平家物語(城方本・八坂系)
巻第十一 P482
逆櫓 さかろ 1101
げんりやく二ねん・むつき十かのひ・九らうたいふのはんぐわんよしつね・ゐんのごしよにまゐり・おほくらのきやうやすつねのあそんを・もつてまをさ
れけるは・へいけは・しゆくはうつきて・しんめいにも・はなたれたてまつり・きみにも・すてられまゐらせて・みやこのほかにいで・
さいかいのなみのうへに・ただよふおちうどと・なれり・しかるを・この二三ケねんが・あひだ・えせめおとさずして・おほくの・
くにぐにを・ふさげさふらふことこそ・あまりに・めざましくさふらへ・こんど・よしつねにおいては・きかい・かうらい・てんぢく・しんたん
までも・へいけのあらん・かぎりは・せむべきよしをぞ・まをされける・ほうわう・なのめならず・ごかんあつて・やがて・
ゐんぜん・あそばしてぞ・たうだりける・はんぐわん・ゐんぜん・たまはつて・ゐんのごしよをいで・しよこくの・さふらひどもに・むかつ
て・のたまひけるは・こんど・よしつね・かまくらどのの・ごだいくわんとして・ちよくせんをうけたまはつて・へいけつゐたうのために・さいこくへ・
まかりむかふ・くがはこまのひづめの・かよはんほど・うみは・ろかいの・たたんかぎりは・せめむずるなり・ただしこれは・むやく・
いのちぞをしい・さいしぞかなしい・なんど・おもひ・あはれんずる・ひとびとは・いそぎこれより・かまくらへ・くだらるべし
とぞ・のたまひける・さるほどに・八しまには・ひまゆく・こまのあしはやくして・むつきもたち・きさらぎにもなりぬ・
P483
しゆんさうくれては・あきのかぜに・おどろき・しうふうやんでは・またはるのくさになりぬ・おくりむかへて・みとせにもはや・
なりにけり・おなじききさらぎ十三にちに・みやこには・いせ・いはしみづを・はじめたてまつつて・廿二しやに・くわんぺいあり・これ
は・こんど・しんじ・はうけん・ないしどころ・三しゆのしんぎを・ことゆゑなう・みやこへ・かへしいれ・たてまつらむとの・ごきせいの・
おんためとぞおぼえたる・おなじき・十四かに・げんじ・みかはのかみのりより・つのくに・かんざきより・七百よさうの・ふねにとり
のり・せんやうだうへ・おもむく・そのおとうと・九らうたいふのはんぐわんよしつね・これも・おなじき・くに・とうか・わたなべ・ふくしまより・二
百よさう・ひやうせんとりのり・なんかいだうへ・はつかうす・わたなべ・かんざき・りやうしよにて・このひごろ・そろへたる・ふねのともづな・け
ふぞとく・をりふし・きたかぜ・きををつて・ふきければ・ふねをいだすに・およばず・あまつさへ・おほかぜ・おほなみに・ふねども・たたき
わられて・しうりのためにとて・そのひは・わたなべに・とどまりぬ・おなじき十五にちに・わたなべには・とうごくのだいみやう・
よりあつて・そもそも・こんどの・ふないくさのやうは・いかがあるべきと・ひやうぢやうあり・なかにも・さがみのくにのぢうにん・かぢはらへい三
かげとき・すすみいでて・まをしけるは・あはれふねに・さかろを・たてさふらはばやと・まをしたりければ・はんぐわん・さかろとは・なにもの
にてさふらふやらん・かぢはらさんさふらふ・むまはかけんとおもへばかけ・ひかんとおもへば・ひき・ゆんでへも・めてへも・
まはしやすきものにてさふらふが・ふねはきつと・おしなほすに・たやすからねば・とも・へに・かぢを・たて・さ
うに・ろをたて-ならべて・へへも・ともへも・おさせさふらはばやと・まをしければ・はんぐわんいやいや・かどいであし・
いくさのならひ・ひつとひきも・ひかじとかねて・やくそくしたるだに・あはひあしければ・かたきにうしろをみするな
らひあり・まして・さやうにかねてより・にげじたくを・せんには・なじかは・よかるべき・せんずるところ・
P484
さかろをも・かいさまろとかやをも・たてたくは・ひとのふねには・百ちやう千ちやうも・たてばたてよ・よしつねが・ふね
においては・一ちやうも・たつべからずとぞ・のたまひける・かぢはらかさねてまをしけるは・いやいや・よき・たいしやうぐんとまをす
は・みをまたう-して・かたきをほろぼすさふらふさやうに・かくべきところをも・ひくべきところをも・しらぬをば・ただゐのしし-
むしやとこそ・まをしさふらへとまをしたりければ・はんぐわん・よしよし・よしつねは・ゐのししかししのためしはしらず・ただかたきをば・ひら
ぜめにせめて・かつたぞ・ここちはよきと・のたまへば・かぢはら・てんせい・このとのについて・いくさ-せじとぞ・つぶやきけ
る・それよりしてぞ・かぢはら・はんぐわんを・にくみ-そめ・たてまつつて・かまくらどのに・ざんげん-して・つひにうたせたてまつりける・
とぞきこえし・おなじき-十六にちの・とりのこくばかりに・はんぐわん・いまは・ふねども・せうせうあらたまつたるらん・一しゆもの・せさ
せよやわかたうとて・いとなむていに・もてなし・もののぐふねへ・はこばせ・むまどものせて・いまはとうとう・ふねをいだせ
と・のたまへば・かぢとりどもがまをしけるは・このかぜは・おきは・なほつようぞ・さふらはん・おんあやまち・せさせたまはん
とてとまをしければ・はんぐわんきしよくおほきにいかつて・のやまのすゑ・うみかはにて・しぬるも・これみなぜんごふのしよゐなり・こん
ど・よしつね・かまくらどのの・ごだいくわんとして・一ゐんのゐんぜんをうけたまはつて・へいけつゐたうのために・さいこくへむかふ・よしつねがげ
ぢを・そむくおのれらこそ・てうてきよ・一ぢやうふねをば・いだすまじきか・いださずは・一々に・いころせと・のたまひ
ける・うけたまはつて・あうしうの・-さとう-三らうびやうゑ-つぎのぶ・おなじき-四らうびやうゑ-ただのぶ・かたをかの-たらう-ちかつね・げん八-ひろつな・いせ三らう
よしもり・むさしばうべんけい・いげの・一にんたう千のつはものども・かたてやを・はげて・ごぢやうにてあるぞ・一ぢやうふねをば・いだ
すまじきか・いださずば・一々に・いころさむとて・よつぴいて・むかひければ・かぢとりどもがまをしけるは・やにあP485
たつて・しなんもおなじこと・かぜつよくは・おきにて・はせじににしねやとて・二百よさうの・ふねのうちより・たんだ五さうぞ・いだしける・五さうのふねとまをすは・まづ・はんぐわんのおんふね・たしろのくわんじやのぶつなのふね・ごとうびやうゑさねもとがふね・さとうきやうだいがふね・よどのがうないただとしがふねなりけり・ただしよどのがうないは・ふねのそうぶぎやうたるによつてなり・のこりのふねどもは・あるひは・かぜにおそれ・あるひはかぢはらがめいにしたがつていださず・そののち・はんぐわんふねのへにすすみいで・だいおんじやうをあげて・かかるおほかぜ・おほなみに・かたきうちとけたらんところへ・よせてこそ・おもふかたきはうたんずれ・いまは四こくのうらうらへ・へいけのぐんびやうども・さしむけたるらんぞ・ふねふねに・かがりたいて・かたきに・ふなかずみするな・よしつねがふねをもとぶねにして・かがりをまほれやとて・とりかぢ・おもかぢに・はしりならべて・ゆくほどに・あまりにかぜのつよきときは・おほづなおろして・ひかせけり・おすには・三かにわたるところを・ただみときに・十六にちのうしのこくに・わたなべをたちて・あくる十七にちのうのこくに・あはのかつうらにつきたまふ
桜場(あひ) 1102
よの・ほのぼのと・あけければ・なぎさに・あかはた・さしあげたり・はんぐわん・あはや・ここにも・よしつねがまうけは・
したるらんぞ・ふねどもひらつけにつけて・かたきのまとになつて・いらるな・なぎさちかうもならば・ふねどものりかたぶ
け-のりかたぶけ・むまどもうみへ・おひおろし-おひおろし・ふなばたにひきつけ-ひきつけ・およがせて・くらづめひたるほどに・ならば・ひた
ひたと・うちのつて・くがへをめいて・かけよやとて・なぎさ三ちやうばかりより・ふねどものりかたぶけ・むまども・うみへおひおP486
ろし・ふなばたに・ひきつけ-ひきつけ・およがせて・くらづめ・ひたるほどにも・なりしかば・ひたひたと・うちのつて・くがへをめいてぞ・かけられける・五さうのふねに・むま五十ぴき・たてられたり・くがにも・五十き・ばかりありけるが・このよしを・みて・二ちやうばかり・はつとひいてぞ・のきにける・はんぐわん・いせ三らうよしもりをめして・きやつばらは・けしかるものと・おぼゆるぞ・あのなかに・しかるべきものやある・一にん・ぐしてまゐれと・のたまへば・うけたまはつて・よしもり・五十きばかりがなかへ・ただ一きあゆませいつて・なんとかまをしたりけん・よはひよそぢばかりなるをのこの・ふしなはめの・よろひきたりけるを・ゆみをはづさせ・かぶとを・ぬかせのつたりける・むまをば・げにんに・ひかせて・ぐしてまゐる・はんぐわんあれは・いかにと・のたまへばこれは・たうごくのざいちやう・ばんさいのこんどう六ちかいへさふらふ・はんぐわん・よしよし・なにいへにても・あらばあれ・八しまのあんないじやに・めしぐすべきなり・やがて・よしもりに・あづくるぞ・もののぐばし・ぬがすな・にげてゆかば・しやついころせとぞ・のたまひける・そののち・はんぐわん・ちかいへをめして・ここをば・いづくといふぞと・とひたまへば・こここそ・かつうらさふらふ・よしつねがとへば・しきだいな・まことに・かつうら・さふらふもじには・かつうらと・かいてさふらへども・げらふどもの・まをし-やすきままにこそ・かつらとはまをしさふらへ・はんぐわん・これききたまひてや・ひとびといくさ-しに・きたる・よしつねが・かつうらにつく・めでたさよ・そののち・はんぐわん・またちかいへをめして・たうじ八しまに・せいは・いかほどあるらんなと・のたまへば・千きばかりは・さふらふらん・などすくなきぞ・さんさふらふ・かやうに・四こくのうらうらへ・五十き百き-づつ・さしむけられてさふらふなかにも・あはのみんぶしげよしがちやくし・でんないざゑもんのりよしが・かはのをせめに・三千よきにて・いよのくにへこえてさふらふなりとぞまをしける・はんぐわんさて・このP487
へんに・へいけのうしろや・いつべきものはなきか・などかなうてはさふらふべき・あはのみんぶしげよしがおとうと・さくらばのすけよしとほこそさふらへ・はんぐわんさらばやがて・よしとほうつて・いくさがみにまつれやとて・さくらばがじやうへぞ・おしよせたる・かのさくらばがじやうとまをすは・三ぱうはぬま・一ぱうは・ほりなりけり・げんじ・ほりのかたより・おしよせて・ときをどつとぞ・つくりける・よしとほさんざんに・ふせぎたたかふといへども・はんぐわんに・ていたう・せめられて・かなはじとやおもひけん・くきやうのむまは・もつたり・うちのつて・そばなるぬまより・おちにけり・ふせぐところの・いへのこ・らうどう・廿よにんがくびとつて・よろこび-まをしの・ときつくり・いくさがみにぞ・まつられける
観音講 1103
そののち・はんぐわん・また・ちかいへをめして・これより・八しまへは・いかほどの・みちぞと・とひたまへば・二かぢさふらふとまをす・さらば・かたきのしらぬさきに・よせよやとて・おほさかごえに・かかつて・かけあしになつつ・あよませつ・よもすがら・ばんどう・ばんざい・うちこえて・あくる・十八にちのまんだあさ・さぬきのくに・ひげたといふ・ところに・おちつきて・むまのいきをぞ・やすめられける・ここに・きやうのかたよりと・おぼしくて・みのかさ・らうれう・ふみども・せうせうしたため-もつたる・をとこ一にん・いそがはしげにて・いできたる・はんぐわんこは・なにものぞと・のたまへば・これは・みやこより八しまへ・まゐりさふらふ・はんぐわん・八しまへは・どれへまゐるぞ・おほいとのへまゐりさふらふ・はんぐわんこは・なにごとのおつかひにてか・あるらむなとのたまへば・このをとこまをしけるは・げらふは・おんつかひつかまつるまでにて・こそさふらへ・なにごとのおつかひをば・いかでか・しりまゐら
せP488さふらふべきと・まをしたりければ・はんぐわん・げにもとて・おはしけるが・これも・やとの・あはのくにのざいちやうなるが・
けふはじめて・へいけへめされて・まゐるが・いまだ・八しまへの・あんないをしらず・なんぢはさだめて・たびたびまかりくだつ
てぞ・あるらん・これより八しまへの・あんないじやせよかしと・のたまへば・このをとこさんさふらふ・たびたびまかりくだつてさふらへば・八しまのあんないにおいては・よくそんぢ・しつてさふらふとぞ・まをしける・そののち・はんぐわん・ほしいひくはせなんど・したまひて・さるにても・こはなにごとの・おんつかひにてか・あるらんなと・のたまへば・このをとこさんさふらふ・べちのやうや・さふらふべき・たうじつのくに・かはじりに・げんじども・おほううかうてさふらふを・にようばうの・おんかたより・おほいとのの・おんかたへ・まをされさふらふ・ごさんなれ・さてその・げんじのたいしやうをば・たれとかきく・さんさふらふ・一にんは・三かはのかうのとの・一にんは・九らうたいふはんぐわんどのとこそ・うけたまはりさふらへ・はんぐわん・さてそのたいしやう・はんぐわんどのばし・よくみしりたてまつりたるかと・のたまへば・さんさふらふ・なかにも・たいしやうはんぐわんどのは・せいのちひさきをのこの・いろのしろきが・むかばのふたつさしあらはれて・ことに・しるうましましさふらふが・とのこそよくにさせたまひてさふらへとぞ・まをしける・はんぐわん・どこなるやとの・みやうが・ばかさむとて・からからと・わらはれけるが・あのをとこ・かなたへも・こなたへも・ゆかぬやうに・はからへと・のたまへば・いせの三らう・うけたまはつて・ふみどもうばひとり・かいだうより・二ちやうばかり・ひきいれて・おほきなる・まつのきに・したたかに・しめつけてこそ・とほられけれ・そののち・はんぐわん・ふみをひらいて・みたまへば・まことににようばうのてと・おぼしくて・九らうは・すすどきをのこにて・さふらへば・いかなる・おほかぜ・おほなみをも・きらひさふらふまじきぞ・あひかまへて・おんせいども・ちらさで・よくよくごようじん・さふらふべし・そのほか・たびのそらのP489
ことまでも・こまやかにこそ・かかれたれ・はんぐわん・これみたまへや・ひとびとこれこそ・てんのあたへたまへる・ところのふみよ・かまくらどのにみせたてまつらんとて・ふかうをさめてぞ・よせられける・にうのや・しろとり・たかまつのさとをも・うちすぎうちすぎ・よりたまふほどに・あるまつのなかに・ひとおとあまたして・きこえければ・はんぐわんあはや・ここにも・かたきのこもりたるにこそとて・ひとをつかはして・みせられければ・かたきにてはなかりけり・ころは・きさらぎ十八にち・まんだ・あさのことなりければ・あるみだうに・そのへんの・ざいちのもの・よりあひて・くわんおんかうをぞ・おこなひける・つかひかへつて・このよし・まをしたりければ・はんぐわんさては・よしつねが・まうけにこそは・したるらめとて・かしこに・おしよせ・かれらを・おつぱらひ・しゆはんを・おこなはれけるが・はんぐわん・かうのざしきに・つきながら・しきよまでは・いかがあるべき・べんけいよめと・のたまへば・うけたまはつて・もののぐしながら・かうざにのぼり・けいびやくのかねうちならし・もとよりふるやまぼうし・なりければ・くわんおんかうのしきをば・うちわすれ・さんわうかうの・しきをぞ・ようだりける・はんぐわん・たたばただも・たちたまはず・らいとうは・よしつねさうぞ・ようとてぞ・いでられける・そののち・はんぐわん・またちかいへを・めして・さて八しまのじやうのていは・いかにとのたまへば・むげにあさまにさふらふ・しほのひてさふらふときは・むまのふとばらもぬれずさふらふとぞ・まをしける・はんぐわんさらば・しほのひんを・まつべしとて・しほひがたよりぞ・よせられける・ころはきさらぎ十ハにちの・むまのこくばかりの・ことなれば・けあぐるしほの・かすみとともに・しぐらうだる・なかより・げんじはかりごとに・五き・十き・うちむれうちむれ・よせけるを・へいけは・うんのきはめにや・これをたいぜいとこそ・みてんげれ・さるほどに・八しまには・あはの・みんぶしげよしがちやくし・でんないざゑもんのりよしが・かはのをせめに・三千よP490
きにて・いよのくにへ・むかうたんなるが・つはもの百よにんがくび・とつてきのふ・八しまへまゐらせたりけるを・けふおほいとのの・ごしゆくしよにて・ごじつけんあり・さるほどに・げんじのかたには・このよしをききて・さらばまづひを・かけよやとて・あたりのざいけに・ひをかけければ・ものどもぜうまう・いできたりとて・ひしめきけるが・よつくみて・いいや・これはかたきのよせておぼえさふらふ・われらぶぜいなり・これにて・とりこめられては・かなふまじ・さらば・おふねに・めさるべしとて・くがに・ほしあげおいたりける・五百よさうのふねどもを・をめきさけんで・おしおろす・こくもを・はじめたてまつつて・二ゐどのいげの・やごとなき・にようばうたちは・ごしよのおふねにぞ・めされける・おほいとのふしも・ごしよのおんふねへぞ・まゐられける・そのほか・へいだいなごん・へいちうなごん・しんちうなごん・しゆりのだいぶ・いげのひとびとは・おもひおもひ・こころごころの・ふねにとりのり・あるひは・七八だん・あるひは一ちやうばかり・おしいだして・みたまへば・げんじわづかに・百きばかりには・すぎざりけり・なかにもあらての・むしやと・おぼしくて・三十きばかりすすんだり・ことにむしや一きすすんだり・たいしやうとぞみえし・たいしやうの・そのひのしやうぞくには・あかぢのにしきのひたたれに・くれないすそごのよろひをき・くはがたうつたる・五まいかぶとの・ををしめ・こがねづくりの・たちを・はき・二十四さいたる・そめはのやおひ・しげどうのゆみもつて・くろきむまのふとくたくましきに・きんぷくりんの・くらをおきて・うちのり・おきのかたに・かけむかひ・あぶみふんばり・つつたちあがり・だいおんじやうをあげて・これは・せいわてんわうに十だいのこういん・かまくらのひやうゑのすけよりともがおとうと・一ゐんの・おんつかひけびゐし・五ゐのじよう・九らうたいふのはんぐわんよしつねぞ・へいけのかたにわれと・おもはんひとびとは・すすめや・むかへ・げんざんせんとぞ・なのられける・おきにはへいけ・これをみて・ただいまなのるは・げん九らうよしつねP491
ぞ・あれいとれや・うつとれとて・さしつめ・ひきつめ・さんざんに・いるつづいて・なのるは・たしろのくわんじやのぶつな・ごとうびやうゑさねもと・しそくしんびやうゑのぜうもときよ・かねこの十らういへただ・おとうとのよ一ちかのりと・なのる・げんじはかりごとに・五き・十き・うちむれうちむれ・よせけるに・またつづいてなのるは・あうしうの・さとう三らうびやうゑつぎのぶ・おなじき四らうびやうゑただのぶ・かたをかのたらうちかつね・げん八ひろつな・いせの三らうよしもり・むさしばうべんけいと・なのる・おきには・へいけ・これをみて・さしやにいる・ふねもあり・とほやにいる・ふねもあり・げんじもくがに・ほしあげおいたりける・ふねどもを・こだてにとつて・ゆんでになしては・いてとほり・めてに・なしては・いてとほる・なかにも・ごとうびやうゑさねもとは・ふるつはものなりければ・いそのいくさをば・せず・あはのみんぶしげよしが・このみとせが・あひだやうやうにして・つくりたてたる・八しまのごしよや・だいりに・ひをかけて・ただへんしがあひだの・くわいじんとぞなりにける
あひ 1104
おほいとの・このよしを・みたまひて・げんじのせい・いくほどもなかりけるものを・あまりに・あわてて・ごしよや・だいりを・
やかせつることこそ・やすからね・のとどのは・おはせぬか・くがにあがつて・一いくさしたまへかしとのたまへば・
うけたまはつて・こぶね百さうばかり・なぎさによす
次信が最期 1105 P492
なかにも・ゑつちうの・二らうびやうゑもりつぎ・かちのひたたれに・くろかはのよろひをき・しらえのおほなぎなたの・さやをはづいて・つゑにつき・ふねのへに・すすみいで・だいおんじやうをあげて・いぜんに・なのつたりけれども・かいしやうはるかにへだて・けみやうじつみやう・さだかならず・いかなるひとぞ・なのれや・なのれと・いひければ・いせの三らうよしもり・すすみいでて・あなことも・おろかや・せいわてんわうに・十だいのみすゑ・かまくらどののおんおとうと・九らうたいふのはんぐわんどのぞ・もりつぎきいて・あなことごとし・さては・それは・かねあきうどが・しよじうにてこそ・あんなれ・ちちよしともは・さんぬる・へいぢに・うたれぬ・ははときはが・ふところに・いだかれて・やまと・やましろ・まどひありきしが・そののちは・すておきたりしを・こだいじやうのにふだうどのの・をさなければ・ふびんさに・そだておき・くらまのてらに・ちごにて・十四五までは・ありしが・そののちは・かねあきうどが・らうれうせおひて・おくのかたへ・まどひたりし・そのこくわんじやにこそ・とぞまをしける・よしもり・わうしたのねのやはらかなるままに・さやうのことな・まをされそ・さては・ごへんは・ほつこくとなみやまのかつせんに・うちまけて・こつじきをして・きやうへにげのぼりけるとこそきけ・それをばよもあらがはじとぞ・まをしける・もりつぎこれは・えうせうより・きみのごおんを・あくまで・とげたるみの・なにのふそくに・こつじきをば・せむ・さてわぎみは・いせのくに・すずかやまの・やまだちして・よをわたりけるとこそきけ・それをば・よもあらがはじなとぞ・まをしける・かねこの十らういへただ・すすみいでて・とのばらたちの・ざふごんむやく・りやうはう・くちのきいたるままに・ひがごとを・まをしあはむに・よはあけ・ひはくるるとも・つきすまじ・ただしこぞのきさらぎつのくに一たににて・むさし・さがみの・わかとのばらの・てなみのほどは・よくしつたるらんと・いはせもはてず・うしろに・ひかへたる・おとうとのよ一ちかのり・なかさしと
つP493て・つがひ・よつぴいて・ひやうといる・もりつぎがよろひの・むないた・うらかくほどに・いさせてぞ・ことばたたかひは・やみにける・のとどの・このよしをみたまひて・ふないくさは・やうあるものぞとて・わざとひたたれをば・きたまはず・からまきぞめの・こそでに・くろいとをどしのよろひをき・五まいかぶとのををしめて・廿四さいたる・おほなかぐろの・やおひ・ぬりごめどうの・ゆみもつて・ふねのへに・すすみいで・こんどの・げんじの・たいしやうを・いおとさむとぞ・うかがはれける・のとどのは・とうごくまでも・きこえたまへる・つよゆみ・せいひやうやつぎばやの・てききにて・おはしければ・のとどのの・やさきに・はんぐわんを・かけたてまつらじと・げんじの・つはものども・おんまへに・むんずと・ふさがつてぞ・さふらひける・のとどの・だいおんじやうをあげて・おんまへにさふらひける・ざふにんばらども・あまりに・みぐるしうさふらふ・のけられさふらへ・のけられさふらへとて・さしつめ・ひきつめ・さんざんに・いたまひけるに・くきやうのつはものども・五きまで・こそいおとされけれ・なかにも・はんぐわんの・みにかへて・おもはれける・あうしうの・さとう三らうびやうゑつぎのぶは・かちの・ひたたれに
くろかはをどしの・よろひをき・かげなるむまに・のつて・おんまへに・むんずと・ふさがつて・さふらひける・よろひのひきあはせ・
うしろへつつと・いいだされて・むまよりまつさかさまに・どうとおつ・のとどののわらはに・きくわうまるとて・しやう
ねん十八さいに・なりけるが・しげめゆひの・ひたたれに・もえぎの・はらまきをき・しらえのおほなぎなたの・さやをはづいて・
つゑにつき・ておひたる・つぎのぶが・くびとらむと・するところを・おとうとのただのぶ・につくき・やつのとて・なかさしとつ
てつがひ・よつぴいて・ひやうといる・これもはらまきのひきあわせ・うしろへつつと・いいだされて・いぬゐにこ
そは・まろびけれ・のとどの・わらはが・くびかたきにとられじと・いそぎふねよりとんでおり・わらはを・ひつさ
げP494てぞ・のりたまひける・わらはがくび・かたきにはとられねども・いたでなりければ・ふねのなかにて・しににけり・このきく
わうとまをすは・のとどののおんあに・ゑちぜんの三み・みちもりのわらはなり・三みうたれ・たまひて・のちしかるべきおんかたみにもと・
おもはれける・きくわうを・うたせて・よろづ・こころぼそくや・おもはれけん・そののちは・いくさをも・したまはず・
ふねをば・おきにおしいださす・そののち・はんぐわんも・ておひたる・つぎのぶを・ぢんのうしろに・かきいださせ・いそぎむまよりお
り・つぎのぶがてをとつて・さて・いかにやいかにと・のたまへば・いまはかうさふらふとぞ・まをしける・こんじやうに・おもひお
くことは・なきか・おもひおくことあらば・なにごとにても・よしつねに・いひおけかしと・のたまひければ・つぎのぶ・よに
も・くるしげにて・いきをついて・まをしけるは・こんじやうに・おもひおくことの・などかは・なうて・さふらふべき・まづ
は・きみのへいけをほろぼして・よにわたらせ・たまはむを・みたてまつらぬこと・さては・あうしうにとどめおきし・らうぼをみ
さふらはぬことこそ・よみぢの・さはりとも・なりぬべうさふらへ・さりながら・おんいのちに・かはりまゐらせさふらへば・
ゆみやとりのほんい・ただこのことにさふらふ・おとうとにて・さふらひける・ただのぶをば・あひかまへて・ごふびんに・せさせ・おはしま
す・べしと・これをさいごのことばにて・つぎのぶ廿八とまをしし・きさらぎ十八にちの・とりのこくに・やしまのいそにて・つひには
かなく・なりにけり・はんぐわんおほきに・あきれさせ・たまひて・いせの三らうよしもりをめして・このへんに・そうやある・
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よろひのそでをぞ・ぬらしける
那須の与一 1106
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き・うちよりうちより・はんぐわんのせいに・くははる・げんじほどなく・三百きばかりにぞ・なりにける・けふはひくれぬ・
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弓流し 1107
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志渡合戦 1108 P501
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百よさうのたいせんに・とりのり・さぬきの・八しまへぞ・わたりける・いよのくにのぢうにん・かはの四らうみちのぶ・五百よきに
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けり・おなじき二十四かに・げんじしどの・だうぢやうに・おしよせて・ときをどつとぞ・つくりける・へいけ・さんざんにふせぎ・
たたかふといへども・ぶせい・たせいに・かなはねば・しどのだうぢやうも・やぶれて・またふねに・とりのり・うみにぞ・うかび・
たまひける・へいけつひには・四こくのうちをば・おひいだされ・九ごくのうちへは・いれられず・いまだ・せんやう・
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さうのふねどもも・なみかぜをしづめ・けふ・八しまへさんじたり・はんぐわんのさぶらひども・こはいかに・ゑにあはぬ・はな・六
かのあやめ・のちのあふひかとぞ・わらひける・おなじき十九にちに・みやこには・すみよしの・かんぬし・ながもり・いそぎ・だいりに・はせ
さんじて・そうもんしけるは・さんぬる・十六にちよの・ねのこくばかりに・すみよしのだいみやうじんの・だい三のしんでんより・
かぶらやのこゑ・いでて・にしをさして・ないてゆき・さふらふなりと・そうもんまをし・たりければ・ほうわうなのめならず・ぎよかんあつて・
いろいろの・へいはく・さまざまの・しんばうをととのへて・すみよしのだいみやうじんの・だい三のしんでんへぞ・こめられける・むかし・
じんぐうくわうごう・しんらをせめさせ・たまひしとき・いせだいじんぐうより・二しんのあらみさきを・さしそへらる・二しんふねの・P504
とも・へに・たつて・いこくをたひらげさせ・たまひてのち・一しんは・しなののくにに・いははれたまふ・すはのだいみやうじん
これなり・一しんは・つのくに・なにはに・いははれたまふ・すみよしのだいみやうじんこれなり・じやうこの・せいばつを・おぼしめしわすれずし
て・いままた・てうのをんできを・しりぞけさせ・たまふにこそと・ありがたかりし・おんことなり
壇の浦合戦 1109
さるほどに・はんぐわんは・すはうのちに・おしわたり・あにの・三かはのかみと・一になる・げんじは・ながとのくに・おひつにつくと・
きこえしかば・へいけは・おなじきくに・ひくしまに・つきたまふこそ・ふしぎなれ・げんじのせいは・かさなれば・へいけの
せいは・おちぞゆく・げんじのふねは・三千よさう・へいけのふねは・千よさう・へいけのふねのうちには・たうせんもありとか
や・おなじきやよひ廿四かの・うのこくに・ながとのくに・もじ・あかま・だんのうらにて・げんぺいたがひに・やあはせとぞ・さだめてん
げる・かかりけるところに・かぢはらとはんぐわんと・どしいくさ・せんとする・こといできにけり・かぢはら・はんぐわんに・まをしけるは・
こんどの・いくさの・せんぢんをば・さぶらひどものうちへ・たびさふらへかしと・まをしければ・はんぐわん・よしつねがなくばこそ・かぢはら・
まさなやきみは・たいしやうぐんにてこそ・おんわたりさふらへ・かまくらどのこそ・たいしやうよ・よしつねは・いくさのぶぎやううけたまはつたる・み
なれば・ただわどのばらとは・おなじことぞと・のたまひければ・かぢはら・いくさのせんぢんを・しよまうしかねて・てんせい・このとのは・
さぶらひのしうには・なりがたしとぞ・つぶやきける・はんぐわん・かぢはらは・につほん一の・をこのものにて・ありけるよと・
のたまひければ・かぢはらこはいかに・かまくらどのよりほかは・またふたりのしうをば・もたぬものをと・まをしければ・はんぐわん・P505
けしき・かはつて・みえられければ・はんぐわんのかたには・あうしうのさとう四らうびやうゑただのぶ・かたをかのたらうちかつね・
げん八・ひろつな・いせの三らうよしもり・むさしばうべんけい・いげのつはものども・かたてやはげて・かぢはらに・めをかけければ・
かぢはらも・おやこ四にん・よりあひて・うちものの・さやをぞはづしける・すでにかうとみえけるに・かぢはらがむまの
くちには・どひの二らう・つかみつき・はんぐわんのおんむまのくちには・三うらのすけとりつき・たてまつつて・かかる・てんかの・おんだい
じに・どしいくささふらひては・いよいよみかたの・おんよわりなるべし・またかまくらどのの・かへりきこしめされむ
ずるところも・をんびんならずさふらふと・やうやうにまをしければ・はんぐわん・げにもとや・おもはれけむ・しづまりたまへば・
かぢはらすすむにおよばず・それよりしてぞ・かぢはら・はんぐわんをいよいよ・にくみたてまつつて・かまくらどのに・ざんげんして・
つひにうたせたてまつりけるとぞ・きこえし・おなじきやよひ廿四かの・うのこくに・もじ・あかま・だんのうらにて・げんぺいたがひに・
よせあはす・かのはやともが・おきと・まをすは・たぎつておつる・しほなれば・げんじのふねは・しほにむかうて・ひきおと
さる・へいけのふねは・こころならず・しほにつれてぞ・おうたりける・げんぺいたがひに・ふなばたをたたいて・ときつくるこゑそらは・
ぼんてんまでも・きこえ・しもはかいりうじんも・さだめて・おどろき・さわぎ・たまふらむとぞ・おぼえたる・おきはしほの・はやけ
れば・なぎさに・そうて・かぢはら・こぎちがふ・かたきのふねに・くまでをかつはと・なげかけ・おやこ四にん・いへのこらう
どう・十よにん・かたきの・ふねにのりうつりのりうつり・さんざんに・きつてまはり・けるに・おもてを・むかふる・ものぞ
なき・つはものおほく・ほろびにけり・さてこそ・そのひの・いくさのかうみやうは・かぢはらと・一のふでには・つけられけれ・その
のち・しんちうなごんとももり・ふねのへに・すすみいで・だいおんじやうをあげて・てんぢくしんたんにも・にほんわがてうにも・かくれなき・めいしやうP506
ゆうしと・いへとも・うんのきはめは・ちからなし・いくさはけふぞ・かぎりやや・さぶらひども・いのちをば・いつのれうにか・
たばふべきと・のたまへば・ひだの三らうざゑもんかげつなみな・このごぢやううけたまはれとぞ・げぢしける・なかにも・ゑつちう
の-じらうびやうゑもりつぎ・すすみいでてまをしけるは・ちうばんどうのやつばらどもは・むまのうへにてこそ・くちはききさふらふとも・ふないくさには・
いつかてうれんつかまつりさふらふべき・ただうをのきに・のぼらむずるやうに・こそさふらはんずらめ・一々に・とつて・
うみへつけさふらひなんとぞ・まをしける・かづさのあく七びやうゑかげきよが・まをしけるは・げんじのたいしやう九らうは・せいちひさ
う・いろしろう・むかばのふたつ・さしあらはれて・ことにしるかんなるぞ・たとへこころこそたけくとも・せいが
ちひさかんなれば・なにほどのことか・あるべき・ただひつくんで・うみへいれよとぞ・まをしける・そののち・しんちうなごん
とももり・おほいとののおんまへに・まゐらせたまひて・まをさせ・たまひけるは・いつよりも・さぶらひどものきそくよげに・
みえてさふらふ・なかにもあはのみんぶしげよしこそ・ひごろにも・にず・けしきかはつて・みえてさふらへ・あはれきやつを・きり
さふらはばやと・まをさせたまひたりければ・おほいとのみえたることもなきに・いかでかさることのあるべき・さるにても・
しげよしめせとて・めされける・しげよしめゆひのひたたれに・ひをどしのよろひきて・おんまへにまゐりかしこまる・おほいとの・やや・
しげよしや・などひごろにも・にず・さぶらひどもにいくさのげぢをもせぬぞ・こころのかはりたるか・またおくしたるかと・のたま
へば・なにごとによつてか・おくしさふらふべきとて・むへんじにて・おんまへをまかりたつ・ちうなごん・あはれ・きやつを・き
らばや・きらばやとは・おもはれけれども・おほいとのの・おんゆるされなければ・ちからおよびたまはず・さるほどに・へいけは・
千よさうを・みてに・わかつ・せんぢんは・やまがのひやうとうじひでとほ・五百さう・二ぢんは・まつらたう三百よさう・ごじんは・P507
へいけのきんだち二百よさうに・のりたまふ・なかにも・やまがのひやうとうじひでとほは・九しう一の・つよゆみ・せいひやう・やつぎばや
の・てぎきなりければ・われにおとらぬ・せいひやう・五百よにん・すぐつて・ふねぶねにたて・さしつめ・ひきつ
め・さんざんに・いけるやに・げんじのたても・たまらず・よろひもかけず・いとほさる・げんじのかたには・ふせぎたたかふ
といへども・さんざんに・いしらまされて・こぎしりぞく・へいけいくさに・かちぬとて・つづみをうつて・ときをつくる・
されども・げんじのかたには・ぐんにぬけて・たたかふものこそ・おほかりけれ
遠矢の沙汰(あひ) 1110
さるほどに・とうごく・さがみのくにのぢうにんわだのこたらうよしもりは・ふねにはのらず・かげなるむまにのり・くがにひかへ・
とほやを・いけるに・なにものにても・三ちやうがうちにて・めにかくるほどのものを・いおとさずと・いふことなし・しらのの・
おほやを・しんちうなごんの・ふねのへのなみに・いうけて・そのや・こなたへ・かへしたまはらんとぞ・まねいたる・ちうな
ごん・このやをめしよせ・みたまへば・しらのに・くぐひのはをもつて・はいだりける・おほやの・十三そくふたつぶ
せの・なかざし・のまき一そくばかり・おいて・とうごくさがみのくにのぢうにん・わだのこたらうたひらのよしもりと・うるしをもつてぞ・
かきつけたる・そののち・しんちうなごん・いよのくにのぢうにんに・にゐのき四らうちかいへをめして・このやいかへせと・のたまへば・
うけたまはつて・わがゆみにうちつがひ・よつぴいて・ひやうといる・これも三ちやうよを・つつといわたし・わだが
うしろ二たんばかりへだてて・ひかへたるむさしのくにのぢうにん・いしさかのこたらうが・ゆんでのかひなに・くつまきせめてぞ・P508
いこうだる・三うらのひとびと・これをみて・わだどのは・われほどのおほやいるものなしと・のたまへども・いかへされて・はぢ
かきたまひぬと・わらはれて・わだおほきに・はらをたて・しうじう七八にんこぶねに・とりのり・へいけの・ふねのあた
りを・おしまはさせ・さしつめ・ひきつめ・さんざんにいけるに・つはものおほく・いころさる・そののちへいけのかたより
も・しらののおほやを・はんぐわんの・ふねのへに・いたてて・これもわだがやうに・あふぎをあげて・そのやこなたへ・
たまはらんとぞ・まねいたる・はんぐわん・このやを・ぬかせて・みたまへば・しらのにつるの・もとじろをもつて・はいだ
りける・おほやの・十四そく二ぶせの・なかさし・のまき一そく・ばかりおいて・いよのくにのぢうにん・にゐのき四
らう・たちばなのちかいへと・うるしをもつてぞ・かきつけたる・はんぐわん・ごとうびやうゑさねもとをめして・このや・いかへしつべきものは・
みかたにたれかあると・のたまへば・つよゆみ・せいひやう・いくらもさふらへども・かひ・げんじにあさりのよ一どのこそ・おん
わたりさふらへ・はんぐわんさらば・よ一めせとて・めされたる・をりふし・あさりどのはこぶねにのつて・おはしたり・はんぐわん
いかに・あさりどの・このや・いかへしたまひてんやと・のたまへば・たまはつて・みさふらはんとて・つまよりみて・これ
は・のもすこし・よわうさふらふ・やつかも・すこし・みじかうさふら〔ふ〕・おなじうは・よしなりがやをもつて・つかまつつて・げんざん
に・いらうずるさふらふとて・ぬりのに・くろほろはいだりける・おほやの十五そく二ぶせの・なかさし・ぬりごめどうの・ゆみ
にとつて・うちつがひ・よつひいて・ひやうといる・これは四ちやうよを・つつと・いわたし・しんちうなごんのふねのへ
に・すすんで・たつたる・にゐのき四らうが・うちかぶとをののかくるるほどに・とつと・いこまれ・ふねよりまつ
さかさまにうみへ・だうとぞ・いいれたる・なかにもあはのみんぶしげよしは・このひごろ・へいけにちうをいたしけるP509
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ひけん・みかたのあかはた・あかじるし・きりすて・かなぐりすて・しらはたしろじるしに・なつて・はんぐわんのせいにぞ・
くははりける・さてこそおほいとのも・しんちうなごんも・あはれ・きやつを・きるべかりつるものをと・こうくわいしたまへど
も・かひぞなき・そののち・そらより・しらくもひとむら・みえけるが・くもにては・なかりけり・ぬしなき・しらはた一
ながれ・まひさがり・はんぐわんの・ふねのへに・さをつけの・をの・つくほどに・みえて・またそらへ・まひのぼる・げんじの
つはものども・このよしをみたてまつつて・これほどに・八まんだいぼさつの・ごやうがうあらんうへは・などか・いくさに・かたざるべき
とて・いさみののしること・なのめならず
先帝の身投 1111
そののちいるかといふ・うを一二千がほど・へいけの・ふねのしたをはうて・とほる・おほいとの・みやこより・めしぐせられたり
ける・かもんのかみ・はるのぶとまをす・おんやうしを・めして・いるかは・つねにおほけれども・かかる・ためしは・いまだなし・
きつとかんがへて・まをせと・のたまへば・かしこまつてうけたまはる・かんがへて・まをしけるは・このいるか・はみとほりさふらはば・げんじ・
ことごとく・ほろびさふらひなんず・またはみかへらば・みかたの・おんいくさはあやうく・みえさせ・たまひてさふらふと・まをしもはてぬに・
いるかは・へいけの・ふねのしたよりも・ことごとく・はみかへりけり・さてこそ・おほいとのも・しんちうなごんも・けふをさい
ごとは・おもはれけれ・そののち・へいけ・はかりごとに・たうせんに・ざふにんをのせ・ひやうせんにへいけのきんだちのりたまふ・P510
げんじさだめて・たうせんをぞ・せめんずらむ・そのとき・ひやうせんをもつて・なかに・とりこめ・うたんとは・ぎせられけれ
ども・あはのみんぶしげよしが・かへりちうのうへは・たうせんは・いそやだうなに・ひやうせんをいよとぞ・をしへける・
したく・さうゐしてんげる・かのきしに・あがらむと・したまへば・げんじやさきをそろへて・まちかけたり・ひごろはみ
に・かはらんいのちにかはらむと・ちぎりし・つはものどもも・けふは・きみにむかつて・ゆみをひき・しうにたいして・たち
をぬく・すゐしゆかんどりどもは・ふなぞこに・いふせられ・きりふせられて・をめき・さけぶこと・なのめならず・げんぺいのくに
あらそひ・ただけふを・かぎりとぞ・みえし・そののち・しんちうなごんとももり・ごしよの・おんふねへ・まゐらせたまひて・まを
させたまひけるは・いまははや・みぐるしきものどもさふらはば・うみへいれさせたまへ・とて・はきのごひ・ちりひろひ
なんど・したまへば・にようばうたち・やや・ちうなごんどの・いくさは・いかにと・とはれければ・いくさはけふぞかぎり・いま
よりのちこそ・にようばうたちの・めづらしき・あづまをとこを・ごらんぜんずれとて・からからと・うちわらひたまへば・にようばう
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までも・おんたからと・ならむずればとて・しんじを・わきにはさみ・はうけんをこしに・さしつつ・わがみは・をんななりとも・
かたきのてには・わたるまじ・きみのおんともに・まゐるなり・きみにおんこころざし・おもひあはれんずる・ひとびとは・みなまゐり
たまふべしとて・にぶいろのきぬうちかづき・ねりばかまの・そばたかくとつて・ふなばたへこそ・いでられけれ・せんていは・こ
とし八さいに・ならせ・おはしましけるが・おんとしの・ほどよりも・はるかに・くまませ(イねびさせ)・たまひて・みぐしP511
も・おんせなか・すぎたまふ・ほどなりやまばといろのおんぞに・びんづらいはせ・たまへり・おんなみだに・おもれ・させ
たまひて・こはいづちへぞ・あまぜと・おほせければ・二ゐどの・いまだいとけなききみに・むかひたてまつつて・きみはいま
だ・しろしめされ・さふらはずや・十ぜんのかいごふによつて・いまばんじようのあるじとは・うまれさせ・たまひて・
さふらへども・あくえんにひかれて・ごうんすでに・つきさせたまひ・さふらひぬ・いまははや・いせだいじんぐうに・おん
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能登殿の最後 1112 P512
そののち・にようゐんも・つづいて・うみにいらせたまひけるを・わたなべの・げん五むまのぜう・つがふとまをすもの・こぶねをこぎよせ・
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もり・きやうだい二にん・よろひのうへに・いかりをおうて・うみにぞ・しづみたまひける・こまつのしん三みのちうじやうすけもり・おととに・しんせうしやうありもり・いとこに・さまのかみゆきもり三にん・てに・てをとりくみ・これもうみにぞ・しづまれける・ひとびとはかやうに・なりゆきたまへども・おほいとのふしは・さるけしきも・みえたまはず・ふなばたにたちいで・四はうみはるかしてぞ・おはしける・
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たてまつり・おほいとのは・いとど・しづみも・やりたまはず・これもとらはれ・たまひけり・おんめのとごの・ひだの三
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ところを・ほりいせが・ふねにのりうつり・三らうざゑもんと・むずとくんで・たがひに・うへになり・したになり・ころびあふ
ところを・ほりがらうどう・あまたおちあうて・かげつねがくびをば・とつてんげり・おほいとのひごろは・さしもみにかへて・
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のとどのは・けふをさいごとや・おもはれけむ・あかぢのにしきの・ひたたれに・ひをどしのよろひをき・くはがたうつたる・五
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に・のりうつり・のりうつり・おきよりいそ・なぎさよりおきへ・さんざんにないで・まはられけるに・おもてをむかふる・ものぞなき・つはものおほく・ほろびにけり・そののち・しんちうなごんとももり・のとどののかたへ・ししやをたて・いつたうつみな・つくりたまひP514
そ・しやつばらなればとて・いしいやつにても・なかりけりと・のたまひつかはされたりければ・のとどのさて
は・たいしやうと・くめと・ござんなれ・そのぎならば・いでくまんとて・またかたきのふねに・のりうつり・のりうつり・
たいしやうを・たづねられけるに・あやまたず・はんぐわんのふねに・のりうつり・のとどのたち・なぎなたをからりとすて・おほ
てをひろげ・につこと・わらうて・かけられければ・はんぐわん・あつかなはじとや・おもはれけん・二ぢやうばかり・
のいたりける・みかたのふねに・つんとこえて・のりうつる・のとどの・はやわざやおとられけむ・つづいても・
こえたまはず・のとどの・いまこれほどに・うんのつきぬるうへはとて・かぶとをもぬいで・うみへなげいれ・よろひのこぐそく
きりすて・かなぐりすて・どうばかりきて・おほわらはに・なつてぞ・たたれたる・そののち・のとどの・だいおんじやう
をあげて・いかに・とうごくに・われとおもはんものあらば・のりつねを・いけどりにして・かまくらへ・ぐしてくだれ・ひやう
ゑのすけにあうて・もの一ことば・いはむずるに・よれや・よれやとのたまへども・あたりを・はらつて・よるものなし・ここ
に・とさのくにのぢうにんに・あきのこほりを・ちぎやうしける・あきのたいりやうすけみつがこに・たらうさねみつ・じらうすゑみつとて・ともに・卅にんが・ちからもつたる・だいりきの・がうのものあり・らうどうの一にん・さふらひけるも・しうには・おとらぬ・くせ
ものなり・かれら三にんがまをしけるは・たとへのとどの・たけ十ぢやうの・おににても・おはせよ・われら三にんが・よせたらむ
に・などか・いけどりたてまつらざるべき・いざくまんとて・うちものの・きつさきをならべて・うつてかかる・のとどの・
このよしを・みたまひて・につくき・やつのとて・まづ・まつさきに・すすんだる・らうどうのすそを・あはせて・うみ
へだぶと・けいれらる・そののち・たらうをば・ゆんでのわきに・二らうをばめてのわきに・かいはさみ・二しめ・三し
めP515・ひつしめ・ひつしめ・したまひけるが・いざうれさらば・おのれら・しでの・やまぢの・ともせよとて・しやう
ねん・廿六と・まをすには・二にんのものを・わきばさみ・うみに・とびいりたまひけり・そののちしんちうなごんとももり・おんめのとごの・いがのへいないざゑもんいへながを・めして・いまははや・みるべきほどの・ことをばみつ・ひごろのけいやくは・いかにと・
のたまへば・なじかは・たがへまゐらせさふらふべきとて・しうにも・おもよろひ・二りやうきせ・たてまつり・わがみも・よろひ二りやうきて・おんてに・てをとりくみ・うみにぞ・しづみたまひける・ちうなごんの・いへのこらうどう・十よにん・さふらひけるが・もるる
は・一にんも・なかりけり・みなひとつところにぞ・しづみける・むなしきふねは・なみにただよひ・かぜにまかせて・い
づちともなく・ゆられゆく・かいしやうには・へいけのあかはた・あかじるし・きりすて・かなぐりすてたれば・たつたの・
かはの・あきならねども・もみぢながるとも・いつつべし・なぎさによする・しらなみも・うすくれなゐにぞ・なりにける・いけ
どりのひとびとには・まづ・さきのないだいじんむねもり・ゑもんのかみきよむね・へいだいなごんときただ・くらのかみのぶもと・さぬきのちうじやうときざね・ひやうぶのせうまさあき・そうがうには二ゐのそうづせんしん・ほつしようじのしゆぎやうのうゑん・ちうなごんのりつしちうくわい・きやうじゆばうのあじやりゆうゑんを・はじめとして・廿八にんとぞ・きこえし・にようばうたちには・かたじけなくも・こくもけんれいもんゐんらふの・おんかた・ぢぶきやうのつぼね・そちのすけどの・だいなごんのすけのつぼねを・はじめたてまつつて・四十三にんとぞ・きこえし・さぶらひには・げんたいふのはんぐわんすゑさだ・つのはんぐわんもりずみ・きつないさゑもんすゑやす・とうないひやうゑすゑくにをさきとして・いじやう百六拾三にんとぞ・きこえし・げんりやく二ねんはるのくれ・いかなる・としつきなれば・いちじんかいていにしづみ・はくくわんはじやうに・うかぶらん・こくもくわんぢよは・とうゐ・せいじうの・てにわたり・げつけいうんかくは・なんばん・ほくてき・すひやくのぐんりよに・とらはれて・ふたたびみやこへ・かへりのぼりたまひしP516
に・かのしゆばいしんが・にしきをきて・こきやうへかへりしことを・うらやみ・わうせうくんが・えびすのてにわたり・ここくへ・おもむきたつし・うらみまでも・おもひやられて・あはれなり
内侍所の帰洛
おなじき四ぐわつ三かのひ・さいこくよりのはやむま・みやこにつく・げん八ひろつなとぞ・きこえし・ほうわう・・おんつぼにめして・ぢきに・きこしめす・へいけのいけどりども・ならびに・しんじ・ないしどころ・いれまゐらするよし・そうもんしたりければ・ごかんの・あまりに・やがてさひやうゑのじやうにぞ・なされける・なほごふしんを・さんぜられんが・ために・そうはんぐわんのぶもりを・さいこくへ・くださる・のぶもりしゆくしよにもかへらず・れうの・おんむまをたまはつて・むちをあげて・はせくだる・おなじき十四かに・かへりまゐつて・ことのよしをぞ・まをしける・おなじき十六にち・九らうはんぐわん・いけどりども・あひぐして・はりまのあかしに・つきたまふ・なをえたる・うらなれば・ふけゆくままに・つきさへのぼる・あきのそらにも・おとらず・にようばうたち・さしつど
ひて・ひととせこれを・かよひしふねは・かかるべしとは・おもはざりしものを・などいひて・しのびねに・なきあはれ
ける・そちのすけどの・つきをながめて・いとおもひの・ますことなれば・まくらも・とこも・うきぬ・ばかりにて
ながむればぬるるたもとにやどりけり・つきよくもゐの・ものがたりせよ・ W
はんぐわんは・おなじあづまの・ぶしとは・まをしながら・もののなさけを・しれるひとなれば・いうにたへなる・ここちして・みに
しみてぞ・おもはれける・おなじき廿五にちに・しんじ・ないしどころ・とばへつかせ・たまふと・きこえしかば・おんむかひの・P517
ひとびと・くぎやうには・なかのみかどのむねいへ・かでのこうぢのちうなごん・つねふさ・つちみかどの・さいしやうちうじやうみちちか・でんじやうびとには・たかくらのちうじやうやすみち・えなみちうじやうきんあり・たじまのせうしやうのりよし・ごんさちうべんかねみつ・くらんどうゑもんのじようごんすけ・ちかまさなどぞ・まゐられける・さいこくよりの・おんとものぶしには・九らうたいふはんぐわんよしつね・あしかがくらんどよしかね・さぶらひには・どひのじらうさねひらとぞ・きこえし・そのよの・ねのこくに・ないしどころ・だいじやうくわんのちやうに・いらせたまふ・しんじとまをすは・しるしの-みはこなり・二ゐどの・わきに・はさみ・うみにいらせ・たまひしが・なみにうかうで・みえたまひしを・かたをかのたらうちかつね・とりあげたてまつる・はうけんはながく・うせてぞ・なかりける
あひ(爰に剣あり) 1114
二のみやも・みやこへ・いらせたまふ・このみやこそ・みやこにわたらせたまはば・みくらゐに・つかせたまふ・べかりしかども・へいけ・まうけのきみに・つかへまゐらせんとて・とりたてまつつて・さいこくへくだりぬ・されども・しさいなく・かへりのぼらせたまひけり・ならはぬ・たびのそらに・おもむかせ・たまひて・つかれ・くろませたまひけれども・べちのおんことも・なかりけ
れば・おんぼぎ・七でうのにようゐんも・おんめのと・ぢみやうゐんのさいしやうなども・いかばかりか・うれしく・お
もはれけん・やがて・にようゐんのごしよ・七でうばうじやうどのへ・いれまゐらせられけり・おなじき廿六にちに・へいけの・いけ
どりのひと・みやこへいりたまふとぞ・きこえし・おほいとののおんくるま・つかうまつるものは・としごろ・めしつかはれし・三らうまるとぞ・きこえし・おほいとのは・や二らうまる・三らうまるとて・二にん・めしつかはれけるが・や二らうまるは・一とせ・きそP518
がくるま・やりそんじて・ほうしに・なされ・ゆきがたしらずぞ・なりにける・三らうまるばかり・をとこになつて・にしのきやう
なる・ところにさふらひけるが・おほいとのの・けふみやこへ・いりたまふと・きこえしかば・とばにくだり・はんぐわんの・おんまへにまゐり・これは・おほいとのの・としごろ・めしつかはれさふらひし・三らうまるとまをすものにてさふらふ・しかるべくはおんゆるされ
を・かうぶりて・おほいとののさいごの・おんともをつかうまつりさふらはんと・まをしければ・はんぐわん・はやはやとてぞ・ゆるされ
ける・へいけのいけどりけふ・みやこへ・いりたまふと・きこえしかば・きやうちう・ならびに・ちかき・あたりより・きたり・あつ
まる・じやうげしよにん・とばの・きたのもんより・とうじのみなみのもんまで・ところもなく・つづいて・くるまはしぢを・めぐ
らさず・ひとはかへりみる・ことをえず・さんぬる・ぢしよう・やうわの・ききんえきれいに・ひとだねはみな・つきぬと・
おもひしに・なほのこるは・おほかりけり・ほとけのおんちゑならでは・かずへつくすべき・やうぞなき・おほいとの
には・じやうえをきせ・たてまつり・くるまの・ぜんごの・すだれをまかせ・さうの・ものみを・あげたりけり・ふし・ひとつ
くるまに・のりたまふ・おんこうゑもんのかみは・なみだににむせびて・うつぶして・おはしければ・おほいとのは・四はうをみまは
して・おもひいりたる・けしきも・おはせず・ときただのきやうのくるまも・おなじうやりつづけられたリ・三らうまるは・
なみだにむせびて・ゆくさきも・さらにおぼえず・くらのかみのぶもとも・どうしやして・いりたまふ・べかりしが・しよらうのここちと
て・かんだうより・いりたまふさぬきのちうじやうときざねは・きずをかうぶられければ・これも・べちのみちより・いりたまふ・さふらひには・しゆめのはんぐわんもりくにを・はじめとして・百六十三にん・しろき・ひたたれをきせ・くらのまへはに・しめつけ・しめつけ・わた
しけり・六でうをひがしへ・わたしたてまつる・くわうこんに・およんで・はんぐわんのしゆくしよ・六でう・ほりかはへ・いれたてまつる・しゆごP519
の-ぶしには・かたをかのたらうちかつね・いせの三らうよしもり・えだのげん三・げん八びやうゑなどぞ・さふらひける・ものまゐらせけれども・おんはしをだにも・とりあげたまはず・よにいりけれども・しやうぞくをも・くつろげたまはず・さてしも・あるべき・ならねば・おほいとのも・よりふしたまひけり・うゑもんのかみも・おんそば・ちかく・ふしたまひければ・おほいとの・
じやうえのそでを・うちかけ・まゐらせたまひけり・しゆごのぶしども・これをみたてまつつて・あはれおんあいのみちほど・か
なしかりける・ことあらじ・あのおんそでを・うちかけまゐらせ・たまひたらば・なにほどのことかあるべきとて・たけき
もののふなれども・みなそでをぞ・しぼりける・おなじき廿八にちに・かまくらひやうゑのすけ・じう二ゐ・したまひけり・さんぬる・
ぢしように・じうげの五ゐより・しやうげの四ゐに・うつりたまひき・をつかいとて・二かいを・あがるだに・ありがたき
に・これはすでに・三かいをこえたまへり・三みこそ・したまふべかりしかども・よりまさのきやうのれいをいみてなり・いまはかま
くらげん二ゐどのとぞ・まをしける
廻し文(あひ) 1115
なかにも・へいだいなごんときただのきやうを・はんぐわんのしゆくしよ・ちかく・おきたてまつらる・あるときだいなごん・しそくの・さぬきのちうじやうときざねに・むかつて・のたまひけるは・さても・とらるまじき・ふみを一かう・はんぐわんにとられたんなり・このふみ・かまくらへ・みえては・ひともあまた・いのちをうしなひ・わがみも・いのちたすかるまじ・こはいかがはせんと・のたまひけ
れば・さぬきのちうじやうの・いけんには・はんぐわんは・いろごのみにてさふらへば・おんむすめあまた・ましませば・いづれにても・P520
一にん・はんぐわんに・みせたまへ・したしうなつて・おほせられて・ごらんじさふらへかしと・まをされたりければ・だいな
ごん・このひごろは・むすめどもをば・いかなる・にようごきさきにも・たてむとこそ・おもひしに・いつしか・いまさやうに・
なみなみのものに・みすべしとは・つゆおもひこそ・よらざりしかとて・なみだにむせび・たまひけり・さぬきのちうじゃう
のこころには・たうふくの・おんむすめ・しやうねん十七に・なられけるを・はんぐわんにとは・おもはれけれども・だいなごん・それを
ば・なほいとふしきことにおもひ・たまひて・さきのうへのはらの・おんむすめ・しやうねん廿三に・なられけるを・はんぐわんに・
みせられけり・さかりこそ・すこしすぎられたりけれども・てうつくしう・かきて・じんじやうに・おはし
ければ・はんぐわんは・さきのうへ・かはごえがむすめも・ありけれども・これをば・なほいとふしみたてまつつて・ざしき・じんじ
やうに・しつらうて・おきたてまつらる・あるとき・このにようばう・くだんのふみのことを・のたまひいだされたりければ・はんぐわんさる-ことさふらふとて・ふうをも・とかずして・へいだいなごんどのへ・かへしまをされけり・だいなごんなのめならず・よろこびたま
ひて・やがて・ひにこそ・たかれけれ・いかなることをか・かきたまひたりけん・おそろし・おそろしとぞ・ひとまをしける
女院の御出家 1116
けんれいもんゐんは・さいこくより・たけきもののふの・てにわたり・ふたたび・みやこへ・かへりのぼらせ・たまひては・ひがしやまのふもと・よしだのほういん・きやうゑとまをす・ならほうしのばう・なりけり・すみあらして・としへにければ・にはには・くさふかく・のきP521
には・しのぶしげり・すだれたえ・ねやあらはにて・いづくに・あめかぜたまる・べしとも・みえざりけり・はな
はいろいろにほへども・あるじとたのむ・ぬしもなく・つきはよなよな・さしいれども・ながめてあかす・ひとも
なし・むかしは・たまのうてなを・みがき・にしきのちやうに・まとはれて・たへなるおんみにて・わたらせ・たまひたりしか
ども・いまはありとし・あるひとにもみな・わかれはてさせ・たまひて・あさましげなる・くちばうに・なくなく・たちいらせ・たまひ
ける・おんこころのうち・おしはかられて・あはれなり・みちのほどつき・まゐらせられける・にようばうたちも・みみの・すてが
たさに・いとままをして・みな・ちりぢりにこそ・なりたまひけれ・うをの・くがに・あがれるが・ごとし・とりのすを・
はなれたるより・なほかなし・うかりし・しま・なみのうへ・ふねのうちの・おんすまひも・いまはなかなか・おんこひしうぞ・おぼし
めされける・おなじ・そこのみくづとも・なりぬべかりし・みの・なにしにか・ひとりのこり・とどまつてと・
おぼしめせども・かひぞなき・てんにんの五すゐのかなしみは・にんげんにもありける・ものをとぞ・おほせける・さてしも・
わたらせ・たまふべき・ならねば・おなじき・五ぐわつついたちのひ・にようゐん・みぐしおろさせ・たまひけり・ごかいの・し
には・ちやうらくじのべつたう・あせうしやうにんいんせい(イにんせい)とぞ・きこえし・ごかいのふせには・せんていの・おんなほしとかや・しやうにん・このぎよいを・たまはつて・なんといふことばをば・いだされねども・ぎよいを・かほに・おしあてて・なみだに・むせびたまひけり・そのごまでも・めされたりし・ぎよいなれば・おんうつりがも・いまだ・つきさせたまはず・しか
るべき・おんかたみにもと・おぼしめされて・さいこくより・はるばると・もたせられたりしかども・いまは・ごかいの・
ふせに・なりぬべきものの・なきうへ・かつまた・かのぼだいのおんためにもと・おぼしめされて・なくなく・とりP522
ぞ・いださせたまひける・しやうにん・このぎよいを・はたにぬひて・ちやうらくじのしやうめんに・かけられて・いまにありとぞ・うけたまは
る・にようゐん十五にて・うちへまゐらせたまひ・十六にて・こうひのくらゐに・そなはり・くんわうの・かたはらに・さぶらはせ・たま
ひて よは・よを・もつぱらに・せさせ・おはします・あしたには・あさまつりごとを・すすめ・まゐらつ
させ・たまふばかりなり・廿二にて・わうじ・ごたんじやうあつて・くわうたいしに・たたせたまひ・廿五にて・ゐんがう・
かうぶらせ・たまひて・けんれいもんゐんとぞ・まをしける・ことしは・廿九に・ならせ・おはします・たうりのおんよそほひ・な
ほ・こまやかに・ふようの・おんかたちの・いまだ・おとろへさせ・たまはねど・いまは・ひすゐの・おんかんざしを・つけても・なにに
かは・せさせたまふべき・なれば・なくなく・みぐし・おろさせ・たまひけり・おんよを・いとひ・まこと
のみちに・いらせたまふとは・まをせども・おんなげきは・いまだ・つきさせ・たまはず・ひとびとの・いまはかうとて・うみ
に・しづみたまひし・ありさま・せんていの・おんおもかげ・いつのよにか・わすれまゐらつさせ・たまふべきなれば・さつき
の・みじかよなれども・あかしかねさせ・たまひて・おのづから・うちも・まどろませ・たまはねば・むかしのことを
ば ゆめにだにも・ごらんぜず・かべにそむけたる・のこりのともしびのかげ・かすかにかかげつつ・よもすがら・
くらき・まどを・うつあめのおと・しづかなり・じやうやうじんが・じやうやうきうに・とぢこもられたる・さびしさも・これには・す
ぎじとぞ・みえし・むかしをしのぶ・つまとなれ・とてや・もとの・あるじが・うゑおきし・はなたちばなのありける
が・かぜなつかしく・かをりける・をりふし・やまほととぎす・しきりに・おとづれて・すぎければ・にようゐん
ほととぎすはなたちばなのかをとめて・なくはむかしのひとやこひしき・ W P523
にようばうたちは・二ゐどののやうに・さのみ・たけく・うみにも・しづませ・たまはねば・たけきもののふの・てにわた
り・ふたたびみやこへ・かへりのぼらせ・たまひても・あるにも・あられぬ・さまにて・あるひは・かたちをやつし・さまをか
へ・おもひもかけぬ・たにのそこ・いはのはざまにて・あかしぞ・くらさせ・たまひける・すまひしやどはみな・けぶり
とのみ・たちのぼりにしかば・むなしきあとのみ・のこつて・しげきのべとぞ・なりにける・ひごろみなれし・
ひとのとひくるも・なく・ただせんかよりかへつて・七せのまごに・あひけむも・これには・すぎじとぞ・みえし
あひ 1117
へいけ・ほろびて・のちは・くにぐにもしづかに・みちをかよふに・わづらひなく・みやこもおだしかりければ・あはれ・このはんぐわんほどの・ひとこそ・おはせね・されば・かまくらのげん二ゐどのは・なにごとか・しいだしたまへる・かうみやうある・はんぐわんのよにて・あはれ・しばらくも・あらばやなんど・じやうげまをしあへりけり・かまくらのげん二ゐどの・このよしを・つたへききたまひて・
これにて・よりともが・ずゐぶん・はかりごとを・めぐらしたればこそ・へいけはたやすく・ほろびたれ・九らう一にんしては・いかで
かかなふべき・しかるに・さしもの・てうてき・へいだいなごんの・むこになること・こころえられず・まただいなごんの・むこ
どりも・おほきに・しかるべからず・いかさまにも・こんど・くだつたらば・さだめて・くわぶんの・ふるまひを
ぞ・せむずらんと・ないないこころよからずぞ・きこえしP524
副将 1118
おなじき・五ぐわつなぬかのひ・九らうたいふのはんぐわんよしつねは・おほいとのふしを・ぐそくし・たてまつつて・くわんとうへ・くだらるべしとぞ・きこえし・おなじき六かのひの・くれかたに・おほいとの・はんぐわんのもとへ・ししやをたてて・まことにてさふらふや・みやうにちすでに・くわんとうへ・くだらるべしとやらん・うけたまはりさふらふ・さらんにとつては・だんのうらの・いけどりのうちに・八さいのわらはと・しるされてさふらふは・いまだ・このよにさふらふやらん・あはれ・おんゆるされを・かうぶつて・いま一どみさふらはばやと・のたまひつかはされたりければ・はんぐわんは・よろづになさけあるひとにて・おはしければ・やすきおんこと
さふらふとぞ・のたまひける・このわかぎみをば・かはごえのこたらうしげふさが・あづかりたてまつつて・めのと・かいしやくとて・にようばう二にんぞ・つきたりける・はんぐわん・このよしを・かはごえがもとへ・のたまひつかはされたりければ・わかぎみ・二にんのにようばうども・ひとつくるまに・のせたてまつつて・おほいとのの・おんかたへ・いれたてまつる・わかぎみはるかに・ちちをごらんぜねば・いそぎおんひざへ・まゐられけり・おほいとの・わかぎみのかみ・かきなで・しゆごのぶしに・むかつて・のたまひけるは・これみたまへや・ひとびと・このこがははは・このこをうむとて・なんざんしてしにぬ・さんをば・たひらかに・したりしかども・やがてう
ちふし・なやみしが・わらはが・なからむのち・いかならむひとに・あひぐせさせ・たまひて・をさなきひとを・
まうけて・ましますとも・このこをば・おんめのまへにて・そだておき・わらはが・なからむのちの・よの・かた
みにも・ごらんぜよ・なんど・いつしが・ふびんさに・てんかに・ことのいできたらむずるときは・あのゑもんの-P525
かみに・たいしやうぐんを・せさせ・これには・ふくしやうぐんを・せさせむずれば・なをふくしやうと・つけんなんど・いつしか
ば・なのめならず・よろこび・いまはのときまでも・なをよび・なんどして・あいせしが・七かといつしに・つひ
にはかなく・なりたるぞとよ・されば・このこをみるたびに・そのことのおもはれてとて・なみだにむせびたまへば・ゑ
もんのかみも・なかれけり・二にんの・にようばうも・なみだをながし・しゆごのぶしどもみな・よろひのそでをぞ・ぬらしけ
る・おほいとの・うれしうもみつ・いまはとく・かへれかしと・のたまへば・わかぎみいなや・かへらじとてぞ・なかれ
ける・ゑもんのかみたつて・いかに・ふくしやうよ・こよひは・これに・みぐるしきことの・あらむずるぞ・まづかへつ
て・あすとく・まゐるべしと・のたまへども・わかぎみいなや・かへらじとて・ちちのごじやうえの・そでに・ひしと・とりつ
いてぞ・なかれける・さてしも・あるべきならねば・わかぎみ・二にんのにようばうともに・ひとつくるまにのせ・たてまつつて・
いだしたてまつる・おほいとの・わかぎみの・おんうしろを・はるばると・ごらんじ・おくらせ・たまひて・ひごろの・おもひなげきは・こと
のかずならずとてぞ・なかれける・ははのゆゐごんが・ふびんさに・めのとなんどのかたへ・さしはなつても・つ
かはさず・めのまへにて・そだて・三さいのとし・かぶりたまはつて・よしむねとぞ・なのらせける・おひたちたまふ・
ままに・みめかたち・ならびなく・こころざま・すぐれて・おはしければ・おほいとのことに・さいあいし・たまひて・
こんど・さいかいの・たびのそら・ふねのうちまでも・ひきぐしたてまつつて・つひにへんしも・はなれたまはざりしが・いくさやぶれて・
四十よにちとまをすには・けふぞはじめて・みたまひける・おなじき七かのひの・まんだあさ・かはごゑ・はんぐわんにまをしけるは・
さて・あのをさなきひとをば・なんとしたてまつる・べきひとにてさふらふ・やらんと・まをしたりければ・はんぐわん・このあつ
きP526なかに・をさなきものを・はるばると・かまくらまで・ぐしてくだるに・およばねば・ここにて・なにとも・よきや
うに・はからふべしと・のたまへば・かはごえ・よきやうに・はからへとは・いよいようしなひたてまつるべき・ひとぞと・
こころえて・やどにかへつて・みければ・わかぎみは・いまだ・二にんのにようばうと・ねたまへり・かはごえ・二にんのにようばうに・
むかつて・まをしけるは・おほいとのはけふすでに・くわんとうへ・おんくだりさふらふ・しげふさも・はんぐわんの・ともにてまかりくだりさふらふが・わかぎみをば・けさよりして・をがたの三らううこれよしが・あづかりたてまつるべきにて・おんむかへのおんくるま・よういつかまつてさふらふ・とうとうと・まをしたりければ・二にんの・にようばうこれを・まことぞと・こころえて・いまだねいり・たまへる・をさなきひと・おしおどろかし・たてまつつて・いざさせたまへ・おんむかへのおんくるまのまゐりて・さふらふにと・まをしたりければ・わかぎみさては・きのふのやうに・ちちのおんかたへ・まゐらんずるが・うれしさよ・とくいでむとぞ・のたまひける・さるほど
に・わかぎみ・二にんのにようばうども・ひとつくるまにのせたてまつり・六でうをひがしへ・かはらに・くるまをやりとどめ・しきがはしいて・わかぎみすでに・だきおろし・たてまつらんとす・二にんのにようばう・ひごろより・かかるべしとは・おもひまうけし
ことなれども・さしあたつては・かなしくて・こゑをあげてぞ・かなしみける・わかぎみおほきに・あきれさせたまひ
て・おほいとのは・いづくにぞと・のたまへば・ただいまいらせたまひさふらふ・これにて・まちまゐらつさせ・たまふべしとて・
おんくるまより・だきおろしたてまつつて・しきがはの・うへに・おきたてまつるかはごえが・らうどう・たちをぬいて・ひきそば
め・おんうしろに・たちまはりければ・わかぎみこれを・ごらんじて・いまいくほど・たすかりたまふべきやうに・いそぎ
にげさせたまひ・めのとがふところに・かほさしいれてぞ・なかれける・二にんのにようばう・さらばまづ・われをうしな
ひP527て・さてをさなきひとをば・ともかうも・なしまゐらつさせ・たまふべしとて・をめきさけぶこと・なのめならず・
かはごえも・さすが・いはきならねば・あはれに・おもひまゐらせ・けれども・さてしも・あるべき・ならねば・らうどうに・
めを・おそしと・みあはせければ・こんどは・たちにては・かなはじとや・おもひけむ・こしのかたなをぬき・めの
とがふところに・かほさしいれて・なかれける・をさなきひとを・あらけなく・ひきいだしたてまつつて・みかたなさいて・
くびを・とる・ことしは・八さいにぞ・なられける・くびをば・はんぐわんに・みせたてまつらんとて・もたせてゆけば・
むくろは・むなしう・かはらにあり・二にんのにようばう・かちはだしにて・はんぐわんのしゆくしよに・ゆきむかひ・なにかはく
るしう・さふらふべき・をさなきひとの・おんくびたまはつて・おんぼだいをなりとも・とぶらひ・まゐらせ・さふら
はばやと・なみだもせきあへず・まをしたりければ・はんぐわんは・よろづになさけあるひとに・て・とうとうとてぞ・いだされけ
る・二にんのにようばう・をさなきひとの・おんくびたまはつて・なくなくそこをば・いづるとぞみえしが・ゆきがたしらずぞ・な
りにける・そののち・五六にちありて・にようばうの・二にん・かつらがはへ・みなげたる・ものありけり・をさなきひとの・おん
くびふところにいれて・しづみたるは・めのとなり・おんしがいいだきたてまつつて・しづみたるは・かいしやくの・にようばうなり・
めのとが・みをなげたらむは・いかがせん・かいしやくの・にようばうさへ・みをなげけるこそ・あはれなれ
腰越 1119
さるほどに・九らうたいふはんぐわんよしつねは・おほいとのふしを・ぐそくしたてまつつて・かまくらへこそ・くだられけれ・みちすがら・P528
おほいとの・はんぐわんへ・のたまひけるは・あはれこんど・むねもりおやこがいのちを・まをしてたすけさせ・おはしましさふらへかしと・のたまひければ・はんぐわんさんさふらふ・こんどの・いくさのくんこうには・おんふたところの・おんいのちをまをして・たすけたてまつらばやとこそ・ぞんじさふらへ・ただしおきのかたへ・ながしたてまつらるべう・もやさふらふらんと・まをされたりければ・おほいとの・たとへいかなる・あくる(イろくろ)・つがる・そとのはま・えびす・が・すむなる・ちしまなりとも・むねもりおやこが・いのちだにあらばと・のたまひけるぞ・いとほしき・かくてくにぐに・しゆくじゆく・うちすぎ・うちすぎ・くだりたまふほどに・をはりのくに・のまのうつみにも・なりしかば・はんぐわんは・ここはちち・よしともの・ほろびたまひしところなればとて・おほいとのふしを・むまより・おろしたてまつつて・はかのまへを・かなた・こなたへ・七たびまで・ひきまはしたてまつり・そののち・はんぐわん・はかのまへに・かしこまり・ねがはくは・くわこしやうりやう・このこころざしをもつて・九ほんあんやうのじやうどへ・いんぜふしたまへと・まをされけるこそ・あはれなれ・またおほいとのふしを・むまにかきのせたてまつつて・やうやう・くだりたまふほどに・するがのくに・うきしまがはらにも・なりしかば・おほいとの・こまをひかへて
しほぢよりたえずおもひをするがなる・みはうきしまになをばふじのね(イ名は浮島に身をば富士の嶺) W
おんこゑもんのかみ
われなれやおもひにもゆるふじのねの・むなしきそらのけぶりばかりは・ W
さるほどに・はんぐわんは・三かぢより・ひとをさきだてて・かまくらへあんないを・まをされたりければ・げん二ゐどの・まづ・かぢ
はらをめして・けふ・九らうが・かまくらいりすなるぞ・いかさまにも・くわぶんのふるまひをぞ・せんずらん・さぶらひどもめすP529
べしと・のたまへば・かぢはらうけたまはつて・かまくらちうを・はせめぐりて・もよほしけるに・かまくらちうの・だいみやう・せうみやう・はせあつまつて・げん二ゐどのを・しゆごしたてまつる・げん二ゐどのまた・かぢはらをめして・まづ・かねあらひざはに・せきすゑさせよと・のたまへば・かぢはらうけたまはつて・ふし三き・五百よきにて・ゆきむかひ・かねざはに・せきすゑさせ・おほいとのふしをうけとりたてまつつて・それより・はんぐわんをば・こしごえへ・おつかえし・たてまつる・そののち・おほいとのふしをば・かまくらちうへ・いれたてまつつて・げん二ゐどのすまれける・つぼをへだてて・たいのやに・おきたてまつり・ひきのとう四らうよしかずをもつて・のたまひ・つかはされけるは・まつたう・よりとも・へいけに・いしゆ・おもひたてまつらずさふらふ・そのゆゑは・さんぬる・へいぢに・たうけのために・いけどられ・すでに・ちうせらるべかりしを・こいけのぜんにの・やうやうに・まをして・しざいを・るざいに・しよ
せらるるところなり・たとへ・ぜんにばかりこそ・あはれませたまひ・さふらふとも・こにふだう・しやうごくの・おんあはれみなくては・いかでか・よりともが・かひなきいのちの・たすかりさふらふべき・しかりとはまをせども・かやうに・てうてきとなりたまひぬるうへは・つゐたうしたてまつれとの・ゐんぜんをかうぶつて・ことごとくほろぼし・まゐらせさふらひぬ・されども・かやうに・まのあたり・ご
げんざんに・いつつとこそ・かねてはぞんじさふらはねと・のたまひつかはされたりければ・おほいとの・ゐなほり・かしこま
つて・きかれけるこそ・くちをしけれ・ひごろ・へいけに・ほうこうせしともがらどもの・いま一どよに・あらむとて・かまくら
に・はせくだつて・さふらひけるが・このよしをみたてまつつて・あなあさましあの・おんこころにて・わたらせ・たまへばこそ・こん
ど・さいかいのなみの・そこに・しづみたまふべき・ひとの・いのちいきて・これまでは・はるばるくだらせ・たまひたんな
れ・されば・ただいま・ゐなほり・かしこまつて・ききたまひたらば・そも・たすからせ・たまふべき・おんみか・な
んどP530おのおの・つまはじきをして・あざみ・あへれば・そのうちに・すこしこころえたる・ものの・まをしけるは・まうこしん
ざんに・あるときんば・はくじゆう・ふるひをののき・かんせいの・なかに・あるときは・ををうごかして・しよくを・もとむといふ・ほんもん
あり・されば・いかにたけきつはものなれども・かたきのてに・とらはれぬれば・こころは・かはるならひなり・されば・
ただいま・おほいとのの・わるびれ・たまふもことわりなりと・まをしてこそ・はぢをば・よそにて・たすけけれ・さるほどに・
はんぐわんは・こしごえに・おはしけるが・いかさまにも・こんどかまくらに・くだつたらば・しよしよのかつせん・まいどのかうみやう・
たづねかんぜられんずるかと・おもひたれば・あまさへ・かまくらちうへ・だに・いれられざるこそ・ぞんぐわいの・しだいなれ・
いかさまにも・これは・かぢはらが・かすめまをすにこそ・あんなれとて・まつたう・おんために・やしんを・さしはさま
ざるむねを・きしようだいに・のせられて・すつうのじやうをかき・しんじやうせらる・なかにも・べつして・一ふでなげき・まをさ
るるむねあり・そのじやうにいはく・みなもとのよしつね・おそれながらつつしんでまをしあげさふらふいしゆは・ごだいくわんのその一と・えらばれ・ちよくせんのおつかひとして・てうてきをたひらげ・くわいけいのはぢをすすぎ・ちうしやうおこなはるべきところに・ここうのざんげんによつて・ばくだいのぐんこうを・もだせらる・よしつねをかしなうして・とがをかうぶり・こうあつて・あやまりなしといへども・むなしく・こうるゐにしづむ・ざんしやのじつぷを・ただされず・あまさへ・よしつね・かまくらちうへだに・いれられざるあひだ・しさいをのぶるに・あたはず・いたづらにすじつをおくる・このときにいたつて・おんがんをはいしたてまつらずんば・こつにくどうばうのぎ・ながくたえ・しゆくうんきはまりて・むなしきに・にたるか・はたまた・ぜんぜの・しゆくいんを・かんずるか・こばうこん・そんれいさいたん・したまはずんば・いづれのひか・ぐいのひ
たんP531を・まをしひらかん・たれのひとか・あいれんをたれんや・ことあたらしきまをしじやうかつじゆつくわいに・にたりと・いへども・よしつね・しんてい・はつぷを・ぶもにうけ・いくばくの・じせつをへずして・こさまのかうのとの・ごたかいのあひだ・みなしごとなりはてて・ははのふところに・いだかれ・やまとのくに・うだのこほり・りようもんのまきに・おもむきしより・このかた・一じつへんしも・あんどのおもひに・ぢうせず・
いのちはそんずと・いへども・みを・ざいざいしよしよに・かくし・へんどをんごくを・すみかとして・いやしき・どみん・はくしやうらに・ぼ
くじゆ・せらる・かうけいたちまちに・じゆんじゆくして・へいじ・つゐたうのうつてに・しやうらくせしむる・てあはせに・きそよしなかを・
ちうりくし・へいけを・ほろぼさんために・さいこくに・はつかうして・あるときは・ががたる・がんせきに・むかつて・しゆんめに・むち
をうつて・かたきのために・みをほろぼさむことを・やまず・あるときは・まんまんたる・かいしやうにうかび・ふうはの・なんをしのいて・みをかいていに・しづめんことを・かへりみず・かばねを・けいげいのあぎどに・かけんとせしこと・どどなり・しかのみならず・かつちうをまくらとし・きうせんをげふとする・ほんいは・こばうこんそんれいの・おんいきどほりを・やすめたてまつらんと・おもふよりほかは・またたじなし・あまさへ・よしつね・五ゐのじように・ふにんのでう・たうけのぢうしよく・なにごとか・これにしかんや・しかりといへども・いまうれへふかく・なげきせつなり・このときにいたつて・ぶつじんのおんたすけにあらずんば・いかんか・しうそをたつせむ・まつたう・おんためにやしんを・もたざるむね・しよじ・しよしやの・ほういんのうらをもつて・にほんこくちうの・だいせうのじんぎ・みやうだう・しやうじ・おどろかしたてまつつて・すつうの・きしやうもんをかき・しんじやうすと・いへども・なほもつて・ごいうめんなくんば・にほんはこれ・しんこくなり・たのむところ・たにあらず・ひとへにきでんくわうだいのじひを・あふぎ・びんぎをうかがつて・かうもんに・たつせられ・あやまりなきむねを・いうせられ・ごはうめんにあづからば・しやくぜんのよけい・かもんにつたへ・えいぐわをながく・しそんにのこさむ・よつてねんらいの・しうびをP532
ひらいて・まさに一ごの・あんねいをえん・しよしにつくさず・しかしながらせいりやくせしめをはんぬ・よしつね・きようくわうきんげん・げんりやく弐ねん・六ぐわつ五かのひ しんじやう ゐなばのかみどのへとぞかかれたる
大臣殿のきられ 1120
このじやう・じやうぶんに・たつせずもや・ありけん・とかうの・ごへんじも・なかりければ・はんぐわん・のたまひけるは・さきにうまれたを・あにといひ・のちにうまれたを・おととといふにてこそあれ・よをしらむには・たれかは・おとるべき
と・よにも・ほいなげにこそ・のたまひけれ・おなじき六がつ十二にちに・九らうたいふのはんぐわんよしつね・また・おほいとのふし
を・うけとりたてまつつて・みやこへ・かへりのぼられけり・みちすがら・おほいとのゑもんのかみに・むかつて・われらこんど・かまくらにて・きられんずるかと・おもひたれば・おもひのほかに・いのちたすけられぬることよと・のたまへば・ゑもんのかみ・なにごと
によつてか・たすけられさふらふべきとて・おほいとのにも・ねんぶつを・すすめたてまつり・わがみもいつかう・ごせぼだいの・つ
とめをのみぞ・したまひける・みの・をはりにも・なりしかば・おほいとのまた・ゑもんのかみに・むかつて・いまはわれら・
おやこが・いのちの・たすからむずるに・こそと・のたまへば・たうじは・あつきころにてさふらへば・くびのそんぜぬやう
を・はからうて・みやこちかきところにてぞ・きられさふらはん・ずらむとて・いつかうごせぼだいの・つとめをのみぞ・
したまひける・おなじき・廿二にちに・あふみのくに・しのはらにこそ・つきたまひけれ・そのあさより・おほいとの・ふしを・ひ
きわけたてまつつて・ところどころに・おきたてまつらる・さてこそ・おほいとのも・ゑもんのかみも・けふを・さいごとは・おもはれけれ・P533
はんぐわんは・よろづになさけあるひとにて・おはしければ・一にちぢより・さきに・みやこへひとを・のぼせて・ぜんちしきのひじりを・たづねさせらる・をはらの・ほんしやうばうたんがうとぞ・きこえし・おほいとの・ぜんちしきのひじりに・むかつて・のたまひけるは・われら・こんど・さいかいのそこに・しづむべかりしみの・いけどりにせられて・きやう・ゐなか・ひきしろはれ・はぢをさらしさふらふことも・あのゑもんのかみをおもふゆゑなり・たとへくびをこそ・とらるるとも・むくろは・ひとつところに・ふさむとこそ・
おもひしに・ところどころにて・しなんことこそ・かなしけれと・のたまへば・ぜんちしきのひじり・さな・おぼしめ
されさふらひそ・もとより・このところは・しやうじやひつめつのくになれば・いけるものは・かならずしし・あふものはさだめて・わかるるならひなり・されば・じんのしくわうのをごりを・きはめしも・つひには・りざんのつかに・うづもれ・かんのぶていの・いのちををしまれしも・つひには・もりやうのこけに・くちにき・たのしみはこれ・かなしみのもとゐなり・しやうはすなはち・しのいんなり・きみは・こんねん三十九に・ならせ・おはします・そのおんあひだのことどもを・あんじつづけて・ごらんじさふらへ・ただ一やのゆめのごとし・たとへ・いまよりのち・七十・八十を・たもたせ・たまひさふらふとも・それも・ほどやは・さふらふべき・かたじけなくも・みかどの・ごぐわいせきにて・しようしやうのくらゐに・いたらせ・たまひぬれば・ごえいぐわ・のこるところも・さふらはず・しやくそん・いまだ・せんだんのけぶりを・まぬかれたまはず・いはんや・ゑんぶふぢやうのさかひに・おいてをや・てんにんなほ・またおとろへのひにあへり・とこそみえられてさふらへ・されば・ほとけも・がしんじくう・ざいふくむしゆ・くわんじんむしん・ほふふぢうほふとも・とかれてさふらふなり・いかなる・みだなれば・おこしがたき・せいぐわんをおこして・われらを・いんぜふしたまふらん・いかなる・われらぞや・おく
おくまんごふより・このかた・しやうじに・るてんして・いまだ・しゆつりのごをいでず・こんどたからのやまにいつて・てをむなし
うP534・せさせおはしまさんこと・おんなげきのなかの・おんなげきなるべし・あひかまへて・よねん・おこさせたまふなとて・しきり
に・かねうちならし・ねんぶつを・すすめたてまつる・おほいとの・たちまちまうねんひるがへし・かうしやうに・ねんぶつす百ぺん・となへたまひて・
さらばとく・きれやとて・くびをのべてぞ・またれける・きりては・たちばなうまのじようきんながとぞ・きこえし・きんなが
たちをぬいて・ひきそばめ・おんうしろに・たちまはりければ・おほいとの・ごらんじて・ゑもんのかみも・すでにかうかと・
のたまひもあへず・くびはまへにぞ・おちにける・このきんながとまをすは・ひごろ・しんちうなごんどのの・めしつかはれけるところの・
さぶらひなり・いま一どよに・あらんとて・かまくらに・はせくだつて・いひけるが・一けのしうのくびを・うつ・にくまぬ
ものこそ・なかりけれ・そののち・ぜんちしきのひじり・ゑもんのかみの・おんかたにおはしたり・ゑもんのかみ・ぜんちしきのひじりにむか
つて・のたまひけるは・さて・おほいとののさいごの・おんありさまは・いかにと・とひたまへば・ぜんちしきのひじり・さもゆゆ
しうこそ・みえさせ・おはしまして・さふらひつれと・のたまへば・ゑもんのかみ・なのめならず・よろこびたまひて・十ねんう
け・さらば・とくきれやとて・くびをのべてぞ・うたせられける・きりては・ほりのやたらうあさひろとぞ・きこえし・
まことにをしかるべし・ことしは・十七にぞ・なられける・くびをば・はんぐわん・もたせて・みやこへ・のぼらる・むくろは・
ちしきのひじりと・きんながが・さたとして・ひとつところに・ほりうづみ・そとばをたててぞ・のぼりける・おなじき二十
三にちにけびゐし・二にん・三でう・かはらに・ゆきむかひ・おほいとのふしの・かうべ・うけとりたてまつつて・三でうをにしへ・
わたしたてまつる・かかりければ・ほうわうも・三でう・にしのとうゐんに・みくるまをたてて・えいらんある・そのほか・ぐぶの・くぎやう・
でんじやうびとの・くるまをも・おなじう・たてぞ・ならべられたる・このひとびとは・この・ひごろ・さしも・おんまへちかう・ま
ゐりP535あはれし・ともがらなれば・いつしか・あはれに・おぼしめして・りようがんに・おんなみだ・せきあへさせ・たまはず・
だいじんいじやうのかうべ・おほぢを・わたさるること・てんぢくしんたんはしらず・にほんわがてうに・おいては・これはじめとぞうけたまはる・
さいこくより・かへりのぼらせたまひては・いきて・六でうをひがしへ・わたされ・とうごくより・かへりたまひては・しんで・三
でうをにしへ・わたさる・いきてのはぢ・しんでのはぢ・まをすばかりもなかりけり
P536


入力者:荒山慶一



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