話し合いで養育費の取り決めがまとまらなかった。
相手が養育費の話し合いに応じてくれない。
こんな時に取れる次の手立てが、裁判所への養育費請求調停の申し立てです。
養育費請求調停とは、裁判官と調停委員の仲裁によって、養育費の取り決めをする手続きになります。
ここで気になるのが、この養育費請求調停に掛かる費用です。
低所得者が大部分を占める母子世帯にとって、養育費請求のためとは言え、費用捻出は決して楽なことではありません。
しかも、弁護士を雇うとなれば、高額と言われる弁護士費用の心配も必要です。
総費用がいくらかかるのかが分からなければ、安心して養育費請求調停の申し立てもできませんよね。
そこで今回は養育費請求調停にかかる全費用を紹介します。
養育費請求調停の申し立てを考えている人は、しっかりと目を通して、養育費請求調停を申し立てる算段の参考にしてください。
養育費請求調停を申し立てに掛かる費用
養育費請求調停の申し立てに掛かる費用は下記の通りです。
- 収入印紙:1,200円(子供1人につき)
- 郵便切手:1,000円
収入印紙は予納金、郵便切手は裁判所からの連絡用に使用されます。
収入印紙代は全国共通ですが、郵便切手代は申し立てる家庭裁判所によって異なるので注意が必要です。
申し立てる際は、下記の裁判所HPから申立先となる家庭裁判所を選んで確認してみるようにしてください。
必要な郵便切手代は、「裁判所手続きを利用する方へ」に掲載されていることが多いようです。
見つけられなかった、確認するのが面倒だという人は、「裁判所の窓口」のページで申立先の家庭裁判所窓口となる、家裁受付センターの電話番語を調べて問い合わせてみるといいでしょう。
申し立てに掛かる費用は、決して負担となる額ではありません。
安心してもらっていいでしょう。
弁護士を雇う時に掛かる弁護士費用の相場
養育費請求調停の申し立てに掛かる費用は懸念する必要はありませんが、問題なのはこの弁護士費用です。
弁護士費用は、どう控えめに言っても安価とは言えません。
養育費請求調停を弁護士に依頼する際も同様です。
それでは養育費請求調停に掛かる、弁護士費用相場を見てみることにしましょう。
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養育費請求調停に掛かる弁護士費用の相場
一口に弁護士費用といっても、その費用は下記4つの費用をまとめた金額になります。
- 相談料:養育費請求に関する相談時に発生する費用で、依頼後は大抵の場合請求されません
- 着手金:依頼に着手する際に発生する費用で、通常は依頼時に前払いで支払いが求められる
- 報酬金:養育費請求が認められた時に支払う報酬
- 実費・日当:先に紹介した申立費用と、弁護士の交通費や出張時の日当
そして、これら費用の相場は下記の通りです。
- 相談料:1時間5,000円~10,000円
- 着手金:20万円~40万円
- 報酬金:20万円~40万円
実費は申立先裁判所、日当や交通費は弁護士事務所と裁判所の距離によって異なるため記載を省きますが、それでも費用は上記のように高額になってきます。
安く抑えられたとして40万円もの大金が必要です。
これは低所得者の多い母子世帯にとっては、かなり大きな負担になるでしょう。
また、これら費用の他に注意して欲しいのが、依頼先の弁護士事務所が経済的利益に触れているかどうかです。
この経済的利益に関する請求がある場合は、さらに費用が必要になります。
経済的利益とは?
経済的利益とは弁護士に依頼した調停結果によって得られた利益を指します。
10万円の養育費支払いが当初の争点だったとしましょう。
それを弁護士に依頼して調停を行った結果、養育費が5万円になった。
この際の差額5万円が経済的利益に当たります。
その経済的利益に対して、成功報酬とは別に費用請求する弁護士事務所は少なくありません。
となれば、この費用請求がない方が、弁護士費用を安く抑えられるのは言うまでもありませんよね。
経済的利益の有無を判断する方法
養育費請求調停を弁護士に依頼する際、一番良いのは養育費を経済的利益としない弁護士事務所を選ぶことです。
そのような弁護士事務所であれば、経済的利益に応じた費用請求はありません。
これは弁護士事務所の報酬規定を見れば、経済的利益に応じた費用請求の有無が確認できます。
下記のような文言が記載されていれば、その費用請求はありません。
しかし、下記のような文言があれば、経済的利益に応じた費用を請求されてしまいます。
「養育費は経済的給付債権と同様とみなし、受領総額の○○%を経済的利益とみなす。」
「受け取る養育費の〇年分を経済的利益とする」
しかし、中には下記のような記載をしている弁護士事務所もあり、経済的利益に関する表記は弁護士事務によって様々です。
そのため、着手金や報酬金の定めがどう記載されているかの確認が重要になります。
なにわともあれ、弁護士費用を高額にする要因は下記の3つです。
- 着手金
- 報酬金
- 経済的利益に応じた費用
これら費用がどう定められているかを必ず確認し、総費用がいくらになるのかを計算してみましょう。
せっかく養育費が受け取れるようになっても、弁護士費用の負担が大きくては何の意味もありません。
そうならないためにも、総費用がいくらになるのかをちゃんと計算して、各事務所を比較検討した上で、依頼先を決めるようにしてください。
弁護士費用を相手に請求することはできるのか
養育費請求調停で掛かった弁護士費用を、相手に請求できないものかを考える人はいるでしょう。
アメリカなどでは弁護士費用を敗訴した人が支払う、敗訴者負担制度が認められています。
これはアメリカの法定ドラマのシーンでもよく見かけるので、もしかして請求できるのではと考える人がいても不思議ではありません。
ですが日本では、この敗訴者負担制度は導入されていません。
そのため、日本では今のところ、相手に弁護士費用を請求することはできないのです。
相手に請求できるのは不法行為にに対する損害賠償請求時のみ!
基本的に日本では弁護士費用を相手に請求することはできませんが、不法行為に基づく損害賠償請求では、相手に弁護士費用を請求することができます。
不法行為とみなされるのは、下記3つの要件が成立した時です。
- 故意過失
- 違法行為
- 損害発生
つまり相手が故意や過失による違法行為で相手に迷惑を与えて、それによって第三者が損害を受けたというケースが不法行為にあたるわけです。
このような場合、相手が第三者に対して損害を賠償するのは当たり前の話ですよね。
そのため法律でも不法行為という考えが規定されています。
不法行為に該当する具体例は下記の通りです。
- 交通事故による損害
- 痴漢や盗撮の被害
- 暴行や障害の被害
- パワハラやセクハラの被害
- 名誉棄損
- エステの施術事故や医療事故による被害
- 不倫による精神的被害
残念ながら債務不履行に当たる養育費の支払いは、これら不法行為には当たりません。
現在のところ養育費の不払いが違法行為とする規定がないからです。
2020年現在、不払いの養育費を撲滅とさせようと法改正への取り組みが始められています。
その法改正で養育費不払いが違法であるとされれば、不法行為とみなされる可能性はあります。
しかし、2020年11月時点では、不貞行為に当たらないため、弁護士費用は自己負担するしかありません。
残念ですが、これはよく理解しておきましょう。
相手が来ないため調停不成立になった場合の行方
養育費請求調停は相手が来ないことには成立のしようがありません。
調停は両者の主張や意見を調停委員が取りまとめて、話し合いを成立させる手続きです。
そのため、どちらか一方が調停に現れず、調停を行う意思がないと調停委員が判断すれば、調停不成立なってしまいます。
特に相手が話し合いに応じない場合には、裁判所からの呼び出しにも応じない可能性は高いでしょう。
では、そんな時に養育費請求はどうなってしまうのでしょうか。
安心してください。
養育費請求調停が不成立になっても、養育費請求が却下されたわけではありません。
審議の場が審判に移されて、そこで裁判官から養育費請求の決定が下されます。
よって、超低不成立となっても、養育費請求の取り決めは、ちゃんと成立させることができるのです。
調停不成立後の手続きについては、下記の記事で詳しく解説しています。
調停不成立となるケースは珍しくありません。
そうなった時に慌てないように、しっかりと目を通して対処方法を頭に入れておきましょう。
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まとめ
今回は養育費請求調停にどれくらいの費用が必要になるかを解説しました。
裁判所でかかる実費は数千円と負担になるような額ではありませんが、弁護士を雇うとなれば決して安価とは言えない費用が必要になります。
養育費請求調停は弁護士に頼らず自分だけで臨むこともできますが、満足のいく結果を求めるのであれば弁護士の助力は必要不可欠です。
今では弁護士費用の分割払いを受け付けている弁護士事務所も多くなっています。
端から支払えないと決めつけずに、まずは支払う算段を模索してみることをおすすめします。
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