆんくわん−そうづ/と¥まうす¥ひと/の、¥おん=ゆく−すゑ/や¥しつ/たる」/と¥とふ/に、¥ほつしようじ/と/も、¥しゆぎやう/と/も、¥しつ/たら/ば/こそ¥へんじ/は¥せ/め、¥ただ¥かしら/を¥ふつ/て¥しら/ぬ/と¥いふ。¥その¥なか/に¥ある¥もの/が¥こころ−え/て、「¥いさ/とよ、¥さやう/の¥ひと/は、¥さん−にん¥これ/に¥あり/し/が、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て¥みやこ/へ¥のぼり/ぬ。¥いま¥いち−にん¥のこさ/れ/て、¥あそこ−ここ/よ/と¥まよひ−ありき/し/が、¥その−のち/は¥ゆくへ/を/も¥しら/ず」/と/ぞ¥いひ/ける。¥やま/の¥かた/の¥おぼつかな−さ/に、¥はるか/に¥わき−いり、¥みね/に¥よぢ、¥たに/に¥くだれ/ども、¥はくうん¥あと/を¥うづん/で、¥ゆきき/の¥みち/も¥さだか/なら/ず。¥せいらん¥ゆめ/を¥やぶつ/て/は、¥その¥おもかげ/も¥みえ/ざり/けり。¥やま/にて/は¥つひ/に¥たづね/も¥あは/ず。¥うみ/の¥ほとり/に¥つい/て¥たづぬる/に、¥さとう/に¥いん/を¥きざむ¥かもめ、¥おき/の¥しらす/に¥すだく¥はまちどり/の¥ほか/は、¥あと¥とふ¥もの/も¥なかり/けり。¥
ある¥あした¥いそ/の¥かた/より、¥かげろふ/なんど/の/ごとく/に¥やせ−おとろへ/たる/もの、¥よろぼひ¥いで−き/たり。P202¥もと/は¥ほふし/にて¥あり/けり/と¥おぼえ/て、¥かみ/は¥そらさま/に¥おひ−あがり、¥よろづ/の¥もくづ¥とり−つけ/て、¥おどろ/を¥いただい/たる/が/ごとし。¥つぎめ¥あらはれ/て¥かは¥ゆたひ、¥み/に¥き/たる¥もの/は、¥きぬ、¥ぬの/の¥わき/も¥みえ/ず。¥かたて/に/は¥あらめ/を¥もち、¥かたて/に/は¥うを/を¥もらう/て¥もち、¥あゆむ¥やう/に/は¥し/けれ/ども、¥はか/も¥ゆか/ず、¥よろよろ/と/して/ぞ¥いで−き/たる。¥みやこ/にて¥おほく/の¥こつがいにん/は¥み/しか/ども、¥かかる¥もの/は¥いまだ¥み/ず。「¥しよ−あしゆら−とう、¥こざい−だいかいへん」/とて、¥しゆら/の¥さん−あく¥し−しゆ/は、¥しんざん¥だいかい/の¥ほとり/に¥あり/と、¥ほとけ/の¥とき−おき¥たまひ/たれ/ば、¥しら/ず、¥われ¥がきだう/など/へ¥まよひ−き/たる/か/と/ぞ¥おぼえ/たる。¥はや¥かれ/も¥これ/も¥しだい/に¥あゆみ−ちかづく。¥もし¥かやう/の¥もの/にて/も、¥わが¥しゆ/の¥おん=ゆくへ/や¥しつ/たる/と、「¥もの¥まうさ/う」/と¥いへ/ば、「¥なにごと」/と¥こたふ。「¥これ/に¥みやこ/より¥ながさ/れ¥たまひ/たり/し¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−、しゆんくわん−そうづ/と¥まうす¥ひと/や¥まします」/と¥とふ/に、¥わらは/こそ¥み−わすれ/たれ/ども、¥そうづ/は¥いかで/か¥わすれ¥たまふ/べき/なれ/ば、「¥これ/こそ¥そ/よ」/と¥のたまひ/も¥あへ/ず、¥て/に¥もて/る¥もの/を¥なげ−すて/て、¥すなご/の¥うへ/に/ぞ¥たふれ−ふす。¥さて/こそ¥わが¥しゆ/の¥おん=ゆくへ/と/は¥しり/てげれ。¥そうづ¥やがて¥きえ−いり¥たまふ/を、¥ありわう¥ひざ/の¥うへ/に¥かき−のせ¥たてまつり、「¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのぎ/つつ、¥はるばる/と¥これ/まで¥たづね−まゐつ/たる¥かひ/も¥なく、¥いか/に¥やがて¥うき−め/を/ば¥みせ/ん/と/は、¥せ/させ¥たまひ¥さふらふ/ぞ」/と、¥さめざめと¥かき−くどき/けれ/ば、¥そうづ¥すこし¥ひとごこち¥いで−き、¥たすけ−おこさ/れ、「¥まこと/に¥なんじ¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのぎ/つつ、¥はるばる/とP203¥これ/まで¥まゐつ/たる/こそ¥しんべう/なれ。¥ただ¥あけ/て/も¥くれ/て/も、¥みやこ/の¥こと/を/のみ¥おもひ−ゐ/たれ/ば、¥こひしき¥もの=ども/の¥おもかげ/を、¥ゆめ/に¥みる¥をり/も¥あり、¥また¥まぼろし/に¥たつ¥とき/も¥あり。¥み/も¥いたう¥つかれ−よわつ/て¥のち/は、¥ゆめ/も¥うつつ/も¥おもひ−わか/ず。¥いま¥なんぢ/が¥きたれ/る/を/も、¥ただ¥ゆめ/と/のみ/こそ¥おぼゆれ。¥もし¥この¥こと/の¥ゆめ/なり/せ/ば、¥さめ/て/の¥のち/は¥いかが−せ/ん」。¥ありわう、「¥こ/は¥うつつ/にて¥さふらふ/なり。¥さて/も¥この¥おん=ありさま/にて、¥いま/まで¥おん=いのち/の¥のび/させ¥たまひ/たる/こそ、¥ふしぎ/に/は¥おぼえ¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、「¥いさ/とよ、¥これ/は¥こぞ¥せうしやう/や¥はんぐわん−にふだう/が¥むかひ/の¥とき、¥その¥せ/に¥み/を/も¥なぐ/べかり/し/を、¥よし−なき¥せうしやう/の、『¥いま−いちど、¥みやこ/の¥おとづれ/を/も¥まて/かし』/など¥なぐさめ−おき/し/を、¥おろか/に¥もしや/と¥たのみ/つつ、¥ながらへ/ん/と/は¥せ/しか/ども、¥この¥しま/に/は、¥ひと/の¥くひもの/も¥たえ/て¥なき¥ところ/なれ/ば、¥み/に¥ちから/の¥あり/し/ほど/は、¥やま/に¥のぼつ/て¥いわう/と¥いふ¥もの/を¥とり、¥くこく/より¥かよふ¥あきんど/に¥あひ、¥くひもの/に¥かへ/など¥せ/しか/ども、¥ひ/に¥そひ/て¥よわり−ゆけ/ば、¥いま/は¥さやう/の¥わざ/も¥せ/ず。¥かやう/に¥ひ/の¥のどか/なる¥とき/は、¥いそ/に¥いで/て、¥あみうど¥つりうど/に¥て/を¥すり、¥ひざ/を¥かがめ/て、¥うを/を¥もらひ、¥しほひ/の¥とき/は¥かひ/を¥ひろひ、¥あらめ/を¥とり、¥いそ/の¥こけ/に¥つゆ/の−いのち/を¥かけ/て/こそ、¥うき/ながら¥けふ/まで/は¥ながらへ/たれ。¥さら/で/は¥うき−よ/を¥わたる¥よすが/を/ば、¥いか/に−し/つ/らん/と/か¥おもふ/らん」。¥そうづ、「¥これ/にて¥なにごと/を/も¥いは/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥いざ¥わが¥いへ/へ」/と¥のたまへ/ば、¥ありわう、¥あの¥おん=ありさま/にて/も、¥いへ/を¥もち¥たまへ/る¥ふしぎ−さ/よ/と¥おもひ、¥そうづ/を¥かた/にP204¥ひつ−かけ¥まゐらせ、¥をしへ/に¥したがつ/て¥ゆく/ほど/に、¥まつ/の¥ひとむら¥ある¥なか/に、¥よりたけ/を¥はしら/と¥し、¥あし/を¥ゆひ、¥けたはり/に¥わたし、¥うへ/に/も¥した/に/も、¥まつ/の−は/を¥ひし/と¥とり−かけ/たれ/ば、¥あめかぜ¥たまる/べう/も¥みえ/ず。¥ありわう、「¥あな¥あさまし。¥もと/は¥ほつしようじ/の¥じむしき/にて、¥はちじふ−よ−か−しよ/の¥しやうむ/を¥つかさどり¥たまひ/しか/ば、¥むねかど¥ひらかど/の¥うち/に、¥しごひやく−にん/の¥しよじうーけんぞく/に¥ゐねう−せ/られ/て¥おはせ/し¥ひと/の、¥まのあたり¥かかる¥うき−め/に¥あはせ¥たまふ¥こと/の¥ふしぎ−さ/よ。¥ごふ/に¥さまざま¥あり、¥じゆんげん、¥じゆんしやう、¥じゆんごごふ/と¥いへ/り。¥そうづ¥いちご/が¥あひだ、¥み/に¥もちふる¥ところ、¥みな¥だい−がらん/の¥じもつ¥ぶつもつ/なら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥され/ば¥かの¥しんぜ−むざん/の¥つみ/に¥よつ/て、¥こんじやう/にて¥はや¥かんぜ/られ/けり/と/ぞ¥みえ/たり/ける」。¥
(『そうづしきよ』)S0309¥そうづ、¥こ/は¥うつつ/にて¥あり/けり/と¥おもひ−さだめ/て、「¥こぞ¥せうしやう/や¥はんぐわん−にふだう¥むかひ/の¥とき/も、¥これ=ら/が¥ふみ/と¥いふ¥こと/も¥なし。¥いま¥また¥なんぢ/が¥たより/に/も、¥かく/と/も¥いは/ざり/けり/な」/と¥のたまへ/ば、¥ありわう¥なみだ/に¥むせび、¥うつぶし/て、¥しばし/は¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず。¥やや¥あつ/て¥おき−あ(お)がり、¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥きみ/の¥にしはちでう/へ¥いで/させ¥たまひ/し¥のち、¥くわんにん¥まゐつ/て、¥しざい−ざふぐ/を¥つゐふく−し、¥み=うち/の¥もの=ども¥からめ−とり、¥ご=むほん/の¥しだい/を¥たづね−とひ、¥みな¥うしなひ−はて¥さふらひ/き。¥きたのかた/は¥をさなき¥ひと/を¥かくし−かね¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥くらま/の¥おく/に¥しのう/で¥おん=わたり¥さふらひ/し/に/も、¥この¥わらは/ばかり/こそ、¥ときどき¥まゐつ/て¥おん=みやづかへ¥つかまつり¥さふらふ/なり。¥いづれ/も¥おん=なげき/の¥おろか/なる¥かた/は¥さふらは/ね/ども、¥なか/に/も¥をさなき¥ひと/は、¥あまり/に¥こひ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥まゐり¥さふらふ¥たび−ごと/に/は、『¥いか/に¥ありわう/よ、¥われ¥きかいがしま/とかや/へP205¥ぐし/て¥まゐれ』/と¥のたまひ/て、¥むつから/せ¥たまひ/し/が、¥すぎ¥さふらひ/し¥きさらぎ/に、¥もがさ/と¥まうす¥こと/に、¥うせ/させ¥おはしまし¥さふらひ/ぬ。¥きたのかた/は¥その¥おん=なげき/と¥まうし、¥また¥これ/の¥おん=こと/と¥まうし、¥ひとかた/なら/ぬ¥おん=もの−おもひ/に¥おぼしめし−しづま/せ¥たまひ/て、¥うち−ふさ/せ¥たまひ/し/が、¥さんぬる¥さんぐわつ−ふつかのひ、¥つひに¥はかなく¥なら/せ¥たまひ/て¥さふらひ/ぬ。¥いま/は¥ひめ−ごぜん/ばかり/こそ、¥なら/の¥をば−ごぜん/の¥おん=もと/に¥しのう/で¥おはし/ける、¥それ/より¥おん=ふみ¥たまはつ/て¥まゐつ/て¥さふらふ」/とて、¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥そうづ¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまへ/ば、¥ありわう/が¥まうす/に¥たがは/ず¥かか/れ/たり。¥おく/に/は、「¥などや¥さん−にん¥ながさ/れ/て¥まします¥ひと/の、¥ににん/は¥めし−かへさ/れ/て¥さぶらふ/に、¥なに/とて¥いち−にん¥のこさ/れ/て、¥いま/まで¥おん=のぼり/も¥さぶらは/ぬ/ぞ。¥あはれ¥たかき/も¥いやしき/も、¥をんな/の¥み/ほど¥いふ−かひ−なき¥こと/は¥さぶらは/ず。¥をとこ/の¥み/にて/も¥さぶらは/ば、¥わたら/せ¥たまふ¥しま/へ/も、¥など/か¥たづね−まゐら/で¥さぶらふ/べき。¥この¥わらは/を¥おん=とも/にて、¥いそぎ¥のぼら/せ¥たまへ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。「¥これ¥みよ、¥ありわう/よ。¥この¥こ/が¥ふみ/の¥かきやう/の¥はかな−さ/よ。¥おのれ/を¥とも/にて、¥いそぎ¥のぼれ/と¥かい/たる¥こと/の¥うらめし−さ/よ。¥しゆんくわん/が¥こころ/に¥まかせ/たる¥うき−み/なら/ば、¥いかで/か¥この¥しま/にて¥みとせ/の¥はるあき/を/ば¥おくる/べき。¥ことし/は¥じふに/に¥なる/と¥おぼゆる/が、¥これ−ほど/に/は¥かなう/て/は、¥いかで/か¥ひと/に/も¥まみえ、¥みやづかへ/を/も¥し/て、¥み/を/も¥たすく/べき/か」/とて¥なか/れ/ける/に/ぞ、¥ひと/の¥おや/の¥こころ/は¥やみ/に¥あら/ね/ども、¥こ/を¥おもふ¥みち/に¥まよふ/と/は、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。P206「¥
この¥しま/へ¥ながさ/れ/て¥のち/は、¥こよみ/も¥なけれ/ば、¥つきひ/の¥たつ/を/も¥しら/ず。¥ただ¥おのづから¥はな/の¥ちり、¥は/の¥おつる/を¥み/て/は、¥みとせ/の¥はるあき/を¥わきまへ、¥せみ/の¥こゑ¥ばくしう/を¥おくれ/ば¥なつ/と¥おもひ、¥ゆき/の¥つもる/を¥ふゆ/と¥しる。¥びやくぐわつ¥こくぐわつ/の¥かはり−ゆく/を¥み/て/は、¥さんじふにち/を¥わきまへ、¥ゆび/を¥をつ/て¥かぞふれ/ば、¥ことし/は¥むつ/に¥なる/と¥おぼゆる¥をさなき¥もの/も、¥はや¥さきだち/ける¥ござんなれ。¥にしはちでう/へ¥いで/し¥とき、¥この¥こ/が¥ゆか/ん/と¥したひ/し/を、¥やがて¥かへら/うずる/ぞ/と¥なぐさめ−おき/し/が、¥ただいま/の¥やう/に¥おぼゆる/ぞ/や。¥それ/を¥かぎり/と/だに/も¥おもは/ましか/ば、¥いま¥しばらく/も¥など/か¥み/ざら/ん。¥おや/と¥なり¥こ/と¥なり、¥ふうふ/の¥えん/を¥むすぶ/も、¥みな¥この−よ¥ひとつ/に¥かぎら/ぬ¥ちぎり/ぞ/かし。¥いま/は¥ひめ/が¥こと/ばかり/こそ¥こころ−ぐるしけれ/ども、¥それ/は¥いきみ/なれ/ば、¥なげき/ながら/も¥すごさ/んず/らん。¥さ/のみ¥ながらへ/て、¥おのれ/に¥うき−め/を¥みせ/ん/も、¥わが−み/ながら¥つれなかる/べし」/とて、¥おのづから¥しよくじ/を¥とどめ、¥ひとへに¥みだ/の¥みやうがう/を¥となへ、¥りんじう−しやうねん/を/ぞ¥いのら/れ/ける。¥ありわう¥わたつ/て¥にじふさんにち/と¥まうす/に、¥そうづ¥いほり/の¥うち/にて、¥つひに¥をはり¥たまひ/ぬ。¥とし¥さんじふしち/と/ぞ¥きこえ/し。¥ありわう¥むなしき¥すがた/に¥とり−つき¥たてまつり、¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし、¥こころ/の¥ゆく/ほど¥なき−あき/て、「¥やがて¥ごせ/の¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらへ/ども、¥この−よ/に/は¥ひめ−ごぜん/ばかり/こそ¥わたら/せ¥たまひ¥さふらへ。¥ごせ¥とぶらひ¥まゐらす/べき¥ひと/も¥さふらは/ず。¥しばし¥ながらへ/て¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐらす/べし」/とて、¥ふしど/を¥あらため/ず、¥いほり/を¥きり−かけ、¥まつ/の¥かれえだ、¥あし/の¥かれば/を¥ひし/と¥とり−かけ/て、¥もしほ/の¥けぶり/と¥なし¥たてまつり、¥だびこと¥をへ/ぬれ/ば、¥はくこつ/をP207¥ひろひ¥くび/に¥かけ、¥また¥あきんど−ぶね/の¥たより/にて、¥くこく/の¥ぢ/に/ぞ¥つき/に/ける。¥それ/より¥そうづ/の¥おん=むすめ/の、¥しのう/で¥おはし/ける¥おん=もと/に¥まゐつ/て、¥あり/し¥やう/を¥はじめ/より¥こまごま/と¥かたり¥まうす。「¥なかなか¥ふみ/を¥ごらんじ/て/こそ、¥いとど¥おん=おもひ/は¥まさら/せ¥たまひ/て¥さふらひ/しか。¥くだん/の¥しま/に/は、¥すずり/も¥かみ/も¥なけれ/ば、¥おん=ぺんじ/に/も¥およば/ず。¥おぼしめさ/れ/つる¥おん=こと=ども/は、¥さながら¥むなしう/て¥やみ¥さふらひ/ぬ。¥いま/は¥しやうじやう−せせ/を¥おくり、¥たしやう−くわうごふ/を/ば¥へだて¥たまふ/とも、¥いかで/か¥おん=こゑ/を/も¥きき、¥おん=すがた/を/も¥み¥まゐら/させ¥たまふ/べき。¥ただ¥いか/に/も−し/て、¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐら/させ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥ひめ−ごぜん¥きき/も¥あへ¥たまは/ず、¥ふし−まろび/て/ぞ¥なか/れ/ける。¥やがて¥じふに/の¥とし¥あま/に¥なり、¥なら/の¥ほつけじ/に¥おこなひ−すまし/て、¥ぶも/の¥ごせ/を¥とぶらひ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥ありわう/は¥しゆんくわん−そうづ/の¥ゆゐこつ/を¥くび/に¥かけ、¥かうや/へ¥のぼり、¥おく/の¥ゐん/に¥をさめ/つつ、¥れんげだに/にて¥ほふし/に¥なり、¥しよ−こく−しちだう¥しゆげふ−し/て、¥しゆ/の¥ごせ/を/ぞ¥とぶらひ/ける。¥かやう/に¥ひとびと/の¥おもひ−なげき/の¥つもり/ぬる、¥へいけ/の¥すゑ/こそ¥おそろしけれ。¥
「つじかぜ」(『つじかぜ』)S0310¥さる−ほど/に¥おなじき−ごぐわつ−じふににち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥きやうちう/に¥つじかぜ¥おびたたしう¥ふい/て、¥じんをくP208¥おほく¥てんだう−す。¥かぜ/は¥なかのみかど−きやうごく/より¥おこつ/て、¥ひつじさる/の¥かた/へ¥ふい/て¥ゆく/に、¥むねかど¥ひらかど¥ふき−ぬい/て、¥しごちやう¥じつちやう/ばかり¥ふき¥もて¥ゆき、¥けた、¥なげし、¥はしら/など/は、¥こくう/に¥さんざい−し、¥ひはだ、¥ふきいた/の¥るゐ、¥ふゆ/の¥こ/の−は/の¥かぜ/に¥みだるる/が/ごとし。¥おびたたしう¥なり−どよむ¥おと/は、¥かの¥じごく/の¥ごふふう/なり/とも、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥ただ¥しやをく/の¥はそんずる/のみ/なら/ず、¥いのち/を¥うしなふ¥もの/も¥おほし。¥ぎうば/の¥たぐひ、¥かず/を¥しら/ず¥うち−ころさ/る。¥これ¥ただごと/に¥あら/ず、¥みうら¥ある/べし/とて、¥じんぎくわん/に/して¥みうら¥あり。「¥いま¥ひやく−にち/の¥うち/に、¥ろく/を¥おもんずる¥だいじん/の¥つつしみ、¥べつし/て/は¥てんが/の¥だいじ、¥ぶつぽふ¥わうぼふ¥とも/に¥かたぶき、¥ならびに¥ひやうがく¥さうぞく−す/べし」/と/ぞ、¥じんぎくわん、¥おんやうりやう¥とも/に¥うらなひ¥たてまつる。¥
「いしもんだふ」(『いしもんだふ』)S0311¥おなじき¥なつ/の¥ころ、¥こまつの−おとど/は、¥かやう/の¥こと=ども/に、¥よろづ¥こころ−ぼそく/や¥おもは/れ/けん、¥その−ころ¥くまの−さんけい/の¥こと¥あり/けり。¥ほんぐう−しようじやうでん/の¥おん=まへ/にて、¥しづか/に¥ほつせ¥まゐらせ/て、¥よ/も−すがら¥けいびやく−せ/られ/ける/は、「¥しんぷ¥にふだう−しやうこく/の¥てい/を¥みる/に、¥あくぎやく−ぶだう/に/して、¥やや/も¥すれ/ば¥きみ/を¥なやまし¥たてまつる。¥その¥ふるまひ/を¥みる/に、¥いちご/の¥えいぐわ¥なほ¥あやふし。¥しげもり¥ちやうし/と/して、¥しきり/に¥いさめ/を¥いたす/と¥いへ/ども、¥み¥ふせう/の¥あひだ、¥かれ¥もつて¥ふくよう−せ/ず。P209¥しえふ¥れんぞく−し/て、¥しん/を¥あらはし¥な/を¥あげ/ん¥こと¥かたし。¥この−とき/に¥あたつ/て、¥しげもり¥いやしう/も¥おもへ/り。¥なまじひ/に¥れつし/て、¥よ/に¥ふちん−せ/ん¥こと、¥あへて¥りやうしん−かうし/の−ほふ/に¥あら/ず。¥しか/じ、¥な/を¥のがれ¥み/を¥しりぞい/て、¥こんじやう/の¥めいばう/を¥なげ−すて/て、¥らいせ/の¥ぼだい/を¥もとめ/ん/に。¥ただし¥ぼんぶ¥はくぢ、¥ぜひ/に¥まどへ/る/が¥ゆゑ/に、¥こころざし/を¥なほ¥ほしいまま/に¥せ/ず、¥なむ−ごんげん−こんがうどうじ。¥ねがは−く/は、¥しそん¥はんえい¥たえ/ず/して、¥つかへ/て¥てうてい/に¥まじはる/べく/ば、¥にふだう/の¥あくしん/を¥やはらげ/て、¥てんが/の¥あんぜん/を¥え/せ/しめ¥たまへ。¥えいえう¥また¥いちご/を¥かぎつ/て、¥こうこん¥はぢ/に¥およぶ/べく/ば、¥しげもり/が¥うんめい/を¥つづめ/て、¥らいせ/の¥くりん/を¥たすけ¥たまへ。¥りやうか/の¥ぐぐわん¥ひとへに¥みやうじよ/を¥あふぐ」/と、¥かんたん/を¥くだい/て¥きねん−せ/られ/けれ/ば、¥とうろう/の¥ひ/の¥やう/なる¥もの/の、¥おとど/の¥おん=み/より¥いで/て、¥ばつ/と¥きゆる/が/ごとく/して¥うせ/に/けり。¥ひと¥あまた¥み¥たてまつり/けれ/ども、¥おそれ/て¥これ/を¥まうさ/ず。¥おとど¥げかう/の¥とき、¥いはだがは/を¥わたら/れ/ける/に、¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり¥いげ/の¥きんだち、¥じやうえ/の¥した/に¥うすいろ/の¥きぬ/を¥き/て、¥なつ/の¥こと/なれ/ば、¥なにと−なう¥みづ/に¥たはぶれ¥たまふ/ほど/に、¥じやうえ/の¥ぬれ/て¥きぬ/に¥うつり/たる/が、¥ひとへに¥いろ/の/ごとく/に¥みえ/ける/を、¥ちくごの−かみ−さだよし¥これ/を¥み−とがめ/て、「¥なに/と/やらん¥あの¥おん=じやうえ/の、¥よ/に¥いまはし=げ/に¥みえ/させ¥ましまし¥さふらふ。¥いそぎ¥めし−かへ/らる/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥おとど、「¥さて/は¥わが¥しよぐわん¥すでに¥じやうじゆ−し/に/けり。¥あへて¥その¥じやうえ¥あらたむ/べから/ず」/とて、¥いはだがは/より¥くまの/へ、¥べつし/て¥よろこび/の¥ほうへい/を/ぞ¥たて/られ/ける。¥ひと¥あやし/と¥おもへ/ども、¥なほ¥その¥こころ/を/ばP210¥え/しめ¥たまは/ず。¥しかる/に¥この¥きんだち、¥ほど−なく¥やがて、¥まこと/の¥いろ/を¥き¥たまひ/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥その−のち¥おとど¥げかう/の¥とき、¥いくばく/の¥ひかず/を¥へ/ず/して、¥やまひ¥つき¥たまひ/ぬ。¥ごんげん¥すでに¥ご=なふじゆ¥ある/に/こそ/とて、¥れうぢ/を/も¥し¥たまは/ず。¥まして¥きたう/を/も¥いたさ/れ/ず。¥
その−ころ¥そうてう/より¥すぐれ/たる¥めいい¥わたつ/て、¥ほんてう/に¥やすらふ¥こと¥あり/けり。¥をりふし¥にふだう−しやうこく/は、¥ふくはら/の¥べつげふ/に¥おはし/ける/が、¥ゑつちうの−ぜんじ−もりとし/を¥ししや/にて、¥こまつ=どの/へ¥のたまひ−つかはさ/れ/ける/は、「¥しよらう¥いよいよ¥だいじ/なる¥よし、¥その¥きこえ¥あり。¥かねては¥また¥そうてう/より¥すぐれ/たる¥めいい¥わたれ/り。¥をりふし¥これ/を¥よろこび/と¥す。¥よつて¥かれ/を¥めし−しやうじ/て、¥いれう/を¥くはへ/しめ¥たまへ」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥おとど¥たすけ−おこさ/れ、¥もりとし/を¥おん=まへ/へ¥めし/て¥たいめん¥あり。「¥まづ¥いれう/の¥こと、¥かしこまつ/て¥うけたまはり¥さふらひ/ぬ/と¥まうす/べし。¥ただし¥なんぢ/も¥よく¥うけたまはれ。¥えんぎの−みかど/は、¥さ/ばかん/の¥けんわう/にて¥わたら/せ¥たまひ/しか/ども、¥いこく/の¥さうにん/を、¥みやこ/の¥うち/へ¥いれ/られ/たり/し¥こと/を/ば、¥まつだい/まで/も¥けんわう/の¥おん=あやまり、¥ほんてう/の¥はぢ/と/こそ¥みえ/たれ。¥いはんや¥しげもり/ほど/の¥ぼんにん/が、¥いこく/の¥いし/を¥わうじやう/へ¥いれ/ん¥こと、¥まつたく¥くに/の¥はぢ/に¥あら/ず/や。¥かん/の¥かうそ/は、¥さんじやく/の¥けん/を¥ひつ−さげ/て、¥てんが/を¥をさめ/し/に、¥わいなん/の¥げいふ/を¥うち/し¥とき、¥りうし/に¥あたつ/て¥きず/を¥かうぶる。¥きさき¥りよたいこう、¥りやうい/を¥むかへ/て¥みせ/しむる/に、¥い/の¥いはく、¥この¥きず¥ぢし/つ/べし。¥ただし¥ごじつこん/の¥きん/を¥あたへ/ば¥ぢせ/ん/と¥いふ。¥かうそ¥のたまはく、¥われ¥まもり¥つよかつ/し/ほど/は、¥おほく/のP211¥たたかひ/に¥あう/て¥きず/を¥かうぶり/しか/ども、¥その¥いたみ¥なし。¥うん¥すでに¥つき/ぬ。¥めい/は¥すなはち¥てん/に¥あり、¥へんじやく/と¥いふ/とも¥なん/の¥えき/か¥あら/ん。¥しかれ/ば¥また¥かね/を¥をしむ/に¥に/たり/とて、¥ごじつこん/の¥きん/を¥いし/に¥あたへ/ながら、¥つひに¥ぢせ/ざり/き。¥せんげん¥みみ/に¥あり、¥いま¥もつて¥かんじん−す。¥しげもり¥いやしくも¥きうけい/に¥れつし¥さんたい/に¥のぼる。¥その¥うんめい/を¥はかる/に、¥もつて¥てんしん/に¥あり。¥なんぞ¥てんしん/を¥さつせ/ず/して、¥おろか/に¥いれう/を¥いたはしう¥せ/ん/や。¥しよらう¥もし¥ぢやうごふ/たら/ば、¥いれう/を¥くはふる/とも¥えき¥なから/ん/か。¥また¥ひごふ/たら/ば、¥れうぢ/を¥くはへ/ず/とも、¥たすかる¥こと/を¥う/べし。¥かの¥ぎば/が¥いじゆつ¥およば/ず/して、¥だいかく−せそん、¥めつど/を¥ばつだいが/の¥ほとり/に¥となふ。¥これ¥すなはち¥ぢやうごふ/の¥やまひ、¥いやさ/ざる¥こと/を¥しめさ/ん/が¥ため/なり。¥ぢする/は¥ぶつたい/なり。¥れうする/は¥ぎば/なり。¥
ぢやうごふ¥もし¥いれう/に¥かかはる/べう¥さふらは/ば、¥あに¥しやくそん¥にふめつ¥あら/ん/や。¥ぢやうごふ¥なほ¥ぢする/に¥たへ/ざる¥むね¥あきらけし。¥しかれ/ば¥しげもり/が¥み、¥ぶつたい/に¥あら/ず、¥めいい¥また¥ぎば/に¥およぶ/べから/ず、¥たとひ¥しぶ/の¥しよ/を¥かんがみ/て、¥ひやく−れう/に¥ちやうず/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥うだい/の¥ゑしん/を¥ぐれう−せ/ん。¥たとひ¥また¥ごきやう/の¥せつ/に¥つまびらか/に/して、¥しゆびやう/を¥いやす/と¥いふ/とも、¥あに¥ぜんぜ/の¥ごふびやう/を¥ぢせ/ん/や。¥もし¥かの¥いじゆつ/に¥よつ/て¥ぞんめい−せ/ば、¥ほんてう/の¥いだう¥なき/に¥に/たり。¥いじゆつ¥かうげん¥なく/ば、¥めんえつ¥しよせん¥なし。¥なかんづく¥ほんてう¥ていしん/の¥げさう/を¥もつて、¥いてう¥ふいう/の¥らいかく/に¥まみえ/ん¥こと、¥かつうは¥くに/の¥はぢ、¥かつうは¥みち/の¥りようち/なり。¥たとひ¥しげもり¥めい/は¥ばうず/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥くに/の¥はぢ/を¥おもふ¥こころ/を¥ぞんぜ/ざら/ん。¥この¥よし/を¥まうせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。P212¥
もりとし¥なくなく¥ふくはら/へ¥はせ−くだり、¥この¥よし/を¥まうし/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく、「¥くに/の¥はぢ/を¥おもふ¥だいじん、¥しやうこ/に¥いまだ¥きか/ず。¥まして¥まつだい/に¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥につぽん/に¥さうおう−せ/ぬ¥だいじん/なれ/ば、¥いかさま/に/も¥こんど¥うせ/られ/な/んず」/とて、¥いそぎ¥みやこ/へ¥のぼら/れ/けり。¥しちぐわつ−にじふはちにち、¥こまつ=どの¥しゆつけ−し¥たまひ/ぬ。¥ほふみやう/は¥じやうれん/と/こそ¥つき¥たまへ。¥やがて¥はちぐわつ−ひとひのひ、¥りんじう−しやうねん/に¥ぢうし/て¥うせ¥たまひ/ぬ。¥おん=とし¥しじふさん。¥よ/は¥さかり/と/こそ¥みえ/つる/に、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥にふだう−しやうこく/の、¥さ/しも¥よこがみ/を¥やら/れ/し/に/も、¥この¥ひと/の¥おはし/て、¥やうやう/に¥なだめ−のたまひ/つれ/ば/こそ、¥よ/は¥けふ/まで/も¥おだしかり/つれ。¥この−のち¥てんが/に¥いか/ばかり/の¥こと/か¥いで−こ/んず/らん/とて、¥じやうげ¥みな¥なげき−あへ/り。¥また¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥かたざま/の¥ひとびと、¥よ/は¥ただいま¥だいしやう=どの/へ¥まゐり/な/んず/とて、¥いさみ−よろこび−あは/れ/けり。¥ひと/の¥おや/の¥こ/を¥おもふ¥ならひ/は、¥おろか/なる/が、¥さきだつ/だに/も¥かなしき/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は¥たうけ/の¥とうりやう、¥たうせい/の¥けんじん/にて¥ましませ/ば、¥おんあい/の¥わかれ、¥いへ/の¥すゐび、¥かなしん/で/も¥なほ¥あまり¥あり。¥され/ば¥よ/に/は¥りやうしん/を¥うしなへ/る¥こと/を¥なげき、¥いへ/に/は¥ぶりやく/の¥すたれ/ぬる¥こと/を¥かなしむ。¥およそ/は¥この¥おとど、¥ぶんしやう¥うるはしう/して、¥こころ/に¥ちう/を¥そんじ、¥さいげい¥すぐれ/て、¥ことば/に¥とく/を¥かね¥たまへ/り。P213¥
「むもんのさた」(『むもん』)S0312¥てんぜい¥この¥おとど/は、¥ふしん¥だいいち/の¥ひと/にて、¥みらい/の¥こと/を/も¥かねて¥さとり¥たまひ/ける/に/や、¥さんぬる¥しんぐわつ−なぬか/の¥よ/の¥ゆめ/に、¥み¥たまひ/たり/ける¥こと/こそ¥ふしぎ/なれ。¥たとへば¥ある¥はまぢ/を、¥はるばる/と¥あゆみ−ゆき¥たまふ/ほど/に、¥かたはら/に¥おほき/なる¥とりゐ/の¥あり/ける/を、¥おとど¥ゆめ/の¥うち/に、「¥あれ/は¥いか/なる¥おん=とりゐ/やらん」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥かすが−だい−みやうじん/の¥おん=とりゐ/なり」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ひと¥くんじゆ−し/たり。¥その¥なか/より¥おほき/なる¥ほふし/の¥かうべ/を、¥たち/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ/たる/を、¥おとど、「¥なにもの/の¥くび/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥へいけ−だいじやう−にふだう=どの/の、¥あくぎやう¥てうくわ−し¥たまへ/る/に¥よつ/て、¥たうしや¥だい−みやうじん/の¥めし−とら/せ¥たまひ/て¥さふらふ」/と¥まうす/と¥おぼえ/て¥ゆめ¥さめ/ぬ。¥たうけ/は¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥てうてき/を¥たひらげ、¥けんじやう¥み/に¥あまり、¥ていそ、¥だいじやうだいじん/に¥いたり、¥いちぞく/の¥しようじん¥ろくじふ−よ−にん、¥にじふ−よ−ねん/の¥この−かた、¥くわん−かかい¥てんが/に¥かた/を¥ならぶる¥ひと/も¥なかり/つる/に、¥さて/は¥にふだう/の¥あくぎやう¥てうくわ−し¥たまへ/る/に¥よつ/て、¥たうけ/の¥うんめい/の¥すゑ/に¥なる/に/こそ/と¥おぼしめし/て、¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ。¥をりふし¥つまど/を¥ほとほとと¥うち−たたく¥もの¥いで−き/たり。¥おとど、「¥なにもの/ぞ、¥あれ¥きけ」/とP214¥のたまへ/ば、「¥せのをの−たらう−かねやす/が、¥こんや¥あまり/に¥ふしぎ/の¥こと/を¥み¥さふらう/て、¥まうし−あげ/ん/が¥ため/に、¥よ/の¥あくる/が¥おそう¥おぼえ/て¥まゐつ/て¥さふらふ。¥おん=まへ/の¥ひと/を¥はるか/に¥のけ/られ¥さふらへ」/とて、¥ひと/を¥のけ/て¥たいめん¥あり/けり。¥おとど/の¥ごらんぜ/られ/ける¥ゆめ/に、¥すこし/も¥たがは/ず、¥つぶさ/に¥かたり¥まうし/たり/けれ/ば、¥さて/こそ¥かねやす/は、¥しん/に/も¥つうじ/たる/ものかな/と/ぞ、¥おとど/も¥かんじ¥たまひ/ける。¥
その¥あした¥ちやくし¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり、¥ゐん/へ¥まゐら/ん/とて¥いで−たた/れ/ける/を、¥おとど¥よび¥たてまつ/て、「¥ひと/の¥おや/の¥かやう/の¥こと¥まうす/は、¥をこがましけれ/ども、¥ご=へん/は¥ひと/の¥こ/に/は¥すぐれ/て¥みえ¥たまへ/り。¥あれ¥せうしやう/に¥さけ¥すすめよ」/と¥のたまへ/ば、¥ちくごの−かみ−さだよし¥おん=しやく/に¥まゐる。¥これ/を/ば¥せうしやう/に/こそ¥たぶ/べけれ/ども、¥おや/より¥さき/に/は¥よも¥たまはら/じ/とて、¥おとど¥さんど¥くん/で、¥その−のち¥せうしやう=どの/に/ぞ¥ささ/れ/ける。¥せうしやう¥また¥さんど¥うけ¥たまふ¥とき、「¥あれ¥せうしやう/に¥ひきでもの−せよ」/と¥のたまへ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥あかぢ/の−にしき/の¥ふくろ/に¥いれ/たる¥おん=たち¥もつ/て¥まゐつ/たり。¥せうしやう、¥これ/は¥たうけ/に¥つたはる¥こがらす/と¥いふ¥たち/やらん/と、¥うれし=げ/に¥み¥たまへ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥だいじん¥さう/の¥とき¥もちふる¥むもん/の−たち/なり。¥その−とき¥せうしやう¥もつて/の−ほか/に¥きしよく¥かはつ/て¥みえ¥たまへ/ば、¥おとど¥なみだ/を¥はらはらと¥ながい/て、「¥それ/は¥さだよし/が¥ひがごと/に/は¥あら/ず。¥だいじん¥さう/の¥とき¥はい/て¥とも−する¥むもん/と¥いふ¥たち/なり。¥ひごろ/は¥にふだう=どの¥いか/に/も−なり¥たまは/ば、¥しげもり¥はい/て¥とも−せ/ん/と/こそ¥ぞんぜ/しか。¥いま/は¥しげもり、¥にふだう=どの/に¥さきだち¥たてまつら/んずれ/ば、¥ご=へん/に¥たぶ/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。P215¥せうしやう¥とかう/の¥へんじ/に/も¥および¥たまは/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥しゆくしよ/に¥かへり、¥その−ひ/は¥しゆつし/も¥し¥たまは/ず、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥その−のち¥おとど¥くまの/へ¥まゐり¥げかう−し/て、¥いくばく/の¥ひかず/を¥へ/ず/して、¥やまひ¥つい/て¥うせ¥たまひ/ける/に/こそ、¥げに/も/と¥おもひ−しら/れ/けれ。¥
「とうろう」(『とうろのさた』)S0313¥すべて¥この¥おとど/は、¥めつざい−しやうぜん/の¥こころざし¥ふかう¥おはし/けれ/ば、¥たうらい/の¥ふちん/を¥なげき、¥ろくはち−ぐぜい/の¥ぐわん/に¥なぞらへ/て、¥ひがしやま/の¥ふもと/に、¥しじふはちけん/の¥しやうじや/を¥たて、¥いつけん/に¥ひとつ−づつ、¥しじふはち/の¥とうろう/を¥かけ/られ/たり/けれ/ば、¥くぼん/の¥うてな¥め/の¥まへ/に¥かがやき、¥くわうえう¥らんけい/を¥みがい/て、¥じやうど/の¥みぎり/に¥のぞみ/ぬる/が/ごとし。¥まいげつ¥じふしにち¥じふごにち/を¥てんじ/て、¥だいねんぶつ¥あり/しか/ば、¥たうけ¥たけ/の¥ひとびと/の¥もと/より、¥みめ¥よく¥わかう¥さかん/なつ/し¥にようばう/を¥しやうじ/て、¥いつけん/に¥ろくにん−づつ、¥にひやくはちじふはちにん/の¥じしゆ/と¥さだめ/て、¥かの¥りやうにち/が¥あひだ/は、¥いつしん−ふらん/の¥しようみやう/の¥こゑ¥おこたら/ず。¥まことに¥らいかう−いんぜふ/の¥ひぐわん/も、¥この¥ところ/に¥やうがう/を¥たれ、¥せつしゆ−ふしや/の¥ひかり/も、¥この¥おとど/を¥てらし¥たまふ/か/と/ぞ¥おぼえ/たる。¥じふごにち/の¥につちう/を¥けちぐわん/と/して、¥だいねんぶつ¥あり/けり。¥おとど¥ぎやうだう/の¥なか/に¥まじはつ/て、¥さいはう/に¥むかひ¥て/をP216¥あはせ、「¥なむ¥あんやうせかい/の¥けうしゆ、¥みだぜんぜい、¥さんがい−ろくだう/の¥しゆじやう/を、¥あまねく¥さいど−し¥たまへ」/と、¥ゑかう−ほつぐわん−し¥たまへ/ば、¥みる¥ひと¥じひしん/を¥おこし、¥きく¥もの¥かんるゐ/を/ぞ¥もよほし/ける。¥それ/より/して/こそ、¥この¥おとど/を¥とうろう/の−だいじん/と/は¥まうし/けれ。¥
「かねわたし」(『かねわたし』)S0314¥おとど¥また¥いか/なる¥ぜんごん/を/も¥し/て、¥ごせ¥とぶらは/れ/ばや/と¥おもは/れ/ける/が、¥わが¥てう/に/は¥いか/なる¥だい=ぜんごん/を¥し−おい/たり/とも、¥しそん¥あひ−つづい/て、¥しげもり/が¥ごせ¥とぶらは/ん¥こと¥あり−がたし。¥たこく/に¥いか/なる¥ぜんごん/を/も¥し/て、¥ごせ¥とぶらは/れ/ん/とて、¥あんげん/の¥はる/の¥ころ、¥ちんぜい/より¥めうでん/と¥いふ¥せんどう/を¥めし−のぼせ、¥ひと/を¥はるか/に¥のけ/て¥たいめん¥あり。¥こがね/を¥さんぜんごひやく−りやう¥めし−よせ/て、「¥なんぢ/は¥きこゆる¥だい=しやうじき/の¥もの/なれ/ば」/とて、「¥ごひやく−りやう/を/ば¥なんぢ/に¥え/さす。¥さんぜんりやう/を/ば¥そうてう/へ¥わたし、¥いつせんりやう/を/ば¥いわうさん/の¥そう/に¥ひき、¥にせんりやう/を/ば¥みかど/へ¥まゐらせ/て、¥でんだい/を¥いわうさん/へ¥まうし−よせ/て、¥しげもり/が¥ごせ¥とぶらは/す/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥めうでん¥これ/を¥たまはつ/て、¥ばんり/の¥えんらう/を¥しのぎ/つつ、¥だいそうこく/へ/ぞ¥わたり/ける。¥いわうさん/の¥はうぢやう、¥ぶつせう−ぜんじ¥とくくわう/に¥あひ¥たてまつ/て、¥この¥よし¥まうし/けれ/ば、¥ずゐき¥かんたん−し/て、P217¥やがて¥せんりやう/を/ば、¥いわうさん/の¥そう/に¥ひき、¥にせんりやう/を/ば¥みかど/へ¥まゐらせ/て、¥こまつ=どの/の¥まうさ/れ/つる¥やう/を、¥つぶさ/に¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥みかど¥おほき/に¥かんじ¥おぼしめし/て、¥ごひやくちやう/の¥でんだい/を、¥いわうさん/へ/ぞ¥よせ/られ/ける。¥され/ば¥につぽん/の¥だいじん、¥たひらの−あそん−しげもり=こう/の¥ごしやう−ぜんしよ/と¥いのる¥こと、¥いま/に¥あり/と/ぞ¥うけたまはる。¥(『ほふいんもんだふ』)S0315¥にふだう−しやうこく、¥こまつ=どの/に/は¥おくれ¥たまひ/ぬ。¥よろづ¥こころ−ぼそく/や¥おもは/れ/けん、¥ふくはら/へ¥はせ−くだり、¥へいもん−し/て/こそ¥おはし/けれ。¥
「ほふいんもんだふ」¥おなじき−じふいちぐわつ−なぬか/の¥よ/の¥いぬ/の−こく/ばかり、¥だいぢ¥おびたたしう¥うごい/て¥やや¥ひさし。¥おんやう/の−かみ−あべの−たいしん、¥いそぎ¥だいり/へ¥はせ−まゐり、「¥こんど/の¥ぢしん、¥せんもん/の¥さす¥ところ、¥その¥つつしみ¥かろから/ず¥さふらふ。¥たう−だう¥さんきやう/の¥なか/に、¥こんききやう/の¥せつ/を¥み¥さふらふ/に、¥とし/を¥え/て/は¥とし/を¥いで/ず、¥つき/を¥え/て/は¥つき/を¥いで/ず、¥ひ/を¥え/て/は¥ひ/を¥いで/ず、¥もつて/の−ほか/に¥くわきふ/に¥さふらふ」/とて、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながし/けれ/ば、¥てんそう/の¥ひと/も¥いろ/を¥うしなひ、¥きみ/も¥えいりよ/を¥おどろか/せ¥おはします。¥わかき¥くぎやう−てんじやうびと/は、「¥けしから/ぬ¥やすちか/が¥なきやう/かな。¥ただいま¥なにごと/の¥ある/べき/か」/とて、¥いちど/に¥どつと/ぞ¥わらひ−あは/れ/ける。¥され/ども¥このP218¥やすちか/は、¥せいめい¥ごだい/の¥べうえい/を¥うけ/て、¥てんもん/は¥えんげん/を¥きはめ、¥すゐでう¥たなごころ/を¥さす/が/ごとし。¥いちじ/も¥たがは/ざり/けれ/ば、¥さす/の−みこ/と/ぞ¥まうし/ける。¥いかづち/の¥おち−かかり/たり/しか/ども、¥らいくわ/の¥ため/に¥かりぎぬ/の¥そで/は¥やけ/ながら、¥その¥み/は¥つつが/も¥なかり/けり。¥じやうだい/に/も¥まつだい/に/も¥あり−がたかり/し¥やすちか/なり。¥おなじき−じふしにち、¥にふだう−しやうこく¥いかが/は¥おもひ−なら/れ/たり/けん、¥すせんぎ/の¥ぐんびやう/を¥たなびい/て、¥みやこ/へ¥かへり−いり¥たまふ¥よし¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥なに/と¥きき−わけ/たる¥こと/は¥なけれ/ども、¥じやうげ¥さわぎ−あへ/り。¥また¥なにもの/の¥まうし−いだし/たり/ける/やらん。¥にふだう−しやこく¥てうか/を¥うらみ¥たてまつる/べし/と¥いふ¥ひろう/を¥なす。¥くわんばく=どの/も、¥ないない¥きこしめさ/るる¥むね/も/や¥あり/けん、¥いそぎ¥ご=さんだい¥あつ/て、「¥こんど¥にふだう/の¥じゆらく/は、¥ひとへに¥もとふさ¥ほろぼす/べき¥よし/の¥けつこう/にて¥さふらへ。¥つひに¥いか/なる¥うき−め/に/か¥あひ¥さふらは/んず/らん」/と、¥そうせ/させ¥たまへ/ば、¥しゆしやう¥きこしめし/て、「¥そこ/に¥いか/なる¥め/に/も¥あは/ん/は、¥ひとへに¥わが¥あふ/にて/こそ¥あら/んず/らめ」/とて、¥りようがん/より¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ/ぞ¥かたじけなき。¥まことに¥てんが/の¥おん=まつりごと/は、¥しゆしやう¥せふろく/の¥おん=ぱからひ/にて/こそ¥ある/に、¥これ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や。¥てんせうだいじん、¥かすが−だい−みやうじん/の¥しんりよ/の/ほど/も¥はかり−がたし。¥
おなじき−じふごにち、¥にふだう−しやうこく¥てうか/を¥うらみ¥たてまつる/べき¥こと、¥ひつぢやう/と¥きこえ/しか/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥おどろか/せ¥たまひ/て、¥こ=せうなごん−しんせい/の¥しそく¥じやうけん−ほふいん/を¥お=つかひ/にて、¥にふだう−しやうこく/の¥もと/へ¥つかはさ/る。¥おほせ−くださ/れ/ける/は、「¥きんねん¥てうてい¥しづか/なら/ず/して、¥ひと/の¥こころ/も¥ととのほら/ず。P219¥せけん/も¥いまだ¥らくきよ−せ/ぬ¥さま/に¥なり−ゆく¥こと/を、¥そうべつ/に¥つけ/て¥なげき−おぼしめせ/ども、¥さて¥そこ/に¥あれ/ば、¥ばんじ/は¥たのみ−おぼしめさ/れ/て/こそ¥ある/に、¥たとひ¥てんが/を¥しづむる/まで/こそ¥なから/め、¥あまつさへ¥がうがう/なる¥てい/にて、¥てうか/を¥うらみ¥たてまつる/べし/と¥きこしめす/は¥なにごと/ぞ」/と¥おほせ−くださ/る。¥ほふいん¥ちよくぢやう/を¥うけたまはつ/て、¥にしはちでう/の−てい/に¥ゆき−むかふ。¥にふだう¥たいめん/も¥し¥たまは/ず、¥あした/より¥ゆうべ/に¥およぶ/まで¥また/れ/けれ/ども、¥ぶいん/なり/けれ/ば、¥され/ば/こそ/と¥むやく/に¥おもひ、¥げん−たいふ/の−はんぐわん−すゑさだ/を¥もつて、¥ちよくぢやう/の¥おもむき¥いひ−いれ/させ、「¥いとま¥まうし/て」/とて¥いで/られ/けれ/ば、¥その−とき¥にふだう、「¥ほふいん¥よべ」/とて¥いで/られ/たり。¥よび−かへし/て、「¥やや¥ほふいん/の−おん=ばう、¥じやうかい/が¥まうす¥ところ/は¥ひがごと/か。¥まず¥だいふ/が¥みまかり/ぬる¥こと、¥たうけ/の¥うんめい/を¥はかる/に¥もつて、¥にふだう¥ずゐぶん¥ひるゐ/を¥おさへ/て/こそ¥まかり−すぎ¥さふらひ/しか。¥ご=へん/の¥こころ/に/も¥すゐさつ−し¥たまへ。¥ほうげん¥いご/は、¥らんげき¥うち−つづい/て、¥きみ¥やすい¥こころ/も¥ましまさ/ざり/し/に、¥にふだう/は¥ただ¥おほかた/を¥とり−おこなふ/ばかり/で/こそ¥さふらへ。¥だいふ/こそ¥て/を¥おろし¥み/を¥くだい/て、¥どど/の¥げきりん/を/ば¥しづめ¥まゐらせ¥さふらひ/しか。¥その−ほか¥りんじ/の¥おん=だいじ、¥てうせき/の¥せいむ、¥だいふ/ほど/の¥こうしん/は、¥あり−がたう/こそ¥さふらへ。¥ここ/を¥もつて¥いにしへ/を¥あんずる/に、¥たう/の¥たいそう/は、¥ぎちよう/に¥おくれ/て、¥かなしみ/の¥あまり/に、¥むかし/の¥いんそう/は¥ゆめ/の¥うち/に¥りやうひつ/を¥え、¥いま/の¥ちん/は¥さめ/て/の¥のち¥けんしん/を¥うしなふ/と¥いふ¥ひ/の¥もん/を¥みづから¥かい/て、¥べう/に¥たて/て/だに/こそ¥かなしみ¥たまひ/ける/なれ。¥わが¥てう/に/も、¥まぢかう¥み¥さふらひ/し¥こと/ぞ/かし。¥あきよりの−みんぶきやう/が¥せいきよ−し/たり/し/を/ば、¥こ=ゐん¥こと/に¥おん=なげき¥あつ/て、P220¥やはた/の−ぎやうがう¥えんいん¥あつ/て、¥ぎよ=いう¥なかり/き。¥すべて¥しんか/の¥そつする/を/ば、¥だいだい/の¥みかど、¥みな¥おん=なげき¥ある¥こと/で/こそ¥さふらへ。¥それ/に¥だいふ/が¥ちういん/に、¥やはた/の¥ご=かう¥あつ/て¥ぎよ=いう¥あり/き。¥おん=なげき/の¥いろ、¥いちじ/も¥これ/を¥み/ず。¥たとひ¥だいふ/が¥ちう/を/こそ¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまふ/とも、¥など/か¥にふだう/が¥かなしみ/を/ば、¥おん=あはれみ¥なく/て/は¥さふらふ/べき。¥たとひ¥にふだう/が¥かなしみ/を/こそ¥おん=あはれみ¥なく/とも、¥など/か¥だいふ/が¥ちう/を/ば¥おぼしめし−わすれ/させ¥たまふ/べき。¥ふし¥とも/に¥えいりよ/に¥そむき¥まうす¥こと、¥いま/に¥おいて¥めんぼく/を¥うしなふ。¥これ¥ひとつ。¥つぎ/に¥ゑちぜんの−くに/を/ば、¥しし−そんぞん/まで¥ご=へんかい¥ある/まじき¥よし¥おん=やくそく¥さふらひ/て、¥くだし¥たまひ/て¥さふらひ/しか/ども、¥だいふ/に¥おくれ/て¥のち、¥やがて¥めし−かへさ/れ¥さふらふ/は、¥なん/の¥くわたい/にて¥さふらふ/やらん。¥これ¥ひとつ。¥つぎに¥ちうなごん¥けつ/の¥さふらひ/し¥とき、¥にゐ/の−ちうじやう¥しきり/に¥しよまう¥さふらひ/し/を、¥にふだう¥ずゐぶん¥とり¥まうし/しか/ども、¥つひに¥ご=しよういん¥なく/して、¥くわんばく/の¥そく/を¥なさ/るる¥こと/は¥いか/に。¥たとひ¥にふだう¥いか/なる¥ひきよ¥まうし−おこなふ/とも、¥いちど/は¥など/か¥きこしめし−いれ/で/は¥さふらふ/べき。¥ゐかい/と¥いひ、¥けちやく/と¥いひ、¥りうん¥さう/に¥およば/ざる¥こと/を、¥ひき−ちがへ/させ¥たまふ¥おん=こと/は、¥あまり/に¥ほい−なき¥おん=ぱからひ/と/こそ¥ぞんじ¥さふらへ。¥これ¥ひとつ。¥つぎに¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう¥いげ、¥きんじふ/の¥ひとびと、¥ししのたに/に¥より−あひ/て、¥むほん/を¥くはだて/し¥こと/も、¥まつたく¥わたくし/の¥けいりやく/に/は¥あら/ず、¥しかしながら¥きみ¥ご=きよよう¥ある/に¥よつ/て/なり。¥こと−あたらしき¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥この¥いちもん/を/ば¥しちだい/まで/は、¥いかで/か¥おぼしめし−すて/させ¥たまふ/べき/に、¥それ/に¥にふだう¥しちじゆん/に¥およん/で、¥よめい¥いくばく/なら/ぬP221¥いちご/の¥うち/に/だに、¥やや/も¥すれ/ば¥ほろぼさ/る/べき¥よし/の¥ご=けつこう¥ざふらふ。¥まうし¥さふらは/ん/や、¥しそん¥あひ−つづい/て、¥てうか/に¥めし−つかは/れ/ん¥こと/も¥あり−がたう/こそ¥さふらへ。¥およそ¥おい/て¥こ/に¥おくるる/は、¥こぼく/の¥えだ¥なき/に¥こと/なら/ず。¥いま/は¥ほど−なき¥うき−よ/に、¥さ/のみ¥こころ/を¥つひやし/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/なれば、¥いかで/も¥あり/な/ん/と¥おもひ−なつ/て/こそ¥さふらへ」/とて、¥かつうは¥ふくりふ−し、¥かつうは¥らくるゐ−し¥たまへ/ば、¥ほふいん¥おそろしう/も、¥また¥あはれ/に/も¥おぼえ/て、¥あせみづ/に/こそ¥なら/れ/けれ。¥
その−とき/は¥いか/なる¥ひと/も、¥いちごん/の¥へんじ/に/は¥および−がたき¥こと/ぞ/かし。¥その−うへ¥わが−み/も¥きんじゆ/の¥じん/にて、¥ししのたに/に¥より−あひ/し¥こと/を、¥まさしう¥み−きか/れ/しか/ば、¥ただいま/も¥その¥にんじゆ/とて¥めし/や¥こめ/られ/んず/らん/と¥おもは/れ/けれ/ば、¥りよう/の¥ひげ/を¥なで、¥とら/の¥を/を¥ふむ¥ここち/は¥せ/られ/けれ/ども、¥ほふいん/も¥さる¥おそろしき¥ひと/にて、¥ちつと/も¥さわが/ず¥まうさ/れ/ける/は、「¥まことに¥どど/の¥ご=ほうこう¥あさから/ず¥さふらふ。¥いつたん¥うらみ¥まうさ/せ¥まします¥むね、¥その¥いはれ¥さふらふ。¥ただし¥くわんゐ/と¥いひ、¥ほうろく/と¥いひ、¥おん=み/に¥とつ/て/は¥ことごとく¥まんぞく−す。¥され/ば¥こう/の¥ばくたい/なる¥こと/を/も、¥きみ¥つねに¥ぎよ=かん¥ある/で/こそ¥さふらへ。¥しかる/に¥きんしん¥こと/を¥みだり、¥きみ¥ご=きよよう¥あり/など¥まうす¥こと/は、¥ぼうしん/の¥きようがい/にて/ぞ¥さふらは/んず/らん。¥およそ¥みみ/を¥しんじ/て¥め/を¥うたがふ/は、¥ぞく/の¥つね/の¥へい/なり。¥せうじん/の¥ふげん/を¥おもく/して、¥てうおん/の¥た/に¥こと/なる/に、¥いまさら¥また¥きみ/を¥かたぶけ¥まゐら/させ ¥たまは/ん¥こと、¥みやうけん/に¥つけ/て、¥その¥おそれ¥すくなから/ず¥さふらふ。¥およそ¥てんしん/は¥さうさう/と/して¥はかり−がたし。¥えいりよ¥さだめて¥その¥ぎ/で/ぞ¥さふらは/んず/らん。P222¥しも/と/して¥かみ/に¥さかふる¥こと/は、¥あに¥じんしん/の¥れい/たら/ん/や。¥よくよく¥ご=しゆゐ¥さふらふ/べし。¥せんずる−ところ、¥この¥おもむき/を/こそ¥ひろう¥つかまつり¥さふらは/め」/とて¥たた/れ/けれ/ば、¥その¥ざ/に¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥ひとびと、「¥あな¥おそろし。¥にふだう/の¥あれ−ほど¥いかり¥たまふ/に、¥ちつと/も¥さわが/ず、¥へんじ¥うち−し/て¥たた/れ/ける/よ」/とて、¥ほふいん/を¥ほめ/ぬ¥ひと/こそ¥なかり/けれ。
「だいじんるざい」(『だいじんるざい』)S0316¥ほふいん¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥ほふわう/も¥だうり¥しごく−し/て、¥かさねて¥おほせ−くださ/るる¥むね/も¥なし。¥おなじき−じふろくにち、¥にふだう−しやうこく¥この¥ひごろ¥おもひ−たち¥たまへ/る¥こと/なれ/ば、¥くわんばく=どの/を¥はじめ¥たてまつり/て、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく¥しじふさん−にん/が¥くわんしよく/を¥とどめ/て、¥おひ−こめ¥たてまつら/る。¥なか/に/も¥くわんばく=どの/を/ば、¥だざい/の−そつ/に¥うつし/て、¥ちんぜい/へ/と/ぞ¥きこえ/し。「¥かから/ん¥よ/に/は、¥とても−かくても¥あり/な/ん」/とて、¥とば/の¥へん、¥ふるかは/と¥いふ¥ところ/にて¥ご=しゆつけ¥あり。¥おん=とし¥さんじふご。「¥れいぎ¥よく¥しろしめし/て、¥くもり¥なき¥かがみ/にて¥おはし/つる¥ひと/を」/とて、¥よ/の¥をしみ¥たてまつる¥こと¥なのめ/なら/ず。¥をんる/の¥ひと/の、¥みち/にて¥しゆつけ−し/たる/を/ば、¥やくそく/の¥くに/へ/は¥つかはさ/ぬ¥こと/にて¥ある¥あひだ、¥はじめ/は¥ひうがの−くに/とP223¥さだめ/られ/たり/しか/ども、¥これ/は¥ご=しゆつけ/の¥あひだ、¥びぜん/の¥こふ/の¥へん、¥いばさま/と¥いふ¥ところ/に/ぞ¥おき¥たてまつる。¥だいじん¥るざい/の¥れい/は、¥さだいじん−そがの−あかえ、¥うだいじん−とよなり、¥さだいじん−うをな、¥うだいじん−すがはら、¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく¥いま/の¥きたのの−てんじん/の¥おん=こと/なり。¥さだいじん−かうめい=こう、¥ないだいじん−ふぢはらの−いしう=こう/に¥いたる/まで、¥その¥れい¥すでに¥ろくにん、¥され/ども¥せつしやう¥くわんばく¥るざい/の¥れい/は¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥こ=なか=どの/の¥おん=こ、¥にゐ/の−ちうじやう−もとみち/は、¥にふだう/の¥むこ/にて¥おはし/けれ/ば、¥だいじん¥くわんばく/に¥なし¥たてまつら/る。¥さんぬる¥ゑんゆうゐん/の¥ぎよ=う、¥てんろく−さんねん−じふいちぐわつ−ひとひのひ、¥いちでうの−せつしやう−けんとく=こう¥うせ¥たまひ/しか/ば、¥おん=おとと¥ほりかはの−くわんばく−ちうぎこう、¥その−とき/は¥いまだ¥じゆ−にゐ/の−ちうなごん/にて¥おはし/き。¥その¥おん=おとと¥ほふこうゐん/の−おほ−にふだう−かねいへ=こう、¥その−ころ/は¥だいなごん/の−うだいしやう/にて¥ましまし/けれ/ば、¥ちうぎ=こう/は¥おん=おとと/に¥かかい¥こえ/られ/させ¥たまひ/たり/しか/ども、¥いま¥また¥こえ−かへし/て、¥ないだいじん−じやう−にゐ−し/て、¥ないらん/の¥せんじ¥かうぶら/せ¥たまひ/し/を/こそ、¥ひと¥みな¥じぼく/を¥おどろかし/たる¥ご=しようじん/と/は¥まうし−あは/れ/しか。¥これ/は¥それ/に/は¥なほ¥てうくわ−せ/り。¥ひさんぎ−にゐ/の−ちうじやう/より、¥だいちうなごん/を¥へ/ず/して、¥だいじん−せつしやう/に¥なる¥こと、¥これ¥はじめ。¥ふげんじ=どの/の¥おん=こと/なり。¥しやうけい−さいしやう、¥だいげき、¥たいふのし/に¥いたる/まで、¥みな¥あきれ/たる¥さま/にて/ぞ¥さふらは/れ/ける。¥
だいじやうだいじん−もろなが/は、¥つかさ/を¥とどめ/て、¥あづま/の¥かた/へ¥ながさ/れ¥たまふ。¥さんぬる¥ほうげん/に/は¥ちちP224¥あく−ひだん/の−おほい=どの/の¥えんざ/に¥よつ/て、¥きやうだい¥しにん¥るざい−せ/られ¥たまひ/に/き。¥おん=あに¥うだいしやう−かねなが、¥おん=おとと¥ひだん/の−ちうじやう−たかなが、¥はんちやう−ぜんじ¥さん−にん/は、¥きらく/を¥また/ず/して、¥はいしよ/にて¥つひに¥うせ¥たまひ/ぬ。¥これ/は¥とさ/の¥はた/にて¥ここのかへり/の¥はるあき/を¥おくり−むかへ、¥ちやうぐわん−にねん−はちぐわつ/に¥めし−かへさ/れ/て、¥ほんゐ/に¥ふくし、¥つぎ/の¥とし¥じやう−にゐ−し/て、¥にんあん−ぐわんねん−じふぐわつ/に、¥さきの−ちうなごん/より¥ごん−だいなごん/に¥あがり¥たまふ。¥をりふし¥だいなごん¥あか/ざり/けれ/ば、¥かず/の¥ほか/に/ぞ¥くはは/られ/ける。¥だいなごん¥ろくにん/に¥なる¥こと、¥これ¥はじめ。¥また¥さきの−ちうなごん/より¥ごん−だいなごん/に¥あがる¥こと/も、¥ごやましなの−だいじん−みもり=こう、¥うぢの−だいなんごん−りうこくの−きやう/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥くわんげん/の¥みち/に¥たつし、¥さいげい¥すぐれ/て¥おはし/けれ/ば、¥しだい/の¥しようじん¥とどこほら/ず、¥だいじやうだいじん/まで¥きはめ/させ¥たまひ/て、¥また¥いか/なる¥つみ/の¥むくい/に/や、¥かさね/て¥ながさ/れ¥たまふ/らん。¥ほうげん/の¥むかし/は、¥なんかい¥とさ/へ¥うつさ/れ、¥ぢしよう/の¥いま/は、¥また¥とうくわん¥をはりの−くに/とかや。¥もと/より¥つみ¥なく/して¥はいしよ/の¥つき/を¥み/ん/と¥いふ¥こと/を/ば、¥こころ−ある¥きは/の¥ひと/の¥ねがふ¥こと/なれ/ば、¥おとど¥あへて¥こと/と/も¥し¥たまは/ず。¥かの¥たう/の¥たいし/の¥ひんかく¥はくらくてん、¥しんやうのえ/の¥ほとり/に¥やすらひ/けん、¥その¥いにしへ/を¥おもひ−やり、¥なるみがた¥しほぢ¥はるか/に¥ゑんけん−し/て、¥つねは¥らうげつ/を¥のぞみ、¥うらかぜ/に¥うそぶき、¥びは/を¥だんじ、¥わか/を¥えいじ/て、¥なほざり−がてら/に、¥つきひ/を¥おくり¥たまひ/けり。¥ある−とき¥たう−ごく¥だいさん/の¥みや¥あつたの−みやうじん/に¥さんけい¥あり/て、¥その¥よ¥しんめい¥ほふらく/の¥ため/に、¥びは¥ひき¥らうえい−し¥たまふ/に、¥ところ¥もと/より¥むち/の¥さかひ/なれ/ば、¥なさけ/を¥しれ/る¥もの¥なし。¥いふらう¥そんぢよ、P225¥ぎよじん¥やそう、¥かうべ/を¥うなだれ、¥みみ/を¥そばだつ/と¥いへ/ども、¥さらに¥せいだく/を¥わかつ/て、¥りよりつ/を¥しる¥こと¥なし。¥され/ども¥こはきん/を¥だんぜ/しか/ば、¥ぎよりん¥をどり−ほとばしり、¥ぐこう¥うた/を¥はつせ/しか/ば、¥りやうぢん¥うごき−うごく。¥もの/の¥めう/を¥きはむる¥とき/に/は、¥しぜん/に¥かん/を¥もよほす¥ことわり/なれ/ば、¥しよにん¥み/の−け¥よだつ/て、¥まんざ¥きい/の¥おもひ/を¥なす。¥やうやう¥しんかう/に¥およん/で、¥ふがうでう/の¥うち/に/は、¥はな¥ふんぷく/の¥き/を¥ふくみ、¥りうせん/の¥きよく/の¥あひだ/に/は、¥つき¥せいめい/の¥ひかり/を¥あらそふ。「¥ねがは−く/は¥こんじやう¥せぞくもんじ/の¥ごふ、¥きやうげん−きぎよ/の¥あやまり/を¥もつて」/と¥いふ¥らうえい/を¥し/て、¥ひきよく/を¥ひき¥たまひ/しか/ば、¥しんめい¥かんおう/に¥たへ/ず/して、¥ほうでん¥おほき/に¥しんどう−す。「¥へいけ/の¥あくぎやう¥なかり/せ/ば、¥いま¥この¥ずゐさう/を/ば¥いかで/か¥をがむ/べき」/とて、¥おとど¥かんるゐ/を/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥あぜつ/の−だいなごん−すけかたの−きやう、¥しそく¥うこんゑ/の−せうしやう−けん−さぬきの−かみ−みなもとの−すけとき、¥ふたつ/の¥くわん/を¥とどめ/らる。¥さんぎ−くわうだいこうぐう/の−ごん/の−だいぶ−けん−うひやうゑ/の−かみ−ふぢはらの−みつよし、¥おほくらきやう−うきやう/の−だいぶ−けん−いよの−かみ−たかしなの−やすつね、¥くらんど/の−させうべん−けん−ちうぐう/の−ごん/の−だいしん−ふぢはらの−もとちか、¥さんくわん¥とも/に¥とどめ/らる。¥なか/に/も¥あぜつ/の−だいなごん−すけかたの−きやう、¥しそく¥うこんゑ/の−せうしやう、¥まご/の¥うせうしやう−まさかた、¥これ¥さん−にん/を/ば、¥けふ¥やがて¥みやこ/の¥うち/を¥おひ−いださ/る/べし/とて、¥しやうけい/に/は¥とう−だいなごん−さねくに、¥はかせ/の−はうぐわん−なかはらの−のりさだ/に¥おほせ/て、¥その−ひ¥やがて¥みやこ/の¥うち/を¥おひ−いださ/る。¥だいなんごん¥のたまひ/ける/は、「¥さんがい¥ひろし/と¥いへ/ども、¥ごしやく/の¥み¥おきどころ¥なし。¥いつしやう¥ほど−なし/と¥いへ/ども、¥いちにち¥くらし−がたし」/とて、¥やちう/に¥ここのへ/の¥うち/を¥まぎれ−いで/て、¥やへ¥たつ¥くも/の¥ほか/へ/ぞP226¥おもむか/れ/ける。¥かの¥おほえやま/や、¥いくの/の¥みち/に¥かかり/つつ、¥はじめ/は¥たんばの−くに¥むらくも/と¥いふ¥ところ/に、¥しばし/は¥やすらひ¥たまひ/し/が、¥それ/より¥つひに/は¥たづね−いださ/れ/て、¥しなのの−くに/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「ゆきたかのさた」(『ゆきたかのさた』)S0317¥さきの−くわんばく−まつ=どの/の¥さぶらひ/に、¥がう−たいふ/の−はうぐわん−とほなり/と¥いふ¥もの¥あり。¥これ/も¥へいけ/に¥こころよから/ざり/ける/が、¥ろくはら/より¥からめ−とら/る/べし/と¥きこえ/し/ほど/に、¥しそく¥がう−ざゑもん/の−じよう−いへなり¥あひ−ぐし/て、¥みなみ/を¥さし/て¥おち−ゆき/ける/が、¥いなりやま/に¥うち−あがり、¥むま/より¥おり/て、¥おやこ¥いひ−あはせ/ける/は、「¥これ/より¥とうごく/へ¥おち−くだり、¥るにん¥さきの−うひやうゑ/の−すけ−よりとも/を¥たのま/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥それ/も¥たうじ/は¥ちよくかん/の¥み/にて、¥わが−み¥ひとつ/を/だに¥かなひ−がたう¥おはす/なり。¥その−ほか¥につぽんごく/に、¥へいけ/の¥しやうゑん/なら/ぬ¥ところ/や¥ある。¥とても¥のがれ/ざら/ん¥もの−ゆゑ/に、¥ねんらい¥すみ−なれ/たる¥ところ/を、¥ひと/に¥みせ/ん/も¥はぢがまし。¥これ/より¥とつ/て¥かへし、¥ろくはら/より¥めしつかひ¥あら/ば、¥たち/に¥ひ¥かけ¥やき−あげ、¥はら¥かき−きつ/て¥しな/ん/に/は¥しか/じ」/とて、¥また¥かはらざか/の¥しゆくしよ/へ¥とつ/て¥かへす。¥あん/の/ごとく¥げん−だいふ/の−はうぐわん−すゑさだ、¥つの−はうぐわん−もりずみ、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥かはらざか/の¥しゆくしよ/へ¥おし−よせ/て、P227¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥がう−たいふ/の−はうぐわん、¥えん/に¥たち−いで¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いか/に¥おのおの¥ろくはら/で/は、¥この¥やう/を¥まうさ/せ¥たまへ」/とて、¥たち/に¥ひ¥かけ、¥やき−あげ、¥ふし¥とも/に¥はら¥かき−きつ/て、¥ほのほ/の¥なか/にて¥やけ−しに/ぬ。¥そもそも¥かやう/に¥ひと/の¥ほろび−そんずる¥こと/を¥いか/に/と¥いふ/に、¥さきの−おほ=との/の¥おん=こ¥さんみ/の−ちうじやう=どの/と、¥たうじ¥くわんばく/に¥なら/せ¥たまふ¥にゐ/の−ちうじやう=どの/と、¥ちうなごん¥ご=さうろん¥ゆゑ/と/ぞ¥きこえ/し。¥さら/ば¥くわんばく=どの¥ご=いつしよ/ばかり/こそ、¥いか/なる¥おん=め/に/も¥あはせ¥たまふ/べき/に、¥しじふさん−にん/の¥ひとびと/の、¥こと/に¥あふ/べき/や/は。¥およそ/は¥これ/に/も¥かぎる/まじか/ん/なれ/ども、¥にふだう−しやうこく/の¥こころ/に¥てんま¥いり−かはつ/て、¥よろづ¥はら/を¥すゑ−かね¥たまふ¥よし¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥また¥さわぎ−あへ/り。¥こぞ¥さぬきのゐん¥ご=つゐがう¥あり/て、¥しゆとく−てんわう/と¥かうし、¥うぢの−あく−さふ、¥ぞうくわん¥ぞうゐ¥おこなは/れ/たり/と¥いへ/ども、¥せけん/は¥なほ/も¥しづか/なら/ず。¥
その−ころ¥さきの−させうべん−ゆきたか/と¥きこえ/し/は、¥こ=なかやまの−ちうなごん−あきときの−きやう/の¥ちやうなん/なり。¥にでうのゐん/の¥おん=とき/は、¥べんくわん/に¥くははつ/て、¥さ/しも¥ゆゆしう¥おはせ/し/が、¥この¥じふ−よ−ねん/は¥くわん/を/も¥とどめ/られ/て、¥なつ¥ふゆ/の¥ころもがへ/に/も¥およば/ず、¥てうぼ/の¥ざん/も¥まれ/なり。¥ある/か¥なき/か/の¥てい/にて¥おはし/ける/を、¥にふだう−しやうこく¥ししや/を¥もつて、「¥きつと¥たち−より¥たまへ。¥まうし−あは/す/べき¥こと¥あり」/と、¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゆきたか、「¥この¥じふ−よ−ねん/は¥くわん/を/も¥とどめ/られ/て、¥よろづ¥なにごと/に/も¥まじはら/ざり/つる/ものを。¥いかさま/に/も¥ざんげん−し/て、¥うしなは/ん/と¥する¥もの/の¥ある/に/こそ」/とて、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥きたのかた¥いげ¥にようばう=たち、P228¥こゑごゑ/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。¥さる−ほど/に¥にしはちでう=どの/より、¥つかひ¥しきなみ/に¥あり/しか/ば、¥ゆきたか、「¥いで−むかつ/て/こそ、¥と/も−かく/も¥なら/め」/とて、¥ひと/に¥くるま¥かつ/て¥いで/られ/たれ/ば、¥おもふ/に/は¥に/ず、¥にふだう¥やがて¥いで−あひ¥たいめん¥あり/て、「¥ご=へん/の¥ちち/の¥きやう/は、¥にふだう¥だいせうじ/を¥まうし−あはせ/し¥ひと/なり。¥その¥しそく/にて¥おはすれ/ば、¥ご=へん/とて/も¥まつたく¥おろそか/に¥おもひ¥たてまつら/ず。¥ねんらい¥ろうきよ/の¥こと/も¥いたはしう/は¥おぼゆれ/ども、¥ほふわう/の¥ご=せいむ/の¥うへ/は¥ちから¥およば/ず。¥いま/は¥しゆつし−し¥たまへ。¥くわんど/の¥こと/も、¥まうし¥さた¥つかまつり¥さふらは/ん。¥さら/ば¥とう¥かへら/れよ」/とて¥かへさ/れ/たれ/ば、¥しゆくしよ/に/は¥にようばう¥さぶらひ¥さし−つどひ/て、¥しに/たる¥ひと/の¥いき−かへり/たる¥ここち−し/て、¥よろこびなき/を/ぞ¥せ/られ/ける。¥その−のち¥げん−たいふ/の−はんぐわん−すゑさだ/を¥もつて、¥ちぎやう−し¥たまふ/べき¥しやうゑんじやう=ども、¥あまた¥なし−つかはし、¥まづ¥さ/こそ¥おはす/らん/とて、¥ひやつ−ぴき¥ひやく−りやう/に、¥よね/を¥つん/で/ぞ¥おくら/れ/ける。¥しゆつし/の¥れう/に/とて、¥ざふしき¥うしかひ¥うし−ぐるま/に¥いたる/まで、¥きよ=げ/に¥さた−し¥おくら/れ/けれ/ば、¥ゆきたか¥て/の¥まひ、¥あし/の¥ふみど/を/も¥おぼえ¥たまは/ず、¥こ/は¥ゆめ/やらん/と/ぞ¥おどろか/れ/ける。¥おなじき−じふしちにち、¥ごゐ/の−じちう/に¥ふせ/られ/て、¥もと/の/ごとく¥させうべん/に¥なし−かへさ/る。¥こんねん¥ごじふいち、¥いまさら¥わかやぎ¥たまひ/けり。¥ただ¥へんし/の¥えいぐわ/と/ぞ¥みえ/し。P229¥
「ほふわうごせんかう」(『ほふわうながされ』)S0318¥おなじき−はつかのひ、¥ほふぢうじ=どの/を/ば、¥ぐんびやう¥しめん/を¥うち−かこん/で、¥へいぢ/に¥のぶよりの−きやう/が¥さんでう=どの/を¥し/たり/し¥やう/に、¥ごしよ/に¥ひ/を¥かけ、¥ひと/を/ば¥みな¥やき−ほろぼす/べき¥よし¥きこえ/しか/ば、¥つぼね/の¥にようぼう、¥あやし/の¥め/の−わらは/に¥いたる/まで、¥もの/を/だに¥うち−かづか/ず/して、¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と/ぞ¥にげ−いで/ける。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥おん=くるま/を¥よせ/て、「¥とうとう」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥えいりよ/を¥おどろか/せ¥おはしまし、「¥なりちか¥しゆんくわん=ら/が¥やう/に、¥とほき¥くに、¥はるか/の¥しま/へ/も¥うつし−やら/れ/んずる/に/こそ。¥さらに¥おん=とが¥ある/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥しゆしやう¥さて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥せいむ/の¥こうじゆ−する/ばかり/なり。¥それ/も¥さら/ず/は、¥じごん¥いご、¥さら/で/も¥あれ/かし」/と¥おほせ/けれ/ば、¥むねもりの−きやう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥いか/に¥ただいま、¥さる−おん=こと¥さふらふ/べき。¥しばらく¥よ/を¥しづめ/ん/ほど、¥とば/の¥きた=どの/へ¥ご=かう/を¥なし¥まゐらせよ/と、¥ちち/の¥ぜんもん¥まうし¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、「¥さら/ば¥なんぢ¥やがて¥おん=とも¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ども、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥きしよく/に¥おそれ/を¥なし/て、¥おん=とも/に/は¥まゐら/れ/ず。「¥これ/に¥つけ/て/も、¥あに/の¥だいふ/に/は、¥こと/の−ほか/に¥おとり/たる/ものかな。¥ひととせ/も¥かかる¥おん=め/に¥あふ/べかり/し/を、¥だいふ/が¥み/に¥かへ/てP230¥せいし−とどめ/て/こそ、¥けふ/まで/も¥おん=こころ−やすかり/つれ。¥いま/は¥いさむる¥もの/の¥なき/とて、¥かう/は¥する/やらん。¥ゆく−すゑ/とて/も¥たのもしから/ず¥おぼしめす」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥さて¥おん=くるま/に¥めさ/れ/けり。¥くぎやう−てんじやうびと、¥いち−にん/も¥ぐぶ−せ/られ/ず、¥ほくめん/の¥げらふ/と、¥さて/は¥こんぎやう/と¥いふ¥おん=りきしや/ばかり/ぞ¥まゐり/ける。¥おん=くるま/の¥しり/に/は、¥あまぜ¥いち−にん¥まゐら/れ/けり。¥この¥あまぜ/と¥まうす/は、¥やがて¥ほふわう/の¥おん=ち/の¥ひと、¥きの−にゐ/の¥おん=こと/なり。¥しちでう/を¥にし/へ、¥しゆしやか/を¥みなみ/へ¥ご=かう¥なし¥たてまつる。「¥あはや¥ほふわう/の¥ながさ/れ/させ¥おはします/ぞ/や」/とて、¥こころ−なき¥あやし/の¥しづ/の−を、¥しづ/の−め/に¥いたる/まで、¥みな¥なみだ/を¥ながし、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。「¥さんぬる¥なぬか/の¥よ/の¥おほ−ぢしん/も、¥かかる/べかり/ける¥ぜんべう/にて、¥じふろく−らくしや/の¥そこ/まで/も¥こたへ、¥けんらうぢじん(じしん)/の¥おどろき−さわぎ¥たまふ/らん/も¥ことわり/かな」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥さて¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なつ/て¥のち、¥ごぜん/に¥ひと¥いち−にん/も¥さふらは/ず。¥なに/と/して/か¥まぎれ−いり/たり/けん、¥だいぜん/の−だいぶ−のぶなり/が¥ただ¥いち−にん¥さふらひ/ける/を、¥ごぜん/へ¥めし/て、「¥われ/は¥ちかう¥うしなは/れ/んずる/と¥おぼしめす/ぞ。¥おん=ぎやうずゐ/を¥めさ/ばや/と¥おぼしめす/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥さら/ぬ/だに¥のぶなり/は、¥けさ/より¥きも−たましひ/も¥み/に¥そは/ず、¥あきれ/たる¥さま/にて¥さふらひ/ける/が、¥この¥おほせ¥うけたまはる¥こと/の¥かたじけな−さ/に、¥かりぎぬ/の¥たまだすき¥あげ、¥かま/に¥みづ¥くみ−いれ、¥こしばがき¥こぼち、¥おほ−ゆか/の¥つかばしら¥わり/など¥し/て、¥かた/の/ごとく/の¥おん=ゆ¥し−いだい/て¥たてまつる。P231¥
また¥じやうけん−ほふいん、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/へ¥ゆき−むかつ/て、「¥ゆふべ¥ほふわう/の¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なつ/て¥さふらふ/なる/に、¥ごぜん/に¥ひと¥いち−にん/も¥さふらは/ぬ¥よし¥うけたまはつ/て、¥あまり/に¥あさましく¥おぼえ¥さふらふ。¥なにか¥くるしう¥さふらふ/べき。¥じやうけん/ばかり¥おん=ゆるされ/を¥かうぶつ/て、¥まゐり¥さふらは/ばや」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥いかが¥おもは/れ/けん。「¥おん=ぼう/は¥いつかう¥こと¥あやまつ/まじき¥ひと/なり。¥とうとう」/とて¥ゆるさ/れ/けり。¥ほふいん¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥いそぎ¥とば=どの/へ¥まゐり、¥もんぜん/にて¥くるま/より¥おり、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いり¥たまふ/に、¥をりふし¥ほふわう/は¥おん=きやう¥うち−あげ−うち−あげ¥あそばさ/れ/ける¥おん=こゑ/の、¥こと/に¥すごう/ぞ¥きこえ/させ¥おはします。¥ほふいん/の、¥つと¥まゐら/れ/たれ/ば、¥あそばさ/れ/ける¥おん=きやうに、¥おん=なみだ/の¥はらはら/と¥かから/せ¥たまふ/を¥み¥まゐらせ/て、¥ほふいん¥あまり/の¥かなし−さ/に、¥きうたい/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥なくなく¥ごぜん/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥ごぜん/に/は¥あまぜ/ばかり/ぞ¥さふらは/れ/ける。「¥やや¥ほふいん/の¥おん=ばう、¥きみ/は¥きのふ/の¥あした、¥ほふぢうじ=どの/にて、¥ぐご¥きこしめし/て¥のち/は、¥ゆふべ/も¥けさ/も¥きこしめさ/ず。¥ながき¥よ−すがら¥ぎよ=しん/も¥なら/ず、¥おん=いのち/も¥すでに¥あやふう/こそ¥みえ/させ¥おはしませ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ほふいん¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥なにごと/も¥かぎり−ある¥こと/で/こそ¥さふらへ。¥へいけ¥よ/を¥とつ/て¥にじふ−よ−ねん、¥され/ども¥あくぎやう¥ほふ/に¥すぎ/て、¥すでに¥ほろび¥さふらひ/な/んず。¥され/ば¥てんせうだいじん、¥しやう−はちまんぐう/も、¥きみ/を/ば¥いかで/か¥おぼしめし−はなた/せ¥たまふ/べき。¥なか/に/も¥きみ/の¥おん=たのみ¥まします¥ひよし−さんわう−しちしや、¥いちじよう−しゆご/の¥おん=ちかひ¥いまだ¥あらたま/ら/ず/は、¥かの¥ほつけ−はちぢく/にP232¥たち−かけつ/て/こそ、¥きみ/を/ば¥まもり¥まゐら/させ¥たまふ/らめ。¥され/ば¥せいむ/は¥きみ/の¥おん=よ/と¥なり、¥きようと/は¥みづ/の¥あわ/と¥きえ−うせ¥さふらひ/な/んず」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ほふわう¥この¥ことば/に¥すこし¥なぐさま/せ¥おはします。¥しゆしやう/は¥くわんばく¥ながさ/れ¥たまひ、¥しんか/の¥おほく¥ほろび−そんずる¥こと/を/のみ/こそ、¥おん=なげき¥あり/つる/に、¥いま¥また¥ほふわう/の¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なり/ぬる¥よし¥きこしめし/て、¥つやつや¥ぐご/も¥きこしめさ/ず、¥ご=なう/とて¥つね/は¥よるの−おとど/に/のみ¥いら/せ¥おはします。¥ごぜん/に¥さぶらは/せ¥たまふ¥にようばう=たち、¥きさいのみや/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥いか/なる/べし/と/も¥おぼしめさ/ず。¥ほふわう/の¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なつ/て¥のち、¥だいり/に/は¥りんじ/の¥ご=じんじ/とて、¥せいりやうでん/の¥いしばひ/の−だん/に/して、¥しゆしやう¥よ−ごと/に¥いせ−だい−じんぐう/を/ぞ¥ご=はい¥あり/ける。¥これ/は¥いつかう¥ほふわう¥おん=いのり/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥にでうのゐん/は、¥さ/ばかり/の¥けんわう/にて¥わたら/せ¥たまひ/しか/ども、¥てんし/に¥ぶも¥なし/とて、¥つね/は¥ゐん/の¥おほせ/を¥まうし−かへさ/せ¥おはしまし/けれ/ば/に/や、¥けいてい/の−きみ/にて/も¥ましまさ/ず。¥され/ば¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまひ/たり/し¥ろくでうのゐん/も、¥あんげん−にねん−しちぐわつ−じふしにち、¥おん=とし¥じふさん/にて、¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥あさましかり/し¥こと=ども/なり。P233¥
「せいなんのりきう」(『せいなんのりきゆう』)S0319¥はくかう/の¥なか/に/は、¥かうかう/を¥もつて¥さき/と¥す。¥めいわう/は¥かう/を¥もつて¥てんが/を¥をさむ/と¥いへ/り。¥され/ば¥たうげう/は¥おい−おとろへ/たる¥はは/を¥たつとび、¥ぐしゆん/は¥かたくな/なる¥ちち/を¥うやまふ/と¥みえ/たり。¥かの¥けんわう¥せいしゆ/の¥せんき/を¥おはせ¥ましまし/けん、¥えいりよ/の¥ほど/こそ¥めでたけれ。¥その−ころ¥だいり/より¥とば=どの/へ、¥ひそか/に¥ごしよ¥あり/けり。「¥かから/ん¥よ/に/は、¥くもゐ/に¥あと/を¥とどめ/て/も、¥なに/に/かは¥し¥さふらふ/べき/なれ/ば、¥くわんぺい/の¥むかし/を/も¥とぶらひ、¥くわざん/の¥いにしへ/を/も¥たづね/て、¥さんりん¥るらう/の¥ぎやうじや/と/も¥なり/ぬ/べう/こそ¥さふらへ」/と¥あそばさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/の¥おん=ぺんじ/に、「¥さ¥な¥おぼしめさ/れ¥さふらひ/そ。¥さて¥わたら/せ¥たまへ/ば/こそ、¥ひとつ/の¥たのみ/にて/も¥さふらへ。¥あと¥なく¥おぼしめし−なら/せ¥たまひ/な/ん¥のち/は、¥なに/の¥たのみ/か¥さふらふ/べき。¥ただ¥と/も−かう/も、¥ぐらう/が¥なら/ん¥やう/を、¥ごらんじ−はて/させ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と、¥あそばさ/れ/たり/けれ/ば、¥しゆしやう¥この¥おん=ぺんじ/を¥りようがん/に¥おし−あて/させ¥たまひ/て、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥きみ/は¥ふね、¥しん/は¥みづ、¥みづ¥よく¥ふね/を¥うかべ、¥みづ¥また¥ふね/を¥くつがへし、¥しん¥よく¥きみ/を¥たもち、¥しん¥また¥きみ/を¥くつがへす。¥ほうげん¥へいぢ/の¥ころ/は、¥にふだう−しやうこく、¥きみ/を¥たもち¥たてまつる/と¥いへ/ども、¥あんげん¥ぢしよう/の¥いま/は¥また、¥きみ/を¥なみし¥たてまつる。¥ししよ/のP234¥もん/に¥たがは/ず。¥
おほみやの−だいしやうこく、¥さんでうの−ないだいじん、¥はむろの−だいなごん、¥なかやまの−ちうなごん/も¥うせ/られ/ぬ。¥いま¥ふるき¥ひと/とて/は、¥せいらい、¥しんぱん/ばかり/なり。¥この¥ひとびと/も、¥かから/ん¥よ/に/は、¥てう/に¥つかへ¥み/を¥たて、¥だいちうなごん/を¥へ/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/とて、¥いまだ¥さかん/なつ/し¥ひとびと/の、¥いへ/を¥いで¥よ/を¥のがれ、¥みんぶきやう−にふだう−しんぱん/は、¥をはら/の¥しも/に¥ともなひ、¥さいしやう−にふだう−せいらい/は、¥かうや/の¥きり/に¥まじはつ/て、¥いつかう¥ごせ−ぼだい/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥なし/と/ぞ¥きこえ/し。¥むかし/も¥しやうざん/の¥くも/に¥かくれ、¥えいせん/の¥つき/に¥こころ/を¥すます¥ひと/も¥あり/けん/なれ/ば、¥これ¥あに¥はくらん−せいけつ/に/して、¥よ/を¥のがれ/たる/に¥あら/ず/や。¥なか/に/も¥かうや/に¥おはし/ける¥さいしやう−にふだう−せいらい、¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥あはれ¥こころ¥とく/も¥よ/を/ば¥のがれ/たる/ものかな。¥かくて¥きく/も¥おなじ¥こと/なれ/ども、¥まのあたり¥たち−まじはつ/て¥きか/ましか/ば、¥いか/ばかり¥こころ−うから/ん。¥ほうげん¥へいぢ/の¥みだれ/を/こそ、¥あさまし/と¥おもひ/つる/に、¥よ¥すゑ/に¥なれ/ば、¥かかる¥ふしぎ/も¥いで−き/に/けり。¥この−のち¥てんが/に¥いか/ばかり/の¥こと/か¥いで−こ/んず/らん。¥くも/を¥わき/て/も¥のぼり、¥やま/を¥へだて/て/も¥いり/な/ばや」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥げに¥こころ−あら/ん/ほど/の¥ひと/の、¥あと/を¥とどむ/べき¥よ/と/も¥おぼえ/ず。¥
おなじき−にじふいちにち、¥てんだい−ざす−かくくわい−ほつしんわう、¥しきり/に¥ご=じたい¥あり/しか/ば、¥さきの−ざす−めいうん−だいそうじやう、¥くわんちやく−し¥たまふ。¥にふだう−しやうこく、¥かく¥さんざん/に¥し−ちらさ/れ/たり/しか/ども、¥ちうぐう/と¥まうす/も¥おん=むすめ、¥くわんばく=どの/も¥また¥むこ/なり/けれ/ば、¥よろづ¥こころ−やすく/や¥おもは/れ/けん、¥せいむ/はP235¥いつかう¥しゆしやう/の¥おん=ぱからひ/たる/べし/とて、¥ふくはら/へ/ぞ¥くだら/れ/ける。¥おなじき−にじふさんにち、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥いそぎ¥さんだい−し/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥しゆしやう、「¥ほふわう/の¥ゆづり¥ましまし/たる¥よ/なら/ば/こそ。¥ただ¥しつぺい/に¥いひ−あはせ/て、¥むねもり¥と/も−かう/も¥よき¥やう/に¥あひ−はからへ」/とて、¥きこしめし/も¥いれ/ざり/けり。¥ほふわう/は¥せいなん/の−りきう/に/して、¥ふゆ/も¥なかば¥すごさ/せ¥たまへ/ば、¥やさん/の¥あらし/の¥おと/のみ¥はげしく/て、¥かんてい/の¥つき/ぞ¥さやけき。¥には/に/は¥ゆき¥ふり−つもれ/ども、¥あと¥ふみ−つくる¥ひと/も¥なく、¥いけ/に/は¥つらら¥とぢ−かさね/て、¥むれ−ゐ/し¥とり/も¥みえ/ざり/けり。¥おほでら/の¥かね/の¥こゑ、¥ゐあいじ/の¥きき/を¥おどろかし、¥にしやま/の¥ゆき/の¥いろ、¥かうろほう/の¥のぞみ/を¥もよほす。¥よる¥しも/に¥さむけき¥きぬた/の¥ひびき、¥かすか/に¥おん=まくら/に¥つたひ、¥あかつき¥こほり/を¥きしる¥くるま/の¥あと、¥はるか/の¥もんぜん/に¥よこたは/れ/り。¥ちまた/を¥すぐる¥かうじんせいば/の¥いそがはし=げ/なる¥けしき、¥うき−よ/を¥わたる¥ありさま/も、¥おぼしめし−しら/れ/て¥あはれ/なり。¥きうもん/を¥まもる¥ばんい/の、¥よる¥ひる¥けいゑい/を¥つとむる/も、「¥さき/の¥よ/の¥いか/なる¥ちぎり/にて、¥いま¥えん/を¥むすぶ/らん」/と、¥おほせ/なり/ける/ぞ¥かたじけなき。¥およそ¥もの/に¥ふれ¥こと/に¥したがつ/て、¥おん=こころ/を¥いため/しめ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥さる−まま/に/は、¥かの¥をりをり/の¥ご=いうらん、¥ところどころ/の¥ご=さんけい、¥おん=が/の¥めでたかり/し¥こと=ども、¥おぼしめし−つづけ/て、¥くわいきう/の¥おん=なみだ¥おさへ−がたし。¥とし¥さり¥とし¥きたつ/て、¥ぢしよう/も¥しねん/に¥なり/に/けり。P236¥

平家物語 巻第四  総かな版(元和九年本)
「いつくしまごかう」(『いつくしまごかう』)S0401¥P236¥ぢしよう−しねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥とば=どの/に/は、¥しやうこく/も¥ゆるさ/ず、¥ほふわう/も¥おそれ/させ¥ましまし/けれ/ば、¥ぐわんにち¥ぐわんざん/の¥あひだ、¥さんにふ¥つかまつる¥ひと/も¥なし。¥され/ども¥その¥なか/に¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥しそく、¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう、¥その¥おとと¥さきやう/の−だいぶ−ながのり/ばかり/ぞ、¥ゆるさ/れ/て/は¥まゐら/れ/ける。¥おなじき−はつかのひ、¥とうぐう¥おん=はかまぎ、¥ならびに¥おん=まなはじめ/とて、¥めでたき¥こと=ども¥あり/しか/ども、¥ほふわう/は¥とば=どの/にて、¥おん=みみ/の¥よそ/に/ぞ¥きこしめす。¥にんぐわつ−にじふいちにち、¥しゆしやう¥こと/なる¥おん=つつが/も¥わたら/せ¥たまは/ざり/し/を、¥おし−おろし¥たてまつ/て、¥とうぐう¥せんそ¥あり。¥これ/も¥にふだう−しやうこく、¥よろづ¥おもふ¥さま/なる/が¥いたす¥ところ/なり。¥とき¥よく¥なり/ぬ/とて¥ひしめき−あへ/り。¥しんし、¥ほうけん、¥ないしどころ¥わたし¥たてまつる。¥かんだちめ¥ぢん/に¥あつまつ/て、¥ふるき¥こと=ども¥せんれい/に¥まかせ/て¥おこなひ/し/に、¥さだいじん=どの¥ぢん/に¥いで/て、¥おん=くらゐ−ゆづり/の¥こと=ども¥おほせ/し/を¥きい/て、P237¥こころ−ある¥ひとびと/の¥なみだ/を¥ながし、¥こころ/を¥いたま/しめ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥われ/と¥おん=くらゐ/を¥まうけ/の−きみ/に¥ゆづり¥たてまつり、¥はこや/の−やま/の¥うち/も、¥しづか/に/など¥おぼしめす¥さきざき/だに/も、¥あはれ/は¥おほき¥ならひ/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は、¥おん=こころ/なら/ず¥おし−おろさ/れ/させ¥ましまし/けん¥おん=こころ/の¥うち、¥まうす/も¥なかなか¥おろか/なり。¥つたはれ/る¥おん=たからもの=ども¥しなじな、¥つかさづかさ¥うけ−とつ/て、¥しんてい/の¥くわうきよ¥ごでう−だいり/へ¥わたし¥たてまつる。¥かんゐん=どの/に/は、¥ひ/の¥かげ¥かすか/に、¥けいじん/の¥こゑ/も¥とどま/り、¥たきぐち/の¥もんじやく/も¥たえ/に/しか/ば、¥ふるき¥ひとびと/は、¥かかる¥めでたき¥いはひ/の¥なか/に/も、¥いまさら¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥なみだ/を¥ながし¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥しんてい¥こんねん¥さんざい、¥あはれ¥いつしか/なる¥じやうゐ/かな/と/ぞ、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/ける。¥
へい−だいなごん−ときただの−きやう/は、¥うち/の¥おん=めのと、¥そつのすけ/の¥をつと/たる/に¥よつ/て、「¥こんど/の¥じやうゐ¥いつしか/なり/と、¥たれ/か¥かたぶけ¥まうす/べき。¥いこく/に/は、¥しう/の¥せいわう¥さんざい、¥しん/の¥ぼくてい¥にさい、¥わが¥てう/に/は、¥こんゑのゐん¥さんざい、¥ろくでうのゐん¥にさい、¥これ¥みな¥きやうほう/の¥なか/に¥つつま/れ/て、¥いたい/を¥ただしう¥せ/ざり/しか/ども、¥あるひは¥せつしやう¥おう/て¥くらゐ/に¥つき、¥あるひは¥ぼこう¥いだい/て¥てう/に¥のぞむ/と¥みえ/たり。¥ごかん/の¥かうしやう−くわうてい/は、¥むまれ/て¥ひやく−にち/と¥いふ/に¥せんそ¥あり。¥てんし¥くらゐ/を¥ふむ¥せんじよう、¥わかん¥かく/の/ごとし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥その−とき/の¥いうしよく/の¥ひとびと、「¥あな¥おそろし、¥もの¥な¥まうさ/れ/そ。¥され/ば¥それ=ら/は¥よき¥れい=ども/か/や」/と/ぞ¥つぶやき−あは/れ/ける。¥とうぐう¥せんそ¥あり/しか/ば、¥にふだう−しやうこく¥ふうふ¥とも/に、¥ぐわいそぶ、¥ぐわいそぼ/とて、¥じゆんさんごう/のP238¥せんじ/を¥かうぶり、¥ねんぐわん¥ねんじやく/を¥たまはつ/て、¥じやうにち/の−もの/を¥めし−つかひ、¥ゑ¥かき¥はな¥つけ/たる¥もの=ども¥いで−いつ/て、¥ひとへに¥ゐんぐう/の/ごとく/にて/ぞ¥あり/ける。¥しゆつけ/の¥ひと/の¥じゆんさんごう/の¥せんじ/を¥かうぶる¥こと/は、¥ほふこうゐん/の−おほ−にふだう=どの−かねいへ=こう/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥おなじき−さんぐわつ−じやうじゆん/に、¥じやうくわう¥あきの−いつくしま/へ¥ご=かう¥なる/べし/と¥きこえ/けり。¥ていわう¥くらゐ/を¥すべら/せ¥たまひ/て、¥しよしや/の¥ご=かう¥はじめ/に/は、¥やはた、¥かも、¥かすが/へ/こそ¥ご=かう/は¥なる/べき/に、¥はるばる/と¥あきの−くに/まで/の¥ご=かう/は¥いか/に/と、¥ひとふしん/を¥なす。¥ある¥ひと/の¥まうし/ける/は、「¥しらかはのゐん/は¥くまの/へ¥ご=かう、¥ごしらかは/は¥ひよし/の−やしろ/へ¥ご=かう¥なる。¥され/ば¥しん/ぬ、¥えいりよ/に¥あり/と¥まうす¥こと/を」。¥ご=しんぢう/に¥ふかき¥ご=りふぐわん¥あり。¥その−うへ¥この¥いつくしま/を/ば、¥へいけ¥なのめ/なら/ず/に¥あがめ−うやまひ¥まうさ/れ/ける¥あひだ、¥うへ/に/は¥へいけ/に¥ご=どうしん、¥した/に/は¥ほふわう/の¥いつ/と−なく¥とば=どの/に¥おし−こめ/られ/て¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥にふだう−しやうこく/の¥こころ/も¥やはらぎ¥たまふ/か/と/の、¥ご=きねん/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥さんもん/の¥だいしゆ¥いきどほり¥まうし/ける/は、「¥しゆしやう¥おん=くらゐ/を¥すべつ/て、¥しよしや/の¥ご=かう¥はじめ/に/は、¥やはた、¥かも、¥かすが/へ¥ご=かう¥なら/ず/は、¥わが−やま/の¥さんわう/へ/こそ¥ご=かう/は¥なる/べき/に、¥はるばる/と¥あきの−くに/まで/の¥ご=かう/は、¥いつ/の¥ならひ/ぞ/や。¥その¥ぎ/なら/ば¥しんよ¥ふり−くだし¥たてまつ/て、¥ご=かう/を¥とどめ¥たてまつれ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥これ/に¥よつ/て¥しばらく¥ご=えんいん¥あり/けり。¥にふだう−しやうこく¥やうやう/に¥なだめ¥のたまへ/ば、¥さんもん/の¥だいしゆ¥しづまり/ぬ。¥
おなじき−じふしちにち、¥しやうくわう¥いつくしま−ご=かう/の¥おん=かどで/とて、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた¥にゐ=どの/のP239¥しゆくしよ、¥はちでう−おほみや/へ¥ご=かう¥なる。¥その¥よ¥やがて¥いつくしま/の¥ご=じんじ¥はじめ/らる。¥てんが/より¥から/の¥おん=くるま、¥うつし/の¥むま/など¥まゐらせ/らる。¥あくる¥じふはちにち、¥にふだう−しやうこく/の¥てい/へ¥いら/せ¥おはします。¥その−ひ/の¥くれがた/に、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/を¥めし/て、「¥みやうにち¥いつくしま−ご=かう/の¥おん=ついで/に、¥とば=どの/へ¥まゐつ/て、¥ほふわう/の¥おん=げんざん/に¥いら/ばや/と¥おぼしめす/は、¥しやうこく−ぜんもん/に¥しらせ/ず/して/は、¥あしかり/な/ん/や」/と¥おほせ/けれ/ば、¥むねもりの−きやう、「¥なんでふ¥こと/か¥さふらふ/べき」/と¥そうせ/られ/たり/けれ/ば、「¥さら/ば¥なんぢ¥こよひ¥とば=どの/へ¥まゐり/て、¥その¥やう/を¥まうせ/かし」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥いそぎ¥とば=どの/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−せ/られ/けれ/ば、¥ほふわう/は¥あまり/に¥おぼしめす¥おん=こと/にて、¥こ/は¥ゆめ/やらん/と/ぞ¥おほせ/ける。¥あくる¥じふくにち、¥おほみやの−だいなごん−たかすゑの−きやう、¥いまだ¥よ¥ふかう¥まゐつ/て、¥ご=かう¥もよほさ/れ/けり。¥この¥ひごろ¥きこえ/させ¥たまひ/つる¥いつくしま−ご=かう/を/ば、¥にしはちでう/の−てい/より¥すでに¥とげ/させ¥おはします。¥やよひ/も¥なかば¥すぎ/ぬれ/ど、¥かすみ/に¥くもる¥ありあけ/の−つき/は¥なほ¥おぼろ/なり。¥こしぢ/を¥さし/て¥かへる¥かり/の、¥くもゐ/に¥おとづれ−ゆく/も、¥をりふし¥あはれ/に¥おぼしめす。¥いまだ¥よ/の¥うち/に¥とば=どの/へ¥ご=かう¥なる。¥もんぜん/にて¥おん=くるま/より¥おり/させ¥おはしまし、¥もん/の¥うち/へ¥さし−いら/せ¥たまふ/に、¥ひと¥まれ/に/して¥こ−ぐらく、¥もの−さびし=げ/なる¥おん=すまひ、¥まづ¥あはれ/に/ぞ¥おぼしめす。¥はる¥すでに¥くれ/な/ん/と¥す。¥なつ−こだち/に/も¥なり/に/けり。¥こずゑ/の¥はな¥いろ¥おとろへ/て、¥みや/の¥うぐひす¥こゑ¥おい/たり。¥きよねん/の−しやうぐわつ−むゆか、¥てうきん/の¥ため/に¥ほふぢうじ=どの/へ¥ぎやうがう¥あり/し/に/は、P240¥がくや/に¥らんじやう/を¥そうし、¥しよきやう¥れつ/に¥たつ/て、¥しよゑ¥ぢん/を¥ひき、¥ゐんじ/の¥くぎやう¥まゐり¥むかつ/て、¥まんもん/を¥ひらき、¥かもんれう¥えんだう/を¥しき、¥ただしかり/し¥ぎしき、¥いちじ/も¥なし。¥けふ/は¥ただ¥ゆめ/と/のみ/ぞ¥おぼしめす。¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう¥まゐつ/て、¥ご=きしよく¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう/は¥はや¥しんでん/の¥はしがくし/の−ま/へ¥ご=かう¥なつ/て、¥まち¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥しやうくわう/は¥こんねん¥にじふ、¥あけがた/の¥つき/の¥ひかり/に¥はえ/させ¥たまひ/て、¥ぎよくたい/も¥いとど¥うつくしう/ぞ¥みえ/させ¥ましまし/ける。¥おん=ぼぎ¥こ=けんしゆんもんゐん/に、¥いたく¥に¥まゐら/させ¥たまひ/たり/しか/ば、¥ほふわう/は¥まづ¥こ=によゐん/の¥おん=こと¥おぼしめし¥いで/て、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥りやうゐん/の¥ござ、¥ちかく¥しつらは/れ/たり。¥ご=もんだふ/は¥ひと¥うけたまはる/に¥およば/ず。¥ごぜん/に/は¥あまぜ/ばかり/ぞ¥さぶらは/れ/ける。¥やや¥ひさしく¥おん=ものがたり−せ/させ¥おはしまし、¥はるか/に¥ひ¥たけ/て¥のち、¥おん=いとま¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥とば/の¥くさづ/より¥おん=ふね/に/ぞ¥めさ/れ/ける。¥しやうくわう/は¥ほふわう/の¥りきう/の¥こ=てい、¥いうかん¥せきばく/の¥おん=すまひ、¥おん=こころ−ぐるしう¥ごらんじ−おか/せ¥たまへ/ば、¥ほふわう/は¥また¥しやうくわう/の¥りよはく¥かうきう/の¥なみ/の¥うへ、¥ふね/の¥うち/の¥おん=ありさま、¥おぼつかなく/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。¥まことに¥そうべう、¥やはた、¥かも/など/を¥さし−おか/せ¥たまひ/て、¥はるばると¥あきの−くに/まで/の¥ご=かう/を/ば、¥しんめい/も¥など/か¥ご=なふじゆ¥なかる/べき。¥ご=ぐわん¥じやうじゆ¥うたがひ¥なし/と/ぞ¥みえ/たり/ける。P241¥
「くわんぎよ」(『くわんぎよ』)S0402¥おなじき−にじふろくにち、¥しやうくわう¥いつくしま/へ¥ご=さんちやく。¥にふだう−しやうこく/の¥さいあい/の¥ないし/が¥しゆくしよ、¥くわうきよ/に¥なる。¥なか¥ふつか¥おん=とうりう¥あつ/て、¥きやうゑ¥ぶがく¥おこなは/る。¥けちぐわん/の¥だうし/に/は、¥こうけん−そうじやう、¥かうざ/に¥のぼり¥かね¥うち−ならし、¥へうびやく/の¥ことば/に¥いはく、「¥ここのへ/の¥みやこ/を¥いで/させ¥たまひ、¥やへ/の¥しほぢ/を¥わき¥もつて、¥はるばると¥これ/まで¥まゐらせ¥たまひ/たる、¥おん=こころざし/の¥かたじけな−さ/よ」/と¥たからか/に¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥きみ/も¥しん/も¥みな¥かんるゐ/を/ぞ、¥もよほさ/れ/ける。¥おほみや、¥まらうど/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥やしろやしろ¥ところどころ/へ¥みな¥ご=かう¥なる。¥おほみや/より¥ごちやう/ばかり、¥やま/を¥まはら/せ¥たまひ/て、¥たきのみや/へ¥まゐらせ¥たまふ。¥こうけん−そうじやう¥はいでん/の¥はしら/に¥かき−つけ/られ/ける/とかや。¥
くもゐ/より¥おち−くる¥たき/の¥しらいと/に¥ちぎり/を¥むすぶ¥こと/ぞ¥うれしき W016¥
かんぬし¥さいきの−かげひろ¥かかい、¥じゆ−じやう/の−ごゐ、¥こくし−ふぢはらの−ありつな、¥しな¥あげ/られ/て¥じゆ−げ/の−し−ほん、¥ならびに¥ゐん/の¥てんじやう/を¥ゆるさ/る。¥ざす−そんえい、¥ほふげん/に¥なさ/る。¥しんりよ/も¥うごき、¥にふだう−しやうこく/の¥こころ/も¥やはらぎ¥たまひ/ぬ/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥おなじき−にじふくにち¥おん=ふね¥かざつ/て¥くわんぎよ¥なる。¥をりふし¥なみかぜ¥はげしかり/けれ/ば、¥おん=ふね¥こぎ−もどさ/せ、P242¥その−ひ/は¥いつくしま/の¥うち、¥あり/の−うら/と¥いふ¥ところ/に¥とどまら/せ¥たまふ。¥しやうくわう、「¥だい−みやうじん/の¥おん=なごり−をしみ/に、¥うた¥つかまつれ¥ひとびと」/と¥おほせ/けれ/ば、¥たかふさの−せうしやう、¥
たち−かへる¥なごり/も¥あり/の−うら/なれ/ば¥かみ/も¥めぐみ/を¥かくる¥しらなみ W017¥
やはん/ばかり/に¥かぜ¥しづまつ/て、¥かいじやう/も¥おだしかり/けれ/ば、¥おん=ふね¥こぎ−いださ/せ、¥その−ひ/は¥びんごの−くに¥しきな/の−とまり/に¥つか/せ¥たまふ。¥この¥ところ/は¥さんぬる¥おうほう/の¥ころほひ、¥いちゐん¥ご=かう/の¥とき、¥こくし−ふぢはらの−ためなり/が¥つくつ/たり/ける¥ごしよ/の¥あり/ける/を、¥にふだう−しやうこく¥おん=まうけ/に¥しつらは/れ/たり/しか/ども、¥しやうくわう¥それ/へ/は¥ご=かう/も¥なら/ず、「¥けふ/は¥うづき−ひとひ、¥ころもがへ/と¥いふ¥こと/の¥ある/ぞ/かし」/とて、¥おのおの¥みやこ/の¥こと/を¥のたまひ−いだし、¥ながめ−やり¥たまふ/ほど/に、¥きし/に¥いろ¥ふかき¥ふぢ/の¥まつ/の¥えだ/に¥さき−かかり/ける/を、¥しやうくわう¥えいらん¥あつ/て、「¥あの¥はな¥をり/に¥つかはせ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥おほみやの−だいなごん−たかすゑの−きやう¥うけたまはつ/て、¥さししやう−なかはらの−やすさだ/が¥はし−ぶね/に¥のつ/て、¥をりふし¥ごぜん/を¥こぎ−とほり/ける/を¥めし/て、¥をり/に¥つかはす。¥ふぢ/の¥はな/を¥まつ/の¥えだ/に¥つけ/ながら、¥をり/て¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥こころばせ¥あり/など¥おほせ/られ/て、¥ぎよ=かん¥あり/けり。「¥この¥はな/にて¥うた¥つかまつれ。¥おのおの」/と¥おほせ/けれ/ば、¥たかすゑの−だいなごん、¥
ちとせ¥へ/む¥きみ/が¥よはひ/に¥ふぢなみ/の¥まつ/の¥えだ/に/も¥かかり/ぬる/かな W018¥
ふつかのひ/は、¥びぜん/の¥こじま/の−とまり/に¥つか/せ¥たまふ。¥いつかのひ¥てん¥はれ/て、¥かいじやう/も¥のどけかり/けれ/ば、¥ごしよ/の¥おん=ふね/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥ひとびと/の¥ふね=ども¥みな¥こぎ−いだす。¥くも/のP243¥なみ、¥けぶり/の¥なみ/を¥わき−しのが/せ¥たまひ/て、¥その−ひ/は¥はりまの−くに¥やまた/の−うら/に¥つか/せ¥たまふ。¥それ/より¥おん=こし/に¥めし/て、¥ふくはら/へ¥いら/せ¥おはします。¥むゆかのひ/は、¥おん=とうりう¥あつ/て、¥ふくはら/の¥ところどころ/を¥みな¥れきらん¥ある。¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/の¥さんざう、¥あらた/まで¥ごらんぜ/らる。¥あくる¥なぬかのひ、¥ふくはら/を¥たた/せ¥たまふ/とて、¥にふだう/の¥いへ/の¥しやう¥おこなは/る。¥にふだう−しやうこく/の¥やうじ、¥たんばの−かみ−きよくに¥じやう−げ/の−しゐ、¥おなじう¥にふだう/の¥まご、¥ゑちぜんの−せうしやう/は¥しゐ/の−じゆ−じやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥その−ひ¥てらゐ/に¥つか/せ¥たまふ。¥やうかのひ¥おん=むかひ/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥とば/の¥くさづ/まで¥みな¥まゐら/れ/けり。¥くわんぎよ/の¥とき/は、¥とば=どの/へ/は¥ご=かう/も¥なら/ず、¥すぐに¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/へ/ぞ¥いら/せ¥おはします。¥おなじき−にじふににち、¥しんてい/の¥ご=そくゐ¥あり。¥だいこくでん/にて¥おこなは/る/べかり/しか/ども、¥ひととせ¥えんしやう/の¥のち/は¥いまだ¥つくり/も¥いださ/れ/ず。¥だいこくでん¥なから/ん¥うへ/は、¥だいじやうぐわん/の−ちやう/にて¥おこなは/る/べき/か/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ば、¥くでう=どの¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥だいじやうぐわん/の−ちやう/は、¥ぼんにん/の¥いへ/に¥とら/ば、¥くもんじよ−てい/の¥ところ/なり。¥だいこくでん¥なから/ん¥うへ/は、¥ししんでん/にて/こそ、¥ご=そくゐ/は¥ある/べけれ」/と¥まうさ/せ¥たまへ/ば、¥ししんでん/にて/ぞ、¥ご=そくゐ/は¥あり/ける。¥いんじ¥かうほう−しねん−じふいちぐわつ−じふいちにち、¥れんぜいゐん/の¥ご=そくゐ、¥ししんでん/にて¥あり/し/は、¥しゆしやう¥ご=じやけ/に¥よつ/て、¥だいこくでん/へ/の¥ぎやうがう¥かなは/ざり/し¥おん=ゆゑ/なり。¥ごさんでうのゐん/の¥えんきう/の¥かれい/に¥まかせ/て、¥だいじやうぐわん/の−ちやう/にて¥おこなは/る/べき/ものを/と、¥ひとびと¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥その−とき/の¥くでう=どの/の¥おん=ぱからひ/の¥うへ/は、¥さう/に¥およば/ず。¥とうぐうP244¥せんそ¥あり/しか/ば、¥ちうぐう/は¥こうきでん/より¥じじゆでん/へ¥うつつ/て、¥やがて¥たかみくら/へ¥まゐらせ¥たまふ。¥へいけ/の¥ひとびと¥みな¥しゆつし−せ/られ/ける¥なか/に、¥こまつ=どの/の¥きんだち=たち/は、¥こぞ¥おとど¥こうぜ/られ/に/しか/ば、¥いろ/にて¥ろうきよ−せ/られ/けり。¥
「げんじそろへ」(『げんじぞろへ』)S0403¥くらんど/の−さゑもん/の−ごん/の−すけ−さだなが、¥こんど/の¥ご=そくゐ/に¥ゐらん¥なく、¥めでたき¥やう/を、¥こうし¥じふまい/ばかり/に¥かい/て、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた、¥はちでうの−にゐ=どの/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥ゑみ/を¥ふくん/で/ぞ¥よろこば/れ/ける。¥かやう/に¥はなやか/に、¥めでたき¥こと=ども¥あり/しか/ども、¥せけん/は¥なほ¥にがにがしう/ぞ¥みえ/し。¥その−ころ¥いちゐん¥だいに/の¥わうじ、¥もちひとの−しんわう/と¥まうし/し/は、¥おん=はは¥かがの−だいなごん−すゑなりの−きやう/の¥おん=むすめ/なり。¥さんでうたかくら/に¥ましまし/けれ/ば、¥たかくらのみや/と/ぞ¥まうし/ける。¥いんじ¥えいまん−ぐわんねん−じふいちぐわつ−じふごにち/の¥あかつき、¥おん=とし¥じふご/にて、¥しのび/つつ、¥こんゑかはら/の−おほみや/の−ごしよ/にて、¥ひそか/に¥おん=げんぶく¥あり/けり。¥おん=しゆせき¥うつくしう¥あそばし、¥おん=さいかく/も¥すぐれ/て¥ましまし/けれ/ば、¥たいし/に/も¥たち、¥くらゐ/に/も¥つか/せ¥たまふ/べかり/しか/ども、¥こ=けんしゆんもんゐん/の¥おん=そねみ/に¥よつ/て、¥おし−こめ/られ/させ¥たまひ/けり。¥はな/の¥もと/の¥はる/の¥あそび/に/は、P245¥しがう/を¥ふるつ/て¥てづから¥ご=さく/を¥かき、¥つき/の¥まへ/の¥あき/の¥えん/に/は、¥ぎよくてき/を¥ふい/て、¥みづから¥がいん/を¥あやつり¥たまふ。¥かく−し/て¥あかし−くらさ/せ¥たまふ/ほど/に、¥ぢしよう−しねん/に/は、¥おん=とし¥さんじふ/に/ぞ¥なら/せ¥ましまし/ける。¥その−ころ¥このゑかはら/に¥さぶらは/れ/ける¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ、¥ある¥よ¥ひそか/に¥この¥みや/の¥ごしよ/に¥まゐり/て、¥まうさ/れ/ける¥こと/こそ¥おそろしけれ。¥たとへば、「¥きみ/は¥てんせうだいじん¥しじふはつせ/の¥しやうとう、¥じんむ−てんわう/より¥しちじふはちだい/に¥あたら/せ¥たまふ。¥しかれ/ば¥たいし/に/も¥たち、¥くらゐ/に/も¥つか/せ¥たまふ/べかり/し¥ひと/の、¥さんじふ/まで¥みや/にて¥わたら/せ¥たまふ¥おん=こと/を/ば、¥おん=こころ−うし/と/は¥おぼしめさ/れ¥さふらは/ず/や。¥はやはや¥ご=むほん¥おこさ/せ¥たまひ/て、¥へいけ/を¥ほろぼし、¥ほふわう/の¥いつ/と−なく、¥とば=どの/に¥おし−こめ/られ/て¥わたら/せ¥たまふ¥おん=いきどほり/を/も、¥やすめ¥まゐらせ、¥きみ/も¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまふ/べし。¥これ¥ひとへに¥ご=かうかう/の¥おん=いたり/にて/こそ¥さふらは/んずれ。¥もし¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/て、¥りやうじ/を¥くださ/れ¥たまふ¥もの/なら/ば、¥よろこび/を¥なし/て¥はせ−まゐら/んずる¥げんじ=ども/こそ、¥くにぐに/に¥おほう¥さふらへ」/とて¥まうし−つづく。「¥まづ¥きやうと/に/は¥ではの−ぜんじ−みつのぶ/が¥こども、¥いがの−かみ−みつもと、¥ではの−はんぐわん−みつなが、¥ではの−くらんど−みつしげ、¥ではの−くわんじや−みつよし、¥くまの/に/は¥こ=ろくでうの−はうぐわん−ためよし/が¥ばつし¥じふらう−よしもり/とて¥かくれ/て¥さふらふ。¥つの−くに/に/は¥ただの−くらんど−ゆきつな/こそ¥さふらへ/ども、¥これ/は¥しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥むほん/の¥とき、¥どうしん−し/ながら¥かへりちう−し/たる¥ふたうじん/にて¥さふらへ/ば、¥まうす/に¥およば/ず。¥さり/ながら¥その¥おとと¥ただの−じらう−ともざね、¥てしまの−くわんじや−たかより、¥おほたの−たらう−よりもと。¥かはちの−くに/に/は、¥いしかは/の−こほり/を¥ちぎやう−し/けるP246¥むさしの−ごん/の−かみ−にふだう−よしもと、¥しそく¥いしかはの−はんぐわんだい−よしかぬ。¥やまとの−くに/に/は、¥うのの−しちらう−ちかはる/が¥こども、¥たらう−ありはる、¥じらう−きよはる、¥さぶらう−なりはる、¥しらう−よしはる。¥あふみの−くに/に/は、¥やまもと、¥かしはぎ、¥にしごり。¥みの¥をはり/に/は、¥やまだの−じらう−しげひろ、¥かうべの−たらう−しげなほ、¥いづみの−たらう−しげみつ、¥うらのの−しらう−しげとほ、¥あじきの−じらう−しげより、¥その¥こ/の¥たらう−しげすけ、¥きだの−さぶらう−しげなが、¥かいでんの−はうぐわんだい−しげくに、¥やしまの−せんじやう−しげたか、¥その¥こ/の¥たらう−しげゆき。¥かひの−くに/に/は、¥へんみの−くわんじや−よしきよ、¥その¥こ/の¥たらう−きよみつ、¥たけだの−たらう−のぶよし、¥かがみの−じらう−とほみつ、¥おなじき−こじらう−ながきよ、¥いちでうの−じらう−ただより、¥いたがきの−さぶらう−かねのぶ、¥へんみの−ひやうゑ−ありよし、¥たけだの−ごらう−のぶみつ、¥やすだの−さぶらう−よしさだ。¥しなのの−くに/に/は、¥おほうち−たらう−これよし、¥をかだの−くわんじや−ちかよし、¥ひらがの−くわんじや−もりよし、¥その¥こ/の¥しらう−よしのぶ、¥こ=たてはきの−せんじやう−よしかた/が¥じなん、¥きその−くわんじや−よしなか。¥いづの−くに/に/は¥るにん−さきの−うひやうゑ/の−すけ−よりとも。¥ひたちの−くに/に/は、¥しだの−さぶらう−せんじやう−よしのり、¥さたけの−くわんじや−まさよし、¥その¥こ/の¥たらう−ただよし、¥さぶらう−よしむね、¥しらう−たかよし、¥ごらう−よしすゑ、¥みちの−くに/に/は¥こ=さま/の−かみ−よしとも/が¥ばつし、¥くらう−くわんじや−よしつね、¥これ¥みな¥ろくそんわう/の¥ご=べうえい、¥ただの−しんぼち−まんぢう/が¥こういん/なり。¥てうてき/を¥たひらげ¥しゆくまう/を¥とぐる¥こと/は、¥げんぺい¥いづれ¥しようれつ¥なかり/しか/ども、¥いま/は¥うんでい¥まじはり/を¥へだて/て、¥しゆじう/の¥れい/に/も¥なほ¥おとれ/り。¥くに/は¥こくし/に¥したがひ、¥しやう/は¥あづかつしよ/に¥めし−つかは/れ、¥くじざふじ/に¥かり−たて/られ/て、¥やすい¥こころ/も¥し¥さふらは/ず。¥つらつら¥たうせい/の¥てい/を¥み¥さふらふ/に、¥うへ/に/は¥したがう/たる¥やう/なれ/ども、¥ないない/は¥いつかう¥へいけ/を¥そねま/ぬ¥もの/や¥さふらふ。¥きみ¥もし¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/て、¥りやうじ/を¥たう/づる/ほど/なら/ば、¥くにぐに/の¥げんじ=ども、¥よ/を¥ひ/に¥つい/で¥はせ−のぼり、P247¥へいけ/を¥ほろぼさ/ん¥こと/は、¥じじつ/を¥めぐらす/べから/ず。¥その¥ぎ/にて¥さふらは/ば、¥にふだう/も¥とし/こそ¥よつ/て¥さふらへ/ども、¥わかき¥こども¥あまた¥さふらへ/ば、¥ひき−ぐし/て¥まゐり¥さふらふ/べし」/と/ぞ¥まうし/ける。¥
みや/は¥この¥こと¥いかが¥あら/んず/らん/と、¥おぼしめし−わづらは/せ¥たまひ/て、¥しばし/は¥ご=しよういん/も¥なかり/ける/が、¥ここ/に¥あこまる−だいなごん−むねみちの−きやう/の¥まご、¥びんごの−ぜんじ−すゑみち/が¥こ/に、¥せうなごん−これなが/と¥まうし/し/は、¥すぐれ/たる¥さうにん/の¥じやうず/にて¥あり/けれ/ば、¥とき/の−ひと、¥さうせうなごん/と/ぞ¥まうし/ける。¥その¥ひと¥この¥みや/を¥み¥まゐらせ/て、「¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまふ/べき¥おん=さう¥まします。¥あひ−かまへ/て¥てんが/の¥こと、¥おぼしめし−すつ/な」/と¥まうさ/れ/ける¥をりふし、¥この¥さんみ−にふだう/も、¥かやう/に¥すすめ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さて/は¥しかる/べき¥てんせうだいじん/の¥おん=つげ/やらん/とて、¥ひしひし/と¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/けり。¥まづ¥しんぐう/の−じふらう−よしもり/を¥めし/て、¥くらんど/に¥なさ/る。¥ゆきいへ/と¥かいみやう−し/て、¥りやうじ/の¥お=つかひ/に¥とうごく/へ/こそ¥くださ/れ/けれ。¥しんぐわつ−にじふはちにち¥みやこ/を¥たつ/て、¥あふみの−くに/より¥はじめ/て、¥みの¥をはり/の¥げんじ=ども/に、¥しだいに¥ふれ/て¥くだる/ほど/に、¥ごぐわつ−とをか/に/は、¥いづの¥ほうでう¥ひるがこじま/に¥つい/て、¥るにん−さきの−うひやうゑ/の−すけ=どの/に、¥りやうじ/を¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥しだの−さぶらう−せんじやう−よしのり/は、¥あに/なれ/ば¥たば/ん/とて、¥しだ/の¥うきしま/へ¥くだる。¥きその−くわんじや−よしなか/は、¥をひ/なれ/ば¥とら/せ/ん/とて、¥せんだう/へ/こそ¥おもむき/けれ。¥ここ/に¥くまのの−べつたう−たんぞう/は、¥へいけ¥ぢうおん/の¥み/なり/し/が、¥なに/と/して/か¥きき−いだし/けんP248、「¥しんぐうの−じふらう−よしもり/こそ、¥たかくらのみや/の¥りやうじ¥たまはつ/て、¥すでに¥むほん/を¥おこす/なれ。¥なち¥しんぐう/の¥もの=ども/は、¥さだめて¥げんじ/の¥かたうど/を/ぞ¥せ/んず/らん。¥たんぞう/は¥へいけ/の¥ご=おん/を¥あめやま/に¥かうぶり/たれ/ば、¥いかで/か¥そむき¥たてまつる/べき。¥や¥ひとつ¥い−かけ/て、¥その−のち¥みやこ/へ¥しさい/を¥まうさ/ん」/とて、¥ひた−かぶと¥いつせん−よ−にん、¥しんぐう/の−みなと/へ¥はつかう−す。¥しんぐう/に/は¥とりゐの−ほふげん、¥たかばう/の−ほふげん、¥さぶらひ/に/は¥うゐ、¥すずき、¥みづや、¥かめのかふ、¥なち/に/は¥しゆぎやう−ほふげん¥いげ、¥つがふ¥その¥せい¥いつせんごひやく−よ−にん、¥とき¥つくり¥や−あはせ−し/て、¥げんじ/の¥かた/に/は/と/こそ¥いれ、¥へいけ/の¥かた/に/は¥かく/こそ¥いれ/と、¥たがひ/に¥やさけび/の¥こゑ/の¥たいてん/も¥なく、¥かぶら/の¥なり−やむ¥ひま/も¥なく、¥みつか/が/ほど/こそ¥たたかう/たれ。¥され/ども¥おぼえ/の¥ほふげん¥たんぞう/は、¥いへのこ−らうどう¥おほく¥うた/せ、¥わが−み¥て−おひ、¥からき¥いのち¥いき/つつ、¥なくなく¥ほんぐう/へ/こそ¥かへり−のぼり/けれ。¥
「いたちのさた」(『いたちのさた』)S0404¥さる−ほど/に¥ほふわう/は、¥なりちか¥しゆんくわん=ら/が¥やう/に、¥とほき¥くに¥はるか/の¥しま/へ/も、¥うつし/ぞ¥やり¥まゐらせ/んずる/に/こそ/と、¥おぼしめさ/れ/けれ/ども、¥さ/は¥なく/して、¥とば=どの/にて¥ぢしよう/も¥しねん/に¥おくら/せ¥おはします。¥おなじき−ごぐわつ−じふににち/の¥うま/の−こく/ばかり、¥とば=どの/に/は、¥いたち¥おびたたしう¥はしり−さわぐ。¥ほふわう¥おん=うらかた¥あそばい/て、¥あふみの−かみ−なかかぬ、¥その−とき/は¥いまだ¥つるくらんど/にてP249¥さふらひ/ける/を、¥ごぜん/へ¥めし/て、「¥これ¥もつ/て¥あべの−やすちか/が¥もと/へ¥ゆき、¥きつと¥かんがへ/させ/て、¥かんじやう/を¥とつ/て¥まゐれ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥なかかぬ¥これ/を¥たまはつ/て、¥あべの−やすちか/が¥もと/へ¥ゆく。¥をりふし¥しゆくしよ/に/は¥なかり/けり。¥しらかは/なる¥ところ/へ/と¥いひ/けれ/ば、¥それ/へ¥たづね−ゆき/て、¥ちよくぢやう/の¥おもむき¥おほすれ/ば、¥やすちか¥やがて¥かんじやう/を/こそ¥まゐらせ/けれ。¥なかかぬ¥これ/を¥とつ/て¥とば=どの/へ¥はせ−まゐり、¥もん/より¥いら/ん/と¥すれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども¥ゆるさ/ず。¥あんない/は¥しつ/たり、¥ついぢ/を¥こえ、¥おほ−ゆか/の¥した/を¥はう/て、¥ごぜん/の¥きりいた/より、¥やすちか/が¥かんじやう/を/こそ¥まゐらせ/けれ。¥ほふわう¥これ/を¥ひらい/て¥えいらん¥ある/に、「¥いま¥みつか/が¥うち/の¥おん=よろこび、¥ならびに¥おん=なげき」/と/ぞ¥かんがへ¥まうし/たる。¥ほふわう、「¥この¥おん=ありさま/にて/も、¥おん=よろこび/は¥しかる/べし。¥また¥いか/なる¥おん=め/に/か¥あふ/べき/やらん」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥おなじき−じふさんにち¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥ちち/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、¥ほふわう/の¥おん=こと/を¥たりふし¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥やうやう/に¥おもひ−なほつ/て、¥ほふわう/を/ば¥とば=どの/を¥いだし¥たてまつり、¥みやこ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつり、¥はちでう−からすまる/の¥びふくもんゐん/の¥ごしよ/へ¥いれ¥たてまつる。¥いま¥みつか/が¥うち/の¥おん=よろこび/と/は、¥やすちか¥これ/を/ぞ¥まうし/ける。¥かかり/ける¥ところ/に、¥くまのの−べつたう−たんぞう、¥ひきやく/を¥もつて、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/の¥よし/を、¥みやこ/へ¥まうし/たり/けれ/ば、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥おほき/に¥さわい/で、¥をりふし¥にふだう−しやうこく/は、¥ふくはら/の¥べつげふ/に¥おはし/ける/に¥この¥よし¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥おほき/に¥いかつ/て、「¥その¥ぎ/なら/ば¥たかくらのみや/をP250¥からめ−とつ/て、¥とさ/の−はた/へ¥うつす/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥しやうけい/に/は¥さんでうの−だいなごん−さねふさ、¥しきじ/に/は¥とう/の−べん−みつまさ/と/ぞ¥きこえ/し。¥ぶし/に/は¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな、¥ではの−はうぐわん−みつなが、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥みや/の¥ごしよ/へ/ぞ¥むかひ/ける。¥この¥げん−だいふ/の−はうぐわん/と¥まうす/は、¥さんみ−にふだう/の¥じなん/なり。¥しかる/を¥この¥にんじゆ/に¥いれ/られ/ける¥こと/は、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/を、¥さんみ−にふだう¥すすめ¥まうさ/れ/たり/と¥いふ¥こと/を、¥へいけ¥いまだ¥しら/ざり/ける/に¥よつ/て/なり。¥
「のぶつらかつせん」(『のぶつら』)S0405¥さる−ほど/に、¥みや/は¥さつき−じふごや/の¥くもま/の¥つき/を¥ながめ/させ¥たまひ/て、¥なん/の¥ゆくへ/も¥おぼしめし−よら/ざり/ける/に、¥さんみ−にふだう/の¥ししや/とて、¥ふみ¥もち/て¥いそがはし=げ/に¥いで−き/たる。¥みや/の¥おん=めのとご、¥ろくでうの−すけ/の−たいふ−むねのぶ、¥これ/を¥とつ/て¥ごぜん/へ¥まゐり、¥ひらい/て¥みる/に、「¥きみ/の¥ご=むほん¥すでに¥あらはれ/させ¥たまひ/て、¥とさ/の−はた/へ¥うつし¥まゐらす/べし/とて、¥くわんにん=ども/が¥べつたうせん/を¥うけたまはつ/て、¥お=むかひ/に¥まゐり¥さふらふ。¥いそぎ¥ごしよ/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥みゐでら/へ¥いら/せ¥おはしませ。¥にふだう/も¥やがて¥まゐり¥さふらは/ん」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥みや/は¥この¥こと¥いかが−せ/ん/と、¥おぼしめし−わづらは/せ¥たまふ¥ところ/に、¥みや/の¥さぶらひ/に¥ちやう−ひやうゑ/の−じよう−はせべの−のぶつら/とP251¥いふ¥もの¥あり。¥をりふし¥ごぜん¥ちかう¥さふらひ/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥ただ¥なん/の¥やう/も¥さふらふ/まじ。¥にようばう−しやうぞく/に¥いで−たた/せ¥たまひ/て、¥おち/させ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし/とて、¥おん=ぐし/を¥みだり、¥かさね/たる¥ぎよ=い/に、¥いちめがさ/を/ぞ¥めさ/れ/ける。¥ろくでうの−すけ/の−たいふ−むねのぶ、¥からかさ¥もち/て¥おん=とも¥つかまつる。¥つるまる/と¥いふ¥わらは、¥ふくろ/に¥もの¥いれ/て¥いただい/たり。¥たとへば¥せいし/が¥ぢよ/を¥むかへ/て¥ゆく¥やう/に¥いで−たた/せ¥たまひ/て、¥たかくら/を¥きた/へ¥おち/させ¥たまふ/に、¥おほき/なる¥みぞ/の¥あり/ける/を、¥いと¥もの−がるう¥こえ/させ¥たまへ/ば、¥みちゆきびと/が¥たち−とどまつ/て、「¥はしたな/の¥にようばう/の¥みぞ/の¥こえやう/や」/とて、¥あやし=げ/に¥み¥まゐらせ/けれ/ば、¥いとど¥あしばや/に/ぞ¥すぎ/させ¥おはします。¥
ごしよ/の¥おん=るす/に/は、¥ちやう−ひやうゑ/の−じよう−はせべの−のぶつら/を/ぞ¥おか/れ/ける。¥にようばう=たち/の¥せうせう¥おはし/ける/を/ば、¥かしこ−ここ/へ¥たち−しのばせ/て、¥み−ぐるしき¥もの¥あら/ば、¥とり−したため/ん/とて¥みる/ほど/に、¥さ/しも¥みや/の¥ご=ひざう¥あり/ける¥こえだ/と¥きこえ/し¥おん=ふえ/を、¥つね/の¥ごしよ/の¥おん=まくら/に、¥とり−わすれ/させ¥たまひ/たる/を/ぞ、¥たち−かへつ/て/も¥とら/まほしう/や¥おぼしめさ/れ/けん。¥のぶつら¥これ/を¥み−つけ/て、「¥あな¥あさまし。¥さ/しも¥きみ/の¥ご=ひざう/の¥おん=ふえ/を」/と¥まうし/て、¥いま¥ごちやう/が¥うち/にて¥おつ−つい/て¥まゐらせ/たり。¥みや¥なのめ/なら/ず¥ぎよ=かん¥あつ/て、「¥われ¥しな/ば、¥この¥ふえ/を/ば、¥ご=くわん/に¥いれよ」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥やがて¥おん=とも¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥のぶつら¥まうし/ける/は、「¥ただいま¥あの¥ごしよ/へ、¥くわんにん=ども/が¥お=むかひ/にP252¥まゐり¥さふらふ/なる/に、¥ひと¥いち−にん/も¥さふらは/ざら/ん/は、¥むげ/に¥くちをしく¥ぞんじ¥さふらふ。¥その−うへ¥あの¥ごしよ/に、¥のぶつら/が¥さふらふ/と¥まうす¥こと/を/ば、¥じやうげ¥みな¥しつ/たる¥こと/で/こそ¥さふらへ。¥こんや¥さふらは/ざら/ん/は、¥それ/も¥その¥よ/は¥にげ/たり/など¥いは/れ/ん¥こと、¥くちをしう¥さふらふ/べし。¥ゆみ−や¥とる¥み/は、¥かり/に/も¥な/こそ¥をしう¥さふらへ。¥くわんにん=ども/に¥しばらく¥あひ−しらひ、¥いつぱう¥うち−やぶつ/て、¥やがて¥まゐり¥さふらは/ん」/とて、¥ただ¥いち−にん¥とつ/て¥かへす。¥のぶつら/が¥その¥よ/の¥しやうぞく/に/は、¥うすあを/の¥かりぎぬ/の¥した/に、¥もよぎ−にほひ/の−はらまき/を¥き/て、¥ゑふ/の−たち/を/ぞ¥はい/たり/ける。¥さんでうおもて/の¥そうもん/を/も、¥たかくらおもて/の¥こもん/を/も、¥とも/に¥ひらい/て¥まち−かけ/たり。¥
あん/の/ごとく¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな、¥ではの−はうぐわん−みつなが、¥つがふ¥その¥せい¥さんびやく−よ−き、¥じふごにち/の¥ね/の−こく/に、¥みや/の¥ごしよ/へ/ぞ¥おし−よせ/たる。¥げん−だいふ/の−はうぐわん/は、¥ぞんずる¥むね¥あり/と¥おぼえ/て、¥はるか/の¥もんぐわい/に¥ひかへ/たり。¥ではの−はうぐわん−みつなが/は、¥のり/ながら¥もん/の¥うち/へ¥うち−いれ、¥には/に¥ひかへ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥みや/の¥ご=むほん¥すで/に¥あらはれ/させ¥たまひ/て、¥とさ/の−はた/へ¥うつし¥まゐらせ/ん/が¥ため/に、¥くわんにん=ども/が¥べつたうせん/を¥うけたまはつ/て、¥ただいま¥おん=むかひ/に¥まゐり/て¥さふらふ。¥とうとう¥おん=いで¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥のぶつら¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、「¥たうじ/は¥ごしよ/で/も¥さふらは/ず、¥おん=ものま[う]で/で¥さふらふ/ぞ。¥なにごと/ぞ、¥こと/の¥しさい/を¥まうさ/れよ」/と¥いひ/けれ/ば、¥ではの−はうぐわん、「¥なんでふ¥この¥ごしよ/なら/で/は、¥いづく/へ/か¥わたら/せ¥たまふ/べかん/なる/ぞ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥しもべ=ども¥まゐつ/て¥さがし¥たてまつれ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥のぶつら¥かさね/てP253、「¥もの/も¥おぼえ/ぬ¥くわんにん=ども/が¥まうしやう/かな。¥むま/に¥のり/ながら、¥もん/の¥うち/へ¥まゐる/だに/も¥きくわい/なる/に¥あまつさへ¥しもべ=ども¥まゐつ/て¥さがし¥たてまつれ/と/は、¥いかで/か¥まうす/ぞ。¥ちやう−ひやうゑ/の−じよう−はせべの−のぶつら/が¥さふらふ/ぞ。¥ちかう¥よつ/て¥あやまち−す/な」/と/ぞ¥いひ/ける。¥ちやう/の¥しもべ/の¥なか/に、¥かなたけ/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥うちもの/の¥さや/を¥はづし、¥のぶつら/に¥め/を¥かけ/て、¥おほ−ゆか/の¥うへ/へ¥とび−のぼる。¥これ/を¥み/て¥どうれい=ども、¥じふしごにん/ぞ¥つづい/たる。¥のぶつら¥これ/を¥み/て、¥かりぎぬ/の¥おびひも¥ひつ−きつ/て¥すつる¥まま/に、¥ゑふ/の−たち/なれ/ども、¥み/を/ば¥こころ−え/て¥つくら/せ/たる/を¥ぬき−あはせ/て、¥さんざん/に/こそ¥ふるまう/たれ。¥かたき/は¥おほ−だち、¥おほ−なぎなた/で¥ふるまへ/ども、¥のぶつら/が¥ゑふ/の−たち/に¥きり−たて/られ/て、¥あらし/に¥こ/の−は/の¥ちる¥やう/に、¥には/へ¥さつ/と/ぞ¥おり/たり/ける。¥
さつき−じふごや/の¥くもま/の¥つき/の、¥あらはれ−いで/て¥あかかり/ける/に、¥かたき/は¥ぶあんない/なり、¥のぶつら/は¥あんないしや/にて¥あり/けれ/ば、¥あそこ/の¥めんらう/に¥おつ−かけ/て/は、¥はた/と¥きり、¥ここ/の¥つまり/に¥おつ−つめ/て/は、¥ちやうど¥きる。「¥いか/に¥せんじ/の¥お=つかひ/を/ば、¥かう/は¥する/ぞ」/と¥いひ/けれ/ば、「¥せんじ/と/は¥なん/ぞ」/とて、¥たち¥ゆがめ/ば¥をどり−のき、¥おし−なほし、¥ふみ−なほし、¥やには/に¥よき¥もの=ども¥じふしごにん/ぞ¥きり−ふせ/たる。¥その−のち¥たち/の¥きつさき¥さんずん/ばかり¥うち−をつ/て¥すて/てげり。¥はら/を¥きら/ん/と¥こし/を¥さぐれ/ども、¥さやまき¥おち/て¥なかり/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず。¥おほて/を¥ひろげ/て、¥たかくらおもて/の¥こもん/より、¥をどり−いで/ん/と¥する¥ところ/に、¥おほ−なぎなた¥もち/たる¥をとこ¥いち−にん¥より−あう/たり。¥のぶつら¥なぎなた/に¥のら/ん/とP254¥とん/で¥かかる/が、¥のり−そんじ/て、¥もも/を¥ぬひざま/に¥つらぬか/れ、¥こころ/は¥たけく¥おもへ/ども、¥おほぜい/の¥なか/に¥とり−こめ/られ/て、¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥その−のち¥ごしよ−ぢう/に¥みだれ−いつ/て¥さがせ/ども、¥みや/は¥わたら/せ¥たまは/ず。¥のぶつら/ばかり¥からめ/て、¥ろくはら/へ¥ゐ/て¥まゐる。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、¥のぶつら/を¥おほ−には/に¥ひつ−すゑ/させ、「¥まことに¥わ−をのこ/は、¥せんじ/の¥お=つかひ/と¥なのる/を、¥せんじ/と/は¥なん/ぞ/とて¥きつ/たり/ける/か。¥その−うへ、¥ちやう/の¥しもべ=ども、¥おほく¥にんじやう¥せつがい−し/たん/なれ/ば、¥よくよく¥きうもん−し/て、¥こと/の¥しさい/を¥たづね−とひ、¥その−のち¥かはら/に¥ひき−いだい/て¥かうべ/を¥はねよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥
のぶつら¥もと/より¥すぐれ/たる¥だい−かう/の−もの/なり/けれ/ば、¥ゐ−なほり¥あざ−わらつ/て¥まうし/ける/は、「¥この−ほど¥あの¥ごしよ/を、¥よなよな¥もの/の¥うかがひ¥さふらふ/を、¥なんでふ¥こと/の¥ある/べき/と¥おもひ−あなどつ/て、¥ようじん/も¥つかまつら/ぬ¥ところ/に、¥やはん/ばかり/に¥よろう/たる¥もの=ども/が、¥にさんびやくき¥うち−いつ/て¥さふらふ/を、¥なにもの/ぞ/と¥たづね/て¥さふらへ/ば、¥せんじ/の¥お=つかひ/と¥まうす。¥たうじ/は¥しよ−こく/の¥せつたう¥がうだう、¥さんぞく¥かいぞく/など¥まうす¥やつ=ばら/が、¥あるひは¥きんだち/の¥いら/せ¥たまひ/たる/ぞ、¥あるひは¥せんじ/の¥お=つかひ/など¥なのり¥まうす/と、¥かねがね¥うけたまはつ/て¥さふらふ/ほど/に、¥せんじ/と/は¥なん/ぞ/とて、¥きつ/たる¥ざふらふ。¥およそ¥のぶつら、¥もののぐ/を/も¥おもふ¥さま/に¥つかまつり、¥かね¥よき¥たち/を/も¥もつ/て¥さふらは/ん/に/は、¥ただいま/の¥くわんにん=ども/を/ば、¥よも¥いち−にん/も¥あんをん/で/は¥かへし¥さふらは/じ。¥その−うへ、¥みや/の¥ご=ざいしよ/は、¥いづく/に¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん、¥しり¥まゐらせ/ぬ¥ざふらふ。¥たとひP255¥しり¥まゐらせ/て¥さふらふ/とも、¥さぶらひ−ほん/の¥もの/の、¥いちど¥まうさ/じ/と¥おもひ−きり/て/ん¥こと/を、¥きうもん/に¥およん/で¥まうす/べき¥やう¥なし」/とて、¥その−のち/は¥もの/も¥まうさ/ず。¥いくら/も¥なみ−ゐ/たり/ける¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、「¥あつぱれ¥かう/の−もの/や。¥これ=ら/を/こそ¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/と/も¥いふ/べけれ」/と、¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、¥その¥なか/に¥ある¥ひと/の¥まうし/ける/は、「¥あれ/が¥かうみやう/は¥いま/に¥はじめ/ぬ¥こと/ぞ/かし。¥せんねん¥ところ/に¥あり/し¥とき、¥おほ−ばんじゆ/の¥もの=ども/の¥とどめ−かね/たり/し¥がうだう¥ろくにん/に、¥ただ¥いち−にん¥おつ−かかり、¥にでうほりかは/なる¥ところ/にて、¥しにん¥きり−ふせ、¥ににん¥いけどつ/て、¥その−とき¥なさ/れ/たり/し¥さひやうゑ/の−じよう/ぞ/かし。¥あつたら¥をのこ/の¥きら/れ/んずる¥こと/の¥むざん−さ/よ」/と¥をしみ−あへ/り/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥いかが¥おもは/れ/けん、「¥さら/ば、¥な¥きつ/そ」/とて、¥はうき/の¥ひの/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥へいけ¥ほろび¥げんじ/の¥よ/に¥なつ/て、¥とうごく/へ¥くだり、¥かぢはら−へいざう−かげとき/に¥つい/て、¥こと/の¥こんげん¥いちいち/に¥まうし/たり/けれ/ば、¥かまくら=どの、「¥しんべう/なり」/と¥かんじ¥たまひ/て、¥のとの−くに/に¥ご=おん¥かうぶり/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「たかくらのみやをんじやうじへじゆぎよ」(『きをほ』)S0406¥さる−ほど/に、¥みや/は¥たかくら/を¥きた/へ、¥こんゑ/を¥ひがし/へ、¥かもがは/を¥わたら/せ¥たまひ/て、¥によいやま/へP256¥いら/せ¥おはします。¥むかし¥きよみばらの−てんわう、¥おほともの−わうじ/に¥おそは/れ/させ¥たまひ/て、¥よしのやま/へ¥いら/せ¥たまひ/ける/に/こそ、¥をとめ/の¥すがた/を/ば¥から/せ¥たまひ/ける/なれ。¥いま¥この¥みや/の¥おん=ありさま/も、¥それ/に/は¥すこし/も¥たがは/せ¥たまふ/べから/ず。¥しら/ぬ¥やまぢ/を、¥よ/も−すがら¥はるばる/と¥わけ−いら/せ¥たまふ/に、¥いつ¥ならはし/の¥おん=こと/なれ/ば、¥おん=あし/より¥いづる¥ち/は、¥いさご/を¥そめ/て¥くれなゐ/の/ごとし。¥なつぐさ/の¥しげみ/が¥なか/の¥つゆけ−さ/も、¥さ/こそ/は¥ところ−せう¥おぼしめさ/れ/けめ。¥かく−し/て¥あかつき−がた/に¥みゐでら/へ¥いら/せ¥おはします。「¥かひ−なき¥いのち/の¥をし−さ/に、¥しゆと/を¥たのん/で¥じゆぎよ¥あり」/と¥おほせ/けれ/ば、¥だいしゆ¥おほき/に¥かしこまり−よろこん/で、¥ほふりんゐん/に¥ごしよ/を¥しつらひ、¥かた/の/ごとく/の¥ぐご¥し−いだい/て¥たてまつる。¥
「きほふ」¥あくる¥じふろくにち、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん¥おこさ/せ¥たまひ/て、¥みゐでら/へ¥おち/させ¥たまふ/ぞ/や/と¥まうす/ほど/こそ¥あり/けれ、¥きやう−ぢう/の¥さうどう¥なのめ/なら/ず。¥そもそも¥この¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/は、¥としごろ−ひごろ/も¥あれ/ば/こそ¥あり/けめ、¥こんねん¥いか/なる¥こころ/にて、¥むほん/を/ば¥おこさ/れ/ける/ぞ/と¥いふ/に、¥へいけ/の¥じなん¥むねもりの−きやう/の、¥ふしぎ/の¥こと/を/のみ¥し¥たまひ/ける/に¥よつ/て/なり。¥され/ば¥ひと/の¥よ/に¥あれ/ば/とて、¥すずろ/に¥いふ/まじき¥こと/を¥いひ、¥す/まじきP257¥こと/を¥する/は、¥よくよく¥しりよ¥ある/べき¥こと/なり。¥たとへば¥その−ころ¥さんみ−にふだう/の¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな/の¥もと/に、¥くぢう/に¥きこえ/たる¥めいば¥あり。¥かげ/なる¥むま/の¥ならび−なき¥いちもつ、¥のり−はしり、¥こころ−むけ、¥よ/に¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥な/を/ば¥このした/と/ぞ¥いは/れ/ける。¥むねもりの−きやう¥ししや/を¥たて/て、「¥きこえ¥さふらふ¥めいば/を¥たまはつ/て、¥み¥さふらは/ばや」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥いづの−かみ/の¥へんじ/に/は、「¥さる¥むま/を¥もつ/て¥さふらひ/し/を、¥この−ほど¥あまり/に¥のり−つからかし/て¥さふらふ/ほど/に、¥しばらく¥いたはら/せ/ん/が¥ため/に、¥でんしや/へ¥つかはし/て¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥さら/ん/に/は¥ちから¥およば/ず」/とて、¥その−のち/は¥さた¥なかり/ける/が、¥おほく¥なみ−ゐ/たり/ける¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、「¥あつぱれ¥その¥むま/は¥をととひ/も¥さふらひ/し。¥きのふ/も¥みえ/て¥さふらふ。¥けさ/も¥にはのり−し¥さふらひ/つる」/など、¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、「¥さて/は¥をしむ¥ござんなれ。¥にくし。¥こへ」/とて、¥さぶらひ/して¥はせ/させ、¥ふみ/など¥し/て、¥ひととき/が¥うち/に¥ごろくど¥しちはちど/など¥こは/れ/けれ/ば、¥さんみ−にふだう¥これ/を¥きき、¥いづの−かみ/に¥むかつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥たとひ¥こがね/を¥もつて¥まろめ/たる¥むま/なり/とも、¥それ−ほど¥ひと/の¥こは/うずる/に、¥をしむ/べき¥やう/や¥ある。¥その¥むま¥すみやか/に¥ろくはら/へ¥つかはせ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥いづの−かみ¥ちから¥およば/ず、¥いつしゆ/の¥うた/を¥かき−そへ/て、¥ろくはら/へ¥つかはさ/る。¥
こひしく/は¥き/て/も¥みよ/かし¥み/に¥そふる¥かげ/を/ば¥いかが¥はなち−やる/べき W021¥
むねもりの−きやう、¥まづ¥うた/の¥へんじ/を/ば¥し¥たまは/で、「¥あつぱれ¥むま/や、¥むま/は¥まことに¥よい¥むま/で¥あり/けり。P258¥され/ども¥あまり/に¥をしみ/つる/が¥にくき/に、¥ぬし/が¥なのり/を¥かなやき/に¥せよ」/とて、¥なかつな/と¥いふ¥かなやき/を¥し/て、¥むまや/に/こそ¥たて/られ/けれ。¥まらうと¥きたつ/て、「¥きこえ¥さふらふ¥めいば/を¥み¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、「¥その¥なかつな=め/に¥くら¥おけ、¥ひき−いだせ、¥のれ、¥うて、¥はれ」/なんど/ぞ¥のたまひ/ける。¥いづの−かみ¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥み/に¥かへ/て¥おもふ¥むま/なれ/ども、¥けんゐ/に¥つい/て¥とら/るる/さへ¥ある/に、¥あまつさへ¥てんが/の¥わらはれぐさ/と¥なら/んずる¥こと/こそ¥やすから/ね」/と¥おほき/に¥いきどほら/れ/けれ/ば、¥さんみ−にふだう¥のたまひ/ける/は、「¥なんでふ¥こと/の¥ある/べき/と¥おもひ−あなどつ/て、¥へいけ/の¥ひと=ども/が、¥かやう/の¥しれごと/を¥する/に/こそ¥あん/なれ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん。¥びんぎ/を¥うかがふ/に/こそ¥あら/め」/と¥のたまへ/ども、¥わたくし/に/は¥おもひ/も¥たた/れ/ず、¥たかくらのみや/を¥すすめ¥まうさ/れ/ける/と/ぞ、¥のち/に/は¥きこえ/し。¥これ/に¥つけ/て/も、¥てんが/の¥ひと、¥こまつの−おとど/の¥こと/を/ぞ¥しのび¥まうし/ける。¥ある−とき¥おとど¥さんだい/の¥ついで/に、¥ちうぐう/の¥おん=かた/へ¥まゐらせ¥たまふ/に、¥はつしやく/ばかり¥あり/ける¥くちなは/の、¥おとど/の¥さしぬき/の¥ひだん/の¥りん/を¥はひ−まはり/ける/を、¥しげもり¥さわが/ば、¥にようばう=たち/も¥さわぎ、¥ちうぐう/も¥おどろか/せ¥たまひ/な/んず/と¥おぼしめし、¥ひだん/の¥て/にて¥を/を¥おさへ、¥みぎ/の¥て/にて¥かしら/を¥とつ/て、¥なほし/の¥そで/の¥なか/へ¥ひき−いれ、¥ちつと/も¥さわが/ず、¥つい−たつ/て、「¥ろくゐ/や¥さふらふ、¥ろくゐ/や¥さふらふ」/と¥めさ/れ/けれ/ば、¥いづの−かみ−なかつな、¥その−とき/は¥いまだ¥ゑふ/の−くらんど/にて¥さふらは/れ/ける/が、「¥なかつな」/と¥なのつ/て¥まゐら/れ/たる/に、¥この¥くちなは/を¥たぶ。¥たまはつ/て¥ゆば=どの/をP259¥へ/て、¥てんじやう/の¥こには/に¥いで/つつ、¥みくら/の¥こ−とねり/を¥まねい/て、「¥これ¥たまはれ」/と¥いは/れ/けれ/ば、¥おほき/に¥かしら/を¥ふつ/て¥にげ−さり/ぬ。¥いづの−かみ¥ちから¥およば/ず、¥わが¥らうどう/の¥きほふ/を¥めし/て¥これ/を¥たぶ。¥たまはつ/て¥すて/てげり。¥その¥あした¥こまつ=どの/より、¥よい¥むま/に¥くら¥おい/て、¥いづの−かみ/の¥もと/へ¥つかはす/とて、「¥さて/も¥きのふ/の¥ふるまひ/こそ、¥いう/に¥やさしう¥さふらひ/つれ。¥これ/は¥のりいち/の¥むま/で¥さふらふ/ぞ。¥ゆふべ/に¥およん/で、¥ぢんげ/より¥けいせい/の¥もと/へ¥かよは/れ/ん¥とき¥もちひ/らる/べし」/とて¥つかはさ/る。¥いづの−かみ、¥だいじん/の¥おん=ぺんじ/なれ/ば、「¥お=むま¥かしこまつ/て¥たまはり¥さふらひ/ぬ。¥さて/も¥きのふ/の¥おん=ふるまひ/は、¥げんじやうらく/に/こそ¥に/て¥さふらひ/しか」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥いか/なれ/ば¥こまつ=どの/は、¥かやう/に¥いう/なる¥ためし/も¥おはせ/し/ぞ/かし。¥この¥むねもりの−きやう/は、¥さ/こそ¥なから/め、¥ひと/の¥をしむ¥むま¥こひ−とつ/て、¥あまつさへ¥てんが/の¥だいじ/に¥および/ぬる/こそ¥うたてけれ。¥さる−ほど/に¥おなじき−じふろくにち/の¥よ/に¥いつ/て、¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ、¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな、¥じなん¥げん−だいぶ/の−はうぐわん−かねつな、¥ろくでうの−くらんど−なかいへ、¥その¥こ¥くらんど−たらう−なかみつ¥いげ、¥ひた−かぶと¥さんびやく−よ−き、¥たち/に¥ひ¥かけ¥やき−あげ/て、¥みゐでら/へ/こそ¥まゐら/れ/けれ。¥ここ/に¥さんみ−にふだう/の¥としごろ/の¥さぶらひ/に、¥わたなべの−げんざう−きほふの−たきぐち/と¥いふ¥もの¥あり。¥はせ−おくれ/て¥とどまり/たり/ける/を、¥ろくはら/へ¥めし/て、「¥など¥なんぢ/は、¥さうでん/の¥しゆ、¥さんみ−にふだう/が¥とも/を/ば¥せ/で、¥とどまつ/たる/ぞ」/と¥のたまへ/ば、¥きほふ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥ひごろ/は¥しぜん/の¥こと/も¥さふらは/ば、¥まつさき¥かけ/て、¥いのち/を¥たてまつら/う/ど/こそ¥ぞんぜ/しか。¥こんど/は¥いかがP260¥さふらひ/つる/やらん。¥かう/と/も¥しらせ/られ/ざり/つる¥あひだ、¥とどまつ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥むねもりの−きやう、「¥これ/に/も¥また¥けんざん/の¥もの/ぞ/かし。¥せんど¥こうえい/を¥ぞんじ/て、¥たうけ/に¥つい/て¥ほうこうーせ/う/と/や¥おもふ。¥また¥てうてき¥よりまさ−ぼふし/に¥どうしんーせ/ん/と/や¥おもふ。¥あり/の−まま/に¥まうせ/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥きほふ¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥たとひ¥さうでん/の¥よしみ¥さふらふ/とも、¥いかん/か¥てうてき/と¥なれ/る¥ひと/に、¥どうしん/を/ば¥つかまつり¥さふらふ/べき。¥ただ¥てん−ちう/に¥ほうこう¥いたさ/うずる¥ざふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいしやう、「¥さら/ば¥ほうこうーせよ。¥よりまさ−ぼふし/が¥し/けん¥おん/に/は、¥ちつと/も¥おとる/まじき/ぞ」/とて¥いり¥たまひ/ぬ。¥あした/より¥ゆふべ/に¥およぶ/まで、「¥きほふ/は¥ある/か」。「¥ざふらふ」。「¥ある/か」。「¥ざふらふ」/とて¥しこうーす。¥ひ/も¥やうやう¥くれ/けれ/ば、¥だいしやう¥いで/られ/たり。¥きほふ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥まこと/や¥さんみ−にふだう/は、¥みゐでら/に/と¥きこえ¥さふらふ。¥さだめて¥ようち/なんど/も/や¥むけ/られ¥さふらは/んず/らん。¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう¥さて/は¥みゐでら−ぼふし/にて/ぞ¥さふらは/んず/らん。¥こころ−にくう/も¥さふらは/ず、¥まかり−むかつ/て¥えりうち/など/も¥つかまつる/べき。¥さる¥むま/を¥もつ/て¥さふらひ/し/を、¥この−ほど¥したしい¥やつ−め/に¥ぬすま/れ/て¥さふらふ。¥おん=むま¥いつぴき¥くだし−あづかり¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいしやう、「¥もつとも¥さる/べし」/とて、¥しらあしげ/なる¥むま/の、¥なんれう/とて¥ひざうーせ/られ/たり/ける/に、¥よい¥くら¥おい/て¥きほふ/に¥たぶ。¥たまはつ/て¥しゆくしよ/に¥かへり、「¥はや¥ひ/の¥くれ/よ/かし。¥みゐでら/へ¥はせーまゐり、¥にふだう=どの/の¥まつさき¥かけ/て¥うちじにーせ/ん」/と/ぞ¥まうし/ける。¥ひ/も¥やうやう¥くれ/けれ/ば、¥さいし=ども/を/ば、¥かしこ−ここ/に¥たち=しのば/せ/て、¥みゐでら/へ/とP261¥いで−たち/ける、¥こころ/の¥うち/こそ¥むざん/なれ。¥ひやうもん/の¥かりぎぬ/の¥きくとぢ¥おほきらか/に¥し/たる/に、¥ぢうだい/の¥きせなが、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥ほしじろ−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥いかもの−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥おほ−なかぐろ/の−や¥おひ、¥たきぐち/の¥こつぽふ¥わすれ/じ/と/や、¥たか/の−は/で¥はい/だり/ける¥まとや¥ひとて/ぞ¥さし−そへ/たる。¥しげどう/の−ゆみ¥もつ/て、¥なんれう/に¥うち−のり、¥のり−かへ¥いつき¥うち−ぐし、¥とねり−をとこ/に¥もつだて¥わき−ばさま/せ、¥やかた/に¥ひ¥かけ¥やき−あげ/て、¥みゐでら/へ/こそ¥はせ/たり/けれ。¥ろくはら/に/は¥きほふ/が¥やかた/より¥ひ¥いで−き/たり/とて¥ひしめき/けり。¥むねもりの−きやう¥いそぎ¥いで/て、「¥きほふ/は¥ある/か」。「¥さふらは/ず」/と¥まうす。「¥すは¥きやつ−め/を¥てのび/に/して、¥たばから/れ/ぬる/は。¥あれ¥おつ−かけ/て¥うて」/と¥のたまへ/ども、¥きほふ/は¥すぐれ/たる¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥やつぎばや/の¥てきき/にて¥あり/けれ/ば、「¥にじふし¥さい/たる¥や/で/は、¥まづ¥にじふしにん/は¥い−ころさ/れ/な/んず。¥おと¥な¥せ/そ」/とて、¥すすむ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥ただいま/しも¥みゐでら/に/は、¥わたなべ−たう¥より−あひ/て、¥きほふ/が¥さた¥あり/けり。「¥いか/に/も−し/て¥この¥きほふ−たきぐち/を/ば、¥めしーぐせ/られ¥さふらは/んずる/ものを」/と、¥くちぐち/に¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さんみ−にふだう、¥きほふ/が¥こころ/を¥よく¥しつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥むげ/に¥その¥もの¥とらへ−からめ/られ/は¥せ/じ。¥にふだう/に¥こころざし¥ふかき¥もの/なれ/ば、¥みよ、¥ただいま¥まゐら/うずる/ぞ」/と¥のたまひ/も¥はて/ぬ/に、¥きほふ¥つと¥まゐり/たり。「¥され/ば/こそ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥きほふ¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥いづの−かう/の=との/の¥このした/が¥かはり/に、¥ろくはら/の¥なんれう/を/こそ¥とつ/て¥まゐつ/てP262¥さふらへ。¥まゐらせ¥さふらは/ん」/とて¥たてまつる。¥いづの−かみ¥なのめ/なら/ず¥よろこび¥たまひ/て、¥やがて¥をがみ/を¥きり、¥かなやき/を¥し/て、¥その¥よ¥ろくはら/へ¥つかはさ/る。¥やはん/ばかり/に¥もん/の¥うち/へ¥おひ−いれ/たり/けれ/ば、¥むまや/に¥いつ/て、¥むま=ども/と¥くひ−あひ/けれ/ば、¥その−とき¥とねり¥おどろき−あひ、「¥なんれう/が¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥むねもりの−きやう¥いそぎ¥いで/て¥み¥たまふ/に、¥むかし/は¥なんれう、¥いま/は、「¥たひらの−むねもり−にふだう」/と¥いふ¥かなやき/を/こそ¥し/たり/けれ。¥だいしやう、「¥につくい¥きほふ−め/を¥きつ/て¥すつ/べかり/ける/ものを。¥てのび/に/して¥たばから/れ/ぬる¥こと/こそ¥やすから/ね。¥こんど¥みゐでら/へ¥よせ/たら/んずる¥ひとびと/は、¥いか/に/も−し/て¥きほふ−め/を¥いけどり/に¥せよ。¥のこぎり/で¥くび¥きら/ん」/と、¥をどり−あがり−をどり−あがり¥いから/れ/けれ/ども、¥なんれう/が¥をがみ/も¥おひ/ず、¥かなやき/も¥また¥うせ/ざり/けり。¥
「さんもんへのてふじやう」(『さんもんへのてうじやう』)S0407¥さる−ほど/に、¥みゐでら/に/は、¥かひ¥かね¥ならい/て、¥だいしゆ¥せんぎ−す。「¥そもそも¥きんじつ¥せじやう/の¥てい/を¥あんずる/に、¥ぶつぽふ/の¥すゐび、¥わうぼふ/の¥らうろう、¥まさに¥この−とき/に¥あたれ/り。¥こんど¥にふだう/の¥ばうあく/を¥いましめ/ず/ば、¥いづれ/の¥ひ/を/か¥ごす/べき。¥みや¥ここ/に¥じゆぎよ/の¥おん=こと、¥しやう−はちまんぐう/の¥ゑご、¥しんら−だい−みやうじん/の¥みやうじよ/に¥あら/ず/や。¥てんじゆ−ちるゐ/も¥やうがう/を¥たれ、¥ぶつりき¥じんりき/も¥がうぶく/を¥くはへP263¥まします¥こと、¥など/か¥なから/ん。¥なかんづく¥ほくれい/は¥ゑんじう¥いちみ/の¥がくぢ、¥なんと/は、¥げらふ¥とくど/の¥かいぢやう/なり。¥てつそう/の¥ところ/に¥など/か¥くみせ/ざる/べき」/と、¥いちみ−どうしん/に¥せんぎ−し/て、¥やま/へ/も¥なら/へ/も¥てふじやう/を/こそ¥つかはし/けれ。¥まづ¥さんもん/へ/の¥じやう/に¥いはく、「¥をんじやうじ¥てつす、¥えんりやくじ/の¥が。¥こと/に¥がふりよく/を¥いたし/て、¥たうじ/の¥はめつ/を¥たすけ/られ/ん/と¥おもふ¥じやう。¥みぎ¥にふだう−じやうかい、¥ほしいまま/に¥ぶつぽふ/を¥はめつ−し、¥わうぼふ/を¥みだら/ん/と¥ほつす。¥しうたん¥きはまり¥なき¥ところ/に、¥こんげつ−じふごにち/の¥よ、¥いちゐん¥だいに/の¥わうじ、¥ふりよ/の¥なん/を¥のがれ/ん¥ため/に、¥ひそか/に¥にふじ−せ/しめ¥たまふ。¥ここ/に¥ゐんぜん/と¥かうし/て、¥いだし¥たてまつる/べき¥よし、¥しきり/に¥せめ¥あり/と¥いへ/ども、¥いだし¥たてまつる/に¥あたは/ず。¥よつて¥くわんぐん/を¥はなち−つかはす/べき¥むね、¥その¥きこえ¥あり。¥たうじ/の¥はめつ、¥まさに¥この−とき/に¥あたれ/り。¥しよしゆ¥なんぞ¥しうたん−せ/ざら/ん/や。¥なかんづく¥えんりやく¥をんじやう¥りやうじ/は、¥もんぜき¥ふたつ/に¥あひ−わかる/と¥いへ/ども、¥がくする¥ところ/は、¥これ¥ゑんどん¥いちみ/の¥けうもん/に¥おなじ。¥たとへば¥とり/の¥さう/の¥つばさ/の/ごとく、¥また¥くるま/の¥ふたつ/の¥わ/に¥に/たり。¥いつぱう¥かけ/ん/に¥おいて/は、¥いかで/か¥その¥なげき¥なから/ん/や。¥ていれば¥こと/に¥がふりよく/を¥いたし/て、¥たうじ/の¥はめつ/を¥たすけ/られ/ば、¥はやく¥ねんらい/の¥ゐこん/を¥わすれ、¥ぢうせん/の¥むかし/に¥ふくせ/ん。¥しゆと/の¥せんぎ¥かく/の/ごとし。¥よつて¥てふそう¥くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−ごぐわつ−じふはちにち、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。P264
「なんとへのてふじやう」(『なんとてうじやう』)S0408¥さんもん/の¥だいしゆ、¥この¥じやう/を¥ひけん−し/て、「¥こ/は¥いか/に、¥たうざん/の¥まつじ/で¥あり/ながら、¥とり/の¥さう/の¥つばさ/の/ごとく、¥また¥くるま/の¥ふたつ/の¥わ/に¥に/たり/と、¥おさへ/て¥かく¥でう、¥これ¥もつて¥きくわい/なり」/とて、¥へんてふ/に/も¥およば/ず。¥その−うへ¥にふだう−しやうこく、¥てんだい−ざす−めいうん−だいそうじやう/に、¥しゆと/を¥しづめ/らる/べき¥よし¥のたまひ/けれ/ば、¥ざす¥いそぎ¥とうざん−し/て、¥だいしゆ/を¥しづめ¥たまふ。¥かかり/し−ほど/に、¥みや/の¥おん=かた/へ/は、¥ふぢやう/の¥よし/を/ぞ¥まうし/ける。¥また¥にふだう−しやうこく/の¥はかりごと/に、¥あふみごめ¥にまんごく、¥ほくこく/の¥おりのべぎぬ¥さんぜんびき、¥わうらい/の¥ため/に¥さんもん/へ¥よせ/らる。¥これ/を¥たにだに¥みねみね/へ¥ひか/れ/ける/に、¥にはか/の¥こと/にて¥あり/けれ/ば、¥いち−にん/して¥あまた¥とる¥だいしゆ/も¥あり、¥また¥て/を¥むなしう/して、¥ひとつ/も¥とら/ぬ¥しゆと/も¥あり。¥なにもの/の¥しわざ/に/や¥あり/けん、¥らくしよ/を/ぞ¥し/たり/ける。¥
やまぼふし¥おりのべごろも¥うすく/して¥はぢ/を/ば¥え/こそ¥かくさ/ざり/けれ W022¥
また¥きぬ/に/も¥あたら/ぬ¥だいしゆ/の¥よみ/たり/ける/に/や、¥
おりのべ/を¥ひときれ/も¥え/ぬ¥われ=ら/さへ¥うすはぢ/を¥かく¥かず/に¥いる/かな W023¥
また¥なんと/へ/の¥じやう/に¥いはく、「¥をんじやうじ¥てつす、¥こうぶくじ/の¥が。¥こと/に¥がふりよく/を¥いたし/て、¥たうじ/のP265¥はめつ/を¥たすけ/られ/ん/と¥こふ¥じやう。¥みぎ¥ぶつぽふ/の¥しゆしよう/なる¥こと/は、¥わうぼふ/を¥まもら/ん/が¥ため、¥わうぼふ¥また¥ちやうきう/なる¥こと、¥すなはち¥ぶつぽふ/に¥よる。¥ここ/に¥にふだう−さきの−だいじやうだいじん−たひらの−あそん−きよもり=こう、¥ほふみやう¥じやうかい、¥ほしいまま/に¥こくゐ/を¥ひそか/に¥し、¥てうせい/を¥みだり、¥ない/に¥つけ¥げ/に¥つけ、¥うらみ/を¥なし、¥なげき/を¥なす¥あひだ、¥こんぐわつ−じふごにち/の¥よ、¥いちゐん¥だいに/の¥わうじ¥ふりよ/の¥なん/を¥のがれ/ん/が¥ため/に、¥にはか/に¥にふじ−せ/しめ¥たまふ。¥ここ/に¥ゐんぜん/と¥かうし/て¥いだし¥たてまつる/べき¥むね、¥しきり/に¥せめ¥あり/と¥いへ/ども、¥しゆと¥いつかう¥をしみ¥たてまつ/て、¥いだし¥たてまつる/に¥あたは/ず。¥よつて¥かの¥ぜんもん、¥ぶし/を¥たうじ/へ¥いれ/ん/と¥す。¥ぶつぽふ/と¥いひ、¥わうぼふ/と¥いひ、¥いちじ/に¥まさに¥はめつ−せ/ん/と¥す。¥むかし¥たう/の¥ゑしやう−てんし、¥ぐんびやう/を¥もつて¥ぶつぽふ/を¥ほろぼさ/しめ/し¥とき、¥しやうりやうぜん/の¥しゆ、¥かつせん/を¥いたし/て、¥これ/を¥ふせぐ。¥わうけん¥なほ¥かく/の/ごとし。¥いか/に−いはんや¥むほん−はちぎやく/の¥ともがら/に¥おいて/を/や。¥たれ/の¥ひと/か¥きやうせい−す/べき/ぞ/や。¥なかんづく¥なんきやう/は¥れい¥なく/して、¥つみ¥なき¥ちやうじや/を¥はいる−せ/らる。¥この−とき/に¥あら/ずん/ば、¥いづれ/の¥ひ/か¥くわいけい/を¥とげ/ん。¥ねがは−く/は¥しゆと、¥うち/に/は¥ぶつぽふ/の¥はめつ/を¥たすけ、¥ほか/に/は¥あくぎやく/の¥はんるゐ/を¥しりぞけ/ば、¥どうしん/の¥いたり、¥ほんぐわい/に¥たん/ぬ/べし。¥しゆと/の¥せんぎ¥かく/の/ごとく、¥よつて¥てつそう¥くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−ごぐわつ−じふはちにち、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。P266
「なんとへんてふ」¥なんと/の¥だいしゆ¥この¥じやう/を¥ひけん−し/て、¥いちみ−どうしん/に¥せんぎ−し/て、¥やがて¥へんてふ/を/こそ¥おくり/けれ。¥その¥へんてふ/に¥いはく、「¥こうぶくじ¥てつす、¥をんじやうじ/の¥が。¥らいてふ¥いつし/に¥のせ/られ/たり。¥みぎ¥にふだう−じやうかい/が¥ため/に、¥きじ/の¥ぶつぽふ/を¥ほろぼさ/ん/と¥する¥よし/の¥こと¥てつす。¥ぎよくせん¥ぎよくくわ¥りやうか/の¥しうぎ/を¥たつ/と¥いへ/ども、¥きんしやう−きんく、¥おなじう¥いちだい/の¥けうもん/より¥いで/たり。¥なんきやう¥ほくきやう¥とも/に¥もつて¥によらい/の¥でし/たり。¥じじ¥たじ、¥たがひ/に¥でうだつ/が¥ましやう/を¥ぶくす/べし。¥そもそも¥きよもり−にふだう/は¥へいじ/の¥さうかう、¥ぶけ/の¥ぢんがい/なり。¥そぶ¥まさもり、¥くらんど−ごゐ/の¥いへ/に¥つかへ/て、¥しよ−こく¥じゆりやう/の¥むち/を¥とる。¥おほくらきやう−ためふさ、¥かしう−しし/の¥いにしへ、¥けんびしよ/に¥ふし、¥しゆり/の−だいぶ−あきすゑ、¥はりまの−たいしゆ/たり/し¥むかし、¥むまや/の−べつたうしき/に¥にんず。¥しかる/を¥しんぶ¥ただもり、¥しようでん/を¥ゆるさ/れ/し¥とき、¥とひ/の¥らうせう、¥みな¥ほうこ/の¥かきん/を¥をしみ、¥ないげ/の¥えいかう、¥おのおの¥ばだい/の¥じんもん/に¥なく。¥ただもり¥せいうん/の¥つばさ/を¥かいつくろふ/と¥いへ/ども、¥よ/の¥たみ¥なほ¥はくをく/の¥たね/を¥かろん/ず。¥な/を¥をしむ¥せいし、¥その¥いへ/に¥のぞむ¥こと¥なし。¥しかれ/ば−すなはち¥さんぬる¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥だ[い]じやう−てんわう¥いつせん/の¥こう/を¥かんじ/て、¥ふじ/の¥しやう/を¥さづけ¥たまひ/し/より¥この−かた、¥たかく¥しやうこく/に¥のぼつ/て、¥かねて¥ひやうぢやう/を¥たまはる。¥なんし¥あるひは¥たいかい/を¥かたじけなう¥し、¥あるひは¥うりん/にP267¥つらなり、¥によし¥あるひは¥ちうぐうしき/に¥そなはり、¥あるひは¥じゆんごう/の¥せん/を¥かうぶる。¥くんてい−そし、¥みな¥きよくろ/に¥あゆみ、¥その¥まご¥かの¥をひ、¥ことごとく¥ちくふ/を¥さく。¥しか/のみ/なら/ず¥きうしう/を¥とうりやう−し、¥はくし/を¥しんだい−し/て、¥ぬび¥みな¥ぼくじう/と¥なす。¥いちまう¥こころ/に¥たがへ/ば、¥わうこう/と¥いへ/ども¥これ/を¥とらへ、¥へんげん¥みみ/に¥さかふ/れ/ば、¥くぎやう/と¥いへ/ども¥これ/を¥からむ。¥これ/に¥よつ/て、¥あるひは¥いつたん/の¥しんみやう/を¥のべ/ん/が¥ため、¥あるひは¥へんし/の¥りようじよく/を¥のがれ/ん/と¥おもつ/て、¥ばんじよう/の−せいしゆ、¥なほ¥めんてん/の¥こび/を¥なし、¥ぢうだい/の¥かくん、¥かへつて¥しつかう/の¥れい/を¥いたす。¥だいだい¥さうでん/の¥けりやう/を¥うばふ/と¥いへ/ども、¥しやうさい/も¥おそれ/て¥した/を¥まき、¥みやみや¥さうじよう/の¥しやうゑん/を¥とる/と¥いへ/ども、¥けんゐ/に¥はばかつ/て¥もの¥いふ¥こと¥なし。¥かつ/に¥のる¥あまり、¥きよねん/の¥ふゆ¥じふいちぐわつ、¥だ[い]じやうくわう/の¥すみか/を¥つゐふく−し/て、¥はくりく=こう/の¥み/を¥おし−ながす。¥ほんぎやく/の¥はなはだしき¥こと、¥まことに¥こきん/に¥たえ/たり。¥その−とき¥われ=ら、¥すべからく¥ぞくしゆ/に¥ゆき−むかつ/て、¥その¥つみ/を¥とふ/べし/と¥いへ/ども、¥あるひは¥しんりよ/に¥あひ−はばかり、¥あるひは¥りんげん/と¥しようずる/に¥よつ/て、¥うつたう/を¥おさへ/て、¥くわういん/を¥おくる¥あひだ、¥かさねて¥ぐんびやう/を¥おこし/て、¥いちゐん¥だいに/の¥しんわうぐう/を¥うち−かこむ¥ところ/に、¥はちまん−さん−じよ、¥かすが−だい−みやうじん、¥ひそか/に¥やうがう/を¥たれ、¥せんひつ/を¥ささげ¥たてまつり、¥きじ/に¥おくり−つけ/て、¥しんら/の¥とぼそ/に¥あづけ¥たてまつる。¥わうぼふ¥つき/ざる¥むね¥あきらけし。¥よつて¥きじ¥しんみやう/を¥すて/て¥しゆご−し¥たてまつる¥でう、¥がんじき/の¥たぐひ、¥たれ/か¥ずゐき−せ/ざら/ん。¥この−とき¥われ=ら¥ゑんゐき/に¥あつ/て、¥その¥なさけ/を¥かんずる¥ところ/に、¥きよもり=こう、¥なほ¥きようき/を¥おこし/て、¥きじ/に¥いら/ん/と¥する¥よし、¥ほのか/に¥つたへ¥うけたまはる/に¥よつ/て、¥かねて¥ようい/を¥いたす。¥じふはちにち¥たつ/の−いつてん/に¥だいしゆ/を¥おこし、¥しよじ/に¥てつそう−し、¥まつじ/にP268¥げぢ−し/て、¥ぐんし/を¥え/て¥のち、¥あんない/を¥たつせ/ん/と¥する¥ところ/に、¥せいてう¥とび−きたつ/て¥はうかん/を¥なげ/たり。¥すうじつ/の¥うつねん¥いちじ/に¥げさん−す。¥かの¥たうか¥しやうりやう−いつ−さん/の¥ひつしゆ、¥なほ¥ぶそう/の¥くわんびやう/を¥かへす。¥いはんや¥わこく¥なんぼく¥りやうもん/の¥しゆと、¥なんぞ¥ぼうしん/の¥じやるゐ/を¥はらは/ざら/ん。¥よく¥りやうゑん¥さう/の¥ぢん/を¥かため/て、¥よろしく¥われ=ら/が¥しんぱつ/の¥つげ/を¥まつ/べし。¥じやう/を¥さつし/て¥ぎたい/を¥なす¥こと¥なかれ。¥もつて¥てつす。¥くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−ごぐわつ−にじふいちにち、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。¥
「だいしゆそろへ」(『ながのせんぎ』)S0409¥てら/に/は¥みや¥いら/せ¥たまひ/て¥のち、¥おほぜき¥こぜき¥ほり−きつ/て、¥だいしゆ¥また¥せんぎ−す。「¥そもそも¥さんもん/は¥こころがはり−し/つ。¥なんと/は¥いまだ¥まゐら/ず。¥この¥こと¥のび/て/は¥あしかり/な/ん。¥いざ/や¥こんや¥ろくはら/に¥おし−よせ/て、¥ようち/に¥せ/ん。¥その¥ぎ/なら/ば、¥らうせう¥ふたて/に¥あひ−わかつ/て、¥まづ¥らうそう=ども/は、¥によいがみね/より¥からめで/へ¥むかふ/べし。¥あしがる=ども/を¥さき−だて/て、¥しらかは/の¥ざいけ/に¥ひ/を¥かけ¥やき−あげ/ば、¥ざいきやうにん、¥ろくはら/の¥ぶし=ども、¥あはや¥こと¥いで−き/たり/とて、¥はせ−むかは/んず/らん。¥その−とき¥いはさか、¥さくらもと/の¥へん/に、¥しばし¥ささへ/て¥ふせぎ−たたかは/ん¥ま/に、¥おほて/は¥まつざか/より、¥いづの−かみ/を¥たいしやうぐん/と/して、¥わかだいしゆ¥あくそう=ども/は、¥ろくはら/にP269¥おし−よせ、¥かざうへ/に¥ひ/を¥かけ¥やき−あげ、¥ひともみ¥もう/で¥せめ/ん/に、¥など/か¥だいじやう−にふだう¥やき−いだい/て、¥うた/ざる/べき」/と/ぞ¥せんぎ−し/たり/ける。¥ここ/に¥へいけ/の¥いのり−し/ける、¥いちによ−ばう/の−あじやり−しんかい/は、¥でし¥どうじゆく¥すじふにん¥ひき−ぐし、¥せんぎ/の¥には/に¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥かやう/に¥まうせ/ば、¥へいけ/の¥かたうど/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らん。¥いつかう¥その¥ぎ/にて/は¥さふらは/ず。¥たとひ¥さ¥さふらふ/とも、¥いかが¥しゆと/の¥ぎ/を/も¥おもひ、¥わが¥てら/の¥な/を/も¥をしま/で/は、¥さふらふ/べき。¥むかし/は¥げんぺい¥さう/に¥あらそひ/て、¥てうか/の¥おん=かため/たり/しか/ども、¥ちかごろ/は¥げんじ/の¥うん¥かたぶき、¥へいけ¥よ/を¥とつ/て¥にじふ−よ−ねん、¥てんが/に¥なびか/ぬ¥くさき/も¥さふらは/ず。¥され/ば¥ないない/の¥たち/の¥ありさま/も、¥こぜい/にて/は¥たやすう¥かなひ−がたし。¥よくよく¥はかりごと/を¥めぐらし、¥せい/を¥もよほし、¥ごにち/に¥よせ/らる/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と、¥ほど/を¥のばさ/ん/が¥ため/に、¥ながなが/と/こそ¥せんぎ−し/たり/けれ。¥ここ/に¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう/は、¥ころも/の¥した/に¥もよぎ−にほひ/の−はらまき/を¥き、¥おほき/なる¥うち−がたな¥まへだれ/に¥さし−ほらし、¥しらえ/の−なぎなた¥つゑ/に¥つき、¥せんぎ/の¥には/に¥すすみ−いで/て、「¥しようこ/を¥ほか/に¥ひく/べから/ず。¥まづ¥わが¥てら/の¥ほんぐわん、¥てんむ−てんわう、¥いまだ¥とうぐう/の¥おん=とき、¥おほともの−わうじ/に¥おそは/れ/させ¥たまひ/て、¥よしの/の¥おく/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥やまとの−くに¥うだ/の−こほり/を¥すぎ/させ¥たまふ/に/は、¥その¥せい¥わづか/に¥じふしちき、¥され/ども¥いが¥いせ/に¥うち−こえ、¥みの¥をはり/の¥ぐんびやう/を¥もつて、¥おほともの−わうじ/を¥ほろぼし/て、¥つひに¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/き。¥きうてう¥ふところ/に¥いる。¥じんりん¥これ/を¥あはれむ/と¥いふ¥ほんもん¥あり。¥じよ/は¥しら/ず、¥きやうしう/が¥もんと/に¥おいて/は、¥こんやP270¥ろくはら/に¥おし−よせ/て¥うちじに−せよ/や」/と/ぞ¥せんぎ−し/ける。¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく¥すすみ−いで/て、「¥せんぎ¥はし¥おほし。¥ただ¥よ/の¥ふくる/に。¥いそげ/や、¥すすめ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥
(『だいしゆそろへ』)S0410¥まづ¥からめで/に¥むかふ¥らうそう=ども/の¥たいしやうぐん/に/は、¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ、¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう、¥りつじやう−ばう/の−あじやり−にちいん、¥そつ/の−ほふいん−ぜんち、¥ぜんち/が¥でし¥ぎはう、¥ぜんやう/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥いつせん−にん、¥てんで/に¥たいまつ¥もつ/て、¥によいがみね/へ/ぞ¥むかひ/ける。¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな、¥じなん¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな、¥ろくでうの−くらんど−なかいへ、¥その¥こ¥くらんど−たらう−なかみつ。¥だいしゆ/に/は¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく、¥りつじやう−ばう/の−いがのきみ、¥ほふりんゐん/の−おにさど、¥じやうきゐん/の−あらとさ、¥これ=ら/は¥ちから/の¥つよさ、¥ゆみ−や¥うちもの¥とつ/て/は、¥いか/なる¥おに/に/も¥かみ/に/も¥あは/う/ど¥いふ、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/なり。¥びやうどうゐん/に/は、¥いなばの−りつしや−くわうだいぶ、¥すみの−ろくらうばう、¥しまの−あじやり、¥つつゐ−ぼふし/に、¥きやうの−あじやり、¥あく−せうなごん、¥きたのゐん/に/は、¥こんくわうゐん/の−ろくてんぐ、¥しきぶ−たいふ、¥のと、¥かが、¥さど、¥びんご=ら/なり。¥まつゐの−ひご、¥しようなんゐん/の−ちくご、¥がやの−ちくぜん、¥おほやの−しゆんちやう、¥ごちゐん/の−たぢま、¥きやうしう/が¥ばうにん、¥ろくじふにん/の¥うち、¥かが−くわうじよう、¥ぎやうぶ−しゆんしう、¥ほふし=ばら/に/は、¥いちらい−ほふし/に¥しか/ざり/き。¥だうじゆ/に/は、¥つつゐの−じやうめう−めいしう、¥をぐらの−そんぐわつ、¥そんえい、¥じけい、¥らくぢう、¥かなこぶしの−げんやう、¥ぶし/に/は¥わたなべの−はぶく¥はりまの−じらう−さづく¥さつまの−ひやうゑ、¥ちやうじつ−となふ、¥きほふの−たきぐち、¥あたふの−うま/の−じよう、¥つづくの−げんた、¥きよし、¥すすむ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥いつせんごひやく−よ−にん、¥みゐでら/を/こそ¥うつ−たち/けれ。P271¥てら/に/は¥みや¥いら/せ¥たまひ/て¥のち、¥おほぜき¥こぜき¥ほり−きり、¥かいだて¥かき、¥さかもぎ¥ひき/たり/けれ/ば、¥ほり/に¥はし¥わたし、¥さかもぎ¥とり−のけ/など¥し/ける/ほど/に、¥じこく¥おし−うつつ/て、¥せきぢ/の¥にはとり¥なき−あへ/り。¥いづの−かみ、「¥ここ/にて¥とり¥ない/て/は、¥ろくはら/へ/は、¥はくちう/に/こそ¥よせ/んずれ。¥いかが−せ/ん」/と¥のたまへ/ば、¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく、¥また¥さき/の/ごとく/に¥すすみ−いで/て、「¥むかし¥しん/の¥せうわう、¥まうしやうくん/を¥めし−いましめ/られ/たり/し/に、¥きさき/の¥おん=たすけ/に¥よつ/て、¥つはもの¥さんぜんにん/を¥ひき−ぐし/て、¥にげ−まぬかれ/ける/が、¥ほど−なく¥かんこくくわん/に¥いたり/ぬ。¥いこく/の¥ならひ/に、¥にはとり/の¥なか/ぬ¥かぎり/は、¥せき/の¥と/を¥ひらく¥こと¥なし。¥かの¥まうしやうくん/が¥さんぜん/の¥かく/の¥なか/に、¥てんかつ/と¥いふ¥つはもの¥あり。¥にはとり/の¥なく¥まね/を¥ゆゆしう¥し/けれ/ば、¥けいめい/と/も¥いは/れ/けり。¥かの¥けいめい、¥たかき¥ところ/に¥はしり−あがり、¥にはとり/の¥なく¥まね/を¥ゆゆしう¥し/たり/けれ/ば、¥せきぢ/の¥にはとり¥きき−つたへ/て、¥みな¥なき−あへ/り。¥その−とき¥せきもり、¥とり/の¥そらね/に¥ばかさ/れ/て、¥せき/の¥と/を¥あけ/て/ぞ¥とほし/ける。¥され/ば¥これ/も¥かたき/の¥はかりごと/に/や¥なか/す/らん。¥ただ¥よせよ/や」/と/ぞ¥まうし/ける。¥かかり/し−ほど/に、¥さつき/の¥みじか−よ/なれ/ば、¥ほのぼの/と/ぞ¥あけ/に/ける。¥いづの−かみ¥のたまひ/ける/は、「¥ようち/に/こそ¥さり/とも/と¥おもひ/つれ、¥ひるいくさ/に/は¥いか/に/も¥かなふ/まじ。¥あれ¥よび−かへせ/や」/とて、¥おほて/は¥まつざか/より¥とつ/て¥かへし、¥からめで/は¥によいがみね/より¥ひつ−かへす。¥わかだいしゆ¥あくそう=ども、「¥これ/は¥いちによ−ばう/が¥なが−せんぎ/に/こそ、¥よ/は¥あけ/たれ。¥その¥ばう¥きれ」/とて、¥おし−よせ/て¥ばう/を¥さんざん/に¥きる。¥ふせぐ¥ところ/の¥でし¥どうじゆく、¥みな¥うた/れ/に/けり。P272¥わが−み¥て−おひ、¥はふはふ¥ろくはら/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥うつたへ¥まうし/けれ/ども、¥ろくはら/に/は¥ぐんびやう¥すまんぎ¥はせ−あつまつ/て、¥ちつと/も¥さわぐ¥けしき/も¥し¥たまは/ず。¥さる−ほど/に¥みや/は、¥さんもん/は¥こころがはり−し/つ、¥なんと/は¥いまだ¥まゐら/ず。¥この¥てら/ばかり/で/は、¥いか/に/も¥かなふ/べから/ず/とて、¥おなじき−にじふさんにち/の¥あかつき−がた/に、¥みゐでら/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥なんと/へ¥おち/させ¥おはします。¥この¥みや/は¥せみをれ、¥こえだ/とて、¥かんちく/の¥ふえ/を¥ふたつ¥もち¥たまへ/り。¥なか/に/も¥せみをれ/は、¥むかし¥とばのゐん/の¥おん=とき、¥そうてう/の¥みかど/へ、¥しやきん/を¥おほく¥まゐらつ/させ¥たまひ/たり/しか/ば、¥へんぱう/と¥おぼしく/て、¥いき/たる¥せみ/の/ごとく/に、¥ふし/の¥つき/たる¥ふえたけ/を、¥ひとよ¥まゐらつ/させ¥たまひ/けり。¥これ−ほど/の¥ちようほう/を、¥いかん/か¥さう−なう¥ゑら/せ/らる/べき/とて、¥みゐでら/の¥だいしん/の−そうじやう−かくそう/に¥おほせ、¥だんじやう/に¥たて、¥しち−にち¥かぢ−し/て、¥ゑら/せ¥たまへ/る¥おん=ふえ/なり。¥ある−とき¥たかまつの−ちうなごん−さねひらの−きやう¥まゐつ/て、¥この¥おん=ふえ/を¥ふか/れ/ける/に、¥よ/の−つね/の¥ふえ/の¥やう/に¥おもひ−わすれ/て、¥ひざ/より¥しも/に¥おか/れ/たり/けれ/ば、¥ふえ/や¥とがめ/けん、¥その−とき¥せみ¥をれ/に/けり。¥さて/こそ¥せみをれ/と/は¥めさ/れ/けれ。¥この¥みや¥ふえ/の¥おん=きりやう/たる/に¥よつ/て、¥ご=さうでん¥あり/ける/とかや。¥され/ども¥いま/を¥かぎり/と/や¥おぼしめさ/れ/けん、¥こんだう/の¥みろく/に¥こめ¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥りうげ/の¥あかつき、¥ちぐ/の¥おん=ため/か/と¥おぼしく/て、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥さる−ほど/に¥みや/は、¥らうそう=ども/に/は¥みな¥いとま¥たう/で、¥とどめ/させ¥おはします。¥しかる/べき¥わかだいしゆ¥あくそう=ども/は¥まゐり/けり。¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥みゐでら/の¥だいしゆ¥ひき−ぐし/て、P273¥その¥せい¥いつせんごひやく−よ−にん/と/ぞ¥きこえ/し。¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう/は¥はと/の¥つゑ/に¥すがり、¥みや/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥さうがん/より¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て¥まうし/ける/は、「¥いづく/まで/も¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらひ/しか/ども、¥とし¥すでに¥はちじゆん/に¥たけ/て、¥ぎやうぶ¥いか/に/も¥かなひ−がたく¥さふらへ/ば、¥でし/で¥さふらふ¥ぎやうぶ−ばう−しゆんしう/を¥まゐらせ¥さふらは/ん。¥これ/は¥ひととせ¥へいぢ/の−かつせん/の¥とき、¥こ=さま/の−かみ−よしとも/が¥て/に¥さふらう/て、¥ろくでうかはら/で¥うちじに¥つかまつり¥さふらひ/し、¥さがみの−くに/の¥ぢうにん、¥やまのうちのすどう−ぎやうぶ/の−じよう−としみち/が¥こ/にて¥さふらひ/し/を、¥いささか¥ゆかり¥さふらふ/に¥よつ/て、¥あとふところ/にて¥おほし−たて/て、¥こころ/の¥そこ/まで/も、¥よく¥しつ/て¥さふらへ/ば、¥いづく/まで/も¥めし−ぐせ/られ¥さふらへ」/とて、¥なみだ/を¥おさへ/て¥とどまり/ぬ。¥みや/も¥あはれ/に¥おぼしめし/て、「¥いつ/の¥よしみ/に¥かく/は¥まうす/らん」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥
「はしかつせん」(『はしがつせん』)S0411¥さる−ほど/に、¥みや/は¥うぢ/と¥てら/と/の¥あひだ/にて、¥ろくど/まで¥おん=らくば¥あり/けり。¥これ/は¥さんぬる¥よ、¥ぎよ=しん/なら/ざり/し¥ゆゑ/なり/とて、¥うぢばし¥さんげん¥ひき−はづし、¥びやうどうゐん/に¥いれ¥たてまつり、¥しばらく¥ご=きうそく¥あり/けり。¥ろくはら/に/は、「¥すはや¥みや/こそ、¥なんと/へ¥おち/させ¥たまふ/なれ。¥おつ−かけ/て¥うち¥たてまつれ/や」/とて、¥たいしやうぐん/に/は、¥さひやうゑ/の−かみ−とももり、P274¥とう/の−ちうじやう−しげひら、¥さつまの−かみ−ただのり、¥さむらひ−だいしやう/に/は、¥かづさの−かみ−ただきよ、¥その¥こ¥かづさの−たらう−はうぐわん−ただつな、¥ひだの−かみ−かげいへ、¥その/こ¥ひだの−たらう−はうぐわん−かげたか、¥たかはし/の−はうぐわん−ながつな、¥かはちの−はうぐわん−ひでくに、¥むさしの−さぶらうざゑもん−ありくに、¥ゑつちうの−じらうびやうゑ−もりつぎ、¥かづさの−ごらうひやうゑ−ただみつ、¥あく−しち−びやうゑ−かげきよ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥にまんはつせん−よ−き、¥こはたやま¥うち−こえ/て、¥うぢばし/の¥つめ/に/ぞ¥おし−よせ/たる。¥かたき¥びやうどうゐん/に/と¥み/てげれ/ば、¥とき/を¥つくる¥こと¥さん−か−ど/なり。¥みや/の¥おん=かた/に/も、¥おなじう¥とき/の−こゑ/を/ぞ¥あはせ/たる。¥せんぢん/が、「¥はし/を¥ひい/たる/ぞ、¥あやまち−す/な。¥はし/を¥ひい/たる/ぞ、¥あやまち−す/な」/と¥どよみ/けれ/ども、¥ごぢん/は¥これ/を¥きき−つけ/ず、¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と¥すすむ/ほど/に、¥せんぢん¥にひやく−よ−き¥おし−おとさ/れ、¥みづ/に¥おぼれ/て¥うせ/に/けり。¥さる−ほど/に、¥はし/の¥りやうばう/の¥つめ/に¥うつ−たつ/て¥や−あはせ−す。¥みや/の¥おん=かた/より、¥おほやの−しゆんちやう、¥ごちゐん/の−たぢま、¥わたなべの−はぶく、¥さづく、¥つづくの−げんた/が¥い/ける¥や/ぞ、¥たて/も¥たまら/ず、¥よろひ/も¥かけ/ず¥とほり/けり。¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/は、¥けふ/を¥さいご/と/や¥おもは/れ/けん、¥ちやうけん/の−よろひ−びたたれ/に、¥しながは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥わざと¥かぶと/を/ば¥き¥たまは/ず。¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−よろひ/なり。¥ゆみ/を¥つよう¥ひか/ん/が¥ため/に、¥これ/も¥かぶと/を/ば¥き/ざり/けり。¥
ここ/に¥ごちゐん/の−たぢま、¥おほ−なぎなた/の¥さや/を¥はづい/て、¥ただ¥いち−にん¥はし/の¥うへ/に/ぞ¥すすん/だる。¥へいけ/の¥かた/に/は¥これ/を¥み/て、「¥ただ¥い−とれ/や¥い−とれ」/とて、¥さしつめ−ひきつめ、P275¥さんざん/に¥い/けれ/ども、¥たぢま¥すこし/も¥さわが/ず、¥あがる¥や/を/ば¥つい−くぐり、¥さがる¥や/を/ば¥をどり−こえ、¥むかつ/て¥くる/を/ば¥なぎなた/にて¥きつ/て¥おとす。¥かたき/も¥み=かた/も¥けんぶつ−す。¥それ/より/して/こそ¥やぎり/の−たぢま/と/は¥いは/れ/けれ。¥また¥だうじゆ/の¥なか/に、¥つつゐの−じやうめう−めいしう/は、¥かち/の−ひたたれ/に、¥くろかは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥ごまい−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こくしつ/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥くろぼろ/の−や¥おひ、¥ぬりごめどう/の−ゆみ/に、¥このむ¥しらえ/の−おほ−なぎなた¥とり−そへ/て、¥これ/も¥ただ¥いち−にん¥はし/の¥うへ/に/ぞ¥すすん/だる。¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥とほから/ん¥もの/は¥おと/に/も¥きけ。¥ちかから/ん¥ひと/は¥め/に/も¥み¥たまへ。¥みゐでら/に/は¥かくれ¥なし、¥だうじゆ/の¥なか/に¥つつゐの−じやうめう−めいしう/とて、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/ぞ/や。¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥より−あへ/や¥げんざん−せ/ん」/とて、¥にじふし¥さい/たる¥や/を、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥いる。¥やには/に¥かたき¥じふににん¥い−ころし、¥じふいち−にん/に¥て¥おう/せ/たれ/ば、¥えびら/に¥ひとつ/ぞ¥のこつ/たる。¥その−のち、¥ゆみ/を/ば¥から/と¥なげ−すて/て、¥えびら/も¥とい/て¥すて/てげり。¥つらぬき¥ぬい/で¥はだし/に¥なり、¥はし/の¥ゆきげた/を、¥さらさら/と¥はしり/ける。¥ひと/は¥おそれ/て¥わたら/ね/ども、¥じやうめう−ばう/が¥ここち/に/は、¥いちでう¥にでう/の¥おほち/と/こそ¥ふるまう/たれ。¥なぎなた/にて¥むかふ¥かたき¥ごにん¥なぎ−ふせ、¥ろくにん/に¥あたる¥かたき/に¥あう/て、¥なぎなた¥なか/より¥うち−をつ/て¥すて/てげり。¥その−のち、¥たち/を¥ぬい/て¥たたかふ/に、¥かたき/は¥おほぜい/なり、¥くもで、¥かくなは、¥じふもんじ、¥とんばう−かへり、¥みづくるま、¥はつぱう¥すかさず¥きつ/たり/けり。¥むかふ¥かたき¥はちにん¥きり−ふせ、¥くにん/に¥あたる¥かたき/が¥かぶと/の¥はち/に¥あまり/に¥つよう¥うち−あて/て、¥めぬき/の¥もと/より¥ちやうど¥をれ、P276¥くつ/と¥ぬけ/て、¥かは/へ¥ざつぶと/ぞ¥いり/に/ける。¥たのむ¥ところ/は¥こし−がたな、¥しな/ん/と/のみ/ぞ¥くるひ/ける。¥
ここ/に¥じようゑん−ばう/の−あじやり−きやうしう/が¥めし−つかひ/ける¥いちらい−ほふし/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥じやうめう−ばう/が¥うしろ/に¥つづい/て¥たたかひ/ける/が、¥ゆきげた/は¥せばし、¥そば¥とほる/べき¥やう/は¥なし。¥じやうめう−ばう/が¥かぶと/の¥しころ/に¥て/を¥おい/て、「¥あしう¥さふらふ、¥じやうめう−ばう」/とて、¥かた/を¥づんど¥をどり−こえ/て/ぞ¥たたかひ/ける。¥いちらい−ほふし¥うちじに−し/てげり。¥じやうめう−ばう/は¥はふはふ¥かへつ/て、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥まへ/なる¥しば/の¥うへ/に¥もののぐ¥ぬぎ−すて、¥よろひ/に¥たつ/たる¥やめ/を¥かぞへ/たれ/ば¥ろくじふさん、¥うら¥かく¥や¥ごしよ、¥され/ども¥いたで/なら/ね/ば、¥ところどころ/に¥きうぢ−し、¥かしら¥からげ、¥じやうえ¥き、¥ゆみ¥きり−をり¥つゑ/に¥つき、¥ひらあしだ¥はき、¥あみだぶ¥まうし/て、¥なら/の¥かた/へ/ぞ¥まかり/ける。¥その−のち/は¥じやうめう−ばう/が¥わたつ/たる/を¥てほん/と/して、¥みゐでら/の¥だいしゆ、¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥われ¥さき/に/と¥はしり−つづき−はしり−つづき、¥はし/の¥ゆきげた/を/こそ¥わたり/けれ。¥あるひは¥ぶんどり−し/て¥かへる¥もの/も¥あり、¥あるひは¥いたで¥おう/て¥はら¥かき−きり、¥かは/へ¥とび−いる¥もの/も¥あり、¥はし/の¥うへ/の¥いくさ、¥ひ¥いづる/ほど/に/ぞ¥みえ/たり/ける。¥へいけ/の¥かた/の¥さぶらひ−だいしやう−かづさの−かみ−ただきよ、¥たいしやうぐん/の¥おん=まへ/に¥まゐり、「¥あれ¥ごらん¥さふらへ。¥はし/の¥うへ/の¥たたかひ、¥て−いたう¥さふらふ。¥いま/は¥かは/を¥わたす/べき/にて¥さふらふ/が、¥をりふし¥さみだれ/の¥ころ、¥みづ¥まさつ/て¥さふらへ/ば、¥わたさ/ば¥むま¥ひと¥おほく¥ほろび¥さふらひ/な/ん。¥よど、¥いもあらひ/へ/や¥むかふ/べき。¥また¥かはちぢ/へ/や¥まはる/べき。¥いかが−せ/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥しもづけの−くに/の¥ぢうにん、¥あしかがの−またたらう−ただつな、P277¥しやうねん¥じふしちさい/にて¥あり/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥よど、¥いもあらひ、¥かはちぢ/へ/は、¥てんぢく¥しんだん/の¥ぶし/を¥めし/て、¥むけ/られ¥さふらは/んずる/か、¥それ/も¥われ=ら/こそ¥うけたまはつ/て¥むかひ¥さふらは/んずれ。¥め/に¥かけ/たる¥かたき/を¥うた/ず/して、¥みや/を¥なんと/へ¥いれ¥まゐらせ/な/ば、¥よしの¥とづがは/の¥せい=ども¥はせ−あつまつ/て、¥いよいよ¥おん=だいじ/で/こそ¥さふらは/んず/らめ。¥むさし/と¥かうづけ/の¥さかひ/に、¥とねがは/と¥まうす¥だいが¥さふらふ。¥ちちぶ、¥あしかが、¥なか¥たがう/て、¥つね/は¥かつせん/を¥つかまつり¥さふらひ/し/に、¥おほて/は¥ながゐ/の−わたり、¥からめで/は¥こがすぎ/の−わたり/より¥よせ¥さふらひ/し/に¥ここ/に、¥かうづけの−くに/の¥ぢうにん、¥につたの−にふだう、¥あしかが/に¥かたらは/れ/て、¥すぎ/の−わたり/より¥よせ/ん/とて、¥まうけ/たり/ける¥ふね=ども/を、¥ちちぶ/が¥かた/より¥みな¥わら/れ/て、¥まうし/ける/は、『¥ただいま¥ここ/を¥わたさ/ず/は、¥ながき¥ゆみ−や/の¥きず/なる/べし。¥みづ/に¥おぼれ/て/も¥しな/ば¥しね、¥いざ¥わたさ/う』/とて、¥むま−いかだ/を¥つくつ/て、¥わたせ/ば/こそ¥わたし/けめ。¥ばんどう−むしや/の¥ならひ、¥かたき/を¥め/に¥かけ、¥かは/を¥へだて/たる¥いくさ/に、¥ふちせ¥きらふ¥やう/や¥ある。¥この¥かは/の¥ふか−さ¥はやさ、¥とねがは/に¥いく−ほど/の¥おとり−まさり/は¥よも¥あら/じ。¥つづけ/や¥との=ばら」/とて、¥まつさき/に/こそ¥うち−いれ/たれ。¥つづく¥ひとびと、¥おほご、¥おほむろ、¥ふかず、¥やまがみ、¥なはの−たらう、¥さぬきの−ひろつな−しらう−だいふ、¥をのでらの−ぜんじ−たらう、¥へやこの−しらう、¥らうどう/に/は¥うぶかたの−じらう、¥きりふの−ろくらう、¥たなかの−そうだ/を¥はじめ/と/して、¥さんびやく−よ−き/ぞ¥つづき/ける。¥あしかが¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥よわき¥むま/を/ば¥したて/に¥たてよ。¥つよき¥むま/を/ば¥うはて/に¥なせ。¥むま/の¥あし/の¥およば/う/ほど/は、¥たづな/を¥くれ/て¥あゆま/せよ。P278¥はずま/ば、¥かい−くつ/て¥およが/せよ。¥さがら/う¥もの/を/ば¥ゆみ/の¥はず/に¥とり−つか/せよ。¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥かた/を¥ならべ/て¥わたす/べし。¥むま/の¥かしら¥しづま/ば¥ひき−あげよ。¥いたう¥ひい/て¥ひつ−かづくな。¥くらつぼ/に¥よく¥のり−さだまつ/て、¥あぶみ/を¥つよう¥ふめ。¥みづ¥しとま/ば、¥さんづ/の¥うへ/に¥のり−かかれ。¥かはなか/にて¥ゆみ¥ひく/な。¥かたき¥いる/とも¥あひびき−す/な。¥つねに¥しころ/を¥かたぶけよ。¥いたう¥かたぶけ/て¥てへん¥い/さす/な。¥むま/に/は¥よわう、¥みづ/に/は¥つよう¥あたる/べし。¥かね/に¥わたい/て¥おし−おとさ/る/な。¥みづ/に¥しなう/て¥わたせ/や¥わたせ」/と¥おきて/て、¥さんびやく−よ−き¥いつき/も¥ながさ/ず、¥むかひ/の¥きし/へ¥ざつと/ぞ¥うち−あげ/たる。¥
「みやのごさいご」(『みやのごさいご』)S0412¥あしかが/が¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥くちば/の−あやの−ひたたれ/に、¥あかがは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥たかづの¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥もち/て、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥かしはぎ/に¥みみづく¥うつ/たる¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て/ぞ¥のつ/たり/ける。¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むかし¥てうてき¥まさかど/を¥ほろぼし/て、¥けんじやう¥かうぶつ/て、¥な/を¥こうだい/に¥あげ/たり/し¥たはら−とうだ−ひでさと/に¥じふ−だい/の¥こういん、¥しもづけの−くに/の¥ぢうにん、¥あしかがの−たらう−としつな/が¥こ、¥またたらう−ただつな、¥しやうねん¥じふしちさい/に¥まかり−なる。P279¥かやう/に¥むくわん¥むゐ/なる¥もの/の、¥みや/に¥むかひ¥まゐらせ/て¥ゆみ/を¥ひき¥や/を¥はなつ¥こと/は¥てん/の¥おそれ¥すくなから/ず¥さふらへ/ども、¥ただし¥ゆみ/も¥や/も、¥みやうが/の¥ほど/も¥へいけ/の¥おん=うへ/に/こそ¥とどまり¥さふらは/め。¥さんみ−にふだう=どの/の¥おん=かた/に、¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥より−あへ/や¥げんざん−せ/ん」/とて、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥うち/へ、¥せめ−いり−せめ−いり¥たたかひ/けり。¥たいしやうぐん−さひやうゑ/の−かみ−とももり、¥これ/を¥み¥たまひ/て、「¥わたせ/や¥わたせ」/と¥げぢ−し¥たまへ/ば、¥にまんはつせん−よ−き、¥みな¥うち−いれ/て¥わたす。¥さ/ばかり¥はやき¥うぢがは/も、¥むま/や¥ひと/に¥せか/れ/て、¥みづ/は¥かみ/に/ぞ¥たたへ/たる。¥ざふにん=ばら/は、¥むま/の¥したて/に¥とり−つき−とり−つき¥わたる/ほど/に、¥ひざ/より¥うへ/を¥ぬらさ/ぬ¥もの/も¥おほかり/けり。¥おのづから¥はづるる¥みづ/に/は¥なに/も¥たまら/ず¥ながれ/たり。¥ここ/に¥いが¥いせ¥りやうごく/の¥くわんびやう=ら、¥むま−いかだ¥おし−やぶら/れ/て、¥ろくぴやく−よ−き/こそ¥ながれ/たれ。¥もよぎ、¥ひ−をどし、¥あか−をどし、¥いろいろ/の¥よろひ/の、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ¥ゆら/れ/ける/は、¥かみなみやま/の¥もみぢば/の¥みね/の¥あらし/に¥さそは/れ/て、¥たつたがは/の¥あき/の¥くれ、¥ゐせき/に¥かかり/て、¥ながれ/も¥あへ/ぬ/に¥こと/なら/ず。¥その¥なか/に¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/たる¥むしや¥さん−にん、¥あじろ/に¥ながれ−かかり/て、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ¥ゆら/れ/ける/を、¥いづの−かみ¥み¥たまひ/て、¥かく/ぞ¥えいじ¥たまひ/ける。¥
いせ−むしや/は¥みな¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て¥うぢ/の¥あじろ/に¥かかり/ぬる/かな W024¥
これ=ら/は¥みな¥いせの−くに/の¥ぢうにん/なり。¥くろだの−ごへい−しらう、¥ひのの−じふらふ、¥おとべの−やしち/と¥いふ¥もの/なり。¥なか/に/も¥ひのの−じふらう/は¥ふる−つはもの/にて¥あり/けれ/ば、¥ゆみ/の¥はず、¥いは/の¥はざま/に¥ねぢ−たて/て、¥かき−あがり、¥ににん/の¥もの=ども/を¥ひき−あげ/て、¥たすけ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P280¥おほぜい¥みな¥わたつ/て、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥うち/へ、¥せめ−いり−せめ−いり¥たたかひ/けり。¥この¥まぎれ/に¥みや/を/ば¥なんと/へ¥さきだた/せ¥まゐらせ、¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥みゐでら/の¥だいしゆ、¥のこり−とどまつ/て¥ふせぎ−や¥い/けり。¥げん−ざんみ−にふだう/は、¥しちじふ/に¥あまつ/て¥いくさ−し/て、¥ゆんで/の¥ひざぐち/を¥い/させ、¥いたで/なれ/ば、¥こころ−しづか/に¥じがい−せ/ん/とて、¥びやうどうゐん/の¥もん/の¥うち/へ¥ひき−しりぞく¥ところ/に、¥かたき¥おそひ−かかれ/ば、¥じなん¥げん−だいふ/の−はうぐわん−かねつな/は、¥こんぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に¥からあや−をどし/の−よろひ¥き/て、¥しら−つきげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て¥のり¥たまひ/たり/ける/が、¥ちち/を¥のばさ/ん/が¥ため/に、¥かへし−あはせ−かへし−あはせ¥ふせぎ−たたかふ。¥かずさの−たらう−はうぐわん/が¥い/ける¥や/に、¥げん−だいふ/の−はうぐわん、¥うち−かぶと/を¥い/させ/て¥ひるむ¥ところ/に、¥かづさの−かみ/が¥わらは、¥じらうまる/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥もよぎ−にほひ/の−よろひ¥き、¥さんまい−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥うちもの/の¥さや/を¥はづい/て、¥げん−だいふ/の−はうぐわん/に¥おしーならべ/て、¥むず/と¥くん/で¥どうど¥おつ。¥げん−だいふ/の−はうぐわん/は、¥だい−ぢから/にて¥おはし/けれ/ば、¥じらうまる/を¥とつ/て¥おさへ/て¥くび/を¥かき、¥たち−あがら/ん/と¥する¥ところ/に¥へいけ/の¥つはもの=ども、¥じふしごき¥おち−かさなつ/て、¥つひに¥かねつな/を¥うち/てげり。¥いづの−かみ−なかつな/も¥さんざん/に¥たたかひ、¥いたで¥あまた¥おう/て、¥びやうどうゐん/の¥つり=どの/にて¥じがい−し/てげり。¥その¥くび/を/ば¥しもかうべの−とうざぶらう−きよちか¥とつ/て、¥おほ−ゆか/の¥した/へ/ぞ¥なげ−いれ/たる。¥ろくでうの−くらんど−なかいへ、¥その¥こ¥くらんど−たらう−なかみつ/も、¥さんざん/に¥たたかひ、¥いつしよ/で¥うちじに−し/てげり。¥この¥なかいへ/と¥まうす/は、¥こ=たてはき−せんじやう−よしかた/が¥ちやくし/なり。¥しかる/を¥ちち¥うた/れ/て¥のち、¥みなしご/にて¥あり/し/を、¥さんみ−にふだう¥やうじ/に/して、¥ふびん/に¥し¥たまひ/しか/ば、¥ひごろ/の¥けいやく/を¥たがへ/じ/と/や、P281¥いつしよ/で¥しに/に/ける/こそ¥むざん/なれ。¥さんみ−にふだう、¥わたなべの−ちやうじつ−となふ/を¥めし/て、「¥わが¥くび¥うて」/と¥のたまへ/ば、¥しう/の¥いけくび¥うた/んずる¥こと/の¥かなし−さ/に、「¥つかまつ/と/も¥ぞんじ¥さふらは/ず。¥おん=じがい¥さふらは/ば、¥その−のち/こそ¥たまはり¥さふらは/め」/と¥まうし/けれ/ば、¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥にし/に¥むかひ¥て/を¥あはせ、¥かうじやう/に¥じふねん¥となへ¥たまひ/て、¥さいご/の¥ことば/ぞ¥あはれ/なる。¥
うもれぎ/の¥はな¥さく¥こと/も¥なかり/し/に¥み/の¥なる¥はて/ぞ¥かなしかり/ける W025¥
これ/を¥さいご/の¥ことば/にて、¥たち/の¥さき/を¥はら/に¥つき−たて、¥うつぶさま/に¥つらぬかつ/て/ぞ¥うせ/られ/ける。¥その−とき/に¥うた¥よむ/べう/は¥なかり/しか/ども、¥わかう/より¥あながち/に¥すい/たる¥みち/なれ/ば、¥さいご/の¥とき/も¥わすれ¥たまは/ず。¥その¥くび/を/ば¥ちやうじつ−となふ/が¥とつ/て、¥いし/に¥くくり−あはせ、¥うぢがは/の¥ふかき¥ところ/に¥しづめ/てげり。¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、¥いか/に/も−し/て¥きほふ−たきぐち/を/ば¥いけどり/に¥せ/ばや/と¥うかがひ/けれ/ども、¥きほふ/も¥さき/に¥こころ−え/て¥さんざん/に¥たたかひ、¥いたで¥あまた¥おひ、¥はら¥かき−きつ/て¥しに/に/ける。¥ゑんまんゐん/の−たいふ−げんかく/は、¥いま/は¥みや/も¥はるか/に¥のび/させ¥たまひ/ぬ/らん/と/や¥おもひ/けん、¥おほ−だち¥おほ−なぎなた¥さう/に¥もつ/て、¥かたき/の¥なか/を¥わつ/て¥いで、¥うぢがは/へ¥とん/で¥いり、¥もののぐ¥ひとつ/も¥すて/ず、¥みづ/の¥そこ/を¥くぐつ/て、¥むかひ/の¥きし/に/ぞ¥つき/に/ける。¥たかき¥ところ/に¥はしり−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いか/に¥へいけ/の¥きんだち、¥これ/まで/は¥おん=だいじ/か、¥よう」/と¥いひ−すて/て、¥みゐでら/へ/こそ¥かへり/けれ。P282¥ひだの−かみ−かげいへ/は、¥ふる−つはもの/にて¥あり/けれ/ば、¥この¥まぎれ/に¥みや/は¥さだめて¥なんと/へ/や¥おち/させ¥たまふ/らん/とて、¥ひた−かぶと¥しごひやく−き、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おつ−かけ¥たてまつる。¥あん/の/ごとく¥みや/は¥さんじつき/ばかり/で¥おち/させ¥たまふ¥ところ/を、¥くわうみやうせん/の¥とりゐ/の¥まへ/にて¥おつ−つき¥たてまつり¥あめ/の¥ふる¥やう/に¥い¥たてまつり/けれ/ば、¥いづれ/が¥や/と/は¥しら/ね/ども、¥や¥ひとつ¥きたつ/て、¥みや/の¥ひだり/の¥おん=そばはら/に¥たち/けれ/ば、¥お=むま/より¥おち/させ¥たまひ/て、¥おん=くび¥とら/れ/させ¥たまひ/けり。¥おん=とも¥まうし/たる¥おにさど、¥あらとさ、¥くわうだいぶ、¥ぎやうぶ−しゆんしう/も、¥いのち/を/ば¥いつ/の¥ため/に/か¥をしむ/べき/とて、¥さんざん/に¥たたかひ、¥いつしよ/で¥うちじにーし/てげり。¥そのなか/に¥めのとご/の¥ろくでうの−すけ/の−たいふ−むねのぶ/は、¥にひの/が−いけ/へ¥とん/で¥いり、¥うきぐさ¥かほ/に¥とり−おほひ、¥ふるひ−ゐ/たれ/ば、¥かたき/は¥まへ/を/ぞ¥うち−とほり/ぬ。¥やや¥あつ/て¥かたき¥しごひやく−き、¥ざざめい/て¥かへり/ける¥なか/に、¥じやうえ¥き/たる¥しにん/の¥くび/も¥なき/を、¥しとみ/の¥もと/より¥かき−いだい/たる/を¥みれ/ば、¥みや/にて/ぞ¥おはしまし/ける。「¥われ¥しな/ば¥ご=くわん/に¥いれよ」/と¥おほせ/られ/し¥こえだ/と¥きこえ/し¥おん=ふえ/を/も、¥いまだ¥おん=こし/に/ぞ¥ささ/せ¥ましまし/ける。¥はしり−いで/て、¥とり−つき¥たてまつら/ばや/と¥おもへ/ども、¥おそろしけれ/ば¥それ/も¥かなは/ず。¥かたき¥みな¥とほつ/て¥のち、¥いけ/より¥あがり、¥ぬれ/たる¥もの=ども¥しぼり−き/て、¥なくなく¥みやこ/へ¥のぼつ/たり/ける/を、¥にくま/ぬ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥さる−ほど/に¥なんと/の¥だいしゆ¥しちせん−よ−にん、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥みや/の¥おん=むかひ/に¥まゐり/ける/が、¥せんぢん/は¥こづ/に¥すすみ、¥ごぢん/は¥いまだ¥こうぶくじ/の¥なんだいもん/に/ぞ¥ゆらへ/たる。¥みや/は¥はや¥くわうみやうせん/のP283¥とりゐ/の¥まへ/にて、¥うた/れ/させ¥たまひ/ぬ/と¥きこえ/しか/ば、¥だいしゆ¥ちから¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥とどまり/ぬ。¥いま¥ごじつちやう/ばかり¥まち−つけ/させ¥たまは/で、¥うた/れ/させ¥たまひ/ける、¥みや/の¥ご=うん/の¥ほど/こそ¥うたてけれ。¥
「わかみやごしゆつけ」(『わかみやしゆつけ』)S0413¥へいけ/の¥ひとびと、¥みや¥ならび/に¥さんみ−にふだう/の¥いちるゐ、¥わたなべ−たう、¥みゐでら/の¥だいしゆ、¥つがふ¥ごひやく−よ−にん/が¥くび¥きつ/て、¥たち¥なぎなた/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥ゆふべ/に¥およん/で¥ろくはら/へ¥かへり−いら/る。¥つはもの=ども¥いさみ−ののしる¥こと¥おびたたし。¥なか/に/も¥さんみ−にふだう/の¥くび/を/ば、¥ちやうじつ−となふ/が¥うぢがは/の¥ふかき¥ところ/に¥しづめ/てげれ/ば、¥みえ/ざり/けり。¥こ=ども/の¥くび/を/ば、¥あそこ−ここ/より¥みな¥たづね−いださ/れ/たり。¥なか/に/も¥みや/の¥おん=くび/を/ば、¥つね/に¥まゐり−かよふ¥ひと/も¥なかり/しか/ば、¥たれ¥み−しり¥まゐらせ/たる¥ひと/も¥なし。¥てんやく/の−かみ−さだなり/こそ、¥せんねん¥ご=れうぢ/の¥ため/に¥めさ/れ/しか/ば、¥それ/ぞ¥み−しり¥まゐらせ/たる/に/こそ/とて¥めさ/れ/けれ/ども、¥げんしよらう/とて¥まゐら/ず。¥また¥ろくはら/より、¥つね/は¥みや/の¥めさ/れ¥まゐらせ/ける¥にようばう/とて、¥たづね−いださ/れ/たり。¥おん=こ¥あまた¥うみ¥まゐらせ/など/して、¥さ/しも¥おん=ちぎり¥あさから/ざり/しか/ば、¥なじかは¥み−そんじ¥たてまつる/べき。¥ただ¥ひとめ¥み¥まゐらせ/て、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て¥なみだ/をP284¥ながし/ける/に/ぞ、¥やがて¥みや/の¥おん=くび/と/は¥しつ/てげる。¥この¥みや/は、¥はらばら/に¥おん=こ/の¥みや=たち、¥あまた¥おはしまし/けり。¥はちでうの−にようゐん/に¥さぶらは/れ/ける¥いよの−かみ−もりのり/が¥むすめ、¥さんみ/の−つぼね/と¥まうし/ける¥にようばう/の¥はら/に、¥しちさい/の¥わかみや、¥ごさい/の¥ひめみや¥おはしまし/けり。¥にふだう−しやうこく/の¥おとと、¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/を¥もつて、¥はちでうの−にようゐん/へ¥まうさ/れ/ける/は、「¥ひめみや/の¥おん=こと/は¥まうす/に¥およば/ず。¥わかみや/を/ば、¥とう¥いだし¥まゐら/させ¥たまへ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようゐん/の¥おん=ぺんじ/に、「¥かかる¥きこえ/の¥あり/し¥あかつき、¥おち/の¥ひと/なんど/が¥こころ−をさなう¥ぐし¥たてまつ/て¥うせ/に/ける/に/や、¥まつたく¥この¥ごしよ/に/は¥わたら/せ¥たまは/ず」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥よりもりの−きやう¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし¥かく/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥なんでふ¥その¥ごしよ/なら/で/は、¥いづく/へ/か¥わたら/せ¥たまふ/べかん/なる/ぞ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥ぶし=ども¥まゐり/て¥さがし¥たてまつれ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥この¥ちうなごん/は、¥にようゐん/の¥おん=めのと、¥さいしやう=どの/と¥まうす¥にようばう/に¥あひ−ぐし/て、¥つね/は¥まゐり−かよは/れ/けれ/ば、¥ひごろ/は¥なつかしう/こそ¥おぼしめし/つる/に、¥この¥みや/の¥おん=こと¥まうし/に¥まゐら/れ/たれ/ば、¥いつしか¥うとましう/ぞ¥おぼしめさ/れ/ける。¥わかみや、¥にようゐん/に¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥これ−ほど/の¥おん=だいじ/に¥および¥さふらふ¥うへ、¥つひに/は¥のがれ¥さふらふ/まじ。¥はやはや¥いださ/せ¥おはしませ」/と¥まうさ/せ¥たまひ/けれ/ば、¥にようゐん¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまひ/て、「¥ひと/の¥ななつ¥やつ/は、¥いまだ¥なにごと/を/も¥きき−わか/ぬ/ほど/ぞ/かし。¥それ/に¥おん=み¥ゆゑ、¥かかる¥だいじ/の¥いで−き/たる/を、¥かたはらいたく¥おぼし/て、¥かやう/に¥おほせ/らるる¥こと/よ。¥よし−なかり/ける¥ひと/を、P285¥この¥ろくしちねん¥て−ならし/て、¥けふ/は¥かかる¥うき−め/を¥みるよ」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥よりもりの−きやう、¥わかみや/の¥おん=こと¥かさね/て¥まうし/に¥まゐら/れ/たれ/ば、¥にようゐん¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず、¥つひに¥いだし¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥おん=はは¥さんみ/の−つぼね、¥いま/を¥かぎり/の¥おん=わかれ/なれ/ば、¥さ/こそ/は¥おん=なごり−をしう/も¥おぼしめさ/れ/けめ。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥なくなく¥ぎよ=い¥き/せ¥まゐらせ、¥おん=ぐし¥かき−なで/て、¥いだし¥まゐら/させ¥たまふ/も、¥ただ¥ゆめ/と/のみ/ぞ¥おもは/れ/ける。¥にようゐん/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥つぼね/の¥にようばう、¥め/の−わらは/に¥いたる/まで、¥なみだ/を¥ながし¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥よりもりの−きやう、¥わかみや¥うけ−とり¥まゐらせ、¥おん=くるま/に¥のせ¥たてまつり/て、¥ろくはら/へ¥わたし¥たてまつる。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥この¥みや/を¥み¥まゐらせ/て、¥ちち/の¥ぜんもん/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、「¥ぜんせ/の¥こと/に/や¥さふらふ/らん、¥わかみや/を¥ただ¥ひとめ¥み¥まゐらせ/て¥さふらへ/ば、¥あまり/に¥おん=いたはしう¥おもひ¥まゐらせ¥さふらふ。¥なに/か¥くるしう¥さふらふ/べき、¥この¥みや/の¥おん=いのち/を/ば、¥まげ/て¥むねもり/に¥たび¥さふらへ/かし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にふだう¥いかが¥おもは/れ/けん、「¥さら/ば¥とう¥ご=しゆつけ/を¥せ/させ¥たてまつれ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥むねもりの−きやう¥はちでうの−にようゐん/へ、¥この¥よし¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようゐん、「¥なん/の¥やう/も¥ある/べから/ず、¥ただ¥とうとう」/とて、¥ご=しゆつけーせ/させ¥たてまつら/る。¥しやくし/に¥さだまら/せ¥たまひ/しか/ば、¥ほふし/に¥なし¥まゐらせ/て、¥にんなじ/の−お=むろ/の¥おん=でし/に¥なし¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥のち/に/は¥とうじ/の¥いち/の−ちやうじや、¥やすゐのみや/の−だいそうじやう−だうそん/と¥まうし/し/は、¥この¥みや/の¥おん=こと/なり。P286¥
(『とうぜうのさた』)S0414¥なら/に/も¥また¥ご=いつしよ¥おはし/ける/を、¥おん=めのと¥さぬきの−かみ−しげひで/が¥ご=しゆつけ−せ/させ¥たてまつり、¥ぐし¥たてまつり/て、¥ほくこく/へ¥おち−くだり/たり/し/を、¥きそ−よしなか¥しやうらく/の¥とき、¥しう/に¥し¥まゐらせ/ん/とて、¥げんぞく−せ/させ¥たてまつり、¥ぐそく−し¥たてまつり/て、¥みやこ/へ¥のぼり/たり/けれ/ば、¥きそがみや/と/も¥まうし、¥また¥げんぞく/の−みや/と/も¥まうす。¥のち/には¥さが/の¥へん、¥のより/に¥ましまし/けれ/ば、¥のよりのみや/と/も¥まうし/き。¥むかし¥とうじよう/と¥いつ/し¥さうにん¥あり。¥うぢ=どの、¥にでう=どの/を/ば、¥きみ¥さんだい/の¥くわんばく、¥とも/に¥おん=とし¥はちじふ/と¥まうし/たり/し/も¥たがは/ず、¥そつ/の−うち/の−おとど/を¥るざい/の¥さう¥まします/と¥まうし/たり/し/も¥たがは/ず。¥また¥しやうとくたいし/の、¥しゆじゆん−てんわう/を¥わうし/の¥さう¥まします/と¥まうさ/せ¥たまひ/たり/し/が、¥むまこの−だいじん/に¥ころさ/れ/させ¥たまひ/ぬ。¥かならず¥さうにん/と/しも¥あら/ね/ども、¥しやうこ/に/は¥かく/こそ¥めでたかり/しか。¥これ/は¥いつかう¥さうせうなごん/が¥ふかく/に/は¥あら/ず/や/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥なか−ごろ¥げんめい−しんわう、¥ぐへい−しんわう/と¥まうし/し/は、¥ぜん−ちうしよわう、¥ご−ちうしよわう/とて、¥とも/に¥けんわう−せいしゆ/の¥わうじ/にて¥わたら/せ¥たまひ/しか/ども、¥つひに¥くらゐ/に/は¥つか/せ¥たまは/ず。¥され/ども¥いつか/は¥ご=むほん¥おこさ/せ¥たまひ/たり/き。¥また¥ごさんでうのゐん¥だいさん/の¥わうじ、¥すけひとの−しんわう/と¥まうし/し/は、¥おん=さいかく¥すぐれ/て¥おはしまし/けれ/ば、¥しらかはのゐん¥いまだ¥とうぐう/の¥おん=とき、¥おん=くらゐ/の¥のち/は、¥この¥みや/を¥くらゐ/に¥つけ¥まゐら/させ¥たまへ/と、¥ごさんでうのゐん、¥ご=ゆゐぜう¥あり/しか/ども、¥しらかはのゐん¥いかが¥おぼしめさ/れ/けん、¥つひに¥くらゐ/に/は¥つけ¥まゐら/させ¥たまは/ず。¥せめて/の¥おん=こと/に/や、P287¥すけひとの−しんわう/の¥おん=こ/の¥みや/に、¥げんじ/の¥しやう/を¥さづけ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥むゐ/より¥いちど/に¥さんみ/に¥じよし/て、¥やがて¥ちうじやう/に¥なし¥まゐらせ/て、¥さんみ/の−ちうじやう/と/ぞ¥まうし/ける。¥いつせ/の¥げんじ、¥むゐ/より¥さんみ−する¥こと/は、¥さがの−くわうてい/の¥おん=こ、¥やうぜいゐん/の−だいなごん−さだむの−きやう/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥はなぞのの−さだいじん−ありひと=こう/の¥おん=こと/なり。¥され/ば¥こんど/の¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/に¥よつ/て、¥てうぶく/の¥ほふ¥うけたまはつ/て¥おこなは/れ/ける¥かうそう=たち/に、¥けんじやう=ども¥おこなは/る。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥しそく、¥じじう−きよむね¥さんみ/に¥じよし/て、¥さんみ/の−じじう/と/ぞ¥まうし/ける。¥こんねん¥じふにさい、¥ちち/の¥きやう/は¥この¥よはひ/で/は、¥わづか¥ひやうゑ/の−すけ/まで/こそ¥いたら/れ/しか。¥たちまち/に¥かんだちめ/に¥あがり¥たまふ¥こと、¥いち/の−ひと/の¥きんだち/の¥ほか/は、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥さる−ほど/に¥みなもとの−もちひと¥ならびに¥さんみ−にふだう−よりまさ−ふし、¥つゐたう/の¥しやう/と/ぞ¥ききがき/に/は¥あり/ける。¥まさしい¥だ[い]じやう−ほふわう/の¥わうじ/を、¥い¥たてまつる/だに¥ある/に、¥あまつさへ¥ぼんにん/に¥なし¥たてまつる/ぞ¥あさましき。¥みなもとの−もちひと/と/は、¥この¥たかくらのみや/の¥おん=こと/なり。¥
「ぬえ」(『ぬえ』)S0415¥そもそも¥この¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/は、¥つの−かみ−らいくわう/に¥ごだい、¥みかはの−かみ−よりつな/が¥まご、¥ひやうごの−かみ−なかまさ/がP288¥こ/なり/けり。¥ほうげん/の−かつせん/の¥とき/も、¥み=かた/にて¥さき/を¥かけ/たり/しか/ども、¥させる¥しやう/に/も¥あづから/ず。¥また¥へいぢ/の−げきらん/に/も、¥すでに¥しんるゐ/を¥すて/て¥さんじ/たり/しか/ども、¥おんしやう¥これ¥おろそか/なり/き。¥たいだい−しゆご/にて、¥とし¥ひさしう¥あり/しか/ども、¥しようでん/を/ば¥ゆるさ/れ/ず。¥とし¥たけ¥よはひ¥かたぶい/て¥のち、¥じゆつくわい/の¥わか¥いつしゆ¥よみ/て/こそ、¥しようでん/を/ば¥し/たり/けれ。¥
ひと¥しれ/ぬ¥おほうちやま/の¥やまもり/は¥こ−がくれ/て/のみ¥つき/を¥みる/かな W026¥
これ/に¥よつ/て¥しようでん¥ゆるさ/れ、¥じやう−げ/の−しゐ/にて¥しばらく¥あり/し/が、¥なほ¥さんみ/を¥こころ/に¥かけ/つつ、¥
のぼる/べき¥たより−なき¥み/は¥こ/の−もと/に¥しゐ/を¥ひろひ/て¥よ/を¥わたる/かな W027¥
さて/こそ¥さんみ/は¥し/たり/けれ。¥やがて¥しゆつけ−し/て、¥げん−ざんみ−にふだう−よりまさ/とて、¥こんねん/は¥しちじふご/に/ぞ¥なら/れ/ける。¥この¥ひと¥いちご/の¥かうみやう/と¥おぼしき¥こと/は¥おほき/が¥なか/に/も、¥こと/に/は¥にんぺい/の¥ころほひ、¥こんゑのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥しゆしやう¥よなよな¥おびえ/させ¥たまふ¥こと¥あり/けり。¥うげん/の¥かうそう¥きそう/に¥おほせ/て、¥だいほふ−ひほふ/を¥しゆせ/られ/けれ/ども¥その¥しるし¥なし。¥ご=なう/は¥うし/の−こく/ばかり/の¥こと/なる/に、¥とうさんでう/の−もり/の¥かた/より、¥くろくも¥ひとむら¥たち−きたつ/て、¥ご=てん/の¥うへ/に¥おほへ/ば、¥かならず¥おびえ/させ¥たまひ/けり。¥これ/に¥よつ/て¥くぎやう−せんぎ¥あり/けり。¥さんぬる¥くわんぢ/の¥ころほひ、¥ほりかはのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥しゆしやう¥しか/の/ごとく¥おびえ¥たまぎら/せ¥たまひ/けり。¥その−とき/のP289¥しやうぐん−よしいへの−あそん、¥なんでん/の¥おほ−ゆか/に¥さふらは/れ/ける/が、¥ご=なう/の¥こくげん/に¥およん/で、¥めいげん−する¥こと¥さんど/の¥のち、¥かうじやう/に¥さきの−みちの−くにの−かみ−みなもとの−よしいへ/と¥なのり/たり/けれ/ば、¥きく¥ひと¥み/の−け¥よだつ/て、¥ご=なう¥かならず¥おこたら/せ¥たまひ/けり。¥しかれ/ば−すなはち¥せんれい/に¥まかせ/て、¥ぶし/に¥おほせ/て¥けいご¥ある/べし/とて、¥げんぺい−りやうか/の¥つはもの/の¥なか/を¥えらま/せ/られ/ける/に、¥この¥よりまさ/を/ぞ¥えらび−いださ/れ/たり/ける。¥その−とき/は¥いまだ¥ひやうごの−かみ/にて¥さふらは/れ/ける/が、¥まうさ/れ/ける/は、「¥むかし/より¥てうか/に¥ぶし/を¥おか/るる¥こと/は、¥ぎやくほん/の¥もの/を¥しりぞけ、¥ゐちよく/の¥ともがら/を¥ほろぼさ/ん/が¥ため/なり。¥め/に/も¥みえ/ぬ¥へんげ/の−もの¥つかまつれ/と¥おほせ−くださ/るる¥こと、¥いまだ¥うけたまはり¥およば/ず」/と¥まうし/ながら、¥ちよくせん/なれ/ば、¥めし/に¥おうじ/て¥さんだい−す。¥よりまさ¥たのみ−きつ/たる¥らうどう、¥とほたふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ゐの−はやた/に、¥ほろ/の¥かざぎり¥はい/だり/ける¥や¥おは/せ/て、¥ただ¥いち−にん/ぞ¥ぐし/たり/ける。¥わが−み/は¥ふたへ/の¥かりぎぬ/に、¥やまどり/の¥を/を¥もつて¥はい/だり/ける¥とがりや¥ふたすぢ、¥しげどう/の−ゆみ/に¥とり−そへ/て、¥なんでん/の¥おほ−ゆか/に¥しこう−す。¥よりまさ¥や¥ふたつ¥た−ばさみ/ける¥こと/は、¥がらいの−きやう、¥その−とき/は¥いまだ¥させうべん/にて¥おはし/ける/が、¥へんげ/の−もの¥つかまつら/んずる¥じん/は、¥よりまさ/ぞ¥さふらふ/らん/と¥えらび¥まうさ/れ/たる¥あひだ、¥いち/の−や/にて¥へんげ/の−もの¥い−そんずる/ほど/なら/ば、¥に/の−や/に/は、¥がらいの−べん/の¥しや¥くび/の¥ほね/を¥い/ん/と¥なり。¥あん/の/ごとく¥ひごろ¥ひと/の¥まうす/に¥たがは/ず、¥ご=なう/の¥こくげん/に¥およん/で、¥とうさんでう/の−もり/の¥かた/より、¥くろくも¥ひとむら¥たち−きたつ/て、¥ご=てん/の¥うへ/に¥たなびい/たり。¥よりまさ¥きつと¥み−あげ/たれ/ば、P290¥くも/の¥なか/に¥あやしき¥もの/の¥すがた¥あり。¥い−そんずる/ほど/なら/ば、¥よ/に¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥さり/ながら¥や¥とつ/て¥つがひ、¥なむ−はちまん−だい−ぼさつ/と¥こころ/の¥うち/に¥きねん−し/て、¥よつ−ぴい/て、¥ひようど¥はなつ。¥てごたへ−し/て¥はた/と¥あたる。「¥え/たり/や、¥おう」/と、¥やさけび/を/こそ¥し/てんげれ。¥ゐの−はやた¥つと¥より、¥おつる¥ところ/を¥とつ/て¥おさへ、¥つか/も¥こぶし/も¥とほれ−とほれ/と、¥つづけさま/に¥ここの−かたな/ぞ¥さい/たり/ける。¥その−とき¥じやうげ¥てんで/に¥ひ/を¥とぼし/て、¥これ/を¥ごらんじ−み¥たまふ/に、¥かしら/は¥さる、¥むくろ/は¥たぬき、¥を/は¥くちなば、¥てあし/は¥とら/の/ごとく/にて、¥なく¥こゑ¥ぬえ/に/ぞ¥に/たり/ける。¥おそろし/など/も¥おろか/なり。¥しゆしやう¥ぎよ=かん/の¥あまり/に¥ししわう/と¥まうす¥ぎよ=けん/を¥くださ/る。¥うぢの−さだいじん=どの¥これ/を¥たまはり−つい/で、¥よりまさ/に¥たば/ん/とて、¥ごぜん/の¥きざはし/を¥なから/ばかり¥おり/させ¥たまふ¥をりふし、¥ころ/は¥うづき−とをか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥くもゐ/に¥くわつこう¥ふたこゑ¥みこゑ¥おとづれ/て¥とほり/けれ/ば、¥さだいじん=どの、¥
ほととぎす¥な/を/も¥くもゐ/に¥あぐる/かな
/と¥おほせ/られ−かけ/たり/けれ/ば、¥よりまさ¥みぎ/の¥ひざ/を¥つき、¥ひだり/の¥そで/を¥ひろげ/て、¥つき/を¥すこし¥そばめ/に¥かけ/つつ、¥
ゆみはりつき/の¥いる/に¥まかせ/て W028
/と¥つかまつり、¥ぎよ=けん/を¥たまはり/て¥まかり−いづ。¥この¥よりまさの−きやう/は¥ぶげい/に/も¥かぎら/ず、¥かだう/に/も¥また¥すぐれ/たり/と/ぞ、¥とき/の−ひとびと¥かんじ−あは/れ/ける。¥さて¥かの¥へんげ/の−もの/を/ば、¥うつほ−ぶね/にP291¥いれ/て¥ながさ/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥また¥おうほう/の¥ころほひ、¥にでうのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥ぬえ/と¥いふ¥けてう、¥きんちう/に¥ない/て、¥しばしば¥しんきん/を¥なやまし¥たてまつる¥こと¥あり/けり。¥しかれ/ば¥せんれい/に¥まかせ/て、¥よりまさ/を/ぞ¥めさ/れ/ける。¥ころ/は¥さつき−はつか−あまり、¥まだ¥よひ/の¥こと/なる/に、¥ぬえ¥ただ¥ひとこゑ¥おとづれ/て、¥ふたこゑ/と/も¥なか/ざり/けり。¥めざす/とも¥しら/ぬ¥やみ/で/は¥あり、¥すがた¥かたち/も¥みえ/ざり/けれ/ば、¥やつぼ/を¥いづく/と/も¥さだめ−がたし。¥よりまさ/が¥はかりごと/に、¥まづ¥おほかぶら¥とつ/て¥つがひ、¥ぬえ/の¥こゑ−し/たり/ける¥だいり/の¥うへ/へ/ぞ¥い−あげ/たる。¥ぬえ、¥かぶら/の¥おと/に¥おどろい/て、¥こくう/に¥しばし/ぞ¥ひひめい/たる。¥つぎ/に¥こかぶら¥とつ/て¥つがひ、¥ひいふつと¥い−きつ/て、¥ぬえ/と¥ならべ/て¥まへ/に/ぞ¥おとし/たる。¥きんちう¥ざざめき−わたつ/て、¥よりまさ/に¥ぎよ=い/を¥かづけ/させ¥おはします。¥こんど/は¥おほひのみかど/の−うだいじん−きんよし=こう/の¥たまはり−つい/で、¥よりまさ/に¥かづけ/させ¥たまふ/とて、「¥むかし/の¥やういう/は、¥くも/の¥ほか/の¥かり/を¥い/き。¥いま/の¥よりまさ/は、¥あめ/の¥うち/の¥ぬえ/を¥い/たり」/と/ぞ¥かんぜ/られ/ける。¥
さつきやみ¥な/を¥あらはせ/る¥こよひ/かな
/と¥おほせ/られ−かけ/たり/けれ/ば、¥よりまさ、¥
たそかれどき/も¥すぎ/ぬ/と¥おもふ/に W029
/と¥つかまつり、¥ぎよ=い/を¥かた/に¥かけ/て¥まかり−いづ。¥その−のち¥いづの−くに¥たまはり、¥しそく¥なかつな¥じゆりやう/に¥なし、¥わが−み¥さんみ−し/て、¥たんば/の¥ごか/の−しやう、¥わかさ/の¥とうみやがは/を¥ちぎやう−し/て、¥さて¥おはす/べかり/しP292¥ひと/の、¥よし−なき¥むほん¥おこい/て、¥みや/を/も¥うしなひ¥まゐらせ、¥わが−み/も¥しそん/も¥ほろび/ぬる/こそ¥うたてけれ。¥
「みゐでらえんしやう」(『みゐでらえんしやう』)S0416¥ひごろ/は¥さんもん/の¥だいしゆ/こそ、¥はつかう/の¥みだりがはしき¥うつたへ¥つかまつる/に、¥こんど/は¥いかが¥おもひ/けん、¥をんびん/を¥ぞんじ/て¥おと/も¥せ/ず。¥しかる/を¥なんと¥みゐでら¥どうじん−し/て、¥あるひは¥みや¥うけ−とり¥まゐらせ、¥あるひは¥おん=むかひ/に¥まゐる¥でう、¥これ¥もつて¥てうてき/なり。¥しから/ば¥なら/を/も、¥てら/を/も¥せめ/らる/べし/と¥きこえ/し/が、¥まづ¥みゐでら/を¥せめ/らる/べし/とて、¥おなじき−ごぐわつ−にじふしちにち、¥たいしやうぐん/に/は¥さひやうゑ/の−かみ−とももり、¥ふくしやうぐん/に/は¥さつまの−かみ−ただのり、¥つがふ¥その¥せい¥いちまん−よ−き、¥をんじやうじ/へ¥はつかう−す。¥てら/に/も¥だいしゆ¥いつせん−にん、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥かいだて¥かき、¥さかもぎ¥ひい/て、¥まち−かけ/たり。¥う/の−こく/より¥や−あはせ−し/て、¥いちにち¥たたかひ−くらし、¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥だいしゆ¥いげ¥ほふし=ばら/に¥いたる/まで、¥さんびやく−よ−にん¥うた/れ/ぬ。¥よいくさ/に¥なつ/て、¥くら−さ/は¥くらし、¥くわんぐん¥じちう/に¥せめ−いり/て、¥ひ/を¥はなつ。¥やくる¥ところ、¥ほんがくゐん、¥じやうきゐん、¥しんによゐん、¥けをんゐん、¥だいほうゐん、¥しやうりうゐん、¥ふげんだう、¥けうだい−くわしやう/の¥ほんばう、¥ならびに¥ほんぞうとう、¥はちけん−しめん/の¥だい−かうだう、¥しゆろう、¥きやうざう、¥くわんぢやうだう、¥ごほふぜんじん/の¥しやだん、¥いまぐまの/の¥ご=ほうでん、¥すべてP293¥だうじや¥たふべう¥ろくぴやくさんじふしちう、¥おほつ/の−ざいけ¥いつせんはつぴやくごじふさんう、¥ならびに¥ちしよう/の¥わたし¥たまへ/る¥いつさいきやう¥しちせん−よ−くわん、¥ぶつざう¥にせん−よ−たい、¥たちまち/に¥けぶり/と¥なる/こそ¥かなしけれ。¥しよてん−ごめう/の¥たのしみ/も、¥この−とき¥ながく¥つき、¥りうじん−さんねつ/の¥くるしみ/も、¥いよいよ¥さかん/なる/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥
それ¥みゐでら/は、¥あふみ/の¥ぎだいりやう/が¥わたくし/の¥てら/たり/し/を、¥てんむ−てんわう/に¥よせ¥たてまつり/て、¥ご=ぐわん/と¥なす。¥ほんぶつ/も¥かの¥みかど/の¥ご=ほんぞん、¥しかる/を¥しやうじん/の¥みろく/と¥きこえ¥たまひ/し¥けうだい−くわしやう、¥ひやくろくじふねん¥おこなう/て、¥だいし/に¥ふぞく−し¥たまへ/り。¥としたてんじやう、¥まにほうでん/より¥あま−くだり、¥はるか/に¥りうげげしやう/の¥あかつき/を¥また/せ¥たまふ/と/こそ¥きき/つる/に、¥こ/は¥いか/に−し/つる¥こと=ども/ぞ/や。¥だいし¥この¥ところ/を¥でんぽふ−くわんぢやう/の¥れいせき/と/して、¥ゐけすゐ/の¥みつ/を¥むすび¥たまひ/し¥ゆゑ/に/こそ、¥みゐでら/と/は¥なづけ/たれ。¥かかる¥めでたき¥せいぜき/なれ/ども、¥いま/は¥なに/なら/ず。¥けんみつ¥しゆゆに¥ほろび/て、¥がらん¥さらに¥あと/も¥なし。¥さんみつ−だうぢやう/も¥なけれ/ば、¥れい/の¥こゑ/も¥きこえ/ず。¥いちげ/の−はな/も¥なけれ/ば、¥あか/の¥おと/も¥せ/ざり/けり。¥しゆくらう−せきとく/の¥めいし/は、¥ぎやうがく/に¥おこたり、¥じゆほふ−さうじよう/の¥でし/は、¥また¥きやうげう/に¥わかれ/ん/だり。¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/は、¥てんわうじ/の−べつたう/を/も¥とどめ/られ/させ¥たまふ。¥その−ほか¥そうがう¥じふさん−にん、¥けつくわん−せ/られ/て、¥みな¥けんびゐし/に¥あづけ/らる。¥だうじゆ/は¥つつゐの−じやうめう−めいしう/に¥いたる/まで、¥さんじふ−よ−にん¥ながさ/れ/けり。「¥かかる¥てんが/の¥みだれ、¥こくど/の¥さわぎ、¥ただごと/と/も¥おぼえ/ず、¥へいけ/の¥よ/の¥すゑ/に¥なり/ぬる¥ぜんべう/やらん」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。P294¥

平家物語 巻第五  総かな版(元和九年本)
「みやこうつり」(『みやこうつり』)S0501¥ぢしよう−しねん−ろくぐわつ−みつかのひ、¥ふくはら/へ¥ご=かう¥なる/べし/と¥きこゆ。¥この¥ひごろ¥みやこうつり¥ある/べし/と¥きこえ/しか/ども、¥たちまち/に¥きんみやう/の¥ほど/と/は、¥おもは/ざり/し/ものを/とて、¥きやう−ぢう/の¥じやうげ¥さわぎ−あへ/り。¥みつか/と¥さだめ/られ/たり/しか/ども、¥あまつさへ¥いま¥いちにち¥ひき−あげ/られ/て、¥ふつか/に¥なり/ぬ。¥ふつか/の¥う/の−こく/に、¥ぎやうがう/の¥み=こし/を¥よせ/たり/けれ/ば、¥しゆしやう/は¥こんねん¥さんざい、¥いまだ¥いとけなう¥ましまし/けれ/ば、¥なにごころ/も¥なう/ぞ¥めさ/れ/ける。¥しゆしやう¥をさなう¥わたら/せ¥たまふ¥とき/の¥ご=とうよ/に/は、¥ぼこう/こそ¥まゐらせ¥たまふ/に、¥これ/は¥その¥ぎ¥なし。¥おん=めのと¥そつのすけ=どの/ばかり/こそ、¥ひとつ¥おん=こし/に/は¥まゐら/れ/けれ。¥ちうぐう、¥いちゐん、¥しやうくわう/も¥ご=かう¥なる。¥せつしやう=どの/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥われ/も¥われ/も/と¥ぐぶ−せ/らる。¥へいけ/に/は¥だいじやう/の−にふだう/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥いちもん/の¥ひとびと¥みな¥まゐら/れ/けり。¥あくる¥みつかのひ、¥ふくはら/へ¥いら/せ¥おはします。¥にふだう−しやうこく/の¥おとと、¥いけの−ちうなごん−よりもりの−きやう/のP295¥さんざう、¥くわうきよ/に¥なる。¥おなじき−よつかのひ、¥よりもり、¥いへ/の¥しやう/とて¥じやう−にゐ−し¥たまふ。¥くでう=どの/の¥おん=こ、¥うだいしやう−よしみちの−きやう、¥かかい¥こえ/られ/させ¥たまひ/けり。¥せふろく/の¥しん/の¥ご=しそく、¥はんじん/の¥じなん/に¥かかい¥こえ/られ/させ¥たまふ¥こと、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥にふだう−しやうこく¥やうやう¥おもひ−なほつ/て、¥ほふわう/を/ば¥とば/の¥きた=どの/を¥いだし¥まゐらせ/て、¥みやこ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつら/れ/たり/し/が、¥たかくらのみや/の¥ご=むほん/に¥よつ/て、¥おほき/に¥いきどほり、¥また¥ふくはら/へ¥ご=かう¥なし¥たてまつり、¥しめん/に¥はたいた−し/て、¥くち¥ひとつ¥あき/たる¥うち/に、¥さんげん/の¥いたや/を¥つくつ/て、¥おし−こめ¥たてまつる。¥しゆご/の−ぶし/に/は、¥はらだの−たいふ−たねなほ/ばかり/ぞ¥さふらひ/ける。¥たやすう¥ひと/の¥まゐり−かよふ/べき¥やう/も¥なけれ/ば、¥わらんべ/など/は、¥ろう/の−ごしよ/と/ぞ¥まうし/ける。¥きく/も¥いまいましう、¥あさましかり/し¥こと=ども/なり。¥ほふわう、「¥いま/は¥よ/の¥まつりごと/を¥しろしめさ/ばや/と/は、¥つゆ/も¥おぼしめし−よら/ず。¥ただ¥やまやま¥てらでら¥しゆぎやう−し/て、¥おん=こころ/の¥まま/に¥なぐさま/ばや」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥へいけ/の¥あくぎやう/に¥おいて/は、¥ことごとく¥きはまり/ぬ。¥さんぬる¥あんげん/より¥この−かた、¥おほく/の¥だいじん¥くぎやう、¥あるひは¥ながし¥あるひは¥うしなひ、¥くわんばく¥ながし¥たてまつ/て、¥わが¥むこ/を¥くわんばく/に¥なし、¥ほふわう/を¥せいなん/の−りきう/に¥おし−こめ¥たてまつり、¥あまつさへ¥だいに/の¥わうじ¥たかくらのみや¥うち¥たてまつ/て、¥いま¥のこる¥ところ/の¥みやこうつり/なれ/ば、¥かやう/に¥し¥たまふ/に/や」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥
みやこうつり/は¥これ¥せんじよう¥なき/に¥あら/ず。¥じんむ−てんわう/と¥まうす/は、¥ぢじん¥ごだい/の¥てい、¥ひこなぎさたけうがやふきあはせずのみこと¥だいし/の¥わうじ、¥おん=はは/は¥たまよりひめ、¥かいじん/の¥むすめ/なり。¥かみ/の¥よ¥じふにだい/のP296¥あと/を¥うけ、¥にんだい−はくわう/の¥ていそ/なり。¥かのとのとり/の−とし、¥ひうがの−くに¥みやざき/の−こほり/に/して、¥くわうわう/の¥ほうそ/を¥つぎ、¥ごじふくねん/と¥いひ/し¥つちのとひつじ/の−とし¥じふぐわつ/に¥とうせい−し/て、¥とよあしはら−なかつくに/に¥とどまり、¥この−ころ¥やまとの−くに/と¥なづけ/たる、¥うねび/の−やま/を¥てんじ/て、¥ていと/を¥たて、¥かしはら/の¥ち/を¥きり−はらつ/て、¥きうしつ/を¥つくり¥たまへ/り。¥これ/を¥かしはらのみや/と¥なづけ/たり。¥それ/より¥この−かた、¥だいだい/の¥ていわう、¥みやこ/を¥たこく¥たしよ/へ¥うつさ/るる¥こと、¥さんじふど/に¥あまり、¥しじふど/に¥およべ/り。¥じんむ−てんわう/より¥けいかう−てんわう/まで¥じふにだい/は、¥やまとの−くに¥こほりごほり/に¥みやこ/を¥たて/て、¥たこく/へ/は¥つひに¥うつさ/れ/ず。¥しかる/を¥せいむ−てんわう−ぐわんねん/に、¥あふみの−くに/に¥うつつ/て、¥しが/の−こほり/に¥みやこ/を¥たつ。¥ちうあい−てんわう−にねん/に、¥ながとの−くに/に¥うつつ/て、¥とよら/の−こほり/に¥みやこ/を¥たつ。¥その¥くに¥かの¥みやこ/に/して、¥みかど¥かくれ/させ¥たまひ/しか/ば、¥きさき¥じんぐう−くわうこう、¥おん=よ/を¥うけ−とら/せ¥たまひ、¥によたい/と/して、¥きかい、¥かうらい、¥けいたん/まで¥せめ−したがへ/させ¥たまひ/けり。¥いこく/の¥いくさ/を¥しづめ/させ¥たまひ/て、¥きてう/の¥のち、¥ちくぜんの−くに¥みかさ/の−こほり/に/して¥わうじ¥ご=たんじやう、¥やがて¥その¥ところ/を/ば、¥うみのみや/と/ぞ¥まうし/ける。¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく¥やはた/の¥おん=こと¥これ/なり。¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/て/は、¥おうじん−てんわう/と/ぞ¥まうし/ける。¥その−のち¥じんぐう−くわうこう/は、¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥いはれわかざくらのみや/に¥おはします。¥おうじん−てんわう/は、¥おなじき−くに¥かるしまあかりのみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥にんとく−てんわう−ぐわんねん/に、¥つの−くに¥なんぱ/に¥うつつ/て、¥たかつのみや/に¥おはします。¥りちう−てんわう−にねん/に、¥また¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥とをち/の−こほり/に¥みやこ/を¥たつ。¥はんせい−てんわう−ぐわんねん/に、¥かはちの−くに/に¥うつつ/て、¥しばがきのみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥いんぎよう−てんわう−しじふにねん/に、¥また¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥とぶ−とり/のP297¥あすかのみや/に¥おはします。¥ゆうりやく−てんわう−にじふいちねんに、¥おなじき−くに¥はつせ−あさくら/に¥みやゐ−し¥たまふ。¥けいたい−てんわう−ごねん/に、¥やましろの−くに¥つづき/に¥うつつ/て¥じふにねん、¥その−のち¥おとぐん/に¥みやゐ−し¥たまふ。¥せんくわ−てんわう−ぐわんねん/に、¥また¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥ひのくま/の−いるののみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥かうとく−てんわう¥たいくわ−ぐわんねん/に、¥つの−くに¥ながら/に¥うつつ/て、¥とよざきのみや/に¥おはします。¥さいめい−てんわう−にねん/に、¥また¥やまとの−くに/に¥うつつ/て、¥をかもとのみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥てんぢ−てんわう−ろくねん/に、¥あふみの−くに/に¥うつつ/て、¥おほつのみや/に¥おはします。¥てんむ−てんわう−ぐわんねん/に、¥なほ¥やまとの−くに/に¥かへつ/て、¥をかもとのみなみのみや/に¥すま/せ¥たまふ。¥これ/を¥きよみばらの−みかど/と¥まうし/き。¥ぢどう¥もんむ¥にだい/の¥せいてう/は、¥ふぢはらのみや/に¥おはします。¥げんめい−てんわう/より¥くわうにん−てんわう/まで¥しちだい/は、¥なら/の−みやこ/に¥すま/せ¥たまふ。¥
しかる/を¥くわんむ−てんわう/の¥ぎよ=う、¥えんりやく−さんねん−じふぐわつ−みつかのひ、¥なら/の−きやう¥かすが/の−さと/より、¥やましろの−くに¥ながをか/に¥うつつ/て、¥じふねん/と¥いつ/し¥しやうぐわつ/に、¥だいなごん−ふぢはらの−をぐるまる、¥さんぎ−さだいべん−きの−こさみ、¥たいそうづ−げんけい=ら/を¥つかはし/て、¥たう−ごく¥かどの/の−こほり¥うだ/の−むら/を¥みせ/らるる/に、¥りやうにん¥とも/に¥そうし/て¥いはく、「¥この¥ち/の¥てい/を¥み¥さふらふ/に、¥さしやうりう、¥うびやくこ、¥ぜんしゆじやく、¥ごげんむ、¥しじん¥さうおう/の¥ち/なり。¥もつとも¥ていと/を¥さだむる/に¥たれ/り」/と¥まうす。¥これ/に¥よつ/て¥おたぎ/の−こほり/に¥おはします¥かもの−だい−みやうじん/に、¥この¥よし/を¥つげ¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥えんりやく−じふさんねん−じふいちぐわつ−にじふいちにち、¥ながをか/の−きやう/より¥この¥きやう/へ¥うつさ/れ/て、¥ていわう/は¥さんじふにだい、¥せいざう/は¥さんびやくはちじふ−よ−さい/の¥しゆんじう/を¥おくり−むかふ。¥それ/より¥この−かた¥だいだい/の¥みかど、¥くにぐに¥ところどころ/へ、¥おほく/の¥みやこ/を¥うつさ/れ/しか/ども、¥かく/の/ごとき/の¥しようち/は¥なし/と、¥くわんむ−てんわう¥こと/に¥しつ/しP298¥おぼしめし/て、¥だいじん¥くぎやう、¥しよ−こく/の¥さいじん=ら/に¥おほせ/て、¥ちやうきう/なる/べき¥さう/とて、¥つち/にて¥はつしやく/の¥にんぎやう/を¥つくり、¥くろがね/の−よろひ−かぶと/を¥きせ、¥おなじう¥くろがね/の¥ゆみ−や/を¥もた/せ/て、¥まつだい/と¥いふ/とも、¥この¥きやう/を¥たこく/へ¥うつす¥こと¥あら/ば、¥しゆごじん/と¥なら/ん/と¥ちかひ/つつ、¥ひがしやま/の¥みね/に、¥にしむき/に¥たて/て/ぞ¥うづま/れ/ける。¥され/ば¥てんが/に¥こと¥いで−こ/ん/とて/は、¥この¥つか¥かならず¥めいどう−す。¥しやうぐん/が−つか/とて¥いま/に¥あり。¥なかんづく¥この¥きやう/を/ば、¥へいあんじやう/と¥なづけ/て、¥たひら¥やすき¥みやこ/と¥かけ/り。¥もつとも¥へいけ/の¥あがむ/べき¥みやこ/ぞ/かし。¥くわんむ−てんわう/と¥まうす/は、¥へいけ/の¥なうそ/にて¥おはします。¥せんぞ/の¥きみ/の¥さ/しも¥しつし¥おぼしめし/つる¥みやこ/を、¥させる¥ゆゑ¥なう/して、¥たこく¥たしよ/へ¥うつさ/れ/ける/こそ¥あさましけれ。¥ひととせ¥さがの−くわうてい/の¥おん=とき、¥へいぜいの−せんてい、ないしのかみ/の¥すすめ/に¥よつ/て、¥すでに¥この¥きやう/を¥たこく/へ¥うつさ/ん/と¥せ/させ¥たまひ/しか/ども、¥だいじん¥くぎやう¥しよ−こく/の¥にんみん¥そむき¥まうし/しか/ば、¥うつさ/れ/ず/して¥やみ/に/き。¥いつてん/の−きみ¥ばんじよう/の−あるじ/さへ、¥うつし−え¥たまは/ぬ¥みやこ/を、¥にふだう−しやうこく¥じんしん/の¥み/と/して、¥うつさ/れ/ける/ぞ¥あさましき。¥きうと/は¥あはれ¥めでたかり/つる¥みやこ/ぞ/かし。¥わうじやう−しゆご/の¥ちんじゆ/は、¥しはう/に¥ひかり/を¥やはらげ、¥れいげん−しゆしよう/の¥てらでら/は、¥じやうげ/に¥いらか/を¥ならべ/たり。¥ひやくしやう¥ばんみん¥わづらひ¥なく、¥ごき−しちだう/も¥たより¥あり。¥され/ども¥いま/は¥つじつじ/を¥ほり−きつ/て、¥くるま/など/の¥たやすう¥ゆき−かふ¥こと/も¥なく、¥たまさか/に¥ゆく¥ひと/は、¥こぐるま/に¥のり、¥みち/を¥へ/て/こそ¥とほり/けれ。¥のき/を¥あらそひ/し¥ひと/の¥すまひ、¥ひ/を¥へ/つつ¥あれ−ゆく。¥いへいへ/は¥かもがは、¥かつらがは/に¥こぼち−いれ、¥いかだ/に¥くみ−うかべP299、¥しざい−ざふぐ¥ふね/に¥つみ、¥ふくはら/へ/とて¥はこび−くだす。¥ただなり/に、¥はな/の−みやこ、¥ゐなか/に¥なる/こそ¥かなしけれ。¥なにもの/の¥しわざ/に/や¥あり/けん、¥ふるき¥みやこ/の¥だいり/の¥はしら/に、¥にしゆ/の¥うた/を/ぞ¥かき−つけ/ける。¥
ももとせ/を¥よかへり/まで/に¥すぎ−き/に/し¥おたぎ/の−さと/の¥あれ/や¥はて/なむ W030¥
さき−いづる¥はな/の−みやこ/を¥ふり−すて/て¥かぜ¥ふく¥はら/の¥すゑ/ぞ¥あやふき W031¥「しんと」¥おなじき−ろくぐわつ−ここのかのひ、¥しんと/の¥ことはじめ¥ある/べし/とて、¥しやうけい/に/は¥とくだいじの−さだいしやう−じつていの−きやう、¥つちみかどの−さいしやう/の−ちうじやう−とうしんの−きやう、¥ぶぎやう/の−べん/に/は、¥さきの−させうべん−ゆきたか、¥おほく/の¥くわんにん=ども¥めし−ぐし/て、¥たう−ごく¥わだ/の−まつばら、¥にしのの/を¥てんじ/て、¥くでう/の¥ち/を¥わら/れ/ける/に、¥いちでう/より/しも、¥ごでう/まで/は¥その¥ところ¥あり/て、¥それ/より¥しも/は¥なかり/けり。¥ぎやうじくわん¥かへり−まゐつ/て、¥この¥よし/を¥そうもん−す。¥さら/ば¥はりま/の¥いなみの/か、¥なほ¥つの−くに/の¥こやの/か/なんど、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、¥こと−ゆく/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。¥きうと/は¥すでに¥うかれ/ぬ。¥しんと/は¥いまだ¥こと−ゆか/ず。¥あり/と/し−ある¥ひと/は、¥みな¥み/を¥うきくも/の¥おもひ/を¥なし、¥もとこ/の¥ところ/に¥すむ¥もの/は、¥ち/を¥うしなつ/て¥うれへ、¥いま¥うつる¥ひとびと/は、¥どぼく/のP300¥わづらひ/を/のみ¥なげき−あへ/り。¥すべて¥ただ¥ゆめ/の¥やう/なつ/し¥こと=ども/なり。¥つちみかどの−さいしやう/の−ちうじやう−とうしんの−きやう/の¥まうさ/れ/ける/は、「¥いこく/に/は¥さんでう/の¥くわうろ/を¥ひらい/て、¥じふじ/の¥とうもん/を¥たつ/と¥みえ/たり。¥いはんや¥ごでう/まで¥あら/ん¥みやこ/に、¥など/か¥だいり/を¥たて/ざる/べき。¥かつがつ¥まづ¥さとだいり¥つくら/る/べし」/と¥くぎやう−せんぎ¥あつ/て、¥ごでうの−だいなごん−くにつなの−きやう、¥りんじ/に¥すはうの−くに/を¥たまはつ/て、¥ざうしん−せ/らる/べき¥よし、¥にふだう−しやうこく¥はからひ¥まうさ/れ/けり。¥この¥くにつなの−きやう/と¥まうす/は、¥ならび−なき¥だいふく−ちやうじや/にて¥おはし/けれ/ば、¥だいり¥つくり−いださ/れ/ん¥こと、¥さう/に¥およば/ね/ども、¥いかんが¥くに/の¥つひえ、¥たみ/の¥わづらひ¥なかる/べき。¥まことに¥さし−あたつ/たる¥てんが/の¥だいじ、¥だいじやうゑ/など/の¥おこなは/る/べき/を¥さし−おい/て、¥かかる¥よ/の¥みだれ/に、¥せんと、¥ざうだいり、¥すこし/も¥さうおう−せ/ず。「¥いにしへ/の¥かしこき¥みよ/に/は、¥すなはち¥だいり/に¥かや/を¥ふき、¥のき/を/だに/も¥ととのへ/ず、¥けぶり/の¥とぼしき/を¥み¥たまふ¥とき/に/は、¥かぎり−ある¥みつぎもの/を/も¥ゆるさ/れ/き。¥これ¥すなはち¥たみ/を¥めぐみ、¥くに/を¥たすけ¥たまふ/に¥よつ/て/なり。¥そ¥しやうくわ/の−たい/を¥たて/て¥れいみん¥あらけ、¥しん¥あはうのてん/を¥おこい/て/は、¥てんが¥みだる/と¥いへ/り。¥ばうし¥きら/ず、¥さいてん¥けづら/ず、¥しうしや¥かざら/ず、¥いふく¥あや−なかり/ける¥よ/も¥あり/けん/ものを。¥され/ば¥たう/の¥たいそう/の¥りさんきう/を¥つくつ/て、¥たみ/の¥つひえ/を/や¥はばから/せ¥たまひ/けん、¥つひに¥りんかう¥なく/して、¥かはら/に¥まつ¥おひ、¥かき/に¥つた¥しげつ/て、¥やみ/に/ける/に/は¥さうゐ/かな」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。P301¥
「つきみ」(『つきみ』)S0502¥ろくぐわつ−ここのかのひ、¥しんと/の¥ことはじめ、¥はちぐわつ−とをかのひ¥しやうとう、¥じふいちぐわつ−じふさんにち¥せんかう/と¥さだめ/らる。¥ふるき¥みやこ/は¥あれ−ゆけ/ど、¥いま/の¥みやこ/は¥はんじやう−す。¥あさましかり/つる¥なつ/も¥くれ/て、¥あき/に/も¥すでに¥なり/に/けり。¥あき/も¥やうやう¥なかば/に¥なり−ゆけ/ば、¥ふくはら/の¥しんと/に¥ましまし/ける¥ひとびと、¥めいしよ/の¥つき/を¥み/ん/とて、¥あるひは¥げんじ/の−だいしやう/の¥むかし/の¥あと/を¥しのび/つつ、¥すま/より¥あかし/の¥うら−づたひ、¥あはぢ/の−せと/を¥おし−わたり、¥ゑじま/が−いそ/の¥つき/を¥みる。¥あるひは¥しらら、¥ふきあげ、¥わか/の−うら、¥すみよし、¥なには、¥たかさご、¥をのへ/の¥つき/の¥あけぼの/を、¥ながめ/て¥かへる¥ひと/も¥あり。¥きうと/に¥のこる¥ひとびと/は、¥ふしみ、¥ひろさは/の¥つき/を¥みる。¥なか/に/も¥とくだいじの−さだいしやう−じつていの−きやう/は、¥ふるき¥みやこ/の¥つき/を¥こひ/つつ、¥はちぐわつ−とをか−あまり/に、¥ふくはら/より/ぞ¥のぼり¥たまふ。¥なにごと/も¥みな¥かはり−はて/て、¥まれ/に¥のこる¥いへ/は、¥もんぜん¥くさ¥ふかく/して、¥ていじやう¥つゆ¥しげし。¥よもぎ/が−そま、¥あさぢ/が−はら、¥とり/の¥ふしど/と¥あれ−はて/て、¥むし/の¥こゑごゑ¥うらみ/つつ、¥くわうぎく¥しらん/の¥のべ/と/ぞ¥なり/に/ける。¥いま¥こきやう/の¥なごり/とて/は、¥こんゑかはら/の−おほみや/ばかり/ぞ¥ましまし/ける。¥だいしやう¥その¥ごしよ/へ¥まゐり、¥まづ¥ずゐじん/を¥もつて、¥そうもん/を¥たたか/せ/らるれ/ば、¥うち/より¥をんな/の¥こゑ/にて、「¥た/そ/や、¥よもぎふ/の¥つゆ¥うち−はらふ¥ひと/も¥なき¥ところ/に」/とP302¥とがむれ/ば、「¥これ/は¥ふくはら/より¥だいしやう=どの/の¥おん=のぼり¥ざふらふ」/と¥まうす。「¥さ¥さぶらは/ば、¥そうもん/は¥ぢやう/の¥ささ/れ/て¥さぶらふ/ぞ。¥ひがし/の−こもん/より¥いら/せ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥だいしやう、¥さら/ば/とて、¥ひがし/の−こもん/より/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥おほみや/は、¥おん=つれづれ/に、¥むかし/を/や¥おぼしめし−いで/させ¥たまひ/けん、¥なんめん/の¥み=かうし¥あけ/させ、¥おん=びは¥あそばさ/れ/ける¥ところ/へ、¥だいしやう¥つと¥まゐら/れ/たれ/ば、¥しばらく¥おん=びは/を¥さし−おか/せ¥たまひ/て、「¥ゆめ/か/や¥うつつ/か、¥これ/へ−これ/へ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥げんじ/の−うぢ/の−まき/に/は、¥うばそくのみや/の¥おん=むすめ、¥あき/の¥なごり/を¥をしみ/つつ、¥びは/を¥しらべ/て¥よ/も−すがら¥こころ/を¥すまし¥たまひ/し/に、¥ありあけ/の−つき/の¥いで/ける/を、¥なほ¥たへ/ず/や¥おぼし/けん、¥ばち/にて¥まねき¥たまひ/けん/も、¥いま/こそ¥おぼしめし−しら/れ/けれ。¥まつよひ/の−こじじう/と¥まうす¥にようばう/も、¥この¥ごしよ/に/ぞ¥さふらは/れ/ける。¥そもそも¥この¥にようばう/を¥まつよひ/と¥めさ/れ/ける¥こと/は、¥ある−とき¥ごぜん/より、「¥まつ¥よひ、¥かへる¥あした、¥いづれ/か¥あはれ/は¥まされ/る」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かの¥にようばう、¥
まつ¥よひ/の¥ふけ−ゆく¥かね/の¥こゑ¥きけ/ば¥かへる¥あした/の¥とり/は¥もの/かは W032
/と¥まうし/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥まつよひ/と/は¥めさ/れ/けれ。¥だいしやう¥この¥にようばう/を¥よび−いで/て、¥むかし−いま/の¥ものがたり=ども¥し¥たまひ/て¥のち、¥さ−よ/も¥やうやう¥ふけ−ゆけ/ば、¥ふるき¥みやこ/の¥あれ−ゆく/を、¥いまやう/に/こそ¥うたは/れ/けれ。¥
ふるき¥みやこ/を¥き/て¥みれ/ば¥あさぢ/が−はら/と/ぞ¥あれ/に/けるP303¥
つき/の¥ひかり/は¥くまなく/て¥あきかぜ/のみ/ぞ¥み/に/は¥しむ
/と、¥おし−かへし−おし−かへし¥さんべん¥うたひ−すまさ/れ/たり/けれ/ば、¥おほみや/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥ごしよ−ぢう/の¥にようばう=たち、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥さる−ほど/に¥よ/も¥やうやう¥あけ−ゆけ/ば、¥だいしやう¥いとま¥まうし/つつ、¥ふくはら/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥とも/に¥さふらふ¥くらんど/を¥めし/て、「¥じじう/が¥なに/と¥おもふ/やらん、¥あまり/に¥なごり−をし=げ/に¥みえ/つる/に、¥なんぢ¥かへつ/て、¥と/も−かう/も¥いう/て¥こよ」/と¥のたまへ/ば、¥くらんど¥はしり−かへり、¥かしこまつ/て、「¥これ/は¥だいしやう=どの/の¥まうせ/と¥ざふらふ」/とて、¥
もの/かは/と¥きみ/が¥いひ/けむ¥とり/の−ね/の¥けさ/しも¥など/か¥かなしかる/らむ W033¥
にようばう¥とり−あへ/ず、¥
また/ば/こそ¥ふけ−ゆく¥かね/も¥つらから/め¥かへる¥あした/の¥とり/の−ね/ぞ¥うき W034¥
くらんど¥はしり−かへつ/て、¥この¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、「¥さて/こそ¥なんぢ/を/ば¥つかはし/たれ」/とて、¥だいしやう¥おほき/に¥かんぜ/られ/けり。¥それ/より/して/こそ、¥ものかは/の−くらんど/と/は¥めさ/れ/けれ。P304
「もつけ」(『もつけのさた』)S0503¥へいけ¥みやこ/を¥ふくはら/へ¥うつさ/れ/て¥のち/は、¥ゆめみ/も¥あしう、¥つね/は¥こころ−さわぎ/のみ¥し/て、¥へんげ/の−もの=ども¥おほかり/けり。¥ある¥よ¥にふだう/の¥ふし¥たまひ/たり/ける¥ところ/に、¥ひとま/に¥はばかる/ほど/の¥もの/の¥おもて/の¥いで−きたつ/て¥のぞき¥たてまつる。¥にふだう¥ちつと/も¥さわが/ず、¥はつた/と¥にらまへ/て¥おはし/けれ/ば、¥ただきえ/に¥きえ−うせ/ぬ。¥をか/の−ごしよ/と¥まうす/は、¥あたらしう¥つくら/れ/たり/けれ/ば、¥しかる/べき¥たいぼく/なんど/も¥なかり/ける/に、¥ある¥よ¥おほぎ/の¥たふるる¥おと−し/て、¥ひと/なら/ば¥にさんぜんにん/が¥こゑ−し/て、¥こくう/に¥どつと¥わらふ¥おと−し/けり。¥いかさま/に/も¥これ/は¥てんぐ/の¥しよゐ/と¥いふ¥さた/にて、¥ひる¥ごじふにん、¥よる¥ひやくにん/の¥ばんしゆ/を¥そろへ、¥ひきめ/の−ばん/と¥なづけ/て、¥ひきめ/を¥い/させ/られ/ける/に、¥てんぐ/の¥ある¥かた/へ¥むかつ/て¥い/たる/と¥おぼし/き¥とき/は、¥おと/も¥せ/ず。¥また¥ない¥かた/へ¥むかつ/て¥い/たる¥とき/は、¥どつと¥わらひ/なんど¥し/けり。¥また¥ある¥あした¥にふだう−しやうこく¥ちやうだい/より¥いで/て、¥つまど/を¥おし−ひらき、¥つぼ/の−うち/を¥み¥たまへ/ば、¥しにん/の¥しやれかうべ=ども/が、¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず、¥つぼ/の−うち/に¥みちみち/て、¥うへ/なる/は¥した/に¥なり、¥した/なる/は¥うへ/に¥なり、¥なか/なる/は¥はし/へ¥ころび−いで、¥はし/なる/は¥なか/へ¥ころび−いり、¥ころび−あひ、¥ころび−のき、¥からめき−あへ/り。¥にふだう−しやうこく、「¥ひと/や¥ある¥ひと/や¥ある」/とP305¥めさ/れ/けれ/ども、¥をりふし¥ひと/も¥まゐら/ず。¥かく−し/て¥おほく/の¥どくろ=ども/が、¥ひとつ/に¥かたまり−あひ、¥つぼ/の−うち/に、¥はばかる/ほど/に¥なつ/て、¥たかさ/は¥じふしごぢやう/も¥ある/らん/と¥おぼゆる¥やま/の/ごとく/に¥なり/に/けり。¥かの¥ひとつ/の¥おほがしら/に、¥いき/たる¥ひと/の¥め/の¥やう/に、¥だい/の¥まなこ/が¥せんまん¥いで−き/て、¥にふだう−しやうこく/を¥きつと¥にらまへ、¥しばし/は¥まだたき/も¥せ/ず。¥にふだう¥ちつと/も¥さわが/ず、¥ちやうど¥にらまへ/て¥たた/れ/たり/けれ/ば、¥つゆ¥しも/など/の¥ひ/に¥あたつ/て¥きゆる¥やう/に、¥あとかた/も¥なく¥なり/に/けり。¥
また¥にふだう−しやうこく、¥いち/の−おん=むまや/に¥たて/て、¥とねり¥あまた¥つけ/て、¥あさゆふ¥なで−かは/れ/ける¥むま/の¥を/に、¥ねずみ¥いち−や/の¥うち/に¥す/を¥くひ¥こ/を/ぞ¥うん/だり/ける。¥これ¥ただごと/に¥あら/ず、¥みうら¥ある/べし/とて¥じんぎくわん/に/して、¥みうら¥あり。¥おもき¥おん=つつしみ/と¥うらなひ¥まうす。¥この¥むま/は、¥さがみの−くに/の¥ぢうにん、¥おほばの−さぶらう−かげちか/が、¥とう−はつ−か−こく¥いち/の¥むま/とて、¥にふだう−だいしやうこく/に¥まゐらせ/たり/ける/とかや。¥くろき¥むま/の¥ひたひ/の¥すこし¥しろかり/けれ/ば、¥な/を/ば¥もちづき/と/ぞ¥いは/れ/ける。¥おんやう/の−かみ−あべの−やすちか¥たまはつ/てげり。¥むかし¥てんぢ−てんわう/の¥ぎよ=う/に、¥れう/の−お=むま/の¥を/に、¥ねずみ¥いち−や/の¥うち/に¥す/を¥くひ、¥こ/を¥うん/だり/ける/に/は、¥いこく/の¥きようぞく¥ほうき−し/たり/と/ぞ、¥につぽんぎ/に/は¥みえ/たり/ける。¥また¥げん−ぢうなごん−がらいの−きやう/の¥もと/に、¥めし−つかは/れ/ける¥せいし/が¥み/たり/ける¥ゆめ/も、¥おそろしかり/けり。¥たとへば¥たいだい/の¥じんぎくわん/と¥おぼし/き¥ところ/に、¥そくたい¥ただしき¥じやうらふ/の、¥あまた¥より−あひ¥たまひ/て、¥ぎぢやう/の¥やう/なる¥こと/の¥あり/し/に、¥ばつざ/なる¥じやうらふ/の、¥へいけ/の¥かたうど−しP306¥たまふ/と¥おぼし/き/を、¥その¥なか/より/して¥おつ−たて/らる。¥はるか/の¥ざじやう/に¥けだか=げ/なる¥おん=しゆくらう/の¥ましまし/ける/が、「¥この¥ひごろ¥へいけ/の¥あづかり¥たてまつる¥せつたう/を/ば¥めし−かへい/て、¥いづの−くに/の−るにん−さきの−うひやうゑ/の−すけ−よりとも/に¥たば/うずる/なり」/と¥おほせ/けれ/ば、¥その¥そば/に¥なほ¥おん=しゆくらう/の¥ましまし/ける/が、「¥その−のち/は¥わが¥まご/に/も¥たび¥さふらへ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥せいし¥ゆめ/の¥うち/に、¥ある¥らうをう/に、¥しだい/に¥これ/を¥とひ¥たてまつる。「¥ばつざ/なる¥じやうらふ/の、¥へいけ/の¥かたうど−し¥たまふ/と¥おぼし/き/は、¥いつくしまの−だい−みやうじん、¥せつたう/を¥よりとも/に¥たば/う/と¥おほせ/らるる/は、¥はちまん−だい−ぼさつ、¥その−のち¥わが¥まご/に/も¥たべ/と¥おほせ/ける/は、¥かすがの−だい−みやうじん、¥かう¥まうす¥おきな/は、¥たけうちの−みやうじん」/と¥こたへ¥たまふ/と¥いふ¥ゆめ/を¥み/て、¥さめ/て¥のち、¥ひと/に¥これ/を¥かたる/ほど/に、¥にふだう−しやうこく¥もれ−きき¥たまひ/て、¥がらいの−きやう/の¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥それ/に¥ゆめみ/の¥せいし/の¥さふらふ/なる/を¥たまはつ/て、¥くはしう¥たづね¥さふらは/ばや」/と¥のたまひ/て、¥つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥かの¥ゆめ¥み/たり/ける¥せいし、¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、¥やがて¥ちくでん−し/てげり。¥その−のち¥がらいの−きやう、¥にふだう−しやうこく/の¥てい/に¥ゆい/て、「¥まつたく¥さる−こと¥さふらは/ず」/と、¥ちんじ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥その−のち/は¥さた/も¥なかり/けり。¥それ/に¥また¥なに/より¥ふしぎ/なり/ける¥こと/に/は、¥きよもり¥いまだ¥あきの−かみ/たり/し¥とき、¥じんぱい/の¥ついで/に¥れいむ/を¥かうぶつ/て、¥いつくしま−だい−みやうじん/より¥うつつ/に¥たまはら/れ/たり/ける¥しろがね/の¥ひるまき−し/たる¥こなぎなた、¥つね/の¥まくら/を¥はなた/ず¥たて/られ/たり/し/が、¥ある¥よ¥にはか/に¥うせ/に/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥へいけ¥ひごろ/は¥てうか/の¥おん=かため/にて、¥てんが/を¥しゆご−せ/しか/ども、¥いま/は¥ちよくめい/に/もP307¥そむき/ぬれ/ば、¥せつたう/を/も¥めし−かへさ/るる/に/や、¥こころ−ぼそく/ぞ¥きこえ/し。¥
「おほばがはやむま」¥なか/に/も¥かうや/に¥おはし/ける¥さいしやう−にふだう−せいらい、¥この¥こと=ども/を¥つたへ−きい/て、「¥あは¥はや¥へいけ/の¥よ/は¥やうやう¥すゑ/に¥なり/ぬる/は。¥いつくしまの−だい−みやうじん/の、¥へいけ/の¥かたうど−し¥たまふ/と¥いふ/も、¥その¥いはれ¥あり。¥ただし¥この¥いつくしまの−だい−みやうじん/は、¥しやかつらりうわう/の¥だいさん/の¥ひめみや/なれ/ば、¥ぢよじん/と/こそ¥うけたまはれ。¥はちまん−だい−ぼさつ/の¥せつたう/を¥よりとも/に¥たば/う/と¥おほせ/られ/つる/も¥ことわり/なり。¥かすが−だい−みやうじん/の¥その−のち/は¥わが¥まご/に/も¥たび¥さふらへ/と¥おほせ/られ/ける/こそ¥こころ−え/ね。¥それ/も¥へいけ¥ほろび、¥げんじ/の¥よ¥つき/な/ん¥のち、¥たいしよくくわん/の¥おん=すゑ、¥しつぺいけ/の¥きんだち=たち/の¥てんが/の¥しやうぐん/に¥なり¥たまふ/べき/か/なんど¥のたまひ/ける。¥をりふし¥ある¥そう/の¥き/たり/ける/が¥まうし/ける/は、「¥それ¥しんめい/は、¥わくわう−すゐじやく/の¥はうべん、¥まちまち/に¥ましませ/ば、¥ある−とき/は¥ぢよじん/と/も¥なり、¥また¥ある−とき/は¥ぞくたい/と/も¥げんじ¥たまへ/り。¥まことに¥この¥いつくしまの−だい−みやうじん/は、¥さんみやう¥ろくつう/の¥れいしん/にて¥ましませ/ば、¥ぞくたい/と¥げんじ¥たまは/ん¥こと/も¥かたかる/べき/に¥あら/ず/や」/と/ぞ¥まうし/ける。¥うき−よ/を¥いとひ、¥まこと/の−みち/に¥いり¥たまへ/ば、¥ひとへに¥ごせ−ぼだい/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥ある/まじき¥こと/なれ/ども、¥ぜんせい/を¥きい/て/は¥かんじ、¥うれへ/をP308¥きい/て/は¥なげく、¥これ¥みな¥にんげん/の¥ならひ/なり。¥
(『はやむま』)S0504¥さる−ほど/に¥おなじき−くぐわつ−ふつかのひ、¥さがみの−くに/の¥ぢうにん、¥おほばの−さぶらう−かげちか、¥ふくはら/へ¥はやむま/を¥もつて¥まうし/ける/は、「¥さんぬる¥はちぐわつ−じふしちにち、¥いづの−くに/の−るにん−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥しうと¥ほうでう−しらう−ときまさ/を¥かたら/う/て、¥いづの−くに/の¥もくだい、¥いづみ/の−はんぐわん−かねたか/を、¥やまき/が−たち/にて¥ようち/に¥うち¥さふらひ/ぬ。¥その−のち¥とひ、¥つちや、¥をかざき/を¥はじめ/と/して¥さんびやく−よ−き、¥いしばしやま/に¥たて−こもつ/て¥さふらふ¥ところ/を、¥かげちか¥み=かた/に¥こころざし/を¥ぞんずる¥もの=ども、¥いつせん−よ−き/を¥いんぞつ−し/て、¥おし−よせ/て¥さんざん/に¥せめ¥さふらへ/ば、¥ひやうゑ/の−すけ¥わづか¥しちはつき/に¥うち−なさ/れ、¥おほ−わらは/に¥たたかひ−なつ/て、¥とひ/の¥すぎやま/へ¥にげ−こもり¥さふらひ/ぬ。¥はたけやま¥ごひやく−よ−き/で、¥み=かた/を¥つかまつる。¥みうらの−おほすけ/が¥こども、¥さんびやく−よ−き/で¥げんじ−がた/を/して、¥ゆゐ¥こつぼ/の−うら/で¥せめ−たたかふ。¥はたけやま¥いくさ/に¥まけ/て¥むさしの−くに/へ¥ひき−しりぞく。¥その−のち¥はたけやま/が¥いちぞく、¥かはごえ、¥いなげ、¥をやまだ、¥えど、¥かさい、¥そうじて¥ななたう/の¥つはもの=ども、¥ことごとく¥おこり−あひ、¥つがふ¥その¥せい¥にせん−よ−き、¥みうら¥きぬがさ/の−じやう/に¥おし−よせ/て、¥いちにち−いち−や¥せめ¥さふらひ/し/ほど/に、¥おほすけ¥うた/れ¥さふらひ/ぬ。¥こども/は¥みな¥くりばま/の−うら/より¥ふね/に¥のつ/て、¥あは¥かづさ/へ¥わたり/ぬ/と/こそ、¥ひと¥まうし/けれ。P309¥
「てうてきぞろへ」¥へいけ/の¥ひとびと、¥みやこうつり/の¥こと/も、¥はや¥きよう¥さめ/ぬ。¥わかき¥くぎやう−てんじやうびと/は、「¥あはれ¥とく/して、¥こと/の¥いで−こよ/かし。¥われ¥さき/に¥うつて/に¥むかは/う」/など¥いふ/ぞ¥はかなき。¥はたけやまの−しやうじ−しげよし、¥をやまだの−べつたう−ありしげ、¥うつのみやの−さゑもん−ともつな、¥これ=ら/は¥おほばんやく/にて、¥をりふし¥ざいきやう−し/たり/ける/が、¥はたけやま¥まうし/ける/は、「¥したしう¥なつ/て¥さふらふ/なれ/ば、¥ほうでう/は¥しり¥さふらは/ず。¥じよ/の¥ともがら/は、¥よ/も¥てうてき/の¥かたうど/は¥つかまつり¥さふらは/じ。¥ただいま¥きこしめし−なほさ/んずる/ものを」/と¥まうし/けれ/ば、「¥げに/も」/と¥まうす¥ひと/も¥あり、「¥いやいや¥ただいま¥おん=だいじ/に¥および¥さふらひ/な/んず」/と¥ささやく¥ひと/も¥あり/ける/とかや。¥にふだう−しやうこく/の¥いから/れ/ける¥さま¥なのめ/なら/ず、「¥そも¥かの¥よりとも/は、¥さんぬる¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥ちち¥よしとも/が¥むほん/に¥よつ/て、¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥こ=いけの−ぜんに/の¥あながち/に¥なげき−のたまふ¥あひだ、¥るざい/に/は¥なだめ/られ/たん/なり。¥しかる/に¥その¥おん/を¥わすれ/て、¥たうけ/に¥むかつ/て¥ゆみ/を¥ひき、¥や/を¥はなつ/に/こそ¥あん/なれ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥しんめい/も¥さんぽう/も、¥いかで/か¥ゆるし¥たまふ/べき。¥ただいま¥てん/の¥せめ¥かうぶら/んずる¥よりとも/かな」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥
(『てうてきぞろへ』)S0505¥そもそも¥わが¥てう/に¥てうてき/の¥はじまり/ける¥こと/は、¥むかし¥やまといはれひこのみこと/の¥ぎよ=う¥しねん、¥きしうP310¥なぐさ/の−こほり¥たかを/の−むら/に、¥ひとつ/の¥ちちう¥あり。¥み¥みじかく¥てあし¥ながく/して、¥ちから¥ひと/に¥すぐれ/たり。¥にんみん¥おほく¥そんがい−せ/しか/ば、¥くわんぐん¥はつかう−し/て、¥せんじ/を¥よみ−かけ、¥かづら/の¥あみ/を¥むすん/で、¥つひに¥これ/を¥おほひ−ころす。¥それ/より¥この−かた、¥やしん/を¥さし−はさん/で、¥てうゐ/を¥ほろぼさ/ん/と¥する¥ともがら、¥おほいしの−やままる、¥おほやまの−わうじ、¥やまだの−いしかは、¥もりやの−だいじん、¥そがの−いるか、¥おほともの−まとり¥ぶんやの−みやだ、¥きつ−いつせい、¥ひかみの−かはつぎ、¥いよの−しんわう、¥ださい/の−せうに−ふぢはらの−ひろつぎ、¥ゑみの−おしかつ、¥さはらの−たいし、¥ゐがみの−くわうこう、¥ふぢはらの−なかなり、¥たひらの−まさかど、¥ふぢはらの−すみとも、¥あべの−さだたふ¥むねたふ¥さきの−つしまの−かみ−みなもとの−よしちか、¥あく−さふ、¥あく−ゑもん/の−かみ/に¥いたる/まで、¥その¥れい¥すでに¥にじふ−よ−にん、¥され/ども¥いち−にん/と/して、¥そくわい/を¥とぐる¥もの¥なし。¥みな¥かばね/を¥さんや/に¥さらし、¥かうべ/を¥ごくもん/に¥かけ/らる。¥この−よ/こそ¥わうゐ/も¥むげ/に¥かろけれ。¥むかし/は¥せんじ/を¥むかつ/て¥よみ/けれ/ば、¥かれ/たる¥くさき/も¥たちまち/に¥はな¥さき¥み¥なり、¥とぶ¥とり/も¥したがひ/き。¥ちかごろ/の¥こと/ぞ/かし。¥えんぎ/の−みかど¥しんぜんゑん/へ¥ぎやうがう¥なつ/て、¥いけ/の¥みぎは/に¥さぎ/の¥ゐ/たり/ける/を、¥ろくゐ/を¥めし/て、「¥あの¥さぎ¥とつ/て¥まゐれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥いかんが¥とら/る/べき/と/は¥おもへ/ども、¥りんげん/なれ/ば¥あゆみ−むかふ。¥さぎ¥はねづくろひ−し/て¥たた/ん/と¥す。「¥せんじ/ぞ」/と¥おほす/れ/ば、¥ひらん/で¥とび−さら/ず。¥すなはち¥これ/を¥とつ/て¥まゐらせ/たり/けれ/ば、「¥なんぢ/が¥せんじ/に¥したがひ/て¥まゐり/たる/こそ¥しんべう/なれ。¥やがて¥ごゐ/に¥なせ」/とて、¥さぎ/を¥ごゐ/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥けふ/より¥のち、¥さぎ/の¥なか/の¥わう/たる/べし/と¥いふ¥おん=ふだ/を、¥みづから¥あそばい/て、¥くび/に¥つけ/て/ぞ¥はなた/せP311¥たまふ。¥まつたく¥これ/は¥さぎ/の¥おん=れう/に/は¥あら/ず、¥ただ¥わうゐ/の¥ほど/を¥しろしめさ/ん/が¥ため/なり。¥
「かんやうきう」(『かんやうきう』)S0506¥また¥いこく/に¥せんじよう/を¥とぶらふ/に、¥えん/の¥たいし−たん、¥しん/の¥しくわうてい/に¥とらはれ/て、¥いましめ/を¥かうぶる¥こと¥じふにねん、¥ある−とき¥えん−たん¥なみだ/を¥ながい/て、「¥われ¥こきやう/に¥らうぼ¥あり。¥いとま/を¥たまはつ/て、¥いま−いちど¥かれ/を¥み/ん」/と/ぞ¥なげき/ける。¥しくわうてい¥あざ−わらつ/て、「¥なんぢ/に¥いとま¥たば/ん¥こと、¥むま/に¥つの¥おひ、¥からす/の¥かしら/の¥しろく¥なら/ん/を¥まつ/べき/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥えん−たん¥てん/に¥あふぎ¥ち/に¥ふし/て、「¥ねがは−く/は¥むま/に¥つの¥おひ、¥からす/の¥かしら/を¥しろく¥なし¥たべ。¥ほんごく/へ¥かへつ/て¥いま−いちど¥はは/を¥み/ん」/と/ぞ¥いのり/ける。¥かの¥めうおん−ぼさつ/は、¥りやうぜん−じやうど/に¥けいし/て、¥ふけう/の¥ともがら/を¥いましめ、¥くじ¥がんくわい/は、¥しな−しんだん/に¥いで/て、¥ちうかう/の¥みち/を¥はじめ¥たまふ。¥みやうけん/の¥さんぽう、¥かうかう/の¥こころざし/を¥あはれみ¥たまふ¥こと/なれ/ば、¥むま/に¥つの¥おひ/て¥きうちう/に¥きたり、¥からす/の¥かしら¥しろく¥なつ/て、¥ていぜん/の¥き/に¥すめ/り/けり。¥しくわうてい、¥うとう−ばかく/の−へん/に¥おどろき、¥りんげん¥かへら/ざる¥こと/を¥ふかく¥しんじ/て、¥たいし−たん/を¥なだめ/つつ、¥ほんごく/へ/こそ¥かへさ/れ/けれ。¥しくわう¥なほ¥くやしみ¥たまひ/て、¥しん/の−くに/と¥えん/の¥さかひ/に¥そこく/と¥いふ¥くに¥あり。¥おほい/なる¥かはP312¥ながれ/たり。¥かの¥かは/に¥わたせ/る¥はし/を、¥そこく/の−はし/と¥いへ/り。¥しくわう¥さき/に¥くわんぐん/を¥つかはし/て、¥えん−たん/が¥わたら/ん¥とき、¥かはなか/の¥はし/を¥ふま/ば、¥おつる¥やう/に¥したため/て、¥わたさ/れ/たり/けれ/ば、¥なじか/は¥よかる/べき。¥まんなか/にて¥おち−いり/ぬ。¥され/ども¥みづ/に/は¥ちつと/も¥おぼれ/ず、¥へいち/を¥ゆく/が/ごとく/にて、¥むかひ/の¥きし/に/ぞ¥つき/に/ける。¥えん−たん¥こ/は¥いか/に/と¥おもひ/て、¥うしろ/を¥かへり−み/たり/けれ/ば、¥かめ=ども/が¥いくら/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず、¥みづ/の¥うへ/に¥うか/れ¥き/て、¥かふ/を¥ならべ/て¥その¥うへ/を¥とほし/ける。¥これ/も¥かうかう/の¥こころざし/を、¥みやうけん/の¥あはれみ¥たまふ/に¥よつ/て/なり。¥
えん−たん¥なほ¥うらみ/を¥ふくん/で、¥しくわうてい/に¥したがは/ず。¥しくわう¥くわんぐん/を¥つかはし/て、¥えん−たん/を¥ほろぼさ/ん/と¥す。¥えん−たん¥おほき/に¥おそれ−をののい/て、¥けいか/と¥いふ¥つはもの/を¥かたら/う/て¥だいじん/に¥なす。¥けいか¥また¥でんくわう−せんせい/と¥いふ¥つはもの/を¥かたらふ/に、¥せんせい¥まうし/ける/は、「¥きみ/は¥この¥み/が¥わかう¥さかん/なつ/し¥こと/を¥しろしめし/て、¥かく/は¥たのみ−おほせ/らるる/か。¥きりん/は¥せんり/を¥とぶ/と¥いへ/ども、¥おい/ぬれ/ば¥どば/に/も¥おとれ/り。¥この¥み/は¥とし¥おい/て、¥いか/に/も¥かなひ¥さふらふ/まじ。¥せんずる−ところ、¥よき¥つはもの/を¥かたらつ/て/こそ¥まゐらせ/め」/と¥まうし/けれ/ば、¥けいか、「¥あな−かしこ、¥この¥こと¥ひろう−す/な」/と¥いふ。¥せんせい¥きい/て、「¥この¥こと¥もれ/ぬる¥もの/なら/ば、¥われ¥まづ¥さきに¥うたがは/れ/な/んず。¥ひと/に¥うたがは/れ/ぬる/に¥すぎ/たる¥はぢ/こそ¥なけれ」/とて、¥けいか/が¥もんぜん/なる¥すもも/の−き/に¥かしら/を¥つき−あて、¥うち−くだい/て/ぞ¥しに/に/ける。P313¥また¥はんよき/と¥いふ¥つはもの¥あり。¥これ/は¥しん/の−くに/の¥もの/なり/し/が、¥しくわう/の¥ため/に、¥おや¥をぢ¥きやうだい¥ほろぼさ/れ/て、¥えん/の−くに/に¥にげ−こもり/ぬ。¥しくわう¥しかい/に¥せんじ/を¥なし−くだし、¥えん/の¥さしづ¥ならびに¥はんよき/が¥かうべ/を¥もつ/て¥まゐり/たら/んずる¥もの/に/は、¥ごひやくこん/の¥きん/を¥あたへ/ん/と¥ひろう−せ/らる。¥けいか、¥はんよき/が¥もと/に¥ゆい/て、「¥われ¥きく、¥なんぢ/が¥かうべ¥ごひやくこん/の¥きん/に¥ほうぜ/られ/たん/なり。¥なんぢ/が¥かうべ¥われ/に¥かせ。¥とつ/て¥しくわうてい/に¥たてまつら/ん。¥よろこび/て¥えいらん/を¥へ/ら/れ/ん/とき、¥つるぎ/を¥ぬい/て¥むね/を¥ささ/ん/は¥やすかり/な/ん」/と¥いひ/けれ/ば、¥はんよき¥をどり−あがり−をどり−あがり、¥おほいき¥つい/て¥まうし/ける/は、「¥われ¥おや¥をぢ¥きやうだい/を、¥しくわうてい/に¥ほろぼさ/れ/て、¥よる¥ひる¥これ/を¥おもふ/に、¥こつずゐ/に¥とほつ/て¥しのび−がたし。¥まことに¥しくわうてい¥うつ/べから/ん/に¥おいて/は、¥わが¥かうべ¥あたへ/ん¥こと、¥ちり¥あくた/より/も¥やすし」/とて、¥みづから¥かうべ/を¥きつ/て/ぞ¥しに/に/ける。¥また¥しんぶやう/と¥いふ¥つはもの¥あり。¥これ/も¥しん/の−くに/の¥もの/なり/し/が、¥じふさん/の¥とし¥かたき/を¥うつ/て、¥えん/の−くに/へ¥にげ−こもり/ぬ。¥かれ/が¥ゑん/で¥むかふ¥とき/は、¥みどりご/も¥いだか/れ、¥また¥いかつ/て¥むかふ¥とき/は、¥だい/の¥をとこ/も¥ぜつじゆ−す。¥ならび−なき¥つはもの/なり。¥けいか¥かれ/を¥かたらつ/て、¥しん/の¥みやこ/の¥あんないしや/に¥ぐし/て¥ゆく/に、¥ある¥かた−やまざと/に¥しゆくし/たり/ける¥よ、¥その¥へん¥ちかき¥さと/に¥くわんげん/を¥する/を¥きい/て、¥てうし/を¥もつて¥ほんい/の¥こと/を¥うらなふ/に、¥かたき/の¥かた/は¥みづ/なり、¥わが¥かた/は¥ひ/なり。¥はくこう¥ひ/を¥つらぬい/て¥とほら/ず。「¥わが¥ほんい¥とげ/ん¥こと¥あり−がたし」/と/ぞ¥まうし/ける。P314¥
さる−ほど/に¥てん/も¥あけ/ぬ。¥され/ども¥かへる/べき¥みち/に¥あら/ね/ば、¥しん/の¥みやこ¥かんやうきう/に¥いたり/ぬ。¥えん/の¥さしづ¥ならびに¥はんよき/が¥かうべ、¥もつ/て¥まゐり/たる¥よし/を¥そうもん−す。¥しんか/を¥もつて¥うけ−とら/ん/と¥し¥たまへ/ば、「¥まつたく¥ひとづて/に/は¥まゐらせ/じ。¥ぢき/に¥たてまつら/ん」/と¥そうする¥あひだ、¥さら/ば/とて¥せちゑ/の−ぎ/を¥ととのへ/て、¥えん/の¥つかひ/を¥めさ/れ/けり。¥かんやうきう/は、¥みやこ/の¥めぐり、¥いちまんはつせんさんびやくはちじふり/に¥つもれ/り。¥だいり/を/ば¥ち/より¥さんり¥たかく¥つき−あげ/て、¥その¥うへ/に/ぞ¥たて/られ/たる。¥ちやうせいでん¥あり。¥ふらうもん¥あり。¥こがね/を¥もつて¥ひ/を¥つくり、¥しろがね/を¥もつて¥つき/を¥つくれ/り。¥しんじゆ/の¥いさご、¥るり/の¥いさご、¥こがね/の¥いさご/を¥しき−みて/り。¥しはう/に/は¥くろがね/の¥ついぢ/を、¥たかさ¥しじふぢやう/に¥つき−あげ/て、¥てん/の¥うへ/に/も¥おなじう¥くろがね/の¥あみ/を/ぞ¥はつ/たり/ける。¥これ/は¥めいど/の¥つかひ/を¥いれ/じ/と/なり。¥あき/は¥たのも/の¥かり、¥はる/は¥こしぢ/へ¥かへる/に/も、¥ひぎやう−じざい/の¥さはり¥あり/とて、¥ついぢ/に/は¥がんもん/と¥なづけ/て、¥くろがね/の¥もん/を¥あけ/て/ぞ¥とほさ/れ/ける。¥その¥なか/に¥あはうでん/とて、¥しくわう/の¥つね/は¥ぎやうがう¥なつ/て、¥せいだう¥おこなは/せ¥たまふ¥てん¥あり。¥とうざい/へ¥くちやう、¥なんぼく/へ¥ごちやう、¥たかさ/は¥さんじふろく−ぢやう/なり。¥うへ/を/ば¥るり/の¥かはら/を¥もつて¥ふき、¥した/に/は¥こんごん/を¥みがけ/り。¥おほ−ゆか/の¥した/に/は、¥ご=ぢやう/の¥はたぼこ/を¥たて/たれ/ども、¥なほ¥およば/ぬ/ほど/なり。¥けいか/は¥えん/の¥さしづ/を¥もち、¥しんぶやう/は¥はんよき/が¥かうべ/を¥もつ/て、¥たま/の¥きざはし/を¥なから/ばかり¥のぼり−あがり/ける/が、¥あまり/に¥だいり/の¥おびたたしき/を¥み/て、¥しんぶやう¥わなわな/と¥ふるひ/けれ/ば、¥しんか¥これ/を¥あやしん/で、「¥けいじん/を/ば¥きみ/の¥かたはら/に¥おか/ず。¥くんし/は¥けいじん/に¥ちかづか/ず。P315¥ちかづけ/ば¥すなはち¥し/を¥かろんずる¥みち/なり」/と¥いへ/り。¥けいか¥たち−かへつ/て、「¥ぶやう¥まつたく¥むほん/の¥こころ¥なし。¥ただ¥でんじや/の¥いやしき/に/のみ¥ならつ/て、¥かかる¥くわうきよ/に¥なれ/ざる/が¥ゆゑ/に、¥こころ¥めいわく−す」/と¥いひ/けれ/ば、¥その−とき¥しんか¥みな¥しづまり/ぬ。¥よつて¥わう/に¥ちかづき¥たてまつり、¥えん/の¥さしづ¥ならびに¥はんよき/が¥かうべ/を¥げんざん/に¥いるる¥ところ/に、¥さしづ/の¥いつ/たる¥ひつ/の¥そこ/に、¥こほり/の¥やう/なる¥つるぎ/の¥あり/ける/を、¥しくわうてい¥ごらんじ/て、¥やがて¥にげ/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥けいか¥おん=そで/を¥むず/と¥ひかへ¥たてまつり、¥つるぎ/を¥むね/に¥さし−あて/たり。¥いま/は¥かう/と/ぞ¥みえ/たり/ける。¥すまん/の¥ぐんりよ/は、¥ていじやう/に¥そで/を¥つらぬ/と¥いへ/ども、¥すくは/ん/と¥する/に¥ちから¥なし。¥ただ¥この¥きみ¥ぎやくしん/に¥をかさ/れ/させ¥たまは/ん¥こと/を/のみ、¥なげき−かなしみ−あへ/り/けり。¥しくわうてい、「¥われ/に¥ざんじ/の¥いとま/を¥え/させよ。¥きさき/の¥こと/の¥ね/を、¥いま−いちど¥きか/ん」/と¥のたまへ/ば、¥けいか¥しばし/は¥をかし/も¥たてまつら/ず。¥しくわうてい/は¥さんぜんにん/の¥きさき/を¥もち¥たまへ/り。¥その¥なか/に¥くわやう−ぶにん/とて、¥ならび−なき¥こと/の¥じやうず¥おはし/き。¥およそ¥この¥きさき/の¥こと/の¥ね/を¥きけ/ば、¥たけき¥もののふ/の¥いかれ/る¥こころ/も¥やはらぎ、¥とぶ¥とり/も¥ち/に¥おち、¥くさき/も¥ゆるぐ/ばかり/なり。¥いはんや¥いま/を¥かぎり/の¥えいぶん/に¥そなへ/ん/と、¥なくなく¥ひき¥たまへ/ば、¥さ/こそ/は¥おもしろかり/けめ。¥けいか¥かうべ/を¥うなだれ、¥みみ/を¥そばだて/て、¥ほとんど¥ぼうしん/の¥こころ/も¥たゆみ/に/けり。¥その−とき¥きさき¥はじめて¥さらに¥いつきよく/を¥そうす。「¥しちせき/の¥へいふう/は¥たかく/とも、¥をどら/ば¥など/か¥こえ/ざら/ん。¥いちでう/の¥らこく/は¥つよく/とも、¥ひか/ば¥など/か¥たえ/ざら/ん」/と/ぞ¥ひき¥たまふ。P316¥けいか/は¥これ/を¥きき−しら/ず。¥しくわうてい/は¥きき−しり/て、¥おん=そで/を¥ひつ−きつ/て、¥しちしやく/の¥びやうぶ/を¥をどり−こえ、¥あかがね/の¥はしら/の¥かげ/へ¥にげ−かくれ/させ¥たまひ/けり。¥その−とき¥けいか¥いかつ/て、¥つるぎ/を¥なげ−かけ¥たてまつる。¥をりふし¥ごぜん/に¥ばん/の¥いし/の¥さふらひ/ける/が、¥つるぎ/に¥くすり/の¥ふくろ/を¥なげ−あはせ/たり。¥つるぎ¥くすり/の¥ふくろ/を¥かけ/られ/ながら、¥くち¥ろくしやく/の¥あかがね/の¥はしら/を、¥なから/まで/こそ¥きつ/たり/けれ。¥けいか¥また¥つるぎ/も¥もた/ざれ/ば、¥つづい/て/も¥なげ/ず。¥わう¥たち−かへつ/て、¥おん=つるぎ/を¥めし−よせ/て、¥けいか/を¥やつざき/に/こそ¥し¥たまひ/けれ。¥しんぶやう/も¥うた/れ/ぬ。¥やがて¥くわんぐん/を¥つかはし/て、¥えん−たん/を/も¥ほろぼさ/る。¥さうてん¥ゆるし¥たまは/ね/ば、¥はくこう¥ひ/を¥つらぬい/て¥とほら/ず。¥しん/の¥しくわう/は¥のがれ/て、¥えん−たん¥つひに¥ほろび/に/けり。¥され/ば¥いま/の¥よりとも/も、¥さ/こそ/は¥あら/んず/らめ/と、¥しきだい¥まうす¥ひとびと/も¥あり/ける/とかや。¥
「もんがくのあらぎやう」(『もんがくのあらぎやう』)S0507¥しかる/に¥かの¥よりとも/は、¥さんぬる¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥ちち¥さま/の−かみ−よしとも/が¥むほん/に¥よつ/て、¥すでに¥ちうせ/らる/べかり/し/を、¥こ=いけの−ぜんに/の¥あながち/に¥なげき−のたまふ/に¥よつ/て、¥しやうねん¥じふしさい/と¥まうし/し¥えいりやく−ぐわんねん−さんぐわつ−はつかのひ、¥いづ/の¥ほうでう¥ひるがこじま/へ¥ながさ/れ/て、¥にじふ−よ−ねん/の¥しゆんしう/を¥おくり−むかふ。¥ねんらい/も¥あれ/ば/こそ¥あり/けめ、¥ことし¥いか/なる¥こころ/にて、P317¥むほん/を/ば¥おこさ/れ/ける/ぞ/と¥いふ/に、¥たかを/の¥もんがく−しやうにん/の¥すすめ¥まうさ/れ/ける/に¥よつ/て/なり。¥そもそも¥この¥もんがく/と¥まうす/は、¥わたなべの−ゑんどう−さこん/の−しやうげん−もちとほ/が¥こ/に、¥ゑんどう−むしや−もりとほ/とて、¥じやうせいもんゐん/の¥しゆ/なり。¥しかる/を¥じふく/の¥とし、¥だうしん¥おこし、¥もとどり¥きり、¥しゆぎやう/に¥いで/ん/と¥し/ける/が、¥しゆぎやう/と¥いふ/は、¥いか/ほど/の¥だいじ/やらん、¥ためい/て¥み/ん/とて、¥ろくぐわつのひ/の¥くさ/も¥ゆるが/ず¥てつ/たる/に、¥ある¥かた−やまざと/の¥やぶ/の¥なか/へ¥はひり、¥はだか/に¥なり、¥あふのけ/に¥ふす。¥あぶ/ぞ、¥か/ぞ¥はち¥あり/など¥いふ¥どくちう=ども/が、¥み/に¥ひし/と¥とり−つい/て、¥さし−くひ/など¥し/けれ/ども、¥ちつと/も¥み/を/も¥はたらか/さ/ず。¥なぬか/まで/は¥おき/も¥あがら/ず、¥やうか/と¥いふ/に¥おき−あがり/て、「¥しゆぎやう/と¥いふ/は、¥これ−ほど/の¥だいじ/やらん」/と¥ひと/に¥とへ/ば、「¥それ−ほど/なら/ん/に/は、¥いかで/か¥いのち/も¥いく/べき」/と¥いふ¥あひだ、「¥さて/は¥あんぺい¥ござんなれ」/とて、¥やがて¥しゆぎやう/に/こそ¥いで/に/けれ。¥くまの/へ¥まゐり、¥なち−ごもり−せ/ん¥と¥し/ける/が、¥まづ¥ぎやう/の¥こころみ/に、¥きこゆる¥たき/に¥しばらく¥うた/れ/て¥み/ん/とて、¥たきもと/へ/こそ¥まゐり/けれ。¥ころ/は¥じふにんぐわつ−とをか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥ゆき¥ふり−つもり、¥つらら¥い/て、¥たに/の¥をがは/も¥おと/も¥せ/ず。¥みね/の¥あらし¥ふき−こほり、¥たき/の¥しらいと¥たるひ/と¥なつ/て、¥みな¥しろたへ/に¥おし−なべ/て、¥よも/の¥こずゑ/も¥みえ−わか/ず。¥しかる/に¥もんがく¥たきつぼ/に¥おり−ひたり、¥くび−きは¥つかつ/て、¥じく/の−しゆ/を¥み/て/ける/が、¥にさんにち/こそ¥あり/けれ、¥しごにち/に/も¥なり/しか/ば、¥もんがく¥こらへ/ず/して¥うき−あがり/ぬ。¥すせんぢやう¥みなぎり−おつるP318¥たき/なれ/ば、¥なじか/は¥たまる/べき、¥ざつと¥おし−おとさ/れ、¥かたな/の¥は/の/ごとく/に、¥さ/しも¥きびしき¥いはかど/の¥なか/を、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ、¥ごろくちやう/こそ¥ながれ/けれ。¥とき/に¥うつくしき¥どうじ¥いち−にん¥きたつ/て、¥もんがく/が¥て/を¥とつ/て¥ひき−あげ¥たまふ。¥ひと¥きどく/の¥おもひ/を¥なし/て、¥ひ/を¥たき¥あぶり/など¥し/けれ/ば、¥ぢやうごふ/なら/ぬ¥いのち/で/は¥あり、¥もんがく¥ほど−なく¥いき−いで/ぬ。¥だい/の¥まなこ/を¥み−いからかし、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥われ¥この¥たき/に¥さんしち−にち¥うた/れ/て、¥じく/の¥さんらくしや/を¥み/て/う/と¥おもふ¥だい=ぐわん¥あり。¥けふ/は¥わづか¥ごにち/に/こそ¥なれ。¥いまだ¥なぬか/だに/も¥すぎ/ざる/に、¥なにもの/が¥これ/まで/は¥とつ/て¥きたれ/る/ぞ」/と¥いひ/けれ/ば、¥きく¥ひと¥み/の−け¥よだつ/て¥もの¥いは/ず。¥また¥たきつぼ/に¥かへり−たつ/て/ぞ¥うた/れ/ける。¥だいににち/と¥まうす/に、¥はちにん/の¥どうじ¥きたつ/て、¥もんがく/が¥さう/の¥て/を¥とつ/て、¥ひき−あげ/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥さんざん/に¥つかみ−あう/て¥あがら/ず。¥だいさんにち/と¥まうす/に、¥つひに¥はかなく¥なり/ぬ。¥とき/に¥たきつぼ/を¥けがさ/じ/と/や¥びんづら¥ゆう/たる¥てんどう¥ににん、¥たき/の¥うへ/より¥おり−くだら/せ¥たまひ/て、¥よ/に¥あたたか/に¥かうばしき¥おん=て/を¥もつて、¥もんがく/が¥ちやうじやう/より¥はじめ/て、¥てあし/の¥つまさき、¥たなうら/に¥いたる/まで、¥なで−くださ/せ¥たまへ/ば、¥もんがく¥ゆめ/の¥ここち−し/て¥いき−いで/ぬ。「¥そもそも¥いか/なる¥ひと/にて¥ましませ/ば、¥かく/は¥あはれみ¥たまふ/やらん」/と¥とひ¥たてまつれ/ば、¥どうじ¥こたへ/て¥いはく、「¥われ/は¥これ¥だいしやう−ふどう−みやうわう/の¥お=つかひ/に、¥こんがら、¥せいたか/と¥いふ¥にどうじ/なり。¥もんがく¥むじやう/の¥ぐわん/を¥おこし、¥ゆうみやう/の−ぎやう/を¥くはだつ。¥ゆい/て¥ちから/を¥あはせよ/と、¥みやうわう/の¥ちよく/に¥よつ/て¥きたれ/る/なり」/と/ぞ¥こたへ¥たまふ。¥もんがく¥こゑ/を¥いからかい/て、「¥さて¥みやうわう/はP319¥いづく/に¥まします/ぞ」。「¥とそつてん/に」/と¥こたへ/て、¥くもゐ¥はるか/に¥あがり¥たまひ/ぬ。¥もんがく¥たなごころ/を¥あはせ/て、¥さて/は¥わが¥ぎやう/を/ば、¥だいしやう−ふどう−みやうわう/まで/も、¥しろしめさ/れ/たる/に/こそ/と、¥いよいよ¥たのもしう¥おもひ、¥なほ¥たきつぼ/に¥かへり−たつ/て/ぞ¥うた/れ/ける。¥その−のち/は¥まことに¥めでたき¥ずゐさう=ども¥おほかり/けれ/ば、¥ふき−くる¥かぜ/も¥み/に¥しま/ず、¥おち−くる¥みづ/も¥ゆ/の/ごとし。¥かく/て¥さんしち−にち/の¥だい=ぐわん¥つひに¥とげ/しか/ば、¥なち/に¥せんにち¥こもり/けり。¥おほみね¥さんど、¥かつらぎ¥にど、¥かうや、¥こがは、¥きんぶうせん、¥はくさん、¥たてやま、¥ふじのだけ、¥いづ、¥はこね、¥しなの/の¥とがくし、¥では/の¥はぐろ、¥そうじて¥につぽんごく¥のこる¥ところ¥なう¥おこなひ−まはり、¥さすが¥なほ¥ふるさと/や¥こひしかり/けん、¥みやこ/へ¥かへり−のぼつ/たり/けれ/ば、¥およそ¥とぶ¥とり/を/も¥いのり−おとす/ほど/の、¥やいば/の−げんじや/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「くわんじんちやう」(『くわんじんちやう』)S0508¥その−のち¥もんがく/は、¥たかを/と¥いふ¥やま/の¥おく/に、¥おこなひ−すまし/て/ぞ、¥ゐ/たり/ける。¥かの¥たかを/に¥じんごじ/と¥いふ¥やまでら/あり。¥これ/は¥むかし¥しようとく−てんわう/の¥おん=とき、¥わけの−きよまろ/が¥たて/たり/し¥がらん/なり。¥ひさしく¥しうざう¥なかり/しか/ば、¥はる/は¥かすみ/に¥たち−こめ/て、¥あき/は¥きり/に¥まじはり、¥とびら/は¥かぜ/に¥たふれ/て、¥らくえふ/の¥した/に¥くち、¥いらか/は¥うろ/に¥をかさ/れ/て、¥ぶつだん¥さらに¥あらは/なり。P320¥ぢうぢ/の¥そう/も¥なけれ/ば、¥まれ/に¥さし−いる¥もの/とて/は、¥ただ¥つきひ/の¥ひかり/ばかり/なり。¥もんがく¥いか/に/も−し/て、¥この¥てら/を¥しうざう−せ/ん/と¥おもふ¥だい=ぐわん¥おこし、¥くわんじんちやう/を¥ささげ/て、¥じつぱう¥だんな/を¥すすめ−ありく/ほど/に、¥ある−とき¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/へ/ぞ¥さんじ/たる。¥ご=ほうが¥ある/べき¥よし/を¥そうもん−す。¥ぎよ=いう/の¥をりふし/にて、¥きこしめし/も¥いれ/ざり/けれ/ば、¥もんがく/は¥もと/より¥ふてき¥だいいち/の¥あらひじり/で/は¥あり、¥ごぜん/の¥こと−なき¥やう/を/ば¥しら/ず/して、¥ただ¥ひと/の¥まうし−いれ/ぬ/ぞ/と¥こころ−え/て、¥ぜひ−なく¥お=つぼ/の−うち/へ¥やぶり−いり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥だいじ−だいひ/の−きみ/にて¥まします。¥これ−ほど/の¥こと¥など/か¥きこしめし−いれ/ざる/べき」/とて、¥くわんじんちやう/を¥ひき−ひろげ/て、¥たからか/に/こそ¥よう/だり/けれ。「¥
しやみ¥もんがく¥うやまつ/て¥まうす。¥こと/に/は¥きせん¥だうぞく/の¥じよじやう/を¥かうぶつ/て、¥たかをさん/の¥れいち/に¥いちゐん/を¥こんりふ−し、¥にせ¥あんらく/の¥だいり/を¥ごんぎやう−せ/ん/と¥こふ¥くわんじん/の−じやう。¥それ¥おもんみれ/ば、¥しんによ¥くわうだい/なり。¥しやうぶつ/の¥けみやう/を¥たつ/と¥いへ/ども、¥ほつしやう¥ずゐまう/の¥くも¥あつく¥おほつ/て、¥じふに−いんえん/の¥みね/に¥たなびき/し/より¥この−かた、¥ほんう−しんれん/の¥つき/の¥ひかり¥かすか/に/して、¥いまだ¥さんどく−しまん/の¥たいきよ/に¥あらはれ/ず。¥かなしき/かな、¥ぶつにち¥はやく¥ぼつし/て、¥しやうじ−るてん/の¥ちまた¥みやうみやう/たり。¥ただ¥いろ/に¥ふけり、¥さけ/に¥ふける。¥たれ/か¥きやうざう−てうゑん/の¥まどひ/を¥しやせ/ん。¥いたづら/に¥ひと/を¥ばうじ¥ほふ/を¥ばうず。¥これ¥あに¥えんら−ごくそつ/の¥せめ/を¥まぬかれ/ん/や。¥ここ/に¥もんがく、¥たまたま¥ぞくぢん/を¥うち−はらつ/て、¥ほふえ/を¥かざる/と¥いへ/ども、¥あくぎやう¥なほ¥こころ/に¥たくましう/して、¥にちや/に¥つくり、¥ぜんべう¥また¥みみ/に¥さかつ/て¥てうぼ/に¥すたる。¥いたましき/かな、¥ふたたび¥さんづ/の−くわきやう/に¥かへつ/て、¥ながく¥ししやう/の¥くりん/を¥めぐら/んP321¥こと/を。¥この¥ゆゑ/に¥むに/の¥けんしやう¥せんまん−じく、¥ぢくぢく/に¥ぶつしゆ/の¥いん/を¥あかし、¥ずゐえん−しじやう/の−ほふ、¥ひとつ/と/して¥ぼだい/の¥ひがん/に¥いたら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥かるがゆゑ/に¥もんがく、¥むじやう/の¥くわんもん/に¥なみだ/を¥おとし、¥じやうげ/の¥しんぞく/を¥すすめ/て、¥じやうぼん−れんだい/に¥えん/を¥むすび、¥とうめうがくわう/の¥れいぢやう/を¥たて/ん/と/なり。¥それ¥たかを/は¥やま¥うづたかう/して¥じゆぶぜん/の¥こずゑ/を¥へうし、¥たに¥しづか/に/して¥しやうざんとう/の¥こけ/を¥しけ/り。¥がんせん¥むせん/で¥ぬの/を¥ひき、¥れいゑん¥さけん/で¥えだ/に¥あそぶ。¥にんり¥とほう/して¥けんぢん¥なし。¥しせき¥こと−なう/して¥しんじん/のみ¥あり。¥ちけい¥すぐれ/たり。¥もつとも¥ぶつてん/を¥あがむ/べし。¥ほうが¥すこしき/なり。¥たれ/か¥じよじやう−せ/ざら/ん。¥ほのか/に¥きく¥じゆしやゐ−ぶつたふ、−くどく¥たちまち/に¥ぶついん/を¥かんず。¥いはんや¥いつし−はんせん/の¥ほうざい/に¥おい/て/を/や。¥ねがは−く/は¥こんりふ¥じやうじゆ/して、¥きんけつ−ほうれき、−ご=ぐわん−ゑんまん、¥ないし¥とひ−ゑんきん、−りみん−しそ、¥げう−しゆん¥ぶゐ/の−くわ/を¥うたひ、¥ちんえふ¥さいかい/の¥ゑみ/を¥ひらか/ん。¥こと/に/は¥また¥しやうりやう−いうぎ、−ぜんご−だいせう、¥すみやか/に¥いちぶつ−しんもん/の−うてな/に¥いたり、¥かならず¥さんじん−まんどく/の¥つき/を¥もてあそば/ん。¥よつて¥くわんじん−しゆぎやう/の¥おもむき、¥けだし¥もつて¥かく/の/ごとし。¥ぢしよう−さんねん−さんぐわつ/の−ひ¥もんがく」/と/こそ¥よみ−あげ/たれ。¥
「もんがくながされ」(『もんがくながされ』)S0509¥をりふし¥ごぜん/に/は、¥めうおんゐん/の−だいじやう/の−おほい=どの、¥おん=びは¥あそばし、¥らうえい¥めでたう¥せ/させP322¥おはします。¥あぜち/の−だいなごん−すけかたの−きやう、¥わごん¥かき−ならし、¥しそく¥うま/の−かみ−すけとき、¥ふうぞく−さいばら¥うたは/る。¥しゐ/の−じじう−もりさだ¥ひやうし¥とつ/て、¥いまやう¥とりどり¥うたは/れ/けり。¥ゐん−ぢう¥ざざめき−わたつ/て、¥まことに¥おもしろかり/けれ/ば、¥ほふわう/も¥つけうた−せ/させ¥おはします。¥それ/に¥もんがく/が¥だい−おんじやう¥いで−き/て、¥てうし/も¥たがひ、¥ひやうし/も¥みな¥みだれ/に/けり。「¥ぎよ=いう/の¥をりふし/で¥ある/に、¥なにもの/ぞ。¥らうぜき/なり。¥そ−くび¥つけ」/と¥おほせ−くださ/るる/ほど/こそ¥あり/けれ、¥ゐん−ぢう/の¥はやりを/の¥もの=ども、¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と¥すすみ−いで/ける¥なか/に、¥すけゆき−はうぐわん/と¥いふ¥もの¥すすみ−いで/て、「¥ぎよ=いう/の¥をりふし/で¥ある/に、¥なにもの/ぞ。¥らうぜき/なり。¥とうとう¥まかり−いでよ」/と¥いひ/けれ/ば、¥もんがく、「¥たかを/の¥じんごじ/へ、¥しやう/を¥いつしよ¥よせ/られ/ざら/ん¥かぎり/は、¥まつたく¥いづ/まじ」/とて¥はたらか/ず。¥よつて¥そ−くび/を¥つか/う/と¥すれ/ば、¥くわんじんちやう/を¥とり−なほし、¥すけゆき−はうぐわん/が¥ゑぼし/を、¥はた/と¥うつ/て¥うち−おとし、¥こぶし/を¥つよく¥にぎり、¥むね/を¥ばく/と¥つい/て、¥うしろ/へ¥のけ/に¥つき−たふす。¥すけゆき−はうぐわん/は¥ゑぼし¥うち−おとさ/れ/て、¥おめおめ/と¥おほ−ゆか/の¥うへ/へ/ぞ¥にげ−のぼる。¥その−のち¥もんがく¥ふところ/より¥むま/の¥を/で¥つか¥まい/たり/ける¥かたな/の、¥こほり/の¥やう/なる/を¥ぬき−もつ/て、¥より−こ/ん¥もの/を¥つか/う/と/こそ¥まち−かけ/たれ。¥ひだり/の¥て/に/は¥くわんじんちやう、¥みぎ/の¥て/に/は¥かたな/を¥もつ/て¥はせ−まはる¥あひだ、¥おもひ/も¥まうけ/ぬ¥にはかごと/で/は¥あり、¥さう/の¥て/に¥かたな/を¥もつ/たる¥やう/に/ぞ¥みえ/たり/ける。¥くぎやう/も¥てんじやうびと/も、¥こ/は¥いか/に/と¥さわが/れ/て、¥ぎよ=いう/も¥すで/に¥あれ/に/けり。¥ゐん−ぢう/の¥さうどう¥なのめ/なら/ず。¥
ここ/に¥しなのの−くに/の¥ぢうにん、¥あんどう−むしや−みぎむね、¥その−とき/の¥たうしよく/の¥むしやどころ/にて¥あり/ける/が、「P323¥なにごと/ぞ」/とて¥たち/を¥ぬい/て¥はしり−いで/たり。¥もんがく¥よろこん/で¥とん/で¥かかる。¥あんどう−むしや、¥きつ/て/は¥あしかり/な/ん/と/や¥おもひ/けん、¥たち/の¥むね/を¥とり−なほし、¥もんがく/が¥かたな¥もつ/たる¥みぎ/の¥かひな/を¥したたか/に¥うつ。¥うた/れ/て¥ちつと¥ひるむ¥ところ/に、「¥え/たり/や、¥をう」/と、¥たち/を¥すて/て/ぞ¥くん/だり/ける。¥もんがく¥した/に¥ふし/ながら、¥あんどう−むしや/が¥みぎ/の¥かひな/を¥したたか/に¥つく。¥つか/れ/ながら/ぞ¥しめ/たり/ける。¥たがひ/に¥おとら/ぬ¥だい−ぢから、¥うへ/に¥なり¥した/に¥なり、¥ころび−あひ/ける¥ところ/を、¥じやうげ¥よつ/て、¥かしこがほ/に、¥もんがく/が¥はたらく¥ところ/の¥ぢやう/を¥がうし/てげり。¥その−のち¥もんぐわい/へ¥ひき−いだい/て、¥ちやう/の¥しもべ/に¥たぶ。¥たまはつ/て¥ひつぱる。¥ひつぱら/れ/て¥たち/ながら、¥ごしよ/の¥かた/を¥にらまへ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥たとひ¥ほうが/を/こそ¥し¥たまは/ざら/め、¥あまつさへ¥もんがく/に¥これ−ほど/まで、¥からき¥め/を¥みせ¥たまひ/つれ/ば、¥ただいま¥おもひ−しらせ¥まうさ/んずる/ものを。¥さんがい/は¥みな¥くわたく/なり、¥わうぐう/と¥いふ/とも、¥いかで/か¥その¥なん/を/ば¥のがる/べき。¥たとひ¥じふぜん/の−ていゐ/に¥ほこつ/たう/と¥いふ/とも、¥くわうせん/の¥たび/に¥いで/な/ん¥のち/は、¥ごづ¥めづ/の¥せめ/を/ば、¥まぬかれ¥たまは/じ/ものを」/と、¥をどり−あがり−をどり−あがり/ぞ¥まうし/ける。「¥この¥ほふし¥きくわい/なり。¥きんごく−せよ」/とて¥きんごく−せ/らる。¥すけゆき−はうぐわん/は¥ゑぼし¥うち−おとさ/れ/たる¥はぢがまし−さ/に¥しばし/は¥しゆつし/も¥せ/ざり/けり。¥あんどう−むしや/は¥もんがく¥くん/だる¥けんじやう/に、¥いちらふ/を¥へ/ず/して、¥たうざ/に¥うま/の−じよう/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥その−ころ¥びふくもんゐん¥かくれ/させ¥たまひ/て、¥たいしや¥あり/しか/ば、¥もんがく¥ほど−なく¥ゆるさ/れ/けり。P324¥しばらく/は¥いづく/にて/も¥おこなふ/べかり/し/を、¥また¥くわんじんちやう/を¥ささげ/て、¥じつぱう¥だんな/を¥すすめ¥ありき/ける/が、¥さら/ば¥ただ/も¥なく/して、「¥あはれ¥この¥よ/の−なか/は、¥ただいま¥みだれ/て、¥きみ/も¥しん/も¥とも/に¥ほろび−うせ/んずる/ものを」/など、¥かやう/に¥おそろしき¥こと/を/のみ¥まうし−ありく¥あひだ、「¥この¥ほふし¥みやこ/に¥おい/て/は¥かなふ/まじ。¥をんる−せよ」/とて、¥いづの−くに/へ/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥
げん−ざんみ−にふだう/の¥ちやくし¥いづの−かみ−なかつな、¥その−とき/の¥たうしよく/にて¥ある¥あひだ、¥その¥さた/と¥し/て、¥とうかいだう/より¥ふね/にて¥くださ/る/べし/とて、¥いづの−くに/へ¥ゐ/て¥まかる/に、¥はうべん¥りやうさん−にん/を/ぞ¥つけ/られ/たる。¥これ=ら/が¥まうし/ける/は、「¥ちやう/の¥しもべ/の¥ならひ、¥かやう/の¥こと/に¥つい/て/こそ、¥おのづから/の¥えこ/も¥さふらへ。¥いか/に¥ひじり/の−おん=ばう/は、¥しりうど/は¥もち¥たまは/ぬ/か。¥をんごく/へ¥ながさ/れ¥たまふ/に、¥とさん−らうれう/ごとき/の¥もの/を/も¥こひ¥たまへ/かし」/と¥いひ/けれ/ば、「¥もんがく/は、¥さやう/の¥えうじ¥いふ/べき¥とくい/は¥なし。¥さり/ながら¥ひがしやま/の¥へん/に/こそ¥とくい/は¥あれ。¥いで¥さら/ば¥ふみ/を¥やら/う」/と¥いひ/けれ/ば、¥けしかる¥かみ/を¥え/させ/たり。¥もんがく¥おほき/に¥いかつ/て、「¥かやう/の¥かみ/に¥もの¥かく¥やう¥なし」/とて¥なげ−かへす。¥さら/ば/とて、¥こうし/を¥たづね/て¥え/させ/たり。¥もんがく¥わらつ/て、「¥この¥ほふし/は¥もの/を¥え¥かか/ぬ/ぞ。¥おのれ=ら¥かけ」/とて¥かか/する¥やう、「¥もんがく/こそ¥たかを/の¥じんごじ¥ざうりふ−くやう/の¥ため/に、¥くわんじんちやう/を¥ささげ/て、¥じつぱう¥だんな/を¥すすめ−ありき/ける/が、¥かかる¥きみ/の¥よ/に/しも¥あう/て、¥ほうが/を/こそ¥し¥たまは/ざら/め、¥あまつさへ¥をんる−せ/られ/て、¥いづの−くに/へ¥まかりP325¥さふらふ。¥ゑんろ/の¥あひだ/で¥さふらへ/ば、¥とさん−らうれう/ごとき/の¥もの/も¥たいせつ/に¥さふらふ。¥この¥つかひ/に¥たべ」/と¥いふ。¥いふ¥まま/に¥かい/て、「¥さて¥たれ=どの/へ/と¥かき¥さふらふ/べき/やらん」。「¥きよみづ/の−くわんおん−ばう/へ/と¥かけ」/と¥いふ。「¥それ/は¥ちやう/の¥しもべ/を¥あざむく/に/こそ」/と¥いひ/けれ/ば、「¥いつかう¥あざむく/に/は¥あら/ず。¥さり/とて/は、¥もんがく/は、¥きよみづ/の−くわんおん/を/こそ、¥ふかう¥たのみ¥たてまつ/たれ。¥さら/で/は¥たれ/に/かは¥ようじ/を/も¥いふ/べき」/と/ぞ¥まうし/ける。¥さる−ほど/に¥いせの−くに¥あの/の−つ/より¥ふね/にて¥くだり/ける/が、¥とほたふみの−くに¥てんりうなだ/にて、¥にはか/に¥おほ−かぜ¥ふき¥おほ−なみ¥たつ/て、¥すでに¥この¥ふね/を¥うち−かへさ/ん/と¥す。¥すゐしゆ−かんどり=ども、¥いか/に/も−し/て¥たすから/ん/と¥し/けれ/ども、¥かなふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けれ/ば、¥あるひは¥くわんおん/の¥みやうがう/を¥となへ、¥あるひは¥さいご/の¥じふねん/に¥およぶ。¥され/ども¥もんがく/は¥ちつと/も¥さわが/ず、¥ふなそこ/に¥たかいびき¥かい/て/ぞ¥ふし/たり/ける。¥すで/に¥かう/と¥みえ/し¥とき、¥かつぱ/と¥おき−あがり、¥ふなばた/に¥たつ/て、¥おき/の¥かた/を¥にらまへ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥りうわう/や¥ある¥りうわう/や¥ある」/と/ぞ¥よう/だり/ける。「¥なに/とて¥かやう/に¥だい=ぐわん¥おこし/たる¥ひじり/が¥のつ/たる¥ふね/を/ば、¥あやまた/う/と/は¥する/ぞ。¥ただいま¥てん/の¥せめ¥かうぶら/んずる¥りうじん=ども/かな」/と/ぞ¥いひ/ける。¥その¥ゆゑ/に/や、¥なみかぜ¥ほど−なく¥しづまり/て、¥いづの−くに/に/ぞ¥つき/に/ける。¥もんがく¥きやう/を¥いで/ける¥ひ/より/して、¥こころ/の¥うち/に¥きせい−する¥こと¥あり/けり。¥われ¥みやこ/に¥かへつ/て、¥たかを/の¥じんごじ¥ざうりふ−くやう−す/べくん/ば、¥しぬ/べから/ず。¥この¥ぐわん¥むなしかる/べくん/ば、¥みち/にて¥しぬ/べし/とて、¥きやう/より¥いづ/へ¥つき/ける/まで、¥をりふし¥じゆんぷう¥なかり/けれ/ば、¥うら−づたひ¥しま−づたひ−し/て、¥さんじふいちにち/が¥あひだ/は、P326¥いつかう¥だんじき/にて/ぞ¥あり/ける。¥され/ども¥きりよく¥すこし/も¥おとろへ/ず、¥ふなぞこ/に¥おこなひ¥うち−し/て/ぞ¥ゐ/たり/ける。¥まことに¥ただびと/と/も¥おぼえ/ぬ¥こと=ども¥おほかり/けり。¥
「いづゐんぜん」(『ふくはらゐんぜん』)S0510¥その−のち¥もんがく/を/ば、¥たう−ごく/の¥ぢうにん¥こんどう−しらう−くにたか/に¥おほせ/て、¥なごや/が¥おく/に/ぞ¥すまは/せ/ける。¥さる−ほど/に¥ひやうゑ/の−すけ=どの¥おはし/ける¥ひるがこじま/も¥ほど−ちかし。¥もんがく¥つね/は¥まゐり、¥おん=ものがたり=ども¥まうし/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥ある−とき¥もんがく、¥ひやうゑ/の−すけ=どの/に¥まうし/ける/は、「¥へいけ/に/は¥こまつの−おほい=どの/こそ、¥こころ/も¥かう/に、¥はかりごと/も¥すぐれ/て¥おはせ/しか。¥へいけ/の¥うんめい/の¥すゑ/に¥なる/やらん、¥こぞ/の¥はちぐわつ¥こうぜ/られ/ぬ。¥いま/は¥げんぺい/の¥なか/に、¥ご=へん/ほど¥てんが/の¥しやうぐん/の¥さう¥もつ/たる¥ひと/は¥なし。¥はやはや¥むほん¥おこさ/せ¥たまひ/て、¥につぽんこく¥したがへ¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥ひやうゑ/の−すけ=どの、「¥それ¥おもひ/も¥よら/ず。¥われ/は¥こ=いけの−ぜんに/に¥たすけ/られ¥たてまつ/たれ/ば、¥その¥おん/を¥はうぜ/ん/が¥ため/に、¥まいにち¥ほけきやう¥いちぶ¥てんどく−し¥たてまつる/より¥ほか/は、¥また¥たじ¥なし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥もんがく¥かさね/て、「¥てん/の¥あたふる/を¥とら/ざれ/ば、¥かへつて¥その¥とが/を¥うく。¥とき¥いたり/たる/を¥おこなは/ざれ/ば、¥かへつて¥その¥あう/を¥うく/と¥いふ¥ほんもん¥あり。¥かやう/に¥まうせ/ば、¥ご=へん/の¥おん=こころ/を¥かなびか/ん/とて、¥まうす/と/や¥おぼしめさ/れP327¥さふらふ/らん。¥その¥ぎ/で/は¥さふらは/ず。¥まづ¥ご=へん/の¥ため/に、¥こころざし/の¥ふかい¥やう/を¥み¥たまへ」/とて、¥ふところ/より¥しろい¥ぬの/にて¥つつん/だる¥どくろ/を¥ひとつ¥とり−いだす。¥ひやうゑ/の−すけ=どの、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、「¥これ/こそ¥ご=へん/の¥ちち、¥こ=さま/の−かう/の=との/の¥かうべ/よ。¥へいぢ/の¥のち/は、¥ごくしや/の¥まへ/の¥こけ/の¥した/に¥うづもれ/て、¥ごせ¥とぶらふ¥ひと/も¥なかり/し/を、¥もんがく¥ぞんずる¥むね¥あり/て、¥ごくもり/に¥こひ、¥くび/に¥かけ、¥やまやま¥てらでら¥しゆぎやう−し/て、¥この¥にじふ−よ−ねん/が¥あひだ¥とぶらひ¥たてまつ/たれ/ば、¥いま/は¥さだめて¥いちごふ/も¥うかび¥たまひ/ぬ/らん。¥され/ば¥こ=かう/の=との/の¥おん=ため/に/は、¥さ/しも¥ほうこう/の¥もの/にて¥さふらふ/ぞ/かし」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ひやうゑ/の−すけ=どの、¥いちぢやう/と/は¥おぼえ/ね/ども、¥ちち/の¥かうべ/と¥きく¥なつかし−さ/に、¥まづ¥なみだ/を/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥やや¥あり/て¥ひやうゑ/の−すけ=どの、¥なみだ/を¥おさへ/て¥のたまひ/ける/は、「¥そもそも¥よりとも¥ちよくかん/を¥ゆり/ず/して/は、¥いかで/か¥むほん/を/ば¥おこす/べき」/と¥のたまへ/ば、¥もんがく、「¥それ¥やすい/ほど/の¥こと/なり。¥やがて¥のぼつ/て¥まうし−ゆるし¥たてまつら/ん」。¥ひやうゑ/の−すけ=どの¥あざ−わらう/て、「¥わが−み/も¥ちよくかん/の¥み/にて¥あり/ながら、¥ひと/の¥こと¥まうさ/う/ど¥のたまふ¥ひじり/の−おん=ばう/の¥あてがひ−やう/こそ、¥おほき/に¥まことしから/ね」/と¥のたまへ/ば、¥もんがく¥おほき/に¥いかつ/て、「¥わが−み/の¥とが/を¥ゆり/う/ど¥まうさ/ば/こそ¥ひがごと/なら/め、¥わ=どの/の¥こと¥まうさ/う/に、¥なじか/は¥ひがごと/なら/ん。¥これ/より¥いま/の¥みやこ¥ふくはら/の¥しんと/へ¥のぼら/う/に、¥みつか/に¥すぐ/まじ。¥ゐんぜん¥うかがふ/に、¥いちにち/の¥とうりう/ぞ¥あら/んず/らん。¥つがふ¥なぬか¥やうか/に/は¥すぐ/まじ」/とて、¥つき−いで/ぬ。¥
ひじり¥なごや/に¥かへり/て、¥でし=ども/に/は、¥ひと/に¥しのう/で、¥いづ/の−お=やま/に¥なぬか¥さんろう/のP328¥こころざし¥あり/とて¥いで/に/けり。¥げに/も¥みつか/と¥いふ/に/は、¥ふくはら/の¥しんと/に¥のぼり−つい/て、¥さきの−うひやうゑ/の−かみ−みつよしの−きやう/の¥もと/に、¥いささか¥ゆかり¥あり/けれ/ば、¥それ/に¥たづね−ゆい/て、「¥いづの−くに/の−るにん、−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥ちよくかん/を¥ゆるさ/れ/て、¥ゐんぜん/を/だに¥かうぶり¥さふらは/ば、¥はつ−か−こく/の¥けにん=ども¥もよほし−あつめ/て、¥へいけ/を¥ほろぼし、¥てんが/を¥しづめ/ん/と/こそ¥まうし¥さふらへ」。¥みつよしの−きやう、「¥いさ/とよ、¥わが−み/も¥たうじ/は¥さんくわん¥とも/に¥とどめ/られ/て、¥こころ−ぐるしき¥をりふし/なり。¥ほふわう/も¥おし−こめ/られ/て¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥いかが¥あら/んず/らん。¥さり/ながら/も¥うかがう/て/こそ¥み/め」/とて、¥この¥よし¥ひそか/に¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥やがて¥ゐんぜん/を/ぞ¥くださ/れ/ける。¥もんがく¥よろこん/で¥くび/に¥かけ、¥また¥みつか/と¥いふ/に/は、¥いづの−くに/へ¥くだり−つく。¥ひやうゑ/の−すけ=どの、¥ひじり/の−おん=ばう/の¥なまじひ/なる¥こと¥まうし−いだし/て、¥よりとも¥また¥いか/なる¥うき−め/に¥あは/んず/らん/と、¥おもは/じ¥こと¥なう、¥あんじ−つづけ/て¥おはし/ける。¥やうか/と¥いふ¥うま/の−こく/に、¥くだり−つい/て、「¥くは¥ゐんぜん/よ」/とて¥たてまつる。¥ひやうゑ/の−すけ=どの、¥ゐんぜん/と¥きく¥かたじけな−さ/に、¥あたらしき¥ゑぼし¥じやうえ/を¥き、¥てうづ−うがひ/を¥し/て、¥ゐんぜん/を¥さんど¥はいし/て¥ひらか/れ/けり。「¥しきり/の−とし/より¥この−かた、¥へいじ¥わうくわ/を¥べつじよ−し/て、¥せいだう/に¥はばかる¥こと¥なし。¥ぶつぽふ/を¥はめつ−し、¥わうぼふ/を¥みだら/ん/と¥す。¥それ¥わが¥くに/は¥しんこく/なり。¥そうべう¥あひ−ならん/で、¥しんとく¥これ¥あらた/なり。¥かるがゆゑに¥てうてい¥かいき/の¥のち、¥すせん−よ−さい/の¥あひだ、¥ていゐ/を¥かたぶけ、¥こくか/を¥あやぶめ/ん/と¥する¥もの、¥みな¥もつて¥はいぼく−せ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥しかれ/ば−すなはち¥かつうは¥しんたう/の¥めいじよ/に¥まかせ、P329¥かつうは¥ちよくせん/の¥しいしゆ/を¥まもつ/て、¥はやく¥へいじ/の¥いちるゐ/を¥ほろぼし/て、¥てうか/の¥をんでき/を¥しりぞけよ。¥ふだい¥さうでん/の¥へいりやく/を¥つぎ、¥るゐそ¥ほうこう/の¥ちうきん/を¥ぬきんで/て、¥み/を¥たて¥いへ/を¥おこす/べし。¥ていれば¥ゐんぜん¥かく/の/ごとく、¥よつて−しつたつ−くだん/の/ごとし。¥ぢしよう−しねん−しちぐわつ−じふしにち、¥さきの−うひやうゑ/の−かみ−みつよし/が¥うけたまはつ/て、¥きんじやう、¥さきの−ひやうゑ/の−すけ=どの/へ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥この¥ゐんぜん/を/ば¥にしき/の¥ふくろ/に¥いれ/て、¥いしばしやま/の−かつせん/の¥とき/も、¥ひやうゑ/の−すけ=どの¥くび/に¥かけ/られ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「ふじがは」(『ふじがは』)S0511¥さる−ほど/に¥うひやうゑ/の−すけ=どの、¥むほん/の¥よし¥しきり/に¥ふうぶん¥あり/しか/ば、¥ふくはら/に/は¥くぎやう−せんぎ¥あつ/て、¥いま¥いちにち/も¥せい/の¥つか/ぬ¥さき/に、¥いそぎ¥うつて/を¥くださ/る/べし/とて、¥たいしやうぐん/に/は¥こまつの−ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり、¥ふくしやうぐん/に/は¥さつまの−かみ−ただのり、¥さぶらひ−だいしやう/に/は¥かづさの−かみ−ただきよ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥さんまん−よ−き、¥くぐわつ−じふはちにち/に¥しんと/を¥たつ/て、¥あくる¥じふくにち/に/は¥きうと/に¥つき、¥やがて¥おなじき−はつかのひ、¥とうごく/へ/こそ¥おもむか/れ/けれ。¥たいしやうぐん−こまつの−ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり/は、¥しやうねん¥にじふさん、¥ようぎ−たいはい、¥ゑ/に¥かく/とも、¥ふで/も¥および−がたし。¥ぢうだい/の¥きせなが、¥からかは/と¥いふ¥よろひ/を/ば、¥からと/に¥いれ/て¥かか/せ/らる。P330¥みちうち/に/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥もよぎ−にほひ/の−よろひ¥き/て、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら/を¥おい/て¥のり¥たまへ/り。¥ふくしやうぐん−さつまの−かみ−ただのり/は、¥こんぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−よろひ¥き/て、¥くろき¥むま/の¥ふとう¥たくましき/に、¥いかけぢ/の−くら/を¥おい/て¥のり¥たまへ/り。¥むま¥くら、¥よろひ−かぶと、¥ゆみ−や、¥たち、¥かたな/に¥いたる/まで、¥てり−かかやく/ほど/に¥いで−たた/れ/たれ/ば、¥めづらしかり/し¥けんぶつ/なり。¥なか/に/も¥ふくしやうぐん−さつまの−かみ−ただのり/は、¥ある¥みやばら/の¥にようばう/の¥もと/へ¥かよは/れ/ける/が、¥ある¥よ¥おはし/たり/ける/に、¥この¥にようばう/の¥つぼね/に、¥やんごとなき¥にようばう¥まらうと¥きたつ/て、¥さ−よ/も¥やうやう¥ふけ−ゆく/まで¥かへり¥たまは/ず。¥ただのり¥のきば/に¥たたずん/で、¥あふぎ/を¥あらく¥つかは/れ/けれ/ば、¥かの¥にようばう、「¥のもせ/に¥すだく¥むし/の¥ね/よ」/と、¥いう/に¥くちずさみ¥たまへ/ば、¥あふぎ/を¥やがて¥つかひ−やみ/て/ぞ¥かへら/れ/ける。¥その−のち¥おはし/たる¥よ、「¥いつ/ぞ/や、¥なに/とて¥あふぎ/を/ば¥つかひ−やみ/し/ぞ/や」/と¥とは/れ/けれ/ば、「¥いさ、¥かしがまし/など¥きこえ¥はんべり/し/ほど/に、¥さて/こそ¥あふぎ/を/ば¥つかひ−やみ/て/は¥さふらひ/しか」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥その−のち、¥この¥にようばう、¥さつまの−かみ/の¥もと/へ、¥こそで/を¥ひとかさね¥つかはす/とて、¥せんり/の¥なごり/の¥をし−さ/に、¥いつしゆ/の¥うた/を¥かき−そへ/て¥おくら/れ/ける。¥
あづまぢ/の¥くさば/を¥わけ/む¥そで/より/も¥たた/ぬ¥たもと/の¥つゆ/ぞ¥こぼるる W035¥
さつまの−かみ/の¥へんじ/に、¥
わかれぢ/を¥なにか¥なげか/む¥こえ/て¥ゆく¥せき/も¥むかし/の¥あと/と¥おもへ/ば W036 P331¥せき/も¥むかし/の¥あと/と¥よめ/る¥こと/は、¥せんぞ¥たひらの−しやうぐん−さだもり、¥たはら−とうだ−ひでさと、¥まさかど¥つゐたう/の¥ため/に、¥あづま/へ¥げかう−し/たり/し¥こと/を、¥いま¥おもひ−いで/て¥よみ/たり/ける/に/や、¥いと¥やさしう/ぞ¥きこえ/し。¥むかし/は¥てうてき/を¥たひらげ/に、¥ぐわいと/へ¥むかふ¥しやうぐん/は、¥まづ¥さんだい−し/て¥せつたう/を¥たまはる。¥しんぎ¥なんでん/に¥しゆつぎよ−し/て、¥こんゑ¥かいか/に¥ぢん/を¥ひき、¥ないべん¥げべん/の¥くぎやう¥さんれつ−し/て、¥ちうぎ/の−せちゑ/を¥おこなは/る。¥たいしやうぐん¥ふくしやうぐん、¥おのおの¥れいぎ/を¥ただしう/して、¥これ/を¥たまはる。¥しようへい¥てんぎやう/の¥じようせき/も、¥とし¥ひさしう¥なつ/て、¥なぞらへ−がたし/とて、¥こんど/は¥さぬきの−かみ−たひらの−まさもり/が、¥さきの−つしまの−かみ−みなもとの−よしちか¥つゐたう/の¥ため/に、¥いづもの−くに/へ¥げかう−せ/し¥れい/とて、¥すず/ばかり¥たまはつ/て、¥かは/の¥ふくろ/に¥いれ/て、¥ざつしき/が¥くび/に¥かけ/させ/て/ぞ¥くだら/れ/ける。¥いにしへ¥てうてき/を¥たひらげ/ん/とて、¥みやこ/を¥いづる¥しやうぐん/は、¥みつ/の¥ぞんぢ¥あり。¥せつたう/を¥たまはる¥ひ¥いへ/を¥わすれ、¥いへ/を¥いづる/とて¥さいし/を¥わすれ、¥せんぢやう/に/して¥かたき/に¥たたかふ¥とき¥み/を¥わする。¥され/ば¥いま/の¥へいじ/の¥たいしやうぐん−これもり¥ただのり/も、¥さだめて¥さやう/の¥こと=ども/を/ば、¥ぞんぢ−せ/られ/たり/けん、¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥
おのおの¥くぢう/の¥みやこ/を¥たつ/て、¥せんり/の¥とうかい/へ¥おもむか/れ/ける。¥たひらか/に¥かへり−のぼら/ん¥こと/も、¥まことに¥あやふき¥ありさま=ども/にて、¥あるひは¥のばら/の¥つゆ/に¥やど/を¥かり、¥あるひは¥たかね/の¥こけ/に¥たびね/を¥し、¥やま/を¥こえ¥かは/を¥かさね、¥ひかず¥ふれ/ば、¥じふぐわつ−じふろくにち/に/は、¥するがの−くに¥きよみ/が−せき/に/ぞ¥つき¥たまふ。¥みやこ/を/ば¥さんまん−よ−き/で¥いで/たれ/ども、¥ろし/の¥つはもの¥つき−そひ/て、¥しちまん−よ−き/と/ぞP332¥きこえ/し。¥せんぢん/は¥かんばら、¥ふじがは/に¥すすみ、¥ごぢん/は¥いまだ¥てごし、¥うつのや/に¥ささへ/たり。¥たいしやうぐん−ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり、¥さぶらひ−だいしやう−かづさの−かみ−ただきよ/を¥めし/て、「¥これもり/が¥ぞんぢ/に/は、¥あしがら/の−やま¥うち−こえ、¥ひろみ/へ¥いで/て¥いくさ/を¥せ/ん」/と¥はやら/れ/けれ/ども、¥かづさの−かみ¥まうし/ける/は、「¥ふくはら/を¥おん=たち¥さふらひ/し¥とき、¥にふだう=どの/の¥おほせ/に/は、¥いくさ/を/ば¥ただきよ/に¥まかせ/させ¥たまへ/と/こそ¥おほせ¥さふらひ/つれ。¥いづ¥するが/の¥せい/の¥まゐる/べき/だに、¥いまだ¥いつき/も¥みえ¥さふらは/ず。¥み=かた/の¥おん=せい¥しちまん−よ−き/と/は¥まうせ/ども、¥くにぐに/の¥かりむしや、¥むま/も¥ひと/も¥みな¥つかれ−はて/て¥さふらふ。¥とうごく/は¥くさ/も¥き/も、¥みな¥ひやうゑ/の−すけ/に¥したがひ−つい/て¥さふらふ/なれ/ば、¥なんじふまんぎ/か¥さふらふ/らん。¥ただ¥ふじがは/を¥まへ/に¥あて/て、¥み=かた/の¥おん=せい/を¥また/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥ちから¥およば/で¥ゆらへ/たり。¥さる−ほど/に¥ひやうゑ/の−すけ−よりとも¥かまくら/を¥たつ/て、¥あしがら/の−やま¥うち−こえ、¥きせがは/に/こそ¥つき¥たまへ。¥かひ¥しなの/の¥げんじ=ども、¥はせ−きたつ/て¥ひとつ/に¥なる。¥するがの−くに¥うきしま/が−はら/にて¥せいぞろへ¥あり。¥つがふ¥その¥せい¥にじふまんぎ/と/ぞ¥しるい/たる。¥ひたち−げんじ¥さたけの−しらう/が¥ざつしき/の、¥ふみ¥もつ/て¥きやう/へ¥のぼり/ける/を、¥へいけ/の−さぶらひ−だいしやう−かづさの−かみ−ただきよ、¥この¥ふみ/を¥うばひ−とつ/て¥みる/に、¥にようばう/の¥もと/へ/の¥ふみ/なり。¥くるしかる/まじ/とて、¥とら/せ/てげり。¥さて、「¥げんじ/が¥せい/は、¥いか/ほど¥ある/ぞ」/と¥とひ/けれ/ば、「¥げらふ/は¥しごひやくせん/まで/こそ、¥もの/の¥かず/を/ば¥しつ/て¥さふらへ。¥それ/より¥うへ/を/ば¥しり¥まゐらせ/ぬ¥ざふらふ。¥おほい/やらう、¥すくない/やらう、¥およそ¥なぬか¥やうか/が¥あひだ/は、¥はたと¥つづい/て、¥の/も¥やま/も¥うみ/も¥かは/も、¥みな¥むしや/でP333¥さふらふ。¥きのふ¥きせがは/にて、¥ひと/の¥まうし¥さふらひ/つる/は、¥げんじ/の¥おん=せい¥にじふまんぎ/と/こそ¥まうし¥さふらひ/つれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥かづさの−かみ、「¥あな¥こころ−う/や。¥たいしやうぐん/の¥おん=こころ/の¥のび/させ¥たまひ/たる/ほど、¥くちをしかり/ける¥こと/は¥なし。¥いま¥いちにち/も¥さき/に¥うつて/を¥くださ/せ¥たまひ/たら/ば、¥おおば−きやうだい、¥はたけやま/が¥いちぞく、¥など/か¥まゐら/で¥さふらふ/べき。¥これ=ら/だに¥まゐり¥さふらは/ば、¥いづ¥するが/の¥せい/は¥みな¥したがひ−つく/べかり/つる/ものを」/と、¥こうくわい−すれ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥たいしやうぐん−ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり、¥とうごく/の¥あんないしや/とて、¥ながゐ/の−さいとう−べつたう−さねもり/を¥めし/て、「¥なんぢ/ほど/の¥つよゆみ−せいびやう、¥はつ−か−こく/に/は¥いか/ほど¥ある/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、¥さいとう−べつたう¥あざ−わらつ/て、「¥さ¥さふらへ/ば、¥きみ/は¥さねもり/を¥おほや/と¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/に/こそ。¥わづか¥じふさんぞく/を/こそ¥つかまつり¥さふらへ。¥さねもり/ほど¥い¥さふらふ¥もの/は、¥はつ−か−こく/に/は¥いくら/も¥さふらふ。¥おほや/と¥まうす¥ぢやう/の¥もの/の、¥じふごそく/に¥おとつ/て¥ひく/は¥さふらは/ず。¥ゆみ/の¥つよさ/も、¥したたか/なる¥もの/の¥ごろくにん/して¥はり¥さふらふ。¥かやう/の¥せいびやう=ども/が¥い¥さふらへ/ば、¥よろひ/の¥にさんりやう/は¥たやすう¥かけ/ず¥い−とほし¥さふらふ。¥だいみやう/と¥まうす¥ぢやう/の¥もの/の、¥ごひやくき/に¥おとつ/て¥もつ/は¥さふらは/ず。¥むま/に¥のつ/て¥おつる¥みち/を¥しら/ず、¥あくしよ/を¥はすれ/ど¥むま/を¥たふさ/ず。¥いくさ/は¥また¥おや/も¥うた/れよ、¥こ/も¥うた/れよ、¥しぬれ/ば¥のり−こえ−のり−こえ¥たたかふ¥ざふらふ。¥さいこく/の¥いくさ/と¥まうす/は、¥すべて¥その¥ぎ¥さふらは/ず。¥おや¥うた/れ/ぬれ/ば¥ひき−しりぞき、¥ぶつじ¥けうやう−し、¥いみ¥あけ/て¥よせ、¥こ¥うた/れ/ぬれ/ば、¥その¥うれへ¥なげき/とて、¥よせ¥さふらは/ず。¥ひやうらうまい¥つき/ぬれ/ば、P334¥はる/は¥た¥つくり、¥あき¥かり−をさめ/て¥よせ、¥なつ/は¥あつし/と¥いとひ、¥ふゆ/は¥さむし/と¥きらひ¥さふらふ。¥とうごく/の¥いくさ/と¥まうす/は、¥すべて¥その/ぎ¥さふらは/ず。¥その−うへ¥かひ¥しなの/の¥げんじ=ら、¥あんない/は¥しつ/たり、¥ふじ/の¥すそ/より、¥からめで/に/や¥まはり¥さふらは/んず/らん。¥かやう/に¥まうせ/ば、¥たいしやうぐん/の¥おん=こころ/を¥おくせ/させ¥まゐらせ/ん/とて、¥まうす/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らん。¥その¥ぎ/で/は¥さふらは/ず。¥ただし¥いくさ/は¥せい/の¥たせう/に/は¥より¥さふらは/ず。¥たいしやうぐん/の¥はかりごと/に¥よる/と/こそ¥まうし−つたへ/て¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥これ/を¥きく¥つはもの=ども、¥みな¥ふるひ−わななき−あへ/り/けり。¥
さる−ほど/に¥おなじき−にじふしにち/の¥う/の−こく/に、¥ふじがは/にて、¥げんぺい/の¥や−あはせ/と/ぞ¥さだめ/ける。¥にじふさんにち/の¥よ/に¥いつ/て、¥へいけ/の¥つはもの=ども、¥げんじ/の¥ぢん/を¥み−わたせ/ば、¥いづ¥するが/の¥にんみん−ひやくしやう=ら/が、¥いくさ/に¥おそれ/て、¥あるひは¥の/に¥いり¥やま/に¥かくれ、¥あるひは¥ふね/に¥とり−のつ/て、¥うみかは/に¥うかび/たる/が、¥いとなみ/の¥ひ/の¥みえ/ける/を、「¥あな¥おびたたし/の¥げんじ/の¥ぢん/の¥とほび/の¥おほ−さ/よ。¥げに/も¥の/も¥やま/も¥うみ/も¥かは/も、¥みな¥むしや/で¥あり/けり。¥いかが−せ/ん」/と/ぞ¥あきれ/ける。¥その¥よ/の¥やはん/ばかり、¥ふじ/の¥ぬま/に¥いくら/も¥あり/ける¥みづとり=ども/が、¥なに/に/かは¥おどろき/たり/けん、¥いちど/に¥ばつと¥たち/ける¥はおと/の、¥いかづち¥おほ−かぜ/など/の¥やう/に¥きこえ/けれ/ば、¥へいけ/の¥つはもの=ども、「¥あはや¥げんじ/の¥おほぜい/の¥むかう/たる/は。¥きのふ¥さいとう−べつたう/が¥まうし/つる¥やう/に、¥かひ¥しなの/の¥げんじ=ら、¥ふじ/の¥すそ/より、¥からめで/へ/や¥まはり¥さふらふ/らん。¥かたき¥なんじふまんぎ/か¥ある/らん。¥とり−こめ/られ/て/は¥かなふ/まじ。¥ここ/を/ば¥おち/て、P335¥をはりがは¥すのまた/を¥ふせげ/や」/とて、¥とる¥もの/も¥とり−あへ/ず、¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥あまり/に¥あわて−さわい/で、¥ゆみ¥とる¥もの/は¥や/を¥しら/ず、¥や¥とる¥もの/は¥ゆみ/を¥しら/ず、¥わが¥むま/に/は¥ひと¥のり、¥ひと/の¥むま/に/は¥われ¥のり、¥つない/だる¥むま/に¥のつ/て¥はすれ/ば、¥くひ/を¥めぐる¥こと¥かぎり−なし。¥その¥へん¥ちかき¥しゆくじゆく/より、¥いうくん−いうぢよ=ども¥めし−あつめ、¥あそび¥さかもり/ける/が、¥あるひは¥かしら¥け−わら/れ、¥あるひは¥こし¥ふみ−をら/れ/て、¥をめき−さけぶ¥こと¥おびたたし。¥おなじき−にじふしにち/の¥う/の−こく/に、¥げんじ¥にじふまんき、¥ふじがは/に¥おし−よせ/て、¥てん/も¥ひびき¥だいぢ/も¥ゆるぐ/ばかり/に、¥とき/を/ぞ¥さん−か−ど¥つくり/ける。¥
(『ごせつのさた』)S0512¥へいけ/の¥かた/に/は、¥しづまり−かへつ/て¥おと/も¥せ/ず。¥ひと/を¥いれ/て¥みせ/けれ/ば、「¥みな¥おち/て¥さふらふ」/と¥まうす。¥あるひは¥かたき/の¥わすれ/たる¥よろひ¥とつ/て¥まゐる¥もの/も¥あり、¥あるひは¥へいけ/の¥すて−おい/たる¥おほまく¥とつ/て¥かへる¥もの/も¥あり。「¥およそ¥へいけ/の¥ぢん/に/は、¥はい/だに/も¥かけり¥さふらは/ず」/と¥まうす。¥ひやうゑ/の−すけ、¥いそぎ¥むま/より¥おり、¥かぶと/を¥ぬぎ、¥てうづ−うがひ/を¥し/て、¥わうじやう/の¥かた/を¥ふし−をがみ、「¥これ/は¥まつたく¥よりとも/が¥わたくし/の¥かうみやう/に/は¥あら/ず、¥ひとへに¥はちまん−だい−ぼさつ/の¥おん=ぱからひ/なり」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥やがて、¥うつ−とる¥ところ/なれ/ば/とて、¥するがの−くに/を/ば、¥いちでうの−じらう−ただより、¥とほたふみの−くに/を/ば、¥やすだの−さぶらう−よしさだ/に¥あづけ/らる。¥なほ/も¥つづい/て¥せむ/べかり/しか/ども、¥うしろ/も¥さすが¥おぼつかなし/とて、¥するがの−くに/より¥かまくら/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥かいだう¥しゆくじゆく/の¥いうくん−いうぢよ=ども、「¥あな¥いまいまし/の¥うつて/の¥たいしやうぐん/や。¥いくさ/に/は¥みにげ/を/だに¥あさましき¥こと/に¥する/に、P336¥へいけ/の¥ひとびと/は¥ききにげ−し¥たまへ/り」/と/ぞ¥わらひ/ける。¥さる−ほど/に¥らくしよ=ども¥おほかり/けり。¥みやこ/の¥たいしやうぐん/を/ば¥むねもり/と¥いひ、¥うつて/の¥だいしやう/を/ば、¥ごん/の−すけ/と¥いふ¥あひだ、¥へいけ/を¥ひらや/に¥よみ−なし/て、¥
ひらや/なる¥むねもり¥いか/に¥さわぐ/らむ¥はしら/と¥たのむ¥すけ/を¥おとし/て W037¥
ふじがは/の¥せぜ/の¥いは¥こす¥みづ/より/も¥はやく/も¥おつる¥いせ−へいじ/かな W038¥
また¥かづさの−かみ−ただきよ/が、¥ふじがは/に¥よろひ¥すて/たり/ける/を/も¥よめ/り。¥
ふじがは/に¥よろひ/は¥すて/つ¥すみぞめ/の¥ころも¥ただ¥きよ¥のち/の−よ/の¥ため W039¥
ただきよ/は¥にげ/の/むま/に/ぞ¥のり/てげる¥かづさ¥しりがひ¥かけ/て¥かひ¥なし W040¥「ごせつのさた」¥おなじき−じふいちぐわつ−やうかのひ、¥たいしやうぐん−ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり、¥ふくはら/へ¥かへり−のぼり¥たまふ。¥にふだう−しやうこく¥おほき/に¥いかり/て、「¥これもり/を/ば¥きかいがしま/へ¥ながす/べし。¥ただきよ/を/ば¥しざい/に¥おこなふ/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥これ/に¥よつ/て¥おなじき−ここのかのひ、¥へいけ/の¥さぶらひ、¥らうせう¥すひやくにん¥さんくわい−し/て、¥ただきよ/が¥しざい/の¥こと、¥いかが¥ある/べから/ん/と¥ひやうぢやう−す。¥しゆめ/の−はうぐわん−もりくに¥すすみ−いで/て、「¥この¥ただきよ/を¥ひごろ¥ふかくじん/と/は¥ぞんじ¥さふらは/ず。¥あれ/が¥じふはち/の¥とし/とP337¥おぼえ¥さふらふ。¥とば=どの/の¥ほうざう/に、¥ごきない¥いち/の¥あくたう¥ににん、¥にげ−こもり/たり/し/を、¥よつ/て¥からめ/う/と¥まうす¥もの¥いち−にん/も¥さふらは/ざり/し/に、¥この¥ただきよ¥ただ¥いち−にん、¥はくちう/に¥ついぢ/を¥こえ、¥はね−いつ/て、¥いち−にん/を/ば¥うち−とり、¥いち−にん/を/ば¥からめ−とつ/て、¥な/を¥こうだい/に¥あげ/たり/し¥もの/ぞ/かし。¥こんど/の¥ふかく/は、¥ただごと/と/も¥おぼえ¥さふらは/ず。¥これ/に¥つけ/て/も、¥よくよく¥ひやうらん/の¥おん=つつしみ¥さふらふ/べし」/と/ぞ¥まうし/ける。¥おなじき−とをかのひ、¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥ごん/の−すけ−ぜうしやう−これもり、¥うこんゑ/の−ちうじやう/に¥あがり¥たまふ。¥こんど¥ばんどう/へ¥うつて/に¥むかは/れ/たり/と/は¥まうせ/ども、¥させる¥し−いだし/たる¥こと/も¥さふらは/ず。¥これ/は¥され/ば¥なん/の¥けんじやう/ぞ/や/と/ぞ、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/ける。¥むかし¥へい−しやうぐん−さだもり、¥たはら−とうだ−ひでさと、¥まさかど/を¥つゐたう/の¥ため/に、¥あづま/へ¥げかう−し/たり/しか/ども、¥てうてき¥たやすう¥ほろび−がたかり/しか/ば、¥かさね/て¥うつて/を¥くださ/る/べし/と、¥くぎやう−せんぎ¥あつ/て、¥うぢの−みんぶきやう−ただふん、¥きよはらの−しげふぢ、¥ぐんけん/と¥いふ¥つかさ/を¥たまはり/て¥くだる/ほど/に、¥するがの−くに¥きよみ/が−せき/に¥しゆくし/たり/ける¥よ、¥かの¥しげふぢ、¥まんまん/たる¥かいじやう/を¥ゑんけん−し/て、「¥ぎよしう/の¥ひ/の¥かげ/は¥さむう/して¥なみ/を¥やき、¥えきろ/の¥すず/の¥こゑ/は¥よる¥やま/を¥すぐ」/と¥いふ¥からうた/を、¥たからか/に¥くちずさみ¥たまへ/ば、¥ただふん¥いう/に¥おぼえ/て、¥かんるゐ/を/ぞ¥ながさ/れ/ける。¥さる−ほど/に¥まさかど/を/ば、¥さだもり¥ひでさと/が¥つひに¥うち−とつ/て、¥その¥かうべ/を¥もた/せ/て¥のぼる/ほど/に、¥するがの−くに¥きよみ/が−せき/にて¥ゆき−あう/たり。¥それ/より¥ぜんご/の¥たいしやうぐん¥うち−つれ/て¥しやうらく−す。¥さだもり¥ひでさと/に¥けんじやう¥おこなは/れ/けり。¥とき/に¥ただふん¥しげふぢ/に/も¥けんじやう¥ある/べき/か/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ば、P338¥
くでうの−いうしようじやう−もろすけ=こう、「¥こんど¥ばんどう/へ¥うつて¥むかう/たり/と¥いへ/ども、¥てうてき¥たやすう¥ほろび−がたかり/し¥ところ/に、¥この¥ひとびと¥ちよくぢやう/を¥うけたまはり/て、¥せき/の¥ひがし/へ¥おもむき/し¥とき、¥てうてき¥すでに¥ほろび/たり。¥され/ば¥ただふん¥しげふぢ/に/も、¥など/か¥けんじやう¥なかる/べき」/と¥まうさ/せ¥たまへ/ども、¥その−とき/の¥しつぺい¥をののみや=どの、「¥うたがはしき/を/ば¥なす¥こと¥なかれ/と、¥らいき/の¥もん/に¥さふらへ/ば」/とて、¥つひに¥なさ/せ¥たまは/ず。¥ただふん¥これ/を¥くちをしき¥こと/に¥おもう/て、¥をののみや=どの/の¥おん=すゑ/を/ば、¥やつこ/に¥みなさ/ん、¥くでう=どの/の¥おん=すゑ/は、¥いつ/の¥よ/まで/も¥しゆごじん/と¥なら/ん/と¥ちかひ/つつ、¥つひに¥ひじに/に/こそ/は¥しに/に/けれ。¥され/ば¥くでう=どの/の¥おん=すゑ/は、¥めでたう¥さかえ/させ¥たまへ/ども、¥をののみや=どの/の¥おん=すゑ/に/は、¥しかる/べき¥ひと/も¥ましまさ/ず、¥いま/は¥たえ−はて¥たまひ/ける/に/こそ。¥おなじき−じふいちにち、¥にふだう−しやうこく/の¥しなん、¥とう/の−ちうじやう−しげひら、¥さこんゑ/の−ごん/の−ちうじやう/に¥あがり¥たまふ。¥おなじき−じふさんにち、¥ふくはら/に/は、¥だいり¥つくり−いださ/れ/て、¥しゆしやう¥ご=せんかう¥あり/けり。¥だいじやうゑ¥おこなは/る/べかり/しか/ども、¥だいじやうゑ/は¥じふぐわつ/の¥すゑ、¥とうか/に¥みゆき−し/て¥ご=けい¥あり。¥たいだい/の¥きた/の¥の/に、¥さいぢやうじよ/を¥つくり/て、¥じんぷくじんぐう/を¥ととのふ。¥だいこくでん/の¥まへ、¥れうびだう/の¥だんか/に、¥くわいりふでん/を¥たて/て、¥お=ゆ/を¥めす。¥おなじき¥だん/の¥ならび/に、¥だいじやうぐう/を¥つくつ/て、¥しんぜん/を¥そなふ。¥しんえん¥あり、¥ぎよ=いう¥あり、¥だいこくでん/にて¥たいれい¥あり、¥せいしよだう/にて¥み=かぐら¥あり、¥ぶらくゐん/にて¥えんくわい¥あり。¥しかる/を¥この¥ふくはら/の¥しんと/に/は、¥だいこくでん/も¥なけれ/ば、¥たいれい¥おこなは/る/べき¥やう/も¥なく、¥せいしよだう/も¥なけれ/ば、¥み=かぐら¥そうす/べき¥ところ/もP339¥なし。¥ぶらくゐん/も¥なけれ/ば、¥えんくわい/も¥おこなは/れ/ず。¥こんねん/は¥ただ¥しんじやうゑ、¥ごせつ/ばかり/で¥ある/べき¥よし、¥くぎやう−せんぎ¥あつ/て、¥なほ¥しんじやう/の¥まつり/を/ば、¥きうと/の¥じんぎくわん/にて/ぞ¥とげ/られ/ける。¥ごせつ/は¥これ¥きよみはら/の−その−かみ、¥よしの/の−みや/に/して、¥つき¥しろく¥さえ、¥かぜ¥はげしかり/し¥よ、¥おん=こころ/を¥すまし/て、¥きん/を¥ひき¥たまひ/しか/ば、¥しんによ¥あま−くだつ/て、¥いつたび¥そで/を¥ひるがへす。¥これ/ぞ¥ごせつ/の¥はじめ/なる。¥
「みやこがへり」(『みやこがへり』)S0513¥こんど/の¥みやこうつり/を/ば、¥きみ/も¥しん/も¥なのめ/なら/ず¥おん=なげき¥あり/けり。¥やま¥なら/を¥はじめ/て、¥しよじ¥しよしや/に¥いたる/まで、¥しかる/べから/ざる¥よし¥うつたへ¥まうし/たり/けれ/ば、¥さ/しも¥よこがみ/を¥やら/れ/し¥だいじやう/の−にふだう=どの、「¥さら/ば¥みやこがへり¥ある/べし」/とて、¥おなじき−じふにんぐわつ−ふつかのひ、¥にはか/に¥みやこがへり¥あり/けり。¥しんと/は¥きた/は¥やまやま/に¥そびえ/て¥たかく、¥みなみ/は¥うみ¥ちかく/して¥くだれ/り。¥なみ/の¥おと¥つねに¥かまびすしく、¥しほかぜ¥はげしき¥ところ/なり。¥され/ば¥しんゐん、¥いつ/と−なく¥ご=なう/のみ¥しげかり/けれ/ば、¥これ/に¥よつ/て¥いそぎ¥ふくはら/を¥いで/させ¥おはします。¥ちうぐう、¥いちゐん、¥しやうくわう/も¥ごかう¥なる。¥せつしやう=どの/を¥はじめ¥たてまつり/て、¥だいじやうだいじん¥いげ/の¥けいしやう−うんかく、¥われ/も¥われ/も/と¥ぐぶ−せ/らる。¥へいけ/に/は¥だいじやう/の−にふだう/を¥はじめ¥たてまつり/て、¥いちもん/のP340¥ひとびと¥みな¥のぼら/れ/けり。¥さ/しも¥こころ−うかり/つる¥しんと/に、¥たれ/か¥かたとき/も¥のこる/べき。¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と/ぞ¥のぼら/れ/ける。¥さんぬる¥ろくぐわつ/より、¥や=ども¥せうせう¥こぼち−くだし、¥かた/の/ごとく¥とり−たて/られ/しか/ども、¥いま¥また¥もの−ぐるはしう、¥にはか/に¥みやこがへり¥あり/けれ/ば、¥なん/の¥さた/に/も¥およば/ず、¥みな¥うち−すて−うち−すて¥のぼら/れ/けり。¥りやうゐん/は¥ろくはら¥いけ=どの/へ¥ご=かう¥なる。¥ぎやうがう/は¥ごでう−だいり/と/ぞ¥きこえ/し。¥おのおの/の¥しゆくしよ/も¥なけれ/ば、¥やはた、¥かも、¥さが、¥うづまさ、¥にしやま、¥ひがしやま/の¥かたほとり/に¥つい/て、¥あるひは¥み=だう/の¥くわいらう、¥あるひは¥やしろ/の¥ほうでん/など/に、¥しかる/べき¥ひと/も¥たち−やどつ/て¥ましまし/ける。¥そもそも¥こんど/の¥みやこうつり/の¥ほんい/を¥いか/に/と¥いふ/に、¥きうと/は¥やま¥なら¥ちかく/して、¥いささか/の¥こと/に/も、¥ひよし/の¥しんよ、¥かすが/の¥じんぼく/など¥いひ/て¥みだりがはし。¥しんと/は¥やま¥へだたり¥え¥かさなつ/て、¥ほど/も¥さすが¥とほ/けれ/ば、¥さやう/の¥こと/も¥たやすかる/まじ/とて、¥にふだう−しやうこく¥はからひ¥まうさ/れ/ける/とかや。¥おなじき−にじふさんにち、¥あふみ−げんじ/の¥そむき/し/を¥せめ/ん/とて、¥たいしやうぐん/に/は¥さひやうゑ/の−かみ−とももり、¥さつまの−かみ−ただのり、¥つがふ¥その¥せい¥さんまん−よ−き、¥あふみの−くに/へ¥はつかう−す。¥やまもと、¥かしはぎ、¥にしごり/など¥いふ¥あぶれ−げんじ=ども¥せめ−おとし、¥それ/より¥やがて¥みの¥をはり/へ/ぞ¥こえ/られ/ける。P341¥
「ならえんしやう」(『ならえんしやう』)S0514¥みやこ/に/は¥また、「¥なんと¥みゐでら¥どうしん−し/て、¥あるひは¥みや¥うけ−とり¥まゐらせ、¥あるひは¥おん=むかひ/に¥まゐる¥でう、¥これ¥もつて¥てうてき/なり。¥しから/ば¥なら/を/も¥せめ/らる/べし」/と¥きこえ/しか/ば、¥だいしゆ¥おほき/に¥ほうき−す。¥くわんばく=どの/より、「¥ぞんぢ/の¥むね¥あら/ば、¥いく−たび/も¥そうもん/に/こそ¥およば/め」/とて、¥うくわん/の−べつたう−ただなり/を¥くださ/れ/たり/ける/を、¥だいしゆ¥おこつ/て、「¥のりもの/より¥とつ/て¥ひき−おとせ、¥もとどり¥きれ」/と¥ひしめく¥あひだ、¥ただなり¥いろ/を¥うしなひ/て¥にげ−のぼる。¥つぎに¥うゑもん/の−かみ−ちかまさ/を¥くださ/れ/たり/けれ/ども、¥これ/を/も、「¥もとどり¥きれ」/と¥ひしめき/けれ/ば、¥とる¥もの/も¥とり−あへ/ず、¥いそぎ¥みやこ/へ¥のぼら/れ/けり。¥その−とき/は¥くわんがくゐん/の¥ざつしき¥ににん/が¥もとどり¥きら/れ/て/けり。¥なんと/に/は¥また¥おほき/なる¥ぎつちやう/の¥たま/を¥つくり/て、¥これ/こそ¥にふだう−しやうこく/の¥かうべ/と¥なづけ/て、「¥うて、¥ふめ」/など/ぞ¥まうし/ける。「¥ことば/の¥もらし−やすき/は、¥わざはひ/を¥まねく¥なかだち/なり。¥ことば/の¥つつしま/ざる/は、¥やぶれ/を¥とる¥みち/なり」/と¥いへ/り。¥かけ/ま−く/も¥かたじけなく、¥この¥にふだう−しやうこく/は、¥たうぎん/の¥ぐわいそ/にて¥おはします。¥それ/を¥かやう/に¥まうし/ける¥なんと/の¥だいしゆ、¥およそ/は¥てんま/の¥しよゐ/と/ぞ¥みえ/し。¥にふだう−しやうこく、¥かつがつ¥まづ¥なんと/の¥らうぜき/を¥しづめ/ん/とて、¥せのをの−たらう−かねやす/を、¥やまとの−くに/のP342¥けんびしよ/に¥ふせ/らる。¥かねやす¥ごひやく−よ−き/で¥はせ−むかふ。「¥あひ−かまへ/て、¥しゆと/は¥らうぜき/を¥いたす/とも、¥なんぢ=ら/は¥いたす/べから/ず。¥もののぐ¥な¥せ/そ、¥きうせん¥な¥たいせ/そ」/とて¥つかはさ/れ/たり/ける/を、¥なんと/の¥だいしゆ、¥かかる¥ないぎ/を/ば¥しら/ず/して、¥かねやす/が¥よせい¥ろくじふ−よ−にん¥からめ−とつ/て、¥いちいち/に¥くび/を¥きつ/て、¥さるさは/の−いけ/の¥はた/に/ぞ¥かけ−ならべ/たり/ける。¥にふだう−しやうこく¥おほき/に¥いかり/て、「¥さら/ば¥なんと/を/も¥せめよ/や」/とて、¥たいしやうぐん/に/は、¥とう/の−ちうじやう−しげひら、¥ちうぐう/の−すけ−みちもり、¥つがふ¥その¥せい¥しまん−よ−き、¥なんと/へ¥はつかう−す。¥なんと/に/も¥らうせう¥きらは/ず¥しちせん−よ−にん、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥ならざか、¥はんにやじ、¥に−か−しよ/の¥みち/を¥ほり−きつ/て、¥かいだて¥かき、¥さかもぎ¥ひい/て¥まち−かけ/たり。¥へいけ¥しまん−よ−き/を¥ふたて/に¥わかつ/て、¥ならざか、¥はんにやじ、¥に−か−しよ/の¥じやうくわく/に¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥だいしゆ/は¥かちだち¥うちもの/なり。¥くわんぐん/は¥むま/にて¥かけ−まはし−かけ−まはし¥せめ/けれ/ば、¥だいしゆ¥かず/を¥つくし/て¥うた/れ/に/けり。¥う/の−こく/より¥や−あはせ−し/て、¥いちにち¥たたかひ−くらし、¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥ならざか、¥はんにやじ、¥に−か−しよ/の¥じやうくわく¥とも/に¥やぶれ/ぬ。¥おち−ゆく¥しゆと/の¥なか/に、¥さかの−しらう−やうがく/と¥いふ¥あくそう¥あり。¥これ/は¥ちから/の¥つよさ、¥ゆみ−や¥うちもの¥とつ/て/は、¥しちだいじ¥じふごだいじ/に/も¥すぐれ/たり。¥もよぎ−をどし/の−よろひ/に、¥くろいと−をどし/の−はらまき¥にりやう¥かさね/て/ぞ¥き/たり/ける。¥ばうし−かぶと/に¥ごまい−かぶと/の¥を/を¥しめ、¥ち/の−は/の/ごとく/に¥そつ/たる¥しらえ/の−おほ−なぎなた、¥こくしつ/の−おほ−だち、¥さう/の¥て/に¥もつ¥まま/に、¥どうしゆく¥じふ−よ−にん¥ぜんご¥さう/に¥たて、¥てんがい/の¥もん/より¥うつ/て¥いで/たり。¥これ/ぞ¥しばらく¥ささへ/たる。¥おほく/の¥くわんびやう=ら¥むま/の¥あし¥ながれ/て、¥おほく¥ほろび/に/けり。P343¥され/ども¥くわんぐん/は¥おほぜい/にて、¥いれ−かへ−いれ−かへ¥せめ/けれ/ば、¥やうがく/が¥ふせぐ¥ところ/の¥どうじゆく¥みな¥うた/れ/に/けり。¥やうがく¥こころ/は¥たけう¥おもへ/ども、¥うしろ¥あばら/に¥なり/しか/ば、¥ちから¥およば/ず、¥ただ¥いち−にん¥みなみ/を¥さし/て/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥よいくさ/に¥なつ/て、¥たいしやうぐん−とう/の−ちうじやう−しげひら、¥はんにやじ/の¥もん/の¥まへ/に¥うつ−たつ/て、¥くら−さ/は¥くらし、「¥ひ/を¥いだせ」/と¥のたまへ/ば、¥はりまの−くに/の¥ぢうにん、¥ふくゐ/の−しやう/の¥げし、¥じらう−たいふ−ともかた/と¥いふ¥もの、¥たて/を¥わり¥たいまつ/に¥し/て、¥ざいけ/に¥ひ/を/ぞ¥かけ/たり/ける。¥ころ/は¥じふにんぐわつ−にじふはちにち/の¥よ/の、¥いぬ/の−こく/ばかり/の¥こと/なれ/ば、¥をりふし¥かぜ/は¥はげしし、¥ほもと/は¥ひとつ/なり/けれ/ども、¥ふき−まよふ¥かぜ/に、¥おほく/の¥がらん/に¥ふき−かけ/たり。¥およそ¥はぢ/を/も¥おもひ、¥な/を/も¥をしむ/ほど/の¥もの/は、¥ならざか/にて¥うちじに−し、¥はんにやじ/に/して¥うた/れ/に/けり。¥ぎやうぶ/に¥かなへ/る¥もの/は、¥よしの¥とつかは/の¥かた/へ/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥あゆみ/も¥え/ぬ¥らうそう/や、¥じんじやう/なる¥しゆがくしや、¥ちご=ども¥をんな¥わらんべ/は、¥もしや¥たすかる/と、¥だいぶつでん/の¥にかい/の¥うへ、¥やましなでら/の¥うち/へ、¥われ¥さき/に/と/ぞ¥にげ−いり/ける。¥だいぶつでん/の¥にかい/の¥うへ/に/は、¥せん−よ−にん¥のぼり−あがり、¥かたき/の¥つづく/を¥のぼせ/じ/とて、¥はし/を¥ひき/てげり。¥みやうくわ/は¥まさしう¥おし−かけ/たり。¥をめき−さけぶ¥こゑ、¥せうねつ、¥だいせうねつ、¥むげん−あび、¥ほのほ/の¥そこ/の¥ざいにん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥
こうぶくじ/は¥たんかいこう/の¥ご=ぐわん、¥とうじ¥るゐだい/の¥てら/なり。¥とうこんだう/に¥おはします¥ぶつぽふ¥さいしよ/の¥しやか/の¥ざう、¥さいこんだう/に¥おはします¥じねん−ゆじゆつ/の¥くわんぜおん、¥るり/を¥ならべ/し¥しめん/のP344¥らう、¥しゆたん/を¥まじへ/し¥にかい/の¥ろう、¥くりん¥そら/に¥かがやき/し¥にき/の¥たふ、¥たちまち/に¥けぶり/と¥なる/こそ¥かなしけれ。¥とうだいじ/は¥じやうざい−ふめつ、¥じつぱう−じやくくわう/の¥しやうじん/の¥おん=ほとけ/と¥おぼしめし−なぞらへ/て、¥しやうむ−くわうてい、¥てづから−みづから¥みがき−たて¥たまひ/し¥こんどう−じふろく−ぢやう/の¥るしやなぶつ、¥うしつ¥たかく¥あらはれ/て、¥はんでん/の¥くも/に¥かくれ、¥びやくがう¥あらた/に¥をがま/れ/させ¥たまへ/る¥まんぐわつ/の¥そんよう/も、¥み=ぐし/は¥やけ−おち/て¥だいぢ/に¥あり、¥ごしん/は¥わき−あひ/て¥やま/の/ごとし。¥はちまんしせん/の¥さうがう/は、¥あき/の¥つき¥はやく¥ごぢう/の¥くも/に¥かくれ、¥しじふいちぢ/の¥えうらく/は、¥よる/の¥ほし¥むなしう¥じふあく/の¥かぜ/に¥ただよひ、¥けぶり/は¥ちうてん/に¥みちみち/て、¥ほのほ/は¥こくう/に¥ひま/も¥なし。¥まのあたり¥み¥たてまつる¥もの/は¥さらに¥まなこ/を¥あて/ず、¥かすか/に¥つたへ−きく¥ひと/は、¥きも−たましひ/を¥うしなへ/り。¥ほつさう¥さんろん/の¥ほふもん−しやうげう、¥すべて¥いつくわん/も¥のこら/ず。¥わが¥てう/は¥まうす/に¥およば/ず、¥てんぢく¥しんだん/に/も¥これ−ほど/の¥ほふめつ¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥うでんだいわう/の¥しまごん/を¥みがき、¥びしゆかつま/が¥しやくせんだん/を¥きざみ/し/も、¥わづか/に¥とうじん/の¥おん=ほとけ/なり。¥いはんや¥これ/は¥なんえん−ぶだい/の¥うち/に/は、¥ゆゐいつ−ぶさう/の¥おん=ほとけ、¥ながく¥きうそん/の¥ご¥ある/べし/と/も¥おもは/ざり/し/に、¥いま¥どくえん/の¥ちり/に¥まじはつ/て、¥ひさしく¥かなしみ/を¥のこし¥たまへ/り。¥ぼんじやく¥しわう、¥りうじん−はちぶ、¥みやうくわん−みやうしう/も、¥おどろき−さわぎ¥たまふ/らん/と/ぞ¥みえ/し。¥ほつさう−おうご/の¥しゆんにち−だい−みやうじん、¥いか/なる¥こと/を/か¥おぼし/けん、¥され/ば¥かすがの/の¥つゆ/も¥いろ¥かはり、¥みかさやま/の¥あらし/の¥おと/も¥うらむる¥さま/に/ぞ¥きこえ/ける。¥ほのほ/の¥なか/にて¥やけ−しぬる¥にんじゆ/を¥かぞへ/たれ/ば、¥だいぶつでん/の¥にかい/の¥うへ/に/は¥いつせんしちひやく−よ−にん、¥やましなでら/に/は¥はつぴやく−よ−にん、¥ある¥み=だう/に/は¥ごひやく−よ−にん、¥ある¥み=だう/に/は¥さんびやく−よ−にん、¥つぶさ/に¥しるい/たり/けれ/ば、P345¥さんぜんごひやく−よ−にん/なり。¥せんぢやう/に/して¥うた/るる¥だいしゆ¥せん−よ−にん、¥せうせう/は¥はんにやじ/の¥もん/に¥きり−かけ/させ、¥せうせう/は¥くび=ども¥もつ/て¥みやこ/へ¥のぼら/れ/けり。¥あくる¥にじふくにち、¥とう/の−ちうじやう−しげひら、¥なんと¥ほろぼし/て¥ほくきやう/へ¥かへり−いら/る。¥およそ/は¥にふだう−しやうこく/ばかり/こそ、¥いきどほり¥はれ/て¥よろこば/れ/けれ。¥ちうぐう、¥いちゐん、¥しやうくわう/は、「¥たとひ¥あくそう/を/こそ¥ほろぼさ/め、¥おほく/の¥がらん/を¥はめつ−す/べき/やは」/と/ぞ¥おん=なげき¥あり/ける。¥ひごろ/は¥しゆと/の¥くび¥おほぢ/を¥わたい/て、¥ごくもん/の−き/に¥かけ/らる/べし/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、¥とうだいじ¥こうぶくじ/の¥ほろび/ぬる¥あさまし−さ/に、¥なん/の¥さた/に/も¥およば/ず。¥ここ/や¥かしこ/の¥みぞ/や¥ほり/に/ぞ¥すて−おき/ける。¥しやうむ−くわうてい/の¥しんぴつ/の¥ご=きもん/に/も、「¥わが¥てら¥こうぶく−せ/ば、¥てんが/も¥こうぶく−す/べし。¥わが¥てら¥すゐび−せ/ば、¥てんが/も¥すゐび−す/べし」/と/ぞ¥あそばさ/れ/たる。¥され/ば¥てんが/の¥すゐび−せ/ん¥こと、¥うたがひ¥なし/と/ぞ¥みえ/たり/ける。¥あさましかり/つる¥とし/も¥くれ/て、¥ぢしよう/も¥ごねん/に¥なり/に/けり。P346¥

平家物語 巻第六  総かな版(元和九年本)
「しんゐんほうぎよ」(『しんいんほうぎよ』)S0601¥ぢしよう−ごねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥だいり/に/は、¥とうごく/の¥ひやうがく、¥なんと/の¥くわさい/に¥よつ/て、¥てうはい¥とどめ/られ/て、¥しゆしやう¥しゆつぎよ/も¥なし。¥もの/の¥ね/も¥ふき−ならさ/ず、¥ぶがく/も¥そうせ/ず、¥よしの/の¥くず/も¥まゐら/ず、¥とうじ/の¥くぎやう¥いち−にん/も¥さんぜ/られ/ず。¥これ/は¥うぢでら¥ぜうしつ/に¥よつ/て/なり。¥ふつかのひ¥てんじやう/の¥えんすゐ/も¥なく、¥なんによ¥うち−ひそめ/て、¥きんちう¥いまいましう/ぞ¥みえ/し。¥ならびに¥ぶつぽふ¥わうぼふ¥とも/に¥つき/ぬる¥こと/ぞ¥あさましき。¥ほふわう¥おほせ/なり/ける/は、「¥しだい/の¥ていわう、¥おもへ/ば¥こ/なり、¥まご/なり。¥いか/なれ/ば¥ばんき/の¥せいむ/を¥とどめ/られ/て、¥むなしう¥としつき/を¥おくる/らん」/と/ぞ¥おん=なげき¥あり/ける。¥おなじき−いつかのひ、¥なんと/の¥そうがう=ら¥けつくわん−ぜ/られ/て、¥くじやう/を¥ちやうじ−し、¥しよしよく/を¥もつしう−せ/らる。¥され/ば¥かた/の¥やう/にて/も、¥ご=さいゑ/は¥ある/べき/ものを/と、¥そうみやう/の¥さた¥あり/し/に、¥なんと/の¥そうがう=ら/は、¥みな¥けつくわん−ぜ/られ/ぬ。¥ほくきやう/の¥そうがう/を¥もつて¥おこなは/る/べき/か/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、P347¥され/ば/とて、¥いまさら¥なんと/を/も¥すて−はて/させ¥たまふ/べき/なら/ね/ば、¥さんろんじう/の¥がくしやう、¥じやうほふ−いかう/が¥しのび/つつ、¥くわんじゆじ/に¥かくれ−ゐ/たり/ける/を¥めし−いだい/て、¥ご=さいゑ¥かた/の/ごとく¥とげ−おこなは/る。¥しゆと/は¥みな、¥おい/たる/も、¥わかき/も、¥あるひは¥い−ころさ/れ¥あるひは¥きり−ころさ/れ/て、¥けぶり/の¥うち/を¥いで/ず、¥ほのほ/に¥むせん/で¥ほろび/に/しか/ば、¥わづか/に¥のこる¥ともがら/は、¥さんりん/に¥まじはつ/て、¥あと/を¥とどむる¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥なか/に/も¥こうぶくじ/の−べつたう¥けりんゐん/の−そうじやう−やうえん/は、¥ぶつざう−きやうくわん/の¥けぶり/と¥たち−のぼら/せ¥たまふ/を¥み¥まゐらせ、¥あな¥あさまし/とて、¥むね¥うち−さわが/れ/ける/より¥やまひ¥つい/て、¥つひに¥うせ¥たまひ/ぬ。¥この¥やうえん/は¥いう/に¥やさしき¥ひと/にて¥おはし/けり。¥ある−とき¥ほととぎす/の¥なく/を¥きい/て、¥
きく¥たび/に¥めづらしけれ/ば¥ほととぎす¥いつも¥はつね/の¥ここち/こそ¥すれ W041
/と¥いふ¥うた/を¥よう/で/こそ、¥はつね/の−そうじやう/と/は¥いは/れ¥たまひ/けれ。¥しやうくわう/は、¥をとどし¥ほふわう/の¥とば=どの/に¥おし−こめ/られ/て¥わたら/せ¥たまひ/し¥おん=こと、¥こぞ¥たかくらのみや/の¥うた/れ/させ¥たまひ/し¥おん=ありさま、¥さ/しも¥たやすから/ぬ¥てんが/の¥だいじ、¥みやこうつり/など¥まうす¥こと/に、¥ご=なう¥つか/せ¥たまひ/て、¥おん=わづらはしう¥きこえ/させ¥たまひ/し/が、¥いま¥また¥とうだいじ¥こうぶくじ/の¥ほろび/ぬる¥よし¥きこしめし/て、¥ご=なう¥いとど¥おもら/せ¥おはします。¥ほふわう¥なのめ/なら/ず¥おん=なげき¥あり/し/ほど/に、¥おなじき−じふしにち¥ろくはら¥いけ=どの/にて、¥しんゐん¥つひに¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥ぎよ=う¥じふにねん、¥とくせい¥せんばんたん、¥ししよ¥じんぎ/の¥すたれ/ぬる¥みち/を¥おこし、¥りせい−あんらく/の¥たえ/たるP348¥あと/を¥つぎ¥たまふ。¥さんみやう−ろくつう/の¥らかん/も¥まぬかれ¥たまは/ず、¥げんじゆつ¥へんげ/の¥ごんじや/も¥のがれ/ぬ¥みち/なれ/ば、¥うゐ−むじやう/の¥ならひ/と/は¥いひ/ながら、¥ことわり¥すぎ/て/ぞ¥おぼえ/ける。¥やがて¥その¥よ、¥ひがしやま/の¥ふもと、¥せいがんじ/へ¥うつし¥たてまつり、¥ゆふべ/の¥けぶり/に¥たぐへ/つつ、¥はる/の¥かすみ/と¥のぼら/せ¥たまひ/ぬ。¥ちようけん−ほふいん、¥ご=さうそう/に¥まゐり−あは/ん/とて、¥いそぎ¥やま/より¥くだら/れ/ける/が、¥はや¥みち/にて¥けぶり/と¥たち−のぼら/せ¥たまふ/を¥み¥まゐらせ/て、¥なくなく¥かう/ぞ¥えいじ¥たまひ/ける。¥
つね/に¥み/し¥きみ/が¥みゆき/を¥けふ¥とへ/ば¥かへら/ぬ¥たび/と¥きく/ぞ¥かなしき W042¥
また¥ある¥にようばう/の、¥みかど¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ/と¥うけたまはつ/て、¥なくなく¥おもひ−つづけ/けり。¥
くも/の¥うへ/に¥ゆく−すゑ¥とほく¥み/し¥つき/の¥ひかり¥きえ/ぬ/と¥きく/ぞ¥かなしき W043¥
おん=とし¥にじふいち、¥うち/に/は¥じつかい/を¥たもつ/て¥じひ/を¥さき/と¥し、¥ほか/に/は¥ごじやう/を¥みだら/せ¥たまは/ず、¥れいぎ/を¥ただしう¥せ/させ¥おはします。¥まつだい/の¥けんわう/にて¥おはし/けれ/ば、¥よ/の¥をしみ¥たてまつる¥こと、¥つきひ/の¥ひかり/を¥うしなへ/る/が/ごとし。¥かやう/に¥ひと/の¥ねがひ/も¥かなは/ず、¥たみ/の¥くわはう/も¥つたなき、¥ただ¥にんげん/の¥さかひ/こそ¥かなしけれ。¥
「こうえふ」(『こうやう』)S0602¥たかくらのゐん¥ご=ざいゐ/の¥おん=とき、¥ひと/の¥したがひ−つき¥たてまつる¥こと/は、¥おそらく/は¥えんぎ−てんりやく/の−みかど/とP349¥まうす/とも、¥これ/に/は¥いかで¥まさら/せ¥たまふ/べき/と/ぞ、¥ひと¥まうし/ける。¥おほかた/は¥けんわう/の¥な/を¥あげ、¥じんとく/の¥かう/を¥ほどこさ/せ¥おはします¥こと/も、¥きみ¥ご=せいじん/の¥のち、¥せいだく/を¥わかた/せ¥たまひ/て/の¥うへ/の¥おん=こと/で/こそ¥ある/に、¥むげ/に¥この¥きみ/は、¥いまだ¥えうしゆ/の¥おん=とき/より、¥せい/を¥にうわ/に¥うけ/させ¥おはします。¥さんぬる¥しようあん/の¥ころほひ/は、¥おん=とし¥じつさい/ばかり/に/も/や¥なら/せ¥おはしまし/けん、¥あまり/に¥こうえふ/を¥あいせ/させ¥たまひ/て、¥きた/の−ぢん/に¥こやま/を¥つか/せ、¥はじかへで/の、¥まことに¥いろ¥うつくしう¥もみぢ/たる/を¥うゑ/させ、¥もみぢ/の−やま/と¥なづけ/て、¥ひねもす/に¥えいらん¥ある/に、¥なほ¥あき−たら/せ¥たまは/ず。¥しかる/を¥ある¥よ¥のわき¥はしたなう¥ふい/て、¥こうえふ¥みな¥ふき−ちらし、¥らくえふ¥すこぶる¥らうぜき/なり。¥とのもり/の¥とも/の−みやづこ、¥あさぎよめ−す/とて、¥これ/を¥ことごとく¥はき−すて/てげり。¥のこれ/る¥えだ、¥ちれ/る¥こ/の−は/を/ば¥かき−あつめ/て、¥かぜ¥すさまじかり/ける¥あした/なれ/ば、¥ぬひどの/の−ぢん/にて、¥さけ¥あたため/て¥たべ/ける¥たきぎ/に/こそ¥し/てげれ。¥ぶぎやう/の−くらんど、¥ぎやうがう/より¥さき/に/と、¥いそぎ¥ゆい/て¥みる/に、¥あとかた¥なし。「¥いか/に」/と¥とへ/ば、¥しかじか/と¥こたふ。「¥あな¥あさまし。¥さ/しも¥きみ/の¥しつし−おぼしめさ/れ/つる¥こうえふ/を、¥かやう/に¥し/つる¥こと/よ。¥しら/ず、¥なんぢ=ら¥きんごく¥るざい/に/も¥および、¥わが−み/も¥いか/なる¥げきりん/に/か¥あづから/んず/らん」/と、¥おもは/じ¥こと¥なう¥あんじ−つづけ/て¥ゐ/たり/ける¥ところ/に、¥しゆしやう¥いとどしく¥よる/の−おとど/を¥いで/させ/も¥あへ/ず、¥かしこ/へ¥ぎやうがう¥なつ/て、¥もみぢ/を¥えいらん¥ある/に、¥なかり/けれ/ば、¥いか/に/と¥おん=たづね¥あり/けり。¥くらんど¥なに/と¥そうす/べき¥むね/も¥なし。¥あり/の−まま/にP350¥そうもん−す。¥てんき¥こと/に¥おん=こころよ=げ/に¥うち−ゑま/せ¥たまひ/て、「¥りんかん/に¥さけ/を¥あたため/て¥こうえふ/を¥たく/と¥いふ¥し/の¥こころ/を/ば、¥され/ば¥それ=ら/に/は¥たれ/が¥をしへ/ける/ぞ/や。¥やさしう/も¥つかまつ/たる/ものかな」/とて、¥かへつて¥えいかん/に¥あづかつ/し¥うへ/は、¥あへて¥ちよくかん¥なかり/けり。¥また¥あんげん/の¥ころほひ、¥おん=かたたがひ/の¥ぎやうがう/の¥あり/し/に、¥さら/で/だに¥けいじん¥あかつき/を¥となふ¥こゑ、¥めいわう/の¥ねぶり/を¥おどろかす/ほど/に/も¥なり/しか/ば、¥いつも¥おん=ねざめ−がち/にて、¥つやつや¥ぎよ=しん/も¥なら/ざり/けり。¥いはんや¥さゆる¥しもよ/の¥はげしき/に/は、¥えんぎ/の−せいたい、¥こくど/の¥たみ=ども/が、¥いか/に¥さむかる/らん/とて、¥よる/の−おとど/に/して¥ぎよ=い/を¥ぬが/せ¥たまひ/ける¥こと/など/まで/も、¥おぼしめし−いで/て、¥わが¥ていとく/の¥いたら/ぬ¥こと/を/ぞ¥おん=なげき¥あり/ける。¥やや¥しんかう/に¥およん/で、¥ほど¥とほく¥ひと/の¥さけぶ¥こゑ−し/けり。¥ぐぶ/の¥ひとびと/は¥きき/も¥つけ/られ/ず。¥しゆしやう/は¥きこしめし/て、「¥ただいま¥さけぶ/は¥なにもの/ぞ。¥あれ¥み/て¥まゐれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥うへぶし−し/たる¥てんじやうびと、¥じやうにち/の−もの/に¥おほせ/て¥たづぬれ/ば、¥ある¥つじ/に¥あやし/の¥め/の−わらは/の、¥ながもち/の¥ふた¥さげ/たる/が、¥なく/にて/ぞ¥あり/ける。「¥いか/に」/と¥とへ/ば、「¥しう/の¥にようばう/の、¥ゐん/の−ごしよ/に¥さぶらは/せ¥たまふ/が、¥この−ほど¥やうやう/に/して¥したて/られ/たり/つる¥きぬ/を¥もつ/て¥まゐる/ほど/に、¥ただいま¥おとこ/の¥にさん−にん¥まうで−き/て、¥うばひ−とつ/て¥まかり/ぬる/ぞ/や。¥いま/は¥おん=しやうぞく/が¥あら/ば/こそ、¥ごしよに/も¥さぶらは/せ¥たまは/め。¥また¥はかばかしう¥たち−やどら/せ¥たまふ/べき。¥したしき¥おん=かた/も¥ましまさ/ず。¥これ/を¥おもひ−つづくる/に¥なく/なり」/と/ぞ¥いひ/ける。¥さて¥かの¥め/の−わらは/を¥ぐし/て¥まゐり、¥この¥よし¥そうもん−し/たり/けれ/ば、¥しゆしやう¥きこしめし/てP351、「¥あな¥むざん、¥なにもの/の¥しわざ/にて/か¥ある/らん」/とて、¥りようがん/より¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまふ/ぞ¥かたじけなき。「¥げう/の¥よ/の¥たみ/は、¥げう/の¥こころ/の¥すなほ/なる/を¥もつて¥こころ/と¥する¥ゆゑ/に、¥みな¥すなほ/なり。¥いま/の¥よ/の¥たみ/は、¥ちん/が¥こころ/を¥もつて¥こころ/と¥する¥ゆゑ/に、¥かだましき¥もの¥てう/に¥あつ/て¥つみ/を¥をかす。¥これ¥わが¥はぢ/に¥あら/ず/や」/と/ぞ¥おほせ/ける。「¥さる/にて/も¥とら/れ/つ/らん¥きぬ/は、¥なにいろ/ぞ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥しかじか/の¥いろ/と¥そうす。¥けんれいもんゐん、¥その−とき/は、¥いまだ¥ちうぐう/にて¥わたら/せ¥たまふ¥とき/なり。¥その¥おん=かた/へ、「¥さやう/の¥いろ¥し/たる¥ぎよ=い/や¥さふらふ」/と¥おん=たづね¥あり/けれ/ば、¥さき/の/より¥はるか/に¥いろ¥うつくしき/が¥まゐり/たる/を、¥くだん/の¥め/の−わらは/に/ぞ¥たまは/せ/ける。「¥いまだ¥よ¥ふかし。¥また¥さる¥め/に/も/ぞ¥あふ」/とて、¥じやうにち/の−もの/を¥あまた¥つけ/て、¥しう/の¥にようばう/の¥つぼね/まで、¥おくら/せ¥ましまし/ける/ぞ¥かたじけなき。¥され/ば、¥あやし/の¥しづ/の−を、¥しづ/の−め/に¥いたる/まで、¥ただ¥この¥きみ¥せんしう−ばんぜい/の¥はうさん/を/ぞ¥いのり¥たてまつる。¥
「あふひのまへ」(『あふひのまへ』)S0603¥それに¥なに/より/も¥また¥あはれ/なり/し¥こと/に/は、¥ちうぐう/の¥おん=かた/に¥さぶらは/れ/ける¥にようばう/の¥めし−つかひ/ける¥しやうとう、¥おもは/ざる¥ほか、¥りようがん/に¥しせき−する¥こと¥あり/けり。¥ただ¥よ/の−つね¥あからさま/にて/も¥なく/して、¥まめやか/に¥おん=こころざし¥ふかかり/けれ/ば、¥しう/の¥にようばう/も¥めし−つかは/ず、¥かへつて¥しう/の/ごとく/に/ぞP352、¥いつき¥もてなし/ける。『¥その−かみ¥えうえい/に¥いへ/る¥こと¥あり、¥をとこ/を¥うん/で/も¥きくわん−する¥こと¥なかれ、¥ぢよ/を¥うん/で/も¥ひさん−する¥こと¥なかれ。¥なん/は¥これ¥こう/に/だも¥ほうぜ/られ/ず、¥ぢよ/は¥ひ/たり』/とて、¥きさき/に¥たつ/と¥いへ/り。¥めでたかり/ける¥さいはひ/かな。「¥この¥ひと¥にようご¥きさき/と/も¥もてなさ/れ、¥こくも¥せんゐん/と/も¥あふが/れ/な/んず」/とて、¥その¥な/を、¥あふひのまへ/と¥まうし/けれ/ば、¥ないない/は¥あふひの−にようご/など/ぞ¥ささやき−あは/れ/ける。¥しゆしやう/は¥これ/を¥きこしめし/て、¥その−のち/は¥めさ/ざり/けり。¥これ/は¥おん=こころざし/の¥つき/ぬる/に/は¥あら/ず、¥ただ¥よ/の¥そしり/を¥はばから/せ¥たまふ/に¥よつ/て/なり。¥され/ば¥おん=ながめ−がち/にて、¥つやつや¥ぐご/も¥きこしめさ/ず、¥ご=なう/とて¥つね/は¥よる/の−おとど/に/のみ¥いら/せ¥おはします。¥その−とき/の¥くわんばく¥まつ=どの、¥この¥よし/を¥うけたまはつ/て、「¥しゆしやう¥おん=こころ/の¥つき/ぬる¥こと/こそ¥おはす/なれ。¥まうし−なぐさめ¥まゐらせ/ん」/とて、¥いそぎ¥ご=さんだい¥あつ/て、「¥さやう/に¥えいりよ/に¥かから/せ¥ましまさ/ん/に¥おいて/は、¥なんでふ¥こと/か¥さふらふ/べき。¥くだん/の¥にようばう¥めさ/れ¥まゐらす/べし/と¥おぼえ¥さふらふ。¥しな¥たづね/らるる/に¥およば/ず、¥もとふさ¥やがて¥いうし/に¥つかまつり¥さふらは/ん」/と¥そうせ/させ¥たまへ/ば、¥しゆしやう¥おほせ/なり/ける/は、「¥いさ/とよ、¥そこ/に¥はからひ¥まうす/も¥さる−こと/なれ/ども、¥くらゐ/を¥すべつ/て¥のち/は、¥まま¥さる¥ためし/も¥ある/なり。¥まさしう¥ざいゐ/の¥とき、¥さやう/の¥こと/は¥こうたい/の¥そしり/なる/べし」/とて、¥きこしめし/も¥いれ/ざり/けれ/ば、¥くわんばく=どの¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず、¥おん=なみだ/を¥おさへ/て、¥ご=たいしゆつ¥あり/けり。¥その−のち¥しゆしやう、¥みどん/の¥うすやう/の、¥にほひ¥こと/に¥ふかかり/ける/に、¥ふるき¥こと/なれ/ども、¥おぼしめし−いで/てP353、¥かう/ぞ¥あそばさ/れ/ける。¥
しのぶれ/ど¥いろ/に¥いで/に/けり¥わが¥こひ/は¥もの/や¥おもふ/と¥ひと/の¥とふ/まで W044¥
れんぜいの−せうしやう−たかふさ、¥これ/を¥たまはり−つい/で、¥くだん/の¥あふひのまへ/に¥たば/せ/たれ/ば、¥これ/を¥とつ/て¥ふところ/に¥いれ、¥かほ¥うち−あかめ、¥れい/なら/ぬ¥ここち¥いで−き/たり/とて、¥さと/へ¥かへり、¥うち−ふす¥こと¥ごろく−にち¥し/て、¥つひに¥はかなく¥なり/に/けり。¥きみ/が¥いちじつ/の¥おん/の¥ため/に、¥せふ/が¥はくねん/の¥み/を¥あやまつ/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。「¥むかし¥たう/の¥たいそう/の、¥ていじんき/が¥むすめ/を¥げんくわんでん/に¥いれ/ん/と¥せ/させ¥たまひ/し/を、¥ぎちよう、¥かの¥むすめ¥すでに¥りくし/に¥やくせ/り/と¥いさめ¥まうし/たり/けれ/ば、¥てん/に¥いれ/らるる¥こと/を¥とどめ/られ/たり/し/に/は、¥すこし/も¥たがは/せ¥たまは/ぬ、¥いま/の¥きみ/の¥おん=こころばせ/かな」/と/ぞ、¥ひと¥まうし/ける。¥
「こがう」(『こがう』)S0604¥しゆしやう/は¥れんぼ/の¥おん=なみだ/に¥おぼしめし−しづま/せ¥たまひ/たる/を、¥まうし−なぐさめ¥まゐらせ/ん/とて、¥ちうぐう/の¥お=かた/より、¥こがうの=との/と¥まうす¥にようばう/を¥まゐらせ/らる。¥そも¥この¥にようばう/と¥まうす/は、¥さくらまちの−ちうなごん−しげのりの−きやう/の¥おん=むすめ、¥きんちう¥いち/の¥びじん、¥ならび−なき¥こと/の¥じやうず/にて/ぞ¥ましまし/ける。¥れんぜいの−だいなごん−りうはうの−きやう、¥いまだ¥せうしやう/なり/し¥とき、¥み−そめ/たり/し¥にようばう/なり。¥はじめ/はP354¥うた/を¥よみ、¥ふみ/を/ば¥つくさ/れ/けれ/ども、¥たまづさ/の¥かず/のみ¥つもり/て、¥なびく¥けしき/も¥なかり/し/が、¥さすが¥なさけ/に¥よわる¥こころ/に/や、¥つひに/は¥なびき¥たまひ/けり。¥され/ども¥いま/は¥きみ/へ¥めさ/れ¥まゐらせ/て、¥せんかた/も¥なく¥かなしく/て、¥あか/ぬ¥わかれ/の¥なみだ/に/や、¥そで¥しほたれ/て、¥ほし−あへ/ず。¥せうしやう¥いか/に/も−し/て、¥こがうの=との/を¥いま−いちど¥み¥たてまつる¥こと/も/や/と、¥その¥こと/と¥なく¥つね/は¥さんだい−せ/られ/けり。¥こがうの=との/の¥おはし/ける¥つぼね/の¥へん、¥かなた−こなた/へ、¥たたずみ−ありき¥たまひ/けれ/ども、¥こがうの=との、¥われ¥きみ/へ¥めさ/れ¥まゐらせ/ぬる¥うへ/は、¥せうしやう¥いか/に¥まうす/とも、¥ことば/を/も¥かはす/べから/ず/とて、¥つて/の¥なさけ/を/だに/も¥かけ/られ/ず。¥せうしやう¥もしや/と、¥いつしゆ/の¥うた/を¥よう/で、¥こがうの=との/の¥ましまし/ける¥つぼね/の¥み=す/の¥うち/へ/ぞ¥なげ−いれ/ける。¥
おもひ−かね¥こころ/は¥そら/に¥みちのく/の¥ちか/の¥しほがま¥ちかき¥かひ−なし W045¥
こがうの=との、¥やがて¥へんじ/も¥せ/まほしう/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥きみ/の¥おん=ため、¥おん=うしろめたし/と/や¥おもは/れ/けん、¥て/に/だに¥とつ/て/も¥み¥たまは/ず、¥やがて¥しやうとう/に¥とら/せ/て、¥つぼ/の−うち/へ/ぞ¥なげ−いださ/る。¥せうしやう¥なさけ−なう¥うらめしけれ/ども、¥さすが¥ひと/も/こそ¥みれ/と、¥そら−おそろしく/て、¥いそぎ¥とつ/て¥ふところ/に¥ひき−いれ/て¥いで/られ/ける/が、¥なほ¥たち−かへり、¥
たまづさ/を¥いま/は¥て/に/だに¥とら/じ/と/や¥さ/こそ¥こころ/に¥おもひ−すつ/とも W046¥
いま/は¥この−よ/にて¥あひ−み/ん¥こと/も¥かたけれ/ば、¥いき/て¥ゐ/て、¥と/に−かく/に¥ひと/を¥こひし/と¥おもは/ん/より、¥ただ¥しな/ん/と/のみ/ぞ¥ねがは/れ/ける。P355¥
にふだう−しやうこく、¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥ちうぐう/と¥まうす/も¥おん=むすめ、¥れんぜいの−せうしやう/も¥また¥むこ/なり。¥こがうの=との/に、¥ふたり/の¥むこ/を¥とら/れ/て/は、¥よ/の−なか¥よかる/まじ。¥いか/に/も−し/て、¥こがうの=との/を¥めし−いだい/て¥うしなは/ん」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥こがうの=との、¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥わが−み/の−うへ/は¥と/に/も−かく/に/も¥なり/な/ん、¥きみ/の¥おん=ため¥おん=こころ−ぐるし/と¥おもは/れ/けれ/ば、¥ある¥よ¥だいり/を/ば¥まぎれ−いで/て、¥ゆくへ/も¥しら/ず/ぞ¥うせ/られ/ける。¥しゆしやう¥おん=なげき¥なのめ/なら/ず、¥ひる/は¥よる/の−おとど/に/のみ¥いら/せ¥たまひ/て、¥おん=なみだ/に¥しづま/せ¥おはします。¥よる/は¥なんでん/に¥しゆつぎよ¥なつ/て、¥つき/の¥ひかり/を¥ごらんじ/て/ぞ、¥なぐさま/せ¥ましまし/ける。¥にふだう−しやうこく¥この¥よし/を¥うけたまはつ/て、「¥さて/は¥きみ/は、¥こがう¥ゆゑ/に¥おぼしめし−しづま/せ¥たまひ/たん/なり。¥さら/ん/に¥とつ/て/は」/とて、¥おん=かいしやく/の¥にようばう=たち/を/も¥まゐらせ/られ/ず、¥さんだい−し¥たまふ¥ひとびと/も¥そねま/れ/けれ/ば、¥にふだう/の¥けんゐ/に¥はばかつ/て、¥まゐり−かよふ¥しんか/も¥なし。¥なんによ¥うち−ひそめ/て、¥きんちう¥いまいましう/ぞ¥みえ/し。¥ころ/は¥はちぐわつ−とをか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥さ/しも¥くまなき¥そら/なれ/ども、¥しゆしやう/は¥おん=なみだ/に¥くもら/せ¥たまひ/て、¥つき/の¥ひかり/も¥おぼろ/に/ぞ¥ごらんぜ/られ/ける。¥やや¥しんかう/に¥およん/で、「¥ひと/や¥ある¥ひと/や¥ある」/と¥めさ/れ/けれ/ども、¥お=いらへ¥まうす¥もの/も¥なし。¥やや¥あつ/て、¥だんじやう/の−だいひつ−なかくに、¥その¥よ/しも¥お=とのゐ/に¥まゐり/て、¥はるか/に¥とほう¥さふらひ/ける/が、「¥なかくに」/と¥お=いらへ¥まうす。「¥なんぢ¥ちかう¥まゐれ。¥おほせ−くださ/る/べき¥むね¥あり」/と¥おほせ/けれ/ば、¥なにごと/やらん/と¥おもひ、¥ごぜん¥ちかう/ぞ¥さんじ/たる。「¥なんぢ¥もし¥こがう/が¥ゆくへ/や¥しつ/たる」/と¥おほせ/けれ/ばP356、「¥いかで/か¥しり¥まゐらせ¥さふらふ/べき」/と¥まうす。「¥まことや¥こがう/は、¥さが/の¥へん、¥かたをりど/とかや¥し/たる¥うち/に¥あり/と、¥まうす¥もの/の¥ある/ぞ/とよ。¥あるじ/が¥な/を/ば¥しら/ず/とも、¥たづね/て¥まゐらせ/てんや」/と¥おほせ/けれ/ば、¥なかくに、「¥あるじ/が¥な/を¥しり¥さふらは/で/は、¥いかで/か¥たづね−あひ¥まゐらせ¥さふらふ/べき」/と¥まうし/けれ/ば、¥しゆしやう、¥げに/も/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥ましまさ/ず。¥
なかくに¥つくづく¥もの/を¥あんずる/に、¥まことや¥こがうの=との/は、¥こと¥ひき¥たまひ/し/ぞ/かし。¥この¥つき/の¥あか−さ/に、¥きみ/の¥おん=こと¥おもひ−いで¥まゐらせ/て、¥こと¥ひき¥たまは/ぬ¥こと/は¥よも¥あら/じ。¥だいり/にて¥こと¥ひき¥たまひ/し¥とき、¥なかくに¥ふえ/の¥やく/に¥めさ/れ¥まゐらせ/しか/ば、¥その¥こと/の¥ね/は、¥いづく/にて/も¥きき−しら/んずる/ものを。¥さが/の¥ざいけ¥いく−ほど/か¥あら/ん、¥うち−まはつ/て¥たづね/ん/に、¥など/か¥きき−いださ/で¥ある/べき/と¥おもひ、「¥さ¥さふらは/ば、¥あるじ/が¥な/は¥しら/ず¥さふらふ/とも、¥たづね¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥たとひ¥たづね−あひ¥まゐらせ/て¥さふらふ/とも、¥ご=しよ/など¥さふらは/ず/は、¥うはのそら/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらは/んず/らん。¥ご=しよ/を¥たまはつ/て、¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥しゆしやう、¥げに/も/とて、¥やがて¥ご=しよ¥あそばい/て/ぞ¥くださ/れ/ける。「¥れう/の−お=むま/に¥のり/て¥ゆけ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥なかくに¥れう/の−お=むま¥たまはつ/て、¥めいげつ/に¥むち/を¥あげ、¥にし/を¥さし/て/ぞ¥あゆま/せ/ける。¥をしか¥なく¥この¥やまざと/と¥えいじ/けん、¥さが/の¥あたり/の¥あき/の¥ころ、¥さ/こそ/は¥あはれ/に/も¥おぼえ/けめ。¥かたをりど−し/たる¥や/を¥み−つけ/て/は、¥この¥うち/に/も/や¥おはす/らん/と、¥ひかへ−ひかへ¥きき/けれ/ども、¥こと¥ひく¥ところ/は¥なかり/けり。P357¥み=だう/など/へ/も¥まゐり¥たまへ/る¥こと/も/や/と、¥しやかだう/を¥はじめ/て、¥だうだう¥み−まはれ/ども、¥こがうの=との/に¥に/たる¥にようばう/だに/も¥なかり/けり。¥むなしう¥かへり−まゐり/たら/ん/は、¥まゐら/ざら/ん/より、¥なかなか¥あしかる/べし。¥これ/より¥いづち/へ/も、¥まよひ−ゆか/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥いづく/か¥わうぢ/なら/ぬ、¥み/を¥かくす/べき¥やど/も¥なし。¥いかが−せ/ん/と¥あんじ−わづらふ。¥まことや¥ほふりん/は¥ほど−ちかけれ/ば、¥つき/の¥ひかり/に¥さそは/れ/て、¥まゐり¥たまへ/る¥こと/も/や/と、¥そなた/へ¥むい/て/ぞ¥あくがれ/ける。¥
かめやま/の¥あたり¥ちかく、¥まつ/の¥ひとむら¥ある¥かた/に、¥かすか/に¥こと/ぞ¥きこえ/ける。¥みね/の¥あらし/か¥まつかぜ/か、¥たづぬる¥ひと/の¥こと/の¥ね/か、¥おぼつかなく/は¥おもへ/ども、¥こま/を¥はやめ/て¥ゆく/ほど/に、¥かたをりど−し/たる¥うち/に、¥こと/を/ぞ¥ひき−すまさ/れ/たる。¥ひかへ/て¥これ/を¥きき/けれ/ば、¥すこし/も¥まがふ/べう/も¥なく、¥こがうの=との/の¥つまおと/なり。¥がく/は¥なに/ぞ/と¥きき/けれ/ば、¥をつと/を¥おもう/て¥こふ/と¥よむ、¥さうぶれん/と¥いふ¥がく/なり/けり。¥なかくに、¥され/ば/こそ、¥きみ/の¥おん=こと¥おもひ−いで¥まゐらせ/て、¥がく/こそ¥おほけれ、¥この¥がく/を¥ひき¥たまふ¥こと/の¥やさし−さ/よ/と¥おもひ、¥こし/より¥やうでう¥ぬき−いだし、¥ちつと¥ならい/て、¥かど/を¥ほとほと/と¥たたけ/ば、¥こと/を/ば¥やがて¥ひき−やみ¥たまひ/ぬ。「¥これ/は¥だいり/より¥なかくに/が¥お=つかひ/に¥まゐり/て¥さふらふ。¥あけ/させ¥たまへ」/とて、¥たたけ/ども¥たたけ/ども、¥とがむる¥もの/も¥なかり/けり。¥やや¥あり/て、¥うち/より¥ひと/の¥いづる¥おと−し/けり。¥うれしう¥おもひ/て¥まつ¥ところ/に、¥ぢやう/を¥はづし、¥かど/を¥ほそめ/に¥あけ、¥いたいけ−し/たる¥こ−にようばう/の、¥かほ/ばかり¥さし−いだい/て、「¥これ/はP358¥さやう/に¥だいり/より¥お=つかひ/など¥たまはる/べき¥ところ/で/も¥さぶらは/ず。¥もし¥かどたがへ/にて/ぞ¥さぶらふ/らん」/と¥いひ/けれ/ば、¥なかくに、¥へんじ−せ/ば¥かど¥たて/られ、¥ぢやう¥ささ/れ/な/んず/と/や¥おもひ/けん、¥ぜひ−なく¥おし−あけ/て/ぞ¥いり/に/ける。¥つまど/の¥きは/なる¥えん/に¥ゐ/て、「¥なん/とて¥かやう/の¥ところ/に¥おん=わたり¥さふらふ/やらん。¥きみ/は¥おん=ゆゑ/に¥おぼしめし−しづま/せ¥たまひ/て、¥おん=いのち/も¥すでに¥あやふく/こそ¥みえ/させ¥ましまし¥さふらへ。¥かやう/に¥まうさ/ば、¥うはのそら/と/や¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/らん。¥ご=しよ/を¥たまはつ/て¥まゐり/て¥さふらふ」/とて¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥あり/つる¥にようばう¥とり−つい/で、¥こがうの=との/に/ぞ¥まゐらせ/ける。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、¥まことに¥きみ/の¥ご=しよ/にて/ぞ¥あり/ける。¥やがて¥おん=ぺんじ¥かい/て¥ひき−むすび、¥にようばう/の¥しやうぞく¥ひとかさね¥そへ/て/ぞ¥いださ/れ/たる。¥なかくに、「¥おん=ぺんじ/の¥うへ/は、¥とかう¥まうす/に¥および¥さふらは/ね/ども、¥べつ/の¥お=つかひ/にて/も¥さふらは/ば/こそ。¥ぢき/の¥おん=ぺんじ¥うけたまはら/で/は、¥いかで/か¥かへり−まゐり¥さふらふ/べき」/と¥まうし/けれ/ば、¥こがうの=との、¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥みづから¥へんじ−し¥たまひ/けり。「¥そこ/に/も¥きき¥たまひ/つ/らん¥やう/に、¥にふだう¥あまり/に¥おそろしき¥こと/を/のみ¥まうす/と¥きき/し/が¥あさまし−さ/に、¥ある¥よ¥ひそか/に¥しのび/つつ、¥だいり/を/ば¥まぎれ−いで/て、¥いま/は¥かかる¥ところ/の¥すまひ/なれ/ば、¥こと¥ひく¥こと/も¥なかり/し/が、¥あす/より¥おはら/の¥おく/へ¥おもひ−たつ¥こと/の¥さぶらへ/ば、¥あるじ/の¥にようばう、¥こよひ/ばかり/の¥なごり/を¥をしみ、¥いま/は¥よ/も¥ふけ/ぬ、¥たち−きく¥ひと/も¥あら/じ/など¥すすむる¥あひだ、¥さぞ/な¥むかし/の¥なごり/も¥さすが¥ゆかしく/て、¥て−なれ/し¥こと/を¥ひく/ほど/に、¥やすう/も¥きき−いださ/れ/けり/な」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ¥たまは/ね/ば、¥なかくに/も¥そぞろ/にP359¥そで/を/ぞ¥しぼり/ける。¥やや¥あつ/て、¥なかくに¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥あす/より¥おはら/の¥おく/へ¥おぼしめし−たつ¥こと/と¥さふらふ/は、¥さだめて¥おん=さま/など/も/や¥かへ/させ¥たまひ¥さふらは/んず/らん。¥しかる/べう/も¥さふらは/ず。¥さて¥きみ/を/ば¥なに/と/か、¥し¥まゐらせ¥たまふ/べき。¥ゆめゆめ¥かなひ¥さふらふ/まじ。¥あひ−かまへ/て¥この¥にようばう¥いだし¥まゐらす/な」/とて、¥とも/に¥めし−ぐし/たる¥めぶ、¥きじちやう/など¥とどめ−おき、¥その¥や/を¥しゆご−せ/させ、¥わが−み/は¥れう/の−お=むま/に¥うち−のつ/て、¥だいり/へ¥かへり−まゐつ/たれ/ば、¥よ/は¥ほのぼの/と/ぞ¥あけ/に/ける。¥なかくに、¥やがて¥れう/の−お=むま¥つなが/せ、¥にようばう/の¥しやうぞく/を/ば、¥はねむま/の¥しやうじ/に¥うち−かけ/て、¥いま/は¥さだめて¥ぎよ=しん/も¥なり/つ/らん、¥たれ/して/か¥まうす/べき/と¥おもひ、¥なんでん/を¥さし/て¥まゐる/ほど/に、¥しゆしやう/は¥いまだ¥ゆうべ/の¥ござ/に/ぞ¥ましまし/ける。「¥みなみ/に¥かけり¥きた/に¥むかふ、¥かんうん/を¥あき/の¥かり/に¥つけ−がたし。¥ひがし/に¥いで¥にし/に¥ながる、¥ただ¥せんばう/を¥あかつき/の¥つき/に¥よす」/と、¥おん=こころ−ほそ=げ/に¥うち−ながめ/させ¥たまふ¥ところ/に、¥なかくに¥つと¥まゐり/つつ、¥こがうの=との/の¥おん=ぺんじ/を/こそ¥まゐらせ/けれ。¥しゆしやう¥なのめ/なら/ず/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、「¥さら/ば¥なんぢ¥やがて¥ゆふさり¥ぐし/て¥まゐれ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥なかくに、¥にふだう−しやうこく/の¥かへり−きき¥たまは/ん¥ところ/は¥おそろしけれ/ども、¥これ¥また¥ちよくぢやう/なれ/ば、¥ひと/に¥くるま¥かつ/て、¥さが/へ¥ゆき−むかふ。¥こがうの=との¥まゐる/まじき¥よし¥のたまへ/ども、¥やうやう/に¥こしらへ¥たてまつり/て、¥くるま/に¥のせ¥たてまつり/て、¥だいり/へ¥まゐり/たり/けれ/ば、¥かすか/なる¥ところ/に¥しのば/せ/て、¥よなよな¥めさ/れ¥まゐらせ/ける/ほど/に、¥ひめみや¥ご=いつしよ¥いで−き/させ¥たまひ/けり。¥ばうもん/の−によゐん/と/は¥この¥みや/の¥おん=こと/なり。P360¥
にふだう−しやうこく、「¥こがう/が¥うせ/たり/と¥いふ/は、¥あとかた/も¥なき¥そらごと/なり。¥いか/に/も−し/て¥うしなは/ん」/と¥のたまひ/ける/が、¥なに/と/して/かは¥たばかり−いださ/れ/たり/けん、¥こがうの=との/を¥とらへ/つつ、¥あま/に¥なし/て/ぞ¥おつ−ぱな/たる。¥とし¥にじふさん。¥しゆつけ/は¥もと/より¥のぞみ/なり/けれ/ども、¥こころ/なら/ず¥あま/に¥なさ/れ、¥こき¥すみぞめ/に¥やつれ−はて、¥さが/の¥おく/に/ぞ¥すま/れ/ける。¥むげ/に¥うたてき¥こと=ども/なり。¥しゆしやう/は¥かやう/の¥こと=ども/に¥ご=なう¥つか/せ¥たまひ/て、¥つひに¥かくれ/させ¥たまひ/ける/とかや。¥ほふわう¥うち−つづき、¥おん=なげき/のみ/ぞ¥しげかり/ける。¥さんぬる¥えいまん/に/は、¥だいいち/の¥みこ¥にでうのゐん¥ほうぎよ¥なり/ぬ。¥あんげん−にねん/の−しちぐわつ/に/は、¥おん=まご¥ろくでうのゐん¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥てん/に¥すま/ば¥ひよく/の¥とり、¥ち/に¥あら/ば¥れんり/の¥えだ/と¥なら/ん/と、¥あまのがは/の¥ほし/を¥さし/て、¥さ/しも¥おん=ちぎり¥あさから/ざり/し¥けんしゆんもんゐん、¥あき/の¥きり/に¥をかさ/れ/て、¥あした/の¥つゆ/と¥きえ/させ¥たまひ/ぬ。¥としつき/は¥へだた/れ/ども、¥きのふ¥けふ/の¥おん=わかれ/の¥やう/に¥おぼしめし/て、¥おん=なみだ/も¥いまだ¥つきせ/ざる/に、¥ぢしよう−しねん/の−ごぐわつ/に/は、¥だいに/の¥わうじ¥たかくらのみや¥うた/れ/させ¥たまひ/ぬ。¥げんぜ¥ごしやう¥たのみ−おぼしめさ/れ/つる¥しんゐん/さへ、¥さきだた/せ¥たまひ/ぬれ/ば、¥と/に−かく/に、¥かこつ¥かた¥なき¥おん=なみだ/のみ/ぞ¥しげかり/ける。「¥かなしみ/の¥いたつ/て¥かなしき/は、¥おい/て¥のち、¥こ/に¥おくれ/たる/より/も¥かなしき/は¥なし。¥うらみ/の¥いたつ/て¥うらめしき/は、¥わかう/して¥おや/に¥さきだつ/より/も、¥うらめしき/は¥なし」/と、¥かの¥あさつなの−しやうこう/の、¥しそく¥すみあきら/に¥おくれ/て、¥かき/たり/ける¥ふで/の¥あと、¥いま/こそ¥おぼしめし−しら/れ/けれ。¥かの¥いちじよう−めうでん/のP361¥ご=どくじゆ/も、¥おこたら/せ¥たまは/ず、¥さんみつ−ぎやうぼふ/の¥ご=くんじゆ/も、¥こう¥つもら/せ¥おはします。¥てんが¥りやうあん/に¥なり/しか/ば、¥おほみやびと/も¥おしなべて、¥はな/の¥たもと/や¥やつれ/けん。¥
「めぐらしぶみ」(『めぐらしぶみ』)S0605¥にふだう−しやうこく、¥かやう/に¥いたく¥なさけ−なう¥あたり¥たてまつら/れ/たり/ける¥こと/を、¥さすが¥そら−おそろしう/や¥おもは/れ/けん、¥ほふわう¥なぐさめ¥まゐらせ/ん/とて、¥あきの−いつくしま/の−ないし/が¥はら/の¥ひめぎみ/の、¥しやうねん¥じふはち/に¥なり¥たまふ/を/ぞ、¥ほふわう/へ/は¥まゐらせ/らる。¥たうけ¥たけ/の¥くぎやう¥おほく¥ぐぶ−し/て、¥ひとへに¥にようご¥まゐり/の/ごとく/にて/ぞ¥あり/ける。¥しやうくわう¥かくれ/させ¥たまひ/て、¥わづか¥にしち−にち/だに¥すぎ/ざる/に、¥しかる/べから/ず/と/ぞ、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/ける。¥さる−ほど/に¥その−ころ¥しなのの−くに/に、¥きその−じらう−よしなか/と¥いふ¥げんじ¥あり/と¥きこえ/けり。¥かれ/は¥こ=たてはき−せんじやう−よしかた/が¥じなん/なり。¥しかる/を¥ちち¥よしかた/は、¥さんぬる¥きうじゆ−にねん−はちぐわつ−じふににち、¥かまくら/の−あく−げんだ−よしひら/が¥ため/に¥ちうせ/られ/ぬ。¥その−とき/は¥いまだ¥にさい/なり/し/を、¥はは¥かかへ/て、¥なくなく¥しなの/へ¥くだり、¥きその−ちうざう−かねとほ/が¥もと/に¥ゆい/て、「¥これ¥いか/に/も−し/て¥そだて/て、¥ひと/に¥なし/て、¥われ/に¥みせよ」/と¥いひ/けれ/ば、¥かねとほ¥かひがひしう¥うけ−とつ/て¥やういく−す。¥やうやう¥ちやうだい−する¥まま/に、¥ようぎ−たいはい¥ひと/に¥すぐれ、¥こころ/も¥ならび−なく¥かう/なり/けり。P362¥ちから/の¥つよさ、¥ゆみ−や¥うちもの¥とつ/て/は、¥すべて¥しやうこ/の¥たむら、¥としひと、¥よご−しやうぐん、¥ちらい、¥ほうしやう、¥せんぞ¥らいくわう、¥ぎかの−あつそん/と¥いふ/とも、¥これ/に/は¥いかで/か¥まさる/べき/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥
じふさん/で¥げんぶく−し/たり/し/に/も、¥まづ¥やはた/へ¥まゐり、¥つや−し/て、「¥わが¥しだい/の¥そぶ¥ぎかの−あつそん/は、¥この¥おん=がみ/の¥おん=こ/と¥なし/て、¥な/を¥はちまん−たらう−よしいへ/と¥かうし/き。¥かつうは¥その¥あと/を¥おふ/べし/とて、¥ご=ほうぜん/にて¥もとどり¥とり−あげ、¥きその−じらう−よしなか/と/こそ¥つけ/たり/けれ。¥つね/は¥めのと/の¥ちうざう/に¥ぐせ/られ/て、¥みやこ/へ¥のぼり、¥へいけ/の¥ふるまひ¥ありさま=ども/を/も、¥よくよく¥み−うかがひ/けり。¥きそ¥ある−とき¥めのと/の¥かなとほ/を¥よう/で、「¥そもそも¥ひやうゑ/の−すけ−よりとも/は、¥とう−はつ−か−こく/を¥うち−したがへ/て、¥とうかいだう/より¥せめ−のぼり、¥へいけ/を¥おひ−おとさ/ん/と¥す/なり。¥よしなか/も¥とうせん¥ほくろく¥りやうだう/を¥したがへ/て、¥いま¥いちにち/も¥さき/に¥へいけ/を¥ほろぼし/て、¥たとへば¥につぽんごく/に¥ふたり/の¥しやうぐん/と¥あふが/れ/ん/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥かねとほ¥おほき/に¥かしこまり−よろこん/で、「¥その¥れう/に/こそ、¥きみ/を/ば¥この¥にじふ−よ−ねん/まで¥やういく−し¥たてまつ/て¥さふらへ。¥かやう/に¥おほせ/らるる/こそ、¥はちまん=どの/の¥おん=すゑ/と/も¥おぼえ/させ¥ましませ」/とて、¥やがて¥むほん/を¥くはだつ。「¥まづ¥めぐらしぶみ¥さふらふ/べし」/とて、¥しなのの−くに/に/は、¥ねのゐの−こやた¥しげのの−ゆきちか/を¥かたらふ/に、¥そむく¥こと¥なし。¥これ/を¥はじめ/て¥しなの¥いつこく/の¥つはもの=ども、¥みな¥したがひ−つき/に/けり。¥かうづけの−くに/に/は、¥たご/の−こほり/の¥つはもの=ども、¥ちち¥よしかた/が¥よしみ/に¥よつ/て、¥これ/も¥したがひ−つき/に/けり。¥へいけ/の¥すゑ/にP363¥なり/ぬる¥をり/を¥え/て、¥げんじ¥ねんらい/の¥そくわい/を¥とげ/ん/と¥す。¥
「ひきやくたうらい」(『ひきやくたうらい』)S0606¥きそ/と¥いふ¥ところ/は、¥しなの/に¥とつ/て/も¥みなみ/の¥はし、¥みの−ざかひ/なれ/ば、¥みやこ/も¥むげ/に¥ほど−ちかし。¥へいけ/の¥ひとびと、「¥とうごく/の¥そむく/だに¥ある/に、¥ほくこく/さへ¥こ/は¥いか/に」/とて、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥にふだう−しやうこく¥のたまひ/ける/は、「¥たとひ¥しなの¥いつこく/の¥もの=ども/こそ、¥きそ/に¥したがひ−つく/と¥いふ/とも、¥ゑちごの−くに/に/は、¥よご−しやうぐん/の¥ばつえふ、¥じやうの−たらう−すけなが、¥おなじき−しらう−すけもち、¥これ=ら/は¥きやうだい¥とも/に¥たぜい/の¥もの/なり。¥おほせ−くだし/たら/ん/に、¥やすう¥うつ/て¥まゐらせ/て/んず」/と¥のたまへ/ば、「¥げに/も」/と¥まうす¥ひと/も¥あり、「¥いやいや、¥ただいま¥おん=だいじ/に¥および/な/んず」/と、¥ささやく¥ひとびと/も¥あり/ける/とかや。¥にんぐわつ−ひとひのひ、¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥ゑちごの−くに/の¥ぢうにん、¥じやうの−たらう−すけなが、¥ゑちごの−かみ/に¥にんず。¥これ/は¥きそ¥つゐたう−せ/らる/べき¥はかりごと/と/ぞ¥きこえ/し。¥おなじき−なぬかのひ、¥だいじん¥くぎやう、¥いへいへ/に/して、¥そんじよう−だらに¥ならびに¥ふどう−みやうわう¥かき¥くやう−せ/らる。¥これ/は¥ひやうらん−つつしみ/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥おなじき−ここのかのひ、¥かはちの−くに/の¥いしかは/の−こほり/に¥きよぢう−し/ける¥むさしの−ごん/の−かみ−にふだう−よしもと、¥しそく¥いしかはの−はんぐわんだい−よしかぬ、¥これ/も¥へいけ/を¥そむい/て、¥よりとも/に¥こころ/を¥かよはし/てP364、¥とうごく/へ¥おち−くだる/べし/など¥きこえ/しか/ば、¥へいけ¥やがて¥うつて/を¥つかはす。¥たいしやうぐん/に/は¥げん−だいふ/の−はうぐわん−すゑさだ、¥つの−はうぐわん−もりずみ、¥つがふ¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥かはちの−くに/へ¥はつかう−す。¥じやう/の¥うち/に/は、¥よしもと−ぼつし/を¥はじめ/と/して、¥わづか¥ひやくき/ばかり/に/は¥すぎ/ざり/けり。¥う/の−こく/より¥や−あはせ−し/て、¥ひとひ¥たたかひ−くらし、¥よ/に¥いり/けれ/ば、¥よしもと−ぼつし¥うちじに−す。¥しそく¥いしかはの−はんぐわんだい−よしかぬ/は、¥いたで¥おう/て¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥おなじき−じふいちにち、¥よしもと−ぼつし/が¥かうべ、¥みやこ/へ¥いつ/て¥おほぢ/を¥わたさ/る。¥りやうあん/に¥ぞくしゆ/を¥わたさ/るる¥こと、¥ほりかはのゐん¥ほうぎよ/の¥とき、¥さきの−つしまの−かみ−みなもとの−よしちか/が¥かうべ/を¥わたさ/れ/し、¥その¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥
あくる¥じふににち、¥ちんぜい/より¥ひきやく¥たうらい、¥うさ/の−だいぐうじ−きんみち/が¥まうし/ける/は、¥ちんぜい/の¥もの=ども、¥をがたの−さぶらう−これよし/を¥はじめ/と/して、¥うすき、¥へつぎ、¥まつら−たう/に¥いたる/まで、¥いつかう¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥どうしん/の¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、¥へいけ/の¥ひとびと、「¥とうごく¥ほくこく/の¥そむく/だに¥ある/に、¥さいこく/さへ¥こ/は¥いか/に」/とて、¥て/を¥うつ/て¥あさみ−あは/れ/けり。¥おなじき−じふろくにち、¥いよの−くに/より¥ひきやく¥たうらい、¥こぞ/の¥ふゆ/の¥ころ/より、¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥かはのの−しらう−みちきよ、¥いつかう¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥どうしん/の¥あひだ、¥びんごの−くに/の¥ぢうにん、¥ぬかの−にふだう−さいじやく/は、¥へいけ/に¥こころざし¥ふかかり/けれ/ば、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で¥いよの−くに/へ¥おし−わたり、¥だうぜん¥だうご/の¥さかひ/なる¥たかなほ/の−じやう/に¥おし−よせ/て、¥さんざん/に¥せめ/けれ/ば、¥かはのの−しらう−みちきよ¥うちじに−す。¥しそく¥かはのの−しらう−みちのぶ/は、¥あきの−くに/の¥ぢうにん、¥ぬたの−じらう/は¥ははかた/の¥をぢ/なり/けれ/ば、¥それ/へ¥こえ/て¥あり−あは/ず、¥ちち/を¥うた/せ/て¥やすから/ず¥おもひ/ける/が、¥いか/に/も−し/てP365¥さいじやく/を¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥うかがひ/ける。¥ぬかの−にふだう−さいじやく/は、¥しこく/の¥らうぜき/を¥しづめ/て、¥こんねん−しやうぐわつ−じふごにち、¥びんご/の¥とも/へ¥おし−わたり、¥いうくん−いうぢよ=ども¥めし−あつめ/て、¥あそび−たはぶれ、¥さかもり/ける¥ところ/へ、¥かはのの−しらう−みちのぶ、¥おもひ−きつ/たる¥もの=ども、¥ひやく−よ−にん¥あひ−かたらつ/て、¥ばつ/と¥おし−よす。¥さいじやく/が¥かた/に/も¥さんびやく−よ−にん¥あり/けれ/ども、¥にはかごと/にて¥あり/けれ/ば、¥おもひ−まうけ/ず、¥あわて−ふためき/ける/が、¥たて−あふ¥もの/を/ば¥い−ふせ¥きり−ふせ、¥まづ¥さいじやく/を¥いけどつ/て、¥いよの−くに/へ¥おし−わたり、¥ちち/が¥うた/れ/たる¥たかなほ/の−じやう/まで¥さげ−もて−ゆき、¥のこぎり/にて¥くび/を¥きつ/たり/と/も¥きこゆ。¥また¥はつつけ/に¥し/たり/と/も¥きこえ/けり。¥(『にうだうしきよ』)S0607¥その−のち/は¥しこく/の¥もの=ども、¥かはのの−しらう/に¥したがひ−つく。¥また¥きの−くに/の¥ぢうにん、¥くまの/の−べつたう−たんぞう/は、¥へいけ¥ぢうおん/の¥み/なり/し/が、¥たちまちに¥こころがはり−し/て、¥げんじ/に¥どうしん/の¥よし¥きこえ/しか/ば、¥へいけ/の¥ひとびと、¥とうごく¥ほくこく/の¥そむく/だに¥ある/に、¥なんかい¥さいかい¥かく/の/ごとし。¥いてき/の¥ほうき¥みみ/を¥おどろかし、¥げきらん/の¥せんべう¥しきり/に¥そうす。¥しい¥たちまちに¥おこれ/り。¥よ¥すでに¥うせ/な/ん/と¥する¥こと/は、¥かならず¥へいけ/の¥いちもん/に¥あら/ね/ども、¥こころ−ある¥ひとびと/の、¥なげき−かなしま/ぬ/は¥なかり/けり。P366
「にふだうせいきよ」¥おなじき−にじふさんにち、¥ゐん/の¥てんじやう/にて、¥にはか/に¥くぎやう−せんぎ¥あり。¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう/の¥まうさ/れ/ける/は、¥こんど¥ばんどう/へ¥うつて/は¥むかう/たり/と¥いへ/ども、¥させる¥し−いだし/たる¥こと/も¥なし。¥こんど/は¥むねもり¥たいしやうぐん/を¥うけたまはつ/て、¥とうごく¥ほくこく/の¥きようと=ら/を¥つゐたう−す/べき¥よし¥まうさ/れ/けれ/ば、¥しよきやう¥しきだい−し/て、「¥むねもりの−きやう/の¥まうしじやう、¥ゆゆしう¥さふらひ/な/んず」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あり/けり。¥くぎやう−てんじやうびと/も、¥ぶくわん/に¥そなはり、¥すこし/も¥きうせん/に¥たづさはら/ん/ほど/の¥ひとびと/は、¥むねもり/を¥たいしやうぐん/と/して、¥とうごく¥ほくこく/の¥きようと=ら/を、¥つゐたう−す/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥おなじき−にじふしちにち¥かどで−し/て、¥すでに¥うつ−たた/ん/と¥し¥たまひ/ける¥やはん/ばかり/より、¥にふだう−しやうこく¥ゐれい/の¥ここち/とて、¥とどまり¥たまひ/ぬ。¥あくる¥にじふはちにち、¥ぢうびやう/を¥うけ¥たまへ/り/と¥きこえ/しか/ば、¥きやう−ぢう¥ろくはら¥ひしめき−あへ/り。「¥すは¥し/つる/は」。「¥さ¥み/つる¥こと/よ」/と/ぞ¥ささやき/ける。¥にふだう−しやうこく¥やまひ¥つき¥たまへ/る¥ひ/より/して、¥ゆみづ/も¥のど/へ¥いれ/られ/ず、¥み/の¥うち/の¥あつき¥こと/は、¥ひ/を¥たく/が/ごとし。¥ふし¥たまへ/る¥ところ、¥しごけん/が¥うち/へ¥いる¥もの/は、¥あつ−さ¥たへ−がたし。¥ただ¥のたまふ¥こと/とて/は、「¥あたあた」/と/ばかり/なり。¥まことに¥ただごと/と/もP367¥みえ¥たまは/ず。¥あまり/の¥たへ−がた−さ/に/や、¥ひえいさん/より¥せんじゆゐ/の¥みづ/を¥くみ−くだし、¥いし/の¥ふね/に¥たたへ、¥それ/に¥おり/て¥ひえ¥たまへ/ば、¥みづ¥おびたたしう¥わき−あがつ/て、¥ほど−なく¥ゆ/に/ぞ¥なり/に/ける。¥もしや/と¥かけひ/の¥みづ/を¥まか/すれ/ば、¥いし/や¥くろがね/など/の¥やけ/たる¥やう/に、¥みづ¥ほとばしつ/て¥より−つか/ず。¥おのづから¥あたる¥みづ/は、¥ほむら/と¥なつ/て¥もえ/けれ/ば、¥こくえん¥てん−ちう/に¥みちみち/て、¥ほのほ¥うづまい/て/ぞ¥あがり/ける。¥これ/や¥むかし¥ほふざう−そうづ/と¥いひ/し¥ひと、¥えんわう/の¥しやう/に¥おもむい/て、¥はは/の¥しやうじよ/を¥たづね/し/に、¥えんわう¥あはれみ¥たまひ/て、¥ごくそつ/を¥あひ−そへ/て、¥せうねつ−ぢごく/へ¥つかはさ/る。¥くろがね/の¥もん/の¥うち/へ¥さし−いつ/て¥みれ/ば、¥りうしやう/など/の/ごとく/に、¥ほのほ¥そら/に¥うち−のぼり、¥たひやく−ゆじゆん/に¥および/けん/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥おぼえ/ける。¥また¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた、¥はちでう/の−にゐ=どの/の、¥ゆめ/に¥み¥たまひ/ける¥こと/こそ¥おそろしけれ。¥たとへば¥みやうくわ/の¥おびたたしう¥もえ/たる¥くるま/の、¥ぬし/も¥なき/を、¥もん/の¥うち/へ¥やり−いれ/たる/を¥みれ/ば、¥くるま/の¥ぜんご/に¥たつ/たる¥もの/は、¥あるひは¥うし/の¥おもて/の¥やう/なる¥もの/も¥あり、¥あるひは¥むま/の¥やう/なる¥もの/も¥あり。¥くるま/の¥まへ/に/は、¥む/と¥いふ¥もじ/ばかり¥あらはれ/たる、¥くろがね/の¥ふだ/を/ぞ¥うつ/たり/けり。¥にゐ=どの¥ゆめ/の¥うち/に、「¥これ/は¥いづく/より¥いづち/へ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥へいけ−だいじやう/の−にふだう=どの/の¥あくぎやう¥てうくわ−し¥たまへ/る/に¥よつ/て、¥えんま−わうぐう/より/の¥おん=むかひ/の¥おん=くるま/なり」/と¥まうす。「¥さて¥あの¥ふだ/は¥いか/に」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥なんえんぶだい¥こんどう−じふろく−ぢやう/の¥るしやなぶつ、¥やき−ほろぼし¥たまへ/る¥つみ/に¥よつ/て、¥むげん/の¥そこ/に¥しづめ¥たまふ/べき¥よし、¥えんま/の−ちやう/にて¥おん=さた¥あり/し/が、¥むげん/の¥む/を/ば¥かか/れ/たれ/ども、¥いまだ¥けん/のP368¥じ/を/ば¥かか/れ/ぬ/なり」/と/ぞ¥まうし/ける。¥にゐ=どの¥ゆめ¥さめ/て¥のち、¥あせみづ/に¥なり/つつ、¥これ/を¥ひと/に¥かたり¥たまへ/ば、¥きく¥ひと¥みな¥み/の−け¥よだち/けり。¥れいぶつ−れいしや/へ¥こんごん−しつぱう/を¥なげ、¥むま¥くら¥よろひ−かぶと¥ゆみ−や¥たち¥かたな/に¥いたる/まで、¥とり−いで¥はこび−いだし/て、¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ども、¥かなふ/べし/と/も¥みえ¥たまは/ず。¥ただ¥なんによ/の¥きんだち、¥あとまくら/に¥さし−つどひ/て、¥なげき−かなしみ¥たまひ/けり。¥うるふ−にんぐわつ−ふつかのひ、¥にゐ=どの¥あつ−さ¥たへ−がたけれ/ども、¥にふだう−しやうこく/の¥おん=まくら/に¥よつ/て、「¥おん=ありさま¥み¥たてまつる/に、¥ひ/に¥そへ/て¥たのみ¥すくなう/こそ¥みえ/させ¥おはしませ。¥もの/の¥すこし/も¥おぼえ/させ¥たまふ¥とき、¥おぼしめす¥こと¥あら/ば、¥おほせ−おか/れよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥にふだう−しやうこく、¥ひごろ/は¥さ/しも¥ゆゆしう¥おはせ/しか/ども、¥いまは/の−とき/に/も¥なり/しか/ば、¥よに/も¥くるし=げ/にて、¥いき/の¥した/にて¥のたまひ/ける/は、「¥たうけ/は¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥てうてき/を¥たひらげ、¥けんじやう¥み/に¥あまり、¥かたじけなく/も¥いつてん/の−きみ/の¥ご=ぐわいせき/と/して、¥しようじやう/の¥くらゐ/に¥いたり、¥えいぐわ¥すでに¥しそん/に¥のこす。¥こんじやう/の¥のぞみ/は、¥いちじ/も¥おもひ−おく¥こと¥なし。¥ただ¥おもひ−おく¥こと/とて/は、¥ひやうゑ/の−すけ−よりとも/が¥かうべ/を¥み/ざり/つる¥こと/こそ、¥なに/より/も¥また¥ほい−なけれ。¥われ¥いか/に/も−なり/な/ん¥のち、¥ぶつじ¥けうやう/を/も¥す/べから/ず、¥だうたふ/を/も¥たつ/べから/ず。¥いそぎ¥うつて/を¥くだし、¥よりとも/が¥かうべ/を¥はね/て、¥わが¥はか/の¥まへ/に¥かく/べし。¥それ/ぞ¥こんじやう¥ごしやう/の¥けうやう/にて¥あら/んずる/ぞ」/と¥のたまひ/ける/こそ、¥いとど¥つみ¥ふかう/は¥きこえ/し。¥もしや¥たすかる/と、¥いた/に¥みづ/を¥おき/て、¥ふし−まろび¥たまへ/ども、¥たすかる¥ここち/も¥しP369¥たまは/ず。¥おなじき−しにちのひ、¥もんぜつ−びやくち−し/て、¥つひに¥あづちじに/に/ぞ¥し¥たまひ/ける。¥むま¥くるま/の¥はせ−ちがふ¥おと/は、¥てん/も¥ひびき¥だいぢ/も¥ゆるぐ/ばかり/なり。¥いつてん/の−きみ、¥ばんじよう/の−あるじ/の、¥いか/なる¥おん=こと¥まします/とも、¥これ/に/は¥いかで/か¥まさる/べき。¥こんねん/は¥ろくじふし/に/ぞ¥なら/れ/ける。¥おいじに/と¥いふ/べき/に/は¥あら/ね/ども、¥しゆくうん¥たちまち/に¥つき/ぬれ/ば、¥だいほふ−ひほふ/の¥かうげん/も¥なく、¥しんめい−ぶつだ/の¥ゐくわう/も¥きえ、¥しよてん/も¥おうご−し¥たまは/ず。¥いはんや¥ぼんりよ/に¥おいて/を/や。¥み/に¥かはり¥いのち/に¥かはら/ん/と、¥ちう/を¥ぞんぜ/し¥すまん/の¥ぐんりよ/は、¥たうしやう−たうか/に¥なみ−ゐ/たれ/ども、¥これ/は¥め/に/も¥みえ/ず、¥ちから/に/も¥かかはら/ぬ¥むじやう/の¥せつき/を/ば、¥ざんじ/も¥たたかひ−かへさ/ず、¥また¥かへり−こ/ぬ¥しで/の−やま、¥みつせがは、¥くわうせん¥ちうう/の¥たび/の¥そら/に、¥ただ¥いつしよ/こそ¥おもむか/れ/けれ。¥され/ども¥ひごろ¥つくり−おか/れ/し¥ざいごふ/ばかり/こそ、¥ごくそつ/と¥なつ/て¥むかひ/に/も¥きたり/けめ。¥あはれ/なり/し¥こと=ども/なり。¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥おなじき−なぬかのひ、¥おたぎ/にて¥けぶり/に¥なし¥たてまつり、¥こつ/を/ば¥ゑんじつ−ほふげん¥くび/に¥かけ、¥つの−くに/へ¥くだり、¥きやうのしま/に/ぞ¥をさめ/ける。¥さ/しも¥につぽん¥いつしう/に¥な/を¥あげ、¥ゐ/を¥ふるひ/し¥ひと/なれ/ども、¥み/は¥ひととき/の¥けぶり/と¥なつ/て、¥みやこ/の¥そら/へ¥たち−のぼり、¥かばね/は¥しばし¥やすらひ/て、¥はま/の¥まさご/に¥たはぶれ/つつ、¥むなしき¥つち/と/ぞ¥なり¥たまふ。P370
「きやうのしま」(『つきしま』)S0608¥さうそう/の¥よ、¥ふしぎ/の¥こと¥あり/けり。¥たま/を¥のべ、¥きんぎん/を¥ちりばめ/て、¥つくら/れ/たり/ける¥にしはちでう=どの、¥その/よ¥にはか/に¥やけ/に/けり。¥ひと/の¥いへ/の¥やくる¥こと/は、¥つね/の¥ならひ/なれ/ども、¥なにもの/の¥しわざ/に/や¥あり/けん、¥はうくわ/と/ぞ¥きこえ/し。¥また¥ろくはら/の¥みなみ/に¥あたつ/て、¥ひと/なら/ば¥にさんじふにん/ばかり/が¥こゑ−し/て、「¥うれし/や¥みづ、¥なる/は¥たき/の¥みづ」/と¥いふ¥ひやうし/を¥いだい/て、¥まひ−をどり、¥どつと¥わらふ¥こゑ−し/けり。¥さんぬる¥しやうぐわつ/に/は、¥しやうくわう¥かくれ/させ¥たまひ/て、¥てんが¥りやうあん/に¥なり/ぬ。¥わづか¥いちりやう−ぐわつ/を¥へだて/て、¥にふだう−しやうこく¥こうぜ/られ/ぬ。¥こころ−なき¥あやし/の¥もの/も、¥いかが¥うれへ/ざる/べき。¥いかさま¥これ/は¥てんぐ/の¥しよゐ/と¥いふ¥さた/にて、¥へいけ/の¥はやりを/の¥つはもの=ども¥ひやく−よ−にん、¥わらふ¥こゑ/に¥つい/て¥これ/を¥たづぬる/に、¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/に/は、¥この¥さん−か−ねん/は¥ゐん/も¥わたら/せ¥たまは/ず。¥ごしよ−あづかり¥びぜんの−ぜんじ−もとむね/と¥いふ¥もの¥あり。¥かの¥もとむね/が¥あひ−しつ/たる¥もの=ども、¥さけ/を¥もつ/て¥きたり−あつまり、¥のみ/ける/が、「¥かかる¥をりふし/に¥おと¥な¥せ/そ」/とて¥のみ/ける/が、¥しだいに¥のみ−ゑひ/て、¥かやう/に/は¥まひ−をどり/ける/なり。¥ろくはら/の¥つはもの=ども¥これ/を¥きき−つけ、¥ばつと¥おし−よせ、¥さけ/に¥ゑひ=ども¥にさんじふにん¥からめ−とつ/て、¥ろくはら/へ¥ゐ/て¥まゐり、¥つぼ/の−うち/にP371¥ひつ−すゑ/させ、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥おほ−ゆか/に¥たつ/て、¥こと/の¥しさい/を¥たづね−きき¥たまひ/て、「¥げに/も¥さやう/に¥のみ−ゑひ/たら/んずる¥もの/を、¥さう−なく¥きる/べき¥やう¥なし」/とて、¥みな¥かへさ/れ/けり。¥じやうげ¥ひと/の¥うせ/ぬる¥あと/に/は、¥あさゆふ/に¥かね¥うち−ならし、¥れいじ−せんぼふ−する¥こと/は、¥つね/の¥ならひ/なれ/ども、¥この¥ぜんもん¥こうぜ/られ/て¥のち/は、¥いささか¥くぶつ−せそう/の¥いとなみ/と¥いふ¥こと/も¥なし。¥あさゆふ¥ただ¥いくさ−かつせん/の¥いとなみ/の¥ほか/は、¥また¥たじ¥なし/と/ぞ¥みえ/し。¥
およそ/は¥さいご/の¥しよらう/の¥ありさま=ども/こそ、¥うたてけれ/ども、¥まこと/に/は、¥ただびと/と/も¥おぼえ/ぬ¥こと=ども¥おほかり/けり。¥ひよし/の−やしろ/へ¥まゐり¥たまひ/し/に/も、¥たうけ¥たけ/の¥くぎやう¥おほく¥ぐぶ−し/て、「¥せふろく/の¥しん/の¥かすが/の¥ご=さんけい、¥うぢいり/など¥まうす/とも、¥これ/に/は¥いかで/か¥まさる/べき」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥なに/より/も¥また¥ふくはら/の¥きやうのしま¥つい/て、¥じやうげ¥わうらい/の¥ふね/の、¥いま/の¥よ/に¥いたる/まで、¥わづらひ¥なき/こそ¥めでたけれ。¥かの¥しま/は、¥さんぬる¥おうほう−ぐわんねん−にんぐわつ−じやうじゆん/に、¥つき−はじめ/られ/たり/ける/が、¥おなじき−はちぐわつ−ふつかのひ、¥にはか/に¥おほ−かぜ¥ふき¥おほ−なみ¥たつ/て、¥みな¥ゆり−うしなひ/て/き。¥おなじき−さんねん−さんぐわつ−げじゆん/に、¥あはの−みんぶ−しげよし/を¥ぶぎやう/にて¥つか/れ/ける/に、¥ひとばしら¥たて/らる/べき/なんど、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、¥それ/は¥なかなか¥ざいごふ/なる/べし/とて、¥いし/の¥おもて/に¥いつさいきやう/を¥かい/て、¥つか/れ/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥きやうのしま/と/は¥なづけ/けれ。P372
「じしんばう」(『じしんばう』)S0609¥ある¥ひと/の¥まうし/ける/は、¥きよもり=こう/は¥ただびと/に/は¥あら/ず。¥じゑ−そうじやう/の¥けしん/なり。¥その¥ゆゑ/は、¥つの−くに¥せいちようじ/の¥ひじり、¥じしんばう−そんゑ/と¥まうし/し/は、¥もと/は¥えいざん/の¥がくりよ、¥たねん¥ほつけ/の¥ぢしや/なり。¥しかる/を¥だうしん¥おこし¥りさん−し/て、¥この¥てら/に¥すみ/ける/を、¥ひと¥みな¥きえ−し/けり。¥さんぬる¥じようあん−にねん−じふにんぐわつ−にじふににち/の¥よ/に¥いつ/て、¥そんゑ¥じやうぢう/の¥ぶつぜん/に¥いたり、¥けふそく/に¥より−かかつ/て、¥ほけきやう¥よみ¥たてまつり/ける¥ところ/に、¥ゆめ/と/も¥なく¥うつつ/と/も¥なく、¥じやうえ/に¥たて−ゑぼし¥き/て、¥わらんづ¥はばき−し/たる¥をとこ¥ににん、¥たてぶみ/を¥もつ/て¥き/たり。¥そんゑ¥ゆめ/の¥うち/に、「¥あれ/は¥いづく/より/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥えんま−わうぐう/より¥せんじ/の¥さふらふ」/とて¥そんゑ/に¥わたす。¥そんゑ¥これ/を¥ひらい/て¥みる/に、「¥なんえんぶだい¥だい−につぽんごく¥つの−くに¥せいちようじ/の¥ひじり、¥じしんばう−そんゑ、¥らい¥にじふろくにち¥えんまらじやう−だいこくでん/に/して、¥じふまんぶ/の¥ほけきやう¥あり。¥じふまんごく/より¥じふまんにん/の¥そう/を¥くやう−し、¥ほつけ¥てんどく−せ/らる/べき/なり。¥そんゑ/も¥その¥にんず/たる¥うへ、¥いそぎ¥さんきん−せ/らる/べし。¥えんわうせん¥よつて¥くつしやう¥くだん/の/ごとし。¥じようあん−にねん−じふにんぐわつ−にじふににち、¥えんま/の−ちやう」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥そんゑ¥いなみ¥まうす/に¥およば/ね/ば、¥やがて¥りやうじよう/の¥うけぶみ/を¥たてまつる/と¥おぼえ/て、¥ゆめ¥さめ/ぬ。¥これ/を¥ゐんじゆ/の¥くわうやう−ばう/にP373¥かたり/たり/けれ/ば、¥きく¥ひと¥み/の−け¥よだち/けり。¥その−のち/は¥ひとへに¥しきよ/の¥おもひ/を¥なし/て、¥くち/に/は¥ぶつみやう/を¥となへ、¥こころ/に¥いんぜふ/の¥ひぐわん/を¥ねんず。¥おなじき−にじふごにち/の¥よ/に¥いつ/て、¥また¥じやうぢう/の¥ぶつぜん/に¥まゐり、¥れい/の/ごとく¥ねんじゆ¥どくきやう−す。¥ね/の−こく/ばかり、¥ねぶり¥せつ/なる/が¥ゆゑ/に、¥ぢうばう/に¥かへつ/て¥うち−ふす。¥うし/の−こく/ばかり、¥また¥さき/の/ごとく/に¥をとこ¥ににん¥きたつ/て、¥とうとう/と¥すすむる¥あひだ、¥そんゑ¥さんけい¥いたさ/ん/と¥すれ/ば、¥えはつ¥さらに¥なし。¥えんわうせん/を¥じせ/ん/と¥すれ/ば、¥はなはだ¥その¥おそれ¥あり。¥この¥おもひ/を¥なす¥ところ/に、¥ほふえ¥じねん/に¥み/に¥まとつ/て¥かた/に¥かかり、¥てん/より¥こがね/の¥はち¥くだる。¥ににん/の¥じゆぞう、¥ににん/の¥どうじ、¥じふにん/の¥げそう、¥しつぽう/の¥だいしや、¥じばう/の¥まへ/に¥げんず。¥そんゑ¥よろこん/で¥くるま/に¥のり、¥せいほく/に¥むかつ/て¥そら/を¥かける/と¥おぼえ/て、¥ほど−なく¥えんま−わうぐう/に¥いたり/ぬ。¥
わうぐう/の¥てい/を¥みる/に、¥ぐわいくわく¥くわうくわう/と/して、¥その¥うち¥べうべう/たり。¥その¥なか/に¥しつぽう¥しよじやう/の¥だいこくでん¥あり。¥かうくわう¥こんじき/に/して、¥さらに¥ぼんぶ/の¥まなこ/に¥および−がたし。¥その−ひ/の¥ほふゑ¥をはつ/て¥のち、¥よそう=ら¥みな¥かへり−さん/ぬ。¥そんゑ/は¥だいこくでん/の¥なんぱう/の¥ちうもん/に¥たつ/て、¥はるか/の¥だいこくでん/を¥み−わたせ/ば、¥みやうくわん−みやうじゆ、¥みな¥えんま−ほふわう/の¥おん=まへ/に¥かしこまる。¥あり−がたき¥さんけい/なり。¥この¥ついで/に¥ごしやう/の¥ざいしやう/を¥たづね¥まうさ/ん/と¥おもつ/て¥あゆみ−むかふ。¥その¥あひだ/に¥ににん/の¥じゆそう¥はこ/を¥もち、¥ににん/の¥どうじ¥かい/を¥さし、¥じふにん/の¥げそう¥れつ/を¥ひい/て、¥やうやう¥あゆみ−ちかづく¥とき、¥えんま−ほふわう、¥みやうくわん−みやうじゆ、¥ことごとく¥おり−むかふ。¥やくわう−ぼさつ、¥ゆうぜ−ぼさつ、¥ににん/の¥じゆそう/に¥へんじ、¥たもん¥ぢこく、¥ににん/の¥どうじ/に¥げんず。¥じふ−らせつによ、¥じふにん/の¥げそう/にP374¥へんじ/て、¥ずゐちく−きふじ−し¥たまへ/り。¥えんわう¥とつ/て¥のたまはく、「¥よそう=ら¥みな¥かへり−さん/ぬ。¥おん=ばう¥いち−にん¥きたる¥こと¥いかん」。¥そんゑ¥こたへ¥まうさ/れ/ける/は、「¥われ¥えうせう/より、¥ほつけ¥てんどく¥まいにち¥おこたら/ず/と¥いへ/ども、¥ごしやう/の¥ざいしやう/を¥いまだ¥しら/ず、¥たづね¥まうさ/ん/が¥ため/なり」。¥えんわう¥おほせ/ける/は、「¥わうじやう¥ふわうじやう/は¥ひと/の¥しん¥ふしん/に¥あり/と¥うんぬん。¥それ¥ほつけ/は¥さんぜ/の¥しよぶつ/の¥しゆつせ/の¥ほんくわい、¥しゆじやう¥じやうぶつ/の¥ぢきだう/なり。¥いちねん¥しんげ/の¥くどく/は、¥ごはらみつ/の¥ぎやう/に/も¥こえ、¥ごじふてんでん/の¥ずゐき/の¥くどく/は、¥はちじつ−か−ねん/の¥ふせ/に/も¥すぐれ/たり。¥され/ば¥なんぢ¥かの¥くりき/に¥よつ/て、¥とそつ/の¥ないゐん/に¥しやうず/べし」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥えんわう¥また¥みやうくわん/に¥ちよくし/て¥おほせ/ける/は、「¥この¥ひと/の¥いちご/の¥ぎやう、¥さぜん/の¥ふばこ/に¥あり。¥とり−いだい/て¥けた/の¥ひもん¥みせ¥たてまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥みやうくわん¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥なんぱう/の¥ほうざう/に¥ゆい/て、¥かの¥ひとつ/の¥ふばこ/を¥とつ/て¥まゐり、¥すなはち¥ふた/を¥ひらい/て¥よみ−きか/す。¥いちご/が¥あひだ¥おもひ/と¥おもひ、¥せ/し/と¥せ/し¥こと/の、¥ひとつ/と/して¥あらはれ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥そんゑ¥ひたん−ていきふ−し/て、「¥ただ¥ねがは−く/は、¥しゆつりしやうじ/の¥はうほふ/を¥をしへ、¥しようだいぼだい/の¥ぢきだう/を¥しめし¥たまへ」/と¥なくなく¥まうさ/れ/けれ/ば、¥えんわう¥あいみん−けうげ−し/て、¥しゆじゆ/の¥げ/を¥じゆす。¥
さいし−わうゐ−ざい−けんぞく¥しこ−むいちらいさうしん¥
じやうずゐ−ごふ−き−けいばく−が¥じゆく−けうくわん−むへんざい¥
この¥げ/を¥じゆし−をはつ/て、¥そんゑ/に¥ふぞく−す。¥そんゑ¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、「¥なんえんぶだい¥だい−につぽんごく/に、P375¥へい−だいしやうこく/と¥まうす¥ひと/こそ、¥つの−くに¥わだ/の−みさき/を¥てんじ/て、¥しめん¥じふ−よ−ちやう/に¥や/を¥たて、¥けふ/の¥じふまんぞうゑ/の/ごとく、¥おほく/の¥ぢきやうじや/を¥くつしやうじ/て、¥ばうばう/に¥いちめん/に¥ざ/に¥つけ、¥ねんじゆ¥どくきやう、¥ていねい/に¥ごんぎやう¥いたさ/れ¥さふらふ」/と¥まうす。¥えんわう¥ずゐき−かんたん−し¥たまひ/て、「¥くだん/の¥にふだう/は¥ただびと/に/は¥あら/ず、¥まことに/は¥じゑ−そうじやう/の¥けしん/なり。¥その¥ゆゑ/は、¥てんだい/の¥ぶつぽふ¥ごぢ/の¥ため/に、¥かり/に¥につぽん/に¥さいたん−する¥ゆゑ/に、¥われ¥かの¥ひと/を¥にちにち/に¥さんど¥らいする¥もん¥あり。¥くだん/の¥にふだう/に¥え/さす/べし」/とて、¥
きやうらい−じゑ−だいそうじやう¥てんだい−ぶつぽふ−おうごしや¥
じげん−さいしよ−しやうぐん−しん¥あくごふ−しゆじやう−どう−りやく¥
この¥もん/を¥よみ−をはつ/て、¥そんゑ/に¥また¥ふぞく−す。¥そんゑ¥よろこび/の¥なみだ/を¥ながい/て、¥なんぱう/の¥ちうもん/を¥いづる¥とき、¥じふ−よ−にん/の¥じゆそう=ら、¥くるま/の¥ぜんご/を¥しゆご−し、¥とうなん/に¥むかつ/て¥そら/を¥かけ/り、¥ほど−なく¥かへり−きたる/か/と¥おぼえ/て、¥ゆめ/の¥ここち−し/て¥いき−いで/ぬ。¥その−のち¥みやこ/へ¥のぼり、¥にふだう−しやうこく/の¥にしはちでう/の−てい/に¥ゆい/て、¥この¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、¥にふだう−しやうこく¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥やうやう/に¥もてなし、¥さまざま/の¥ひきでもの¥たう/で、¥その−とき/の¥けんじやう/に/は、¥りつし/に¥なさ/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥それ/より/して/こそ、¥きよもり=こう/を/ば、¥じゑ−そうじやう/の¥けしん/と/は、¥ひと¥みな¥しり/てげり。¥ぢきやう−しやうにん/は、¥こうぼふ−だいし/の¥さいたん、¥しらかはのゐん/は¥また¥ぢきやう−しやうにん/の¥けしん/なり。¥この¥きみ/は¥くどく/の¥はやし/を¥なし、¥ぜんごん/の¥とく/を¥かさね/させ¥おはします。¥まつだい/に/も¥きよもり=こう、¥じゑ−そうじやう/の¥けしん/にて、¥あくごふ/も¥ぜんごん/も¥とも/にP376¥こう/を¥つん/で、¥よ/の¥ため¥ひと/の¥ため/に、¥じた/の¥りやく/を¥なす/と¥みえ/たり。¥かの¥だつた/と¥しやくそん/の、¥どうしゆじやう/の¥りやく/に¥こと/なら/ず。¥
「ぎをんにようご」(『ぎをんにようご』)S0610¥また¥ふるい¥ひと/の¥まうし/ける/は、¥きよもり=こう/は¥ただびと/に/は¥あら/ず。¥まこと/に/は¥しらかはのゐん/の¥おん=こ/なり。¥その¥ゆゑ/は¥さんぬる¥えいきう/の¥ころほひ、¥ぎをん−にようご/とて、¥さいはひじん¥おはし/き。¥くだん/の¥にようばう/の¥すまひどころ/は、¥ひがしやま/の¥ふもと、¥ぎをん/の¥ほとり/にて/ぞ¥あり/ける。¥しらかはのゐん¥つね/は¥かしこ/へ¥ご=かう¥なる。¥ある−とき¥てんじやうびと¥いちりやう−にん、¥ほくめん¥せうせう¥めし−ぐし/て、¥しのび/の¥ご=かう¥あり/し/に、¥ころ/は¥さつき−はつか−あまり、¥まだ¥よひ/の¥こと/なる/に、¥さみだれ/さへ¥かき−くれ/て、¥よろづ¥もの¥いぶせかり/ける¥をりふし、¥くだん/の¥にようばう/の¥しゆくしよ¥ちかう¥み=だう¥あり。¥み=だう/の¥かたほとり/より、¥ひかりもの/こそ¥いで−き/たれ。¥かしら/は¥しろがね/の¥はり/を¥みがき−たて/たる¥やう/に¥きらめき、¥かたて/に/は¥つち/の¥やう/なる¥もの/を¥もち、¥かたて/に/は¥ひかる¥もの/を/ぞ¥もつ/たり/ける。¥これ/ぞ¥まこと/の¥おに/と¥おぼゆる。¥て/に¥もて/る¥もの/は、¥きこゆる¥うちで/の−こづち/なる/べし。¥いかが−せ/ん/とて、¥きみ/も¥しん/も¥おほき/に¥さわが/せ¥おはします。¥その−とき¥ただもり、¥ほくめん/の¥げらふ/にて、¥ぐぶ−せ/られ/たり/ける/を、¥ごぜん/へP377¥めし/て、「¥この¥なか/に/は¥なんぢ/ぞ¥ある/らん。¥あの¥もの¥い/も¥ころし、¥きり/も¥とどめ/な/ん/や」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て¥あゆみ−むかふ。¥ただもり¥ないない¥おもひ/ける/は、¥この¥もの¥さし/て¥たけき¥もの/と/は¥みえ/ず、¥おもふ/に¥きつね¥たぬき/の¥しわざ/にて/ぞ¥ある/らん。¥これ/を¥い/も¥ころし、¥きり/も¥とどめ/たら/ん/は、¥むげ/に¥ねん¥なから/まし。¥おなじく/は¥いけどり/に¥せ/ん/と¥おもう/て、¥あゆみ−むかふ。¥と/ばかり¥あつ/て/は¥さつ/と/は¥ひかり、¥と/ばかり¥あつ/て/は¥さつ/と/は¥ひかり、¥にさんど¥し/ける/を、¥ただもり¥はしり−よつ/て¥むず/と¥くむ。¥くま/れ/て、「¥こ/は¥いか/に」/と¥さわぐ。¥へんげ/の−もの/にて/は¥なかり/けり。¥ひと/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥その−とき¥じやうげ¥てんで/に¥ひ/を¥ともい/て、¥これ/を¥ごらんじ−み¥たまふ/に、¥ろくじふ/ばかり/の¥ほふし/なり。¥たとへば¥み=だう/の¥じようじ−ぼふし/にて¥あり/ける/が、¥ほとけ/に¥み=あかし/を¥まゐらせ/ん/とて、¥かたて/に/は¥てがめ/と¥いふ¥もの/に¥あぶら/を¥いれ/て¥もち、¥かたて/に/は¥かはらけ/に¥ひ/を¥いれ/て/ぞ¥もつ/たり/ける。¥あめ/は¥い/に−い/て¥ふる。¥ぬれ/じ/とて、¥こむぎ/の¥わら/を¥ひき−むすん/で¥かづい/たり/ける/が、¥かはらけ/の¥ひ/に¥かがやい/て、¥ひとへ/に¥しろがね/の¥はり/の/ごとく/に/は¥みえ/ける/なり。¥こと/の¥てい¥いちいち¥しだい/に¥あらはれ/ぬ。「¥これ/を¥い/も¥ころし、¥きり/も¥とどめ/たら/ん/は、¥いか/に¥ねん¥なから/まし。¥ただもり/が¥ふるまひ/こそ¥まことに¥しりよ¥ふかけれ。¥ゆみ−や−とり/は¥やさしかり/ける/ものかな」/とて、¥さ/しも¥ご=さいあい/と¥きこえ/し¥ぎをん−にようご/を、¥ただもり/に/こそ¥くださ/れ/けれ。¥この¥にようご¥はらみ¥たまへ/り。「¥うめ/らん¥こ、¥によし/なら/ば¥ちん/が¥こ/に¥せ/ん。¥なんし/なら/ば、¥ただもり¥とり/て、¥ゆみ−や−とり/に¥したてよ」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥すなはち¥なん/を¥うめ/り。¥こと/に¥ふれ/て/は¥ひろう−せ/ざり/けれ/ども、P378¥ないない/は¥もてなし/けり。¥
この¥こと¥いか/に/も−し/て¥そうせ/ばや/と¥おもは/れ/けれ/ども、¥しかる/べき¥びんぎ/も¥なかり/ける/が、¥ある−とき¥しらかはのゐん、¥くまの/へ¥ご=かう¥なる。¥きの−くに¥いとがさか/と¥いふ¥ところ/に、¥おん=こし¥かき−すゑ/させ、¥しばらく¥ご=きうそく¥あり/けり。¥その−とき¥ただもり、¥やぶ/に¥いくら/も¥あり/ける¥ぬかご/を、¥そで/に¥もり−いれ、¥ごぜん/へ¥まゐり¥かしこまつ/て、¥
いも/が¥こ/は¥はふ/ほど/に/こそ¥なり/に/けれ
/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゐん¥やがて¥おん=こころえ¥あつ/て、¥
ただ¥もり−とり/て¥やしなひ/に¥せよ W047
/と/ぞ¥つけ/させ¥ましまし/ける。¥さて/こそ¥わが¥こ/と/は¥もてなさ/れ/けれ。¥この¥わかぎみ、¥あまり/に¥よなき/を¥し¥たまひ/しか/ば、¥ゐん¥きこしめし/て、¥いつしゆ/の¥ご=えい/を¥あそばい/て/ぞ¥くださ/れ/ける。¥
よなき−す/と¥ただ¥もり−たて/よ¥すゑ/の¥よ/に¥きよく¥さかふる¥こと/も/こそ¥あれ W048¥
それ/より/して/こそ¥きよもり/と/は¥なのら/れ/けれ。¥じふに/の¥とし¥げんぶく−し/て¥ひやうゑ/の−すけ/に¥なり、¥じふはち/の¥とし¥し−ほん−し/て、¥しゐ/の−ひやうゑ/の−すけ/と¥まうせ/し/を、¥しさい¥ぞんぢ−せ/ぬ¥ひと/は、「¥くわぞく/の¥ひと/こそ¥かう/は」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥とばのゐん/は¥しろしめし/て、「¥きよもり/が¥くわぞく/は¥ひと/に¥おとら/じ」/と/こそ¥おほせ/けれ。¥むかし/も¥てんぢ−てんわう、¥はらみ¥たまへ/る¥にようご/を¥たいしよくくわん/に¥たまふ/とて、「¥この¥にようご/の¥うめ/らんP379¥こ、¥によし/なら/ば¥ちん/が¥こ/に¥せ/ん、¥なんし/なら/ば¥しん/が¥こ/に¥せよ」/と¥おほせ/ける/に、¥すなはち¥なん/を¥うめ/り。¥たふのみね/の¥ほんぐわん¥ぢやうゑ−くわしやう¥これ/なり。¥しやうだい/に/も¥かかる¥ためし¥あり/けれ/ば、¥まつだい/に/も¥きよもり=こう、¥まこと/に/は¥しらかはのゐん/の¥わうじ/と/して、¥さ/しも¥たやすから/ぬ¥てんが/の¥だいじ、¥みやこうつり/など¥いふ¥こと/を/も、¥おもひ−たた/れ/ける/に/こそ。¥
「すのまたかつせん」¥おなじき−はつかのひ、¥ごでうの−だいなごん−くにつなの−きやう/も¥うせ¥たまひ/ぬ。¥にふだう−しやうこく/と¥さ/しも¥ちぎり¥ふかう¥おはせ/し/が、¥どう−にち/に¥やまひ¥つい/て、¥おなじ−つき¥うせ¥たまひ/ける/こそ¥ふしぎ/なれ。¥おなじき−にじふににち、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう¥ゐんざん−し/て、¥ゐん/の−ごしよ/を¥ほふぢうじ=どの/へ¥ご=かう¥なし¥たてまつる/べき¥よし¥そうせ/らる。¥かの¥ごしよ/は¥さんぬる¥おうほう−ぐわんねん−しんぐわつ−じふごにち/に¥つくり−いださ/れ/て、¥いまびよし、¥いまぐまの、¥まぢかう¥くわんじやう−し¥たてまつり、¥せんずゐ−こだち/に¥いたる/まで、¥おぼしめす¥まま/なり/し/が、¥へいけ/の¥あくぎやう/に¥よつ/て、¥この¥にさん−か−ねん/は、¥ゐん/も¥わたら/せ¥たまは/ず。¥ごしよ/の¥はゑ−し/たる/を¥しゆり−し/て、¥ご=かう¥なし¥まゐらす/べき¥よし、¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう、「¥なん/の¥やう/も¥ある/べから/ず。¥ただ¥とうとう」/とて¥ご=かう¥なる。¥まづP380¥こ=けんしゆんもんゐん/の¥おはし/ける¥おん=かた/を¥ごらんずれ/ば、¥きし/の¥まつ、¥みぎは/の¥やなぎ、¥とし¥へ/に/けり/と¥おぼしく/て、¥こだかく¥なれ/り。¥たいえき/の¥ふよう、¥びあう/の¥やなぎ、¥これ/に¥むかふ/に¥いかんが¥なんだ¥すすま/ざら/ん。¥かの¥なんだい−せいきう/の¥むかし/の¥あと、¥いま/こそ¥おぼしめし−しら/れ/けれ。¥さんぐわつ−ひとひのひ、¥なんと/の¥そうがう=ら、¥みな¥ゆるさ/れ/て¥ほんぐわん/に¥ふくす。¥まつじ−しやうゑん¥いつしよ/も¥さうゐ¥ある/べから/ざる¥よし¥おほせ−くださ/る。¥おなじき−みつかのひ、¥だいぶつでん¥ことはじめ¥あり。¥ことはじめ/の¥ぶぎやう/に/は、¥さきの−させうべん−ゆきたか/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥この¥ゆきたか、¥せんねん¥やはた/へ¥まゐり、¥つや−せ/られ/たり/ける¥ゆめ/に、¥ご=はうでん/の¥み=と¥おし−ひらき、¥びんづら¥ゆう/たる¥てんどう/の¥いで/て、「¥これ/は¥だい−ぼさつ/の¥お=つかひ/なり。¥だいぶつでん¥ことはじめ/の¥ぶぎやう/の¥とき/は、¥これ/を¥もつ/べし」/とて、¥しやく/を¥たまはる/と¥いふ¥ゆめ/を¥み/て、¥さめ/て¥のち¥み¥たまへ/ば、¥うつつ/に¥まくらがみ/に/ぞ¥さふらひ/ける。¥あな¥ふしぎ、¥たうじ¥なにごと¥あつ/て/か、¥だいぶつでん¥ことはじめ/の¥ぶぎやう/に/は¥まゐる/べし/と¥おもは/れ/けれ/ども、¥ご=れいむ/なれ/ば、¥くわいちう−し/て¥しゆくしよ/に¥かへり、¥ふかう¥をさめ/て¥おか/れ/ける/が、¥へいけ/の¥あくぎやう/に¥よつ/て、¥なんと−えんしやう/の¥あひだ、¥おほく/の¥べん/の¥なか/に、¥この¥ゆきたか¥えらび−いださ/れ/て、¥だいぶつでん¥ことはじめ/の¥ぶぎやう/に¥まゐら/れ/ける¥しゆくえん/の¥ほど/こそ¥めでたけれ。¥
おなじき−とをかのひ、¥みのの−くに/の¥もくだい、¥はやむま/を¥もつて¥みやこ/へ¥まうし/ける/は、¥げんじ¥すで/に¥をはりの−くに/まで¥せめ−のぼり、¥みち/を¥ふさい/で、¥ひと/を¥いつかう¥とほさ/ぬ¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、¥へいけ¥やがて¥うつて/を¥さし−むけ/らる。¥たいしやうぐん/に/は、¥さひやうゑ/の−かみ−とももり、¥さちうじやう−きよつね、¥おなじき−せうしやう−ありもり、¥たんごの−じじう−ただふさ、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥ゑつちうの−じらう−ひやうゑ−もりつぎ、¥かづさの−ごらう−ひやうゑ−ただみつ、P381¥あく−しち−びやうゑ−かげきよ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥さんまん−よ−き、¥をはりの−くに/へ¥はつかう−す。¥にふだう−しやうこく¥こうぜ/られ/て、¥わづか/に¥ごじゆん/を/だに¥みた/ざる/に、¥さ/こそ¥みだれ/たる¥よ/と¥いひ/ながら、¥あさましかり/し¥こと=ども/なり。¥げんじ/の¥かた/に/は、¥じふらう−くらんど−ゆきいへ、¥ひやうゑ/の−すけ/の¥おとと−きやう/の−きみ−ぎゑん、¥つがふ¥その¥せい¥ろくせん−よ−き、¥をはりがは/を¥へだて/て、¥げんぺい¥りやうばう/に¥ぢん/を¥とる。¥おなじき−じふろくにち/の¥よ/に¥いつ/て、¥げんじ¥ろくせん−よ−き¥かは/を¥わたい/て、¥へいけ¥さんまん−よ−き/が¥せい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥とら/の−こく/より¥や−あはせ−し/て、¥よ/の¥あくる/まで¥たたかふ/に、¥へいけ/の¥かた/に/は¥ちつと/も¥さわが/ず。「¥かたき/は¥かは/を¥わたい/たれ/ば、¥むま¥もののぐ/も¥みな¥ぬれ/たる/ぞ。¥それ/を¥しるし/に¥うて/や」/とて、¥げんじ/を¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥ひやうゑ/の−すけ/の¥おとと−きやう/の−きみ−ぎゑん、¥ふかいり−し/て¥うた/れ/に/けり。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ¥さんざん/に¥たたかひ、¥いへのこ−らうどう¥おほく¥い/させ、¥ちから¥およば/で、¥かは/より¥ひがし/へ¥ひき−しりぞく。¥へいけ¥やがて¥かは/を¥わたい/て、¥おち−ゆく¥げんじ/を、¥おふものい/に¥い/て¥ゆく/に、¥あそこ−ここ/にて¥かへし−あはせ/て、¥ふせぎ−たたかふ/と¥いへ/ども、¥たぜい/に¥ぶぜい、¥かなふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。「¥すゐえき/を¥うしろ/に¥する¥こと¥なかれ/と/こそ¥いふ/に、¥こんど/の¥げんじ/の¥はかりごと/は¥おろか/なり」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ/は¥ひき−しりぞき、¥みかはの−くに/に¥うち−こえ/て、¥やはぎがは/の¥はし/を¥ひき、¥かいだて¥かい/て¥まち−かけ/たり。¥へいけ¥やがて¥つづい/て¥せめ¥たまへ/ば、¥そこ/を/も¥つひに¥せめ−おとさ/れ/ぬ。¥なほ/も¥つづい/て¥せめ¥たまは/ば、¥みかは¥とほたふみ/の¥せい/は、¥たやすう¥つく/べかり/し/を、¥たいしやうぐん−さひやうゑ/の−かみ−とももり、P382¥いたはり¥あり/とて、¥みかはの−くに/より¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/けり。¥こんど/も¥わづか/に¥いちぢん/を/こそ¥やぶら/れ/たれ/ども、¥ざんたう/を¥せめ/ざれ/ば、¥させる¥し−いだし/たる¥こと¥なき/が/ごとし。¥へいけ/は¥きよきよねん¥こまつの−おとど¥こうぜ/られ/ぬ。¥こんねん¥また¥にふだう−しやうこく¥うせ¥たまひ/ぬ。¥うんめい/の¥すゑ/に¥なる¥こと¥あらは/なり/しか/ば、¥ねんらい¥おんこ/の¥ともがら/の¥ほか/は、¥したがひ−つく¥もの¥なかり/けり。¥とうごく/は¥くさ/も¥き/も、¥みな¥げんじ/に/ぞ¥なびき/ける。¥
「しはがれごゑ」(『しはがれごゑ』)S0611¥さる−ほど/に¥ゑちごの−くに/の¥ぢうにん、¥じやうの−たらう−すけなが、¥ゑちごの−かみ/に¥にんぜ/らる。¥てうおん/の¥かたじけな−さ/に、¥きそ¥つゐたう/の¥ため/に/とて、¥その¥せい¥さんまん−よ−き/で、¥しなのの−くに/へ¥はつかう−す。¥ろくぐわつ−じふごにち/に¥かどで−し/て、¥すでに¥うつ−たた/ん/と¥し/ける¥やはん/ばかり、¥にはか/に¥そら¥かき−くもり、¥いかづち¥おびたたしう¥なつ/て、¥おほ−あめ¥くだり、¥てん¥はれ/て¥のち、¥こくう/に¥しはがれ/たる¥こゑ/を¥もつて、「¥なんえんぶだい¥こんどう−じふろく−ぢやう/の¥るしやなぶつ¥やき−ほろぼし¥たてまつ/たる¥へいけ/の¥かたうど−する¥もの¥ここ/に¥あり。¥よつて¥めし−とれ/や」/と、¥みこゑ¥さけん/で/ぞ¥とほり/ける。¥じやうの−たらう/を¥はじめ/と/して、¥これ/を¥きく¥つはもの=ども、¥みな¥み/の−け¥よだち/けり。¥らうどう=ども、「¥これ−ほど¥おそろしき¥てん/の¥おん=つげ/の¥さふらふ/に、P383¥ただ¥り/を¥まげ/て¥とまら/せ¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ども、「¥ゆみ−や¥とる¥み/の、¥それ/に¥よる/べから/ず」/とて、¥じやう/を¥いで/て、¥わづか¥にじふ−よ−ちやう/ぞ¥ゆき/たり/ける。¥また¥くろくも¥ひとむら¥たち−きたつ/て、¥すけなが/が¥うへ/に¥おほふ/と¥みえ/し/が、¥たちまち/に¥み¥すくみ¥こころ¥ほれ/て、¥らくば−し/て/けり。¥こし/に¥かか/れ/て¥たち/へ¥かへり、¥うち−ふす¥こと¥みとき/ばかり¥あつ/て、¥つひに¥しに/に/けり。¥ひきやく/を¥もつて¥みやこ/へ¥この¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、¥へいけ/の¥ひとびと、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥おなじき−しちぐわつ−じふしにち¥かいげん¥あつ/て、¥やうわ/と¥かうす。¥その−ひ¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥ちくごの−かみ−さだよし、¥ひごの−かみ/に¥なつ/て、¥ちくぜん¥ひご¥りやうごく/を¥たまはつ/て、¥ちんぜい/の¥むほん¥たひらげ/に、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥ちんぜい/へ¥はつかう−す。¥また¥その−ひ¥ひじやう/の¥しや¥おこなは/れ/て、¥さんぬる¥ぢしよう−さんねん/に¥ながさ/れ¥たまひ/し¥ひとびと、¥みな¥みやこ/へ¥めし−かへさ/る。¥にふだう−まつ=どの−てんが、¥びぜんの−くに/より¥のぼら/せ¥たまふ。¥めうおんゐん/の−だいじやう/の−おほい=どの、¥をはりの−くに/より¥ご=しやうらく、¥あぜち/の−だいなごん−すけかたの−きやう/は、¥しなのの−くに/より¥きらく/と/ぞ¥きこえ/し。¥
おなじき−にじふはちにち、¥めうおんゐん=どの¥ご=ゐんざん、¥さんぬる¥ちやうくわん/の¥きらく/に/は、¥ごぜん/の¥すのこ/に/して、¥がわうおん、¥げんじやうらく/を¥ひき¥たまひ/し/が、¥やうわ/の¥いま/の¥ききやう/に/は、¥せんとう/に/して¥しうふうらく/を/ぞ¥あそばさ/れ/ける。¥いづれ/も¥いづれ/も¥ふぜい¥をり/を¥おぼしめし−よら/せ¥たまひ/ける、¥お=こころばせ/こそ¥めでたけれ。¥あぜち/の−だいなごん−すけかたの−きやう/も、¥その−ひ¥おなじう¥ゐんざん−せ/らる。¥ほふわう¥えいらん¥あつ/て、「¥いか/に/や−いか/に、¥この−ころ/は¥ならは/ぬ¥ひな/の¥すまひ−し/て、¥えいきよく/など/も、¥いま/は¥さだめて¥あとかた¥あら/じ/と/こそ¥おぼしめせ/ども、¥まづ¥いまやう¥ひとつ¥あれ/かし」/とP384¥おほせ/けれ/ば、¥だいなごん¥ひやうし¥とつ/て、「¥しなの/に¥あん/なる¥きそぢがは」/と¥いふ¥いまやう/を、¥これ/は¥まさしう¥み−きか/れ/たり/しか/ば、「¥しなの/に¥あり/し¥きそぢがは」/と¥うたは/れ/ける/こそ、¥とき/に¥とつ/て/の¥かうみやう/なれ。¥
「よこたかはらかつせん」(『よこたがはらのかつせん』)S0612¥はちぐわつ−なぬかのひ、¥くわん/の−ちやう/に/して¥だい−にんわうゑ¥おこなは/る。¥これ/は¥まさかど¥つゐたう/の¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥くぐわつ−ひとひのひ、¥すみとも¥つゐたう/の¥れい/とて、¥いせ−だい−じんぐう/へ¥くろがね/の−よろひ−かぶと/を¥まゐらせ/らる。¥ちよくし/は¥さいしゆ¥じんぎ/の−ごん/の−たいふ−おほなかとみの−さだたか、¥みやこ/を¥たつ/て、¥あふみの−くに¥かふが/の¥うまや/より¥やまひ¥つい/て、¥おなじき−みつかのひ、¥いせ/の−りきう/に/して¥つひに¥しに/ぬ。¥また¥てうぶく/の¥ため/に、¥ごだんの−ほふ¥うけたまはつ/て¥おこなひ/ける¥こうざんぜ/の−だいあじやり、¥だい−ぎやうじ/の¥ひがんじよ/に/して、¥ねじに/に¥しに/ぬ。¥しんめい/も¥さんぱう/も、¥ご=なふじゆ¥なし/と¥いふ¥こと¥いちじるし。¥また¥だいげん/の−ほふ¥うけたまはつ/て¥おこなひ/ける、¥あんじやうじ/の−じつげん−あじやり/が、¥おん=くわんじゆ/を¥まゐらせ/たる/を、¥ひけん−せ/られ/けれ/ば、¥へいじ¥てうぶく/の¥よし/を¥ちうしん−し/ける/こそ¥おそろしけれ。「¥こ/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、「¥てうてき¥てうぶく−せよ/と¥おほせ−くださ/る。¥つらつら¥たうせい/の¥てい/を¥み¥さふらふ/に、¥へいけ¥もつぱら¥てうてき/と¥みえ/たり。¥よつて¥かれ/を¥てうぶく−す。¥なん/の¥とが/や¥さふらふ/べき」/と/ぞ¥まうし/ける。P385¥この¥ほふし¥きくわい/なり、¥しざい/か¥るざい/か/と¥さた¥あり/しか/ども、¥だいせうじ/の¥そうげき/に¥うち−まぎれ/て、¥なん/の¥さた/に/も¥およば/ず。¥へいけ¥ほろび¥げんじ/の¥よ/に¥なつ/て、¥かまくら/へ¥くだり、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥かまくら=どの¥かんじ¥たまひ/て、¥その¥けんじやう/に¥そうじやう/に¥なさ/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥おなじき−じふにんぐわつ−にじふしにち、¥ちうぐう¥ゐんがう¥かうぶら/せ¥たまひ/て、¥けんれいもんゐん/と/ぞ¥まうし/ける。¥しゆじやう¥いまだ¥えうしゆ/の¥おん=とき、¥ぼこう/の¥ゐんがう、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/て¥やうわ/も¥にねん/に¥なり/に/けり。¥せちゑ¥いげ¥つね/の/ごとし。¥にんぐわつ−にじふいちにち、¥たいはく¥ばうせい/を¥をかす。¥てんもんえうろく/に¥いはく、「¥たいはく¥ばうせい/を¥をかせ/ば、¥しい¥おこる」/と¥いへ/り。¥また、「¥しやうぐん¥ちよくめい/を¥うけたまはつ/て、¥くに/の¥さかひ/を¥いづ」/と/も¥みえ/たり。¥さんぐわつ−とをかのひ、¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥へいけ/の¥ひとびと¥たいりやく¥くわん−かかい−し¥たまふ。¥しんぐわつ−じふごにち、¥さきの−ごん−せう−そうづ−けんしん、¥ひよし/の−やしろ/に/して、¥によほふ/に¥ほけきやう¥いちまんぶ¥てんどく¥いたさ/るる¥こと¥あり/けり。¥ご=けちえん/の¥ため/に/とて¥ほふわう/も¥ご=かう¥なる。¥なにもの/の¥まうし−いだし/たり/ける/やらん、¥いちゐん¥さんもん/の¥だいしゆ/に¥おほせ/て、¥へいけ−つゐたう−せ/らる/べし/と¥きこえ/しか/ば、¥ぐんびやう¥だいり/へ¥さんじ/て、¥しはう/の¥ぢんどう/を¥けいご−す。¥へいじ/の¥いちるゐ、¥みな¥ろくはら/へ¥はせ−あつまる。¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥ひよし/の−やしろ/へ¥さんかう−す。¥さんもん/に¥また¥きこえ/ける/は、¥へいけ¥やま¥せめ/ん/とて、¥とうざん−す/と¥きこえ/しか/ば、¥だいしゆ¥ひがしざかもと/へ¥おり−くだつ/て、¥こ/は¥いか/に/と¥せんぎ−す。¥ほふわう/も¥えいりよ/を¥おどろか/させ¥おはします。¥くぎやう−てんじやうびと/も¥いろ/をP386¥うしなひ、¥ほくめん/の¥ともがら=ども/の¥なか/に/は、¥あまり/に¥あわて−さわい/で、¥わうずゐ¥つく¥もの¥おほかり/けり。¥さんじやう¥らくちう/の¥さうどう¥なのめ/なら/ず。¥さる−ほど/に¥しげひらの−きやう、¥あなふ/の¥へん/にて、¥ほふわう¥むかひ−とり¥まゐらせ/て、¥みやこ/へ¥くわんぎよ¥なし¥たてまつる。「¥いちゐん¥さんもん/の¥だいしゆ/に¥おほせ/て、¥へいけ−つゐたう−せ/らる/べし/と¥いふ¥こと/も、¥へいけ¥また¥やま¥せめ/ん/と¥いふ¥こと/も、¥あとかた−なき¥そらごと/なり。¥ただ¥てんま/の¥よく¥あれ/たる/に/こそ」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥ほふわう¥おほせ/なり/ける/は、「¥かく/のみ¥あら/ん/に/は、¥この−のち/は¥おん=ものまうで/など¥まうす¥おん=こと/も、¥おん=こころ/に/は¥まかす/まじき¥こと/やらん」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥おなじき−はつかのひ、¥にじふにしや/へ¥くわんぺいし/を¥たて/らる。¥これ/は¥ききん¥しつえき/に¥よつ/て/なり。¥おなじき−ごぐわつ−にじふしにち/に¥かいげん¥あつ/て、¥じゆえい/と¥かうす。¥その−ひ¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥ゑちごの−くに/の¥ぢうにん¥じやうの−しらう−すけもち、¥ゑちごの−かみ/に¥にんず。¥あに¥すけなが¥せいきよ/の¥あひだ、¥ふきつ/なり/とて、¥しきり/に¥じし¥まうし/けれ/ども、¥ちよくめい/なれ/ば¥ちから¥およば/ず。¥これ/に¥よつ/て¥すけもち/を¥ながもち/と¥かいみやう−す。¥
さる−ほど/に¥くぐわつ−ふつかのひ、¥ゑちごの−くに/の¥ぢうにん、¥じやうの−しらう−ながもち、¥きそ¥つゐたう/の¥ため/に/とて、¥ゑちご、¥では、¥あひづ¥しぐん/の¥つはもの=ども/を¥いんぞつ−し/て、¥つがふ¥その¥せい¥しまん−よ−き、¥しなのの−くに/へ¥はつかう−す。¥おなじき−ここのかのひ、¥たう−ごく¥よこたがはら/に¥ぢん/を¥とる。¥きそ/は¥よだ/の−じやう/に¥あり/ける/が、¥さんぜん−よ−き/で¥じやう/を¥いで/て¥はせ−むかふ。¥ここ/に¥しなの−げんじ、¥ゐのうへの−くらう−みつもり/が¥はかりごと/に、¥さんぜん−よ−き/を¥ななて/に¥わかち、¥にはか/に¥あかはた¥ななながれ¥つくつ/て、¥てんで/に¥さし−あげ、¥あそこ/の¥みね、¥ここ/の¥ほら/より¥よせ/けれ/ば、¥ゑちご/の¥せい=ども¥これ/を¥み/て、「¥あはや¥このP387¥くに/に/も¥み=かた/の¥あり/ける/は。¥ちから¥つき/ぬ」/とて¥いさみ−よろこぶ¥ところ/に、¥しだい/に¥ちかう¥なり/けれ/ば、¥あひづ/を¥さだめ/て、¥ななて/が¥ひとつ/に¥なり、¥あかはた=ども¥きり−すて/させ、¥かねて¥ようい−し/たり/ける¥しらはた/を、¥ざつと¥さし−あげ/て、¥とき/を¥どつと¥つくり/けれ/ば、¥ゑちご/の¥せい=ども¥これ/を¥み/て、「¥こ/は¥たばから/れ/に/けり。¥かたき¥なんじふまんぎ/か¥ある/らん、¥とり−こめ/られ/て/は¥かなふ/まじ」/とて、¥あわて−ふためき/ける/が、¥あるひは¥かは/へ¥おつ−ぱめ/られ、¥あるひは¥あくしよ/へ¥おひ−おとさ/れ/て、¥たすかる¥もの/は¥すくなう、¥うた/るる¥もの/ぞ¥おほかり/ける。¥じやうの−しらう/が¥むね/と¥たのみ−きつ/たる¥ゑちごの−やまの−たらう、¥あひづの−じようたん−ばう/など¥いふ¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの=ども、¥そこ/にて¥みな¥うつ−とら/れ/ぬ。¥じやうの−しらう、¥わが−み¥て−おひ、¥からき¥いのち/を¥いき/つつ、¥かは/に¥つい/て¥ゑちごの−くに/に¥ひき−しりぞく。¥ひきやく/を¥もつて¥みやこ/へ¥この¥よし/を¥まうし/たり/けれ/ども、¥へいけ/の¥ひとびと¥これ/を¥こと/と/も¥し¥たまは/ず。¥おなじき−じふろくにち、¥さきの−うだいしやう−むねもりの−きやう、¥だいなごん/に¥くわんぢやく−し/て、¥じふぐわつ−みつかのひ、¥ないだいじん/に¥なり¥たまふ。¥おなじき−なぬか、¥よろこび−まうし/の¥あり/し/に、¥くぎやう/に/は¥くわざんのゐん−ちうなごん/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥じふににん¥こしよう−し/て¥やり−つづけ/らる。¥くらんど/の−とう−ちかむね¥いげ、¥てんじやうびと¥じふろくにん¥ぜんく−す。¥ちうなごん¥しにん、¥さんみ/の−ちうじやう/も¥さん−にん/まで¥おはし/き。¥とうごく¥ほくこく/の¥げんじ=ら、¥はち/の/ごとく/に¥おこり−あひ、¥ただいま¥みやこ/へ¥みだれ−いる¥よし¥きこえ/しか/ども、¥へいけ/の¥ひとびと/は、¥かぜ/の¥ふく/やらん、¥なみ/の¥たつ/やらん/を/も¥しり¥たまは/ず。¥かやう/に¥はなやか/なり/し¥こと=ども、¥なかなか¥いふ−かひ−なう/ぞ¥みえ/し。P388¥さる−ほど/に¥ことし/も¥くれ/て、¥じゆえい/も¥にねん/に¥なり/に/けり。¥せちゑ¥いげ¥つね/の/ごとし。¥しやうぐわつ−いつかのひ、¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/けり。¥これ/は¥とばのゐん¥ろくさい/にて、¥てうきん/の−ぎやうがう¥あり/し、¥その¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥にんぐわつ−にじふいちにち、¥むねもり=こう¥じゆ−いちゐ−し¥たまふ。¥やがて¥その−ひ¥ないだいじん/を/ば¥じやうへう−せ/らる。¥これ/は¥ひやうらん−つつしみ/の¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥なんと−ほくれい/の¥だいしゆ、¥ゆやきんぽうせん/の¥そうと、¥いせ−だい−じんぐう/の¥さいしゆ¥じんぐわん/に¥いたる/まで、¥いつかう¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥こころ/を¥かよは/し/けり。¥しかい/に¥せんじ/を¥なし−くだし、¥しよ−こく/へ¥ゐんぜん/を¥つかはせ/ども、¥ゐんぜん¥せんじ/を/も、¥みな¥へいけ/の¥げぢ/と/のみ¥こころ−え/て、¥したがひ−つく¥もの¥なかり/けり。¥

平家物語 巻第七  総かな版(元和九年本)
「ほくこくげかう」(『しみづのくわんじや』)S0701 P13¥じゆえい−にねん−さんぐわつ−じやうじゆん/に、¥きその−くわんじや−よしなか、¥ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥ふくわい/の¥こと¥あり/と¥きこえ/けり。¥さる−ほど/に¥かまくら/の−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥きそ¥つゐたう/の¥ため/に/とて、¥その¥せい¥じふまん−よ−き/で、¥しなのの−くに/へ¥はつかう−す。¥きそ/は¥その−ころ¥よだ/の−じやう/に¥あり/ける/が、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥しろ/を¥いで/て、¥しなの/と¥ゑちご/の¥さかひ/なる¥くまさかやま/に¥ぢん/を¥とる。¥ひやうゑ/の−すけ/も¥おなじき−くに/の¥うち、¥ぜんくわうじ/に/こそ¥つき¥たまへ。¥きそ、¥めのとご/の¥いまゐの−しらう−かねひら/を¥ししや/にて、¥ひやうゑ/の−すけ/の¥もと/へ¥つかはす。「¥そもそも¥ご=へん/は¥とう−はつ−か−こく/を¥うち−したがへ/て、¥とうかいだう/より¥せめ−のぼり、¥へいけ/を¥おひ−おとさ/ん/と/は¥し¥たまふ/なり。¥よしなか/も¥とうせん¥ほくろく¥りやうだう/を¥うち−したがへ/て、¥ほくろくだう/より¥せめ−のぼり、¥いま¥いちにち/も¥さき/に¥へいけ/を¥ほろぼさ/ん/と¥する¥こと/で/こそ¥ある/に、¥いか/なる¥しさい¥あつ/て/か、¥ご=へん/と¥よしなか、¥なか/を¥たがう/て、¥へいけ/に¥わらは/れ/ん/と/は¥おもふ/べき。¥ただし¥をぢ/の¥じふらう−くらんど=どの/こそ、¥ご=へん/を¥うらみ¥たてまつる¥こと¥あり/とて、¥よしなか/がP14¥もと/へ¥おはし/つる/を、¥よしなか/さへ、¥すげなう¥あひ−しらひ¥もてなし¥まうさ/ん¥こと、¥いかん/ぞ/や¥さふらへ/ば、¥これ/まで/は¥うち−つれ¥まうし/たり。¥よしなか/に¥おいて/は¥まつたく¥いしゆ¥おもひ¥たてまつら/ず」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥ひやうゑ/の−すけ/の¥へんじ/に、「¥いま/こそ¥さやう/に¥のたまへ/ども、¥まさしう¥よりとも¥うつ/べき¥よし/の¥むほん/の¥くはたて¥あり/と、¥つげ−しらする¥もの¥あり。¥ただし¥それ/に/は¥よる/べから/ず」/とて、¥とひ、¥かぢはら/を¥さき/と/して、¥すまんぎ/の¥ぐんびやう/を¥さし−むけ/らるる¥よし¥きこえ/しか/ば、¥きそ¥しんじつ¥いしゆ¥なき¥よし/を¥あらはさ/ん/が¥ため/に、¥ちやくし/に¥しみづの−くわんじや−よししげ/とて、¥しやうねん¥じふいつさい/に¥なり/ける¥こ−くわんじや/に、¥うみの、¥もちづき、¥すは、¥ふぢさは/など¥いふ、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/を¥あひ−そへ/て、¥ひやうゑ/の−すけ/の¥もと/へ¥つかはす。¥ひやうゑ/の−すけ、「¥この−うへ/は¥まことに¥いしゆ¥なかり/けり。¥よりとも¥いまだ¥せいじん/の¥こ/を¥もた/ず。¥よしよし、¥さら/ば¥こ/に¥し¥まうさ/ん」/とて、¥しみづの−くわんじや/を¥あひ−ぐし/て、¥かまくら/へ/こそ¥かへら/れ/けれ。¥
(『ほつこくげかう』)S0702¥さる−ほど/に¥きそ−よしなか/は、¥とうせん¥ほくろく¥りやうだう/を¥うち−したがへ/て、¥すでに¥みやこ/へ¥みだれ−いる¥よし¥きこえ/けり。¥へいけ/は¥こぞ/の¥ふゆ/の¥ころ/より、「¥みやうねん/は¥むま/の¥くさがひ/に¥つい/て、¥いくさ¥ある/べし」/と¥ひろう−せ/られ/たり/けれ/ば、¥せんをん¥せんやう、¥なんかい¥さいかい/の¥つはもの=ども、¥うんか/の/ごとく/に¥はせ−あつまる。¥とうせんだう/は¥あふみ、¥みの、¥ひだ/の¥つはもの/は¥まゐり/たれ/ども、¥とうかいだう/は¥とほたふみ/より¥ひんがし/の¥つはもの/は¥いち−にん/も¥まゐら/ず、¥にし/は¥みな¥まゐり/たり。¥ほくろくだう/は¥わかさ/より¥きた/の¥つはもの/は¥いち−にん/も¥まゐら/ず。¥へいけ/の¥ひとびと、¥まづ¥きそ−よしなか/を¥うつ/て¥のち、¥ひやうゑ/の−すけ−よりとも/を¥うつ/べき¥よし/の¥くぎやう−せんぎ¥あり/て、¥ほくこく/へ¥うつて/を¥さし−むけ/らる。¥たいしやうぐん/に/は、¥こまつの−さんみ/の−ちうじやう−これもりP15、¥ゑちぜんの−さんみ−みちもり、¥ふくしやうぐん/に/は、¥さつまの−かみ−ただのり、¥くわうごぐう/の−すけ−つねまさ、¥あはぢの−かみ−きよふさ、¥みかはの−かみ−とものり、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ、¥かづさの−たいふ/の−はうぐわん−ただつな、¥ひだの−たいふ/の−はうぐわん−かげたか、¥かはちの−はうぐわん−ひでくに、¥たかはしの−はうぐわん−ながつな、¥むさしの−さぶらう−ざゑもん−ありくに/を¥さき/と/して、¥いじやう¥たいしやうぐん¥ろくにん、¥しかる/べき¥さぶらひ¥さんびやくしじふ−よ−にん、¥つがふ¥その¥せい¥じふまん−よ−き、¥しんぐわつ−じふしちにち/の¥たつ/の−いつてん/に¥みやこ/を¥たつ/て、¥ほくこく/へ/こそ¥おもむか/れ/けれ。¥かたみち/を¥たまはつ/てげれ/ば、¥あふさか/の−せき/より¥はじめ/て、¥ろし/に¥もつ/て¥あふ¥けんもん−せいけ/の¥しやうぜい¥くわんもつ/を/も¥おそれ/ず、¥いちいち/に¥みな¥うばひ−とる。¥しが、¥からさき、¥みつかはじり、¥まの、¥たかしま、¥しほつ、¥かひづ/の¥みち/の¥ほとり/を、¥しだいに¥つゐふく−し/て¥とほり/けれ/ば、¥にんみん¥こらへ/ず/して、¥さんや/に¥みな¥でうさん−す。¥
「ちくぶしままうで」(『ちくぶしままふで』)S0703¥たいしやうぐん−これもり、¥みちもり/は¥すすみ¥たまへ/ども、¥ふくしやうぐん−ただのり、¥つねまさ、¥きよふさ、¥とものり/など/は、¥いまだ¥あふみの−くに¥しほつ、¥かひづ/に¥ひかへ¥たまへ/り。¥なか/に/も¥くわうごぐう/の−すけ−つねまさ/は、¥えうせう/の¥とき/より、¥しいか−くわんげん/の¥みち/に¥ちやうじ¥たまへ/る¥ひと/にて¥おはし/けれ/ば、¥かかる¥みだれ/の¥なか/に/も¥こころ/を¥すまし、¥ある¥あした、¥みづうみ/の¥はた/に¥うち−いで、¥はるか/の¥おき/なる¥しま/を¥み−わたい/て、¥とも/に¥さふらふP16¥とう−びやうゑ/の−じよう−ありのり/を¥めし/て、「¥あれ/は¥いか/なる¥しま/ぞ」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥あれ/こそ¥きこえ¥さふらふ¥ちくぶしま/にて¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥つねまさ、「¥さる−こと¥あり。¥いざや¥まゐら/ん」/とて、¥とう−びやうゑ/の−じよう−ありのり、¥あんゑもん/の−じよう−もりのり¥いげ、¥さぶらひ¥ろくにん¥めし−ぐし/て、¥こ−ぶね/に¥のり、¥ちくぶしま/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥ころ/は¥うづき−なか/の−やうか/の¥こと/なれ/ば、¥みどり/に¥みゆる¥こずゑ/に/は、¥はる/の¥なさけ/を¥のこす/か/と¥うたがは/れ、¥かんこく/の¥あうぜつ/の¥こゑ¥おい/て、¥はつね¥ゆかしき¥ほととぎす、¥をりしり−がほ/に¥つげ−わたり、¥まつ/に¥ふぢなみ¥さき−かかつ/て、¥まことに¥おもしろかり/けれ/ば、¥つねまさ¥いそぎ¥ふね/より¥おり、¥きし/に¥あがつ/て、¥この¥しま/の¥けしき/を¥み¥たまふ/に、¥こころ/も¥ことば/も¥およば/れ/ず。¥かの¥しんくわう、¥かんぶ、¥あるひは¥どうなん¥くわぢよ/を¥つかはし、¥あるひは¥はうし/を/して¥ふし/の−くすり/を¥もとめ/しむ。「¥ほうらい/を¥み/ず/は、¥いなや¥かへら/じ」/と¥いひ/て、¥いたづら/に¥ふね/の¥うち/にて¥おい、¥てんすゐ¥ばうばう/と/して、¥もとむる¥こと/を¥え/ざり/けん、¥ほうらいどう/の¥ありさま/も、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥ある¥きやう/の¥もん/に¥いはく、「¥えんぶだい/の¥うち/に¥みづうみ¥あり。¥その¥なか/に¥こんりんざい/より¥おひ−いで/たる¥すゐしやうりん/の¥やま¥あり。¥てんによ¥すむ¥ところ」/と¥いへ/り。¥すなはち¥この¥しま/の¥おん=こと/なり/とて、¥つねまさ、¥みやうじん/の¥おん=まへ/に¥つい−ゐ¥たまへ/り。「¥それ¥だいべんくどくてん/は、¥わうご/の¥によらい、¥ほつしん/の¥だいじ/なり。¥めうおん¥べんざい¥にてん/の¥な/は、¥かくべつ/なり/と/は¥まうせ/ども、¥ほんぢ¥いつたい/に/して、¥しゆじやう/を¥さいど−し¥たまへ/り。¥いちど¥さんけい/の¥ともがら/は、¥しよぐわん¥じやうじゆ¥ゑんまん−す/と¥うけたまはれ/ば、¥たのもしう/こそ¥さふらへ」/とて。¥しづか/に¥ほつせ¥まゐらせ/て¥ゐ¥たまへ/ば、¥やうやう¥ひ¥くれ、¥ゐまち/の−つき¥さし−いで/て、P17¥かいじやう/も¥てり−わたり、¥しやだん/も¥いよいよ¥かかやい/て、¥まことに¥おもしろかり/けれ/ば、¥じやうぢう/の¥そう、「¥これ/は¥きこゆる¥おん=こと/なり」/とて、¥おん=びは/を¥たてまつる。¥つねまさ¥これ/を¥とつ/て¥ひき¥たまふ/に、¥しやうげん、¥せきしやう/の¥ひきよく/に/は、¥みや/の¥うち/も¥すみ−わたり、¥まことに¥おもしろかり/けれ/ば、¥みやうじん/も¥かんおう/に¥たへ/ず/や¥おぼし/けん、¥つねまさ/の¥そで/の¥うへ/に¥びやくりう¥げんじ/て¥みえ¥たまへ/り。¥つねまさ¥あまり/の¥かたじけな−さ/に、¥しばらく¥おん=びは/を¥さし−おか/せ¥たまひ/て、¥かう/ぞ¥おもひ−つづけ/らる。¥
ちはやぶる¥かみ/に¥いのり/の¥かなへ/ばや¥しるく/も¥いろ/の¥あらはれ/に/けり W049¥
め/の¥まへ/にて¥てう/の¥をんでき/を¥たひらげ、¥きようと/を¥しりぞけ/ん¥こと¥うたがひ¥なし/と¥よろこん/で、¥また¥ふね/に¥のり、¥ちくぶしま/を/ぞ¥いで/られ/ける。¥あり−がたかり/し¥こと=ども/なり。¥
「ひうちかつせん」(『ひうちがつせん』)S0704¥さる−ほど/に¥きそ−よしなか/は、¥みづから/は¥しなの/に¥あり/ながら、¥ゑちぜんの−くに¥ひうち/が−じやう/を/ぞ¥かまへ/ける。¥かの¥じやうくわく/に¥こもる¥せい、¥へいせんじ/の−ちやうり−さいめい−ゐぎし、¥とがしの−にふだう−ぶつせい、¥いなづの−しんすけ、¥さいとうだ、¥はやしの−ろくらう−みつあきら、¥いしぐろ、¥みやざき、¥つちだ、¥たけべ、¥にふぜん、¥さみ/を¥はじめ/と/して、¥ろくせん−よ−き/こそ¥こもり/けれ。¥ところ¥もと/より¥くつきやう/の¥じやうくわく、¥ばんじやく¥そばだち¥めぐつ/て、¥しはう/に¥みね/を¥つらね/たり。¥やま/を¥うしろ/に¥し、¥やま/を¥まへ/に¥あつ。¥じやうくわく/の¥まへ/に/は、¥のうみがは、P18¥しんだうがは/とて¥ながれ/たり。¥かの¥ふたつ/の¥かは/の¥おちあひ/に、¥たいせき/を¥かさね−あげ、¥おほぎ/を¥きつ/て、¥さかもぎ/に¥ひき、¥しがらみ/を¥おびたたしう¥かき−あげ/たれ/ば、¥とうざい/の¥やま/の−ね/に、¥みづ¥せきこう/で、¥みづうみ/に¥むかへる/が/ごとし。¥かげ¥なんざん/を¥ひたし、¥あをく/して¥くわうやう/たり。¥なみ¥せいじつ/を¥しづめ/て、¥くれなゐ/に/して¥いんりん/たり。¥かの¥むねつち/の¥そこ/に/は、¥こんごん/の¥いさご/を¥しき、¥こんめいち/の¥なぎさ/に/は、¥とくせい/の¥ふね/を¥うかべ/たり。¥わが¥てう/の¥ひうち/が−じやう/の¥つきいけ/は、¥つつみ/を¥つき、¥みづ/を¥にごし/て、¥ひと/の¥こころ/を¥たぶらかす。¥ふね¥なく/して/は、¥たやすう¥わたす/べき¥やう¥なかり/けれ/ば、¥へいけ/の¥おほぜい、¥むかひ/の¥やま/に¥しゆくし/て、¥いたづら/に¥ひかず/を/ぞ¥おくり/ける。¥かの¥じやうくわく/に¥こもつ/たる¥へいせんじ/の−ちやうり−さいめい−ゐぎし、¥へいけ/に¥こころざし¥ふかかり/けれ/ば、¥やま/の−ね/を¥まはり、¥せうそく/を¥かき、¥ひきめ/に¥いれ、¥へいじ/の¥ぢん/へ/ぞ¥い−いれ/たる。¥つはもの=ども¥これ/を¥とつ/て、¥たいしやうぐん/の¥おん=まへ/に¥まゐり、¥ひらい/て¥みる/に、「¥この¥かは/と¥まうす/は、¥わうご/の¥ふち/に¥あら/ず。¥いつたん¥やまがは/を¥せき−とめ、¥みづ/を¥にごし/て¥ひと/の¥こころ/を¥たぶらかす。¥よ/に¥いつ/て¥あしがる=ども/を¥つかはし/て、¥しがらみ/を¥きり−おとさ/せ/られ/な/ば、¥みづ/は¥ほど−なく¥おつ/べし。¥いそぎ¥わたさ/せ¥たまへ。¥ここ/は¥むま/の¥あしだち¥よき¥ところ/にて¥さふらふ。¥うしろや/を/ば¥つかまつら/ん。¥かう¥まうす¥もの/は、¥へいせんじ/の−ちやうり−さいめい−ゐぎし/が¥まうしじやう」/と/ぞ¥かい/たり/ける。¥へいけ¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥よ/に¥いり、¥あしがる=ども/を¥つかはし/て、¥しがらみ/を¥きり−おとさ/せ/られ/たり/けれ/ば、¥まこと/の¥やまがは/で/は¥あり、¥みづ/は¥ほど−なく¥おち/に/けり。¥へいけ¥しばし/の¥ちち/に/も¥およば/ず、¥ざつと¥わたす。¥じやう/の¥うち/に/も¥ろくせん−よ−き、¥ふせぎ−たたかふ/と¥いへ/ども、¥たぜい/に¥ぶぜい、P19¥かなふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。¥へいせんじ/の−ちやうり−さいめい−ゐぎし/は、¥へいけ/に¥つい/て¥ちう/を¥いたす。¥とがしの−にふだう−ぶつせい、¥いなづの−しんすけ、¥さいとうだ、¥はやしの−ろくらう−みつあきら、¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥かがの−くに/へ¥ひき−しりぞき、¥しらやま¥かはち/に¥ぢん/を¥とる。¥へいけ¥やがて¥かがの−くに/に¥うち−こえ、¥とがし、¥はやし/が¥じやうくわく¥に−か−しよ¥やき−はらふ。¥なに¥おもて/を¥むかふ/べし/と/も¥みえ/ざり/けり。¥くにぐに¥しゆくじゆく/より¥ひきやく/を¥もつて、¥この¥よし¥みやこ/へ¥まうし/たり/けれ/ば、¥おほい=との/を¥はじめ¥たてまつり/て、¥いちもん/の¥ひとびと¥いさみ−よろこび−あは/れ/けり。¥おなじき−ごぐわつ−やうかのひ、¥へいけ/は¥かがの−くに¥しのはら/に¥つい/て、¥おほて¥からめで¥ふたて/に¥わかつ。¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥こまつの−さんみ/の−ちうじやう−これもり、¥ゑちぜんの−さんみ−みちもり、¥さぶらひ−だいしやう/に/は¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ/を¥はじめ/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥しちまん−よ−き、¥かが¥ゑつちう/の¥さかひ/なる¥となみやま/へ/ぞ¥むかは/れ/ける。¥からめで/の¥たいしやうぐん/に/は、¥さつまの−かみ−ただのり、¥くわうごぐう/の−すけ−つねまさ、¥あはぢの−かみ−きよふさ、¥みかはの−かみ−とものり、¥さぶらひ−だいしやう/に/は¥むさしの−さぶらう−ざゑもん−ありくに/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥さんまん−よ−き、¥のと¥ゑつちう/の¥さかひ/なる¥しほ/の−やま/へ/ぞ¥むかは/れ/ける。¥きそ/は¥その−ころ¥ゑちご/の¥こふ/に¥あり/ける/が、¥これ/を¥きい/て、¥ごまん−よ−き/で¥こふ/を¥たつ/て、¥となみやま/へ¥はせ−むかふ。¥よしなか/が¥いくさ/の¥きちれい/なれ/ば/とて、¥ごまん−よ−き/を¥ななて/に¥わかつ。¥まづ¥をぢ/の¥じふらう−くらんど−ゆきいへ、¥いちまん−よ−き/で¥しほ/の−やま/へ/ぞ¥むかひ/ける。¥ひぐちの−じらう−かねみつ、¥おちあひの−ごらう−かねゆき、¥しちせん−よ−き/で、¥きたぐろさか/へ¥さし−つかはす。¥にしな、¥たかなし、¥やまだの−じらう、¥しちせん−よ−き、¥みなみぐろさか/へ¥つかはし/けり。¥いちまん−よ−き/は¥となみやま/の¥すそ、¥まつなが/の¥やなぎはら、¥ぐみのきんばやし/に¥ひき−かくす。¥いまゐの−しらう−かねひらP20、¥ろくせん−よ−き、¥わしのせ/を¥うち−わたり、¥ひのみやばやし/に¥ぢん/を¥とる。¥きそ¥わが−み¥いちまん−よ−き/で、¥をやべ/の¥わたり/を/して、¥となみやま/の¥きた/の¥はづれ、¥はにふ/に¥ぢん/を/ぞ¥とつ/たり/ける。¥
「きそのぐわんじよ」(『ぐわんじよ』)S0705¥きそ=どの¥のたまひ/ける/は、「¥へいけ/は¥おほぜい/で¥あん/なれ/ば、¥いくさ/は¥さだめて¥かけあひ/の¥いくさ/にて/ぞ¥あら/んず/らん。¥かけあひ/の¥いくさ/と¥いふ/は、¥せい/の¥たせう/に¥よる¥こと/なれ/ば、¥おほぜい¥かさ/に¥かけ/て¥とり−こめ/られ/て/は¥かなふ/べから/ず。¥まづ¥はかりごと/に¥しらはた¥さんじふながれ¥さきだて/て、¥くろさか/の¥うへ/に¥うつ−たて/たら/ば、¥へいけ¥これ/を¥み/て、¥あはや¥げんじ/の¥せんぢん/の¥むかう/たる/は。¥なんじふまんき/か¥ある/らん。¥とり−こめ/られ/て/は¥かなふ/まじ。¥この¥やま/は¥しはう¥がんぜき/なれ/ば、¥からめで¥よも¥まはら/じ。¥しばらく¥おり−ゐ/て¥むま¥やすめ/ん/とて、¥となみやま/に/ぞ¥おり−ゐ/んず/らん。¥その−とき¥よしなか¥しばらく¥あひ−しらふ¥てい/に¥もてなし/て、¥ひ/を¥まち−くらし¥よ/に¥いつ/て、¥へいけ/の¥おほぜい、¥うしろ/の¥くりから/が−たに/へ¥おひ−おとさ/ん」/とて、¥まづ¥しらはた¥さんじふながれ、¥くろさか/の¥うへ/に¥うつ−たて/たれ/ば、¥あん/の/ごとく¥へいけ¥これ/を¥み/て、「¥あはや¥げんじ/の¥おほぜい/の¥むかう/たる/は。¥とり−こめ/られ/て/は¥かなふ/まじ。¥ここ/は¥むま/の¥くさがひ、¥すゐびん¥とも/に¥よ=げ/なり。¥しばらく¥おり−ゐ/て¥むま¥やすめ/ん」/とて、¥となみやま/の¥やまなか、¥さるのばば/と¥いふ¥ところ/に/ぞ¥おり−ゐ/たる。¥きそ/はP21¥はにふ/に¥ぢん¥とつ/て、¥しはう/を¥きつと¥み−まはせ/ば、¥なつやま/の¥みね/の¥みどり/の¥こ/の−ま/より、¥あけ/の−たまがき¥ほの−みえ/て、¥かた−そぎ−づくり/の¥やしろ¥あり。¥まへ/に/は¥とりゐ/ぞ¥たつ/たり/ける。¥きそ=どの、¥くに/の¥あんないしや/を¥めし/て、「¥あれ/を/ば¥いづく/と¥まうす/ぞ。¥いか/なる¥かみ/を¥あがめ¥たてまつ/たる/ぞ」/と¥のたまへ/ば、「¥あれ/こそ¥はちまん/にて¥わたら/せ¥たまひ¥さふらへ。¥ところ/も¥やがて¥やはた/の¥ご=りやう/で¥さふらふ」/と¥まうす。¥きそ=どの¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥てかき/に¥ぐせ/られ/たり/ける、¥だいぶ−ばう−かくめい/を¥めし/て、「¥よしなか/こそ¥なにと−なう¥よする/と¥おもひ/たれ/ば、¥さいはひ/に¥いま¥やはた/の¥ご=はうぜん/に¥ちかづき¥たてまつ/て、¥かつせん/を¥すでに¥とげ/ん/と¥すれ。¥さら/ん/に¥とつ/て/は、¥かつうは¥こうたい/の¥ため、¥かつうは¥たうじ/の¥きたう/の¥ため/に、¥ぐわんじよ/を¥ひとふで¥かい/て¥まゐらせ/う/ど¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥かくめい、「¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べう¥さふらふ」/とて、¥むま/より¥おり/て¥かか/ん/と¥す。¥かくめい/が¥その−ひ/の¥ていたらく、¥かち/の−ひたたれ/に¥くろいと−をどし/の−よろひ¥き/て、¥こくしつ/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥くろぼろ/の−や¥おひ、¥ぬりごめどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で¥たかひも/に¥かけ、¥えびら/の¥はうだて/より¥こすずり、¥たたうがみ¥とり−いだし、¥きそ=どの/の¥おん=まへ/に¥かしこまつ/て¥ぐわんじよ/を¥かく。¥あつぱれ¥ぶんぶ¥にだう/の¥たつしや/かな/と/ぞ¥みえ/たり/ける。¥この¥かくめい/と¥まうす/は、¥もと/は¥じゆけ/の¥もの/なり。¥くらんど−みちひろ/とて、¥くわんがくゐん/に/ぞ¥さふらひ/ける。¥しゆつけ/の¥のち/は、¥さいじよう−ばう−しんぎう/と/ぞ¥なのり/ける。¥つね/は¥なんと/へ/も¥かよひ/けり。¥ひととせ¥たかくらのみや、¥をんじやうじ/へ¥じゆぎよ/の¥とき、¥やま、¥なら/へ¥てふじやう/を¥つかはさ/れ/ける/に、¥なんと/の¥だいしゆ¥いかが¥おもひ/けん、¥その¥へんてふ/を/ば、¥この¥しんぎう/に/ぞ¥かか/せ/ける。「¥そもそも¥きよもり−にふだう/は、P22¥へいじ/の¥さうかう、¥ぶけ/の¥ぢんがい」/と/ぞ¥かい/たり/ける。¥にふだう¥おほき/に¥いかつ/て、「¥なんでふ¥その¥しんぎう−め/が、¥じやうかい/ほど/の¥もの/を、¥へいじ/の¥ぬか−かす、¥ぶけ/の¥ちり−あくた/と¥かく/べき¥やう/こそ¥きくわい/なれ。¥いそぎ¥その¥ほふし¥からめ−とつ/て、¥しざい/に¥おこなへ」/と¥のたまふ¥あひだ、¥これ/に¥よつ/て¥なんと/に/は¥こらへ/ず/して、¥ほくこく/へ¥おち−くだり、¥きそ=どの/の¥てかき−し/て、¥だいぶ−ばう−かくめい/と¥なのる。¥その¥ぐわんじよ/に¥いはく、「¥きみやう−ちやうらい、¥はちまん−だい−ぼさつ/は、¥じちゐき¥てうてい/の¥ほんじゆ、¥るゐせい¥めいくん/の¥なうそ/たり。¥はうそ/を¥まもら/ん/が¥ため、¥さうせい/を¥りせ/ん/が¥ため/に、¥さんじん/の¥きんよう/を¥あらはし、¥さん−じよ/の¥けんび/を¥おし−ひらき¥たまへ/り。¥ここに¥しきり/の−とし/より¥この−かた、¥へい−しやうこく/と¥いふ¥もの¥あつ/て、¥しかい/を¥くわんりやう−し、¥ばんみん/を¥なうらん−せ/しむ。¥これ¥すでに¥ぶつぽふ/の¥あた、¥わうぼふ/の¥かたき/なり。¥よしなか¥いやしくも¥きうば/の¥いへ/に¥むまれ/て、¥わづか/に¥ききう/の¥ちり/を¥つぐ。¥かの¥ばうあく/を¥あんずる/に、¥しりよ/を¥かへりみる/に¥あたは/ず。¥うん/を¥てんたう/に¥まかせ/て、¥み/を¥こくか/に¥なぐ。¥こころみ/に¥ぎへい/を¥おこし/て¥きようき/を¥しりぞけ/ん/と¥ほつす。¥しかる/に¥とうせん¥りやうか¥ぢん/を¥あはす/と¥いへ/ども、¥しそつ¥いまだ¥いつち/の¥いさみ/を¥え/ざる¥あひだ、¥まちまち/の¥こころ¥おそれ/たる¥ところ/に、¥いま¥いちぢん¥はた/を¥あぐ。¥せんぢやう/に/して¥たちまち/に¥さん−じよ−わくわう/の¥しやだん/を¥はいす。¥きかん/の¥じゆんじゆく¥あきらか/なり。¥きようと¥ちうりく¥うたがひ¥なし。¥くわんぎ¥なんだ¥こぼれ/て、¥かつがう¥きも/に¥そむ。¥なかんづく¥ぞうそぶ¥さきの−みちの−くにの−かみ−ぎかの−あそん、¥み/を¥そうべう/の¥しぞく/に¥きふ−し/て、¥な/を¥はちまん−たらう−よしいへ/と¥かうせ/し/より¥この−かた、¥その¥もんえふ/たる¥もの、¥ききやう−せ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥よしなか¥その¥こういん/と/して、¥かうべ/を¥かたぶけ/て¥とし¥ひさし。¥いま¥このP23¥たいこう/を¥おこす¥こと、¥たとへば¥えいじ/の¥かひ/を¥もつて¥きよかい/を¥はかり、¥たうらう/が¥をの/を¥いからかい/て¥りうしや/に¥むかふ/が/ごとし。¥しかり/と¥いへ/ども¥くに/の¥ため、¥きみ/の¥ため/に/して¥これ/を¥おこす。¥まつたく¥み/の¥ため、¥いへ/の¥ため/に/して¥これ/を¥おこさ/ず。¥こころざし/の¥いたり、¥しんかん¥そら/に¥あり。¥たのもしき/かな、¥よろこばしき/かな。¥ふし/て¥ねがは−く/は、¥みやうけん¥ゐ/を¥くはへ、¥れいしん¥ちから/を¥あはせ/て、¥かつ¥こと/を¥いつし/に¥けつし、¥あた/を¥しはう/へ¥しりぞけ¥たまへ。¥しかれ/ば−すなはち¥たんき¥みやうりよ/に¥かなひ、¥げんかん¥かご/を¥なす/べく/ば、¥まづ¥ひとつ/の¥ずゐさう/を¥みせ/しめ¥たまへ。¥じゆえい−にねん−ごぐわつ−じふいちにち、¥みなもとの−よしなか¥うやまつ/て¥まうす」/と¥かい/て、¥わが−み/を¥はじめ/て、¥じふさんき/が¥うはや/の¥かぶら/を¥ぬき、¥ぐわんじよ/に¥とり−そへ/て、¥だい−ぼさつ/の¥ご=ほうでん/に/ぞ¥をさめ/ける。¥たのもしき/かな、¥はちまん−だい−ぼさつ、¥しんじつ/の¥こころざし¥ふたつ¥なき/を/や、¥はるか/に¥せうらん−し¥たまひ/けん、¥くも/の¥なか/より、¥やまばと¥みつ¥とび−きたつ/て、¥げんじ/の¥しらはた/の¥うへ/に¥へんぱん−す。¥むかし¥じんぐうくわうごう¥しんら/を¥せめ/させ¥たまひ/し¥とき、¥み=かた/の¥たたかひ¥よわく、¥いこく/の¥いくさ¥こはく/して、¥すでに¥かう/と¥みえ/し¥とき、¥くわうごう¥てん/に¥ご=きせい¥あり/しか/ば、¥くも/の¥うち/より¥れいきう¥みつ¥とび−きたつ/て、¥み=かた/の¥たて/の¥おもて/に¥あらはれ/て、¥いこく/の¥いくさ¥やぶれ/に/けり。¥また¥この¥ひとびと/の¥せんぞ¥らいぎの−あそん、¥あうしう/の¥えびす¥さだたふ¥むねたふ/を¥せめ¥たまひ/し¥とき、¥み=かた/の¥たたかひ¥よはく、¥きようぞく/の¥いくさ¥こはく/して、¥すでに¥かう/と¥みえ/しか/ば、¥らいぎの−あそん¥かたき/の¥ぢん/に¥むかつ/て、「¥これ/は¥まつたく¥わたくし/の¥ひ/に¥あら/ず。¥しんくわ/なり」/とて¥ひ/を¥はなつ。¥かぜ¥たちまち/に¥いぞく/の¥かた/へ¥ふき−おほひ、¥くりやかは/の−じやう¥やけ−おち/ぬ。¥その−とき¥いくさ¥やぶれ/て¥さだたふ¥むねたふ¥ほろび/に/けり。¥きそ=どの¥かやう/のP24¥せんじよう/を¥おもひ−いで/て、¥いそぎ¥むま/より¥おり、¥かぶと/を¥ぬぎ、¥てうづ−うがひ/を¥し/て、¥いま¥この¥れいきう/を¥はいし¥たまひ/ける、¥こころ/の¥うち/こそ¥たのもしけれ。¥
「くりからおとし」(『くりからをとし』)S0706¥さる−ほど/に¥げんぺい¥りやうばう¥ぢん/を¥あはす。¥ぢん/の¥あはひ、¥わづか¥さんちやう/ばかり/に¥よせ−あはせ/たり。¥げんじ/も¥すすま/ず、¥へいけ/も¥すすま/ず。¥やや¥あり/て¥げんじ/の¥かた/より、¥せいびやう/を¥すぐつ/て、¥じふごき、¥たて/の¥おもて/に¥すすま/せ、¥じふごき/が¥うはや/の¥かぶら/を、¥ただ¥いちど/に¥へいじ/の¥ぢん/へ/ぞ¥い−いれ/たる。¥へいけ/も¥じふごき/を¥いだい/て、¥じふご/の¥かぶら/を¥い−かへさ/す。¥げんじ¥さんじつき/を¥いだい/て、¥さんじふ/の¥かぶら/を¥い/さすれ/ば、¥へいけ/も¥さんじつき/を¥いだい/て、¥さんじふ/の¥かぶら/を¥い−かへさ/す。¥げんじ¥ごじつき/を¥いだせ/ば、¥へいけ/も¥ごじつき/を¥いだし、¥ひやくき/を¥いだせ/ば、¥ひやくき/を¥いだす。¥りやうばう¥ひやくき/づつ¥ぢん/の¥おもて/に¥すすま/せ、¥たがひ/に¥しようぶ/を¥せ/ん/と¥はやり/ける/を、¥げんじ/の¥かた/より¥せいし/て、¥わざと¥しようぶ/を/ば¥せ/させ/ず。¥かやう/に¥あひ−しらひ、¥ひ/を¥まち−くらし、¥よ/に¥いつ/て、¥へいけ/の¥おほぜい/を、¥うしろ/の¥くりから/が−たに/へ¥おひ−おとさ/ん/と¥たばかり/ける/を、¥へいけ¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しら/ず、¥とも/に¥あひ−しらひ、¥ひ/を¥まち−くらす/こそ¥はかなけれ。¥さる−ほど/に¥きた¥みなみ/より¥まはる¥からめで/の¥せい¥いちまん−よ−き、¥くりから/の−だう/の¥へん/に¥まはり−あひ、P25¥えびら/の¥はうだて¥うち−たたき、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥おのおの¥うしろ/を¥かへりみ¥たまへ/ば、¥しらはた¥くも/の/ごとく/に¥さし−あげ/たり。「¥この¥やま/は¥しはう¥がんぜき/で¥ある/なれ/ば、¥からめで¥よも¥まはら/じ/と/こそ¥おもひ/つる/に、¥こ/は¥いか/に」/と/ぞ¥さわが/れ/ける。¥さる−ほど/に¥おほて/より¥きそ=どの¥いちまん−よ−き、¥とき/の−こゑ/を¥あはせ¥たまふ。¥となみやま/の¥すそ、¥まつなが/の¥やなぎはら、¥ぐみのきんばやし/に¥ひき−かくし/たり/ける¥いちまん−よ−き、¥ひのみやばやし/に¥ひかへ/たる¥いまゐの−しらう¥ろくせん−よ−き/も、¥おなじう¥とき/の−こゑ/を/ぞ¥あはせ/ける。¥ぜんご¥しまん−よ−き/が¥をめく¥こゑ/に、¥やま/も¥かは/も、¥ただ¥いちど/に¥くづるる/と/こそ¥きこえ/けれ。¥さる−ほど/に¥しだいに¥くらう/は¥なる、¥ぜんご/より¥かたき/は¥せめ−きたる、「¥きたなし/や、¥かへせ/や¥かへせ/や」/と¥いふ¥やから¥おほかり/けれ/ども、¥おほぜい/の¥かたぶき−たつ/たる/は、¥さう−なう¥とつ/て¥かへす¥こと/の¥かたけれ/ば、¥へいけ/の¥おほぜい¥うしろ/の¥くりから/が−たに/へ、¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥さき/に¥おとし/たる¥もの/の¥みえ/ね/ば、「¥この¥たに/の¥そこ/に/も、¥みち/の¥ある/に/こそ」/とて、¥おや¥おとせ/ば¥こ/も¥おとし、¥あに/が¥おとせ/ば¥おとと/も¥おとし、¥しゆ¥おとせ/ば¥いへのこ−らうどう/も¥つづき/けり。¥むま/に/は¥ひと、¥ひと/に/は¥むま、¥おち−かさなり−おち−かさなり、¥さ/ばかり¥ふかき¥たに¥ひとつ/を、¥へいけ/の¥せい¥しちまん−よ−き/で/ぞ¥うめ/たり/ける。¥がんせん¥ち/を¥ながし、¥しがい¥をか/を¥なせ/り。¥され/ば¥この¥たに/の¥ほとり/に/は、¥や/の¥あな、¥かたな/の¥きず¥のこつ/て、¥いま/に¥あり/と/ぞ¥うけたまはる。¥へいけ/の¥かた/の¥さぶらひ−だいしやう、¥かづさの−たいふ/の−はうぐわん−ただつな、¥ひだの−たいふ/の−はうぐわん−かげたか、¥かはちの−はうぐわん−ひでくに/も、¥この¥たに/の¥そこ/に¥うづもれ/て/ぞ¥うせ/に/ける。¥また¥びつちうの−くに/の¥ぢうにん、¥せのをの−たらう−かねやす/は、¥きこゆる¥つはもの/にて¥あり/けれ/ども、¥うん/や¥つき/に/けん、¥かがの−くに/の¥ぢうにん、¥くらみつの−じらう−なりずみ/が¥て/にP26¥かかつ/て、¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥また¥ゑちぜんの−くに¥ひうち/が−じやう/にて¥かへりちう−し/たり/ける¥へいせんじ/の−ちやうり−さいめい−ゐぎし/も、¥とらはれ/て¥いで−きたる。¥きそ=どの、「¥その¥ほふし/は¥あまり/に¥にくき/に、¥まづ¥きれ」/とて¥きら/せ/らる。¥たいしやうぐん−これもり¥みちもり、¥けう/に/して¥かがの−くに/へ¥ひき−しりぞく。¥しちまん−よ−き/が¥なか/より、¥わづか/に¥にせん−よ−き/こそ¥のがれ/たれ。¥おなじき−じふににち、¥おく/の−ひでひら/が¥もと/より、¥きそ=どの/へ¥りようてい¥にひき¥たてまつる。¥いつぴき/は¥しら−つきげ、¥いつぴき/は¥れんぜん−あしげ/なり。¥やがて¥この¥むま/に¥かがみくら¥おい/て、¥はくさん/の−やしろ/へ¥じんめ/に¥たて/らる。¥きそ=どの「¥いま/は¥おもふ¥こと¥なし」/とて¥おはし/ける/が、「¥ただし¥をぢ/の¥じふらう−くらんど=どの/の¥しほ/の¥たたかひ/こそ¥おぼつかなけれ。¥いざや¥ゆい/て¥み/ん」/とて、¥しまん−よ−き/が¥なか/より、¥むま/や¥ひと/を¥すぐつ/て、¥にまん−よ−き/で¥はせ−むかふ。¥ここ/に¥ひみ/の−みなと/を¥わたら/ん/と¥し¥たまひ/ける/が、¥をりふし¥しほ¥みち/て、¥ふか−さ¥あさ−さ/を¥しら/ざり/けれ/ば、¥きそ=どの¥まづ¥はかりごと/に、¥くらおきむま¥じつぴき/ばかり¥おひ−いれ/られ/たり/けれ/ば、¥くらづめ¥ひたる/ほど/にて、¥さうゐ−なく¥むかひ/の¥きし/に/ぞ¥つき/に/ける。¥きそ=どの¥これ/を¥み¥たまひ/て、「¥あさかり/ける/ぞ、¥わたせ/や」/とて、¥にまん−よ−き¥ざつと¥わたい/て¥み¥たまへ/ば、¥あん/の/ごとく¥じふらう−くらんど=どの/は、¥さんざん/に¥かけ−なさ/れ、¥ひき−しりぞき、¥じんば/の¥いき¥やすむる¥ところ/に、¥あらて/の¥げんじ¥にまん−よ−き、¥へいけ¥さんまん−よ−き/が¥なか/へ¥かけ−いり、¥もみ/に¥もう/で、¥ひ¥いづる/ほど/に/ぞ¥せめ/たり/ける。¥たいしやうぐん−みかはの−かみ−とものり¥うた/れ¥たまひ/ぬ。¥これ/は¥にふだう−しやうこく/の¥ばつし/なり。¥その−ほか¥つはもの¥おほく¥ほろび/に/けり。¥へいけ¥そこ/を/も¥おひ−おとさ/れ/て、¥かがの−くに/へ¥ひき−しりぞく。¥きそ=どの/は¥しほ/の−やま¥うち−こえ/て、P27¥のと/の¥こだなか、¥しんわう/の−つか/の¥まへ/に/ぞ¥ぢん/を¥とる。¥
「しのはらかつせん」(『しのはらがつせん』)S0707¥きそ=どの¥やがて¥そこ/にて¥しよしや/へ¥じんりやう/を¥よせ/らる。¥ただ/の−やはた/へ/は¥てふや/の−しやう、¥すがふ/の−やしろ/へ/は¥のみ/の−しやう、¥けひ/の−やしろ/へ/は¥はんばら/の−しやう、¥はくさん/の−やしろ/へ/は¥よこえ、¥みやまる¥に−か−しよ/の¥しやう/を¥きしん−す。¥へいせんじ/へ/は¥ふぢしま−しちがう/を/ぞ¥よせ/られ/ける。¥さんぬる¥ぢしよう−しねん−はちぐわつ¥いしばしやま/の−かつせん/の¥とき、¥ひやうゑ/の−すけ=どの¥い¥たてまつり/し¥ぶし=ども、¥みな¥にげ−のぼつ/て、¥へいけ/の¥み=かた/に/ぞ¥さふらひ/ける。¥むねと/の¥ひとびと/に/は、¥ながゐ/の−さいとう−べつたう−さねもり、¥うきすの−さぶらう−しげちか、¥またのの−ごらう−かげひさ、¥いとうの−くらう−すけうぢ、¥ましもの−しらう−しげなほ/なり。¥これ=ら/は¥みな¥いくさ/の¥あら/ん/ほど¥しばらく¥やすま/ん/とて、¥ひ−ごと/に¥より−あひ−より−あひ、¥じゆんしゆ/を¥し/て/ぞ¥なぐさみ/ける。¥まづ¥ながゐ/の−さいとう−べつたう/が¥もと/に¥より−あひ/たり/ける¥ひ、¥さねもり¥まうし/ける/は、「¥つらつら¥たうせい/の¥てい/を¥み¥さふらふ/に、¥げんじ/の¥かた/は¥いよいよ¥つよく、¥へいけ/の¥おん=かた/は¥まけいろ/に¥みえ/させ¥たまひ/て¥さふらふ。¥いざ¥おのおの¥きそ=どの/へ¥まゐら/う」/ど¥いひ/けれ/ば、¥みな、「¥さん¥なう」/と/ぞ¥どうじ/ける。¥つぎ/の−ひ、¥また¥うきすの−さぶらう/が¥もと/に¥より−あひ/たり/ける¥とき、¥さいとう−べつたう、「¥さて/も¥きのふ¥さねもり/が¥まうし/し¥こと/は¥いか/に、¥おのおの」/と¥いひ/けれ/ば、¥その¥なか/にP28¥またのの−ごらう−かげひさ、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥さすが¥われ=ら/は、¥とうごく/で/は¥ひと/に¥しら/れ/て、¥な¥ある¥もの/で/こそ¥あれ。¥きち/に¥つい/て、¥あなた/へ¥まゐり¥こなた/へ¥まゐら/ん¥こと/は、¥み−ぐるしかる/べし。¥ひとびと/の¥おん=こころ=ども/を/ば¥しり¥まゐらせ/ぬ¥ざふらふ。¥かげひさ/に¥おいて/は、¥こんど¥へいけ/の¥おん=かた/で、¥うちじに−せ/ん/と¥おもひ−きつ/て¥さふらふ/ぞ」/と¥いひ/けれ/ば、¥さいとう−べつたう¥あざ−わらつ/て、「¥まこと/に/は¥おのおの/の¥おん=こころ=ども/を、¥かなびか/ん/とて/こそ¥まうし/たれ。¥さねもり/も¥こんど¥ほくこく/にて、¥うちじに−せ/ん/と¥おもひ−きつ/て¥さふらへ/ば、¥ふたたび¥いのち¥いき/て、¥みやこ/へ/は¥かへる/まじき¥よし、¥おほい=との/へ/も¥まうし−あげ、¥ひとびと/に/も¥その¥やう/を¥まうし−おき¥さふらふ」/と¥いひ/けれ/ば、¥みな¥また¥この¥ぎ/に/ぞ¥どうじ/ける。¥その¥やくそく/を¥たがへ/じ/と/や、¥たうざ/に¥あり/ける¥にじふ−よ−にん/の¥さぶらひ=ども/も、¥こんど¥ほくこく/にて¥いつしよ/に¥しに/に/ける/こそ¥むざん/なれ。¥へいけ/は¥かがの−くに¥しのはら/に¥ひき−しりぞい/て、¥じんば/の¥いき/を/ぞ¥やすめ/ける。¥おなじき−ごぐわつ−はつかのひ、¥きそ=どの¥ごまん−よ−き、¥しのはら/へ/ぞ¥むかは/れ/ける。¥きそ=どの/の¥かた/より、¥いまゐ/の−しらう−かねひら、¥まづ¥ごひやく−よ−き/にて¥はせ−むかふ。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥はたけやまの−しやうじ−しげよし、¥をやまだの−べつたう−ありしげ、¥うつのみやの−さゑもん−ともつな、¥これ=ら/は¥おほばんやく/にて、¥をりふし¥ざいきやう−し/たり/ける/を、¥おほい=との、「¥なんぢ=ら/は¥ふるい¥もの/なり。¥いくさ/の¥やう/を/も¥おき/て/よ」/とて、¥こんど¥ほくこく/へ¥むけ/られ/たり。¥かれ=ら¥きやうだい¥さんびやく−よ−き/で¥うち−むかふ。¥はたけやま、¥いまゐ、¥はじめ/は¥ごき¥じつき/づつ¥いだし−あはせ/て、¥しようぶ/を¥せ/させ/ける/が、¥のち/に/は¥りやうばう¥みだれ−あう/て/ぞ¥たたかひ/ける。¥おなじき−にじふいちにち/の¥うま/の−こく、¥くさ/も¥ゆるが/ず¥てらす¥ひ/に、¥げんぺい/の¥つはもの=ども、¥われ¥おとら/じ/と¥たたかへ/ば、P29¥へんしん/より¥あせ¥いで/て、¥みづ/を¥ながす/に¥こと/なら/ず。¥いまゐ/が¥かた/に/も、¥つはもの¥おほく¥ほろび/に/けり。¥はたけやま、¥いえへのこ¥らうどう¥おほく¥うた/せ、¥ちから¥およば/で¥ひき−しりぞく。¥つぎ/に¥へいけ/の¥かた/より、¥たかはしの−はうぐわん−ながつな、¥ごひやく−よ−き/で¥はせ−むかふ。¥きそ=どの/の¥かた/より、¥ひぐちの−じらう−かねみつ、¥おちあひの−ごらう−かねゆき、¥さんびやく−よ−き/で¥うち−むかふ。¥げんぺい/の¥つはもの=ども、¥しばし¥ささへ/て¥ふせぎ−たたかふ。¥され/ども¥たかはし/が¥かた/の¥せい/は、¥くにぐに/の¥かりむしや/なり/けれ/ば、¥いつき/も¥おち−あは/ず、¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥たかはし¥こころ/は¥たけう¥おもへ/ども、¥うしろ¥あばら/に¥なり/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず¥ただ¥いつき、¥みなみ/を¥さし/て/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥ここ/に¥ゑつちうの−くに/の¥ぢうにん、¥にふぜんの−こたらう−ゆきしげ、¥よい¥かたき/と¥め/を¥かけ、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−きたり、¥おし−ならべ/て¥むず/と¥くむ。¥たかはし、¥にふぜん/を¥つかう/で、¥くら/の¥まへわ/に¥おし−つけ、¥ちつと/も¥はたらか/さ/ず、「¥さて¥わ−ぎみ/は¥なにもの/ぞ。¥なのれ、¥きか/う」/ど¥いひ/けれ/ば、「¥ゑつちうの−くに/の¥ぢうにん、¥にふぜんの−こたらう−ゆきしげ、¥しやうねん¥じふはつさい」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥たかはし¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥あな¥むざん、¥こぞ¥おくれ/たる¥ながつな/が¥こ/も¥あら/ば、¥ことし/は¥じふはつさい/ぞ/かし。¥わ−ぎみ¥ねぢ−きつ/て¥すつ/べけれ/ども、¥さら/ば¥たすけ/ん」/とて¥ゆるし/けり。¥たかはしの−はうぐわん/は¥み=かた/の¥せい¥また/ん/とて、¥むま/より¥おり/て¥いき¥つぎ−ゐ/たり。¥にふぜん/も¥やすみ−ゐ/たり/ける/が、¥あつぱれ¥よき¥かたき、¥われ/を/ば¥たすけ/たれ/ども、¥いか/に/も−し/て¥うた/ばや/と¥おもひ−ゐ/たる¥ところ/に、¥たかはし¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しら/ず、¥うち−とけ/て¥ものがたり/を/ぞ¥し−ゐ/たる。¥にふぜん/は¥きこゆる¥はやわざ/の¥をのこ/にて¥あり/けれ/ば、¥たかはし/が¥み/ぬ¥ひま/に、¥かたな/をP30¥ぬき、¥たち−あがり、¥たかはしの−はうぐわん/が¥うち−かぶと/を¥したたか/に¥さす。¥ささ/れ/て¥ひるむ¥ところ/に、¥にふぜん/が¥らうどう、¥おくれ−ばせ/に¥さんき¥はせ−きたつ/て¥おち−あひ/たり。¥たかはし¥こころ/は¥たけう¥おもへ/ども、¥かたき/は¥あまた¥あり、¥て/は¥おう/つ。¥うん/や¥つき/に/けん、¥そこ/にて¥つひに¥うた/れ/ぬ。¥つぎ/に¥へいけ/の¥かた/より、¥むさしの−さぶらう−ざゑもん−ありくに、¥さんびやく−よ−き/で¥をめい/て¥かく。¥きそ=どの/の¥かた/より、¥にしな、¥たかなし、¥やまだの−じらう、¥ごひやく−よ−き/で¥うち−むかふ。¥これ/も¥しばし¥ささへ/て¥ふせぎ−たたかふ。¥され/ども¥ありくに/は、¥あまり/に¥ふかいり−し/て¥たたかひ/ける/が、¥むま/を/も¥い/させ、¥かちだち/に¥なり、¥かぶと/を/も¥うち−おとさ/れ、¥おほ−わらは/に¥なつ/て、¥やだね¥みな¥つき/けれ/ば、¥うちもの¥ぬい/て¥たたかひ/ける/が、¥や¥ななつ¥やつ¥い−たて/られ、¥かたき/の¥かた¥にらまへ、¥たちじに/に/こそ¥しに/に/けれ。¥たいしやう¥かやう/に¥なる¥うへ/は、¥その¥せい¥みな¥おち/ぞ¥ゆく。¥
「さねもりさいご」(『さねもり』)S0708¥おち−ゆく¥せい/の¥なか/に、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥ながゐ/の−さいとう−べつたう−さねもり/は、¥ぞんずる¥むね¥あり/けれ/ば、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥もよぎ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥もつ/て、¥れんぜん−あしげ/なるP31¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら/を¥おい/て¥のつ/たり/ける/が、¥み=かた/の¥せい/は¥おち−ゆけ/ども、¥ただ¥いつき¥かへし−あはせ−かへし−あはせ¥ふせぎ−たたかふ。¥きそ=どの/の¥かた/より、¥てづかの−たらう¥すすみ−いで/て、「¥あな¥やさし、¥いか/なる¥ひと/にて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥み=かた/の¥おん=せい/は、¥みな¥おち−ゆき¥さふらふ/に、¥ただ¥いつき¥のこら/せ¥たまひ/たる/こそ¥いう/に¥おぼえ¥さふらへ。¥なのら/せ¥たまへ」/と¥ことば/を¥かけ/けれ/ば、「¥まづ¥かう¥いふ¥わ=どの/は¥た/そ」。「¥しなのの−くに/の¥ぢうにん、¥てづかの−たらう−かなざしの−みつもり」/と/こそ¥なのつ/たれ。¥さいとう−べつたう、「¥さて/は¥たがひ/に¥よき¥かたき、¥ただし¥わ=どの/を¥さぐる/に/は¥あら/ず。¥ぞんずる¥むね/が¥あれ/ば、¥なのる¥こと/は¥ある/まじい/ぞ。¥よれ、¥くま/う、¥てづか」/とて、¥はせ−ならぶる¥ところ/に、¥てづか/が¥らうどう、¥しゆ/を¥うた/せ/じ/と¥なか/に¥へだたり、¥さいとう−べつたう/に¥おし−ならべ/て¥むず/と¥くむ。¥さいとう−べつたう、「¥あつぱれ¥おのれ/は、¥につぽん−いち/の¥かう/の−もの/と¥くん/で/うず/よ/な¥うれ」/とて、¥わが¥のつ/たり/ける¥くら/の¥まへわ/に¥おし−つけ/て、¥ちつと/も¥はたらか/さ/ず、¥くび¥かき−きつ/て¥すて/てげる。¥てづかの−たらう、¥らうどう/が¥うた/るる/を¥み/て、¥ゆんで/に¥まはり−あひ、¥よろひ/の¥くさずり¥ひき−あげ/て、¥ふた−かたな¥さし、¥よわる¥ところ/を¥くん/で¥ふす。¥さいとう−べつたう¥こころ/は¥たけう¥おもへ/ども、¥いくさ/に/は¥し−つかれ/ぬ、¥て/は¥おう/つ、¥その−うへ¥おいむしや/で/は¥あり、¥てづか/が¥した/に/ぞ¥なり/に/ける。¥てづかの−たらう、¥はせ−きたる¥らうどう/に¥くび¥とら/せ、¥きそ=どの/の¥おん=まへ/に¥まゐり¥かしこまつ/て、「¥みつもり/こそ¥きい/の¥くせもの/と¥くん/で、¥うつ/て¥まゐつ/て¥さふらへ。¥さぶらひ/か/と¥み¥さふらへ/ば、¥にしき/の−ひたたれ/を¥き/て¥さふらふ。¥また¥たいしやうぐん/か/と¥み¥さふらへ/ば、¥つづく¥せい/も¥さふらは/ず。¥なのれ¥なのれ/と¥せめ¥さふらひ/つれ/ども、¥つひに¥なのり¥さふらは/ず。P32¥こゑ/は¥ばんどう−ごゑ/にて¥さふらひ/つる」/と¥まうし/けれ/ば、¥きそ=どの、「¥あつぱれ¥これ/は、¥さいとう−べつたう/にて¥ある¥ござんなれ。¥それ/なら/ん/に/は、¥よしなか/が¥かうづけ/へ¥こえ/たり/し¥とき、¥をさなめ/に¥み/しか/ば、¥しらが/の¥かすを/なつ/し/ぞ/かし。¥いま/は¥はや¥しちじふ/に/も¥あまり、¥はくはつ/に/こそ¥なり/ぬ/らん/に、¥びんひげ/の¥くろい/こそ¥あやしけれ。¥ひぐちの−じらう−かねみつ/は、¥としごろ¥なれ−あそん/で、¥み−しり/たる/らん。¥ひぐち¥めせ」/とて、¥めさ/れ/けり。¥ひぐちの−じらう¥ただ¥ひとめ¥み/て、「¥あな¥むざん、¥さいとう−べつたう/にて¥さふらひ/けり」/とて、¥なみだ/を¥ながす。¥きそ=どの、「¥それ/なら/ん/に/は、¥はや¥しちじふ/に/も¥あまり、¥はくはつ/に/こそ¥なり/ぬ/らん/に、¥びんひげ/の¥くろい/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥やや¥あつ/て¥ひぐちの−じらう、¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥さ¥さふらへ/ば、¥その¥やう/を¥まうし−あげ/ん/と¥つかまつり¥さふらふ/が、¥あまり/に¥あはれ/に¥おぼえ¥さふらう/て、¥まづ¥ふかく/の¥なみだ/の¥こぼれ¥さふらひ/ける/ぞ/や。¥され/ば¥ゆみ−や−とり/は、¥いささか/の¥ところ/にて/も、¥おもひで/の¥ことば/を/ば、¥かねて¥つかひ−おく/べき¥こと/にて¥さふらひ/ける/ぞ/や。¥さいとう−べつたう、¥つね/は¥かねみつ/に¥あう/て、¥ものがたり−し¥さふらひ/し/は、『¥ろくじふ/に¥あまつ/て、¥いくさ/の¥ぢん/へ¥むかは/ん¥とき/は、¥びんひげ/を¥くろう¥そめ/て、¥わかやが/う/と¥おもふ/なり。¥その¥ゆゑ/は¥わか=どの=ばら/に¥あらそう/て、¥さき/を¥かけ/ん/も¥おとな=げ−なし。¥また¥おいむしや/とて、¥ひと/の¥あなどら/れ/ん/も¥くちをしかる/べし』/と¥まうし¥さふらひ/し/が、¥まことに¥そめ/て¥さふらひ/ける/ぞ/や。¥あらは/せ/て¥ごらん¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥きそ=どの¥さ/も¥ある/らん/とて、¥あらは/せ/て¥ごらんずれ/ば、¥はくはつ/に/こそ¥なり/に/けれ。¥また¥さいとう−べつたう、¥にしき/の−ひたたれ/を¥き/ける¥こと/も、¥さいご/の¥いとま¥まうし/に¥おほい=との/へ¥まゐつ/て、P33「¥かう¥まうせ/ば、¥さねもり/が¥み¥ひとつ/にて/は¥さふらは/ね/ども、¥せんねん¥ばんどう/へ¥まかり−くだり¥さふらひ/し¥とき、¥みづとり/の¥はおと/に¥おどろき、¥や¥ひとつ/を/だに¥い/ず/して、¥するが/の¥かんばら/より¥にげ−のぼつ/て¥さふらひ/し¥こと、¥おい/の¥のち/の¥ちじよく、¥ただ¥この¥こと/に¥さふらふ。¥こんど¥ほくこく/へ¥まかり−くだり¥さふらは/ば、¥さだめて¥うちじに¥つかまつり¥さふらふ/べし。¥さねもり¥もと/は¥ゑちぜんの−くに/の¥もの/にて¥さふらひ/し/が、¥きんねん¥ご=りやう/に¥つけ/られ/て、¥むさしの−くに¥ながゐ/にきよぢう¥つかまつり¥さふらひ/き。¥こと/の¥たとへ/の¥さふらふ/ぞ/かし。¥こきやう/へ/は¥にしき/を¥き/て¥かへる/と¥まうす¥こと/の¥さふらへ/ば、¥なに/か¥くるしう¥さふらふ/べき。¥にしき/の−ひたたれ/を¥ごめん¥さふらへ/かし」/と¥まうし/けれ/ば、¥おほい=との、「¥やさしう/も¥まうし/たり/ける/ものかな」/とて、¥にしき/の−ひたたれ/を¥ごめん¥あり/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥むかし/の¥しゆばいしん/は、¥にしき/の¥たもと/を¥くわいけいざん/に¥ひるがへし、¥いま/の¥さいとう−べつたう−さねもり/は、¥その¥な/を¥ほくこく/の¥ちまた/に¥あぐ/とかや。¥くち/も¥せ/ぬ¥むなしき¥な/のみ¥とどめ−おい/て、¥かばね/は¥こしぢ/の¥すゑ/の¥ちり/と¥なる/こそ¥あはれ/なれ。¥さんぬる¥しんぐわつ−じふしちにち、¥へいけ¥じふまん−よ−き/にて、¥みやこ/を¥いで/し¥ことがら/は、¥なに−おもて/を¥むかふ/べし/と/も¥みえ/ざり/し/に、¥いま¥ごぐわつ−げじゆん/に、¥みやこ/へ¥かへり−のぼる/に/は、¥その¥せい¥わづか/に¥にまん−よ−き、「¥ながれ/を¥つくし/て¥すなどる¥とき/は、¥おほく/の¥うを/を¥うる/と¥いへ/ども、¥めいねん/に¥うを¥なし。¥はやし/を¥やい/て¥かる¥とき/は、¥おほく/の¥けだもの/を¥うる/と¥いへ/ども、¥めいねん/に¥けだもの¥なし。¥のち/を¥ぞんじ/て、¥せうせう/は¥のこさ/る/べかり/ける/ものを」/と、¥まうす¥ひとびと/も¥あり/ける/とかや。P34
「げんばう」(『げんばう』)S0709¥かづさの−かみ−ただきよ、¥ひだの−かみ−かげいへ/は、¥をととし¥にふだう−しやうこく¥こうぜ/られ/し¥とき、¥ににん¥とも/に¥しゆつけ−し/て¥あり/ける/が、¥こんど¥ほくこく/にて、¥こども¥みな¥うた/れ/ぬ/と¥きい/て、¥その¥おもひ/の¥つもり/に/や、¥つひに¥なげき−じに/に/ぞ¥しに/に/ける。¥これ/を¥はじめ/て、¥おや/は¥こ/に¥おくれ、¥め/は¥をつと/に¥わかれ/て、¥なげき−かなしむ¥こと¥かぎり−なし。¥およそ¥きやう−ぢう/に/は、¥いへいへ/に¥もんこ/を¥とぢ/て、¥あさゆふ¥かね¥うち−ならし、¥こゑごゑ/に¥ねんぶつ¥まうし、¥をめき−さけぶ¥こと¥おびたたし。¥また¥ゑんごく¥きんごく/も¥かく/の/ごとし。¥ろくぐわつ−ひとひのひ、¥さいしゆ¥じんぎ/の−ごん/の−たいふ−おほなかとみの−ちかとし/を、¥てんじやう/の¥しもぐち/へ¥めさ/れ/て、¥こんど¥ひやうがく¥しづまら/ば、¥いせ−だい−じんぐう/へ¥ぎやうがう¥ある/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥だい−じんぐう/は¥むかし¥たかまのはら/より¥あま−くだら/せ¥たまひ/て、¥すゐにん−てんわう/の¥ぎよ=う、¥にじふごねん−さんぐわつ/に、¥やまとの−くに¥かさぬひ/の−さと/より、¥いせの−くに¥わたらひ/の−こほり¥いすず/の¥かはかみ、¥したついはね/に¥おほみやばしら/を¥ふとしき−たて/て、¥あがめ−そめ¥たてまつ/し/より¥この−かた、¥につぽん¥ろくじふ−よ−しう、¥さんぜんしちひやくごじふ−よ−しや/の、¥だいせう/の¥じんぎ−みやうだう/の¥なか/に/は¥ぶさう/なり。¥され/ども¥よよ/の¥みかど、¥つひに¥りんかう/は¥なかり/し/に、¥ならの−みかど/の¥おん=とき、¥さだいじん−ふひとう/の¥まご、¥さんぎ−しきぶきやう−うがふ/の¥こ、¥うこんゑ/の−せうしやう−けん−だざい/の−せうに、P35¥ふぢはらの−ひろつぎ/と¥いふ¥ひと¥あり/けり。¥てんぴやう−じふごねん−じふぐわつ/に、¥ひぜんの−くに¥まつら/の−こほり/に/して、¥すまん/の¥ぐんびやう/を¥そつし/て、¥こくか/を¥すでに¥あやぶめ/ん/と¥す。¥その−とき¥おほのの−あづまうど/を¥たいしやうぐん/と/して、¥ひろつぎ¥つゐたう−せ/られ/し¥とき、¥みかど¥おん=いのり/の¥ため/に、¥いせ−だい−じんぐう/へ¥はじめて¥ぎやうがう¥あり/し、¥その¥れい/と/ぞ¥きこえ/し。¥かの¥ひろつぎ/は¥ひぜん/の¥まつら/より、¥みやこ/へ¥いちにち/に¥おり−のぼる¥むま/を/ぞ¥もつ/たり/ける。¥され/ば¥つゐたう−せ/られ/し¥とき、¥み=かた/の¥つはもの=ども、¥おち−うせ¥うた/れ/しか/ば、¥くだん/の¥むま/に¥うち−のり、¥ただ¥いつき¥かいちう/へ¥はせ−いり/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥その¥ばうれい¥あれ/て、¥つね/は¥おそろしき¥こと=ども¥おほかり/けり。¥てんぴやう−じふはちねん−ろくぐわつ−じふはちにち、¥ちくぜんの−くに¥みかさ/の−こほり、¥だざいふ/の¥くわんぜおんじ¥くやう−ぜ/られ/し¥だうし/に/は、¥げんばう−そうじやう/と/ぞ¥きこえ/し。¥かうざ/に¥のぼり¥かね¥うち−ならす¥とき、¥にはか/に¥そら¥かき−くもり、¥いかづち¥おびたたしう¥なつ/て、¥かの¥そうじやう/の¥うへ/に¥おち−かかり、¥その¥かうべ/を¥とつ/て、¥くも/の¥なか/へ/ぞ¥いり/に/ける。¥これ/は¥ひろつぎ¥てうぶく−せ/られ/し、¥その¥ゆゑ/と/ぞ¥きこえ/し。¥この¥そうじやう/は、¥きびの−だいじん¥につたう/の¥とき、¥あひ−ともなつ/て¥わたり、¥ほつさうしう¥わたし/たり/し¥ひと/なり。¥たうじん/が¥げんばう/と¥いふ¥な/を¥わらつ/て、「¥げんばう/と/は¥かへつ/て¥ほろぶ/と¥いふ¥こゑ¥あり。¥いかさま/に/も¥この¥ひと¥きてう/の¥のち、¥なん/に¥あふ/べき¥ひと/なり」/と¥さうし/たり/ける/とかや。¥おなじき−じふくねん−ろくぐわつ−じふはちにち、¥しやれかうべ/に¥げんばう/と¥いふ¥めい/を¥かい/て、¥こうぶくじ/の¥には/に¥おとし、¥ひと/なら/ば¥にさんびやくにん/ばかり/が¥こゑ−し/て、¥こくう/に¥どつと¥わらふ¥おと−し/けり。¥こうぶくじ/は¥ほつさうしう/の¥てら/たる/に¥よつ/て/なり。¥その¥でし=ども¥これ/を¥とつ/て¥つか/に¥つき、¥その¥うち/に¥をさめ/て、¥づはか/とP36¥なづけ/て¥いま/に¥あり。¥これ/に¥よつ/て¥ひろつぎ/が¥ばうれい/を¥あがめ/られ/て、¥ひぜんの−くに¥まつら/の¥いま/の¥かがみのみや/と¥かうす。¥さがの−くわうてい/の¥おん=とき、¥へいぜいの−せんてい、¥ないしのかみ/の¥すすめ/に¥よつ/て、¥すでに¥よ/を¥みだら/ん/と¥せ/させ¥たまひ/し¥とき、¥みかど¥おん=いのり/の¥ため/に、¥だいさん/の¥くわうぢよ¥いうち−ないしんわう/を¥かもの−さいゐん/に¥たて¥まゐら/させ¥たまふ。¥これ/ぞ¥さいゐん/の¥はじめ/なる。¥しゆしやくゐん/の¥おん=とき/も、¥すみとも¥つゐたう/の¥れい/とて、¥やはた/にて¥りんじ/の¥み=かぐら¥あり。¥こんど/も¥その¥れい/たる/べし/とて、¥さまざま/の¥おん=いのり=ども¥あり/けり。¥
「きそさんもんてふじやう」(『きそさんもんてうじやう』)S0710¥さる−ほど/に¥きそ−よしなか/は¥ゑちぜん/の¥こふ/に¥つい/て、¥いへのこ−らうどう¥めし−あつめ/て¥ひやうぢやう−す。「¥そもそも¥よしなか、¥あふみの−くに/を¥へ/て/こそ、¥みやこ/へ/は¥のぼる/べき/に、¥れい/の¥さんぞう=ども/の、¥ふせぐ¥こと/も/や¥あら/んず/らん。¥かけ−やぶつ/て¥とほら/ん¥こと/は¥やすけれ/ども、¥たうじ/は¥へいけ/こそ、¥ぶつぽふ/と/も¥いは/ず、¥てら/を¥ほろぼし¥そう/を¥うしなひ、¥あくぎやう/を/ば¥いたす/なれ。¥それ/を¥しゆご/の¥ため/に¥しやうらく−せ/んずる¥よしなか/が、¥へいけ/と¥ひとつ/なれ/ば/とて、¥さんもん/の¥しゆと/に¥むかつ/て¥かつせん−せ/ん¥こと、¥すこし/も¥たがは/ぬ¥に/の−まひ/なる/べし。¥これ/こそ¥さすが¥やすだいじ/よ。¥いかが−せ/ん」/と¥のたまへ/ば、¥てかき/に¥ぐせ/られ/たり/ける¥だいぶ−ばう−かくめい、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/はP37、「¥さんもん/の¥だいしゆ/は¥さんぜんにん¥さふらふ/なる/が、¥かならず¥いちみ−どうしん/なる¥こと/は¥さふらは/ず。¥あるひは¥へいけ/に¥どうしん−せ/ん/と¥まうす¥しゆと/も¥さふらふ/らん。¥あるひは¥げんじ/に¥つか/ん/と¥まうす¥だいしゆ/も¥さふらふ/らん。¥せんずる−ところ、¥てふじやう/を¥つかはし/て¥ごらん¥さふらへ。¥へんてふ/に/こそ、¥その¥やう/は¥みえ¥さふらは/んず/らめ」/と¥まうし/けれ/ば、¥きそ=どの、「¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし。¥さら/ば¥かけ」/とて、¥かくめい/に¥てふじやう/を¥かか/せ/て、¥さんもん/へ¥おくら/る。¥その¥じやう/に¥いはく、「¥よしなか¥つらつら¥へいけ/の¥あくぎやく/を¥みる/に、¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥ながく¥じんしん/の¥れい/を¥うしなふ。¥しかり/と¥いへ/ども、¥きせん¥て/を¥つかね、¥しそ¥あし/を¥いただく。¥ほしいまま/に¥ていゐ/を¥しんだい−し、¥あくまで¥こくぐん/を¥りよりやう−す。¥だうり¥ひり/を¥ろんぜ/ず、¥けんもん−せいけ/を¥つゐふく−し、¥うざい¥むざい/を¥いは/ず、¥けいしやう¥ししん/を¥そんまう−す。¥その¥しざい/を¥うばひ−とつ/て、¥ことごとく¥らうじう/に¥あたへ、¥かの¥しやうゑん/を¥もつしゆ−し/て、¥みだりがはしく¥しそん/に¥はぶく。¥なかんづく¥さんぬる¥ぢしよう−さんねん−じふいちぐわつ、¥ほふわう/を¥せいなん/の−りきう/に¥うつし¥たてまつり、¥はくりく/を¥かいせい/の¥ぜつゐき/に¥ながし¥たてまつる。¥しゆそ¥もの¥いは/ず、¥だうろ¥め/を¥もつて¥す。¥しか/のみ/なら/ず¥おなじき−しねん−ごぐわつ、¥に/の−みや/の¥しゆがく/を¥かこみ¥たてまつり、¥きうちよう/の¥こうぢん/を¥おどろか/さ/しむ。¥ここに¥ていし¥ひぶん/の¥がい/を¥のがれ/ん/が¥ため/に、¥ひそか/に¥をんじやうじ/へ¥じゆぎよ/の¥とき、¥よしなか¥せんにち/に¥りやうじ/を¥たまはる/に¥よつ/て、¥むち/を¥あげ/ん/と¥ほつする¥ところ/に、¥をんでき¥ちまた/に¥みち/て、¥よさん¥みち/を¥うしなふ。¥きんけい/の¥げんじ¥なほ¥さんこう−せ/ず。¥いはんや¥ゑんけい/に¥おい/て/を/や。¥しかる/に¥をんじやう/は¥ぶんげん¥なき/に¥よつ/て、¥なんと/へ¥おもむか/しめ¥たまふ¥あひだ、¥うぢばし/に/して¥かつせん−す。¥たいしやう−さんみ−にふだう−よりまさ−ふし、¥いのち/を¥かろんじ¥ぎ/を¥おもんじ/て、¥いつせん/のP38¥こう/を¥はげます/と¥いへ/ども、¥たぜい/の¥せめ/を¥まぬかれ/ず。¥けいがい/を¥こがん/の¥こけ/に¥さらし、¥せいめい/を¥ちやうか/の¥なみ/に¥ながす。¥りやうじ/の¥おもむき¥きも/に¥めいじ、¥どうるゐ/の¥かなしみ¥たましひ/を¥けす。¥これ/に¥よつ/て¥とうごく¥ほくこく/の¥げんじ=ら、¥おのおの¥さんらく/を¥くはだて/て、¥へいけ/を¥ほろぼさ/ん/と¥ほつす。¥よしなか¥いんじ¥とし/の¥あき、¥しゆくい/を¥たつせ/ん/が¥ため/に、¥はた/を¥あげ/けん/を¥とつ/て、¥しんしう/を¥いで/し¥ひ、¥ゑちごの−くに/の¥ぢうにん、¥じやうの−しらう−ながもち、¥すまん/の¥ぐんびやう/を¥そつし/て¥はつかう−せ/しむる¥あひだ、¥たう−ごく¥よこたがはら/に/して¥かつせん−す。¥よしなか¥わづか/に¥さんぜん−よ−き/を¥もつて、¥かの¥すまん/の¥つはもの/を¥やぶり−をはん/ぬ。¥ふうぶん¥ひろき/に¥およん/で、¥へいじ/の¥たいしやう¥じふまん/の¥ぐんし/を¥そつし/て、¥ほくろく/に¥はつかう−す。¥ゑつしう、¥かしう、¥となみ、¥くろさか、¥しほさか、¥しのはら¥いげ/の¥じやうくわく/に/して、¥すかど¥かつせん−す。¥はかりごと/を¥ゐあく/の¥うち/に¥めぐらし/て、¥かつ¥こと/を¥しせき/の¥もと/に¥え/たり。¥しかる/に¥うて/ば¥かならず¥ふし、¥せむれ/ば¥かならず¥くだる。¥あき/の¥かぜ/の¥ばせを/を¥やぶる/に¥こと/なら/ず。¥ふゆ/の¥しも/の¥くんいう/を¥からす/に¥あひ−おなじ。¥これ¥ひとへに¥しんめい−ぶつだ/の¥たすけ/なり。¥さらに¥よしなか/が¥ぶりやく/に¥あら/ず。¥へいじ¥はいぼく/の¥うへ/は、¥さんらく/を¥くはだつる/なり。¥いま¥えいがく/の¥ふもと/を¥すぎ/て、¥らくやう/の¥ちまた/に¥いる/べし。¥この¥とき/に¥あたつ/て、¥ひそか/に¥ぎたい¥あり。¥そもそも¥てんだい/の−しゆと/は、¥へいじ/に¥どうしん/か、¥げんじ/に¥よりき/か。¥もし¥かの¥あくと/を¥たすけ/らる/べく/は、¥しゆと/に¥むかつ/て¥かつせん−す/べし。¥もし¥かつせん/を¥いたさ/ば、¥えいがく/の¥めつばう¥くびす/を¥めぐらす/べから/ず。¥かなしい/かな、¥へいじ¥しんきん/を¥なやまし、¥ぶつぽふ/を¥ほろぼす¥あひだ、¥あくぎやく/を¥しづめ/ん/が¥ため/に、¥ぎへい/を¥おこす¥ところ/に、¥たちまち/に¥さんぜん/の¥しゆと/に¥むかつ/て、¥ふりよ/の¥かつせん/を¥いたさ/ん¥こと/を。¥いたましき/かな、¥いわう−さんわう/にP39¥はばかり¥たてまつ/て、¥かうてい/に¥ちりう−せ/しめ/ば、¥てうてい¥くわんたい/の¥しん/と/して、¥ながく¥ぶりやく¥かきん/の¥そしり/を¥のこさ/ん¥こと/を。¥しんだい/に¥まどつ/て、¥かねて¥あんない/を¥けいする¥ところ/なり。¥こひねがは−く/は¥てんだい/の¥しゆと、¥かみ/の¥ため¥ほとけ/の¥ため¥くに/の¥ため¥きみ/の¥ため/に、¥げんじ/に¥どうしん−し/て、¥きようと/を¥ちうし、¥こうくわ/に¥よくせ/ん。¥こんたん/の¥いたり/に¥たへ/ず。¥よしなか¥きようくわう¥つつしん/で¥まうす。¥じゆえい−にねん−ろくぐわつ−とをかのひ、¥みなもとの−よしなか¥しんじやう。¥ゑくわう−ばう/の−りつし/の−おん=ばう/へ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥
「さんもんへんてふ」(『へんでう』)S0711¥さんもん/の¥だいしゆ¥この¥じやう/を¥ひけん−し/て、¥あん/の/ごとく¥あるひは¥へいけ/に¥どうしん−せ/ん/と¥いふ¥しゆと/も¥あり、¥あるひは¥げんじ/に¥つか/ん/と¥いふ¥だいしゆ/も¥あり、¥おもひおもひ¥こころこころ、¥いぎ¥まちまち/なり。¥らうそう=ども/の¥せんぎ−し/ける/は、¥われ=ら¥もつぱら¥きんりんせいしゆ¥てんちやう−ちきう/と¥いのり¥たてまつる。¥なか/に/も¥へいけ/は¥たうだい/の¥ご=ぐわいせき、¥さんもん/に¥おいて¥こと/に¥ききやう/を¥いたす。¥しかり/と¥いへ/ども¥あくぎやう¥ほふ/に¥すぎ/て、¥ばんにん¥これ/を¥そむき、¥くにぐに/へ¥うつて/を¥つかはす/と¥いへ/ども、¥かへつ/て¥いぞく/の¥ため/に¥ほろぼさ/る。¥げんじ/は¥きんねん/より¥この−かた、¥どど/の¥いくさ/に¥うち−かつ/て、¥うんめい¥すでに¥ひらけ/ん/と¥す。¥なんぞ¥たうざん¥ひとり¥しゆくうん¥つき/ぬる¥へいけ/に¥どうしん−し/て、¥うんめい¥ひらくる¥げんじ/を¥そむか/ん/や。¥すべからく¥へいじ¥ちぐ/の¥ぎ/を¥ひるがへし/て、¥げんじ¥がふりよく/の¥むね/に¥ぢうす/べき¥よし、¥さんぜん¥いちどう/にP40¥せんぎ−し/て、¥へんてふ/を/こそ¥おくり/けれ。¥きそ=どの、¥また¥いへのこ−らうどう¥めし−あつめ/て、¥かくめい/に¥この¥へんてふ/を¥ひらか/せ/らる。「¥ろくぐわつ−とをかのひ/の¥てふじやう、¥おなじき−じふろくにち¥たうらい、¥ひえつ/の¥ところ/に、¥すうじつ/の¥うつねん¥いつし/に¥げさん−す。¥およそ¥へいけ/の¥あくぎやく¥るゐねん/に¥およん/で、¥てうてい/の¥さうどう¥やむ¥こと¥なし。¥こと¥じんこう/に¥あり、¥ゐしつ−する/に¥あたは/ず。¥それ¥えいがく/に¥いたつ/て/は、¥ていと¥とうぼく/の¥じんし/と/して、¥こくか¥せいひつ/の¥せいき/を¥いたす。¥しかり/と¥いへ/ども、¥いつてん¥ひさしく¥かの¥えうげき/に¥をかさ/れ/て、¥しかい¥とこしなへ/に¥その¥あんせん/を¥え/ず。¥けんみつ/の¥ほふりん¥なき/が/ごとし。¥おうご/の¥しんゐ¥しばしば¥すたる。¥ここに¥きか¥たまたま¥るゐだい¥ぶび/の¥いへ/に¥むまれ/て、¥さいはひ/に¥たうじ¥せいせん/の¥じん/たり。¥あらかじめ¥きぼう/を¥めぐらし/て¥ぎへい/を¥おこし、¥たちまち/に¥ばんし/の¥めい/を¥わすれ/て、¥いつせん/の¥こう/を¥たつ。¥その¥らう¥いまだ¥りやうねん/を¥すぎ/ざる/に、¥その¥な¥すで/に¥しかい/に¥ながる。¥わが−やま/の¥しゆと、¥かつがつ¥もつて¥しようえつ−す。¥こくか/の¥ため、¥るゐか/の¥ため、¥ぶこう/を¥かんじ¥ぶりやく/を¥かんず。¥かく/の/ごとく/なら/ば、¥さんじやう/の¥せいき¥むなしから/ざる¥こと/を¥よろこび、¥かいだい/の¥ゑご¥おこたり¥なき¥こと/を¥しん/ぬ。¥じじたじ、¥じやうぢう/の¥ぶつぽふ、¥ほんしや¥まつしや¥さいてん/の¥しんめい、¥ふたたび¥けうぼふ/の¥さかえ/ん¥こと/を¥よろこび、¥すきやう/の¥ふるき/に¥ふくせ/ん¥こと/を¥ずゐき−し¥たまふ/らん。¥しゆと=ら/が¥しんぢう¥ただ¥けんさつ/を¥たれよ。¥しかれ/ば−すなはち¥みやう/に/は¥じふに−じんじやう、¥かたじけなく¥いわう−ぜんぜい/の¥ししや/と/して、¥きようと¥つゐたう/の¥ようし/に¥あひ−くははり、¥けん/に/は¥また¥さんぜん/の¥しゆと、¥しばらく¥しゆがく¥さんぎやう/の¥きんせつ/を¥やめ/て、¥あくりよ¥ぢばつ/の¥くわんぐん/を¥たすけ/しめ/ん。¥しくわん−じふじよう/の¥ぽんぷう/は、¥かんりよ/を¥わてう/の¥ほか/に¥はらひ、¥ゆが−さんみつ/のP41¥ほふう/は、¥しぞく/を¥げうねん/の¥むかし/に¥かへさ/ん。¥しゆと/の¥せんぎ¥かく/の/ごとし。¥つらつら¥これ/を¥さつせよ。¥じゆえい−にねん−しちぐわつ−ふつかのひ、¥だいしゆ=ら」/と/ぞ¥かい/たり/ける。¥
「へいけさんもんへのれんじよ」(『へいけさんもんへのれんじよ』)S0712¥へいけ¥これ/を/ば¥ゆめ/に/も¥しり¥たまは/ず、「¥こうぶく¥をんじやう¥りやうじ/は、¥うつぷん/を¥ふくめる¥をりふし/なれ/ば、¥かたらふ/とも¥よも¥なびか/じ。¥たうけ/は¥さんもん/に¥おいて、¥いまだ¥あた/を¥むすば/ず。¥さんもん¥また¥たうけ/の¥ため/に¥ふちう/を¥ぞんぜず。¥せんずる−ところ、¥さんわう−だいし/に¥きせい¥まうし/て、¥さんぜん/の¥しゆと/を¥かたらは/ばや」/とて、¥いちもん/の¥くぎやう¥じふにん、¥どうしん¥れんじよ/の¥ぐわんじよ/を¥かい/て、¥さんもん/へ¥おくら/る。¥その¥ぐわんじよ/に¥いはく、「¥うやまつ/て¥まうす。¥えんりやくじ/を¥もつて¥うぢてら/に¥じゆんじ、¥ひよし/の−やしろ/を¥もつて¥うぢやしろ/と/して、¥いつかう¥てんだい/の¥ぶつぽふ/を¥あふぐ/べき¥こと。¥みぎ¥たうけ¥いちぞく/の¥ともがら、¥こと/に¥きせい−する¥こと¥あり。¥しいしゆ¥いかん/と¥なれ/ば、¥えいざん/は¥これ¥くわんむ−てんわう/の¥ぎよ=う、¥でんげう−だいし¥につたう¥きてう/の¥のち、¥ゑんどん/の¥けうぼふ/を¥この¥ところ/に¥ひろめ、¥しやな/の¥だいかい/を¥その¥うち/に¥つたへ/て/より¥この−かた、¥もつぱら¥ぶつぽふ¥はんじやう/の¥れいくつ/と/して、¥ひさしく¥ちんごこくか/の¥だうぢやう/に¥そなふ。¥まさに¥いま¥いづの−くに/の−るにん、−みなもとの−よりとも、¥み/の¥とが/を¥くい/ず、¥かへつ/て¥てうけん/を¥あざける。¥しか/のみ/なら/ず¥かんぼう/にP42¥くみし/て¥どうしん/を¥いたす¥げんじ=ら、¥よしなか¥ゆきいへ¥いげ、¥たう/を¥むすん/で¥かず¥あり。¥りんけい¥ゑんけい¥すこく/を¥しやうりやう−し、¥とぎ¥とこう¥ばんもつ/を¥あふりやう−す。¥これ/に¥よつ/て¥あるひは¥るゐだい¥くんこう/の¥あと/を¥おひ、¥あるひは¥たうじ¥きうば/の¥げい/に¥まかせ/て、¥すみやか/に¥ぞくと/を¥ちうし、¥きようたう/を¥がうぶく−す/べき¥よし、¥いやしくも¥ちよくめい/を¥ふくん/で、¥しきり/に¥せいばつ/を¥くはだつ。¥ここ/に¥ぎよりん¥かくよく/の¥ぢん、¥くわんぐん¥り/を¥え/ず、¥せいばう¥てんげき/の¥ゐ、¥ぎやくるゐ¥かつ/に¥のる/に¥に/たり。¥もし¥しんめい−ぶつだ/の¥かび/に¥あら/ず/は、¥いかで/か¥はんぎやく/の¥きようらん/を¥しづめ/ん。¥いか/に−いはんや、¥しん=ら/が¥なうそ、¥おもへ/ば¥かたじけなく、¥ほんぐわん/の¥よえい/と¥いつ/つ/べし。¥いよいよ¥そうちよう−す/べし。¥いよいよ¥くぎやう−す/べし。¥じごん¥いご¥さんもん/に¥よろこび¥あら/ば、¥いちもん/の¥よろこび/と¥し、¥しやけ/に¥いきどほり¥あら/ば、¥いつけ/の¥いきどほり/と/して、¥おのおの¥しそん/に¥つたへ/て¥ながく¥しつだ−せ/じ。¥とうじ/は¥かすが/の−やしろ¥こうぶくじ/を¥もつて、¥うぢやしろ¥うぢてら/と/して、¥ひさしく¥ほつさう−だいじよう/の−しう/に¥きす。¥へいじ/は¥ひよし/の−やしろ¥えんりやくじ/を¥もつて¥うぢやしろ¥うぢてら/と/して、¥まのあたり¥ゑんじつ−とんご/の−けう/に¥ちぐ−せ/ん。¥かれ/は¥むかし/の¥ゆゐせき/なり。¥いへ/の¥ため¥えいかう/を¥おもふ。¥これ/は¥いま/の¥せいき/なり。¥きみ/の¥ため¥つゐばつ/を¥こふ。¥あふぎ−ねがは−く/は、¥さんわう−しちしや、¥わうじ−けんぞく、¥ごほふ−しやうじゆ、¥とうざい−まんざん、¥じふに−じようぐわん、¥いわう−ぜんぜい、¥につくわう−ぐわつくわう、¥むに/の¥たんぜい/を¥てらし/て、¥ゆゐいつ/の¥けんおう/を¥たれ¥たまへ。¥しかれ/ば−すなはち¥じやぼうぎやくしん/の¥ぞく、¥おのおの¥て/を¥くんもん/に¥つかね、¥ほんぎやく¥ざんがい/の¥ともがら、¥かうべ/を¥けいと/に¥つたへ/ん。¥よつて¥いちもん/の¥くぎやう=ら、¥いく−どうおん/に¥らい/を¥なし/て、¥きせい¥くだん/の/ごとし。¥じゆ−ざんみ−ぎやう−けん−ゑちぜんの−かみ−たひらの−あそん−みちもり、¥じゆ−ざんみ−ぎやう−けん−うこんゑ/の−ちうじやう−たひらの−あそん−すけもり、¥じやう−ざんみ−ぎやう−うこんゑ/の−ちうじやう−けん−いよの−かみ−たひらの−あそん−これもり、P43¥じやう−ざんみ−ぎやう−さこんゑ/の−ごん/の−ちうぢやう−けん−はりまの−かみ−たひらの−あそん−しげひら、¥じやう−ざんみ−ぎやう−ゑもん/の−かみ−けん−あふみ−とほたふみの−かみ−たひらの−あそん−きよむね、¥さんぎ−じやう−ざんみ−くわうだいこうぐう/の−ごん/の−だいぶ−けん−しゆり/の−だいぶ−かが−ゑつちうの−かみ−たひらの−あそん−つねもり、¥じゆ−にゐ−ぎやう−ちうなごん−せいい−たいしやうぐん−けん−さひやうゑ/の−かみ−たひらの−あそん−とももり、¥じゆ−にゐ−ぎやう−ごん−ぢうなごん−けん−ひぜんの−かみ−たひらの−あそん−のりもり、¥じやう−にゐ−ぎやう−ごん−だいなごん−けん−みち−では−あぜつし−たひらの−あそん−よりもり、¥じゆ−いちゐ−さきの−ないだいじん−たひらの−あそん−むねもり。¥じゆえい−にねん−しちぐわつ−いつかのひ、¥うやまつ/て¥まうす」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥くわんじゆ¥これ/を¥あはれみ¥たまひ/て、¥さう−なう¥しゆと/に¥ひろう/も¥し¥たまは/ず、¥じふぜんじ−ごんげん/の¥しやだん/に¥こめ、¥さんにち¥かぢ−し/て、¥その−のち¥しゆと/に¥ひろう−せ/らる。¥はじめ/は¥あり/と/も¥みえ/ざり/ける¥ぐわんじよ/の¥うはまき/に、¥うた/こそ¥いつしゆ¥いで−き/たれ。¥
たひらか/に¥はな¥さく¥やど/も¥とし¥ふれ/ば¥にし/へ¥かたぶく¥つき/と/こそ¥みれ W050¥
さんわう−だいし¥これ/を¥あはれみ¥たまひ/て、¥さんぜん/の¥しゆと¥ちから/を¥あはせよ/と/なり。¥され/ども¥としごろ−ひごろ/の¥ふるまひ¥しんりよに/も¥たがひ、¥じんばう/に/も¥そむき/ぬれ/ば、¥いのれ/ども¥かなは/ず、¥かたらへ/ども¥なびか/ざり/けり。¥だいしゆ/も¥まことに¥さ/こそ/は/と、¥こと/の¥てい/を/ば¥あはれみ/けれ/ども、¥げんじ¥がふりよく/の¥へんてふ/を¥おくり/ぬる¥うへ/は、¥いま¥また¥かろがろしく、¥その¥ぎ/を¥ひるがへす/に¥およば/ね/ば、¥これ/を¥きよよう−する¥しゆと/も¥なし。P44
「しゆしやうのみやこおち」(『しゆしやうのみやこおち』)S0713¥おなじき−しちぐわつ−じふしにち、¥ひごの−かみ−さだよし、¥ちんぜい/の¥むほん¥たひらげ/て、¥きくち、¥はらだ、¥まつら−たう¥さんぜん−よ−き/を¥めし−ぐし/て¥しやうらく−す。¥ちんぜい/の¥むほん/を/ば、¥わづか/に¥たひらげ/たれ/ども、¥とうごく¥ほくこく/の¥いくさ/は、¥いか/に/も¥しづまら/ず。¥おなじき−にじふににち/の¥やはん/ばかり、¥ろくはら/の¥へん¥おびたたしう¥さうどう−す。¥むま/に¥くら¥おき、¥はるび¥しめ、¥もの=ども¥とうざいなんぼく/へ¥はこび−かくす。¥ただいま¥かたき/の¥うち−いつ/たる¥さま/なり/けり。¥あけ/て¥のち¥きこえ/し/は、¥みの−げんじ/に、¥さどの−ゑもん/の−じよう−しげさだ/と¥いふ¥もの¥あり。¥さんぬる¥ほうげん/の−かつせん/の¥とき、¥ちんぜいの−はちらう−ためとも/が¥ゐんがた/の¥いくさ/に¥まけ/て、¥おちうと¥なつ/たり/し/を、¥からめ/て¥いだし/たり/し¥けんじやう/に、¥もと/は¥ひやうゑ/の−じよう/たり/し/が、¥その−とき¥うゑもん/の−じよう/に¥なり/ぬ。¥これ/に¥よつ/て¥いちもん/に/は¥あたま/れ/て、¥この−ころ¥へいけ/を¥へつらひ/ける/が、¥その¥よ¥ろくはら/に¥はせ−まゐり、「¥きそ¥すでに¥ほくこく/より¥ごまん−よ−き/で¥せめ−のぼり、¥てんだいさん、¥ひがしざかもと/に¥みちみち/て¥さふらふ。¥らうどう/に¥たての−ろくらう−ちかただ、¥てかき/に¥だいぶ−ばう−かくめい、¥ろくせん−よ−き¥てんだいさん/に¥きほひ−のぼり、¥さんぜん/の¥しゆと¥どうしん−し/て、¥ただいま¥みやこ/へ¥みだれ−いる」¥よし¥まうし/けれ/ば、¥へいけ/の¥ひとびと¥おほき/に¥さわい/で、¥はうばう/へ¥うつて/を¥さし−むけ/らる。¥たいしやうぐん/に/は¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥さんぜん−よ−き/で¥まづ¥やましな/にP45¥しゆくせ/らる。¥ゑちぜんの−さんみ−みちもり、¥のとの−かみ−のりつね、¥にせん−よ−き/で¥うぢばし/を¥かため/らる。¥さま/の−かみ−ゆきもり、¥さつまの−かみ−ただのり、¥いつせん−よ−き/で¥よどぢ/を¥しゆご−せ/られ/けり。¥げんじ/の¥かた/に/は¥じふらう−くらんど−ゆきいへ、¥すせんぎ/で¥うぢばし/を¥わたつ/て¥みやこ/へ¥いる。¥みちの−くにの−しん−はうぐわん−よしやす/が¥こ、¥やたの−はんぐわんだい−よしきよ、¥おほえやま/を¥へ/て¥しやうらく−す/と/も¥まうし−あへ/り。¥また¥つの−くに¥かはち/の¥げんじ=ら¥どうしん−し/て、¥おなじう¥みやこ/へ¥みだれ−いる¥よし¥まうし/けれ/ば、¥へいけ/の¥ひとびと、「¥この−うへ/は¥ちから¥およば/ず、¥ただ¥いつしよ/で¥いか/に/も−なり¥たまへ」/とて、¥はうばう/へ¥むけ/られ/たり/ける¥うつて=ども、¥みな¥みやこ/へ¥よび−かへさ/れ/けり。¥ていと¥みやうり/の−ち、¥にはとり¥ない/て¥やすき¥こと¥なし。¥をさま/れる¥よ/だに/も¥かく/の/ごとし。¥いはんや¥みだれ/たる¥よ/に¥おいて/を/や。¥よしのやま/の¥おく/の¥おく/へ/も¥いり/な/ばや/と/は¥おぼしめさ/れ/けれ/ども、¥しよ−こく−しちだう¥ことごとく¥そむき/ぬ。¥いづく/の¥うら/か¥おだしかる/べき。¥さんがい−むあん、−いうによくわたく/と/して、¥によらい/の¥きんげん、¥いちじよう/の¥めうもん/なれ/ば、¥なじか/は¥すこし/も¥たがふ/べき。¥おなじき−にじふしにち/の¥さ−よ−ふけがた/に、¥さきの−ないだいじん−むねもり=こう、¥けんれいもんゐん/の¥わたら/せ¥たまふ¥ろくはら¥いけ=どの/に¥まゐつ/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥きそ¥すでに¥ほくこく/より¥ごまん−よ−き/で¥せめ−のぼり、¥ひえいさん¥ひがしざかもと/に¥みちみち/て¥さふらふ。¥らうどう/に¥たての−ろくらう−ちかただ、¥てかき/に¥だいぶ−ばう−かくめい、¥ろくせん−よ−き¥てんだいさん/へ¥きほひ−のぼり、¥さんぜん/の¥しゆと¥ひき−ぐし/て、¥ただいま¥みやこ/へ¥みだれ−いる¥よし¥きこえ¥さふらふ。¥ひとびと/は¥ただ¥みやこ/の¥うち/にて、¥いか/に/も−なら/ん/と¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥まのあたり¥にようゐん、¥にゐ=どの/に、¥うき−め/を¥みせ¥まゐらせ/ん¥こと/の¥くちをしく¥さふらへ/ば、¥ゐん/を/も¥うち/を/もP46¥とり¥たてまつ/て、¥さいこく/の¥かた/へ¥ご=かう¥ぎやうがう/を/も、¥なし¥まゐらせ/ばや/と¥おもひ−なつ/て/こそ¥さふらへ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にようゐん、「¥いま/は¥ただ¥と/も−かう/も、¥そこ/の¥はからひ/で/こそ¥あら/んず/らめ」/とて、¥ぎよ=い/の¥おん=たもと/に¥あまる¥おん=なみだ、¥せき−あへ/させ¥たまは/ね/ば、¥おほい=との/も¥なほし/の¥そで¥しぼる/ばかり/に/ぞ¥みえ/られ/ける。¥
さる−ほど/に¥ほふわう/を/ば¥へいけ¥とり¥たてまつ/て、¥さいこく/の¥かた/へ¥おち−ゆく/べし/など¥まうす¥こと/を、¥ないない¥きこしめす¥むね/も/や¥あり/けん、¥その¥よ/の¥やはん/ばかり、¥あぜつし−だいなごん−すけかたの−きやう/の¥しそく、¥むま/の−かみ−すけとき/ばかり/を¥おん=とも/にて、¥ひそか/に¥ごしよ/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥おん=ゆくへ/も¥しら/ず/ぞ¥ご=かう¥なる。¥ひと¥これ/を¥しら/ざり/けり。¥へいけ/の¥さぶらひ/に¥きち−ないざゑもん/の−じよう−すゑやす/と¥いふ¥もの¥あり。¥さかざかしき¥をのこ/にて、¥ゐん/に/も¥めし−つかは/れ/ける/が、¥その¥よ/しも¥お=とのゐ/に¥まゐつ/て、¥はるか/に¥とほう¥さふらひ/ける/が、¥つね/の¥ごしよ/の¥おん=かたざま、¥よ/に¥もの−さわがしう、¥にようばう=たち¥しのびね/に¥なき/など¥し¥たまへ/り。¥なにごと/なる/らん/と¥きき/けれ/ば、「¥にはか/に¥ほふわう/の¥みえ/させ¥ましまさ/ぬ/は、¥いづかた/へ/の¥ご=かう/やらん」/と¥まうす¥こゑ/に¥きく/ほど/に、¥あな¥あさまし/とて、¥いそぎ¥ろくはら/へ¥はせ−まゐり、¥この¥よし¥まうし/たり/けれ/ば、¥おほい=との、「¥さだめて¥ひがごと/で/ぞ¥ある/らん」/と/は¥のたまひ/ながら、¥いそぎ¥まゐつ/て¥み¥まゐら/させ¥たまふ/に、¥げに/も¥ほふわう¥わたら/せ¥ましまさ/ず。¥ごぜん/に¥さぶらは/せ¥たまふ¥にようばう=たち、¥にゐ=どの¥たんご=どの¥いげ¥いち−にん/も¥はたらき¥たまは/ず。「¥いか/に/や」/と¥とひ¥まゐら/させ¥たまへ/ども、「¥われ/こそ¥ほふわう/の¥おん=ゆくへ¥しり¥まゐらせ/たり」/と¥まうさ/るる¥にようばう=たち、¥いち−にん/も¥おはせ/ざり/けれ/ば、P47¥おほい=との/も¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず、¥なくなく¥ろくはら/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥さる−ほど/に、¥ほふわう¥みやこ/の¥うち/に¥わたら/せ¥たまは/ず/と¥まうす/ほど/こそ¥あり/けれ、¥きやう−ぢう/の¥さうどう¥なのめ/なら/ず。¥いはんや¥へいけ/の¥ひとびと/の¥あわて−さわが/れ/ける¥ありさま/は、¥いへいへ/に¥かたき/の¥うち−いつ/たり/とも、¥かぎり−あれ/ば、¥これ/に/は¥すぎ/じ/と/ぞ¥みえ/し。¥へいけ¥ひごろ/は¥ゐん/を/も¥うち/を/も¥とり¥たてまつ/て、¥さいこく/の¥かた/へ¥ご=かう¥ぎやうがう/を/も¥なし¥まゐらせ/ん/と¥したく−せ/られ/たり/しか/ども、¥かく¥うち−すて/させ¥たまひ/ぬれ/ば、¥たのむ¥こ/の−もと/に¥あめ/の¥たまら/ぬ¥ここち/ぞ¥せ/られ/ける。「¥せめて/は¥ぎやうがう/ばかり/を/も¥なし¥まゐらせよ/や」/とて、¥あくる¥う/の−こく/に¥ぎやうがう/の¥み=こし/を¥よせ/たり/けれ/ば、¥しゆしやう/は¥こんねん¥ろくさい、¥いまだ、¥いとけなう¥ましまし/けれ/ば、¥なにごころ¥なく/ぞ¥めさ/れ/ける。¥ご=どうよ/に/は、¥おん=ぼぎ¥けんれいもんゐん¥まゐらせ¥たまふ。「¥しんし、¥ほうけん、¥ないしどころ、¥いんやく、¥とき/の−ふだ、¥げんじやう、¥すずか/など/を/も¥とり−ぐせよ」/と、¥へい−だいなごん−ときただの−きやう¥げぢ−せ/られ/たり/けれ/ども、¥あまり/に¥あわて−さわい/で、¥とり−おとす¥もの/ぞ¥おほかり/ける。¥ひ/の−ござ/の¥ぎよ=けん/など/を/も、¥とり−わすれ/させ¥たまひ/けり。¥やがて¥この¥ときただの−きやう、¥くら/の−かみ−のぶもと、¥さぬきの−ちうじやう−ときざね、¥ふし¥さん−にん、¥いくわん/にて¥ぐぶ−せ/らる。¥こんゑつかさ、¥み=つな/の−すけ、¥かつちう¥きうせん/を¥たいし/て、¥ぎやうがう/の¥おん=とも¥つかまつる。¥しちでう/を¥にし/へ、¥しゆしやか/を¥みなみ/へ¥ぎやうがう¥なる。¥あくれ/ば¥しちぐわつ−にじふごにち/なり。¥かんてん¥すでに¥ひらけ/て、¥くも¥とうれい/に¥たなびき、¥あけがた/の¥つき¥しろく¥さえ/て、¥けいめい¥また¥いそがはし。¥ゆめ/に/だに¥かかる¥こと/は¥み/ず。¥ひととせ¥みやこうつり/とて、P48¥にはか/に¥あわたたしかり/し/は、¥かかる/べかり/ける¥ぜんべう/と/も、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。¥せつしやう=どの/も¥ぎやうがう/に¥ぐぶ−し/て、¥ぎよ=しゆつ¥あり/ける/が、¥しちでう−おほみや/にて、¥びんづら¥ゆう/たる¥どうじ/の、¥おん=くるま/の¥まへ/を、¥つと¥はしり−とほる/を¥ごらんずれ/ば、¥かの¥どうじ/の¥ひだん/の¥たもと/に、¥はる/の−ひ/と¥いふ¥もじ/ぞ¥あらはれ/たる。¥はる/の−ひ/と¥かい/て/は、¥かすが/と¥よめ/ば、¥ほつさう−おうご/の¥かすが−だい−みやうじん、¥たいしよくくわん/の¥おん=すゑ/を¥まもり¥たまふ/に/こそ/と、¥たのもしう¥おぼしめす¥ところ/に、¥くだん/の¥どうじ/の¥こゑ/と¥おぼしく/て、¥
いか/に−せ/む¥ふぢ/の¥すゑば/の¥かれ−ゆく/を¥ただ¥はる/の−ひ/に¥まかせ/たら/なむ W051¥
とも/に¥さふらふ¥しんどう−さゑもん/の−じよう−たかなほ/を¥めし/て、「¥この¥よ/の−なか/の¥ありさま/を¥ごらんずる/に、¥ぎやうがう/は¥なれ/ども¥ご=かう/は¥なら/ず。¥ゆく−すゑ¥たのもしから/ず¥おぼしめす/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥おん=うしかひ/に¥め/を¥きつと¥み−あはせ/たり。¥やがて¥こころ−え/て、¥おん=くるま/を¥やり−かへし、¥おほみや/を¥のぼり/に、¥とぶ/が/ごとく/に¥つかまつり、¥きたやま/の¥へん、¥ちそくゐん/へ/ぞ¥いら/せ¥たまひ/ける。¥
「これもりのみやこおち」(『これもりのみやこおち』)S0714¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ、¥たち¥わき−ばさみ、¥せつしやう=どの/の¥おん=とどまり¥ある/を¥おし−とどめ¥まゐらせ/ん/と、¥しきり/に¥すすみ/けれ/ども、¥ひとびと/に¥せい−せ/られ/て、¥ちから¥およば/で¥とどまり/ぬ。P49¥
なか/に/も¥こまつの−さんみ/の−ちうじやう−これもりの−きやう/は、¥ひごろ/より¥おもひ−まうけ¥たまへ/る¥こと/なれ/ども、¥さし−あたつ/て/は¥かなしかり/けり。¥この¥きたのかた/と¥まうす/は、¥こ=なかのみかど/の−しん−だいなごん−なりちかの−きやう/の¥むすめ、¥ちち/に/も¥はは/に/も¥おくれ¥たまひ/て、¥みなしご/にて¥おはせ/しか/ども、¥たうがん¥つゆ/に¥ほころび、¥こうふん¥まなこ/に¥こび/を¥なし、¥りうはつ¥かぜ/に¥みだるる¥よそほひ、¥また¥ひと¥ある/べし/と/も¥みえ¥たまは/ず。¥ろくだい−ごぜん/とて、¥しやうねん¥とを/に¥なり¥たまふ¥わかぎみ、¥その¥いもと¥はつさい/の¥ひめぎみ¥おはし/けり。¥この¥ひとびと/も¥めんめん/に¥おくれ/じ/と¥したひ¥たまへ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう¥のたまひ/ける/は、「¥われ/は¥ひごろ¥まうし/し¥やう/に、¥いちもん/に¥ぐせ/られ/て、¥さいこく/の¥かた/へ¥おち−ゆく/なり。¥いづく/まで/も¥ぐそく−し¥たてまつる/べけれ/ども、¥みち/に/も¥かたき¥まつ/なれ/ば、¥こころ−やすく¥とほら/ん¥こと¥あり−がたし。¥たとひ¥われ¥うた/れ/たり/と¥きき¥たまふ/とも、¥さま/など¥かへ¥たまふ¥こと/は、¥ゆめゆめ¥ある/べから/ず。¥その¥ゆゑ/は、¥いか/なら/ん¥ひと/に/も、¥み/も¥し¥みえ/て、¥あの¥をさなき¥もの=ども/を/も、¥はぐくみ¥たまへ。¥なさけ/を¥かく/べき¥ひと/も、¥など/か¥なく/て¥さふらふ/べき」/と、¥やうやう/に¥なぐさめ¥のたまへ/ども、¥きたのかた¥とかう/の¥へんじ/を/も¥し¥たまは/ず、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥ちうじやう¥すでに¥うつ−たた/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥きたのかた¥たもと/に¥すがり、「¥みやこ/に/は¥ちち/も¥なし、¥はは/も¥なし。¥すて/られ¥たてまつ/て¥のち、¥また¥たれ/に/かは¥みゆ/べき/に、¥いか/なら/ん¥ひと/に/も¥みえよ/など¥うけたまはる/こそ¥うらめしけれ。¥ぜんぜ/の¥ちぎり¥あり/けれ/ば、¥ひと/こそ¥あはれみ¥たまふ/とも、¥また¥ひと−ごと/に/しも/や¥なさけ/を¥かく/べき。¥いづく/まで/も¥ともなひ¥たてまつり、¥おなじ¥のばら/の¥つゆ/と/も¥きえ、¥ひとつ¥そこ/の¥みくづ/と/も¥なら/ん/と/こそ¥ちぎり/し/に、¥され/ば¥さ−よ/の¥ねざめ/の¥むつごと/は、¥みな¥いつはり/に¥なり/に/けり。P50¥せめて/は¥み¥ひとつ/なら/ば¥いかが−せ/ん。¥すて/られ¥たてまつる¥み/の¥う−さ/を、¥おもひ−しつ/て/も¥とどまり/な/ん。¥をさなき¥もの=ども/を/ば、¥たれ/に¥み−ゆづり、¥いか/に−せよ/と/か¥おぼしめす。¥うらめしう/も¥とどめ¥たまふ/ものかな」/とて、¥かつうは¥うらみ¥かつうは¥したひ¥たまへ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう、「¥まことに¥ひと/は¥じふさん、¥われ/は¥じふご/より、¥み−そめ¥たてまつ/たれ/ば、¥ひ/の¥なか¥みづ/の¥そこ/へ/も、¥とも/に¥いり¥とも/に¥しづみ、¥かぎり−ある¥わかれぢ/まで/も、¥おくれ¥さきだた/じ/と/こそ¥おもひ/しか。¥けふ/は¥かく¥もの−うき¥ありさま=ども/にて、¥いくさ/の¥ぢん/へ¥おもむけ/ば、¥ぐそく−し¥たてまつ/て、¥ゆく−すゑ/も¥しら/ぬ¥たび/の¥そら/にて、¥うき−め/を¥みせ¥まゐらせ/ん/も、¥わが−み/ながら¥うたてかる/べし。¥その−うへ¥こんど/は¥ようい/も¥さふらは/ず、¥いづく/の¥うら/に/も¥こころ−やすう¥おち−つき/たら/ば、¥それ/より¥むかひ/に¥ひと/を/こそ¥まゐらせ/め」/とて、¥おもひ−きつ/て/ぞ¥たた/れ/ける。¥ちうもん/の¥らう/に¥いで/て、¥よろひ¥とつ/て¥き、¥むま¥ひき−よせ/させ、¥すでに¥のら/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥わかぎみ¥ひめぎみ¥はしり−いで/て、¥ちち/の¥よろひ/の¥そで、¥くさずり/に¥とり−つき、「¥これ/は¥され/ば、¥いづち/へ/とて¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん。¥われ/も¥まゐら/ん、¥われ/も¥ゆか/ん」/と¥したひ−なき¥たまへ/ば、¥うき−よ/の¥きづな/と¥おぼえ/て、¥さんみ/の−ちうじやう、¥いとど¥せんかた−な=げ/に/ぞ¥みえ/られ/ける。¥おん=おとと¥しん−ざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥ひだん/の−ちうじやう−きよつね、¥おなじき−せうしやう−ありもり、¥たんごの−じじう−ただふさ、¥びつちうの−かみ−もろもり、¥きやうだい¥ごき、¥むま/に¥のり/ながら、¥もん/の¥うち/へ¥うち−いれ、¥には/に¥ひかへ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥ぎやうがう/は¥はるか/に¥のび/させ¥たまひ/ぬ/らん/に、¥いか/に/や¥いま/まで/の¥ちさん¥ざふらふ」/と、¥こゑごゑ/に¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう¥むま/に¥うち−のつ/て¥いで/られ/ける/が、¥またP51¥ひつ−かへし、¥えん/の¥きは/に¥うち−よせ、¥ゆみ/の¥はず/にて¥み=す/を¥ざつと¥かき−あげ/て、「¥これ¥ごらん¥さふらへ。¥をさなき¥もの=ども/が¥あまり/に¥したひ¥さふらふ/を、¥とかう¥こしらへ−おか/ん/と¥つかまつる/ほど/に、¥ぞん/の−ほか/の¥ちさん¥ざふらふ」/と¥のたまひ/も¥あへ/ず、¥はらはら/と¥なき¥たまへ/ば、¥には/に¥ひかへ¥たまへ/る¥ひとびと/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥ここ/に¥さんみ/の−ちうじやう/の¥としごろ/の¥さぶらひ/に、¥さいとう−ご、¥さいとう−ろく/とて、¥あに/は¥じふく、¥おとと/は¥じふしち/に¥なる¥さぶらひ¥あり。¥さんみ/の−ちうじやう/の¥お=むま/の¥さう/の¥みづつき/に¥とり−つい/て、¥いづく/まで/も¥おん=とも¥つかまつり¥さふらは/ん/と¥まうし/けれ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう¥のたまひ/ける/は、「¥なんぢ=ら/が¥ちち¥ながゐ/の−さいとう−べつたう−さねもり/が、¥ほくこく/へ¥くだり/し¥とき、¥とも−せ/う/ど¥いひ/し/を、¥ぞんずる¥むね/が¥ある/ぞ/とて、¥なんぢ=ら/を¥とどめ−おき、¥つひに¥ほくこく/にて¥うちじに−し/たり/し/は、¥ふるき¥もの/にて、¥かかる/べかり/ける¥こと/を、¥かねて¥さとつ/たり/ける/に/こそ。¥あの¥ろくだい/を¥とどめ/て¥ゆく/に、¥こころ−やすう¥ふち−す/べき¥もの/の¥なき/ぞ。¥ただ¥り/を¥まげ/て¥とどまれ/かし」/と¥のたまへ/ば、¥ににん/の¥もの=ども¥ちから¥およば/ず、¥なみだ/を¥おさへ/て¥とどまり/ぬ。¥きたのかた/は、「¥としごろ−ひごろ、¥かく¥なさけ−なき¥ひと/と/こそ、¥かけ/て/は¥おもは/ざり/しか」/とて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥わかぎみ¥ひめぎみ¥にようばう=たち/は、¥み=す/の¥ほか/まで¥まろび−いで、¥こゑ/を¥はかり/に¥をめき−さけび¥たまひ/けり。¥その¥こゑごゑ¥みみ/の¥そこ/に¥とどまつ/て、¥され/ば¥さいかい/の¥たつ¥なみ/の¥うへ、¥ふく¥かぜ/の¥おと/まで/も、¥きく¥やう/に/こそ¥おもは/れ/けれ。¥へいけ¥みやこ/を¥おち−ゆく/に、¥ろくはら、¥いけ=どの、¥こまつ=どの、¥はちでう、¥にしはちでう¥いげ、¥ひとびと/の¥いへいへ、¥にじふ−よ−か−しよ、¥その−ほか¥つぎつぎ/の¥ともがら/の¥しゆくしよじゆくしよ、¥きやうしらかは、¥しごまんげん/がP52¥ざいけ/に¥ひ/を¥かけ/て、¥いちど/に¥みな¥やき−はらふ。¥
「せいしゆりんかう」(『せいしゆりんかう』)S0715¥あるひは¥せいしゆ¥りんかう/の¥ち/なり。¥ほうけつ¥むなしく¥いしずゑ/を¥のこし、¥らんよ¥ただ¥あと/を¥とどむ。¥あるひは¥こうひ¥いうえん/の¥みぎり/なり。¥せうばう/の¥あらし¥こゑ¥かなしみ、¥えきてい/の¥つゆ¥いろ¥うれふ。¥さうきやう¥すゐちやう/の¥もとゐ、¥よくりん¥てうしよ/の¥たち、¥くわいきよく/の¥ざ、¥えんらん/の¥すみか、¥たじつ/の¥けいえい/を¥むなしう/して、¥へんし/の¥くわいしん/と¥なり−はて/ぬ。¥いはんや¥らうじう/の¥ほうひつ/に¥おいて/を/や。¥いはんや¥ざふにん/の¥をくしや/に¥おいて/を/や。¥よえん/の¥およぶ¥ところ、¥ざいざい¥しよしよ¥すじつちやう/なり。¥きやうご¥たちまち/に¥ほろび/て、¥こそたい/の¥つゆ¥けいきよく/に¥うつり、¥ぼうしん¥すでに¥おとろへ/て、¥かんやうきう/の¥けぶり、¥へいけい/を¥かくし/けん/も、¥かく/や/と/ぞ¥おぼえ/ける。¥ひごろ/は¥かんこく¥じかう/の¥さがしき/を¥かたうせ/しか/ども、¥ほくてき/の¥ため/に¥これ/を¥やぶら/れ、¥いま/は¥こうか¥けいゐ/の¥ふかき/を¥たのみ/しか/ども、¥とうい/の/ため/に¥これ/を¥とら/れ/たり。¥あに¥はかり/き/や、¥たちまちに¥れいぎ/の¥きやう/を¥せめ−いださ/れ/て、¥なくなく¥むち/の¥さかひ/に¥み/を¥よせ/ん/と。¥きのふ/は¥くも/の¥うへ/にて¥あめ/を¥くだす¥しんりよう/たり/き。¥けふ/は¥いちぐら/の¥ほとり/に¥みづ/を¥うしなふ¥こぎよ/の/ごとし。¥くわ−ふく¥みち/を¥おなじう¥し、¥じやうすゐ¥たなごころ/を¥かへす。¥いま¥め/の¥まへ/に¥あり。¥たれ/か¥これ/を¥かなしま/ざら/ん。¥ほうげん/の¥むかし/は¥はる/の¥はな/と¥さかえ/しか/ども、¥じゆえい/の¥いま/は¥また¥あき/の¥もみぢ/と¥おち−はてぬ。P53¥はたけやまの−しやうじ−しげよし、¥をやまだの−べつたう−ありしげ、¥うつのみやの−さゑもん−ともつな、¥これ=ら/は¥さんぬる¥ぢしよう/より¥じゆえい/まで、¥めし−こめ/られ/て¥あり/し/が、¥その−とき¥すでに¥きら/る/べかり/し/を、¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥いけん/に¥まうさ/れ/ける/は、「¥かれ=ら¥ひやくにん¥せん−にん/が¥くび/を¥きら/せ¥たまひ/て¥さふらふ/とも、¥ご=うん¥つき/させ¥たまひ/な/ば、¥おん=よ/を¥たもた/せ¥たまは/ん¥こと¥あり−がたし。¥こきやう/に¥さふらふ¥さいし¥しよじう=ら、¥いか/ばかり¥なげき−かなしみ¥さふらふ/らん。¥ただ¥り/を¥まげ/て¥くださ/せ¥たまへ。¥もし¥うんめい¥ひらけ/て、¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/せ¥たまふ¥こと/も¥さふらは/ば、¥あり−がたき¥おん=なさけ/で/こそ¥さふらは/んずれ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥おほい=との、「¥さら/ば¥とう¥くだれ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥これ=ら¥かうべ/を¥かたぶけ¥たなごころ/を¥あはせ/て、「¥いづく/まで/も¥おん=とも¥つかまつり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥おほい=との、「¥なんぢ=ら/が¥たましひ/は¥みな¥とうごく/に/こそ¥ある/べき/に、¥ぬけがら/ばかり¥さいこく/へ¥めし−ぐす/べき¥やう¥なし。¥ただ¥とう¥くだれ」/と/こそ¥のたまひ/けれ。¥これ=ら/も¥にじふ−よ−ねん/の¥しゆ/なり/けれ/ば、¥わかれ/の¥なみだ¥おさへ−がたし。¥
「ただのりのみやこおち」(『ただのりのみやこおち』)S0716¥さつまの−かみ−ただのり/は、¥いづく/より/か¥かへら/れ/たり/けん。¥さぶらひ¥ごき¥わらは¥いち−にん、¥わが−み¥とも/に¥ひた−かぶと¥しちき¥とつ/て¥かへし、¥ごでうの−さんみ−しゆんぜいの−きやう/の¥もと/に¥おはし/て¥み¥たまへ/ば、¥もんこ/をP54¥とぢ/て¥ひらか/ず。「¥ただのり」/と¥なのり¥たまへ/ば、¥おちうと¥かへり−き/たれ/り/とて、¥その¥うち¥さわぎ−あへ/り。¥さつまの−かみ¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥みづから¥たからか/に¥まうさ/れ/ける/は、「¥これ/は¥さんみ=どの/に¥まうす/べき¥こと¥あつ/て、¥ただのり/が¥まゐつ/て¥さふらふ。¥たとひ¥かど/を/ば¥あけ/られ/ず/とも、¥この¥きは/まで¥たち−より¥たまへ。¥まうす/べき¥こと/の¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥しゆんぜいの−きやう、「¥その¥ひと/なら/ば¥くるしかる/まじ。¥あけ/て¥いれ¥まうせ」/とて、¥もん/を¥あけ/て¥たいめん¥あり/けり。¥こと/の¥てい¥なにと−なう¥もの−あはれ/なり。¥さつまの−かみ¥まうさ/れ/ける/は、「¥せんねん¥まうし¥うけたまはつ/て/より¥のち/は、¥ゆめゆめ¥そりやく/を¥ぞんぜ/ず/と/は¥まうし/ながら、¥この¥にさん−か−ねん/は、¥きやうと/の¥さわぎ、¥くにぐに/の¥みだれ¥いで−き、¥あまつさへ¥たうけ/の¥み/の−うへ/に¥まかり−なつ/て¥さふらへ/ば、¥つね/に¥まゐり−よる¥こと/も¥さふらは/ず。¥きみ¥すでに¥ていと/を¥いで/させ¥たまひ/ぬ。¥いちもん/の¥うんめい¥けふ¥はや¥つき−はて¥さふらふ。¥それ/に¥つき¥さふらひ/て/は、¥せんじふ/の¥おん=さた¥ある/べき¥よし¥うけたまはつ/て¥さふらひ/し/ほど/に、¥しやうがい/の¥めんぼく/に、¥いつしゆ/なり/と/も¥ご=おん/を¥かうむら/う/ど¥ぞんじ¥さふらひ/つる/に、¥かかる¥よ/の¥みだれ¥いで−き/て、¥その¥さた¥なく¥さふらふ¥でう、¥ただ¥いつしん/の¥なげき/と¥ぞんずる¥ざふらふ。¥この−のち¥よ¥しづまつ/て、¥せんじふ/の¥おん=さた¥さふらは/ば、¥これ/に¥さふらふ¥まきもの/の¥なか/に、¥さり/ぬ/べき¥うた¥さふらは/ば、¥いつしゆ/なり/と/も¥ご=おん/を¥かうむつ/て、¥くさ/の¥かげ/にて/も¥うれし/と¥ぞんじ¥さふらは/ば、¥とほき¥おん=まもり/と/こそ¥なり¥まゐらせ¥さふらは/んずれ」/とて、¥ひごろ¥よみ−おか/れ/たる¥うた=ども/の¥なか/に、¥しうか/と¥おぼしき/を、¥ひやく−よ−しゆ¥かき−あつめ/られ/たり/ける¥まきもの/を、¥いま/は/とて¥うつ−たた/れ/ける¥とき、¥これ/を¥とつ/て¥もた/れ/たり/ける/を、¥よろひ/の¥ひき−あはせ/よりP55¥とり−いで/て、¥しゆんぜいの−きやう/に¥たてまつら/る。¥さんみ¥これ/を¥ひらい/て¥み¥たまひ/て、「¥かかる¥わすれ−がたみ=ども/を¥たまはり¥さふらふ¥うへ/は、¥ゆめゆめ¥そりやく/を¥ぞんず/まじう¥さふらふ。¥さて/も¥ただいま/の¥おん=わたり/こそ、¥なさけ/も¥ふかう、¥あはれ/も¥こと/に¥すぐれ/て、¥かんるゐ¥おさへ−がたう/こそ¥さふらへ」/と¥のたまへ/ば、¥さつまの−かみ、「¥かばね/を¥のやま/に¥さらさ/ば¥さらせ、¥うき−な/を¥さいかい/の¥なみ/に¥ながさ/ば¥ながせ、¥いま/は¥うき−よ/に¥おもひ−おく¥こと¥なし。¥さら/ば¥いとま¥まうし/て」/とて、¥むま/に¥うち−のり¥かぶと/の¥を/を¥しめ/て、¥にし/を¥さし/て/ぞ¥あゆま/せ¥たまふ。¥さんみ¥うしろ/を¥はるか/に¥み−おくつ/て¥たた/れ/たれ/ば、¥ただのり/の¥こゑ/と¥おぼしく/て、「¥せんど¥ほど¥とほし、¥おもひ/を¥がんざん/の¥ゆふべ/の¥くも/に¥はす」/と、¥たからか/に¥くちずさみ¥たまへ/ば、¥しゆんぜいの−きやう/も、¥いとど¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥なみだ/を¥おさへ/て¥いり¥たまひ/ぬ。¥その−のち¥よ¥しづまつ/て、¥せんざいしふ/を¥せんぜ/られ/ける/に、¥ただのり/の¥あり/し¥ありさま、¥いひ−おき/し¥こと/の−は、¥いまさら¥おもひ−いで/て¥あはれ/なり/けり。¥くだん/の¥まきもの/の¥なか/に、¥さり/ぬ/べき¥うた¥いくら/も¥あり/けれ/ども、¥その¥み¥ちよくかん/の¥ひと/なれ/ば、¥みやうじ/を/ば¥あらはさ/れ/ず、¥こきやう/の¥はな/と¥いふ¥だい/にて、¥よま/れ/たり/ける¥うた¥いつしゆ/ぞ、¥よみびと−しら/ず/と¥いれ/られ/たる。¥
さざなみ/や¥しが/の¥みやこ/は¥あれ/に/し/を¥むかし/ながら/の¥やまざくら/かな W052¥
その¥み¥てうてき/と¥なり/ぬる¥うへ/は、¥しさい/に¥およば/ず/と¥いひ/ながら、¥うらめしかり/し¥こと=ども/なり。P56
「つねまさのみやこおち」(『つねまさのみやこおち』)S0717¥しゆり/の−だいぶ−つねもり/の¥ちやくし、¥くわうごぐう/の−すけ−つねまさ/は、¥えうせう/の¥とき/より、¥にんわじ/の−お=むろ/の¥ごしよ/に、¥とうぎやう/にて¥さぶらは/れ/しか/ば、¥かかる¥そうげき/の¥なか/に/も、¥きみ/の¥おん=なごり¥きつと¥おもひ−いで¥まゐらせ、¥さぶらひ¥ごろくき¥めし−ぐし/て、¥にんわじ=どの/へ¥はせ−まゐり、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥もん/を¥たたか/せ¥まうし−いれ/られ/ける/は、「¥きみ¥すでに¥ていと/を¥いで/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥いちもん/の¥うんめい¥けふ¥すでに¥つき−はて¥さふらひ/ぬ。¥うき−よ/に¥おもひ−おく¥こと/とて/は、¥ただ¥きみ/の¥おん=なごり/ばかり/なり。¥はつさい/の¥とし¥この¥ごしよ/へ¥まゐり¥はじめ¥さふらひ/て、¥じふさん/で¥げんぶく¥つかまつり¥さふらひ/し/まで/は、¥いささか¥あひ−いたはる¥こと/の¥さふらは/ん/より¥ほか/は、¥あからさま/に¥ごぜん/を¥たち−さる¥こと/も¥さふらは/ず。¥けふ¥すでに¥さいかい¥せんり/の¥なみぢ/に¥おもむき¥さふらへ/ば、¥また¥いづれ/の¥ひ¥いづれ/の¥とき、¥かならず¥たち−かへる/べし/と/も¥おぼえ/ぬ¥こと/こそ¥くちをしう¥さふらへ。¥いま−いちど¥ごぜん/へ¥まゐつ/て、¥きみ/を/も¥み¥まゐらせ/たう¥ぞんじ¥さふらへ/ども、¥かつちう/を¥よろひ¥きうせん/を¥たいし/て、¥あら/ぬ¥さま/なる¥よそほひ/に¥まかり−なつ/て¥さふらへ/ば、¥はばかり−ぞんじ¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥お=むろ¥あはれ/に¥おぼしめし/て、「¥ただ¥その¥すがた/を¥あらため/ず/して¥まゐれ」/と/こそ¥おほせ/けれ。¥つねまさ¥その−ひ/は、¥むらさきぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥もよぎ−にほひ/の−よろひ¥き/て、¥ながぶくりん/の−たち/を¥はき、P57¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で¥たかひも/に¥かけ、¥ごぜん/の¥お=つぼ/に¥かしこまる。¥お=むろ¥やがて¥ぎよ=しゆつ¥あつ/て、¥み=す¥たかく¥あげ/させ、「¥これ/へ¥これ/へ」/と¥めさ/れ/けれ/ば、¥つねまさ¥おほ−ゆか/へ/こそ¥まゐら/れ/けれ。¥とも/に¥さぶらふ¥とう−びやうゑ/の−じよう−ありのり/を¥めす。¥あかぢ/の−にしき/の¥ふくろ/に¥いれ/たり/ける¥おん=びは/を¥もつ/て¥まゐり/たり。¥つねまさ¥これ/を¥とり−つい/で、¥ごぜん/に¥さし−おき、¥まうさ/れ/ける/は、「¥せんねん¥くだし−あづかつ/て¥さふらひ/し、¥せいざん¥もた/せ/て¥まゐつ/て¥さふらふ。¥なごり/は¥つき/ず¥ぞんじ¥さふらへ/ども、¥さ/しも/の¥わが¥てう/の¥ちようほう/を、¥でんじや/の¥ちり/に¥なさ/ん¥こと/の¥くちをしう¥さふらへ/ば、¥まゐらせ−おく¥ざふらふ。¥もし¥ふしぎ/に¥うんめい¥ひらけ/て、¥みやこ/へ¥たち−かへる¥こと/も¥さふらは/ば、¥その−とき/こそ¥かさね/て¥くだし−あづかり¥さふらは/め」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥お=むろ¥あはれ/に¥おぼしめし/て、¥いつしゆ/の¥ぎよ=えい/を¥あそばい/て/ぞ¥くださ/れ/ける。¥
あか/ず/して¥わかるる¥きみ/が¥なごり/を/ば¥のち/の¥かたみ/に¥つつみ/て/ぞ¥おく W053¥
つねまさ¥おん=すずり¥くださ/れ/て、¥
くれたけ/の¥かけひ/の¥みづ/は¥かはれ/ども¥なほ¥すみ−あか/ぬ¥みや/の¥うち/かな W054¥
さて¥つねまさ¥ごぜん/を¥まかり−いで/られ/ける/に、¥すはい/の¥とうぎやう、¥しゆつせしや、¥ばうくわん、¥さぶらひ¥そう/に¥いたる/まで、¥つねまさ/の¥なごり/を¥をしみ、¥たもと/に¥すがり¥なみだ/を¥ながし、¥そで/を¥ぬらさ/ぬ/は¥なかり/けり。¥なか/に/も¥えうせう/の¥とき、¥こじ/で¥おはせ/し¥だいなごん/の−ほふいん−ぎやうけい/と¥まうし/し/は、¥はむろの−だいなごん−くわうらいの−きやう/の¥おん=こ/なり。¥あまり/に¥なごり/を¥をしみ¥まゐらせ/て、¥かつらがは/の¥はた/まで¥うち−おくり、P58¥それ/より¥いとま¥こう/て¥かへら/れ/ける/が、¥ほふいん¥なくなく¥かう/ぞ¥おもひ−つづけ¥たまふ。¥
あはれ/なり¥おいき¥わかき/も¥やまざくら¥おくれ¥さきだち¥はな/は¥のこら/じ W055¥
つねまさ/の¥へんじ/に、¥
たびごろも¥よなよな¥そで/を¥かたしき/て¥おもへ/ば¥われ/は¥とほく¥ゆき/なむ W056¥
さて¥まい/て¥もた/せ/られ/たり/ける¥あかはた、¥ざつと¥さし−あげ/たれ/ば、¥あそこ−ここ/に¥ひかへ−ひかへ¥まち¥たてまつる¥さぶらひ=ども、¥あはや/とて¥はせ−あつまり、¥その¥せい¥ひやくき/ばかり¥むち/を¥あげ、¥こま/を¥はやめ/て、¥ほど−なく¥ぎやうがう/に¥おつ−つき¥たてまつら/る。¥
「せいざんのさた」(『せいざんのさた』)S0718¥この¥つねまさ¥じふしち/の¥とし、¥うさ/の¥ちよくし/を¥うけたまはつ/て¥くだら/れ/ける/に、¥その−とき¥せいざん/を¥たまはつ/て、¥うさ/へ¥まゐり、¥ご=てん/に¥むかひ¥たてまつ/て、¥ひきよく/を¥ひき¥たまひ/しか/ば、¥とも/の¥みやびと¥おしなべ/て、¥りよくい/の¥そで/を/ぞ¥しぼり/ける。¥こころ−なき¥やつこ/まで/も、¥いつ¥きき−なれ/たる¥こと/は¥なけれ/ども、¥むらさめ/と/は¥まがは/じ/な。¥めでたかり/し¥こと=ども/なり。¥かの¥せいざん/と¥まうす¥おん=びは/は、¥むかし¥にんみやう−てんわう/の¥ぎよ=う、¥かしやう−さんねん−さんぐわつ/に、¥かもん/の−かみ−ていびん、¥とたう/の¥とき、¥たいたう/の¥びは/の−はかせ¥れんせふぶ/に¥あひ、¥さんきよく/を¥つたへ/て¥きてう−せ/し/に、P59¥その−とき¥けんじやう、¥ししまる、¥せいざん、¥さんめん/の¥びは/を¥さうでん−し/て¥わたり/ける/が、¥りうじん/や¥をしみ¥たまひ/けん、¥なみかぜ¥あらく¥たち/けれ/ば、¥ししまる/を/ば¥かいてい/に¥しづめ/ぬ。¥いま¥にめん/の¥びは/を¥わたい/て、¥わが¥てう/の¥みかど/の¥おん=たから/と¥す。¥むらかみの−せいたい¥おうわ/の¥ころほひ、¥さんごやちう/の¥しんげつ/の¥いろ¥しろく¥さえ、¥りやうふう¥さつさつ/たり/し¥よ¥なかば/に、¥みかど¥せいりやうでん/に/して、¥けんじやう/を/ぞ¥あそばさ/れ/ける。¥とき/に¥かげ/の/ごとく/なる¥もの、¥ごぜん/に¥さんじ/て、¥いう/に¥けだかき¥こゑ/を¥もつて、¥しやうが/を¥めでたう¥つかまつる。¥みかど¥しばらく¥おん=びは/を¥さし−おか/せ¥たまひ/て、「¥そもそも¥なんぢ/は¥いか/なる¥もの/ぞ。¥いづく/より¥き/たれ/る/ぞ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥こたへ¥まうし/て¥いはく、「¥これ/は¥むかし¥ていびん/に¥さんきよく/を¥つたへ¥さふらひ/し、¥たいたう/の¥びは/の−はかせ、¥れんせふぶ/と¥まうす¥もの/にて¥さふらふ/が、¥さんきよく/の¥なか/に、¥ひきよく/を¥いつきよく¥のこせ/る¥つみ/に¥よつ/て、¥まだう/に¥ちんりん¥つかまつる。¥いま¥きみ/の¥おん=ばちおと、¥たへ/に¥きこえ¥はんべる¥あひだ、¥さんにふ¥つかまつる¥ところ/なり。¥ねがは−く/は¥この¥きよく/を¥きみ/に¥さづけ¥まゐらせ/て、¥ぶつくわ¥ぼだい/を¥しようず/べき」¥よし¥まうし/て、¥ごぜん/に¥たて/られ/たり/ける¥せいざん/を¥とり、¥てんじゆ/を¥ねぢ/て、¥この¥きよく/を¥きみ/に¥さづけ¥たてまつる。¥さんきよく/の¥なか/に¥しやうげん¥せきしやう¥これ/なり。¥その−のち/は¥きみ/も¥しん/も、¥おそれ/させ¥たまひ/て、¥あそばし−ひく¥こと/も、¥せ/させ¥たまは/ざり/し/を、¥にんわじ/の−お=むろ/の¥ごしよ/へ、¥まゐら/させ¥たまひ/たり/し/を、¥この¥つねまさ¥さいあい/の¥とうぎやう/たる/に¥よつ/て、¥くだし¥たまはら/れ/たり/ける/とかや。¥かふ/は¥しとう/の¥かふ、¥なつやま/の¥みね/の¥みどり/の¥こ/の−ま/より、¥ありあけ/の−つき/の¥いで/ける/を、¥ばちめん/に¥かか/れ/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥せいざん/と/は¥なづけ/けれ。¥けんじやう/に/も¥あひ−おとら/ぬ¥きたい/の¥めいぶつ/なり。P60
「いちもんのみやこおち」(『いちもんのみやこおち』)S0719¥いけの−だいなごん−よりもりの−きやう/も、¥いけ=どの/に¥ひ¥かけ/て¥いで/られ/たる/が、¥とば/の¥みなみ/の¥もん/にて、¥わすれ/たる¥こと¥あり/とて、¥よろひ/に¥つけ/たる¥あかじるし=ども¥かなぐり−すて/させ、¥その¥せい¥さんびやく−よ−き、¥みやこ/へ¥かへり−のぼら/れ/けり。¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ、¥ゆみ¥わき−ばさみ、¥おほい=との/の¥おん=まへ/に¥はせ−まゐり、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥かしこまつ/て、「¥あれ¥ごらん¥さふらへ。¥いけ=どの¥おん=とどまり/に¥よつ/て、¥おほく/の¥さぶらひ=ども¥とどまり¥さふらふ/が、¥きくわい/に¥おぼえ¥さふらふ。¥いけ=どの/まで/は¥その¥おそれ/も¥さふらへ/ば、¥さぶらひ=ども/に¥や¥ひとつ¥い−かけ¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、¥おほい=との、「¥いま¥これ−ほど/の¥ありさま=ども/を、¥み−はて/ぬ/ほど/の¥ふたうじん/は、¥さ¥なく/と/も¥あり/な/ん」/と¥のたまへ/ば、¥ちから¥およば/で¥い/ざり/けり。「¥さて¥こまつ=どの/の¥きんだち/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、「¥いまだ¥ご=いつしよ/も¥みえ/させ¥たまひ¥さふらは/ず」/と¥まうす。¥おほい=との、「¥みやこ/を¥いで/て、¥いま¥いちにち/だに¥すぎ/ざる/に、¥はや¥ひとびと/の¥こころ=ども/の¥かはり−ゆく¥うたて−さ/よ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、「¥ゆく−すゑ/とて/も¥たのもしから/ず。¥ただ¥みやこ/の¥うち/にて¥いか/に/も−なら/せ¥たまへ/と、¥さ/しも¥まうし/つる/ものを」/とて、¥おほい=との/の¥おん=かた/を、¥よに/も¥うらめし=げ/に/ぞ¥み¥たまひ/ける。P61¥そもそも¥いけ=どの/の¥おん=とどまり/を¥いか/に/と¥いふ/に、¥ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥つね/は¥なさけ/を¥かけ¥たてまつ/て、「¥まつたく¥おん=かた/を/ば¥おろか/に¥おもひ¥たてまつら/ず、¥ひとへに¥こ=いけ=どの/の¥おん=わたり/と/こそ¥ぞんじ¥さふらへ。¥はちまん−だい−ぼさつ/も¥ご=せうばつ¥さふらへ」/など、¥たびたび¥せいじやう/を¥もつて¥まうさ/れ/けり。¥へいけ−つゐたう/の¥うつて/の¥つかひ/の¥のぼる/ごと/に、「¥あひ−かまへ/て¥いけ=どの/の¥さぶらひ/に¥むかつ/て¥ゆみ¥ひく/な」/なんど、¥こと/に¥ふれ/て¥はうじん−せ/られ/たり/けれ/ば、「¥いちもん/の¥へいけ/は¥うん¥つき/て、¥みやこ/を¥おち/ぬ。¥いま/は¥ひやうゑ/の−すけ/に/こそ¥たすけ/られ/んずれ」/とて、¥おち−とどまら/れ/たり/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥はちでうの−にようゐん/は、¥みやこ/を/ば¥いくさ/に¥おそれ/させ¥たまひ/て、¥にんわじ/の¥ときは=どの/に¥しのう/で¥ましまし/ける¥ところ/へ¥まゐり¥こもら/れ/けり。¥この¥よりもりの−きやう/と¥まうす/は、¥にようゐん/の¥おん=めのと¥さいしやう=どの/と¥まうす¥にようばう/に、¥あひ−ぐせ/られ/たり/ける/に¥よつ/て/なり。「¥しぜん/の¥こと/も¥さふらは/ば、¥よりもり¥たすけ/させ¥おはしませ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥にようゐん、「¥いま/は¥よ/が¥よ/で¥あら/ば/こそ」/と、¥よ/に¥たのもし=げ/も¥なう/ぞ¥おほせ/ける。¥およそ/は¥ひやうゑ/の−すけ/ばかり/こそ、¥はうじん/を¥ぞんず/と¥いへ/ども、¥じよ/の¥げんじ=ら/は¥いかが¥あら/んず/らん。¥なまじひ/に¥いちもん/に/は¥ひき−わかれ/て、¥おち−とどまり/ぬ。¥なみ/に/も¥いそ/に/も¥つか/ぬ¥ここち/ぞ¥せ/られ/ける。¥さる−ほど/に¥こまつ=どの/の¥きんだち¥きやうだい¥ろくにん、¥つがふ¥その¥せい¥いつせん−よ−き、¥よど/の¥むつだがはら/にて、¥ぎやうがう/に¥おつ−つき¥たてまつら/る。¥おほい=との¥なのめ/なら/ず¥うれし=げ/にて、「¥いか/に/や¥いま/まで/の¥ちさん¥ざふらふ」/と¥のたまへ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう、「¥をさなき¥もの=ども/が¥あまり/に¥したひ¥さふらふ/を、¥とかう¥こしらへ−おか/ん/と¥つかまつる/ほど/に、¥ぞん/の−ほか/の¥ちさん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥おほい=との、P62「¥など¥ろくだい=どの/を/ば¥めし−ぐせ/られ¥さふらは/ぬ/ぞ。¥こころ−つよく/も¥とどめ¥たまふ/ものかな」/と¥のたまへ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう、「¥ゆく−すゑ/とて/も¥たのもしう/も¥さふらは/ず」/とて、¥とふ/に¥つらさ/の¥なみだ/を¥ながさ/れ/ける/こそ¥かなしけれ。¥おち−ゆく¥へいけ/は¥たれ¥たれ/ぞ。¥さきの−ないだいじん−むねもり=こう、¥へい−だいなごん−ときただ、¥へい−ぢうなんごん−のりもり、¥しん−ぢうなごん−とももり、¥しゆり/の−だいぶ−つねもり、¥ゑもん/の−かみ−きよむね、¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひら、¥こまつの−さんみ/の−ちうじやう−これもり、¥おなじき−しん−ざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥ゑちぜんの−さんみ−みちもり、¥てんじやうびと/に/は、¥くら/の−かみ−のぶもと、¥さぬきの−ちうじやう−ときざね、¥ひだん/の−ちうじやう−きよつね、¥おなじき−せうしやう−ありもり、¥たんごの−じじう−ただふさ、¥くわうごぐう/の−すけ−つねまさ、¥さま/の−かみ−ゆきもり、¥さつまの−かみ−ただのり、¥むさしの−かみ−ともあきら、¥のとの−かみ−のりつね、¥びつちうの−かみ−もろもり、¥をはりの−かみ−きよさだ、¥あはぢの−かみ−きよふさ、¥わかさの−かみ−つねとし、¥くらんど/の−たいふ−なりもり、¥つねもり/の¥おとご¥たいふ−あつもり、¥ひやうぶ/の−せふ−まさあきら、¥そう/に/は¥にゐ/の−そうづ−せんしん、¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−のうゑん、¥ちうなごん/の−りつし−ちうくわい、¥きやうじゆ−ばう/の−あじやり−いうゑん、¥ぶし/に/は¥じゆりやう、¥けんびゐし、¥ゑふ、¥しよし/の¥じよう¥ひやくろくじふにん、¥つがふ¥その¥せい¥しちせん−よ−き、¥これ/は¥この¥さん−か−ねん/が¥あひだ、¥とうごく¥ほくこく¥どど/の¥いくさ/に¥うち−もらさ/れ/て、¥わづか/に¥のこる¥ところ/なり。¥へい−だいなごん−ときただの−きやう、¥やまざき¥せきど/の−ゐん/に¥たま/の¥み=こし/を¥かき−すゑ/させ、¥をとこやま/の¥かた¥ふし−をがみ、「¥なむ−きみやう−ちやうらい¥はちまん−だい−ぼさつ、¥ねがは−く/は¥きみ/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥われ=ら/を¥いま−いちど¥こきやう/へ¥かへし−いれ/させ¥たまへ」/と¥いのら/れ/ける/こそ¥かなしけれ。¥おのおの¥うしろ/を¥かへりみ¥たまへ/ば、¥かすめる¥そら/の¥ここち−し/て、¥けぶり/のみ¥こころ−ぼそう/ぞ¥たち−のぼる。P63¥へい−ぢうなごん−のりもり、¥
はかなし/な¥ぬし/は¥くもゐ/に¥へだつれ/ば¥やど/は¥けぶり/と¥たち−のぼる/かな W057¥
しゆり/の−だいぶ−つねもり、¥
ふるさと/を¥やけの/が−はら/と¥かへりみ/て¥すゑ/も¥けぶり/の¥なみぢ/を/ぞ W058¥
ゆく¥まことに¥こきやう/を/ば、¥いつぺん/の¥えんぢん/に¥へだて/つつ、¥せんど¥ばんり/の¥うんろ/に¥おもむか/れ/けん、¥こころ/の¥うち¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥ひごの−かみ−さだよし/は、¥かはじり/に¥げんじ¥まつ/と¥きい/て、¥け−ちらさ/ん/とて、¥その¥せい¥ごひやく−よ−き/で¥はつかう−し/たり/ける/が、¥ひがごと/なれ/ば/とて¥とつ/て¥かへし/て¥のぼる/ほど/に、¥うどの/の¥へん/にて¥ぎやうがう/に¥まゐり−あひ、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥おほい=との/の¥おん=まへ/に¥まゐり¥かしこまつ/て、「¥あな¥こころ−う/や、¥こ/は¥いづち/へ/とて¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん。¥さいこく/へ¥くだら/せ¥たまひ/たら/ば、¥おちうと/とて、¥あそこ−ここ/にて¥うち−もらさ/れ/て、¥うき−な/を¥ながさ/せ¥ましまさ/ん¥こと、¥くちをしう¥さふらふ/べし。¥ただ¥みやこ/の¥うち/にて、¥いか/に/も−なら/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥おほい=との、「¥さだよし/は¥いまだ¥しら/ぬ/か。¥きそ¥すでに¥ほくこく/より¥ごまん−よ−き/で¥せめ−のぼり、¥ひえいさん¥ひがしざかもと/に¥みちみち/たり。¥ほふわう/も¥すぎ/し¥やはん/に、¥うせ/させ¥たまひ/ぬ。¥ひとびと/は¥みやこ/の¥うち/にて¥いか/に/も−なら/ん/と¥まうし−あは/れ/けれ/ども、¥まのあたり¥にようゐん、¥にゐ=どの/に¥うき−め/を¥みせ¥まゐらせ/ん/も、¥わが−み/ながら¥くちをしけれ/ば、¥せめて¥ぎやうがう/ばかり/を/も¥なし¥たてまつり、¥おのおの/を/も¥ひき−ぐし/て、¥さいこく/の¥かた/へP64¥おち−くだり、¥ひとまづ/も/と¥おもふ/ぞ/かし」/と¥のたまへ/ば、「¥さ¥さふらは/ば、¥さだよし/は¥み/の¥いとま/を¥たまはつ/て、¥みやこ/の¥うち/にて¥いか/に/も−なり¥さふらは/ん」/とて、¥めし−ぐし/たり/ける¥ごひやく−よ−き/の¥せい/を/ば、¥こまつ=どの/の¥きんだち=たち/に¥つけ¥まゐらせ、¥てぜい¥さんじつき/ばかり¥みやこ/へ¥とつ/て¥かへす。¥へいけ/の¥よたう/の¥みやこ/に¥のこり−とどまつ/たる/を¥うた/ん/とて、¥さだよし/が¥かへり−いる¥よし¥きこえ/しか/ば、¥いけの−だいなごん/は¥よりもり/が¥み/の−うへ/で/ぞ¥あら/んず/らん/と、¥おほき/に¥おそれ−さわが/れ/けり。¥され/ども¥さだよし/は、¥にしはちでう/の¥やけあと/に¥おほまく¥ひか/せ、¥いち−や¥しゆくし/たり/けれ/ども、¥かへり−いら/せ¥たまふ¥へいけ/の¥きんだち¥いち−にん/も¥おはせ/ざり/けれ/ば、¥さすが¥よ/の¥ありさま¥こころ−ぼそく/や¥おもひ/けん、¥げんじ/の¥こま/の¥ひづめ/に¥かけ/させ/じ/とて、¥こまつ=どの/の¥おん=はか¥ほら/せ、¥ご=こつ/に¥むかひ¥たてまつ/て、¥なくなく¥まうし/ける/は、「¥あな¥あさまし、¥ご=いちもん/の¥おん=はて¥ごらん¥さふらへ。¥しやう¥ある¥もの/は¥かならず¥めつす。¥たのしみ¥つき/て¥かなしみ¥き/たる/と¥いふ¥こと/を/ば、¥むかし/より¥かき−おき/たる¥こと/にて¥さふらへ/ども、¥まのあたり¥かかる¥うき¥こと¥さふらは/ず。¥きみ/は¥かかる/べかり/ける¥こと/を、¥かねて¥さとら/せ¥たまひ/て、¥ぶつしん¥さんぽう/に¥ご=きせい¥あつ/て、¥おん=よ/を¥はやう¥せ/させ¥ましまし/ける¥こと/こそ、¥あり−がたう¥さふらへ。¥いか/に/も−し/て¥その−とき、¥さだよし/も¥ごせ/の¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらひ/し/ものを、¥かひ−なき¥いのち¥ながらへ/て、¥けふ/は¥かかる¥うき−め/に¥あひ¥さふらふ¥こと/こそ、¥くちをしう¥さふらへ。¥しご/の¥とき/は、¥かならず¥いちぶつど/へ¥むかへ/させ¥たまへ」/と¥なくなく¥はるか/に¥かき−くどき、¥こつ/を/ば¥かうや/へ¥おくり、¥あたり/の¥つち/を/ば¥かもがは/へ¥ながさ/せ、P65¥ゆく−すゑ¥たのもしから/ず/や¥おもひ/けん、¥しゆ/と¥うしろ−あはせ/に、¥とうごく/の¥かた/へ/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥さだよし/は¥せんねん¥うつのみや/を¥まうし−あづかつ/て、¥その−とき¥なさけ−あり/しか/ば、¥こんど/も¥また¥うつのみや/を¥たのう/で¥くだつ/たり/けれ/ば、¥その¥よしみ/に/や¥はうじん−し/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥
(『ふくはらおち』)S0720¥へいけ/は¥こまつの−さんみ−ちうじやう−これもりの−きやう/の¥ほか/は、¥おほい=との¥いげ、¥さいし/を¥ぐせ/られ/けれ/ども、¥つぎざま/の¥ひとびと/は、¥さ/のみ¥ひき−しろふ/に/も¥およば/ね/ば、¥こうくわい¥その¥ご/を¥しら/ず、¥みな¥うち−すて/て/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥ひと/は¥いづれ/の¥ひ¥いづれ/の¥とき、¥かならず¥たち−かへる/べし/と、¥その¥ご/を¥さだめ−おく/だに/も、¥わかれ/は¥かなしき¥ならひ/ぞ/かし。¥いはんや¥これ/は¥けふ/を¥さいご、¥ただいま¥かぎり/の¥こと/なれ/ば、¥ゆく/も¥とまる/も、¥たがひ/に¥そで/を/ぞ¥しぼり/ける。¥さうでん¥ふだい/の¥よしみ、¥としごろ−ひごろ/の¥ぢうおん、¥いかで/か¥わする/べき/なれ/ば、¥おい/たる/も¥わかき/も、¥みな¥あと/を/のみ¥かへりみ/て、¥さき/へ/は¥すすみ/も¥やら/ざり/けり。¥あるひは¥いそべ/の¥なみまくら、¥やへ/の¥しほぢ/に¥ひ/を¥くらし、¥あるひは¥とほき/を¥わけ、¥はげしき/を¥しのい/で、¥こま/に¥むち¥うつ¥ひと/も¥あり。¥ふね/に¥さを¥さす¥もの/も¥あり、¥おもひおもひ¥こころごころ/に/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥
「ふくはらおち」¥へいけ/は¥ふくはら/の¥きうり/に¥つい/て、¥おほい=との、¥しかる/べき¥さぶらひ¥らうせう¥すひやくにん¥めし/て¥のたまひ/ける/はP66、「¥しやくぜん/の¥よけい¥いへ/に¥つき、¥せきあく/の¥よあう¥み/に¥およぶ/が¥ゆゑ/に、¥しんめい/に/も¥はなた/れ¥たてまつり、¥きみ/に/も¥すて/られ¥まゐらせ/て、¥ていと/を¥いで/て¥りよはく/に¥ただよふ¥うへ/は、¥なん/の¥たのみ/か¥ある/べき/なれ/ども、¥いちじゆ/の¥かげ/に¥やどる/も、¥ぜんぜ/の¥ちぎり¥あさから/ず。¥おなじ¥ながれ/を¥むすぶ/も、¥たしやう/の¥えん¥なほ¥ふかし。¥いはんや¥なんぢ=ら/は、¥いつたん¥したがひ−つく¥もんきやく/に¥あら/ず、¥るゐそ¥さうでん/の¥けにん/なり。¥あるひは¥きんしん/の¥よしみ、¥た/に¥こと/なる/も¥あり。¥あるひは¥ぢうだい¥はうおん¥これ¥ふかき/も¥あり。¥かもん¥はんじやう/の¥いにしへ/は、¥その¥おん=ぱ/に¥よつ/て¥わたくし/を¥かへりみ/き。¥なん/ぞ¥いま¥その¥はうおん/を¥むくは/ざら/ん/や。¥しかれ/ば¥じふぜん−ていわう、¥さんじゆ/の−しんぎ/を¥たいし/て¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥いか/なら/ん¥の/の¥すゑ、¥やま/の¥おく/まで/も、¥ぎやうがう/の¥おん=とも¥まうし/て、¥いか/に/も−なら/ん/と/は¥おもは/ず/や」/と¥のたまへ/ば、¥らうせう¥みな¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥あやし/の¥とり¥けだもの/も、¥おん/を¥はうじ¥とく/を¥むくふ¥こころ/は¥さふらふ/なり。¥いはんや¥じんりん/の¥み/と/して、¥いかで/か¥その¥ことわり/を¥ぞんぢ¥つかまつら/で/は¥さふらふ/べき。¥なかんづく¥きうせん¥ばじやう/に¥たづさは/る¥ならひ、¥ふたごころ¥ある/を¥もつて¥はぢ/と¥す。¥その−うへ¥この¥にじふ−よ−ねん/が¥あひだ、¥さいし/を¥はぐくみ、¥しよじう/を¥かへりみ¥さふらふ¥こと/も、¥しかしながら¥きみ/の¥ご=おん/なら/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥しかれ/ば¥につぽん/の¥ほか、¥しんら、¥はくさい、¥かうらい、¥けいたん、¥くも/の¥はて¥うみ/の¥はて/まで/も、¥ぎやうがう/の¥おん=とも¥つかまつり、¥いか/に/も−なり¥さふらは/ん」/と、¥いく−どうおん/に¥まうし/たり/けれ/ば、¥ひとびと¥みな¥たのもし=げ/に/ぞ¥み¥たまひ/ける。¥さる−ほど/に¥へいけ/は¥ふくはら/の¥きうり/に/して、¥いち−や/を/ぞ¥あかさ/れ/ける。¥をりふし¥あき/の¥つき/は¥しも/の¥ゆみはり/なり。¥しんこう¥くうや¥しづか/に/して、¥たびね/の¥とこ/の¥くさまくら、¥つゆ/も¥なみだ/に¥あらそひ/て、¥ただ¥もの/のみ/ぞP67¥かなしき。¥いつ¥かへる/べし/と/も¥おぼえ/ね/ば、¥こ=にふだう−しやうこく/の¥つくり−おき¥たまへ/る¥ふくはら/の¥ところどころ/を¥み¥たまふ/に、¥はる/は¥はなみ/の¥をか/の−ごしよ、¥あき/は¥つきみ/の¥はま/の−ごしよ、¥いづみ=どの、¥まつかげ=どの、¥ばば=どの、¥にかい/の¥さじき=どの、¥ゆきみ/の−ごしよ、¥かや/の−ごしよ、¥ひとびと/の¥たち=ども、¥ごでうの−だいなごん−くにつなの−きやう/の¥うけたまはつ/て¥ざうしん−せ/られ/し¥さとだいり、¥をし/の−かはら、¥たま/の−いしだたみ、¥いづれ/も¥いづれ/も、¥みとせ/が/ほど/に¥あれ−はて、¥きうたい¥みち/を¥ふさぎ、¥あき/の¥くさ¥かど/を¥とづ。¥かはら/に¥まつ¥おひ¥かき/に¥つた¥しげれ/り。¥だい¥かたぶい/て¥こけ¥むせ/り。¥まつかぜ/のみ/や¥かよふ/らん。¥すだれ¥たえ¥ねや¥あらは/なり。¥つきかげ/のみ/ぞ¥さし−いり/ける。¥あけ/ぬれ/ば¥ふくはら/の¥だいり/に¥ひ/を¥かけ/て、¥しゆしやう/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥ひとびと¥みな¥おん=ふね/に¥めす。¥みやこ/を¥いで/し/ほど/こそ¥なけれ/ども、¥これ/も¥なごり/は¥をしかり/けり。¥あま/の¥たく¥も/の¥ゆふけぶり、¥をのへ/の¥しか/の¥あかつき/の¥こゑ、¥なぎさなぎさ/に¥よする¥なみ/の¥おと、¥そで/に¥やど¥かる¥つき/の¥かげ、¥ちぐさ/に¥すだく¥しつしゆつ/の¥きりぎりす、¥すべて¥め/に¥み、¥みみ/に¥ふるる¥こと/の、¥ひとつ/と/して¥あはれ/を¥もよほし、¥こころ/を¥いたま/しめ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥きのふ/は¥とうくわん/の¥ふもと/に¥くつばみ/を¥ならべ/て、¥じふまん−よ−き、¥けふ/は¥さいかい/の¥なみ/の¥うへ/に、¥ともづな/を¥とい/て¥しちせん−よ−にん、¥うんかい¥ちんちん/と/して、¥せいでん¥すでに¥くれ/な/ん/と¥す。¥こたう/に¥せきぶ¥へだて/て、¥つき¥かいしやう/に¥うかべ/り。¥きよくほ/の¥なみ/を¥わけ、¥しほ/に¥ひか/れ/て¥ゆく¥ふね/は、¥はんでん/の¥くも/に¥さかのぼる。¥ひかず¥ふれ/ば、¥みやこ/は¥さんせん¥ほど/を¥へだて/て、¥くもゐ/の¥よそ/に/ぞ¥なり/に/ける。¥はるばる¥き/ぬ/と¥おもへ/ども、¥ただ¥つきせ/ぬ¥もの/は¥なみだ/なり。¥なみ/の¥うへ/に¥しろき¥とり/の¥むれ−ゐる/を¥み¥たまひ/て/は、¥かれ/なら/ん、P68¥ありはらの−なにがし/の、¥すみだがは/にて¥こと−とひ/けん、¥な/も¥むつまじ/き¥みやこどり/かな/と¥あはれ/なり。¥じゆえい−にねん−しちぐわつ−にじふごにち/に、¥へいけ¥みやこ/を¥おち−はて/ぬ。P69

平家物語 巻第八  総かな版(元和九年本)
「さんもんごかう」(『さんもんごかう』)S0801¥じゆえい−にねん−しちぐわつ−にじふしにち/の¥やはん/ばかり、¥ほふわう/は¥あぜつし−だいなごん−すけかたの−きやう/の¥しそく、¥むま/の−かみ−すけとき/ばかり/を¥おん=とも/にて、¥ひそか/に¥ごしよ/を¥いで/させ¥たまひ/て、¥くらま/の¥おく/へ¥ご=かう¥なる。¥じそう=ども、「¥これ/は¥なほ¥みやこ¥ちかう/て¥あしう¥さふらひ/な/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥さら/ば/とて、¥ささのみね、¥やくわうざか/など¥いふ¥さがしき¥けんなん/を¥しのが/せ¥たまひ/て、¥よかは/の¥げだつだに¥じやくぢやう−ばう/へ¥いら/せ¥おはします。¥だいしゆ¥おこつ/て、「¥とうだふ/へ/こそ¥ご=かう/は¥なる/べけれ」/と¥まうし/けれ/ば、¥とうだふ/の¥みなみだに¥ゑんゆう−ばう¥ごしよ/に¥なる。¥かかり/しか/ば、¥しゆと/も¥ぶし/も、¥みな¥ゑんゆう−ばう/を¥しゆご−し¥たてまつる。¥ほふわう/は¥せんとう/を¥いで/て¥てんだいさん/へ、¥しゆしやう/は¥ほうけつ/を¥さつ/て¥さいかい/へ、¥せつしやう=どの/は¥よしの/の¥おく/とかや。¥にようゐん¥みやみや/は、¥やはた、¥かも、¥さが、¥うづまさ、¥にしやま、¥ひがしやま/の¥かたほとり/に¥つい/て、¥にげ−かくれ/させ¥たまひ/けり。¥へいけ/は¥おち/ぬれ/ど、¥げんじ/は¥いまだ¥いり−かはら/ず、¥すでに¥この¥きやう/は¥ぬし¥なき¥さと/と/ぞ¥なり/に/ける。¥かいひやく/よりP70¥この−かた、¥かかる¥こと¥ある/べし/と/も¥おぼえ/ず。¥しやうとくたいし/の¥みらいき/に/も、¥けふ/の¥こと/こそ¥ゆかしけれ。¥さる−ほど/に¥ほふわう¥てんだいさん/に¥わたら/せ¥たまふ/と¥きこえ/しか/ば、¥おん=むかひ/に¥はせ¥まゐらせ¥たまふ¥ひとびと、¥その−ころ/の¥にふだう=どの/と/は、¥さきの−くわんばく−まつ=どの、¥たう=との/と/は¥こんゑ=どの、¥だいじやうだいじん、¥さう/の−だいじん、¥ないだいじん、¥だいなごん、¥ちうなごん、¥さいしやう、¥さんみ¥しゐ¥ごゐ/の¥てんじやうひと、¥すべて¥よ/に¥ひと/と¥かぞへ/られ、¥くわん−かかい/に¥のぞみ/を¥かけ、¥しよたい¥しよしよく/を¥たいする/ほど/の¥ひと/の、¥いち−にん/も¥もるる/は¥なかり/けり。¥ゑんゆう−ばう/に/は、¥あまり/に¥ひと¥おほく¥まゐり−つどひ/て、¥たうしやう−たうか、¥もんげ¥もんない、¥ひま−はざま/も¥なう/ぞ¥みちみち/たる。¥さんもん¥はんじやう、¥もんぜき/の¥めんぼく/と/こそ¥みえ/たり/けれ。¥おなじき−にじふはちにち、¥ほふわう¥みやこ/へ¥くわんぎよ¥なる。¥きそ¥ごまん−よ−き/で¥しゆご−し¥たてまつる。¥あふみ−げんじ¥やまもとの−くわんじや−よしたか、¥しらはた¥さい/て¥せんぢん/に¥ぐぶ−す。¥この¥にじふ−よ−ねん¥み/ざり/つる¥しらはた/の、¥けふ¥はじめて¥みやこ/へ¥いる、¥めづらしかり/し¥けんぶつ/なり。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ、¥すせんぎ/で¥うぢばし/を¥わたい/て¥みやこ/へ¥いる。¥みちの−くにの−しん−はうぐわん−よしやす/が¥こ、¥やだの−はんぐわんだい−よしきよ、¥おほえやま/を¥へ/て、¥しやうらく−す。¥また¥つの−くに¥かはちの−げんじ=ら¥どうしん−し/て、¥おなじう¥みやこ/へ¥みだれ−いる。¥およそ¥きやう−ぢう/に/は¥げんじ/の¥せい¥みちみち/たり。¥かでのこうぢの−ちうなごん−つねふさの−きやう、¥けんびゐし/の−べつたう−さゑもん/の−かみ−さねいへ¥りやうにん、¥ゐん/の¥てんじやう/の¥すのこ/に¥さふらひ/て、¥よしなか¥ゆきいへ/を¥めす。¥きそ¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/にP71、¥からあや−をどし/の−よろひ¥き/て、¥いかもの−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で¥たかひも/に¥かけ、¥ひざまづい/て/ぞ¥さふらひ/ける。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ/は、¥こんぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−よろひ¥き/て、¥こくしつ/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥おほ−なかぐろ/の−や¥おひ、¥ぬりごめどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥これ/も¥かぶと/を¥ぬい/で¥たかひも/に¥かけ、¥かしこまつ/て/ぞ¥さふらひ/ける。¥さきの−ないだいじん−むねもり=こう/を¥はじめ/と/して、¥へいけ/の¥いちぞく¥みな¥つゐたう−す/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥りやうにん¥ていしやう/に¥かしこまり−うけたまはつ/て¥まかり−いづ。¥おのおの¥しゆくしよ¥なき¥よし/を¥そうもん−す。¥きそ/は¥だいぜん/の−だいぶ−なりただ/が¥しゆくしよ、¥ろくでう−にし/の−とうゐん/を¥くださ/る。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ/は、¥ほふぢうじ=どの/の¥みなみ=どの/と¥まうす¥かや/の−ごしよ/を/ぞ¥たまはり/ける。¥
しゆしやう/は¥ぐわいせき/の¥へいけ/に¥とらはれ/させ¥たまひ/て、¥さいかい/の¥なみ/の¥うへ/に¥ただよは/せ¥たまふ¥こと/を、¥ほふわう¥なのめ/なら/ず¥おん=なげき¥あつ/て、¥しゆしやう¥ならびに¥さんじゆ/の−しんき、¥ことゆゑ−なう¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつる/べき¥よし、¥さいこく/へ¥おほせ−くださ/れ/けれ/ども、¥へいけ¥もちひ¥たてまつら/ず。¥たかくらのゐん/の¥わうじ/は、¥しゆしやう/の¥ほか¥さん−じよ¥おはしまし/き。¥なか/に/も¥に/の−みや/を/ば、¥まうけ/の−きみ/に¥し¥たてまつら/ん/とて、¥へいけ¥とり¥たてまつ/て、¥さいこく/へ¥おち−くだり/ぬ。¥さんし/は¥みやこ/に¥ましまし/けり。¥はちぐわつ−いつか、¥ほふわう¥この¥みや=たち¥むかへ−よせ¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥まづ¥さん/の−みや/の¥ごさい/に¥なら/せ¥ましまし/ける/を、¥ほふわう、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥おほせ/けれ/ば、¥ほふわう/を¥み¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥おほき/に¥むつから/せ¥たまふ¥あひだ、「¥とうとう」/とて¥いだし¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥その−のち¥し/の−みや/の¥しさい/に¥なら/せ¥ましまし/ける/を、¥ほふわう、「¥あれ/は¥いか/に」/とP72¥おほせ/けれ/ば、¥やがて¥ほふわう/の¥おん=ひざ/の¥うへ/に¥まゐら/させ¥たまひ/て、¥なのめ/なら/ず¥なつかし=げ/にて/ぞ¥ましまし/ける。¥ほふわう¥おん=なみだ/を¥ながさ/せ¥たまひ/て、「¥げに/も¥すぞろ/なら/ん¥もの/の、¥この¥おい−ぼふし/を¥み/て、¥いかで/か¥なつかし=げ/に/は¥おもふ/べき。¥これ/ぞ¥まこと/の¥わが¥おん=まご/にて¥おはします。¥こ=ゐん/の¥をさな−おひ/に¥すこし/も¥たがは/せ¥たまは/ぬ/ものかな。¥これ−ほど/の¥わすれ−がたみ/を、¥いま/まで¥ごらんぜ/られ/ざり/つる¥こと/よ」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥じやうどじ/の¥にゐ=どの、¥その−とき/は¥いまだ¥たんご=どの/とて¥ごぜん/に¥さぶらは/れ/ける/が、「¥さて¥おん=くらゐ/は¥この¥みや/にて/こそ¥わたら/せ¥たまひ¥さぶらは/め/なう」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ほふわう、「¥しさい/に/や」/と/ぞ¥おほせ/ける。¥ないない¥みうら/の¥あり/し/に/も、「¥し/の−みや¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまは/ば、¥はくわう/まで/も¥につぽんごく/の¥おん=あるじ/たる/べし」/と/ぞ¥かんがへ¥まうし/けり。¥おん=ぼぎ/は¥しちでうの−しゆり/の−だいぶ−のぶたかの−きやう/の¥おん=むすめ/なり。¥ちうぐう/の¥おん=かた/に¥みやづかへ¥たまひ/し/を、¥しゆしやう¥つね/は¥めさ/れ¥まゐらせ/ける/ほど/に、¥みや¥あまた¥いで−き¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥この¥のぶたかの−きやう/は、¥おん=むすめ¥おほく¥おはしまし/けれ/ば、¥いづれ/にて/も¥にようご¥きさき/に¥たて¥まゐらせ/たく¥おもは/れ/ける/が、¥ひと/の¥いへ/に¥しろい¥にはとり/を¥せん¥かひ/つれ/ば、¥その¥いへ/に¥かならず¥きさき/の¥いで−き/たると¥いふ¥こと/の¥あれ/ば/とて、¥にはとり/の¥しろき/を¥せん¥そろへ/て¥かは/れ/たり/ける¥ゆゑ/に/や、¥この¥おん=むすめ¥わうじ¥あまた¥うみ¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥のぶたかの−きやう/も¥ないない¥うれしく¥おもは/れ/けれ/ども、¥あるひは¥へいけ/に/も¥おそれ/を¥なし、¥あるひは¥ちうぐう/を¥はばかり¥たてまつ/て、¥もてなし¥たてまつる¥こと/も¥なかり/し/を、¥にふだう−しやうこく/の¥きたのかた、¥はちでうの−にゐ=どの、「¥よしよし¥くるしかる/まじ。P73¥われ¥そだて¥まゐらせ/て、¥まうけ/の−きみ/に¥し¥たてまつら/ん」/とて、¥おん=めのと¥あまた¥つけ/て¥もてなし¥まゐら/させ¥たまひ/けり。¥なか/に/も¥し/の−みや/は、¥にゐ=どの/の¥おん=せうと、¥ほつしようじ/の−しゆぎやう−のうゑん−ほふいん/の¥やしなひぎみ/にて/ぞ¥ましまし/ける。¥しかる/を¥ほふいん¥へいけ/に¥ぐせ/られ/て、¥みや/を/も¥にようばう/を/も¥きやうと/に¥すて−おき、¥さいかい/へ¥おち−くだら/れ/たり/ける/が、¥ほふいん¥さいこく/より¥ひと/を¥のぼせ、「¥みや¥いざなひ¥まゐらせ/て¥いそぎ¥くだり¥たまへ」/と¥まうし−あげ/られ/たり/けれ/ば、¥きたのかた¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥みや¥いざなひ¥まゐらせ/て、¥にしの−しちでう/まで¥いで/られ/たり/ける/を、¥にようばう/の¥せうと¥きの−かみ−のりみつ、「¥これ/は¥もの/の¥つい/て¥くるひ¥たまふ/か。¥この¥みや/の¥ご=うん/は、¥ただいま¥ひらけ/させ¥たまは/んずる/ものを」/とて、¥とり−とどめ¥たてまつり/たり/ける¥つぎ/の−ひ/ぞ、¥ほふわう/より¥おん=むかひ/の¥おん=くるま/は¥まゐり/たり/ける/とかや。¥なにごと/も¥しかる/べき¥こと/と/は¥まうし/ながら、¥きの−かみ−のりみつ/は、¥し/の−みや/の¥おん=ため/に/は、¥さ/しも¥ほうこう/の¥ひと/と/ぞ¥みえ/し。¥され/ども¥その¥ちう/を/も¥おぼしめし−よら/ざり/ける/に/や、¥むなしう¥としつき/を¥おくり/ける/が、¥ある−とき¥のりみつ、¥もしや/と¥にしゆ/の¥うた/を¥よみ/て、¥きんちう/に¥らくしよ/を/ぞ¥し/たり/ける。¥
ひとこえ/は¥おもひ−いで/て¥なけ¥ほととぎす¥おいそ/の−もり/の¥よは/の¥むかし/を W059¥
こ/の¥うち/も¥なほ¥うらやまし¥やまがら/の¥み/の−ほど¥かくす¥ゆふがほ/の¥やど W060¥
しゆしやう¥この¥よし¥きこしめし/て、「¥これ−ほど/の¥こと/を¥いま/まで¥おぼしめし−よら/ざり/ける/こそ、¥かへすがへす/も¥おろか/なれ」/とて、¥やがて¥てうおん¥かうむつ/て、¥じやう−ざんみ/に¥じよせ/られ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P74¥
「なとら」(『なとら』)S0802¥おなじき−とをかのひ、¥きそ¥さま/の−かみ/に¥なつ/て、¥ゑちごの−くに/を¥たまはる。¥その−うへ¥あさひ/の−しやうぐん/と¥いふ¥ゐんぜん/を/ぞ¥くださ/れ/ける。¥じふらう−くらんど、¥びんごの−かみ/に¥なり/て、¥びんごの−くに/を¥たまはる。¥きそ、¥ゑちご/を¥きらへ/ば、¥いよ/を¥たぶ。¥じふらう−くらんど、¥びんご/を¥きらへ/ば、¥びぜん/を¥たまはる。¥その−ほか¥げんじ¥じふ−よ−にん、¥じゆりやう、¥けんびゐし、¥ゆぎへの−じよう、¥ひやうゑ/の−じよう/に/ぞ¥なさ/れ/ける。¥おなじき−じふろくにち、¥さきの−ないだいじん−むねもり=こう¥いげ、¥へいけ/の¥いちぞく¥ひやくろくじふにん/が¥くわんしよく/を¥とどめ/て、¥てんじやう/の¥み−ふだ/を¥けづら/る。¥その¥なか/に¥へい−だいなごん−ときただの−きやう、¥くら/の−かみ−のぶもと、¥さぬきの−ちうじやう−ときざね、¥ふし¥さん−にん/を/ば¥けづら/れ/ず。¥その¥ゆゑ/は¥しゆしやう¥ならびに¥さんじゆ/の−しんき、¥ことゆゑなう¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつれ/と、¥ときただの−きやう/の¥もと/へ、¥たびたび¥おほせ−くださ/れ/ける/に¥よつ/て/なり。¥あくる¥じふしちにち、¥へいけ/は¥ちくぜんの−くに¥みかさ/の−こほり¥ださいふ/に/こそ¥つき¥たまへ。¥きくちの−じらう−たかなほ/は、¥みやこ/より¥へいけ/の¥おん=とも/に¥さふらひ/ける/が、「¥おほづやま/の¥せき¥あけ/て¥まゐらせ/ん」/とて、¥ひごの−くに/に¥うち−こえ、¥おのれ/が¥じやう/に¥ひき−こもつ/て、¥めせ/ども¥めせ/ども¥まゐら/ず。¥その−ほか¥きうしう−にたう/の¥もの=ども、¥みな¥まゐる/べき¥よし/の¥おん=りやうじやう/を/ば¥まうし/ながら、¥いち−にん/も¥まゐら/ず。¥たうじ/はP75¥いはど/の−しよきやう−おほくら/の−たねなほ/ばかり/ぞ¥さふらひ/ける。¥おなじき−じふはちにち、¥へいけ¥あんらくじ/に¥まゐり、¥よ/も−すがら¥うた¥よみ¥れんが−し/て、¥みやづかへ¥たまひ/し/に、¥なか/に/も¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥
すみ−なれ/し¥ふるき¥みやこ/の¥こひし−さ/は¥かみ/も¥むかし/に¥おもひ−しる/らむ W061¥
ひとびと¥まことに¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥みな¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥おなじき−はつかのひ、¥みやこ/に/は¥ほふわう/の¥せんみやう/にて、¥し/の−みや、¥かんゐん=どの/にて¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまふ。¥せつしやう/は¥もと/の¥せつしやう、¥こんゑ=どの¥かはら/せ¥たまは/ず。¥とう/や¥くらんど¥なし−おい/て、¥ひとびと¥みな¥たいしゆつ−せ/られ/けり。¥さん/の−みや/の¥おん=めのと¥なき−かなしみ¥こうくわい−すれ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥てん/に¥ふたつ/の¥ひ¥なし、¥くに/に¥ふたり/の¥わう¥なし/と/は¥まうせ/ども、¥へいけ/の¥あくぎやう/に¥よつ/て/こそ、¥きやう¥ゐなか/に¥ふたり/の¥わう/は¥ましまし/けれ。¥むかし¥もんどく−てんわう、¥てんあん−にねん−はちぐわつ−にじふさんにち¥かくれ/させ¥たまひ/ぬ。¥おん=こ/の¥みや=たち¥あまた¥おん=くらゐ/に¥のぞみ/を¥かけ/て¥ましまし/けれ/ば、¥ないない¥おん=いのり=ども¥あり/けり。¥いち/の−みこ¥これたかの−しんわう/を/ば、¥こばらの−わうじ/と/も¥まうし/き。¥わうしや/の¥ざいりやう/を¥おん=こころ/に¥かけ、¥しかい/の¥あんき/は¥たなごころ/の¥うち/に¥てらし、¥はくわう/の¥りらん/は¥おん=こころ/に¥かけ¥たまへ/り。¥され/ば¥けんせい/の¥な/を/も、¥とら/せ¥ましまし/ぬ/べき¥きみ/なり/と¥みえ¥たまへ/り。¥に/の−みや¥これひとの−しんわう/は、¥その−ころ/の¥しつぺい¥ちうじん=こう/の¥おん=むすめ、¥そめ=どの/の−きさき/の¥おん=はら/なり。¥いちもん/の¥くぎやう¥れつし/て¥もてなし¥たてまつら/せ¥たまひ/しか/ば、¥これ/も¥また¥さし−おき−がたき¥おん=こと/なり。¥かれ/は¥しゆぶんけいてい/の¥きりやう¥あり、¥これ/は¥ばんきふさ/の¥しんしやう¥あり。¥かれ/も¥これ/も¥いたはしく/て、¥いずれ/も¥おぼしめしP76¥わづらは/れ/き。¥いち/の−みこ¥これたかの−しんわう−げ/の¥おん=いのり/に/は、¥かきのもとの−きそうじやう−しんぜい/とて、¥とうじ/の¥いち/の−ちやうじや、¥こうぼふ−だいし/の¥おん=でし/なり。¥に/の−みや¥これひとの−しんわう−げ/の¥おん=いのり/に/は、¥ぐわいそ¥ちうじん=こう/の¥ごぢそう、¥ひえいさん/の¥ゑりやう−くわしやう/ぞ¥うけたまはら/れ/ける。¥いづれ/も¥おとら/ぬ¥かうそう=たち/なり。¥とみ/に¥こと−ゆき−がたう/や¥あら/んず/らん/と、¥ひとびと¥ないない¥ささやき−あは/れ/けり。¥あん/の/ごとく¥みかど¥かくれ/させ¥たまひ/しか/ば、¥くぎやう−せんぎ¥あり/けり。「¥そもそも¥しん=ら/が¥おもんぱかり/を¥もつて、¥えらん/で¥くらゐ/に¥つけ¥たてまつら/ん¥こと、¥ようしや¥わたくし¥ある/に¥に/たり。¥ばんじん¥くちびる/を¥かへす/べし。¥しら/ず¥けいば¥すまふ/の¥せち/を¥とげ、¥その¥うん/を¥しり、¥しゆう/に¥よつ/て、¥はうそ¥さづけ¥たてまつる/べし」/と¥ぎぢやう−をはん/ぬ。¥
さる−ほど/に¥おなじき−くぐわつ−ふつかのひ、¥ににん/の¥みや=たち、¥うこん/の−ばば/へ¥ぎやうげい¥あり/けり。¥ここ/に¥わうこう¥けいしやう¥たま/の¥くつばみ/を¥ならべ、¥はな/の¥たもと/を¥よそほひ、¥くも/の/ごとく/に¥かさなり、¥ほし/の/ごとく/に¥つらなり¥たまへ/り。¥これ¥きたい/の¥しようし、¥てんが/の¥さかん/なる¥みもの、¥ひごろ¥こころ/を¥よせ¥たてまつり/し¥げつけい¥うんかく、¥りやうばう/に¥ひき−わかつ/て、¥て/を¥にぎり¥こころ/を¥くだき¥たまへ/り。¥おん=いのり/の¥かうそう=たち、¥いづれ/か¥そりやく¥あら/ん/や。¥しんぜい−そうじやう/は¥とうじ/に¥だん/を¥たて、¥ゑりやう−くわしやう/は¥たいだい/の¥しんごんゐん/に¥だん/を¥たて/て¥いのら/れ/ける/が、¥ゑりやう/は¥うせ/たり/と¥いふ¥ひろう/を¥なさ/ば、¥しんぜい−そうじやう¥すこし¥たゆむ¥こころ/も/や¥おはす/らん/とて、「¥ゑりやう/は¥うせ/たり」/と¥いふ¥ひろう/を¥なし/て、¥かんたん/を¥くだい/て¥いのら/れ/けり。¥すでに¥じふばん/の¥けいば¥はじまる。¥はじめ¥しばん/は¥いち/の−みこ¥これたかの−しんわう−げ¥かた/せ¥たまふ。¥のち¥ろくばん/はP77¥
に/の−みや¥これひとの−しんわう−げ¥かた/せ¥たまふ。¥やがて¥すまふ/の¥せち¥ある/べし/とて、¥いち/の−みこ¥これたか/の¥しんわう−げ/より/は、¥なとらの−うひやうゑ/の−かみ/とて、¥およそ¥ろくじふにん/が¥ちから¥あらはし/たる¥ゆゆしき¥ひと/を¥いださ/れ/たり。¥に/の−みや¥これひとの−しんわう−げ/より/は、¥よしをの−せうしやう/とて、¥せい¥ちひさう¥たへ/に/して、¥かたて/に¥あふ/べし/と/も¥みえ/ぬ¥ひと、¥ご=むさう/の¥おん=つげ¥あり/とて、¥まうし−うけ/て/ぞ¥いで/られ/ける。¥さる−ほど/に、¥なとら¥よしを¥より−あひ/て、¥ひしひし/と¥つまどり−し/て¥のき/に/けり。¥しばらく¥あり/て、¥なとら¥つと¥より、¥よしを/を¥とつ/て¥ささげ、¥にぢやう/ばかり/ぞ¥なげ−あげ/たる。¥ただ¥なほつ/て¥たふれ/ず。¥よしを¥また¥つと¥より、¥なとら/を¥とつ/て¥ふせ/ん/と¥す。¥され/ども¥なとら/は¥だい/の¥をのこ、¥かさ/に¥まはる。¥よしを¥なほ¥あぶなう¥みえ/けれ/ば、¥お=ぼぎ¥そめ=どの/の−きさき/より、¥お=つかひ¥くし/の¥は/の/ごとく/に、¥しげう¥はしり−かさなつ/て、「¥み=かた¥すでに¥まけいろ/に¥みゆ、¥いかが−せ/ん」/と¥おほせ/けれ/ば、¥ゑりやう−くわしやう/は、¥だいゐとく/の−ほふ/を¥おこなは/れ/ける/が、「¥こ/は¥こころ−うき¥こと/なり」/とて、¥とくこ/を¥もつて¥かうべ/を¥つき−やぶり、¥なづき/を¥くたし、¥にう/に¥わし/て、¥ごま/に¥たき、¥くろけぶり/を¥たて/て、¥ひともみ¥もま/れ/たり/けれ/ば、¥よしを¥すまふ/に¥かち/に/けり。¥に/の−みや¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまふ。¥せいわの−みかど¥これ/なり。¥のち/に/は¥みづのをの−てんわう/と/も¥まうし/き。¥それ/より/して¥さんもん/に/は、¥いささか/の¥こと/に/も、「¥ゑりやう¥なづき/を¥くだけ/ば、¥じてい¥くらゐ/に¥つき、¥そんい¥ちけん/を¥ふつ/しか/ば、¥くわんしやう¥なふじゆ−し¥たまふ」/と/も¥つたへ/たり。¥これ/のみ/や¥ほふりき/にて/も¥あり/けん、¥その−ほか/は¥みな¥てんせうだいじん/の¥おん=ぱからひ/なり/と/ぞ、¥みえ/たり/ける。P78¥
「うさぎやうがう」¥へいけ/は¥つくし/にて¥この¥よし/を¥つたへ−きき¥たまひ/て、「¥あはれ¥さん/の−みや/を/も、¥し/の−みや/を/も、¥ぐし¥たてまつり/て¥おち−くだる/べき/ものを」/と¥まうし−あは/れ/けれ/ば、¥へい−だいなごん−ときただの−きやう、「¥さら/ん/に/は¥たかくらのみや/の¥おん=こ/の¥みや/を、¥おん=めのと¥さぬきの−かみ−しげひで/が、¥ご=しゆつけ−せ/させ¥たてまつり、¥ぐし¥たてまつ/て¥ほくこく/へ¥おち−くだり/たり/し/を、¥きそ−よしなか¥しやうらく/の¥とき、¥しゆ/に¥し¥まゐらせ/ん/とて、¥げんぞく−せ/させ¥たてまつり、¥ぐし¥たてまつり/て、¥みやこ/へ¥のぼり/たる/を/ぞ、¥くらゐ/に/は¥つけ¥まゐらせ/んず/らん」/と¥のたまへ/ば、¥ひとびと、「¥いかで/か¥げんぞく/の−みや/を/ば、¥くらゐ/に¥つけ¥たてまつる/べき」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ときただの−きやう、「¥さ/も−さう/ず。¥げんぞく/の¥こくわう/の¥ためし、¥いこく/に/は¥その¥れい/も/や¥ある/らん。¥わが¥てう/に/は、¥まづ¥てんむ−てんわう¥いまだ¥とうぐう/の¥おん=とき、¥おほともの−わうじ/に¥おそは/れ/させ¥たまひ/て、¥びんぱつ/を¥そり、¥よしの/の¥おく/へ¥にげ−こもら/せ¥たまひ/たり/し/が、¥おほともの−わうじ/を¥ほろぼし/て、¥つひに¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/き。¥また¥かうけん−てんわう/と¥まうせ/し/も、¥だい−ぼだいしん/を¥おこさ/せ¥たまひ/て、¥おん=かざり/を¥おろし、¥み=な/を¥ほふきに/と¥まうせ/しか/ども、¥ふたたび¥くらゐ/に¥つか/せ¥たまひ/て、¥しようとく−てんわう/と¥まうし/し/ぞ/かし。¥いはんや¥きそ/が¥しゆ/に¥し¥まゐらせ/たる¥げんぞく/の−みや/なれ/ば、¥しさい/に¥およぶ/べき」/と/ぞ¥のたまひ/ける。P79¥おなじき−くぐわつ−みつかのひ、¥いせ/へ¥くぎやう/の¥ちよくし/を¥たて/らる。¥ちよくし/は¥さんぎ−ながのり/と/ぞ¥きこえ/し。¥だいじやう−ほふわう¥いせ/へ¥くぎやう/の¥ちよくし/を¥たて/らるる¥こと/は、¥しゆしやく、¥しらかは、¥とば¥さんだい/の¥じようせき¥あり/と/は¥まうせ/ども、¥これ/は¥みな¥ご=しゆつけ¥いぜん/なり。¥ご=しゆつけ¥いご/の¥れい、¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥
(『をだまき』)S0803¥へいけ/は¥つくし/に¥みやこ/を¥さだめ、¥だいり¥つくら/る/べし/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、¥みやこ/も¥いまだ¥さだまら/ず。¥しゆしやう/は¥その−ころ¥いはど/の−しよきやう−おほくら/の−たねなほ/が¥しゆくしよ/に/ぞ¥ましまし/ける。¥ひとびと/の¥いへいへ/は、¥のなか¥たなか/なり/けれ/ば、¥あさ/の¥ころも/は¥うた/ね/ども、¥とをち/の−さと/と/も¥いつ/つ/べし。¥だいり/は¥やま/の¥なか/なれ/ば、¥かの¥きのまる=どの/も、¥かく/や¥あり/けん/と、¥なかなか¥いう/なる¥かた/も¥あり/けり。¥まづ¥うさのみや/へ¥ぎやうがう¥なる。¥だいぐうじ−きんみち/が¥しゆくしよ¥くわうきよ/に¥なる。¥しやとう/は¥げつけい¥うんかく/の¥きよしよ/に¥なる。¥くわいらう/は¥ごゐ¥ろくゐ/の¥くわんにん、¥ていしやう/に/は¥しこく−ちんぜい/の¥つはもの=ども、¥かつちう¥きうせん/を¥たいし/て、¥うんか/の/ごとく¥なみ−ゐ/たり。¥ふり/に/し¥あけ/の−たまがき、¥ふたたび¥かざる/と/ぞ¥みえ/し。¥しちにち¥さんろう/の¥あかつき、¥おほい=との/の¥おん=ため/に、¥むさう/の¥つげ/ぞ¥あり/ける。¥ご=ほうでん/の¥み=と¥おし−ひらき、¥ゆゆしう、¥けだか=げ/なる¥おん=こゑ/にて、¥
よ/の−なか/の¥うさ/に/は¥かみ/も¥なき¥もの/を¥なに¥いのる/らむ¥こころ−づくし/に W062¥
おほい=との¥うち−おどろき、¥むね¥うち−さわぎ、¥あさまし−さ/に、¥
さり/とも/と¥おもふ¥こころ/も¥むし/の¥ね/も¥よわり−はて/ぬる¥あき/の¥くれ/かな W063
/と¥いふ¥ふるうた/を、¥こころ−ぼそ=げ/に/ぞ¥くちずさみ¥たまひ/ける。¥さて¥ださいふ/へ¥くわんかう¥なる。P80¥さる−ほど/に¥くぐわつ/も¥とをか−あまり/に¥なり/ぬ。¥をぎ/の¥はむけ/の¥ゆふあらし、¥ひとり¥まるね/の¥とこ/の¥うへ、¥かたしく¥そで/も、¥しをれ/つつ、¥ふけ−ゆく¥あき/の¥あはれ−さ/は、¥いづく/も/と/は¥いひ/ながら、¥たび/の¥そら/こそ¥しのび−がたけれ。¥くぐわつ−じふさんや/は、¥な/を¥え/たる¥つき/なれ/ども、¥その¥よ/は¥みやこ/を¥おもひ−いづる¥なみだ/に、¥われ/から¥くもり/て、¥さやか/なら/ず。¥きうちよう/の¥くも/の¥うへ、¥ひさかた/の¥つき/に¥おもひ/を¥のべ/し¥ゆふべ/も、¥いま/の¥やう/に¥おぼえ/て、¥さつまの−かみ−ただのり、¥
つき/を¥み/し¥こぞ/の¥こよひ/の¥とも/のみ/や¥みやこ/に¥われ/を¥おもひ−いづ/らむ W064¥
しゆり/の−だいぶ−つねもり、¥
こひし/とよ¥こぞ/の¥こよひ/の¥よ/も−すがら¥ちぎり/し¥ひと/の¥おもひ−いで/られ/て W065¥
くわうごぐう/の−すけ−つねまさ、¥
わき/て¥こ/し¥のべ/の¥つゆ/と/も¥きえ/ず/して¥おもは/ぬ¥さと/の¥つき/を¥みる/かな W066¥
「をだまき」¥ぶんごの−くに/は、¥ぎやうぶきやう−ざんみ−よりすけの−きやう/の¥くに/なり/けり。¥しそく¥よりつねの−あそん/を¥だいくわん/に¥おか/れ/たり/ける/が、¥きやう/より¥よりつね/の¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、¥へいけ/は¥すでに¥しんめい/に/も¥はなた/れ¥たてまつり、¥きみ/に/も¥すて/られ¥まゐらせ/て、¥ていと/を¥いで/て、¥なみ/の¥うへ/に¥ただよふ¥おちうと/と¥なれ/り。P81¥しかる/を¥きうしう−にたう/の¥もの=ども/が¥うけ−とつ/て、¥もて−あつかふ/らん¥こと/こそ¥しかる/べから/ね。¥たう−ごく/に¥おいて/は、¥いつかう¥したがふ/べから/ず。¥とうほくこく/と¥いちみ−どうしん−し/て、¥くこく/の¥うち/を¥おひ−いだし¥たてまつる/べき¥よし、¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥これ/を¥をがたの−さぶらう−これよし/に¥げぢ−す。¥かの¥これよし/と¥まうす/は、¥おそろしき¥もの/の¥すゑ/にて/ぞ¥さふらひ/ける。¥たとへば、¥むかし¥ぶんごの−くに¥ある¥かた−やまざと/に¥をんな¥あり/き。¥ある¥ひと/の¥ひとりむすめ、¥をつと/も¥なかり/ける/が¥もと/へ、¥をとこ¥よなよな¥かよふ/ほど/に、¥としつき/も¥へだた/れ/ば、¥み/も¥ただ/なら/ず¥なり/ぬ。¥はは¥これ/を¥あやしん/で、「¥なんぢ/が¥もと/へ¥かよふ¥もの/は、¥いか/なる¥もの/ぞ」/と¥とひ/けれ/ば、「¥くる/を/ば¥みれ/ども、¥かへる/を¥しら/ず」/と/ぞ¥いひ/ける。「¥さら/ば¥あさがへり−せ/ん¥とき、¥しるし/を¥つけ/て¥つない/で¥みよ」/と/ぞ¥をしへ/ける。¥むすめ¥はは/の¥をしへ/に¥したがひ/て、¥あさがへり−し/ける¥をとこ/の、¥みづいろ/の¥かりぎぬ/を¥き/たり/ける¥くびかみ/に¥はり/を¥さし、¥しづ/の−をだまき/と¥いふ¥もの/を¥つけて、¥へ/て¥ゆく¥かた/を¥つない/で¥みれ/ば、¥ぶんごの−くに/に¥とつ/て/も¥ひうが/の¥さかひ、¥うばだけ/と¥いふ¥だけ/の¥すそ、¥おほき/なる¥いはや/の¥うち/へ/ぞ¥つなぎ−いれ/たる。¥をんな¥いはや/の¥くち/に¥たたずん/で¥きき/けれ/ば、¥おほき/なる¥こゑ−し/て¥にえび/けり。¥をんな¥まうし/ける/は、「¥おん=すがた/を¥み¥まゐらせ/ん/が¥ため/に、¥わらは/こそ¥これ/まで¥まゐつ/て¥さぶらへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥いはや/の¥うち/より¥こたへ/て¥いはく、「¥われ/は¥これ¥ひと/の¥すがた/に/は¥あら/ず。¥なんぢ¥わが¥すがた/を¥み/て/は、¥きも−たましひ/も¥み/に¥そふ/まじき/ぞ。¥はらめ/る¥ところ/の¥こ/は、¥なんし/なる/べし。¥ゆみ−や¥うちもの¥とつ/て/は、¥きうしう−にたう/に¥かた/を¥ならぶる¥もの¥ある/まじき/ぞ」/と/ぞ¥をしへ/ける。P82¥をんな¥かさね/て、「¥たとひ¥いか/なる¥すがた/にて/も¥あら/ば¥あれ、¥ひごろ/の¥よしみ¥いかで/か¥わする/べき/なれ/ば、¥たがひ/の¥すがた/を¥いま−いちど、¥み/も¥し¥みえ/られ/ん」/と¥いひ/けれ/ば、¥さら/ば/とて、¥いはや/の¥うち/より、¥ふしだけ/は¥ごろくしやく、¥あとまくらべ/は¥じふしごぢやう/も¥ある/らん/と¥おぼゆる¥だいじや/にて、¥どうえう−し/て/ぞ¥はひ−いで/たる。¥をんな¥きも−たましひ/も¥み/に¥そは/ず、¥めし−ぐし/たる¥じふ−よ−にん/の¥しよじう=ども、¥をめき−さけん/で¥にげ−さり/ぬ。¥くびかみ/に¥さす/と¥おもひ/し¥はり/は、¥だいじや/の¥のどぶえ/に/ぞ¥たつ/たり/ける。¥をんな¥かへり/て¥ほど−なく¥さん/を¥し/たり/けれ/ば、¥なんし/にて/ぞ¥あり/ける。¥ははかた/の¥おほぢ、¥そだて/て¥み/ん/とて¥そだて/たれ/ば、¥いまだ¥じつさい/に/も¥みた/ざる/に、¥せい¥おほきう¥かほ¥ながかり/けり。¥しちさい/にて¥げんぶく−せ/させ、¥ははかた/の¥おほぢ/を、¥だいたいふ/と¥いふ¥あひだ、¥これ/を/ば¥だいた/と/こそ¥つけ/たり/けれ。¥なつ/も¥ふゆ/も¥てあし/に¥ひま¥なく¥あかがり¥われ/たり/けれ/ば、¥あかがりだいた/と/も¥いは/れ/けり。¥かの¥これよし/は、¥くだん/の¥だいた/に/は¥ごだい/の¥そん/なり。¥かかる¥おそろしき¥もの/の¥すゑ/なれ/ば/に/や、¥こくし/の¥おほせ/を¥ゐんぜん/と¥かうし/て、¥きうしう−にたう/に¥めぐらしぶみ/を¥し/たり/けれ/ば、¥しかる/べき¥もの=ども/も、¥これよし/に¥みな¥したがひ−つく。¥くだん/の¥だいじや/は、¥ひうがの−くに/に¥あがめ/られ/させ¥たまふ、¥たかちを/の−みやうじん/の¥しんたい/なり/と/ぞ¥うけたまはる。P83
「ださいふおち」(『ださいふおち』)S0804¥さる−ほど/に¥へいけ/は、¥つくし/に¥みやこ/を¥さだめ、¥だいり¥つくら/る/べし/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、¥これよし/が¥むほん/に¥よつ/て、¥それ/も¥かなは/ず。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥いけん/に¥まうさ/れ/ける/は、「¥かの¥をがたの−さぶらう/は、¥こまつ=どの/の¥ご=けにん/なり。¥しかれ/ば¥きんだち¥ご=いつしよ¥むかは/せ¥たまひ/て、¥こしらへ/て¥ごらんぜ/らる/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、「¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし」/とて、¥しん−ざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥その¥せい¥ごひやく−よ−き、¥ぶんごの−くに/に¥うち−こえ、¥やうやう/に¥こしらへ¥のたまへ/ども、¥これよし¥したがひ¥たてまつら/ず。¥あまつさへ、「¥きんだち/を/も、¥これ/にて¥とり−こめ¥まゐらす/べう¥さふらへ/ども、¥だいじ/の¥なか/の¥せうじ¥なし/とて、¥とり−こめ¥まゐらせ/ず/は、¥なに/ほど/の¥こと/か¥さふらふ/べき。¥ただ¥ださいふ/へ¥かへら/せ¥たまひ/て、¥ご=いつしよ/で¥いか/に/も−なら/せ¥たまへ」/とて、¥おつ−かへし¥たてまつる。¥その−のち¥これよし/が¥じなん、¥のじりの−じらう−これむら/を¥ししや/にて、¥ださいふ/へ¥まうし/ける/は、「¥へいけ/こそ¥ぢうおん/の¥きみ/にて¥ましまし¥さふらへ/ば、¥かぶと/を¥ぬぎ¥ゆみ/の¥つる/を¥はづい/て、¥かうにん/に¥まゐる/べく¥さふらへ/ども、¥いちゐん/の¥おほせ/に/は、¥すみやか/に¥くこく/の¥うち/を¥おひ−いだし¥たてまつる/べき¥よし¥さふらふ」/と¥まうし−おくつ/たり/けれ/ば、¥へい−だいなごん−ときただの−きやう、¥ひを−くくり/の−はかま、¥いとくず/の−ひたたれ、P84¥たて−ゑぼし/にて、¥これむら/に¥いで−むかひ/て¥のたまひ/ける/は、「¥それ¥わが¥きみ/は¥てんそん¥しじふくせ/の¥しやうとう、¥じんむ−てんわう/より¥にんわう¥はちじふいちだい/に¥あたら/せ¥たまふ。¥され/ば¥てんせうだいじん¥しやう−はちまんぐう/も、¥わが¥きみ/を/こそ¥まもり¥まゐら/させ¥たまふ/らめ。¥なかんづく¥たうけ/は、¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥げきらん/を¥しづめ/て、¥きうしう/の¥もの=ども/を/ば、¥みな¥うちさま/へ/こそ¥めさ/れ/しか。¥しかる/に¥その¥おん/を¥わすれ/て、¥とうごく¥ほくこく/の¥きようと=ら、¥よりとも¥よしなか=ら/に¥かたらは/れ/て、¥しおほせ/たら/ば¥くに/を¥あづけ/ん、¥しやう/を¥たば/ん/と¥まうす/を、¥まこと/と¥おもひ/て、¥その¥はなぶんご/が¥げぢ/に¥したがふ/らん¥こと/こそ¥しかる/べから/ね」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥ぶんご/の¥こくし¥ぎやうぶきやう−ざんみ−よりすけの−きやう/は、¥きわめて¥はな/の¥おほき/なり/けれ/ば、¥かやう/に/は¥のたまひ/ける/なれ。¥これむら¥かへつ/て¥ちち/に¥この¥よし¥つげ/たり/けれ/ば、「¥こ/は¥いか/に、¥むかし/は¥むかし、¥いま/は¥いま、¥その¥ぎ¥なら/ば、¥くこく/の¥うち/を¥おひ−いだし¥たてまつれ/や」/とて、¥せい¥そろゆる/と¥きこえ/しか/ば、¥げん−たいふ/の−はうぐわん−すゑさだ、¥つの−はうぐわん−もりずみ、「¥きやうこう¥はうばい/の¥ため¥きくわい/に¥さふらふ。¥めし−とり¥さふらは/ん」/とて、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥ちくごの−くに/に¥うち−こえ、¥たかの/の−ほんじやう/に¥はつかう−し/て、¥いちにち−いち−や¥せめ−たたかふ。¥され/ども¥これよし/が¥かた/の¥せい、¥うんか/の/ごとく/に¥かさなれ/ば、¥ちから¥およば/で¥ひき−しりぞく。¥へいけ/は、¥をがたの−さぶらう−これよし/が、¥さんまん−よ−き/の¥せい/にて、¥すでに¥よす/と¥きこえ/しか/ば、¥とる¥もの/も¥とり−あへ/ず、¥ださいふ/を/こそ¥おち¥たまへ。¥さ/しも¥たのもしかり/つる¥てんまんてんじん/の¥しめ/の¥あたり/を、¥こころ−ぼそく/も¥たち−わかれ、¥かよちやう/も¥なけれ/ば、¥そうくわ¥ほうれん/は、¥ただ¥な/を/のみP85¥きき/て、¥しゆしやう¥えうよ/に¥めさ/れ/けり。¥こくも/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥やんごとなき¥にようばう=たち/は、¥はかま/の¥すそ/を¥たかく¥とり、¥おほい=との¥いげ/の¥けいしやう−うんかく/は、¥さしぬき/の¥そば/を¥たかく¥はさみ、¥かちはだし/で¥みづき/の¥と/を¥いで/て、¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と、¥はこざき/の−つ/へ/こそ¥おち¥たまへ。¥をりふし¥くだる¥あめ¥しやぢく/の/ごとし。¥ふく¥かぜ¥いさご/を¥あぐ/とかや。¥おつる¥なみだ¥ふる¥あめ、¥わき/て¥いづれ/も¥みえ/ざり/けり。¥すみよし、¥はこざき、¥かしひ、¥むなかた¥ふし−をがみ、¥しゆしやう¥ただ¥きうと/の¥くわんかう/と/のみ/ぞ¥いのら/れ/ける。¥たるみやま、¥うづらばま/など¥いふ¥さがしき¥けんなん/を¥しのが/せ¥たまひ/て、¥べうべう/たる¥へいさ/へ/ぞ¥おもむか/れ/ける。¥いつ¥ならはし/の¥おん=こと/なれ/ば、¥おん=あし/より¥いづる¥ち/は¥いさご/を¥そめ、¥くれなゐ/の¥はかま/は¥いろ/を¥まし、¥しろき¥はかま/は¥すそ−ぐれなゐ/に/ぞ¥なり/に/ける。¥かの¥げんざう−さんざう/の¥りうさ¥そうれい/を¥しのが/れ/たり/けん¥かなしみ/も、¥これ/に/は¥いかで/か¥まさる/べき。¥それ/は¥ぐほふ/の¥ため/なれ/ば、¥じた/の¥りやく/も¥あり/けん、¥これ/は¥とうせん/の¥みち/なれ/ば、¥らいせ/の¥くるしみ、¥かつ¥おもふ/こそ¥かなしけれ。¥
はらたの−たいふ−たねなほ/は、¥にせん−よ−き/で、¥きやう/より¥へいけ/の¥おん=とも/に¥まゐる。¥やまがの−ひやうどうじ−ひでとほ、¥すせんぎ/で¥へいけ/の¥おん=むかひ/に¥まゐり/ける/が、¥たねなほ¥ひでとほ、¥もつて/の−ほか/に¥ふわ/なり/けれ/ば、¥たねなほ/は¥あしかり/な/ん/とて、¥みち/より¥ひつ−かへす。¥それ/より¥あしや/の−つ/と¥いふ¥ところ/を、¥すぎ/させ¥たまふ/に/も、「¥これ/は¥みやこ/より¥われ=ら/が¥ふくはら/へ¥かよひ/し¥とき、¥あさゆふ¥み−なれ/し¥さと/の¥な/なれ/ば」/とて、¥いづれ/の¥さと/より/も¥なつかしく、¥いまさら¥あはれ/を/ぞ¥もよほさ/れ/ける。¥しんら、¥はくさい、¥かうらい、¥けいたん、¥くも/の¥はて¥うみ/の¥はて/まで/も、¥おち−ゆか/ばや/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、P86¥なみかぜ¥むかう/て¥かなは/ね/ば¥ちから¥およば/ず、¥ひやうどうじ−ひでとほ/に¥ぐせ/られ/て、¥やまが/の−じやう/に/ぞ¥こもり¥たまふ。¥やまが/へ/も¥また¥かたき¥よす/と¥きこえ/しか/ば、¥とる¥もの/も¥とり−あへ/ず、¥へいけ¥こ−ぶね=ども/に¥とり−のつ/て、¥よ/も−すがら¥ぶぜんの−くに¥やなぎがうら/へ/ぞ¥わたら/れ/ける。¥ここ/に¥みやこ/を¥さだめ/て、¥だいり¥つくら/る/べし/と、¥くぎやう−せんぎ¥あり/しか/ども、¥ぶんげん¥なけれ/ば¥それ/も¥かなは/ず。¥また¥ながと/より¥げんじ¥よす/と¥きこえ/しか/ば、¥とる¥もの/も¥とり−あへ/ず、¥あま¥を−ぶね/に¥めし/て、¥うみ/に/ぞ¥うかび¥たまひ/ける。¥かんなづき/の¥ころほひ、¥こまつ=どの/の¥さんなん、¥ひだん/の−ちうじやう−きよつね/は、¥なにごと/も¥ふかう¥おもひ−いれ¥たまへ/る¥ひと/にて¥おはし/ける/が、¥ある¥つき/の¥よ、¥ふなばた/に¥たち−いで/て、¥やうでう¥ねとり¥らうえい−し/て、¥あそば/れ/ける/が、¥みやこ/を/ば¥げんじ/の¥ため/に¥せめ−おとさ/れ、¥ちんぜい/を/ば¥これよし/が¥ため/に¥おひ−いださ/れ、¥あみ/に¥かかれ/る¥うを/の/ごとし。¥いづち/へ¥ゆか/ば¥のがる/べき/かは。¥ながらへ−はつ/べき¥み/に/も¥あら/ず/とて、¥しづか/に¥きやう¥よみ¥ねんぶつ−し/て、¥うみ/に/ぞ¥しづみ¥たまひ/ける。¥なんによ¥なき−かなしめ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥ながとの−くに/は¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥くに/なり/けり。¥もくだい/は¥きの−ぎやうぶ/の−たいふ−みちすけ/と¥いふ¥もの/なり。¥へいけ¥あま¥を−ぶね/に¥めし/たる¥よし¥うけたまはつ/て、¥おほ−ぶね¥ひやく−よ−そう¥てんじ/て¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥へいけ¥これ/に¥のり−うつり、¥しこく/へ/ぞ¥わたら/れ/ける。¥あはの−みんぶ−しげよし/が¥さた/と/して、¥さぬきの−くに¥やしま/の−いそ/に¥かた/の¥やう/なる¥いたや/の¥だいり/や、¥ごしよ/を/ぞ¥つくら/せ/ける。¥その/ほど/は¥あやし/の¥みんをく/を¥くわうきよ/と¥する/に¥およば/ね/ば、¥ふね/を¥ごしよ/と/ぞ¥さだめ/ける。¥おほい=とのP87¥いげ/の¥けいしやう−うんかく/は、¥あま/の−とまや/に¥ひ/を¥くらし、¥ふね/の¥うち/にて¥よ/を¥あかす。¥りようどう−げきしゆ/を¥かいちう/に¥うかべ、¥なみ/の¥うへ/の¥かうきう/は、¥しづか/なる¥とき¥なし。¥つき/を¥ひたせ/る¥うしほ/の¥ふかき¥うれへ/に¥しづみ、¥しも/を¥おほへ/る¥あし/の¥は/の¥もろき¥いのち/を¥あやぶむ。¥すさき/に¥さわぐ¥ちどり/の¥こゑ/は、¥あかつき¥うらみ/を¥まし、¥そはゐ/に¥かかる¥かぢ/の¥おと/は、¥よは/に¥こころ/を¥いたま/しむ。¥はくろ/の¥ゑんしよう/に¥むれ−ゐる/を¥み/て/は、¥げんじ/の¥はた/を¥あぐる/か/と¥うたがは/る。¥やがん/の¥れうかい/に¥なく/を¥きい/て/は、¥つはもの=ども/の¥よ/も−すがら¥ふね/を¥こぐ/か/と¥おどろか/る。¥せいらん¥はだへ/を¥をかし/て/は、¥すゐたい¥こうがん/の¥いろ¥やうやう¥おとろへ、¥さうは¥まなこ¥うげ/て、¥ぐわいと¥ばうきやう/の¥なんだ¥おさへ−がたし。¥すゐちやう¥こうけい/に¥かはれ/る/は、¥はにふ/の¥こや/の¥あしすだれ、¥くんろ/の¥けぶり/に¥こと/なる、¥あま/の¥もしほび¥たく¥いやしき/に¥つけ/て/も、¥にようばう=たち/は、¥つきせ/ぬ¥もの−おもひ/に、¥くれなゐ/の¥なみだ¥せき−あへ¥たまは/ね/ば、¥みどり/の¥まゆずみ¥みだれ/つつ、¥その¥ひと/と/も¥みえ¥たまは/ず。¥
「せいいしやうぐんのゐんぜん」(『せいいしやうぐんのゐんぜん』)S0805¥さる−ほど/に¥かまくら/の−さきの−うひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥ぶよう/の¥めいよ¥ちやうじ¥たまへ/る/に¥よつ/て、¥ゐ/ながら¥せいい−しやうぐん/の¥ゐんぜん/を¥くださ/る。¥お=つかひ/は¥さししやう−なかはらの−やすさだ/と/ぞ¥きこえ/し。¥じふぐわつ−よつかのひ¥くわんとう/へ¥げちやく。¥ひやうゑ/の−すけ=どの¥のたまひ/ける/は、「¥そもそも¥よりとも¥ぶよう/の¥めいよ¥ちやうぜる/に¥よつ/て、P88¥ゐ/ながら¥せいい−しやうぐん/の¥ゐんぜん/を¥かうぶる。¥され/ば¥わたくし/にて/は¥いかで/か¥うけ−とり¥たてまつる/べき。¥わかみや/の¥はいでん/に/して、¥うけ−とり¥たてまつる/べし」/とて、¥わかみや/へ/こそ¥まゐり−むかは/れ/けれ。¥はちまん/は¥つるがをか/に¥たた/せ¥たまふ。¥ちけい¥いはしみづ/に¥たがは/ず。¥くわいらう¥あり、¥ろうもん¥あり、¥つくりみち¥じふ−よ−ちやう/を¥み−くだし/たり。¥そもそも¥ゐんぜん/を/ば、¥たれ/して/か¥うけ−とり¥たてまつる/べき/と¥ひやうぢやう¥あり。¥みうら/の−すけ−よしずみ/して、¥うけ−とり¥たてまつる/べし。¥その¥ゆゑ/は¥はつ−か−こく/に¥きこえ/たる¥ゆみ−や−とり、¥みうらの−へいたらう−ためつぎ/が¥ばつえふ/なり。¥ちち¥おほすけ/も¥きみ/の¥ため/に¥いのち/を¥すて/し¥つはもの/なれ/ば、¥かの¥ぎめい/が¥くわうせん/の¥めいあん/を¥てらさ/ん/が¥ため/と/ぞ¥きこえ/し。¥ゐんぜん/の¥お=つかひ¥やすさだ/は、¥いへのこ¥ににん、¥らうどう¥じふにん¥ぐし/たり。¥みうら/の−すけ/も、¥いへのこ¥ににん、¥らうどう¥じふにん¥ぐし/たり/けり。¥ににん/の¥いへのこ/は、¥わだの−さぶらう−むねざね、¥ひきの−とうしらう−よしかず/なり。¥らうどう¥じふにん/を/ば、¥だいみやう¥じふにん/して、¥ひとり−づつ¥にはか/に¥したて/られ/たり。¥みうら/の−すけ、¥その−ひ/は、¥かちん/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−よろひ¥き/て、¥こくしつ/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥かぶと/を/ば¥ぬい/で¥たかひも/に¥かけ、¥こし/を¥かがめ/て¥ゐんぜん/を¥うけ−とり¥たてまつら/ん/と¥す。¥さししやう¥まうし/ける/は、「¥ただいま¥ゐんぜん¥うけ−とり¥たてまつら/ん/と¥する/は¥たれびと/ぞ。¥なのり¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥ひやうゑ/の−すけ/の¥すけ/の¥じ/に/や¥おそれ/けん、¥みうら/の−すけ/と/は¥なのら/ず/して、¥ほんみやう¥みうらの−あらじらう−よしずみ/と/こそ¥なのつ/たれ。¥ゐんぜん/を/ば¥らんばこ/に¥いれ/られ/たり。¥ひやうゑ/の−すけ=どの/に¥たてまつる。¥やや¥あつ/て¥らんばこ/を/ば¥かへさ/れ/けり。¥おもかり/けれ/ば、¥やすさだ¥これ/を¥ひらい/て¥みる/に、¥しやきんP89¥ひやくりやう¥いれ/られ/たり。¥わかみや/の¥はいでん/に/して、¥やすさだ/に¥さけ/を¥すすめ/らる。¥さいゐん/の−じくわん¥はいぜん−す。¥ごゐ¥いち−にん¥やくそう/を¥つとむ。¥むま¥さんびき¥ひか/る。¥いつぴき/に¥くら¥おい/たり。¥みや/の¥さぶらひ¥かのの−くどう−いちらふ−すけつね¥これ/を¥ひく。¥ふるき¥かやや/を¥しつらう/て、¥やすさだ/を¥いれ/らる。¥あつわた/の¥きぬ¥にりやう、¥こそで¥とかさね、¥ながもち/に¥いれ/て¥まうけ/たり。¥こんあゐずり、¥しろぬの¥せんだん/を¥つめ/り。¥はいばん¥ゆたか/に/して¥びれい/なり。¥つぎ/の−ひ¥ひやうゑ/の−すけ/の¥たち/に¥むかふ。¥うちと/に¥さぶらひ¥あり。¥ともに¥じふろくけん/まで¥あり/けり。¥とさぶらひ/に/は、¥いへのこ(原本いへこの)¥らうどう¥かた/を¥ならべ、¥ひざ/を¥くん/で¥なみ−ゐ/たり。¥うちさぶらひ/に/は、¥いちもん/の¥げんじ¥しやうざ−し/て、¥ばつざ/に/は¥はつ−か−こく/の¥だいみやう−せうみやう¥ゐ−ながれ/たり。¥げんじ/の¥しやうざ/に/は、¥やすさだ/を¥すゑ/らる。¥やや¥あつ/て¥しんでん/に¥むかふ。¥うへ/に/は¥かうらいべり/の¥たたみ/を¥しき、¥ひろびさし/に/は¥むらさきべり/の¥たたみ/を¥しい/て、¥やすさだ/を¥すゑ/らる。¥み=す¥たかく¥まき−あげ/させ/て、¥ひやうゑ/の−すけ=どの¥いで/られ/たり。¥その−ひ/は¥ほうい/に¥たて−ゑぼし/なり。¥かほ¥おほき/に/して¥せい¥ひきかり/けり。¥ようばう¥いうび/に/して¥げんぎよ¥ぶんみやう/なり。¥まづ¥しさい/を¥いちじ¥のべ/たり。「¥そもそも¥へいけ¥よりとも/が¥ゐせい/に¥おそれ/て、¥みやこ/を¥おつ。¥その¥あと/に¥きそ−よしなか、¥じふらう−くらんど=ら/が¥うち−いつ/て、¥わが¥かうみやうがほ/に、¥くわん−かかい/を¥おもふ¥さま/に¥つかまつり、¥あまつさへ¥くに/を¥きらひ¥まうす¥でう¥きくわい/なり。¥また¥おくの−ひでひら/が¥みちの−くにの−かみ/に¥なり、¥さたけの−くわんじや/が¥ひたちの−かみ/に¥なつ/て、¥これ/も¥よりとも/が¥げぢ/に¥したがは/ず。¥かれ=ら/を/も¥いそぎ¥つゐたう¥す/べき¥よし/の¥ゐんぜん、¥たまはる/べき」¥よし/を¥まうさ/る。¥やすさだ、「¥やがて¥これ/にて¥みやうぶ/を/も¥まゐらせ/たう/は¥さふらへ/ども、¥たうじ/は¥お=つかひ/の¥み/で¥さふらへ/ば、P90¥まかり−のぼつ/て、¥やがて¥したため/て/こそ¥まゐらせ/め。¥おとと/で¥さふらふ¥し/の−たいふ−しげよし/も、¥この¥ぎ/を¥まうし¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥ひやうゑ/の−すけ=どの¥あざ−わらう/て、「¥たうじ¥よりとも/が¥み/と/して、¥おのおの/の¥みやうぶ¥おもひ/も¥よら/ず。¥さり/ながら/も¥いたさ/れ/ば、¥さ/こそ¥ぞんぜ/め」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥やすさだ¥やがて¥こんにち¥しやうらく/の¥よし/を¥まうす。¥けふ/ばかり/は¥とうりう¥ある/べし/とて¥とどめ/らる。¥つぎ/の−ひ¥また¥ひやうゑ/の−すけ/の¥たち/へ¥むかふ。¥もよぎ/の−いと−をどし/の−はらまき¥いちりやう、¥しろう¥つくつ/たる¥たち¥ひとふり、¥しげどう/の−ゆみ/に¥のや¥そへ/て¥たぶ。¥むま¥じふさんびき¥ひか/る。¥さんびき/に¥くら¥おい/たり。¥じふににん/の¥いへのこ−らうどう=ども/に/も、¥ひたたれ、¥こそで、¥おほぐち、¥むま、¥もののぐ/に¥およべ/り。¥むま/だに/も¥さんびやくひき/まで¥あり/けり。¥かまくら−いで/の−しゆく/より/も、¥あふみの−くに¥かがみ/の−しゆく/に¥いたる/まで、¥しゆくじゆく/に¥じつこく−づつ/の¥よね/を¥おか/れ/たり/けれ/ば、¥たくさん/なる/に¥よつ/て、¥せぎやう/に¥ひき/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥
「ねこま」(『ねこま』)S0806¥やすさだ¥みやこ/へ¥のぼり¥ゐんざん−し/て、¥お=つぼ/の−うち/に¥かしこまつ/て、¥くわんとう/の¥やう/を¥つぶさ/に¥そうもん¥まうし/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あり/けり。¥くぎやう/も¥てんじやうびと/も、¥ゑつぼ/に¥いら/せ¥おはしまし、P91¥いか/なれ/ば¥ひやうゑ/の−すけ/は、¥かう/こそ¥ゆゆしう¥おはせ/しか。¥たうじ¥みやこ/の¥しゆご−し/て¥さふらは/れ/ける¥きそ−よしなか/は、¥に/も¥に/ず¥あしかり/けり。¥いろ¥しろう¥みめ/は¥よい¥をのこ/にて¥あり/けれ/ども、¥たちゐ/の¥ふるまひ/の¥ぶこつ−さ、¥もの¥いひ/たる¥ことばつづき/の¥かたくな/なる¥こと¥かぎり−なし。¥ことわり/なる/かな、¥にさい/より¥さんじふ/に¥あまる/まで、¥しなのの−くに¥きそ/と¥いふ¥かた−やまざと/に¥すみ−なれ/て¥おはし/けれ/ば、¥なじか/は¥よかる/べき。¥その−ころ¥ねこまの−ちうなごん−みつたかの−きやう/と¥いふ¥ひと¥あり/けり。¥きそ/に¥のたまひ−あはす/べき¥こと¥あつ/て、¥おはし/たり/ける/を、¥らうどう=ども、「¥ねこま=どの/の¥いら/せ¥たまひ/て¥さふらふ」/と¥いひ/けれ/ば、¥きそ¥おほき/に¥わらう/て、「¥ねこ/は¥ひと/に¥たいめん−する/か」/と/ぞ¥いひ/ける。「¥これ/は¥ねこまの−ちうなごん=どの/とて、¥くぎやう/にて¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ」/と¥いひ/けれ/ば、¥さら/ば/とて¥たいめん−す。¥きそ、¥ねこま=どの/と/は¥え¥いは/で、「¥ねこ=どの/の¥けどき/に、¥まればれ¥わい/た/に、¥もの¥よそへ」/と/ぞ¥いひ/ける。¥ちうなごん=どの、「¥いかで/か¥ただいま¥さる−おん=こと/の¥おはす/べき」/と¥のたまへ/ども、¥きそ、¥なに/を/も¥あたらしき¥もの/を/ば、¥ぶえん/と¥いふ/ぞ/と¥こころ−え/て、「¥ぶえん/の¥ひらたけ¥ここ/に¥あり。¥とうとう」/と¥いそが/す。¥ねのゐの−こやた¥はいぜん−す。¥ゐなか¥がふし/の¥きはめ/て¥おほき/に、¥くぼかり/ける/に、¥はん¥うづたかう¥よそひ、¥ご=さい¥さんじゆ−し/て、¥ひらたけ/の¥しる/にて¥まゐらせ/たり。¥きそ/が¥まへ/に/も、¥おなじ¥てい/にて¥すゑ/たり/けり。¥きそ¥はし¥とつ/て¥しよく−す。¥ちうなごん/は¥あまり/に¥がふし/の¥いぶせ−さ/に、¥めさ/ざり/けれ/ば、¥きそ、「¥きたなう¥な¥おもひ¥たまひ/そ。¥それ/は¥よしなか/が¥しやうじん−がふし/で¥さふらふ/ぞ。¥とうとう」/と¥すすむる¥あひだ、¥ちうなごん=どの、P92¥めさ/で/も¥さすが¥あしかり/な/ん/と/や¥おもは/れ/けん、¥はし¥とつ/て¥めす¥よし/して、¥さし−おか/れ/たり/けれ/ば、¥きそ¥おほき/に¥わらつ/て、「¥ねこ=どの/は¥せうじき/にて¥おはす/よ。¥きこゆる¥ねこおろし−し¥たまひ/たり。¥かい¥たまへ¥かい¥たまへ/や」/と/ぞ¥せめ/たり/ける。¥ちうなごん=どの/は、¥かやう/の¥こと/に、¥よろづ¥きよう¥さめ/て、¥のたまひ−あはす/べき¥こと=ども、¥ひとことば/も¥いひ−いださ/ず、¥いそぎ¥かへら/れ/けり。¥その−のち¥よしなか¥ゐんざん−し/ける/が、¥くわん−かかい−し/たる¥もの/の¥ひたたれ/にて¥しゆつし−せ/ん¥こと、¥ある/べう/も¥なし/とて、¥にはか/に¥ほうい¥とり、¥しやうぞく、¥かぶりぎは、¥そで/の¥かかり、¥さしぬき/の¥りん/に¥いたる/まで、¥かたくな/なる¥こと¥かぎり−なし。¥よろひ¥とつ/て¥き、¥や¥かき−おひ、¥ゆみ¥おし−はり、¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥むま/に¥うち−のつ/たる/に/は、¥に/も¥に/ず¥あしかり/けり。¥され/ども¥くるま/に¥こがみ¥のん/ぬ。¥うしかひ/は¥やしま/の¥おほい=との/の¥うしかひ/なり。¥うし¥くるま/も¥そ/なり/けり。¥いちもつ/なる¥うし/の、¥すゑ¥かう/たる/を、¥かど¥いづる/とて、¥ひとずばえ¥あて/たら/う/に、¥なじか/は¥よかる/べき。¥うし/は¥とん/で¥いづれ/ば、¥きそ/は¥くるま/の¥うち/にて、¥あふのき/に¥たふれ/ぬ。¥てふ/の¥はね/を¥ひろげ/たる¥やう/に、¥さう/の¥そで/を¥ひろげ、¥て/を¥あがい/て、¥おき/ん¥おき/ん/と¥し/けれ/ども、¥なじか/は¥おき/らる/べき。¥きそ、¥うしかひ/と/は¥え¥いは/で、「¥やれ¥こうし−こでい/よ、¥やれ¥こうし−こでい/よ」/と¥いひ/けれ/ば、¥くるま/を¥やれ/と¥いふ/ぞ/と¥こころ−え/て、¥ごろくちやう/こそ¥あがか/せ/けれ。¥いまゐの−しらう¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おつ−つき、「¥なに/とて¥おん=くるま/を/ば、¥かやう/に/は¥つかまつる/ぞ」/と¥いひ/けれ/ば、「¥あまり/に¥お=うし/の¥はな/が¥こはう¥さふらう/て」/と/ぞ¥のべ/たり/ける。¥うしかひ、P93¥きそ/に¥なかなほり−せ/ん/と/や¥おもひ/けん、「¥それ/に¥さふらふ¥てがた/と¥まうす¥もの/に、¥とり−つか/せ¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥きそ¥てがた/に¥むずと¥つかみ−つい/て、「¥あつぱれ¥したく/や、¥うし−こでい/が¥はからひ/か、¥との/の¥やう/か」/と/ぞ¥とう/たり/ける。¥さて¥ゐん/の−ごしよ/へ¥まゐり、¥もんぜん/にて¥くるま¥かけ−はづさ/せ、¥うしろ/より¥おり/ん/と¥し/けれ/ば、¥きやう/の¥もの/の¥ざつしき/に¥めし−つかは/れ/ける/が、「¥くるま/に/は¥めさ/れ¥さふらふ¥とき/こそ、¥うしろ/より/は¥めさ/れ¥さふらへ。¥おり/させ¥たまふ¥とき/は、¥まへ/より/こそ¥おり/させ¥たまふ/べけれ」/と¥いひ/けれ/ば、¥きそ、「¥いかで/か¥くるま/なら/ん/がら/に、¥なんでふ¥すどほり/を/ば¥す/べき」/とて、¥つひに¥うしろ/より/ぞ¥おり/てげる。¥その−ほか¥をかしき¥こと=ども¥おほかり/けれ/ども、¥おそれ/て¥これ/を¥まうさ/ず。¥うしかひ/は¥つひに¥きら/れ/に/けり。¥
「みづしまがつせん」(『みづしまがつせん』)S0807¥さる−ほど/に¥へいけ/は、¥さぬき/の¥やしま/に¥あり/ながら、¥せんやうだう¥はつ−か−こく、¥なんかいだう¥ろくかこく、¥つがふ¥じふしかこく/を/ぞ¥うつ−とり/ける。¥きそ¥やすから/ぬ¥こと/なり/とて、¥やがて¥うつて/を¥むけ/らる。¥たいしやうぐん/に/は¥みちの−くにの−しん−はうぐわん−よしやす/が¥こ、¥やたの−はんぐわんだい−よしきよ、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥しなのの−くに/の¥ぢうにん¥うみのの−やへい−しらう−ゆきひろ/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥しちせん−よ−き、¥せんやうだう/へP94¥はつかう−す。¥びつちうの−くに¥みづしま/の−と/に¥ふね/を¥うかべ/て、¥やしま/へ¥すでに¥よせ/ん/と¥す。¥うるふ−じふぐわつ−ひとひのひ、¥みづしま/が−と/に¥こ−ぶね¥いつそう¥いで−き/たり。¥あま−ぶね、¥つり−ぶね/か/と¥みる¥ところ/に、¥さ/は¥なく/して、¥へいけ/の¥かた/より/の¥てふ/の¥つかひ/の¥ふね/なり/けり。¥げんじ/の¥かた/の¥つはもの=ども、¥これ/を¥み/て、¥ほし−あげ/たり/ける¥ごひやく−よ−そう/の¥ふね=ども/を、¥みな¥われ¥さき/に¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おろし/ける。¥へいけ/は¥せん−よ−そう/で/ぞ¥よせ/たり/ける。¥たいしやうぐん/に/は¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥ふくしやうぐん/に/は¥のとの−かみ−のりつね/なり/けり。¥のと=どの¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いか/に¥しこく/の¥もの=ども、¥ほくこく/の¥やつ=ばら/に¥いけどり/に¥せ/られ/ん/を/ば、¥こころ−うし/と/は¥おもは/ず/や。¥み=かた/の¥ふね/を/ば¥くめ/や」/とて、¥せん−よ−そう/の¥ともづな、¥へづな/を¥くみ−あはせ、¥なか/に¥もやひ/を¥いれ、¥あゆみ/の¥いた/を¥ひき−わたし−ひき−わたし¥わたい/たれ/ば、¥ふね/の¥うち/は¥へいへい/たり。¥とき¥つくり、¥や−あはせ−し/て、¥とほき/を/ば¥い/て¥おとし、¥ちかき/を/ば¥たち/で¥きる。¥あるひは¥くまで/に¥かけ/て¥ひき−おとさ/るる¥もの/も¥あり。¥あるひは¥ひつ−くみ¥さし−ちがへ/て、¥うみ/へ¥とび−いる¥もの/も¥あり。¥いづれ¥ひま¥あり/と/も¥みえ/ざり/けり。¥げんじ/の¥かた/の、¥さぶらひ−だいしやう¥うみのの−やへい−しらう−ゆきひろ¥うた/れ/ぬ。¥これ/を¥み/て¥やたの−はんぐわんだい−よしきよ、¥やすから/ぬ¥こと/なり/とて、¥しゆじう¥しちにん¥こ−ぶね/に¥のり、¥まつさき/に¥すすん/で¥たたかひ/ける/が、¥ふね¥ふみ−しづめ/て¥うせ/に/けり。¥へいけ/は¥ふね/に¥むま/を¥たて/たり/けれ/ば、¥ふね=ども¥のり−かたぶけ−のり−かたぶけ、¥むま=ども¥おひ−おろし−おひ−おろし、¥ふね/に¥ひき−つけ−ひき−つけ¥およが/す。¥むま/の¥あしだち、¥くらづめ¥ひたる/ほど/に/も¥なり/しか/ば、¥ひたひたと¥うち−のつ/て、¥のと=どの¥ごひやく−よ−き、¥をめい/て¥さき/を¥かけ¥たまへ/ば、¥げんじ/の¥かた/に/は¥たいしやうぐん/は¥うた/れ/ぬ、¥われP95¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥へいけ/は¥こんど¥みづしま/の−いくさ/に¥かつ/て/こそ、¥くわいけい/の−はぢ/を/ば¥きよめ/けれ。¥
「せのをさいご」(『せのをさいご』)S0808¥きその−さま/の−かみ、¥この¥よし/を¥きい/て、¥やすから/ぬ¥こと/なり/とて、¥その¥せい¥いちまん−よ−き/で、¥びつちうの−くに/へ¥はせ−くだる。¥ここに¥へいけ/の¥み=かた/に¥さふらひ/ける、¥びつちうの−くに/の¥ぢうにん、¥せのをの−たらう−かねやす/は、¥きこゆる¥つはもの/にて¥あり/けれ/ども、¥さんぬる¥ごぐわつ¥ほくこく/の¥たたかひ/の¥とき、¥うん/や¥つき/に/けん、¥かがの−くに/の¥ぢうにん、¥くらみつの−じらう−なりずみ/が¥て/に¥かかつ/て、¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥その−とき¥すでに¥きら/る/べかり/し/を、¥きそ=どの、「¥あつたら¥をのこ/を¥さう−なう¥きる/べき/に¥あら/ず」/とて、¥おとと¥さぶらう−なりうぢ/に¥あづけ/られ/て/ぞ¥さふらひ/ける。¥ひとあひ¥こころざま、¥まことに¥いう/なり/けれ/ば、¥くらみつ/も¥ねんごろ/に¥もてなし/けり。¥そしけい/が¥ここく/に¥とらはれ、¥りせうけい/が¥かんてう/へ¥かへら/ざり/し/が/ごとし。¥とほく¥いこく/に¥つける¥こと/も、¥むかし/の¥ひと/の¥かなしめ/り/し/が¥ところ/なり/と¥いへ/り。¥おしかは/の¥たまき、¥かも/の¥ばく、¥もつて¥ふうう¥を¥ふせぎ、¥なまぐさき¥しし、¥らく/の−つくりみづ、¥もつて¥きかつ/に¥あつ。¥よる/は¥いぬる¥こと¥なく、¥ひる/は¥ひねもす/に¥つかへ/て、¥き/を¥きり¥くさ/を¥から/ず/と¥いふ/ばかり/に¥したがひ/つつ、¥いか/に/も−し/て¥かたき/を¥うかがひ−うつ/て、¥いま−いちど¥きうしゆ/をP96¥み/ばや/と、¥おもひ−たち/ける¥かねやす/が、¥こころ/の¥うち/こそ¥おそろしけれ。¥ある¥とき¥せのをの−たらう、¥くらみつの−さぶらう/に¥いひ/ける/は、「¥さんぬる¥ごぐわつ/より¥かひ−なき¥いのち/を¥たすけ/られ¥まゐらせ/て¥さふらへ/ば、¥たれ/を¥たれ/と/か¥おもひ¥まゐらせ¥さふらふ/べき。¥こんど¥ご=かつせん¥さふらは/ば、¥いのち/を/ば¥まづ¥きそ=どの/に¥たてまつら/ん。¥それ/に¥つき¥さふらひ/て/は、¥せんねん¥かねやす/が¥ちぎやう−し¥さふらひ/し¥びつちう/の¥せのを/と¥いふ¥ところ/は、¥むま/の¥くさがひ¥よき¥ところ/にて¥さふらふ。¥ご=へん¥まうし/て¥たまはら/せ¥さふらへ。¥あんないしや−せ/ん」/と¥いひ/けれ/ば、¥くらみつの−さぶらう、¥きそ=どの/に、¥この¥よし/を¥まうす。¥きそ=どの、「¥さて/は¥ふびん/の¥こと/を/も¥まうす¥ござんなれ。¥まことに/は¥なんぢ¥まづ¥くだつ/て、¥むま/の¥くさ/など/を/も¥かまへ/させよ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥くらみつの−さぶらう¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥てぜい¥さんじつき/ばかり、¥せのをの−たらう/を¥あひ−ぐし/て、¥びつちうの−くに/へ¥はせ−くだる。¥せのを/が¥ちやくし¥こたらう−むねやす/は、¥へいけ/の¥み=かた/に¥さふらひ/ける/が、¥ちち/が¥きそ=どの/より¥いとま¥たまはつ/て¥くだる/と¥きい/て、¥としごろ/の¥らうどう=ども¥もよほし−あつめ/て、¥その¥せい¥ひやくき/ばかり/で、¥ちち/が¥むかひ/に¥のぼり/ける/が、¥はりま/の¥こふ/で¥ゆき−あう/たり。¥それ/より¥うち−つれ/て¥くだる/ほど/に、¥びぜんの−くに¥みついし/の−しゆく/に¥とどまつ/たり/ける¥よ、¥せのを/が¥あひ−しつ/たる¥もの=ども、¥さけ/を¥もた/せ/て¥きたり−あつまり、¥よ/も−すがら¥さかもり−し/ける/が、¥くらみつ/が¥せい¥さんじつき/ばかり/を¥しひ−ふせ/て、¥おこし/も¥たて/ず、¥くらみつの−さぶらう/を¥はじめ/と/して、¥いちいち/に¥みな¥さし−ころし/てげる。¥びぜんの−くに/は¥じふらう−くらんど/の¥くに/なり/けり。¥その¥だいくわん/の¥こふ/に¥あり/ける/を/も、¥やがて¥おし−よせ/て¥うち/てげり。¥せのをの−たらう¥まうし/ける/は、「¥かねやす/こそ¥きそ=どの/より¥いとま¥たまはつ/て、¥これ/まで¥まかり−くだつ/たれ。P97¥へいけ/に¥おん=こころざし¥おもひ¥まゐらせ/ん¥ひとびと/は、¥こんど¥きそ=どの/の¥くだり¥たまふ/に、¥や¥ひとつ¥い−かけ¥たてまつれ/や」/と¥ひろう−し/たり/けれ/ば、¥びぜん、¥びつちう、¥びんご¥さんかこく/の¥つはもの=ども、¥しかる/べき¥むま¥もののぐ、¥しよじう/など/を/ば、¥へいけ/の¥おん=かた/へ¥まゐらせ/て、¥やすみ−ゐ/たり/ける¥らうしや=ども、¥せのを/に¥もよほさ/れ/て、¥あるひは¥かき/の−ひたたれ/に¥つめひも−し、¥あるひは¥ぬの/の¥こそで/に¥あづまをり−し、¥やぶれ−はらまき¥つづり−き、¥やまうつぼ、¥たかえびら/に¥や=ども¥せうせう¥さし、¥かき−おひ−かき−おひ、¥つがふ¥その¥せい¥にせん−よ−にん、¥せのを/が¥たち/へ¥はせ−あつまる。¥びぜんの−くに¥ふくりうじなはて、¥ささのせまり/を¥じやうくわく/に¥かまへ/て、¥くち¥にぢやう¥ふか−さ¥にぢやう/に¥ほり/を¥ほり、¥かいだて¥かき、¥たかやぐら−し、¥さかもぎ¥ひい/て¥まち−かけ/たり。¥じふらう−くらんど/の¥だいくわん、¥せのを/に¥うた/れ/て、¥その¥げにん/の¥にげ/て¥きやう/へ¥のぼる/が、¥はりま/と¥びぜん/の¥さかひ/なる¥ふなさかやま/にて、¥きそ=どの/に¥ゆき−あひ¥たてまつり、¥この¥よし¥かくと¥まうし/けれ/ば、¥きそ=どの、「¥にくから/ん¥せのを−め/を、¥きつ/て¥すつ/べかり/つる/ものを、¥てのび/に/して¥たばから/れ/ぬる¥こと/こそ¥やすから/ね」/と¥こうくわい−せ/られ/けれ/ば、¥いまゐの−しらう、¥まうし/ける/は、「¥きやつ/が¥つらだましひ、¥ただもの/と/は¥みえ¥さふらは/ず。¥ちたび¥きら/う/と¥まうし¥さふらひ/し/も、¥ここ¥ざふらふ/ぞ/かし。¥さり/ながら¥なに/ほど/の¥こと/か¥さふらふ/べき。¥かねひら¥まづ¥まかり−むかつ/て、¥み¥さふらは/ん」/とて、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥びぜんの−くに/へ¥はせ−くだる。¥びぜんの−くに¥ふくりうじなはて/は、¥はたばり¥ゆんづゑ¥ひとつゑ/ばかり/にて、¥とほ−さ/は¥さいこく−みち/の¥いちり/なり。¥さう/は¥ふかた/にて、¥むま/の¥あし/も¥およば/ね/ば、¥さんぜん−よ−き/が¥こころ/は¥さき/に¥すすめ/ども、¥ちから¥およば/ず、¥むま¥しだい/に/ぞ¥あゆま/せ/ける。P98¥
いまゐの−しらう¥おし−よせ/て¥み/けれ/ば、¥せのをの−たらう/は、¥いそぎ¥たかやぐら/に¥はしり−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥さんぬる¥ごぐわつ/より、¥かひ−なき¥いのち/を¥たすけ/られ¥まゐらせ/て¥さふらふ、¥おのおの/の¥はうし/に/は、¥これ/を/こそ¥ようい¥つかまつ/て¥さふらへ」/とて、¥にじふし¥さい/たる¥や/を、¥さしつめ−ひきつめ、¥さんざん/に¥いる。¥いまゐの−しらう、¥みやざき−さぶらう、¥うみの、¥もちづき、¥すは、¥ふぢさは/など¥いふ¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの=ども、¥これ/を¥こと/と/も¥せ/ず、¥かぶと/の¥しころ/を¥かたぶけ、¥い−ころさ/るる¥じんば/を/ば、¥とり−いれ¥ひき−いれ¥ほり/を¥うめ、¥あるひは¥さう/の¥ふかた/に¥うち−いれ/て、¥むま/の¥くさわき、¥むながい−づくし、¥ふとはら/に¥たつ¥ところ/を/も¥こと/と/も¥せ/ず、¥むらめかい/て¥おし−よせ、¥あるひは¥たにふけ/を/も¥きらは/ず、¥かけ−いり−かけ−いり¥をめき−さけん/で¥せめ−いり/けれ/ば、¥せのを/が¥かた/の¥つはもの=ども、¥たすかる¥もの/は¥すくなく、¥うた/るる¥もの/ぞ¥おほかり/ける。¥よ/に¥いつ/て、¥せのを/が¥たのみ−きつ/たる¥ささのせまり/の¥じやうくわく/を¥やぶら/れ/て、¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥ひき−しりぞく。¥びつちうの−くに¥いたくらがは/の¥はた/に、¥かいだて¥かい/て¥まち−かけ/たり。¥いまゐの−しらう¥やがて¥つづい/て¥せめ/けれ/ば、¥せのを/が¥かた/の¥つはもの=ども、¥やまうつぼ、¥たかえびら/に、¥やだね/の¥ある/ほど/こそ¥ふせぎ/けれ、¥やだね¥みな¥つき/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず、¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥せのをの−たらう¥ただ¥しゆじう¥さんき/に¥うち−なさ/れ、¥いたくらがは/の¥はた/に¥つい/て、¥みどろやま/の¥かた/へ¥おち/ぞ¥ゆく。¥さんぬる¥ごぐわつ¥ほくこく/にて、¥せのを¥いけどり/に¥し/たり/ける¥くらみつの−じらう−なりずみ/は、¥おとと/の¥さぶらう−なりうぢ/を¥うた/せ/て、¥やすから/ず/や¥おもひ/けん、¥こんど/も¥また¥せのを−め/に¥おいて/は、¥いけどり/に¥せ/ん/とて、¥ただ¥いつき¥ぐん/に¥ぬけ/て¥おう/て¥ゆく。¥あはひ¥いつちやう/ばかり/に¥おつ−つき、「¥あれ/はP99¥いか/に、¥せのを/と/こそ¥みれ。¥まさなう/も¥かたき/に¥うしろ/を¥みする/ものかな。¥かへせ/や¥かへせ」/と¥ことば/を¥かけ/けれ/ば、¥せのをの−たらう/は、¥いたくらがは/を¥にし/へ¥わたす/が、¥かはなか/に¥ひかへ/て¥まち−かけ/たり。¥くらみつの−じらう、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おつ−つき、¥おし−ならべ¥むずと¥くん/で、¥どうど¥おつ。¥たがひ/に¥おとら/ぬ¥だい−ぢから/で/は¥あり、¥うへ/に¥なり¥した/に¥なり、¥ころび−あひ/ける/が、¥かはぎし/に¥ふち/の¥あり/ける/に¥ころび−いり/ぬ。¥くらみつ/は¥ぶすゐれん、¥せのを/は¥くつきやう/の¥すゐれん/にて¥あり/けれ/ば、¥みづ/の¥そこ/にて¥くらみつ/が¥こし/の¥かたな/を¥ぬき、¥よろひ/の¥くさずり¥ひき−あげ/て、¥つか/も¥こぶし/も¥とほれ¥とほれ/と、¥み−かたな¥さい/て¥くび/を¥とる。¥せのをの−たらう、¥わが¥むま/を/ば¥のり−そんじ/たり/けれ/ば、¥くらみつ/が¥むま/に¥うち−のつ/て¥おち/て¥ゆく。¥ちやくし/の¥こたらう−むねやす/は、¥とし/は¥にじふ/に¥なり/けれ/ども、¥あまり/に¥ふとつ/て、¥いつちやう/と/も¥え¥はしら/ず。¥これ/を¥み−すて/て、¥せのを/は¥にじふ−よ−ちやう/ぞ¥のび/たり/ける。¥せのをの−たらう、¥らうどう/に¥いひ/ける/は、「¥ひごろ/は¥せんばん/の¥かたき/に¥あう/て¥いくさ−する/に/は、¥しはう¥はれ/て¥おぼゆる/が、¥けふ/は¥こたらう−むねやす/を¥すて/て¥ゆけ/ば/に/やらん、¥いつかう¥さき/が¥くらう/て¥みえ/ぬ/なり。¥こんど/の¥いくさ/に¥いのち¥いき/て、¥ふたたび¥へいけ/の¥おん=かた/へ¥まゐり/たり/とも、¥かねやす/は¥ろくじふ/に¥あまつ/て、¥いく−ほど¥いか/う/ど¥おもう/て、¥ただ¥ひとり¥ある¥こ/を¥すて/て、¥これ/まで¥のがれ−まゐり/たる/らん/など、¥どうれい=ども/に¥いは/れ/ん¥こと/こそ¥くちをしけれ」/と¥いひ/けれ/ば、¥らうどう、「¥さ¥さふらへ/ば/こそ、¥ただ¥ご=いつしよ/で¥いか/に/も−なら/せ¥たまへ/と¥まうし/つる/は、¥ここ¥ざふらふ/ぞ/かし。¥かへさ/せ¥たまへ」/とて、¥また¥とつ/て¥かへす。¥あん/の/ごとく¥こたらう−むねやす/は、¥あし¥かん/ばかり/に¥はれて¥ふせり−ゐ/たる¥ところ/へ、¥せのをの−たらう¥とつ/て¥かへし、P100¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥こたらう/が¥て/を¥とつ/て、「¥なんぢ/と¥いつしよ/で¥いか/に/も−なら/ん/と¥おもふ¥ため/に、¥これ/まで¥かへり/たる/は¥いか/に」/と¥いひ/けれ/ば、¥こたらう¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥たとひ¥この¥み/こそ¥ぶきりやう/に¥さふらへ/ば、¥ここ/にて¥じがい/を¥つかまつり¥さふらふ/とも、¥われ¥ゆゑ¥おん=いのち/を/さへ¥うしなひ¥まゐらせ/ん¥こと、¥ごぎやくざい/に/や¥さふらは/んず/らん。¥ただ¥とうとう¥のび/させ¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ども、¥おもひ−きつ/て/ん¥うへ/は/とて、¥やすみ−ゐ/たり/ける¥ところ/に、¥また¥あらて/の¥げんじ¥ごじつき/ばかり/で¥いで−きたる。¥せのをの−たらう、¥い−のこし/たる¥やすぢ/の¥や/を、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥いる。¥ししやう/は¥しら/ず、¥やにはに¥かたき¥はちき¥い−おとし、¥その−のち¥たち/を¥ぬい/て、¥まづ¥こたらう/が¥くび¥ふつと¥うち−おとし、¥かたき/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥たてさま、¥よこさま、¥くもで、¥じふもんじ/に¥かけ−まはり、¥さんざん/に¥たたかひ、¥かたき¥あまた¥うつ−とつ/て、¥そこ/にて¥うちじに−し/てげり。¥らうどう/も¥しゆ/に¥ちつと/も¥おとら/ず¥たたかひ/ける/が、¥いたで¥おう/て¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥なか−いちにち¥あつ/て、¥やがて¥しに/に/けり。¥かれ=ら¥しゆじう¥さん−にん/が¥くび/を/ば、¥びつちうの−くに¥さぎがもり/に/ぞ¥かけ/たり/ける。¥きそ=どの、「¥あはれ¥かう/の−もの/や。¥これ=ら/が¥いのち/を¥たすけ/て¥み/で」/と/ぞ¥のたまひ/ける。P101
「むろやまかつせん」(『むろやま』)S0809¥さる−ほど/に¥きそ/は¥びつちうの−くに¥まんじゆ/の−しやう/にて¥せいぞろへ−し/て、¥やしま/へ¥すでに¥よせ/ん/と¥す。¥その¥あひだ¥みやこ/の¥るす/に¥おか/れ/たり/ける¥ひぐちの−じらう−かねみつ、¥さいこく/へ¥ししや/を¥たてまつ/て、「¥との/の¥わたら/せ¥たまは/ぬ¥ま/に、¥じふらう−くらんど=どの/こそ、¥ゐん/の¥きりびと/して、¥やうやう/に¥ざんそう−せ/られ¥さふらふ/なれ。¥さいこく/の¥いくさ/を/ば¥しばらく¥さし−おか/せ¥たまひ/て、¥いそぎ¥のぼら/せ¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥きそ、¥さら/ば/とて、¥よ/を¥ひ/に¥つい/で¥はせ−のぼる。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ/は、¥きそ/に¥なか¥たがう/て¥あしかり/な/ん/と/や¥おもは/れ/けん、¥その¥せい¥ごひやく−よ−き/で、¥たんばぢ/に¥かかつ/て、¥はりまの−くに/へ¥おち−くだる。¥きそ/は¥つの−くに/を¥へ/て¥みやこ/へ¥いる。¥へいけ/は¥きそ¥うた/ん/とて、¥たいしやうぐん/に/は¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ、¥かづさの−ごらう−びやうゑ−ただみつ、¥あく−しち−びやうゑ−かげきよ、¥いがの−へいないざゑもん−いへなが/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥にまん−よ−き、¥はりまの−くに/に¥おし−わたり、¥むろやま/に¥ぢん/を/ぞ¥とつ/たり/ける。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ/は、¥へいけ/と¥いくさ−し/て、¥きそ/に¥なかなほり−せ/ん/と/や¥おもひ/けん、¥その¥せい¥ごひやく−よ−き、¥むろやま/へ/こそ¥かから/れ/けれ。¥へいけ/は¥ぢん/を¥いつつ/に¥はる。¥まづ¥いがの−へいないざゑもん−いへなが、¥にせん−よ−き/で¥いちぢん/を¥かたむ。¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ、P102¥にせん−よ−き/で¥にぢん/を¥かたむ。¥かづさの−ごらう−びやうゑ−ただみつ、¥あく−しち−びやうゑ−かげきよ、¥さんぜん−よ−き/で¥さんぢん/を¥かたむ。¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥さんぜん−よ−き/で¥しぢん/を¥かため¥たまふ。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥いちまん−よ−き/で¥ごぢん/に¥ひかへ¥たまへ/り。¥まづ¥いちぢん¥いがの−へいないざゑもん−いへなが、¥しばらく¥あひ−しらふ¥てい/に¥もてなし/て、¥なか/を¥あけ/て/ぞ¥とほし/ける。¥にぢん¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ、¥これ/も¥あけ/て/ぞ¥とほし/ける。¥さんぢん¥かづさの−ごらう−びやうゑ、¥あく−しち−びやうゑ、¥とも/に¥あけ/て/ぞ¥とほし/ける。¥しぢん¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう/も、¥おなじう¥あけ/て/ぞ¥いれ/られ/ける。¥せんぢん/より¥ごぢん/まで、¥かねて¥やくそく−し/たり/けれ/ば、¥げんじ/を¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥じふらう−くらんど−ゆきいへ、¥こ/は¥たばから/れ/に/けり/と/や¥おもは/れ/けん、¥おもて/も¥ふら/ず、¥いのち/も¥をしま/ず、¥ここ/を¥さいご/と¥せめ−たたかふ。¥しん−ぢうなごん/の¥むねと¥たのま/れ/たり/ける¥きしちゑもん、¥きはちゑもん、¥きくらう/など¥いふ¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの=ども、¥みな¥そこ/にて¥じふらう−くらんど/に¥うつ−とら/れ/ぬ。¥かく−し/て¥ごひやく−よ−き/の¥せい=ども、¥わづか¥さんじつき/ばかり/に¥うち−なさ/れ、¥うんか/の/ごとく/なる¥かたき/の¥なか/を¥わつ/て¥いづれ/ども、¥わが−み/は¥て/も¥おは/ず、¥にじふしちき¥たいりやく¥て¥をひ、¥はりまの−くに¥たかさご/より¥ふね/に¥のつ/て、¥いづみの−くに¥ふけひ/の−うら/へ¥おし−わたり、¥それ/より¥かはちの−くに¥ながの/の−じやう/に¥たて−ごもる。¥へいけ/は¥むろやま¥みづしま¥にかど/の¥いくさ/に¥かつ/て/こそ、¥いよいよ¥せい/は¥つき/に/けれ。P103¥
「つづみはうぐわん」(『つづみはうぐわん』)S0810¥およそ¥きやう−ぢう/に/は¥げんじ/の¥せい¥みちみち/て、¥ざいざいしよしよ/に¥いりどり¥おほし。¥かも、¥やはた/の¥ご=りやう/と/も¥いは/ず、¥あをた/を¥かり/て¥まぐさ/に¥し、¥ひと/の¥くら/を¥うち−あけ/て¥もの/を¥とり、¥ろし/に¥もつ/て¥あふ¥もの/を¥うばひ−とる。「¥へいけ/の¥みやこ/に¥おはせ/し/ほど/は、¥ろくはら=どの/とて、¥ただ¥おほかた¥おそろしかり/し/ばかり/なり。¥いしやう/を¥はぎ−とる/まで/は¥なかり/し/ものを。¥へいけ/に¥げんじ¥かへおとり−し/たり」/と/ぞ¥ひと¥まうし/ける。¥ほふわう/より¥きその−さま/の−かみ/の¥もと/へ、「¥らうぜき¥しづめよ」/と¥おほせ−くださ/る。¥お=つかひ/は¥いきの−かみ−ともちか/が¥こ/に、¥いきの−はうぐわん−ともやす/と¥いふ¥もの/なり。¥てんが/に¥きこえ/たる¥つづみ/の¥じやうず/にて¥あり/けれ/ば、¥とき/の−ひと¥つづみはうぐわん/と/ぞ¥まうし/ける。¥きそ¥たいめん−し/て、¥まづ¥ゐん/の¥おん=ぺんじ/を/ば¥まうさ/で、「¥そもそも¥わ=どの/を¥つづみはうぐわん/と¥いふ/は、¥よろづ/の¥ひと/に¥うた/れ/たう/た/か、¥はら/れ/たう/た/か」/と/ぞ¥とう/たり/ける。¥ともやす¥へんじ/に¥およば/ず、¥いそぎ¥かへり−まゐつ/て、「¥よしなか¥をこ/の−もの/にて¥さふらふ。¥はやく¥つゐたう−せ/させ¥たまへ。¥ただいま¥てうてき/と¥なり¥さふらひ/な/んず」/と¥まうし/けれ/ば、¥ほふわう¥やがて¥おぼしめし−たた/せ¥たまひ/けり。¥さら/ば¥しかる/べき¥ぶし/に/も¥おほせ−つけ/られ/ず/して、¥やま/の¥ざす、¥てら/の−ちやうり/に¥おほせ/られ/て、¥やま、¥みゐでら/の¥あくそう=ども/を/ぞP104¥めさ/れ/ける。¥くぎやう−てんじやうびと/の¥めさ/れ/ける¥せい/と¥いふ/は、¥むかへつぶて、¥いんぢ、¥いふ−かひ−なき¥つじくわんじや=ばら、¥さて/は¥こつじき¥ほふし=ばら/なり。¥また¥しなの−げんじ¥むらかみの−さぶらう−はんぐわんだい、¥これ/も¥きそ/を¥そむい/て¥ほふわう/へ/ぞ¥まゐり/ける。¥きその−さま/の−かみ、¥ゐん/の¥ご=きしよく¥あしう¥なる/と¥きこえ/しか/ば、¥はじめ/は¥きそ/に¥したがう/たる¥ごきない/の¥もの=ども、¥みな¥きそ/を¥そむい/て、¥ゐんがた/へ¥まゐる。¥いまゐの−しらう¥まうし/ける/は、「¥これ/こそ¥もつて/の−ほか/の¥おん=だいじ/にて¥さふらへ。¥され/ば/とて¥じふぜん/の−きみ/に¥むかひ¥まゐらせ/て、¥いかで¥ご=かつせん¥さふらふ/べき。¥ただ¥かぶと/を¥ぬぎ¥ゆみ/の¥つる/を¥はづい/て、¥かうにん/に¥まゐらせ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうし/けれ/ば、¥きそ¥おほき/に¥いかつ/て、「¥われ¥しなの/を¥いで/し/より、¥をみ、¥あひだ/の−かつせん/より¥はじめ/て、¥ほくこく/にて/は、¥となみ、¥くろさか、¥しほさか、¥しのはら、¥さいこく/にて/は、¥ふくりうじなはて、¥ささのせまり、¥いたくら/が−じやう/を¥せめ/しか/ども、¥いちど/も¥かたき/に¥うしろ/を¥みせ/ず。¥たとひ¥じふぜん/の−きみ/にて¥わたら/せ¥たまふ/とも、¥かぶと/を¥ぬぎ¥ゆみ/の¥つる/を¥はづい/て、¥かうにん/に/は¥え/こそ¥まゐる/まじけれ」。¥
「ほふぢうじかつせん」811「¥たとへば¥みやこ/の¥しゆご−し/て¥あら/んずる¥もの/が、¥むま¥いつぴき−づつ¥かう/て¥のら/ざる/べき/か。P105¥いくら/も¥ある¥た=ども¥から/せ/て¥まぐさ/に¥せ/ん/を、¥あながち/に¥ほふわう/の¥とがめ¥たまふ/べき¥やう/や¥ある。¥ひやうらうまい¥つき/ぬれ/ば、¥くわんじや=ばら=ども/が、¥にしやま¥ひがしやま/の¥かたほとり/に¥つい/て、¥ときどき¥いりどり−せ/ん/は、¥なじか/は¥くるしかる/べき。¥だいじん¥いげ、¥みやみや/の¥ごしよ/へ¥まゐら/ば/こそ、¥ひがごと/なら/め。¥いかさま¥これ/は¥つづみはうぐわん/が¥きようがい/と¥おぼゆる/ぞ。¥その¥つづみ−め¥うち−やぶつ/て¥すてよ。¥こんど/は¥よしなか/が¥さいご/の¥いくさ/にて¥あら/んずる/ぞ。¥かつうは¥ひやうゑ/の−すけ−よりとも/が¥かへり−きか/んずる¥ところ/も¥あり。¥いくさ¥よう¥せよ、¥もの=ども」/とて¥うち−いで/けり。¥ほくこく/の¥もの=ども、¥はじめ/は¥ごまん−よ−き/と¥きこえ/し/が、¥みな¥おち−くだつ/て、¥わづか¥ろくしちせんき/ぞ¥あり/ける。¥よしなか/が¥いくさ/の¥きちれい/なれ/ば/とて、¥ななて/に¥わかち、¥まづ¥ひぐちの−じらう−かねみつ、¥にせん−よ−き/で¥いまぐまの/の¥かた/より、¥からめで/に¥さし−つかはす。¥のこる¥むて/は、¥おのおの/が¥ゐ/たら/んずる¥でうりこうぢ/より¥みな¥うつ−たつ/て、¥ろくでうかはら/で¥ひとつ/に¥なれ/と、¥あひづ/を¥さだめ/て¥うつ−たち/けり。¥み=かた/の¥かさじるし/に/は、¥まつ/の¥は/を/ぞ¥つけ/たり/ける。¥いくさ/は¥じふいちぐわつ−じふくにち/の¥あした/なり。¥ゐん/の−ごしよ−ほふぢうじ=どの/に/も、¥ぐんびやう¥にまん−よ−にん¥まゐり−こもり/たる¥よし¥きこえ/けり。¥きそ、¥ほふぢうじ=どの/の¥にし/の¥もん/へ¥おし−よせ/て¥み/けれ/ば、¥つづみはうぐわん−ともやす/は、¥いくさ/の¥ぎやうじ¥うけたまはつ/て、¥ごしよ/の¥にし/の¥ついがき/の¥うへ/へ¥のぼり−あがつ/て¥たつ/たり/ける/が、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥かぶと/ばかり/ぞ¥き/たり/ける。¥かぶと/に/は¥してん/を¥かい/て/ぞ¥おし/たり/ける。¥かたて/に/は¥ほこ/を¥もち、¥かたて/に/は¥こんがうれい/を¥もつ/て、¥うち−ふり−うち−ふり、¥ときどき/は¥まふ¥をり/も¥あり/けり。¥くぎやう−てんじやうびと/は、「¥ふぜい¥なし。¥ともやす/に/は¥てんぐ¥つい/たり」/と/ぞP106¥わらは/れ/ける。¥ともやす¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むかし/は¥せんじ/を¥むかつ/て¥よみ/けれ/ば、¥かれ/たる¥くさき/も¥たちまち/に¥はな¥さき¥み¥なり、¥とぶ¥とり/も¥ち/に¥おち、¥あくき¥あくじん/も¥したがひ/き。¥まつだい¥げうき/なれ/ば/とて、¥いかで/か¥じふぜん/の−きみ/に¥むかひ¥まゐらせ/て、¥ゆみ/を¥ひき¥や/を/ば¥はなつ/べき。¥はなた/ん¥や/は、¥かへつて¥なんぢ=ら/が¥み/に¥たつ/べし。¥ぬか/ん¥たち/は、¥かへつて¥み/を¥きる/べし」/など、¥ののしつ/たり/けれ/ば、¥きそ、「¥さ¥な¥いは/せ/そ」/とて、¥とき/を¥どつと¥つくり/ける。¥さる−ほど/に¥ひぐちの−じらう−かねみつ¥にせん−よ−き、¥いまぐまの/の¥かた/より、¥おなじう¥とき/の−こゑ/を/ぞ¥あはせ/ける。¥いまゐの−しらう−かねひら、¥かぶら/の¥なか/に¥ひ/を¥いれ/て、¥ほふぢうじ=どの/の¥ごしよ/の¥むね/に¥い−たて/たり/けれ/ば、¥をりふし¥かぜ/は¥はげしし、¥みやうくわ/は¥てん/に¥もえ−あがつ/て、¥ほのほ/は¥こくう/に¥みちみて/り。¥くろけぶり¥おし−かけ/けれ/ば、¥いくさ/の¥ぎやうじ¥ともやす/は、¥ひと/より¥さき/に¥おち/に/けり。¥ぎやうじ/が¥おつる¥うへ/は/とて、¥にまん−よ−にん/の¥つはもの=ども、¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥あまり/に¥あわて−さわい/で、¥ゆみ¥とる¥もの/は¥や/を¥しら/ず、¥や¥とる¥もの/は¥ゆみ/を¥しら/ず。¥あるひは¥なぎなた¥さかさま/に¥つい/て¥わが¥あし¥つき−つらぬく¥もの/も¥あり、¥あるひは¥ゆみ/の¥はず¥もの/に¥かけ/て、¥え¥はづさ/で¥すて/て¥にぐる¥もの/も¥あり。¥しちでう/が¥すゑ/を/ば、¥つの−くに−げんじ/の¥かため/たり/ける/が、¥ゐん/の−ごしよ/より、「¥おちうと¥あら/ば、¥ようい−し/て¥みな¥うち−ころせ」/と、¥げぢ−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ざいぢ/の¥もの=ども、¥やねゐ/に¥たて/を¥つき−ならべ、¥おそへ/の¥いし/を¥とり−あつめ/て、¥まち−ゐ/たる¥ところ/に、¥つの−くに−げんじ/の¥おち/ける/を、「¥あはや¥おちうと」/とて、¥いし/を¥ひろひ−かけ、¥さんざん/にP107¥うち/けれ/ば、「¥ゐんがた/で¥ある/ぞ、¥あやまち−す/な」/と¥いひ/けれ/ども、「¥さ¥な¥いは/せ/そ。¥ゐんぜん/で¥ある/に、¥ただ¥うち−ころせ¥うち−ころせ」/とて¥うつ/ほど/に、¥あるひは¥かしら¥うち−わら/れ、¥あるひは¥こし¥うち−をら/れ/て、¥むま/より¥おち、¥はふはふ¥にぐる¥もの/も¥あり、¥あるひは¥うち−ころさ/るる¥もの/も¥おほかり/けり。¥はちでう/が¥すゑ/を/ば、¥さんそう=ども/の¥かため/たり/ける/が、¥はぢ¥ある¥もの/は¥うちじに−し、¥つれ¥なき¥もの/は¥おち/て¥ゆく。¥ここ/に¥もんどの−かみ−ちかなり/は、¥うすあを/の¥かりぎぬ/の¥した/に、¥もよぎ−をどし/の−はらまき/を¥き、¥しろ−つきげ/なる¥むま/に¥のつ/て、¥かはら/を¥のぼり/に¥おち/ける/を、¥いまゐの−しらう−かねひら、¥おつ−かかり、¥よつぴい/て、¥しや¥くび/の¥ほね/を、¥ひようつば/と¥い/て、¥むま/より¥さかさま/に¥い−おとす。¥せい−だいげき−よりなり/が¥こ/なり/けり。¥みやうぎやうだう/の¥はかせ、¥かつちう/を¥よろふ¥こと¥これ¥はじめ/と/ぞ¥うけたまはる。¥あふみの−ちうじやう−ためきよ、¥ゑちぜんの−せうしやう−のぶゆき、¥はうきの−かみ−みつつな、¥しそく¥はうきの−はうぐわん−みつつね/も、¥い−おとさ/れ/て¥くび¥とら/れ/ぬ。¥また¥きそ/を¥そむい/て、¥ゐん/へ¥まゐり/たる¥しなの−げんじ¥むらかみの−さぶらう−はんぐわんだい/も¥うた/れ/ぬ。¥あぜつ/の−だいなごん−すけかたの−きやう/の¥まご、¥うせうしやう−まさかた/も、¥よろひ¥たて−ゑぼし/で、¥いくさ/の¥ぢん/へ¥いで/られ/たり/ける/が、¥ひぐちの−じらう−かねみつ/が¥て/に¥かかつ/て、¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥てんだい−ざす−めいうん−だいそうじやう、¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/も、¥ごしよ/に¥まゐり¥こもら/せ¥たまひ/たり/ける/が、¥くろけぶり¥すでに¥おし−かけ/けれ/ば、¥お=むま/に¥めし/て、¥いそぎ¥いで/させ¥たまひ/ける/を、¥ぶし=ども¥さんざん/に¥い¥たてまつる。¥めいうん−だいそうじやう、¥ゑんけい−ほつしんわう/も、¥お=むま/より¥い−おとさ/れ/て、¥おん=くび¥とら/れ/させ¥たまひ/けり。P108¥ほふわう/は¥おん=こし/に¥めし/て、¥たしよ/へ¥ご=かう¥なる。¥ぶし=ども¥さんざん/に¥い¥たてまつる。¥ぶんごの−せうしやう−むねなが、¥むくらんぢ/の−ひたたれ/に、¥をり−ゑぼし/で¥ぐぶ−せ/られ/たり/ける/が、「¥これ/は¥ゐん/にて¥わたら/せ¥たまふ/ぞ。¥あやまち¥つかまつる/な」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ぶし=ども¥みな¥むま/より¥おり/て¥かしこまる。「¥なにもの/ぞ」/と¥おん=たづね¥あり/けれ/ば、「¥しなのの−くに/の¥ぢうにん¥やしまの−しらう−ゆきしげ」/と¥なのり¥まうす。¥やがて¥おん=こし/に¥て¥かけ¥まゐらせ/て、¥ごでう−だいり/へ¥いれ¥たてまつ/て、¥きびしう¥しゆご−し¥たてまつる。¥ぶんごの−こくし¥ぎやうぶきやう−ざんみ−よりすけの−きやう/も、¥ごしよ/に¥まゐり−こもら/れ/たり/ける/が、¥くろけぶり¥すでに¥おし−かけ/けれ/ば、¥いそぎ¥かはら/へ¥にげ−いで/られ/ける/が、¥ぶし/の¥しもべ=ども/に、¥いしやう¥みな¥はぎ−とら/れ/て、¥まつぱだか/にて¥たた/れ/たり。¥ころ/は¥じふいちぐわつ−じふくにち/の¥あした/なれ/ば、¥かはら/の¥かぜ¥さ/こそ/は¥はげしかり/けめ。¥さんみ/の¥せうと¥ゑちぜんの−ほつけう−しやうい/が¥ちうげん−ぼふし/の¥あり/ける/が、¥いくさ¥み/ん/とて¥いで/たり/ける/が、¥さんみ/の¥はだか/にて¥たた/れ/たる/を¥み−つけ/て、「¥あな¥あさまし」/とて、¥いそぎ¥はしり−よる。¥この¥ほふし/は¥しろき¥こそで¥ふたつ/に¥ころも/を/ぞ¥き/たり/ける。¥さら/ば¥こそで/を/も¥ぬい/で¥きせ¥たてまつれ/かし。¥ころも/を¥ぬい/で¥なげ−かけ/たり。¥みじかき¥ころも¥うつほ/に¥かぶつ/て、¥おび/も¥せ/ず、¥うしろ/の¥てい、¥さ/こそ/は¥み−ぐるしかり/けめ。¥さら/ば¥いそぎ/も¥あゆみ/も¥たまは/で、¥びやくえ/なる¥ほふし/を¥とも/に¥ぐし/て¥おはし/ける/が、¥あそこ−ここ/に¥たち−やすらひ、「¥あれ/なる/は¥た/が¥いへ/ぞ。¥ここ/なる/は¥なにもの/の¥しゆくしよ」/なんど¥とひ¥たまへ/ば、¥みる¥ひと¥て/を¥たたい/て¥わらひ−あへ/り/けり。P109¥しゆしやう/は¥お=ふね/に¥めし/て、¥いけ/に¥うかば/せ¥たまひ/たり/ける/に、¥ぶし=ども¥しきり/に¥や¥まゐらせ/けれ/ば、¥しちでうの−じじう−のぶきよ、¥きの−かみ−のりみつ、¥お=ふね/に¥さふらは/れ/ける/が、「¥これ/は¥うち/にて¥わたら/せ¥たまふ/ぞ/や。¥あやまち¥つかまつる/な」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ぶし=ども¥みな¥むま/より¥おり/て¥かしこまる。¥やがて¥かんゐん=どの/へ¥ぎやうがう¥なし¥たてまつる。¥ぎやうがう/の¥ぎしき/の¥あさまし−さ、¥まうす/も¥なかなか¥おろか/なり。¥
(『ほふぢゆうじかつせん』)S0811¥げん−くらんど−なかかぬ/は、¥その¥せい¥ごじつき/ばかり/で、¥ほふぢうじ=どの/の¥にし/の¥もん/を¥かため/て¥ふせぐ¥ところ/に、¥あふみ−げんじ¥やまもとの−くわんじや−よしたか、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−きたり、「¥いか/に¥おのおの/は¥たれ/を¥かばは/ん/とて、¥いくさ/を/ば¥し¥たまふ/ぞ。¥ご=かう/も¥ぎやうがう/も、¥たしよ/へ¥なり/ぬ/と/こそ¥うけたまはれ」/と¥いひ/けれ/ば、¥さら/ば/とて¥おほぜい/の¥なか/に¥かけ−いり、¥さんざん/に¥たたかへ/ば、¥しゆじう¥はつき/に¥うち−なさ/る。¥はつき/が¥なか/に、¥かはち/の¥くさか−たう/に、¥かが−ばう/と¥いふ¥ほふしむしや¥あり。¥つきげ/なる¥むま/の、¥くち/の¥こはき/に/ぞ¥のつ/たり/ける。「¥この¥むま/は¥あまり/に¥くち/が¥つよう/て、¥のり¥たまつ/つ/べし/と/も¥ぞんじ¥さふらは/ず」/と¥いひ/けれ/ば、¥げん−くらんど、「¥さら/ば¥この¥むま/に¥のり−かへよ」/とて、¥くりげ/なる¥むま/の¥したを¥しろい/に¥のり−かへ/て、¥ねのゐの−こやた/が¥にひやく−よ−き/ばかり/で¥ひかへ/たる、¥かはらざか/の¥せい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥さんざん/に¥たたかひ、¥そこ/にて¥はつき/が¥ごき¥うた/れ/ぬ。¥かが−ばう/は¥わが¥むま/の¥ひあい/なり/とて、¥しゆ/の¥むま/に¥のり−かへ/たり/けれ/ども、¥うん/や¥つき/に/けん、¥そこ/にて¥つひに¥うた/れ/に/けり。¥ここ/に¥げん−くらんど/の¥いへのこ/に、¥じらう−くらんど−なかより/と¥いふ¥もの¥あり。¥くりげ/なる¥むま/の、¥したをP110¥しろい/が¥かけ−いで/たる/を¥み−つけ/て、¥げにん/を¥よび、「¥ここ/なる¥むま/は、¥げん−くらんど/の¥むま/と¥みる/は¥ひがごと/か」。「¥さん−ざふらふ」/と¥まうす。「¥さて¥どの¥ぢん/へ/や¥かけ−いり/たる/と¥み/つる」。「¥かはらざか/の¥せい/の¥なか/へ/こそ¥いら/せ¥たまひ/つる/なれ。¥お=むま/も¥やがて¥あの¥せい/の¥なか/より¥いで−き/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥じらう−くらんど、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥あな¥むざん、¥はや¥うた/れ¥たまひ/たり。¥えうせう¥ちくば/の¥むかし/より、¥しな/ば¥いつしよ/で¥しな/ん/と/こそ¥ちぎり/し/に、¥いま/は¥ところどころ/に¥ふさ/ん¥こと/こそ¥かなしけれ」/とて、¥さいし/の¥もと/へ¥さいご/の¥ありさま¥いひ−つかはし、¥ただ¥いつき¥かはらざか/の¥せい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥あつみの−しんわう/に¥はちだい/の¥こういん、¥しなのの−かみ−なかしげ/が¥こ/に、¥じらう−くらんど−なかより/とて、¥しやうねん¥にじふしち/に¥まかり−なる。¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥より−あへ/や¥げんざん−せ/ん」/とて、¥たてさま、¥よこさま、¥くもで、¥じふもんじ/に¥かけ−わり¥かけ−まはり¥たたかひ/ける/が、¥かたき¥あまた¥うつ−とつ/て、¥つひに¥うちじに−し/てげり。¥げん−くらんど¥これ/を/ば¥しり¥たまは/ず、¥あに/の¥かはちの−かみ−なかのぶ¥うち−ぐし/て、¥しゆじう¥さんき¥みなみ/を¥さし/て¥おち−ゆき/ける/が、¥せつしやう=どの/の¥みやこ/を/ば¥いくさ/に¥おそれ/させ¥たまひ/て、¥うぢ/へ¥ぎよ=しゆつ¥あり/ける/に、¥こはたやま/にて¥おつ−つき¥たてまつり、¥むま/より¥おり/て¥かしこまる。「¥なにもの/ぞ」/と¥おん=たづね¥あり/けれ/ば、「¥なかのぶ、¥なかかぬ」/と¥なのり¥まうす。「¥とうごく¥ほくこく/の¥きようと=ら/か/なんど¥おぼしめし/たれ/ば」/とて、¥ぎよ=かん¥あり。「¥やがて¥なんぢ=ら/も¥おん=とも/に¥さふらへ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥うけたまはつ/て、¥うぢ/の¥ふけ=どの/まで¥おくり¥まゐらせ/て、¥それ/より¥この¥ひとびと/は、¥かはちの−くに/へ/ぞ¥おち−ゆき/ける。P111¥あくる¥はつかのひ、¥きその−さま/の−かみ−よしなか¥ろくでうかはら/に¥うつ−たつ/て、¥きのふ¥きる/ところ/の¥くび=ども、¥みな¥かけ−ならべ/て¥しるい/たれ/ば、¥ろつぴやくさんじふ−よ−にん/なり。¥その¥なか/に¥てんだい−ざす−めいうん−だいそうじやう、¥てら/の−ちやうり−ゑんけい−ほつしんわう/の¥おん=くび/も¥かから/せ¥たまひ/たり。¥これ/を¥みる¥ひと、¥なみだ/を¥ながさ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥きその−さま/の−かみ、¥つがふ¥その¥せい¥しちせん−よ−き、¥むま/の¥かしら¥いちめん/に¥ひんがし¥むけ/て、¥てん/も¥ひびき¥だいぢ/も¥ゆるぐ/ばかり/に、¥とき/を/ぞ¥さん−か−ど¥つくり/ける。¥きやう−ぢう¥また¥さわぎ−あへ/り。¥ただし¥これ/は¥よろこび/の¥とき/と/ぞ¥きこえ/し。¥さる−ほど/に¥こ=せうなごん−にふだう−しんせい/の¥しそく、¥さいしやう−ながのり、¥ほふわう/の¥わたら/せ¥たまふ¥ごでう−だいり/へ¥まゐつ/て、¥もん/より¥いら/ん/と¥すれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども¥ゆるさ/ず。¥あんない/は¥しつ/たり。¥ある¥せうをく/に¥たち−いり、¥にはか/に¥かみ¥そり−おろし、¥すみぞめ/の¥ころも¥はかま¥き/て、「¥この−うへ/は¥なにか¥くるしかる/べき、¥あけ/て¥いれ/よ」/と¥のたまへ/ば、¥その−とき¥ゆるし¥たてまつる。¥なくなく¥ごぜん/へ¥まゐつ/て、¥こんど¥うた/れ¥たまふ¥ひとびと/の¥こと、¥いちいち/に¥まうし/たり/けれ/ば、¥ほふわう、「¥めいうん/は¥ひごふ/の¥しに¥す/べき¥もの/と、¥つゆ/も¥おぼしめし−よら/ざり/し/ものを。¥こんど/は¥ただ¥わが¥いか/に/も−なる/べかり/つる¥おん=いのち/に¥かはり/たる/に/こそ」/とて、¥おん=なみだ¥せき−あへ/させ¥たまは/ず。¥おなじき−にじふさんにち、¥さんでうの−ちうなごん−ともかたの−きやう¥いげ、¥しじふくにん/が¥くわんしよく/を¥とどめ/て、¥おひ−こめ¥たてまつる。¥へいけ/の¥とき/は¥しじふさん−にん/を/こそ¥とどめ/られ/しか。¥これ/は¥すでに¥しじふくにん/なれ/ば、¥へいけ/の¥あくぎやう/に/は、¥なほ¥てうくわ−せ/り。¥まつ=どの/の¥ひめぎみ¥とり¥たてまつ/て、¥くわんばく=どの/のP112¥むこ/に¥おし−なる。¥
その−ひ¥また¥きその−さま/の−かみ、¥いへのこ−らうどう¥めし−あつめ/て、¥ひやうぢやう−す。「¥そもそも¥よしなか¥いつてん/の−きみ/に¥むかひ¥まゐらせ/て、¥いくさ/に/は¥うち−かち/ぬ。¥しゆしやう/に/や¥なら/まし、¥ほふわう/に/や¥なる/べき。¥ほふわう/に¥なら/う/ど¥おもへ/ども、¥ほふし/に¥なら/ん/も、¥をかしかる/べし。¥しゆしやう/に¥なら/う/ど¥おもへ/ども、¥わらは/に¥なら/ん/も¥しかる/べから/ず。¥よしよし¥さら/ば¥くわんばく/に¥なら/う」/と¥いひ/けれ/ば、¥てかき/に¥ぐせ/られ/たり/ける¥だいぶ−ばう−かくめい¥すすみ−いで/て、「¥くわんばく/に/は、¥たいしよくくわん/の¥おん=すゑ、¥しつぺいけ/の¥きんだち=たち/こそ¥なら/せ¥たまへ。¥との/は¥げんじ/にて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥それ/こそ¥かなひ¥さふらふ/まじ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥さら/ば/とて、¥ゐん/の¥おん=むまや/の−べつたう/に¥おし−なつ/て、¥たんばの−くに/を/ぞ¥ちぎやう−し/ける。¥ゐん/の¥ご=しゆつけ¥あれ/ば¥ほふわう/と¥まうし、¥しゆしやう/の¥いまだ¥おん=げんぶく¥なき/ほど/は、¥ご=とうぎやう/にて¥ましまし/ける/を、¥しら/ざり/ける/こそ¥うたてけれ。¥さる−ほど/に¥かまくら/の−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥きそ/が¥らうぜき¥しづめ/ん/とて、¥のりより¥よしつね/に¥ろくまん−よ−き/を¥あひ−そへ/て、¥さし−のぼせ/られ/ける/が、¥みやこ/に/は¥いくさ¥いで−き/て、¥ごしよ¥だいり¥みな¥やき−はらひ、¥てんが¥くらやみ/と¥なつ/たる¥よし¥きこえ/しか/ば、¥さう−なう¥のぼつ/て¥いくさ−す/べき¥やう/も¥なし/とて、¥をはりの−くに¥あつた/の¥へん/なる¥ところ/に/ぞ¥ましまし/ける。¥ほくめん/に¥さふらひ/ける¥くない−はうぐわん−きんとも、¥とうない−はうぐわん−ときなり、¥この¥こと¥うつたへ/ん/とて、¥をはりの−くに/へ¥はせ−くだり、¥この¥よし¥かく/と¥まうし/けれ/ば、¥のりより¥よしつね、「¥これ/は¥きんとも/の¥くわんとう/へ¥くだら/る/べき/で¥さふらふ/ぞ。¥その¥ゆゑ/は¥しさい/を¥ぞんぜ/ぬ¥つかひ/は、¥かへし/て¥とは/るる¥とき、¥ふしん/の¥のこる/に」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥こんど/のP113¥いくさ/に¥しよじう¥みな¥おち−うせ¥うた/れ/に/しか/ば、¥しそく¥くないどころ−きんもち/とて、¥しやうねん¥じふごさい/に¥なり/ける/を¥あひ−ぐし/て/ぞ¥くだり/ける。¥よ/を¥ひ/に¥つい/で¥かまくら/へ¥はせ−くだり、¥この¥よし¥うつたへ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥かまくら=どの、「¥これ/は¥つづみはうぐわん/が¥ふしぎ/の¥こと¥まうし−いで/て、¥きみ/を/も¥なやまし¥たてまつり、¥おほく/の¥かうそう¥きそう/を/も¥うしなひ/ける¥こと/こそ、¥かへすがへす/も¥きくわい/なれ。¥これ=ら/を¥めし−つかはせ¥たまは/ば、¥この−のち/も¥てんが/の¥さうどう¥たゆ/まじう¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ともやす¥この¥こと¥ちんぜ/ん/とて、¥よ/を¥ひ/に¥つい/で¥かまくら/へ¥はせ−くだり、¥かぢはら−へいざう−かげとき/に¥つい/て、¥さまざま/に¥ちんじ¥まうし/けれ/ども、¥かまくら=どの、「¥しやつ/に¥め¥な¥かけ/そ。¥あひ−しらひ¥な¥せ/そ」/と¥のたまへ/ば、¥ひ−ごと/に¥ひやうゑ/の−すけ/の¥たち/へ¥むかふ。¥つひに¥めんぼく−なく/して、¥また¥みやこ/へ¥かへり−のぼり、¥からき¥いのち¥いき/つつ、¥いなり/の¥へん/なる¥ところ/に、¥かすか/なる¥てい/にて¥すまひ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥きそ¥さいこく/へ¥ししや/を¥たて/て、¥いそぎ¥のぼら/せ¥たまへ、¥ひとつ/に¥なつ/て¥くわんとう/へ¥はせ−くだり、¥ひやうゑ/の−すけ¥うつ/べき¥よし、¥いひ−つかはし/たり/けれ/ば、¥おほい=との/を¥はじめ¥たてまつ/て、¥いちもん/の¥ひとびと/は¥みな¥よろこば/れ/けれ/ども、¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥いけん/に¥まうさ/れ/ける/は、「¥たとひ¥よ¥すゑ/に¥なつ/て¥さふらへ/ば/とて、¥きそ/なんど/に¥かたらは/れ/て、¥いかで/か¥みやこ/へ¥のぼら/せ¥たまふ/べき。¥じふぜん−ていわう、¥さんじゆ/の−しんき/を¥たいし/て、¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥かぶと/を¥ぬぎ¥ゆみ/の¥つる/を¥はづい/て、¥これ/へ¥かうにん/に¥まゐれ/と¥まうさ/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥おほい=との¥その¥やう/を¥おん=ぺんじ¥あり/しか/ども、¥きそ¥もちひ¥たてまつら/ず。P114¥にふだう/の−まつ=どの−てんが、¥きそ/を¥めし/て、¥きよもり=こう/は¥あくぎやうにん/たり/しか/ども、¥きたい/の¥ぜんごん/を¥し−おい/たれ/ば/に/や、¥よ/を/ば¥おだしう¥にじふ−よ−ねん/まで¥たもち/たん/なり。¥あくぎやう/ばかり/にて¥よ/を¥をさむる¥こと/は¥なき/ものを、¥させる¥ゆゑ¥なう/て¥おし−こめ¥たてまつ/たる¥ひとびと/の¥くわんど=ども、¥みな¥ゆるす/べき¥よし¥おほせ/けれ/ば、¥ひたすら¥あらえびす/の¥やう/なれ/ども、¥したがひ¥たてまつ/て、¥おし−こめ¥たてまつ/たる¥ひとびと/の¥くわんど=ども、¥みな¥ゆるし¥たてまつる。¥まつ=どの/の¥おん=こ¥もろいへ=こう、¥その−とき/は¥いまだ¥じゆ−にゐ/の−ちうなごん/にて¥ましまし/ける/を、¥きそ/が¥はからひ/にて、¥だいじん−せつしやう/に¥なし¥たてまつる。¥をりふし¥だいじん¥あか/ざり/けれ/ば、¥とくだいじ=どの、¥その−ころ/は¥ないだいじん/の−さだいしやう/にて¥ましまし/ける/を、¥かり¥たてまつ/て、¥だいじん−せつしやう/に¥なし¥たてまつる。¥いつしか¥ひと/の¥くち/なれ/ば、¥しん−せつしやう=どの/を/ば¥かるの−だいじん/と/ぞ¥まうし/ける。¥おなじき−じふにんぐわつ−とをかのひ、¥ほふわう/を/ば¥ごでう−だいり/を¥いだし¥たてまつ/て、¥だいぜん/の−だいぶ−なりただ/が、¥しゆくしよ、¥ろくでう−にし/の−とうゐん/へ¥ご=かう¥なし¥たてまつる。¥おなじき−じふさんにち、¥さいまつ/の¥み=しほ¥はじめ/らる。¥その−ひ¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥きそ/が¥はからひ/にて、¥ひとびと/の¥くわん−かかい、¥おもふ¥さま/に¥なし−おき/てげり。¥へいけ/は¥さいこく/に、¥ひやうゑ/の−すけ/は¥とうごく/に、¥きそ/は¥みやこ/に¥はり−おこなふ。¥ぜんかん¥ごかん/の¥あひだ、¥わうもう/が¥よ/を¥うつ−とつ/て、¥じふはちねん¥をさめ/たり/し/が/ごとし。¥しはう/の¥せきぜき¥みな¥とぢ/たれ/ば、¥おほやけ/の¥みつぎもの/を/も¥たてまつら/ず、¥わたくし/の¥ねんぐ/も¥のぼら/ね/ば、¥きやう−ぢう/の¥じやうげ、¥ただ¥せうすゐ/の¥うを/に¥こと/なら/ず。¥あぶな/ながら/に¥とし¥くれ/て、¥じゆえい/も¥みとせ/に¥なり/に/けり。P115¥

平家物語 巻第九  総かな版(元和九年本)
「こでうはい」(『いけずきのさた』)S0901¥じゆえい−さんねん−しやうぐわつ−ひとひのひ、¥ゐん/の−ごしよ/は¥だいぜん/の−だいぶ−なりただ/が¥しゆくしよ、¥ろくでう−にし/の−とうゐん/なり/けれ/ば、¥ごしよ/の¥てい¥しかる/べから/ず/とて、¥ゐん/の¥はいらい/も¥おこなは/れ/ず。¥ゐん/の¥はいらい¥なかり/けれ/ば、¥だいり/の¥こでうはい/も¥おこなは/れ/ず。¥へいけ/は¥さぬきの−くに¥やしま/の−いそ/に¥おくり−むかへ/て、¥とし/の¥はじめ/なれ/ども、¥ぐわんにち¥ぐわんざん/の¥ぎしき¥こと¥よろしから/ず。¥しゆしやう¥わたら/せ¥たまへ/ども、¥せちゑ/も¥おこなは/れ/ず、¥しはうはい/も¥なし。¥はらか/も¥そうせ/ず、¥よしの/の−くず/も¥まゐら/ず。「¥よ¥みだれ/たり/しか/ども、¥みやこ/にて/は¥さすが¥かく/は¥なかり/し/ものを」/と/ぞ、¥おのおの¥のたまひ−あは/れ/ける。¥せいやう/の¥はる/も¥き/たり、¥うら¥ふく¥かぜ/も¥やはらか/に、¥ひかげ/も¥のどか/に¥なり−ゆけ/ど、¥ただ¥へいけ/の¥ひとびと/は、¥いつも¥こほり/に¥とぢ−こめ/られ/たる¥ここち−し/て、¥かんくてう/に¥こと/なら/ず。¥とうがん¥せいがん/の¥やなぎ¥ちそく/を¥まじへ、¥なんし¥ほくし/の¥うめ、¥かいらく¥すでに¥こと/に/して、¥はな/の¥あした¥つき/の¥よ、¥しいか−くわんげん、¥まり、¥こゆみ、¥あふぎ−あはせ、P116¥ゑ−あはせ、¥くさ−づくし、¥むし−づくし、¥さまざま¥きよう¥あり/し¥こと=ども¥おもひ−いで、¥かたり−つづけ/て、¥ながき¥ひ/を¥くらし−かね¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥
「うぢがは」¥おなじき−しやうぐわつ−じふいちにち、¥きその−さま/の−かみ−よしなか¥ゐんざん−し/て、¥へいけ−つゐたう/の¥ため/に、¥さいこく/へ¥はつかう−す/べき¥よし/を¥そうもん−す。¥おなじき−じふさんにち、¥すでに¥かどいで−す/と¥きこえ/しか/ば、¥かまくら/の−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥きそ/が¥らうぜき¥しづめ/ん/とて、¥のりより¥よしつね/を¥さき/と/して、¥すまんぎ/の¥ぐんびやう/を¥さし−のぼせ/られ/ける/が、¥すでに¥みのの−くに、¥いせの−くに/に/も¥つく/と¥きこえ/しか/ば、¥きそ¥おほき/に¥おどろき、¥うぢ−せた/の−はし/を¥ひい/て、¥ぐんびやう=ども/を/も¥わかち−つかはす。¥をりふし¥せい/こそ¥なかりけれ。¥まづ¥せた/の−はし/へ/は、¥おほて/なれ/ば/とて、¥いまゐの−しらう−かねひら、¥はつぴやく−よ−き/にて¥さし−つかはす。¥うぢばし/へ/は、¥にしな、¥たかなし、¥やまだの−じらう、¥ごひやく−よ−き/で¥つかはし/けり。¥いもあらひ/へ/は、¥をぢ/の¥しだの−さぶらう−せんじやう−よしのり、¥さんびやく−よ−き/で¥むかひ/けり。¥さる−ほど/に¥とうごく/より¥せめ−のぼる¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥かまの−おん=ざうし−のりより、¥からめで/の¥たいしやうぐん/に/は、¥くらう−おん=ざうし−よしつね、¥むねと/の¥だいみやう¥さんじふ−よ−にん、¥つがふ¥その¥せい¥ろくまん−よ−き/と/ぞ¥きこえ/し。¥その−ころ¥かまくら=どの/に/は、¥いけずき、¥するすみ/とて、¥きこゆる¥めいば¥あり/けり。¥いけずき/を/ばP117¥かぢはら−げんだ−かげすゑ¥しきり/に¥しよまう¥まうし/けれ/ども、「¥これ/は¥しぜん/の¥こと/の¥あら/ん¥とき、¥よりとも/が¥もののぐ−し/て¥のる/べき¥むま/なり¥これ/も¥おとら/ぬ¥めいば/ぞ」/とて、¥かぢはら/に/は¥するすみ/を/こそ¥たう/でげれ。¥その−のち¥あふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ささき−しらう/の¥おん=いとま¥まうし/に¥まゐら/れ/たる/に、¥かまくら=どの¥いかが¥おぼしめさ/れ/けん。「¥しよまう/の¥もの/は¥いくら/も¥あり/けれ/ども、¥その¥むね¥ぞんぢ−せよ」/とて、¥いけずき/を/ば¥ささき/に¥たぶ。¥ささき¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥こんど¥この¥お=むま/にて、¥うぢがは/の¥まつさき¥わたし¥さふらふ/べし。¥もし¥しに/たり/と¥きこしめさ/れ¥さふらは/ば、¥ひと/に¥さき/を¥せ/られ/てげり/と、¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/べし。¥いまだ¥いき/たり/と¥きこしめさ/れ¥さふらは/ば、¥さだめて¥せんぢん/を/ば、¥たかつな/ぞ¥し/つ/らん/ものを/と、¥おぼしめさ/れ¥さふらへ」/とて、¥おん=まへ/を¥まかり−たつ。¥さんくわい−し/たる¥だいみやう−せうみやう、「¥あつぱれ¥くわうりやう/の¥まうしやう/かな」/と/ぞ、¥ひとびと¥ささやき−あは/れ/ける。¥おのおの¥かまくら/を¥たつ/て、¥あしがら/を¥へ/て¥ゆく/も¥あり、¥はこね/に¥かかる¥せい/も¥あり、¥おもひおもひ/に¥のぼる/ほど/に、¥するがの−くに¥うきしま/が−はら/にて、¥かぢはら−げんだ−かげすゑ、¥たかき¥ところ/に¥うち−あがり、¥しばらく¥ひかへ/て、¥おほく/の¥むま=ども/を¥み/ける/に、¥おもひおもひ/の¥くら¥おか/せ、¥いろいろ/の¥しりがい¥かけ、¥あるひは¥のりくち/に¥ひか/せ、¥あるひは¥もろくち/に¥ひか/せ、¥いくせんまん/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず、¥ひき−とほし−ひき−とほし¥し/ける¥なか/に/も、¥かげすゑ/が¥たまはつ/たる¥するすみ/に¥まさる¥むま/こそ¥なかりけれ/と、¥うれしう¥おもひ/て¥みる¥ところ/に、¥ここに¥いけずき/と¥おぼしき¥むま/こそ¥いつき¥いで−き/たれ。¥きんぶくりん/の−くら¥おか/せ、¥こぶさ/の¥しりがい¥かけ、¥しろぐつわ¥はげ、¥しろあわ¥かませ/て、¥とねり¥あまたP118つい/たり/けれ/ども、¥なほ¥ひき/も¥ため/ず、¥をどら/せ/て/こそ¥いで−き/たれ。¥かぢはら¥うち−よつ/て、「¥これ/は¥た/が¥お=むま/ぞ」。「¥ささき=どの/の¥お=むま¥ざふらふ」/と¥まうす。「¥ささき/は¥さぶらう=どの/か¥しらう=どの/か」。「¥しらう=どの/の¥お=むま¥ざふらふ」/とて¥ひき−とほす。¥かぢはら、「¥やすから/ぬ¥こと/なり。¥おなじ¥やう/に¥めし−つかは/るる¥かげすゑ/を、¥ささき/に¥おぼしめし−かへ/られ/ける¥こと/こそ、¥ゐこん/の¥しだい/なれ。¥こんど¥みやこ/へ¥のぼり、¥きそ=どの/の¥み=うち/に、¥し−てんわう/と¥きこゆる¥いまゐ、¥ひぐち、¥たて、¥ねのゐ/と¥くん/で¥しぬる/か、¥しから/ず/は、¥さいこく/へ¥むかつ/て、¥いち−にん−たうぜん/と¥きこゆる¥へいけ/の¥さぶらひ=ども/と¥いくさ−し/て、¥しな/ん/と/こそ¥おもひ/し/に、¥この¥ご=きしよく/で/は、¥それ/も¥せん−なし。¥せんずる−ところ、¥ここ/にて¥ささき/を¥まち−うけ、¥ひつ−くみ、¥さし−ちがへ¥よき¥さぶらひ¥ににん¥しん/で、¥かまくら=どの/に¥そん¥とら/せ¥たてまつら/ん」/と、¥つぶやい/て/こそ¥まち−かけ/たれ。¥ささき¥なにごころ/も¥なう¥あゆま/せ/て¥いで−き/たり。¥かぢはら¥おし−ならべ/て/や¥くむ、¥むかうざま/に¥あて/や¥おとす/べき/と¥おもひ/ける/が、¥まづ¥ことば/を/ぞ¥かけ/ける。「¥いか/に¥ささき=どの/は、¥いけずき¥たまはら/せ¥たまひ/て¥のぼら/せ¥たまふ/な」/と¥いひ/けれ/ば、¥ささき、¥あつぱれ、¥この¥じん/も、¥ないない¥しよまう¥まうし/つる/と¥きき/し/ものを/と¥おもひ、「¥さ¥さふらへ/ば、¥こんど¥この¥おん=だいじ/に¥まかり−のぼり¥さふらふ/が、¥さだめて¥うぢ−せた/の−はし/を/や¥ひき/たる/らん。¥のつ/て¥かは/を¥わたす/べき¥むま/は¥なし。¥いけずき/を¥まうさ/ばや/と/は¥ぞんじ/つれ/ども、¥ご=へん/の¥まうさ/せ¥たまふ/だに、¥おん=ゆるされ¥なき/と¥うけたまはつ/て、¥まして¥たかつな/など/が¥まうす/とも、¥よも¥たまはら/じ/と¥おもひ、¥ごにち/に¥いか/なる¥ご=かんだう/も¥あら/ば¥あれ/と¥ぞんじ/つつ、¥あかつき¥たた/ん/とて/の¥よ、¥とねり/にP119¥こころ/を¥あはせ/て、¥さ/しも¥ご=ひざう/の¥いけずき/を、¥ぬすみ−すまし/て、¥のぼり¥さう/は¥いか/に、¥かぢはら=どの」/と¥いひ/けれ/ば、¥かぢはら¥この¥ことば/に¥はら/が¥ゐ/て、「¥ねつたい、¥さら/ば¥かげすゑ/も¥ぬすむ/べかり/ける/ものを」/とて、¥どつと¥わらう/て/ぞ¥のき/に/ける。¥
(『うぢがはのせんぢん』)S0902¥ささき−しらう/の¥たまはら/れ/たり/ける¥お=むま/は、¥くろくりげ/なる¥むま/の、¥きはめて¥ふとう¥たくましき/が、¥むま/を/も¥ひと/を/も、¥あたり/を¥はらつ/て¥くひ/けれ/ば、¥いけずき/と/は¥つけ/られ/たり。¥やき/の¥むま/と/ぞ¥きこえ/し。¥かぢはら/が¥たまはつ/たり/ける¥お=むま/も、¥きはめて¥ふとう¥たくましき/が、¥まことに¥くろかり/けれ/ば、¥するすみ/と/は¥つけ/られ/たり¥いづれ/も¥おとら/ぬ¥めいば/なり。¥さる−ほど/に¥とうごく/より¥せめ−のぼる¥おほて¥からめで/の¥ぐんびやう、¥をはりの−くに/より¥ふたて/に¥わかつ/て¥せめ−のぼる。¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥かまの−おん=ざうし−のりより、¥あひ−ともなふ¥ひとびと、¥たけだの−たらう、¥かがみの−じらう、¥いちでうの−じらう、¥いたがきの−さぶらう、¥いなげの−さぶらう、¥はんがへの−しらう、¥くまがへの−じらう、¥ゐのまたの−こへいろく/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥さんまんごせん−よ−き、¥あふみの−くに¥のぢ¥しのはら/に/ぞ¥ぢん/を¥とる。¥からめで/の¥たいしやうぐん/に/は、¥くらう−おん=ざうし−よしつね、¥おなじく¥ともなふ¥ひとびと、¥やすだの−さぶらう、¥おほうちの−たらう、¥はたけやまの−しやうじ−じらう、¥かぢはら−げんだ、¥ささき−しらう、¥かすやの−とうだ、¥しぶやの−むま/の−じよう、¥ひらやまの−むしやどころ/を¥さき/と/して¥つがふ¥その¥せい¥にまんごせん−よ−き、¥いがの−くに/を¥へ/て、¥うぢばし/の¥つめ/に/ぞ¥おし−よせ/たる。¥うぢ/も¥せた/も¥はし/を¥ひき、¥みづ/の¥そこ/に/は¥らんぐひ¥うつ/て¥おほづな¥はり、¥さかもぎ¥つない/で¥ながし−かけ/たり。¥ころ/は¥むつき−はつか−あまり/の¥こと/なれ/ば、¥ひら/の−たかね、¥しが/の−やま、¥むかし/ながら/の¥ゆき/も¥きえ、P120¥たにだに/の¥こほり¥うち−とけ/て、¥みづ/は¥をりふし¥まさり/たり。¥はくらう¥おびたたしう¥みなぎり−おち、¥せまくら¥おほき/に¥たき¥なつ/て、¥さかまく¥みづ/も¥はやかり/けり。¥よ/は¥すでに¥ほのぼの/と¥あけ−ゆけ/ど、¥かはぎり¥ふかく¥たち−こめ/て、¥むま/の¥け/も、¥よろひ/の¥け/も¥さだか/なら/ず。¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし、¥かは/の¥はた/に¥うち−いで、¥みづ/の¥おもて/を¥み−わたい/て、¥ひとびと/の¥こころ/を¥み/ん/と/や¥おもは/れ/けん、「¥よど¥いもあらひ/へ/や¥むかふ/べき、¥また¥かはちぢ/へ/や¥まはる/べき。¥みづ/の¥おちあし/を/や¥まつ/べき、¥いかが−せ/ん」/と¥のたまふ¥ところ/に、¥ここ/に¥むさしの−くに/の¥ぢうにん¥はたけやまの−しやうじ−じらう−しげただ、¥しやうねん¥にじふいち/に¥なり/ける/が¥すすみ−いで/て、「¥この¥かは/の¥ご=さた/は、¥かまくら/にて/も¥よくよく¥さふらひ/し/ぞ/かし。¥かねても¥しろしめさ/れ/ぬ¥うみ¥かは/の、¥にはか/に¥いで−き/て/も¥さふらは/ば/こそ。¥あふみ/の¥みづうみ/の¥すゑ/なれ/ば、¥まつ/とも¥まつ/とも¥みづ¥ひ/まじ。¥はし/を/ば¥また¥たれ/か¥わたい/て¥まゐらす/べき。¥さんぬる¥じしよう/の−かつせん/に、¥あしかがの−またたらう−ただつな/が、¥しやうねん¥じふしちさい/にて¥わたし/ける/も、¥おにがみ/にて/は¥よも¥あら/じ。¥しげただ¥まづ¥せぶみ¥つかまつら/ん」/とて、¥たん/の−たう/を¥むね/と/して、¥ごひやく−よ−き¥ひしひし/と¥くつばみ/を¥ならぶる¥ところ/に、¥ここ/に¥びやうどうゐん/の¥うしとら、¥たちばな/の¥こじま/が−さき/より、¥むしや¥にき¥ひつ−かけ−ひつ−かけ¥いで−き/たり。¥いつき/は¥かぢはら−げんだ−かげすゑ、¥いつき/は¥ささき−しらう−たかつな/なり。¥ひとめ/に/は¥なに/と/も¥みえ/ざり/けれ/ども、¥ないない¥さき/に¥こころ/を¥かけ/たる/らん、¥かぢはら/は¥ささき/に¥いつたん/ばかり/ぞ¥すすん/だる。¥ささき、「¥いか/に¥かぢはら=どの、¥この¥かは/は¥さいこくいち/の¥たいが/ぞ/や。¥はるび/の¥のび/て¥みえ¥さう/ぞ。¥しめ¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥かぢはら¥さ/も¥ある/らん/と/や¥おもひ/けん、¥たづな/を¥むま/の¥ゆがみ/に¥すて、¥さう/の¥あぶみ/をP121¥ふみ−すかし、¥はるび/を¥とい/て/ぞ¥しめ/たり/ける。¥ささき、¥その¥ま/に、¥そこ/を¥つと¥はせ−ぬい/て、¥かは/へ¥ざつと/ぞ¥うち−いれ/たる。¥かぢはら¥たばから/れ/ぬ/と/や¥おもひ/けん、¥やがて¥つづい/て¥うち−いれ/たり。¥かぢはら、「¥いか/に¥ささき=どの、¥かうみやう−せ/う/とて¥ふかく−し¥たまふ/な。¥みづ/の¥そこ/に/は¥おほづな¥ある/らん、¥こころ−え¥たまへ」/と¥いひ/けれ/ば、¥ささき¥さ/も¥ある/らん/と/や¥おもひ/けん、¥たち/を¥ぬい/て、¥むま/の¥あし/に¥かかり/ける¥おほづな=ども/を¥ふつふつ/と¥うち−きり−うち−きり、¥うぢがは¥はやし/と¥いへ/ども、¥いけずき/と¥いふ¥よいち/の¥むま/に/は¥のつ/たり/けり。¥いちもんじ/に¥ざつと¥わたい/て、¥むかふ/の¥きし/に/ぞ¥うち−あげ/たる。¥かぢはら/が¥のつ/たり/ける¥するすみ/は¥かはなか/より¥のためがた/に¥おし−ながさ/れ、¥はるか/の¥しも/より¥うち−あげ/たり。¥その−のち¥ささき¥あぶみ¥ふんばり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て「¥うだの−てんわう/に¥くだい/の¥こういん、¥あふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ささき−さぶらう−ひでよし/が¥しなん、¥ささき−しらう−たかつな、¥うぢがは/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥はたけやま¥ごひやく−よ−き¥うち−いれ/て¥わたす。¥むかひ/の¥きし/より¥やまだの−じらう/が¥はなつ¥や/に、¥はたけやま¥むま/の¥ひたひ/を¥のぶか/に¥い/させ、¥はぬれ/ば、¥ゆんづゑ/を¥つい/て¥おり−たつ/たり。¥いはなみ−かぶと/の¥てさき/へ¥ざつと¥おし−かけ/けれ/ども、¥はたけやま¥これ/を¥こと/と/も¥せ/ず、¥みづ/の¥そこ/を¥くぐつ/て、¥むかひ/の¥きし/に/ぞ¥つき/に/ける。¥うち−あがら/ん/と¥する¥ところ/に、¥うしろ/より¥もの/こそ¥むず/と¥ひかへ/たれ。「¥た/そ」/と¥とへ/ば、「¥しげちか」/と¥こたふ。「¥おほぐし/か」。「¥さん−ざふらふ」。¥おほぐしの−じらう/は、¥はたけやま/が¥ため/に/は、¥ゑぼしご/にて/ぞ¥さふらひ/ける。「¥あまり/に¥みづ/が¥はやう/て、¥むま/を/ば¥かはなか/よりP122¥おし−ながさ/れ¥さふらひ/ぬ。¥ちから¥およば/で¥これ/まで¥つき¥まゐつ/て¥さふらふ」/と¥いひ/けれ/ば、¥はたけやま、「¥いつも¥わ=どの=ばら/が¥やう/なる¥もの/は、¥しげただ/に/こそ¥たすけ/られ/んずれ」/と¥いふ¥まま、¥おほぐし/を¥つかん/で¥きし/の¥うへ/へ/ぞ¥なげ−あげ/たる。¥なげ−あげ/られ/て、¥ただ¥なほり、¥たち/を¥ぬい/て¥ひたひ/に¥あて、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥おほぐしの−じらう−しげちか、¥うぢがは/の¥かちだち/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥かたき/も¥み=かた/も¥これ/を¥きい/て、¥いちど/に¥どつと/ぞ¥わらひ/ける。¥その−のち¥はたけやま¥のりがへ/に¥のつ/て、¥をめい/て¥かく。¥ここ/に¥ぎよりようの−ひたたれ/に、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら/を¥おい/て、¥のつ/たり/ける¥むしや¥いつき、¥まつさき/に¥すすん/だる/を、¥はたけやま、「¥ここ/に¥かくる/は¥いか/なる¥もの/ぞ、¥なのれ/や」/と¥いひ/けれ/ば、「¥これ/は¥きそ=どの/の¥いへのこ/に、¥ながせの−はんぐわんだい−しげつな」/と¥なのる。¥はたけやま、¥けふ/の¥いくさがみ¥いはは/ん/とて、¥おし−ならべ/て¥むず/と¥くん/で¥ひき−おとし、¥わが¥のつ/たり/ける¥くら/の¥まへわ/に¥おし−つけ、¥ちつと/も¥はたらか/さ/ず、¥くび¥ねぢ−きつ/て、¥ほんだの−じらう/が¥くら/の¥とつつけ/に/こそ¥つけ/させ/けれ。¥これ/を¥はじめ/て、¥うぢばし¥かため/たり/ける¥つはもの=ども、¥しばし¥ささへ/て¥ふせぎ−たたかふ/と¥いへ/ども、¥とうごく/の¥おほぜい¥みな¥わたい/て¥せめ/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず、¥こはたやま、¥ふしみ/を¥さし/て/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥せた/を/ば¥いなげの−さぶらう−しげなり/が¥はからひ/にて、¥たなかみ/の−ぐご/の−せ/を/こそ¥わたし/けれ。P123
「かはらがつせん」(『かはらがつせん』)S0903¥いくさ¥やぶれ/に/けれ/ば、¥くらう−おん=ざうし−よしつね、¥ひきやく/を¥もつて¥かまくら=どの/へ、¥かつせん/の¥しだい/を¥くはしう¥しるい/て¥まうさ/れ/けり。¥かまくら=どの、¥まづ¥お=つかひ/に、「¥ささき/は¥いか/に」/と¥おん=たづね¥あり/けれ/ば、「¥うぢがは/の¥まつさき¥ざふらふ」/と¥まうす。¥さて¥につき/を¥ひらい/て¥み¥たまへ/ば、「¥うぢがは/の¥せんぢん、¥ささき−しらう−たかつな、¥にぢん、¥かぢはら−げんだ−かげすゑ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥うぢ¥せた¥やぶれ/ぬ/と¥きこえ/しか/ば、¥きそ/は¥さいご/の¥いとま¥まうさ/ん/とて、¥ゐん/の−ごしよ−ろくでう=どの/へ¥はせ−まゐる。¥きそ¥もんぜん/まで¥まゐり/たり/しか/ども、¥さして¥そうす/べき¥むね/も¥なく/して、¥とつ/て¥かへし、¥ろくでう−たかくら/なる¥ところ/に、¥はじめて¥み−そめ/たり/ける¥にようばう/の¥あり/けれ/ば、¥そこ/に¥うち−よつ/て、¥さいご/の¥なごり¥をしま/ん/とて、¥とみ/に¥いで/も¥やら/ざり/けり。¥ここ/に¥いま−まゐり−し/たり/ける¥ゑちごの−ちうだ−いへみつ/と¥いふ¥もの¥あり。「¥おん=かたき¥すでに¥かはら/まで¥せめ−いつ/て¥さふらふ/に、¥なん/とて¥さやう/に¥うち−とけ/て/は¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん。¥ただいま¥いぬじに−せ/させ¥たまひ¥さふらひ/な/んず。¥とうとう¥おん=いで¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ども、¥なほ¥いで/も¥やら/ざり/けれ/ば、「¥さ¥さふらは/ば、¥いへみつ/は¥まづ¥さきだち¥まゐらせ/て、¥しで/の−やま/にて/こそ¥まち¥まゐらせ¥さふらは/め」/とて、¥はら¥かき−きつ/て/ぞ¥しに/に/ける。¥きそ、「¥これ/はP124¥われ/を¥すすむる¥じがい/に/こそ」/とて、¥やがて¥うつ−たち¥たまひ/けり。¥ここ/に¥かうづけの−くに/の¥ぢうにん、¥なはの−たらう−ひろずみ/を¥さき/と/して、¥その¥せい¥ひやくき/ばかり/に/は¥すぎ/ざり/けり。¥ろうでう¥かはら/に¥うち−いで/て¥みれ/ば、¥とうごく/の¥せい/と¥おぼしく/て、¥まづ¥さんじつき/ばかり/で¥いで−き/たる。¥その¥なか/より¥むしや¥にき¥さき/に¥すすん/だり。¥いつき/は¥しほのやの−ごらう−これひろ、¥いつき/は¥てしがはらの−ごさぶらう−ありなほ/なり。¥しほのや/が¥まうし/ける/は、「¥ごぢん/の¥せい/を/や¥まつ/べき」。¥また¥てしがはら/が¥まうし/ける/は、「¥いちぢん¥やぶれ/ぬれ/ば¥ざんたう¥まつたから/ず。¥ただ¥かけよ/や」/とて、¥をめい/て¥かく。¥きそ/は¥けふ/を¥さいご/と¥たたかへ/ば、¥とうごく/の¥おほぜい、¥きそ/を¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥いくさ/を/ば¥ぐんびやう=ども/に¥せ/させ、¥わが−み/は、¥ゐん/の−ごしよ/の¥おぼつかなき/に、¥しゆご−し¥たてまつら/ん/とて、¥ひた−かぶと¥ごろくき、¥ゐん/の−ごしよ−ろくでう=どの/へ¥はせ−まゐる。¥ごしよ/に/は、¥だいぜん/の−だいぶ−なりただ、¥ごしよ/の¥ひんがし/の¥ついがき/の¥うへ/に¥のぼり−あがつ/て、¥わななく−わななく¥み−わたせ/ば、¥ぶし¥ごろくき¥のけ−かぶと/に¥たたかひ−なつ/て、¥いむけ/の¥そで¥はるかぜ/に¥ふき−なびか/させ、¥しらはた¥ざつと¥さし−あげ、¥くろけぶり¥け−たて/て¥はせ−まゐる。¥なりただ、「¥あな¥あさまし、¥きそ/が¥また¥まゐり¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥ゐん−ぢう/の¥くぎやう−てんじやうびと、¥かたへ/の¥にようばう=たち/に¥いたる/まで、¥こんど/ぞ¥よ/の¥うせはて/とて、¥て/を¥にぎり、¥たて/ぬ¥ぐわん/も¥ましまさ/ず。¥なりただ¥かさね/て¥そうもん−し/ける/は、「¥けふ¥はじめて¥みやこ/へ¥いる¥とうごく/の¥ぶし/と¥おぼえ¥さふらふ。¥いかさま/に/も¥みな¥かさじるし/が¥かはつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/も¥はて/ぬ/に、¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥もんぜん/にて¥むま/よりP125
おり、¥もん/を¥たたか/せ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥かまくら/の−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも/が¥おとと、¥くらう−よしつね/こそ、¥うぢ/の−て/を¥せめ−やぶつ/て、¥この¥ごしよ¥しゆご/の¥ため/に¥はせ−まゐつ/て¥さふらへ。¥あけ/て¥いれ/させ¥たまへ」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥なりただ¥あまり/の¥うれし−さ/に、¥いそぎ¥ついがき/の¥うへ/より¥をどり−おるる/とて、¥こし/を¥つき−そんじ/たり/けれ/ども、¥いた−さ/は¥うれし−さ/に¥まぎれ/て¥おぼえ/ず、¥はふはふ¥ごしよ/へ¥まゐつ/て、¥この¥よし¥そうもん−し/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、¥もん/を¥あけ/させ/て/ぞ¥いれ/られ/ける。¥よしつね¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥むらさき−すそご/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ/の¥とりうち/の¥もと/を、¥かみ/を¥ひろ−さ¥いつすん/ばかり/に¥きつ/て、¥ひだりまき/に¥まい/たる。¥これ/ぞ¥けふ/の¥たいしやうぐん/の¥しるし/と/は¥みえ/し。¥ほふわう、¥ちうもん/の¥れんじ/より¥えいらん¥あつ/て、「¥ゆゆし=げ/なる¥もの=ども/かな。¥みな¥なのら/せよ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥まづ¥たいしやうぐん−くらう−よしつね、¥つぎに¥やすだの−さぶらう−よしさだ、¥はたけやまの−しやうじ−じらう−しげただ、¥かぢはら−げんだ−かげすゑ、¥ささき−しらう−たかつな、¥しぶやの−むま/の−じよう−しげすけ/と/ぞ¥なのつ/たれ。¥よしつね¥ぐし/て¥ぶし/は¥ろくにん、¥よろひ/は¥いろいろ¥かはつ/たり/けれ/ども、¥つらだましひ¥ことがら、¥いづれ/も¥おとら/ず。¥なりただ¥おほせ¥うけたまはつ/て、¥よしつね/を¥おほ−ゆか/の¥きは/へ¥めし/て、¥かつせん/の¥しだい/を¥くはしう¥おん=たづね¥あり。¥よしつね¥かしこまつ/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥かまくら/の−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥きそ/が¥らうぜき¥しづめ/ん/とて、¥のりより¥よしつね/を¥さき/と/して、¥つがふ¥ろくまん−よ−き/を¥さし−のぼせ¥さふらふ/が、¥のりより/は¥せた/より¥まゐり¥さふらへ/ども、¥いまだ¥いつき/も¥みえ¥さふらは/ず。P126¥よしつね/は¥うぢ/の−て/を¥せめ−やぶつ/て、¥この¥ごしよ¥しゆご/の¥ため/に¥はせ−さんじ/て¥さふらへ。¥きそ/は¥かはら/を¥のぼり/に¥おち¥さふらひ/つる/を、¥ぐんびやう=ども/を¥もつて¥おは/せ¥さふらひ/つる/が、¥いま/は¥さだめて¥うつ−とり¥さふらひ/な/んず」/と、¥いと¥こと/も¥な=げ/に/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥ほふわう¥おほき/に¥ぎよ=かん¥あつ/て、「¥また¥きそ/が¥よたう/など¥まゐつ/て、¥らうぜき/も/ぞ¥つかまつる。¥なんぢ/は¥この¥ごしよ¥よくよく¥しゆご¥つかまつれ」/と¥おほせ/けれ/ば、¥かしこまり−うけたまはつ/て、¥しはう/の¥もん/を¥かため/て¥まつ/ほど/に、¥つはもの=ども¥はせ−あつまつ/て、¥ほど−なく¥いちまん−よ−き/ばかり/に¥なり/に/けり。¥きそ/は¥しぜん/の¥こと¥あら/ば、¥ほふわう¥とり¥たてまつ/て、¥さいこく/へ¥おち−くだり、¥へいけ/と¥ひとつ/に¥なら/ん/とて、¥りきしや¥にじふにん¥そろへ/て¥もつ/たり/けれ/ども、¥ごしよ/に/は¥また¥くらう−よしつね¥まゐつ/て、¥きびしう¥しゆご−し¥たてまつる/と¥きい/て、¥いま/は¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥かはら/を¥のぼり/に¥おち−ゆき/ける/が、¥ろくでうかはら/と¥さんでうかはら/の¥あひだ/にて、¥すでに¥うつ−とら/れ/ん/と¥する¥こと¥どど/に¥およぶ。¥きそ¥なみだ/を¥ながい/て、「¥かく¥ある/べし/と/も¥ごし/たり/せ/ば、¥いまゐ/を¥せた/へ/は¥やら/ざら/まし。¥えうせう¥ちくば/の¥むかし/より、¥しな/ば¥いつしよ/で¥しな/ん/と/こそ¥ちぎり/しか。¥いま/は¥ところどころ/で¥うた/れ/ん¥こと/こそ¥かなしけれ。¥さり/ながら、¥いま−いちど¥いまゐ/が¥ゆくへ/を¥きか/ん」/とて、¥かはら/を¥のぼり/に¥かくる/ほど/に、¥ろくでうかはら/と¥さんでうかはら/の¥あひだ/にて、¥かたき¥おそひ−かかれ/ば、¥とつ/て¥かへし¥とつ/て¥かへし、¥きそ¥わづか/なる¥こぜい/にて、¥うんか/の/ごとく/なる¥かたき/の¥おほぜい/を、¥ごろくど/まで¥おひ−かへし、¥かもかは¥ざつと¥うち−わたり、¥あはたぐち、¥まつざか/に/も¥かかり/けり。¥きよねん¥しなの/を¥いで/し/に/は、¥ごまん−よ−き/と¥きこえ/し/が、¥けふ¥しのみやがはら/をP127¥すぐる/に/は、¥しゆじう¥しちき/に¥なり/に/けり。¥まして¥ちうう/の¥たび/の¥そら、¥おもひ−やら/れ/て¥あはれ/なり。
「きそさいご」(『きそのさいご』)S0904¥きそ/は¥しなの/を¥いで/し/より、¥ともゑ、¥やまぶき/とて¥ににん/の¥びぢよ/を¥ぐせ/られ/たり。¥やまぶき/は¥いたはり¥あつ/て¥みやこ/に¥とどまり/ぬ。¥なか/に/も¥ともゑ/は¥いろ¥しろう¥かみ¥ながく、¥ようがん¥まことに¥びれい/なり。¥くつきやう/の¥あらむまのり/の、¥あくしよおとし、¥ゆみ−や¥うちもの¥とつ/て/は、¥いか/なる¥おに/に/も¥かみ/に/も¥あふ/と¥いふ、¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/なり。¥され/ば¥いくさ/と¥いふ¥とき/は、¥さね¥よき¥よろひ¥き/せ、¥つよゆみ、¥おほ−だち¥もた/せ/て、¥いつぱう/の¥たいしやう/に¥むけ/られ/ける/に、¥どど/の¥かうみやう、¥かた/を¥ならぶる¥もの¥なし。¥され/ば¥こんど/も¥おほく/の¥もの¥おち−うせ、¥うた/れ/ける¥なか/に、¥しちき/が¥うち/まで/も、¥ともゑ/は¥うた/れ/ざり/けり。¥きそ/は¥ながさか/を¥へ/て、¥たんばぢ/へ/と/も¥きこゆ。¥りうげごえ/に¥かかつ/て、¥また¥ほくこく/へ/と/も¥きこえ/けり。¥かかり/しか/ども、¥いまゐ/が¥ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/に、¥とつ/て¥かへし/て、¥せた/の¥かた/へ/ぞ¥おち−ゆき¥たまふ。¥いまゐの−しらう−かねひら/も、¥はつびやく−よ−き/にて¥せた/を¥かため/たり/ける/が、¥ごじつき/ばかり/に¥うち−なさ/れ、¥はた/を/ば¥まか/せ/て¥もた/せ/つつ、¥しゆ/の¥ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/にP128、¥みやこ/の¥かた/へ¥のぼる/ほど/に、¥おほつ/の¥うちで/の−はま/にて、¥きそ=どの/に¥ゆき−あひ¥たてまつる。¥なか−いつちやう/ばかり/より、¥たがひ/に¥それ/と¥み−しつ/て、¥しゆじう¥こま/を¥はやめ/て¥より−あひ/たり。¥きそ=どの、¥いまゐ/が¥て/を¥とつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥よしなか¥ろくでうかはら/にて、¥いか/に/も−なる/べかり/しか/ども、¥なんぢ/が¥ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/に、¥おほく/の¥かたき/に¥うしろ/を¥みせ/て、¥これ/まで¥のがれ/たる/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥いまゐの−しらう、「¥ご=ぢやう¥まことに¥かたじけなう¥さふらふ。¥かねひら/も¥せた/にて¥うちじに¥つかまつる/べう¥さふらひ/しか/ども、¥おん=ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/に、¥これ/まで¥のがれ−まゐつ/て¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥きそ=どの、「¥さて/は¥ちぎり/は¥いまだ¥くちせ/ざり/けり。¥よしなか/が¥せい、¥さんりん/に¥はせ−ちつ/て、¥この¥へん/に/も¥ひかへ/たる/らん/ぞ。¥なんぢ/が¥はた¥あげ/させよ」/と¥のたまへ/ば、¥まい/て¥もた/せ/たる¥いまゐ/が¥はた¥さし−あげ/たり。¥これ/を¥み−つけ/て、¥きやう/より¥おつる¥せい/と/も¥なく、¥また¥せた/より¥まゐる¥もの/と/も¥なく、¥はせ−あつまつ/て、¥ほど−なく¥さんびやくき/ばかり/に¥なり¥たまひ/ぬ。¥きそ=どの¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび/て、「¥この¥せい/にて/は¥さいご/の¥いくさ、¥ひといくさ¥など/か¥せ/ざる/べき。¥あれ/に¥しぐらう/て¥みゆる/は、¥た/が¥て/やらん」。「¥かひ/の¥いちでうの−じらう=どの/の¥おん=て/と/こそ¥うけたまはつ/て¥さふらへ」。「¥せい¥いか/ほど¥ある/らん」。「¥ろくせん−よ−き/と¥きこえ¥さふらふ」。「¥さて/は¥たがひ/に¥よい¥かたき、¥おなじう¥しぬる/とも、¥おほぜい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥よい¥かたき/に¥あう/て/こそ¥うちじに/を/も¥せ/め」/とて、¥まつさき/に/ぞ¥すすみ¥たまふ。¥きそ=どの¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥あかぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥からあや−をどし/の−よろひ¥き/て、¥いかもの−づくり/の−たち/を¥はき、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥にじふし¥さい/たる¥いしうち/の−や/の、P129¥その−ひ/の¥いくさ/に¥い/て、¥せうせう¥のこつ/たる/を、¥かしらだか/に¥おひ−なし、¥しげどう/の−ゆみ/の¥まんなか¥とつ/て、¥きこゆる¥きそ/の¥おにあしげ/と¥いふ¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら/を¥おい/て¥のつ/たり/ける/が、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥ひごろ/は¥きき/けん/ものを、¥きその−くわんじや、¥いま/は¥みる/らん、¥さま/の−かみ−けん−いよの−かみ−あさひ/の−しやうぐん−みなもとの−よしなか/ぞ/や。¥かひ/の¥いちでうの−じらう/と/こそ¥きけ。¥よしなか¥うつ/て、¥ひやうゑ/の−すけ/に¥みせよ/や」/とて¥をめい/て¥かく。¥いちでうの−じらう¥これ/を¥きい/て、「¥ただいま¥なのる/は、¥たいしやうぐん/ぞ/や。¥あます/な¥もの=ども、¥もらす/な¥わかたう、¥うて/や」/とて、¥おほぜい/の¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥きそ¥さんびやく−よ−き、¥ろくせん−よ−き/が¥なか/へ¥かけ−いり、¥たてさま¥よこさま、¥くもで¥じふもんじ/に¥かけ−わつ/て、¥うしろ/へ¥つと¥いで/たれ/ば、¥ごじつき/ばかり/に¥なり/けり。¥そこ/を¥やぶつ/て¥ゆく/ほど/に、¥とひの−じらう−さねひら、¥にせん−よ−き/で¥ささへ/たり。¥そこ/を/も¥やぶつ/て¥ゆく/ほど/に、¥あそこ/にて/は¥しごひやくき、¥ここ/にて/は¥にさんびやくき、¥ひやくしごじつき、¥ひやくき/ばかり/が¥なか/を、¥かけ−わり−かけ−わり¥ゆく/ほど/に、¥しゆじう¥ごき/に/ぞ¥なり/に/ける。¥ごき/が¥うち/まで/も、¥ともゑ/は¥うた/れ/ざり/けり。¥きそ=どの¥ともゑ/を¥めし/て、「¥おのれ/は¥をんな/なれ/ば、¥これ/より¥とうとう¥いづち/へ/も¥おち−ゆけ。¥よしなか/は¥うちじに/を¥せ/んずる/なり。¥もし¥ひとで/に¥かから/ず/は、¥じがい/を¥せ/んずれ/ば、¥よしなか/が¥さいご/の¥いくさ/に、¥をんな/を¥ぐし/たり/など¥いは/れ/ん¥こと、¥くちをしかる/べし」/と¥のたまへ/ども、¥なほ¥おち/も¥ゆか/ざり/ける/が、¥あまり/に¥つよう¥いは/れ¥たてまつ/て、「¥あつぱれ¥よから/う¥かたき/の¥いで−こよ/かし。¥きそ=どの/に¥さいご/の¥いくさ−し/て¥みせ¥たてまつら/ん」/とて、P130
ひかへ/て¥かたき/を¥まつ¥ところ/に、¥ここに¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥おんだの−はちらう−もろしげ/と¥いふ¥だい−ぢから/の¥かう/の−もの、¥さんじつき/ばかり/で¥いで−き/たる。¥ともゑ¥その¥なか/へ¥わつ/て¥いり、¥まづ¥おんだの−はちらう/に¥おし−ならべ、¥むず/と¥くん/で¥ひき−おとし、¥わが¥のつ/たり/ける¥くら/の¥まへわ/に¥おし−つけ/て、¥ちつと/も¥はたらか/さ/ず、¥くび¥ねぢ−きつ/て¥すて/てんげり。¥その−のち¥もののぐ¥ぬぎ−すて、¥とうごく/の¥かた/へ/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥てづかの−たらう¥うちじに−す。¥てづかの−べつたう¥おち/に/けり。¥きそ=どの¥いまゐの−しらう¥ただ¥しゆじう¥にき/に¥なつ/て¥のたまひ/ける/は、「¥ひごろ/は¥なに/と/も¥おぼえ/ぬ¥よろひ/が、¥けふ/は¥おもう¥なつ/たる/ぞ/や」/と¥のたまへ/ば、¥いまゐの−しらう¥まうし/ける/は、「¥おん=み/も¥いまだ¥つかれ/させ¥たまひ¥さふらは/ず、¥お=むま/も¥よわり¥さふらは/ず。¥なに/に¥よつ/て¥いちりやう/の¥おん=きせなが/を、¥にはか/に¥おもう/は¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/べき。¥それ/は¥み=かた/に¥つづく¥せい/が¥さふらは/ね/ば、¥おくびやう/で/こそ¥さ/は¥おぼしめし¥さふらふ/らめ。¥かねひら¥いつき/を/ば、¥よ/の¥むしや¥せんぎ/と¥おぼしめし¥さふらふ/べし。¥ここ/に¥い−のこし/たる¥や¥ななつ¥やつ¥さふらへ/ば、¥しばらく¥ふせぎ−や¥つかまつり¥さふらは/ん。¥あれ/に¥みえ¥さふらふ/は、¥あはづ/の−まつばら/と¥まうし¥さふらふ。¥きみ/は¥あの¥まつ/の¥なか/へ¥いら/せ¥たまひ/て、¥しづか/に¥ご=じがい¥さふらへ」/とて、¥うつ/て¥ゆく/ほど/に、¥また¥あらて/の¥むしや¥ごじつき/ばかり/で¥いで−き/たる。「¥かねひら/は¥この¥おん=かたき¥しばらく¥ふせぎ¥まゐらせ¥さふらふ/べし。¥きみ/は¥あの¥まつ/の¥なか/へ¥いら/せ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥よしなか、「¥ろくでうかはら/にて、¥いか/に/も−なる/べかり/しか/ども、¥なんぢ/と¥いつしよ/で¥いか/に/も−なら/ん¥ため/に/こそ、¥おほく/の¥かたき/に¥うしろ/を¥みせ/て、¥これ/まで¥のがれ/たん/なれ。¥ところどころ/で¥うた/れ/ん/より、¥いつしよ/で/こそ¥うちじに/を/も¥せ/め」/とて、¥むま/の¥はな/を¥ならべ/てP131、¥すでに¥かけ/ん/と¥し¥たまへ/ば、¥いまゐの−しらう、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥しゆ/の¥むま/の¥みづつき/に¥とり−つき、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥ゆみ−や−とり/は、¥としごろ−ひごろ¥いか/なる¥かうみやう¥さふらへ/ども、¥さいご/に¥ふかく−し/ぬれ/ば、¥ながき¥きず/にて¥さふらふ/なり。¥おん=み/も¥つかれ/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥お=むま/も¥よわつ/て¥さふらふ。¥いふ−かひ−なき¥ひと/の¥らうどう/に¥くみ−おとさ/れ/て、¥うた/れ/させ¥たまひ¥さふらひ/な/ば、¥さ/しも¥につぽんごく/に¥おにがみ/と¥きこえ/させ¥たまひ/つる¥きそ=どの/を/ば、¥なにがし/が¥らうどう/の¥て/に¥かけ/て、¥うち¥たてまつ/たり/な/ん/ぞ¥まうさ/れ/ん¥こと、¥くちをしかる/べし。¥ただ¥り/を¥まげ/て、¥あの¥まつ/の¥なか/へ¥いら/せ¥たまへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥きそ=どの、¥さら/ば/とて、¥ただ¥いつき¥あはづ/の−まつばら/へ/ぞ¥かけ¥たまふ。¥いまゐの−しらう¥とつ/て¥かへし、¥ごじつき/ばかり/が¥せい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥とほから/ん¥もの/は¥おと/に/も¥きけ、¥ちかから/ん¥ひと/は¥め/に/も¥み¥たまへ。¥きそ=どの/の¥めのとご/に、¥いまゐの−しらう−かねひら/とて、¥しやうねん¥さんじふさん/に¥まかり−なる。¥さる−もの¥あり/と/は、¥かまくら=どの/まで/も¥しろしめさ/れ/たる/らん/ぞ。¥かねひら¥うつ/て¥ひやうゑ/の−すけ=どの/の¥おん=げんざん/に¥いれよ/や」/とて、¥い−のこし/たる¥やすぢ/の¥や/を、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥いる。¥ししやう/は¥しら/ず、¥やにはに¥かたき¥はちき¥い−おとし、¥その−のち¥たち/を¥ぬい/て¥きつ/て¥まはる/に、¥おもて/を¥あはする¥もの/ぞ¥なき。¥ただ、「¥い−とれ/や¥い−とれ」/とて、¥さしつめ−ひきつめ、¥さんざん/に¥い/けれ/ども、¥よろひ¥よけれ/ば¥うら¥かか/ず、¥あきま/を¥い/ね/ば¥て/も¥おは/ず。¥きそ=どの/は¥ただ¥いつき、¥あはづ/の−まつばら/へ¥かけ¥たまふ。¥ころ/は¥しやうぐわつ−にじふいちにち、¥いりあひ/ばかり/のP132¥こと/なる/に、¥うすごほり/は¥はつ/たり/けり。¥ふかた¥あり/と/も¥しら/ず/して、¥むま/を¥ざつと¥うち−いれ/たれ/ば、¥むま/の¥かしら/も¥みえ/ざり/けり。¥あふれ/ども¥あふれ/ども、¥うて/ども¥うて/ども¥はたらか/ず。¥かかり/しか/ども¥いまゐ/が¥ゆくへ/の¥おぼつかな−さ/に、¥ふり−あふのぎ¥たまふ¥ところ/を、¥さがみの−くに/の¥ぢうにん、¥みうら/の−いしだの−じらう−ためひさ¥おつ−かかり、¥よつぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥きそ=どの¥うち−かぶと/を¥い/させ、¥いたで/なれ/ば、¥かぶと/の¥まつかふ/を¥むま/の¥かしら/に¥おし−あて/て¥うつぶし¥たまふ¥ところ/を、¥いしだ/が¥らうどう¥ににん¥おち−あひ/て、¥すでに¥おん=くび/を/ば¥たまはり/けり。¥やがて¥くび/を/ば¥たち/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥この¥ひごろ¥につぽんこく/に¥おにがみ/と¥きこえ/させ¥たまひ/つる¥きそ=どの/を/ば、¥みうら/の−いしだの−じらう−ためひさ/が、¥うち¥たてまつる/ぞ/や」/と¥なのり/けれ/ば、¥いまゐの−しらう/は¥いくさ−し/ける/が、¥これ/を¥きい/て、「¥いま/は¥たれ/を¥かばは/ん/とて、¥いくさ/を/ば¥す/べき。¥これ¥み¥たまへ、¥とうごく/の¥との=ばら、¥につぽん−いち/の¥かう/の−もの/の¥じがい−する¥てほん/よ」/とて、¥たち/の¥きつさき/を¥くち/に¥ふくみ、¥むま/より¥さかさま/に¥とび−おち、¥つらぬかつ/て/ぞ¥うせ/に/ける。¥
「ひぐちのきられ」(『ひぐちのきられ』)S0905¥いまゐ/が¥あに/の¥ひぐちの−じらう−かねみつ/は、¥じふらう−くらんど¥うた/ん/とて、¥その¥せい¥ごひやく−よ−き/で、¥かはちの−くにP133¥ながの/の−じやう/へ¥こえ/たり/ける/が、¥そこ/にて/は¥うち−もらし/ぬ。¥きの−くに¥なぐさ/に¥あり/と¥きい/て、¥やがて¥つづい/て¥よせ/たり/ける/が、¥みやこ/に¥いくさ¥あり/と¥きい/て、¥とつ/て¥かへし/て¥のぼる/ほど/に、¥よど/の−おほ−わたり/の−はし/にて、¥いまゐ/が¥げにん/に¥ゆき−あう/たり。「¥これ/は¥され/ば、¥いづち/へ/とて¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん。¥みやこ/に/は¥いくさ¥いで−き/て、¥きみ¥うた/れ/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥いまゐ=どの/も¥おん=じがい¥さふらふ」/と¥いひ/けれ/ば、¥ひぐちの−じらう、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥これ¥きき¥たまへ¥との=ばら、¥きみ/に¥おん=こころざし¥おもひ¥まゐらせ/ん¥ひとびと/は、¥これ/より¥とうとう¥いづち/へ/も¥おち−ゆき、¥いか/なら/ん¥こつじき−づだ/の−ぎやう/を/も¥し/て、¥きみ/の¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐら/させ¥たまへ。¥かねみつ/は¥みやこ/へ¥のぼり¥うちじに−し/て、¥めいど/にて/も、¥きみ/の¥おん=げんざん/に¥いり、¥いまゐ/を/も¥いま−いちど¥み/ばや/と¥おもふ¥ため/なり」/とて、¥うつ/て¥ゆく/ほど/に、¥ごひやく−よ−き/の¥せい=ども、¥あそこ−ここ/に¥ひかへ−ひかへ¥おち−ゆく/ほど/に、¥とば/の¥みなみ/の¥もん/を¥すぐる/に/は、¥その¥せい¥わづか/に¥にじふ−よ−き/に/ぞ¥なり/に/ける。¥ひぐちの−じらう、¥けふ¥すでに¥みやこ/へ¥いる/と¥きこえ/しか/ば、¥たう/も¥かうけ/も、¥しちでう¥しゆしやか、¥つくりみち、¥よつづか/へ¥はせ−むかふ。¥ひぐち/が¥て/に、¥ちのの−たらう−みつひろ/と¥いふ¥もの¥あり。¥よつづか/に¥いくら/も¥あり/ける¥せい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ、「¥この¥せい/の¥なか/に、¥かひ/の¥いちでうの−じらう=どの¥おん=て/の¥ひと/や¥まします」/と¥とひ/けれ/ば、「¥いちでうの−じらう/が¥て/で¥ない/は、¥いくさ/を/ば¥せ/ぬ/か。¥たれ/に/も¥あへ/かし」/とて、¥どつと¥わらふ。¥わらは/れ/て¥なのり/ける/は、「¥かう¥まうす¥もの/は、¥しなのの−くに¥すは/の−かみのみや/の¥ぢうにん、¥ちのの−たいふ−みついへ/がP134¥こ/に、¥ちのの−たらう−みつひろ/と¥いふ¥もの/なり。¥かならず¥いちでうの−じらう=どの/の¥おん=て/の¥ひと/を¥たづぬる/に/は¥あら/ず。¥おとと/の¥しちらう¥それ/に¥あり。¥こ=ども¥ににん¥しなのの−くに/に¥おい/たる/が、¥あつぱれ¥わが¥ちち/は、¥よう/て/や¥しん/だる/らん、¥あしう/て/や¥しん/だる/らん/と、¥なげか/んずる¥ところ/に、¥おとと/の¥しちらう/が¥まへ/にて¥うちじに−し/て、¥こ=ども/に¥たしか/に¥きか/せ/ん/と¥おもふ¥ため/なり。¥かたき/を/ば¥きらふ/まじ」/とて、¥あれ/に¥はせ−あひ、¥これ/に¥はせ−あひ、¥むしや¥さんき¥きつ/て¥おとし、¥しにん/に¥あたる¥かたき/に¥おし−ならべ、¥むずと¥くん/で¥どうど¥おち、¥さし−ちがへ/て/ぞ¥しに/に/ける。¥ひぐちの−じらう/は¥こだま−たう/に¥むすぼほれ/たり/けれ/ば、¥こだま/の¥ひと=ども¥より−あひ/て、「¥そもそも¥ゆみ−や−とり/の、¥われ/も¥ひと/も¥ひろなか/へ¥いる/と¥いふ/は、¥しぜん/の¥とき¥ひとまづ/の¥いき/を/も¥つぎ、¥しばし/の¥いのち/を/も¥いか/う/ど¥おもふ¥ため/なり。¥され/ば¥ひぐち/が¥われ=ら/に¥むすぼほれ/けん/も、¥さ/こそ¥あり/けめ。¥いのち/ばかり/を¥たすけ/ん」/とて、¥ひぐち/が¥もと/へ¥ししや/を¥たて/て、「¥きそ=どの/の¥み=うち/に、¥いまゐ、¥ひぐち、¥たて、¥ねのゐ/と¥きこえ/させ¥たまひ/て¥さふらへ/ども、¥きそ=どの¥うた/れ/させ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥いまゐ=どの/も¥おん=じがい¥さふらふ¥うへ/は、¥なにか¥くるしう¥さふらふ/べき。¥われ=ら/が¥なか/へ¥かうにん/に¥なり¥たまへ。¥こんど/の¥くんこう/の¥しやう/に¥まうし−かへ/て、¥おん=いのち/ばかり/を/ば、¥たすけ¥たてまつら/ん」/と¥いひ−おくつ/たり/けれ/ば、¥ひぐちの−じらう/は¥きこゆる¥つはもの/なり/しか/ども、¥うん/や¥つき/に/けん、¥おめおめと¥こだま−たう/の¥なか/へ、¥かうにん/に/こそ¥なり/に/けれ。¥たいしやうぐん−のりより¥よしつね/に¥この¥よし/を¥まうす。¥ゐん/へ¥うかがひ¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ゐん−ぢう/の¥くぎやう−てんじやうびと、P135¥
つぼね/の¥にようばう、¥め/の−わらは/に¥いたる/まで、「¥きそ/が¥ほふぢうじ=どの/へ¥よせ/て、¥ごしよ/に¥ひ/を¥かけ¥やき−ほろぼし、¥おほく/の¥かうそう¥きそう/を¥うしなひ/たり/し/に/は、¥あそこ/に/も¥ここ/に/も、¥いまゐ、¥ひぐち/と¥いふ¥こゑ/のみ/こそ¥あり/しか。¥これ=ら/を¥たすけ/られ/ん/は、¥むげ/に¥くちをしかる/べし」/と、¥くちぐち/に¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥かなは/ず/して、¥また¥しざい/に/ぞ¥さだめ/られ/ける。¥おなじき−にじふににち、¥しん−せつしやう=どの¥とどめ/られ/させ¥たまひ/て、¥もと/の¥せつしやう¥くわんちやく−し¥たまふ。¥わづか¥ろくじふにち/の¥うち/に¥かへ/られ/させ¥たまひ/ぬれ/ば、¥いまだ¥み−はて/ぬ¥ゆめ/の/ごとし。¥むかし¥あはた/の−くわんばく/は¥よろこび−まうし/の¥のち、¥ただ¥しちかにち/だに¥あり/し/ぞ/かし。¥これ/は¥ろくじふにち/と/は¥まうせ/ども、¥その¥あひだ/に¥せちゑ/も¥ぢもく/も¥おこなは/れ/ぬれ/ば、¥おもひで¥なき/に¥あら/ず。¥おなじき−にじふしにち、¥きその−さま/の−かみ、¥よたう¥ごにん/が¥くび¥みやこ/へ¥いつ/て、¥おほぢ/を¥わたさ/る。¥ひぐちの−じらう/は¥かうにん/たり/し/が、¥しきり/に¥くび/の¥とも¥せ/ん/と¥まうし/けれ/ば、¥さら/ば/とて¥あゐずり/の−ひたたれ、¥たて−ゑぼし/にて/ぞ¥わたさ/れ/ける。¥あくる¥にじふごにち、¥ひぐちの−じらう¥つひに¥きら/れ/に/けり。¥のりより¥よしつね、¥さまざま/に¥まうさ/れ/けれ/ども、¥いまゐ、¥ひぐち、¥たて、¥ねのゐ/とて、¥きそ/が¥し−てんわう/の¥その¥いつ/なれ/ば、¥これ=ら/を¥たすけ/られ/ん/は、¥やうこ/の−うれへ¥ある/べし/と、¥こと/に¥さた¥あつ/て¥きら/れ/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥つて/に¥きく、¥こらう/の−くに¥おとろへ/て、¥しよこう¥はち/の/ごとく/に¥おこつ/し¥とき、¥はいこう¥さき/に¥かんやうきう/へ¥いる/と¥いへ/ども、¥かうう/が¥のち/に¥き/たら/ん¥こと/を¥おそれ/て、¥さい/は¥びじん/を/も¥をかさ/ず、¥きんぎん¥しゆぎよく/を/も¥かすめ/ず、¥いたづら/に¥かんこく/の−せき/を¥まもつ/て、¥ぜんぜん/に¥かたき/を¥ほろぼし/て、¥てんが/を¥ぢするP136¥こと/を¥え/たり/き。¥され/ば¥いま/の¥きその−さま/の−かみ/も、¥まづ¥みやこ/へ¥いる/と¥いへ/ども、¥よりともの−あそん/の¥めい/に¥したがは/ましか/ば、¥かの¥はいこう/が¥はかりごと/に/は¥おとら/ざら/まし。¥さる−ほど/に¥へいけ/は¥こぞ/の¥ふゆ/の¥ころ/より、¥さぬきの−くに¥やしま/の−いそ/を¥いで/て、¥つの−くに¥なにはがた/に¥おし−わたり、¥にし/は¥いちのたに/を¥じやうくわく/に¥かまへ、¥ひんがし/は¥いくた/の−もり/を¥おほて/の¥きどぐち/と/ぞ¥さだめ/ける。¥その¥あひだ¥ふくはら、¥ひやうご、¥いたやど、¥すま/に¥こもる¥せい、¥せんやうだう¥はつ−か−こく、¥なんかいだう¥ろくかこく、¥つがふ¥じふしかこく/を¥うち−したがへ/て、¥めさ/るる¥ところ/の¥ぐんびやう、¥じふまん−よ−き/と/ぞ¥きこえ/し。¥いちのたに/は¥きた/は¥やま、¥みなみ/は¥うみ、¥くち/は¥せばく/て¥おく¥ひろし。¥きし¥たかく/して¥びやうぶ/を¥たて/たる/に¥こと/なら/ず。¥きた/の¥やまぎは/より、¥みなみ/の¥うみ/の¥とほあさ/まで、¥たいせき/を¥かさね−あげ、¥おほぎ/を¥きつ/て¥さかもぎ/に¥ひき、¥ふかき¥ところ/に/は¥おほ−ふね=ども/を¥そばだて/て、¥かいだて/に¥かき、¥じやう/の¥おもて/の¥たかやぐら/に/は、¥しこく−ちんぜい/の¥つはもの=ども、¥かつちう¥きうせん/を¥たいし/て、¥うんか/の/ごとく/に¥なみ−ゐ/たり。¥やぐら/の¥まへ/に/は、¥くらおきむま=ども、¥とへ¥はたへ/に¥ひつ−たて/たり。¥つねに¥たいこ/を¥うつ/て¥らんじやう−す。¥いつちやう/の¥ゆみ/の¥いきほひ/は、¥はんげつ¥むね/の¥まへ/に¥かかり、¥さんじやく/の¥けん/の¥ひかり/は、¥あき/の¥しも¥こし/の¥あひだ/に¥よこだへ/たり。¥たかき¥ところ/に/は¥あかはた¥おほく¥うつ−たて/たれ/ば、¥はるかぜ/に¥ふか/れ/て、¥てん/に¥ひるがへる/は、¥ただ¥くわえん/の¥もえ−あがる/に¥こと/なら/ず。P137
「ろくかどかつせん」(『ろくかどのいくさ』)S0906¥さる−ほど/に¥へいけ¥いちのたに/へ¥わたり¥たまひ/て¥のち/は、¥しこく/の¥もの=ども¥いつかう¥したがひ¥たてまつら/ず、¥なか/に/も¥あは¥さぬき/の¥ざいちやう=ら、¥みな¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥こころ/を¥かよはし/ける/が、¥さすが¥きのふ¥けふ/まで、¥へいけ/に¥したがひ¥たてまつ/たる¥み/の、¥けふ¥はじめて¥げんじ/へ¥まゐり/たり/とも、¥よも¥もちひ¥たまは/じ。¥へいけ/に¥や¥ひとつ¥い−かけ¥たてまつ/て、¥それ/を¥おもて/に/して¥まゐら/ん/とて、¥かどわきの−へい−ぢうなごん−のりもり、¥ゑちぜんの−さんみ−みちもり、¥のとの−かみ−のりつね¥ふし¥さん−にん、¥びぜんの−くに¥しもつゐ/に¥まします/と¥きい/て、¥ひやうせん¥じふ−よ−そう/で/ぞ¥よせ/たり/ける。¥のと=どの¥おほき/に¥いかつ/て、「¥きのふ¥けふ/まで、¥われ=ら/が¥むま/の¥くさ¥きつ/たる¥やつ=ばら/が、¥いつしか¥ちぎり/を¥へんずる/に/こそ¥あん/なれ。¥その¥ぎ/なら/ば、¥いち−にん/も¥もらさ/ず¥うて/や」/とて、¥こ−ぶね=ども¥おし−うかべ/て¥おは/れ/けれ/ば、¥しこく/の¥もの=ども、¥ひとめ/ばかり/に/や¥ひとつ¥い/て、¥のか/ん/と/こそ¥おもひ/し/に、¥のと=どの/に¥あまり/に¥て−いたう¥せめ/られ¥たてまつ/て、¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥とほまけ/に/して¥ひき−しりぞき、¥あはぢの−くに¥ふくら/の−とまり/に¥つき/に/けり。¥その¥くに/に¥げんじ¥ににん¥あり/と¥きこえ/けり。¥こ=ろくでうの−はんぐわん−ためよし/が¥ばつし、¥かもの−くわんじや−よしつぎ、¥あはぢの−くわんじや−よしひさ/と¥きこえ/し/を、¥たいしやう/に¥たのう/で、¥じやうくわく/を¥かまへ/て¥まつ¥ところ/に、¥のと=どの¥おし−よせ/て、¥さんざん/に¥せめ¥たまへ/ば、P138¥
かもの−くわんじや¥うちじに−す。¥あはぢの−くわんじや/は¥いたで¥おう/て、¥いけどり/に/こそ¥せ/られ/けれ。¥のこり−とどまつ/て¥ふせぎ−や¥い/ける¥もの=ども、¥にひやくさんじふ−よ−にん/が¥くび¥きり−かけ/させ、¥うつて/の¥けうみやう¥しるい/て、¥ふくはら/へ/こそ¥まゐらせ/られ/けれ。¥それ/より¥かどわき=どの/は、¥いちのたに/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥しそく=たち/は、¥いよ/の¥かはのの−しらう/が¥めせ/ども¥まゐら/ぬ/を¥せめ/ん/とて、¥しこく/へ/ぞ¥わたら/れ/ける。¥あに¥ゑちぜんの−さんみ−みちもりの−きやう/は、¥あはの−くに¥はなぞの/の−じやう/に/ぞ¥つき¥たまふ。¥おとと¥のとの−かみ−のりつね/は、¥さぬき/の¥やしま/に¥つき¥たまふ¥よし¥きこえ/しか/ば、¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥かはのの−しらう−みちのぶ/は、¥あきの−くに/の¥ぢうにん、¥ぬたの−じらう/は¥ははかた/の¥をぢ/なり/けれ/ば、¥ひとつ/に¥なら/ん/とて、¥あきの−くに/へ¥おし−わたる。¥のと=どの¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥やしま/を¥たつ/て¥おは/れ/ける/が、¥その−ひ/は¥びんごの−くに¥みのしま/と¥いふ¥ところ/に¥つい/て、¥つぎ/の−ひ¥ぬた/の−じやう/へ/ぞ¥よせ/られ/ける。¥ぬたの−じらう、¥かはのの−しらう¥ひとつ/に¥なつ/て、¥じやうくわく/を¥かまへ/て¥まつ¥ところ/に、¥のと=どの¥やがて¥おし−よせ/て、¥さんざん/に¥せめ¥たまへ/ば、¥ぬたの−じらう¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥かぶと/を¥ぬぎ¥ゆみ/の¥つる/を¥はづい/て¥かうにん/に¥まゐる。¥かはの/は¥なほ/も¥したがは/ず、¥その¥せい¥ごひやく−よ−き¥あり/ける/が、¥ごじつき/ばかり/に¥うち−なさ/れ、¥じやう/を¥おち/て¥ゆく¥ところ/に、¥ここ/に¥のと=どの/の¥さぶらひ/に、¥へいはち−びやうゑ−ためかず/と¥いふ¥もの、¥にひやくき/ばかり/が¥なか/に¥とり−こめ/られ、¥しゆじう¥しちき/に¥うち−なさ/れ、¥たすけ−ぶね/に¥のら/ん/とて、¥ほそみち/に¥かかつ/て¥みぎは/の¥かた/へ¥おち−ゆく¥ところ/を、¥へいはち−びやうゑ/が¥しそく、¥さぬきの−しちらう−よしのり、¥くつきやう/の¥ゆみ/の¥じやうず/なり/けれ/ば、¥おつ−かかり、¥よつびい/て、¥しちき/を¥ごき¥い−おとす。¥しゆじう¥にき/に/ぞ¥なり/に/ける。¥かはの/が¥み/に¥かへ/て¥おもひ/ける¥らうどう/に、¥さぬきの−しちらうP139¥おし−ならべ、¥むず/と¥くん/で、¥どうど¥おち、¥とつ/て¥おさへ/て、¥くび/を¥かか/ん/と¥する¥ところ/に、¥かはのの−しらう¥とつ/て¥かへし、¥わが¥らうどう/の¥うへ/なる¥さぬきの−しちらう/が¥くび¥かき−きつ/て¥ふかた/へ¥なげ−いれ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥かはのの−しらう−をちの−みちのぶ、¥しやうねん¥にじふいち、¥いくさ/を/ば¥かう/こそ¥すれ。¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥よつ/て¥とどめよ/や」/と¥なのり−すて/て、¥らうどう/を¥かた/に¥ひつ−かけ、¥そこ/を/ば¥なつく¥にげ−のび、¥いよの−くに/へ¥おし−わたる。¥のと=どの¥かはの/を/ば¥うち−もらさ/れ/たり/けれ/ども、¥ぬたの−じらう/が¥かうにん/たる/を¥めし−ぐし/て、¥いちのたに/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥また¥あはの−くに/の¥ぢうにん、¥あまの−ろくらう−ただかげ、¥これ/も¥へいけ/を¥そむい/て、¥げんじ/に¥こころ/を¥かよはし/ける/が、¥おほ−ぶね¥にそう/に¥ひやうらうまい¥つみ、¥もののぐ¥いれ、¥みやこ/を¥さし/て¥のぼり/ける/を、¥のと=どの¥ふくはら/にて、¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥こ−ぶね=ども¥おし−うかべ/て¥おは/れ/けれ/ば、¥にしのみや/の¥おき/にて、¥かへし−あはせ/て¥ふせぎ−たたかふ。¥のと=どの、「¥あます/な、¥もらす/な」/とて、¥さんざん/に¥せめ¥たまへ/ば、¥あまの−ろくらう¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥いづみの−くに¥ふけひ/の−うら/に¥たて−こもる。¥また¥きの−くに/の¥ぢうにん、¥そのべの−ひやうゑ−ただやす、¥これ/も¥へいけ/に¥こころよから/ざり/ける/が、¥あまの−ろくらう/が¥のと=どの/に¥て−いたう¥せめ/られ¥たてまつ/て、¥いづみの−くに¥ふけひ/の−うら/に¥あり/と¥きい/て、¥その¥せい¥ひやくき/ばかり/で、¥いづみの−くに/へ¥うち−こえ/て、¥あまの−ろくらう、¥そのべの−ひやうゑ¥ひとつ/に¥なつ/て、¥じやうくわく/を¥かまへ/て¥まつ¥ところ/に、¥のと=どの¥やがて¥おし−よせ/て、¥さんざん/に¥せめ¥たまへ/ば、¥あまの−ろくらう、¥そのべの−ひやうゑ¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥みがら/は¥にげ/て¥きやう/へ¥のぼる。¥のこり−とどまつ/て、¥ふせぎ−やP140¥い/ける¥つはもの=ども、¥ひやくさんじふ−よ−にん/が¥くび¥きつ/て、¥ふくはら/へ/こそ¥まゐら/れ/けれ。¥また¥ぶんごの−くに/の¥ぢうにん、¥うすきの−じらう−これたか、¥をがたの−さぶらう−これよし、¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥かはのの−しらう−みちのぶ¥ひとつ/に¥なつ/て、¥つがふ¥その¥せい¥にせん−よ−にん、¥こ−ぶね=ども/に¥とり−のつ/て、¥びぜんの−くに/へ¥おし−わたり、¥いまぎ/の−じやう/に¥たて−ごもる。¥のと=どの、¥ふくはら/にて、¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥やすから/ぬ¥こと/なり/とて、¥その¥せい¥さんぜん−よ−きで、¥びぜんの−くに/に¥はせ−くだり、¥いまぎ/の−じやう/を¥せめ¥たまふ。¥のと=どの、¥きやつ=ばら/は¥こはい¥おん=かたき/で¥さふらふ。¥かさね/て¥せい/を¥たまはる/べき¥よし¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥ふくはら/より¥すまんぎ/の¥ぐんびやう/を¥さし−むけ/らるる¥よし¥きこえ/しか/ば、¥じやう/の¥うち/の¥つはもの=ども、¥て/の−きは¥たたかひ、¥ぶんどり¥かうみやう−し¥きはめて、¥かたき/は¥たぜい/なり、¥み=かた/は¥こぜい/なり/けれ/ば、「¥とり−こめ/られ/て/は¥かなふ/まじ。¥ここ/を/ば¥おち/て、¥しばし/の¥いき/を¥つげ/や」/とて、¥うすきの−じらう−これたか、¥をがたの−さぶらう−これよし/は、¥ぶんごの−くに/へ¥おし−わたり、¥かはの/は¥いよ/へ/ぞ¥わたり/ける。¥のと=どの、¥いま/は¥せむ/べき¥かたき¥なし/とて、¥ふくはら/へ/こそ¥まゐら/れ/けれ。¥おほい=との¥いげ/の¥げつけい¥うんかく¥より−あひ¥たまひ/て、¥のと=どの/の¥まいど/の¥かうみやう/を/ぞ、¥かんじ−あは/れ/ける。¥
「みくさせいぞろへ」(『みくさせいぞろへ』)S0907¥おなじき−しやうぐわつ−にじふくにち、¥のりより¥よしつね¥ゐんざん−し/て、¥へいけ−つゐたう/の¥ため/に、¥さいこく/へ¥はつかう−す/べきP141¥よし/を¥そうもん−す。¥ほんてう/に/は、¥じんだい/より¥つたは/れ/る¥おん=たから¥みつ¥あり。¥しんし、¥ほうけん、¥ないしどころ¥これ/なり。¥ことゆゑ−なう¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつる/べき¥よし¥おほせ−くださ/る。¥りやうにん¥ていしやう/に¥かしこまり−うけたまはつ/て¥まかり−いづ。¥にんぐわつ−よつかのひ、¥ふくはら/に/は¥こ=にふだう−さうこく/の¥きにち/とて、¥ぶつじ¥かた/の/ごとく¥とげ−おこなは/る。¥あさゆふ/の¥いくさだち/に、¥すぎ−ゆく¥つきひ/は¥しら/ね/ども、¥こぞ/は¥ことし/に¥めぐり−き/て、¥うかり/し¥はる/に/も¥なり/に/けり。¥よ/の¥よ/にて¥あら/ましか/ば、¥いか/なる¥きりふ−たふば/の¥くはだて、¥くぶつ−せそう/の¥いとなみ/も、¥ある/べかり/しか/ども、¥ただ¥なんによ/の¥きんだち=たち¥さし−つどひ/て、¥なげき−かなしみ−あは/れ/けり。¥ふくはら/に/は、¥この¥ついで/に¥ぢもく¥おこなは/れ/て、¥そう/も¥ぞく/も¥みな¥つかさ¥なさ/れ/けり。¥なか/に/も¥かどわきの−へい−ぢうなごん−のりもりの−きやう/を/ば、¥じやう−にゐ/の−だいなごん/に¥あがり¥たまふ/べき¥よし、¥おほい=との/より¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥のりもりの−きやう、¥
けふ/まで/も¥あれ/ば¥ある/か/の¥わが−み/かは¥ゆめ/の¥うち/に/も¥ゆめ/を¥みる/かな W067
/と¥おん=ぺんじ¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥つひに¥だいなごん/に/は¥なり¥たまは/ず。¥だいげき−なかはらの−もろなほ/が¥こ、¥すはう/の−すけ−もろずみ¥だいげき/に¥なる。¥ひやうぶ/の−せう−まさあき、¥ごゐ/の−くらんど/に¥なさ/れ/て、¥くらんど/の−せう/と/ぞ¥めさ/れ/ける。¥むかし¥まさかど¥とう−はつ−か−こく/を¥うち−したがへ/て、¥しもふさの−くに¥さうま/の−こほり/に¥みやこ/を¥たて、¥わが−み/を¥へい−しんわう/と¥しようじ/て、¥ひやくくわん/を¥なし/たり/し/に/は、¥こよみ/の−はかせ/ぞ¥なかり/ける。¥これ/は¥それ/に/は¥にる/べから/ず。¥しゆしやう¥きうと/を/こそ¥いで/させ¥たまふ/と¥いへ/ども、¥さんじゆ/の−しんき/を¥たいし/て、¥ばんじよう/の−くらゐ/に¥そなはり¥たまへ/ば、¥じよゐ−ぢもく¥おこなは/れ/ん/も¥ひがごと/に/は¥あら/ず。P142¥へいじ¥すでに¥ふくはら/まで、¥せめ−のぼつ/たる¥よし¥きこえ/しか/ば、¥ふるさと/に¥のこり−とどまり¥たまふ¥ひとびと、¥みな¥いさみ−よろこび−あは/れ/けり。¥なか/に/も¥にゐ/の−そうづ−せんしん/は、¥かぢゐのみや/の¥としごろ/の¥ご=どうじゆく/にて¥おはし/けれ/ば、¥かぜ/の−たより/に/も¥まうさ/れ/けり。¥みや/より/も¥また¥おん=ふみ¥あり。「¥たび/の¥そら/の¥よそほひ、¥おん=こころ−ぐるしけれ/ども、¥みやこ/も¥いまだ¥しづまら/ず」/など、¥こまごま/と¥あそばい/て、¥おく/に/は¥いつしゆ/の¥うた/ぞ¥あり/ける。¥
ひと¥しれ/ず¥そなた/を¥しのぶ¥こころ/を/ば¥かたぶく¥つき/に¥たぐへ/て/ぞ¥やる W068¥
そうづ¥これ/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥かなしみ/の¥なみだ¥せき−あへ/ず。¥さる−ほど/に¥こまつの−さんみ/の−ちうじやう−これもりの−きやう/は、¥とし¥へだたり¥ひ¥かさなる/に¥したがつ/て、¥ふるさと/に¥とどめ−おき¥たまへ/る¥きたのかた、¥をさなき¥ひとびと/の¥こと/を/のみ¥なげき−かなしみ¥たまひ/けり。¥あきんど/の¥たより/に、¥ふみ/など/の¥かよふ/に/も、¥きたのかた/の¥みやこ/の¥おん=すまひ、¥こころ−ぐるしう¥きき¥たまひ/て、¥さら/ば¥これ/へ¥むかへ¥まゐらせ/て、¥いつしよ/で¥いか/に/も−なら/ばや/と/は¥おもは/れ/けれ/ども、¥わが−み/こそ¥あら/め、¥おん=ため¥いたはしく/て/など、¥おぼしめし−しづん/で、¥あかし−くらし¥たまふ/に/ぞ、¥せめて/の¥おん=こころざし/の¥ふか−さ/の¥ほど/は¥あらはれ/に/ける。¥にんぐわつ−よつかのひ、¥げんじ¥ふくはら/を¥せむ/べかり/しか/ども、¥こ=にふだう−しやうこく/の¥きにち/と¥きい/て、¥ぶつじ¥とげ/させ/ん/が¥ため/に、¥その−ひ/は¥よせ/ず。¥いつか/は¥にし¥ふさがり、¥むゆか/は¥だうこにち、¥なぬかのひ/の¥う/の−こく/に、¥いちのたに/の¥ひんがし¥にし/の¥きどぐち/にて、¥げんぺい¥や−あはせ/と/ぞ¥さだめ/ける。P143¥
され/ども¥よつか/は¥きちにち/なれ/ば/とて、¥おほて¥からめで/の¥ぐんびやう、¥ふたて/に¥わかつ/て¥せめ−くだる。¥おほて/の¥たいしやうぐん/に/は、¥かまの−おん=ざうし−のりより、¥あひ−ともなふ¥ひとびと、¥たけだの−たらう−のぶよし、¥かがみの−じらう−とほみつ、¥おなじき−こじらう−ながきよ、¥やまなの−じらう−のりよし、¥おなじき−さぶらう−よしゆき、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥かぢはら−へいざう−かげとき、¥ちやくし/の¥げんだ−かげすゑ、¥じなん¥へいじ−かげたか、¥おなじき−さぶらう−かげいへ、¥いなげの−さぶらう−しげなり、¥はんがへの−しらう−しげとも、¥おなじき−ごらう−ゆきしげ、¥をやまの−こしらう−ともまさ、¥なかぬまの−ごらう−むねまさ、¥ゆふきの−しちらう−ともみつ、¥さぬきの−しらう−だいふ−ひろつな、¥をのでらの−ぜんじ−たらう−みちつな、¥そがの−たらう−すけのぶ、¥なかむらの−たらう−ときつね、¥えどの−しらう−しげはる、¥たまのゐの−しらう−すけかげ、¥おほかはづの−たらう−ひろゆき、¥しやうの−さぶらう−ただいへ、¥おなじき−しらう−たかいへ、¥しやうだいの−はちらう−ゆきひら、¥くげの−じらう−しげみつ、¥かはらの−たらう−たかなほ、¥おなじき−じらう−もりなほ、¥ふぢたの−さぶらう−だいふ−ゆきやす/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥ごまん−よ−き、¥にんぐわつ−よつかのひ/の¥たつ/の−いつてん/に¥みやこ/を¥たつ/て、¥その−ひ/の¥さるとり/の−こく/に/は、¥つの−くに¥こやの/に¥ぢん/を/ぞ¥とつ/たり/ける。¥からめで/の¥たいしやうぐん/に/は、¥くらう−おん=ざうし−よしつね、¥おなじう¥ともなふ¥ひとびと、¥やすだの−さぶらう−よしさだ、¥おほうちの−たらう−これよし、¥むらかみの−はんぐわんだい−やすくに、¥たしろの−くわんじや−のぶつな、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥とひの−じらう−さねひら、¥しそく/の¥やたらう−とほひら、¥みうら/の−すけ−よしずみ、¥しそく/の¥へいろく−よしむら、¥はたけやまの−しやうじ−じらう−しげただ、¥おなじき−ながのの−さぶらう−しげきよ、¥さはらの−じふらう−よしつら、¥わだの−こたらう−よしもり、¥おなじき−じらう−よしもち、¥さぶらう−むねざね、¥ささき−しらう−たかつな、¥おなじき−ごらう−よしきよ、¥くまがへの−じらう−なほざね、¥しそく/の¥こじらう−なほいへ、P144¥ひらやまの−むしやどころ−すゑしげ、¥あまのの−じらう−なほつね、¥こがはの−じらう−すけよし、¥はらの−さぶらう−きよます、¥たたらの−ごらう−よしはる、¥その¥こ/の¥たらう−みつよし、¥わたりやなぎの−やごらう−きよただ、¥べつぷの−こたらう−きよしげ、¥かねこの−じふらう−いへただ、¥おなじき−よいち−ちかのり、¥げんぱち−ひろつな、¥かたをかの−たらう−つねはる、¥いせの−さぶらう−よしもり、¥あうしう/の¥さとう−さぶらう−つぎのぶ、¥おなじき−しらう−ただのぶ、¥えだの−げんざう、¥くまゐの−たらう、¥むさし−ばう−べんけい、¥これ=ら/を¥さき/と/して、¥つがふ¥その¥せい¥いちまん−よ−き、¥おなじ¥ひ/の¥おなじ¥とき/に¥みやこ/を¥たつ/て、¥たんばぢ/に¥かかり、¥ふつかぢ/を¥ひとひ/に¥うつ/て、¥たんば/と¥はりま/の¥さかひ/なる¥みくさ/の−やま/の¥ひんがし/の¥やまぐち、¥おのばら/に¥ぢん/を/ぞ¥とつ/たり/ける。¥
「みくさかつせん」(『みくさがつせん』)S0908¥へいけ/の¥かた/の¥たいしやうぐん/に/は、¥こまつの−しん−ざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥おなじき−せうしやう−ありもり、¥たんごの−じじう−ただふさ、¥びつちうの−かみ−もろもり、¥さぶらひ−だいしやう/に/は、¥いがの−へいないびやうゑ−きよいへ、¥えみの−じらう−もりかた/を¥さき/と/して、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き/で、¥みくさ/の−やま/の¥にし/の¥やまぐち/に¥おし−よせ/て¥ぢん/を¥とる。¥その¥よ/の¥いぬ/の−こく/ばかり/に、¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥さぶらひ−だいしやう−とひの−じらう−さねひら/を¥めし/て、「¥へいけ/は¥これ/より¥さんり¥へだて/て、¥みくさ/の−やま/の¥にし/の¥やまぐち/に、¥おほぜい/で¥ひかへ/たり。¥ようち/に/や¥す/べき、¥また¥あす/の¥いくさ/か」/と¥のたまへ/ば、¥たしろの−くわんじや¥すすみ−いで/て、P145「¥へいけ/の¥せい/は¥さんぜん−よ−き、¥み=かた/の¥おん=せい/は¥いちまん−よ−き、¥はるか/の¥り/に¥さふらふ。¥あす/の¥いくさ/と¥のべ/られ¥さふらひ/な/ば、¥へいけ/に¥せい¥つき¥さふらひ/な/んず。¥ようち¥よかん/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥とひの−じらう、「¥いしう/も¥まうさ/せ¥たまふ¥たしろ=どの/かな。¥たれ/も¥かう/こそ¥まうし/たう¥さふらひ/つれ。¥ようち¥よかん/ぬ/と¥おぼえ¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、¥つはもの=ども、「¥くら−さ/は¥くらし、¥いかが−せ/ん」/と¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、¥おん=ざうし、「¥れい/の¥おほ=だいまつ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥とひの−じらう、「¥さる−こと¥さふらふ」/とて、¥をのばら/の¥ざいけ/に¥ひ/を/ぞ¥かけ/たり/ける。¥これ/を¥はじめ/て、¥の/に/も¥やま/に/も、¥くさ/に/も¥き/に/も¥ひ/を¥かけ/たれ/ば、¥ひる/に/は¥ちつと/も¥おとら/ず/して、¥さんり/の¥やま/を/ぞ¥こえ−ゆき/ける。¥この¥たしろの−くわんじや/と¥まうす/は、¥ちち/は¥いづの−くに/の¥さきの−こくし、¥ちうなごん−ためつな/の¥ばつえふ/なり。¥はは/は¥かの/の−すけ−もちみつ/が¥むすめ/を¥おもう/て¥まうけ/たり/し/を、¥ははかた/の¥そぶ/に¥あづけ/て、¥ゆみ−や−とり/に/は¥したて/たん/なり。¥ぞくしやう/を¥たづぬれ/ば、¥ごさんでうのゐん/の¥だいさん/の¥わうじ、¥すけひとの−しんわう/に¥ごだい/の¥そん/なり。¥ぞくしやう/も¥よき¥うへ、¥ゆみ−や/を¥とつ/て/も¥よかり/けり。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥その¥よ、¥ようち/に¥せ/んずる/を/ば¥ゆめ/に/も¥しら/ず、「¥いくさ/は¥さだめて¥あす/の¥いくさ/にて/ぞ¥あら/んず/らん。¥いくさ/に/も¥ねぶたい/は¥だいじ/の¥もの/ぞ。¥よく¥ね/て¥いくさ−せよ¥もの=ども」/とて、¥せんぢん/は¥おのづから¥ようじん−し/けれ/ども、¥ごぢん/の¥つはもの=ども/は、¥あるひは¥かぶと/を¥まくら/に¥し、¥あるひは¥よろひ/の¥そで¥えびら/など/を¥まくら/と/して、¥ぜんご/も¥しら/ず/ぞ¥ふし/たり/ける。¥その¥よ/の¥やはん/ばかり、¥げんじ¥いちまん−よ−き、¥みくさ/の−やま/の¥にし/の¥やまぐち/に¥おし−よせ/て、¥とき/を¥どうと/ぞP146¥つくり/ける。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥あまり/に¥あわて−さわい/で、¥ゆみ¥とる¥もの/は¥や/を¥しら/ず、¥や/を¥とる¥もの/は¥ゆみ/を¥しら/ず、¥あわて−ふためき/ける/が、¥むま/に¥あて/られ/じ/と/や¥おもひ/けん、¥みな¥なか/を¥あけ/て/ぞ¥とほし/ける。¥げんじ/は¥おち−ゆく¥へいけ/を、¥あそこ/に¥おつ−かけ、¥ここ/に¥おつ−つめ、¥さんざん/に¥せめ/けれ/ば、¥やにはに¥ごひやく−よ−にん¥うた/れ/ぬ。¥て¥おふ¥もの=ども¥おほかり/けり。¥たいしやうぐん−しん−ざんみ/の−ちうじやう−すけもり、¥おなじき−せうしやう−ありもり、¥たんごの−じじう−ただふさ、¥みくさ/の¥て/を¥やぶら/れ/て、¥めんぼく−なう/や¥おもは/れ/けん、¥はりま/の¥たかさご/より¥ふね/に¥のつ/て、¥さぬき/の¥やしま/へ¥わたり¥たまひ/ぬ。¥びつちうの−かみ−もろもり/ばかり/こそ、¥なに/と/して/かは¥もれ/させ¥たまひ/たり/けん、¥へいないびやうゑ、¥えみの−じらう/を¥めし−ぐし/て、¥いちのたに/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥
「らうば」(『らうば』)S0909¥おほい=との、¥あきの−むま/の−すけ−よしゆき/を¥ししや/にて、¥ひとびと/の¥もと/へ¥のたまひ−つかはさ/れ/ける/は、「¥くらう−よしつね/こそ、¥みくさ/の−て/を¥せめ−やぶつ/て、¥すでに¥みだれ−いる¥よし¥きこえ¥さふらふ。¥やま/の−て/が¥だいじ/で¥さふらへ/ば、¥おのおの¥むかは/れ¥さふらひ/な/ん/や」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥みな¥じし¥まうさ/れ/けり。¥のと=どの/の¥もと/へ/も、「¥たびたび/の¥こと/で/は¥さふらへ/ども、¥こんど/も¥また¥ご=へん¥むかは/れ¥さふらひ/な/ん/や」/と¥のたまひ−つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥のと=どの/の¥へんじ/に、「¥いくさ/は¥さやう/にP147¥かりすなどり/など/の¥やう/に、¥あしだち/の¥よから/う¥かた/へ/は¥むかは/う、¥あしから/ん¥かた/へ/は¥むかは/じ/など¥さふらは/ん/に/は、¥いくさ/に¥かつ¥こと/は¥よも¥さふらは/じ。¥いく−たび/で/も¥さふらへ、¥こはから/ん¥かた/へ/は、¥のりつね¥うけたまはつ/て、¥まかり−むかひ¥さふらふ/べし。¥いつぱう¥うち−やぶつ/て¥まゐらせ¥さふらは/ん。¥おん=こころ−やすう¥おぼしめさ/れ¥さふらふ/べし」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥おほい=との¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび¥たまひ/て、¥ゑつちうの−せんじ−もりとし/を¥さき/と/して、¥いちまん−よ−き、¥のと=どの/に/ぞ¥つけ/られ/ける。¥あに¥ゑちぜんの−さんみ−みちもりの−きやう/を¥あひ−ぐし/て、¥やま/の−て/へ/ぞ¥むかは/れ/ける。¥この¥やま/の−て/と¥まうす/は、¥いちのたに/の¥うしろ、¥ひよどりごえ/の¥ふもと/なり。¥みちもりの−きやう、¥のと=どの/の¥かりや/へ、¥きたのかた¥むかへ−よせ¥たまひ/て、¥さいご/の¥なごり¥をしま/れ/けり。¥のと=どの¥おほき/に¥いかつ/て、「¥この¥て/は¥だいじ/の¥かた/とて、¥のりつね¥むけ/られ¥さふらふ/が、¥まことに¥こはう¥さふらふ/なり。¥ただいま/も¥うへ/の¥やま/より¥かたき¥おとす/ほど/なら/ば、¥とる¥もの/も¥とり−あへ¥さふらふ/まじ。¥たとひ¥ゆみ/を/ば¥もつ/たり/とも、¥や/を¥はげ/ず/は¥あしかる/べし。¥たとひ¥や/を/ば¥はげ/たり/とも、¥ひか/ず/は¥なほ/も¥あしかる/べし。¥まして¥さやう/に¥うち−とけ/て¥わたら/せ¥たまひ/て/は、¥なん/の¥よう/に¥あはせ¥たまふ/べき」/と¥いさめ/られ/て、¥みちもりの−きやう¥げに/も/と/や¥おもは/れ/けん、¥いそぎ¥もののぐ−し/て、¥ひと/を/ば¥かへし¥たまひ/けり。¥いつかのひ/の¥くれがた/に、¥げんじ¥こやの/を¥たつ/て、¥やうやう¥いくた/の−もり/へ¥せめ−ちかづく。¥すずめ/の−まつばら、¥みかげのまつ、¥こやの/の¥かた/を¥み−わたせ/ば、¥げんじ¥てんで/に¥ぢん/を¥とつ/て、¥とほび/を¥たく。¥ふけ−ゆく¥まま/に¥ながむれ/ば、¥やま/の−は¥いづる¥つき/の/ごとし。¥へいけ/も¥とほび¥たけ/や/とて、P148¥いくた/の−もり/に/も¥かた/の/ごとく/ぞ¥たい/たり/ける。¥あけ−ゆく¥まま/に¥み−わたせ/ば、¥はれ/たる¥そら/の¥ほし/の/ごとし。¥これ/や¥むかし¥かはべ/の¥ほたる/と¥えいじ¥たまひ/けん/も、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/けれ。¥かやう/に¥げんじ/は、¥あそこ/に¥ぢん¥とつ/て/は¥むま¥やすめ、¥ここ/に¥ぢん¥とつ/て/は¥むま¥かひ/など¥し/ける/ほど/に¥いそが/ず。¥へいけ/の¥かた/に/は、¥いま/や¥よす、¥いま/や¥よする/と¥あひ−まつ/て、¥やすい¥こころ/も¥せ/ざり/けり。¥おなじき−むゆかのひ/の¥あけぼの/に、¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥いちまん−よ−き/を¥ふたて/に¥わけ/て、¥とひの−じらう−さねひら/に、¥しちせん−よ−き/を¥さし−そへ/て、¥いちのたに/の¥にし/の¥きどぐち/へ¥さし−つかはす。¥わが−み/は¥さんぜん−よ−き/で、¥いちのたに/の¥うしろ、¥ひよどりごえ/を¥おとさ/ん/とて、¥たんばぢ/より¥からめで/へ/こそ¥むかは/れ/けれ。¥つはもの=ども、「¥これ/は¥きこゆる¥あくしよ/にて¥あん/なり。¥おなじう¥しぬる/とも、¥かたき/に¥あう/て/こそ¥しに/たけれ。¥あくしよ/に¥おち/て/は¥しに/たから/ず。¥あつぱれ¥この¥やま/の¥あんないしや/や¥ある」/と¥くちぐち/に¥まうし/けれ/ば、¥ここ/に¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥ひらやまの−むしやどころ¥すすみ−いで/て、「¥すゑしげ/こそ¥この¥やま/の¥あんない¥よく¥ぞんぢ¥つかまつ/て¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥おん=ざうし、「¥わ=との/は¥とうごく−そだち/の¥もの/の、¥けふ¥はじめて¥みる¥さいこく/の¥やま/の¥あんないしや、¥おほき/に¥まことしから/ず」/と¥のたまへ/ば、¥すゑしげ¥かさね/て¥まうし/ける/は、「¥こ/は¥ご=ぢやう/と/も¥おぼえ¥さふらは/ぬ/ものかな。¥よしの¥はつせ/の¥はな/を/ば、¥み/ね/ども¥かじん/が¥しり、¥かたき/の¥こもつ/たる¥じやう/の¥うしろ/の¥あんない/を/ば、¥かう/の¥むしや/が¥しり¥さふらふ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥これ¥また¥ばうじやくぶじん/に/ぞ¥きこえ/し。P149¥
また¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥べつぷの−こたらう−きよしげ/とて、¥しやうねん¥じふはつさい/に¥なり/ける/が、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥ちち/にて¥さふらひ/し¥よししげ−ぼふし/が¥をしへ¥さふらひ/し/は、¥たとへば¥やまごえ/の¥かり/を¥せよ、¥また/は¥かたき/に/も¥おそは/れよ、¥しんざん/に¥まよひ/たら/んずる¥とき/は、¥らうば/に¥たづな¥むすん/で¥うち−かけ、¥さき/に¥おつ−たて/て¥ゆけ、¥かならず¥みち/へ¥いで/うずる/ぞ/と/こそ¥をしへ¥さふらひ/しか」/と¥まうし/けれ/ば、¥おん=ざうし、「¥やさしう/も¥まうし/たる/ものかな。¥ゆき/は¥のばら/を¥うづめ/ども、¥おい/たる¥むま/ぞ¥みち/は¥しる/と¥いふ¥ためし¥あり」/とて、¥しらあしげ/なる¥らうば/に、¥かがみぐら¥おき、¥しろぐつわ¥はげ、¥たづな¥むすん/で¥うち−かけ、¥さき/に¥おつ−たて/て、¥いまだ¥しら/ぬ¥しんざん/へ/こそ¥いり¥たまへ。¥ころ/は¥きさらぎ¥はじめ/の¥こと/なれ/ば、¥みね/の¥ゆき¥むらぎえ/て、¥はな/か/と¥みゆる¥ところ/も¥あり、¥たに/の¥うぐひす¥おとづれ/て、¥かすみ/に¥まよふ¥ところ/も¥あり。¥のぼれ/ば¥はくせつ¥かうかう/と/して¥そびえ、¥くだれ/ば¥せいざん¥がが/と/して¥きし¥たかし。¥まつ/の¥ゆき/だに¥きえ−やら/で、¥こけ/の¥ほそみち¥かすか/なり。¥あらし/に¥たぐふ¥をりをり/は、¥ばいくわ/と/も¥また¥うたがは/れ、¥とうざい/に¥むち/を¥あげ、¥こま/を¥はやめ/て¥ゆく/ほど/に、¥やまぢ/に¥ひ¥くれ/ぬれ/ば、¥みな¥おり−ゐ/て¥ぢん/を¥とる。¥ここ/に¥むさし−ばう−べんけい、¥ある¥らうおう¥いち−にん¥ぐし/て¥まゐり/たり。¥おん=ざうし、「¥あれ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、「¥これ/は¥この¥やま/の¥れふし/で¥さふらふ」/と¥まうし/けれ/ば、「¥さて/は¥あんない¥よく¥しつ/たる/らん」。「¥いかで/か¥ぞんぢ¥つかまつら/で/は¥さふらふ/べき」。¥おん=ざうし、「¥さぞ¥ある/らん。¥これ/より¥へいけ/の¥じやうくわく¥いちのたに/へ¥おとさ/う/と¥おもふ/は¥いか/に」。「¥ゆめゆめ¥かなひ¥さふらふ/まじ。¥およそ¥さんじふぢやう/の¥たに、¥じふごぢやう/の¥いはさき/など/を/ば、¥たやすう¥ひと/の¥かよふ/べき¥やう/もP150¥さふらは/ず。¥その−うへ、¥じやう/の¥うち/に/は、¥おとしあな/を/も¥ほり、¥ひし/を/も¥うゑ/て¥まち¥まゐらせ¥さふらふ/らん。¥まして¥お=むま/など/は¥おもひ/も¥より¥さふらは/ず」/と¥まうし/けれ/ば、¥おん=ざうし、「¥さて¥さやう/の¥ところ/は、¥しし/は¥かよふ/か」。「¥しし/は¥かよひ¥さふらふ。¥せけん/だに¥あたたか/に¥なり¥さふらへ/ば、¥くさ/の¥ふかき/に¥ふさ/ん/とて、¥はりま/の¥しし/は¥たんば/へ¥こえ、¥せけん/だに¥さむく¥なり¥さふらへ/ば、¥ゆき/の¥あさり/に¥はま/ん/とて、¥たんば/の¥しし/は¥はりま/の¥いなみの/へ¥こえ¥さふらふ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥おん=ざうし、「¥さて/は¥ばば¥ござんなれ。¥しし/の¥かよは/んずる¥ところ/を、¥むま/の¥かよは/ざる/べき¥やう/や¥ある。¥さら/ば¥やがて¥なんぢ¥あんないしや−せよ」/と¥のたまへ/ば、「¥この¥み/は¥とし¥おい/て、¥いか/に/も¥かなひ¥さふらふ/まじ」/と¥まうす。「¥さて¥なんぢ/に¥こ/は¥ない/か」。「¥さふらふ」/とて、¥くまわう/とて¥しやうねん¥じふはつさい/に¥なり/ける¥せうくわん/を¥たてまつる。¥おん=ざうし、¥やがて¥もとどり¥とり−あげ/させ¥たまひ/て、¥ちち/を/ば¥わしのをの−しやうじ−たけひさ/と¥いふ¥あひだ、¥これ/を/ば¥わしのをの−さぶらう−よしひさ/と¥なのら/せ/て、¥いちのたに/の¥さきうち−せ/させ、¥あんないしや/に/こそ¥ぐせ/られ/けれ。¥へいけ¥ほろび、¥げんじ/の¥よ/に¥なつ/て¥のち、¥かまくら=どの/と¥なか¥たがう/て、¥あうしう/へ¥くだり¥うた/れ¥たまひ/し¥とき、¥わしのをの−さぶらう−よしひさ/と¥なのつ/て、¥いつしよ/で¥しに/に/ける¥つはもの/なり。P151
「いちにのかけ」(『いちにのかけ』)S0910¥むゆか/の¥やはん/ばかり/まで/は、¥くまがへ、¥ひらやま¥からめで/に/ぞ¥さふらひ/ける。¥くまがへ、¥しそく/の¥こじらう/を¥よう/で¥いひ/ける/は、「¥この¥て/は¥あくしよ/で¥あん/なれ/ば、¥たれ¥さき/と¥いふ¥こと/も¥ある/まじき/ぞ。¥いざ−うれ、¥とひ/が¥うけたまはつ/て¥むかう/たる¥にし/の¥て/へ¥よせ/て、¥いちのたに/の¥まつさき¥かけ/う」/ど¥いひ/けれ/ば、¥こじらう、「¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べう¥さふらふ。¥たれ/も¥かく/こそ¥まうし/たう¥さふらひ/つれ。¥さら/ば¥とう¥よせ/させ¥たまへ」/と¥まうす。¥くまがへ、「¥まこと/や¥ひらやま/も¥この¥て/に¥ある/ぞ/かし。¥うちごみ/の¥いくさ¥このま/ぬ¥もの/なれ/ば、¥ひらやま/が¥やう¥み/て¥まゐれ」/とて、¥げにん/を¥みせ/に¥つかはす。¥あん/の/ごとく¥ひらやま/は、¥くまがへ/より¥さき/に¥いで−たつ/て、「¥ひと/を/ば¥しる/べから/ず、¥すゑしげ/に¥おいて/は¥ひとひき/も¥ひく/まじい/ものを、¥ひく/まじい/ものを」/と、¥ひとりごと/を/ぞ¥し−ゐ/たる。¥げにん/が¥むま/を¥かふ/とて、「¥につくい¥むま/の¥ながぐらひ/かな」/とて¥うち/けれ/ば、¥ひらやま、「¥さう¥な¥せ/そ。¥その¥むま/の¥なごり/も¥こよひ/ばかり/ぞ」/とて¥うつ−たち/けり。¥げにん¥わしり−かへつ/て、¥しゆ/に¥この¥よし¥つげ/けれ/ば、¥さら/ば/こそ/とて、¥これ/も¥やがて¥うつ−たち/けり。¥くまがへ/が¥その¥よ/の¥しやうぞく/に/は、¥かち/の−ひたたれ/に、¥あかがは−をどし/の−よろひ¥き/て、¥くれなゐ/の¥ほろ/を¥かけ、P152¥ごんだくりげ/と¥いふ¥きこゆる¥めいば/に/ぞ¥のつ/たり/ける。¥しそく/の¥こじらう−なほいへ/は、¥おもだか/を¥ひとしほ¥すつ/たる¥ひたたれ/に、¥ふしなはめ/の−よろひ¥き/て、¥せいろう/と¥いふ¥しら−つきげ/なる¥むま/に/ぞ¥のつ/たり/ける。¥はたさし/は¥きぢん/の−ひたたれ/に、¥こざくら/を¥き/に¥かへい/たる¥よろひ¥き/て、¥きかはらげ/なる¥むま/に/ぞ¥のつ/たり/ける。¥しゆじう¥さんき¥うち−つれ、¥おとさ/んずる¥たに/を/ば¥ゆんで/に¥なし、¥めて/へ¥あゆま/せ−ゆく/ほど/に、¥としごろ¥ひと/も¥かよは/ぬ¥たゐのはた/と¥いふ¥ふるみち/を¥へ/て、¥いちのたに/の¥なみうちぎは/へ/ぞ¥うち−いで/ける。¥いちのたに¥ちかう¥しほや/と¥いふ¥ところ¥あり。¥いまだ¥よ¥ふかかり/けれ/ば、¥とひの−じらう−さねひら、¥しちせん−よ−き/で¥ひかへ/たり。¥くまがへ¥よ/に¥まぎれ/て、¥なみうちぎは/より、¥そこ/を/ば¥つと¥はせ−とほり、¥いちのたに/の¥にし/の¥きどぐち/に/ぞ¥おし−よせ/たる。¥その−とき/も¥いまだ¥よ¥ふかかり/けれ/ば、¥じやう/の¥うち/に/は¥しづまり−かへつ/て¥おと/も¥せ/ず。¥くまがへ、¥しそく/の¥こじらう/に¥いひ/ける/は、「¥この¥て/は¥あくしよ/で¥あん/なれ/ば、¥われ/も¥われ/も/と¥さき/に¥こころ/を¥かけ/たる¥もの=ども¥おほかる/らん。¥すでに¥よせ/たれ/ども、¥よ/の¥あくる/を¥あひ−まつ/て、¥この¥へん/に/も¥ひかへ/たる/らん/ぞ。¥こころ−せばう¥なほざね¥いち−にん/と¥おもふ/べから/ず。¥いざ¥なのら/ん」/とて、¥かいだて/の¥きは/に¥あゆま/せ−より、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むさしの−くに/の¥ぢうにん¥くまがへの−じらう−なほざね、¥しそく/の¥こじらう−なほいへ、¥いちのたに/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、「¥よしよし¥おと¥な¥せ/そ。¥かたき/の¥むま/の¥あし¥つからかさ/せよ。¥やだね/を¥い−つくさ/せよ」/とて、¥あひ−しらふ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥やや¥あつ/てうしろ/より¥むしや/こそ¥にき¥つづい/たれ。「¥た/そ」/と¥とへ/ば、「¥すゑしげ」/と¥こたふ。「P153¥とふ/は¥た/そ」。「¥なほざね/ぞ/かし」。「¥いか/に¥くまがへ=どの/は¥いつ/より/ぞ」。「¥よひ/より」/と/こそ¥こたへ/けれ。「¥すゑしげ/も¥やがて¥つづい/て¥よす/べかり/つる/を、¥なりだ−ごらう/に¥たばから/れ/て、¥いま/まで/は¥ちち−し/たり/つる/なり。¥なりだ/が¥しな/ば¥いつしよ/で¥しな/ん/と¥ちぎり/し¥あひだ、¥うち−つれ/て¥よせ/つれ/ば、『¥いたう¥ひらやま=どの¥さきがけばやり¥な¥し¥たまひ/そ。¥いくさ/の¥さき/を¥かくる/と¥いふ/は、¥み=かた/の¥せい/を¥うしろ/に¥おい/て、¥さき/を¥かけ/たれ/ば/こそ、¥かうみやう¥ふかく/を/も¥ひと/に¥しら/るれ。¥あの¥おほぜい/の¥なか/へ¥ただ¥いつき、¥かけ−いつ/て¥うた/れ/たら/ん/は、¥なん/の¥せん/に/か¥あふ/べき』/と¥いふ¥あひだ、¥げに/も/と¥おもひ、¥こざか/の¥あり/つる/を¥うち−のぼせ、¥くだ(原本かな無し)りさま/に¥むま/の¥かしら/を¥ひき−たて/て、¥み=かた/の¥せい/を¥まつ¥ところ/に、¥なりだ/も¥つづい/て¥いで−き/たり、¥うち−ならべ/て¥いくさ/の¥やう/を/も¥いひ−あはせ/んずる/か/と¥おもひ/たれ/ば、¥さ/は¥なく/して、¥すゑしげ/が¥かた/を/ば¥すげな=げ/に¥みなし/つつ、¥そば/を¥つと¥はせ−とほる¥あひだ、¥あつぱれ¥この¥もの¥すゑしげ¥たばかつ/て、¥さき¥かくる/よ/と¥おもひ、¥ごろくたん/ばかり¥すすん/だる/を、¥あれ/が¥むま/は¥わが¥むま/より¥よわ=げ/なる/ものを/と¥め/を¥かけ、¥ひとむち¥うつ/て¥おつ−つき、『¥いか/に¥なりだ=どの/は、¥まさなう/も¥すゑしげ/ほど/の¥もの/を、¥たばかり¥たまふ/ものかな』/と¥いひ/かけ、¥うち−すて/て¥よせ/つれ/ば、¥いま/は¥はるか/に¥さがり/ぬ/らん。¥よも¥うしろかげ/を/ば¥み/たら/じ」/と/こそ¥かたり/けれ。¥さる−ほど/に¥しののめ¥やうやう¥あけ−ゆけ/ば、¥くまがへ¥ひらやま、¥かれ−これ¥ごき/で/ぞ¥ひかへ/たる。¥くまがへ/は¥さき/に¥なのつ/たり/けれ/ども、¥ひらやま/が¥きく¥まへ/にて、¥また¥なのら/ん/と/や¥おもひ/けん、¥かいだて/の¥きは/へ¥あゆま/せ−より、¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥そもそもP154¥いぜん¥なのつ/つる¥むさしの−くに/の¥ぢうにん¥くまがへの−じらう−なほざね、¥しそく/の¥こじらう−なほいへ、¥いちのたに/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、「¥いざ¥よ/も−すがら¥なのる¥くまがへ−おやこ/を¥ひつ−さげ/て¥こ/ん」/とて、¥すすむ¥へいけ/の¥さぶらひ¥たれたれ/ぞ。¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ、¥かづさの−ごらう−びやうゑ−ただみつ、¥あく−しち−びやうゑ−かげきよ、¥ごとうない−さだつね/を¥さき/と/して、¥むねと/の¥つはもの¥にじふ−よ−き、¥きど/を¥ひらい/て¥かけ−いで/たり。¥ここ/に¥ひらやま/は¥しげめゆひ/の−ひたたれ/に、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥ふたつひきりやう/の¥ほろ/を¥かけ、¥めかすげ/と¥いふ¥きこゆる¥めいば/に/ぞ¥のつ/たり/ける。¥はたさし/は¥くろかは−をどし/の−よろひ/に、¥かぶと¥ゐくび/に¥き−なし/つつ、¥さび−つきげ/なる¥むま/に/ぞ¥のつ/たり/ける。「¥ほうげん¥へいぢ¥にかど/の¥いくさ/に、¥さきがけ/て¥かくみやう−し/たる¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥ひらやまの−むしやどころ−すゑしげ」/と¥なのつ/て¥をめい/て¥かく。¥くまがへ¥かくれ/ば¥ひらやま¥つづき、¥ひらやま¥かくれ/ば¥くまがへ¥つづき、¥たがひに¥われ¥おとら/じ/と、¥いれ−かへ−いれ−かへ、¥なのり−かへ−なのり−かへ、¥もみ/に¥もう/で、¥ひ¥いづる/ほど/に/ぞ¥せめ/たり/ける。¥へいけ/の¥さぶらひ=ども、¥くまがへ¥ひらやま/に¥あまり/に¥て−いたう¥せめ/られ/て、¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥じやう/の¥うち/へ¥ざつと¥ひい/て、¥かたき/を¥とざま/に¥なし/て/ぞ¥ふせぎ/ける。¥くまがへ/は¥むま/の¥ふとばら¥い/させ、¥はぬれ/ば、¥ゆんづゑ¥つい/て¥おり−たつ/たり。¥しそく/の¥こじらう−なほいへ/も、¥しやうねん¥じふろくさい/と¥なのつ/て、¥まつさき¥かけ/て¥たたかひ/ける/が、¥ゆんで/の¥かひな/を¥い/させ、¥これ/も¥むま/より¥おり、¥ちち/と¥ならん/で/ぞ¥たつ/たり/ける。¥くまがへ、「¥いか/に¥こじらう/は¥ておう/たる/か」。「¥さん−ざふらふ」。「¥よろひづき/を¥つね/に¥せよ。¥うら¥かかす/な。¥しころ/を¥かたぶけよ、¥うち−かぶと¥い/さす/な」/と/こそP155¥をしへ/けれ。¥くまがへ/は¥よろひ/に¥たつ/たる¥や=ども¥かなぐり−すて、¥じやう/の¥うち/を¥にらまへ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥こぞ/の¥ふゆ、¥かまくら/を¥たち/し/より¥この−かた、¥いのち/を/ば¥ひやうゑ/の−すけ=どの/に¥たてまつり、¥かばね/を¥いちのたに/の¥みぎは/に¥さらさ/ん/と、¥おもひ−きつ/たる¥なほざね/ぞ/かし。¥さんぬる¥むろやま¥みづしま¥にかど/の¥いくさ/に¥うち−かつ/て、¥かうみやう−し/たり/と¥なのる/なる、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ、¥かづさの−ごらう−びやゑ、¥あく−しち−びやうゑ/は¥ない/か。¥のと=どの/は¥おはせ/ぬ/か。¥かうみやう¥ふかく/も¥かたき/に¥よつ/て/こそ¥すれ。¥ひと−ごと/に/は¥え¥せ/じ/ものを。¥ただ¥くまがへ−おやこ/に¥おち−あへ/や、¥くめ/や¥くめ」/と/ぞ¥ののしつ/たる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ−もりつぎ、¥このむ¥しやうぞく/なれ/ば、¥こむらご/の−ひたたれ/に、¥あか−をどし/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥わき/に¥はさみ、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら/を¥おい/て¥のつ/たり/ける/が、¥くまがへ−おやこ/を¥め/に¥かけ/て¥あゆま/せ−よる。¥くまがへ−おやこ/も¥なか/を¥わら/れ/じ/と、¥あひ/も¥すかさ/ず¥たち−ならび、¥たち/を¥ぬい/て¥ひたひ/に¥あて、¥うしろ/へ/は¥ひとひき/も¥ひか/ず、¥いよいよ¥まへ/へ/ぞ¥すすん/だる。¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ¥これ/を¥み/て、¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥とつ/て¥かへす。¥くまがへ、「¥あれ/は¥いか/に、¥ゑつちうの−じらう−びやうゑ/と/こそ¥みれ。¥かたき/に/は¥どこ/を¥きらは/う/ぞ。¥おし−ならべ/て¥くめ/や¥くめ」/と¥いひ/けれ/ども、¥じらう−びやうゑ、「¥さ/も−さう/ず」/とて¥ひつ−かへす。¥かづさの−あく−しち−びやうゑ¥これ/を¥み/て、「¥きたない¥との=ばら/の¥ふるまひ/かな。¥しや¥くま/んずる/ものを。¥おち−あは/ぬ¥こと/は¥よも¥あら/じ」/とて、P156¥すでに¥かけ−いで¥くま/ん/と¥し/けれ/ば、¥じらう−びやうゑ、¥あく−しち−びやうゑ/が¥よろひ/の¥そで/を¥ひかへ/て、「¥きみ/の¥おん=だいじ¥これ/に¥かぎる/べから/ず。¥ある/べう/も¥なし」/と¥せいせ/られ/て、¥ちから¥およば/で¥くま/ざり/けり。¥その−のち¥くまがへ/は¥のりがへ/に¥のつ/て¥をめい/て¥かく。¥ひらやま/も¥くまがへ−おやこ/が¥たたかふ¥ま/に、¥むま/の¥いき¥やすめ、¥これ/も¥おなじう¥つづい/たり。¥へいけ/の¥かた/に/は¥これ/を¥み/て、¥ただ¥い−とれ/や¥い−とれ/とて、¥さしつめ−ひきつめ、¥さんざん/に¥い/けれ/ども、¥かたき/は¥こぜい/なり、¥み=かた/は¥おほぜい/なり/けれ/ば、¥せい/に¥まぎれ/て¥や/に/も¥あたら/ず。「¥ただ¥おし−ならべ/て¥くめ/や¥くめ」/と¥げぢ−し/けれ/ども、¥へいけ/の¥かた/の¥むま/は¥かふ/は¥まれ/なり、¥のり−しげし。¥ふね/に¥ひさしう¥たて/たり/けれ/ば、¥みな¥ゑり−きつ/たる¥やう/なり/けり。¥くまがへ¥ひらやま/が¥のつ/たる¥むま/は、¥かひ/に¥かう/たる¥だい/の¥むま=ども/なり。¥ひとあて¥あて/ば、¥みな¥け−たふさ/れ/ぬ/べき¥あひだ、¥さすが¥おし−ならべ/て¥くむ¥むしや¥いつき/も¥なかり/けり。¥ここ/に¥ひらやま/は、¥み/に¥かへ/て¥おもひ/ける¥はたさし/を¥うた/せ/て、¥やすから/ず/や¥おもひ/けん、¥じやう/の¥うち/へ¥かけ−いり、¥やがて¥その¥かたき/が¥くび¥とつ/て/ぞ¥いで/たり/ける。¥くまがへ−おやこ/も、¥ぶんどり¥あまた¥し/てげり。¥くまがへ/は¥さき/に¥よせ/たれ/ども、¥きど/を¥ひらか/ね/ば¥かけ−いら/ず。¥ひらやま/は¥のち/に¥よせ/たれ/ども、¥きど/を¥あけ/たれ/ば¥かけ−いり/ぬ。¥さて/こそ¥くまがへ¥ひらやま/が、¥いちに/の−かけ/を/ば¥あらそひ/けれ。P157
「にどのかけ」(『にどのかけ』)S0911¥さる−ほど/に¥なりだ−ごらう/も¥いで−き/たる。¥とひの−じらう−さねひら¥しちせん−よ−き、¥いろいろ/の¥はた¥さし−あげ、¥をめき−さけん/で¥せめ−たたかふ。¥おほて¥いくた/の−もり/を/ば、¥げんじ¥ごまん−よ−き/で¥かため/たり/ける/が、¥その¥せい/の¥なか/に、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥かはら−たらう、¥かはら−じらう/とて¥おととい¥あり。¥かはら−たらう、¥おとと/の¥じらう/を¥よう/で¥いひ/ける/は、「¥だいみやう/は¥われ/と¥て/を¥おろさ/ね/ども、¥けにん/の¥かうみやう/を¥もつて¥めいよ−す。¥われ=ら/は¥みづから¥て/を¥おろさ/で/は¥かなひ−がたし。¥かたき/を¥まへ/に¥おき/ながら、¥や¥ひとつ/を/だに¥い/ず/して¥まち−ゐ/たれ/ば、¥あまり/に¥こころ−もとなき/に、¥たかなほ/は¥じやう/の¥うち/へ¥まぎれ−いつ/て、¥ひと−や¥い/ん/と¥おもふ/なり。¥され/ば¥せんまん/が−いつ/も、¥いき/て¥かへら/ん¥こと¥あり−がたし。¥なんぢ/は¥のこり−とどまつ/て、¥のち/の¥しようにん/に¥たて」/と¥いひ/けれ/ば、¥おとと/の¥じらう、¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥ただ¥きやうだい¥ににん¥ある¥もの/が、¥あに/を¥うた/せ/て、¥おとと/が¥あと/に¥のこり−とどまつ/たれ/ば/とて、¥いく−ほど/の¥えいぐわ/を/か¥たもつ/べき。¥ところどころ/で¥うた/れ/ん/より、¥いつしよ/で/こそ¥うちじに/を/も¥せ/め」/とて、¥げにん=ども¥よび−よせ、¥さいし/の¥もと/へ、¥さいご/の¥ありさま¥いひ−つかはし、¥むま/に/は¥のら/で¥げげ/を¥はき、¥ゆんづゑ/を¥つい/て、¥いくた/の−もり/の¥さかもぎ/を¥のぼり−こえ/て、¥じやう/の¥うち/へ/ぞ¥いつ/たり/ける。¥ほし−あかり/に¥よろひ/の¥け¥さだか/なら/ず。¥かはら−たらう¥だい−おんじやう/をP158¥あげ/て、「¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥かはら−たらう−きさいちの−たかなほ、¥おなじき−じらう−もりなほ、¥いくた/の−もり/の¥せんぢん/ぞ/や」/と/ぞ¥なのつ/たる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、「¥あつぱれ¥とうごく/の¥ぶし/ほど¥おそろしかり/ける¥もの/は¥なし。¥この¥おほぜい/の¥なか/へ、¥ただ¥きやうだい¥ににん¥かけ−いつ/たら/ば、¥なに/ほど/の¥こと/を/か¥し−いだす/べき。¥ただ¥おい/て¥あいせよ/や」/とて、¥うた/ん/と¥いふ¥もの/こそ¥なかり/けれ。¥かはら−きやうだい、¥くつきやう/の¥ゆみ/の¥じやうず/なり/けれ/ば、¥さしつめ−ひきつめ¥さんざん/に¥いる。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥み/て、「¥いま/は¥この¥もの¥あいし−にくし。¥うて/や」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けめ、¥さいこく/に¥きこえ/たる¥つよゆみ−せいびやう、¥びつちうの−くに/の¥ぢうにん、¥まなべの−しらう、¥まなべの−ごらう/とて¥おととい¥あり。¥あに/の¥しらう/を/ば¥いちのたに/に¥おか/れ/たり。¥おとと/の¥ごらう/は¥いくた/の−もり/に¥あり/ける/が、¥これ/を¥み/て、¥よつ−ぴき、¥しばし¥たもつ/て¥ひやうど¥いる。¥かはらの−たらう/が¥よろひ/の¥むないた/を、¥うしろ/へ¥つと¥い−ぬか/れ/て、¥ゆんづゑ/に¥すがり¥すくむ¥ところ/を、¥おとと/の¥じらう¥はしり−より、¥あに/を¥かた/に¥ひつ−かけ/て、¥いくた/の−もり/の¥さかもぎ¥のぼり−こえ/ん/と¥する¥ところ/を、¥まなべ/が¥に/の−や/に、¥おとと/の¥じらう/が¥よろひ/の¥くさずり/の¥はづれ/を¥い/させ/て、¥おなじ¥まくら/に¥ふし/に/けり。¥まなべ/が¥げにん¥おち−あはせ/て、¥かはら−きやうだい/が¥くび/を¥とる。¥たいしやうぐん−しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥おん=げんざん/に¥いれ/たり/けれ/ば、「¥あつぱれ¥かう/の−もの/や、¥これ=ら/を/こそ、¥いち−にん−たうぜん/の¥よき¥つはもの=ども/と/も¥いふ/べけれ。¥あつたら¥もの=ども/が¥いのち/を¥たすけ/て¥み/で」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥その−のち¥かはら/が¥げにん¥はしり−ちつ/て、「¥かはら=どの¥きやうだい/こそ、¥ただいま¥じやう/の¥うち/へ¥まつさき¥かけ/て、P159¥うた/れ/させ¥たまひ/ぬる/は」/と¥よばはつ/たり/けれ/ば、¥かぢはら−へいざう¥これ/を¥きい/て、「¥これ/は¥し/の−たう/の¥との=ばら/の¥ふかく/で/こそ、¥かはら−きやうだい/を/ば¥うた/せ/たれ。¥とき¥よく¥なり/ぬる/ぞ、¥よせよ/や」/とて、¥かぢはら¥ごひやく−よ−き、¥いくた/の−もり/の¥さかもぎ/を¥とり−のけ/させ/て、¥じやう/の¥うち/へ¥をめい/て¥かく。¥じなん¥へいじ¥あまり/に¥さき/を¥かけ/う/ど¥すすむ¥あひだ、¥ちち¥へいざう¥ししや/を¥たて/て、「¥ごぢん/の¥せい/の¥つづか/ざら/ん/に、¥さきがけ/たら/んずる¥もの/に/は、¥けんじやう¥ある/まじき¥よし、¥たいしやうぐん/より/の¥おほせ/ぞ」/と¥いひ−おくつ/たり/けれ/ば、¥へいじ¥しばらく¥ひかへ/て、「¥
もののふ/の¥とり−つたへ/たる¥あづさゆみ¥ひい/て/は¥ひと/の¥かへす/もの/かは W069
/と¥まうさ/せ¥たまへ/や」/とて、¥をめい/て¥かく。¥かぢはら¥これ/を¥み/て、「¥へいじ¥うた/す/な¥もの=ども、¥かげたか¥うた/す/な¥つづけ/や」/とて、¥ちち/の¥へいざう、¥あに/の¥げんだ、¥おなじき−さぶらう¥つづい/たり。¥かぢはら¥ごひやく−よ−き/の、¥おほぜい/の¥なか/へ¥かけ−いり、¥たてさま、¥よこさま、¥くもで、¥じふもんじ/に¥かけ−わつ/て、¥ざつと¥ひい/て¥いで/たれ/ば、¥ちやくし/の¥げんだ/は¥みえ/ざり/けり。¥かぢはら¥らうどう=ども/に、「¥げんだ/は¥いか/に」/と¥とひ/けれ/ば、「¥あまり/に¥ふかいり−し/て、¥うた/れ/させ¥たまひ/て¥さふらふ/やらん。¥はるか/に¥みえ/させ¥たまひ¥さふらは/ず」/と¥まうし/けれ/ば、¥かぢはら¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥いくさ/の¥さき/を¥かけ/う/ど¥おもふ/も¥こ=ども/が¥ため、¥げんだ¥うた/せ/て、¥かげとき¥いのち¥いき/て/も¥なに/に/かは¥せ/ん/なれ/ば、¥かへせ/や」/とて、¥また¥とつ/て¥かへす。¥その−のち¥かぢはら¥あぶみ¥ふんばり¥たち−あがり、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥むかし¥はちまん=どの/の¥ごさんねん/の−おん=たたかひ/に、¥ではの−くに¥せんぶく¥かなざは/の−じやう/を¥せめ¥たまひ/し¥とき、¥しやうねん¥じふろくさい/と¥なのつ/て、¥まつさきP160¥かけ、¥ゆんで/の¥まなこ/を¥かぶと/の¥はちつけ/の¥いた/に¥い−つけ/られ/ながら、¥その¥や/を¥ぬか/で、¥たう/の¥や/を¥い−かへし、¥かたき¥い−おとし、¥けんじやう¥かうぶり、¥な/を¥こうだい/に¥あげ/たり/し¥かまくら/の−ごんごらう−かげまさ/に、¥ごだい/の¥ばつえふ、¥かぢはら−へいざう−かげとき/とて、¥とうごく/に¥きこえ/たる¥いち−にん−たうぜん/の¥つはもの/ぞ/や。¥われ/と¥おもは/ん¥ひとびと/は、¥より−あへ/や¥げんざん−せ/ん」/とて、¥をめい/て¥かく。¥じやう/の¥うち/に/は¥これ/を¥きい/て、「¥ただいま¥なのる/は¥とうごく/に¥きこえ/たる¥つはもの/ぞ/や。¥あます/な、¥もらす/な、¥うて/や」/とて、¥かぢはら/を¥なか/に¥とり−こめ/て、¥われ¥うつ−とら/ん/と/ぞ¥すすみ/ける。¥かぢはら¥まづ¥わが¥み/の−うへ/を/ば¥しら/ず/して、¥げんだ/は¥いづく/に¥ある/やらん/と、¥かけ−わり¥かけ−まはり¥たづぬる/ほど/に、¥あん/の/ごとく、¥げんだ/は、¥むま/を/も¥い/させ¥かちだち/に¥なり、¥かぶと/を/も¥うち−おとさ/れ、¥おほ−わらは/に¥たたかひ−なつ/て、¥にぢやう/ばかり¥あり/ける¥きし/を¥うしろ/に¥あて、¥らうどう¥ににん¥さう/に¥たて、¥うちもの¥ぬい/て、¥かたき¥ごにん/が¥なか/に¥とり−こめ/られ/て、¥おもて/も¥ふら/ず¥いのち/も¥をしま/ず、¥ここ/を¥さいご/と¥せめ−たたかふ。¥かぢはら¥これ/を¥み/て、¥げんだ/は¥いまだ¥うた/れ/ざり/けり/と¥うれしう¥おもひ、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、「¥いか/に¥げんだ、¥かげとき¥ここ/に¥あり。¥おなじう¥しぬる/とも、¥かたき/に¥うしろ/を¥みす/な」/とて、¥おやこ/して¥ごにん/の¥かたき/を¥さん−にん¥うつ−とり、¥ににん/に¥て¥おはせ/て、「¥ゆみ−や−とり/は、¥かくる/も¥ひく/も¥をり/に/こそ¥よれ。¥いざ−うれ¥げんだ」/とて、¥かい−ぐし/て/ぞ¥いで/たり/ける。¥かぢはら/が¥にど/の¥かけ/と/は¥これ/なり。P161
「さかおとし」(『さかおとし』)S0912¥これ/を¥はじめ/て、¥みうら、¥かまくら、¥ちちぶ、¥あしかが、¥たう/に/は、¥ゐのまた、¥こだま、¥のゐよ、¥よこやま、¥にしたう、¥つづき−たう、¥そうじ/て、¥し/の−たう/の¥つはもの=ども、¥げんぺい¥たがひ/に¥みだれ−あひ、¥をめき−さけぶ¥こゑ/は¥やま/を¥ひびかし、¥はせ−ちがふる¥むま/の¥おと/は¥いかづち/の/ごとく、¥い−ちがふる¥や/は¥あめ/の¥ふる/に¥こと/なら/ず。¥あるひは¥うすで¥おう/て¥たたかふ¥もの/も¥あり、¥あるひは¥ひつ−くみ¥さし−ちがへ/て¥しぬる/も¥あり、¥あるひは¥とつ/て¥おさへ/て¥くび/を¥かく/も¥あり、¥かか/るる/も¥あり、¥いづれ¥ひま¥あり/と/も¥みえ/ざり/けり。¥かかり/しか/ども、¥げんじ¥おほて/ばかり/で/は、¥いか/に/も¥かなふ/べし/と/も¥みえ/ざり/し/に、¥なぬかのひ/の¥あけぼの/に、¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥その¥せい¥さんぜん−よ−き、¥ひよどりごえ/に¥うち−あがつ/て、¥じんば/の¥いき¥やすめ/て¥おはし/ける/が、¥その¥せい/に/や¥おどろき/たり/けん、¥をじか¥ふたつ¥めじか¥ひとつ、¥へいけ/の¥じやうくわく¥いちのたに/へ/ぞ¥おち/たり/ける。¥へいけ/の¥かた/の¥つはもの=ども¥これ/を¥み/て、「¥たとひ¥さと¥ちかから/ん¥しし/だに/も、¥われ=ら/に¥おそれ/て¥やま¥ふかう/こそ¥いる/べき/に、¥ただいま/の¥しし/の¥おちやう/こそ¥あやしけれ。¥いかさま/に/も、¥これ/は¥うへ/の¥やま/より¥かたき¥おとす/に/こそ」/とて、¥おほき/に¥さわぐ¥ところ/に、¥ここ/に¥いよの−くに/の¥ぢうにん、¥たけちの−むしやどころ−きよのり¥すすみ−いで/てP162、「¥たとひ¥なにもの/にて/も¥あら/ば¥あれ、¥かたき/の¥かた/より¥いで−き/たら/んずる¥もの/を、¥とほす/べき¥やう¥なし」/とて、¥をじか¥ふたつ¥い−とどめ/て、¥めじか/を/ば¥いい/で/ぞ¥とほし/ける。¥ゑつちうの−せんじ¥これ/を¥み/て、「¥せん−ない¥との=ばら/の¥しし/の¥いやう/かな。¥ただいま/の¥や¥ひとすぢ/で/は、¥かたき¥じふにん/を/ば¥ふせが/んずる/ものを。¥つみつくり/に¥や−だうな/に」/と/ぞ¥せいし/ける。¥さる−ほど/に¥たいしやうぐん−くらう−おん=ざうし−よしつね、¥へいけ/の¥じやうくわく¥はるか/に¥み−くだし/て¥おはし/ける/が、¥むま=ども¥おとい/て¥み/ん/とて、¥せうせう¥おとさ/れ/けり。¥あるひは¥ちう/にて¥ころん/で¥おち、¥あるひは¥あし¥うち−をつ/て¥しぬる/も¥あり。¥され/ども¥その¥なか/に、¥くらおきむま¥さんびき、¥さうゐ−なく¥おち−つい/て、¥ゑつちうの−せんじ/が¥やかた/の¥まへ/に、¥みぶるひ−し/て/こそ¥たつ/たり/けれ。¥おん=ざうし、「¥むま/は¥ぬしぬし/が¥こころ−え/て¥おとさ/ん/に/は、¥いたう/は¥そんず/まじかり/ける/ぞ。¥くは¥おとせ、¥よしつね/を¥てほん/に¥せよ」/とて、¥まづ¥さんじつき/ばかり、¥まつさき¥かけ/て¥おとさ/れ/けれ/ば、¥さんぜん−よ−き/の¥つはもの=ども、¥みな¥つづい/て¥おとす。¥そこ/しも¥こ−いし−まじり/の¥まさご/なり/けれ/ば、¥ながれ−おとし/に¥にちやう/ばかり¥ざつと¥おとい/て、¥だん/なる¥ところ/に¥ひかへ/たり。¥それ/より¥しも/も¥み−くだせ/ば、¥だいばんじやく/の¥こけ¥むし/たる/が、¥つるべおろし/に¥じふしごぢやう/ぞ¥くだつ/たる。¥それ/より¥さき/へ/は¥すすむ/べき/と/も¥みえ/ず。¥また¥うしろ/へ¥とつ/て¥かへす/べき¥やう/も¥なかり/しか/ば、¥つはもの=ども、¥ここ/ぞ¥さいご/と¥まうし/て、¥あきれ/て¥ひかへ/たる¥ところ/に、¥みうらの−さはらの−じふらう−よしつら、¥すすみ−いで/て¥まうし/ける/は、「¥われ=ら/が¥かた/で/は、¥とり¥ひとつ¥たつ/て/だに/も、¥あさゆふ¥かやう/の¥ところ/を/ば¥はせ−ありけ。¥これ/は¥みうら/の¥かた/の¥ばば/ぞ」/とて、¥まつさき¥かけ/て¥おとし/けれ/ば、¥おほぜい¥みな¥つづい/てP163¥おとす。¥ごぢん/に¥おとす¥もの/の¥あぶみ/の¥はな/は、¥せんぢん/の¥よろひ−かぶと/に¥さはる/ほど/なり。¥あまり/の¥いぶせ−さ/に、¥め/を¥ふさい/で¥おとし/ける。¥えいえいごゑ/を¥しのび/に/して、¥むま/に¥ちから/を¥つけ/て¥おとす。¥おほかた¥ひと/の¥しわざ/と/は¥みえ/ず、¥ただ¥きじん/の¥しよゐ/と/ぞ¥みえ/し。¥おとし/も¥はて/ぬ/に、¥とき/を¥どつと/ぞ¥つくり/ける。¥さんぜん−よ−き/が¥こゑ/なれ/ども、¥やまびこ¥こたへ/て¥じふまん−よ−き/と/ぞ¥きこえ/ける。¥むらかみの−はんぐわんだい−やすくに/が¥て/より¥ひ/を¥いだい/て、¥へいけ/の¥やかた¥かりや/を、¥へんし/の¥けぶり/と¥やき−はらふ。¥くろけぶり¥すでに¥おし−かけ/けれ/ば、¥へいけ/の¥つはもの=ども、¥もしや¥たすかる/と、¥まへ/なる¥うみ/へ/ぞ¥おほく¥はしり−いり/ける。¥なぎさ/に/は¥たすけ−ぶね=ども¥いくら/も¥あり/けれ/ども、¥ふね¥いつそう/に/は¥よろう/たる¥もの=ども/が、¥しごひやくにん、¥せん−にん/ばかり¥こみ−のつ/たら/う/に、¥なじか/は¥よかる/べき。¥なぎさ/より¥さんちやう/ばかり¥こぎ−いで/て、¥め/の¥まへ/にて¥おほ−ぶね¥さんぞう¥しづみ/に/けり。¥その−のち/は、¥よき¥むしや/を/ば¥のする/とも、¥ざふにん=ばら/を/ば¥のす/べから/ず/とて、¥たち¥なぎなた/にて¥うち−はらひ/けり。¥かく¥する¥こと/と/は¥しり/ながら、¥かたき/に¥あう/て/は¥しな/ず/して、¥のせ/じ/と¥する¥ふね/に¥とり−つき¥つかみ−つき、¥あるひは¥ひぢ¥うち−きら/れ、¥あるひは¥うで¥うち−おとさ/れ/て、¥いちのたに/の¥みぎは/に、¥あけ/に¥なつ/て/ぞ¥なみ−ふし/たる。¥さる−ほど/に¥おほて/に/も¥はま/の−て/に/も、¥むさし¥さがみ/の¥わか=との=ばら、¥おもて/も¥ふら/ず¥いのち/も¥をしま/ず、¥ここ/を¥さいご/と¥せめ−たたかふ。¥のと=どの/は¥どど/の¥いくさ/に、¥いちど/も¥ふかく−し¥たまは/ぬ¥ひと/の、¥こんど/は¥いかが¥おもは/れ/けん、¥うすずみ/と¥いふ¥むま/に¥うち−のつ/て、¥にし/を¥さし/て/ぞ¥おち¥たまふ。¥はりま/の¥たかさご/より、¥お=ふね/に¥めし/て、P164¥さぬき/の¥やしま/へ¥わたり¥たまひ/ぬ。¥
「もりとしさいご」(『ゑつちゆうのせんじさいご』)S0913¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/は、¥いくた/の−もり/の¥たいしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥ひんがし/に¥むかつ/て¥たたかひ¥たまふ¥ところ/に、¥やま/の¥そば/より¥よせ/ける¥こだま−たう/の¥なか/より、¥ししや/を¥たて/て、「¥きみ/は¥ひととせ¥むさし/の¥こくし/にて¥わたら/せ¥たまへ/ば、¥その¥よしみ/を¥もつて、¥こだま/の¥もの=ども/が¥なか/より¥まうし¥さふらふ。¥いまだ¥おん=うしろ/を/ば¥ごらんぜ/られ¥さふらは/ぬ/やらん」/と¥まうし/けれ/ば、¥しん−ぢうなごん¥いげ/の¥ひとびと、¥うしろ/を¥かへりみ¥たまへ/ば、¥くろけぶり¥おし−かけ/たり。「¥あはや、¥にし/の−て/は¥やぶれ/に/ける/は」/と¥いふ/ほど/こそ¥あり/けれ、¥とる¥もの/も¥とり−あへ/ず、¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥ゑつちうの−せんじ−もりとし/は、¥やま/の−て/の¥さぶらひ−だいしやう/にて¥ましまし/ける/が、¥いま/は¥おつ/とも¥かなは/じ/と/や¥おもひ/けん、¥ひかへ/て¥かたき/を¥まつ¥ところ/に、¥ゐのまたの−こべいろく−のりつな、¥よき¥かたき/と¥め/を¥かけ、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−き/たり、¥おし−ならべ/て¥むず/と¥くん/で¥どうど¥おつ。¥ゐのまた/は¥はつ−か−こく/に¥きこえ/たる¥したたかもの/なり。¥か/の−つの/の¥いちに/の¥くさかり/を/ば、¥たやすく¥ひき−さき/ける/と/ぞ¥きこえ/し。¥ゑつちうの−せんじ/も、¥ひとめ/に/は¥にさんじふにん/が¥ちから¥あらはす/と¥いへ/ども、¥ないない/はP165¥ろくしちじふにん/して¥あげ−おろす¥ふね/を、¥ただ¥いち−にん/して¥おし−あげ¥おし−おろす/ほど/の¥だい−ぢから/なり。¥され/ば¥ゐのまた/を¥とつ/て¥おさへ/て¥はたらか/さ/ず、¥ゐのまた¥した/に¥ふし/ながら、¥かたな/を¥ぬか/う/ど¥すれ/ども、¥ゆび/の¥また¥はだかつ/て、¥かたな/の¥つか/を¥にぎる/に/も¥およば/ず、¥もの/を¥いは/う/ど¥すれ/ども、¥あまり/に¥つよう¥おさへ/られ/て¥こゑ/も¥いで/ず。¥され/ども¥ゐのまた/は¥だい−かう/の−もの/にて¥あり/けれ/ば、¥しばし/の¥いき/を¥やすめ/て、「¥かたき/の¥くび/を¥とる/と¥いふ/は、¥われ/も¥なのつ/て¥きか/せ、¥かたき/に/も¥なのら/せ/て、¥くび¥とつ/たれ/ば/こそ¥たいこう/なれ。¥な/も¥しら/ぬ¥くび¥とつ/て、¥なに/に/かは¥し¥たまふ/べき」/と¥いひ/けれ/ば、¥ゑつちうの−せんじ¥げに/も/と/や¥おもひ/けん、「¥もと/は¥へいけ/の¥いちもん/たり/し/が、¥み¥ふせう/なる/に¥よつ/て、¥たうじ/は¥さぶらひ/に¥なさ/れ/たる¥ゑつちうの−せんじ−もりとし/と¥いふ¥もの/なり。¥わ−ぎみ/は¥なにもの/ぞ。¥なのれ、¥きか/う」/ど¥いひ/けれ/ば、「¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥ゐのまたの−こべいろく−のりつな/と¥いふ¥もの/なり。¥ただいま¥わが¥いのち¥たすけ/させ¥おはしませ。¥さ/だに/も¥さふらは/ば、¥ご=へん/の¥いちもん、¥なんじふにん/も¥おはせよ、¥こんど/の¥くんこう/の¥しやう/に¥まうし−かへ/て、¥おん=いのち/ばかり/を/ば¥たすけ¥たてまつら/ん」/と¥いひ/けれ/ば、¥ゑつちうの−せんじ¥おほき/に¥いかつ/て、「¥もりとし¥み¥ふせう/なれ/ども、¥さすが¥へいけ/の¥いちもん/なり。¥もりとし¥げんじ/を¥たのま/う/ども¥おもひ/も¥よら/ず。¥げんじ¥また¥もりとし/に¥たのま/れ/う/ども、¥よも¥おもひ¥たまは/じ。¥にくい¥きみ/が¥まうしやう/かな」/とて、¥すでに¥くび/を¥かか/ん/と¥し/けれ/ば、「¥まさなう¥ざふらふ。¥かうにん/の¥くび¥かく¥やう/や¥ある」/と¥いひ/けれ/ば、「¥さら/ば¥たすけ/ん」/とて¥ゆるし/けり。¥まへ/は¥かただ/の¥はたけ/の¥やう/なる/が、¥うしろ/は¥みづた/の¥ごみ¥ふかかり/ける¥くろ/の¥うへ/に、¥ふたり/ながらP166¥こし¥うち−かけ/て、¥いき¥つぎ−ゐ/たり。¥やや¥あつ/て、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥つきげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て¥のつ/たり/ける¥むしや¥いつき、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−きたる。¥ゑつちうの−せんじ¥あやし=げ/に¥み/けれ/ば、「¥あれ/は¥ゐのまた/に¥したしう¥さふらふ¥ひとみの−しらう/で¥さふらふ/が、¥のりつな/が¥ある/を¥み/て、¥まうで−くる/と¥おぼえ¥さふらふ。¥くるしう/も¥さふらは/ぬ」/と¥いひ/ながら、¥あれ/が¥ちかづく/ほど/なら/ば、¥しや¥くま/んずる/ものを、¥おち−あは/ぬ¥こと/は¥よも¥あら/じ/と¥おもひ/て¥まつ¥ところ/に、¥あはひ¥いつたん/ばかり/に¥はせ−き/たる。¥ゑつちうの−せんじ、¥はじめ/は¥ふたり/の¥かたき/を¥ひとめ/づつ¥み/ける/が、¥しだいに¥ちかづく¥かたき/を¥はた/と¥まぼつ/て、¥のりつな/を¥み/ぬ¥ひま/に、¥ゐのまた¥ちからあし/を¥ふん/で¥たち−あがり、¥こぶし/を¥つよく¥にぎり、¥ゑつちうの−せんじ/が¥よろひ/の¥むないた/を、¥ばく/と¥つい/て、¥うしろ/へ¥のけ/に¥つき−たふす。¥おき−あがら/ん/と¥する¥ところ/を、¥ゐのまた¥うへ/に¥のり−かかり、¥ゑつちうの−せんじ/が¥こし/の¥かたな/を¥ぬき、¥よろひ/の¥くさずり¥ひき−あげ/て、¥つか/も¥こぶし/も¥とほれ¥とほれ/と、¥み−かたな¥さい/て¥くび/を¥とる。¥さる−ほど/に¥ひとみの−しらう/も¥いで−き/たり。¥かやう/の¥とき/は¥ろんずる¥こと/も¥あり/とて、¥やがて¥くび/を/ば¥たち/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥この¥ひごろ¥へいけ/の¥おん=かた/に¥おにかみ/と¥きこえ/つる¥ゑつちうの−せんじ−もりとし/を/ば、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥ゐのまたの−こべいろく−のりつな/が¥うつ/たる/ぞ/や」/と¥なのつ/て、¥その−ひ/の¥かうみやう/の¥いち/の−ふで/に/ぞ¥つき/に/ける。P167
「ただのりさいご」(『ただのりのさいご』)S0914¥さつまの−かみ−ただのり/は、¥にし/の−て/の¥たいしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥こんぢ/の−にしき/の−ひたたれ/に、¥くろいと−をどし/の−よろひ¥き/て、¥くろき¥むま/の¥ふとう¥たくましき/に、¥いかけぢ/の¥くら¥おい/て¥のり¥たまひ/たり/ける/が、¥その¥せい¥ひやくき/ばかり/が¥なか/に¥うち−かこま/れ/て、¥いと¥さわが/ず、¥ひかへ−ひかへ¥おち¥たまふ¥ところ/に、¥ここ/に¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥をかべの−ろくやた−ただずみ、¥よき¥かたき/と¥め/を¥かけ、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おつ−かけ¥たてまつり、「¥あれ/は¥いか/に、¥よき¥たいしやうぐん/と/こそ¥み¥まゐらせ/て¥さふらへ。¥まさなう/も¥かたき/に¥うしろ/を¥みせ¥たまふ/ものかな。¥かへさ/せ¥たまへ」/と¥ことば/を¥かけ/けれ/ば、「¥これ/は¥み=かた/ぞ」/とて、¥ふり−あふのぎ¥たまふ¥うち−かぶと/を¥み−いれ/たれ/ば、¥かねぐろ/なり。「¥あつぱれ¥み=かた/に、¥かね¥つけ/たる¥もの/は¥なき/ものを。¥いかさま/に/も¥これ/は¥へいけ/の¥きんだち/にて/こそ¥おはす/らめ」/とて、¥おし−ならべ/て¥むず/と¥くむ。¥これ/を¥み/て¥ひやくき/ばかり/の¥つはもの=ども、¥みな¥くにぐに/の¥かりむしや/なり/けれ/ば、¥いつき/も¥おち−あは/ず、¥われ¥さき/に/と/ぞ¥おち−ゆき/ける。¥さつまの−かみ/は¥きこゆる¥くまの−そだち/の¥だい−ぢから、¥くつきやう/の¥はやわざ/にて¥おはし/けれ/ば、¥ろくやた/を¥つかう/で、「¥につくい¥やつ/が、¥み=かた/ぞ/と¥いは/ば¥いは/せよ/かし」/とて、¥ろくやた/を¥とつ/て¥ひき−よせ、¥むま/の¥うへ/にて¥ふた−かたな、¥おち−つく¥ところ/で¥ひと−かたなP168、¥み−かたな/まで/こそ¥つか/れ/けれ。¥ふた−かたな/は¥よろひ/の¥うへ/なれ/ば¥とほら/ず、¥ひと−かたな/は¥うち−かぶと/へ¥つき−いれ/られ/たり/けれ/ども、¥うすで/なれ/ば¥しな/ざり/ける/を、¥とつ/て¥おさへ/て、¥くび/を¥かか/ん/と¥し¥たまふ¥ところ/に、¥ろくやた/が¥わらは、¥おくれ−ばせ/に¥はせ−きたつ/て、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥うち−がたな/を¥ぬい/て、¥さつまの−かみ/の¥みぎ/の¥かひな/を、¥ひぢ/の¥もと/より¥ふつと¥うち−おとす。¥さつまの−かみ¥いま/は¥かう/と/や¥おもは/れ/けん。「¥しばし¥のけ、¥さいご/の¥じふねん¥となへ/ん」/とて、¥ろくやた/を¥つかう/で、¥ゆんだけ/ばかり/ぞ¥なげ−のけ/らる。¥その−のち¥にし/に¥むかひ、「¥くわうみやう−へんぜう−じつぱう−せかい、¥ねんぶつ−しゆじやう−せつしゆ−ふしや」/と¥のたまひ/も¥はて/ね/ば、¥ろくやた¥うしろ/より¥より、¥さつまの−かみ/の¥くび/を¥とる。¥よい¥くび¥うち¥たてまつ/たり/と/は¥おもへ/ども、¥な/を/ば¥たれ/と/も¥しら/ざり/ける/が、¥えびら/に¥ゆひ−つけ/られ/たる¥ふみ/を¥とつ/て¥み/けれ/ば、¥りよしゆく/の−はな/と¥いふ¥だい/にて、¥うた/を/ぞ¥いつしゆ¥よま/れ/たる。¥
ゆき−くれ/て¥こ/の¥したかげ/を¥やど/と¥せ/ば¥はな/や¥こよひ/の¥あるじ/なら/まし W070¥
ただのり/と¥かか/れ/たり/ける¥ゆゑ/に/こそ、¥さつまの−かみ/と/は¥しり/てげれ。¥やがて¥くび/を/ば¥たち/の¥さき/に¥つらぬき、¥たかく¥さし−あげ、¥だい−おんじやう/を¥あげ/て、「¥この¥ひごろ¥につぽんごく/に¥おにかみ/と¥きこえ/させ¥たまひ/たる¥さつまの−かみ=どの/を/ば、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥をかべの−ろくやた−ただずみ/が¥うち¥たてまつ/たる/ぞ/や」/と、¥なのつ/たり/けれ/ば、¥かたき/も¥み=かた/も¥これ/を¥きい/て、「¥あな¥いとほし、¥ぶげい/に/も¥かだう/に/も¥すぐれ/て、¥よき¥たいしやうぐん/にて¥おはし/つる¥ひと/を」/とて、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらし/ける。P169
「しげひらいけどり」(『しげひらいけどり』)S0915¥ほん−ざんみ/の−ちうぢやう−しげひらの−きやう/は、¥いくた/の−もり/の¥ふくしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥その−ひ/の¥しやうぞく/に/は、¥かち/に¥しろう¥き/なる¥いと/を¥もつて、¥いは/に¥むらちどり¥ぬう/たる¥ひたたれ/に、¥むらさき−すそご/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥もつ/て、¥どうじかげ/と¥いふ、¥きこゆる¥めいば/に、¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て¥のり¥たまへ/り。¥めのとご/の¥ごとう−びやうゑ−もりなが/は、¥しげめゆひ/の−ひたたれ/に、¥ひ−をどし/の−よろひ¥き/て、¥さんみ/の−ちうじやう/の¥さ/しも¥ひざう−せ/られ/たる、¥よめなし−つきげ/に/ぞ¥のせ/られ/たる。¥しゆじう¥にき¥たすけ−ぶね/に¥のら/ん/とて、¥なぎさ/の¥かた/へ¥おち¥たまふ¥ところ/に、¥しやうの−しらう−たかいへ、¥かぢはら−げんだ−かげすゑ、¥よき¥かたき/と¥め/を¥かけ、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おつ−かけ¥たてまつる。¥なぎさ/に/は¥たすけ−ぶね=ども¥おほかり/けれ/ども、¥うしろ/より¥かたき/は¥おつ−かけ/たり。¥のる/べき¥ひま/も¥なかり/けれ/ば、¥みなとがは、¥かるもがは/を/も¥うち−わたり、¥はすのいけ/を¥めて/に¥み/て、¥こま/の−はやし/を¥ゆんで/に¥なし、¥いたやど、¥すま/を/も¥うち−すぎ/て、¥にし/を¥さし/て/ぞ¥おち¥たまふ。¥さんみ/の−ちうじやう/は、¥どうじかげ/と¥いふ¥きこゆる¥めいば/に¥のり¥たまへ/り。¥もり−ふせ/たる¥むま=ども、¥たやすう¥おつ−つく/べし/と/も¥みえ/ざり/けれ/ば、¥かぢはら、¥もしや/と、¥とほや/に¥よつ−ぴい/て¥ひやうど¥はなつ。¥さんみ/の−ちうじやう/のP170¥むま/の¥さんづ/を¥のぶか/に¥い/させ/て¥よわる¥ところ/に、¥めのとご/の¥ごとう−びやうゑ−もりなが、¥わが¥むま¥めさ/れ/な/ん/と/や¥おもひ/けん、¥むち/を¥うつ/て/ぞ¥にげ/たり/ける。¥さんみ/の−ちうじやう、「¥いか/に¥もりなが、¥われ/を/ば¥すて/て¥いづく/へ¥ゆく/ぞ。¥ひごろ/は¥さ/は¥ちぎら/ざり/し/ものを」/と¥のたまへ/ども、¥そら−きか/ず/して、¥よろひ/に¥つけ/たる¥あかじるし=ども¥かなぐり−すて/て、¥ただ¥にげ/に/こそ¥にげ/たり/けれ。¥さんみ/の−ちうじやう、¥むま/は¥よわる、¥うみ/へ¥ざつと¥うち−いれ¥たまふ。¥み/を¥なげ/ん/と¥し¥たまへ/ども、¥そこ/しも¥とほあさ/にて、¥しづむ/べき¥やう/も¥なかり/けれ/ば、¥はら/を¥きら/ん/と¥し¥たまふ¥ところ/に、¥しやうの−しらう−たかいへ、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−きたり、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、「¥まさなう¥ざふらふ。¥いづく/まで/も¥おん=とも¥つかまつり¥さふらは/んずる/ものを」/とて、¥わが¥のつ/たり/ける¥むま/に¥かき−のせ¥たてまつり、¥くら/の¥まへわ/に¥しめ−つけ¥たてまつ/て、¥わが−み/は¥のりがへ/に¥のつ/て、¥み=かた/の¥ぢん/へ/ぞ¥いり/に/ける。¥めのとご/の¥もりなが/は、¥そこ/を/ば¥なつく¥にげ−のび/て、¥のち/に/は¥くまの−ぼふし/に、¥をなかの−ほつけう/を¥たのう/で¥ゐ/たり/ける/が、¥ほつけう¥しん/で/の¥のち、¥ごけ/の¥にこう/の¥そしよう/の¥ため/に、¥みやこ/へ¥のぼる/に¥とも−し/て¥のぼつ/たり/けれ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう/の¥めのとご/にて、¥じやうげ¥おほく/は¥み−しら/れ/たり。「¥あな¥にく/や、¥ごとう−びやうゑ−もりなが/が、¥さんみ/の−ちうじやう/の¥さ/しも¥ふびん/に¥し¥たまひ/つる/に、¥いつしよ/で¥いか/に/も−なら/ず/して、¥おもひ/も¥よら/ぬ¥ごけ/の¥にこう/の¥とも−し/て¥のぼつ/たる/よ」/とて、¥みな¥つまはじき/を/ぞ¥し/ける。¥もりなが/も¥さすが¥はづかしう/や¥おもは/れ/けん、¥あふぎ/を¥かほ/に¥かざし/ける/と/ぞ¥きこえ/し。P171
「あつもり」(『あつもりのさいご』)S0916¥さる−ほど/に¥いちのたに/の¥いくさ¥やぶれ/に/しか/ば、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥くまがへの−じらう−なほざね、¥へいけ/の¥きんだち/の¥たすけ−ぶね/に¥のら/ん/とて、¥みぎは/の¥かた/へ/や¥おち−ゆき¥たまふ/らん、¥あつぱれ¥よき¥たいしやうぐん/に¥くま/ばや/と¥おもひ、¥ほそみち/に¥かかつ/て¥みぎは/の¥かた/へ¥あゆま/する¥ところ/に、¥ここ/に¥ねりぬき/に¥つる¥ぬう/たる¥ひたたれ/に、¥もよぎ−にほひ/の−よろひ¥き/て、¥くはがた¥うつ/たる¥かぶと/の¥を/を¥しめ、¥こがね−づくり/の−たち/を¥はき、¥にじふし¥さい/たる¥きりふ/の−や¥おひ、¥しげどう/の−ゆみ¥もち、¥れんぜん−あしげ/なる¥むま/に、¥きんぷくりん/の−くら¥おい/て¥のつ/たり/ける¥もの¥いつき、¥おき/なる¥ふね/を¥め/に¥かけ、¥うみ/へ¥ざつ/と¥うち−いれ、¥ごろくたん/ばかり/ぞ¥およが/せ/ける。¥くまがへ、「¥あれ/は¥いか/に、¥よき¥たいしやうぐん/と/こそ¥み¥まゐらせ/て¥さふらへ。¥まさなう/も¥かたき/に¥うしろ/を¥みせ¥たまふ/ものかな。¥かへさ/せ¥たまへ¥かへさ/せ¥たまへ」/と、¥あふぎ/を¥あげ/て¥まねき/けれ/ば、¥まねか/れ/て¥とつ/て¥かへし、¥みぎは/に¥うち−あがら/ん/と¥し¥たまふ¥ところ/に、¥くまがへ¥なみうちぎは/にて¥おし−ならべ、¥むず/と¥くん/で、¥どうど¥おち、¥とつ/て¥おさへ/て¥くび/を¥かか/ん/とて、¥かぶと/を¥おし−あふのけ/て¥み/たり/けれ/ば、¥うすげしやう−し/て¥かねぐろ/なり。¥わが¥こ/の¥こじらう/が¥よはひ/ほど/して、¥じふろくしち/ばかん/なる/が、¥ようがん¥まことに¥びれい/なり。「¥そもそも¥いか/なる¥ひと/にて¥わたら/せ¥たまひ¥さふらふ/やらん。¥なのら/せ¥たまへ。¥たすけ¥まゐらせ/ん」/とP172¥まうし/けれ/ば、「¥まづ¥かう¥いふ¥わ=との/は¥た/そ」。「¥もの¥その¥かず/にて/は¥さふらは/ね/ども、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥くまがへの−じらう−なほざね」/と¥なのり¥まうす。「¥さて/は¥なんぢ/が¥ため/に/は¥よい¥かたき/ぞ。¥なのら/ず/とも¥くび/を¥とつ/て¥ひと/に¥とへ。¥み−しら/うずる/ぞ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥くまがへ、「¥あつぱれ¥たいしやうぐん/や。¥この¥ひと¥いち−にん¥うち¥たてまつ/たり/とも、¥まく/べき¥いくさ/に¥かつ/べき¥やう¥なし。¥また¥たすけ¥たてまつ/たり/とも、¥かちいくさ/に¥まくる¥こと/も¥よも¥あら/じ。¥けさ¥いちのたに/にて、¥わが¥こ/の¥こじらう/が¥うすで¥おう/たる/を/だに/も、¥なほざね/は¥こころ−ぐるしく¥おもふ/に、¥この¥との(/の¥ちち)、¥うた/れ¥たまひ/ぬ/と¥きき¥たまひ/て、¥さ/こそ/は¥なげき−かなしみ¥たまは/んず/らめ。¥たすけ¥まゐらせ/ん」/とて、¥うしろ/を¥かへりみ/たり/けれ/ば、¥とひ、¥かぢはら¥ごじつき/ばかり/で¥いで−き/たる。¥くまがへ¥なみだ/を¥はらはら/と¥ながい/て、「¥あれ¥ごらん¥さふらへ。¥いか/に/も−し/て¥たすけ¥まゐらせ/ん/と/は¥ぞんじ¥さふらへ/ども、¥み=かた/の¥ぐんびやう¥うんか/の/ごとく/に¥みちみち/て、¥よも¥のがし¥まゐらせ¥さふらは/じ。¥あはれ¥おなじう/は、¥なほざね/が¥て/に¥かけ¥たてまつ/て、¥のち/の¥おん=けうやう/を/も¥つかまつり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、「¥ただ¥なにさま/に/も、¥とうとう¥くび/を¥とれ」/と/ぞ¥のたまひ/ける。¥くまがへ¥あまり/に¥いとほしく/て、¥いづく/に¥かたな/を¥たつ/べし/と/も¥おぼえ/ず、¥め/も¥くれ¥こころ/も¥きえ−はて/て、¥ぜんごふかく/に¥おぼえ/けれ/ども、¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥なくなく¥くび/を/ぞ¥かい/てげる。「¥あはれ¥ゆみ−や¥とる¥み/ほど¥くちをしかり/ける¥こと/は¥なし。¥ぶげい/の¥いへ/に¥うまれ/ず/は、¥なに¥し/に¥ただいま¥かかる¥うき−め/を/ば¥みる/べき。¥なさけ−なう/も¥うち¥たてまつ/たる/ものかな」/と、¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と/ぞ¥なき−ゐ/たる。¥くび/を¥つつま/ん/とてP173、¥よろひ−ひたたれ/を¥とい/て¥み/けれ/ば、¥にしき/の¥ふくろ/に¥いれ/られ/たり/ける¥ふえ/を/ぞ¥こし/に¥ささ/れ/たる。「¥あな¥いとほし、¥この¥あかつき¥じやう/の¥うち/にて、¥くわんげん−し¥たまひ/つる/は、¥この¥ひとびと/にて¥おはし/けり。¥たうじ¥み=かた/に¥とうごく/の¥せい、¥なんまんぎ/か¥ある/らめ/ども、¥いくさ/の¥ぢん/に¥ふえ¥もつ¥ひと/は¥よも¥あら/じ。¥じやうらふ/は¥なほ/も¥やさしかり/ける/ものを」/とて、¥これ/を¥とつ/て¥たいしやうぐん/の¥おん=げんざん/に¥いれ/たり/けれ/ば、¥みる¥ひと¥なみだ/を¥ながし/けり。¥のち/に¥きけ/ば、¥しゆり/の−だいぶ−つねもり/の¥おとご、¥たいふ−あつもり/とて、¥しやうねん¥じふしち/に/ぞ¥なら/れ/ける。¥それ/より/して/こそ、¥くまがへ/が¥ほつしん/の¥こころ/は¥いで−き/に/けれ。¥くだん/の¥ふえ/は、¥おほぢ¥ただもり、¥ふえ/の¥じやうず/にて、¥とばのゐん/より¥くだし−たまはら/れ/たり/し/を、¥つねもり¥さうでん−せ/られ/たり/し/を、¥あつもり¥ふえ/の¥きりやう/たる/に¥よつ/て、¥もた/れ/たり/ける/とかや。¥な/を/ば¥さえだ/と/ぞ¥まうし/ける。¥きやうげん−きぎよ/の¥ことわり/と¥いひ/ながら、¥つひに¥さんぶつじよう/の¥いん/と¥なる/こそ¥あはれ/なれ。¥
「はまいくさ」(『ともあきらのさいご』)S0917¥かどわき=どの/の¥ばつし、¥くらんど/の−たいふ−なりもり/は、¥ひたちの−くに/の¥ぢうにん、¥ひぢやの−ごらう−しげゆき/と¥くん/で¥うた/れ¥たまひ/ぬ。¥くわうごぐう/の−すけ−つねまさ/は、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥かはごえの−こたらう−しげふさ/が¥て/に¥とり−こめP174¥たてまつ/て、¥つひに¥うち¥たてまつる。¥をはりの−かみ−きよさだ、¥あはぢの−かみ−きよふさ、¥わかさの−かみ−つねとし、¥さんぎ¥つれ/て¥かたき/の¥なか/へ¥わつ/て¥いり、¥さんざん/に¥たたかひ、¥ぶんどり¥あまた¥し/て、¥いつしよ/で¥うちじに−し/てげり。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/は、¥いくた/の−もり/の¥たいしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥その¥せい¥みな¥おち−うせ¥うた/れ/に/しか/ば、¥おん=こ¥むさしの−かみ−ともあきら、¥さぶらひ/に¥けんもつ−たらう−よりかた、¥しゆじう¥さんぎ¥みぎは/の¥かた/へ¥おち¥たまふ¥ところ/に、¥ここ/に¥こだま−たう/と¥おぼしく/て、¥うちは/の¥はた¥さし/たる¥もの=ども/が¥じつき/ばかり、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥おし−かけ¥たてまつる。¥けんもつ−たらう/は、¥くつきやう/の¥ゆみ/の¥じやうず/なり/けれ/ば、¥とつ/て¥かへし、¥まづ¥まつさき/に¥すすん/だる¥はたさし/が¥くび/の¥ほね/を、¥ひやうつば/と¥い/て、¥むま/より¥さかさま/に¥い−おとす。¥その¥なか/の¥たいしやう/と¥おぼしき¥もの、¥しん−ぢうなごん/に¥くみ¥たてまつら/ん/とて¥はせ−ならぶる¥ところ/に、¥おん=こ¥むさしの−かみ−ともあきら、¥ちち/を¥うた/せ/じ/と、¥なか/に¥へだたり、¥おし−ならべ、¥むず/と¥くん/で、¥どうど¥おち、¥とつ/て¥おさへ/て¥くび/を¥かき、¥たち−あがら/ん/と¥し¥たまふ¥ところ/に、¥かたき/が¥わらは¥おち−あはせ/て、¥むさしの−かみ/の¥くび/を¥とる。¥けんもつ−たらう¥おち−かさなり、¥むさしの−かみ¥うち¥たてまつ/たり/ける¥かたき/の¥わらは/を/も¥うち/てげり。¥その−のち¥やだね/の¥ある/ほど¥い−つくし、¥うちもの¥ぬい/て¥たたかひ/ける/が、¥ゆんで/の¥ひざぐち/を¥したたか/に¥い/させ、¥たち/も¥あがら/で¥ゐ/ながら¥うちじに−し/てげり。¥この¥まぎれ/に¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/は、¥そこ/を¥つと¥にげ−のび/て、¥くつきやう/の¥いき−ながき¥めいば/に/は¥のり¥たまひ/ぬ。¥うみ/の¥おもて¥にじふ−よ−ちやう¥およが/せ/て、¥おほい=との/の¥おん=ふね/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。P175¥ふね/に/は¥ひと¥おほく¥とり−のつ/て、¥むま¥たつ/べき¥やう/も¥なかり/けれ/ば、¥むま/を/ば¥なぎさ/へ¥おつ−かへさ/る。¥あはの−みんぶ−しげよし、「¥お=むま¥かたき/の¥もの/に¥なり¥さふらひ/な/んず。¥い−ころし¥さふらは/ん」/とて、¥かたてや¥はげ/て¥いで/けれ/ば、¥しん−ぢうなごん、「¥たとひ¥なん/の¥もの/に/も¥なら/ば¥なれ、¥ただいま¥わが¥いのち¥たすけ/たら/んずる/ものを。¥ある/べう/も¥なし」/と¥のたまへ/ば、¥ちから¥およば/で¥い/ざり/けり。¥この¥むま、¥ぬし/の¥わかれ/を¥をしみ/つつ、¥しばし/は¥ふね/を¥はなれ/も¥やら/ず、¥おき/の¥かた/へ¥およぎ/ける/が、¥しだいに¥とほく¥なり/けれ/ば、¥むなしき¥なぎさ/へ¥およぎ−かへり、¥あし¥たつ/ほど/に/も¥なり/しか/ば、¥なほ¥ふね/の¥かた/を¥かへりみ/て、¥にさんど/まで/こそ¥いななき/けれ。¥その−のち¥くが/に¥あがつ/て¥やすみ−ゐ/たり/ける/を、¥かはごえの−こたらう−しげふさ、¥とつ/て¥ゐん/へ¥まゐらせ/たり。¥もとも¥この¥むま¥ゐん/の¥ご=ひざう/にて、¥いち/の−み=むまや/に¥たて/られ/たり/し/を、¥ひととせ¥むねもり=こう¥ないだいじん/に¥なつ/て、¥よろこび−まうし/の¥あり/し¥とき、¥くだし−たまはら/れ/たり/し/を、¥おとと¥ちうなごん/に¥あづけ/られ/たり/しか/ば、¥あまり/に¥ひざう−し/て、¥この¥むま/の¥いのり/の¥ため/に/とて、¥まいぐわつ¥ついたち−ごと/に、¥たいざんぶくん/を/ぞ¥まつら/れ/ける。¥その¥ゆゑ/に/や¥むま/の¥いき/も¥ながう、¥しゆ/の¥いのち/を/も¥たすけ/ける/こそ¥めでたけれ。¥この¥むま¥もと/は¥しなのの−くに¥ゐのうへ−だち/にて¥あり/けれ/ば、¥ゐのうへぐろ/と/ぞ¥めさ/れ/ける。¥こんど/は¥かはごえ/が¥とつ/て¥ゐん/へ¥まゐらせ/たり/けれ/ば、¥かはごえぐろ/と/ぞ¥めさ/れ/ける。¥その−のち¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう、¥おほい=との/の¥おん=まへ/に¥おはし/て、¥なみだ/を¥ながい/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥むさしの−かみ/に/も¥おくれ¥さふらひ/ぬ。¥けんもつ−たらう/を/も¥うた/せ¥さふらひ/ぬ。¥いま/は¥こころ−ぼそう/こそP176¥まかり−なつ/て¥さふらへ。¥され/ば¥こ/は¥あつ/て、¥おや/を¥うた/せ/じ/と、¥かたき/に¥くむ/を¥み/ながら、¥いか/なる¥おや/なれ/ば、¥こ/の¥うた/るる/を¥たすけ/ず/して、¥これ/まで¥のがれ¥まゐつ/て¥さふらふ/やらん。¥あはれ¥ひと/の¥うへ/なら/ば、¥いか/ばかり¥もどかしう¥さふらふ/べき/に、¥わが−み/の−うへ/に¥なり¥さふらへ/ば、¥よう¥いのち/は¥をしい¥もの/にて¥さふらひ/けり/と、¥いま/こそ¥おもひ−しら/れ/て¥さふらへ。¥ひとびと/の¥おぼしめさ/ん¥おん=こころ/の¥うち=ども/こそ、¥はづかしう¥さふらへ」/とて、¥よろひ/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥さめざめ/と¥なか/れ/けれ/ば、¥おほい=との、「¥まことに¥むさしの−かみ/の¥ちち/の¥いのち/に¥かはら/れ/ける/こそ¥あり−がたけれ。¥て/も¥きき、¥こころ/も¥かう/に/して、¥よき¥たいしやうぐん/にて¥おはし/つる¥ひと/を。¥あの¥きよむね/と¥どうねん/にて、¥ことし/は¥じふろく/な」/とて、¥おん=こ¥ゑもん/の−かみ/の¥おはし/ける¥かた/を¥み¥たまひ/て、¥なみだぐみ¥たまへ/ば、¥その¥ざ/に¥いくら/も¥なみ−ゐ¥たまへ/る¥ひとびと、¥こころ−ある/も¥こころ−なき/も、¥みな¥よろひ/の¥そで/を/ぞ¥ぬらさ/れ/ける。¥
「おちあし」(『おちあし』)S0918¥こまつ=どの/の¥ばつし¥びつちうの−かみ−もろもり/は、¥しゆじう¥しちにん¥こ−ぶね/に¥のり¥おち¥たまふ¥ところ/に、¥ここ/に¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥さぶらひ/に、¥せいゑもん−きんなが/と¥いふ¥もの、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−き/たり、「¥あれ/は¥いか/に、¥びつちうの−かう=との/の¥おん=ふね/と/こそ¥み¥まゐらせ/て¥さふらへ。¥まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ばP177、¥ふね/を¥なぎさ/へ¥さし−よせ/たり。¥だい/の−をとこ/の¥よろひ¥き/ながら、¥むま/より¥ふね/へ¥かはと¥とび−のら/う/に、¥なじか/は¥よかる/べき。¥ふね/は¥ちひさし、¥くるり/と¥ふみ−かへし/てげり。¥びつちうの−かみ、¥うき/ぬ¥しづみ/ぬ¥し¥たまふ¥ところ/に、¥はたけやま/が¥らうどう、¥ほんだの−じらう−ちかつね、¥しゆじう¥じふしごき、¥むち−あぶみ/を¥あはせ/て¥はせ−き/たり、¥いそぎ¥むま/より¥とん/で¥おり、¥びつちうの−かみ/を¥くまで/に¥かけ/て¥ひき−あげ¥たてまつり、¥つひに¥おん=くび/を/ぞ¥かい/てげる。¥しやうねん¥じふしさい/と/ぞ¥きこえ/し。¥ゑちぜんの−さんみ−みちもりの−きやう/は、¥やま/の−て/の¥たいしやうぐん/にて¥おはし/ける/が、¥その¥せい¥みな¥おち−うせ¥うた/れ、¥おほぜい/に¥おし−へだて/られ/て、¥おとと¥のとの−かみ/に/は¥おくれ¥たまひ/ぬ。¥こころ−しづか/に¥じがい−せ/ん/とて、¥ひんがし/に¥むかつ/て¥おち−ゆき¥たまふ¥ところ/に、¥あふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ささきの−きむらの−さぶらう−なりつな、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥たまのゐの−しらう−すけかげ、¥かれ−これ¥しちき/が¥なか/に¥とり−こめ¥まゐらせ/て、¥つひに¥うち¥たてまつ/てげり。¥その−とき/まで/は、¥さぶらひ¥いち−にん¥つき¥たてまつ/たり/けれ/ども、¥これ/も¥さいご/の¥とき/は¥おち−あは/ず。¥およそ¥とうざい/の¥きどぐち、¥とき¥うつる/ほど/に/も¥なり/しか/ば、¥げんぺい¥かず/を¥つくし/て¥うた/れ/に/けり。¥やぐら/の¥まへ、¥さかもぎ/の¥した/に/は、¥じんば/の¥ししむら¥やま/の/ごとし。¥いちのたに¥を−ざさ−はら、¥みどん/の¥いろ/を¥ひき−かへ/て、¥うすくれなゐ/に/ぞ¥なり/に/ける。¥いちのたに、¥いくた/の−もり、¥やま/の¥そば、¥うみ/の¥みぎは/に、¥い/られ¥きら/れ/て¥しぬる/は¥しら/ず、¥げんじ/の¥かた/に¥きり−かけ/らるる¥くび=ども、¥にせん−よ−にん/なり。¥こんど¥いちのたに/にて¥うた/れ/させ¥たまへ/る¥むねと/の¥ひとびと/に/は、¥まづ¥ゑちぜんの−さんみ−みちもり、¥おとと¥くらんど/の−たいふ−なりもり、¥さつまの−かみ−ただのり、¥むさしの−かみ−ともあきら、¥びつちうの−かみ−もろもり、¥をはりの−かみ−きよさだ、P178¥あはぢの−かみ−きよふさ、¥つねもり/の¥ちやくし¥くわうごぐう/の−すけ−つねまさ、¥おとと¥わかさの−かみ−つねとし、¥その¥おとと¥たいふ−あつもり、¥いじやう¥じふにん/と/ぞ¥きこえ/し。¥いくさ¥やぶれ/に/けれ/ば、¥しゆしやう/を¥はじめ¥まゐらせ/て、¥ひとびと¥みな¥お=ふね/に¥めし/て、¥いで/させ¥たまふ/こそ¥かなしけれ。¥しほ/に¥ひか/れ¥かぜ/に¥したがつ/て、¥き/の−ぢ/へ¥おもむく¥ふね/も¥あり、¥あしや/の¥おき/に¥こぎ−いで/て、¥なみ/に¥ゆら/るる¥ふね/も¥あり。¥あるひは¥すま/より¥あかし/の¥うら−づたひ、¥とまり¥さだめ/ぬ¥かぢまくら、¥かたしく¥そで/も¥しをれ/つつ、¥おぼろ/に¥かすむ¥はる/の¥つき、¥こころ/を¥くだか/ぬ¥ひと/ぞ¥なき。¥あるひは¥あはぢ/の−せと/を¥おし−わたり、¥ゑじま/が−いそ/に¥ただよへ/ば、¥なみぢ¥はるか/に¥なき−わたり、¥とも¥まよは/せ/る¥さ−よ−ちどり、¥これ/も¥わが−み/の¥たぐひ/かな。¥ゆく−すゑ¥いまだ¥いづく/と/も、¥おもひ−さだめ/ぬ/か/と¥おぼしく/て、¥いちのたに/の¥おき/に¥やすらふ¥ふね/も¥あり。¥かやう/に¥うらうら−しまじま/に¥ただよへ/ば、¥たがひ/の¥ししやう/も¥しり−がたし。¥くに/を¥したがふる¥こと/も¥じふしかこく、¥せい/の¥つく¥こと/も¥じふまん−よ−き、¥みやこ/へ¥ちかづく¥こと/も¥わづか/に¥いちにち/の¥みち/なれ/ば、¥こんど/は¥さり/とも/と¥たのもしう/こそ¥おもは/れ/つる/に、¥いちのたに/を/も¥せめ−おとさ/れ/て、¥いとど¥こころ−ぼそう/ぞ¥なら/れ/ける。¥
「こざいしやう」(『こざいしやうみなげ』)S0919¥ゑちぜんの−さんみ−みちもりの−きやう/の¥さぶらひ/に、¥くんだ−たきぐち−ときかず/と¥いふ¥もの¥あり。¥いそぎ¥きたのかた/の¥お=ふね/にP179¥まゐつ/て¥まうし/ける/は、「¥きみ/は¥けさ¥みなとがは/の¥しも/にて、¥かたき¥しちき/が¥なか/に¥とり−こめ¥まゐらせ/て、¥つひに¥うた/れ/させ¥たまひ/て¥さふらひ/ぬ。¥なか/に/も¥こと/に¥て/を¥おろい/て¥うち¥たてまつ/たり/し/は、¥あふみの−くに/の¥ぢうにん、¥ささきの−きむらの−さぶらう−なりつな、¥むさしの−くに/の¥ぢうにん、¥たまのゐの−しらう−すけかげ/と/ぞ、¥なのり¥まゐらせ/て¥さふらひ/つれ。¥ときかず/も¥いつしよ/で¥うちじに¥つかまつり、¥さいご/の¥おん=とも¥つかまつる/べう¥さふらひ/つれ/ども、¥かねて/より¥おほせ¥さふらひ/し/は、¥みちもり¥いか/に−なる/とも、¥なんぢ/は¥いのち/を¥すつ/べから/ず。¥いか/に/も−し/て¥ながらへ/て、¥おん=ゆくへ/を/も¥たづね¥まゐらせよ/と、¥おほせ¥さふらひ/し/ほど/に、¥かひ−なき¥いのち/ばかり¥いき/て、¥つれなう/こそ¥これ/まで¥まゐつ/て¥さふらへ」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた、¥とかう/の¥へんじ/に/も¥および¥たまは/ず。¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥いちぢやう¥うた/れ¥たまひ/ぬ/と/は¥きき¥たまへ/ども、¥もし¥ひがごと/にて/も/や¥ある/らん、¥いき/て¥かへら/るる¥こと/も/や/と、¥にさんにち/は、¥あからさま/に¥いで/たる¥ひと/を、¥まつ¥ここち−し/て¥おはし/ける/が、¥しごにち/も¥すぎ/しか/ば、¥もしや/の¥たのみ/も¥よわり−はて/て、¥いとど¥こころ−ぼそく/ぞ¥なら/れ/ける。¥ただ¥いち−にん¥つき¥たてまつり/たり/ける¥めのと/の−にようばう/も、¥おなじ¥まくら/に¥ふし−しづみ/に/けり。¥かく/と¥きき¥たまひ/し¥なぬかのひ/の¥くれ/ほど/より、¥じふさんにち/の¥よ/まで/は、¥おき/も¥あがり¥たまは/ず。¥あくれ/ば¥じふしにち、¥やしま/へ¥おし−わたる¥よひ¥うち−すぐる/まで/は、¥ふし¥たまひ/たり/ける/が、¥ふけ−ゆく¥まま/に、¥ふね/の¥うち¥しづまり/けれ/ば、¥めのと/の−にようばう/に¥のたまひ/ける/は、「¥けさ/まで/は、¥さんみ¥うた/れ/に/し/と/は¥きき/しか/ども、¥まこと/と/も¥おもは/で¥あり/つる/が、¥このP180¥くれ/ほど/より、¥げに¥さ/も¥あら/ん/と¥おもひ−さだめ/て¥ある/ぞ/とよ。¥その¥ゆゑ/は、¥みな¥ひと−ごと/に、¥みなとがは/と/やらん/にて、¥さんみ¥うた/れ/に/し/と/は¥いひ/しか/ども、¥その−のち、¥いき/て¥あう/たり/と¥いふ¥もの¥いち−にん/も¥なし。¥あす¥うち−いで/ん/とて/の¥よ、¥あからさま/なる¥ところ/にて、¥ゆき−あひ/たり/しか/ば、¥いつ/より/も¥こころ−ぼそ=げ/に¥うち−なげい/て、『¥みやうにち/の¥いくさ/に/は、¥かならず¥うた/れ/ん/と¥おぼゆる/は/とよ。¥われ¥いか/に/も−なり/な/ん¥のち、¥ひと/は¥いかが/は¥し¥たまふ/べき』/など¥いひ/しか/ども、¥いくさ/は¥いつも/の¥こと/なれ/ば、¥いちぢやう¥さる/べし/と/も¥おもは/で¥あり/つる¥こと/こそ¥かなしけれ。¥それ/を¥かぎり/と/だに¥おもは/ましか/ば、¥など¥のち/の−よ/と¥ちぎら/ざり/けん/と、¥おもふ/さへ/こそ¥かなしけれ。¥ただ/なら/ず¥なり/たる¥こと/を/も、¥ひごろ/は¥かくし/て¥いは/ざり/しか/ども、¥あまり/に¥こころ−ぶかう¥おもは/れ/じ/とて、¥いひ−いだし/たり/しか/ば、¥なのめ/なら/ず¥うれし=げ/にて、『¥みちもり¥さんじふ/に¥なる/まで、¥こ/と¥いふ¥もの/も¥なかり/つる/に、¥あはれ¥おなじう/は¥なんし/にて/も¥あれ/かし。¥うき−よ/の¥わすれ−がたみ/に/も/と¥おもひ−おく/ばかり/なり。¥さて¥いくつき/に/か¥なる/らん、¥ここち/は¥いかが¥ある/らん。¥いつ/と−なき¥なみ/の¥うへ、¥ふね/の¥うち/の¥すまひ/なれ/ば、¥しづか/に¥みみ/と¥なら/ん¥とき、¥いかが/は¥し¥たまふ/べき』/など¥いひ/し/は、¥はかなかり/ける¥かねごと/かな。¥まこと/やらん、¥をんな/は¥さやう/の¥とき、¥とを/に¥ここのつ/は¥かならず¥しぬる/なれ/ば、¥はぢがましう、¥うたてき¥め/を¥み/て、¥むなしう¥なら/ん/も¥こころ−うし。¥しずか/に¥みみ/と¥なつ/て¥のち、¥をさなき¥もの/を¥そだて/て、¥なき¥ひと/の¥かたみ/に/も¥み/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥それ/を¥み/ん¥たび−ごと/に/は、¥むかし/の¥ひと/のみ¥こひしく/て、¥おもひ/の¥かず/は¥まさる/とも、¥なぐさむ¥こと/は¥よも¥あら/じP181。¥つひに/は¥のがる/まじき¥みち/なり。¥もし¥ふしぎ/に¥この/よ/を¥しのび−すごす/とも、¥こころ/に¥まかせ/ぬ¥よ/の¥ならひ/は、¥おもは/ぬ¥ほか/の¥ふしぎ/も¥ある/ぞ/とよ。¥それ/も¥おもへ/ば¥こころ−うし。¥まどろめ/ば¥ゆめ/に¥みえ、¥さむれ/ば¥おもかげ/に¥たつ/ぞ/とよ。¥いき/て¥ゐ/て、¥と/に−かく/に¥ひと/を¥こひし/と¥おもは/ん/より、¥みづ/の¥そこ/へ/も¥いら/ばや/と、¥おもひ−さだめ/て¥ある/ぞ/とよ。¥そこ/に¥いち−にん¥とどまつ/て、¥なげか/んずる¥こと/こそ¥こころ−ぐるしけれ/ども、¥わらは/が¥しやうぞく/の¥ある/を/ば¥とつ/て、¥いか/なら/ん¥そう/に/も¥たてまつり、¥なき¥ひと/の¥ご=ぼだい/を/も¥とぶらひ¥まゐらせ、¥わらは/が¥ごしやう/を/も¥たすけ¥たまへ。¥かき−おき/たる¥ふみ/を/ば¥みやこ/へ¥つたへ/て¥たべ」/など、¥こまごま/と¥のたまへ/ば、¥めのと/の−にようばう、¥なみだ/を¥おさへ/て、「¥いとけなき¥こ/を/も¥ふり−すて、¥おい/たる¥おや/を/も¥とどめ−おき、¥はるばる/と¥これ/まで¥つき¥まゐらせ/て¥さぶらふ¥こころざし/を/ば、¥いか/ばかり/と/か¥おぼしめさ/れ¥さぶらふ/らん。¥こんど¥いちのたに/にて¥うた/れ/させ¥たまふ¥ご=いつけ/の¥きんだち=たち/の¥きたのかた/の¥おん=なげき、¥いづれ/か¥おろか/に¥おぼしめさ/れ¥さぶらふ/べき。¥かならず¥ひとつ−はちす/へ/と¥おぼしめさ/れ¥さぶらふ/とも、¥しやう¥かはら/せ¥たまひ/な/ん¥のち、¥ろくだう−ししやう/の¥あひだ/にて、¥いづれ/の¥みち/へ/か¥おもむか/せ¥たまは/んず/らん。¥ゆき−あはせ¥たまは/ん¥こと/も¥ふぢやう/なれ/ば、¥おん=み/を¥なげ/て/も¥よし−なき¥おん=こと/なり。¥しづか/に¥みみ/と¥なら/せ¥たまひ/て、¥いか/なら/ん¥いはき/の¥はざま/にて/も、¥をさなき¥ひと/を¥そだて¥まゐらせ、¥おん=さま/を¥かへ、¥ほとけ/の¥みな/を¥となへ/て、¥なき¥ひと/の¥ご=ぼだい/を¥とぶらひ¥まゐらせ¥たまへ/かし。¥その−うへ¥みやこ/の¥おん=こと/を/ば、¥たれ¥み−つぎ¥まゐらせよ/とて、¥かやう/に/は¥おほせ/られ¥さぶらふ/やらん。¥うらめしう/も¥うけたまはり¥さぶらふ/ものかな」/とて、¥さめざめ/と¥かき−くどき/けれ/ば、¥きたのかたP182、¥この¥こと¥あしう/も¥しらせ/な/ん/と/や¥おもは/れ/けん、「¥これ/は¥こころ/に¥かはつ/て/も、¥おし−はかり¥たまふ/べし。¥おほかた/の¥よ/の¥うらめし−さ、¥ひと/の¥わかれ/の¥かなし−さ/に/も、¥み/を¥なげ/ん/など¥いふ/は、¥つね/の¥ならひ/なり。¥され/ども¥さやう/の¥こと/は、¥あり−がたき¥ためし/ぞ/かし。¥まことに¥おもひ−たつ¥こと¥あら/ば、¥そこ/に¥しらせ/ず/して/は¥ある/まじき/ぞ。¥いま/は¥よ/も¥ふけ/ぬ。¥いざや¥ね/ん」/と¥のたまへ/ば、¥めのと/の−にようばう、¥この¥しごにち/は¥ゆみづ/を/だに、¥はかばかしう¥ごらんじ−いれ/させ¥たまは/ぬ¥ひと/の、¥かやう/に¥こまごま/と¥おほせ/らるる/は、¥まことに¥おぼしめし−たつ¥こと/も/や/と¥かなしう/て、「¥およそ/は¥みやこ/の¥おん=こと/も、¥さる−おん=こと/にて¥さぶらへ/ども、¥げに¥おぼしめし−たつ¥こと/なら/ば、¥わらは/を/も¥ちひろ/の¥そこ/まで/も、¥ひき/こそ¥ぐせ/させ¥たまは/め。¥おくれ¥まゐらせ/な/ん¥のち、¥さらに¥かたとき¥ながらふ/べし/と/も¥おぼえ/ぬ/ものかな」/と¥まうし/て、¥おん=そば/に¥あり/ながら、¥ちと¥うち−まどろみ/たり/ける¥ひま/に、¥きたのかた¥やはら¥ふなばた/へ¥おき−いで¥たまひ/て、¥まんまん/たる¥かいしやう/なれ/ば、¥いづち/を¥にし/と/は¥しら/ね/ども、¥つき/の¥いるさ/の¥やま/の¥は/を、¥そなた/の¥そら/と/や¥おぼし/けん、¥しづか/に¥ねんぶつ−し¥たまへ/ば、¥おき/の¥しらす/に¥なく¥ちどり、¥あま/の−と¥わたる¥かぢ/の¥おと、¥をり/から¥あはれ/や¥まさり/けん、¥しのびごゑ/に¥ねんぶつ¥ひやくぺん/ばかり¥となへ/させ¥たまひ/つつ、「¥なむ−さいはう−ごくらく−せかい/の−けうじゆ、¥みだによらい、¥ほんぐわん¥あやまた/ず、¥あか/で¥わかれ/し¥いもせ/の¥なからひ、¥かならず¥ひとつ−はちす/に」/と、¥なくなく¥はるか/に¥かき−くどき、¥なむ/と¥となふる¥こゑ¥とも/に、¥うみ/に/ぞ¥しづみ¥たまひ/ける。¥いちのたに/より¥やしま/へ¥おし−わたら/ん/とて/の、¥やはん/ばかり/の¥こと/なり/けれ/ば、¥ふね/の¥うち¥しづまつ/てP183、¥ひと¥これ/を¥しら/ざり/けり。¥その¥なか/に¥かんどり/の¥いち−にん¥ね/ざり/ける/が、¥この¥よし/を¥み¥たてまつ/て、「¥あれ/は¥いか/に。¥あの¥おん=ふね/より、¥にようばう/の¥うみ/へ¥いら/せ¥たまひ/ぬる/は」/と¥よばはつ/たり/けれ/ば、¥めのと/の−にようばう¥うち−おどろき、¥そば/を¥さぐれ/ども¥おはせ/ざり/けれ/ば、¥ただ「¥あれよ¥あれよ」/と/ぞ¥あきれ/ける。¥ひと¥あまた¥おり/て、¥とり−あげ¥たてまつら/ん/と¥し/けれ/ども、¥さら/ぬ/だに、¥はる/の¥よ/は、¥ならひ/に¥かすむ¥もの/なれ/ば、¥よも/の¥むらくも¥うかれ−き/て、¥かづけ/ども¥かづけ/ども、¥つき¥おぼろ/にて¥みえ¥たまは/ず。¥はるか/に¥ほど¥へ/て¥のち、¥とり−あげ¥たてまつり/たり/けれ/ども、¥はや¥この−よ/に¥なき¥ひと/と¥なり¥たまひ/ぬ。¥しろき¥はかま/に、¥ねりぬき/の¥ふたつぎぬ/を¥き¥たまへ/り。¥かみ/も¥はかま/も¥しほたれ/て、¥とり−あげ/けれ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥めのと/の−にようばう、¥て/に¥て/を¥とり−くみ、¥かほ/に¥かほ/を¥おし−あて/て、「¥などや¥これ−ほど/に¥おぼしめし−たつ¥こと/なら/ば、¥わらは/を/も¥ちひろ/の¥そこ/まで/も、¥ひき/こそ¥ぐせ/させ¥たまふ/べけれ。¥うらめしう/も¥ただ¥いち−にん¥とどめ/させ¥たまふ/ものかな。¥さる/にて/も、¥いま−いちど¥もの¥おほせ/られ/て、¥わらは/に¥きか/させ¥たまへ」/とて、¥もだえ−こがれ/けれ/ども、¥はや¥この−よ/に¥なき¥ひと/と¥なり¥たまひ/ぬる¥うへ/は、¥いちごん/の¥へんじ/に/も¥および¥たまは/ず。¥わづか/に¥かよひ/つる¥いき/も、¥はや¥たて−はて/ぬ。¥さる−ほど/に¥はる/の¥よ/の¥つき/も、¥くもゐ/に¥かたぶき、¥かすめる¥そら/も¥あけ−ゆけ/ば、¥なごり/は¥つきせ/ず¥おもへ/ども、¥さて/しも¥ある/べき¥こと/なら/ね/ば、¥うき/も/や¥あがり¥たまふ/と、¥こ=さんみ=どの/の¥きせなが/の¥いちりやう¥のこつ/たる/を、¥ひき−まとひ¥たてまつり、¥つひに¥うみ/に/ぞ¥しづめ/ける。¥めのと/の−にようばうP184、¥こんど/は¥おくれ¥たてまつら/じ/と、¥つづい/て¥うみ/に¥いら/ん/と¥し/ける/を、¥ひとびと¥とり−とどめ/けれ/ば、¥ちから¥およば/ず。¥せめて/の¥こころ/の¥あら/れ/ず−さ/に/や、¥てづから¥かみ/を¥はさみ−おろし、¥こ=さんみ=どの/の¥おん=おとと、¥ちうなごん/の−りつし、−ちうくわい/に¥そら/せ¥たてまつり、¥なくなく¥かい/を¥たもつ/て、¥しゆ/の¥ごせ/を/ぞ¥とぶらひ/ける。¥むかし/より¥をとこ/に¥おくるる¥たぐひ¥おほし/と¥いへ/ども、¥さま/を¥かふる/は¥つね/の¥ならひ、¥み/を¥なぐる/まで/は¥あり−がたき¥ためし/なり。¥され/ば¥ちうしん/は¥じくん/に¥つかへ/ず、¥ていぢよ/は¥じふ/に¥まみえ/ず/とも、¥かやう/の¥こと/を/や¥まうす/べき。¥この¥にようばう/と¥まうす/は、¥とう/の−ぎやうぶきやう−のりかた/の¥むすめ、¥きんちう¥いち/の¥びじん、¥な/を/ば¥こざいしやう=どの/と/ぞ¥まうし/ける。¥じやうせいもんゐん/の¥にようばう/なり。¥この¥にようばう¥じふろく/と¥まうし/し¥あんげん/の¥はる/の¥ころ、¥によゐん¥ほつしようじ/へ¥はなみ/の¥ご=かう/の¥あり/し/に、¥みちもりの−きやう、¥その−ころ/は、¥いまだ¥ちうぐう/の−すけ/にて¥ぐぶ−せ/られ/たり/ける/が、¥み−そめ/たり/し¥にようばう/なり。¥はじめ/は¥うた/を¥よみ、¥ふみ/を¥つくさ/れ/けれ/ども、¥たまづさ/の¥かず/のみ¥つもつ/て、¥とり−いれ¥たまふ¥こと/も¥なし。¥すでに¥みとせ/に¥なり/しか/ば、¥みちもりの−きやう、¥いま/を¥かぎり/の¥ふみ/を¥かい/て、¥こざいしやう=どの/の¥もと/へ¥つかはす。¥あまつさへ¥とり−つたへ/ける¥にようばう/に/だに¥あは/ず/して、¥つかひ¥むなしう¥かへり/ける¥みち/にて、¥をりふし¥こざいしやう=どの/は、¥さと/より¥ごしよ/へ/ぞ¥まゐら/れ/ける。¥つかひ¥むなしう¥かへり−まゐら/ん¥こと/の¥ほい−な−さ/に、¥そば/を¥つと¥はしり−とほる¥やう/にて、¥こざいしやう=どの/の¥のり¥たまへ/る¥くるま/の¥すだれ/の¥うち/へ、¥みちもりの−きやう/の¥ふみ/を/ぞ¥なげ−いれ/たる。¥とも/の¥もの=ども/に¥とひ¥たまへ/ば、「¥しら/ず」/と¥まうす。¥さて¥かの¥ふみ/を¥あけ/て¥み¥たまへ/ば、¥みちもりの−きやう/の¥ふみ/なり/けり。¥くるま/に¥おく/べき¥やう/も¥なし。¥おほぢ/にP185¥すて/ん/も¥さすが/にて、¥はかま/の¥こし/に¥はさみ/つつ、¥ごしよ/へ/ぞ¥まゐり¥たまひ/ける。¥さて¥みやづかへ¥たまひ/し/ほど/に、¥ところ/しも/こそ¥おほけれ、¥ごぜん/に¥ふみ/を¥おとさ/れ/たり。¥にようゐん¥これ/を¥とら/せ¥おはしまし、¥いそぎ¥ぎよ=い/の¥たもと/に¥ひき−かくさ/せ¥たまひ/て、「¥めづらしき¥もの/を/こそ¥もとめ/たれ。¥この¥ぬし/は¥たれ/なる/らん」/と¥おほせ/けれ/ば、¥ごしよ−ぢう/の¥にようばう=たち、¥よろづ/の¥かみ−ほとけ/に¥かけ/て、「¥しら/ず」/と/のみ/ぞ¥まうし/ける。¥その¥なか/に¥こざいしやう=どの/ばかり¥かほ¥うち−あかめ/て、¥つやつや¥もの/も¥まうさ/れ/ず。¥にようゐん/も、¥ないない¥みちもりの−きやう/の¥まうす/と/は¥しろしめさ/れ/たり/けれ/ば、¥さて¥この¥ふみ/を¥あけ/て¥ごらんずれ/ば、¥きろ/の¥けぶり/の¥にほひ¥こと/に¥ふかき/に、¥ふで/の¥たて/ども¥よ/の−つね/なら/ず。「¥あまり/に¥ひと/の¥こころ−づよき/も、¥いま/は¥なかなか¥うれしく/て」/など、¥こまごま/と¥かい/て、¥おく/に/は¥いつしゆ/の¥うた/ぞ¥あり/ける。¥
わが¥こひ/は¥ほそたにがは/の¥まろきばし¥ふみ−かへさ/れ/て¥ぬるる¥そで/かな W071¥
にようゐん、「¥これ/は¥あは/ぬ/を¥うらみ/たる¥ふみ/や。¥あまり¥ひと/の¥こころ−づよき/も、¥なかなか¥いま/は¥あた/と¥なん/なる/ものを。¥なかごろ¥をのの−こまち/とて、¥みめ−かたち¥うつくしう、¥なさけ/の¥みち¥あり−がたかり/しか/ば、¥みる¥ひと¥きく¥もの、¥きも−たましひ/を¥いたま/しめ/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥され/ども¥こころ−づよき¥な/を/や¥とり/たり/けん、¥はて/に/は¥ひと/の¥おもひ/の¥つもり/とて、¥かぜ/を¥ふせぐ¥たより/も¥なく、¥あめ/を¥もらさ/ぬ¥わざ/も¥なし。¥やど/に¥くもら/ぬ¥つきほし/は、¥なみだ/に¥うかび、¥のべ/の¥わかな、¥さは/の¥ねぜり/を¥つみ/て/こそ、¥つゆ/の−いのち/を/ば¥すごし/けれ」。¥にようゐん、「¥これ/は¥いか/に/も¥へんじ¥ある/べき¥こと/ぞ」/とて、¥おん=すずり¥めし−よせ/て、¥かたじけなく/も¥みづから¥おん=ぺんじ¥あそばさ/れ/けり。P186¥
ただ¥たのめ¥ほそたにがは/の¥まろきばし¥ふみ−かへし/て/は¥おち/ざら/め/やは W072¥
むね/の¥うち/の¥おもひ/は、¥ふじ/の¥けぶり/に¥あらはれ、¥そで/の¥うへ/の¥なみだ/は、¥きよみ/が−せき/の¥なみ/なれ/や。¥みめ/は¥さいはひ/の¥はな/なれ/ば、¥さんみ¥この¥にようばう/を¥たまはつ/て、¥たがひ/の¥こころざし¥あさから/ず。¥され/ば¥さいかい/の¥なみ/の¥うへ、¥ふね/の¥うち/まで/も¥ひき−ぐし/て、¥つひに¥おなじ¥みち/へ/ぞ¥おもむか/れ/ける。¥かどわきの−ちうなごん/は、¥ちやくし¥ゑちぜんの−さんみ、¥ばつし¥なりもり/に/も¥おくれ¥たまひ/ぬ。¥いま¥たのみ¥たまへ/る¥ひと/とて/は、¥のとの−かみ−のりつね、¥そう/に/は¥ちうなごん/の−りつし−ちうくわい/ばかり/なり。¥こ=さんみ=どの/の¥かたみ/と/も、¥この¥にようばう/を/こそ¥み¥たまふ/べき/に、¥それ/さへ¥かやう/に¥なり¥たまへ/ば、¥いとど¥こころ−ぼそう/ぞ¥なら/れ/ける。P187¥

平家物語 巻第十  総かな版(元和九年本)
「くびわたし」(『くびわたし』)S1001¥P187¥じゆえい−さんねん−にんぐわつ−なぬかのひ、¥つの−くに¥いちのたに/にて¥うた/れ¥たまひ/し¥へいじ/の¥くび=ども、¥じふににち/に¥みやこ/へ¥いる。¥へいけ/に¥むすぼれ/たり/し¥ひとびと/は、¥こんど¥わが¥かたざま/に、¥いか/なる¥うき¥こと/を/か¥きき、¥いか/なる¥うき−め/を/か、¥み/んず/らん/と、¥なげき−あひ¥かなしみ−あは/れ/けり。¥なか/に/も¥だいかくじ/に¥かくれ−ゐ¥たまへ/る¥こまつの−さんみ/の−ちうじやう−これもりの−きやう/の¥きたのかた/は、¥いとど¥おぼつかなう¥おもは/れ/ける/に、¥こんど¥いちのたに/にて、¥いちもん/の¥ひとびと¥のこり¥すくな/に¥うち−なさ/れ、¥いま/は¥さんみ/の−ちうじやう/と¥いふ¥くぎやう¥いち−にん、¥いけどり/に¥せ/られ/て¥のぼる/なり/と¥きき¥たまひ/て、¥この¥ひと¥はなれ¥たまは/じ/ものを/とて、¥もだえ−こがれ¥たまひ/けり。¥ある¥にようばう/の¥だいかくじ/に¥まゐつ/て¥まうし/ける/は、「¥さんみ/の−ちうじやう=どの/と/は、¥これ/の¥おん=こと/にて/は¥さぶらは/ず、¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう=どの/の¥おん=こと/なり」/と¥まうし/けれ/ば、¥さて/は¥くび=ども/の¥なか/に/こそ¥ある/らめ/とて、¥なほ¥こころ−やすう/も¥おもひ¥たまは/ず。P188¥おなじき−じふさんにち、¥たいふ/の−はうぐわん−なかより¥いげ/の¥けんびゐし=ども、¥ろくでうかはら/に¥いで−むかつ/て、¥へいじ/の¥くび=ども¥うけ−とり、¥ひんがし/の−とうゐん/を¥きた/へ¥わたい/て、¥ごくもん/の−き/に¥かけ/らる/べき¥よし、¥のりより¥よしつね¥そうもん−す。¥ほふわう、¥この¥こと¥いかが¥あら/んず/らん/と、¥おぼしめし−わづらは/せ¥たまひ/て、¥だいじやうだいじん、¥さう/の−だいじん、¥ないだいじん、¥ほりかはの−だいなごん−ただちかの−きやう/に¥おほせ−あはせ/らる。¥ごにん/の¥くぎやう¥まうさ/れ/ける/は、「¥むかし/より¥けいしやう/の¥くらゐ/に¥いたる¥ひと/の¥くび、¥おほち/を¥わたさ/るる¥こと¥せんれい¥なし。¥なか/に/も¥この¥ともがら/は、¥せんてい/の¥おん=とき/より¥せきり/の−しん/と/して、¥ひさしく¥てうか/に¥つかうまつる。¥はんらい¥ぎけい/が¥まうしじやう、¥あながち/に¥ご=きよよう¥ある/べから/ず」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥わたさ/る/まじき/に¥さだめ/られ/たり/しか/ども、¥のりより¥よしつね¥かさね/て¥そうもう−し/ける/は、「¥ほうげん/の¥むかし/を¥おもへ/ば、¥そぶ¥ためよし/が¥あた、¥へいぢ/の¥いにしへ/を¥あんずる/に、¥ちち¥よしとも/が¥かたき/なり。¥され/ば¥きみ/の¥おん=いきどほり/を¥やすめ¥たてまつり、¥ちち/の¥はぢ/を¥きよめ/ん/が¥ため/に、¥いのち/を¥すて/て¥てうてき/を¥ほろぼす。¥こんど¥へいじ/の¥くび¥おほち/を¥わたさ/れ/ざら/ん/に¥おいて/は、¥じこん¥いご¥なん/の¥いさみ¥あつ/て/か¥きようと/を¥しりぞけ/ん/や」/と、¥しきり/に¥うつたへ¥まうさ/れ/けれ/ば、¥ほふわう¥ちから¥およば/せ¥たまは/ず、¥つひに¥わたさ/れ/けり。¥みる¥ひと¥いくせんばん/と¥いふ¥かず/を¥しら/ず。¥ていけつ/に¥そで/を¥つらね/し¥いにしへ/は、¥おぢ−おそるる¥ともがら¥おほかり/き。¥ちまた/に¥かうべ/を¥わたさ/るる¥いま/は、¥また¥あはれみ−かなしま/ず/と¥いふ¥こと¥なし。¥なか/に/も¥だいかくじ/に¥かくれ−ゐ¥たまへ/る、¥こまつの−さんみ/の−ちうじやう−これもりの−きやう/の¥わかぎみ、¥ろくだい−ごぜん/に¥つき¥たてまつ/たり/ける¥さいとう−ご、¥さいとう−ろく、¥あまり/の¥おぼつかな−さ/に、¥さま/を¥やつし/て¥み/けれ/ば、P189¥おん=くび=ども/は、¥みな¥み−しり¥たてまつり/たれ/ども、¥さんみ/の−ちうじやう=どの/の¥おん=くび/は¥みえ¥たまは/ず。¥され/ども¥あまり/の¥かなし−さ/に、¥つつむ/に¥たへ/ぬ¥なみだ/のみ¥しげかり/けれ/ば、¥よそ/の¥ひとめ/も¥おそろしくて、¥いそぎ¥だいかくじ/へ/ぞ¥かへり−まゐり/ける。¥きたのかた、「¥さて¥いか/に/や−いか/に」/と¥とひ¥たまへ/ば、「¥ひとびと/の¥おん=くび=ども/は、¥みな¥み−しり¥たてまつ/たれ/ども、¥さんみ/の−ちうじやう=どの/の¥おん=くび/は、¥みえ/させ¥たまひ¥さふらは/ず。¥ご=きやうだい/の¥おん=なか/に/は、¥びつちうの−かう/の=との/の¥おん=くび/ばかり/こそ、¥みえ/させ¥たまひ¥さふらひ/つれ。¥その−ほか/は、¥そんぢやう¥その¥くび、¥その¥おん=くび」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた、「¥それ/も¥ひと/の¥うへ/と/は¥おぼえ/ず」/とて、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥やや¥あつ/て、¥さいとう−ご¥なみだ/を¥おさへ/て¥まうし/ける/は、「¥この¥いちりやう−ねん/は¥かくれ−ゐ¥さふらひ/て、¥ひと/に/も¥いたう¥み−しら/れ¥さふらは/ね/ば、¥いま¥しばらく¥さふらひ/て、¥み¥まゐらせ/たう¥ぞんじ¥さふらひ/つれ/ども、¥よに¥あんない¥くはしう¥しり/たる¥もの/の¥まうし¥さふらひ/し/は、『¥こんど/の¥かつせん/に、¥こまつ=どの/の¥きんだち=たち/は、¥あはせ¥たまは/ず。¥その¥ゆゑ/は、¥はりま/と¥たんば/の¥さかひ/なる、¥みくさ/の¥て/を¥かため/させ¥たまひ¥さふらひ/ける/が、¥くらう−よしつね/に¥やぶら/れ/て、¥しん−ざんみ/の−ちうじやう=どの、¥おなじき−せうしやう=どの、¥たんごの−じじう=どの/は、¥はりま/の¥たかさご/より¥おん=ふね/に¥めし/て、¥さぬき/の¥やしま/へ¥わたら/せ¥たまひ¥さふらひ/ぬ。¥なに/と/して/かは¥はなれ/させ¥たまひ/て¥さふらひ/ける/やらん、¥その¥なか/に¥びつちうの−かう/の=との/ばかり/こそ、¥こんど¥いちのたに/にて¥うた/れ/させ¥たまひ/て¥さふらへ』/と¥かたり¥まうし¥さふらひ/し/ほど/に、¥さて¥さんみ/の−ちうじやう=どの/の¥おん=こと/は、¥いか/に/と¥とひ¥さふらひ/つれ/ば、『¥それ/は¥いくさ¥いぜん/より、P190¥だいじ/の¥おん=いたはり/とて、¥さぬき/の¥やしま/へ¥わたら/せ¥たまひ/て、¥この−たび/は¥むかは/せ¥たまは/ず』/と、¥まうす¥もの/に/こそ¥あう/て¥さふらひ/つれ」/と、¥こまごま/と¥かたり¥まうし/たり/けれ/ば、¥きたのかた、「¥それ/も¥われ=ら/が¥こと/を¥こころ−ぐるしう¥おもひ¥たまひ/て、¥あさゆふ¥なげか/せ¥たまふ/が、¥やまふ/と¥なつ/たる/に/こそ。¥かぜ/の¥ふく¥ひ/は、¥けふ/も/や¥ふね/に¥のり¥たまふ/らん/と¥きも/を¥けし、¥いくさ/と¥いふ¥とき/は、¥ただいま/も/や¥うた/れ¥たまひ/ぬ/らん/と¥こころ/を¥つくす。¥まして¥さやう/の¥おん=いたはり/なんど/を/ば、¥たれ/か¥こころ−やすう¥あつかひ¥たてまつる/べき。¥それ/を¥くはしう¥きか/ばや」/と¥のたまへ/ば、¥わかぎみ¥ひめぎめ/も、「¥など¥なに/の¥おん=いたはり/と/は¥とは/ざり/ける/ぞ」/と¥のたまひ/ける/こそ¥あはれ/なれ。¥さんみ/の−ちうじやう/も、¥かよふ¥こころ/なれ/ば、¥さて/も¥みやこ/に/は、¥いか/に¥こころ−もとなう¥おもふ/らん。¥たとひ¥くび=ども/の¥なか/に/こそ¥なく/とも、¥や/に¥あたつ/て/も¥しに、¥みづ/に¥おぼれ/て¥うせ/ぬ/らん、¥いま/まで¥この−よ/に¥ある¥もの/と/は、¥よも¥おもひ¥たまは/じ。¥つゆ/の−いのち/の¥きえ−やら/で、¥いまだ¥うき−よ/に¥ながらへ/たる/を、¥しらせ¥たてまつら/ん/とて、¥つかひ/を¥いち−にん¥したて/て、¥のぼせ/られ/ける/が、¥みつ/の¥ふみ/を/ぞ¥かか/れ/ける。¥まづ¥きたのかた/へ/の¥おん=ふみ/に/は、「¥みやこ/に/は¥かたき¥みちみち/て、¥おん=み¥ひとつ/の¥おきどころ/だに¥あら/じ/に、¥をさなき¥もの=ども¥ひき−ぐし/て、¥いか/に¥かなしう¥おはす/らん。¥これ/へ¥むかへ¥まゐらせ/て、¥ひとつ−ところ/にて¥いか/に/も−なら/ばや/と/は¥おもへ/ども、¥わが−み/こそ¥あら/め、¥おん=ため¥いたはしく/て」/なんど、¥こまごま/と¥かい/て、¥おく/に/は¥いつしゆ/の¥うた/ぞ¥あり/ける。P191¥
いづく/と/も¥しら/ぬ¥あふせ/の¥もしほぐさ¥かき−おく¥あと/を¥かたみ/と/も¥みよ W073¥
さて¥をさなき¥ひとびと/の¥おん=もと/へ/は、「¥つれづれ/を/ば¥なに/と/して/かは¥なぐさむ/らん。¥やがて¥これ/へ¥むかへ−とら/うずる/ぞ」/と、¥ことば/も¥かはら/ず¥かい/て¥のぼせ/らる。¥つかひ¥みやこ/へ¥のぼり、¥きたのかた/に¥おん=ふみ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥これ/を¥あけ/て¥み¥たまひ/て、¥いとど¥おもひ/や¥まさら/れ/けん、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥かくて¥しごにち/も¥すぎ/しか/ば、¥つかひ、「¥おん=ぺんじ¥たまはつ/て、¥かへり−まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥きたのかた¥なくなく¥おん=ぺんじ¥かき¥たまふ。¥わかぎみ¥ひめぎみ/も、¥めんめん/に¥ふで/を¥そめ/て、「¥さて¥ちち=ごぜん/へ/の¥おん=ぺんじ/を/ば、¥なに/と¥かき¥まうす/べき/やらん」/と¥とひ¥たまへ/ば、¥きたのかた、「¥ただ¥と/も−かく/も、¥わ−ごぜ=たち/が¥おもは/うずる¥やう/を¥まうす/べし」/と/ぞ¥のたまひ/ける。「¥などや¥いま/まで/は¥むかへ/させ¥たまひ¥さふらは/ぬ/ぞ。¥あまり/に¥おん=こひしう¥おもひ¥まゐらせ¥さふらふ/に、¥とく¥むかへ/させ¥たまへ」/と、¥おなじ¥ことば/に/ぞ¥かか/れ/たる。¥つかひ¥おん=ふみ¥たまはつ/て、¥やしま/へ¥かへり−まゐつ/て、¥さんみ/の−ちうじやう=どの/に、¥おん=ぺんじ¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥まづ¥をさなき¥ひとびと/の¥おん=ぺんじ/を¥み¥たまひ/て、¥さんみ/の−ちうじやう=どの/に、¥おん=ぺんじ¥とり¥いだい/て¥たてまつる。¥まづ¥をさなき¥ひとびと/の¥おん=ぺんじ/を¥み¥たまひ/て、¥いとど¥せんかた−な=げ/に/ぞ¥みえ/られ/ける。「¥そもそも¥これ/より¥ゑど/を¥いとふ/に¥いさみ¥なし。¥えんぶ−あいしふ/の¥つな¥つよけれ/ば、¥じやうど/を¥ねがは/ん/も¥もの−うし。¥ただ¥これ/より¥やま−づたひ/に¥みやこ/へ¥のぼり、¥こひしき¥もの=ども/を/も、¥いま−いちど¥み/も¥し¥みえ/て¥のち、¥じがい/を¥せ/ん/に/は¥しか/じ」/と/ぞ、¥なくなく¥かたり¥たまひ/ける。P192
「だいりにようばう」(『だいりにようばう』)S1002¥おなじき−じふしにち、¥いけどり¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう、¥みやこ/へ¥いつ/て¥おほち/を¥わたさ/る。¥こ−ばちえふ/の¥くるま/の¥ぜんご/の¥すだれ/を¥あげ、¥さう/の¥ものみ/を¥ひらく。¥とひの−じらう−さねひら/は、¥むくらんぢ/の−ひたたれ/に¥こぐそく/ばかり/して、¥ずゐびやう¥さんじふ−よ−き¥ひき−ぐし/て、¥くるま/の¥ぜんご/を¥うち−かこん/で¥しゆご−し¥たてまつる。¥きやう−ぢう/の¥じやうげ¥これ/を¥み/て、「¥あな¥いとほし。¥いくら/も¥まします¥きんだち/の¥なか/に、¥この¥ひと¥いち−にん¥かやう/に¥なり¥たまふ¥こと/よ。¥にふだう=どの/に/も¥にゐ=どの/に/も、¥おぼえ/の¥おん=こ/にて¥ましませ/ば、¥いちもん/の¥ひとびと/も¥おもき¥こと/に/して、¥ゐん¥うち/へ¥まゐらせ¥たまひ/し/に/も、¥おい/たる/も¥わかき/も、¥ところ/を¥おき/て¥もてなし¥たてまつら/せ¥たまひ/し/ぞ/かし。¥いま¥また¥かやう/に¥なり¥たまふ¥こと/は、¥いかさま/に/も¥なら/を¥やき¥たまへ/る¥がらん/の¥ばち」/と¥いひ−あへ/り。¥ろくでう/を¥ひんがし/へ¥かはら/まで¥わたい/て、¥それ/より¥かへつ/て、¥こ=なかのみかどの−とう−ぢうなごん−かせいの−きやう/の¥み=だう、¥はちでう−ほりかは/なる¥ところ/に¥すゑ¥たてまつ/て、¥きびしう¥しゆご−し¥たてまつる。¥ゐん/の−ごしよ/より¥お=つかひ¥あり。¥くらんど/の−さゑもん/の−ごん/の−すけ−さだなが、¥はちでう−ほりかは/へ/ぞ¥むかひ/ける。¥せきい/に¥けんしやく/を/ぞ¥たいし/たり/ける。¥さんみ/の−ちうじやう/は、¥こんむらご/の−ひたたれ/に、¥をり−ゑぼし¥ひき−たて/て¥おはします。¥ひごろ/は¥なに/と/も¥おもは/れ/ざり/し¥さだなが/を、¥いま/は¥めいど/にて¥ざいにん=ども/が、P193¥みやうくわん/に¥あへ/る¥ここち/ぞ¥せ/られ/ける。¥おほせ−くださ/れ/ける/は、「¥やしま/へ¥かへり/たく/ば、¥いちもん/の¥かた/へ¥いひ−おくつ/て、¥さんじゆ/の−しんき/を¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつれ。¥しから/ば¥やしま/へ¥かへさ/る/べし」/と/の¥ご=きしよく/なり。¥さんみ/の−ちうじやう¥まうさ/れ/ける/は、「¥さ/しも/に¥わが¥てう/の¥ちようほう、¥さんじゆ/の−しんき/を、¥しげひら¥いち−にん/に¥かへ¥まゐらせ/ん/と/は、¥だいふ¥いげ¥いちもん/の¥もの=ども/が、¥よも¥まうし¥さふらは/じ。¥によしやう/で¥さふらへ/ば、¥もし¥ぼぎ/の¥にほん/なんど/も/や、¥さ/も¥まうし¥さふらは/んず/らん。¥さり/ながら/も、¥ゐ/ながら¥ゐんぜん/を¥かへし¥たてまつら/ん¥こと/は、¥その¥おそれ/も¥さふらへ/ば、¥すみやか/に¥まうし−おくつ/て/こそ¥み¥さふらは/め」/と/ぞ¥まうさ/れ/ける。¥ゐんぜん/の¥お=つかひ/は、¥お=つぼ/の−めしつぎ−はなかた、¥さんみ/の−ちうじやう/の¥つかひ/は、¥へいざう−ざゑもん−しげくに/と¥いふ¥もの/なり。¥おほい=との、¥へい−だいなごん/へ/は、¥ゐんぜん/の¥おもむき/を¥まうさ/る。¥にゐ=どの/へ/は¥おん=ふみ¥こまごま/と¥かい/て¥まゐらせ/らる。¥わたくし/の¥ふみ/を/ば¥ゆるされ¥なけれ/ば、¥ひとびと/の¥もと/へ/は¥ことば/にて¥ことづて/らる。¥きたのかた¥だいなごん/の−すけ=どの/へ/も、¥ことば/にて¥まうさ/れ/けり。「¥たび/の¥そら/にて/も、¥ひと/は¥われ/に¥なぐさみ、¥われ/は¥ひと/に¥なぐさみ/し/ものを、¥ひき−わかれ/て¥のち、¥いか/に¥かなしう¥おはす/らん。¥ちぎり/は¥くちせ/ぬ¥もの/と¥まうせ/ば、¥のち/の−よ/に/は¥かならず¥むまれ−あひ¥たてまつる/べし」/と、¥なくなく¥ことづて¥たまへ/ば、¥しげくに/も¥まことに¥あはれ/に¥おぼえ/て、¥なみだ/を¥おさへ/て¥たち/に/けり。¥ここに¥さんみ/の−ちうじやう/の¥としごろ/の¥さぶらひ/に、¥むく−むま/の−じよう−ともとき/と¥いふ¥もの¥あり。¥はちでうの−にようゐん/に¥けんざん/の¥もの/にて¥さふらひ/ける/が、¥とひの−じらう−さねひら/が¥もと/に¥ゆい/て、「¥これ/は¥ねんらい¥さんみ/の−ちうじやう=どの/にP194¥めし−つかは/れ¥さふらひ/し、¥それがし/と¥まうす¥もの/にて¥さふらふ/が、¥けふ¥おほち/で¥み¥まゐらせ¥さふらへ/ば、¥め/も¥あて/られ/ず、¥あまり/に¥おん=いたはしう¥おもひ¥まゐらせ¥さふらふ。¥なにか¥くるしう¥さふらふ/べき。¥ともとき/ばかり/は¥おん=ゆるされ/を¥かうぶつ/て、¥いま−いちど¥ちかづき¥まゐつ/て、¥はかなき¥むかしがたり/を/も¥まうし/て、¥なぐさめ¥たてまつら/ばや/と¥ぞんじ¥さふらふ。¥ゆみ−や/を¥とる¥み/にて/も¥さふらは/ね/ば、¥いくさ−かつせん/の¥おん=とも¥つかまつ/たる¥こと/も¥さふらは/ず。¥あさゆふ¥ただ¥お=まへ/に¥しこう−せ/し/ばかり/で¥さふらひ/き。¥それ/も¥なほ¥おぼつかなう¥おぼしめさ/れ¥さふらは/ば、¥こし/の¥かたな/を¥めし−おか/れ/て、¥まげて¥おん=ゆるされ/を¥かうぶり¥さふらは/ばや」/と¥まうし/けれ/ば、¥とひの−じらう、¥なさけ−ある¥もの/にて、「¥まことに¥ご=いつしん/は、¥なにか¥くるしう¥さふらふ/べき。¥さり/ながら/も」/とて、¥こし/の¥かたな/を¥こひ−とつ/て/ぞ¥いれ/てげる。¥むま/の−じよう¥なのめ/なら/ず¥よろこび、¥いそぎ¥まゐつ/て¥おん=ありさま/を¥み¥たてまつる/に、¥まことに¥ふかう¥おもひ−いれ¥たまへ/る/と¥おぼしく/て、¥おん=すがた/も¥いたく¥しをれ−かへつ/て¥おはし/ける/を、¥み¥まゐらする/に、¥ともとき¥なみだ/も¥さら/に¥おさへ−がたし。¥ちうじやう/も¥ゆめ/に¥ゆめ¥みる¥ここち−し/て、¥とかう/の¥こと/を/も¥のたまは/ず。¥やや¥あつ/て、¥むかし−いま/の¥ものがたり=ども−し¥たまひ/て¥のち、「¥さて/も¥なんぢ/して¥もの¥いひ/し¥ひと/は、¥いまだ¥だいり/に/と/や¥きく」。「¥さ/こそ¥うけたまはり¥さふらへ」。¥ちうじやう、「¥われ¥さいこく/へ¥くだり/し¥とき、¥ふみ/を/も¥やら/ず、¥いひ¥おく¥こと/も¥なかり/しか/ば、¥よよ/の¥ちぎり/は、¥みな¥いつはり/に¥なり/に/ける/よ/と、¥おもふ/らん/こそ¥はづかしけれ。¥ふみ/を¥やら/ばや/と¥おもふ/は¥いか/に。¥たづね/て¥ゆき/て/ん/や」/と¥のたまへ/ば、¥ともとき、「¥やすい/ほど/の¥おん=こと¥ざふらふ」/と¥まうす。¥ちうじやう¥なのめ/なら/ず¥よろこび、¥やがて¥かい/て/ぞ¥たう/でげる。P195¥
ともとき¥これ/を¥たまはつ/て、¥まかり−いで/ん/と¥し/けれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども、「¥いか/なる¥おん=ふみ/にて/か¥さふらふ/らん。¥み¥まゐらせ¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥ちうじやう、「¥みせよ」/と¥のたまへ/ば、¥みせ/てげり。¥くるしかる/まじ/とて、¥とら/せ/てげり。¥ともとき¥これ/を¥とつ/て、¥いそぎ¥だいり/へ¥まゐり、¥ひる/は¥ひとめ/の¥しげけれ/ば、¥その¥へん¥ちかき¥せうをく/に¥たち−より、¥ひ/を¥まち−くらし、¥たそがれどき/に¥まぎれ−いつ/て、¥くだん/の¥にようばう/の¥つぼね/の¥しもぐちへん/に¥たたずん/で¥きき/けれ/ば、¥この¥にようばう/の¥こゑ/と¥おぼしく/て、「¥あな¥いとほし。¥いくら/も¥まします¥きんだち/の¥なか/に、¥この¥ひと¥いち−にん¥かやう/に¥なり¥たまふ¥こと/よ。¥ひと/は¥みな¥なら/を¥やき/たる¥がらん/の¥ばち/と¥いひ−あへ/り。¥ちうじやう/も¥さぞ¥いひ/し。¥わが¥こころ/に¥おこつ/て/は¥やか/ね/ども、¥あくたう¥おほかり/しか/ば、¥てんで/に¥ひ/を¥はなつ/て、¥おほく/の¥だうたふ/を¥やき−ほろぼす。¥すゑ/の¥つゆ¥もと/の¥しづく/の¥ためし¥あれ/ば、¥わが−み¥ひとつ/の¥ざいごふ/に/こそ¥なら/んず/らめ/と¥いひ/し/が、¥げに¥さ/と¥おぼゆる/ぞ/や」/とて¥なか/れ/けれ/ば、¥ともとき、¥これ/に/も¥かく¥なげき¥たまふ¥こと/の¥いとほし−さ/よ/と¥おもひ、「¥もの¥まうさ/う」/ど¥いへ/ば、「¥なにごと」/と¥こたふ。「¥これ/に¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう=どの/より/の¥おん=ふみ/の¥さふらふ」/と¥まうし/たり/けれ/ば、¥ひごろ/は¥はぢ/て¥みえ¥たまは/ぬ¥ひと/の、「¥いづら/や¥いづら」/とて¥はしり−いで、¥てづから¥この¥ふみ/を¥とつ/て¥み¥たまふ/に、¥さいこく/にて¥いけどり/に¥せ/られ/たり/し¥ありさま、¥けふ¥あす/を/も¥しら/ぬ¥み/の¥ゆくへ/など、¥こまごま/と¥かい/て、¥おく/に/は¥いつしゆ/の¥うた/ぞ¥あり/ける。¥
なみだがは¥うき−な/を¥ながす¥み/なり/とも¥いま¥ひとたび/の¥あふせ/ともがな W074 
P196¥にようばう¥この¥ふみ/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥とかう/の¥こと/を/も¥のたまは/ず、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥かくて¥じこく¥はるか/に¥おし−うつり/けれ/ば、¥ともとき、「¥おん=ぺんじ¥たまはつ/て、¥かへり−まゐり¥さふらは/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥にようばう¥なくなく¥おん=ぺんじ¥かき¥たまへ/り。¥こころ−ぐるしう¥いぶせく/て、¥この¥ふたとせ/を¥おくつ/たり/し¥ありさま、¥こまごま/と¥かい/て、¥
きみ¥ゆゑ/に¥われ/も¥うき−な/を¥ながす/とも¥そこ/の¥みくづ/と¥とも/に¥なり/なむ W075¥
ともとき¥これ/を¥たまはつ/て、¥かへり−まゐり/たり/けれ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども、¥また、「¥いか/なる¥おん=ふみ/にて/か¥さふらふ/らん。¥み¥まゐらせ/ん」/と¥まうし/けれ/ば、¥みせ/てげり。「¥くるしう¥さふらふ/まじ」/とて¥たてまつる。¥ちうじやう¥これ/を¥み¥たまひ/て、¥いとど¥おん=もの−おもひ/や¥まさら/れ/けん、¥やや¥あつ/て、¥とひの−じらう−さねひら/を¥めし/て¥のたまひ/ける/は、「¥さて/も¥この−ほど¥おのおの/の¥なさけ−ふかう¥はうじん−せ/られ/つる/こそ、¥あり−がたう¥うれしけれ。¥いま−いちど¥はうおん¥かうぶり/たき¥こと¥あり。¥われ/は¥いち−にん/の¥こ¥なけれ/ば、¥うき−よ/に¥おもひ−おく¥こと¥なし。¥としごろ¥ちぎつ/たり/し¥によばう/に、¥いま−いちど¥たいめん−し/て、¥ごしやう/の¥こと/を/も¥いひ−おか/ばや/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥とひの−じらう¥なさけ−ある¥もの/にて、「¥まことに¥にようばう/など/の¥おん=こと/は、¥なにか¥くるしう¥さふらふ/べき。¥とうとう」/とて¥ゆるし¥たてまつる。¥ちうじやう¥なのめ/なら/ず¥よろこび、¥ひと/に¥くるま¥かつ/て¥つかはさ/れ/たり/けれ/ば、¥にようばう¥とり−あへ/ず、¥いそぎ¥のつ/て/ぞ¥おはし/ける。¥えん/に¥くるま¥やり−よせ、¥この¥よし¥かくと¥まうし/たり/けれ/ば、¥ちうじやう¥くるまよせ/まで¥いで−むかひ、「¥ぶし=ども/の¥み¥まゐらせ¥さふらふ/に、¥おり/させ¥たまふ/べから/ず」/とて、¥くるま/の¥すだれ/を¥うち−かづき、¥て/に¥て/を¥とり−くみ、P197¥
かほ/に¥かほ/を¥おし−あて/て、¥しばし/は¥とかう/の¥こと/を/も¥のたまは/ず、¥ただ¥なく/より¥ほか/の¥こと/ぞ¥なき。¥やや¥あつ/て、¥ちうじやう¥なみだ/を¥おさへ/て¥のたまひ/ける/は、「¥さいこく/へ¥くだり¥さふらひ/し¥とき/も、¥いま−いちど¥おん=げんざん/に¥いり/たかり/しか/ども、¥おほかた/の¥よ/の¥もの−さわがし−さ、¥まうし−おくる/べき¥たより/も¥なく/して、¥まかり−くだり¥さふらひ/き。¥その−のち¥おん=ふみ/を/も¥たてまつり、¥おん=かへりこと/を/も¥み¥まゐらせ/たう¥さふらひ/つれ/ども、¥たび/の¥そら/の¥もの−う−さ、¥あさゆふ/の¥いくさだち/に¥ひま¥なく/て、¥むなしう¥まかり−すぎ¥さふらひ/き。¥こんど¥いちのたに/にて¥いか/に/も−なる/べかり/し¥み/の、¥いき/ながら¥とらはれ/て、¥ふたたび¥みやこ/へ¥まかり−のぼり¥さふらふ/も、¥おん=げんざん/に¥いる/べき/と/の¥こと/にて¥さふらふ/ぞ/や」/とて、¥また¥なみだ/を¥おさへ/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥たがひ/の¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥かくて¥さ−よ/も¥やうやう¥ふけ−ゆけ/ば、¥しゆご/の−ぶし=ども、「¥この−ほど/は¥おほち/の¥らうぜき/も/ぞ¥さふらふ/に、¥とうとう」/と¥まうし/けれ/ば、¥ちうじやう¥ちから¥および¥たまは/ず、¥やがて¥かへし¥たまふ。¥くるま¥やり−いだせ/ば、¥ちうじやう¥にようばう/の¥そで/を¥ひかへ/て、¥
あふ¥こと/も¥つゆ/の−いのち/も¥もろとも/に¥こよひ/ばかり/や¥かぎり/なる/らむ W076¥
にようばう¥とり−あへ/ず、¥
かぎり/とて¥たち−わかるれ/ば¥つゆ/の¥み/の¥きみ/より¥さき/に¥きえ/ぬ/べき/かな W077¥
さて¥にようばう/は¥だいり/へ¥まゐり¥たまひ/ぬ。¥その−のち/は¥しゆご/の−ぶし=ども¥ゆるさ/ね/ば、¥ときどき¥ただ¥おん=ふみ/ばかり/ぞ¥かよひ/ける。¥この¥にようばう/と¥まうす/は、¥みんぶきやう−にふだう−しんぱん/の¥むすめ/なり。¥みめ−かたち¥よ/に¥すぐれ、¥なさけ−ふかき¥ひと/なれ/ば、¥ちうじやう¥なんと/へ¥わたさ/れ/て、¥きら/れ¥たまひ/ぬ/と¥きこえ/しか/ば、P198¥やがて¥さま/を¥かへ、¥こき¥すみぞめ/に¥やつれ−はて、¥かの¥ごせ−ぼだい/を¥とぶらひ¥たまふ/ぞ¥あはれ/なる。¥
「やしまゐんぜん」(『やしまゐんぜん』)S1003¥ひかず¥ふれ/ば、¥ゐんぜん/の¥お=つかひ、¥お=つぼ/の−めしつぎ−はなかた、¥おなじき−にじふはちにち¥さぬきの−くに¥やしま/の−いそ/に¥くだり−つい/て、¥ゐんぜん/を¥とり−いだい/て¥たてまつる。¥おほい=との¥いげ/の¥けいしやう−うんかく¥より−あひ¥たまひ/て、¥この¥ゐんぜん/を¥ひらか/れ/けり。「¥いちじん−せいたい、¥ほつけつ/の¥きうきん/を¥いで/て、¥しよしう/に¥かうし、¥さんじゆ/の−しんき、¥なんかい¥しこく/に¥うづもれ/て¥すねん/を¥ふ、¥もつとも¥てうか/の¥なげき、¥ばうこく/の¥もとゐ/なり。¥そもそも¥かの¥しげひらの−きやう/は、¥とうだいじ¥ぜうしつ/の¥ぎやくしん/なり。¥すべからく¥よりともの−あつそん¥まうし−うくる¥むね/に¥まかせ/て、¥しざい/に¥おこなは/る/べし/と¥いへ/ども、¥ひとり¥しんぞく/に¥わかれ/て、¥すでに¥いけどり/と¥なる。¥ろうてう¥くも/を¥こふる¥おもひ、¥はるか/に¥せんり/の¥なんかい/に¥うかび、¥きがん¥とも/を¥うしなふ¥こころ、¥さだめて¥きうちよう/の¥ちうと/に¥とうぜ/ん/か。¥しかれ/ば−すなはち¥さんじゆ/の−しんき、¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつら/ん/に¥おいて/は、¥かの¥きやう/を¥くわんいう−せ/らる/べき/なり。¥ていれば¥ゐんぜん¥かく/の/ごとく、¥よつて−しつたつ−くだん/の/ごとし。¥じゆえい−さんねん−にんぐわつ−じふしにち、¥だいぜん/の−だいぶ−なりただ/が¥うけたまはり、¥きんじやう、¥さきの−へい−だいなごん=どの/へ」/と/ぞ¥かか/れ/たる。P199
「うけぶみ」(『うけぶみ』)S1004¥おほい=との、¥へい−だいなごん/の¥もと/へ、¥ゐんぜん/の¥おもむき/を¥まうさ/れ/けり。¥にゐ=どの、¥ちうじやう/の¥ふみ/を¥あけ/て¥み¥たまふ/に、「¥しげひら/を¥こんじやう/で¥いま−いちど¥ごらんぜ/ん/と¥おぼしめさ/れ¥さふらは/ば、¥さんじゆ/の−しんき/の¥おん=こと/を、¥よき¥やう/に¥まうさ/せ¥たまひ/て、¥みやこ/へ¥かへし−いれ/させ¥たまへ。¥さら/ず/は¥おん=め/に¥かかる/べし/と/も¥ぞんじ¥さふらは/ず」/と/ぞ¥かか/れ/たる。¥にゐ=どの、¥この¥ふみ/を¥かほ/に¥おし−あて/て、¥ひとびと/の¥おはし/ける¥うしろ/の¥しやうじ/を¥ひき−あけ/て、¥おほい=との/の¥おん=まへ/に¥たふれ−ふし、¥しばし/は¥もの/を/も¥のたまは/ず。¥やや¥あつ/て¥おき−あがり、¥なみだ/を¥おさへ/て¥のたまひ/ける/は、「¥これ¥み¥たまへ、¥むねもり、¥きやう/より¥ちうじやう/が¥いひ−おこし/つる¥こと/の¥むざん−さ/よ。¥げに/も¥こころ/の¥うち/に¥いか/ばかり/の¥こと/を/か¥おもふ/らん。¥ただ¥われ/に¥おもひ−ゆるし/て、¥さんじゆ/の−しんき/の¥おん=こと/を、¥よき¥やう/に¥まうし/て、¥みやこ/へ¥かへし−いれ¥たてまつら/せ¥たまへ」/と¥のたまへ/ば、¥おほい=との¥まうさ/せ¥たまひ/ける/は、「¥むねもり/も¥さ/こそ/は¥ぞんじ¥さふらへ/ども、¥さ/しも/に¥わが¥てう/の¥ちようほう¥さんじゆ/の−しんき/を、¥しげひら¥いち−にん/に¥かへ¥まゐらせ/ん¥こと、¥かつう/は¥よ/の¥ため¥しかる/べから/ず。¥かつうは¥よりとも/が¥かへり−きか/んずる¥ところ/も、¥いふ−かひ−なう¥さふらふ。¥その−うへ、¥ていわう/の¥おん=よ/を¥たもた/せ¥たまふ¥おん=こと/も、¥ひとへに¥この¥ないしどころ/の¥わたら/せ¥たまふ¥おん=ゆゑ/なり。¥さて¥よ/の¥こ=ども、¥したしき¥ひとびと/を/ば、P200¥ちうじやう¥いち−にん/に¥おぼしめし−かへ/させ¥たまふ/べき/か。¥こ/の¥かなしい/と¥いふ¥こと/も、¥こと/に/こそ¥より¥さふらへ。¥ゆめゆめ¥かなひ¥さふらふ/まじ」/と¥のたまへ/ば、¥にゐ=どの、¥よに/も¥ほい−な=げ/にて、¥かさねて¥のたまひ/ける/は、「¥われ¥こ=にふだう−しやうこく/に¥おくれ/て¥のち/は、¥いち−にち−へんし¥いのち¥いき/て、¥よ/に¥ある/べし/と/は¥おもは/ざり/しか/ども、¥しゆしやう/の¥いつ/と−なく、¥さいかい/の¥なみ/の¥うへ/に、¥ただよは/せ¥たまふ¥おん=こころ−ぐるし−さ、¥ふたたび¥よ/に¥あら/せ¥たてまつら/ん/が¥ため/に、¥うき/ながら¥けふ/まで/も¥ながらへ/たれ。¥ちうじやう¥いちのたに/にて、¥いけどり/に¥せ/られ/ぬ/と¥きき/し¥のち/は、¥いとど¥むね¥せき/て、¥ゆみづ/も¥のど/へ¥いれ/られ/ず。¥ちうじやう¥この−よ/に¥なき¥もの/と¥きか/ば、¥われ/も¥おなじ¥みち/に¥おもむか/ん/と¥おもふ/なり。¥ふたたび¥もの/を¥おもは/せ/ぬ¥さき/に、¥ただ¥われ/を¥うしなへ/や」/とて、¥をめき−さけび¥たまへ/ば、¥まことに¥さ/こそ/は/と¥いたはしく/て、¥みな¥ふしめ/に/ぞ¥なら/れ/ける。¥しん−ぢうなごん−とももりの−きやう/の¥いけん/に¥まうさ/れ/ける/は、「¥さ/しも/に¥わが¥てう/の¥ちようほう、¥さんじゆ/の−しんき/を¥みやこ/へ¥かえし−いれ¥たてまつ/たり/とも、¥しげひら¥かへし¥たまはら/ん¥こと¥あり−がたし。¥ただ¥その¥やう/を¥おそれ¥なく、¥おん=うけぶみ/に¥まうさ/せ¥たまふ/べう/も/や¥さふらふ/らん」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥この¥ぎ¥もつとも¥しかる/べし/とて、¥おほい=との¥おん=うけぶみ/を¥まうさ/る。¥にゐ=どの/は¥なみだ/に¥くれ/て、¥ふで/の¥たて=ども¥おぼえ¥たまは/ね/ども、¥こころざし/を¥しるべ/に、¥なくなく¥おん=かへりこと¥かき¥たまへ/り。¥きたのかた¥だいなごん/の−すけ=どの/は、¥とかう/の¥こと/を/も¥のたまは/ず、¥ひき−かづい/て/ぞ¥ふし¥たまふ。¥その−のち¥へい−だいなごん−ときただの−きやう、¥ゐんぜん/の¥お=つかひ、¥お=つぼ/の−めしつぎ−はなかた/を¥めし/て、「¥なんぢ¥ほふわう/の¥お=つかひ/と/して、¥おほく/の¥なみぢ/を¥しのい/で、¥はるばる/と¥これ/まで¥くだつ/たる¥しるし/に、¥なんぢ¥いちご/が¥あひだ/のP201¥おもひで¥ひとつ¥ある/べし」/とて、¥はなかた/が¥つら/に、¥なみかた/と¥いふ¥やいじるし/を/ぞ¥せ/られ/ける。¥みやこ/へ¥かへり−のぼつ/たり/けれ/ば、¥ほふわう¥えいらん¥あつ/て、「¥なんぢ/は¥はなかた/か」。「¥さん−ざふらふ」。「¥よしよし、¥さら/ば¥なみかた/と/も¥めせ/かし」/とて、¥わらは/せ¥おはします。¥その−のち¥うけぶみ/を/ぞ¥ひらか/れ/ける。「¥こんぐわつ−じふしにち/の¥ゐんぜん、¥おなじき−にじふはちにち、¥さぬきの−くに¥やしま/の−いそ/に¥たうらい、¥つつしん/で¥もつて¥うけたまはる¥ところ¥くだん/の/ごとし。¥ただし¥これ/に¥つい/て¥かれ/を¥あんずる/に、¥みちもりの−きやう¥いげ、¥たうけ¥すはい、¥せつしう¥いちのたに/にて¥すでに¥ちうせ/られ−をはん/ぬ。¥なんぞ¥しげひら¥いち−にん/が¥くわんいう/を¥よろこぶ/べき/や。¥それ¥わが¥きみ/は、¥こ=たかくらのゐん/の¥おん=ゆづり/を¥うけ/させ¥たまひ/て、¥ご=ざいゐ¥すでに¥し−か−ねん、¥まつりごと¥げうしゆん/の¥こふう/を¥とぶらふ¥ところ/に、¥とうい−ほくてき、¥たう/を¥むすび¥ぐん/を¥なし/て¥じゆらく/の¥あひだ、¥かつうは¥えうてい¥ぼこう/の¥おん=なげき¥もつとも¥ふかく、¥かつうは¥ぐわいせき¥きんしん/の¥いきどほり¥あさから/ざる/に¥よつ/て、¥しばらく¥くこく/に¥かうす。¥くわんかう¥なから/ん/に¥おいて/は、¥さんじゆ/の−しんき¥いかで/か¥ぎよくたい/を¥はなち¥たてまつる/べき/や。¥それ¥しん/は¥きみ/を¥もつて¥こころ/と¥し、¥きみ/は¥しん/を¥もつて¥たい/と¥す。¥きみ¥やすけれ/ば¥すなはち¥しん¥やすく、¥しん¥やすけれ/ば¥すなはち¥くに¥やすし。¥きみ¥かみ/に¥うれふれ/ば¥しん¥しも/に¥たのしま/ず。¥しんぢう/に¥うれへ¥あれ/ば、¥たいぐわい/に¥よろこび¥なし。¥なうそ¥へい−しやうぐん−さだもり、¥さうまの−こじらう−まさかど/を¥つゐたう−せ/し/より¥この−かた、¥とう−はつ−か−こく/を¥しづめ/て、¥しし−そんぞん/に¥つたへ/て、¥てうてき/の¥ぼうしん/を¥ちうばつ−し/て、¥だいだい−せぜ/に¥いたる/まで、¥てうか/の¥せいうん/を¥まぼり¥たてまつる。¥しかれ/ば−すなはち¥こ=ばうふ−だいじやうだいじん、¥ほうげん¥へいぢ¥りやうど/の¥げきらん/の¥とき、¥ちよくめい/を¥おもんじ/て¥わたくし/の¥めい/を¥かろん/ず。¥これP202¥ひとへに¥きみ/の¥ため/に/して、¥まつたく¥み/の¥ため/に¥せ/ず。¥なかんづく、¥かの¥よりとも/は、¥さんぬる¥へいぢ−ぐわんねん−じふにんぐわつ、¥ちち¥さま/の−かみ−よしとも/が¥むほん/に¥よつ/て、¥すでに¥ちうばつ−せ/らる/べき¥よし、¥しきり/に¥おほせ−くださ/るる/と¥いへ/ども、¥こ=にふだう−たいしやうこく、¥じひ/の¥あまり、¥まうし−なだめ/られ/し¥ところ/なり。¥しかる/に¥むかし/の¥こうおん/を¥わすれ/て、¥はうい/を¥ぞんぜ/ず、¥たちまちに¥らうるゐ/の¥み/を¥もつて、¥みだりに¥ほうき/の¥らん/を¥なす。¥しぐ/の¥はなはだしき¥こと¥まうし/て¥あまり¥あり。¥はやく¥しんめい/の¥てんばつ/を¥まねき、¥ひそか/に¥はいせき/の¥そんめつ/を¥ごする¥もの/か。¥それ¥じつげつ/は¥いちもつ/の¥ため/に、¥その¥あきらか/なる¥こと/を¥くらう−せ/ず。¥めいわう/は¥いち−にん/が¥ため/に、¥その¥ほふ/を¥まげ/ず。¥いちあく/を¥もつて¥その¥ぜん/を¥すて/ず、¥せうか/を¥もつて¥その¥こう/を¥おほふ¥こと¥なかれ。¥かつうは¥たうけ¥すだい/の¥ほうこう、¥かつうは¥ばうぶ¥すど/の¥ちうせつ、¥おぼしめし−わすれ/ず/は、¥きみ¥かたじけなく/も¥しこく/の¥ご=かう¥ある/べき/か。¥とき/に¥しん=ら¥ゐんぜん/を¥うけたまはつ/て、¥ふたたび¥きうと/に¥かへつ/て、¥くわいけい/の−はぢ/を¥きよめ/ん。¥もし¥しから/ず/は、¥きかい、¥かうらい、¥てんぢく、¥しんだん/に¥いたる/べし。¥かなしき/かな、¥にんわう¥はちじふいちだい/の¥ぎよ=う/に¥あたつ/て、¥わが¥てう¥かみよ/の¥れいほう、¥つひに¥むなしく¥いこく/の¥たから/と¥なさ/ん/か。¥よろしく¥これ=ら/の¥おもむき/を¥もつて、¥しかる/べき¥やう/に¥もらし¥そうもん−せ/しめ¥たまへ。¥むねもり¥とんじゆ、¥つつしん/で¥まうす。¥じゆえい−さんねん−にんぐわつ−にじふはちにち、¥じゆ−いちゐ−さきの−ないだいじん−たひらの−あそん−むねもり/が¥うけぶみ」/と/こそ¥かか/れ/たれ。P203
「かいもん」(『かいもん』)S1005¥さんみ/の−ちうじやう、¥この¥よし/を¥きき¥たまひ/て、¥さ/こそ/は¥あら/んずれ、¥いか/に¥いちもん/の¥ひとびと/の¥わるう¥おもは/れ/けん/と、¥こうくわい−せ/られ/けれ/ども¥かひ/ぞ¥なき。¥げに/も¥しげひら¥いち−にん/を¥をしみ/て、¥さ/しも/に¥わが¥てう/の¥ちようほう、¥さんじゆ/の−しんき/を¥かへし¥たまふ/らん/と/も¥おぼえ/ね/ば、¥この¥おん=うけぶみ/の¥おもむき/は、¥かねて/より¥おもひ−まうけ/られ/たり/しか/ども、¥いまだ¥さう/を¥まうさ/れ/ざり/つる/ほど/は、¥なにと−なう¥こころ−もとなう¥おもは/れ/ける/に、¥うけぶみ¥すでに¥たうらい−し¥て、¥くわんとう/へ¥くだら/る/べき/に¥さだまり/しか/ば、¥さんみ/の−ちうじやう、¥みやこ/の¥なごり/も、¥いまさら¥をしう/や¥おもは/れ/けん、¥とひの−じらう−さねひら/を¥めし/て、「¥しゆつけ−せ/ばや/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥この¥よし/を¥くらう−おん=ざうし/へ¥まうす。¥ゐん/の−ごしよ/へ¥そうもん−せ/られ/たり/けれ/ば、¥ほふわう、「¥よりとも/に¥みせ/て¥のち/こそ、¥と/も−かう/も¥はからは/め。¥ただいま/は¥いかで/か¥ゆるす/べき」/と¥おほせ/けれ/ば、¥この¥よし/を¥ちうじやう=どの/に¥まうす。「¥さら/ば¥ねんらい¥ちぎつ/たる¥ひじり/に、¥いま−いちど¥たいめん−し/て、¥ごしやう/の¥こと/を/も¥まうし−だんぜ/ばや/と¥おもふ/は¥いか/に」/と¥のたまへ/ば、¥とひの−じらう、「¥ひじり/を/ば¥たれ/と¥まうし¥さふらふ/やらん」。「¥くろだに/の¥ほふねん−ばう/と¥いふ¥ひと/なり」。「¥さて/は¥くるしう¥さふらふ/まじ、¥とうとう」/とて¥ゆるし¥たてまつる。P204¥さんみ/の−ちうじやう¥なのめ/なら/ず/に¥よろこび、¥やがて¥ひじり/を¥しやうじ¥たてまつ/て、¥なくなく¥まうさ/れ/ける/は、「¥こんど¥さいこく/にて¥いか/に/も−なる/べかり/し¥み/の、¥いき/ながら¥とらはれ/て、¥まかり−のぼり¥さふらふ/は、¥ふたたび¥しやうにん/の¥おん=げんざん/に¥いる/べき/にて¥さふらひ/けり。¥さて/も¥しげひら/が¥ごしやう¥いかが¥つかまつり¥さふらふ/べき。¥み/の¥み/にて¥さふらひ/し/ほど/は、¥しゆつし/に¥まぎれ、¥せいむ/に¥ほだされ、¥けうまん/の¥こころ/のみ¥ふかう/して、¥たうらい/の¥しようちん/を¥かへりみ/ず。¥いはんや¥うん¥つき¥よ¥みだれ/て、¥みやこ/を¥いで/し¥のち/は、¥ここ/に¥たたかひ¥かしこ/に¥あらそひ、¥ひと/を¥ほろぼし¥み/を¥たすから/ん/と¥おもふ¥あくしん/のみ¥さへぎつ/て、¥ぜんしん/は¥かつて¥おこら/ず。¥なかんづく¥なんと−えんしやう/の¥こと/は、¥わうめい/と¥まうし¥ぶめい/と¥いひ、¥きみ/に¥つかへ¥よ/に¥したがふ¥ほふ¥のがれ−がたう/して、¥しゆと/の¥あくぎやう/を¥しづめ/ん/が¥ため/に¥まかり−むかつ/て¥さふらへ/ば、¥ふりよ/に¥がらん/の¥めつばう/に¥および/ぬる¥こと/は、¥ちから¥およば/ざる¥しだい/なり。¥され/ども¥とき/の¥たいしやうぐん/にて¥さふらひ/し¥あひだ、¥せめ¥いちじん/に¥きす/とかや¥まうし¥さふらふ/なれ/ば、¥しげひら¥いち−にん/が¥ざいごふ/に/こそ¥なり¥さふらひ/ぬ/らめ/と¥おぼえ¥さふらふ。¥いま¥また¥かれ−これ¥はぢ/を¥さらす/も、¥しかしながら¥その¥むくい/と/のみ/こそ¥おもひ−しら/れ/て¥さふらへ。¥いま/は¥かみ/を¥そり、¥こつじき−づだ/の−ぎやう/を/も¥し/て、¥ひとへに¥ぶつだう−しゆぎやう−し/たく¥さふらへ/ども、¥かかる¥み/に¥まかり−なつ/て¥さふらへ/ば、¥こころ/に¥こころ/を/も¥まかせ¥さふらは/ず。¥いか/なる¥ぎやう/を¥しゆし/て/も、¥いちごふ¥たすかる/べし/と/も¥おぼえ/ぬ¥こと/こそ¥くちをしう¥さふらへ。¥つらつら¥いつしやう/の¥けぎやう/を¥あんずる/に、¥ざいごふ/は¥しゆみ/より/も¥たかく、¥ぜんごん/は¥みぢん/ばかり/も¥たくはへ¥なし。¥かくて¥いのち¥むなしう¥をはり¥さふらひ/な/ば、¥くわけつたう/の¥くくわ、¥あへて¥うたがひ¥なし。¥ねがは−く/は、¥しやうにん¥じひ/を¥おこし、¥あはれみ/を¥たれ¥たまひ/て、¥かかるP205¥あくにん/の¥たすかり/ぬ/べき¥ほうぼふ¥さふらは/ば、¥しめし¥たまへ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥しやうにん¥なみだ/に¥むせび¥うつぶし/て、¥しばし/は¥とかう/の¥こと/も¥のたまは/ず。¥
やや¥あつ/て¥しやうにん¥のたまひ/ける/は、「¥まことに¥うけ−がたき¥にんじん/を¥うけ/ながら、¥むなしく¥さんづ/に¥かへり¥ましまさ/ん¥こと、¥かなしん/で/も¥なほ¥あまり¥あり。¥しかる/に¥いま¥ゑど/を¥いとひ、¥じやうど/を¥ねがは/ん/と¥おぼしめさ/ば、¥あくしん/を¥すて/て¥ぜんしん/を¥おこし¥ましまさ/ん/に¥おいて/は、¥さんぜ/の¥しよぶつ/も¥さだめて¥ずゐき−し¥たまふ/らん。¥それ¥しゆつり/の¥みち¥まちまち/なり/と/は¥まうせ/ども、¥まつぽふ−ぢよくらん/の¥き/に/は、¥しようみやう/を¥もつて¥すぐれ/たり/と¥す。¥こころざし/を¥くほん/に¥わかち、¥ぎやう/を¥ろくじ/に¥つづめ/て、¥いか/なる¥ぐち−あんどん/の¥もの/も¥となふる/に¥たより¥あり。¥つみ¥ふかけれ/ば/とて、¥ひげ−し¥たまふ/べから/ず。¥じふあく¥ごぎやく¥ゑしん−すれ/ば¥わうじやう/を¥とぐ。¥くどく¥すくな/けれ/ば/とて、¥のぞみ/を¥たつ/べから/ず。¥いちねん−じふねん/の¥こころ/を¥いたせ/ば¥らいかう−す。¥せんしやう−みやうがう−し−さいはう/と¥しやくし/て、¥もつぱら¥みやうがう/を¥しようずれ/ば、¥さいはう/に¥いたり、¥ねんねん−しようみやう−じやう−ざんげ/と¥のたまひ/て、¥ねんねん/に¥みだ/を¥となふれ/ば、¥ざんげ−する/なり/と/ぞ¥をしへ/ける。¥りけん−そくぜ−みだがう/を¥たのめ/ば、¥まえん¥ちかづか/ず。¥いつしやう−しようねん−ざい−かいぢよ/と¥ねんずれ/ば、¥つみ¥みな¥のぞけ/り/と¥みえ/たり。¥じやうどしう/の¥しごく/は、¥おのおの¥りやく/を¥ぞんじ/て、¥たいりやく¥これ/を¥かんじん/と¥す。¥ただし¥わうじやう/の¥とくふ/は、¥しんじん/の¥いうぶ/に¥よる/べし。¥ただ¥この¥をしへ/を¥ふかく¥しんじ/て、¥ぎやうぢう−ざぐわ、¥じしよ−しよえん/を¥きらは/ず、¥さんげふ−しゐぎ/に¥おいて、¥しんねん−くしよう/を¥わすれ¥たまは/ず/は、¥ひつみやう/を¥ご/と/して、¥この¥くゐき/の¥かい/を¥いで/て、¥かの¥ごくらく−じやうど/の¥ふたい/の¥ど/に¥わうじやう−し¥たまは/ん¥こと、¥なん/の¥うたがひ/か¥あら/ん/や」/とP206¥けうげ−し¥たまへ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう¥なのめ/なら/ず¥よろこび、「¥ねがは−く/は、¥この¥ついで/に¥かい/を¥たもた/ばや/と/は¥ぞんじ¥さふらへ¥ども、¥しゆつけ¥つかまつら/で/は¥かなひ¥さふらふ/まじ/や」/と¥まうさ/れ/たり/けれ/ば、¥しやうにん、「¥しゆつけ−せ/ぬ¥ひと/も、¥かい/を¥たもつ¥こと/は¥つね/の¥ならひ/なり」/とて、¥ひたひ/に¥かみそり/を¥あて、¥そる¥まね/を¥し/て、¥じつかい/を¥さづけ/らる。¥ちうじやう¥ずゐき/の¥なみだ/を¥ながい/て、¥これ/を¥うけ−たもち¥たまふ。¥しやうにん/も¥よろづ¥もの−あはれ/に¥おぼえ/て、¥かき−くらす¥ここち−し/て、¥なくなく¥かい/を/ぞ¥とか/れ/ける。¥おん=ふせ/と¥おぼしく/て、¥ひごろ¥おはし/て¥あそば/れ/ける¥さぶらひ/の¥もと/に¥あづけ−おか/れ/たり/ける¥おん=すずり/を、¥ともとき/して¥めし−よせ/て、¥しやうにん/に¥たてまつり、「¥これ/を/ば¥ひと/に¥たび¥さふらは/で、¥つねに¥おん=め/の¥かから/んずる¥ところ/に¥おか/れ¥さふらひ/て、¥それがし/が¥もの/ぞ/かし/と¥ごらんぜ/られ/ん¥たび−ごと/に/は、¥おん=ねんぶつ¥さふらふ/べし。¥また¥おん=ひま/に/は、¥きやう/を/も¥いつくわん¥ご=ゑかう¥さふらは/ば、¥しかる/べう¥さふらふ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥しやうにん¥とかう/の¥へんじ/に/も¥および¥たまは/ず、¥これ/を¥とつ/て¥ふところ/に¥いれ、¥すみぞめ/の¥そで/を¥かほ/に¥おし−あて、¥なくなく¥くろだに/へ/ぞ¥かへら/れ/ける。¥くだん/の¥すずり/は、¥しんぷ¥にふだう−しやうこく、¥そうてう/の¥みかど/へ、¥しやきん/を¥おほく¥まゐら/させ¥たまひ/たり/しか/ば、¥へんぱう/と¥おぼしく/て、¥につぽん¥わだ/の¥へい−たいしやうこく/の¥もと/へ/とて、¥おくら/れ/たり/ける/とかや。¥な/を/ば¥まつかげ/と/ぞ¥まうし/ける。P207
「かいだうくだり」(『かいだうくだり』)S1006¥さる−ほど/に¥ほん−ざんみ/の−ちうじやう−しげひらの−きやう/を/ば、¥かまくら/の−さきの−ひやうゑ/の−すけ−よりとも、¥しきり/に¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さら/ば¥くださ/る/べし/とて、¥とひの−じらう−さねひら/が¥て/より、¥くらう−おん=ざうし/の¥しゆくしよ/へ¥わたし¥たてまつる。¥おなじき−さんぐわつ−とをかのひ、¥かぢはら−へいざう−かげとき/に¥ぐせ/られ/て、¥くわんとう/へ/こそ¥くだら/れ/けれ。¥さいこく/にて¥いか/に/も−なる/べかり/し¥ひと/の、¥いき/ながら¥とらはれ/て、¥みやこ/へ¥のぼり¥たまふ/だに¥くちをしき/に、¥いまさら¥また¥せき/の¥ひんがし/へ¥おもむか/れ/ん¥こころ/の¥うち、¥おし−はから/れ/て¥あはれ/なり。¥しのみやがはら/に¥なり/ぬれ/ば、¥ここ/は¥むかし¥えんぎ¥だいし/の¥わうじ¥せみまる/の、¥せき/の¥あらし/に¥こころ/を¥すまし、¥びは/を¥ひき¥たまひ/し/に、¥はくが/の−さんみ/と¥いつ/し¥ひと、¥かぜ/の¥ふく¥ひ/も¥ふか/ぬ¥ひ/も、¥あめ/の¥ふる¥よ/も¥ふら/ぬ¥よ/も、¥みとせ/が¥あひだ¥あゆみ/を¥はこび、¥たち−きき/て、¥かの¥さんきよく/を¥つたへ/けん、¥わらや/の¥とこ/の¥いにしへ/も、¥おもひ−やら/れ/て¥あはれ/なり。¥あふさかやま¥うち−こえ/て、¥せた/の−からはし、¥こま/も¥とどろ/と¥ふみ−ならし、¥ひばり¥あがれ/る¥のぢ/の−さと、¥しが/の¥うらなみ¥はる¥かけ/て、¥かすみ/に¥くもる¥かがみやま、¥ひら/の−たかね/を¥きた/に¥し/て、¥いぶき/の−だけ/も¥ちかづき/ぬ。¥こころ/を¥とむ/と¥し¥なけれ/ども、¥あれ/て¥なかなか¥やさしき/は、¥ふは/の−せきや/の¥いたびさし、¥いか/にP208¥なる¥み/の¥しほひがた、¥なみだ/に¥そで/は¥しをれ/つつ、¥かの¥ありはらの−なにがし/の、¥からごろも¥き/つつ¥なれ/に/し/と¥ながめ/けん、¥みかはの−くに/の¥やつはし/に/も¥なり/ぬれ/ば、¥くもで/に¥もの/を/と¥あはれ/なり。¥はまな/の−はし/を¥わたり¥たまへ/ば、¥まつ/の¥こずゑ/に¥かぜ¥さえ/て、¥いりえ/に¥さわぐ¥なみ/の¥おと、¥さら/で/も¥たび/は¥もの−うき/に、¥こころ/を¥つくす¥ゆふまぐれ、¥いけだ/の−しゆく/に/も¥つき¥たまひ/ぬ。¥かの¥しゆく/の¥ちやうじや¥ゆや/が¥むすめ、¥じじう/が¥もと/に、¥その¥よ/は¥さんみ¥しゆくせ/られ/けり。¥じじう、¥さんみ/の−ちうじやう=どの/を¥み¥たてまつ/て、「¥ひごろ/は¥つて/に/だに¥おぼしめし−より¥たまは/ぬ¥ひと/の、¥けふ/は¥かかる¥ところ/へ¥いら/せ¥たまふ¥こと/の¥ふしぎ−さ/よ」/とて、¥いつしゆ/の¥うた/を¥たてまつる。¥
たび/の¥そら¥はにふ/の¥こや/の¥いぶせ−さ/に¥ふるさと¥いか/に¥こひしかる/らむ W078¥
ちうじやう/の¥へんじ/に、¥
ふるさと/も¥こひしく/も¥なし¥たび/の¥そら¥みやこ/も¥つひ/の¥すみか/なら/ね/ば W079¥
やや¥あつ/て、¥ちうじやう、¥かぢはら/を¥めし/て、「¥さて/も¥ただいま/の¥うた/の¥ぬし/は、¥いか/なる¥もの/ぞ。¥やさしう/も¥つかまつ/たる/ものかな」/と¥のたまへ/ば、¥かげとき¥かしこまつ/て¥まうし/ける/は、「¥きみ/は¥いまだ¥しろしめさ/れ¥さふらは/ず/や。¥あれ/こそ¥やしま/の¥おほい=との/の、¥いまだ¥たう−ごく/の¥かみ/にて¥わたら/せ¥たまひ/し¥とき、¥めさ/れ¥まゐらせ/て、¥ご=さいあい¥さふらひ/し/に、¥らうぼ/を¥これ/に¥とどめ−おき、¥つね/は¥いとま/を¥まうし/しか/ども、¥たまはら/ざり/けれ/ば、¥ころ/は¥やよひ/の¥はじめ/にて/も/や¥さふらひ/けん、¥
いか/に−せ/む¥みやこ/の¥はる/も¥をしけれ/ど¥なれ/し¥あづま/の¥はな/や¥ちる/らむ W080
/とP209¥いふ¥めいか¥つかまつり、¥いとま/を¥たまはつ/て¥まかり−くだり¥さふらひ/し、¥かいだういち/の¥めいじん/にて¥さふらふ」/と/ぞ¥まうし/ける。¥みやこ/を¥いで/て¥ひかず¥ふれ/ば、¥やよひ/も¥なかば¥すぎ、¥はる/も¥すでに¥くれ/な/ん/と¥す。¥ゑんざん/の¥はな/は¥のこん/の¥ゆき/か/と¥みえ/て、¥うらうら−しまじま¥かすみ−わたり、¥こ/し−かた¥ゆく−すゑ/の¥こと=ども/を¥おもひ−つづけ¥たまふ/に/も、「¥こ/は¥され/ば¥いか/なる¥しゆくごふ/の¥うたて−さ/ぞ」/と¥のたまひ/て、¥ただ¥つきせ/ぬ¥もの/は¥なみだ/なり。¥おん=こ/の¥いち−にん/も¥おはせ/ぬ¥こと/を、¥はは/の¥にゐ=どの/も¥なげき、¥きたのかた¥だいなごん/の−すけ=どの/も、¥ほい−なき¥こと/に¥し¥たまひ/て、¥よろづ/の¥かみ−ほとけ/に¥かけ/て¥いのり¥まうさ/れ/けれ/ども、¥その¥しるし¥なし。「¥かしこう/ぞ¥なかり/ける。¥こ/だに/も¥あら/ましか/ば、¥いか/ばかり¥おもふ¥こと¥あら/む」/と¥のたまひ/ける/こそ¥せめて/の¥こと/なれ。¥さやのなかやま/に¥かかり¥たまふ/に/も、¥また¥こゆ/べし/と/も¥おぼえ/ね/ば、¥いとど¥あはれ/の¥かず−そひ/て、¥たもと/ぞ¥いたく¥ぬれ−まさる。¥うつ/の−やまべ/の¥つた/の¥みち、¥こころ−ぼそく/も¥うち−こえ/て、¥てごし/を¥すぎ/て¥ゆけ/ば、¥きた/に¥とほざかつ/て、¥ゆき¥しろき¥やま¥あり。¥とへ/ば¥かひ/の−しらね/と¥いふ。¥その−とき¥さんみ/の−ちうじやう¥おつる¥なみだ¥を¥おさへ/つつ、¥
をしから/ぬ¥いのち/なれ/ども¥けふ/まで/に¥つれなき¥かひ/の−しらね/を/も¥み/つ W081¥
きよみ/が−せき¥うち−こえ/て、¥ふじ/の−すその/に¥なり/ぬれ/ば、¥きた/に/は¥せいざん¥がが/と/して、¥まつ¥ふく¥かぜ¥さくさく/たり。¥みなみ/に/は¥さうかい¥まんまん/と/して、¥きし¥うつ¥なみ/も¥ぼうぼう/たり。「¥こひ−せ/ば¥やせ/ぬ/べし、¥こひ−せ/ず/も¥あり/けり」/と、¥みやうじん/の¥うたひ−はじめ¥たまひ/けん、¥あしがら/の−やま¥うち−こえ/て、P210¥こゆるぎ/の−もり、¥まりこがは、¥こいそ、¥おほいそ/の¥うらうら、¥やつまと、¥とがみがはら、¥みこしがさき/を/も¥うち−すぎ/て、¥いそが/ぬ¥たび/と/は¥おもへ/ども、¥ひかず¥やうやう¥かさなれ/ば、¥かまくら/へ/こそ¥いり¥たまへ。¥
「せんじゆ」(『せんじゆのまへ』)S1007¥さる−ほど/に¥ひやうゑ/の−すけ=どの、¥さんみ/の−ちうじやう=どの/に¥たいめん¥あつ/て¥まうさ/れ/ける/は、「¥そもそも¥よりとも、¥きみ/の¥おん=いきどほり/を¥やすめ¥たてまつり、¥ちち/の¥はぢ/を¥きよめ/ん/と¥おもひ−たち/し¥うへ/は、¥へいけ/を¥ほろぼさ/ん¥こと、¥あん/の¥うち/に¥ぞんぜ/しか/ども、¥まさしう¥かやう/に¥おん=め/に¥かかる/べし/と/は、¥かけ/て/は¥ぞんじ¥さふらは/ず。¥この¥ぢやう/で/は、¥やしま/の¥おほい=との/の¥げんざん/に/も¥いり/ぬ/べし/と¥おぼえ¥さふらふ。¥さて/も¥なんと−えんしやう/の¥こと/は、¥こ=にふだう−しやうこく/の¥ご=せいばい/にて¥さふらひ/ける/か、¥また¥とき/に¥とつ/て/の¥おん=ぱからひ/か、¥もつて/の−ほか/の¥ざいごふ/で/こそ¥さふらふ/めれ」/と¥まうさ/れ/けれ/ば、¥さんみ/の−ちうじやう¥のたまひ/ける/は、「¥まづ¥なんと−えんしやう/の¥こと/は、¥こ=にふだう−しやうこく/の¥せいばい/に/も¥あら/ず、¥また¥しげひら/が¥わたくし/の¥ほつき/にて/も¥さふらは/ず。¥しゆと/の¥あくぎやう/を¥しづめ/ん/が¥ため/に、¥まかり−むかつ/て¥さふらひ/し/ほど/に、¥ふりよ/に¥がらん/の¥めつぼう/に¥および¥さふらひ/ぬる¥こと/は、¥ちから¥およば/ざる¥しだい/なり。¥こと−あたらしき¥まうしごと/にて¥さふらへ/ども、¥むかし/は¥げんぺい¥さう/に¥あらそひ/て、¥てうか/の¥おん=かため/たり/しか/ども、P211¥ちかごろ/は¥げんじ/の¥うん¥かたぶき−たつ/し¥こと、¥ひと¥みな¥ぞんぢ/の¥むね/なり。¥なかんづく¥たうけ/は¥ほうげん¥へいぢ/より¥この−かた、¥どど/の¥てうてき/を¥たひらげ、¥けんじやう¥み/に¥あまり、¥かたじけなく/も¥いつ