平家物語(城方本・八坂系)
巻第十一 P482
逆櫓 さかろ 1101
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P483
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P484
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桜場(あひ) 1102
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観音講 1103
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おほいとのこのよしをみたまひてげんじのせいいくほどもなかりけるものをあまりにあわててごしよやだいりを
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うけたまはつてこぶね百さうばかりなぎさによす
次信が最期 1105 P492
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つP493てつがひよつぴいてひやうといるもりつぎがよろひのむないたうらかくほどにいさせてぞことばたたかひはやみにけるのとどのこのよしをみたまひてふないくさはやうあるものぞとてわざとひたたれをばきたまはずからまきぞめのこそでにくろいとをどしのよろひをき五まいかぶとのををしめて廿四さいたるおほなかぐろのやおひぬりごめどうのゆみもつてふねのへにすすみいでこんどのげんじのたいしやうをいおとさむとぞうかがはれけるのとどのはとうごくまでもきこえたまへるつよゆみせいひやうやつぎばやのてききにておはしければのとどののやさきにはんぐわんをかけたてまつらじとげんじのつはものどもおんまへにむんずとふさがつてぞさふらひけるのとどのだいおんじやうをあげておんまへにさふらひけるざふにんばらどもあまりにみぐるしうさふらふのけられさふらへのけられさふらへとてさしつめひきつめさんざんにいたまひけるにくきやうのつはものども五きまでこそいおとされけれなかにもはんぐわんのみにかへておもはれけるあうしうのさとう三らうびやうゑつぎのぶはかちのひたたれに
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つゑにつきておひたるつぎのぶがくびとらむとするところをおとうとのただのぶにつくきやつのとてなかさしとつ
てつがひよつぴいてひやうといるこれもはらまきのひきあわせうしろへつつといいだされていぬゐにこ
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那須の与一 1106
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きうちよりうちよりはんぐわんのせいにくははるげんじほどなく三百きばかりにぞなりにけるけふはひくれぬ
しようぶはけつせじとてげんぺいたがひにひきしりぞくところにおきのかたよりかざりじんじやうにしたるこぶねを一さうなぎさに
よすなぎさ一ちやうばかりよりふねをよこさまになすかたきみかたあれはいかにとみるところによはひ十六か七かと
みえたるをんなのやなぎの五ぎぬにくれなゐのはかまきたりけるがみなくれなゐのあふぎのつまにひいだしたりけるを
ふねのせがいに はさみたてくがへむけてぞまねきけるはんぐわんごとうびやうゑさねもとをめしてあれはいかに
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すけたかがこによ一すけむねこそこひやうにはさふらへどもてはきいてさふらふとまをしたりければはんぐわんしようこはあるか
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てめされけりそのころよ一は十八九のをのこのあかぢのにしきをもつておほくびはたそでいろへたる
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ぞんじさふらはねどもつかまつてこそみさふらはめとておんまへをまかりたちなすのこぐろとてきこゆるめいばにきん
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てふねゆりあげゆりすゑあふぎざしきにもたまらずひらめいたりおきにはへいけふねを一めんにな
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腰越 1119
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大臣殿のきられ 1120
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入力者:荒山慶一



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