『文学的思念の光彩』

   梶木 剛 著
 
            2012年10月25日、深夜叢書社発行
            B6判、374頁、定価3000円+税

 

      目   次


   I


事件としてのある出会い 折口信夫と吉本隆明 ……………………   10

折口信夫のたたかい 文献・歴史実証主義への批判 ………………   36

アジア的、実感、まれびと ……………………………………………   49

神の嫁と神隠し『死者の書』『遠野物語』『山の人生』 ……………  54

逸脱と還相 吉本隆明『〈信〉の構造』を読む ………………………  75

平野謙戦後初頭 …………………………………………………………   96

平野謙『志賀直哉とその時代』 ………………………………………  120


   U


古井由吉の現勢 女性・家・自然 ……………………………………  126

古井由吉『女たちの家』 ………………………………………………  167

横光利一の現在 …………………………………………………………  171

横光利一の評価 …………………………………………………………  175

横光利一の復権 …………………………………………………………  178

横光利一の現在性 ………………………………………………………  181

デニス・キーン『モダニスト横光利一』 ……………………………  185

菅野昭正『横光利一』 …………………………………………………  188

佐々木重治郎ほか『折口信夫を〈読む〉』 …………………………  190

汲めども尽きぬ折口信夫 西村亨編『折口信夫事典』一読 ……    193

石内徹『折口信夫』 ……………………………………………………  198

吉本隆明『「反核」異論』その他 ……………………………………  201

吉本隆明小筆 …………………………………………………………  208

歳月というもの 八木義徳『風祭』を読む ………………………  213

八木義徳『文学の鬼を志望す』 ……………………………………  228

『奥野健男文学論集』賛 ……………………………………………  230

奥野健男『素顔の作家たち』その他 ………………………………  234

奥野健男『文学のトポロジー』 ……………………………………  238

保昌正夫見渡し ………………………………………………………  240

保昌正夫断簡 …………………………………………………………  244

関口安義『評伝松岡譲』 ……………………………………………  245

関口安義編『芥川龍之介研究資料集成』に寄せて ………………  248

藤井貞和『古日本文学発生論』(増補新装版) …………………… 253

藤井貞和『日本〈小説〉原始』 ……………………………………  255


   V


徳田秋聲展望 とくに『假装人物』から『縮圖』 ……………  258

還相の思想の一実践 高尾敏雄『死の棘』を読む ……………  291

司馬遼太郎『峠』再読 ……………………………………………  299

人麿の像二、三 ……………………………………………………  302

月村敏行『幻視の鏡』 ……………………………………………  305

芹沢俊介『浮力と自壊』 …………………………………………  308

中上健次『化粧』 …………………………………………………  313

立松和平『今も時だ』その他 ……………………………………  316

清水昶『太宰治論』その他 ………………………………………  319

庄野潤三『屋上』 …………………………………………………  322

桶谷秀昭『風景と記憶』 …………………………………………  325

中山和子『平野謙論』 ……………………………………………  328

古橋信孝『神話・物語の文芸史』 ………………………………  331

本多秋五あれこれ …………………………………………………  333

梅原稜子『海の回廊』 ……………………………………………  337

大谷晃一 『与謝蕪村』 …………………………………………  339

河野修一郎『千年の森』 …………………………………………  341

四元仰歌集『石塵』  ………………………………………………  343

安田速正『長塚節「鍼の如く」』 ………………………………… 345

短歌新聞社編『大正昭和の歌集』 ………………………………  348

勝又浩『作家たちの往還』 ………………………………………  350

大星光史『越後の歌びと』 ………………………………………  353

今西幹一スナップ …………………………………………………  354

佐藤志満・全歌集以後 ……………………………………………  356


〔解説〕
実感にもとづく想像力の射程  立石伯 ………………………  360


梶木とのこと  佐藤満洲子 ……………………………………  366


初出一覧 ……………………………………………………………  370  


                    装丁  高林昭太

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梶木とのこと


 最後の三冊目の本が出来上がりました。全身から力が抜けてゆく感じです。
 梶木が亡くなって三冊の本が出来上がるまで二年四ケ月がたちました。この間、私の体力と精神力が
もつか心配でした。そのため普段の生活を一段階上に設定し背のびしてきた気がします。自分を鼓舞し
なければもちこたえられないようにずっと思って過して来ました。
 結婚する時、梶木は三歳年下ですし体力もあり元気な人でしたから将来病弱な私を看取ってくれるも
のと思っていました。梶木もおおまかなところで承知してたと思います。しかしそれはかないませんで
した。
 まだ、ほとんど書斎の整理はしておりませんが、自分が興味をもったものは、ずーっと続ける人でし
た。切手収集、旅行、写真、絵画を見る事、「なにか興味をもって始めたら十年続ければある程度もの
になる」と言っていました。又結婚して四十七年間の日記、手帳、切り抜き帳、手紙等それは膨大な量
が残されています。
 しかし計算が苦手で、お金に無頓着で全て私まかせでした。又機械が嫌いで、パソコン等は見むきも
せず、学校に提出するレジュメや書類等は全て私が打ち込んでいました。そしてなにをする時でも私を
ないがしろにすることは生涯ありませんでした。
 学生時代、吉本隆明さん宅を訪問する時も二人一緒でした。ときには夜の食事を御馳走になり、とき
には奥様のお誕生日のお祝いの外食にもお供をさせてもらいました。まだ私共が結婚する前のことです。
 卒業後、結婚ということになり吉本ご夫妻にお仲人をお願いしました。七年後には長女(草乃)が、
次の年には二女(南衣)が授かり、娘たちの産湯は吉本さん直伝の入浴のさせ方で梶木が入れてくれま
した。
 その後もずっと家族ぐるみのおつきあいをしていただきました。伺うと、主人は吉本さんと話し、私
は奥さまの和子さんとおしゃべりをし(大和文化会館にも誘っていただき月一回の講演と年に一回の研
修旅行に参加したり)、娘達は多子ちゃん(のちの漫画家ハルノ宵子さん)と眞秀子ちゃん(のちの小
説家吉本ばななさん)に、池袋のサンシャインや映画や買物や食事にと遊んでもらい、私共家族にとっ
ては至福の時でした。吉本家を訪問するのがなにより楽しみでしたから今でも思い出すと心が暖かくな
ります。
 そして最後まで衒うことなく全てを見せて下さった吉本さんの生き方には頭が下がります。やはりす
ごい思想家であり生活者だったと思います。梶木が亡くなったときもそうでしたが残されたものにとっ
ては、残念で無念で悲しいです。
 最後になりましたが、『文学的視線の構図』(平成二十三年五月既刊)『文学的思考の振幅』(平成
二十四年八月既刊)が出版されたあと沢山の方達からお電話やお手紙を頂戴しました。また直接お見え
下さった方、「梶木剛を偲ぶ会」(平成二十三年八月六日)に御出席下さいました皆様、どんなにはげ
まされたかわかりません。ここまでがんばってこられたのも皆様方のおかげです。心より感謝申し上げ
ます。ありがとうどざいました。
これからは力を抜いて生活できると思います。きっと、そんな私をどこかでみていて梶木もほっとして
いることでしょう。そして、ごくろうさんと言っている声が聞こえてくるような気がします。

  平成二十四年九月
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                           佐藤満洲子

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梶木 剛(かじき・ごう)

文芸評論家。本名、佐藤春夫。一九三七年五月、新潟市生まれ。一九五七年、新潟県立新津高等学校卒業、
法政大学文学部日本文学科入学。在学中に吉本隆明と出会い、雑誌「試行」に文学評論を発表、以降常連
執筆者となる。一九六二年より千葉県の県立高校に教諭として勤務。一九九八年に退職後は、弘前学院大
学教授、法政大学大学院講師なども務めた。二〇一〇年五月、食道癌による敗血症のため死去。享年七十
三。
主な著書に『古代詩の論理』『斎藤茂吉』『思想的査証』『存在への征旅』『夏目漱石論』『宿命の暗渠』
『横光利一の軌跡』『長塚節』『折口信夫の世界』『柳田國男の思想』『正岡子規』『抒情の行程』『写
生の文学』『子規の像、茂吉の影』『文学的視線の構図』などがある。



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