「もうこれ以上夫とは一緒に暮せない!」
離婚段階に入った女性の中には、こう考えて別居に踏み切る人も少なくありません。
ですが、職に就いている女性ならまだしも、別居後の生活が心配でなかなか別居できずにいる専業主婦は多いでしょう。
しかし、別居後の生活は心配いりません。
夫に別居後の生活費用を請求することができるからです。
決して別居を後押しするわけではありません。
ですが、どうしても同居が耐えられないというならば、夫に別居後の生活費用を支払ってもらうことを前提に別居すればいいでしょう。
そこで今回は別居後の生活費用はどうやって請求すればいいのか、その方法と注意点を解説します。
別居後に支払ってもらえる相場金額も併せて紹介するので、あなたが別居を考えているなら、最後まで目を通して参考にしてください。
別居後の生活費用(婚姻費用)の請求方法と手順
婚姻中の夫婦には、協力扶助義務が課されています。
協力扶助義務とは、お互いが助け合って同じレベルで生活できるようにする義務です。
そして、この協力扶助義務の1つが婚姻費用分担義務で、夫婦それぞれの収入や資力に応じて、生活費用を分担する義務が課されています。
別居中も婚姻費用分担義務は継続する
婚姻中の生活費用を「婚姻費用」と言います。
そして、この婚姻費用分担義務は婚姻中であれば、同居・別居に関わらず、なくなることはありません。
夫の収入が40万円、妻の収入が10万円で、婚姻中の婚姻費用をまかなっていたとしましょう。
この場合、婚姻費用の分担割合は下記の通りです。
- 夫:80%
- 妻:10%
別居後に掛かる妻の生活費用も、この分担割合に応じて、夫が負担しなければならないというわけです。
婚姻中の婚姻費用分担義務は、民法第752条に定められた義務ですから、妻は夫に婚姻費用(生活費用)を法的根拠に基づいて請求できます。
まず、あなたにはこの権利があることを、しっかり理解しなければなりません。
そうすれば、どうどうと夫に別居後の生活費用を、請求できるようになるでしょう。
別居後に必要な生活費用の請求方法を学ぼう!
基本的に別居後の生活費用は、夫婦の話し合いで決めることになります。
これが一番おすすめな方法です。
話し合いで決まらなければ、裁判所に裁決を委ねることになるため、長い時間と多大な労力が必要になってしまいます。
生活費用の受け取りもかなり先になってしまうので、話し合いで決着をつけるのが一番スムーズに事が進む方法でしょう。
話し合いで決着しなければ、後は裁判所任せ
しかし、「別居したいから、その間の生活費用をちょうだい!」と言っても、相手がすんなり応じるとは限りません。
相手が感情的になっていれば、その可能性は高いでしょう。
この時、次に取れる手は裁判所への申し立てだけです。
裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てるしか手はありません。
これ以降は裁判所に裁決を委ね、結果が出るのを待つことになるでしょう。
それでは申立方法と必要書類、そしてその費用を簡単に紹介しておきます。
申立先裁判所
申し立て先は原則、夫の住所地を管轄する家庭裁判所です。
お互いの合意があれば、任意の家庭裁判所に変更することもできます。
別居後、あなたの住所が夫と遠隔地になる場合は、夫と話し合って中間地点の家庭裁判所を選ぶといいでしょう。
申し立てに掛かる費用
申し立てに掛かる費用は大して掛かりません。
- 収入印紙1,200円分
- 連絡用の郵便切手
連絡用の郵便切手は申し立てる家庭裁判所によって異なります。
必ず事前に確認するようにしてください。
また、弁護士に依頼するならば、弁護士費用も必要になります。
離婚を視野に入れているなら、費用は掛かりますが、この段階から弁護士を雇うのも賢い選択でしょう。
申し立てに必要な書類
申し立てに必要な書類は下記の通りです。
- 申立書の原本とその写しを1通ずつ
- 夫婦の戸籍謄本(*全部事項証明書)
- あなたの収入証明書(源泉徴収票や給与明細書、確定申告書の写しなど)
申立書は下記の裁判所HPからダウンロードできます。
記入例も記載されているので、確認してみるといいでしょう。
別居後の生活費用(婚姻費用)を請求する時のポイントと注意点
それでは引き続き、別居後の生活費用を請求する際の、ポイントと注意点をお教えします。
知っておいて欲しい情報ばかりですから、しっかり目を通すようにしてください。
別居後の生活費用(婚姻費用)は遡って請求できない
別居後の生活費用は請求した時点からしか、支払ってもらうことはできません。
あなたが別居して3か月後に請求したとしましょう。
請求できる生活費用は3か月後の請求月からで、それ以前の3ヶ月分は支払ってもらうことはできません。
請求が遅れれば遅れるほど、受け取れる生活費は少なくなってしまいます。
また、裁判所に調停申立した場合は、その申立月が請求開始月とされるのが一般的です。
話し合いで決着がつかない時は、迅速に申し立てるようにしてください。
この点は勘違いしないように、しっかりと覚えておきましょう。
支払いの口約束は絶対にNG
話し合いで決着がついた時は、必ず取り決め内容を書面化しておきましょう。
別居は離婚の様に法的な取り決めではないため、軽く考える人が少なくありません。
そのため、口約束で終わらせる人も多いのです。
しかし、口約束だけですまそうとすることだけは、絶対に止めてください。
夫が支払いを止めた時に、「言った、言わない、」といった言い争いになり、らちが明かなくなります。
それを避けるためにも、取り決め内容は書面化しておく必要があるのです。
また、書面化するなら、絶対に「執行認諾文言付き公正証書」がおすすめです。
取り決め内容を執行認諾文言付き公正証書として作成しておけば、不払い時に財産の差し押さえ申し立てが即時可能になります。
相手の同意が必要ですが、必ず作成を求めるようにしてください。
公正証書の効力や作成方法、注意点については、下記の記事で詳しく解説しています。
ぜひ目を通して、さらに詳しい情報を入手してください。
別居後の生活費用(婚姻費用)を請求できる期間
離婚前提の別居なら、長期化する可能性もあります。
離婚に数年を掛ける夫婦もいるほどです。
そのため、別居中の生活費用をいつまで請求できるのかは、あなたも気になるところでしょう。
しかし、安心してください。
別居時の生活費用請求は、法的根拠に基づく婚姻費用分担義務によるものです。
別居期間に関係なく、離婚するまでずっと支払ってもらうことができます。
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別居時の生活費用(婚姻費用)はどれくらい請求できるか
基本的に別居時の生活費用は、夫婦が話し合って決めることです。
そのため、夫の同意が得られれば、生活費用はあなたの要望通りにもできるでしょう。
しかし、話し合いで決着がつかず、裁判所に調停申立をした場合は話が別です。
裁判所が公表している「婚姻費用算定表」の相場データが基準にされます。
婚姻費用算定表の見方
婚姻費用算定表の相場データは裁判所で用いられていることから、最初の話し合いの場でもデータとして有効です。
請求金額が適正である証となるので、夫との交渉時にも役に立つでしょう。
裁判所に場を移しても、同じ金額になることを理解させれば、話し合いで決着がつく可能性も高くなります。
婚姻費用算定表は下記3つの情報さえ分かれば、誰でも簡単に相場データが確認できます。
- 夫婦それぞれの収入
- 子供の人数
- 子供の年齢
婚姻費用算定表の見方は、下記記事の「別居中の支払ってもらえる生活費と養育費の相場」で、分かりやすく解説しています。
記事に目を通して、あなたが請求できる生活費用を確認してみましょう。
別居時の生活費用(婚姻費用)は養育費とは全く別物!
別居時の生活費用の内訳は下記の通りです。
- あなたの生活費
- 子供の生活費
- 子供の養育費
子供がいなければあなたの生活費だけ、子供がいれば子供の生活費と養育費が含まれます。
これに対して、離婚後の養育費は子供の養育に掛かる費用のみです。
そのため、あなたに子供がいれば離婚後の養育費は、原則、別居時の生活費用からあなたの生活費が差し引かれた金額になります。
別居時の生活費用と、離婚後の養育費を混同している人もいるので、誤解しないように覚えてきましょう。
別居時に賃貸物件を借りた家賃や引っ越し費用
別居時の生活費用には下記のものが含まれます。
- 食費
- 光熱費
- 医療費
- 子供の養育費
- 家賃等の住居費
- 交際費
- 娯楽費
よって、別居時にアパートなどを借りた場合、その家賃を生活費用として支払ってもらうことができます。
しかし、引っ越し費用は話が別です。
引っ越し費用は婚姻費用としては認められていません。
別居時の生活費用を夫に請求できるのは、先に話したように婚姻費用分担義務が法的根拠になります。
そのため、婚姻費用として認められないものは、別居時の生活費用として請求することはできないのです。
もちろん、あなたの夫が請求に応じれば問題ありませんが、裁判所が生活費用として認めることはないでしょう。
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まとめ
今回は別居後の生活費用の請求方法について解説しました。
請求方法は下記のいずれかです。
- 夫婦同士の話し合い
- 裁判所による裁決
別居時の生活費用は法的に認められているものなので、裁判所に裁決を委ねても否決されることはありません。
必ず請求は通るでしょう。
しかし、夫婦で話し合って決めるのと、裁判所に裁決を委ねるのとでは、結果が出るまでに大きな差が出てきます。
別居後の生活を考えれば、早く生活費用を手にするに越したことはありません。
この点を念頭に置いて、夫婦で上手く話し合うことを心がけるようにしましょう。
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