もらっている養育費で十分子供を養育していける。
おそらくこう感じているシングルマザーは一握りしかいないでしょう。
大半のシングルマザーは子供の成長と共に、受け取っている養育費に物足りなさを感じています。
その理由は明白です。
「いい教育を受けさせてやりたい。」
「大学にも進学させたい。」
こう願うが余り、進学塾や家庭教師、習い事といった教育費の支出が増え、受け取っている養育費だけでは賄いきれない状態になってしまうからです。
「こういった費用は養育費に含まれていて当然。」と考える人もいるでしょう。
しかし、これは大きな勘違いです。
そこで今回は受け取れる学費にはどんなものが含まれるのか、養育費でまかないきれない費用を増額請求できるのか。
シングルマザーの多くが疑問としている額費と養育費の関係性について解説します。
養育費と教育費の違い
大抵の場合、養育費算定表で算出された養育費相場を基準として、支払われる養育費の金額が決定されます。
相場以上の養育費請求は難しいというのが周知の事実です。
そのため、まとめていくらといったどんぶり勘定になり、大抵の人は養育費に含まれる内訳まで気が回りません。
養育費と教育費は別物だと勘違いしている人もいるくらいです。
はっきり言いますが、教育費は養育費に含まれる費用内訳の1つで、決して別ものではありません。
まずは、これを理解した上で、養育費の取り決めについて話し合う必要があるでしょう。
養育費に含まれる内訳
養育費の取り決めをする際は、まず養育費の内訳をしっかり把握しておくべきです。
内訳も知らずに杓子定規に養育費相場だけで養育費を決めてしまうと、必ず後で「全然足りない・・・」と後悔することになるでしょう。
取り決め時には養育費の内訳を知った上で、不十分な部分に関して、どうするのかを離婚する2人で話し合わなければなりません。
養育費にどんなものが含まれているかについては、下記の記事で徹底解説しています。
しっかりと目を通して、養育費にどんなものが含まれており、どんなものが足りないのかを、よく理解するようにしてください。
養育費に学費は含まれるのか
まず本題に入る前に、混同しやすい「学費」と「教育費」の違いについて説明します。
この2つの言葉を混同している人もいるようですが、この2つは似て非なる言葉です。
学費は学校に通うに当たって必要になる全費用、そして教育費は家計における子供の教育に充てられる全費用を指します。
つまり、下記の費用は学費ではなく、教育費に当たるというわけです。
- 進学塾の費用
- 家庭教師の費用
- 習い事の費用
学費と教育費を同じものだと勘違いしている人も多いので、この2つの違いをまずはしっかりと理解しておきましょう。
それでは本題に入りますが、結論から言うと養育費に学費は含まれています。
しかし、注意して欲しいのは、含まれる学費は子供が公立の小・中・高校に通うのに必要な費用だけです。
そのため、公立ではなく私立に通った場合の費用や、進学塾などの教育費に当たる費用は含まれていません。
唖然としたかもしれませんが、これが養育費の実情です。
基本的に養育費に含まれるものは、必要最低限の費用が基準にされています。
学費以外の教育費は含まれていません。
この点は勘違いしないように、しっかりと理解しておきましょう。
足りない教育費の増額請求の可否
「公立ではなく私立に通わせたい。」
「大学進学に向けて進学塾に通わせたいし、家庭教師も雇ってやりたい。」
こう願うのであれば、養育費相場通りの養育費では、間違いなく足が出てしまいます。
これは、先ほどの説明で理解してもらえたことでしょう。
これら認められた学費以外の教育費を必要とするのであれば、必ず養育費の取り決め時に増額について話し合っておく必要があります。
そこで問題となるのが、増額請求の可否です。
子供のためなんだから同意するのが当たり前だと思う人もいるでしょう。
相手もそう考えて、増額に応じるのであれば何の問題もありません。
しかし、問題なのは、相手が同意しなかった場合です。
この場合、離婚時でも、離婚後でも、裁判所に調停の申し立てをすることになります。
申し立て以降は裁判所に裁決を委ねることになりますが、問題なのは増額が認められる可能性が低いという点です。
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通常の学費以外の増額請求は難しい・・・
学費以外の教育費の請求が認められないなんて、信じられないと思ったかもしれません。
しかし、教育費に当たる下記の費用を増額請求しても、裁判所が認める可能性はかなり低いのです。
- 私立に通わせる費用
- 進学塾の費用
- 家庭教師の費用
- 習い事の費用
その理由は明快です。
私立に通わせたり、家庭教師を雇うのは親が任意でやることであって、通常必要となる学費には当たらないと裁判所は認識しています。
そのため、裁判所はこれらの費用を養育費の増額事由として認めてはいないのです。
これについては下記記事の「進学塾や習い事に掛かる養育費増額の可否」で詳しく解説しています。
教育費を求めて増額請求することは可能です。
増額請求する際は、裁判所が認める可能性が低いことを念頭に置いて、できるだけ当事者同士の話し合いで決着をつけるようにしてください。
知っておこう!進学塾代や習い事代の増額請求が認められる条件!!
裁判所が学費以外の進学塾代や習い事代を認める可能性が低いのは事実です。
しかし、全く可能性がないわけではありません。
下記条件に該当する場合は、認められる可能性がかなり高くなります。
- 婚姻時に元夫が進学塾や習い事を強く切望していた
- 発達障害児の学習補助など学校以外の学習が必要な場合
「婚姻時に元夫が進学塾や習い事を強く切望していた」に該当するのであれば、進学塾代や習い事代の増額が認められる可能性は十分あります。
相手がなかなか増額請求に応じず、話し合いが決裂しそうな時は、このことをほのめかしてみるのも1つの手でしょう。
そうすれば、面倒な調停申立をすることなく、増額請求が叶う可能性も出てきます。
あなたがこの条件に該当するならば、忘れず覚えておくようにしてください。
養育費算定表の相場データ枠内で高めの設定が認められるかも!
また、裁判所が増額請求を認めてくれそうにないとしても、端から諦める必要はありません。
養育費算定表の相場データ枠内で、高めの設定が認められる可能性があるからです。
養育費算定表の相場データは「4万円~6万円」といった幅を持たせた金額設定になっています。
実は、増額請求が考慮され、この枠内ではありますが、審判で上限金額が養育費として認められる可能性があるのです。
本来は4万円だったが、6万円になるといった具合で、増額が認められます。
増額希望している金額とはかけ離れているかもしれませんが、養育費の金額が多いに越したことはありません。
必ずという保証はありませんが、可能性に賭けてみるだけの価値はあるでしょう。
しかし、この増額が認められるのは離婚時のみです。
離婚後の増額請求では同じ配慮は受けられません。
これは先に言ったように、基本的に裁判所が通常の学費以外の教育費を、増額事由として認めていないからです。
そのため離婚後に教育費の増額を求めて申し立てても、養育費算定表の相場データ枠内であろうとも、増額が認められることはないでしょう。
この点はよく覚えておくようにしてください。
養育費を受け取れる期間
養育費を受け取れる期間は、基本的には子供が20歳になるまでです。
しかし、これはあくまで一般的な話であって、養育費の支払い期間は変更可能です。
原則、養育費は社会的・経済的に自立できない未成熟子に対して支払われるものですから、下記のような場合には支払い期間を延期・短縮できます。
- 子供が大学に進学した
- 子供が高校卒業と同時に就職した
支払い期間の変更は子供が未成熟子かどうかがポイント!
大学に進学すれば20歳を迎えても、社会的・経済的に自立できない未成熟子のままです。
よって、支払い期間の延長が可能。
高校を卒業して就職したなら20歳になっていなくても、社会的・経済的に自立しているため未成熟子とは言えません。
よって、支払い期間の短縮が可能という解釈です。
つまり、子供が未成熟子であるかどうかで、養育費の支払い期間を延長・短縮できる可能性があるというわけですね。
これについては、下記の記事で詳しく解説しています。
後述する大学進学時の学費請求をする時、知っておくと得する情報です。
相手に大学進学の学費負担を請求する根拠ともなるので、必ず目を通すようにしてください。
相手が大学進学時の学費を養育費として認めない時の対処方法
養育費として認められている教育費は、公立の小・中・高校に通うのに必要な学費だけです。
となれば、大学進学に掛かる学費が養育費に含まれていないのは、言うまでもありませんよね。
あなたが子供を大学に進学させるつもりならば、養育費の取り決め時に話し合う必要があるでしょう。
ですが大学進学に掛かる学費は数千万円にも上ります。
地方ならば戸建て住宅やマンションを、新築で購入できるほどの金額です。
そのため、相手が同意しない可能性も高いでしょう。
そうなれば、裁判所に裁決を委ねるしかありません。
子供の大学進学に掛かる学費が得られるかどうかの最終判断は、裁判官に委ねることになるのです。
大学進学に掛かる学費が養育費として認められる可能性
大学進学時の学資請求に対する裁判所の判断は、決して請求者寄りとは言えません。
近年は大学進学率が50%を超えたため、大学進学を一般的な教育課程だとする声も出ています。
この声を反映した判決も多くなってきたとは言われますが、まだまだ認められないケースの方が多いのが実情です。
当事者同士の話し合いで決着がつかなければ、大学進学に掛かる学費を養育費として請求できる可能性は低くなってしまうでしょう。
判例から見る大学進学時の学費請求が認められる可能性
裁判所が大学進学時の学費請求を認めた判決には、1つの傾向が見られます。
養育費の支払い義務者の最終学歴が大学卒であるケースが大半です。
これは養育費支払いが親の法的義務とされている根拠となる、生活保持義務が大きく影響しています。
つまり、親は自分が受けた教育と同水準の教育を、子供にも受けさせる義務があるというわけです。
この法的根拠に基づき、親が大学卒であり、経済的に余裕があるのであれば、裁判所は高い確率で大学進学時の学費請求を認める傾向にあります。
これは実際の判例を見れば明らかです。
大学進学時の学費請求を認めた判例は、下記記事の「大学への進学費用請求の判例を紹介!」で紹介しています。
この記事を覗いて、本当にその傾向があるかを確かめてみましょう。
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まとめ
今回は教育費にはどんなものが含まれるのか、養育費でまかないきれない費用を増額請求できるのかについて解説しました。
子供の教育費を通常の養育費でまかなうことは無理です。
進学塾や習い事などの教育費、大学進学時の学費が必要なら、別途増額請求する必要があるでしょう。
しかし、相手が同意せず、裁判所に判断を委ねた時は、残念ながら認められる可能性が低くなってしまいます。
できるならば、当人同士の話し合いで決着をつけるのが良策でしょう。
しかし、まったく裁判所が認める可能性がないわけではありません。
今回の記事を参考にして、満足のいく養育費を受け取れるように、その方法をじっくりと模索してください。
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