離婚後でも養育費回収に必要な公正証書を作成したい!そのために必要な情報を漏らさず解説!!

未払いの養育費を回収しようとしたが、離婚協議書を公正証書として作成していなかったため、申し立てできなかった。

これと同じ理由で協議離婚した多くの人が、差し押さえを阻まれています。

その理由は協議離婚した人が、差し押さえで養育費を回収するには、公正証書として作成した離婚協議書が必要不可欠だからです。

ですが、公正証書がなくても、差し押さえを諦める必要はありません。

この公正証書は離婚後でも作成できるからです。

そこで今回は養育費回収で必要な公正証書について、分かりやすく解説します。

  • 公正証書とは
  • 公正証書の効力
  • 公正証書の作成方法

差し押さえで必要な公正証書の作成を考えている人は一読して、しっかりとその方法を理解してください。

知っておきたい公正証書の効力。離婚協議書との違いを知ろう!

差し押さえの申し立て時に、公正証書として作成された離婚協議書が必要なのは、その公正証書が債務名義に当たるからです。

「債務名義って?」と思われた人は多いでしょう。

債務名義とは、養育費を差し押さえで回収できる権利があることを証明した書類です。

未払いの養育費を回収するための差し押さえは、誰にでもできるものではありません。

債務名義を取得した人だけに認められた権利なのです。

裁判所を介した判決離婚や調停離婚で離婚を成立させれば、裁判所からこの債務名義が与えられますが、協議離婚は裁判所が無介入です。

しかし、協議離婚で債務名義を取得する方法はただ1つ。

離婚協議書を公正証書で作成するしか手はありません。

それではなぜ、公正証書が特別に債務名義として認められるのでしょうか。

これについては下記の記事で詳しく解説しています。

記事の中で書いている公正証書の効力を理解してもらえば、債務名義として認められる理由も理解してもらえるでしょう。

公正証書についてよく理解している人は読み飛ばしてもらって結構ですが、そうでない人は必ず目を通して公正証書について理解するようにしてください。

公正証書に有効期限はあるのか

公正証書に有効期限の存在があるのかを気にする人もいるでしょう。

養育費の支払いは長期にわたるため、有効期限があるならば、申し立てできないケースも出てきます。

となれば、有効期限の有無は気にして当然の話です。

しかし、安心してください。

原則、公正証書に有効期限は存在しません

 

ですが、注意しなければならないのは、養育費の支払いに関しては、有効期限が限定されるという点です。

養育費の様に公正証書を取り交わした相手に債務責任がある場合、下記条項が記載されています。

  • 支払額
  • 支払日
  • 支払方法
  • 支払期間(基本的には子供が成人するまで)

よって、未払いの養育費を差し押さえで回収する際、公正証書が債務名義としての効果を発揮するのは、支払期間の終了時点で未払いとなっている養育費に対してのみです。

支払期間を過ぎれば相手に支払義務はありませんし、仮に支払いを求めて差し押さえを申し立てようとしても、認められることはありません。

近年は大学に進学する子供が増えたことから、大学卒業時点である22歳まで支払期間を延長できるようになっています。

公正証書の作成時には支払トラブルを避けるため、下記のような文言を記載しておくといいでしょう。

「*大学進学時には卒業時まで支払期間を延長する。」

公正証書の作成方法

差し押さえに公正証書が必要と言われても、その手続きを1人で進められるかと言われれば、不安に思う人が大半でしょう。

そこで安心して公正証書の作成に進んでもらうためにも、ここではその作成方法について詳しく解説します。

最近は公正証書の作成を全て弁護士に丸投げすることもできますが、その際には10万円ほどの手数料が発生します。

できるならば、掛かる費用はできるだけ抑えたいところですよね。

ここでは、公正証書の作成方法を分かりやすく解説するので、弁護士費用を抑えるためにも、自らできることにはどんなことがあるのかを理解してください。

作成手続場所は公証役場

公正証書は公正役場と呼ばれる役所で、公証人と呼ばれる公務員によって作成されます。

公正証書は下記目的で作成される公文書のため、作成者は下記条件を有する者であることが求められます。

  • 高度な法的知識を有する
  • 豊富な法律実務経験を有する
  • 公務員として党派性がなく、中立・公正である

そのため、下記の様に特別な事情がある場合を除けば、公証人が依頼者のもとへ訪れて作成することはなく、原則、依頼者となる両名が公証役場を訪れ、本人確認と作成手続きをすることになります。

  • 依頼者が高齢
  • 依頼者が病気治療中

公正証書の作成申込の手続きは、公証役場に問い合わせれば教えてくれますし、手続きそのものは難しいものではありません。

この手続きに限って言えば、弁護士の手を借りなくても、十分自分でやれるでしょう。

公証役場の場所

公証役場は国民が利用しやすいように、全国各地の約300箇所に開庁されています。

しかし、開庁時間は平日の9時から17時までですから、日中仕事を抱えている人は注意が必要です。

また、開庁数は十分な数ですが、開庁数は都道府県によってバラつきがあります。

45ヵ所もの開庁数を持つ東京都のようなところもあれば、数ヵ所だけしかないところもあるので、場合によっては訪問が一日仕事になることもあるでしょう。

事前に公証役場のある場所を確認するようにしてください。

参照先:日本公証人連合会HP(公証役場一覧)

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公正証書作成の進め方

次は公正証書を作成する際の、手続とその流れを簡単にお教えしておきます。

手続き方法については公証役場によって異なる場合もありますが、本筋としてはおおむね変わりはありません。

今回お教えする流れを頭に入れた上で、公証役場が定めるルールに従うようにしてください。

公正証書を作成する際の手続きと流れば下記の通りです。

  1. 公正証書に記載する内容を決定する
  2. 申込手続きに必要な書類を集める
  3. 公証役場へ作成申込をする
  4. 公証人が公正証書作成に向けた準備を進める
  5. 依頼者両名が作成予約日に公証役場へ出向く
  6. 公証役場で公正証書を作成する
  7. 完成した公正証書を受け取り、公証人手数料を支払う

それでは、これら流れを順を追って見ていきながら、注意点を確認していくことにしましょう。

公正証書に記載する内容を決定する

公正証書の作成に当たって、一番重要なのが記載内容です。

公正証書を作成しても、依頼者の意にかなったものでなくては意味を成しません

差し押さえを目的に作成するのであれば、養育費に関する下記条項の記載は絶対に必要です。

  • 養育費支払いの有無
  • 養育費の金額
  • 養育費の支払い期間
  • 養育費の支払い方法

記載漏れや誤りのないように細心の注意してください。

この中でも特に重要なのが、支払われる養育費の額でしょう。

養育費は離婚時の話し合いによる自由裁量が認められていますが、裁判所を介した離婚では毎月2万円から6万円くらいが相場です。

2016年に厚生労働省が発表した「全国ひとり親世帯等調査結果報告」の養育費受給額は下記の通りです。

世帯

平均受給月額

母子世帯

43,707

父子世帯

32,550

裁判所が養育費を決定する場合、その基準としているのが「養育費用算定表」です。

この養育費算定表では下記条件を比較して養育費が算定されており、子どもの人数が多いほど増加傾向にあります。

  • 夫の年収と妻の年収
  • 子供の年齢
  • 子供の数

判決離婚や協議離婚であれば裁判所による決定が下されますが、協議離婚では基本的に両者の話し合いにより決定されます。

そのため、一般的な相場を持ち出して交渉したとしても、その通りの金額が通るとは限りません。

できるだけ受給額を上げるためにも、交渉は第三者、または弁護士に任せた方がいい結果となるでしょう

しかも、依頼する両者に記載事項に対する認識ずれがあったり、一方に認識ずれがあるまま作成を進めれば手続きが進まなかったり、作成後にトラブルが生じることも考えられます。

目的に則した有効な公正証書には、下記の2つが欠かせません。

  • 依頼者双方が理解して納得した内容であること
  • 法的に有効な内容であること

よって、全てを考慮すれば、やはり公正証書の作成内容は弁護士の力を借りることをおすすめします。

申込手続きに必要な書類を集める

公正証書の作成手続は手ぶらで行って申し込めるものではありません。

養育費についての取り決めを交わす際は、記載する内容文と下記の書類提出が求められます。

  • 本人確認書(公的書類:印鑑証明書や運転免許証、マイナンバーカードなど
  • 実印(印鑑証明書を本人確認書とする時)
  • 依頼者双方の戸籍謄本

上記の様に本人確認者は公的文書であれば問題ありませんが、印鑑証明書以外の物を提出する際は注意が必要です。

運転免許所の様に写真付きの本人確認書が認められる公証役場が多いのですが、中には印鑑証明書の提出を必須としているところも見られます。

印鑑証明を作成していない場合、印鑑登録の手続きを先に済まさなければならないこともあるでしょう。

申込時にアタフタしないためにも、印鑑証明書の提出が必要かを事前確認してください。

公証役場へ作成申込をする

公正証書の作成内容が決まり、提出書類が揃えば、後は公証役場を訪れて申し込めば手続きは完了です。

また、申込時には公正証書の作成日の予約ができないかを確認してください。

公証役場では予約を受け付けているところもあるので、作成を急ぐ場合には予約して作成日を決めておいた方が確実です。

事前に作成予定日の候補を考えておくようにしましょう。

公証人が公正証書作成に向けた準備を進める

申し込みを受けた公証役場では、公正証書作成に向けて準備作業が開始されます。

申込日に作成が行われることはまずありません。

申し込みされた順番に沿って申込準備が開始されるからです。

準備は早ければ1週間、遅ければ3週間ほどと言われますが、2週間前後と考えておけばいいでしょう。

しかし、記載内容に法的に無効な点や不備があれば依頼人に照会され、その分、作成期間は長くなってしまいます。

不備のない内容で申し込むためにも、やはり作成内容については弁護士の強力を得るべきでしょう。

依頼者両名が作成予約日に公証役場へ出向く

公証役場で作成準備が整うと、その旨、連絡が入ります。

申込時に予約できなかった場合は、公証役場で作成日時の予約をしてください。

その後は、予約日に再び公証役場に出向いて、公正証書の作成を行います。

作成時には依頼者双方の署名と押印が必要になるので、揃って公証役場を訪れなければなりません。

本人ではなく代理人として弁護士に出向いてもらうこともできますが、そうでない場合は注意してください。

公証役場で公正証書を作成する

作成現場では公証人により、依頼者双方の本人確認が行われ、問題なければそのまま作成に入ります。

完成後は依頼者双方が公証人の前で内容確認し、問題なければ双方が署名・押印し、その後に公証人が同じく署名・押印すれば公正証書の完成です。

公証人の前で依頼者双方が、それぞれの意思により署名・押印し、公証人は記載内容が正式なものであることを署名・押印で認証したことで、作成文書が真正に成立したことが証明されるというわけです。

完成した公正証書を受け取り、公証人手数料を支払う

公正証書が完成すれば、その原本は公証役場に保管され、写しとなる「正本」もしくは「謄本」が交付されます。

この際に作成手数料を現金で納めなくてはなりません。(*2020年時点では、現金以外の支払い方は用意されていません。)

公証役場に支払う手数料は下記の通りです。

養育費の受給額

手数料

100万円以下

5,000

100万円超え~200万円以下

7,000

200万円超え~500万円以下

11,000

500万円超え~1,000万円以下

17,000

1,000万円超え~3,000万円以下

23,000

3,000万円超え~5,000万円以下

29,000

5,000万円超え~1億円以下

43,000

1億円超え~3億円以下

43,000円に5,000万円までごとに13,000円を加算

3億円超え~10億円以下

95,000円に5,000万円までごとに11,000円を加算

10億円超え

249,000円に5,000万円までごとに8,000円を加算

3人の子供に対して月額40,000万円/人を、養育費として10年間支払う場合の手数料は下記の通りです。

40,000万円 × 3人 × 12ヵ月 × 10年 = 23,000円

受けとる養育費が多いほど、手数料は高くなります。

手数料は月額換算ではなく、総受給額換算です。

手数料は作成準備が整った時点で、公証役場から事前に連絡が入るので、事前に準備しておくようにしてください。

公正証書の内容は離婚後でも作成・変更できる!

 

公正証書は離婚後でも作成・変更できます。

協議離婚で債務名義が取得できていない場合は、まずは公正証書の作成を検討してみましょう。

また、離婚後の予期せぬ出来事によって、養育費の取り決めに変更が必要な場合も、内容変更することが可能です。

離婚時の条件に意がそぐわない場合には、条件変更を申し出てみるのもいいでしょう。

しかし、離婚後の作成・変更は、離婚した両者の同意が必要不可欠です。

どちらか一方だけの同意では、作成も変更もできません。

この点は覚えておくようにしてください。

相手に公正証書の作成を拒否された時の対処法

養育費を払っていない場合、おそらく公正証書の作成は拒まれてしまうでしょう。

それでは相手に公正証書の作成を拒まれた時は、どうすればいいのでしょうか?

この場合、公正証書を作成して債務名義とすることはできないでしょう。

しかし、離婚後に債務名義を取得する方法は、公正証書の作成だけではありません。

公正証書の作成に同意してもらうのが、一番簡単で時間もかからない方法ですが、無理な場合は「裁判所へ支払督促の申し立て」という方法もあります。

この支払督促の申し立てをすれば、その後の仮執行宣言の申し立てを経て、債務名義となる「仮執行宣言付支払督促」の取得が可能です。

この申し立ては相手に異議申し立ての権利が認められているため、その権利を実行される可能性があります。

そうなれば債務名義の取得には、長い期間を要することになるでしょう。

その時は民事訴訟に移行され、判決が出るまで債務名義を取得できませんが、他に債務名義を取得する方法は見当たりません。

この手以外、他に方法はありません。

支払督促の申し立てによる「仮執行宣言付支払督促」の取得方法は、下記の記事で詳しく解説しています。

公正証書の作成に同意してもらえそうにない場合は、「仮執行宣言付支払督促」の取得方法を学んで、できるだけ早く申し立てることをおすすめします。

離婚後に公正証書で養育費の支払条件を変更する方法

公正証書にある養育費の支払条件を変更する方法は下記の2つです。

  • 両者間の話し合いによる合意
  • 裁判所での調停及び審判

支払条件を変更したいならば、相手と話をつけるか、裁判所に裁定を仰ぐかのどちらかかしかありません。

最も望ましいのは話し合いで決着をつける方法でしょう。

両者の合意が得られた場合は、不払い時に差し押さえ申し立てができるよう、取り決め事項を公正証書にしておくことをおすすめします

また、話し合いでは片が付かない場合は、裁判所に裁定をゆだねることになりますが、その際の流れは下記の通りです。

  1. 調停による話し合い
  2. 調停が不成立のばあい、民事裁判に移行
  3. 判決

調停で話し合いが成立しなければ、通常の民事裁判に移行されます。

その際には判決が出るまでの期間は長期化が必至です。

この点はよく理解しておきましょう。

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まとめ

協議離婚した人が未払いの養育費を差し押さえで回収するためには、公正証書の有無が大きく影響してきます。

近年は離婚協議書を公正証書として作成する人が増えてきましたが、それでも全体的に見れば大した増加ではありません。

公正証書がないために、差し押さえできないという人が依然として、大部分を占めているのが実情です。

しかし、今回お話ししたように、公正証書は離婚後でも作成できますし、相手が作成に同意しなくても、債務名義を取得する方法は他にもあります。

公正証書がなくて差し押さえができずに困っている人は、今回の記事を参考にして、早急に債務名義を取得するようにしてください。

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