『世界文学としての 芥川龍之介』
     関口 安義 著

            
        2007年6月15日・新日本出版社 発行
        B6判、254頁、定価2000円+税 


目 次


序章 二十一世紀の芥川研究…………………………………………    9

 内外で注目される芥川文学  10
 ペンギン古典叢書に登場した芥川  12
 中国における芥川研究  18
韓国における芥川研究  24

第T章 なぜ、木曾義仲か――「義仲論」…………………………   31

 一 河合榮治郎の「項羽論」  33
 二 「項羽論」への挑戦  38
 三 歴史と漢文の力  43
四 「野性の児」へのあこがれ  47

第U章 近代的人間の模索――「忠義」…………………………   57

 一 草稿「主従」と典拠  59
-
 二 神経衰弱  62
 三 二人の家老  64
四 孤独と寂寥  72

第V章 「寂しさ」への問い――「或日の大石内蔵之助」……   77

 一 忠臣蔵への関心  79
 二 大石最後の一日  82
 三 芥川の新解釈  89
四 寂しさの内実  91

第W章 自己確立のドラマ――「戯作三昧」……………………   97

一 馬琴像に託すもの  100
二 虚構の中での自己表現  108
三 新進作家芥川への風当たり  112
四 自己確立の闘い  116

第V章 人生のしたたかな眼――[首が落ちた話」……………  121

 一 何小二の受難  123
 二 反戦の叫び  126
 三 みじめな生存  131
四 人間の悪魔性、不条理な世界  135

第Y章 芸術と人生――「地獄変」………………………………  139

 一 「地獄変」への道  141
 二 超人大殿と天才絵師  144
 三 芸術と人生  148
 四 良秀の闘い  157

第Z章 自由への遁走――「馬の脚」……………………………  167

 一 空想劇  169
二 理性の超克  172
三 変身譚と典拠  176
四 <馬の脚>とは何か  180

第[章 芥川の中国旅行記――『支那游記』……………………  187

 一 新世紀中国における芥川  189
 二 構成と「自序」  191
 三 上海の印象  194
 四 三文人との会見  203
 五 現代中国批判  218
 六 長沙、および北京の印象  229


あとがき  237

 初出一覧  240

 索  引  巻末


あとがき


 芥川龍之介は一九二七(昭和二)年七月二十四日未明に自死して果てた。今年二〇〇七
(平成一九)年は、芥川逝いて八十年ということになる。本書はそれを覚えて、過去三年
間に発表した、わたしの最新の芥川論を集成したものだ。基調は世界文学としての芥川龍
之介を見極めることにあるが、その一里塚に過ぎない。
 ここ数年、芥川研究は飛躍的に進展した。しかも、それは日本という地理的空間、日本
語という言語的空間を越えてのことであった。日本人、そして日本語でなければ芥川は理
解できないという驕った考えでは、もはや芥川龍之介という対象(テクスト)を捉えるこ
とはできない。芥川の作品は、実に世界四十か国に翻訳され、読まれているのだ。
 しかも、新訳が相次ぐ。例えば芥川文学翻訳の先進国ロシアでは、冷戦後の一九九八
(平成一〇)年に、ポリャス出版社から主要作品を網羅した『芥川龍之介作品集』全四巻
が出たが、新世紀に入り日本の国際交流基金の援助を受けて、二〇〇二(平成一四)年に
『芥川龍之介選集』がヒペリオン出版社から刊行されている。
 二〇〇五(平成一七)年三月には、中国で本格的な『芥川龍之介全集』全五巻が翻訳刊
行され、韓国でもハングルによる芥川全集刊行の気運が高まっている。イギリスに本拠を
置く大手出版社ペンギン社からは、昨年、二〇〇六(平成一八)年三月に、ジェイ・ルー
ビン訳『「羅生門」ほか17編』(Rashomon  and  Seventeen Other Stories)とい
う芥川小説のアンソロジーが刊行された。ここにはこれまで翻訳不可能とされ、敬遠され
てきた「尾形了斎覚え書」や「忠義」や「馬の脚」など、九作品ものはじめての英訳(First
 time in English)を含む。
 芥川の生国日本では、新資料の発掘が続いた。かなりの数の新書簡の出現(新全集に収
録)、実父新原敏三や養父芥川道章関係の諸資料の発見、『新思潮』時代の資料、さらに
は一高時代の親友井川恭の日記の公刊などがあげられる。こうした現象は、内外あげての
芥川再評価・再発見につながるものがあり、作品の読み直しが進むことになった。学際研
究も盛んとなり、哲学・宗教・絵画・映画などとの関連で芥川文学が論じられるようにも
なる。芥川研究はいまや国際化・学際化の波に洗われ、新しいページを繰ろうとしている
のである。本書には、当然そうした研究の最前線が反映されている。
 二〇〇六(平成一八)年九月八日、韓国ソウルの延世大学校で国際芥川龍之介学会が発
足した。韓国はいまや世界でもっとも日本語の学習者の多い国であり、芥川研究もきわめ
て盛んである。朝鮮を舞台とした芥川小説「金将軍」の研究など、日本をはるかにしのぐ。
芥川とキリスト教をめぐっての論文も多い国だ。今回の第一回学術発表会に参加した国は、
日本・韓国・中国の三か国であったが、おいおい参加国はふえるに違いない。
 国際的に研究を共有し、共に考えることは、芥川研究の新しい次元を拓くものとなろう。
本書は新日本出版社から刊行した前著『芥川龍之介の歴史認識』の姉妹編となるものであ
る。前著が総論編と言ってよいなら、作品論に立った本書は、各論編としてよいであろう。
刊行に際しては、前著同様編集部の志波泰男氏に何かとお世話になった。記して厚く感謝
したい。

  二〇〇七年五月三日
                               関□安義

……………………………………………………………………………………
関□安義(せきぐち・やすよし) 

1935年埼玉県生まれ 早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了
都留文科大学名誉教授 文学博士              

主な著書
 『評伝 豊島与志雄』未来社 1987.11    
  『芥川龍之介 実像と虚像』洋々社 1988.11  
  『評伝 松岡譲』小沢書店 1991.1
  『芥川龍之介 闘いの生涯』毎日新聞社 1992.7
  『芥川龍之介の手紙』大修館書店 1992.10
   『芥川龍之介』(岩波新書)1995.10     
  『特派員 芥川龍之介』毎日新聞社 1997.2
  『芥川龍之介の復活』洋々社 1998.11     
  『「羅生門」を読む』小沢書店 1999.2    
  『芥川龍之介とその時代』筑摩書房 1999.3
  『芥川龍之介の素顔』イー・ディー・アイ 2003.6
  『一つの花 評伝今西祐行』教育出版 2004.3
  『悲運の哲学者 評伝藤岡蔵六」イー・ディー・アイ 2004.7
  『芥川龍之介の歴史認識』新日本出版社 2004.10
  『キューポラのある街 評伝早船ちよ』新日本出版社 2006.3
  『よみがえる芥川龍之介』NHK出版 2006.6
………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………
 著者・関□安義氏は、本書収録論文の内、次の3点を、日本文学研究会の機関誌『文学
研究』に執筆して下さった。
◎	芸術と人生(原題「「地獄変」の虚実」)第93号
◎	なぜ、木曾義仲か(原題「芥川龍之介「義仲論」の背景」)第94号
◎	芥川の中国旅行記(原題「『支那游記』論―新たな評価軸をめぐって」)第95号
 御多忙の中、編集部の依頼に快く応じて、このような力作論文をお寄せ下った関口氏に改
めて感謝の意を表します。(深沢秋男)


新刊案内(近世文学・その他)に戻る
はじめに戻る