不払いの養育費を自分の力だけで回収することは容易ではありません。
相手が支払いを渋っているケースでは、さらに回収は難航になるでしょう。
そんな時の相談先として、まず頭に浮かぶのが弁護士です。
とりあえず弁護士に回収を依頼してみようと考える人は多いでしょう。
ですが、頼れるのは弁護士だけではありません。
近年注目を集めている養育費保証サービスもその1つです。
これは民間の保証会社が不払い時の養育費を保証するという有償サービスで、自治体がこの保証会社と提携して立て替え制度を導入したことからも注目を集めています。
よって、現在、養育費の回収代行を依頼できるのは下記3つです。
民間会社の養育費保証サービス
自治体の立て替え制度
弁護士
そこで今回はこれら3つの回収代行方法を徹底検証し、どの回収代行がおすすめなのかを検証していきます。
養育費の不払い問題に悩んでいる人は最後まで目を通して、最善の回収方法を選ぶ参考にしてください。
養育費の回収代行を依頼できる3者の違いを徹底比較!
以前は不払いの養育費回収となれば、個人で対応するか、弁護士に依頼して回収してもらうかの2択しかありませんでした。
自分で交渉してダメなら、弁護士に依頼するという流れです。
よって、養育費保証サービスの登場は、養育費回収を模索している人にとっては喜ぶべきことでしょう。
ですが、依頼先を選ぶ際には注意が必要です。
どこに回収代行を依頼するかで、効果と結果は違ってきます。
この得られる効果と結果を理解した上で依頼先を決定しなければ、あなたが期待している効果と結果は得られません。
そこで、あなたにとってどこに依頼すれば最善の効果と結果が得られるのかを判断してもらうためにも、この3つの回収代行先の特徴とメリット・デメリットを分かりやすく紹介します。
回収代行先を選ぶ際の判断基準になる重要情報です。
しっかりと理解するようにしてください。
民間会社の養育費保証サービス
民間会社の養育費保証サービスでまず理解して欲しいのは、このサービスが慈善事業として展開されているわけではない点です。
そのため依頼時には保証料の支払いが求められます。
保証料は保証会社によって異なりますが、月額の養育費と同額というのが一般的です。
よって、民間会社の養育費保証サービスを利用する際には、まずは保証料の比較検討が必要になってくるでしょう。
民間会社の養育費保証サービスの特徴
自治体が民間会社と提携して立て替え制度を導入したことで、養育費保証サービスは養育費が不払いになった人が利用する回収サービスだと思っている人もいるでしょう。
しかし、これは大間違いです。
今は養育費保証サービスに参入する企業が増えたことから、サービス内容も多岐に渡ります。
そのため、すでに不払いとなっている人の申し込みを、受け付けるところも出てきました。
ですが、そもそもこの養育費保証サービスは、養育費の不払いに備えた保証サービスです。
そのため自治体の立て替え制度のように、すでに養育費の不払いに悩まされている人を救済する為に始まったサービスではありません。
この点は後述する、残り2つとは全く異なります。
失業保険をイメージしてください。
失業保険は毎月保険料を支払い、失業時に給与保証してもらいますよね。
要はこれと同じ保証サービスなのです。
それではこの民間会社の養育費保証サービスのメリット・デメリットを見ていくことにしましょう。
民間会社の養育費保証サービスのメリット
民間会社の養育費保証サービスのメリットは、何と言っても不払いとなった時のリスクを相当程度軽減できる点に尽きます。
養育費の受け取りは相手あってのことです。
そのため、下記のような不測の事態で相手が養育費を支払えなくなることもあるでしょう。
- 会社都合による退職
- 病気やケガによる長期療養
相手が支払いたくても、支払えなくなる可能性は否定できません。
こんな時、養育費保証サービスがあれば、収入が安定するまで急場を凌ぐことができます。
また、すでに不払いが始まっている人の申し込みを受け付けているサービスでは、確実に不払いの養育費を受け取れる点も見逃せません。
民間会社の養育費保証サービスは審査が行われます。
この審査に通過しさえすれば、不払い時は確実に養育費の保証が受けられるのです。
後述する弁護士の場合、相手から不払いの養育費が回収できなければ、養育費を受け取ることはできません。
弁護士費用だけを支払う結果となる可能性もあるのです。
となれば、審査さえ通過できれば確実に不払いの養育費が受け取れるのは、特記すべきメリットと言えるでしょう。
民間会社の養育費保証サービスのデメリット
民間会社の養育費保証サービスのデメリットは下記の通りです。
- 保証料がかかる
- 保証額に上限がある
- 誰でも利用できるわけではない
- 非弁行為に該当する可能性がある
メリットよりもデメリットの多さが目立ちます。
基本的に民間会社の養育費保証サービスは、利用者にとって十分にメリットのあるサービスです。
しかし、その反面、このようにデメリットも多いので、これを理解した上で各社のサービス内容を比較検討し、申込先を決定しなければなりません。
これらデメリットは保証会社のサービス内容や条件でカバーすることが可能です。
民間会社の養育費保証サービスにはこれらデメリットがあることを理解して、できるだけいい条件で信頼できる保証会社を選ぶようにしてください。
それではこれらデメリットを簡単に確認してみることにしましょう。
①保証料がかかる
先に話したように民間会社の養育費保証サービスを利用するには保証料の支払いが必要です。
また、民間会社の養育費保証サービスは1年契約が基本で、更新時には再度保証料の支払いが発生します。
この保証料がいくらかによって、得られるメリットは変わってくるのは明白ですよね。
複数社を十分に比較検討した上で、申込先を決めるようにしてください。
②保証額に上限がある
民間会社の養育費保証サービスの保証額には上限があり、保証額がこの上限に達すると契約は解除されてしまいます。
上限額は各社で異なりますが、これも重要な選択肢の1つとなってくるでしょう。
➂誰でも利用できるわけではない
民間会社の養育費保証サービスを利用できるのは、申込要件をクリアしている人だけです。
また、申込要件をクリアして申し込めたとしても、その後の審査を通過しなければ利用できません。
誰でも利用できるわけではないのです。
申込要件と審査基準は各社で異なります。
申込要件が緩いところほど審査通過率は高くなりますが、その分、保証料が割高に設定されています。
費用対効果をしっかり考慮して、申し込むようにしてください。
④非弁行為に該当する可能性がある
この養育費保証サービスは、弁護士法に抵触する非弁行為の可能性があります。
非弁行為については後で詳しく解説しますが、民間会社の養育費保証サービスを利用する上で一番注意して欲しいのは、提供しているサービスがこの非弁行為に当たらないかです。
事実、この養育費保証サービスは、始まったばかりの新しいものです。
提供するサービス内容が法律的に適正なものかどうかの判断が難しいことは否めません。
よって、十分な法的対応をしないまま、サービスを提供しているところもあるでしょう。
この場合、その会社は営業停止となり、サービスが途中で停止される可能性も出てきます。
そのため、民間会社の養育費保証サービスを利用する際は、まずは信頼性の高い会社であるかどうかの見極が必要不可欠です。
まずは、会社概要や口コミなどを確認して、会社の信頼度を検証するようにしてください。
民間会社の養育費保証サービスについては、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
おすすめの養育費保証サービスも数社紹介しているので、各社のサービス条件を比較してみましょう。
自治体の立て替え制度
近年メディアの報道等で注目されている自治体の立て替え制度ですが、これは先に紹介した民間会社の養育費保証サービスと全く同じものです。
自治体が独自に実施している制度の様に思っている人もいるでしょう。
しかし、そう思っているなら考えを改めてください。
自治体の立て替え制度は民間会社に業務委託して、民間会社の養育費保証サービスを提供しているだけなのです。
よって、サービスの特徴やメリット・デメリットは、一部を除いて民間会社の養育費保証サービスとほとんど変わりません。
自治体の立て替え制度の特徴
民間会社の養育費保証サービスを提供しているといっても、民間会社のものと全く同じというわけではありません。
民間会社は完全な営利目的で養育費保証サービスを提供していますが、自治体は不払いの養育費に悩む人を救済することが目的です。
完全に非営利目的で実施している制度であり、財政補てんを目的としたものではありません。
この点が民間会社の養育費保証サービスと大きく異なる点であり、一番の特徴と言えるでしょう。
よって、申し込む人は現状、養育費が不払いとなっている人に限定されます。
養育費の不払い問題を解消するための制度と考えてもらえばいいでしょう。
自治体の立て替え制度のメリット
自治体の立て替え制度のメリットは、初回保証料がかからない点です。
自治体によって違いがありますが、少なくても補てんはしてくれます。
申込後に審査があるため、申し込めば必ず利用できるわけではありませんが、これは利用者にとって大きなメリットと言えるでしょう。
しかし、更新時の保証料は面倒を見てくれません。
更新する際は自己負担となるので覚えておきましょう。
また、もう1つのメリットは安心して利用できる点です。
先ほど話したように養育費保証サービスは、弁護士法に抵触する非弁行為に当たる可能性があります。
そのため、申込先は慎重に選ばなければなりません。
ですが自治体が業務委託した保証会社なら、そんな心配はいらないでしょう。
当然、しっかりと調査した上で業務委託しているはずですから、途中で保証が急に打ち切られる心配もありません。
自治体の立て替え制度のデメリット
自治体の立て替え制度のデメリットは下記の3つです。
- 保証会社を選べない
- 利用者数に限りがある
- 制度実施している自治体が少ない
民間会社の養育費保証サービスのように非弁行為は気にする必要はありませんが、その他のデメリットに加えて、上記デメリットがさらに加わります。
①保証会社を選べない
まず自治体の立て替え制度のデメリットとして注目して欲しいのは、保証会社を選べない点です。
自治体の立て替え制度は、業務委託した保証会社の保証を受けることになります。
よって、下記の利用条件は保証会社の規定に準じることになるでしょう。
- 申込要件
- 審査条件
- 保証条件
そのため、民間会社の養育費保証サービスのように、自分が求める条件のところへ申し込むということができません。
②利用者数に限りがある
また、自治体の立て替え制度は、利用者数に限りがあります。
これは保証料を負担するための予算に限りがあるからです。
今後、この制度を継続していく上で、予算の増加は期待できますが、それでも利用者数は限定されます。
早い者勝ちとなることもあるでしょう。
申し込みが一歩遅れて利用できなかったということも無きにしも非ずです。
この点は覚えておくようにしてください。
➂制度実施している自治体が少ない
残念ながらこの立て替え制度を導入している自治体は限られています。
よって、日本中の誰もが利用できるわけではありません。
今後、導入する自治体は増加すると期待されていますが、導入していない自治体の方が圧倒的に多いのが実情です。(*2020年11月現在)
ですが、注意してください。
自治体が新しく導入する制度は必ずしも大々的に公表されるわけではありません。
利用者がその存在を知らないという制度は少なくないのです。
まずは、お住まいの自治体HPから、制度実施の有無を確認してみることをおすすめします。
この自治体の立て替え制度については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。
初めてこの制度を導入した兵庫県明石市を例に挙げて紹介しているので、目を通して利用条件を確認してみてください。
弁護士
それでは最後は弁護士です。
養育費の不払い問題を弁護士に依頼するとなれば、この手続きが回収代行と思わない人も多いでしょう。
しかし、弁護士があなたの代理人となって、不払いの養育費を請求して回収するのですから、弁護士への依頼も回収代行に当たります。
それでは弁護士への回収代行依頼は、先の2つとどう違うのでしょうか。
はっきり言って、養育費の回収代行で得られる効果と結果において、弁護士と先の2つは全く異なります。
分類するならば弁護士と先の2つに分けられるでしょう。
それでは先の2つ度どう違うのか、弁護士の特徴とメリット・デメリットから確認してみることにしましょう。
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弁護士の特徴
弁護士と先の2つで最も異なるのは、相手が望めば必ず依頼を引き受けてくれる点です。
先の2つは利用するために様々な条件が課されています。
これは理解してもらっていることでしょう。
そのため、いくら魅力的なサービスといっても、利用できる人は限られてしまいます。
ですが、弁護士ならば費用さえ支払えば、利用条件にくくりは全くありません。
養育費の不払い問題に悩む人すべてが頼れる、回収代行先といっても過言ではないでしょう。
弁護士のメリット
弁護士に回収代行を依頼するメリットは下記の通りです。
- 状況に応じた最適な回収方法を提案してもらえる
- 養育費回収に必要な手続きが迅速にできる
- 将来の養育費回収の対策ができる
- 不払い中の負担を軽減するアドバイスがもらえる
基本的に先2つのサービスは、現状不払いになっている養育費を立て替えてもらうだけです。
ですが、回収を弁護士に依頼すれば、他のサポートも受けることができます。
近年は協力弁護士を雇って法律事務を取り扱う保証会社も増えてきましたが、直接弁護士に依頼した時と同じサポートをしてくれることはありません。
保証にしても上限があるので、人によっては全額回収できないケースもあるでしょう。
ですが弁護士ならば完全サポートと、全額回収という効果と結果が期待できます。
養育費の不払い問題を根本的に解決することができるのです。
となれば、一時的な問題解決しかできない先の2つと、不払い状況を根本的に解決できる弁護士とでは、得られる効果と結果は全く異なります。
ZOZO創業者の前園氏が始めた「株式会社小さな一歩」のサービスは、養育費の不払い問題の解決支援を掲げているようです。
しかし、それでもサポート対応は直接弁護士に依頼した時の足元にも及びません。
これらメリットについては、下記記事の「養育費回収を弁護士に依頼するメリットはコレ!」で詳しく解説しています。
しっかりと目を通して、これらメリットにどんな効果が期待できるのかを確認してください。
弁護士のデメリット
養育費の不払い問題をしっかりと解決したいという人には、弁護士がおすすめです。
ですが、その分、費用が高額になる点は否めません。
強制執行による差し押さえに掛かる費用相場が回収額の20%から30%前後ですから、先の2つと比べれば確実に費用は高くなります。
今の不払い分の回収ができさえすればいいというなら、弁護士よりも先の2つを利用した方がお得でしょう。
ですが根本的に問題解決したいなら、断然弁護士がおすすめです。
どんな効果と結果を求めるかで、依頼先は変わってくるというわけですね。
また、もう一点覚えておいてもらいたいデメリットは、回収できない可能性があることです。
もちろん、その時にも弁護士費用は発生します。
費用だけ支払って回収できないケースも想定しておかなければなりません。
ですが、余程のことがなければ、回収不能となることはないでしょう。
仮にその可能性がある場合は、弁護士からその旨の忠告があるはずです。
無駄に費用だけが発生することはないので安心してください。
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養育費保証サービスは非弁行為の可能性が!
非弁行為とは弁護士法に抵触する行為を指します。
先に話したように、養育費保証サービスはこの非弁行為に当たる可能性が否めません。
下記の弁護士法に抵触する可能性があります。
- 弁護士法72条
- 弁護士法73条
日本弁護士連合会から各弁護士会長に対して、このサービスを扱う企業から協力を求められた場合、慎重に対応するようにとの注意喚起を促す文書が通達されたほどです。
しかし、全ての養育費保証サービスが、この弁護士法に抵触しているわけではありません。
抵触しないようなサービス体制を取っている信頼性の高い保証会社であれば、非弁行為を問題視されることはないでしょう。
この非弁行為と養育費保証サービスの問題については、下記記事の「養育費保証サービスは弁護士法に抵触する皮弁行為に当たる可能性が!」で詳しく解説しています。
これは養育費保証サービスの申込先を選ぶ上でも重要な情報です。
養育費保証サービスの利用を検討している人は、ぜひ目を通してしっかりと頭に入れておいてください。
突然消えた「iCash」は非弁行為に当たった可能性も!?
一時時期、スマートフォン1つで養育費の未払いを回収できるアプリとして注目されたのが「iCash」です。
リリース当時は口コミも期待や称賛の声が多く、期待されたサービスでした。
しかし、202011月現在では、HPは閉鎖されて忽然と姿を消しています。
サービス条件を見ると申し込んだ後、不払いの養育費が回収できれば、システム利用料として回収額の20%が差し引かれた額がアプリのウォレットに蓄積されるというものでした。
手数料だけ見れば弁護士と変わりません。
養育費保証サービスとしては、間違いなく高額な部類になるでしょう。
「iCash」という会社自体が「スマホひとつで権利を行使できる社会に」をコーポレートテーマに据えており、その手始めとして養育費が選ばれたとのことです。
新規参入が増えている今、事業スタートから1年も絶たずに閉鎖したのには、非弁行為という問題がクリアできていなかったことが理由ではないかとの憶測もあります。
実際、その閉鎖理由については言及されていないので、確かなことは分かりませんが、その可能性は十分にあるでしょう。
この非弁行為が問題視されてからは、この養育費保証サービスをあつかう会社は下記の様に経弁行為に当たらないことを明言するところが多くなっています。
本サービスは、弁護士と相談者をマッチングするサービスではなく、元パートナーに代わってあなたに養育費をお支払いする「保証サービス」であって、養育費という権利を買い取るサービスでもありません。
そして、また、書面がない方向けに協力弁護士を通じた書面作成サポートも提供しておりますが、そのことで当社は報酬を一切頂いておりません。
本サービスは保証サービスの対価として報酬(保証料)を得るのみで、事件を弁護士へ紹介することの対価としての報酬は得ておらず、また、権利の譲渡を受けているわけでもないため、弁護士法72・73条には抵触いたしません。
なお、日本弁護士連合会に対しては当社から本サービスの適法性を説明しております。
引用先:株式会社小さな一歩HP
株式会社小さな一歩は、日本弁護士連合会へ適法性の説明までする徹底ぶりです。
養育費保証サービスへの参入が増加している今だからこそ、非弁行為とならないサービス提供をしている保証会社の見極めが重要になってきます。
くれぐれも申込先の選定時には、非弁行為に当たらないサービス内容であるかを、しっかりと確認するようにしてください。
まとめ
今回は養育費の回収代行に焦点を当てて、3つの回収代行先を徹底比較してきました。
養育費保証サービスは不払い問題を解決する1つの方法です。
利用できれば養育費回収という点においては、弁護士に依頼するよりも短期間・低料金で回収することができます。
安心して利用できる信頼性の高い保証会社であれば、何の問題もなく利用できるでしょう。
しかし、利用時にはどのような効果と結果を求めて、回収代行を依頼するのかが重要なポイントとなってきます。
依頼先が適材適所であるかが重要なポイントなのです。
まずは、この点を明確にして、自分にとって一番必要な効果と結果が得られる回収代行先を選ぶようにしてください。
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