養育費の不払いは今や社会的な問題に発展しています。
離婚時に養育費の取り決めをしたはいいが、「養育費を払ってくれない・・・」と頭を悩ませているシングルマザーは少なくないでしょう。
しかし、安心してください。
払ってもらえない養育費の回収方法はいくつもあります。
あなたがその回収方法を理解して、自分の状況にあった方法で対処さえすれば、払ってもらえない養育費は確実に回収可能です。
最終的な手段としては、強制執行による差し押さえを申し立てることになりますが、それ以外にも回収方法はいくつもあります。
それら方法を知って、あなたの状況に一番適した方法で回収すればいいのです。
そこで今回は養育費を払ってくれない元夫から回収する方法を徹底解説していきます。
最後まで目を通して、あなたに合った回収方法を見つけてみましょう。
養育費を払ってもらえない時の対処方法
養育費を払ってもらえない時に、まずやらなければならないのは相手への請求です。
養育費の不払い額と支払い期日を明確にして、相手に直接連絡しなければなりません。
ここで相手の出方に応じて、次にどうするかを考えることになるでしょう。
しかし、相手が請求に応じない場合、次に取れる対処方法は、あなたが下記のどちらに該当するかで変わってきます。
- 養育費の取り決めを裁判所で決めた
- 養育費の取り決めを当事者同士の話し合いで決めた
それでは相手への請求と、それ以降に取れる対処方法を、順追って見ていくことにしましょう。
相手への直接請求
請求方法は下記のどの方法を取ってもかまいません。
- 直接面談
- 電話
- メール
- 郵送
あなたに合った方法で、請求するようにしてください。
請求時の注意点
しかし、注意して欲しいのは、絶対に相手をとがめるような言及をしてはならないということです。
あなたが感情的になって相手をとがめれば、絶対に話はうまくいきません。
下記の2点に注意して、請求するようにしてください。
- 養育費を払ってもらっていることへの感謝を表す
- 養育費を払ってくれないことで生活が困窮していることを伝える
おすすめの例文と請求時に注意しなければならないポイントは、下記記事の「メールで催促する際のおすすめの文例」で詳しく解説しています。
この記事を参考にして請求すれば、話をややこしくすることはありません。
下手に出るくらいの方が、話はうまくいくでしょう。
相手が連絡に応じない時は内容証明郵便で請求しよう!
また、請求時には、相手が連絡に応じない可能性も考えておく必要があります。
相手が養育費を払ってくれないということは、払いたくないという意思の表れです。
そんな相手が素直に、あなたの連絡に応じるとは考えられません。
請求しても相手が無反応という結果になる可能性は高いでしょう。
そんな時は、内容証明郵便で請求してください。
内容証明郵便は、郵便局が下記事項を証明してくれるサービスです。
- 書面がどんな内容だったか
- 誰から誰に差し出されたか
他の請求方法だと、あなたが請求した事実を証明することが困難です。
しかし、内容証明郵便であれば、あなたが請求した事実を郵便局が証明してくれます。
この請求事実は、裁判等でも有効な証拠にすることが可能です。
他の請求方法ではなく、端から内容証明郵便で請求した方が確実かもしれません。
ですが、相手が話し合いに応じてくれる可能性がある場合は、端から内容証明郵便で請求するのはあまりおすすめできません。
いきなり内容証明郵便が届いたでは、相手の心証を悪くする可能性があるからです。
相手に支払う気があっても、その気持ちをそぐ結果になる可能性もあります。
端から内容証明郵便で請求する方が良いかどうかは、よく考えるようにしてください。
相手が請求に応じない場合の対処方法
先に言ったように相手が請求に応じない場合、あなたが下記どちらに該当するかで、取れる対処方法が違ってきます。
- 養育費の取り決めを裁判所で決めた
- 養育費の取り決めを当事者同士の話し合いで決めた
それでは、それぞれで取れる対処方法について、見ていくことにしましょう。
養育費の取り決めを裁判所で決めた
あなたが養育費の取り決めを、裁判所の調停や審判で決めたならば、下記いずれかの回収方法を取ることができます。
- 履行勧告
- 履行命令
どちらも裁判所から相手へ、不払いの養育費を支払うように促してもらう制度です。
強制力はありませんが、裁判所からの勧告になるため、相手へ心理的プレッシャーを与えることはできるでしょう。
その結果、相手が不払いの養育費を支払う可能性が期待できます。
しかし、強制力がないことから、結果は可能性にすがるしかありません。
これがこの方法のデメリットです。
履行勧告と履行命令については、下記記事の「裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てた人が利用できる回収手段」で詳しく解説しています。
裁判所で養育費の取り決めをしているなら、端から最終手段となる「強制執行による差し押さえ」を申し立てることもできます。
しかし、まずはこれらいずれかの方法で相手の出方を見てみるのも1つの手でしょう。
養育費の取り決めを当事者同士の話し合いで決めた
あなたが裁判所を介さず、当事者同士で養育費の取り決めをしたなら、取れる方法は下記のいずれかになります。
- 裁判所へ養育費請求調停を申し立てる
- 裁判所へ支払督促を申し立てる
当事者同士で養育費の取り決めをした場合、強制執行による差し押さえを申し立てる権利である、債権名義を取得できていない可能性があります。
この場合、養育費の取り決めを「執行認諾文言付き公正証書」として作成しなければ、債権名義を取得することができないからです。
あなたが債権名義を取得していないのであれば、最終手段となる強制執行による差し押さえを申し立てるためにも、いずれかの申し立てをすることをおすすめします。
裁判所へ養育費請求調停を申し立てる
相手に請求しても養育費の不払い分を払ってくれない場合、個人で取れる手段は他に何もないでしょう。
後述しますが現在、養育費を払ってくれない相手に対する罰則は何もありません。
だからといって、あなたが相手に対して強制的な回収手段を取れば、刑事罰に問われることになってしまいます。
よって、相手が請求に応じなければ、あなた個人ではどうすることもできないのです。
その時は、裁判所に養育費請求調停を申し立てて、裁判所から養育費の支払いを促してもらうしかないでしょう。
あなたが債権名義を取得できていないなら、債権名義を取得することもできます。
まさに一石二鳥というわけですね。
養育費請求調停の申立方法と注意点は、下記の記事で詳しく解説しています。
養育費請求調停が不成立になった時の対処方法も、併せて紹介しているので参考にしてください。
また、養育費請求調停を申し立てるとなれば、弁護士の存在が気になるところです。
あなた1人で申し立てることもできますが、調停を有利に進めたいのであれば、弁護士を雇った方が満足のいく結果を得られるでしょう。
弁護士費用は掛かりますが、ぜひ検討してもらいたいところです。
養育費請求調停を申し立てるのに掛かる弁護士費用については、下記の記事で詳しく解説しています。
あなたが裁判所への養育費請求調停を申し立てようと考えているならば、是非この2つの記事を覗いて、必要な情報を入手してください。
裁判所へ支払督促を申し立てる
養育費請求調停は不成立となり、審判に移行される可能性もあります。
そうなれば半年から1年ほどの歳月が掛かることになるでしょう。
実に多くの時間と労力、そして費用が必要になるのです。
また、その間は養育費を払ってもらえないままですから、あなたの負担が軽減されることはありません。
そこで、おすすめしたいのが支払督促です。
支払督促は裁判所が相手に対して支払いを督促してくれる制度になります。
費用も安価で、短期間です。
強制力はありませんが、履行勧告や履行命令のように、相手へ心理的プレッシャーを与えて、支払いを促す効果が期待できるでしょう。
また、この支払督促で注目してもらいたいのは、債権名義を入手できる点です。
となれば、養育費請求調停を申し立てるよりも、この支払督促をした方がメリットが高いのはお分かりでしょう。
この支払督促については、先ほどと同じ下記記事の「裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てていない人が利用できる回収手段」で詳しく解説しています。
ぜひ記事を覗いて、申立方法を確認してみましょう。
何をしても効果がない時は差し押さえを申し立てよう!
ここまで紹介したどの方法でも効果がないなら、最終手段となる「強制執行による差し押さえ」を申し立てるしかないでしょう。
ここまでの方法を取ってもらえたなら、債権名義は入手できています。
後は、残る下記2つの申立要件さえそろえば、裁判所へ申し立てることが可能です。
- 相手の現住所を把握している
- 差し押さえる財産情報を把握している
しかも、今は法改正によって、裁判所を介してこれら情報が入手できるようになっています。
以前は個人で調べなければなりませんでした。
裁判所を利用して、情報を調査することができるようになったのです。
2020年の法改正によって申立要件は把握しやすくなった!
以前は債権名義を取得していても、残り2つの申立要件が揃わず、「強制執行による差し押さえ」を断念するシングルマザーは少なくありませんでした。
しかし、2020年4月に施行された改正民事執行法によって、今は残り2つの申立要件は把握しやすくなっています。
改正民事執行法で注目して欲しいのは、下記3つの変更・追加ポイントです。
- 財産開示手続の利用者枠が拡大された(変更点)
- 財産開示手続時の出頭拒否や虚偽申告に対する罰則が強化された(変更点)
- 第三者からの情報取得手続きができるようになった(追加点)
これら3つの制度を上手く利用することで、残り2つの情報を把握できる可能性がグンと上がったのです。
この3つの制度については、下記の記事で詳しく解説しています。
あなたが申立要件を揃えられていないなら、是非この記事を覗いて調査方法を確認してみましょう。
差し押さえの申立方法と注意点
差し押さえを申し立てたいけど、どうやればいいか分からない。
こんな人は多いでしょう。
大半の人は初めてのことでしょうから、分からなくても当然です。
これでは申立要件が揃っていても、どうしようもありませんよね。
裁判所へ「強制執行による差し押さえ」を申し立てる方法と注意点は、下記の記事で詳しく解説しています。
是非この記事を覗いて、申立方法を理解するようにしてください。
差し押さえ時に掛かる弁護士費用の相場
養育費請求調停と異なり、「強制執行による差し押さえ」を申し立てるとなれば、弁護士の力が必要になります。
1人でやるという人もいるようですが、弁護士を雇うのが一般的です。
あなたも弁護士を雇うことになるでしょう。
そこで気になるのが、その弁護士費用です。
弁護士費用は依頼先によって異なります。
どこでも一緒ということはありません。
一般的には回収額の20%くらいから30%前後が相場と言われています。
しかし、回収額に対する弁護士費用の負担が大きいようでは、差し押さえする意味がなくなってしまうでしょう。
そうならないためにも、依頼する弁護士は慎重に選ばなければなりません。
差し押さえ時に掛かる弁護士費用の相場と注意点については、下記の記事で詳しく解説しています。
まずはこの記事を覗いて、必要な情報を入手してください。
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【おさらい】払ってもらえない養育費の請求方法は公正証書の有無で違ってくる!
ここまでの解説で、下記どちらに該当するかで、払ってもらえない養育費の回収方法は違うことは理解してもらえたでしょう。
- 養育費の取り決めを裁判所で決めた
- 養育費の取り決めを当事者同士の話し合いで決めた
しかし、最終的な回収方法となる「強制執行による差し押さえ」を申し立てる際、注意して欲しいのは、後者の「養育費の取り決めを当事者同士の話し合いで決めた」人です。
日本の協議離婚者は全体の80%に達しています。
そのため、債権名義を取得できていない人は実に多いのです。
端から「強制執行による差し押さえ」を申し立てて、早急に払ってもらえない養育費を回収したいという人も少なくないでしょう。
ですが、債権名義を取得していなくては、申し立てることはできません。
つまり、離婚協議者の場合、下記どちらに該当するかで、差し押さえの申し立てをするまでの手続きがまったく違ってくるのです。
- 養育費取り決めを私文書や口頭で取り交わしている(債権名義を未取得)
- 養育費の取り決めを「執行認諾文言付き公正証書」として作成している(債権名義を取得済み)
あなたが前者の「養育費取り決めを私文書や口頭で取り交わしている」で、直ぐに差し押さえの申し立てをしたいのであれば、その方法を理解しておく必要があるでしょう。
その方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
あなたが前者に当たるのであれば、この記事を覗いて、申立方法を確認するようにしてください。
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養育費を払ってくれない人に対する罰則
先に少し触れましたが、現在の日本には養育費を払ってくれない人を罰する制度はありません。
2020年4月に改正民事執行法が施行される際、「6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金」が科されるとツイッターで話題になりましたが、そんな事実はありませんでした。
財産開示手続時の出頭拒否や虚偽申告に、下記の刑事罰が科されただけです。
期待した人は多いでしょうが、今は諦めるしかありません。
2020年に入って、国が養育費を払ってくれない人に対して罰則を設けるとの噂もありますが、これも確かな事実ではないため、今のところ噂に留めておいた方が無難でしょう。
日本における養育費を払ってくれない人に対する罰則については、下記の記事で詳しく解説しています。
この記事を覗いて、今の実状を確認してみましょう。
【要注意】払ってもらえない養育費には時効があります!
今回は払ってもらえない養育費の回収方法について徹底解説してきましたが、回収時に注意して欲しいのが時効の存在です。
払ってもらえない養育費にも時効が存在します。
時効期間は原則5年で、養育費取り決めを下記いずれかで決めた場合のみ10年です。
- 養育費請求調停(離婚調停)
- 養育費請求審判(離婚審判・離婚訴訟)
払ってもらえない養育費を、5年も放ったらかしにするとは考えられませんが、時効があることは把握しておく必要があります。
また、払ってもらえない養育費の時効は、基礎知識さえ持っていればさほど気にする必要はありません。
基礎知識さえあれば、時効を回避することができますし、時効を迎えた払ってもらえない養育費を回収することも不可能ではないからです。
払ってもらえない養育費の時効については、下記の記事で詳しく解説しています。
養育費の支払いを受けている人なら、絶対に知っておくべき情報です。
しっかりと目を通して、時効の基礎知識を身に着けるようにしてください。
まとめ
今回は養育費を払ってくれない元夫から回収する方法を徹底解説しました。
養育費を払ってくれない元夫に、頭を悩ませているシングルマザーは多いことでしょう。
しかし、諦める必要はありません。
相手に支払う財産さえあれば、払ってもらえない養育費は、確実に回収することができるからです。
債権名義を取得しているかどうかで、回収方法は異なりますが、最終的には差し押さえという方法を取れば確実に回収できるでしょう。
あなたが現在、払ってもらえない養育費に頭を悩ませているならば、今回の記事を参考にして、早速回収手続きに取り掛かるようにしてください。
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