「年収200万円の夫と離婚を考えている。」
「でも、この年収で養育費なんてもらえるんだろうか?」と心配している人は少なくないでしょう。
そもそも、世帯年収200万円で暮していくこと自体、厳しいのが実情です。
それは、結婚していたあなたなら十分、理解していることでしょう。
しかし、養育費の支払いと年収の低さには、全く関係はありません。
例え無収入でも、養育費の支払い義務が免除されることはないからです。
そこで今回は年収200万円の夫と離婚した場合、いくらの養育費が請求できるのかを検証していきます。
起こりうる養育費不払いの対処法もお教えするので、離婚時の養育費交渉の参考にしてください。
養育費の基本的な計算方法を理解しよう!
社会保険料や税金を差し引けば、年収200万円の手取りは約163万円です。
これを月額に置き換えればたったの13万円ほどにしかなりません。
しかも、ボーナス込みの年収であれば、さらに額面は低くなってしまいます。
この収入で家賃や光熱費、食費、生活雑貨などの生活費を差し引けば、残るのはせいぜい2万円くらいがいいところでしょう。
この実情は元妻であれば、重々承知しているかと思います。
となれば、「養育費はもらえない。」と端から諦めている人も多いことでしょう。
しかし、養育費は収入が低いからといって、逃れられるものではありません。
親は収入が低いなら、低いなりに支払うべき義務を負っているのです。
離婚を決意しているのなら、養育費の請求交渉は必ずするべきでしょう。
そこで、まず把握しなければならないのは養育費の相場です。
これが分からないでは、交渉の仕様がありませんよね。
そこで養育費の相場を確認する方法としておすすめしたいのが「養育費算定表」です。
養育費算定表は裁判所でも用いられている、信頼性と実効性の高いデータで、計算することなく簡単に養育費相場を確認することができます。
何の知識もない素人が正確に養育費相場を確認するには、最もおすすめな手段と言えるでしょう。
養育費算定表の見方
それでは、養育費算定表を用いた養育費相場の確認方法をお教えします。
実際に養育費算定表を見ながら解説するので、一緒に養育費相場を確認してみることにしましょう。
養育費算定表は下記の裁判所HPで公開されています。
まずは上記サイトにアクセスして下さい。
アクセスできたら、下記のステップに従って、実際に年収200万円の養育費相場がいくらなのかを確認していきましょう。
ステップ1:「養育費・婚姻費用算定表」を開く
上記サイトにアクセスすると下記の「養育費・婚姻費用算定表」ページが開くので、まずは「養育費・婚姻費用算定表」をクリックしてください。
すると、「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」というページが開きます。
ステップ2:条件に該当するPDFファイルを開く
このページのトップ下を見ると、下記の様にいくつものPDFファイルが並んでいるのが確認できます。
ここで見てもらいたいのが、(表1)から(表9)までのPDFファイル名です。
養育費算定表で養育費相場を確認する為には、下記の3つの情報が必要になります。
- 夫婦それぞれの年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
まずは、あなたの下記条件に該当するPDFファイルを選び、クリックしてください。
- 子供の人数
- 子供の年齢
今回は「14歳未満の子供が1人」という条件で、養育費の確認をしていきます。
それでは早速、このPDFファイルを開いてみましょう。
ステップ3:夫婦それぞれの年収から養育費を確認する
PDFファイルを開くと、下記のグラフが画面に出てきます。
このグラフは表題の通り、14歳未満の子供が1人いる場合の養育費算定です。
ここで確認してもらいたいのが、「義務者の年収/万円」と書かれた縦列と、「権利者の年収/万円」と書かれた横列です。
- 義務者 ⇒ 非親権者(離婚する夫)
- 権利者 ⇒ 親権者(あなた)
縦列と横列に下記区分に分けて数字が記載されているのが確認できるでしょう。
後は離婚する夫とあなたの職業に応じて、それぞれの年収がクロスする金額を確認するだけです。
- 自営 ⇒ 自営業者
- 給与 ⇒ 会社員
試しに、下記条件で養育費がいくらになるのかを確認してみましょう。
- 夫の年収(会社員):200万円
- 妻の年収:無収入
この場合両者の年収がクロスするのは下記の様に「2~4万円」になります。
難なく養育費相場が確認できましたよね。
この養育費算定表を使えば、このように簡単に養育費相場が確認できます。
今回確認した条件と異なるなら、もう一度あなたの条件で養育費相場がいくらになるのかを確認してみてください。
年収200万円の夫と離婚した際の養育費を条件別に分けて確認しよう!
養育費算定表を使った養育費相場の確認手順でお分かりかと思いますが、養育費は下記3つの条件によって変動します。
- 離婚する夫婦それぞれの年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
ここでは、下記年収条件で子供の人数と年齢が変われば、養育費がどう変動するのかを確認します。
- 夫の年収:200万円
- あなたの年収:無収入
また、夫の年収が200万円の場合、その妻が専業主婦で無収入というケースはまずあり得ません。
少なくてもパート・アルバイトでの収入は得ているでしょう。
そこで上記条件に加え、パート・アルバイトの全国平均年収となる120万円を妻の年収とした場合の養育費も確認します。
妻に収入がある場合、養育費にどれくらいの影響が出るのかを見比べてみてください。
子供の年齢・人数別に見る養育費
夫の年収が200万円、妻が無収入のケースで、子供の年齢と人数が異なれば、養育費相場は下記の様に変動します。
子供の人数・子供の年齢 |
養育費相場 |
子供1人・年齢14歳以下 |
2万円~4万円 |
子供1人・年齢15歳以上 |
2万円~4万円 |
子供2人・共に年齢14歳以下 |
2万円~4万円 |
子供2人・第1子年齢15歳以上/第2子年齢14歳以下 |
4万円~6万円 |
子供2人・共に年齢15歳以上 |
4万円~6万円 |
子供3人・全員年齢14歳以下 |
4万円~6万円 |
子供3人・第1子年齢15歳以上/第2子、3子年齢14歳以下 |
4万円~6万円 |
子供3人・第1子、2子年齢15歳以上/第3子年齢14歳以下 |
4万円~6万円 |
子供3人・全員年齢15歳以上 |
4万円~6万円 |
次は夫の年収が200万円、妻の年収が120万円のケースです。
子供の人数・子供の年齢 |
養育費相場 |
子供1人・年齢14歳以下 |
1万円~2万円 |
子供1人・年齢15歳以上 |
2万円~4万円 |
子供2人・共に年齢14歳以下 |
2万円~4万円 |
子供2人・第1子年齢15歳以上/第2子年齢14歳以下 |
2万円~4万円 |
子供2人・共に年齢15歳以上 |
2万円~4万円 |
子供3人・全員年齢14歳以下 |
2万円~4万円 |
子供3人・第1子年齢15歳以上/第2子、3子年齢14歳以下 |
2万円~4万円 |
子供3人・第1子、2子年齢15歳以上/第3子年齢14歳以下 |
2万円~4万円 |
子供3人・全員年齢15歳以上 |
2万円~4万円 |
先に話したように養育費算定表の養育費は、3つの条件に応じて金額が異なりますが、その中でも一番養育費に影響を及ぼすのは年収です。
もちろん子供の人数と年齢の高さも関係してきますが、年収の影響の大きさは無視することはできません。
高収入となる夫の年収が高いほど、養育費も高くなるのが一般的です。
下記は夫の年収が800万円で、妻が無収入のケースの養育費ですが、今回の年収200万円のケースと比較すれば、一目で納得してもらえるでしょう。
子供の人数・子供の年齢 |
養育費相場 |
子供1人・年齢14歳以下 |
10万円~12万円 |
子供1人・年齢15歳以上 |
12万円~14万円 |
また、年収は夫婦間の年収差が大きいほど、もらえる養育費は高くなります。
これは夫の年収の高さに関わらず見られる傾向ですから、覚えておくといいでしょう。
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夫婦それぞれが子供を引き取った場合の養育費
夫の年収が200万円の場合、もらえる養育費はたかが知れています。
しかも、あなたがパート・アルバイトの収入しかないなら、2人以上の子供を抱えて生活するのには無理があるでしょう。
となれば、夫の年収が200万円の離婚では、それぞれが子供を引き取るケースは多くなってくることが予測できます。
気付いた人もいるかもしれませんが、養育費算定表の養育費は、親権者1人が全ての子供を引き取ったケースで算定されたものです。
別れる夫婦それぞれが、子供を分けて引き取った場合の養育費は確認できません。
この場合、通常は養育費算定表の養育費算出に用いられた標準計算式を使って、養育費を計算することになります。
その計算方法は下記の記事で紹介していますが、計算が複雑で面倒なため、計算ミスをする可能性が高く、計算慣れしていない人にはおすすめはできません。
そこで今回は、より簡単に計算できる方法をお教えします。
見るだけで確認できる養育費算定表とは違い、多少の計算は必要ですが、計算慣れしていない人でも難なく養育費を求めることができます。
下記の条件で養育費がいくらになるのかを分かりやすく解説するので、あなたの養育費の求め方を身に着けるようにしてください。
- 夫の年収:200万円
- 妻:無収入
- 夫婦がそれぞれ14歳未満の子供を1人ずつ親権
ステップ1:子供の生活指数を確認する
生活指数とは生活費指数とも呼ばれ、家計の生活費に基づいて算出された物価指数を指します。
今回の計算では一般的な大人の生活を100とした場合、子供の生活数値は年齢に応じて下記の通り規定されたものを用います。
- 0歳~14歳未満:55
- 14歳以上:90
よって、今回はどちらの子供も14歳未満のため、生活指数は共に55を用います。
ステップ2:養育費を支払う子供の生活指数割合を求める
生活指数割合は、養育費を支払うことになる子供の生活指数の割合が、子供全員の生活指数どれくらいになるかを指す数値です。
よって、今回は14歳未満の子供が2人ですから、2人の生活指数合算値は下記の通りです。
また、養育費を支払うのは14歳未満の子供1人ですから、生活指数割合は下記の計算で求められます。
55 ÷ 110 = 0.50
⇒生活指数割合50%
14歳未満の子供が3人いて、あなたが2人、分かれる夫が1人引き取る場合だと、生活指数合算値は165となり、生活指数割合は下記の通りです。
100 ÷ 165 = 0.60
⇒生活指数割合60%
養育費を支払う子供の生活指数を、子供全員の生活指数合算値で割ってやれば、生活指数割合が求められるというわけです。
ステップ3:養育費算定表から養育費を確認する
次は子供全員をあなたが引き取った時の養育費を養育費算定表で確認します。
この場合の養育費は「2万円~4万円」です。
ステップ4:養育費を計算する
ここまでくれば後は簡単です。
確認した養育費に、先ほど計算した生活指数割合を掛けてやれば、下記の様にもらえる養育費が算出できます。
実際にあなたの条件で計算してもらえば分かると思いますが、さほど面倒な計算ではありません。
これなら計算ミスをすることなく、正確に養育費を算出することができるでしょう。
夫婦それぞれが子供を引き取る場合には、この計算方法で養育費相場を確認してください。
養育費のボーナス月加算を検討しよう!
夫の年収が200万円だと、もらえる養育費は決して満足なものではありません。
内閣府が「インターネットによる子育て費用に関する調査報告書」と題して公表した、中学生になるまでに必要になる各年代の子育て費用を見てください。
年齢 |
子育て費用/年 |
0歳 |
約930,000円 |
1歳 |
約880,000円 |
2歳 |
約940,000円 |
3歳 |
約1,040,000円 |
4歳~6歳 |
約1,200,000円 |
小学1年生~小学4年生 |
約1,100,000円 |
小学5年生~小学6年生 |
約1,250,000円 |
先に確認した養育費では、全然足りないのは一目瞭然ですよね。
そこでおすすめしたいのが、養育費のボーナス月加算です。
年収200万円では、養育費算定表で算出された月額を超える増額は、求めたとしても無理でしょう。
しかし、まとまった収入が入るボーナス月なら可能性がないわけではありません。
少しでも養育費を充実させるためにも、ぜひ検討してもらいたい養育費の増額手段です。
養育費のボーナス月加算については、下記の記事で詳しく解説しています。
ぜひ目を通してもらい、ボーナス月に養育費増額できるか、その可能性を探ってみることをおすすめします。
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知っておくべき養育費不払い時の対処法!
周知のことですが、養育費で一番心配なのは不払いです。
日本で継続して養育費を受け取っている母子世帯は、全体の25%にも達していません。
近年は養育費の不払いが社会的問題にまで発展し、行政も養育費回収に着手する動きを見せているほどです。
これでは、離婚時に養育費をもらう取り決めをしたとしても、支払期間が終わるまで払い続けられるとは限りませんよね。
そこで事前策として知っておいて欲しいのが、養育費が不払いになった時の対処法です。
2020年4月に民事執行法が改正されたことにより、未払いの養育費を回収できる確率はグンと高くなりました。
よって、簡単に諦めるのではなく、確実に回収できる方法を身に着けて、まずは回収することを考えるべきでしょう。
養育費が不払いになった時の対処法は、下記の記事で詳しく解説しています。
今すぐ必要になるものではありませんが、離婚する夫の年収が低いケースでは、十分にあり得る話です。
いざという時の予備知識として、頭に入れておくことをおすすめします。
まとめ
今回は年収200万円の夫と離婚した時、いくらの養育費が請求できるのかを解説しました。
低年収となる200万円でも養育費の請求はできますし、相手も逃れられない支払い義務を負っています。
端から無理だと諦めようとする必要はないのです。
額面は物足りないかもしれませんが、養育費を払ってもらえる可能性は十分にあります。
今回話した内容を参考にして、子供のために必要な養育費をもらえるよう努めてください。
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