養育費の不払いに頭を悩ましている人ならば、一度は考えたことがあるでしょう。
国や地方自治体が何とか支援してくれないものかと。
しかし、残念ながら日本においては、行政は不払いの養育費回収に関与していません。
よって、今のところ不払いの養育費回収の支援を、行政に求めることは基本的に不可能です。
ですが、養育費の不払いが社会的問題となった今、国がやらないなら私たち自治体がと、支援制度の整備に乗り出す地方自治体が出てきています。
また、国もこの地方自治体の支援制度に感化されたのか、不払いの養育費回収のための法整備に乗り出したとの報告もあります。
そこで今回は国や地方自治体が不払いの養育費回収にどう対応しているのかを、最新情報を交えて紹介していきます。
不払いの養育費回収で知っておくべき法律や相談先と回収方法も紹介するので、不払いの養育費問題に悩んでいる人はしっかりと目を通して、回収の参考にしてください。
不払いの養育費を国が立て替える制度の有無
冒頭でも言いましたが、今のところ国は不払いの養育費回収に直接関与していません。
養育費の不払い問題の解決支援を、国に頼るのは不可能です。
養育費の不払いが社会問題となっている今、未だ国が何の対応もしていないのは、怠慢と言われても仕方がないでしょう。
養育費の立て替え払いや強制徴収、罰則化といった制度を実施している欧米と比べ、大きく出遅れているのは本当に残念なところです。
この養育費の不払い問題は、ここ数年で深刻化したものではありません。
養育費不払いの深刻さは約30年前から把握されており、その実態も公表されていました。
しかも、2000年代に入るまで、福祉政策に「養育費の確保」が入ってもなかったのです。
まるで「不払いの養育費は自己責任で回収してください。」と言ってるのと変わりませんよね
これでは国の怠慢だと言われても、仕方ないことです。
今後は国の動向に期待できるかも!?
しかし、今後の対応にまったく期待ができないわけではありません。
後述する地方自治体の立て替え制度にならって、国も同様の立て替え払いや強制徴収の制度化に向けて調整を始めたからです。
2020年度内にその方針を取りまとめる予定だと新聞報告がありました。
これら制度を実施するには法改正が必要になるため、この話し合いがまとまったとしても実際実行に移されるのには時間が掛かるでしょう。
ですが、今まで難の動向も示さなかった国が、重い腰を上げたのは間違いなく朗報です。
これら制度が本当に施行されれば、養育費の不払いに頭を悩ます多くの女性は、大きな味方を得ることになります。
そこで、今後そのような制度が実現されるのかを予測するためにも、既に不払いの養育費回収に取り組んでいる欧米の制度を見てみることにしましょう。
現在行われている厚生労働省と総務省による検討会でも、この欧米で実施されている制度が、ガイドラインとして用いられているとのことです。
同様の制度が導入される可能性は十分にあるので、しっかりと目を通すようにしてください。
欧米で施行されている不払いの養育費を回収する為の制度
主要先進国と呼ばれる大半の国では、不払いの養育費問題回収に行政が関与しています。
これは、この各国の行政が養育費の不払いを、子供の生活を阻害する重大な国の問題だと認識しているからです。
養育費の不払いはあくまで家族内の問題だと、強く認識している日本とは全く異なります。
日本の行政が関わろうとしなかったのは、認識のずれが理由の1つでしょう。
欧米で実際に実施されている、不払いの養育費を回収する為の制度は、大きく分けると下記の2つに分類できます。
- 不払い者からの徴収強化
- 立て替え払い
不払い者からの徴収強化を制度介している代表国はアメリカ、立て替え払いを制度化している代表国がスウェーデンです。
それではこのアメリカとスウェーデンが実施している、制度の特徴と効果を見てみることにしましょう。
アメリカが実施している徴収制度
アメリカでは1960年代半ばから離婚が急増し、公的扶助を受給する母子世帯が増えたことで財政負担が問題になっていました。
これを解消するため、実父からの養育費支払に関心が高まり、その回収方法が模索されるようになったのです。
母子世帯の経済的救済も目的ではありましたが、実際に制度化実現の弾みとなったのは、財政難の解決が目的だったというわけです。
1975年に養育費徴収を実施するために、連邦政府に養育費庁、そして各州に養育費事務所が設置されました。
これによって全州で下記の公的制度が実施され、応じない場合は制裁が加えられるようになったのです。
- 養育費の支払い義務者の捜索
- 養育費の給与天引き
- 養育費を税金の還付金で相殺
強制徴収という強力な制度ですが、アメリカが実施しているこの制度には他にも特徴があります。
不払い者には下記特徴が共通していることから、養育費政策の一環として父親向けの就労支援を同時展開し、養育費の支払い原資確保の対策が施されているのです。
- 低学歴
- 職業技能を持っていない
また、親子交流がある方が養育費の支払い率が高いことから、公的介入による面会交流の支援も進められています。
親としての責任を持たせることによって、養育費の支払い率を向上させようというわけです。
強制徴収するだけでなく、養育費の不払いを生み出す抜本的問題を解決するための対策が講じている点が大きな特徴と言えるでしょう。
しかし、これだけの政策を実施しても、実際に徴収できているのは全体の60%にしか過ぎません。
いかに養育費の不払い金を回収することが困難かがうかがえますね。
スウェーデンが実施している立て替え払い制度
スウェーデンが実施している立て替え払い制度は、養育費が支払われない場合、社会保険事務所に申請することで立て替え払い金が支給されます。
支給期間は原則18歳で、学生の場合は20歳まで延長可能です。
また、スウェーデンが実施している立て替え払い制度の特徴は、養育費の受け取りは子供の権利だという見解の元、実施されている点でしょう。
そのためアメリカの様な父親への支援体制は実施されていません。
養育費が支払われない場合は国が肩代わりしますが、その代金は支払い義務者である親からしっかり徴収しますというスタンスです。
支払い能力に応じた減額・免除措置は設けられていますが、支払いに応じない場合は強制徴収によりほぼ100%の徴収実績を実現しています。
養育費を受け取れない世帯を100%支援し、その代金を支払義務者からほぼ100%回収しているのですから、称賛に値する実績と言えるでしょう。
同様の成果が期待できるのであれば、アメリカの徴収制度よりも、スウェーデンの立て替え払い制度の方が現実的かもしれません。
日本においてどちらの制度が導入されるのかは分かりませんが、養育費の不払いに悩む人の立場で言えば、100%の保証があるスウェーデンの立て替え払い制度の方がウェルカムでしょう。
地方自治体が独自に取り組んでいる不払い養育費の立て替え払い制度
冒頭でも話した通り、現在いくつもの地方自治体において、不払いの養育費に対する立て替え払い制度が実施されています。
この先駆者となったのが兵庫県明石市です。
兵庫県明石市は以前から、不払いの養育費回収に対する取り組みに熱心で、離婚届と共に下記の配布などを実施していました。
- 養育費の取り決め合意書
- 養育費の取り決めの手引書
そして、2018年10月に「明石市養育費立替パイロット事業」として、不払いの養育費問題解消のため、立て替え払い制度に着手しました。
今ではこれが全国の地方自治体に波及し、この立て替え制度を導入する自治体が年々増加しています。
自治体によって制度内容や利用条件等に違いは見られますが、利用できる自治体にお住まいの場合は、是非とも利用してもらいたい制度です。
それでは、立て替え制度とはどんな制度なのかを、兵庫県明石市を例に挙げて、その概要を見ていくことにしましょう。
立て替え制度を利用する際の流れ
この立て替え払い制度は、民間の保証会社が事業として展開している養育費保証サービスが土台となっています。
この養育費保証サービス利用時の流れは下記の通りです。
- 申込者と保証会社が養育費保証契約を締結
- 保証会社が養育費の不払い分を立て替え
- 保証会社が養育費の支払い義務者に立て替え分を督促
- 保証会社が養育費の支払い義務者に立て替え分を回収
保証会社はこのサービス利用で得られる保証料を収益として、事業を展開しているというわけです。
兵庫県明石市が実施している立て替え払い制度は、この保証会社と提携して不払いの養育費を立て替えるという仕組みになっていますす。
よって、自治体の立て替え払い制度の仕組みは、下記流れを想像してもらえば分かりやすいでしょう。
- 自治体が保証会社へ業務委託
- 養育費不払いの世帯が自治体に相談
- 利用の申し込み
- 申込者が保証会社と養育費保証契約を締結
- 自治体が保証会社へ保証料を支払う
- 保証会社が申込者へ養育費の不払い分を立て替え
- 保証会社が養育費の支払い義務者に立て替え分を督促
- 保証会社が養育費の支払い義務者に立て替え分を回収
自治体が実施している立て替え払い制度と、民間の保証会社の養育費保証サービスで異なるのは、保証料の有無です。
自治体の立て替え払い制度は、保証会社へ支払う保証料を自治体が援助してくれます。
通常、5万円ほどの保証料が必要になるので、これは低所得者の多い母子世帯にとっては大きなメリットになるでしょう。
兵庫県明石市の立て替え払い制度概要
それでは自治体の立て替え払い制度の仕組みを理解してもらったところで、次は兵庫県明石市の立て替え制度の概要を見ていきます。
実際の導入事例となるので、かなり参考になるでしょう。
「明石市養育費立替パイロット事業」の概要は下記の通りです。
保証期間 |
契約締結日から1年間 |
(*2年目以降は保証料の時効負担により継続可能) |
|
年間保証料 |
初回:養育費1ヶ月分 |
2年目以降:養育費0.5ヶ月分 |
|
保証内容 |
不払いとなっている月額養育費の最大12ヶ月分 |
保証会社 |
株式会社イントラスト(総合保証会社・一部上場) |
予算措置 |
90万円(平成30年度当初予算) |
立て替え払い制度の概要は、先に話した通り自治体によって異なります。
そして、自治体の立て替え制度の利用を検討する際、注意して欲しいのは申込要件です。
これも自治体や業務委託している保証会社によって異なりますが、裁判所に強制執行の申し立てができる「債務名義」の取得は必ず求められるでしょう。
また、利用者に制限がある点にも注意が必要です。
自治体の立て替え払い制度では、自治体が保証料の援助または免除を実施しているため、その予算が必要になります。
兵庫県明石市でならば、90万円が上限です。
よって、どうしても利用者に上限を設けざるを得ません。
最終的には早い者勝ちとなってしまうでしょう。
その際、後手に回らないようにするためにも、申込要件ではねられてしまうことだけは避けなければなりません。
債権名義の取得方法は、下記記事の中の「債権名義の取得方法」で分かりやすく紹介しています。
最も短期間で簡単に取得できる方法を紹介しているので、債権名義を取得していない人はしっかり目を通して、至急手続きにかかるようにしてください。
養育費の不払いを取り締まる法律の有無
残念ですが、今のところ養育費の不払いを取り締まる法律はありません。
養育費を支払わなくても、罪に問われることはないのです。
民法では養育費の支払いが親の義務であると定めているのに、不払いを取り締まる法整備がされていないのには矛盾を感じます。
先に話した国の決定によっては、今後取り締まる法律が制定される可能性はありますが、今のところは諦めるしかありません。
ですが、2020年4月に施行された民事執行法では、財産開示手続における罰則が強化され、出頭拒否や虚偽申告に対し刑事罰が下されることになりました。
財産開示手続とは、差し押さえ財産が不明な時、相手を裁判所に出頭させて開示させられる制度です。
養育費の不払い者を直接罰することはできませんが、差し押さえで不払いの養育費を回収しやすくなった点は見逃せません。
差し押さえするにも財産が特定できないという人には、是非とも知っておいてもらいたい重要な情報です。
これに関しては下記の記事で詳しく解説しているので、目を通して基礎知識として頭に入れておきましょう。
ーーー
諦めないで!不払いの養育費は強制執行で回収できます!!
ここで言う強制執行とは、財産の差し押さえを指します。
不払いの養育費問題で悩んでいる人ならば、この差し押さえという言葉は聞いたことがあるでしょう。
財産の差し押さえは、不払いの養育費回収において最終手段とも呼ばれ、絶大な効果を発揮します。
よって、相手に差し押さえられる財産さえあれば、この差し押さえで確実に養育費を回収することができるでしょう。
ですが、いざ差し押さえするにしても、どうすればいいのか分からないという人は少なくありません。
そのため、不払いの養育費回収に二の足を踏んでいる人は多いのです。
しかし、不払いの養育費回収は、後にすればするほど回収できる可能性が低くなってしまいます。
時効を迎える可能性もありますし、相手に差し押さえる財産が無くなってしまう可能性もあるからです。
確実に不払いの養育費を回収する為には、迅速な対応が欠かせません。
不払いの養育費を差し押さえで回収する方法は、下記の記事で詳しく解説しています。
差し押さえの方法だけでなく、押さえておいて欲しい注意点にも言及しているので、しっかりと目を通して参考にしてください。
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養育費の不払い問題は専門家へ相談を!誰でも利用できるおすすめの相談先はココ!!
不払いの養育費回収が進まない人や、簡単に諦めてしまう人が多い利用の1つに、的確なアドバイスを受けていないことが挙げられます。
不払いの養育費問題は、1人で悩んでいてもらちがあきません。
相手が進んで支払ってくれでもしない限り、問題解決は期待できないでしょう。
不払いの養育費を回収する為には、法に則た請求が前提となります。
また、確実に請求するためには、その方法手段が重要です。
よって、最善の方法を取るためにも、法的問題に強く、養育費の不払い問題に詳しい専門家に相談しなければなりません。
こう言われれば、あなたの頭には弁護士が浮かんでいることでしょう。
おそらく弁護士に相談した方が良いことなんて、誰でも分かっているはずです。
いざそれを実行に移せないのは、弁護士費用を気にしてのことでしょう。
しかし、弁護士費用を気にして、専門家の貴重な意見やアドバイスを逃すのはおすすめできません。
無料相談に応じている弁護士事務所は多数ありますし、無料で養育費相談を受け付けている支援機関もあるからです。
まずは、これら相談先を利用して、最善な対応策を相談してみることをおすすめします。
おすすめの無料相談先に関しては、下記の記事で紹介しています。
自分に合った相談先を選んで、至急連絡してみるようにしてください。
まとめ
今回は国や地方自治体が不払いの養育費問題を解決するために、どんな対策を講じているのか、その実情を解説しました
国に関しては今後の対応に期待したいところですが、自治体は既に立て替え制度を導入して、不払いの養育費問題解決に向けてスタートしています。
これは不払いの養育費に悩む人にとって、朗報と言えるでしょう。
全ての自治体で導入されている制度ではありませんが、該当する人は是非とも利用してもらいたい制度です。
また、2020年度内には国の支援策がどうなるか、その方向性が見えてくるはずです。
現在、日本では行政をあげて、不払い問題を解決しようという流れになっています。
不払いの養育費は必ず回収できると信じて、諦めずに回収に努めるようにしてください。
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