未払いの養育費回収は公正証書のあり・なしで大きく違う!公正証書の効力と離婚後作成の可否

公正証書の持つ効力を知っている人ならば、協議離婚時には協議離婚書を公正証書で作成することを勧めるでしょう。

子供のいる夫婦が離婚した場合、付きまとうのが養育費の支払いです。

しかし、養育費を受けているのはたったの24%ほどしかいません。

この数字を見れば養育費の不払いが、いかに深刻な問題かお分かりいただけるでしょう。

そこで、未払いの養育費の回収方法として、知られている差し押さえですが、この時、この公正証書のあり・なしが大きな影響を及ぼします。

差し押さえしようにもこの公正証書がなければ、裁判所に差し押さえの申し立てすらできないのです。

そこで今回は公正証書がどんな効力を持っているのか、離婚後でも公正証書は作成できるかを解説します。

協議離婚をして、離婚協議書を公正証書で作成していない人には、絶対に理解しておいてもらいたい話です。

最後までしっかりと目を通して、差し押さえ時の参考にしてください。

養育費差し押さえには公正証書が不可欠!その効力をよく理解しよう!!

冒頭でお話しした通り、協議離婚した人が未払いの養育費を差し押さえで回収するためには、公正証書の存在が欠かせません。

そこでまずは公正証書がどういうもので、どうして差し押さえに必要なのかを、分かりやすく解説していきます。

これは公正証書と差し押さえの関係を理解する上で必要不可欠な情報です。

よく理解できていない人は、しっかりと目を通すようにしてください。

公正証書とは

公正証書は法務大臣によって任じられた公証人が、公証役場で作成した公文書を指します。

ここで注目して欲しいのは、公正証書が公文書であるという点です。

公文書とは国や地方自治体などの公的機関が作成した文書を指し、下記のようなものが公文書に該当します。

  • 法律
  • 免許証
  • 登記台帳
  • 住民基本台帳
  • 納税通知書

これら文書に共通して言えるのは、文書自体に高い信頼性が伴っている点です。

運転免許証であれば車を運転する資格を所持していることが証明されますし、不動産登記簿であれば土地や建物の所有者が誰かを証明できます。

運転免許センターが発行した本物の運転免許証を提示して、無免許運転を疑われることはありませんよね。

つまり、公文書は高い信頼性と証明力が備わった文書というわけです。

公正証書を作成する目的

離婚協議書を公正証書として作成する目的は、離婚協議書にこの高い信頼性と証明力を付加することにあります。

離婚協議書は協議離婚時に話し合って決めた約束事を書面化したものですが、単に個人間で取り交わしただけでは公文書にはなりません。

この場合はあくまで単なる私文書でしかなく、公文書のような高い信頼性と証明力は伴わないのです。

離婚後、養育費が払われず、離婚協議書を盾に支払を求めて裁判を起こしたとしましょう。

その際、もちろん離婚協議書は裁判で証拠として利用できます。

しかし、訴えられた側が、

「そんなものは作成していない!」

「取り交わした時と条件が違う!偽造されたものだ!」

などと、離婚協議書を否定したらどうでしょう。

この場合は、離婚協議書自体の真偽が疑われることになってしまうでしょう。

ですが、この離婚協議書を公正証書として作成しておけば、相手が離婚協議書を否定しても、その主張は通用しません

離婚協議書の真偽が疑われることはなく、裁判では両者の合意を立証する証拠として採用されます。

そのため、訴えた側の審判も有利に進めることができるでしょう。

離婚協議書を公正証書として作成しておいた方がいいのは、離婚後トラブルを巡り、裁判となった場合、疑われることのない証拠として利用できる点にあります

ですが、得られるメリットはこれだけではありません。

養育費不払い時には、支払いを求めて裁判をしなくても、即座に強制執行による財産差し押さえを申し立てられるのです。

公正証書があれば即座に差し押さえを申し立てられる!

養育費を払わない場合には、相手の財産を差し押さえできる。

こんな風に思っている人は多いでしょう。

確かに相手が約束した養育費を払わなければ、相手の財産を差し押さえて、未払いの養育費を回収することができます。

ですが差し押さえの申し立てをするには、その権利となる債務名義を取得しなければなりません

ここで問題となるのは協議離婚で取得できる債務名義が、この公正証書だけだという点です。

よって、離婚時に公正証書として離婚協議書を作成していない場合は、裁判所に養育費を請求する申し立てをして、他の債務名義を取得しなければなりません。

まずは家庭裁判所への「養育費請求調停」申し立てです。

この申し立てで調停成立となれば、債務名義となる調停調書が取得できますが、不成立に終われば調停調書は取得できません

この場合は裁判所による審理に移行され、結審後に債務名義として「仮執行宣言付判決」が取得できます。

これでやっと債務名義が取得でき、差し押さえの申し立てができる権利が入手できるのです。

しかし、結審しても必ずしもここで審判が終わるとは限りません。

相手がこの裁判所の審判を不服とした場合は、場所が家庭裁判所から高等裁判所に移され、再度審理が行われます。

以上の様に協議離婚で公正証書として離婚協議書を作成していない場合、差し押さえするには前準備にかなりの期間を要する可能性があるのです。

しかも、債務名義を取得できても、裁判が継続される可能性があるのですから、たまったものではありません。

この際に掛かる弁護士費用も無視できませんよね。

差し押さえするといっても、無条件に「はい、どうそ。」というわけにはいかないのです。

ですが、離婚協議書を公正証書で作成していれば話は別です。

公正証書があればこれら全課程を経ることなく、直ぐに裁判所へ差し押さえを申し立てられます

これが養育費の不払いで差し押さえする時に、公正証書が不可欠だと言った理由です。

差し押さえするのに無駄な時間とお金を掛けないためにも、協議離婚時には公正証書として離婚協議書を作成することをおすすめします。

公正証書は「執行認諾文言付き」で!

補足ですが公正証書は「執行認諾文言付き」で作成しなければ、差し押さえ時の効力は発揮できません。

執行認諾文言は、下記の様に相手が養育費の支払いを履行しない場合、強制執行される事に同意したという文言です。

「甲が乙に対して本証書に記載した養育費の支払いを履行しない時は、直ちに強制執行に服する旨陳述した。」

この文言が公正証書に記載されていれば、養育費不払い時に裁判を経ずに財産の差し押さえが認められるというわけです。

公正証書を用いて差し押さえ申し立てをするためには、下記3つの要件を満たす必要があります。

  1. 金銭債務の履行に係わる内容であること
  2. 強制執行の条件、または支払期限が到来していること
  3. 執行認諾文言が記載されていること

最近は差し押さえ時のメリットを求めて、離婚協議書を公正証書として作成する人が増えています。

ですが、弁護士に頼らず不確かなネット情報を元に個人で作成する人もいるため、上記条件を満たさず、いざという時、期待した効力が発揮されないこともあるようです。

そうならないためにも、離婚協議書を公正証書として作成する際は、弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

公正証書がない協議離婚者は必見!最短で差し押さえするための方法を紹介!!

差し押さえを申し立てる時に、公正証書が必要不可欠な理由は理解してもらえたことでしょう。

協議離婚で公正証書で離婚協議書を作成していない場合、差し押さえできる権利となる債務名義を取得するには時間と費用が必要になります。

場合によっては長期戦を覚悟する必要もあるでしょう。

ですが、先に話した方法以外でも、債務名義は取得できます。

その方法は支払いに応じない相手に対し、裁判所から支払いに応じるよう督促してもらう「支払督促の申し立て」です。

この申し立てをすれば、債務名義となる「仮執行宣言付支払督促」が取得できます。

この方法は先に話した方法と比べ、短期間で債務名義が取得できる上、掛かる費用も抑えることが可能です。

これを考慮すれば、この方法の方がおすすめとも言えるでしょう。

支払督促の申し立てにより、 仮執行宣言付支払督促を取得する方法は、下記の記事で詳しく解説しています。

公正証書で離婚協議書を作成していない協議離婚者は必見です。

しっかりと目を通して、債務名義を早急に収取するようにしてください。

離婚後でも公正証書は作成できる!

ここまで、公正証書に代わる債務名義の取得方法をいくつかお教えしましたが、離婚後に公正証書が作成できればこれに越したことはありません。

裁判所に頼る必要もなく、離婚した両名が公証役場に出向けば済むだけです。

離婚時に公正証書で離婚協議書を作成していない場合は、相手に一度相談してみることをおすすめします。

既に養育費が支払われず、両者の間がギクシャクした状態では、相手が同意することはないでしょう。

しかし、未払いなどなく、離婚後の関係がこじれていなければ、相手が同意してくれる可能性は十分あります。

今後のことを見据えて、公正証書を作成しておくべきでしょう。

離婚後に公正証書で離婚協議書を作成する方法は、下記の記事で詳しく解説しています。

離婚後に公正証書で離婚協議書を作成できる可能性がある人は、ぜひ目を通して公正証書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。

公正証書を作成する為に必要な書類と費用と注意点

それでは引き続き、公正証書を作成するために必要な書類と費用をお教えします。

併せて知っておいてもらいたい注意点も紹介するので、公正証書の作成を検討している人は、目を通すようにしてください。

公正証書の作成で必要な書類

公正証書の作成手続時に提出が求められる必要書類は下記の通りです。

  • 本人確認資料
  • 戸籍謄本
  • 合意書(契約内容の骨子を記載した書類)

それではこれら必要書類の詳細を簡単に解説しておきましょう。

本人確認資料

一般的に本人確認資料として認められているものは下記の書類です。

  • 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 運転免許証
  • マイナンバーカード等(顔写真付きのもの)
  • パスポート(住所記載のあるもの、ない場合は住民票の提出も必須)

基本的はいずれかの書類があれば問題ありませんが、公証役場によっては印鑑証明書の提出が必須となっている場合があるので注意が必要です。

印鑑証明書を取得していない場合は印鑑登録が必要になるので、まずは手続する公証役場に問い合わせてみましょう。

戸籍謄本

離婚前ならば戸籍謄本は一通で済みますが、離婚後に作成する際は各当事者の戸籍謄本が一通ずつ必要になります。

戸籍謄本の取得に掛かる費用は250円とさしたるものですが、離婚後の申し込みでは相手の戸籍謄本も必要です。

くれぐれも注意してください。

合意書(契約内容の骨子を記載した書類)

公正証書の作成で一番重要になるのがこの合意書です。

合意書は養育費の支払い条件が記載された書類ですが、記載内容に不備があれば、せっかく公正証書を作成しても、差し押さえの申し立て時に効力が発揮できない恐れがあります。

不備のない内容にするためには、法律に精通した弁護士等の専門家による判断が欠かせません。

余分に費用は掛かりますが、確実性を求めて弁護士等に依頼した方が確実でしょう。

公正証書を作成する時は、弁護士等に助力を求めるかどうかを、慎重に検討するようにしてください。

公正証書の作成で必要な費用

公正証書の作成で発生する費用は下記の2つです。

  • 公証役場に支払う手数料
  • 弁護士費用

それではこれら費用がどれくらい発生するのかを見ていくことにしましょう。

公証役場に支払う手数料

公証役場に支払う手数料は下記のように、養育費の総受給額によって異なります。

養育費の総受給額

手数料

100万円以下

5,000

100万円超え~200万円以下

7,000

200万円超え~500万円以下

11,000

500万円超え~1,000万円以下

17,000

1,000万円超え~3,000万円以下

23,000

3,000万円超え~5,000万円以下

29,000

5,000万円超え~1億円以下

43,000

1億円超え~3億円以下

43,000円に5,000万円までごとに13,000円を加算

3億円超え~10億円以下

95,000円に5,000万円までごとに11,000円を加算

10億円超え

249,000円に5,000万円までごとに8,000円を加算

注意してもらいたいのは、手数料を算出する際の基準は、受給期間中の総受給額である点です。

1人の子供に対して月額30,000万円/人を、養育費として20年間支払う場合の手数料は下記の通りです。

30,000円 × 12ヵ月 × 20年 = 720万円

この場合の手数料は17,000円です

手数料は月額換算ではなく、総受給額です。

この点は勘違いしないよう、よく覚えておいてください。

また公正証書が完成すれば離婚した両者に、公正証書正本および謄本が交付されますが、この用紙代として5,000円ほどの費用が発生します。

これら費用は公正証書が完成して、公正証書正本・謄本を受け取る際に、公証役場へ現金で支払わなければなりません。

現金以外の支払いは受け付けてくれないので注意してください。

弁護士費用

公証役場に支払う手数料は大して高額なものではありません。

これだけなら費用はさして心配する必要はないでしょう。

しかし、公正証書の作成を弁護士に依頼する場合は、まとまったお金が必要になります。

弁護士に全てを依頼して公証役場での作成代理を依頼すれば、10万円前後が相場となるでしょう。

作成時に欠かせない合意書(契約内容の骨子を記載した書類)の添削だけならば、3万円ほどで請け負ってもらえます。

弁護士費用を抑えたいならば、合意書の原案を自分で作成して、問題がないか添削だけを依頼するという手もおすすめです。

弁護士費用はどこまでの作業を依頼するかによって、請求される費用が異なります。

弁護士に依頼する際は料金設定をしっかりと確認してください。

また、合意書の作成だけならば、弁護士に限定しなくても司法書士へ依頼することができます。

同じ作業を依頼するにしても、弁護士よりも安い費用で済むので、検討してみるといいでしょう。

公正証書作成時の注意点

公正証書を作成する際に注意して欲しいのは下記の4点です。

  • 費用負担の取り決め
  • 作成中止となった時の対応
  • 公正証書へ誤った認識を持たない
  • 養育費を支払う側にメリットはない

それではこれら注意点を1つずつ確認していくことにしましょう。

費用負担の取り決め

公正証書の作成手数料はどちらが負担することになるのでしょう。

これはお互いに気になるところでしょう。

作成手数料の支払いはどちらがしなければならないといった決まりはありません。

離婚時の作成であれば、分かれる夫婦両名が折半するのが一般てすが、離婚後の作成となれば言い出した方が負担することになるでしょう。

しかし、自己負担となったとしても、相手が作成に同意してくれるなら儲けものです。

最終的には両者の話し合いになりますが、手数料負担は仕方ないと覚悟しておきましょう。

作成中止となった時の対応

申込手続きが終わった後、条件等の変更で公正証書の作成を、完成前に中止しなければならないケースもあるでしょう。

そんな時はできるだけ早く、作成中止を連絡するようにしてください。

公正証書は申込後、準備に入った段階で公証人による作業が発生します。

そのため、中止に伴う手数料を支払わなければなりません。

ですが早い段階ならば、公証人が準備に着手しておらず、中止に伴う手数料が必要ない場合もあります。

早ければ早いほど、中止に伴う手数料を抑えることができるというわけです。

公正証書へ誤った認識を持たない

今回話したように執行認諾文言付きの公正証書があれば、面倒な手間と時間、そして費用を省いて差し押さえを申し立てできます。

しかし、公正証書があるから、差し押さえできるわけではありません。

相手に差し押さえる財産がなければ、養育費を回収することはできないのです。

執行認諾文言付きの公正証書を作成していても、絶対に養育費の回収ができるわけではありません

この点は勘違いしないよう、よく理解しておきましょう。

養育費を支払う側にメリットはない

養育費の支払い条件を公正証書として作成する場合は、相手の同意が必要です。

相手が同意してくれなければ、公正証書は作成できません。

先に話したように、離婚後に作成同意を得るのは簡単ではないでしょう。

そもそも養育費の支払い条件を公正証書して、メリットがあるのは養育費を受け取る側だけです。

支払う側には全くメリットがないと言っても過言ではないでしょう。

離婚後だけでなく、離婚時も作成同意が得られない可能性も考えられます。

よって、作成同意を得る交渉は自分でするより、弁護士等の専門家に任せた方が確実です。

自分では上手くいかないと少しでも感じる際は、弁護士等の専門家に助力を求めるようにしてください。

まとめ

今回は養育費の差し押さえ時に必要不可欠な、公正証書について徹底解説しました。

協議離婚時に公正証書で離婚協議書を作成していない人が差し押さえするためには、作成している人よりも回り道することになります。

これについては今回の話で、よく理解してもらえたことでしょう。

養育費が不払いになれば、その分、生活は困窮してしまいます。

一刻も早い養育費の回収が必要になるでしょう。

公正証書で離婚協議書を作成していない人は今回の記事を参考にして、一刻も早く公正証書を作成し、養育費の回収に努めるようにしてください。

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