生まれ変わった改正民事執行法で養育費の不払いは減る!!改正後の重要3ポイントを徹底解説!

離婚時には養育費の支払いを約束していたのに、離婚して数ヵ月が経つとプッツリ入金が止まってしまった。

それでも請求に応じて支払ってもらえるならまだましです。

何度請求しても無視されたり、様々な理由を付けて支払いを拒まれる人は少なくありません。

事実、日本の養育費受取率の低さは、目をつむりたくなるような状況です。

厚生労働省が発表した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 」によると、母子家庭の養育費受取率は24.3と全体の4分の1にも達していません。

元夫に支払いを拒まれ、泣き寝入りしている人がいかに多いかがうかがえます。

しかし、そんな人たちに朗報です。

202041日に施行された改正民事執行法により、元夫は養育費の支払いから逃げ出すことが困難になりました。

今まで泣き寝入りしていた人でも、養育費の未払いを回収できるチャンスが広がったのです。

そこで今回は民事執行法の改正ポイントを見ていきながら、その絶大な不払い抑止力を検証していきます。

そもそも民事執行法ってどんな法律なの?

借金の不払いで問題となるのが回収方法です。

返済すべき借金を返さないからといって、法治国家である日本では、実力行使での回収は法律によって禁じられています

法律に則った回収が求められます。

そして、その回収方法として法的に認められているのが、裁判所の強制執行命令による所有財産の差し押さえです。

回収する権利を持つ債権者が、支払義務を課せられた債務者の財産を差し押さえた上で、その中から未払い額を回収します。

その差し押さえ申し立て時に、守らなければならない事細かな決まり事を規定した法律が民事執行法なのです。

それでは何故、この民事執行法の改正によって、元夫の養育費不払いが減ると期待されているのでしょうか。

その答えは明白です。

改正民事執行法が「債権者側(元妻)に寄り添った法律に生まれ変わったから」という一言に尽きるでしょう。

改正前の民事執行法は、決して債権者側(元妻)に寄り添った法律とは言えませんでした。

強制執行による差し押さえを申し立てしたくてもできない、申し立てても未払いの養育費を回収できないといったケースが実に多かったのです。

改正民事執行法の施行で養育費回収はどう変わる?

差し押さえ申し立て時に提出が義務付けられているのが、差し押さえ対象の財産情報です。

差し押さえできる財産は、下記の様にいくつも認められています。

  • 不動産:土地や建物
  • 動産:現金や貴金属など
  • 債権:給与や預貯金、有価証券など

しかし、差し押さえの申し立て時には、下記の様にそれぞれに規定された財産情報の提出が求められます。

  • 預貯金の場合 → 銀行名・支店名

  • 給与の場合 → 会社名・会社住所・給与支払者氏名(代表者名)

離婚後も元夫の勤務先が同じであれば、給与差し押さえは難なく申して立てできます。

ですが、既に退職しており、新しい勤務先が分からない場合はどうでしょう。

また、退職して新たに職に就いていないとしたらどうでしょう。

前者なら新しい勤務先を調べる必要がありますし、後者なら他に差し押さえできる財産を調べる必要が出てきます。

こんな調査を個人が簡単にできるわけありませんよね。

となれば、諦めて泣き寝入りしてしまう人が多いのもうなずけます。

ですが、民事執行法の改正に伴い、この困難な調査に自分の手を煩わせることなく、裁判所から正確な情報を入手できるようになったのです。

改正民事執行法に強力な養育費回収手段に生まれ変わったと、絶大な評価が与えられているのは、元夫の財産情報を見つけやすくなり、元夫が養育費の支払いから逃れることが困難になった点にあります。

今回の改正に伴い、民事執行法は強力な養育費回収手段として生まれ変わったというわけです。

それでは引き続き、改正民事執行法がどう改善されたのか、それが養育費の回収率アップにどう影響するのかを見ていくことにしましょう。

改正民事執行法で変更・追加された重要な改善ポイントはこの3つ!

改正民事執行法で変更・追加された重要ポイントは、下記の3つです。

  • 財産開示手続時の出廷拒否や虚偽に対する罰則が強化された
  • 財産開示手続きの利用者枠が拡大された
  • 第三者からの情報取得手続ができるようになった

先にも話した通り、元夫の財産を差し押さえできるかどうかは、その財産情報を把握できているかどうかに掛かっています。

養育費の回収を諦めてしまう主な原因は、差し押さえ対象の情報把握ができないからです。

改正民事執行法で元夫の財産情報を見つけやすくなったと言われるのは、これら3つの相乗効果によるたまものと言っても過言ではありません。

これら3つの変更・追加で元妻は元夫の財産情報を見つけやすくなり、養育費の不払いに泣き寝入りする必要がなくなったのです。

それでは早速、順を追って、これら3つの効果を見ていきましょう。

財産開示手続時の出廷拒否や虚偽に対する罰則が強化された

この罰則強化により、元夫の出廷拒否や財産情報の虚偽申告が防げ、確実に回収できる財産を確認できる可能性が高くなりました。

財産開示手続は法改正以前から設けられている制度で、債務者(元夫)を裁判所に出頭させて、所有する全財産を自ら開示させる手続きです。

しかし、改正以前の財産開示手続は債務者(元夫)が裁判所に出頭しなかったり、虚偽申告するケースが後を絶たず、実行力を伴わない名ばかりの制度でしかなかったのです。

これはひとえに、最大30万円の過料という罰則の弱さが災いしての結果でしょう。

過料とは行政上における軽い罪を犯した際に支払わせる金銭を指します。

つまり、債務者(元夫)にとって、この罰則はさほど気にする必要がないペナルティでしかなかったのです。

未払いの養育費が数百万円と多く、30万円支払った方が、まだましという人も少なくありませんでした。

しかも、実際に金銭支払いを命じられるのは稀だったと言われますから、元夫に「まともに取り合う必要はない」という意識が働いても仕方のないことでしょう。

ですが、改正後の財産開示手続はこの点を踏まえ、罰則の強化を図り、罰則が行政罰から下記の刑事罰へ変更されています。

6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」

つまり、罰則を犯せば刑事罰処分の対象となり、前科者として登録されてしまようになったのです。

普通の社会常識を持ち合わせていれば、前科者扱いなんて絶対に避けたいところですよね。

20208月現在では、施行後間もないため効果の程は論じられませんが、この罰則強化による、今後の出廷拒否や虚偽申告の減少には期待のかかるところです。

恐らく期待以上の効果が表れることでしょう。

財産開示手続きの利用者枠が拡大された

改正民事執行法では、財産開示手続の利用者枠も拡大されました。

これは差し押さえできる元妻が増えることを意味するので、不払い者の減少が期待できます。

財産開示手続の申し立てでは、申立人が債務名義を取得していることが必須要件とされています。

債務名義とは強制執行により、債権者が差し押さえできる権利を有することを示した公的文書で、下記情報が記載されたものです。

  • 請求権の存在
  • 請求権の範囲
  • 債権者名(元妻)
  • 債務者名(元夫)

その公文書には下記のものが該当します。

  • 確定判決
  • 仮執行宣言付判決
  • 和解調書
  • 調停調書

しかし、問題なのはこれら債務名義を取得している元妻がごく少数に限られる点です。

取得するには裁判所への訴訟申し立てが必要なため、裁判所を介さない協議離婚が多い日本では、取得している元妻の数がどうしても限られてしまいます。

もちろん離婚後に訴訟申し立てをして取得することは可能ですが、取得には時間と労力、諸費用が必要です。

そのため、離婚後すんなりと財産開示手続をできる元妻は、ごく一部に限られるのが実情でした。

しかし、民事執行法の改正後は「執行認諾文言付き公正証書」が債務名義として、新たに加えられ、財産開示手続きの利用枠が拡大されました。

利用枠の拡大は養育費を回収できる人の拡大に繋がります。

今まで利用できなかった人が利用できるようになったのは、大きな改善ポイントと言えるでしょう。

 執行認諾文言付き公正証書とは?

公正証書は公証人法に基づいて、法務大臣に任命された公証人が作成した公文書を指します。

裁判所を介さない協議離婚の場合、離婚後の養育費支払等の取決事項を書面にした協議離婚書を互いに取り交わすことがありますが、これはあくまで私文書に過ぎません。

この私文書である協議離婚書に、公的効果をもたらすため作成するのが公正証書としての協議離婚書です。

近年は離婚後トラブル時の裁判を有利に進めるため、離婚協議書を公正証書として作成するケースが増えています。

弁護士に離婚相談をすれば、必ず協議離婚書を公正証書として作成することを進められるでしょう。

そしてこの公正証書に「債務者は,本証書記載の金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨陳述した」という文言を加筆したものが、執行認諾文言付き公正証書です。

日本における離婚の80%が協議離婚で執り行われています。

そのため10人に2しか、裁判所からの債務名義を取得していません。

となれば養育費トラブルを解消するためにも、夫婦間により話し合いで簡単に作成できる、執行認諾文言付き公正証書の存在は貴重になってきます。

現在は下記の様に養育費の不払いに悩む母子家庭を支援する、公的な相談機関の創設や拡充が実施されています。

養育費相談支援センター事業

母子家庭等就業・自立支援センターで受け付けた養育費回収の相談事例への対応、相談に当たる人材養成のための研修施設で、養育費の意義や取り決め方法、支払確保の手続き、養育費相談支援センターの業務内容をまとめたパンフレットの地方自治体への配布を実施

母子家庭等就業・自立支援センター事業

母子家庭等就業・自立支援センターに養育費専門相談員を設置

母子家庭の母が養育費取り決め等で家庭裁判所へ訪れる際の同行

弁護士による養育費の法律相談を実施

今後はこれら事業に加えて、公的機関の先導による執行認諾文言付き公正証書作成の推進を働きかけるための対応に期待したいところですね。

第三者からの情報取得手続ができるようになった

財産開示手続による財産情報開示は、あくまで元夫の自己申告です。

しかも、裁判所には警察のような捜査権はないので、申告内容に対する調査はできません。

そのため出廷しておけば、虚偽申告しても上手くごまかせるのではと考える人もいるでしょう。

ですが、改正民事執行法では、こういった考えに対する対処策がしっかりとフォローされています。

改正に伴い、裁判所は第三者から元夫が所有する財産情報を取得できるようになったのです。

これは改正後、新たに追加された制度で「第三者からの情報取得手続」といいます。

 

「第三者からの情報取得手続」で、取得できる元夫の財産情報は下記の通りです。

  • 勤務先
  • 預貯金や有価証券
  • 不動産

所有する高価な貴金属を除けば、養育費の回収で差し押さえできる対象財産を全て網羅していることがお分かりいただけるでしょう。

元夫が虚偽申告しても、申立人(元妻)が「第三者からの情報取得手続」をすれば、元夫の所有財産を丸裸にできるいうわけです。

これでは元夫もやすやすと虚偽申告なんてできませんよね。

それでは引き続き、これら財産情報の取得方法とその効果を、簡単に見ていくことにしましょう。

勤務先の情報取得

元夫の勤務先に給与の差し押さえをしたが、退職しており、差し押さえできなかった。

こんなケースは珍しい話ではありません。

この場合、改正前なら自ら新たな勤務先を探し出す必要があったのですが、「第三者からの情報取得手続」をすれば、裁判所が勤務先を見つけ出してくれます

勤務先で得た給与からは、各種税金や国民年金保険料が控除されています。

それを管理する下記機関に裁判所が情報開示請求すれば、新たな勤務先情報が得られるというわけです。

  • 各市町村
  • 税務署
  • 日本年金機構

以前は自力で探し出すのは困難な上、他の都道府県へ移住しているともなれば、お手上げの状態でした。

それを考えれば、確実に勤務先を探し出せるこの制度は、給与の差し押さえを準備している人にとって、大きな味方となるのは明白ですね。

預貯金や有価証券の情報取得

給与の差し押さえは元夫の生活への支障を考慮して、差し押さえできる上限額が決められています。

そのため、未払い額を全額回収するために、数ヵ月の期間を有することも珍しくありません。

しかし、預貯金や有価証券であれば、差し押さえの上限額が決められていないので、一度に全額回収することも可能です。

元夫が預貯金や有価証券を所有しているならば、給与よりもこちらを差し押さえた方が効率的でしょう。

ですが、所有していることを知っていても、問題となるのはこれら資産を管理している金融機関情報です。

弁護士に依頼すれば、弁護士照会制度を利用して、取り引きしている金融機関を探し出すことはできるでしょう。

しかし、預貯金を差し押さえするにしても、銀行名と支店名が必要になり、照会を求める銀行と支店はこちらから指定しなければなりません。

そのため当てずっぽうで探すことになり、取引先が見つかるまで同じ作業を繰り返す手間と時間が掛かったのです。

ですが、裁判所で「第三者からの情報取得手続」をすれば、銀行本店に全支店の情報開示請求ができ、短時間で正確な情報を取得することができます。

改正前は情報取得にかかる弁護士費用や時間と労力に耐えられず、途中で諦めてしまった人も多いことでしょう。

しかし、今ではそんな不条理な事態を回避できるようになったというわけです。

預貯金や有価証券の差し押さえを準備している人にとっては、本当にありがたい制度ですね。

不動産の情報取得

差し押さえ対象の中で最も高額になる可能性が高いのが不動産です。

そのため高額な養育費の未払いがある場合は、不動産を差し押さえて回収に充てるのもおすすめな方法になります。

元夫が所有する不動産情報ならば、元妻もちゃんと把握していることでしょう。

そんな時には、不動産の差し押さえを検討してみることをおすすめします。

しかし、個人的な不動産を所有していないが、元夫が離婚後に個人で不動産ビジネスを始めたといったような場合は話が別です。

改正以前なら、これら所有している不動産を特定するのは困難だったでしょう。

ですが、これも裁判所に第三者からの情報取得手続きをすれば、簡単に調べ上げることができます。

不動産の所得時には、登記所で不動産登記することが義務付けられています。

「第三者からの情報取得手続」により裁判所が、不動産所在地を管轄する下記いずれかの登記所に情報開示請求すれば、元夫が保有する不動産情報を確実に取得することが可能です。

  • 法務局
  • 地方法務局
  • 地方法務局の支所または出張所

しかし、この情報開示請求は2020年時点では開始されていません

この情報開示に関しては、20215月中旬頃を目処に手続きできるようになる予定です。

申立時期には注意してください。

「財産開示手続」と「第三者からの情報取得手続」利用時の注意点

今回は養育費の差し押さえを可能にした、改正民事執行法の効力について解説してきました。

その効力の骨子となるのは、「財産開示手続」の規定変更と「第三者からの情報取得手続」の追加です。

そこで最後に、これら手続きを利用する際の注意点について、解説していきたいと思います。

これら手続きを利用すれば、高い確率で未払いの養育費を回収することが可能です。

しかし、双方ともに利用時には注意してもらいたいポイントがあります。

上手く利用して、確実に養育費を回収するためにも、ここで解説する注意点はしっかりと理解するようにしてください。

 財産開示手続の注意点

財産開示手続をするには、強制執行により差し押さえできる権利となる債務名義を取得していることが求められます。

ですが、注意してください。

この債務名義を取得していたとしても、申し立て時の状況が下記に該当する場合は、財産開示手続自体が無効にされてしまいます。

  • 過去3年以内に元夫に対して財産開示手続を実施した
  • 元夫が債務整理の手続を開始している

第三者からの情報取得手続には再申し立てに制限はありませんが、財産開示手続では前回の実施日から3年が経過しないと再申し立てができません。

また、元夫がある種の返済で困窮しており、債務整理手続きを開始している場合も、財産開示手続は申し立て無効にされてしまいます。

債務整理しても、いくらか支払える余裕はあるだろうと考える人もいるでしょう。

ですが、財産の差し押さえ自体、元夫に返済能力がなければ認められません。

となれば、返済能力なしというレッテルが貼られる、債務整理者に対する財産開示手続が認められないのも仕方のないことなのです。

借金返済に首が回らない状況で、養育費の支払いを命じられてしまっては、元夫の生活が破綻してしまうと解釈された結果でしょう。

財産開示手続を申し立てる際は、必ずこれら条件に該当していないかを事前確認するようにしてください。

第三者からの情報取得手続の注意点

第三者からの情報取得手続で得られる財産情報は下記の通りですが、預貯金や有価証券を除く財産情報を取得する際には注意が必要です。

  • 預貯金や有価証券
  • 不動産
  • 勤務先

不動産と勤務先情報の開示を求めて「第三者からの情報取得手続」する場合には、財産開示期日から3年以内に申し立てる必要があります。

再申し立てに制限はありませんが、財産開示手続をした後でないと申し立てできませんし、財産開示期日から3年が経過している場合には、再度、財産開示手続をした後で申し立てしなければなりません。

元夫が転職し、新たな勤務先を調べることになる人は少なくありません。その際はこの申し立て条件に注意してください。

まとめ

民事執行法の改正により、養育費の不払いに泣く元妻はずいぶん減ることでしょう。

その効果については、今回の記事で納得してもらえたかと思います。

母子家庭にとって養育費の存在は無視できるものではありません。

諦めさえしなければ、高い確率で未払いの養育費を回収できるでしょう。

今回の記事内容を参考に、未払いの養育費は必ず回収できるという強い意志をもって、養育費の未払い問題に取り組むようにしてください。

コメント

  1. […] […]

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