元夫が自己破産した!今後の養育費や未払いの養育費の行方を徹底解説!!

元夫が自己破産。

その可能性は絶対にないとは言えません。

あなたの元夫が自己破産する可能性も否めないでしょう。

そこで気になるのが自己破産後の養育費への影響です。

自己破産は借金等の支払いが全て免責される制度ですから、養育費の支払いも免除となるのではと心配する人は多いでしょう。

また、未払いの養育費があるなら、その支払いへの影響も気になるところです。

しかし、安心してください。

たとえあなたの元夫が自己破産しようとも、養育費の支払いは免責されませんし、未払いの養育費を請求することも可能です。

ですが、支払い義務が免責されないから、安心できるわけではありません。

相手に支払う財力がなくては支払い義務が履行されない、未払いの養育費が回収できないという可能性があるからです。

そこで今回は元夫が自己破産した時の養育費への影響と、回収するための対処方法をお教えします。

元夫が自己破産しても養育費の支払い義務は変わらない!

自己破産はすべての借金の支払い義務が免責されますが、なにもかも免責されるわけではありません。

下記の様に免責されるものと、されないものがちゃんと規定されています。

  • 免責債権:支払い義務が免責される債権
  • 非免責債権:支払い義務が免責されない債権

自己破産では公益上の理由や特定の債権者を保護するために、免責しない債権が規定されているのです。

その特定の債権者が養育費を受け取る権利を持つ子供に当たります。

養育費は非免責債権!

非免責債権には下記のものが挙げられ、養育費もその1つに指定されています。

  • 税金
  • 下水道代
  • 社会保険料
  • 養育費
  • 罰金
  • 損害賠償金(重過失の場合)
  • 従業員の給料(生命や身体を害した過失によるもの)

また、養育費は下記の様に破産法で非免責債権に当たることが、はっきりと規定されています。

(破産法 第253条 第1項)
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
④ 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務

以上の様に養育費が非免責債権に当たり、自己破産しても支払義務が免責されることはありません。

法律でもはっきりと明記されているので、安心して請求するようにしてください。

自己破産手続中の養育費はどうなるの?

後述しますが、元夫が自己破産手続中は未払いの養育費を回収することはできません。

しかし、月々の養育費の支払いは別です。

従来通り支払ってもらうことができます。

もし、元夫が自己破産手続中であることを理由に、養育費の支払いをストップするようなことがあれば、必ず請求するようにしてください。

自己破産後の養育費回収の注意点

自己破産する人に財産がある場合、競売などで現金に換金して、債権者に分配しなければなりません。

この手続きを管財事件と呼ぶのですが、自己破産の場合、ほぼ例外なく管財事件の手続きが行われます。

そのため自己破産後は目ぼしい財産が残っていません。

元夫が定職に就いておらず、収入がない場合は、不払いとなる可能性が高いでしょう。

しかし、ちゃんと勤務しており、収入がある場合は心配することはありません。

借金返済に充てていたお金がまるまる浮くわけですから、元夫は以前より資金的余裕が生まれます。

よって、自己破産後も養育費を受け取ることはできるでしょう。

相手が自己破産したことを理由に、支払いを渋った時は、「以前よりも養育費を支払う余裕があるでしょ!」と迫って、養育費を支払うように要求してください。

以上のように自己破産しても養育費の支払い義務はそのままですが、回収できるかどうかの問題は残ります。

相手が無職であるとか、生活保護を受けているようなケースでは、養育費が受け取れる可能性は限りなく低くなってしまうでしょう。

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養育費の受け取りが不可能な時は公的給付を利用しよう!

その場合は利用できる公的給付や支援制度を上手く利用して、養育費の穴を埋めるしかありません。

主な公的給付と支援制度には下記のものがあります。

  • 児童扶養手当
  • 母子福祉資金
  • 子育て短期支援事業
  • ひとり親家庭等生活支援事業
  • ひとり親家庭等医療援助制度
  • 母子家庭等日常生活支援事業

これら公的給付と支援制度を活用すれば、養育費の穴埋めもできるでしょうし、就業時間を確保でき、収入を増額することも可能です。

それではこれら公的給付と支援制度の内容を、簡単に紹介していきましょう。

児童扶養手当

児童扶養手当は子供を抱えて離婚した世帯に支給される手当です。

支給額は下記のように条件によって異なります。

子供の数

区分

支給額(月額)

1

全部支給

43,160

一部支給

10,180円~43,150

2

子供1人につき5,100円~10,190円加算

3人以上

子供3人目から子供が1人増すごとに3,060円~6,110円加算

*2020年4月現在

支給対象者は子供です。

すでに支給を受けている場合は話が別ですが、そうでないならこの支給で養育費の穴埋めができる人も出てくるでしょう。

詳しくはあなたが住んでいる市区町村役場に問い合わせてみていください。

母子福祉資金

母子福祉資金は20歳未満の子供を養育している母親が利用できる融資制度です。

給付制度ではありませんが、低金利もしくは無金利で借入することができます。

他にも下記の様に、目的に応じた融資を受けることも可能です。

  • 技能習得資金:母親が就職するための技能習得で掛かる費用の融資
  • 事業開始資金:母親が事業を始めるために必要な費用の融資
  • 修学資金:子供の学校入学等で掛かる費用の融資

大抵の場合、保証人が必要になりますが、資金融資が必要な場合は申し込みを検討してみるといいでしょう。

申込先は市区町村を管轄している福祉事務所になります。

詳しくはお住まいの地域を管轄している福祉事務所に問い合わせてください。

子育て短期支援事業

子育て短期支援事業は下記の2つがあります。

  • 短期入所生活援助事業(ショートステイ)
  • 夜間養護等事業(トワイライトステイ)
短期入所生活援助事業(ショートステイ)

この事業は下記のような理由で、子供の養育が困難になった時、児童養護施設などで養育・保護を受け持ってもらう支援制度です。(*原則7日以内)

  • 身体上の理由
  • 精神上の理由
  • 環境上に理由
夜間養護等事業(トワイライトステイ)

この事業は、仕事等の理由で母親が夜間または休日に家を空けることになり、子供の養育が困難になった時や緊急の時に、児童養護施設などで養育・保護を受け持ってもらう支援制度です。(*宿泊可)

詳しくはあなたが住んでいる市区町村役場に問い合わせてみましょう。

ひとり親家庭等生活支援事業

ひとり親家庭等生活支援事業は子育て支援を目的に設けられた事業で、下記の支援が受けられます。

  • 相談支援事業
  • 家計管理・生活支援講習会事業
  • 学習支援事業
  • 情報交換事業

詳しくはあなたが住んでいる市区町村役場に問い合わせてみましょう。

相談支援事業

これは養育や家事など生活一般にかかわる相談に応じてもらえ、助言や指導、そして各種支援の情報提供を実施してもらえる事業です。

家計管理・生活支援講習会事業

これは家計管理や養育、そして養育費の請求手続き等の講習会や個別相談を実施してもらえる事業です。

学習支援事業

この事業では、母親が高等学校卒業程度認定試験を合格するための学習支援を実施してもらえます。

情報交換事業

この事業は、ひとり親が互いの悩みや相談できる場を設けて、ひとり親世帯の交流や情報交換を実施しています。

ひとり親家庭等医療援助制度

ひとり親家庭等医療援助制度は、ひとり親家庭の医療費の一部を助成する制度です。

詳しくはあなたが住んでいる市区町村役場に問い合わせてみましょう。

母子家庭等日常生活支援事業

母子家庭等日常生活支援事業は一時的に生活援助や保育サービスが必要になった時、生活支援員の派遣して下記のような支援を行う制度です。

  • 乳幼児の保育
  • 子供の生活指導
  • 食事の世話
  • 住居の掃除
  • 身の回りの世話
  • 生活必需品等の買い物
  • 医療機関等との連絡
  • その他必要な用務

詳しくはあなたが住んでいる市区町村役場に問い合わせてみましょう。

自己破産後は養育費が減額される可能性も!

元夫が自己破産しても、依然と変わらず勤務して収入がある場合はあり得ませんが、無職や生活保護を受けている場合には、相手から減額請求を求められる可能性があります。

この申し出は断ってもかまいませんが、相手が裁判所へ養育費の減額請求を求めて、調停を申し立てることになるでしょう。

そうなれば調停、そして審判により、減額請求が認められる可能性も出てきます。

元夫の収入が離婚時よりも明らかに大幅ダウンしていれば、減額請求が認められる可能性は高いでしょう。

この減額請求の結果が出るまでは、従来通りの養育費を支払ってもらうことができます。

養育費の支払いがストップするわけではないので安心してください。

しかし、減額となる可能性があることは覚悟しておいた方がいいかもしれませんね。

元夫が自己破産しても未払いの養育費は回収できる!

次は気になる未払いの養育費の回収について検証していきます。

冒頭で言ったように、元夫が自己破産しても未払いの養育費の回収は可能です。

これは先に話したように、養育費が非免責債権のため、自己破産しても未払いの養育費が免責されることがないからです。

未払いの養育費の回収を検討している人は、安心して手続きを進めてください。

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未払いの養育費を回収する時の注意点

相手が未払いの養育費請求に応じない場合、最終的には強制執行による差し押さえという手段を取ることになるでしょう。

しかし、先に話したように、自己破産手続中は差し押さえすることはできません

これは自己破産の手続き中に、特定の債権者だけに債務の支払いをすることが法律で禁止されているからです。

差し押さえができるのは自己破産が成立した後!

先に話した通り、自己破産手続では、自己破産する人の財産を競売などで現金に換金して、債権者に分配しなければなりません。

この分配では債権額に比例した按分することが「債権者平等の原則」で規定されているため、先に特定の債権者だけに優先して支払うことはできないのです。

(債権者平等の原則)
1人の債務者に対し複数の債権者がいる場合、債権者間に優劣はなく、その持っている債権額に応じて、債務者の総財産から平等・公平に債務の返済を受けられなければならない。

そのため裁判所も自己破産手続中に差し押さえ命令を出すことはありません。

また、直接元夫に要求しても、支払ってもらえることはないでしょう。

仮に自己破産手続中に、子供のためにと未払いの養育費を支払ってしまうと、偏波弁済(へんぱべんさい)と呼ばれる阻害行為とみなされ、自己破産が認められない可能性があるからです。

当然、元夫もこの点は重々承知しています。

そのため、あなたが財産が没収される前に支払ってと懇願しても、「うん。」と言うことはありません。

元夫が自己破産手続に入っていれば、差し押さえは手続き完了後になります。

これは覚えておきましょう。

差し押さえ時の対処方法と注意点

自己破産すれば、目ぼしい財産は処分されているでしょう。

そのため元夫の所有財産を差し押さえることは困難です。

元夫がちゃんと勤務していて、給与を得ていなければ差し押さえる財産がなく、差し押さえできない可能性が高いでしょう。

そこで最後に、自己破産後に差し押さえする時の対処方法と注意点をお教えします。

下記2つの状況に応じた対処方法と注意点を紹介するので、よく理解するようにしてください。

  • 差し押さえる財産がない場合
  • 給与差し押さえができる場合

差し押さえる財産がない場合

差し押さえる財産がない場合は、差し押さえによる回収は諦めるしかないでしょう。

差し押さえる財産が特定できなければ、申立要件さえ満たしていないので、裁判所への申し立てさえできません。

しかし、これで完全に諦めないでください。

いつまでも元夫が無収入のままとは限らないからです。

元夫も生活していかなければならないため、いずれは定職に就いて安定した収入が得られるようになる可能性は否めません。

その時に再度、未払いの養育費を請求すればいいのです。

そこで注意して欲しいのが養育費の時効です。

時効を迎えてしまえば、元夫は未払いの養育費を支払う義務がなくなってしまいます。

これだけはなんとしても回避しなければなりません。

未払いの養育費の時効に対する対処方法

養育費の時効は原則5年です。

しかし、時効期間を延長することもできますし、時効を回避するための方法もあります。

しかも、時効を迎えた養育費を回収する方法だってあるのです。

これら対処方法を知っておきさえすれば、養育費の時効を気に病む必要はありません。

正しい対処法を理解して時効対策を心がければ、時効を気にせずに未払いの養育費を回収できるというわけです。

その方法については下記の記事で詳しく解説しています。

しっかり目を通して対処方法を理解してください。

給与差し押さえができる場合

給与差し押さえができる場合は、早速、回収手続きに入ってください。

自己破産によって借金返済の負担が減った分、未払いの養育費支払に回せる資金の余裕は確実に増えています。

話し合いで片が付く可能性もあるでしょう。

それでも支払いに応じない場合は、強制執行による差し押さえを申し立ててください。

給与差し押さえであれば、確実に未払いの養育費を回収することができるでしょう。

強制執行による差し押さえの申立方法と注意点は、下記の記事で詳しく解説しています。

また、時折、勤務先が元夫をかばって、差し押さえを拒否してくるケースがあるようです。

その場合も諦める必要はありません。

ちゃんと回収する方法があるからです。

その方法は下記記事の「会社が元夫をかばって強瀬執行を拒否した場合」で分かりやすく紹介しています。

可能性があるなと思う人は、目を通して対処方法を頭に入れておきましょう。

差し押さえ時には将来分の差し押さえも忘れずに!

給与差し押さえ時には、将来分の養育費の差し押さえも併せて申し立てるようにしてください。

未払い分だけでなく、支払い期間が終了するまでの全額を差し押さえることができます。

これは給与差し押さえ時だけに認められた特例です。

元夫が転職すれば、この申し立ては無効になってしまいますが、同じ勤務先にいる間は養育費の不払いを心配する必要がなくなります。

給与差し押さえの申し立て時には、忘れず将来分の養育費差し押さえを申し立てるようにしてください。

詳しい情報が知りたいという人は、下記の裁判所HPで確認できます。

将来発生する養育費の差押えについて

まとめ

今回は元夫が自己破産した時に、養育費や未払いの養育費がどうなるのかを解説しました。

自己破産によって今後の養育費や未払いの養育費の支払いが免責されることはありません。

従来通り請求してもらって結構です。

しかし、実際に回収できるのかは、自己破産後の元夫の状況次第となります。

養育費が不払いとなる可能性や、未払いの養育費を回収できない可能性は否めません。

だからと言って諦める必要はないのです。

今回の記事を参考にして、あなたにあった対処方法で確実に回収できる策を講じてください。

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