養育費相場の確認方法と言えば、裁判所が公表している「養育費算定表」が一般的です。
しかし、養育費算定表よりもさらに手軽で、迅速に養育費相場の確認ができる養育費計算ツールもありますし、養育費算定表では確認できない条件の人もいます。
決して、なにがなんでも養育費算定表というわけではないのです。
そこで今回は養育費相場の基本的な計算方法と、養育費算定表よりもさらに使い勝手のいい、養育費計算ツールの使い方を紹介します。
養育費算定表で養育費確認ができる人にとっても、できない人にとっても、両者に有益な情報です。
最後まで目を通して、新しい養育費相場の算出方法をマスターしてください。
計算式を使った養育費の基本的な算出方法
通常、養育費相場を確認する際は、養育費算定表の算定データを使うのが一般的です。
この養育費算定表の養育費相場データは、裁判所が様々な統計データを元に策定したもので、協議離婚や裁判所の調停・審判時に参考データとして運用されています。
現在のところ、この養育費算定表が最も信頼性と実効性の高い養育費相場データであると断言してもいいでしょう。
ですが、その養育費算定表の利用には下記条件が求められます。
- 子供が3人以下
- 夫婦どちらか一方が、全ての子供を引き取る
つまり、下記条件に該当する人は。養育算定表を使った養育費相場の確認はできないのです。
- 子供が4人以上いる場合
- 夫婦それぞれが子供を引き取る場合
どちらのケースも、養育費算定表の利用条件を逸脱しているのは明らかですよね。
この場合は、養育費算定表の養育費算出時に用いられた標準計算式を使って、自ら計算するしかありません。
そこで今回はその計算方法を紹介します。
しっかりと目を通して、よく理解するようにしてください。
養育費の基本的な考え方と計算方法を理解しよう!
今回紹介する標準計算方式に基づく計算方法は、いわば養育費相場を算出する際の基本となる計算です。
そのため、これさえマスターしておけば、養育費算定表では確認不能なケースでも、養育費相場を難なく算出することができます。
覚えておいて損はないでしょう。
計算方法はたったの3ステップです。
- 夫婦のそれぞれの基礎収入を算出
- 養育費を受け取る子供の生活費を算出する
- 子供の生活費を夫婦で按分して養育費相場を算出
それでは実際に下記条件で養育費相場がいくらになるのかを、1つずつ手順を追って計算していきます。
- 夫の年収(給与所得):600万円
- 妻の年収(専業主婦):無収入
- 子供の人数:2人
- 子供の年齢:共に14歳以下
- 子供:14歳以下の子供2人を妻が監護
分かりやすく解説するので、計算方法をしっかりマスターしてください。
ステップ1:夫婦のそれぞれの基礎収入を算出
まず最初に計算するのが、夫婦それぞれの基礎収入です。
基礎収入は年収(総収入)から下記費用を控除した金額で、養育費を算出する際の基礎金額になります。
- 公租公課(各種税金や社会保険料など)
- 職業費(仕事のために必要になる経費)
- 特別経費(住居費など、家計の中で固定費に当たる費用)
基本的に基礎収入は下記の範囲内に納まり、この基礎収入が高ければ高いほど、もらえる養育費は多くなります。
- 給与所得者:年収(総収入)の38%~54%の範囲内
- 自営業者:年収(総収入)の48%~61%の範囲内
この基礎年収は裁判官が養育費の平均的数値を基に作成した、下記表の基礎収入割合を、下記計算式に当てはめることで求められます。
(給与所得者の場合)
給与年収 |
基礎収入割合 |
0円~75万円以下 |
54% |
75万円超え~100万円以下 |
50% |
100万円超え~125万円以下 |
46% |
125万円超え~175万円以下 |
44% |
175万円超え~275万円以下 |
43% |
275万円超え~525万円以下 |
42% |
525万円超え~725万円以下 |
41% |
725万円超え~1,325万円以下 |
40% |
1,325万円超え~1,475万円以下 |
39% |
1,475万円超え~2,000万円以下 |
38% |
(自営業者の場合)
事業年収 |
基礎収入割合 |
0円~66万円以下 |
61% |
66万円超え82万円以下 |
60% |
82万円超え~98万円以下 |
59% |
98万円超え~256万円以下 |
58% |
256万円超え~349万円以下 |
57% |
349万円超え~392万円以下 |
56% |
392万円超え~496万円以下 |
55% |
496万円超え~563万円以下 |
54% |
563万円超え~784万円以下 |
53% |
784万円超え~942万円以下 |
52% |
942万円超え~1,046万円以下 |
51% |
1,046万円超え~1,179万円以下 |
50% |
1,179万円超え~1,482万円以下 |
49% |
1,482万円超え~1,567万円以下 |
48% |
よって、夫婦それぞれの基礎収入割合は下記の通りです。
- 夫の基礎収入割合 ⇒ 41%
- 妻の基礎収入割合 ⇒ 0%
これを先ほどの計算式に当てはめると、夫婦それぞれの基礎収入は下記の様になります。
- 夫の基礎収入:600万円 × 41% = 246万円
- 妻の基礎収入:0円
基礎収入を出すため基礎収入割合の確認が必要ですが、計算自体は簡単なものです。
難なく回答を求めることができるでしょう。
また基礎収入を算出する際の年収ですが、基本的には昨年度年収を使って計算します。
離婚時の年収が減額となることが確実な場合には、変更が認められますが、その際には離婚する当事者間の話し合いが必要です。
ただし、相手から減額を理由に年収変更を求められた際は、安易に受け入れないようにしてください。
養育費引き下げのための口実である可能性もあります。
相手から申し出があった場合は弁護士等に相談し、自己判断だけは避けるようにしましょう。
ステップ2:養育費を受け取る子供の生活費を算出する
子供の生活費は下記の計算式で算出できます。
義務者の基礎収入は先の計算で算出済みです。
よって、次に必要になるのは親子それぞれの生活指数ですが、一般的な大人の生活指数を100とした場合、子供の生活指数は下記の通りです。
- 0歳から14歳まで:62
- 15歳から19歳まで:85
今回は2人とも14歳以下ですから、子供の生活指数はそれぞれ62です。
これで子供の生活費の計算に必要な数値が揃いました。
早速これらを計算式に当てはめて、計算してみることにしましょう。
246万円 ×(62+62)÷(100+62+62)= 約136万円
⇒子供の生活指数:約136万円
この計算で注意して欲しいのは「養育費を受け取る子供の生活指数」です。
子供が1人の場合は気にする必要はありませんが、子供が複数おり、夫婦それぞれがその子供を引き取る場合は注意してください。
養育費を受け取る子供の人数を誤って、生活指数値を間違ってしまう可能性があります。
よく見られるミスなので、くれぐれも気を付けるようにしてください。
ステップ3:子供の生活費を夫婦で按分して養育費相場を算出
それでは、最後の計算に取り掛かりましょう。
最後は、義務者が支払う養育費の算出です。
養育費相場は下記の計算式で算出できます。
ここまで算出した各条件を当てはめると、養育費相場は下記の通りです。
この金額を12で割ってやれば、養育費月額が求められます。
この計算式を見てもらえば分かりますが、そもそも養育費とは、子供の生活費を夫婦それぞれが按分し、義務者となる親が支払う按分額を指します。
養育費と言えば離れて暮らす父親が支払うものというイメージがありますが、これは大きな勘違いです。
今回は妻の年収が無収入のため、按分比率は夫が100%となっていますが、妻に年収がある場合は、夫の負担額はその年収分減額されます。
このように、どうしてこの計算式で養育費相場が算出できるのかを理解しておけば、計算式や計算手順を理解しやすいでしょう。
計算式が確立された理由も併せて、理解しておくようにしてください。
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おすすめな無料の養育費計算機ツールと使い方
今回は養育費相場の基本的な計算方法を紹介しましたが、養育費算定表で確認できる人は面倒な計算をする必要はありません。
養育費算定表で確認する方が断然おすすめです。
しかし、今はこの養育費算定表よりも、さらに簡単に養育費相場を確認できる方法があります。
養育費計算機ツールが、まさにその代表格です。
養育費計算機ツールは養育費算定表を基に作成された、養育費相場のシミュレーションツールで、弁護士事務所をはじめとして多くのところから提供されています。
下記3つの情報を入力すれば養育費相場が自動計算されるので、確認作業が必要な養育費算定表よりも、さらに手間なく短時間で養育費相場の確認が可能です。
- 夫婦それぞれの年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
それでは実際に、どれくらい簡単で迅速に養育費相場が確認できるのかを見てみることにしましょう。
実際に養育費計算機ツールを使ってみよう!
今回紹介するのは、下記のベリーベスト法律事務所が提供している「養育費計算ツール」です。
シミュレーションに必要なのは下記3つの情報だけです。
- 夫婦それぞれの年収と職業
- 子供の人数
- 子供の年齢
養育費算定表を基に作成されているだけあって、確認に必要な情報は養育費算定表を使う時と全く同じです。
それでは、早速この養育費計算ツールを使って、実際に養育費相場をシミュレーションしてみることにしましょう。
まずは、下記条件でシミュレーションしてみます。
- 夫の年収:500万円
- 妻の年収:無収入
- 子供の人数:1人
- 子供の年齢:14歳
まずは「Q1.子どもの人数と子どもの年齢」を入力します。
続いて「Q2.年収とご職業」を入力します。
後は「養育費を計算する」をクリックするだけです。
下記の様に養育費は「約6万円~8万円」と回答が出ました。
試しに、同じ条件で養育費算定表で確認してみると、下記の通り同じ回答となっています。
入力時間を含めて数十秒で養育費相場のシミュレーション結果が確認ができました。
確実性が確認できれば、養育費算定表よりも断然使い勝手は上です。
そこで、さらにその確実性を計るため、下記条件で子供の人数と年齢が異なる場合、シミュレーション結果がどうなるかを、養育費算定表で確認した数値と比較してみまることにします。
- 夫の年収:500万円
- 妻の年収:無収入
それでは結果を見てみることにしましょう。
子供の人数・子供の年齢 |
養育費計算ツール |
養育費算定表 |
子供1人・年齢14歳以下 |
約6万円~約8万円 |
6万円~8万円 |
子供1人・年齢15歳以上 |
約8万円~約10万円 |
8万円~10万円 |
子供2人・共に年齢14歳以下 |
約8万円~約10万円 |
8万円~10万円 |
子供2人・第1子年齢15歳以上/第2子年齢14歳以下 |
約10万円~約12万円 |
10万円~12万円 |
子供2人・共に年齢15歳以上 |
約10万円~約12万円 |
10万円~12万円 |
子供3人・全員年齢14歳以下 |
約10万円~約12万円 |
10万円~12万円 |
子供3人・第1子年齢15歳以上/第2子、3子年齢14歳以下 |
約10万円~約12万円 |
10万円~12万円 |
供3人・第1子、第2子年齢15歳以上/第3子年齢14歳以下 |
約12万円~約14万円 |
12万円~14万円 |
子供3人・全員年齢15歳以上 |
約12万円~約14万円 |
12万円~14万円 |
シミュレーション数値は養育費算定表と全く同じになりました。
こうして信頼できる数値が求められると分かった以上、養育費算定表よりも養育費計算ツールを使った方が断然おすすめですね。
今回の養育費計算ツールは下記のベリーベスト法律事務所HPで無料公開されています。
養育費相場を確認したい人は、試しにシミュレーションしてみるといいでしょう。
状況別で異なる養育費相場を徹底検証!
養育費は下記3つの条件によって決定されます。
- 夫婦それぞれの年収
- 子供の人数
- 子供の年齢
そのため、養育費は個々の条件によって異なります。
夫の年収が同じでも、他の条件が異なれば、受け取れる養育費は違ってくるというわけです。
下記の記事では、これら3つの条件が異なる際、受け取れる養育費はどうなるのかを徹底検証しています。
記事に目を通してもらえれば、きっとあなたが求めている養育費相場を確認することができるでしょう。
また、養育費のよくある疑問にも完全回答しているので、養育費に関する悩みがある人にも最適な記事です。
ぜひ目を通して、必要な情報をゲットしてください。
お互いの再婚が養育費へ与える影響
離婚した夫婦が再婚するのは、決して珍しいことではありません。
これは離婚した2人だけでなく、子供にとってもいい環境を提供できる絶好のチャンスと言えるでしょう。
しかし、覚悟しておいて欲しいのは、お互いの再婚は養育費の減額や免除の機会を確実に高めてしまう点です。
どちらが再婚しようとも、その可能性は否めません。
特に元夫の再婚は高い確率で、養育費の減額対象になってしまいます。
これは依然、独り身のままの女性にとっては、大きな痛手となってくるでしょう。
再婚による養育費の減額や免除の可能性については、下記の記事で詳しく解説しています。
離婚後の再婚は、お互い高い確率であると考えておくべきです。
その時に慌てないように、再婚による養育費への影響をよく理解し、事前に対応策を講じることをおすすめします。
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まとめ
今回は養育費の基本的な計算方法と、養育費算定表の計算機ツールを紹介しました。
下記条件に該当しない人は、わざわざ養育費の計算方法を身に着ける必要はありません。
- 子供が3人以下
- 夫婦どちらか一方が、全ての子供を引き取る
今回紹介した養育費計算ツールを使って、養育費相場を確認すればいいでしょう。
しかし、下記条件に該当する人は、養育費相場の計算方法をマスターする必要があります。
- 子供が4人以上いる場合
- 夫婦それぞれが子供を引き取る場合
養育費の交渉時には、あなたがもらえる養育費相場の把握が必要不可欠です。
今回の記事を参考にして、自分に合った確認方法で養育費相場をしっかりと把握するようにしてください。
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