『草双紙事典』

               叢の会 編



              2006年8月10日・東京堂出版発行
              A5判・388頁・定価6500円+税


  目次

刊行によせて ………………………………………………小池正胤

凡例
草双紙の概要(赤本・黒本・青本) 
一、	赤本概説 ………………………………加藤康子…………     1
二、	黒本・青本概説 ………………………黒石陽子…………     5
『草双紙事典』書誌用語集 ……………………細谷敦仁…………     9
赤本・黒本・青本解題編 ……………………………………………    13
広告一覧 ………………………………………………………………   313
参考文献目録 …………………………………………………………   319
『叢 草双紙の翻刻と研究』総目次 ………………………………   339
草双紙の概要英訳 ………………………………加藤康子…………   361
あとがき ……………………細谷敦仁・丹和浩・黒石陽子………   362
 
赤本・黒本・青本解題編索引 ………………………………………   388

執筆者一覧
内ケ崎有里子・有働裕・大橋里沙・鍛冶聖子・加藤康子・黒石陽子・
笹本まり子・杉本紀子・高橋則子・丹和浩・橋本智子・檜山裕子・
細谷敦仁・三好修一郎・ジョナサン・ミズル・山下琢己・湯浅佳子


刊行によせて                 小池正胤

 本事典は初期草双紙の作品解題・評価を中心として、関連する諸事項を解説
した研究事典であります。対象作品は二四〇種、これはこの期の草双紙のほぼ
二割に当たります。赤小本・赤本・黒本・青本それぞれの特色を知る上では十
分な分量といえるでしょう。
 初期草双紙の研究は一九三〇年前後から始りましたが、本格的には一九六〇
年代に入ってからでした。かねてから黒本・青本の作者富川房信(吟雪)に関心
があったので、大学院の板本解読演習資料として、これらを利用しました。数
年後の一九七九年四月、最初の同人五人がその結果をゼロックスに写し、手作
りの稚拙な小冊子に『叢 近世文学演習ノート』と題して、数十部を近世文学
研究者にお送りし批正を仰ぎました。これが本事典のそもそもであります。
 初期草双紙一種の平均単位は十丁〜十五丁一部、絵を中心とするいわゆる小
本型・中本型です。その素材と世界は古代説話から江戸時代、本邦から異国・
仮想国、史伝・物語、各種演劇、役者見立て、当代生活・教育、などにいたる
まで、あらゆる分野に及んでいます。表現と内容や挿絵が単純素朴であるので、
それが作者画工の知識力量を思わせ、作品の評価にも及んでいました。しかし
その中には当時でも難解と思われる原拠を読者の理解度に応じて手際よく興味
ある場面を重ねる作品も多く、その構想・手法も多様で、作者画工の趣向工夫
がうかがえます。民話・民俗信仰・地口口合・日用器物・心学道話・幼童教育
など当時の社会生活がそのまま描かれてもいます。
 これらの初期草双紙の出現は、近世中期以後寺子屋の全国的な普及とともに
識字率が急増し、多種多彩な出版物が三都その他から供給され、人の交流文物
の流通が盛んになり多様化した社会現象に応じた一端でもありました。それゆ
え、初期草双紙は文学史的な意義だけではなく、国語学的に、社会史的・庶民
生活史的・教育史的になど、多面多様な資料・史料として利用が期待でき、す
でにそれが実証されてもいます。
 一九九三年度『叢』十六号刊行とともに、定年をもって私はいっさいを同人
各氏に譲り、海彼の客員に移りました。それまで同人各氏は一層研鑽を重ね、
初期草双紙以外の分野でも気鋭の研究者として業績をあげ評価をうけておりま
した。
 以後十三年、『叢』は号数を重ね同人も二十人をこえました。各氏からの発
意によって本企画を立案し、その緻密化を重ねてきました。今までの内容を精
選し、足らざるを補い、研究者や一般の有意の方のための事典形式を志しまし
た。博捜に努め、試案を重ね、検討を続けました。同人のみの力を結実させる
という大胆かつ年来の理想的な営為と密に信じました。しかも同人には「大韓
民国」「連合王国(UNITED KINGDOM)」の大学院留学生が加わり
ました。これも画期的なことでした。本事典はここに初期草双紙研究の確かな
道標となったことを確信いたしますが、さらに補正すべきところも多々あると
思います。叱正を仰ぎたく存じます。
 終わりに刊行まで終始指導と後援を戴いた東京堂出版編集部松林孝至氏に深
甚の感謝を申し上げます。
  二〇〇六年六月



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