現在利用できる養育費の回収方法といえば下記の3つです。
- 弁護士
- 民間会社の養育費保証サービス
- 自治体の立て替え制度
不払いの養育費を回収しようという人にとって、選択肢が多いことは良いことです。
ですが、逆に回収方法が増えたことで、どの方法で回収するのが一番良いのか悩まれる人もいるでしょう。
これら回収方法で得られる効果と結果は全く異なります。
そのため、まず自分にとって、どの方法が一番適しているのかを考える必要があるのです。
そこで今回は状況別に分けて、一番適した不払いの養育費の回収方法をお教えします。
自分にとって最善の回収方法がどれになるのかを、確認しながら読み進めていきましょう。
離婚後の不払いを回避し、確実に養育費を回収する方法はコレ!
不払いの養育費回収対策は、何も不払いが起こってから始めることではありません。
養育費の不払いが起こらないよう未然に対策を講じるのも、重要な対応策となるのです。
そして、仮に不払いがあった時、直ぐに問題解決できる対策を講じておくことも、必要不可欠な対応策と言えるでしょう。
このように離婚後の不払いを回避し、養育費回収に備えた対策を取る際におすすめなのが下記の2つです。
- 弁護士
- 民間会社の養育費保証サービス
それでは早速、これら2つの回収方法が、どのような効果と結果を生み出すのかを見ていくことにしましょう。
弁護士
離婚後の養育費不払いを回避する為に、一番おすすめなのが弁護士です。
日本では協議離婚率の割合は87.2%と9割近くに及びます。
そのため両者の話し合って、役所の受付窓口に離婚届を提出して終わりという夫婦が実に多いのです。
この際、弁護士を雇って、離婚後の養育費取り決めを書面化する夫婦も増えてきましたが、それでもその数は決して多くはありません。
つまり、養育費取り決めをきちんとして、それを法的効力のある協議書として書面化していない夫婦が大半を占めるわけです。
これはまさに、離婚後に起こりうる養育費の不払い対策を全く考えていない、愚かな行為としか言いようがありません。
養育費の取り決めは公的文書で作成を!
現在、養育費の不払いを取り締まる罰則は何もありません。
相手が不払いのまま逃げても、法的にとがめられることはないのです。
日本における母子世帯の養育費不払い率が60%を超えているのも、支払わなければ法律で罰せられるという抑止力がないことが1つの理由として挙げられます。
よって、他の方法でこの抑止力を課す必要があるのです。
その抑止力こそが、強制執行による差し押さえになります。
支払わないなら、裁判所命令で財産を差し押さえますよという抑止力があれば、相手が支払わなくてもいいかという気持ちを抑制することが可能です。
そのために必要なのが公正証書です。
強制執行できる権利を得るには、養育費の取り決めを公的証明力のある公的文書で作成しておかなければなりません。
ですが、協議離婚では下記方法で養育費の取り決めをしている人が大半です。
- 口約束
- 個人間で作成して取り交わした離婚協議書や養育費の協議書
口約束では、言った言わないの言い争いになり、養育費支払いの取決事項を証明することはできません。
また、個人間で取り交わした離婚協議書や養育費の協議書には公的証明力や執行力がないため、不払いになった時、即時強制執行ができないのです。
これでは、養育費の取り決めをしたとしても、相手に対して何の抑止力も働きませんよね。
不払い時には直ちに差し押さえされるという事実がなければならないのです。
離婚時には弁護士に相談し、協議離婚書を法的執行力のある「執行認諾文言付き公正証書」として作成しておくことをおすすめします。
この文書作成も弁護士なら必ず指摘してくれますし、作成代行も引き受けてくれるので、安心して任せられるのです。
弁護士に相談すれば適正な養育費を請求できる!
また、離婚時に弁護士へ養育費の取り決めを相談すれば、適正な養育費を請求することが可能です。
個人間での話し合いでは、養育費の請求額に折り合いが付かず、適正金額で取り決めが交わされないケースがしばしば見られます。
早く離婚したいという思いが強く、徹底的に話し合わない人が多いことが理由の1つでしょう。
しかし、弁護士に依頼すれば代理人として、相手と交渉してくれるので、あなたが直接相手と話し合う必要はありません。
弁護士が乗り出してきたとなれば、すんなり話がまとまる可能性も出てくるでしょう。
しかも交渉成立しない場合には、裁判所へ問題解決を申し立て、下記手続きで裁判所により養育費の取り決めが決定されます。
- 調停
- 審判
- 訴訟
裁判所が介入すれば適正金額の養育費が請求できますし、その決定で強制執行できる権利を取得することもできます。
わざわざ公正証書を作成する必要はありません。
離婚時の養育費取決については、弁護士に相談した方が断然おすすめです。
下記の効果や結果を得ることができるので、まずは弁護士に相談するようにしてください。
- 適正な養育費請求ができる
- 不払いを防ぐ抑止力が得られる
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民間会社の養育費保証サービス
また、弁護士に養育費の取り決めを依頼しても、相手が必ず支払うとは限りません。
相手が支払いたくても、下記理由で支払えない状況に陥ることもあるでしょう。
- 会社都合による解雇
- 病気やケガによる長期療養
こんな不測の事態に対応するためにピッタリなのが、民間会社の養育費保証サービスです。
保証料の支払いは必要ですが、養育費の不払いがあった時、その金額を保証してもらえます。
保証額に上限がありますが、一時しのぎという点において、このサービスは大きなメリットを生み出すでしょう。
民間会社の養育費保証サービスは短期保証には打って付けな方法!
解雇や長期療養ならば再び養育費を支払えるなるようになるまで。
強制執行による差し押さえを申し立てるなら、回収できるまでの期間を保証によって凌げばいいのです。
期間限定で保証を受けられれば急場を凌ぐことができます。
となれば、この民間会社の養育費保証サービスは、まさに打ってつけの回収方法となるでしょう。
保証額の上限は月額養育費の12ヶ月分というところが多いようですが、最大36ヶ月分の保証が得られる保証会社もあります。
もちろん、このサービスを利用するためには申立要件をクリアし、審査を通過する必要があり、誰もが希望する保証会社の養育費保証サービスを利用できるとは限りません。
ですが、短期間限定で不払い問題を回避したい人には、おすすめの回収方法です。
検討するだけの価値は十分あるでしょう。
また、この保証料の支払い負担は、母親でなくてもかまいません。
養育費を支払う父親が負担することもできるのです。
よって、離婚時の取り決めで、支払いについて話し合い、父親に負担させるという手もアリでしょう。
この交渉も弁護士に任せた方が無難です。
上手く話をまとめるためにも、離婚時には弁護士の助力を仰ぐことをおすすめします。
民間会社の養育費保証サービス利用時には自治体の養育費保証制度をお忘れなく!
現在自治体では後述する、不払いの養育費に対する立て替え制度の導入が進んでいます。
ですが、自治体が実施している助成制度はこれだけではありません。
民間会社の養育費保証サービス利用者に対して、保証料の助成制度を導入している自治体が数多く存在します。
この助成制度は民間会社に支払う、初回保証料を補助してくれる制度です。
導入している自治体は限られており、利用条件も自治体によって異なります。
下記は仙台市が導入している助成制度の申立要件です。
(申請する時に下記要件をすべて満たす方)
- 仙台市内に住所があり、居住している
- 児童扶養手当の支給を受けている、又は同等の所得水準にある
- 養育費の取り決めに係る債務名義を有している
- 養育費の取り決めの対象となる20歳未満の児童を現在扶養している
- 新たに保証会社と1年以上の養育費保証契約を締結する
- 過去に同一の児童を対象として、仙台市からこの補助金を交付されていない
- 市税を完納している
- 暴力団等と関係を有していない
参照先:仙台市HP
保証料は初回分が一番高額となり、2年度以降の更新保証料は初回保証料の50%以下なのが一般的です。
よって、一番高額となる初回保証料を補助してくれる制度は、大きな負担軽減になります。
民間会社の養育費保証サービス利用を検討しているならば、是非とも利用してもらいたい助成制度と言えるでしょう。
この助成制度に関しては下記の記事で、養育費保証サービスの概要と共に詳しく解説しています。
おすすめの養育費保証サービスを提供している民間会社も紹介しているので、目を通して民間会社の養育費保証サービス利用時の参考にしてください。
離婚後に起こった不払いの養育費を確実に回収する方法はコレ!
残念ですが未然に養育費の不払いを回避する為の対策を講じたとしても、養育費の不払いを完全に回避できるわけではありません。
何の対策も講じておらず、突然不払いが始まる人も多いでしょう。
実際に養育費の不払いが始まった時の回収方法には、下記の3つ挙げられます。
- 弁護士
- 自治体の立て替え制度
- 養育費回収アプリ
それでは早速、これら3つの回収方法で得られる、効果と結果を確認していくことにしましょう。
弁護士
不払いの養育費を回収する方法は、下記の様に多岐に渡ります。
- 電話やメール連絡、郵便物による督促
- 内容証明郵便の送付による督促
- 養育費請求調停の申し立て
- 履行勧告または履行命令の申し立て
- 強制執行による差し押さえの申し立て
不払いの養育費回収といえば、強制執行による差し押さえを思い浮かべる人は多いでしょう。
しかし、何でもこの方法で回収すればいいというわけではありません。
不払い状況に応じた最適な方法で回収する必要があるのです。
数ヵ月分の養育費を強制執行による差し押さえで回収するとなれば、費用対効果は限りなく低くなってしまいます。
時間や労力、そして弁護士費用が必要になるからです。
よって、まずはどの方法で回収するのがベストなのかを判断し、その回収方法で回収する必要があります。
弁護士ならば、これら全ての回収方法に対応できます。
しかも、どの回収方法がベストなのかを正しく判断できるので、不払いとなった養育費を回収するならベストな方法と言えるでしょう。
また、弁護士に回収を依頼すれば、回収問題だけでなく、下記のようなトータルサポートを受けることも可能です。
- 養育費回収に必要な手続きが迅速にできる
- 将来の養育費回収の対策ができる
- 不払い中の負担を軽減するアドバイスがもらえる
これは他の回収方法では得られない、効果と結果になってきます。
全てのサポートを期待して、確実に不払いの養育費を回収したいなら、弁護士が最もおすすめとなるでしょう。
ですが、ただ一点、問題となるのが弁護士費用です。
強制執行による差し押さえで不払いの養育費を回収するのに必要な弁護士費用は、回収額の20%から30%前後が相場と言われています。
回収額が100万円ならば20万円から30万円前後の費用が必要になるというわけです。
弁護士費用は依頼先によって違いがありますが、各事務所の費用比較は必要になるでしょう。
弁護士に養育費回収する際のメリットについては、下記の記事で詳しく解説しています。
弁護士に依頼した時の費用対効果を徹底検証しているので、ぜひ目を通して参考にしてください。
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自治体の立て替え制度
不払いの養育費を確実に回収して、不払い問題を根本的に解決したいなら、弁護士への依頼を検討するべきです。
しかし、費用負担が気になる。
弁護士なんて大仰な対応はしたくない。
行政が何とかしてくれないものかと考える人は少なくないでしょう。
そんな人におすすめなのが、自治体の立て替え制度です。
これは自治体が民間会社へ業務委託し、養育費保証サービスを提供する制度になります。
基本的には先に紹介した民間会社の養育費保証サービスを利用することになりますが、この制度ならば自治体が初回保証料を補助してくれるため、保証料負担を気にする必要がありません。
保証額に上限があるため、必ずしも全額回収できるとは限りませんが、とりあえず回収できるだけ回収したいという人にはおすすめな制度です。
導入している自治体が少ないのが玉にきずですが、今後は導入する自治体が増加すると言われています。
回収目的や結果が伴うのであれば、ぜひ利用してもらいたい制度と言えるでしょう。
この自治体の立て替え制度については、下記の記事で詳しく解説しています。
今後の国の対応についても紹介しているので、ぜひ目を通すようにしてください。
民間会社の養育費保証サービス利用を検討してみるのもアリ!
自治体がこの立て替え制度を導入していない場合は、先に紹介した民間会社の養育費保証サービス利用を検討してみるといいでしょう。
民間会社の養育費保証サービスは各社で申立要件と審査基準が異なります。
そのため、すでに不払いが始まっている人の申し込みを受け付けていない会社も少なくありません。
しかし、割高となりますが、受け付けている会社はいくつもあるのです。
先に紹介した下記記事でも、受付可能な保証会社として「株式会社イントラスト」の利用条件を記載しています。
この記事に目を通していない人は、覗いて確認してみるといいでしょう。
養育費回収アプリ
養育費保証サービスの1つとして、養育費回収アプリがあります。
この養育費回収アプリはスマートフォンから手軽に申し込めるサービスで、養育費回収を依頼し、回収が成功すれば、システム手数料を差し引いた額がアプリのウォレットに蓄積されるというものです。
この養育費回収アプリは2019年12月に「iCash」がリリースしたことで注目を浴びました。
しかし、現在この「iCash」はサービス提供を停止しており、HPも閉鎖されたままです。(*2020年11月現在)
おそらく、問題とされる非弁行為をクリアできなかったことが、閉鎖となった原因でしょう。
残念ながら現在、この養育費回収アプリを扱っているところは見当たりません。
ですが、今後養育費回収アプリによる、養育費回収サービスが提供される可能性は十分にあります。
今後の動向に期待したいところですね。
覚えておきましょう!未払いの養育費には時効があります!!
未払いの養育費を回収する上で、絶対に注意して欲しいのが時効問題です。
知らない人もいるかもしれませんが、未払いの養育費にも時効があります。
時効期間は原則5年で、特定条件を満たせば10年です。
時効期間は養育費の不払いがあった日の翌日からスタートします。
そのため、未払いの養育費請求を長期間放ったらかしにしている人は、時効を迎えている可能性も出てくるでしょう。
しかし、この時効問題はその条件さえ理解しておけば、回避することができますし、時効を迎えた養育費を回収することも不可能ではありません。
そのため、不払いの養育費がある人は、絶対に理解しておかなければならない情報なのです。
この不払いの養育費の時効に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
不払いの養育費の時効について十分な知識がない人は、絶対に目を通して必要な情報を得るようにしてください。
まとめ
今回は不払いの養育費回収を検討している人に向けて、その回収方法を徹底検証しました。
記事に目を通してもらえたなら、自分にとってどの回収方法がベストなのか検討を付けることができたでしょう。
紹介した3つの回収方法で得られる効果と結果は異なります。
まずは各回収方法で得られる効果と結果が、自分の望むものでなければなりません。
依頼先を検討している人は、この2つのポイントを意識して、自分にとってベストな回収方法を選ぶようにしてください。
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