平家物語(城方本・八坂系)
巻第七 P289
清水の冠者のさた 701
じゆえい二ねん・しやうぐわつ廿二にちに・さきのないだいじん・むねもりこう・じゆ一ゐに・あがりたまふ・ただし・ないだいじんをば・じしまを
されけり・おなじき廿三にちに・いせ・いはしみづを・はじめたてまつつて・廿二しやに・くわんぺいあり・これはこんど・とうごく・ひやう
らんの・おんいのりの・おんためとぞ・おぼえたる・しかいに・せんじを・なしくだし・しよこくへ・ゐんぜんをくだされけれども・いつ
かう・へいけのげぢと・のみこころえて・まゐりちかづく・ものもなし・くまの・きんぷうせんの・そうら・なんと・ほくれいのたいしゆ・
いせ・いはしみづの・しんじん・きうじんにいたるまで・いつかう・へいけを・そむいて・げんじに・こころをぞかよはしける・そのころ・
かまくらのひやうゑのすけと・きそと・ふくわいのこと・あつて・かつせんあるべしとぞ・きこえし・さるほどに・かまくらの・ひやうゑのすけより
ともは・十万よきにて・かまくらをたつて・ゑちごのこふに・つきたまふ・きそもそのせい・三千よき・たうごく・よたのじやう
を・たつて・ゑちごと・しなのの・さかひなる・くまさかやまに・ぢんをとる・きそひやうゑのすけのかたへ・ししやをたてて・いかで
か・よしなか・うたんとはさふらふぞ・十らうくらんどどのこそ・ごへんをうらむるしさいありて・たうごくにうちこえて・おはす
なるを・よしなかさへ・すげなうもてなし・まをさんずることも・いかんぞやなれば・ひきぐしては・さふらふなる・
P290
もしそのゆゑか・それならば・いしゆあるべしとも・ぞんぜず・たうじごへんと・よしなかと・いくさして・へいけにわらは
れんとは・おもふべきと・のたまひつかはされたりければ・ひやうゑのすけ・いいやいまこそ・さやうにまをさるれども・ま
ことは・よりとも・うつべきはかりごとを・めぐらされけるに・こそとて・うつてのいちぢん・いよいよちかづくよ
し・きこえしかば・きそ・かなはじとや・おもはれけん・しそく・しみづのくわんじやよししげとて・しやうねん十一さいに・な
られけるに・うんの・もちづき・すは・ふぢさは・いげのつはもの・五百よきを・さしそへて・ひやうゑのすけのかたへ・つかはさ
る・ひやうゑのすけ・このうへは・いしゆなしとて・しみづのくわんじやを・ぐそくして・かまくらへこそかへられけれ・さるほどに・き
そは・ゑちごのくにに・うつていで・じやうの四らうと・かつせんす・こんどもまた・じやうの四らう・いくさににうちまけて・ではざかひへぞ・
おちゆきける・さるほどに・へいけは・きよねんのふゆより・みやうねんの・むまのくさかひに・ついて・いくさあるべしと・ふれられた
りければ・せんやう・せんおん・なんかい・さいかいの・つはものどもみなまゐりけり・とうかいだうには・とほたふみより・ひがしは・まゐらず・とう
せんだうには・あふみ・みの・ひだのつはもの・まゐりけり・ほくろくだうには・わかさ・よりきたは・まゐらず・そのほかは・みなまゐ
りけり・されども・いづのくにのぢうにん・いとうの九らうすけうぢ・さがみのくにのぢうにん・またのの五らうかげひさ・たかはしのはんぐわんながつな・
むさしの三らうさゑもんありくに・ながゐのさいとうべつたうさねもりは・へいけの・かたにぞさふらひける・さらば・まづほくこくへ・はつ
かうせよやとて・たいしやうぐんには・こまつの三ゐのちうしやうこれもり・ゑちぜんの三ゐみちもり・さつまのかみただのり・みかはのかみとものり・たじ
まのかみつねまさ・わかさのかみつねとし・さぶらひたいしやうには・かづさのたらうはんぐわんただつな・ひだのたいふのはんぐわんかげたか・かはちはんぐわんひでくに・
たかはしのはんぐわんながつな・いとうの九らうすけうぢ・またのの五らうかげひさ・むさしの三らうさゑもんありくに・ながゐのさいとうべつたうさねもりを・
P291
さきとして・つがふそのせい・十万よき・おなじき四ぐわつ十六にちに・みやこをたつて・ほつこくへ・はつかうせられけり・かたみちを・
たまはつてんければ・あふさかのせきより・はじめて・ろじにもてやう・けんもん・せいかの・しやうぜいくわんもつをいはず・
みないちいちに・うばひとる・まして・しが・からさき・まのの・たかしま・しほつ・かいづの・みちのほとりの・いへいへを・つゐふく
して・とほられければ・じんみんことごとく・にげさんず・せんぢんは・ゑちぜんへ・すすめば・ごぢんは・いまだあふみのくに・かいづの
うらに・みちみちたり
経政の竹生島詣 702
なかにも・ごぢんのたいしやうぐん・くわうごぐうのすけけんたじまのかみつねまさは・およそ・くわんげんのみちに・たつし・さいげい・ひとにすぐれて・お
はしければ・かかるよの・みだれのなかなれども・なぎさにたちいで・まんまんたる・かいしやうをみわたせば・一のしまあり・あ
れはいかにとのたまへば・あれこそきこえさふらふ・ちくぶじまさふらふよと・まをしければ・いざやさらば・わたつてみむとて・
さぶらひあんゑもんありのりを・はじめとして・そうじて・さふらひ五六にん・こぶねに・とりのり・かのしまにわたつて・しまのけいきをみたま
ふに・こころもことばも・およばれず・ころはうづき十かあまりの・ことなれば・まつにふぢなみ・さきかかり・むらさきのくもかと・
うたがはれ・はつねゆかしきほととぎす・をりしりがほに・つげわたり・かんこくの・あうぜつの・こゑおいんたり・かの・じんくわう・
どうなん・くわぢよを・つかはして・ふしのくすりを・もとめしに・われ・ほうらいをみずば・いなや・かへらじとて・い
たづらに・ふねのうちにて・としつきを・おくり・てんすゐ・べうべうとして・もとむることを・えざりけん・かのほうらいたうのあり
P292
さまも・これにはすぎじとぞ・みえし・あるきやうのもんにみえたる・なんえんぶだい・たいかいのひがしに・みづうみあり・そのうちに・
こんりんざいより・おひいでたる・すゐしやうりんの・やまあり・てんによすむところと・いへりすなはち・かの・ちくぶしまこれなり・べんざいてん
は・じゆげせきじやうに・あまくだらせたまへりと・いへり・これは・こすゐ・せきじやうに・一そくの・かたちをうつしたま
ふ・つねまさ・ふねよりあがり・みやうじんのおんまへに・まゐりをがみを・まゐらつさせたまひけり・それべんざいてんは・わうこ
のによらい・ほつしんのだいじなり・めうおんべんざいてん・みなは・おのおのべちなりとは・まをせども・しゆじやうさいどの・おんめぐみ・ひ
としく・一どさんけいのともがらも・しよぐわんじやうじゆ・ゑんまんすとこそ・うけたまはれ・たのもしうこそ・さふらへとて・ただ
かたときの・ほどとはおもはれけれども・そのひも・すでに・くれければ・そのよはしまにてぞ・あかされける・ころはうづき・
なかの八かの・ことなれば・ゐまちのつき・さしいでて・こじやうも・てりわたり・みやのうちも・かがやきて・おもしろかり
ければ・つねまさ・じやうぢうより・びはを・まをしおろし・よもすがら・しらべ・ひきよくを・つくされけり・かのしやうりつ
の・しらべには・みやのうちも・すみわたり・まことにおもしろかりければ・みやうじん・かんおうやしたまひけん・つねまさの・そで
のうへに・びやくりうげんじて・みえたまふ・つねまさ・ばちさしをさめ・たまひて・
ちはやふるかみにいのりのかなへばや・しるくもいろのあらはれにけり・
われらこんど・てうてきを・たひらげて・みをまつたうせんこと・うたがひなしとよろこびて・またふねに・とりのつて・かい
づのうらにぞ・あがられける
P293
火うち合戦 703
さるほどに・きそは・ゑちごのこふに・ありながら・ゑちぜんの・ひうちが・じやうをぞ・こしらへさせられける・じやう
のうちに・こもるせい・とがしのにふだうぶつせい・はやしの六らうみつあきら・へいせんじのちやうりさいめいゐぎし・にふぜん・みやさき・いしくろ・うち
だのものどもを・さきとして・つがふそのせい・六千よきとぞ・きこえし・へいけ・かしこにおしよせて・みたまへば・
ひうちもとより・くきやうの・じやうくわくなり・ばんじやくそばたち・めぐつて・しはうにみねを・つらね・やまをうしろにし・やま
をまへにあつ・じやうのまへには・のうみがは・しんだうがはとて・ながれたり・ふたつのかはの・おちあひに・たいぼくをきつて・しが
らみにかき・たいせきをたたみ・あげたりければ・みづとうざいの・やまのねをひたして・ひとへにたいかいに・のぞむがご
とし・かげなんざんを・ひたして・あをうして・くわうやうたり・なみせいじつをしづめて・くれなゐにして・いんりんたり・かのこんめい
ちの・ありさまも・これには・すぎじとぞ・みえし・ふねならでは・たやすくわたすべしとも・みえざりければ・へい
けのだいぜい・むかひのやまに・ぢんをとつて・むなしくひかずをぞ・おくられける・なかにも・じやうのうちにさふらひける・
へいせんじのちやうり・さいめいゐぎし・へいけに・こころざしありければ・よにいつて・やまのねをまはり・ふみをかいて・ひき
めにいれ・へいけのぢんへぞ・うちいれたる・へいけのつはもの・これをみて・ここなるひきめの・ならぬことこそ・ふしぎ
なれとて・とつて・みけるに・なかにふみぞ・さふらひける・たいしやうぐんに・みせたてまつる・ひらいてみたまへば・このかは
は・わうこよりの・ふちにはあらず・いつたん・やまがはを・せきあげてさふらふ・よにいつて・あしがるどもを・つかはして・し

P294
がらみを・きりおとさせたまはば・みづはほどなく・おつべし・むまの・あしぎき・くきやうのところにてさふらふ・いそぎ・よせさせ
たまへ・うしろやに・おいては・つかまつらむずるさふらふ・かうまをすは・へいせんじのちやうり・さいめいゐぎしが・まをしじやうとぞかきた
りける・へいけ・なのめならず・よろこびたまひて・よにいつて・あしがるどもを・つかはして・しがらみを・きりおとさせら
れたりければ・げにもやまかはにてはあり・みづはほどなくおちにけり・へいけしばしの・ちちにもおよばず・十万
よきを・おほて・からめてふたてに・わけてぞよせられける・なかにも・じやうのうちにさふらひける・へいせんじのちやうりさい
めいゐぎし・てぜい三百よきを・ひきわけて・へいけにちうをぞ・いたしける・にふぜん・みやさき・いしぐろ・うちだのものども・
ふせぎたたかふといへども・ぶせい・たぜいにかなはねば・さんざんにうちちらされ・かがのくにに・ひきしりぞき・しらやま
の・いちのはしをひきて・しらやまかはうちに・たてこもる・へいけつづいて・かがのくにに・みだれいり・とがしはやしが・二ケしよの・じやう
くわく・やきはらひてぞ・とほられける・へいけの・かたのたいしやうぐんに・こまつの三ゐのちうしやうこれもり・はやむまをたててみやこへ・
このよしを・まをされたりければ・のこりとどまりたまへる・へいけのゆかりのひとびと・いさみののしりたまふこと・なのめ
ならず・さるほどに・へいけは十万よきを・おほてからめて・ふたてにわけてぞむかはれける・まづ・おほての・たいしやうぐん
には・こまつ三ゐのちうしやうこれもり・ゑちぜんの三ゐみちもり・みかはのかみとものり・三にんたいしやうぐんにて・つがふそのせい・七まんよき・か
が・ゑつちうのさかひなる・となみやまへぞむかはれける・からめての・たいしやうぐんには・さつまのかみただのり・たじまのかみつねまさ・わかさの
かみつねとし・三にんたいしやうぐんにて・つがふそのせい・三万よき・のと・ゑつちうのさかひなる・しほのてへこそ・むかはれけれ・
なかにも・ひうちがじやうに・さふらひける・はやしの六らうみつあきら・きそどのへ・まをしけるは・さりともと・ぞんじさふらひつる・ひ
P295
うちのじやうをば・へいせんじのちやうりさいめいゐぎしが・かへりちうによつて・ねんなう・やぶられさふらひぬ・こんどは・へいけ・
たいぜいにて・むかはれさふらふ・ゑつちうの・ひろみへ・うちいづるほどならば・いよいよみかたの・おんだいじなるべし・いよいよよせ
させたまへと・まをしたりければ・きそ・さてはとて・おなじき五ぐわつ五かのひ・五万よきにて・ゑちごのこふをぞ・
うつたたれける・きそ・のたまひけるは・へいけのたいぜい・ゑつちうのひろみへ・うちいづるほどならば・さだめて・かけあひの
かつせんにてぞ・あらんずらん・かけあひの・いくさといふは・いきほひのたせうに・よることなれば・たいぜいを・かさに・か
けては・かなふまじ・まづ・からめてを・むけよやとて・をぢの十らうくらんどゆきいへに・壱万よきを・さしそへて・
しほのてへこそ・むけられけれ・よしなかが・いくさの・きちれいには・七手(ななて)に・わかつものなればとて・のこり四万よ
きを・六てに・わかつ・まづあしかがの・やたのはんぐわんだいよしきよに・七千よきを・さしそへて・きたくろさかへぞ・むけ
られける・にしな・たかなし・やまだのじらう・これも・七千よきにて・みなみくろさかへぞ・むかひける・ひぐちのじらうかね
みつ・五せんよきにて・くりからの・だうのうしろへ・からめてにこそ・まはりけれ・ねのゐの・こやた・五千よき・まつ
ながのやなぎはら・ぐみのきばやしに・ひきかくす・いまゐの四らうかねひら・六千よきにて・わしのしまを・うちわたり・ひ
のみやばやしに・たてこもる・きそは・一万よきにて・くろさかの・きたのはづれ・おやへの・わたりをし・はに
ふのもりに・ぢんをとる
木曽の願書 704
P296
きそ・はかりごとに・はたさしを・さきにたてよやとて・まづ・はたさしを・さきだてらる・おなじき五ぐわつ十一
にちの・みのこくばかりに・くろさかのたうげに・はせついて・しらはた卅ながればかり・一どに・はつと・さしあげたり
ければ・へいけのかたには・これをみて・あはや・げんじの・一ぢんこそ・むかうたんなれ・ここは・やまも・た
かう・たにもふかう・四はう・ぐわんせきなりければ・からめて・さうなう・よもまはさじ・ここに・ぢんをとれやとて・
となみやまの・さんちう・さるが・ばばと・いふところに・へいけ七万よき・おりゐて・ぢんをぞ・とつたりける・きそ
は・やはたのしやりやう・はにふのもりに・ぢんどつて・四はうを・きつと・みまはせば・なつやまの・みねの・みどんの・
このまより・あけのたまがき・ほのみえて・かたそぎづくりの・やしろあり・まへに・とりゐぞ・たちたりける・きそ・くに
の・あんないしやをめして・あれにみえさせたまふをば・いづれの・やしろと・まをしたてまつるぞ・または・いかなるかみを・
あがめたてまつりたるぞと・のたまへば・あれこそ・やはたを・うつしたてまつつて・たうごくの・しんやはたともまをし・またははにふの
やしろとも・まをしさふらふなりとぞ・まをしける・きそ・なのめならずよろこびたまひて・てかきに・めしぐせられたりける・た
いふばうかくめいをめして・よしなかこそ・さいはひに・うぢがみ・八まんだいぼさつの・ごはうぜんに・ちかづきたてまつつて・かつせんを・とげむ
とすれ・さらむにとつては・かつうは・こうだいのため・かつうは・たうじの・きたうのために・ぐわんしよを・ひとふでまゐ
らせばやと・おもふはいかがあるべきと・のたまへば・かくめい・このぎもつとも・ゆゆしうさふらひなんとて・むまより・お
りてかからんとす・かくめいが・そのひのしやうぞくには・かちのひたたれに・くろいとをどしの・よろひをき・三じやく五すんの・いか
ものづくりの・たちをはき・廿四さいたる・おほなかぐろの・やおひ・ぬりごめどうのゆみ・わきにはさみつつ・えびらより・こ
P297
すずり・たたうがみを・とりいだし・きそがまへに・ついひざまづいて・ぐわんしよを・かくす千のつはもの・これをみて・あつぱれ・ぶん
ぶどもの・たつしやかなとぞ・ほめたりける・このかくめいとまをすは・もとは・じゆけのものなり・くらんどみつひろとて・くわんがく
ゐんに・さふらひけるが・しゆつけして・三でうばうしんきうと・なのつて・しばらく・なんとに・さふらひけるが・一とせ・たか
くらのみや・みゐでらへ・じゆぎよのとき・さんもん・なんとへ・てふじやうつかはされし・そのへんでふをも・このかくめいぞ・かきたりけ
る・そもそもきよもりにふだうは・へいしのさうかう・ぶけのぢんかいなりと・かきたりければ・にふだうおほきに・いかつて・せんず
るところ・そのしんきうほうし・いけどりにして・しざいに・おこなへと・のたまへば・かくめい・なんとには・こらへで・ほつこくに・
おちくだり・きそに・ついて・かいみやうし・そのなを・たいふばうかくめいとぞ・なのりける・かかりし・さいじんなりければ・
なじかは・かきもそんすべき・こころもおよばずぞ・かきたりける・そのぐわんしよに・いはく・
きみやうちやうらい・八まんだいぼさつは・じちゐきてうていのほんしよ・るゐせいめいくんのなうそなり・はうそをまもらむがため・さうせいをりせん
がために・三じんのきんようをおく・三じよのけんひをひらきたまへり・ここにしきりのとしよりこのかた・へいしやうこくといふものあつ
て・しかいをくわんりやうし・ばんみんをなうらんせしむ・これすでに・ぶつぽふのあだ・わうぽふのてきたり・よしなかいやしくも・きうばの
いへにむまれて・わづかにききうのちりをつぐ・かのばうあくをみるに・しりよかへりみるにあたはず・うんをてんだうにまかせて・みを
こくかになげうち・まことにぎへいをおこして・きようきをしりぞけむとす・いまたうせんりやうかの・ぢんをあはすと・いへども・しそついまだ・
いちどのいさみを・えざるあひだ・まちまちのこころ・おそれたるところに・いまいちぢんはたをあぐ・せんぢやうにして・たちまちに三しよわ
くわうのしやだんをはいす・きかんのじゆんじゆく・あきらかなり・きようとちうりくうたがひなし・くわんきなみだ・こぼれて・かつがうきもにそむ・そう
P298
そふ・さきのむつのかみ・みなもとのよしいへのあそん・みをそうべうの・しぞくに・きふして・そのなを・八まんたらうと・がうせ
しよりこのかた・そのもんえふたるものの・ききやうせずと・いふことなし・よしなかいやしくも・そのこういんとして・かうべをかたぶけて・とし
ひさし・いまこのたいこうを・おこすこと・たとへば・えいじのかひをもつて・きよかいをはかり・たうらうがをのをとつて・りうしやに・むか
ふがごとし・しかりといへども・いへのため・みのためにして・これをおこさず・きみのため・くにのためにして・これを
おこす・こころざしのいたり・しんかんあんに・あらんをや・たのもしいかな・よろこばしいかな・ふしてねがはくは・みやうけん・ゐをくはへ・りやうしん
ちからをあはせて・かつことを・いちじにけつし・あくを・四はうへ・しりぞけたまへ・しからばすなはち・たんき・みやうりよにかなひ・ゆうけん・か
ごを・なすべくんば・まづ・一のずゐさうを・みせしめたまへ
じゆえい二ねん五ぐわつ十一にち・ みなもとのよしなかうやまつてまをす
とぞ・よみあげたる
倶利伽羅 705
きそどのを・はじめとして十三にんの・うはやのかぶちらを・一づつ・ぐわんしよにそへて・だいぼさつの・ごはうぜんにぞ・をさめけ
る・八まんだいぼさつ・まことのこころざし・二つなきところを・はるかにせうらんや・したまひけん・くものなかより・やまばと・二・とびきたり・
げんじの・はたのうへに・へんはんす・げんじのかたには・このよしをみて・いさみののしること・なのめならず・へいけの・つはものどもは・これ
をみて・みのけ・よだつてぞ・おぼえたる・そののちは・げんじもすすまず・へいけも・すすまず・りやうはう・たてのは
P299
をつきあはせてぞ・ささへたる・そのあひわづかに・二ちやうばかりは・あるらんとぞ・みえし・そののち・げんじはかり
ごとに・せいひやう十五きを・いだして・十五のかぶらを・へいけのぢんへ・いいれさす・へいけも・せいひやう・十五きを・いだ
して・十五のかぶらを・いかへさす・げんじ・卅きを・いだして・卅のかぶらを・いさせければ・へいけも・卅きを・いだ
して・卅のかぶらを・いかへす・げんじ・五十きを・いだせば・へいけも・五十きをいだし・百きをいだせば・百きを
いだし・あはせ・りやうはうたてのおもてに・さしいでて・しようぶをせんと・はやりけるを・げんじせいして・しようぶをば・せさせ
ず・かやうに・あひしらひ・ひをまちくらし・へいけのたいぜいを・そばなるたにへ・おひおとさんと・しけるを・へい
けはこれを・ゆめにも・しらずして・ともに・あひしらひ・ひをまちくらしけるこそ・はかなけれ・そのよの・
ねのこくばかりに・ひぐちのじらうかねみつ・五千よきにて・くりからのだうのうしろに・まはりあひ・ときを・どつ
とぞ・つくりける・ねのゐのこやた・五千よき・まつながのやなぎはら・ぐみのきばやしより・をめきさけんで・はせ
きたる・いまゐの四らうかねひら・六千よきにて・ひのみやばやしより・はせちかづく・きそは・一万よきにて・おなじう・
ときのこゑをぞ・あはせける・ぜんご・しまんよきが・ときのこゑには・やまも・かはも・ただいちどに・くづるるか
とぞおぼえたる・へいけは・おもひもかけぬ・ときのこゑに・おどろいて・そばなる・たにへぞおとしける・きたなしや・
かへせや・かへせと・いひけれども・たいぜいの・かたぶきぬるはとつて・かへすが・まれなれば・おやおとせば・
こも・おとし・あにが・おとせば・おとともつづく・しゆおとせば・いへのこ・らうどうも・つづきけり・むまにはひと・
ひとにはむま・おちかさなりおちかさなり・せしほどに・さしもに・ふかき・たにひとつを・へいけのせい・七万よきにて・うめ
P300
あげたり・さればにや・がんせん・ちをながし・しがい・をかを・なすとかや・わづかに・たいしやうぐん・これもり・みちもり・
ばかりこそ・からきいのち・たすかつて・かがのくにへは・ひかれけれ・にふだうの・ばつしみかはのかみとものりも・うたれ
たまひぬ・ただつな・かげたかも・うたれにけり・さればにや・このたにのそこ・いはのはざまには・やのあと・かたなのきずあと・
のこつて・いまにありとぞ・うけたまはる・なかにも・いづのくにのぢうにん・いとうの九らうすけうぢは・とし卅四と・なのつて・とつ
て・かへし・さんざんに・たたかうて・うたれにけり・またのの五らうかげひさも・いつしよにうちじに・してんげり・
なかにも・びつちうのくにのぢうにん・せのをのたらうかねやす・へいせんじの・ちやうり・さいめいゐぎしは・いけどりにこそ・せられけれ・
せのをのたらうかねやす・をば・きそ・いかがは・おもはれけむ・さうなう・きらで・かがのくにのぢうにん・くらみつの三
らうなりずみに・あづけおかれたり・へいせんじの・ちやうりさいめいゐぎしをば・きそが・まへにひつすゑ・にくし・そのほう
しきれとて・きらせられけり・そのほか・いけどり・三千よにんが・くびきりかけさせ・いまは・おもふことなし・ただし・
をぢの十らうくらんどゆきいへに・一万よきを・さしそへて・しほの・てへむけつるこそ・おぼつかなけれ・いざやゆきて・
みむとて・四万よきが・うち・あらて・二万よきを・ひきぐして・ゑつちうのくに・ひみのみなとを・うちわたさんと・
したまひけるが・をりふし・しほさしみちて・ふかさ・あささを・しらざりけるに・たいふばうかくめいが・はかりごとに・
くらおきむま・十ぴきばかりに・たつな・むすんで・うちかけ・たいぜいがまつさきに・おひいれたりければ・くらつめ・ひた
るほどにて・むかひのきしに・わたりつつ・さては・あさかりけるぞや・わたせやとて・きそ・あらて・二万よき・
うちいりてぞ・わたしける・しほのてに・うちのぞんで・みたまへば・あんのごとく・十らうくらんど・いくさに・うちまけ・
P301
ひきしりぞき・むまのいきを・やすめたまふところに・きそ・あらて・二万よきを・いれかへて・さんざんにこそ・せめられけれ・へい
け・きそに・ていたう・せめられて・かなはじとや・おもはれけん・かがのくにに・ひきしりぞき・あだか・しのはらに・
ぢんをとる・きそ・つづいて・かがのくにに・みだれいり・あだか・しのはらにて・かつせんす・五ぐわつ廿三にち・むまの
こく・ばかりのことなりければ・くさも・ゆるがず・てらすひに・げんぺいたがひに・いりみだれ・さんざんに・せめたたか
ひけるに・へんしんより・あせながれ・みづをいだすに・ことならず・ここにて・へいけ・三千よき・うたれにけり・げんじ
も・二千よき・ほろびにけり・へいけは・しよしよの・いくさにうちまけて・みなちりぢりに・なつてぞ・のぼら
れける
実盛が最後 706
ここに・おちゆくせいのうちに・むしや三き・とつてかへし・さんざんにこそ・たたかひけれ・一きは・たかはしのはんぐわんながつな・
一きは・むさしの三らうざゑもんありくに・一きは・ながゐのさいとうべつたうさねもりとぞ・きこえし・なかにも・たかはしのはんぐわんなが
つなは・ゑつちうのくにのぢうにん・にふぜんのこたらうと・くんで・おちけるところを・にふぜんが・いとこ・ゑちごのくにのぢうにん・なんでう
のじらう・おちあひて・たかはしがくびをば・とつてけり・むさしの三らうざゑもんありくには・むまをも・いさせ・おりた
つて・たたかひけるが・や・二三十すぢ・いたてられ・たちをつゑにつき・かたきのかたを・にらまへて・たちすくみ
にこそ・したりけれ・いまは・ながゐの・さいとうべつたう・ただいつきに・なつて・かへしあはせ・かへしあはせ・さんざんに
P302
こそ・たたかひけれ・ここに・げんじの・かたより・むしや一き・はせきたり・みかたのせいは・みな・おちゆきさふらふに・ただ
一き・のこりとどまつて・いくさするひとこそ・おぼつかなけれ・いかなるひとぞ・なのれや・なのれと・いひければ・
かういふ・わぎみは・なにものぞ・まづ・なのれと・いはれて・これは・しなののくにの・ぢうにん・てづかの・たらう・かな
さしのみつもりとぞ・なのりたる・ひごろより・さるひとありとは・ききおよびたり・これは・わざとおもふやうあつて・
なのらぬなり・ただしなんぢを・さぐるには・あらず・よれあへや・くまんとて・むまうちならべ・ひつくんで・
どうとおつ・さねもりこころは・たけうおもへども・いたで・どもをば・おうたりけり・そのうへ・おいむしや・なりければ・
つひに・てづかが・したになつてぞ・うたれける・てづか・くびとつて・きそどのの・おんまへにまゐり・みつもりこそ・きい
のくせものと・あうて・くんでうつてまゐりてさふらへ・たいしやうぐん・かとみさふらへば・つづく・せいも・さふらはず・また・は
むしややらんと・ぞんじさふらへば・にしきの・ひたたれをきて・さふらひつる・さいこくぶし・きないのつはものやらんと・ききさふらへ
ば・こゑは・ばんどうごゑにてさふらふと・まをしたりければ・きそどの・あなむざん・もしそれは・ながゐの・さいとうべつたうさね
もりにてもや・あるらん・それならば・よしなかが・かうづけへ・こえたりしとき・をさなめに・みしかば・しら
がの・すこしかすほなり・しが・いまは・七十にも・あまり・しらがにこそ・ならむずるに・びんはつの・く
ろきは・たれなるらん・ひぐちのじらうかねみつは・ねんらいのとくいなれば・みしりたるらん・ひぐち・めせとて・めされ
けり・ひぐち・このくびを・ただひとめみて・あなむざん・これは・まことに・ながゐのさいとうべつたうさねもりにて・さふらひ
けるぞや・きそ・さて・びんひげのくろきは・いかにと・のたまひければ・ひぐちのじらう・なみだを・はらはらと・な
P303
がいて・さんさふらふ・そのやうを・まをさんと・つかまつりさふらへば・あまりに・あはれにおぼえて・まづ・かねみつが・ふかく
のなみだの・さきだちさふらふなり・されば・ゆみやとりは・ただかりそめの・ところにても・のちまでの・おもひでのことばをば・
かねて・まをしおくべきことにてさふらふなり・さねもり・ひごろ・かねみつにあうての・つねは・うちとけ・ものがたりに・われ六十
にあまり・いくさばに・いでんときは・びんひげを・すみにそめうと・おもふなり・そのゆゑは・わかとのばらに・あらそつて・さ
きをかけんも・おとなげなし・またおいむしやとて・ひとにあなづられんも・くちをしかるべし・なんどまをして・さふら
ひしが・さては・そめて・さふらひけるぞや・あらはせて・ごらんじさふらへと・なみだもせきあへず・まをしたりけ
れば・きそどの・まことにもとて・かがのくに・なりあひの・いけにて・あらはせて・みたまへば・げにも・はくはつに
こそ・なりにけれ・さねもり・またにしきの・ひたたれを・きさふらひけることは・さねもり・みやこを・いづるとて・おほいとの
に・まをしけるは・ひととせ・とうごくの・あんないしや・つかまつつて・やひとつを・だにも・いすてずして・するがの・かんばら
より・にげのぼりて・さふらふことも・さねもり一にんが・みのうへにては・さふらはねども・おいのはての・ちじよくただ・このことにこそ・
さふらへ・こんど・ほくこくに・まかりむかうて・さふらはば・さだめて・うちじに・つかまつるべしあはれ・にしきの・ひたたれを・おんゆる
され・さふらへかし・そのゆゑは・さねもりもとは・ゑちぜんのものにてさふらふが・きんねんしよりやうに・ついて・むさしのながゐに・きよ
ぢうつまつり・さふらひき・さてこそ・ながゐのさいとうとは・めされさふらへ・こきやうへは・にしきをきてかへれと・まをすことのさふらふ・
ものをなんど・やうやうに・まをしたりければ・おほいとのは・さることありとて・かんじて・ゆるしたまひけり・
むかしの・けんしんは・にしきのたもとを・くわいけいざんに・ひるがへし・いまのさねもりは・にしきをきて・そのなをほつこくの・ちまたにあぐと
P304
かや・へいけ・さんぬる・四ぐわつに・みやこをいでられしには・十万よき・おなじき五ぐわつにかへりのぼり・たまふには・ただ三万
よき・さしも・はなやかに・て・みやこをいでし・ひとびとの・くちもせぬ・なをば・うきよにとどめおき・そのみは・
こしぢのすゑのちりと・なるこそ・かなしけれ・みかはのかみとものりも・かへりたまはず・ただつな・かげたかも・かへらず・ながれ
を・つくして・すなどるときは・おほくの・うを・うと・いへども・めいねんには・うをなし・はやしを・やきて・かるとき
は・おほくの・けだもの・うと・いへども・めいねんには・けだものなし・のちを・ぞんじて・せうせうは・のこさるべかりけるもの
をとぞ・みなひと・まをしあはれける
玄ムの沙汰(あひ) 707
かづさのかみただきよは・ちやくし・たらうはんぐわんただつなを・うたせておほいとのに・いとままをし・しゆつけとんせい・してんげり・おとと・ひだの
かみかげいへも・ちやくし・たいふのはんぐわんかげたかを・うたせこれも・しゆつけにふだう・してんげる・みやこのうちは・まをすにおよばず・
きんごく・ゑんごくの・ものどもも・あるひは・おやを・うたせこにわかれ・をつとにはなれ・もんとを・とぢて・かなしみけり・これ
ひとへに・うむなんの・たたかひに・あひおなじ・おなじき六ぐわつついたちのひ・だいりには・さいしゆじんぎのおほなかとみのさだとしを・
でんじやうのしもくちへ・めされて・こんど・ひやうらんしづまらば・いせへ・ぎやうかうなるべき・よしを・おほせくださる・さだとし
かしこまりうけたまはつて・まかりいづ・そもそもいせだいじんぐうと・まをしたてまつるは・むかし・たかまのはらより・みののくに・いぶき
のたけへ・あまくだらせ・たまひたりしを・すゐにんてんわう・廿五ねん・三ぐわつついたちのひ・いせのくに・わたらへのこほり・いすず
P305
のかはかみ・したづ・いはねにして・おほみやばしらを・ふとしきたてて・いはひそめ・まゐらせてより・このかた・につぽん・六十よしう・三
千七百・五十よしやの・なかには・すぐれたまへる・おんかみなり・されども・よよのみかどの・りんかうは・なかりしに・
むかし・ならの・みかどのおんとき・さだいじん・ふひとのまご・しきぶきやう・うまかひのこに・だざいのせうに・けんさひやうゑのかみ・ふぢ
はらの・ひろつぎといふひとは・おそろしきひとなりけり・たとへば・てんぴやう十五ねん・十ぐわつに・ひぜんのくにまつらのこほりに
して・す万のひやうかくをそつして・こくかを・あやぶめんと・せしとき・みかどおほののあづまうどを・たいしやうとして・ひろ
つぎつゐたうの・おんいのりのおんために・はじめていせへぎやうかうなる・さればそのばうりやうあれて・つねに・おそろしきことども・
おほかりけり・おなじき・てんぴやう十八ねん・六ぐわつ三かのひ・ちくぜんのくに・みかさのこほり・だざいふの・くわんぜんおんじ・くやうのだう
しは・なんとの・げんばうそうじやうとぞ・きこえし・げんばう・かうざに・のぼり・けいびやくのかね・うちならし・せつぽふせんと・しけ
るに・にはかに・そらかきくもり・いかづち・おびただしう・なりさかり・だうのむねを・けやぶつて・げんばうのうへに・おち
かかり・そのくびを・とつて・くものうちへぞ・いりにける・おそろしなんども・おろかなり・これは・げんばう・ひろつぎを・
てうぷく・せられたりけるに・よつてなり・おなじき・てんぴやう十九ねん正ぐわつ十五にちの・むまのこく・ばかりに・こうふくじ
の・なんだいもんには・しやれたる・かうべに・げんばうといふ・めいをかきて・そらより・おとし千にんばかりが・こゑに
て・くものうちに・いちどにどつと・わらふこゑ・しけり・きくひとみな・みのけよだつてぞ・おぼえたる・この・ひろ
つぎとまをすは・ひぜんのくに・まつらより・みやこへ一にちにうつ・むまを・もちたまへり・されば・さいごのときも・かのむまに・うち
のつて・かいちうへ・かけいりてぞ・うせられける・されば・そのりやうをあがめて・ひぜんのくにまつらのこほりに・いははれたまふ・
P306
かがみのみやうじん・これなり・このげんばうとまをすは・むかし・きびのだいじん・につたうのとき・ほつさうしうを・わがてうへ・わたしたりしひとなり・
そのときに・たうじんが・げんばうとは・かへりて・ばうすと・いふこゑあり・いかさまにも・このひと・きてうののち・ことにあ
ふべしと・まをしたりしに・たがはず・むかし・さがの・てんわうのおんとき・へいぜいの・せんてい・よを・みだらんと・
せさせたまひしとき・みかど・第三(だいさん)の・ひめみやを・かもの・さいゐんに・たてまゐらつさせ・たまひけり・それより・さい
ゐん・はじまりけり・またしゆじやくゐんのぎよう・てんぎやう七ねんに・すみとも・つゐたうの・おんいのりの・おんために・やはたの・りんじ
のまつりを・はじめらる・へいけ・かやうのことどもを・れいとして・さまざまの・おんいのりどもをぞ・はじめられける
木曽山門の牒状 708
おなじき六ぐわつ八かのひ・きそは・ゑちぜんのこふに・つきて・まづ・いまゐ・ひぐち・たてねのゐを・めして・われら・こん
ど・きんごくを・へてこそ・しやうらくすべきに・れいのさんもんのたいしゆ・へいけの・かたうどして・ふせぐ・こともや・あら
んずらん・うちやぶつて・とほらんことは・やすけれども・へいけこそ・ぶつぽふをも・しらじ・きみを・なやましたてまつ
れ・そのしゆごのために・しやうらくせん・よしなかが・しゆとに・むかつて・かつせんせんこと・おとらぬ・にのまひなるべし・
これこそ・ゆゆしきやすだいじなれ・こはいかが・はからふ・とのはらたちと・いひければ・たいふばうかくめいが・まをし
けるは・さんもんはこれ・三千しゆと・いちみどうしんに・あるべからず・ないないは・みかたに・こころざしを・ぞんずる・しゆと
も・せうせうさふらふらん・まづ・てふじやうを・つかはして・ごらんじさふらへかし・しさいは・へんてふに・みえさふらふべしと・まをし
P307
たりければ・きそ・このぎもつともとて・やがて・てふじやうを・かくめいに・かかせて・さんもんへこそ・おくられけれ・その
じやうにいはく
みなもとのよしなかおそれながらつつしみてまをしあげさふらふ・つらつら・へいけの・あくぎやくをおもふに・さんぬる・はうげん・へいぢより・このかた・
ながく・じんしんの・れいをうしなふ・しかりといへども・きせんてをつかね・しそあしをいただく・ほしいままに・ていゐを・しんだいし・
あくまで・こくぐんを・りやりやうす・だうり・ひりを・ろんぜず・うざい・むざいを・きらはず・けんもん・せいかを・つゐふくし・
そのしさいを・とりて・みだりがはしく・らうどうにあたへ・かの・しやうゑんを・もつしうして・ほしいままに・しそんに・はぶく・なかんづく・いんじ・
ぢしよう三ねん十一ぐわつに・ほうわうを・せいなん・りきうに・おしこめたてまつり・はくろくを・せいかいの・ぜつゐきに・うつし・たてまつる・
しゆしよ・ものいはず・だうろ・めをもつてす・しかのみならず・おなじき・四ねん五ぐわつに・一ゐんだい二の・みこ・たかくらのみやの・
しゆかくを・うちかこみて・ここのへの・こうぢんを・おどろかさしむ・ここに・ていし・ひぶんのがいを・のがれんがために・三ゐでら
へ・じゆぎよのとき・よしなかせんじつ・りやうしをたまはつて・さんらくを・くはだてんと・ほつするところ・をんてき・ちまたに・みちて・よ
さん・みちをうしなふ・きんきやうのげんじ・なほさんこうせず・いはんやわれら・ゑんきやうにおいてをや・なかんづく・をんじやうは・ぶげんせばき
によつて・なんとへ・おもむかしめたまふすなはち・げん三ゐよりまさにふだう・うぢばしにおいて・めいを・かろんじ・ぎをおもん
じて・一せんのこうをはげますと・いへどもたせいのせめを・まぬかれず・げいがいを・こがんの・こけにうづみ・せいめい
を・ちやうかのなみに・ながしをはんぬ・りやうしのおもむき・きもにめいじ・どうるゐの・かなしみ・たましひをうしなふ・これによりて・とうごく・
ほくこくのげんじら・さんらくをくはだてんとす・そのなかに・よしなか・そのしゆくいを・たつせんがために・いんじ・としのあき・はたを
P308
あげ・つるぎをとつて・しんしうをいでし・ひ・ゑちごのくにのぢうにん・じやうの四らうながもち・すまんのひやうかくを・そつして・はつかう
せしむるあひだ・よしなか・よこたがはらに・はせむかつて・かつせんす・よしなか・わづかに・三千のつはものをもつて・かの二万の・ぐん
びやうをやぶりをはんぬ・しかるを・ふうぶん・ひろきにおよんで・かさねて・へいしの・たいしやう十まんの・ひやうかくを・そつして・ほくろく
にはつかうす・ゑつしう・かしう・のうしう・となみ・くろさか・しほ・あだか・しのばら・いげのじやうくわくに・おいて・すケど
の・かつせんにおよぶ・はかりごとを・ゐあくのうちに・めぐらして・かつことを・しせきのもとに・えたり・うちては・かならずふく
し・せむればかならずくだる・たとへば・あきのかぜの・ばせうをやぶるに・ことならず・ふゆのしもの・ぐんえふを・からすに・
あひおなじ・これ・よしなかが・ぶりやくにあらず・ひとへにしんめいぶつだのたすけなり・へいしすでに・はいぼくのうへは・さんらくを・くはだてん
とす・いまえいがくのふもとをへて・まさに・らくやうのちまたに・いるべきなり・このときにいたつて・ひそかに・ぎたいあり・そのゆゑ・
いかんとなれば・そもそもてんだい・三千しゆと・げんじに・どうしんか・へいけによりきか・もしかのあくとを・たすけらるべ
くんば・しゆとにむかつて・かつせんすべし・もしかつせんにおよばば・えいがくのめつばう・くびすをめぐらすべからず・かなしいかな・へい
けしんきんをなやまし・たてまつり・ぶつぽふをほろぼすあひだ・あくぎやくをしづめむがために・ぎへいをおこすところに・たちまちに・三千のしゆとに
むかつて・ふりよのかつせんに・およばむことを・いたましいかな・いわうさんわうに・はばかりたてまつつて・かうていにちりうせしめば・
てうていくわんたいのしんとして・ぶりやくかきんの・そしりをのこさんことを・しんたいにまよひて・かくのごとく・あんないを・けいするところなり・
こひねがはくは三千しゆとかみのため・ほとけのため・きみのため・くにのために・して・げんじに・どうしんして・へいけを・ほろ
ぼし・こうくわに・よくせん・こんたんのいたりに・たへずよしなか・きようくわうきんげん
P309
じゆえい二ねん・六ぐわつのひ
しんじやう ゑくわうゐんのりつしのごばうへとぞかかれける
山門よりの返牒 709
そののちさんもんには・このじやうをひけんして・あるひはげんじに・どうしんせむといふ・しゆともあり・あるひは・へいけに・よりきせ
んといふ・たいしゆもあり・そのなかに・らうそうどものまをしけるは・われらは・むねとこんりんしやうわう・てんちやうちきうと・いのりたてまつ
るものなり・しかるに・へいけは・たうだいのごぐわいせき・さんもんに・おいて・ききやうを・いたさる・されども・あくぎやく・ほふにも
れ・ばんしんこれを・そむきたり・きんねんよりは・くにぐにへ・うつてを・つかはすといへども・へいけかへつて・いぞくのために・
ほろぼされ・うんめい・すでに・つきなんとす・げんじは・しよしよのいくさに・うちかちて・うんめいすでに・ひらけなんとす・なんぞ・さん
もんひとり・しゆくうんつきぬる・へいけのかたうどして・げんじをそむかんや・ねがはくは・われら・けふよりして・へいけ・ちぐ
のぎを・ひるがへし・げんじ・がふりよくすべきよしを・一みどうしんに・せんぎして・そののちかのへんてふをも・おくりける・そのじやうに
いはく・
さんぬる・十かのひのてふじやう・おなじき・十六にちたうらい・ひえつのところに・すじつのうつねん・いちじにかいさんす・ここに・へい
け・るゐねんにおよんで・せじやう・さわぎやむことなし・ことじんこうにあり・ゐしつすること・あたはず・(イ詳にあたはず)それえいざん
は・ていととうぼくのかみとして・こくか・せいひつの・せいきをいたす・しかりといへども・一てんひさしくかのえうげきにをかされ・し
P310
かいしづかに・そのあんぜんをえず・けんみつのほふり・なきがごとし・おうごのじんゐしばしば・すたるここに・きかたまたま・るゐだいぶび
のいへに・むまれて・たうじさいはひに・せいせんのじんたり・あらかじめ・きぼうをめぐらして・ぎへいをおこすところに・そのらういまだ・りやうねん
を・すぎざるに・そのなすでに・七だうにほどこす・こくかのため・るゐかのために・ぶこうをかんじ・ぶりやくをかんず・わがやまのしゆと・
かつかつもつて・しようえつす・かくのごとくならば・さんじやうのせいき・むなしからざる・ことを・よろこび・かいだいのけいご・おこた
り・なきことをしりぬ・しゆとらが・しんちう・ただけんさつをたれよ・じじ・たじ・じやうぢうの・ぶつぽふ・ほんしや・まつしや・さいそん
の・しんめい・いまけうほふの・ふたたび・さかえんことを・よろこび・そうきやうのふるきに・ふくせんことを・さだめて・ずゐきしたまふらむ・みやう
にはまた・いわうぜんせいのししやとして・きやうぞくつゐたうのゆうしに・あひくははり・けんにはまた・三千しゆと・しばらく・しゆ
がくさんきやうのきんせつを・やめて・あくりよちばつの・くわんぐんをたすけしめむ・しくわん十じようのぼんふうは・かんりよわてうのほかに・は
らひ・ゆか三みつのほふうは・じぞくを・げうねんのふるきに・かへさん・しゆとせんぎ・かくのごとし・つらつらこれを・さつ
せよ
じゆえい二ねん・六ぐわつのひ だいしゆら
とぞ・かきたりける
平家の一門日吉の社へ連署の願書 710
これによつて・げんじの一ぢん・すでにちかづきしよし・きこえしかば・へいけのひとびと・こは・いかがせんとぞ・さわ
P311
がれける・なんと・みゐでらは・うつぷんをふくめる・をりふしなれば・かたらふとも・よもなびかじさんもんは・たうけ
において・ふちうをぞんぜず・たうけまた・さんもんにおいて・うらみをむすばねば・ひよしのやしろへ・れんしよのぐわんしよを・こめ
たてまつつて・三千しゆとを・かたらはんとて・一もん十よにん・れんしよのぐわんしよを・かいて・ひよしのやしろへこそ・おく
られけれ・そのぐわんしよに・いはく
うやまつてまをすひよしのやしろを・うぢがみとさだめ・えんりやくじを・うぢでらと・がうして・いつかうてんだいのぶつぽふを・あふぐべきこと
みぎたうけ一ぞくのともがら・ことにきせいするむねあり・それ・えいざんは・くわんむてんわうの・ぎよう・だいしにつたうきてうののち・かの
たうざんによぢのぼり・このところに・しやなのたいかいをひろめ・たまひしよりいらい・ふかくぶつぽふはんじやうのれいくつとして・もつぱら・
ちんごこくかのだうぢやうに・そなふ・ここに・いづのくにのるにん・さきのうひやうゑの・ごんのすけ・よりとも・みのとがをくいず・
かへつててうけんをあざける・そのかんぼうにくみし・どうしんをいたすげんじら・ゆきいへ・よしなか・いげ・たうをむすんで・かずあり・りん
きやう・ゑんきやう・すこくをそうりやうし・とぎどこう・ばんぶつをあふりやうせしむ・これによつて・かつは・るゐだいくんこうのあとをおひ・
かつは・たうじきうばのげいにまかせて・しきりにつゐざいを・こふぎよりんかくよくのぢん・くわんぐんりをえず・せいぼでんげきのゐ・げき
るゐかつにのるににたり・いましんめいぶつだの・かびにあらずんば・いづれのひか・ほんげきの・きようらんを・しずめむ・こ
れによりて・いつかうてんだいの・ぶつぽふを・あふぎて・ひとへに・ひよしのしんおんを・たのまん・まくのみ・いかにいはんや・しん
らがなうそを・おもへば・かたじけなくも・ほんぐわんの・よえいと・いひつべし・いよいよ・そうちようすべし・いよいよ・くぎやうすべし・この
しそんにつたへて・ながく・しつだせし・さんもんに・よろこびあらば・いちもんの・よろこびとし・しやけに・いきどほり・あらば・一
P312
かの・いきどほりとし・ぜんにつけ・あくにつけ・ともによろこびをなし・おなじく・うれひをいだかん・とうしはまた・かす
がのやしろ・こうふくじを・うぢがみ・うぢでらとそんそうして・ひさしく・ほつそうだいじようのしうに・きえす・たうけはまた・ひよしの
やしろ・えんりやくじを・うぢがみ・うぢでらと・ききやうして・あらたに・ゑんじつとんごの・をしへにちぐせん・かれは・むかしの・
ゐせきなり・きみのために・えいかうをおもふ・これは・いまのせいきなり・いへのために・しきりにつゐばつをこふ・あふぎねがはくは・
さんわう七しや・わうじけんぞく・とうざいまんざん・ごほふしやうしゆ・十二だいぐわん・につくわうげつくわう・いわうぜんぜい・十二しんしやう・おのおのむ
にのたんぜいをてらし・ゆゐ一けんおうを・たれたまへ・じやほふげきしんのぞく・てをくんもんにつかね・ぼうぎやく・ざんがいのともがら・かばねを・
きやうどにのこさんか・われらがこんぜい・ぶつしんあに・すてめや・よつてたうけ一ぞくのともがら・いくどうおんに・れいをなし・きせい
かくのごとし・じゆ三ゐ・うこんゑのちうじやう・けん・さぬきのかみ・たひらのすけもり・じゆ三ゐ・ちうぐうの・ごんのちうしやう・けん・
ゑちぜんかみの・たひらのみちもり・じやう三ゐ・さこんゑのちうじやう・けん・いよのかみ・たひらのこれもり・じやう三ゐさこんゑの・ちうじやう・けん・はり
まのごんのかみ・たひらのしげひら・じやう三ゐ・ゑもんのかみ・けん・こんゑのきやうとほたふみのかみ・たひらの・きよむね・さんぎ・じやう三ゐ・しゆり
のごんのだいぶ・けん・かが・ゑつちうのかみ・たひらのつねもり・せいいたいしやうぐん・じゆ二ゐ・ぎやう・ごんちうなごん・けん・さひやうゑの
かみ・たひらのとももり・じゆ二ゐぎやう・ごんちうなごん・けんひぜんのかみ・たひらののりもり・じやう二ゐぎやう・ごんだいなごん・けん・さゑもんの
かみ・たひらのときただ・じやう二ゐぎやう・ごんだいなごん・けんでは・むつのかみ・たひらのよりもり・じゆ一ゐさきのないだいじん・たひらのむねもり・
うやまつてまをす・
じゆえい二ねん・六ぐわつのひ
P313
きん(きん二字愆カ)きんじやうざすそうじやうのごばうへとぞかかれたる
主上の都落 711
さんわう・だいしあはれみを・たれさせたまひ・おなじう・三千のだいしゆ・ちからをあはせよとなり・たいしゆ・われら・せんじつげんじ
に・どうしんのうへは・いまさら・ひるがへすべきに・あらずとて・へんてふにも・およばず・なかにも・ひごのかみさだよしは・ちんぜい
の・むほん・たひらげて・きくち・へつき・まつらたう・三千よきを・ひきぐして・おなじき・七ぐわつ十八にちに・みやこに
つく・こんども・ちんぜいはしたがへども・とうごく・ほくこくは・いまだ・しづまりも・やらざりけり・おなじき・廿二にちのよの・
ねのこく・ばかりに・六はらへんにはかに・だいちを・うちかへすが・ごとくに・しんどうし・むまにくらおき・はらおびし
め・しざいさふぐを・とうざいへ・はこびかくす・あけてのち・きこえしは・みの・げんじに・さどの・ゑもんの・じようしげ
としと・まをすものあり・これは・さんぬる・はうげんに・ちんぜいの・八らうためともが・いくさにまけて・おちゆきけるを・あふみのくに・いし
だふにて・からめとりて・そのときゑもんのじようには・なされたり・ためとも・からめたりとて・いちもんのげんじには・にくまれて・
へいけをかたらひけるが・このよの・やはんばかりに・六はらに・はせまゐつて・まをしけるは・きそよしなか・あふみのくに
まで・みだれいり・五万よきの・せいにて・ひがしさかもとに・みちみちて・ひとをも・やすくとほさず・たての六らう・
ちかただ・たいふのばうかくめい・てんだいざんに・きほひのぼり・そうぢゐんを・じやうくわくとして・さんそうら・ひとつに・なつて・すでに・
みやこへみだれいりさふらふ・ぞやと・まをしたりければ・へいけさらば・まづ・これをふせげやとて・たいしやうぐんには・さひやうゑの
P314
かみ・とももり・ほん三ゐのちうしやう・しげひら・二にんたいしやうぐんにて・つがふ・そのせい二千よにん・やましなをふせぎに・むかはれけ
り・さつまのかみただのり・たじまのかみつねまさ・わかさのかみつねとし・三にん・たいしやうぐんにて・つがふそのせい・三千よき・せたの・てへ
こそ・むかはれけれ・ゑちぜんの三ゐみちもり・のとのかみのりつね・二にん・たいしやうぐんにて・つがふそのせい・一千よき・うぢ
をふせぎに・むかはれけり・さるほどに・そのくらんどゆきいへ・一万よきにて・うぢぢより・みやこへいるとも・きこえけり・
あしかがの・やたのはんぐわんだい・よしきよ・五千よきにて・たんばのくにより・おほえやまをへて・しやうらくすとも・きこえけり・その
ほか・つのくに・かはちげんじども・ひとつになりて・よど・かはじりより・みだれいるとも・きこえけり・へいけこのうへは・みやこのう
ちにてこそ・ともかうも・ならむずれ・さらば・てどもよびかへせとて・うぢ・せたのてをも・みなよ
びかへされける・ていとみやうりのち・にはとりなきて・やすきことなし・をさまれるよだに・かくのごとし・いはんやみだれ
たるよに・おいてをや・よしののやまの・おくの・おくへも・いりなばやとは・おぼしめされけれども・しよこく七だうことごとく・や
ぶれにしかば・いづくのうらか・おだしかるべき・さんがいむあん・ゆによくわたく・によらいのきんげん・一じようの・めうもんなれ
ば・なじかは・すこしもまがふべき・おなじき・廿三にちの・さよふけがたに・おほいとの・にようゐんの・わたらせたまひ
ける・六はら・いけどのへ・まゐらせたまひて・まをさせたまひけるは・このよのなかの・ありさまは・いまははや・か
うにこそさふらへ・ひとびとは・みやこのうちにて・ともかうもなるべきよしを・のたまへども・まのあたりひとびとに・うき
めを・みせまゐらせんことも・いかんぞや・なれば・ひとまど・なりとも・ごかう・ぎやうかうをも・さいこくの・か
たへと・おもひなつて・こそさふらへと・まをさせたまひたりければ・にようゐん・ただ・とも・かうも・そこの・おん
P315
はからひに・こそとて・ぎよいのおんたもとに・あまるおんなみだ・せきあへさせ・たまはねば・おほいとのも・なほしの
そで・しぼるばかりにぞ・みえられける・へいけ・ゐんをも・うちをも・とりたてまつつて・さいこくの・かたへと・いふこと
を・ほうわうも・ないないしろしめされてもや・ありけむ・おなじき・廿四かのくれがたに・あぜちの・だいなごんすけかたのきやう
の・しそく・うまのかみすけとき・ばかりを・おんともにて・ひそかに・くらまのかたへ・ごかうなる・ひとこれを・しりたてまつら
ず・ここに・へいけの・さぶらひに・きちないさゑもんすゑやすと・いふものあり・さがさがしきによつて・つねはゐんのおんまへに
も・めしつかはれけるが・そのよしも・ゐんのごしよに・おんとのゐまをしさふらひけるが・つねのごしよのかた・なにと
なうさざめきあひ・にようばうたちの・しのびねに・うちなきなんど・したまひけるを・なにごとやらんと・きくほどに・
ほうわうの・ごしよにもわたらせ・たまはねば・いづかたへごかうなりたる・やらむと・まをすこゑに・ききなし・あな・あさ
ましやと・おもひ・いそぎ・六はらへ・はしりまゐつて・このよしまをしたりければ・おほいとの・いかでか・さるおん
ことの・わたらせ・たまふべきとは・のたまひけれども・いそぎおんむまに・めしゐんの・ごしよに・はしりまゐつて・みま
ゐらつさせ・たまふに・げにも・ほうわう・わたらせ・たまはずにようばうたちには・二ゐどの・たんごどのを・はじめたてまつつて・
ひとところも・わたらせ・たまはず・おほいとの・さていかにや・いかにと・おんたづねありけれども・たれおんゆくへ・しりま
ゐらせたりと・まをすひと・ひとりもなかりけり・さるほどに・ほうわうの・ごしよにも・わたらせ・たまはぬと・まをすほど
こそ・ありけれ・きやうちうの・さうどうなのめならず・いはんや・へいけの・ひとびとの・さわぎ・あはれける・ありさま・おの
づから・いへいへに・かたきうちいりたりとも・かぎりあれば・これには・すぎじとぞ・みえし・へいけ・ゐんをも・うちをも・
P316
とりたてまつつて・さいこくへとは・おもはれけれども・ほうわうのかく・すてさせ・おはしましけるうへは・たのむこの
もとに・あめのたまらぬ・ここちぞ・したまひける・さてしも・あるべきならねば・いまは・ぎやうかうばかりをなりとも・
なしまゐらせよやとて・おなじき廿五にちの・うのこくに・たまのみこしを・さしよせまゐらせ・たりければ・しゆじやう
は・こんねん・六さいにならせ・おはしましけるが・なにごころもなうぞ・めされける・へいだいなごん・ときただのきやうのきたの
かた・そちのすけどのぞ・ごどうよには・まゐられける・なかにも・へいだいなごん・ときただのきやううけたまはつて・しんじ・はうけん・ない
しどころ・いんやく・ときのふだすずかに・いたるまで・みな・とりたてまつれやと・げぢせられけれども・あまりにあわてて・とり
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くわんただしうして・ぎやうかうには・ぐぶせられけれ・そのほかおほゐとの・を・はじめたてまつつて・こんゑづかさ・みつなのすけ
にいたるまで・かつちうをよろひ・きうせんをたいして・ぐぶせられけり・七でうをにしへ・しゆじやつかをみなみへ・ぎやうかうなる・ゆめ
のやうなる・おんことなり・さるほどに・かんてんすでに・ひらけて・くも・とうれいに・たなびき・あけがたのつきしろく・さ
え・けいめいまた・いそがはし・ひととせみやこうつしとて・にはかに・あわただしかりし・ことどもは・かかるべき・ぜん
べうとも・いまこそ・おもひしられけれ
あひ 712
なかにも・せつしやうどのは・とうじの・みなみへもんまで・ぎやうかうに・ぐぶせさせおはしまし・けるが・いかなるおんことか・わた
P317
らせ・たまひけん・かすがのだいみやうじんの・おんつげありとて・それより・おんくるまを・とつてかへし・おほみやを・のぼ
りに・きたやまのへん・ちそくゐんどのへ・いらせたまひけり
維盛の都落 713
なかにも・こまつの三ゐのちうじやうこれもりのきやうは・ひごろより・おもひまうけられし・ことなれども・さしあたつて
は・またかなしくぞ・おもはれける・この・きたのかたと・まをすは・こなかのみかどの・しんだいなごんなりちかのきやうの・おんむすめにて・
おはしけれども・ちちにも・ははにも・おくれたまひて・みなしごにては・おはしけれども・たうがんつゆに・ほころ
び・こうふんおもてに・こびをなし・りうはつ・かぜに・みだるるよそほひ・までも・たぐひすくなくぞ・みえられける・わかぎみ・
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のちうしやう・きたのかたにむかつて・のたまひけるは・これもりこそ・ひごろまをしさふらひつるやうに・いちもんに・ぐせられて・
さいこくのかたへ・おちゆきさふらへ・いづくまでも・ひきぐし・たてまつるべけれども・みちにもかたき・あひまつなれば・たひら
かに・とほらんこともかたければ・さて・とどめおきたてまつるなり・もしまた・いづくのうらわにも・こころやすう・おちついて・
さふらはば・それよりひとを・むかへにたてまつるべし・たとへ・これもり・またこのよに・なきものと・なりたると・ききたまふとも・さ
まなんど・かへさせたまふべからず・いかならんひとにも・みみえて・みをもたすけ・あの・をさなきもの
どもをも・はごくみ・たまふべし・よのつねの・ならひなれば・なさけをかけたてまつる・ひともなどかは・なかるべ
P318
き・なんど・やうやうに・こしらへおき・たまへども・きたのかたには・とかくのへんじも・したまはず・ひきか
つぎてぞ・なかれける・三ゐのちうじやう・すでに・いでんと・したまへば・きたのかた・三ゐのそでに・すがつて・みやこに
は・ちちもなし・ははもなし・すてられたてまつつて・そのゆゑはまた・たれにかは・みゆべきに・いかならん・ひとにもみ
えよなんど・うけたまはるこそ・うらめしけれ・ひごろは・おんこころざし・あさからぬやうに・もてなしたまへば・たれもひと
しれず・ふかうたのみたてまつつて・おなじのはらのつゆとも・きえ・おなじそこのみくづとも・ならんとこそ・ちぎ
りしに・いつのまにかはりぬる・ひとのこころぞや・されば・さよのねざめの・むつごとも・みないつはりに・なりに
けり・せめて・わがみ・ひとりならば・すてられたてまつる・みのほどを・おもひしりても・とどまりなん・
あのをさなきものをば・たれにみゆづり・いかになれとて・とどめおきたまふぞや・なさけなうも・すてたまふものかなと
て・かつうはうらみ・かつうはしたひつつ・なきたまひけるにも・三ゐのちうじやうまた・きたのかたにむかつて・のたまひけるは・
まことに・これもり十五・ひとは・十三のとしより・たがひに・みそめみえそめ・たてまつつて・ことしは・すでに・十二ねん・ひ
のなか・みづのそこへも・ともにいり・ともにしづみ・かぎりある・わかれぢまでも・おくれさきだたじとこそ・まをして
さふらひしかども・こんどはかく・こころうきかつせんのにはへ・うちいでさふらへば・あのをさなきものどもをさへ・ひきぐして・
うきめを・みせんことも・いかんぞやなれば・さて・とどめおきたてまつるなり・そのうへ・こんどは・よういもつかまつらず・あひ
かまへて・むかへをたてまつるべしとて・ちうもんにて・もののぐし・すでにいでんとしたまへば・わかぎみ・はしりいで・
ちちのよろひの・さうのそで・くさずりに・とりつきたまひて・こは・いづちとて・わたらせたまひさふらふぞや・われもまゐ
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らん・われもゆかんと・したひつつ・なきたまひけるにぞ・三ゐのちうじやう・うきよのきづなとは・おもはれけり・
さるほどに・三ゐのおとと・しん三ゐのちうじやう・すけもり・さちうじやうきよつね・しんせうしやうありもり・たんごの・ぢじうただふさ・びつちうのかみもろもり・
きやうだい・五にん・むまにのりながら・おほにはにひかへたまひて・ぎやうかうははや・はるかに・のびさせたまひてさふらふに・いかに
や・いままでのちさんと・こゑごゑに・まをされたりければ・三ゐのちうじやう・さてはとて・むまにうちのりて・いでられけ
るが・さるにてもとて・またひきかへし・えんのきはに・こまうちよせ・ゆみのはずにて・みすをきつと・かきあげたま
ひて・あれごらんぜよや・千万のかたきのなかをこそ・わつてもとほり・さふらはめ・あのをさなき・ものどもが・
あまりにしたひさふらふを・とかう・こしらへおかんと・つかまつりつるほどに・ぞんぐわいのちさんと・のたまひもあへず・なみだにむせ
びたまへば・きやうだい五きのひとびとも・みなよろひのそでをぞ・ぬらされける・また三ゐのさぶらひに・さいとう五・さいとう六とて・
あには十九・おととは・十七になるさぶらひあり・これはさんぬる・なつ・ほつこく・かがのくににて・うちじに・したりし・なが
ゐの・さいとうべつたうさねもりが・こどもなり・三ゐの・おんむまの・みづつきに・とりつきたてまつつて・いづくまでも・まゐるべ
きよしを・まをしければ・三ゐのちうじやう・わざと・なんぢらをば・おもふやうあつて・さてとどめおくなり・あの六だいが・また
たれをかは・たのむべき・ただまげて・とどまれと・のたまへば・かれら・ちからおよばず・なみだを・おさへて・
とどまりけり・三ゐのちうじやう・すでに・うちいでたまへば・きたのかたひごろは・これほどまで・なさけなかりける・ひととは・つゆおも
ひこそよらざりしかとて・ひとのきくをも・はばからず・みすのきはに・たふれふし・こゑをあげてぞ・なか
れける・わかぎみ・ひめぎみ・にようばうたちの・なきたまひける・こゑごゑの・はるかのもんぐわいにまでも・きこえければ・三ゐのちうじやう・こころ
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つよくも・こしらへおきては・いでられけれども・さすが・むまをも・すすめもやりたまはず・ただうしろのみ・
ひきかへす・ここちして・ひかへひかへぞ・なかれける・ひとはいつのひのいつのときには・かならず・かへりきた
るべしと・そのごをさだめおくだにも・さしあたつては・まづかなしきぞかし・いはんや・このひとびとは・けふ
をかぎり・ただいま・ばかりのわかれなれば・さこそはなごりをしかりけめ・わかぎみ・ひめぎみのなきたまひける・こゑごゑのはるか
の・みみのそこに・とどまつて・こんど・さいかいの・たびのそら・ふくかぜたつなみに・つけても・きくやうにこそ・おも
はれけれ
池の大納言都にとどまらるる事(あひ) 714
さるほどに・にふだうのおとと・いけのだいなごんよりもりは・いけどのに・ひかけさせ・てぜい三百よき・はたささせ・とうじの・みなみ
のもんまで・ぎやうかうに・ぐぶせられたり・けるが・いかがは・おもはれけむ・とつて・かへし・はたをばま
いて・もたせ・おほみやを・のぼりに・きたやまのほとり・ときはのゐんどのへ・まゐりこもられけり・こんどだいなごんの・ときはの
ゐんどのへ・まゐられけるゆゑを・いかにまをすに・にようゐんのおんめのと・ぢみやうゐんのさいしやうどのに・あひぐせられたりける
によつてなり・そののち・だいなごん・にようゐんの・おんまへにまゐつて・まをされけるは・しぜんのことも・さふらはば・たすけさ
せ・おはしませと・まをされたりければ・にようゐん・いざとよ・たうじはよが・よにても・あらばこそと・よ
にも・たのもしげなうぞ・おほせける・なかにも・ゑつちうのじらうびやうゑもりつぎ・おほいとののおんまへに・まゐり・かしこまつて
P321
まをしけるは・こんどいけどのの・とどまらせたまふによつて・おほくのさぶらひどもの・つきたてまつつて・とどまりさふらふが・あ
まりに・にくうおぼえさふらふ・いけどのまでは・おほきにおそれいつておぼえさふらへば・さぶらひどものなかへ・やひとつ・いか
けさふらはばやと・まをしたりければ・おほいとの・よしよし・そのぎ・さなくとも・ひごろのぢうおんを・わすれて・とど
まらんずる・やつばらは・なかなかいふにおよばずとぞ・のたまひける・おほいどの・さてもまつどのの・きんたちだちは・い
かにと・のたまへば・それもいまだ・ひとところも・みえさせたまはずと・まをしたりければ・しんちうなごんとももり・おほい
とののおんまへに・まゐらせたまひて・まをさせたまひけるは・みやこをいでて・いまだいちにちをだにも・すぎざるに・ひと
びとのこころのかはりゆくこそ・なによりもつて・うたてけれ・これにつけても・みやこのうちにて・とも・かうも・な
りぬべかりつるものをとて・おほいとのの・かたをつらげにみてぞ・なかれける・まことにもとぞ・おもはれけ
る・こんどよりもりのきやうの・みやこにとどまられけるゆゑを・いかにとまをすに・かまくらのひやうゑのすけの・かたより・八まんだいぼ
さつも・ごせうらんさふらへ・いけどのにおきたてまつつて・いしゆおもひたてまつらざるよしを・たびたびのたまひ・のぼせられける
うへ・うつてののぼる・たびごとに・いけどのに・むかひたてまつつて・ゆみばしひくな・やへいびやうゑに・むかつて・やば
しはなつなと・のたまひけるを・たのみにて・とどまられけるとぞ・きこえし・たとへ・ひやうゑのすけこそ・さやうに
はうしん・したまふとも・じよのものどもは・なにとかおもふべき・いちもんには・おくれたまひぬ・なみにも・いそにもつか
ぬ・ここちぞしたまひける
P322
経政の都落 715
なかにも・くわうごぐうのすけ・けんたじまのかみつねまさは・えうせうより・にんわじ・おむろのごしよに・さふらはれければ・いちもんのひと
びとには・さきだつて・よに・まぎれ・みやこをいで・にんわじどのへぞ・まゐられける・そのみ・ちよくかんのみにて・おはし
ければ・さうなう・おんまへへは・まゐられず・ひとして・ことのしさいを・まをされたりければ・みや・なにかは・く
るしかるべき・いまいちどこれへと・おほせければ・つねまさおんまへにまゐり・かしこまりなみだをはらはらと・ながいて・えうどうの
いにしへは・このごしよに・しこうつかまつつて・ごおんみにあまり・まかりうけたまはり・さふらひき・きうゐんに・ほうこうのとき
も・つねは・さんじさふらひしに・いまはいちもんの・きようとにさそはれて・さいかいのなみのうへに・ただよふおちうどと・
なりぬべうさふらへば・またいつのよに・かへりまゐるべき・そのごもさだめがたうさふらふ・さても・十三のとしよりくだ
し・あづかりさふらひつる・おんびはをば・かたときみをはなたじとこそ・ぞんじさふらひしかども・いま・ゐなかの・ちり
に・まじへ・そうかいのそこの・みくづと・なさむことも・あまりに・くちをしうさふらへば・まづかへしおきまゐらせさふらふ
なり・もしたうけの・よともなつて・ふたたびみやこへ・かへりのぼることもさふらはば・そのときは・かならずくだしあづかりさふらふべ
しとて・さぶらひ・あんゑもんのぜうありのりを・めして・からにしきのふくろにいれて・もたせられたりける・おんびはを・めしよせて・
みやのおんまへに・さしおくとて・よにもなごりをしげにみえられければ・みやかうぞ・おほせける
あかずしてわかるるきみがなごりをば・のちのかたみにつつみてぞおく・
P323
つねまさかしこまつてうけたまはり
くれたけのかけひのみづのかはらねば・なほすみあかぬみやのうちかな・
さてしもあるべき・ならねば・つねまさ・いとままをして・いでられけり・みやもまた・いつのよにか・ごらんぜらるべき
なれば・おんなみだにむせばせ・おはします・そのほかごしよちうのひとびと・つねまさのそでにすがり・たもとにとりつき・みな・
なみだをぞ・ながされける・なかにも・はむろのだいなごんみつよりのきやうのしそく・だいなごんの・ほういんぎやうけいは・つねまさの・こ
じにておはしければ・ことになごりを・をしみたてまつつて・かつらがはのほとりまで・うちおくりて・かへられけるが・つねまさ
の・そでをひかへて
あはれなりおいきわかぎもやまざくら・おくれさきだち(イたつ)はなはのこらじ・
つねまさひきかへし
たびごろもよなよなそでをかたしきて・おもひとほくもわれはゆくかな・(イ思へば我は遠く行くなり)
ほういんかへりたまへば・つねまさ・むらさきぢのにしきのひたたれに・もえぎにほひの・よろひをきて・たつがしらのかぶとの・ををしめ・あししろ
の・たちをはき・廿四さいたる・きりふのやおひ・しげどうのゆみもつて・つきげなる・むまにきんぷくりんの・くらお
いて・のりたまふ・まいてもたせられたりける・あかはたといてはつと・さしあげたりければ・ここかしこにひか
へて・まちたてまつる・二き・三き・五き・十き・うちよりうちより・みなおんともつかまつり・ほどなう・百きばかりになつて・
かつらがはのみぎはを・くだりに・よのほのぼのとあけければ・やまざきせきとのゐんに・いでたまふ・およそ・このつねまさは・
P324
くわんげんのみちにたつし・さいげいすぐれて・おはしければ・なによりも・みやこにとどめおかれし・おんびはのゆくへをのみぞ・
おもはれける・まことにをしかるべし・わがてうにまたそのたぐひ・あるべからざる・てうはうなり・そのゆゑは・むかしにんめいてんわうのぎよう・
かじやう三ねんに・かもんのかみていびんが・につたうして・だいたうの・びはのはかせ・れんしようぶにあひ・三きよくをさうでんして・き
てうのとき・げんしやう・せいざん・ししのまろとて・三めんのびはを・さうでんしてこそ・わたりけれ・とかいにて・なみかぜ・はげし
かりければ・りうじんのおそれありとて・なかにも・ししのまろをば・かいていに・しづむ・げんしやう・せいざんは・ことゆゑなくぞ・
わたりける・それより・だいりに・とどまつて・よよの・みかどのおんたからとなる・なかにも・むらかみのてんわうのぎよう・
てんとく四ねんのあきのなかばに・みかどせいりやうでんの・つきのえんにして・かのげんしやうを・あそばされけるに・三五やちうの・しん
げつしろくさえ・りやうふう・さつさつの・よふかきに・けにんあまくだつて・しやうかゆゆしくつかまつる・みかど・いつごらん
じなれたる・ものともおぼし・めされねば・そもなんぢは・いかなるものぞと・おほせければ・かのけにん・これは・だいたう
の・びはのはかせ・れんしようぶとまをす・ものなり・かもんのかみていびんが・につたうして・三きよくをつたへしに・いまいつきよくををし
みて・つたへざりしによつて・まだうにおちて・ちんりんす・いまかしこを・すぎゆくに・みかどの・おんびはをうけたはまつ
て・まゐりよりてさふらふなり・すなはちかのひきよくをば・かたじけなくも・てんしにさづけたてまつつて・まだうのくるしみをば・のがるべしとて・
おんまへに・たてられたる・せいざんをとつて・かきならし・じやうげん・せきじやうの・しらべとまをす・ひきよくをば・かたじけなくも・
てんしに・さづけたてまつつて・かきけすやうにぞ・うせにける・それより・かのせいざんをば・いよいよごひさう・ありけるを・
あるとき・だいりより・おむろへ・まゐらつさせ・たまひけりしかるを・えうどうの・ごさいあいのうへ・みちのたつしやにておは
P225
しければ・くだしあづかられけるとぞ・うけたまはる・このひと十七のとし・うさの・はうじやゑの・ちよくしにたつて・かの
おんびはをともなひ・九しうにげかうし・八まんだいぼさつの・ごはうぜんの・つきのえんにして・かのせいざんを・ひかれける
に・あやしのともがらも・みみをおどろかし・とものみやびとも・みな・りよくいのそでをぞ・ぬらしける・せいざんは・これ・
しだんのかふ・ひつじのかはの・ばちめんのゑに・なつやまの・このまもりくる・ありあけのつきを・かかれたりしに・よりて・
こそ・せいざんとは・なづけられけれ
薩摩守の都落 716
なかにも・さつまのかみただのりは・いづくよりかは・かへられけむ・さぶらひ五きわらは一にん・めしぐして・五でうの三
ゐしゆんぜいのきやうのもとに・おはして・みたまふに・もんこをとぢたり・さつまのかみ・むまよりおり・もんを・ほとほととたたい
て・これはただのりとまをすものが・いささかまをすべきこと・あつて・まゐつてさふらふ・もんをばな・あけられさふらひそ・このきはまで・
たちよらせたまふべうもやさふらふらんと・まをされければ・三ゐそのひとならば・くるしかるまじ・もんをあけよと
て・ひらいてたいめんある・さつまのかみは・こんぢのにしきのひたたれに・こぐそくばかりせられ・たりけるが・なほ・こ
ぐそくをも・とつて・ひとにもたせられたり・ことのてい・なにとなうものあはれなり・さつまのかみ・まをされけるは・としごろまをし・
うけたまはりさふらひし・のちは・そりやくを・ぞんぜずとは・まをしながら・このりやう三ねんは・きやうとのさわぎ・くにぐにの・みだ
れひとへに・たうけの・みのうへにてさふらへば・つねはまゐりよることも・さふらはず・きみ・みやこをいでさせたまひぬる・うへは・
P326
いまはのべに・かばねをさらさむずる・よりほかは・また・ごするかたも・さふらはず・さても・ちよくせんあるべきよし・うけたまは
りさふらひしに・いくほどなうて・よのみだれ・いでき・そのさたなくさふらふこと・ただいつしんのなげきと・こそぞんじさふらへ・もし
よしづまつてのち・ちよくせんのさたさふらはば・このうちにいつしゆなりとも・ごおんに・かうぶつて・くさのかげにても・とほ
きおんまぼりと・なりまゐらせさふらはめとて・ふところより・まきもの・ひとつ・とりいだし・しゆんぜいのきやうに・たてまつらる・ひらい
てみたまへば・百しゆのうたをぞ・かかれたる・三ゐいまにはじめぬ・おんこととは・まをしながら・かかる・そうげきの・なか
にも・おぼしめしわすれぬ・おんこころざしこそ・いうに・ありがたう・ぞんじさふらへ・ちよくせんに・おいては・ぐしんうけたまはり
さふらへば・そりやくを・ぞんずまじうさふらふと・まをされたりければ・さつまのかみ・なのめならず・よろこびたまひて・いまはのべに・
かばねを・さらさばさらせ・さうかいのそこに・しづまば・しづめ・こんじやうにおもひおくことも・さふらはず・たとへ・このよの・
わかれこそ・ただいまばかりにてさふらふとも・らいせにては・かならずいちぶつじやうどのえんと・まゐりあひ・まゐらせさふらふべし・
さらば・いとままをしてとて・なみだを・おさへて・いでられけり・三ゐも・あはれにて・さつまのかみの・うしろをはるばると・
みおくり・なみだをおさへている・そののち・さつまのかみは・もんぜんにて・もののぐし・むまにうちのりて・いでられければ・いづ
くよりか・きたりけん・さぶらひ二三百きがほど・いできたつて・さつまのかみをなかに・とりこめたてまつつて・おとしたてまつるときに・
ただのりのこゑと・おぼしくて・せんどほどとほし・おもひを・がんざんのゆふべのくもにはすと・たからかに・えいぜられ・たり
けるにぞ・まことにすごく・みにしみて・のちのよまでも・わすれがたみと・なられけるこそ・あはれなれ・げにも・よ
しづまつてのち・ちよくせんのさたあり・いまのせんざいしふ・これなり・そのうちに・さつまのかみのうたいつしゆぞ・いれられたる・
P327
こころざしせつなりしかば・あまたも・いればやとは・おもはれけれども・そのみ・ちよくかんのひとにて・おはしければ・わざと
みやうじをば・あらはされず・よみびとしらずとぞ・いれられたる・こきやうの・はなといふ・だいをもつて・よまれ
たりし・うたなり
さざなみやしがのみやこはあれにしを・むかしながらのやまざくらかな・
そのみちよくかんのひととは・まをしながら・くちをしかりし・ことどもなり・さるほどに・こまつの三ゐのちうじやうこれもり・きゃうだい・六きうち
つれて・つがふそのせい・五百よき・つくりみちに・うつていで・こまをはやめて・うつほどに・よどのむつだがはらの
へんにてぞ・ぎやうかうに・おつつきたてまつる
福原落 717
おほいとの・三ゐのちうじやうを・みつけたまひて・などや・いままでのちさんと・のたまへば・三ゐのちうじやう・さればこそ・
あのをさなきものどもが・あまりに・したひさふらふを・とかうこしらへ・おかんと・つかまつりつるほどに・と・のたまへば・
あなこころつよや・など・ひきぐしたまはぬぞと・のたまへば・三ゐのちうじやう・ゆくすゑとても・たのもし・からずさふらへ
ばとて・とふに・つらさのなみだをぞ・ながされけるこそ・あはれなれ・へいけみやこを・おつるとて・六はらどの・こ
まつどの・にし八でうに・ひをかけたりければ・くろけぶり・てんにみちみちて・ひのひかりも・みえざりけり・あるひは・せい
しゆ・りんかうのちなり・ほうけつ・むなしく・いしずゑをのこし・らんよ・ただあとをとどむ・あるひは・こうひいうえんのみぎりなり・
P328
せつぱうのあらし・こゑかなしみ・えきていのつゆ・いろうれふ・あるひは・さうきやうふちやうのもとゐ・よくりんてうしよのたち・えんらんのすみか・たじち
のけいえい・むなしくして・へんしの・くわいじんとなれり・いはんやらうじうのをくしやに・おいてをや・いはんやざふにんの・ほうひつ
に・おいてをや・よえんの・およぶところ・ざいざい・しよしよす十ちやうなり・きやうごほろびて・けいきよくあり・こそだいのつゆ・じやうじやうた
り・ぼうしんおとろへて・こらうなし・かんやうきうの・けぶり・へいげいを・かくしけむも・これには・すぎじとぞ・みえし・
ひごろは・かんこく・二かうの・さかしきを・かたくせしかども・ほくてきのために・これをやぶられ・こうが・けいいの・
ふかきを・おもんしかども・とういのために・これを・とられたり・あにはかりきや・たちまちに・れいぎのみやこを・
せめいだされ・なくなく・むちのさかひに・みをよせむとは・きのふは・くものうへにして・あめを・くだす・しんりうた
り・けふは・いちくらの・ほとりにして・みづをうしなふ・こぎよたり・はうげん・へいぢの・むかしは・へいけはるのはなと・
さかえしが・えいじゆ二ねんのいまは・また・あきのもみぢと・おちはてぬ・そのころ・みやこにさふらひける・とうごくの・だいみやう
には・はたけやまのしやうじしげよし・おとと・をやまだのべつたうありしげ・うつのみやのさゑもんともつななり・さんぬる・ぢしようのころより・
めしうどにて・みやこに・さふらひけるを・おほいどの・みやこをいづるとて・かれら・三にんが・くびをはねんと・のたまひける
を・へいだいなごんと・しんちうなごんの・まをされけるは・たとへ・かれら・十にん百にんが・くびを・はねさせ・たまひてさふらふとも・
ごうんつきさせたまひなば・みよを・めされんこと・ありがたしそのうへ・かれらは・とうごくに・こどもあまたもつて・
さふらへば・かれらが・なげかんずる・あとこそ・まことに・ふびんにさふらへば・ただまげて・たすけさせおはしませと・のたま
ひあはれければ・おほいどのも・このうへは・ちからおよびたまはず・かれら・三にんよどの・すまひのつじまで・ぎやうかうの・おんとも
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つかまつり・いづくまでも・まゐるべきよしを・まをしければ・おほいとの・かれらがこどもは・とうごくにのみ・あんな
れば・なんぢがたましひは・一かうとうごくにのみぞ・あるらん・からだばかり・めしぐして・なんのせんか・あるべき・も
し・たうけの・よとも・なつて・ふたたび・みやこへかへりのぼる・ことあらば・そのときは・いそぎ・まゐるべし・ただまげて・
とどまれと・のたまへば・かれらちからおよばず・なみだを・おさへて・とどまりけり・これも・この廿よねんの・しゆなりけれ
ば・さこそなごり・をしかりけめ・へいけは・やまざきせきどのゐんにして・たまのみこしを・かきすゑて・をとこやまを・
ふしをがみ・なむきみやうちやうらい・八まんだいぼさつ・しゆじやうをはじめたてまつつて・われらを・いま一ど・みやこへ・かへし・いれさ
せたまへと・まをさせたまふぞ・あはれなる・おちゆくへいけは・たれだれぞ・まづ・さきのないだいじんむねもり・ゑもんのかみきよむね・
へいだいなごんときただ・へいちうなごんのりもり・しんちうなごんとももり・しゆりのたいふつねもり・ほん三ゐのちうじやうしげひら・こまつの三ゐちうじやう
これもり・ゑちぜんの三ゐみちもり・しん三ゐのちうじやうすけもり・でんじやうびとには・くらんどのかみのぶもと・さぬきのちうじやうときざね・ひやうぶのせう
まさあき・さまのかみゆきもり・さちうじやうきよつね・しんせうしやうありもり・たんごのじじうただふさ・さつまのかみただのり・たじまのかみつねまさ・わかさのかみつね
とし・あはぢのかみきよふさ・をはりのかみきよさだ・のとのかみのりつね・びつちうのかみもろもり・むさしのかみともあきら・くらんどのたいふなりもり・たいふあつもり・
そうがうには・二ゐのそうづせんしん・ほつしようじしゆぎやうのうゑん・ちうなごんりつし・ちうくわい・きやうじゆばうのあじやりいうゑん・さぶらひには・げん
たいふのはんぐわんすゑさだ・つのはんぐわんもりずみ・きちないさゑもんすゑやす・とうないびやうゑすゑくにを・さきとして・一もん百六十三にん・
むねとのさぶらひ・三百よにん・つがふそのせい・七千よにん・これらは・この二三ケねんがあひだ・とうごく・ほつこく・どどのいくさに・うち
もらされて・わづかにのこるところなり・なかにも・こまつの三ゐのちうじやうこれもりのほかは・おほいとのを・はじめたてまつつて・みな・
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さいしを・ひきぐしてぞ・くだられける・そのほかつぎざまのものどもは・こうゑ・そのごを・しらざれば・みなうちすてうちすて
ぞ・くだりける・あるひは・としの・ひごろの・よしみ・なじかは・わするべきなれば・ゆくもとどまるも・ただ・
うしろをのみ・かへりみて・さきへは・すすみも・やらざりける・おのおの・うしろをかへりみたまへ
ば・くろけぶり・てんに・みちみちたり・なかにも・さつまのかみただのり
はかなしなぬしはくもゐをわかるれば・やどはけぶりとたちのぼるかな・(イのぼるなり)
しゆりのたいふつねもり
ふるさとをやけののはらとかへりみて・すゑもけぶりのなみぢをぞゆく・
みやこをばただ・一ぺんのえんぢんに・へだてつつ・ぜんと・ばんりのくもぢに・おもむきたまふ・こころのうち・おしはかられ・
あはれなり・なかにも・ちくごのかみさだよしは・かはじりに・げんじありとききて・けちらさんとて・七千よきにて・む
かうたりけるが・ひがごとなりければ・とつてかへし・みやこをさして・のぼるほどに・よどのおほわたりのへんにて・
ぎやうかうにまゐり・あひ・いそぎ・むまよりとんでおり・おほいとのの・おんまへにまゐり・かしこまつてまをしけるは・こはいづく
を・さして・いらせたまひさふらふやらん・さいこくのかたへ・いらせたまひてさふらはば・おちうどとて・かしこ・ここのの
べに・かばねをさらさせ・たまはんずる・おんことをば・こころうしとは・おぼしめされさふらはずやと・まをしたりければ・
おほいとのさだよしは・いまだ・しらずや・きそよしなか・あふみのくにまで・みだれいり・五万よきのせいにて・ひがしさかもと
に・みちみちて・ひとをも・たやすくとほさず・たての六らうちかただ・たいふばうかくめい・一千よきにて・てんだいさんに・きほひの
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ぼり・そうぢゐんを・じやうくわくとして・さんそうら・一になつて・すでにみやこへ・みだれいるあひだ・ひとびとは・みやこのうちにて・と
も・かうも・なるべきやうを・のたまへども・まのあたり・ひとびとにうきめを・みせまゐらせんことも・いか
んぞやなれば・ひとまど・なりとも・さいこくのかたへと・おもふまでにて・こそあれと・のたまへば・ささふらはば・
さだよしには・いとまたびさふらへかしとて・てぜい・三百よきを・ひきわけて・みやこにのぼり・にし八でうの・やけあとに・おほ
まく・ひきまはさせ・一やしゆくし・たりけれども・かへりのぼりたまふ・へいけの・きんたち・一にんも・おはせざりけれ
ば・ゆくすゑたのもし・からずや・おもひけむ・またげんじのひづめに・かけじとや・こまつどのの・はか・ほらせ・あた
りの・つちをば・かもがはへ・ながし・こつをば・かうやさんへおくり・わがみをば・へいけと・うしろ・あはせに・
なつて・とうごくのかたへぞ・くだりけるなかにも・うつのみやのさゑもんともつなは・さんぬる・ぢしようのころ・より・めしうどに
て・みやこに・さふらひけるを・さだよし・あづかつて・ことのほかに・はうしん・ほどこし・たりしかば・そのおんを・わすれ
じと・とうごくに・ぐしくだり・なのめならず・いとほしみ・けるとぞ・きこえし・さるほどに・へいけは・にしのうみ・
八へのしほぢに・ひをくらし・いそべのとこの・くさまくら・いりえ・こぎゆく・かいのしづく・つゆも・なみだにあらそひて・たもとも
さらに・ほしあへず・あけければ・ふねに・さをさす・ひともあり・こまに・むちうつものもあり・おもひおもひ・ここ
ろごころに・おちぞゆく・そのひのくれがたに・つのくに・ふくはらにこそ・つきたまへ・さるほどに・へいけは・ふくはらのきうり
に・おちつき・たまひて・おほいとの・まづ・むねとのさぶらひ・三百よにんをめして・しやくぜんのいへに・よけいつき・しやくあく
の・よわう・みにおよぶ・ゆゑに・しんめいにも・はなれ・たてまつりきみにも・すてられ・まゐらせて・みやこのほかに・い
P332
で・なみのうへに・ただよふ・おちうどとなりぬるうへは・なんのたのみか・あるべき・されども・あるひは・きんしんの・よしみた
に・ことなるもあり・あるひは・ぢうだいはうおんの・これふかきもあり・一じゆのかげに・やどるも・ぜんせのちぎり・あさか
らず・一かのながれを・むすぶも・たしやうの・えんなほふかし・いはんや・なんぢら・一たんかたらひをなす・もんかくに・あ
らず・すでに・るゐそ・さうでんのけにんなり・かもんはんじやうの・いにしへは・おんはに・よつて・わたくしをねがひき・たのしみつ
きて・かなしみきたる・なんぞ・しりよを・めぐらして・はうおんを・むくいざらむや・しゆじやうみやこを・いでさせ・たまふと
は・まをせども・しんじ・はうけん・ないしどころ・三しゆの・じんきを・たいして・ましませば・ののすゑ・やまのおくまでも・
ぎやうかうの・おんともつかまつらんとは・おもはずやと・かきくどいて・のたまひければ・さぶらひどもも・みな・しうるゐして・
まをしけるは・いかなる・こころなき・とり・けだものに・いたりさふらふまでも・おんをはうじ・とくをむくう・こころざしは・みなさふらふ
なるものを・いはんやわれら・ひととして・いかでか・ごおんを・わすれまゐらせさふらふべき・この廿よねんがあひだ・さいしを・はご
くみ・しよじうをかへりみさふらふ・ことも・ひとつとして・ごおんならずと・いふことなし・されば・くものはて・うみ
のはて・までも・ぎやうかうのおんとも・つかまつるべきよしを・いくどうおんに・まをしたりければ・おほいとのも・二ゐどのも・
ちからつきてこそ・おもはれけれ・へいけそのよは・ふくはらの・きうり・にて・一やをこそ・あかされけれ・をりふし・
あきのはじめのつきは・しものゆみはりなり・しんかう・くうや・しづかにして・たびねのとこの・くさまくら・つゆも・なみだに・あらそ
ひて・ただもののみぞ・かなしき・いつかへるべしとも・おぼえねば・こにふだうしやうごくの・つくりおきたまひし・はるは
はなみの・をかのごしよ・あきはつきみの・はまのごしよ・ばばどの・二かいのさじきどの・ゆきのごしよ・かやのごしよ・ひとびとの・
P333
いへいへ・五でうのだいなごん・くにつなのきやう・のうけたまはつて・つくらせられし・さとだいり・いつしか三とせに・あれはてて・
あきのくさ・もんをとぢ・きうたいみちを・ふさぐ・かはらに・まつおひ・かきに・つたしげり・だい・かたぶいて・こけむせり・
まつかぜのみや・かよふらん・すだれたえ・ねやあらはにて・つきかげのみぞ・さしいりける・あけければ・しゆじやうを・はじめ
たてまつつて・へいけみな・ふねにとりのり・うみにぞ・うかびたまひける・みやこをいでしほどこそ・なけれども・これも・なごり
は・をしかりけり・なかにも・たじまのかみつねまさは・ぎやうかうに・ぐぶすとて
みゆきするすゑもみやことおもへども・なほなぐさまぬなみのうへかな・
きのふはとうざんのせきのふもとに・くつばみを・ならべて・十万よき・けふは・さいかいのなみのうへにして・ともづなをといて・七
千よにん・うらうら・しましま・すぎゆけば・あまのたくもの・ゆふけぶり・をのへの・しかの・あかつきのこゑ・なぎさなぎさに・よする
なみのおと・そでにやどかる・よはのつき・ちぐさにすだく・むしのこゑ・すべて・めにみ・みみにふるる・ことのひと
つとして・あはれを・もよほし・こころをいたましめずと・いふことなし・うんかい・ちんちん・として・せいてん・すでに・くれな
んとす・こたうに・せきぶへだてつつ・つきかいしやうにうかぶ・きよくほのなみをわけ・しほにひかれて・ゆくふねは・はんてんの・くも
に・さかのぼる・ひかずふれば・みやこは・さんせんほどをへだてつつ・をんごくはまた・ちかくなる・はるばるきぬと・
おもふにも・つきせぬものは・なみだなり・なみのうへに・しろきとりの・むれゐるをみては・かれならん・むかし・
ありはらのちうじやうの・すみだがはらにて・こととひけん・なもむつまじき・みやこどりにやと・あはれなり・じゆえい二ねん・七
ぐわつ廿五にちの・うのこくに・へいけ・みやこをおちはてぬ



 

入力者:荒山慶一



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