養育費相場の確認は「養育費算定表」を用いるのが一般的です。
協議離婚時や裁判所の調停・審判時の養育費決定で参考にされていることからも、現在のところ最も信頼性と実効性の高いデータと言えるでしょう。
ですが、この養育費算定表は子供3人までを想定して作成された算定表です。
そのため、今回の様に子供が4人以上になる場合、この養育費算定表は使えません。
そこで今回は子供が4人以上の時の養育費相場算出に用いられる、最も標準的な計算方法をお教えします。
そして、子供が4人いる場合の養育費相場を、ケーススタディ別にシミュレーションした結果を紹介するので、子供4人の養育費を知りたい人は最後まで目を通して、養育費相場の参考にしてください。
養育費の基本的な計算方法を理解しよう!
それでは早速、養育費相場の最も基本的な計算方法について解説します。
この計算方法で必要なのは下記の2つです。
- 夫婦それぞれの基礎収入
- 親子それぞれの生活指数
この2つを元に養育費相場を算出します。
基礎収入にしても、生活指数にしても聞き慣れない言葉でしょうが、ちゃんと意味さえ理解してもらえば、計算自体はさほど難しいものではありません。
それでは実際に下記条件で養育費相場がいくらになるのかを、順を追って計算していきましょう。
- 夫の年収(給与所得):600万円
- 妻の年収(給与所得):100万円
- 子供:14歳以下の子供4人を妻が監護
養育費算定表が利用できない場合、養育費相場は自分で計算するしかありません。
分かりやすく解説するので、計算方法をしっかりマスターしてください。
ステップ1:夫婦のそれぞれの基礎収入を算出
まず最初に求めるのが夫婦それぞれの基礎収入の算出です。
基礎収入とは年収(総収入)から下記を控除した金額で、養育費を算出する際の基礎金額になります。
- 公租公課(各種税金や社会保険料など)
- 職業費(仕事のために必要になる経費)
- 特別経費(住居費など、家計の中で固定費に当たる費用)
基本的に基礎収入は下記の範囲内に納まるとされています。
- 給与所得者:年収(総収入)の38%~54%の範囲内
- 自営業者:年収(総収入)の48%~61%の範囲内
正確に把握しているのであれば、その金額を基礎収入として用いても結構ですが、わざわざ正確な金額を調査するような必要はありません。
裁判官が養鶏場の平均的数値を基に作成した、下記表の基礎収入割合を参考にして求めるといいでしょう。
(給与所得者の場合)
給与年収 |
基礎収入割合 |
0円~75万円以下 |
54% |
75万円超え~100万円以下 |
50% |
100万円超え~125万円以下 |
46% |
125万円超え~175万円以下 |
44% |
175万円超え~275万円以下 |
43% |
275万円超え~525万円以下 |
42% |
525万円超え~725万円以下 |
41% |
725万円超え~1,325万円以下 |
40% |
1,325万円超え~1,475万円以下 |
39% |
1,475万円超え~2,000万円以下 |
38% |
(自営業者の場合)
事業年収 |
基礎収入割合 |
0円~66万円以下 |
61% |
66万円超え82万円以下 |
60% |
82万円超え~98万円以下 |
59% |
98万円超え~256万円以下 |
58% |
256万円超え~349万円以下 |
57% |
349万円超え~392万円以下 |
56% |
392万円超え~496万円以下 |
55% |
496万円超え~563万円以下 |
54% |
563万円超え~784万円以下 |
53% |
784万円超え~942万円以下 |
52% |
942万円超え~1,046万円以下 |
51% |
1,046万円超え~1,179万円以下 |
50% |
1,179万円超え~1,482万円以下 |
49% |
1,482万円超え~1,567万円以下 |
48% |
それではこの表の基礎収入割合を元に、夫婦それぞれの基礎収入を計算してみますよう。
今回は夫婦共に給与所得者ですから、2人の基礎収入割合は下記の通りです。
- 夫の基礎収入割合 ⇒ 41%
- 妻の基礎収入割合 ⇒ 50%
よって、夫婦それぞれの基礎収入は下記の様になります。
- 夫の基礎収入:600万円 × 41% = 246万円
- 妻の基礎収入:100万円 × 50% = 50万円
年収に基礎収入割合を掛けてやれば、基礎収入が求められるというわけです。
ステップ2:養育費の権利対象となる子供の生活費を算出する
子供の生活費は下記の2つを用いて計算します。
- 養育費を支払う親の基礎収入
- 親子それぞれの生活指数
生活指数は一般の成人(親)を100とした場合、未成年の子供は年齢に応じて、下記のように区分されます。
- 0歳から14歳まで:62
- 15歳から19歳まで:85
今回は4人全員が14歳以下ですから、子供の生活指数はそれぞれ62です。
それでは必要なピースが揃ったところで、子供の生活費を算出することにしましょう。
子供の生活費は下記の計算式で求められます。
よって、この計算式に各ピースを当てはめると、子供の生活費は下記の通りです。
ステップ2:養育費相場を算出
後は最後の計算を残すだけです。
養育費相場は下記の計算式で求めることができます。
これまで算出した下記3つをこの計算式に当てはめれば、養育費相場が算出できます。
- 子供の生活費:175万円
- 養育費を支払う親の基礎収入:246万円
- 親権者の基礎収入:50万円
その計算結果は下記の通りです。
この養育費相場は年額です。
よって、12で割って月額を求めると、算出された額は約12万円になります。
以上が子供が4人の時の養育費の計算方法です。
手順としては下記の通り3ステップですから戸惑うことはないでしょう。
- 基礎収入を計算する
- 子供の生活費を計算する
- 養育費を算出する
今一度、自分に合った条件で計算してみることをおすすめします。
ーーー
条件別に見る子供が4人いる時の養育費相場
養育費を左右する一番大きな決め手は、養育費を支払うことになる義務者の年収です。
一般的には下記の3つが、養育費相場を決定する重要な要因とされていますが、一番大きな影響を与えるのは、義務者の年収であることに間違いはありません。
- 夫婦それぞれの年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
そこで、義務者となる夫の年収が違った場合、下記条件で子供が4人いる時の養育費相場はどう変動するのかを検証します。
- 妻の年収:無収入
- 子供:子供4人を妻が監護
下記年収時の養育費相場を、子供の年齢を変えながら確認するので、どう変動するかを比較しながら見るようにしてください。
- 年収300万円
- 年収400万円
- 年収500万円
- 年収600万円
- 年収1,000万円
夫の年収が300万円の時の養育費相場
夫の年収が300万円時、子供の年齢が異なると下記の様に養育費相場が変動します。
子供の年齢 |
養育費相場 |
全員が14歳以下 |
74,828円 |
1人が15歳以上、残り3人が14歳以下 |
76,698円 |
2人が15歳以上、残り2人が14歳以下 |
78,351円 |
3人が15歳以上、残り1人が14歳以下 |
79,820円 |
全員が15歳以上 |
81,137円 |
夫の年収が300万円の場合、養育費は「7万円中盤~8万円強」が相場です。
15歳以上の子供が1人増えるごとに、約2,000円ほどの増額が見られます。
15歳を超えると生活指数は大人とほぼ変わらない点を考慮すれば、この増額は十分なものとは言えません。
子供の年齢による養育費相場への影響は、さして大きくないと言ってもいいでしょう。
夫の年収が400万円の時の養育費相場
夫の年収が400万円時、子供の年齢が異なると下記の様に養育費相場が変動します。
子供の年齢 |
養育費相場 |
全員が14歳以下 |
99,902円 |
1人が15歳以上、残り3人が14歳以下 |
102,399円 |
2人が15歳以上、残り2人が14歳以下 |
104,605円 |
3人が15歳以上、残り1人が14歳以下 |
106,567円 |
全員が15歳以上 |
108,325円 |
夫の年収が400万円の場合、養育費は「10万円弱~10万円強」が相場です。
今回も300万円の時と同じく、下記の特徴が見られます。
- 年齢による養育費相場への影響は大きくない
これは養育費相場の算定における特徴かもしれません。
年収500万円以降にも同じ傾向が見られるかを見てみましょう。
夫の年収が500万円の時の養育費相場
夫の年収が500万円時、子供の年齢が異なると下記の様に養育費相場が変動します。
子供の年齢 |
養育費相場 |
全員が14歳以下 |
124,742円 |
1人が15歳以上、残り3人が14歳以下 |
127,860円 |
2人が15歳以上、残り2人が14歳以下 |
130,615円 |
3人が15歳以上、残り1人が14歳以下 |
133,065円 |
全員が15歳以上 |
135,259円 |
夫の年収が500万円の場合、養育費は「12万円中盤~13万円中盤」が相場です。
今回は400万円までと異なり、15歳以上の子供が1人増えるごとに約3,000円ほどの増額が見られます。
年齢による増額も、年収の高さしだいというわけですが、やはり子供の年齢による影響は大きくないのは確かなようです。
夫の年収が600万円の時の養育費相場
夫の年収が600万円時、子供の年齢が異なると下記の様に養育費相場が変動します。
子供の年齢 |
養育費相場 |
全員が14歳以下 |
147,746円 |
1人が15歳以上、残り3人が14歳以下 |
151,439円 |
2人が15歳以上、残り2人が14歳以下 |
154,701円 |
3人が15歳以上、残り1人が14歳以下 |
157,604円 |
全員が15歳以上 |
160,203円 |
夫の年収が600万円の場合、養育費は「14万円中盤~16万円強」が相場です。
年収300万円から今回の600万円までの増額幅を見て分かったのですが、養育費相場は年収が100万円増えるごとに、約25,000円ずつ増額されています。
年収300万円で全員が14歳以下の場合、養育費相場は74,828円でした。
これに200万円分の増額幅50,000円を加算してみます。
すると124,828円と、年収500万円で全員が14歳以下の124,742円とほぼ変わりません。
これは養育費相場の算定における法則です。
この法則は簡易計算にも使えるので、覚えておくといいでしょう。
夫の年収が1,000万円の時の養育費相場
夫の年収が1,000万円時、子供の年齢が異なると下記の様に養育費相場が変動します。
子供の年齢 |
養育費相場 |
全員が14歳以下 |
238,537円 |
1人が15歳以上、残り3人が14歳以下 |
244,499円 |
2人が15歳以上、残り2人が14歳以下 |
249,776円 |
3人が15歳以上、残り1人が14歳以下 |
254,452円 |
全員が15歳以上 |
258,648円 |
夫の年収が1,000万円の場合、養育費は「24万円弱~26万円弱」が相場です。
さすがに年収1,000万円ともなれば、ここまでの養育費とは段違いです。
やはり、受け取れる養育費は、別れる夫の年収しだいなのは疑う余地はありません。
子供の年齢による増額幅も「4,000円~5,000円」と大きいことから、やはり、子供の年齢による影響は、義務者の年収しだいなのは間違いないでしょう。
養育費相場は年収が高ければ高いほど、確実に高額になると覚えておきましょう。
4人の子供を夫婦それぞれが引き取った場合の養育費相場
ここでまで全ての子供を妻が、親権者となって引き取った時の養育費相場を紹介してきました。
しかし、子供が4人ともなれば、子供を夫婦それぞれが引き取るケースも出てくるでしょう。
ここでは、その際の計算方法について解説します。
このケースも先に紹介した計算方法を利用してもらえば難なく算出できます。
お教えした通り計算してもらえばいいだけです。
4人以上の子供の養育費相場を算出する際の計算式は下記の通りですが、注意する点は「子供の生活費」の算出時だけでしょう。
子供の生活費を算出する際の注意点
子供の生活費は下記の計算式で求められます。
ここで注目して欲しいのは、「養育費を受ける子供の生活指数合計値」です。
離婚する夫婦が4人の子供を2人ずつ引き取ったとしましょう。
この子供は全員14歳以下です。
この場合、 養育費を受ける子供の生活指数合計値は、14歳以下の子供が2人ですから124になります。
この計算のポイントは、養育費を受ける子供の人数を間違わないという点に尽きます。
ここさえ間違わなければ、夫婦それぞれが引き取る子供が何人になろうと、正確に養育費相場を算出することができます。
それでは、試しに夫婦それぞれが子供を引き取ったケースの養育費相場を、計算してみることにしましょう。
実際に夫婦それぞれが子供を引き取った時の養育費相場を計算しよう!
今回は下記条件で養育費相場を計算してみます。
- 夫の年収:600万円
- 妻の年収:100万円
- 子供の人数:4人
- 子供の年齢:全員が14歳以下
- 子供の引き取り先:夫が2人、妻が2人
先にお教えした手順通りやれば、問題なく回答を導くことがでるでしょう。
まずは、夫婦それぞれの基礎収入の計算です。
- 夫の基礎収入:600万円 × 41% = 246万円
- 妻の基礎収入:100万円 × 50% = 50万円
次は子供の生活費を求めましょう。
子供の生活指数は全員が62で、養育費を受ける子供は2人ですから、これを子供の生活費を求める計算式に当てはめると下記の様になります。
- 養育費を受ける子供の生活指数合計値: 62+62 = 124
- 子供全員の生活指数合計値: 62+62+62+62 = 248
- 養育費を支払う親の生活指数:100
それでは、養育費を求める下記計算式に各ピースを当てはめて計算してみましょう。
すると、子供の生活費は下記の通りです。
それでは、最後に養育費相場の算出です。
ここまで求めた各条件を、下記計算式に当てはめて計算してください。
すると、今回の養育費相場は下記の通り、月額約6万円になります。
87.6万円 × 246万円 ÷(246万円+50万円)= 約72.8万円
約72.8万円 ÷ 12ヶ月 = 月額約6万円
夫婦それぞれが子供を引き取る際、養育費相場の計算で注意しなければならないのは下記の2つです。
- 養育費を受け取る子供の生活指数
- 養育費を受け取る子供の人数
この2点さえ間違わなければ、難なく養育費相場を算出することができるでしょう。
よくある養育費の疑問をスッキリ解決!
下記の2つは養育費を受け取っている人なら、遅かれ早かれいずれは抱く疑問です。
- 養育費はいつまでもらえるの?
- お互いの再婚は養育費に影響するの?
それでは最後に、これら養育費の疑問に対して、分かりやすく回答しておきます。
今現在、気にしていなくても、いずれは疑問を抱く問題です。
近い将来直面する問題への予備知識として、覚えておくことをおすすめします。
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養育費はいつまでもらえるの?
養育費の支払い期間は、原則、子供が成年年齢に達する20歳までとされています。
これは、20歳が法的に成人として認められることを、根底とした考え方によるものです。
ここで問題となるのが大学進学です。
大学への進学率が50%を超えた今、子供の大学進学を考える親は実に多くなりました。
大学進学を当然の規定ラインとして考えている親も少なくないでしょう。
ですが、卒業時年齢が22歳となる大学進学では、養育費の支払い期間が在学中に終わってしまいます。
となれば、養育費の支払い期間延長の可否が気になる親が多いのも頷ける話です。
結論から言えば、養育費の支払い期間は延長できます。
そもそも養育費は下記詳細が法律で規定されているわけではありません。
- 支払金額
- 支払い期間
養育費は本来、離婚する両者の話し合いによる合意によって取り決められるものなのです。
よって、相手が期間延長に同意さえすれば、大学卒業時の22歳まで養育費を受け取ることもできます。
しかし、問題は相手の同意が得られなかった場合です。
この時は裁判所の裁決を仰ぐことになるため、少々厄介な話になってくるでしょう。
これについては下記の記事で詳しく解説しています。
養育費の支払い期間延長を希望している人は、ぜひ目を通して対策を講じるようにしてください。
お互いの再婚は養育費に影響するの?
離婚した夫婦が、その後再婚するのは珍しい話ではありません。
これは離婚した夫婦だけでなく、子供にとっても望ましいことでしょう。
しかし、問題となるのはお互いの再婚が及ぼす養育費への影響です。
養育費はお互いの再婚により、減額・免除となる可能性が出てきます。
これは養育費を受け取っている人によっては、切実な問題となるケースも出てきます。
互いの再婚が養育費の減額・免除にどう影響するのかは、事前にちゃんと把握しておく必要があるでしょう。
この問題については下記の記事で詳しく解説しています。
お互いの再婚が養育費の減額・免除にどう影響するのかを、ケーススタディごとに解説しています。
ぜひ目を通して、離婚後の再婚が養育費に及ぼす影響を、しっかりと理解しておくことをおすすめします。
まとめ
今回は子供が4人いる場合の養育費相場を、年収別に分けてシュミレーションしました。
子供を4人も引き取るとなれば、いくら養育費がもらえるかは切実な問題となってきます。
今回のシミュレーションで、大体の養育費相場は理解してもらえたかと思います。
基本的に相場以上の養育費を受け取れる可能性は高くありません。
相手が高額年収で収入に余裕がある場合を除き、請求しても認められることはないでしょう。
あなたが離婚して受け取れる養育費がいくらなのかを把握し、その上で離婚後の生活設計をどうすればいいのかを熟考するようにしてください。
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