協議離婚では、養育費の取り決めは当事者同士の話し合いで進められます。
その話し合いで争点となりやすいのが、養育費の支払い金額です。
あなたが請求する金額と、相手が支払うと言っている金額に差異があれば、話し合いは難航することになるでしょう。
また、中には夫から、下記のような無理難題を強いられるケースもあるようです。
「養育費の内訳を出せ!」
「毎月、養育費の利用明細を出せ!」
これら条件を呑まないなら、養育費を支払わないと言われる可能性もあるでしょう。
しかし、こんな要求をされても、呑む必要はなありません。
内訳や利用明細の提出義務はないからです。
そこで今回はこんな要求をされた時、あなたがはっきりと「NO!」と言えるように、養育費の内訳や利用明細の提出義務の有無について解説します。
相手が一歩も引き去らず、らちが明かない時の対処方法も併せて紹介するので、最後までしっかりと目を通すようにしてください。
養育費の内訳
本題に入る前に、まず知っておいてもらいたいのが養育費の内訳についてです。
養育費にどんなものが含まれているのか、その詳細を理解した上で、養育費の取り決め交渉に臨む人はほとんどいません。
むしろ、養育費の内訳など気にせず、金額ばかりに気を取られている人が大半でしょう。
しかし、養育費の取り決め交渉には、養育費にどんな費用が含まれているのかを、しっかりと理解した上で臨むことをおすすめします。
養育費の取り決めで参考にされる養育費相場には、必要最低限の費用しか含まれていないからです。
あなたが含まれていて当然と考える費用が、含まれていない可能性もあるでしょう。
むしろ、高いと言った方がいいかもしれません。
養育費の取り決め交渉では不足分を請求するようにしよう!
養育費さえ受け取れれば、子供を満足のいく状態で養育できる。
あなたがこんな風に考えているなら、大間違いです。
きっと、近い将来、受け取っている養育費が十分でないことに気が付くでしょう。
子供を育てていく上で、一番お金がかかるのが教育費です。
はっきり言っておきますが、養育費に含まれている教育費は、公立の小・中・高校に通うのに必要な学費だけです。
そのため、子供に下記教育を受けさせる際は、受け取っている養育費だけでは絶対にまかないきれません。
- 私立の幼稚園や学校に進学させる
- 進学塾に通わせる
- 家庭教師をつける
- 習い事に通わせる
こういった教育を受けさせたいのであれば、特別費用として養育費への加算を求めなければならないのです。
他にも大学進学時の学費や、その際の養育費支払い期間延長も話し合っておく必要があるでしょう。
このように養育費の内訳を知らずに取り決めをすれば、離婚後に多くの問題に直面することになります。
筆者が養育費にどんな費用が含まれているかを、しっかり理解した上で交渉に臨むことを、おすすめする理由も分かってもらえたでしょう。
養育費の内訳や特別費用の請求については、下記の記事で詳しく解説しています。
あなたが子供に十分満足いく教育を受けさせたいと考えるなら、絶対に知っておくべき情報です。
しっかりとこの記事に目を通した上で、養育費の取り決め交渉に臨むようにしてください。
養育費金額の取り決め方法
冒頭で言ったように、養育費の取り決めで一番の焦点となるのが、養育費の支払い金額です。
養育費は当事者同士で決めることですから、双方が合意するのであれば支払い額はいくらでも問題ありません。
しかし、妻はできるだけ多く、夫はできるだけ少なくと望むのが一般的ですから、両者が互いの要求ばかりしていては話し合いはまとまらないでしょう。
そこで、養育費の取り決めで参考にされているのが、養育費相場です。
基本的には、この養育費相場を基に、支払い額を決定するのが一般的とされています。
あなたも、この確認方法は知っておくべきでしょう。
養育費相場の確認方法
養育費相場の確認方法には、下記の2つが挙げられます。
- 養育費算定表の相場データ
- 標準計算式を用いた計算
最もおすすめなのは養育費算定表です。
計算いらずで、目視確認できるので、簡単にあなたが請求できる養育費相場を確認できるでしょう。
しかし、条件によっては、この養育費算定表を利用できない人もいます。
この場合は、標準計算式を用いて、自分で計算するしかありません。
それではどんな人がどちらの確認方法に向いているのか、そしてどうやって確認すればいいのか、その方法を紹介していくことにしましょう。
養育費算定表の見方
養育費算定表は裁判所がHPで公表している、養育費の相場データです。
裁判所が養育費を決定する際にも、参考データとして用いているので、最も実効性と信頼性のある相場データと言えるでしょう。
下記3つのデータが分かれば、誰でも簡単に相場データを確認できるのも注目ポイントです。
- 夫婦それぞれの年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
しかし、この養育費算定表を利用できるのは、下記条件に該当する夫婦だけです。
- 離婚後、すべての子供を片親が引き取る
- 子供の人数が3人以下
これに該当しない場合は、次に紹介する標準計算式を用いた計算で確認するしかありません。
養育費算定表の概要と確認方法は、下記記事で分かりやすく紹介しています。
養育費算定表を利用できる人は、この記事で確認方法を学んで、実際に請求できる養育費相場を確認してみましょう。
標準計算式を用いた計算方法
養育費算定表を利用できない、下記条件に該当する場合は標準計算式を用いた計算で、自ら養育費相場を計算するしかありません。
- 夫婦それぞれがお互いに子供を引き取る
- 子供が4人以上
この標準計算式は、養育費算定表の相場データを算出する際にも用いられているものです。
そのため、計算さえ間違わなければ、正しい養育費相場を算出することができます。
計算するのがわずらわしいと感じる人もいるでしょう。
しかし、これ以外に養育費相場を自分で確認する方法はありません。
有料で弁護士等に依頼する方法もありますが、まずは自分で計算してみましょう。
標準計算式を用いた計算方法は、下記の記事で順追って分かりやすく紹介しています。
たったの3ステップで計算できるので、記事の指示通り計算してみてください。
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養育費の取り決め時に内訳の提出義務はない!
冒頭でも言ったように、養育費の内訳を提出する義務はありません。
また相手が「内訳を出さないなら、養育費を支払わない。」と言っても、通る話ではないのです。
そもそも、養育費の支払いは親に課された法的義務ですから、どんなことがあっても支払義務から逃れることはできません。
相手の言っていることは、何の法的根拠も持たない、支離滅裂な話にしか過ぎません。
相手が内訳提出を求めてきた時は、言っていることが間違っていることを指摘してください。
相手が話を聞かない時の対処方法
相手に内訳提出の義務がないことを説明しても、それでも納得しないケースもあるでしょう。
この場合は、早急に裁判所へ養育費請求調停を申し立てるようにしてください。
相手が下記理由で、話を引き延ばしているだけの可能性も考えられます。
- あなたと離婚したくない
- 養育費を支払いたくない
決着のつかない話し合いを続けても無駄なだけです。
離婚や養育日の支払いが送れるだけで、あなたに何のメリットもありません。
早急に裁判所に裁決を下してもらうようにしてください。
養育費の支払合いは親に課せられた法的義務です。
そのため裁判所が支払いを認めないことはありませんし、適正な養育費が設定されることになるでしょう。
また、養育費の支払いスタート月は、裁判所に養育費請求調停を申し立てた月です。
申し立てが遅れれば遅れるほど、支払い開始日は後回しになり、総請求額も減ってしまいます。
そうならないためにも、早急な対応を心がけましょう。
裁判所への養育費請求調停の申立方法と申し立て後の流れは、下記の記事で詳しく解説しています。
話しがつかない時に備えて、しっかりとこの記事で情報収集しておくことをおすすめします。
養育費の内訳提出が必要なケース
仮にあなたが子供が成人するまでの必要費用を事細かく計算して、それを相手に請求したいのであれば、内訳書の提出は必要になるでしょう。
請求額が適正なものであることを、証明する必要があるからです。
養育費の支払い額に法的な決まりはありません。
そのため、あなたが必要と考える金額を請求し、相手がそれに同意さえすれば、養育費の支払い額はいくらでも問題ないのです。
しかし、相手がその請求金額に同意するとは限りません。
相手が高すぎると感じる金額であれば、なおのことでしょう。
その時に請求金額が適正であることを証明するのに、あなたが算出した内訳が重要になってくるのです。
先に話した教育費を特別費用として請求する際は、内訳の提出は必要になってくるでしょう
ですが、それ以外の場合は、相手が内訳を出せと言っても、あなたに提出義務はありません。
突っぱねてもらって結構です。
請求金額が養育費相場に基づいたものであるなら、なおさらです。
内訳の提出義務はないと言ってやりましょう。
養育費の受け取りに利用明細の提出義務はない!
「毎月の利用明細を出さないと養育費の取り決めには応じない!」
「利用明細を提出しないなら、養育費の支払いをストップする!」
こういった要求をする男性も少なからずいるようです。
確かに自分が支払っている養育費が、ちゃんと子供の養育に使われているのか心配する気持ちは理解できます。
それを理解した上で、相手の要求に応じる女性もいることでしょう。
しかしそうでないなら、これも先ほどの内訳と同じように、まったく提出義務はありません。
提出義務はないと突っぱねてもらって結構です。
相手が話を聞かない時の対処方法
あなたが要求を認めないことを理由に、相手が養育費の取り決めに応じない。
こんな場合は、内訳提出を求められた時と同じく、早急に裁判所へ養育費請求調停を申し立ててください。
そうすることが最善策である理由は、先ほど話した通りです。
絶対に無駄に時間を浪費することだけは避けるようにしましょう。
養育費の取り決め後に利用明細の提出を求められた場合
養育費の取り決め時には、利用明細の提出については何ら要求がなかった。
しかし、支払いが始まってから、突如として提出を求められるケースも考えられます。
この場合は大抵、「利用明細を提出しないなら、養育費の支払いをストップする!」というような脅し文句が添えられるでしょう。
ですが、利用明細の提出に法的義務はありません。
そのため、利用明細が提出されなかったからといって、元夫が養育費の支払いをストップすることはできないのです。
まずは、これを相手に説明してください。
それでも支払いをストップし、支払い再開が望めそうにないなら、至急、裁判所に強制執行による差し押さえを申し立てるようにしましょう。
しかし、この時に重要になるのが、あなたが債権名義を取得しているかどうかです。
債権名義は差し押さえを申し立てる権利があることを、公文書で証明した書類になります。
そのため、あなたが債権名義を取得していなければ、裁判所へ差し押さえを申し立てることはできません。
いくつもの手続きをして、債権名義を取得することになるでしょう。
養育費の取り決め時には債権名義を取得しておこう!
内訳を出せ、利用明細を出せと言われ、話し合いが決着しない時は、早急に裁判所へ養育費請求調停を申し立てるのが最善策です。
このように、あなたが養育費の取り決めを裁判所を介して決めたならば、下記いずれかの債権名義が取得できています。
- 調停調書
- 審判調書
しかし、裁判所を介さずに、当事者同士で取り決めた場合は、注意が必要です。
その協議内容を「執行認諾文言付き公正証書」として作成するしか、債権名義を取得する方法はありません。
よって、協議離婚者が離婚後に「明細書を出さないと養育費をストップする!」と無理難題を言われた時、直ぐに差し押さえの申し立てをするには、「執行認諾文言付き公正証書」を作成しておく必要があるのです。
公正証書の作成方法と注意点は、下記の記事で詳しく解説しています。
現状、債権名義を取得していない人に向け、最短で債権名義を取得する方法も併せて紹介しています。
しっかりと目を通して、あなたに必要な情報を入手してください。
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まとめ
今回は養育費の内訳や利用明細の提出義務の有無について解説しました。
あなたが養育費の内訳や利用明細の提出を求められても、それに対応する義務はまったくありません。
いやなら「NO!」と断ってもらって結構です。
それを理由に相手が養育費取り決めに応じなかったり、養育費の支払いをストップするようであれば、今回紹介した適正な方法で対応すればいいでしょう。
利用明細ならばまだしも、内訳の提出を求めてくる場合は、相手が離婚や養育費の支払いを先延ばししたいだけの可能性もあります。
養育費の取り決めをしないことには、養育費が支払われることはありません。
後回しにするほど養育費支払いは遅れ、受け取れる養育費総額も少なくなってしまうのです。
当然、あなたの離婚後の生活にも支障が出るでしょう。
そのようなことがないように、話し合いが進まないなら、至急、裁判所で申し立て手続きに取り掛かるようにしてください。
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