一時、ツイッターで令和2年4月1日から養育費を支払わないままでいると、「6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金」が科されると話題になりました。
これは恐らく改正民事執行法の施行により、法改正に伴う罪や罰則の変更に触れたツイートなのでしょうが、事実とは異なります。
本当にこのような罪と罰則が科されれば、養育費を払わない人は激減するでしょう。
しかし、残念ながら、養育費を払わないで逃げても、このような罪を受けることもありませんし、罰則が科されることはありません。
ですが、改正民事執行法の施行に伴い、養育費を払わない人に罪や罰則が強化されたのは事実です。
しかもこの強化によって、差し押さえによる未払いの養育費回収がしやすくなりました。
不払いの養育費回収に頭を悩ませている人にとって、民事執行法の改正は本当に朗報と言えるでしょう。
そこで今回は養育費を払わないで逃げるとどんな罪や罰則がかされるのか、そしてどうすれば未払いの養育費を差し押さえで確実に回収できるのかを解説します。
未払いの養育費回収を検討している人にとって、知っておくべき情報ばかりです。
最後まで目を通して、未払いの養育費回収時の強い味方にしてください。
養育費を払わないで逃げた時の罪と罰則
残念ながら養育費を払わないで逃げても、ツイッターで流れたような罪と罰則が科されることはありません。
しかし、未払いの養育費を回収するために、改正民事執行法では罪と罰則が強化されています。
それではどのような行為に対して、罪と罰則が強化されたのかを見ていくことにしましょう。
この罪と罰則の強化によって、養育費の回収はかなりしやすくなっています。
泣き寝入りしなくて済む、重要なポイントになるので、よく目を通してください。
財産開示手続時の出頭拒否や虚偽に対する罪と罰則が強化された!
未払いの養育費を回収する方法として、最も効果的なのが財産の差し押さえです。
裁判所から強制執行による差し押さえ命令を出してもらい、相手の財産を差し押さえ、その中から未払い分の養育費を回収します。
いわば国家権力による、究極の養育費回収方法と言えるでしょう。
しかし、裁判所に差し押さえを申し立てるには、差し押さえる財産情報の提出が不可欠です。
給与差し押さえ時に相手の勤務先が婚姻時と同じならば、あなたも承知のことです。
下記の給与情報を調べる必要はないでしょう。
- 会社名
- 会社住所
- 給与支払者氏名(代表者)
ですが、誰もが給与を会差し押さえられるわけではありません。
相手が既に退職しており、無職のままということもあるでしょう。
そんな時に差し押さえ財産を調査する制度として、設けられていたのが「財産開示手続」です。
財産開示手続は相手を裁判所に出頭させて、所有する財産を開示させる制度になります。
しかし、この財産開示手続の罪と罰則は、下記の様に強固なものではありませんでした。
罰則:最大30万円の科料
(*科料とは軽い犯罪に課する罰金)
そのため、出頭拒否や虚偽申告が蔓延し、まったく効力のない、名ばかりの制度だったのです。
実際に未払いの養育費を払うより、罰則を受けた方が得だという人が多かったとのです。
しかも、実際に罪や罰則に問われることは少なかったため、まともに相手をする人がいませんでした。
しかし、改正民事執行法の施行に伴い、この罪と罰則が下記の様に強化されました。
罰則:6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金
期待される効果
刑事罰となったため、罪を問われれば前科者という扱いになり、最悪、身体的拘束を伴う懲役刑に課される可能性が出てきました。
となれば、相手も改正前のような対応が取れないのは、言うまでもありませんよね。
よって、以前の様に出頭拒否や虚偽をする人が減り、この財産開示手続で相手の所有財産を簡単に知ることができる可能性が高くなったのです。
今までは給与以外の財産を分からず、財産調査ができない人は少なくありませんでした。
そのため養育費の回収を諦め、泣き寝入りするしかないケースは珍しくなかったのです。
養育費の受給率が25%と低い事からも、泣き寝入りした人がいかに多いかは簡単に想像がつくでしょう。
しかし、罪と罰則の強化により、泣き寝入りせずに差し押さえできる人の増加が期待できるようになったのです。
ーーー
改正民事執行法の施行により養育費の回収がしやすくなった!その理由とポイントはコレ!!
財産開示手続の罪と罰則の強化により、養育費の回収はしやすくなりました。
しかし、改正民事執行法の改正で、注目して欲しいのはこれだけではありません。
まだまだ、養育費の回収をしやすくするための、改善や追加が行われています。
確かに財産開示手続時の罪と罰則の強化によって、相手の財産情報を正確に把握できる可能性は高くなりました。
ですが、それでも虚偽申告する人が完全にいなくなったわけではありません。
裁判所は警察の様に捜査権がありませんから、本人の申告した情報に虚偽がないかを確かめてはくれません。
そのため、財産開示手続による財産調査では、申告内容を信じるしかないのです。
となれば財産の虚偽申告や隠ぺいの可能性も出てきますよね。
しかし、安心してください。
差し押さえの申し立てに必要な財産情報の調査では、相手が虚偽や隠ぺいをできないように、しっかりとした制度が設けられています。
「第三者からの情報取得手続き」がまさにそれです。
この制度を財産開示手続と併用すれば、相手を丸裸にすることもできるでしょう。
これについては下記の記事で詳しく解説しています。
相手の財産情報を調査しなければ、差し押さえの申し立てができない人は、ぜひ目を通して対処方法を身に着けるようにしてください。
相手が養育費を払わないなら差し押さえで回収!確実に差し押さえするため対処方法!!
改正民事執行法の施行によって、差し押さえできる可能性が上がったことは理解してもらえたでしょう。
しかし、差し押さえの申し立てをしても、必ず養育費の回収ができるとは限りません。
給与を差し押さえた会社が差し押さえを拒否することもありますし、既に退社して差し押さえる給与がなかったというケースも考えられます。
給与1つを差し押さえるにしても、スムーズに事が進まないこともあるのです。
差し押さえする際には、こういった不慮の事態に直面する可能性もあると考えておかなければなりません。
下記の記事では差し押さえするために必要な、ありとあらゆる知識と情報を紹介しています。
覗いてもらえば、あなたが知りたい情報と知識が必ず見つかるはずです。
差し押さえでつまずいている人は下記記事を覗いて、必要な情報と知識を手に入れてください。
ーーー
現状、養育費の回収に行政はノータッチ!養育費の回収は自己責任!!
改正民事執行法の施行に伴い、世間では今後の養育費回収率の上昇に期待がかかっています。
しかし、行政が養育費問題に直接かかわっている欧米と比べ、日本では依然、行政はノータッチです。
日本では養育費問題は家庭内で解決すべきものという認識が強く、行政のかかわりは下記にとどまっています。
- 裁判所の利用手続きを助言
- 裁判所での解決の後押し
つまり、現状の行政は、養育費は自己責任において確保しなさいというスタンスなのです。
今回の法改正は大きな前進ではあります。
しかし、下記のように欧米が実施している、行政による養育費の回収制度が実施されなくては、大きな効力は期待できません。
国 |
制度内容 |
アメリカ |
全州で未払い親の捜索、養育費の給与天引き、税還付金からの相殺などの公的制度を展開 |
スウェーデン |
未払いの養育費を社会保険事務所に申請すれば、立て替え払いで養育費を支給。(支給期間は子供が18歳までで、学生の場合は20歳まで延長可能。) |
現状、日本では当事者が最善の方法を見つけ出し、回収に努めなければなりません。
相手が養育費を払ってくれないからといって、国に対応をゆだねることはできないのです。
他人任せでは決して未払いの養育費を回収することはできません。
あなたの実行力だけが頼りです。
この点はよく理解して、断固たる覚悟で養育費の回収に努めるようにしてください。
まとめ
今回は改正民事執行法の施行によって、未払いの養育費回収がいかにしやすくなったか、どうすれば確実に差し押さえで養育費の回収ができるのかを解説しました。
今回の法改正に伴い、養育費回収を諦めて泣き寝入りする人は、確実に減ることでしょう。
今までなら諦めるしかなかった人も、差し押さえの申し立てができるようになったからです。
今回の記事を参考に、まずは差し押さえの申し立て準備に取り掛かり、養育費の不払い問題の解決に取り組むようにしてください。
コメント