日本童謡撰 あやとりかけとり

               竹久夢二




 千九百十六年に出版した「ねむの木」に、その後古い本の中から、または諸方へ旅行した折々、口伝てに拾ひあつめた童謡幾篇かを書き添へ、千九百十九年に出した「歌時計」の姉妹篇のやうな形で、この本の出版を思立つた。
 その年の秋、書肆の方へ原稿は送つたのだが、その頃の所定めぬ私の旅行は、落付いて何一つ出来ない心持にしてしまつたので、この本も、そのまゝにして、だから挿絵も装画もしないで、今日になつてしまつた。
 この頃、また思出したやうに、書肆へ催促して、挿絵も装画も、ことしの夏のはじめから画きだした。
 「クリスマスまでにはこんどは出します。なんしろ童謡が流行つてきましたからね」書肆の番頭さんは、さう言つて上梓を急きだした。
 この本は、今出しても遅すぎもしなけれは、十年前に出てゐても早すぎもしない。番頭さんは、童謡流行の秋だと言ふけれど、私にして見れは、もはや二十年来、童謡風な絵も唄もかいてゐる。世間はどうあらうと、英雄崇拝時代が過ぎて、所謂児童の世紀が来たらうとも、私は私のちよつとした好きな仕事をしたまでだ。それにしても、たま/\我国の古い童謡が忘れられやうとしてゐる今の時代の子供達に、この本を送ることが出来たのは喜ばしい。
 今、我国に行はれてゐる小学唱歌が、所謂教訓的で、新しい童謡が、所謂民衆的であるかどうか知らないが、いつの世に誰が作つたとも、誰が歌ひ伝へたとも知れない我国のこれ等の童謡には、がつしりとした線の太い純朴な、万葉の気韻をさへ持ち、瓢逸なその落想には、太平な民族の微笑がある。
 新しい童謡を、舶来金属の絃にたとへるなら、これ等の古い童謡には、笛・太鼓のおかしいなつかしさがある。
 なんにせよ、私は、この可憐な唄をあつめたり、さしゑする仕事を楽しんでしたことを書いておかう。
  千九百二十二年十二月



お山

お山が曇つた。
三百六十五日
薄も刈らず、
松葉も掃かず、
それで山曇つた。




星さん、
星さん、
ひとり星で出ぬもんぢや。
千も万も出るもんぢや。


七夕

一年に一度の七夕さん、
鬼灯採つてもだんないか。


十三夜

影や、だうろく神、
十三夜の牡丹餅。


麦畑

何で畑は青い。
麦の穂波で青い。
風が吹いて青い。
雨が降つて青い。


さくら

ねんねんよう、
おころりよう。
家のこの子はいつ出来た。
三月桜の咲くころに。
それゆゑお顔が桜色。


雨と風

雨、雨降るな、雨ふらば
お寺の屋根に巣をかけた
可愛い小鳥が泣かうもの。

風、風吹くな、風ふかば
今日巣立した雛鳥が
道を忘れて泣かうもの。




路の端の茨、
お糸街が通りや
茨がとめる。
放しやれ茨、
はや日も暮れる。


●(オウヘン+「攵」)瑰

浜の●(オウヘン+「攵」)瑰
なぜ濡れる。
浜の男波が
来て濡らす。
来て濡らす。


相撲取花

げん/\花と
相撲取花と
結び合せて、襷にかけて、
あちら向かんせ、髪結うて進上。
こちら向かんせ、化粧して進上。


合歓の木

合歓の木、
合歓の木、
寝やしやんせ。
お鐘が鳴つたら
起きやしやんせ。


安楽日花

安楽日花よ、
やすらひ咲いた
明日ない花よ。
かざす小袖を荊棘にかけな、
やすらひ花は………。


春の鳥

な泣きそ、泣きそ、春の鳥、
春の小鳥は何を泣く。
親が死んだか、子が無いか。
親も御座れば、子も御座る。
おいとし、殿御を持つたらば
鷹匠に捕られて今日七日。
七日と思へば四十九日、
四十九日の銭金を
どうして貰ろたな好からうぞ。
高い米買うて船に積み、
安い米買うて船に積み、
船は何処船、加賀の船、
北前船こそ品よけれ。




寝たか
寝なんだか
枕に問へば、
枕もの言うた、
寝たと言た。



つづれさせ/\
はや寒むなるに


鹿

向の山で鹿が啼く。
暑くて啼くか、
寒くてか。
暑くも、寒くもないけれど、
九十九人の猟人が
九十九谷を取巻いて
親子もろとも打つわいの。


鍛冶どん

鍛冶どん、鍛冶どん、
火一つごじやれ。
火はない、ないよ。
あの山越えて、
この山越えて、
火はこゝにある。




雪はちら/\
空は灰だらけ。




うちの隣の千松は
近江の戦にたのまれて、
一年待てどもまだ見えぬ。
二年待てどもまだ見えぬ。
三年経つたら首が来た。


茅花

つうばな、茅花、
一枝折つては腰にさし、
二枝折つては髪にさし、
三枝が先に日が暮れて
上の庄屋へ泊らうか、
下の庄屋へ宿とろか。
中の庄屋へ泊つたら
夜著は短し、夜は長し、
うつら/\とするほどに
簪の花を所望され
紅い花を進ぜうか、
白い花を進ぜうか、
いえ/\みんな進ぜましよ。




鴬や、うぐひすや、
たま/\都へ上る時
梅の小枝に昼寝して
お蝶に何々著せてやる。
上衣にこん/\紺縮緬、
下着にちん/\珍縮緬、
それほど持たせてやるからにや
道で転ぶな、手をつくな、
殿に逢うたらお辞儀をせ、
お馬が来たら傍へよれ、
手習子供に構ふなや、
構ふと草子で打たれるぞ。




千畳坐敷の唐紙育ち。
山を拓いて、蔵建てゝ、
蔵の隣に松植ゑて、
松の隣に竹植ゑて、
竹の隣に梅植ゑて、
梅の小枝に鈴さげて、
手綱紋の紐つけて、
その鈴ちやら/\鳴る時は
坊ちやまさぞ/\嬉しかろ。
嬢ちやまさぞ/\嬉しかろ。


寺町

蜜柑、金柑、なんぼ食べた。
お寺の二階で三つ食べた。
お寺の鐘楼は誰が建てた。
八幡長者の乙娘。
乙が嫁入する時にや
長い寺町しやら/\と、
短い寺町しやら/\と。
しやら/\雪駄の緒がきれた。
姉様すげてお呉れんか。
すげてあげるは易けれど、
針もなければ、糸もない。
針は針屋の腐針。
糸は糸屋の腐糸。
姉様雪駄に血ががついた。
血ではないもの、紅ぢやもの。
京の紅こそ品よけれ。


天満の市

ねんねころいち天満の市は
大根そろへて船に積む。
船に積んだら何処往きやる。
木津は難波の橋の下。
橋の下には鴎がゐるよ。
鴎とりたや、網ほしや。
網はゆら/\由良の助。


箱根の関

こおこは何処の細道ぢや。
天神様の細道ぢや。
ちよいと通して下さんせ。
御用のないもの通せません。
天神様へ願かけに、
お札を納めに参ります。
お前の家は何処ぢやいな。
箱根のお玉でございます。
そんならちよい/\通らんせ。
  往きはよい/\
  帰りは怖い。


両国橋

長い両国橋
お馬でやろか、
お駕籠でやろか。
お馬もいやや、
お駕籠もいやや、
お江戸ではやる
紺傘さして
十六七に手を引かれ、
手を引かれ。


佐渡が島

ねん/\とろりよ、ねんとろり。
朝はとうからお目ざめで、
夜はとろ/\御寝なされ、
暮れりやお寺の鐘が鳴る。
金山佐渡へ金掘りに、
金が湧くやら、湧かぬやら。
一年待てどもまだ見えぬ。
二年待てどもまだ見えぬ。
三年三月で状が来て
お染に来いと書いてある。
お染の小袖の紺縮緬
松葉散らしの模様見れば、
待つに来んとは情ない。
来いと言たとて往かれよか、
佐渡は四十五里波の上、
波に揺られてゆら/\と。
ねん/\とろりよ、ねんとろり。


桑名の宿

桑名の宿で日が暮れて、
お茶屋の椽へ腰かけて、
お水を一口お呉れんか。
お水を上げるは易けれど
吊桶の底が抜けました。
やれ/\きつい姉さんだ、
お茶を一杯お呉れんか。
お茶を上げるは易けれど
茶釜の底が抜けました。
やれ/\きつい姉さんだ、
煙草を一服お呉れんか。
煙草を上げるは易けれど
煙管の首が抜けました。
やれ/\きつい姉さんだ。


相の中山

相の中山
油屋お紺、
お紺の墓へ雨が降る。
雨ぢやないぞえ、
涙ぢやものを。
可愛い貢の涙雨。


沼津

この子の可愛いさ限りしなし。
山で木の数、萱の数、
富士へ上れば星の数、
沼津へ下れば松林、
千本松原、小松原、
松葉の数よりまだ可愛い。


淀の川瀬

淀の川瀬の水車、
どんどんと落ちるは
滝の水。
ちよろ/\落ちるは
お茶の水。


六地蔵

橋の下の六地蔵
鼠に頭食はれた。
鼠こそ地蔵だ!
鼠が地蔵なら
何しに猫に捕られた?
猫こそ地蔵だ!
猫が地蔵なら
何しに犬に捕られた?
犬こそ地蔵だ!
犬が地蔵なら
何しに狼に捕られた?
狼こそ地蔵だ!
狼が地蔵なら
何しに火に焼かれた?
火こそ地蔵だ!
火が地蔵なら
何しに水に消された?
水こそ地蔵だ!
水が地蔵なら
何しに人に呑まれた?
人こそ地蔵だ!
人が地蔵なら
何しに地蔵拝んだ?
ほんの地蔵は六地蔵!


藍染川

やれ腹たつ。腹たつならば
硯と筆とを手にもつて、
思ふことをばかきおいて、
藍染川へ身をなげた。
下から鯉がつゝくやら。
上から烏がつゝくやら。
お寺の前で子をうんで
住寺の袈裟へ血がついた。
雨垂水であらつて、
香炉の火であぶつて、
香炉の火がたらいで
油の火であぶつて、
油の火がたらいで
竃突の火であぶつて、
竃突の火もたらいで
火燵の火でかわいた。


日傘

日傘くる/\山路ゆけば
お菊さんの振袖木にかゝる。
さゝ、どうしよぞいな。


隣の頓平さん

隣の頓平さんは
何処へ往つた。
佐渡の金山、金掘りに。
金が湧くやら、湧かぬやら。
山の上から金山見れば
袖に時雨が降りかゝる。


狐雨

何処から北やら、南やら、
狐の嫁入り鼬が媒人、
二十日鼠が三升樽さげて、
奥の細道ぶら/\ゆけば
雲もないのに雨が降る。
雨が降る。


お染

酒屋のお染は縹致好し、
鎌倉武士にお茶たてゝ
染分手綱を貰うたが、
帯に短し、襷に長し、
観音様へ願かけて
鈴の引緒にあげました。


雪やこんこ

雪やこんこ。霰やこんこ。
お前の背戸で団子も煮える。
小豆も煮える。山人は帰る。
赤子は泣くし、杓子は見えず。
やれ、いそがしや。


乙姫
奥のお池に蛇がたつた。
八幡長者の乙娘
好くもたつたり、企んだり。
手には二本の玉をもち
足には黄金の靴をはき
あゝ呼ベ、かう呼べ、と言ひながら
山暮れ、野暮れ、往つたらば
草刈殿御に行逢つて、
帯を下され殿御さん、
小袖を下され殿御さん。
帯も小袖もやすいこと、
俺等の女房になるならば
朝はとうから髪結うて、
糸もきり/\巻いてやる。
何処へやるにも船でやる。
船は何船。二千石。
積んだ荷物は何々ぞ。
一にギヤマン、二に緋繻子、
三にオランダ砂時計、
四には白無垢、五にゴロス、
四十八なみ蔵たてゝ、
蔵に夕日のあたるとき
あれさ、出船の鐘が鳴る。


雀の子

泣くなや、泣くなや、雀の子、
泣くと餌差が差しにくる。
泣かねば鷹匠が撫でにくる。


お正月

   1
正月さんが御座つた。
何処まで御座つた。
富士のお山の麓まで。
何に乗つて御座つた。
お餅のやうな下駄はいて、
譲葉に乗つて、
ゆづり/\御座つた。
   2
お盆のやうな餅ついて、
割木見たよな魚添へて、
霰のやうな飯食べて、
火燵へあたつてねんこ/\。


玄猪

   1
げんしや、げんし、
げんしの晩に
祝はぬものは
鬼性め、蛇性め、
角の生えた子生め。
   2
猪の子、猪の子、
歯朶の下で昼寝して
猟師の飛ぶのを夢に見た。
   3
西行法師は一人旅、
四国西国巡る時
菎蒻背骨を足にたて、
豆腐の角で蹴つまづき、おゝ痛や、
もし/\そこな姉御さん
これに薬はあるまいか。
薬もだん/\あるけれど、
山で掘つた蛤と
浜辺で生えた松茸を
雪の黒焼火で溶いて
宵につけると朝癒える。


稲荷祭

稲荷万年講、お稲荷様のお初穂、
十二銅おあげ、おあげに戸あげ、
戸あげの上から落こちて
ちんちらちんこを摺むいた。
膏薬代おくれ、
小判の端をちよつと切つておくれ。


お盆唄

   1
今日はお盆の十六日
地獄の釜の蓋さへあくに
出しておくれよ、中形を。
   2
黒門町の黒船御覧うぜ、
幕は緋緞子、葵の御紋、
中の囃の顔見たや。
   3
ぼん/\盆は今日ばかり、
あしたは嫁のしをれ草。


お月様

   1
お月様いくつ、十三七つ、
七折著せて、京の町へのぼつて、
彼方へしやらり、此方へしやらり、
五条の橋で笄落した。
誰が拾つた。
櫛屋の息子が拾つた。
泣いてもくれず、笑うてもくれず、
滑つて、ころんで、七折汚した。
洗屋で洗つて、
干屋で干して、
熨斗屋でのして、
畳屋でたゝんで、
手箱へ入れた。
   2
お月さんいくつ、十三七つ、
まだ年若いな。
若船乗つて
唐まで渡れ。
   3
お月様いくつ、十三七つ、
金の屏風に切子の枕、
あの子を産んで、この子を産んで、
お万に抱かしよ。
お萬ほ何処往た。
油買ひに、茶買ひに。
油屋の門で滑つてころんで
油一升こぼした。
太郎どんの犬と次郎どんの犬と
みんな嘗めてしまつた。
その犬どうした。
太鼓に張つた。
その太鼓どうした。
あんまり敲いて破れた。
それからどうした。
火にくべて灰にした。
その灰どうした。
風が吹いてけし飛んだ。

大事なお月様雲めがかくす、
とてもかくすなら金屏風でかくせ。
   5
まうし、まうし、お月様、
猫と鼠が一升さげて
富士のお山を今越えた。
   6
大事なお月さん
黒坊がかくす
小袖の下から
白い顔をちよと出した。




   1
一つ星目つけた。
長者になあれ、
   2
天竺天の星様が
お城の門で子を産んだ。
金の冠をきんきせて、
白いお馬にのせかけて
流れの岸をゆく時は
青い柳がしやな/\と。
川の流れがしやら/\と。
赤い襟したつばくらが
状箱くはへて宙返り。




   1
雨、あめ、こんご、
お寺の茶の木へ
ちやつととまれ。
   2
雨晴れてくれ、
なんまいだ。
ちうちゆの山に
簑笠おいてきた。
   3
雨、あめ、あがれ、
お茶屋の二階で
振袖あがる。




   1
ふれ、ふれ、小雪、
たまれや、粉雪、
垣や木の間に。
   2
雪やこんこ、霰やこんこ、
お寺の前の山椒の木の下に
一升五合たあまれ。
   3
雪花、散り花、
空の灰花、扇を腰にさして
くる/\舞ひ花。
   4
爺さいの、婆さいの、
綿帽子雪が降るわいの。
雨戸も小窓もたてさつし。
   5
天上見れや灰だらけ、
下見れや綿だらけ。
   6
雪は殿様、霰は小姓
雨は草履取、霙は槍持。
   7
雪はちら/\。
灯はしん/\。




   1
天道様強いな。
風の神は弱いな。
   2
山の婆、山の婆、
風一杯おくれ。
   3
北風いやよ、
南がふけば、
港に花が咲く。




   1
かんなり山往け、
山から里往け、
安達が原の
鬼婆の臍をとれ。
   2
雷落ちよ、
桑の棒で叩くぞ。
   3
があらがら、ぴいかぴか、
かゝ蚊帳つれ、
おせん線香たけ。


動物

   1
何で烏は真黒だ
焦げて、転げて、真黒だ。
   2
烏、かあらす、勘三郎、
西の空真赤、
われがうちや焼ける、
はやういて水かけろ。
   3
烏が笑つた、
黒牛見て笑つた。
何とて笑つた。
黒いとて笑つた。
   4
烏よ、翔けれ、
権現堂が閉る。
   5
烏はかあ/\勘三郎、
鳶はとろ/\藤三郎、
仲好く遊べ。
   6
烏はかあ/\返せ。
鳶はたうとう取つちやつた。
   7
鳶とろろ、お旅所の前で
油揚やるからわく/\廻れ。
   8
裏の田圃のまん中で
鳶が田螺をむくわいな、
たアんき、ぽオんき、たんころりん。
   9
雀や鈴ふれ、烏は鉦たゝけ、
鳶とろゝと笛吹いてまはれ。
   10
燕泥食つて、土食つて、渋い
   11
百舌鳥、もず、きいちきち、
あしたあ日か好いか、
上吉々日。
   12
鳰の頭に火がついた。
比丘尼さんが水かけた。
   13
蝌斗は何故髪結はぬ。
油元結ないから結はぬ。
   14
蜻蛉、とんぼ、
おいらの母さに抱かしよ。
乳のいぼにとまれ。
   15
おいらの指は金の指、
蜥蜴の指は腐れ指。
   16
何がやさしや、蛍がやさし、
小草の蔭でぴか/\と。
   17
蛍来い。
阿祢陀の光で傘さして来い。
  18
ほおたろこい。太郎吉来い。
昼はお母さんの乳呑んで、
夜は提燈高のぼり。
   19
とんぼ、べらんぼ、
もとの屋敷にとまれ。
   20
日向の石はやけた。
日向へとまれ。
   21
蝶々とまれ、菜の葉にとまれ。
菜の葉がいやなら手にとまれ。
   22
まひ/\つぶろ、
風呂屋が喧嘩だ。
角だせ、鎗だせ、鋏箱だしやれ。
   23
でろ/\、でゞ虫、
みろ/\、蓑虫
小春の日和
   24
大綿、小綿、
河原の碁石。
   25
やれとべ、蜻蛉。
そりやとべ、鳶。
   26
白鷺、しろさぎ、
なんで首や長い。
びたるて長い。
ひだるけりや田打て。
田打ちや泥がつく。
泥がつきや払へ。
払へばなほひだるい。
   27
狸どんの舟は泥の舟、
水におぼれてぶつくらぶんのぶん。
   28
蝙蝠来い。
行燈にかくれて笠きてこい。


お日様

あちらの山陰げれ。
こちらの山照つとくれ。
照らにや天下さんの
帯切つてかくそ。
何処へかくそ。
椽の下へかくそ。
椽の下は見える。
屋根の瓦へかくそ。
そりや、もう照つてきた。


時雨

北山時雨、
黒雲、赤鬼。


夕焼雲

ありや誰が紅だ。
向の山の
おせんが紅だ。
おせんが機織る紅だ。


向ぼつこ

影になるものは
傘小僧。
破いてすてろ。


子守唄


とんとんとろりや、
とんとろり。
好い児の坊やは誰が子ぞや。
お城の上の星の子か、
南の海の椰子の実か。
坊やを生んだ母が子ぞ。
坊やを抱いた父が子ぞ。
とんとんとろりや、
とんとろり。
好い子の坊やはねんねしな。
   2
ねんねしなされまだ夜中、
明けりやお寺の鐘が鳴る。
鐘ぢやない/\、母さんの
銀の簪が鳴るわいの。
   3
宵にはとうから御寝なされ、
朝はとうからお目ざめで、
何を褒美にあげましよぞ。
鶏の蹴合を御覧じか。
鶏の蹴合がおいやなら、
お乳の出花をあげましよぞ。
   4
ねんねこ、ねんねこ、ねん/\よ。
あちら向いてもやあま山。
こちら向いてもやあま山。
山の中には何がある。
椎や榧の木、松ばかり。
   5
ねんねんよう、おころりよ。
ころころ山の小兎は
なぜにお耳が長ござる。
お母さんのお腹にゐた時に
推の若葉を食べたから。
なぜにお眼々が紅ござる。
お母さんのお腹にゐた時に
紅い木の実を食べたから。
ねんねんよう、おころりよ。
   6
おらの隣の藤吉は
あんまり子供をほしがつて、
御所の鼠を捕へて、
月代剃つて、髪結うて、
明日はお城の御普請で
牡丹餅売りにいつたらば、
石垣なんぞのあはひから
隣の三毛猫飛んできて
牡丹餅ぐるみにしてやつた。
   7
伊賀と大和の境のさくら、
花は大和の根は伊賀の。
   8
ねん/\、ねん/\、ねん/\よ。
ねんねした子に羽子板と羽根と、
ねんねせぬ子に羽根ばかり。
   9
ねんね五郎一、竹馬与一、
竹にもたれてねんねしな。
   10
ねんねこさんねこ酒屋の子、
酒屋がいやなら嫁にやろ。
嫁入道具は何々ぞ。
箪笥、長持、鋏箱、
琉球包が十三荷、
風呂敷包は、数知れず、
これほど持たせてやるからにや
一生去られて戻るなや。
そりやまた母さん胴慾な、
千石積んだ船でさへ
船が変れば戻るもの。
ねん/\よ、ねんねこよ。
   11
ころりや、ころりや、ちんころり、
ころりと鳴くのは庭の虫。
虫のお宿はをみなへし、
尾花、刈萱、萩、桔梗、
七草千草の数よりも
この子の可愛さ限りなし。
ころりや、ころりや、ちんころり。
   12
とん/\とろりこ、とんとろり、
とろり/\と睡たい時は
長持三艘の衣裳もいや、
馬に五十駄の金もいや、
とん/\とろりこ、とんとろり。
   13
うちのこの子の枕の模様、
梅に鶯、日の出の桜、
梅に肖るとも、桜に肖るな、
おなじ花でも散りやすい。
   14
ねんね、寝た子に香箱七つ、
起きて泣く子に石七つ。
   15
この子泣くゆゑ日に日に痩せる。
帯の二重が三重まはる。
ねんねんよう、ねんねんよう。
   16
泣いてくれやるな、殿御はお留守、
烏啼さへ気にかゝる。
   17
ねんねする子にや赤い衣著せて、
乳母に抱かせて伊勢詣。
起きて泣く子にや縞の衣著せて、
籠を背負はせて山へやろ。
   18
ねんねこねん/\、ねんころよ。
おころり山の雉の子は
泣くとお鷹に捕られるぞ。
城の鷹匠は何処へいた。
山越え、野越え、町へいた。
町のお土産何々ぞ。
でん/\太鼓に振鼓、
敲いて聞そよ、ねんねしな。
   19
ねんねのお守は何処へいた。
あの山越えて、野を越えて、
行けども、行けども、里はなし、
遠い野末の柿の枝に
赤い夕日を見たばかり。


遊戯唄
    其他
   1
寄つてきな、よつてきな、
鬼事するもんよつてきな。
   2
一人狙ひ、三度鬼。
   3
鬼ぬけ、間ぬけ、
太鼓背負つて逃げろ。
   4
甘いか、酸いか、甘けりや出してやろ。
   5
手つなんご、つなご、
博多の浜までつなご。
   6
どん/\橋渡れ、
どん/\橋の上を
狐が渡る。
   7
千艘や、万艘
お船はぎつちらこ。
ぎつちら/\漕げば
恵比須か、大黒か、
こちや福の神よ。
   8
どう/\めぐり、こうめぐり、
粟の餅もいいや、いや。
米の餅もいいや、いや。
蕎麦切索麺食ひたいな。
   9
まはり/\の小仏は
なんで背が矮い、
親の日に海老食べて
そんで背が矮い。
うしろの正面だあれ。
   10
桃栗三年、柿八年、
柚子は九年で生れかゝり、
梅は酸いとて十八年。
   11
お君さんの隣に誰がゐる、
でえんこ、でんこ。
   12
坊さん、坊さん、何処いくの。
私は田圃へ稲刈りに。
私も一緒に連れていて。
お前がいくと邪魔になる。
こゝなお寺の糞坊主。
   13
わつしよい。わつしよい。
天王様だ。わつしよい。わつしよい。
てんぐてん車に誰々乗せよ。
二階坐敷の和尚様乗せよ。
わつしよい。わつしよい。
   14
泣き虫、毛虫、
はさんですてろ。
   15
十文ぢや、十文ぢや、
お嫁さんの駕籠は
戻りは三文ぢや。
深い川へはめよか、
浅い川へはめよか、
おなじことなら深川へ。
どんぶらこつこ、どんぶらこ。
   16
つくしんぼ、とうしんぼ、
彼岸の入りに袴はいて出やれ。
   17
ずい/\ずつころばしや
胡麻味噌ずい。
茶壼に追はれてとつぴんしやん。
ぬけたらどんどこしよ、
俵の鼠が米食つてちゆ。
ちゆう、ちう、ちゆう。
   18
茶に吹く風は
大津の馬よ、
も一つこつちへお帰り。
   19
凧が木にかゝつた。
鍛冶屋のお父さんとつてんかん。
   20
向うの媼さまお茶呑みござれ。
道に鬼がゐてよう往かぬ。
鉄砲かついで叱々とござれ。
   21
やめた。ちやつきりこ。
鬼は川へ流いた。
   22
草履かくし常蓮坊、
柿の枝に一つ、
萱のかげに一つ、
紺屋の角にまだ一つ。
おいらの蔵に火がついた。
   23
草履きんじょ、きんじよ。
お天満てんま。
どん/゛\土橋の下の
菖蒲は咲いたろか。
まだ咲きそめぬ。
妙々車手にとつて見たら
しどろく、十三六、
一ぬけ、九年母。
どんどこしよ。
   24
お山のお山のお狐さんは
隣へお芋食べにいた。
おゝ可笑し。おゝ可笑し。
   25
火事は何処だい。西河岸だ。
お地蔵さんの頭巾は丸焼けだ。
   26
ひいらいた、開いた。
何の花開いた。
蓮華の花開いた。
開いたと思つたらまたつうぼんだ。
つうぼんだ、窄ぼんだ、
何の花つうぼんだ。
蓮華の花窄んだ。
窄んだと思つたら
また開いた。
   27
かあごめ、かごめ
籠の中の鳥は
いつ/\鳴きやる。
夜明の晩に
油一升こぼして
つる/\滑つた。
   28
昼は日傘で日が暮れて、
提灯ぶら/\まゐりましよ。
   29
明日は朔日、
お尻まくり、はあやあろ。
   30
今日は二十八日、
明日はお福の団子の日、
お尻の用心、御用心。
31
やれかん/\、すれかん/\、
擂つたも、擂つたも、生味噌だ。
   32
爺さん、婆さん、毛唐人、
お腰の曲つた爺さんだ。
とつても歯のない婆さんだ。
結構人の爺さんだ。
結構人の婆さんだ。
   33
影や道陸神、
十三夜の牡丹餅、
さんさ、踏んで見やれ。
   34
待夜、たいや、
駒何処へ繋いだ。
長老殿のお倉の下へ
小笹食はせて繋いだ。
   35
奥山の白狐、
おいらも二三度魅かされた。
   36
ぜうかいな、ぜうかいな、
花が見たけりや岩田へござれ、
岩田長助さんの花園見れば
梅に、桜に、躑躅の花よ、
抱いてからまる白藤の花、
わたしや松の木ゆら/\と。
   37
小菅の山で茶を摘む女郎
十七八の花盛り、
あつちから貰ひ、
こつちから貰ひ、
貰うた帯が十三七つ。
一筋貰うて皆戻す。
   38
一人きな、二人きな、
皆きな、寄つてきな。
いつきて見ても
むづかしなんの薬師、
こゝのやの十よ。
   39
西の宮から蛇が出たげなが、
怖い蛇ぢやげな、嘘ぢやげな。
   40
ひとごに、ふたご、みわたしや嫁御。
斜子の帯を矢車にしめて
こゝのよで十よ。
   41
油屋お染、
久松十よ。
   42
正月門松、
二月初午、
三月節句、
四月釈迦、
五月幟、
六月天王、
七月七夕、
八月八朔、
九月菊月、
十月恵比須講、
霜月。師走。
   43
無花果、人参、山椒に椎茸、
牛蒡に、零余子、七草、山芋、
九年母、唐辛
   44
ひや、ふや、お駒さん、
煙草のけむりは丈八つさん。
   45
ひや彦平、
禿げたか次郎平、
次郎平の頭は何故禿げた。
親が邪険で火にくべた。
   46
ひとめがふた目、
見る目が与次郎、
与次郎の顔は
いつきて見ても
巴旦杏の実より
日が照るやうな。
   47
梅干さんといふ人は赤い顔に皺よせて、
あれは酸い、これは酸い、すい/\すい。
   48
ひい、ふう、みい、よう、
四方の景色を春と眺めて
梅に鶯、法華経とさへづる。
明日は祇園の二軒茶屋で
琴や三味線、はやしてん/\
手鞠唄。歌の中山、
ちよごにごじふご、
ちよろく、ろくろく、
ちよしち、しちしち、
ちよはち、はちはち、
ちよくにじふで、
ちよつと百ついた。
   49
ひい、ふう、みい、よう、いつ、
むう、なゝ、やあ、こゝの、とを、
渡海屋の嫁御は三ツ子を生んで、
漆屋へやつて漆にまけて、
紺屋へやつて色つけて、
紙屋へやつて色紙貰ろて、
いろはと書いて左義長にあげて、
どんどの橋で袖引く、眼引く。
新町島屋の爺さんぢや。
今頃何しにお出てたか。
雪駄が代つて替へにきた。
お前の鼻緒は何鼻緒。
表繻珍の金唐革ぢや。
そんな革なら嘘の皮、
何処ぞそこらを問ひなされ。
   50
雪をまるめてお玉とつけて、
抱いてねたらばみな溶けた。
   51
裏の河原で紅皿拾ろて、
そつと秘して袂にいれて、
草履ぬぐとき見咎められて、
母さんに叱られ、父さんに折檻、
きつい折檻、血の涙。
ちよつと一丁よ。
   52
向う通るは糸屋の娘、
京で一番伊達者でござる。 
諸国諸大名は弓矢で殺す、
糸屋娘は眼で殺す。
   53
おれが婆さは焼餅焼きで
宵に九つ、夜明けに七つ、
明日の茶の子に十三七つ、
一つ残して袂に入れて
馬に乗るとてすつとん落し
取るにや恥かし、
取らぬは惜しや、
どうか馬方取つてくりやれ。
   54
伊賀の勘十さん松坂て
三春の駒に落されて、
何にもお怪我は御座らぬか。
竹の切抹で横腹さして、
わしが死んだら墓建てゝ、
墓のまはりに梅植ゑて、
梅の小枝に鈴さげて、
鹿子絞の紐つけて、
七日七日にお七をよんで
その鈴ちやら/\鳴る時は
八万地獄も何怖かろね。
鬼に責められ、蛇にとりまかれ、
ぐるり/\と輪廻の責苦、
丁度百貫つきました。
   55
かい/\手鞠、かいまみしより
かごとにかへたらおなぐさみ。
   56
とらせとんまの鐘が鳴る。
いま鳴る鐘は何処の鐘。
三笠の峯の山奥の
三宝の三宝のその中に
雀が三羽とまつて
一羽の雀が言ふことにや、
今年の節季は好い節季
粟苗、稗苗、米になる。
茶碗のかけらが金になる。
岩間の清水が酒になる。
   57
おねんじよ、ねてゐろ。
金持はかせげ。
山の中にはうづきどの。
   58
屏風を立てゝ、双六見やれ、
双六に負けて、
二度とゆくまい鎌倉へ。
鎌倉街道に椿をうゑて、
日が照りやかざす。
雨降りややどり。
五月六日に降りこめられて
お茶もいや/\。
煙草もいやよ。
しよんがいな。
   59
てん/\てれつく糸桜、
空にちら/\降る雪は
よしのゝ吉野の糸桜。
   60
一つ鵯、
二つ梟、
三つ鷦鷯、
四つ夜鷹、
五つ石叩、
六つ椋鳥、
七つ渚の浜千鳥、
八つ山鳥、
九つ鸛の鳥。
十で鳶。
   61
ひん/\左巻、お仙や、お万、
中ゆく舟は
浮草、蓮、
今日よ明日よとしなだれかゝる。
   62
おんしやう正月松立てゝ、竹立てゝ、
喜ぶものはお子供衆、
厭がるものはお年寄。
旦那の嫌ひな大晦日。
一夜明くれば源之助が
歌留多にまけて
金が三両に小袖が七つ。
おらが姉様三人御座る、
一人姉様鼓が上手、
一人姉様太鼓が上手、
一人姉様下谷に御座る。
下谷一番伊達者で御座る、
五両で帯買うて三両でくけて
折目折目に七房さげて、
白粉つけて、紅さして、
今年はじめて花見にでたら
寺の和尚様に抱きとめられて、
よしや、放しやれ、帯切らしやるな。
帯の切れたは大事はないが
縁の切れたは結ばれぬ。
まへで結んでうしろで締めて
締めたところへつぼみと書いて、
高い椽からつきおとされて
笄落し、小枕落し。
お仙や、お仙や、お仙女郎
お仙の針箱開けて見たれば
雌鳥、雄鳥、仲よし、小よし、
ほゝろ、さくら貝。
   63 
田螺殿、田螺殿、
愛宕詣をなさらぬか。
いやに候、去年の春
栂尾の谷で懲りました。
泥鰌殿から誘はれて
しよろ/\川を渡る時、
鳶と鴉と梟めが
あつちへ蹴転ばし、こつちへ蹴転ばし、
その疵四節、四土用、冬来れば
つゝくりつくりとうづき候。
何か薬は御座らぬか。
まづ第一の妙薬は
海の底なる勝栗と
山の峠の法螺貝と
それを練交ぜ用ふれは
功能一夜にあらはれる。
   64
おかんかんかん加賀様屋敷。
おけさ米つく、小糠がおちる。
なんとて落ちる。さつさ、しちく竹、
格子造りの白壁造りの
紺の布簾の琴や三味線、
受取つた。受取つた。
蝶よ花よとお育て申し
今夜の晩から髪結うて、
紙と硯を引寄せて
思ふ事をば書きつけて
吉三にもたせてやつたらば、
あんまりいそいで馬から落ちて、
向う通るは医者ではないか。
医者は医者でも薬箱持たぬ、
薬飲むより死んだがましよ、
死ぬりや野山の土となる。
殺して下され国手殿、
持つた状箱紫川へ落し、
浮きつ沈みつ柳の下で
浮き草のおもしろや、
おもしろや、浮きつ沈みつ。
   65
橙/゛\父さん、
榧母さん、
蜜柑姉さん、
金柑小僧。
   66
ペん/\ことかいな。
   67
嫁さん長持いつくるの。
明日の晩の今頃ぢや。
月夜に提灯何事ぢや。
闇夜に提灯尤もぢや。
ぎこさ、ぎこさで、ほうい、ほい。
   68
紀州、紀の川、
荒川、
粉川、
虎屋饅頭、竹の皮。
   69
一つとや、一夜明くれば賑かで
お飾たてたり、松飾/\。
二つとや、二葉の松は色ようて、
三蓋松は上総山/\。
三つとや、皆様子供は独楽遊、
丸一独楽どり、羽根をつく/\。
四つとや、吉原女郎衆は手鞠つく、
手鞠はやしを何ときく/\。
五つとや、いつも変らぬ年男、
年をとらずに嫁をとる/\。
六つとや、無理にたゝんだこの小袖、
夕風吹いてもまだとけぬ/\。
七つとや、南無阿弥陀仏と手を合せ
百本杭から身をなげる/\。
八つとや、やらずに育てたよいお子ぢや、
お千代が育てたよいお子ぢや/\。
九つとや、こゝで逢はねば何処で逢ふ。
極楽浄土の真ん中で/\。
十とや、年神様のお飾りは
橙、九年母、ほん俵/\。
十一とや、十一日は蔵開き、
お蔵を開いて願ひませう/\。
十二とや、十二の神楽を舞込んで
お笛や太鼓ではやしませう/\。
   70
一い、二う、三い、四う、鎧の人形顔赤い。
赤●(ウオヘン+「覃」)の吸物。蛸の足。
おあし難波の南蛮寺。
なんでそんなにおしやすえ。
おしやんす長持、鋏箱、
重箱、お茶箱、お供に奉る。
松明、提灯、賑かな。
にんにやだらすけ癪によし。
吉野の山ほ皆天狗。
天狗ちら/\ちつとらや、
虎屋の饅頭豆杓子。
杓子如来の釈迦の天。
釈迦の天から空覗く。
桃粟三年、柿八年、
柚子が九年でなりかゝる、
梅はすいとて十三年。
のみの正月、蚊の五月。
   71
さうで有馬の御入湯、
入道清盛火の病、
病のぼるは石童丸よ、
丸い玉子も切りよで四角、
四角浮世は色と酒、
洒に雀は仙台様の御紋、
御紋何処へゆく油買、茶買、
茶買ひ山から谷底見れば、
見れば歯固めの歯の薬、
薬峠の権現様よ、
様よ三度笠、三味や猫の皮、
可愛い男と逢ふ夜はゆかし、
ゆかし/\その昔
爺さと婆さがあつたとさ、
あつたとさの観音様一寸八分、
八分去つても二分残る、
のこるはそこに何してゐやる
ゐやる八方外が浜、
浜で刈るよな毛がはえた、
はえた傘、下駄、足駄、
足駄通れば二階で招く、
招く二十一、妹は二十、
はたしや本郷へゆくわいな。
   72
一つ、拾つた豆砂まみれ。
二つ、踏んだ豆泥だらけ。
三つ、味噌豆味噌くさい。
四つ、択つた豆屑がない。
五つ、煎つた豆香ばしい。
六つ、剥いた豆皮がない。
七つ、生つた豆まだ青い。
八つ、焼いた豆こりや黒い。
九つ、買うた豆たんとない。
十で、豆腐豆臼の中。
   73
おくら、おくら、
どこまでおくら、
佐渡が島まで
おくら。


竹久夢二文学館
第8巻
童謡童話讐T
万田務監修
1993年12月15日初版第1刷発行
発行者 高野義夫
発行所 日本図書センター
〒112 東京都文京区大塚3-4-13 電話03-3947-9387
制作 オフィスコヤマ
装幀 成田克彦
印刷・製本 亜細亜印刷/関製本
定価3,800円(3,690円)
ISBN4-8205-9279-3 C0391 P3800E(第8巻)
ISBN4-8205-9271-8 C0391 P38000E(セット)