太陽と木銃
- 太陽の子供 序詩
- 太陽の子供
みんなみんな子供だ、僕たちは、
日の出だ、起きろよ、見ろ、空を、
地平だ、光だ、旗雲だ。
生れたばかりだ、僕たちは。
みんなみんな子供だ、僕たちは、
嵐だ、かけろよ、野を山を。
小鳥だ、花粉だ、若駒だ。
地べたをはだしだ、僕たちは。
みんなみんな子供だ、僕たちは、
芽ばえだ、のびろよ、すくすくと、
みどりだ、素直だ、草の葉だ。
萌えたつ林だ、僕たちは。
みんなみんな子供だ、僕たちは、
男だ、きたへろ、あらがねを。
勇気だ、正義だ、ピストンだ。
力で行くのだ。僕たちは。
みんなみんな子供だ、僕たちは、
日の出だ、起きろよ、見ろ、空を。
らつぱだ、太鼓だ、進軍だ。
太陽の子供だ、僕たちは。
- 日の丸万歳
- 今日は八の日
- 大詔奉戴日の歌
子供日本、日の出の雲に
起床らつぱだ、早よ、起きよ。
けふは大詔奉戴日。
いちんち元気で日の丸弁当。
兵隊さんありがたう。
日の丸進め。
子供日本、野山に海に、
体きたへにまた出よよ。
けふは大詔奉戴日。
いちんち仲よくはげんで暮らそ。
兵隊さんありがたう。
日の丸進め。
子供日本、がつちり組んで
興る亜細亜に今立とよ。
けふは大詔奉戴日。
いちんち青空仰いで勇む。
兵隊さんありがたう。
日の丸進め。
- 日の丸万歳
日の丸万歳、お日さまを
染めだす日の丸、お国のしるし。
日の丸日本、どの空も、
いつでもどこでも、明るいな。
日の丸万歳、日の丸の
下から鳴ります君が代の喇叭。
日の丸日本、どの空も、
いつでもどこでも、明るいな。
日の丸万歳、東から
行け行け日の丸、アジヤは明ける。
日の丸日本、どの空も、
いつでも、どこでも、明るいな。
日の丸万歳、太平洋、
南へ南へお船はすすむ。
日の丸日本、どの空も、
いつでもどこでも、明るいな。
- 皇太子さまお生れなつた
一
日の出だ、日の出に
鳴つた、鳴つた、ポーオ、ポー、
サイレンサイレン、ランラン、チンゴン、
夜明けの鐘まで。
天皇陛下お喜び、
皆々かしは手、
うれしいな、母さん、
皇太子さま、お生れなつた。
二
日の出だ、日の出に
鳴つた、鳴つた、ポーオ、ポー、
サイレンサイレン、ランラン、チンゴン、
夜明けの鐘まで。
皇后陛下、お大事に、
皆々涙で、
ありがと、お日さま、
皇太子さま、お生れなつた。
三
日の出だ、日の出に
鳴つた、鳴つた、ポーオ、ポー、
サイレンサイレン、ランラン、チンゴン、.
夜明けの鐘まで。
日本中が大喜び、
皆々子供が、
うれしいな、有難う、
皇太子さま、お生れなつた。
- 日本万歳皇太子さま
日本万歳、皇太子さま、
元日元日おめでたう、
おめざめ早いな、
アジヤの夜明。
君が代のらつぱ
霞に鳴るよ。
日本万歳、皇太子さま、
父さん母さんおめでたう、
子供はつよいな、
ぐんぐんのびる。
進軍らつぱ
雲までひびく。
日本万歳、皇太子さま、
みんなみんなおめでたう、
もうぢきすごいな、
僕らの時代。
進軍らつぱ
世界はどよむ。
日本万歳、皇太子さま、
陸軍海軍おめでたう、
日の丸えらいな
アジヤは興る。
君が代のらつぱ
霞に鳴るよ。
- 継宮さま
一
風はかがやく、
朝日はあがる。
早いお目ざめ、お庭の芝で、
ラジオ体操、一二三四。
ラジオ体操、一二三四。
宮さま、宮さま、ごきげんよろしう、
お手々は空へ
おみ足土に
継宮さま、万々歳。
二
山はかがやく、
那須野はひろい。
早いおさんぽ、仔馬も鳩も、
いつもお供で、たんたほろろん。
いつもお供で、たんたほろろん。
宮さま、宮さま、ごきげんよろしう、
お手々は空に
おみ足土に
継宮さま、万々歳。
三
海はかがやく、
波、波、あがる。
早いお目ざめ、鴎も魚も、
浜で潮あび、らんらざぶらん。
浜で潮あび、らんらざぶらん。
宮さま、宮さま、ごきげんよろしう、
お手々は空に
おみ足止に
継宮さま、万々歳。
- みんなの皇女さま
大きな大きな日の丸の
中から御誕生皇女さま、
うぶごゑお高くお手あげて
大陸日本日がのぼる。
万歳万歳野も山も
見わたすかぎりは日の丸だ、
戦地も銃後も声あげて
これからみんなの皇女さま。
可愛い、凛々しい皇女さま
お眼々はどちらを御覧なる、
きつとよ、満洲、支那、蒙古
海でも河でも大きいな。
今にもお船で椰子の嶋
お供しましよか皇女さま、
陸ではちりから驢馬の鈴、
万里の長城日がのぼる。
- 秩父の宮さま
日本アルプス槍ケ嶽、槍ケ嶽、
雪のお山に、お山に、お山に、
たららる、らつら、おのぼりなるよ。
リユクサツクしよつて、ステツキついて、
登山の宮様、秩父の宮さま、
みんなの宮さま、たららる、らつ。
霧のテントに藁の床、藁の床、
星の光に、光に、光に、
たららる、らつら、おやすみなるよ。
背嚢とつて、夜露にぬれて、
スポーツの宮さま、秩父の宮さま、
みんなの宮さま、たららる、らつ。
つよい兵隊、三聯隊、三聯隊、
赤い軍帽で、軍帽で、軍帽で、
たららる、らつら、おすすみなるよ。
指揮刀振つて、真つ先かけて、
士官の宮さま、秩父の宮さま、
みんなの宮さま、たららる、らつ。
いつもお気がる、御所のまへ、御所のまへ。
チカリおめがね、おめがね、おめがね。
たららる、らつら、おとほりなるよ。
はやいおみあし、お手々をあげて、
僕らの宮さま、秩父の宮さま、
みんなの宮様、たららる、らつ。
- 風の来る道
- 軍艦日向
戦艦日向の
兵隊さん、
馬鈴薯むきむき
いそがしい。
ホラ、ラツラルラ、
ソラ、ラツラルラ。
ビーフだ、ビーフだ、
うまさうだ。
のつぽに、ふとつちよ、
がやがやだ。
ホラ、ラツラルラ、
ソラ、ラツラルラ。
すゐとん、すゐとん、
メリケン粉、
千人分だよ、
二千人。
ホラ、ラツラルラ、
ソラ、ラツラルラ。
むけむけ馬鈴薯、
すぐお午、
散歩の時間が
おそくなる。
ホラ、ラツラルラ、
ソラ、ラツラルラ。
- クレーン
クレーン立つてる、お空へ向いて
クレーン吊ります、揺れてる鉤で。
クレーン突き出す、片手の腕を、
クレーン、がつちやん、力があるよ。
クレーンうごいた、羊をのせて、
クレーン、そろりとお船へまはす。
クレーン、夕焼、さざなみ、小波、
クレーン、がつちやん、羊をおろす。
クレーン見ないか、十五夜さまだ。
クレーン吊ります、こんどは影だ。
- 沖
風の来る道、
波のうへ、
白く、ひらひら、
見えてます。
およぎつかれて、
うしろみりや、
だれもゐませぬ
もう浜に。
風の来る道、
波のうへ、
「おうい。」わたしは
手をあげる。
すぐに見えても、
城ケ嶋、
いけばいくほど
遠くなる。
- かいがん
おふねは、おふねは
見えずなる、
ケビンも、フラフも
見えずなる。
港のさざなみ、
飛の魚、
どこまで、いつまで、
ぎんぎらだ。
どこまで、ついてく
あのかもめ、
けむりも、マストも
見えずなる。
なんだつて、すつぱい
このざくろ、
あかいかはごと
なげつけろ。
- 海の台場
海の台場に
萌えたよ、草が。
春が来ました、
来ました、沖に。
壊れ台場に
さします、潮が。
波がぶつかる、
ぶつかる、岩に。
空にひらひら
飛びます、鳥が。
あれはかもめだ、
かもめだ、白い。
海の台場の
つくつくぼうず。
とりにゆきませう、
ゆきませう、とりに。
海の台場に
萌えたよ、草が。
春が来ました、
来ました、沖に。
- うちのボート
うちのボートは
オールが二つ。
胴に赤すぢ、
ちやつぷり/\揺れる。
うちのボートは
梶なしボート。
いつも、あてなし
ちやつぷり/\揺れる。
うちのボートは
ちつちやなボート。
水と影とが
ちやつぷり/\揺れる。
うちのボートは
兄さんと乗れる。
漕げば、月夜も
ちやつぷり/\揺れる。
うちのボートは
うつかりすりや逃げる。
下の浅瀬で、
ちやつぷり/\揺れる。
- さびれた砂山
あかいだんだら
日よけ傘、
浜に見えなくなつちまふ。
みんないつちやふ
砂の山、
風がその砂ふきあげる。
いつも見に出た
沖の雲、
波もごうごうやつてくる。
ふたつ瘤山
砂のやま、
防風ばかりになつちまふ。
つまんないなと
兄さんと、
大きな鴎をかぞへてる。
- 二人の兵隊さん
二人ならんで、
兵隊さん、
そろひの帽子で
あかいすぢ。
まるで一人で、
あるくよだ、
足が合つてる、
向かふ土手。
ポプラも一列、
並んでる、
雲がぽつかり、
白い雲。
二人並んで
兵隊さん、
足が合つてる
あのズボン。
- 一銭蒸気
ポツポツポ、
けむりのドーナツ
ポツポツポツとはいて
ちひさなえんとつ、
ちひさなおふね。
ポツポツポ、
けむりのドーナツ、
ポツポツポツで出てる。
あかるい大川、
おふねははしる。
ポツポツポ、
おやつのドーナツ、
ポツポツポツはいいな、
ゆふやけこやけで
おてんき、てんき。
- 川つぷち
大きな寝台は
樫の木の寝台、
お百姓さんの寝台、
ちやうど似てゐる兵隊さんの寝台。
大きな寝台に
小さなふたり、
姉さん、なアに。
あれは瀬の音、なんでもないの。
樫の木の寝台に
晩かた、ふたり。
姉さん、なアに。
あれは風でしよ、田圃ぢやないの。
川つぷちの寝台に
腹んばひで、ふたり。
姉さん、なアに。
あれは稲妻、遠いぢやないの。
兵隊さんの寝台に
仰向いて、ふたり。
姉さん、なアに。
あれは七つよ、昴ぢやないの。
姉さん、なアに。
姉さん、なアに。
- ラジオの塔
- 春が来る、来る
春が来る、来る、
夜があける。
まはれ、地球儀
くるくると。
朝が来る、来る、
日がのぼる。
咲けよ、さくらよ
らんらんと。
風が来る、来る、
夜があける。
まはれ、火星よ、
あの運河。
誰か来る、来る、
音が来る。
光れ、プロペラ、
雲がわく。
- 麦笛
麦笛吹き吹き
野道を行けば
ぴいちく雲雀が
旋廻してあがる。
時計台のお空を
旋廻してあがる。
五月の霞は
お乳の霞、
ぴいちく雲雀の
ひよつこは何処だ。
お乳のこひしい
ひよつこはどこだ。
雲雀のおうちは
青麦穂麦、
野道の向かふを
ガソリンカアがはしる。
日向の山すそ
高圧線がつづく。
麦笛吹き吹き
野道を行けば
ぴいちく雲雀が
急降下でおりる。
母さん雲雀が
急降下でおりる。
- 兵隊さんと鳩
赤い帽子の
兵隊さん、
ついてひいてく
鳩の家。
鳩がいつぱい
伝書鳩、
まどにかなあみ、
まるいまど。
きいこ、きいころ
くるまのわ、
鳩はほろろと
啼いて行く。
土手にたんぽぽ、
しろい雲、
「やすめつ」おひるの
ドンがなる。
- 花火の兵隊
ポン、ポン、ポン、
あれは花火よ、おひるの花火。
ポン、ポン、ポン、
あれは柳よ、黄いろいけむり。
ポン、ポン、ポン、
あれは兵隊、鉄砲も紙よ。
ポン、ポン、ポン、
あれはどこゆく、野山か、海か。
ポン、ポン、ポン、
風に吹かれて、はるかに消えて。
ポン、ポン、ポン、
あれはひとりよ、鉄砲を肩に。
ポン、ポン、ポン、
花火花火よ、もひとつあがれ。
- タンク
タンク、ギリ/\、ガツチヤンチヤン、
タンクのお窓に何がゐる。
タンク、ギリ/\、ガツチヤンチヤン、
ぎんぎら眼玉が中にゐる。
タンク、ギリ/\、ガツチヤンチヤン、
ぎんぎら眼玉は何見てる。
タンク、ギリ/\、ガツチヤンチヤン、
眼がねをかけてる、敵見てる。
タンク、ギリ/\、ガツチヤンチヤン、
機関銃すゑつけ、ほら、見てる。
タンク、ギリ/\、ガツチヤンチヤン、
まつかな夕日にまだ見てる。
タンク、ギリ/\、ガツチヤンチヤン、
タンクはぢべたをゆすつてく。
- 来た来た
ほうら、来た来た。
おうちの空で、
下を見ました、
飛行機のうへで。
ピカリ光つた翼のうらが。
下で母さん、
ふつてる旗を、
空を見ました、
飛行機のマーク。
ピカリ光つた翼のうらが。
ひとつまはつた、
おうちの空を。
そして飛行機、
小さくなつて消えた。
ピカリ光つた翼のうらが。
- お空は紫
上に来た、前に来た、
横に来た、後に来た。
飛行機よ、飛行機よ、
はやいな飛行機。
ゆうらり、ゆうらり、
航空船がすすむよ。
鯨に鰯よ、
ちひさい飛行機。
上に来た、前に来た、
横に来た、後に来た。
どこまでついてく、
かはいい飛行機。
うなづく、うなづく、
航空船がうなづく。
よい子だ、よい子だ、
おいでよ、飛行機。
上に来た、前に来た、
横に来た、後に来た。
のどかなお昼よ、
きらきら飛行機。
お空はむらさき、
航空船は黄色よ。
母さん、母さん、
ついてく飛行機。
- 今年の春
春、春、春よ、
燕が来てる。
省線電車、
窓には子ども。
「燕よ、燕、
家はどこだ。」
「まだまだ知れぬ、
さがしてゐます。」
アンテナかけた
不思議な林。
今年の春は
見馴れぬ春よ。
どの屋根見ても
ななめの竹よ。
- てつきんコンクリート
てつきんコンクリート、コンカンと、
音がしてます、ふしんばに。
ちいちく、ぴいちく、ひばりの子。
あかいフラフのビルヂング、
五かい、六かい、ほう、高い。
ちいちく、ぴいちく、ひばりの子。
高いほねぐみ、てつのほね、
人がよぢてる、まめのよに。
ちいちく、ぴいちく、ひばりの子。
天につきます、ビルヂング、
いまに花ぞのやねのうへ。
ちいちく、ぴいちく、ひばりの子。
いいな、あそこへのぼれたら、
どんなお国が見えましよか。
ちいちく、ぴいちく、ひばりの子。
てつきんコンクリート、コンカンと、
音がしてます、雲のなか。
ちいちく、ぴいちく、ひばりの子。
- 鉄工場
しらべ革が、すべるよ、
するするするする、すべるよ。
歯ぐるまが、まはるよ、
噛み合ひ、噛み合ひ、まはるよ。
腕が、腕が、うごくよ、
ピストン、ピストン、うごくよ。
光つてる、光つてる――刃物が、
しゆうしゆうまはる鋸だよ。
ごんがん、鉄板投げるよ、
螺旋、螺旋、孔をあけるよ。
火花だ、鎚だ、くわつくわだ、
汽車のレールができるよ。
- しうんてん
ぴいしゆつ、しうんてんだ、
機関車だ。
ピストン、ピストン、
動いてる。
つきみさうだ、てつぽうゆりだ、
そら土手だ。
子供が、子供が、
すべつてる。
ふれふれ青旗、
ふみきりだ。
カタリとシグナル
手をあげた。
ぴいしゆつ、しうんてんだ、
工夫がまた出て
むきあつた。
- ラジオの塔
ラジオの塔は
きりんのくびよ。
おかほはどこだ、
耳だけみえる。
あつち向いちやいやよ、
こつち向いておくれ。
ラジオの塔は
二本よ二本、
むきあヘキリン、
夕日にあかれ。
あつち向いちやいやよ、
こつち向いておくれ。
ラジオの塔に
まきつけ雲よ、
キリンのくびが、
えりまきしたよ。
あつち向いちやいやよ、
こつち向いておくれ。
ラジオの塔よ、
キリンのくびよ、
夕やけ、小やけ、
出た出た月が。
あつち向いちやいやよ、
こつち向いておくれ。
- 青少年団
月が出ました、
丘のうへ、
青少年団、
手をあげる。
青少年団、
道ぶしん、
小石掻き掻き
準してる。
青少年団、
うれしいな、
でかいシヤベルに
長い捧。
青少年団、
さらさつと、
月の光に
すくつてる。
- 秋晴れ
みんなそろつて
日の丸弁当、
草にすわつて
たのしいおひる。
ツビー、ツビーと小鳥がなけば
谷でちよろろと水の音ひびく。
向かふとほるは
出征兵士、
誰か手をあげ
万歳してる。
ツビー、ツビーと小鳥がなけば
谷でちよろろと水の音ひびく。
今日は秋晴
勤労奉仕、
ぼくら稲刈
手だすけ今だ。
ツビー、ツビーと小鳥がなけば
谷でちよろろと水の音ひびく。
- 汽車みち
レールのまくら木
なほすひと。
つるはしコツコツ、
雪こんこ。
汽車が湯けぶり
はいて来りや、
よけて見てます
土手のへり。
客車の窓から
かほ出した、
ちさいこどもは
あかの帽。
ちさいこどもは
手をあげる、
をぢさん下から
手をあげる。
機関車お笛を
ならします、
もうぢき駅です、
丘ひとつ。
- てんてつふ
お日さま、ちさくて
豆のやう。
カタリと、シグナル
お手のやう。
小屋から出てくる
てんてつふ。
雀よ、さむいな、
風ふくな。
おひるだ、おつつけ
汽車がくる。
- 高架線
町にはぴゆうぴゆう
からつかぜ。
向かふにあかいは
高架線。
電車はづんづん
すれちがふ。
お日さまちさいぞ、
おさむいぞ。
すつぱい蜜柑だ、
この蜜柑。
ぢやぢやん、ぢやんぢやん、
そら、火事だ。
- きくわんしやの家族
坊やのきくわんしや、とびだした、
めちやくちや走りだ、しゆつぽつぽ。
かつかと燃えるはかまのくち、
シヤベルで石炭ほりこんだ。
父さんきくわんしや、おどろいた、
おうい、まてまて、おういおい。
かつかと燃えるはかまのくち、
シヤベルで石炭ほりこんだ。
母さんきくわんしや、おつかけた、
あらあら、たいへん、どうしましよ。
かつかと燃えるはかまのくち、
シヤベルで石炭ほりこんだ。
「だつせんだよう、
だつせんだよう。」
坊やのきくわんしや、なきだした、
「母さん母さん。」しゆつぽつぽ。
かつかと燃えるはかまのくち、
シヤベルで石炭ほりこんだ。
- ぼんぼん時計
ぼんぼん時計のお爺さん
ぼんぼん鳴ります、柱から、
そしていつでも、ゆつくらと、
振子ふります、右ひだり。
ぼんぼん時計のお爺さん、
時間はせいかく、きまじめだ。
朝から晩まで、チクタクと
年が年中、音たてる。
ぼんぼん時計のお爺さん、
お顔は六角、長い頤。
アラビヤ数字で、きつちりと、
長いとみじかい針二つ。
ぼんぼん時計のお爺さん
ぼんぼん鳴ります、柱から。
「ねぢはどうした、なぜまかぬ。
まけまけ、ゼンマイ、精だした。」
- 工場の長靴
ワン、ツウ、スリー、フオル、ごむのくつ、
長靴、黒靴、ごむのくつ、
ずらりと、ぶらりこ、ぶうらりしよ。
ピカピカエナメル、ごむのくつ、
すあしのこどもはゐませんか。
ワン、ツウ、スリー、フオル、ごむのくつ、
工場の、工場の、ごむのくつ、
梁からぶらりこ、ぶうらりしよ。
ピカピカつまさき、ごむのくつ、
すあしのこどもはゐませんか。
ワン、ツウ、スリー、フオル、ごむのくつ、
長靴、黒靴、ごむのくつ、
四列で、ぶらりこ、ぶうらりしよ。
前むき、あとむき、ごむのくつ、
すあしのこどもはゐませんか。
- お窓の花
- ピツプウとガツグウ
子どもが麦笛ふいてきたよ、
をばさん、あひるをだいてきたよ。
子どもが子どもが見ていつたよ、
ピツプウ、あのひとだれだつけ。
をばさん、をばさん、見ていつたよ、
ガツグウ、あのお子だれだろな。
子どもがときどきあとむいたよ、
どこかで見たよだ、だれだろな。
をばさんときどきあとむいたよ、
どこかでみたよだ、だれだつけ。
ピツプウ、麦笛ふいてゆく。
ガツグウ、あひるが鳴いてゆく。
あのひと、あのひと、みたよだな、
あのお子、あのお子、だれだろな。
- 知らぬふりして
知らぬふりして、
とつとと、駆けた。
薔薇が咲いてた、
ペンキの柵に。
わたし知つてる、
あの、あの、お窓。
だけど、駆けてく、
そつと、そつと、そつと。
わたし知つてる、
うしろのお窓。
誰か見てゐる、
やさしいお眼眼。
- お窓の小父さん
お窓の小父さん
横向いて、
いつも、何やら
してました。
ああ、あのお窓
チユウリツプ。
お窓の小父さん、
こんにちは、
僕は毎朝
見上げてく。
ああ、あのお窓
チユウリツプ。
お窓の小父さん、
何時からか、
ふつと見えなく
なりました。
ああ、あのお窓
チユウリツプ。
- おまはりさん
なんだか見たよなおまはりさん、
にこにこ笑つて僕見てる。
坂の交番、角時計、
ポプラもちらちら揺れてゐる。
なんだか見たよなおまはりさん、
あつ、さうだ、おうちのうらのひと、
けさは白い帽、白い服、
夏が来た来た、ちやかちやかと。
お早う、お早う、
こんにちは、
僕は学校へ、
駆けてゆく。
- もとゐたお家
もとゐたお家、
丘のうへ、
草もぼうぼうのびました。
のびました。
誰もゐぬのに
眼のやうな、
壊れ硝子が光ります。
光ります。
もとゐたお家
僕ひとり、
けふものぞきに来て見たら、
来て見たら。
黒いひまはり
花ななつ、
雀下向き、つついてた。
つついてた。
- 雨ふり
雨雨、ふれふれ、母さんが
蛇の目でおむかひうれしいな。
ピツチピツチ チヤツプチヤツプ
ランランラン。
かけましよ、鞄を母さんの
あとからゆこゆこ鐘が鳴る。
ピツチピツチ チヤツプチヤツプ
ランランラン。
あらあら、あの子はずぶぬれだ、
柳の根かたで泣いてゐる。
ピツチピツチ チヤツプチヤツプ
ランランラン。
母さん、僕のを貸しましよか、
君君この傘さしたまへ。
ピツチピツチ チヤツプチヤツプ
ランランラン。
僕ならいいんだ、母さんの
大きな蛇の目にはいつてく。
ピツチピツチ チヤツプチヤツプ
ランランラン。
- 先生んとこ
「さあ、すぐ行かう。」
「どこへいくの、どこへ。」
「ついてくりやいいよ。
どこだつていいさ。」
「いやだ、わけきかう、
はつきり云へよ。」
「うん、さうか、云はう、
先生んとこだ。」
「なにしにいくの。」
「ドーナツあるよ。」
「ドーナツ、しめた、
僕もいく、僕も。」
「先生んとこの
をばさんいいな。」
「ほんとにいいな、
母さんに似てる。」
- すずしい夏
すずしいお冷水、
コツプのお冷水、
一口のんで、すかして見よか、
指、指、生きてる、霧ふいて見える。
すずしいお冷水、
コツプのお冷水、
はなして見れば、12時、1時、
時計が映る、お部屋が見える。
すずしいお冷水、
コツプのお冷水、
ぶつかき氷、角だけ見える、
氷山なんだ、すきとほつて見える。
すずしいお冷水、
コツプのお冷水、
白い薔薇させば、霧吸つて見える、
水の中の茎は折れ曲つて見える。
すずしいお冷水、
コツプのお冷水、
電燈がつけば底だけ光る、
卓に置けば条だけ光る。
- 山みち
かつこうが啼くよ、
お馬のうへで
ぶだうをもげば。
かつこうが啼くよ、
麦稈帽に
ぶだうを入れよ。
かつこうが啼くよ、
お馬の眼眼も
紫いろよ。
かつこうが啼くよ、
お馬よかへろ、
ぶだうをたべて。
- 柿もぎ
「柿の木にのぼろ。」
「兄さんまつて。」
「はよこい、此処だ。」
「そら手がとどく。」
「ゆすぶつちやいやだ。」
「あぶなかないよ。」
「もぎるぞひとつ。」
「ナイフはあるの。」
「いらねやもぎれ。」
「百舌が啼くぞ百舌が。」
「や、ありやなによ。」
「機関銃の音だ。」
「学校は見える。」
「うん、うん、見える、
雲、山、お宮。」
お日和、日和
柿の枝、小枝、
揺れや、揺れ。
噛れや噛れ、
もぎれや二つ、
もぎれや三つ。
- フウン
ポンポンポン
「どちらへおいで。」
「あちらへ行くの。」
「あちらてどこよ。」
「向かふの方よ。」
フウン
ポンポンポン
「どちらから来たの。」
「こちらへ来たさ。」
「こちらてどこよ。」
「お前の方よ。」
フウン
ポンポンポン
「君、君、だれよ。」
「僕は君、子ども。」
「子どもてだれよ。」
「僕つてこども。」
フウン
- 魚や
こどもの さかなや、
テキパキ してる。
おはやう、こんちは、
魚や で ござい。
かつを に さより、
ぎんばう に ひらめ、
はしり だ、しゆんだ、
おやすうござい。
お父ちやん と うをがし、
かひだしや よあけ だ、
トラツク で トツトツト、
いまついて ござい。
はんだい かついで、
エツサエツサ こども、
ちび でも はちまき、
しめ しめ だ。
おはやう、こんちは、
をばさん かつとくれ、
まけときますぜ、
これから がくかうだ。
- あをばうず
おてんき、てんき、
学校へゆけば、
「一年生のあをぼうず。」
えうちゑんのこども
すぐ手をたたく。
「一年生のあをばうず。」
やいやい、なんだ、
あかんぼのくせに。
「一年生のあをばうず。」
小学生だ、僕ら、
なんとでもいへよ。
「一年生のあをばうず。」
- くすりびん
ちやらんと
おとしたくすりびん、
道にくすりは
こほりつく。
僕、
どうしよか、お母さん、
おうちでねてゐるお母さん。
雁の
のし首、
月は鏡のやうな月。
ちやらんと
おとしたくすりびん、
月におくすり、光つてる。
- 僕の自画像
僕の自画像、自由画、
ほうら、頬つぺたあかいよ。
とてもつめたいこの鼻、
日本アルプスなんだよ。
この眼、睨んでゐるつて、
だつて笑へやしないよ。
友だち僕にないんだ、
みんなやさしくないんだ。
僕の自画像、をかしい、
いやにむつつりしすぎて。
ううん、しやうがないんだ、
ひとりで泣けてくるんだ。
- 雪の山道
雪の山道、
すべる道、
雪はこほつて、よごれてる。
あ、お母さん、お母さん。
とんとん、しんしん、
杉の雪、
風で飛びます、雪つぶて。
あ、お母さん、お母さん。
落ちたばかりの、
しろい雪、
はあとたべれば、つめたいな。
あ、お母さん、お母さん。
雪の山道、
すべる道、
雪がくだけてまたこほる。
あ、お母さん、お母さん。
- 竹ばうき
ちひさな小僧さん
霧の朝、
庭をはいてる、
サラ、サラリ。
とても大きな
竹ばうき、
せいたかのつぽの
竹ばうき。
「これぢやはけない、
竹ばうき、
脊より高いや、
こまつたな。」
小さな小僧さん、
からだごと、
右へもつてゆく。
また、ひだり。
よしと、よしきた、
霧の朝、
落葉はきます。
サラ、サラリ。
- しつけい
どんつく、どんつく、
どんつくどん、
あさから、小僧さん、
どんつくどん。
お太鼓たたいて、
どんつくどん。
なむめうほうれん
げえきやうだ。
どんつく、お堂は
山のかげ、
あそびにでたいし、
おこられる。
あつちを向いては
どんつくどん、
こつちを向いては、
どんつくどん。
僕らがとほれば、
どんつくどん、
こそつと、しつけい、
手をあげた。
- 大寒小寒
大寒、小寒、
山から小僧が飛んで来た。
ちんぴら小僧が泣いて来た。
なんのなんの泣くもんか、
山から柴薪背負て来た。
愛国貯金をかけに来た。
大寒、小寒、
お山は雪だろ寒かろに
どんどとたき火を燃してやれ。
かつかとゐろりにたいてやれ。
- 僕の木銃
- 一ぽんの線
まつすぐに見れば
まつすぐに見える。
よこから見たら
まよこに見えよ。
ななめにごらん、
ななめに見える。
くるくるまはせ、
くるくるまはる。
一ぽん引いた線だ
紙に引いた線だ。
まつすぐに行けよ
まつすぐの道よ。
- 上へ上へ
「立て立てみんな。」
「立つた、立つた、みんな。」
「がつちり組めよ。」
「がつちり組んだ。」
「あがれ、あがれ、肩に。」
「踏まへていいか。」
「踏まへろ立てよ。」
「立つたよ、立つた。」
「がつちり組めよ。」
「がつちり組んだ。」
「来い来い、あがれ。」
「あがるぞ、もつと。」
「もつともつとあがれ。
踏まへて立てよ。」
「じゆんじゆんにいいか、
立つたよ、立つた。」
「さうだ、さうだ、高く、
踏まへてあがれ、」
「がつちり組めよ、
踏んだ、踏んだ、立つぞ。」
「乗り越せ高く。
石垣高い。
がつちり組んで、
しつかと踏んで。」
「立て立てみんな、
踏まへろみんな、
乗り越せ高く、
みんなであがれ。」
- 騎馬戦
一人来な、二人来な、
お馬をつくろ。
ひらりと乗つたら、進めよ進め。
一人来な、二人来な、
お馬をつくろ。
ひらりと乗つたら、向かふも進め。
やつて来な、よつて来な、
お馬よお馬、
乗つてる子供も勢こめよ。
飛んで来な、組んで来な、
お馬よ跳ねろ、
大将と大将だ、がつしり組めよ。
ワアイのワアイの、そら進め。
やつと来な、えいと来な、
お馬よ駈けろ。
見ろ見ろ、旗持やまつさき駈ける。
- カーン
カーンだ、
あの音
むねがすく、むねが。
カーンだ、
ヒツトだ。
てんきははれだ。
なんて
ゆくわいだ、
あの子はだれだ。
白い
ユニホーム、
りりしいかまへ。
バツト
ふつたら、
直球も何だ。
カーンだ、
いつでも
そら飛んだ、かけた。
- 山のぼり
山のぼり、
山のぼり、
きばつてゆくと、
おなかがすくよ。
山のぼり、
山のぼり、
リユツクサツクしよつて、
ごつとごつとあるけ。
山のぼり、
山のぼり、
あの雪アどこだ、
あの雲どこだ。
山のぼり、
山のぼり、
お母さんどこだ、
おうちにゐるさ。
山のぼり、
山のぼり、
日ぐれになると
おなかがすくよ。
- 木銃
僕の木銃、コルクだま、
うてば すぽんと 音がする。
紐のついてる コルクだま、
飛んで すぽんと すぐ返る。
そうら、お空だ、杉の実だ、
栗鼠だ、てふてふだ、鶯だ。
僕の木銃、コルクだま、
あたりやしないんだ、うつだけだ。
だけどお日和、いい林、
すぽんすぽんだ、おもしろい。
- 赤上衣
シルクハツトに
赤上衣、
僕は競馬の
審判官。
僕はいつでも
駈けさせる、
白や、栗毛や
青の馬。
僕の玩具は
馬ばかり、
いつも日和に
曳いて出る。
僕は見てます、
夢にでも、
シルクハツトに
赤上衣。
- 玩具の町
玩具の町なら六日町、
小さな小さな山の町、
それでも世界の六日町。
玩具の細工は誰がする、
小さな小さなみな子供、
かはいいかはいいみな子供。
玩具の木どりの早いこと、
せつせと組立てそら船だ、
お家だ、ひよつ子だ、自働車だ。
玩具の色塗おもしろい、
エナメルしゆうしゆう、ごむ管で
吹つかけ吹つかけ赤や青。
玩具の町なら六日町、
子供の日本、六日町。
世界の世界の六日町。
- 遊動円木
そろそろ、はじめた、ゆれゆれ円木、
タラタツと走つて、タラタツととまれよ。
落ちるな、落ちるな、ゆれゆれ円木、
タラタツと、とまつて、タラタツと走れよ。
両手でかぢとれ、ゆれゆれ円木、
タラタツと走つて、タラタツととまれよ。
夕焼小焼だ、ゆれゆれ円木、
タラタツととまつて、タラタツと走れよ。
鳴れ鳴れくさりよ、ゆれゆれ円木、
タラタツと走つてタラタツととまれよ。
- 眼ばかり
ヅドン、ドンドン、
眼ばかり出した。
ほう、また三人、
また、二人。
ざんがうの中から
てつかぶと
びくびく、おづおづ、
ヅドン、ドン。
ヅドン、ドンドン、
眼ばかり出した。
こちらも、三人、
また五人。
ヅドン、ドンドン、
出てこい、こいよ、
いくさがこはけりや
白旗だ。
ヅドン、ドンドン、
敵味方、
おひよりひよりで、
気がながい。
ざんがうの中から、
てつかぶと、
キヤラメルかぢつて
ヅドンドン。
- ローラ・スケート
ローラ・スケート、らりるれろ、
朝から、つつつと、あいうえお。
ローラ・スケート、らりるれろ、
カーブでSの字、かきくけこ。
ローラ・スケート、らりるれろ、
さかんにれんしゆう、さしすせそ。
ローラ・スケート、らりるれろ、
たたつとすべつて、たちつてと。
ローラ・スケート、らりるれろ、
なんでもやりとげ、なにぬねの。
ローラ・スケート、らりるれろ、
前からスピード、まみむめも。
ローラ・スケート、らりるれろ、
やいやい、そこどけ、やいゆえよ。
ローラ・スケート、らりるれろ、
ららんとひらいて、らりるれろ。
ローラ・スケート、らりるれろ、
わんわん泣いたら、わゐうゑを。
- オートジヤイロ
オートジヤイロは
地べたから
すーと、ま上へあがつてく。
オートジヤイロは
お空から
すーと、ましたへきてとまる。
オート、ジヤイロは
ぶんぶんと
音を立ててる飛んでくる。
オートジヤイロよ、
くるくると
まはせプロペラ、あの脊中。
オートジヤイロは
竹とんぼ
僕も飛ばそか、ひとひねり。
- 凧、凧あがれ
凧、凧、あがれ、
鷺のやうに あがれ。
のばせ、のばせ、いとを、
つうつとのばせ。
凧、凧、ゆれる、
おつと、おつと、おちる。
たぐれ、たぐれ、いとを、、
すつすとたぐれ。
凧、凧、なほれ、
しやんとして たかく。
ひくよ、ひくよ、いとを、
ぐんぐんつよく。
凧、凧、すわる、
雲んなか うなる。
のばせ、のばせ、いとを、
たれよ、たれよ、しつぽ。
- ヨーヨー
ヨーヨー、
よーときた、
すつすとさがれ、
この糸まいたら
まいただけ、さがれ。
ヨーヨー、
よーときた、
お手まであがれ、
この糸のびたら
のびただけ、あがれ。
ヨーヨー、
よーときた、
よこつちよへとんだ、
この玉なげたら、
なげただけ、かへれ。
ヨーヨー、
よーときた、
そとへでろそとへ、
こどもよ、あそんだら
あそんだだけ、ご本だ。
- 竹馬
ひとり、出て来た、竹馬で、
白いスエターに白い帽、
見えた、大また、町の角。
ほうい、ほういだ、雪がふる。
またも出て来た、竹馬で、
青いスエターに青い帽。
これも大また、かけてくる。
ほうい、ほういだ、雪がふる。
ほうら来た来た、竹馬で、
赤いスエターに赤い帽、
あれはちよこちよこまだちさい、
ほうい、ほういだ、雪がふる。
みんな出て来た、竹馬で、
そしてつづいてみなかけて、
きたぞ、一れつ町の中。
ほうい、ほういだ、雪がふる。
ぼくはおむかへ、こちらから、
高い竹馬、じやんじやんと
みろよ、屋根から、のつて出る、
ほうい、ほういだ、雪がふる。
- 勢ぞろへ
えい、えい、おう、
えい、えい、えい、
押し出せ、乗り出せ、鎧武者。
えい、えい、おう、
えい、えい、えい、
陣笠、長槍、種ケ島。
えい、えい、おう、
えい、えい、えい、
つづいた、二番手、三番手、
えい、えい、おう、
えい、えい、えい、
行け行け、指物、馬じるし。
えい、えい、おう、
えい、えい、えい、
吹け吹け、本陣、法螺の貝。
えい、えい、おう、
えい、えい、えい、
ふれふれ、采配、関ケ原。
- あやつり人形
あやつり人形でございます、
横むき、前むき、うしろむき、
フラフラ、ヒヨツコリ、お手と足。
カチヤリ。
たふれて、坐つて起き直りや、
またまたステツプ、トーダンス、
房つき帽子が宙ぶらり。
カチヤリ。
あやつり人形でございます、
吊られて、引かれて、泣かされて、
笑へや笑へと、お手と足。
カチヤリ。
たふれて、カタリと起き直りや、
それそれ、そろつて、トーダンス、
ポンポンポンポン、沓が鳴る。
カチヤリ。
- お山の大将
我儘、気まま、
お山の大将、
ひとりで笑ひ、
ひとりで怒れ。
けんほろろ、雉子が啼く。
我儘、気まま、
お山の大将、
ひとりでいばれ、
友だちや逃げる。
けんほろろ、日が暮れる。
我儘、気まま、
お山の大将、
ひとりで泣いて、
ひとりで帰れ。
けんほろろ、雉子が啼く。
- 紙芝居
ホラ、また、来た来た、
紙芝居のをぢさん、
じてんしやにのつけて、
やつて来た、ちりんりん。
肉弾三勇士だ、
爆薬筒かかへて、
これから出るとこ、
ソラ、みんなおいでよ。
材木屋のかどから
小犬も出てくる。
ケツケツケのコケツケで
ちやぼまでよつて来る。
拍子木かちかち、
夕焼小焼だ、
もう日がくれるぞ、
よつてこい、よつてこい。
それから、ドンチヤン、
紙芝居のをぢさん、
じてんしやにのつけて、
またあした、これつきり。
- その道この道
- おさそひ
きました、きました、
おさそひに、
のばらのさくみち、
ほうほけきよ、
おはやう、おはやう、
はよおいで。
まつてよ、まつてよ、
すぐゆくわ、
ごもんのやまぶき、
ほうほけきよ、
おべんとこさへて、
すぐゆくわ。
のをこえ、をかこえ、
はしこえて、
げんげのさくみち、
ほうほけきよ、
がくかうへ、がくかうへ、
はよゆこよ。
- 野道を
ながれはちよろちよろ、
風なら そよそよ、
野みちをあるけば、
ほろん、ろんろん、お鳩が、
かすみにないてる。
お手々をならそか、
イツチヨ、パツチヨ、スツチヨ、ピツチヨ、
ピツチヨ、スツチヨ、パツチヨ、イツチヨ。
ねんねんねむの木、
ねぶたも、もえてる。
野みちをあるけば、
とろん、ろんろん、鳶が、
げんげにおりてる。
お手々をならそか、
イツチヨ、パツチヨ、スツチヨ、ピツチヨ、
ピツチヨ、スツチヨ、パツチヨ、イツチヨ。
ながれはちよろちよろ、
風ならそよそよ、
野みちをあるけば、
ころん、ろんろん、こどもが、
ころんでないてる。
お手々をならそか、
イツチヨ、パツチヨ、スツチヨ、ピツチヨ、
ピツチヨ、スツチヨ、パツチヨ、イツチヨ。
- その道、この道
その道、この道、どちらが早い、
まはりつこしましよか、そちらとこちら。
「かけつこぢやないの。」
「かけたらだめよ。」
その道 行つたら、おうちのまへよ、
この道 行つても、おんなじことよ。
「さよなら、あばよ。」
「さよなら、あばよ。」
その道、この道、しろいな野ばら、
ちひさな弟、ランドにシヤツポ。
「みちぐさしずに。」
「かけてもだめよ。」
この道、あぜみち、げんげの花よ、
わたしは姉さん、日傘にカバン。
「ほう、ほう、ほうい。」
「ほう、ほう、ほうい。」
その道、この道、そちらとこちら、
どちらもよい道、おひより、ひより。
「お母さん、ただいま。」
「お母さん、ただいま。」
- おてだま
おてだま とりましよ、
おひなた、ひなた。
おひと、おふた、おみい、およお、
おいつ、とんきん。
五つ おてだま、
さくらの ちらし。
おひとざくら、おふたざくら、
おみいざくら。
雪も とけます、
もうぢき春よ。
おひと、おふた、おみい、
およお、おいつ、とんきん。
姉と 妹とよ、
ふりそで、こそで。
おひとざくら、おふたざくら、
おみいざくら。
花も さきます、
さくらに ももよ。
おひと、おふた、おみい、
およお、おいつ、とんきん。
- ゆふかた
さよならよ、さよならよ、
母さんよんでる、さよならよ。
遊ばうよ、遊ばうよ、
まだまだあかるい、遊ばうよ。
さよならよ、さよならよ、
もう日がくれるよ、さよならよ。
遊ばうよ、遊ばうよ、
いいのよいいのよ、遊ばうよ。
さよならよ、さよならよ、
ぢやあ、またあしたよ、さよならよ。
遊ばうよ、遊ばうよ、
もつとよもつとよ、遊ばうよ。
さよならよ、さよならよ、
もうぢきおうちよ、さよならよ。
遊ばうよ、遊ばうよ、
かへるの、かへるの、遊ばうよ。
さよならよ、さよならよ、
みんながみんなが、さよならよ。
- 谷中
夕焼小焼、
五重の塔、
豆腐屋ラツパで、
いそいでく。
夕焼小焼、
かくれんぼ、
かなめのいけがき、
きりがない。
夕焼小焼、
御飯です、
どこかの母さん
呼んでゐる。
- さよなら
「さよならよ。」
「さよならよ。」
あかい帽子のぼんぼんを
ちよいとつまんで、
そら、駈けた。
「さよならよ。」
「さよならよ。」
あかいポストよ、まがりかど、
霧がふります、
「またあした。」
月が出る、
月が出る。
あかい灯がぼうとして。
「ごはんですよ。」と
誰か呼ぶ。
- (奥付)
- 白秋全集28第九回配本(第2期二五〜三七巻・別巻一)
一九八七年九月七日発行
定価四五〇〇円
著者 北原白秋
発行者 緑川亨
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