子供の養育費がいくらもらえるのか、これは離婚を考えている女性にとって重大な問題です。
子供を大学卒業まで育てるとすると養育費(教育費を含む)は、下記の様に途方もない金額になります。
- すべて国公立の学校に進学した場合:2,500万円以上
- すべて私立の学校に進学した場合:4,000万円以上
もちろんこれは子供1人に掛かる金額です。
子供が増えるごとに掛かる養育費は倍々ゲームで増額します。
となれば、離婚した元夫から支払われる養育費に関心が高まるのは当然のことでしょう。
通常、子供の養育費の取り決め時には「養育時算定表」の算定額が、養育費相場として用いられています。
養育費算定表は裁判所の養育費決定時にも運用されているデータですから、養育費算定表の養育費相場が、養育費として妥当なものであると断言してもいいでしょう。
そこで今回はこの養育費算定表の確認方法を分かりやすく解説していきます。
確認方法は決して難しいものではありません。
今回の記事を読んでもらえば、一度でマスター可能です!
しっかりと目を通して、自分で養育費相場の確認ができるようになってください。
まずは養育費算定表について詳しく知ろう!
現在、養育費算定表と呼ばれるものには下記の2つがあります。
- 裁判所が策定した養育費算定表
- 日本弁護士連合会が策定した新養育費算定表
冒頭で話した裁判所で運用されているものが、「裁判所が策定した養育費算定表」です。
それでは、なぜ2つもの養育費算定表が用意されているのでしょうか?
これは裁判所の養育費算定表では、養育費が低くなってしまうという問題を、常日頃から日本弁護士連合会が指摘し続けたことが事の発端です。
養育費の低くなる原因を危惧した日本弁護士連合会が、従来の養育費算定方法を改訂して、子供の生活保持をより徹底した「新養育費算定表」を提言したのです。
指摘された養育費算定表の問題点
裁判所の養育費算定表で養育費が低く抑えられてしまう理由は、養育費算定表の作成時に用いた算定方法にあります。
基本的に養育費算定表は下記3条件を基に金額が算定されています。
- 夫婦それぞれの年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
この中でも最も養育費に影響を及ぼすのが、養育費を支払うことになる義務者の年収です。
受け取れる養育費は、義務者の年収しだいと言っても過言ではないでしょう。
養育費算定時には、義務者の年収を実際に手元に残る金額を「基礎収入」として算出し、この基礎収入に基づき養育費相場を算定しています。
つまり、基礎収入が養育費を決定する基礎条件となるわけです。
今、「受け取れる養育費は、義務者の年収しだいと言っても過言ではない。」と言った理由も理解してもらえたのではないでしょうか。
つまり、裁判所の養育費算定表の金額が低い原因は、この基礎収入の算定方法に問題があるのです。
基礎収入は下記の計算式で算出されます。
また、基礎収入を算定する際の、年収内訳は下記の通りです。
年収 |
内訳 |
含まれる費用 |
公租公課 |
所得税、住民税、社会保険料など |
|
職業費 |
交通費、書籍、衣類、履物、交際費など |
|
特別経費 |
住居関係費、保険医療、保健掛け金など |
|
基礎収入 |
年収から上記3つを差し引いた金額 |
基礎収入は年収(総収入)からを差し引かれるものが多いため、基礎収入自体が低くなり、その結果、養育費が低くなってしまう。
これが日本弁護士連合会の主張です。
事実、基礎収入は34%から42%と、日本弁護士連合会の新養育費算定表の60%から70%と比べれば大きな違いが生まれています。
日本弁護士連合会が用いた算定方式で算出された養育費相場は、養育費を受け取る人にとっては強い味方となってくれるでしょう。
ならば、裁判所のものより日本弁護士連合会の新養育費算定表を使えばいいと思った人も多いでしょう。
残念ながら事はそう安直には進まないのが実情です。
日本弁護士連合会の新養育費算定表は、提言されてから間もありません。
これに対し裁判所の養育費算定表は、長い実績による信頼性と実効性が認められているデータです。
そのため、日本弁護士連合会の新養育費算定表は高い評価を得ているデータとは言い難く、ほとんどの裁判所は未だ養育費算定表を参考データとして運用してます。
もちろん、離婚する両者が日本弁護士連合会の新養育費算定表を基に、養育費の算定をしてくれというのならば問題はありません。
ですが、養育費を受け取る権利者有利な日本弁護士連合会の新養育費算定表は、裁判所で参考データとしてもほとんど使われていないのが実情です。
「日本弁護士連合会の新養育費算定表の方がいいよ!」とアドバイスされることもあるでしょうが、この点はよく覚えておくようにしてください。
裁判所の養育費算定表は、下記の裁判所HPで無料閲覧できます。
試しにどんなものか見てみるといいでしょう。
【改定版】養育費算定表の改善ポイント
裁判所の養育費算定表の問題点をお教えしましたが、みなさん安心してください。
裁判所もこの問題については重々承知しています。
2019年12月23日に最新統計資料に基づき算定し直した「【改定版】養育費算定表」が公表され、養育費が低いと指摘されていた問題が改善されました。
【改定版】養育費算定表で改善されたのは下記の2点です。
- 子供の生活指数の変更
- 基礎収入の変更
それではこの改善ポイントを簡単に紹介しておきましょう。
子供の生活指数の変更
変更ポイントの1つ目が子供の生活指数の変更です。
子供の生活指数は養育費の算出時に用いられる変数で、この生活指数が高いほど養育費は高くなります。
子供の生活指数は、一般の大人を100とした場合、いくらになるかを数値化したもので、その変更幅は下記の通りです。
(変更前)
- 0歳~14歳未満:55
- 14歳以上:90
⇒(変更後)
- 0歳から14歳以下:62
- 15歳以上:85
15歳以下の子供がいる場合、生活指数が引き上げられたことで、改正前よりも養育費が高額になります。
しかし、15歳以上の引き下げは気になります。
養育費が下がってしまうのではと、心配する人もいるでしょう。
ですが、これは全く問題ありません。
次に紹介する基礎年収の変更により、生活指数が減った15歳以上の子供の場合でも、養育費は高くなる傾向にあります。
悪くても下がることはなく、現状維持をほぼキープしできるので安心してください。
基礎収入の変更
2つの目変更点が基礎年収です。
今回の改定でこの基礎収入の変更が、養育費の増額に一番大きな効果をもたらすポイントになります。
先に話したように、改訂前の基礎収入は34%から42%でしたが、今回の改定で38%から54%まで引き上げられました。
養育費を支払う義務者の負担は大きくなりましたが、養育費を受け取る権利者は確実に受け取る養育費が高くなります。
日本弁護士連合会の新養育費算定表のように60%から70%とはいきませんが、これは大きな前進であり、評価すべき点でしょう。
養育費算定表の改定は、取決め済みの養育費は該当しない!
「養育費算定表の改定によって、受け取れる養育費が増額されるなら、それ以前に取り決めた養育費もそれに合わせて欲しい。」
こう考える人は多いでしょう。
しかし、改訂前に取り決められていた養育費が、養育費算定表の改訂に伴い増額されることはありません。
養育費算定表が改訂されたことによる養育費増額が、「養育費の変更事由には該当しない」と明言されているからです。
よって、「養育費算定表が改訂されたのだから、養育費は増額されるべきだ!」という変更事由は認められません。
養育費を支払う義務者が納得し、話し合いで決着が付くなら問題ありませんが、裁判所に増額調停を申し立てた場合、この主張で養育費の増額が認められることは100%ないでしょう。
この点は勘違いしないように、しっかり理解しておきましょう。
ーーー
実践編!実際に年収600万円で子供2人の養育費を算定表で確認してみよう!!
それでは、実際に裁判所の養育費算定表を使って、養育費相場を確認していくことにします。
確認方法はいたって簡単です。
今回の確認方法に目を通してもらえば、次回からは難なく1人で養育費相場の確認ができるようになっているでしょう。
養育費算定表を使った養育費相場の確認方法は、たったの3ステップです。
- 必要な養育費算定表を選ぶ
- 夫婦それぞれの年収を選ぶ
- 養育費算定表のグラフ上で年収をクロスする
この3ステップだけで、知りたい養育費相場が確認可能です。
今回は下記条件で養育費相場を確認します。
- 夫の年収:600万円
- 妻の年収:無収入
- 子供の人数:2人
- 子供の年齢:14歳以下1人、15歳以上1人
1つ1つ手順に沿って確認を進めていくので、しっかりと目を通して、確認方法を理解するようにしてください。
ステップ1:必要な養育費算定表を選ぶ
それではまずは養育費算定表が無料公開されている、下記の弁護士HPにアクセスしてください。
すると「養育費・婚姻費用算定表」というページが画面に開くので、画面トップ下にある「▶養育費・婚姻費用算定表」をクリックしましょう。
すると、画面に「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」ページが開きます。
ページを確認できたら、このページ内に添付されているPDFファイルに注目してください。
このPDFファイルのうち、下記の「(表1)から(表9)」までが養育費算定です。
養育費算定表は下記2条件に基づき、全部で9つに分類されています。
- 子供の人数
- 子供の年齢
自分の条件に該当するPDFファイルを開けば、養育費相場を確認するために必要な、養育費算定表が立ち上がるというわけです。
今回は子供の条件は下記の通りですから、この条件に該当するのは「(表4)養育費・子2人表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)」のPDFファイルになります。
- 子供の人数:2人
- 子供の年齢:14歳以下1人、15歳以上1人
それでは早速、このファイルを開いてください。
ステップ2:夫婦それぞれの年収を選ぶ
現在画面には下記表題のグラフが立ち上がっているでしょう。
このグラフは縦軸が養育費を支払う人の年収、横軸が養育費を受け取る人の年収になっています。
ここでもう一点注意して欲しいのが下記の区分です。
下記の様にグラフは職業によって、年収が区分されています。
- 自営 ⇒ 自営業者
- 給与 ⇒ 会社員
くれぐれも間違わないように、自分の職業に応じたマスを見るようにしてください。
それでは、グラフ上で夫婦それぞれの職業に応じた年収の箇所を確認してましょう。
今回の条件は下記の通りです。
- 義務者:600万円
- 権利者:無収入
夫婦それぞれの年収の箇所が確認できたでしょうか?
ここまでくればもう終わったも同然です。
次の作業で養育費相場の確認は完了します。
ステップ3:養育費算定表のグラフ上で年収をクロスする
それでは最後の作業に取り掛かりましょう。
後は、夫婦それぞれの年収をグラフ上で縦横に伸ばしてクロスするだけです。
グラフ上でクロスしたマス(☆印)の分布する金額帯が、「12万円~14万円」となっているのが確認できたでしょうか。
この金額が今回の条件時の養育費相場になります。
以上が養育費算定表を使った養育費相場の確認方法です。
確認に必要な条件が簡単に用意できる上、確認手順も難しくありません。
最後まで問題なく読み進められたのではないでしょうか。
現状ではこれが、最も簡単な養育費相場の確認方法です。
この後、マスターできているかの確認のため、あなたの条件に合った養育費相場を確認してみるといいでしょう。
お互いが再婚した場合に与える養育費への影響
養育費は離婚後に再婚した場合、どうなるのだろうと心配している人は多いでしょう。
原則、養育費を支払いう義務者には、子供が20歳になるまでの支払義務が課されています。
そのため、例え離婚した夫婦のどちらが再婚しようとも、義務者は支払い義務から解放されることはありません。
しかし、注意して欲しいのは、再婚により養育費が減額・免除される可能性が出てくる点です。
特に扶養義務の対象が増えることになる元夫の再婚は、高い確率で養育費の減額対象となってきます。
元夫から減額請求が求められると、それに応じざるを得ないケースも出てくるでしょう。
あなたが再婚して再婚相手の収入を当てにできる立場ならまだいいですが、未だ独り身で養育費の存在が欠かせない状態だと、これは切実な問題となってしまいますよね。
養育費が減額・免除される際の条件は、再婚後の自分を取り巻く状況が大きく影響してきます。
減額幅は少なくて済む場合もあれば、半額以下とひどい減額となることあり、最悪、全額免除という可能性すら否めないのが実情です。
離婚後の再婚は可能性の話ではありません。
特に20代、30代であれば、むしろ現実問題として捉えておくべきです。
となれば、お互いの再婚が養育費へどう影響するのかは、事前に知っておくべき問題と言えるでしょう。
これについては下記の記事で詳しく解説しています。
いざ再婚となって慌てないようにするためにも、この記事で必要な情報をしっかりと入手するようにしてください。
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あなたを取り巻く情況に応じた養育費の相場を徹底チェック!
養育費相場は下記の3つを基準として算出されています。
- 夫婦それぞれの年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
よって、これら条件が異なれば、受け取れる養育費も違ってきます。
それでは、これら3条件が異なることによって、養育費相場はどのように変動するのでしょうか。
この中で最も養育費に影響が大きいのは、養育費を支払う義務者の年収です。
受け取れる養育費は、義務者の年収の高さしだいと言っても過言ではないでしょう。
しかし、残る2つが与える影響も見逃すことはできません。
これについては下記の記事で徹底検証しています。
この記事を見てもらえば、あなたがどれくらいの養育費を受け取れるのかが、一目で確認できます。
養育費でよくある疑問に関しても徹底解説しているので、ぜひ目を通して必要な知識を手に入れてください。
まとめ
今回は養育費算定表の確認方法を解説しました。
しっかり目を通していただいたなら、確認方法のレクチャーはもう必要なくなっていることでしょう。
養育費算定表を使えば、養育費相場は誰でも簡単に確認可能です。
受け取れる養育費に目処が立てば、その金額が十分なものであるか、どんな費用が不足しているかなど、相手との交渉材料を明確にすることができます。
養育費相場は交渉を優位に進めるためにも、必要不可欠な情報となってくるのです。
今回得た知識で、どれくらいの養育費がもらえるのかを確認し、建設的な養育費交渉に臨むようにしてください。
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