養育費を受け取りながら生活保護は受けられる!元夫が生活保護受給者の時も併せて紹介!!

日本におけるひとり親世帯の相対的貧困層は50.8%と高い数値を示しています。

それもあって、生活保護を受けざるを得ない母子世帯は少なくありません。

そこで懸念されるのは養育費を受け取りながら、生活保護が受けられるのかという問題です。

受けられないと心配している人も多いことでしょう。

しかし、心配はいりません。

養育費を受け取っている人も、生活保護は受けられます。

また、元夫が生活保護を受けている場合、養育費の請求はできるのかという心配もあるでしょう。

そこで今回は養育費を受け取っている人が生活保護を受ける時の注意点、そして、生活保護受給者への養育費請求の可否について解説します。

養育費を受け取っていても生活保護は受けられる!

そもそも生活保護とは、経済的に困窮している世帯に対して、生活費を援助する国の制度です。

養育費を受け取っていても、それだけでは生活していけない母子世帯は少なくないでしょう。

そのため、養育費を受け取りながら、生活保護を受けるのは何ら問題はありません。

下記条件をクリアしていれば、申請後の審査に通過することも難しくないでしょう。

  • 世帯収入が最低生活費の基準を下回っている
  • 病気や障害が理由で働くことができない
  • 生活に充てる預貯金や不動産などの財産がない
  • 国の公的融資や年金制度をなどを利用しても最低生活費の基準を下回っている

要は生活に充てる財産がなく、養育費を受け取っても、世帯収入が最低生活費の基準を下回っていれば、生活保護は受けられるというわけです。

しかし、養育費を受け取っている人が生活保護申請をする場合、養育費の存在は無視することができません。

申請に臨む時に養育費のスタンスを取り違えると、後で大きな問題に発展する可能性があるからです。

まずは生活保護申請時の養育費のスタンスについて解説します。

これは養育費を受け取っている人が生活保護を申請するならば、知っておくべき重要な情報です。

しっかりと目を通して、よく理解するようにしてください。

原則、養育費は収入と認定される

養育費は原則非課税として扱われます。

子供の扶養義務に基づく支払いは、子供の養育に秘湯不可欠なものであるため、課税対象にはならないのです。

となれば、収入には当たらないと、勝手に思い込んでいる人もいるでしょう。

しかし、生活保護の申請においては、養育費は収入として認定されています。

まずは、この点をよく理解してしておきましょう。

養育費を収入除外することもできる!

原則、生活保護申請時には、養育費は収入として扱われます。

しかし、収入認定除外を求めることで、養育費を収入除外することも可能です。

収入除外ができるものには、下記のような教育費が挙げられます。

  • 保育園や幼稚園などの入園料や保育料
  • 進学塾の費用
  • 参考書や問題集の購入代金
  • 通学用自転車の購入代金
  • 修学旅行費
  • クラブ活動費

何にいくら支払うかを記載した自立更生計画書を福祉事務所に提出し、認められれば収入除外とすることができます。

また、収入除外として認められるのは最小限度額であり、その金額は住んでいる地域で、同年齢の子供に通常必要とされている金額です。

そのため、住んでいる地域によって違いが見られるため、その金額については福祉事務所に問い合わせる必要があります。

収入除外を求める際は、福祉事務所によく相談するようにしてください。

生活保護申請時には養育費の申告が必要!

生活保護を受給できるのは、家族が得ているすべての収入を合わせても、最低生活費とされる金額を下回る場合です。

生活保護の受給額は最低生活費に足りない金額が支給されることになります。

最低生活費が15万円、世帯収入が10万円だとすると、5万円が支給額となるといった具合です。

となれば、生活保護では収入と認定されている養育費の申告が必要なのは、言うまでもないでしょう。

養育費の申告をしなかった時に課せられるペナルティ

生活保護申請時には、養育費の受け取り額を正確に申告しなければなりません。

しかし、中にはできるだけ多くの生活保護費を得るために、養育費の申告を怠る人もいるようです。

この場合、養育費の隠匿が福祉事務所にバレると、下記のペナルティが科せられます。

  • 費用返還
  • 強制徴収

生活保護法第63条では、下記の様に費用返還義務が規定されています。

「被保護者が、急迫の場合等に おいて資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。」

また、生活保護法第78条第1項には、強制徴収できることが規定されています。

「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、 又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、 その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に100分の40を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。」

養育費の受け取りを隠して生活保護申請をしても、バレると不正受給となり、その分はしっかり返還が求められるというわけです。

養育費を手渡しで受け取っていればバレないはウソ!

生活保護申請時には下記の書類提出によって、申請者の収入状況が確認されます。

  • 残高のあるすべての銀行口座の通帳
  • 給与明細(直近3ヵ月分)

提出先の福祉事務所は申立者の銀行口座を確認する法的権限があり、当然、口座情報も確認しています。

そのため、銀行口座を介した入金は、すべて把握されることになるでしょう。

養育費を口座入金で受け取っている場合、まず養育費の受給をごまかすことはできません。

となれば、養育費を手渡しで受け取っていれば、バレないのではと考える人もいるでしょう。

確かに養育費は原則非課税ですから、税金の納付義務はありません。

しかも、養育費の受け取りを行政に申告する必要はないので、その可能性は十分あるでしょう。

事実、子供との面会交流時に合わせて、手渡ししている人もいるようです。

しかし、いつまでもこの状況が続くわけではありません。

元夫が養育費の支払いに伴い、扶養控除を申し出る可能性があるからです。

元夫が扶養控除を申告すれば必ずバレる!

扶養控除とは扶養している親族がいる場合、一定額の所得控除が受けられる制度です。

所得控除が受けられれば、課税所得が減額され所得税の納税額を抑えることができます。

しかも、扶養控除には同居の有無は関係なく、扶養している実態があれば控除を受けることが可能です。

となれば、年間で見れば数十万円単位となる養育費は、大きな節税効果を発揮するため、元夫が扶養控除を申請する可能性は高いでしょう。

これによって、行政が養育費の存在を知り、不正受給が指摘される可能性が出てくるというわけです。

子供の扶養に伴う控除が受けられるのは、16歳以上からになります。

そのため子供が15歳まではバレない可能性もあるでしょうが、16歳以上になればバレることになるでしょう。

生活保護をいつから受給しているかにもよりますが、この時には養育費の受給期間についても調べられ、過去に遡って返還が求められることになります。

となれば、その額はかなりの金額となってしまうでしょう。

バレると大きなしっぺ返しを受けることになります。

このデメリットは、よく覚えておくようにしてください。

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支払い義務者となる元夫が生活保護を受けている場合の養育費の行方

支払い義務者となる元夫が生活保護を受けている場合、養育費の請求はできるのか。

こんな疑問を持つ人は少なくないでしょう。

生活保護は自分の収入だけでは生活できない人のための支援制度です。

となれば、生活誇受給者に養育費の請求なんてできないと、端から諦めてしまう人もいるでしょう。

どちらにしても元夫が生活保護受給者の場合、この疑問はクリアにしておく必要があります。

そこで最後に、生活保護受給者に対する養育費請求について検証していきます。

生活保護受給者であっても養育費の支払い義務は無くならない!

親の養育費支払い義務は、子供が経済的・社会的に自立するまで無くなることはありません。

これは支払い義務者となる親の経済状況が、どのような状態にあっても同じです。

そのため、支払い義務者となる元夫が生活保護を受けている状況でも、養育費は請求できます

しかし、今回問題となるのは支払い義務の有無ではなく、元夫に支払い能力があるかです。

請求しても支払う資力がなければ、養育費を受け取ることはできません。

この点を考慮すれば、生活保護受給者の元夫から養育費を受け取ることは難しいでしょう。

未払いの養育費を差し押さえで回収できる可能性?!

となれば大抵の人は、未払いの養育費を差し押さえで回収できないものかと考えることでしょう。

生活保護法第58条では下記の様に、

「被保護者は、既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。」

民事執行法第152条では下記の様に、生活保護費の差し押さえ禁止が規定されています。

「次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一  債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二  給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権」

しかし、差し押さえが禁止されている生活保護費も、銀行口座に振り込まれて預金債権となれば、差し押さえが可能になるのです。

生活保護費の支給方法は下記の2つです。

  • 口座支給
  • 窓口支給

福祉事務所の方針や判断で支給方法が指定されることもありますが、基本的には任意で選ぶことができます。

ですが下記理由から、基本的には口座支給となることが大半です。

  • 職員のミス
  • 職員の不正防止
  • 事務負担の軽減

よって、口座支給された生活保護費を差し押さえて、未払いの養育費を回収できる可能性は高いでしょう。

事実、下記判決が、平成10年2月10日の最高裁で下されています。

「差し押さえ禁止財産が銀行口座に振り込まれて預金債権になれば、差し押さえ禁止債権としての属性は無くなり、差し押さえや相殺が可能であると認める。」

この判決こそが、銀行口座に振り込まれれば、差し押さえ禁止財産も差し押さえることができる根拠なのです。

差し押さえられた元夫の生活を考慮すれば、これは無慈悲な方法かもしれません。

しかし、そんなことは言ってられない状況にあるのなら、生活保護費の差し押さえも検討しなければならないでしょう。

相手の出方によっては差し押さえができない可能性も・・・

そもそも差し押さえ禁止財産が、支給方法によって差し押さえ可能になるのでは、差し押さえ禁止財産に指定している意味がありません。

そのため、差し押さえを回避するために、元夫は差し押さえ禁止債権の範囲の変更の申し立てで、差し押さえを禁止することが下記の通り、法律によって認められています。

民事執行法第153条1項

「執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。」

差し押さえ命令が送達されてから1週間以内に、差し押さえ禁止債権の範囲の変更を申し立てれば、差し押さえることができなくなります。

また、下記の様に、預金債権となった差し押さえ禁止財産は、差し押さえを禁止すべきとの判決も多々見られます。

(広島高等裁判所松江支部・平成25年11月27日判決)
「処分行政庁において本件児童手当が本件口座に振り込まれる日であることを認識した上で、本件児童手当が本件口座に振り込まれた9分後に、本件児童手当によって大部分が形成されている本件預金債権を差し押さえた本件差押処分は、本件児童手当相当額の部分に関しては、実質的には本件児童手当を受ける権利自体を差し押さえたのと変わりがないと認められるから、児童手当法15条の趣旨に反するものとして違法であると認めざるを得ない。」

(東京地方裁判所・平成15年5月28日判決)
「年金受給権者が受給した年金を金融機関・郵便局に預け入れている場合にも、当該預貯金の原資が年金であることの識別・特定が可能であるときは、年金それ自体に対する差押と同視すべきものであって、当該預貯金債権に対する差押は禁止されるべきものというべきである。」

差し押さえ自体が認められないケースもあるというわけです。

現在は差し押さえ禁止財産が差し押さえ可能となってしまうことを指摘し、それを禁止する法改正を求める声が大きくなっています。

そのため、このような判決を下す裁判所が、多くなってくる可能性もあるでしょう。

銀行口座の差し押さえを求めても、認めれない可能性もあると覚えておいてください。

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まとめ

今回は養育費を受け取っている人が生活保護を受ける時の注意点、そして、生活保護受給者への養育費請求の可否について解説しました。

養育費を受け取っていても生活保護を受けることは可能です。

しかし、申請時には養育費の申告はごまかさない方が無難でしょう。

バレない可能性もあるかもしれませんが、バレた時の返還や徴収が大きな負担になってきます。

この点は十分注意してください。

また、元夫が生活受給者の場合、養育費の請求はできますが、実質回収することは困難です。

未払い分を差し押さえで回収することはできますが、何度も使える手ではありません。

元夫が生活保護受給者の場合は、養育費に変えて行政の補助金制度等を見直して、他の対応策を検討するようにしてください。

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