離婚時に夫婦間でトラブルになりやすいのが養育費問題です。
支払い額もさることながら、2022に成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることで、いつまで養育費を支払わなくてはならないのか、いつまで支払いを求めていいのかと気をもんでいる人も多いことでしょう。
そこで今回は養育費が支払われるべき期間を、徹底検証していきます。
養育費の支払期間で悩んでいる人は、最後まで目を通して、養育費取決の参考にしてください。
養育費を請求できる期間
養育費は経済的・社会的に自立できていない未成熟子が、自立するまでに要するすべての費用のことです。
通常は離婚後に子供と同居している法定管理人である親権者(母親)が、子供と離れて暮らす非親権者(父親)に、子供の法定代理人として請求する形が取られます。
養育費の取り決めで問題となるのが下記の2点です。
- 養育費の支払い額
- 養育費の支払い期間
養育費は離婚する双方の合意さえあれば、どのようにでも取り決めることができます。
よって、今回の焦点となる養育費の支払い期間も両者の合意さえあれば、自由に決めることができるのです。
養育費には取り決め時の基本ベースが存在する!
極端な話、「支払い額が月額100万円、支払期間を子供が結婚するまで」と定めたとしても、両者がこの条件に合意するのであれば何の問題もありません。
この無茶な取り決めも成り立つのです。
しかし、実際はこんな極端な要望が通ることはありません。
親権者(母親)の求めに対して、非親権者(元夫)が合意しないケースが多く見られます。
請求側である親権者はできるだけ多く・長く、そして支払う側となる非親権者はできるだけ少なく・短くと考えてしまうのが自然です。
となれば、両者が合意しないケースが多くなるのも仕方がないことでしょう。
通常、養育費は下記2つを基本ベースとして、取り決められるのが一般的です。
- 養育費の支払い額:養育費算定表の金額を養育費相場として参照
- 養育費の支払い期間:原則、成年年齢である20歳になるまで
ここで注目してもらいたいのが養育費の支払期間です。
養育費算出で算出された養育費は、下記条件をベースに最低限必要な費用が養育費として算出されています。
- 親権者の年収
- 非親権者の年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
よって、養育費では賄えない費用が必要になり、その費用に関しては特別費用として、両者話し合いの元、増額の可否が決められます。
しかし、支払期間の変更に関しては、合意が得られにくいのが実情です。
これは、養育費の支払い義務が「経済的・社会的に自立できていない未成熟子が自立するまで。」とされているため、法的に成人として認められる20歳までが支払期間とされていることに起因しています。
しかし、この判断は本当に正しいのでしょうか?
そこで、まずは養育費とは何を根拠として義務付けられているのかを、下記2つから検証し、その是非を問うことにします。
- 法律上の根拠
- 事実上の根拠
2つとも養育費の支払い期間を決める上で、重要な役割を担っています。
よく目を通して、しっかり理解するようにしてください。
養育費の法律上の根拠
実は養育費の支払い期間は、法律で明確な規定はされていません。
驚かれた人も多いことでしょう。
ですが、非親権者が離れて暮らす子供に対して、養育費の支払い義務がある法的根拠はちゃんと定められています。
その規定が記載されているのは、下記の民法第766条【離婚後の子の監護に関する事項の定め等】の1項です。
「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。 」
この条項は両親が離婚したことを前提としていますが、両親が結婚せずに生まれた非嫡出子に対しても、養育費の負担義務があることが前提にされています。
そして、この民法第766条【離婚後の子の監護に関する事項の定め等】で注目してもらいたいのは「監護」という用語です。
この監護に要する費用が養育費に当たるのですが、監護とは親権者が子供の代理人として法的行為をする権利や義務のことを差し、具体的には下記の2つが挙げられます。
- 財産管理権
- 身上監護権
権利名 |
権利内容 |
財産管理権 |
①子供の全財産の管理権 |
②子供の法律行為に対する同意権 |
|
身上監護権 |
①身分行為の代理権:子供が身分法上の行為をする際の同意・代理権 |
②居所指定権:親が子供の居所を指定する権利 |
|
➂懲戒権:親が子供に対してしつけをする権利 |
|
④職業許可権:子供が職に就くに当たって、親が就業を許可する権利 |
この監護権は民法第818条第1項に下記の通り規定されており、子供が20歳になった時点でこの権利は消滅します。
「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」
よって、民法第766条【離婚後の子の監護に関する事項の定め等】における養育費の規定からすれば、支払い期間は監護権が消滅する20歳までという解釈が成り立ちます。
そのため法律上の根拠を元に、養育費の支払い期間を主張する場合は、20歳までが支払期間という主張が正論となるのです。
養育費の事実上の根拠
養育費の事実上の根拠には、親と子供に法的な親子関係が成立していることが求められます。
法的に親子関係が成立することで、親は子供に対して扶養義務を負うことになるからです。
扶養義務は大きく下記の2つに分類されます。
生活扶養義務:兄弟姉妹などの親族、配偶者の姻族に対するもので、自分が生活を送り、それでもまだ余力がある場合に限って相手の生活を援助する義務。
生活保持義務:親が子供に対して、自分と同等程度の生活を維持しなければならない義務。
つまり、親は子供に対して「一粒の米粒も分かち合わなければならない。」という絶対的な強制力を持つ扶養義務を負っているのです。
養育費の支払い義務も、この生活保持義務が根拠となっています。
そして、この生活保持義務で注目してもらいのが「自分と同等程度の生活を維持しなければならない。」という部分です。
親が4年制の大学を卒業していたとしましょう。
このケースでは親は子供が望めば、自分と同等の学歴取得のために援助しなければならないことになります。
つまり、子供が大学進学を望むのであれば、卒業時年齢となる22歳まで、子供に対して扶養義務を負うことになるのです。
そのため事実上の根拠を元に、養育費の支払い期間を主張する場合は、22歳まで認められる可能性が出てくるというわけです。
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養育費の延長・短縮の請求可否は断言できない!
ここまで話したように養育費の支払い期間は、下記のどちらを根拠に請求するかで、その見解は異なります。
- 法律上の根拠
- 事実上の根拠
これも養育費をいつまで支払わなければならないのか、法律で明確な規定がされていないことが災いしてのことです。
そのため、子供の成長に伴い、下記の様に養育費の支払い期間の変更が求められる可能性が出てきます。
- 支払期間の延長:大学進学
- 支払期間の短縮:高校卒業に伴う就職
大学進学時の支払期間の延長にしても、高校卒業に伴う支払期間の短縮にしても、どちらを根拠として主張するかで、下記の様にその可否は異なります。
(大学進学に伴う支払期間の延長)
- 法律上の根拠:扶養期間は20歳までのため認められない
- 事実上の根拠:養育費を支払う親の最終学歴が大学であれば、認められる可能性がある
(高校卒業後の就職に伴う支払期間の短縮)
- 法律上の根拠:扶養期間は20歳までのため認められない
- 事実上の根拠:養育費を支払う親の最終学歴が高校であれば、認められる可能性がある
離婚した親同士、または子供との話し合い合いで決着が付けば、その可否は両者の合意によって自由に決められます。
しかし、話し合いで決着が付かない場合は、結論は裁判所へと持ち込まれ、裁判官の裁定に委ねるしかありません。
その際には上記根拠や両親や子供の身辺条件が加味された上で、裁決が下されることになるでしょう。
裁判官の考え1つというわけです。
養育費の延長や短縮を決めるには、下記どちらかの方法しかありません。
- 両親や子供による話し合い
- 裁判所による裁決
この結果がどうなるかは、断言できないのが実情です。
「天のみぞ知る」というわけではありませんが、運任せとなる可能性もあるでしょう。
どちらにしても現状、養育費の延長・短縮の請求可否は断言できません。
この点は十分に理解しておくようにしてください。
養育費を大学卒業まで延長したい!養育費の延長と増額の可否
「大学進学を理由に養育費の支払い延長を、進学費用の増額を含めて請求したい。」
大学進学率が50%に達したことにより、そう希望する子供や親が年々増加しています。
今後はそう考える人は、さらに多くなってくるでしょう。
となれば大学進学を想定している親権者や子供は、養育費の延長と増額が認められるかは気になるところです。
ですがこれについても、断定した意見を述べることはできません
請求する子供やその両親の状況や事情が大きく影響してくるからです。
しかし、端から諦める必要はありません。
実際に裁判所から大学進学に伴う、養育費期間の延長と増額が認められたケースが多々あるからです。
これについては下記の記事で詳しく解説しています。
実際に大学の進学費用請求をした裁判の判例や、認められなかった場合の対処法にも触れています。
詳しく知りたい人は目を通して、必要な情報をしっかり身に着けるようにしてください。
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まとめ
今回は養育費はいつまで請求できるのかと題して、養育費の支払い期間の延長・短縮の可能性を解説しました。
現在は養育費の支払い期間が、法律で明確化されていないため、その可能性は個々によって異なります。
そのため、はっきりと断言する意見を述べることはできません。
認められる可能性もあれば、認められない可能性もあると言うに留まるのが精いっぱいでしょう。
今回解説した内容を参考に、その可能性を探り、どうすればいいのか最善の道を探るようにしてください。
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