「ボーナス分を、毎月の養育費とは別に増額請求したい。」
こう考えている人は意外と多いでしょう。
しかし、「でも、これってアリなの?」と、言い出せずにいる人も意外と多いはずです。
原則、養育費は誰かに決めてもらうものではありませんし、具体的な支払い額が法律で決められているわけでもありません。
ですから、養育費を支払っている相手が同意さえすれば、養育費のボーナス月の加算請求は可能です。
そこで今回はボーナスの加算方法について、分かりやすく解説します。
請求時のポイントと注意点、いくらくらいが相場なのかも検証するので、養育費をボーナス時に加算請求をと考えている人は、最後まで目を通して参考にしてください。
ボーナス時に養育費を加算請求する前に知っておくべきこと!
冒頭で話した様に、ボーナス時に養育費を加算請求することは可能です。
結果は相手との交渉次第でしょう。
ですが、相手と交渉する前に、理解しておくべき点が1つだけあります。
それは、養育費は端からボーナスを含めて算定されているという点です。
中には、「給料とは別にまとまった収入が入るのだから、それを養育費として余分に支払ってもらうのは当然だ。」と考えている人もいるでしょう。
しかし、この考えは大きな勘違いです。
こんな間違った考えのまま相手との交渉に臨めば、上手くまとまる話も、まとまることはないでしょう。
そこでまずは、この間違った考えを改めてもらうためにも、養育費の算定方法をおさらいしておきます。
ちゃんと理解している人は読み飛ばしてもらって結構です。
しかし、そうでない人はしっかりと目を通して、養育費の算定方法を正しく理解してください。
①養育費は年収ベースに算定されている!
養育費の相談を受け付けている弁護士のサイトには、下記のような質問が数多く寄せられています。
「養育費換算表で年収から月々の支払いが決まりました。決まった額は換算表で算出した額の上限いっぱいです。この場合でもボーナス月にさらに追加してくれと言われたら必ず応じなければならないのですか? 」
「自分の年収580万 妻の年収36万前後 長女9歳 長男4歳がいます。相手方の弁護士から一人当たり1ヶ月5万6千円、ボーナス月一人当たり12万5千円の提示がありました。この額って妥当な額ですか? 」
「養育費のボーナスの月の別途払いをボーナスがないからと断られましたが、強制的に確認する方法はありますか。」
「離婚が決まった月の養育費とは別に、ボーナスからいくらかもらえないでしょうか?話し合いで可能なんでしょうか?虫がよすぎるでしょうか。」
「ボーナスも養育費としてもらえますか?」
「ボーナス月には月々の養育費に、プラス増額分という形になるのですか?その増額分の金額は決めてしまう事は可能なのでしょうか?」
恐らくこの人たちは、養育費はボーナス別で決められていると思っているのでしょう。
しかし、これは先に話したように大きな勘違いです。
養育費は端からボーナスを含めた収入を基に算定されています。
これは養育費を取り決める際、参考にされている養育費算定表を見てもらえば、納得してもらえるでしょう。
実際に下記の養育費算定表を見てください。
離婚夫婦それぞれの年収が、養育費の算定基準に用いられていることがお分かりいただけると思います。
- 義務者の年収
- 権利者の年収
年収は給与にボーナスを加えた年間総支給額です。
養育費がボーナスを加算した収入を基準に決定されているのは明白ですよね。
よって、「給料とは別にまとまった収入が入るのだから、養育費として余分に支払ってもらうのは当然だ。」という主張は通りません。
大事なのはボーナス時に加算請求する際のスタンス!
養育費の取り決めに臨む際は、相手も養育費について詳しく調べることでしょう。
となれば、ボーナス込みで養育費が決定されることを十分理解しているはずです。
そんな相手に対し、当たり前の様にボーナス時増額を要求しても、すんなり話が通るはずはありません。
養育費としてボーナス時に加算請求することはできます。
ですが、間違ってはならないのは、交渉に臨むスタンスです。
「養育費を増額して欲しいので、ボーナス時に別途請求したい」 ⇒ 〇
交渉に当たる際は、養育費とは別に増額請求するスタンスで臨む必要があります。
離婚時に弁護士を雇っていれば、あなたの間違った考えはちゃんと指摘してくれるでしょう。
しかし、そうでない人は勘違いしたまま、交渉に臨むことにもなりかねません。
「ボーナス時には養育費として余分に支払ってもらうのは当然だ。」などと勘違いしたスタンスでは、交渉は決して上手くいきません。
ボーナス時の加算請求はあくまで通常の養育費から、さらに養育費を引き出すために用いられる増額手段の1つです。
この点は勘違いしないよう、しっかり理解しておくようにしてください。
②決められた養育費は十分でないことも多々・・・
ボーナス時に養育費の増額請求したいという人は少なくありません。
養育費は多いに越したことはありませんから、そう考える人が多いのは当然の話です。
そこでまず、理解しておいて欲しいのは、決められた養育費があなたにとって、十分な金額とは限らないという点です。
「多過ぎる」ということは滅多にありませんが、受給後に「少ない・足りない」と感じる人は多いことでしょう。
これは、養育費を決める際に参考資料として用いられる、養育費算定表に原因があります。
養育費算定表の養育費は必要最低限の費用を基に算出されている!
養育費算定表の養育費は下記条件を基に算出されています。
- 夫婦それぞれの年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
そして、養育費に含まれている費用は下記の通りです。
- 衣食住の費用(食費や住居費、被服費)
- 教育費(学校の授業料や教科書代など)
- 医療費
- 適度な娯楽費
これだけ見れば、「十分に考慮された金額が設定されているのでは?」と感じる人は多いことでしょう。
しかし、養育費算定表を基に算出された養育費が十分な額なのかと問われれば、決して十分なものとは言えないのが実情です。
養育費算定表で算出された養育費は、必要最低限な費用を基に算出されています。
そのため、毎月の養育費だけでは足りなくなる可能性は否めません。
その時に備えて取れる手段の1つが、ボーナス時の増額請求なのです。
ボーナス時の加算方法と金額の決め方
それでは実際にボーナス時に増額請求する方法を解説していきましょう。
ここまでの話で養育費のボーナス月加算は、足りない養育費を補てんする方法であることは理解してもらえたと思います。
そこで気になるのは、ボーナス月加算分の相場です。
相場が分かれば、相手にも自信をもって請求できますよね!
しかし、残念ながらボーナス月加算分の相場は決まっていません。
お互いの話し合いによって、増額幅が決められることになるでしょう。
そこで実際にどうやって、ボーナス時の増額請求するのかを紹介します。
肝心なのは請求理由です。
ボーナス月加算の請求理由の中で最も多い請求理由を挙げて、ボーナスの加算方法を紹介するので、よく目を通すようにしてください。
①住宅ローン返済等の理由で養育費が十分でない場合
養育費は親がどのような状態にあったとしても、絶対に支払わなければならない費用です。
そのため、下記のような理由で養育費が減額されることはありません。
- 転職による減給で支払う余裕がない
- 借金があり支払う余裕がない
- 退職して無収入のため支払う余裕がない
いかに強制力のある義務であるかが、お分かりいただけるでしょう。
養育費は多くもらえるに越したことはありません。
ですが、忘れてはならないのは、養育費は実際にもらえなければ意味がないということです。
養育費の未払いには差し押さえで抵抗することができます。
しかし、それには調停や審判に掛ける時間や労力、弁護士費用が必要になる場合もありますし、裁判所から差し押さえ命令が出ても、必ず回収できるわけではありません。
そのため、養育費を決める際には、相手が支払を滞らせることなく、支払い続けられる金額を設定した方が無難だという考え方もあるのです。
減額分をボーナス払いで充当!
養育費の交渉についてはお互いが雇った弁護士同士で行われるのですが、交渉によりもらえる月額が十分でない結果に終わることも少なくありません。
下記夫婦の場合、離婚後の養育費は「6万円から8万円」が相場になります。
- 父親:年収600万円
- 母親:無収入
- 子供:3歳1人
この場合の養育費は間を取って、7万円に設定されるのが一般的です。
しかし、父親の住宅ローン支払い等の諸事情により、確実に支払える額が6万円とされた場合、養育費は7万円の時よりも下記の減額となってしまいます。
月額7万円 × 12ヶ月 = 84万円
⇒月額6万円 × 12ヶ月 = 72万円
⇒年間12万円の減額
年間12万円もの減額となれば、もらう側としては大きな痛手ですよね。
ここで、ボーナス時の加算請求の出番です。
この減額された12万円を、年2回のボーナス月に6万円づつ支払ってもらえば、月額7万円換算の養育費をもらった時と同じになります。
このように、諸事情で月額の養育費が低く設定された場合、その減額分をボーナス月加算でカバーするという考え方も、ボーナス時の増額請求の使い方の1つです。
②突発的な費用に備えたボーナス時の増額請求!
子供が成長していく中では、いつ何が起こるか分かりません。
ですが、養育費は通常生活を想定して算定されているため、そんな時に必要な費用は含まれていないのです。
一般的にこの費用は特別費用と呼ばれます。
特別費用に関しては離婚する夫婦も十分理解しているので、離婚時にその支払い方法を決めるケースも少なくありません。
その時は離婚協議書に下記のような文言が記載されるのが一般的です。
しかし、ここで問題となるのが、上記には記載されていない具体的な金額です。
特別費用をボーナス月加算で確実に回収!
将来、子供のクラブ活動で地方遠征や合宿費用がいくら必要になるか、重病になっていくらの医療費が掛かるかなんて分かるはずはありません。
これら費用は将来発生するのもですから、具体的な金額が分からなくて当然です。
そのため通常は離婚協議書に具体的金額が記載されず、先の文言のように、支払方法のみが記載されます。
近年、離婚時の取り決めを協議離婚書として文書化し、執行認諾文言付きの公正証書として作成する夫婦が多くなってきました。
その理由は協議離婚書を執行認諾文言付きの公正証書として作成しておけば、不払いとなった場合、裁判を経ずに強制執行による財産差し押さえができるからです。
親権者はすぐに差し押さえができ、その財産から未払い分の養育費を回収できます。
ですが、この強制執行による財産差し押さえを申し立てるには、公正証書に支払う金銭が具体的に記載されていなければなりません。
先ほどの文言では、強制執行による財産差し押さえはできないのです。
相手が支払いに応じなければ、話し合いを経て、裁判所へ養育費増額調停を申し立てることになります。
しかも、その養育費増額調停の申し立てが不成立となれば、裁判に移行し審判を仰ぐことになるのです。
支払ってもらうまで、いかに時間が掛かるかは言うまでもありませんよね。
しかし、この特別費用をボーナス時に増額請求できていれば話は別です。
まずは、将来必要になる特別費用を両者で想定し、それをボーナス時に支払ってもらうことに同意してもらいましょう。
後は公正証書に下記文言を加えれば、未払い時に財産の差し押さえが可能になります。
将来発生する特別費用を想定して、それをボーナス払いで回収する方法ですから、実際に必要になる金額とは異なる点は否めません。
しかし、特別費用が必要になった都度、請求するよりも確実で、時間や労力も掛かりません。
一度にまとまった金額を請求して、「そんなお金は払えない!」と言われるよりはマシでしょう。
これはあくまで特別費用を回収する1つの手段です。
必ずしもこれがベストな方法というわけではありません。
弁護士等とよく相談して、何が最善の方法なのかを慎重に検討するようにしてください。
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養育費のボーナス月加算を請求する時の注意点
養育費の増額は可能です。
ここまで話したように、養育費のボーナス月加算はその手段の1つになります。
しかし、養育費の増額交渉は認められてはいるものの、請求したら必ず要求が通るというわけでありません。
もちろん、養育費の支払い額に法的な定めはありませんから、親権者と非親権者が合意さえすれば、いくらにしようがOKです。
ですが合意を得られなかった場合は、裁判所に裁決を委ねることになり、増額が認められないケースも出てきます。
特に一度決めた養育費を変更する場合には、認められるだけの正当な理由が必要です。
ボーナス月加算で養育費をの増額を請求する場合には、この点を十分に理解しておくようにしてください。
それではその「認められるだけの正当な理由」には、どのようなものがあるのかを見ていきましょう。
裁判所で養育費の増額が認められるポイント
養育費の支払い義務は、親が子供に対して負っている生活保持義務が根幹になっています。
生活保持義務とは、親は子供に対して自分の生活レベルと同等の生活を維持しなければならないというものです。
そのため、離婚して離れて暮らすことになっても、親は子供が自分と同レベルの生活を送るための扶養義務が課され、養育費の支払い義務を負うことになります。
よって、この支払い義務を考慮すれば、下記3つが認められるだけの正当な理由となるでしょう。
- 子供が病気やケガで医療費が必要になった
- 親権者の収入が諸事情で減少し、通常生活の維持が困難になった
- 物価上昇等で、親権者の生活が困難になった
1は子供の命に係わることですから、親がサポートして助けるのは当然のことです。
また、2と3は生活困窮が子供の安定した生活を阻むことになります。
これも親が援助するのは当然のことととみなされるでしょう
これら理由は子供の生活に大きくかかわってくるため、養育費の増額が認められる可能性は高くなります。
そして、ここでもう1つ注目してもらいたいのが教育費です。
養育費の増額理由で最も多いのは、下記のように新たな教育費の必要性が挙げられます。
- 進学に伴い教育費が増えた
- 学習塾や習い事を始めて教育費が増えた
これら教育費は子供の生活を援助・サポートするという観点では、重要な費用になってきます。
しかし、先ほどの生活保持義務にもあるように、養育費は親と同等の生活レベルを維持することを目的とした費用です。
そのため養育費を支払う非親権者の学歴・生活レベルに照らし合わせ、過分と認められる場合は、増額請求の認められる可能性は低くなってしまいます。
親が子供の求める教育を受けさせてやるのは当たり前という考えもあります。
しかし、裁決を裁判所に委ねた場合、その考えが通用しないケースも出てくるというわけです。
この点を考慮すれば、先に紹介した将来発生する特別費用を、養育費のボーナス月加算で払ってもらうのは、確実に教育費を得るための有効な手段と言えるでしょう。
よくある養育費の疑問点を解決!
それでは最後によくある養育費の疑問点を挙げて、その答えと対処法についてお教えします。
今回は弁護士事務所などの法律関連サイトで、よく見られる下記2つの疑問に対して徹底解説するので、ぜひ目を通すようにしてください。
- 養育費はいつまでもらえるの?
- お互いが再婚したら養育費はどうなるの?
養育費はいつまでもらえるの?
養育費はいつまでもらえるのかは、養育費を受け取る親権者にとって、気になることの1つでしょう。
原則は子供が成年年齢に達する20歳までとされていますが、下記理由で支払い期間の延長や短縮が求められるケースは少なくありません。
- 大学進学
- 高校卒業に伴う就職
特に支払期間の延長が必要になる、大学進学を望む子供がいる場合には、養育費の支払い期間の延長は切実な問題となってくるでしょう。
この疑問に関しては下記の記事で詳しく解説しています。
この問題で頭を悩ませている人は、ぜひ目を通して最善の対処法を身に着けるようにしてください。
お互いが再婚したら養育費はどうなるの?
離婚後の元夫婦が再婚するのは珍しいことではありません。
しかし、この再婚で気になるのが養育費です。
再婚によって養育費が減額されたり、免除されたりされては困るという親権者は少なくないでしょう。
結論から言えば、その可能性は十分にあります。
また、親権者だけでなく、養育費を支払っている非親権者の再婚でも、養育費が減額される可能性が出てくるのです。
養育費を当てにしている親権者は、自分の再婚ばかりを気にしていればいいわけではありません。
将来起こりうる事態に備えておく必要があるでしょう。
この疑問に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
これは事が起こってから慌てても、後の祭りになる可能性があります。
事が起こる前に最善の対応を取れるように、しっかりと目を通して対処法を身に着けるようにしてください。
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まとめ
今回は養育費をボーナス月加算で増額する方法を解説しました。
ボーナス月加算での養育費の増額請求は、誰にでも認められています。
しかし、問題なのはボーナス月加算を請求しても、必ず要求が通るわけではないという点です。
まずは今回話した内容を参考にして、自分の要求が通るものなのかを判断し、増額交渉に臨むようにしてください。
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