鈴木重嶺(翠園)関係資料(7)

 

 

                       深沢 秋男

                       菅野 貴子

 

 

鈴木重嶺関係資料は、これまで6回にわたって紹介してきた。今回は、その後調査することが出来たものを紹介したいと思う。今回紹介する資料は、深沢秋男所蔵のものである。配列は、年代順にしたが、厳密ではない。今後も追加されるものと思われるので、その都度紹介したい。

 

 

  A、短冊・色紙

 

1 木枯  夜あけなは□りも曇らぬ空や見む

           明らはねられねこからしの風

                        八十叟  重嶺

  裏書込「鈴木」(朱)

 

2 朝氷  あつふすまかつきても猶さえにしを

           玉もひのみつけさこほりたる

                       八十一叟  重嶺

 

3 落葉深  ふみわけむかたもなきまて紅葉は

           散れともしはし朝きよめすな

                        八十二叟 重嶺

 

4 初秋風  あきたつとおもふゆゑにやきのふにも

           かはらぬかせそけさは身にしむ  

                       八十三叟  重嶺

  これは、色紙(縦208ミリ×横180ミリ)であるが、本居豊頴・海

  上胤平等のものと一括されている。

 

5 あきの野にむすへる露は分なくに

           在し世しのふそてそひちぬる

                       八十三叟  重嶺

  古書店注記「幕府の旗本、江戸幕府最後の佐渡奉行、浜松県知事、相川

  県知事」

 

6 菊盛久  おほかたのさかりはやかてうつろふを

           世にきくはかり久しきはなし  

                       八十四翁  重嶺

  裏書込「歌人 鈴木重嶺翁 鈴木氏」

 

7 新年聞鶯  うくひすはとく来にけらしあら玉の

           としをことほくひとくとそなく    重嶺

  裏書込「鈴木重嶺」

 

8 籠中鶯  せはきこのうちに有なからうくひすは

           あたりの家を春になしたる      重嶺

  裏書込「鈴木重嶺 国学者 村山素行ニ学ブ 幕府ノ臣 勘定奉行、佐渡

  奉行ヲ経、兵庫頭ニナリ 明治六年佐渡県知事トナル 明三十一年没」

 

9 野春雪  下もえのを草あらすは春の野の

           ゆきもかはかりきえはいそかし    重嶺

  裏書込「鈴木重嶺」

 

10      ほときすきけは恋しも君まし

           むかしをなれもしのひてやなく    重嶺

 

11 待郭公  藤なみのうつろひしよりほときす

           まつに心のかりこそすれ      重嶺

  裏書込 辞典のコピー貼付「シゲネ 重嶺(鈴木)国学者。村山素行に学

  ぶ。徳川幕府の臣。初め大之進と称す。勘定奉行、佐渡奉行を経て、兵庫

  頭となり、隠居後、田安家に寄る。明治六年佐渡権知事となり、十一年辞

  職、三十一年十一月二十六日卒す。」

 

12 郭公  としのはにきけともきけとほときす

           なけともなけそ声のふりせぬ     重嶺

  裏書込、白紙貼付「鈴木重嶺 名ハ大之進旧幕臣秀賢門ノ歌人 明治三十

  一年八十五没」 古書店注記「※旧幕臣」

 

13 朝霞  朝ほらけたつや霞にひかれつゝ

           そこはかとなくいてゝ見るかな   重嶺

  裏書込「元相川県令正五位鈴木重嶺」

 

14 菊花盛久  たくしそへし竹を杖とはしたれとも

           日をへておいぬしらきくの花    重嶺

  裏書込「東京 従五位 鈴木重嶺大人」

 

15 夜初雪  つもるまてふらせてしかなやり戸なく

           めつらしと見る夜はのはつゆき   重嶺

  裏書込「鈴木重嶺」

 

16 冬梅  よへふりしみそののはたに残るかと

           立いて見れは梅さきにけり    重嶺

  裏書込「鈴木元佐渡権令 十三」

 

17 寄帯恋  今宵またひとりかねなんさむしろに

           しつはたおひのかたむすひして   重嶺

  裏書込「鈴木兵庫頭」 古書店注記「鈴木重嶺 徳川幕府に仕え、最後の

  佐渡奉行となる。短歌をよくした。」

 

18 冨岳  天地のいつれの神かうしはける

           くものうへなるふしの高ねは    重嶺

  古書店注記「鈴木重嶺 幕府の旗本で儒者。」

 

19 つゑ  世とゝもに紫かへぬ竹を杖にきりて

           つかへのみちにつかむとそ思ふ   重嶺

  裏書込「東京 鈴木氏 旧相川県参事」

 

20      きのふかとおもひしことはむかしにて

           現とゆめのこちこそすれ     重嶺

 

 

21 月前虫  なれもまた月やめつらむすめはすみ

          曇れはむしの声たゆむなる     重嶺

 

 

  B、短冊等、貼交ぜ掛軸

 

縦1220ミリ×横450ミリの掛軸に短冊・封筒等8点が貼込まれている。

 

1、縦180ミリ×横58ミリ。

「山路菊 秋霜 谷紅葉 遠□/惜暮秋/菊盛久 暮秋虫 紅葉 □深 故

 郷鶉/鳴千鳥」

 

2、桑田鑒宛、鈴木重嶺書簡の封筒。縦177ミリ×横142ミリ。

「北多摩郡府中町五千七百九十五番地/桑田鑒殿/□□/八月十二□□/麹

 町区飯田町五丁目三十番地/鈴木重嶺」消印には「武蔵/府中/廿九年八 

 月/十二日/便」とある。

 

3、縦180ミリ×横58ミリ。

「早春□ 若□木 朝桜 桜置枕/雑 名所山 暁□□/初聞鶯□□ □辺

 折 余寒風/雑 名所松 □花 □木 野若草 名所椿 閑居春明」

 

4、縦160ミリ×横81ミリ。

「さす岡にむしなく 里□花 庭紅葉/閑庭菊 湖□□ 植菊紅葉□/残菊

初冬紅葉 夜時鳥 冬の里/橋上初霜」

 

5、縦158ミリ×横112ミリ。

「待花 恋誠 朝雲雀 故郷山吹/潮干狩 待頃花 夜場雁 浦□雁/花間

鶯 湖辺花 風前柳 春旅/水辺山吹/残□ 首夏月里柳花 待郭公/首夏

藤 新竹」

 

6、短冊 縦359ミリ×横57ミリ。

「森鵑 ほときすあすもきかはやおひしける杜のこかけにをちかへりなく

                    八十五翁  重嶺」

 

7、縦167ミリ×横80ミリ。

「首夏□ 待郭公 水辺卯花/庭新竹 残鶯/(以下朱)早苗 夜水鶏 都

夕立/夏夢 初見蛍 桜□久/夏夜趣(以上朱)/名所郭公 夏草露 花あ

 やめ 棟 樹陰納涼」

 

8、桑田鑒宛、鈴木重嶺書簡の封筒。縦178ミリ×横137ミリ。

「武州北多摩郡府中町/桑田鑒殿/□□/十二月三十日/東京/麹町区飯田

町五丁目三十番地/鈴木重嶺」消印には「武蔵/府中/廿九年十二月/三十

一日/便」とある。

 

 

  C、掛軸

 

縦1331ミリ×横475ミリ。

「橋上江楼思渺病残月光如水/水連天同来翫月人何処/風景依稀以去年  緑

堂」 落款・1、陽刻方形朱印、31ミリ×31ミリ「緑堂」。落款・2、

陰刻方形朱印、31ミリ×31ミリ「雲烟過眼」。表に「鈴木重嶺氏 佐渡

奉行 浜松県知事」「一八六五 慶応元年」とある。

 

 

付記 資料の翻字は菅野が担当し、深沢が確認した。判読し得ない部分など、今後補訂してゆきたいと思う。

 

 

【注】この後に、短冊、色紙、掛軸等の原物の写真33点が収録されている。ここでは省略した。

 

●本稿は、『芸文稿』第3号、(平成22年4月発行)に発表したものを改訂した。