養育費を不払いにしたまま放ったらかしの元夫を罰してやりたい。
こう思っている人は多いでしょう。
ですが、養育費を不払いにしている人を罰する刑事罰は日本に存在しません。
残念ながら養育費の不払いを理由に、元夫を刑事罰に問うことはできないのです。
しかし、不払いの養育費回収においては、その限りではありません。
不払いの養育費回収を阻む行為に対しては、刑事罰が科されるようになりました。
これは2020年施行の改正民事執行法の重要ポイントであり、この改正によって不払いの養育費回収はずいぶんと楽になると言われています。
そこで今回は改正民事執行法が不払いの養育費回収に与えるメリットと、不払いの養育費を回収する方法を分かりやすく解説します。
どうにか不払いの養育費を回収したいという人は、ぜひ目を通して回収を成功させるための参考にしてください。
養育費の不払い相手に科される刑事罰
子供に対する養育費の支払い義務は、親に対して法的に課されている義務です。
親は子供に対して自分と同等の生活レベルを維持させるために、金銭的援助をしなければならない生活保持義務が民法766条で定められています。
この生活保持義務こそが、親が子供に対して養育費の支払い義務があるとされている根拠なのです。
事実、たとえ親に負債がある場合でも自らの生活を維持できている以上、養育費の支払いから逃れることができないという判決が裁判所によって下されています。(*大阪高裁:平成6年4月19日判決)
それほど強制力の強い義務というわけですね。
となれば、養育費の不払いを決め込んでいる相手に対し、何かしらの罪と罰則が課せられると考えて当然でしょう。
ですが、残念ながら、養育費の不払いを取り締まる刑事罰は存在しません。
たとえ養育費の不払を決め込んだとしても、刑事罰が科せられることはないのです。
納得いかない人は多いでしょうが、これが日本における養育費不払いの実情です。
日本において養育費の不払いが多いのも、刑事罰のないことが影響していることは否めないでしょう。
ですが、行政が養育費の不払い問題を無視しているわけではありません。
2020年に施行された改正民事執行法から、養育費を回収する際に必要な相手への財産開示請求で出頭拒否や虚偽申告した場合、厳格な刑事罰が下されることになったのです。
これに関しては下記の記事で詳しく解説しています。
この民事執行法の改正に伴い、不払いの養育費回収はグンとしやすくなったと言われています。
しっかりと目を通して、民事執行法がどう変わったのかを理解するようにしてください。
【注目!】改正民事執行法の施行で変わった重要3ポイントはコレ!!
不払の養育費の回収方法として知られているのが、財産の差し押さえです。
相手の財産を差し押さえて、それを不払いの養育費回収に充てる方法になります。
養育費の不払いに悩む人の間では、この差し押さえの存在は周知のことでしょう。
改正民事執行法で一番注目して欲しいのは、先にも話した通り、差し押さえしやすいように法的な改正・追加がされた点にあります。
差し押さえは不払いの養育費回収に頭を悩ます人にとって、必ずしも救済手段となるわけではありませんでした。
その理由は明白です。
不払いの養育費を差し押さえで回収する為には、下記3つの条件をクリアした上で、裁判所に申し立てしなければならないからです。
- 債権名義を取得している(*差し押さえを請求できる権利)
- 差し押さえ相手の現住所を把握している
- 差し押さえる対象財産の情報を把握している
つまり、この3条件をクリアできないがために、差し押さえを断念しなければならない人が少なくありませんでした。
差し押さえる財産情報を明確にできなかったからです。
相手が離婚時と同じ会社に勤めていれば、何の問題もありません。
勤務先の給与を差し押さえ対象にすればいいだけです。
ですが、退職して勤務先が不明であったり、無職のままだったとしたらどうでしょう。
他に差し押さえる財産を明確にしなければなりませんよね。
差し押さえできる財産は数多くありますが、それを明確にするのは簡単なことではありません。
しかも、それを申立人自身が明確にしなければならなかったのです。
ですが、改正民事執行法では下記の改正・追加がされ、改正以前よりも差し押さえる財産を把握しやすくなりました。
- 財産開示請求時の出頭拒否や虚偽申告に対する罰則が強化された
- 財産開示請求手続きの利用者枠が拡大された
- 第三者からの情報取得手続きができるようになった
この3つの改正・追加については、下記の記事で詳しく解説しています。
これら3つの制度を利用することによって、差し押さえの申し立てを断念しなければならない人は、ずいぶん減ると期待されています。
差し押さえの申立条件が揃っていない人は、ぜひ目を通してその方法を取得するようにしてください。
知っておくべき真実!養育費を不払いにする人が多い理由とは
近年は養育費の不払いが社会的問題として取り上げられるようになったため、この問題に関心が集まるようになりました。
おそらく多くの人が、養育費の不払いを決め込む相手に憤慨していることでしょう。
しかし、養育費の不払い問題は、養育費を支払わない相手にだけあるわけではありません。
下記の2つにも問題があるのです。
- 養育費を請求する人自身
- 養育費の不払に対する行政の取り組み
この2つは養育費の不払い問題を語る上で、無視することはできません。
養育費の不払い問題を解決するためには、国民すべてがこの事実を理解しておく必要があるでしょう。
この問題に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
これは養育費の不払い問題に悩む当事者は、絶対に理解しておかなければならない真実です。
ぜひ目を通して、養育費の不払い問題を引き起こしている理由を理解するようにしてください。
不払いの養育費を確実に回収する方法
差し押さえは不払いの養育費を回収する最終手段です。
相手との話し合いで決着が付かない場合は、差し押さえに頼るしか方法はないでしょう。
しかし、「差し押さえなんて無理だ・・・。」と、端から諦めている人が多いもの事実です。
しかし、この考えは間違いです。
特に相手がちゃんと会社に勤務していて、給与を得ているならば、差し押さえで不払いの養育費を回収できる可能性はかなり高いでしょう。
たとえ離婚時に養育費の取り決めをしていない人でも、差し押さえを検討してみる価値は十分あります。
給与の差し押さえ方法と注意点に関しては、下記の記事で分かりやすく解説しています。
給与差し押さえが可能な人は差し押さえで、不払いの養育費回収を検討してみましょう。
また、給与差し押さえで注意して欲しいのは、勤務先が差し押さえを拒否した場合と、差し押さえに掛かる弁護士費用の問題です。
これは給与差し押さえで不払いの養育費回収をする際に、押さえておいてもらいたい情報です。
しっかり知識として持ち合わせておくことをおすすめします。
それではこれら問題を解消するためにも、この2つについて見ていくことにしましょう。
元夫の会社が差し押さえを拒否した場合の対処方法
差し押さえは裁判所による強制執行命令ですから、基本的にこれを拒否することはできません。
ですが、下記理由で元夫の会社が差し押さえを拒否するケースも出てきます。
- 元夫の退職理由による差し押さえ拒否
- 会社が元夫をかばって差し押さえ拒否
元夫が会社を退職していれば、会社に差し押さえる給与は存在しません。
この場合は給与以外の差し押さえを検討しなければならないでしょう。
また、会社が元夫を不憫に思い、かばって差し押さえを拒否するケースも少ないながら見られます。
元夫が会社社長と懇意であるとか、会社が元夫の親族経営だというケースならば、十分あり得る話でしょう。
このケースでは差し押さえによる回収は難しくなりますが、会社を相手取った取立訴訟を申し立てることで回収可能です。
つまり、理由に関わらず、会社が差し押さえを拒否したとしても、不払いの養育費回収を諦める必要はありません。
その方法と注意点に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
元夫の会社に差し押さえを拒否される可能性は否めません。
そんな時にも慌てず対応できるように、予備知識として頭に入れておいてください。
養育費の差し押さえで必要な弁護士費用の相場
裁判所に差し押さえを申し立てる際、忘れてはならないのが弁護士費用です。
裁判所への申し立ては個人でやろうと思えば、決して不可能なことではありません。
手間はかかるでしょうし、時間と労力は必要ですが、申し立てを受理してもらうことは可能でしょう。
しかし、個人で差し押さえを申し立てるのは、決しておすすめできることではありません。
差し押さえには法的知識が必要な上、専門性が問われる書類提出が必要になるからです。
しかも、再弁所への申立条件が揃っていなければ、その条件をクリアする必要があります。
となれば、差し押さえを申し立てる際は、専門知識に富み、差し押さえ申し立ての経験を積んだ弁護士の力は無視することはできないでしょう。
ですが、ここで問題となるのが弁護士を雇うための費用です。
弁護士費用となれば決して安価ではありません。
その費用が必要となれば、それが原因で差し押さえを諦める人もいるでしょう。
しかし、弁護士費用を理由に、差し押さえを断念する必要はありません。
確かに安価ではありませんが、分割払いに対応している弁護士事務所が多く存在するからです。
この弁護士費用の相場と支払い時の注意点に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
どうしても弁護士費用が支払えない時の解決策も紹介しているので、よく目を通して差し押さえする際の事前準備の参考にしてください。
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【要注意!】不払いの養育費には時効がある!!
不払いの養育費回収を検討している人に、絶対知っておいてもらいたい情報があります。
それは、不払いの養育費に時効が存在するということです。
不払いの養育費に時効があるなんて知らない人も多いでしょうが、養育費にも借金と同じように時効が存在します。
不払いの養育費の時効は原則5年で、特別な条件に該当する場合のみ10年です。
よって、長期間に及んで不払いの養育費を放ったらかしにしていると、時効となって回収できないケースも出てきます。
ですが安心してください。
この時効に関する基礎知識をしっかり理解しておけば、みすみす時効を迎えさせることを回避できますし、たとえ時効を迎えていたとしても回収できる可能性もあります。
不払いの養育費を確実に回収する為にも、この時効の知識はしっかり理解しておく必要があるでしょう。
これに関しては下記の記事で詳しく解説しています。
ぜひ目を通して、不払いの養育費を回収するために必要不可欠な知識を、身に着けるようにしてください。
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まとめ
今回は養育費を不払いにしている元夫に刑事罰が科されるのかをテーマに、不払いの養育費に関する法律知識と回収方法を解説しました。
現在のところ、養育費を支払わない元夫を罰する刑事罰は存在しません。
しかし、それで落胆する必要はありません。
不払いの相手を罰するよりも、不払いの養育費をどう回収するかの方が重要な問題だからです。
その点に関しては、2020年に施行された改正民事執行法によって、回収しやすい環境が整備されています。
これによって、泣き寝入りしなければならない人は、ずいぶんと減ることでしょう。
今回解説した内容を参考にして、諦めずに不払いの養育費回収に取り組むようにしてください。
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