養育費を強制執行による差し押さえで回収するには、裁判所への申し立てが必要になります。
そのため、どうしても弁護士の助力が必要だと思い込んでいる人もいるでしょう。
もちろん弁護士に依頼するのが一番いい方法ではあります。
可能ならば弁護士を雇った方が良いでしょう。
ですが、自分1人の力だけでやれないわけではありません。
弁護士に頼らず、差し押さえができないものかと、考えている人もいるでしょう。
そこで今回は養育費を強制執行による差し押さえで回収する方法と流れを、分かりやすく解説します。
弁護士を雇った場合と、自分1人でやる場合との両目線で解説するので、養育費を強制執行による差し押さえで回収しようと考えている人はぜひ参考にしてください。
まずは養育費の強制執行申し立てに必要な書類を準備しよう!
強制執行による差し押さえをするために、まずやらなければならないのが裁判所への申し立てです。
裁判所に強制執行の申し立てをして、それを受理してもらわなければ事は先に進みません。
そこで最初に必要になるのが申立書類の準備です。
強制執行の申し立てに必要な主な文書は下記のものが挙げられます。
書類名 |
書類の内容 |
債権差押命令申立書 |
債権の差し押さえを求める旨の書類 |
第三債務者に対する陳述催告の申立書 |
第三債務者に5事項を報告してもらうための書類 |
債務名義の正本 |
申立人に強制執行の権利があることを証明する公文書 |
債権名義正本の送達証明書 |
差し押さえる相手に債務名義謄本が送達された証明書類 |
執行文・確定申告書 |
養育費の取り決めが確定していることの証明書 |
登記事項証明書 |
勤務先や金融機関の土地や建物の登記情報が記載された書類 |
当事者目録 |
申立人と差し押さえる相手の現住所等の情報を記載したもの |
請求債権目録 |
差し押さえる相手への債権情報や請求金額を記載したもの |
差押債権目録 |
差し押さえる相手の財産、もしくは勤務先の情報を記載したもの |
住民票・戸籍事項証明書 |
申立人の現住所が債務名義記載住所と異なる場合 |
かなりの数の書類提出が求められますが、弁護士に依頼すれば、債務名義以外の書類作成や書類収集は弁護士に一任できます。
しかし、個人で申し立てをする場合は、これら全書類の収集および作成をしなけれななりません。
個人で申し立てをする際は、まずこれら書類の不備がないかが重要なポイントになってきます。
書類不備がある場合、申し立てが不受理となってしまうからです。
個人で申し立てを検討するのであれば、まず、これら書類の作成・収集が可能かを見極める必要があります。
この段階で無理だと思うのであれば、弁護士への依頼を検討するべきでしょう。
それではこれら書類の収集方法と作成方法について、分かりやすくお教えしていきます。
個人だけで申し立てを検討している人は、自分でできそうかどうかを確認しながら、見ていくようにしてください。
債権差押命令申立書
債権差押命令申立書は、なぜ強制執行による差し押さえを申し立てるのかを記載した書類で、下記の旨を記載作成したものです。
債権名義に記載された養育費の支払いを元夫が認め、その子供が請求権を持っているにもかかわらず、支払いをしないため強制執行による左足抑え命令を求める。
裁判所への申立書ともなれば、法律に詳しい弁護士でないと作成できないと思っている人もいるでしょう。
ですが、そんな心配はいりません。
この申立書は裁判所HPで書式をダウンロードできますし、記載内容も難しいものではありません。
下記の様に申立人の情報と、この申立書に添付する書類を記載するだけです。
弁護士でなくても十分、作成することができるでしょう。
第三債務者に対する陳述催告の申立書
これは元夫の給与や、預貯金を差し押さえる際に必要な書類です。
給与なら勤務先、預貯金なら金融機関といったように、差し押さえる相手に対して、債務を負っている相手にも差し押さえ命令を出すことになります。
その際、この申立書が必要とされるのは、差し押さえる給与や預貯金が本当に存在するのかを確認するためです。
差し押さえる財産が存在しない場合、差し押さえ自体が不可能になるため、申立人は改めて他の財産を差し押さえしなければなりませんよね。
確実に差し押さえを成功させるためにも、給与や預貯金などを差し押さえる際は、欠かすことのできない書類と言えるでしょう。
この書式は先ほどの債権差押命令申立書のダウンロードで、一緒に取得することができます。
債務名義の正本
主な債権名義は下記のものが挙げられます。
- 確定判決書
- 仮執行宣言付き判決書
- 家事審判書
- 和解調書
- 調停調書
- 執行認諾文言付き公正証書
- 仮執行宣言付き支払督促書
これら債権名義は、裁判所へ離婚や養育費請求の申し立てをしていれば、必ず取得できています。
よって、協議離婚で、離婚後に裁判所へ養育費請求の申し立てをしたことがない人は、離婚時に協議離婚書を執行認諾文言付き公正証書として作成している場合を除き、取得できていません。
裁判所への強制執行の申し立て時には、この債務名義の提出が不可欠です。
取得していない人は、まずは債権名義を取得してください。
一番簡単な取得方法については、下記記事の中の「債権名義の取得方法」で分かりやすく解説しています。
債権名義を所得できていない人は、しっかりと目を通して、早急に債権名義取得の手続きをしてください。
債権名義正本の送達証明書
これは、債権名義の正本または謄本が元夫に送達されたことの証明書です。
なぜ元夫にこの送達証明書が必要なのか。
強制執行する際には、事前に相手に対して不払いの養育費があることを知らせて、その支払いや反論をする機会を与えなければなりません。
また、不払いの養育費を支払っているにもかかわらず、行き違いで強制執行の申し立てをしてしまう可能性もあります。
それを防止するためにも、債権名義正本の送達証明書の提出が求められるのです。
この送達証明書は債権名義を取得した裁判所、または公証人役場で取得できます。
執行文・確定申告書
取得している債務名義が下記2の場合は、執行文および確定申告書の提出が必要です。
- 確定判決書:執行文
- 家事審判書:確定証明書
これら書類は下記で取得可能です。
- 執行文:判決を出した裁判所
- 確定申告書:審判を出した家庭裁判所
債務名義は養育費の支払い債務内容を記載した書類のため、これら2つの債権名義には強制執行に関する記載はされていません。
そのため、債権名義として認められてはいるものの、このままでは強制執行の申し立てをすることができないのです。
それを補足し強制執行するために必要になるのが、執行文と確定証明書になります。
該当する債務名義を取得している人は、取得申請を忘れないようにしましょう。
登記事項証明書
差し押さえる財産が下記の時は、第三債務者の登記事項証明書が必要です。
- 給与
- 預貯金
会社や法人の登記事項証明書には、下記の4つがあります。
- 履歴事項証明書
- 現在事項証明書
- 代表者事項証明書
- 閉鎖事項証明書
会社の代表者について証明した、代表者事項証明書を提出するようにしてください。
取得先は法務局で窓口で申請書に必要事項を記入して提出するだけです。
その際には下記情報が必要となるので、事前に調べておくようにしましょう。
- 会社・法人の会社名(商号)
- 会社・法人の本店所在地
また、直接出向かなくても、オンライン請求して郵送で受け取ることも可能です。
当事者目録
当事者目録は下記3者の住所・氏名を記載した書類です。
- 債権者(申立人)
- 債務者(元夫)
- 第三債務者(勤務先や金融機関など)
この書式も先ほどの債権差押命令申立書のダウンロードで、一緒に取得することができます。
請求債権目録
請求債権目録は強制執行による差し押さえで、回収する養育費の不払い額を記載する書面です。
この請求債権目録は給与差し押さえ時の書式ですが、上記画像にあるように、給与差し押さえの場合では不払いとなっていない、将来分の養育費を給与から差し押さえることが可能です。
養育費の支払い日が到達した分しか差し押さえできませんが、相手が勤務先を変えない限り、確実に養育費を回収することができます。
給与差し押さえ時には、記載して申し立てるようにしてください。
この書式も債権差押命令申立書のダウンロードで、一緒に取得することができます。
差押債権目録
差押債権目録は差し押さえる財産情報について記載した書類です。
上記画像も給与差し押さえの書式になりますが、差し押さえ財産情報を記載するだけですから、情報把握さえしていれば難なく作成できるでしょう。
この書式も債権差押命令申立書のダウンロードで、一緒に取得することができます。
住民票・戸籍事項証明書
債務名義に記載されている住所と現住所が異なる場合は、住民票もしくは戸籍事項証明書が必要です。
住民票および戸籍事項証明書は本人確認書があれば、お住まいの市町村役場で簡単に取得できます。
住民票はマイナンバーカードがあれば、コンビニで簡単に写しが取得できるコンビニ交付サービスを実施している自治体もあるようです。
まずは、お住まいの自治体HPで入手方法を確認してみましょう。
以上が強制執行の申し立てに必要になる主な書類です。
申立方法や必要書類については、下記裁判所HPでも紹介されており、書類の作成方法についても開設されています。
個人で文書作成する場合は、参考にするといいでしょう。
自分で強制執行による差し押さえで養育費を回収する方法と流れ
裁判所への申し立てに必要な書類が揃えば、後は裁判所に申し立てをして、差し押さえた財産から、不払い分の養育費を回収するだけです。
よって、方法について論じるとすれば、どうすれば裁判所へ申し立てができるかということになります。
これは今紹介した申し立てに必要な書類の作成と収集こそが、まさにその方法になってくるでしょう。
書類の作成と収集方法については、先に話した通りです。
ですが、まず強制執行による差し押さえを検討するならば、下記3つの申立要件を満たしていることが大前提になります。
- 債権名義を取得している
- 差し押さえる相手の現住所を把握している
- 差し押さえる財産情報を把握している
そもそも債務名義を取得していなければ、強制執行を申し立てる権利がありません。
また、差し押さえる相手の現住所や財産が分からなければ、差し押さえ財産を特定できませんから、差し押さえができるはずもありませんよね。
しかも、この3つの要件が揃わなければ、申し立てに必要な書類の作成も収集もできません。
これは、前項の「まずは養育費の強制執行申し立てに必要な書類を準備しよう!」に目を通してもらっていれば、納得してもらえることでしょう。
強制執行による差し押さえを検討する段階で、これら要件を満たしていない人は、まず、この3つの申立要件をクリアすることから始めてください。
債権名義の取得方法は、前項で紹介しました。
ここでは、残り2つの申立要件を満たす方法を、分かりやすくお教えします。
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差し押さえる相手の現住所を調べる方法
離婚しても養育費の支払いがあれば、元夫との連絡方法は把握しているでしょう。
ですが、養育費が不払いとなれば、連絡が取れなくなり、住んでいるところも分からないという人も出てきます。
中には勤めていた会社も退職し、住所不定で分からずじまいというケースもあるようです。
こうなってしまえば、自分で相手の現住所を調べるのは簡単ではありません。
実は相手の現住所が分からないが故に、強制執行による差し押さえを断念する人も少なくないのです。
自分で調べられる方法は限られています。
相手の友人知人や親族に当たってみるか、せいぜい興信所に依頼するくらいしか手はありません。
しかし、戸籍の附票から、現住所を割り出すことも可能です。
この方法は知らない人が多いので、是非とも試してもらいたい方法になります。
その方法については下記文書の中の「戸籍の附票を取得する」で分かりやすく解説しています。
ですが、この方法でも現住所が分からない場合は諦めるか、上記の記事に記載した方法で弁護士に調べてもらうしか道はないでしょう。
ですが、弁護士に依頼したとしても、絶対という保証はありません。
弁護士依頼に依頼する際は、これを納得した上でじっくり検討するようにしてください。
差し押さえる財産情報を調べる方法
離婚した元夫が婚姻中と同じ勤務先に勤めていれば、給与を差し押さえることができます。
この場合は簡単に差し押さえ財産を特定可能です。
しかし、転勤先が分からない、退職後無職のままというケースでは、差し押さえる財産の特定は簡単ではありません。
ですが、相手の現住所さえ分かっていれば、差し押さえる財産を特定するのは難しくないのです。
2020年4月に施行された改正民事執行法により、相手財産の調査を裁判所に依頼できる上、財産開示手続で正確に相手財産を把握できるようにもなりました。
財産調査を裁判所に依頼する方法については、後述する「【要チェック】法改正で養育費回収は成功しやすくなった!」で解説しています。
その方法を知りたい人は、この事項の記事に目を通して、調べる方法をしっかりと理解してください。
裁判所への申し立てから回収までの流れ
次は申し立てをして、養育費を回収するまでの流れを見ていくことにします。
勤務先の給与差し押さえを例に挙げて、その流れを見ていくことにしましょう。
申し立てから回収までの流れは下記の通りです。
- 裁判所に差し押さえの申し立てをする
- 裁判所から差し押さえ命令が出される
- 第三債務者と回収条件についての話し合い
- 回収完了後、裁判所に取立完了届を提出する
それでは順追って、各工程の注意点をお教えしていきましょう。
1.裁判所に差し押さえの申し立てをする
申立先となる裁判所は、元夫の現住所地を管轄している地方裁判所になります。
この際、必要書類一式と共に必要になるのが下記諸費用です。
- 収入印紙代(4,000円)
- 郵便切手代(数千円)
収入印紙は申立手数料に当たり、一律4,000円です。
しかし、郵便切手代は下記の人数によって異なります。
- 債権者(申立人)
- 債務者(元夫)
- 第三債務者(勤務先や金融機関)
一般的な給与差押の場合は各1名ずつですから、3,495円分の郵便切手でOKです。
しかし、人数が増える場合は、必要な郵便切手代は違ってきます。
その場合は、下記で郵便切手代を確認して、該当する郵便切手を用意するようにしてください。
2.裁判所から強制執行による差し押さえ命令が出される
裁判所で申し立てが認められると、差し押さえ命令が差押命令正本として、下記の両者へ送達されます。
- 債務者(元夫)
- 第三債務者(会社や銀行など)
この送達はまず第三債務者、そして債務者の順番です。
この差し押さえ命令が送達されたことは、両者への送達後に申立人(元妻)に届く、通達通知書で確認できます。
通達通知書に債務者と第三債務者への送達日が記載されているので、いつ相手が知ったかを確認可能です。
この送達日は差し押さえ後の財産取立に必要な情報ですから、しっかり確認するようにしましょう。
また、通達通知書が不送達の場合には、その旨が通知されます。
受け取れていない場合は、至急、受け取る手続きをしてください。
3.第三債務者と回収条件についての話し合い
差押命令が出ても、裁判所が不払いの養育費を回収してくれるわけではありません。
給与の管理をしている勤務先と、取り立て方法について話し合い、自分で回収しなければならないのです。
この点は誤解しないように、よく覚えておきましょう。
取り立てができるのは、送達通知書に記載されている債務者への送達日から1週間が経過した翌日からです。
相手への送達日が11月1日ならば、取り立て可能になるのは11月9日になります。
1週間後の11月8日ではないので、間違えないように注意しましょう。
取り立てが可能になれば、勤務先に連絡を取って、どういう方法で回収するかを取り決めるようにしてください。
大抵の場合は、あなたの銀行口座に請求額が振り込まれることになるでしょう。
また、取り立てに掛かる振込手数料など費用は、全てあなたの自己負担です。
第三債務者である勤務先は、あなたが請求した額以上の支払い義務は負っていません。
この点は勘違いしないように、覚えておいてください。
4.裁判所への取立届と取立完了届の提出
請求額の回収後は取り立てが完了したことを、取立完了届で裁判所に通知しなければなりません。
取立完了届の書式は下記からダウンロードできます。
FAXで通知してもかまいませんが、原本提出が必須です。
必ず郵送するようにしてください。
また、取立完了届の記載方法は、下記から確認できます。
また、給与を差し押さえる場合、一度の差し押さえ額の上限が決められています。
そのため一度の差し押さえで、全額回収できないケースも出てくるでしょう。
この場合は、回収した都度、取立届の提出が必要です。
まとめて提出ではありません。
取り立てが完了した時に取立完了届、それまでの取立時には取立届の提出が必要です。
最後に取立完了届を提出しなければ、以降に取り立てる養育費がなくても、裁判所は取立完了と判断してくれません。
間違わないように、最終取立後は取立届ではなく、取立完了届を提出してください。
自分で強制執行による養育費回収を成功させる必須ポイント
これは個人の場合に限りませんが、不払いの養育費回収を成功させるのに一番必要なのは迅速な対応です。
不払いの養育費は後回しにすればするほど、回収できる可能性は低くなります。
養育費回収に向けた対応が早ければ早いほど、確実に不払いの養育費を回収できる確率が高くなるのです。
親の義務である養育費の支払いを拒否するということは、相手が養育費を支払いたくないという意思表示の他なにものでもありません。
よって、どうにか支払わずにすむように、下記のような様々な手を使ってくるでしょう。
- 財産隠し
- 転職
- 所在隠し(住所不定)
まだ、給与所得者であれば、個人で養育費回収できる可能性は十分あります。
しかし、相手が上記のような手を使ってくれば、裁判所への申立要件を満たすことが難しくなり、個人の力だけでは対応できない状況に追い込まれてしまうでしょう。
個人で回収に成功できるタイムリミット!
個人で強制執行による差し押さえで、未払いの養育費を回収するには、タイムリミットが存在します。
そのタイムリミットは、難なく裁判所への下記申立要件を揃えられる間です。
- 債権名義の取得
- 相手の現住所の把握
- 差し押さえる財産情報の把握
下記のような事態になる前に、対応しなければなりません。
- 相手の現住所がわからない
- 相手が勤務先を退職した
- 行方が分からなくなった
先に、この場合の対処方法はお教えしましたが、その方法で必ず解決できるとは限りません。
専門家の助力がないのであれば、ことが面倒になる前に対応するしかないのです。
自分だけの力で強制執行仕様と考えているならば、この点をよく理解して、至急行動に移すようにしてください。
離婚時に養育費の取り決めをしていない人は弁護士が必要に・・・
裁判所へ申し立てに必要な申立要件さえ満たしていれば、弁護士の手を借りなくても、個人で不払いの養育費を回収することはできるでしょう。
これは今話した通りです。
しかも、強制執行による差し押さえは、調停や審判、訴訟があるわけではないので、弁護士がどうしても必要という手続きではありません。
事実、個人で成功させた人も存在します。
個人で挑戦してみるのもアリでしょう。
ですが、申立要件が揃っていない場合は話は別です。
特に離婚時に養育費の取り決めをしていない人は、弁護士の必要性が高くなります。
支払い額や支払い方法が決まっていないでは、どうしようもありません。
まず、相手と養育費の取り決めをしなければならず、これが個人間で不調に終われば、裁判所に養育費請求の調停申し込みが必要です。
しかも、この調停が不調に終われば審判もしくは訴訟となります。
裁判所への申し立て後は有利な条件を引き出す上でも、専門知識や駆け引きに長けた弁護士の助力があった方が満足のいく結果になりやすいのです。
養育費の支払いは親の義務ですから、裁判所が支払いを認めないことはありません。
しかし、結果が不十分に終わる可能性は十分に考えられます。
満足のいく結果を求めるのであれば、弁護士の助力は必要不可欠でしょう。
弁護士に依頼せず事を進めたいのであれば、自分の置かれた状況を考慮して決めるようにしてください。
ーーー
弁護士に強制執行による差し押さえを依頼して養育費を回収する方法と流れ
弁護士に丸投げして、強制執行による差し押さえで養育費を回収する場合も、個人の場合とやらることは基本的に変わりません。
自分でやらなければならないことの大部分を、弁護士が代行してくれるだけです。
弁護士に依頼して、強制執行による差し押さえで不払いの養育費を回収する方法と流れは、下記の記事で詳しく解説しています。
弁護士に依頼したい、個人でやるのとどう違うのかを知りたい人は、この記事に目を通して方法と流れを確認してください。
知っておくべき養育費回収に掛かる弁護士費用の相場
強制執行による差し押さえで、不払いの養育費を回収するなら、断然弁護士に依頼した方おすすめです。
わざわざ時間と労力を割き、必要な知識を身に着ける必要もありません。
ですが、弁護士に頼らず、自分でやろうという人がいるのも事実です。
これは恐らく弁護士費用を気にしてのことでしょう。
事実、弁護士に依頼した場合、決して安価とは言えない弁護士費用が必要になります。
強制執行による差し押さえは、比較的、弁護士費用は安価だと言われていますが、それでも右から左に出てくる金額ではありません。
そこでまず知っておいてもらいたいのが、強制執行による差し押さえ時に掛かる、弁護士費用の相場です。
事前に必要になる弁護士費用を把握しておけば、端から支払えないと考える人も減るでしょうし、依頼するにしてもお金の算段がしやすくなります。
また、今は分割払いに対応している弁護士事務所も多くなっているので、依頼できる可能性を探る判断材料にもできるでしょう。
この弁護士費用に関する情報は、下記の記事で詳しく解説しています。
弁護士費用が支払えない時の対処方法も紹介しているので、しっかり目を通すようにしてください。
差押禁止財産と差し押さえる財産がない場合の対処方法
給与が差し押さえ対象として多く選ばれる理由は、特定しやすく、回収確率が高いからです。
一度に差し押さえられる上限額は決められていますが、相手が給与所得者であれば、給与が最もおすすめな差し押さえ財産と言えるでしょう。
しかし、相手が停職中であるとか、無職であるといった場合、給与を差し押さえ対象にすることはできません。
この場合は、他の財産を差し押さえるしかないでしょう。
その時に知っておいて損がないのが下記2つの情報です。
- 差押可能財産
- 差押禁止財産
この2つを理解しておけば、次に何を差し押さえればいいのかを判断しやすくなります。
しかし、差し押さえる財産をいくら調べても何もないケースも出てきます。
この場合、不払いの養育費回収は諦めるしかないのでしょうか。
いいえ、利用できる人は限られてきますが、他にも養育費を回収する方法はあります。
簡単に諦める必要はありません。
これについては下記の記事で詳しく解説しています。
給与以外に差し押さえる財産を特定しなければならない人は、しっかり目を通して差し押さえ財産を特定する参考にしてください。
元夫の勤務先に給与差し押さえを拒否された時の対処方法
元夫の給与の差し押さえ命令が出たのに、勤務先が差し押さえを拒否して回収できなかった。
こんなケースもあるのです。
裁判所命令を拒否する会社なんて、そうざらにあるわけではありませんが、下記理由で差し押さえを拒否してくるケースも見られます。
- 元夫がすでに退職していた
- 勤務先が元夫をかばっている
ですが拒否されたからといって、簡単に諦める必要はありません。
退職していたなら他の財産を差し押さえればいいだけですし、かばって拒否しているなら、会社を相手取って取立訴訟を起こせばいいだけです。
拒否されたから回収できないわけではありません。
この問題解決の方法については下記の記事で詳しく解説しているので、その方法を緊急時の対処方法として頭に入れておきましょう。
強制執行で将来分の養育費も差し押さえることができる!
強制執行による差し押さえで、未払いの養育費が回収できたとしても、安心することはできません。
これからまた養育費の不払いが始まる可能性があるからです。
給与の差し押さえともなれば、勤務先に養育費を支払っていないことがバレるので、相手に大きなダメージを与えることができます。
それに懲りて、ちゃんと支払おうと考える人は多いでしょう。
しかし、そんな人ばかりとは限りません。
また不払いを決め込む人も少なくないでしょう。
そうなれば、また不払いの養育費を回収する為に、強制執行による差し押さえの申し立てをしなければなりません。
そう何度も何度も時間や労力、そして費用の掛かる手続きをやってられませんよね。
ですが安心してください。
まだ支払い時期を迎えていない、将来分の養育費を差し押さえる方法があるのです。
給与差し押さえなら将来分を合わせて回収できる!
法律では下記の通り、不払いの養育費請求と併せて、支払い期限が到達していない養育費を、一括で差し押さえ請求することが認められています。
「その一部に不履行があるときは、第30条第1項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。」
(民事執行法第151条の2)
つまり、養育費の不払いがある場合には、将来分の養育費を一括で差し押さえるできるということです。
ですが、一括で差し押さえできる財産は、給与に限定されています。
給与差し押さえであれば、将来分も併せて一緒に差し押さえることが可能です。
しかし、注意して欲しいのは回収方法で、差し押さえできるのは支払い期限が到達した養育費だけです。
また差し押さえで回収できるのは、養育費の支払い期限日を迎えた後に支払われた給料になります。
仮に養育費の支払い日が毎月末日、給与支払い日が毎月10日としましょう。
この場合、11月末日に支払期限を迎える養育費は、12月15日に得た給料から回収できますが、11月15日に得た給料から回収することはできません。
養育費の支払い期限月の給与を差し押さえられそうなものですが、そうではないので勘違いしないようにしてください。
これは差し押さえという概念があってのことです。
差し押さえできるのは不払いの債権のみですから、不払いとなった養育費しか差し押さえできません。
よって、養育費の支払い日を過ぎてからの回収とされているのでしょう。
このもう申立方法は前項の「まずは養育費の強制執行申し立てに必要な書類を準備しよう!」で紹介した通り、請求債権目録にその旨を記載するだけです。
給与を差し押さえる際には、併せて申し立てすることをおすすめします。
しかし、この差し押さえが有効なのは、同一の勤務先に勤めている間だけです。
転職した場合は無効になるので、この点は覚えておきましょう。
【要チェック】法改正で養育費回収は成功しやすくなった!
前項の「差し押さえる財産情報を調べる方法」で話した通り、2020年4月に施行された改正民事執行法によって、養育費回収は確実に成功しやすくなりました。
裁判所申し立てに必要な、差し押さえる財産の情報を把握しやすくなったからです。
これについては下記の記事で詳しく解説しています。
これは強制執行による差し押さえで、不払いの養育費回収を検討するいる人には、是非とも知っておいてもらいたい情報です。
どのような改正が実施されて、財産情報がどう把握しやすくなったのかを確認してください。
養育費の強制執行の阻害要因「時効」を意識しよう!
強制執行で差し押さえする際、一番意識して欲しいのは不払いの養育費の時効です。
養育費にも、法律で時効が認められています。
よって、時効期間を経過した不払いの養育費は、法的に支払う必要はありません。
養育費に時効があるなんて思いもしなかったという人は少なくないでしょう。
養育費の時効期間は原則5年、ある条件を満たした場合のみ10年です。
長期間請求しないまま放ったらかしにしている人は、不払いの養育費が時効を迎えている可能性もあるでしょう。
しかし、この時効に関する知識を持ち合わせておけば、時効を回避することもできますし、時効を迎えていたとしても回収できる可能性を模索可能です。
この不払いの時効に関しては、下記の記事で詳しく解説しています。
これも強制執行による差し押さえで、不払いの養育費回収を検討するいる人には是非とも知っておいてもらいたい情報です。
しっかりと目を通して、時効に関する知識を頭に入れるようにしてください。
まとめ
今回は養育費を強制執行で回収する方法と流れを徹底解説しました。
弁護士に頼らず、自分で手続したいという人の目線に立って解説したので、自分だけで実践できるかの目処が付いた人も多のではないでしょうか。
強制執行による差し押さえで、不払いの養育費を回収するなら、弁護士の助力を仰いだ方が得策です。
しかし、自分だけで成功できないわけではありません。
今回は成功を阻害するあらゆるケースを想定して、その対処方法も紹介しました。
不払いの養育費回収を考えている人は、今回の内容を参考にして、自分にとって一番いい方法で回収に取り組むようにしてください。
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